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1963-06-06 第43回国会 衆議院 大蔵委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月六日(木曜日)    午前十一時九分開議  出席委員    委員長 臼井 莊一君    理事 足立 篤郎君 理事 鴨田 宗一君    理事 毛利 松平君 理事 吉田 重延君    理事 堀  昌雄君       安藤  覺君    天野 公義君       伊藤 五郎君    大久保武雄君       金子 一平君    川村善八郎君       久保田藤麿君    田澤 吉郎君       濱田 幸雄君    藤井 勝志君       藤枝 泉介君    坊  秀男君       佐藤觀次郎君    坪野 米男君       広瀬 秀吉君    武藤 山治君       横山 利秋君    春日 一幸君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         大蔵事務官         (理財局長)  吉岡 英一君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君  委員外出席者         大蔵事務官         (理財局経済課         長)      塚本孝次郎君         大蔵事務官         (理財局証券部         長)      加治木俊道君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 六月五日  委員芳賀貢辞任につき、その補欠として稻村  隆一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員稻村隆一君辞任につき、その補欠として芳  賀貢君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 六月五日  砂糖消費税法を廃止する法律案有馬輝武君外  八名提出衆法第四二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  金融緊急措置令を廃止する法律案内閣提出第  一六二号)  税制に関する件  金融に関する件  証券取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 臼井莊一

    臼井委員長 これより会議を開きます。  参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  外国保険事業者に関する法律の一部を改正する法律案について、来たる十一日、生命保険協会会長弘世現君及び日本損害保険協会会長高木幹夫君を、また証券取引に関する件について、来たる十三日日本証券業協会連合会会長福田千里君、東京証券取引所理事長井上敏夫君及び日本証券金融株式会社社長谷口孟君をそれぞれ参考人として委員会出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 臼井莊一

    臼井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  4. 臼井莊一

    臼井委員長 税制金融及び証券取引に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。広瀬秀吉君。
  5. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 金融関係物価関係等についてお伺いをする前に、つい最近青色申告申告者が出して、それに対する更正処分通知を出す場合に、理由付記しなければならないということは所得税法四十五条一項でありますかに定められておるわけでありますが、その問題をめぐって最高裁から判決が出ておるわけです。これは結局国の言い分が、差益率を検討して、実際と違うからこれこれの金額の申告に対してこれこれを納めろ、こういう通知をすれば足りるという見解で上告をしたわけでありますが、最高裁敗訴をいたしたわけであります。この問題につきまして、私ども国税通則法の審議に際しましても、詳細な調べた結果について、ここに脱漏があり、ここにごまかしがあるというようなことを逐一理由として付記するのが、当然税制における民心の要請をかなえるものなのだということで、ずいぶん追及をしたわけでありましたが、今回そういう私ども考え方というものが、最高裁によって判例として裏打ちされた形になったわけです。このことを税制民主化全般の問題として、徴税関係民主化一つのチャンスとして私は受け取るべきであろうと思う。単に青色申告に基づく更正処分通知書に、おざなりの、どういうところが間違っておったのかわからないような、どういう理由によってということがわからないような簡単な理由付記だけで足りるのだという考え方、こういうものが民主主義を否定した徴税考え方だったと思うのです。それが判例として今回明確に最高裁から提示をされたわけです。大蔵大臣として、税制全般民主化について、どういうお考えをお持ちであるか、この点を一つ伺っておきたいと思います。
  6. 田中角榮

    田中国務大臣 判決を待つまでもなく、昭和三十四年かと思いますが、長官通達を出しまして、できるだけ納税者理解ができ得るように理由を付すようにという通達を出しておるのであります。また法律上の問題として争っておりました問題に対しては、判例が示されたわけでありますので、これらの問題に対しては、判例違反にならないように十分慎重に対処してまいらねばならぬことは言うを待たないと思います。ただ具体問題として申しますと、現在民主化されておらないというような見方もございますが、世界的な例から見まして、日本徴税方法、また納税制度申告納税制度をとっておりますから、体系的には御承知のとおり世界的水準にある民主化された体制であることは事実でございます。また現実問題として、いろいろ御指摘になるような議論になるような問題も間間あることも事実でございますので、これらに対しては大蔵省としましても、特に徴税民主化納税というものを国民自体が喜んで、また理解をしてやってもらえるような方向をできるだけ完成するように努力をいたしておる次第でございます。ただすべての更正決定に対して理由を付さなければいかぬ、こういうことになって、その理由も非常にこまかい理由を付さなければいかぬ、これは理論的には非常にそのとおりでございますが、そのようになりますと、申告納税という制度そのものに対して問題があります。申告納税というものは、納税者の自主的な申告を待つという非常に税制度民主化の先端をいく方法をとっておるわけでありますが、これに対してこまかい理由を付せということになると、こまかく調べるということでオウム返しになるわけであります。でありますから、いわゆる申告納税制度のよさを十分理解しながら、そして納める人と受け取る側の国税庁当局が、お互い理解をし合うということが徴税の最も理想的な姿でありまして、先ほど申し上げたとおり、法律的には最高裁判例違反など起こさないということに、当然法律上の措置が必要ならばいたしますし、また現行制度のもとでも非難を受けないように民主化努力を続けるのでございますが、理論的にだけ押していきますと、そういう問題もありますので、私のほうは逆に判例どおりにやればこうなりますよということを申し上げるのではありませんが、徴税というものはなかなかむずかしい問題であるということで、政府側としては納めていただく国民理解を得られるということを前提にして善処をしてまいりたいというのが基本的な態度であります。
  7. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 基本的な態度として、最後のところで税制民主化のためにつとめてまいるということでありますから、その点をぜひこういう機会考えていただきたい。この種の問題、これは何もこの問題だけに限らない。そのほかにもいろいろ問題があるわけでありますが、きょうはそのことが中心でございませんから、一つ一つ申し上げませんけれども、やはり全般にわたって納税者利益を保護するという立場から、もう一ぺん検討を加えるというようなことをやっていただかなければならぬと思うのです。三十四年から通達が出ておることは私も知っておりますけれども行政処分にこの理由付記しろというようなことは、この判例にも示されておるように、その処分理由というものを相手方に知らせて、不服の申し立てに便宜を与えておる趣旨に出ておるものであるということなのであります。したがって、その理由が十分に付記されていないということであるならば、処分自体が取り消しの事由になるのだということであります。所得税法の場合におきましても、正式の帳簿を備えつけておる、そしてそれが法定の正当な記載をやっておる、その帳簿記載を無視して更正することはないんだということで、納税者利益を保障するのだ、そういう趣旨に出ておるのだ、その考え方、そういう気持ちというものが貫徹されるような程度の処分に対する理由付記、そういうものが求められておるわけであります。このことだけではなしに、全般的に、この機会に全体を当たってみる、もう一ぺんまたほかの事例で最高裁に持っていって、また国が敗訴をするというようなことが再びないように、事前に手を打っていかなければならぬし、また三十四年の通達それ自体においても、この判例においていわれておるだけの要件というものを満たしておるかどうかという点については、私は疑問があると思う。現在やられているのでも、依然として相当簡単なものが多いというように見ております。そういうような点についても、この通達自体で大体解決はついておるのじゃないかということでなしに、実際に行なわれておる実情というものをもう一ぺん調べ直してやっていただく、こういうように考えておるわけでありますが、いかがですか。
  8. 田中角榮

    田中国務大臣 お説のとおり、就任第一の仕事として徴税機構民主化合理化を取り上げ、いま着々と整備を急いでおるのでありまして、御説の線に沿ってやってまいりたい、このように考えます。
  9. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 それでは税制の問題はそのくらいにいたしまして、六月四日の新聞に、全銀協から物価等の関連において低金利政策批判の問題が提示をされました。国会におきましてもこの数日間、特に予算委員会中心にいたしまして物価論議が非常にやかましい問題になってまいりました。この中で物価の見通しがいまのまま推移するならば、昭和三十八年度におきましても六%を上回るおそれがあるというような状況がはっきりしてきたわけであります。低金利政策というものとこの物価値上げの問題あるいはまた高度経済成長そのもの、そういうようなものがからみ合って物価を上げている。特にとどのつまりは高度経済成長そのものの中に物価を上げる要素というものが、これはもう宿命的にひそんでいるんだ、こういうような形の批判がなされているわけでありますが、物価抑制対策も、閣議のゴシップなども出ておりますが、安いものを食えばいいだろう、大根が高ければニンジンを食えばいいんだろうというような論議がなされているということを聞いて、たいへん私どもも残念に思うわけでありますが、物価値上げ根本原因は一体どこにあると大臣はお考えになるのか、この点を一つ明らかにしていただきたい。
  10. 田中角榮

    田中国務大臣 物価問題に対して、ただいま御説にありましたように、閣議では種々議論をし、同時に施策を進めておるのでありまして、大根が高かったらニンジンを食えというような議論に終始をしているわけではございません。真剣な問題として取り組んでおりますので、御理解を賜わりたいと存じます。物価問題の中でも特に消費者物価の問題を御指摘でございますが、消費者物価というものはなかなかむずかしい問題でございます。しかし政治的にも、われわれが生きていくために、社会をよりよくしていくためにも、物価問題とまっこうから取り組んでいかなければならぬということだけは事実でございます。物価の中で一番の問題は、戦後急激に消費者物価の中で非常に高騰部分を示しております。生鮮食料野菜とかこういうものに対しまして、戦後の特殊事情が非常に大きな原因になっておるということは考えられます。これは野菜などをつくっておっても合わない、鉱工業生産の指数と農林関係成長率を比べてみてもこれは相当な差がありますので、若い労働者はだんだんと鉱工業生産のほうに、第二次、三次産業のほうに移動していくという問題で、生産をする量が落ちておるという問題、もう一つは大都市に過度に人口が集中しておる。東京などは年間六十万も人口がふえておるわけでありまして、現在の流通機構というものがそれに追いついていかない。東京の市場などは御承知のように五百万単位につくったものでありますが、現在潜在人口を入れて千万をこしておる東京考えますと、流通機構そのものに対しても相当な問題がございます。同時に大企業労働賃金が上がったために、引き続いて中小企業の、いままで非常に低廉であったものが、当然所得格差是正という線からサービス料金その他が価上がりをしておりますが、そのうちのほとんど大半が人件費の増加によって占められておる。こういうような問題もございまして、いろいろな理由がございます。特にわれわれが消費をするものの質が非常に変わっております。いままでわれわれは大根とかニンジンとかゴボウとかそういうものは、長もちをするし非常に安くていいものだというふうに考えておったのですが、このごろは季節ものであるいわゆるレタスとかそういうなま野菜を食うという嗜好が非常に大きく伸びておる。いわゆる食生活の内容そのものも変わっておる。また住居費等においても、戦後の七坪半が十坪になり、十二坪五合になり、十五坪になり、十七坪五合になり、いま平均二十二坪五合というようなものを、公営住宅法及び公団等においても目標をそこに置いておるという、いわゆる質が相当変わっておるというような問題がありますので、日本の現在の状態においては、消費者物価抑制という問題はたいへんにむずかしい問題ではありますが、いずれにしても根本を探求しながら一つずつ解決努力をしておるわけでございます。まあ全く観念的な問題といいますか、基本的な考え方――この間全銀協が述べましたものを引例して申し上げると、最終的には貯蓄増強ということが一つの大きな物価政策の柱になるということを全銀協も言っておるわけでありますが、私もこれが一つの柱であるということは考えておる次第であります。
  11. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 結論的に言われた問題は、私どもはそれはむしろ低物価政策が行なわれることによって、あるいはその他の可処分所得をふやすというような政策が行なわれることによって、貯蓄というものは増大するのだという見解を持っておるわけで、それが物価を下げるきめ手になるのだというようなことならば、強制貯蓄をやるより手がないということになるのであって、その議論はやはりさか立ちだと思うわけなんです。それ以上に、問題は、日本生産構造というような問題にメスを入れない限り、この問題はいかに政府がいろいろな流通機構を若干変えるとか、あるいはもうそろそろスーパーマーケットをおそれるなというようなことで、できるだけ安い品物をマージンを少なくしてやろうとか、そういうようなことや、あるいはその消費の質が少し高くなり過ぎたからそれをもうちょっと下げて安いサンマやイワシを食うようにというようなそういうことでは、私は物価問題というのは解決しないのじゃないかと思うわけなんです。それはやはり、予算が通って地方選挙を迎えるちょうど中間ごろに、大蔵大臣は何とか景気も上向きに転じさせなければいかぬということで、低金利政策もどんどん進めるのだ、しかも大型予算が通ったばかりで、これをできるだけ早く予算の交付を早めて、予算の使用を早めて、そして大型予算景気に及ぼす乗数効果を早く出そう、こういうような発言をなさったわけでありますが、こういうようなことはやはり高度経済成長を推進する立場だと思うのです。こういうようなことから、やはり物価というものが上がる問題点がどうしても出てくるのだと思うのですね。こういう点について特に物価が上がって低金利を推進する、低金利を推進しながらなおかつ物価はどんどん上がっているというような問題、これはわれわれのいまの常識からいえば、低金利政策をとれば資本コストも下がるはずだ、ところがそれが下がらない。こういうような問題は、いろいろ資本コストが上がる要素というものは非常に多くなってきているというような問題なども考えるわけですが、やはり基本的には高度経済成長政策そのものの中に、どうしても物価が上がらざるを得ない問題点というものがあるのじゃないか、こう思うのですが、その点についての考え方はいかがですか。
  12. 田中角榮

    田中国務大臣 これはわが党及びわが党政府との間では、この問題に対しては過去数年間議論をしてまいっておるわけでございますが、高度成長ということが進んでいきますためには、現実的理論的にも物価は多少上昇ぎみになっていくということは、これは世界的な現象でございますが、また理論的にもそうなるわけでありますが、ただこのごろの物価上昇そのもの高度成長という経済政策を進めておりますからこういうものが起こるのであって、これをやめれば物価は下がるのだ、不景気にすれば下がるのだ、こういうことにすぐなるわけでございますが、そうは政府考えておらないのであります。終戦直後に物価が非常に上がる、いわゆるインフレ状況がございました。このときは御承知のとおり賃金物価との悪循環がお互いの討論の目標になったわけでありますが、現在でもやはり物価を下げることになりますと高度成長経済という問題ではなく、問題はいままで農林、通産その他いろいろなものに対しても、戦後荒廃の中から立ち上がる、産業保険という意味で、また所得差格是正という意味価格安定という政策を与野党とも非常に強くとってまいりました。そういう意味では物価が下がる要素はないわけであります。下がるときは政府がてこ入れをしよう、こういうことでありますから、これから自由化が進んでまいりますと、お互い合理化によってそのメリットだけは当然消費者にはね返って物価は下がっていく、こういうふうに構造的にならなければならないのだということが一つございます。  もう一つは、やはり賃金生産性の問題でありますが、生産性賃金が上回ったのは三十六年、三十五年だけじゃないかと言いますが、理想的に物価対策の面から論断をしていきますと、生産性のうち賃金にはね返るもの、賃金に見合うものは幾らなのか、これはただ日本現状で申し上げるわけではありませんが、理論的な根拠からいいますと、まず生産性が一〇%上がった場合には、コストの切り下げ、いわゆる賃金にはね返るものに割り戻されるものが三分の一、あと資本蓄積に回されるものが三分の一、あとの三分の一は将来の価格変動とか、将来的な、値段を下げるというような大衆に還元せられるべきものであります。そういうものの原則理論から考えますと、生産性の八割、九割は賃金となり、ある時期には二〇%賃金上昇もある、こういうこともありますので、ただ別の政策として所得格差の解消もはからなければなりませんし、価格の安定もしなければいかぬし、これが戦後の日本の苦難な状態であります。でありますから、自由化に対してこれらの問題を、二兎を追う者は一兎を得ずといいますが、三兎も五兎も十兎も追わなければならぬのが日本の実態なのでありますから、こういう中でできる限り消費者物価を押えていくことを目標にしながら、じみちに消費者物価を下げていくことに努力していくべきだと考えておるわけであります。
  13. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大蔵大臣言い分を聞いてみますと、価格の低落を防ぐことに政策の重点がいままで置かれてきた。特に農産物なんかの場合価格支持というようなことをわれわれも強く要求しているところです。そういう現象は確かにあったわけです。しかしそのことが物価を上げてきた原因なのかどうかという点については、私は疑問があると思うのです。最近における製造工業関係資本コストをながめてみますと、減価償却の面におきましても大体三十年を一〇〇にいたしまして、三十六年の下期までしか統計を持っていないのですけれども、一二〇・八になっておる。二割以上上がっておる。金融コストは三十四年の一〇〇に対して三十六年の下期、ここらのところでは九八・三ということで、金融コストは若干ですが、低金利政策が出ているから下がっている。しかしこれは三十七年あたりはまた相当高くなっているのじゃないかと思います。配当コストが一五%ふえている。販売コストが一六%ふえている、こういうぐあいに、非常に資本コストは高まっているわけです。こういうのが一体どこから出てきたのか、別に生産性の上がりぐあいを見ていると、これはたいへんなテンポで上がってきているわけですね。世界的な最高の水準が上がってきている。こういうことがいわれたにもかかわらず資本コストが同時に非常な上がり方を示しております。特に減価償却などにおいて二割を突破しておる。こういう現状はここらあたり問題点があるのではないか。そのよってくるところはやはり今日の高度経済成長中身というものが、特に設備投資中心にした中身というものが、この過剰投資であり二重投資であった。そのいい証拠は、今日の減産態勢操短態勢というものが軒並みに出ている。鉄鋼でも二割から二割五分、あるいは繊維関係なんかではひどいところになりますと五〇%近くも操短をしている、あるいは合成繊維なんかでもそれに近い操短をやっている。そういうような結果は一体なぜ出たのか、ここに問題の本質があるのではないか。国民経済的な視野から輸出にこれだけ向くだろう、国内の消費はこれだけあるだろう、こういうようなしっかりした基礎の上に生産規模というものを決定し、そういうところには財政資金中心にして送り込んでいくという、その金融もばらばら、日銀がその資金を貸し付ける質の問題にまで干渉しておるというようなやり方、こういうようなところと、それからお互いに自分のマーケットシェアをふやそうというようなことによる不必要なものについての二重投資三重投資が行なわれる、そういう結果が操短になる、資本コストは必然的に上がってくる、こういうところに物価騰貴という問題もあり、またこの低金利政策をじゃまする問題点があるのではないかと思うのですが、そういう点について反省というのは――政府物価対策根本はそこに求めなければ、臨床的にまわりを堂々めぐりしているような臨床対策だけでは、この本質に迫らない限り物価値下げの達成ということはできないのではないか、こういうように思うのですが、いかがですか。
  14. 田中角榮

    田中国務大臣 高度成長経済政策を進めておりますために、設備投資が過剰に行なわれた、その意味操短等も行なわれておりますので、資本圧力もありまして、非常にコスト高になり物価上昇原因になっている。これは一つ考え方としてはそういう考え方が起き得ることは私も認めますが、しかしそのようになっておりましても、確かに設備は過剰な投資が行なわれました、また操短も行なわれておりますが、しかし卸売り物価は横ばいもしくは下がっておるのでありまして、われわれがいま問題にしております消費者物価の問題は、生鮮食料品とか、生鮮魚介類とか、住居費とか、光熱費とか、それから公共料金、こういうものであります。われわれの生活にも直接影響するものであります。公共料金につきましては相当押えております。公益企業バス料金などは昭和二十六年から十二年間据え置いているのであります。十二年間に賃金が幾ら上がったかということを考えてみますと、よくも押え得たと思われるくらいのものであります。こういうふうに物価は私たちとしては押えているのであります。今まで官立学校公立学校等授業料を上げたということは、民間に比べれば非常に少ないのであります。ただし、このごろは非常に進学率が多くなりましたので、民間私学そのもの昭和二十三年、二十六年当時と違いまして、増設増設をして坪当たり五十万円の土地を買って鉄筋コンクリートの五階、八階建てを建てても収容し切れない、もっと採用人員をふやさなければいかぬ、こういう現象にかんがみましてどうにもならないから政府は一部補助しておりますが、御承知のとおり私立の授業料は上がっておりますから消費者物価にそれがはね返って、非常に消費者物価が上がっておる、こういうようなものでありまして、消費物価そのものをどうしても下げなければならぬという問題は、成長経済論などというよりも、成長経済に対しては自由化というもっと大きな問題があるのであります。日本民族根こそぎどうするかという問題に対処しなければならない問題でありますから、物価論に対してはやはり貯蓄物価というものはどうなるのか、一体日本物価というもの、特に消費物価が上がっておるのはどこに原因があるのかというと、やはり流通機構の問題とか、われわれが価格安定政策というものに重点を置いてきたとか、それからいままでは自分で食べるようなものは、少なくとも国民の半分くらいは野菜などは自分でつくっておった戦前に比べて、現在はつくっても合わない、買ったほうがいいのだ、こういう考え方であります。これは事実皆さんも御承知のとおり、昔は大阪や東京で退職料をもらったら、いなかに帰って自分の食いぶちぐらいは自分でつくったものでありますが、このごろは学校の校長先生などが三百万という退職料をもらっても、子供が東京の学校に入っておるので、二軍生活にたえないというので、全部東京や大阪という都市に逆に転住をしてきておる。こういう問題を根本的に解決しないで、いわゆる流通機構の問題一つだけ取り上げて、消費者物価対策を行なっても片づく問題ではありませんので、私どもはその意味でより広い立場で衆知を集めて、お互い議論のための議論とか、イデオロギーによって既定のレールの上を走って物価論をやろうというような考えではなく、政府は一体どうすればいいのか、民間には一体どういうふうに協力してもらえばいいのか、また物律上現行法をどこまで広げればいいのか、民間の自由濶達な競争力をどこまで活用すればいいのかというような問題を一つずつ片づけていきたいということを考えておるのでありまして、少なくともいまの消費物価高が高度成長経済政策に基づくものであると早計に判断するのは間違っておると思います。
  15. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 流通機構の問題を整備することも当然やらなければいかぬ。そういうことを私どもはたいした価値のない問題だ、そう言ってしまうわけではないのです。そういうこともぜひやっていただきたいし、あるいはその他考えられ得る限り抑制の対策というものは全部やってもらいたい。それだけではしかし、構造的な形の中から物価高というものが生まれている今日の問題というものをなかなか解決できないのじゃないか。たとえばいま野菜なんかの問題を大臣が引き合いに出されましたけれども、この問題なんかにしても、私はやはり高度経済成長の結果そういうことになっていると見るんです。というのは、今日高度経済成長の中で地方に、特に野菜をつくる都市近郊の地帯なんかにどんどん工場が進出しているわけです。もうとんでもない山の中にどんどん工場が立って、そしてどんどん農村の人たちが働いている。第二種兼業がどんどんできるわけです。しかも第二種兼業で働き盛りの若い青年層の人たちはみんな工場に働きに出ちまうんです。野菜、蔬菜をつくるというものはこれは政府の選択的拡大で、拡大の方向は農業基本法では示されているわけです。ところが工場が来て、そこの賃金が、野菜をつくっている農民やあるいは米をつくっている農民よりもよほど賃金がいいんです。そうすればどんどん工場に働きに出てしまう。そうすると三ちゃん農業の形のものが出てきて、野菜の供給昂はどうしても減っちまう。おじいちゃん、おばあちゃんでは野菜がつくれない。かなりの労働を必要とします。しかも高度なすぐれた技術を必要とするのです。そういうのをおかあちゃん、それからおじいちゃん、おばあちゃんではとてもやれない。そういうところにやはり野菜がなぜ値上がりしているかという問題点というものがあるだろうと思います。もちろん天候による野菜の問題、あるいは貯蔵性のないものが非常に多いというような問題等もありますけれども、やはりそういうところに農村の生産構造がもう変わってきている、そういう問題点というものの認識がないと、これは出てきた表面づらだけ見て、それじゃ流通機構をうまくやれば根本的に解決するか。もう野菜の供給力というものはだんだん減ってくるということは言えると思うんです。特に景気変動や貯蔵性に欠けるようなもの、こういうようなものはなるべくつくらないようにしようという農民の知恵が、そこから出てくると思うんですね。そういう農業における生産構造の問題といったようなことも、一方においては製造工業等における二重投資過剰投資というような問題から、大体卸売り物価は横ばいというところに、私は問題があるだろうと思う。生産性がぐんぐんものすごい勢いで上がっているのですから、もう五、六年の間に何倍という、何百%という形で生産量や何かが上がっているのです。生産性にすれば五、六〇%かもしれないけれども、そういう生産量が上がっておってなおかつ物価が下がらない、卸売り物価横ばいだ、それは実質的には上がっているということじゃないですか。だからそういうやはり生産構造が変わってきている。それから製造工業等におけるそういう過剰投資の問題というようなものが、卸売り物価横ばいだとおっしゃる大蔵大臣考え方は、もう実質的にはそれは値上がりなんだ、下がるべきものが下がらない。下がらないようにしているのは何かという、その点について答えてもらいたいのです。
  16. 田中角榮

    田中国務大臣 卸売り物価が下がらない、横ばいというのは上がっていることだというのですが、これは賃金が上がっております、コストが上がっております、この中に先ほど言ったとおり過剰設備投資いわゆる資金圧力とか金利圧力、いろいろなことをあなたは強調しておられるわけですが、これは少なくとも日本卸売り物価が横ばいもしくは下がっておるということは、世界各国いわゆる先進工業国に比べてみれば、驚異というくらいに安定的なものであります。これは比較論であります。でありますから、現在の日本議論をするのは、国内的な問題よりも貿易為替の自由化に対処して国外の諸外国の市場において公正な競争に打ち勝っていけるかという立場で検討すべきでございまして、私は先ほど言ったとおり、昔十年、十五年前にさんざんお互い議論したように、賃金とか物価の悪循環論をいま言って、お互いにエキサイトして、物価安定という具体的な問題を解決する方向よりも逆な議論の方向に行くような答弁もしたくないし、それは日本人全体として、こういう問題はわれわれの生活自体に関する問題でありますので、一つずつ具体的に政府もこうします、こうするかわりにこれだけ消費者物価は下がるんですというような前向きの政策を私たちは立てていきたいという考えであの政策を進めておるのでありまして、私は、いま相当上がり続けてきた卸売り物価が横ばいもしくは下降ぎみにあり、自由化に対応するようやく基本的な態勢ができつつあることを自他ともに認め得るようになったことは成功と考えております。われわれ自身が考えなければならぬのは消費者物価でありまして、消費物価に対しましては先ほどから申し上げておりますとおり、ただ高度成長経済というものが消費物価にはね返っているんだ、高度成長経済やめればいいんだ、これはやめてスケジュール闘争のように、毎年毎年やる春闘も何もやらないで、四、五年間お互いにがまんして低賃金に甘んずるんだ、こういう気持になるかというと、そういううしろ向きな考えでは日本自由化に対応していけないのだ、やはり国際競争力をつけながら、賃金も国際水準に上げてお互いの生活自体をよくしながら、特に私は、あなたも御承知でありながらおっしゃっておられると思うのですが、日本の一番大きな問題は、やはり敗戦経済ということであります。もう一つは潜在失業人口が非常に大きい、これを自由企業という中小企業やその他の犠牲においてカバーしておるという特殊な状態で、血で血を洗わずして、血の粛清を行なわず血の犠牲を出さずに、今日までの成長を遂げてきたのでありまして、こういうファクターを一つずつみなお互いが知っておるのでありますから、やはりこういうものに目をおおわないで、動かすことができない基盤というものをお互いが共通の基盤として、それをまず前提にしてその上に可能な限度一ぱいに努力を進めていくということを考えていただければ、私はいま政府がとっておる高度成長経済というものは、これはその過程においていろいろな障害もあり、いろいろな具体的な問題では是正すべき問題はありますが、おおよその方向においては間違っておるものではないし、民族が立っていくにはこれ以外の方法はないのだ、こういうふうに考えておるわけであります。
  17. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大蔵大臣誤解していると思うのですが、私は決して高度成長経済をやめろなんという議論は、一言も言っていないのです。高度成長経済中身が問題、やり方が問題です。高度成長経済は、これは高度に経済の成長がはかれることは何人も否定するところではありませんし、そうしなければいかぬです。しかしながら高度経済成長中身が間違っておって、自由に野放しにやらしておる。これはなるほどいろいろな形で規制はしているけれども、その規制なんというものは本質に触れていない。そのいい証拠が、せっかく何百億の設備投資をして八幡製鉄の戸畑工場だけで七百五十億の設備投資をやって、それが二割ないし二割五分も遊ぶ、あるいは二割減産をするという事態にさせるという結果を生むやり方、そういうものにメスを入れない限り解決はないということを言っているわけです。それから賃金コストの問題にしても三十年を一〇〇にして、これも古い資料なんですが、大体三十六年で一五九、六割方上がっているわけです。これは現在ではもっと、七割近く上がっているという形が出ていると思うのですが、その間において賃金コストは三十年を一〇〇にして三十六年は大体九四に下がっているのです。先ほどの資本コスト、これはほとんど金融コストが若干下がっただけで軒並み全部、販売コストでもあるいは減価償却でも上がっている。これはもうはっきりした現実なんですね。それで賃金コストはこのように下がっているのです。最近宮澤企画庁長官が、賃金コスト・インフレが出ているのじゃないかというようなことを警告しているというようなことは、こういう数字を見れば、大蔵大臣もまさか宮澤さんに歩調を合わせてこういうことを考えているとは思いませんけれども、こういう事態について、一体賃金が上がることが物価値上げ原因だ、したがって賃金コスト・インフレの状態に今日あるのだからというようなことを言う気持がありますか、その点、ひとつ伺ってみたいと思います。
  18. 田中角榮

    田中国務大臣 そういう状況にあるかどうかは別にしまして、コスト・インフレになってはいかぬ、こういう施策をいま考えておるわけであります。
  19. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 もしコスト・インフレだというようなことを言うとしたら大問題だと思うのですが、非常に慎重な答弁をされました。確かに賃金コスト・インフレというようなことになってはやはり経済成長がとまることにもなるわけでありますが、欧州あたりでは、賃金上昇率のほうが長期にわたって生産性をずっと上回ってきたというようなことが言われておるわけでありますが、日本の場合にはほとんどこの一、二年ぐらいがちょっと生産性を上回ったという程度であって、いままでは全部賃金上昇率のほうが生産性をぐっと下回ってきたのですから、これがちょこっと出たぐらいのところで宮津さんのようなことを言われるのはわれわれは心外です。しかも物価値上がりの犯人は賃金上昇にあるのだというような形で持っていかれたのでは全然施策の根本を誤るだろうという気持ちでおるわけであります。そこで、これから低金利政策というものは、依然として物価対策考えながらも、大蔵大臣は低金利政策は続けていく、こういうことを表明されておるわけでありますが、この点についての考え方を、物価問題に低金利政策の推進ということが抵触しないのかどうか。全銀協のほうではこれは問題だ、もうそろそろここらで一服か何か知らないけれども、とにかく低金利政策とは矛盾するということを言っているわけであります。その点についてお答え願いたいと思います。
  20. 田中角榮

    田中国務大臣 低金利政策といいますか、政府は国際金利のさや寄せ、こういうことを言っておるわけであります。低金利というのは、金利が低いほど企業金利負担が少なくなるのでありますから、これは好ましいことである。困るのは銀行だけで、金を使うほうは資金コストが下がってくるということでございまして、金利圧力からのがれるということでありますから、これは非常に好ましいことである。ただそういう一般的な考え方よりも、国際競争力をつけていく、貿易為替の自由化に対応する国際競争力の培養という意味からいって、できるだけ早い機会に国際金利にさや寄せしていく、またいきたいということは論のないところであります。でありまして、この四月まで公定歩合を四回にわたって引き下げたのも、日銀当局も、また私の当時の談話においても発表いたしましたとおり、金融環境の整備がだんだんなされつつありますので、当時の状況においては預金金利を引き下げなくても、金融機関の合理化によりまして公定歩合も引き下げられる、預金金利の引き下げもこの程度は行なわれるという見通しのもとに公定歩合の引き下げも行なわれ、その後民間金融機関の貸し出し金利も引き下げられておるわけであります。これ以上引き下げられないのかといいますが、これは環境の整備を進めておりまして、引き下げられないような段階にきたら困るのであります。これは引き下げられるような環境整備をいまよりもより強く進めてまいりまして、できるだけ早い機会にそういう環境が整備されたら下げていく、こういうことでないと、八条国の移行を来年の四月、五月、六月と言わないで再来年にできるのか、一括関税引き下げというものに対して背中を向けるのか、OECDの加盟をやめるのかという問題にすぐぶつかるのであります。OECDの加盟も八条国の移行もガットの関税引き下げも日本のためによくないというなら別ですが、日本はそれらの道を進まなければ日本人の生活はこれ以上向上しない、こういうのが大前提でありますから、やはり貿易為替の自由化ということには、窓を開いて進めていく基本的な方向は続けていかなければならぬ。であればいろいろな低金利政策、いわゆる国際金利のさや寄せの過程において起こり得る問題は起こり得ないように適宜処置をしながら、原則的には金利は国際的金利さや寄せの方向に推進していくということになるべきだと考えておるわけであります。
  21. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 低金利は、OECD加盟にあたっても、あるいは自由化の問題との関連上これは進めなければならない、国際水準にさや寄せするという立場から当然考えられることでありますが、大型予算はどんどん動き出しておる。しかもできるだけ投資を、特に公共投資等は重点に取り上げられ、そういう財政資金乗数効果というようなものも、大蔵大臣の言明によってできるだけ早く使っていけというような号令もかかったようだし、そういうようなものが出てくる。しかもことしの設備投資の内容を見てみますと、中小企業に相当な比重が移ってきたという特色があるわけであります。そういたしますと、非常に小さいところでありますから、大きいところを押える以上にこれをコントロールして過剰投資にならないように、あるいは二重投資にならないようにという配慮ということもこれは相当大きな問題点になるであろうと思いますが、いままでも実は比較的そういうコントロールがきくはずである大企業設備投資の際にも、この設備投資の行き過ぎというものが非常に行なわれた。中小企業がこれに追いかけてようやく二年ばかりずれてここにきておるわけであります。そういう事態ができてここでまた中小企業が、減産しなければならぬ、生産のレベルダウンをやらなければならない、操短をやらなければならないということになったら、ここでまた非常に大きなガラがくるといいますか、そういう問題もこれはより一そう深刻な形でくるのではないか、こういうものについての特別な配慮というものは私はなければならぬと思うのです。そういうようなことを防ぐためにも金融のシステムというものが一番大きな問題ではないか。オーバー・ボローイング、オーバー・ローンというような問題を解消していくために答申等もなされて着々実施に移されておるわけだけれども、こういうようなものがいまの日銀、市銀を通ずる、しかも日銀が市中銀行の貸し出し先の質の問題にもタッチするというような問題なんかにもやはり問題が一つあるだろうということで、金融の問題というものをもっと――これは自由主義経済、資本主義経済の中では若干無理な点はあるだろうけれども、そこらのところを蛮勇をふるった形で、金融をどこにつけていくか、どこに国民経済的に最も効率的な資金投資ができるのか、こういうような形でのチェックをしていかない限り、これが根本的な解決というものに至らないのじゃないかという危惧を持つわけです。金融政策根本的な変革になるかもしれませんが、やはり国のコントロールがきく資金を大量に使う。日銀の貸し出しというようなことを極端に減らしていく、そして財政資金といいますか、そういうものを、これは国会における審議、民主的なコントロールというような問題も含め、そういうような方向というものがやはり強く打ち出されていかないと、金融の面から幾ら大蔵大臣が一生懸命物価値上げを阻止しよう、あるいは過剰投資のないように持っていこう、そして国際競争力が真についていくようにしようとしても、いまのこんな操短なんかをやっている現状物価が上がっていく現状の中では、OECDに早く加盟しよう、自由化を早くやろう、こういうことにとても太刀打ちできないのじゃないか。たとえばイタリアのモンティカティニの方式なんというものはやはり一つの参考になるのじゃないか。ああいうような形の方向に政策を転換していくというような考えはあるかどうかというような点についてひとつ伺っておきたいと思います。
  22. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のとおり、輸入も伸びてまいっておりますし、在庫投資も非常に低水準になりましたが、同時に輸出も相当伸びておりまして、現在の状態では五月末の外貨じりも十九億ドル近くということでありまして、国際収支上の不安はまずないというふうに考えていいと思います。それから先日きめました輸出目標もおおむね達成できるというような考え方でございます。でありますから、現在、政府考えなければならぬ問題は、先ほどあなたが申されたとおり、消費者物価をどうしていくかということ。もう一つ景気刺激的なことが、さなきだに過去において設備過剰投資となってあらわれた大企業がまたぞろ大きな投資を行なって景気過熱を来たさないか。その反面に、中小企業自由化に対応する設備の近代化その他設備投資というものに対して適切なる財政措置がとられるかという問題に極限されるわけであります。過去において非常に投資が進みましたのは、都市銀行に資金が集中をした。また地方銀行は、コールが非常に高かったというので、コールにほとんど資金を回しておって地元産業中小企業対象というものは、数字の上では相当伸びておりましたが、重点的でなかった。その上、なお都市銀行等は日銀から大きな借り入れを行なって、これを集中的に大企業に貸し出しを行なった結果、設備過剰投資が行なわれたわけでございます。まあ一部においては、大企業がまたそろそろ自由化に対応して設備投資の意欲を燃やしておるのではないかというような意見もありますが、つまびらかにこの実態を調査してみますと、なるほど大企業景気過熱でこりまして、この二、三年間は生きた気もなかった、こういうことでありまして、やはり自由化に対応していくにはもっと企業の力をつけなければいかぬ。また合理化を進めなければいかぬ。特に輸出秩序を乱したり、また業界同士の反目や過度の競争を行なってはならないというために非常に慎重であります。特に金融関係も中へ入りまして、これからの設備投資というものに対しては、将来を見通しながら段階的な計画投資を行なうということで慎重な態勢を続けておりますので、一部に言われるようなまたぞろ過剰投資が行なわれるというような危険はないものと考えております。  それから中小企業は、ちょうどこれから中小企業設備の近代化等をやらなければならぬ潮どきに引き締めが行なわれたわけでございますので、このままにすれば大企業と業種間の格差はますます開くということにもなります。でありますから、私もこのことに十分留意をいたしまして、今度の低金利政策などをやっていくこと、もう一つは日銀からの貸し出し、オーバー・ローンの解消、こういうことをやっていきますと、当然市銀の貸し出し限度というものを相当押えてまいろうという考えであり、また公定歩合の引き下げ等によりまして、御承知のとおりコールも六銭、七銭というところから日歩二銭というところまで下がっておりますので、今度は経済ベースでそろばんをはじいてみましても、このままでいくと、どうも預金金利は引き下げない、貸し出し金利は引き下げなければいかぬ、コールで高い金利をとろうと思うと、いながらにしてそのようにはもうからない。これから長期的に企業の安定をはかっていくためには、やはりいい貸し出し先を開拓しなければいかぬ。こういう気持ちに地方銀行等はなっておるはずであります。そこへもってきて私たちが地方銀行もコールなどに回すよりも、今度はあなた方の貸し出し先が、設備の近代化や自由化対策をとらなければならぬときでありますから、われわれも今までのように長期に金を貸してはいかぬとかこまかくコールに流れるようにしむけたような銀行行政はやめて、市中金融機関と同じように、都市銀行と同じレベルまで引き上げていくために、地方銀行そのものの合理化もはかると同時に、地方銀行も同時に中小企業や地方産業の長期的な見通しの上に立って、良質な投資を行なうように指導いたしておりますから、私は中小企業設備の近代化等は、今度こそ合理的なペースで進んでいくものである、またそうすることが金融政策でなければいかぬというふうに考えておるのでありまして、あなたがいま御心配になられたような中小企業財政資金などで片づけなければいかぬというような考え方だけではなく、民間資金も十分中小企業設備近代化等に対して回るというふうに考えておりますし、また必要があれば財政資金等の導入に対しても十分な配慮をしてまいりたい、こういう考えでございます。いまから考えてみるとけがの功名だったかと私個人は思っておるのでございますが、大企業と一緒になって設備投資をやっておったら、まだまだ景気は過熱をしたと思いますし、高い金利を負担しなければならなかったと思いますが、二カ年間おくれたために、私が言いましたように長期低利にしてしかも安定的な資金を借りられるので、よかったかもしれません。しかも前車のくつがえるを見て、後車の戒めとなすということで、大企業はさんざんこりたのですから、今度は中小企業設備投資を行なう場合には、長期、安定的な見通しのもとに、これらの投資が行なわれ、また政府もそれに対して積極的な協力を行なっていくという考えでございます。
  23. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いろいろ答弁をいただいたわけですが、物価対策もこれは金利政策も含めて非常に大きな問題点であります。どうも私どもまたコスト・インフレ論などを持ち出して、さらに安いものを食ったらいいというような窮乏論を国民に押しつけて、耐乏経済によって強制貯蓄をさしていこうというような考え方の中で物価対策考えていこうということになりますと、これは根本を誤る。そういうことはなしに、やはり生産構造の変化というものが、三十四年以降ずっと非常に強く出てきている。そういうような中に、特に投資中身の問題、過剰投資、行き過ぎ、二重投資という問題の中で、この問題が主として資本コストの値上がりによって行なわれている面が非常に多い。したがってそういう面からするならば、そういう事態を完全に解決するためにやはり金融体系というものも変えていく。そして国会の民主的コントロールのきくような形のものを考えていく。こういうところに、やはり突き詰めていくと物価問題も帰するのじゃないか。そういうような考えを持つわけなんです。そういう基本的な問題点というものをぼかさずに、自由主義と資本主義を前提にすると、なかなかやりにくいことかもしれません。しかし自由主義であっても何であっても、これは国民全体のために生活水準を向上さしていくということ、あるいはまた対外競争力をつけていくということ、そういうことを可能にするためには、やはりそこまでいかなければならない段階を迎えているのじゃないか、もう糊塗策ではいかぬということで質問をしたわけでありますので、最後にその点についての、特に金利政策なんかの面につきましても、これはそういう金融体系そのものを変えていく、日銀から市中銀行にオーバーローン、解消の施策が若干の手は打たれたにしても、基本的な解決というものはつかないだろうと私は思う。そういう事態を抜本的に金融体系を変えることによって、そしてそれに対してはギブ・アンド・テイクの考え方というものを、企業にも国民経済的な責任を負わしていく、こういうような方向を出していかなければならぬのじゃないか。したがって、これから非常に重大なことは、財政投融資なんかについても、これは国民の金だ、それを政府が国会の審議を経ずにかってに使えると言っては言い過ぎかもしれないけれども、これなんかはもう国会の審議に移すくらいの――これは決して弾力性をそこなうものではないと私は思う。そういうような形というものも将来考えていくべきだというように思うのですが、最後にその点だけお答えいただいて、質問を終わりたいと思います。
  24. 田中角榮

    田中国務大臣 消費物価対策というものが非常に重大な問題であるということは、先ほどから申し上げておるとおりでありまして、金融政策上からも、これらの問題に対して是正すべき問題があれば、積極的に是正してまいるつもりであります。この間から私が言っておるのでありますが、確かに一割しかもうけのなかったものが――今までのでっち小僧であったものが週休になって土曜、日曜は休ませなければいかぬとか、超過勤務手当も出さなければいかぬということで、サービス料金や何かが上がりますように、生鮮食料品や末端の配給機構、いわゆる末端の流通機構等の経費も上がっていることは事実であります。事実八百屋、魚屋の利益も一側から三割五分ということにもなっておる。これはなるのはあたりまえなんですということです。この間私も魚屋や八百屋をやってみたのです。私は新潟県人ですが、私のところからかついできた大根を売ってもそんなにならぬよ、こういうことを言ったら、その人は中間マージン社長がこれだけ取るのです。それからまん中におるところの服を着た人がこのくらい取るので。せり代にこのくらい取られるのです。また労働組合の費用みたいなものも納めなければいかぬしとか、いろいろなことを言われまして、私ども三割五分は高くありません。しかしあなたは大蔵大臣ですから申し上げるのですが、昔は魚屋が朝早く河岸に買い出しに行くときには、一日で日歩二十銭、三十銭という金を使って何時間か借りて、魚屋が売れたら返すというような、私たちは非常にひどい歴史を経てきておるのでありまして、いまでも銀行から金を借りられないから、結局高い相互銀行とか、信用金庫とか、信用組合とか、それでまだ足りなければ市中のほんとうのやみ金融を借りるのですから、三割五分は高くありませんよ。こう言われまして、あなたが私たちに必要な金を正規に二銭、三銭の金で三カ月も五カ月も貸して下さるなら、私たちも二割や一割五分にしたっていいですよ。消費者物価は下がりますよ。私は、こういう問題を一つ一つ片づけていかないと、消費者物価を下げるということはできないと考えておりますので、これらの大衆資金、特に消費物価に必要な金融制度に対しましても十分な配慮をいたしたい。このように考えておるわけであります。
  25. 臼井莊一

    臼井委員長 堀昌雄君。
  26. 堀昌雄

    ○堀委員 どうも質問が小間切れになるようでやりにくいのですが、私は、実は本日から向こう三回にわたって、と申しますのは、本日の委員会、来週の十三日には証券関係の参考人にお越しいただいて、その次の週にもう一回大臣に御出席を願って、証券界の皆さんの御意見、あるいはわれわれの質疑をもとにして、今後の対策を含めて、向こう三回にわたって証券関係の問題を取り上げたいと思います。  私が、今回この時期に、証券の問題を取り上げるに至りました経緯を簡単に申し上げますと、私ども直接証券の問題についていろいろな実情を知ることが比較的少ないわけでありますが、最近、投資家の人たちが証券会社との間にトラブルが起こります問題が案外多くて、私どものところにも、その具体的な問題についていろいろと相談があるわけでございます。その問題をずっと話を聞き、調べております中で、現在の証券行政の中で、いささか不十分な点がやはり残されておるのではないかということに少し気がついてまいったわけであります。  そこで、きょうはまず最初でございますので、全体の問題としての証券行政のあり方、こういう問題について少し論議をさせていただきたい、こういうふうに思います。  そこで実は証券取引法の第一条には、「この法律は、国民経済の適切な運営及び投資者の保護に資するため、有価証券の発行及び売買その他の取引を公正ならしめ、且つ、有価証券の流通を円滑ならしめることを目的とする。」こういうふうにあります。前段において、国民経済の適切な運営のためにある。後段においては、投資者の保護に資するためにある。この二つが、大体証券取引法の主たる目的のようでありますし、また証券取引法は証券関係の諸法律の土台をなすものだと私は理解をしておるのですが、まず最初に大蔵大臣にお伺いをいたしたいのは、いまの時点で投資者の保護という面について、これまでおやりになっておる問題は別として、今後どういう形でこの問題についておやりになろうとしておるか、現在における大蔵省の考え方を伺いたいと思います。
  27. 田中角榮

    田中国務大臣 証券というものが一部の人の投機の場ではない。新しい国際経済の中に立っていく日本産業資金調達の場である、しかも産業資金の調達の場ということにもう一つ国民自体が、国民のすべてがこの市場を通じて資本参加をしていくのだ、こういう非常に重要な意義を持つものでありまして、かつて銀行法によって銀行が金融機関として特殊な任務を要求せられ、また特殊な保護のもとにあったというようなことにもかんがみまして、いわゆる金融機関というものと証券市場が二大支柱になるというような考え方で早急に育成強化をしてまいりたいという考え方でございます。  それから具体的な問題としては、投資家保護の問題として、現在五百万円の資本金である非会員が非常に大きな取引をやったり、また取引をやること自体よりも、俗にいう買い占めとかそういうものを中小業者がやっておるというようなことは、証券業者としてまじめなことではなく、またこれが証券業将来の市場育成のために障害ともなることでありますので、これらを排除するためにも、これら業者の届け出制にするかあるいは認許可制にするかというような問題もございますが、さしあたり資本金弱小のものに対しては資本金を引き上げるというような処置をとりたいということで、具体的な方策を進めておるわけでございます。  それから事故がございますが、どうもこの事故は――銀行の店舗を使った事故に対しては、これは法律の規定いかんにかかわらず銀行は信用のために解決をしております。ところが証券業者というものはその中の店舗を使い、しかもその証券会社の職員の身分を持ちながら取引を行なっても、いろいろな問題に対しては、これは個人対個人が特にひとつもうけてやるからということであったので、元本保証はしておりませんし、会社の関知するところではございません。こういう問題は、これは銀行で行なわれる場合、生命保険会社のトラブルやまた損害保険会社のトラブル、そういうものに比べると非常にルーズである。こういう問題は将来個々のケースだけではなく、国民大衆自体の資本参加という大きな場を非常に混乱せしむるものでありますので、かかるものに対しては厳重な規制を行なっていかなければならぬだろうということで、現在はこれらに対して私は就任後、こういうものを解決もしないで、そのまま私たちは関知しませんなどと言って、増資をしたり店舗の増設申請をしたり、そういうことは認めませんよというくらいに強い態度を持しておりますので、現在まではかかる懸案の問題は相当解決をしておるようでございます。自発的に解決ができることは好ましいことではありますが、場合によってはこれらに対しても規制が必要であれば規制をしなければならぬというふうに考えております。
  28. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのお話の中で、資本金を増額することによっていろいろな問題に対処する力をつけたいというお考えにつきましては、一つの方向としてよくわかります。ただ、私はいまお話になったように、一番の根本問題の中にはやはり銀行と証券会社というものの中にまだ非常な差異がある。銀行は、預金者のほうも非常にはっきり慣習が成り立っておりますから、通帳を持たないで金を出してくれと言ったって出してくれないというのは常識になっておりますし、判を持っていかなければ金を出してくれないというのも常識であります。ところが遺憾ながら証券の実情を調べてみますと、これまでは証券の会社のほうがルーズであるということを反映して、大衆の側としてもまたルーズにやっている。そこへ過当競争のようなものが加わって、そういうふうにきちっとした慣習が銀行のようにいっていないという点が確かに私はあると思う。そうすると一体これをただすのはどこか。いまのようなルーズな状態をただす、銀行のような要するにきちっとした慣習を確立するようにするためには私は資本金をふやしてみたところでそういうふうになると思わないし、あるいは免許制にしてみたところでそういうふうになると思わないのですね。それではどうしたらいま銀行と大衆との間に行なわれているような状態に証券会社と大衆を持っていくことができるのか、これについての大臣のお考えを伺いたい。
  29. 田中角榮

    田中国務大臣 私は金融界、証券界その他に対して、就任当初から自律を求めておるわけであります。無責任な自律というのではなく、自律を求めておりますが、のんべんだらりといつまで待つわけにいきませんから、ある時期がきましたら、私はこちらのほうからやりますよ、こういうことを言っておるわけです。民主政治でありますから、そうでなくても大蔵省が一方的だといわれておるのですから、これだけの時間をかけてやりましたが、さっぱりやりませんから私のほうでやったのです、これ以上手がありません、これは民主政治の常道であります。私はそういう意味で、行儀をよくするのにはどうするか、銀行と同じようによくするのにはどうするか。株というものはもうかるものだということばかり――特にいま過当競争でありますから、そう言っておるのでしょうが、何かいまの投資家というものが、株を買うと一カ月か二カ月で倍にならぬか、こういう考え、特にまた勧誘する人たちがそういうニュアンスをもって大衆に投資を求めておる。こういうところにトラブルが起き、市場の不安定性が続くのであります。ですから、一つには利回り採算ということを本義にして国民大衆に入っていかなければならぬのだ。もう一つは株というものは、銀行の金利が四分でも五分でも安いといいながら、三分利回りであるところの、五十円払い込みが三百円、四百円しておっても、これはまだ上がるのだ、こういうような考え方です。そういう値幅が大きいのは下がるのも大きいのです、ということをまじめに当然大衆に周知徹底せしめなければならないのです。いわゆる戦後急激に膨張しましたので、機構やらまた首脳部が考えておるほど末端が言うことをきくということもないと思うのです。急激に膨張した機構というのは大体そういうものであります。特に証券業者にはそういう問題がある。こういうことで首脳部が考え、経営者が考えて、お互い大蔵省と話をしながら、納得したものは末端までこれが行き届くようなことを――私たちはそう思わなかったのですが、なかなか届かないうちにこういう事故が起きました、こういうことになっておるのです。なに大蔵省に社長が行っておるうちに、われわれはとにかく生きるためにやるのだ、こういうことでは困るのです。だからいわゆる外務員、勧誘員という制度自体考えなければならぬ。だからあなた方自粛して、具体的な問題を出してもらえば私たちもそれを受けます、がしかしいつまでたってもまだ世論が非常に手きびしいというような場合は、業務方法書をつくりましてこちらから交付いたしますが、ということを言っておりますので、野放しに自律を求めておるのではないのであります。
  30. 堀昌雄

    ○堀委員 私もいまの世の中ですから、できるだけ自主的に業界の皆さんがそういう方向にやっていただきたいというふうに思います。ただ証券業者の皆さんの中で事故防止委員会というようなものがつくられておるようです。これを調べて見ますと、どうも四大証券の方は入っておられないで、それ以外でつくられておるようですね。大体私はそこにも問題が一つあると思うのです。何か証券業界という中には、四社という別格なところがあって、四社以外と四社という問題、これは今後ずっと引き続き論議さしていただきますが、その論議を私ちょっと読んでおりますと、いろいろといいことを取りきめる、いいことを取りきめるけれども、半分くらいの人はやってくれるだろうけれどもあとはなかなかむずかしいのではないだろうか。そういう人の中には、事故というものはどうしてもなくさなければいけない、なくすることによって証券というものの立場を高くしたいという方たちと、もう事故はどうやっても起こるものだ、そこで自分のリスクだけを見て、精出してもうければいいじゃないか、こういうものの考え方の人たちと二つあるということを証券の方がみずからおっしゃっておるわけですね。そうすると、そういう善意のある非常に前向きの皆さんは確かに私どものここで論議することをすなおに聞いていただいて、自分たちとして銀行と同じ線に届くまでの努力をされる方が半分ぐらいはある。ところが、残念ながら、こういうものを読んでみると、あと半分の方は、そんなことを言ったってもうけることが先だ、もうけてしまえば、そこで事故が起きてそれを弁償したって何とかいけるではないかという姿勢であるということになりますと、この問題はなかなか簡単に解決のつかない問題である。そこで私は最初に、いま資本金の増額及び免許制の問題に触れておられますけれども、やはり根本的には二つの問題があると思う。一つは、率直な言い方をいたしますと、もうけるためには手段を選ばない、そういう方はやはり証券業者としてどうもあまり適当ではないのではないか。やはり証券業というものの社会的な位置、公共性というものが十分自覚をされておるような人によってのみ証券業が行なわれるのでなければ、もうけることのほうが先で、公共性というか、そういり社会的な自分たちに与えられておる責任のほうを二義的に考えるような証券業者の方々は御遠慮を願うようなことを考える必要があるのではないか、こういうふうに私は思いますけれども大臣、その点いかがですか。
  31. 田中角榮

    田中国務大臣 すなおに申し上げるとあなたの言うとおりでございますが、大蔵大臣としてはいろいろこまかい配慮も必要でありますので慎重にかまえておるわけであります。でありますから、端的に証券業法の改正そのものも必要であると思っておりますし、また事務当局にも検討を命じておりますが、しかし、証券業法を改正します、それから許可制にします、こういうことを言ってしまえば実もふたもないということで、ある程度お互いに自律の時間を待っておるわけであります。でありますが、先ほど申したとおり、貿易為替の自由化もございますし、資本の自由化もあります。また特に銀行から借り入れておるというようなことだけでは日本企業はしっかりいたしませんし、自己資本比率も上げなくちゃいかぬというような考え方、またこういう政策を進めていきますために、好むと好まざるとにかかわらず、社会的要請として、また政治的な要請として証券業の育成強化が必要なのであります。でありますから、いつまでも民主主義政策だなどといって何もやらないで手をこまねいて時日を待っておるというわけにはいかないのでありまして、現行法をひとつ遺憾なく弾力的に活用する。その弾力的の中には、みずからを律することをもって臨んではおりますが、不当事項等に対しては手きびしく取り締まる。いわゆる営業停止等もおざなりのようなことはやらない。この間も国会でも申し上げましたが、政府関係三公庫と協調融資をしておりながら歩積み、両建てをどうしても廃しないというようなものは指定を取り消す、こういう態度を表明いたしておりますが、やはり、事故を起こしてもその事故は当然起こり得るのだ、弁護士に頼んでおけばいいのだというようなことでは絶対にいけないということで、そのようなものに対しては徹底的に監査も行ないますし、随時その前には行政指導も行なって、できるだけ円満な発展を願っておりますが、いやしくも証券業というものはこういうものだという古い観念のままで国民大衆を食いものにするというような業者に対しては適切な処置を行政上とる、こういう基本的な態度をとっております。
  32. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの大臣のお話では、一種の猶予期間といいますか、それがどうもあるようですね。その猶予期間というのは大体いつごろまでが猶予期間なんです。
  33. 田中角榮

    田中国務大臣 なかなかそれもむずかしいのです。これから証券業に対する要請の度合いもありますし、もう一つ、こちらがいま資本金の増額とかまた業務仕様書というようなものを暗に提示をしたり、また向こうからの意見を聞いたり、やっておるわけであります。でありますから、こういうものはおおむね目的を達成しつつある状況でありますので、この進展のぐあいによりまして、もうここらでひとつ外面的な体系も整えましょうや、ということになれば証券業法の改正にもなると思います。いずれにしても、現在の状況では大きな事故でも起きたり、または、その問題が急速に進展する場合を除きましては、大体現行の会員は一年とか二年とか、中には三年にしてくれというようなこともありますが、このようなテンポの早いときに三年も五年もさくというわけにはいかぬので、やはり一、二年という考え方をめどにして育成、強化、整備の目標を立てておるわけであります。
  34. 堀昌雄

    ○堀委員 実は、私は資本金の増額も必要な要素ではあると思いますけれども、やはり肝心なのは、いまは登録制ですから、皆さんが方向を出せばそれを拒否する条件――証券業法に書いてある条件以外であれば認めなければならないわけですね。最近はどうも、そろそろ免許制になるのではないかという雲行きを察知して、登録数が非常に増加をしておるように聞いているのですが、その点は事務当局どうですか。いまが六月ですから、一月から六月までと、昨年の一月から六月までの登録数の増加のぐあいというものはどうなっておるか、これは事務当局でいいですからちょっとお答えいただきたい。
  35. 田中角榮

    田中国務大臣 こまかい数字はあとから事務当局が調べて御報告申し上げますが、飛び込みがあるのじゃないかということで事務当局にも注意をしておりますし、またこういう統計に対しては統計をとっておくようにと言っております。また、同時に、飛び込みに対しましては、いまは届け出制でございますから、条件を具備しなくとも、届け出ておって、こちらが黙っておれば発効するわけでありますが、やはり証券業というだけに、届け出のほうも実際はなかなか慎重であります。届け出でありますから、法律的に大蔵省、財務局に届け出れば発効したのだという場合に、手きびしくこちらでもって法律どおり監査をされたりやられては困るというので、やはりその道の専門家が何人か入っておりますから、届け出て免許をしないじゃないかと文句を言うような人はなく、なるべく早くひとつ条件は具備しますから認可をいただきたいというような気持で、届け出制であるといいながら、届け出る人は認可と同様に考えておりますので、現在非常に混乱をしておるような状態はないと存じますし、特に、財務局にも、そういうことをよく言っておきなさい、これは国会で問題になれば私のほうで陳弁するから、特に法律どおりやってめちゃくちゃやったら今度は永久に営業できないように、大臣が相当強い態度でいるからということを、そういう人たちに対しては特に言っておきなさい、こういうことを言っておりますので、現在までは大蔵省の意向をたださず自動的に営業活動をしたという例はありません。
  36. 堀昌雄

    ○堀委員 そういうことであるならばまあ登録制と免許制の中間のようなことでありますが、私そんなに免許制にこだわるわけではないのですけれども、やはり一面的には、今度資本金が増額になるということは、また出てくるほうは多少厳選をされてくるということにはなると思いますけれども、問題は、現在ある証券業者の中に、さっきお話ししたような方があるという事実、これは証券の方がおっしゃっておることだから私は事実だと思うのですけれども、そういう方があるとするなれば、そういう方はやはり大いに遠慮をしていただく前には自粛をしていただいて、正しい意味の証券業者になっていただく、これはやはり期間も必要でしょう。おっしゃるように一年なり二年の間はいいわけですが、その間はやはりきちっとこういう条件になるということを目途として行なわれて、ある時期にはそういう人たちには御遠慮願うようなふうにするためにも、私は一つ制度の更改といいますか、現在登録して認められておる方を一ぺんある時期に御破算にする、全部一ぺん元に戻してもう一ぺん再登録させるとか、免許するとか、そういう中で時間をかけて、少なくとも正しい方向へ行くように、大蔵省として指導もし、業界御自身も指導をされて自粛に努力をされたけれども依然としてだめだというものも起こり得るのではないか。もしそういうものがが起こった場合には、そういう人はやはりちょっと御遠慮願うというものの考え方を明らかにしたならば自粛のしかたも少しは変わってくるんではないか。やはり学生が試験があると思えば勉強する、試験がないと思えば勉強しないと同じように、やはり一ぺん業者を試験する。その試験は入学試験のように一日の試験では困りますから、これから一年間はひとつ試験だ、試験期間一年間、そうしていろいろな状態を見せていただいて、その結果終わりはここですよということが明示をされておるならば、その期間に向かって努力をされるされ方は私は多少違うのではないだろうか。やはり私は一番根本的な問題は、これは何といっても証券業をやっていくのかやっていけないのかということが最終的な問題です。だからさっきお話ししたように、もうけるためには手段を選ばないのだけれども、もうけられなくなるということが前提になれば、手段を考えないことにはもうけようにも手段の選びようがなくなる。その手段を選ぶために、今度はその手段が正しい方向へいくという手段にならざるを得ないというふうな道筋になってくるんじゃないか。ですから私がいま前段で申し上げておるこのことは、こまかい問題はあとからぼつぼつとお話をしますが、やはり姿勢をどうするか、それについての企業の人たちの責任感をどのように明らかにしてもらうか、これについては私はやはりある時期を限っていいのではないか。率直に言って二年、三年なんということでは、私はその間に――これは事実かどうかしりませんが、証券の方がおっしゃっている中で、昨年度における事故の総額は六十億円に達しておるのではないか、こういうことが実は述べられておる。六十億円の事故といえばこれはたいへんなものです。こんなことはおそらく株が非常に高くて下がったということが一つ要素にはなっておるかもしれませんが、二年ほっておいてもし六十億いくとすれば百二十億円ですから、これはたいへんなことです。私は免許にするしないとか、そういうことをお答えいただきたいとは思わないのですけれども、少なくとも私が本日ここで取り上げて、向こう一年間にある限度を限って、証券業協会は、証券業の皆さんはまず自分の立場から自粛をしていただきたいし、それから証券取引所も取引所の立場から自主的にそういう業者の方にいろいろな手段、方法を講じてもらいたいし、証券業協会としても向こう一年間の中で事故についての問題を真剣にひとつ取り組んでいただきたい。そうして大蔵省はそれらの自主的な努力に相まって、随時にひとつ検査その他によって正しい方向への行政指導をやる。そうして一年たって一体どうなのかということをまた私来年のこの時期につまびらかにこの国会で、大蔵省及び証券業の皆さんに御出席をいただいて報告をしていただきたい。そうしてもしその際に、なお不十分である方についてはどうするかということをもっと正確な形で検討しなければならぬ、こういうふうな気持でおるのです。だから私が言っているのは免許制にしなさいとかするとか、登録をどうするということではありません。ありませんが、そういう諸般の問題を含んでそういう時限を一年と限って自主的な努力を促す。さらに大蔵省もその気になってひとつ指導するという提案をしたいと思うのですが、その点についての大臣の御見解を伺いたいと思います。
  37. 田中角榮

    田中国務大臣 一年と限るということを明らかに申し上げることはどうかと思いますが、私も就任後証券業界の強化育成という立場から随時意見の交換もしておりますし、こちらの考え方提示をいたしておりますので、このごろ非常に自粛をしておる。自粛というよりも健全化に努力をしておるということは事実であります。しかも証券業界及び取引所も取引基準の問題とか、それから上場基準の問題とか、特にいろいろ二、三の問題を起こしたものもございますので、一体こういう原因がどこにあるのか、これは大衆に対して非常に迷惑のかかる話であって、これらの問題を適切に考えて処置するようにということで、非常な努力を証券業界自体が進めておりますこともひとつ認めていただきたいと思います。同時に私のほうでも検査を行なっております。中にはどうも問題があるというものも散見せられますので、こういうものに対しては期日を限りまして、六カ月の間にこれらの問題は全部大蔵省の指示するようにできるか、できるという者に対しては自律を求めるということでありますし、またそれに対しては随時進行状況等に対しても係員を派遣しますし、事故が起きたものに対しても、事故は裁判所の管轄であるなどという考えではなく、事故が起きたということが大蔵省の、耳に入った場合、また監査の結果これらが明らかになった場合、一体どこに原因があるのか、それに対して裁判とかいう問題ではなく、どのようにして解決をするのか、こういう具体的な問題に対しても関心を持つ、関心を持つだけではなく、許される範囲内で行政指導も行なうという考え方で、証券業界の育成強化をはかっていくという方針をすでに一年前から進めておりますので、相当効果が上がっております。これは例をあげて申し上げればすぐわかるくらいに、経理の状況もまた予算運用状況とかその他非常に健全化に進んでおります。これはもう申し上げられると思います。それから、いつまでやりますというような答えではなく、社長が来て大蔵省の言うとおりやりますというような考えでなく、これはこちらがまいって自分で一つずつ当たりまして、これに対して納得ができるという状態までこまかく行政指導もやっておりますので、できるならこういうことをやらないで済むような状況まで一日も早く成長してもらうように、また強化してもらうようにという方向で、いま調整を行なっておりますので、私は可及的すみやかに証券業界というものは強化せられる、こういう見通しでございます。
  38. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと大臣不在でありますから、その間に事務当局にお伺いをいたしますが、最近における事故の実情についてこの際少し伺いたいことと、もう一つ、ちょっと私この前この委員会で取り上げたことがある問題ですが、たしか南旺観光であったと思いますが、ダブル株事件というものがあったのです。ダブル株ということで株券がたくさん出たわけですが、その処理は一体どうなっておるのか、順序としてまず先に取り上げておりましたから、南旺観光のダブル株のその後の処理ですね。善意のある投資家が買っておるものが、それのほうが不正な株でこっちは正当な株だという区別はついていないんじゃないかというふうな気が私はしますが、その後の処理についてちょっと。
  39. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 お答え申し上げます。南旺観光の問題は刑事事件になりまして、警察当局で取り調べをいたしておる最中でございます。証拠書類その他が向こうへいっておりますためにその写しをとりまして、取引所においていま証拠書類について事実をなお究明をしておる段階でございます。
  40. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、株が相当出たわけですね。何にしてもダブル株として相当出た。その株を相当の人が持っていると思うのですが、株の価格は二部に上場したのを取り消しになったのだと思います。現在はおそらく店頭取引なんかで価格構成がされておるんじゃないかと思うのですが、そういう点の取引関係は現状はどうなっておるのでしょう。
  41. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 すでに昨年の十二月二十七日に上場廃止になっております。ただ現実には、その後実際の取引がないという実情のようでございます。店頭でもあまり取引はされておらないということであります。
  42. 堀昌雄

    ○堀委員 そうするとダブル株事件が起こる前の価格、現在取引はないにしても、何か株には価格があると思うのですが、その価格状態はどうなっておるのでしょう。
  43. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 ちょっと調べて……
  44. 堀昌雄

    ○堀委員 それではそれはお調べ願って……。  こういうふうなことが起きたときに、今後の問題だと思うのですけれども、この責任はもちろん会社が負うといえばそれまでですが、いま南旺観光という会社はつぶれてないでしょうからいいと思いますが、その際に南旺観光自身が、不動産会社ですか何かの関係だったと思うのですが、どんどん資産を売っちゃうというようなことがもし起こったとしますね。持っておる資産はどんどん売られてくる。そして終わりで手をあげてしまって清算されるということがもし起きたとしたら、普通の株の場合ならまだそれについてのルールがあると思うのですが、こういうふうに不当な株が出ている場合は、その不当に出た株についてはどういうことになるのですか。会社はそれを正当なものとみなして処理することになるのか。ただ買った人たちだけが損をするのか。それについての監督のあり方というのは一体どういうことになるのか。そこらをちょっと伺いたいと思います。
  45. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 たいへん特殊な事例でございましてむずかしい問題でございます。南旺観光自体の問題について私まだ十分承知しておりませんので、もし少し研究さしていただきたいと思います。
  46. 堀昌雄

    ○堀委員 それではひとつ御検討願って、私の要望を添えておきますと、善意なる投資家が不当な処理を受けないように考えておかなければならないと思うのです。そしてこれは私非常に例外的な事件だと思いますけれども、しかし注意をしなければならぬことは、これまでもこれにとどまらず、これに類した事件はあったわけですから、この点をひとつよくお調べを願っておきたい。  その次は、日本不動産という会社だったと思うのですが、たしか今月の初めでしたか、先月の末かに不渡り手形が出ております。これは二部に上場されてまだ二カ月くらいにしかならないで不渡りを出した、こういうことのようですが、こういう問題は次の参考人にお越しいただいたときにも東証のほうに伺うつもりでございますが、こういうような二部というものは店頭取引の不公正を排除するために、この論議の中でも出て設けられるようになったと私は思っておりますが、どうも二部市場には問題が少し多いのではないかという感じがするのですが、この日本不動産の問題についてはどういうことなのか伺っておきます。
  47. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 日本不動産の具体的な問題につきましては、私十分承知しておりませんが、ただ二部に上場した会社が、上場後間もなく二カ月くらいでそういう事態を起こすということはたいへん遺憾なことでございます。  取引所に上場いたしますにつきましては、そういうことがないように実は上場基準を定めて、相当上場にあたってはその会社について調査をし、審査をしておるわけであります。そのときに十分な調査と申しますか、そういうことが起こるような予測ができなかった結果であろとう思いますが、上場基準をつくっております以上は、それによりましてどの会社の株が上場されましても、ある程度安定した取引と申しますか、価格が維持されて投資者に不当な損害を及ぼさないようにという趣旨での上場基準であるはずでございますから、そういう意味で、その辺についてももっと検討と申しますか、十分な措置が必要であったのではないかと考えております。ただ逆に上場基準をあまり厳重にいたしますと、せっかく公正な価格を形成させようとして取引所に上場させる範囲のものが狭まるわけでありますから、あまり上場基準を上げて非常に制限するわけにもまいらぬと思いますが、上場基準についての検討をなお十分にする必要があろうかと考えます。
  48. 堀昌雄

    ○堀委員 局長は事実は御存じないでしょうが、理財局ではだれか事実のわかっておる人はいないのですか。
  49. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 日本不動産は監査会社になっておりますので、過去における当該会社の有価証券報告書の内容が適正なものであったかどどうか、それから上場する場合の上場申請書の内容であります財務書類が適正なものであったかどうかという点につきまして、目下調べております。これが間違っておった場合においては、商取引法上の問題が出ますので本格的な調査に入りたい。この場合に公認会計士の監査報告書がついておりますから、それが適正なものであったかどうかということにつきましても、目下検討中であります。
  50. 堀昌雄

    ○堀委員 事実の問題は私もよく知りませんし、新聞にちょっと出ていた程度ですからわかりませんけれども、私どもが心配しますのは、なるほど公認会計士が監査をしておって、そのこと自体は私は皆さんのほうとして手落ちがあるとかないとかいうようなことを言っておるわけではない。問題は、その上場をするときには、どこかの証券会社が引き受け会社のようなかっこうになって上場するのだと思いますが、私の聞いておるところでは、その上場した証券会社が、何か今度の問題について内部に事故があって、そういうふうな事故について、かなり資金を出してでも処理をしようとかなんとかいうような事実もあったというふうなことをちょっと聞いておるわけです。そこで株式を上場するについては、引き受け会社というものを何かかなり利益があるのかどうか。幹事会社というのですか、もしそういうものがないとするならば、単に信用上だけの問題として自分のところで出した問題だからということで、そういうことを考えることになるのか、ここらが私としても話を聞いて疑問が少し残っております。  もう一つは、そういうことがあれば、おそらく急激に株価が下がりますから、そういうふうな非常に専門家の諸君はいいでしょうが、そうでない、おそらくすすめられて買った善意なる投資家は、こういうことによって非常な損害を受けることになるのではないか、こういうふうに思いますので、この問題は後刻調査をしていただいて報告を受けるといたしますけれども、やはりちょっとくらいの事故が起きたら、さっそく手をあげちゃうというような会社が上場されておるということは、私はやはり問題があるのではないかというふうな感じがしますので、この点はさっきの問題とあわせてひとつ調査をして御報告をいただきたい。  その次に事故の問題でありますけれども、昨年一年間の事故の件数と、ことしの一月から六月までの間の事故の件数とがわかりましたらちょっと御報告いただきたい。
  51. 加治木俊道

    ○加治木説明員 報告をとりましたのが去年の十一月からでございます。したがって、その報告による件数だけを申し上げますと、十一月からことしの三月までに報告された件数が八十二件でございます。したがって、一月から六月までの分がまだ集計されておりませんけれども、しかしこれは十一月以降に発生した事故ということでなくて、十一月以降に発見された事故でございまして、この八十二件のうちに十一月以降にトラブルが発生したものは十六件でございます。ただし、これも十一月以降に発見された事故でございまして、十一月以降に発生した分で今後また発見される分があるかもしれませんが、それがちょっとダブっておりますが、そういう数字になっております。
  52. 堀昌雄

    ○堀委員 この八十二件というのは、証券会社数としては幾つの会社なんでしょう。
  53. 加治木俊道

    ○加治木説明員 証券会社数としてはちょっと手元には資料ございませんが、後ほどまた……。
  54. 堀昌雄

    ○堀委員 私いまお話を聞いて、どういう制度になっていたのかわからないのですが、大臣の話では一年ほど前から相当この問題については関心持ってやっている、ところが、事故の報告を受けたのは十一月からだというので、大臣の発言と行政当局の動きの間に少しギャップがあるような気がいたしますが、そうすると、昨年十一月まではそういう事故があっても大蔵省は報告を受けていなかったということですか。
  55. 加治木俊道

    ○加治木説明員 全面的に事件の報告を求めるような体制になってはいなかったと思います。ただ訴訟事件になったようなものがあれば報告を受けるというようなことであったようであります。
  56. 堀昌雄

    ○堀委員 やはり証券業界のほうで姿勢が正しくされていないという点については、私は一面――そうすると、大蔵省側も比較的安易な形で訴訟になったものは持ってこい、それ以外はよろしいというようなことは、いまのお答えの範囲で聞きますと、非常に不十分な態度ではなかったのか。この証券取引自体投資家の保護ということを――二つの柱ということですが、実際は私このほうが大きい柱だと思っております。そういう取引法の定めがあったにもかかわらず、その処分するしない、処罰するしないの問題は私は別個でいいと思うのですよ。しかし、いかように証券業界に投資家保護に関して不十分な点があったかということが、もっと正確につまびらかにされておらなければならなかったのではないか、こういう感じがいたします。特にいま私が伺ったように八十二件あるということと、私がなぜ証券会社の数を伺っているかというと、要するに、この八十二の事件が八十二の会社で起きておるならば、一件一会社ということでしょう。ところが、これがもし六十の会社で起きておるとするならば、どっかで何回か起きているということになるのですね。だから、事故というもののあり方に対して大蔵省としては全体で網をかぶせて見ておればいいというわけではないはずであって、いま大臣もかなり前段でお話しになったように、自粛を求めておるという時期であるならば、その自粛のあり方をはかるのは何かといえば、やはりその会社における事故のあり方を見る以外にいまの問題の判定がつかないんじゃないかと私は感じるわけです。ですから、そういうふうにしてみると、私が本日からここで三回にわたってこれを大々的に取り上げますから、皆さんのほうもひとつ今後は処分をするとか、検査をするとかいう角度よりも、まず証券業者は実情を包み隠さず出しなさい。それについての問題はもしこれまでの処分が強過ぎるのであれば、処分が目的ではないはずなんです、事故を防ぐことが目的なんです。事故を防ぐことを目的とするならば、実情を知らなければ事故を防ぐ方法は出てこないわけです。そこで、起きてきた問題については逐一全部出してもらいたい。私が資料で見た中には、証券業協会のほうには何か届けをしておられるようですから、十三日に協会のほうにお伺いをいたしますけれども、この時期を限ってみてもおそらく協会のほうにはもっと出ているのかもわかりません。そこで、協会のほうに届けられる程度のものは当然大蔵省でも知っていて、それは処分をするとかいう目的ではなく、実情を把握するという点においては、この事故の問題について十分知悉しておることが必要ではないか。それでなければ対策は立たないと思うのです。  そこでいまのお話を聞きながら、昨年一年間とこの一月から六月を比較したいと思ったけれども、実はそういうかっこうで比較ができないということは、やや不十分な点があるのではないかという感じがするわけでありますから、この点については検査ではなくて調査をしてもらいたい、そういうことを私はまず前段として要望いたしておきます。  そこで、いまの八十二件でありますけれども、八十二件をジャンル別にくくっていただいて、大体どういうようなケースのものが何件くらいです、そういうような事故のスタイル、事故にはいろいろなパターンがありまから、そのパターンごとに集計、分類されておるかどうか、それができておりましたらそれをちょっと伺いたいと思います。
  57. 加治木俊道

    ○加治木説明員 この八十二件だけの内訳で申し上げますと、お客から預かっておる株券の横領持ち出し、こういうものが全体で八十二件のうち五十一件、その次い多いのがお客からの買い付け代金を横領しておるというものが十一件、あとその他ということになっております。
  58. 堀昌雄

    ○堀委員 そういたしますと株券の横領、持ち出しということは、黙って処分をしたということだろう。お客さんの了解を得ずして売ったり――大体これは売ったんでしょう。売って、売った結果その代金はお客さんのほうに行かなかったということになるだろうと思いますし、買い付け代金の横領というか、そういうものはおそらくあとのほうの比重が高かった問題ではないかと思うのですが、この八十二件というのは社員、それから社員外務員というのですか、歩合外務員ですか、これらに分けてみたら事故を起こした人たちの内容は一体どういう形になりますか。
  59. 加治木俊道

    ○加治木説明員 恐縮でございますが、まだそういう仕訳はいたしておりませんけれども、外務員は一応全部職員ということになっておりますので、そういう意味で申し上げますと大部分職員がこれに関連している。会社自体がやっております場合には当然行政政策の対象になりますから、外務員である職員、あるいは外務員でない職員もあるわけであります。たまたまこの間に職員でも外務員でもない町のアナリストまがいの人が介在しておるという例もあったようでありますが、その場合でも必ず社員、職員がタッチしておるようでありまして、大部分が職員あるいは外務員の不正ということに見てよろしいかと思います。
  60. 堀昌雄

    ○堀委員 私率直に言って残念なのは、八十二件の事故がここに出されておったら、三月までですから、四月、五月、六月と三カ月たってこの八十二件の分析が十分行なわれていないようでは対策などは立ちようがないのじゃないか。私がいまその分数を伺っておるのは社員――私も最近わかったのですが、歩合外務員あるいはその他外務員いろいろなものがあるようであります。いろいろと登録を受けて処理はされておるようですけれども、ちょっと性格が違いますね。単なる社員というのは株の取引をしたからといって歩合が入るわけでも何でもない。片一方は歩合が入る職員、だんだん減ってきておるそうですが、やはりそれらについて、どういうところに事故の大きな原因があるかということは、これらの内容がわかりませんと問題が処理できないのですが、わかっておりましたらそれを伺いたい。
  61. 加治木俊道

    ○加治木説明員 たいへんお叱りを受けましたけれども、十分御趣旨の線に沿いましてもう少し勉強いたします。いままだ十分お答えできるほどの資料ができていないということでございます。
  62. 堀昌雄

    ○堀委員 きょうをスタートにひとつ……。せっかくお集めになった資料であれば、その資料を十分分析していただいて、やはり集まっておるものの中からも問題点を拾い出す努力がなければ、これは投資家保護にあずかっておる大蔵省として、特に現在は理財局の中に証券部が設けられておるわけですから、その点加治木さん新任でございますから、新々気鋭のところでひとつ努力していただきたいと思います。  その次に、大臣が約束を守らないですでに二十五分出席をしない。私のほうは常に約束をきちっと守って処理をしておる。皆さんのほうは一向に約束を守らないということでは、今後委員会の権威が疑われることになると思うのです。委員長にもそれを十分お含み置きいただきたいと思います。  大臣がいないところでやってもしかたがありませんから、その間銀行局長にお伺いいたします。  最近のコールレートの実情についてちょっとお伺いをいたします。無条件、翌月もの、月越しのもののコールの最近の状態はいかがでしょうか。
  63. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 コールのレートは、主として無条件を中心考えますと、二銭を割りまして一銭九厘というところまでは下がったわけでございます。しかしコールのレートは月の中でもやはり動くわけでございまして、月末になりますとどうしても高くなる。これは月末に通貨の増発がありまして、ことに月越しというふうなものがございますから無条件もはね上がる。大体それでも二銭程度におさまることが多いと思うのです。月越しということになりますとそれから直コールといいますか、金融機関同士の直接の取引によるコール・レート、これは実勢といたしまして大体二銭三厘ないし四厘というのが大部分だろうと思うのです。これがほんとうの実勢だろうと言われておるわけでございます。
  64. 堀昌雄

    ○堀委員 コールが二銭三厘ないし四厘、二銭三厘で年率八分四厘ですね。二銭四厘ですともう少し高くなるのですが、公定歩合がいま一銭六煙まで下がっておる。そして確かに無条件ものは月の中では一銭八厘になったこともあるようだし、一銭九厘というのが多いようですが、私はやはりこの問題の中で、もちろん無条件ないし翌月もののコールも非常に重要だと思うのですが、コールの中で、いま金融政策上の問題について見ますと、月越しのもののコールがどうなるかというのが非常に大きな問題点だと思うのです。  そこで、この二銭三厘、四厘から下がらないのはなぜか、これをひとつ伺いたいと思います。
  65. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 コールのレートがどうしてきまるかという点ですが、私の考えを申しますと、無条件ものにつきましては、大体いま日本銀行貸し出しが一兆以上でございます。そのうちには並手も若干担保に入っております。そうすると並手の公定歩合は一銭六厘ではなくて一銭八厘、それに高率適用がかかれば一銭九厘になる。ですから日銀から借りるかコールを引くかという場合も一つの並ぶところがちょうど一銭九厘のところが並ぶわけでございます。これはいわゆる無条件ものがそうであるということでありますが、月越しということになり、あるいは金融機関同士の取引ということになりますとかなり実際は長いわけです。つまりコールというものは本来非常に短期のものであるべきなんでございますけれども、特に直コールの実態はかなり長期にわたって実際は出しっ放し、比較的安定した資金になるということからその相場がおのずから無条件よりは高くなる。これはどんな場合でも無条件よりは高いのですけれども、それが二銭三厘、四厘になってそれ以下に下がらないのはどうであろうか。これはやはりいままでの日本金融が、時によって非常に緩慢にもなるけれどもはね上がることもある。非常に引き締めがきつくなる。そういうときに何らあわてることなく使える金というものは、やはり相場が漸くなる、こういうことであろうと思いますが、かつてこれらの相場が四銭であったり、五銭にもなったことがございますが、半分ぐらいに下がってきた。二銭三厘程度で無条件ものがするすると一銭六厘まで下がれば、これもまたそれに追随いたしまして二銭を割ることもありましょうけれども、いまのような日本銀行貸し出しが多額にある状態では、無条件ものが一銭六厘になるという可能性はきわめて少ないのではないかというように思います。どうしても二銭を上回るというような月越しものの相場になると思います。
  66. 堀昌雄

    ○堀委員 月越しものが二銭三厘、四厘で安定をしておる一つのもとの中には、私はいま日銀が今度は融資態度を少し変えまして、買いオペレーションによって通貨を供給する。貸し出しの方はクレジットラインを設けて、あとは窓口審査としないんだという形になったために、本来なら銀行のほうとしては自主的な預金のワク内で処理をすることを求められていると思うんですけれどもね。必要な揚げ超、散超の関係からくる資金の需給状態に応じて、日銀は買いオペレーションで調整をしたい、こういうことになっているようですから。ところが実際には日銀から借りたいけれども、そういう制度になっているからどうも借りにくい。この際銀行もちょっといい顔をしたほうがいいんじゃないかということが、私は月越しもののコールにすぐしわが寄ってきているんじゃないか、こういう感じがするのですが、その点銀行局長はどういう感じをしておりますか。
  67. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 コール市場というものは、かつたは日本では戦後量的に非常に少なかった。それがしばしば引き締めのたびにレートがはね上がり非常に高くなる。したがって、これを出しております中小金融機関からいえば非常に有利な運用ということになりまして、本来のコールというものと離れまして、かなり重要な運用対象として考えられる。それでそれがあったからまた逆にコール市場は非常に大きくなった。戦前に比べましても実質的にはコールの総量は多くなっていると思います。これは金が都市銀行の系列化にある企業の成長の度合いと、その都市銀行の資金の伸びとがマッチしてないというところにあると思う。つまり都市銀行というのは非常にオーバーローンにならざるを得ない。日本銀行としてはほとんど貸し出しを都市銀行に限っておりますが、これもおのずから限界がある。通貨の総量というものをべらぼうにふやすわけにいきませんので、ある程度押さえているわけです。実際はクレジットラインというようなものもやはりやりまして、量的な規制だけはやっておるわけです。これをいまの需要そのものに応じて楽々と貸してしまったのでは、やはりインフレにもなるわけでございますから、そこに一つのかんぬきが入るわけであります。やむを得ず都市銀行としては足りない分をコールに依存せざるを得ない。その成長の度合いよりも大企業の成長の度合いが激しく、しかも資金調達の方式が主として貸し出しという形になる。これまで社債市場などが非常に発達いたしまして、大企業が地方銀行や中小金融機関に社債という形で資金の調達ができるようになりますると、その系列銀行の負担は減るわけでございますが、いまのところはオーバーローンという形で行なわれているためにどうしても資金の余ります方面からコールという形で金をかき集めるという結果になるわけでございます。
  68. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの銀行局長のお答えを聞いていますと、実にむずかしいところがあるんですね。都市銀行は資金の需要のほうが多くて供給が少ない、そこで社債でも出ればいいけれども、社債が出ないものだから、まあやむを得ず日銀へ行くか、コールでとるということにならざるを得ない、そういうことになると今度はコールのほうが上がってきます。コールのほうが上がってくると、これはまた社債なんというものはますます出しにくくなるわけですね。コールが高ければ生命保険でも何でも、中小金融機関でも社債を買うよりコールを出しておいたほうがいいですからね、ぐるぐる回っていますね、一体これを今後どこで切りますか。これを切らなければ、金融正常化というのは絵に描いたもちですから、どこかでこの環を切らなければならない。この環を切る場所はどこで切りますか。
  69. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 これはもう当然に資金の需給の緩和ということでコールが下がるわけでございますから、需給の緩和といいましても一方において資金の供給量をふやすということがございましょう、その蓄積の総量をふやすということ、それがゆえに預金の増加をはかるということも必要でありますが、片一方で需要が強過ぎやせぬか。大企業といわず、中小企業といわず、全体を含めますると、いまの日本金融機関の資金供給総量に対して需要のほうがやや勝っている。これはもう先般の引き締めのときには最もはなはだしかったわけでございますが、これは漸次緩和していることはおわかりであろうと思います。私どもも緩和していると思います。しかしながら、まだ十分には緩和していません。たとえば末端にいきますると、いまだに何といいますか支払いの遅延ですね、相当企業間信用が完全には解けておらぬ問題もあります。それから設備の問題は、大企業については、大部分の業種については私は低下の傾向にあると思いまするが、中には例外もございます。中小企業にやはり資金需要が強いということもいわれておりますが、まあ、全体としての需要を適正に押えていくといいますか、やっていかなければこの問題は解決しない。需要がほんとうにゆるんでまいりますれば、つまり過大な設備投資も行なわれず、それから余分な在庫投資も行なわれないということでありますれば、私はある程度の成長を十分遂げながらなおかつ資金需要は供給に見合うということは可能であろうと思います。
  70. 堀昌雄

    ○堀委員 実は大臣が、何かわが党の質問が長かったんだそうですが、時間が長過ぎたものですから、ちょっと金融のほうに入りまして、区切りが悪いので、また戻るのをやめまして、きょうは証券のほうはやむを得ませんからあそこまでにしておいて、金融といまお話が出てきたいろいろな関係でちょっと少し質問しておきたいと思うのです。  まあ銀行局長が言っていることはそのとおりです。資金の需要のほうが低くなって供給がもしオーバーになってくればこれはもうコールは当然下がってくるから、コールがうんと下がってくればまさに社債の発行条件ができてくるということで、これは非常にいいですね。しかし過去の状態を見てみると、昭和三十何年かに非常に資金状態がゆるんだことが一回だけあるんですね。ところがそれ以後は資金状態のゆるんだためしがないわけですね。常に需要がオーバーで供給が少ない、こういうかっこうになっておるわけです。そこで私は今後の見通しの問題で考えますと、なかなかにいまの日本の情勢では、需要のほうが供給より少なくなる可能性はないのではないか、こう思うのです。それは理由がある。一つは、さっき広瀬君が質問をしましたように、やはり構造的な問題というものが日本のいまの経済の発展の過程の中に一つあると思うのです。その構造的な問題の上に自由化その他の外的条件が加わっておるから、どうしても日本の場合にはある程度企業自体は前向きに相当進まなければ取り残されるというビヘビアを持たざるを得ないような客観情勢が一つある。そこでどうしても資金需要というものはなかなか当分減らないだろう、私は一つそういうふうに思います。  もう一つ、供給の面からいうと、これはもうさっきから広瀬君が言い私がこの前から言うように、一年に六%も七%も物価が上がっているのなら、多少経済に関心を持つものならこれはインフレ・ヘッジをどこかで考えなければならないのはあたりまえのことだと思う。だんだん日本でもマネービルとか何とかで、テレビその他を通じて国民が金というものの効率を昔のようにのんきに考えないでわりに敏感になってきているということになりますと、定期預金が五分五厘、最長が五分五厘のものに一年間金を預けておいて物価が六・五%上がりますと、どういうことが起きると大臣思われますか。利子を五・五%もらったけれども物価としては六・五%上がったということは、金を銀行に預けておいて一年に一分ずつ預金者が追い足しをしているわけですよ、七%上がったら一・五%です。預金したと思っていたら、何のことはない、銀行へ利子を払いに行っているようなものです。そんなことが世の中で通っておるときに、これは大臣がどうおっしゃっても預金がふえるはずはないですよ。だって、預金者にしてみれば五分五厘の利子をもらうつもりで預金しておるのに、実質的には一分五厘なり二分なりの金利を払っているのだということになるのでは、これはふえっこないわけですからね。そうしてみると、宮澤さんはけさの新聞で日本消費者物価の高騰は構造的な変化である、こう大上段に振りかぶってきたわけですね。そのうち一ぺん宮澤さんに来ていただいて、予算委員会当時からの経過についてはやりますが、物価の上がるほうは構造変化なんですよ、ということになれば、金利でも上げないことには、いますでに逆ざやなんです。ところが政府のほうは、大臣は、この前低金利政策というふうなことは言わないのだ、国際水準にさや寄せだとおっしゃっている。ところが私は、広瀬君との質疑応答を聞いておりましたら、低金利政策を実施するためにはと言って、大臣もやはりそういうことばを使っておられる。だから私は、やはり低金利政策というのはあるのだなと確認をしたわけでありますが、低金利政策を片一方で進めて、今国会に郵貯法の改正案を出して、郵便貯金の金利を省令によって自由にして、大蔵省が、おいちょっと下げてくれと肩をたたけば郵政省はさあきたといってこれを下げるような状態をつくる、いま下げることではないでしょうが、つくるということは、将来預金金利のほうは下げたい――これはそうですね、貸し出し金利がある程度下がってくれば預金金利を下げなければ銀行がペイしないから。物価のほうは上がる、預金金利は下がるということになれば、逆ざやがますますふえるというのが日本の今後の構造的な変化である、こうなってくると、これはたまたま偶然起きていることではなくて、日本経済における構造的変化は需要が増加し供給がそれに伴って伸びないということは非常に私は明らかになってくると思う。そういう中でいま銀行局長は、理想案だろうと思うのですが、理想の方向を述べられたけれども、なかなか私は理想のようにいかないと思う。この現実の中でそれではこの環をどこで切るか、大臣にひとつお伺いいたします。
  71. 田中角榮

    田中国務大臣 四月のベースでずっと計算をしますと三十八年度五・九%という数字が出ます。こうなっては困りますので二・八%というように引き下げるように、いま諸般の努力をいたしております、こういうことをお答えいたしておるわけでございます。あなたの言うとおりにそれは物価が上がりまして預金金利を上回るということはもう実によろしくないことでありまして、こういうことでは貯蓄増強もかけ声だけではないか、まさに理論的にはそのとおりでございます。でありますから、物価が上がるならばもう預金をしてどうにもならぬから使ってしまえ、こうなればますます上がるわけであります。でありますから、構造的な変化ということは、これは確かにそういう面もあるでありましょう。でありますから、消費の質等も上がっておりますし、だんだんと消費物価は上がる趨勢にある。これを押えていってもゼロというようにすることはなかなかむずかしい問題である。ただこれは無制限に外貨があり、全く自由化をするということになって、しかも国内産業に対しては一般会計からでもあらゆる立場で無制限に合理化を進めるということになれば、これはもう物価は一挙に下がるということになるわけでありますが、現在言い得てなかなかそこまで現実的に進まないという過程において考えますと、物価お互い努力しながら少なくとも下げていくという方向にいま進めなければならぬということを考えておるわけであります。  もう一つは、日本人は、物価は上がってはきましたし、いろいろな理由はありますけれども貯蓄心旺盛な国民でありますから、とにかく物価は相当去年も上がりましたけれども貯蓄は有史以来伸びておるわけであります。そういう意味において、三十八年度の税制改正につきまして、利子課税一〇%を五%に下げても貯蓄などは全然ふえないだろう、こういう御意見もございましたが、確かに政府努力しておるということに対して、貯蓄政策国民各位も協力をしていただいて、現在非常に貯蓄は増強せられております。でありますから、そういうことが金融環境の整備にもなり、また環境の緩和にも資しておるわけでございます。私どもはそういう意味で、物価は上げないように、それから貯蓄はますますしていただくように、また貯蓄だけではなく、また貯蓄をやらなければ、企業に対する貸し出しのために日銀からの借り入れがますます増大するというのでは困りますので、貯蓄の増強もはかりながら、オーバーローンの解消をはかり、しかもオーバー・ボローイングの是正ということ自体も並行して進め、また公社債市場の育成強化ということもあわせて総合的に行なっておるわけでございます。ただ、いままでの状態から見ますと、大きな産業が非常に過大投資を行なうという問題は、三十五、六年にはございましたが、現在は自由化に対応して、遊休施設として過剰投資であったものをフル運転にするということが大きな問題でありまして、大きな企業がより銀行借り入れというものに依存をして、資金をかき集めて過大な設備投資を行なうという機運にはございませんので、政府国民相呼応して政策よろしきを得れば、物価対策も徐々にではございますが解決をしていき、また金融環境の整備も漸進的に動くであろうというふうに考えております。
  72. 堀昌雄

    ○堀委員 私は大蔵大臣が長いこと答弁するときは、問題の焦点をぼかして、何を言ったかわからぬようにするのだということをこの前伺った。なるほどいまのも何を言われたのかさっぱり私はわからないのです。私はそういう論議はこれはしかたがないんですから、もうちょっと端的な議論をしているのですよ。端的な議論というのはどういうことかといいますと、さっき申し上げたように、月越しもののコールが下がらないのはなぜか、これは需要と供給の関係なんだ、そうすると需要と供給というのは、需要はふえる方向はあってもなかなか減らないという、日本のいまの構造的な変化があるのではないか。供給のほうはなるほどいま市中銀行の預金量はどんどんふえていますよ。これはなぜふえているかというと、私は、総体としては、総貯蓄はやはりふえるでしょう。やはり収入がふえているんですからね。経済の成長があって、国民所得がふえているのだからふえるのが当然ですが、内部的な均衡を見ますと、いまふえているのは、証券なり投資信託にこれまでかなりいっていたものが、いま還流しているわけですね。理財局長ちょっと伺いますが、最近の投資信託の解約の状態ですね、どうですか、過去一年間で投資信託の総計の純資産といいますか、契約残高というか、これは一体どのぐらい減少しておりますか。
  73. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 お答え申し上げます。  三十七年の集計が出ておりますので申し上げますが、三十七年中の株式投信の積算の増加額が千三十八億円、公社債投信が二百三十三億円のマイナスで、累計いたしまして八百四億円の純増ということになっております。
  74. 堀昌雄

    ○堀委員 三十七年中は八百幾らかの増ですが、公社債投信のマイナスは一応横へどけたとて、株式投信は増加額では一千三十八億、前年その前年、三十五年、三十六年の増加額は幾らぐらいありますか。
  75. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 三十六年が四千二百二十六億円、三十五年が二千七百四十一億円、三十四年が千四億円でございます。
  76. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのでおわかりになるように、投資信託に四千億から三十六年にいっていたものが一千億に減った。これは三千億というものが、三十六年はかなり預金のほうから投資信託へ流れたのが、今度逆向けにいま返りつつある。全体の総額がふえておりますけれども、内部的な移動がかなりあった。これは投資信託に向かっていたわけですが、投資信託以外の証券の中へ流入しているものも相当ある。やはり株の価格がこれだけ変化を見れば私はいろいろ問題が出てくると思う。そういうふうにして見ると、実は供給のほうもやはりそんなにゆるむほどにはふえにくいという構造の状態だ。そうすると、私はいま社債の問題で論議をしているわけですけれども、そうするとコールは下がらないということになれば、いまの社債金利から見ればこれは社債発行はむずかしいわけですね。要するに社債のほうがコールの月越しのものをとるよりも有利にならなければ、社債というのは長いのだし、月越しものは社債に比べれば違いますけれども資金的に見ればこれが非常に差があって、社債の利回りのほうがいいということになれば、月越しもののコールは、性格が違うけれども、社債というものがもっと出てくる条件が出てくる。しかしコールが高いから出ない、こういうことですね。そうするとこの問題は、いま私がこれから伺いたいことは、この公社債市場の育成の問題にコールから始めていまきているわけですが、皆さんのほうが公社債市場の育成について御検討になっておるようです。私も必要だと思うのです。これはもう大臣が御就任になる以前から私はここでずいぶん公社債の問題をやってきたわけです。この公社債の流通というのはどういうことなんだ、担保金融をやってこれを調整するとかなんとかいっておる。前の証券部長だったかだれだったか、いろいろな人が苦しい答弁をそこでしてきたわけですけれども、今日になったっててんで流通しないわけです。そんなことで議論はいろいろあるでしょう。理想もいろいろあるでしょうが、現実にはやはりこういう状態である。解きほぐして自由化や何かしていかない限りこの問題は解決しないんですね。そこで私がいま伺っておるのは、いまの資金需要の関係や供給の関係やコールの状態、それといまの社債の長期金利の関係、こういうものが悪循環しておるわけですよ。要するにコールが高いから社債が出ない、社債が出ないから資金需要が相変わらず多いのだ、こういう悪循環をしておる、この輪をどこで切るかということをひとつ端的に、ここで切りたいというふうに答えていただきたい。
  77. 田中角榮

    田中国務大臣 ここで切ればばさっととまりますというような名案はないわけであります。が、しかし金融を正常化していくということに対しては種々方策をめぐらしておるわけであります。公社債市場の育成ができない理由は、公社債利回りよりもコールが高いという一点にあるわけであります。あなたが言われたとおりの現象がありますが、しかし企業自体は大きな資金を必要とした企業は、御承知のとおり三十五年、六年でもって設備投資が少し過重になっておりまして、現在残っておる、負担になっておる設備をフル運転したいということでありますから、とにかく企業自体もその自由化に対処して、いままでのように幾らでも拡張するのだというような、オーバ一・ボローイングを是正するという気持ちをまずつくってもらう。それから銀行自体も日銀依存という態度を改めて、少なくとも一〇七、一〇八というような貸し出し過多におちいらないように自粛をしなければならない。特に民間の個人が持っております公社債というものに対して、担保金融を行なおうということでもって、民間金融機関そのものも公社債流通市場の育成、強化というものにひとつ肩を入れてくれ、また事実そういう体制になっております。同時にそういうような新通貨供給方式として、日銀がとっておりますいわゆるオーバーローンの解消ということを主目的にしてとられた買いオペレーション制度というものも、新しい観点から考えますと、公社債市場の育成、強化という面にこれからだんだんとウエートを変えてまいりまして、このような面からも努力をし、また適正なオペレーション制度の活用によりまして公社債の市場が育成せられる方向に行くであろうし、またそういうふうにしてやらなければいかぬ。またこの間の答申等にもありましたとおり、公社債担保金融というような面から一歩進めて、また市中都市銀行や市中金融機関というものだけではなく、別な公社債というものを対象にして、日銀のオペレーション対象に業者自体も加えなければいかぬのじゃないかというような問題も議論されますので、これらの問題を総合的に調整していくことによって公社債市場の育成、強化もはかってまいりたい、それによって産業資金の供給も円滑な道を開いていきたいというふうに考えております。
  78. 堀昌雄

    ○堀委員 どうもこの委員会で、大体いつも何でも自由化の方向へ行っているわけですね。そこで金融のいまの問題も私よくわからないことは、いいですか、あなたがいまお話しになったように、コールと社債の間にこういう格差があれば、この格差があるということは、これは当分やむを得ないと思うのです。ということになると幾ら担保金融をやってみたところで、担保に入れて金を借りる。それじゃ金が済んだら担保を引き取ってこうなる。このことは率直に言って、流通市場ということと私直接関係ないと思うのです。なるほど一カ所に、いま市中銀行なら市中銀行だけが非常に多量にかかえておる公社債が、多少どこかほぐれるという問題があるかもしれませんが、しかし、それならいまの状態で公社債を一般の人が買うかどうかということになると、実際はそう簡単に買わないと思うのです。それは裏返していえば、この前あなたおいでにならなかった、水田さんが大臣だったときのおととしの一月の、要するに預金金利改定の際に、私は長期利回りのものは減らす必要はないではないかという論議をしておいたけれども、下げてしまったわけですね。長期利回りのものをくっつけて下げてしまった。だから、そこらに大蔵省としての政策に対する無定見さ、こうこうこういってという一つの一貫したそういう経済政策に対する見通しを欠いていたのじゃないか、率直に言うと……。そうしていまそのためにコールとそういう社債金利の値幅が当時は逆にコールのほうが高かったから問題は別ですが、しかし、コールが異常な状態になってきても、依然としていまの状態解決できない。問題は残されているわけですね。そうすると、なるほど担保金融をするなら、それは換金性じゃないけれども、金が借りられるという点での道を開くことにはなるでしょうが、そのことはそんなに簡単にできるのか。いまのコールが下がることに直接つながってこないのじゃないか。やはり債券が出ることが実際はまず必要なんでしょう。債券が出たら資金需要がゆるんで、ゆるんだらコールが下がる、こうなっておるわけです。環ですから、何にしてもこの環の外側をぐるぐる幾らなで回してみたところで、この環は切れないですね。やはりどっかで少しずつ、一ぺんにぱさっと切れなくても、少しずつその環を切ることに問題を向けないと、いまの問題は外側を回っておる。ぐるぐるその環の外を回って、どこか切れるところがないかなということでさわってみたところで、この環は切れない。切るためにはたがねを持ってきて、少しはずっていかなければだめなんですね。そのはずり方に対する政府のかまえがほんとうはないのじゃないかという気がするのです。そこで、いまの問題は、そのはずり方ですけれども、公社債の金融の問題があるし、もう一つは日銀のオペレーションですね。このオペレーションにしたところで、最近ずっと端数はいいというかもしれませんが、要するに固定した関係者の取引で、おまけに取引まで私はなっていないような気がするのです。いまのところ見ていると買いっぱなしオペレーションです。買ったり売ったりが、買っているほうが多くて、その中でずっと見ていると、現実にはオペレーションがやられておりながら貸し出しもふえている。いわゆる政策オペレーションを始めてから見て、その部分もふえておる。こうなってくると、日銀の買いオペレーションといえどもそう簡単な問題ではない。一方通行です。担保金融みたいなものも一種の一方通行ですね。両方通行になるということになると、やはりもっと根本的なところにあるのじゃないか、これが一点です。
  79. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたが、先ほどから言っておりますようなことに対して、政府考えて施策を行なっておるわけであります。日銀の買いオペレーションも先ほど申し上げたとおり、初めはオーバーローンの解消ということでありましたが、公社債の流通市場育成、強化という面にウエートを置いてひとつやろうということで、対象も都市銀行や市中金融機関だけでなく、また別なものも考えなければいかぬじゃないかというようなことをいま検討いたしておるわけであります。しかもまた買いっぱなしでもって売り戻しがないじゃないか、いまくらいのものを買っておって、あれで売ったり買ったりというのでは大したことないと思うのです。ほんとうに弾力運用で、売ったり買ったり金融調節機能を果たすということになると、量が多くなるのじゃないかということが次に御質問に出てくると思うので申し上げておるわけでありますが、実際弾力運用ということになればそうなるわけです。でありますから、これは一ぺんにやりますと、いま病後のからだでありますから、また非常に梗塞状態になったり、一ぺんにまた貸し出しがふえたりということでは困るので、日銀の貸し出しをだんだん減らしながら、目標は一体いつかということでありますが、目標日本経済の動き方によってマッチさせていかなければならぬから、いま一年間で全部ゼロにしますというわけにはいかぬとしましても一応二千億貸し出しておるものを、いまのままにしておくと一兆円以下になるのは一体いつになるのか、いまの半分になるのかどうなのかということは議論の対象になるのでありまして、来年の六月ごろまでに、一体日銀の現在の一兆二千億が六千億になるのか、五千億台に縮められるのか、その場の状態における日本企業状態資金需要の状態はどうなるのかというような資金ポジションを十分想定しながら、これからの第二段階における買いオペレーションの活用ということをお互いがいま検討いたしておるわけであります。あなたが先ほど言われたとおり、コールを下げるには社債が出回らないからコールはいつでも上がるのだ。同時にまた逆の面から見ますと、コールに流すようなことよりももっと市中金融機関そのもの、いわゆるいままでコールで荒かせぎをしておったものが、今度は地元金融機関としてのむしろ中小企業の育成とか、そういう長期的な見通しのものとに立ってこれから投資ということを考えていかないと、また長期的な預金吸収ということはできませんよということで、地方銀行や、相互銀行、また信用金庫等コールの放出源に対しましても社債の持ち分を大きくしたり、株式の持ち分を大きくだんだんと制限を設けましたり、内容の充実をはかっておりますので、そういう面からもコールというものは、そんなにコール市場でもって荒かせぎをしようというような考え方よりも、正常な金利体系にコールの放出源そのものも協力していくような総合的な対策をいま考えておるわけであります。
  80. 堀昌雄

    ○堀委員 おっしゃることは私もわかりますけれども、いまのお話で、環の切り方のところはコールの出るほうを押えよう。なるほどそれは二銭三厘で出すものがなくなれば買いようがないわけでありますから、出すほうを押える。確かに一つの名案です。出すほうが押えられれば私は非常にけっこうだと思います。ところがいわゆる中小金融のいまのコールの出し手というのはどういうことになっているかというと、これまでずいぶん高い。高利で荒かせぎしていたけれどもなかなかいかない。片一方では、田中さんの言われるところの国際水準にさや寄せする金利政策によってだんだん下がりつつある。下がったのなら歩積み、両建てをやめなさい。正しい金利でいきなさい。片方では金利コストがかなりかかっている。要するに貸すほうはうまみのほうは減ってきて、中小金融機関は板ばさみになっていると思うのです。いま板ばさみになっているところへ、さらに安い社債を、コールのほうにうまみがあるものを買いなさい。これは一種の統制経済でしょうが、私らの統制経済はそうつまらない小細工はしません、全体でやるけれども、どうもそういうことでやらなければ、いまの社債を幾ら買えというワクでもつくらなければ。だってこっちのほうは利益があるのに安いほうをしなさいと言われたら困るわけですから、だからそういうふうになかなかいかない。そこで中小金融の中にこれからますます矛盾が出てくると私は思うのです、実際問題としてみると。だからそうなってくると、いまのお話も必ずしも私は円滑にはいきにくいだろうと思いますが、時間があまりありませんからきょう聞いておきたいことだけをちょっと伺っておきたいのです。  日銀のオペレーション、これは日銀の考えと大蔵省の考えとどうも少し私は違うような気がするのです。総裁の答弁を聞いたり、新聞記者会見などのいろいろなものを読んでいると、私の受ける感触と、いま大臣の言われた公社債の流通育成の方向に踏み切ったと言われる問題とは、私はいささかニァアンスが違う感じがしますが、それは山際さんに来てもらって話すことにして、大蔵省は日本銀行の買いオペレーションというものの対象になる公社債という関係については、今後の見通しとしては何を一番中心考えられておるか。さっきの弾力的もあり、量もふえてくるということになるかもしれませんが、対象としては何を考えているか。――もうちょっと具体的に言いましょう。要するに日銀のほうにはどうも将来的には諸外国のように、オペレーションの対象は政府の短期証券が適当ではないかという考えがあるようですね。ところが現実はそうなっていません。短期証券はそんなものに現在なるような状態に置かれていないのですから。その問題です。要するに、日銀が考えておるオペレーションの対象として最も適当なのは政府の短期証券ではないかという考えは、日銀の発言の中にしばしば出ておりますから、それについてはどうですか。
  81. 田中角榮

    田中国務大臣 買いオペレーション制度そのものに対して、日銀と大蔵省に意見の相違はありません。運用問題に対しても十分意見交換をしておりまして、大体一つの線に沿っています。将来の問題としてあなたがいま言われたような方向でいくことは好ましいかもわかりませんが、とにかく買いオペレーションの制度を去年の十一月開きましたときには、日銀自体が困っておるので、オーバーロンの解消の問題がありましたので、特に金融債や電力債まで加えた、こういう考え方は初めは基本的な問題としてはしぼるのがほんとうである、こういう考えでありましたが、現実問題を片づける一つの手段としての買いオペレーション制度でありましたので、当然現在のように、場合によったらふやさなければいかぬじゃないか、こういう問題も起きておるのでありまして、将来の問題は別にして、現実の問題としては個々の問題を調整していくべきだと思います。
  82. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのような、将来の問題としてはともかく、現状の問題としてはこうこうだ、私が伺っているのはそういうふうに聞いていないのです。短期証券というものをオペレーションの対象として主たるものと考えるかどうか。ではこういうふうに伺いましょう。
  83. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 この点は先ほどのオーバーローン解消に関する、オーバーローン是正のための調査会の答申にも書いてありますが、本来は政府の短期証券によることが望ましい。それは実際は、対象にするしないは金利の問題です。短期証券はいままだ一銭人煙三毛で、これを下げるかどうか検討しておりますが、いずれにいたしましても一銭六厘五毛、これは長期国債の金利との関係もございまして、これを一銭八厘あるいは二銭というような高さにきめることはちょっとできません。またそれを発行している外為会計や食管会計の負担の問題もございますから、あまりばかげた金利には上げられない。そういたしますと現在の事情におきましては、先ほどコールのお話がいろいろございましたが、それと比べまして等しく低いレートのものをオペレーションの種に使うということは、実際問題としては相手が応じないのでありますから。これはかつて三十一年の三月ころでございますか、日本銀行貸し出しが実質的にゼロになった、そのときはコールが一銭四厘、一番安いときは一銭三厘まで下がった、このときにおきましては、一銭四厘五毛程度のものでも売りオペの種になり得た。だからいまのように相当額の地方銀行の貸し出しがあった場合には、そのコールレートはあまり大きくは下げられないし、したがいまして、やむを得ず、やむを得ずと言っては何ですが、現状に適するような方法で、ほぼ二銭あるいはそれ以上に回る程度の社債、電力債まで含めましてオペレーションをやっている。しかもそのオペレーションは大体において買いのほうでございます。現在では囲いを多くする。場合によって売り戻すこともございますが、主としてこれを適時に買い上げ、そして貸し出し限度額を適正に引き下げまして、金融がそのために不当に緩和するということがないようにしながら、日本銀行の貸し出しを逐次減らしていくという方向に持っていっておる。これが現在のオペレーションの主たる目的になっております。本来季節的な調整をしたり、あるいは季節的以外にも金融の繁閑を調整するために、短期の証券などの売買によって市中の流動性を調整するのがオペレーションの目的であると思います。外国ではそういう形で行なわれます。ですから、見通しを申し上げれば、おそらく日本銀行貸し出しが実質的にゼロになりまして、そしてその上に企業にも流動性があって、市中のいわゆる流動性が高まる、そういう時期におきましては当然に短期証券がオペレーションの対象として、ほとんどそれのみが働いてさしつかえないということで、それを活用していいんじゃないかと思いますが、そこに至るまでの過程においてはとうてい無理ではないかというように考えます。
  84. 堀昌雄

    ○堀委員 わかりました。そうすると、当分は短期の証券は、そういうオペレーションの対象には考えないということですが、いろいろなものを読んでみると、短期の証券の金利の引き下げ問題これはいまどうなっているのですか。一ぺん下げると言ったけれども、もやもやとなってそのままになっているようですが、これは一銭六厘に下がるのですか、それとも時期はいつごろになるのですか。
  85. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 短期証券の金利を下げるか据え置くかの問題は、先般の公定歩合の引き下げに伴いまして問題になりましたことは御承知のとおりであります。その後われわれのほうでも検討いたしておりますし、日本銀行ともいま相談しておるところであります。
  86. 堀昌雄

    ○堀委員 日本銀行とはだいぶ前から相談しているのでしょうね。だって公定歩合が一銭六厘になったのは四月二十日ごろでしょう。そして何か下がるということが一ぺん新聞に出たら、山際さんが大阪で下げるということはしてもらいたくないとか、すったもんだした。それがいまも相談中であるでは私に対する答弁にならない。これは大蔵省がやることでしょう。最近の状態を見ると、日銀のやる問題についてかなり大蔵省の発言がある。今度日銀のあれには大蔵省が遠慮せられる。いいですよ、それは別によそのことじゃないのだからいいけれども、何となくもたもたしているというのは、要するに政府に一貫した方針がきちんとないからじゃないのか。それじゃなぜいま相談中、相談中といって延びているのか、その延びている原因をちょっとここで言ってください。
  87. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 御承知のように、常識的に考えまして、政府短期証券の金利というのは公定歩合より低いのが諸外国の例でもございますし、当然でもあるわけです。一方いまのお話のありましたような短期証券を買いオペの材料に使うというか、本来の姿としては市中消化をするのがたてまえであるということも事実でございます。その辺について現実の事態をどう認識し、どう判断するかについて多少両方の意見があって、その辺を相談しておるということでございます。
  88. 堀昌雄

    ○堀委員 両方の意見というのは、ちょっといま――さっき私はけりがついたのかと思ったら、まだついていないようですから、両方の意見というのをお聞かせいただきたい。
  89. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 両方の意見と申しますのは、普通の、ただいま申し上げましたような外国の例あるいは通常に考えられますように、公定歩合より短期証券というものの金利というものは下がっておるべきだ。したがって下げますと、先ほど銀行局長が申し上げましたように、買いオペの材料にする、あるいは市中消化ということはかなり困難で、現在のような状況になるわけでございます。したがって、そういう形のまま筋を通すべきだというのが片一方の議論でございます。片一方の議論は、理想の姿を考えまして、買いオペの材料と申しますか、できるだけ短期証券というものは、本来市中に消化をすべき性質のものなんで、そういう方向に持っていきたい。したがって、この際短期証券の金利を下げないでおくことが少しでもそういう方面に助けにならないのだろうかというのが片一方の意見でございます。
  90. 堀昌雄

    ○堀委員 銀行局長、何か発言があるようですから……。
  91. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 この問題は、非常に何かもたもたしておるとおっしゃいましたが、まさにそういう見方もございます。また、現実問題として、短期証券の金利を動かす問題、市中で現在銀行などが持っておらぬわけですね。ごくわずか証券会社などが、いま公募制でございますから買う場合もございます。実際は、金利としては非常に高いわけでございます。政府の短期証券のレートが六分二朱のものなんですが、一年ものの定期預金の利回りよりも高いわけなんです。そういう点は、もしこれは一般に非常に考える人がありましたら、短期証券が有利だ、銀行よりも有利じゃないかということになると思うのですが、どういうわけかあまり買われない。ほとんどこれは政府部内といいますか、政府が持っておるのと、日本銀行が持っておるのと、政府機関が持っておるのとだけでございまして、政府の部内金利のような形になっておるのです。ですから問題として、非常に対市中において重大な金利の効果を云々するというようなあれがないわけでございますから、こういう点について、ああいう答申にもありましたように、これはどういう趣旨で書かれたか知りませんが、日本銀行貸し出しの有無にかかわらずというふうな考えであるとしますと、その辺、若干現状の認識において違う。いずれにしてもさしあたりいまの問題としては重大な問題ではない。ただし、金利の体系からしますと、やはり公定歩合よりも上回るといいますか、すなわち民間金利よりも短期証券のほうが金利が高いという状態は、体系の上からいっては好ましくないのじゃないかという考え方もあるわけでございます。そういうことで、これをいかようにきめましても重大な影響がいま現に起こるというふうなことではございません。そこで十分日本銀行あたり考え方も、こういう将来のオペレーションの問題もございますから、そういうことを意見を十分戦わしまして、そういう金利体系というふうな点、オペレーションの問題というものを相談して、まあ急ぐこともないんじゃないかという感じでおるわけでございます。
  92. 堀昌雄

    ○堀委員 私はあなたのおっしゃるように、いまほとんど資金運用部へ入っていて、市中にないということをよく知っております。ただ問題は、やはり非常に重要だと思っているのです。それは五毛動くということに重要性があるのではなくて、あなたがいま言われたような基本的な態度の問題によって、この議論が出ているわけですからね。その基本的な態度をきめない限りは、基本的態度は別で、五毛だけ動かすということは、これは政策として成り立たないと思いますからね。そうすると基本的態度という点においては問題がある。しかしその問題は話し合って解決することじゃないんじゃないか。大臣の話をさっき聞いたら、当分短期証券というものは買いオペレーションの対象にしないのだ、現状では無理なんだと割り切ったから、大臣に私は違う話を持っていったら、いやそうじゃないのだということになってきたので、ちょっといやな質問をしたわけですけれども、だから私どもが知りたいのは、一体大蔵省はいまそうは言っておるけれども大臣はああ言ったけれども、いやまた先へいって、少し日銀のほうの考え方で、これをオペレーションに近づけるのだといって――だから私はきょうの大臣の答弁なら、一銭六厘になるものだというふうにさらっと理解すればそうなるのです。ところがどうもまだそうじゃないのだということになる点に、何だかもやもやしたものがある、こういう言い方をしているわけです。大臣はどうなんですか。それじゃもう一ぺん上げるのか上げないのか、時期はいいですよ。方針がなければ話し合いはできませんものね、そうでしょう。
  93. 田中角榮

    田中国務大臣 基本的には下げるつもりでおったのです。おったのですが、政府、日銀まさに表裏一体ということで、非常にむずかしい金融の情勢に対処しまして、これから金融正常化をはかっていくのでありますから、いま日銀さんの意向も聞いてござんなさい、こういうことでありまして、私はこれが悪いことだと思っておらないわけでございます。このごろはマスコミ等も日銀は非常に強かったんだけれども――私たちは日銀の権限を侵しておるとは全然考えておりませんが、どうも大蔵省がこのごろ強いというようなことを言われておりますし、とにかくまさに一体になろうという考え方で、日銀の意向も十分聞きながら、お互いがひとつ検討しよう、こういうことでありまして、これは初めのうちは当然下げるべきであるというような考え方でおったわけでありますが、先ほど高橋銀行局長から言われましたような現状もございますので、現在現状尊重ということでございます。
  94. 堀昌雄

    ○堀委員 実は問題が非常にあれこれあってというならいいのですが、率直に言って二つしかないのですよ。そうして相談する、相談するといって、すでに一カ月以上相談しているのだろうと思う。相談していないんじゃないでしょう。相談していて、そしてきまらないというのは、私ども部外者から見るとどういうことになっているのか、実に摩訶不思議なんです。そしていま大臣の答えを聞いていると、大蔵省がどっちにするかまだきまっていない。大蔵省自身が二つのうち一つをどっちにするかまだきめていないなら、相談する必要がないでしょう。大蔵省はこうするのだということをきめて相談するならわかるが、いまの大臣の話を聞いたら、いろいろあるからという。それならあっちに言ったって、こっちの態度がなくては相談のしょうがないと思うのです。相談というのは、二つの立場があるなら、私はこうです、向こうはこうです、それで話し合ってどっちかにきめるので、間をとるということはないと思う。一銭六厘五毛二朱ですか、一つに手を打ちましょうという性格になるものじゃないですからね。やはり一銭六厘五毛を据え置くのか、下げるのか二つに一つしかない。そのときの形というなら、もうこれ以上聞きません。聞いてもあなたは答えられないでしょうから聞きませんが、やはりもうちょっとすかっとした――田中さんらしくないですよ。私は何も下げなさいとか上げなさいとか言っているのではない。政府政策では、オペレーションに対して今後いかにあるべきか。これは短期証券の問題については、一つのスタートになるわけですからね。それについては政府部内が――銀行局と理財局といろいろ立場もあろうかもしれないけれども、しかし大臣立場としては、大蔵省としてはいかにすべきかというその政策を先に立ててから話をきちっとしてもらうということにならなければならないじゃないかと思います。  時間が大へんおそくなりまして申しわけありませんが、ここまでで一応打ち切りまして、証券の問題につきましては、次会に参考人に来ていただいて――あなたの御不在中に事務当局にいろいろ質問してみましたが、あなたがおっしゃった一年前から自律性を言っているのだ、しっかりやらしているのだと言われておるのに比して、証券内部における実情に対する把握のしかたはきわめて不十分であることは当委員会で明らかになりました。そこで新しい理財局長、証券部長でございますから、これからひとつ調査を大いにやってもらいたいということを述べておりますが、次回の次回ですから、これから二週間ほどありますから、それまでにいまの問題の分だけについては少し詳しい分析をして、さっきのような五十一件、何件、あとはその他というのではなく、少し詳しい報告を当委員会でしていただくようにお願いをして、そこでそれらの分析を含めて今後の対策をひとつ次の次の週の委員会でやらしていただくということにいたしまして、本日の私の質問を終わります。
  95. 臼井莊一

    臼井委員長 春日一幸君。
  96. 春日一幸

    ○春日委員 採決前にごく短時間だけですけれども、高橋銀行局長に伺います。  本員は、先般の委員会東京昼夜信用組合の破綻について質問をいたしました。この銀行がめちゃめちゃな運営をいたしました結果といたしまして、都内数千の零細預金者に対しまして預金払い出し停止を行なうことによって非常な迷惑を加えておりおす。これは直属の所管は東京都にあるといえども、しかし法文のたてまえ、最終的責任は国にございます。したがって前の大月銀行局長は、その立場に立って東京都を督励をしながらこれに対する最終的な解決、零細なる預金者の被害を救済することのために努力したいとの答弁でございました。自来二、三カ月を経過をいたしておると思うのでありますが、本員に対しても、本委員会に対しても何らの回答がなされておりません。その後どうなっておりますか、この機会に明らかにいたされたいと思います。
  97. 田中角榮

    田中国務大臣 東京昼夜信用組合の問題につきましては、大蔵省も重大な関心を持っておりまして、東京都の報告を求めておるのであります。東京都の回答書によりますと、欠損は十数億円を見込まれる現在でございまして、できる限り善意の預金者に対しまして迷惑をかけないように現在善後措置を講じておるわけでございます。特に零細な預金者に対する払い戻しの確保につきまして、ただいま協議をいたしておるわけでございまして、万全を期したいと思います。
  98. 春日一幸

    ○春日委員 これは東京都と大蔵省と協議されておるのでありますか、それともその破綻をいたしました信用組合当事者と大蔵省と協議されておるのでありますか、伺います。
  99. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 東京都が主として解決に当たっておりますが、いま大臣から御説明申しましたように、零細な預金者等に対しては迷惑をかけないというふうな基本的な方針で、おそらくいまのあれで申しますと、今月中くらいに解決策をきめて、それを公表するということになると思います。私の方は直接はタッチしておりませんが、東京都を督励いたしまして措置させておるわけでございます。この措置はまだ内容を公表するところまではいっておりませんが、とにかく連合会が救済に当たる、安い金利で銀行から連合会が借り入れて、それを元本とするとともに利ざやをかせいで赤字を埋めていくというふうな、かなり長期間を要しますが、さしあたり善意の預金者にはほとんど迷惑をかけないようなことで解決したい、こう申しております。その措置は、決定するのは今月一ぱいかかるんじゃないかというふうに考えております。
  100. 春日一幸

    ○春日委員 高橋君のほうの御意見をいろいろ伺っておりますと、堀君の質問に対して、金融理論としては一個の見識を備えておられるようでありますが、はたして金融行政上どの程度の力量を持っておるか未知数でございます。どうか新局長の腕の見せどころとして、その零細預金者の実害が真に救済されますように――こういうような金融機関というものはやはり信用第一でございますから、連帯責任の上に立ってその実害がほんとうに救済を見ることのできますように――本案件はすでに破綻をいたしましてから六カ月、委員会においても二、三論じられておるところでございます。半年たって解決を見ないということは、私は金融行政上非常な怠慢であると思うのであります。新局長が就任されたのを契機といたしまして、少なくともここ二、三日のうちに解決されることを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。      ――――◇―――――
  101. 臼井莊一

    臼井委員長 金融緊急措置令を廃止する法律案を議題といたします。  他に本案に対して御質疑はありませんか。――御質疑がないようですから、本案に対する質疑はこれにて終了いたします。     ―――――――――――――
  102. 臼井莊一

    臼井委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  採決いたします。  本案を原案のとおり可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  103. 臼井莊一

    臼井委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 臼井莊一

    臼井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次会は明七日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後二時十六分散会