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1963-02-13 第43回国会 衆議院 文教委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月十三日(水曜日)    午後二時十八分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 上村千一郎君 理事 小澤佐重喜君    理事 八木 徹雄君 理事 小林 信一君    理事 村山 喜一君 理事 山中 吾郎君       坂田 道太君    田川 誠一君       中村庸一郎君    濱野 清吾君       松永  東君    杉山元治郎君       高津 正道君    三木 喜夫君  出席国務大臣         文部大臣    荒木萬壽夫君  出席政府委員         文部事務官         (大臣官房長) 蒲生 芳郎君         文部事務官         (大学学術局         長)      小林 行雄君         文部事務官         (体育局長)  前田 充明君         文部事務官         (調査局長)  矢城  勲君         文部事務官         (管理局長)  杉江  清君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 宮地  茂君  委員外出席者         専  門  員 丸山  稲君     ————————————— 二月八日  日本学校給食会法の一部を改正する法律案(内  閣提出第六〇号) 同月十一日  国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣  提出第七五号) 同月九日  文化財虫菌害等駆除予防に関する請願外十件  (中村三之丞紹介)(第六二八号)  高等学校全員入学及び義務教育無償等に関する  請願加藤勘十君紹介)(第六五八号)  同(坂本泰良紹介)(第六五九号)  同(阪上安太郎紹介)(第六六〇号)  同外一件(辻原弘市君紹介)(第六六一号)  同(坪野米男紹介)(第六六二号)  同(島上善五郎君外一名紹介)(第六六三号)  同外一件(中村英男紹介)(第六六四号)  同外一件(肥田次郎紹介)(第六六五号)  同(細迫兼光紹介)(第六六六号)  同外二件(前田榮之助君紹介)(第六六七号)  同外一件(松井誠紹介)(第六六八号)  同(松原喜之次紹介)(第六六九号)  同(村山喜一紹介)(第六七〇号)  平城宮跡等埋蔵文化財保護に関する請願(米田  吉盛君紹介)(第八四四号)  奈良県文化財保存事務所従業員の県職員定数繰  入れに関する請願矢尾喜三郎紹介)(第八  八三号)  同(安宅常彦紹介)(第九五八号)  同(赤松勇紹介)(第九五九号)  同(井岡大治紹介)(第九六〇号)  同(太田一夫紹介)(第九六一号)  同(角屋堅次郎紹介)(第九六二号)  同(栗原俊夫紹介)(第九六三号)  同(下平正一紹介)(第九六四号)  同(東海林稔紹介)(第九六五号)  同(田中誠治紹介)(第九六六号)  同(田中織之進君紹介)(第九六七号)  同(広瀬秀吉紹介)(第九六八号)  同(八木一男紹介)(第九六九号)  同(吉村吉雄紹介)(第九七〇号)  同(渡辺惣蔵紹介)(第九七一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本学校給食会法の一部を改正する法律案(内  閣提出第六〇号)  国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣  提出第七五号)  文教行政基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  日本学校給食会法の一部を改正する法律案及び国立学校設置法の一部を改正する法律案、右両案を一括議題とし、政府より提案理由説明を聴取いたします。荒木文部大臣
  3. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 今回政府から提出いたしました日本学校給食会法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  学校給食は、昭和二十一年に開始されて以来、その普及に目ざましいものがあり、児童生徒の体位の向上はもとより、その教育上にも数々の成果を上げ、身心ともに健全な国民育成に寄与しているのであります。  学校給食のこの意義にかんがみ、政府としてはかねてその普及奨励に努めてきたのでありますが、三十八年度においてはさらに一歩を進め、すべての義務教育学校においてミルク給食のすみやかな実施をはかりたいと考え低廉価額ミルク給食実施できるよう必要な予算上の措置を講じたのであります。  この施策実施いたしますため、ここに日本学校給食会法の一部を改正する法律案提出いたした次第であります。  すなわち、従来から同法により学校給食用脱脂粉乳を一括して取り扱っております日本学校給食会に対し、新たに国が脱脂粉乳の供給に要する経費補助することができることとするとともに、日本学校給食会義務教育学校脱脂粉乳を供給する場合には、この補助に相応する金額を控除して、価格を算定するものといたしたのであります。なお、この補助を受けた脱脂粉乳については、その用途外の使用を禁止することといたしました。  以上が、この法律案提出いたしました理由及びその内容概要であります。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成下さるようお願い申し上げます。  次に、このたび政府から提出いたしました国立学校設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、昭和三十八年度における国立大学学部大学院及び付置研究所新設並びに昭和三十八年度及び昭和三十九年度における国立高等専門学校新設について規定するとともに、国立大学内部組織に関する規定整備しようとするものであります。  まず第一は、国立大学学部新設についてでありまして、科学技術者養成計画一環として理工系学生の増員を行なうため、埼玉大学に工学部を設置することといたしました。  第二は、国立大学大学院新設についてでありまして、これまで大学院を置かなかった大学のうち、学術振興の観点から特に重要な分野について充実した内容を有する学部を持つ大学大学院を設置することといたしました。すなわち、東京芸術大学美術研究科及び音楽研究科を、お茶の水女子大学家政学研究科を、横浜国立大学工学研究科を、富山大学薬学研究科を、それぞれ設置しようとするものであります。  第三は、国立大学付置研究所新設についてでありまして、群馬大学内分泌研究所を、京都大学大学関係者共同利用に供する研究所として、数理解析研究所及び原子炉実験所を、それぞれ付置することといたしました。内分泌研究所は、内分泌に関する学理及びその応用の研究目的とするものであり、数理解析研究所は、数理解析に関する総合研究を、原子炉実験所は、原子炉による実験及びこれに関連する研究を、それぞれその目的とするものであります。  第四は、国立大学内部組織に関する規定整備についてでありまして、各学部に共通する一般教養に関する教育を一括して行なうための組織としてこれまで実際上運営されてきたもののうち、体制の整ったものを教養部として制度上認めるとともに、学部に置かれる学科または課程大学付置研究所に置かれる研究部門等を法令上明確に定めることといたしたのであります。  なお、このたび東京商船大学に包括される海務学院を廃止することによって、国立学校に包括される旧制の学校はすべて廃止されることになりますので、これに関する規定を削除することといたしました。  第五は、国立高等専門学校新設についてであります。前年度に引き続き、このたびは、八戸、宮城、秋田、鶴岡、富山、長野、岐阜、豊田、米子松江、津山、呉、阿南、高知、有明、大分及び鹿児島の計十七校の国立工業高等専門学校を設置し、科学技術教育振興一環として、中堅技術者育成をさらに強化しようとするものであります。  なお、これらの十七校のうち、秋田、冨山、米子松江及び呉の計五校の国立工業高等専門学校については、予算その他の都合により昭和三十八年度中に準備を行ない、昭和三十九年度から開設することといたしたのであります。  以上が、この法律案提案理由及び内容概要であります。  何とぞ、十分御審議の上、御賛成下さるようお願い申し上げます。
  4. 床次徳二

    床次委員長 両案に対する質疑は、後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  5. 床次徳二

    床次委員長 次に、文教行政に関し調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。村山喜一君。
  6. 村山喜一

    村山委員 大臣に対する総括質問の続きをやって参りたいと思うのですが、担当の局長おいでにならないところは後日に譲りたいと思います。  そこで高等学校生徒急増対策の問題につきましては、その後いろいろと各地募集定員が県の教育委員会によって確定をいたしまして、それに基づいて実施計画全国的に把握をされて、三十八年度募集定員調査文部省の方でなされておるようでございますが、公立で百七万六百十三名、私立で四十八万一千八百八十二名、合わせまして百五十五万二千四百九十五名という数字が、手元に資料として提出をされました。この三十八年度の四月に入学をする募集定員内容は、進学希望率に対して、どの程度こたえているのかという点をお伺いをしたいのであります。それは六一・八%ということで三十八年度入学率を押えて、三十九年度は六三・五%でありまして、四十年度が六五・五%、こういう新しい計画文部省政府において閣議決定を見ておりますが、その六一・八%というのを、大臣がよく話される入学率合格率といいますか、九六%という数字で押えて参りますと、全国高等学校進学希望率というものは六四・四%という数字になるわけであります。その六四・四%の数字に現在なっているのかどうか。それを押えた場合に、進学率は六一・八%という数字で押えることが可能であるのかどうかという点が、ここに出されました全国各地におけるところ募集定員の上からどういうふうにその計画との間においては数字が合致しているのかということについて説明を承りたいと思うわけです。
  7. 杉江清

    杉江政府委員 改定計画によりますと、昭和三十八年度入学者予定数を百五十五万と見ております。ここで募集定員合計が百五十四万一千となっておりますから、ほとんど同じだということが言えるわけでございます。従って率も予定した率とほとんど近いところをいっておる、こういうことになるわけでございます。
  8. 村山喜一

    村山委員 今いただいた数字は百五十五万二千四百九十五というふうに数字が訂正されておるのですが、それはよろしい。わずかの数字の誤差はいいと思うのです。  それでは入学希望率というものを六四・四%というふうにあなた方は踏んでおいでになるわけですね。そうでなければ六一・八%、百五十五万の生徒を収容するという計画との間には、大臣が本会議を通じて、九六%は従来の実績であるからその線については確保するんだ、こういうことでございますので、その点からのいわゆる入学希望率進学率との関係はどういうふうに把握をしておられるかということをお尋ねしているわけです。
  9. 杉江清

    杉江政府委員 これは年度当初に入学希望の状況を全国的に調査いたしたわけでございます。その数字基礎にして計算いたしますと、九五ないし九六%進学できる、こういう数字が出て参るのでございます。今御指摘の九四という数字はどういうふうにして計算しておられましょうか、ちょっとその点をお伺いしたいと思いますが……。
  10. 村山喜一

    村山委員 私は九六と言っているのですよ。その九六という数字は、大臣が本会議で九六%は収容できることは変わりございませんという答弁をされているので、その入学希望者数把握した場合に、これだけの募集定員があるわけです、その募集定員との間における比率を私は言うているわけです。その数字がありますか。
  11. 杉江清

    杉江政府委員 ちょっとその計算を申し上げますと、こういうことになるわけでございます。  三十七年度の当初の全日制進学希望者は百五十八万ありました。これは調査の結果でございます。これは希望者で、年度末に今までの例を見ましてある程度減少する率がございます。また同時に新しくふえる率も今までの経験に徴して出て参っております。そういう具体的な率がただいままでの例によって確かめられるわけで、その率を用いて計算いたします。そういたしますと、差し引き進学希望者は百五十六万という推定が出て参るのであります。その上定時制進学希望者が六万あると推定いたします。そういたしますと、合計進学希望者として推定されるものは百六十二万になるのであります。ところで、三十八年度入学見込みは、計画数の上において百五十五万と踏んでおりますから、この進学希望者入学見込み数字比率、すなわち百六十二万と百五十五万の比率をとりますと、これは九五・七%になるわけでございます。そういうふうな推計の上から大よそ九六%は進学可能だ、こういうふうに踏んでおるわけでございます。もちろんこれらは見込みでございますから、いろいろの変化は考えられますけれども、大よそ従来の例に徴してこのような推定はほぼ確実であろう、かように考えておる次第でございます。
  12. 村山喜一

    村山委員 最近私立高等学校入学試験が始まった。この入学金あるいは授業料後援会費、こういうような問題につきまして、従来から非常に問題が指摘をされておったわけでありますが、最近は特に人件費等が上がったという理由のもとに、入学金が非常に大きな形で出されている。私たちの同僚の議員の中にも、今度私立高等学校を受けさせると十万円ほど必要になる。それが公立を通った場合には私立には行かない。公立に通るような子供はまた私立にも受かる率が大きいわけです。そういたしますと、私立には入学金関係で家庭的にどうしても受けられない、だから公立の方を受けさせなければならないということになると、一回の試験でその当落を決定しなければならない、こういう事態が派生するわけです。そういたしますと、公立割合に多い地区は、そういうような公立入学したいという希望がかなえられるわけですけれども、割合からいって私立が非常に多くて、そして私立公立とつきまぜてみたら中学浪人東京あたりは一人も出ないだろう、こういう見方がされている。そこで私立高等学校入学金なり授業料規制していくと同時に、それに対するところ公立とのつり合いをとった一つ教育政策というものが日本高等学校教育の中では出てこなければ、今のような形でいきますと、高等学校段階で十万円、それから新聞の伝えるところでは私立大学の場合には当初の経費が七十五万円とか五十万円、こういう形になって、もう金のない普通の労働者、サラリーマンという階層は私立学校には入学させることはできない、こういう事態が派生しつつあると思うのです。そういたしますと、全体計画が百三十三万という計画で六一・八%から出発する高等学校急増計画というものが、私立公立との割合考えてみたときに九十万と四十三万という比率になっているようでございますが、これを是正するか、あるいは私立の方の入学金授業料を何とかして上がらないように別な政策を立てるか、どうかしなければ、高等学校入学希望というもの、これからさらに進学していこうという希望がかなえられない、国民の声にこたえられないという結果が出てくるんじゃないか、こういうような情勢現実は進んでいると思うのですが、それに対するところ方法を何かお考えになっているかどうか、その点を明らかにしていただきたい。
  13. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 今の制度を申しますか、国公私立あり方に立脚して申せば、今御指摘になりましたような結果が現われるのはやむを得ないといわざるを得ないかと思います。ただしそのままで放置してよろしいとはむろん思いません。今村山さんの言われた御意見の中の、私学入学金授業料を引き下げる方法はないか、そのことが考えられるべき具体的な課題だと受け取るのであります。そういうことで、一般的に申せば、国公私立を通じて育英、奨学の道を幅広く拡大していく努力をしますと同時に、私学の持つ公共性を念頭に置いて、私学学校教育に必要な諸条件の整備にどうせ金が要りますから、できるだけその資金長期低利のもので何とか提供する努力をしたいというのが従来の考え方であったことは御承知の通りであります。幸いにして二十億円の財政投融資の道が開かれましたので——むろん二十億くらいでは二階から目薬式なことであろうとは思いますけれども、これを年々積み上げていきまして、極力低利長期資金を提供するというやり方をあわせ行なって、入学金その他が上がらないように、できれば下げ得るような努力をするということが、一番具体的な、かつまた効果的な考え方ではなかろうかというふうにただいまのところ考えておるわけであります。
  14. 村山喜一

    村山委員 大臣の基本的な考え方というものはわからないでもないのですが、現実大臣考えている方向とは違って、現に東京都のごときは、私立高等学校急増に要する経費については公立とほとんど変わりのないほど、施設についても、設備費にまでも助成をしておる。その助成をした金額も相当な金額に上っていると聞いております。大体二十億くらいの金が使われているということさえも聞いておる。にもかかわらず、それだけ助成をしてもなお入学金が上がり、授業料が上がっていくという現象が出ている。これに対しては、もうけ主義的な通信教育については、設備基準規制を加えて、文部省の方で四月からですか、規制をしていこうというお考えがあるやに聞いている。ところ私立のこの授業料値上がり入学金値上がりについては、東京のような助成策を講じてもなおかつ上がらざるを得ないということであるならば、一体どういうような方法があるのかという点をやはり明確にしてもらわなければ、国民進学希望というものが実現をしないという結果になりますので、その対策をお尋ねをしておるわけです。  それともう一つは、私立学校合格をした、公立試験にも通った、しかしながら私立入学金はその前に納めておかなければ、現実的にはそのような公立の方に受かるか受からないかわからないときに、合格発表私立の方でいたしますので、公立の方に入る可能性がある人はもう納める必要はありませんが、その見込みがはっきり立たないようなときには、どうしても入れる必要もないのに入学金を納めなければならない、こういうようなしきたりが現実において行なわれてきた。これは長い慣習として成立をしてきたということで、違法ではないという解釈もありますが、今日の段階においては、この金額が非常に大きくなっておる。その場合に、入学金設備資金というものを納めておかなければ、私立に入る権利を喪失する。こういうような格好の中で、これが収入として私立学校に納められるということになると、道義的に見て、これがはたして正しいかどうか、もうけ主義ではないか。この問題についてはやはり一つの見解をはっきりと出して、文部大臣行政指導をされる必要があるのではないか。現に裁判を行なうということで、訴訟まで行なわれるような情勢に発展をしておるようでありますが、その対策についてはどういうふうにお考えになっているかをお尋ねいたします。
  15. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 今御指摘の具体問題、カレントトピックとしての問題につきましては、今直ちにこうするという考えはございません。ございませんけれども、これまた放置してよろしいという考えもあわせ持っているわけではないわけでございます。これは実際問題としてはなかなか微妙な課題だと思うのでありまして、私学に対して文部省立場から一種の規制的なことをやるべきかどうか、それ自体も検討を要する問題かと思います。さりとて見物人の立場におるべきではむろんないのでございますから、もっと問題それ自体を着実に把握いたしまして、あらためて考えたい、かように思うのであります。
  16. 村山喜一

    村山委員 その問題につきましては、その具体的な対策をどういうふうに今後において立てるかということは、また後ほどでけっこうでございますから、明らかにしていただきたいと思います。  次に新聞にも出ておりますが、通産省技術者養成計画の需給の実情を文部省は無視している。粗雑な文部省調査、これは当てにならないと数字をあげて通産省指摘をしている。この内容を調べてみますと、五十人以上の規模の段階における調査を進めたそうでございますが、現在の高等学校課程あり方から普通高校を縮小して産業高校に転換をしていくのだ、これが文部省の今年度予算の中でも明らかにされている点でもあります。ところがその結果、昭和四十五年にはどういう結果になるかというのを通産省の方で調べた結果は、商業科が二十二万人余り、普通科は百九万人足らない、工業科は五十六万人足らない、こういう具体的な数字指摘をされておるようであります。とするならば、この高等学校教育課程の問題をめぐって、学科ごとに今後どういうふうな方向を目ざしていくのかということを、やはり今後の一つ教育計画として練り直されなければならぬ段階がきているのではないか。なおこのままの数字でいきますと、これは三十七年度の六三・三%という公立国立私立高等学校進学率基礎にして算出をしておるわけでございますが、そのような計画から進んで参ったときと、今度の文部省の六一・八%から出発をいたします急増対策計画との間における、高等学校の将来の卒業生がどのような構成を示してくるかということを明らかにしていかなければならないのではないか。そうしますと、現在のこれらの方向でいくならば、普通科が百九万人足らなくなる、工業科が五十六万人なお足らない、このような指摘通産省の方から文部省に今度はなされた。前には科学技術庁の方から科学技術者養成計画をめぐって勧告が当時文部省になされたことがございます。今度は通産省の方からそういうのがなされたやに新聞は報道している。これはそういうふうに粗雑な文部省調査だということで指摘をされたわけですか、どうですか。
  17. 矢城勲

    矢城政府委員 今のはおそらく教育新聞記事をおっしゃったのだろうと思いますが、中をお読みいただけば、表題と中身は違っております。私たちもその記事、特に見出しが非常にきついものですから、検討いたしましたけれども、中身はそういうことは必ずしも言っておらない。そのことは、私たちとしてここで御答弁申し上げる筋ではございませんが、その記事の書き方については、新聞社に私の方から大げさに申せば責任を追及している段階でございます。  なお、そこの中身になっておりますのは、三十三年の調査を言っているのだと思うのでございますが、御存じの通産省産業構造会議を持っておられまして、そこで将来の産業構造あり方の分析をされております。これは主として工業でございまして、第一次、第三次産業をやっておらないようでございますが、むしろ通産省は三十三年の私たち調査を唯一の手がかり基礎はやっておられるのでありまして、それと現在の見通しがいろいろ狂っているということは、時期がすでに五年たっておりますので、諸般の情勢が違っていることは通産省でも十分了解しておるようでございます。従って、ずさんであるということは過去の資料から見れば現在の情勢が違うわけで、問題の取り上げ方だろうと思っております。私たちといたしまして、倍増計画を経済企画庁が立てますときにも、また通産省が今御研究になっておる場合にも、職場における学歴の構成調査というのは三十三年にやりました文部省調査しかございませんので、一応それを手がかりに皆さんやっておられるわけでございますけれども、今申したように、その後社会は非常に激しく動いておりますし、事情も変わっておりますので、本年私たち予算も新しく要求いたしまして直近の調査実施いたしたい、その上にいろいろ将来の推計をいたしたい、こう考えております。
  18. 村山喜一

    村山委員 内容はそうでないとおっしゃいますけれども、内容を見てみると、明らかに高等学校の卒業者の需要動向というものが示されて、それによるところの将来の需給関係のアンバランスを指摘していることは事実なんです。やはりこの問題は、今度は五十人以下の小規模の企業がどういうような需要を考えているのかということはこの数字基礎には入っておりません。もちろん、それを入れますと、高等学校を卒業いたしましたその後期中等教育を受けた将来の青少年というものが、まだまだこの高等学校急増計画よりも上回った数字で社会的には要請をされているという現実が必ず出てくるということを私は言いたいわけです。とするならば、先ほど入学率あるいは進学率の押え方につきましては一応の説明をいただきましたが、昭和三十八年度進学希望率というのを各地で私も集めております。たとえば鹿児島県のようなところにおきましても、三十七年度は五二%の進学希望率であった。ところが三十八年度は五九%の進学希望率を持っている。七%一年間に上昇をしている。それに対して収容計画を立ててみたけれども、なお千八百名の中学浪人が出るであろうという予想が成り立っているわけです。なおそのほかに各地の状況を調べてみますと、たとえば宮城県におきましては、八十八学級の学級増をはかったけれども八千四百名の中学浪人が出ざるを得ない、こういうような数字現実において各地において出ております。そのようなところから出していきますと、いわゆる年度当初におけるところ進学希望者の押え方とその後におけるところの実態との間にずれが出てきているのではないか。やはり高等学校程度の教育を受けた者でなければ新しい社会に生きていけないという現実、またいろんな産業方面からのそのような需要の関係、いろんな要素が入っているだろうと思うのでありますが、そうなって参りますと、当初計画で定めた当初の募集動向というその志願者の動きと、この二月の段階におきます状況との間には相当な狂いが生まれているのではないかという懸念を持っているわけです。そこで九六%の入学率をあくまでも堅持していくというのが大臣考え方でありますから、各地におきますところのその希望率が非常に高まってきて、現実募集定員調査によります百五十五万ではとても応じ切れない、こういう事態が出てくる可能性というものはないかどうか。先ほどはないという説明でございましたが、ございませんか。その点をもう一回はっきりと念を押しておきたい。
  19. 杉江清

    杉江政府委員 過去の入学希望率、その後の変化の状況から見ての計算では、先ほど申し上げた通りのことになるわけでありまして、そういう推定は現在のところ推定としては妥当性を持つと思いますけれども、ただ御指摘のように高校急増になりまして生徒数がふえたのにかかわらず、なお一そう高校志願者も増加の傾向にある、こういうことはやはり重要に思います。その点で従来の例によります積算においてやや窮屈であろうか、このような観測もいたしております。しかし著しく離れることはないのではないか、かように考えておりますが、なおこの点についてはやはり調査いたしてみたいと考えております。
  20. 村山喜一

    村山委員 私たちの方でも資料を収集いたしておりまして、実際各地においてどのような状態が生まれるだろうかということを、全国的に見通しを立てて、その上に立って文部省の六一・八%という計画現実にそぐわないものであるならば、当然これは大臣がこの前の国会でも言われているように、修正を願わなければならない事態が出てくると思うのです。そういうような事態がどうも出そうな気がするものですから、先ほどから念を押して、これで大丈夫ですかということを言っているわけです。  高等学校入学問題についてちょっとお尋ねをします。合格できなくて最近自殺をする子供たち新聞にあちらこちら出るようであります。全国で二千二百人ぐらいの自殺者があるのだという報道をしている新聞もありますが、その数字文部省の方としてはどういうふうに把握をしておられるかをお尋ねしたい。
  21. 杉江清

    杉江政府委員 その点正確な数字把握しておらないものと承知いたしております。
  22. 村山喜一

    村山委員 そういうような事態が生まれつつある。そういうような状況はどういうふうになっているかということを、社会問題として、教育問題として調べられたことがありますか。
  23. 杉江清

    杉江政府委員 数字につきまして正確なところ調査はいたしておりません。ただ入学志願につきましてそのような事例が年々目につくように考えられます。そういうふうなことを考えまして進学指導等においてはこれを強化するように、各種の研修会その他において指導はいたしております。
  24. 床次徳二

    床次委員長 山中委員から関連質問の申し出があります。これを許します。山中君。
  25. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 一言だけですが、九六%入学をしているということは荒木大臣が公の席上で何回か言われているのです。それは実際には合っていないと思うのですが、どういうところから事務当局が進言されたか知らないけれども、受験者の数のうち九六%がどっかの学校に入っている、こういう意味ですか。
  26. 杉江清

    杉江政府委員 先ほど御説明申し上げたところでございますが、文部省としましては年度当初に高校進学希望者数を調べております。そしてその数字から現実年度末にどのような変化を示すかも、過去の例から減少率、増加率その両方について一応の数字を持っております。詳しく申し上げますと、年度当初進学希望する者の中で、その進学希望をやめる者が大体三%ございます。それから新たに進学希望して参る者が約二%ございます。こういうふうな過去の例から計算いたしまして三十八年度進学希望者合計百五十六万になるものと推定いたしたわけでございます。そのほかに定時制進学希望者がやはり一定数ある。それを六万と考えて、その合計進学希望者を百六十二万と考えております。それが現実には募集定員合計が百五十五万になっておりますから、九五・七%だ、こういう推定をいたしておるわけでございます。
  27. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 それが数字の魔術でして、とんでもないことですよ。たとえば具体的に岩手なら岩手というところをとると、いなかの高等学校の定員募集が、百五十名なら百五十名、百名なら百名とありますね。ところがいなかですから、そこに入る者は、受験をして実際に入れる場合は定員より少ない。百名募集のところで八十名のところがある。それから定時制の場合については、文部省の報告について、百名以上にしないと閉鎖を命ぜられるとか、三百名以下ならやめさせるというような法案を出したりするものですから、定員はちゃんと出しているけれども実際は入っていない。それから全国的に計算をした場合には、鹿児島が定員より少ない欠員のままでおっても、岩手の子供をそこに入れるわけにいかぬでしょう。そういうところ入学させるわけにいかぬ。全国の募集した定員は百五十六万だ、実際はこれだけ入っているというふうなことの中に数字の魔術があります。  それから希望者という数字は、希望者というよりむしろ行為的に実際に受けた者、受験者ということを考えて私は言っているのですが、それを国会の本会議だとか予算委員会で、文部省は九六%入れておりますと言っておりますが、国民を迷わすのですよ。とんでもないことだ。全国進学希望者が百六十二万人ある。それから募集定員が百五十何万ある。それは全国的な数字の問題としてはできるのであって、何倍か競争の多い学校と定員に満たない学校もあるわけですからね。その全体の数字を持ってきたら私はいけないと思うのです。それで高校急増対策に移行しているような措置をしているとか、大体の希望を入れてそれは入れておりますとか、そういうことを私は言うべきものじゃないと思う。私の言うことはどこか間違いがありますか。
  28. 杉江清

    杉江政府委員 現実進学率でございますが、これはやはり文部省としてずっと毎年この点調査いたしておりますが、公私立合わせますとやはり九六%程度には毎年なっておるわけでございます。ただ実際問題として、これは県によって差があります。だからこれは全国平均の数字でありますから、その点においてたとえば鹿児島とか宮崎とかそういったところの具体的な県について見ますと、必ずしもこの通りいっていないと思いますけれども、大観してこの程度の者が入っているということは、少なくとも過去においては言えることでございます。  今度の推定でございますが、先ほど申し上げたようなことで、この高校急増期にかえって進学希望者がふえるというような状況も一部あるようでございます。そのようなことが現実にどのような結果をもたらすかは今後の調査に待たなければならないと思いますけれども、従来の状況がそうであり、ままたその線に即してそれを落さないということで計画を立てておる。そして現実にこちらの計画とほぼマッチした数字が出ているということもまた事実だと考えております。
  29. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 もう一度あとで研究してもらったらいいと思います。国会で文部大臣希望者の九六%入れておりますと言っても、具体的に国民はみなうそを言っていると思っていますよ。事実合わない。全日制の高等学校の場合、受けて落第をして、次にもう一回受けるというときに、夜間に腰かけとして戸籍だけ入れている、籍だけ入れておるという者が非常に多い。これは入っているのではないのですよ。それから農村地域の希望者、貧乏な子供は下宿をして大きい都市の学校には行けないから、そこで学校を建ててやる。百五十名定員で建てても、実際は百名しか入っていない。従って全国数字の総計で九六%あるということは、これはうそですよ。だからこの速記録を見たりしておる父兄から言えば、総理大臣文部大臣はうそを言っているとの実感を持って間違いない。こういう問題はもう少し現実的に言ってもらわなければいかぬので、そういうことから言えばうそで、責任回避ということになるから、もう少し具体的に実際の調査をされて、そして高校対策をお立てになるべきだ。高校対策を立てない理由にそういう数字の魔術を使うことはよろしくないと思うのです。これは関連ですからあとで次のときに聞きます。  それから入学関係で自殺をしたり家出をしたりいろいろな問題があるので、これは教育政策の最も基本的問題、子供が入学できないので親が自殺をしたということが新聞にまで出てきている。こういう問題についてはもっと総合的にやはり文部省から御意見を承りたい。これは次の機会にもう少し準備をしてからお聞きしたいと思うので、今のような、簡単に進学指導というような答弁では質問は終わりにならないと思うので、もう少し深めていただきたいと思います。
  30. 村山喜一

    村山委員 新しい改定計画をお立てになって六百八十二億の事業量が決定をした。この事業量の内容から見て、この前、国会でも論議されました働きながら学ぶいわゆる定時制高校の教育施設設備、これは当初の文部省急増対策計画の中には全然なかったわけですね。都道府県の知事会議の方では定時制の高校増設という問題が出ておったことは御承知の通りであります。この点について、定時制の働きながら学ぶところの青少年の高等学校教育施設設備というものを、この際やはり拡張をすべきではないかということを申しておったのでありますが、それは今度の改定計画の中に入れられたものかどうか、その点だけをお尋ねをして、高等学校急増の問題につきましては、また具体的な資料を用意いたしましてから追及をして参りたいと思います。
  31. 杉江清

    杉江政府委員 定時制の方も考えております。ただ改定計画においては定時制の方の増があまり見られませんから、その方は改定計画の上ではあまり現われておりません。ただ現実にやはり全日制志願者の収容力をふやすことに、やはり計画としても重点を置いておるわけでございます。
  32. 村山喜一

    村山委員 そうしたら、六百八十二億の中では、計画数字としては出ていないわけですね。
  33. 杉江清

    杉江政府委員 入っております。
  34. 村山喜一

    村山委員 幾ら入っておるのですか。
  35. 杉江清

    杉江政府委員 今度改定計画の増の分には入っておりませんが、基礎数字としては二万人の定時制の収容ということで、この全体計画の中に、それに必要な施設を整備する計画が入っております。
  36. 村山喜一

    村山委員 二万人の分は、今までの分について、その施設、設備の改善計画が示されているのであって、増員分については、文部省の当初計画にはなかった、私たちはそういうふうに把握をしておる。そして都道府県の知事会議の方は、六億という金額がたしか明示されておる。ところ文部省計画の中には、全日制の高等学校急増計画が出されている、定時制の分については考えられていなかったというふうに、当初計画の中では承っておるのですが、それは違いますか。
  37. 杉江清

    杉江政府委員 一応その計画としてはそういうものを入れておりますけれども、ただ現実に既設の設備で大部分間に合うという現実がありますので、その数字が具体的に響いてくるのはきわめてわずかでございます。
  38. 村山喜一

    村山委員 どうもわけのわからない説明をされておりますが、それはそれでいいでしょう。  行政指導はどうされましたか。というのは、定時制の募集時期が、大阪やあるいは東京、名古屋方面に、中学を卒業して、家庭の事情等によってどうしても就職をしなければならない子供たち高等学校進学希望したときには、すでに定時制入学試験は終わっておった、一年間待たなければならないという事態がある。それに対しては、そういうような進学に燃える青少年に対する方法を行政的に指導をしてもらいたいということを、この前の委員会で申し上げて、それに対しましては、同感であるという説明が、初中局長から当時ございました。その後そういうような行政指導をされたかどうか、その点だけ伺いたい。担当が違うのでおわかりにならないかもしれませんが、わからないところは官房長の方からでもお答えを願います。——この次でけっこうです。  次は、学校給食の問題について、大まかな問題だけお尋ねをいたしておきます。この学校給食政策論、たなぼた式に四十億の金が要求もしないのに落ちてきた。賀屋様、賀屋様だということで、非常にうれしさの余り悲鳴を上げて、計数整理にてんてこ舞いだという話を聞くのでありますが、粉ミルクを全国の小中学校の子供たちに飲ませる。それは趣旨はよくわかるのです。しかし政策論として、どういうようなところにその学校給食を位置づけているのかということを私は承りたいのです。というのは、脱脂粉乳、粉ミルクというものを日本でやるということは、アメリカの余剰農産物、アメリカの経済を助けるための一つ方法でもあるわけです。この脱脂粉乳を購入して、それを配給するという政策は、日本のいわゆる食糧政策、特に乳価、酪農政策という問題と、どのような関連において結びつけておるのか、その政策的な発展の将来の方向性というものはどういうふうになっているのかということを、まず第一に、これは政策論ですので、大臣からお答えを願わなければ、局長ではちょっとお困りになるだろうと思いますが、大臣が来られるまでの間、局長から説明をいただきたいと思います。
  39. 前田充明

    前田(充)政府委員 大臣の代理ということで申し上げるわけでございますが、位置づけという問題でございますが、私ども学校給食が国内の産業と全然相反しているということは一つ考えておりません。将来におきましては、日本の農業政策と申しますか、食糧政策と申しますか、そういう問題とマッチしながら学校給食をやっていくという考え方は基本的には持っております。ただ、現状におきまして粉ミルクをたなぼたでもらったというお話でございますが、たなぼたというのかどうか、私はその点については必ずしもそう思いませんが、ともかく全義務教育学校にやるということは、青少年の体位向上という立場から考えましたときには、安くて栄養のあるものをやるというのは、学校給食のまた一方の基本的な考え方でございます。そういうことになりますと、粉ミルクが非常にいいということは言えるのじゃないかと思うのです。そういたしました場合に、ことし考えられます粉ミルクの量は八万五千トンでございます。平年度にいたしますと、おおむね十万トンと言ってもいいんじゃないかと思うのでございますが、現在日本にそれだけの生産がないのでございます。従って、アメリカからの購入をやっているわけでございます。そうした場合に、アメリカの余剰農産物のお手伝いといいますか、そういうことをしているということは、私は実際はどうなのか知りませんが、ともかく日本にないのでやっていく。しかしこれをまた将来の問題で考えますと、日本人は従来ミルクを飲むことがあまり好きでなかった、戦争中あるいは戦後あまり好きでなかったわけであります。しかし子供が今大へん飲むようになって、最近では一般国民全体から言えば、むしろそれに刺激されたかどうか、ともかく相当学校給食の影響があると思うのですが、非常に飲むようになった。そういう需要が起きてきたということは、日本に将来そういう酪農業が盛んになるもとになるのではないか。産業はやはり需要と供給と、そういう関係でできていくわけでございますので、だんだん需要ができてくれば、自然に産業は盛んになっていく。そういう遠い将来も考えながらやっておりますので、さしあたってはやむを得ずアメリカのミルクを買わざるを得ない、そういうように私ども考えております。
  40. 村山喜一

    村山委員 この脱脂粉乳の栄養価値といいますか、これは専門ですから、局長よくお調べになっていらっしゃると思っておるのだが、あぶら分がともかく足らないので、あぶらをまぜて使うようにという指示をしておられるようですね。そのあぶらをまぜる機械は八万円ぐらいするそうですが、そういういわゆる設備費ですか、これは当然今度の補助対象として考えられているわけですか。こういうような学校給食は、今まで御承知のように施設費が実質は四分の一補助、その程度しか補助金としての効力を発揮していなかったわけですが、この粉ミルクを飲ませるということになると、そういうような機械が要る。その機械については、設備費は国庫補助金で考えられておるわけですか。その点もお尋ねしてみたい。
  41. 前田充明

    前田(充)政府委員 ミルクの設備の補助金でございますが、これは一応八万七千六百円を一校に対して充てまして、その二分の一を補助しております。その一番大きいものは攪拌機でございます。従って、かりにバターを入れるとか、あるいはマーガリンを入れるとしますと、それをその攪拌機の中へ入れてまぜるわけでございます。
  42. 村山喜一

    村山委員 ビタミンのGが足りないのはどうですか。
  43. 前田充明

    前田(充)政府委員 専門的なことは私どもよくわかりませんが、なま牛乳にもビタミンGというのはないように思いますが……。
  44. 村山喜一

    村山委員 その問題はあとでまた研究してみたいと思います。  私は大臣にお尋ねしておきますが、先ほど粉ミルクのこれを全部の子供たちに飲ませるというその趣旨はよくわかるけれども、学校給食のいわゆる政策論といいますか、方法論というのですか、その点から見ていわゆる日本の酪農政策との関連におけるその問題は、どういうふうに今後の方向づけをお考えになっているのか。やはりこれは大臣でないと答えられないような大きな問題ですので、この点について大臣の今後の向こうべき方向というものを明らかにしていただきたいというのが第一点であります。  それで学校給食目的というものは、もちろん直接的には児童生徒の体位の向上にあり、あるいは食生活の改善といいますか、そのしつけというような面も教育的にはねらっていることはいうまでもないでしょうが、この学校給食を始めたほんとうのねらいは一体どこにあるのか。これは日本人の食生活の構造的な改善をやるのだという考え方なのか。そして将来、日本のこういうような食生活というのは一つの慣習になって参りますので、それによって日本の農業政策というものにどういう影響をもたらそうと考えているのか。そういうような問題はどういうふうにお考えになっているのか。  さらにまた学校給食制度調査会の答申の中に出ておりますように、米の使用という問題が出ております。これらの問題をめぐっていわゆる米の過剰生産の調整的な役割というものを学校給食でやろうとしているのか。現在生乳に対するところの国庫の補助がございまして、それによって安い金で子供たちになま牛乳を飲ましている、そういうようなのが酪農政策一つとして、学校給食にになわされている一つの仕事があるようであります。そういうような面との関連性がどういうふうに把握されておるのかという点を、これは大臣からお答えを願いたいと思います。
  45. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 三つのお尋ねでございますが、全部に共通しまして結論的なことを先に申し上げれば、緻密な計画に基づいて、日本の農業政策上から出てきました今後の日本農業の酪農化というものと有機的に結びついた課題としてスタートし、もしくは進行中であるとは申し上げかねると思います。これは農林大臣からお答えせねばならないことであって、責任をもって申し上げ得ないとかぶとを脱がざるを得ない課題と心得ます。必要ならば、他の機会に所管大臣からお答え申し上げることにいたしまして、お許しをいただきます。  そこで一体給食はいかなる目的をもって始めたかというお尋ねの点でございますが、これはすでに村山さんも御承知の通り、戦後食事情が非常に悪かった。発育盛りの子供たちに必要なカロリーがやれない。弁当に期待しておったのではどうにもならないという現実に直面して、たまたま放出物資等がございまして、アメリカが占領政策上の見地からもあったでございましょうが、学校給食ということを始める機会が訪れた。ですから、食糧事情が非常に困難だからそれに応ずる応急措置としてたまたま始まったことだ、こう申し上げ得ると思います。ところがだんだん実施して参りますと、児童生徒の体位向上の上に目立って効果があるということが立証されたということから、何月何日からそう考えたということでなしに、これは一番続けていくべき値打があるぞということに転化いたしまして、今日では児童生徒の体位向上、必要カロリーを摂取させるという合理性を追求しながら継続していこうという課題に移り変わった。そういうことで今文部省としてもとらえまして、前向きにこれを重視していく値打があるという受け取り方のもとに年々努力を積み重ねておる、こういうように御理解いただくのが実情に即した率直な感想であろうと思うのであります。そこで学校給食あり方として、農業政策との関連がむろん必然性を持ってきますけれども、一応考えております考え方は、粉ミルクを溶いて飲ませるよりも、できることならばなま牛乳の方が児童生徒は好む傾向にあると教えられます。できればそうしたいとむろん思いますけれども、現実は国内産が足らざるを得ません。なま牛乳は分量が足りない。また値段の点におきましても、現状通りでいきまするなれば、農業政策上のある程度の補助金が出ましても、父兄負担が増大せざるを得ない。しかも安定性を欠いておる。供給面においての安定性が期待できない。それはとりもなおさず農業政策学校給食とが有機的に結びついていない結果であろうと思いますけれども、そういう不安定な状態において、分量も価格も維持し得ない条件にあるとするならば、これは実際問題として制度化するわけには参らない。たまたま季節的に地域的に今申したような求めに応じ得るところを禁止する必要はございませんから、実際上やっておる。そのことは悪いことではないとむろん思います。そこで一般的にミルク給食をやるとしますれば、粉ミルクに依存せざるを得ない。その粉ミルクとなりますと、これはまた聞くところによりますれば、国内の粉ミルクの全生産量をもっていたしましても、小中学全児童にこれを与えんとなれば、二日分か三日分しかないというように分量には絶対的な不足を来たす。また価格の面でもキロ当たり、二、三百円格差があると聞かされております。アメリカの余剰物資か何か知りませんけれども、質は国内産と同じだと考えられますので、この輸入脱脂粉ミルクに依存いたしまして、先ほど来申し上げた意味においてよきことですから、小中学校全員に一つ実施したい、そういうことで三十八年度予算にも四十億円を盛り込んだような次第でございます。従いまして、三つのお尋ねの全体を通じて食糧政策上、日本の農業政策上の見地からどういう関係に立つかにつきましては、合理的なお答えは今日の段階においてはできない。ただし御指摘学校給食制度調査会の答申が、米の飯でやれるところはやるように考えたらどうだという意見も添えて答申をいただいておるわけでありまして、そういうことができるところはそれも一緒にやる、推進する。同時にまた粉ミルクなりあるいは粉食なりということでやり続けてきましたものは推進していくという実際上の必要に立って今日の段階にたどりついておる。今後に向かいましては、もちろん国内の酪農政策の見通しあるいは食生活それ自体が農業政策に影響をもたらす点を考えての米麦の生産をどう考えていくのかということ、できることならば有機的な関連を持ってそこでやっていくということが望ましいこととは思います。ただし先ほど申し上げましたように、責任を持ってお答えし得ない部分を含んでおりますから、御了承いただきたいと思います。
  46. 村山喜一

    村山委員 学校給食の問題につきましては別に法律も出ておりますので、この際こまかな問題をお尋ねをしておきまして、ただいまは大臣から政策論をお聞きしたわけでありますが、これはやはり農林大臣も来ていただいて、そして大臣に対して学校給食と今後の酪農政策との関連づけを、国会の決議もございましたので問いただして参りたいと思いますが、これは他日に譲りたいと思います。  きょうは、私の質問はこれで終わります。
  47. 床次徳二

    床次委員長 小林信一君。
  48. 小林信一

    小林(信)委員 大臣がまた予算委員会の方に呼ばれるということでございますので、その呼ばれるまで主として教科書の無償問題でお尋ねしたいと思うのです。  この無償問題は、政府もだいぶ張り切って前々国会に提案をされ、その後仕事も進んでおるようでございますが、答申も出たようでございまして、この際どういうような計画で進められるのか、それをまずお聞きしたいと思うのです。あのときにもやはり問題にしました、なるべく早い時期に中小一斉にしてもらいたいというふうな一般の希望がありますが、これはどういうふうに進められるのか。それからこれの費用の支弁でございますが、新聞等では、国が購入して市町村に渡して、それから校長がこれを児童に渡すというようなことが見えておりますが、どういう方法でするのか、この際大臣からはっきりお聞きしたいと思うのです。その場合に貸与であるか給付であるか、それからその費用を、あの当時も非常に問題が多かったわけでございますが、国が全部負担をするのか、あるいは地方にも一部負担をさせるのか、こういう点につきまして、いずれ法案が出ると思いますが、今の大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  49. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 なるべく早く義務教育学校全部に行き渡るように無償給付いたしたい、かように考えております。ただ実際問題としますと、御案内の通り、三十八年度入学します小学校の一年生にだけ当面やる、三十九年度入学します小学校生徒には一年、二年、三年に及ぼすという内容で、三十八年度予等に計上いたしておることは御案内のごとくであります。貸与であることは、この前の国会で御審議決定をいただきました義務教育学校の教科書無償法の趣旨からいたしまして許されないところ考えておるのであります。経費の分担につきましても、国費で全部まかなって給付するという建前でいきたいと思っております。
  50. 小林信一

    小林(信)委員 そこで私がこれからお伺いしようと思うのは、前に二十六年、二十七年に文部省が最初は一年生に限られた教科書でございますが、これを支給するときにも、それが将来発展をして全学年に、しかも全教科に及ぶようなことを言われながら実行したのですが、残念ながらその計画が粗漏であったために、ついにその計画を放棄せざるを得ないような状態になったことがございます。これは文部当局は十分御承知だと思うのですが、今回もまず手始めとして行なわれる、一学年に無償で教科書が支給される、この仕事がうまくいけばいいのですが、前回のような無計画な粗漏なもので始められると、そのこともうまくいかないばかりか、せっかくの国民が要望しておる教科書無償制度というものがまた消えてなくなるようなことになるわけでございまして、この点につきまして万全を期しておるかどうか、この点も私は伺って参りたいわけでございます。第一回の場合には、市町村が購入した形式にして、国が補助金を出し、それからあとの残りは平衡交付金で見るというふうな建前をとったわけでございますが、これがなかなかうまくいかなかったということで、第一回の、将来全学年に及ぶという計画を捨てなければならぬようになったわけです。そういう問題を十分考慮して今回はそういう手落ちはないということが言えるかどうか。  さらにその場合に問題になりましたことは、非常に過不足があった。その過不足を調整することが困難であって非常に問題が起き、やはりこれは国定教科書でなければまずいじゃないか、あるいは採択を、少なくても全県一致した形で採択をしなければならぬという、そういう教科書本来の現行制度が、そのためにくつがえるような事態まで起きたわけですが、そういう点が十分問題が起きないようにされておるかどうか。  それから第一回の場合には、だれが代金回収の保障をするか、これは非常に業者にとって大きな問題であったわけであります。それから代金の回収が遅延いたしますそのしわ寄せというものを業者は非常に憂慮いたしまして、どっちかといえば、この無償制度というものは廃してもらいたい、こういうふうな要望が強くなされたことを私たちは聞いておるわけであります。こういう過程から第一回は業者の方の強い要望によりまして、入学祝いにするというような後退をせざるを得なくなり、ついに制度を廃止するような形になってしまっわけですが、こういうことについては、今度はどういうふうに用心をしてなされるか、まず、この昭和三十八年度第一学年に支給される教科書無償の実施というものは、非常な試練になるわけだと思いますが、大臣どういうふうにこの点過去を反省され、今後に対して十分な用意をなさっておるか、お聞きしたいと思います。
  51. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お尋ねの点は、法案を提出しまして、御説明も申し上げ、御質問に応ずるのが至当なことかと思います。ですけれども、すでに申し上げるまでもなく、御承知のように、この前の通常国会で決定していただいた教科書無償法そのものの趣旨が物語りますように、無償で給付するということには、あの法律がなくなったり、変わったりすれば別ですけれども、あの法律が厳存します限りにおいてはその懸念なし。御指摘の、かってやりましたことが、経費分担の関係等にもからみまして混乱をしたことはお話しの通りと理解いたします。そのゆえに、また代金回収の問題が現実の悩みとなったと承知いたしておりますが、そういうことをきっかけに、またこの大事な無償給付の課題が後退することのないようにと期しておる次第であります。  ただ実際問題としますと、あのときの法律によって定められました調査会の答申は、委員の大多数は経費分担などということは考うべきじゃない、国費一本たるべしという意見が圧倒的でありましたが、一部少数意見として、地方公共団体にも分担させてしかるべきじゃないか、少なくともそういうことを検討すべきじゃないかという意見が添えられてあります。ですからそれは政府内部のことでありまして、今申し上げたような趣旨に沿うように、予測しない混乱等のために、大事なことがまたさたやみになるというようなことがないように、文部省としては努力していかなければならぬ分野は残っちゃおりますけれども、基本的な考え方としては、先刻申したような線で政府としてはやっていく、こういう考え方でございます。
  52. 小林信一

    小林(信)委員 大臣は確信を持って臨んでおられるようでございますが、前回教科書無償の問題を国会で論議したときにも、そういう点はあらかじめ憂慮しましたのでいろいろお伺いしたのですが、この問題は憲法の二十六条の義務教育費無償の原則を発展させるために、将来これは全学年に及ぼすんだ、こういうふうに政府当局が申されて、しかもああいう結果になったわけなんです。だから私は、もしそういう結果になっては大へんだというわけで、大臣のそういう決意をお伺いして事務当局の方にお伺いをして参りたいのです。  その前に大臣に聞いていただきたいのですが、これは教科書懇話会で発行したものでございますが、この中に教科書無償を行なったときの経緯というのがこまかく書いてある。これを読んでいただいても、いかに教科書無償の制度を実行するのに問題が多いかということがわかるわけですよ。その一カ所を読んでみますと、これは昭和二十六年に実施して、それから昭和二十七年に移る段階の業者の方の意向なんですが、「逐年給与範囲が拡大し、」だからこれは最初一学年に二冊ですが、学年を広め、給与する教科書というものを全般に及ぶように拡大して参りまして、「義務教育全体の教科書が無償になった暁に予想される教科書国定化に対する危惧を感じはじめていた業界は、」これは決して文部省が国定教科書にしようという意図でなくても、無償制度を実行するためにいろんな支障が出てくる、その支障を排除するためには、結局これが簡便な方法は国定化にする以外にないんだということになってくるという業者の危惧の念から、「自由党内の空気に応じて、実施主旨を新就学児童に対する国の祝品に改めるべきだと主張し、一面、全額国庫負担と中央一括払いを重点に工作を推進した。」、これは残念ながら自民党あるいは時の政府というものが、自分たち国民に公約したものを業者の意向によって変更せざるを得なくなったというふうな、まことに嘆かわしい問題でございます。相当業者もそういう政治的な配慮も考慮したわけでございましょうが、そのことは書かなければならなかったわけなんですが、こういうような一つの問題を取り上げても、教科書無償という問題は私は簡単に実現できないというような心配をしておるものでございまして、大臣は法案を出したときにまた審議をしてほいしというふうなお話でございますが、すでに三十八年度の一学年の教科書というものは、前回は二冊でございますが、今回は一学年全体の教科書に及んで仕事をされるわけでございますので、今のうちにそういう点を十分お聞きしておかなければ国民に非常に心配をかけるわけなんです。教科書は子供にとっては非常に大事なものでございますから、四月の当初、まだ私のところには教科書が来ない、見つけたけれども自分のところの教科書はもう品切れであるというような心配をさせてはならないし、またいろんな資金面で、業者がこんな制度を継続されては大へんだというふうな憂慮から、またこういうふうな業者の方から政党を動かすようなことがなされて、そうしてうやむやになるようなことがあってはならないということを考えると、やはり質問をせざるを得ないわけなんです。まあ大臣がそういう確固たる信念に立っておいででございますので、大臣にはもうお聞きいたしませんが、事務当局にお伺いする点は、まず業者に対する金の支払いの方法をどういうふうに計画を立てておられるか。
  53. 蒲生芳郎

    ○蒲生政府委員 まことに申しわけございませんけれども、ただいま主管局長、主管課長が法制局へこの法案について審議に参っておりますので、すぐこちらに参るように今手配しておりますので、いましばらくお待ち願いたいと思います。
  54. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 先刻もお答え申し上げましたように、この前の国会で決定していただきました教科書無償に関する法律そのものが、小中学校義務教育学校の教科書無償給付ということが後退することがあってはならないぞと定めておりますので、その点に関する限りの心配は、私の信念とかなんとかいうことじゃなしに、法律そのものが物語って保障しておる課題だと思います。経費の分担の問題は、さっき申し上げましたように、答申そのものに少数意見というものが付記されておりますから、政府部内のことではございますが、そういう課題が今後検討されるチャンスはあり得るということは念のため申し上げておかなければなりませんけれども、それにしましても、今小林さんおっしゃるように、過去の経験は国、公費分担によって、もともと無償給付それ自体を後退せしめるという事実があったのじゃないか、そういう事態を十分考慮して文部省はがんばらなければいかぬぞという意味の御質問かと思いますが、そう思いましたので、課題はございますが、過去の経験に顧みてもそんなことにすべきじゃない、こういう考えで臨むべきだという意味を申し上げた次第でございます。  支払い方法というお尋ねでございますが、国が買い上げて給付するというやり方でございますから、当然に初めから精算支払いはできないわけでございますので、教科書業者に概算払いをいたしまして、結果に基づいて精算するというやり方になろうかと思います。
  55. 小林信一

    小林(信)委員 大臣はいわゆる答申案を待って、要するに全学年に及ぶ問題についてお考えだろうと思うのですが、昭和三十八年度については前々国会でもって予算をとってもうすでに今までの過程の中で計画というものを進められて、すぐ四月から実施されなければならない一年生の問題があるわけなんです。これは当然文部省としては考えるとかなんとかいうことでなくて、措置されておるわけなんです。もしその最初の一学年の問題がこの前のような結果になれば、今構想を持っており、法律でもって制定されたから云々といわれておる問題も大きな障害に突き当たるのじゃないかということから、この昭和三十八年に一学年に給与されるところのものは一体どういうふうに運んでおるかということを聞いておるわけなんですが、大臣だけの御答弁ではまことに要を得ないと思いますから、その問題は次にいたします。——まだ答えていただけますか。
  56. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 それは詳しいことは法案を御提出申してから御審議いただくことといたします。  そこで今の御懸念の点でございますけれども、先刻申し上げようと思って言い忘れましたが、三十八年度予算の執行に関連した課題だけを申しておりまして、三十七年度予算、すなわち小学校の一年に対する予算の執行はどうだというお尋ねにお答えしておりませんでした。これは現行法及び必要とあらば政令によってやるという建前になっております。決定していただいた法律の建前からいきましてもそういうことに相なっておりまして、あらためて御審議願うところの、提案します法律案の御決定をいただけば、それが三十九年度予算の執行を初めとして将来にわたって恒久的に処理される立法になるわけでございます。
  57. 小林信一

    小林(信)委員 非常に抽象的な問題で具体的な問題に入れないわけですから、これでもってやめますが、前には二冊の本を支給するにも相当混乱を起こして業者の方には非常な不安を与えたわけなんです。(「市町村の問題じゃないか」と呼ぶ者あり)市町村の問題じゃない。市町村に責任があったのは昭和二十六年です。昭和二十七年の場合には国が責任を負ったわけなんですが、そのときですらも問題があった。そこで、たとえば転校生を対象とした問題、最近工事なんかが非常にたくさんになっておりまして、従って人の動きが非常に多いわけなんです。あるいは住宅団地がつくられるというようなことから、非常に人口の移動が多い。そういうふうな場合に学校をかえる子供がたくさん出てきますが、そういう者の措置はどうするか、こういうふうなことを私はこの前問題があったので、こまかくお聞きして、今度は文部省答申ともいうべきものをお伺いしたくて実は質問を始めたわけです。これはいずれ専門家が来られたときにお伺いして参りたいと思います。  そこで、きょうは最初は文化財の問題をお伺いしようと思っておりましたので、文化財についてお伺いいたしますが……。
  58. 床次徳二

    床次委員長 小林さん、大臣はもういいですか。
  59. 小林信一

    小林(信)委員 大臣はことに文化財にはおれは関係ないと言っておられるから、けっこうです。
  60. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 答弁しなくてもいいようにおっしゃったのですけれども、ちょっとただいまの点補足さしていただきます。今も申し上げた通り三十七年度予算の執行という形で三十八年度入学します一年生に給付します教科書については、現行法で従来のままでやりますから、御心配のように生徒増その他でもって年度当初に予定したものよりは教科書がよけい要るということもむろんございますが、従来も程度の差こそございましたが、混乱を起こさないできておりますゆえんのものは、教科書会社がそういうことも含めて責任を持って届けるということになっておりますから混乱しないわけでして、その事情は第一学年の児童に今度無償給付しますものについては従来通りにやりますから、現実問題としても御心配なかろう、こう思っておるわけであります。
  61. 小林信一

    小林(信)委員 文化財につきまして私一つお伺いしたいのは、平城宮趾の問題から端を発しまして、最近の経済伸展に伴っていろいろな事業が行なわれる、そのために埋蔵文化というふうな重大な民族遺産が機械力のためにめちゃくちゃにされて、心ない業者によってこういうものが破壊されていく、これに対してこの際経済成長計画をされるという政府の責任においても相当心配をしてもらわなければ困るというふうな話をしてきたのですが、やはりきょうもそういう問題についてお伺いして、もっと根本的な文化財行政というものをこの際確立する必要があるのじゃないか。今度新しく事務局長に出られて、その点では大いに手腕があり信頼すべき事務局長でございますから、第一歩から大きな理想を持って文化財行政に当たっていただきたいということをお願いするつもりでございます。  ことしの予算の中に平城宮趾の土地買い上げの四億何がしというものが盛り込まれたということは、これは考古学者を初め文化財に関心を持っておられる人たちは非常な喜びを感じておると思うわけです。この問題からお伺いするのですが、当初二十億くらいは要望されておったのですが、四億という予算はどういう形でもってお使いになられるのか。それから範囲ですね、あの平城宮趾のどの範囲を買い上げるのか、その買い上げ方が国が全額負担するのか地方にも分担をさせるのか、こういう点をお伺いして参りたいと思います。
  62. 宮地茂

    ○宮地(茂)政府委員 ただいまのお尋ねの件でございますが、平城宮趾のことにつきましてはこれは経緯はむしろ小林先生の方が十分御存じですから、そういう経緯は省略いたしまして、ただいまの御質問そのものにお答えいたします。  予算要求の過程におきましては確かにつきました四億二千六百万円の金額よりも数倍の金額でございました。しかし現実の問題として目下国会で御審議いただいております予算案には四億二千六百万円ということになっております。これをどのように使うのか、あるいは県にも金を出させるのかといったようなお話でございます。実はこれは多少もったいぶるようで恐縮なんですが、この四億二千六百万円で買えるのは要するに三十一万坪ばかりの平城宮の趾といいますと、多少の前後はございましょうが、せいぞい七万坪くらいではなかろうか。私の方でもその金によってどの地域をどのように買うかということは、一応の目安はございます。しかし何といいましょうか、この金でここを買うのですということを、あまりこうした場所で申し上げるということは、実は、さなきだに土地所有者の方は地価をつり上げるとか、いろいろな動きもあるように聞いておりますし、そういう関係と、それから実は直接購入費はつきましたが、これの買収費等につきまして、いわゆる買収の事務費でございますが、こういうものについては遺憾ながら予算がついておりませんので、奈良県当局とも、そういった買収のいろいろな事務をしていただくような応援は奈良県にしていただかなければならぬと思ってお話を進めております。奈良県としましては、目下来年度予算というものが近く開かれる二月県会であるやに聞いております。こういったようなことが十分決定いたしておりませんので、いましばらく、こういう場所を買いたいと言うことは差し控えさしていただきたいというふうに思っております。ただ、それにしましても四億二千六百万円、先ほど、いろいろ産業開発といったような問題もお話しになられましたが、国といたしましては、地域は今直ちにこの地域と申し上げられませんが、三十一万坪のどこかの地域になるわけでありますが、考え方といたしましては、あまり地元民に犠牲をしいるような買い上げ方はすべきでない。それから、さらばといって、あまりにも地価をつり上げられたような、むちゃくちゃな値段を容認して買うということは、今後の買収にもいろいろ支障も来たします。それから買うとしました場合には、学術上の問題、発掘を推進していく点からもいろいろな関連もございます。それから遺構、地下にある遺構ですから、掘ってみなければわかりませんが、大体数十年前に関根博士が御調査になられましたような資料もございますので、遺構そのものとも関連します。あれやこれやから、できる限り一般も納得していただけるような買い方をし、また文化財保存行政上も非難の起こらないような買い方をして参りたい、こういうふうに考えております。
  63. 小林信一

    小林(信)委員 文化財として四億というような金を一つの問題に計上したという点からすれば、もったいぶってもいいと思うのですが、しかしネコが小判をもらったと同じように、その使い道に困るような仕打ちをするというとやっぱり問題になるわけですから、私もきょうはどこを対象にするかというようなことは聞きません。事務局長の意図を尊重いたしまして申しません。しかしそれだけでもって問題が解決するのではなくて、今度は発掘の問題なんですが、あれを買い上げるというならば、いよいよこれは発掘をしていかなければならないわけですが、これもさなきだに文化財行政は遅々として進まない状況なんで、買ったは買ったけれども、いつもこれが発掘されるかわからぬ。また地方の人たちからマムシの巣になって困るとか、あるいは害虫の巣くつになって困るというような批判もおそらく受けると思うのです。従ってこれを発掘する手段方法を直ちに立てまして、迅速にその仕事を進めていかなければならぬと思うのです。だからネコが小判をもらったと同じようにならないように、一つ急速に仕事を進めて一般の要望にこたえていただきたいと思うのです。  それからこの問題はほんとうに今から私は申し上げたいと思うのですが、考古学者等は一つの問題に取っ組んでじっくり研究をするということよりも、今は破壊される、何か工事が始まるというそういう破壊作業のあとを追って、そこには文化財がないか、ここには文化財がないかというようなことでもって追われているような日本の考古学者の今の現状なんです。こういう点を考えてみても、いかにこの平城宮趾の問題で文化財努力をしたとか、与党が予算の捻出に努力したとかいうふうなことにあまり頭を置かずに、そういうふうな一般の国民の平城宮趾を守る会というような、ああいう素朴の人たちの声というものが盛り上がったわけですから、その声を尊重してこれにこたえられるように御努力を願いたいと思う。  そこで、これと同じ問題が今度は大阪に起きているわけです。大阪の難波宮社の問題は、ここにもおいでになりますが、責任者はそのときの団長で行かれたんですが、こっちの方に責任があるのですが、あそこに参りましてやはり今のような涙ぐましいものを私たちは見てきたわけなんです。これは非常にとうとい民族の文化を守る仕事なんですが、その説明を聞いてきましたが、その私たちの聞いた説明と、それから文化財把握しているいわゆる後円塚の発掘されている遺跡、あれが難波宮跡であるかどうか、こういう点をどういうふうに文化財は認めておるか、これをまず最初にお伺いしたいと思う。
  64. 宮地茂

    ○宮地(茂)政府委員 非常に恐縮ですが、まだ私新米で、先生が特に具体的にあげられましたものが宮跡の跡かどうかということを十分に専門屋から伺っておりません。ただあるいは御質問がないのに先走ってお答えするのもいかがかと思いますが、一度例の難波宮跡のあとに国の出先機関の庁舎を建てたりして、その辺が荒されるのではないか、文化財保存上非常に遺憾なことではないかというような世論もあり、先生方のそういうお声もあったやに聞いておりますが、この点につきましては、実は昨日、文部省と大蔵省の方でいろいろその辺も相談いたしておりましたが、昨日大蔵省の管財局の方のお話では、難波宮跡と目されているところ、最初の予定地ではなくて、離れた別の代替地が見つかったので、そこに国の出先の合同庁舎は建てる。だから当初問題になりました庁舎は建てなくとも済むようになった、三千坪ばかりの土地が見つかった、関係者で話し合いがついたということをきのう聞きましたので、小林先生等が御心配になられておった一部はそれでまあまあ焦眉の急を開いたわけではないかというふうに考えております。
  65. 小林信一

    小林(信)委員 大へんわかりがよくて、話が非常に早く進むのですが、結局そうなれば、文化財としても本委員会としても、難波宮跡であるということ認められたこととは推測いたします。やはり平城宮跡を重視するならば、それ以前の、唐文化が入ってきた最初の地帯であって、仁徳天皇の問題もあるし、四回の遷都があったとかいうふうなことから考えれば、当然ここは奈良と同じように、同等に重視されなければならぬ問題だと思うのです。それをもし認識不足でおるならば、私の知る限りを申し上げて、そうして認識を改めていただこう、こう思ったのですが、そこまで話が進んでおれば、私はもう申し上げる必要はないと思うのですが、大阪市としても、市会の決議をして、あのときに八木さんの団長のところに陳情されて、そうして市当局に相当これにも金を援助しておるようでございます。それから文化財としても、形は違うかもしれぬけれども、大阪城とあわせて研究するということで、補助をしておるというふうにも聞いておりましたので、大阪市民の強い要望の上に立っておるわけでございますから、その問題はできるだけそのように進んでいただきたいと思うのですが、私も実はその話を聞いてきたわけです。ところが、この国有地と大阪市で持っておる土地を合わせれば、今大阪の営林局、大阪の検察庁の分室ですか、簡易裁判所、これはバラックで建てておるそうですが、この地域がちょうど適当なかえ地になり、それでもって第二庁舎の建設はうまくいくというふうなことで、市当局も考えておるそうですが、問題は大蔵省と文化財保護委員会がこれを認めるかどうかということになってくるわけですが、今のような話であれば地元の人たちも非常に喜ぶと思いますし、ぜひそういうふうに進めていただきたいと思うのです。そうしてやはりこのところも、市当局もあれほど積極的に山根さんを応援して仕事をしておられるので、それもこれもというと大へんにえらいかもしれませんが、もっと理解した措置がほしいと思っております。  それで一つ問題が早く片づいたわけですが、そのほかにこれから問題を申しますが、これは前に参議院で、清水局長のときに問題になったことですか、千葉県の京葉工業地帯の埋め立ての問題ですね。あのときに、別に問題はございません——古墳等があの近所にたくさんあるのですが、その中で金鈴塚のようなものは特に留意して保存をいたしますというふうなことを言って、参議院の方で質問をした者に、だいぶ自信を持って文化財当局が答えられたそうでございますが、現実はそれと異なって、大堀町の内裏塚というのがありますが、その内裏塚の前方後円でございますが、このところが破壊されて石棺が露出した。最近行ってみたら、これは影も形もなくなっておるというふうな話も聞いております。それからこれは兵庫県の問題ですが、新舞子というところが、新しく観光地として非常に開発されておるところだそうですが、その付近に一つの山がありまして、その山の上にも古墳があるのですが、その古墳は、県の文化財保護委員会としては、十分考慮して、業者等が旅館あるいはその他建設をする際に損傷しないようにという約束をしたそうです。ところがやはり現実にはそれが破壊をされておる。一応破壊をされたところを、考古学者の方たちが寄り合いまして、約束が違うじゃないか、こういう苦情を申しましたら、直ちにこれを修復いたします、元の形に直しますという約束をしたそうです。ところが、しばらくたって後に、今度は別の方が破壊された。地元の人たちが観光地として開発するためにこういう遺跡が破壊されることを、何らか文化財行政の中で善処してほしいという要望が来ておる。それからもう一つは、これは建設大臣河野さんが主体になってやるのだそうでございますが、京都の宝池というのですか、この付近に国際会議場をつくるという計画がなされておる。ところがここはもうりっぱに指定地になっておるのですが、それを損傷しないようにというようなことでもって進めているのだそうですが、ちょっと手をつけたら、昔の釜場、かわらを焼いた釜場、こういうふうなものが続々と出てきて、それが破壊されつつあるというふうな問題が出てきておるわけです。とにかく新しく国道がつくられる。その問題から、考古学者等は、あそこにもここにも古墳その他遺跡の破壊が行なわれて非常に残念だということで、この前の国会でも、われわれがかわって当局に申し上げておるわけですが、またこういうふうな新しい問題が全国各地に出てきておる。一体こういうふうなものはどうしたらいいか、非常に関係者は心配しておるわけですが、おそらく文化財保護委員会とすれば、今のわれわれの体制ではいかんともしがたい、手を上げるような形だと思うのですが、それでも新事務局長はこれに対して何か抱負があるかどうか、お伺いしたいと思うのです。
  66. 宮地茂

    ○宮地(茂)政府委員 いろいろ三つばかり例をあげられましたが、特に最後にあげられました国が国道をつくるというような場合、たとえば東海道の新幹線をつくるんだとか、あるいは名古屋、神戸の間の自動車道路をつくるんだとかいったような、いろいろ大がかりな土木事業がございますが、そのような場合には、実は私どもの方と建設省等とがお互いに、協定とまで——あまりいかめしいものではございませんが、相互に話し合いいたしまして、書類の交換をいたしておりますが、そういう道路をつくる場合、一応地図を見ればどこにどのような遺跡があるはずだ、地上にあるものはもちろんですが、埋蔵されておると覚しきような場所はこのあたりであるというようなことを、私の方からも関係省にも申しますが、またそういう道路をつくる前には、文化財保護委員会の方に事前に、重要と思われるようなところ調査させてもらいたい。それから調査経費等は、急におやりになるときなどで、私の方では予算を持っておらないような場合は、できれば先方で調査経費は出してもらうようにといったような話し合いもいたしておりますし、また調査の結果重要な遺跡が出てきたというような場合は、当初地図を書いて線を引いておられたところを、少し当該場所をよけて通ってもらうとか、そういうことを一応文書等にもいたしまして、できる限りの措置をしておりますが、しかしそれにしましても、御指摘のような場合が事実起こってくると存じます。従いまして、事前に十分そういうことのないように話し合いをすると同時に、またそういう問題が起こって参りました場合は、そのつど即応した措置をとるというふうにいたしたいと思います。  今、何かりっぱな抱負でもあるかとおっしゃいましたことにつきまして、特に抱負があるわけではございませんが、従来からもそのように、考え得るだけのことはいたしております。しかし、それについてもまだこのようなあやまちがあるじゃないかというような御指摘でもございますので、そういう点は、もちろん事後になりますが、調査の上できる限り支障のない措置を追っかけてでもとる以外に方法はないのではなかろうか。経験も浅うございまして、抱負ということはございませんが、そのように考えております。
  67. 小林信一

    小林(信)委員 今事務局長が言われたようなことは、法律をたてにとれば問題ないことなんですよ。発見した場合には直ちに届出をしなければならぬ。そうすればこれはやはり調査をすることになっていくわけですが、そんなことをしておったら業者は仕事にならないわけです。今そんな良心的な業者はいないということは、この前の国会でも大いに論議したわけです。そういう業者が日の丸の旗だとかあるいは君が代ということは口では言うけれども、実際自分がそういう問題にぶつかったときには、やはり自分の欲の方が先に立って、ブルドーザでもってがあっとやってしまうという今時代なんです。だから、文化財保護委員会としてはそういう時代の動きというものをつかんで、ここに画期的な対策を講じなければならぬということを私は常々考えておるわけなんです。今度の名神国道の完成にあたっては、公団が非常に良心的であったために自分たちから調査費を出し、あるいは考古学者に相談をしてそういう問題を一々解決していった。それでもなお考古学者とかそういう関心を持つ人たちから言わせるならば、非常に遺憾なものがたくさんあげられるわけなんです。まして一般の業者等の仕事の場合には、そういう点にまことに無関心でもって行なわれるわけなんです。それはただ遺跡が破壊されるということだけでなくて、ひいては民族文化を軽視する業者あるいはそれを黙って見ておる政府に対する国民の批判ということになって出てくるわけなんです。いかに今の政府当局が道徳教育なんということを主張しても、実際においては大きな矛盾が出てきておるわけです。私は、そういう点から、もっと古代文化を尊重するというふうなことを、実際に政府が熱心にやっていかなければいかぬと思う。それには、今日の文化財行政の機構、形態では私は不可能だと思う。まず文化財保護委員会は、あんな文部省の屋上なんかを借りておらないで、一番文化財の多い関西地方に移ったらどうかと思います。しかし、こうやって政府当局として国会との関係もあるから、あそこに本拠を置かなければならぬとするならば、奈良に文化財研究所というような、一つの出張所のような形を置いて、あそこに集結されておるたくさんの日本文化財を出張所が守るというような形、そしてそこへ行けば話がつくというふうな形をまずとるべきだと思うのです。これくらいあの地方に対する関心をまず持たなければいかぬと思うのです。  それから、今度は各府県の文化財行政のあり方ですが、これは事務局長まだ初めてでおわかりになっておられないと思うのですが、各府県に、ほんとうに専門的に文化財関係の仕事をするものが全国で何県あるか、私の想像では、おそらくみんな兼務のような形でもって仕事をされているのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  68. 宮地茂

    ○宮地(茂)政府委員 県が文化財保護行政についてどのような人員を持っておるかというお尋ねのようにお聞きいたしましたが、おっしゃいますように、私も十分承知はいたしておりませんが、大体のところ申し上げますと、文化財保存行政のみを専管している文化財保存課というのが京都と奈良の二県にございます。それから、栃木県が新年度からそういう課を置くというふうに聞いております。東京都と静岡県では文化課というところで一般文化行政と一緒にやっておるのですが、相当の人員も擁して仕事をしており、その他は大体社会教育課の中へ係長を置いてやっておるというのが実情のようでございます。中には係も置いてないところもあるようでございますが、御指摘のように、文化財保存行政につきましては、全般的に申しまして十分な組織、機構が確立されていないということが言えるではないかと思います。従いまして、文化財保護委員会としましては、保存行政の重要性を従来からも県、市町村にお話し申し上げ、いろいろ組織、機構を充実していただくようにしてきておるようでございますが、今後ともそういった努力をいたしまして、文化財保存行政に遺憾のないようにいたしたいと思っております。  それから、前半の御質問の奈良に出張所くらい置いてやったらどうだというお考え一つの有益な御意見だと存じますので、私どもも考えさしていただきたいと思いますが、ただ、昨年からですか、パトロール官といったようなものの定員もとりまして、文化財保護委員会から県等に文化財保存行政をお願いしておりますが、お願いじゃなくして県自体としてもやっておりますが、国からもしょっちゅうそれを見て回って実態を十分把握しておく必要があるということで、文化財の監督官を定員化して相当効果が上がっておるようでございます。従いまして、おっしゃるお気持は、文化財保護行政をしっかりやれという御激励の御趣旨だろうと存じますので、私どもとしては肝に銘じましてしっかりやりたいと思いますが、ただ、形として出張所を今すぐ置くかどうかということは、一つの検討すべき問題として検討さしていただきたい、このように考えます。
  69. 小林信一

    小林(信)委員 ただ激励するなんということでこんなことを言っているのではない。もっと真剣に取っ組むべきだと思うのです。この予算説明書を見たときに私はしゃくにさわったわけです。いつか私が荒木文部大臣文化財問題を聞いたら、私は文化財問題には関係ございません、文化財委には文部省の一角を貸しておくだけだ、こういうことを言っておきながら、言われておる文化財保護委員会では、文部省予算要求額事項別表、こんなものを出して、その一番しまいの方に半ページくらい文化財予算が載っておるわけです。こんなものから抜いて、独立して、予算説明をするくらいになるべきだと思うのです。文部大臣は、私は全然関知しません、こう言っている。だから、そういう地方の文化財行政の機構を充実すると同時に、文化財保護委員会というものをもっとしっかりしたものにしなければいかぬ、こういうことを私はあわせて言いたいわけです。そういうような問題については、私は、この国会でも小委員会というふうなものをつくってもらって本格的に検討をしてもらいたいと思うのです。  地方の実情を申し上げればきりがないわけですが、実はきょう私の県で、裁判の最終判決が下されることになっております。これは文化財委も聞いておられると思うのですが、例の火繩銃をつくったという問題です。これは最初警察の方では銃砲火器取締でもってその人間を引っぱって、そして二十一日ですか、二日ですか、最大限勾留した、そしたら、これは穴があいてない、火繩銃だけで銃砲火器取締に該当しないということで、警察の面子かあるいは検察庁の面子かどうか知りませんが、今度は起訴理由を変えて裁判をしているわけです。きょう判決が下されるわけですが、その問題になったのは例の登録用紙——文化財の仕事をされておる人は知っていると思うのですが、事務局長は知らぬかもしれませんが、要するにこれは江戸時代の火繩銃でございますというのを登録するわけですね。その登録をする場合に審査員というふうなものが県の中できめられるわけでしょう。ところがそれが勝手に書いて出すと、それが今の県の文化財保護委員会ではそういう眼識がないから、そういう審査員の言うことをそのままめくら判を押してしまうわけです。今度もやはり裁判官にそういう点を追及されたのですが、私たちはそんなことは全然わからぬ。だから責任は教育委員会にあるかもしれませんが、私たちにはそんなことを判定する力はないんだからというふうなことでもって、問題をどこへ持っていくこともできなくなって、結局その登録用紙というのは一体どこに責任があるのだということが今度の裁判の山になっているわけです。私はきょう判決が下ったら、今度は文化財保護委員会でもって、はたしてその裁判が妥当であるかどうかということを、これは立法上の問題になるわけですが、お聞きしようと思っております。もしそれがどういう結果になるともこれは聞かなければならぬと思うのですが、そういうふうに文化財保護行政というのはでたらめなんですよ。極端に言えば、文化財保護委員会から指名されたというような形でもってそういう審査員というものがたくさんにある。そういう人たちは古物商と結託をして、そうしてつまらぬ私蔵品を、これはこうこうこういうものであるというようなことを勝手に書いて、そしてその登録用紙が添付されると、とたんにそれが高価なものになっていく。かえって文化財保護委員会なんというものがあるために、地方の古物商なんというものはそれを悪用して仕事をしているわけです。それが大きなものになれば、永仁のつぼだとかそういう問題になっておるいろいろな陶器、こういうふうなものと同じようなことが地方にはたくさんあるわけです。そうして今度は実際保護される問題はどうかというと、これも私の県の例を申し上げれば、私のすぐ隣に窪八幡という社がございますが、ここには確かに重要文化財一つの神社の九つぐらいあると思います。そういうたくさんな文化財を持っていて、先ごろみんな修復されたのです。ところが、防火施設というものが完備されておらなければならぬが、これも文化財保護委員会から指定された人たちでしょう、地方を回って仕事をする人たちですね。この人たちのやっている仕事が非常にずさんなために、貯水槽がつくられておるけれども、みんな水が漏ってしまう。コンクリートで仕事をして水が漏ってしまうなんということはないはずですが、現に漏っておる。水がたまらない。せっかく防火施設を完備しろというようなことを盛んに言われながらも、文化財保護委員会から派遣される人が水が漏るような貯水槽をつくって平気でおる。それで防火施設はここ一年くらい機械が故障で全然とまっているわけです。こういうふうに文化財行政というものは、地方へ参りますとまことにもうどうしようもない状態なんです。そうかといって私の県のそういう係の人がなまけておるかというと、なまけておるわけじゃない。社会教育の仕事をしながら、幾分そういう点について理解があるからということで、兼務で仕事をしているわけなんですが、とても手が回らない。これではせっかく一つの独立した委員会というものがあっても、とてもその本来の目的を達することができないのじゃないか。だから新事務局長は、そういう全国的な今の情勢の問題、機構の問題、いろいろたくさん出てくる問題のことを考えたら、これはもうきょうのような行政機構ではとてもできないのだ——世界のいろいろな事例をあげれば切りがございませんが、そういうふうな問題を究明されまして、一つ思い切った機構整備をやって、そうして行政の充実をはかっていただきたい。これが私の一番の念願でございますが、しかしそういう大きな問題は簡単にすぐできるわけではございません。きょう新舞子の問題、あるいは千葉県の京葉工業地帯の問題、それから例の京都の宝池の国際会議場の問題、この三つの問題は早急に御調査願って、はたしてそういう問題があるかどうかを調べていただきたいと思うのです。そしてそれに対して問題がございませんというならいいのですが、問題があるというなら、どういうふうに手をつけてくれるか、次の機会にお聞かせ願いたいと思います。事務局長が非常に早く話をつけてくれましたので、私はこれで終わらしていただきます。
  70. 床次徳二

    床次委員長 次会は来たる十五日金曜日に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十六分散会