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山内委員 大臣がおいでになるうちに、二、三、
大臣にお尋ねしておきたいと思います。
実は、前の
委員会のときに強く指摘しておいた点でありますが、今度は二百二十九名の増員でありまして、これは単なる
業務量の増加、三十二年度に対して三割の
業務量増加に対し、一割二分の増員ということで、これは問題がないわけです。特に私
どもは、二百二十九名の増員でもまだ足りないという
考え方はありますけれ
ども、これは機械化、あるいは機動力を持たせて、
業務の能率を上げて補いたいという当局の御説明ですから、それはそうまかしておきます。ただ、最近の労働災害が非常に多い。実質的に減っておらない。これは労働
大臣官房統計調査部でお調べになった「労働経済の分析」なんですが、この中を見ましても、三十六年度では四十八万一千六百八十六件の労働災害が出て、そのために死亡した人が六千七百十二人もある、こういう
資料が出されておるわけなんです。こういう労働災害が発生しまして、
あと保険金を払うとか、失業者に失業保険をやるとか、こういうことは、私は大した問題でないと思う。労働基準局というものが、国の機関の中に直結して置いてある
意味は、この災害をどうして予防するか、防止するかという点にある。単なる保険料を徴収して、保険金を払うのであったら、これは
地方自治体の公共団体にこの
業務を移管した方がいいという
考え方を私は持っております。非常に
格好な、
地方公共団体に移管するにはいい
仕事だと思っておるのです。ただそれだけを
考えればですよ。しかし、労働者を災害から守る。そうすると、経営者というものは、経費を詰めて、安全な作業のできないような工場をつくって、そして顧みないから、国の力でもってバック・アップをして、そういうものを直して、労働者の災害を防ごうというので、労働基準局というものを
政府の機関にし、それに付随したこういう保険の
業務をやっておるわけなんです。もし労災というものが、予防的な
措置、機能、働きができないのであったら、私はもう労働行政というものの大半は要らないものだと思う。これはほんとうは厚生省と一緒になってもいいのです。最近は、統計に現われるばかりでなく、実はこの間も一例として申し上げたのですが、大阪劇場でああいう災害が出て、踊り子さんが四十何名かけがをした。あわてて今度は、そういう劇場ですから、どういう通知を出されたか知りませんが、通告一本で気をつけろという通知を出した。ですから、日劇では、それを受け取って二、三日たったら、また事故が起こった。これは軽微な事故ですから、幸い大きくならなかったから、あまり問題にはならなかったとは思いますけれ
ども、この労働基準監督局の監督官というのは、そういう危険な職場にはみずから踏み込んでいって、そしてそういう施設を見て、働く人の環境の整備をやるのが任務なわけです。そういう点で、はたして今の陣容でやれるのかどうか、そういう点で問題になりまして、他の
委員からも
質問が出ておりますけれ
ども、一人の監督官の受け持ち個所が四百も五百も負担がある。これは
あとで事務当局から数字を出していただきたいと思いますけれ
ども、そうすると、一日に一軒ずつ回っても、一年半もかかる。こういうことでは、とてもこの本来の労災防止の
仕事ができないではないか、こういうふうに私
どもは
考えております。
特に、予算書の中から拾ってみますと、これもこの前ちょっと触れたのですが、労働保護官署の方々の身分というものは非常に低い。たとえば労働基準監督官というのは二百六十四名おります。そのうち、六等級が二百二名、七等級が六十一名。別にこれは等級が低いから
仕事ができないというものではなくて、
仕事に誇りを持てばそれはやれるでしょうけれ
ども、労働省のお役人というのは、実はここにたくさんおられると思いますけれ
ども、私は非常に同情しております。建設とか農林とか、そういう
事業を持っていない。こういう
人たちの職場というものは、
仕事に生きがいを感じて、給料は安くてもいいのだ、こういう
仕事に対する誇りを持ってもらうことが一番大事です。ですから、こういう官等級の低い人を監督官ということにしておいても、これは、りっぱな職場へ行って社長に会って、この工場の施設が悪い、これはこういうふうに直しなさい、それくらいの指導監督ができるように、せめて警察の署長くらいの
立場でものが言えるようにしないと、一方的な経営者側の言うなりになってしまい、文書の通知一本でやったって、これは決して直るものじゃない。そういう
意味で、今こういう点の労務災害から労働者をどうして守るかという、労働
大臣にかけられた使命というものは、私は非常に大きいと思う。
業務量で二百二十九人の増員をして、しかも、それはできてしまった失業保険金の支払い、徴収に充てる人間でしょう。そういうことでは、私は労働省設置の
意味がないと思う。
一つこの際、労働
大臣は、幸い党内実力者として非常に力もあり、また長い経歴から見て、労働行政には明るい方なんですから、この際、抜本的にこの点に触れて、ぜひ問題の解決をやっていただきたい。この点についての
大臣の所感を伺いたいと思います。