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1963-06-04 第43回国会 衆議院 農林水産委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月四日(火曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 秋山 利恭君 理事 小山 長規君    理事 田口長治郎君 理事 丹羽 兵助君    理事 山中 貞則君 理事 足鹿  覺君    理事 片島  港君 理事 東海林 稔君       安倍晋太郎君    大野 市郎君       金子 岩三君    亀岡 高夫君       仮谷 忠男君    川村善八郎君       草野一郎平君    倉成  正君       小枝 一雄君    田邉 國男君       寺島隆太郎君    中山 榮一君       野原 正勝君    松浦周太郎君       松本 一郎君    米山 恒治君       角屋堅次郎君    栗林 三郎君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       芳賀  貢君    松井  誠君       安井 吉典君    山田 長司君       湯山  勇君    稲富 稜人君       玉置 一徳君  出席政府委員         外務事務官         (欧亜局長)  法眼 晋作君         農林政務次官  津島 文治君         水産庁長官   庄野一郎君  委員外出席者         議     員 角屋堅次郎君         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      和田 正明君     ————————————— 五月三十一日  委員楢崎弥之助辞任につき、その補欠として  五島虎雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員五島虎雄辞任につき、その補欠として楢  崎弥之助君が議長指名委員に選任された。 六月四日  委員内藤隆君、稻村隆一君及び楢崎弥之助君辞  任につき、その補欠として米山恒治君、松井誠  君及び小林進君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員小林進君及び松井誠辞任につき、その補  欠として楢崎弥之助君及び芳賀貢君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員芳賀貢辞任につき、その補欠として稻村  隆一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月三日  菓子の自由化に関する請願廣瀬正雄紹介)  (第三九九一号)  国有林野事業に従事する常用作業員定員化に  関する請願外三件(石橋政嗣君紹介)(第四〇  一一号)  同外三件(石橋政嗣君紹介)(第四〇三三号)  農林年金制度改正に関する請願田邊誠紹介  )(第四〇三四号)  同(足鹿覺紹介)(第四〇九〇号)  同(山口鶴男紹介)(第四一三四号)  同(栗原俊夫紹介)(第四一六一号)  同(内海安吉紹介)(第四二二五号)  畜産物価格安定に関する請願外十二件(今松  治郎君紹介)(第四〇六九号)  森林開発公団鳥取出張所設置に関する請願(足  鹿覺紹介)(第四〇八九号)  地方青果卸売市場法制定に関する請願足鹿覺  君紹介)(第四〇九一号)  農業構造改善事業国庫補助率引上げ等に関す  る請願足鹿覺紹介)(第四〇九二号)  乳価安定対策に関する請願下平正一紹介)  (第四一二一号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第四一四八号)  同(井出一太郎紹介)(第四一六七号)  国有林国民的民主的利用林業労働者の雇用  安定に関する請願外十二件(原茂紹介)(第  四一三五号)国有林野事業に従事する作業員の  全員定員化に関する請願外六件(石橋政嗣君紹  介)(第四一七九号)  海草天草人工栽培増産法採用に関する請願(齋  藤憲三紹介)(第四二三一号)  除虫菊生産振興に関する請願野原正勝君紹  介)(第四二六二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  沿岸漁業等振興法案内閣提出第三七号)  漁業基本法案角屋堅次郎君外三十名提出、衆  法第六号)  沿岸漁業振興法案角屋堅次郎君外三十名提出、  衆法第七号)  水産物価格安定等に関する法律案安井吉  典君外十一名提出衆法第二五号)  水産業改良助長法案湯山勇君外十一名提出、  衆法第二六号)      ————◇—————
  2. 長谷川四郎

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  降ひょう及び突風等による農作物被害について発言を求められております。これを許します。足鹿覺君。
  3. 足鹿覺

    足鹿委員 私は、埼玉県、群馬県及び栃木県下における降ひょう及び突風による農作物等被害について現地調査を行ないました委員を代表いたしまして、調査概要を御報告申し上げます。  本調査に参加されました農林水産委員は、全コース安井委員東海林委員高田委員山田委員と私の五人で、埼玉県のみでありますが野原委員も参加されたのであります。  報告申し上げます。  まず、本災害発生の五月二十二日の気象状況を概観いたしますと、日本海上空にあった寒冷前線が南下を始め、埼玉県、群馬県及び栃木県の被害地を結ぶ線上にあった本土上の温暖前線が太平洋に去ったあとに発生した熱帯性低気圧により、この地帯に猛烈な上昇気流現象が起こり、多量の湿気を含んだ空気が一万四、五千メートルの上空まで押し上げられ、これが上空に張り出していた寒冷前線にぶつかり、急速に冷却されて大規模な積乱雲となり、瞬間最大風速四、五十メートルの突風と雷鳴を伴うひょうを午後四時半ごろから約四十分間にわたり地上にたたきつけたのでありまして、ひょうの大きさも鶏卵大のものであったようであります。そのひょうの大きさと激しさは言語に絶するものがあったようでありまして、いまもなおそのつめあとが、外にあっては踏みつけられたように倒した農作物や、茎のみを残し見る影もなく荒らされた蔬菜に見られ、農家にあっては板が割れた雨一尺こわれたガラス、くずれた壁等に見受けられたのであります。さらに、降ひょうには珍しい四、五十メートルの突風を伴っていたため、降ひょうによる被害には何ら関係のない住居、納屋、畜舎等の諸施設が倒壊あるいは大損害をこうむったのでありまして、農作物と繭の収穫あと一週間に控えた最悪の時期にあったため、農民の落胆も大きく、しばし虚脱状態にあったようであります。また、降ひょう突風被害面積は近年に見ない広範囲に及んでおりまして、埼玉県にあっては大里郡妻沼町、岡部村、豊里村、児玉郡美里村、本庄市及び深谷市に、群馬県にあっては伊勢崎市、佐波郡、桐生市、新田郡、太田市、山田郡、大泉町、舘林市に、栃木県は河内郡、上都賀郡、下都賀郡、足利郡、安蘇郡、足利市等となっているのであります。被害額ひょう害としては末曽有といわれ、埼玉県では総額十七億円に達し、農作物のおもなものは蔬菜甚大被害を受け、その面積二千二百ヘクタールで八億八千万円にのぼり、次は麦類で、五千五百ヘクタールで四億四千万円、桑の被害による繭の減収三億円となっておるのであります。群馬県は総額九億五千万円で、麦類減収千二百万キログラム、三億円、蔬菜二億円、桑の被害による繭の減収三億円となっているのであります。また栃木県の被害は六億円で、麦類が四億円の損害を、残りの二億円は栃木特産大麻で、大麻損害は県の生産量の三分の一以上といわれているのであります。  以上が被害概要であります。  次いで、われわれの調査経路を簡単に申し上げます。  われわれは六月一日午前八時、衆議院前を自動車にて出発し、まず埼玉県に入り、深谷市役所におきまして県、市町村及び農業団体等代表者から被害説明要望を受けたのであります。それによりますと、埼玉県は、被害の判明と同時に、被害農家一戸当たり五万円を限度として、年利五分の営農資金総額一億円貸し付けを行なうとともに、種苗確保措置として、農災法適用作物については三分の一、その他のものについては二分の一の補助を、また肥料対策として水陸稲用については三分の一、桑、果樹等樹勢回復用については二分の一の補助を実施することとし、それに必要な予算を一億一千万円計上し、臨時県会提出しているとのことであります。現地は最激甚地深谷周辺妻沼市を視察し、十三時半、予定より三十分おくれ群馬県に入ったのであります。  群馬県では、知事みずから陣頭指揮を兼ねてわれわれを案内され、太田周辺と尾島町の激甚地を回ったのであります。時間の関係で、被害地関係者には太田市役所にお集まり願いまして、実情説明要望を承ったのであります。知事説明によりますと、群馬県は災害対策制度化されており、したがって今回は災害発生後二十四時間以内に県会を招集、災害対策条例発動し、種子確保肥料手当てを行ない、可能である最大限度の適切な措置を講じたとのことであります。そのためでありますか、被害を受けた桑の技払い、被害麦焼却等生産に力強く立ち向かっている姿が見受けられたのであります。  栃木県には、最初予定は十五時太田市役所で車を乗り継ぎ調査に入る予定でありましたが、埼玉県で三十分おくれ、群馬県でも地元自動車事故に道をさえぎられ、四十分ほど立ち往生したため、栃木県では予定から一時間半ばかり時間がずれてしまったのであります。したがいまして、当初の調査予定地であった栃木吹上、寺尾、尻内、都賀村大柿、西方村金井及び金崎、鹿沼町を経て宇都宮市までのコースは大幅に変更されざるを得なくなり、地元山田委員の寛大な計らいと地元の御理解によりまして、現地栃木市郊外の大麻の主産地吹上地区のみとし、関係者各位からは栃木市の県下都賀庁舎会議室において要望等を承ったのであります。この災害を受けた地方は全国一のビール麦生産地であり、大麻特産地でありますが、この双方が徹底的な打撃をこうむっておったのであります。  以上でわれわれの調査を完了し、小山駅発十九時の列車で帰京したのであります。  調査中に要望されました事項につきましては、いずれも同一のものが多いので便宜上一括し、われわれ調査委員の意見を付して申し上げます。  第一は、天災融資法発動による天災資金貸し付け早期実現であります。天災法発動は前回の委員会でも農林大臣発動を言明しておりますので、その点は解決しているのでありますが、被害者の強く要望していることは、特別被害農業者指定についてであります。これが指定にあたりましては災害特殊性からして、十分実情に沿うように配慮されるとともに、資金貸し付けが常に六カ月以上もおくれて貸し付けられるが、今回はこのようなことのないよう事務促進をはかるようにされたいということであります。  第二は、自作資金貸し付けワク貸し付け限度の引き上げであります。貸し付けワクにつきましては、必要に応じ拡大できると思いますが、貸し付け限度額につきましては、検討する必要が痛感されたのであります。それは、今度の災害台風災害等と異なり、救農土木的な現金収入救済事業が見当たりませんし、被害農家生活資金はただこの自創資金にたよらざるを得ない現状にあるからであります。  第三は、天災資金、自創資金改良資金及び農業近代化資金等既貸し付け資金の借りかえまたは据え置き期間及び償還延期についてであります。特に新しい農業近代化資金につきましては、今回の被害地においては、蔬菜早期栽培用ビニール・ハウスに活用され、昨年度は非常な好成績をあげ、勇躍して二年目を迎えたやさき壊滅的被害であります。農業近代化の推進という点からしても再貸し付けの道を開くとともに、既貸し付け分についても据え置き期間の延長により再生産確保をはかってやるべきであると思うのでありまして、政府はこれが指導に万全を期すことを希望する次第であります。  第四は、等外麦政府買い入れについてであります。等外麦政府買い入れについては、等外麦の上の買い入れは決定しているようでありますが、規格を大幅に緩和し、救済意味からも等外麦の大部分の買い入れ措置を講ぜられたいのであります。  第五は、農業共済金早期支払いであります。このたびの災害は一見してその被害の程度が明確に把握できるのでありますので、担当者を督励して早期支払いに努力されたいのであります。  第六は、被害農作物等種苗確保樹勢回復用肥料代については、前述のとおり、各被害県がそれぞれ手当てをしておりますが、被害県のみに負担せしめず、国においても災害復旧の一端を受け持つという意味からも補助方法を講ずべきであると思うのであります。  第七は、米麦の安売りであります。これは過去の例からすれば、立法を要することとなるのではないかと思うのでありますが、数量もたいした量になると思われませんので、前例と同様の価格で安売りできる何らかの方法が講ぜられないものか研究し、早急に安売りできるようにすべきであると思うのであります。  第八は、蔬菜に対する共済制度であります。蔬菜の主要地農家の切なる願いとして、蔬菜を任意共済し、これを政府に再保険をする制度について、政府部内で真剣に研究し、早期制度の確立を願うものであります。  第九は、農林漁業金融公庫主務大臣指定施設に対する公庫資金貸し付けであります。今回の災害突風による農舎、畜舎蚕室等に多大の被害を受けているのであります。したがいまして、農林大臣は、この個人施設に対しましての貸し付けの道を開くために、施設指定を行なうようにすべきであると思うのであります。  最後に、群馬県下に発生した霜害につきましても、ひょう害等対策同一の扱いにより善処されんことを望みまして私の報告を終わります。(拍手)     —————————————
  4. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次に、福岡県下の長雨による麦被害について、稲富君から発言を求められておりますので、これを許します。稲富君。
  5. 稲富稜人

    稲富委員 主管大臣農林大臣予算委員会に行っておられますので、この際委員長に特に要望いたしまして、委員長より私の質問いたします趣旨を大臣に伝えていただいて、これに対する適当な手を打って、直ちに国、農林省としての農林大臣の御方針をお示しを願いたいと思います。  最初委員長にお願い申し上げたいと思いますことは、今回の九州及び西日本をおおいました長雨によります被害状況というものは、実に言語に絶するものでございまして、おそらくただいま農林省におきましても、これが統計をとられておるようでございます。私の推定いたしまするところによりますると、二百億内外を突破するだろうというような惨状でございまして、麦、なたね及びバレイショ、タマネギ等一切の夏作というものは収穫皆無の状態にあるのであります。この中におきまして農民は、この処分と今後の生産に対する意欲を非常に失墜しているという状態であるのでありますので、私たちは今後農民に次の生産に大きな意欲を持たせるような処置をとることが最も必要であると思うのであります。こういう意味から私はこの機会に、木農林委員会といたしましても、直ちに現地調査をやって、そうしてこれに対する対策を樹立することが最も必要であると思うのであります。こういう意味から、しかもその期限の問題でありまするが、九州地方におきましては、すでに田植え期を控えておるのでありますが、現在の麦の刈り入れさえもできないような状態で、立ったままこれを焼こうといたしましても、燃えないので困っております。全然実の入っていない麦の処分に困っておるというような状態でございますので、この実情を見るためには少なくとも十日以前に行く必要があると思いますので、早急に本委員会によって現地調査をなされることを、この機会委員長に特に申し上げたいと思うのであります。  さらに政府対策要望する問題でありますが、これは何と申し上げましても、今回の農作物被害というものがほとんど収穫皆無でございますので、これは農災法によります概算払い処置を直ちにひとつ政府で樹立していただきたいということであります。さらに天災法適用にあたりましても、今回の被害状況より見まして特別地域としての指定を早く決定することが必要でありまして、これによりまして、あるいは利子におきましても最低の三分五厘以内の金利であり、それから返還期限におきましても五年という最も長い期限をとることと、貸し付け限度におきましても、伊勢湾台風等の例もありますので、最局の貸し付け方法を樹立するような対策政府でやっていただきたい、こういうことを特に申し上げたいと思うのであります。  さらに等外麦の問題でありますが、委員長の手元に現地収穫いたしました麦を持ってきておるのでございますが、これは麦と称することのできないような実態でございます。政府等外麦買い上げができればいいけれども、もしも等外麦としての買い上げができないような場合には、これは収穫皆無とみなして考える。こういうようなくず麦がありますときは、収穫とみなしますと、いろいろ次の問題に支障を来たしますので、商品価値のないものは全然収穫皆無である、こういうような見当をつけて私たち処置をすべきであると思うのであります。現にそういうような事情から刈ることさえも困難であるという状態でございますので、この点を考えていただきたいということ。  さらに来年度の種子の問題ですが、おそらく来年度の麦の種子というものは確保できないというような状態でございますので、これは政府責任において来年度の種子確保するように、いまからひとつ処置をとっていただきたい。そうして来年度の麦の生産農家が安心して当たれるような方法を講じていただくように処置をとっていただきたいと思うのであります。  さらに次期生産のための肥料代のごとき問題も、これは非常に困難を生じますのでこういうものに対する特別融資方法を講じていただきたい。  さらにまた考えますことは、現在の状況からいいまして、天候等から見て、今年度の水稲におきましても相当に被害があるのじゃないかということが推定されておりますので、いまからこういうことに対しましても政府としての特段の考慮を払って対策を講じていただきたい。こういうことを要望いたしまして、いずれ機会を見まして、大臣よりこれに対する所感を承りまして、さらにまた質問をいたしたいと思いますので、とりあえず急を要しますので、この点だけを委員長を通じましてひとつ政府要望していただきますように希望を申し上げたいと思うのであります。
  6. 長谷川四郎

    長谷川委員長 お答え申し上げます。  稲富君の発言に対する政府からの答弁は責任を持っていたすようにいたさせます。  なお、現地調査の件につきましては、後日理事会をもって決定いたして御報告申し上げます。      ————◇—————
  7. 長谷川四郎

    長谷川委員長 引き続いて、内閣提出にかかる沿岸漁業等振興法案並びにいずれも本院議員提出にかかる漁業基本法案沿岸漁業振興法案水産物価格安定等に関する法律案及び水産業改良助長法案、以上各案を一括議題といたし、審査を進めます。  質疑を行ないます。安井吉典君。
  8. 安井吉典

    安井委員 この間に引き続きまして、主として政府提出沿岸漁業等振興法案に関しましてお尋ねを進めてまいりたいと思うのでありますが、私は、沿岸漁業を振興する上におきまして最も基礎的な重大な意義を持つのは、沿岸漁民のための漁場確保するということではないかと思います。ところが政府提出法案の中には、そのような問題に対する基本的な理念というようなものが示されていないわけであります。この点、私は今回の政府案における大きな弱点だと思うのでありますが、この点について政府はどういうふうにお考えでございますか。
  9. 庄野五一郎

    庄野政府委員 御指摘のように、漁業を振興する上におきましては、漁場確保ということも一つの大きな重要な点だと存じます。漁場の問題につきましては、沿岸漁業におきましては、漁業法によりまして法定の漁業権というものにつきまして、この漁場確保並びに調整等をいたしております。特に沿岸漁業におきましては、共同漁業権あるいは区画漁業権その他定置漁業権といった許可認可漁業によりましてこれを行なっているわけでございますし、また沖合いなり、遠洋中心といたしまする漁業につきましては、指定漁業といたしまして、農林大臣許可によりまして、この漁場等に関しまする調整並びに許可をいたしておるわけでございまして、そういう意味におきまして漁業法に基づきまして、この漁場権利関係なり調整なりをいたしておるわけでございます。なお振興法におきまして、漁場を積極的に造成するというような事業につきましては、沿岸漁業等振興法案の中にもございますように、特に沿岸漁業におきましては、構造改善事業等によりまして漁場の造成、これは漁場改良事業等中心にいたしますもの、それから三十八年度から大型魚礁につきましては、公共事業ということにいたしまして、そういった面の事業促進をはかる、こういったような措置を講じております。なお新しい漁場開発というようなことにつきましては、国の事業あるいは助成事業といたしまして、調査をいたしまして、たとえば日本海におきましては、大和堆の開発といったようなことを行ないますし、また遠洋におきましても調査船を出してカムチャッカ沿岸におきまする底びき網漁業調査あるいは遠く熱帯あるいはアフリカといったようなところの漁業調査等をいたしまして、新しい漁場開発につとめておるわけでございまして、そういった面を総合いたしまして漁場確保調査開発ということをいたしておる次第でございます。
  10. 安井吉典

    安井委員 いまいろいろお話がございましたが、私は沿岸漁業者についても、漁業権の問題は漁業法という法律がはっきりあるのですから、その中で規定されるのが当然だと思います。しかしながらこの沿岸漁業等振興法案も、政府のこの間うちからの御発言によりますと、あくまでも沿岸漁民に対する基本法だという考え方であります。そういう基本法だという考え方があるのならば、漁業法を含めまして漁業法制全体の中での沿岸漁業漁場確保するという姿勢がこの法律案の中に、はっきりとはめ込まれても悪くはないし、それどころかきわめて重大な意義があることであろうというふうな感じを持つわけであります。現に沿岸漁民は、この間の質疑の中にもございましたように中型機船底びき網漁業との競合の問題が常に起きまして、その底びき漁業禁止区域拡大というものが、いつも大きな課題になってくるわけであります。沿岸漁業のどこの人にお会いしても、やはりこの禁止区域拡大題問が、沿岸漁業の当面する一番大きな問題点だというふうに私どもは話を聞くわけであります。小さな魚まで全部洗いざらいとってしまう、そういうようなことから資源の枯渇の問題が起きてまいりますし、同時にまた沿岸漁民の漁具が、その底びき漁船のために持っていかれてしまう、こういうふうないろいろな角度からトラブルが常に絶えないわけです。ですから、私ども沿岸漁民を守るという立場からすれば、この底びきの禁止区域拡大というふうな問題に、やはりもっと本式に政府は取りかかっていただかなければいけないのじゃないかと思うのです。さきに三十三年の九月二日の農林省告示ですかで、禁止区域拡大措置が講ぜられたことがございましたが、新しい段階におけるこの問題についての政府のお考え方を、ひとつこの際お聞きをしておきたいと思います。
  11. 庄野五一郎

    庄野政府委員 沿岸漁業と沖合いの底びき漁業との調整の問題でございますが、これは漁業法によりましてやはり資源の問題、それから沿岸漁業と底びき漁業との操業上の調整の問題ということで、漁業法に基づきまする農林省令をもちまして、この調整をはかっております。御指摘のように、底びき漁業は非常に能率的な漁業でございまして、資源等の問題もあるわけでございます。そういう意味におまして、底びき漁業操業区域あるいは操業期間、そういうものを定めるにつきましては、沿岸漁業との調整も考えながら、やはり資源との関係もさらに科学的な調査等に基づいて検討いたしまして、禁止区域の設定あるいは操業期間の制限、そういったことを実情に即していたしておる次第でございます。  なお、漁業の方向といたしまして、沿岸漁業につきましては、構造改善対策事業によりまして、その構造的な改善をはかりながら沿岸漁業の振興をはかる、こういった考えでございますし、底びき等を営む形態におきましては、これは沿岸漁業振興法におきましては、中小漁業が大部分でございまして、そういう面におきましては、沿岸漁業との調整をはかりながら、改善事項を公示するといったようなことで、融資等のあっせんをいたしまして、この生産性の向上あるいは不安定性の除去といったような施策を講じながら、漁業の振興をはかりたい、こういうふうに考えておるわけでございますが、やはり沿岸漁業振興法におきましても、この総合的な施策によりまして、日本の水産業の最も大きな基盤となっておりまする沿岸漁業なり中小漁業の総合的な発展をはかるということで、その中には沿岸と沖合いとの調整ということが、大きなウエートになるわけでございます。そういう意味におきまして、かねてから漁業法におきましてそういった調整はいたしておるわけでございますが、なお施策の方向といたしましては、沿岸から沖合いへ、沖合いから海洋へ、こういった方向で漁場が広がりつつある現状におきまして、沖合いへ出ていく、そういったことで沿岸へのしわ寄せはできるだけ避けていく、こういうふうな方向で施策をいたしておる次第でございます。
  12. 安井吉典

    安井委員 私のお聞きしておるのは、そういうふうな全体的なかまえは当然なことだと思いますが、いまの段階においてその区域の問題について再検討をするようなお考え方はないか。現実の問題についてひとつ伺っておきたい。
  13. 庄野五一郎

    庄野政府委員 沿岸漁業の構造改善が進みますにつきましても、やはり沖合いとの調整をいたさなくちゃならぬ場合が生じてきます。また沖合いの底びき漁業についてもいろいろ経営上の問題が最近特に起こっておるわけでございまして、そういう面から沖合い漁業が、経常が安定して伸長するように、こういった配慮も行なわなくちゃならぬわけでございますが、そういった沿岸と沖合いとの調整といったようなものにつきましては、具体的に現地実情に応じて考えなくちゃならぬと考えております。そういう場合には、やはり中央漁業調整審議会の意見をよく聞き、また海区の調整審議会等の意見もよく聞き、それから県なり関係者の意見もよく聞いて、無理のないような体制で進めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  14. 安井吉典

    安井委員 私は現実のいまの時点に立って、たとえば北海道なら北海道でいま調整をはからなければいけないとか、そういうような事態はありませんかということをいま伺っておるわけです。
  15. 庄野五一郎

    庄野政府委員 具体的に北海道の例を申し上げますと、北海道につきましても、沖合いの底びき漁業操業区域を広めてくれ、あるいは沿岸から申しますと、禁止区域をさらに拡大してくれ、両方の相反する要請があるわけでございますが、そういう点につきましては、ただいま慎重に検討中でございます。沿岸等の問題等を考えますと、簡単には進めていけないのじゃないかというふうに考えております。
  16. 安井吉典

    安井委員 慎重な御検討ということでありますが、いつどこまで検討されておるのだか私はよくわかりませんが、いずれにしてもこれは常に新しい問題としてトラブルの問題が出ておりますから、やはりいつか慎重な御検討の結果として踏み切っていただかなければいけない時期がくるのじゃないかと思います。そういう点、ひとつ申し上げておきたいわけであります。  社会党の漁業基本法案の中には、漁場利用の基本原則という第七条の規定を置いております。それによって公正な漁業生産の秩序を確保する措置の基本的な原則をここに掲げているわけであります。私どもは、昨年の漁業法の改正の際にも、沿岸漁業保護水域という規定を漁業法の中に入れるべきではないかという主張をし、そのような改正法案を実は社会党提出としていたしたのでありますが、残念ながら社会党案は敗れてしまっているわけであります。しかしいまこの沿振法の審議に際しまして考えますことは、漁場確保ないし拡大がなくして沿岸漁業の安定ということはあり得ないわけです。そのためには、同時に中小漁業の確実な転換先を見定めるということも必要になってまいりますし、そのためには、遠洋の大企業に若干の譲歩をしてもらうというようなことも同時に必要ではないかと考えます。ちょうど農地法によって零細な農民の土地までがはっきり守られているように、私どもは、漁業の基本的な法体系の中にそういうふうな保護水域というふうなものがはっきりと位置づけされなくてはならないというふうに考えるわけであります。沿岸漁業構造改善事業だとか、その他いろいろな沿岸漁業保護のための対策が講ぜられても、その大前提はやはり漁場確保の問題だと思うのです。この間も与党の議員の質問の中にも、沿岸漁民漁場確保の問題が強く主張されていたのを私もお聞きいたしていたわけでありますが、与党の議員諸君も賛成だとすれば、この沿岸漁業振興法案の中にも沿岸漁民のための保護水域を設けていくとか、あるいはまた少なくも漁場利用の基本原則というようなものをうたい込む、こういうようなことは決して無理ではない主張だと思うのでありますが、いかがですか。
  17. 庄野五一郎

    庄野政府委員 御指摘の点ごもっともでございますが、御質問になりました点等につきましては、漁場利用の秩序は漁業法によりましてこれをいたしております。先ほどから御説明いたしましたように、漁業種類に応じまして禁止区域を設定するとか、あるいは禁止期間を設定する、そういった点を具体的にいたしておりますし、またモ場の設定をいたしまして、そういうところにおきまする資源の保存措置を講ずる、それから積極的には漁礁とか、投石によりまする漁場の造成あるいは大型漁礁の造成、こういったことによりまして沿岸漁業に不可欠な漁場の造成等を積極的に行なう。これは沿岸漁業振興法によりまして、構造改善の一環として漁場造成事業をいたしておるわけでありますが、そういったことによりまして漁場の造成なり漁場秩序の維持ということをいたしているわけでありまして、特にそういう基本原則をうたわなくても漁業法沿岸漁業振興法によりまして効果が期待できる、こういうふうに考えております。
  18. 安井吉典

    安井委員 この問題ははっきりしたお答えが得られませんが、ひとつ問題点をはっきりと以上のように私は指摘をいたしておきたいと思うのであります。  なお漁場確保という問題につきましては、いわゆる安全操業の問題は、その地域によりましては非常に重大な問題となっているわけであります。たとえば韓国との間におきまして、あるいはまたソ連との間におきまして常に問題が絶えないで漁業経営を脅かしておりますことはまことに残念でありますが、そのうち根室海域の貝殻島周辺のコンブ漁に関する問題につきまして、現在モスクワで民間交渉が行なわれ、十数日の交渉の結果、実質的な妥結に至ったという報道を私ども聞きまして、このことだけは懸案の一つが解決点に向いたものとして私ども喜びにたえないわけであります。この間も角屋委員から質問がございましたので、私きょうは多くを繰り返さないつもりでございますが、この点につきまして二、三お尋ねをしておきたいと思います。きょうは外務省からもお見えでございますが、調印はいつごろになるお見込みですか。
  19. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 これは先方の漁業の主任者であるイシコフさんがいまモスクワにおられないために、大体これが帰るのを待って本日かあす行なわれるというふうに聞いております。
  20. 安井吉典

    安井委員 調印によって、この協定は、日本政府としては、ソ連政府と日本の大日本水産会との民間協定でありますが、扱いとしてはどういうことになるわけですか。
  21. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 政府としましては、ある方法でこの協定に対しては異議がないということをソ連側に通告することになっております。
  22. 安井吉典

    安井委員 この内容につきましては、たとえば出漁許可料の問題だとか、コンブ漁船の通路の設定の問題、出船規模の縮小が希望よりも縮小しておる問題だとか、問題はあると思いますが、ここでは触れないことにいたしまして、今後政府は出漁に対してこの協定に関連してどういうふうな措置をとろうというお考えでありますか。これは外務並びに農林両御当局にお尋ねしたいと思います。
  23. 庄野五一郎

    庄野政府委員 この北方水域におきまする安全操業につきましては、政府といたしましても年来この安全操業の保障につきまして正式に交渉をいたしたわけでございますが、なかなか円満な解決に至らないままに今日に及びましたところ、民間協定の段階におきまして、安全操業が貝殻島周辺のコンブ採取漁業につきましてこのたび調印の運びになった、こういうような段階でございます。政府といたしましては、この点につきましては異議がないということに相なるわけでございまして、水産庁といたしましては、やはり民間協定でございますが、大日本水産会の指導のもとにおきまして協定どおり現地の漁民が操業されることを期待し、またそういう秩序ある操業をなされるように注意はいたしていきたい、こういうように考えております。
  24. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 ただいま水産庁長官の言われたとおりでございます。
  25. 安井吉典

    安井委員 実際の出漁はいつごろからになるように政府はお考えになっておりますか。
  26. 庄野五一郎

    庄野政府委員 まだ最終的な調印になっておりませんが、本年の操業は六月十日から九月三十日まで、こういうことに相なっております。調印いたしますれば早急に大日本水産会から出漁する船舶あるいは漁業者に対しまして証明書を発給する、こういうようになりまして、証明書を発給いたしましたら、それをソ連に通知する。通知の上において出漁していく、こういうことに相なろうかと存じます。できるだけ事務促進をはかる、こういうふうに大日本水産会におきましても準備をいたしておりますので、十日過ぎには出漁できるように相なろうかと存じております。
  27. 安井吉典

    安井委員 今後の新しい問題として許可料が支払われるというふうなこともあるものですから、コンブ漁が一種の利権扱いにされるおそれがあるとか、あるいはまたせっかくの協定にもかかわらず操業のための秩序が乱されるとか、そういうような問題が起きる可能性があるわけでありますし、あるいはまた現地ではだいぶコンブの価格が下がっておるというふうな話も聞くわけでございますが、これらの問題をもからめまして、これからあと政府としておとりになる御措置についてのお考えをひとつ伺っておきます。
  28. 庄野五一郎

    庄野政府委員 協定によりますと、貝殻島周辺の協定されました区域に出漁するにつきましては、一舩当たり一定の金額をソ連に大水を通じて支払う、こういうことに相なっておりますが、この区域に出漁することが利権のようになって、これが扱われるということは、これは警戒いたさなくちゃならぬと存じます。われわれといたしましては、それが利権化してあるいは区域外の漁業者にこれが移る、そういうことがないように指導したい、こういうふうに考えております。
  29. 安井吉典

    安井委員 監視船の配置だとか、そういうふうなことはどうですか。
  30. 庄野五一郎

    庄野政府委員 貝殻島周辺の協定区域は一応ソ連の取り締まりということに相なっておりますが、大日本水産会の指難船も入り得るように細目の話し合いが済んでいる、こういうふうに聞いておりますので、大日本水産会の指導船によって十分目主的な指導を行なって、ソ連の監視船等のやっかいにならないようにいたしたいと考えております。
  31. 安井吉典

    安井委員 外務省のほうに伺いたいのですが、同じソ連関係の問題にいたしましても、樺太国境近くの北海道北部海域のカニかごの漁船拿捕事件だとか、そういったような事件が従来ずっとあるわけであります。こういったような問題も、今回は民間代表による交渉ということで成功したわけでありますが、その他の起こり得る問題に対しましても安全操業の具体的な話し合いをもっと進めるべきだと思うのでありますが、その点どうお考えになっておりますか。
  32. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 この点は御承知のごとく政府は昭和三十二年以来交渉を続けてまいっておりまして、今回はそのごく一部について幸いにして妥結に近づいておる、こういうことであります。政府としては言うまでもなく、今後とも安全操業の問題につきましてはあらゆる機会を利用してソ連側と話を続けていきたい、かように考えております。
  33. 安井吉典

    安井委員 どうもソ連は日本の外務省よりも民間のほうが評判がいいようですね。外務省が行きますとなかなか話がきまりませんが、民間代表によりますととにかく話がきまってくる。特にこのコンブ漁の安全操業の問題も、社会党の使節団が去年の八月十四日にイシコフ議長と会って、このコンブ漁船の安全操業確保をするために提案をしているわけでありますが、そのときの提案も、いま大日本水産会の高碕案してと提案されたものとほとんど内容が同じなわけであります。当時その提案に対してイシコフ議長らは、漁業労働者の生活実態を初めて知った、われわれは政治的、人道的立場からこの問題を解決する道をさがしたい、今後日ソ両国で友好裏に継続的討議を重ね、政府間協定が結べるようにともに努力しよう、こういうふうな話し合いがあったという経過も、表には出ませんけれども、実はあったわけであります。ですから私は残されたこの安全操業の問題も、あくまでもこれは政府間協定という方向で進めるべきがたてまえでありますけれども、その前段的な行き方として今回のような行き方も一つの考え方ではないか、そういうふうに思うわけでありますが、どうでしょう。いままでと同じような考え方でいかれるのか、あるいはまたこれからの安全操業の問題の解決のために何か新しい方向を切り開こうとされるのか、その点ひとつ伺います。
  34. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 安全操業の問題は、実は昨年の五月日ソ間の漁業交渉の際に、高碕先生並びに当時の農林大臣河野大臣が話をされたということにごく最近は端を発しておりまして、その話がずっと生きてきているわけでございます。これは非常にけっこうなことで、私は今回ソ連が日本の要求に聴従した、そして民間協定の形で運ぶことができた、たいへんけっこうなことだと思っております。しかしながら従来の安全操業の問題は、先ほど申しましたように、われわれといたしましてはやはりあらゆる機会を利用してソ連と話をする、こういう態度を続けていくべきであると考えております。交渉のことでございますから、先方の出方その他を見合わしていかなければなりませんので、いまからこうするんだああするんだということは言えませんけれども、それは情勢全体を見回して、一番双方に納得できる基礎でいきたい、こういう方針は今後といえども変わりはないと考えております。
  35. 安井吉典

    安井委員 たいへんいいきっかけがいまできている際でございますので、その点これから沿岸漁民あるいは中小漁民の安全操業を確立する方向を積極的にお進めをいただくということでなくてはならないと私は思うわけであります。その点ひとつ要望申し上げておきます。  現在ソ連に抑留されている人はどれくらいの数でございますか。
  36. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 漁業関係抑留者は終戦以来百十九名くらいだと記憶しております。
  37. 安井吉典

    安井委員 現在はそんなにいないのでしょう。
  38. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 終戦以来コンブに関連して抑留されておる人数は、これは記憶ですけれども、大体七十名前後じゃないかと思います。
  39. 安井吉典

    安井委員 私は、だいぶ帰っておる人がありますから、そうはいないと思いますが……。
  40. 庄野五一郎

    庄野政府委員 ただいまソ連関係で拿捕抑留されておりまする漁民の数でございますが、本年の五月末現在におきましてなお未帰還の方が百十八名でございます。船で三百二十六隻が未帰還、こういうふうになっております。従来までの拿捕されました漁船は一千五十二隻でございまして、抑留漁民が八千八百二十一名というふうになっておりますが、未帰還の者が百十八名、こういうことに相なっております。
  41. 安井吉典

    安井委員 早期釈放に関しましてどういう努力をされているわけですか。
  42. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 これは事件が起こるつど返還を要求いたしております。事実その結果だんだん帰ってきていることも御承知のとおりでございます。われわれといたしましてはこういうことができた機会にまたひとつ抑留漁民の返還を交渉したいという意図を持っております。
  43. 安井吉典

    安井委員 ここで一つ私伺っておきたいのであります。この抑留の問題につきましては今度の交渉の段階でもいろいろお話が進むということも聞いているわけでありますが、先ほどの安全操業の問題と同様に、もっと積極的な態度でお進みをいただかなくてはならぬのではないかと私は思うのです。現在抑留されている人に対する政府の援護措置でありますが、大体におきまして韓国に抑留されております方々と同じように見舞い金の交付が行なわれているようであります。ただ、こちらの留守家族から先方へ慰問小包等を送る場合に、それの受け取りが拒否されたり、返送されたりする実情があるようであります。これに対しまして政府は一体どういうふうにお考えなんですか。
  44. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 御指摘の点につきましてはソ連と交渉いたしまして、どうしてそういうことが起こるかということを聞いております。で、まだこの返事がたしか着いておりません。しかしながらこれはすぐ取り上げて、何がゆえに届かぬか、先方の説明は、いや古いものがあったからであるとかいろいろなことを言っておりますけれども、われわれとしては古ければ古いものじゃなく、新しいものを送っていいのだから、ひとつ届くようにしてくれということは、先方に要求してあるのでございます。
  45. 安井吉典

    安井委員 聞くところによりますと、たとえば下着だとか作業衣、便せん、たばこ、郵便切手、こういったようなものはそれぞれ手持ち現金がないと買えないようでありますし、さらにまたそれらの差し入れ品に対しましては相当多額の関税ですかがかかる、こういうようなことで、食事はもちろん当然官給があるわけでありますけれども、日用品等にお金が要る上に、相当多額の税まで払って受け取るというわけにはいかないということで、せっかく現物が目の前まで来ても受け取れずにそれを返している、こういうような実情があると聞くのであります。韓国の抑留漁民に対しましては、差し入れ品購入費等の補助金が政府から出されているようでありますが、ソ連抑留者の留守家族に対してはそれが出ていないようです。前段申し上げましたようなそういう事態と、差し入れ品購入費等の補助、こういうような二つの問題をにらみ合わせまして、ソ連抑留者に対しましても同様な措置を講ずることによって、必ずその現物が向こうの手に入るような措置をやはりいま講ずべきではないか、そう思うのですが、いかがですか。
  46. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 ただいま御指摘の問題はよくわかっておりまして、われわれのほうとしましては、それは抑留者は金を払うことができないのだから、こちらから納める方法があるんだということで交渉しているわけですけれども、先方から返事がない、こういう実情でございます。このためには二、三回ソ連側と文書を交換いたしまして返事がない、こういう実情でございます。
  47. 安井吉典

    安井委員 こちらで十分に支払ってあげられるというふうな状態になったら、さらにまた抑留留守家族は決して生活は楽じゃないのですから、いま韓国に抑留されている留守家族に対すると同様な措置が——何か閣議決定によりますと、抑留者一人について四月、八月及び十二月にそれぞれ三万二千円を差し入れ品講入費等の補助として交付する、こういうふうな措置が韓国関係には行なわれているわけでありますが、同様にソ連抑留者の関係についても行なう、こういうふうになさるおつもりだと理解して差しつかえありませんか。
  48. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 われわれは目下ソ連と交渉いたしておりまして、日本側では抑留されている人は金を払って受け取れないことがわかっておるのだから、日本側から前払いをしてもいいんだ。送るものは全部届けてくれ。古いものがあったからとか、いろいろなことでこれは検査しなければならぬ、こういうことを言わぬで届けてくれ。もしそういう懸念があるのだったら、そういう心配のないようなものを送ってもいいんだ、こういうことで交渉いたしておりますけれども、まだソ連側から返事がないという実情でございます。われわれとしましては、交渉するものから見れば、まずソ連側の返答をもらってからしたい。ソ連ともっぱら交渉して返答を得る段階でございます。
  49. 安井吉典

    安井委員 そういたしますと、その差し入れ品購入費補助の問題は、そのソ連の返事いかんで措置する、そういうことですか。
  50. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 われわれは現在もっぱらソ連との交渉に集中いたしておりまして、何とか先方から、われわれの送るものは届くように、そういう約束を取りつけたい、そう考えておるわけであります。
  51. 安井吉典

    安井委員 からめた質問ではいけないかもしれませんが、それじゃ単独に切り離して、ソ連抑留者家族には差し入れ品等の購入費補助をなさるおつもりはありませんか。さっきの向こうの返事の問題と切り離して、韓国はされて、ソ連関係はなぜしないのですか。
  52. 庄野五一郎

    庄野政府委員 韓国関係につきましては、御承知のように昭和三十二年の閣議決定、これは三十四年に一部改正いたしました閣議決定になっておりますが、それによりまして見舞い金とそれから差し入れ品の購入費等につきましての助成をいたしております。ソ連関係は、その後昭和三十四年に拿捕が非常に多くなりましたときに、やはり同じ閣議決定いたしまして、見舞い金を支出することを決定いたした次第でございますが、当時の事情から申しますと、抑留者の抑留状況等が韓国に比べましてソ連のほうが良好である、韓国は抑留者の給与等非常に悪いというようなこともありまして、韓国については見舞い金並びに差し入れ品の購入費等につきましても助成するという措置が講ぜられたわけでありますが、ソ連につきましてはその必要もないということで、差し入れ品の購入費補助はなされなかった次第でございます。要は、せっかく家族が差し入れ品等を送りました場合におきまして、ソ連側の事情によってこれが抑留者の手に届かない、いろいろ経費がかさむ、そういった問題があるわけでありまして、送ったものが着実に届くということが先決問題ではなかろうか、こういうふうにわれわれは考えて、そちらのほうの交渉に外務省を通じて集中しておるわけでございますが、この韓国側とソ連側の差異がなぜあるかということになりますと、さっき言いましたような実情があったかと存じます。こういう問題につきましては、今後ともよく検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  53. 安井吉典

    安井委員 韓国側とそれからソ連側との待遇の差異の問題でありますが、これは具体的に見比べてみなければわからないと思うわけであります。私どものほうも、ソ連抑留者の食糧事情についての資料もいまここにございますが、きょうはそこまで具体的には触れませんけれども、決して政府がお考えになっておられるような事情では私はないように思うし、かつまた生活の形態というものが、日本人の日常の形態とソ連ラーゲルの中における形とはまるきり違うのですから、そういうようなことも考慮すれば、韓国の場合だけに支給されて、ソ連の場合には支給しなくてもいいという理屈は出ないんじゃないかと私は思うのです。いまのお話の中では、さらに検討するということでございますので、これ以上私は申し上げませんけれども、やはり見舞い金が同様に支給になっておれば、これまた差し入れ品の購入費等の問題についてもやはり同様の措置が必要であり、その前提として差し入れ品を送ろうとしたって向こうで受け取ってくれなければこれはしようがないじゃないか、こういうような問題になるかと思うのでありますが、その問題も、民間交渉の際でもございますし、いまの段階でももっと向こうとの話し合いが当然進めらるべきだということ、さらにまた政府は当然のこととして、一日も早くこれは措置すべきだと思うのです。いま新たに抑留の問題が始まったわけじゃないのです、ずっと前からの問題なわけですから、それがいまだに解決がつかないということは、私はどうしてもふに落ちないのです。ぜひ根本的な解決を急いでいただきたい、そのことをひとつ申し上げておきます。  次に漁業災害補償の問題につきまして、若干お尋ねをいたしたいと思います。  今度の政府法案の中には、漁業災害をどう補償していくかということに対するかまえが、これまたほとんどないにひとしいわけであります。第三条の国の施策のところには、第一項第五号の規定の中に、大まかな規定はないわけでありませんけれども、たとえば、農業基本法がはっきりした単独の規定を持っておるように、あるいはまた社会党の法案が、漁業等の災害復旧、漁船等の災害補償制度の整備、漁業共済制度の確立、こういうような三木の柱、それに合わせて漁船の遭難防止、こういうふうな明確な規定を持っているのに比べますと、漁業災害に対してどう対処するかという政府としてのかまえが、きわめて不明確だと言うことができると思います。現行の制度はずいぶん問題が多いと思うのでありますが、いま行なわれている制度につきまして、政府は、これは改善が必要だとか、こうしなくてはいかぬとか、そういうようにお考えになっている点は、どういう点ですか。
  54. 庄野五一郎

    庄野政府委員 沿岸漁業等振興法案の第三条に、国の施策の基本的な方針といたしまして、その五号に、「災害による損失の合理的な補てん等によって、経営の安定を図ること。」こういうふうに総括的にうたってあるわけでございまして、この基本的な国の方向に沿いまして、われわれは漁業災害に対処する方法といたしまして、現実にやっているものを、今後これをどういう方向に拡充していくか、こういう問題につきまして、お答え申し上げたいと思います。  現段階におきましては、御承知のように漁業経営の基盤をなしております漁船災害につきましては、漁船損害補償法によりまして、この漁船災害によります保険を実施いたしております。すでに加入実績も相当伸長いたしておりまして、これによって漁船の災害によります、棄損、滅失等によります再生産資金、再建造資金等の措置確保されておるわけでございまして、さらにこれは加入の促進あるいは保険料率の適正化、そういった問題等につきまして今後とも拡充なり改善をはかっていきたい、こういうふうに考えております。  それから一般の施設の問題でございますが、漁港施設等あるいは海岸の保全等につきましては、当委員会でも御審議を願いました漁港法によりまして、積極的にこの漁港の改修なり修築をいたすわけでございますが、これが災害を受けました場合におきましては、公共土木国庫負担法によりましてこの災害復旧を実施する、こういうふうにいたしております。漁港災害並びに海岸の災害、あるいは海岸保全、こういった措置によりまして、そういった損害の復旧をはかっていく、こういうふうにいたしております。  それから災害がありまして、漁業者として、あるいは漁網、あるいは共同施設、そういった面の災害によりますものにつきましては、御承知のように天災融資法によります災害融資というものを融資いたしまして、再生産の経営資金確保等をいたしておる次第でございます。  なお、災害の激甚なる場合等におきましては、これに対する漁船並びに共同施設等に補助をいたす、こういう道を開いているわけでありまして、この点も御承知のとおりだろうと思います。  なお漁獲の問題につきましては、ただいま漁獲共済を試験実施中でございますが、これは三十八年まで試験実施をいたしまして、今後これを制度化するという段階にきておるわけでございます。漁業共済につきましては、御承知のように漁獲共済と漁網、漁具の共済と両方あるわけでございますが、これを合わせて制度化するという、本格的実施のための制度化をはかるということで、ただいま制度化のための研究会を学識経験者をもって組織いたしまして、すでに数回会合を開いております。来年の予算編成並びに法案提出に間に合うように、この七、八月までには結論を得るようにという目標のもとに答申をいただきたいということで、検討していただいておるわけでございます。  そういった漁船の損害に対しまする保険、それから天災に対しまする融資の措置、また漁港なり海岸施設に対しまする災害復旧補助、あるいは漁獲、漁具、漁網をひっくるめた漁業共済の本格的実施のための制度化、そういった道を開きまして、災害による損失の合理的補てんによりまして経営安定に資してまいりたい、こういうような考えであります。
  55. 安井吉典

    安井委員 漁場や漁港あるいは共同施設等の災害復旧に関する問題、あるいはまた災害についての漁船、漁具の損失補てん、こういった問題について、曲がりなりにも現在制度がないわけではありませんけれども、それらにきわめて問題が多いことは、いまの長官の御説明の裏にも、私は隠されておるのではないかというふうに思うわけでありますが、とりわけ漁業共済といいますか、そういうような問題については、全く手がつけられていないというのが実際の状態だと思います。研究会のテストがことし終わって、新しい段階としてどういうふうな形になるかわかりませんが、とにかくつくろうという意欲をお持ちだということは私はわかるのでありますが、この際根本的な漁業災等補償というふうな問題に政府は取り組んでいただかなければならないところにいまきているのではないかと思うわけであります。それだけに私は、この振興法案の中にそういったような考え方を盛り込んだ規定がやはり一本ほしかった、そういうふうな感じを受けるわけです。一例をあげますと、これはことし北海道の稚内市の付近で、流氷によってコンブ漁が全くやられたというふうな問題があります。ことしは特に流氷が多くて、コンブは豊漁年であって、非常に大きな生産を期待していたのにかかわらず、流氷で全くやられてしまって、当初予想しておりました生産の八割が流氷のためにやられてしまった。その被害額は三億五千四百万円くらいにのぼる、こういうようなことで、関係漁民は生活の資を絶たれて全くどうにもならないというふうな事態が起きております。こういうような問題が現実にあるわけでありますが、対策はどうなんですか。
  56. 庄野五一郎

    庄野政府委員 北海道稚内地区におきます御指摘のようなコンブの流氷等によります被害につきましては、先般安井委員からも御指摘がありまして、われわれただいま道庁を通じて実情調査中でございます。まだ詳しい報告が参っておりませんので、どういう程度の深刻な被害が起こっているかという実情の把握はいたしておりません。これはいずれ近々に道庁から実情の報告があろうかと存じます。それに基づきましてよく対策を講じてまいりたい、こういうふうに考えております。
  57. 安井吉典

    安井委員 この問題につきましては、生業資金確保だとかあるいはまた漁業協同組合に対する助成だとか、こういったような措置が積極的にとられなくてはならないのではないかと私は思うのでありますが、その点は重ねてお願いをしておくわけであります。しかし、こらいったような半旗は、私はもう全国至るところで、漁村に起きていると思うのです。農村の中におけるいろんな問題は、きょうの最初にも陳情がございましたけれども、非常に大きく取り上げられて、問題の解決のための努力がなされていく、あるいはまた曲がりなりにも災害補償制度もあると思います。しかしながら、漁業の問題については、ちょっとくらいの災害などは全く問題にされない、しかしその地域の住民にとってはきわめて深刻な問題である、こういうような事態が、私どもここで問題に取り上げるものの数は少なくても、全体的には非常に大きくあるのではないか、こういうような点からいって、漁業災害補償の問題に対する政府の取り組み方が非常に緩慢で、それだけに私は今度の法律案の中にも筋金を入れる、そういうような規定をぜひつくるべきだ、かように考えているわけであります。その点、これまた検討の課題として私申し上げておく次第でございます。  次には、水産物の流通の問題あるいは価格の問題についてちょっと触れておきたいと思います。この間の農林大臣に対するお尋ねのときにも私ちょっと申し上げましたけれども、農業基本法の中には、農民の所得を確保しというような明確な規定が幾つもあるわけでありますが、今度の沿振法の中には、漁民の所得についての——所得ということばが大体ないのですね。だから、「他産業従事者と均衡する生活を営む」というふうな言い方をしておっても、じゃ一体何でその生活の基礎をつくろうとするのか、私はやはり所得でないかと思うのです。ことさらに所得いうことばを落としている理由が一体どこにあるのか。
  58. 庄野五一郎

    庄野政府委員 沿岸漁業等振興法案第一条の目的のところにうたってございますように「沿岸漁業等の生産性の向上、その従事者の福祉の増進その他沿岸漁業等の近代化と合理化に関し必要な施策を講ずることにより、その発展を促進し、あわせて、沿岸漁業等の従事者が他産業従事者と均衡する生活を営むことを期することができることを目途として、その地位の向上を図ることを目的とする。」こういうのでありまして、こういった生産性を向上しあるいは従事者の福祉を増進するために漁業の近代化、合理化をはかり、そして、終局の目的として沿岸漁家あるいは中小漁業従事者の地位の向上をはかる、こういうことであります。地位の向上をはかるためには当然所得の増加をはかることが必要であるわけでありまして、われわれ所得の向上ということは当然なことと考えているわけでありまして、特に所得ということばがなくても所得の増大をはかるということは当然前提になっておるのでございます。ことばがないからといって所得の増大をはからない、こういう趣旨でございません。所得の増大をはからなければ地位の向上等ははかれない、こういうようにわれわれは考えております。
  59. 安井吉典

    安井委員 そういたしますと、いまの長官の御説明からすれば、農業基本法の場合には「農業従事者が所得を増大して他産業従事者と均衡する生活を営むことを期することができることを目途として、」と書いてあります。その「所得を増大して」ということばだけが沿岸漁業振興法の中にないわけです。では、今の御説明からすれば、入れてもよいわけですね。挿入してもしなくても同じだとすれば、挿入しておいたほうがはっきりすると思うのですが、いかがですか。
  60. 庄野五一郎

    庄野政府委員 所得の増大をはかることはわれわれ当然だと考えているわけでございます。所得を増大することのみならず、他産業従事者と均衡する生活を営むためには所得を増大することが中心的な手段であることはもちろんでございますが、そのほか、たとえば生活環境の改善をはかる、たとえば道路とか下水道とか上水道、そういった生活環境の増大をはかっていく、こういった社会資本の充実をはかることもやはり必要でございまして、そういう面からくる福祉の増大ということもわれわれは当然考えているわけでございまして、所得の増大のみならず、その他諸般の施策を講ずることによりまして生活の向上をはかる、こういうような意味でございます。
  61. 安井吉典

    安井委員 長官の言われたその他諸般の措置を講ずるということも農業基本法にははっきり書いてあるのです。ただ違うところは、「所得を増大して」ということばだけが沿振法にない。だから、所得の増大ということだけにウエートを置いたお考えがあるならば、ここに入れても入れなくても同じことなら、入れたほうがむしろよいではないか、こういうふうに私は申し上げているわけです。  そこで、もう時間がだいぶ過ぎて、ほかの質問者もおられますので先を急ぎますが、所得の増大のためには流通改称あるいは価格政策の問題、これが一番大事であるにもかかわらず、これまた扱いがきわめておろそかにされているわけであります。社会党案は、価格の支持のために一条を、流通の合理化のために二条を、その他需要の確保や輸出振興、輸入制限、これらいろいろな問題について考え方を示しているわけでありますが、所得を確保するとか他産業との均衡をとるとかいっても、基本的にはとったものがどういう流通機構に乗っていくか、それによって生産費や所得がどう補償されるか、そういうようなかまえがなくては、第一条の文句は全くから念仏になってしまうと私は思うのです。とりわけ所得という問題をとってあるだけに、政府案の中でいま言いました流通やあるいは価格の問題に対するしっかりした規定を欠いているということが非常に気になるわけです。なぜいま言いましたような輸出入の問題を含めた流通の問題、あるいはまた価格支持の問題についての規定を、政府案では欠いているのが、何か意識的に欠いているような印象を受けるのですが、その点いかがですか。
  62. 庄野五一郎

    庄野政府委員 国の施策の基本的方向といたしまして、第三条に第一号から八号まで例示的に列挙してございます。これは各項目を総合的に施策することによりまして、第一条の目的を達成する、こういう考えで第三条の国の施策の基本的方向が示してあるわけでございます。その第四号に御指摘のような点は十分盛り込んであるわけでございまして、われわれは第四号によりまして国の基本的施策の方向が明確に示される、こういうふうに考えておるわけでございます。
  63. 安井吉典

    安井委員 輸出入の問題はどこに触れられていますか。
  64. 庄野五一郎

    庄野政府委員 輸出入の問題につきましては、第四号によって、「水産物の流通の合理化、加工及び需要の増進並びに価格の安定を図る」こういうことによりまして、輸出入の問題も対処してまいりたい、こういうふうに考えております。特にわが国の水産業につきましては、国内消費に大きなウエートがございますが、一方水産物の輸出というものも、国民経済上非常に大きなウエートを持っておるわけでございます。水産物の一割をこすものが輸出されておりますし、またわが国の輸出総額の中におきまして、水産物の占めるシェアが六%をこす、こういった程度で、水産物の輸出というものは相当大きなウエートを持っておるわけでございます。それに引きかえまして、この価格安定なり取引の改善をやりますについては、国内消費の拡大ということとあわせて、海外に対する水産物輸出の確保をはかっていくということが、大きな今後の施策の方向だと存じます。輸出の拡大をはかりますにつきましては、やはり国内価格の安定といったようなことも考えなければなりませんし、また共販体制を持って——不必要な国内的な競争等によりまして価格の低落を来たすというようなことのないように、水産物の輸出に関しまする振興法によりまして、輸出組合をつくりまた共販会社をつくりまして、そういった点の輸出の振興をはかっておるわけでございます。そういう面で輸出が非常に大きなウエートを占めておりますので、この輸入の問題につきましても自由化の問題と対処して、われわれは十分国内の、特に沿岸漁業等への影響等は慎重に考えながら、この自由化の問題に対処しなければならぬかと存じますが、また輸入を制限するといったような——形式的にことばを変えますと、輸出いたしまする相手方との関係もありまして、輸出の伸長上またいろいろ問題も起ころうかと存ずるわけでございまして、特に輸入の問題についてはそういった国内的な受け入れ態勢その他を整備しながら、相手国との関係におきまして、輸出を伸ばしながらまた輸入についても国内の沿岸漁業の振興との関連におきましてそういう支障にならないように措置を講じながら対処する、こういうような考えでございまして、特に輸入についてはこういう事情もあってここにはうたってありませんが、水産物の流通の合理化ということでわれわれはそういう問題に対処する、こういう考えでございます。
  65. 安井吉典

    安井委員 いまこの第三条第一項第四号の規定の中に何もかもみんな入っているんだ、流通から価格から輸出入の問題までみんな入っているんだというような御説明でございますが、これはなるほどとりようによってはそうなると思います。そういうような解釈からすれば、第一条の目的を読むと「他産業従事者と均衡する生活を営むことを期する」とあって、みんなこれに入っていますと説明すればすべてに通ずるわけです。一カ条あればみんな済みますよ、ところが農業基本法の中には一応きっちりした規定をお持ちだし、しかもたとえば輸出の問題なんか、農業よりもむしろ水産物の輸出のほうが大きいわけです。そういうことからいっても、やはり私は沿振法の中にはっきりしたそういう規定を設けられるべきだと思うのです。だから現実に漁民の方々の中から、価格対策や輸出入についての問題が政府案には何も触れられてないので、きわめて不安だから修正してくれというような要望さえ、現に出てきているわけです。いま言ったそれくらいの対策では輸出入の問題に対処するためにも不十分だし、ことに私はいまのいわゆる大漁貧乏といったような問題に対しての価格政策は全く不備だと思います。だから社会党は特別に水産物価格安定法案というふうな形で、きめのこまかい法律案を別に準備しているということからも知れますように、やはり価格対策に対してのかまえをこの沿振法案をおつくりになる際にもっと強烈な意欲でお考えになるべきではなかったかと思うわけでありますが、そういったような問題もみんなこの一条項の中に入っているんだという御説明でお逃げになろうとするなら、私は非常に残念なことだと思うのです。もっと真剣に、少なくもそこまでお考えなら、やはり一条を別に起こすくらいの値打ちがあるのじゃないですか。せっかくそこまでお考えになっております農林省のために非常に残念に思うわけです。  時間が過ぎますので、あと一、二点伺って終わりたいと思いますが、沿岸漁業構造改善事業の問題であります。これもこの間の質問の中でほかの方から若干触れられていたわけでありますが、第八条の規定は、全体的に基本法的なスタイルで書かれている中で、この一カ条だけは事業法的な色彩で異色の規定だというふうな感じがあるわけです。私は、沿岸漁業の構造改善事業というふうな問題をここにお出しになるなら、むしろこれに対する基本的なかまえ、目標といったようなものがここにはっきり打ち出さるべきではなかったかと思うのです。ところがここにお書きになっているのは、沿岸漁業構造改善事業の進め方という問題をここにお出しになっている。肝心の目標は何も書いてなくて、やり方を書いてある。しかもそのやり方の内容は、きわめて抽象的な書かれ方しかしていない。ここに私は問題があると思うのです。この点はどうでしょう。沿岸漁業構造改善事業によって漁村は一体どうなるのかというそのあるべき姿、あるべき目標というものを、これが基本法的な性格だとすればやはりここにお示しになるのが正しかったのではないかと思うわけです。その点いかがですか。
  66. 庄野五一郎

    庄野政府委員 この沿岸漁業振興法は、第一条から第七条までが基本法的な性格でございます。それで特にこの沿岸漁業振興法沿岸漁業と中小漁業に焦点を当てまして、その沿岸漁業並びに中小漁業の振興をはかるということが第一条の目的でございます。そしてこういう目的を待つ施策を国としてはこういう方向でやるという基本的施策の方向が第三条にうたってあるわけでございます。そういう意味におきまして第一条、第三条、それから第七条というのが基本法的な性格を持ったわけでございます、それで先ほど申しましたように、水産業におきまして最も振興を必要とする沿岸漁業と中小漁業といったものに焦点を当てまして、それに対しまする国の基本的方向に沿って具体的な施策はどうかというのが、八条で沿岸漁業に対しまする構造改善の事業のやり方を示したわけでございますし、第九条で中小漁業の振興方策を具体的に掲げたわけでございます。そういう意味におきまして、基本的な性格、第八条以下の事業法的な性格、両方の性格を持った法律だとわれわれは考えておるわけでございます。第八条はもちろん、その沿岸漁業等の構造改善をやりまする目標は、この法の第一条に書いてございますように、沿岸漁業生産性の向上なりあるいは福祉の増進のための近代化あるいは合理化をはかって、この沿岸漁業の地位の向上をはかる、こういうのが目標でございまして、その目標に沿って沿岸漁業構造改善事業を行なうわけでございます。この構造改善のやり方については、県を中心にいたしまして全国四十二海区に分けまして調査をいたし、その上におきまして計画を樹立いたしまして、その計画を農林大臣が承認し、その承認した計画に基づいて助成あるいは融資等をやって、十年間にこういった第一次の目標達成に進む、こういうふうに考えておるわけでございます。
  67. 安井吉典

    安井委員 それでは、国は沿岸漁業構造改善事業に対してどういう責任をおとりになるわけですか。国の責任はどういうことなのですか。
  68. 庄野五一郎

    庄野政府委員 国といたしましては、調査の段階におきまして、県を中心といたしまする調査を二年間やるわけでございますが、その調査をいたしましたところによりまして漁業者等の意見をよく聞いて計画を立てる。そういう計画につきまして、国といたしましては指導なり助言をする。そうして、できました計画によりまして、実施段階に移るわけでありますが、実施段階に移りましたところ、計画に沿って、国といたしましては助成の補助をやる。こういったことで、補助を通じまして監督なり指導をいたす、こういうふうに考えております。
  69. 安井吉典

    安井委員 私は、そういうかまえで、ここに沿岸漁業の構造改善事業というふうなことでお書きになったのでは、あまりにも退嬰的といいますか、積極的に国がこの問題に対してどう対処するかということについて関心を持っております漁民に失望を与えるだけではないかと思うわけです。やはり国がもっと責任を持って、前面に出て、自分の責任において沿岸漁業の構造改善事業を引きずっていくのだ、この事業を引きずっていくのだ、こういうようなかまえがなくてはならないと私は思うわけです。そういう点、きわめて遺憾に思います。なお、この沿岸漁業構造改善事業は、これだけで、あとは要綱だけでおやりになるというのは私はどうしてもふに落ちないわけです。それによって法制は別な沿岸漁業構造改善事業法というふうな法制が必要ではないか、あるいはまたこれだけでおやりになるなら、これに伴う政令や省令や、そういうようなもののはっきりした喪づけでこの仕事をなさるのでなくてはならないのではないか、こういうふうに思うわけです。いま要綱だけでおやりになっているわけでありますが、十年計画でおやりになる、あるいは平均三億くらいのワクでやるとか、そういうようなことで指導はなさっておられるわけでありますけれども、しかしそれは単なる要綱だけであって、政府がかわればどうなるかわからない、こういうような不安感もあるわけです。あるいはまた、このような法律に基づかない事業を進めることによって、地方公共団体を政府が動かすことは、地方自治法の違反にもなるのではないか、こういうような見解もあるわけでありますし、やはりこの問題についてはっきりした法制措置をもっと講ずべきではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  70. 庄野五一郎

    庄野政府委員 御指摘のように、沿岸漁業の構造改善事業は、一昨年から地域を指定し、昨年から事業を開始して進めておるわけでございますが、実は沿岸漁業等振興法案は、四十国会に出しましてその成立を期しておったわけでございますが、審議が今日まで及んでおるわけでございます。われわれといたしましては、沿岸漁業等振興法案が成立いたしますれば、これによって法的基礎が与えられるわけでございまして、この法的基礎に基づきまして、沿岸漁業等の振興、構造改善事業を進めるということでございます。この法案によりまして行なうわけでございまして、その他の法律は不必要かと存じております。
  71. 安井吉典

    安井委員 そういたしますと、これに基づく政令とか省令はほかにおつくりにならないとすれば、私は、政令とか省令とか、そういう具体的な実施措置というものが必要だと思いますが、いかがですか。
  72. 庄野五一郎

    庄野政府委員 実施につきましては、特に法律あるいは政令等は、いまのところは必要はない、不必要だと考えております。補助等の要綱等で十分こういう事業は実施できる、こういうふうにわれわれ考えておるわけであります。
  73. 安井吉典

    安井委員 ですから、私が先ほど来申し上げておるように、政府のおやりになっておりますこの構造改善事業に対して、実施する都道府県にしても、あるいは市町村や漁業団体、一番末端の漁民等において、常に不安感が消えないわけです。はっきりした法律的な根拠がないものですから、そういうことになるわけです。ただ唐突に沿岸漁業等振興法案の中にこういうような規定が一つできたって、一体これが三億円とどう結びつくのか、十カ年計画とどう結びつくのか、現実におやりになるものとのつながりがないと思うのです。だから私は、はっきりした姿で、特別な法律をもって政、省令をはっきりとつくり上げることによってやるべきだという考え方を持っておりますが、ただこれだけでおやりになるとしても、やはりはっきりした基礎をおつくりになるべきだというように考えるわけであります。これは水かけ論になってしまっておるようでございますし、あとまだ質問者が続いておりますので、なお資金の問題や水質汚濁やほかの問題やたくさん問題がございますけれども、これはさらに別の機会にお尋ねをすることにいたしまして、一応この際保留いたしまして、これできょうのところは終わりたいと思うのですが、この法律案は内容的にきわめて不備で、当初この法律案に対して、漁業基本法ができて漁業の大きな発展に寄与することになるのだというふうな期待があったのを全く裏切られたような形でありますことをきわめて遺憾に思うわけであります。士農工商というのがあって、国会の大会議室の上のほうにも彫刻がありますよ。さむらいの剣と農の稲と商人のマーキュリーのあれですか、それからハンマーなんかかいたのが四つあるわけですが、そのいわゆる四民の中に漁民は入らないのではないか。四つの民の中に漁民は入らない、そういうふうなひがみさえ日本の漁民は持っておるのではないかと思います。やはり農業は、農業基本法が1私どもはきわめて内容に同調できない思いでおるわけでありますが、一応はあれだけのかまえを示しておきながら、漁業にはさらに後退した対策しか講じ得ないという、そういうことに対する不満といいますか、そういうものをどうしても消し去ることができないような感じであります。一応これで終わります。
  74. 長谷川四郎

  75. 松井誠

    松井(誠)委員 沿岸漁業等振興法案につきましてお尋ねをいたしたいと思います。  最初に、この法律案のスタイルといいますか、そのことについてちょっとお伺いをいたしたいと思います。私、実はいままでの質問者の方々の質問を全部お聞きをしたわけではございませんので、あるいは重複するところがあるかもしれませんけれども、ひとつ御了承をいただきたいと思います。水準庁の出しましたこのパンフレットによりますと、言ってみれば、この法律案漁業基本法ともいうべきものだといううたい文句がございますけれども、もしほんとうに漁業基本法というかまえでやられておったのであるとすれば、当然のことでありますけれども、大資本漁業というものをこの中に含めなければ首尾一貫しなかったのではないか。しかしこの法律案は大資本漁業については一切手を触れていないわけであります。その点を最初にお伺いをいたします。
  76. 庄野五一郎

    庄野政府委員 水産業には、御指摘のように大資本によりまする漁業と、中小漁業による漁業、それから沿岸漁業の零細漁家を中核にいたしまする漁業と三形態ございます。なお操業区域等につきましてもいろいろなパターンがあるわけでございます。われわれといたしまして水産業の振興をはかりますにつきましては、その経営体の大部分を占めまする沿岸漁家並びに中小漁業の経営体というものの現状なり、あるいはその経営の不安定要因を非常に含んでいる、そういった面から焦点をしぼりまして、沿岸漁業振興法におきましてその国の基本的な振興対策の方向を示す、それによりまして沿岸漁業並びに中小漁業の具体的な振興方策を規定する、こういった考え方沿岸漁業と中小漁業につきましてのこの振興方策を中心とした基本法的な性格、事業法的な性格、こういうものをあわせ備えた法案を策定いたしまして御審議を願っておるわけでございます。御指摘のように、大資本漁業につきましては、十分検討いたしました段階におきまして、ただいま国がこれに必要な助成なり振興方策を講ずるといった必要が他の沿岸漁業なり中小漁業に比べまして非常に低いわけでございまして、われわれは焦点を明確にし、そしてその振興の対策を集中する、こういう意味におきまして沿岸漁業と中小漁業を取り上げ、ここに振興策を講ずるという考えのもとに沿岸漁業等振興法案を御審議願っておる次第であります。
  77. 松井誠

    松井(誠)委員 いまのような考え方は、おそらくこの法律案の基礎になっておる農林漁業基本問題調査会の答申にも出ており、まして、したがっていま焦眉の急は中小漁業並びに沿岸漁業だ、階層間の格差が非常に大きいときには焦点をそこに合わせなければならないのだという確かに答申はございます。しかし、あとでいろいろ具体的にお伺いをいたしたいと思いますけれども、大資本漁業を除いたということで、この法律案にいろいろな矛盾といいますか、そういうものが出てくる一つの大きな原因になっておると思うのです。私たちは逆に大資本漁業というものをこの中に入れるべきだという主張の根拠は、やはり大資本漁業をもっと規制をしなければ中小漁業なり沿岸漁業なりというものの振興は非常にむずかしい、あるいは不可能でさえあるということを思うわけです。つまり漁業法の改正のときにも申し上げましたけれども、やはり沖合いから遠洋へというようなスローガンをあげましても、一番先の遠洋のほうがすでに大資本の独占的な資本でがっちり押えられておるという形の中では、これは限られたワクの中で沿岸漁業にしても中小漁業にしても、なかなか伸びていくことはできない。やはりほんとうに沿岸漁業、中小漁業というものの振興を真剣に考えるならば、規制をするという方向で大資本漁業に手をつける必要があったのではないか。やはり漁業法の改正のときにも漁業権の一斉更新ということで一応はそういうかまえをとった。しかし、実績尊重という名前でやはり現状維持という線に後退をしてしまった。言ってみれば、それにふさわしい沿岸漁業振興法ではないのだ、そういう基本的な点を私は疑問に思うわけです。しかしそういう問題とは別に、やはり大資本漁業を除いたということで、日本の漁業全体として考えなければならない問題が、大資本漁業を除いたためにどこかしり抜けになり、穴があく、そういう矛盾もやはりこの法律案に出てくるのではないか、そういうことを考えまして、いわば念のためではありましたけれども、なぜ大資本漁業を除いたかということをお尋ねをいたしたわけであります。  それからもう一つ、沿岸漁業というものはこの法律案の定義で一応はっきりいたしておると思いまますけれども、中小漁業というものが必ずしもはっきりしないのではないかと思うのです。これはこの法律案の定義によりますと、言ってみれば中小漁業者の生産活動の大部分が行なわれる漁業ということでありますから、おそらくいろいろな漁業の種別ごとに何が中小漁業であるかということをおきめになるのだと思いますけれども、それはそのように理解をしてよろしゅうございますか。
  78. 庄野五一郎

    庄野政府委員 中小漁業と申しますのは、この法案におきましてわれわれが考えておりますのは、経営の体といたしまして、操業いたしております漁船の総トン数が千トン未満であり、かつ従業者の数が三百人以下の漁業の経営体を中小漁業というふうにわれわれは考えております。これにつきまして中小漁業とは、そういう中小漁業者が大部分営んでいる事業を中小漁業と、こういうふうにわれわれは観念するわけでございまして、そういう点の問題の把握につきましては、御指摘のようにやはり底びきとかあるいはまき網、そういった業種ごとにそういう点は考えてまいりたい、こういうふうに考えております。
  79. 松井誠

    松井(誠)委員 中小漁業者と中小漁業というものを区別をしてことばをお使いいただきたいと思うのですけれども、いま千トン以下で常時従業者が三百人以下というのは中小漁業者ということですね。そのような中小漁業者が主たる活動をやっておる漁業ということですから、中小漁業というのは何か漁業種別ごとに指定をしなければならない漁業ということになるわけで、中小漁業というのは漁業の規模ではないわけでしょう。
  80. 庄野五一郎

    庄野政府委員 御指摘のとおり中小漁業者は千トン未満で、かつ三百人以下の従業者が従事している経営体を中小漁業者と称しております。そういう中小漁業者が漁業操業の大部分を占めるような漁業というものが中小漁業になるわけでございまして、そういう観点から定義いたしますと、沖合い底びき漁業あるいはまき網漁業、そういったものが中小漁業とわれわれは考えておるわけでございます。
  81. 松井誠

    松井(誠)委員 ですから私、具体的な例は知りませんけれども、中小漁業者が生産活動の大部分を行なっておる漁業の種類であればそれが中小漁業である。そうするとその中小漁業を営んでおる漁業経営者の規模は、中小漁業者でない場合ももちろんある。つまり大規模の、中小漁業者でないそれ以上の大資本の漁業者であっても、いわゆる中小漁業を営むということはあるわけですし、そしてそれはその限りにおいてこの法律案の中に含まれる、このようになるわけですね。
  82. 庄野五一郎

    庄野政府委員 大資本漁業のほうから申しますと、大資本漁業の大郷分は母船式のサケ・マスをやるととかあるいは母船式のマグロをやるとか、そういった経営体が中心になって把握されると思います。ただ大資本漁業におきましてもやはり底びき船を所持して底びきをやっておるという場合もございましょうし、また沿岸においては、ごく一部でございますが、定置漁業をやっているという面もあろうかと存じます。そういう経営体から把握する面と、それから漁業上の漁業権あるいは農林大臣指定許可漁業のほうから把握される面、二つ面があるわけでございますが、われわれがここで施策の対象として振興をはかってまいりたいというのは、そういう経営体を着目しておるわけでございまして、中小漁業におきまして中小漁業者という、先ほど申しました千トン末満でかつ三百人以下の従業者を擁する経営体であります中小漁業者の経営の振興をはかる、こういうふうにわれわれは考えておるわけでございます。
  83. 松井誠

    松井(誠)委員 少なくとも法律案の正面からは中小漁業者、沿岸漁業者を保証するという文字は見えないわけです。沿岸漁業をどうする、中小漁業をどうするということしか書いてないわけです。ですからいわゆる中小漁業を営んでおる大規模の漁業者も、形式的にはこの法律案のワクの中に入るということになるのではないか。   〔委員長退席、田口(長)委員長代理着席〕 これを漁業経営者の規模別にきめなくて、いわゆる漁業の種別別にきめたということは、私はそれなりに理由があると思いますけれども、その点をはっきりしていただかないといろいろ混乱が起きると思うんです。ですから中小漁業というのは中小漁業者のことではもちろんない。しかし中小漁業者が大部分の活動を行なう漁業という中には、大部分の活動ですから、残りの部分についてはあるいは中小漁業者以外の者が行なうということを、いわば当然に予定をしておるわけですから、主として中小漁業者が行なうではあろうけれども、しかし中小漁業者ばかりをこの法律案の対象にしておるのだとすれば、当然中小漁業者という規定にしなければならなかった。しかしそうじゃなくて中小漁業という規定にしたのはおそらくそれなりの理由があると思います。したがって中小漁業の中には大規模な漁業者が行なうという場合も含まれるのだ。それは融資その他の面では選別はされましょう。選別はされましょうけれども、形式的にはやはりこの大規模の漁業肴も入るんだということになるんじゃないですか。
  84. 庄野五一郎

    庄野政府委員 御指摘のとおり、中小漁業というものにつきましては御説明申し上げましたように、中小漁業者が大部分営んでいる漁業でございます。それで御指摘のように中小漁業の中にはやはり大資本漁業が営むものも含まれるわけでございます。それで中小漁業者の振興というような場合におきます金融措置とかそういった面は、御指摘のように優先順位をつけるとか、そういうことで中小漁業者を優先して振興対策の対象に乗せていくということは当然でございますが、やはりこの国の施策の方針をお沈みになってもおわかりになりますように、その中小漁業生産性を向上するとか、あるいはその近代化をはかるとか、あるいは漁獲物の流通改善、生産費の安定をやる。そういった面におきましては、やはりその中小漁業者だけを対象にして考えても施策はできないわけでございまして、中小漁業を対象としてそういった流通改善なりいろいろな施策は講じなくちゃならぬと思います。そういう面におきましては、その中に大資本が営む中小漁業も含まれることは当然でございますが、そういう施策の総合性といったものを確保する意味において、そういうことは当然起こり得ると考えておるわけでございます。
  85. 松井誠

    松井(誠)委員 そういう施策の総合性ということを考えたために、中小漁業者としなくて中小漁業としたという理由は私はわかるのです。それならば、一体なぜ大資本漁業というものを除いたのか、除くということから、総合的な一貫した政策というものは、そこからひびが入ってこないかということを考えるわけです。私、よく具体的な実例は知りませんけれども、たとえばカツオ・マグロの漁業遠洋カツオ・マグロ漁業、搭載型母船式カツオ・マグロ漁業、独航型母船式カツオ・マグロ漁業というように、たとえばカツオ、マグロの漁業にはいろいろな規模がある。その中でそれではこの法律でいわゆる中小漁業というものになるのはこの全部ではなくて、その一部にしかすぎないということになるじゃありませんか。つまりこの中小漁業のワクの中にはまらないカツオ・マグロ漁業というものがあるんじゃないですか。
  86. 庄野五一郎

    庄野政府委員 例をカツオ、マグロにとりますれば、中小漁業は先ほど申しましたように、漁船の操業いたしますトン数は千トン未満、かつ従業者三百人以下、こういうことになっております。それでカツオ・マグロ漁業を業種としてとらえますれば、その中には大資本漁業の母船式のカツオ・マグロ漁業、そういったものも含まれるわけでございます。それでここでは中小漁業というふうに把握しておりますが、価格の安定とかそういった面におきましては、業種として把握するというような面も考えなくちゃならぬかと思います。総合的な施策をやるということになりますれば、カツオ、マグロの中小漁業者がとってくる分だけの価格安定をやるということでは、施策の一貫性がないわけであります。そういう面におきましては、大資本がとってまいりましたカツオ、マグロにつきましても、やはり一貫的な施策でいく、こういうことに当然なろうかと思います。
  87. 松井誠

    松井(誠)委員 私もそうだと思うのです。そうしなければ、先ほど言われたような総合した一貫した施策というものがとれないと思います。ですからほんとうに総合した一貫的な政策をとろうとするならば、われわれのように大資本を規制しろという立場でなくても、やはり大資本漁業というものをここに入れなければ首尾一貫しないのじゃないか、そうしなければ中小漁業を規制するとすれば、カツオ、マグロにすれば遠洋のカツオ、マグロにしか規制ができない、この法律案のワクの中ではそれしかできないということになりますと、カツオ・マグロについてはこの沿岸漁業振興法では総合的な一貫施策はとれないということになりゃしませんか。
  88. 庄野五一郎

    庄野政府委員 中小漁業がその大部分を占めるものを中小漁業、こういうふうに申しておるわけでございまして、その中には当然大資本のものも含まれるとわれわれは考えておるわけでございます。これは先ほどから御指摘のとおりでございます。それでこれにつきまして総合施策を講じますれば、反射的には大資本のほうにもそういう面は及ぶかと存じておるわけでございます。
  89. 松井誠

    松井(誠)委員 この大資本を抜かしたということのひずみといいますか、そういうものはあとにもまだ出てくると思いますので、その程度にいたします。  そこでこの法律案の内容に入ります前にひとつお伺いいたしておきたいと思いますが、この法律案はやはり農業基本法が農林漁業基本問題調査会の答申をいわばその背後に持っておったと同じような意味で、同じ答申案をその背後に持っておる、その基本的な考え方は答申案に基づくというように考えてよろしゅうございますか。
  90. 庄野五一郎

    庄野政府委員 そのとおりでございます。
  91. 松井誠

    松井(誠)委員 その答申案について、答申案の漁業の基本政策の目標というものは一体何かということが私は必ずしもはっきりしないと田ふうのです、答申案によりますと、生産性の高い漁業というものを育成して、いわば経済的なく合理性に基づいて大いにそれをやるという一つの柱と、それからもう一つ社会正義に基づいて、低い漁業者の所得をできるだけ比較し得る他産業の従事者所得に合わせるように持っていく、それを最低の目標にするというような二本の柱を掲げてあって、そしてその二木の柱は相互に矛盾するものではなくて、いってみれば統一して実現されなければならないというような形になっておりますけれども、基本的な考え方としては、やはりこの法律案の底を流れるものはそういうように考えていいでしょうか。
  92. 庄野五一郎

    庄野政府委員 沿岸漁業振興法の第一条にこの法案の目的を掲げてございますが、その目的に掲げてございますように、沿岸漁業者あるいは中小漁業者に焦点をしぼりながら、その地位の向上をはかる。そのためには沿岸漁業者なり、あるいは中小漁業者なり、漁業の内部におきます格差の是正は、もちろん生産性の向上なり、あるいは経営の近代化をはかることによって格差の是正をはかりながら、さらにまた他産業とも均衡するような地位の向上をはかる、均衡するような生活を営めるような所得の増大、あるいは環境の整備、そういったものをあわせて行なう、こういうふうにわれわれは了解しておるわけでございます。先生が御指摘のとおりだと存じております。
  93. 松井誠

    松井(誠)委員 私は、経済的な合理性というものと社会正義的な観点というものとはいつも必ず統一されるものではなくて、むしろ漁業の中では矛盾をする、利害が対立するという、そういう二律背反のような形にしょっちゅう追い込まれると思うのです。同じ漁場を利用するという、そういう漁場利用の形態から当然出てくると思う。そういうときに経済的な合理性と社会正義的な観点とがぶつかったときに、どちらを主として考えるか、どちらを優先的に考えるかということが先ほどの答申案でははっきりしないわけです。その点はいかがですか。
  94. 庄野五一郎

    庄野政府委員 漁業基本問題調査会の答申によりまして、われわれといたしましては、この基本的な方向として、漁業法の改正、それから漁業を経営いたしております沿岸漁家の組織体であります水協法の改正、それからいま、格差が大きく、他産業に比較しましても、その生活の程度が低い、こういった点を引き上げるための沿岸漁業等振興法案、この三つの法案提出いたしまして、前の二つの漁業法あるいは水協法は成立いたしたわけでございまして、ただいま最後の沿岸漁業等振興法案の御審議を願っておるわけでございます。御指摘のような経済性と社会性の問題でございますが、こういった漁場調整の問題といたしましては、やはり資源の問題もございましょうし、またその地帯に入り会っている沿岸と沖合いの漁業の生活の問題もございましょうし、またそれぞれの経営の問題もあろうかと存じまして、そういう点につきましては、漁業法によりまして漁業権の認可あるいは指定漁業許可におきまして、資源あるいは沿岸と沖合いの操業上の調整といったものを講じて許可いたしておるわけでございまして、そういう点は漁業法で処理いたしておるわけでございます。
  95. 松井誠

    松井(誠)委員 その認可にしても、許可にしても、一応ある限度の自由裁量の幅というものがあるわけです。ですから、沿岸と沖合いとがぶつかったときに一体その調整の原則は何なのかということを私は聞きたい。そのときそのときの場当たりで、足して二で割るような形で調整するのか、あるいはそうじゃなしに水産政策として基本的な方針があって、それに基づいて調整をやろうとするのか。やはり少なくとも社会正義というものを第一の観点にしなければならぬじゃないか。そういうものはあとでよろしい、ともかく経済的な合理性が優先だという考え方がいま非常に強い。そういう中でだからこそ私は特にお伺いをしたいのです。ですから、たとえば漁業法の改正のときにも、私たちは、いわゆる老人漁業といわれる、ほんとうにささいな家計の補助になるような漁業についても、それこそ社会正義の観点からもっと残すべきだと思った。しかし例の行使規則の調整によって、ほんとうに漁業を二次的な、三次的な副次的な仕事にしておる。そういうものをその共同漁業からはずすというような形になってしまった。やはり社会正義というものをもっと土台に据えて水産政策というものを考えるならば、ああいう行使規則の制定によって、ほんとうに家計の補助として零細な漁民が期待しておったものからその漁民を追い出すというような形にはならなかったと思う。ですから私はお伺いをしたいのですけれども、利害が対立したときに調整をする原則としては、やはり社会正義を土台に据えるべきではないか。繰り返して申しますけれども、その点についての御意見をお伺いしたいと思います。
  96. 庄野五一郎

    庄野政府委員 御指摘のような点は、漁業法におきまして、許可の優先順位等におきまして、沿岸漁業の共同体であります漁協とか、あるいは漁民がつくります生産組合、あるいは漁民会社、そういったものを優先するような考え方漁業法が制定されておるわけでございまして、御指摘のように社会的正義というものと経済的な問題とのかみ合わせ、非常に困難な問題でございますが、漁民の死活に関する問題といったものをわれわれは根本に置いて、重点を置いて調整してまいりたい、こういうふうに考えております。
  97. 松井誠

    松井(誠)委員 ほんとうに漁民の死活に関する問題ということは何としても政治の、あるいは政策の基本でなければならぬ。ところが、そういうものよりも経済的な合理性が優先するという風潮がありますものですから私はお伺いをいたしたわけでありますが、その点をもう少し具体的にお伺いいたしますと、これは農業基本法の場合もそうですけれども生産政策あるいは構造政策、所得政策といいますか価格政策、そういうものがいわば柱になっておったわけです。漁業基本法といわれるこの法律案では、この構造政策というものの目標がきわめてはっきりしない。少なくともこの法律案を読んだ限りにおいては、一体構造政策の基本は何かということがはっきりしないと思う。漁業基本法では自立経営農家の育成ということを正面からうたっておる。そして副次的には漁協というものをその次に書いてございます。しかしこの法律案では、一体どういう漁業形態というものにこれからの沿岸や中小漁業の中で支配的な地位を占めさせようとするのかという、その点がはっきりしない答申では健全な漁家経営というようなことをいっておりますけれども、やはり健全な漁家経営というものが構造政策の柱ということになるのか、あるいはもっと企業的な経営が中心になると考えるのか、あるいは社会正義と経済合理性の問題のように、両方仲よくやらしていくのですという形でやられるのか、どっちなんです。
  98. 庄野五一郎

    庄野政府委員 沿岸漁業の構造改善事業を第八条にうたっております。これの目標につきましては、法第一条の生産性の向上なり、従事者の福祉の増進をはかって、他産業と均衡する生活を営むことを期するということによりまして、その沿岸漁家の地位の向上をはかる。こういうことが構造改善計画の目標でございまして、その目標に沿って生産性の高い、そして近代的な合理的な経営のほうに助成していく、指導していく、こういうことに相なるわけでございます。そういう意味におきまして、この経営体のあり方につきましては、国の施策の基本的な方向にも示してございますように、第三条第一項の三号でございますが、経営規模の拡大、これは漁船では大型化をはかっていく、あるいはそういうようなことを考えられますし、また生産工程につきましては協業化をはかる。こういうことで共同経営なりあるいは漁民の生産組合の育成なりあるいは集団操業、そういった協業なり生産組合、あるいは漁民が大部分の出資、議決権を持っておりまする漁民会社といったようなものを中核体にいたしまして、そういう経営体の育成をはかってまいりたい、こういうように考えております。
  99. 松井誠

    松井(誠)委員 先ほど安井委員から、「他産業従事者と均衡する生活を営むことを期する」ということを書いてあるけれども、はっきりしないという御指摘がありましたが、そこに関係があると思うわけです。つまり、どのような漁業経営のものを中心に据えるのか。漁業基本法では、よかれあしかれ、とにかく自立経営を経営の中心に据え、そしてそれが他産業従事者との均衡した生活を得しめるような支配的な経営形態になり得るということをともかく中心に据えておる。ところがこの場合には一体どういう規模の漁業経営の形態になったならば他産業従事者と均衡する生活を営むことができるのか。また逆に他産業従事者と均衡する生活という他産業従事者というのは一体どこをめどにしておるのか。その辺のことが一切がっさいかいもくわからないわけです。もっと具体的に申しますと、自立経営といういわば家族の労働力というものを中心にした経営体というものを農業基本法では考えておるけれども漁業の場合は、そういうワクにはとらわれないで、もっと企業的な家族経営のワクを離れたものを中心に考えるのか、あるいはやはり家族経営、家族の労力を中心にした健全漁家経営という答申のような考え方中心になるのかということが一つ。それからもう一つ、他産業従事者と比較をするというその他産業従事者というのは具体的にはどういう他産業従事者のことをいうのか、これは、漁業は農業の場合と違って格差が大きいから一がいに平均的には言えないと思いますけれども、しかし、それにしても目的がはっきりしないと、それこそ日本の沿岸漁民は、この法律案ができたらさて自分はどうなるんだという具体的な手引としては何もわからない。ですから、そこのところをお伺いをしたいのです。
  100. 庄野五一郎

    庄野政府委員 漁業と農業は非常に基盤なり事情が違うことは御指摘のとおりでございます。農業において自立経営ということがうたってあるわけでございますが、漁業においては、そういった農業におきます自立経営のような観念でこれを持っていくということには非常に困難があるということは、基本問題調査会においても指摘されておるところでございます。で、われわれといたしまして沿岸漁業の経営体をどういうふうに考えるか、こういうふうな御質問でございます。われわれといたしましては、やはり沿岸漁業につきましては、協合組合を中心といたしまして生産組合をつくる、あるいは漁家が共同経営をやる、あるいは個々の漁家が集団操業を行なう、そういったような面におきまして経営の拡大なり、経営の合理化、近代化をはかってまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございまして、必ずしも農業のような自立経営の基本をなす自家労力を中心にして漁業も律するというふうにはわれわれは考えていないわけであります。
  101. 松井誠

    松井(誠)委員 一体あすのめしをどうするかというような非常に窮迫した立場にある沿岸漁業者としては、いまのような抽象的な説明では、それではおれはあしたから何をしたらいいか、沿岸漁業振興法は具体的に自分に何をしてくれるのか、そういうつながりとしては感じられない。率直にお伺いしますけれども、この水産庁からいただいた「漁業基本対策の手引き」、ここには一応段階的な構造政策の構想みたいなものを書いてあるわけですが、それによると、主として漁業所得、または、これに多少の兼業収入を加味して、生活水準で他と比較し得るような水準に達し得る経営の確立ということが最低の目標。その次には、やはり同じように家族経営を主とするわけですけれども、投下資本の利子や地代や、利潤等を実現し得るような経営の確立。第三番目にはいわゆる企業的な経営、企業としての漁業。そのような三段階の考え方を述べておるわけですけれども、自立経営一本のような形にはもちろんいきませんし、それははなはだ実際的ではないと思いますけれども、具体的にはやはりこういう形で他産業従事者との生活の均衡をはかるというめどを持っておられるのかどうかということを私は実は聞きたい。
  102. 庄野五一郎

    庄野政府委員 沿岸漁業の構造改善対策事業を進めますにつきましては、海区ごとの計画を樹立して、その計画に基づきまして事業を実施する、こういうことでございます。その計画にあたりましては、もちろん御指摘のように関係沿岸漁民の生活の向上、地位の向上ということが終局目的でございますので、その基本をなす漁業所得の向上ということが中心になるわけでございます。それで、計画を立てますにつきましては、十年計画でございますので、現状を十分把握いたしまして、そうして漁場なりあるいは経営の近代化なり、あるいは経営の拡大なり、そういった経営方式の協業化なり、そういうようないろいろな施策を講じますが、十年後の所得は一体どの程度になるか、そういった想定をいたしまして、その十年後の沿岸漁民漁業所得というものが、通常考えられまする社会的妥当性を持った他産業の所得との均衡を得ているかどうか、こういうようなことを十分検討いたしまして計画を確定し、その所得が確保されるように事業を実施していく、こういうふうにわれわれは進めておるわけでございまして、そういう意味におきまして、御指摘のように、所得の増大、増加ということはございませんが、これはその基礎であり、当然のことだと考えて、構造改善対策の柱になっておるわけであります。
  103. 松井誠

    松井(誠)委員 私がお尋ねしたことにひとつ直接お答えをいただきたいと思うのですけれども、所得の増大ということはさっきから言われております。しかしどの程度の所得の増大なのか、当面の目標はどこなのかということがわからないということを私はさっきから言っておるわけです。ですから、それは伸びるにこしたことはないでしょうけれども、無限大に伸びるというようなことを漁業政策の基本に置くはずはない。やはり少なくとも漁業経営はここまでいかなければならぬというめどがあるはずなんです。そのめどを私はお尋ねをしておるわけです。たとえば構造改善計画を立てるときに、どれだけ十年後に伸びるだろうかということじゃなくて、どれだけ伸ばさなければならないかということに当然なる。そのときに他産業従事者との比較というものは、その他産業というものは一体どこにめどを置くか、そのときの漁業経営の形態というものはどういうものを想定をするのかということがわからなければ、この法律案というものはお経みたいなものになってしまう。世上、この法律案はお経のようだという話があるわけです。お経というのは、これはお坊さんには悪いですけれども、ことばは非常にむずかしくて、ちょっと見るとありがたそうだけれども、しかし役には立たない、ごりやくはない、そういうことをいうのだろうと思うのです。やはりこれが具体的にごりやくを持ってくるためには、もっと具体性を持ったものの裏づけ、具体性を持った基本目標の設定というものがなければ——農業基本法を出したから漁業基本法も出さなければ形がつかないという程度の心がまえでは困ると思う。ですから、同じように律するわけにはいきませんけれども、一体漁業経営というものはどうするのか。協業が中心なのか、個人経営が中心なのか。個人経営にしたところで、企業的な、つまり雇用労力にたよるのが中心なのか、あるいは家族経営というものをやはり依然として中心にしていくのか。それからそれに応じて他産業との生活の均衡ということは具体的にはどこをめどにするのかということをさっきからお伺いをしておるのです。
  104. 庄野五一郎

    庄野政府委員 構造改善対策事業の目標でございますが、総括的な目標は第一条に掲げてございます。これでは具体性がないじゃないか、こういう御指摘でございますが、構造改善対策事業は四十二海区に分けまして事業を実施するわけでございまして、その海区海区の実情に即応しまして現状をよく調査、把握して、こういうノリ漁業中心に十年後の経営を考える。あるいはここでは真珠養殖なりカキ養殖を中心にして漁業の経営を振興していく。あるいはこの海区におきましては一本釣り等につきましても、集団操業等と養殖業を加味して漁業振興をはかる、こういう具体的な計画を立てるわけでございまして、その具体的な計画を現地実情に即して立てる場合に、大体十年後の所得目標というものはこういう施策を講ずれば、現在の所得の何割増し、何倍になる、そういった具体的な目標を掲げてございます。そういう目標を掲げて、さっき申しましたどういった漁業を営むか、あるいは養殖にいくか、そういった方策を確定しまして、そしてそのにない手は共同経営でいくか、あるいは生産組合でいくか、あるいは共同経営の集団操業でいくか、こういったいろいろな方式があろうかと存じますが、そういった面をやはり計画として考えながら具体性を持った計画を立ててそれを実施する、こういうことでございます。それでここで観念的に一括して申し上げることはなかなか困難なことでございますが、海区ごとに分けました構造改善対策事業はそういう具体性を持った計画になっております。
  105. 松井誠

    松井(誠)委員 依然として私のお尋ねに対するお答えはございませんけれども、半農半漁という、ほんとうに政治の谷間におるような人たちがずいぶんおるわけです。農業基本法からいえばお前は農業の外へ出ていけという、漁業政策からいえば、漁業法改正のときから具体化してきたように、やはりお前は漁民の外へ出ていけ、そういうことで半農半漁の国民は一体どこへ行ったらいいのか、どこへ行っても壁にぶち当たるわけです。ですから農業基本法の問題はいまは別ですから、漁業政策についてお尋ねをしたいのですけれども、やはり漁民はできるだけ漁業政策の中で解決をしていく。もちろんこれは漁業政策だけで解決できなくて、日本の資本主義全体との関連がなければもちろん不可能ですけれども、しかし心がまえとしては、漁民は漁業政策の中で解決をしていく。したがってそのようにほんとうに窮迫のどん底にある漁民というものに、まず当面の目標は何かということを示す。そのことによって経営形態なり所得の目標なりを示すということでないと、この法律案がほんとうに幻想を与えるお経になってしまいはしないかと思うのです。ですから先ほどもお伺いをいたしておりますけれども、時間が十分ございませんので、お答えのないままに次に移りたいと思います。  先ほどから長官は構造改善、構造改善ということを盛んに言っておられますけれども、構造改善というのは何も構造政策のすべてではなくて、構造政策の目標がきまらなくて、さて構造改善をやろうといっても、私は非常に腰だめ的なものになってしまいはしないかと思うのです。先ほど来一体将来の経営形態はどうするかというその基本的な目標がはっきりしないままに構造改善をやるということになると、府県で計画を立てる場合に私は困りはしないかと思うのです。しかしそれにしてもこの法律案の、言ってみれば具体的な裏づけとなる最大のものは構造改善、だと思う。構造改善が具体的にどのように進められるかということが、言ってみればこの法律案が本物であるかうそ物であるかという一つの試金石になりはしないかと私は考えますので、この構造改善について少し具体的にお伺いをいたしたいと思います。  その前に、私よく存じませんけれども、いままで沿岸漁業特別対策事業というものがあったやに聞いておりますが、そういうものはございましたか。
  106. 庄野五一郎

    庄野政府委員 昭和三十三年から本年度までの事業として実施しております。これは三十八年で一応終止符を打って、三十六年から構造改善対策事業を始めておりますから、そのほうに引き継ぐ、こういうふうに考えております。
  107. 松井誠

    松井(誠)委員 そうすると特別対策事業というのは構造改善事業に切りかえるということになるのか、並行をして行なうということになるのか、特に構造改善計画を実施をしておる県としては並行するわけですか、あるいはそれを引き継いでいくわけですか。
  108. 庄野五一郎

    庄野政府委員 特別対策事業は、三十三年から三十八年までやるわけでございまして、それで一応考えました地区を全部終わる、こういうことになっております。構造改善対策事業は三十六年から開始いたしまして、二年間調査して、二年後に計画を確定して事業の実施に移る、こういうことになります。そういう段階におきましては並行して行なうわけでございますが、特別対策事業が済んだところから構造改善対策事業に移っていくということになりますので、一時的には並行するという形になっております。
  109. 松井誠

    松井(誠)委員 先ほど構造改善対策事業ということをおっしゃいましたけれども、おそらくいま行なわれておる構造改善事業のことだと思いますが、この構造改善事業というものの基本的な考え方、これは沿岸漁業だけに関する問題でありますけれども、それが私はよく理解ができないわけです。と申しますのは、沿岸漁業振興というようなことを叫びだしたのは、沿岸漁業の不振が非常に明らかになって以来でありますけれども、一体なぜ沿岸漁業が不振になったのか、いままで沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へというスローガンが一体なぜ頭打ちになったのかという原因はおいて、もう外延的な拡張は不可能なんだ、沿岸が沖合いに出ることはなかなかむずかしい、沖合いが遠洋へ行くことはなかなか困難だ、だから沿岸は沿岸で解決しろという形、そういう非常に消極的な、後退的な形になってしまって、そこで沿岸漁業振興ということが叫ばれたのではないか。ほんとに沿岸漁業というものを外延的に広げるということをあきらめてしまって、沿岸のワクの中で解決をしようということがこの構造改善という形の基本にあるのではないかと思うのですけれども、その点はどうでしょう。
  110. 庄野五一郎

    庄野政府委員 戦後の日本の水産業の発展段階を見ますと、いま御指摘のように戦後マッカーサー・ラインがとれましてからの日本の漁業の発展は非常に外延的に、漁場の拡張ということで遠洋へ、遠洋へというような形で発展いたしております。しかしその中においては生産性の問題とかあるいは構造的ないろいろな格差が起こりつつあるいろいろな問題を包蔵しておったわけでございます。しかし外延的な発展ということも最近の国際漁場におきまする各国の沿岸国の漁業の発展等から、戦後マッカーサー・ライン廃止後のような事情とは事情が変わってきたわけでございます。さりとはいっても、やはり当時からわれわれが指導しておりましたように沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へ、こういった方向には変わりはないとは存じますが、その当時から持っておりました内部に包蔵する生産性の問題あるいは労働力の問題、いろいろな問題が、最近におきまして高度の経済発展をいたす中におきまして非常に明らかになってきた、こういうことがいわれると思います。そういう面におきまして沿岸漁業等におきましても、今後資源の問題等もございますけれども、やはり沖合いへ出、また沖合いから遠洋へ転換する、こういった方途は考えていかなくてはならぬかと存じますが、御承知のように外延的に発展の中で、当時においても包蔵しておった内部的な問題について沿岸漁業等振興法案等をもって対処していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  111. 松井誠

    松井(誠)委員 外延的に頭打ちになったのは、たとえば沿岸が沖合いへ出ようとすれば漁業権漁業制度に縛られる。それから沖合いから遠洋へ出ようとすればやはりそれも縛られる。ですから、ほんとに外延的に広げようということならば、漁業制度漁業権あるいは漁業許可制度というものの運用によって沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へというスローガンをまだおろさなくてやっていける余地があったのではないか。ところが先ほど言いましたように、もう漁業制度の中で、大資本漁業の現状というものを、言ってみればそのまま肯定するような形で、一番その外延の、一番端になるところは、もう漁業制度でストップをしてしまう、つまり沖合いが遠洋へ出ようと思っても許可制度がワクがあって、実績尊重という美名のもとに実は現状維持というものが行われるということで、外延的な漁場の拡張ということが不可能になったのではないか。それは国際的にもいろいろな理由もございましょうし、資源の問題もございましょう、しかし政策の結果というものもあったと思うのです。そういうものを一体構造改善ではどうして打開をしていこうとするのか、あくまでも沖合いは沖合いで、沿岸は沿岸で解決をしようという形なのか、あるいはそうじゃなくて沿岸もやはりできるだけ沖合いから遠洋へ出ようという、それも構造改善の一つの柱として持っておられるのか、重ねてお伺いをしたい。
  112. 庄野五一郎

    庄野政府委員 漁場の転換が具体的に非常に窮屈になってきたから、沿岸は沿岸ヘヘばりついて構造改善でやる、こういうような御指摘のようでございますが、必ずしもわれわれはそういうふうには考えてないわけでございまして、やはり新しい漁場開発等は国において調査船を出すとかいろいろな公館を通じて調べるとか、そういったことで新しい漁場開発等は努力いたしておるわけでございまして、そういう面におきまして沖合いから遠洋へ出るとか、あるいはそのあき間に沿岸から沖合いへ出る、そういう措置も当然考えておるわけでございます。  なお最近の転換の一例でございますが、沿岸漁業にも遠洋のカツオ・マグロの新しい許可を出しまして、沿岸から沖合いへ、遠洋にカツオ、マグロをとりにいく、こういった方途も講じておりますし、なお沿岸等の漁民が相当数従事しておりまするサケ・マス等におきましても、カツオ・マグロに転換するとかあるいは遠洋底びきに転換する、いろいろな転換方策を進めておるわけでございます。そういう面もわれわれとしては今後転換方策を合理的に進めてまいりたい、こういうように考えております。   〔田口(長)委員長代理退席、委員   長着席〕
  113. 松井誠

    松井(誠)委員 最近のカツオ・マグロヘの転換というものが一つの例と言われましたけれども、おそらく唯一の例と言ってもいいくらいではないかと思うのですが、ともかく沿岸や沖合いの外延的な拡張というのは漁場開発という問題のほかに、やはり大資本を規制するというそういう形で実はまだ十分の余裕があるのではないか、そのことを漁業制度の壁をつくってしまっておいて、そのワクの中で構造改善をやるといっても、それにはもう一つの限界が初めからあるのではないかという疑問を持つわけでございます。私がなぜそういう疑問を持つかというと、この構造改善事業の中でいわゆる漁船漁業というものの比重が非常に低いのではないかという疑いを持つからであります。最近浅海養殖とかいって、養殖業というものが沿岸漁業の生きる大きな道になっておる、これはそのとおりでありますけれども、しかし養殖ができるというところは、地形的にどこでもできるわけではございません。言ってみれば日本海沿岸というものはそういう適地が非常に少ない。裏日本などという蔑称で呼ばれておるこの日本海の沿岸の漁民は、構造改善に何を期待するのかということになりますと、やはり大きな柱は漁船漁業じゃないか。その漁船漁業が構造改善で具体的にどう取り扱われておるのかということをお伺いいたしたいと思いますけれども、やはりこの漁船漁業というものも構造改善の中で沿岸漁業の振興の中で重要な柱だというように理解はしていいですね。
  114. 庄野五一郎

    庄野政府委員 漁船漁業も経営規模の拡大というようなことで大型化していく、あるいは操業資金等を融資することによりまして、そういう面の拡大をはかる、こういうように考えているわけでございまして、沿岸漁業の一つの柱として漁船漁業の振興ということも考えております。
  115. 松井誠

    松井(誠)委員 確かに沿岸漁業というものは非常にいま困難な時期に差しかかっておると思うのですが、答申なんかの考え方ですと、ともかく過剰人口という、それを解決しなければ、もう漁船漁業はにっちもさっちもいかないのだ、そういう一種のあきらめみたいなものが先に立っておるのではないか。沿岸漁民とそういう漁船漁業の小さいものを間引く。それから、一部は養殖のほうへいく。一部は沿岸漁業で何とかやっていけ。そうして、恵まれた少数のものが沖合いへ出ていけというようなことが、何か答申の基礎のように思うのです。この漁船漁業というものについてもっと本気になって考えれば、つまり沿岸漁業政策のワクの中で漁業から出ていけという形で間引くという形でなくてもやれるという——それは農業よりももっと困難でしょう。困難でしょうけれども、それが政策の基本、少なくとも農林省、水産庁の政策の基本でなければならぬじゃないか。つまり外へ出ていくことを初めから期待をして政策を立てるというのは、言ってみれば一番大事な困難な問題を回避して放棄をしてしまうということになりはしませんか。そういう意味で私はお尋ねをしたいのですけれども、漁船漁業で何としても一番重要なのは、この構造改善では基盤の整備ということを盛んにいっておりますけれども、基盤の中の基盤である漁港というものがこの構造改善からはずれておる。これは一体どういうわけですか。
  116. 庄野五一郎

    庄野政府委員 構造改善対策事業といたしまして、御指摘のように漁船漁業等も、これは経営の合理化なり経営規模の拡大なりということで大きく取り上げていくわけでございますが、やはり基本的な問題といたしまして資源の培養ということが必要であろうかと存じます。いままで日本の漁業におきましては資源に対する配慮という問題が非常に薄かったのではないかというきらいもあるわけでございまして、今後はやはり沿岸漁業におきましては資源の保護培養ということを非常に重点的に考えなくてはならぬではないか。資源の保護培養を講じながら沿岸の漁船漁業の振興をはかる、こういうことも必要であろうかと存じます。そういう意味におきましては、魚礁なり漁場改良なりといった点を沿岸漁業の構造改善の一つの大きな柱にいたしまして振興策を講ずるわけでございますが、御指摘のような漁港の問題につきましては、漁港法の審議並びに第三次漁港整備計画の御承認の際にも御指摘がありましたように、漁港の整備につきましては漁港法によっておるわけでございますが、沿岸漁業構造改善対策事業と漁港の整備ということは密接不可分の関係にあるわけでございまして、沿岸漁業の振興の中核となりますような漁港の整備を第三次の漁港整備計画におきましては大きく取り上げて、この沿岸漁業構造改善対策の一つの基盤造成にいたしたい、こういう考えで、御指摘がありましたように、その間の計画にそごのないように、事前に十分密接な計画の連絡調整をはかっていきたい、こういうことにいたしておるわけでございます。
  117. 松井誠

    松井(誠)委員 この法律案ができます前に水産庁でつくりました、第何次案になるのか知りませんけれども、その中には、構造改善の中に漁港というものがちゃんと入っておるわけです。それを今度はわざわざ抜いておるということが私はどうもふに落ちないわけです。それと、もう一つは、なるほど今度は漁港法の改正で特定第三種漁港の補助率というものは上がるけれども、ほかの一種、二種あるいは普通の三種の漁港についての補助率は依然として昔のままだ。ほんとうに漁船漁業というものを一生懸命やろうということであるならば、私は特定第三種の補助率を上げたことが悪いというのではありません、しかし特定第三種漁港の直接の利益を受けるのは、少なくとも沿岸漁民ではないわけです。ですから、ほんとうに沿岸漁業の振興をやろうということならば、少なくともそれに並行して一種、二種あるいは普通の三種の漁港の補助率も当然上げるべきではなかったのか。それはやはり構造改善の中で漁港整備の重要な柱として、この法律案の中にきちんと明記をすべきではないか。そうしなければ、一体この改正案は漁船漁業をどう考えておるのかということが正面からわかりにくいのです。その最初の案にあっていま抜けた漁港というもの、この間の事情というものは何かおありですか。
  118. 庄野五一郎

    庄野政府委員 漁港の整備は漁港法によって行なうということで単独の法律があるわけでございますが、漁港法によって整備計画を立て、漁港の整備をはかるのは、もちろん水産業の振興でございまして、漁港には第一種から四種まであり、一種、二種港がおおむね沿岸漁業の漁船が利用する漁港になっておるわけでございまして、沿岸漁業の構造改善対策を進めますについては、その漁船の生産なりあるいは漁獲物の水揚げの基地になる中核的な一種または二種漁港につきましては、重点的にこれを整備計画に取り入れて、構造改善対策事業と即応して整備をはかる、こういう方針にいたしておるわけでございまして、御指摘のような補助率の改正等はまだ実現いたさず、特定第三種だけが今度補助率の一割アップをいたしたわけでございますが、そういう問題につきましては、漁港法の御審議のときに御指摘がありまして、ただいま検討中でございます。
  119. 松井誠

    松井(誠)委員 やはり漁船漁業を構造改善の一つの柱にするならば、漁港というものについてもいままでとは違った特段のかまえというものが必要ではないか。漁港法によって整備計画をやるんだということは何もいまに始まったことではなくて、この第何次案か知りませんけれども、いまの改正案の前の原案ができるときから考えておったわけです。しかしそのときには、それにもかかわらず漁港というものを構造改善の基盤整備の中に入れておったのですから、私は、それが漁船漁業を軽視するということが原因でなければ幸いだと思いましてお尋ねをいたしたわけでありますが、この漁港の問題について、離島の関係については、その補助率はどのようになっておりましょうか。漁港の施設といっても、基本的な施設、付属的な施設あるいは機能施設といいますか、いろいろ施設があって、補助率も本土の場合は違うようでありますが、離島の場合にはどういうようになっておりますか。
  120. 庄野五一郎

    庄野政府委員 漁港施設の国の負担金あるいは補助金の関係でありますが、漁港施設には基本施設と機能施設とあることは御承知のとおりと存じます。機能施設につきましては、北海道と内地と離島、こういうふうな三つのグループに分けまして、離島関係につきましては、基本施設は国において全額見る、そういったふうに承知いたしております。
  121. 松井誠

    松井(誠)委員 本土の場合には、その漁港のいろいろな施設が、基本施設のほかに、あるいは機能施設というのですか、それも補助率は同じだと思うのです。離島の場合には、基本施設はなるほど一〇〇%の補助ですけれども、それ以外の施設については補助率が低い。この違いというものは一体どこにあるのでしょうか。御承知のように、やはり離島は漁業で生きていかなければならないという、そういう環境が非常に多い。しかも資金が足りない、ですから、特別に離島のめんどうを見るというその法律の趣旨からいえば、漁港施設の基本的なものだけに限って高い補助をし、それ以外の施設は低い補助をするという、そういう区分けはどういうわけですか。本土の場合には、基本施設も付属施設もみな同じ補助率であるのに離島の場合に変えておるというのはどういうわけですか。将来やはりほかの施設についても一〇〇%補助という形に持っていく御意思はないかどうか、お伺いをしたいのです。
  122. 庄野五一郎

    庄野政府委員 離島の場合は、基本施設が一〇〇%ということで高いわけでございまして、基本施設が漁港としてまず整備すべき先決の問題でございます。われわれはその機能施設が低いというんじゃなしに、機能施設は大体内地と変わりないわけでございますが、基本施設だけ内地よりも非常に高く、一〇〇%補助する。こういうふうに特に離島についての措置をしたわけでございまして、内地と格差があるというふうにお考えにならないで、基本施設だけ内地よりも特段の措置を講じてある、こういうふうにお考え願いたいと思います。
  123. 松井誠

    松井(誠)委員 基本施設だけ一〇〇%補助してあるのだから、それでありがたく思え、そういう御答弁ですけれども、私はそれは離島の漁業の、実情をよく御存じないからだと思うのです。何としても金がない。基本施設だけはできても、さてそれからあと自力でその付属をやるということはたいへんなことです。ですから、今度の構造改善の計画でもそういうことがいわば隘路になっているわけです。ですから構造改善、そしてそれによる沿岸漁業の振興をほんとうに真剣に考えるならば、やはり基盤中の基盤である漁港について、もっと政府がめんどうを見るべきではないかと思いますので、そのような方向で検討されることを要望いたしたいと思うのです。  時間がございませんので、あと一、二点にいたしたいと思いますけれども、先ほど私が申し上げましたように、沿岸と沖合いとが利害が衝突する。そのときに調整の原則は何かということをお尋ねをいたしました。それからもう一つ、沿岸が沖合いへ出ていくというようなことが構造改善の中ではもうはずされてしまって、沿岸は沿岸の中で何とかやっていけ、そのような考え方が構造改善の計画にあるのではないかという危惧も表明をいたしましたけれども、たとえば先般、去年の夏の漁業法の改正のときに私お尋ねをいたしました小型底びきと沿岸漁業との調整の問題であります。形式的には小型底びきとの調整の問題ですが、具体的に申しますと、小型底びきと沿岸漁業との操業区域というものは、一応県なら県の規則できまっておる。そのきまっておる調整の原則は何に基づいたのか知りませんけれども、それはやはり少なくとも沿岸漁民は殺さないということを基本的なかまえとして、そういった意味の社会正義を基本にして私は調整をきめたのではないかと思う。そうでなければいかぬと思うんです。それであるにかかわらず、実はこの底びきが定められた海域を越えて沿岸に不必要にといいますか、法令に違反をして接岸をしてくるということが非常に多い。そしてそういうことによるトラブルがおそらくはあちらこちらにあるに違いないと思うんです。そのときに調整の原則、そしてそれが沿岸漁業振興、構造改善とどう結びつくかということに関連をしてお尋ねをいたしたいのですけれども、具体的に申しますと、新潟県の場合にこの小型底びきの夜間の操業を許しておる。夜間の操業を許しておるために、いわば夜陰に乗じて接岸をしてくるという事態が起きるわけです、この点について、前の伊東水産庁長官は、違反操業の原因になるようなものはこれからなくしていきたい、そして夜間操業を許しているところと許していないところとがあるから、そういうものは統一的な指導をしたいという御答弁でありましたが、そのことについてどのようにお考えになっておるか、お伺いをいたします。
  124. 庄野五一郎

    庄野政府委員 沿岸漁業の中におきまして、いわゆる沿岸に接着して一木釣りだとか、あるいははえなわだとか、あるはタコつぼだとか、沿岸漁家を中核にするような漁業と、それから沿岸の中でも小型底びきといったように、多少沖合いにおいて底びきを営む漁業とがあるわけでございまして、その調整の問題は非常に困難な問題でございます。この問題は越佐海峡のみならず、紀淡水道だとか、あるいは豊後水道だとか、あるいは北海道等におきましても問題があるわけでございまして、長年のいろいな紛争の経過を経て、今日いろいろ禁止区域の設定あるいは禁漁期間の設定、操業期間の制限、そういった調整が行なわれてきておるわけでございます。それは漁業調整規則によりましてそういった調整をしておるわけでございまして、先生が御指摘になりますように、やはり社会正義という問題と経済の経営の問題というものとの一つの衝突のあらわれかと存じておるわけでございます。いずれにいたしましても、沿岸におきまする漁業があるということと、やはり小型底びきの漁業があるという現実の姿を考えながら調整をはかってまいらなければならぬと思います。いずれにも社会正義がそれぞれあるのではないかと思いますが、その調整が非常にむずかしいわけであります。越佐海峡の御指摘のような夜間におきます操業等につきまして違反漁業が多いということで、この取り締まり等にわれわれは非常に苦心しておるわけでありますが、夜陰であるとかいうようなことで、なかなか取り締まりの実があがらない面もあろうかと思います。違反があれば必罰主義で、厳罰に処するという方針は、再々国会におきましても申し上げましたとおり、前長官、私におきましても通じた方針で、その違反漁業に対する処罰は厳重に行なって、こういうことのないようにというふうに考えております。要は、やはり資源が非常に問題になってくるわけでありまして、少ない資源をいかに分け合うかという配分の問題になろうかと存じます。いずれにいたしましても資源の造成等もあわせ考えながら、両方の主張をよく聞きまして、さらにこういう問題につきましての調整をはかってまいりたい、こういうように考えております。
  125. 松井誠

    松井(誠)委員 いま全国的に、夜間操業を許しておるところと許していないところの統計的な資料はございませんか。
  126. 和田正明

    ○和田説明員 小型機船底びきの夜間操業の禁止は、現在都道府県の漁業調整規則でやっておりますが、全面的に夜間操業を禁止しておりますところは現在四県、なおその四県のうち、一、二の県はすでに関係の海区調整委員会で決定をいたしまして、近く一部について解除の予定だという報告が参っております。全く禁止をしておりません県が十八都道府県、種類によりまして一部禁止しておりますのが十七県であります。
  127. 松井誠

    松井(誠)委員 種類によって禁止をしておるというのは、具体的にはどういうことを意味するのですか。
  128. 和田正明

    ○和田説明員 県によって違いますけれども、小型底びきの中に、たとえばナマコをとるような底びきでありますとか、自家用の餌料をとりますとか、あるいはエビをとりますとか、そういう小型底びきの中の種類に応じて地方地方実情に即して解除したり禁止しておるということであります。
  129. 松井誠

    松井(誠)委員 具体的な、実例を言いますと、実際にやってくるのは、小型ではなくてむしろ十五トン以上の中型の船がやってくる。昼やってきて、沖の方に昼寝しておって、夜になると動き出す。これは夜動く魚をとろうという意味じゃなくて、接岸しやすいから夜動いてくる。船の位置は、なるほど遠くにあるようですけれども、網はずっと接岸をしておる。千間というのですから、二千メートルくらい船から長い網を接岸させて底びきをする。そのためにほんとうに稚魚が根こそぎ持っていかれる。そのために年がら年じゅう紛争が起きる。その底びき船を追いかけ、船の上に飛び乗って傷害事件が起きる。漁村を回ればそういう訴えばかりです。それはやはり何としても夜間操業を許しておるというそのことにかかっておるわけです。取り締まりを厳重にするに言いますけれども、夜間ですからさて取り締まりの船が来るように手配をすればもうそのときにはいない。ですから、夜間操業を禁止することによってこの底びきが立ち行かないという合理的な理由があるのならば、これはまた話は別でしょうが、しかしそれにしても、沿岸漁民が食えないのと、底びきが食えないのと、その数からいって、つまり社会正義というものを基本にする限りにおいては、やはり沿岸漁民の利益を主にしなければならぬと思います。なるほど底びきは能率的な漁法でょう。しかしそういう経済的な合理性ということのために沿岸漁民の生活が犠牲にされていいというはずはないと思う。ですから、そのような具体的な実例というものをひとつお調べになって——底びきというものは能率のあがる漁法なんだという経済的な合理性一本やりの考え方でいまの沿岸漁業というものを律せられるということになりますと、たいへんなことになりはしないか。そういますと、それじゃ沿岸漁民も底びきをやればいいんじゃないか、沖合いに出ればいいじゃないかと言いますけれども、には一体この構造改善事業の中で小さい沿岸漁民が沖合いに出ていくような具体的な措置の裏づけがあるのかということになると、たとえば漁船なら漁船の建造の問題にしましても、私は必ずしもいままでとは格段に違った保護助成の政策がとられておるとは思わぬのです。時間がないので大体終わりにいたしますけれども、さらに漁業金融の問題とかあるいはその他の問題について、実際この法律案ができることによって、いままでの沿岸漁業振興策と具体的にどこが違うのか、どれだけが違うのか、ただ、いままでやったことを成文化するにすぎないのではないかという疑いがあります。  最後にお伺いをいたしますが、この法律案というものは沿岸漁業の振興にとってまさに画期的な措置予定しておる法律案と考えていいのかどうか。現実には漁船の問題にしても、漁港の問題にしても、おそらくは変わりばえのしない政策しかいまとられていないと思いますけれども、あるいは漁業金融の問題にしてもそれほど格段の違いがあるような気配も見えませんけれども、その全体を含めて、この法律案沿岸漁業振興にどれだけ役に立つかという、抽象的なことになりますけれども、その決意を最後にお伺いいたしたいと思うのです。
  130. 庄野五一郎

    庄野政府委員 われわれといたしましては前向きの姿勢で対処していきたい、こういうふうに考えております。
  131. 松井誠

    松井(誠)委員 最後にするつもりでしたけれども、そういう御答弁ではこれで終わりにするわけにはまいらない。ですから私は、そういう内容の空疎な答弁というのはこの法律案がお経だといわれる一つの原因ではないかと言うのです。なるほど数年来沿岸漁業の振興ということを一つの重点施策にはしてまいりました。まいりましたけれども、しかしそれでもうまくいかないという現実があるわけです。ですから、ここで飛躍的に政策を強化するのだという決意がなければ、この法律ができたけれども、いままでやった政策、法律案というものをただこれでまとめたということにすぎないならばお経だと思うのです。前向きということばはいろいろな意味に使われるでしょう。しかしほんとうに食えない漁民がともかく食っていかれる、言ってみれば人間としてのぎりぎりの線というものはこれで何とか保障ができるのだ、それくらいは水産庁長官として言明ができませんか。具体的な裏づけのことはまたあとでいろいろお聞きする機会があると思いますけれども……。
  132. 庄野五一郎

    庄野政府委員 具体的に申しますと、構造改善対策事業をこの法律によりまして裏づけをしていただきまして、その中の実施の問題といたしまして大型魚礁の公共化、その事業費の拡大をはかる、あるいは融資の方途といたしましては構造改善対策資金の融通、三分五厘の低利資金のワクの確保をはかる、われわれは具体的に拡充の姿勢で進めたい、こういうふうに考えておるわけでございます。なお、漁港等につきましてもいろいろいま研究会等を設けて、機能施設、基本施設、その他運営の現状を洗いながら、御指摘がありましたような補助率のアップ等も含めましていろいろ検討しておるわけでございまして、今後沿岸漁業構造改善あるいは中小漁業の振興方策というものにつきましてさらに拡充し、具体的な方向で進めたい、こういうふうに考えております。      ————◇—————
  133. 長谷川四郎

    長谷川委員長 参考人出頭要求の件についておはかりをいたします。  ただいま審査中の内閣提出にかかる甘味資源特別措置法案及び芳賀貢君外二十六名提出、甘味資源生産の振興及び砂糖類の管理に関する法律案の両案審査のため、参考人の出頭を求め、その意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  134. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  なお、日時及び参考人の人選につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  本会議散会後再開することとし、この際休憩いたします。    午後一時二十六分休憩      ————◇—————    午後四時十八分開議
  136. 長谷川四郎

    長谷川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出にかかる沿岸漁業等振興法案外四件について質疑を続行いたします。仮谷忠男君。
  137. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 私は政府提出沿岸漁業等振興法案並びに社会党提出漁業基本法案外二案についてお伺いをしたいと思うのです。  まず、政府提出沿岸漁業等振興法案についてお伺いをいたします。時間の関係もございますから、前置きは抜きにいたしまして、単刀直入にお伺いいたします。  まず第三条の政府の基本的な施策の方向でありますが、そこに八項目が規定をいたされておりますが、なお私は基本的な問題として二、三追加をしてお伺い申し上げて、所見を承っておきたいと思うのであります。これはすでに先日来からいろいろ同僚議員から御質問があったことで、あるいは重複するかもしれませんけれども、この際もう一度政府考え方を確認いたしておきたいと思う。  第一点が水質保全と漁場喪失に対する対策の問題であります。御承知のように日本経済の目ざましい発展、それによる土地造成、工場排水あるいは農薬の使用の増大、こういうものが水質汚濁と漁場の荒廃、喪失等に将来重大な影響がある。今後の沿岸漁業対策上特に構造改善事業を推進する上において、放任することは絶対にできない問題である、基本的な問題として考えなくちゃならないのじゃないかと思うのであります。いたずらに他の法律に漫然とゆだねるというのではなくして、この際積極的に明文化をする必要があるのじゃないか、こういうふうに考えます。これが一点。  時間の都合がありますからまとめて伺いますが、第二点は、農業基本法の十四条には、農産物の輸出振興に関する一条が設けられておる。水産物の輸出は全輸出額の六%程度で、その面から見ますときわめて少ない額ではありますけれども、御承知のようにカツオ、マグロといったようなものは全漁獲高の半分以上が輸出に依存をしておる。あるいはまた真珠養殖のごときはそのほとんど大部分が輸出に依存をしておる。したがってこれら漁業というものは、輸出を振興すること自体が漁業の振興に直結をしておる。さらに国内市場価格というものはやはり輸出価格にささえられておる。こういうふうな点を考えてみると、これまた重要施策として当然規定すべき問題ではないかと思うのです。さきの長官の答弁についても、その問題についてはいろいろ積極的な考え方を持たれておるようでありますが、それならなおさら一応明文化をしておくことがいいのじゃないか、こういう考え方を持ちます。なお輸入水産物調整の問題でありますが、これはもちろん農産物の場合とは若干趣を異にすることは承知をいたしておりますけれども、ただ競合関係にあるたとえばノリとか一般大衆魚、こういうふうなものは今後の漁業構造改善を進めていくその目的達成上からいっても、これまた局部的ではあるけれども捨てておけない問題ではないか、こういうようなことについてどういう考え方を持っておるか、いま一度はっきり承っておきたいと思うのであります。  第三点は、社会党の基本法にもうたわれておるのでありますが、「災害による損失の合理的な補てん等によって、経営の安定を図る」というのが五号に記載せられておるのでありまして、一応これで御趣旨はうたわれておるとは思うのでございますけれども、合理的な補てん制度というもの、これは漁船保険は別といたしましても、その他の漁獲あるいは漁具といったような制度というものは確立をされていないのでございます。これまた漁民のきわめて関心を持ち要望をしておる問題でありますから、やはり積極的に漁業制度の確立といったようなものも明定をする必要がある、こういう考え方を持ちます。さらに漁船の遭難防止の措置、これまた沿岸漁業等の特殊性に基づく施策として、一応その態度を明確にしておくことはどうか、こういう考え方を持つものでありまして、以上三点について水産庁当局の考え方をもう一度伺っておきたいと思うわけであります。
  138. 庄野五一郎

    庄野政府委員 政府提案の沿岸漁業等振興法案につきまして三点御質問があったわけでございます。  水質保全の点につきましてお答え申し上げます。  政府提案の沿岸漁業振興法によりましては、第三条一号に「水産資源の適正な利用、水産同植物の増殖等によって、水産資源の維持増大を図ること。」こういうふうにうたってございます。端的に水質保全ということばを使ってございませんが、この条項によりまして水質保全の要は結局水産資源の維持増大にあろうかと存ずるわけでございまして、水産資源の維持増大をはかる国の基本方針にのっとりまして、政府といたしましては水質の保全等も十分汚濁を防止していきたい、こういうように考えております。その実質的な方法といたしましては、御承知のように水質汚濁防止に関する法律と工場排水等の規制に関する法律の二法によりまして、水質の保全を河川ごとにあるいは沿岸の水域、海域を指定いたしまして、河川または沿岸海域の水質保全を現在におきまして調査し、江戸川あるいは石狩川等水質基準がすでにつくられて、その基準によりまして、水質の汚濁を食いとめる、こういうふうな措置をやっておるわけでございまして、政府といたしましては、いま申しました水質二法の運営によりまして、第三条の一号によります水質保全を実施いたしてまいりまして、よく水産資源の維持増大をはかってまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  それから第二点の水産物の輸出の促進及び輸入の抑制等に関します諸点につきましては、輸出につきましては、御指摘のように水産物は日本の全輸出額の六%を占めるわけでございまして、そのうちでも真珠等はほとんどが海外輸出に依存しておる、それからマグロの冷凍あるいはマグロのかん詰め、サケかんあるいはカニかんといったようなものの相当部分が海外に輸出されておるわけでございます。こういう点につきましては、第四号の水産物の流通の合理化、価格の安定といったようなことをうたってございますが、それによりまして輸出促進をはかるということを考えております。要は、やはり生産性を高めて生産価格の安定をはかり、したがってそれによりまして加工施設あるいは流通機構の整備をやって製品の適正な価格形成をいたしまして、それによりまして輸出水産物の輸出振興に関します法律等によって輸出協同組合、輸出組合あるいは輸出を扱います共販会社を通じて無用な国内競争を排除して海外の輸出の伸長をはかるということを考えております。なおその先決の問題といたしましては、海外の市場の調査といったような点を実施する、そういう面において輸出の振興を今後とも促進してまいりたい、こういうふうに考えております。なお輸入の点につきましても、御指摘のように輸入の抑制ということばは入れてございません。第四号の運営によりまして、水産の輸入等については適正な措置を講じていきたい。これは御承知のように自由化関係で、まだ自由化していないものが、御指摘のようにノリとか、あるいは沿岸漁業の競合のブリ、アジといったようなものがございます。こういうものについては国内沿岸漁業等の影響が非常にあるわけでございまして、こういう面においては自由化に際してよく慎重な態度をとらなくちゃならぬと考えておりますが、また将来におきまして、関税の問題あるいはそれを受け入れます場合のいろいろな受け入れの方法等があるわけでございまして、適正な措置によってそういう問題を解決していきたい、こういうふうに考えております。これは輸出入を総観いたしまして、日本の水産業が輸出に依存する面が非常に多い。こういう面を考え、相手国に対する問題等もありまして、輸入を制限するあるいは抑制するというような刺激的なことばを用いまして輸出の伸長がはばまれるというようなことのないように、水産物の流通の合理化ということと、そういった輸出の促進と、輸入に対する慎重な態度をとる、こういった方途をわれわれとしては措置したい、こういうふうに考えております。  なお「災害による損失の合理的な補てん等によって、経営の安定を図ること。」災害対策としては、第五号にうたってございますが、これによりまして、いま実施しておりますのは漁船の保険を中心といたします漁船損害補償法でありますが、これはさらに制度の拡充なり運用の改善をはかっていく、こういう態度でございます。なお漁獲物の共済、あるいは漁具、漁網の共済につきましては、ただいま、三十二年と思いますが、三十二年から試験的に実施いたしております。それでこの実施の状況をただいま十分検討いたしまして、三十八年で一応試験実施の段階が終わるわけでございますので、三十九年度からこれを制度化して法律にしていきたい、こういうことで研究会を設けて鋭意研究いたしております。大体七月末を目途に成案を得るように努力をしている段階でございまして、漁業共済の制度化ということも十分考えておるわけでございます。なおその他災害によりまして経営の不安定を来たすことのないように、災害融資あるいは激甚災に対しまする補助といったような点もさらに拡充してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  139. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 漁船の遭難防止についての御答弁はなかったようでございますが、いずれにしてもきょうこの問題で議論をしようとは思っておりません。ただ、ただいまの御答弁は、午前中と同じような御答弁をなさっておるのでありまして、私がお伺いをして、それだけ時間をかけて長官が御説明をしなければならぬというところに、この法律案に漁民感情として割り切れないものを感ずるわけであって、それだけ積極的なお考え方を持っておるなら明文化したらいいじゃないか、こういうわけです。私はこれ以上申し上げません。いずれ小委員会等でゆっくり意見等を申し上げることにいたしましょう。  時間がないから続けますが、次は八条、今度は漁業構造改善裏業について具体的に若干お伺いをしてみたいと思う。まず全体として構造改善の要綱等を見て考えますことは、この構造改善が一県一地域ということになっております。このことは、漁業の持つ特殊性からいってやむを得ないと思うのでありますが、ところで、補助総額は三億以内、こういうことになっておる。三億以内という金額の基準ですね、どこから割り出したものか、どうですか。
  140. 庄野五一郎

    庄野政府委員 沿岸漁業構造改善事業につきましては、大体四十二海区、これは北海道は三海区、長崎は二海区、その他は一海区ということで、この海区を区別いたしまして、海区の実情に合った振興対策を十年間継続して行なう、こういうことに相なっております。この改善事業補助、助成いたしまする事業と融資によって行なう事業の二つに分かれておるわけでございますが、補助によりまする事業はおおむね一海区三億、こういうことに御指摘のとおりなっております。これはおおむねでございまして、海区の実情によってはこれを上回るものもあり、多少は下回るものがある、こういう考えでおります。十年間にこれを順次実施するわけでございまして、一海区につきましては三億、四年間に行なう、こういうことになっております。大体三億という基準はめどでございまして、基準はどうだと言われますと、大体その海区の計画を県からとって、漁場改良とかあるいはその他の養殖事業というような事業がございますが、そういうものを平均いたしましておおむね三億程度、こういうことに相なっておりますので、それを基準にいたしまして十年計画を立てたわけでございます。
  141. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 そういう御答弁しかできないと思うのでありますが、おおむねきめたと言われるのであります。大体一海区の構造改善計画というものは、補助金は三億以内、こういう一つのワクをきめて、それであなた方は計画を立てさしているのです。ほんとうに計画を立てようと思ったら、こんなことでできようはずはない。しかも平均三億というのを上回るところがあるかもしれませんが、大体下回るところが多いでしょう。そういう問題を考えまして、これはもちろん多いにこしたことはありませんけれども、むちゃくちゃなことを言うわけではありませんが、ただ農業構造改善とひとつ比較をしてみようじゃありませんか。農業構造改善は一町村一億二千万で三千二百ですか、そうしますと、十カ年間に三千二百億です。三億平均にして四十二地区でしょう。一カ年百二十六億です。漁業構造改善事業事業費をかりに六億と倍にしても二百五十億でしょう。農業構造改善三千何百億、漁業構造改善二百五十億。こういうように、私は比較してとやかく言うわけじゃありませんけれども、全く一つの形式のような感じがするわけです。いまさら特別にふやせということを言ってもいけないかもしれません。補助率を特別に倍にせよということを言っても困難かもしれませんけれども、そういった面にいささか机上計画的な面があるのではないかということを現実の問題として申し上げたいのです。そこで、一応それはそれとして、そのワク内でやらすことといたしますれば、問題はやはり融資の面で大幅にこの短所を補っていかなければならぬ。そこで改善事業の要綱を見ますと、単独融資事業というのがある。これは近代化の事業に貸すということになっておるのですが、一体単独融資事業というのはどの程度のものですか。これも一定のワクにはめられておるのですか。
  142. 庄野五一郎

    庄野政府委員 三十八年度におきましては、沿岸漁業の構造改善事業の推進資金として単独融資につきましては、約八億を予定しております。なお、先ほど申しました改善事業補助事業の融資残としては約二億を考えて、この構造改善対策事業の国の補助と相まって融資によりまして十億の金を用意しているわけでございます。単独融資のものは、一地域大体七千万円といたしまして、ことしは五地域予定しておりますので、一地域三億五千万円程度、これで金利は三分五厘、償還期限十七年でございますか、そういう三分五厘という低利の金利によってこれを行なうという考えでございます。
  143. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 一地域三億五千万というのは、融資ワクですか。大体補助総額三億以内、そうすると、補助率五〇%として大体事業は六億ですな。六億プラス融資額三億五千万というわけですか。
  144. 庄野五一郎

    庄野政府委員 ちょっと説明に私間違いがあったかと存じます。総ワクで八億でありまして、昨年から事業実施しております五地域と、本年事業実施になります八地域、十三地域を予定しております。大体昨年から事業開始しております五地域に重点がいこうかと存じますが、あとの八地域はことしから事業を開始するわけでございます。重点は昨年からのほう、こういうふうに考えております。なお、一地域につきましては大体のめどは立てております。必ずしもそれに限定されるものじゃございませんが、大体のめどとして一地域一年間四千五百万円、これはこれ以内ということじゃありませんで、前後ということであります。これは年間でございます。それで五年間これを継続する、こういうことになりますから、二億五千万円前後、こういうことに相なろうかと存じます。
  145. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 それではもう一度確認をしておきますが、大体計画期間内で融資額が二億五千万円程度、それから補助総額が三億円、事業費にして大体六億くらいになりますか、そういうことが考えられるわけですね。
  146. 庄野五一郎

    庄野政府委員 大体補助事業につきましては三割ないし五割の補助、こういうことになります。平均いたしまして四割というふうに考えますと、三億の倍、こういうわけにはいきませんが、五億多少になろうかと思います。それが構造改善の中で地域ごとにやる事業でございます。なおそのほかに漁場改良事業として構造改善事業に先行投資として漁場の造成をはかる、こういうのを並行してやっております。それも構造改善の計画にのっとって全国規模でやっておるわけでございますが、そういうものを入れますと六億をこす、こういうことになります。
  147. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 午前中松井議員からの御質問で、この法律によって漁業対策が思い切って推進ができるか、大改革ができるか、こういったような御質問があったのですが、率直に言ってわれわれもこれによって大きく前進する、漁民が期待しておる沿岸漁業対策というものはそうできぬのじゃないか。施策の内容を見ましても、従来一応みんなで議論されてきたものが羅列されておる程度である。そういたしますと、それかといって奇想天外の施策があろうはずはないのですから、私はこれを着実に進めていくということが一番必要だろうと思う。そのために漁民として一番魅力を持つものは、補助率を増大をしてもらいたい、融資をワクを大きくしてもらいたい、そして金も借りられる、補助金ももらえるというところに漁民自体の一つの魅力がある、期待があるわけです。それが今日の程度——わずか三億円の補助金あるいは二億五千万程度の融資といったようなことでは、少なくとも一県一地域の場合においてはたして何ほどのことができるかという問題について、われわれは非常に遺憾な点があるわけでありまして、これは早急に、ではいま直ちにこのワクを増大しなさいということを言ったところでできようはずがないと思うのでありますが、将来こういった面で十分ひとつ御検討をいただきたい。特に農業改善の問題と比較をいたしまして、少なくとも基本法にかわる沿岸漁業振興法ができるのでありますから、漁民の期待にこたえるような、せめて積極的な今後の御努力をお願いいたしたい、こういうふうに考えておるわけであります。そこで次に移りますが、八条の二項の重点施策の中に、「生産性の高い漁業への転換及び漁場の利用関係の改善」というのがある。これも午前中の御質問にもいろいろ出たようでありますが、私はこの第一号の問題は単に沿岸漁業だけの問題でなくして、やはり中小漁業にも関連する問題であろうと思うのであります。漁業転換といえば、まずその事業をする前提として、考えるべき問題は、やはり許可の問題、免許の問題、これを考えなければならぬと思う。従来漁業の転換といえばカツオ・マグロが何か代表的なもののようになってきておりました。また政府もそれを終着駅としていままでいろいろ取り扱われてきたように考えられます。おそらく今後といえども、私は転換の問題もいろいろとお考えがあろうと思うけれども、結局それ以外の方法はないのじゃないかということが現実の問題として考えられるわけであります。ところで政府はこの制度改正前に中型カツオ・マグロの新規許可要綱というものをおつくりになった。そしてすでに、しかも二万トン余りの転換を実施をされたのであります。そこでまず伺いたい。私はこの二万トンの転換の問題につきましてもあとで少し検討を加えてみたいと思うのでありますが、まず先にお伺いいたしたいのは、そういうふうにしてすでに制度改正に先行して実施をされたのでありますから、今後この法案を実施しようとする場合において、この問題が再び起きてくると思う。さらに具体的にどういう転換策を持っておられるのか、そういった問題についてこの際基本的な考え方を承っておきたいと思う。
  148. 庄野五一郎

    庄野政府委員 沿岸漁業の構造改善事業を進めてまいります場合、いま御指摘のように生産性の高い漁業への転換ということは十分考えなくてはならぬかと存じます。御指摘のように中型カツオ・マグロの転換を昨年からことしにかけて実施をいたしたわけでございまして、ただいまその実施状況を見守っておるわけでございます。こういう沿岸から遠洋への中型カツオ・マグロの操業がどういう動きを示すかということをわれわれは実施をよく見守りまして、その結果をよく判断したい、こういうふうに考えておるわけでございます。  なお、カツオ・マグロのほかにもわれわれの考えます分としましては、やはり沖合いに出ていく場合の遠洋の底びきの転換、そういったものも考えられようかと存じます。日本海サケ・マスの流し網、これに従事しておるのはほとんど沿岸の漁民でございますが、そういう日本海サケ・マスの流し網からもカツオ・マグロにも一部転換をした、あるいは北洋の底びきを遠洋に転換する道を開くとか、そういった道を順次開きながら、沿岸からまた沖合いに出る、そういうことも考えなくてはならぬかと存じますが、なお生産性の高い漁業への転換ということには、そういう漁業形態の変わるマグロ・カツオにかわるばかりでなく、沿岸におきましても、今後非常に進展が期待されておりまする養殖漁業といったような面にも転換を考えたらいいじゃないか、こういうふうにわれわれ考えて、こういう面からの計画を構造改善事業の中に大きく取り上げて実施していきたいと思います。
  149. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 さきの転換の実績ですか、それを見守りながら今後考えたい、それを見守ってあとで新しい転換の構想を立てていくというお考えだと思うのでありますが、私は、この問題は一応転換策として打ち出されたものの、実質的にこれを漁業構造改善事業でやるという熱意に燃えてきた場合、これは真剣に対策を考えておかないと非常にお困りになるのじゃないか、こういうふうに思うのであります。そのためにはやはり許可制度の根本的な再検討というものも、これは非常にむずかしい問題であるけれども、取り組んでいかなければならぬ問題だと思うのです。そこで、さきの転換策の実施を見守ろうというお話もございましたから、それではさきの転換策、いわゆる二万トンの問題について、それがどういう形にいま実施をされておるか、少しく検討を加えて正しい評価を求めておきたい、こういうふうに私は考えておる。そこでまずお伺いいたしたいのですが、さきに新規二万トン余り——こまかい数字は存じませんけれども、やられたのですが、最終的な割り当ては一体どうなっておるのですか。業種別にひとつ承りたい。
  150. 庄野五一郎

    庄野政府委員 中型カツオ・マグロの新規の許可でございますが、総ワクで二万九百トン、百トン型にいたしまして二百九隻、こういうことに相なっております。詳しい資料は小委員会までに提出いたしたいと思っておりますが、大体の数字を申し上げて、もし間違いがあれば訂正さしていただきたい、こういうふうに考えております。サケ・マス漁業からの転換といたしまして一万五百トン、それから沿岸漁業の新規のワクといたしまして三千八百トン、それから中型底びき網漁業からの転換分といたしまして二千九百トン、まき網漁業からの転換といたしまして一千四百トン、日本海サケ・マス漁業からの転換といたしまして千二百トン、それから特別にフィジー島の基地漁業といたしまして千百トン、合計二万九百トン、こういうふうに記憶いたしております。
  151. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 その後の転換の進行状況を各漁業種別にひとつお伺いいたしたいと思います。
  152. 庄野五一郎

    庄野政府委員 これもいま詳しい資料を持っておりませんので、小委員会までに企業の認可あるいは建造許可といった点を取りそろえてお答えしたいと思います。なお、沿岸漁業等につきましても、すでに建造許可なり認可をいたしまして、あるいは既存の百トン型の船を購入して徐々に操業についております。で、沿岸漁業につきましては、この海外基地漁業で行なうもの、あるいは内地基地で単船操業を行なうもの、あるいは母船と共同して行なう母船式マグロの系列に入るもの、そういったものがあるわけでございまして、いま詳しい数字を持っておりませんので、次会までに資料でお答え申したいと思います。
  153. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 それじゃあとで詳しい資料をいただきたいと思います。  これだけはわかるでしょう。権利の横流しを防止するために大体各県には公社の設立条件というものをつけて、それで幾ぶんか配分をいたしておるわけでありますが、各県の公社の設立状況、それはわかるでしょう。
  154. 庄野五一郎

    庄野政府委員 ただいま三県を除きましてあと全部設立が終わっておる、こういうふうに承知いたしております。
  155. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 あとで設立できていない三県をお知らせいただきたいと思います。  それから次は、これはいやなことを聞くようでありますけれども、権利の横流しというものをやった事実はないか。もしそういう事実があったとすれば、これは許可目的に反する。許可の取り消しということをいたしますか。
  156. 庄野五一郎

    庄野政府委員 特に沿岸漁業には新規の許可でございますので、権利の横流しのないようにという配慮をも考え、また中型カツオ・マグロの操業によります利益が関係沿岸漁業に均てんできるように、こういった考えもありまして、県に公社の設立を指導し、公社にマグロの許可を出す、こういうふうな配慮のもとに権利の譲渡ということを防いでおります。その他転換に対しまして許可いたしましたカツオ・マグロの新しい許可につきましても、これを新規の許可補充トン数に使えない、こういうような考え方で、新規のそのままの譲渡ということのないような道を講じたわけでございます。特に沿岸漁業につきましては、公社等の設立によりましてそういうことのないことを期して強く指導をいたしております。
  157. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 海外基地漁業というのが、フィジーですか、千百トン許可されております。これは何漁業からの転換ですか。
  158. 庄野五一郎

    庄野政府委員 千百トンがフィジー基地漁業許可してございます。これは特に転換ということでなしに、海外漁業の移住という考え方での新規の許可でございます。
  159. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 それじゃ特定業者に対する特定配分という意味ですか。沿岸漁業の転換は多いところで二隻、二百トン、少ないところで一隻、百トン。まだ一隻も割り当てがないところもあると承知をいたしておるわけでありますが、沿岸漁業の転換対策としてこのカツオ・マグロの新規許可というものは、各県がほんとうに真剣に考えておる問題であります。わずか二隻くらいの割り当てをもらって公社をつくって、これから先どうして二隻で運営をしていこうかという大きな悩みを水産県は持っておるわけです。それだけ漁業転換として、率直に言ったらのどから手の出るほどほしい権利なんです。これが海外基地漁業という名目で、特別に漁業転換でもなしに新規に許可をされるということについて、私はそういう点についてきわめて水産庁の水産行政上の真意を疑いたくなるわけです。この問題は、私はとやかくこれ以上申し上げたくないと思っておりますが、じゃしからば将来そういうふうな問題が各県や各地域から出た場合に、同じような措置を水産庁としてはとられるかどうか、お伺いしたい。
  160. 庄野五一郎

    庄野政府委員 フィジーの基地漁業につきましては、海外移住というような観点で漁民が海外に長期に移住して、そこで漁業を営む、こういった点は沿岸漁業から転換あるいは進出するという観念になるわけでございます。そういうような観点で、海外基地におきまして海外移住の性格を持って漁業を始める、こういった場合にこのフィジーは当たるわけでございまして、そういう観点から割り当てをしたわけでございます。同様のものがあれば、今後とも考えてまいらなくちゃならぬかと存じております。
  161. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 九十九トン型に対する問題でお伺いいたしたいと思うのでございますが、これは中小漁業の問題にもなると思うのでありますけれども、やはりこの許可との関連を持っておりますからお伺いをいたしておきたいと思います。この問題は、昨年の二月に当時の長官と私との間でいろいろ質疑応答が行なわれて、きょうは速記録も持ってきておるわけでありますが、時間の関係もありますからそれも格別読むのは省略いたしますが、この九十九トン型に対する最終的な取り扱い、これはどういうふうになされておるか。
  162. 庄野五一郎

    庄野政府委員 九十九トン型の大型化の問題につきましては、漁業法の改正によりまして従来抑制されていた壁が除かれて、九十九トン型から百トン以上に大型化できる道が開かれたわけでございます。これにつきましては、許可方針によりまして補充トン数を一部使うことによりまして大型化していく、こういう道が開けたわけでございます。一般の大型化と同じ基準によりまして、大型化の道を開いております。
  163. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 もう少し具体的に、じゃどの程度まで大型化できるか、今後どういう措置をとられるか、それをひとつお聞きしておきたい。
  164. 庄野五一郎

    庄野政府委員 九十九トンが大型化する場合は百八十トンまで上がります。それでその船で継続三年以上同一所有者が経営している場合は補充で上がれる、こういうことになっておるかと記憶いたしております。
  165. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 百八十トンまで無補充で上がれるという線は漁業法改正以前から抽せんで一応できておったわけです。漁業法改正の目的は権利の売買を廃止しようあるいはまた百トンラインを撤廃して十年間不自然な許可方針によって押えられてきたそういう人々に生きる道を与えてやろう、こういった点にも改正の大きなねらいがあると思う。じゃ従来の方針と何ら九十九トンの大型化について取り扱いは変わってはおりませんか。
  166. 庄野五一郎

    庄野政府委員 九十九トン大型化については、先ほど申しましたように法律でできなかったのが今度道が開かれて、その道によって大型化される、こういうことになったわけでございまして、許可方針といたしましては、船齢の古いものから優先いたしまして、三年以上同一所有者が経営しているという場合に百八十トンまで無補充で上がれる、こういうことになっております。従来は抽せんあるいは遠洋との交換というような道があったわけでございますが、一定の資格があれば無補充、それから一定の資格が欠ける場合は一部補充を要する、こういうような方針になっております。
  167. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 じゃ質問をあらためますが、中小漁業と言う場合に中と小とはどこで区別するのですか。
  168. 庄野五一郎

    庄野政府委員 中小漁業、こう言うのは沿岸漁業との区別でございまして、中と小との限界がどこにあるかという御質問でございますが、明確にその点は区別してございません。中小漁業と申しますものの中には、午前中お答え申しましたような基準以下の漁業で、沿岸の漁船漁業であれば十トン未満が沿岸になりますから、それ以上のもので千トン未満、こういった幅の中に入るもの、こういうように承知しております。
  169. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 私の質問が悪かったかもしれません。中小漁業者と言わねばならぬのを漁業と言ったから悪かった。だから中小漁業者としても中と小との区別はなかなかつきにくい。ところがこの法律の趣旨はどこにあるかといえば、やはり零細小漁業者というものを助けていこうというところにねらいがあるのじゃなかろうか、こういうように私は思っておるわけです。そうすると、じゃどこで行政のめどを立てていくかといえば、漁業のいわゆる安定操業ですか、経営の安定ということをめどにして、そしてその経営安定は大体適正トン数、適正船型というものがあるはずです。適正トン数、適正船型によってどの程度以上のものが経営が安定する、どの程度以下のものがきわめて不安定である、こういうところに一つの基準を置いて、そこで中小漁業対策を考えていくべきではないか、こういうように思う。率直に言いますと、三百人とかあるいは千トンとかいうふうなことをいろいろ考えておられるようでありますが、これは定義としては当然でしょうけれども、たとえばカツオ・マグロの問題を一つ取り上げてみましても、三百トン級の船を持っておる漁業者というものはほとんど沿岸漁業としては大企業として考えられる。経営も一応安定をしておるわけなんであります。ところが百トンラインのものあるいは二百トン前後のもの、こういうものがまだまだ経営がきわめて不安定だということは一応水産庁としてもおわかりになるのじゃないかと思う。適正トン数だとか適正規模というものは一応めどが立っておるはずだと思う。それを、一応どの程度のところをめどに置いておるかということを承っておきたいのであります。どうですか。
  170. 庄野五一郎

    庄野政府委員 適正トン数、適正船型という問題でございます。これは漁業種類によりましても相当変わってくるかと思います。例をカツオ・マグロに引きますれば、やはり操業の方式によってもその適正トン数は変わろうかと思いますが、いまカツオ・マグロにおいて先生が御指摘のように、三百トンが安定している、こうおっしゃっておられますけれども、必ずしも、あれは三百トンで適正トン数、適正規模だとは考えておりません。操業の形態によって母船の系列に入る、あるいは内地操業をやる、そういうことによりましても適正トン数、適正船型というものが変わってこようかと思います。内地基地におきましても集団操業だとか一あるいは指導船にくっついていく、そういういろいろな操業の形態によりましてもこの基準は変わってくるかと思います。まだ、この問題は漁業権あるいは指定漁業権の一斉切りかえを行なうまでに十分検討いたしまして、そういう点のいろいろなバラエティーがあるかと思いますが、そういう点はよく検討させていただきたいと思っております。
  171. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 そういった面で検討されるというのですから、ぜひ御検討いただきたいと思うのでありますが、参考までに申し上げておきますけれども、大体二百四十トン級以上のもの、これはカツオ・マグロとしては大体安定した経営ができるのだ、こういうことが一つの常識になっている、そのことは水産庁自体お認めになっておられる事態ではないかと思うのです。いわゆる九十九トンの大型化、これをほんとうに中小業者として、今後その安定をはかっていこうという場合に、当然二百トン以上のものが安定をする形態だということは認めておられながら、それを百八十トンまで従来のままに押えるということは、これは中小漁業対策としても実際筋が通らないのではないか、そういうふうに私は考えた。こういう問題はもう少し御検討いただきたしと思う。  また、私の聞くところによりますと、二百四十トンまでは一応認めてやろう、ただしその場合に四十トンの補充トン数を自分でつくってこい、あとの二十トンだけは足してやる、こういうことを水産庁の内部できめておるかどうか知りませんが、私はそういうふうに開いている。そういうことが事実だということになると、なおさらその許可方針というものはきわめて矛盾した方向ではないかと思っております。そういう事実はあるのですか、御参考までに聞きたい。
  172. 庄野五一郎

    庄野政府委員 この船型なり船のトン数、改装区分というものにつきましては、やはり一挙に大きくなるということにつきましても、漁場の問題、資源の問題等も考えながら考えなければいけない問題だと思います。また経営の技術、経営のリスクの問題等も考えて、この大型化の場合の改装というものも考えておるわけでございます。先生が御指摘のようなことはないと思いますが、一応九十九トン型は百八十トンまで、こういうふうにランクを置いて、さらにその上へいく場合にはまた補充トン数を考えなくてはならぬかと思っております。
  173. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 この問題について、私はもう一つ問題があるからお伺いをしておきたいと思うのです。  百八十トンのいわゆる大型化には一定の要件が伴わなくてはならぬ。いわゆる木船は四年以上、鋼船は八年以上ということになる、これはまあいいと思うのです。ところがこれを昭和四十年一月三十一日までと時限にしてある、それまでにこの一定の要件に満たないものは大型化ができないということになっておる。そうすると、鋼船の場合は結局昭和四十年までにはその一定の要件を満たさないものがたくさんあるわけです。そういたしますと、これはせっかくの恩恵に浴することができないという形になるわけでありまして、大体大型化をする目的は何かといえば、いわゆる十カ年間許可方針によって押えてきた重量貧乏だ、これを今度ひとつ漁業法の改正に基づいて引き上げていこう、そして中小漁業者の経営安定をはかっていこうというところにねらいがある、そういうせっかくのねらいでつくったものが、鋼船と木船とによってそこに差別ができてきた、こういうことは私はその大型化の趣旨に反することじゃないかと思うのでありますが、その点どういうふうにお考えでありますか。
  174. 庄野五一郎

    庄野政府委員 この大型化の問題につきましては、従来の方針を一挙に、漁業法の精神によって変更していくということにつきましては、従来との経過で非常な不均衡ができるかと存じまして、三十八年から四十年まで、四十年から四十二年までと二段階に区切って、漁業法の改正の方向に即応するように漸進的に進もう、こういう配慮で二段がまえにいたしまして、四十二年以降は漁業法の精神によってこの大型化を処理する、こういう考えで、四十年に一段階を置いたわけでございます。そういう面におきまして、鋼船と木船の間に、御指摘のような問題があるかと存じますが、鋼船につきましては、御承知のとおりに資本投下等も多いわけでございまして、さらにそれを短期間にまた大型化するというような問題につきましても、今後の経営の問題に問題があろうかと存じ、そういう点を考えて、一応こういう基準をつくったわけでございます。
  175. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 一応何らかの形で線を引かないと、整理がつかないとは思うのですが、現時点においては、同じように網船と木船の違いだけで、九十九トン型という船を持っている。それが一定の期間内に、特別なものだけがその恩典に浴し得ないという形になることは、これは、私はやはり許可方針からいっても、どうも不合理じゃないかと思うのであります。一応四十年とか四十二年とかいう期限は切るべきでありましょうけれども、たとえばその後に、現時点においてやはり網船で一応残るものがあるとすれば、これは救済の道を考えてやるべきじゃないかと思いますが、どうですか。これはぜひ御検討願いたいと思いますが、どうですか。
  176. 庄野五一郎

    庄野政府委員 われわれの一つの問題といたしましては、大型化して経営を拡大し、安定の方向に向かうということも非常に重要なことでございます。それで、やはり漁船法によりまして、漁船の建造につきましても認可制、企業認可をやり、漁船の建造についても一応の整理をいたしておるわけでございまして、最近の情勢といたしましては、漁船建造が非常に旺盛でございまして、権利を持った船と、片一方においては権利のない船が非常にあって、こういった面の悩みがあるわけでございます。先生の御指摘のような面から見れば、木船と鋼船の間にいろいろ問題があろうかと存じますが、鋼船については、先ほど申しましたように、やはりこれについての適正な耐用年数があるわけでございまして、耐用年数の中におきまして、さらにこれを資本投下をしていくということにも、経営の問題とからんで、問題があろうかと存じ、先ほど申しましたような線を引いたわけでございます。なおこういう問題については、将来の問題でございますが、よく検討したいと思っております。
  177. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 将来の問題として検討をしてもらいたいと思うのです。  もう一つ、三十九トン型漁船の対策の問題、これも中小企業対策として大きく浮かび上がってくる問題だと思うのであります。最近の、特に遭難、あるいはそれに伴うところの乗り組み員の不足で、経営というものが限界点にきておるということで、相当漁民としては重大関心を持った問題でありますが、直ちにこの問題についての結論を出すということは、なかなかむずかしい問題でありますけれども、やはりこの問題については、相当に将来真剣な心がまえで臨むべきじゃないかと思うのでありまして、もしこういった問題についての御意見があれば、ひとつ承っておきたいと思うのであります。
  178. 庄野五一郎

    庄野政府委員 三十九トン型のマグロの問題は、御指摘のように航行安全の面から、非常に問題が起こっております。非常に小さな船で遠くへ出るといった関係で、積み荷等に非常な無理をするということで、トップヘビーの形になって、それが日本近海を出る、あるいは帰港する場合、日本近海の風浪の荒いところに行きますと事故を起こしやすい。こういう点で、そのために三十九トン型のマグロの乗り組み員もなかなか確保しにくい、こういった経営面にまで反映いたしております。こういう問題につきまして、運輸省あたりからも、遭難防止という面から、相当意見が出ているわけでございまして、これは緊急に処理しなくちゃならぬ問題だと思って、この問題につきましては、中央漁業調整審議会の中に小委員会をつくって、この問題の処理に、学識経験者の意見を聞いて、早急に処理対策を立てたい、こういうことで臨んでおります。
  179. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 午前中に松井委員からもお話がありましたが、底びきの問題でありますけれども、これは沿岸漁業との調整が非常に困難であることは、私どもも現実の問題としてよく承知をいたしております。ただ底びきというものは、将来整理する方針に向かっているということは、さきの転換の問題を見ましても、一応われわれは了解ができるわけであります。ただ漁業法の改正によって、これは漁業法の趣旨からいったら当然かと思うのでありますけれども、大海区といった問題がまた一つの線に浮かび上がってきているわけでございますが、この問題は、ややもすると従来の底びきの、いわゆる操業区域拡大という形になってあらわれるおそれもあるわけであります。沿岸漁業と底びきというものは、これは全く利害相反する問題であります。特に大型魚礁等を、今回は特に構造改善の重大な事業として取り上げて、積極的な施策を講じているやさきに、この問題との調整が将来の一つの大きな問題じゃないかと思います。私は少なくとも今後、底びきが沿岸、近海においてさらにその操業区域拡大していくという形には、絶対になるべきではないという考え方を持っております。禁漁区を拡大することは、絶対にあるべきではない、拡大してはならない、そういうふうに考えているわけでありまして、この点について、ひとつ長官の基本的な考え方を承っておきたいと思います。
  180. 庄野五一郎

    庄野政府委員 午前中は、禁漁区を拡大せよ、禁漁期間は延長せよ、これが社会正義の一つの問題である、こういうふうな御指摘がございました。午後は、禁漁区は拡大すべきじゃない、こういうふうなお話でございますが…。
  181. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 ちょっと待ってください。私が錯覚をしているかもしれないが、禁漁区というのは禁止区域ですね。
  182. 庄野五一郎

    庄野政府委員 禁止区域というのは、先生がどちらのほうから着目していらっしゃいますか、底びきのほうから申しますと、底びき操業をやってはいけない区域になっているわけでございます。これは沿岸漁業との調整上、過去非常に長い間調整をして、今日の一つの禁止区域の設定、あるいは操業期間の抑制、禁漁期間の設定、こういうふうな経過で、一応の落ちつきを示しております。ところが最近におきましては、昨年から実施しております構造改善事業の進展、それから、やはり国民経済の進展に伴う漁業労働の確保の問題、そういういろいろな面から、さらにこれを、底びきのほうからは禁止期間を短縮してくれ、あるいは禁漁区等につきましても、資源の問題に問題がなければ、沿岸との調整可能な範囲において禁止区域も縮小してもらいたい、こういったような要請が間々出てきておるのであります。これについては、やはり沿岸漁業との調整を十分はかりつつ、そして両方の漁業が共存共栄できるというような線を見出すという、非常に困難な仕事でございますが、そういう調整を海区漁業調整委員会と、それから県、われわれの方は中央漁業調整審議会、こういうところの学識経験者の意見をよく聞きながら、そういったところの調整の問題も処理しておるわけでございます。今後とも、そういう沿岸構造改善事業の進展に応じまして、底びきとの調整は十分慎重にやっていかなくちゃならぬ、こう考えております。
  183. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 引き続いて、これまた午前中の質問にもあって重複をいたすわけでありますが、八条の二号ですか、魚礁の設置、養殖場の造成というような条項がありますが、漁港がやはり依然としてそのままになっておる。もちろん漁港法によってこれは整備するわけでありますけれども、やはりこの沿岸漁業の基盤整備の大本と申しますか、それはやはり漁港だと思うのであります。今後無動力船を動力化していかなければならない。そういうことによって沿岸漁業の今後の伸展をはかっていかなければならぬわけでありますが、第一動力化するにも漁港というものが整備されていないと動力化自体ができないわけです。構造改善の基本というものはやはり漁港であります。そういふうに考えてみますと、なるほど漁港法自体ではその整備が一応きめられておりますけれども、ただ漁港法では実質的に漁港整備がほんとうに遅々として進んでいない。第一次、第二次整備計画というものが立てられて、今度第三次整備計画が立てられましたけれども、第二次整備計画のものがずっといまでも完成せずに残っておるわけであります。現実の問題として、離島振興の場合は別でありますが、地元負担なのであります。大体小さい町村、あるいは単位組合が負担を負わなければならないということになりますと、大きく予算を盛って進めていこうとすればするほど、そういう負担金の悩みも漁港の整備がおくれておる大きな原因なのであります。そういたしますと、そういう欠陥をこの沿岸漁業振興法によって救ってやるというところに、一番大きなねらいを持たなければいかぬのじゃないか。これは切実な問題なんです。せっかく沿岸漁業振興法ができたけれども、従来と何も変わるところはないじゃないかと言われる理由も、こういったところに一つの大きな原因があるのじゃないかと思うのであります。率直に言って補助率の引き上げなんです。これは長官の先ほどの御答弁では、明年度あたりぜひ考えたいというお話もあって、まことにけっこうでありますが、これは言うべくしてほかの補助事業等にも影響する問題であって非常にむずかしいと思う。そういたしますと、やはり沿岸漁業の構造改善の指定を受けた地区に関しては、この振興法によってある程度救っていくというように一応考えてやるのが私は一番現実的な政策ではないかと思うのですが、どうですか。
  184. 庄野五一郎

    庄野政府委員 第三次の漁港整備計画を立てますときには、沿岸漁業構造改善事業も実施の段階に入っておるわけでございます。それで三百八十港というものを拾い上げてまいります場合の一つの基準といたしまして、沿岸構造改善事業の中核漁港というものを優先的に第一種、第二種漁港のうちから三百八十港の中に取り上げる。こういう方針で大体県の調査の進みぐあい等ともにらみ合わせて、県の意見も十分尊重いたしまして、沿岸漁業の中核的漁港というものを三百八十港の中に優先的に取り入れてまいったわけでございます。それで御指摘のように、沿岸漁業構造改善事業と漁港法による整備事業との間にはそご矛盾のないように十分配慮はいたしてまいったわけでございますが、要は地元負担の問題もあって、この事業の進展をはかるためには、やはり国の補助の問題、地元負担を起債のワク等も考えながらどのようにするかといったような問題があるわけであります。この問題は御指摘のありましたように他の公共事業とも関連して財政の規模とも関係があるわけでありまして、非常にむずかし問題だと思いますけれども、御指摘のような点十分検討して何とか努力いたしたいと考えております。
  185. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 中小企業対策で一、二点お伺いいたしたのでありますが、率直に言って沿岸漁業対策がいわゆる構造改善事業等事業法的にきわめて具体的に取り上げられておる。その反面中小漁業がきわめて抽象的で基本法的な表現になっておる。これは率直に言ってきわめて熱意のない感じがいたします。大体名は体をあらわすといいますが、最初から沿岸漁業等という、等という字で中小企業をあらわしておるわけであります。これはいっそ沿岸漁業及び中小漁業振興法、こういうふうにどういうわけでできなかったか。何か理由があったのですかお伺いしたい。
  186. 庄野五一郎

    庄野政府委員 法律のていさいといたしまして特に理由はありません。沿岸漁業等といたしましたのは、表題があまり長くなるからということもあろうかと存じます。十分法文の中身をお読みくだされば、沿岸漁業と中小漁業というものはあらわれていると思います。施策については、第九条に改善事項を公表し、それにのっとって指導し、またそれに必要な資金の融資は十分確保する、こういうふうに書いてあります。それによって中小漁業の振興をはかってまいりたい、こう考えております。
  187. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 第九条には一応当面する改良事業は羅列はしてあります。しかし、片一方構造改善事業と比較をいたしますと、何だか抽象的な感じを持たしておる。これは率直に長官も認めるんじゃないかと思う。しかも、核心というような問題、そういうような重要な問題にも若干触れていない面があると思います。たとえば二、三例を申し上げてみますと、まず弱小経営の組織化の問題であります。それから過当競争の正常化、これは非常にむずかしい問題であります。中小漁業者のいま一番当面する関心事はここにあるんじゃないかと思うのであります。そういった面について全然触れられていないように思う。これが第一。  それからいま一つ、これはきわめて重要な問題だと私どもは思っておるのですが、先ほども少しくお話を質問の中に入れて申し上げたのでありますが、中小漁業の大部分は許可制度が採用されておる。そうすると今日その許可制度の運用ですか、あるいは許可制度そのもののあり方いかんが中小漁業経営に重大な影響を及ぼしておる。こういうことも私が申し上げるまでもないと思うのであります。もっと端的に申しますと、政府が決定する許可要綱ですか、あるいはその運用というものが中小漁業の活殺権を握っておる、こういうふうにさえも考えられるのであります。ほんとうにこれから真剣に中小漁業の問題に取り組んでいこうということになりますと、まず第一に許可制度に対する基本方針を、これはむずかしいと思うのですけれども明らかにして、少なくとも将来の方向は明示する必要があるんじゃないか、こういう考え方です。いかがでしょう。
  188. 庄野五一郎

    庄野政府委員 中小漁業につきましては、午前中から申しておりますように、千トン未満でかつ三百人以下の漁業者の経営体を考えておるわけでございます。これは事業者の団体といたしましては水協法の適用を受ける範囲になっておるわけでございまして、こういう面からの組織化ということも可能であろうかと存じます。なお中小漁業の大部分は、御指摘のようにカツオ・マグロあるいは沖合い底びきとか遠洋底びき、あるいはサケ・マスといった面が多いわけでございます。そういう面の許可方針でございますが、これは農林大臣指定漁業といたしまして大体の資源のワクあるいは操業状態あるいは漁獲努力、カツオ・マグロでいいますと、漁獲率といったものを勘案しながら、一斉更新の場合に、許可方針を定める、それは中審の意見をよく聞いて許可方針を定める、こういうことになっております。一斉更新までに十分そういった基準を検討いたしまして、御指摘のようなことのないような方向で進みたいと思います。
  189. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 この問題は非常に重要な問題であって、私もいろいろ申し上げたいこともございますけれども、時間もございませんから、今後大いに御検討いただいて、さらに御努力を希望いたしまして、一応政府案に対する質問は打ち切ります。  続いて、提案者の角屋委員に、たいへんお待たせいたしまして申しわけありませんが、簡単に二、三お伺いをいたしたいと思います。  まず、漁業基本法について伺いたいのでありますが、一般に漁業と言う場合は、大規模漁業、中小漁業沿岸漁業の三つを含めて言っておることは御承知のとおりであります。そのうちで、国の積極的な施策を必要とするものは、言うまでもなく沿岸漁業と中小漁業であることはだれもが認める、社会党が一番強調をいたしておる問題であります。ところが、いわゆる漁業基本法という概念では、当然全漁業が対象となるのでありまして、現にこの基本法でも、大規模漁業を含めて規制の対象にいたしておるのであります。これでは施策の焦点といいますか、ほんとうに提案者の意図するところの焦点というものが何かあいまいになってくるおそれがある、こういうふうに考えるのでありまして、私は、政府案があえて沿岸漁業等振興法案としたゆえもここにあるのじゃないか、こういう考え方を持っておりますが、これについて御意見を伺います。
  190. 角屋堅次郎

    ○角屋議員 今回私どもが提案をしております漁業基本法案並びに沿岸漁業振興法案、こういうものを提案いたしました考え方を若干述べながら、ただいまの御質問にお答えいたしたいと思います。  冒頭に、水産関係に非常に御経験の深い仮谷委員から、わが党提案の法案について御質問くださいますことについて、心から敬意を表したいと思います。  きょうも、私は、本会議の質問でも、日米加問題の際に、特に国際漁業等を含めた基本方針の問題について総理にお尋ねしたのでありますが、口には水産日本、あるいは漁獲高においては世界第一位ということを誇っておるわけでありますけれども漁業内部を見ますと、仮谷委員も御承知のとおり、沿岸、沖合い、遠洋、さらに漁獲量の中小規模の漁業あるいは大規模漁業というふうな関係を見てまいりますと、階層間の格差というものが非常にあるわけでありますし、またそれぞれが非常に問題を包蔵しておるわけでございます。したがいまして、日本の水産業の長期正常の発展というものを考える場合には、やはり漁業基本法という考え方の中で、従来とってきたった漁業政策に対する反省、そしてまた現在の日本漁業の実態というものを明らかにしながら、しかも漁業基本法の中では、これはあくまでも基本法でありますから、沿岸から沖合い、遠洋を含めて、日本漁業全体についての基本的な道筋というものをやはり明らかにしていく必要がある。特にわれわれが強調しておりますのは、従来の水産政策は、沿岸とかあるいは沖合い関係というのが規制された中で、特に戦後の復興期におきましては、資本漁業中心にする政策がとられてまいったのであります。したがって、特に沿岸方面において問題を多く持っておるというのが現状の姿かと思うのであります。そして、今後水産業の抜本的な振興をはかるためには、総合的しかも計画的にやらなければならぬという考えが出発点としてあるわけでありまして、仮谷委員もわが党の法案を十分読まれたと思いますが、そういう観点から、漁業基本法の目的あるいは国の責任、さらに総合的、計画的な推進というような意味において、漁業に対する基本計画あるいは年次計画という中で、この計画の中に盛り込むべき必要最小限度のものを明らかにし、そしてそれを国会に報告をし、年次計画については翌年度の予算を付与してこれを推進するのに万遺憾なからしめる措置をとっていく、こういう考え方をとっておるわけであります。さらにまた、漁業基本法の中では、御承知のように、価格問題にいたしましても、あるいは流通問題にいたしましても、あるいは生産基盤の整備の問題にいたしましても、あるいは最近の貿易自由化の問題等とも関連して輸出振興、輸入制限等の問題にいたしましても、こういう基本的な問題についてはやはり考え方を明らかにする必要がある。なおまた、最近経済の発展のため労働力確保というような問題がきわめて困難な条件を持ってきているわけですが、これらの問題についても、やはり近代的な労働政策の感覚を持って、漁業労働者に対する基本的なかまえを基本法の中で明らかにする。さらにまた、災害その他の問題についても、どういう基本的な立場でこれをどう取り扱うのかというふうな、日本の漁業政策全体を進める中で重要な問題について基本的な考え方を明らかにしながら、しかも漁業政策を進めるにあたっては、やはり総合的に基本的な計画の上に立ってこれを推進していく。そういう中で、先ほど申しております、特に今日までの水産政策の中で非常にしわ寄せを受けてきた沿岸漁業あるいは沖合い漁業関係、つまり中小の漁業関係の問題について力点を注いでいこうということで、事業立法として沿岸漁業振興法案を出でいるわけであります。したがいまして、今後の質問にもあろうかと思いますけれども、中小漁業者の問題を含めて事業立法の整備をする必要のある問題については、十分連携をとりながら推進をしなければならぬだろう、かように考えているわけでありまして、わが党が漁業基本法案というものを出した場合に、仮谷委員指摘のとおり、大資本漁業を含んでくれば一番力を入れなければならぬ沿岸漁業あるいは中小漁業関係の焦点がぼけるではないかというおそれは、私ども基本法あるいはそれに関連する事業法の推進の過程では起こらないというふうに考えているのであります。
  191. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 きょうは時間もありませんから議論は抜きにしまして、お説はよくわかったわけであります、大体趣旨は階層間の格差是正というところに重点が置かれている、それを柱にしておるようでありまして、そういう意味で、沿岸漁業振興法が別途にできていることは非常にけっこうであるし、御努力に敬意を表します。ただ、それだけ階層間に御努力なされているのに、なぜ中小漁業に対する特別な事業立法ですか、そういったものをお考えになっていられないのか、その点若干矛盾するようですが、いかがでありましょうか。
  192. 角屋堅次郎

    ○角屋議員 先ほどの私の答弁でも若干触れたと思いますが、条項としては、仮谷委員お読みになったように、基本法の第十二条の関係で、中小漁業者の資本装備の高度化に関する条項がございます。しかし、わが党の基本法全体を見られれば、総合的、計画的な推進の中で中小漁業の振興の精神というものは、基本的な考え方としては明らかにしているつもりであります。もちろん、個々の中小漁業関係の振興の問題については、価格の問題にしろ、流通関係の問題にしろ、あるいは輸出輸入の問題にしろ各般の問題を含んでいるわけであります。したがって、そういう点では、この基本法を貫く全体的な考え方というのは、よくお読みになれば沿岸漁業振興あるいは中小漁業振興というところに力点を注いだ考え方がにじみ出ていると思います。先ほど御質問にお答えしました際に、やはり沿岸漁業の一番悪条件のものの事業立法をつくりましたけれども、さらに基本法考え方を受けて中小漁業に対するところの事業立法については、必要に応じてこれを積極的につくっていくという考え方で進まなければならぬだろう、かように思っておるわけでございます。
  193. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 御説明をいただけばわかるわけであります。基本法を読んでみますと、確かにその中に中小漁業の問題は取り上げられておりますが、私は社会党案に対しましても政府案に対しましても中小漁業に対する具体的、積極的な施策が盛られていないということ、これは率直に指摘をしなければならぬ。確かに基本法の中にはいろいろ盛られておりますけれども、これだけ階層間の格差をなくするために御努力なされるのならば、沿岸漁業と中小漁業とを一緒にしてもけっこうだと思う。その事業法を提出するのが私は当然じゃないかと思う。政府案自体も、先ほど指摘いたしましたように沿岸漁業等といった、何の格別な理由もなしに単なる等という一文字で一切始末していこうということで、私は沿岸漁業に対する積極性が欠けておる、こう考えておるわけであります。これは議論になりますからこれ以上はあえて申し上げません。  第三点をお伺いしたいのでありますが、第三条に、「長期の漁業基本計画を樹立し、これを国会に提出してその承認を受けなければならない。」といった字句があるわけであります。私も実は漁業組合長をやってきたのでありますが、率直に言って漁業者の漁もわからぬ、宵越しの金を持たぬといったような漁師気質があるわけであります。農業の場合とはいささか同一に考えられない。いわんや国会に提出をして承認を受けるような長期計画の策定というものは、実際問題としては非常にむずかしいのではないか、こういう考えを持つものであります。よしんばそれができたとしても、数字の上で、形の上であらわれたとしても、ほんとにそれが将来確信の持てる見通しのついた計画であるということを実証するものは何もないのではないか、それは漁業の持つ特殊性ではないか、こういう考え方を持つわけでありますが、こういう点いささか形式的なものがあるように思うがいかがでございましょう。
  194. 角屋堅次郎

    ○角屋議員 わが党の一番かなめになる考え方について御質問があったわけでありますが、仮谷委員指摘のとおり、私は水産関係についての基本計画を策定する場合には、やはり農業と違った困難な条件があろうかと思います。しかしこれはやろうとするかまえであるかどうかということが問題でありまして、たとえば農林省関係の統計整備という観点から見ましても、農業関係の統計整備というものには大きく力が注がれている。ところが林業関係にいたしましても漁業関係にいたしましても、この種の統計整備というものについては私は必ずしも十分でなかろうと思う。ときに漁業センサスその他を御承知のようにやられますけれども、実際にはやはり私どもの望んでおるような漁業基本計画を実施するという場合においては、中央、地方を通じての統計整備というものの体制についてももちろん考えなければならぬだろうと思いますし、またこの点についての地方自治団体あるいは漁業団体関係の協力というものも得なければならぬだろうと私は思います。そういう観点の上に立ち、しかも変動する国際、国内の漁場におけるところのいろいろな諸条件というものを十分勘案しながら、私ども漁業基本計画の中で考えておりますのは、第三条の第二項にありますように、「水産物の需給計画、漁場開発、改良及び荒廃の防止に関する計画、漁場の利用計画、水産資源の保護培養計画、漁港の整備計画、漁業の共同化に関する計画、水産物の流通の合理化に関する計画、水産業に関する調査、試験研究及び教育に関する計画、漁村の生活文化水準の向上に関する計画並びにこれらの計画を実施するのに必要な財政金融計画」、こういうことになっておりまして、私は、政府自身が水産政策に本腰を入れて総合的、計画的にやるんだというかまえになるならば、第三条第二項に盛られておるこれらの内容については、やはり相当重視した内容に今後持っていくことができるのではないか、そういうかまえの中で仮谷委員指摘のような沿岸、沖合い関係の政策について力点を注いでやっていくということが今日非常に要請されているのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  195. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 たいへん時間がかかって御迷惑ですからなるべく簡単にやっていきます。  第九条に母船式漁業政府の監督下に公社がこれを行なうというのがあります。これについてひとつ具体的な構想。もう一つまとめてお伺いいたしますが、三十三条に、海外漁業振興会という規定があるわけであります。私は着想としてはたいへんけっこうだと思うのであります。これの具体的な構想、これは非常に時間が長くなるかもしれませんが、なるべく簡単にひとつお答え願いたいと思います。
  196. 角屋堅次郎

    ○角屋議員 いま御指摘基本法の第九条で、母船式漁業という条項を設けまして、「母船式漁業は、別に法律で定めるところにより、政府の監督の下に置かれる母船式漁業公社がこれを行なうものとする。」この条項についてお尋ねがあったわけでありますが、これは何も社会党の考え方というものを中心にしてこういう公社制度を考えたわけでは必ずしもない。もちろん今日母船式漁業の実態を見ますと、資本構成から見まして、水産庁からお出しになりました資料を見ましても、資本金十億以上の水産会社というものがほとんど八、九〇%を占めておるといった姿に相なっておるわけでございますけれども、最近の鯨その他の母船式漁業の実態から見ると、経営上の問題等も出て、私どもが提唱しておる公社制度というものに対して非常に関心を持ってきておるような傾向がございます。国際漁業については御承知のとおり国際協調という面が必要でございまして、資本の恣意的な形で運営されるということには実際問題として国際的に問題が起こる場合がございます。したがってやはり政府の指導による公社というふうな形で、特に国際面に関係の深い母船式漁業についてこの種方式を考えてはどうだろうかということで、積極的な意図として提案申し上げておるわけですけれども、実際に、この公社制度の中にどういうものを具体的に入れていくか。たとえば母船式漁業といっても、母船式漁業の母船と独航船を含むかどうかという問題もあります。われわれとしては、水産五社の母船あるいは独航船についてはこの公社の中に含むけれども、しかしその他のものについては独航船は別ワクにしてはどうだろうかというふうな考え方もあるわけでございまして、必ずしもコンクリート化しておるわけではありませんが、公社制度を考える場合にはそういう母船、独航船の関係、あるいは母船、独航船のいずれも含むもの、あるいは独航船は別ワクにするもの等についても実情に即して考えていく必要があるだろう、かように思うのでありまして、これは今後の国際漁業における指導の考え方としてこういうものを積極的意図として出しておることを御了承願いたいと思うのであります。  それから三十三条の海外漁業振興会についてもお尋ねがあったわけでありますが、「海外に基地を設けて行なう漁業及び海外において外国人と協力して行なう漁業の健全な発展を図るため、別に法律で定めるところにより、政府の監督の下に置かれる海外漁業振興会にこれらの漁業に関する調査、情報の提供、あっせん、連絡等の業務を行なわせるものとする。」ということで、移住関係の、今度の国会で議論されておる運営の問題を見ても、これは漁業関係でも、やはり農林省ばかりでなしに外務省が関係があったりいろいろするわけでありますが、そういう面で漁業に関する限りはやはり農林省中心になり、政府と申しましても主として農林省関係の行政指導のもとにおいて海外漁業振興会というものを設けたいというふうに私どもとしては考えておるわけですが、これは従来の日本漁業に対するところの国際的な不信感あるいは批判というものをコントロールするためにも、総合的な視野からやはり政府の指導をそのまま受けて、そして積極的に協力する組織団体としてこの種問題を考え、特に海外基地漁業等の設定の場合に、このまま放任をしておきますと、先ほども別の問題で仮谷委員指摘になりましたけれども、ややもすれば資本の恣意にまかされてしまって、中小漁業等を海外基地漁業に積極的に振り向けるというふうなことを考える場合にも、やはり必ずしもそういう形になっていかない。ここで海外漁業振興会を設け、一つの窓口にしたゆえんは、沿岸、沖合い、遠洋を含めての総合政策の中で、海外基地漁業あるいは外国資本との合弁システム、こういうものを考える場合に、特に総合的な基本計画あるいは年度計画というものにマッチをした形の中で、政府の指導に基づく運用をやっていこうというそういう意図をこの中に盛っておるわけであります。
  197. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 第九条の問題は、これはいささか基本的な考え方の問題になりますからそれはともかくといたしまして、三十三条の海外基地漁業の振興といった面からこれは非常に研究する余地があると思うのです。いずれこの問題は、ひとつまた提案者の御意図等もゆっくり聞く機会を得たいと思うのです。特に政府は、基地漁業をすでに新規許可までやっておるのです。手放しでやるわけにはいかぬでしょうから、今後もそういう希望者ができれば許可を与えるという言明を長官はいたしておる。そうするとこの問題は当然将来大きく考えなければならぬ問題である、着想としてはたいへんけっこうだと思いますので、いずれまた御高見を拝聴する機会を持ちたいと思います。  そこでもうあと一、二点、沿岸漁業振興法についてお伺いをいたしますが、率直に申しましてこの沿岸漁業振興法を見まして、その振興事業をずっと私一べついたしますと、これは私どもの意見と完全に一致とは申し上げませんけれども、ほとんど九〇%まで一致するものがあると思うのであります。それだけに現在の政府が実施しておる沿岸漁業の構造改善事業とか、あるいはまた現在提案をいたしておる構造改善事業の八項目ですか、一体内容にどういう違いがあるのか、ほとんど違っていないのではないか、こういう感じを私は持つのでありますけれども、何か内容的に異なる面があればひとつ承りたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  198. 角屋堅次郎

    ○角屋議員 沿岸漁業の振興事業として私どもが考えております事業対象というものの内容の多くのものは、政府が今日沿岸漁業構造改善として進めておる内容と大差はないのであります。御承知の政府の場合においては、漁場改良造成あるいは経営近代化促進対策事業とか、あるいは経営近代化のための施設の導入とか、あるいは流通加工部門の施設の改良とかいうふうな面、ある意味では先行投資的にいくものもありますし、また沿岸漁業の構造改善事業の中でとらえていく面もありますし、いろいろ時期的な面あるいは地域的な面、そういう点で跛行的な現象というものが場合によっては私は出てこようかと思うのであります。内容的には大差はなくても、私ども考え方としては、ここで考えておる沿岸漁業構造改善事業というものを総合的にとらえて、しかもこれについては国の基本計画あるいは年度計画、県の基本計画、年度計画というふうな形で総合的に推進をしていきたい、こういうところに内容的な問題よりも基本的なかまえという点で私は違った点があるように考えるわけでありますし、また同時に私どもとしては、沿岸漁業構造改善の場合には、たとえば十四項のところで「漁業生産組合の育成に関する事業」というふうなものもいっておりますけれども、これはやはり零細な漁業経営等の今後の構造改善の経営面の指導方向という問題では、これは一つの方向として意欲的なものを持っておるわけでありますし、また第十六項の「沿岸漁業者の住宅の建設その他漁村の生活環境の改善に関する施設の整備に関する事業」というふうな面は、今日の漁村の生活環境等から見て、沿岸漁業の構造改善事業をやる場合に、単に漁業面だけのことを考えるのじゃなしに、生活面、文化面——文化面までと言うとちょっと広くなりますけれども、生活面、そして漁業自身の沿岸構造改善事業を有機的に結びつけてやっていくという考え方から、内容的に必ずしもそう大きな差はありませんけれども、全体を包んで、これを総合的、計画的にやろうという問題と、さらに沿岸漁業の構造改善の構造政策としての指導方向、あるいはその中で今日生活環境として悪条件下にある、そういう環境整備あるいは住宅も経営とマッチをした住宅建設の方向というふうなものを取り入れておるところに、少しくわれわれのほうが前進があるのではないか、こう思っておるわけでございます。
  199. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 いろいろ伺いたいこともありますけれども、もう時間も切迫しておるようでありますから省略をいたしまして、価格問題は後ほど小委員会でお聞きいたしますが、もう一点だけ伺います。  第四条に、農林大臣沿岸漁業振興基本計画を策定するというのがあるのです。それと今度は漁業基本法に、さきに私がお伺いいたしました漁業基本計画というのがあります。この関連ですね、これを事務的な問題でありますから最後にお伺いいたしまして終わりたいと思います。
  200. 角屋堅次郎

    ○角屋議員 いま、基本法第三条と沿岸漁業振興法の第四条の関係について御指摘がございました。まことにごもっともな御質問でございまして、これは当然私どもの法体系としては、漁業基本法沿岸漁業振興法、これは密接不離の関係にあるわけでありますから、国が定める漁業基本計画あるいは漁業の年度計画というものと十分マッチしながら、国の沿岸漁業振興基本計画というものを立てるべきことは当然でございます。ただこの場合に、沿岸漁業の振興基本計画を立てる場合には、県の沿岸漁業振興計画という下からの計画の策定を十分しんしゃくをし、これを国の基本計画を立てるときに配慮しながらやっていこうという考え方を御承知のように持っておるわけでありまして、当然御指摘の点は密接不離の関係において計画の樹立をやっていきたいと思います。
  201. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次会は明五日午前十時から理事会、十時十五分から委員会を開会することといたします。  これにて散会をいたします。    午後五時五十八分散会