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1963-05-07 第43回国会 衆議院 地方行政委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年五月七日(火曜日)    午後一時二十七分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 小澤 太郎君 理事 大上  司君    理事 纐纈 彌三君 理事 丹羽喬四郎君    理事 太田 一夫君 理事 阪上安太郎君    理事 二宮 武夫君       宇野 宗佑君    大沢 雄一君       大竹 作摩君    金子 岩三君       亀岡 高夫君    久保田円次君       富田 健治君    三池  信君       成田 知巳君    松井  誠君       山口 鶴男君    門司  亮君  出席国務大臣         国 務 大 臣 篠田 弘作君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      宮地 直邦君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君         自治事務官         (財政局長)  奥野 誠亮君  委員外出席者         専  門  員 越村安太郎君     ————————————— 三月二十七日  委員宇野宗佑辞任につき、その補欠として森  下國雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員森下國雄辞任につき、その補欠として宇  野宗佑君が議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員久保田円次君及び前田義雄辞任につき、  その補欠として渡邊良夫君及び中山マサ君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員中山マサ君及び渡邊良夫辞任につき、そ  の補欠として前田義雄君及び久保田円次君が議  長の指名委員に選任された。 四月二十日  委員中嶋英夫君が退職された。     ————————————— 三月二十七日  地方公務員共済組合法長期給付に関する施行  法の一部を改正する法律案内閣提出第一三四  号)(参議院送付) 同月二十八日  地方財政法の一部を改正する法律案内閣提出  第一五五号) 同日  道路交通法全面改正等に関する請願岡良一  君紹介)(第二七四一号)  同(加藤勘十君紹介)(第二七四二号)  同外二件(勝澤芳雄紹介)(第二七四三号)  同外一件(栗原俊夫紹介)(第二七四四号)  同外二件(永井勝次郎紹介)(第二七四五  号)  同外五件(藤原豊次郎紹介)(第二七四六  号)  同(柳田秀一紹介)(第二七四七号)  同(島上善五郎紹介)(第二八三〇号)  同(中村高一君紹介)(第二八三一号)  同外六十二件(山花秀雄紹介)(第二八三二  号)  同外四件(下平正一紹介)(第二九六四号)  同(坪野米男紹介)(第二九六五号)  同(帆足計紹介)(第二九六六号)  地方公務員共済組合法の一部改正に関する請願  (愛知揆一君紹介)(第二八二八号)  元樺太市町村吏員恩給通算に関する請願(島  本虎三君紹介)(第二八二九号)  旧樺太引揚市町村吏員処遇に関する請願外一  件(伊藤郷一君紹介)(第二九四三号)  同外四件(高田富與紹介)(第二九四四号)  同(八田貞義紹介)(第二九四五号) 四月九日  旧樺太引揚市町村吏員処遇に関する請願(神  田博紹介)(第三一〇二号)  同(椎熊三郎紹介)(第三一〇三号)  同外一件(永井勝次郎紹介)(第三一〇四  号)  同(椎熊三郎紹介)(第三二四七号)  同(佐々木義武紹介)(第三三二一号)  同(椎熊三郎紹介)(第三三二二号)  同外一件(牧野寛索紹介)(第三三八二号)  農地の固定資産評価方式維持に関する請願外十  一件(石田宥全君紹介)(第三一〇五号)  同外三十六件(石田宥全君紹介)(第三三八四  号)  同(栗林三郎紹介)(第三三八五号)  道路交通法全面改正等に関する請願外二件(  河野密紹介)(第三一〇六号)  地方公務員共済組合法の一部改正に関する請願  (島上善五郎君外一名紹介)(第三二四一号)  同(小林信一紹介)(第三二四二号)  同(門司亮紹介)(第三二四三号)  同(横山利秋紹介)(第三二四四号)  同(永田亮一紹介)(第三二四五号)  同(船田中君紹介)(第三二四六号) 同月二十日  旧樺太引揚市町村吏員処遇に関する請願(古  井喜實紹介)(第三四七六号)  同(始関伊平紹介)(第三五八二号)  同外一件(松田鐵藏紹介)(第三六七六号)  道路交通法全面改正等に関する請願(淺沼享  子君紹介)(第三五〇三号)  同(鈴木茂三郎紹介)(第三五〇四号)  地方自治関係団体職員共済制度化に関する請  願(池田清志紹介)(第三五〇五号)  地方公務員共済組合法の一部改正に関する請願  (灘尾弘吉紹介)(第三七〇七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方公務員共済組合法長期給付に関する施行  法の一部を改正する法律案内閣提出第一三四  号)(参議院送付)  地方財政法の一部を改正する法律案内閣提出  第一五五号)  警察に関する件(幼児誘かい事件女子高校生  殺害事件及び警察管理運営の問題)      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  去る三月二十七日参議院より送付されました地方公務員共済組合法長期給付に関する施行法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。
  3. 永田亮一

    永田委員長 提案理由説明を聴取いたします。篠田自治大臣
  4. 篠田弘作

    篠田国務大臣 ただいま議題となりました地方公務員共済組合法長期給付に関する施行法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  すでに御承知のとおり、政府は、恩給制度について、旧外国特殊法人職員期間通算増加恩給子女加給額引き上げ等措置を講ずるため、恩給法等の一部を改正する法律案を今国会に提出し、御審議を願っておりますが、これに伴い、地方公務員退職年金制度においても同様の措置を講ずる必要があります。これがこの法律案を提出した理由であります。  次に、この法律案概要を御説明申し上げます。  第一に、旧南満洲鉄道株式会社等外国特殊法人職員期間について、外国政府職員期間と同様に、地方公務員共済組合組合員期間に通算することとしております。  第二に、公務上の傷病による廃疾年金最低保障額に付加される扶養加給額のうち、組合員退職後に出生した子にかかわるものを、一人につき二千四百円から四千八百円に引き上げることとしております。  第三に、地方職員共済組合公立学校共済組合及び警察共済組合が支給する国家公務員共済組合法規定による長期給付及び国家公務員共済組合法長期給付に関する施行法第三条の規定による給付について、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等の一部を改正する法律案による措置と同様の措置を講ずることとしております。  第四に、新共済制度実施に伴い解散した旧町村職員恩給組合恩給組合条例規定による退隠料等受給者及び恩給組合条例にかかわる年金条例職員であった者について、恩給法改正に準じて同様の措置を講ずることといたしております。  以上のほかに、地方公務員共済組合法長期給付に関する施行法規定について若干の整備を行なうことといたしております。  以上がこの法律案提案理由及びその概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  5. 永田亮一

    永田委員長 以上で説明は終わりました。  本案についての質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  6. 永田亮一

    永田委員長 次に、去る三月二十八日付託になりました地方財政法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。
  7. 永田亮一

    永田委員長 提案理由説明を聴取いたします。篠田自治大臣
  8. 篠田弘作

    篠田国務大臣 ただいま議題となりました地方財政法の一部を改正する法律案提案理由とその要旨を御説明いたします。  ここ数年来、地方財政健全化の諸施策の進展に伴い、地方財政の実態は相当改善されてきておりますが、さらに都道府県市町村間または都道府県住民間の財政秩序適正化を前進させ、地方財政のより健全な運営を確保してまいる必要があるのであります。また、最近の石炭鉱害復旧事業実施に伴う地方公共団体経費負担状況にかんがみ、関係地方公共団体に対しその所要財源の充実をはかる必要があります。  これが本法律案提案理由であります。  次に、本法律案内容要旨につきまして御説明申し上げます。  第一は、さきに都道府県又はその機関が行なう道路、河川、砂防または海岸にかかる大規模かつ広域にわたる土木事業経費市町村負担させることを禁止し、都道府県及び市町村間の財政秩序適正化をはかることとしたのでありますが、さらに昨年十月になされた地方制度調査会の答申の趣旨に沿い、昭和三十九年四月一日から、都道府県が行なう高等学校施設建設に要する経費についても、これを市町村負担させてはならないことといたしたのであります。  また、これとあわせて、都道府県は、その都道府県立高等学校施設建設費について、住民に直接であると間接であるとを問わず、その負担を転嫁してはならないこととして、税外負担金の解消をさらに前進させることといたしたのであります。  第二は、従来から、地方公共団体実施する鉱害復旧事業に要する経費については地方債の発行が認められておりますが、今回新たに鉱害復旧事業団など地方公共団体以外の者が実施する鉱害復旧事業について、臨時石炭鉱害復旧法規定により地方公共団体負担し、支弁しまたは補助するために要する経費についても、当分の間地方債を発行することができることとするとともに、鉱害復旧事業に要する経費に充てるため起こした地方債元利償還費については、昭和三十八年度から地方交付税の額の算定に用いる基準財政需要額基礎に算入することといたしたのであります。  以上が、地方財政法の一部を改正する法律案提案理由及び要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  9. 永田亮一

    永田委員長 以上で説明は終わりました。  本案についての質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  10. 永田亮一

    永田委員長 次に、警察に関する件について調査を進めます。  本日は、特に最近発生した幼児誘かい事件女子高校生殺害事件並びにこれらに関連して、警察管理運営の問題について、議事を進めることにいたします。  この際、事件概要等について、警察当局より説明を求めます。宮地刑事局長
  11. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 最近相次いで発生いたしまして世間の注目を浴びております二つ事件について、すでにこの事件につきましては詳細に報道せられておりますので、事件概要だけを御報告申したいと思っております。  第一は、御承知通り都内台東区に起きました小児の営利誘拐事件でございます。これは去る三月三十一日の午後六時ごろ、台東区入谷の南公園で遊んでおりました四才になる村越吉展ちゃんが行くえ不明になった事件であります。同日八時十五分ごろに、家人から警察に対しまして迷い子としての届け出がございましたが、その当日は発見できず、翌日になりまして、さような状態において行くえ不明になったという状況判断のもとに、それを誘拐事件といたしまして警視庁本庁も応援を出しまして、これを捜査し始めたのでございますが、翌二日ごろになりますと、被害者の宅に電話がかかって参りました。結局この電話の回数は、七日までの間に約百数回の電話がかかっておりますが、われわれがこれらの電話を分析いたしました結果、九回の電話が、これは犯人であると判定をいたしておるのでございます。その最初の三回のものは、場所指定して金を渡せと言ってまいりましたけれども、これはいずれもその現場において、被疑者を発見するに至らない状態でございます。その後四月七日午前一時二十五分ごろになりまして、九回目の電話におきまして、被害者の宅から約三百メートル離れました昭和通りの、品川自動車株式会社のわきに駐車しておる自動車に子供の靴を置くから、そこに母親一人で来て五十万円を置いていけ、こういう連絡がございました。母親がその自動車のところに参って、結果的には母親の感じた位置とは違いましたところではございましたけれども、結局自動車を発見して置いてまいった。捜査員は、直ちに母親と同時に、そのうちにおりました捜査員六名が現場にかけつけましたけれども、現場に到着する時間がおそかった、こういうためにその大事なときに犯人逮捕するに至らなかったという事件でございます。その後被害者方に対する電話はなくなっております。  そこで、去る四月十九日にはこれまでの捜査経過を詳細に発表いたしますとともに、吉展ちゃんを中心とする特徴点を公開いたしたのでございます。また二十五日には犯人被害者宅にかけました電話のうち、一部を収録いたしまして、各報道機関協力を得まして、これを全国的に報道いたしたのであります。この報道の結果は非常な反響を呼びまして、ただいままで私の方で承知いたしておりますのでは、約六千件に近い反響を呼んでおるのであります。これらの中には、相当われわれの方の捜査資料として活用し得るものがございましたので、これらにつきましては、われわれ捜査に関係する者といたしまして、非常に感謝いたしておるのであります。しかしながら、現在まで逮捕に到達いたしませんことはまことに残念でございますけれども、警視庁中心といたしまして、関係府県目下鋭意捜査に努力をいたしておるのであります。  続いて、狭山市におきます女子高校生殺害事件について、その概要を御報告いたします。  埼玉県の狭山市の大字赤坂中田栄作さん四女、川越高校入間川分校一年生の中田善枝さんが、夕方、学校から帰らないという状況が出ました。しかもそのときに、門口に恐喝内容を記載いたしました手紙が差し込まれてあったという状況でございましたので、これが直ちに狭山警察署に通報されました。この状況から警察といたしましては悪質な営利誘拐の疑いをもちまして、極秘裏捜査を開始したわけであります。その恐喝の文面から申しますと、二十万円を五月二日の夜十二時に、指定した場所に置いておけということでございましたので、姉の登美恵さんが指定場所に参りました。同夜、指定の日の午前零時十五分ころ、登美枝さんが立っております位置から約三十メートルくらいのところに犯人があらわれまして、十分間くらいにわたりましてこっちへ持ってこい、こっちへ来てくれ、つまり被害者の姉さんのほうはこちらへ呼び寄せたい、犯人は佐野氏の家から離れた方向に呼び寄せたい、そういう問答に終始いたしまして、もうこれで帰るという犯人ことばとともに、警察官は警笛を鳴らしまして追跡しましたが、ついにこれまた犯人逮捕できなかった。  その後、狭山市一帯の地区を広範囲に警察官及び消防団等協力を得まして捜索しました結果、五月四日の午前十時三十分に、入間川の麦畑の農道付近に埋められております被害者死体を発見いたしたのでございます。死体を解剖いたしました結果は、直接の死因は扼殺である。暴行せられている事実及び死亡の時刻は、およそ食後三時間前後であるということがはっきりわかりましたので、犯行時間はおよそ五月一日の午後四時前後と判定いたしたわけであります。すなわち、すでに脅迫文等をうちに届けたときには殺されておったという状況になったのであります。目下これまた埼玉警察といたしましては、全力をあげて捜査いたしておるところであります。  これらの最も犯人逮捕の好機におきまして、警察捜査の手違いと申しますか、不手ぎわによりまして、これらの犯人を逃がしましたことにつきましては、まことに遺憾に存じておる次第でございます。
  12. 永田亮一

    永田委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。阪上安太郎君。
  13. 阪上安太郎

    阪上委員 ただいま宮地さんから御報告をいただいのでありますが、その最後ことばに、非常に捜査の不手ぎわがあって遺憾である、こういうようなことを言っておられます。  そこでお尋ねいたしたいのは、今回のこの二つ事件につきまして、非常に捜査上の欠陥が暴露された、こういうふうに言われておるのでありますが、そのよってきたる原因は一体どこにあるのか、こういうことだと思うのであります。そこで最初に、こういった誘拐事件に対する捜査方針といったものは確立されておるのかどうか、当局のほうにそういう捜査方針というものがあるならば、それをひとつ示してもらいたい。
  14. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 先年、いわゆる雅樹ちゃん殺しの苦い経験を持っておるのでございます。したがって、われわれのほうとしては、こういう種類の事件につきましての心がまえというようなものにつきましては十分持っておるべきであり、また指導もいたしてあるのでございます。しかしながら、今回のような具体的な逮捕場所というようなことになりますると、これはその事件によって、これまた千差万別になるので、それはその現場における捜査官判断に依存するところが非常に大きいと考えておるのでございます。  なお、御質問によりまして、詳細にお答えをいたしたいと考えます。
  15. 阪上安太郎

    阪上委員 この事件に対する各方面からのいろいろな意見を聞いてみますると、こういった誘拐事件に対する捜査方針としては、まず大きな問題となるのは、誘拐された者の生命の危険を防除するということと、それから犯人逮捕、これをどちらに重点を置いてやるのかというようなことが非常に問題になってくると思うのですが、その点について伺いたい。
  16. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 捜査官といたしましては、事件を解決するために、当然犯人逮捕するとともに、その被害者生命の安全をはかるべきである。この両者を完全に全うすることがわれわれの責任であると存じております。これが、捜査のある一段階におきまして、あるいは犯人逮捕するか、あるいは、その誘拐された者の生命保護するか、こういうものが、ある時期の捜査経過といたしまして、判断に迫られたような場合におきましては、これはわれわれ当然のこととして、生命保護に当たることにつきましては、十分徹底いたしておるところでございます。
  17. 阪上安太郎

    阪上委員 その問題についてのあなたの考え方というもので、大体警察当局のお考え方というものがわかるのですが、これについて徹底した一つのものの考え方逮捕もきわめて大切な要件であるが、やはり生命の危険にさらされているというこの事態に対して、まずそれを徹底して、生命の安全をはかっていく方向への捜査が続けられるべきだ。こういう説があるのですが、警察当局としては、過去の経験等に徴して、その点についてはっきりした態度が持てないのか、やはり言いわけ的な意味において、まあ二者択一が迫られたならば、生命の方が大切だ。だからその方向へいくのだ。これではこの種の悪質な誘拐事件に対してのほんとうの解決の道にはならないと思うのですが、どうでしょう。
  18. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 もしも——これは阪上委員の御趣旨ではないと思いますが、もしも誘拐事件につきまして、生命保護をはかるということについてのみ集中いたしましたならば、ある意味におきましては、これは野放しということになります。われわれはさようなことは許すべきではない。したがって、われわれは両者目的を達する捜査技術を身につけたい。ただし、今回の場合におきましては、そういう高度の技術を要する段階でなく失敗をいたしておるのでございますが、今後ともこういう問題に関して、両者目的を完全に達するのは警察責任だと思っております。ただ、ある捜査段階において生命を助けるかどうかという場合におきましては、これは当然だ、そういうものの判断というものは、これは現場警察官の問題ではなくて、捜査指揮官判断の問題だ。現場に参った者は、当然犯人逮捕するということに集中さるべきものと今回の事件を通じてわれわれは痛感いたしておるところであります。
  19. 阪上安太郎

    阪上委員 私はそれでいいと思う。警察が野放しにしておいて、そうして誘拐された家庭と犯人との連絡のみにまかせるということでは、私はいけないと思う。  そこで、先ほど二者択一の話が出たのでありますけれども、いまこの吉展ちゃん事件についてどういう段階にあるのでありますか。
  20. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 事件の当初は、先ほど御説明申し上げましたように、迷い子であるか誘拐であるかということに関する資料さえ一切なかったのでございます。それを最後に申しましたように、犯人の音声を放送いたしますと、相当多数の方から資料を得、その資料基礎にしてわれわれが捜査をいたしますと、その申し出と違ったような方面にまで捜査の端緒が開けてきておるのであります。しかしながら、まだこれにおいて被疑者を特定する、将来の見通しを述べるような段階にまで捜査が伸びていないことは非常に遺憾でございますが、すでに犯人は五十万円という現金を持って逃走しておるということは当然のことでございますので、単に警視庁の問題とせず、全国的に手配をいたし、全国の警察の網によってこれの発見に努めておるのでございます。
  21. 阪上安太郎

    阪上委員 生命を守ること即逮捕だということでやっておられることについてはわかりますが、しかしその逮捕の一番接点であった、こういった利益誘拐の一番頂点であったといいますか、現金の受け渡しの段階で、あのような失敗をしているということですね、これは何かそこに大きな欠陥があると思います。巷間承るところによりますと、あの五十万円の一万円札のナンバーが全然控えられていなかったということ、これは基礎的な問題だと思います。それから多くの手がかりが失われているのじゃないかという感じが私はするわけなんです。犯人警察当局がおそらく一番しのぎを削らなければならぬところの場所接点、そこで失敗したということは、たいへん大きなミスであって、あなたも言いわけはなさろうとはしないけれども、なぜああいうような不手ぎわ状態に入ったのか、そこのところをひとつ説明して下さい。
  22. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 阪上委員から御指摘通り、われわれも本捜査における最大の不手ぎわと申しますのは、その最も重要なる瞬間に、われわれの配備した警戒網の中にその犯人を捕捉できなかった、おくれた、これはいかなる非難をも警察措置において解決すべき問題だと思っておるのでございます。これは具体的な状態と申しますものより、こういうふうな犯人がいつどこからあらわれてくるかもわからないというような事件につきましては、特に私どもは今回の事件につきまして、現場指揮官というものの部下の掌握能力及び状況判断というものにかかって非常に大きいものがある。われわれこの事件につきましては目下捜査中ではございますが、捜査進展とともにすでにその検討をいたしておりまして、そういういまの結論という点を阪上委員の御指摘通り意味において反省いたしているのでございます。
  23. 阪上安太郎

    阪上委員 次に、やはり捜査上の欠陥について、公安委員長は新聞で談話を発表しておられた際に、この問題に触れられておるのですが、捜査体制の不備ということばを使っておられたように私は記憶しております。捜査体制は必ずしも完ぺきでなかったということだったと思うのでありますが、これは今度のこの事件について初めて気がつかれたのですか、どうなんでしょう。
  24. 篠田弘作

    篠田国務大臣 たとえば帝国ホテル外人殺しであるとか、あるいはにせ札の犯人であるとか、誘拐事件等も、雅樹ちゃんの場合は特別でありますが、その他にもありまして、現在もすでに九件起こっておるのであります。この帝国ホテルの殺人あるいはにせ札等におきまして、相手が巧妙であるといえばそれまででありますけれども、捜査が何らかの欠陥を持っているのじゃないかということは考えておりましたけれども、今度の事件ほど具体的にその欠陥を暴露したということはないのでありまして、今度の事件において私はほんとうに捜査陣の不手ぎわというものを痛感したわけであります。それ以前においては、今回ほど痛感しておらなかったので意見を発表しておりませんでしたが、今度はあまりにもはっきりしておるので意見を発表したわけです。
  25. 阪上安太郎

    阪上委員 体制の不備とか、捜査技能の拙劣といった問題もありますが、そのほかに、特にこの際考えなければならぬことは、捜査科学の研究不足、科学警察研究所でありますか、ああいったものをわれわれやかましく言って、盛んに当局をつついて、早くこれを拡充しなさいということをここ数年来われわれ言ってきたが、ようやく建物が一部更新された程度で、しかも今回のこの事件と関連してああいった科学警察研究所の果たした役割りというものは認めることのできる何ものかがあるのですか。これはどうでしょう。
  26. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 あとの狭山に起きました事件等におきましては、その死後の、推定時間というものがきわめて重要なものになりますから、特に信頼の置ける専門家を現地に派遣をしており、こういう点に心をいたしておりまして、われわれ今後の証拠を中心とします捜査につきましては、科学研究所の役割りがきわめて大きい、われわれもこれの活動に期待をいたしておるところでちりまけ。ただ、いま述べました欠点と申しますのは、きわめて率直に申しまして、そこまでの事態に至らぬ欠点であることもまた私ども遺憾に思っておる次第でございます。
  27. 阪上安太郎

    阪上委員 警察科学の介入する余地のない以前の拙劣な捜査技能がやはり今回の不手ぎわを出したのだ。しかしまた考えようによると、逆に、常日ごろ科学警察研究所がただ単に鑑識ばかりに重点を置いて、それ以外の、ことに誘拐事件というような、人の生命の危険とつながっている問題のきわめて困難な捜査ということについての科学、これがやはり欠けておったんじゃないかと私は思うのです。そういったものが常日ごろ準備されておって、それが司法警察官の末端にまで十二分に教育訓練されておる、こういう態勢がなかったために、篠田さんが言われているように、銭形平次的な科学以前の状態でとりものがやられておるということになったんじゃないかと思うのですが、こういった点について、科学研究所等ではそういった研究はいまはなされていないのですか。
  28. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 ただいまの御質問は主として犯罪心理学の問題だと思っております。これは相当以前から科学警察研究所におきましては専門家において研究されておる。ただこれまた御指摘のとおり、犯罪捜査の実務の点においてどの程度に生かされたかどうかという点の問題でございますが、これらの点につきまして、われわれやはりこの例が立証しておるごとく徹底していないと言わざるを得ないと思います。
  29. 阪上安太郎

    阪上委員 捜査の結果についてはもう十二分に反省されておると思いますので、これ以上私は追及しませんが、次に公開捜査の点について若干質問したいと思うのです。  今回のこの事件、ことに吉展ちゃん事件についての公開捜査、これはどういう経過を経て公開捜査に踏み切られたか、との点の経過説明していただきたい。
  30. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 本件の届け出が迷子ということでございましたから、その段階におきましては、これはいわゆる公開、非公開という問題はなかった。その段階におきましては、一般の迷子ということにおきましてすでに一般には漏れておったと判断いたします。その翌日に至りまして、先ほども申しましたように、たとえば上野公園で父親と行っておって迷子になった、こういう事例と違う。うちのすぐそばの公園において誘拐された、こういう事態であるために誘拐事件である、こういう判断のもとに、これは極秘に捜査をいたしたのでございます。すでに雅樹ちゃんの事件におきまして、警視庁等におきましては苦い経験を持っておりますから、かような場合、報道することによって被害者生命身体に関係あるような場合におきましては、警察捜査当局と各報道機関責任者におきまして、その取り扱いにおいて万全を期する打ち合わせの措置が講ぜられることの道が開かれておる。今回も新たにこの段階からこういうことになりまして、相当長期間にわたりまして、これは報道機関の内部におきましては、われわれの捜査ということを秘密にいたしておりませんが、部外に漏れることにつきましては報道機関協力を得たのでございます。七日に現金の授受がございまして、相当期間——現金が授受される当時というものは生命に最も危険のある時期とわれわれ経験上考えておりまして、この期間を過ぎましてもなお何らの捜査上の手がかりもなく、かつ応答もないという状況になりましたので、その現金の授受から約十日たちましてから捜査経過を発表した次第でございます。
  31. 阪上安太郎

    阪上委員 ざっくばらんに言って、いままでの警察の公開捜査、これはいままでの警察が調べた事実を明らかにして、そして民間の協力を求める、こういうことが公開捜査だと思うのですが、その例を見ましても、にせ札事件にしても何にしても、全部後手に回ってしまっている。公開捜査というものは、警察捜査失敗したあとで出すところのきめ手なんですか、そういうことになっておるのですか。すべて事件が行き詰まり、捜査が行き詰まって、どうにもこうにも手が打てなくなったときに、初めて公開捜査という手が打たれる、こういうことなのですか。
  32. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 私どものほうで、結果的にはそういう御印象を与えることを否定し得ないと思います。われわれのほうで厳格な意味におきます公開捜査と申しておりますのは、犯人が——これは警察段階でございますから、これが犯人であるという断定はできませんけれども、あらゆる角度から見まして犯人に間違いない。しかも再犯を犯して危険性が特にあるというものを、われわれのほうはこれを公開捜査と申します。今回の事件は通称公開捜査と申しておりますけれども、ややそういう意味からは性格を異にいたしまして、いままでの捜査経過を、これは失敗も含めてすなおに警視庁におきましては批判をし、そうして国民に協力を求めたということなのでございまして、やはり結果において警察のみの力においてこれを解決することは困難であるという意味におきましては、御指摘のとおりだと思っております。
  33. 阪上安太郎

    阪上委員 私はそこで聞きたいのは、昭和三十五年の銀座の天地堂ですか、雅樹ちゃん事件、あれでとうとう殺してしまったというようなことになって、新聞協会等でもこの問題を非常に反省されて、そうしていわゆる取りきめというようなものが方針として出てきた、こういうことなのですが、今回のこの事件について、多少この取りきめとの間で何かはっきりしないものがある。公開捜査、いま言われたように、ただモンタージュ写真であるとかあるいはまた犯人とおぼしき者の声の録音であるとか、そんなことばかりが公開捜査ではない。こういうような誘拐事件等につきましては、これは事実上の問題がありますので私もはっきりよう言い切りませんけれども、何もそこまでの何か確証を握るのでなければ——モンタージュ写真とかそういったもので公開捜査協力してもらうという態度でなくして、新聞等に対するところの真相発表等について、あるいはいままで得てきたところの捜査のいろいろな事実、これについていろいろ捜査上問題もあろうけれども、発表すべきものは発表していくという形ですね。しかも取りきめ、方針等によって伏せてもらうものは伏せてもらうというような形をとれば私はいいと思うのです。それを伏せっぱなしにしておる。肝心かなめの五十万円の金の受け渡しが済んだ十日目ぐらいに発表しておる。一方、取材をもうみな終わっているような状態だ。こういうような状態で、はたして公開捜査というものの協力を得る効果があるかどうか、こういうことだと思うのです。これはどうなのでしょうか。
  34. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 捜査内容を発表いたしますることにつきましては、これはいろいろのケースによってその方法等を検討すべき問題だと思います。たとえばにせ札捜査等におきましては、あるいは私どもが九月六日に発表しましたときには、その特徴点を発表すれば行使がとまる可能性はある。はたして行使がとまっても、警察はこれを基本的捜査において捜査する体制ができるかどうかという点を一つの目安にしたわけでございます。そういうふうに個々の事件によりまして、発表その他につきましては、われわれむしろこういう点は今後とも捜査の幹部において判断をしてまいりたいと思っております。  なお、今回の事件につきまして、金銭の授受の後に、多少警視庁におきまして公開するかしないかという問題につきまして意見が一致しなかったことはございますが、結論としてもう少し日を延ばした上のほうが適当であるという結論によりまして、結局十数日にわれわれのほうの従来いたしましたことを一般に公表いたした次第でございます。
  35. 阪上安太郎

    阪上委員 こまかい話になりますけれども、たとえば録音ですね。私は犯人じゃないけれども、犯人の側に立って考えてみれば、おれの証拠というものは何もないのだ。録音だけだ、声だけとられている、こういったようなことから、かえって犯人の逃亡を許しているような面があるのじゃないかということが考えられるのですが、これはどうでしょうか。
  36. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 一般的に公開捜査をいたしますときには、公開された者の人権及びその逃亡というものは、御指摘のとおり、そういうものを彼此勘案いたしまして、その具体的な場合にどれがいいかという方法をわれわれはとるのでございます。いま御指摘状況におきましては、あの吉展ちゃんが公園からいつだれに連れ去られたか、一切の状況というものが正直に申しまして、ない。普通の場合でございますと、何らかの、目撃者がいるとか、その目撃者の言動が不正確であろうとなかろうと、何か端緒というものがあるのでございますが、世俗的なことばで申しますと、全く神隠しというような状態においてこつ然と、われわれの方の捜査資料から申しますと、いなくなった、こういう状態を前提として、警視庁におきまして価値判断をいたしまして、さような事実を公表したのでございます。
  37. 阪上安太郎

    阪上委員 そうしますと、ぼくは率直に伺いますが、公開捜査は、結局はやはり捜査が行き詰まったあとで打たれる手なんですか。事前にそういうものも含めた捜査の方針とかいうものが、事件の性質によって私はあるのじゃないかと思うのですが、そういうものはないのですか。
  38. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 これは事件の性質、具体的な場合によってあり得ると思います。ごく最近も新聞に報ぜられました愛知県におきましての誘拐事件、これはラジオ、新聞等ではございませんけれども、特殊な通話方法によりまして、局部的に行方不明になったということを公開いたした。その結果、翌日誘拐された者を無事に救出し、しかもまた被疑者も発見した、こういう状況でございます。
  39. 阪上安太郎

    阪上委員 捜査問題についてはその程度にいたしまして、次に伺いたいのは緊急対策です。  最近この問題は、二つ事件が起こってからきわめて連鎖反応的に各所に誘拐ないしそれに似たような事件がひんぴんとして起こっておる。どうなんですか、全国的にいま広がっているようでありますが、この連鎖反応はどういう状態にありますか。
  40. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 まず吉展ちゃんの事件が起こりましたに際しまして、警察庁としまして考えましたことは、いま御指摘のとおり、この手口というものは模倣性が多い犯罪である、こういうことの蔓延を防ぎたいというために、全国に連絡をいたしますとともに、先月保安局長並びに私の連名におきまして、発生防止並びに万一発生した場合の措置というものにつきまして指示、通牒をいたしたのでございます。現在までにおきまして、私どもの方の手元に参りましたものに誘拐として認むべきものがこの事件後八件起こっております。そのうち六件は解決いたしております。そのうちの一件がこの吉展ちゃん事件であるのでございます。
  41. 阪上安太郎

    阪上委員 そこで、そういう連鎖反応性を持っておる、これはだれもわかっておることなんです。いま緊急措置しなければならぬ問題の一つとしてこの問題があるのですが、これをどういうふうに防止していくか、防止策は一体何なんですか。
  42. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 これは警察側から申しますと、やはりこういう犯人が野放しになっておるということが、まず第一にわれわれの責任を感ずるところで、早くこれらの犯人逮捕して、結果を示すことだと存じておるのでございます。  その他の問題といたしまして、われわれの方としましては、捜査体制を整備する、これは具体的に指示しておるのでございますし、また、来たる十日には今回の両事件の具体的な内容の検討、指示を管区の刑事課長を集めましていたしたいと思っております。これは警察部内におきましては、部内措置といたしましてできるだけの措置を当然いたしますが、一般に関しましては、いろいろの学校その他年令によって相当状況が違うと思いますので、すでにわれわれあらゆる機会にこの事実を申し、大臣以下、そういう状況等を率直に披露いたしますことによって、一般的な予防をいたすとともに、すでに警察等によりましては、学校、幼稚園、そういう状況によって連絡をとって、警察の力の及ぶ限りにおいて、そういう事件の発生を防ぎたいと存じておるのでございます。
  43. 阪上安太郎

    阪上委員 あなたは、いま、こういった連鎖反応をなくする一番近道は、迅速果敢な方法としては、犯人逮捕にあるんだ、こういうように言っておられますが、一般的にそういう見方もできるかもしれぬけれども、吉展ちゃんの誘拐犯人がすべての誘拐をやっておるわけじゃないから、連鎖反応というものは、そういう形で出てくるものじゃないと思う。したがって、犯人逮捕はやはり一翻の心理的なものをねらった連鎖反応阻止だと思いますが、同時に、やはりいま言われたような方向措置がとられておらなければおかしいと思う。  そこで、それでは犯人逮捕の非常手段というようなものをお持ちなんですか。
  44. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 犯人逮捕の非常手段の御説明、必ずしも私、具体的に理解をしがたいところもございますが、誘拐犯人というものはいろいろの場合を検討いたしますと、手口が相当違っておる。したがって、こういう場合に最も大事なことは、私の方ではその捜査の幹部が、その事件の実態を的確に把握することだと思う。そうして、その的確な判断のもとに——これは事態が推移いたしますために、その現場における幹部が首脳部の意見を体して、当意即妙と申しますか、その事態に即応する活動をし得るような人選をすることがわれわれの最も重要なことである、と同時に、これはやはり現在の警察が持っております装備をフルに活用することであろうと思っております。具体的なお答えになっていないかと思いますが、なお御質問がありましたらお答えいたします。
  45. 阪上安太郎

    阪上委員 いま言われたおことばは、要約すると、何ですか、末端の刑事は動かないということですか。そういう意味に解釈していいのですか。動かないから動かすようにするのが緊急の措置である、こういうことなんですか。
  46. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 そういう意味ではございません。もう少し具体的に申しますと、やはり幹部の責任の重大性ということを強調しておるのでございますが、先ほどの御指摘にもありましたように、誘拐犯人逮捕という問題につきまして、現場に出ていった警察官もこれは生命であるか、逮捕であるかというような問題について人間としての迷いがどうしても出てまいる。こういう場合に、この場合は逮捕である、あるいはこの場合は犯人に接触するが、これは逮捕に出てはならないんだ、こういう判断をすることが、こういう事件で最も重要なことであろうかと思うのでございます。今回の失敗の一つの原因も、そういう問題が、幹部の指揮命令の徹底という点にあるのではないかということを判断して、もちろん第一線の具体的逮捕に向かう者は刑事であり、一般警察官である、それを意のごとく活用し得る幹部の能力及び装備ということの意味において申し上げたのでございます。
  47. 阪上安太郎

    阪上委員 しかし、そういうことになりますと、この間ついにむざんにも殺害された善枝さん事件ですか、あのときの二十万円の受け渡しのあの段階において、逮捕だなんということをいったら逮捕したらいいじゃないですか。そんなものは何も、そこに生命の危険も何も——あの当時誘拐されたものと見ておったのでありましょうが、そんなものはそこには何ら予測する余地はないじゃないですか。なぜ逮捕に踏み切らないのですか。おかしいじゃないですか。やはり刑事というものが動かないということになるのじゃないですか、それは。
  48. 篠田弘作

    篠田国務大臣 その問題につきましては、私しばしば申し上げているように、大体その善枝さん殺しの問題を誘拐事件であると判断した警察の認識が非常におかしい。私は新聞記者のクラブの諸君の質問に、これは誘拐と書いてあるけれども誘拐じゃない、これは暴行殺人事件だ、そういうふうに率直に、勘ではありますが、申し上げました。それはどういうことかと申しますと、高等学校一年生、満十六才、五月一日をもって十六才を迎えたわけでありますが、しかもその人が非常に大柄である、そういうものを一体あんないなかで、鉄筋コンクリートのほら穴でもあれば別ですけれども、とにかく二晩それを隠すということはできない、しかもその大きな高等学校の生徒をどこへしょって歩くわけにもいかない問題でありまして、これはどうも誘拐事件と見たという——たまたま脅迫状がきたから誘拐と見たかもしれませんが、まあそこに第一の失敗があると私は思います。当然これは生命の問題ということよりも——もし生きておるとすれば、犯人逮捕すれば当然これは生命も助かるわけであります。そういう関係上、四十人の警官が出ていっております。それを、しばしば申し上げるように、犯人自動車で金を取りに行くということを言っておるために、捜査陣は、自動車で行くならばこれは表側の道路だということで、四十人のほとんどすべてを全部道路に配置いたしまして、茶畑のほうには一人も配置いたしておりません。こういうことも私は、全く指揮官の命令でやったとするならば、これはもうほんとうの指揮官判断力の欠除からきたものだ、はっきりそういうことがいえる。それから脅迫状がきましてから犯人が金を取りに来るまでに三十時間あった。一日の午後七時半に脅迫状がきまして、金を取りに来る時刻は二日の午後十二時でございますから三十時間その間にあった。そういうように地理的に茶畑とかいろいろなものがあるということであれば、当然警察犬の二匹か三匹連れてきて準備しておいたら、いざというとき、逃げた場合には追っかけさせることができるし、あるいはまた照明弾のようなものを国鉄あたりでよく使っておるようでありますが、そういうようなものを用意してもいいし、あるいはまたこの犯人は、必ず女に金を持たせてよこせということを言ってていますが、その場合、女がねえさんであるということ、ねえさんに限らない、ねえさんをやったから、こっちへ来いあっちへ来いと言った、あれがもし婦人警官にピストルでも持たしてやっておれば、こっちへ来いと言ったらすっと行きまして、金を渡すようなふりをしてピストルを突きつけて幾らでも逮捕できたと思います。そういうこともやっておらない。まあ、ありとあらゆる面から見まして、私はこれはもう判断力の欠除だというふうに解釈しております。国家公安委員長があまりそういうひどいことを言うのはどうかと思いますけれども、これは将来参考に——参考になるか、ならぬか、参考にするほどの価値もないようなミステークである、私はそういうふうに判断しています。  それから私が考えていることは、この吉展ちゃんのときでありましても、善枝さんの場合でありましても、犯人逮捕する人数は確かにそろえておりました、これは。吉展ちゃんの場合は、そこに六人の刑事がおりました。今度の場合も四十人くらいいました。ところが、この犯人のあらわれるという場所を取り巻く非常線というものは張っておりません。こういうところにも——私は事件記者ですからそういうことを申しますが、こういうところにも非常な欠陥があります。そういう意味におきまして、今後、科学的な装備というものを使うほどの問題じゃないわけでありますから、むしろ科学的な頭脳を養うということが必要になってくるのじゃないか、こう思うわけであります。
  49. 阪上安太郎

    阪上委員 公安委員長から聞けば聞くほどこれはずさんな捜査であったと思うのです。われわれよく聞くのでありますけれども、ああいった場合、照明弾くらい用意していったらどうなんです。何でもないことじゃないですか、そんなことは。それをデモとか何とかのときには盛んに照明弾を使って、国会のこの明るい中でも大騒ぎしている。肝心かなめの、零時何分ですか、茶畑のあんなまっ暗けなところで犯人逮捕に向かって、懐中電灯くらいのことは考えておったと思ったところが、公安委員長のこの間の談話によると、懐中電灯すら持っていない。ああいうときにこそ照明弾を使ったら、百メートルやそこら追っかけていくのわけないじゃないか。そういう配慮をちっともやっていない、こういうことなんです。それから、いま委員長からも言われたのですが、そういう幼稚な頭脳なんですが、そういう幼稚な頭脳しかないのですか、警察には。それはどうなんです。
  50. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 結果的にはまことに申しわけないと思っております。いま公安委員長の御発言がございましたように、この事件の実体を、恐喝文書の内容にあまりにとらわれ過ぎて状況判断したということにこの事件の大きな失敗があると思うのでございます。したがって、現場にはもちろん懐中電灯等は持っておりましたし、いま申し上げましたように四十人もおりましたけれども、自動車ということのために、自動車で逃走されるというために相当広範囲に配備して、持っていきました資材は、もちろん逃走ということを中心に考えておりますから、オートバイあるいは七台のウォーキー・トーキー、こういうような警察が現在持っておる装備を持っていっておったのでございますが、その状況判断の誤りから、それを生かす事態が起こらなかったという判断の問題だと思います。
  51. 阪上安太郎

    阪上委員 だから私は、そういう判断しかできない者ばかり集まっているのかということを聞いているのです。そうなんですか。
  52. 篠田弘作

    篠田国務大臣 そのときの捜査の実際の状況というものは、どういうふうに判断をしたか、捜査会議を開いたかどうかということは私まだ聞いておりません。しかし私は、三十時間もありますから、もしそこで一応捜査会議を開いておるとすれば、いわゆるベテランの刑事も中におるわけでありますから、たとえ捜査課長が道路の逃走ばかりを心配してそこに配備をしたとしましても、課長さん、裏の茶畑のほうは一人も配置しなくていいのですかという意見くらいは会議があれば出たと思うのですが、おそらくこれは指揮者の判断によって配置したものと思います。私は、記者団にも申したのでありますが、佐野屋というのはもちろん中心になっておりますが、それを中心といたしまして、もし直径百メートルの円周において警官を配置したとすれば、三十一名あれば配置できたわけです。それが話をしているうちにぐんぐんとそれを詰めてきて——三十一名あれば十メートルの範囲で配置できます。そうすると、十メートルですから、一人の刑事の守り分は五メートルです。どんなことをしても逃がすわけはありません。もしその犯人がそういうことをしゃべっておる間に、ぐっと輪を詰めたとすれば逃がさない。問題は私はいま刑事局長が言いましたように、自動車で行くんだと犯人が言っておる。そこで自動車で逃走されては困るという、犯人の言うとおりの作戦で犯人に教えられてやっておる。そういうところで、犯人は逃げたいのでありますから、自動車で行くといってもあるいはそうでないかもしれない、逆にくるかもしれないということを考えなかったというところに私はこの欠陥があるのであって、あまりにも犯人の言うことを聞き過ぎているという実にふしぎな現象でございますが、従来の彼らの経験から、そういうことになっておるのかどうか私にはわかりませんけれども、これにつきましては、今後ほんとうにそういうばかなような考え方については、もっとほんとうに厳重に分析、批判をいたしまして、そういう失敗をさせないようにやりたい。何と申しましても、この善枝ちゃんの場合につきましては、もうほとんど、われわれ専門家ではありませんけれども、しろうとが考えても、しそうもないような失敗をしているということで、これはもう何とも世間に対しておわびをする以外にないだろう、こういうように思っております。
  53. 阪上安太郎

    阪上委員 それでは最後に、警察行政のあり方について若干伺っておきたいと思います。釈迦に説法かもしれませんけれども、あるいはそういう質問は迂論かもしれませんけれども、念のために私は伺っておきたいと思いますが、これは公安委員長から伺えれば非常にけっこうだと思います。旧憲法下におけるところの警察に対する観念、それと新憲法下における警察、これについてどういうふうに見ておられますか。もう少し申し上げますと、戦前の警察というものについては、これはむしろ行政警察が主体になっておって、司法警察というものは大体従の立場に置かれておった。ところが新しい憲法下においては、行政警察というものは逐次これは他の機関に行政警察権というものが移譲されて、残ってきたものが、というよりも警察の主たる任務としては司法警察だ、こういうふうにいわれている向きが多いのでありますが、この点に対するものの考え方なんです。これはどういうようにお考えになっているか。
  54. 篠田弘作

    篠田国務大臣 行政警察と司法警察という問題でございますが、もちろん警察の本来の問題というものは司法警察であろうと私は思います。犯罪に対する犯人逮捕ということが一番大きな問題だろうと思いますが、最近のような交通事故の頻発、あるいは交通取り締まり、あるいは交通の整理というようなものが非常に大きな犯罪以上の圧力でもって出てまいります場合には、これを一般の消防団とかそういうものに移譲するというようなことはなかなかできないんじゃないか。したがいまして、行政警察、司法警察、まあ本来はっきりいえば司法警察に重きを置くべきであるが、現在の場合におきましては、行政警察もまた軽視できないというのが実情じゃないか、こう考えております。ただ戦後の憲法あるいはその他の法律の改正によりまして、雅樹ちゃん殺しのような場合には、雅樹ちゃんはあの歯医者の家に長く生きていたわけです。警察でも大体目安をつけまして、その周囲を警戒しておったわけです。ところがそこに入る口実がなくて入らないで遠巻きにしているうちに殺された。だからその場合には、私は警察官が入ることができなければ、さっき申し上げた婦人警察官でもけっこうですが、歯が痛いからひとつ治療してもらいたいぐらいのことで入っても私はいいんじゃないか。これは私はしろうと考えでありますが、そういうような頭の使い方というものを一つもしていないわけです。いそうだけれども、今の法律ではうっかり入ったらひどい目にあわされるということの方が、僕は警察官の頭を支配していた。そういうことでなければ、雅樹ちゃんの場合も、そこのぐるりは確かに張っておったのであります。ただ中へ入らなかったということであります。そういう法律というものの解釈がはっきりのみ込めないために、むしろ警察官が憶病になっている面があるのではないかというふうにも感じます。いずれにしましても、現在の段階におきましては、司法警察、行政警察というものがある程度並立していかなければ時代に即応ができないのじゃないか、こういうふうに考えております。
  55. 阪上安太郎

    阪上委員 全くそれはおっしゃるとおりであって、現在の警察というものは警察法によって明確にその任務というものがきめられておるのであって、それによりましても、これは明らかに旧憲法下におけるところの一般統治権に基づくところの一切がっさいの警察権というようなものの考え方はもちろん消えておるし、それから行政警察というような考え方もやはり非常に薄くなっておる。むしろ今後の警察のあり方として考えなければならぬのは、やはり司法警察に徹底するということじゃないか、こういうことだと私は思うのであります。大体において警察が行政機関というような立場をとるよりは、法の執行機関としてのたてまえというものをもっとはっきりする必要があるのではないか。公安においては非常に大活躍されて、機動隊なんかほとんど今度の事件で役に立たぬほどどこかすみっこにおって何の訓練もしてないというような状態に放置してある。そして肝心かなめのこういった刑事警察といいますか、司法警察といいますか、こういったものが全くなおざりになってしまっておる。最近の大都市等、それから郊外周辺の状態等を警察の観点から考えてみても、郊外等においては刑事関係について非常な手薄になってしまっておる。そうして交通とかその他の問題に投入してしまって、したがって最近陸続と郊外地へ伸びていくああいった新住宅地付近におけるところの犯罪捜査などというようなものについては、犯罪防止等については、これは全然なおざりになってしまっておるというふうなことを、私は警察の相当な立場におる人々から聞いておるわけです。もっと警察は司法警察に徹底すべきだ、こういうふうに考えるのですが、そのためには警察の体系というものを少し改めなければ、いまのような状態ではそういった司法警察に透徹するというふうなことにはならないのじゃないか、こういうふうに思うのです。この点はどうでしょうか。
  56. 篠田弘作

    篠田国務大臣 先ほど申し上げましたように、警察の任務は主として犯罪捜査でございますから、司法警察に徹底するという考え方が、決して正しくないとは申しません。しかし交通事故の場合は、ちょうど日清戦争二カ年分の戦死傷者と同じ数を一年で出しておりまして、言いかえれば、けが人が四十万人、それから死者を多いときは一万数千人から二万人近く出しておるわけであります。これはまた人命という立場からいいますと、死亡とかけがの原因こそ違いますけれども、実際にとうとい人命をなくしておるというところからいいますと、普通の犯罪の何十倍、何千倍かの問題がそこに起こっておりますから、警察として人命を保護するという立場から見ますと、警察以外の役所にこれを移せば別問題でございますが、現在警察の所管となっている以上は、一年に四十万人近いけが人と二万人近い死者、少なくとも一万人以上の死者を出すというこの状態というものを、司法警察にだけ切りかえていくという実情ではないんじゃないか。だからそういう面をもっと割り切って、警察はもう司法警察だけにさせる、警察は検察庁に付属する、その他のことは警察にはやらせない、他の機関をつくるということであれば別問題でありますが、いま申しましたように、そういう現在の情勢から見まして、行政警察だからこれを軽視するというわけにはいかない、まあこういうふうに考えます。
  57. 阪上安太郎

    阪上委員 まあそれはわが国の特異性に大きく原因していると思うのです。必ずしも諸外国ではそういうようなケースは当てはまらないんじゃないかと思うのです。諸外国でもかなり交通事故はありますけれども、日本のようなああいうひどい状態には達していない。したがってそこにバランスの問題が出てくるんじゃないか、このように思うわけであります。しかし実定法上からいっても、やはり警察の主たる任務というものはあくまでも司法警察でなくちゃならぬ。したがって、いまなくちゃならぬものは、他の付随的なものといっては少し語弊があるかもしれませんけれども、そういった行政警察的な方向へ力を注がなきゃならぬような状態にある。これはたいへん大きな問題だと私は思いますけれども、やはり警察の本質としては、司法警察重点主義に徹していく必要があるということが私言えると思うのであります。  交通問題等につきましては、交通安全対策等がもっと完全に講じられれば、あるいは道路問題等がもっと進められていけば、これは明らかに警察の本質的な任務じゃないということがわかってくると私は思うのでありますが、しかしいまの段階でこれをいきなりここで体制を急変せよというようなこともこれは無理かと思います。しかしながらたとえばあの機動隊などですね。あれもまた特殊な任務を持っておりまして必要でありましょうけれども、もっとああいったものについても使い道があるんじゃないですか。いままでは刑事捜査その他についてはあれは役に立たぬでしょう。そういったものについてもっと頭を切りかえて、やはり司法警察が本来の近代におけるわが国の警察の任務であるということであるならば、その方向へああいったものも大いに利用するというか、使用するという方向で考えるべきだと思うのですが、この点はどうでしょうか。
  58. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 ただいま阪上委員の御質問、警察のあり方の根本問題に触れている問題だと存ずるのでございます。旧刑訴時代におきましては、捜査は検事の補助機関としての任務しか持っていなかったのでございます。現在の刑事訴訟法のもとにおきましては、捜査の第一次的責任警察にあるのでございます。従来単に検事の補助機関であって、責任というものは警察本来になかったということから、新しい人権擁護の捜査、憲法のもとにおける刑事訴訟法に変わりまして、一部においてわれわれの活動につきまして制限が加わったことの反面、われわれの責任はきわめて重大になったのでございます。したがって事捜査に関する限り、われわれ一そう従来の惰性というようなものを払拭いたしまして、国民の期待にこたえるような状態にまで早くあげたいとわれわれこれに日夜努力をいたしております。必ずしもその目的を達しられていないことをおわびするのでございます。  なお、機動隊の問題でございます。今回の事件におきましても山狩り等におきましては機動隊を使っております。これは一例でございますが、われわれは機動隊というものを決して集団暴力のために備えたものというふうには考えておりません。最近犯罪が相当凶悪化してまいり、集団化してまいる、こういうような場合におきまして現に機動隊を使っております。また交通整理におきましても、ある段階に至りますと、個々の警察官の力においてはまいらなくなってきた、こういうときに単に個々の警察官でなくて、相当組織化された警察官を使うべき場合に機動隊を使うべきであるというふうにわれわれは理解すると同時に、最近もまたこの問題につきまして注意を喚起したことを私記憶いたしておるのでございます。
  59. 阪上安太郎

    阪上委員 かつて交通事犯が非常に多いときに、これを何とか切り抜けようというので、ある県警本部等においては機動隊に交通警察官の役割を果たさせてみたというような事例もあります。今回の場合でも、おそまきながらも一部機動隊を動員して山狩りをやっている。しかし、あんな状態であの程度の訓練で、はたして捜査に大きな役割を果たすことができるかどうかということが私は問題だと思うのです。何かかばんと手ぬぐいを探して山の中を歩いている、消防団と大体違わないような使い方をしている。あの程度に機動隊を使うのでは、私はそういう意味ではもったいないと思う。何かもう少し先ほど言ったような警察本来の姿に、困難な事情の中から邁進しようということであるならば、機動隊の使い方ということについてもっと考えるべきじゃないか、こういうように思うのです。これは答弁はいりませんからひとつ考えてください。  そこで、次にあり方として問題になるのは、警察人事の刷新の問題だと思います。これは宮地さん、あなた自身が新聞でこの間言っておったでしょう。ここにありますけれども、どうも刑事の処遇がよくないということをはっきり言っておられたように私は思うのです。よくないのをなぜいまのようにほったらかしておくのですか。処遇がよくなければよいようにしなければいけない。大体刑事上がりというものはどこまで出世するのですか。
  60. 篠田弘作

    篠田国務大臣 この問題につきまして、私就任以来特に心を配りまして、就任してすぐ警察官の階級並びに進級の状態を聞きましたところが、巡査部長までは普通なれるけれども、警部補になるのには試験を受けなくちゃならぬ、こういう話を聞きました。それじゃ毎日省線電車に乗ってすりを追っかけて歩いている刑事あるいはまた強力犯、強盗殺人犯を追っかけて歩いている刑事というものが、一体試験を受けるだけのひまがあるのか、またいまと違いまして、いまは高等学校卒業でございますが、昔は高等小学校卒業くらいの程度で巡査になって、十年、二十年つとめておる。それでひまのない人間に試験を受けさせる、試験が受からなかったら昇給できない。そういうことで一体警察官処遇並びに士気を高揚するということが正しくできるかどうかということを聞きまして、何か法律によらなければ警察官というものは昇給させられないものであるかということを聞きましたところが、法律による必要はないのだ、各県の警察の規則によってそれはやられるのだということを聞きました。そこで私が提案をいたしましたことは、たとえば私服の刑事、毎日電車に乗ってすりを追っかけている刑事、あるいはまた暴力団を扱っている刑事、あるいはまた強力犯を扱っている刑事、こういう人たちは試験を受けなくても五年たったらば一階級上がるとか、あるいはまあ十年たったら警部補にするとか、あるいはすり係の刑事をやっている人は二十年たったら警部にする、ただし警部にしたからといって、青い机を前にして部下をかかえてすわっているというのではなくて、給料も警部であって資格も警部であるけれもど、その人たちの経験を生かして依然として警部のまま電車に乗ってすりを追っかける、強力犯を追っかける、そういうような方法をとったらどうかということを言いました。なかなか初めは警察庁の内部におきまして、いやそういう刑事というものは出世をしたがらない、警部になると何かと金もかかるし給料も何とかになるし、そういうのになかなかなりたがらないというような意見を述べた幹部もありましたが、君、そんなばかなことを言うやつがあるか、とにかく巡査を拝命して、それが巡査部長のままで一生いたいというばかなことはないだろう、警部にすれば喜ぶにきまっている。警部になることによって、何らかそこに給料とか何とかというものが下がるということならば、そういう方面の改善をすべきではないかということで、初めの間は非常に一人奮闘しましが、これを本部長会議で述べ、また公安委員会会議で述べまして、公安委員の諸君も私の意見に賛成をしてくれました。きょうも、ぼくが就任してから何人ぐらい試験を受けないで警部補になり、警部になった人があるか出せということを言ってありますが、各府県におきまして、相当たくさんになりました。先般聞きましたところが、北海道でも五十名くらいはなったということでありました。これは記憶違いがあるといけませんから、あとで数字でお示しいたしますが、そういうふうに、その人間の仕事上において、試験をどうしても受けられないという人がたくさん警察官にいるわけであります。それを依然として試験を受けなければ昇給させない、昇給といいますか昇格させないということでは非常にまずいではないかということで、いま私はそれをやらしております。私が就任いたしましてから、相当数の警部補あるいは警部がそういう私服の警官の中から出ておると思いますから、あとでお知らせいたします。
  61. 阪上安太郎

    阪上委員 大体そういうことは配慮としては非常にけっこうなんですけれども、やはりどうも一般的にもいわれておりますけれども、刑事畑というのは非常に待遇が悪い、それでまた将来の望みが非常に少ないということは、これは現にいわれておることなのであります。このことについて、今回これが直ちにそういう結果に出たのだということを言い切ることは、私はどうかと思います。思いますが、やはりそういうことがえてしてこういう結果を生み出す原因になるおそれがあるということだと思うのでありまして、十二分にこれは配慮していただきたい、こういうふうに思うわけであります。  それからいま一つ公安委員会ですが、最近、きのうでしたか臨時の公安委員会が開かれましたが、えらいおそまきに開かれたような感じも実はするわけなんで、もう少し早く開かれてもよかったのではないかと私は思うのであります。まあ篠田さんとしてはがまんにがまんをしたけれども、どうにもならなくてやったのだという気持もわからぬことはないのですが、しかしあの結果を見まして、何かやはりまだ十分な対策というものが出てきていないように思うのですが、もう少し言いますと、これはもう申し上げるまでもなく、公安委員会というのはやはり自分でマスタープランを立てて、そしてそれを警察庁に執行せしめる、実施せしめる、警察庁はあくまでも公安委員会実施機関である、こういうたてまえをとっている限りにおいて、しかもそれに対して、監督権は持っておられるはずである。そうしますと、ああいう態度を見ておりますと警察だけが何が悪いようで、公安委員会は別に責任がないんだというような感じが出てくるわけなんですけれども、この点委員長はどういうようにお考えになっていますか。
  62. 篠田弘作

    篠田国務大臣 国家公安委員会の開き方がむしろおそかったのではないかというお話でございましたが、私が国家公安委員会を開きました直接の原因は、善枝さん殺しでございます。そこで善枝さんの死体が発見されまして、どちらかと申しますと、新聞は御承知のとおり夕刊の一面のトップにこれを扱いました。われわれ長い間の新聞記者の経験から、社会部の記事を一面のトップに扱うということは、これは世論がこれを非常に重要視しているということであります。そこで私は、世論がそこまで重要視しておるのに、正直なことを申しますと、国家公安委員会がぼんやりしていたのでは悪いではないか、そういうことで早く国家公安委員会を開くべきだと考えましたけれども、御承知のとおり連休続きでございました。そこでやりたくてもやれない、委員の諸君がみな旅行されております。そこでおられた方だけを三名集まっていただきまして、そして開いたのであります。要するに開こうということを決意してから一番早い機会に開いたということです。  それから監督権と責任の問題でございますが、これはやはり国家公安委員長が全責任を負うべきものと思っております。したがいまして、私は警察官の過失あるいは不手ぎわ失敗一切につきまして責任を負うつもりであります。
  63. 阪上安太郎

    阪上委員 最後に一つ。この間うちからこの事件と関連しまして、もっと刑罰を強化せいというような声も出ておりますとともに、何か警職法ないし一連の警察関係法令に、捜査上非常に困難を伴うような欠陥があるような言いっぷりがなされております。たとえば戸口調査などを復活しようなどというような声が一部に出ておるように聞いております。先ほどからいろいろとこの事件の真相を伺っておりまして、また捜査経過等を伺いまして、法に欠陥があろうなどというような点は、ここから先もわれわれは発見することができない。しかるにかかわらずそういう空気が出てきておるということは、非常に私は憂うべきことだ、かように考えておるわけなんですが、委員長いかがでしょうか、今回の事件に関して、何らか法を改正しなければならぬというような必要性というものをあなたはお認めになったのでございましょうか、どうでしょうか。
  64. 篠田弘作

    篠田国務大臣 私は、現在の段階あるいは今までの事件状態から見まして、法律を改正しなければこの問題が解決しないんだというふうには毛頭考えておりません。刑罰の強化ということは、これは私は非常に必要があると思うのです。それはどういうことかといいますと、刑法が非常に古い。そこで交通事故一つとりましても、スピード違反をやりますと、そこですぐ交通警官から罰金の言い渡しを受けまして、五千円くらいの金をすぐ裁判所かなにかに行って納めます。ところが刑法のほうを見ますと、ひいてけがさしても罰金三十円とか五十円とか非常に少額です。私は法律家ではありませんから一々具体的に申し上げることはできませんけれども、そういう感じを非常に深くしておりますので、やはり時代にふさわしい刑法、刑罰の改正をするということ、たとえば罰金であれば三十円や五十円の罰金なんというものではだれも驚きゃしません。それが依然として日本の刑法に今日残されておるということは非常に問題だろう、こう考えます。  戸口調査の問題は、これは別に戸口調査をやろうということで発言されたわけではございません。吉展ちゃんの事件で、子供が一体どこに隠されているかというようなことが閣議の問題になりました。それからまたこの前の雅樹ちゃんのときにも、先ほど申しましたように歯科医のうちにいるということがわかっておって、遠巻きにしておりながら、歯医者のうちに入っていくということの、戸口調査はもちろんできませんし、入るという口実を発見するのに警官が非常に苦労した。これは少し頭を働かせれば何でもない問題でございますが、非常にそこに苦労をしておるというようなことから、閣議の席上である閣僚から、この吉展ちゃんの事件捜査するのにはやはり戸口調査というようなものが必要じゃないのかというような意見が出たわけです。ただ、それが記者会見で新聞に発表されましたために、何かこれを機会に戸口調査を復活するのではないか、そういうような疑惑を与えましたけれども、そういう考えはございませんし、私、国家公安委員長として、先ほども申しましたように、今ここで何らかの法律、あるいは警職法というものの改正をしなければこういう問題が解決しないというふうには考えておりません。
  65. 阪上安太郎

    阪上委員 大体以上で私の質問を終わりたいと思いますが、最後に、きょうは警察に対して、特に捜査上の欠点がありましたので、これを質問いたしたのでありますが、しかし、この種事件が発生してくる背景というのは、ただ単に警察だけの力で防止できる性質のものではないと私は思っております。そういう意味において、委員長は、閣僚の一員として、やはり児童に対するところのいろいろな保護政策であるとか、あるいは社会的な責任であるとか、あるいは家庭内におけるところのしつけの問題であるとかいうような、いろいろな社会的な環境の整備といいますか、そういったことにもう少しく児童保護のたてまえから手を打たないと、この種の事件というものはなかなか解消することができないんじゃないか、かように思いますので、いずれ機会を見て意見を申し述べたいと思っておりますが、そういった点について、ひとつ政府として十二分に配慮をしていただきたい。このことを申し上げまして、私、質問を終わります。
  66. 篠田弘作

    篠田国務大臣 この予防の問題につきまして、子供の教育の問題、家庭における注意の問題、社会的な一つの監視態勢の問題、いろいろございますが、非常にむずかしい問題が多いと思いますが、長谷川仁君という参議院議員が、われわれの友人でございますが、きのう、うちへ帰りがけに、子供がひとりで遊んでおったので、坊やと言って声をかけたところが、はっとびっくりしたような顔をして、おじちゃんいい人か、悪い人かと聞いたそうです。いい人ならば話をするつもりで、悪い人ならば話さぬつもりで、子供の教育というものはその程度の効果きりないんじゃないかと思っております。そこでやはり子供に、人を見たらどろぼうと思えというような教育をしまして、その人間が大きくなったときに、一体、全体から見れば非常な少ない事件のために、子供に常におとなに対する不信感を持たせるというようなことは、これは避けなくちゃいけないし、また子供の責任においてこういう問題を解決するということは、不適当である。だから子供はなるべくのんびりさしておいて、先生なり、周囲なり、おとななり、社会人なり、あるいは警察なりがこれを守ってやるという態勢をつくっていきたい、こういうふうに考えております。学校に対しましても、警察から注意をしろというような意見もございますけれもど、あまり警察中心になりまして、学校にまで手を仲ばして、おまえの方はこういうふうに注意しろとか、ああいうふうに注意しろと言うことは、教育上も、また実際問題としてあまりにも神経質になり過ぎて、おもしろくないんじゃないか。そこで私自身——もちろん警察としまして、先ほど申しましたように専門家の会議も開きますけれども、これはやはり広く、小暴力の追放のごとき世論を高めていきまして、世論の支持とまた応援、あるいはまたいい知恵があったらどんどん貸してもらう。われわれだけの頭では、とてもなかなか根絶するだけの頭は、はっきり申し上げましてありません。皆さん方の御意見も十分考えまして、こういう方法があるじゃないかということを、ひとつみなで持ち寄って、この問題を、社会的な責任と申しますか、警察責任はもちろんでございますが、社会的な責任においてひとつ解決していきたい。もしお知恵がございましたら、失礼でございますけれども、幾らでも貸していただいてひとつやっていきたい、こう考えております。
  67. 永田亮一

  68. 宇野宗佑

    宇野委員 阪上委員から相当詳しく質問がございましたが、私も二、三の点に関しまして、まず、警察のミスに対して追及をいたしたい。あわせて、今後かかる事件が二度とないことを祈らんがために、いかなる措置を具体的にされるかということに関しましても、御所見のほどを伺っておきたい、かように存ずるものであります。  第一点は、先ほどの阪上さんの質問に対しまして、今日の段階において、はたして吉展ちゃん事件犯人が目星がついたのかどうか、それもむずかしいし、また善枝さん事件犯人があがるかあがらないかということについても、まだ目星がついておらないというふうな御意見であったと思いますが、きょうの新聞報道によりますと、両事件に関して、何かこう犯人が目睫の間においてつかまるのではないかというふうな印象を与えているような向きもございます。また、新聞によりましてはニュアンスが多少違います。だから、ひとつこの際に、現段階におけるところのことを確認をいたしておきたいと思いますが、まず狭山の善枝さん事件、あれに関して、きょう結婚をするという青年が投身自殺をしてしまった。それが犯人であるかどうかということになっておりますが、あの青年は白か黒か、またほかに犯人がいると思われるのか、現段階ではどうですか。
  69. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 両事件について申しますが、第一の吉展ちゃん事件につきましては、先ほど申しましたように、捜査資料というものが捜査の当初において全くなかった。時間の経過の割合に進展をしていなかったということは事実でございます。しかしながら、先ほど申しましたような資料というものを録音の公開によって得ましたので、新たなる出発をいたしておるのであります。まだ現在の捜査途中におきまして申し上げる段階には至っておりません。  これに反しまして、狭山に起きました事件につきましては、犯人が比較的いろいろの物的証拠その他のものを残しております。したがって、早く参るかおそく参るかは、ちょっと捜査現場指揮官でないとわかりませんが、捜査の一般論として申しましたならば、捜査資料は多いということでございます。いまの御質問の、自殺いたしました青年につきましていかがかということでございますが、これについては、たまたま新聞等に書かれました報道が事実であり、かつ血液型がいずれもB型であるというのでありますが、私のほうでも、これを犯人でないというふうに断定することはできませんけれども、またこれをその他の資料において犯人なりというふうにきめつける資料も持っていないのでございます。したがって、われわれのほうといたしましては、ここに偶然の一致で常識上これが死亡の原因を疑われる、そういう事件が起こりましても、決してこれにのみ捜査力を集中することなく、基本的な捜査を続行中なのでございます。
  70. 宇野宗佑

    宇野委員 いまさらここで捜査会議の蒸し返しをやってみたり、そういう推理の合戦をやってみたり、そういう気持は私もありませんが、しかしすでにして民間において、いまやこの犯人があがらないということについては、警察の威信地に落ちることこれよりはなはだしきものなしと私は考えておる。したがいまして、その報道に関しましても、国民はおそらく毎日々々どうだったのだろうということを心から祈っていらっしゃる方がたくさんいらっしゃると思うのですが、片一方のほうは死んでしまいましたから、あとは犯人を検挙するだけだということになってしまいましたが、吉展さんのことに関しては、山谷の方向に逃げた中年らしき男がそれではないかというような報道がけさなされておりますが、しかし初めからこれをずっと一連のつながりとして考えてみますと、あの犯人らしき者を目撃する以前に、運転手の証言以前に、一人の女性が行った、あの女性が犯人を見たのではないかというようなことも言われておりましたが、民間の協力を得られる以上は、そうした女性が届け出をして、私は見ましたということがあったのかどうか。あるいはまた公園において二、三の男が付近にいて、そして吉展君が連れていかれるのを見たという子供の証言がありましたが、そういう民間の協力という点においては、そのときその時間に私がいたのだということを積極的に協力された方があったのかどうか、この点をひとつお伺いをいたしておきたいと思います。
  71. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 捜査最初におきましては、ちょうど村越氏の宅の反対側にあります便所の付近において、八才の子供の、その吉展ちゃんが持っておった水鉄砲をほめた人物があったということだけでございます。しかも、その人物が誘拐したというふうに直ちに見られないということであって、この事件警察がいわゆる公開いたしました以前におきましては、全然なかったのであります。いろいろ一般の空気によりまして、見た人の話自体は必ずしもこの事件に直結するものではなかった。そういう場合におきましても、その関連の捜査において、われわれの方としてはいろいろ捜査上参考になる事例を得ておるのでございまして、今述べられました事件もその一つでございます。
  72. 宇野宗佑

    宇野委員 なぜ私がこういうふうに申し上げるかと申しますと、つまり運転手が犯人らしき者を乗せたという証言をしておるし、もしもそのときにいた女の人がみずから名乗り出てくれて、大体こういうかっこうでしたと言えば、そこに一つの打つ手が見出されるから、そういうことがもしただいまあなたから答弁があるのならば、一応捜査が進んでおるというふうに私たちは見て差しつかえないと思うから質問したのです。しかし残念にして今のお答えでは五里霧中である、こういうふうに解釈せざるを得ぬだろうと思います。  そこで、今後こういうことがあってはならぬことですから、先ほどからもずいぶんと科学的な捜査という面についてお話がありましたが、私は一つだけ具体的な例をもってお伺いいたしておきたいと思います。  つまり、吉展さんの事件に関しましては、何回となく犯人から電話がかかっておりますが、ああした場合に、外国なんかの映画を見ておりますと、電話がかかってまいりますと、すぐに電話局と連絡をして、なるべく電話を長引かして、どこからかけておるかということを回線数とかその根源をたどることにおいて発見しやすい場面がときどき見られるわけですが、わが国においてはそういうことはできないのですか。かつて小松川事件のときには、犯人電話をかけておる。そのかけておる公衆電話を見つけて行かせたのだが、一瞬の差にして逃がしてしまったということがあったのですが、九回も電話をかけておるのですから、その間においてそのような措置ができなかったのかどうか。これほど進んだ科学警察であるならば、またいろいろな面において技術の面が非常に進んでおるにかかわらず、犯人がかけておるところがつかめなかったのかどうか。この点は今後どうされますか。今まではつかめなかったのですが、これからそういう対策があるのですか。
  73. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 これは捜査上きわめて重要な問題でございますが、現在憲法上の通信の秘密の問題に関連してくるものと思うのでございます。われわれの方が犯罪の容疑ありといたしまして令状をもってこれに処置する場合においては、いかなる通信でもこれは開封なり、内容をいつどこでかけたということを警察力をもって措置することができると思います。さもない場合におきまして、アメリカ等に行なわれておりますような、いわゆる盗聴方式というものは、現在わが国の憲法上許されざることであると同時に、われわれの方ではそういう捜査方針をとっていないのです。ただ、こういうような場合に電話が長時間かかってきておる。その電話を受ける人が非常に専門家であるとか、特殊な人であった場合において、電話を長引かせまして、そして他の状況証拠によって位置を推定しておいて、そこに警察官を急行せしめるという事例はあるのであります。いま御指摘のような事例は、ごく最近におきましては、選挙違反をもって措置をいたしておりますが、大阪におきましてある者が東候補並びに佐藤候補を殺害するという電話をかけた。その場合受けましたものが警察官なり新聞記者でありましたためにそういう技術がうまかったために、幸いにして盗聴という問題を離れて、早くその大体の現場とわれわれの判断と一致いたしまして逮捕したという事例があります。その他におきましてもさようなことはございますが、いわゆる盗聴、タッピングという方法は現在法律上私どもの方は許されないことであり、とっておらないということであります。
  74. 宇野宗佑

    宇野委員 どうもそこら辺が少しく警察庁の御見解がおかしいと思うのです。では、犯人から電話がかかってきた場合に、あなたが今言われたように、大阪でそういう事件があった、幸いに警察官なり新聞記者であったから、長く話をさせて、その間に大体目星をつけたとおっしゃいますが、それならばそれと同様の方法をもって、別にタッピング、盗聴しなくたって一応奥さんに、もっとしゃべれ、もっとしゃべれということはできたはずだろうと思うのです。  では、その場合に警察官はモニターを使うのですか。モニターでは盗聴であり、通信の秘密を侵すのかどうか。モニターはお使いになるでしょう。
  75. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 この場合、録音をとっております。そして録音機には御指摘通りモニターがありますから、今回の場合、私も報告を受けておりますが、これはわれわれが婦人警察官を使って、それから関係者におきましてできるだけ電話を長引かせまして、さような方法をとろうと努力はいたしましたけれども、これは結果的にうまくまいりませんでした。
  76. 宇野宗佑

    宇野委員 仄聞いたしますと、警察電話、すなわち一一〇番は一応特殊な装置がなくてはならぬと私は思います。私の知り及ぶ限りの知識では、一一〇番の場合には、どこから電話がかかってきておるかということは一切わかるというふうに存じておりますが、それだけのことができるのであったら、この特殊な事件において、犯人が一回電話しただけで終わったというならばいざ知らず、ずいぶん期間もあって、しかもそっくり五十万円まで取られている。そういう期間があったのですから、そういうふうなことこそやるのが、これからの科学警察ではないかと思うのです。今後の問題を言っておるのです。今まではそれで失敗しておるのですから、責任を追及しても、すまぬすまぬの一言で、これものれんに腕押しで終わりでしょうが、そういうことはできないのですか。九回も犯人電話をかけて、なおかつその電話がわからなかったということが、ひいては連鎖反応を起こさしめるということで、私たちはそういう方面のことを憂慮しております。できないのですか。一一〇番はどうなんです。
  77. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 一一〇番におきましては、これは受信主義をとっておりますから、どこからの電話ということはわかります。しかしながら他の電話につきましては、さようなことは現在の技術方式が違っておるので困難でございますので、相当判断がむずかしい。ただし先ほど御指摘のように、今回の事件経験といたしまして、われわれ一般警察官というものは、そういう機械的知識がわりあいに乏しい。同時にことに警察官というものは、五名おりましても六名おりましても、単独でそこに本署からはずれて行った場合は、それだけの力しかないのであります。それを警察力に結びつけますのは通信の力であります。その点はわれわれかねて言っておったことがまた失敗したという感じで、この点につきましては、来たるべき会議におきましては特に声を大にして言ってまいりたい。たとえ現場に一人行きましても、それが通信によってつながった警察官ならば、これは決して一人の力でないということは、かねがねから私どもは感じておった。おったことですけれども、そういう点につきまして今回の直接の失敗という形には出てまいりませんけれども、もっと大きな警察力を発揮するには、この通信問題があるということを、われわれ内部におきましてきびしい批判をいたしておるのでございます。
  78. 宇野宗佑

    宇野委員 誘拐事件には電話がつきものですから、ひとついま言われたようなことで今後十二分に検討して、すみやかに対策を立てていただきたい、こういうふうに思います。  第二番には、いまのお話にもありましたとおり、最近警官についてもどうも科学的知識が乏しいからぐあいが悪いというようなお話でしたが、確かにさようなことが今回の大きなミスになったと私は思います。そこで、たとえば先ほどのお話におきましても、今回の二つ事件は何か連鎖反応的な問題と一般に論ぜられるわけでございましょうけれども、警察自体も連鎖反応的に吉展ちゃん事件があったから、今度の狭山事件誘拐だ、国家公安委員長が先ほど言われたように、暴行であり殺人であると判断されたが、一般的には警察自体が連鎖反応で誘拐誘拐だというような調子でやられたのが失敗の原因であった、こういうふうに言われておりますけれども、しかしすでにして吉展さんの事件に関しては、公開捜査もして相当民間の協力を得て、あらゆる人がなぜ警察はこのような失敗を重ねたのだろうかという一つの常識的な判断を持っております。その判断のあとですから、私は捜査当局がどういうふうにされたか、一つだけお伺いしたいと思いますが、たとえば、吉展さん事件におけるところの最も問題は、現場に急行できなかったということ。二番目には一万円札の番号を控えておかなかったということ。しかしあれだけ何回か電話がかかったのですから、電話の主がはたして雅樹ちゃん殺しのときのようなインテリであるかあるいは労働者であるかあるいは無能の人であるか、大体判断がつくわけです。そうした場合において、私自身しろうとが考えましても、ああいうときならば手の切れるような一万円札を渡してやる。しかもあれだけ期限があって、五十万円、五十万円といっておるわけですから、その間に警察としてはちゃんと準備させておいて、その番号を控えさせておいて、それをやったならば、おそらく労働者であるならば、いま大体想定されておるような犯人のタイプであるならば、そんな一万円を使えばすぐ足がついてしまいます。それぐらいのことすらできなかったのですが、ああいう苦い経験に基づいて、狭山事件のときには一応現物を二十万円持っていかれたのですか。そのときは番号を控えておかれたのですか。そういう報告はあったのですか。
  79. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 狭山事件のときには現金を持っていっておりません。
  80. 宇野宗佑

    宇野委員 にせものでしょう。にせものを持っていかれた。しかしながら私はそこに問題があると思う。あの脅迫状には二十万円持ってこい、もしも警察に言ったならば命があぶないぞということが書いてある。にもかかわらずにせものを持っていかれた。しかも先ほど公安委員長が言われたごとくに、婦人警官が持っていったならばいざ知らず、ねえさんに持ってやらして、しかも犯人との距離は三十二メートルですか、三十メートルくらいでしょう。そういうところで取り逃がしてしまったのですが、その責任は一体だれが負うのかという問題です。つまりにせものであるということが犯人にわかった場合に、命を守るために持っていっていないという証拠です。私から言うならば、先ほどあなたは命を守らなくちゃならないし、犯人逮捕しなくちゃならない。この二つが大切であるのならば、犯人に本物を渡して——そのときつかまえるならばにせものでよろしい。ところが命が大切だというので、捜査にも何かほんわりしておって、そうしてにせものを持っていく。どうも趣旨が徹底しておらない。だから私が言いたいのは、これはどういうことか知りませんけれども、狭山警察署の土地カンのある人たちが、あの事件を自分たちの名誉欲によって解決されようとしたのか、あるいは県警本部で出かけていって、お前たちじゃいかぬからおれの言う通りにせよ、それともそういうことは警察庁に御連絡があって、あの吉展事件の苦い経験に基づいてこうせいといわれたのか、その間におけるところの警察行政上の命令系統はどうなっておったのですか。その点をお伺いしたい。
  81. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 命令系統の問題は警察法第五条の規定によるのでございまして、この事件につきましては私の方には指揮権その他ございません。しかしながら先ほど申しましたように、こういう事件の特殊性にかんがみまして、局長命を出し、一般的警戒の指示を出した。したがって、これを受けました——関東管区警察当局の問題に限定して申しますと、直ちに関係管内の捜査一課の次席を招集いたしまして、警視庁の具体的例を中心といたしまして説明をいたし——それは時間的にいいまして末端の一警察官まで徹底しておる状態とは私は判断いたしませんが、幹部にまではいっておった状況じゃないかと私は思うのでございます。  なお、この具体的事件措置につきまして、一警察署のみにおいてこれを解決しようとしたことはない。やはり警察官といたしましても判断の誤りありといわれましたように、いまの社会風潮ということから誘拐ということが頭にきて、県本部が出まして共同でやった。ただし県本部の者がこの事件を総括的に主宰いたしましたことは事実でありますが、署を無視したこともない。これは捜査内容を私は一々具体的に承知いたしておりますが、あまり申しますと、かえって現在の警察措置段階において弁解となりますので、やはり差し控えさせていただきたいと思います。
  82. 宇野宗佑

    宇野委員 まあ追及の点に関しましてはその辺でやめておきたいと思います。ひとつ一日も早く逮捕していただきたいということのみが、私のみならず、犯人以外のほとんど全国民の声だろうと思っております。  第四番目といたしまして、先ほど阪上委員から戸口調査の問題が出ましたので、この問題に関しまして国家公安委員長の御答弁をちょうだいいたしたいと思います。私自身の考えを申しますと、別に、こういう問題が出たから、警察捜査が非常に難儀をするのだから、大政官達によるところの明治初年のあの戸口調査を復活しなさいということは申したくはございません。そのような復古調主義でもございません。しかしながら現実の問題としては、今日自分の管轄内においても把握することが非常にむずかしかろう。これは阪上さんも言われた通り、戦前の警察と民衆の間柄、戦後の警察と民衆の間柄ということを考えますと、常においこら警察はだめであるから民主主義になれ、民衆警察になれとお互いに双方から言っておりますから、自然と警察のさような面におきまして不都合な点があるのではなかろうかという気がいたします。しかし現在として、きょうの新聞の報道のごとくに、山谷方面犯人が逃げたということが事実として、おそらくその捜査が続けられるだろうと思うのですが、山谷を特殊な例として用いることはどうかと思われますけれども、たとえばああいうところにたむろしていらっしゃる方々の氏名だとかそういうことは、今日の警察としてはどういうふうな把握方法を持っていらっしゃるのですか。住民登録というものがあるかないか私は存じませんし、今日警察で許されているのは、何か連絡だけして回るような調子で、申告書を出してくれ、通知書を出してくれという程度だろうと思いますが、たとえばこの事件に限らず、ああいうところに犯人がまぎれ込んだ場合にどういうふうな——今日の段階としては、あの人たちをだれのだれ兵衛だ、だれのだれ兵衛だというふうに把握できるのですか、できないのですか。
  83. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 現在一般的には戸口調査は御承知通りいたしておりません。しかしながら、巡回連絡という方法によりまして、これは人がそこに転入されますと、警察の方からカードを渡しまして、全く協力を得るという形におきまして御記入をいただいて、警察の帳簿に秘密に保管する、こいう方法をとっておるのでございます。これらに関しましては、全国的に見ましてはある程度の高い数字は出てまいるわけです。しかしながら今申されましたような地点におきましては、人口の流動も激しく、またそういうことに対しての協力というのは著しく困難である。したがってこういう方法によってのみ実態を把握するということはわれわれのほうも不可能だ。警察といたしましては、必ずしも常に犯罪ということを念頭に置くわけではございませんけれども、保護という意味におきましても、自分の受け持ち管内の実情を把握するということはぜひ必要なことではないか。こうなりますと、これは山谷事件、釜ヶ崎事件等のわれわれのほうの苦い経験から考えまして、今度そういう組織の形においてまいらないとするならば、やはり老練な、たんのうな警察官の配置その他人の面においてこれを補っていく、おのずから限度はあるといたしましても、そういう方法を考えておるのでございます。
  84. 宇野宗佑

    宇野委員 戸口調査自体もこの間からだいぶ問題になっておりますから、私も詳しく調べてみますと、そうむちゃくちゃなことを書いておるわけではありません。一応戸口調査に関して、ことさらに応答を拒否した場合にはこれに説諭を加えるという明治調らしい言葉が書いてあったのですが、私はそのことをいまさら取り上げる必要はないと思う。いま局長が言われたように、今日の段階で把握しにくいというのは、巡査が巡回勤務をして、そうして通知書を出せといわれて、通知書に善良な市民としてみな協力をして、私はこうなんですといって出してもらった場合にはいいのでしょう。どうなんですか。いま出せというわけにはいかぬから、どうぞお願いしますといって置いてくる。そうすると、善良なる市民である限りは、ああそうですかといって持ってくる。これならば、全部がそれをしてくれたら把握できるのですか、できないのですか。
  85. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 全部の方に自主的にそういうふうにしていただければ把握はできる、望ましいと思うのでありますが、問題点は、必ずしも全部の方にそういう御協力をいただけないという点にあるのでございます。
  86. 宇野宗佑

    宇野委員 その点公安委員長はどうでございましょう。別に戸口調査を復活せよといっておるのではありませんが、ひとつ新しいアイデアによって、まず善良なる市民から協力してもらって、これだけ公開捜査をしてあらゆる事件に関して暴力追放だとか、何やら追放だとかいって、相当民間はこういう事件に対して協力態勢になっている。こういう協力態勢にあるときに何とか一つ新しいアイデアを奮発されて、警察がほんとうに司法警察として治安の任に任ぜられるようなことをお考えになったらどうですか。法律を改正せよというのじゃありません。たとえば、ほんとうに警察協力されて通知書を出された人であるならば、善良なる市民の証か何か知りませんが、ちょうど大掃除が終わると春季大掃除が終わったという札を張って回るように、ああいうことなら各家庭は何も文句は言わない。そこに今日の、戦後の警察と大衆の間のニュアンスの差があると思う。私はもう一ぺんおいこら警察にせよとは言わないけれども、民間の協力態勢というものをもう一ぺん国民に、国家公安委員長として、また自治大臣としても要望されたらいい。何か警察警察だといって憶病になり過ぎている。悪い法律をつくれと言うのじゃありません。やはりそういう態勢は、暴力を追放し、悪を追放せんがために今日の日本としてやっていいのじゃないか、それをやってはじめて警察も司法警察だ、あるいは科学警察だと言われることになると思う。どうもお互いにおっかながって憶病風を吹かしてしまって、何かもう一歩のところをかちっと言わないというのが最近の風潮だと思います。私は具体的にこう思っておるということは申しませんが、公安委員長としてはこういう問題に対し今後やるという意思があるかどうかお伺いしたいと思います。
  87. 篠田弘作

    篠田国務大臣 御承知のとおり、戸口調査は戦前といえども法律によってやっておったのではなくて、太政官達しによって住民協力を得てやっておりました。現在におきましても住民協力を得ることができれば、先ほど刑事局長が申しましたように、当然こういう場合に効果をあげるものと確信をいたします。しかし人間が善良であるか、あるいは戸口調査に応じないから善良でないかという問題につきましては、私は非常な議論があると思います。自分が犯罪を犯していなかったら当然こういう事件については善良の人は協力を惜しまないと思うのであります。しかし戦後の民主主義というものは、個人の尊厳ということを非常に憲法にもうたっておりますし、思想的にもいろいろな考え方の人がおるわけであります。そういう関係から、たとえば警官が行きまして、ひとつおたくの人数を教えて下さい、だれが下宿をしておるか、どういう人がおるか知らせてくれと言いましても、その人が人間的に善良であっても、考え方が違っておれば何も個人のそういうプライバシーの問題にまでわれわれは答える必要はない、こういう考え方の人も世間には大ぜいいるということは宇野さんも御存じのとおりです。そういうものの考え方から協力をするかしないかという問題が生まれてくるのじゃないか。だから今度の犯罪なら犯罪、吉展ちゃん事件の問題だけでひとつどうでしょうか、おたくの近所でそういう人を見かけなかったかとか、あるいはおたくにはそういう人はいないかというようなことならばおそらく協力するのじゃないか。ところが一般戸口調査の問題としてそれを持っていった場合に、善良であるから必ずしも協力するというふうには私は考えておりません。その根本にはやはりプライバシーの問題、あるいは個人の尊厳とか、あるいは民主主義とか、あるいは自由とか、そういう問題に対する考え方によって協力する人としない人がある、こういうように思います。
  88. 宇野宗佑

    宇野委員 最後に、これは直接公安委員会にもまた警察にも関係はないと思いますが、この吉展さんの事件に関して、松下総長ですか、みずから名のり出て、犯人との直接の連絡を買って出よう、もちろんこれは警察とは一切関係のないことだと言って、本人もさような声明をされました。しかし一応あの方の御人格でありますから、さようなことを申されてはっきりされたのでございましょうが、警察は直接連絡をとられてもいやだと峻拒されるでしょうけれども、そのことに関して何か間接、また聞きというようなことで松下総長のもとに犯人らしき者かあるいは犯人本人から連絡があってこの解決のめどがつくだろう、松下さんがそういうことを言われたが、その責任は果たせるのだろうかということについて何かお聞きになっておるのならば、ちょっとお尋ねしておきたいと思います。
  89. 篠田弘作

    篠田国務大臣 非常な御好意ではございましたが、何も反響はなかったそうでございます。いろいろ協力を申し出ておるということは事実でございますが、警察以外の人が、特別な人が特別の形で個人的にやられるということは、本人はそれで何か相当の協力ができるとお思いになったか知りませんが、われわれの目から見ますと、問題はそういうところにあるのじゃないか、私は個人的にはそういうふうに考えておったのです。ただ、いたずらの電話が非常に多くかかってきて本人が繁忙されただけであって、結果的には何もなかった、こういうことになっております。
  90. 宇野宗佑

    宇野委員 あのような人格者がおやりになりましても、なおかつ世相はそのようなもので、じゃまな電話とかひやかしの電話が多かった、非常に残念なことだということを私は仄聞しております。これからの捜査も非常にむずかしいだろうと思います。私といたしましては、ただいまいろいろと御答弁をいただきましたが、今日の答弁ではどうも——もちろんまだ捜査段階でございますから、確約は得られなかったにいたしましても、警察も思い切って一つ奮発していただきたい。なおかつ、国家公安委員長におきましても、こういう誘拐事件に関しましては先ほど申されたとおり刑法の厳罰主義、そういう改正もみずから法務省と御検討になることも必要でございましょうが、今後とも御健闘をお祈りいたしまして私の質問を終わります。
  91. 永田亮一

  92. 門司亮

    門司委員 時間も非常におそくなっておりますし、それから阪上君並びに宇野君から同様の質問で内容経過等については大体言い尽くされておると思いますが、警察側の答弁はほとんど弁解される余地はないのである。これは両方とも警察行政というもの自体に対する非常に大きなミスというよりも、もうミスの範囲を越えておると思うのです。一方、金を渡す場所、時間というようなものは警察と当然連絡がとられてなければならぬはずであるのに、時間がおくれたというようなことでは一体何をやっておるかということです。一方、犯人が車で来るからというので車の方だけ警戒しておった。それから御本人と犯人との間で八分か十分話をしておったというのです。それが認められておったのに、また犯人が移動するということが予想されるのに——これは人形を配置しておるのじゃないのです。みずから警察官は動き得る力を持っておるし、特に私はそういう点は敏感であると思うのです。そうでなければならぬのに、弁解にも何にもならぬ。さっきから答弁を聞いておって私はふき出した。犯人がそこに車で来るからといって、そっちに配置して逃がしたというのだけれども、それも通り魔のように逃げていったのならそういうこともあるかもしれぬけれども、十分も話をしておったのです。犯人の所在が確認されておるのです。私は実際答弁にならぬと思うのです。そういう答弁にならぬ答弁をいくら聞いてもほんとうにどうにもしようがない。しょうがないから、私は警察自身の立場に立って公安委員長に十分聞いておきたいと思います。  警察行政の上から見ていま非常に国民が関心を持って見ておるのじゃないかと考えられることは、警察庁長官の退職の問題であります。警察庁にいま課せられておる大きな問題はにせ札の事件であります。この問題は、この前の委員会では宮地君だいぶ張り切って解決すると言っておったが、これはまだ解決されておらない。しかもまたごく最近出てきておる。それから次に問題になるのは、この二つ事件警察のミスであります。一体この責任の所在はどこにあるかということです。私は公安委員長に聞きたいのだが、柏村長官の辞職はどういう理由によるものであるか、この際明らかにしておいていただきたいと思います。
  93. 篠田弘作

    篠田国務大臣 ここにちょうど柏村君の辞表を持っております。               私儀   一身上の都合により辞職つかまつりたく何とぞ御聴許相なるよう御願申上ます    昭和三十八年五月五日      警察庁長官 柏村 信雄    国家公安委員長篠田弘作殿
  94. 門司亮

    門司委員 私は、おそらく一身上の都合だという文句が書かれておることは大体想像にかたくありませんし、またそうだと思います。しかし公安委員長としてのあなたの立場から、これをどう処置されたかということをもう一度聞いておきたい。
  95. 篠田弘作

    篠田国務大臣 このとおり処置するつもりでございます。
  96. 門司亮

    門司委員 そのとおりに処置されたということでありますが、おおよそ行政府の長にある者は、私はやはり責任を感じてもらいたい。上司が責任を感じない、責任を明らかにしないで、下僚に対してどんなにやかましいことを言っても、私は士気の高揚というようなことはあり得ないと考える。したがって、大臣の処置としては、もう一応聞いておきますが、そのとおりに処置されたということでありますが、それなら柏村長官は一身上の都合として、病気であったのか、あるいはその他に理由があったのかということを、もう一応私はお聞きをしておきたいと思います。
  97. 篠田弘作

    篠田国務大臣 柏村長官の話を聞いてみますと、自分はもう長官を五年以上つとめた。それで一般的にいうならば最古参である。そこで各省のいろいろな割り振りというようなものを見ましても、五月ごろには、地方の統一選挙が終わればやめたい、こういう気持を持っておった。そこで統一選挙も終わったからやめたい、これが柏村君のほんとうの腹の中の理由でもあり、表面的な理由でもあると思います。しかし率直に言いまして、これについては新聞等で御存じのとおり、本人はそういういきさつには全然拘泥しておらぬということは言っておりますけれども、この前公団の副総裁の地位があきましたときに、従来あまりに警察官退職後の処遇というものが恵まれておらない、そういうことから私が、実はあれは建設省の人事ではございましたが、河野建設大臣に、ひとつ公団副総裁の地位を警察によこさないかという個人的な話をいたしました。そのときに河野君は、それはやろう。だれを充てるんだという話が出まして、それは柏村君を充てるのだということを私が言ったわけであります。といった意味は、私自身ももう相当長い間、柏村君は警察庁長官としても、また役人としても最古参だ。そこでやはり適当なる更迭というものが人心一新のために必要じゃないか。そういうような場合に、一体従来の警察官というものは出ていってしまうと、どっか社会の一番すみっこへ追い詰められちゃって、そう言うと悪いですけれども、非常に豊かな待遇も受けてない。ひとつ自分が大臣をやっているうちに、多少そういうことを言うとうぬぼれが強いように聞こえるかもしれませんが、何かそういうことをすれば、警察で働いた者は将来やはり相当の立場をとれるんだという、何か一つの士気高揚になるんじゃないかといろ考えで、私はその問題を、柏村君をやめさせるというよりも、むしろ公団副総裁という地位があいておるからということで、そういう考えに立ちまして、そのとき私は柏村君にも一応話をし、また総理大臣等ともいろいろ話をしたわけでありますが、それが新聞で御承知のとおり、警察の柏村君のほうから見ますと、何か職場があるからやめたというように思われるということは非常に困る。先輩がみな浪人しておるのだから、進退と職場というものとは別にしてもらいたい。自分自身もそう長くはやろうとは思わないが、統一選挙が終わるまでは最後の御奉公をしたい。こういう申し出がありましたので、結局本人自身も相当長くなるからやめようという気持はあったかもしれませんが、私が公団の副総裁という問題を持ち出したことが、あるいは拍車をかけたかもしれません。しかし同君の言うのには、そういうことによって自分は決して動かされておるのではなくて、初めから統一選挙が終わったらやめようと思っておったのだ、こういうお話です。そこで先ほど参議院委員会におきましても質問がありましたが、こういう問題が起こっているときに、国警長官が直接責任をとらぬと言いながら、やめるということはよくないんじゃないかという意見があります。しかし私は逆に考えております。それはもうすでにやめようと思って辞表を出した人間を慰留して、あるいはこの事件の解決のために数カ月なり一カ月なりを延ばしてみても、それは警察力というものは組織で動いておりますから、そういうやめようとした長官が残ってみても、別に特に警察の士気が高揚されるということはない、むしろ逆に陣容を一新して臨んだ方がかえっていいんじゃないかという考えを私は持っております。したがって、そういう私の立場から、この辞表というものはそのまますなおに受け取る、こういうふうに考えております。
  98. 門司亮

    門司委員 今の大臣の答弁は、私は委員長としての私情においてはそういうことも言い得るかと思います。また経過から見ても、そういうことはあり得たかもしれないと思います。それから警察法の関係から見ましても、直接の責任者でないということは、これは私は法文上の責任者でないということは言えるかもしれないが、警察行政全体に対する責任者でないということは断じて言えないと思います。それは少なくとも地方警察本部長あるいは管区本部長その他の任命権をお持ちになっておる上司であるという関係においては、法文上の職務分担の上においては直接関係がないかもしれないが、任命権者としての立場は当然あるはずです。私はただ警察法の五条がこうなっておるからこうだという、そういう法文上の取り扱いで済まされる問題ではないと考えておる。国民全体がこういう大きな衝撃を受けておるときに、少なくとも警察の最高の地位にある者がやめられるということは、私は勇退というような形であってはならないと思う。おやめになるのなら責任をしょって、そうして責任上私はやめる、申しわけないのだという態勢が望ましいんじゃないか。もしそれができないとするならば、事件の解決までやはり踏みとどまって、事件の解決をしていくという責任をとるか、どちらかでなければ、力の入った警察行政はできやしない。おそらく今度の問題も終末にいけば、埼玉県の直接の責任者あるいは警視庁の直接の指揮をした連中は、いい結果に必ず私はならないと思う。必ず世間からもいろいろ非難をされるでありましょうし、また警察当局としても何らかの処置をとらないわけには参りません。任命された下僚はたとえ自分の失策でございましょうとも、行き違いであろうとも、そういうことに当然ならざるを得ないという羽目に追い込まれておるときに、最高の責任者が勇退をするというようなゆうちょうなことをして、どうして一体警察の士気がほんとうに弛緩しないでおられるかということです。私は少なくとも公安委員長の考えとしては、私情としてはそういういきさつがあったかもしれない、しかしこの際の処置としてはやはり勇断を持って処置をしていただく、また本人もそういう考え方でなければ、私は今後の警察行政が案じられる。こういう権力行政に関する限りにおいては、ほんとうに出所進退というものは明確にしていただきたい、これは国民もひとしく望んでおると思う。また警察官自身としてもこれを望んでおる、望んでおるというと多少言い過ぎかもしれませんが、考えておると思う。国民の注目の的は、こういう失態を起こしておる、その際に最高の責任者が何か勇退というような形でやめられるということには、不可解なものを国民は持っておると思う。この点について大臣どうお考えになるか、もう一度お答え願いたい。
  99. 篠田弘作

    篠田国務大臣 警察の最高の責任者は国家公安委員長でございます。したがいまして、柏村長官に責任を負わせて、その責任というものが退職までに及ぶような責任であれば、私が当然退職をいたしまして責任をとります。そういう事務官に責任は負わせません。事務官の責任というものはおのずから限度があります。柏村君が責任を負って退陣しなければならぬというなら、私が当然退陣すべきだと私は思っております。この柏村君の退職の問題は、先ほど申し上げましたように、吉展ちゃん事件も起きない、善枝ちゃん事件も起きないずっと前からそういうことを考え、また選挙後においては辞職したいということを申し出ておられました。副産物といたしまして、私が先ほど申し上げましたような公団副総裁問題というものもありましたけれども、それはもう世間的にいいますと、篠田公安委員長の黒星である、勇み足であるということで、すでに問題は解決しております。したがいまして、私は、私の多少の面目を失墜したという程度におきまして、柏村君の問題はその問題とは一つもからましておりません。今度できました問題は、相当長くなるから、統一選挙後において、最後の御奉公をしたらやめるという柏村君の申し出によりまして、吉展ちゃん事件も、善枝殺しも起こらないうちから、すでにそういう計画があったわけであります。そこで、形の上から申しますと、事務的には柏村君は最高責任者でありますから、その人がいなくなるということによって士気が沈滞するのではないかというものの考え方があります。しかし考え方は二色ありまして、すでにもう退陣を決意している人を、いつまでも残して指揮させることのほうが士気にどういう影響があるか、あるいはまたそういうことで一段落をして、新しい最高幹部というものによって指揮させることのほうが効果があるかという問題は、これはおのおのの判断によって違いますが、私は後者をとっているわけであります。
  100. 門司亮

    門司委員 私が聞いておりますのは、大臣のいまのおことば、あるいは大臣としての立場からそういうことが言えるかと思います。しかし国民の受ける印象というものは、私は必ずしもそういうものではないと思います。素朴な国民の印象というものは、これだけ大きな失態が重なっておる、しかも事人命に関する問題じゃないかということが考えられる、警察の処置いかんによっては、人命も——一方の狭山事件はあるいはそれ以前に殺害されていたとすればそれで済むかもしれない、しかし一方の吉展ちゃんの事件については、あるいは捜査が長引くことによって命を失うかもしれないというように、非常に国民としてはこの問題を重要視している。その際に、これが関係あるとかないとかいう法律上の問題、あるいは条文上の問題というようなことでなく、世間一般の受ける印象というものは、あれだけ警察が大きな失態を重ねておりながら、一体その長官が勇退してよろしいのかどうかということについて、私は警察官としての良識を実は疑うのである。私も柏村君とは長い間の知り合いでありますから、こういうことを言うのは私情としては忍びないのでありますが、私はもし今の大臣のような御答弁であるならば、これは踏みとどまって——そう長い間のことじゃないと思う、あるいはこれは迷宮入りするかもしれない、しかしそれにはおのずから限度があるはずである。私は少なくとも末端の警察官あるいは中間の幹部がほんとうに自分の身を犠牲にして、警察行政というものを全うし、警察の威信を高めていくということが、自分たちの本来の使命である、警察法の一条に書いてあるとおりだ、あるいは宣誓をする、三条に書いてあるとおりだ。ほんとうの警察官としての誇り、警察官としての使命を全うすることのためには、いささかも世間から警察が軽侮されるようなことがあってはならないと私は思う。今度の長官の処置について、私はその点について実は非常に残念に考えておる。どうしてこれが踏みとどまることができなかったかということでございます。あるいはもしいまの大臣の御答弁で、長官がやめるような失態があるのならおれがやめるとおっしゃるなら、それでもよろしいと思う。何も大臣にやめていただきたいということではありませんけれども、そういう事態であるなら私はそれもよろしいと考える。少なくとも国民の受ける印象というものは、そう機械的なものでもなければ、いきさつだけで今日国民は割り切れないのじゃないか。国民はひとしくやはり警察行政というものを見ておると私は思う。そうして警察の威信が地に落ちれば、どんなに国民に協力をしていただきたいといってもこれは協力はしませんぞ。いわゆる警察というものがほんとうに自分たちの味方である、ほんとうに自分たちの生命、財産、社会の秩序を守ってくれるのだという威信と信頼があってこそ、初めて国民の協力が得られるのである。威信も信用もないところにだれが協力しますか。私はこの際、ほんとうに大臣としてはいろいろお考えもあろうし、言いにくいこともあろうかと思いますけれども、少なくとも警察の威信だけは保ってもらいたい。そうして将来のこういう問題に対する警察官の行動その他についても、ひとつ十二分にこういう間違いを起こさぬようにしてもらいたい。極論をすれば、さっき冒頭に申し上げましたように、犯人の所在がわかっておるんだから、どんなに自動車で来るからといっても、そこに張り込んでおったら、そこを縮小することは幾らでもできたはずである。そういうことができなかったというところに私はどう考えても割り切れないものがある。もし私のこの割り切れない気持が、警察官の士気の弛緩である、あるいは責任感の薄らいでおる考え方であるということがかりに当たっておるとするならば、これは大きな問題だ。だから、その点についてもう少し突っ込んで、お互いこの事件一切についての責任の所在というものをもう少し国民の納得のいく、あるいは国民が安心して警察を信頼し、あるいは協力のできる態勢に私はこの際どうしても警察を持っていってもらいたい。そうしなければ将来の警察というものはもうどうにもならぬですよ。
  101. 篠田弘作

    篠田国務大臣 犯人を逃がしたという不手ぎわにつきましては、もう先ほど来刑事局長、私からその不手ぎわの具体的な面を指摘いたしまして、何とももうわれわれとしては言うことができないほど不手ぎわである、こういうことを申し上げておわびをしております。しかしその警察の不手ぎわが直接国警長官である柏村君に結びつくかどうかということは、これは非常な問題だと私は思う。門司さんは国民がそういう印象を受けるとおっしゃいますけれども、それは門司さん御自身のお考えでありまして、国民が全部そういう印象を受けるなんということはほんとうに投票してみないとわからぬ。そこで私自身の考え方門司さんとは全然別です。私は国家公安委員長としての責任の立場から、また警察人事という問題を長く、約一年近く見てきました。よそでは大臣がかわればみんな人事異動をやっておるのです。ところが自治省と国家警察だけは人事異動をやっておりません。やっておらないということは、私がずっと見てきて、そうして各公安委員最後には総理の承認を受けるわけでありますが、よく見て、誤りのないような人事をやるべきであるし、部内の空気もまた部外の空気も十分に見てやるべきであるという判断で、私は就任以来これで約十カ月になりますが、十カ月間ずっとながめてきた。そういう意味から申しまして、私自身は、この二つ事件のミスというものと柏村君のいわゆる国家警察庁長官としての責任というものはこの際ごっちゃにしないで区別して考えるべきものである、この事件が起こったから国警長官が辞職してもいけないし、辞職することが非常に国民に悪い印象を与えるなどということは、これはそういうふうに考える人も大ぜいの中だからもちろんあるでありましょうけれども、私は少なくともそうは考えません。そこで先ほど申し上げましたように、この二つ事件が、かりに柏村国警長官の進退にまで及ぼすほどのそういうかかり合いの事件であるし、理論上もまた法律的にもそうであるというのなら、私は何も事務官である柏村君を犠牲にはいたしません。私自身がやめます。そういうことを申し上げておるのであって、少なくとも私は警察責任者としてこの人事というものを国家公安委員会にはかってやるわけでありますから、私の一存でやるわけではありませんが、本人からそういう辞表が出て、また内外の時期がそういう時期であるという以上は、国家公安委員会にはからざるを得ない。そしてはかって、皆さんが賛成であるならば、当然そのとおりやる、これが私の方針でありますから、門司さんが何とおっしゃいましても私はやります。
  102. 門司亮

    門司委員 大臣もなかなかきつい答弁をされている。それはあなたの権限ですから、私は何もあなたの権限を侵そうと考えて言っているわけではない。これは私の立場で話しているのであって、国民投票をしなければわからないということは、ひとつ抜いてもらいたい。このために国民投票をするなんと言ったって、規定があるわけでもなければ、できない相談です。私はそういう認識で言っているのであって、もし国民投票ができるのなら私は国民投票を要求するが、しかし法律がいまのところない。国民投票をするわけにもまいらぬでしょう。だから、そういう仮定のものでここで問答してみたところで、これは大臣の気性としてそういうことを言われるのだと思いますが、実際問題としては、いま大臣が言われたようには素朴な国民は考えない。警察法を全部知っている国民が何人おりますか。
  103. 篠田弘作

    篠田国務大臣 それは幾ら議論しても同じですよ。あなたの意見と僕の意見は違うからしようがない。
  104. 門司亮

    門司委員 意見が違うから聞いている。意見が同じなら何も聞く必要はない。そういう議論がこれから話の中に出るわけでありますから、聞いている。  それから次に聞いておきたいと思いますことは、いま大臣は、そういう大臣の所信として御答弁をされておる。また強い、大臣らしい地金がまる出しになっていることについては、私は別にこれを追及する意思もなければ文句も言いません。国民というものは、現実を見て、それに率直な判断をしていくのが国民の一つのものの考え方なんです。専門的にものを見るということは国民はできない。警察の人事がどこでどうなっているかということは考えていない。しかし、少なくとも素朴な国民の考え方としては、警察庁の長官は警察行政では一番トップにいるということだけは、ちゃんとみんな知っていると思う。警察官だって法律を知っているかというと、そうじゃない。余談ですけれども、この間、選挙の取り締まりに行って、九時以後は屋内演説会もけしからぬといってとめて、選挙妨害で訴えられたおまわりさんがいる。巡査部長だというのだからあきれかえってものが言えない。これが取り締まりに当たっているから、間違いができるのはあたりまえです。その程度のことであってはならないと思う。こういうものは国民感情として私はほんとうに許せない。もう少しこういう問題に対する責任の所在を明確にしてもらいたい。  それなら最後に聞いておきたい。この事件のこういうミスの責任の所在は一体どこにあるのですか、だれが責任者なんですか。
  105. 篠田弘作

    篠田国務大臣 もちろん警察を指揮しておるといいますか、警察の最高責任者であるというたてまえからいえば、私にありますが、法律から申しますと、各府県本部長に現在の段階では責任がある。
  106. 門司亮

    門司委員 そうだといたしますと、これはひとつ委員長にお願いしておきたいのですが、埼玉県の本部長と警視総監を呼んでもらいたい。そしてこの問題の責任の所在を明確にする必要があると思う。そして国民の疑惑というもの、国民の警察に対する不信感というものを払拭いたしたい。この際私どもが最も要求するのは、事件内容がどうのこうのということじゃない。ミスはミスでいまさらどうにもならない。われわれの立場から、先ほど同僚から御注意もあり、またわれわれとしての考え方からの御発言もあったのですけれども、それはそれとして、国民の一番心配しているのは、こういう問題がよって来たる原因もさることながら、これの処置について警察の威信というものを保つ必要がこの際あるのではないか。この際、警察の威信をどこで一体保持していくか。警察のミスはミスで、それでよろしいのだという考え方では、さっきから申し上げておりますように、警察行政というものは全く地に落ちてしまう。それでは日本の将来というものは案ぜられる。そうだとするならば、やはり警察責任者というものをこの際明確にしていただいて、それらの直接責任者から事情をよく聞くなり、あるいは直接責任者の考え方というものを十分私どもも知る必要がこの際あるのでありますから、委員長はひとつこの委員会に、ぜひ原警視総監と埼玉県の本部長を呼んでもらいたい。
  107. 篠田弘作

    篠田国務大臣 門司さんのおっしゃるように、警察の威信という問題も非常に重要な問題であります。しかしながら、警察の威信は今後において幾らでも追及できる問題であります。現在は、犯人逮捕という捜査線上における問題が一番大きな問題であって、国民全体からいうならば、警察の威信の追及よりも犯人の追及の方に私は重きを置くと思うのであります。こういうような重大な時期に、その責任者であるからといって、警視総監や県警本部長を呼んでここで詰問をする、あるいは質問をするということは、私は捜査の上からいって非常に思わしくない、私自身の解釈からいいますと何も利益はない、むしろマイナスである、こういうふうに考えます。委員会におきまして理事の方々が全部相談の上、呼べという結論に達すれば、これは呼ばないわけにはいきませんでしょうが、門司さんの御要求に対する私の見解を述べるならばそういう見解でございます。
  108. 門司亮

    門司委員 私はこういう問題について、従来のたてまえ、今度の事件でもある程度の公開捜査に踏み切った時期と秘密にしておる時期との間における事件進展というものが、どの程度見られたかということになると、ほとんどその進展を見ておらないし、それでやむを得ざる——やむを得ざるということばは少し言い過ぎるかもしれませんが、一つの手段として公開捜査の方法が最近とられてきておる。私どもは、こういう事件については、何もいま大臣が言ったように、本部長や警視総監を呼んで詰問しようとも考えておりませんし、また捜査のじゃまになるような質問をしようとは考えておりません。また警察官の立場として、いかに国会から要求されても、捜査に関係あるもの、あるいは職務上打ち明けることのできないものは答弁されないのは当然であって、私どもは、それまで何もかも言えという権限を持っておりません。また言う必要もないと考えておる。私の言っているのは、責任がそこの所在であるなら、責任者自身から、一体経過がどうなっておるのかというようなことを聞けばそれでよいのであって、捜査のじゃまになるというなら、ここでいかなる質問がございましょうとも、それは大臣のほうがよく御存じだと思う。この種の事件あるいは法務委員会等におけるいろいろな事件で、捜査線上にあるもので、捜査の秘密ということになれば、いつでも答弁をされてない。またそれを無理に要求した議員さんも私はないと思う。またあるべき道理もない。大臣のようにむきになっておこらなくともよいと思うのです。われわれはそういうことでいじめようと考えておるわけでも何でもない。また国民全体は、こういう大きな警察のミスについてはかなり大きな疑惑を持っている。その疑惑を、国会の場を通じて国民に明らかにしてもらいたい。そうして警察に対する国民の信頼と、それから威信というものを保っていく必要がある。そういうことから私ども申し上げているのであって、警察をここでいじめたところで、それで何も事件が早く解決するわけでもない。そういう筋合いのものでも決してない。そういうことをひとつ大臣も誤解をしないように話をしてもらいたい。
  109. 篠田弘作

    篠田国務大臣 私はあなたを、ずいぶん古い、四十年近い前から知っていますから、誤解もはちかいもございません。しかしながら私は、あなたが委員長の意見はどうかということをさっきおっしゃったから私の意見を述べた。実際、私がそういう責任者を喚問するのがいいとか悪いとかいうべき筋合いのものではありません。御承知のとおり、この委員会理事会において喚問すべしという多数の意見があれば、私がいかにそれをきらいましても喚問しなければなりません。また理事の多数が、やはり捜査段階だから延ばした方がいいというふうにお考えであれば、それは延ばすということがあたりまえでありまして、賢明なる理事諸君がどういう判断をされるかということは、私は何もかれこれ言っているのじゃありません。決しておこっているのでも何でもない。あなたにお答えしたのです。そういうわけですから、ひとつ門司さん、しかるべき手続をもって、理事会に証人喚問の手続をとっていただければそれで済むと思います。
  110. 門司亮

    門司委員 私は委員長と言ったが、あなたも委員長だから勘違いしたのでしょうが、そっちの委員長に要求したのですよ。これをあなたに要求したところであなた自身がこの委員会でやろうというわけにもいかぬ。この委員長に要求してこの委員長から次の理事会に出していただければ話はできるわけでありまして、国家公安委員長に相談して、おまえのほうから出してこいと相談したからといって、はい出しましょうとあなたの方から押しつけて出すわけにいかぬでしょう。それはひとつ勘違いしないようにしていただきたい。私もその手続くらいは大体了承している。  最後に聞いておきたいと思うことは、先ほど宮地局長のほうから話のあった、あるいは公安委員長も直接お話をされた、警察官の、ことばをかえて言えば勇気を持ってということになろうかと思いますが、事犯についてかくすることがこの事件を解決することだという考え方、確信が持てるならば、たとえ逮捕状がなくても、ここに踏み込めばこういうことになっているのではないか、あとで多少の障害、非難があろうともそういう処置をしていくということで、絶えず警察官は大衆の味方をするという勇気がなければならぬと思う。絶えず大衆から遊離して、法律がこうなっているからこうなんだ、おれはこれまでしかやれないのだということで事件を何か妙なふうに持っていくというような態度は、警察官としての教養の問題としてどうかと思う。絶えず警察官というものは大衆をバックにしておれば、たとえ逮捕状はなくても、さっきの委員長のお話のように、ここにこういう犯人がいるのだということになれば、それで踏み込むことはできたと思う。またやれるはずだと思う。しかし、その勇気がなくて、まあ逮捕状がなければやれないのだ、どんな事件があってもこれにタッチしないのだ、現行犯でなければどうにもしようがないのだということによって延ばされていやしませんか。そういう教養はどういうふうになっていますか。局長のほうからひとつそういう教養についての話を伺っておきたい。
  111. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 警察官は法の執行者でございますからあくまでも法には忠実でなければならぬ。しかしながら、御指摘のように法律というものはそれを解釈するものによって幅があると申しますか、おのずから常識というものによって生かされる面もございます。その場合が御指摘のような問題であろうかと存じます。そういう場合に積極的に動くかあるいは消極的になるか、こういう問題はわれわれの一番関心を持っているところで、あくまでも法律に忠実な上においてその法律を生かすか生かさないかということは法の執行者の問題であり、それがすぐ捜査の結果にあらわれてまいりますから、われわれは各警察官捜査意欲をもり立てるようにあらゆる努力をいたし、そういう意味においてまたわれわれもお話を申し上げているのでございます。
  112. 門司亮

    門司委員 いまの局長の答弁ですけれども、ほんとうにそういうことになっているのならもう少し警察行政はスムーズにいくと私は思う。いま法律法律とおっしゃるけれども、警察法の一条に何と書いてあるか。あれが警察の大方針なんですね。あとはその法律としての行動を規制した一つの法律であって、警察法の精神は、前文がなくなったから、前文のことをここで申し上げることはできないと思いますけれども、前文がなくとも、少なくとも警察法の一条というものが警察官すべてに対する行動の基本だと考えられる。そうだとするなら、社会の秩序を守ることのためにどうすればいいか、人間の生命を守ることのためにどうすればいいか、判断ができれば、それから以下の手続といっても差しつかえのないような、枝葉末節とはいいませんが、そういう法令にとらわれ過ぎてものを失敗するという考え方は、これは私はいい警察官ではないと思う。私は、ほんとうに警察官がいい警察官であるには、やはり警察法一条の精神というものが十分に守られて、自分たちの職務を十分に守っていくという考え方に立って絶えず教養されていかなければならぬ。ところがそのことが忘れられて、ややもすれば何か重箱のすみをようじでつつくようなこまかい理屈をこねて、そうして仕事をしない。仕事をしないと言うとおこられるかもしれませんが、それで職務を当然やればよかったと考えられることがおろそかになっていく事例はたくさんあるのですね。そういうものに対する教養、いまこういうことを教養しているとおっしゃるのだけれども、ほんとうに教養しているのか、どういう教養をしているのか、それを一つだけ教えておいてください。
  113. 宮地直邦

    宮地(直)政府委員 各種の法律がございますから、その警察官の行動が直ちに身体の拘束その他、いわゆる憲法で保障した自由に触れるようなものにつきましては、これはあくまでも慎重でなければならぬと思います。しかしながら、法規によりましては非常に幅のある法規、あるいはそれが国民の利益のためにできている法規、こういうふうに法規の性格によって、それらの行動は違ってくると思います。いま警察教養におきましても、私の所管事項ではございませんが、私の所管事項におきましても、抽象的な法規の教え方ということにおいて理解せしめるよりも、具体的事件においていかに運用していくかというような面におきまして、いわゆる詰め込み主義の勉強ではなくて、実際に応用力のある知識、やはりそれを生かすための円満なる良識というものを涵養することにつきまして、いま各一年間の初任教養その他において努力を払っておるのでございます。
  114. 門司亮

    門司委員 終わります。
  115. 永田亮一

    永田委員長 二宮武夫君。
  116. 二宮武夫

    ○二宮委員 先ほど来の答弁を聞いておりますと、国家公安委員長はこれらの警察のミスその他は全部私の責任であるという答弁をされておる。それから後に、なお警視総監あるいは埼玉県の本部長が当面の責任である、こういう答弁をされたわけでありますが、私はここで資料をひとつ国家公安委員長にお願いしたいのです。  あなたの先ほどの答弁を聞いておりましても、国家公安委員の中には旅行中で自分が招集してもなかなか思うように招集に応じられない人がある、こういうような御答弁があったわけですけれども、この警察法第五条第二項の十四項目にわたるところの警察庁の管理というものが、国家公安委員会の性格から申しまして、私も自分の経験から考えまして、国家公安委員都道府県公安委員というのはどうかするとロボットになるようなおそれがある。したがって、私が要求したいのはここ二年ぐらいの、三十六年、三十七年、三十八年ぐらいの国家公安委員会の開会状況、日時とその出席者の人名、それをひとつお出し願って、できればそのときの議題。どのように国家公安委員会責任を持って警察庁を管理しておるのかという実態がどうもあやふやになっているような感じがする。この際意見だけ申し上げまして、答弁は必要ありませんが、資料としてひとつお出し願いたい。
  117. 永田亮一

    永田委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十八分散会