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1963-03-08 第43回国会 衆議院 文教委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月八日(金曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 上村千一郎君 理事 小澤佐重喜君    理事 長谷川 峻君 理事 八木 徹雄君    理事 小林 信一君 理事 村山 喜一君       伊藤 郷一君    田川 誠一君       濱野 清吾君    松山千惠子君       南  好雄君    米田 吉盛君       杉山元治郎君    高津 正道君       三木 喜夫君    谷口善太郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君  出席政府委員         文部事務官         (大臣官房長) 蒲生 芳郎君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         文部事務官         (社会教育局         長)      齋藤  正君         文部事務官         (管理局長)  杉江  清君  委員外出席者         専  門  員 丸山  稲君 三月六日  農業、水産、工業又は商船に係る産業教育に従  事する国立及び公立高等学校教員及び実習  助手に対する産業教育手当の支給に関する法律  の一部を改正する法律案小林武君外四名提出  、参法第一二号)(予)  教育職員免許法の一部を改正する法律案小林  武君外四名提出参法第一三号)(予)  公立の盲学校、聾(ろう)学校及び養護学校の  幼稚部及び高等部整備に関する特別措置法案  (小林武君外四名提出参法第一四号)(予) 同月七日  国立養護教諭養成所設置等に関する臨時措置  法案千葉千代世君外四名提出参法第一五  号)(予)  日本育英会法の一部を改正する法律案千葉千  代世君外四名提出参法第一六号)(予) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月六日  日本学校安全会法の一部改正に関する陳情書  (第二八四号)  義務教育施設等整備充実に関する陳情書  (第二八五号)  高等学校生徒急増に伴う学級数増設に関する陳  情書  (第二八六号)  高等学校増設及び学区制改廃に関する陳情書  (第二八七号)  義務教育施設等整備充実に関する陳情書  (第二八八号)  高等学校生徒急増対策促進に関する陳情書  (第二八九号)  高等学校生徒急増対策に関する陳情書  (第二九〇号)  同(第三四九  号)  産業教育振興に関する陳情書  (第  二九一号)  教科書無償配布に関する陳情書  (第二九二号)  私立学校助成に関する陳情書  (第二九三号)  義務教育学校児童生徒減少に伴う教職員定  数改定に関する陳情書  (第二九四号)  公立文教施設整備に関する陳情書  (第二九五号)  教育施策に関する陳情書  (第三五〇号)  公立高等学校全員入学に関する陳情書  (第三五一号)  義務教育教科用図書全額国庫負担に関する陳情  書  (第四〇五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  私立学校振興会法の一部を改正する法律案(内  閣提出第六六号)  学校教育に関する件(高校進学に関する問題  等)      ――――◇―――――
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  文教行政に関する件について、調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。高津正道君。
  3. 高津正道

    高津委員 広島県の小学校において、婦人教師日直をやっておった場合に、十七才の少年が、日曜には、夜は男だが、昼には女教師が一人当直をしておるということをあらかじめ知って、次々と三つ学校に現われ、ナイフをもって先生を脅迫して未遂に終わり、あるいは既遂で逃げたというような事件があって、教師たちは大きいショックを受けて、恐慌状態だ、こういう事件があるのであります。それは今月のことですが、広島県の府中市、深安郡、福山市、去年の十二月には世羅郡にあったというように、連続して起こるから恐慌状態になっておるということは、われわれにも想像できるのでありますが、こういう事件文部省は御承知でしょうか、それをお伺いします。
  4. 福田繁

    福田政府委員 今御指摘のありましたような事件、詳細はわかりませんけれども新聞等によって一応のことは承知いたしております。
  5. 高津正道

    高津委員 この事件をどのように見ておられますか。また、どう指導すればいいか、どう改めればいいとお考えになっておられますか。
  6. 福田繁

    福田政府委員 この問題につきましては、福山市その他においてそういう事件が起こったようでございますが、福山市等におきましては、すでに教育委員会でそれに対する対策考えて方針を出しております。従いまして、その福山市のとった処置についてみますと、たとえば女子教員日直等の場合におきましては男子の用務員学校に配置をしまして、そういう事件が起きないようにするという対策をとっております。今後の問題としては、教育委員会自体でさような処置をとっていただきたいと考えております。
  7. 高津正道

    高津委員 福山教育委員会のとった処置は、やはり女子教師日直させて、その上に用務員を一人つけておく、こういうことでしょうか。
  8. 福田繁

    福田政府委員 福山市におきましては、やはり教員日直宿直という問題は継続するようでございます。ただし、御承知のように、女子教員については宿直ということはやりませんが、日直につきましては、さようないまわしい事件が起きないようにできる限りの対策を講じてやるという処置をとっております。
  9. 高津正道

    高津委員 女子を配置しておくとそのような事件当直の場合に起きるので、福山教育委員会のとっておる処置はおもしろいから、——これを中央からの指導で、全国的に、あるいははっきり法律で、女子教員日直はやらせない、やらない方がいい、こういうことにはできないものですか。
  10. 福田繁

    福田政府委員 女子日直等につきましては、各学校管理しております教育委員会できめることでございます。従って、各府県とも、従来から宿直女子にはやらせませんが、日直については、これは建前としてやっていただくということで、そのかわり、今言ったような、これはたまたま起こった事件でありますけれども、そういう不都合のないように十分な処置を講じてやるということでございます。文部省がそれについて特にいろいろ具体的に指導しておるということではございません。各教育委員会がそれぞれの判断におきまして適切な措置をとって実施をするということでございます。
  11. 高津正道

    高津委員 労働基準法の第六十一条を読みますと、こう書いてあります。「使用者は、満十八歳以上の女子については、第三十六条の協定による場合においても、一日について二時間、一週間について六時間、一年について百五十時間を超えて時間外労働をさせ、又は休日に労働させてはならない。」と書いてあります。また第三十五条には、「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。」と書いてあります。そこに「前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。」ということが書かれておりますが、女子日直をやらせるということは労働基準法に違反しておると思うのですが、その点はいかがですか。
  12. 福田繁

    福田政府委員 労働基準法は御指摘のように一定のワクを設けております。従いまして、宿直日直等勤務にあたりましては、教員は一日で八時間、一週四十四時間という勤務時間のワクをこえるものでございますから、日直宿直等につきましては、当然県立学校職員でございますと人事委員会市町村立学校の場合におきましては市町村長許可を受ける。これが労働基準法にいうところの断続的な勤務としてその許可を受けてやるという手続を踏むわけでございます。そういった意味でございますので、今やっておりますそういう日直等につきましても、当然そういう手続を踏んで行なっておるものと私ども考えております。
  13. 高津正道

    高津委員 女教師にそういう日直をやらせておけばこういう弊害基本的人権問題でもあるし、大きな事件が起きるという事例広島県に二つも三つも現われたのでありますから、全国的にも相当こういうような事例があろうかと思いますが、その点はいかがですか。文部省はどのように把握しておられますか。
  14. 福田繁

    福田政府委員 最近そういう事件を私聞いたことはございませんが、以前は日直だけではなくて宿直もやった時代もございます。そういうときには、たまたま御指摘のような事件が起きたこともございますけれども、最近におきましては、私どもそういう事例を聞いておりませんが、今お述べになりましたような福山市の事件は、はなはだ遺憾な事件だと考えております。
  15. 高津正道

    高津委員 福山市の教育委員会がとっておるその応急的な措置は、文部省としては好ましいものと思われますか。それでは不徹底であると思われますか。そんなことをする必要もなかろうぐらいに思っておられますか。
  16. 福田繁

    福田政府委員 福山市の措置を批判することは避けたいと思いますけれども女子教員日直させるにつきましては、十分そういう点を配慮して、教育委員会としては実施するということが望ましいわけでございます。その限りにおきましては、今度たまたまそういうことが起きましてとりました処置につきましては、これは私どもも首肯できる措置だと考えております。
  17. 高津正道

    高津委員 学校教育法の第二十八条に、教員本務というか、仕事内容というか、それを規定してありますが、その中には、日直というようなことは入っておらぬのです。私の見るところ、入っていません。だから本務外仕事をやらせておるというように思われますが、いろいろ仕事が多くて、父兄に面会したり、いろいろ個々の指導を学童についてやらなければならないことがあって非常に忙しくて、ほんとうの教育ができないような事情にあるのだから、それにさらに日直をさせるということは非常に過労になるので、教育の大きい目的を達成することができない。だから、日直のような、そういう事務をはずしてしまう。これが私は理想であろうと思います。文部省はよく地方のことに必要以上に介入しようとされるし、しておられることを知っておるのでありますが、この問題に対しては逃げ回るような態度で、女子日直をやめればそういう弊害はなくなるのですから、そうして負担を軽くしてやる、これが理想であって、そっちの方へ向いて中央行政指導をやっていきたい、このようにはお考えになりませんか。
  18. 福田繁

    福田政府委員 私どもも将来の方向として教員負担をある程度軽くするという方向は賛成でございますけれども現実問題として、教諭生徒児童教育をつかさどるという、いわば主たる業務のほかに、やはり学校勤務場所でございますから、その学校管理者命令に従って営造物管理その他の仕事に協力するということは当然に必要でございます。その範囲においてはやはり宿直日直という問題は当然に起きてくると私は考えるのでございまして、そういった意味において、従来もやっておりましたが、今後もある程度は宿直日直をやっていただく必要があるのではないか。だんだんにその負担量を軽減していくということは、私どもは将来の問題として検討して参りたいと思います。
  19. 高津正道

    高津委員 日直宿直の場合、手当丁はどの程度出しておるのですか。
  20. 福田繁

    福田政府委員 三十八年度の予算におきましては、宿日直手当は三百六十円に引き上げて積算をされております。一回三百六十円が単価でございます。
  21. 高津正道

    高津委員 話が戻りますが、警備員に切りかえるということはできませんか。
  22. 福田繁

    福田政府委員 これはかつて村山委員からも御指摘がございましたが、そういうお考えも確かにあろうと思います。私どもは将来そういう方向も研究したいと思いますけれども、現在のところ学校教員が全く宿日直をやらないという建前では困るということを感じているわけでございます。
  23. 三木喜夫

    三木(喜)委員 警備員の話が出ましたので、関連してお伺いしたいと思うのですが、警備員については各市町村ですでに雇って、本採用としておるようなところがかなりあると思うのです。そういうところについて文部省はどのように判断しておられますか。  それから学校火災について、文部省は白書的なものを出されておるわけです。これによって見ますと、件数消防庁件数かなり違っておるわけです。そこで、学校火災というものを消防庁に聞いてみますと、やはり学校教育法にいうところの学校火災、このように答弁をしております。文部省の出しておる学校火災統計も、学校教育法に基づくところの学校火災というように読めるのですが、相当数この数の開きがある。これは学校火災消防庁統計よりも故意に少なくしたのか、あるいは何かそこに間違いがあるのかという点を第二点としてお聞きしておきたいと思います。  それから、学校火災損害が三十六年度で大体十五億ほどだと推定されておりますが、この学校火災の中には相当放火とか原因不明のものが多いと思います。こういうものを背負い込まされた学校教師の、断続的勤務とは言いながら、負担のオーバー・ワークというものはかなりだと思うのです。そこで各地には警備員問題が起こっているわけです。これについて最終的にどう考えられるか。これを一つお聞きしたい。
  24. 福田繁

    福田政府委員 学校火災統計等につきましては、私今資料を持っておりませんし、わかりませんけれども、御指摘のようにことさらに減らすということはないと思います。これは実際にあったものをそのまま統計として出していると思っております。なおよく調べてみたいと思います。ただ御指摘のように、まだ全国の学校には木造の校舎が相当多うございますので、原因不明等のことによりましていろいろ火災が起きております。従って学校設置者である市町村は、できる限りそういう損害を未然に防ぎたいということで警備員を置いているところも相当ございます。それは御指摘通りでございます。ただ私ども、そういう学校営造物保存し、維持するために警備員の制度を今後強化していくということは望ましいことだと考えております。ただし、それだからといって、この教員宿日直が直ちにやめられるかという問題でございますが、私はこの学校管理あるいは業務運営という面から考えますと、いわゆる火災予防ということだけが問題じゃなくて、それも大きな仕事でございましょうけれども、この校務を行なっていくということにつきましては、火災予防以外に、たとえば休みの間にいろいろな電話がかかってくるとか、あるいはまた文書の処理だとか、いろいろなそういう火災問題だけに関連しない日常の仕事があるわけでございます。そういった点から申しますと、やはりこれは責任を持っている学校職員が、そういう立場において命を受けてそれを処理していくということが適切であろうと考えるわけでございます。ただその火災予防の点につきましては、おっしゃるように警備員等をいろいろ強化していくことは望ましいことだと私も増えるわけでございます。
  25. 三木喜夫

    三木(喜)委員 今入学試験とか就職試験とかかなり教師負担が重くかかって参っております中で、今初中局長は大へんな御発言をなさったと思うのです。夜宿直しておって、断続的な勤務ではありますけれども、夜というのは大体校務が行なわれることはないのです。勤務時間の間に大体校務が行なわれるわけなんですが、校務を処理する、このようなお話しなんですが、宿直勤務に対しての教師校務執行内容を、電話等でお話がありましたが、そのほか文部省としては、宿直勤務に対する規則的なものというか、実行しなければならないこと、実務要綱というか、そういうようなものを校務として考えておられますか、私は文部省が消防に対するところの、防火に対する二十則を出しておられる。その二十則の中にはどういうように防火設備をしなければならないか、どういうふうにものを整頓しなければならないか、通路をどのようにあけなければならないか、こういうものはあろうと思うのですが、校務というものをどのようにお考えになっておりますか。これは警備員を置かなければならないという考え方と、初中局長がいう校務という考え方とは、私は非常な問題点がこの中にあると思う。一つ答弁を願います。
  26. 福田繁

    福田政府委員 私の申し上げましたのは、校務という範囲問題でございましたが、常識的に申しまして、学校営造物管理保存し、また学校のいろいろな各種の教育活動並びに行事を行なっていく、そういうこともすべて含んだ意味での校務だと考えております。従いまして、たまたま今までに宿日直等考えられますことは、たとえば校内の巡視だとか、あるいは施設設備備品等保存整備、そういう問題もございましょうし、あるいは緊急文書の受付とか、あるいは先ほど申し上げましたような電話の収受、そういうものも場合によってはございましょう。あるいはまた非常事態の発生のときに、それを適切に処理するというような事柄も、やはり学校教育活動を行ない、全体として管理運営されていくという面から見ますと、校務の一部分に入るのだ、こういうふうに考えているわけでございます。従いまして、この学校設置者である管理機関がそういう校務についていろいろと規則を設けて、校長あるいはその部下の職員に分掌してもらう、こういうことはあり得ることだと考えるのであります。
  27. 三木喜夫

    三木(喜)委員 もう一ぺんお聞きしておきたいのですが、警備員問題とかあるいは日宿直についての問題ですね。超過勤務問題については、後刻社会党としては法律案を用意しなければならない、このように考えておりますので、その節申し上げるといたしまして、その法律案をつくりますのに大切な資料になると思いますので、今言われた初中局長のお考えをもう一回ただしておきたいと思うのです。  それは、日宿直については、法的に、今高津先生がおっしゃったように、一週間のうちに小規模学校では特に宿直においては二回しなければならない、このような事態が起こってくるので、そういう事態に対処いたしましては、市町村管理者にそのことを願い出て、宿直をさせてもらいますというような格好で許可を得る。これ自体おかしいのですが、管理者の方からよろしくたのむというのが普通なのですが、そういう許可を一本市町村が、管理者がおろすということ自体、変則的に法を曲げて運営しておると思うのです。それが一つ。  次に、管理者の万から学校の保全、保存、いわゆる火災に対してそのものを守るという、このことは、私は校務というように規定づけるのはおかしいと思う。管理者の方から依頼されておることですが、これは宿直仕事として防火一環あるいは盗難防止一環、こういうものとして考えるならよろしいけれども校務規定の中に入れることに非常に発生的に問題が起きる。宿直が発生し、日直が発生した、このことが、法的に見て、校務の中に入れることに私は問題があると思うのです。もう一ぺんここを明確にしていただきたいと思う。
  28. 福田繁

    福田政府委員 先ほど申し上げた通りでございまして、学校管理運営につきましては、委員会規則なる管理者規則を設けて、これを校長以下に分掌してもらうという場合はあり得ると思います。従いまして、その管理規則等で設けられた仕事も、仕事内容としては、生徒児童教育をつかさどるものではございませんけれども、そういうものをひっくるめた意味で、私は校務というものは広い概念ではないかということを申し上げたわけでございます。従いまして、ただ生徒教育だけをつかさどるのが校務だ、そういうように私ども考えていないわけでございます。
  29. 三木喜夫

    三木(喜)委員 よくわかりました。今おっしゃる中で、命令系統が違い、あるいはまた人事の関係が違う市町村から委託を受けた仕事、これ自体は元来は市町村長仕事なんです。学校管理者仕事なんです。その仕事をもってきて、これを校務と色を塗るというところに私は問題があると思う。これは委託事項だ、これは校務だ、こう見たときに、これも校務だというように持っていくところに私は問題がある、このように申し上げようと思う。本来教育長がこれを命令する、あるいは県の教育委員会から命令を受けるとかいうことになれば、これは系統的に見て校務系統です。一方管理という仕事は純然たる市町村長仕事なんです。その仕事を横からもらってきて校務だ、このように初中局長考えになることにちょっと私は抵抗を感じるわけなんです。  この問題については、また私らの方から法律案を出すとか、あるいはその以前にもう一回詳しく内容等につきまして文部省の見解をお聞きしたいと思いますので、この問題はこれで終わりたいと思います。  今のは関連質問です。
  30. 床次徳二

    床次委員長 引き続き三木喜夫君に質問を許します。
  31. 三木喜夫

    三木(喜)委員 最近中学生の集団的な暴力事件というものが非常に多くなって参りました。なお、先般は受験に失敗して子供が自殺をしたというまことに悲しむべき事態が起こって参ったのでございまして、私は、きょう特に政府の方で人つくりということを非常に言われますが、その人をつくられない部面についてどのような対策を立てたらよいかということについてお聞きもし、御意見も申しあげたい、このように思うわけです。  そこで、この自殺問題、それから中学校の出征の集団の暴行事件、犯罪、それから就職問題、大体この三つについて、お聞きしたいと思うのであります。  先般、村山委員並びに山中委員の方からもこの入学試験に失敗して自殺をした少年問題が提起されました。それについて杉江管理局長進学指導を適正にする、また福田初中局長進路指導を適切にする、このように答えておられると思うのです。おのずから言葉が違いますので、私はもう少し、どのような進学指導をされ、どのような進路指導をされるかについて承りたいというように考えておるわけであります。しかし当日、福田初中局長は、その事件については知らないと明言を避けておられますので、私は事件内容をここで明らかにしておかなければならぬと思うのです。  それは二月の四日、川崎市のさいか屋デパート歴上から投身自殺をした若山肇君の件でございます。若山君は横浜一商の受験をいたしまして、それに失敗したわけでございますが、この事件に関して、当時「週刊朝日」も「サンデー毎日」も、同時に記事にして大きくこれを取り上げました。その「サンデー毎日」の見出しといたしましては「ついに“悲劇”は現実となった。高校入試に失敗した終戦っ子が、みずから若い命を絶った。」「親や先生ショックは大きい。だが、この悲劇は決して他人ごとではないのだ。」このように大きく見出しをつけて警告をしております。私はこの問題を、ことさらにかなり前のことを取り上げます意味は、これに対しまして教師は一体どのように考えておるのだろうか、親や兄弟がこういう問題を今後どのように考えていくか、あるいは教育者、為政者、政治家はこんな問題にどう対処していったらいいのかと思うわけです。皆さんの中には、それは一つのできごとであって全体ではない、このように思われるかもしれませんけれども、私はこういう問題は、入学試験が終わりますと続発するのではなかろうかということをおそれるわけでございます。あえてこの問題を取り上げたのは、そういう意味合いでございます。  そこで杉江管理局長にお聞きしたいのですが、あなたは、そういう事件はちょいちょい見ます、しかしながらこれについては進学指導を適切にやっていくように私たち指導しております。このように言うておられますが、進学指導をどのようにされますか、杉江さんにお聞きしたいと思います。
  32. 杉江清

    杉江政府委員 私、管理局でございまして、そのことは直接担当はいたしておりませんが、一般論として申し上げた次第でございまして、そういうことは従来とも文部省としては注意してきたところであると理解しておるわけでございます。具体的には初中局長からお答えいただくことが適当であるかと思います。
  33. 福田繁

    福田政府委員 川崎市でのできごとは非常にお気の毒な事件だと考えております。私はこの事件についてかれこれ申し上げることは避けたいと思いますが、上級学校への進学指導なり、あるいはまたそれらを含めた進路指導というものは最近各教育委員会でも非常に真剣にやっているのが一般的でございます。従いまして、いろいろ生徒の発達段階に応じまして、将来の進路なり進学という問題については個々の担任の先生が十分その希望なり、あるいはまたその適性というものを発見しながら、また家庭とも十分連絡をとってそれを指導していくというのがやり方でございます。そういった意味で、特に高校急増期を控えておるわけでございますので、各学校ともそういう面についてはできる限りの指導の徹底をはかるという趣旨で、各教育委員会ともやっておるわけでございます。そういう方向においては文部省としても教育委員会と必要に応じて相談をしながら、あるいは会議等でそういう進学指導について打ち合わせをしながらやっておるというのが現状でございます。
  34. 三木喜夫

    三木(喜)委員 多少この事件の分析になると思うのですが、家庭は非常に円満であった、夫婦の間のたった一人子であった、経済的にも悩みはなかった、性格も非常にほがらかで、からだも丈夫な子であった。そういたしますと、おそらく教師としても、こういう問題にぶちあたったときには手の打ちようがないと思うのです。そこで、こういう問題を聞いた各学校では、教師としては防御的な役割はしておるわけです。あなたがおっしゃる意味も、いろいろ手を打って進路指導をやって、家庭と手をつないで、このようなお考えですけれども、その内容としては聞けなかったわけなんですが、おそらくこういうことのないようにというその事態を防御するという役割しか私はないのじゃないか、このように思うのです。山中委員質問に対しまして初中局長はこのように答えておられます。警察の方は直ちに行って原因を調査したりして大へんにこれを重大視して考えておるが、文部省の方はこの問題については知らない、知らないからあまり関心を示さない、このように冷ややかな答えが出ておるのですが、この問題は今の試験地獄の世の中の大きな問題点だと私は思うのです。今おっしゃったような答えは、ただそれをおそれて防御するということにしか役立たないのじゃないか、このように思うのですが、初中局長のお考えはどうですか。
  35. 福田繁

    福田政府委員 全国の教育委員会等でやっております生徒指導が防御的のみだというようには私は解していないのでございまして、各学校の現場でやっております先生指導は、相当積極的に指導しておるところが多いように聞いております。この場合は私はどういう指導をやったか詳細には存じませんけれども、担任の山崎という教諭生徒指導については相当ベテランの教師であるということは聞いておりますし、詳細はわかりませんけれども、やはりいろいろ平素から指導はしておったのではないかということは想像されるわけでございます。三木(喜)委員 こういうことが同じ週刊誌に載っておるのです。中学三年の長男を持つ東洋大学の教授は、「子供がどんな反応を示すか、それが一番気がかりです。全国的に公立高校の試験が実施される三月上旬に、第二、第三の若山君がでなければいいが」、このように言っておりますし、それからある学校校長先生は、全校生徒を集めて七ころび八起きの精神訓話をやっています。またこうした生徒が出ないように観察、早期発見をより徹底的にやる、こういう考え方です。それからある教師は、この事件を子供に話したところが、教室は水を打ったようにしんとなり、生徒の心は張り詰めている、こわいくらいだ、このように言っております。それからまた、「“あんなに高いところから飛び降りるなんて、実に勇気がある。りっぱだ”という生徒もいました。実に危険です」このように言っておりますけれども、私は、口頭禅では、あるいはそういう事態が起こることに対して早期発見しようとかそういうことをいろいろ考えてみても、抜本的な解決にはならない、このように思うのです。なるほど見きわめも早くでき、あるいは防止もでき、訓示もできるかもしれません。しかし、それはその範囲にしかとどまらないやり方だと私は思うのです。そこで初中局長の仰せになったのも、かなり積極的にやっているようだと思いますということですけれども教育の為政者として、特にこういう問題が出たときにどうしたらよいかということについてはやはり相当はっきりと明示してもらい、あるいは考えてもらわなければ私は困ると思うのです。この前二回のこの委員会で、進路指導進学指導という言葉によって簡単に表現し去られてしまっております。こんなことで済まされない問題だと私は思うのですが、どういう対策を立てたらよいかということについてお伺いしたいと思うのです。
  36. 福田繁

    福田政府委員 学校におきますところの生徒進路指導なり進学指導というものは、三木先生もよく御承知のように、やはりいろいろな形で行なわれているのが現実でございます。私どもといたしましては、やはりそれにはいろいろなやり方があると思いますけれども学校の現場においてその子供や家庭の状況等も十分考えて、そして適切な指導をしていただくということ以外にはない。具体的にどのような対策を持ってこれに臨むかというようなことは、むしろやはり学校自体においてそういう問題で意見なり方法というものが出てくると思っております。従いまして、いい方法が将来またいろいろ出てきます場合には、教育委員会なりあるいは私どものいろいろの学習指導あるいはその他の指導につきましても、そういう面でこれを取り入れて、そうして適切な指導をより完璧にしていくということが願わしいわけでございます。そういった意味でございますので、この事件を契機にして直ちに何かそういう生徒指導を変えていくとか、そういうようなことは今のところ考えていないわけでございます。
  37. 三木喜夫

    三木(喜)委員 次の問題と関連いたしますので、次の問題に移りたいと思うのですが、その前に、よく取り上げられた問題ですけれども、こういう問題の根底に何があるかということをやはり的確につかまえていって、その原因を除去するということ以外にないのじゃないか。それはこうした青少年は人生の非常な動揺期にあります。その動揺期に、史上最大の試験地獄がやってきたわけであります。その試験地獄の中で子供がゆすぶられるという問題一つあると思うのです。そこで試験地獄をどのように緩和するかということが当面の問題でなければならないと思います。  それから、これは現代子供センターの高山事務局長の言葉でありますが、終戦っ子は幼児期は毎日親に余裕がなかったためにはおっておかれた、従って連帯性が薄く、何でも自主的に解決する、いわば一人オオカミ、親しい友もできぬ、そうして功利的、協調性が少ない、終戦っ子の特徴をこのように規定しております。私はこういうものもこの中にあると思うのです。そういう人生最大の動揺期というものをどのように子供の指導に当たるか、もちろん指導もそうですか、政治の場においてそれにこたえてやる、このことも大きな解決の方法だと思うのです。  そこで、今中学校において差別教育が行なわれております。教師は行なっていないということを極力実証づけておりますけれども、実際今の世間の要請といいますか、産業界の要請というものは差別教育をやらざるを得ない方向に持っていっておる、ここに問題点があるわけなのです。進学組と就職組に分かれて編制されておる、ここには問題があろうかと思うわけであります。  そこで話を次に進めたいのですが、次に、この間うちから、ずっと中学校、高校に起こったいろいろな問題をまず取り上げてみますと、ここに岩倉高校の連続放火犯人の一年生を逮捕し、けさ五度目の騒ぎで二件自供、その原因は成績の悪い腹いせだ、このように新聞は報道しております。それから静岡の中学校で就職組の十二人が進学組の八人にリンチを加えております。それからこれは東京で起こった事件ですが、中学生が万引遊び、スリルに酔った二十五人、教室の自慢話で次々仲間に、警察の知らせで学校はびっくりした、このような事件もございます。それから福岡の中学校で、注意をした先生をなぐった、その処分をめぐって問題化しておるいううことが載っておりますし、富山県の商船高校では、リンチの処分に不満として、卒業期前に寮生が四十六人集団帰郷しております。それからこれは兵庫県の問題になるのですが、就職組のひがみが原因で、暴力団をつくって少年たちを恐喝しておった尼崎の中学生、卒業の置きみやげとばかり、新築の体育館をめちゃめちゃにしている中学生、なまいきな顔をするなと言ったのがきっかけで決闘をやった大阪の東淀中学校の普通学級と特殊学級の三年生。それからきのうは、東京都下で数十人の中学生が乱闘をやって、重傷者を出しておる。こうした相次ぐ問題、集団的な中学生の暴行事件、こういう問題を、前の受験に失敗した終戦っ子があったという問題とにらみ合わして、どのように文部省考え、こういう問題をどのように対処されようとしますか。この点も一つお聞きしたい。  ただ、私は、ここで申し上げておきたいことは、子供たち指導あるいは進学のために、現場の教師はもうぎりぎり一ぱいの努力です。ほとんど寧日なきまでに現場の教師は、働き、働き抜いています。そこへもってきてこういう問題がかぶさっていったということにつきましては、現場だけの問題ではないと私は思う。大きく社会の問題があり、今の教育のどこかに歪曲された面があると思うのです。これを今において文部省自体考え教育行政者が考えなかったら、このまま、ほうかむりのまま進んではこれは大へんなことになると思うので、一つお聞きいたしたいと思います。
  38. 福田繁

    福田政府委員 私、先ほどから御指摘になりましたようないろいろな事例につきまして、私見にわたるかもわかりせんが申し上げますと、入学試験問題については、これは私はまた別個の観点から考えられる面があろうかと思います。まず高等学校の進学等につきましては、先ほど申し上げましたように中学校自体における進学指導というものをさらにより適切にやる必要があろうかと思っております。それからまた、この試験制度そのものも、さらに子供に負担をかけないような方向において、これを将来改善していくということも、当然考えていい問題だろうと考えております。ただ、ことしは高校生の急増期だということでマス・コミその他が相当あふり立てて、気の弱い生徒はそれにいじけてきたというような傾向も見のがすことはできないと思うのでございます。そういった意味で、今までに起こったような事件も、いろいろ聞いてみますと、非常に気が弱いとかというような生徒もあるようでございまして、そういった面から、やはり自信をつけて、十分な進学指導をしてやるということが、学校側としては非常に大切な問題であろうと思っております。願わくば、そういう意味におきまして、マス・コミその他があまりこの試験地獄の問題をあふり立てない方がよろしいのではないかというように考えるのでございます。  それから、一面、御指摘となりましたような中学生の非行は、確かに最近ふえて参っております。これは非常に残念なことでございますが、その原因をいろいろと分析して見まして、その原因によりまして、いろいろ手を考えなければならないと考えるわけでございますが、いろいろな非行に至るまでの原因というものが考えられるわけでございまして、たとえば家庭の状況等についてみますと、非常に複雑な家庭の者が多いとか、あるいはまた両親が全く事業に没頭して、子供の指導、しつけにはほとんど手を抜いておる、放任されておるというような家庭の子供が多いというようなことも聞いております。あるいはまた、御指摘になりましたように、学校における学業が遅滞しておる、そのために学校に行ってもおもしろくない、従って仲間の悪に引きずられやすいというような子供もあるようでございます。それからまた、一般の社会の影響というものも非常に強く作用しておるのではなかろうかというように考えるわけでございまして、最近のマス・コミ等の影響等も、これは見のがすことのできない問題であろうと思います。そういった意味で、いろいろな原因があってそういう非行というものが多く発生しておると思いますが、その非行の内容も、いろいろ聞いてみますと、性に関する非行、あるいは先ほどお述べになりましたような暴力教室的な暴力事件、そういうものが相当多いようでございます。また一面、物を盗むというような窃盗に関する非行も、統計上は相当たくさん出ております。従いまして、今申しましたような性の問題、あるいは人の物を盗むとかあるいは暴力をふるうというような、人間生活において基本的なものが何かそこに欠けているような感じがするわけでございます。  そういった面におきまして、私ども考えますのは、やはり家庭生活において子供のしつけというものが十分行われていない、経済的には恵まれておりましても、子供を放任しておるというような家庭の子供が、相当こういう事件を起こしておるようでございます。それからまた、学校における子供の指導というものも、今まではたして適切であったかどうかということも十分反省してみる必要があろうかと思います。そういった意味におきまして、やはりいろいろな要因を総合的に検討しまして、家庭における子供のしつけ、あるいは多く時間をさいておりますところの学校指導問題も、今後十分研究していく必要がある、こういうように思うのでございます。それ以外にもあろうと思いますが、私ども学校教育の担当者といたしまして感じますのは、中学校における、あるいは高等学校でも同様でございますけれども、特に中学校の年令層におけるところの子供のしつけあるいは訓育といったような面について、さらに徹底した指導を行なう必要があるのではなかろうか、こういうように感ずるのでございます。そういった意味で、クラスを担任しておりますところの先生自体も、子供の扱い方にもう少しなれる必要がある、あるいはそういう問題の子供に対しする扱い方を十分研究していただく必要がありますので、いろいろな知識もそういう面から先生に持っていただきたいと思います。そういうことで、少しおそまきではございますけれども、本年度からそういう子供の指導について特に講習会等も設けまして、中学生のいわゆる補導の完璧を期していきたい、こういうように考えておるわけでございます。いろいろ原因がございますので、それらに従ったぴたりとした対策というものはなかなかないわけでございますけれども、要するに学校における生徒に対する指導を強化していきたい、こういうように現在では考えておるわけでございます。
  39. 三木喜夫

    三木(喜)委員 今も言われた通り、個々のケースが違いますから、暴力問題、犯罪問題に対しまして、ぴたりと当てはまるところの対策はない、その通りであろうと思うのであります。しかしながら、問題になる点は一つ一つ取っていく必要があると思うのです。ここが問題だということは取ってやる必要があると思うのです。そうでなかったら——これは三十六年の非行少年の実態ですが、大体非行青少年が百万人おる。十才以上の少年で、千人中十人が犯罪を犯し、四十人が犯罪予備軍である。このように朝日新聞は非行少年の実態を摘出しております。あなたのおっしゃるように、今家庭教育にも問題があって、これを適切にやらなければならない、先生にも少し研究してもらわなければならない。この問題は研究し尽くし、やり尽くして今まで教育をやってきたのじゃないですか、終戦後十何年という間。今の終戦っ子が高校へ入るのに非常な苦労があるということがわかっているように、あの終戦の中から、子供たちの取り扱いが非常にむずかしいということであなたたちも一丸になってやってきて、こういう答えが出てきておるわけです。それに対してもう一ぺん訓辞的なことだけで事足りますか。現実に千人に対して十人が犯罪者である。四十人が犯罪予備軍であり、虞犯青少年であるというような実態では、そういうお話だけでは救えない。ぴったりしたものがないですよ。そのことに対処するぴったりしたものがないけれども一つずつ取っていくという考え方が私は必要ではないかと思う。先がたのお話の中で、終戦っ子あるいは高校入学難の問題をマス・コミがあおり立てるからこういう気の弱い子が出てこうなるのだ、私はそういうようなとらえ方には非常に反対なんです。私はマス・コミのせいにする必要はないと思うのです。今の犯罪が出ておるのは、明らかに映画とか演芸とか不良文化財とか雑誌とか週刊誌、こういうところには問題があろうと思います。マス・コミのせいにするのだったら、私は、こういう点を指摘していただいて、それの取り除きをやってもらわなければならないと思うのですけれども、気の弱い子がマス・コミにあおられて死んでいくのだ、こういうようなとらえ方はまことに皮相なとらえ方だと私は思います。この川崎の少年はほんの先がたまで母親と談笑して元気よく別れておるんです。別れてからデパートに行って飛んでおるんです。それはマス・コミのせいでも何でもない。これは青少年問題の研究家である加藤博士の説をかりますと、試験に落ちたということが直接の原因でありますけれども、死の動機にはなっていない。このような把握が私はいいのじゃないかと思うのです。なぜかといいますと、その子が死ぬにはそれが原因になっていない。マス・コミも原因ではない。ただぐるりからそういう情勢がそこにつくられて、そのつくられたことが死を呼んだ。試験に失敗したということが一つの動機になって、あそこから飛んでおる。あえて言うならば、この子に対するところの母親の期待あるいは世間の期待、あるいは友だちが落ちたということに対していろいろなことを開くというような条件が積もり積もって死に至る、こういうことになっているんです。おそらくこういう子はまだ新聞も読んでいないでしょうし、高校が非常にどうだこうだというようなことは、マス・コミの問題でなくて、やはりこれらの子供に対して期待を大きくかけ過ぎる、こういうところが問題じゃないかと思います。そういうことを何気なしにやっていけるように持っていくことが私は必要ではないかと思うのと、もう一つは、先がたから話に出ておりますように、その条件になるものを一つ一つ取っていくことが必要だ。そういう一つ一つ取らなければならぬ条件はどういう条件だと思われますか。ただ精神訓話的な、あるいは教育の原理的な言い方だけでは取られていかないと思う。
  40. 福田繁

    福田政府委員 誤解のないように申し上げておきますが、私が先ほど申し上げたのは、川崎の問題について申し上げたわけではございません。東京都内の中学校等をいろいろ回って聞いてみましても、やはり中学生といえども新聞を読んでことしは大へんだというような感じを持って、気の弱い子供は指導の上にいろいろ困っておるという話をよく聞くわけであります。そういう一般的な問題を申し上げたわけであります。別の問題として、中学生の非行の要因の中には映画、テレビ等の影響も相当あると私は考えております。警視庁あたりで調べました資料を見ましても、やはりテレビのアメリカ映画か何かを見まして、瞬間的にそれをまねしていろいろ非行を犯したというような事件も出ております。そういう影響もあろうかと思いますが、これは別の問題でございますので、特にこの機会に申し上げませんけれども、そういういろいろな影響、原因というものがありますので、中学校生徒指導についてはいろいろ先生も苦慮されましょうが、家庭においてもいろいろ研究すべき問題があるのではないかというように考えるのでございます。御指摘のようにやはり、一般的な問題は別といたしましても、個々の生徒あるいは個々の学校における指導というものをどうするかということが非常に私は大切な問題であろうと思います。  私はかつて聞いたことがございますが、三木委員の地元のある市では、そういう問題をとらえて教育委員会が非常に熱心に研究しまして、そして学校と家庭が一緒になってある小さな班をつくりまして、数人ずつの生徒に分けて、先生と親が一緒に子供を指導していくというような一種のやり方をしておるわけでございますが、そういうことによりまして、やはり子供の指導の上に家庭と学校が連絡をとりながら十分なる指導を行なっていくということにおいては、相当な効果を上げておると聞いております。またいろいろな対策もございましょうが、たとえば生徒の実態に応じまして——生徒の中にはいろいろと能力の違う者がありますので、あるいは知能的にすぐれておる生徒もございましょうし、あるいはまた図工その他作業的な仕事にすぐれておる生徒もおるわけでございます。そういう能力なり適性というものを先生がよく見きわめまして、それに応じた教育を施していきながら指導することによって、生徒の不満や欲求を満たしてやるというような指導も必要であろうと思います。現に兵庫県のある地区ではそういう指導をやっておる例を私は聞いておりますが、そういうことによりまして、やはり個々の実態に応ずるような指導をやっていくということが非常に大切な問題であろうと思います。そういう意味におきまして、私どもは、今後も教育委員会等がそういう具体的な指導方策というものを研究して打ち出していただくことを、非常に期待しておるわけであります。
  41. 三木喜夫

    三木(喜)委員 初中局長は、東京の中学校を回られて、そういうお話を具体的に校長とか現場の教師とされたということですが、その点がそういうふうにやられておるということになれば私は非常にいいことだと思います。しかしながら、今おっしゃったある県で——私の県のようですが、青少年指導あるいはモデル地区というような格好で組織をつくってやっておることが、私は思わせぶりになっておるのではないかと思う。上から子供をなでておるだけに終わって、それらの人もかなり忙しい人があって、子供の深部に手が届かないと思う。ほんとうに子供の深部に手を届かすということと、それから子供のうっせきした気持のはけ口をどこかにつくってやることが必要だ。だから、そういう組織づくりがただ形式的なことに終わっておるということを私は非常に残念に思う。たとえげ、今おっしゃるような兵庫県のある地区のモデル地区だと指定されておるところから、きょう私手紙を持ってきたのですが、中学校の子供が集団で盗みを働いて物を分けておる。それから同じくそのモデル地区の指導の役人の子供が、父親も知らなかったが、短刀で女の子を脅迫して、自分の運転するところの三輪車に乗せて、そしてあるところでいまわしいことをやっておるということが現実起こったから、私は非常に悲しい思いがしておるわけなんです。そういうことだけではとうてい今の子供は救えないのです。この新聞を見ますと、新聞のとらえ方も私は問題だと思うのですけれども、きょうの新聞なんかは、中学生の子供たちに対して、不良何名、こうきめつけて書いてあるのは、やはり言葉の使い方に問題がありますし、その不良という考え方に私は問題があると思うのですが、いずれにいたしましても、その深部に手が届いていない。しかして、初中局長がおっしゃることは、各所を具体的に回っていただくことはありがたいです。これは私はむしろ喜ぶべきことだと思うのですけれども、今おっしゃった後段の分については、それができておるから大丈夫だ、こんな考え方はきわめて危険なんです。そういう形式的なことが日本にはあまりにも多いから、私たちの子供はどんどん思わざる方向へいってしまいおる。千人中四十人が予備軍で十人が実犯者だという実態が出て参っておるのでございます。もう一回その問題についてもう少し具体性を持った確信のある話をして下さい。
  42. 福田繁

    福田政府委員 私は一例として申し上げたいのでございまして、そういうことを全般がやっているという意味でもございませんし、またそれが非常に上すべりでやっているということにも聞いておりません。やはりやっている当事者はきわめて真剣にやっているわけでございます。そういうことでありますので、かりに一部の地区でありましても、そういう適切な指導が行なわれて効果が上がってきておるとなりますと、やはりそれがほかの地区にも影響しまして、それを見習っていくというようなことになろうと思います。そういった意味で別に私どもの方でモデル地区としてそれを指定しているわけでもございませんし、やはり現場の先生教育委員会の人たちが研究的にこうしてみたらどうだろうというようなことで、一番いいと思われる方法をとっているやり方でございます。そういう意味におきまして、私どもは、その効果がだんだん上がってくることを期待しているわけでございまして、ほかの地区でもそういうことをやろうとしているところも兵庫県以外にもあるということをこの機会に申し上げておきたいと思います。
  43. 三木喜夫

    三木(喜)委員 第三として、給食費を持っていけない子供があって、それが学校へ行くのを非常に渋っておる。しかして七%と三%の準要保護児童と要保護児童政府からの教育援助、こういうことが非常によい影響を持っておる、こういうように具体的にそのことを押えていかなければならぬと私は思うのです。ここに一つお聞きしたいのですが、それでは、長欠児童生徒援護会財団法人池田勇人会長を初め、労働省、文部省では対策を急いでいる、こうあるのですが、昨年の統計では長欠児童が十六万人おるという文部省の調査が出ております。これが具体的にどう動いておるか、まずこれを一つお聞きしたいと思います。形だけでは困ると思うのです。
  44. 福田繁

    福田政府委員 私、会でどういうことを具体的にきめたかよく存じませんけれども、長欠児童につきましては、私ども従来から非常にいろいろ対策を講じているわけでございますが、ここ数年間の傾向を見てみますと、漸次減少してきております。小学校につきましても、三十六年の数字を見ますと、大体〇・六%程度に下がっております。これは約十年前の一・四%から比べますと年々減って、現在小学校につきましては〇・六%、それから中学校におきましても、十年くらい前は三・七%だったものが三十六年度におきましては一%程度減っているという現状でございます。従いまして、まだ、そういう小学校におきましては約六万以上、それから中学校におきまして約八万近くの長欠児童が三十六年度に統計として出ておりますことは遺憾でございますけれども、漸次これらの長欠児童に対する対策を強化して参りまして、こういう事態を一日も早く解消していきたい、こういうように考えているわけでございます。
  45. 三木喜夫

    三木(喜)委員 その次に週刊朝日ジャーナルにこのようなことが載っております。三十八年二月二十四日号ですが、「戦後に生まれた子どもたちの高校に進学する数は、今年がその頂点である。どうしてこれを収容するかが、一つの社会問題となっている。」という見出しで、「中学を出て、すぐに就職する子どもたちのことである。進学組と就職組との間のいざこざは、めずらしい話ではない。これまでも、暴力事件をおこしたことさえあった。」こう書いて、「有名校に入学したがるのは、学問するためではなく、立身出世の方便にすぎぬことが多い。教え方、勉強の仕方ばかりでなく、日本人の教育観そのものにユガミがある。」このように載っておりますが、端的に申し上げまして、遊学組と就職組という、こういう分け方をなくすることはできませんか。こういうことはやはり指導いたしますか。その点一つ承りたい。
  46. 福田繁

    福田政府委員 文部省としてはそういう指導はいたしておりません。
  47. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そういう指導はしておりませんけれども、全国中学校は大体このような分け方になっていますよ。それではどこに問題があるのですか。こういうことにして就職組に対しては非常な劣等感を持たしている。また現実に手が行き届かないのですね。それはちょっとほかのデータで申し上げたいと思うのですが、これはどこに問題があるのですか。
  48. 福田繁

    福田政府委員 これはやはり、高等学校に進学する場合におきまして、学校当局がその進学を容易にするために、ある程度そういう進学する生徒を分けて平素から教育していく、こういうような考え方からくるわけでございます。従いまして、私どもとしては、進学組、就職組といわず、これは義務教育の段階でございますので、そういった区別なしに、中学校で課せられるべき教育が普通に行なわれることが望ましいわけでございます。従って、そういう進学組のために特にそういう特殊な教育をやらなければ高等学校に入れないのだというようなやり方でない方を希望するわけでございます。
  49. 三木喜夫

    三木(喜)委員 次に、これも端的な質問では割り切れないだろうと思うのですけれども、ずっと以前から文部省にもせよ、各都道府県にもせよ、高校を増設することに非常な努力を払ってきました。そうして現在を迎えて子供たちは今年どういう結果が出るかが問題だと思うのですが、しかし最大限の努力をそれぞれに払っておられるということは、私たちも認め、今なお払おうとしておられることを認めるわけなんですが、ただ昨年度からの論議の中で、文部省と私たちの意見が対立したのは、文部省では高校入学に対しましてはこれは政府の責任だというような考え方から、最近では設置者の責任であるといわれるのかということが一つ、それから私たちは全入ということを非常にやかましく言うわけですが、ある議員に聞きますと、私たちの側では、全入という考え方、そんなものはけっ飛ばせということになっているのだ、こういうことを一つ聞きました。それから荒木文部大臣の考え方の中に、昨年来賢い者もあほうな者も一緒に高等学校に入れるというような不合理な考え方はないということを、基本線として強調されました。私はこの三つが、今の高等学校へ子供を進学させるということに対して、日本の国の意見を二つに分けている原因ではないかと思うのです。やはり全入けっ飛ばせ、それから荒木文部大臣は端的な言い方で誤解があるかもしれませんが、賢い者もできない者も一緒に高等学校へ入れるというのはけしからぬ、こういうお考えですか、その二点をお聞きしたい。
  50. 福田繁

    福田政府委員 高等学校設置者の責任だというようなことについてお尋ねございましたが、私どもとして当初高校の急増対策考えました際に、御承知のようにこの急増対策については財政的な面から国が相当の責任を持つやり方をしてもいいのではないかというような意味合いにおいて、この急増対策考えたわけでございます。従いまして、補助金等も普通課程について要求したわけでございますけれども、これは御承知のように、普通課程に対する校舎についての補助金は認めないという結果になりましたので、これはやめましたけれども、起債あるいは交付税等による財源措置は、国として必要な限度においてやったわけでございます。これは高等学校設置者が都道府県であるというそういう責任と別個に、やはり急増対策について、こういう非常事態でございますので、国が財政的にこれを援助していくという責任の立場をはっきりさしたものだと考えておるわけでございます。この点は先ほど御指摘になりましたように、別に国が全体についての責任者だというようには考えませんけれども、少なくともその高等学校の設置あるいは増設を容易にするための援助をする責任を果たすという限度においてこれが実施されたわけでございます。そういう趣旨でございます。  また高等学校の全員入学の問題につきましては、御承知のように現在の中学校の場合と違いまして、中学校義務教育でございますが、高等学校義務教育ではございません。従いまして高等学校の課程にもいろいろございますので、それらの高等学校教育に耐え得る子供を、やはり十分能力を見て入れるというのが建前であろうと思います。そういった意味で申しますと、現在でも中学校生徒の中には、いわゆる三%以下の学業の劣った者もおります。そういった点から申しますと、全部高等学校に、しかも全日制の高等学校に入り得るというようには、制度論から申しましても実際上の問題から申しましてもできないのじゃないかというように考えるのでございまして、そういう点を申し上げたつもりでございます。
  51. 三木喜夫

    三木(喜)委員 高等学校が今のお話では、社会的、経済的、知能的に恵まれた者からより抜いて入れるのだという考え方ですが、これは私は問題だと思うんです。今の高等学校というものは収容力の最大限まで国家の全青年に奉仕すべきであるという考え方に私は立ってもらいたいと思うのです。入学試験、選抜というものは、そのうちでやむを得ないものであって、これが本質的な問題でない、こういうように考えてもらわなければならないわけでありまして、今の初中局長のお考え方には、やはり能力的にということを言われましたが、今の高等学校義務教育ではない、しかしながら国民全体の教育機関として、中学校卒業者の希望する者をすべて入学せしめるという建前になっておるわけなのです。そんな建前になっていない、このように言われるなら、文部省一つ明らかにしてもらいたいのは、学校教育法の第七十五条に、高等学校に精神薄弱者の学級を置くことを認めておられます。そうしますと、ここがおかしくなって参る。それから第二点といたしまして、「入学志願者数が、入学定員を超過した場合には、入学者の選抜を行うことができる。」こうありますから、ここから考えた場合に、超過しないときは全員入学さすという考え方も出てくるわけなのです。そうしますと、高校をつくっておく必要がある、全入の考え方は私は間違いでない、義務教育でないからという考え方はおかしいと思うんです。その点について一つ文部省にお聞きいたしたいと思います。
  52. 福田繁

    福田政府委員 ただいま学校教育法の七十五条の問題を御指摘になりましたので、この点についてまず申し上げますが、なるほどこの七十五条を形式的に読みますと、小・中・高等学校については精神薄弱者の学級を置くことができるようになっております。これは従来から非常に誤解のある点でございまして、もしそういう誤解がありとするならば、これは私どもは改正すべき点だろうと考えております。これは立法当時の事情もいろいろ考えて、あるいは聞いてみましても、高等学校について精神薄弱者のための特殊学級を置くというようなことを考えたわけではございません。小・中・高等学校一本にこれを規定いたしましたために、精神薄弱者から第五号、第六号等の問題も全部含めて形式的に書いてございますので、そういう誤解を持たれるのも当然だと思いますけれども、やはり盲ろう等につきましては、高等学校について特殊な者を入れるための施設はあってもいいと思いますが、立法趣旨としては、そういうことで、当初から高等学校について精神薄弱者のための学級を置かなければならぬという意味においてこれは立法されたのではないというように聞いております。現に高等学校についてはそういうものはございません。そういう趣旨でございます。  それから高等学校の入学許可問題でございますが、これは五十九条の第一項を読んでいただきますと、「高等学校の入学は、校長が、これを許可する。」ということになっております。この校長許可する前提としては、中学校から送られました調査書いわゆる内申書と、あるいは学力、入学試験を行なった際には、その試験の成績というものを総合的に見て、そうして判断してきめる建前になっています。従いまして、この書き方は、入学定員を超過した場合には、入学者の選抜を行なうという定員との関連を書いておりますけれども許可権は校長が持っておりまして、従いまして、その内申書等によりまして、高等学校教育を受けるに足る能力を持っているかどうかというような事情は、選抜試験を行なうと行なわないとにかかわらず、これは実際に検査をしまして、許可するわけでございます。そういう意味でございますので、私どもの先ほど申し上げました高等学校教育の本旨というものから見て、この五十九条というものは、そう矛盾するものではないというように考えるわけでございます。
  53. 三木喜夫

    三木(喜)委員 この前村山委員からだったかと思うのですが、技能労働者について、昭和四十五年までに四百十七万が必要である。三十七年度労働省の統計では百二十六万人が不足しておる。三十八年から四十二年まで職業訓練をフルに動かしても百三十万しか調整できない、こういう実態が出て参っておりますので、私はこの機会に定時制の問題あるいは全日制の問題、今話として出しておりますが、働く青少年に全部高等学校教育をやらす。そうすれば、今申しますように、就職組だとかあるいはまた進学組だというあつれきが、私はかなり緩和されるのではないか、こう思うのです。現在定時制を入れて八〇%の高校に行っておる者がある。しかしながら全日制にとっては、私立も入れて六一・八%、こういうことになっておりますが、そうしますと、具体的には四〇%ほどの子供が働く形の中で学ばなければならない、私はこういうことになってくるのだと思うのです。それらの子供に働きながら高校教育を受けられるというようなことを考えられないかと私は思うのです。それはこの委員会でもたびたび取り上げられておるようですけれども、具体的な線は出ていない。それは適齢の青少年、父母を含めて、国民のすべてが高等教育を受けたい。そうでなかったら、働きもできない、産業社会では一人前に取り扱ってもらえない、こういう考え方が支配的だと思うのです。そういう考え方が非常に強く出ておりますし、根本はそうですか、その過程においては、就職組と進学組との争いになって出てくる。こういう病的なままに放置することは問題があるので、一つ一つ問題点をとっていくという意味において、働く青少年に高等教育を全部やらす。今労働省の統計においても、このように足らないのですから、それについて文部省はどういう施策を考えておられるか。考えておられるならば、早くそれを実現してもらって働く青少年に希望を持たせたい、こう思います。
  54. 福田繁

    福田政府委員 おっしゃるように、全日制の高等学校だけが教育の機関ではないわけでございます。広くいわゆる後期中等教育という分野の中には、職場における教育施設ももちろん考えられるわけでございます。そういった面から、高等学校の制度の問題としては、すでに御承知のように、定時制教育もございますが、通信教育の拡充あるいはこの前学校教育法の一部改正を実施いたしまして、職場の教育施設との連携をはかっていく、すなわち言いかえますと、職場における技能教育のすぐれたものは、高等学校の単位としてこれを認めて、そうして高等学校の卒業資格をとりやすくするというような意味におきましての連携を深めていくというようなやり方をしておるわけでございます。また先ほど申しました通信教育にいたしましても、通信制のみによる高等学校の卒業資格を与え得る道も開かれております。そういう方面に今後十分拡充をして参りまして、そして働きながら勉強のできる仕組みというものを考えていきたいと考えておりますが、ただ現在の時点におきましてそれのみで十分であるかともしお尋ねでございますと、それで十分だとは私ども考えておりません。従いましてこの働きながら勉強する青年たちの実態に応じた教育というものが行なわれやすいような態勢をとることが必要であろう。そういった意味から申しまして、現在の定時制教育につきましてもいろいろとこれは改善工夫をしなければならぬ面がたくさんあると思います。たとえばこれは一例でございますけれども、昼間制の定時制につきましては、これは各方面から批判がありますように、いろいろこれは改善を施すべき内容を持っております。そういった面から定時制教育につきましても内容を充実すると同時に、やはりそこに働きながら勉強したいという青少年が来やすいような場をつくってやるということが必要でございます。年限の問題もございましょうし、中身の問題もございますが、そういった面にひっくるめまして、私どもは、また学校教育だけの問題でなく、現在社会教育として扱われておりますところの青年学級の実態についても十分検討を加えて、それらを、職場の教育施設、青年学級あるいは定時制教育というようなものを広くひっくるめた青少年教育機関というものを検討して参りまして、できればそういう面において新しい施策を打ち出していきたい。これはまだ私の私見でございますけれども、そういう考え方で今日進んでおるわけでございます。事務的な段階におきましては、そういう方向で現在関係の部局と相談をしながら研究中であることを申し上げておきたいと思います。
  55. 床次徳二

    床次委員長 三木君に申し上げますが、本日は、まだ他に質問の予定者もありますので、議事の進行に御協力を一つお願いしたいと思います。
  56. 三木喜夫

    三木(喜)委員 太田委員も先般要望して、雇用主が協力して、定時制といえども昼間に学ぶ機会を与えるような協力態勢をしいてくれという話もありましたが、そういうこと等を勘案して、ただいま初中局長の言われたようなことを早く実現していただくように、この点は要望をいたしたいと思うのです。  それからもう二点ほど簡単にお聞かせ願いたいのですが、その一つは定時制締め出しの就職問題です。昨年度電電公社の採用試験があって、定時制の締め出しを考えておるような応募資格条件を発表しておりましたが、本年はそういうようなことはございませんか。
  57. 福田繁

    福田政府委員 一般的に申しますと、昨年も私関西の財界の方にも参りまして、いろいろ要望いたしたわけでございますが、全体のこの会社関係の面にもそういう差別的な扱いをしないでほしいということは、もう従前から申しておるわけでございます。今電電公社のお話がございましたが、これは具体的に私は存じません。存じませんが、もしそういうことがあるとすれば、私どもとしては、今後そういう定時制の卒業者は受けさせないというようなことであれば、それは一つ是正するような方向で努力して参りたいと考えております。
  58. 三木喜夫

    三木(喜)委員 もう一つは、大学卒の就職試験期日で問題があるのですが、このような試験地獄を通って、そしてあなた方が言われる人づくりがなされ、そしてその結果産業界は野放しで卒業生を奪い合う、こういうようなことは私は問題が多いと思うのです。そこで協定をこの際立てるべきだと思うのですが、この文部省の笠木学生課長の話では、「学生の青田り刈は教育効果の面から困った問題だ。こちらとしては十月一日以降の従来の線が望ましい。大学団体や日経連の話し合いの結果を待って態度をきめたい。」このようなことを言っておられますが、日経連は、協定などできぬ相談だといって、大手に押し切られております。ここにやはり文教担当者として考えてもらわなければならぬことは、国の要請である、産業界の要請であるというようなことを非常に大きく前面に出して人づくりをやりながら、最後では強いもの勝ちというような奪い合いのままで見過ごしておくということは、私は仏をつくって魂を入れぬというようなことになって、笠木学生課長が言われておるように、学生の青田刈りのこういう事態をそのまま放置しておくということは、いよいよもって教育というものが産業界の従属物であるということ——従属物でない、横暴な支配の中にひったくられていくというような格好が私は出てきておると思う。この点どうしますか。
  59. 福田繁

    福田政府委員 私ども、大学に限らず、高等学校の面におきましても、そういう傾向は好ましくないと思いますが、特に大学の場合におきまして、御指摘のような傾向が強いことを承知しております。きょうは担当の政府委員が見えておりませんので、私から意見を申し上げるのは差し控えたいと思いますが、おそらく今年におきましてもそういう従来の考え方でもって文部省としては臨むものと考えております。
  60. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そういう弱いことでは、この問題は対処できないですよ。だから、教育が独占に奉仕するとかあるいは産業界の言いままになっておるとかいうようなことがいわれるわけなんです。この最後のきめ手ができないじゃないですか。こういう問題すら調整がつかぬ。経営者がみな良識に立てばいいわけなんです。これは経営者の中から、人づくりとかなんとかいうことを言うてきたのじゃないですか。あなた方が道徳教育なんか言うておるじゃないですか。経営者それ自体が道徳教育的なものを要望し、しかして人づくりを要望しておきながら、こういう最後のぶざまなことで一体どうなるのですか。道徳性も協調性も何もない。そしてそれをどうにもできませんというようなことでは、私はやはり問題は大きいと思います。大臣一体どうお考えになるか、聞かしていただきたいと思います。
  61. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 先ほど政府委員からお答え申し上げた以上のことは、実際問題としては申し上げにくいかと思います。もちろん今後に対しましても、大学教育それ自体を混乱せしめないような要請を、産業界にもやりたいと思います。また大学自体としましても、自分の責任において、そういう時期を逸脱した就職試験等によって、採用決定が行なわれたことに対して、何らかの制約を加えるような考え方もあってしかるべきではないかというふうにも思います。しかしそういうこと自体がなかなか大学のあり方あるいは職業選択の自由にもかかわり、あるいは会社方面、経済界からいたしましても、なるべくいい人材を自分の会社に採用したいということ、そのことをけしからぬというわけにも参らない節もございまするし、現実問題として非常に悩みの多い課題ですけれども、御心配の点はわれわれも同感でありまして、何か有効適切な妥当な方法なきやということもあわせ考えながら、今後に向って善処したいと思います。
  62. 三木喜夫

    三木(喜)委員 それではちょっと不満なんですけれども、もう一度言っておきたいと思います。  なるほど就職の自由あるいはまた各会社が人材を自分の会社に入れたい、こういう気持はわかるのです。そこが協定じゃないのですか。その音頭とりをすることが就職の自由というものを抑圧するものではない。せっかく協定をやっておきながら自主協定の十月一日以前に、昨年度は七七%がもはや受験しておった。しり抜けになってしまった協定が昨年結ばれたものですから、本年はそれができないと言われるのですが、せっかく協定を結んで、お互いやろうということを約束しておきながら、こういうざまでは財界、産業界それ自体道徳教育を唱える資格がない。それを受け継ぐ文部省も資格がない。そういう産業界をそのままにしておくというようなことでは私は問題があろうと思うのです。道徳教育をいうなら、産業界といわず政界といわず、あるいは官吏といわず、やはりそのことをやり上げていかなかったら、産業界が教育にこれだけ要望して参っておることが、全部自分の行ないによって非常に疑問を持たれる、こう言っても過言ではないと思うのです。大学自体には管理制度、あるいは教師には管理職とかいろいろな制約を加えておいて、教育をやるのに非常にやりにくい状態をとっておきながら、一方はもう無政府状態といいますか、野放図に、やりたいほうだいにやらせておるというのは、あまりにもこれらの人の支配に服して、しかもそれに対して言い切れないという弱さが、われわれ非常に歯がゆいのです。以上です。      ————◇—————
  63. 床次徳二

    床次委員長 私立学校振興会法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。村山喜一君
  64. 村山喜一

    村山委員 質疑に入る前に委員長一つ御注意を願いたいのでございますが、今ここにおりますのは委員長を含めまして十名であります。これは国会法の上からいった場合には、十六名以上いなければこの委員会は成立していない、こういうことになりますので、厳密にいうならばこの委員会は成立していないような状態と相なっているのです。こういうようなことでは今後の法案の審議にあたりまして非常に支障を来たすと考えますので、各委員には委員長の方から出席方の督励を要望申し上げておきたい。  さて、私立学校振興会法の一部を改正する法律案の提案理由を見て参りますと、このたび財政投融資計画の中で預金部運用資金から二十億円の融資がなされ、それに伴いまして資金の公募を振興会が行なうようにする、なおその資金は貸付金の原資に充てるのだ、こういうような考え方のもとに打ち出されている新しい内容的なものがこの法案の一部改正に出て参っているわけでございます。そこで、私は、大臣から根本的な考え方を承る前に、まず担当の局長から、現在の私学振興会法によりますと、この第二十四条の業務方法書には貸付の限度とか利率及び期限、助成の限度、そういうようなものが掲げてあるわけでございますので、現在まで政府が出資いたしました出資金を中心に私学振興会の運営がなされて参ったわけでございますが、その場合におきますいわゆる貸付のそういう利率とか、期限とか、こういうようなものはどのような内容にわたっているのか、その点についてまず承りたいのでございます。
  65. 杉江清

    杉江政府委員 貸付の利率、貸付期間は、貸付の内容によって多少の差がございます。貸付のうち一般施設費に対するものは、利率は六分、二年据え置き、五年以内償還、こういうものと、もう一つ二年据え置き、十年以内償還、こういう二種類がございます。それから理工系学生増募のための施設費につきましては、特に優遇いたしまして、利率は五分五厘、二年据え置き、十五年償還、こういうことになっております。また、高校生増募施設費につきましては、やはりこれを優遇いたしまして、理工系学化増募の経費と同じように扱っております。その他経営費等については一年以内の償還になっておりますし、また災害復旧費についても二種類ありまして、十年償還のものと十五年償還のものとございますが、大体において以上のような扱いをいたしております。
  66. 村山喜一

    村山委員 そういたしますと、この利率でございますが、六分なりあるいは五分五厘というこの金利につきましては、一つの資金コストというものが考えられた上でこういうようなものが定められたものだと思うんですが、私学振興会に対するところの国の補助金はどういうふうになっておりますか。
  67. 杉江清

    杉江政府委員 今までは一般会計からの出資でございますから、その出資についてはそういう問題は起こらないわけでございます。ただその原資の中の一部については、私学共済からの借り入れがございまして、これについては八分の利率で借り入れをいたしております。今度資金運用部資金から借り入れる部分については六分五厘ということになると考えております。
  68. 村山喜一

    村山委員 現在、私学振興会の人件費は、この運用益によってまかなっているわけですね。
  69. 杉江清

    杉江政府委員 さようでございます。
  70. 村山喜一

    村山委員 そうしますと、今度、資金運用部資金の中身、いわゆる預託金を預金部運用資金にいたします郵便貯金あるいは簡易保険その他厚生年金等の、いわゆる源泉があるわけでありますが、預託金の金利については、一カ月以上の定期性のものについて、年二分から六分ということになっておるようであります。それを今度は融通条件というもので調べて参りますと、基準金利というものが示されておる。この基準金利は幾らになっておりますか。
  71. 杉江清

    杉江政府委員 ただいま申し上げたように、六分五厘になっております。
  72. 村山喜一

    村山委員 基準金利は六分五厘。そうしますと、特別会計に対しては六分になっておりますね。そうすると、私学振興関係の債権に対する基準金利は六分五厘ということで考えてよろしいわけですか。
  73. 杉江清

    杉江政府委員 さようでございます。
  74. 村山喜一

    村山委員 この六分五厘のコストのつくものを借りて、それを運用をして参るということになると、そこには資金コストという問題が当然出てこなければならない。そうなって参りますと、今、お話を聞いておると、貸付内容、今日までの出資金の問題と比較をして、六分に対して、六分五厘で借りてくることになりますと、二十億の財政資金については、この私学振興会の方は、これに対する人件費なりあるいはその他の運営費、こういうもののコストは見ないわけですか。
  75. 杉江清

    杉江政府委員 ただいまの御質問の趣旨が、はっきりつかめなかったのですか、もう一度おっしゃっていただけませんか。
  76. 村山喜一

    村山委員 それはこういうことなんです。基準金利は六分五厘だ、こういうことで金を借りてくるわけですね。融資を受ける。そうした場合に、その二十億の資金が私学振興会に一応集まる。ところが、その資金を今度運営をする。それには人件費とかなんとかいろいろな経費がかかる。そのコストは見ないのかどうかということです。
  77. 杉江清

    杉江政府委員 この資金を運用いたします場合は、現在の計画では五分五厘、二年据え置き、十五年償還ということを一応私ども考えております。これについては、まだ大蔵省と協議がととのっておりません。法律制定後に、その条件を協議の上、ととのえるわけであります。  そこで、そのような六分五厘で借りますが、今のような運営のための経費を見ますと、その部分だけについては、もっと利率を上げないと採算がとれないということになるわけでありますけれども、しかし、そのような扱いはいたしませず、この運営に要する経費は、私学振興会全体として考える、プールして考える、そうして貸付にあたっては事柄の性質上から適当な利率をもって貸し付ける、こういうふうにいたしておるわけであります。  そこで、その問題は、ひいて、それでは逆ざやになるのではないか、それをどうするかという御質問につながるかと思いますが、それは振興会で、やはり全体の貸付の中から利子が相当上がっております。現在のところ、そこに余裕もありますから、その中からその経費を出して、全体の運営には支障を生じないことになるわけでございます。
  78. 村山喜一

    村山委員 適当な利率を見る、あるいは逆ざや現象が生じないように措置する。ところが、この問題については、大蔵省と打ち合わせをしなければならないから、まだこの金利については、幾らにするかということはきまっていない。こういうようなことになりますと、現在の業務内容、それについて、三十一条に、財務諸表をつくらなければならないし、またそれを報告しなければならないようになっておるし、承認を文部大臣から受けるようになっておりますね。そうなって参りますと、今管理局長が話をされたように、私学振興会全体の事業計画の中で、貸出金利よりも安い金利で今度また転貸をしていくことが、はたして可能かどうかという問題になって参りますと、財務諸表の中にある貸借対照表とか損益計算書とかいうものの資料をお出しにならなければ、そういうようなことがうまくやっていけますということは言えないんじゃないか。そういうような自信があるのであれば、そうういうような参考書類をわれわれ委員の方にもお配りを願って、そして、こういうようなふうでございますから、こんなふうにやっていけますという証拠をお出し願わなければならないと思いますが、その考え方はどうですか。
  79. 杉江清

    杉江政府委員 詳細な資料は後ほど提出してよろしゅうございますが、考え方としましては、そういった利子収入がおおむね五億あるわけであります。これは一部は再び貸付の原資に振り向けます。それから一部はそれを助成財源にいたします。それにいたしましても、今の逆ざや現象といたしまして、六分五厘で借りて五分五厘でもし貸した場合を考えましても、その一分の差というものは、全額にしてはごくわずかなものでございまして、これは五億の中で十分まかない得るわけでございます。
  80. 村山喜一

    村山委員 そうなって参りますと、はたして今の私立学校振興会の職員の給与体系というものが妥当になるか、あるいはその他の運営上の問題は、どこに問題があるのかということも、私たちとしては調べなければならないと思う。五億円も余剰金を出しているのであれば、それについてあまりにも利率がまだ高過ぎるのではないか。というのは、私はある私立大学の例を聞いたのでありますが、市中銀行から年五分程度で、しかも五十年間にわたって長期的な借款をしている。だからわれわれとしては、そのコストの高いものについてはあまり歓迎しないのだという話がある。だから、基準金利にして六分五厘というこの資金運用部資金のものを借りてきて、それを運営をしていくということになると、今までは国の出資金をもとにして運営をして参ったわけですから、資金的なコストというものはほとんど考えなくてもよかったけれども、このような高いものを持ってくるということは問題があるのじゃなかろうかという点を一つ考えたわけです。ところがそれは、今までの出資金の分によってうまく回転をしているから、その中で逆ざや現象が生じないように適当に金利を安くして、他のものとつり合いがとれたような格好の中でやっていけるのだ、こういうような話でございますのでそういうようなうまい話が、はたして私学振興会の中でできるかどうか。この点については、私は財務諸表を出していただかなければ、これ以上審議はできないと思いますから、後日でよろしゅうございますが、その資料をお出しを願いたいと要望しておきたいと思います。  そこで、数字的なものは担当の局長の方がよくおわかりになっておりますので、ちょっとお尋ねをいたしますが、私学振興関係といたしまして、ことし、三十八年度予算で見られるのは、私学振興会に対する出資金が十二億円、それから財政投融資の資金が二十億円、そのほかに助成費として二十四億三千八百八十万円、こういうふうに相なっているかと思いますが、その中身は、そのうち大学関係が二十三億円、こういうことになっているやに見受けるのでありますが、それは間違いございませんか。総計にいたしましてこれはなんぼになりますか。予算的に措置されたものは三十六億ということになりますかね。
  81. 杉江清

    杉江政府委員 大学にどれだけいっており、それから高校以下にどういっでいるかということの分析は、ちょっとむずかしいようになっているのです。と申しますのは、この貸付内容は大体こうなっておるわけなんです……。
  82. 村山喜一

    村山委員 いや、それを聞いているのじゃない。予算関係を聞いているのです。
  83. 杉江清

    杉江政府委員 融資の部分でございますか、予算全部の。
  84. 村山喜一

    村山委員 予算説明書としてわれわれがもらいました中身をあけてみますと、私学振興関係としてそういうような予算が計上されているわけです。ただ、この中には高等学校の産振関係のものが入っていないわけですが、私立学校の場合の高等学校の産振関係はどういうふうになっているのか、それが一体幾らになるかということなんです。予算項目の中に八項目の「私学振興」としてそこに打ち出してあるものが、私立学校振興会出資、それから私立大学研究設備助成、それに理科特別助成、私立学校職員共済組合補助、こういうように出ていますから、そのほかに何かありますかというのです。それをお答え願えればよろしいのです。
  85. 杉江清

    杉江政府委員 今の産業教育振興費の中には、私立学校分は五億含まれております。それからまた、理科教育設備費の中には一億五千含まれております。そのほか、今おあげになった費目のほかに、特に私立学校の経費はございません。
  86. 村山喜一

    村山委員 そういたしますと、ここで大臣にお尋ねをいたしたいのでございますが、これは上村委員からも前に局長にたしか御質問があったかと思いますが、今後の私学に対するところの大臣の政策といいますか、考え方というものについて、御見解と見通しを述べていただきたいのであります。  それは、今度の私学振興に対するところの方法といたしましては、新たに財政投融資の措置を加えたということが一つの特徴であろうと思いますが、従来やって参りました助成金あるいは出資金と、——この三つの柱によって私学振興をやっていくのだというかまえが出て参ったわけであります。そこで、今まで局長との間で取りかわしをいたしましたように、この資金コストの問題考えてみますと、財政投融資による分よりも助成金による分の方が望ましいわけでありますが、それが資金需要という面から考えてとても出資金だけではまかない切れない。、だから、新しく財政投融資の道を開いたという考え方であろうと思うのであります。しかしながら、この道を広げて参りますと、今後出資金はもうここら辺で打ち切りだ、今後はそういうような財政的な資金の世話をしていけば、五億円もそういう余裕があるのであれば、もう出資金を助成してやるよりも財政的な措置をするだけで十分だ、こういう考え方が私は大蔵省あたりには必ず生まれてくるだろうと思うのであります。そういうような点から、一体今後の方策としては、この三本建をどのようにかみ合わせながら進めていくかということが非常に大きな問題になって参ろうかと思いますので、ここで大臣はどういう基本計画を立てて今後の私学対策問題をお考えになろうとしておいでになるのか、大臣の見通しと見解を承りたいのであります。
  87. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 いつかも申し上げたことに関連をいたしますが、私学に対して国として根本的にどういう考えで臨むかということにつきましては、ただいまのところ従来と同じ考えを私は持っております。それは、なるべく低利長期の資金を国の立場で私学の経営のために提供して参るという考え方が基本線であるべきであろう。助成金を交付しますことは、国の立場で私学に特にお願いをして、御依頼を申して協力をしていたくだという課題に対しましては、助成金というものが出てしかるべし。このごろ授業料その他の関係等の関連におきましてよく聞きますような、教師の給与、いわば経常費を国が助成すべきじゃないかという意見に対しましては、どうも私もにわかに賛成いたしかねる気持でございます。と申しますのは、経常費を国の立場で提供しますことに伴って、多かれ少なかれ私学のことについて、それ自体に国の立場で新たなる支配をとらざるを得ないということに関連してくるように思います。そのことは、私学がその独自性あるいは自主性という根拠に立って特色がある、私学の生命はそこにあると申しても過言でない状態にひびが入りはしないかということをおそれるがゆえであります。従いまして、御質問の中にもありましたように、また今も申し上げた通り、私学運営のための資金を提供する。そのやり方は政府出資と、今度新たに御審議願って決定を見るであろうところの財政投融資の両面で参りたい。しからばその二つの資金源の将来に向かっての比率はどうだということも御質問の中身にあろうかと拝察をいたしますが、その見通しは今はっきりと具体的に申し上げかねる状態だと存じます。しかしながらお説の通り、資金コストのことが無関係なままに進行していくべきものではないと思います。その問題ともにらみ合わせて政府出資も今後も続けていくと同時に、それにも現実問題としては、おのずから年々の限度があることもやむを得ないことでございますから、それとのからみ合いにおきましても、財政投融資の窓口を広げていく。どの限度まで特に資金コストの面からまかない得るかということが課題としてくっついて参ると思いますが、それらのこともあわせて考えながら、将来のことをもっと長い見通しをもって確立して参りたい。本日直ちにそのことを具体的に申し上げかねることは残念でございますが、心がまえとしては以上のように考えております。
  88. 村山喜一

    村山委員 そこで大臣にお尋ねをいたしますが、大蔵省と予算折衝をされる場合には、この財政投融資による資金源として幾ら要求をなさったわけですか。
  89. 杉江清

    杉江政府委員 六十億円でございます。
  90. 村山喜一

    村山委員 出資金については幾ら要求をなさいましたか。
  91. 杉江清

    杉江政府委員 四十一億でございます。
  92. 村山喜一

    村山委員 そういたしますと、大体三分の一程度に両方とも削られた、こういうようなことになると思いますが、その場合にいわゆる四十億なり六十億というそれぞれの比率を定めてお出しになった根拠というものは——文部省としてはどういうような根拠に基づいて今後の将来をきめていこうとなさったのでありますか。
  93. 杉江清

    杉江政府委員 財政投融資からの資金の受け入れについては、一般的には臨時的に大量の経費を必要とするという場合に、この資金の受け入れをするという考え方がとられておりますし、またその考え方が妥当なものと了解しております。そういうふうな考え方から、おおよその考えは、臨時的性格の強い理工系増高と、それから高校急増の経費を資金運用部資金によってまかなう。その他やや恒常的な、たとえば一般施設費に対する貸付、こういうものは出資によってまかなうことが適当ではないか、かように考えて、おおむねそのような区別に従って四十億、六十億円の要求をいたしておるわけでございます。
  94. 村山喜一

    村山委員 そういたしますと、そのような考え方からいくならば、将来は高校急増が済み、そうして大学における理工系の設備施設の充実が済んだ場合においては、やはり恒常的なかまえとしては、財政投融資にたよるのではなくて、出資金を増大して今後やっていくのだという基本的なかまえを持っておるのだ、こういうふうに承ってよろしいですか。
  95. 杉江清

    杉江政府委員 基本的にはそのようにいたすべきものと考えております。ただ一般施設に対する経費にいたしましても、これは基準まで早く充実するという意味をもちまして、その性格としては、多分にやはり臨時的な性格を持っておるものですから、これらの経費の性格を峻別することはむずかしい問題でございまして、それは、もう一歩その必要とする所要経費総額がどれくらいになるかという実際問題考えましたときに、それが相当多額になることが予想されます。そのような事情を考えましたとき、本年度の予算要求の考え方をそのまま踏襲いたしまして、今後その二つ以外は一般会計からの出資のみによるのだ、こういうふうにのみは考えにくい。それはそのときの全体の資金需要と現実の一般会計予算とのあり方との相関関係において決定されるべきものだと考えますが、考え方としては、最初に申し上げたような考え方をできるだけ貫くように努力いたしたいと考えております。
  96. 村山喜一

    村山委員 そこで大臣が言葉を濁されたわけでありますが、省議で決定をして予算要求をされるその際においては、将来の見通しというものを含めながら折衝をされなければならないものだと私は思う。そうでなければ、財政投融資をここに導入することによってどういうような影響があり、今後の対策としてはどういうようなことになるだろうという見通しを立てないで予算要求されるはずはないと思う。そういうような点から今後の具体的な方向というものは——基本的な性格は今局長から承りましたので、それで了承したいと思いますか、その点は大臣今の局長答弁でよろしいわけですか。
  97. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 よろしゅうございます。本来ならば、さっき申し上げた通りもっと見通しを持ったことをお話できる状態であるべきものと思いますけれども、実際問題としますと、私学側の資金の要望なるものが具体的に的確に捕捉しにくい性格もございまして、現在のところお答えし得ない状態ということを申し上げたわけであります。
  98. 村山喜一

    村山委員 そこで、的確に捕捉はしがたいということでございますが、私学の資金需要というものに対してはどういうようなふうに把握をしておいでになりますか。
  99. 杉江清

    杉江政府委員 この資金需要総額の算出はかなりむずかしく、またその立て方をどうするかによって動くのでありますが、一応私どもそのかなり切り詰めた、従ってまたその重要性、緊急性の強いものを考えまして、その需要額を算定いたしますと、所要総額は六百五十億円になります。このうち貸付予定額、これは今までも全部貸しておるわけじゃなくて、自己負担を相当見ておるわけなんです。それを今までの貸付率によって算定いたしますと、総貸付所要額としては三百十三億円になるわけであります。ただしこの積算の中には、これまで私学側が要望して参っております老朽危険校舎の改築費が入っておりません。また小・中・高等学校の付帯整備費等も入っておりませんし、その他病院、寄宿舎、研究所等の建設費が他の資金から見られておるような関係もあって、こちらには入っておりません。こういうふうな点を全部入れますと、この所要額は相当大きな金額になるわけであります。私学側が一千億必要だというようなことを言っておられますけれども、それは必ずしも不当な数学ではないと私ども考えております。  大体のところ以上でございます。
  100. 村山喜一

    村山委員 そういたしますと、振興会が私学振興債券を発行するわけですが、その場合に公募を行なうということになっておる。この応募者利回りは幾らになりますか。
  101. 杉江清

    杉江政府委員 まず今回の改正は、資金運用部資金から借り入れるのに、その条件として、特殊法人が債券発行能力を持つことが必要だ、こういう建前になっておりますので、そのためにこのような改正をするということが今回の改正案の趣旨でございます。  現実に債券を発行するかといいますと、今のところそれは考えておりません。それはなぜかといいますと、先ほどのコストの問題に関連があるわけでございますが、私学振興債券を発行いたします場合の利率は、一般には七分三厘になるはずでございます。そういうふうに利率が高くなります、資金コストが高くなりますので、このような方法はなるべくとりたくない。将来資金需要の関係からはそういうことを考えなければならぬこともあり得ようかとも思いますけれども、当分のところはそういった点から現実に債券発行ということは考えておらないわけでございます。
  102. 村山喜一

    村山委員 そういたしますと、あなた方は提案理由の説明の中で「私学振興債券を発行することができる旨の規定を設け、振興会が資金の公募を行なうとともに、」こういうように公募を行なうということが明らかにされている、とするならば、提案理由の説明とあなたの今の説明は食い違うじゃないですか。
  103. 杉江清

    杉江政府委員 ここにも「私学振興債券を発行することができる」というふうに書いてありますが、将来のことを考えればこういう必要の起こることが予想されますので、振興会の能力としてはこのようなことを付与していくことが適当だと考えます。ただ当面の目的は、こういうふうな能力を振興会が持つことによって資金運用部資金を借りられる、そういう建前になっているから、それをねらってこの改正をするということが当面の目的だ、しかし法律建前としては、そういった将来を予測いたしまして「債券を発行することができる」というふうにしておきたいという趣旨でございます。
  104. 村山喜一

    村山委員 その問題につきましては、私はどうも提案理由の説明と今の説明は納得できないのですが、それはまたあとで追及することにいたしますけれども、そういたしますと、問題は、政府の資金運用部資金を対象にいたしまして借り入れられるものを原資にして、そうして長期資金を他の金融機関から借り入れていく、こういうような考え方ですか。
  105. 杉江清

    杉江政府委員 長期資金も、いわゆる一般市中銀行等からの借り入れは現実には考えておりません。これは借り入れが実際問題としてなかなか容易でないのであります。ただ先ほども申し上げましたように、私立学校共済組合の積み立て資金から借り入れるということは今までもいたしておりますし、今後ともいたしたいと考えております。
  106. 村山喜一

    村山委員 そういたしますと、振興会は、第三十四条に新しく挿入をされました長期借入金もやらない、私学振興債券発行も今のところ考えていない、残っているのは、当分考えられるのは短期借入金だけだ、この短期借入金も考えないのだということになるならば、そういうような条文だけをつくって、法律の上において実効を生じないようなものをつくり上げてみても、これは意味ないじゃないですか。
  107. 杉江清

    杉江政府委員 この長期借り入れの中には、資金運用部資金からの借り入れが含まれるわけでございます。二十億円はこの長期借り入れとして借り入れるわけでございます。
  108. 村山喜一

    村山委員 とするならば、今度は長期借り入れ資金という道はそれだということになると、私学振興債は発行しないのだというような考え方であれば、その点は抜いたらどうですか。私学振興債については、そのコストを見てみたら七分三厘になる、こういうようなことになるならば、債券を発行するというようなめんどうな仕事はやらないでもいいのじゃないですか。
  109. 杉江清

    杉江政府委員 先ほど申し上げましたように、資金運用部資金法によりまして、債券発行能力を持つ団体にしか貸せないような規定があるわけでございます。だから当面この債券を発行することは現実的には考えておりませんけれども、ただ借り入れるためにこういう規定を設けることが必要だから、こういうふうな改正をいたしたいということでございます。
  110. 村山喜一

    村山委員 時間の関係もありますので、私はあと一つだけ聞いて、また他に譲りたいと思いますが、この三十九条の二項に、文部大臣はあらかじめ大蔵大臣と協議しなければならないという事項がずっと列挙してございます。この内容を検討してみますと、第三十三条第一項からあとのものにつきましては、その財政投融資の資金を受入れる、それに伴うところの法律改正に基づく分でありますが、その前の分につきましては、現在文部大臣が権限を持っている事項が、ここに新たに大蔵大臣と協議しなければならないというようにチェックされているということは、文部大臣の権限がそれだけ縮小されているということになりますね。そういうような財政資金を受け入れることによって、文部大臣が持っておるところの権限というものが規制をされるというようなことを受け入れられたあなた方の立場というものはどういうことなのか。
  111. 杉江清

    杉江政府委員 資金運用部資金の受け入れにつきましては、その団体が確実な償還能力があるということ、その業務運営が適切に行なわれるということ、そういうことを十分チェックする必要があるわけでございまして、単に一般会計からの出資を受けていたとき以上に振興会の業務運営の重要事項については、そういった資金の償還の確実性、ひいてはそういった資金運用部資金の償還等の面について障害が起こることが万一にもないようなチェックをする立場ということは、やはり当然認めなければならない。その資金運用部資金というものが別会計で処理されれば別でありますけれども、その実際の運営はそれが原資となって一本で運営されて参る。だから、その分だけに限定することは、実際問題として不可能になってくるわけでございまして、そういう意味において、その協議事項の範囲がやや広がって参ることはやむを得ないと考えます。またこのようなことは資金運用部資金からの借り入れをするすべての団体について、ほとんどこれと同種の規定があるわけでございまして、そういう意味からも今回の改正はやむを得ないものであり、また妥当なものであると考えております。
  112. 村山喜一

    村山委員 今まで説明を聞いておりましたが、内容的には、そういうような財政資金を受け入れるに伴って、私学振興会の現在の貸借対照表なり損益計算書の中に見られる財務諸表というものがわれわれの前に提示されて、これによって六分五厘あるいは五分五厘という安い金利で適当な行政効果を上げ得るような措置が可能なんだという一つの実証を示してもらわなければならないと思いますので、それは今後の審議に際しても必要なものであると考えますから、提出を要望申し上げまして、私の質問はこれで終わります。
  113. 床次徳二

    床次委員長 次会は十三日水曜日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十三分散会