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田中国務大臣 先ほども申し上げましたように、
預金の
金利よりも
物価が上がるということは
考えておりません。これは三十八年度の年度末を見ていただいても、そういうことはないというふうに
考えておるわけでございます。また、それはそうあってはならないということで、お互いに真剣にこの問題とは取り組まなければいかぬということで、
政府も鋭意
対策を急いでおるわけでございます。
それから
物価が上がるということでございますが、これは
総理が答弁をされておりますように、
国民消費の
内容もよくなり、また
経済成長率がどんどんとよくなる場合には、
物価も幾らかずつでも上がるということは避けられない現象である。また、
日本自体だけの問題ではなく、ドイツは今年度の
経済成長率三・五%ないし四%と見ておりますが、
物価は六%くらい上がるだろうと見ておるようであります。
賃金も四・五%くらい上がらざるを得ないだろう、こういうことをいわれておるのでありまして、最も
健全財政であるといわれた
西ドイツにおいてさえもこのような
状態でございますし、EECに加盟できなかったイギリスの
現状も、フランス、イタリア、その他
主要工業国の内情も、比べてみると、
日本と同じような
傾向にあることは事実でございます。しかし、
経済の
原則はそうなんだからというような
考えでこれを断定してまいるわけにはいかないのでありまして、
物価の安定ということに対しては、特にいろいろな
施策をとっていきつつあるわけでございます。
物価には二つありまして、
一つは
卸売り物価で、
卸売り物価はもう申すまでもなく、戦後最低ということでありましたが、ことしは
経済成長率も相当上がってくるということで、まあ横ばいから多少上がりぎみであるというふうに
考えることが正しいと思います。三十八年度
予算では
経済成長率名日八・一%、
実質六・一%と見たわけでございます。現在の
経済指数をとって
考えてまいりますと、おおむね
所得倍増の
年率七・二%くらいな
実質成長率になるのではないかというふうに推算をせられるわけでございます。七・二%になるということになりますと、どうも
物価も少し上がるというような懸念もありますので、これらに対して
卸売り物価というものをどの
程度で押えるのかということに対しては、いま
検討中でございます。
問題は、
消費物価であります。
消費物価は、これは質の
内容改善というのも非常にございます。戦後十八年間を見ますと、七・五坪というのが一番初めの
公営住宅法に基づく
基準坪数でございましたが、これが十二・五坪になり、十五坪になり、十七・五坪になり、二十二・五坪というように、順次
基準を上げておるわけでございます。そういう
意味において、しかも、木造のものが
不燃化にだんだん切りかえられていき、
高層住宅にも切りかえられてまいりつつありますから、まあ
消費の質というものもよくなってきたということは言い得ると思います。また、われわれが
日常生活でもって、一カ月に一ぺんしか牛肉を食わなかったものを、一週間に一ぺんずつ食おうということにもなっておりますし、電気も十五坪で三灯、しかも三十ワット三灯で九十ワットであったものが、客間には百ワットつけよう、こういうことにもなりまして、玄関にも御不浄にもということになりまして、
電力消費量も非常に上がっておる。水も御
承知の
通り、今までは
水洗便所でなかったものが、一人当たりの水の
使用量は非常に上がっておる。こういうことでございますし、また、三分の一くらいしか
高校進学率がなかったものが、現在六〇%以上の
高校進学率というように、家庭の
負担もふえておる。こういう
意味で
消費物価が年々質において
向上しておりますために、質の
向上に沿って
消費物価が上がっておるという事実もございますが、質の
向上よりもより高騰しておる面があるではないかというのが御説だと思う。これは
生鮮食料品、特に
大都市における
生鮮食料品が大きく
目標になっておるわけでございますが、その一番の大きな問題は、
流通機構の問題だと思います。でありますから、
政府も、
経済閣僚会議等で御
承知の
通り、
市場法のあり方が一体どういうふうになるべきか、また、季節的な
生鮮魚介類というようなものに対して、
長期にこれを保存するように、冷蔵庫をつくったりいろいろな
処置をやっておるわけでございます。
東京などを見ますと、年間六十万人も人がふえてくる。今の
市場法に基づく
市場規模は、おおむね五百万人の
東京都民を対象にしてつくられておるわけでございますが、これが
潜在人口を入れて千百万にもなんなんとしておる。そこに持ってきて、質が非常に変わっておる。もう
一つは、
賃金体系というものがだんだんと合理的になってきて、今まで
でっち小僧であったようなものが、だんだんと大
企業との格差が
解消しつつある。でありますから、
サービス料金等も、内弟子で住み込み三千円、三千五百円といっておったような
パーマネント歴が、少なくとも
週休制にならなければいかぬ、日曜祭日は休みだ、もちろんのことでございますが、そういうような
制度上の問題がだんだんと
合理化され、
内容充実を来たしておりますので、特に
大都市における
消費物価が急激な
値上がりを来たしておるという事実だと思います。これらの問題に対しては、下げられるものに対しては総力をあげて、あらゆる
施策を行なうことによって、
消費者物価の抑制をはかっていこうという方向でおりますので、あなたがいま申されたように、ウナギ登りに、
天井知らずに
消費者物価が上がっていくのだというようなことにはしないように、いま鋭意
検討をいたしておるわけでございます。