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1963-02-06 第43回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月六日(水曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長代理理事 秋山 利恭君    理事 田口長治郎君 理事 丹羽 兵助君    理事 足鹿  覺君 理事 片島  港君    理事 東海林 稔君       安倍晋太郎君    伊藤  幟君       金子 岩三君    亀岡 高夫君       草野一郎平君    田邉 國男君       谷垣 專一君    寺島隆太郎君       中山 榮一君    松浦 東介君       松本 一郎君    米山 恒治君       稻村 隆一君    角屋堅次郎君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       野口 忠夫君    芳賀  貢君       安井 吉典君    山田 長司君       湯山  勇君    稲富 稜人君  出席政府委員         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  小沼  亨君         農林政務次官  津島 文治君         農林事務官         (畜産局長)  村田 豊三君  委員外出席者         参  考  人         (群馬酪農会         議会長)    根岸  孝君         参  考  人         (全国農業協同         組合中央会調査         役)      吉田 和雄君         参  考  人         (日本乳製品協         会会長)    大野  勇君         参  考  人         (全国飲用牛乳         協会参与)   佐々木久治君         参  考  人         (全国業務用乳         製品卸事業協同         組合理事長)  中島 清次君         参  考  人         (畜産振興事業         団理事長)   蓮池 公咲君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 二月六日  委員栗林三郎辞任につき、その補欠として芳  賀貢君が議長指名委員に選任された。 同日  委員芳賀貢辞任につき、その補欠として栗林  三郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(乳価問題)      ————◇—————
  2. 秋山利恭

    秋山委員長代理 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  去る一日の委員会決定に基づき、本日は乳価問題につきまして参考人から意見を聴取することといたします。  ただいま御出席参考人は、群馬酪農会議会長根岸孝君、全国農業協同組合中央会調査役吉田和雄君、日本乳製品協会会長大野勇君、全国飲用牛乳協会参与佐々木久治君、全国業務用乳製品卸事業協同組合理事長中島清次君、畜産振興事業団理事長蓮池公咲君、以上の方々でございます。  参考人各位には、御多用中のところ当委員会に御出席下さいまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から率直な御意見をお述べ下さるようにお願い申し上げます。  議事の順序は、まず参考人各位より御意見を御開陳願い、しかる後委員諸君から参考人及び政府当局に質疑をしていただくことにいたしたいと存じます。なお、はなはだ勝手でありますが、参考人の御意見はお一人十五分程度にまとめていただくようお願い申し上げます。  それでは根岸参考人からお願いいたします。根岸参考人
  3. 根岸孝

    根岸参考人 私、ただいま御紹介にあずかりました群馬県の酪農会議会長をいたしておりますと同時に、東毛酪農協という酪農専門農協組合長をしております。と同時に、自分でも乳牛十頭ばかり飼いまして現在酪農をやっておる者でございます。従いましてそういう立場から、今回の乳価値下げ問題につきまして、国会の諸先生方一つお願いいたしたいと思うわけでございます。  まず第一に、今度の値下げにつきましては、私は群馬でございますが、群馬県を一円とし、しかも同一の時期に同一価格をもってするというような値下げ打ち出し方でございまして、値下げの時期は十二月の十一日から、価格につきましてはキロ当たり二円七十銭という、一升にしますと五円というような大幅の値下げ状況でございます。従いまして私どもの考えますには、これは独禁法違反疑いがあるのではないかということを強く考えておる次第でございます。特に今度打ち出しましたところのメーカー乳価値下げの理由というものは、まず第一に生産消費のバランスがくずれたということをいっております。そして市乳消費伸びなかったので乳製品滞貨ができ、従って乳製品が値下がりしたのだ、そのために今度値下げをするのだということをいっております。それが会社経営を圧迫しているような現況にあるということもいわれております。なおこれは値下げといえども奨励金の取りはずしであって、乳価値下げではないということも私どもメーカーの方から聞いております。こういう状況でございますが、私ども生産者立場から見ましたときに生産者の言い分としましては、生産伸びというのは正常の一五%か一六%程度の昨年の数字でございまして、過去におきましてずっとその程度伸長度を示してきておるわけでありまして、決して異常ではないというふうに解釈しているわけでございます。なお市乳伸びが悪いということは天候の影響もあるかもしれませんけれども、これは生産者自体の問題ではなくてむしろメーカー側にその責任があるというふうに考えておる次第でございます。と申しますのは、最近におきます牛乳消費の傾向は、色もの、つまり加工乳乳飲料というような性格のものが非常に伸びております。白もののパーセンテージは三分の一以下というような現状でございまして、牛乳が五〇%ないしはそれ以下しか中に入っていない製品が多いというような現状では、あれほどの本数がもし全部白牛乳が入ったとしたならばこれはとても今の消費伸び悩みなんていう程度の問題ではないだろうというふうに解釈しているわけでございます。従いましてこの市乳伸びの減少ということはメーカー側責任であって生産者責任ではない、それが今回の値下げとなると生産者の方へそのしわがくるというのはとても納得ができぬ、こういうことでございます。  その次に、そのメーカーで出しておりますところの乳製品の値が下がったといっておりますけれども一般消費大衆向け乳製品は、市乳にしましても、あるいは育児用乳製品にしましても、バター、チーズその他大衆の使うものはそう下がっていない。そして第二次、第三次加工用に使われますところの大カンものは値下がりを示しておりますけれども、この中には自社ないしは同系統の製菓会社において使われるところの、いわゆる自分会社で使われる性質の、還元してもう一ぺん水に戻して使われるというような性格のものが非常に多く含まれておる。従ってこういうふうな関係では、われわれ生産者あるいは消費大衆には決して安くはなっていないということでございますので、値下げに対してはどうも納得がいかない。  なお、滞貨の問題につきましては、すでに昨年の暮れに、二十億の畜産振興事業団によるところの買い上げが決定いたしております現況におきましては、もうすでにその問題も一応解決されたものと私ども解釈しているわけであります。  なおまた、そういう状況から会社経営が圧迫されるというお話でございますけれども、現在の株価を見ましても、あるいは九月末の決算状況を見ましても、株主の配当状況を見ましても、職員に行なう各乳業会社のボーナスの状況を見ましても、決して業績が悪いというふうに、生産者の方から見ると見えないのであります。これはあげて生産者に一方的なしわ寄せをしているのであるというふうな解釈をせざるを得ない。これが現実の状況でございます。  生産者は、今の価格でさえも所得補償おろか生産費もまかなえないというのが実情でございまして、これ以上値下げをしろといいましても値下げできない状況にあるわけでございます。現在群馬県で要求されておりますキロ当たり二円七十銭、一升五円の値下げをいたしますと、多頭飼育に入って六、七頭飼っておる人は月に一万円以上の賃下げをされるような現状でございます。もしこれが俸給生活者だったらどうだったろう、一万円以上の賃下げをするのだといえば大騒ぎを起こすわけでございます。で、われわれ生産者がこの問題で大きく騒いでおるわけでございます。特に公共料金や諸物価が高騰いたしております現在、この値下げに対してはどうしても納得がいかないということから、今回の乳価問題が持ち上がっておるわけでございます。特にその中で、メーカー側あるいは政府でもこういうことを言っておりますけれども、私ども納得のいかない問題は、奨励金の取りはずし処置であって乳価値下げではないというようなことを言っておることであります。この問題につきまして群馬県の実情を申し上げますならば、群馬県におきましては、おそらくこれは群馬県だけでなくてほかもほとんど同じように聞いておりますけれども基本乳価が二十六円七十銭だという。今まで取引したものは幾らかというと、三十三円七十銭でございます。従いましてキロ当たり七円、一升にしますと、基本乳価は五十円であとの十三円は奨励金だ。その奨励金性格は、中身を分けてみますと、二円七十銭、二円七十銭、あと一円六十銭が特別奨励金とかなんとかいろんな名前があるようでございます。しかしながら、その名前たるや、ほんとうに名目的な名前であって、特別奨励金だとか増産奨励金だとか、実際に牛乳を売っております立場から考えてみましたときに、毎日々々の品物を渡しております全部が——卵でも牛乳でも肉でも、売り買いする場合には、特別の奨励金というのは、夏場の奨励金だとかあるいは乳質のいいものを出したから特別報奨するとか、そういうものでなければ奨励金という意味はないと思うのであります。ところが、現在の段階では残念ながらそういうふうな状況でございます。  そこで、群馬県では、昨年の三月の値上げのときでございましたけれども、この点が大きく問題となりまして、生産者団体責任者としてはこういう契約書には判こが押せない。乳価は五十円だけれども実際に取引しているものは六十三円だ、あとは、どういう意味だかわからないけれども奨励金というような性格では判こを押すわけにいかないというようなことでだいぶ問題になり、たまたま酪振法の十九条に規定がございまして契約をしなければならないということもありますし、契約をしたものは知事に届け出をしなければならないという規定もございますが、それが公正を欠くときには知事は勧告することができるという条項が三項にございますので、その問題を取り上げて、県に対して適正な運用をやってもらいたいと申し入れをいたしました。群馬県におきましては、現在満足な契約書ができていないというような実情にあるわけでございます。それで酪振法制定以来こういうような牛乳取引になってしまった。これは、メーカー生産者の力の関係であまりにも生産者団体が弱過ぎるというようなことからこういう事態が起こっているというふうに解釈しているわけでございます。  こういう事態の上に立って、基本乳価を中心として物事は論じるのであって、あと奨励金その他であるから取りはずそうとどういうふうにしようと安易なものであるという解釈に立つことは取引の正常な姿ではない、少なくもそういう形ではないというふうに私ども解釈すると同時に、この解決につきましては、政府並びに国会におきまして姿勢を正すような方法を講じていただきたい、こういうふうに考えると同時に、ただいま申し上げましたような事情から値下げをしないように、私どもが見ては値下げの要素もないように思うからして、ぜひ値下げをしないようにということで県下統一の交渉を今日まで進めて参っておりますが、依然としてこの問題ははかばかしく解決をいたしておりません。と同時に、十二月分の乳代につきましては、話し合いがつかないにもかかわらず一月の十日前後に値引きをしたままで送られて、一方的な支払いを受けたという実情にあるわけであります。  そこで、生産者といたしましては、概算金ないしは内渡金としてこれを受領するけれども酪農家がその金をとらずにおくというような余裕はございませんので、あと不足分話し合いがついていないのだから、ついてから渡してもらいたいという請求を内容証明その他の方法によっていたしておりますと同時に、こういう状態を続けていては仕方がないから、一つ知事酪振法二十条の申請をしようということになりまして、知事紛争あっせん申請中でございます。  こういうふうな状態で、地方における酪農民並びに地方実情酪農民がこういう事態に対してどういう考え方でいるかを国会の諸先生方に聞いていただきたいと思うわけでございます。  酪農民は、今のような処置を受けまして、まず第一に、これでは仕方がない、もうがまんができないというような立場から、これでは闘争をしなければならないというような立ち上がり方をいたしまして、群馬県ではすでに県内八カ所において抗議大会が持たれておるような現状でございます。なお、今後も継続してこの問題をやっていくのだというような方向にあるわけでありますが、その反面、乳業会社の方では、半分にするから黙っていればこのくらいで話をおさめるというように、切りくずしと申しますか、各地にちらほらそういう動きも出てきてはおります。しかしながら、現在のところまだ妥結に至ったところは一つもございません。ただ、末端の酪農家の中にこういう意識に燃えている者と、その反対に、現在農業と他産業と格差が大きいと同時に、労働力不足から農業を継続しようとする意欲、特に酪農を続けていこうとする意欲がなくなり、こう価格が不安定な状態ではやめるというような動きも非常に数多く見られるような状況になってきたわけでございます。特にあきらめて牛を売る。現在乳牛価格がかなり下がっております。と同時に、それが屠場の方へかなり回っております。去年の暮れからことしに入りまして相当大きな数字を占めてきておるわけでございます。特に酪農家自体については、こういう国の政治に対する不信感と申しましょうか、そういうものがどうしても——今までは国の重要な産業であるというような、今後の成長産業である、選択的拡大のホープであるというような考え方でおったものが、今日乳価の問題について何ら打つ手がないというようなことから、不信感が強まってきておる現状はいなめないと思うのでございます。特に県、市町村、特に市町村とそれから市町村農協の態度につきましては、酪農振興をこれ以上していいのだろうかどうかということについて、大きな迷いを持っているような現状でございます。従って、構造改善事業の中で酪農主幹作目として取り入れているものは、これを何とかはずそうというような動きが出ていると同時に、その構造改善に対する返上をしようというようなことも、現在群馬の中にも出ております。と同時に、農協あたりでは勝手にどんどん導入資金その他を貸しまして、現在のような状況になると今度は合わないから、あるいは他産業日傭取りに出てもまだ手間がよけいとれるから——どもの方は日傭取りに出まして七百円から八百円の日当でございます、土方に出まして。それをとった方が酪農をやるよりもまだましだというような状況で、牛をやめていく人々は結局借金だけ残ってしまう。こういうようなことでは、今後農協では資金の貸し出しはもうだめだ、ごめんだというような声がかなり出ておるわけでございます。こういうふうな情勢を反映しまして、現在の私ども地方におきましては、牛乳の減産の態勢というものはますます進行しつつある。このまま推移すれば、私どもの方の実情からすれば、ことしの夏にはかなり牛乳が減産するというような実情であろうと思うわけでございます。酪農会議におきましても需給推算を立てておりますけれども、今の地方実情を見ますと、そういうような情勢の中で迎えておりますこの需給関係につきましては、すでにこの夏相当不足するのではないかというような、牛は売ってしまうわ、あるいは屠殺してしまう、屠殺頭数がどんどんふえるというような現況の中ではそうなるのではないか。特に東京の市乳地帯という、この関東、甲信の地区におきましては働く場所がよけいある、労働の報酬がよけいとれるというような方向から、現在の乳価をもってしてはそういうふうな現象が出てくることはやむを得ないというような状況にあるわけでございます。  そこで、国会先生方にお願いする問題といたしまして、当面いたしまして私どもが今までこの問題を取り上げて参ってきますと、これは当事者間の経済行為であるから乳価問題はどうも介入できないというようなことをおっしゃられますが、私どもの考えますには、今までに酪農振興をはかってきたのはだれがやってきたか、これは政府であり県であり、市町村もやりましたけれども、今まで国の大きなささえがあって酪農振興がなされ、今日これだけの乳量が集まって参ったわけでございまして、成長産業として今後続けていかなければならないことも当然であろうと思います。  なお、昨年度あたり需給推算の誤りから緊急輸入等をいたしておりますような状況もあり、なお取引が今のような状態で行なわれていることは、生産者の団結をあるいは力をもう少しつけなければ均等な取引が対等の立場で、しかも公正なる取引ができないというような現状の中においては、これは当然政府においてもその行政上の責任として、仕事としてぜひこういう問題について検討をし、やっていただきたいというふうに考えるわけでございます。  特に今度の事業団の二十億の買い入れに伴う問題と関連いたしまして、生産者側の方から見ますならば、このまま乳価値下げが通ったならば、生産者の方には、せっかく二十億の国費を使ってやったものが、生産者には何の御利益もなかったというような結果を来たしてしまうわけでございます。メーカーの方は、滞貨融資にひとしいような状況でございますので、利益はあるかもしれないが、生産者の方には何の還元もない。そういうような事情から、ぜひとも政府が今度の値下げの防止については積極的にこの処置をとっていただけるようにお願いいたしたい。  特にお願いいたしたいことは、現在の生産者価格がそれでは国際価格としてもはたして高いのか安いのか、こういう問題も十分検討していただきたいと思います。乳製品のいわゆる製品価格はなるほど国際競争力についてはかなりの問題があろうと思います。しかしながら、生産者価格におきましては、世界各国に比して決して現在の乳価が高過ぎるという性質ではないように私どもは見ております。言うなれば、それは販売なり加工面合理化が現在まだできていないから、いわゆる旧態依然とした方式でやっておるから、こういう状態生産者価格は三分の一以下でございます。現在生産者の手取りが販売価格に対して三分の一以下なんというところは、世界各国にもございません。そういう状況から一つ検討を願って、そうして今の生産者価格を維持する、値下げをしないようにすることに対する御努力をお願いいたしたいわけでございます。  次に、畜産物価格安定法基準価格の改正が来たる三月に行なわれるわけでございますが、現在の段階におきましては、特に一キロ当たり五十二円というのが工場持ち込み価格であるというような、これはしかも乳製品原料についてだけでございますけれども、これを一つ早急に価格を改定してもらいたい。  それからなお、緊急に飼料用として政府手持ち麦類あるいはふすまの放出等をはかってもらいたいというのが、当面した対策としてお願いいたしたいわけでございます。  なお、長期の問題としましては、自由化の問題も遠い将来としても当然控えております状況の中では、長期酪農安定施策につきまして十分御検討をいただきたい、かように考えるわけでございます。  まず第一に、長期安定施策としては、価格安定の抜本的な処置一つ講じていただくようにお願いしたいわけでございます。特に流通面合理化については、酪農会議等の設立もできております現況から、これを十分活用されまして、そしてこの酪振法取引合理化という問題もあわせて考え、それから現在のような、先ほど申し上げましたような弱い立場にありますところの生産者団体育成強化をはかると同時に、対等の立場価格決定ができるような処置一つこの価格安定の中に加えてもらいたい。そうするためには、実は群馬県でございますので養蚕県でございます。養蚕の問題は掛目協定と申しまして県一本で価格の大綱がきまるような仕組みができております。こういうような方式牛乳取引ができることをぜひお願いしたい。そういうような問題とあわせて畜産物価格安定法も同時に改正されて、そして現在は原料乳だけでございますけれども、なま乳を全部含めて考えていただくようにお願いいたしたいわけでございます。特に価格決定方法であるとか、あるいは審議会委員選出方法であるとか、そういう問題についても、今後生産費なり所得補償方式が講じられますようにお願いいたしたいわけでございます。  時間がございませんので急いで申し上げますが、次に飼料政策につきましてお願いいたしたいのは、現在生産者の手元には専管ふすま、増産ふすまというような、国で政策的に出しております飼料が思うように潤沢に流れておりません。これが配合業者あるいは飼料業者の手に渡っているというような実情でございまして、私ども実需者には非常に縁の遠いものになっておる、これが実情でございます。従いまして、これらにつきましても、価格の安定と同時に需給の安定をはかれるように、現在の需給安定法を改廃していただいて、その価格安定をはかっていただくと同時に、実需者に直接渡るような前向きな施策一つ講じていただきたい、こういうふうにお願いするわけでございます。  なお、自給度の向上も大きな今後の酪農合理化問題点でございます。この問題については、現在の耕地の飼料作物関係ももちろんながら、国有林の開放とか牧野造成ということに積極的なる施策を講じていただくようにお願いいたしたいわけでございます。  なお、学校給食も、そのときの場当たり的な政策でなく、制度化されて、そして今後国内産の牛乳学校給食の大きなウエートとして持ち込まれるように計画されることをお願いいたしたい次第でございます。  大へん時間が超過しまして恐縮でございますが、以上を申し上げまして、私ども生産者立場を一応御了察いただきたいと思うわけでございます。(拍手)
  4. 秋山利恭

  5. 吉田和雄

    吉田参考人 時間があまりございませんので、懇切を欠くと思いますが、生産者団体中央機関職員といたしまして一言陳述をいたしたいと思います。  まず現在の状況でございますけれども、御承知のように、昨年の十一月の初めに全国一斉に乳価値下げ通告を受けたわけでございます。この値下げ通告の実態は、先ほど根岸参考人から言われましたように、同じ時期に、しかも同じ地域に対して、同じ期日から、しかも同じ値下げの幅を通告されたわけでございまして、これは事前にメーカーが協定した疑いが非常に濃いものでございます。すなわち独禁法違反疑いが非常に濃いものでございまして、現在、昨年酪農民大会を開きましたが、大会実行委員会としましては、これにつきまして公正取引委員会に提訴をしておるという実情でございます。  第二番目に、乳価値下げは、乳価価格値下げでない、奨励金の取りはずしであるというような詭弁をメーカーは弄しておりますが、われわれの考えるところでは、現在奨励金なるものの額を見て参りますと、この額が乳価の二割にも及ぶというのが実態でございます。他の農産物あるいは商品におきまして、価格の二割に及ぶ奨励金がつけられておるものはない。これは牛乳だけでございまして、これはわれわれとしては常識的に見まして明らかに価格の一部であるというふうに考えております。こういう実態につきまして、実は再三われわれ生産者団体としましては契約の改定交渉を今まで行なってきたわけでございます。すなわち、奨励金なるものをいわゆる基本乳価に全部繰り入れてくれということを再三乳業者と交渉して参ったわけでございますが、力が弱いためにらちがあかないというのが実情でございます。さらに酪振法第十九条におきましては、「都道府県知事は、前項の規定による書面の提出があった場合において、生乳等の取引の公正を確保するため必要があると認めるときは、当該契約の当事者に対し、その内容を改善すべきことを勧告することができる。」ということをいっております。ところが、われわれは寡聞にして、このような勧告を受けたことは一ぺんもないのでございます。農林省がそのような御指導をなさったこともないということを今までの経過から申し上げる次第でございます。  第三番目の問題としましては、現在全国各地域におきまして、乳価をめぐりまして紛争状態にございます。これもメーカー側は、紛争状態にはないのだ、九割通り片づいたのだというふうなデマ放送を流しておりますけれども、第三者の公正な観察もございます。たとえば一月十二日の朝日新聞をごらんになった方があろうと思いますけれども、この朝日新聞には、福島県の酪連を除いてほとんど全国各地で紛争中であるということがはっきり書いてあります。新聞の責任ある報道として、第三者の観察というものは公正であるというふうにわれわれは見ております。  なお、十二月分の乳代の受け取りにつきましては、ほとんどすべての生産者団体がこれを内金として受け取っております。しかも、従来乳価値下げ通告乳価との差額につきましては、この近県では、茨城県あるいは栃木県におきましては、差額を県の信連で立てかえ払いをする、あるいは単位農協が差額を立てかえ払いをするというような手段を講じております。なお、酪農振興法による調停申請もすでに長野県を初めとしまして近日中にほとんどの県が歩調をそろえて調停申請をやるという段取りになっておるような次第でございます。以上が今の状況でございます。  これから申し上げますのは問題点でございますが、私どもが感じておりますのは、もちろん値下げの幅も問題であると思いますけれども、どちらかと申しますと、値下げの幅よりもその裏にある意図が最も問題であるというふうに実は考えておるわけでございます。この意図が問題であるということの内容を申し上げますと、乳業会社経営状態は一体どうかということになりますが、一部の特定のメーカーを除きまして、いわゆる大手三社というような乳業会社におきましては、非常に経営状態がいいのでございます。乳価を下げなければならないというような経営条件ではないというふうにわれわれは考えております。たとえば、去る九月の乳業会社決算状況を見ましても、それぞれ純利益金として三億円内外の利益金を出しておりますし、そのほかに内部留保として七億なり八億なりの積立金をやっております。昨年は御承知のように産業界全体として非常に不景気であった時代といわれておりますが、その不景気の中におきましても、乳業会社成長産業としましてかなり経営的には好調を示しておる。それにもかかわらずなぜ乳価を下げなければならぬかという疑問がわれわれには実はあるわけでございます。さらにメーカーは、昨年夏でございますけれども、約七十万石の乳製品の過剰在庫があるのだ、あるいは秋になりましてから、約百二十億円分の過剰在庫が存在するのだというようなことを言っておられるわけでございますけれども、どうも私どものいろいろ聞きました事情から推察いたしますと、それほど過剰在庫がたくさんあるように考えられないという実情でございます。たとえば今度の事業団による乳製品の買い上げが去る十二月二十二日に公表されたわけでございますが、公表された直後の状態を見ますと、ある団体におきましては、あわてて問屋に対して荷どめをするというようなこともやっておられたようでございますし、また、ある大きな乳業会社の首脳部の方と話し合いましたときの言を申しますと、事業団に売り込むほどのものはないのだ、これからつくって売らなければならぬというようなことも言っておられます。また某大乳業の首脳部の言を間接的に聞いたのでございますけれども、私の会社は東京の市乳店においてなお日常三百石の乳がほしいんだということも言っておられます。こういう実態から見まして、過剰在庫なるものがはたしてどれだけ存在しておるのかということは、実はわれわれのはなはだ疑問としておるところでございます。  さらにメーカー側乳価値下げの口実といたしまして市乳消費伸びないということを盛んに言っております。ところが昨年の春からの状況を見ますと、ほとんどのメーカーは昨年の春からいわゆる乳飲料それから加工牛乳という、業界で言います色もの販売に非常に力を入れたようでございます。その反面いわゆる普通牛乳、きっすいのミルクでございますが、普通牛乳販売の方はかなり怠っていたんじゃないかという状況が見られるわけでございます。先般私がある小売業者と話しまして、お前らは利幅の広い色ものばかり売って普通牛乳を売らないのはけしからぬじゃないかということを申しましたところが、確かに色ものの方が利幅が広い、だからそれを売りたがるのは小売業者の心理である、しかしながら会社の方で普通牛乳、白といっておりますけれども、この普通牛乳の割当をあまりくれないんだ、私のところは千本しかくれないということをはっきり申しております。もっとはっきりしておりますことは、先生方がもう御存じだと思いますけれども、有楽町とかあるいは東京駅で牛乳を売っております。ところが夜の八時以降くらいになりますとほとんど白いものがなくなってしまう。フルーツ牛乳とかコーヒー牛乳ばかりしか売ってないというのが実態でございます。こういう実態から見まして、はたしてメーカー牛乳消費拡大にどれだけ努力をしたかということが疑われるわけでございます。しかも農林省あるいは厚生省でございますが、この色ものにつきましてはことに食品衛生法の関係がございまして、成分の規制をやっていない。ですから色ものの中に含まれる牛乳というのは別に乳成分としてどれだけ牛乳が含まれなければならぬかということは規制していないわけですね。われわれの推察では、大体普通の牛乳の五分の一程度しか乳の成分が色ものについては含まれていないんだというふうに推察しております。つまり色ものを五本売っても普通牛乳一本売ったことにしかならないというのが大体の実情だろうというふうに想像しておるわけでございますけれども、このような色もの販売に力を入れるというようなメーカーのセンスそのものが非常に問題であるというふうに実は考えております。メーカーの首脳者の言い分を聞きますと、おれのところは私企業なんだ、私の企業なんだ、だからおれが何を売ろうと勝手じゃないかということを申されるわけでございます。しかしながら乳業会社というのは多数の生産者から乳を集めて多数の消費者にこれを販売するという、大衆大衆との間の中間に介在する会社でございます。ですから、単なる私企業である、おれのところはもうけさえすればいいんだということで済まされないのじゃないかというふうにわれわれは考えるわけです。いわゆる私企業であろうと、やはり企業の公共性ということは、ことに乳業会社の場合は必要なんじゃないかということを特に申し上げておきたいと思います。こういう点におきまして実は企業センスの問題があるんじゃないかということを特に申し上げておきたいと思います。  さらにここで申しますのは、われわれ生産者団体の不信と申しますか、不満と申しますか、そういう点につきまして申し上げたいと思います。経過から申しますと、昨年の春の三月に畜産物価格審議会というものが開かれたわけでございます。この際におきまして政府側の方から、この三十七年度は全体で牛乳が約二十万石程度不足をするということで、予察指導を農林省の方で出されたわけであります。これに対しましてメーカー側委員はあげてこれに賛成をいたしまして、ことしは供給不足になるという結論で、その結論に基づきまして昨年の夏に脱脂粉乳二千トン、バター四百トンを事業団をして輸入をせしめたわけであります。ところがその口先もかわかない夏になりまして、ことしは牛乳がだぶつくんだ、だぶつくんだということを政府メーカーが一緒になって宣伝をいたしまして、乳価値下げのムードをつくってきた。これは生産者に対してのみならず、消費者に対しても重大な背信行為であるというふうに私は考えるわけであります。こういうことで、そういうことをやった責任は一体どうとってくれるのかということを実はわれわれとして追及いたしたいわけであります。いかに無責任時代とは申しながら、こういう明確な誤り、誤りで済まされないもの、こういう責任をどうやってとってくれるんだということを強く申し上げたいと思います。現実といたしましては、みずからそういうことをやっていながら、その責任生産者乳価値下げの形で転嫁してくるというのが実態でございます。われわれとしては絶対これは受け入れられないという気持でございます。  さらに申し上げますと、メーカー側の首脳者の方々は、これは今までの惰性からきたことでございますが、乳価を下げないと百姓は幾らでも牛乳を増産してしようがないんだ、だからどうしても乳価の上げ下げによっていわゆる需給の調整をやらなければならぬのだということを常に言われております。たとえば今月の二十日のNHKの朝の放送を聞きますと、そういうことを公然と言われております。つまり牛小屋の中で乳の調整をやるというのがメーカー側の言い分でございます。こういうことを突き詰めますとどういうことになるかと申しますと、畜産物価格安定法なんというのは要らぬのだということになるわけですね。事業団買い上げというのは、そういう施策というのは一切要らないんだ、おれたちは乳価の上げ下げによって調整するから、国や県にそんな介入してもらわなくてもいいんだ、政策というものはなくてもいいんだということになるわけでございます。こういうセンスの持ち主が今のメーカーの首脳部におるということははなはだ遺憾に考えるわけであります。  さらに生産者の不安をかき立てておりますのは、いわゆる乳製品の貿易自由化の体制がかなり着々としてでき上がりつつあるということでございます。たとえば一昨々年にナチュラル・チーズ、原料チーズは自動承認制に移行したわけでありますけれども、それ以来、三十六年と自動承認制に移行いたします前と比べますと、輸入が一躍八倍にもふえておるというのが実情でございます。しかも業界新聞によりますと、メーカーの首脳者の方々は、この貿易自由化に対して、貿易自由化が実現すれば原料乳価格は一升当たり二十八円か三十円に下げにゃならぬということを公然と言っておられるわけであります。こういうことが非常に酪農民の不安をかき立てておるというのが実情でございます。一体将来どうなるのだろうか、貿易自由化になったら一体メーカーはどういう態度を示してくるのだろう、どうも今の乳価値下げは貿易自由化への地ならしではなかろうかというのが、率直な農家の不安であるというふうに考えております。このようにメーカーとしましても、生産者に背中を向けて、かえってアメリカあるいはニュージーランドから輸入されます乳製品の方に興味を持っている。いわゆる国内のメーカーとしてコスト・ダウンをする、企業の合理化をするという方向よりも、むしろ外国の安い乳製品を輸入して、二次加工会社になろうという気配が多分に濃厚でございます。こういうことに対しまして、実は政府の態度でございますけれども、非常にあいまいであると申しますか、政策として貧しい、貧困であるということが言い得るのではないかと思います。つまり、酪農のこれからの将来に対しまして、一体どういうふうに政策として対処をしていくのかというような未来像と申しますか、ビジョンがない、政策方向が全然ないというのが、今の酪農の政治の実態でございます。一例を申し上げますと、牛乳の裏側にあるえさの問題でございますけれども、現在畜産全体といたしまして、輸入飼料に対する依存率は大体五〇%にも達しております。これが五年先になりますと大体六〇%になる。十年先になりますと七〇%になりまして、大体七百万トンくらいのえさを輸入しなければならぬことになるわけでございますが、七百万トンと申しますと、約五千トンずつ積みまして千四百そうの船が要るわけでございます。港の設備もそれ相当に整えなければならぬ、こういう問題に対しまして一体どうするのかということになりますと、それの答えがさっぱり出ていない。ただ十年後には牛乳消費事情が三・七倍にふえるのだ、だから酪農振興するのだというようなことで、構造改善事業とか申しまして、酪農の主産地造成を一生懸命やっておる。しかしながら、われわれの受け取り方としましては、どうもそれにあまりついていくと、将来つまずくんじゃないか。その際に一体政府はしりをぬぐってくれるのかどうかということになりますと、非常に不安でございます。このような事情でございまして、つまり、酪農の将来に対しましてビジョンがないというのが実情であろうと思います。やはり将来自由化になるならなるで、その場合は一体どうなるのだ、その場合のウイーク・ポイントは乳製品なんだ、原料乳地帯なんだ、だからそれに対して、国としてどうしてカバーするのだということをこの際はっきりさしていただきたいというのが、われわれの要請でございます。  さらに、現実の施策につきましても非常に矛盾が多い。たとえばえさの問題につきましては、ふすまは今後非常に需給が窮屈になるということが見え透いておるわけでございます。しかも、わが国は世界じゅうのふすまを買いあさっているのが実情でございますが、その買いあさったふすまを払い下げる場合におきまして、いわゆる実際の実需者からでき上がった団体農協にこれを払い下げるだけでなくて、配合飼料業者団体政府のふすまの二割程度のものが毎年払い下げられる。ところが配合飼料業者はこのふすまをほとんど配合飼料にいたしまして、それも養鶏の配合飼料にする。養鶏は、御承知のように必ずしもふすまを必要としないわけでございますが、そういうものにほとんど回ってしまう。肝心の牛の口にはふすまが入らないというのが実情でございます。  さらに、当面の問題としましては、伝えられるところによりますと、例の脱脂粉乳の輸入の差益金四千四百万円を使用して、これから牛乳乳製品消費普及運動をおやりになるということでございますけれども、この普及運動の主体となっております牛乳乳製品消費推進協議会なるもののメンバーは全部メーカーで占められておる。消費普及運動をやるのだから、われわれの常識といたしましては、当然消費団体が入るべきじゃないか、また生産者団体も当然これに関与すべきじゃないかというふうに思っておるわけでございますが、そういうものは全部オミットいたしまして、メーカーだけで消費普及をおやりになる、しかもその消費普及の内容をお聞きいたしますと、大体小学校の学童等を対象に絵をかかして展覧会をやるというような迂遠な方法でおやりになるということでございます。現在メーカー側の言い分としては、乳が余っているのだという実態におきまして、そういう迂遠な方法で余った乳が処分できるかということがまず問題になろうかと思います。  しかもさらに申しますと、来年度、文部省におきましては、四十億円の予算を使いまして輸入脱脂粉乳で学校給食をやろう、約八万五千トンの脱粉を輸入してやろうというような御計画のようでございますが、先ほどの消費普及の問題とあわせますと、どうも私ども納得のいきませんのは、小学校の生徒に盛んに消費を宣伝するが、その口に入るものは輸入のまずい脱脂粉乳であるということであります。さらに、農林省の方は、別途国内産牛乳につきまして、来年度八億円ないし九億円程度の補給金を出して、国内産牛乳学校給食をおやりになる。同じ政府の中で、文部省と農林省とやり方が違うわけでございます。文部省の方は輸入の脱粉でおやりになる、農林省の方は国内産牛乳でやるんだ、こういう不統一なことで一体どうするんだということを私は心配するわけでございます。  さらに、畜産物価格安定法の運用にいたしましても、実は生産者団体としましてはかなり不満を持っておるわけでございます。昨年の豚肉の買い入れ状況等を見ましても非常に規格がきびしくて、ほとんど半分はふるい落とされてしまって、そのふるい落とされたものは食肉業者が待っていたとばかりに安い値で買いたたいて買う。事業団が買い入れました十一万頭分の豚肉は、安定上位価格を上回った場合に放出するということでございましたが、安定上位価格三百四十円に達しない前に三百十円の価格でどんどん昨年の九月から放出をされまして、すでに八万頭程度の放出をされておるということを聞いております。つまり、せっかく上がる値段を事業団がわざわざさましてくれておる。去る夏に私は鹿児島県の養豚地帯に行きましたところが、生産者の農家は非常に不満である。あんな畜安法なんていうものはない方がいい、もしあれがなかったらもっと豚肉の値段が上がっただろう、われわれの借金も払えていただろうということでございます。そういうわけで、畜安法には抜け穴が非常に多いわけでございますので、こういう点も国会の諸先生方の御努力によりまして、ぜひ早目に改正をしていただきたいというふうに考えております。  結びといたしまして、結局メーカーもさることながら、酪農につきましては政治の姿勢、なりを直しませんと、どうにもならないのであるということが結論として言い得るわけでございます。われわれが最も期待しておりますのは、やはり国会でございます。国会しかたよるところがないというのが実情でございます。この辺を十分一つお考え下さいまして、国会におきまして適切な御措置をおとり下さるようにこの際お願い申し上げておきたいと思います。  以上で終わります。(拍手)
  6. 秋山利恭

  7. 大野勇

    大野参考人 私は、乳製品協会の会長と同時に、森永乳業の社長をしております。一般論といたしまして乳製品協会の会長あとの個々のことは、自分会社のことしかあまりはっきりわかっておりませんから、御了承を願います。  牛乳問題が非常にやかましくなっておりますが、一つ御理解を願っておきたいことは、牛乳の価値は消費者の手に入らなければ価値がない、従って、生産する場所によって牛乳の値段に違いがある、こういうことは御了承願わなければなりません。その次に、時期によって違うのです。売れる時期に生産される牛乳と、売れない時期に生産される牛乳とは、需要供給の関係で、当然世界じゅう値段が違うわけです。それから用途によって違うのです。なまの牛乳で、市乳に売れる牛乳と加工しなければならぬ牛乳、こういうことがあるのですが、不幸なことに牛乳の売れる夏には牛乳がないのです。牛乳の売れない冬にはうんと生産がふえる。ところが一般の生産者の方は夏よけいに乳をしぼりたがらない。腐りやすいということと、分娩の危険があるからそういうことはやりたくない。そういうので夏と冬との牛乳の値段に差をつけて、何とかして夏よけいに生産さして、冬比較的少なくする、こういう方法が従来とられて参りました。従って夏の牛乳と冬の牛乳は時間的の関係と用途の関係で五円ないし極端なところは十円の差がついていたのです。昭和三十四年くらいまでは大体そういう形で、夏は高くなって冬は奨励金がとられる、こういう形になって参りましたが、幸いなことに昭和三十四年から三十六年までは大体牛乳不足し通しで不足してきた。従って今一番問題になっております乳製品の市場価格が非常に高い。従って夏の生産奨励金をそのままつけっ放しにして今日まで大体の会社経営状態がもててきた。ところが昨年は、幸か不幸か景気と冷害の関係牛乳の需要供給のバランスが破れた。これは今非常におしかりを受けましたが、われわれ自身も非常に間違いをしていて、昨年は牛乳は足りなくなるだろう、足りなくなっては困るというので、四月一日から九月三十日まで大体五円の奨励金をつけるということを皆さんに申し上げてあったわけであります。それはもとの正常状態に戻ることを大体頭に入れまして、もし都合によって、景気がそのまま持続すれば、これはまた考えを新たにしてもいい、こう言っておきましたところが、牛乳生産は一五%あるいは一八%増加いたしましたが、市乳の増加は七%くらいにとまってしまった。従って人によっては九月一日から奨励金を撤廃すると言い、人によっては十月二十一日から撤廃すると言い、いろいろなことになりましたが、大体競争状態にある会社が対立している限りは、生産者の皆さんにとって一番有利な時期において一致せざるを得なくなるのです。従ってその前から文書なり何なり出しておりました会社も一応撤回をいたしまして、十二月の十一日というふうになったわけであります。確かにいろいろな奨励金はついておりますが、期限の定めのない奨励金はそのままになっておるのです。期限を定めた奨励金の一部を撤廃した、こういうふうに考えております。それが十二月まで延びたのは、何とか景気が回復しそうだ、もう少しやってみたらどうだといういろいろな考えがありましたので、会社によってだんだんこれがおくれていった。しかし冬になりますと需要供給のバランスが非常に破れた。そこでやむを得ず一部を撤廃するというふうなことになったのでありますが、幸いなことに事業団の買い上げが二十億の範囲内で行なわれるということになりますと、われわれも何とかこの辺で相場を立て直して、これ以上の御迷惑を生産者の方々にかけないように努めるべきものである、かように考えまして、それ以上の値下げということは考えておりません。  なお一般に行なわれております、私から言うと迷信に類することですが、色ものが非常に売れて、そうして白ものが売れないのだというようなことを、これはばく然とおっしゃっておりますから、後に印刷物ができますからお目にかけますが、白ものは比較的順調に伸びているのです。これは当然なんです。そうして色ものが一般のジュースその他に食われて伸びが悪いのです。色であろうが白であろうが、これは会社の工場というものが一〇〇%に動かなければ、ますますコストが高くなるのでありますし、また同時に、色ものであっても牛乳が相当入っているものが売れるということは、酪農にとって決してマイナスではない。今五分の一とか何分の一とかおっしゃっていますが、こういうことですと、もっとときどき皆さんとお目にかかってお話ししなければなりませんが、大体六割ということがきまっているのです。六割入らなければいかぬ。これは普通の牛乳に一五%の砂糖を一割の水で溶いて入れて、そのほかにコーヒーなり何なりを一五%入れれば、それがもとの牛乳と同じ濃さにあるということはどなたが考えてみてもあるわけはないのでありまして、半分以上は少なくとも牛乳なんです。これはもう一つは、夏冬の需要供給が非常にアンバランスでありますから、冬の間乳製品をつくっておいたもので、これを利用して夏色ものをつくっているのです。これがなければ、日本にあります三千の中小のミルク・プラントというものは、冬の間の残乳の洪水の中でとっくに溺死しているわけです。こういう道が開けましてから、しばらくがまんしていればいいんだ、夏の足りないところは色ものでもって補給すればいい、こういうことになってから、日本の中小のミルク・プラントはみんな生き返ったのでありまして、決してこれは酪農関係している方々から非難されるべきことでない。ジュース屋さんからは非難すべきことがあるかもわからない。これを売らなかったらどうかというと、ジュースが売れるだけで牛乳には関係ないのです。だからもう少し大きな気持で一つこういうことをお考え願いたい、かように考えております。  また、乳製品の値段が下らぬじゃないかということでありますが、製品の値段というものは上げ下げが簡単にできないのです。従って牛乳が上がっても製品の値段は上げないことが多い。これは上げ下げということが非常に社会的に与える影響が大きいのでありますから、なるべく値段というのはじっとして変えないということをもって、大がいどこの会社もやり方の基本にしております。  なお生産者価格、輸入の自由化問題、これはいろいろありまして、決してわれわれが加工業者に転落していいとかなんとかいうことを申し上げているのではないのでありまして、また同時に、何か言った一言が誤解されておりますが、外国の乳製品用の原料牛乳の値段というものは大体三十二円くらいである、こういうことを申し上げているのです。これも今書類ができておりますから、後ほどお配りします。アメリカのニューヨークの原料牛乳の値段は三・五で、工場に到着して一升四十円です。日本より一割脂肪が多いのですが、従って流通機構が悪いとか加工のむだがあるとかなんとか言いましても、今五十二円が最低ですが、かりに五十円の牛乳——七升の牛乳を使ってバターが一ポンドできるのですが、三百五十円かかるのです。百二十円の豪州のバターに会社の加工の金をただにしようがしまいが、あるいは流通機構をどうしようとも、五十円の牛乳でもって百二十円のバターに対抗しろといったってしようがない。これにはこれでまたやる方法がある。外国でやっている通りの方法を、われわれはほんとうにこれが自由化ができてくるならしたいということでありまして、これは市乳用の原料乳をどこの国でもうんと高く売らしているのです。アメリカのニューヨークの場合は八十円で売って、加工用のやつを四十円に見積もって、生産者の手取りを六十円にしている。これはイギリスでもどこの国でもこういう形をやるのです。この方法をとるか、もしくは輸入の権利というものを、われわれから勝手に言わしていただければ、日本の加工業者に渡して、国内の値段と国外の値段をプールして、安いバターを日本に供給する、この二つの道のいずれかをとらずして、日本を輸入自由の国にするというようなことは、これは冒険に近いということを申し上げたいのです。ですから、こういうようないろいろな対案を考えておりますから、そういうような準備が整って初めて自由化にするものならば自由化にするのだ、加工業者が悪いためにバターが高いのでないのです。バターは、今の値段なら安い高いを超越しているのです。ほかに方法を講じなければならぬ、こういうようなことに御理解をお願い申し上げたいと思っております。  なおもう一つ、弁明になりますが、乳業会社の利益金が多くて困るというようなお話でありますが、日本の国内産業のうちで乳業会社の利益金は一番低い方のものに近いのです。最大の会社が売り上げの一%、これは乳業会社というのは地域独占でも何でもありませんで、電灯、電力、交通、ガス、公共事業の会社が一割なり一割何分の配当をするということは、資本金を集める上にそれだけの信用を持たなければいかぬ。乳業会社は好むと好まざるとにかかわらず、年々増加する牛乳の加工設備を自分の力でやらなければならぬ。年に三十億も四十億も借りてくる。それだけのことをして設備の拡張をしなければ、皆さんの生産した牛乳は処理できないのです。そうなりますれば、株主から金を集める必要もあるでしょうし、また同時に銀行から金を借りる必要がある。こういうものの裏づけをするに必要なだけの利益が上がっても私は仕方がないのじゃないか、これをしも一がいに非難されるということは当たらないのじゃないか、かように考えております。  以上、ごく概略でありますが、私の説明をこれで終わらせていただきます。(拍手)
  8. 秋山利恭

  9. 佐々木久治

    ○佐々木参考人 私佐々木でございます。ただいま前参考人からもお話がありましたが、特に私一部について申し上げたいと思います。  最近、新聞記事なんかには、あるいはいろいろなお方と会いましても、市乳に関する限り色ものが非常に多いのじゃないか、一般市乳が非常に市場性がない、数量が少ない、これは色ものでもってメーカーは生きようとしているのじゃないか、非常に努力が足りない、こういうようなことをしょっちゅう伺っております。すでに御承知のように、昭和三十年当時のことを振り返っていただきたい。あの当時の全国生産量、これは大体八百万石くらいだと承知しています。今日は一千二百万石。当時われわれはいかにして牛乳を伸ばそうか、いかにして乳製品消費を拡大しようか、こういうようにわれわれはわれわれなりに努力したつもりです。ところが御承知のように、日本人にはまだ牛乳そのものを非常に好かない方もあり、あるいは好いても、何か味がついてほしい、こういうようなことを申される方もある。こういうようなことから牛乳消費を伸ばす、消費の拡大をはかる、こういうような一端から一つの色ものというものを製造したわけであります。それが今日この市乳全般の伸びの原因になったと私は考えております。生産費の方から申しましても、われわれ会社から見ると、白もの、白牛乳ではとうてい採算というものはとれません。色ものでもってわれわれはどうやら生活をしておる。これは正直に申し上げます。単に今市乳と申しましても、われわれは乳製品市乳、両方やっておりますので、これは単に市乳だけで論ずるわけにもいきませんし、当然これは乳製品の方にも触れて参るわけでありますけれども、御承知のように、最近の乳製品の値下がりは一体どうか。なるほど畜産物価格安定法による乳製品の下位価格、工場着乳価、これが五十二円であります。ところが買い入れ価格のコンデンス・ミルクをとってみましても、これは一カン当たり三千九百円、こういうような価格になっております。しかしこれを採算をとってみますと、今の五十二円の着乳価で買った牛乳でもって一カン当たり三千九百円で採算がとれるか、こういうような実際問題になります。計算しますと、着乳価五十二円で一カン当たり三千九百円で買い上げられても、これは決してわれわれの方のプラスにはなりません。今の五十二円の価格で買って生産しますと、おそらく三千円くらいの赤字になります。われわれの今の乳製品をつくります価格は、大体平均六十七、八円になっておりますが、これでもって生産しましても、大カン練乳というものははるかに採算割れでありまして、これではとうていわれわれメーカーとしてはやることができないわけです。しかも三千九百円で買い上げられればまだしも、現在の市況というものは一カン当たり三千六百円くらいの価格になっておる。そういうようなことで、今の乳品事情から申しますと、おそらく想像を絶するほど市況性というものは軟弱であります。その間に泳ぎましてわれわれは市乳もやっておるわけであります。今申しましたような市乳原料、これもまた非常にマイナスだ。あの市乳の一本一合びん、あれで五十銭くらいのマイナスになっております。それでわれわれは色ものでもって食べている。色もの色ものと申しますけれども、色ものをわれわれがやるからこそ、われわれが生産者にこの今の乳価というものが維持できる。むしろ色ものを制限しないで、色ものをもって拡大して、われわれの乳価というものを維持しろ、なぜこういう声が出ないか、私はこういうように考えております。また、さっき大野参考人からも申しましたように、この奨励金、昨年四月一日から九月まで、これを約束して奨励金というものを平均五円出しておったわけであります。それ以後は約束をしておりません。それで、われわれは牛乳というもので生活をしておる以上は、生産者をむやみやたらに踏みにじる、そういうさもしい根性は持っておりません。従来からわれわれは生産者のおかげで仕事をやらしてもらっております。そういうようなことで、われわれ自身の経済も考えます。また及ばずながら酪農家皆さんの経済も考えて、一升五円の奨励金をとっていいけれども、これは飼料も上がっているし、ほかの粗飼料価格も上がっておる、労賃も上がっておる、こういうようなことから、まず二円くらいはどうしてもこの際われわれにも援助をしてもらいたい、こういうようなことで、私どもが二円の引き下げ、奨励金をとる、こういうように私自身は決心したわけであります。そういうようなことから申しますと、これは当然一升平均五円というようなものをとっていいのでありますけれども、二円でがまんした、こういうようにわれわれは考えておりまして、昨年の四月一日からの約束から見ると、むしろ三円を僕らは値上げをしておる、こういうようにも考えております。そういったような事情でありますし、また、メーカーは昨年の見通しを誤ったのではないか、こういうようにおっしゃいます。誤ったがゆえに脱粉の二千トンを輸入した、あるいはバターの五百トンを輸入した、こうおっしゃいますけれども、われわれも仕事をする以上は、一年なり二年なりの見通し、あるいは計画というものは立てております。しかし、これは人間にもおのずから能力がありまして、天候の見通しがつくかどうか、これはおそらく気象庁でも、見通しというものはつかないと思います。いろいろなデータをとっております。しかし、日々あるいは月々そのデータによって調べてみましても、気象庁の天候予想というものは、必ずしも当たっているとは言えません。そういうような事情もありまして、一応の計画というものを立てますけれども、やはりそこには間違いというものもあります。単にそういうような間違いは、お前たちが間違っておったのだ、こういうように一方的にきめつけられることは、これは市場性、あるいは経済性、あるいは自然界というようなものの判断を、われわれメーカー一人に押しつけられるような形になる。これでは私は遺憾だと思います。今後といえども、私ども生産者立場をよく考え、またわれわれの立場というものもよく考えまして、相協調しながら進む意思には変わりはありません。ただ、そういうような経済界の事情、あるいは一般社会情勢の変化によっては、また同じようなことがあることは、これは当然でありましょうし、今後もないとは私は断言できないと思います。こういうような趣旨で私は仕事をしておりますので、われわれの間違いだというようなことは、これは一つ御勘弁願いたいと思います。これはわれわれ自身が悪いわけでなく、社会一般情勢が悪いわけでありますので、それが皆さんの苦労になり、われわれ自身も苦労をしておるわけであります。  そういうようなことでやっておりますので、またあとで申し上げますが、以上これで私は終わります。(拍手)
  10. 秋山利恭

  11. 中島清次

    中島参考人 中島でございます。初めに私の所属しております組織でございますが、業務用乳製品というのは、いわゆる市販されまして三次加工になりますところの、原料になりますところの、いわゆる大カン練粉乳を扱っておる組合であります。いわゆる畜安法にありまするところの指定乳製品を扱っておる組合の理事長でございます。  私ども酪農の一端をになう者として、いつも痛感することは、流通段階というものはきわめて不可解なものであり、暗黒大陸であるという経済学説もあるように、なかなかむずかしいものでございます。どこに不合理があるかというようなことを、やはり勉強しておるのでありますが、わからないものの一つ乳価がございます。私ども流通業者としまして、乳価というものは、勉強しようとすればするほどわからなくなってくる。一体乳価というものはどこが理想であるのか、奨励金とは一体何であるのか、さっぱり私どもにはわかりません。  そこで、先ほどから生産者の方々、あるいは乳業者の方々からいろいろ伺っておりますると、双方の、いわゆる相互不信に基づいたいろいろな御意見が出て参ります。その相互不信の議論の中で、常に犠牲になっておるのはだれかということを考えるわけでございます。たとえば、乳製品における流通業者のマージンというものは二分五厘でございます。マージンの少ないもののたとえに、よくたばこがあげられますが、今日専売制のたばこでも八分の利益がございます。ところが乳製品流通段階におきましては、わずかに二分五厘のマージンしかちょうだいできません。そして常にその価格決定権というのは、先ほど大野参考人の御発言の中にいみじくもございましたように、価格決定権というものはメーカーに握られております。そして、いわゆる三年周期というものがあるかないかはわかりませんが、その三年周期というのは、二年間は不足であって、一年は余ってくる。私どもが妥当価格で商売ができるのは、ほとんどこの一年でございます。他の二年間というのは、価格決定権を持っておりませんので、マージンがございません。そういった中でいつも考えますことは、御承知の通り製品消費財でございます。お客があっての商品でございますが、顧客の逃げるのにはあまり御関心をお持ちにならないで、夏の原乳不足の時分には、原乳争奪にしのぎを削っておられる、こういう点がどうも納得が参らぬわけであります。  総体的に申しまして、戦後の趨勢を見て参りますと、パーセンテージの起伏は多少ございましたけれども、一度も消費の減退したことはございません。いわゆる消費の自然増の中で生産がふえ、諸政策が行なわれてきたわけでございますが、一度も消費がマイナスのカーブを描いたことのない産業でございます。いわば、いろいろ原因がありましょうが、消費というものはきわめて順調に伸びて参った。考えようによっては、この順調に伸び消費のおかげで企業努力が足りなかったのではないか、こういうことが考えられます。お客あっての商品をつくっておって、お客の側から論議されたことがない。たとえば、昨年前半まで続きました二年半ないし三年にわたる市況というものは、町のアイスクリーム屋さんは原料不足にまことに苦んだわけであります。そして、数年前には市場になかったところの、いわゆる代用品が、あるものは今日はアイスクリームの主要原料としての地歩をすでに確保しております。一度逃げました客というものは、五倍の努力をしても戻って参るものではございません。かつて高級ビスケットにはフレッシュ・バターが使われておりましたが、今日ではショートニング・オイルに変わっている。中小アイスクリーム業者の原料は大豆脱粉が使われている。そういった経過を経まして、去年の後半から、きわめて市況不況を迎えたわけでございますが、その去年の市況不況の実態はどうだったかと申しますと、中間在庫というものはゼロでございました。いわゆる消費の流通段階において、中間に在庫を持たないというような物の流れ方は、私の狭い記憶の中では、ほかの産業では見たことがございません。そして、昨年先生方の御尽力をいただきまして、二十億というものの買い上げが決定したわけでございます。十二月の二十二日に決定いたしましたけれども、今日に至るまで、実際の買い上げは行なわれておりません。流通とか市況の見通し——先刻どなたかからの御発言がございましたが、見通しを誤った。これにつきましては、自由経済下で物の流通の見通しが見通せるのは、神様だけではないかと私は思います。これは人知の外ではないか。これがわかるくらいなら、だれも苦労いたしません。当然見通しの誤りというものは起こり得るのであります。誤ったときにどうするかが問題でありまして、見通しを誤ったということを責めるべきではない。これはあえて農林省の肩を持つわけではございませんが、そういうものではないかと考えるわけであります。そして、いわゆる需給調整ということは、逆に申しますと、これはかなり高度の知識と深い経験をもってしても誤るものであるから、だれがどのような角度で的確な認識を持つかというところに問題があるのではなかろうか。私の記憶にもし誤りなかりせば、一昨年でございましたか、この委員会において畜安法の御審議をお願いした時分に買い上げたものは、場合によっては腐って捨ててもいいのだというような、きわめて幅広い御意見も伺ったように記憶しておりますが、十二月の二十二日に決定いたしました買い上げの二十億は、どこにネットがあるのかわかりませんが、いまだに実際乳業者は代金をちょうだいしておらない事情でございます。さらに畜安法の法律施行細則の十一条にございますように、製造後六十日という期限が付されておりますので、滞貨で問題になりました昨年の秋の状態を振り返ってみますると、たとい買い上げが行なわれても、その実施の期日から六十日を戻しまして、それ以前のものは買い上げの対象にならないわけでございます。たとえば中小乳業者等はその時分の古い買い上げの対象外にある滞貨をかなりかかえて苦しんでおる実情でございます。先刻申しました通り、中間在庫がないまま推移して参りましたので、この措置によりまして——いわゆる市況というものはつくられる面とつくる面とあるわけでございまして、市況というものはつくるものであるという説もございます。もしつくるものであるならば、その時分に行なわれた諸施策がタイミングよく行なわれているならば、このゼロであった中間の層というものはいわゆる買い人気というものが沸くわけでございますが、どうも実際の買い上げというものはいつやられるかわからない。こういうことで昨年末から若干堅調を取り戻した市況は再び混迷の状態にございます。私ども流通の面から見まして、まことに惜しいことでございます。まごまごしていると、せっかくとられましたこの施策が金が死ぬのではないか、こういう不安があるわけでございます。  それから、繰り返すようでございますが、一昨年あるいは一昨々年あたりから、流通という面に対しましていろいろな御考慮が払われていることはまことに感謝に絶えません。  結論的に申し上げますことは、消費拡大という一つの大きな眼目が、相互不信の立場からただ論議だけが突っ走ってちっとも生きてこない、こういう点はまことに残念だと考えるわけです。  それから在来の市況では、ときによるとわれわれの予期しない学校給食会から出るところの不良脱脂粉乳というような思わざるものによって、かなり影響を受けている面もございます。先ほどどなたか消費普及運動についてお触れになっておられましたが、しからば消費拡大のためにどのような形で実際運動をやっていくかということになりますと、なかなか人間の知恵というものは新聞広告だとかなんだとかの範囲を出ないものでございまして、しょせんPRとは概念にすぎないと思います。効果があるのかないのかわかりませんが、御発言があったのであえて申し上げますが、先ほどのプランとは最近かなり違いまして、家庭におけるお母さんというのが一番牛乳を飲まない。日本の母性愛というものは、子供には牛乳を飲ましてもお母さんだけがいつも犠牲になっている。配給されている家庭を見ますと、五人家族で三本か四本でございまして、飲まない一本はだれかというと大がいお母さんでございます。そこでお母さんに飲んでいただこうじゃないかという説もございまして、そういう面でPRの焦点をしぼられて行なわれているようでございます。その点も一言触れておきたいと思います。  以上、端的にいろいろ申しましたけれども、暗黒大陸といわれる流通というものを制限時間の中でいろいろ申し上げたいということはしょせん無理でございますので、大体の要点だけを申し上げまして、私の陳述を終わります。(拍手)
  12. 秋山利恭

  13. 蓮池公咲

    蓮池参考人 私、畜産振興事業団をお預かりしておる蓮池でございます。  乳価の問題が生産者と企業家の間でやかましくなりかけたのは昨年の秋からでございまして、ちょうど昭和三十四年から五年、六年の二カ年は比較的順調でございました。ところが、先ほど来各参考人からお話しになりましたように、昨年の夏場の牛乳及び乳製品消費は思ったほどでなかった、こういうことが一つの大きな問題の起きる土台になっております。そこで、そういうことで起きた乳価問題の土台がどういうことになっているかと申しますと、先ほど来お話のありましたように、基本の乳価需給の見通しによって立てられた奨励金の添えものがついておる、こういうことでございます。その沿革を端的に申し上げますと、日本の乳業と牛乳生産の歴史から申しますと、価格関係においてはいわゆる夏相場、冬相場という二本建の相場が大体繰り返されてきたという沿革を持っております。それで昭和三十四年以後六年まできわめて生産伸びましたが、消費伸びておりますので、そこに問題なく冬相場、夏相場の開きが起きないで済んだというのが実情であります。ところがこの秋になりますと、夏場のはけがよくないものでありますから、そこでメーカーの方では乳製品として原料乳を寝かせておくものが相当多くなった。その結果乳製品それ自体を持ちかかえる結果になった。その乳製品がまた問題であります。ある程度長期保存のできる乳製品になるものと、長期保存の不可能なものになる乳製品とがあるわけであります。御案内の通り脱脂粉乳は比較的長期に保存性を持っておりますから、これは長期価格変動にたえる品物でありますが、練乳になりますと現に長期保存ということがむずかしいのでありますから、長期価格変動に対応することができない性質の商品であります。そこで牛乳生産方面と原料乳を使って製品にしていく方面とで、どこで一体この夏場の消費伸びが振わなかったということによって起きた経済上の不利の始末をつけるのか、こういう問題になるわけであります。奨励金の一部をやめなければならぬということは九月以来業界の声として聞こえて参りましたが、一方考えてみますと、生産伸びが今日のようにありますのは、日本の酪農がようやく育ってきた段階でありまして、自立経営酪農家というものを展望いたしますと、まだきわめて数が少ないのであります。みんな一、二頭、三頭飼育という過程でありまして、こういうことになりますとちょうど一世紀近く前のデンマークの状態になるかと思うのであります。日本は今酪農がようやく伸びる過程に入って参りまして、従って日本では飼料の輸入が年々膨大に増加しております。デンマークは御案内のように、穀物の輸出国であったのが酪農国に変わる過程においては、むしろ穀類の輸入国に逆転してしまっておるわけであります。そういうことでありまして、現在の日本の過程では、輸入飼料が主体になって、それが酪農進展の一つの大きな助力になって伸びていくという過程であるかと思われるのであります。しかも飼っている頭数が、自立農家の経営単位から申しますと非常に小さいのでありますから、決して生産コストが低くなるというわけに参りません。従ってこの乳価問題が生産者の方にマイナスになるということになりますと、せっかく自給飼料自分で開発しながら酪農経営規模を上げていこうとする農家にとって非常な打撃になるわけであります。従ってこの乳価問題で奨励金がコントロールせられて、ある程度奨励金が削られてきておるという問題は、それがはたして妥当であるかどうかということが問題であると同時に、そのはけ場をどこに置くかということが問題だろうと思うのであります。そういう奨励金考え方がずっと歴史的に行なわれてきておる過程で起きた問題でありますので、これを今完全に収拾するわけにはとてもいかないとも思うわけでありますが、行政上の道具立てとして事業団が設けられておりまして、それに対処して事業団が買い受ける、こういう過程になっておるわけであります。昨年の暮れに政府の方針がきまりまして、その後実施の過程に入って、今各関係機関と仕事の連鎖作業で大へん苦労をしております。しかし検査機能も取引機能も大体話し合いの準備が完了しつつありまして、来週になりますれば申し込みの数量も、政府で見当をつけられました数量に大体対応する申し込みがございますので、これを現実の買い取り作業としてこなしていくことになる状態にあります。  事業団乳価の問題との関連においては、以上を簡単に申し上げて、またお尋ねがあればそのときに申し上げることにいたしたいと思います。
  14. 秋山利恭

    秋山委員長代理 以上で参考人各位の御意見開陳は終わりました。  午後一時から再開することとし、この際休憩いたします。    午後零時十四分休憩     —————————————    午後一時十五分開議
  15. 秋山利恭

    秋山委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  乳価問題について参考人に質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。足鹿覺君。
  16. 足鹿覺

    足鹿委員 参考人各位にお尋ねいたします前に、資料の提出を求めたいと思います。  乳価問題と深い関係を持つ意味において、去る二月一日の本委員会におきまして農業構造改善事業の現在における承認地域等に関する資料の提出を求めておりますが、これは非常に重要な問題でありますので、すみやかに、明日の委員会に間に合うように御提出を願いたい。構造改善事業のうち基盤整備を除きましては、基幹作物の中心は酪農であります。数年先にはこの中心になる基幹作物としての酪農が実際化してくるわけでありまして、非常に重大な関係がありますので、政府にその旨を特に善処を願っておきます。  そこで、乳価問題に関する資料の要求でありますが、一応ここに書いてありますので、その項目を読み上げますから、明日の委員会までに間に合うものは間に合わしていただきましょうし、間に合わないものはやむを得ませんのであとでもけっこうですが、でき得る限り間に合わせていただきたい。  一、農林省模範契約書及び大手四社別契約書の写し及び県別生産者乳価基本乳価奨励金に区分)と業者別値下げ額。  二、業者別過剰在庫調べ、十二月十一日現在が適当かと思いますが、その辺はしかるべく取り計らいを願います。  三、輸入乳製品、つまり事業団において輸入いたしましたもの、その数量、金額及び処分をいたしましたものの数量、価格及び処分先。  四、四大乳業会社決算状況。  五、指定乳製品買い入れ要領と買い入れに対する乳業者の申し入れ内容。  六、農林漁業金融公庫の乳業施設資金の年度別、業者別融資額。  七、独禁法違反の提訴状況酪振法に基づく農林大臣または知事の生乳取引契約に対する勧告及び紛争のあっせん調停の状況。  八、三十七年度における政府所有麦の飼料用放出の家畜別数量とその団体及び輸入ふすまの保有状況。  九、三十八年度飼料需給安定法に基づく基準価格の値上げ額とその算定の基礎、政府乳価値下げが行なわれるこの段階に、さらに来年度飼料の値上げを伝えておりますので、これに必要な資料であります。  十、畜産事業団の年度別収支予算、事業計画、出資計画。  十一、乳製品、豚肉の事業団の買い入れ要領。  十二の一、事業団の豚肉の市場別、月別買い入れ数量と売り渡し先、金額、数量並びに保管料、加工料、金利等を含む収支見込みの詳細。  十二の二、乳製品の買い入れ数量と買い入れ申請の業者別数量。  十三、指定助成対象事業の詳細の内容(畜産物の流通合理化、畜産の経営及び技術指導等に対する補助または出資)及び三十六、七、八年度の予算、決算。  十四、輸入乳製品の差益金の団体別処分状況及び牛乳乳製品消費推進協議会の活動状況。  十五、学校給食状況とその実施要領。  十六、右のほか事業団の業務の予算と実施状況。  十七、畜安法附則九条の増資状況、これは法に示されておりますように一定の出資をしなければならないことが義務づけられておるにもかかわらず、最近まだそれが完了しておらないうちに、すでにもはや期限が迫っておるようでありますので、特に重要と思います。  説明は時間がありませんから省略いたします。
  17. 村田豊三

    ○村田政府委員 ただいま資料要求がございましたけれども、早急にできるものと、若干時間のかかるものもございますけれども、できるだけ御趣旨に沿えるように、早く出すように努めたいと思います。
  18. 足鹿覺

    足鹿委員 冒頭に申し上げた構造改善事業に関する資料は特に重要でありますので、明日の冒頭本委員会に御提出されるように、特に委員長に強く要請をいたします。  最初に、根岸参考人にお尋ねを申し上げたいと思います。先ほどの公述の際に、契約の問題についての御意見並びに実情のお話がありましたが、時間の関係上詳細に承ることができませんでした。要するに、生乳取引契約実情問題点とでもいいますか、そういうことについて、あなたは実際乳牛を飼い、みずから酪農団体を統率しておられる立場でもあり、県の公正な酪農会議会長でもありますので、これ以上の条件の整った公正な方は私はないと思います。そういう点において、あなたが考えられる生乳取引契約の内容について詳細を述べられ、正常なる契約の内容はどうあるべきか、正常な契約ができますならば、お互いにこれは公正と誠実な契約の履行によってのみ、今後の酪農界の総合的振興が期せられると思う次第でありますので、その点を最初にお願いをいたします。
  19. 根岸孝

    根岸参考人 お答えいたします。  私どもの地域におきまして、現在のような仕組みになりましたのは、先ほどもちょっと触れましたが、酪振法の施行と同時にこういう形に変わって参ったわけでございまして、それ以前におきましては、一升当たり乳価は三・二%の標準率で幾らということにはっきりときまっておりました。特に夏場の奨励金であるとかあるいは乳質の奨励金であるとかいうものが、わずかに三%か五%の範囲で奨励金としてあったのでございます。ところが酪振法取引の文書化というようなこと、あるいは紛争あっせんというようなことができましてから、酪振法が成立されてからむしろ形は変わって参りまして、生産者基本乳価という新しい言葉が出て参ったわけであります。その基本乳価という性格が、私どもにはどうしても納得がいかないのでありますけれども基本乳価が現在の段階でいいますと五十円でございます。五十円も去年から五十円になったのでございます。それ以前は四十七円でございます。それで実際に取引をいたしております金額というのは六十円から六十三、四円というのが一般の取引価格でございます。従って契約書を作成するときには、基本乳価が五十円であって、なお奨励金という名前がついておりますが、はたしてこれが何の奨励金であるかというような明記がない。その奨励金も五円の奨励金、また五円の奨励金、五円というのを二つ並べて書いてある。しかしその内容については詳細な中身がない。それであと夏場の奨励金と称するやつが一円六十銭、キロ一円六十銭ですから一升三円でございますが、そういう形において現在の段階では十三円の奨励金というものがあるというような契約書メーカー側から一これはどのメーカーもほとんど同じでございます。従いましてメーカー側からこれに調印してほしいというものを出されたわけでありますが、生産者としては何が何だかわからない、これは全然わからない。夏場の奨励金だとかあるいは乳質を保持するための奨励金であるというならばこれはわかる、それ以外のものはどうしても納得ができないから全部一本にしてほしいということを言ったのですが、メーカー側の方ではどうしてもそれはできないんだ、どうしてできないんだ、牛乳の、品物の受け渡しを毎日やっておるんだから、売ったり買ったりする立場からすれば当然それは払っておるんだし、とっている農家の方は、まだこれについては確実に乳価が六十三円だと思っております。それから、あらゆるものに公表する場合に、乳価は六十三円だ、税務署も六十三円なら六十三円ということでやってしまう。生産者もそう思っておるのです。ただ契約書の中身がそうなっておる。これが実態でございます。そこで去年の三月、先ほど申し上げましたけれども、これはおかしいじゃないか、私どもこういうことが後日問題をかもしやすいから調印するわけにいかないということで、群馬県ではほとんどのところが調印をしていないような実態のまま今日に及んでおります。しかし、これは商法上の一般の取引はそのまま金が支払われ、そして取引が行なわれておりますからして、そういう面では何ら痛痒も感じていない。ただ酪振法の違反を犯しているように私は思っております。従って、これを酪振法に定められた範囲で文書契約もしなければならぬというし、それからその売り渡しも、届け出なければならぬというからこれを届け出することができないでおるというような実情を県当局に申し入れをし、その善処方を迫っておりますが、いまだに解決点が出てないのが現状でございます。  私どもといたしましては、今、足鹿先生の御質問にお答えする意見としては、こういう姿を一日も早く排しまして、そうして真に奨励をする、あるいは奨励しなければならぬというような性格のものはそのまま残すべきであり、それ以外は全部乳価として一本に計上するのが当然の姿であり、ものの取引でございますので、これは当然のことだと思っております。  なお、価格決定にあたって、先ほどもお話が出ましたけれども、私どもは、ぜひこれは両者が相互に話し合いの上で、そうして公正妥当なその地域の価格というものが——養蚕の例を引きましたけれども掛目協定というものが県段階で行なわれております。ああいう形にぜひ持っていってもらいたい、これが希望でございます。  特につけ加えて申し上げますならば、酪振法のあっせん申請という問題がありますけれども契約書がないとあっせん申請ができないのかできるのかという問題が今起こっております。しかしながら実際に取引がされていることは事実であり、支払われた伝票等も整備されておりますので、そういう面でその酪振法のあっせんの申請一つお願いいたしたい。十九条の適切な処置もあわせて知事にはお願いしておるような現況にありまして、非常に生産者としては困った事態にあるわけでございますので、申し添えておきます。
  20. 足鹿覺

    足鹿委員 この問題に関しまして、大野さんなり佐々木さんなりの御意見をお聞きしておきたいと思います。NHKに「早起き鳥」という放送番組があるそうでありますが、去る一月二十日のその放送に、大野さんと全国酪農会議の山口事務局長と村田畜産局長がメンバーとして参加をされた。そのときに大野さんは、牛乳需給調整は乳価の上げ下げによらなければできないという御信念を披瀝になったようであります。そういうふうに聴取者が言っておりますが、その御趣旨は、ただいま根岸さんから述べられたような、契約も何も要らぬのだ、牛舎のすみでとにかく調整の話し合いをすればいい、こういう趣旨でありますか。私は、前提で申しましたように、正常な契約というものはお互いが、たとえば時期とか量とか価格とかその他必要な供給条件というものを相談をして、そこで公正な契約を取り結ぶ、その契約はお互いが責任を持って履行する、こういうことなくして、生産者の協力も得られず、従って業界の繁栄というものはあり得ないと思う。そういう近代的な精神なくして、ただ乳価の調整は上げ下げだけでやっていくのだ、こういう考え方で今後も対処されるようでは、私どもとしては——だとするならば事業団の買い上げなどは不必要だということになる。まさかそういうお考えであったとは存じませんが、少なくともそういうふうにとられるような御発言は——今後の酪農を世界水準に引き上げ、総合的に成長産業として伸ばしていかなければならない、この問題に対しては基本的な食い違いがあってはならぬと思うのであります。その点について御所見を承っておきたい。大事な問題でありますので、佐々木、大野両氏からお願いをいたします。
  21. 大野勇

    大野参考人 ただいまの御質問でありますが、取引形態が整備された外国のような仕組みになるまでは、現在の状態では無制限に生産量全部を買う、生産量をこれだけ買うというお約束をいたしていないのでありますから、需要供給のバランスが破れた場合には、何か残ったものを全部吸い上げる機関がない限りは、現在の段階では、価格でもって増産をし、価格でもって多少減産をするということはやむを得ないのではないか、こういうことを説明したわけであります。
  22. 佐々木久治

    ○佐々木参考人 今の契約のお話でありますけれども契約はむろん酪振法に基づいてやっております。実態につきましては今根岸参考人からお話し申し上げた通りであります。この契約というものはなお今後研究する余地のあるものではなかろうか、こういうように思うのであります。
  23. 足鹿覺

    足鹿委員 大野さんに重ねてお尋ねをします。私の意見を申し上げますと、現状においてはそうなんであります。そこに紛争の原因もあると言わねばならぬと思うのです。あなたの御信念は御信念として、これは信念の相違といえばこれまたやむを得ないと思いますが、しかし、そのようないわゆるがんこといいますか、非近代的な、自分の意思は意思なんだということでは——総合的な酪農があっての乳業者であり、乳業者はまた消費者あってというようなこの三本足で立っていかなければならぬと思います。おのおのの恣意性というものは許されないと思うのであります。でありますから、最も公正だと考えられる契約内容というものを、今私が例示した時期、量、その他の供給条件等について考えられて、名なしの権兵衛の奨励金などをつける筋合いのものではないでしょう。やはりもっと基本乳価というものをちゃんとした条件の上に置く、そしてその他はさらに必要な措置をお互いの合意の上に調印をしその誠実な履行以外に、私はこの問題を正常な取引に戻していくということは困難ではないかと思います。その必要をお認めになるかならないのか、どうするということは別としまして、基本的な考え方として御両者の誠実な御答弁をお願いいたします。
  24. 大野勇

    大野参考人 数量、金額、受け渡しの方法というものをきめて売り買いをするということが理想的なんであります。しかし現在までにおいてはそういう慣行がまだ樹立されていないわけでございまして、そういう場合に需要供給のバランスというものはどうしても今の全量買い入れの品物であるという限りにおいては価格調整以外に方法がない、かように私は考えております。
  25. 足鹿覺

    足鹿委員 私の言っておることは必要ないというお考えでありますか。その構造改善事業が進展をいたしますにつれまして——私の見たところでは五〇%近い基幹作物の中には酪農が含まれておるのです。従ってこれが導入後一年半には乳を出すのです。そうですね。これはあなた方乳業者が処理をしていくというのがやはり現在の建前になっておるわけであります。だとするならば、やはりあなた方も責任を分担されて、正常な取引関係というものをつくる責任があると思うのであります。別に法律で規制する必要があれば規制もいたしましょう。が、しかし、いかに法律、命令をつくりましても、お互いが公正な取引条件というものを合意の上でつくってそれを誠実に履行する以外に、私はどのような法律をつくっても、私が述べたようなことが欠けたならば目的は達成できないと思うのであります。そのことについてあなたのお考え方をお聞きしておるのでありまして、その点をお答え願えれば幸いだと思います。
  26. 大野勇

    大野参考人 今、先生のおっしゃった通りのことが将来は行なわれなければならぬと思っておりますが、今まではむしろ無制限に、数量をきめないで全部買うことの方が生産者の御便宜になる、こういう考えで、今までそういうふうな方向に進んでおりませんでした。しかし今後事態がいろいろに変わって参りますれば、今の取引方法を改善していきたい、かように考えております。
  27. 足鹿覺

    足鹿委員 非常に消極的な御発言で、私は不満足でありますが、ここは議論の場ではございませんので、御意見をお聞きするにとどめておきますが、慎重に御善処をわずらわしておきたいと思います。  次に、消費拡大の問題について二、三お尋ねをいたします。  まず吉田さんにお尋ねをいたしますが、消費拡大ができない原因はどこにあると考えておられますか。先ほどのお話を聞いておりますと、あなたの御口述と佐々木さんなり大野さんの御口述とは全く行き違っておるのであります。業界は色ものにおんぶしていくことがいいんだというお考えのようでありますが、あなたのお考えはそうではなく、やはり乳そのものを本体に消費を拡大すべきだという御主張であったと思うのであります。それについて、私どもはしろうとでわかりませんが、色ものというのは、先ほどあなたがおっしゃった点によると、色ものの含んでおる乳の成分量は両者に著しい食い違いがございます。また乳で売った場合の利益と色もので売った場合の利益はどういうふうに違うものか、これは消費拡大につながる相当大きな重点の一つだと考えますので、でき得ればそれを詳しくお尋ねいたしたい。  いま一つは、私はいつも言うのでありますが、業務用については、なるほど一リットルびんですか、ありますが、家庭用には、この労力不足段階に、なぜああいう業務用に匹敵するようなものの配給がなされないのか、これは環境衛生法なり食品衛生法の取り締まり規定の上からもうなずかれる点もあろうと思いますが、法律の立場もあるでしょうが、酒やビールは大びんで売る、牛乳は一合びんで売らなければならぬということは時代おくれもはなはだしい。消費拡大のこまかいポイントとしては、こういう問題に対してもっと、業界は業界なりに反省をされ対策を立てられる必要がある。法律が障害になりいろいろな規定が障害になれば、その排除等について国会に要請されるとかあるいは政府に申し入れをされるというふうに、やり方はあろうかと思う。われわれも重大関心を持っておりますが、とにかく消費価格値下げができないままに、牛乳乳製品の一般家庭の消費価格というものとは別にこのたびの乳価紛争が起きておるところに、消費者としては納得のいかない、また生産者としても納得のいかない問題を含んでおると思うのであります。これは決してへ理屈じゃないと思う。そういう点について、消費拡大を阻害しておるものは何か、これに対する根本的な対策は何かということが、やはり生産者立場からも乳業メーカー立場からも反省をされ再検討されていかなければならないはずだと思う。その一つの例示として私は今の例を申し上げたのであります。色ものの点につきましても同様でありますが、まず最初に吉田さん、続いて大野さん、また佐々木さんに、この点についてお尋ねをいたします。
  28. 吉田和雄

    吉田参考人 牛乳消費の拡大を妨げております大きな原因の一つは、やはり現行の食品衛生法規であるというふうにわれわれ生産者団体の間では断定をしております。たとえて申しますと、牛乳というのは、これは普通牛乳でございますけれども、透明なびんに入れて、たしか記憶では摂氏五度以下の温度で消費者に届けなければならぬという規定がございます。この透明なびんに入れるということ。それから摂氏五度まで一ぺん熱をかけて殺菌をいたしましたものをまた冷却するということ。これには相当の設備と経費が要るわけでございます。こういうことをしておりますものですからどうしてもできたものの値段が高くなってくるというようなことでございます。市販はともかくといたしまして、最小限、ごく控え目に申しますけれども学校給食などは何もそれぞれびんに入れて摂氏五度以下で届ける必要は現状としてないわけでございまして、これはむしろ生乳をカン装のままで学校に届けまして、保健所の職員なり学校の保健婦なりが立ち合って乳質を検査いたしまして、乳質が適するということでありますればかまに入れてたいてすぐ飲ませればよいわけでございます。しかし、そういうことをいたしますとすぐ食品衛生法違反ということでひっかかるのが実態でございます。また、ある例を申しますれば、たとえば小売を通じない、小売商と申しますか、今の配達方式を通じない消費ということで、最近の動きといたしましては自動販売機というのが普及しそうな形勢でございます。私どもの勤めております農協会館の入口にもそれが据えてございます。これは二十円ほうり込みますと牛乳が一本出てくる。空びんを返しますとおつりが出てくるという機械であります。この自動販売機は、食品衛生法 で申しますと一つの店舗とみなされております。店舗ということになりますと、食品衛生法の規定によりまして手洗いの水道と手洗いの施設をわきにつけなければならぬということになっている。われわれ少なくとも常識を持っていると思うのでございますけれども、自動販売機から牛乳をびん装して、しかもフードをかけたものをわれわれが出して飲む場合に一々手を洗う必要があるでしょうか。牛乳の中に手を突っ込むのではないわけであります。そういう非常識な食品衛生法規というものが現在行なわれておって、これが大きな資本に対して利するような結果になっておるということを第一番目に申し上げておきたいと思います。  それから色ものの牛乳につきましては、先ほど大野さんがこれには六〇%の乳成分が含まれているということを言われました。ものによりましては確かにそのくらい含まれているものもあるかと思いますけれども、実は私どもが調べました結果では、ごく上等の品物と思われるもの、これはフルーツ牛乳でございますけれども、フルーツ牛乳千本をつくりますために所要の原料といたしまして生乳を十八・六キロくらい、脱脂乳が五十五・七キロくらいであります。総原料の重さを申しますと、百八十五・七キロでございまして、四〇%くらいしか成分として乳を使っていないというのが抜き取りで調査した結果はっきりした事実でございます。そういうことで、六〇%というのは、大野さんのところの製品は確かにそうかもしれませんが、一般はもっとひどいのじゃないか。私が五分の一と申し上げましたのは、これは食品衛生法の抜け穴でございまして、食品衛生法ではこの乳飲料、こういうものに対して成分の規格が全然ないわけであります。ですから、勝手ほうだいのことをやっておる。ジュースとちょうど同じことでございます。そういうことで、われわれの希望としましては、こういう乳飲料につきましては、少なくとも乳という名前がついている以上は、乳成分を何割以上含まなければいかぬという規格をやはりつくっていただきたいというふうに考えます。私が先ほど問題にしておりましたのは、なるほどメーカーは確かに色ものを売った方がもうかるわけでございまして、色ものの卸売価格と小売価格を調べておりますので申し上げますと、普通牛乳メーカーの卸が十円四十銭でございまして、小売価格が一番低いところで、東京では十六円ですが、私どもの家庭に入ってくるのは普通十七円でございます。それから加工乳というのがありまして、ビタホモ牛乳、デラックス牛乳と二つに分かれておりますが、ビタホモの卸売価格が十一円六十銭、小売価格が十八円ないしは二十円、それからデラックス牛乳というのが少し角になったびんに入ったやつでございますけれども、卸売価格は十四円三十銭、小売価格が二十二円、それからコーヒー牛乳が卸売価格が十一円六十五銭、小売価格が十八円——十八円というのは十八円以上という意味でございます。それからフルーツ牛乳というのが卸売価格が十一円七十銭、小売価格が十八円以上ということになっておりまして、普通牛乳の差益、利幅五円六十銭に比べまして、いずれも六円以上ということで利幅が非常に多いわけであります。メーカーとしましても小売業者としましても、利幅が多いものですからどうしてもこれを売りたがる、売ってはいけないということを私は申し上げるのではないわけでありまして、程度問題でございます。どちらにウエートをかけておるかという程度問題を申し上げておるわけです。メーカーとしては、こういう利幅につられて色ものに販売の重点を置いていくのか、それとも普通牛乳、きっすいの牛乳を売ることに販売の重点を置いていくのか、どちらに重点を置いていくのか、私どもとしてはどうも色ものに重点を置いているのは納得ができないということを申し上げたわけでございます。以上でございます。
  29. 大野勇

    大野参考人 ただいま御質問のありましたこの牛乳販売になぜ大きなびんを使わないか、これは私の会社では十年ほど前から二合びんをやっておりますし、最近は三合、四合、五百CCといういろいろなびんが出ておりますが、ただなかなかお客の方が少しくらい安くては食いついてくれないのです。なぜかといいますと、東京のような金持ちのところで平均一軒当たり牛乳をとっているのが一・八合です。従って、三合びんをとるだけの余裕が少ないということ、それから外国と違いまして、一合びんをそのままコップのかわりに使っているのです。それで一合でとった方が子供にやったりなんかする場合にけんかをしなくていい、こういうことが一つ。それから大体三合も牛乳をとるようなところは、牛乳屋が三合びんを配達すると同じように幾らか値引きをしているのです。従って、五合びんも三合びんも四合びんも出ておりますが、非常な宣伝をしておりますけれども、なかなかこれが進まない、こういうのが実情でありまして、われわれも三合びんなり四合びんになると、今の工場の設備で三倍も能率が上がるのですから、何とかそういう工合にしたいと思って、及ばずながら努力をしているのです。しかしお客の方がなかなかこれに食いついてくれない、こういうのが今の経済問題なりいろいろな実際問題上解決、進展しない。  それから牛乳伸びの悪かったのは、これはだれが何と申しましても景気とそれから天気と人手不足です。人手不足でもって配達能力がない、小売屋がなかなか人を雇えない、こういうことで配達を拡充できなかった。こういうことがおもな点でありまして、皆さん方は、駅だのその辺のパン屋の店先でもって牛乳が盛んに売れていますから、あれが大へんな量になるとお考えになる方が普通多いのですが、幾ら売れてもああいう店頭や駅で売れるのは一割五分です。八割五分は家庭配給をしなければいかぬ。  それから色ものが白ものを食ったんじゃないかというようなお話もありますが、これは今申し上げた大体駅だとか店先が多いのです。コーヒー牛乳だのは普通のジュースを飲むかわりに飲んでいて、色ものを家庭に配達して消費するという量はきわめて少ない。これは現実の問題がそうなっております。こういう牛乳の余るときに、白いものを制限したりなんかするということは、当然あり得ることではないので、これはできるだけのことをやっておりますが、今申し上げた天気が悪かったり景気が悪かったり、一番大きな問題は、人間を雇えない、こういうことで日本の場合におきましては、牛乳はどうしても配達をしないと消費伸びない、こういうふうになっております。
  30. 足鹿覺

    足鹿委員 色もの関係の利益率は今の吉田さんのお話、間違いありませんか。
  31. 大野勇

    大野参考人 吉用さんのはどういう勘定になさっておるのか知りませんが、ともかく先ほど申し上げました通り、普通牛乳に、コーヒーの場合は一割五分の砂糖なら砂糖、コーヒーのエッセンスを一割なら一割、こういう工合にやりますから、それが無脂固型分の八%以上、脂肪三%以上あるということはないのですね。物を薄めただけ、牛乳の成分としては薄まっていく。しかしフルーツ牛乳のごときは、それではミルク成分が足りないので、脱脂粉乳を加えてミルク成分を六割なら六割に上げておるのです。むしろ、薄めているのでなくて、普通の牛乳に脱脂粉乳を入れて濃くしておる。しかし当然エッセンスなり砂糖が入りますから、普通の牛乳の六割に落ちる。こういうことはどうもやむを得ないのじゃないか、こう思っております。
  32. 足鹿覺

    足鹿委員 これは水かけ論というと失礼でありますが、農林省にまた明日いろいろと見解をただしていきたいと思います。要するに、規格についてはもっと単純化していく必要があるように思います。いろいろなホモ牛乳だとか濃厚牛乳だとか、全く私どもわからないままに飲んでおります。そこに非常に問題がある。生の牛乳の、牛乳なら牛乳一本でやはり消費拡大をはかっていくことが正道ではないか。いわゆる利潤本位にあまりものを考えていくことが、結果としては自縄自縛になる、消費拡大を妨げる結果になりはしないか、こういうことを私は心配しておるからお尋ねをしたわけでありまして、まだ参考人もたくさんおられますから、もう一、二点だけ私はお尋ねをいたします。  中島さんにお尋ねしないのも公平を欠くと思いますので、中島さんに一つ。最初に、今度の買い上げによって乳製品の市況はどういうふうに変わるというお見込みでございますか。それから、先ほど蓮池さんのお話によりますと、もう近く買い上げを始めるのだということでありますが、そういたしますと、六カ月以内に交換をするということになっておるそうですね。先ほどのお話で、その時期がきたときに、交換品が確保できるとお考えになっておりますか。中小メーカー立場から、一つ意見をお伺いいたしたい。  これに関連をいたしまして、吉田さんに、乳製品の在庫量、過剰在庫というものは実際あるのかどうか、われわれが耳にするところによりますと、それほどないんじゃないか。先ほども内輪話のようなことを御発表になりましたが、買い上げがきまる、それストップだ、こういう電話や通達が飛んだというようなお話もございましたが、案外ないんじゃないか、むしろ金融上の必要からその過剰在庫があるように伝えられ、そして買い上げを求められておるのじゃないかと世間では見ておる向きもあるのでありますが、その辺についてお伺いいたします。
  33. 中島清次

    中島参考人 御質問の第一点、買い上げによって市況がどのように変化するかという見通しでございますが、先刻も申し上げました通り、見通しというのはなかなかむずかしゅうございまして、ただ私が見るところでは、先刻申し上げました通り、昨年の後半の不況というものの段階において、中間の在庫がなかったという実際面からして、買い上げの話が出ました昨年の秋から、市場は若干の堅調を見て参ったのであります。そして十二月に至りまして二十億の買い上げが決定しました当座、中間在庫を持たない市場は実際の買い傾向に向かいつつあったわけであります。買い上げが実施されるということが流布されました当初は、きわめて明るい見通しを持っておったわけであります。ところが今日に至るまで実際の買い上げが行なわれておらない。言うまでもなく市況というのは一つの人気でございまして、一体これはいつ実施されるかという不安が、流通業者を初め実需者の中に根強く残っております。ただ幸いなことには、これからいわゆる冷菓業界——アイスクリーム等でございますが、そういった業界の仕込みシーズンに入りますので、もしタイミングがよく行なわれるならば、いわゆる市場の人気というものが上がってくるのではないか、その時分に、製造後何日という規定がございまするので、古い、それ以前に製造された滞貨がどのような形で市場に流れて参るかという点が一つのポイントではないか。中小アイスクリーム業者というのは組織を持っておりまして、この業者の連合体に参加しておる数はおおむね七万軒ございます。この七万軒の冷菓業者がかりに一軒で数カンの仕入れをする気持になれば、相当量はこの冷菓業界に吸収されるのではないか。ところがこの時点においてもしタイミングが当を得ない場合には、再び過去三カ年のごとく代用品が充用されてくるのではないか、こういうふうに考えます。  それから第二点の、六カ月以内に交換するという問題でございますが、私どもきまりました法文その他に別に難くせをつける気持はございませんが、今から買い上げが実施されまして六カ月といいますと、市乳のシーズンになります。この夏場の市乳消費量が冬とは比べものにならないほど需要がふえます時期に、この買い上げた保管品の交換として原乳の不足な時期に同一数量をつくって納めるということは、もし畜安法が今度の買い上げ実施が需給調整のためであるとすれば、まことに不合理なものではないか、かように考えております。御承知の通り中小乳業の場合は、夏数カ月間需要を満たすための市乳のため、冬も同一乳量を確保し、その余った乳で大カンをつくっておるわけでございますが、この市乳の最盛期と申しますか、需要期に同一数量の交換品を提出するということは、おそらく一部のメーカーを除いては不可能ではないか、かように考えます。
  34. 足鹿覺

    足鹿委員 先ほど中島さんの御公述の中に、消費はきわめて順調に伸びておる、それは実績の上からも明確であるという御発言があり、企業努力の不足によって逃げた客は帰ってこない遺憾な事態があるということを御指摘になった。一例としてアイスクリーム原料に大豆脱粉が使用されておるという趣旨の御発言がございました。これは消費拡大が叫ばれており、政府はあの手、この手で新しく事業団に助成金を流し、学校の児童に絵をかかせ消費拡大運動の方法にするということだそうでありますが、まだほかにも、飼料協会というものがあって、こういうりっぱな本が出ておる。こういうものもこれは一冊数百円かかると思うのですが、実際農民とこれは一体どういう関係にあるのか。事業団から補助金があってできたものだと思うのですが、縁遠いようなものに金をかけておる。しかも一方にはお客さんは逃げて、大豆脱粉がアイスクリーム原料になるなどということは、私どもはびっくりしました。これはほんとうでしまう。どの程度進んでおりますか。こういうことを放置しておいて、そして消費拡大など論ずるということは、少し次元が違うじゃないか、非常に重要な問題だと思いますのでお尋ねをしておきたい。  それから蓮池さんに、ついでですからこれも一問だけ申し上げておきますが、いろいろな乳製品の買い入れ、あるいは肉類の買い入れ等のほかに、今度の法律によっては補助金をあなた方は出されるような立場に立っておる。先ほど要求した資料を見ないとわかりませんが、事業実施計画の中にどういうものが含まれておるか。たとえば今私が例示したこういうりっぱな「飼料」という本が出ておる。これもおそらく事業団関係から補助金が流れておるものだろうと思いますし、その中身を散見してみますと、まんざら役に立たぬことは書いてありませんが、実際酪農民の現実の必要にどのような意味を持つか、私ども疑いたい。そういったまことに遠回しの、切実な単刀直入に解決のつく問題はやらないで、非常に迂遠な道をたどっておられるような印象を受けるのであります。そういう点について、あなた方はただ単なる買った、売ったと、先ほど吉田さんのお話によりますと、三百三十円が豚肉の上限放出上位価格である、それを三百十円のときに売ってしまうというふうに、逆に畜産農民を苦しめるようなことをおやりになっては困ります。運営の基本は一体どこに置いておられるか。また補助金等を出されるというような、半ば行政事務を代行されておる重要な立場でありますが、先ほどの御公述を聞きますと、委員一同が何かたよりないと言うと語弊がありますが、まことに切実な突き詰めたこの最終段階にあって、私ども力にしておるのに、いかにもちょっと物足りない感じを受けますが、もう少ししっかりした御所信があれば、つけ加えて御発表になっておかないと、畜産事業団の権威にもかかわりましょうし、今後の評価にこれは相当大きく響くであろうと思いますので、念のために一つ御激励かたがた御所見を承っておきたいと思います。
  35. 中島清次

    中島参考人 いわゆる逃がした客という問題でございますが、これは三年周期でなしに、今回の不況の参ります前三カ年間というのは、市場でいわゆる三次加工への原料の供給が枯渇に近い状態であった。そしてその期間に全国の中小アイスクリーム屋さんは原料確保に非常に困りまして、一部は輸入脱脂粉乳の行政措置による供給等もございまして、若干の息はついたわけでございますが、約三年ほど前から過去二年半くらいの聞きわめて代用品というものが伸びて参ったわけでございます。かりに、具体的に申しますと、中小アイスクリーム・メーカーが十円売りのアイスクリーム百キログラムを仕込みます時分には、全脂練乳が約二十キロ使われておる。おおむね大力ン練乳一カンが使われておる。こういうものの供給がなければ、アイスクリーム屋さんとしては、当然クリームをつくらないわけにはいきませんので、粉あめとかそういった代用品が使われるのが最近の事例です。それから、ただその時分に、原料品が間に合わない場合には、乳業界以外の材料関係が当然これに供給を迫られる。御参考までに申し上げますが、今申し上げました大豆脱粉のようなものは乳製品と比べまして決して安くはございません。かなり高いもので、わずかの格差でございますが、そういうものを入手しないとできなかった、こういう実情であったわけでございます。流通業者としましては、乳製品と比べましてそういうものの流通マージンは問題にならぬほど高いので、当然企業の利益追求の面から、これに結果的に協力したということになるわけであります。そういった実情でございます。
  36. 蓮池公咲

    蓮池参考人 お尋ねにお答え申し上げます。  この乳製品の買い上げを行ないます際に交換の問題が付帯条件になっております。ところが先に生産が続かない中小企業体等でそういう状態が起きた場合に、そういう条件がついていることが、そのこと自体不都合じゃないか、こういう趣旨のお尋ねであると思います。私どももこの事態については、開発の仕事を進める前から心配をいたしておるのでありますが、この夏場の消費の時期がきて、それにかわるものを生産するのはおろか、むしろその品物がある程度初期に流れていって品物のオーバーする状態がだんだん解けていく。こういう状態になりますと、中小メーカーも大メーカーもむしろこの交換に応ずることが困難な事態が起きないとは限りません。そういう時点では、交換それ自体の実行不能という正当な理由が生ずるわけでありますから、その正当な理由が生じておる客観的状態が、お役所と私どもの所見が一致し得れば適当な措置が講じ得る、こういう考え方で、今先へ問題を見送りながら事態の推移を見るつもりでおるわけであります。  それからもう一点は、雑誌の「飼料」のことでありますが、この「飼料」については、事業団としては補助金その他一切関係を持っておりません。その点は誤解のないように明瞭に申し上げておきます。  それから豚肉の販売売り渡しについての措置が最高価格を越える前から実行に移されたのははなはだ不都合じゃないか、せっかく値上がりするのが、値上がりをとめられた結果になって、農家のために非常に遺憾であるという角度からの問題をいかに考えるか、こういうお尋ねでございます。私としましては、この事態が起きまして、売り払いに踏み切ります考え方は、単に価格が上がる下がるということだけ頭に置いて踏み切ったわけではございません。と申しますのは、大体六大都市の中央市場を通して放出しておるのでございますが、その六大市場の毎年のノーマル・キャパシティがあるわけでございます。つまりどの程度かの豚が集まって、そこで精肉となって流れていく場合には価格がモデラートに動く、全体の需給を反映して市場の価格が動くにしても、特定の市場の出荷が非常に少ないということになりますと、価格地方的に飛び上がってしまいます。そういう状態を救済するために、むしろ数量の非常に少ない事態に対応して、少ないところは若干穴埋めをしていって、極端な変動が急激に起きないように、こういう手当をしていってずっと昨年の暮れまで参ったわけでございます。ただいまは最高価格を越えておりますから別に御説明申し上げることもない売り払い方法をとっておるわけでございます。
  37. 足鹿覺

    足鹿委員 最後に、まだありますが、他の委員もお待ちのようでありますから、公正取引委員会の小沼事務局長にお尋ねをいたしますが、去る一月十日付をもって生乳引き下げに関し日本乳製品協会及び乳業四社の独占禁止法違反容疑についての審査の依頼があったというようにわれわれは聞いておりますが、その後の審査の状況はどうでありますか、まずそれを伺いたい。と申しますのは、あなたは午前中からの参考人の公述をお聞き取り願ったかどうか存じませんが、私はお聞き取り願って置くことがよいと思って、その旨を事務局に申しておったのです。他の委員会の御都合もあったと思うのですが、同じ時期に同じような値幅で、しかも歩調を合わせて行なわれる。相談なしでこういうことはできることではない。ただ証拠ということになりますと、これはなかなかわからない。これは追って農林省にただしますが、今度畜産事業団ができて、本年は農林省の畜産行政でやらねばならないことまでも事業団に肩がわりをしておる。いわゆる行政介入の余地というものが相当事業団に移行しておる。政府がやるのと事業団がやるのとでは、そう言ってはなんでありますけれども、やはり力関係はおのずから明らかであろうと私は思うのです。最近の政府のやり方を見ておりますと、手ぬるいと言うと語弊があるかもしれませんが、たとえば、昨年の二月二十七日の前畜産局長通達等は相当行政介入をし、取引の正常化その他について行政指導を試みようとした跡は歴然としておる。それが現在に至っては首脳部もかわり、いろいろと御事情もあろうかと思いますが、まだ顕著な成果を上げておらない。そのために、本委員会はきわめて公正かつ厳正な立場から本問題を取り上げて検討いたしておるのであります。私どもも、これは独禁法違反だとはっきり断定を下すということについては、何ら機関を持っておりませんから、なかなか下しがたいのでありますけれども、少なくとも、午前中からの生産者代表の公述をメモをとり、それを読み返してみましても、明らかに独禁法の示しておる第二条六項及び第七項第二号に違反をしておるのではないか。特に日本乳製品協会は、そのための四大大手メーカーと称せられるものの協議機関化しておる疑いが濃厚である。そういう点についていかように現在審査を進められておりますか。時間の都合上重複は避けますが、十カ年計画で農業構造改善政府によって進められ、農地、農用地等の基盤整備のほかに、選択的拡大の基幹作物を見たときに、酪農がその中で五〇%を占めんとしておる。その出鼻をたたくがごとく、昨年は豚肉の値下がり、また昨年末以来乳価の一斉値下げというようなことは、国の政策に挑戦するものではないか、私はかように思うと同時に、その内容は独禁法の条項に明らかに抵触しておる協定行為ではないか、かように考えるものでありまして、全国の農民は今後もこの問題に対しては確固たる決意を持って、次々とあなた方に申請も出しましょうし、あなた方の公正な、そしてすみやかな裁断、審査の結果を待っておると思います。あなた方の審査のその結果が、この問題解決に大きく貢献をするということになりますならば、少なくとも公正取引委員会の使命の上からいっても、私は大きな意義があると思うのであります。右顧左眄することなく断固たる態度をもってこの問題を急速に——事態は急迫しておりますので遷延を許しません。御善処を願いたいと思う次第でありますが、以上の点について審査の模様、今後の見通し、御決意のほどをこの際明らかにしていただきまして、まだそのほかにございますが、私の質疑を終わりたいと思います。
  38. 小沼亨

    ○小沼政府委員 ただいま御指摘ございましたように、一月の九日に全国酪農民代表の方から、昨年末の乳価一斉値下げ独禁法違反の協定によるものである、従ってこれに対して審査を進められるようにという提訴がございまして、それを正式な事件に取り上げて、現在事務局の審査部で調査中でございます。また昨日、他の団体から同じような趣旨の提訴が出されておりまして、目下すでに審査の実行段階でございます。これははたして協定によるものであるか、あるいはたまたま一致したものであるか、これは審査の結果はっきりしなければならない問題でございますが、現在は審査段階でございますので、審査の方法、進捗状況ということは、しばらく公正取引委員会の方におまかせ願いまして、できるだけ御趣旨に沿いますように、すみやかな処置をしたいと考えております。  それからもう一点の事業団の点につきましては、これは別に提訴がなされておるわけでもございませんし、いろいろの問題、不公正取引の問題等も今御審査なさっておるようでございますから、この点につきましても慎重に検討いたしたいと考えております。
  39. 秋山利恭

    秋山委員長代理 安井吉典君。
  40. 安井吉典

    ○安井委員 簡単に一、二点お伺いをいたします。  初めに蓮池参考人に伺うわけでございますが、先ほど二十億の買い上げがきまったことによりまして、申し込みをとっているというふうなことでございますけれども、その申し込みの状況は業者側からすごく殺到して処理に困るような状況なのか、のろのろ進んでおるのか、そういうふうな進み方の工合について一つお話を願いたいと思います。
  41. 蓮池公咲

    蓮池参考人 お答え申し上げます。  ただいま事業団に申し込みになっております数量は、金額で申しますと十七億前後になります。まだまだ逐次製品メーカーの手を離れて、事業団に売り渡しをする現場であります倉庫に入りますと、一方検査機関に対する検査の請求と相待ちまして、だんだん事業団に対する申し込みの件数が進んで参る、かように承知いたしております。大体現在まで手持ちになっているストックの八割方は顔触れがそろった、こう見ております。
  42. 安井吉典

    ○安井委員 そういたしますと、今までいわゆる滞貨といわれているうちの、特にデッド・ストックの部分ですね。それが八割くらいが出ているということになりますと、大体デッド・ストックはどのくらいだというふうに事業団はお見込みだったのですか。
  43. 蓮池公咲

    蓮池参考人 私から確実な数字を申し上げることは、むしろ僣越だと思いますけれども、二十億の大体の想定額、これは私どもも御相談に入ったのでありますが、業界それからお役所、私どもで大体お話し合いをして、生産数量その他の計数からはじき出してねらいをつけた数字でございまして、まあ大きい狂いは今のところないのではないか、ちょうど十七億まできておりますから、今の段階で、まあまあ当たらずといえども遠からずというところではないか、こういうように考えております。
  44. 安井吉典

    ○安井委員 大野参考人に伺うわけでございますが、大体今のようなお見込みなんですか。百億くらいストックがあって、そういうものをもてあましているというふうな話を私ども聞いていたわけでございますが、今のお話について協会としての御見解を一つお聞かせ願いたいのであります。
  45. 大野勇

    大野参考人 協会としてはよくわかりませんが、自分自身の推定では大体百億くらい十二月にあったと思っております。ただ品種が限定されておりまして、つまりバターなんか除外をされておりますから、持っているものを出すわけにいかない。それから期限の制限がありますから、これらも申し込むわけにいかない。ほんとうの問題は、一月−三月が一番市乳が売れなくて、ストックがよけいになる可能性があるわけです。それで牛乳は一番ふえる。しかしそういう話をしていては、ますます仕事がおそくなって市場をどんどん軟化させるから、とにかく十二月三十一日という時点における事業団の買い入れ得るストックを一応なくしてしまう、こういうふうに頼んだわけであります。
  46. 安井吉典

    ○安井委員 私はどうも乳価の値下がりとストックとの話が百億もあるから下げるのだというふうな、何か一つの材料に使われていて、実際買い上げということになりますと、ずっと数量が減ってしまって、何かどうも山をかけておられたような印象を受けるのでありますが、そういうことはありませんか。
  47. 大野勇

    大野参考人 ストックが多いということが、必然的に値下がりを来たしているということは、非常な問題になっておるのでありまして、事業団の最低買い入れ価格三千九百円という規定にかかわらず、実際上の商売は三千六百円で行なわれている。それをそのままにしておくと三千五百円にも三千四百円にもなりかねない。ここに中島参考人がおられますから、これは御商売をやっておられる方でわれわれより詳しいと思いますので、お聞き下さればわかると思いますが、そういうことが需要者に非常な不安を与えて買い手がなかった、こういうことになっております。
  48. 安井吉典

    ○安井委員 それじゃストックの問題はあとでまた御質問があると思いますからあとに回します。  次に、これも蓮池参考人に、先ほどの御説明の中では関係機関等の話し合いがなかなか進まないできまらないでいるというふうなお話でございますが、どういうような点が問題で、いつごろ結論が出て決定されるか、その見通しについて一つ伺います。
  49. 蓮池公咲

    蓮池参考人 お答え申し上げます。  関係機関は、一つは、一番大事な乳製品の規格を担当する乳業技術協会を活用するということであります。この問題は国の経費をもって買い上げる仕事でありますから、そこで完全な任意機関でありますと、私どもはかつて品物が正当な品質を持っているかどうかということに確信が持てないということで大へん仕事で困ったわけであります。しかし、事業団に新たに機構をつくるとかまた新しい検査機構を確立するとかいうことでありますと急の問に合いませんし、しかも乳業技術協会はかつては国策上の機関であったものが業界に支援されて今日まで残ってきておったものでありまして、しかも技術の中身はまことに信頼すべき内容を持っておるのであります。ただ、現在あります乳業技術協会は任意機関でありまして、各メーカー自分たちの製品の品質を保証する、一つの信用を得るためのお手伝いをしている機関であります。それを今度事業団で買い上げますのには、買い上げの品物について全部一わたり品質を検査する。抜き取り検査でありますからきわめて手を抜いて最小限度にするつもりでありますが、仕事の分量が非常にふえるということ、それから検査のやり方に任意機関と違いまして必需要件をきめていかなければならぬということ、それが新たに国から資金を出してやる団体の仕事でありませんで、団体の実力を活用しながらいくということでありますから、そこでどこまでいってもらえるか、どこまでやらせないと事業団としてつながっていかないかということの問題でさんざん苦労いたしました。ようやく最近結論が出まして、今技術協会では最後の検討が行なわれておりまして、おおむね了承をいただいたところまで参りました。そういうことで、関連機関が民間の任意の機関と結びつかないと急速に仕事を具体化することはできませんし、また中途半端な了解でいきますと、大ぜいのメーカーから多量に買うわけでありますから、中途でディスターブが起きるとこれまた業界の非常な迷惑になるわけでありますから、一連の対策をことごとく整備して踏み切りたい、こういうことで準備をしております。大体乳業技術協会の問題は最終的でありまして、これがきまりますと、乳業機関の設備強化から人員強化を実行してもらいます。そうして踏み切るわけでありますが、踏み切りは来週には確実にいける、こういう見通しにこぎつけております。以上であります。
  50. 安井吉典

    ○安井委員 ついでにもう一つお伺いしたいのですが、輸入乳製品をお持ちなわけですね。いわゆる見通しの誤りからきたよけいものであるその乳製品の処理の問題でございますが、それを誤りますとこれは大へんな逆効果になるわけであります。その点特に慎重な御配慮が必要だと思いますが、どういうふうにお考えでありますか。
  51. 蓮池公咲

    蓮池参考人 輸入いたして手持ちしております品物の中身はバターと脱脂粉乳でございます。脱脂粉乳につきましては、ただいまのような乳製品状態でありまして、しかもそれはある程度長期にわたって質を保てる性質の品物でありますから、さしあたって処分急ぎでどうこうということは考えておりません。もっと先まで推移を見るつもりでおります。  それからバターにつきましては、完全に包装した品物と、業務用ということできわめて荒い包装のままでつくられている品物とがございます。   〔秋山委員長代理退席、田口(長)   委員長代理着席〕 その包装等の十分でないものについては、あまり長期にわたって持っておりますと、品質上問題が起きますので、業界と話し合いをしながら業界をディスターブしない範囲において逐次お引き取りをいただく相談をしております。ただいまのところは輸入しましたバター製品のうちで約半量が特別のパンの練り込み材料に供するものの代替原料として業界にお引き取りを願っている、こういう実情であります。半分はバターは残ったままでございます。以上簡単でございますが……。
  52. 安井吉典

    ○安井委員 ぜひその処理については慎重な態度で願いたいと思うわけです。  次に大野参考人に特にお願いしたいわけでございますが、ある業界紙の報道によりますと、大野参考人の発言というのが出ているわけです。今度の乳製品値下げ等につきまして各都道府県議会等の議決があったりいたしまして、地方では大へんな騒ぎになっているわけでありますが、大野さんは、県議会で値下げ撤回を決議しているが、これもわれわれには関係ない、要するに乳価問題は単純な経済問題だ、と大きな世論的な動きを拒否されており、さらに、あくまでも値下げ撤回などと言うなら、乳業者としては取引をやめ、委託加工に切りかえるよりほかない、加工費は農林省の加工費で十分だから、生産者自分製品を売ってみろと、こういうふうに言われたと報道にあるわけでございますが、真意はいかがですか。
  53. 大野勇

    大野参考人 それは多少おもしろく誇張して書いてあるのだと思っておりますが、ともかく県議会で決議されようとも、支払い能力なりなんなりがなし、あるいは需要供給の関係のバランスをとらない限りは、どうしてもこの問題を解決する方法はないのだ、それでこれが右左でもっていつまででもそのままの状態でいくというようなことがかりにありとすれば、今のような事業団買い入れも一つ方法で、そういうことも解決方法ではないか、こういうことを言ったわけです。片方は払えない、片方は何でも負けられないということになれば——その前にいわゆる残乳処理機関という話がありましたが、自分で残乳処理機関をつくるよりは、幾らでもその比較的安い値段で加工をお引き受けして、それを事業団に買ってもらうというのも一つ方法だ、こういうふうに茶話で言ったわけであります。
  54. 安井吉典

    ○安井委員 その茶話のときに案外ほんとうのことを言うというようなことがありますから、一つ茶話でも、これはやはり酪農民にとっては大へんに影響があると思いますから、やはりお気をおつけいただくことがいいのではないかと思います。  ところで、今度原料基準乳価の改定等の問題が出てくると思いますが、その点いかがお考えですか。
  55. 大野勇

    大野参考人 この原料基準乳価を昨年の三月きめましたときに、私自身の考えは、何も意見がない、基準乳価算定の方式を、数字を入れないでその筋道を賛成するしないによってきめる、こういうことでしたから、私はそれが五十円にきまろうが、五十何円にきまろうが、問題はこういう筋道なり、こういう物価指数をとってどうやるということだけを御賛成申し上げたい。それが出てきたやつが五十二円、こういう工合になりましたから、もしかりにことしの三月同じような方式で出ますれば、数字が幾らに出ますかわかりませんが、それはやはりそのまますなおに受け入れる、こういうつもりにしております。
  56. 安井吉典

    ○安井委員 大野さんばかりに集中して申しわけございませんが、とにかく今出ている乳価の問題は、大野さんのところの首の振り方で結論が出るわけでございますので、一つもう少しおつき合いを願いたいのですが、先ほどお話を承って、私のメモでは、乳業会社の利益は売り上げの一%くらいであるということ、年々増加する加工設備を自分でやらねばならぬし、また増資や金融の裏づけをするためにもそれくらいの利潤率は必要だ、こういうふうにさっきお話がございました。私もそういうふうな点に暗いのですが、しかしいずれにいたしましても、今日市況の不況でメーカーの方が非常に困っているという事態もございますが、しかし一方、酪農民の方も五十四円やあるいは五十二円くらいじゃ生産費が間に合わないし、労働報酬も十分でない、一方ではそういうふうに言っておるわけです。ですから私は、全体的に牛乳の問題は原料生産者、それから工場、途中に流通機関が入るわけでございますが、最終的には消費者、そういうところが全部がバランスよく、あまり高くない牛乳が飲めながら、しかし途中の利潤も適当な額を置きながら、同時に原料生産者の希望も満たしていく、こういうことでなくてはならないと思うわけです。一方、先ほど、これも足鹿さんが御質問になったところでありますが、乳製品価格が動かないで、牛乳価格で調節をするのだ、そういうようなことも一方で言われているわけです。そういうことからいいますと、酪農民の方は生産費を償わないと言っておる。しかし乳業会社の方は一%もうけるのは当然だというふうに言っておる。だから私は、乳業会社の方は、これは一%が多いのか少ないのかよくわかりませんが、しかし酪農民の方もやはり間に合うような価格で結論を出さなくてはならないのではないかと思うわけです。つまり、年々増加する加工設備を自分でやるために、乳業会社も増資も必要だし、金融の裏づけも必要なわけです。同時に牛を飼っておる人も、その自分生産を伸ばしていくためには、あるいはコスト・ダウンをしていくためにも、増資が小さいながらも必要なわけです。それから金融の裏づけも必要なわけです。ですから私は、そういうような人々の、乳業会社の利潤だけはこれをびっととめて、これには一歩もさわらせないのだ、あと酪農民のそこで調節をするのだ、こういう考え方では全体的な生産と流通の過程というものはうまくいかないと思うわけです。そういう点から、今度の乳価値下げの問題も十分に考える余地があるのではないかと思いますが、いかがですか。
  57. 大野勇

    大野参考人 先生のお話の後段を除きまして、前の方のくだりは百パーセント同意見です。決して乳業会社だけが立って、生産者が立たなくていいということは考えておりません。ただ前の説明は、乳業会社の利潤が多過ぎるのだというようなことが世間一般に言われておりますから、そういうことをやりますと、ここにありますようにこの五百五十会社の利益率表からいっても、製油会社だとか石原産業を除いては雪印乳業が五百何十億で、日本でこれでもって五十番目くらいの会社でも税込みで一・五%きりないですな。それですから乳業会社の利益というものは、ほかの八分も九分もとっている会社に比べて、そんなに大きいものではない、こういうことを申し上げたのです。  そうしてもう一つは、今までの慣行からいって、牛乳は全部自分の資本でまかなってやっていかなければならぬので、多少の利益が出て、そして銀行の信用か何かを裏づけるということは、これは一つお許しを願いたいと思うのです。独占企業でも何でもないのですから、みな猛烈な競争を原料の買い入れでも品物の売りでもしながらやっていくのだから、この点は御理解をお願いしたい、こういうことを申し上げたわけです。  生産者の方の乳価につきましても、これは考え考えですからいろいろなことを言われるでしょうが、なるべく高く払うということを心がけておるつもりであります。そうして今世の中で大メーカーだ何だかんだと言われて、それだけが残るような勘定になっておりますのは、サイド・ワーク、アイスクリームなり何なりをやって、ほかの二次加工、三次加工をやったものの利益を持ってきて、そこで不足の分を償っておる、どういうのがわれわれの実情でありまして、その点ではかなり良心的に仕事をしている、こういう工合に思っております。
  58. 安井吉典

    ○安井委員 私はむしろあとの方にウエートを置いたお話の仕方をしていたのですが、お話の逆にされてしまいました。  ところで、その乳製品価格が動かないというふうな言い方をなさっているその陰に、私はむしろ乳業会社の過当競争の問題あるいはまた企業の中で問題を解決していくというその企業努力、そういうようなことをよく御説明をいただかないと、どうも大野さんの説得力がないような気がするわけです。だから私は、その過当競争の問題だとか、それから企業の内部のコスト・ダウンの御努力、そういうような点についてどうお考えでしょうか、それを一つ伺います。
  59. 大野勇

    大野参考人 先ほどお話しいたしました昭和三十四年が、北海道の乳価は三十六円、昨年が五十四円ですから、一升十八円の値上がりになっております。これでもって値上げをしましたものは、市乳が二回で、これは値上げしただけ全部生産者、つまり乳価にお払いしてしまった。ですから自分のふところには残っていない。それからバターがこの間、十円が三十円値上げになりました。それですからその間の運賃、それから給料、そういうものの値上がりというものは、今まで全部企業内容の合理化でもってまかなってきた。ほかの製品の値段というのは、この七、八年ほとんど動かぬでそのままの値段を維持しておりますから、それでもってかなりの企業努力はしている、こう私どもは考えております。
  60. 安井吉典

    ○安井委員 最後に、今度の二十億の買い上げを来週中におやりになると事業団理事長もおっしゃるわけですが、それに対してどうでしょう。今のいわゆる値下げの問題については、ここらで一つ政府も間に入ってそこまで手を打つということなのですから、乳業会社の方も、乳価値下げの撤回だとか、だいぶ新聞ではきついことをおっしゃっていますけれども、ここでもう一つお考えを願う余地はありませんか。いかがですか。
  61. 大野勇

    大野参考人 二十億の買い上げが決定しましたときに、畜産局長から、二十億の金を支出する、そうして買ったならば、最低価格を割る三千六百円のようなものが幾らでも市場に売り出されては、つまり支出した金がむだ金になる、これをもって業界がそのままで救われるのではない、過剰を取り除くことによって業界を安定して、むしろ製品価格を値上げする、むしろ上がるということに努力してもらいたい、こういうお話でありましたが、ごもっともなことで、われわれそれは当然努めなければならぬ、かように考えておったわけであります。それで、今のこの奨励金の撤廃なり値下がりというものは、将来今非常に不採算に陥っております製品が大体昔の水準に戻りますれば、われわれも喜んで一つ奨励金をさらにつけたい、こういうふうに考えておったわけでありまして、ただそういう手形を前もってお出ししておくことができないということは、昨年と同じようなえらい見込み違いをしないとも限らない、それですからわれわれの意思といたしましてはできるだけ早い機会に戻したい、しかしいつから必ず戻しますということは前々からお約束はできない、こういうふうに申し上げてあるわけであります。
  62. 安井吉典

    ○安井委員 あとの質問者に譲ります。
  63. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 湯山委員
  64. 湯山勇

    ○湯山委員 時間の関係もございますから端的にお尋ねをいたしたいと思います。大野参考人にお尋ねいたします。  先ほどのお話の中に、奨励金五円を撤廃することについては九月という意見もあったし、それから十月二十一日から撤廃、そういう意見もあった、しかしながらそういうふうに意見が分かれているときには、それを調整していくとどうしても生産者に有利なようなきめ方になるのであって、結局十二月十一日になったのだ、こういう御発言がございました。この際、そういう協議にあずかったのはどういう団体なのか。今のそれぞれの団体にはそれぞれの意見があった、九月説もあるし、十月二十一日というのもあったし、結局それらを調整して十二月の十一日ということになったのだという、その協議した機関と言われるのは一体どういう機関であるか。そしてその協議には業界の団体だけであったのか、政府あるいは生産者団体、そういうものも加えての御意見なのか、その辺もう少し詳しく御説明願いたいと思います。
  65. 大野勇

    大野参考人 言葉が非常に不十分でありまして誤解を招いておるようですが、要するに十月一日という通牒を出した組合もあったというのです。十月一日から値下げをするという通牒を出された組合もあったし、十月二十一日から値を下げるのだといって発表して、生産者に御通知になった会社もある。十一月一日という会社もあったようです。それから十一月の二十一日から値を下げるのだといって御通知になった会社もあったようです。しかしどこかの会社はそれに応じなくて、そういう一般のなにに同調しなかった。十二月一日なり十二月十一日というようなことを発表、値下げするということになると、前から値下げを発表した人もできなかった。ほんとうは十月一日から値下げしたがったのでしょうが、できなくて、その十二月十一日に一致してしまったということを申し上げたので、協議して云々ということではないのであります。
  66. 湯山勇

    ○湯山委員 ただいまの御説明と先ほどのあれとでは、相当ニュアンスだけでなくて事実関係が違うのではないかと思うのです。先ほどの場合はそういういろんな意見があった、そしてその結果、結局その中の最も生産者に有利な十二月十一日、こういうことになったんだ。そうすると、今のお話ではいろいろな意見があって、それぞれその手だてはとった。しかし結局どういうことですか、同調しなかったものもあって十二月十一日となった、こういう御説明なのですが、十二月十一日というのはどういう理由でそういう半端な日と申しますか、年末差し迫った日が——ずっと前からそういう動きをしていた中で、そこへ一致したというのはどういう理由で一致したのでしょうか、偶然だということにはならないと思うのですけれども
  67. 大野勇

    大野参考人 前の方の、今の日のなには協議も何も——おそらくどこかの組合にそういう通牒がきっといっているでしょう。ですから現実にいっている通牒によって御判断を願いたい。十月一日から値下げという通牒がいっているなにもきっとあるでしょう。十二月十一日というのは別にどうこういう意味もないと思います。できるだけ値を下げたくないと考えていた人が、これはどうもどうにもならないという、それが最後の日だということですね。
  68. 湯山勇

    ○湯山委員 それで、現在も値下げ通知をしていないところもあるわけじゃございませんか。
  69. 大野勇

    大野参考人 先ほど申し上げます通り、よその会社がどうなっておるかということはよくわかりません。現在まであるいは値下げの通知をしていないところがあるかもわかりません。それらは一切われわれには不明です。
  70. 湯山勇

    ○湯山委員 今の点はどうも御説明納得しかねるのですけれども、先ほど言われたのがむしろほんとうのことをおっしゃったので、今の場合は若干別な配慮をなさってそういうようなお答えになったのではないかと私は判断をいたしますことだけ申し上げておきたいと思います。  もう一つは、今おっしゃったようなことですから、生産者側の方はそういうことについては納得していないところも相当あると思います。そこで、先ほど生産者側参考人の御意見の中に、内渡しとして受け取っておく、残余については別途請求する、あるいはしているところもあると思います。大野参考人のところはそういう請求を受けておられるかどうかということが一点と、そういう請求については黙殺するのか、あるいは考慮の余地がある、なお検討していく、そういう御態度をおとりになるのか、いずれか一つお答えいただきたいと思います。
  71. 大野勇

    大野参考人 前段先生は私の説明を御納得にならぬと言うのですが、どうせ文書なり何なりがいっておりますから、それはその組合々々でお調べ下さればわかることで、ここでもって口でごまかすというわけの問題にはならぬと思います。  あとの方のくだりは、私どもの方の会社では大部分が生産者が御納得をいただきました。二、三の組合が納得してないというところもありますが、われわれは従来の慣例上値を上げたときもわれわれの通知で御了解願っておる。で、この奨励金に関する限りは、しかも期限を切っておりますので、それはわれわれの通知で御了解を得たことだと思っておりますし、かりに御了解を得ないものでも無理にでも御了解を得たい、かように考えております。
  72. 湯山勇

    ○湯山委員 そうすると、今後も今言われたように値下げあるいは値上げというのは一方的におやりになる、今回と同じように一片の通達と申しますか通報をもってやっていこう、こういうお考えでございますか。今後将来においても、今まで通り一片の一方的な通告でもって乳価決定する、こういうお考えでございますか。たとえば生産者話し合いをするとか、事前に意見を聞くとか、そういうことはなさらない、こういう御方針でございますか。
  73. 大野勇

    大野参考人 従来は値上げのときに御相談したことは、日本じゅうどこもないようです。来月からこういう工合に値上げしたい、買いたい、こういうことを申し上げて御異議なく御了承願っております。ことしの乳価は幾らにしようということを事あらためて御相談したことは、今までの慣例ではありません。
  74. 湯山勇

    ○湯山委員 それは今までのことは済んだことですから。今後もそういう御態度でおやりになるつもりかということなんです。と申しますのは、先ほど来生産者側参考人意見にもありましたように、相当結集した力で当たらなければ生産者は立っていかない、日本農業の将来にも重大な影響がある、こういうことを繰り返し言っておられるので、そういう中で今のような一方的な値下げ——値上げの場合はまた別な考え方もあると思いますけれども、一方的な値下げをやられるということになれば、相当大きなトラブルと申しますか、そういうものも起こる可能性があると思います。すでにかなり多数の府県においてそういう事実もあったし、そういうトラブルの結果、県があるいは調停と申しますか、あっせんと申しますか、そういう形で入って乳価決定された、そういう事例もあるわけです。そういうことは御存じだと思います。そうすると、そういうことも御存じの上でなおかつ今後もやはり一方的にやっていこう、こういうお考えなのかどうか、これをお聞きしておるわけです。
  75. 大野勇

    大野参考人 酪農審議会なり何なりがこういうような形になってきまして、今後どういうふうにするかということにつきましては今研究中であります。将来あるいは先ほどもちょっと説明が足りなかったと思いますが、何でもかんでも買うのだ、どんなに量が出ても、どんなに不特定な量が出ても買うのだということの方が、生産者の方々に残乳処理機関のない間は都合がいいんだというようなことで、あまりそういう点を理詰めに研究するなり突き詰めていなかったわけです。これらをほんとうに突き詰めてやることになりますと、価格と数量というものをほんとうに検討しなければならぬ、こういうことです。それが今そういう時期か、そうした方がはたして生産者のためにいいか悪いかということは、まだ多少疑問の余地があるのじゃないか。しかしいずれよく研究いたしまして、またあらためて御返事申し上げます。
  76. 湯山勇

    ○湯山委員 私がお尋ねしておるのは、全量買い入れとか、そういったような問題じゃなくて、乳価決定にあたっては、ことにあなたが会長でおられるわけですから、近代的なあるいは民主的な買い上げの方式というものをとらなければならない。それは業者の方もそうでしょうけれども生産農民の方は非常に多数の者がそれにつながっているわけですから、そういう人たちが納得すると申しますか、納得させるための努力というものは、近代的な取引においては当然なされるべきだと思うわけです。そういう基本的な立場から話し合っていこう、今回のように一方的な通告で値下げするんだ、将来もまたそうするんだということじゃなくて、納得ずくでなるべくやっていこうというような基本的な態度がとられなければならないと私どもは思うわけです。そういう観点からできるだけそういう場合においても話し合いでいこう、そして受乳拒否をするとかあるいは出荷拒否をするとかそういうことではなく、そういうことはできるだけ両者相寄り相助けていかなければならない問題で、業者の方だけでやれるものでもなし、また生産者だけでやれるものでもない、お互いに手をつないでいかなければならないものが、今回のように一方的なやり方というものは、トラブルを一そう大きくするものですから、そういうことについて今後はなるべく話し合いでいこうというようなお考えはおありにならないかどうか、これをお尋ねしておるわけです。
  77. 大野勇

    大野参考人 御趣旨に沿うように努めたいと思っております。ただ、先ほど申しました通り、今までは全身全霊を傾けて生産者のためにやってきたと思っております。それで、これが近代的な取引ということになりますと、今言う通り、右左をそろえなければならぬ、こういうことになるわけでありまして、なるべく前もって皆さん方と一つ相談してきめていきたい、こう思っております。
  78. 湯山勇

    ○湯山委員 その次にお尋ねいたしたいのは、今回の値下げでございますが、今回の値下げ生産者に対してどういう影響があるかということについては御検討になられたと思います。それについてはどういうお考えをお持ちになっておられるか伺いたいと思います。これも大野参考人一つお願いいたします。
  79. 大野勇

    大野参考人 この今の影響というのがどういうなんですか、牛乳の分量の方ですと、まだはっきりしたものが出ておりません。大体同じような形勢できております。
  80. 湯山勇

    ○湯山委員 それでは、今回値下げをおきめになるときに、これだけ下げれば生産農民に対してはどういう影響があるだろう、そういうことの御検討はなさらないで、事業の採算ということだけから——採算だけじゃないでしょうけれども需給状況とか、そういうことだけから今のをおきめになったので、それが生産者にどういう影響があるかということについては御検討になっていらっしゃらない、こういうことでございますか。
  81. 大野勇

    大野参考人 従前、昭和二十九年、三十年というような生産過剰のときには、比較的大幅な乳価値下げがあったわけです。その翌年は非常に生産不足になって牛乳の大暴騰を来たした。現在一時的に牛乳が暑さの関係なり雨の関係で需要供給のバランスがくずれたんですから、ここではほんの少し生産が制限されればプラス・マイナス・イコール・ゼロになって、そうして来年の、あるいは今年の夏なり何なり、ほんとうに需要が喚起してくれば、かえってその方が生産者のおためになるのではないかというような考えで、昔のような大幅な値下げをしないで、ほんの一部の奨励金の撤廃、こういうふうなことにして考えたわけであります。
  82. 湯山勇

    ○湯山委員 それで今回の措置というのは、生産を幾らか制限できるものならしよう。その制限はあるいは生産の減少をどれくらいできるだろうという予想を大体お立てになっていられるのでしょうか。
  83. 大野勇

    大野参考人 どのくらいというはっきりした見通しはありませんが、一%とか二%ですね。一、二%生産がおりれば、これは夏の需要期も迎えますから、プラス、マイナスがバランスがとれて、あるいはまた奨励金の復活ができる、こういうふうに考えて、われわれとしても販路の拡張には今大努力をしているところであります。
  84. 湯山勇

    ○湯山委員 今のお考えからいえば、一%ないし二%の生産減、これを見越して今回の措置をおとりになった。逆に今回の値下げによってその程度の減を期待している、こういうことだと思います。今一%、二%といえば、頭数からいえば、百頭の中の一頭あるいは二頭の整理、こういうことになるわけですが、現在そういう乳牛の一%ないし二%の減を実際に現場でやっていくということになれば、これは大へんなことじゃないかと思うのです。それについては、一つ吉田参考人から、そういうことが簡単にやれるものかどうか、そういうことについてのお考えがあればお聞かせ願いたいと思います。
  85. 吉田和雄

    吉田参考人 昨年、都道府県と中央に酪農会議という団体が御承知の通りできまして、この酪農会議のおもな任務は一応生産を調整するのだということになっております。しかしながら、生産を調整すると一言に言いましても、なかなか農家にとってはむずかしいことでございまして、専業搾乳業者がやっておりますように、夏はらみ牛の少し年とったやつを入れまして、夏の需要期にしぼって冬は売ってしまうというようなことは農家にはちょっと今の段階ではできないわけでございます。学者なんかによりますと、ちょうど夏に乳が出るように受胎さしたらいいじゃないかということを申しますけれども、これも農繁期等の関係もございまして、口では簡単に申しますけれども、現実にはなかなかできない。しかも、これは非常に恥ずかしい話でございますけれども酪農の方の生産者団体というのはまだ完全に一本に統一されていないわけでございまして、そういう関係から、片一方でたとい生産制限をやりましても、片一方のアウトサイダーが増産をすれば結果として同じことであるということで、言うべくして実際には行なわれがたいというのが実態でございます。つまるところ、牛小屋の中で生産の調整をやるということは現実にはきわめて困難であるということが言い得ると思います。従いまして、現実の事態それだけで済ましていいのかということになりますと、そうとは言えませんけれども、漸進的にやはり生産者団体自体の力で生産の調整をやっていくという方向——もちろんこれは酪農会議ができたという意味はそういう意味でございますけれども、しかしながら現実にはむずかしい。そういう体制ができ上がるまでは、生産されたものがもし余るとするならば、その始末はやはり畜産物価格安定法事業団というような、現在の機構が必ずしも満足だということは言い得ないわけでございますけれども、そういうところで始末をつけていくということよりほか現実にはないのじゃないかというふうに考えます。
  86. 湯山勇

    ○湯山委員 これは非常に重要な問題で、今畜産振興という大眼目の中で、こういうとにかく一、二%生産減というようなことが実際に行なわれるということになれば、これは国の政策として非常に重大な問題であると思います。これは参考人の方に申し上げる問題じゃなくて、政府へ言わなければならない問題でございますから、そういうことについてはまた政府に伺うことといたしまして、今のと逆に、生産の減少を見越しての対策じゃなくて、牛乳消費をさらに伸ばしていくという方面にもっと力を入れる余地があるのじゃないかということ、これは先ほども御指摘がございましたが、それに関連して、これはどなたにお聞きするのが一番いいのかよくわからないのですけれども、今度消費の普及運動推進協議会というのができて、牛乳の差益金でそういう運動をやっていこうという御計画のように承っておりますが、これは具体的にはどういう御計画なのか、これも大野さんにお聞きするのが一番いいのじゃないかと思うのでございますが、どうでございましょうか。
  87. 大野勇

    大野参考人 前の方の生産調整につきまして、先生に一言申し上げたいと思います。百万頭おりますから、えさを一握り減らせば一日三勺でいいのです。一合に足らず、三勺で大体何万石、こういうふうになって、牛乳の増産という場合も一握りよけい出して一頭が五合出すというあれがあるのですから、これは牛を殺すとか殺さぬとかいう問題にはならないのです。ですから今申し上げた野菜だの何か——六十五万人もの人間がおりますと、それを全部一致の方向に向けるということはかなり困難なわけです。  その次の宣伝のなには、これは私が直接タッチしておりませんで、これはむしろ農林省の方の方がコントロールなさっておるので、そちらからお聞き願った方がわかりがいいのじゃないかと思います。
  88. 湯山勇

    ○湯山委員 それでは農林省へまた別な機会にお尋ねいたしますから……。  ただ、今の牛乳消費普及運動に生産者を加えないとなかなかうまくいかないのじゃないかと思いますので、そういう場合には一つそういう御配慮も願いたいと思うわけです。と申しますのは、ミカンにしたってモモにしたって、ミカン娘とかモモ娘とか、それは中間業者でなくて、生産地そのものが乗り出していくということでなければ効果がないわけですから、御配慮願いたいと思うわけです。  それから最後に、蓮池参考人にお尋ねいたしたいのですが、今のような状態で来年度の需給の見通し、あるいはそれに対する対策というものは非常に重要であると思います。そこで、来年度の生乳の需要拡大の一環として学校給食等へも生乳をどんどん回していこう、それから先ほど参考人の御意見にもあったように、粉乳についても国産のものを学校給食に回していこうというようなことを言われておるようでございますけれども、そういうことについて成算がおありになるのかどうか、どういう御計画なのか、それを伺いたいと思います。
  89. 蓮池公咲

    蓮池参考人 お答え申し上げます。  学校給食牛乳及び乳製品——乳製品といいましても、牛乳の材料としての脱脂粉乳等ということにるわけでありますが、この学校給食牛乳を取り上げていくという問題、しかもこれが文部省の予算で非常に大きなスケールで具体化されるということになりますと、これを外国産脱粉等だけでやっていくということになりますと、むしろ国内の乳製品過剰の状態と非常な矛盾を来たす結果になりますので、できればこれを国内品で学校給食の俎上に乗せられるように御配慮をいただきたいということは、私かねがね農林省にも申し上げておりますし、文部省にも申し上げてきたわけであります。そこで、それではどういうことで成算づけて将来続けられるのだというお尋ねに対しては、これは国内産乳製品生産オーバーの状態であればもちろんそれを学校給食に提供していきたい、しかし学校給食一つの計画事業であるから、どうも余りものだけを持ち込むということになれば学校給食もお困りになる。そこで、国内産でまかないのつかない場合は事業団乳製品の原材料を購入してそれを学校給食に提供すれば、コンスタントにある程度続けていくことはできるのじゃなかろうか、それを一年通じて具体化すか半年具体化すか、また冬季四カ月具体化すか、こういう問題はおのずから検討しなければならぬ問題だけれども、とにかく軌道に乗せて、学校給食というものが事業団需給の調節をやっていく場合の持ちものの一つのはけ口ともなり、かつ国民の栄養向上の土台にそれが役立っていくという道を一つ確立していただきたい、こういうことをお願いしてきておりますので、私どもはそういうことが具体化されれば、当然それは事業計画に乗って国内産で買付を進めていき、その手持ちが不足する見通しがあれば、輸入の手配もする、こういうことでいきますれば、そう時期的に食い違うことはないつもりでおるわけであります。ただ一年通じて国内産をどうするか輸入をどうするかということになりますと、年度の初めに国内産、国外産を通じて計画を立てるということは非常に至難なわざだと思います。しかし国内産の見通しというものは七、八月になると確実になります。そこで手薄になれば輸入の手配をいたしますれば、九、十月には間に合うわけであります。それで続けていくことは、どういう時点をとらえて具体化されても事業団としては十分対処できる、こういう考えでおるわけでございます。
  90. 湯山勇

    ○湯山委員 今のような、ある意味では仮定の事実の上に立った御意見じゃなくて、具体的に、たとえばなま乳八億円、これは事業団が補助をお出しになるわけです、それはどういうふうにやる、それから今度の脱脂粉乳の全員給食については国内産をどうする、そういう具体的なことをお述べいただきたいと思うのです。  ここで時間節約のためにこちらの意見を申し上げれば、今のような御答弁がございましたけれども、私は、実際には今度の脱脂粉乳の給食ということは国内産を充当することはきわめて困難ではないか、むしろできないことじゃないかという心配さえしておるのです。ところが、今の理事長のお話では、そういうこともできるかのような御意見なので、そういうところははっきりしておかないと、また需給計画が狂ったということで、生産者にしわ寄せがいくという懸念もないではないと思いますから、一つはっきりとした御説明を願いたいと思います。
  91. 蓮池公咲

    蓮池参考人 本事業年度で政府からいただいております交付金のうちから、一定の金額を助成金として出して学校給食を進めるという問題は、この秋に第二学期の分が政府との間に数量計画がきまりまして、それを各府県の教育委員会を通して具体化して参りましたが、三学期の分についても、現在数量の手配がみなきまりまして、現実に仕事が進んでいる、三学期分もその六億のスケールの範囲内で奨励金を出して実行することになっております。ただ先の問題になりますと、これはもっぱら大蔵省の予算とも関係することでありますが、主務官庁としてはこれは農林省、文部省になるわけでありまして、各省間のお話が軌道に乗らないと、私としてはそれを具体案に盛り込むということは現在不可能な状態でございます。
  92. 湯山勇

    ○湯山委員 それはおかしいので、すでに今審議中の予算の中に八億というものは交付金として見込まれておるわけでありましょう。ですから、それについてはそれだけのものはここで消化できるというお見通しはなければならないと思うわけです。むしろ、もっとたくさん御要求になったのがその程度で押えられたというようなことも考えられないことはないのでありまして、それと同時に、来年度から小中学校全員に粉乳の給食をする、それについて事業団としてはどうなんだということも、また御意見がなければならないと思うわけです。先ほどは、そういうことについてできるだけ国内産でやれるように努力をするということでございましたけれども、そういう努力ではなくて、もうこの段階ではそういうことについての具体的なプランがなければ、四月になってからというのでは手おくれだと思うわけです。そういうことが、今のようにまだ計画が立っていなければ立っていない、しかも粉乳給食については国内産を回す余地はほとんどないのならないというようなことは大体おわかりだろうと思いますので、そういうことがおわかりでしたらはっきりしていただくし、おわかりでなければ、それでけっこうだと思います。
  93. 蓮池公咲

    蓮池参考人 今の御質問にぴったり当てはまる御返事ができるかどうかわかりませんが、実情はこうでございます。私ども脱脂粉乳を三、四月に手配いたしまして、六、七月に入手いたしまして以後、ずっと手持ちをしておるわけでありますが、それと並行してやはり学校給食用の脱粉は事業団と関連なしに直接輸入されているわけでございます。そこで、そういうことが二本建になっておりますと、事業団は手持ちをしておってだんだん品質上の配慮もせねばならない時期もくるのに、一方では別途に脱脂粉乳等を輸入して、それが学校給食に回るということでは非常に残念なことになる。それを一つのプールにして動かし得れば非常にいい。それから、輸入分はそうだけれども、国内産でむしろオーバーしている場合は、輸入でまかなうくらいなら国内産でまかなっていいじゃないか。それを事業団の事業計画に乗せるということができる状態を各省間でお話をきめていただきたい、こういうことでありまして、学校給食を対象とする来年度の数量計画になりますと、来年度の予算である程度の事業が具体化される可能性は、今度交付金を十五億いただいておりますから、十五億の範囲内でどれだけそれに回せるか、これが農林、大蔵のお話し合いで先にいってきまる問題になっておるわけでございます。
  94. 湯山勇

    ○湯山委員 それではけっこうです。
  95. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 山田長司君。
  96. 山田長司

    ○山田(長)委員 最初に根岸参考人吉田参考人に伺いたいと思います。  同僚の足鹿議員が先ほどお話をしましたけれども政府農業施策の今度の構造改善という問題については、何といいましても酪農の問題がその重要点になっておると思うのです。ところがこの重要点になっているものは、まことに価格的に不安定な状態に置かれてふらふらしているというのが現状だと思うのです。こういう状態で、実際問題として重要施策の推進ができるかどうかということになると、これはまことに危ぶまれる部門に属すると私は思います。  そこで、聞くところによると、酪農家メーカーへ引き渡した製品の支払い等については四十日も間がある、こういう点も私は農家にとっては大へんな問題だと思うのです。そこでこの支払いの方法等については、乳価基準価格生産費及び所得補償方式、いろいろ方式があって、価格の最後的な結論が、それは酪農家としては出してほしいところだと思うのでありますが、いかなる方法でどのくらいな価格が一体ほしいというのか、参考にお二人に最初に伺いたいと思います。
  97. 根岸孝

    根岸参考人 お答えいたします。  ただいまおっしゃいましたように、構造改善事業は地元でも末端ではかなり期待を持って臨んでおりましたけれども、こういうふうな価格不安定の状態ではどうにもならぬという空気は先ほど申し述べた通りでございまして、これがもっとはっきりした方向にいくために、まず決定方式が問題だろうと思う。価格そのものもそうでございますけれども決定方式が問題だろうと思う。現在の段階では、先ほど大野参考人からも大体お話が出ましたけれども、用途別、時期別の問題が当然あるのでございまして、用途別、時期別を当然考えなければならぬ、こういうものをどういう形で持っていくかというのは、大体府県なりあるいは同じような条件のところが、ややブロック的に用途別、時期別の価格決定をなされなければならないと思うのです。  そこで現在までの情勢を見て参りますと、これは独禁法云々という話が出ておりますけれども、独禁法はさておきまして、現在までの値上げ、値下げ状況は、ほとんど各社が共通した動き方をしております。従ってこの問題については、ここでいわゆる闘争をするということとは形は別でございますけれども、真にこれを安定させるという考え方であれば、メーカーの方も当然ブロックで、それから生産者の方もブロックで、対等の立場において話し合いができる、その方式が当然なければならぬ。政府がお考えになった酪農会議というものも、将来そういう流通面に対して一歩前進させようというねらいが大きくあったように私どもは考えております。従って今後酪農会議のあり方も、需給調整という問題だけでなくて、そういう問題まで突っ込んで考えていけるようなものにすることが当面の問題ではないかというふうに考えるわけでございます。  そこで今度は価格をどうすればいいんだ、あるいは価格決定方式というのは、まず慣行という問題もそこに当然含まれなければならぬし、今の時期別あるいは用途別の問題を含めて考えていけば、おのずから両者がやや妥結する線が必ず生まれてくると思います。従って、そういうような方式に従って契約がなされるということをまず考えのうちで私どもは理想として、当面の段階としてはぜひそういうふうにありたい。  その次に今度は価格の問題でありますが、価格の問題につきましては、これは畜産物価格安定法の不備は私どもも逐次直していただく、そうして少くとも生産者が安んじてその業につける、いわゆる他産業の方へ目をしょっちゅう向けて、土方に出ようか、やれ牛を売ろうかというような方向でなく、牛を六頭なり十頭ふやしたのだからこれでもって専念してやっていけるのだという安定した考え方、それが構造改善考え方でございます。そういう方向にぴたっと方針を合わしたら、今度はそれでやっていけるだけのそろばんをはじいて、最低の生産費と労賃は補償してもらう、それを価格安定の根本にしていただく、これを一つぜひお願いしたいというのが私ども生産者考え方でございます。
  98. 吉田和雄

    吉田参考人 価格が幾らが適切かという前に、昨年の三月に開かれました畜産物価格審議会におきましては、畜産物価格安定法にあります「再生産を確保することを旨とし、」ということは全く否定をされまして、現実は、算式として農林省の方から出されましたのは、原料乳については今までの市価を平均したものにいろいろな係数をかけたものでございます。それから乳製品の安定下位価格もやはり同じだ、つまるところ原料乳の安定基準価格、それから乳製品の安定下位価格というものは全く関連なしに別個にきめられたといういきさつでございます。これは芳賀先生も委員であられますのでよく御存じだと思いますが、そういういきさつであります。生産費というものは、なま乳につきましてもあるいは乳製品につきましても全然無視された。結局法律の趣旨が無視されて運用されたという実態でございます。従いまして私どもの希望といたしましては——たとえば法文には安定価格は「再生産を確保することを旨とし、」ということが書いてありまして、安定基準価格はということは書いてございません。下値がということが書いてございません。従いましてそこで見解の相違があったわけでございまして、農林省の方は、安定価格はということなんだから価格安定帯の一番下の方は必ずしも再生産を確保しなくてもいいという主張でございました。私どもは、そうじゃなくて、法律をもっとよく読んでもらえば、「安定価格は、……再生産を確保する」ということは、一番下の値段でも再生産を確保するということに読めるじゃないかといって、それがほとんど審議会の論争の中心であったわけであります。つまるところ私としましては、少なくとも原料乳の安定基準価格、また市乳原料乳につきましても安定基準価格を別途定めていただきたいわけでございますが、要するにこの安定基準価格は再生産を確保してほしいということでございまして、この価格を申し上げますと都市労賃並みに、都市の製造業五人以上の規模の男女込み労賃、これは一時間九十八円八十四銭でございますけれども、これで計算をいたしますと大体八十七円くらいになってしまうわけであります。それから農林省の方で試算されております農村労賃でやりましても、七十一円三十四銭という数字が昨年出ております。この程度価格というものはやはり法の精神によりまして確保していただかないと、生産者が、今根岸参考人から述べられたように、いつもふらふらと迷うということになるわけであります。  さらにもう一つつけ加えておきますのは、先ほど大野参考人等から、非常にサービスしてやっているのだ、五十二円の価格をもし払うとすると大損するのだというようなお言葉が実はございましたけれども、私ども生産者団体としましては目下調査中でございますが、ある県のある酪農協の専務理事がこの間上京して参りまして、私は実は今の乳製品の安定下位価格、つまり事業団の買い入れ価格で実業団に売った場合あなたのところはどのくらいの乳価が支払われるのか、端的に一つ率直に言ってくれということを言ったところが、私のところだと五十六円は優に払えますということを言っているわけですね。今安定基準価格というのは五十二円、それに比べますとだいぶ高いわけでございます。さらにその人は、今の五十二円と乳製品の安定下位価格というものを比べますと、これはメーカーにとっては非常に有利な価格であるということをはっきり言っておられます。これはある酪農業で小規模のものでやっておられる、これは当然大規模の企業よりも製造コストがよけいかかりますのは常識でございますけれども、そういうところですらそのくらいの乳価は支払われるというのが実情であります。そういうことで、今の安定基準価格五十二円というのは非常に低きに過ぎるものであるということをあえて申し述べておきたいと思います。
  99. 山田長司

    ○山田(長)委員 次に大野参考人に伺いたいと思います。  先ほどお話を伺っておりますと、乳価の変化が起こったことについては見込み違いの点があった、私はこの見込み違いという問題がどうもしろうとで理解ができないのです。大体一年半たてば牛はおとなになる、それで乳をしぼれるような状態が起こってくる。全国に百万頭いる、百万頭というとちょっとばく然たる数字ですが、こんなばく然たる数字でなくて、もっと計画的に全国に何百何十万頭いるという数字が明確に出なくちゃならぬと思うのです。しかるに、それが見込み違いが起こったというのは、見込み違いが政府のバター輸入とか脱脂粉乳の輸入とかそういうもののために起こっているのじゃないかと思うのです。見込み違いはそういうものを入れたということ。そうすると、そういうために酪農家が犠牲を払わなければならぬという筋合いは一つもないのです。そういう点で、どうしてこれは専門家の人たちの間で見込み違いがあったと思われるか。どうもこれは私はしろうとでよくわからぬのですが、この点はどうなんですか。
  100. 大野勇

    大野参考人 ただいまの見込み違いの話でございますが、確かに春は、あれは去年ですからおととしの情勢が続くとすればどうしても足りなくなる、足りなくなって非常な問題が起きる可能性がある、こういうふうに考えたわけでありますが、五、六年前のように日本の総体的の乳量が比較的少ない時分は一%、二%の見込み違いというものは大きな量にならなかったのですね。それが千三百万石もふえてくると、これの五%なり三%の見込み違いというものは非常に大きな数量となって響いてくる。なぜ見込み違いが起きたかというと、天気が涼しくて雨が降れば、牛の方の生活はきわめて快適なわけです。それですから、牛乳生産は一%とか二%ふえるわけです。そして今度消費の方は、雨が降れば一%とか二%減るわけです。その右と左の差が四%なり五%という違いで、絶対数が大きくなると、そのちょっとの右左のふれが非常な大きな結果をもたらしてくる。そういうことで、これは、お前何十年もやっていてばかじゃないかと言われれば、もう私ら何とも御返答の申し上げようがありませんが、確かに見込み違いをしたわけであります。
  101. 山田長司

    ○山田(長)委員 どうも専門家のお話を伺っておっても、気候やあるいは風土の支配によってまで、それは変化があることは理解できますが、どうもそういうことのために見込み違いというものが起こり、やはり輸入もそれがために見込み違いが起こって、その結果が農民負担ということになってきているわけです。やはり国策に順応してやった仕事に、その犠牲が農民にかけられている点が私には理解ができないので、今の御質問を申し上げたわけです。  次に、先ほどから私は公取委の局長に待っていただいたのは、きょうの質問をずっと伺っておりまして、公取委が、どうしてこういう場合にもっと生きた活躍をしないかということなのです。公取委というものは、御承知のように証拠主義によってやられるけれども、実は、こういう席で話されなくても、証拠はいろいろな点であがっている。そんな変化が起こるたびに値段が下がれば、四大メーカーも値段を下げてくる。あるいは四大メーカーが手数料をみな同じにする。幾ら証拠があがらないといってみても、どうも理解ができないのです。かりにそういう事態のときには、少なくとも予備発動ぐらいして、その動きの一部分たりとも発見したら、やはり示唆していただきたい。それで結果から見れば、完全にこの事態というものは、われわれには理解できない。話し合いの上においての価格決定がなされているとしか理解ができないのです。そういう点で、公取委なんというせっかくの機関を設けていながら、こういう事態のときにどういう動きをしたのですか。ぼんやり見ておったということでは、私は済まぬと思う。その点公取委の局長、どうなんです。
  102. 小沼亨

    ○小沼政府委員 提訴がございまして、その提訴を受けまして、現在活躍を始めておりますが、活躍段階で、どの程度の証人をお呼びするとか、どういうところに出て、どういう調査をするかということは、現在この席では申し上げかねます。着々と調べておるということで、しばらく御猶予をお願いしたいと思います。
  103. 山田長司

    ○山田(長)委員 あなた方が、結果主義はとらない形で動いておるということはわかる。それから提訴がなかったということについて、動きを持たないということも理解できます。しかし、少なくともこれが政府の方針による構造改善の一翼をになう大問題です。こういう大問題のときに、少なくとも公取委としても、いかに発動がなくても、あなた方自身で、間違いを起こさないだけのやはり示唆を与える必要があると私は思う。このことによって、農民自体もまことに不安定な状態が起こっているのですから、当然それは公取委の仕事の一翼として、そういう不安定を農民の上につくらないようにするために、やはり四大メーカー一つの示唆を与えるなり、あるいはまたあなた方が勧告を与えるなりをして、発動して、決して法を逸脱した行為とは私は見ないのです。この点どうなんです。
  104. 小沼亨

    ○小沼政府委員 その活動がスタートがおくれたということは、あるいは御指摘の通りであるかもわかりませんが、御趣旨十分わかりましたので、できるだけ早く問題の処理をいたしたいと思います。  実は、ここで少し余談になって恐縮でございますが、昨年閣議了解で、違法の協定は、独禁法の運用を強化して取り締まれということがありまして、それ以来公取委としましては、できるだけ職権探知その他によりまして、違法の協定について調査をいたして参っております。乳価問題につきましては、従来からかなり農林省の御指導等もございましたし、十二月の十一日ですか、値下げをされたということにつきまして、的確な提訴の形が一月に入ってなされましたので、現在それをもととして、先ほど来申し上げました通り、調査をしております。できるだけ早く結論を出すように、全力をあげるようにいたします。
  105. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 芳賀委員
  106. 芳賀貢

    芳賀委員 大野さんにお尋ねしますが、昨年十二月以降全国的に各メーカーが一斉に値下げを行なったわけですが、その場合事前に、農林省当局に対して、都道府県に対して、このような値下げを行ないたいとか、あるいは行なうというような、そういう申し出をされたかどうか、いかがですか。
  107. 大野勇

    大野参考人 従来値下げを行なう場合には、いつからこういう値下げを行なうつもりだということを、おそらく届けるというか、お話をしただろうと思っております。それは大がい三日とか四日とか、あるいは一週間くらい前にお話をしたと思います。
  108. 芳賀貢

    芳賀委員 あなたは乳製品協会の会長ですから、それは大事な点ですから、そういう申し出をした場合に、農林省、特に担当の畜産局長は、それに対してどういうような意思表示をしたか、これは記憶に残っておると思います。値上げとか値下げということは大事な点ですから。それはどうですか。
  109. 大野勇

    大野参考人 乳製品会長としては、この問題には一切関係しておりません。従って、私は今記憶がありませんが、おそらくうちの酪農部長が、きっと農林省に行ったことだろう、こういうように思っております。
  110. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、酪農部長が話をして、畜産局長が言われたことは、やむを得ないと言ったんですか。値下げもやむを得ぬだろう、そういうことになったのですか。
  111. 大野勇

    大野参考人 それは、直接聞いておりませんからわかりませんが、おそらく困ると言っただろうと思います。
  112. 芳賀貢

    芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、政府乳製品二十億円の買い上げ発動をやることを政府の方針としてきめた場合に、このときにメーカー側に対して、二十億円の買い上げ発動をするから、それを条件にして、たとえば値下げを撤回すべきである、あるいは今後値下げをしてはいけない、この二様に分けて、いずれかの政府からの行政的な指示あるいは呼びかけがあったと思いますが、その点はどうです。
  113. 大野勇

    大野参考人 今の買い上げ問題のときには、ここにおります中島さんと——これは日本乳販と日本製酪組合、この組合の組会員が非常に問題が起きている。もちろん、大メーカーといえども同じような状態ですが、これはぜひ一つ買い上げをしてもらわぬと、相場がどこまで下がるかわからない、ぜひ発動してもらいたい、こういうことで買い上げがきまりましたときに、これ以上の——できれは一つ値下げの撤回をできないものかというような御相談があったかと思っております。それはどうも今の段階でそのまま御承認はできかねるのじゃないか。しからば早い状態において戻せ。今何月何日から戻すということのお約束はできませんが、できるだけ御趣旨に沿いたいと思います。こういう返事をしたと私は思っております。
  114. 芳賀貢

    芳賀委員 あなたはなかなか大事なところをはずすから、もう少しまじめに取り組んでもらいたいと思います。大事な点なのです。たとえば値下げをしようとしたとき、農林省に話をしたと思うが、当局はどう言ったかわからぬと言ったり、また買い上げ発動が行なわれるときに、政府がこれは行政上の一つ施策だから効果をねらって買い上げ発動をするわけですから、そういう場合には具体的に、値下げを撤回すべきであるとか、これ以上今後下げてはいけないとか、何らかの明確な行政的な指導等が加えられなければ、ばく然として二十億円買うというようなことではこれは無為無策だと思うわけです。そういう点についても、あなたははっきりした記憶があるかないかわからぬようなことを言われるが、これは大事な点だと思いますね。枝葉末節な点なら何を言われてもかまわぬですが、ポイントになるような点はもう少しまじめな答弁をぜひしていただきたいと思うわけです。  それでは、買い上げをしてくれれば第一次値下げはやったが第二次以降の値下げはしないということを言ったのですね。それから復元で値下げ撤回、従来価格に戻すことについては極力努力をする、こういうことを言われたわけなのですね。どうなのですか。
  115. 大野勇

    大野参考人 将来市場が回復した暁においては、元の値段になるべくすみやかに戻します、こういうことをこちらの意見として申し上げたわけです。  それから次の値下げはしては困る、これはごもっともな話で、われわれ自身も同じ考えを持っております、こういうことを申し上げました。
  116. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、今後値下げはしないということは明らかになったわけですが、この点について、実は重政農林大臣は、昨日本院の本会議において、社会党の角屋委員の質問に答えて、この乳価値下げ問題については、政府の買い上げ措置によってとにかく一応第一段階としては今後の値下げをさせないことにした。第二段階についてはすみやかに値下げ分に対してはこれを復活すべきである。その内容については値下げ撤回と通ずる点ですが、こういうことを政府としてメーカー側に対して勧告して、これを実現するために努力する、こういうことを重政農林大臣は本会議で言明しておられますから、大体農林大臣の国会における言明はあなたの今述べられた点と狂いはないわけですね。合致しておると考えて差しつかえないのですね。
  117. 大野勇

    大野参考人 裏表ですから、多少ニュアンスが違うかもしれませんが、ともかく次の値下げはいたしません、これはもうお約束したわけです。私は農林大臣にお目にかかったことはありませんからわかりませんが、なるべくすみやかに、この乳価を回復しろ、これはごもっともであります。われわれもこの二十億をむだにしないで早く市況を回復して、そして政府の御好意にもお報いをしたい、こういうことをたしか私は言ったと思っております。
  118. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、昨年の全国の都道府県における値下げ内容について、私の持っておる資料によりますと、少し内容的になりますけれども、北海道については十二月一日から雪印、明治が一円値下げをする。森永乳業がこれに参加してないわけなのです、私の資料によればですね。それで社長である大野さんとしては、北海道については現行の従来価格は五十四円ということになっておりますが、森永乳業としては、北海道については全国で一番乳価が安いから、値下げをする必要がないと判断して雪印、明治と共同行為に出られなかったのですか。いかがですか。
  119. 大野勇

    大野参考人 今の点で少し誤解があるようですが、北海道については値下げをしないではないのです。なるべく値下げをどこもしたくないという考えであったわけです。しかし、だんだん私の会社のストック状況なりなんなりを見ていて、これはなかなかどうも自分会社といえども値下げないで通せることができなさそうだというので値下げに踏み切った。こういうわけでありまして、北海道だけを値下げしない、高くしておくということは——日本じゅうをなるべく一つ値を下げないでいけるものならばいきたい、こういうのが私の終始変わらざる見解だったんです。
  120. 芳賀貢

    芳賀委員 あなたの趣旨はわかるが、現実には北海道についてはあなたの会社だけ一円値下げの通告を出していないのです。値下げをしていないのですよ。十二月一日から一円値下げするという通告を雪印と明治は出したが、北海道の場合にはこれは共販事業でやっておりますからまだ合意に達していないわけです。これはあなたとしてはなかなか努力、苦心されたかと思うが、北海道は現在でもやる気が結局ないのですね。
  121. 大野勇

    大野参考人 北海道も値下げをしておると私は心得ておりますが、非常に不統制で自分も不明ですから、後刻調べまして御回答申し上げます。私はどこかしこといってえこひいきはいたしません。ですから北海道だけ値下げしないで内地は値下げするということは、そういうことは値下げしないならどこも一切しない。値上げをするときは、内地を上げれば北海道がどういう事情であろうとも値上げをする。こういうことですから値下げをしておると心得ておりますが、今御指摘がありますればあらためて調べまして後刻御回答申し上げます。
  122. 芳賀貢

    芳賀委員 それはこちらで調べますから……。私も北海道ですから、あなたに調査してもらってから報告を聞く心要はないわけなんですが、それで結局、調査によると、あなたの会社だけが全国で一番低い北海道乳価を下げなかった。これは善意に解釈しておるわけですが、私に指摘されたからそれでは大へんだということで他社にならって、それでは一円値下げを協議もしないで一方的に通告してそれで押し切るというような、そういうけちなことはしないと思いますが、北海道についてはそういうことになっておる。次に宮城県については、これは明治、雪印、森永三社でございますが、これは十二月十一日から一円の値下げを行なう。秋田県については、十二月十一日から雪印、秋田協乳が九十三銭の値下げを行なう。山形県については、十二月一日から明治乳業が二円の値下げを行なう。茨城県については、協乳だけが調査対象になっておりますけれども、十二月一日から二円六銭の値下げを行なう。栃木県については、森永、明治、雪印三社が十二月十一日からそれぞれ二円六銭、群馬県については、明治、森永が十二月十一日から二円六銭、埼玉県については、協乳、明治、森永が十月一日から二円六銭の値下げ、千葉県については、明治、雪印、森永、中小乳業が全部歩調を合わして、十二月十一日から二円六銭、東京については、大手全部が十二月十一日から二円六銭、神奈川県についても同様に、十二月十一日から二円六銭、静岡県については、森永乳業が同様二円六銭の値下げ、新潟県については明治、雪印、これは期日は確認できませんが、一円の値下げ、石川県については、明治、雪印が十月一日から四円の値下げ、山梨県については、大手及び中小乳業が十二月一日から二円六銭、三重県については、明治、森永が十二月十一日から二円六銭、滋賀県については明治が二円、京都については、明治、森永、雪印が十二月一日から二円六銭、兵庫県については、明治、雪印、森永が十二月十一日から二円六銭、奈良県については、これは各社が二円六銭の値下げ、広島県については、大手全部が十一月十六日から三円の値下げ、大分県については、大分協乳等が十二月一日から三円の値下げ、熊本県については、森永乳業が一月から三円の値下げ、こういうふうになっておるわけですから、最も共通した点は、十二月十一日を一つの線にして二円六銭の値下げというものが、全く同様な状態で行なわれておるわけですね。あなたの先ほどのお説によれば、基本乳価が五十二円だから、それ以上の取引乳価というものは全部奨励金に類するものである。だから、この奨励金については、夏場を対象にしておるものだから、大体九月一ぱいでその改廃は自由である、そういうお考えの上に立っておるようでありますけれども、このような全く異例な、各メーカーが時期も同一であり、値下げの額においても同一である、こういうような一斉値下げというものを、しかも一方的にやられたという点については、それは売り手と買い手の力関係もあるでしょうけれども、われわれとしてはなかなか了承できない点です。公取委も弱虫で、過去十年間、たまにこういう問題が出ておりますが、公正取引委員会が、乳価取引あるいはこういう問題について明確な公取としての結論を出したことは、私の十一年間の国会活動を通じて一度もないのです。結論が出ないで、うやむやに終わっておることなんです。だから、考えようによっては、公取委という機関をメーカーがもうなめてしまって、ばかにして、何を言っても公取委ごときは能力がないんだということが慢性的になって、一つの慣習的なものになって、大手を振ってこういうことをやられたのじゃないかと思いますが、その点については、大野さんとしてはどのような判断をされますか。
  123. 大野勇

    大野参考人 先生のお話の奨励金の場合、当分の間というものはそのままになっているのです。去年の四月一日につけた奨励金は、初めから九月三十日ということに日限を切ってあったのです。ですから、同じ奨励金で幾らか性質が違う。奨励金だから何でもかんでも一方的の通告でとるという問題ではないのです。五円の方は初めから九月三十日までですよということの御了解を得て、そうして奨励金をつけた、こういうことになっておりますから、その点は一つ御了承を願っておきます。  それから乳価の一致ということですね。かりに中小メーカーが先に自分乳価を下げる、こう言っても、大手が下げなければ、これは牛乳がなくなることを覚悟しない限りは下げられない。ですから、そういう点では、中小が大手にきっと一致するでしょう。申し合わせをしようがしまいが、やむを得ない。卑怯なようだけれども、みんなが下げれば私も下げさしてくれということが、中小の大方の言い方です。大メーカー四社のうちでこれだけ競争が激烈なときですと、どれか一社が特別な考えを持っていさえすれば、どういう表現をし、どういう発表をしても、やはり一番生産者に有利な立場でもって同調をせざるを得ないような形になるということが、おそらく先生方の今の疑問に思われたりなんかなさる点じゃないか、こう思っております。森永が十二月に下げようが下げまいが、おれのところだけは十一月二十一日に下げるとかりに言っても——おそらく言っているでしょうが、やはり下がらないですね。そういうことで、偶然の一致でありまして、それが意識的に云々ということにはならない、私はかように考えております。
  124. 芳賀貢

    芳賀委員 今、大野さんが言われた通り、各社の乳価の変更については、各社の足並みがそろった状態では実行不可能なのですね。いみじくもそういうことを言われておるわけです。だから、どうしても歩調を合わせなければいけない。歩調を合わして、値下げの幅についても、実施の時期についても、でこぼこではいかぬ。歩調を合わせなければ実行できないということが基本になって、全国一斉とか、地域においては同額、同時期実施ということになるので、これはやはりどこかで歩調を合わせる努力とか意思の疎通というものがなければ——とにかく背の高さも違うし、足の長さも違えば、歩調を合わせるという意思が働かなければ、これは合わないでしょう。もう長年やっておるからそういうことが麻痺して——歩調を合わせる努力をしておるというその意思の行為が麻痺しているから、いや、何でもないんだということになるんじゃないですか。
  125. 大野勇

    大野参考人 先生が前段にお読みになった通り、歩調を合わせないことをわれわれは主張していたわけです。ですから、みんな、各自各様の経済状態なりなんなりで意見があって、みな適当な発表をしてきたのでしょう。それがやむを得ず同じ形になって現われたということで、歩調を合わせたということにはならないのです。
  126. 芳賀貢

    芳賀委員 これは公取の機関もあるので、どうやるかということは関心に値する点です。  それからもう一つお伺いしたい点は、取引契約ですね、たとえば酪振法に基づく取引契約が行なわれておるところもあるし、行なわれておらないところもある。あるいは交渉の当事者というものが、たとえば農業協同組合を通じての共販事業になる取引契約の場合は、これはその協同組合が組合員である生産者を代表して、組合としてのそういう資格で文書契約ができるということに規定されておるわけです。そういう関係もあるので、先ほどあなたが言われたように、森永乳業については、創業以来、いまだかつて協議によって乳価をきめたことはない。会社創設以来今日まで一貫して、一方的な通告だけでやってきた。これは大野さんの力のしからしめるところで、一面においては実力を認めざるを得ないわけですが、一方的な通告、一方的な取引ということになれば、いわゆる協議して契約するという必要は全然ないわけですね。あなたの先ほどのお話によると、森永乳業の場合には、会社側の一方的な決定、通告、取引、こういうことになるからして、おそらく全国各地において取引契約が文書によって締結されたところはないと思うのですが、そうでしょうか。
  127. 大野勇

    大野参考人 私の記憶しております範囲内におきましては、森永乳業はほとんど全部文書による取引契約をしております。それで一方的ということが多少誤解を招くかもわかりませんが、来月からの牛乳はこういう工合にしたいと思うという通告をして、不平のある場合は向こうから言ってこられまして、それで互いに樽俎折衝してきまるということはやはりあるのです。発動は大体こちらからしております。
  128. 芳賀貢

    芳賀委員 発動というといかにも権威があるようですが、大体のやり方は力関係で押し切っておるというふうに理解したわけですが、そういう点もう少し近代的に改めて、いわゆる生産者会社、製造業者という相互的な対等の立場に立って、話し合いをして、共通の利害の上に立って協議を整えて、そして正常な取引をするというふうに社長の方針を少し改めた方がいいと思うのです。先ほども、少し改めたいというお話がありましたが、そうでないと、これを端的に表現すれば、通告をする、文句のある者は言ってこい、しかしこっちの了承できない場合には、もうお前のところの牛乳は受乳しないぞ、こういうことになりかねないわけですね。生産者は今の段階では非常に力が悪いですからして、各乳業者から乳は要らぬよと言われただけでおじけがついて、対等の話し合いとか交渉はできないというのが現実ですね。だからもう少し生産者立場というものを育成する、力をつけて対等の資格——生産者生産面の責任を持って努力をしてもらう、メーカー側もやはり相手の立場を尊重して、乳業全体の発展のために努力する、こういう相互関係というものが生まれてこなければ、今後においても根本的な問題の解決会社生産者の間においてはできないと思うんですが、その点はいかがですか。
  129. 大野勇

    大野参考人 今、先生の御指摘のありました点は多少あるかもしれませんが、われわれの会社といたしましは、生産者と対等でないのです。生産者と一体だと思ってやってきたのです。それですから、あるいはその点が近代的でないとおっしゃれば、近代的でないのです。従って従来でも、できるだけ利益があれば必ず一定のパーセントを還元しております。ですから、生産者はわれわれのかたきでも敵対行為をするものでもない。両方ともに一体となって進むべきものだというので株も公開しておりますし、実際上の仕事もそういう主義に立ってやってきました。従って最善の努力をして、生産者の満足のいくように努めてきたと私自身は思っております。
  130. 芳賀貢

    芳賀委員 問題は、日本の酪農の発展の経過を見ても、時の政府というのは全く無能であって、無為無策であったということはあなたも認めておると思うのです。だから今までの歴史的な経過の中では、やはり発展の過程で乳業者が日本の酪農を推進してきたということは、これは否定できないわけです。ですが、そういう経過の中で、生産者と製造業者というものの関係が従属的な関係にされておる点はあると思うのです。だから、たとえば地方において酪農組合とか、そういう乳業の組合があっても、これが会社の従属的な地位に置かれており、全く御用化しておるわけです。そういう状態での一体化というのはこれは好ましくないわけです。だから会社生産者が従属しておる、生産者団体が御用化しておるというこの形を会社側においても改めるようにするためには、生産者に力を与えるという、そういう育成の努力といいますかも必要だと思うのです。昔ながらの従属関係での一体化というのは、私はあまり感心しないと思うんですけれどもね。  次にお尋ねしたい点は、全部文書契約ということでございますが、この中身の事例はどうなっていますか。たとえば最低でも基本価格が五十二円ということになっておるか、基本価格は全部五十二円以下で、あと奨励金部面がウエートが高いという文書内容になっておるか、この点は記憶にある限り述べていただきたい。
  131. 大野勇

    大野参考人 その点は今はっきりしておりません。しかし価格については、お互いにたしか三カ月くらいごとに問題があれば交渉する、こういうことになっておりまして、基本価格が五十円より安いというものはないと思います。従ってそれ以上の、あるいは市乳のような場合は、専業牧場のような場合は何十円と、こうなっておりますが、その点は自分で直接やっておりませんから、はっきりいたしておりません。契約は全部やって、乳価契約も別に取りかわしている、こういうことに御了承願います。
  132. 芳賀貢

    芳賀委員 私の知っておる範囲では、基本乳価の点についても、五十二円——五十二円というのはいわゆる畜安法に基づく原料乳基準価格ということになっておるわけです。しかし、あなたの会社だけではないかもしれぬが、大野さんの会社の相当の割合は、五十二円以下で基本乳価というものが契約に載せられておって、それ以外のいわゆる奨励金部分というのが非常に多くて、それを合算すれば相当の乳価になる、他社に劣らぬということになっておる、私はそういう資料を実は持っておるわけです。そうなると、先ほど述べられた基本乳価というものは、畜産物価格安定法というものがあって、これは原料乳価については五十二円ということにきめられておるからして、値段については意見を述べないけれども、きまった以上は文句は言わぬというお話であったが、そういうことであれば、文句を言わぬで認めたということになれば、少なくとも契約内容については、原料乳一つの支持価格である五十二円を下るような契約内容であってはいけないと思うんですね。大野さんも私と同じように審議会の一員になっておられるわけですから、これは遺憾にたえない点だと思うんですけれども、いかがでしょう。
  133. 大野勇

    大野参考人 五十二円というのは工場着の値段ですから、それはちゃんと明文がありますから、運賃を引いた五十円なら五十円ということに絶対に守っていると思います。それで基準乳価でなければならぬということの問題点は、今回のように期限を切ってない奨励金でも、奨励金だからいつでもはずされるのではないかという懸念が一つ、それから脂肪パーセントのスライドの問題、ですからいかなる場合でもそのスライドの問題がある場所については、一定の金額が脂肪によってスライドしておりますから、生産者がそれによって不利になるということはないようになっております。
  134. 芳賀貢

    芳賀委員 こういう点は農林省の指導の怠慢という点にもあるわけですが、乳製品会長としても、やはり国がきめた法律に基づいて、それが批判の余地はあるとしても、そういう一つの基準的な価格というものが定められておるという場合には、高い市乳はもちろんですが、非常に不当に安く扱われておる原料乳等についても、いわゆる契約の最低の基礎というものは五十二円なら五十二円というものが基礎になって、だんだん底値を積み上げて、それを基本価格にするということにしないと、いろいろ集めてこれだけになればいいじゃないかということは、これはやはり正常な取引ではないと思うのです。  それで公取委にお尋ねしますが、取引のいろんな形がありますが、たとえば生産者と製造業者というものが取引関係で対等の地位に置かれなくて、たとえば会社の買手としての優位性というものを不当に利用して相手に対して取引をしいるというやり方は、これはやはり厳密にいえば独禁法上の違反行為になると私は判断しておるのですが、具体的な事例をあげなければ明快な答弁はできないとしても、そのような行為というものはやはり違反行為だと思いますが、あなたはどう考えますか。
  135. 小沼亨

    ○小沼政府委員 ただいま仰せの通り、具体的な事例を見なければわかりませんが、独禁法の中に不公正な取引方法としまして、優越せる地位を乱用して相手方と取引することは公正な取引じゃないという規定がございますので、場合によってはそういうものに該当する場合があると思います。
  136. 芳賀貢

    芳賀委員 それで、牛乳取引の場合においても、今私の言ったような事実があるということを指摘して公取委に報告をした、あるいは公取委自身がこのような事実があると思量して調査活動を開始する、こういうことは当然公取の機能としてあるわけですね。そういう点について報告とか指摘があったかどうか知らぬが、今当委員会において午前中からいろいろ質疑が行なわれる過程において、あなたも専門家ですから、会社側の買手としての優位性というものを不当に利用して、そうして生産者である売手側に不公平あるいは不利益な取引をしいる、こういう事実があった場合は、これはやはり問題として指摘して、これを正常なものに改めさせる、姿勢を正すという努力というものは、これは公取委本来の使命であると思うのです。今後はそういう点については十分意を注いでもらいたいと思うわけです。  次に蓮池さんにお尋ねしますが、二十億円の買い上げ発動する場合、政府がきめた数字かあるいは事業団の業務の中できめた数字かわかりませんが、とにかく四大メーカーと中小乳業を区分して、そうして十九億六千万円の買い上げの金額割当はしておるわけですが、これは畜産局でそういう数字を策定してメーカー側の了承を得たのか、事業団として、試算をしてそういう方針を立てたのか、その点はいかがですか。
  137. 蓮池公咲

    蓮池参考人 買い上げ数量は幾らになるかということについては、政府、業界、私ども加わって検討いたしまして、大体のねらいをつけて結論を出したわけでございます。そしてただいまのお話の中小と大メーカーとの金額の割り振りということについては、私全然存じません。そういうことはないと思います。
  138. 芳賀貢

    芳賀委員 事業団というものは大したものじゃないから、そういう大事な場には参加をしない。ところがあなたは先ほども、ときどき加わりましていかにも重要な方針決定に加わったようなことを言われるから私が聞いたのであって、いいですか、雪印が六億円、明治五億、森永が四億、協乳一億、中小メーカー合わせて三億六千万円、これで十九億六千万円になるのですよ。金額目標はきまって、これは発表になっておるのですよ。そういう大事なことがわからぬということであれば、あなたこれから事業団の運営の責任者なんていうわけにいかぬのじゃないですか。ほんとうにこれを知らないのですか。
  139. 蓮池公咲

    蓮池参考人 かりにそういう数字がお互いに話し合いになっておりましても、私ども現状でやるのでありますから、そういう数字にとらわれてここはこれ以上買わないとか、ここはこれまで買うとかいうことは全然考えておりません。またそういうことをすべきじゃないと思います。
  140. 芳賀貢

    芳賀委員 今のは間違いないですか。あとで記憶違いだとか失念しましたなんていうことはないですか。
  141. 蓮池公咲

    蓮池参考人 ありません。
  142. 芳賀貢

    芳賀委員 一体こういう数字が出たということは、私は何も不可解だとか、そうしてはならぬということではないと思うのです。全国どこからでも持ってくれば買ってやるというような事業団の運営はできないでしょう。だから、この過剰在庫が原因になって乳価を下げなければならぬということであれば、この過剰分をすみやかに吸収して買い上げる措置を講じて固定させる、流通市場から隔絶するということによって乳価を上げようという政府のねらいなわけですから、それには一番大きな生産者との間における取引関係を持っておる四大メーカー、あるいは中小のメーカーに対して、一体どの程度過剰な在庫があるかということを十分調査して把握して、そうしてその数字をトータルしたものが大体金額にすれば二十億円ぐらいは買い上げなければいけないということになるので、その分析ということになると、四大メーカーは大体金額にしてはこれこれということにならなければ、この買い上げの業務とか、メーカー側事業団の買い上げに応ずるという態勢はできないのであって、そんなことをきめるのはおかしいなんて理事長が言っておるから、まだ一向に買い上げも行なわれていないでしょう。これはあなたおかしいじゃないですか。給料をもらわないで奉仕的にやっておるならまだ話がわかるが、やっぱり事業団は、あなたの労働に報いる俸給がきめられて一生懸命がんばって下さいということになっておるにもかかわらず、そんな目標をきめるのはおかしい、だれが持ってきても買うのがあたりまえだというようなことは、これは理事長としての発言としては当を得ないと思う。こういう点は、畜産局長も監督の立場におるならよく確認しておかないといかぬですよ。そういう内容を明らかにして、そうしてこの買い入れは一体いつまでに締め切るのですか。のべつまくなしに二十億になるまで買っては意味ないですよ。二月一ぱいで打ち切るか、あるいは三月中旬までで締め切るのか、そういう買い上げの終期は、あなたはどこに考えておるのですか。
  143. 蓮池公咲

    蓮池参考人 お答え申し上げます。  ただいま数字について私がそういうものは承知していないと申しました。まだきまってそういう数字政府から示達を受けたこともありません。私どもがそういう数字をきめて政府に出したこともありません。ただ在庫数量の見通しについては、各段階、各メーカーに見込みを出してもらってできるのでありますから、大体の数量は見当がつく、そうして御相談にも加わる、こういうことを申しあげたのであります。それから買上げ終期をどうするかという問題は、ただいまのところ終期をきめておりません。大体の事態が終息をする見通しまできめられた事業計画に基づく仕事を進めていく、こういう考えでおります。
  144. 芳賀貢

    芳賀委員 それじゃことし一ぱいかかって二十億にならぬと来年までそれを延期して買い入れする。ただばく然と買って持っておれば満足するというものじゃないですからね。子供のおもちゃを買うようなものじゃないですよ。目標をきめた、その目的を達するために一定の数量を早く吸収して、これを隔絶しなければ、買い上げ発動の効果は何の場合でもできないのですよ。乳製品の場合であってもそうです。農産物の場合でもそうですよ。一定の期間内に一定の数量を凍結する、そういう作業というものに、いわゆる事業団の買い上げとか、保管とか、そういう目的があるわけなんです。それがいつ終期になるかわからぬということになれば、メーカー側はそんなものは大したきき目はない、いつでも余ったら売れば買うだろうということになってしまうのです。これはあなただけ責めてもしようがないが、監督の農林大臣がこういう全くでらめなことを言って、国民に対しては二十億円の緊急買い上げ措置を講じて、そうして乳価を回復させますというようなことを言っておりながら、中身というのは全く——いつ周期がくるかわからぬようなことでやっておるから、現在においてもまだ全然実行に移されていない、こういうことになるわけです。  それから乳業の何とか協会というものにまかして、規格をきめてもらわなければ買い上げできないというのはおかしいじゃないですか。乳製品等の農林物資についてはちゃんと農林規格というのがきまっているのです。その規格を適用して買い上げすることは直ちにできることなんです。それができないとすれば、事業団が法律に基づいてできたときに、こういうことは予見されるわけだから、買い入れする場合の製品規格等についてはどうすべきかということを、一年前にあらかじめ作業を進めていれば、すぐ間に合うわけです。そういうことが、今ごろまだ、協会に頼まなければわからぬ、事業団でやっては経費がかかるからできないというようなことは全く無責任なことだと思うのです。とにかく買い入れを指定したメーカー製品というものはでたらめなものではないと思うのです。常に市販されておる製品を買い入れるんだから、買い入れ製品だから粗悪なものをつくるというような良心のないメーカーはないと思うのです。そういうものがあれば、そういうものは指摘して、当然社会的な制裁を信用の上で加えることができると思うのです。ですから、買い上げを早く全面的にやることを進めなければいかぬと思うが、どうですか。
  145. 蓮池公咲

    蓮池参考人 買い入れをすみやかに進めることについては大体見通しがついて、近く実施に入ります。  それから、多少誤解があったようでありますが、乳業技術協会での今までの検査の内容は農林水産規格であります。その農林水産規格にありますものと食品衛生法に基づく条件を満たすものと、これが両々相待ちまして検査の内容になるわけであります。そういう検査になりますと、衛生検査の角度もあれば、物理検査の角度もあれば、その他の検査の角度もありますので、やはり専門家の手にかからなければならないわけであります。従来乳業技術協会は任意機関で、業界の求めのあるものについて小規模にやっておいでになったのでありますから、これだけの大量を相手にして検査機関になってもらうには、やはりお互いに相談して準備態勢を固めなければならない過程があったわけでございます。さように御了承願います。
  146. 芳賀貢

    芳賀委員 そういう問題があれば、あなたの一存でいかなければ畜産局長に話をするとか農林大臣にじきじき話をするとかして、こういうところに行政上の手落ちがあるから早くこれを是正しなさい、これくらいのことはあなた言えるでしょう。どうですか。
  147. 蓮池公咲

    蓮池参考人 その点については、いろいろお役所にも御相談をしてお役所の力もかり、乳業技術協会の設立関係者にも御協力をいただいて結論に到達したわけであります。
  148. 芳賀貢

    芳賀委員 お役所なんというばか丁寧なことを言わぬで、もう少し権威を持って——あなたも昔畜産局長までやった人物じゃないですか。畜産局長までやった人物がお役所なんて徳川時代のようなことを言っている。それでは仕事ができぬと思うのです。もう少し自信と権威を持ってやってもらいたい。  それから、もう少し大野さんにお尋ねいたします。大体二十億の買い上げ発動に対して、二月一ぱいとか三月のいつということを区切りにした場合、その買い入れに応ずるだけの手持ち在庫が一体ありやなしや、この点はいかがですか。
  149. 大野勇

    大野参考人 先ほど申し上げました通り、一定の時限における生産過剰を一挙にとってしまう、こういうのがわれわれの希望です。従って、前回のたな上げのときに皆さん方に不測の誤解を招いたというようなこと、ないものをあると言ったり、あるものを出さないといったようなことで、それ見たかというようなことは、たとい買い上げのために世の中の相場が上がって高くなろうとも、損でも得でもこれだけは絶対に実行する、こういうことになっておりますが、ただ検査証や何かの関係で、六十日の期限と検査証をそろえて出さなければならぬので、多少時間がおくれるでしょうが、少なくとも旬日のうちにはともかく自分が約束したものは責任を持ってそろえて出す、こういう工合にわれわれ業者は考えております。
  150. 芳賀貢

    芳賀委員 これはあまり無理をしなくてもよいと思うのです。正常在庫というものがなければ今度はかえって経済を乱すようなことになるから、完全にデッド・ストックということで認められた分については、今言われた通り短期間に買い上げを凍結ということにしなければ意味がないことは私も同感です。しかし、一たん約束した世間体もあるから、足りないけれども無理をしてかき集めて、市場にはあまり出さぬようにして義理を果たすとか面目を果たすということまでされなくてもよいのであって、現段階ではそれほどやってもらわなくてもよい。あるいは対象にならぬバター等買い上げをすべきであるというような建設的な態度に出られた方がいいのではないかと私は考えるわけです。  次にお尋ねしたい点は、先ほど根岸参考人吉田参考人からもお話がありましたが、今度の全国的な乳価の紛争については、酪振法の二十条の規定に基づいて知事に対する紛争のあっせんの申請が相当の地域においてされておるわけです。今の酪振法知事の権限はきめ手になるほど力があるとは考えておりませんが、とにかく全国的に法を根拠にした正しいあっせん調停という動きがあるわけでございますから、この申請の出た地域においては、相手方といわれるあなた方の会社が当然そのあっせんに応ずる、こういうことに出られると思いますが、その方針はいかがですか。
  151. 大野勇

    大野参考人 今のお話は、けさ一番最初にお話し申し上げました通り、会社々々によってすでに解決してしまっておる面もあるわけです。たとえば山梨県なら山梨県が問題だというと、山梨県のある組合とある会社の問題だ、こういうようなことになっておりまして、全県的に云々というのはきわめて少ない。私のところの例を申し上げますと、大体みな契約書を締結した。締結していないのも多少ありますけれども。従って、その組合なり代理者とその会社と御相談を願うという形に——そういうふうなことがあれば、法治国の国民ですから、法律には従うつもりであります。
  152. 芳賀貢

    芳賀委員 その点はわかりました。その場合、申請して知事の調停あっせんに入るということになれば、申請の理由なり根拠は、会社側が一方的に一円とかあるいは三円の値下げ通告をしたことに対しては同意できない、それで権限に基づいてあっせんしてもらいたいということになるから、そうなれば、これらの問題は、知事の職権あっせんの期間中は乳代の清算というものは当然仮清算的なものでずっと結論が出るまでの間は移行していくということに常識的に考えてもなるわけですが、この点のお考えを、聞くまでもないことだけれども、念のために聞かせてもらいたい。
  153. 大野勇

    大野参考人 それは聞いてもらわなければ困るんです。こちらはもうすでに御通知申し上げて御了解を得たと思っておりますから、知事の裁定なり何なり出て、その場でいろいろな結論が出ますればその結論に従いますが、それまではやはりこちらの考えの通りにさせていただく、こういうふうに思っております。
  154. 芳賀貢

    芳賀委員 私の言っておりますのは、たとえばあなたの会社生産者側が文書契約を行なって取引してきた、それが十二月一日から会社側の申し出によって一升三円なら三円の引き下げに応じた、こういう件については、これは何もあっせんの申請をする必要もないわけです。これは無理じいされたとしても、一応納得した以上は一つ取引ですから、やはり対象にならないわけですよ。ただ会社側の値下げに対して了承することができない。ですから一方的に値下げした乳代の支払いについては、これを正当な清算払いとしては受け取れない、そういう紛争が今日まで続いている地域が相当あるわけです。ですからこれはメーカー生産者の当事者間では解決がつかないから、酪振法規定に基づいて、まず第一段階としては知事にそのあっせんの申請をするということになれば、会社側はこれはもう一方的に値下げして清算したんだという主張をしても、生産者側は一方的な通告ではそういう取引の変更には応ずることができないという状態のままで、これがあっせん調停に持ち込まれたということになれば、この結論が出るまでの間というものはやはり仮清算であるということで移行していくというのは当然だと思うのですが、その点どうなんですか。
  155. 大野勇

    大野参考人 その点は見解なり法律解釈の相違になると思っております。奨励金の場合は一方的に一定の期間をもって御通告申し上げただけで十分だということに考えられておりますから、その上の機関でそういう通告は無効なりという結論に達すれば、これはあらためて御相談申し上げる、こういう考えでおります。
  156. 芳賀貢

    芳賀委員 今まで酪振法に基づく紛争の調停、あっせんも、ちゃんとした結論の出た事例というものはあまりないわけです。問題が二県以上にまたがるというような場合には、その県の区域だけでは解決ができない問題もあるので、農林大臣の勧告の発動であるとか、あるいは酪振法に基づく中央の牛乳調整委員会、これらの委員会がこれを取り上げる、こういう上の段階の処理方法もあるわけですから、そこまでいって問題がこうなったという事例は——酪振法は昭和二十九年にできた法律ですから、そういう事例はないのです。今度は全国生産者が相当意欲的にこれでやってみるということで出したわけですから、そう関係都道府県の知事もうやむやにするというわけにはいかないと思うのですよ。政府としてもこれを傍観するわけにはいかないのですから、これは相当今までと違った形で取り上げられてくると思うのです。だから仮払いであるか、そうでないかということはもちろん法的判断によることですけれども、少なくとも常識的に考えれば、持ち込まれた案件については、結論が出るまでの間はやはり仮清算的なものである。犯罪だって最終判決が下らなければ罪人だということがわからぬのですからね。そういうことになるから一つメーカー側においても心得ていただきたいということを、私この際申し上げておきます。  それから、大野さんだけに集中してちょっと迷惑かもしれぬが、大体あなただけはっきりすれば問題の解決ができるのですから、そういうことでもう少しお話ししたいと思いますが、たとえば酪農法に基づいて牛乳の共販事業というものを農協が主体になってやっておる。これは相当拡大されておるわけです。北海道においては、先ほども触れました通り農協の経済連、まあ北連ですが、北連が中心になって北海道内の生乳の一元集荷というものを行なって、そしてそれをあなたの会社であるとか雪印とか明治とか、そういう方に協議の上原料の分配を行なっているわけですから、北海道においては一個の会社だけが単独行動というものを起こすわけにいかないわけです。そういう一つの特色があるわけですから、そうなると会社としては、今後やはり共販というものを相当重視して、生産者団体どの間において最も適正な牛乳取引をやるという慣行というものはぜひ確立すべき点だと思うのです。そういうことになれば、生産者会社間の個々の取引とか、特に裏取引なんというものはしなくても、表街道だけで正常取引ができるということになるわけですが、私の承知している範囲では、今回の値下げについても、特に関東の地域においては、表玄関では三円とか五円の値下げをしておるが、今後生乳の会社がそれを一定量集荷しなければならぬ必要上、先ほど根岸さんが言われた通り、五円の値下げ分については二円五十銭で折り合いたいという動きを示したり、あるいはその陰において値下げ分の全額を裏乳価の形で支払いをしておるという事例もあるわけです。こういうことになれば、有利な条件の地域においては表面は乳価の引き下げが行なわれたけれども裏面においては従来価格と同じような取引が継続されておる、不利益な条件の地帯においては全く一方的に切り捨てをされたままで終わっておるという不平等がだんだん拡大されるわけです。ですからこういう点についても、やはり全国生産者というものを同じ立場に置いて、そうしてまじめな取引をやるということをぜひやってもらわぬと、酪農問題というものは非常に複雑怪奇な点があるわけですから、こういう点については、幸い大野さんが乳製品会長ですから、少し弊風を一掃するということに手腕を示してもらいたいと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  157. 大野勇

    大野参考人 ただいま先生の御指摘のあった裏で乳価を出すということなら初めから値を下げる必要がないのです。ですからどんな業者か知りませんが、われわれの仲間にそういうものがありますれば、同業相戒めて正々堂々たる取引を推進する、こういう工合にいたしたいと思っております。実例がありますれば、われわれにもあるいは誤解があるかもわかりませんが、御趣旨に沿うてやりたい、かように考えております。
  158. 芳賀貢

    芳賀委員 次に自由化の問題にちょっと触れますが、たとえばAA制によってナチュラル・チーズが自由に入っておるわけですね。先ほどのあなたの御意見でも、自由化による乳製品については、これはメーカーに一手に輸入権を与えて、それを二次加工とか三次加工して、そうして国産価格との調整をはかるようにしてもらいたいというようなお話がありましたが、これをもう少し具体的に述べてみてもらいたい。
  159. 大野勇

    大野参考人 これはイギリスでも八十円くらいの市乳用の乳価を払っている。イギリスがニュージーランドから輸入したバターと同じ値段でバターを売っているわけです。そうしてイギリスの余剰牛乳でつくった粉ミルクは南洋に輸出されているわけです。それは先ほど申し上げました通り、九〇%とか、九五%とか、なるべく余剰牛乳の量を少なくして、全部市乳で売ってしまう。季節的、地方的にできる最小限度のものを加工する。その場合に、市乳用の原料牛乳を高く見積もって市乳を高く売らせることによって外国との競争にたえさしているというのが、オランダ、デンマーク、オーストラリア、ニュージーランドを除いた世界じゅう大体どこの国でもやっていることであります。従って、万一ここで自由化がくるという場合に、それに対応するためには、今のような市乳価格とバターの価格をプールすることによって市乳を高く売って、バターを百二十円で売るんだということによってやるか、それとも日本のバターが三百円で向こうのバターが百五十円だとすれば、同じ量を組み合わせて二百二十五円でバターを売らせる、こういうことにしなければ原料乳代でも向こうのバター代にならないのですから、加工賃だとか流通過程を議論するに当たらないのです。先ほど申し上げました通り、五十円としても三百五十円かかってしまう。どんな神様がやっても、三百五十円の牛乳を使って百二十円のバターができるわけがないのですから、これは不可能かもしれませんが、バターのメーカーにはバターを入れさして、値段をプールさして、安いバターを国民に供給する、こういうことにすれば、酪農民を阻外しないで、しかも日本の乳製品事業を発展させることができる、このどちらかの方法にだんだん向かっていかなければならないのじゃないかということを私の私見として考えているわけであります。
  160. 芳賀貢

    芳賀委員 それを端的に言えば、日本においては、乳製品事業というものは、国内生産原料乳に依存しないで、国内の分はほとんど市乳に使って、乳製品については、安い外国の一次製品を入れて、そうして加工して国民に提供した方がいい、こういう理論に当然なるわけですね。そうなると、国内における酪農とか畜産の様態というものが全く一変してくるわけですね。市乳重点である。乳製品原料乳というのは切り捨てごめんだということになれば、これは非常に様相が一変すると思うのです。しかも、それは単にあなたが述べられただけでなくて、私の判断では、大メーカーではやはりそういうことに将来の展望を求めて、そうして設備改善とかあるいはまた企業化という方面に相当熱意を燃やしておるように私は見ておるのですが、これは判断の間違いですか。
  161. 大野勇

    大野参考人 ただいまのお話は私どもでなくて、これは諸先生方と日本の政府というものが農業機構改善に対してどういう考えを持たなければならぬという根本をきめて、そうして日本酪農をどうして擁護しなければならぬということであれば、永久に乳製品自由化できない。この話を初めからきめないで、それで中途でふらふら行ってあとでひっくり返るということになると、これは酪農業者にとっても大へんな問題になるのですから、これは今私の議論できる筋合いでもありませんし、またそういうことを議論しようとも思っておりません。万一そういうふうに自由化というものがきて、しかも日本の酪農を衰微させないでこれをやっていくということには、今申し上げた二つの方法のうち一つきりしかない。生産コストにおいては、二十八円の牛乳と、五十二円でも安くてしようがないと言っている日本の乳製品はこれをどう突き合わせるか、現実の問題を解決しなければ、政策なり国の方針というものは宙に浮いたものになる。これはどなたがお考えになっても、虚心たんかいにこの大問題と一番先に取り組まないと大へんな問題になるのじゃないかということを考えておりますが、農林大臣は貿易は自由化しないと言うからこれは大丈夫だろうと私は安心しているわけです。
  162. 芳賀貢

    芳賀委員 今の政府なんか当てにしたらえらいことになる。砂糖にしても、自由化しませんと言って、豹変して、今度は四月からやるとか九月からやるということになっている。乳製品だって、あなた自身は信用はしていないと思うが、結局自由化反対であれば、やはり生産者の側に立って、これはあくまでも国の政策として、すべきでないという、そういう明確な態度を打ち出すべきであって、畜産局なんて、そういうメーカーの出先みたいなものじゃありませんか。そういうものにああ言われたからといって別に驚いてもいないのですよ。あなた方が確固たるかまえで、日本においては畜産の発展上自由化をすべきでない、こういう態勢でメーカー生産者一体になって固まれば、政府といえどもなかなかこれはできないわけなんですよ。だからわれわれはもちろんこれは反対の立場ですが、そういうことです。  最後にお尋ねしたい点は、先ほどの大野さんの要するに大野理論ですね、生産調整をする場合は、製造段階で調整するとを、そういう行政的な措置とかを加えないで、えさを通じて、牛に対するえさの給養の手かげんによって、牛から出る乳をよけい出さしたり、あるいは少なく出させるというかげんをすれば、これで自然に調整ができる。これはやはり自由経済のもとにおける一つの理論と言ってはちょっと大げさかもしれぬが、大野理論としてそれでずっと一貫してやられた信念的な点は一つ方法論かなとわれわれは考えたのだが、ただえさをかげんして、過剰傾向の場合には牛にえさを少し与えて自然に乳量が減るということになれば、作為的に乳量を減らしたその分は、これは当然生産者の損失ですね。マイナスということになって、会社には全然損失が及ばぬということになるわけですね、ただ、大野理論というものは全く自由経済の典型的なものであって、すべてこれは生産者に押しつける、しわ寄せさせる、こういうことに経済学的にはなると思うのです。これはやはり一つ方法論ではあるが、考え直していただかねばならぬと思うのですね。同じ会社でも雪印等は、そういう牛小屋における調整ということより一歩進んで、製品が流通過程において過剰傾向を来たして、それが乳価とか乳製品価格に悪影響を与える場合は、やはり製品段階、流通段階においてこれを行政的、制度的に調整すべきであるという意見が、いわゆる雪印の佐藤理論か瀬尾理論か知らぬが、同じ大メーカーの中においても、そういうふうに理論が相違しておるわけです。いずれをとるかということは問題ですが、私がここで言っておきたいことは、生産者だけに責任を転嫁して、余ったときはえさを少しやればいいじゃないかということだけでやられては、これは全く原始的な抑圧ということになると思うので、この理論は修正しないというのであれば別ですが、やはり他の方法等についても十分研究されておると思いますが、不十分であるが、たとえば畜産物価格安定法が制度化されたとか、あるいはえさについても現行制度がありますが、これらの制度の欠陥というものを指摘して、それを是正することによって、生産者だけにそのしわ寄せをして生産者の所得が激減するような措置はとらぬようにすべきであるというふうに私は指摘しておきたいわけです。  それからもう一点、これは三月になれば畜産物価格審議会が開かれますが、あなたは先ほど価格の問題には自分意見は述べない、これからも述べる考えはない、算定の方式等については意見は述べるけれども価格については触れないということを言われたが、これはちょっとおかしいと思うのです。せっかく審議会委員に選ばれて、大事な価格問題に触れないでおるということは、あと価格問題ができたときに、いや、わしは審議会に行ったって別に価格問題には意見を出さなかったから、こういう価格については連帯の責任がない、勝手にやってもいいということの一つの論拠として審議会委員になって審議会出席しても、大事な乳価とか乳製品とか畜肉等の価格問題に対して意見を述べないという態度はおかしいと思うのです。これも答弁は要りません。私としてこれは変だと思ったからあなたに指摘だけしておくわけです。  まだいろいろありますが、大野さんとはいろいろな機会がありますから、そのときに十分意見を戦わすことにして、きょうはこの程度にとどめます。
  163. 大野勇

    大野参考人 ちょっと誤解があるようですが、私の申し上げる意味は、最終的の値段が七十円でなければならぬときめて、それに理屈をつけるようなことをすると、高くきまっても安くきまってもお互いに議論がやぼになるのだ、どういう物価係数に何をかけた、かにをかけたということにしておけば、その値段が高く出ようが安く出ようが、その方式をいつでも尊重する、こういうことにしないと、いつでも最終的な値段本位の議論をしておるというと大がいまとまらない。ですから大筋のこれこれの物価係数に何をかけていったものがこれだということが、皆さんの御了解を得られれば、それに出た値段を尊重する、こういうので、価格審議会に出て値段をかまわないというか、うっかりやると最近は最終的の値段をきめて、それで先の方に理屈をつけるというようなことには私自身として反対だ、こういうことを申し上げたわけです。
  164. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見を聞かしていただき、まことにありがとうございました。  次会は明七日午前十時三十分より開会することとし、これにて散会いたします。    午後五時五分散会