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1963-02-20 第43回国会 衆議院 農林水産委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月二十日(水曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 秋山 利恭君 理事 小山 長規君    理事 田口長治郎君 理事 山中 貞則君    理事 足鹿  覺君 理事 片島  港君    理事 東海林 稔君       安倍晋太郎君    伊藤  幟君       大野 市郎君    金子 岩三君       亀岡 高夫君    仮谷 忠男君       草野一郎平君    倉成  正君       小枝 一雄君    坂田 英一君       田邉 國男君    寺島隆太郎君       野原 正勝君    松本 一郎君       米山 恒治君    角屋堅次郎君       栗林 三郎君    楢崎弥之助君       野口 忠夫君    安井 吉典君       山田 長司君    湯山  勇君       稲富 稜人君    玉置 一徳君  出席国務大臣         農 林 大 臣 重政 誠之君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         総理府総務長官 徳安 實藏君         農林政務次官  津島 文治君         農林事務官         (農林経済局         長)      松岡  亮君         農 林 技 官         (農地局長)  任田 新治君         建設事務官         (計画局長)  町田  充君  委員外出席者         農林事務官         (農地局管理部         長)      桧垣徳太郎君         農林漁業金融公         庫総裁     清井  正君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 二月十八日  委員楢崎弥之助君及び玉置一徳辞任につき、  その補欠として岡田春夫君及び田中幾三郎君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員岡田春夫君及び田中幾三郎辞任につき、  その補欠として楢崎弥之助君及び玉置一徳君が  議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月十五日  農業改良助長法の一部を改正する法律案内閣  提出第一〇三号)(予) 二月十八日  国有林野開放に関する請願外一件(瀬戸山三男  君紹介)(第九九三号)  同外十四件(小山長規紹介)(第一一六四  号)  同外十八件(相川勝六紹介)(第一二四五  号)  同(川野芳滿紹介)(第一二七四号)  利根川の農業用水資源確保及び流域開発促進に  関する請願竹山祐太郎紹介)(第一〇四三  号)  牛乳価格値下げ阻止並びに飼料対策に関する請  願(草野一郎平紹介)(第一一六一号)  農業災害補償制度改正に関する請願丹羽兵  助君紹介)(第一二四六号)  同(松本一郎紹介)(第一二四七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第三〇号)  農業近代化資金助成法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三一号)      ————◇—————
  2. 長谷川四郎

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案及び農業近代化資金助成法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。湯山勇君。
  3. 湯山勇

    湯山委員 前回、局長にもいろいろお尋ねしたわけですけれども、大臣お尋ねすることが留保されておりましたので、きょうは大臣へのお尋ねをいたしたいと思います。  最初に、今回いろいろ前進の見られるような内容改正がなされようとしておるわけでありますが、それ以前に大臣は、農林金融についていろいろ構想新聞その他へ発表されておりました。その中には、非常に期待を持っておったものもございましたし、どうであろうかという心配を抱いたものもございました。それから、先般内容について若干局長にもお尋ねしたのですけれども、やはり大臣に直接お聞きしなければ真偽をはかりかねるものもございましたので、まずそういう点についてお尋ねいたしたいと思います。  まず今回の改正で、大臣とされては、これで一段落だというお考えなのか、まだまだ農林金融については改めていかなければならないというお考えなのか、これはどういうお考えでございましょうか。
  4. 重政誠之

    重政国務大臣 今回の新しい金融制度は、御承知通り低利長期制度創設いたすことになったのでありますが、これはやはり構造改善事業中心にして、構造改善を推進する上において、どうしてもやらなければならぬ焦眉の急である、こう考えまして、全力を注いでこの制度創設をはかったわけであります。もちろん十分なものではございません。ございませんが、三分五厘という一つ低利の、しかも二十五年以内というような長期金融制度をここに打ち立てたということにおいては、私は非常に意味があると思うのでありますが、資金融資の範囲、額、あるいは金利の問題につきましても、将来さらに改善を加え、さらに拡大をしていかなければならぬ、こう考えておるのであります。さらに、一般農業金融につきましても、もちろん金利体系中心にいたしまして改善を要すべき問題が多々あると私は思うのであります。今回のこの制度はそれらには触れておりませんが、それらの問題も、農業金融全般として考えますれば、将来は改善を加えていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  5. 湯山勇

    湯山委員 大臣から大へん明確な御答弁がございました。私もそういう大臣考えじゃないだろうかということで、局長にもいろいろお尋ねしたのですけれども、事務的にはそこまで明確な御答弁がいただけませんでした。きょうは大臣から今のような、極端にいえば構造改善中心でやったのだ、その中で三分五厘、二十五年という長期低利制度に一歩踏み出した、これは非常に大きな収穫であった、なお、一般農林金融については将来さらに改善検討を加えていく、こういうことで、私も全くそうしていただきたいと思います。  そこで、大臣のお考えになっておる将来への構想の一端を、先般来いろいろ新聞等大臣のお考えとして御発表になったのだと思いますから、その内容も、幾らか具体的にはきちっとしてない面もあるかもしれませんけれども、お考えをお聞かせ願うことは、私どもいろいろ考えていく上で非常に参考にもなるし、将来、今お話のあったような検討方向改善方向というものの示唆にもなると思いますので、お尋ねいたしたい点は、大臣は、農地担保金融ということを言っておられました。今回は農地担保金融といえるかどうか問題でありますが、金融公庫がこれを担保として融資ができる道が開かれましたけれども、大きい構想としての農地担保金融というのは、大臣のお考えではどの程度のことをお考えになっておられるのか、承りたいと思います。
  6. 重政誠之

    重政国務大臣 私の農地担保金融根本考え方は、農家の唯一の財産というものは土地である、その耕地が金融対象に十分ならないということであっては、農業投資が非常に少ないといわれておる——それが事実でありますが、そういう時代に、農業近代化をあらゆる面において推進していく上においては不便ではないか。極端に申しますれば、手をくくり足をくくって、それで農業の振興をやれといってみたところで、それは少し無理なことをいっておるのではないか、政府資金だって限りがあるというふうな根本考えを持っておるわけであります。そうして、自作農創設ということも、もうあの土地改革によって一応九割まで自作農にしたのであるから、これで一段落ではないか。一面においては、あれを担保目的にするということになれば自作農から脱落するものも出てくるという反対もあるけれども、かりにそういうことが若干あるとしても、それがために全体を縛っておくということはいかがなものかというのが私の根本考え方なんです。これには御賛成方々も多数おありになると思うのであります。しかしまた、その半面においては反対の御意見を持っておられる方々もあり、さらにこの問題は農地法根本に触れるきわめて重大な問題となりますので、そういうことを直ちに実現するということは非常にむずかしい。これは慎重に検討をして、各方面の御意見も承って、皆さんがよろしいということにならなければそういう制度を実現することはむずかしくもあり、またやるべきでない、こういうふうに考えて、今回はこの公庫の触資で、一般銀行その他の金融機関融資ではない、これは農林大臣監督のもとにあって、そうして、農地法の趣旨に非常にかけ離れるということがないよう監督もできることであるし、限られた金融機関からの融資でありますからまずこれでやってみたらどうだろうか、こういうふうに考えまして、これならばまず心配もないじゃないかというので今回の金融制度にこれを加えた次第であります。
  7. 湯山勇

    湯山委員 大臣のお考えになっておられるところはよくわかりましたが、そのお考えになっておられるところからやはり一つ疑問があるわけでございます。と申しますのは、農地担保金融をうんと拡大していけば農地法基本理念に触れる問題が出てくるというお考えと、そこでそれをくずさないように、農地法の基本的な考え方をくずさないようにとりあえず今回の措置をとったのだ、こういう二つの御答弁の間には、農地法の基本的な考え方を将来は変えるのだというお考えがおありなのか。おとりになった措置に、農地法の基本的な考え方を持っていかなければならない、こう二つあるものですから、大臣としては将来農地法基本理念というものを変えるお考えなのか、あるいは今回おとりになったように、農地法基本理念は将来にわたって堅持しなければならないものだ、こうお考えになっておられるのか、これが農地担保金融構想についてだれもが抱く一番大きな疑問だと思いますので、その点に対するお考えをもう一度お聞かせ願いたいと思います。
  8. 重政誠之

    重政国務大臣 将来の問題につきましては、現在省内にも一つ研究機関を設けまして、根本的に検討してもらっておるわけであります。これはこの担保金融に関する研究というよりか、農地法全般について目下検討を進めておるわけであります。それで御意見が固まってこなければ将来これをどうするということは、私として決心いたされないわけであります。
  9. 湯山勇

    湯山委員 今の農地担保金融のお考えと、大臣構想として、農地銀行創設するというようなことも伝えられたことがございました。局長からは、農地銀行構想については特に大臣からお話もなかったし、省内検討もそのことについてなされていないということでございましたが、農地銀行というのは大臣のお考えではどういうものであるか、一つお教えを願いたいと思うわけであります。
  10. 重政誠之

    重政国務大臣 私は初めから特別な銀行をつくりたいという意欲はなかったのであります。問題は、これは急速にやらなければならぬ金融でありますし、またその仕事の分量にもよることであろうと思うのであります。将来年々業務も非常に膨大になっていくと思うのでありますが、そういう場合に、将来これを農地銀行にしたらいいかどうかということは、その段階考えるべきものであろう、今日の段階ではそういうことは考えぬでいい、今の公庫でやれる、かように考えてこういうふうな案を考えたのであります。
  11. 湯山勇

    湯山委員 それでは大臣のお考えは、現在の金融公庫農地銀行に発展的にやったらどうだろうかというふうに、結論的なものは別としてお考えであったのか、もっとそれを拡大して、たとえば金融公庫、中金というもの一切を含めて、そういう農業銀行といいますか、農地銀行というものにしていこうという構想であったのか、構想というよりも思いつきといいますか、その程度のものだろうと思うのですが、その辺はどういうことでございましたのでしょうか。
  12. 重政誠之

    重政国務大臣 これはしいて申しますればいろいろの案があるであろうと思うのでありますが、問題は、どういう形でやるのが一番農家に便利であり、その目的を実質的に上げることができるかということによって、考えるべきものであろうと私は思うのであります。先ほど申しました通り、すべての現在の金融機関を一緒にして、一つ農地銀行をつくるとか、あるいは公庫農地銀行にするというようなことは、ほんとうに深く私は研究をいたしておりません。また検討もいたしたことはないのであります。とにかく今の公庫を運用してこれはりっぱにやれる、こういうふうに考えてこういうことにいたした次第であります。
  13. 湯山勇

    湯山委員 それから大臣構想の中に債券発行というのがございました。今回はそういう構想はないようでございますが、いろいろ他の部会等での政府との質疑の中には、将来はやはり債券発行ということが考えられているようにもとれるわけでございます。そこで農林大臣として今の農政を進めていく上に、債券発行というお考えがおありになるのかどうか、おやりになるとすれば、それはどういう段階でどういう形でおやりになるか、あるいはおやりになるのじゃなくても、やるとすればこういう形じゃないだろうかというようなお考えがあれば、これもこの際お聞かせ願いたいと思います。
  14. 重政誠之

    重政国務大臣 債券発行権を認めるかどうかということは、資金需要資金供給がマッチしてできるかどうかということであります。今回の場合は主として政府資金によっておるのであります。将来これがどういうふうに発展いたしますか、非常に発展をして、資金需要が非常に多いということになって、とうてい政府資金供給ではまかなえないというような時代がくれば、債券発行して一般市場からその資金を仰ぐということも当然考えなければならぬ問題だと思うのであります。ただその場合におきましては、申すまでもなく、金利の問題が非常にある、それに対して政府はどういう措置をとらなければならぬかというような問題もいろいろあろうと思うのであります。でありますから、将来の問題としては、あるいはそういうことを考えなければならぬ時代がくるかもわからぬと思うのでありますが、現在のところでは、とにかく政府資金によってこれはまかなうことができるという段階でございますので、金利が高くつく債券発行をしいて認める必要はない、こういうふうに考えた次第であります。
  15. 湯山勇

    湯山委員 大臣の御発表になった三つの構想内容が大体わかって参りました。そこで問題になりますことは、今大臣がおっしゃいましたように、今回の措置というものは、政府資金を多くしたことによってとることができるようになった措置である。しかも今後今のような体制を長期にわたって続けていくということになれば、金利のかからない政府資金、これは将来にわたってもどんどん出していかなければ、長期低利という農林金融の建前をさらに進めていくことは困難であると思います。そこで今回の措置をおとりになるにあたって、ことに大蔵当局、あるいは閣議等において、予算が単年度予算なものでございますからそういう心配があるわけでございますが、今回非常に政府出資が多くなっておりますけれども、来年、再来年と将来にわたってこの傾向政府資金がどんどん金融公庫につぎ込まれるものなのかどうか。このお見通しについては大臣はどのように折衝なさった——という言葉は悪いかもしれませんけれども、どういうふうにお考えになっていらっしゃられるか、どういう確信をお持ちになっておられるか承りたいと思います。
  16. 重政誠之

    重政国務大臣 私は今回この制度を発足するにつきまして、大蔵当局と折衝も重ねたわけでありますが、これをやる以上は、来年からはこれをやめるのだということには実際問題としてとうていできない。また大蔵省の財政当局からこれに対して相当反撃というよりか難色があったのでありますが、それをこういう制度として打ち立てた以上は、財政当局としても相当の覚悟を持っておやりになっておると私は確信をいたします。でありますから、これがことしは三分五厘であるが、来年はそれがやれなくなるというようなことは毛頭心配しておらないわけであります。
  17. 湯山勇

    湯山委員 それで大臣のお考え、御所信はよくわかりました。さらにこの際要望を兼ねたお尋ねでございますが、大臣もごらんのように、せっかくこういうふうにいい部分をふやしていただいたけれども、この制度そのものあるいは体系そのものが非常に複雑でわかりにくくなりました。従来あったものの下側にいい条件のものが重なったような形になりまして、金利等も三分五厘、四分五厘、五分、五分五厘、六分五厘とその対象も非常に複雑で、おそらく大臣も一々覚えていらっしゃらないのじゃないかと思いますが、どうでございましょうか。おそらく大臣一つ一つについては覚えておられないような複雑な状態だと思います。そこで、従来からいわれておりますように、この体系をもっと簡素化してすっきりしたものにしなければせっかくいい制度ができても実際に利用しにくいという声があったと思います。そこでこれをすっきりしたものにする、わかりやすいものにするということになれば、たとえば今の三分五厘と四分というのは、三分五厘の線にそろえていく、それから期間にいたしましても、十五年、十七年、二十年とこんなものがあります。十七年と二十年という区別をしなければならない積極的な理由はないのでございますから、こういうのは二十年なら二十年にそろえていく。そうすれば非常に単純化されるし、これを使う方も非常に使いやすくなる。これは大臣のお出しになったグリーン・レポートにも、この体系は改めていかなくちゃならないということが指摘されております。そういう方向でぜひすみやかに体系整理をして簡素化していく、そういうことをやっていただきたいと思うのです。しかもそのやり方は、悪くするのじゃなくて、大臣が今おっしゃったようにほんとう長期低利といわれておったものに一歩踏み出したそのあとに続いていくような形で整理をしていただく必要があるのではないかと思いますが、いかがなものでございましょうか。
  18. 重政誠之

    重政国務大臣 御意見ごもっともでありますが、かといって、今回の新制度におきましても、ただ無意味に年限とかあるいは金利というものをきめられておるのでないということは一応御承知を願いたいと思うのであります。たとえば二十年とおっしゃいますが、果樹のごときものはどうしても二十五年はなければなりませんから、最高期限はどうしても二十五年とこうせざるを得ない。それから据置期間についても、ものによりまして、果樹のようなものは十年以内とこれはもう特にしなければならぬ。こういうふうにやはり融資対象事業によりまして、当然償還期限であるとかあるいは貸付の最高限度というようなものも考えなければならぬ問題があるわけであります。  それから金利の問題でありますが、これはなかなかむずかしい問題でございますが、現在畜産にいたしましても、あるいは土地の取得にいたしましても、果樹園の造成にいたしましても、それぞれ金利がきめられて融資をせられておるわけであります。それよりできるだけ条件の緩和を今回はそういうものについてはいたしておるわけであります。根本のものについて、三分五厘というのは財政当局としては非常な困難があったにかかわらず御賛成を得て、その根本構造改善事業計画を進めるものについてだけはこれを了承願って、新しい制度を打ち立てたということになるわけであります。金利の問題はもうおっしゃる通り、これは今回の金融制度だけではなしに、従来からも公庫融資のいろいろの対象によってみんな異なっております。そういうようなものもできるだけ統一はいたしたいとはかねがね考えておるのでありますが、さらに、これは農業金融全般として、先ほどの御指摘もありましたように、金融機関の問題あるいは金利の問題その他いろいろの部面にわたって検討をし、改善すべきものは改善をしていかなければならぬ、そういう段階にもうだんだんきておるのではないかというふうに私は感じておるのであります。  農家の預金したものが農村に還元する分が少ないということは一般から言われておるわけであります。これらについてもいろいろ皆さんの御協力を得て、工夫をして、農業近代化資金というような制度もつくられたわけでありますが、これは全般につきまして十分検討する必要があると考えます。
  19. 湯山勇

    湯山委員 ぜひそういう方向での御検討をお願いいたしたいと思います。特に一例として申し上げますと、大臣の言われましたようにそれぞれにはそれぞれの理由があるのはありますけれども、しかしその理由があること以上に、整理しなければならないということの要請の方が強いということでございますから、そういたしませんと、たとえば法律なんかも非常に不備でございまして、政府公庫に対する出資は幾らあるか、二通りあるのです。ですから、どちらがほんとう政府出資かということ、これも非常におかしい話ですけれども、法律の条文から見ると金額が二通りあります。そんなようなところもございますし、それよりも何よりも体系自体の再検討というものをぜひお願いいたしたいと思います。  大臣に対する質問は以上で終わりますが、この際一つ資料をお願いいたしたいと思います。それは今もお尋ねいたしましたように、今回の改正を含めて系統資金、それから制度資金ともに非常に複雑になりました。私ども特にそういう経験の少ない者にとりましては一々言われてもちょっとわかりかねますので、これが用途別、それからこういうときにはこれを使えばいいのだということがすぐわかるような一覧表を、これは早く出していただきたかったのですけれども、出していただけませんでしたが、私どもにもいただきますし、それからそれぞれのたとえば改良普及員なりそれぞれの機関にも早急に出していただきたいと思うのですが、これはお約束願えますでしょうか。
  20. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 ごもっともなお話でございますので、手引きのように便利でわかりやすく刷ったものを一般農家にもわかり得るように早急につくってみたいと思います。
  21. 長谷川四郎

  22. 足鹿覺

    足鹿委員 私は先般来審議が続けられております農林金融二法について総括的な締めくくりの質問をいたしたいと存じます。主として大臣お尋ねをいたす所存でありますが、最後まで御臨席を願い、誠意のある御答弁をわずらわしたいと思います。  最初に、審議の途中で一々申し上げることは繁雑でありますから、今考えております資料を要求いたします。最初農地補償関係関連する資料でありますが、国が買収した農地及び未墾地の旧所有者階層別面積並びに員数。それから認定買収を受けた被買収者の内訳、その階層別人員面積等参考となるべき事項をお願いしたいと思います。これはあと質疑の際に申し上げますが、自民党においては最高二百万に押える、最低は四十万、総額二千八百億の農地補償の法案を議員立法としてもくろんでおられると伝えられております。そのような段階を付せられたということは、それぞれ一応の裏づけか何かあってのことだろうと思うのです。この問題に対する農林省の見解はあとで伺いますが、そういった意味からもぜひお出しを願いたいと思います。それからこれは近代化資金助成法関連をいたす資料でありますが、最近銀行系統農地担保を行なっておる傾向は御存じの通りでありますが、三十五年度の競売件数面積市価等について関連して資料を御提示願います。続いてこれと関係しまして、市銀等競売は年別にどの程度行なわれておりますか、これも資料として御提示を願いたい。それから、本案とは直接関係はございませんが、近代化資金助成法等との密接な関係があり、農業構造改善との関連において政府農協合併を促進指導しておるようだが、最近における農協合併の実績、その内容等を知る資料を御提示願いたい。農協合併関連をいたしまして、末端における農業団体の動きがいろいろ変化をしつつあるようでありますが、特に共済組合の市町村移譲の最近の実績と運用内容について、これを御提示わずらわしておきたいと思うのです。よろしくお願いします。  そこで、各委員からお尋ねがありました問題となるべく重復を避けまして、私はまず農地担保金融について少し掘り下げた御質問を申し上げてみたいと思うのであります。  先ほど湯山委員からもお触れになりましたが、農地担保金融につきましては、現行農地制度との関係において非常に重大であります。もし誤りましたならば、その基本理念をそこなうのみならず、農地法そのものに大きな穴があく。現にざる法的な傾向も出てきておるわけでありますし、今後のこれに対処していく態度はきわめて厳正でなければならぬと思うからであります。このことについて農相にその所信を承りたいのでありますが、今度の改正によりますと、農林漁業金融公庫は競落人となって農地を取得することとなっております。この場合、農地法改正によらず、農地法第三条の第一項九号及び第七条第一項十号の省令で処理する御所存であるようでありますが、先ほども述べましたように、農地法の精神からいたしまして、これはきわめて重要でありますので、なぜ法律そのものを改正をしなくてこれを行なわれたか、その基本的な農林大臣考え方について伺いたい。つまり省令事項とした理由はどこにあるのか。事実上は、第三条の第一項第九号その他によって示されておりますのは、ちゃんと法律によって定められたものが省令に載せられておるのであります。それ以外には私どもとしては見受けることはできませんが、農林漁業金融公庫が農地を取得した場合のこれを処理する基準は何に求めていかれようとしておるのか、それを承りたいのであります。
  23. 重政誠之

    重政国務大臣 これは一般的の問題でなく、きわめて例外的な問題でありますし、さらに公庫そのものが国の公的の金融機関であり、それからまたこれは農林大臣監督のもとにある機関でありますから、非常に限られた金融であります。従って、農地法根本に触れるというほどの問題でもないと考えまして、今御指摘になりました省令によって運用ができる、こういうふうに考えておる次第であります。
  24. 足鹿覺

    足鹿委員 省令によってできるという御解釈のようでありますが、この問題はまだ先でずっと続きまするから進みますが、しからば政府は農林漁業公庫の行なう農地担保金融に関する農地法の特例措置等について、具体的にどのような案を用意して今大臣が御答弁になったような基準とする所存でありますか。すでにこれだけの重大な問題を、農地法そのものの根本に触れる重大な問題でありますから、当然われわれの要求がなくてもその省令案の基準となるべき事項をあらかじめ提示して御説明になるのが至当かと思います。御提示を願います。
  25. 重政誠之

    重政国務大臣 管理部長から御説明をさせます。
  26. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 この法令上の取り扱いについての基本方針については、ただいま大臣から御説明ございました通りでございますが、事務当局としましては、公庫がその金融担保のために取得しました、担保権を設定いたしました農地競売に付した場合に、みずから競落人となって競落をした場合、それを農地法三条の移動制限の除外例を規定いたしますために、農地法三条九号の「その他省令で定める場合」というのを受けて、農地法施行規則第三条に一号を起こしまして、農林漁業金融公庫がその業務として貸し付けた貸付債権の保証のために設定した担保権の実行にあたって、みずからその競落人となって当該農地を取得する場合という一号を起こしたい、そういうふうに考えておるわけであります。
  27. 足鹿覺

    足鹿委員 そういうことは口で言わないで、印刷物があるなら全員にお出しなさい。
  28. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 省令につきましては、ただいま、考え方につきましては、農林省内でも関係部課長の協議を終えておりますが、文章といたしましては、実はまだ用意をする段階に至っておらない要綱程度でございますが、要綱程度でよろしゅうございますれば早急に提出いたします。
  29. 足鹿覺

    足鹿委員 農地法の第三条というものは、農地の権利移動等に対して厳重に制限を加えておる。その例外として認めておることは、公共事業に供される場合以外には、国、都道府県のみが制限除外の適用になっておるのであります。それを新しい農林漁業金融公庫にその資格を与えようとするものでありまして、そこに疑義があるのです。ですから、そういうものは、われわれが法案審議に一番重大な資料として必要なものでありますから、そういうものはわれわれに下さる資料の一番最初にお出しになるのが常識だろうと私は思うのです。一番大事な要項なんです。これは農地法の第二条を大臣の意思によってその内容を自由に取り扱うことができる、こう解釈してもいい権限を省令ですからお持ちになるわけですね。それによって、要するに、国または都道府県あるいは例外としての公共事業の用に供される場合というふうにちゃんと規定されたもの以外に公庫を入れる、すなわちどういう基準でその処分をするかという大事な内容をお示しにならないということは、これは法案審議にとっては一番私は欠陥ではないかと思う。直ちに要綱があればそれをお示し願いたい、それによって私はまた議論の進め方もあろうと思う。その決定も見ずにこういう重大な農地法上疑義のある大きな問題を審議に付するということは、軽率ではありませんか。大臣はいかがお考えになりますか。
  30. 重政誠之

    重政国務大臣 要綱は至急に提出をいたさせますが、内容的には従来からしばしば御説明をいたしておるようなことでありまして、一般的なことでなく、公庫という政府機関農林大臣監督の行き届いておる公庫にやらすことでありますから、私は弊害等も起こることなく実態に即した金融措置がとれるものと考えてこういうことを考えておる次第であります。
  31. 足鹿覺

    足鹿委員 ですから大臣がそれの裏づけになる資料としてすみやかに御提示を願いたい。それをわれわれは拝見した上でまた議論はいたしたいし、お尋ねしたいこともあるわけでありますので、肝心なものをお示しになることをいつも要求によって出すという傾向はよろしくないと思うのです。先ほどの桧垣管理部長の御答弁によりますと、まだ要綱程度であって、最終的な案ではない、そういうことのようでありますが、これは少なくとも当委員会に、その公庫が取得した農地を処分する省令案というものについては、十分納得のいく確定案を付してよく説明をし、全員納得をして、なるほど農地法の第三条の権利移動の制限については心配は少ない、あるいはない、こういう理解と認識をやはり国会に与えて、お互いがちゃんとよく理解し合うことが必要ではないですか。その辺の食い違いがあれば、この法案の最終審議においては重大な難関にぶつかると私は思うのです。いかがでありますか。
  32. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 ごもっともなんでございますが、今日まで御指摘の点についてはしばしば御説明申し上げて参ったのであります。省令を改正いたしますのは、担保に供された農地競売に付された場合に、公庫が、ただいま管理部長から申し上げました省令に基づきまして競落人たり得る、つまり農地及び耕作地を保有し得るという改正をいたすのでございます。それからそれによりまして、今度は処分する場合でございますが、これは農地法一般原則に従って処分いたします。従ってもしも転用するというような事例が出ました場合には、転用の許可を得た人に譲り渡す、こういうことになるのでございます。
  33. 足鹿覺

    足鹿委員 その要綱は今お取り寄せを願えますか。私どもが仄聞をしておるところによりますと、こういう条項があると聞いておるのであります。つまり、農林漁業金融公庫の競落資格の容認の問題と、農林漁業金融公庫の取得した農地等の処分の方法についてまず規定をしておるようでありますが、その中に当該農地等を公共用施設等に供することを適当とする場合は農地法第五条の手続に従い処分するものとすること云々というふうに聞いておりますが、ほんとうにそういうものをお考えになっておるのでありますか。
  34. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 先ほどといいますか、先日来御説明を申し上げて参りました通り公庫農地担保につき法令上の特例を設けますのは、公庫担保にとった農地について競売に付せられた場合、みずから競落人になる場合の特例と、それから取得しました農地について小作地保有の制限の排除をするという二点だけでございまして、従いまして取得しました農地について当該農地が現在の農地法の原則に立ちましても、なおかつ他用途に転用することが至当であるというような場合につきましては、農地法の原則に基づいて処理する。そういう意味で転用による等の場合には農地法第五条の許可を要するということを考えておりますので省内におきます検討段階におきまして、その点を明らかにする意味で五条の手続を経るを要するというようなことを書いた資料があることは事実でございます。
  35. 足鹿覺

    足鹿委員 とにかくその要綱を早くお出し願います。そうしないとどうもはっきりした議論ができませんから。すぐいただけますね。
  36. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 部数をととのえるための印刷等の時間がございますれば出しますが、ただいま申し上げましたような基本的な考え方、これは省令の要綱と普通の法律もしくは政令の要綱という意味とは多少意味の違うものでございますが、それと、ただいまわれわれ農林省内部として省令事項として掲げようとしております事項とを至急に提出するようにいたします。
  37. 足鹿覺

    足鹿委員 よろしくお願いします。  今回の農地担保の活用の範囲は、担保権の実行によって故意に農地の適正価格を低下したり、あるいは耕作希望者以外の者に移動することを防止するために限って公庫が一時所有権を所持できるようにしようという特例事項と言われておりますが、それに間違いありませんか。もし農地法改正しないままに公庫農地を所有することができるようにするならば、その省令は必要最小限度にしぼるべきでしょう。これをむやみに広げていきますと、農地法がざる法になってしまう。第三条が死んでしまう。大臣、こういうことになると思いますが、その点、御所見いかがでありますか。
  38. 重政誠之

    重政国務大臣 御趣旨の通りにできるだけしぼってやるべきものと考えますが、一面におきましては、この公庫金融をする場合にはできるだけその担保力を増大するような措置を講じて、そしてできるだけ多くの金額を融資することができるようにするのが私は適当じゃないかと思うのであります。そういう意味におきまして、御趣旨の通りにこれはできるだけ範囲は縮めて考える、こういうことにいたしたいと考えます。
  39. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは公庫が取得した農地等の処分については、農業上の利用を適当と認めた場合は、農業構造改善に資するよう直接または信託事業を通じて売り渡す、こういうことになっているようでありますが、公共用施設等に供することを適当とする場合は農地法五条の適用だ、こういうことに今はっきりおっしゃったわけですね。そうしますと、これは農地転用の許可は知事が握っておりますね。あるいは五千坪以上ですか、農林大臣の許可権がありますのは。そこで伺っておきたいことは、公庫の処分の場合に前者において農業上の利用を適当とする場合及び公共用施設等に供することを適当とする場合とがあるわけでありますが、公庫の場合、だれがそれを認めますか。
  40. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 農地の使用目的に対する妥当性の判断は、ただいま先生もお話しになりましたように五千坪までの土地につきましては、これは知事が判定をするわけでございます。もちろんその知事の判定につきましては、地元農業委員会意見を徴することに相なっております。五千坪をこえる農地に対しましては、農林大臣みずからが判定するということになっております。
  41. 足鹿覺

    足鹿委員 知事の許可を必要としないのだから、公庫がみずから認めるということになるわけですか。知事との関係はどうなんですか。
  42. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 農地の転用を伴います場合の売り渡しもしくは通常農業用の売り渡しの際にも、これは農地法の原則に従って処理するわけでございますので、やはり知事の認定ということにかかるわけでございます。なお賃借権等の設定につきましては、農業委員会の判定に待つということに相なっております。
  43. 足鹿覺

    足鹿委員 それではその点はよろしゅうございますが、転用の場合は知事の許可が必要である。その例外規定として、省令の施行規則の第三条によって定められておりますが、都道府県が取得する場合、土地収用法その他の法律によって権利の収用または使用の場合、その他省令で定める場合であり、省令では施行規則第五条七号、八号によって、土地区画整理法、都市計画法等に使用する場合が定められております。はっきりしておりますね。  そこでこの際伺っておきたいのは、農地の処分についてははっきりいたしましたが、公共用施設とここであなた方が指摘されるものは、今私が指摘した省令に定むる以外の公共用施設とは、何を意味するものでありますか。
  44. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 ただいまお話に出ました意味での公共施設と申しますのは、学校用地でございますとか、あるいは道路、河川等の公共施設のことを考えて申し上げたのでございます。
  45. 足鹿覺

    足鹿委員 現在転用基準が定められておりますが、これは三十四年のたしか秋だったと思います。その際に定められたことは、第一種の農地としての生産力の高い農地土地改良事業を行なった農地、 これが第一種であります。第二種としては、市街地近郊で市街地の施設がある農地。第三種としては、その他の農地としておる。そこで第二種農地の転用は原則として許可されることとなっておりますが、これらに関連しまして、最近建設省において宅地造成法とか、土地区画整理組合助成法なるものが立案されつつあると聞いております。その内容はどういうものであり、また一方公団等の公的機関土地収用権を付与せしめる制度検討されておると伝えられております。つまり、これは過般の制度審議会が答申をして、現行法では補償価格の対価がきまらないうちは着工等のできないものをあとで対価をきめるという、農地を所有し農業を営んでおる農民としては非常に重大な問題を含んだ土地収用権をめぐる新しい制度検討でありまして、これらのものも要求をしてきた場合には、公庫が取得した農地の処分を、今桧垣管理部長が言われた学校あるいは道路、河川その他の公共用地のほかに、今私が指摘したような外的要求に基づいた場合でも、公共用施設と認めて特例を認めようとしておるのかどうか、この点はいかがでありますか。この問題について事前に建設省と協議検討した結果、これを容認する態度をとっておるのか。これは農林大臣に伺っておきたいのであります。事前に協議をされたかどうか。それは今秋が外的要求の二つの事例をあげましたか、そういうものが次から次へと出てくれば、いわゆる公共用施設として公庫所有の農地を処分していく御所存でありますかどうか。
  46. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 建設省におきまして、現在の宅地事情の窮迫しておる事情から宅地の造成についてその円滑な推進の方途を考えておるというふうには聞いておりますが、具体的に法案について協議は受けておりません。ただ先生も御承知と思いますが、先般建設省に設置されております宅地制度審議会におきまして、宅地に対する対策の一つ制度として市街地開発に関する答申を全体の答申の中の中間答申としてした事実については私どもは承知いたしております。その考え方は、ごくかいつまんで申し上げますと、これは建設省からさらに詳細お聞き願う方が正確と思いますが、審議会事務局の説明では相当にまとまった、おおむね一万人以上の新しい市街地を開発する場合に、これを都市計画として市街地開発地域としての指定をする。その場合には当該地域内において、土地の先買権の制度及び目的実施のために収用権を付与する。その宅地は日本住宅公団あるいは都道府県、市町村等の公共団体及び公共団体の出資にかかる住宅公社、あるいは開発公社のような法人が事業主体になり、法律上の一定期間内に市街地の造成をやるというようなことを考えておるという答申をいたしておりまして、答申の内容には農地法との関係は触れておりませんが、公的に、さように土地利用計画の確定いたしましたものにつきましては、農地法との調整は、関係省との間に慎重に協議の上、調整をはかっていきたいというふうに考えております。
  47. 足鹿覺

    足鹿委員 当然慎重におやりになるべき筋合いのものだろうと思いますが、建設省がおいでになりましてからこの問題はお尋ねをいたします。  そこで先へ進みまして、公庫取得農地の処分は、農地信託にするということになっておりますが、信託事業は実際上は開店休業の状態でありますね。この間の新聞に一件ですか、どこかであったそうですが、ほんとうでしょうか。実際はそれにかわるべきものとして、具体的な農民の動き、要求から出ておるのは、請負耕作の方が活発に進んでおります。これは香川県その他でもうすでに御存じの通りです。  そこでこの開店休業状態の信託の場合、農地信託規程例の第二十一条で、信託終了の要件として、引き受けた日から一年を経ても信託財産が売り渡されないときは信託は終了するとなっておりますか、そうですね。——そこで農林大臣に伺いますが、公庫が農協に信託に出した場合、一年間に処分ができなかったとき、またはこれがぐるぐる繰り返された場合ですね、なかなか処分がつかぬ、ぐるぐる回っておったという場合、だんだん農地の公団所有面積がふえて参りますね。そうすると事実上、公庫は不在大地主の様相を呈してくるわけですね。そういうことになると思うのです。しかもその用地は、信託に付して活用ができる場合もあるし、できない場合もある、こういうことになるのですね。これは農地法上の大きな問題ではありませんか。第三条の権利の移動規制というものは、三反歩以上の農業を営み、自作農として精進し得る者に対しての農地の所有権、賃借権あるいは使用収益権を付与しておることは御案内の通りであります。今度の農業基本法関係法律改正によって、農業法人等にもこれが認められたことは申し上げるまでもありませんが、この農地法の大原則は根本的にくずれてくるのではありませんか。大臣心配ないとおっしゃいますけれども、だんだんこれが進んでいった場合は、事実上そういう結果を招来しはしないか。その対案として、農林大臣——これは基本的な問題でありますので、御構想があればこの際承っておきたいと思います。
  48. 重政誠之

    重政国務大臣 これはもう釈迦に説法で、私から申し上げるまでもないことでありますが、担保にとったから一一競売をして、担保権の執行をするというような金融機関というものは、これは御承知通りにいまだかつてないのです。それはいよいよ最後のときの話であって、初めから担保物を処分するつもりで金を貸すという金融機関は私はないと思う。ことにこういうような政府機関であって担保物を処分する、これを担保権を執行するという場合、これはよくよくのことですよ。でありますから、今非常に足鹿さんの御心配になっておるようなことは、私は現実の問題としては起こらないと思うのです。そういうことを金融機関がやっておったのでは、金融機関の業務というものはやれるものではない。でありますから、これはあくまでも万々一の場合のことであり、そうしてまた、そうやっておけばこの償還もきちんきちんといくというようないろいろな心理的な意味、効果もあってこういうことをやるのであって、しかもこれが一般銀行その他の金融機関なら、乱暴なことも、これも万々一にそういうことがあるかもしらない。絶無とはいえませんが、それだって、よくよくのときでなければ担保権の執行はいたしません。ことにこういう公的な機関で一々担保権の執行をやるというようなことは、とうてい農林大臣としては認めがたいところであります。それは運用においては、あくまでも現実にそういうことのないようなことで融資をしなければならぬと私は思うのです。でありますから、お話のように大地主になって農地法の精神に反するというようなことは、私は想像だにいたしておりませんから、そういう場合はどうするかと今聞かれても、そういう事態は起こらないようにいたします、こういうことよりほかはないと思うのです。
  49. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 今の大臣の御説明の通りでございますが、念のために、今まで農林公庫担保にとりました中で、どれだけが競売になっておるかという件数を申し上げますと、担保でとりましたのは二万六千件ばかりでございまして、そのうち競売に付されましたのは四件でございます。
  50. 足鹿覺

    足鹿委員 だから私は、先ほど市銀等の場合を引例して、三十五年度の競売件数面積、市価、市銀等競売年別等の程度を知りたいというので、お尋ねをしておるのであります。公庫一般市銀とは性格の違った、国家の意思を受けて行なう金融機関でありますから、市中銀行の企業的運営とは同一になるとは思いません。しかし、今の状態から判断をしていきますと、構造改善についてもなかなかむずかしい。価格の安定を伴わない面、あるいはこれに関連して受益者負担の多い点、いろいろな点から見まして、私どもは、大臣が太鼓判を押されるようなそういう安易なものではないか、かように考えまして、一応念を押しておるわけでありまして、今の二万六千件の土地担保のうち競売に付したものは四件だということで、これをもって直ちに判断するということは、私どもはいささか納得いたしかねますが、建設省の方がおいでになったようでありますので、先へ戻りまして、先ほどからお尋ねをいたしておりますのは、あなたの方で宅地造成法案とかあるいは土地区画整理組合助成法案、あるいは公団等の公的機関土地収用権を付与せしめる制度検討され、それに必要な法的措置等が行なわれようとしておると聞いておりますが、そうした場合に——農地担保金融によって公庫が取得した農地が出てくるわけです。今おっしゃるように、競売はきわめて少ないということでありますけれども、一応担保にとった場合は、担保権を確保するためには競売があることは事実なんです。そうした場合には、これは大原則として、農業の用に供するためにこれを払い下げていくということが最も好ましい。しかし農地法施行規則の第三条によって、国または都道府県が必要と認めた場合、あるいは都市計画法等の例外の規定がございます。今度の場合も、まだ要綱は拝見しておりませんけれども、公共用施設に公庫がこれを回していくことができるような省令の内容考えておるようであります。そういう点については、事前にあなた方と何かお打ち合わせかあって——宅地造成法というものは大きな問題でありますが、それらは公共用施設として入れるというようなことについて打ち合わせばしてありますか。あるいは土地区画整理組合助成法等の関係において打ち合わせをしておられますか。先年、土地区画整理法ができましたときに、事実上農地法に優先をいたしまして、農地法は傷だらけになってしまったわけです。結局において、農地を耕す者が農地を所有するという権限移動の制限をむざんにじゅうりんされておる事例があるのであります。一方においては都市の膨張に備えるために宅地の造成が必要であることはわかりますが、農業を営む者がその権利を不当に侵害されたり、不利を来たすようなことがあってはならない、保護が必要だと思うのであります。その点についてどういう調整対策をお考えになっておられますか。もしお考えになっておるとすれば、今述べたような法案または対策の中身、内容構想等について伺いたいし、農林省ともそうした場合には今秋が指摘したような事態のないように十分お打ち合わせになる御用意がありますかどうか、この機会に明らかにしていただきたい。
  51. 町田充

    ○町田政府委員 お尋ねの大規模な住宅団地の造成事業の新しい手法の問題でございますが、これは私どもの方の付属機関に宅地制度審議会というのがございまして、ここで従来からいろいろ御検討をいただいておったわけでございますが、最近ようやく答申をいただきまして、その答申の線に沿って新しく法案をつくって今度の国会に提案をいたそう、こういうことで準備をいたしておるわけでございます。答申をいただきました内容は、相当大規模な住宅団地を造成するというような事業を行ないます場合、その事業主体である地方公共団体あるいは住宅公団に、協議がうまく整いません場合に、土地の取得について収用権を認めよう、あるいはその一定の地区内で土地の売買が私人間に行なわれるというふうな場合には、地方公共団体に一定の条件のもとで先買権というようなものを認めていこう、こういうふうな趣旨の御答申をいただきまして、その線に沿いまして、ただいま申し上げました通りいろいろ法案を検討中でございます。ただ問題は、そういうふうに収用権あるいは先買権というような新しい手法を持った開発方式でございますので、どういう地区にどういう条件でそういう開発収用を認めるかということが一番議論になったわけでございます。この点につきましては何しろそういう大規模な開発のためには、全体の土地利用計画というものがはっきり確定していないと無理ではないか、少なくとも現在あります都市計画法に基づきまする都市計画として、そういう事業を施行すべき地区がはっきり計画的にきめられなければいかぬじゃないかということで、住宅公団なり地方公共団体が、どこでも手当たり次第にそういう開発方式を用いてやるということではございませんで、あらかじめ都市計画法としてそういう事業を施行すべき地域が決定される、こういうことが大前提として必要だ、つまり都市計画法の手続と申しますか、都市計画審議会の意見を聞いて建設大臣が決定をする、こういう手続になるわけでありますが、そういう手続によって都市計画として決定された地域について、今私が申し上げたような開発方式を認めていこうじゃないか、こういう答申の線でございます。従いまして、現在法案も作成中でございまして、農地の転用の問題いろいろむずかしい問題があろうと思いますので、農林省当局とは密接に連絡をとって協議をいたして参りたい、こういう心がまえでおるわけでございます。
  52. 足鹿覺

    足鹿委員 先買権の問題等きわめて重要な内容を持つもののようでありますが、この問題とは直接関係はありませんので、いずれまたそれは法案が出た際に……。今私が取り上げておるのは、農林漁業金融公庫が農地を取得した場合の関連においてお尋ねをしておるのでありまして、今局長の御答弁によりまして一応そうあるべきだとは思いますが、実際には必ずしも局長が御答弁になったような運営になっていない場合が多い。金ヶ作の場合におきましても、私どもも現地に参りましたが、土地区画整理法をめぐって紛争が起きて参ります。いわんや今度の宅地造成については、先買権を発動するということになりますとこれはオールマイティということになります。結局転用基準として農林省が昭和三十四年にきめました生産力の高い農地土地改良事業を行なった農地などと言っておられない。それに農地法そのものの権利移動に君臨していくわけでありますから、いわんや農林省が転用基準として認めておるものあたりは全く一片の紙きれのごとく取り扱われるに相違ない。これは農地法との関係において全面的にその際検討すべき問題でありますので、今の御答弁でこれ以上申し上げませんが、しかし現在の農民の置かれておる立場、しかも計画的に構造改善事業が進まんとし、それに必要な金融制度改正法案を審議しておるさなかでありますので、最も計画的に進むさなかにあって、都市計画法との調整、これと宅地造成法との調整あるいは土地区画整理法との調整といったようなことが、きわめて重要になってくると思うのであります。そういう点についてはまた別な機会に申し上げますが、十分御配慮を願っておきたいと思います。  そこで農林当局にお伺いします。今言ったようなお話でありまして、それが問題になる場合がくると思います。これはこの三条に明記でいかれますか。いわゆる公共の用に供する云々という条項によっていこうとされますか。どういうお考えでありますか。どちらをおとりになるお考えでありますか。
  53. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 ただいま建設省から御説明がありました当省が検討中の法案に関する農地法との調整は、これは当該法自身がある目的法でございますので、もちろんその法案の内容についての協議は、ただいまお話がありましたように、建設省からも十分御相談があるはずでございますけれども、農地法との調整規定は当該目的法の中につくることが適当であろうと考えております。
  54. 足鹿覺

    足鹿委員 当然そうあるべきではないかと思いますが、その前における調整が非常に重要な問題になってくると思います。これはこの法案との関連よりも農地法との関連で、これは農林省はしっかりふんどしを締めておやりにならないと、農地法は全くのかかし法に堕す傾向がありますので、十分御留意を願いたいと申し上げておきます。  先に進みますが、次は直接この問題と関係はございませんが、私は主として農地法上との関係について質疑をしておりますので、請負耕作の問題についてこの際一つ承っておきたい。請負耕作は、部分請負、全面請負など形態が種々多様であるようでありますが、そのいずれを問わず政府の方針はどうでありますか。農林大臣は御存じないかもしれませんが、こういう事態が香川県などでは盛んに出ておる。貸主側が農地を財産的に保有するために、借主も経営拡大のために採算の合う小作料を支払っておるという事例が出ております。これは湯山委員の御出身地の愛媛県にそういう事例が出ておるということを、資料によってわれわれは知っております。これは厳正に言ったら農地法の違反だろうと思います。あなた方が制定された信託は、制定されて一年たっても一件しかない。ところが事実上の請負耕作はそういう形で進んできておる。このような対個別農家の契約を農協があっせん仲介するという、形の上では農地信託制度の貸付運営制度と近いと判断すべきものでありましょうか。この点はいかがでありましょうか。農地法上の解釈を一つ承っておきたい。  それからこれは農地局の見解だといって新聞等に出ておったのでありますが、請負耕作についてどのような見解を持っておるかという点について各県にこの問題で指令、通達を出した形勢があるようでもあるし、ないようでもありますが、何か通達を出したことがありますか。今私が指摘したような、事実上は農地法違反である、しかし農家が必要上やっておる、しかも農家農家がやるのではなしに、農協が中に立った場合には信託事業としての取り扱いをするという解釈であなた方は黙認の姿をとっておるのか、あるいは、ある新聞によりますと農地局の見解なるものがありまして、これは望ましくないというだけであって、耕作を全面的に他人にまかしてしまう全面請負は望ましくないというのであるか、部分請負ならばいいというのであるか、二つのケースが出てきておるのでありますから、これに対しては今度の農業近代化を進めていく上におきましても、相当これは実際に起きておる問題でありますから、これはほおかぶりというわけには参りません。やはりこれに対しては統一見解を出して、そうしてそれが好ましい一つ方向にいくということがいいわけでありますが、しかしそれが根本的に農地法に抵触する疑いのあることは、潜在的な地主制度の復活となりはしないかということでありますね。小作料をとってくるわけであります。これはなかなか重大な問題でありまして、農林省の統一見解というものは私ども聞いておりません。もし違反だとするならば、第何条の違反になるものでありますか。庄野水産庁長官そこでにこにこ笑っておられますから、自信があるようでありますから、一つ教えていただきたい。好ましいというのは部分的で、好ましくないというのは全面的な請負耕作が好ましくないというのか、また信託事業として農協が中に立った場合は好ましいのか、これらの点については少し御研究になっておると思います。農地局長もおいでになっておりますし、こういう機会に承る以外にはないと思いますので、ぜひ一つ明らかにしていただきたいと思います。
  55. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 いわゆる請負耕作の中には部分作業の請負をさしておるものから、一見全面的な耕作の業務を一括請負をさせておるというような形のものがあるように見受けられるのでございます。農地法との関係では、部分的な請負については、これは農地法に抵触する問題ではないと考えております。全面的請負の形をとっておるもので、耕作の主宰権を土地所有者側が持たず、請負者側が耕作、経営の主宰権を持つ、かつ生産物の所属が耕作者自身に帰属するということが実質的に明瞭である、しかも土地所有者に対して小作料に相応するような反対給付が行なわれておるということになりますれば、これは農地法の違反の疑いが濃いのであります。法律の条文との関係では、農地の使用収益に関する権利の移動統制の規定にまずひっかかるのではないかという点が疑われます。それから第二には、創設小作地については第三者に使用収益権を認めて地主化することを禁止しておるのでございますから、その点に問題がある。第三点としては、小作料に関しましていかなる名目をもってするも統制の小作料に従うべきことを規定いたしておりますから、小作料統制に関する違反ではないかということが疑われます。私どもとしては、ただいま申しましたような農地法に対する脱法的な請負については、これは農地法の厳正な施行という意味でさような請負が行なわれないように指導すべきであるということを、機会を得て都道府県あるいは農地事務局等の会議において指示をいたしたことはございます。ただし先ほど先生のお話のございました請負耕作に関して文書をもって農林省が通達をしたというのは、前農地局長時代から今日までの間はないのでございます。  大体農地法との関係における御説明を申し上げると以上のように考えます。
  56. 足鹿覺

    足鹿委員 今述べられたような見解を統一見解として、どのような形で指示をされたのでありますか。
  57. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 農林省の下部機構であります農地事務局の担当官の会議等で、口頭をもって指示をしたのでございます。文書は出しておりません。
  58. 足鹿覺

    足鹿委員 農地法を厳正に守るという立場からいけば、今の法解釈で私ども大体の納得がいくわけでありますが、それが守られるか守られないかということだと思うのであります。従ってこれは、いい芽であれば、前向きの農地法上の合法的な根拠を与えて、たとえば農業法人というものに、すったもんだをやりましたけれども、農地の取得権あるいは使用収益権等を認めたと同じように、やはりこれが一つの国策として推進をされておるわけでありますから、そういう方向で指導すべきものでありましょう。この請負耕作なるものは、昔の地主と小作との立場が転倒しておるのですね。地主が小さくて経営者が大きい、まとめて経営している。そうして一定の小作料に相当するものを現品または金銭によって支払い契約を結んでおる。こういうことになっておるわけでありますから、見方によるならばこれは一種の非合法の共同法人といいますか、法的根拠のない共同経営といいますか、まことに割り切った、関西らしい一つ方向だと思うのです。これを今言った農地事務局長会議で指示しましたくらいの話でほうっておくということではなしに、この際農林大臣一つ御所見を承っておきたいと思いますが、このようなことを黙認をし、進めていきますと、いわゆる旧地主の補償の理論的根拠にも実際においてなりかねまじいと私は思います。自作農主義を少なくともあなた方が中心となって、農業基本法の際にも官僚の原案には協業の促進とあったものが、自民党がこれを助長というふうに改められて、自作農主義というものに固執された、自立経営というものにしがみつこうとあなた方はしておられる。ところが事実は、あなた方の意図とは別に今言ったような方向へ進みつつある。こういう矛盾を、いわゆる農地法の示す、農業に精進する者に農地を保有せしめるという原則の上からいきましたならば、これはもう根本的にくずれておるのです。たとい地域は部分的であっても、数は少なくても。しかしこれは相当拡大していく方向をたどっておるのであります。とするならば、農地法をうしろ向きで消極的に守るというのではなくして、現在の経済情勢や社会情勢や農業情勢に即応した農業近代化の線に沿った農地法のあり方が問題になってくると思うのであります。これらを合法と認めるかあるいは合法でないと認めるか、これを阻止していくのか黙認するのか、根拠を与えてこれを広げていくのか、やはり一つの指針というものが必要となってくる段階ではないかと思うのであります。現にあなた方が三分五厘の長期農業構造改善事業資金制度を発足させられるという時期にこのような事態が起きておる。しかも三十六億というものを二百五十万円の個人資金中心にしてあなた方は考えられておる。ところが実際はそういうものをしり目にかけてこういう請負耕作が進んでおる。農地法上の解釈も怪しい。これでは私ども全く納得いきませんが、農林大臣のこの点に対する御所信があればこの機会に御表明を願いたいと思います。
  59. 重政誠之

    重政国務大臣 全く御指摘の通りでありまして、これは慎重に考えなければならぬ問題であると思うのであります。農地法に関する私の相談相手になっておる研究会に十分にはかりまして結論を得たいと考えます。
  60. 足鹿覺

    足鹿委員 今、東海林委員と打ち合わせしておったので、農林大臣の御答弁をちょっと聞き漏らしましたが、私の相談相手になっておる研究会とかいうのですが、これは農林大臣の諮問機関ですか。何か農地法の中身を検討しておる機関があるのでございますか。もうちょっとその辺をはっきりしておいていただきたい。
  61. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 大臣お話に出ました研究会と申しますのは、農林省としても今後の農業の動向、日本の経済の動向等を勘案して将来の農地法のあり方はいかにあるべきかという点について研究を進める必要があるわけでございまして、その際学識経験者の御意見を徴したいという意味で昨年九月に発足をいたしておるのでございます。農地制度研究会というものを、農林大臣の諮問機関ではございませんが、意見を徴する機会といたしまして学識経験者のお集まりを願っておるのであります。それに私ども便宜農地制度研究会という名前をつけておるのがその実態でございます。
  62. 足鹿覺

    足鹿委員 そのものは農林省の行政上の措置でできたものでありますか。あるいは閣議決定あるいは了解等による官制に準ずるものでありますか。そういう重大な問題を農林省だけが内輪でそっと手をつけていくというような態度は私はどうかと思うのでありますが、どういう趣旨のものでありますか。
  63. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 農林省の行政措置によってただいまのような方向をとっておるのであります。
  64. 足鹿覺

    足鹿委員 私は研究会として今内輪に御研究になるのはこの際とやかく申し上げますまい。農林省がみずから農地法をくずすようなことをお考えになろうとも思えませんし、厳正実施の建前からどう新しい情勢に即応するかということで御苦心になっておると思いますからこれ以上申し上げませんが、片方においては地主補償問題が起きておるわけなんです。従って権威のある機関によって農地法を厳正に守っていくという農林省の基本方針が貫かれておるわけでありますから、その点からもこういった問題はもっと考え直していかれる必要があるのではないかと思います。一応農林大臣がそういうことをおやりになっておるということについては承っておきますが、将来も御検討願いたいと思います。  徳安総務長官がおいでになりましたので、今農地担保金融問題を論議をしておりますので、これに関連をいたしまして地主の補償問題といいますか、報償措置といいますか、この問題についてお伺いをしたいと思うのであります。  大蔵大臣の本問題に対する答弁はいろいろと変わってきております。どこに本音があるのかわかりませんが、それはあとでまた別な機会に大蔵大臣に伺うといたしまして、所管長官として去る二月十二日の閣議了承による了承事項との関係をここに明らかにしていただきたいと思うのであります。それは予算を伴う議員立法は見合わせてほしいという提案を、これは官房長官よりですか、大蔵大臣から申し入れがあって閣議がこれを了承しておる。ところが自民党は同日の総務会において、これは毎年恒例の申し入れであり、農地補償問題について一応別格と認めると軽く一蹴しておるわけです。閣議了承を提案をした大蔵大臣も、これで引き下がるということであるならばサル芝居みたようなことでありまして、この間の予算委員会においては、政府としては農地補償であれ、農地報償措置であれ国会に提出しない、こういうことを言明しておる。そこで、要するにこれに関連する問題として、わずかな予算の問題あるいは大きな予算を伴う問題いずれにいたしましても、われわれは立法府におるわけでありますから、立法権を抑圧されることについては与野党を問わずそれを了承するものでありません。ありませんが、少なくとも最高裁において判決がおり、今日まで複雑な経緯をたどってきておるこの地主補償問題を、報償措置として行なうことを池田総理が昨年の両院総会で言明をされたそれをたてにとって押しに押し上げて、政府が出さなければ自民党としての議員立法を出す、農地補償問題については別格と認めるというようなことを総務会が決定するということは、全く政府不統一ではありませんか。政党政治の立場から考えて、政府は出さぬのだと言っておる、しかも予算を伴う議員立法は見合わせてほしいということを十二日にきめておきながら、同日これにまっこうから挑戦をするような決議が行なわれたといたしますならば、総務長官としてはこれにいかに対処されようといたしますか、その点を一つ伺っておきたいと思います。
  65. 徳安實藏

    徳安政府委員 ただいま足鹿委員お話しになりましたように、二月の十二日に閣議決定をいたしまして、予算に伴う議員立法の取り扱い方について党の方に申し入れをしてございます。それにつきまして農地報償の問題は別だということでこれを一蹴したというお話を今承ったのでありますが、現在までのところ私どもの方ではそうした一蹴された通知も受け取っておりませんので、現在では自民党を信頼しておると申し上げる以外にはございません。そこで、しからばあとの始末はどうするかということは、これは私の所管ではございませんで、そこになりますと今度は官房長官の方の関係になりまして、私はそれ以上のことはきょうは申し上げられないのであります。
  66. 足鹿覺

    足鹿委員 そうですが。官房長官においでを願いたいと申し入れをいたしましたところが、これは徳安総務長官の所管であるというので、お忙しいところ御無理を申し上げて、あなたにお越しをいただいたわけです。総務長官が、それから先は官房長官だということになると、これは官房長官に来ていただいて大いにその御所信を承らなければならぬと思いますが、要するに、地主補償は、私がもしかりに総務会の一蹴したその態度を解釈いたしますならば、かりにこれを議員立法として出しましても、本年度の予算には別に関係ありませんね。今、伝えられておるものだとしますならば、関係ありません。ですから、予算を伴う議員立法は見合わせてほしいということは、当該年度における予算を伴うものと解すべきか、あるいは将来にわたって予算を伴うものと解すべきか。これはいろいろ立場によって勝手な解釈がついてくると思うのでありますが、その点、総務長官としては、十二日の閣議了承事項の、予算を伴う議員立法を見合わせてほしいという趣旨は、将来にわたっても——それが二千八百億ですからね。これはそう簡単な金額ではございますまい。農林省の一年分の予算よりも多いのです。ことしは農林省は二千五百三十一億円であります。これを上回るわけでありますから、そういうものを将来にわたってやるようなことを、いかに政党政治とはいえ、議員立法で出すのだ、政府はこれをたてにとって、防ごうとしておるという熱意ではなくして、一応そういうゼスチュアを示すというようなことでありますならば、われわれは黙視するわけには参りません。その辺の総務長官としての御見解はいかがでありますか。
  67. 徳安實藏

    徳安政府委員 ただいまの、閣議で決定いたしまして党に申し上げましたものは、本年度の予算関係することと同時に、三十九年度以降においてもという申し入れでございますから、この趣旨は、将来はあまり大きな拘束をするような予算を伴うようなものはなるべく遠慮してほしいという考え方でございます。  そこで、農地報償の問題でありますが、これはまだ、何らかの処置をとらねばならぬと思うがという程度でございまして、総理も、じゃあこういう工合にしようという腹がまだきまっておりませんししますので、私どもの方にも指示がございません。党と政府との間は、御承知のように政党内閣でありまして、一体であろうと思いますから、この間の処置等につきましては、けんか別れするわけにも参りますまいし、またお互いに角突き合いばかりもしておれないことになりましょうから、その調整は違った形でとられようかと思いますが、私どもが出しました趣旨は今申し上げたような趣旨であり、今日では党を信頼しておるということだけでございまして、今度は、もめごとになったときの方法をどうするかということになりますと、これはすでに官房長官の方の関係になりまして、私には、ちょっと域を越えた御答弁になりますから、私は差し控えた方がいいと思います。
  68. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは、委員長に申し上げますが、お聞きのような趣旨の御答弁でありますから、官房長官の出席を要求いたします。  そこで、どうせこの質問はそう簡単に打ち切るわけには参りませんので、午前中の日程の御指示もあるようでありますので、この際、農地法改正と、地主補償問題に対する今日までの政府の国会答弁、これに関連して農林省の本問題に対する態度というものを、当委員会においては間接的には聞いておりますが、事農地担保金融ということになりますと、農地法そのものから端を発した農地補償あるいは報償措置の問題でありますので、一応農林大臣について伺っておきたい。  田中大蔵大臣は、一月三十一日、予算委員会において、わが党の小松議員の質問に答えて、農地買収者の報償に関しては何らかの措置をとる必要があるのではないか、しかしいろいろな問題に対しては実情調査を必要とするので、調査費を計上した。続いて二月四日の高田質問には、少なくとも一般の世帯よりも十分生計を営み得、しかも十分の余力のある者まで報償の対象にしようというような考え政府は持っておりませんと述べ、さらに三転して二月六日の楯質問には、金を幾らやるとか、また金でやるのか物でやるのか、それからいろいろな所得制限をするのかというような考えは、まだ全く未定なのでありますが、云々と答えておる。全くどこに問題があるのか私はよくわかりませんが、二月六日の池田総理は、楯質問に答えて、総裁としても総理大臣としても申し上げまするが、農地買収者に対しまする補償はいたしません、これはもうはっきり言っておるわけです。しかし、被買収者に対しまする報償については何らかの措置をしなければならぬということは、もう議員総会でも言っておるわけでありますと言っておるのであります。  そこで、今問題になりますのは、農林大臣に聞きたいのは、このような経過から見まして、農地買収者問題について、地主補償であれ、報償であれ、調査費が一億八千万円計上されております。この一億八千万円の調査費というものは、調査費そのものの性格はどういうものとして、あなた方はこれを閣議において、または予算に農林省関係としてお取り上げになったのか。これは官房長官がおいでになればわかりますが、また、調査の進め方としては農業委員会をして調査せしめるということをわれわれ聞いております。しかし、農業委員会はもと農地委員会として農地買収を行なった機関であります。政府の行政機関であります。途中で機構改革になって、現在は農業委員会、その農業委員会が自分たちのやったことをみずから否定するようなことを調査をせしめられる御所存でありますか。一部には、そういうことはわれわれは調査しないという意見、返上論も出ておるということも聞いておりますが、もしそうだとするならば、どういう機関でこれを調査をされ、どういう性格でもってこれを調査をなさろうとしておるのか。農林大臣としては、報償そのものに対する農林大臣考え方、また調査費の計上について、それを前提としての調査費なのかいなか、それらの点について一つこの際御所見を明らかにしておいていただきたいと思います。
  69. 重政誠之

    重政国務大臣 御承知通りに、旧地主に対する問題は農林省の所管ではないわけであります。土地改革をやって完了いたしたのでありまして、農林大臣としてはもうそれで事は済んでおるのであります。まずこれをはっきりと頭に入れておいていただかないといけないと思うのであります。  そこで、私が今の御質問に対して所管外のものをここで御答弁を申し上げることは適当でないと思うのでありますが、せっかくの御質問でありますから、私がどういうふうに受け取っておるかという考え方を申し上げます。  第一は、申すまでもなく補償ということはあり得ぬ。これは話は済んでおる。適法に行なわれたことでありますから、補償などということはすべきものではない。これは私自身が、この問題が起きて以来堅持しておる思想であります。そこで、報償ということでありますが、報償とは一体どういうことかということがまず問題になると思うのでありますが、私は補償と報償は非常に違うと思う。補償は政府が義務を負担しておるのであるが、報償の方はそうじゃない。政府は何らの義務を抱いてないと私は考えておるわけであります。そこで、報償というその内容は一体どういうのかと言えば、これはもちろん私の個人の考えであるわけでありますが、報償といえば何も金銭に限ったことはない、いろいろそのやり方はあろうと思うのであります。概念としてはそういうふうに私は思う。  今度の調査費の問題でありますが、これも今御質問をせられましたように、これは官房長官の所管に属する予算でありまして、私はこの内容についてかれこれ申し入れた本のでは全然ない……(足鹿委員農業委員会でやらせる……」と呼ぶ)農業委員会一つやってくれぬかという話もまだ私は聞いておらぬ。そこで、農業委員会の方では今の足鹿さんの話のように、それはちょっと困るという意見もたくさんの中だからあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、調査をする必要はあると私も考えておるのです。これは合法的ではあるが、一種の革命と私は思っておるのであります。ああいう重大な、しかも日本にとっては非常に当時適切な政策をとった、しかもそれは合法的にとった。だからそれでいいわけであります。しかし、短期間にたくさんのものを相手にしてやったのでありますから、必ずしもその当時の政府が予定をしておった通りにこれが行なわれておるかどうかということも、これはその後になって私もいろいろ話を聞くのでありますが、そういうものもあるかもわからぬ。また、それがために急激に家政も傾き、生活にも窮するような者もあるやに聞いておるのであります。私はいろいろのケースがあると思う。そういうものをこの際一つ調べ上げて、それに対して適当な措置を講ずるということも、これは政府として考えてしかるべきことである、こういうふうに私は考えておるのです。
  70. 足鹿覺

    足鹿委員 農林大臣はあまりよく知らぬということをおっしゃいますが、「政府は三十八年度予算案に計上した農地問題調査費(一億八千九百万円)の使用法について(1)各市町村農業委員会を通じて被買収農地などの実体を調査する(2)このため必要な世論も調査する——との方針をきめ、具体案の作成を急いでいるが、このほど(1)農地改革当時の書類を整備する」以下相当こまかく規定しておるのであります。これは総理府がつくったのですが、総理府がつくったならば、農林省は済んだのだから補償問題は知らぬ、報償ならば——何だか今きわめてあいまいもことした御答弁を承ったのでありますが、全然官房長官と総理府まかせで、その調査費の具体的な使用方法、調査の方法等については農林省は全然タッチしないのですか。この点は大臣でなくても、大臣はそういうこまかいことはわからぬとおっしゃるかもしれませんが、責任のある農林省当局から御答弁願いたい。
  71. 重政誠之

    重政国務大臣 それは、私には少なくとも具体的に農業委員会を全面的に使っていくということについての打ち合わせば、はっきりしておらないわけです。だから、これは調査の方法でありますから、最も適当な方法で調査するがよかろうと思う。私どもとしても、私の方の関係があればできるだけ協力をしてやる、こういう考えではおるわけです。
  72. 足鹿覺

    足鹿委員 それはおかしいではないですか。今あなたは農地改革は合法的に、しかも適切に行なわれた、だから完了したんだから農林省は知らぬと言う。それを今度は、報償の調査にのこのこついておいでになるのでありますか。これは重政農林大臣の御答弁ともあるまじきことだと思うのでありますが、事務当局は相談に乗ったのですか、乗らないのですか、はっきりして下さい。
  73. 任田新治

    任田政府委員 先ほど来総務長官からもお話がありましたように、とにかくこの問題については総務長官の方の所管になっておるわけであります。従って農林省並びに大蔵省その他の関係省に対して、このような方針で調査をいたしたいという協議があったわけでございます。
  74. 足鹿覺

    足鹿委員 そして今私が述べたような調査に対する具体案を農林省も御了承になった、こういうわけですね。
  75. 任田新治

    任田政府委員 その内容を示されておるわけでありまして、私どもの方では検討いたしておるわけであります。
  76. 足鹿覺

    足鹿委員 その検討資料を御提示願えませんか。農地改革は、農業委員会の前身である農地委員会が、法に基づいて行政機関として農地買収の第一線の衝に当たり、県段階あるいは中央にそれぞれ機関が設けられて、政府と一体となってやった仕事であります。今度は、そのやったことに対して、いわば異議というか、適当でないと判断をする人々が補償であれ報償であれ、これを求めてきておる。そういう調査に農林省が協力をするのはおかしいではありませんか。おかしくないとおっしゃるならば、これは政府一体の責任でやるのだということでありますならば、農業委員会は行政機関であり、農地改革の第一線の責任者であり、現在も農地法の番人でありますから、そういうことに対してはやらせない、総理府なり官房長官の責任においておやりになるのが妥当ではありませんか。農林省がなぜそういうことにタッチするのでありますか。
  77. 重政誠之

    重政国務大臣 これは申すまでもなく、大部分は適法に、適正に行なわれておるものと私は信じております。そこで、事実であるかないかやって調べてみなければわからぬと思っておりますが、もしも巷間伝えるようなことがあれば、一ぺん反省をしてみるということも一悪いことではないと私は思うのです。だから、かりに全部が完全に行なわれていなかったからどうしようというのじゃないのです。どうしようというのじゃないが、事実を事実としてここに出して、それがために、今旧地主というものが気の毒な状態になっておるとかいうようなことがあれば、この事実を事実として、それに対して政府が何とかの措置を講ずるというようなことをやったって、私は悪くないと思う。だから、そういうところはきわめてフランクに考えて、そういう事実があるならあると。そういう事実があるからどうという問題ではない。今の土地所有者政府との間は、これはもう済んでいるのですから。旧地主が、それがためにどうということがあるならば、これは何らかの措置を講ずるということがあっても、私は悪いことはないと思う。そこで今のお話のように、もとやった者に調べさすということはけしからぬ、こういうふうな考えをせられずに、自分がやったのをもう一ぺんそれを調べろ、こう言うのだから、どうせろくなことになってこぬかもわからぬ。ろくなことになってこぬかもわからぬが、しかし、そこは正直に反省をしていいのじゃないかと思うのです。人もかわっておることもあるし。
  78. 足鹿覺

    足鹿委員 官房長官がおいでになったようでありますから伺いますが、政府は三十八年度予算案に計上した農地問題調査費一億八千九百万円の使用方法について、過日具体案をきめたそうでありますが、それはどの機関に担当させ、どういう具体的な内容を調査なさる御所存でありますか。また、それは報償実施を前提としたものでありますかどうでありますか、明らかにしていただきたい。
  79. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 今のお話でございますが、農地買収者の報償の問題につきましては、今農林大臣からもお話がございましたように、要望も非常に強いことも事実でございます。同時にまた、非常に新聞の論調その他批判の強いことも事実でございます。そこで、この問題につきまして、何らか措置をしなければなりますまい。しかし、この前の工藤調査会の調査もございますけれども、どうも政府としては十分に確信を持ってやれるほどの調査でございませんでしたから、もう一ぺんあらためて調査をしてみたいということで、今年度の予算に一億八千九百万でありますか、計上いたしたような次第でございます。この具体的な実行方法等につきましては、総理本府の予算に掲げてございますので、総務長官のところで御検討願っておるというわけで、その使用の方法なり内訳につきましては、総務長官からお聞き取り願いたいと思います。
  80. 足鹿覺

    足鹿委員 官房長官、おかしいですよ。さっき徳安長官は、これから先はあなただと言うからあなたに聞いておる。何を言っておるのですか。官房長官に伺いますが、その調査費の具体案は、報償実施を前提とした調査の具体案であるかどうかということをはっきりしてもらいたい。
  81. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 今申し上げましたように、総理本府に予算を組んでございまして、いわば所管大臣に当たるのは総務長官でございますが、私どもが了承しております限りでは、要否を含めて調査の結論に待とう。従いまして、するということを前提にした調査ではないように承知しております。
  82. 足鹿覺

    足鹿委員 そうしますと、大へんに食い違いがあるように思うのでありますが、ただいまの御言明は、非常に重要な御言明だと思って、一応承っておきます。  そこで、徳安長官にもおいでを願ってただいままで申し上げたのでありますが、地主補償問題に対する田中大蔵大臣、池田総理の答弁は、一転、二転、三転、四転しているのです。今大臣お話によりますと、必ずしも金でなくてもいいということも、現に口に出しておいでになった。蔵相は六日には、所得制限の問題や、金でやるか物でやるかいろいろな考え方考えているので、未定であると言っている。またあるときには、生計を十分に営んでおる余力のある者までは報償の対象にしないと言っている。かというと、池田総理は一方において、報償については何らかの方法をやらねばならぬと言っている。その間にあってあなたは、新聞では、いつも陳情団に囲まれていろいろと御答弁になっておるのでありますが、そこでこの際、農林、官房長官あわせて、私どものこれに対するところの一つの基本的な問題を提起して、御答弁願いたい。  私どもの理解は、農地法を厳守していくということは、今までの論議で明らかになった。そこで、それが農地法の対価に不満である、その方法に不満であるということについては、最高裁の判決によって明らかに裁断が下っている。にもかかわらず、この運動を熾烈にやっていくということは、いわゆる旧地主の農地補償要求は、農地法そのものへの挑戦なんであります。そういう理解の仕方をしなければ、この問題は解決つきません。そういう性格を持っておると思うのです。現に地主運動に二つの流れのあることは、農林当局は御存じでありましょう。同じ地主運動といっても、全国的に補償を対象とした一つの大きな流れと、その中には、香川や石川やその他におきますように、要するに小作地の取り上げを、農地法を無視して強行していく、要するにこれに対しては、農林省は、農地法違反だとしてこれを処断している。従って、表向きでは農地法に基づくために、農地の取り上げ等は一応姿を消した格好でありますけれども、事実上におきましては、香川、徳島等においては、小作地の解消運動が促進されておる。これがために自作農資金からの特別ワクが設けられ、融通されたのであります。しかしながら裏面においては、旧地主団体の指導によりまして、農地法の制限緩和の改正要求が根強く残っておることは、御案内の通りであります。要するに三十五年地主調査会法が成立いたしましてから以来というものは、これに力を得まして、香川県では、小作人はあくまでも雇用人である、賃貸人ではない、だから元来地主の自作地として返還すべきものであるという新たな訴訟の提起を行なっておるのであります。こういう、いわゆる一つ農地法に対するところの挑戦が一方において行なわれ、一方においては補償を報償にすりかえておりましても、いずれにしろ実際的にはその対価に対して形を変えた対価を払うという形になるわけであります。特に農林省として、また官房長官としては、この国会には政府として法案は出さないということをしばしば御言明になっておる立場から、いわゆるこの農地補償の背景をなし、その中でこういう農地法そのものを否認し、農地法そのものを破壊しようという具体的な実力を伴った強い運動が起きておるが、これに対して政府の態度というものがきわめて手ぬるい。香川県では、三十六年に入って——わが党の湯山議員も現地に調査に行かれました。その報告等を聞いておりますが、集団的な小作料の値上げが行なわれておる。農林省はこれは農地法違反だと言って処断をしておりますが、跡を断ちません。要するに地主運動というものは、農地補償の獲得と現行農地法に対するいわゆる統制無視の動きでありまして、西日本に起きておるところの運動というものはそういう性格のものであります。これが一体となって一つ農地補償という形で政府に迫ってきておるのであります。同時に、一面において、どのような名前であろうと血路が開かれるということになりますと、今度は農地法そのものに穴をあけよう、正当に行なわれたこの農地改革そのこと自体を否認しようという大きな流れと運動か国家権力に対してまっ正面から起きてくるということを考えないで、これを調査に乗り出すなどということは軽率千万といわねばならぬ。現行農地法を厳正に守るとしばしば言明しておきながら、一方においてただいま官房長官からは報償を前提としない調査であるという御言明でありましたが、しかし新聞紙その他に伝えられておるところによりますと、報償実施を前提に農地調査の具体案が固まったと伝えられておるのでありまして、ただいまの官房長官の御答弁とはいささか違っております。そういう点からこの問題に対して考えてみました場合においては、農地法の全面改正を一方に掲げ、一方には報償を掲げていく。そういうときに農地担保金融農地法そのものの改正を伴わずして公庫法の改正という形で出てくるということは、事実上において、大阪城でいえば外堀を埋めるという緩和措置になりはしないか。要するに、地主運動に拍車を加える結果になりはしないか。ひいては、それはいわゆる対価の補償、こういうものに拍車を加えていく結果になりはしないかということを私どもは考えざるを得ません。現に、旧地主の各種補償はひんぱんに法律問題として提起されております。土地返還の訴えは行政訴訟の四分の一、東京地裁で五十件あるといわれ、さらに最近の事例では、農地転用からの訴えに対して、ある程度の権利復活を認めた旧地主の勝訴判決が東京地裁でなされたと伝えられておる。また、昨年暮れには福島県で旧地主百四十七人が違憲訴訟を提起したとも伝えられておるのであります。こういうふうにまっ正面から農地法に挑戦をし、そして農地法の精神をくずそうとしておる。農林省は守る守ると言いながら、だんだんジリ貧状態に押されつつある。容易ならざる事態と私どもは解釈するときに、農林大臣は先ほどの御答弁で、反省しなければならぬ、反省してみることは悪いことではないではないかと言われた。そうしますと農地法の精神に対しては疑義を持っておりますか。従来やったことに対して反省をするということは、何かその問題に対しては、全部とは言わないが一部にすっきりしない面もあったということをおっしゃいましたが、あなたがそういう考え方で一体農地法を守っていかれますか。今私が指摘したような、農地法にまっ正面から挑戦していく者に対して、断固たる処置がとれるかとれないか。農地補償問題の一環であるこの問題に対して、あなたは農地法の厳正実施を当委員会でしばしば言明された。農地補償の背景をなし、一つの大きな流れの一環である今秋が述べたいろいろな事例等に対して、あなたは断固としてそのようなものは農地法に基づいて処理をする、こういう確固たる所信をこの機会に御表明にならない限り、この問題は非常に大きな問題だと思うのであります。いかがでありますか。
  83. 重政誠之

    重政国務大臣 どうも、農地法の問題と旧地主報償云々の問題と私は関連があるとは思いません。私としては、現行の農地法というものは厳正に施行して参ります。これは農林大臣としては当然のことである。  それから、やや誤解をしておられるのではないかと思いますから、適切な例ではありませんが、私の耳にいたしておることを申し述べますと、あの当時適法に行なわれたのではあるけれども、しかし家族の者が復員をして帰るからというのもあの当時の法律施行の時点において合法的にやった、あと一年して帰ってきたとかいうような例も聞いている。あるいはまた屋敷の中に、あの当時食糧不足であったから、そこでイモをつくったり麦をつくったりしたのまで、これは農地として処分せられたというような話も聞いておる。これはうそかほんとうか知りませんよ。知りませんが、少なくともそういうようなことが巷間でかれこれ言われておったのでは、あの重大な農地の革命、そして日本のために最もいい政策に対して傷をつけるようなことにも私はなると思うのです。ですからせっかくそういういろいろな話があるのだから、そういうようなことも含めて一ぺん調査をしたからいいではないか、調査をしたからあの当時の処分がどうこう、土地改革というものがどうこうなるのではないのであって、これは政府が中に入ってやったことであるから、政府はその旧地主に対して適当でないと考えられ、あるいは気の毒だと考えられるようなことについては、何らかの措置をするというのは私は悪いことではないと思う。そのことは先ほど申し述べた通りです。ただしこれは私の個人の意見ですよ。そこは間違いないようにしてもらいたい。旧地主の報償問題については私の所管ではないのですから、ただ私の個人の意見を述べておる。農地法については断固として私は現行法を施行いたします。ただ、先ほどもお話がありましたように、あの農地法というものを現在の段階においてまだあの通りやっていいかどうかということは、足鹿さん自身からも先ほどそういうお話があった。だからわれわれとすれば、慎重に検討すべきものは検討して、新時代に合うように持っていくということは、当然農林大臣としての責任である。でありますから、農地法に関することは私の責任である。報償問題は個人としての私の意見だ、こういうのです。
  84. 足鹿覺

    足鹿委員 先ほどの徳安総務長官との応酬によって明らかになったことは、地主の補償であれ報償措置であれ、二月十二日の大蔵大臣の本問題に対する取り扱い方を先ほど述べましたが、これはぐらぐらしておる。そこで二月十二日に閣議の了承というものが行なわれて、予算を伴う議員立法は見合わせてほしいということが、閣僚間で満場一致承認された。ところがその日に、自民党の総務会は、これは毎年恒例の申し入れであって、農地補償問題については一応別格と認めるということで決定したと伝えておるのです。これでは全く国民の前に一つの芝居をしているというか、演出をしておる、こういうことにしかわれわれは理解できないのです。もう少しまじめに考えてほしいと思うのでありますが、とにかく軽く一蹴しておる。そこで徳安総務長官は、これは本年度でかりに報償措置をやるとしても、本年度に予算が伴うわけではありませんから、いわゆる予算を伴うということの解釈は当年度に限るのかと言ったら、いや三十九年度以降そのものにも及ぶものと理解すべきであると、こういうことでございました。だといたしますならば、報償を前提としない調査である、こういうことであり、二千八百億という膨大な、農林省予算を三百億も上回る大金であります。これは私どもは好まないものであります。絶対に反対でありますけれども、政府みずからが責任を負ってやるのならやる、やらないならやらないということを、ピリオドを打つべきなんです。いつまでもこんな問題でぐずぐずすべきではない。一方には報償を前提として調査をするという解釈をとった者もあり、党の責任者であるあなたは報償を前提としたものではない、農林大臣は、農地法はすでに済んだものであって、間違いなかった、農地の買収はよかった、しかし反省をしてみることはいいではないかと言う。社会保障的な角度から困った者を救ってやるというならば、別に農地補償との関係ではなしに、困った人間はあえて地主のみではない、戦争関係の犠牲者というものは、広く深く国民の各層に及んでおる。そういう者を対象にしていくことが私どもは正しいと思っておるのであります。そういう点を政府も真剣に考えておられるだろうと思う。この問題だけがなかなかもたもたしておるのは、そういう点をおもんぱかって考えておられるからだろうと思うのでありますが、先ほどの徳安総務長官の答弁というものは、官房長官としても御確認になりますか。
  85. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 閣議決定との関係ですか、問題点は……。
  86. 足鹿覺

    足鹿委員 ええ。
  87. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 これは毎年のことでございますが、確かにそういう趣旨の大蔵大臣からの発言がありまして、本年度の予算に影響を及ぼすような立法はどうかやめていた、たきたい、同時に、来年度以降に影響を及ぼす立法、これもどうかお控えになっていただきたいということを、私は執行部に申し込んで参りました。その後に今おっしゃるような総務会の決定があったかどうか、私の方には、そういう決定があったということを申して参っておりません。私どもとしては党の方におきましても、予算の問題に関係するような、もうことしの予算を御提案申しておるのでありますから、それを修正しなければならぬような、そういう立法をぜひなさらぬように強く期待をしておるような次第でございます。
  88. 足鹿覺

    足鹿委員 先ほど私が申しました調査要綱、これは官房長官の御所管のようですね。
  89. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 先ほど来申しましたように、総理本府の予算に組んでおるものでございますので、総理本府というものは総務長官の所管でございます。私は内閣官房でございます。
  90. 足鹿覺

    足鹿委員 それはどうも失礼いたしました。農林省と官房長官に申し上げておきますが、総務長官おいでにならないのですけれども、お二人おいでになるとわかりますが、今官房長官が御言明になりました、報償実施を前提としない農地調査具体案というものを、当委員会にも——これは別に秘密を要するものではありますまい。農業委員会をしてやらしめるということが骨子になっておるようでありますので、至急に一つお示しを願いたい。そのことをお願いいたしておきますが、いかがでしょうか。
  91. 黒金泰美

    ○黒金政府委員 総務長官に連絡をとりますが、いつでございましたか、衆議院の予算委員会で一応内訳を大蔵大臣が説明しておったように記憶しております。さっそくに連絡をとります。
  92. 足鹿覺

    足鹿委員 印刷物で、農林省はよもや内容を知らないはずはないと思います。ですから農林省も原文を持って準備をしておると思いますから、先ほど要求をいたしました農地法施行規則に基づく省令案の要綱、直ちに出していただきたい。今官房長官、総務長官から御言明になった農地問題の調査に関する調査要綱を直ちに御提示をお願いいたします。
  93. 重政誠之

    重政国務大臣 それは少し無理じゃございませんか。私の方は調査費も計上していない、調査をする責任もないのに調査要綱を出せということはちょっと無理じゃないですか。農業委員会が所管しておるものを、農業委員会でしからばどういうふうにしてこうという——まだ私がきめておらないものを私の力から要綱を出せというのは少し無理なことで、それはむちゃですよ。それは総務長官から出してもらえばいいのです。
  94. 足鹿覺

    足鹿委員 あなたがそうむきになって言われるなら、別にあなたからもらわなくても、実物さえもらえばいいわけでありますから……。あなたは、総務長官、官房長官よりすでに相談を受けておるとおっしゃるのですから、御存じなんです。お出しになっていただきたい。これは大事な資料ですから、ただいまの官房長官の御言明になったことを裏づける資料でありますから、期待をいたしております。
  95. 重政誠之

    重政国務大臣 相談を受ける書類を、事務当局は見ておるかもしれないが、私はもらっていない。それでもいいです。しかし相談をした方が出さなければ、受けた方から出す、こんなばかな話はないと思います。
  96. 足鹿覺

    足鹿委員 もうこれでやめます。
  97. 長谷川四郎

    長谷川委員長 午後二時から再開することといたし、この際休憩をいたします。    午後一時九分休憩      ————◇—————    午後二時五分開議
  98. 長谷川四郎

    長谷川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  両案に対する質疑を続行いたします。  足鹿覺君。
  99. 足鹿覺

    足鹿委員 午前中に農地担保金融、これに関連して請負耕作、農地補償農地法関係等についてお尋ねをいたしましたが、いよいよ具体的な法案に直接関係のある重要な問題について大臣お尋ねをして私の質疑を終わりたいと思いますが、第四の問題は、農林漁業金融公庫法の一部改正案についてであります。  その大臣お尋ねをいたしたいと思います趣旨は、農林漁業経営構造改善資金等、農林漁業の近代化に必要な長期低利資金が計画的かつ十分に確保できるよう、今後とも公庫に対する政府出資を大幅に増額する等の措置を講ずる御意思があるかどうかという点を中心に御所見を承りたいと思います。この点は先ほどの湯山委員質疑に対してもお答えがありましたので重複を避けますが、とにかく農業構造改善事業推進資金なるものが三十五億、三分五厘、二十年限度で二百五十万円の新しい資金制度が生まれたことは、農林大臣の非常な御努力のあった点でありまして、われわれはその労を多とするにやぶさかではありません。しかしながら、この資金は、三十八年度を初年度として貸し付けられる資金でありまして、総額三百億が予定され、その資金別の概要は、農業構造改善実施地域内の事業に対して、ただいま述べたように三十六億円を予定しておるのであります。この資金は、農業構造改善事業費の一億一千万円のうち、補助事業九千万円、そのうち土地基盤整備事業予定額の三千六百万円を除いた経営近代化施設設置事業五千四百万円の補助残融資分十一億円と、融資単独事業、これは三分五厘資金でありますが、二千万円のうち土地基盤整備事業費を除いた非補助の事業資金に二十五億円を充てることになっておるのであります。このほかに、果樹園経営改善資金三十億円、これは据置五分五厘ということになっておる。畜産経営拡大資金三十億円、これも五分五厘ないしは六分ということになっておる。農地及び未墾地取得資金が、構造改善が四分で一般地区が四分五厘というふうになっておる。林業経営改善資金については、取得については構造改善が四分、一般が四分五厘、管理関係については五分というふうに、金利あるいは償還年限あるいは据置期間というふうに、同じ構造改善資金でありながら多種多様であります。またさらに、沿岸漁業の沿岸漁船整備に八億円、漁業共同化に二億円ということになり、合わせて三百億ということになっておりますが、この中で私が一番問題にいたしたいのは、このような三百億のうち実際に三分五厘の新しい低利長期資金は三十六億円であり、法律施行前に公庫が貸し付けた貸付金についてはその貸付条件は従来の通りとするということを明記しております。附則第二項にございます。従って去年度に事業に着手した構造改善事業は、公庫融資の面においてきわめて不利益をこうむることになります。これが補完対策いかんということであります。先ほどの湯山委員の御質問にも一般的な御答弁がありましたが、同じ構造改善事業を行なう場合において、このような一年違いで、しかも先駆的に事業に着手した人々を片手落ちに見殺しにするようなことはいかがかと思うのでございます。また沿岸漁業の構造改善地域が融資の面において不利益をこうむることがないよう、これが補正についても適正な措置を講ぜられる用意があるかどうか。漁業構造改善農業構造改善も趣旨においては同じであり、むしろその困窮の度合い、資金、受益者負担の弱い点等は、漁業関係は特に農業に比べては劣る点が多いと思うのでありまして、これらの点は平等な取り扱いをすべきであると思うのであります。具体的にこの二点をお尋ねをいたし、明快に一つこの際措置を講じていただきたいと思いますが、いかがでありますか。
  100. 重政誠之

    重政国務大臣 御質問の第一点の、農業構造改善事業資金と沿岸漁業構造改善資金、これは平等の待遇をしろというお話でありますが、そういうふうに三分五厘になっております。  それから第二の御質問の点の、この制度が実施せられる以前において構造改善事業融資がせられておった場合、権衡を失しないように善処すべきではないかという御趣旨はごもっともであります。そういう場合がありましたら、適切な補正の措置を講じたいと考えております。ただ御承知通り、私どもの現在の考えでは、これは本年から初めて実行に移っておることでありまして、先般も本委員会でありましたか御指摘があったように、金融措置はまだ現実にはとられておらぬ部分が大部分でありますから、御心配のような点は少ないのでありますが、もしあったといたしましたならば、これは補正の適切な措置を講じて参りたいと考えます。
  101. 足鹿覺

    足鹿委員 明快な御答弁でありますので、昨年やったものと本年やったものがはんぱな取り扱いを受けないように、万全の措置を実行していただきたいと思います。  次に農地の取得資金についてでありますが、従来、自創資金融通法に基づいて資金公庫本来の貸付資金に移し、構造改善推進の特別長期低利資金として貸し付けられることになりました。その貸付条件は年四分五厘、主務大臣指定資金すなわち農業構造改善事業関係するものは四分ということになっております。これに伴いまして、自創資金の題名は自作農維持資金融通法と改められ、維持資金の融通となるが、この金利は五分ということになっております。  従来、維持資金につきましては大体災害資金融資に出ておるようであります。これを据え置いておられて、同じ自創資金が一方では編成がえになって、四分五厘と四分になり、維持には五分にするということについては、本来が一緒なものでありまして、これをこのように区別をつけるということはいかがかと思うのであります。つまりわれわれが貧農切り捨てというような言葉を使いますのも、どちらかというと、従来の自創資金というものは七割が維持であり、農地取得が三割、こういう形に運営されたものが、逆になり、また今回はこのように金利差がつけられるということになります。今度の豪雪対策にいたしましてもこの資金の利用ということも出てくるわけでありますが、問題は、維持資金を軽視する傾向はよろしくないと思うのであります。これを大臣として妥当である、考慮の余地はないとお考えになりますか。この点をいかに善処されるかということをまず第一点として伺いたい。  また、この利用されておる経緯から見まして、先ほども湯山委員が触れられましたが、検討するということではなしに、先ほど私が述べたような状態でありますから、構造改善資金そのものについてはもっと整理をして、そうしてこの統一をして、同様の趣旨のものについては、構造改善地域であれあるいは地域外であれ、日本農業近代化していくための構造改善でありますから、あまり等差をつけていかないような具体的措置を必要とするのではないかと思うのであります。  構造改善事業の場合で、未墾地取得対策というものがストップしております。未墾地取得がストップしてしまって、事実においてはうまくいっておりません。私はここに幾多事例を持っておりますが、十八町歩を話し合いによって未墾地を取得して新しく樹園地をつくっていこうといたしておりますけれども、強制買収は農地法上生きておっても、農林省の指導が双方の話し合いでやれということに指導しておりますから、話がつかない場合はそれっきりであります。やはりこういうものについては、もっと農地法本来の精神に戻った運用になると同時に、その金利等についても、先ほど述べましたように長期低利にこれを改めるべきものであると思うのであります。この点については非常に重要な点であろうと思いますので、自創資金の中身がこのように改編された理由、また今後維持資金も四分程度に下げて統一していく必要があると思うのでありますが、これに対して農林大臣はやらなくてもいい、これでいいとお考えになりますか。矛盾をお感じになりますならば何らかの措置を講じていただきたいと思いますが、いかがでありますか。
  102. 重政誠之

    重政国務大臣 維持資金を軽視するのではないかという御指摘でありますが、決してそういう考えではございません。ただ土地の取得、耕地並びに未墾地等を取得する場合を今回の公庫資金によるようにいたしましたのは、土地基盤整備というような問題が構造改善の基本的な問題になって参りますので、そこで土地の取得という場合が従前以上に多くなるであろう、こう考えて、これは構造改善のきわめて重要な事項でもあり、さらにだんだんに多くなるだろう。こういうような観点から、今回の資金の方へ入れたわけであります。決して他意があったわけではございません。維持資金の方は決して軽視しておるわけでないことをまず御了承願いたいと思います。  それから金利その他がいろいろ今度の新金融制度においても変わっておる、これは統一する必要がないかという御指摘であります。原則としては私もできるだけそういうふうにいたしたい、こう考えるわけでありますが、一応現在こういうふうになっておりますのは、先般も湯山委員でありましたかにお答えいたしましたように、金融融資対象が異なっておりますので、そこでこまかく融資の各対象対象について検討を加えた結果こういうふうにいたしておるのであります。大局的に考えればお説の通りであります。今後におきましても、一つできるだけ御趣旨に沿うように検討を加え、改善もいたしたいと思うのであります。何分微力でありますから、皆さん方の十分の御協力をこの機会にお願いいたします。
  103. 足鹿覺

    足鹿委員 要するに私の言わんとしておるところは、資金の回転率のきわめて鈍い、そして自然災害その他の災害率の高い、収益性の低い農業関係事業に対する金融体系というものは、普通の金融体系と切り離して農業金融という一本の柱を立て、そしてこれは普通の金融ベースとは切り離した農業金融ベースというものを打ち立てていく一つの金字塔としての三分五厘、二十年融資制度を、農地担保制度は裏にありますけれども、われわれは高く評価しておるのであります。あなたの言っておることでいいことはいいとわれわれは言っておるのであります。従ってそういう見地から、もっと交通整理をしていかなければならぬ。これは最も緊急を要する問題でありますので、少なくとも、これらこそが内部におけるところの研究をすみやかになされて、すみやかな機会に今述べたような一般金融体系と切り離した農業金融体系というものを樹立し、これに必要な金利、あるいは償還期限その他必要な統一された措置を講じていく必要がありはしないか、そういうことを聞いておるのでありまして、見る人によっては、今度の農林漁業公庫法の改正ということで農地担保金融が出発したことは、公庫金融体系を非常に複雑難解なものにする。先ほども湯山委員が指摘されたように、公庫の人みずからもわかりますまい。清井さん、いかがでありますか。これでいいとお考えでございましょうか。実務を担当しておられる人でもなかなか難解である。いわんや借り手の立場に立ったらそれこそ混乱が生ずるのではないか、かように思うのであります。私どもがこの資料を見ましても、そういう印象を受ける。何かさらに複雑化して、現在の公庫融資とは別な一つ農林金融制度が出てきたのではないかという批判もあります。これはよい批判にもとれますし、また悪い批判にもとれると思うのでありますが、その点について、前段は農林大臣から、後段は清井総裁から御答弁をわずらわしたいと思います。
  104. 重政誠之

    重政国務大臣 交通整理の問題は御指摘の通りであります。できるだけ努力をいたすつもりでおります。
  105. 清井正

    ○清井説明員 ただいまのお話の点でございますが、従来からも公庫金利体系並びにその他の償還期限等の条件が貸付対象によっていろいろ異なっておりますので、非常に複雑であるという御批判も受けておるわけでございます。私どもといたしましても、そういう御批判を受けておりまするけれども、なるべく事務を改善いたしまして、申し込み書類の簡約化その他をはかりまして、できるだけ借手の便宜になるように努めて参っておりますけれども、まだまだ問題は多いのでありまして、現実に各方面からそういう御批判なりお話を承っております。これは私どもが担当いたしております制度金融関係上やむを得ない部分があるわけであります。しかし、こういう問題をなお通り越しまして、できるだけ適当な方に適当な条件融資するというわれわれの制度本来の目的からいたしましても、できるだけ簡明をはかるということは公庫金融としての性格上本質的なものだと思います。今回いろいろ画期的な御改正がありまして、私どもも今後この実施に最大の努力をいたす所存でございますけれども、ただいま農林大臣お話もありました通り、この複雑な問題につきましては今後私どもも実施機関の立場からの実際上の御意見、あるいは民間からの御意見等も十分拝聴いたしまして、政府の方にもよろしく伝えまして、大臣お話の御趣旨に沿うようにわれわれも機関として努力をして参りたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  106. 足鹿覺

    足鹿委員 もう少し私はこの点について大臣構想を具体的にただしたいのでありますが、先ほどの湯山さんの質問に対する答弁の域を脱しておらないと思うのであります。やはりここまできた以上は、早急に何らかの措置を講じられる必要をお認めになったわけでありますから、農業金融体系というものを再検討していく研究機関の設置なり、あるいはそれに必要な関連する措置というものをこの際御言明をされて、そうして事務当局を督励して、その措置をすみやかに実現さすべきであると考えますが、くどいようでありますけれども、もう少し具体的な御所見があれば承っておきたい。
  107. 重政誠之

    重政国務大臣 すでに午前中にも湯山委員の御質疑に対してお答えをいたしました通り農業金融改善という問題はきわめて重要な問題でございます。しかもきわめて困難な問題であることは御承知通りであります。私もぜひこれはやりたいと考えておりますので、適切な方法によりましてできるだけすみやかに検討を終えて成案を得たいと考えております。
  108. 足鹿覺

    足鹿委員 すみやかに成案を得られて国会に諮られる機会の早いことを期待いたします。  最後に、農業近代化資金助成法の一部改正の問題につきまして、おもなる点をあげて農相にお尋ねをいたしたい。  このような制度が昭和三十六年度にできましたことは、幾多の矛盾は持っておりますが、わが国農業金融の前進のきっかけを示したものであろうと思うのであります。しかしながら、本来このような政策融資は、農協のごとき短期融資機関をして政策融資を代行せしめることの可否については、もはや反省と批判の余地が出てきておると思うのであります。これは他の委員からもるる申し上げられたと思いますが、たとえば農協に近代化資金の申し入れをいたしますと、必ず役員会においてこれが問題になります。人名別に問題になります。なぜならば十五カ年の間保証をしなければならない義務を理事は負うわけです。ところが、現在の農協の理事は任期三年制度であります。任期三年の制度理事が十五カ年間、残り十二年間保証責任を負うということは、農村の現在の農協の実態から見てこれはなかなか簡単ではありません。そこに一つの隘路が出て参りまして、とやかくしておるうちに、結局信用度の低い貧農は、そこの第一段階でふるいにかけられて、実質的な貧農の融資、実際近代化資金融資してやらなければならないところに金がいかないという実情が現に起きてきておるのであります。こういう点について、このような農業近代化資金助成法の一部を改正する法律案を機会に、かかる政策融資を農協等をしてやらしめることを将来も続ける方針であるかどうか。先ほども交通整理をするという御言明であり、近い機会に抜本的な農林金融のあり方を考えるという大臣お話でありましたが、それらの点についても、特に私が今指摘いたしました農協をしてひもつき融資をせしめていくということについては、農協の自主性を奪うという批判もありますが、その批判もさることながら、私は事実上、現在の農協構成の上からいって、長期にわたるこのような政策融資をやらしめるには、はなはだ条件を備えておらないのではないか、根本的に。この点をいかに受け取っておられるか、大臣の御所見を承りたいのであります。
  109. 重政誠之

    重政国務大臣 御説を拝聴いたしまして、なるほどそういういろいろの難点もあるとも思います。申し上げるまでもなく、農村の資金は農村に還元するという趣旨で、農協にこれを扱ってもらうのが至当であるということでできたことと思うのでありますが、実施の結果、ただいまお話しになりましたようないろいろの点が出て参っておるわけであります。そこで今回は、必要なところに金がいかないというような面もありまして、銀行その他の金融機関で同一の条件融資ができるものは平等に取り扱おうということに一応いたしたわけでありますが、私どもの希望いたしますことは、やはり農協の金は農村にできるだけ還元をいたしたいというのが私どもの希望であり、また方針であるわけであります。これは金利関係その他いろいろの関係で、そう簡単に参りませんが、十分御指摘の点も検討を加えまして、一つ何とかいたしたい、こういうふうに考えております。御承知のように保証協会というようなものもありまして、これによって保証をさして、先ほどお述べになりましたような役員の任期が短期であるというような不便も補わせようと考えたのでありますが、なかなか現実は必ずしもそう参らぬということでありますので、十分それらの点は検討を加えます。
  110. 足鹿覺

    足鹿委員 だいぶん大臣もこの点は御認識しておられるようでありますから、くどくは申し上げませんが、これは早急におやりにならなければならないことと存じます。しかし基本問題でありますから、あとでもう少し申し上げて、直接この法案に関係のある今回の地方銀行等の活用について承っておきたい。  本改正案によって追加された金融機関は、銀行その他の金融機関で、政令で定めるものとなっておりますが、政令で定めるものとは、地方銀行、相互銀行、信用金庫等だと言われておりますが、政令案の内容は概要どういうものでありますか。これも冒頭に述べましたように、付随する具体的な法律の実体規定になるわけでありますから、ちゃんと用意をしてお出しになるのが誠意のある態度ではないかと思うのでありますが、いかがでありますか。
  111. 松岡亮

    松岡(亮)政府委員 政令の内容につきましては御説明をやっておるわけでございますが、内容としましては、銀行、相互銀行、信用金庫、こういう指定をやることにいたしております。それで実際にどの銀行に扱わせるかということは、これは県の事情があると思いますので、県知事の意見を聞きまして、補助の条件としてどういう銀行、どれどれの銀行、あるいはどれどれの相互銀行をやるか具体的にきめて参りたい、かように考えております。
  112. 足鹿覺

    足鹿委員 農協の組織のない地区に、あるいはまた、あっても機能が不十分であり、あるいは停止状態であって、農協金融が受けられない地区にあっては、非常に今回の措置は便利であり、喜ばれる措置ではないかと思います。その点では賛成でありますが、そういう地帯にのみ限定する方針でいくべきではなかったか。何となれば、一般にこれを指定する場合には、既存の農協系統金融機関との競合は必至でありましょう。政府はそれを意識して、競合を通じてサービスの向上等を競争させていく、切磋琢磨せしめるという意味一般的にこれをお認めになったのか。要するに、今までの農協関係が機能停止をして不利不便を受けた地帯に銀行等の窓口を開くというのであるならば、その地域を指定すれば事足りるのではないか。一般的にこれを指定されたということについては、当初相当問題があったように思うのであります。摩擦が生じてくることは、これは当然であります。現在でも、これはそう表向きではありませんが、深刻な摩擦が起きております。また競争も起きております。競争自体はけっこうなことではありますが、現在のままの農協の姿でありましたのでは、なかなか大銀行あるいは大きい信用金庫等との太刀打ちは必ずしも勝利を占めるというわけには参りますまい。押され気味になるでありましょう。これらにかわる措置として、これらに対して政府農業近代化資金助成を始めると同時に、相関連して、農協合併促進法を制定して指導されたことは御案内の通りでありますが、現在農協合併の進行状況はどういう状態でありますか。私はこの機会に実情を申し上げておきたいと思いますが、私も単協の組合長の職責を持っておる一人であります。現在、行政区画単位に私の町には農協が十五ありますが、そのうち十四だけ話がまとまりまして、四月一日発足ということになろうかと思います。ところが、共通管理費の節減ということ、市当局あるいは県の出先機関等の指導の中心がそこにありまして、まず一緒にする、しておいてから今度いろいろ練るという形のようであります。そこで、現在のまま、十五のものを十四合併いたしましても、現在の農協の体系の中にあっては金利は下がりません。また購買マージンもなかなか下がりません。また行政区画単位に合併いたしましたのでは、加工あるいは貯蔵、出荷調整というような点について共販内容を充実していくという機能を合併によって十分満たすことができない実情にあります。また、そのような大きな合併をした場合の人材確保はなかなか容易ではありません。赤字のあるものは赤字を埋め、黒字のあるものは、これは出資の持ち分に計算をして、そうしてお互いがパンツ一丁で一緒になろうというわけであります。でありますから、当初においてはなかなかこれは容易ならぬことであります。赤字を持つものも黒字を持つものも一緒に合同ということは理想でありましょうが、なかなかそうは参りません。全国の実情はいかようになっておるか知りませんが、そのような中にあって、中央における団体のあり方等もさることながら、末端においてはすでに農業協同組合がよくても悪くてもそういう合併を進めつつある。そして中には成果の上がったところもあるし、中には逆に隠れ赤字が出てきて始末のつかないようなところも出てきておる。人材が得られないためにかえって機能が低下しておるところもある、こういうような状態であります。そういう中にあって、農協合併と末端における農業委員会の農政部と農協との関係をどう調整をするか、また農業共済組合のあり方と、農協合併を機会にこれをどう調整し、検討していくかという議論ではなくして、現実の姿の上において解決をしていかなければならぬ問題があろうかと思います。たとえば農災法の改正によって、共済組合は市町村の方へ移譲の道が昭和三十年でありましたか、開かれて、今日まで、先ほど資料要求しておりますが、六百近い合併が行なわれておると私は記憶しております、市町村移譲が行なわれておると記憶しております。そういたしますならば、その移譲をいたしましても任意共済というものはそのまま市町村財政にもその利益は繰り入れない。それから共済組合にも——共済組合はなくなったわけでありますから、そこにも入れる余地はない。宙ぶらりんの、何か特別会計のようなものをつくって、そして地方財政法にも抵触するといえばするような運営も行なわれておることは事実であります。そういう事態の場合には、進んで市町村の公営に移し、そして任意事業、経済事業等は、これは農協に話をつけて一元化をして、そして従来中央に起きておるような事態は末端の必要によってこれは解決していく段階がきておるのではないか。私は架空の議論や独断に基づいた判断ではなしに、現実に起きておるこの事態をどう収拾されようとするのか、要するに農協合併の進め方と農業共済組合の市町村移譲等によって、いわゆる経済力の分散、組織の分裂をできるだけ食いとめ、そして末端の農業協同組合の強化に資することが農業近代化資金制度を運用していく基本の条件ではないかと考えるものでありますが、この点について農林大臣のしかとした御答弁をわずらわしておきたいと思います。
  113. 重政誠之

    重政国務大臣 単位農協が合併をせられまして強化をするということは最も大切なことであると思うのであります。そういうことによりましてこの近代化資金の運営もよくなって参ると私は思うのであります。そのために農業共済を町村に合併をし、移したらどうかという御意見でありますが、これは先ほどもお話しの通りに、法律改正によりましてすでに町村に移っておるものが六百ぐらいあるやに私も存じておるわけであります。ただ、これは各地方々々でのいろいろの実情があるわけでありますから、現在のところではこれを全国一律に何か町村に強制的に移すとかなんとかいうようなことは、これはちょっと検討を要するのではないかと考えておるのであります。町村自体がまたこれを引き受けるということでなければ、これまた移すわけにはいかない、そういうような事情もいろいろございますので、今直ちに御指摘のようにこれを農業共済は町村が経営していくような方法をとるということは、なお十分慎重に検討を要するのではないか、こう考えておる次第であります。
  114. 足鹿覺

    足鹿委員 農林大臣のお考えは少し時点がずれておるではないかと思うのです。と申しますのは、市町村に農業共済の仕事を移譲していく道を開いたのは、まだ農基法もない、従って農業構造改善事業もない、近代化資金もない、農協合併もないときのことであります。その当時はまだ勤務年数の通算制もしかれておらない。また、農業共済に対する事務費の国庫全額負担もきわめて率の低いときであるというふうに、条件の整わないときでありました。ところが、その道を開くことによって、今日四千組合といわれる共済組合のうち六百に近いものが自然にそこへ移譲していくということは、これはすなわち時代の趨勢を物語り、条件が整備したからそういう方向に実際進行しておるのではないかと考えられるのであります。それらについて、農協合併を行なう場合にあっては、やはりそのような配慮のもとに指導していくということは決して法律にも抵触するものでなければ、何ら間違ったものではない。下からの要求がすでに起きておる。また、農業協同組合自体も、合併はしても事実上財政難、人材難、また系統三段階制の段階については何ら政府は手を打っておらない、従って  マージンも下がらぬ、金利も下がらぬ、そういう段階にあるのであります。私どもは、ある程度農協合併が進んだときにはこの上部機構のあり方についても当然検討をしなければならぬと考えておるのでありますが、それよりも、今末端の市町村の段階においては、私が指摘しておることがちゃんと具体的に現われておるわけでありますから、それに対してはあなたも前向きの指導方針を明らかにされても決してあやまちではないと思うのでありますが、この点お尋ねをいたします。
  115. 重政誠之

    重政国務大臣 御趣旨はよくわかります。十分に一つ検討をいたします。
  116. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは、大体私のお尋ねをいたしますのは一応終わりましたが、もう一点だけ農業信用基金協会の問題について、お尋ねかたがた要望を申し上げて質疑を終わりたいと思います。  先ほど大臣も、農業信用基金協会の運営については必ずしも満足すべき状態でない趣旨はお認めになりました。そこで、この信用基金協会の設立の趣旨にかんがみて、本来の機能を十分に果たしておらない現状にかんがみ、政府はその業務運営について具体的に改善指導する責任があると思います。たとえば保証協会ともあろうものが厳重な保証人をさらに要求する、また、担保をさらに求める、そういう市町村の協同組合においては、理事会という難関で、そこでふるい落とされ、さらに計画をして出したものが保証協会で、またそこでふるわれる。昨日も大蔵委員会との合同審査の際にも同僚委員から指摘がありましたが、結果としては資力のある者しか近代化資金が借りられない、こういう事態に事実逢着しておることはお認めにならなければならぬと思います。これはやはり短期融資機関である農協に政策融資の責任を負わせたという本来の問題と、基金協会のあり方とその運営に問題があろうかと思うのであります。  そこで、これらの問題については、中央に再保証の機能を持つ機構をつくって、地方の保証協会の責任をもっと軽くする、中央である程度これをめんどう見てやるというふうになれば、審査も比較的軽くなるのではないか、そういった点も考えられるわけでございますが、この点についての農林大臣構想を承りますと同時に、いま一つは、経営不振の農協の地区においては、近代化資金の取り扱いを従来受けられない地銀あるいは信用金庫、相互銀行が今度窓口になったものの、やはり総合農協から直貸方式で借りたいという声が相当あると思うのであります。ところが、これは農協内部でも問題のある点でありますが、たとえば現在共済農協が共済積立金の運用資金を持っております。これを直貸で出せば、金利も安いし、本来自発的にそういう融資を行なっております。経営改善資金あるいは機械化導入資金、生活改善資金等で、私どもの県においても盛んにやっております。農家から相当喜ばれておりますが、そういったものも一つは信連を経由して出ていくという格好になっております。どうしてもこの問題が農協内部でもなかなか片がつかない。こういうような点について、信連または農協共済の直貸方式等による系統資金の積極的な利用について、もっと検討の余地があるのではないか。これは簡素化の問題とも関連いたしまして、きわめて重大な問題であろうと思います。要は、借りようと思う、近代化を必要とする、日本農業を現実に背負っておるものは事のいかんを問わず零細農民であります。これが集積されて日本農業の生産力を背負っております。そこに生産力停滞の隘路もあり、また問題もあるのでありまして、これが貸し出しの信用度の問題あるいは煩瑣なために貸し出しが受けられず、近代化の目標が達成されないということになりましたのでは、何をか言わんやであります。この点について保証協会の機能の充実及び系統金融機関の直貸方式等すべてを考えて、もっと貧農にも近代化に必要な相当額の資金が簡単に貸し出し得るように、借りられ得るような指導方針をこの際打ち出してもらいたいと思う次第でありまして、これに対する大臣の御所信を承りまして、私の総括的な質問をこれで終わることにいたします。
  117. 重政誠之

    重政国務大臣 御指摘の点一々ごもっともであります。十分に検討を加えまして、御趣旨に沿うように一つやりたいと思いますが、保証の問題、農業信用基金協会のやり方は、もうおっしゃる通り、原則として、保証人を立てるとか担保をとるとかいうことはなしにやらなければならぬものであります。特殊の場合は別といたしまして、原則としてはそうであります。そういうふうに指導を加えますと司庁に、また再保証の御構想の御発表がありましたが、これについては十分検討いたします。  それから第二の直接貸しの問題でありますが、これもごもっともなことでございまして、信連につきましては直貸方式というものは一応とっておるわけでありますが、それは十分にその機能を発揮しておるとは申されません。さらに農業共済組合連合会でありますか、多額の資金を擁しておるのでありますから、そういうものを一つできるだけ活用するということも、これはきわめて重要なことであると思いますので、それらの点は十分検討いたしまして善処いたしたいと考えます。
  118. 長谷川四郎

    長谷川委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  119. 長谷川四郎

    長谷川委員長 別に討論の通告もありませんので、直ちに採決に入ります。  これより農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案及び農業近代化資金助成法の一部を改正する法律案の両案を一括して採決いたします。  両案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  120. 長谷川四郎

    長谷川委員長 起立総員。よって、両案は原案の通り可決いたしました。     —————————————
  121. 長谷川四郎

    長谷川委員長 この際、片島港君外二名より、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案農業近代化資金助成法の一部を改正する法律案の両案に対し、それぞれ附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  趣旨説明を求めます。片島港君。
  122. 片島港

    ○片島委員 私は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党を代表いたしまして、ただいま採決せられました二法案すなわち農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案及び農業近代化資金助成法の一部を改正する法律案の両案に対し、附帯決議を付されたいとの動議を提出いたします。  まず案文を朗読いたします。   農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案に対する附帯決議  (案)   政府は、農林漁業の構造改善事業が真に農林漁業者のものとなるよう、農林漁業者の側の呼応態勢の確立、国の責任態勢の明確化を図るために、引き続き法制上、財政上前進の姿勢をもって各般の措置の整備を図るは勿論、就中、構造改善事業の前提となる農畜水産物価格安定対策の確立、流通機構の整備、消費の拡大等に関し格段の努力を傾倒すべきである。なお、当面の融資制度に関しては、左記の各項に関し遺憾なく措置すべきである。      記  一、農林漁業経営構造改善資金等農林漁業の近代化に必要な長期低利資金が計画的かつ十分に確保できるよう、今後とも公庫に対する政府出資を大巾に増額すること。  二、農地担保金融については、いやしくも現行農地制度基本理念にもとることのないよう厳正にその運用を図ること。  三、自作農維持資金、林業経営維持改善資金及び沿岸漁業者経営安定資金についても、農地及び森林等の取得資金に準じそれぞれその貸付条件改善するよう検討すること。  四、農林漁業経営構造改善資金制度創設以前に事業に着手した農業及び沿岸漁業の構造改善地域が融資の面において不利益をこおむることがないよう、適切な措置を講ずること。  五、農林漁業者等に対し資金が貸付けられた後において、資金融通の所期の目的が達成され償還が確保できるよう、改良普及組織の活用等、格段の創意工夫をこらし農林漁業者の経営指導等について万全を期すること。  六、農林漁業に関する制度金融が極めて複雑多岐にわたっている現状にかんがみ、制度の単純化、金利体系の再調整、借入手続の簡素化等について根本的に再検討を加えること。  七、農林漁業の振興と農山漁家の生活文化の向上を図ることを目的とする団体が連けい式小規模水力発電事業を行なうことができることとし、これに必要な資金について公庫からの貸付ができる途をひらくよう可及的速やかな機会に所要の措置を講ずること。   右決議する。 次に、   農業近代化資金助成法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、左記の各項に留意して本案の施行に当るべきである。     記  一、農業近代化資金融資機関に地方銀行等を指定するに当って、既存の系統金融機関との間に摩擦を生ずることのないよう適切な措置を講ずると同時に、農協の金融業務の円滑化等組合員に対する奉仕態勢の整備に関し遺憾のないよう指導すること。  二、農業信用基金協会は、真に農業に精進する意欲のある農業者が農業近代化資金の債務保証を申込んだ場合にあっては、協会設立の趣旨にかんがみ進んで債務保証機関としての本来の機能を十分に果すよう、その業務運営について指導監督の万全を期するとともに、保証力の増大のため、今後協会に対する政府出資の増額に努め、また再保証機能をもつ中央保証機構の設置に関し検討を進めること。  三、経営不振のため農業近代化資金の取扱を行なっていない総合農協が相当数に上る現状にかんがみ、これら不振農協の地域内の農家に対しても農業近代化資金が円滑に融通されるよう信連の直貸方式等系統資金の積極的な活用を図るよう特段の方途を講ずること。   右決議する。  この両案に対する附帯決議につきましては、ただいま読み上げました案文によっても非常に具体的でありますし、さらに今日まで質疑応答を通じて明らかになったわけでありますから、趣旨の説明は省略をいたします。どうか満場の皆さん方の御賛同をお願い申し上げます。  趣旨の説明を終わります。
  123. 長谷川四郎

    長谷川委員長 採決いたします。  片島君外二名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  124. 長谷川四郎

    長谷川委員長 起立総員。よって、動議の通り両案にそれぞれ附帯決議を付するに決しました。  この際、政府当局より所信を求めます。農林大臣
  125. 重政誠之

    重政国務大臣 附帯決議の御趣旨は十分尊重いたしまして、慎重に検討の上、御趣旨に沿うようにできるだけ善処いたしたいと考えます。
  126. 長谷川四郎

    長谷川委員長 なお、両案の委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  127. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  次会は明二十一日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四分散会      ————◇—————