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1963-03-12 第43回国会 衆議院 大蔵委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月十二日(火曜日)    午前十一時三分開議  出席委員    委員長 臼井 莊一君    理事 毛利 松平君 理事 山中 貞則君    理事 吉田 重延君 理事 堀  昌雄君       安藤  覺君    伊藤 五郎君       岡田 修一君    金子 一平君       久保田藤麿君    田澤 吉郎君       田中 榮一君    高見 三郎君       濱田 幸雄君    藤井 勝志君       藤枝 泉介君    古川 丈吉君       坊  秀男君    佐藤觀次郎君       芳賀  貢君    広瀬 秀吉君       武藤 山治君    横山 利秋君       春日 一幸君  出席政府委員         内閣法制局長官 林  修三君         内閣法制局参事         官         (第一部長)  山内 一夫君         警  視  監         (警察庁保安局         長)      野田  章君         大蔵政務次官  原田  憲君         大蔵事務官         (大臣官房日本         専売公社監理         官)      片桐 良雄君         大蔵事務官         (理財局長)  稲益  繁君         大蔵事務官         (管財局長)  白石 正雄君         大蔵事務官         (銀行局長)  大月  高君         国税庁長官   木村 秀弘君  委員外出席者         検     事         (刑事局刑事課         長)      羽山 忠弘君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    佐竹  浩君         大蔵事務官         (理財局総務課         長)      鈴木 喜治君         大 蔵 技 官         (印刷局製造部         長)      小林 榮一君         国税庁次長   泉 美之松君         日本専売公社総         裁       阪田 泰二君         日本専売公社理         事       狩谷 亨一君         (販売部長)         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 三月十一日  外国保険事業者に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一一一号)(参議院送付)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国タイとの間の条約  の実施に伴う所得税法特例等に関する法律案  (内閣提出第一四一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国タイとの間の条約  の実施に伴う所得税法特例等に関する法律案  (内閣提出第一四一号)  税制に関する件  金融に関する件  専売事業に関する件  印刷事業に関する件      ————◇—————
  2. 臼井莊一

    臼井委員長 これより会議を開きます。  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国タイとの間の条約実施に伴う所得税法特例等に関する法律案議題といたします。     —————————————
  3. 臼井莊一

    臼井委員長 政府より提案理由説明を聴取いたします。原田大蔵政務次官
  4. 原田憲

    原田政府委員 ただいま議題となりました所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国タイとの間の条約実施に伴う所得税法特例等に関する法律案について、提案理由及びその内容を御説明いたします。  政府は、今回、タイとの間に所得に対する租税、すなわち所得税及び法人税に関する二重課税回避及び脱税防止のための条約に署名し、その締結の御承認方につき別途御審議を願っているのでありますが、この条約規定されている事項のうちには、さらに法律規定を要するものがありますので、これにつき所要立法措置を講ずるため、ここにこの法律案を提出することとした次第であります。  この法律案は、配当利子工業所有権使用料等に対する所得税法及び法人税法特例を定め、源泉徴収所得税並びに申告納税にかかる所得税及び法人税の軽減を行なうことを規定するものであります。  すなわち、わが国所得税法及び法人税法によれば、非居住者または外国法人の取得する配当利子使用料等所得については、その収入金額に対し二〇%の税率源泉徴収所得税を徴収し、その者がわが国支店等を有して事業を行なっている場合には、その支店等の他の所得総合合算の上、課税することとなっております。これに対して、今回の条約におきましては、タイ居住者または法人が取得する配当に対する税率は、子会社たる法人からの配当産業的事業に従事する法人からの配当または子会社たる産業的事業に従事する法人からの配当区分に応じ、それぞれ二五%、二〇%または一五%を、これらの者が取得する使用料等に対する税率は一五%をこえてはならないこととされております。また、タイ金融機関わが国産業的事業に従事する者から支払いを受ける利子に対する税率は一〇%をこえてはならないこととされております。この法律案は、この条約規定に従い、産業的事業に従事する法人からタイの親会社に支払われる配当及びタイ居住者または法人に支払われるわが国源泉のある使用料等に対する源泉徴収所得税税率を一五%と定め、また、わが国産業的事業に従事する者からタイ金融機関に支払われる利子に対する源泉徴収所得税税率を一〇%と定めることとしております。さらに、タイ居住者または法人が取得する配当利子使用料等所得でこれらの者の恒久的施設に帰せられないものに対する申告納税にかかる所得税または法人税税負担についても、条約規定するところに従い、配当にあっては、その区分に応じ、二五%、二〇%または一五%を、利子にあっては一〇%を、使用料等にあっては一五%をそれぞれこえないよう、その税額を軽減することとし、その他条約実施するため所要規定を設けているのであります。  何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成下さいますようお願いいたします。
  5. 臼井莊一

    臼井委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本案に対する質疑次会に譲ることといたします。      ————◇—————
  6. 臼井莊一

    臼井委員長 金融及び印刷事業に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。佐藤觀次郎君。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 新千円札が出るということになっておりますが、いつごろ一般に出回るのか、まずその点から伺っておきます。
  8. 稲益繁

    稲益政府委員 先般一応新千円札の発行を決定いたしまして、現在大体三月中旬くらいから印刷にかかる予定でございます。順調に参りますると、本年の十一月ごろには市中に出ると申しますか、いわゆる発行が行なえる、かように予想いたしております。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 千円札以外は、最近また百円の偽造とかいろいろな貨幣偽造も出ているのですが、千円札だけやって、ほかのものをどうしてやらないのか、これも伺っておきたいと思います。
  10. 稲益繁

    稲益政府委員 現在流通いたしております千円札は、昭和二十五年に発行いたしたものであります。大体もう十数年経過いたしておるわけであります。大体過去の例に徴しましても、十年をこえる期間というものは、紙幣流通期間としては非常に長い方なんで、かねて検討をいたしておった次第でございますが、たまたま一昨年でありますか、千円札の偽造券が出まして、そう事情も勘案いたしまして発行を若干早く踏み切ったといういうような事情があるわけであります。ほかの券でありますが、今御指摘の百円、これは先般私ども新聞で拝見いたしましたが、百円硬貨硬貨の面は、これは偽造と申しましても非常に偽造する側からいいましてもコストの割りに引き合うわけでもありませんし、また非常に困難性も多いということで、さして私どもも実は心配いたしておらないのでありますが、ほかの日本銀行券、これもあまり長くなりますと、とかくそういった世界的に共通な現象でありますが、どうしても偽造その他のことが起こりやすいといった点もございまして、おおむねそういった期間にはやはり新紙幣発行ということを検討していくべきではなかろうか、かように考えておりますが、現在のところでは、千円札だけを一応対象にいたしておるわけであります。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 今偽造の話が出ましたが、外国では日本のようにこういう偽造の例がたくさんあるのかどうか、これも伺っておきたいと思います。
  12. 稲益繁

    稲益政府委員 実は必ずしも各国のことを詳細には承知いたしておらないのでありますが、各国ともある程度あるようでありまして、アメリカあたりでもそういった偽造紙幣というものに、かなり悩まされておるというような事情があります。イギリスの例があるのでございますが、年間でやはり四百件くらいの偽造のあれが出ておるというようなことでございます。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 千円札の見本を見せてもらったのですが、その問題についてはまたいつか質問しようと思っております。現在千円札と一万円札との流通状況は、どういう比較になっておりますか。大体のことでいいですから、最近の情勢を知らしてほしいと思います。
  14. 鈴木喜治

    鈴木説明員 お答え申し上げます。  二月末現在でございますが、銀行券の総流通高が一兆四千六百九十一億のうち、千円券が五千七百三十七億、一万円札は六千二百七十二億でございます。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 千円札の偽造はまだ犯人がつかまらないことになっておりますが、しかし一万円札偽造が必ず行なわれないと断言できないわけですが、そういう点について理財局はどういうような考え方をしておられるのか、千円札だけで一万円札には偽造がないかどうかということも伺っておきたいと思います。
  16. 稲益繁

    稲益政府委員 現在までのところ、まだ一万円についての偽造はございませんが、先ほど申し上げましたように、現在流通いたしております千円券が何分古いものでありまして、印刷技術的に見ましても幼稚と申しますか、まあ非常に古い型であります。一万円はこれに比べますとある程度進歩したと申しますか、そういった印刷技術でつくられておるわけであります。やはり当面のところは、私どもは千円札の新しい千円札への切りかえに目下のところ全力を注いでいきたい。御指摘のように一万円についてもそれでは絶対出ないかといいますと、これもまあ必ずしも私ども絶対に出ないというほどの確信はないわけなんで、逐次そういった情勢もにらみ合わせまして、時期を見てまたやって参るというような考えでおります。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 理財局には、たとえば偽造なんかのことについて、調査機関か何か、そういうものがあるのですか。ただ警察にまかして偽造犯人がつかまらないというような態度をとってておられるのでありますか、それも伺っておきたいと思います。
  18. 稲益繁

    稲益政府委員 理財局の方には別にそういったあれはございませんが、印刷局の方では技術的な面でのいろいろなそういう偽造関係の何と申しますか、印刷技術面から見ましての調査研究、そういったことをやる印刷局研究所がございます。
  19. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 そこで紙幣に関連して、先日私、日銀の総裁にデノミ質問をしたのですが、デノミでかりに百円が一円になりますと、百分の一単位になりますと、補助貨幣というものが必要になるのですが、今一銭とか十銭とかそういう単位のものについては大蔵省はどういうようにお考えになっておるのか、その点も伺っておきたいと思います。
  20. 稲益繁

    稲益政府委員 御質問の御趣旨がよく理解できなかったのでございますが、円とか銭とかいう単位について、デノミとの関連でどう考えるか……。
  21. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 デノミになった場合の補助貨幣をどうするかという問題です。
  22. 稲益繁

    稲益政府委員 もしデノミをかりにやるということになりますと、新たにそういった硬貨、これは銀行券も同じことでありますが、すべてを新たに、つくらねばいけない。これはフランスの例で見ましても、銀行券の方は割に早く印刷ができますけれども硬貨の方は、これは製造がなかなか大へんであります。現在私どもの聞いておりますところでは、フランスあたりでは硬貨は切りかえがなかなか困難だ、製造の方がそれだけ時間もかかるわけであります。そういったことでありまして、これは日本でかりにやるといたしますと、硬貨の面が、つまり百分の一単位で切り下げたとしました場合に、お説のように銭という硬貨が必要になって参ります。これをつくるということになりますと、相当期間を予定しなければならない、かように考えております。
  23. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 そういう場合紙幣なんかはどれくらいの期間で完成するものか、フランスの例なんかどうなっておりますか。それは今いろいろデノミ議論が出まして、山村に至るまでデノミが行なわれるのではないかという不安があるわけでございますが、それが完成するにはどれくらいかかるだろうかという、いろいろの推測が行なわれるわけなのでありますが、そういう点でフランスの例などは、デノミをやった場合どのくらいの準備期間を必要とされたのか、日本でやるということは言っておりませんけれども、そういうことについての調査があったらお知らせ願いたいと思う。
  24. 鈴木喜治

    鈴木説明員 フランスが決定しましたのは、五十八年の十二月でございます。それから五十九年に、前から流通しております古い銀行券、それに赤で上から新単位の表示をいたしまして、それが五十九年の中ごろすでに準備されておりまして、デノミをやりましたのは、六十年の一月一日でございますが、六十年の一月一日には、デザインも全然前と同じものに、ただ五千フランの場合には五十新フランと数字だけ書いてあって、それが六十年の一月に出ております。その後旧フランと新フランが並行して流通しておりまして、全然新しい札が出始めましたのは、ことしになってからでございます。五十八年からことしまで、その程度かかっておったわけでございます。
  25. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 三年ばかり前にフランスに行きまして、旧円と新円の経験をしたわけでございます。これは複雑なことでありますけれども、これを日本で行なうということになれば、大へんなことになると思うのでありますが、それはそれとして、ただ今問題になっておるのは、偽造紙幣がはんらんをして、貨幣に対する不安が起きていると思うのですが、こういうものに対して国民が不安を持たないようにする方法大蔵省考えておられるのか、その一点を伺っておきたいと思います。
  26. 原田憲

    原田政府委員 デノミ問題については、政府は、総理、大蔵大臣から予算委員会で申し上げておりますように、現在のところ行なう意思を持っておりません。三十五年でございましたか、デノミ問題が起きましたときに、閣議了解事項として、佐藤大蔵大臣のときだったと記憶しておりますが、デノミを行なわないという申し合わせをいたしております。従いまして、デノミ問題は、あまり議論をすることの方がかえって混乱を招く原因になるのではないかというように考える次第であります。  なお、現在の偽造紙幣について国民が非常に不安がっておる、これについてどういう処置をとっておるかという御質問題でございますが、国民の間には偽造紙幣が出たからといって混乱を招くような状態はないと考えております。早くこの偽造紙幣犯人をつかまえろ、それには国民的な協力をしようという気運もあり、治安当局におきましても何とか早く犯人を検挙したいと鋭意努力し、御案内のように前回この委員会でも論議されたところでございますが、政府当局といたましても、大蔵省といたしましては、ただいま申し上げましたように、新千円札をできるだけ早く出す、新しい千円札——これは新千円札ではございません、今刷っておりますところの千円札でございますが、これを昨年以来できるだけ出しまして、偽造紙幣と新しい紙幣と比べますと、新紙幣の方がはっきりしますので、そういう措置をとってきておるわけでございます。その他事務的にやっております点につきましては、事務当局から一つ説明申し上げたいと思います。
  27. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 先ほど稲益理財局長から新千円札の問題についての説明がございましたが、千円札、それから百円札、百円硬貨、それから一円は原価が一円二十銭かかるそうでありますが、通貨に対して新通貨——こういう千円札を新千円札に移りがえる時期に何か新しい考えを持ってやっておられるのか。ただ千円札が古いから新千円札にかえたというだけでありますか、この点を事務当局大蔵次官に伺いたい。
  28. 原田憲

    原田政府委員 先ほど局長から答弁を申し上げましたが、新千円札の発行ということは、大体今の千円札が非常に長い間使われておる。これはこの前の委員会で申し上げましたが、非常に長い期間やっておるということがございまして、やはりそういうときには新しい紙幣発行するということを各国ともやっておる。それからもう一つは、技術的に見まして、今までの日本機械が非常に古い機械であるために、新しい機械を入れようという計画を立てまして、これはおととしの予算でございましたが、御承認をいただきまして機械を入れまして、この機械は非常に優秀な機械でございますが、それによりまして新しい紙幣発行しよう、こういうことが主眼で、新紙幣印刷してきたわけでございます。偽造の問題が出ましたが、紙幣に対する偽造ということは、各国とも非常に悩まされておるところでございまして、そのためにはどうしても新しい技術偽造のしにくい紙幣発行し、国民信頼感を持っていただくということが必要でございますので、そのために新しい紙幣発行しよう、こういうことを考えて現在に至っておるわけでございます。
  29. 稲益繁

    稲益政府委員 ただいま政務次官からお答えになりました通りでありますが、なお補足して申し上げますると、各国の例を調べますと、そういった偽造関係等を中心にしまして、十年未満で大体銀行券を新しいものにかえていくというのが通例のようであります。私どもとしましても、昭和二十五年から今の千円札が出ておるわけでありますが、印刷局当局におきまして技術的な検討を始めましたのは昭和三十四年ころからであります。機械をとりあえず一台試験的に入れまして、新しい機械でそういう研究を始めました。だんだんこれを本格的にいたしまして、ただいま政務次官言われましたが、昭和三十六年度の予算で認められまして、六年度に大量に機械を入れたわけであります。そういった関係でありまして、偽造世界各国共通の問題でありますが、偽造はどうしても起こりやすいので、ある期間たちますと、やはり新しい紙幣にかえて参るというようなことは当然考えていかなければならぬ問題であります。日本の場合、千円札は十年を過ぎておりますから、そういう意味で申しますと、若干おそい程度である。たまたま、世間を騒がせるような偽造問題が起こっておりますので、私どもといたしましては、極力これを早めまして、急いで新しい千円札の発行に踏み切ると同時に、現在印刷の促進をはかっておるような状況であります。
  30. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 次に、百円は、今、札と硬貨が一緒になってておりますが、これは今後並行的にやっていかれるのか、何か改善される方法があるのか、この点をお聞きしたい。
  31. 稲益繁

    稲益政府委員 御指摘のように、硬貨日本銀行券両方で百円が出ておるわけであります。本来、銀行その他般の扱います側からいきますと、硬貨が非常に便利だということで、その方面からの要望は非常に強いわけであります。一面、これは御承知かと存じますが、例の日本特有ミツマタ対策というものがありまして、主として高知県の方でありますが、そういった関係から、ある時期におきまして、日本銀行券の方を急激に全廃するというところまでなかなか問題が参りませんで、ある割合で日本銀行券を出して参るということで、現在まで、妥協と申しますか、そういった両方をやって参るようなことで参っておるわけであります。硬貨の方は需要は非常に多いわけでありまして、御承知のように、最近自動販売機その他の関係で、十円玉とか、いろいろな面の需要が非常に多い。一円の回収も、御承知のように非常に悪い。そういった面で五円、五十円の需要が非常に高まって参る、そういった面に追われておる点もございまして、三十八年度におきましては逐次百円硬貨製造の率を高めていきたいとは考えております。が、当面はまだ先ほど申しましたような、ミツマタの問題もございますし、百円は硬貨紙幣両方でやって参りたいと考えております。
  32. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点だけ。現在、一円一円二十銭かかるそうですが、それが貯蔵される、保存されるという傾向があるようでありますが、一円硬貨が出回らぬ理由は、何かほかに理由があるのでしょうか。
  33. 稲益繁

    稲益政府委員 その関係よりも、特別に退蔵する、隠匿するというふうな意味よりも、何とはなしに、各方面、各界でとめ置かれると申しますか、そういった関係から還流が悪いという事情であろうかと思います。
  34. 臼井莊一

  35. 横山利秋

    横山委員 局長参議院だそうですが、私の質問は、新しい金融体制といいますか、そういう言葉が一体どういう意味なのか、議論の余地があるわけでありますが、それに触れるのでありますから、政務次官並びに佐竹さんには、十分腹蔵のない意見を聞かせていただきたいと思います。  二カ月前の本委員会でありましたか、私が大蔵大臣国づくり、人つくりは、なるほどいい悪いは別としておやりのようだけれども金づくりについてはとんと何もお話がないようですね、こう言いましたところ、大臣としては、それに対して具体的な御答弁は何らございませんでした。しかるに、ここ約一カ月内外にわたって、新しい金融政策と名づけて、各般の手段がいろいろと俎上に上り、毎日の新聞を飾るようになったわけであります。この新金融体制が、それでは金融の必要から、金融自体の問題から起こったかと申しますと、必ずしも私はそうは思わないのであります。むしろ今日の国際的な必要に基づく産業の必要上から、金の問題が追随をして起こっておる、こう考えます。たとえばIMFの八条国の問題とか、たとえば自由化の問題だとか、それに伴って国際力を強化するための法律案、あるいは海運を救済し強化する法律案、こういうふうに、外からの情勢で問題が出て参りました。しかも、それらを一言でもって表現するならば、大企業を強化し、大企業をさらに寡占化するための必要が国策上必要である、こういうふうな展望からなされております。そのために金融の裏打ちが必要ではないかということが、直接の要因となっておるような気がいたします。もちろんそれに基づいていろいろな問題が出ておるけれども、問題は外からであり、内から伝えたものは大企業産業政策であろう、こう考えられるわけであります。私がきょう質問して言おうとすることは、新金融政策が国際的な経済情勢に歩調を合わせるために出てきて、国内におけるどうしても必要な諸条件というものがおろそかにされているのではないか、これが私の本日言いたい焦点であります。この点については、お答えは抽象的になると思いますから、お答えをいただこうとは思いません。そういう私の疑問というものが、国内においてどんな問題が出てくるであろうか、どういう不安があるだろうかということを、私は具体的に質問をしてお答えをいただきたいと思います。  そこで、まず第一は、これからおやりになるところのことが、伝えられるところによりますと、まず歩積み、両建を自粛させる、あるいは残債式にする、金利をなるべく引き下げさせるようにする、準備預金制度を適用する、マーケット・オペレーションの対象に相銀、信銀を加える、それから有価証券の問題、特に政府保証債保有量を増加する、公定歩合を引き下げる、大口融資、含み貸し出しの是正をする、郵便貯金の法律を改正する等々、いろいろな問題が爼上に上っておるわけであります。しかも、名づけて銀行行政の自由化だという話がある。それは増資にしたって、あるいは店舗の増設にしたって、これからは大蔵省がなるべく直接規制が監視かをやめて、銀行の自主性によってなるべくやらせようという話だそうである。私が心配をいたします第一の問題は、こういう方向というものが、将来金融機関というものの再編成をもたらす出発点になりはしないか。その以前に、また金融機関をこういうふうにやっておくことは、ただでさへ非常に格差のある金融機関の、ますます格差を増大させることとならないか。たとえば、城南信用金庫は七百億の金を持っており、圧倒的に多いけれども、一億内外のところがある。七百億と一億、まさに七百億の格差を持っている。こういうところを自由化させて、そして力のあるものはどんどん伸びよというやり方が格差を増大する。それに対抗するために合併する等々の問題が——今市中銀行が再編成されるとは、私は必ずしも現実問題として思っておりませんけれども金融機関全体にわたって格差の増大から、合併という方向が将来展望される。そのことをあなた方は予期しているのか。予期していないにしても、そういうふうになった場合に、どういう態度をとるのか。そのときには、ああ格差が増大した、やむを得ない、ああ合併するなら、それは国際力強化だから、これもよろしい、こういうふうになっていくのか、その点について、まず第一に腹蔵のない御意見を承りたい。
  36. 原田憲

    原田政府委員 前段の御質問は、日本政府がとっている金融政策というものは、大企業中心主義じゃないかという点に主力が置かれておったと思うのでございますが、私はそうであるとは考えておりません。やはり日本国民が九千五百万人おりまして、それがみな食べていくということが一番大事なことでありまして、そのためには産業事業というものを興していって、それによってみんなが収入を得て富んでいくということでありますから、大企業といいましても、そこにはその産業を中心として、たくさん働き、食べていく者が多いのでありますから、それぞれ産業の振興ということをはかり、このために金融というものも動いておりますので、大企業を中心にやっておるということではないと考えております。ただ、現在までの日本の国は、何しろ昭和二十年以来まだ十八年くらいの間でございますから、その間におきまして、いわゆる資本の蓄積というものも十分ではございません。そのために金融界におきましては、まず何といってもその旺盛な需要に応ずるためには、それに要する資本が必要でありますが、御案内のように、行き過ぎますと昨年のような引き締め政策をとらなければならない。幸いにして日本国民の良識といいますか、力といいますか、このことによりまして、この引き締め政策も、政府の言いましたように、昨年の十一月を待たずして、いわゆる正常事態に戻ってきたわけであります。この機会をとらえまして、これは戦後三べんこういう事態になったのでございますから、もう四回はそういうことはやりたくないと考えまして、この際金融の面でも正常化をやりたいと考えているのが、われわれの今日の考え方の根本でございます。  今、後段に申されました、たとえば信用金庫のお話が出ましたが、信用金庫等について、今後、非常に格差があるが、これの合併というような話が出てきたならば、政府は積極的にそういうようにやるのかというお尋ねでございますが、私どもといたしましては、こういう問題は、やはりその業界のそれぞれの事態に応じて処するべき問題であると考えておりして、政府が合併を奨励するとかいうことはいたさないということでございます。  なお、金融問題につきましてはいろいろと問題が多うございますので、御案内のように、政府は業界ともよく話し合いをし、意思の疎通を講ずるために金融懇談会を設けまして、三月四日でございましたが、初めて各金融界の方々と懇談をしたわけでございます。そういう機会を通じまして、金融問題についていろいろと意思の疎通をはかっていきたいと思っておるような次第でございます。なおその他の問題につきましては、事務当局からも御答弁させたいと思います。
  37. 横山利秋

    横山委員 今政府の政策の一番焦点となっていますのは、国際競争力強化法並びに海運再建整備法、ともに大きな会社を合併をしろ、合併をしたらそれに対して税金を下げよう、それに対して金融もつけよう——金融をつけるといったところで、政府の金をなまで貸すわけではない、金融機関をして貸さしめる方策をとろう、こういう方式なんです。それに対して中小企業基本法三法が出ておりますけれども政府考え方も、そのような柱となる法律に基づいて中小企業の方もできるならば合併しろ、こう言っている。先般の通産省の別の委員会におけるお答えも、中小企業でそういうふうに強化をしてやっていくものならば援助もしましょう、こう言っている。国の政策の一番の中心のものが、大企業を手本にして合併し、対外競争力を備えよ、こういって、それにはあらゆる援助をする、けれども金融機関だけはやりませんよ、私は何も言いませんよ、こういうふうにあなたはおっしゃるわけでもないと思う。私の意見は別ですよ。私の意見は別だけれども政府として今この金融政策というものが新しく発展していく過程ではどうしても格差が増大することになるのではないか。あなたは、格差は増大しない。金融機関の格差は是正され、調整されるという確信があるならば、今お打ちになろうとしている政策に対してどのような歯どめをお持ちかということを聞きたいのです。もしその歯どめがなければ、格差は増大するばかりではない。必然的に政府考えておる大企業をモデルとする合併なり何なりが爼上に上ってくるではないか。その爼上に上ってくることを予期しない、予見しないと一体言い得るのですか。私は、政府がみずからやっていると言っているわけではない。そういう形にならざるを得ないことを予見をしておるのではないかということを言っている。
  38. 佐竹浩

    佐竹説明員 銀行行政の関係でございますので、事務当局から御説明させていただきたいと思いますが、ただいま横山委員の御指摘のように、いわゆる銀行行政を自由化するというようなことになると、それぞれ強いものがますます伸びて、弱いものは押えられるということから、さなきだにある格差がますます拡大するのではないかというお話かと思います。この点につきましては、いわゆる自由化と申しておりますのは、言葉の内容が必ずしも正確に外部に伝えられていないうらみがございます。自由化と申しましても、決していわゆる弱肉強食とか、優勝劣敗とか、そういう趣旨のことを申しておるわけではございません。御承知のように、終戦によりまして金融機関の資本がほとんどこわされるというような状態で、無資本に近い状態から実は戦後の金融機関が立ち上ったわけでございます。それだけに、戦後十数年の間というものはその経営の基礎を充実する、これが預金者保護にとって一番先決問題でごいましたので、この意味において、銀行行政でも非常にこまかいところまで手取り足取りというようなことが行政上行なわれておったことは事実でありますけれども、戦後十数年たちまして、ようやくそれぞれの金融機関の経営基盤というものが強化されて参った、今後はそれぞれの力に応じてそれぞれの役割を十分発揮していくという体制にだんだん入って参りました。なかんずく特に普通銀行関係でそういう傾向は顕著でございますが、従来銀行行政といわれておりました中で、一番手取り足取りしてこまかい制限がございましたのは、実は普通銀行関係でございました。その普通銀行についていわゆる従来のようなそういうこまかい指導と申しますか、そういうことに重点を置くよりは、もっと一段と進んだ形で、たとえば金融機関としての資金の運用の問題あるいは資産構成の問題でありますとか、あるいは誘導比率の問題といったたようなところに重点が移っていく、そういう意味でこまかい、不動産を取得するのに一々どうこうといったような意味での制限というものはだんだん自由化される、実はそういう趣旨でございます。一方信用金庫等におきましては、これはただいま御指摘のようにまさに七百億のところ一億のところというふうに大小の差があります。しかしこれは必ずしも、小さいから弱いというものでもございません。それぞれやはりそのところを得ておるかどうかというところに問題がありまして、小さいのは小さいなりに本来与えられた役割を十分果たしておればそれでよろしいわけでございますが、そこがはたして与えられた役割を果たしておるかどうかという点について、私どもは十分見て参らなければならぬ。必ずしも大きくすることが目的でありません。もともと先生十分御承知のように、信用金庫は非常に地域的と申しますか、人的なつながりと申しますか、そういった連帯性ということが基盤になって出できておりますから、もともと限られた地域の中に発達していくという意味では、むしろ小さい形の方があるいは本来の姿なのかもしれないと思われるのであります。従いまして、それをいたずらに膨大化していくということをねらう意味ではございませんが、ただ一つここで考えなければなりませんのは、やはり一つ金融機関を経営して参ります場合に、一つの経済規模と申しますか、一定の規模というものは必ずあるわけであります。従いまして、なかなか経済規模に達しないところがもしあるといたしますならば、それをできるだけそういう経済規模に達するまで引き上げていかなければならない。それがなかなか自力で引き上げかねる、そういった人たちの仲間が集まりまして、一つお互いに協力して一つの規模をつくろうじゃないかというようなことから、業界の内部に自主的にそういう合併なり合同なりという動きが出てくることも考えられるわけであります。そういう動きに対しては、つまり適正な経済規模に達するという意味で、これは経営の基礎を非常に強める意味で役立つわけでございますので、もし業界の内部にそういう自主的な動きがあれば、これは正しい方向に向かって政府としてもできるだけ助力をしていきたい、こういうように考えておるわけでありまして、いわゆる優勝劣敗とかいうような趣旨では毛頭ございませんので、何とぞ御了承いただきたいと思います。
  39. 横山利秋

    横山委員 優勝劣敗というけれども、今打とうとする諸般の新しい金融政策というものは、少なくとも政府のワクをなるべくほどいていこうということなんです。そちらの方向にあることは事実ですね。従って、その方向である限りにおいては、格差が増大することはもうわかり切ったことではありませんか。私は前にここでも何回も言ったのだけれども、中小企業金融を十分に守らなければいかぬ、そのためには大きなところが飛び出ていく歯どめをかけなければいかぬと言っておるけれども、今度の新金融政策というものは、むしろ大きな会社を合併さして、それに税金をまけて、金融をつけていく、そういうような国の政策を中心に考えられておることではないだろうか、こう言っておるのです。しかし、たくさん質問がありますから、この問題についてはもう一つ質問を続けて別のことに移りたいと思うのです。  今あなたの言うように、適正規模という新しい言葉が最近出ておるわけです。適正規模でない金融機関については何か考えさせなければいかぬ、適正規模に引き上げるために合併をさせるか、適正規模にならないようなものについては自然淘汰を待つか、こういうようなことだという。それと同時に、私も別の立場から聞きたいのは、金融行政としても、金融機関を、相互銀行をつくり、何々をつくった当時のことからいくとずいぶん歴史が違ってきた。今政府の内部でそこそこで話があると聞いておりますのは、市中銀行、地銀、相互銀行、信用組合、信用金庫、それから町の貸し金業者、やみ金融と、一連の金融の交通道路の道筋を一つもう一ぺん考え直す必要があるのではないか。なるほど名前といい、生まれた歴史といい、性格というものははっきりしているのだけれども、今その実態というものは生まれたままの道を通っていないのではないか。方々でラップしているところが一ぱいあるのではないか。しかも格差が七百倍もあるようで、そのてっぺんの信用金庫に至っては、もう相互銀行や市中銀行、地銀にまで匹敵するようなものさえある。従って、ここでもう一度現状に合わせて金融機関の行政的な目から見直すべきではないか、こういう意見があるのです。この点はいかがですか。
  40. 佐竹浩

    佐竹説明員 確かに御指摘のように、そういう現象はだんだん出て参っておると思います。なかんずく相互銀行について見ましても、もともと無尽会社から相互銀行という形に転進をいたしまして、これもいわゆる地域連帯性あるいは人的な連帯性といいますか、そういう色彩が非常に強いもので、相互掛金契約というものがいわば中心になる、そういう格好の金融機関として一応予定されておった。これは先生御承知の通りでございますが、その後の業務の伸展に伴いまして、相互掛金勘定の全体に占める重さと申しますものがだんだんに減っております。一方いわゆる普通預金業務もしくは普通の掛金業務というようなものの占める割合がだんだんふえておることは事実でございます。事実でございますけれども、ただそこに、それじゃもういわゆる普通銀行と全くラップしてしまって、何ら相互銀行というものの特異性と申しますか、他にない特色というものが全然失われてしまったのかということになりますと、その点は決してそういうことではないというふうに私ども考えております。これはやはり普通銀行に比べまして何といってても地域性と申しますものが依然としてかなり強い色彩として残っております。相互掛金勘定も、いわゆるお客様の方の需要というものがだんだん進んで参りますから、それにこたえて脱皮をいたしまして、先ほどちょっと先生もおっしゃいましたが、残債式に切りかえるという努力も業界の中で行なわれておりますし、金利が高過ぎるというような一般の批判にこたえて、極力経営の合理化をしてその金利の引き下げに努める、そういう格好でお客さんの需要にこたえていこうという、相互銀行でなくては他に満たされない役割というようなものについてできるだけ努力していく、そういう態勢が現在でもあるわけでございます。従いまして、確かに先生御指摘のような傾向はだんだんにございますけれども、しかし、まだまだそういう意味では、いわゆる各種の金融機関の持つ持ち味と申しますか、特色というものは、決して失われておるものではない、かように考えます。
  41. 横山利秋

    横山委員 佐竹さんはやはり弁解をなさるようなお立場でございますから、私の質問がどうも率直にまだ食いついてないわけですが、今度は一つ政務次官に聞いていただきたい。こういう心配が私の第一の心配でありますす。たとえば相互銀行や信用金庫にこれからいろいろなことをやれ、こう言う。順番に並べていくならば、歩積み、両建はやめろ、残債式にしろ、自主的に金利を引き下げろ、準備預金制度を適用するから銭を積め、マーケット・オペレーションの対象に加えるぞ、それから政府保証債保有量をもっとたくさん持て、そうして店舗の増加は認めるよ、こういうわけです。私は何も相互銀行、信用金庫それ自身を心配するばかりでなくして、中小企業金融にそれがどういう影響を与えるかということを心配しておるわけです。これだけのことを相互銀行なり信用金庫が一生懸命にやると、どうしてもむだなもの、あるいはコストの高くつくもの、あるいは人件費ばかりかかるもの、そういうものに対して切り捨てていかなければならない、どうしても貸し出しが上を向いて貸し出しをしていく、こういうことになる。零細企業のようなところを相手にしておったのでは、どうしてもうまくいかない、こういう結果をもたらす。利潤を画一に確保する、こういうところを目ざすこともまた言うまでもない。私の聞いたところによりますと、政府保証債は相互銀行、信用金庫の貸し出すものの利回りと逆ざやになるそうですね。そういう状態であれば、今後相互銀行、信用金庫が生き抜いていくためには、同じ中小企業金融でも上の方を向きやすい。それからいかぬいかぬと言っておっても、コールに走りやすい。中小企業から金を受け入れて大企業に金を貸して利ざやをかせぐ。いかぬといってもその方向がなかなか断ち切れない。そういう傾向にどうしてもいくと私は思うのです。この傾向を知らぬ顔をして、準備預金だ、マーケット・オペレーションだ、政府保証債を増加しろ、残債式だ、歩債み、両建はやめろ、金利は引き下げろ、こういうようなことだけでは私の心配は抹消できない。もしも、私の心配はそれは老婆心だ、杞憂にすぎないというならば、そういうような傾向になりそうなものをどこで制御していくか、どこで中小企業金融本来のあるような姿に道をつけさしていくかという点について、お考えを承りたい。
  42. 原田憲

    原田政府委員 今御指摘のありました点につきましては、それなりの御心配があると思います。しかしこれは経済が伸びていくに従いまして、国民所得というものもふえて参ります。その国民所得がふえた分をうまく金融機関に吸収して、またそれを産業に投資していく、こういうところの円滑な運営がされるところに経済の発展があるわけでありまして、今御指摘のようにコールに求めなければ小さい金融機関は生きていけないというお話でございましたが、金融が正常化されることによって、コール市場にたよらなくても本来の金融機関としての生命と機能を発揮していくことができるということになるのではないかと私は考えております。特に、これは金利の問題と関連してくると思うのでありますが、種々雑多の金利が、今、日本の国にはございます。この金利の問題が先ほどお話のございました国際的な経済競争力に日本がついていけないという非常に大きな障害になっておることは御案内の通りであります。そのために政府がいろいろな政策を持つことによりまして、金利というものが自然に下がっていくというようにしていかなければ、国際競争力に耐えないわけでございます。今お話のございました中小企業金融機関として、相互銀行あるいは信用金庫あるいは信用組合、あるいは農業関係金融機関もそうであると思いますが、これらの機関が安い金利で貸す。そして食べていけるということが中小企業にも、またその中小企業対象としておる金融機関にも大事なことでございますが、これは今政府考えております経済政策の発展することによって私は可能になってくると考えております。現在でもコール市場を見ましても、コールというものがだんだん下がってくるということは、これはいわゆる金融が正常化されつつあるという現象であろうと考えます。  なお相互銀行あるいは信用金庫等につきましても、大きなところ大きなところということでなしに、大きくなっていくところは大きくなっていっててけっこうなのでありまして、なお大きくなっていくように、そのために金融措置も講じてあげるということで、より一そうそれぞれの立場における業務に励んでいただくことによって、私は十分やっていけるのじゃないかというように考えております。  今事務当局から話をいたしましたが、相互銀行あるいは信用金庫等は、特に地域的なまた人的なつながりということが、非常に都市銀行と比べて異なるところがございまして、その点におきましては、ますますまだ伸びていける余地があるように私は考える次第でございます。
  43. 横山利秋

    横山委員 それでは私の心配することを端的に申し上げましょう。この新しい金融政策によって、金融機関に格差が増大をする。第二番目には、今例をあげたのは相銀、信金でありますが、新しい金融政策によって金融機関の利潤はその限りにおいては落ちざるを得ない。第三番目には、これによって金融機関は合理化を推進しなければならないから、ただでさえ今問題があるのであるけれども、労使問題が新たに大きくなる、この心配を持っておるわけです。あなたはその心配を認めないというのか、心配があるけれども、こういうふうにするから心配はないというのか、どちらですか。
  44. 原田憲

    原田政府委員 今お話の点では、金融機関というものが縮小していくのじゃないか。そうするとそこに首切りも行なわれるのじゃないか。そうするといたずらな労使間の紛争というものが起きてくるのじゃないかというような御心配のようでございますが、私は経済の発展に伴って金融機関というものが縮小するとは考えられないのであります。従いまして、そういう御心配は要らない。ただそれが伸びていく過程におきまして、今御指摘のような格差が生じて、大きいものはますます大きくなる、小さいものは打ち切られてしまう、こういう形で起こってこないかというお話でございますが、これは一番最初に申し上げましたように、ものを発展させていくという考え方で、合理的にやっていこうということについて、それぞれの当事者の間において相談がされることが、具体的な場合には起こってくると思います。そういうような場合に首切りを行なって伸びていくということが起きてくるのかどうか。私は、金融機関におきましても、経済が伸びていくに従って金融というものはますます伸びていくのでございますから、首を切らなければならないというようなことには相ならないと考えます。
  45. 横山利秋

    横山委員 ちょっと誤解があります。私は首切りなんと言っておらないのです。  もう一ぺん言いますけれども、こういう金融行政が推進される過程でどうしても格差が増大する。これはもうあなたもお認めになったところです。それから第二番目には、相銀及び信金を例にとったけれども、当面この政府の新金融政策によって、それらの利潤は落ちざるを得ない。たとえば歩積み、両建をやめよ、残債式にしろ金利を引き下げよ、準備預金制度を適用する、マーケット・オペレーションの対象に加える、政府保証債保有量を増加しろという限りにおいては、利潤は落ちざるを得ない。それが第二です。第三番目は、それを合理化し、徹底をしていく過程では、どうしても賃金を抑制したり、あるいはベースアップに対して抑制したり、資本について云々したり、従来銀行行政で〇・五以上になったら通知をしろというような指導行政をなさっておるようでありますが、けしからぬことだと思いますけれども、そういうことが、どうしても合理化、近代化をしろ、内部充実をしろという過程においては起こる、こう言っておるのです。私の言うのは、この三つのことが起こる不安はないか、あなたはその不安はないと言っているのか、不安はあるけれども、こういうふうにするからそういう不安を必要としないというのか、どちらかと言っておるのです。首切りの問題がすぐ露呈現象だと言っておるのではありません。
  46. 原田憲

    原田政府委員 私は御心配はないと思います。
  47. 横山利秋

    横山委員 心配がないということは、格差も増大をしない、利潤も当面減少しない、投資問題も全然起こらない、こういう意味ですか。それとも私の言う後段の、不安はあるけれども、こういうふうに是正していくから心配はないということですか。
  48. 原田憲

    原田政府委員 先ほど御指摘のいろいろな方法、たとえば相互銀行政府政府保証債を持たせて、それを買い上げするというような、いろいろな政策があるわけでございますが、そういうことをやることによって御指摘のような心配が起きてくるということはない、こう考えておる次第であります。
  49. 横山利秋

    横山委員 その点私の聞いております範囲内では、政府の保証債は、相互銀行、信用金庫の貸出金の利回りと、政府保証債の利回りとは逆ざやになっておると聞きましたが、違いましたか。
  50. 大月高

    ○大月政府委員 これは平均の水準でございますが、若干の逆ざやになっております。
  51. 横山利秋

    横山委員 次官、どうも勘違いなさっておるようですね。私の言うことは、政府保証債保有量を増大するという限りにおいては利潤は減るのですよ。そうでしょう。それから準備預金制度を適用する。だからそれだけ日銀に適宜預けろという限りにおいては、無利息ですから、利潤は減るのですよ。歩積み、両建をやめろといえば利潤は減る。残債式にしろということは、私は三十億か五十億だと推定をいたしますが、利潤が減るのです。政府の今やろうとしておることは、相互銀行や信用金庫の利潤を少し減らせ、そうして中小企業のために安い利回りでやってやれ、こう言っておるのですから、その限りにおいては利潤は減るのです。減るのだから、それらの金融機関は一生懸命に何とか合理化をしなければならぬ立場があると思うのです。合理化をするためには、二つの方法がある。一つは高いコストにつく零細企業をなるべくやめて上を向いて、上の中小企業関係金融でくぐり抜けていくか、あるいはコールをやってもうけるか、こういう方向が一つある。もう一つは、労働者の労働条件を、何もあなたの言うように、首を切ると言っているのではないのです。そういう議論ではない。労働者の労働条件をストップさせて、これ以上の給料の引き上げはやらせないとか、あるいは年末手当や夏期手当は少なくするとか、こういう労働条件にしわ寄せさせる方法しかない。この二つの方向へどうしても走る、こういうことを私は予見をすると言っておるのです。おわかりですか。
  52. 原田憲

    原田政府委員 政府保証債が逆ざやになるような状態が続いていきまして、それで政府があくまで利子は安くしろ、こういうことをやっていきますと御指摘のような点が生じてくると思うのであります。そういう無理なことはできないのであって、先ほど申し上げましたように、金融が正常化されていくにつれましてコール・レートというものも下がってくる、中小企業に金を貸すことによって利潤というものを上げてこられる、こういう状態に進んでくる、このようになっていきますから御心配はないのじゃないか、私はこういうふうに申し上げておるのであります。今中小企業金融につきましては特に問題がありまして、相互銀行あるいは信用金庫は利子が高い、もっと安く貸さなければならぬじゃないかというようなことは常々取り上げられて論議されておるところでございまして、相互銀行あるいは信用金庫に対しましては、本来中小企業金融機関であるのだからこれを実施してもらわなければ困る、またコールばかりに金を回しておらないで、中小企業に対してもっと融資をしなさいということを申し上げてきたわけでございますが、なかなかそういうような状態になかった。しかし金融を正常化することによってそういうふうになってくる、こう私ども考えるのでありまして、中小企業金融機関の一番の悩みは、相手方の借りる方々が信用があるかないかという問題点、それがまた金利が非常に高くなってくる原因でもありますが、そういう方面に対しましても、申し上げましたように経済の力が伸びて所得がふえてくるに従ってこの問題もおのずから解決されてくる。従いまして、今横山さんのおっしゃるように、現在起きておる現象というものをつかまえて、それであったら、当然政府のものを持っていたら損をするというようなことでは、これはもう御指摘にあるようなことになるのでありまして、私どもはそうならないように努めていきたい、こう考えておるような次第であります。
  53. 横山利秋

    横山委員 どうも議論にならないのですけれども、それなら政務次官、今逆ざやになっておるものはどうなるのですか。保証債の保有量を増加するということによって逆ざやになることについては、あなたもこれは損をさせることを自認されておるわけであります。私が政務次官に言っていることがどうもよくおわかりになっていないような気がしてしようがないのです。逆ざやになること自身はあなたもお認めだし、ほかの諸般の政策が相互銀行や信用金庫に当面損をさせるけれども、お前の方は合理化で生み出していけ、こういうことなんでしょう。そこにあなたと私との認識というか、事実を見る目に相違がなければ議論にならぬです。だから私が言うのは、政府の今の金融政策というものは相互銀行や信用金庫に犠牲を忍べ、損をしろ、こう言っている。これは事実問題としてある。そうするとどうしても中小企業金融金融機関に働く労働者にしわ寄せが行くぞ——荒っぽい議論をしてもらっては困るのです。私の言うのは、少しきめをこまかくしなければ中小企業金融がこれでいいのだというわけにはいかぬ。上の方はいいけれども、下の方は置いていかれるぞ、労働者にしわ寄せが行くぞ、そういう心配をしておるのですから、それにまともに答えてもらわなければ困る。中小企業はよくなりますよ。それは金利が下がるのだから一部よくなりますわ。けれどもきめのこまかい立場でいくと、相互銀行や信用金庫の下の方を少し守ってやらないと格差は増大するばかりになる。そうだから下の方を守ってやらないと、零細企業金融機関に働く労働者の方へしわ寄せが行くぞ。どうも私の言う格差が増大するということについて、まともに増大するという立場をお取りにならない。私の申し上げていることがわかりましたか。
  54. 原田憲

    原田政府委員 大きな方はいいけれども、小さい方が困るというお話でございますけれども、私が先ほどから申し上げておりますように、信用金庫あるいは相互銀行の中で、大きいやつは地方銀行よりも大きな相互銀行もございます。しかし相互銀行は相互銀行あるいは信用金庫は信用金庫としての本来の沿革的ないわゆるお客さん相手の違いがございまして、それぞれの特色というものをまだ今後も十分に発揮していくことができると考えられますから、今の横山さんの言われるような御心配はないのじゃないか、こういうように考えておるのです。今、相互銀行等に政府保証債を持たすということが逆ざや現象になって、それでは相互銀行の利潤が減ってくるから、そういうことが働いている人たちにもしわ寄せされてくるじゃないか、こういう御議論のようでありますが、私は何度も申すようでございますけれども利子も下がって参りますし、そういうことは相互銀行の全般の中では消化されていって、そうならないというように考えております。
  55. 横山利秋

    横山委員 大体あなたの意見はわかります。つまり私の言うような不安はあるけれども金融がゆるんできて商売もうまく行く過程にあるから、それは消化されていくであろう、こういうわけですね。そこであなたと私の意見は別として、話は合ってきたわけです。そうだとすれば、私の言うような心配、そういうものがもしできたら、あなたは除去して下さる、こういうふうに考えてよろしいですね。つまり私の心配というのは、相互銀行や中小企業金融が上向きになって、下の方は置いていくということになることは断じて許さぬ、それから金融関係に労使問題が起こりそうな気がするけれども、それはなぜ起こりそうな気がするかと言うと、金融機関が自分たちの合理化、近代化をしなければならぬからというわけで労働者を押えようとするけれども、そういうことにもならぬ、こういうふうに承ってよろしゅうございますね。
  56. 原田憲

    原田政府委員 その通りでございます。
  57. 横山利秋

    横山委員 そこで、あとの方のことで一つだけ伺っておきますが、この前私が本委員会でこういうことを言ったことがある。つまり、金融労働者の賃金が五%以上上がるときには、事前に金融機関大蔵省に通報しろ、何でそんなことをなさるのかと言って怒ったことがある。そういうことは事前だから、ただ知らしてもらうことだからでは実際問題として済まぬのであります。そういう金融機関における労使問題について、政府金融機関に対して何らかの制肘や行政的な指示をするということはしない、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  58. 原田憲

    原田政府委員 金融機関全般の問題といたしましては、政府は先ほど申し上げましたようにいろいろとお話をしておりますので、そういう各金融機関の問題につきましては、政府の方からこうしていただきたいというようなことはやはり申し上げると思いますけれども、個々の問題につきましてまでも干渉がましいことを申し上げることは差し控えたいと存じます。
  59. 横山利秋

    横山委員 個々の問題はもちろんやらないけれども、全般の問題として五%以上のベースアップのときには事前に連絡をしろということは、もしやらなければならぬにしても、事後になさるべきだ。事後でいいから報告をしろ、こうなさるべきだと言っている。
  60. 原田憲

    原田政府委員 おっしゃる通りであると思います。
  61. 横山利秋

    横山委員 わかりました。  次には金融機関の増資、それから増設の問題であります。私の聞くところによりますと、金融機関が増資を軒並みにしようとしておる。自由化と八条国移行で経営基盤を強化しなければならぬとか、大企業に比べて資本が過小だとか、あるいは増資しないと店舗の増設が不可能だとか、こういうために軒並みに増資をしようとして、富士、三菱は今百十億、三和、住友が百億、第一、三井、勧銀、神戸が九十億、東海、大和が八十八億、協和が八十億、拓銀が六十億、これらのほとんどが倍額増資か、どんなに少なくても半額増資をするという、しかもこれを本年なさる、こういうわけです。そうすると、かりにこれらが倍額増資をした場合においては、約一千億くらいに達すると思われる。かたがた店舗では、大銀行は普通支店が、小型の店舗が一つだったのが、ことしは普通支店を一つないし二つ軒並みに認可しよう、こういう傾向だとあなたの方の御意見を承っておる。それがそうだとするならば、これは少し行き過ぎがありはしないか。今まだ金融機関の増設を軒並みに、また増資を軒並みに許さなくてはならぬという積極性がどこにあるだろうか。一つには、それはかつての設備投資をほうふつさせる。同時に、一つには証券の、その方向に与える影響もきわめて強いと思われる。こういうような金融機関の増設並びに増資というものについて、大蔵省が、あの人たちに言わせると、きわめて好意的な立場をとっておるから、われもわれもとことしは申請し、実行しようとする傾向がある。これをどういうふうにお考えですか。
  62. 大月高

    ○大月政府委員 増資の問題でございますが、従来のわれわれの考え方といたしましては、預金の量に比例いたしまして、ある程度の資本金を持っておってほしいというのが基本的な考え方でございます。理想的には、いろいろな準備金、積立金等を含めまして十分の一程度の資本金は必要であろうかと思っておりますが、まだ現状においては、そういうふうな状態にはいっておりません。銀行の資本金につきましては、この間、昭和三十四年でございましたか、大体一わたり増資が終わりまして、今おっしゃいましたような姿になっておるわけでございますが、その後預金の伸びが非常に大きいわけでございまして、資本金と預金とのバランスを非常に失して参っております。そういう意味で基本的には、われわれとして配当余力があり、金融機関の健全性を害さないという建前を貫かれる限り、能力があれば増資をしてよろしい、こういう基本的な態度をとってきておるわけでございまして、銀行の方におきましても、最近の証券市場の状況からいって、ほかの増資がそうないわけでございます。証券市場に対してもそう影響がないという判断等から、増資をしようという機運があるわけでございます。  それから店舗の問題につきましては、従来の増設の早さに比べまして、若干増加したスピードで認可しようという腹を固めておるわけでございますが、これは、最近の経済が非常に大きく変動いたしておりまして、新しい地域がだんだん開発されていっておるわけでございます。具体的には、たとえばこの付近で申しますれば、従来あまり問題にならなかった京葉の地域でございますとか、あるいは京浜地帯、川崎を中心とする地帯でございますとか、御存じのように各地において、そういう開発が行なわれております。また東京、大阪の周辺におきましても、いろいろな団地ができてくる、これは最近の現象でございまして、そこらに大きく資金の供給源と申しますか、貯蓄増強の見地から、店舗を増設してこれを吸収する余地もあり、その必要もある地域があって、また融資の面におきましても、そういう経済情勢の変動に応じて店舗配置を変えていく必要もある、こういうような情勢でございますので、最近の経済情勢を勘案いたしまして、店舗増設を考えておるわけでございます。
  63. 横山利秋

    横山委員 私はこのような傾向に対して、賛成することはできませんが、意見は別として、次の問題に移りたいと思います。  新金融政策というものが、一つには低金利政策、一つには、言うならば自由化という方向に流れて、どこで一体チェックをするのかという点について、私が疑問を出しておるわけでありますが、そのチェックの一つに、臨時金利調整法をどうするかという問題があります。昨年からちまたに、臨時金利調整法を廃止しろ、預金金利の規制を廃止すれば、金融の秩序が乱れるように心配するのは、過去からの惰性におぼれた錯覚にすぎぬ、こういうような立場で、金利調整法を廃止しろという意見であります。これを廃止することは、ただやみくもに廃止ができないから、おそらく独禁法の問題が生じてくる。独禁法を改正しなければならぬということになると思うのでありますが、この問題についてどういうふうにお考えですか。
  64. 大月高

    ○大月政府委員 現在の臨時金利調整法の建前におきましては、預金金利、貸出金利の最高限度を規制いたしておるわけでごいますが、かつ、この金利の最高限度の変更の発議権は、大蔵大臣にあるという二点がポイントでございます。これに対しまして、一つは、この規制をはずしたらどうか、一つは、かりに置いておくにしても、変更の発議権を、大蔵大臣のみならず日本銀行の政策委員会、あるいは市中銀行にも与えるべきではないかというような議論があるようでございます。それに対してわれわれの見解といたしましては、この法律は独占禁止法のもとにおける例外の規定でございまして、御存じのように、業界における単なる申し合わせが、一般の公共の利益に害があるということから、法律でもって政府及び日本銀行が関与して、この限度をきめるということになっておりますので、そういう建前から申しまして、今すぐには廃止できません。  それから、この金利を自由にして参るということは、方向としては是認されるわけでございますが、この法律のできましたそもそもの基本的な情勢は、この情勢を放置いたしますと、金利が非常に高いところに上がってしまうであろうということでございまして、それを産業界の利益のために、比較的低いところにこれを押えていこうという実質的な理由がございます。そういう意味で、今直ちにこれを廃止することは、現在の金融情勢上適当でない。そういう意味で、ただいまの方針といたしましては、できるだけこの運用について弾力性を持たそうということで、貸出金利につきましては、現在の最高限度の中において、大蔵省日本銀行及び市中銀行の相談によりまして、一定の限度を設けておるわけでございます。ただ預金金利につきましては、御承知のように放置いたしますれば、これはいかなる情勢におきましても、預金獲得競争を原因といたしまして必ず上がる。それが金融界に混乱を生ずるもとになる立場がございますので、これは法律をもって厳重に最高限度を規制しております。この最高限度の規制という問題は、預金金利については、どういう手段をもってやるかは別といたしまして、将来においてもこれをはずすことはできないのじゃあるまいか、このように考えております。
  65. 横山利秋

    横山委員 どうもひっかかるのですが、今すぐにはこれをやめる気持はないと、今すぐにはと勇んでおっしゃるのには意味がありますか。
  66. 大月高

    ○大月政府委員 重要な意味を持っておるわけでございまして、われわれといたしましては、必ずしもこの法律がいいとは思っておりません。しかし、今の金融情勢のもとにおいては、廃止するわけにはいかないということを正確に申し上げられると思います。
  67. 横山利秋

    横山委員 こまかいことですが、準備預金制度を適用する、そして相互銀行、信用金庫二百億以上のところに適用するといいますが、この適用の仕方を、法律は今手元にございませんが、法律というものは、すべての二百億以上のところにはこれを適用するという一括方式でなくして、個々の金融機関ごとにやるのが法律の本旨ではないか。同時に運用問題にしても、二百億とばちんと切って、その上は準備預金がまともに適用される、その下は全然ということも少し画一的ではないか。もう少しきめのこまかい方法があるべきではないか、こう考えるが、いかがですか。
  68. 大月高

    ○大月政府委員 ただいまお話しのございましたように、準備預金制度の建前は、各金融機関の実態に応じましてきめこまかくやるという建前になっております。従いまして、現在の法律におきましては、銀行、相互銀行、信用金庫その他の金融機関に対して準備率の適用が可能なわけでございますが、現在までのところ、最小必要限度という立場におきまして銀行にだけ適用してあるわけでございます。それが最近の情勢におきまして相互銀行、信用金庫の資金量も非常にふえて参りますし、金融界におけるウエートも非常に高い。そういう意味から日本銀行の資金調整の対象とする方が適当であるという判断に基づきまして、今般相互銀行、信用金庫を準備預金の対象にしよう、こういう方針がきめられたわけでございます。従いまして、そういう立場から申しますと、相互銀行、信用金庫と銀行とはやはり現在の資力、信用度、あるいは現に行なっております金融対象、つまり相互銀行、信用金庫は主として中小企業に金を貸しておるという特殊性もございます。そういう面を考えますと、準備預金制度を適用するといたしましても、やはり相互銀行、信用金庫に対する準備率の方が銀行に対する準備率より低い、緩和されたものである方が適当であるという判断をいたしております。そういう意味で、今これは政令事項でございますので、近く閣議の御決定をいただきたいと思っておりますけれども、その方針といたしましては、銀行は資金量二百億以下のものに対しましても準備預金がかかることになっておりますが、相互銀行、信用金庫につきましては二百億超のものにだけこれをかけるということ、かつその率を銀行の半分というようにいたしまして、そういう特殊性を生かしながら金融の調節にも役に立たしたい、こういうように考えておるわけでございます。ただ二百億という線を引くのがいいかどうかという問題でございますが、やはりあまり小さい金融機関に対しましてこの準備預金制度をかけることは、先ほどからお話でございますように、やはり経理の圧迫にもなることでございますのでその辺のところに線を引きたい、こういうことでございます。
  69. 横山利秋

    横山委員 三月じゅうに歩積み、両建の適正基準を示すと伝えられておるのですけれども、この適正基準という言葉が私は非常におかしな言葉だと思うのです。本来歩積み、両建というものがないのが当然であって、適正というのはあるのが当然で、高くてはいかぬというような錯覚を与えるおそれがあると思うのです。しかもそのいわゆる適正限度というもののつくり方によっては、これまた当然それはいただけるもの、するべきものという錯覚を与えるおそれがある、こう考えますが、その歩積み、両建を適正限度に置くというものの考え方と、三月じゅうに大体どのくらいの水準を目ざしておるかということをお伺いをしたい。
  70. 大月高

    ○大月政府委員 歩積み、両建の問題は、今お話しがございましたように、われわれといたしましては適正なものに押えたい。逆に申しますれば、一般に是認すべきもの以外のものを自粛の対象といたしたいという考えを持っております。それは、歩積み、両建と一言に申しましても、一般の取引の慣行上数十年来行なわれておるものもあるわけでございますし、一般の取引の実態から申しまして、是認すべきものもあるわけでございます。これは世界各国共通のことでございまして、一がいに両建になっておる、歩積みがあるから絶対いけないんだというようなことは、金融の今までの常識に反するわけでございます。ただ、何と申しましても現在問題になっておりますのは、それが非常に過度に行なわれておるということ、かつ、それは債務者の都合とか事情によらないで、金融機関側においてこれを強制するというところに問題があるわけでございまして、債務者の都合によりまして、一方には借金がある、しかし逆にまた預金を持っておるという事態はちっとも差しつかえはないし、一般の事業として当然何らかの預金は持っておるべきものでございまして、従いまして、そういう意味でわれわれとしては、是認していいものと完全に排除しなくちゃいかぬものが当然あるという見解に立っておるわけでございまして、現在われわれが金融界と御相談し、日本銀行と相談し、適正な標準をきめたいと申しておりますのは、そういう意味でございます。近く結論を得まして実施に移りたいということでございます。
  71. 横山利秋

    横山委員 その適正限度は大体どのくらいの水準を目ざしておるのか。
  72. 大月高

    ○大月政府委員 ただいま申し上げましたように、これは数字の問題ではございませんで、債務者の都合及び事情によらないで強制するという問題でございます。従いまして、はたして何パーセントあればいいかというような問題は、相当慎重にきめなくちゃいかぬ。社会の常識として二〇%までは是認するというのか、三〇%まではいいというのか、そういうところは必ずしも数字にはとらわれない判定が必要であろう。そういう意味で非常にむずかしい問題でありますので、これは金融界、産業界双方に重要な影響があるものでありますから慎重に今相談しておるわけであります。
  73. 横山利秋

    横山委員 次は、準備預金制度を適用する必要性が、相互銀行が一兆七千億、信金が一兆五千億となったからあると考えられるといわれるのでありますが、それなら約一兆円になんなんとしておる社内預金について新しい角度をここで向けるべきではないか。この一兆円は私の推定ですが、大体間違いはないと私もそろばんをおいておるわけです。その問題は別途所得税のところで大いに議論をしたいと思うわけです。きょうは金融問題として、社内預金はなぜいつまでもあなたの方から放置されるのか。あなたの方ではこれを放置して、それから税制面ではこれを少額貯蓄の問題として、正式なルートに乗せるのはいかがなものであろうか。社内預金についてはずいぶん論争を加えて参りました。きょうは時間がございませんから多くは申しませんけれども、それだけ金融情勢全般の関係金融政策の配置の中で考えるならば、社内預金だけ放置をするのはいかがなものか、こう考えるがいかがですか。   〔委員長退席、吉田(重)委員長代   理着席〕
  74. 大月高

    ○大月政府委員 社内預金の問題は、われわれといたしましてもたびたび国会で御質問に応じて見解を申し上げましたように、金融の立場から申しますれば、お話しのように廃止してもらいたいという制度でございます。好ましくないということをはっきり言っておるわけでございます。しかし、社内預金制度そのものは、これも従来何十年来の慣行として行なわれておるものでありまして、しかもこれは労働者の福祉という立場から労働基準法によって認められておる制度でございます。単に金融の立場からのみこの制度の廃止を決定するということは、現在の段階においては不適当であるという判断を全体として持っておりますので、われわれとしては不本意ながら存置をしておる、こういうことでございます。それでは準備預金制度をこの問題に適用するかと申しますと、本来の金融調節の対象外のものでございまして、これをわれわれとして公に金融機構の中に取り込むということは、逆にこれを一つ金融の立場から公認するという立場において規制するということになりますので、これは絶対にしてはならないことであろう、むしろ社内預金は社内預金としていかに金融に支障のない方向に持っていくか、こういうことで考えるべきことであろうと考えております。
  75. 横山利秋

    横山委員 むしろ社内預金としてその弊害をどういうふうにためていくかという方向に考える、私も現実問題としてはそれより仕方がないと思う。けれどもその弊害をためる方策が、一回でもあなたの方でお打ちになったことがないようです。今日九州地方におきましては、炭鉱が非常に疲弊をしてつぶれていくわけでありますが、その炭鉱の二、三のところでも、社内預金が元金すら返済できなかったという状態が出てきておる。私どもが従来指摘しておった社内預金の弊害というものは、現実的にあるわけです。従ってこの際また別途本委員会におきまして税の問題に関連をして、社内預金についてわれわれとしては十分質疑をしたいと思うのですが、今日の社内預金の状況をもってして、何らか社内預金の運用のあり方に規制を加える必要があると思うのでありますが、いかがでございますか。
  76. 大月高

    ○大月政府委員 この問題はわれわれの金融行政としては好ましくないという立場をとっておるものでございまして、労働省の立場におきまして、労働者の福祉のために認められておる制度である、そうすればこれが会社の破産その他の場合に、いかなる保護を受けるかということは、もっぱら労働行政の立場において考えらるべきものだと考えております。ただ現実の法制上の制度といたしましては、会社更生法の適用上、社内預金には優先権が与えられておりまして、社内預金の保護という点については、労働省としては十分な関心を持ち、かつ社内預金はこれを公開する、かつそれについて強制をしてはいけない、その他金利の面につきましても六分以上つけるというようないろいろな面におきまして、労働行政上御処置になっております。われわれとしてはその辺のところでいい、ただ基本的に申しまして、一般の預金者の預金施設としてわれわれが監督しております金融機関、これは免許制度になっておりまして、政府として十分の責任を持っておるわけでございますが、社内預金を預っております会社は原則として完全な自由企業でございます。従いまして、この会社がかりに内容が悪くなって破産する、倒産するというようなことがございましても、これはやはり預金者の自由なる責任においておやりになっておることでございまして、そこまでわれわれとしてはとやかく言う筋ではないというような立場をとっておるわけでございます。
  77. 横山利秋

    横山委員 一回機会を見て大月さんに社内預金の勉強をしていただかなければなりません。まず第一に指摘したいことは、社内預金は預金者の自由意思によってなされているわけではない。年末手当、夏期手当を天引き社内預金させる——大きな労使対等のところでは別ですよ。ほかのところでは天下りにそういうふうにされておるということです。会社更生法が適用になっているから、その辺は保証されているはずだという、そんないつも会社更生法を適用して問題を解決しているところばかりではない。現実に銭がなければどうしようもないというところも枚挙にいとまがないわけです。それから高利の問題については、最近ではそんなに高利のところはありませんけれども、労働省の言うように、またあなたの言うように、社内預金が労働者の福祉のために行なわれておるという甘いお考えを持っておられたのでは困る。それから本問題は労働省の所管だから大蔵省としてはおもしろくない問題だけれども、まあしようがないということも私はいかがなものかと思う。預金者保護ということが焦点とするならば、大蔵省としても当然今日の社内預金の実情について労働省と協議をしてもらいたい。きょうは時間がありませんから、税制のときにこれは実情をつぶさに申し上げて御検討願うつもりでございますから、一つそれまでに十分検討しておいていただきたいと思います。  やや抽象的ではありますけれども、こういうように新しい金融行政が、私どもの不安をよそにしてどんどんと行なわれていく場合において、もう一つ注意しなければならぬことは、金融機関に自主性を持たせる、こうおっしゃる。金融機関は行政からなるべく離れて自主的に運営しておけ、こうおっしゃる。本委員会が常に議論をしておりますと、あなたの方から、預金者保護ということと金融機関の機密ということをもってして、個々の金融機関についてはなるべく本委員会で触れられないようにということで、逆に言えば金融機関及び経営者というものは常に保護されておる。今金融機関がつぶれるということは絶対にない。戦前と違って取付騒ぎが起こるということは絶対にない。それは政府の行政が預金者保護ということに非常に気を使っているからである。こういうような結果、金融機関の経営者はみずからの責任ということについて稀薄になってきたということが戦前、戦後を比べて言われるようになっておる。従ってもしそれ自主的責任を持って金融機関を運営しろというならば、一そう別な角度で預金者の保護ということについて裏打ちをしていかなければならぬのではなかろうか。今後一そう本委員会並びに政府が、金融機関については彼らの思よううに自主的に責任を持ってやらせるとするならば、それと別にまた預金者保護について考うべき点がなくてはならぬはずである。私は不賛成ではあったけれども政府がかつて弱小金融機関に対して相互連帯保証の制度をつくろうとした。あの制度それ自身には不賛成であるけれども、何らかのそういう預金者の保護というものが金融機関にまた証券機関になさるべきことではなかろうか。私がきょういろいろと申し上げたのは、政府金融政策、新しい金融政策自身にも大いに私は意見があり、反論をしておるけれども、かりにそれを進める過程においていろいろな問題が起こってくるけれども、それらについての配慮がない、従ってこの新しい金融政策なるものは、多くの矛盾や、格差の増大や、落ちこぼれや、しわ寄せというものがくる、それを自由主義経済のもとであるからやむを得ないというならば何をか言わんやで、あなた方と私とはベースが違うのである、こういうような点についてきめのこまかい配慮を当然政府としてしなければならぬのではないか——きょうは時間がございませんので全部を並べてしまいましたけれども準備預金制度の適用範囲を広げること自身に、あるいはマーケット・オペレーションの運営自身に大きな意見は持っておるけれども、しかしそれはそれとして、ずっとながめてみて、政府の新しい金融政策はきわめてきめこまかくなく、しかも落ちこぼれや、格差の増大や、しわ寄せというものが予見をされる、こういうふうな点を私は強調したかったのであります。それらの総合的な点について、次官に一つ本日の感想を承って質問を終わることにいたします。
  78. 原田憲

    原田政府委員 ただいま横山委員からお話がございました点について、なおよく検討を加えまして、ただいま御指摘のありましたような点について手落ちのないように配慮を加えていきたいと存じます。
  79. 春日一幸

    ○春日委員 一、二問だけ……。この前の金融委員会で、東京昼夜信用組合の破綻事件につきまして、二万数千人の預金者が、しかも零細預金者が非常に困っておる、それで政府は東京都知事にこの監督その他を委任してはおるけれども、最終的な責任は政府にある、これが対策はどうしたかと質問いたしまして、善処方の御答弁を得ております。その後何か固まったものがありますか。ありましたらお聞かせ願いたい。
  80. 大月高

    ○大月政府委員 東京昼夜信用組合の問題につきましては、先般お話がございまして、今お話しのように東京都庁において責任を持って善後処理を考究中でございます。ただ、何分にもこの問題は多くの簿外取引があるというところに中心がございまして、なかなか実情がわからないということでございまして、目下徹底的な調査中でございます。  それから基本的な方針といたしましては、善意な預金者に対して迷惑を及ぼさないように処置いたしたいというのが東京都の基本方針でございまして、こういう簿外取引の関係者の預金等については相当御遠慮願わなければいかぬかと思いますけれども、一般の善意の預金者に対してはできるだけのことをいたしたい、こういうことであります。
  81. 春日一幸

    ○春日委員 善意の預金者とまた裏預金を承知の上で高利をとっておった者については、これはおのずから区分があってしかるべきであろうと思いますけれども、とにかく政府から認可を得た受信機関として堂々と営業をしておった、窓口で預金をしておった、これが監督不十分のため経営者諸君の乱脈な運営、経理によって破綻を来たした、これはまことに監督不行き届きの最もはなはだしいものでありまして、政府責任は免れがたいと思います。この問題は、破綻が表に出ましてからすでに二、三カ月を経過いたしております。このままほっておけば預金者は泣き寝入りをしてしまうのではないかというようなことでいたずらに時間がかけられておるきらいがなくはございません。許すべからざるあり方であると思います。こんな問題の処理は、それぞれの受信機関が営業店舗の許可、認可を受けるにあたってきわめて困難な諸清勢等もございましょうし、そういうようなものから関連して、他の有力な受信機関と合併せしめる等、いろいろな方法によって、わずかばかりの——と言っては語弊がございますが、信用協同組合全体としても、また受信機関全体としても、とにかく共同の信用を保持いたしますことのために、これはいろいろな行政指導によって十分救済の実を上げることができると思うのであります。すでに私が発言をいたしましてからかれこれ一カ月くらいたっておるのに結論が出ていないことはきわめて遺憾であります。すべからく東京都庁を十分御督励になりまして、善良なる預金者の被害をすみやかに回復することができますように善処を要望いたします。  それからもう一つ、私はこの際大蔵省に対して警告を発したいことがございます。それは、ただいま横山君の質問の中にもありましたが、歩積み、両建に関する問題でございます。本問題については、私が、これは明らかに独禁法違反の疑いがあり、よって、公正取引委員長を本委員会に招致して、この問題について国政調査を行なうべき旨提示をいたしました。かくて理事会にはかられて、この問題について処理することが理事会において決定されております。本日の理事会においても、税法三案が上げられたその直後において十分責任的審議を行なうことが申し合わされておるのでございます。従いまして、この問題ははたして独占禁止法違反であるのかどうか、そういう問題は国会審議の結果と相待って行政府がしかるべき措置をとるのが道義、条理に照らして適切な処置であろうと思うのであります。そのような過程の中において、銀行局のある検査官が歩積み、両建について一個の基準を明示したということは重大なことであろうと思います。その基準がいかに定めらるべきであるか、少なくとも国会が開会中であり、しかもこの問題を取り上げてここで審議しよう、各党から各委員が出て、この問題について公正取引委員会委員長を招致して独禁法の立場から一応これについての十分なる検討を加えよう、金融を所管いたします本委員会がその調査を行なおうといたしておりますその過程において、何らその結論も出されてはいない、またその調査もなされていないときに少なくとも、銀行局が歩積み、両建について一個の基準を容認的に示すというがごときは、国会に対する挑戦である。こういうことは差しつかえないという前提のもとにそういう基準が示されておる。われわれはこれは独禁法違反であると思料されるがゆえに、その疑惑の上に立ってこれをクリヤーしようと思って調査しようとした。私はこういう処置はきわめて不当な措置であると思うが、いかがでありますか。私は、このことについて政務次官も十分審議の経過、問題の取り扱いの経過について御承知のはずであると思う。本委員会が少なくともこの問題について検討のさなかにおいて、歩積み、両建てはこの限界においては支障なしという限界を示すがごときは、きわめて不謹慎きわまる態度であると私は思う。何のためにわれわれがここに調査せんとするのでありますか、理事会は何のためにその必要ありと認めてそのことを議決したのでありますか。国会に対する挑戦である。何たる態度をもってそういうばかげたことを銀行局が示したのか。この間のいきさつを御答弁願いたい。
  82. 原田憲

    原田政府委員 今、横山先生の御質問中にありましたが、基準は銀行局から銀行側に示しておりません。そいうことはいたしておりません。歩積み、両建はいかぬじゃないかという強い御意見がありまして、今、春日先生がおっしゃる通り、ここへ公取の委員長も呼んで、国政審議の立場からこの場において審議をしようということになっておることも承知をいたしております。私ども大蔵省といたしましては、今この基準がよろしいというようなことは決して申し上げておりません。先ほどの答弁で申しておりますように、こういうことは大事なことでございますから、銀行側あるいは産業側の意見もよく聞いて相談をしたい、こういうことを答弁いたしたと承知いたしております。
  83. 春日一幸

    ○春日委員 この間、一週間くらい前に新聞に、たとえば政府資金の中において、両建にするとかあるいは歩積みをするとかいうことの項目のほか三、四点を明示された、こういう記事を見ました。これは事実無根でありますか。
  84. 大月高

    ○大月政府委員 これは事実と相違いたしております。こういうことであろうと思います。先ほど横山委員の御質問に対してお答えいたしましたように、われわれといたしましては、いわゆる適正なもの、不適正なものという問題は非常にむずかしい問題でございますので、われわれが一方的にきめまして、これを金融界に押しつけましても納得を得られない限り誠意を持って守ることには参らないということだと思います。従いまして、金融界の慣行あるいは社会的な慣習、そういうものを含めまして正確な基準をつくりたいということで相談いたしておりますが、その席にわれわれの銀行局の検査部長も派遣いたしまして相談をさしておる。それが大蔵省から案を出してそれで了承したとかしないとかいう記事になっておるのだと思います。そういう意味で事実はまだ結論が出ておりません、相談中であるというのが実態であります。
  85. 春日一幸

    ○春日委員 私は、あの記事というものは少なくとも項目を制限、列挙してかくかくのものは適正ならざる歩積み、両建であると報道されておりました。従いまして、国民大衆はこの程度のものはやむを得ないのであるかと考え、またこの程度のことをやってもいいのであると金融機関は誤認するのおそれ甚大であると思うのでございます。従いまして、事実無根の記事であるならば、事の重大性にかんがみて、あれは事実無根であるとの記事の取り消しを行なうか、あるいはそれに反論せられたところの意思表示を行なうか、的確な処置をなすことが行政府の当然の責任であると思う。ああいう大きな記事が出され、この重大問題の根幹に触れてああいう問題が出されて、今日まで黙ってこれを捨てておくということは適当なことではない。ああいう四つ、五つの排除的な項目というものは、言うたこともないのだし、また考えてみたこともないのだということを国民の前に明らかにするために、一つ大蔵政務次官の責任において適切な処置をとっていただきたいと思います。重ねて申し上げまするが、税法三案が上がりました直後において公正取引委員会関係者にここへ来ていただいて、厳粛に、その歩積み、両建の問題の適法性、またそのなし得る限界等について十分国政調査をなさなければならぬと考えますので、これに先がけてそういうような処置のありませんよう、十分一つ御戒心あらんことを要望いたしまして、私の質問を終わります。ああいう記事が出ておったことは事実であります。国民大衆が誤認することもまた当然のことでありましょう。これを何らか訂正する意味において、適切な処置をおとりになる意思があるかどうか、この際政務次官から……。
  86. 原田憲

    原田政府委員 今新聞に発表したらどうだというお話でございましたが、そこまでは——私、よく調べてみますが、銀行局長から今御答弁申し上げましたように、また私から答弁いたしましたように、そういうことは、大蔵省としては、まだ何も指示した覚えもないところでございますから、よく連絡をとってみたいと思っております。
  87. 春日一幸

    ○春日委員 大蔵省が指示もしない意思表示もしないとしても、天下の大新聞ことごとく、大蔵省銀行検査官でありますか、その種の責任者が金融懇談会の席においてか、銀行協会等の席においてでありますか、とにかく歩積み、両建預金の排除基準、不適正基準というようなものを示された、こういうことが載っておった事実は重視されなければならぬ。今申しましたように、国民は、この程度の歩積み、両建をするということはやむを得ないものである、かくのごとくに考え、この程度以外のことはやってもいいのだというふうに銀行が思い込んでしまっておる。私はその弊害は甚大だと思う。国民の被害はまた大きいと思う。私は、政府がこの問題について当然そのような誤解のないように、そうして誤った執行によって国民の何人も被害を受けることがないように処置をとることは当然の責務だと思う。私は、少なくとも大蔵政務次官の責任において善処されることを強く要望いたしますが、善処されなければこの次の機会において十分大蔵省の責任をも問いたださなければならぬ。この点一つ注意しておきます。
  88. 原田憲

    原田政府委員 大蔵省といたしましては、今の問題については、先ほど答弁いたしましたように、銀行協会その他関係のある方面が慎重に取り扱うように善処いたしていきたいと思っております。
  89. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 この際、午後一時四十五分まで休憩いたします。    午後一時四分休憩      ————◇—————    午後一時五十三分開議
  90. 臼井莊一

    臼井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  税制及び専売事業に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。堀昌雄君。
  91. 堀昌雄

    ○堀委員 前回、予算委員会の第一分科会におきまして、たばこ専売法違反の問題につきまして少し論議をいたしましたけれども、時間が十分にございませんでしたので、本日は、これからこの問題を取り上げさしていただきます。  最初に、法制局長官にお伺いをいたします。  たばこ専売法第七十九条に、「国税犯則取締法の規定は、この法律の違反事件に準用する。この場合においては、この法律の違反事件は、間接国税の犯則事件とする。」こういうふうにございます。そこで、国税犯則取締法十三条を準用規定で読みかえると一体どうなるのか、ちょっとお答えを願いたいと思います。
  92. 林修三

    ○林(修)政府委員 今御質問の十三条というのは、通報・告発の規定でございますね。これは当然に、この収税官吏とありますのは、専売公社の当該職員、国犯事件の仕事をやっております職員と読みかえられると思います。それから間接国税に関する犯則事件というのは、たばこ専売法違反事件、こういうことになろうかと思います。どういう職員が、ここにいう税務署長あるいは国税局長に当たるかは、専売公社の職制によってきまってくることだと思います。
  93. 堀昌雄

    ○堀委員 今のあなたのお話だと、「国税局又ハ税務署ノ収税官吏」、こうあるのは、地方局または支局の当該職員というところまではお話しになりましたが、それ以外にありますね。   〔委員長退席、吉田(重)委員長代   理着席〕
  94. 林修三

    ○林(修)政府委員 ちょっと今の御質問の趣旨がよくわからなかったのでございますが、恐縮でございますが…。
  95. 堀昌雄

    ○堀委員 今あなたは、十三条の一の「国税局又ハ税務署ノ収税官吏間接国税ニ関スル」というその収税官吏は、たばこ専売公社の職員だ、こういうふうな読みかえをするのだとおっしゃったわけですが、それだけではなくて、ほかにもあるはずだと私は申し上げたのです。ほかにもありますね。
  96. 林修三

    ○林(修)政府委員 今の御趣旨は、このたばこ専売法七十九条の各号に当たるいわゆる司法警察官あるいは司法警察官に準ずるような職員あるいは税務職員、そういうことをおさしかと思いますが、もちろんそれも入っております。
  97. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、こういうふうに読めますね。第十三条は、国税局または税務署の収税官吏間接国税に関する犯則事件の調査を終わりたるときは、これを所轄地方局長または所轄支局長に報告すべし、こういうふうに読めますね。
  98. 林修三

    ○林(修)政府委員 今の御趣旨、やはりちょっとはっきりのみ込めないところがあるわけであります。たばこ専売法違反の犯則事件は、御承知のように、間接国税犯則事件と呼んでいるわけでございます。従いまして、国犯法の方でいえば、間接国税に関する規定が準用になるわけでありまして、そういう点になるじゃないかと思いますが、今おっしゃった趣旨、ちょっと了解しかねる点があるのでありますが……。
  99. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは私が説明をいたしましょう。たばこ専売法第七十九条の三は、そこにこれを読みかえる規定が書かれているわけですね。その中に警察官から収税官吏まであるわけですね。そうして、それをもって「司法警察職員等」という「等」の中に含まっているわけですから、それを一々全部置きかえて法文として読み直してみますと、私がただいま申し上げたように、この十三条を国税局または税務署の収税官吏たばこ専売法の違反事件の調査を終わりたるときはこれを所轄地方局長または所轄支局長に報告すべしと読める、と私は言っているわけです。読めますね。
  100. 林修三

    ○林(修)政府委員 ここで一号から七号まであげておりますのは、いろいろな趣旨がそれぞれあると思うのでございます。
  101. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、そんなことを聞いていない。読めるかどうかと聞いているのです。
  102. 林修三

    ○林(修)政府委員 この収税官吏を入れた趣旨は、結局どういうわけで入れているかといいますと、結局これは今おっしゃったようなのと、簡単にそうはいかない点がある理由を御説明しようと思っているわけでございますが、この三項の各号でいわゆる警察官あるいは海上保安官、あるいは税関官吏、収税官吏を入れておりますのは、やはりそれぞれの職員がたばこ専売法違反事件に関与してくる可能性のある職員をここに入れてあるわけでございます。これによって本来そういう職務を持っていない職員についてまでその権限を与えた規定ではないと思うのでございます。従いまして、収税官吏が出てくるのは、結局、たとえば、主として間接国税関係の収税官吏が間接国税事件を調査しているときに、たとえばたはこの輸入問題等で——これは税関官吏が主としてやりますけれども、収税官吏もある程度輸入物件についての犯則事件の調査ができるわけでございます。そういうことを考慮してこれは入れてあるのじゃないか、かように考えます。
  103. 堀昌雄

    ○堀委員 冗談じゃないですよ、法制局長官。あなた、あんまりそういう政治的な発言を法制局でしてもらっては困ると思うのです。いいですか。もし政治的に今度の処理がひっくり返ったときにそういうことであなた通りますか。法律というものはそういうものじゃないでしょう。今私が言っているのは内容のことを言っているのじゃないのですよ。法律学上のことを言っているのだから、読めるか読めないかと言ったら、読めるかどうかを答えればいいのです。読めるか読めないかどっちですか。読めないなら読めないと言って下さい。
  104. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほど御説明した通りに、この各号に掲げるものは、やはりそれぞれ本来の職務から関連してくるものが掲げてあるわけでございます。従いまして、たばこ専売法違反事件に本来かかわる職務を持っている者がその範囲においてやる、これにおいて新しく職務を与えたものではない、かように考えます。
  105. 堀昌雄

    ○堀委員 読めるか読めないかをここで私伺っておるのですが、あなた、読めると言うのか、読めないと言うのか、どっちか答えて下さいよ。答えなければ何回でも聞きますよ。あしたの朝まで聞きます。
  106. 林修三

    ○林(修)政府委員 今の御趣旨は、いわゆる収税官吏一般全部が入るかという御趣旨……。
  107. 堀昌雄

    ○堀委員 そんなこと聞いてないですよ。ここに書いてあるのを読んでいるだけじゃないか。入るとか入らぬとかの判断のことではない。読めるか読めないかということだ。
  108. 林修三

    ○林(修)政府委員 読めるとか読めないとかは、結局法律の趣旨で解釈するわけでございますから、その文字と同時に法律の趣旨の両方から解釈していくわけでございます。ここに書いてありますのは、要するにたばこ専売法違反事件について、こういう職員もたばこ専売法違反事件の、いわゆる犯則事件の捜査ができるということが書いてあるわけでございますので……。
  109. 堀昌雄

    ○堀委員 犯則事件の捜査ができるのでしょう。
  110. 林修三

    ○林(修)政府委員 できますが、もちろん収税官吏も入っておりますが、これは先ほど申しましたように、警察官も、税関官吏も全部入っているわけでありますが、これによって職務を新しく与えたのではなく、当然こういう問題はそれぞれの職務の範囲で、たばこ専売法違反事件にかかわってくることがあり得るわけであります。そういう場合には、もちろんたばこ専売法犯則事件の調査ができる、そういう趣旨で書いてあるもの、かように考えるわけでございます。
  111. 堀昌雄

    ○堀委員 それではもう一ぺん聞きますが、あなたがさつき収税官吏としてここへあげてあるものは、要するにたばこの輸入の違反だとおっしゃいましたね。いいですか。それだけですか。ほかに収税官吏をここへあげた理由はあるのですかないのですか。それはもう大体税関がやることですよ。収税官吏というのは税務署にいるのでしょう。税関が密輸の問題をやるのじゃないのですか。そのために税関吏はあるのでしょう。その問題とこの問題は違うのじゃないですか。
  112. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは御承知のように、いわゆる内国税の収税官吏でも、その犯則事件の調査の過程において、関税法違反事件についての調査は、同一物品が内国税と関税と両方にかかってくるものが相当ございます。これは両方の捜査権利を持っているわけであります。そういうわけで、収税官吏はいわゆる輸入たばこ等の問題については捜査権はもちろんあり得る場合はございますが、関税等の捜査についても並行してあり得るわけであります。  それから、純然たる国内についても、いろいろの場合を私は一々想定したことはございませんが、間接国税の調査に当たっている収税官吏がたばこの専売法違反事件に突き当たるという場面はもちろんあり得ると思います。そういう場合をもちろん含んでいるだろうと思います。
  113. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると後段の方は、いろいろたばこ専売法違反に関するものにぶつかることが内国税に関してあり得るということですね。私はそれを聞いているのだから、そこまであなたがお答えになるなら、今私が言ったように読んでもちっとも悪くないではないですか。これは要するに、国税局または税務署の収税官吏たばこ専売法違反事件に関する犯則事件の調査を終わりたるときは云々、こう読んだってちっともかまわない。読んでもよいということでここに法律として書いてあるのですからね。そうでしょう。内国税については絶対に権限はないのです、関税法違反についてだけあるのです、ということだけでは、この収税官吏という言葉はないと思う。  それからもう一つ、要するに、今のこの問題は政府がいかような決定をするかにかかっている問題であって、その場合には、法制局というものは、そういう政治的な判断ではなくて、客観的に法律の該当事項の範囲内における意見をあなた方は述べればいいのであって、政策部分にタッちするものまで私はあなたに意見を求めていないわけです。それは大蔵大臣なり、専売公社総裁なり、国税庁長官なりが判断することであって、法制局というものは、法律に対する客観的な事実をどう解釈するかという範囲にとどまるべきだと思うのだけれども、あなたの答弁はややその点を踏み越えて、政策部分についての責任を負おうとするような発言は法制局の立場として適当ではないと私は思う。だから、私が申し上げていることは、あなたがいわゆる内国税についても問題があるということに触れられるならば、それはあたりまえのことだというのです。収税官吏というものは本来的には内国税を担当する部署であって、関税のための収税官吏なんてあるわけじゃない。全国に五万人の職員を関税のために置いているのではないから、その点はおっしゃる通りです。そうなると、私がこの間から論議している問題というものは、まずこの国犯法十三条の通告の義務というものはやはり収税官吏一般にあるのだ。あなたは非常にいろいろとこまかく分けられるけれども、概念的にはたばこ専売法違反に関する犯則の調査を終わったときはこれはやらなければならぬという規定はここに明らかにあるということは確認されておることだと私は思うのです。  その次は、国家公務員法第百条の公務員の秘密保持ということに関する規定と、所得税法七十一条の秘密保持に関する規定と二つあるのですが、これは収税官吏については一体どちらが優先をするのかを承りたい。
  114. 林修三

    ○林(修)政府委員 その点お答えいたします前に、先ほどの点でございますが、私は何も別に政治的な発言をしているわけでも何でもございませんので、本来の法律の解釈のあり方からお答えしたつもりでございます。その点は一つ誤解のないようにしていただきたいと思います。  先ほどの点もまた御質問があればお答えいたしますが、収税官吏は、実は本来の職務は内国税の犯則事件の調査、そういう収税官吏として——しかし、たまたま見つかったという問題があれば別でございますけれども、やはり本来そういう事件の調査を命ぜられている者でなければ権限はないわけで、たまたまそういう犯則事件の調査——職員は収税官吏じゃないわけでありますから、そういう職員がかりに何か見つけたとしても、すぐにその問題にはならないということはちょっと申し上げておきたいと思います。これは堀先生別にそういうことをおっしゃっているのではないのかもしれませんけれども、その点ございます。  それから今の国家公務員法と所得税法関係でございますが、所得税法に関する秘密保持義務の規定は、ある範囲においては重複いたしております。国家公務員である以上は全部がこの国家公務員法百条の規定の適用を受けるわけでございますが、同時に所得税調査に関しての問題はこの規定が優先的と申しますか、ある意味で特別法でございますから、この規定が優先的に適用されるということになると思います。
  115. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、この問題は所得税法七十一条の秘密保持等に関係が出てきますが、「所得税に関する調査に関する事務に従事している者又は従事していた者が、その事務に関して知り得た秘密を漏らし又は窃用したときは、」こうありますね。私は今の税務職員がたばこ専売法違反の事実を知って、それを今の国犯法十三条に基づいて地方専売局の局長その他に通報をするのは、秘密を漏らすとか窃用するということには該当しないと思いますけれども、そこで、私はまず警察庁保安局長にお伺いをいたしますが、これは刑事局長の方になるかもわかりませんが、税務署の職員が今の十三条の私の解釈に基づいて通報の義務を果たしたら、七十一条違反で処罰されますか。それは告発の対象になりますか。これは秘密を漏らしたのでなければ窃用をしているのでもない、通報の義務を果たし刑事訴訟法に基づくところの告発の義務を果たしているだけだから、私はならないと思うのですがどうですか。——それは警察庁の独自の見解で答えて下さい。法制局は法制局の見解があるし、国税庁は国税庁の見解があるでしょうから、おのおのの立場で答えて下さい。
  116. 野田章

    ○野田政府委員 この点について、私どもも十分に研究しておりませんで、お答えが適切にできないのは遺憾でごさいますが、この問題についてはなおもう少し研究させていただきたいと存じます。
  117. 堀昌雄

    ○堀委員 研究していただくならけっこうですが、そこでちょっと保安局長の方にお尋ねした方がはっきりするかもしれませんのでお伺いをいたしますが、最近たばこ専売法違反で兵庫県警が捜査をいたしておる和泉産業事件というのがございます。私が新聞等で承知しております範囲では大体値引き率が四ないし五分、マージンはわずか一分だということです。しかし、その一分のマージンによる利益が一カ月二百万円くらいあり、過去三カ年にわたって六十億円を売りさばいて、それによる利益は一億円をこえておる。これを尼崎中央署が摘発をして、今進行中です。皆さんの方は大へん骨を折ってこういう摘発をされたと思うのですけれども、この場合マージンが一分しか残らないというようなことは一種の反面調査をやれば当然出てきたと思うのですが、私の承知している過去の例はそのほかにかなりあるわけです。これらの違反事件を皆さんの方が捜査された経路は、一体どういうところから始まっておるかをお伺いいたします。
  118. 野田章

    ○野田政府委員 現在捜査中の兵庫県のたばこ専売法に関する事件の端緒というものは、尼崎市内で密造のたばこが大量にパチンコ業者に流れているというような情報もあった、そういう面でいろいろ協力して下さる方もありますので、パチンコ業者の景品用のたばこの仕入れ先というものを隠密裏に調査をしたところが、大阪方面から仕入れているという業者がわかったわけでございます。そこで専売公社の大阪の地方局と連絡をして、その業者の内偵を進めておった、そういう面から販売の事実がわかってきたというのが問題の尼崎の事件の端緒でございます。そのほかにたとえば北海道の、同じようなたばこ専売法事件の嫌疑等がございますが、これもやはりパチンコ業者が大量にたばこを特定の者から買っておるというようなところから調べて参りまして、それが専売法に違反して定価の値引きをして売っているというようなことがわかってきたというような線でございます。
  119. 堀昌雄

    ○堀委員 専売公社の総裁にお伺いをいたしますが、総裁は実はこの間の委員会で、こういうふうにお答えになっております。「たばこ小売人が大口に買い取る者に対しまして値引き販売をしているということにつきましては、私どもいろいろ従前からそういう事実があるという話を伺っております。かようなものは専売法の違反として取り締まりあるいは処分しなければならないものでありますが、現実問題といたしましては、これは現金で取引がなされまするために、証拠をつかむことがむずかしいといったようなことで、現実に犯則として処分いたしましたものはさほど多くはありません。しかし、監視には努めておりまして、違反を発見したものはそのつど調査し、処分をいたしておる、こういう実情になっております。」前回の委員会における会議録でございますから、この御発言は御確認をいただけますね。
  120. 阪田泰二

    ○阪田説明員 その通りでございます。
  121. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると要するに証拠をつかむことがむずかしいといったようなことで、ここにお書きになっておることは現実に犯則として処分いたしにくいということですね。だから現金で取引されて、証拠がつかめさえすれば、監視に努めておられるわけだから、違反を発見したものはそのつど調査し、処分はしていただけるわけですね。
  122. 阪田泰二

    ○阪田説明員 証拠が発見されまして、それを端緒として全体にわたる調査をいたしまして、犯則の心証を得ますればそれぞれ法律に従いまして通告処分あるいは告発という処分をいたします。あるいは小売人の許可自体につきましても検討される、こういうことにいたすことになります。
  123. 堀昌雄

    ○堀委員 そういたしますと、この前の泉さんの答弁がここにありますけれども、泉次長は、「われわれの方で課税をいたします際におきましては、リベートをいたしますと、ほかの業態でもそうでございますが、それだけ所得が少なくなるわけでございまして、担税力がございませんので、そのリベートを引いたところで課税をいたしております。」という答弁がありますから、この事実については税務署に全部証拠はあるわけですね。私はそういうふうに見ておる。調べれば証拠があるかないかはわかるわけです。さっき申し上げた大口のたばこの小売人については、税務署をお調べになれば証拠はあるはずです。それは証拠になっておるかどうかはお調べにならなければわかりませんが、公社としては、この御答弁からするならば、証拠をつかむことがむずかしいので、現実に犯則として処分したものはさほど多くない。だから証拠をつかむことが可能であるならば、その可能の範囲に従って、当然あなたの立場としては、たばこ専売法違反は処分をしなければならぬ立場でありますから、すでにこの問題で、今の和泉産業のように数年にわたって六十億円のたばこ専売法違反による売り上げをしておる事実が過去にあったのです。今日これはほんとうに明るみに出ておるわけですから、そういうふうな異常に多額なものは一たとえば札幌事件でも四分引きです。それからこれは五分引きもやっておるわけです。それほど引いて、そうして本来国に入るべきものが入っていない。だからそういう点で私ども考えるならば、それだけ引けるのならマージンは安くていいわけです。それにもかかわらず今度はふえているといって問題がありますが、一つ阪田さん、これまでの異常にたくさん売っておるところを調査していただきたいと思うのですが、どうでしょう。
  124. 阪田泰二

    ○阪田説明員 ただいまの非常に多額の売り上げをしておるもの、こういうものは大体値引きといいますか、歩率の中を戻すといいますか、そういう形で売っておるのであるから、犯則をやっておるのだろう、従ってそれを調査したらどうか、こういうお話だと思いますが、これにつきましては、確かにその業者の販売努力ということもあると思いますが、しかしそういった専売法違反の行為をやって、そのために売り上げが伸びているのじゃないかといった疑いも十分にあるわけです。ただこれを犯則事件として捜査する、ことにこういう性質の事件でありますから、強制調査をやりまして、確かな証拠をつかまなければならぬわけですが、そういう強制調査をするだけの端緒となる十分な証拠があるかといいますと、ただ何かやっているだろうというだけの推定ではなかなかむずかしいと思います。令状をもらって強制調査をやるというくらいの程度までの確かな証拠がありますれば、これは私どもとしても職責上、また専売法を守るためにも必ず調査をしなければならぬと思いますが、そういった段階までの証拠といいますか、心証がなかなか得られるようなところまでいかないというのが一般の状況でございます。
  125. 堀昌雄

    ○堀委員 専売公社がこれらのたばこ小売人の税の決定の状態を税務署に対して照会をするということは、大蔵省関係部門における処理であって、一々小売人を呼んでその調査をするとか、あるいはそれ以外のいわゆる反面調査をするということを要しないわけですよ。大蔵省という一つの機構の中にある国税庁、国犯法の取り締まりをすべき国税庁の各機関の中にある書類をあなたの方で一回見せてもらいたいということはできないのですか。そんな大げさな、何か外側から警察が捜査をして出てきたものが出てこない限りはやれないのですか。専売法というものはその程度にしか守る必要のない法律なんですか。
  126. 阪田泰二

    ○阪田説明員 税の関係におきまして、歩率を引いて、歩戻しをして売っておる、こういうものにつきまして、そういう実態に応じた課税がされておる、一般的に申しましてそういう状況があるということは私どももかねがね伺っております。従いまして、税務当局の方にもそういった資料をもし法律上私どもの方へ開示していただければ見せていただきたい、これは正式にではありませんが、御相談したこともございます。しかし先ほど来法制局その他、先般もございましたいろいろな事情がございまして、まだ開示していただいておるという段階には至っておらないわけでございます。  なお税務署の所得決定その他の調査資料でございますが、これは所得税あるいは法人税もあるかと思いますが、そういったようなものの所得調査という観点からの資料でありますので、かりに開示していただきました場合、小売業者につきましては、たとえばただいまのお話のような手数料を五分引いて売っておる、こういう計算をして課税してあるといったような事情をお教えいただきました場合でも、ものによりまして、直ちにそれがこういう専売法違反の犯則事件の証拠として使える程度のものであるかどうか、これはまたやはりそこを見せていただかないと、なかなか程度がございまして、はっきりしないのではないかというふうに考えております。とにかく現状ではまだ見せていただくというところまでいってないということでございます。
  127. 堀昌雄

    ○堀委員 公社の方で文書で正式にではないけれども、そういうことを国税庁に申し入れをしておられる、こういう答弁ですが、国税庁、そういう申し入れを聞いておりますか。
  128. 泉美之松

    ○泉説明員 お答えいたしますが、先年大阪国税局におきまして、専売公社の大阪地方局の方から、所得税関係で、たばこ小売人がリベートしている事例についてその内容を開示してほしいというような申し出があった由であります。国税局長の方から直接聞いておりませんが、専売公社の方からは、そういう申し入れをしたけれども、それについて開示できないというような回答があったという報告を受けております。
  129. 堀昌雄

    ○堀委員 今度の和泉産業事件というものは、昭和二十七年ぐらいから行なわれておるのですけれども昭和二十八年からパチンコ屋へたばこをおろし始めて、売り上げが伸びたのは三年ほど前からだ、こういうことになっておりますね。非常に伸びてこういうことになったのでしょう。そこで六十億円に上る犯則事件が起きておるわけですけれども、あなた方、こうじっと国税庁の立場で毎年々々その違反事実を知りながら、所得税法法人税法の問題だけだからとして、今日にきたということについて、何か官吏としての職務執行上にうしろめたいような感じがないですか。
  130. 泉美之松

    ○泉説明員 先般もお答えいたしたのでございますが、所得税及び法人税調査をいたしております税務職員は本来所得税なり法人税調査の仕事を専門にいたしております。その仕事をやっていく過程におきまして、いろいろ個人の秘密あるいは法律違反というようなことを職務上知る機会は相当多うございます。しかしながら、先般も申し上げましたように、刑事訴訟法によって公務員が告発の義務を負っておりますのは、本来行なう職務に際して知り得た犯則があると思量するときに告発の義務があるわけであります。所得税並びに法人税調査をする職員がその職務を執行するに際しまして、たまたま知り得た専売法違反事件につきましては告発の義務を負っておりません。そこで告発する義務がないわけでございますが、先日来堀委員がおっしゃっておられますように、告発の義務はないにしても、これを専売公社に通報するのがいいかどうかという問題はあるわけでございます。これにつきましては、私どもといたしましては、さような通報をした場合に、先ほど申し上げましたように、ひとり専売法違反事件だけではなしに、いろいろな法律違反の事件を税務職員は知り得るわけでありますから、これは通報しろ、これは通報しないというふうにうまく使い分けてやっていくことができるかどうか、またそれによって税務職員が真実の所得を把握するという税務行政の執行の上に弊害がないかどうか、こういった点もいろいろ検討しなければなりませんので、現在のところでは、さような所得税なり法人税調査に際して知り得た専売法違反事件については通報をいたしておらないのでございます。もちろん職務執行上忙しい、そのために専売公社に通報するまでの手数、要するに仕事までやっておれないという事情もあるわけでございます。さような事情にあることを御了承いただきたいのであります。
  131. 堀昌雄

    ○堀委員 今の答弁の中で、所得税決定のための税務行政に、そういう通報することによって弊害が生じるのは困るのだ、弊害が生じて困るということは、その後の所得把握が困難になるということだと思いますが、たばこ小売人については、その所得の決定というのは、専売公社が幾らか売らなければ、所得自体は出てこないのですよ。専売公社から買い入れる以外には、まさにやみたばこでもつくる以外には手はないわけですから、少なくともたばこ専売法違反のたばこ小売人の問題については、税務行政上、あなた方が今後そういう通報をしたからといって、所得税法人税法上の行政執行の弊害にはならないと思いますが、この点に限ってはどう考えますか。
  132. 泉美之松

    ○泉説明員 理屈ではお話のように、たばこ小売人の場合、専売法違反事件を通報したからといって、すぐにたばこの仕入量がわからなくなるというようなことはもちろんございません。しかしながら納税者が税務職員に秘密を知られた場合に、それが他に漏らされるのだという心配を持つようなことになりますと、専売法違反事件に事が限られなくなるおそれはありはしないかという点を、私たちとして心配しておるということでございます。
  133. 堀昌雄

    ○堀委員 それは明らかにたばこ専売法の問題についてだけやっておれば、その他の事案が出てきたら、納税者がそういう心配をするかもしれませんけれども、私は大体そこもおかしいと思うのです。国の法律の定めたものに従ってやるべきであるにもかかわらず、それを税務署がたまたま知ったからといって、税務署が黙ってくれるから、あと継続してその犯罪を何度でも遂行できるなんということは、法治国として一体どうですか。われわれもよく法律はどんな悪法でも法律なんだから守らなければならぬというような論議は、いろいろこれまでもあったわけですけれども、法治国で法の抜けることを有利にさせるようなことが結果として起こるようなことを国の官署が協力した、——間接かどうかは知りませんが、やっておるというのが事実ではないでしょうか。そうすると、所得税法人税をとる方が大事なのか、国民法律を守らす方が大事なのか、一体どちらが大事になるのでしょうか。原田さん、大蔵大臣の資格で国民法律を守らせることが大事か、税金をとる方が大事か言って下さい。
  134. 原田憲

    原田政府委員 両方とも大事でありまして、今の御質問の中で、一方において知ったことをいうことは、一方の法律を犯してくることがはっきりするのに、なぜ言わぬか、こういうところに問題点があると思いますが、国税当局は、やはり自分の税をとっておる、そこで知り得た秘密を漏らすということによって、あらゆるほかの方に波及するということを非常に懸念しておるようであります。しかしながら、御指摘のように、ものは常識だと私は思うのです。その常識はずれなことは——これは一応こういうことがあるがというようなことは、まあ内々に内輪同志で話をするぐらいのことは、これはその方がよいと判断されたときにはそれをすべきだ。しかしそれが法律に問われやせぬか、一方秘密を守るという法律に問われはせぬかということは、これは役人としてはまた懸念するところでございますから、そういうことについては十分検討して、これは罪にならないということであるなら、常識的にこれはどうかと思う点については内々に話をしても、私はいいのではないかと思います。
  135. 堀昌雄

    ○堀委員 政務次官の御答弁まことに同感でありまして、私もやはり今あなたのおっしゃったように、法律その他の執行というのは、やはり元をただせば常識だと思うのです。あなたのおっしゃる通りだと思います。だからあまり非常識なことをしろとは私はいわないのですが、どうもこれまでのやっていることが非常識だという感じがしてならないのです。  もう一つ、法務省の刑事課長もおられますから、一つお願いしておきたいのは、さっき保安局長お答えになりましたけれども所得税法七十一条は、要するに税務官吏がみずからへの利益か何かを考えて、その秘密を漏らしたり、窃用をしたりする場合を規定しておるのであって、今のような公の職務として知り得たことを、公のルートの中で部内で連絡をすることは、七十一条の違反にならないと思っているわけです。今あなたに御答弁をいただきませんけれども、この点について、ここがはっきりしていかなければ、この問題は解決しないのです。これはわかりきったことだけれども、法制局には私は聞きません。またこじつけのことを言われるだけだから聞きません。一つ、警察庁と法務省で統一見解をこれについて出していただきたい。打ち合わせを十分にしていただいて、それに基づいて、今後のたばこ専売法違反に対する態度を国税庁としても一ぺんきめてもらわなければいかぬ問題だと思う。私の言っていることは、所得税法を曲げて使いなさいといっているのではない。それがわかった場合には、所得税法人税の決定はその現実に応じてやったらいい、やったと同時にこういう事実があったということは、少なくとも国犯法十三条の準用規定に基づいて、こういう事実がありましたという通告をしてもらいたいというふうに考えるのです。それは今政務次官が常識的な判断でやりたいとおっしゃったから、それでけっこうだと思います。  そこでもう一つ国税庁にこの問題の部分で伺っておきたいのですが、今の皆さん方のリベートの問題というのは、反面調査をして、ちゃんと何分引きということを認めておられますか。向こうが、たとえばうちは二分引いておりますというので二分引きなのかどうか、今度の和泉産業事件はもう一ぺんか二へんこの委員会で経過を伺うことにしたいと思うのですが、要するに、国税庁は和泉産業所得税の決定にはどうであったのか、今度の警察庁及び検察庁でお調べになった反面調査を含めての歩引きの状態がどうであったのか、それを並べてみて同じならいいですよ。同じでなければ所得税法違反、法人税法違反に基づいて、あなた方は今度みずから国犯法によるところの査察徴収の義務があると思うのですが、その点明らかにしてもらいたいと思います。
  136. 泉美之松

    ○泉説明員 ただいまの点お答えいたします前に、先ほど法制局、長官と御問答があったわけでございますが、たばこ専売法の七十九条の規定にありまする収税官吏と申しまするのは、堀委員はすでに御承知だと思うのでございますが、現在の国税犯則取締法が間接国税犯則取締法時代、その当時は間接国税についてだけの規定があったわけでありますが、すでに同様の規定があったわけでございます。従ってその時代の収税官吏というのは、間接国税の事務を担当する収税官吏になっておったわけでございます。その後間接国税犯則取締法が国税犯則取締法に変わりまして、直税の事件も国税犯則取締法の適用を受けることになったわけでございますが、国税犯則取締法の第十三条は間接国税に関する規定でございますから、従ってここにありまする収税官吏と読みかえる場合におきましても、あくまでもそれは間接国税の事件を取り扱う収税官吏でありまして、直接国税の法人税所得税を担当する職員が入ってくるのでないということをあらかじめ御了解をいただきたいのでございます。それら今のたばこ小売人がパチンコ屋に値引きをして売っておったというような場合に、そのリベートをどうやって認めるかということでございますが、これはもちろん申告納税でございますので、一応本人の申し立てを基礎といたしまして、二分引きであるとか、あるいは五分引きであるとか、四分引きであるというように本人の申し立てを基礎といたしまして、一部につきましてはもちろん反面調査を行ないます。そして相手方がそのリベートを受け取っておるかどうかということを確認した上で認めるかどうかということをきめております。しかしながら、全部について反面調査をすることはなかなか困難でありますので、全部の売上先を調べることはなかなかできないと思います。そういった場合におきましては、そうしたパチンコ屋にはこういうリベートがいっておるはずだからというので、パチンコ屋のリベート収入の資料をつくりまして、それをそのパチンコ屋を担当しておる職員の方に渡すということでやっておるわけでございます。従いまして、たばこ小売人の方の所得からは抜けるわけでございますが、パチンコ屋の収入の方に上がるということになって、それぞれに応じた課税ができることになっておるわけでございます。従いまして、その調査の中におきましては、通報を受けまして、パチンコ屋の調査をしたところが、値引き額がたばこ小売人が申し立てた額と違っておったというような事例が判明いたしまして、申し立て通りを認めなかったというような事例もあるわけでございます。なお和泉株式会社と申しますものにつきましては、新聞に出ましただけでまだ内容がよくわかっておりませんけれども、電話で照会いたしましたところ、昭和二十七年に和泉産業として設立された当時は繊維の販売を行なっておったようであります。その後大王繊維というのと合併いたしまして、その後はたばこの販売とそれからパチンコ屋と両方を経営いたしておるようであります。その課税状況につきましては、現在照会中でございまして、内容は判明いたしておりません。
  137. 堀昌雄

    ○堀委員 次に、今の問題まだあるのですが、専売公社にちょっと伺いますが、千代田ショップ事件とか、あるいは札幌事件というようなものの行政処分はどういう格好で行なっておられますか。
  138. 狩谷亨一

    ○狩谷説明員 行政処分といたしまして、小売店の免許の取り消し、あるいは営業停止その他の措置がございますが、従来の例で申しますと、第一回の事件につきましては、営業停止を十日ないし二週間という場合が多いように思います。
  139. 堀昌雄

    ○堀委員 営業停止が二週間か十日間、あとの十万円以下の罰金の方はどうなっていますか。
  140. 狩谷亨一

    ○狩谷説明員 一行為につきまして一千万円当たり一万円というのが一応通常の場合の例でございます。
  141. 堀昌雄

    ○堀委員 罰金が最高で十万円ですからね。一億も二億ももうけておれば十万円の罰金くらい何でもないですね。そして七日か十日の行政処分による停止なんということは何でもないですよ。そうすると、警察庁が一生懸命和泉産業事件でずいぶんたくさんの人が走り回って事件にしてみたところで、七日か十日くらいならやめていたって、何も小売店をやっておるわけではないですからね。またどさっとやればいいのだから問題にならぬ。罰金も問題にならぬ。営業停止も本式にこの法律に基づいて、「公社は、小売人が左の各号の一に該当するときは、小売人の指定を取り消すことができる。」とありながら、指定を取り消すどころか、十日か七日の停止なのでは、どうですかそれで公社の方、あなた方この法律を正確に守っておる感じがしますか。たくさん売ってくれさえしたら、公社は利益さえ上がればこの法律はどうでもいいのだという感じがするのですが、それはどうですか。
  142. 狩谷亨一

    ○狩谷説明員 公社といたしましては、違反事件がありました場合にはやはり厳正に処置して参りたい、かように考えております。
  143. 堀昌雄

    ○堀委員 今の一千万円で一万円の罰金も私は驚くのですけれども、ともかくたばこ専売法第三十四条三項に違反したものは、今後一つその小売人を取り消すということに私はしてもらいたい。そのぐらいでなければ、警察官だってばからしくって一生懸命やれないですよ。そうしてやれば、今後こういうことはなくなるんですよ。そうすれば他の十七万六千の小売人はみな公平だと思うでしょうけれども、一体あなた方はこの十七万六千人の小売人の気持を知っていますか。大口の人間が一部の人と結託をして、そうしてこういう横流しをして、ぼろいもうけをしておるのは大したことがなくて、そうでなく小さな小売人に対しては、いろいろな格好で専売公社はこまかい行政指導や何かをやっておるのではないですか。私いろいろ聞いているんですよ。だからこの際、公社の総裁は、今後このような値引き問題を起こした小売人については小売人免許を取り消すと私は約束してもらいたいのです。
  144. 阪田泰二

    ○阪田説明員 ただいま販売部長からお答え申し上げた通りでございまして、犯則事件の情状、内容によりまして、軽い処分は十分であると思われる場合もあろうと思いますが、情状の重いものにつきましては、指定の取り消しをするという処分も当然いたしたいと思っております。
  145. 堀昌雄

    ○堀委員 おっしゃるように情状の問題はもちろんありますから、その点はおまかせをいたしますけれども、明らかにたばこ専売法に違反して、そうして特に大口で、そういう格好の処理をしておるものについては、ただいまの公社の総裁の御発言通りの処理をしていただきたい、こういうふうに私は思います。  その次に保安局長に伺いますけれども、あなたの方では、今、和泉産業事件というのは、公社でないたばこをつくっているのではないかといううわさもあった、こういうことのようですが、全国にある非常に売れ行きの大きいそれらのものについては、今度の和泉産業事件の実情にかんがみて、一つ調査を進められる意思があるかないか。異常な部分だけでいいですよ。正当だとあなた方が思われる部分についてはいいです。しかし、こうやって今の千代田ショップ事件も、やはりパチンコ屋の問題との関連で出てきているわけですね。和泉産業もそうだったわけですね。だから東京、大阪、名古屋等、大都市において異常な売れ行きを持っておる小売人については、一ぺん調査をしてみる必要があるのではないか。この二例から見ましてそういうふうに私、取り締まり当局としてはお考えいただくのが適当ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  146. 野田章

    ○野田政府委員 警察といたしましては、主としてパチンコの景品としてたばこを大量に仕入れているという場合に、たまたまそういう値引きによるいわゆる専売法違反の販売が行なわれているというような実情が捜査過程から出てくるわけでございまして、そういう面でたばこを景品として大量に売っているパチンコ業者等の風俗営業法違反の疑いのあるというような犯罪容疑に関連してこの問題に入っていくのが建前であろうと思うのです。そういう面から、一般的に売り上げの多い小売店を調査という点で全国的にやることが、はたして犯罪捜査という面でどう結びつくかということが問題の点になるかとも思いますけれども、主としてパチンコ業者等の大量にたばこを買い入れているというようなもので、単に小売店から仕入れるだけでなしに、いわゆる景品買いと称する者からたばこを仕入れているというような面があるものについて、風俗営業法なり、そういう違反の関係から捜査に入っていきたいというふうには考えております。
  147. 堀昌雄

    ○堀委員 この問題は非常に多角的で、しかし警察庁としても、これだけ次々にそういう事実がある以上、あなた方はたばこ専売法違反が野放しになっていていいとは思っておられないでしょう。専売公社の方の話を聞いていると、何だか売れる方に比重がかかっておって、売れれば目をつぶろうかといわんばかりの感じがするのです。あなた方のところはそういうことではないわけです。取り締まり官庁ですから、やはり法律を順守すべきことを順守させる。ほかの要素はないわけです。その点は、二例もこういうことがあったのに、次に何か偶然に出てこなければだめだということになると、私に言わせますと、何か運の悪かった者だけが貧乏くじを引いたような格好になる。そういうことは、専売法違反というものの性格からいってやるべきではない。やはり悪いことをしている者は、みな一律に罰せられるべきだということが、国民のためにも必要だし、これは十七万六千人のたばこ小売人の公平を守るためにも、私は強く保安局長に要望いたしますから、その点、今のいろいろな問題を含めて一つ調査をお願いしたいと思います。  その次に、今度は公社にお伺いをいたしますが、こういう事例があるのです。今、大口にそういうパチンコ店にたばこがいっているために、パチンコ屋にはホープやハイライトがたくさん、ずっと一年じゅうある、ところがそのすぐそばにあるたばこ小売店には、一週間のうち四日もすればホープ、ハイライトがなくなる。そうすると、お客さんが、パチンコ屋に売っていてあなたのところになぜないんですか、とみな言うと言うのです。都会地で現在しばしば起きている実情なんです。これはどうですか。このハイライト、ホープのこういう取り扱いをあなた方公社では一体どう考えておるのですか。
  148. 狩谷亨一

    ○狩谷説明員 お答えいたします。ただいま堀先生からお話しのような事態の指摘をかつて受けたこともございます。公社としましては、ハイライトあるいはホープ等の需給状況を見まして、必要に応じて、やや不足がちの場合におきましては小売店に最優先に回すという考えを持って指導いたしております。
  149. 堀昌雄

    ○堀委員 小売店に最優先で回しているのにパチンコ屋の方に——小売店というのは、パチンコ屋へおろしているのも小売店ですからね。だからどれもこれも最優先なら、最優先という言葉は要らないわけです。だから小売店になくて、パチンコ屋にあるということは、私は重大な問題だと思う。国会の中のたばこ屋だって、ホープやハイライトはしょっちゅう切れるのだから、ましてや町のたばこ屋は、私が聞いている範囲では、東京都内では、大体一週間に三日目か四日目には切れる。二千個ほしいのだけれども千個から八百個しかどうしてももらえない、今そういう実情ですよ。御存じでしょうね。
  150. 狩谷亨一

    ○狩谷説明員 ホープ、ハイライトの需給状況が、供給が十分参りませんという点は、大へん申しわけなく思っております。ただいまのように、まだ現状では需要に対して十分追いついていないということは十分承知いたしております。先ほども私の言葉が足りませんで、恐縮でございましたが、私がお答えしました趣旨は、店売りを主体にしている小売店に優先的に供給するような心がまたを持っているということを申し上げたのでございます。
  151. 堀昌雄

    ○堀委員 心がまえはけっこうですが、実際にそうならなければしようがないのですよ。ですから、きょうここでのそういうお答えは、心がまえではなくて、実行に移します、そこのパチンコ屋にホープ、ハイライトがあって、その前のたばこ屋にないようなことは一つないようにしてもらいたい。それは全体の供給量に関係があるでしょうから、全部に常に切れないようにしろと言っているのじゃないのですよ。また、先にパチンコ屋の方が切れてその次に小売店が切れるというならば話はわかる。パチンコ屋には年じゅうあって、小売店にはしょっちゅう切れている。これはとんでもないじゃないですか。これだけはきちんと一つやってもらいたいと思うのですが、きちんとやってくれますか。
  152. 狩谷亨一

    ○狩谷説明員 極力御趣旨に沿うように努力いたしたいと思います。
  153. 堀昌雄

    ○堀委員 極力御趣旨に沿うようにというのは、だいぶ苦しい答弁のようですが、私またしばらくして調べてみますから……。第一、私がこれを取り上げてから、私のところにはたばこ小売人の皆さんが、これまで積もりに積もったあれを各地からどんどん寄せられておるわけです。問題は幾らでも出てきた。私はこれを契機に当分たばこの問題を徹底的に一つずつやらしていただくつもりでおります。   〔吉田(重)委員長代理退席、委員長   着席〕 しかし、私が今申しているのは、常識で判断してちっとも無理なことを言っていないと思うのです。さっきの政務次官じゃないけれども、私、常識の範囲のことしか大体大蔵委員会では言わないのですよ。だから、これはあなた方十分考えてもらわなければならない。  それについて、もう一つ、私もまだそんなことがあるのかなと買ったのは、年度の終わりにくると、三月になると、年によっては、大いに買ってくれといって小売屋にたばこをどんどん公社が売るというのですよ。それで家じゅうにたばこが一ぱいになって、火事でも出たらどうしようかと思うほど、いるところがないほどに家じゅう一ぱい積み上がった年もあるし、今度は逆に、売り過ぎるから三月は少し売り控えをして下さいといっててんでもらえないときがある。どうも見ると、それは専売公社の予算の執行の関係でバランスをとるために操作をされておると私は理解をしたのですよ。専売公社の予算をこの次またゆっくりやりますから、納付金関係を調べてみますけれども、これもまだずさんで、だいぶひどいからゆっくりやりますが、そういうことはちょっと行き過ぎではないか。ともかくも、小売人が三月末に売れないほどのものを買わされたり、それからそうではなくて、今度はできるだけ売るなと言われたりされるということ、これが現実にあるのですが、あなた方幹部は承知されておりますか。
  154. 狩谷亨一

    ○狩谷説明員 ただいま御指摘がありましたように、年度末になりまして公社として売り惜しみ、あるいはたくさん小売店に押しつけるというような販売方法につきまして、過去においては多少さような問題もあるいはあったかと存じますけれども、現在私どもの販売のやり方といたしましては、さような年度末に格別の操作をするということはやらないという方針でございます。その点は地方にも十分徹底してあるつもりでございます。ただ、私どもとしましては、小売店の手持ちの数量は、配給場所、配給回数によりましていろいろ違っておりますが、その配給のつど、参りました場合の小売店の手持ちの数量については、十分注意いたしております。公社に在庫があるにもかかわらず特定の銘柄が欠ける、それも全体的に見て需給が非常に逼迫している銘柄ならば別でございますが、さような銘柄ではなくて小売店にも在庫がないという状態は、消費者に対する関係から申しましても適切でないと考えます。従って、小売店が適正な在庫を持つようにという指導はいたしたことがございますが、特に公社内の予算その他に関連いたしましてそういうことはやっておりませんということをお答え申し上げます。
  155. 堀昌雄

    ○堀委員 最近のことではないかもしれませんからいいのですが、それは当然やめてもらいたい。そんなばかなことはあるはずがないですからね。だから今後そういう例があったら、おそらく私のところにわかると思います。それでまたこういうことをここでやるようになるから、そういうことはやらないようにして下さい。  もう一つ、さっきのホープとハイライトに関してですが、これの供給能力は一体今後どうなるのでしょうか。地方ではホープ、ハイライトはほとんど手に入らないところが多い。今大都市だけ出しているのじゃないかと思うのですが、来年度において、皆さんの方はたばこの売り上げを伸ばしたいという時期でしょうから、よく売れるものを十分に供給するようにしたらどうかと思うのですが、これは見通しはどうなっていますか。
  156. 狩谷亨一

    ○狩谷説明員 フィルターのたばこにつきましては、来年度はさらに増産する計画を持っている次第でございます。ただいまの現状では、全国的に見まして——まあいつを起点にするかでございますが、本年度全体を通じましてまだ非常に不足している。全体的に見まして六割程度は不足しているのじゃなかろうかというような推算をいたしておりますので、本年の供給量に対して六割、さらに七割程度の供給増を見込んだ販売計画を立てまして、来年は消費者に御不便をかけないようにやって参りたい、かように考えております。
  157. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、来年度中には大体行き渡るという見通しになりますか。
  158. 狩谷亨一

    ○狩谷説明員 なるべく早期に需給関係の改善をはかりたいと考えております。私どもの見通しとしましては、七月ごろまでにはかなり供給が緩和されてくるのじゃないかというように見ております。
  159. 堀昌雄

    ○堀委員 たばこの関係につきましては、この間私もう一つの今度の歩引き改定の問題を出しているわけですが、さっきのように四分も引く、五分も引くということでも成り立っておるという事実が一方に出ておるときに、八分にするというようなことになると、ますますまた値引きがふえてくるのじゃないかという感じがしますが、六分のときに四分、五分引いている事実がある。その点、公社の総裁はどうお考えになりますか。
  160. 阪田泰二

    ○阪田説明員 その点につきましては、この前予算の分科会におきましてお答え申し上げた通りでございまして、昨年いろいろと売り上げ階層別の小売業者の収支状況その他を考えまして、御承知のような売り上げの非常に大きいものにつきましては歩率を低くする、反面小さいものは高くするというような改定をいたして一年やったわけでありますが、それに対しまして、それをきめました当時から、そういうことが適当かどうかということについて、いろいろと各方面に御意見もあったわけでありますが、私どもは一応そういうやり方がいいと思ってやりたわけであります。その後、最近のたばこの売れ行きの状況でありますが、それが予期したほど伸びない。それにはいろいろ原因があると思いますが、そういったような面から考えまして、小売業者の方にも販売についてもう少し意欲を持っていただく必要があるのじゃないかということは考えられるわけですが、それにつきまして昨年の歩率の改定が、たばこをよけい売れば売るほど歩率が低くなるというような形になっているのは建前として非常におかしいじゃないかというような御意見がだいぶ強くあったわけであります。そういったような面も考慮いたしまして、来年度予算の積算において一応予定しておるわけでありますが、来年度は高額売上者の歩率を一般並みに八分に戻す、もと通りに戻す、こういうことで一応予定いたしているわけでございます。
  161. 堀昌雄

    ○堀委員 たばこの売れ行きが毎年ずんずんふえるということは、やはり一つは個人消費が大きくなるというような点や、いろいろあると思うのです。私いろいろ矛盾があると思うのは、貯蓄しなさい、貯蓄しなさいと政府は一生懸命言っているわけですね。貯蓄しなさいということになれば、金を使わなくする以外に手はない。そうすると、たばこでもやめようかということになって、専売公社は収入が減る。たばこはのみなさい、酒も飲みなさい、それから一つ貯金もしなさい。飯の量でも減らさなければしようがないということになるのではないかと思うのです一どうも政府は少し得手勝手過ぎるところがあるのではないかという感じがするわけです。だから私は、専売公社がたばこの売り上げが非常に減ったらそれが非常に困る。それは何か問題があって、非常にたばこの質が悪くなったんだとか、なんだとかいうなら別ですが、専売公社が普通の正当の努力をしておるのに減るということを、それは専売公社のせいだからといって今のようなことをやったら売り上げがふえるというわけじゃないと思うのです。だからその点は、私はもうちょっと高い政治的な立場から考えていただかないと、売り上げをふやすためには今のような、この間申し上げたように、約百軒ほどに四億円やることがほんとうに売り上げをふやすことになるのか。これを六%に据え置いて、ほかの人たちに配ってあげた方が売り上げをふやすことになるか、これも私は常識の問題としてなら議論の余地はないと思います。ですからどうか一つそういう意味で、このたばこの問題は、まだきょうは結論を出すつもりはないのです。大体問題点を少しずつ明らかにしていって、最終的にはこれは政治的な処理ということになるでしょうが、委員会一つ問題の所在だけは明らかにしておきたいということで論議をしておるわけです。一つそういう点を含めて、常識的にだれもが納得のいく処理、それは今まで申し上げたように、まず国税庁はそういうたばこ専売法違反の事実を知ったときは専売公社に通知をするというこれが第一点。第二点は、警察庁は、疑わしいものについては捜査をしてもらいたい。第三点は、たばこ専売法違反を行なった小売人で、特に大口の小売人で歩引きしたものについて、その事実がわかったときには、小売人免許を取り消すということ。そうして第四点は、今申し上げたように、そういうことによってたばこ小売人が公平な取り扱いをすべてが受けておるという意識の上に立って販売努力をやろう。自分たちがまともにやっておるのは損だというような意識では、私は販売努力というものは実ってこないと思いますから、そういう前段の三つを処置をしていただけば、全国十七万六千のたばこ小売人は、自分たちも公平な立場だからやりましょうということになって、そうしてその公平というものは、さっき申し上げたように、大口の卸売をやるようなタイプの人と小売人との間に公平な分配がされるということにやはりならなければならないじゃないか、こういうふうに考えるわけでありますから、そういうオーソドックスな方向から一つものを考えていただかないと、常識的でない方向の処理をされても、たばこ専売収入というものはそう思われるようにふえないのではないかというふうに考えられますので、その点を一つ関係部局において十分御検討願いたいと思います。  以上で本日のたばこの質問は終わりまして、警察庁、法務省関係はお帰りいただいてけっこうです。  国税庁にお伺いをいたします。実は先般私ども品川税務署を調査に参りました。たまたま納税相談が行なわれておりますところへ私が参りましたところが、御婦人の方と税務職員とで押し問答がございました。私は何を押し問答しておられるかと思って見ておりますと、要するに、その御婦人はたばこ小売人でございまました。そのたばこ小売人が、私のところの専売公社からの仕入金はこれだけでございます、お菓子の買い入れはこれだけでございます、雑貨の買い入れはこれだけでございますと書いた紙がある。それをもとにして計算をしたら、たばこによる所得がこれだけで、お菓子はこれでこうなるのだという申告をやっておるところにぶつかったわけです。ところがその担当税務職員は、それはだめだから、あなた持って帰ってやり直しなさい、こういうふうに言っておるわけです。持って帰っても私にはこれ以上どうにもできません、きょうわざわざ来たのですから一つお願いします、それはだめなんだから帰りなさい、こういうところへ私がぽっと行った。そこで、一体なぜ帰らなければならないのか、その納税者はちっともわからないわけです。今の申告納税というのは、ここでしょっちゅう論議になりますけれども、申告をした人たちに誤りがあるならば、その誤りをつまびらかにしてあげて、納得をさせるという、納得納税といふことが申告納税の基本じゃないかと私は思っておるわけです。その点、国税庁どうでしょうか。
  162. 泉美之松

    ○泉説明員 お話のように所得税あるいは法人税につきましては、申告納税の制度がとられておるわけでございます。申告納税の建前からいきますれば、納税者がよく納得して納税しなければならぬことは申し上げるまでもないのでございます。ただいま先生が御指摘になりました品川税務署での事件につきましては、納税者の方から申告いたしましたのが仕入れ額を基礎にして荒利益を出しまして、そこから所得の計算をしておったわけでございます。そこで担当者は、仕入れ額を基礎にして荒利益を出すのではなくて、売上高を基礎にして荒利益を出すべきだ、従って、仕入れ額を基礎にして売上高を出し、それから荒利益を出すというやり方をよく教えて、そういう計算をすべきのに、そういう計算になっていないからこれではいけないのだ、計算を仕直していただきたいということをもっと親切に申し上げるべきであったのを、担当者のふなれのせいもありまして、そういうふうな親切な指示が行なわれなかったようでございまして、その点、まことに遺憾に存じております。
  163. 堀昌雄

    ○堀委員 お話のように、今の通りだったわけです。そこで、私は公社にお残りいただいたのは、公社の方に一つお願いがあるからです。ということは、私がそばでずっと見ておりまして、率直に言いますと、その税務職員はたばこの小売の歩率のことをよく知らなかったわけですね。おまけに去年は、さっきお話のあったように、五月の何日かに公示があって歩率改定が行なわれておるわけです。一月から十二月までの所得計算の中に歩率の改定が行なわれているのに、その税務職員は全然知らない。その知らない人がそれをやったのでは、これは第一むずかしいわけですね。そこで、ただ非常に概念的な計算方法だけの処理をしていました。それでずっと見せていただいておったら、結果として出てきたのは、その小売人が、これだけの所得があると思ったのよりは、逆に少ない額が出てきたわけです。持って帰れ、だめだというのより、正確な計算をしたら所得が少なかった、これは私もちょっとおそれ入ったのですけれども、これは税務職員その人だけの責任じゃないと思う、それはたばこの問題は非常に複雑な点があるから。そこで私は今の資料も見せていただきました。公社からいっている紙も見せていただきましたが、一つこういうふうに公社で考えてもらった方がいいんじゃないか、それは小売人が税務署でああごてごてやられてはかなわぬから、小売人は一体幾らで売ったかという方は、自分でつけていればいいのですけれども、つけてないわけです。そこで皆さんの仕入れ額の方だけはきちんとあるから、それを持っていって処理しているのですが、大体それは在庫の関係で期首在庫と期末在庫がどうなるかという問題はあると思いますけれども、大体これだけ売ったときはその仕入れに基づいた売上額は一体幾らになるという欄をもう一つどこかにつけておいてもらえば、それを計算すると、彼らは売上額と仕入れ額とでその差額が自分の所得だということで、私は税務署に申告するのも処理がしやすいと思う。売上額が全然出てないから、たとえば八分ということなら、仕入れ額を〇・九二で割って売上額を出すということをしなければならぬ。しかし、そこらは、実際上は公社ならわかっていることだから、これこれのたばこということになれば、要するにその店では大体何万円の売上げということでしょうから、そのときにはそれを越えているならこうだというような、何かもう少し公社側としても、あのお出しになっているいろんな伝票の中を工夫をして、小売人が税制上の問題についてもっと簡単な処理ができるように、そうなっていれば税務署の側もそれを見ればもっと説明しやすいと思うのですけれども、その点が一つ欠けているのじゃないかというふうな感じが私はしましたので、その点を特に今後の問題として検討を進めていただきたい。  それからもう一つは、税務署の側ですが、私はあれを見ながら感じたのです。たまたまその職員は最近まで総務課にいて、直税の方にいなかったという点もあったのでしょうが、直税にいる課員であっても、たばこ小売人のこういう問題をきちんとうまくやっているかどうかは、卒直に言いまして私は疑問があると思うのです。だからそういうふうな点については、やはり何か担当者の講習ぐらいをして、少し複雑なそういう計算過程のあるものについては予備知識を与えるということも国税庁としては必要ではないか。  もう一つは、あそこで感じたことで一番私がかちんときたのは、持って帰りなさいという、この態度です。小売人がわざわざ歩いてきているのに、だめだから帰りなさいというなら、何のために納税相談をやっているのか、私は全然わからないと思うのです。そういうことでなくて、その人に多少時間がかかっても、やはり事情をちゃんと説明をして納得をさせて処理するという、これだけははっきり原則を確立してもらわないと、今の申告制度ももとから御破算になるも同じだという感じがしますから——たまたまこのたばこの問題で、片や大口の脱税の問題は今のように黙っていて通報はされないし、小さい、ともかく十五、六万しか所得のないような納税人の方は帰りなさいというようなことになったのでは、まさに何ともいえない感じが私はいたしましたので、私は済んだことの責任をどうこう言っているのじゃないのですから、一つその点は前向きに、今後はそういうことのないように、特に公社の方に対しても、そういう、たばこ小売人が納税をする場合に便利な方法一つ検討いただきたい。また歩率の改定があれば起こることです、年度のまん中で起こるのです。今九分ですが、今度は下の方が九分二厘になりますが、おまけに公社の計算方法というものは債み上げ方式になっているから、その点は非常に複雑だと思うのです。だからそこらは一つ十分御検討いただいて、小売人の立場に立って一つ研究していただきたいということを申し添えて、たばこ関係は終わります。
  164. 狩谷亨一

    ○狩谷説明員 ただいま御指摘がありました伝票の件につきまして簡単にお答え申し上げます。  実は、先生お話のように、公社と小売人との間の売り渡し価格を基準にいたしまして従来伝票をつくっておりました。昨年の四月以降その伝票制度を改定いたしまして、定価を基本にして表示することにいたしました。たとえば割引歩合が八分だといたしますと、定価に九割二分をかけて売り渡し価格を出す、そういう方式に実は改めたわけでございます。御承知のように昨年の四月以降でございますから、昨年は二つのあれがまざりまして、多分そういう意味で非常に複雑なことであったかと思います。今後はできるだけ御趣旨に沿うような方向で検討を進めて参りたいと思います。
  165. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは公社はけっこうです。  次は国税庁にお伺いをいたしますが、最近作家の皆さん、評論家あるいは学者の皆さんが、著述に伴うところの原稿料の収入の税の査定について、本年は大へんきびしくなってきたということが私どもの身に入りますので、昨年までの取り扱いの実情と本年からの取扱いの実情についてお伺いをしたいと思います。
  166. 泉美之松

    ○泉説明員 いわゆる作家あるいは評論家などの方々、あるいはもう少しかたい方面の著書をお出しになる大学の先生方の場合の原稿料あるいは印税の収入に対する課税、これはなかなかむずかしい問題でございまして、資料的には印税あるいは原稿料につきましては源泉徴収をいたしますから、その収入金額の方は比較的わかりやすいわけでございます。ところがそういう小説を書くなり、あるいは評論を書く場合に、どれだけの必要経費がかかったかということ、この必要経費の額を見出すことがなかなかむずかしいわけでございます。そこで、私どもといたしましては、非常に大きな収入金額の場合は別といたしまして、普通の場合には、そうした収入金額が幾らあれば所得は大体幾らぐらいであるという一つの標準率的な考えをもちまして、その方々の所得の計算を出すことになっておるわけでございます。先ほど、お話によりますと、本年は前年に比べてえらくきびしくなったというようなお話があったということでございますが、この点につきましては所得の低いと申しますか、収入金額の少ない方につきましては、むしろ今申し上げました標準率を下げたのでございます。所得のと申しますか、収入金額の多い部面につきましては、その実態を見ますとどうもそれだけ経費がかかっていないようでありますので、多少標準率を上げた。しかし収入金額の非常に多い人についてはそうした標準率的な考えでなしに、実際の調査をしようということで、それぞれの方々に、あなたの昨年中の収入の金額とそれに要した必要経費の額を書き出していただきたいということを申し上げたわけです。ところが、御承知のように文士の方々は、それぞれそういうことにははなはだうとい方が多うございますので、支出金額を一々書いて出せというのはひどいじゃないかというようなお話もございまして、そうした点が何か昨年に比べまして非常にきつい印象を与えているように考えられておるのではないかと思うのでございます。私どもとしましては、別段それほどきつく申し上げるということではないのでございまして、ただ適正な課税をやっていく上において、収入の多い方につきましては必ずしも標準率的な考え方でいかない場合がありますので、できますれば経費の額を判明さしていただきたい、かような気持で申しておるだけでございます。
  167. 堀昌雄

    ○堀委員 今のお話で結局三つ変わった点があると思う。一つは、今おっしゃったところでは収入が比較的多くない部分については標準率を少し下げた。それから少し多い部分については少し上がった。それから実態調査に基づく支出計算を一番収入の多い人についてやりたい、そういうことだと思うのですが、今の下と上の標準率の切れ目というのは大体収入でどのぐらいの目安になっていますか。
  168. 泉美之松

    ○泉説明員 この点につきましては、文芸家協会というのがございまして、文芸家協会といわゆる文士の方の所得の実態はどういうものであるかというようなことをいろいろ御相談申し上げておるわけでございます。文芸家協会の方のお話は、年額、原稿料なりあるいは印税の収入が百万円以下の人は標準率が低いのがあたりまえだ、それから百万円から五百万円までと、五百万円超とでは相当違う、三段階ぐらいの考え方がいいのじゃないか、それからまた収入が一千万をこえるような人はこれまただいぶ違う、こういうようなお話がございますので、そうしたことを基礎といたしまして考えておるわけでございます。
  169. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、ちょっと今のお話でよくわからなくなってきたのは、百万円以下は標準率は少し下がったんでしょう、さっきのお話でいけば。それから五百万円以上は標準率が少し上がってきたんじゃないかと思いますね。そうすると、その百万円から五百万円まではこれまで通り、こういうことですか。
  170. 泉美之松

    ○泉説明員 お話の通りでございます。
  171. 堀昌雄

    ○堀委員 それならばだいぶよくわかりました。  そこでその点はあとで詳しく伺うとして、この問題の中にはまだもうちょと問題がありますのは、著作等によってだけ収入のある人と、他に固定の収人があって、それ以外に著作等の収入がある人、こういう問題が出てくると私は思う。その一つは大学の先生なんか非常に顕著な例ですが、大学の教授としての収入は勤労所得としてある。その上にプラスされる場合ですね。そういう場合にも今のこういうものの考え方というのは、その勤労所得以外で百万円までというふうに同じように考えられて処理がされるのかどうか、そこをちょっと伺いたい。
  172. 泉美之松

    ○泉説明員 私が今申し上げましたのは、いわゆる作家あるいは評論家の方の場合でございまして、大学の教授の著わされる本、あるいは随筆のような場合がありますが、随筆でございますと今の場合とそう変わりはないかと思いますけれども、大学の教授の著わされる本の中には必要経費というものが非常にかかるような本もございますし、今申し上げました標準で考えるわけには参らない場合が多うございます。結局それはその本の内容とその売れ行きというようなことによって動くわけでございます。  それからまた先ほど申上げましたのは、原稿料あるいは書きおろしの印税の場合でございまして、その本が再版になる場合、あるいはある新聞に載せたあとそれが本になったというような場合、こういった場合はそれぞれ違うわけでございますので、それぞれに応じた取り扱いをすることになっております。
  173. 堀昌雄

    ○堀委員 私もおっしゃる通りだと思うのですが、実は私の非常に心やすい大学教授が、この問題について税務署へ行くと、本を買ったと言いますと、それは先生財産になったじゃないですか、だからそれは経費と認められませんと、こう言うと言うのです。それはなるほど仕事をするために本を買う、その本はなるほどすぐ古本屋に売りませんからそこのうちにあるけれども、その買った購入価格全部が残存価格で財産になっているのであるから経費には見ないなんというのは、私はちょっとさっきのたばこ小売人に対する税務職員と同じような理解の問題があるのじゃないかと思います。やはりそれは、私はさっきもちょっと直税部長と話していたのですが、残存価格というのは古本屋に売ったときの価格は残存価格として残るかもしれないけれども、大体において——私も医者ですけれども、自分が今新しい病気をみてわからない、そこで本を買う。そうするとそれはその病気についてだけ買うのであって、始終それが年から年じゅう役に立つような本というものはないので、そういう格好のものが多いわけです。そうするとそれは実際はそのことでほぼもう経費に見てもらわないと成り立たないようなものの方が割に多いわけです。今おっしゃるように、あなた、ここでは、確かに非常に経費がたくさんかかると思うとおっしゃっているけれども、末端にいくとどうも実施上は必ずしもそういうふうになっていない点が相当にあるようです。  そこで一つ、これもさっきの問題に関連してお願いをいたしたいのですけれども、著作関係の収入——今おっしゃるように、新聞に連載したときのものと、それが再版されて本になって出るときと、やはりいろいろ事情は違うでしょうから、そういう問題についてあなた方の方での標準率に何らかの変化があることはいいと思いますけれども、問題は、やはり経費とは一体何ぞやというところ、この点が非常にむずかしい問題としてあると思うのです。そして非常に厳密に所得税法に基づいてきちきちとやってしまうと、そういう人たちにしてみると、ちょっときびし過ぎるという感じが起きてくる余地があるのじゃないかというふうに感じますので、そこらを含めて、こういう納税の受付をする人は、各税務署で一人くらい担当者をきめてやはり事前に——ことしはもう間に合いませんが、来年からは事前に十分そういう人たちを教育してもらいたい。私は特殊的なものについて国税庁としての指導があってもいいのじゃないかというふうに考えますので、内容の実情はわかりましたから、あとこまかい問題等は後の問題にいたしまして、一つことしの納税について、そういう諸君があまり無理のない、納得をして納税するような処理をお願いしておきたいと思います。実は私、そういう問題がかなり強く出てきたものですから、そういう著述をなさる皆さんの方に今連絡を出しておるわけです。税務署で、自分たちは経費だと思っておるのにかかわらず否認をされて、どうも納得のいかないといわれるものがあったら、どうぞ私のところへ御通知をいただきたい、私がその問題を皆さんの方に紹介をして、それはこういうことであったということを、私が納得をするような説明もいただくようにして、そうして、それはこうだったのですということをお伝えするようにしましょう、だから、そういう点で疑問のある方は一つ御連絡下さいという連絡をしておりますから、そういう面を含めて皆さんの方で遺憾のない処置をお願いいたしておきたいと思います。  以上で私の質問は終わります。
  174. 泉美之松

    ○泉説明員 先ほど大学の先生の場合のお話がございましたが、書籍を購入された場合、これにつきまして、実際の状況におきましては、辞書とかそういった長く使えるものは、もちろん購入したときすぐ経費にすることはできないわけでございますが、そういうふうに長く持つ以外のものにつきましては、大体購入した一年間の経費に見るというくらいの扱いをしているのが実情だと思います。ただ、そうした文士とか大学教授の場合実際の必要経費が幾らということは非常にむずかしい問題でございます。ことに文士の場合、酒を飲みあるいは芸者と遊ぶといふことも、そういう経験がなくしてはそうした小説が書けないということになりますと、それも必要経費だとおっしゃいますし、私どもの方では、そういう小説を書く必要もあったかもわからぬけれども、自分のお楽しみもあったではないかというふうにも見える面がございまして、なかなかむずかしいものでございます。私どもといたしましては、先生の御趣旨を体しまして、従来から文芸家協会の方と連絡をとりまして、お互いの良識でまあこれは経費として認めてほしい、認めましょう、これはどうでしょうか、経費とするには、というようなことで良識ある取り扱いをやって参りたいと思っているのでございます。
  175. 臼井莊一

    臼井委員長 藤井勝志君。
  176. 藤井勝志

    ○藤井委員 先般われわれ大蔵委員は品川の税務署の現場視察をいたしたのでございます。そのときにもいろいろな問題で認識を新たにしたわけでございますが、かねてから当委員会においても問題になっております国税職員の宿舎の問題について、もう現段階において予算がすでに衆議院を通過いたしておりますので、これが予算的な問題よりも、執行の面において当局側の現在いろいろやっております実情について御意見を承りたいと思うのであります。  繰り返して申し上げるまでもないと思いますけれども、先年十一月の二十二日の大蔵委員会において、与野党ともに、特に税務職員のその職務の特殊な点、同時にまた、これが窮乏している点、緊急性の点において国税職員の宿舎は早期に整備充実しなければならぬということがほとんど大多数の意見として、いや、むしろ全員一致の意見として出たわけでございます。その背景のもとに、委員長の名において大蔵大臣に、昭和三十七年十二月十一日付で、第一線税務職員の住宅確保に関する件について理事会の申し合わせが行なわれた。その内容について念のために触れておきますと、第一線税務職員は、その税務の性質上毎年定期的な大異動が行なわれているが、一般住宅事情がよくないためきわめて悪い住宅環境にある。ついては、過般の本委員会の国政調査の結果にもかんがみ、明年度本予算編成に関しては、職員宿舎の建設に特段の措置を講ぜられるよう政府の配慮を申し入れるというのであります。引き続きまして、予算編成の最終段階の時期であります十二月二十四日に、自民党の財政部会において、税務職員の宿舎関係予算について二つの項目を前提とした要求が出されました。昭和三十八年度職員宿舎としては三千三百戸、約二十億円を要求しているが、税務行政の特殊性にかんがみ、びせこれを確保されたい。第二点は、一般の公務員宿舎は、昭和三十八年度は三十数億円程度と思われるので、このワク内で右の国税庁要求を全部充当することが困難な場合には、要求戸数のうち一千二百戸は東京国税局等の職員の配置がえに伴う臨時緊急の分であるので、これを別ワクとして考慮すべきものであるというふうな申し入れをされておることも御承知の通りであります。このような前途に立って、大蔵省予算折衝された管財局長に、その当時のいきさつなり、これが予算としてどのような内容が盛られてきておるかを御説明願いたいと思うのであります。
  177. 白石正雄

    ○白石政府委員 一般に公務員宿舎が行政の能率上きわめて重要であるということにつきましては、私どもかねがね配慮いたしておるところでございまして、宿舎の充実確保につきまして努力いたしておる次第でございます。ただいまいろいろお述べになりましたような事情につきましても私ども承知いたしまして、予算の折衝過程におきましても、また今後におきまする宿舎予算の配分につきましても、十分意を用いて努力してきましたし、今後とも努力いたしたいというように考えておる次第でございます。  昭和三十七年度におきましては、公務員宿舎費に充てまする施設費の予算といたしましては、二十九億九百万円程度であったわけでございまするが、ただいま国会で御審議をお願いいたしておりまする三十八年度予算案におきましては、施設費は三十六億七千五百万円予算として計上になっております。金額といたしましては、相当の増加計上をいたしたものと考えておる次第でございます。  ただいま、大蔵大臣の設置にかかりまする全省庁の宿舎関係費といたしましての対象となりまする職員数は三十八万五千人程度でございまして、これに対しまして三十七年十月一日現在で宿舎を一応設置いたしました戸数は七万四千九十二戸と相なっております。その保有率は一九・二%でございます。一般的に申しまして、まだ相当の不足数があるわけでございまして、これらをなるべく早い時期におきまして充足いたしまして、職務の執行上違憾なからしめたいというふうに努力いたしておる次第でございます。ことに、ただいまるるお述べになりましたように、税務の職員につきましては、非常にその住宅事情が悪いという面もありまするし、かつまた転勤が非常に多い。ことにその行政の執行が権力的な面を伴いまするので、そのような点に関しましても、住宅事情につきましては特段の配慮をいたす必要があるということにつきましても、私どもかねがね考えて配慮してきた次第でありまして、従いまして、ただいま申し上げました三十七年十月一日現在で国税庁関係の住宅の保有割合をながめてみますと、二六・六%を示しておるわけでございまして、この点からもこのような特殊事情につきまして私どもが十分配慮してきた証左だと考える次第でございます。  三十八年度の配分につきましては、目下いろいろな資料を集め、また関係省庁とも連絡をとりながら、予算が成立いたしました暁におきまして、すみやかに配分ができるよう検計中でございまして、まだ配分内容は決定いたしていない次第でございますが、今お述べになりましたような点も十分配慮いたしまして、税務の執行にも違憾なからしむるよう検討いたしたいと考えおる次第でございます。
  178. 藤井勝志

    ○藤井委員 今管財局長から御報告を聞きますと、去年よりは約七億の予算増加に相なっておる、従来においても、税務職員の職務の特殊性と申しましょうか、いろいろな特殊な事情によってこれが充当率も他の省よりは非常によくて二五・六%、こういうような比率に相なっておるというようなお話でございまして、いろいろ御配慮をされておる点も了承するわけでございますけれども、先ほど申し述べましたように、当委員会においても満場一致の申し合わせがあり、党の財政部会においても先ほど申し述べましたような相当多額な申し入れをいたしたわけでございますけれども、これがわずか七億の増という結果に相なりましたわけでございまして、これで少なくとも所管の局長として、公務員宿舎の維持、管理、運営、こういった面においてはたして十分であるかどうか、十分でないとしてもこれでことしは満足しなければならないというふうに引き下がられたのであるかどうか、その点のいきさつは今後のために一応承っておきたいと思います。
  179. 白石正雄

    ○白石政府委員 先ほど申し上げましたように、住宅事情がなお十分でないということは、数字をお示しいたしましてもおわかりの通りでございまして、それにつきましては私どもかねがね努力してきましたし、また今後もなお一そう努力すべきものと考える次第でございます。  三十八年度の予算の三十六億七千五百万円という額につきましては、宿舎の関係のみから考慮いたしますればなお必ずしも十分でないと考える次第でございますけれども、諸般の財政事情全般から考慮いたしまして、三十八年度といたしましては、まあまあこの程度でやむを得なかろうかと考えまして、ただいま御提出の予算案の中にその数字が盛られておる次第でございます。  なお、これらに関連いたしましては、特別に借上費の予算を計上いたしまして、別途、共済組合関係で建築いたしましたその宿舎を借り上げまして、当面の不足に充当するというふうなことも私ども考慮いたしておる次第でございまして、三十八年度におきましては一応この程度で十分努力をいたし、後年度におきましてはなおさらに努力を重ねるというつもりで考えている次第でございます。
  180. 藤井勝志

    ○藤井委員 この問題は今ここで押し問答したところでもう済んだ話でありますし、ただ将来への一つの期待として十分お考えを願いたいという希望を申し述べまして、次の問題に移りたいと思うのであります。  先ほどもちょっと配分の今後の方針について局長もお触れになったようでありますが、管財局の方で世話をされる場合は、国税庁のみならず各省全体があるわけであります。今お話を聞きますと、三十八万五千人、しかもその充当率が現在のところ一九・二%ということで、そういう平均から見れば国税庁関係は非常によろしい、こういうふうなことになるわけでございますけれども、私はここに、冒頭に述べましたように、その職務の特殊性と同時に、現在の宿舎状況の現状から考えて緊急を要する、こういう面において局長の方は御認識をどういうように持っておられるか、一つお聞きしたいと思うのであります。特に職務の性質上転勤が非常にひんぱんである。国税庁の方から出た資料によりますと、大体毎年一万四千人は転勤をするということになっております。その転勤のたびごとに四六%の人たちというものは民間宿舎の借上をしなければならぬ。地方に、あるいはまた中央に転勤をする人たちが宿舎を求めるためにここにいろいろ無理をしなければならぬ。ここで、地元の有力者といいますか、あるいはまたボスといいますか、そういったものとのつながりということでいろいろと非常にジレンマに陥らなければならない、こういうふうな事情もよく耳にいたすわけでございます。同時に、多くの場合、終戦直後、旧軍用地の借用ということで、職員寮というものに相当税務職員の方々も入っております。これはまことに気の毒な老朽した状態に現在置かれておるわけでございますので、こういう点もまた考えなければならない。あるいはまた、最近大都会集中で好むと好まざるとにかかわらず、東京、大阪を中心として、大都市における経済活動というものが非常に膨張してきた。従って、課税物件、課税対象というものが膨大にふえることは、とりもなおさず税務職員の事務分量が急増する、至急に東京であるとか大阪であるとかいう都会地には税務職員の増員をしなければならぬ、先立つものはやはり宿舎である、こういうことがありますので、私は各省との按分もさることながら、国税職員の宿舎の問題ということは特殊扱いされなければならぬ。かるがゆえに先般の党の財政部会においても、先ほど申しましたように別ワクでこれが取り扱いをするようにという強い申し入れをいたしたわけでございまして、この間の事情に対してどのような認識を持たれ、配分においてどのような方針を今後とられようといたすのか、局長の御方針を承って税務行政の円満な遂行をはかりたい、このように考えるわけでございます。
  181. 白石正雄

    ○白石政府委員 今お述べになりましたことは、まことに一つ一つごもっともだと思います。個人的なことを申し上げてはいささか恐縮ではございますが、私も最近まで税務の職場におりましたので、今申し述べられましたような事情につきまして、十分とまではいかないにいたしましてもある程度認識をいたしておるつもりでございまして、他の職場の環境以上に税務の職場につきましては私同情的に考えておる次第でございます。ことに税務の職員の実態と申しますか、宿舎の現状と申しますか、私も名古屋地区におきましてしばらく勤務した経験があるわけでございます。その際に宿舎の現状も見て回ったのでございますが、そのときに非常に老朽いたしました狭い宿舎の中に生活しておるというような現状を見まして、税務の仕事の重要性と勘案いたしましてこれは非常に問題である、すみやかにこういった宿舎関係については改善措置を講じなければならぬということを、当時から非常に考えておった次第でございます。従いまして、ただいま管財局といたしまして、これらの予算措置を講ずるにつきまして及ばずながら努力をいたしておる次第でございまして、先ほど申しましたように一応施設予算といたしましては三十六億七千万円程度を計上いたしておるわけでございますが、さらに別途借り上げ費におきまして相当の宿舎の需要を満たすように考慮いたしておりまするし、かつまた建築交換の方式によりまして特別の処置をとろうということで考えておる次第でございます。御承知のように、ことに東京あたりにおきましては相当土地の事情が重要になって参ったのでございますが、中心地におきまして木造家屋で相当の敷地を占めながら、その割合には戸数の少ないというような宿舎の土地が相当あるわけでございます。こういう土地は、中心地であるがゆえに地価も相当値上がりを示しておりますので、こういったものを別途の用途に開放すると同時に、それに見合う土地を他に求めまして、その広い土地において宿舎を立体化いたしまして、それによって戸数の増加と宿舎の改善をはかるということを考えまして、これらの建築交換の予算といたしまして六億円を別途計上いたしておるわけでございます。これは前年までこういったことを考慮しなかった問題でありまして、これによりましても相当程度の宿舎の質的量的な改善ができるのではないかと考えるわけであります。これらあらゆる方面におきまして努力を重ねまして、そうして宿舎の改善をはかろうといたしておるわけでございまして、国税庁の職員の実情につきましては私十分承知いたしておるわけでございまするが、各省庁におきましてもそれぞれ独自の事情があることでございますので、それらの点もあわせ考慮して、全般といたしまして宿舎事情が向上するように、またそれぞれの実態に相応するように配分が適切を期するよう、十分努力いたしたいと考える次第でございます。
  182. 藤井勝志

    ○藤井委員 六億というのは、借り上げ料というか、それは国税庁関係のみですか。
  183. 白石正雄

    ○白石政府委員 これは各省庁を通じたものでございまして、たとえば東京の市街地に相当の宿舎が各省庁によってあるわけでございます。それらの土地を立化体するあるいは他にそれと同価格の土地を求めまして、土地の交換をする、そういたしましてそこに木造の平家建を立体化しました永久構造の宿舎にかえるというような措置をとるわけでございます。従いまして、これは全省庁を通じた問題でございますので、国税庁のみではないわけでございますが、こういったことをあわせ行なうことによりまして、なお間接的に国税庁の宿舎の充実にも資するといったことに努めておる次第でございます。
  184. 藤井勝志

    ○藤井委員 国税庁関係の宿舎、特に窮迫を告げる東京であるとか大阪、こういったところに対してどの程度の分配の方針であるかということの具体的な数字をこの場でお聞きしようとも思いませんが、先ほど私も申し述べ、局長からもお話になりましたような趣旨に沿うて一つ配分を適切妥当にやっていただきたいと思うわけであります。  ところでこれが実施にあたって、いろいろ話を聞きますと、大体一年からそれ以上施行はずれるというのが通り相場になっておる、こういう意外な事実を私は耳にいたしたわけでございますが、一体そのような状態であるかどうか、もしそのような状態であるとすれば、行政能率きわめて非能率であります。予算執行の年度内施行ということも一つの原則であります。緊急を告げるこの宿舎問題に対して、一年以上もずれているのがあたりまえであって、今度昭和三十八年度の予算がきまっても、それを使うのは来年度に回る、こういうばかげた行政のあり方というものは私は猛省を促したい。そういったことがちょっと耳に入っていささか意外に感じておりますから、この点について局長のお考えを承りたい。
  185. 白石正雄

    ○白石政府委員 予算の実行が一年以上もずれるということはないわけでございますが、若干年度の後半に集中をするというような実情は、率直にいってあると思います。これは御指摘のように非常に好ましくないことでございますので、すみやかに年度当初できる限り早目に実施をいたしまして、そうして職員の窮迫している宿舎事情の改善に資するよう努力いたしたいと考えております。従いまして三十八年度につきましては鋭意目下そういった配分の努力を重ねまして、予算が成立いたしました暁におきましては、さっそく実行にとりかかり得るよう目下努力をいたしておる次第でございます。三十八年度から従来よりさらに改善をいたしたいと考えておりますので、御承知願いたいと思います。
  186. 藤井勝志

    ○藤井委員 一つ今のような線に沿われて、予算が通ったら、急ぐ地域についてはすぐ実施する、こういうふうにお運びを願いたい。何となれば、すでに毎年各省の予算要求というものはお手元に繰り返し繰り返し出ておる。しかもこの大蔵省中心の、国税庁中心の話は、同じ世帯の中の話でありますから、横の連絡はすぐつくわけでありますから、この場で私は数字を求めようとは思いませんけれども、すでに配分の計画は当然できておらなければならぬはずだと思うのであります。従ってこれは昭和三十八年度予算通過とともに実施をやっていくべき当然の措置でなければならない。特に年度早期着工ということが予算単価においても割安につくことは常識でありまして、年度末に迫ってくれば結局高くつく。しかも緊急性のあるものが、局長のところの手元の行政事務のやり方次第で、適切にやれるのと、年度末迫ってあっちこっちの要求をこれでもない、あれでもないといってやってじんぜん日がたつのとでは大へんな違いでありますから、今度は一つ、先ほどあなたが言われたように、自分も税務行政の苦い体験もある、苦しい体験もある、そういう体験があるならば、それをとうとい体験として生かしてもらって、緊急に措置のできるように今から準備の万全を期していただきたいというふうに強く要望いたします。  そこでちょっと時間を拝借いたしまして、管財局に関連する問題を一言触れて局長の御所見を承りたいと思うのであります。  現在の政治のあり方、経済政策のあり方は申し上げるまでもなく低物価政策、あまり物価をどんどん上げない、そして安定した経済の成長をはかるということが当然大前提でなければならないと思うのであります。そういった角度から考えて、どうも私の合点のいかない問題が一、二私の身近な問題としてあるわけでございます。すなわち、国有財産の管理ないし処分を担当されておる管財局において、国有地の賃貸料ないしは国有地の払い下げの価格というものはまことに常識を逸したような処置をなされておるというこの事実であります。具体的な事実については私は時間が限られておりますので後刻に譲りたいと思うのでありますけれども、基本の考え方としてもともと物価が上がるのを押えていくというのが大きな国の政治の方針であるという前提を考えますならば、管財局としても当然その前提に立って、賃貸料あるいはまた払い下げの土地の価格というものは現在の時価を押えるように持っていかなければならない、このように一応常識として当然考えるわけでありますけれども管財局長の御見解を承りたい。
  187. 白石正雄

    ○白石政府委員 国有財産の賃貸料あるいは払い下げ価格はいかにあるべきかという問題についてのお尋ねのようでございますが、今さら申すまでもないことでございますが、これはやはり適正な時価によるというのが基本的な考え方になっておるわけでございます。賃貸料につきましては、従前から新規の貸付というのは割と少のうございまして、従来の関係からいろいろ長い間の経緯で貸し付けておるというようなものが大多数でございます。これらは契約当時におきましては相当安い賃貸料であったわけでございますが、その後諸般の物価が一般的に上昇して参りまして、国有地の賃貸料と一般の時価との開きが相当出てきたというような現状がだんだん出てきたわけでございます。現在の賃貸料は、一例をとって申し上げますと、昭和二十六年ごろに実は一応の方針を考えたわけでございますが、その当時の賃貸料と時価との関係をいろいろ資料をとって調査いたしてみますと、大体四%程度になっておったわけであります。従いまして、一つ一つ具体的に取りきめるということは国有財産の管理上なかなか繁雑でございますし、また正鵠も期しがたい、こういうような点から、時価を評定いたしましてそれの四%を賃貸料とするということできめて参ったわけであります。ところがその時価が、実は御承知のように、ことに土地につきまして最近急激な値上がりをしてきた。大体昭和三十年ごろを境といたしまして、土地の価格はそれまでは一般物価の騰勢よりも低かったのでありますが、昭和三十年ごろに戦前価格を基準といたしまして土地の価格と一般物価が大体同じような水準になり、それからは急激に土地の価格の方が上がりまして、最近におきましては、三十年ごろから見ますと六倍くらいになっておるというのが御承知の通りの情勢でございます。従いまして、昭和二十六年ごろの情勢を基礎といたしまして定めました時価に対する賃貸料の率が四%というのが、時価が急激に上がりましたために、賃貸料もその基準でいきますと急激に上がる、こういった情勢を示しまして、これが一部につきまして批判の対象となったような情勢でございます。これにつきましては、一体賃貸料をどのようにきむべきかということにつきましてまたさらに再検討すべき問題であろうということで、実は三十七年度につきましては一応据え置く、従来の率に据え置きまして、土地の価格が上がったから賃貸料を上げることはしないということで一応ストップをしたわけでございます。今後どのようにすべきかということにつきまして、ただいまいろいろの資料を集めまして検討いたしておるという段階でございます。
  188. 藤井勝志

    ○藤井委員 いろいろ関連のお答えがありましたが、私が一番お尋ねしたいという前提の問題である低物価政策ということに対して、当然それに沿わなければならぬ管財局として局長の方針、見解を承りたい。やはり低物価政策の一番基底をなす重要な要素は地価の抑制対策でなければならぬ。その土地を持っておる、国有財産管理処分に直接携わっておられる管財局というもののこれが払い下げ価格、あるいはまたこれが賃貸料、貸付料はそういった土地価格暴騰の抑制対策として基本の柱になるべき問題である。こういうことについてそういう線でわれわれは考えていくべきだ、こう思う。局長はどういう考えであるか、これをお尋ねしたい。
  189. 白石正雄

    ○白石政府委員 最近におきまする土地の異常な上昇が、ことに住宅地を求めますところの一般市民に対しまして非常な脅威になっておるということは御承知の通りでございます。住宅地のこういった価格の上昇に対しまして対処するためには、それぞれの所管省におきまして住宅政策として考慮せられておることは、これまた御承知の通りでございます。管財局といたしましてもこれらの住宅政策に寄与いたしまして、市民に対しまして住宅地を提供する。要するに住宅地の価格の上昇は需要に対しまして供給が追いつかないというところに基本的な問題があるわけでございまするので、そのような供給をいかにしてふやすかということがその解決の方途ではないかと考えるわけでございます。かような意味合いにおきまして、国有地で住宅適地がありますれば、これをできる限り住宅用に提供いたしまして、そうして供給をふやし、あわせて土地価格の上昇の抑制に役立てるように寄与いたしたい、かように考えておる次第でございまして、そのような意味におきまして、私どもは国有地の相当部分を住宅公団等に出資したり、あるいは譲渡したりいたしまして、住宅政策の一端に寄与するように考えておる次第でございます。価格を低物価政策に資するようにというお話でございまするが、要するに、価格はただいま申し上げましたような需要と供給の見地からきまるわけでございますので、そういった意味におきまして、私どもといたしましてもできる限りその面においてその政策に沿うよう努力いたしておる次第でございます。
  190. 藤井勝志

    ○藤井委員 時間がもう急がなければなりませんので、きょうはこの問題については私はこれで質問を打ち切りたいと思うのでございますが、一応私は他の時期にこの問題を保留するといたしまして、一つ調査を依頼をして時間を切り上げたいと思うのでございます。  今いろいろ御答弁がありましたけれども、肝心な点についてのお答えがなかったわけでありまして、これはおそらく決して反対ではないというふうに理解をいたします。それで全国をいろいろ調べるというわけには参りませんでしょうから、私は一つ岡山県の水島地区、これが最近倉敷の市議会においても大へん問題になりました。去る三月八日、市と広島の財務局との契約はあまりにも不当であるというので専決処分をした市長の提案を議会が否決する、こういう事情に最近監面をいたしております。これは倉敷市が借用いたしております交通局の水島地区内の用地であります。そのほか個人のこれが関連する問題においてもいろいろな問題が現在くすぶっておりまして、ちょうど水島地区は当時広島財務局の水島分室、これが三十四年から五年にかけて汚職事件があったわけでございます。この汚職事件が関連をして、一時事務の処理が停滞をしてしまいまして、それからすでに結論が出ている問題が、管財局側ないしは財務局側の事情によって遷延されたものが、今度は、今局長が言われたような適正な時価という言葉のもとに大へん不合理な取り扱いを受けなければならぬ、こういう事情がございます。個々の点について私も二、三資料を持っておりますけれども、きょうはそれを省略いたしまして、一つあちらの状態がどうなっているか、実態を一つ調べていただいて、私は管財局の行政のあり方がまことに非能率的であり、まことに不親切な仕方になっておる。これを一つ前提において、いろいろ物を申したいことがありましたけれども、時間の関係で切り上げますので、全部ということには参りませんでしょうから、一つ水島に限って早急に調査をしていただきまして、いずれまたの機会にお話をいたしたいと思います。  以上で終わります。
  191. 白石正雄

    ○白石政府委員 お尋ねの点につきましては、至急調査をいたしたいと思います。
  192. 臼井莊一

    臼井委員長 春日一幸君。
  193. 春日一幸

    ○春日委員 私は、昨今、中小企業者に対しまする租税負担が著しく増大の傾向にあることにかんがみまして、当面いたしまする重要なる諸点について質問を行ないたいと存じます。  その前に、まず木村国税庁長官の心境についてただしたいことがございます。と申しますのは、私の承知いたしておりまする範囲内では、長官はその徴税行政に関する運営、管理並びに必要なるその措置について、適切でないという理由のもとに、社会党の諸君からいわば忌避、ボイコットされておられるようでございます。さればこそ本日の質問でも、特に泉次長を相手として質疑がなされております。このことは重大なことでなければなりません。また自民党の諸君も、二十数名の委員のうちわずか二、三名の諸君しか出席になっていないということは、あるいは社会党の方針に同調されておるのかもしれないと思うのであります。由来徴税行政につきましては、私どもここ十数年の間本委員会にあづかっておりますが、平田君のときから渡辺君のときから、ずっと国民の財産権に関します重大なる行政案件といたしまして、長官に絶えず長い時間きわめてしばしば本委員会に出席を求めて、徴税行政のあり方について、深刻なる、適時適切なる審議がなされました。それが本日までの大蔵委員会における慣例であります。しかるところ、長官の措置が適切でないというゆえをもちまして、国税庁を対象といたします徴税行政に対する審議というものがきわめてまれにしか行なわれていないということは、これはわが国の重大なる徴税行政の運営の上において支障まことに甚大なるものがあろうと存ずるのでございます。従いまして、このことは当然国民の利益を確保する立場におきまして、長官においてみずから猛省があって、円満なる審議がはかり得るようにみずから処置されてしかるべきであると思うが、この際長官の心境をまずもってお伺いをいたしたいと存じます。
  194. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 ただいま仰せになりましたように、できるだけ私に出席をさせていただいて、この委員会の場でわれわれの行なっておる税務行政についての御批判なり御叱正をいただくことを私たちは期待をいたし、また望んでいるわけでございます。ただ先ほど仰せになりましたような、前の国会におきます税務署に対する議員の一部の方々の調査に関連いたしまして、私に出席を求められることが非常に少なくなりまして、その点ははなはだ遺憾に存じております。できるだけお呼び出しがあればいろいろな徴税の面につきまして御批判をいただきたいということは私の本心からの願いでございます。
  195. 春日一幸

    ○春日委員 私は木村長官が政府の信頼があってその重き責任をになわれておるのでありますから、その人格においても識見においても相当の御人物であられようと、これに敬意を表するのにやぶさかではありませんが、少くとも議会政治は政党政治、その一政党がボイコットせざるを得ないということは、このこと自体まことに重大でございます。そういうような問題が起きて参りますならば、みずから進んでその誤解を解くとかあるいはその問題点を解きほぐすとか、その責任の重さを御自覚になるならば、当然それだけのみずからの進んでの行動があってしかるべきであると思うのであります。お呼び出しがないから出ていかない、あるいは次長が呼ばれておるから私は庁に座してこれをながめるとか、かくのごときはみずからの職責の何たるかをわきまえざるもはなはだしいと言わざるを得ないのであります。すべからく、この問題についても与野党の理事問においても一、二取り扱われた経過等もありますが、そういうような理事会の取り扱いに待つことも一つ方法ではありましょうけれども、当事者として、しかもそれが国税庁長官たるのその職責にかんがみて、みずから進んでその問題解決のために善処されることは欠くべからざることであると思いますがゆえに、本日この機会を契機とされまして、何らかの行動を起こされますことを強く期待をいたすものであります。やられればよし。やられなければ、私もまた私自体としての態度を表明せざるを得ないと思うのであります。  そこで私は中小企業に対しまする最近の租税が著しくその負担を増大せしめている事柄につきまして、資料に基づいてお伺いをいたしたいと思うのであります。ここにここ数年間におきまするそれらの足取りを見てみますと、昭和三十四年度においては納税人員が十五万人、これが三十五年度には九十六万四千人、越えて三十六年度が七十八万五千人、三十七年度が八十五万九千人、本年度においてはこれが百四万五千人と、納税人員は著しく増大をいたしておるのでございます。このことはそれぞれの所得増と見るべきか、あるいは徴税強化と見るべきか、これはいろいろとその原因があるではありましょうけれども、とにかく営業所得税の納税人員がふえておるということは重視しなければならぬと存ずるのでございます。それぞれ減税の方向をたどっておりますのに、実質的には税額もふえ、またその対象人員もふえておるういうこと。それからもう一つ重視しなければなりませんことは、営業所得の対前年増加割合、それから名目経済成長率との対照におきましてこれが非常にきびしくなりつつあるということでございます。すなわち昭和三十四年度においては名目経済成長率が二一%であった。このとき営業所得の対前年度増加割合は五・六%、三十五年度は二八・六%に対しまして八・六%、三十六年度は一四・四%に対しまして九・六%、昨三十七年度は名目経済成長率が六・五%であるのに対しまして、前年度増加割合が八・九%、本年度予定されておりますものは、八・一%の成長率を見込んで、これに対する増加割合は一〇%、すなわち重くとろう、よけいにとろう、こういうもくろみがここに立てられておるのでございます。このことは苛斂誅求にわたるおそれはないか、どういうわけでこの率をかくのごとくに重く見ていかれようとしておるのであるか、これを一つ国民の納得できますように御説明願いたい。
  196. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 国税庁といたしましては、重くとろうというような意図で税法の執行をいたしておるわけではございません。われわれといたしましては、終始税法の適正な運営に心がけておる次第でございます。ただ先ほど仰せになりましたように、納税人員の増あるいは営業所得の対前年比増というようなことは、成長経済の過程におきまして一般の納税者の方々の所得が向上し、それによって今まで税法の適用を受けなかった方々がその適用を受けるというような結果から、そういう事態が現われてきておるものと信じております。
  197. 春日一幸

    ○春日委員 それにいたしましても、名目経済成長率に対する営業所得の対前年度増加割合というものは、かくのごとく年々この割合をふやしていくという形になれば、これはそれぞれの対象企業に対して税をそれだけ加えていかなければならぬという結果になって参ると思うのでありますが、この関係はいかがでありますか。
  198. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 名目経済成長率というものと一般の所得の増加による税収の増というものはある程度関連はございますけれども、その数字がそのまま比例的に伸び縮みをするというふうにはわれわれは考えておりません。
  199. 春日一幸

    ○春日委員 私は正確にそのままその率がスライドされていくものとは申しておりません。けれども予算の中でこういうような比率によって見込み収入額を算出されて参りますれば、必要額を満たすという心理作用から、徴税現場においてそれだけの増収をはかる作業に心理的に影響を与えているということは当然のことであろうと思うのでございます。私は、直接そのままの関連ではないけれども、その率というものはある程度実績に根をおろしたものでなければならぬと思う。年々そういうふうに高められていけば、年々それだけのものを加えて捕捉する、こういう形にならざるを得ないと思うのでありますが、いかがでありますか。
  200. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 税収の見積もりをいたします場合には、主税局においてそれぞれ各要素を取り出して理論的な見積もりをいたしますと同時に、国税庁といたしましても、実際の当該年度の状況から見て、順調にいけばこの程度は見積もってていいだろうという見積もりをいたしまして、両者突き合わせの上で税収見積もりを出しておるわけでございます。従って一定の責任額と申しますか、そういうようなものを掲げて、それでわれわれの機関に心理的な影響なり圧迫を及ぼすというようなことは全く事実いたしておりませんし、またそういうことにはなっておりません。ただ最近におきます経済の活況に伴いまして、特に所得税におきましては都会地周辺における譲渡関係の事案が相当多うございまして、この関係所得税の増がかなり顕著に現われてきておるということがいえるかと思います。
  201. 春日一幸

    ○春日委員 そうすると、最近庁の方では見込み税額に対する年度内の収入度合い、この昭和三十六年、七年、八年のパーセンテージをどのように計画されておりますか、これを伺います。
  202. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 国税庁におきましては、予算に対してどれだけの収入割合が各月あったか、年度当初から累計的にどれだけあったかという割合はとっておりますけれども、ただいま仰せになりましたような割合はとっておりません。
  203. 春日一幸

    ○春日委員 収入見込額に対します収入歩合いというものはそれぞれ統計が出されておると思うのでありますが、私ども調査いたしております範囲では、三十六年度においては九二%、三十七年度においては九三%、三十八年度においては九四%と、一%ずつこれも高めて収入歩合いを計上されておると思うのでありますが、そういう事実関係はございませんか。
  204. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 われわれの方では、先ほど申し上げましたように、収入見込額に対して年度内収入の見積もりがどうなっておるかという割合は出しておりませんが、おそらく、滞納がだんだん減ってきておる、その意味で九二、九三、九四というふうに、ただいまおっしゃったような数字で収入の見込額が上がってきておる、そういう数字かと思います。
  205. 春日一幸

    ○春日委員 それの滞納が少なくなっておるという問題、これは見ようによってはいろいろあろうと思います。それだけの事業資金の余裕ができて、これを納税に回す場合もあるでありましょうし、あるいは徴税強化によってその収入実績が向上する場合等もあるでございましょうが、事実上、昭和三十七年度のごときは、これは長官も御承知の通り、中小企業においては金融梗塞、きわめて金融難のときでございました。このような年において前年度比一%の年度内収入率が高まっておるということは、これはまさしく権力が強化されて、そうして有無を言わさずその税金を取りしばった、こういう結果の現われではないかと存ずるのでございまして、こういう問題はまた逐次他の面から一つ検討してみたいと思うのでありまするが、そこでこの問題は、中小企業者の営業所得の増差税額について、こういう問題もあわせて一つ検討してみたいと思うのでございます。  御承知の通り現在は申告納税制度でございます。この問題も、七、八年前に、本委員会においてお知らせ制度を特に論じて廃止いたしました。結局租税の民主化、徴税行政の民主化というところから、賦課徴収制度は廃止して、申告納税制度に根本的な税の建前が改革、改善されたわけでございます。しかしながら実際的には、はたして申告納税の効果というものがどの程度守られておるか、問題はここでございます。これによってみますると、税務署所管法人の増差状況は、三十三年度に見ますると、申告税額が六百六十六億九千二百万円、これは一千万円未満の会社であります。これに対する増差税額が二百六十九億六千五百万円、増差割合は四〇%であります。それから三十四年度は一千五百億二千七百万円の申告税額に対し、増差税額が二百八十四億六千四百万円、これは二七%の増差割合です。それから、三十五年度については、千五百七十五億二千六百万円の申告税額に対して、増差税額が三百七十四億ちょうどです。従って、これは二三・八%の増差割合になってくる。こういうことでございます。でありまするから、申告した額と最終的なものとは相当の相違点があると思うのですよ。従って、申告するとはいうものの、あとの手直し、これは更正決定でありまするとか、あるいは特調でありまするとか、査察でありまするとか、こういうことによって、本人の自主的な申告というものが、この中小企業関係法人の場合、非常に変わった形になって現われて参っておる。これが調査課の所管法人、これはその当時は一千万円以上でございまするが、この場合は増差割合が、昭和三十三年度は六・六%、三十四年度は四・三%、三十五年度は四・一%、こういうことになっております。税務署管内のものは一千万円以下でありますから、中小企業法人というものの増差割合は四〇%、二七%、二三%と大きく更正決定がなされておる。あるいはまた最終決定がこういう形の増加を示しておる。大企業においては、ほとんど申告の状態のままこれが処理されておると思われるのでございますが、この関係はいかがでありますか。これについて長官の御見解を伺いたいと思います。
  206. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 申告納税制度でございますので、その基本はあくまでも納税者の申告に基づいて課税をするということが、これはもう当然のことでございます。ただ現在までの情勢を見てみますと、法人につきましては、大体申告に対する更正決定の割合が三八%くらいになっておると思います。また所得税につきましては約三%くらいになっておると思います。従って、この更正決定の割合が年々減ってくるということがこの申告納税制度の発達を裏づけするものであろうと思います。しかしながら、遺憾ながら現在までのところ、この更正決定の割合というものは横ばいの状態でございまして、今後われわれといたしましては、調査一点ばりというようなことでなく、できるだけ申告の指導をいたしまして、納税者の方々が法律を知らないために申告を誤って出されるというようなことのないように、事前の申告指導あるいは所得税については事前の税務相談を活発に行なっていきたいと存じております。
  207. 春日一幸

    ○春日委員 私はここで大いに長官に御判断を願わなければならないことは、なるほど中小企業者には納税知識あるいは税法上の知識が少ないために、いろいろ損金算入とか、法律によって受けることのできるフェーバーを脱漏しておるというような面も相当多いと思うのでありますが、とにかく三十三年、四年、五年の三カ年間のリストによりますと、大規模法人はその増差割合が非常に少ないのですね。とにかく三十五年度については四・一%の大企業に対して二三・八%の中小企業法人、三十四年度については四・三%に対して中小企業は二七・八%、三十三年度のごときは六・六%に対して四〇%増ということになっておりますね。幾ら何でも申告納税制度というものが、片方においては大企業はおおむねその申告の程度でこれが認められるが、中小企業はてんで手直しを受けなければ最終的な決定には至らない。こういうことは調べれば幾らでも中小企業では出てくるのだ、ところが大企業の方は調べても出てこないということは、調べないのか、あるいは調べても税務署ではこういうものは調べようがないのか、いずれかだ。そういうような面についても大きな断層があるような感じがしてなりません。たとえば営業所が全国に何百もあるとか、あるいはそれが立体的な経営でありますとか、多角経営でありますとか、いろいろなことで所得の捕捉ができかねる。中小企業は一目瞭然だから現象的に全部これを捕捉できる、そういうところで、こういう二割三割、四割というような程度までの増差額が出てくる。片方はマンモス的な経営であるから、税務署員では見当がつかぬから、申請した通りこれを承認していく、そういう結果になっておるようなことはあらざるかということですな。長官の御意見はいかがですか。
  208. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 大法人と中小法人とにつきましては、国税庁の調査の方針といたしまして、調査の割合、また一件当たりの調査の日数に傾斜をつけまして、小よりも中、中よりも大というふうに、所得の大きいものに対しては、それなりに深みのある調査をいたしておるわけでございます。ただいま御指摘になりました申告と増産の割合でございますが、大法人におきましては、分母になる申告の額が非常に大きいということ、それに対しまして、小法人につきましては申告の基礎額が比較的小さいというようなこともありまして、その割合を機械的に求めますと、ただいま御指摘になりましたようなパーセンテージになるかと思います。ただ、更正決定をいたしております件数の比率で見ますと、大法人につきましては三十六年度で大体六六%、中小法人につきましては三八%でございまして、更正決定の件数の割合は、ただいま申し上げたような逆の比率になっておる次第でございます。
  209. 春日一幸

    ○春日委員 私はこういう問題点があると思うのですね。六六%も、再調査をしてみるとか、特別調査、査察等といろいろな手を触れてみて、その結果四・何%である、片方は三十何%しかやらないでおいてその収穫というものがかくのごとく二十何%というような形にその実収が上がっていくということですね。片方は、ぶつかっていっても税務署がはね返されてしまうということであり、片方は言ってみれば全部何がしかのみやげを持って帰ってくる、こういう結果になっておることを物語ると思うが、これはいかがでありますか。
  210. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 先ほども申し上げましたように、大法人、特に百億以上の資本金を持っております大法人につきましては、東京、大阪両局に特別国税調査官を置きまして、専担をさせておるわけでございます。昨年度におきます一会社当たりの延べ調査日数は、大体二百日ぐらいになろうかと思います。そういうふうに、特に大きな法人については特別の調査をやり、また資本金一億以上の会社につきましては、国税局の調査課におきまして主査程度の経験なり能力のある人が、これまた相当の日数をかけて調査をいたしておるわけでございます。御承知のように、資本金二千万円以下のものは税務署において調査をいたしておる次第でございます。かように、国税庁といたしましては、先ほども申し上げましたように、所得の大小に応じて傾斜をつけて調査をいたしておる次第でございますが、大法人におきましては、比較的近代的な経営組織でございまして、内部の経理も相互牽制の作用が行き届いておるという状況でもございます。また、中小の同族会社等におきましては、いわゆるどんぶり勘定で、なかなか会社の経理と個人の経理と判然としないというようなものも間々見受けられるわけでありまして、額そのものからいえば、調査のこういう傾斜にもかかわらず、先ほど御指摘になりましたような結果に相なっておりますが、しかしながら、単にこの比率と申しますと、やはり何と申しましても、大法人におきましては申告額が非常に大きい、従ってそれに対する増差は相当出ても、比率から見れば小さくならざるを得ない、こういう結果になっておる次第でございます。
  211. 春日一幸

    ○春日委員 この問題は、そういうような手を尽くしてのこのような比率、結果が現われてくることは、いろいろと調査をした結果、相当の金額が出ているのだが、これを全体的な比率に直すとこういうふうに低くなるということは当たらないと思うのです。実際問題といたしまして、とにかく片一方の中小企業の方は、何と言っても小さいものだから、その全貌を見破りやすい。いわば全的に逋脱されやすい立場に置かれておる。だから見る気になって見れば十分見れるということですね。片一方の方は、これは能力関係でありますが、二百日かかろうと、二千日かかろうと、やはり大いなるものと大いなる仕組みに対しは、そういう対抗策をしていこうと思えば、何といったって力の限界というものがあろうと思うのです。だからこういう実際的な形が現われてくるのではないか。たとえばこういうことではありませんか。私は幾つかの経験を持っておるのだが、たとえば今言われた相互牽制の仕組みだって、大規模法人ならば相互牽制の組織によって立証はできますな。いろいろな経費の支出であろうと、課長、部長、係長と、何のたれがしに出したというので立証はできる。ところが中小企業なんかはそういう牽制組織がないものだから、結局はそのおやじなり経営者の答弁というものが唯一の資料になっていく、だからこれをいかに認証するかということ、疑うか、あるいはそれを信ずるかということになってくると思います。片一方は信じられてしまう。相互牽制があるから支出がなされておるであろうということで、税務署員も信用を高く評価して、これを認めていく。ところが中小企業の場合には、その相互牽制組織がないものだから、それはなかなか認めない。たとえばこういうような場合がございましょう。土建会社なんかは、あなたも御承知だろうと思うが、結局幾つかの飯場、現場がございますね。そういうところに対しては親会社からはなかなか費用が出ない。現場の諸君はしょっちゅうごちそうを出して励ましたり、あるいは深夜手当を出しましたり、さまざましなければならぬ。盆暮れには相当のつけ届けもせなければならぬ、ところがそれは親会社の現場監督がやるものですから、従ってその下請会社は、現場監督なり現場の責任者に対してそれらの費用を出さなければなりませんね。出せば親会社の方では親会社の名に基づいて、そういう供応なりサービスなりをするわけであります。従って、親会社の方でやらなければならぬが、親会社の方はそういうことは出さない慣例である。そうするとその下請の方は、その金を親会社の責任者に持っていくということは一個の贈賄になりますね。事実上持っていくのだ。親方なり現場監督なりが羽ぶりをきかすために現場の諸君や何かにそういうサービスをするのですしね。そうするとこれは帳簿上相互牽制がないですね。ただそこへ持っていったという事実関係は厳存するけれども、さて立証するという形になりますと、それぞれの親会社には、そういう金を収得して、それでふるまうという経理がないですね。ひそかに行なわれることです、あるいはいろいろな基準によらないで行なわれることですから、立証のしようがない。だれに持っていったかという形になる。証拠は十分できれば損金に算入されるだろうけれども、親会社はそんな名前を出してもらっては困る。私が収賄になってしまって首になるから、絶対に入れては困る。それで言うことができない。言うことができなければとるかとらないかわからない、こんなものは認めないという形になりますね。私は大会社のような場合は、そういうような支出が現実に行なわれた場合に、いろいろな相互牽制で立証の道はあると思う。また徴税官吏の心証もこれはうそではないだろうということで損金に算入されていきますね。実質上の課税にあたって、そこに非常に差がある。認定の差というものが現われてくると思うのですが、こういうことはないとお考えになりますか、一体こういうような場合はどうしたらいいとお考えになりますか。
  212. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 これは大会社、中小の会社を問わず、そういう意味の交際費的なもの、あるいはリベートというようなものが支出されておる事実はございます。また一般に中小の下請を業とされる方々につきましては、特にその支出先を明らかにすると困るような場合、そういう場合も多かろうと思います。ただそういうものは中小の会社だけかと申しますと、これは今申し上げましたようにそうでもございませんで、相当大きな会社であっても、やはり政治献金であるとか、あるいは交際費、寄付金、リベートというようなものが行なわれております。これをしからば徴税の面で全部洗いざらいこちらに知らしてもらうというのも、相手の立場から見て相当困難な場合もございますし、といってこれを全部行先不明のままにして、経費として認定をするということも困難な場合がございます。この辺は何としても、現在の税法の建前と一般の社会の実情とがからみ合って非常に困難な問題でございます。国税庁といたしましては、できるだけこの支出をされた事実を認定いたしまして、認定された分については経費として認める。どうしても認定がつかないものについては、やむを得ず経費としてお認めするわけには参らない、こういう考えで現在までやっております。
  213. 春日一幸

    ○春日委員 そこで問題点は、今長官が御答弁になったような、その認定をだれがどういう見解でするかということですね。私はこういう問題は、そんなことを言ってはなんでありますが、まだ若い税務署員にどこにどういう工合に交際費を持っていった、どこにどういう工合にリベートを持っていった——そういうようなことを言うてくるなら出入り差しとめだ、こうきます。言うてもよろしいかと親会社に行けば、そんなことを言うならば出入り差しとめだという形になって、企業存立の基礎を失うわけですね。だから言えない。言えないからこれじゃこんなものは否認されても仕方がないという形で、みんな更生決定がなされているのですね。それは大企業に対するそういうリベートや交際費やさまざまな支出が、相互牽制に対する一つの信頼認証から、これは損金として容認されておる実態にあわせ判断して、租税負担公平の原則から、何らかの公平措置がとられなければならぬと思うのです。それかといって、言うたらいいじゃないかというたところで、商習慣の実態から、それはなかなか言えないのですね。  だから秘密を保ちながら、なお中小企業の営業を守ってやるために、やった相手に問いたださないで、そしてなおかつそれが損金的なものであるのか、あるいは不当に過大なものであるかの認定を、相当の責任的立場にある者が判断して、そうして大企業のそれに合わせてあまり不均衡にならないように、そしてその商売が続けてやっていけるようにやってやる必要があると思うのです。だから私はこういうような場合は、じゃどうしたらいいかと考えるならば、ちょっとした着想ですけれども、少なくとも税務署長がそれを聞いて、そうして税務署長がみずからこれを判断して適当な限界のものであり、やむを得ずと見るものは署員に指示して、それを損金算入を認めていくとかなんとかいうような特別の配慮というものがなされてしかるべきであると思うのです。  かつて企業組合に対していろいろな個人に対する認定課税を行ないます場合には、税務署員みずからが行なうのではなくして、これは租税懇談会に諮問を発し、その答申を待って国税局長がみずからこれを行なうという特別措置をここで定めたことがあると思うのです。だからそういう相当経験を積んだ、そして世人の機微に通暁した人が中小企業の商習慣を守りながら、なおかつ税負担の公平をあんばいしていくという意味で、そういうものについては税務署長の特別な配慮を加えて、中小企業税負担を不当に重くしないように措置をしていく道を開くべきであると思うが、長官のお考えはいかがでありますか。
  214. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 大会社でもって経理上の相互牽制作用が比較的はっきり行なわれておるというものにつきましても、先ほど申し上げましたように、見えざる交際費あるいはリベートが発見されました場合におきましては、税務署としては別に中小の企業と区別をして取り扱うというようなことは絶対にいたしておりません。しかしながら春日委員が御指摘になりましたような、特に若い税務職員で秘密が保たれるかどうか若干の危惧があるという向きも、これは相当あると思います。従いまして、将来におきましては、やはり署長、課長あるいは相当の責任者が、そういう場合の実情をお聞きして、そして経費として認定できるものであるかどうかという心証を、その段階について得るように努めるという今の御指摘は十分研究をいたしてみたいと存じます。
  215. 春日一幸

    ○春日委員 これは一つ事実上、今のデータでも明確でございますように、非常に中小企業法人に対しまする増差額と、大規模法人に対します増差額、これは税務署所管と国税局所管と区分してみますと、現実に相当大きな開きがある。この金額は大きいけれども、実際的には率にするとこうなるのだというようなものではないと私は思う。やはり全貌を探知し得る規模と、全貌を探知することのなかなか困難なる規模と、こういうものからきたるところの差である。同時にまた今言われたような商習慣上立証困難なるもの、あるいは証拠不十分にして立証不可能なるもの、いろいろな結果によって中小企業と大企業との間に、法人だけではこういう形になって現われてきておるのです。だからこれは重視すべき事柄であると思いますので、これをできるだけ均衡をはかるように何らかの措置がとられてしかるべきであると思うのです。このことは、私は中小規模の営業というものは、現実に大観するならば、大企業に対しては祖税特別措置法があって実質課税が非常に低いんだということは徴税当局御承知の通り。片一方は、法律はあるけれども適用を得がたいという実態から、やはり自己調整をやっていくということは人情の必然である。中小企業者が、脱税といっては語弊があるけれども、これは善意の自己調整をはかっておるということ、これは国家的に見るならば、結果的に大体両方ともとんとんに納めておる、むしろ中小企業の方が非常に大きな負担をしておるということは実態関係として明らかです、そういう意味で、このことは中小企業に少なからざる申告脱漏があったとしても、その原因は現行税制そのものにあるのであって、こういうような場合はこういう工合に救済されるんだ、こういうものはこうい損金になるんだ、相互牽制の組織のない場所でもその認証がもっと容易に行なわれ得る基準が定められれば、私はそういう問題は相当解消できると思うので、この問題についてさらに十分御検討の上適切な措置をとっていただきたいと思います。  なお私は、この問題について深く検討してみたいと思いますので、次の資料の提出を求めます。それは三十六年度の——七年度はわからないかもしれませんが、営業所得者の増差状況、これは個人のです。それから三十六年度の税務署とそれから局の調査課、この所管別に法人の営業所得の増差増況、これを一つ資料として御提出を願っておきたいと思います。  それから、この機会に私はさらに伺っておきたいのでありまするが、今のお知らせ制度は廃止になったのでありまするが、事実上は事前調査によって、あなたの本年度の所得はこれこれですという、内示と申しましょうか、そういうようなことが行なわれておるようでありますが、これは庁としてそういう指示をしておるのでありますか。
  216. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 こちらから一方的に金額を示しましてお知らせはいたしておりませんが、納税相談の際にお尋ねがあれば、税務署側として自信を持ってお答えできる場合におきましては金額をお示ししておるという事実はございます。
  217. 春日一幸

    ○春日委員 まあ個人企業、中小企業なんかでは事実上自分に反証がないものだから、どういう工合に税金をぶっかけてくるか見当もつかない、一体どうしたらいいかというようなことで、人情としてトラのしっぽを踏む思いで相談に行くわけですよ。そうすると税務署の方では、去年の二割増しとか去年の三割増しとかいうようなことで、これまたいいころかげんのでたらめで、去年より多ければいいだろうというようなことで内示されて、それを申告して判を押してくる、こういうのが実態なんですね。業界の方でまとめて組合の団交みたいな形で処理しておるところもありまするし、個人心々で相談して、昨年度の何割増しで承知してくれ、へいかしこまりましたというようなことなんですね。私は、こういうことでは、ほんとうに申告納税制度、徴税行政の民主化のためにあのような画期的な変革が行なわれたことの実が伴っていないと思うのです。昔の代官、庄屋時代の賦課徴収制度と何ら変わるところないです。ほんとうに指導するというのであるならば指導の限界を越えてはならぬ。あなたの腹づもりは幾らですか、大体去年より悪うございましたと言うたら、ああそれじゃ減らしておきなさい、こう出なければいけない。相談に行って減らしておきなさいと言ったことは一ぺんもない。三割増し、四割増し、そうだろう。これは実際問題として、法律によらざれば国民は拘束を受けることはないのですね。殺人犯といえども証拠なきはこれを罰せず、証拠がなければ殺人犯でも無罪だ。私は脱税をやっていいと言うわけではないけれども、白色申告の個人経営で証拠なんか事実上絶対ありはしません。だから腹づもりで去年よりよかったか悪かったかですね。そういうものが相談に行くと全部去年より高い。高ければいいし、悪かったらガサ入れるぞ、たんすから長持、仏壇に畳まで押えるぞとおどされれば、弱き納税者は、どうしたらいいでしょうか、去年より三割増し、へいといって帰ってくるのが実態関係です。そういう形で苛斂誅求が行なわれているんです。許しがたきことだとはお思いになりませんか。これは行き過ぎだ、徴税官吏の国家権力の乱用だと反省はしませんか。納税相談とかなんとかいう美名に隠れてそういうどうかつを食らわしたり何かして、あの小さい中小企業者をひどい目にあわせて、そして今このデータにあがっておるように去年の何割増しという結果をつくっているということは私はいかぬと思う。残酷無類の仕打だと思うのです。ああいうことはいかぬ、相談があったときには軽く応対して、やさしく母親のように相談に乗らなければいかぬのだ、こういうふうに通達を出してみる気はありませんか。
  218. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 税務署側で一方的に所得額をお知らせいたしまして、たとえばただいまお話のありましたように、前年の一割増しとか二割増しとかいうようなことで、自信のない、むしろ押しつけがましいことをやっているんじゃないかということでございますが、われわれの指導といたしましては、絶対にそういう割当式の感じで納税者の方々に応対をしてはいけない、あくまでも納税相談におきましては指導の限界というものを心得て、よく納税者の身になって相談に応ずべきであるということを指示しておる次第でございます。今年度の基本方針におきましてもそのことは冒頭にうたっておる次第でございます。なお、先ほども申し上げましたように、事前に税務署で調査をいたしまして相当自信のあるものについては、相談の際に御要求があれば数字をお見せしておるという事実はございますが、繰り返して申し上げますが、割当式に高圧的に納税相談の際に数字を示しておるというようなことは、われわれとしては指導もいたしておりませんし、またそういうことを税務署でやっておるとは私は信じておりません。
  219. 春日一幸

    ○春日委員 今の長官の御答弁の中に、事前調査をして資料が手にあればそれを示すと言われたが、この申告納税制度はそのような事前に調査をしてはいけない、本人が申告をしてその後において間違っておれば意見を述べることもできるし、指示することもできますが、事前調査ということは今やっておるのですか。私は準備調査とか、基準調査とか、実地調査というようなことは許されておると思うが、申告納税制度においては本人が申告する以前にその税額の多寡について事前に調査を行なうということはできないと思うが、いかがですか。
  220. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 あくまでも申告に基づいて納税をしていただくというのが趣旨でございます。しかしながら申告だけをたよっておるということになりますと、課税の公平という見地から見て不十分でございますので、やはり調査はいたさなければならぬということに相なっております。  事前調査の問題でございますが、これは季節的な営業であるとか、あるいは現金取引のような場合に事前に調査をいたしまして、大体所得が去年よりいいか悪いか、どの程度いいか、あるいはどの程度悪いかというような調査をやっておりまして、これはわれわれといたしましては適法な調査であると存じております。
  221. 春日一幸

    ○春日委員 私はこれは重大なことだと思うのです。この申告納税制度は、主権者国民法律に基づいてみずからの所得についてみずから計算をして、そうしてこれを申告する、それが私は法律の建前であると思う。しかしそれが正しいものであるかどうかを国としてやはり把握していかなければならぬ。従って、標準調査であるとか、あるいは準備調査であるとか、そういう意味における実地調査というものはあり得ると思うのです。けれども、納税者を対象として、その納税者の本年度の所得が幾ばくであるかを事前に調査する権限は国家にはないと思うが、いかがですか。
  222. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 申告をお出しいただいた場合に、その申告内容を判断する資料といたしましては、ある程度前もって調査をいたしておきませんと非常に困難になって参る次第でございますので、納税相談の場合におきましても、ことに白色の場合等におきましては、はたして申告が間違いのないものであるかどうか、そういう点についてやはり一応の予備知識を持っておって批判できる、また応答ができるように準備を整えるためには、どうしてもある程度の事前の調査というものが必要であろうかと存じます。
  223. 春日一幸

    ○春日委員 それは言うならばデータの結集にとどまるものであって、その納税者を対象として、いわばその納税者について、その納税者の本年度の所得が幾らであるか、そういうことを事前に調査をするということは、税法の総合的な判断の上において、申告納税制度としては許されてはならぬ。従って、基準調査であるとか、標準調査であるとか、あるいは準備調査であるとか、そのような趣意と目的を持ったところの実地調査、実態調査、概況調査というものはあり得ると思うが、事前調査はなし得るのですか。
  224. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 申告をしていただいた後に調査をするというのが建前としては常道であろうと存じます。しかしながら、法律的に申しますと、所得税に関する調査について必要があるときはということになっておりまして、必ずこの調査は事後でなくてはならぬということには相なっておりませんので、われわれとしては、先ほど申し上げましたような場合には事前の調査をいたして納税相談の準備を整えるということにいたしておるわけでございます。
  225. 春日一幸

    ○春日委員 それは法律上は所得税についてということですね。私は、所得税の賦課、所得税課税についてということを言っておるのです。所得税課税、賦課するについて事前調査はできない。所得税について調査はできる。できるからして標準調査なり概況調査なり準備調査なりいろいろなものがあると思う。それは当然行なわれていい。けれども、その個人の所得税を賦課するについて、そういう事前調査は断じて法律上は許されていないと思う。政務次官いかがですか。
  226. 原田憲

    原田政府委員 必要があればということで、必要がないときにはやらない。
  227. 春日一幸

    ○春日委員 それは、私は内輪みたいな委員会だから申し上げますけれども、池田勇人は偉いと思うのですよ。このお知らせ制度の問題を論じましたときに、長官とか主税局長とか、そのお知らせ制度というものは合法的なものであると答弁しておった。ずっと一年ぐらいそういう答弁をしておった。それから池田勇人が大蔵大臣になりまして、当時本委員会においてそのことを論じたら、池田勇人はお知らせ制度は明らかに違法である、私は当時社会党だったが、それは社会党の御主張が正しいと言ったですね。これは間違っております、直ちに長官に命じてお知らせ制度は廃止させますと、ここではっきり言ったですね。それは徴税行政、税法をあまねく判断をした結果こう考える、政治家的良心に基づいて、かつはまたその法律をずっと深く判断して、いかぬと思ったらこれはいかぬと言った。そうしてお知らせ制度を廃止したのです。今から七年前でした。いかぬと思ったことはいかぬとせなければいかぬですよ。そういう悪い習慣になじんではいかぬし、また現在やっていることをいかぬと思ったら、詭弁を弄して問題を晦冥に陥れるという態度はよろしくない。僕は原田君もまだ若いから将来は自民党の総裁にもなれるかと思うが、やはりいかぬと思ったことは行政当局をしてこれを改正せしめるように、そうしてそのことによって徴税行政上困れば、他の立法措置を講ずるよう、租税法定主義——法律によらざれば国民は拘束を受けることはないのですから、これは憲法の基本的人権なんだから、その法律を恣意的に解釈をして苛斂誅求を行なうことはよろしくない。法律に欠陥があれば直せばよろしい。朝提案して夜議決することもできる。
  228. 原田憲

    原田政府委員 御指摘の点はよくわかりますが、これは先ほどからあなたがおっしゃっているように、税をとる立場にいる者の態度、心がまえ、その他で法律というものは国民のためにもなれば、苛斂誅求の道具にも使われる、こういうことになるのであります。私は今税の問題で、税務職員が苛斂誅求を行なっているのではないかと事例を引いて言われますと、実際はそういうこともあろうかと思います。しかしながら、全般的に考えてみますと、やはり税務職員もその職務を忠実に実行するという立場で動いている人たちが多いと判断する。これは当たらぬかもわかりませんけれども、私はそう思っている。とかく税務職員だとか、税というものに関すると、警察よりこわいということもよく議論される。だから税務署員とか税を取る者が悪いということなら、池田さんとか、あるいは前尾さんとか、あるいは大平さんとか、あるいは黒金さんとか、これが国民の支持を得られるわけがない。ちゃんと当選して出てくる。だから私はその立場々々でやっておると思いますし、今、国税庁の長官がお答えをしておる点につきまして、事前に調査ができるかどうかという点をお問いになっておりますが、税を取る立場におります者は、やはり国民に相談されたときに十分こちらも受け答えができなければならぬ。この人は信用できるかどうかと、こっちも向こうを思っておる、向こうもこっちを思っておる。それに対して十分な信頼感を得るために準備が要る。この準備をするために調査するということはよろしいが、個々の人間を目ざして、春日一幸のところへ一ぺん先に行って調べておいてやろう、原田憲のところを先に調べておいてやろうということは、ちょっとおかしいなという気がしたのであります。法律には必要があればこれを調べてよろしいということは書いてある。ここらの点につきましては、その運営の問題であろうと思いますし、そのことが行き過ぎであるということがありますならば、私は検討しなければならぬと考えます。
  229. 春日一幸

    ○春日委員 私が言っておるのは、これは重大な問題なのです。国税庁長官であろうと、税務署員であろうと自分で判断してはいけない。自分で自主的に判断してはいけない。やはり法律の明文に従ってのみ行政は官吏に許されるのであって、自分でこれを拡大解釈をしたり、普遍的な解釈をすることは許されない。これが専制君主国と立憲法治国の相違点なのですよ。だから申告納税制度というものは、主権者たる国民が国家によって保障されておる権限である。どれだけ申告しようと本人の勝手なのです。ところが、それがうそである場合は他の税法によって、他の条章によって、これが更正を受け、それぞれの追徴を受けていくのです。だから本人が申告する以前に本人の申告に影響を与えるがごとき、すなわちその者についての調査をすることはできない。税法上必要があるという場合はこれは当然標準調査とか、準備調査とか、基準調査とか、概況調査とか、いろいろ調査することは妨げない。けれどもあなたについてはこれこれだという、これを認めるということなら、これはお知らせ制度なんです。池田勇人が、これは法律違反であるがゆえにやめろといって全国に通知を出したのに、またこの制度を復活することとなる。池田勇人をここへ呼んできて、君が通牒を出したことは誤りであるということを明らかにするにあらざれば、私の言っておる理論は成り立たない。お知らせすると同じことですから、本人が幾ら幾らですかと言ったら、あなたはこれこれですよ、と事前に調査しなければ言えない。事前の調査をみることが許されるということは、お知らせ制度を容認することなのだ。お知らせ制度を容認するということは、池田勇人が大蔵大臣たりしころ、国税庁長官をもってお知らせ制度をしてはならぬと通達させたことを復元することになる。そんなことがわからぬでは困る、こういうことです。昭和二十四年シャウプ勧告によりわが国の徴税制度は申告納税制度に改まった。それまでは賦課徴収制度だったのですよ。申告納税制度というものは主権者国民の自主的な意思、自主的な計算に基づいて申告する。それで申告するに先がけて、あなたの税金はこれこれですと言って影響力を与えることは賦課徴収制度なのです。いいですか。賦課徴収制度ということは、昔の大官、庄屋が百姓、町人に対して、あなたはこれこれの税金を納めなければならぬと通達をしたと同じことなのだから、それでは税制の民主化にならないということで、従ってここであなたの税金はこれこれですと、本人が申告する以前に、国家がそういうことを本人に影響を与えるということはやめた。そうして今度は、本人が申告をなすにあらざれば影響を与えることができないという形で、ことさらにお知らせ制度をやってきた。お知らせ制度というものは、長くそういうような賦課徴収制度の慣習があったことにかんがみて、二十四年から二十八、九年までか、この間は経過措置として、これが暗に法律違反の行為であるけれども容認してきた。けれども、だんだんとこういう徴税方式、徴税知識というものも国民に大体において理解ができてきたから、この際これはやめなければ賦課徴収制度を申告納税制度に変えた意義がないということで特に通達を発してお知らせ制度を廃止したのですよ。お知らせ制度をことさらに廃したのに、本人が申告する前に私の税金は幾らですかと言って行ったら、あなたの税金はこれこれですと言うことは、しかもそれを調査してそういう資料を持つということは、法律が国家に対して許してはいない。それは法律が憲法によって国民に保障しておるところの人権を侵害するのです。財産権の侵害なのです。事前調査というものは実態調査であり、標準調査であり、概況調査であり、基準調査である。従って、その課税調査ということはなされてはならぬということです。どうですか。
  230. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 税務署でもって事前に調査をいたしまして、あなたの所得金額は幾ら幾らです、税額は幾らですということを一方的にお知らせするということではございませんので、事前に調査をいたしまして、それから納税相談を受け付けて、納税相談の結果、納税者の側からどれくらいに考えておるかという御質問があれば、その際に調査の結果相当確信のあるものについては、税務署ではこれくらいに見ておりますということはお答えをいたしておりますけれども、一方的に調査をしてその結果お知らせするということはやっておりません。その点は一つ誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  231. 春日一幸

    ○春日委員 だからそういうふうに言えばよろしい。要するに基準調査なり標準調査なり概況調査なりによって税額の基準を把握しておって、そしてたまたまその調査した人が尋ねてきたときに該当する場合もあるし、全然、調査しない人が尋ねてきたときに、その基準をもって、こんなものではないですかといって相談に乗るということはあり得るが、その個人について事前調査を行なってその数字を把握しておって、調査の結果こういう工合になっておるから、従って、あなたはこれだけ申告すべきであるということを言うてはならぬと私は言っておる。すなわち課税についての事前調査はあり得ない、こういうことを言っておる。その点を明確にしておいていただきたい。泉君その通りだろう、君はちゃんと幾らか知っているから……。
  232. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 ただいまお答えをいたしましたように事前に調査をして、そしてあなたの所得金額あるいは税額はこれこれですということで一方的に押しつけをする、あるいはお知らせをするということはやっておりません。ただ納税者から御質問がございますと、調査の結果自信があるものについてはお知らせと申しますか、納税相談の際にお答えをしておるということでございます。
  233. 春日一幸

    ○春日委員 それならば前の答弁はやはり一部取り消しておかれなければいけません。課税について調査をしておいた。そういう場合にその調査に基づいてそれぞれの相談に応ずる、あるいはそれの税額を指示する、こういうふうなことを言われたが、速記録をよく見られて、これは適当でないと思われたら委員長に懇請をして、取り消しておかれないと、これは重大なことになります。  従いまして、私は今時間がありませんから、こういう資料の提出を求めます。一つ、本年度の税務調査、準備調査、実地調査、概況調査、基準調査、こういうふうな調査はどのようにして行なったか、これが一点。それから第二点は、滞納整理は過年度、現年度分に分けてどのように行なっておるか、第三は、特別調査班の調査活動の実績は、資本金、階層別に見てどのようになっておるか。第四点は、同族会社に向かって非常に集中的に攻撃が加えられておるように伝えられておる。それで、一般法人と同族法人に対する特別調査あるいは査察、こういうものの区分率。第五点は、査察は資本金と階級別にどういうような状態か。大企業に対してどう行ない、中小規模事業に対してどんな工合に査察をやっておるか。それから第六点は、事業の概況報告書、これは準備調査の参考資料として税務署の便宜のために提出を求められておるけれども、これは、受ける方では、非常に手数がかかってかなわぬと言っておるのですね。それから実際上の納税額にどういう影響力を持つのか、非常な不安な状態、言うならば、いろいろな不安を与えておるのです。それからまた、その概況調査が提出された後において質問をしたりいろいろなことが行なわれて、これが二重調査になるようなことはないか。これは一つ、あんな大きなものでなしに、もっと簡素なものですね、ほんとうに概況調査を受けるものなんかは、いわば実際国税庁の協力者なんでしょう。ほんとうに協力してもらうものに対して、あんなものが税務署からくると、何か精神的に圧迫を受けて、周章ろうばいして気の毒な、目も当てられない惨状です。実際もっとざっくばらんな、わかりやすいようにあれをもっと極端に簡素化する必要があると思うが、この点はどうか。以上、資料の提出を求めましたのと、最後の点は質問でありますが、資料の提出は提出として求め、あとの分について、概況調査を簡素化することについて、国税庁の見解はどうか。
  234. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 御指摘の通り、概況の報告書というものは非常にこまかくできております。私もこの点に気づいておりまして、できるだけこれを簡素化したい、納税者の方に少しでも多数を省いていただくために、できるだけ簡素化したいという方向で現在研究中でございます。なお、成案ができましたならば、十分検討し、そしてまたこれをお書きいただく納税者の方にも見ていただいて、そういう方面の御意見も取り入れて決定的なものをつくり上げたい、こういうふうに考えております。
  235. 春日一幸

    ○春日委員 次は、青色申告者に対する更正決定の理由として、推計課税が許されないということは、裁判所の判決によって明確になったと思います。この推計課税の基準になりまする標準率、ここでしばしば問題になっておりますが、ああいう標準率を適用して推計課税を行なうということは無効である、違法であると裁判所の判決がございました。そのことにもかんがみて、あの標準率を唯一の基準として、これを一律に適用するということは許されないと思うが、その後その判決にかんがみて、その基準率はどのように運用されておるか、伺います。
  236. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 青色につきましては、税務署におきまして標準率というようなものを使っておりません。白色につきましては、判断の資料として一応標準的なものをつくっておりますが、これはあくまでも執務の参考にするだけでございまして、これによって納税をしていただく、あるいは課税をするというようなことはやっておりません。
  237. 春日一幸

    ○春日委員 青色には使っておらないが、白色にはこれを使う、使うにしても一応の参考資料であると言っておりますね。参考資料であるけれども、他に資料がないのです。ものさしというものは、これも使い、あれも使うといっても、ほかにものさしはない。結局、事前調査、概況調査、基準調査、いろいろな調査によってあれが出てくる唯一無二のバロメーターです。だから青色には使ってはいかぬという一つの概念は、白色にも適用してはいけないということだと思う。要するに、総販売額について、これだけの利益があるのだということを断定する一つの尺度になるのですから、青色には一方において、いろいろな支出が明記されておるから、こういうものを使ってはいかぬということが判決で明確になったけれども、これは一個の概念としてそういうものを使ってはいかぬということなんです。ということはどういうことか。すなわち商売には賢い人とたわけな人がある。とにかく商売というものは、すぐれた地位を占めておる者と、すぐれた地位に恵まれていない人とある。お得意さんのいい人と悪い人がある。千変万化です。それを一個の基準によって律することは適切でないがゆえに、ここに裁判所の判決は、こういうものを青色に使ってはいかぬということになった。だから使わない。それまでは使っておったと思う。だから、青色についてその裁判所の判決があったら、青色だけにこれを使わぬということは適当でない。やはり一つの理念は敷衝して適用してしかるべきだと思う。一個の参考資料としてこれを使うと言うたって、他に併用すべき参考資料がある場合は、弊害が少ないと思うが、事実上すべての参考資料は、その標準率に集約されると思う。だから判決が出たということは重大なことである。よって、白色にもそういうものは使ってはいかぬと思うが、いかがです。
  238. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 青色につきましては記帳がなされておりまして、税務署に判断する資料が十分提出いただけるわけでありますが、白色については、そういう資料がございません。従って、所得税法におきましても推計課税が許されることに相なっております。ただ、標準率なるものを一律機械的に適用いたすということは実情に沿わない面がございますので、やはり税務署において、そういう資料のない場合に、推計課税を行なわなければならぬ、その際に、判断の基準としてこれを使用する、ほかに資料がございませんので、やむを得ずこれを使用するということに相なっておる次第でございます。
  239. 春日一幸

    ○春日委員 ほかにないからということは、唯一無二ということに問わず語りにそこに帰着するわけです。だから、その唯一無二なるバロメーターなるものが、今申し上げたように販売高に対する利益基準——それは賢い人と賢くない人と、俊敏な人と鈍な人、いろいろあるわけです。あらゆる千変万化の要素が集約されて利益率になってくるわけだ。だから、どういうところでその率を押えられておるかにも問題点はあると思うが、とにかく、類推するとか、推計するとかいうことは、やはり賦課徴収の概念に通ずるものです。あくまでも基本は申告納税にあるんだから、本人をどろぼうだ、脱税者だと見るべきではないと思う。本人というものは国家の主権者であります。あなたは、いわば宮内大臣みたいなものです。納税者は、上御一人、陛下、長官は宮内大臣です。ほかの諸君は待従みたいなものだ。それが、陛下はどろぼうなり、脱税者なりと見て、いろいろなそういうバロメーターをつくって訓示するがごときは許されないことなんだ。証拠なきはこれを罰せずとあるならば、白色申告などは、ずいざらっとやればいいのです。そういうことになっておるのです。だからそういうものを使ってはいかぬ。何べん言うても使っておるのだけれども、それはまことに度しがたきものだ。しかしこれは実際の徴税の理念から判断して、特に裁判所がそういう判決を出しているということは画期的な事柄なんですから、十分反省をされて、この基準率の暴力といいますか、悪い脅威、こういう悪い影響を除去するように徴税現場において十分その被害をなくするような適切な措置をとっていただくように要望しておきます。  次は協議団制度の改善について伺います。この間国税通則法が制定されまして、今までは協議団の協議を経なければならないとありましたやつを、特にわれわれ野党が主張をいたしまして、協議団の議決に基づいて行なわれねばならないと直しました。協議ではない、協議団が議決せねばならぬ、こういうことになっております。それから協議団の議決を一そう尊重するために協議団の人事——今まではいろいろ人事に問題がございました。うば拾て山というような印象もなくはなかった。その他その運営面において国税庁は改善するということが要望され、そのような協議とおとりなさっております。その後の実際の運営面はどういう工合に改善しましたか、一ぺん具体的に御説明願いたい。
  240. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 協議団の制度につきましては、ただいま御指摘のありましたように、事前に、協議団審査事案について局長が決定をする場合には協議を経なければならぬということでございましたが、昨年の四月から協議団の議決に基づいて決定をしなければならぬ、こういうことに規定が変わりましたと同時に、この趣旨を生かしまして、協議団の審議の結果を一そう尊重するという建前を貫いておるわけでございます。人事につきましても、できるだけ有能な人で、関係各部と折衝をして遜色のない人を協議団に選任をするように努力をいたしております。また協議の結果、実際の協議団の運用状況を見てみましても、事案で協議決定の結果、納税者の主張が通り、原処分の取り消し等を行なったパーセンテージは大体半分程度ございまして、ただいまのところでは協議団の活動というものはかなりの程度にいっておるというふうに信じております。
  241. 春日一幸

    ○春日委員 問題は、この改正の法意というものはやはり苦情処理の協議団の自主性を拡大して救済を十分行ない得る体制を確立したところにあると思うのです。だから私が今伺っておる運営は、協議団の決定は国税局長がことごとくその決定に基づいて処理をしておるのか、決定したものでもそれは徴税当局なりの理論によって反対のあるいは協議団の決定が変更を加えられたようなことになった場合があるのかどうか、この点おわかりになっておれば御即答願いたいし、わかっていなければ資料によって提出を願いたい。いかがでありますか。   〔委員長退席、吉田(重)委員長代   理着席〕
  242. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 協議団で審査をいたしまして、結論が出ましたものにつきまして国税局長が替成できないというような事案につきましては、本庁まで個々の事案について上申をいたさせております。しかしながら、大体においてそういう上申を待たねばならぬような事例は非常に少ない実情でございます。
  243. 春日一幸

    ○春日委員 それを一つ、明確でありませんから——今までの協議団の決定に対して国税局長がそれに従うことのできなかったような事例があったとすれば、それを一つ資料として御提出願いたい。なければいいです。協議団の決定に基づいてそのまま国税局長がこれを処理したということであればそれでよろしいし、そうでなければその資料の御提出を願いたいと思います。  それから事実上の運営について伺いますが、協議団はあくまで自主的にこれを協議をして決定いたしますが、あるいはその調査の過程において徴税当局と事前の協議をするようなことがありますか。私はこれは重大な影響があると思います。われわれの主張は別にありますけれども、協議団の人事が徴税当局と絶えず交流をしておりますから、従って自分の身分の本分は徴税官吏である、今ちょっと協議団に来ておるだけだということで、その里心を忘れないで取る側に立っていろいろと作業をする場合、従って局なり署なりの意見を聞いたりなんかして事前協議をするようなことがありはしないか、実際の運営はどう行なわれておるか、これを伺いたい。
  244. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 協議団が議決をいたします前には事前に、原処分がどういう経緯でもって行なわれたかという事実を知るために、いろいろ協議をいたす場合がございます。
  245. 春日一幸

    ○春日委員 その適切なる運営をはかれ、人事その他運営面において国税局がやはり協議団の機能を高めることのための改善をしなければならない、こういうことになっている、御承知ですね。だとすればその改善をするということは、事前協議をしてはならぬということを意味すると思う。私はそのことも含めていると思うのです。今申し上げましたように、事前協議ということはよろしくない。協議団というものはあくまで自主性を尊重されなければならぬから、その趣意で法律まで、協議すべきものを決定に基づくというふうに直っているのですよ。法意というものは尊重されなければならぬ。事前の協議をしなければ実態がわからぬということはないでしょう。本人の申し立てがあるのですから。わからなければ徴税当局に基づいて事実関係調査をすればよろしい。徴税当局の意見を聴取することも調査になるかもしれないけれども、協議というものは対等の立場であんたはどう思うとみずからの決定をする前に徴税当局の意思の影響をそこへ導入するということはこの法律の改正の趣旨、それから附帯決議の趣旨、こういうものに私は合致しないと思う。これは善良なる運営ではないですね。いかがですか。
  246. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 私の説明不足で誤解を生じたかと思いますが、協議団の議決に先立って議決の内容について協議をする、相談をするということではございませんで、原処分庁がどういう経緯でもってそういう処分をしたかといういきさつを十分聴取する、実情を調べる、あるいは事実認定について問題がある場合には、どういう理由でどういう認定をしたかということについて調べる、こういう意味で申し上げたわけでございます。
  247. 春日一幸

    ○春日委員 それじゃ協議じゃないのだから、調査だ。私どもは問題はずっと以前に憲法に基づいて、行政裁判は一個の裁判しかないので、海難審判所の特例ありといえども、この税の苦情について救済の道は協議団しかないのです。行政裁判といったって、検事も判事もこんなむずかしい税法なんか、ほんとうに知りやしませんから、従って事実上の実質救済はこの協議団に局限されておると私は思う。だからこの際、中間的処理ではあるけれども、協議団の権限というものをできるだけ強めていこう、こういうところであのような一部改正を行ない、そしてその附帯決議みたいなもので、その運営の面においてその趣旨を一つ顕現しろ、こういうことになっているのですよ。だから人事も、実際上は、私は将来の理想をいえば、国税庁の長官のあなたの本来の使命というものは徴税のことにある。苦情の処理のことにはないのです。納税者の救済はあなたの任務ではない。だからあなたの本来の任務というものは徴税のことにある。その救済する使命を負う者が徴税の任務を背負う者に従属しておるということは、これは協議団の機能を全からしめていないのですね。だから人事関係国税庁長官からこれを分離して、そして終生救済処理に挺身できるような身分保障の体制をつくるべしと論じてきたわけです。しかし保守反動の内閣いまだ理解なくして、そういう民主制度ができ上がっていないことは、きわめて遺憾でありまするけれども、しかしこういうような改正が行なわれ、このような附帯決議がなされたということは重視せねばならぬですよ。だからどうかそういうような意味合いにおいて、人事面においてもやはり有能な人、しかも長期にまたがってその職責に尽瘁できる体制で、人事運営がなされなければならぬと思う。昔は、老朽な人のうば捨て山になってみたり、税務署でつまはじきになった者をそこへほうり込んでみたりするようなことがあって、結局決定という形になると、それぞれの徴税庁の決定に従属するということになって、協議団の機能はもうほとんど有名無実になっておった。これが国税通則法の改正を契機として一歩の前進がはかられたと思うのです。だから、運営の面と人事の面において、その趣旨に基づいて処理されておりますか。
  248. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 お言葉ではございますが、私は徴税をやるだけが任務とは心得ておりませんで、徴税が公平にかつ適正に行なわれることを任務といたしておるわけでございます。従って、苦情のございます方々のその苦情の内容、御主張をよく聞いて、そして筋の通るものであればどんどんもとの処分を取り消し、または変更していくというのも私の大きな任務の一つと心得ております。従いまして協議団の運営につきましても、ただいまの御指摘の通り機能を活発にさせ、そのためには優秀な人を送り込んで、そういう苦情のある方々の御意見なり苦情を十分聞いて、そして原処分に対して無理があれば、それを積極的に変更をいたすということを今後活発にやって参りたいと存じております。
  249. 春日一幸

    ○春日委員 長官の所信の表明がありまして、多といたします。実際問題として、あなたは徴税官吏ではなくて、とにかくこの税務行政の最高の責任者として、特に苦情処理に対する機関の機能を高めることのためにまた最善の工夫をこらしてもらたいと思う。運営の面において、私はなお幾多の改善の余地があると思うのですね。どうかそういう意味一つやってもらいたい。  最後にお伺いをいたしたいことは、通達についてでございます。われわれはここで税法を審議をいたしますけれども、また議決をいたしますけれども、通達についてはつんぼさじきに置かれております。現在の租税行政は通達行政になっておると言っても過言ではない。多くの場合、このような場合はかくあるべし、こうあるべしといって通達がされておるのですね。私はこの問題は非常に重要な問題だと思うのです。国税庁長官あるいは直税部長、間税部長の通達というものが、法律と同じ権威を持って国民を拘束しておりますね。だから、この通達というものの扱いが最高度に注意深く取り扱われなければならぬと思うのです。うしろにおられる泉君がかつて間税部長であられたころ、六、七年前でありましたか、間違った通達を出しまして、取り消されたことがございました。企業組合の酒か何かの問題で次官通達を出して、われわれが指摘してすなおに取り消してもらって、被害は未然に食いとめることができたのであります。法律はここで四十人の同僚によって十分審議いたしますから、しかもわれわれは国民の代表者でありますから、まあ幾らか完璧を期し得る度合いが多いですね。過失の度合いが少ないと思う。ところが、通達は、税金をとる任務にあります者が、少数者が集まって書くのですね。書いてしまって、ここへは内緒で出してしまう。出して、発見したときに、われわれから法律違反なりと指摘されて取り消すこともできるが、われわれはそういう通達を出されても全然つんぼさじきだから、どういう通達がいつ出されたかわからぬ。被害が起きて国民から指摘されてから初めてこれを取り上げることができると思うのです。だから、通達を出すときには本委員会に諮るくらいの注意を払われて、万全を期されることは必要だと思うが、その点どうお考えになりますか。公式に議決承認を求めるということでなしに、この法律についてこのような統一解釈、このような運用方針を定めてみたいと思うが、大蔵委員会の御見解はいかがであろう、私はこれくらいの手を尽くされていいと思うのですね。法律の一カ条一カ条についてここで大へん熱心に論じても、この通達がゆがんでしまったら何のことかわからない。法律よりも通達の方が大いなる拘束力を持って国民にのしかかっている実態にかんがみて、このことは必要であると思うが、いかがですか。
  250. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 形式的に法律的に申しますならば、通達は上級機関が下級機関に出します職務命令でございまして、一般の国民の方々を拘束する力を持っておらぬことは、もう申し上げるまでもございません。しかしながら、下級機関がその通達によって税法を運用いたしております実情を考えますと、何と申しましても非常に影響が大きいということは、ただいま御指摘の通りでございます。従ってわれわれといたしましては、通達を出します場合には慎重に検討をいたしまして、これが適法であるかどうか、またかりに適法であったとしても、その内容が正当であるか、あるいは不当でないかという点については十分慎重に検討いたしまして通達を出しておる次第でございます。  なお、通達を出す前にこの委員会の御意見を伺ってはどうかということでございますが、申し上げるまでもなく、租税の賦課徴収そのものは憲法上行政機関の権限に属するところでございますし、また国家行政組織法におきましては、各省大臣あるいは各庁の長がこういう職務命令なり訓令を出し得ることと相なっております。従いまして通達について御不審の点があればこの委員会で御質問をいただき、われわれとしてはできるだけこまかくその趣旨についての御答弁をいたす、こういうことで今後通達についてはなお一そう慎重にきめ、また御不審があればお答えをいたしたいと存じます。
  251. 春日一幸

    ○春日委員 問題はその通達が違法である場合、それから現実に合わない場合、いろいろあると思うのですけれども、そういうような場合、通達に基づいて行政処分がなされたとき、その被害は一体だれが弁償しますか。こういう問題は実際問題として枚挙にいとまがないと私は思うのです。だからそういう特に国民の財産権というものに対して甚大な影響力を持つものが国税庁長官通達ですよ。あるいは直税部長通達、間税部長通達という部長通達です。これが法律同様の国民に対する拘束力を持っておることにかんがみて、他の行政庁の通達に比べてこれは非常に危険だと思う。もとよりあなた方の通達が全部間違っておるとは言わないですよ。ただ問題は違法な場合が絶無ではないのです。うしろにおられる泉君が間税部長のときに違法の通達を出して、僕に注意を受けて撤回したことがあるのです。これはうそじゃないですよ。木村君聞いてごらんなさい。それは違法な場合で、違法なときにははっきりと訂正ができるけれども、問題は実情に合わないような場合、不当な場合です。法律のしゃくし定木のゆがんだ解釈によってその通達が出され、国民に財産上の被害を与えた場合、これの救済の道はないのです。苦情処理をしたところで、協議団はあなたの所管だから、あなたの所管であるところの協議団はその通達に基づいて処理するのだから、もう救済の手段は全くない。そういうような通達というものはやはり十分手を尽くす必要があると思うのです。あなたは通達を出して、わからなんだらここで聞けと言っているけれども、あなた方はここに連絡をせずにじゃんじゃん乱発するのだから、いつ通達を出されたかわれわれわかりようがない。ですから出すときには理事会ぐらいに持ってきて、そうしてこういう通達を出しますという届けくらいしてもらいたい。これは一歩前進だと思うのです。そうすればみんなにわかって質問する機会もある。黙って出してしまったのではわかりゃしませんよ。隠すようにして出す場合はなおさらわからぬ。そんなものは理事会に持ってくることぐらいできるじゃないか。承認を求めるのじゃないんだ。
  252. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 ただいま御指摘のように、通達を出しましても、それが相当長くなりますと実情に合わぬ場合も生じて参ります。また個別の事案でもって、その通達をそのまま適用してはいかにも気の毒だ、不当だという場合もございます。そういう場合につきましては各所管の局長から上申をさせまして、われわれの方でその通達の補正なり、あるいは訂正をいたしておるのが実情でございます。  なお通達について、内容を知らぬ間に出されるということでございますが、もし御要求がございますならば、われわれとしては通達をお届けするということはけっこうだと存じます。
  253. 春日一幸

    ○春日委員 それでは私は本委員会におきまして、委員長を通じて要求いたします。これから、国税庁長官、各部長、それから主税局、これが通達を出します場合、そのことごとくの通達を不肖春日委員にお届け願いたい。これを要求いたします。  そこで私は伺っておきますが、三十六年七月の税制調査会の答申によりますると、「国税通則法の制定に関する答申」のタイトルでこういうことが書いてあるのです。法令等の解釈について疑義を生じた場合には、すみやかに国税庁長官の判断を求めることとすべき旨、法令上これを明文化せよ、こういう答申をしておりますね。それからまた、法令等の解釈に関する事案の審査等について、第三者の公正な判断と意見を求めるため、国税庁に学識経験者等からなる参与を置くものとする、こういう意見が述べられておるが、これについて国税庁はその後どう措置いたしておりますか。
  254. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 先ほどの通達を提出いたしますと申し上げましたのは、法令の解釈通達でございまして、部内の機構、組織、定員、服務に関すること等については……。
  255. 春日一幸

    ○春日委員 法令に関する通達のみに限って本員はそのつどそれを入手したいと思いますので、お届け願いたい、こういうことであります。訂正いたします。
  256. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 それから次に、この参与についてはまだ国税庁としては設けておりません。なお協議団等で裁決をいたします際に、国税局の方から庁に上申をして通達の補正を求めることができるということは現在やっております。
  257. 春日一幸

    ○春日委員 暮れ六ツを過ぎましたので、これでやめます。  事実上三十六年に税制調査会が答申をしたのですよ。それは、法令の解釈に万全を期さなければならぬ——直税部長疑わしいというような顔をしておるけれども、僕がうそを言うはずはない。疑義を解決するために学識経験者からなるところの、第三者によるところの参与を置いて、そういう法令の解釈を行なえということを答申しておるのです。三十六年に答申をしたのに三十八年になっても置かぬということは、国税庁の独断なんだ。国税庁天皇の現われですね。やはりそういうような民主的な機関を設けて、徴税行政の民主化をはかるために、万全の手を尽くしていただかなければなりません。強く要望いたしておきます。早くその参与制度をつくるべきです。答申に基づいて通則法も直されたのです。だからそれに関連をして万全を期するために、その法令の解釈に間違いなからしめるために、そういう機関を設けよといっているのですから、設けなければいけません。  これで私の質問を終わります。どうも長い間御苦労様でした。
  258. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 春日さんの先ほどの国税庁の通達の問題につきましては、重要な問題でもございますし、特に理事会においてよく研究いたしまして善処することにいたしたいと思います。  次会は明十三日午後二時より理事会、二時三十分より委員会を開会することこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十五分散会