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1963-02-28 第43回国会 衆議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月二十八日(木曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 臼井 莊一君    理事 足立 篤郎君 理事 鴨田 宗一君    理事 毛利 松平君 理事 山中 貞則君    理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君    理事 平岡忠次郎君 理事 堀  昌雄君       伊藤 五郎君    岡田 修一君       金子 一平君    川村善八郎君       田中 榮一君    田中 正巳君       高見 三郎君    藤井 勝志君       古川 丈吉君    坊  秀男君       佐藤觀次郎君    坪野 米男君       広瀬 秀吉君    武藤 山治君       横山 利秋君    春日 一幸君  出席政府委員         大蔵政務次官  原田  憲君         大蔵事務官         (銀行局長)  大月  高君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総         裁)      山際 正道君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 二月二十八日  委員芳賀貢辞任につき、その補欠として安井  吉典君が議長指名委員に選任された。 同日  委員安井吉典辞任につき、その補欠として芳  賀貢君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  金融に関する件
  2. 臼井莊一

    臼井委員長 これより会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  本日は、山際日本銀行総裁参考人として出席しておられます。参考人には御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  まず当面の金融政策上の諸問題について、山際総裁から御意見を述べていただき、その後に質疑を行なうことといたします。では、山際総裁にお願いいたします。山際日本銀行総裁
  3. 山際正道

    山際参考人 私は、昨年の十一月にも当委員会出席をいたしまして、当時の経済金融情勢につきまして、私の所見を申し述べたのでございます。  当時は、いわゆる景気調整の効果が一応浸透しつつありまして、公定歩合の一厘引き下げなど一連の緩和措置実施されました直後でございまして、私は当時、現在の状況は、経済界が平常の状態に一歩近づいたにすぎないのであって、今後わが国自由化の進展に対処するためには、経済基盤の強化、企業体質改善をさらに一そう推進する必要があると考えるということを申し上げたように記憶いたすのでございます。  その後の情勢は、事態が幸いに順調に推移いたしておりまして、十一月末には、さらに公定歩合を一厘引き下げまして、その以前一年余りにわたって実施して参りました引き締め措置を、完全に解除し得ましたことは御承知通りでございます。この間に、景気調整に不可避的にも思われまするところの社会的、経済的な犠牲や摩擦を、各方面の御協力によりまして、最小限度に食いとめることができ、事態をまずまず平穏裏に切り抜け得たと考えますることは、まことに私としてしあわせに感じておるところでございます。  その後の動きを見まするのに、景気調整の足取りはほぼ予期した線に沿って、順調かつ平穏に経過しておるように思います。景気は、一段と落ちついた様相を呈しておるように見受けられるのでございます。すなわち、景気過熱の今回の最大要因でありました設備投資は、最近も引き続き落ちついた水準推移をいたしておるのでございまして、また在庫投資も、このところようやく一巡気配ながら、供給面からの圧力から、全体としてはまだ著しく増加を示そうという勢いにはなっておらぬように思うのでございます。商品の市況は、生産調整の進捗と金融情勢緩和傾向から、総じて落ちついた動きを示しておりまして、一ころ市況が低迷しておりました鉄鉱、繊維なども、このところやや持ち直しの気配がうかがわれるのでございます。  一方金融情勢も、総じて平静を保っておりまして、金融市場財政資金散布超過傾向から、基調的には緩和の趨勢をたどっておると思います。企業資金需要は、滞貨減産資金の一巡から、最近では、過去に繰り述べて参りました決済のための所要資金が中心でありますけれども、それもようやく峠を越しつつあるように思います。年明け後は、銀行に対する資金需要の強さもやや鎮静に向かいつつあるやにうかがわれるのでございます。  また、国際収支の面におきましては、輸出が、アメリカ景気の頭打ちを反映いたしまして、やや伸び率が鈍化いたして参っておる反面において、輸入は、季節的な要因に加えて、一部原材料在庫補充買いから、若干増勢を示しておりまするから、一ころのように好調とはいえなくなっております。しかしながら、輸入増加は主として季節的な原因によるものでありまして、経常収支長期資本の流入を加えました基礎的の収支で見る限りにおきましては、国際収支は、当面さして懸念を要するような情勢とは考えておりません。  以上のように、最近の経済情勢は、総じて落ちついた動きを示しておるのでありまするが、これを景気の局面に当てはめて考えますると、ほぼ底入れないしこれに近い状態にあるということが言えると思うのであります。今後の動向につきましては、いましばらく時日推移を待たないと、的確な判断を下すことは困難でありまするけれども、いずれにいたしましても、設備過剰による供給圧力企業利潤低下などの問題が背後に控えておりまするので、当面直ちに本格的な景気上昇を期待するのは、やや早過ぎるのではないかというふうに考えております。  前回の景気調整時におきましても、景気底入れから、本格的な立ち直りまでには若干の時日を必要といたしました経験から申しましても、当面は、早急な上昇を期待するよりも、まず地道な合理化の推進など、地固めに徹すべき時期ではないかと考えるのであります。日本銀行といたしましても、これまでの調整努力が結実して参りまするように、当面事態推移を慎重に見守って参りたい所存でございます。  去る二月六日の国際通貨基金理事会において、国際収支上の理由から、経常的な国際取引のための支払い制限を、もはや行なうべきではないとの判定が下ったということは、御承知通りでございまするが、これでわが国としましては、貿易為替自由化を一そう推進しなければならなくなったわけでございます。  今日、世界のどの大国といえども、孤立しては繁栄していけない以上は、自由化は将来における日本経済の繁栄につながるものとして、私どももむしろこれを観迎して、これに対する対策に万全を期したいものと考えておるのであります。しかしながら、当面としましては、あるいは外の冷たい風に当たることによって、困難を倍加する企業のあることも否定し得ないところでありまして、この際国際競争に耐え得るために、合理化を一そう推進し、企業体質改善をはかることが何よりも肝要と考えております。  この点に関連いたしまして、世上国際水準に比して割高なわが国金利水準引き下げを要望する声も強いのであります。私どもといたしましても、資本蓄積の増強と金融環境の整備に努めまして、でき得る限り金利水準低下に努めて参りたい所存でございます。しかしながら、最近における企業金利負担の増大は、企業借り入れ依存が一そう高まった結果によるところが大きいのでありまして、企業としましても、この際自己資本の充実に格段の努加をいたして、資本構成是正に努めることが肝要であろうと考えます。  貿易為替自由化に対応しまして、金融政策の使命は今後一そう重かつ大を加えるものと、われわれその覚悟を新たにいたしておる次第でございます。日本銀行は、さきに公定歩合引き下げの機会において、新しい金融調節方式実施に踏み出したのでありますが、私どもといたしましては、これは本格的な金融正常化への第一歩にすぎないと考えております。自由化後において景気の波動を極力小さくし、経済安定的発展をはかって参るためには、金融面における今後改善を要する課題は少なくないと考えております。今後は従前にもましまして、金融施策を予防的かつ弾力的に運営して参ることが必要であると思うのであります。私は弾力的、前向きに金融施策を運営することこそ、経済安定的発展をはかる今後の最大の要件であると確信いたしております。それと同時に機構面におきましても、たとえば資本市場、特に債券市場の育成に努めて参りたい所存であります。債券市場の発達は、いわゆるオーバーローン是正のためにも要望せられておるところでありますが、本行の債券売買を本格的な市場操作として機能させるためにも、ぜひともこれは必要とするところでございます。  また金利につきましても、金利政策を弾力的に運営すると同時に、金利資金需給を敏感に反映して動くように努めて参ることも必要だろうと考えます。金利弾力化は、金融調整を一そう効果的、機動的にするために、必要不可欠な前提であると考えております。  以上のいわゆる金融正常化の諸問題につきましては、ちょうどだだいま金融制度調査会において鋭意検討中であるように聞き及んでおります。私どもといたしましては、その結論を十分検討いたしまして、改善を要する点は果敢にこれを改善いたしまして、もって今後における景気調節経済安定的発展に遺憾なきを期して参りたい覚悟でございます。  以上、最近の金融経済情勢につきまして、一応所信を申し上げまして、御参考に供した以第でございます。(拍手)     ―――――――――――――
  4. 臼井莊一

    臼井委員長 続いて質疑を行ないます。通告がありますので、順次これを許します。佐藤觀次郎君。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 山際総裁から現在の金融市場のあり方を伺ったのでございますが、先日、二月の二十日の記者会見で、総裁デノミネーションの問題に触れられまして、最近インフレ傾向のあるおりに経済界にいろいろな影響を与えたと思うのでありますが、その真意がどこにあるのか、まずお伺いしたいと思います。
  6. 山際正道

    山際参考人 ただいまお尋ねの点につきましては、実はやはり当委員会におきまして、三、四年前であったかと思いますが、私の考えを申し上げたことがあったと記憶いたします。その要点は、要するに私は、一国の通貨制度といたしましては、その単位になる――価格の単位と申しますか通貨単位と申しますか、現実に今の日本制度でいえば一円でございますが、やはり何人もある程度の尊重の念を持つような、購売力を持つべきものがその通貨単位となってしかるべきものではないかと実は考えておるのであります。現状は御承知通り単位通貨である一円は、ややその点において、単位通貨たるに十分な体裁を備えていないような気がいたしますので、できれば、もし諸般の事情が落ちつきましてそれを許す状態になりますならば、通貨制度の問題といたしまして、一種の通貨制度の改正のような意味において、やはり通貨単位相当購買力を持って、同時に及ばざる、いろいろな計算上や取引上生ずる端数はいわゆる補助通貨でもってその計算をするというような普通の姿に持っていくことの方が、結局通貨尊重観念を増し、ひいては資金を効率的に尊重されて使うような風習になり、資本蓄積の目的にも沿うのではないかということを考えておりますがゆえに、数年前にもそのことを申し上げたのでございます。実はその考えはいまだに変わっておらぬということを申し述べたのでございますが、何しろこれは日本銀行業務ではございませんで、むしろ政府並びに国会のお考えによるものでございますので、その意味において私は申し述べたつもりであったのでございます。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 たしか三、四年前だと思いますが、フランスで旧フランと新フランデノミの形が出て一応成功したと言われております。日本でやる場合には旧円と新円をどういうようにするのか。また、これは御承知のように、平価切り下げとの関係がありますので、いろいろな混乱が多少あると思います。この間山際さんがデノミの話をすると株が上がったというような傾向があるのでありますけれども平価切り下げの問題と関連して多少の混乱もあるやに聞いておりますが、そういう点の腹案があるのかないのかお伺いしたいと思います。
  8. 山際正道

    山際参考人 戦後に生じたいわゆるインフレの収束の方法といたしまして、通貨の呼び名を変更した企ては、世界ですでに二十ヵ国に近いと思っております。しかし、このことは、今御指摘通り、よほど十分な準備、十分落ちついた状況のもとに行ないませんとやはり混乱を生ずるおそれがあり、ところによりましては、もう一ぺんやり直しを余儀なくされた国もあるのでございます。たしかギリシャ、韓国でございましたか、両国は二度やっていると思いますけれども、そういう次第でございますので、もとより御指摘通り、これは十分な配慮、十分な準備、十分落ちついた情勢のもとに慎重に考慮さるべきものと私は考えております。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 田中大蔵大臣は、先日、新聞によりますと、総裁の御意見に対して、まだそういう考えはないと記者会見で発表されております。しかし、ただいま山際さんが言われましたように、平価単位の少なくとも百円が一円となるような、そういう事態の方が実際の場合において銀行その他一般国民観念でも非常にわかりやすい点があると思うのです。ところが、現在私たちは、実は一円の金が落ちていても拾わぬような状態で、もし百分の一の単位にすると一銭とか十銭とかいうような金が要るようになるので、そういう準備をするのに相当の時間を要するのか、そういうことが行なわれたならばそういう結果が出てくると思いますが、そういう点の配慮総裁はしておるのか、その三点を伺っておきたいと思います。
  10. 山際正道

    山際参考人 ただいまも申し上げました通り、これは日本銀行業務自体ではございません。しかし、通貨価値につきまして、その維持に非常に苦心をいたしておりますわれわれといたしましては、通貨価値相当購買力を持っているようにすることにつきまして非常に苦心をするのであります。今御指摘のございましたような単位通貨である一円のアルミ貨が路傍に落ちておっても拾わぬで済むというような状態は、日本銀行に職を奉じておる者の目から見ますと心痛にたえない次第でありまして、いろいろ考えておりますけれども、これはいわば個人的な考えでございまして、むしろ各方面でその問題を取り上げて御検討願って、十分な準備、十分な配慮、また最も適当な時期において御断行になるのがしかるべきではなかろうか、こういう意味で私は申し上げたのでございます。私自身十分の成算があるという意味で申し上げたわけではございません。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 貨幣の軽視ということはわれわれも非常に心配しておるのですが、私たちが学生のころ、高橋是清氏が大蔵大臣のとき、百億の公債ということが非常な問題になったと思っております。ところが、現在の予算は兆というものが単位になっておりまして、一兆なんということは、口では言えますけれども現実にとってみて考えても膨大な金だと思うのです。そういうものが平気で予算で使われるようになった。しかし、最近、にせ札犯人はまだつかまらないのですが、札というものに対する国民観念がだんだん変わって、一般国民通貨観念が薄らいだということはやはり銀行券に不安を持っており、非常に粗末にするという面があると思うから、そういう点で――日本銀行は現に紙幣を発行している唯一の銀行であります。それだら、政府がやることだというようなことでなくて、日銀総裁は、少なくとも札のことにつきましては責任があると思うのです。そういう点について、山際さんはいわば沈黙居士であり、なるべく事なかれ主義の人であります。慎重居士のような形になるわけですが、一生涯日銀総裁をやっているわけではないのでありますから、ここらあたりであなたの信念を持った貨幣政策なりこういう政策について率直な御意見――この間も相当なる反響を呼んだのでありますが、一つ大蔵委員会を通じて大胆率直な御意見を伺いたいと思います。
  12. 山際正道

    山際参考人 お尋ねの問題につきましての私の考え方は今申し上げた通りでございますが、さてこれを実施に移します場合にどれだけの準備をし、いつの時期を選ぶかという問題につきましては、及ぶところ広範囲でございまして、日本銀行の力だけではなかなかその準備が整わないと思います。願わくば、そういう必要があるかないか、また、その時期はいつがよいのか、またそれはどういう真意を持っているのかということの国民大衆理解と申しますか、それを得ることが根本でございます。その面から、御賛成でありますればぜひ一つ理解促進する意味において皆様方の御協力も仰ぎたいくらいに私は考えておる次第であります。むろん通貨当局といたしましては日夜苦慮いたしておる問題でございますから、今後とも促進と申しまするか、準備のいかなるものが必要であるかというような検討につきましては、私どもといたしましても、及ばずながら検討を続けたいと考えております。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 私この前に山際さんにそう言ったのでありますが、法王にならなくてもいいけれども、少なくとも中央銀行総裁としてやはりもっとウエートを持ってほしいということを申したこともあります。数年前にも、山際さんは大蔵大臣になれるようなときにも固辞されたと聞いております。今の田中大蔵大臣が悪いとかいいとか言うわけではありませんけれども田中株週刊朝日などを読んでみますと、なかなか株が上がっておりますが、まだ四十四才であります。あなたはよわい六十を過ぎて、大蔵省に長い問おられまして、その方面の権威として尊敬もされ、あなたの発言相当に一このごろ大蔵大臣は、この前は水田君であった、今度は田中君というようなことで非常にしょっちゅう変わりますけれども日銀総裁はなかなか変わらぬ。一萬田さんは法王にまでなられたのでございます。一昨年の金融引き締めのことにつきましても、山際さんは盛んに、この前のようなことはしない、今度は絶対に自分は信念を持ってやるというような発言を先回もここでされました。少なくとも日本の現在の傾向はやはりインフレ傾向だ。それだからデノミなんか――火の消えた問題を言うと、多少混乱が起きるから、混乱の起きるようなことは言いませんけれども、あなたがそういう発言をされるのにはやはり相当な確信を持っておられるのだと思っておりますが、そういう点については一つあまり政府なんかの意見を聞かないで、大胆率直にこうやったらいいだろうくらいの意見は伺いたいと思いますが、どうでございましょうか。
  14. 山際正道

    山際参考人 その点は申し上げました通り、事が非常に重大な問題でございまして、かつ政府並びに国会の十分の御審議を仰ぐべき問題でございます。われわれは必要な際には何どきでも資料の提供をいたすことができますように、常時世界動向を見ながら研究を積み重ねておりますので、今後もそれで行きたいと考えておるのでございます。ただ御承知のようにちょっとその話が出ましても、直ちに株価に影響するというような微妙な事態でございますから、この取り扱いについてはよほど慎重を期さなければならぬということは十分承知いたしておりますので、機会あるごとにそういう方面研究を進めて参ることに促進をいたしたいと実は思っております。場合によりましては、何か通貨制度に関する調査会でもつくりまして、各方面の御意見を伺うということも一つ方法だろうと思いますけれども、これもまた政府の御施策に属することでございます。私どもとしましては、何どきでもその材料を提供するだけの勉強を続けていくつもりでございます。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それに関連いたしまして、最近金利引き下げということが問題になってきました。御承知のように日本金利文明国で一番高いと言われておりますが、大体アメリカと西ドイツが三%、フランスとイタリアが三・五%、イギリスが四%でありますが、日本では御承知のように今日歩一銭八厘、年利にして六・五七%という非常に高い金利を取り扱っておるわけであります。こういう点について、新聞によると田中大蔵大臣金利引き下げを二分やるということを言っておりましたが、今のこの経済状況上、非常にいい時期だと思うんですが、総裁金利引き下げ問題についてはどういうようなお考えを持っておられますか、これも伺っておきたいと思います。
  16. 山際正道

    山際参考人 先ほど冒頭に申し上げました通り、私も、今後国際経済社会において日本が大いにその経済力を伸ばして参りますために、いわゆる経済の諸条件を国際水準並みに持っていくということについては各方面とも努力をいたさねばならぬと考えております。  金利の面につきましても、御指摘通り、これは事実問題でございますが、日本はおおうべくもなく割高でございます。ただただいま御指摘になりました数字は、あるいは中央銀行公定歩合をお示しになったものと実は承ったのでありまするが、金利の差の最もはなはだしいのが公定歩合なのでございまして、金利と一口に申しましても、各種の金利によりましてその割高の度合いがいろいろ違っております。しからばなぜ公定歩合が最も著しく違っておるかということを考えてみますと、これはやはり国全体としての資金需給関係が、欧米その他の先進国に比べて緩和されていないということに帰着すると思うのでございます。たとえば端的に申しますと、欧米中央銀行は大体各金融機関が持っております余裕金なり準備金なりの放出されておる市場、これは本当の意味における短期金融市場というべきであると思いまするが、そこを目当てに、中央銀行として資金需給関係を操作いたしますると、それが自然銀行貸し出し態度に影響いたしまして、そこで全体としての金融調節ができるという慣行ないし仕組みになっておるのでございます。そのことはどういうことかと申しますると、やはり各金融機関とも相当手持の余裕金を残して、これを準備金として、それを常時短期市場で運用いたしておるのでございまして、つまり営業上の資金中央銀行に仰いでおるという事例がはなはだ乏しいのでございます。営業資金は通常はほとんど中央銀行の厄介にならずにいくという建前を貫いております。でありまするから、余裕金市場を見ておって、そこを調整いたしますと、自然金融全体の繁閑の調節になるという仕組みになっておるのでございます。そういたしますると、短期市場でございまするから、金利が非常に安い。たとえばコール日歩というようなものが下がっておるということになるのでございまするが、日本は遺憾ながら資金蓄積が十分でありませんので、各金融機関手一ぱいに貸しておるのでございまして、なお足らぬから日本銀行にきて借りていって、また貸すということになっておりまするから、日本銀行金融調節をいたします場合に、自然短期市場を見ておるということよりも、銀行自身貸し出し態度なり貸し出し所要資金をどの程度に貸すかということであんばいをせざるを得ない状況になっておるのでございまして、自然貸し出し金利と、余裕金放出運用金利との差、これは非常に違うのでございまするが、そのことがちょうど公定歩合に現われてきておる、こういう解釈、言いかえれば日本にはオーバーローンという現象があるけれども欧米にはオーバーローンという現象はない。また企業の側から申しますと、日本企業にはいわゆる借り入れ過多オーバー・ボローイングという現象があるけれども欧米では自己資本の比率が高くて、借り入れ依存度が少ないという現象があるわけでございまして、それがすでに具体的な金利の面において、そのように現われておるのだと思います。できれば今後資本蓄積その他を通じまして、漸次欧米金融市場並みに持って参りますれば、それに従って自然金利低下ということもはかり得るのではないか、かように考えまして、鋭意その方向で努力をいたしておる次第でございます。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 山際さんの御意見は妥当だと思いまするし、またあなたの非常に平和的なやり方、いわゆるおとなしいやり方については非難がないと思うのです。しかし低金利政策をやる場合においては、私は日本銀行というものは、御承知のように公定歩合の操作によって、金融政策の指導的な立場に立っておられる関係上、どうも大蔵省に気がねしたり、大蔵大臣がこうだからというような、そういう懸念からではなくて、日銀独特の立場で、そういう操作ができないものか、こういうふうに考えますけれども総裁はどういうふうにお考えになっておりますか、伺っておきたいと思います。
  18. 山際正道

    山際参考人 全体の問題といたしまして、国際競争力を増強する上に、漸次資本蓄積その他の道を通じて金利低下をはかることに努力するという点は、先ほど申し上げた通りでございまして、これは日本銀行といたしましても変らざる方針でございます。ただその情勢促進とか準備とかにつきまして、非常に人為的にまた不自然に行ないますと、表面はあるいはそれで落ちつけられましても、世の中はやはり実際上の問題としてなかなか金利低下促進が実現できぬという弊害もございまするし、そのほかいろいろな弊害ができまするので、そういう弊害を生ぜざる範囲において、一つ極力金利低下努力していきたいと思うのでございます。それにつきまして、日本銀行は独自の立場においてその見解を持し、その実効を期すべきであるというお考えにつきましては、私どもも全く同感でございまして、私ども広く意見は聞くべきだと思っておりまするし、また日本銀行本来の使命を害せざる範囲においての政府政策への協力ということも必要でございまするけれども、独自の使命として与えられました法律上の使命につきましては、ただいま御指摘通り考え方でやっておりますので、なお足らざる点は今後とも一そう努力いたしたいと思います。
  19. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 先ほども金融政策の一元化についていろいろな御説明がありましたが、この貿易と為替の自由化が進むにつれまして、いろいろ問題が出てくると思うのであります。私、先回も日銀総裁にお伺いしたのでありますが、外貨準備の問題ですね、これを具体的にもう一歩進めていかれる方法があるのか、またいつごろ実施される予定があるのか、この点もあらためて伺いたいと思います。
  20. 山際正道

    山際参考人 外貨準備の問題についてのお尋ねでございますが、幸いに、今日本状態におきましては、政府及び日本銀行の持っておりまする外貨準備が、合わせまして今日ではおそらく十九億、きょうは月末でございまするから、あるいはその数字は多少動くかもしれませんが、前後のところまできておると思います。これは私は、現在発行いたしておりまする一兆三千億程度の銀行券の裏づけといたしましては、準備はまずそれで一応整っておると思っておりますが、ただどんどん拡大して参りまする日本経済のあり方といたしましては、拡大につれましてもっともっと準備をふやしていく。これは銀行券の裏づけとしてはそれだけでございますが、いろいろな商売をいたしますことから考えますと、もっともっとあった方がいいということはまことに望ましいと思いまして、鋭意外貨準備蓄積につきましては、今後も努力を続けたいと思っております。で、お尋ねの点は、おそらくは内容的に金の問題なども考えておられるのではないかと思いまするが、これも前回お尋ねの際にお答え申し上げたと思いますが、私も日本銀行の持っておる、また国全体として持っておる外貨準備のうちの金保有量は十分多いとは考えておりません。欧米諸国の例に比べまして、むしろ日本相当低いというべきだと考えております。ただ機会を得ませんと、金市場に出まして、日本が金を買うということはなかなか困難な情勢にあります。たまたま三、四年前でありましたか、外貨準備が非常にふえて参りましたときに、機を逸せず、日本銀行は一億数千万ドルと思いましたが、金を買うことに成功いたしました。しかも列国の経済を撹乱することなしになし得たことがあったのでございますが、今後といえども事情が許すならば、そういう配慮のもとに充実していくことに努めたいと考えておりまするが、ただこの点御承知のようにようやく準備が充実して参りまして、アメリカから借りておりました金をだんだん自力で返しておる段階でございますし、それからまた各種の国際通貨協力関係で、いろいろ各国がその条件に従っての注文を持っておる際でございますので、国際協調の線を乱さぬ範囲で今後とも進まねばならぬと考えておる次第でございます。
  21. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 四月の一日から中小金融機関日銀取引をされることになりまして、相互銀行と信用金庫が、日銀準備預金制度を適用されるということを聞いております。これは今までにない画期的なことでありまして、われわれは歓迎すべきことだと思いますが、その資金量に対しては相当のワクを広げてやられるのか、その予定、その考え方を一つ伺っておきたいと思います。
  22. 山際正道

    山際参考人 ここ数年来の現象といたしまして、いわゆる中小金融機関と称せられるものが非常にその資力が充実をいたしまして、わが国金融界において占めておる比重がだんだんと向上いたして参っておりますることは御承知通りと思います。私ども中央銀行としては、その勢力がなかなか無視し得ざるところにきておりますので、漸次取引の範囲をその方面へ拡大したいということで鋭意努力をいたしております。現にそれを実施いたしておるわけでございます。それとともに、それだけ大きくなりますとやはり社会的責任において準備預金制度というものもそれらの機関に当てはめるべきではないかという考え方につきましては、大体同感をいたしておりまして、鋭意いろいろ研究はいたしております。ただなかなか、いつから実施するというような具体的の結論まではまだ得ておりませんので、これはまだ何とも申し上げかねる状態にございます。しかし、いずれにいたしましても、取引の面においてもまた社会的責任においても、いわゆる中小金融機関の比重は非常に向上して参った、これは非常にけっこうなことだと実は考えております。
  23. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いろいろむずかしいことであると思うのでございますが、中小企業金融に対してやはりもっとワクを広げてほしいということを希望しておきます。  それからもう一つは、日本の今の一般の景況、いわゆる景気というようなものが、一昨年の急激な金融ストップのために非常に混乱が起きたことは御承知通りであります。ところがこのごろ、この四月のころには大体ノーマルになるのではないかということが言われておりますが、しかし池田さんがいつも、日本経済を数字的に見て非常に楽な安易な気持で考えておられますけれども、たとえば西ドイツのような場合でも非常に上昇したその景気情勢がこのごろ鈍化したということが言われております。私は日本の今の経済のあり方がそんなにノーマルだとは思っておりませんけれども、しかしいつか破綻をしないとも――今のように予算がどんどん膨張するような形では、やはりインフレ傾向が非常に強くなるというふうな考え方が浮かぶわけであります。こういう点について、これは国の財政政策については政府がやるのでありまして、日銀総裁はそういうことをやるだけの権限はないと思うのでありますが、私は少なくとも今の日本経済のあり方でいきますと、非常に危険な状態がかもし出されるのではないかということを心配しておる一人でありますので、こういう心配は要らぬ心配であるかどうか。あなたはそういうような国際関係経済状況もよく御存じでありますし、金融の元締めとして非常に確固たる信念を持っておられますので、そういう不安があるのか、ないのか。私たちは不安を持っておりますけれども、そういう不安はないものかどうかというところの概略の御意見を最後に伺っておきたいと思います。
  24. 山際正道

    山際参考人 最近の金融経済情勢のもとにおいて、今日本経済界が占めております地位につきましては、冒頭申し上げました通り過熱の結果生じた景気調整も一段落をいたしまして、いわば景気底入れもしくはそれに近い状態にあるということを申し上げたわけでございます。ところで先のことにつきましては、これは御承知通りいろいろな事情によりまして、経済というものは内外両要因によりまして変わりやすいことであります。しかしいずれの事態に即しましても、再び日本が過去に繰り返したようなあやまちをしないように、絶対に安定的に、しかも成長を続けていくという配慮は、これは私は片時も忘れるべきではないと思うのであります。それはいろいろ楽観的な見解もあろうと思いますけれども、しかしそういう人々といえども、その点についての配慮というものは、これは内外経済の必要から考えまして片時も忘れてはおられないだろうと私は思います。しかもその景気情勢金融情勢の安定的な推移につきましての日本銀行の職責というものは非常に大きいのでございますから、私は、幸いに今平穏な情勢をたどっておりますけれども、片時もその必要に応じての調整策を忘れずに、常時安定的に持っていくことに気をつけて参りたいという所存でございます。これは日本銀行の当然行なうべき任務と考えております。
  25. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 同僚議員からもたくさん質問があるそうでありますので、私はこれで最後にいたしますが、先ほど私がちょっと問題にいたしましたデバリュエーション、平価切り下げという問題は、日本の現状では行なわれないだろうということを考えられております。しかし先ほども山際さんにお尋ねをしたように、デノミネーションの言葉が一言出ると株がすぐ上がるというような、そういう非常にデリケートな問題がやはり証券界にあるわけであります。証券業界の今の情勢というものは、現在のような位置でいいのかどうか、この点について先ほども総裁からいろいろ御説明がございましたが、私たちは非常に不安定なような感じを持つわけです。これは一般大衆の購買力の問題と関連いたしまして、株価の問題がいろいろと問題になることがあるのでございますが、そういう点についてはどういうお考えを持っておられるのか。最近買いオペの問題とか、日銀からもいろいろな発表があるようでありますけれども、その点を最後に伺っておきたいと思います。
  26. 山際正道

    山際参考人 御承知通り、証券界にあまりにもいろいろなことごとが急激に反映いたしまして敏感なる変動をするということにつきましては、むろんその実態的な問題が取り扱い上慎重を期さるべきことは当然でありますけれども、一面において、証券界自身のあり方についてもなお改善を要するところが少なくないのではないかという見地から、今証券取引審議会でいろいろその問題を審議されておりますし、また大蔵省におきましても、所管の行政機関として、この証券界のあり方の問題については、いろいろ御検討中のように承っておりますので、私は、両々相待ちまして、証券界自身としても、また行政上の見地からいたしましても、安定的に発展して参ることを願っております。私どももその点に沿って、及ばずながらできます範囲の協力を惜しまないという考え方でおります。
  27. 臼井莊一

  28. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 ただいまの佐藤委員の質問に関連することでありますが、私は山際総裁デノミネーションの一点にしぼって御質問を申し上げたいと思います。  まず、デノミネーションについての世評の中の時期尚早論、特に大蔵省筋の不要論に対しまして、総裁はただいまの時点でいかなる立場をとらんとするのでありますか、明らかにせられたいのであります。総裁は二月二十日の定例記者会見のおり、日本の八条国移行、円の交換性回復の問題を控えてデノミネーションは早晩当面しなければならない問題であるとされております。早晩とはおよそいつごろを考えておられますか、お答えをいただきたいと思うのであります。
  29. 山際正道

    山際参考人 私がその問題を数年前にここでお答えをいたしまして、また今日申し上げておりますその内容につきましては、実はそのつど申し上げておりますので、御理解をいただいておるかと思うのでありますが、私は、各国の各種の実例からいたしましても、やがてはこの問題をみなが考えなければならぬのではないか、特に通貨管理の、何と申しますか、価値の維持につきまして日夜考えております日本銀行といたしましては、非常に気になる問題であるのでございます。ただ私は、今がそれを実施する時期だとは実は考えておりませんし、そのことも申したことはないのでございます。要は、どうか各方面ともこの問題に深く一つ考えていただきたい。通貨価値単位というものが現状のままでいいかどうか、これは実体的な問題ではございませんけれども、むしろ制度的な問題であって、あるいは何と申しますか、形だけの問題だと言われるかもしれませんけれども通貨尊重観念という点からいたしまして、私どもが非常に気にいたしておる問題であるということを実は強く訴えたいのでございます。と同時に、その場合のやり方なり、その場合の準備をどうするかというような問題につきましては、これは各国の事例に徴しましても、相当の広範囲の準備、PRその他の措置を必要とする問題でございますから、私は急速には行ない得ない問題だと思っております。私は早晩という字を使いましたが、早晩というのはどれくらいかというお話、まことに恐縮なんでありますが、私はPRなり世間の理解の速度とも関連をいたすと思いますけれども、何年かかからなければなかなかこういうことはできないということを実は考えておるのでございます。その程度の問題と御了承を願いたいと思います。
  30. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 あなたは評論家ではないのであります。政策の衝にある最高責任者であるあなたが当面する問題と言うからには、いつから、またいかなる手順で事を運ばれようとするのか、これは国民の関心事であります。具体的に御見解をさらにお伺いしたいのであります。さしむき、三月四日の金融懇談会でデノミをさらに議題に供するお気持があるのかどうか、お伺いします。
  31. 山際正道

    山際参考人 私は、前から申しております通り、この問題は実は日本銀行自体の問題ではないのでございまして、立法を要し、その他行政上各般の準備を整え、しかもなお国会に御相談をして決定すべき問題であるのでございまして、なかなか私どもが職権上行なうという点からは遠い問題でございます。ただ、何と申しますか、一経済人といたしまして実に関心を深くする問題でございますので、そういう立場から申したのでございます。しからば、その当時も質問がございましたが、具体的にそのことを政府に進言するか、あるいは各界に対して協力を要請するかというお尋ねがございましたが、実は私は情勢がそこまで熟しておるとは判断しておりません。今のそころはまだその考えを持っていないということをその当時申しましたのは、実は情勢がそこまできておると思いませんために発言をいたしておるのでありまして、ちょっとこの問題は今のところ時期を画することがむずかしいと考えております。
  32. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 しつこいようですが、もうちょっとだけお尋ねをいたします。  山際さんは、二月二十日の定例記者会見で、日本の八条国移行、円の交換性回復の問題を控えてデノミネーションを行なう必要が生じておる、そういうことを仰せられた、その言葉から私どもが判断いたしますと、やはり交換性の回復は目前に控えておるのですから、時期としてはこの両三年のうちと判断されておるのではないか、しこうして、かかる判断に立たれる限りにおきましては、公開の討論こそがデノミに関しての間違った思惑を封ずる最良の方法として、あえて百家争鳴のきっかけの役を演じてきたのではないか、われわれはかように判断しているのですが、どうですか。このくらいでしたらお答えいただけるのではないかと思いますが……。
  33. 山際正道

    山際参考人 私は、その問題につきまして、自分から一つここで世間に提議しようという気持はないのでございます。ただ、数年前にお尋ねを受け、また過般の記者会見においても、記者諸君のどなたからでしたか、御質問を受けたものでありますから、それについての自分の経済人としての考えを実は申し上げたのでございまして、残念ながらこれはまだその機運にきておるとは実は考えておりません。むろん今後為替管理もいろいろ変化を受けましょうし、通貨制度も改変をされましょうが、その機会に一環の問題としてこの問題が研究せられ、討議せられることを実は望んでおるという意味合いでございます。
  34. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 初めは脱兎のごとく終わりは処女のごとしでは、どうも格言の逆になります。あなたが注意深く御発言になることもよくわかります。しかし、あなたの発言をきっかけにしてわれわれがこの場で論議すること自身も、一つの啓蒙運動になると思うのです。そういうことで討論しなければならぬ。必ずデノミネーションはやるのだという前提に立ちまして、少しく議論を深めまして御意見を徴したいと思うのであります。もし日本デノミをやるとした場合は、フランス、西独等の、西欧諸国の多くが行なったデバリュエーションを兼ねてやるべしと考えるか、それとも最近フィンランドで行なわれたごとくデノミネーション・オンリーとしてこれを行なうべしという意見であられるかどうか。これは大前提がありますけれども、お答えをいただきたいと思います。
  35. 山際正道

    山際参考人 私は通貨価値の転換、切り下げの問題は全然考えておりませんし、今までの十数年にもわたるこの為替相場、通貨価値の対外的評価の維持という事情からいたしまして、その必要は全然ないと考えております。にもかかわらず、なおかつ国内における通貨尊重観念を増すという考えからこの問題はなお研究に値すると考えておりますので、お示しのような切り下げ意図は全然ございませんし、かつその必要はないと考えております。
  36. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 さらにお尋ねいたしますが、デノミの利害得失が種々あげられております。プラスの面といたしましては、インフレの膨大数字を簡便化し得る、通貨価値単位を引き上げることによって内外国民通貨に対する信頼感を取り戻し得ること、それで特に外国為替との開きを少なくしてやたらにまるをつける手数を省いて、外国物価との比較を容易にすることによって自国経済の国際的地位をわかりやすくするというこの点は私は非常に大切なことであろうと思うのです。自由化ということは世界的な競争場裏に立つことですから、自国の力かげんというものを知らないということは非常に不便であると思うのです。そこでフランス等におきましても、デノミによりましてドイツ・マルクとスイス・フランに拮抗するものとなりましたし、当時の米国予算六百九十億ドルに対し、フランス予算六百四十億重フランということで、自国の予算が米国予算の五分の一だということがすぐわかる、こういうことが大切だということは当時フランス政府筋が言っておったと思うのであります。こういう点は非常に大切なことと思うのであります。  それから逆にマイナス的な面といたしましては、銀行券や補助貨幣発行による出費の増高がございます。それから株券、伝票等の印刷から、タクシー・メーターや金銭登録機のつくり直し、算数教科書の改訂等文教上の障害、それから全体の物価同士の間の比較感から割安物の改定高となる傾向、すなわちでこぼこ修正が高いものに押されて行なわれがちであり、フランス式の二通り通貨をある時期の間併用する方式をとりました場合でも、よほど注意しないと徐々に物価引き上げを招くということ、こういう点も欠陥であるし、また商業活動に混乱を生じがちであるということ、これらは欠点であると思うのであります。  利点に目を向けますればデノミは断行すべしという意見になるし、欠点を強調すれば大蔵省のにべもないところのデノミを断行する理由は少しもなく混乱を招くだけだという結論になると思います。山際さんが参考視するところのフランスデノミネーションについてもこさいに検討いたしますと、フランスに個有の理由が顕著にあったはずであります。新フランの採用をもってフランス経済の立ち直りを印象づけんとするドゴールの意欲がそのまず尤なるものであります。第二にEEC諸国の通貨価値に近づけることは、将来のEECに予見せられるところの統一通貨のための必要な伏線であったということ、さらにわれわれの最も留意すべき第三の理由は、一般に株券の額面変更に伴う思惑発生がデノミのための大障害になりがちで日本の場合に最も心配されることでございますが、フランスでは振替決済制度をとっておりまして、株券の実際の授受が行なわれてないということ、この制度がありまするがゆえに非常にスムーズに行なわれ得たと思うので、この点に関しまして、日本の場合はよほど違うのじゃないか。さように思われるのであります。また日本の場合には券面額の過少という内在している問題がデノミ決行に際しまして一ぺんに現われて、ために重大な混乱を起こすような思惑横行が予想されているのである。そういうことを考えまして、私はいろいろ諸欠点とかあるいは困難とされる要因のうちで特にこの株式の一点にしぼりまして、総裁の所見をこの際承っておきたいのであります。要するに振替決済制度でない日本の株式市場が、デノミネーションに踏み切るための非常な障害になるということ、それを除去する適切な方途はどういうことかをお伺いしたいと思います。
  37. 山際正道

    山際参考人 私が賛成の意見を申し述べました点は、通貨価値の維持に専念いたしておりまする者としての実感に基づきまして、切にそれを希望いたしたからでございます。それにつきまして広範な種々の研究が必要であるという点は、まさにただいま御指摘がありましたような点についての各方面それぞれの立場における研究促進して参りたい。あるいはその結果、なるほど通貨尊重観念はふえるかもしれないけれども、半面より多くの欠点があるからだめだというお話もそれは成り立つかもしれませんが、いずれにしてももう少し各方面研究を進めていただいて、その研究を総合的に御判断願うということにする必要があるのではないかということを思いまするがゆえに、実は申し上げておるのでありまして、私、特にこの証券界の方面への影響等につきましての研究を実は持っておりませんので、ただ研究してもらいたいと申しておるにとどまるのでございます。
  38. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 最後にEECの中で取り残されている国はイタリアであります。そこでEEC筋からの報道であるとかいろいろなことが流布されましたが、一時イタリアがやはりデノミネーションに踏み切るといううわさがずいぶん立ったわけであります。イタリア政府の公式的な見解はデバリュエーション、デノミネーションを否定するということになっておるのでありますが、総裁自身はこのイタリア政府の見解と称するものをいかに受けとめておられるか。もしイタリアがそうであろうということになれば、日本デノミネーションを否定されることに傾きがちだと思うのですけれども、イタリアも案外やるのではないかというふうに総裁は判断せられておるのかどうか。日本とイタリアだけが例外だということからいたしまして、この点に関しましての所見は私どもの関心事でありますので、一つお伺いいたします。
  39. 山際正道

    山際参考人 今御指摘のごとく、ヨーロッパにおいて種々の国が大体実行しておりますのに今イタリアだけが残っておりますことはちょっと奇異の感を与えるわけであります。すでに私どもといたしましてもそれはイタリアとしての当然の理由があるからであろうと思うのでありますし、諸般の事情についてはいろいろまだ調査研究が整っておりませんので、とくとこれは研究いたしまして、参考にしたいと思っております。現状においてはせっかくのお尋ねでございますけれども、私まだイタリアの情勢に関して何とも申し上げるほどの見解を持っておりませんので、あしからず御了承願いたいと思います。
  40. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 最後と申し上げておいてあと続けるのは申しわけないのですが、先ほどお答えがなかった百家争鳴を買って出るというお立場であるとするならば、四日の金融懇談会にデノミネーションを問題の一つとして提起されるかどうか、その点だけお伺いしまして、私の質問を終わりたいと存じます。
  41. 山際正道

    山際参考人 四日の会合には御招待を受けておりますけれども、私はその際にこの問題を提起する考えはございません。もうすでに各方面でも研究が始まっておるかもしれません。まあ当面そのことを具体的に提起する考えは持っておりません。
  42. 臼井莊一

    臼井委員長 有馬輝武君。
  43. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 私は、先ほど総裁からお話のありました金利政策にしぼりまして、一、二の点をお伺いいたしたいと存じます。  つきましては、最初に三十六年一月の施策というものが、時期的に見て、あるいはその他のファクターからどのような効果を発揮し、また巷間言われておるように、今度総理なんかが積極的にならないのも、あの当時の事情がある程度影響しておるんじゃないかというようなことも言われておりますが、この三十六年一月の施策に対する総裁としての顧みられたお考え、所信といいますか、そういったものについて、お聞かせをいただきたいと存じます。
  44. 山際正道

    山際参考人 三十六年一月のことというのは、多分金利低下のことであったかと思います。実は、あの点に対する私の反省は、やはり時期を多少おくらせ過ぎたという気がいたしました。すでに発表いたしております私の見解では、あのときに実際上非常に妨げになりましたのが、郵便貯金の金利を下げ得ないということであったのであります。これは当時国会関係がございまして、ほかの金利は大体行政官庁のお考えによりまして委任されておるのでありますけれども、立法事項でありましたために、それに伴って時期がおくれたという実は感想は持っておりまして、そのことを申し述べたことがございます。そしてまた、願わくは他の金利一般と同じように、郵便貯金の金利もなお一括して政府の行政措置にゆだねるような御立法を願った方が、将来のためにはいいのではなかろうかという感想を申し上げたのでありまして、その感じは現在も実は持っておるのでございます。何しろ経済のことを前もって予測いたしますことは、非常に困難なことが多いものでございますから、今残っております印象としては、その感じが実は残っておるのでございます。十分その当時のことは参考といたしまして、今後に処したいとは考えておりますが、今お尋ねによりましてお答えできるのは、その程度のことでございます。
  45. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 今度金利引き下げの問題が話題になりますときに、これは大蔵大臣もしょっちゅう環境づくりということを強調しておられますし、また総裁の先ほどのお話の中にも、そういった点を強調しておられたのでありますが、問題は、タイミングを誤ると、効果がないどころかむしろ減殺される場合が多いのであります。そういう意味で、この環境づくりについて、総裁としてどのような点を考えておられるのか、これをお聞かせをいただきたいと思います。
  46. 山際正道

    山際参考人 全体としての金融緩和措置によりまして、金利が次第に低下していくということは、われわれも実は企図しておるわけでございまして、すでに昨年末の二次にわたる公定歩合引き下げに伴いまして、漸次各銀行等の実効金利は下がりつつあります。なお下がりつつある過程にあると思うのであります。かくのごとくいたしまして、金利も自然に下がってくる関係にあります。また、ただいま税法上預貯金を優遇するという措置も御審議中と承っておりますけれども、これらもやはり資金蓄積を増強いたしまして、また一面においては、各企業においても自己資金の充実、そのためには証券市場等の整備ということが関連いたしまして、要するに各金融機関日本銀行に対する依存度をそれによって低下せられて、漸次そういう各種の環境がそろいまして、自然に金利低下していくという情勢を誘致することが一番堅実な策ではないかと実は考え努力しておりますし、漸次その方向に事態は動いていると存じます。
  47. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 今お話しのように、利子所得課税の優遇措置等の問題についても、法律案を通じて検討されつつあるわけでありますが、やはり金利低下の条件というものはほっておいたのではできないのじゃないだろうか。ほっておくというのは、日銀が何らかの積極的な手を打たない限り、そういった条件はただ言葉だけに終わって、環境づくりをやるべきだということに終わってしまうおそれがあるのじゃないかと思いますが、具体的に日銀としてどのようなことを特に考えられるのか、いま一度お聞かせをいただきたいと存じます。
  48. 山際正道

    山際参考人 金利低下に必要な条件といたしまして、たとえば公定歩合を下げればそれで金利低下してしまうというように簡単なふうにはいかぬと実は思います。先ほど申しましたように、方々から諸般の条件がそろいまして、次第に全体が下がっていくという態勢を充実しなければならぬ。むろん日本銀行の態度もそのほかに重要な要素を占めますことは御指摘通りであります。昨年末公定歩合を下げました際にも、通貨供給の方法を、単に銀行貸し出しという方向ばかりではなしに、いわゆる買いオペレーションと申しますか、債券売買のルートを通じて資金を必要とする方面へ供給することによりまして、漸次市場における需給関係緩和することによって金利低下を策するという場面もあろうかと思います。私は、日本銀行措置がかえって金利低下を急ぐのあまり逆効果を生じない範囲において、着実にその方向へ進めて参るという措置は惜しみなくとって参りたいと考えております。
  49. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 今の問題に関連しまして、高率適用の廃止の問題があると思うのです。コール・レートで、とにかく無条件のもので、日歩二銭二厘、それから月越しのもので日歩二銭六厘、こういった状態について、やはり当然これは高率適用の廃止の問題が話題に上ってくるわけでありますが、その点に対する時期的の問題その他について、率直にお聞かせいただきたいと思うのです。
  50. 山際正道

    山際参考人 金利低下の問題と関連いたしまして、例の高率適用の問題は、私は、全然関係はないとは考えておりませんが、高率適用制度の昨年の新方式採用にもかかわらず残しました理由のものは、何がしかでも銀行オーバーローン体制是正にそのことが役立つことを願って実は設けましたものでございます。設けましてからまだ三ヵ月しかたっておりませんが、その後の様子を見ておりますと、漸次銀行の経営態度も慎重になりつつあるように思いますので、私は、自分の気持といたしましては、この制度は長く置こうとは考えておりません。これは撤回してもいいという時期のくることが一日もすみやかならんことを願っておりますので、だんだんそういう方向へ後退していきたいと実は私は考えておりますが、申し上げましたように、まだ常時注目いたしまして研究は続けておりまするけれども、始めましてまだ三ヵ月、その効果の良否を十分見届けるまでに至っておりません。今後なお御趣旨の点に沿っての注目を続けたいと考えております。
  51. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 今の問題に関連しまして、やはり市銀筋の率直な意見としまして、日銀貸し出し態度というもがきつ過ぎる、勢いコールは下がらざるを得ない、こういう意見があることは幸い総裁もある程度聞いておられるだろうと思うでです。率直に言いまして、とにかく一面からは、日銀引き締めには非常に熱心だけれども引き下げに対しては消極的であるというような意見があるわけでありますが、その点についての総裁のお考えを伺わせしていただきたいと思います。
  52. 山際正道

    山際参考人 前段のお尋ねの問題は、ただいま申し上げました通り、もともとがあの制度銀行の仕方というようなものを是正したいということを目的でやっております。漸次これは事態改善とともに交代することは申し上げました通りでございます。  次のお尋ねは、日本銀行引き締めに熱心であるけれども引き下げにはあまり興味を持っておらぬらしいというお尋ねでございますが、これは私は自分としてはそう考えておりません。ただ引き下げがどうか一つ弊害を生ぜずして、全体として均衡を失わずに下がっていくということを実現したいというふうに考えておりますので、基本の方向は機会あるごとに低下の方向に向かっていきたいということは、申し上げて差しつかえないと思います。
  53. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 もちろん慎重を期せられるという背景にはやはり経済全体を見て、特に景気に与える刺激的な要素というものについてのお考えが背景にあると思うのですけれども、一方では国際水準へのさや寄せということが言われる、そういう方向に向かっていかなければならない問題は、先ほど公定歩合の問題について佐藤さんからもお話がありましたが、ただイギリスが幾らだから、ドイツが幾らだから、イタリアが幾らだからという観点からは、割り切れない問題があろうと思います。それはどの程度かというものさしがおのずから必要になってくるだろうと思いますが、この一つのめどというか、そういった点についての総裁のお考えを伺わせていただきたいと思います。
  54. 山際正道

    山際参考人 日本の一般貸し出し金利水準がどの程度にあればいいかというようなことを具体的のレートで申し上げることは非常にむずかしいと思います。これはある程度沿革的、歴史的に自然に移り変わる問題でございますから、抽象的にこうということも、なかなかむずかしいと思います。しかし前段申し上げました通り、昨年の引き下げ以来現実金利低下の方向をたどっております。一月末で集計いたしましたところによりますと、十二月までに引き締めの当時それに伴って一般金利が上がりました半ばはすでに低下を見ておるようでございまして、なおかっこの勢いは漸次浸透しつつあるものと考えております。それで諸般の情勢を見まして、今御指摘のような各般の関連する情勢を見きわめました上で、日本銀行金利政策というものは行なわるべきものであるというふうに考えております。これを非常に注視いたしまして、国際金融情勢におくれないようにやっていきたいと考えております。
  55. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 それから第二点の、大体国際金利にさや寄せをするというけれども、大きな幅がありますですね。それをどの程度まで近づかせようとするのかという点について、いま一度お聞かせをいただきたいと思います。目標です。
  56. 山際正道

    山際参考人 これを具体的に申し上げますことは、先ほど申しました通り非常にむずかしい。金利も先ほど申し上げましたが、取り方によりまして、その割高の程度が違います。一番問題になりますのは、これはやはり貸し出し金利ということになるだろうと思います。これは今申し上げました通り、逐次引き下げの方向に努力しておりまするが、何と申しましても基本の銀行オーバーローン体制、企業オーバー・ボローイング体制というものがやはり相当伴って参りませんと、欧米並みの水準というところまでなかなかいきかねると思っております。欧米自身金利水準も実はしょっちゅう動いております。国際競争上十分負けない程度に一つ日本企業を立ち向かわせるために必要な程度に下げていくということ以外に、もう何厘下げればどうなるというふうにはちょっとむずかしい問題でありまして、申し上げかねると私は思います。その程度で御了承願いたいと思います。
  57. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 来月三日か四日ですか、金融懇談会その他でも、当然この金利引き下げの問題が話題になるとすれば、やはり貿易自由化の問題等も関連しまして、具体的にはどういう形でということ、それをやるやらないは別としまして、それなりの意見が交換されなければ意味がないと思うわけです。その際に、めども持たないで、ただ金利はどうにかしなければいかぬというだけでは、これはもう話にならないわけです。しつこいようでありますけれども一つ日銀総裁として、それに対する一つのめどといいますか、それをお聞かせをいただきたいと思うわけです。
  58. 山際正道

    山際参考人 今おそらく話題になるだろうと思いますことは、金利引き下げに関連いたしましては、実質金利引き下げ問題を私は申しております。歩積み、両建の問題でございます。そういう問題はおそらく話題になるかと思いますけれども、しからば一般の貸し出し約定平均金利をどの程度というめどはこれは企業ごとに違い、非常に差がございますので、なかなか標準を示すことはむずかしかろうと思います。申し上げましたように、前年の金融引き締め措置をとりました当時の金利にまでも実はまだ下がってませんが、少なくともそこまではいき、さらにそれ以上に金利は下げてもらいたいということを言えると思います。預金量もどんどんふえて参ることでございますし、銀行の各般の合理化も進行いたしておりますから、その実現の可能性は多かろうと考えております。
  59. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 この金利の問題と関連いたしまして、外資の問題がいろいろ取りざたされております。短期もの、長期もの、いろいろそれぞれの観点から論議されておりますが、そういう論議は抜きにいたしまして、外資の導入と関連して、金利の問題とどの程度にあれするのか、チェックするのがいいか悪いかどいう論議は抜きにいたしまして、現在の外資の入っておる状態から見られまして、そのチェックの機能とあわせ考えて、どの程度が現在の国際金利状態から見て適当だと思っておられるか。これは裏返しの質問ではなはだ恐縮なんですけれども、お聞かせいただきたいと思います。
  60. 山際正道

    山際参考人 外資のうち、いわゆる短期外資、わかりやすく申しますと、国際的なコール・マネーのようなものの移動の場合は、私はある限度にとどめておくことの方が、内外金融措置上しかるべきかと実は思うのでございます。それから申しますとすでに相当量入っております。このことはむろん日本経済力を信頼しておることではございますけれども、いろいろ金融政策を行なう上から申しますと、率直に申しまして、大体この辺の程度でいいんじゃないかということを実は考えております。あまり入り過ぎてもというので、大蔵省の方で指示されまして、為替管理法上の運用として、あるいは金利低下するあるいは準備外資の積み立てをするなりの措置をとっておられるのでありますが、私はやはり多々ますます弁ずというわけには参らねと思いますので、大体この辺がいいところだというふうに考えております。
  61. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 最後に、私は普通貸し出しの金利なり、公社債その他政府保証債と、この金利体系のアンバランス、この点については、先ほどの環境づくりの一環としましても、これを手直ししなければならねと思うのでありますが、これについてのお考えを伺っておきたいと思います。
  62. 山際正道

    山際参考人 今のような銀行資金の運用の仕方あるいは各種の金利間のアンバランスの問題であるとかいうことが、今後のいわゆる金融正常化の重要な問題として考えられておることは事実でございます。現在御承知通り金融制度調査会ではあらゆる問題を取り上げまして、いかにすればそれが是正されていくかということを検討されておりまして、近くその答申が出るように承っておるのであります。一方、証券市場の問題につきましても、証券取引審議会においてちょうど今、いかにすれば証券市場の正常化に役立つかということの研究が行なわれているようであります。むろん私どもその結果を非常に期待いたしておりまして、その答申の線に沿いましてできるだけの協力をしていきたいと考えております。
  63. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 あと武藤委員広瀬委員、また春日委員からも御質問があるようでありますし、また時間が一時までに限られているようでありますから、いずれまた機会を改めてお伺いすることにいたしたいと思います。
  64. 臼井莊一

    臼井委員長 広瀬秀吉君。
  65. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 総裁にお伺いいたしますが、先ほどのあなたの方の中で、これからの景気の見通しが一部語られたわけでありますが、今の景気局面は不況の底入れという段階だろう、こういうお言葉であります。これが好況に転ずるにはなお相当の時間がかかるだろう、こういう見通しを述べられたわけでありますが、ことしの政府経済見通し等も、まあ上期は大体横ばいであろう、下期になってかなり急激なカーブで上昇を見るのじゃないか、こういうようなことが一般的にいわれておったわけであります。最近政府筋では非常に強気に転じまして、われわれの予想よりももっと早い時期に、予算の基礎になった経済見通しよりももっともっと早く好況局面に入っていくのではないかというようなことを述べておるわけであります。そういった観点から、総裁は、底入れから上昇局面に転ずる一定の期間というものが景気循環の法則的なものからもあるのだ、こういう意向でありますが、その一定の期間というものをおよそどのくらいにお考えでありましょうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  66. 山際正道

    山際参考人 前回の引き締めの際に、たしか予算委員会でございましたか、ちょうど同じようなお尋ねを受けたことがございますが、この問題は、各般の条件が予想通りいくかどうか、また一そうの努力によってもっと促進されるかどうかというような相関的関係にある事情が非常に複雑でございます。前途の見通しを的確に申し上げることはなかなかむずかしいと思いますし、またかえって人を誤ると思いますので、私はそれはしいて言わないことに考えております。ただ前回の経験から申しますと、それは三十三年、三十四年ごろの経験でございますが、景気底入れ状態に達してから立ち直って上向きの状態に経過いたしますためには数ヵ月を要しております。この例から申しましても、今御承知のように目前にいろいろな問題を控えております。たとえば過剰設備があって、その過剰設備が相当需給関係を圧迫しておる、あるいはコストが非常に上がりまして、そのコストのために利潤が低下しておる、いろいろな問題がございますし、一方ではいろいろ整理を要する産業等もございますし、また今問題になっております強化を要する産業なども少なくないのでありますからして、前途に問題がいろいろあることを思いますと、そう急速な立ち直りを期待することはなかなかむずかしいのではないかということが思われるのでございますが、しからば何ヵ月かかるかという問題になりますと、それはまあ各方面努力次第にもよりますし、内外情勢の変化にもよりますので、的確に私としては申し上げかねるような事情でございます。
  67. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 的確な見通しを言えといっても、これは責任ある総裁としてむずかしいかもしれません。従って、この問題は時間もございませんからこれ以上お聞きいたしませんが、今の総裁の言葉の中から私ども想像をしていきたいと思っているわけです。  ただ、もう一点お伺いしたいことは、公定歩合の一厘引き下げということが、四月になるだろうとか、あるいは三月過ぎになるだろうとか、その時期は時期といたしましても、いずれにしても早晩ここ一、二ヵ月の間には少なくとも一厘引き下げはあるだろうということは、目下もうほとんど常識的になっているようであります。今総裁が言われましたように、景気局面が上昇に転ずる時期ともこれをやる時期というものは非常に大きな関連があり、また経済に非常に大きな影響を及ぼすのじゃないかと思いますが、先ほども総裁が言われたように、昨年の公定歩合引き上げ以前の状態に戻して、それ以降の推移というものが、経済金融全般的に非常に落ちついた、安定した状況にある、こういうことがずっと今まで続いてきている、これを今度はさらにこういう事態の上に乗って、公定歩合引き下げ、国際水準へのさや寄せ、さらに海外競争力の強化、貿易自由化に対処する、こういうようなことを考えられるとするならば、やはり景気局面が上昇したときにおいてまた下げるというようなことになりますと――前回の経験から申しましても、公定歩合の操作が非常にタイミングを誤ったということによって景気加熱状況を迎えたというようなことからも、その時期というものを非常に慎重に考えられておると思います、やはり上昇局面に転ずるというような事態の中でそれをおやりになるとは私ども思わないわけでありますが、そうしますと、総裁の今の景気の見通しと関連いたしまして、少なくとも四月ごろには一厘下げというような事態が出てくるのじゃないかと思うわけでありますけれども、それらの点についてはどのように御判断でございましょうか。
  68. 山際正道

    山際参考人 公定歩合変動の問題は一にかかってそのときの経済情勢のいかんでありますことは、もう御承知通りであります。今全体の趨勢、環境がだんだん熟して参りまして、金利も今申し上げました通り昨年の引き下げ以来現実に下がりつつあるという例から申しますと、だんだんと金利が下がってくるという方向をたどっておるということは間違いはございません。一面において、今の景気の段階は、申し上げましたように、ちょうど底入れかかっておるけれども、しかし前途には困難な問題があるということでもございます。諸般の情勢をかみ合わせましてこのときと思うときにやるのが実は公定歩合操作でございまして、それは政策委員会というのがございまして、その委員会の決定事項になっておりますので、むろんそれまでには常時経済の変動に注目し、かつ各方面の御意見も十分承っておきまして、時をあやまたずにやりたいというのが私どもの念願でございます。ただ、これをスケジュールに乗せて、いつごろというふうにはなかなか運びかねる性質の問題でございますので、その点は一つ私の申しましたことで御了承いただきたいと思います。
  69. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 何月というようなことでなくても、抽象的にでもけっこうなんです。総裁のお言葉でいうところの落ちつきと安定といいますか、こういうムードの中でそれをやられるのが当然だろうと思いますが、そういうお考えでございますか。
  70. 山際正道

    山際参考人 その時期を予断いたしますことは、世間に与える影響も非常に大きゅうございますし、軽々に申すべきことではないように思います。ただ諸般の情勢上これが許す状況になれば、果敢にこれを実行するという程度に申し上げるよりほかないと思います。一にその判断はそのときまでお待ち願わなければならぬということに御了承いただきたいと思います。
  71. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 それではそのように承っておきます。  次の質問はちょっと妙な質問になるかと思うのでありますが、今日、一ドル三百六十円という対米ドル比価というものが公定されてからすでに十数年経過している。今日のこの一ドル三百六十円というものは、総裁考えと諸般の情勢の判断によれば一体円安なのか、円高なのかという疑問を絶えず私どもは持っておりますが、これも及ぼす影響が非常に大きいと思いますが、総裁の率直な感じとしてはどのように考えられておりますか。
  72. 山際正道

    山際参考人 通貨の持つ購買力低下がどういう状況にあるかという問題は私どもも非常に注意深く研究いたしておる問題でございますが、今御指摘のように十数年前に三百六十円ときめます場合には、きめられることによって各方面とも割高と割安の問題が非常にあったのじゃないかと思います。とにかくそれがある基準によってそこに決定をされました。自来すでに十数年たっておりますので、むしろ諸般の経済情勢が一ドル三百六十円ということでもって調整されてきておると思うのでございます。従って私は、今日のこの歴史的事実を完成しておる現段階といたしまして、これが今ちょうどいいところにきておるのであって、これを中心に経済の発展を考えてしかるべきであると存じております。
  73. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 先ほどからデノミに対していろいろ総裁のお考えを伺ってきたわけでありますが、総裁の談話がデノミについて出たとたんに株が上がったという。これは日本経済――先ほど総裁は株式市場が非常に敏感過ぎるというようなことを言われたわけでありますが、一体こういうような現象はどういうところから出るのでありましょうか、一つ教えていただきたいと思います。
  74. 山際正道

    山際参考人 やはりいろいろな経済上の現象に対する一般の理解というものが徹底していないということの結果、揣摩憶測が出るのだと実は思うのでございます。これにつきましても、事経済上の問題はなるべく慎重を期して、同時にまた弊害が起こらぬ方法においてなるべくPRに努むべき問題だというふうに痛感する次第でございます。要は一般の知識の啓蒙、またその考え方の普及ということにおろそかであってはならぬと思うのでございます。これは行き渡っておりますると、もうあたりまえのこととして受け取られるということになろうかと思うのでございます。
  75. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そういうことでなくて、やはりデノミネーションは早晩当面せざるを得ない問題だ、こう総裁が言った。このことに対して株式市場において、いかなる点でか総裁考え方に好感というか、こういうものを持たなければ、株価が翌日急に上がるというようなことはないはずでありますが、その点一つずばり聞きたいと思うわけであります。
  76. 山際正道

    山際参考人 私が記者会見で語ったということで、その晩に株が上がったというのでございますけれども、翌朝の新聞をよくごらん願ったらたちまちそれがもとへ戻ったというような状態でございまして、特にその研究なり理解なり行き渡っておれば刺激的な問題ではなかったと私は思います。やはり過去における新円の切りかえあるいはインフレとかいう問題がございましたので、切り下げの問題と混同されがちな性格を持つという点があるだろうと思うのです。この点がわれわれといたしましては最も注意を要する点である。今後一そうこの点については十分の注意を払っていきたいと思います。
  77. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 デノミをかりにやった場合に、おそらく百円を一円というような形になるわけだと思うのですが、円の価値というものを戻してくるわけでありますが、そうなりますと、今の二兆八千五百億というようなものも大体二百八十五億というようなことになってくる。それから数万円の月給を取っておった労働者などにいたしましても、これは二百何十円かになってくる。あるいは三百円というように名目上そうなってくる。こういうようなことになりますと、今の大きな膨張した通貨体制の中で今日まできたわけでありますが、そういうものに非常になれてきた、そこへ急にそういうようなことがありますと、これは総裁のお言葉を借りれば実態を知らない、誤解をしているからだということになりまするけれども、これの及ぼす心理的な影響というようなものは、非常に労働者なんかは貧乏になったようなことにる、そういうような雰囲気の中からインフレ的な傾向がかえって助長されるのではないのか、こういうような点も心配をされるわけでありますが、デノミをやった場合のそういう心理的な効果、それが意外に経済局面を大きく転換させるような転機になりはしないかというようなことを心配するわけでありますが、そういう点どういう御判断でございますか。
  78. 山際正道

    山際参考人 お尋ねのような点はわれわれとして最も心配をし、かつ留意を要するところと考えております。先ほど平岡委員お尋ねのございましたときに申し上げました通り、それらのことを十分考えた上のことでなければ、このことたるや実行はできない、こういうことを申し上げておるわけでございます。しかし一面において、貨幣価値を何とか高めまして、みんなが貨幣尊重資金尊重の念慮を厚くするということはこの際において望ましいことと思いまして、私はあえてその研究課題を提供しておるつもりでありまして、願わくば各方面ともその点についてのいろいろな御配慮をわずらわしたいと思っておるわけであります。
  79. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 時間がありませんから、次の質問に移りますが、先ほど総裁オーバーローン企業の側からすればオーバー・ボローイング、こういうようなことは日本だけの特徴だ、こういうようにおっしゃられたわけであります。オーバーローンが確かに今日の金融不正常の非常に大きな要素を占めておることは事実でございますが、そのためにコールが異常高を示した、これも若干最近では落ちつきを取り戻しておりますが、このことがあるわけであります。一体、原因がなくしてのオーバーローンというようなものが好ましい姿でないことは企業家でも銀行家でもだれでも知っておるわけです。しかし、オーバーローンというものが、日本金融界ではいつでも戦後ずっと問題になってきた。これをいかにして解消するかという問題に金融政策の非常に大きな重点もかかってきたわけでありますが、なかなか解決がつかないできた。今日も依然としてそういう状況にまだある。非常に緩和基調になっても、まだ預貸率というようなものも都市銀行あたりを見ましても九〇%程度をかなり大きく上回っておるというような現状にもあるわけです。私どもはこのオーバー・ロンというものは、やはりどんどん銀行が金を日銀から借り出す、そうしてまたそれを企業家に目一ぱいに貸し出してしまう、こういうようなことが解消されないということは、やはり企業といいますか、産業資本といいますか、そういうもの、あるいは商業資本でも同じでありますが、これが非常に高利潤であるということを意味しておるのではないか。高利潤が上がるから高利の金でも借りる。どんどん他人資本を借りてくるというようなことがあるのではないか。むしろその中には金を借りさえすれば、金利なんかはちっとは高くてもいいというマインド、そういうビヘービアが銀行にも企業家にもあるのではないか。依然として企業にとって高利潤である。これは諸外国に対しても高利潤があった。金利が国際的に非常に高くてもそんなことはもう問題にしない、それほど高利潤が上がっておったということを意味しておるのではないかと思いますが、その点についてはいかがでございましょうか。
  80. 山際正道

    山際参考人 いろいろな内容の問題についてのお尋ねがございました。  まず、第一のオーバー・ロン問題でありますが、これは銀行の方の側にも、また企業の方の側にもそれぞれいろいろな理由があるだろうと思いますが、銀行の方から申しますと、やはり企業系列の問題ということに習慣的に日本経済ができております。これはどういうことかと申しますと、直接金融方式つまり株式、社債による大衆の投資というものが未開発でございまして、どうしても銀行預金という形で資金蓄積される。その銀行預金を必要に応じて銀行が供給するという制度のもとに企業が発達しておるなごりが残っております。オーバーローンを解消いたしますためにはどうしても証券市場なり社債市場を振興いたしまして、そうして間接金融方式をなるべく直接金融方式の方へウェートを高めていくことが必要だろうと思いますが、これは銀行にしても俗に言うシェアという問題がございまして、なかなか系列との縁が切り得ないということもございましょうし、また企業家の側から申しますと、いま一つはお話しのように企業の利潤率が割合に日本は高いということで、その結果たとえば配当率のごときものも国際的に見れば割合に高いところが多いというようなことが、結果と申しますか、あるいは原因していると申しますか、ということも関連しておろうかと思います。これらはいずれもどれをとればそれで直るということではございませんで、すべての関連する面において漸次資金のコストを下げていくということでなければならぬと思うのでございます。  もう一つの問題は、日本銀行のサイドにおいても努力を要するところがございまして、たとえば日本銀行経済の拡大につれて必要とする通貨を従来は貸し出しという方式でやっておりました。つまり銀行オーバーローンの形に拍車をかけたわけでございます。それではいかぬというので、昨年の秋から御承知のように経済の自然の発達、拡大に伴う所要通貨はむしろ証券操作、買いオペレーションと言っておりますけれども、あの方向を通じて供給すべきではないかということに踏み切りまして、これがやはりオーバーローン問題の着実な解決に役立つようにということで運用いたしておるのでございます。これらの問題は、その関係するところが非常に広いのでございまして、私の考えといたしましては同じ歩調で各方面から問題を責めて参りまして、安定的に解決に向かうというところに運びたいと考えて実は努力いたしておる最中でございます。これらの問題につきましてはちょうど先ほども申し上げました通り金融関係については金融制度調査会、証券関係については証券審議会によって取り上げられている問題でございます。私どもといたしましては、その答申に期待いたしておる次第でござざいます。
  81. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 証券市場、株式市場、特に債券市場を育成することもこういう問題を解決する大きな問題点であるわけでございますが、企業が高利潤をあげているというところに非常に大きなウェートを私ども考えておかなければならぬと思うのです。高利潤を是正とするという立場も、一つその中で十分考えていっていただかなければならない。特に最近金融正常化の問題をめぐって歩積み、両建をどうして解消していくかという問題が非常に大きな問題になりました。日銀で先刻新聞紙上等に発表したところによりましても、都市銀行は大体中小企業等が主だと思いますが、拘束預金一〇%くらいあるだろう、あるいは地方銀行になりますとこれが二〇%、あるいはまた相互銀行等になりますとこれが五〇%くらいあるだろう。これが表面金利を大きく上回った実質金利高というようなことをいっておるわけであります。これは今度行政指導等を次第に強化いたしまして、できるだけ解消の方向に持っていこうという強い施策が講ぜられつつあるわけでございます。そういうことになりますと今度は預金をふやさなければならぬわけであります。個人預金をふやさなければならぬ。そういったところで先ほどの高利潤の問題と預金をふやす、すなわち可処分所得を国民の各階層、特に低所得階層にふやしていく、これは先ほどの高利潤と関連をして、もっと国民の働く者の可処分所得をふやすということと預金増強というものが非常に関連を持ってくると思うのであります。単に預金利子あるいは配当などに対する税制面の経過措置をやるというようなことで預金というものはふえるものではないと思うのでありますが、そこらの点についての総裁の御意見一つこの際聞かしておいていただきたい。
  82. 山際正道

    山際参考人 御提起になりました問題は、なかなかこれは広範囲な経済的内容を持つ問題でありまして、私ども業務の立場からだけではなかなか的確なお答えがいたしかねる問題かと思います。歩積み、両建の問題につきましては、これは御指摘通りで、鋭意これからその解消に努力をして参りたいと思っております。預金をふやすために可処分所得の増大をはかるべきではないかというお尋ねにつきましては、これは実は個人的な問題でありまして、もし端的に申しますことをお許し願えれば、これは政治全体の問題であろうと思います。私どもは願わくばこの可処分所得のうちで貯金に集まるパーセンテージを高めていただきたいということを念願いたしておるのであります。お尋ねのように、それは関連は多かろうと思いますけれどもお尋ねに対しまして日本銀行としてのやり方いかんということになりますと、ちょっとお答え申し上げかねる問題かと思います。
  83. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 時間がないのでそれ以上申しませんが、銀行局長もうしろで聞いておられるわけでありますから、その点またあとで時をあらためて論じたいと思います。  それから外貨の問題でございます。自由化に伴って内外金融というものの一元化的な方向にだんだん向かってくる、こういうような事態に直面するわけでございますが、先ほど総裁はユーロ・ダラー等の現在のあり方というものが大体適当じゃないか、こういう判断をなさっておるようであります。大体現在では、ことしになってからだけでも二億ドルもユーロ・ダラーが流入しているということで、残高がおおよそもう五億ドルをこえているのではないかと思います。しかもユーロ・ダラーの基準金利が三・八七五%ですか、これに対して日本のユーロ・ダラー受け入れの金利は大体五%だ、こういうことになっておれば、しかも先ほど総裁もちょっと触れましたが現地貸しのワクの制限を取り払ったとかあるいは現地商社等の現地借り入れに対する保証ワクというものの制限もこれを大幅にゆるめた、こういうような事態なんかもあるわけであります。こういう事態から考えまして、このユーロ・ダラー等の短資というものがまだこれ以上どんどん流入する可能性が依然としてあるのではないかと思いますが、外貨準備率の引き上げというようなことで、ある程度これが国内に及ぼす――たとえは保証料のワクを取り払うということやあるいは現地貸しの制限を緩和するということで、これが陰に形をかえて国内にどんどん持ち込まれるということなんかもあり得ることであります。それらの事態考えますと非常に輸入系統を大きく狂わせるということもあるのじゃないか、いろいろな経済に対する悪影響というものがさらにふえる見込みの上に立って現在の程度ならばいいと言われるわけでありますが、これに対する影響の問題等、さらにこれがもっとふえてくるのじゃないか。これを総裁が望ましいというパーセンテージに有効に押える、これはもちろん経済の拡大等とまた日本経済がどれだけ力を持ってくるかということとも関連して、若干その数字は動くだろうと思いますが、当面これがどんどん入ってくるということは金融情勢全般としてあるいは日本経済政策全般として好ましいことではなかろうと思うわけでありますが、総裁のこれに対する対策についてお聞かせをいただきたい。
  84. 山際正道

    山際参考人 日本経済力が回復するにつれまして世界の余資がユーロ・ダラーというような形で流れ込んでくることは御指摘通りでございます。先ほども申しました通りもう大体この辺でいいんじゃないかという気持を持っておりますゆえんのものは、これらの金は非常に足が速いのでございまして、事あらばヨーロッパにも逃げ、アメリカにも逃げ、世界じゅうをぐるぐる回っております金でございまして、国内の市場を放置いたしますと、外的事情によって撹乱されるおそれがありますので、これは必要最小限度にとどめるようにするのがいいのだと私は考えております。これはヨーロッパの各銀行も同じような態度で臨んでおります。それに対する対策を見ますと、大てい金利引き下げる、あるいは担保率を大きくする、準備率を高くするというような方法で対処いたしておりまして、日本におきましても、私の記憶では、昨年来すでに四回金利引き下げ措置をとってきておると思います。今後も情勢によりましては同じような方法を強化いたしまして、非常に足の速い外資によって国内金融市場が撹乱されないように十分の注意を払っていきたいと思っております。
  85. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 やはりユーロ・ダラーの受け入れ金利というようなものは、情勢を見てこれからも下げていく、こういうようなお考えでありますね。イギリスの政府短期証券の金利が三分六厘二毛五糸から三分一厘二毛五糸に下げるということなんかも一月にとられたと思いますが、やはりそれ以来ずっと非常に足が速く日本にも向かってきておるというようなことがあると思うのです。従って、低金利政策の推進というようなこととも関連して、やはりこういうようなものについても適切な手が打たれるものと期待をいたすわけであります。  それから、最後にもう一問だけ伺いますが、これは国債整理基金特別会計の予算総則できめられておるわけでありますが、昭和三十八年三百三十二億の公債の借りかえが行なわれるわけでありますけれども、この借りかえの際、大体どのくらいのワクを借りかえるか、あるいはその借りかえの条件といいますか、こういうようなものは大蔵省との間でどういうことにきまって参るのですか。その点を明らかにしていただきたい。
  86. 山際正道

    山際参考人 満期になりました日本銀行保有の公債の借りかえにつきましては、従前は大体そのまま借りかえに応じております。これは財政の、ことに政府の金繰りの関係もございますので、私どもの立場からいたしますと、すでに発行された公債のことでもございますし、それによって新しく金融市場が影響を受けるという関係にもないと考えますので、従前、そのまま応じてきておるわけでございます。その際の条件をどうするかという問題につきましては、実は今起債市場全般が新しい条件の決定ということを非常に困難にしておるという事情にあることは御承知通りであります。ただ、私の考えでは、とにかく現在ある各種の債券の金利の利回りは大体均衡を得ておると思いますので、現在といたしましては今の国債の金利において借りかえに応ずるということで差しつかえなかろうというわけで勘案をいたしておるわけでございます。
  87. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 以上で終わります。
  88. 臼井莊一

    臼井委員長 春日一幸君。
  89. 春日一幸

    ○春日委員 私は、銀行の歩積みと両建預金のあり方につきまして、この際特にあらためて山際総裁の御所見をお伺いいたしたいと存じます。  田中大蔵大臣が、貿易の自由化に対処してわが国企業国際競争力を高めるために企業金利負担を軽くする必要があろう、そのために、金利水準引き下げるために再々公定歩合引き下げを行なう必要もあろう、このような意見を発表いたしましたのに対しまして、相前後して日銀総裁から、公定歩合引き下げの問題はまだ本質的なものではない、現在わが国企業金融というものは歩積み、両建が非常に重く行なわれておる、こういう歩積み、両建がなくされるのでなければ問題の解決にはなり得ないのだ、この意味の見解を記者発表されておるのでございます。従いまして、そのような日銀総裁の御見解を、この際大蔵委員といたしましてここにあらためて表明が願いたいと存ずるのでございます。
  90. 山際正道

    山際参考人 わが国金融の実情といたしまして、多年の慣習上、いわゆる歩積み、両建なるものが行なわれております。そのために企業の実質負担金利が高くなっておるという事実、これはもうおおうべくもないことでございます。私の考えでは、この歩積み、両建の慣行が必要以上に出ている点もあろうと思いますので、まずこういうことをやめまして、そうして約定金利がそのまま実際の金利負担水準ということで考えられていけるように、そういう慣行と申しますか、商習慣というものを確立していきたいという望みを持っておって、それを提起しておるわけであります。一般の公定歩合引き下げの問題は、全体の経済情勢景気の位置等各般の経済事情を判断いたしましてそのときにこれをいかがするかという判断を下すべき問題と考えますので、必ずしも歩積み、両建問題が解決しなければ公定歩合の問題が解決しないということには考えておりません。たまたま公定歩合引き下げ問題は、ただいまもお尋ねがございました通り、どうもスケジュールによってやっていくというわけに参りませんので、これには一にかかって情勢判断である。それにもかかわらずこの歩積み、両建の問題はぜひともなくしたい商習慣でございますから、この際商取引上必要最小の範囲のものにとどめたいというので、今般大蔵省と相談いたしまして実現を見るように取り計らっている次第でございます。
  91. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、日本銀行総裁といたしましては、過去において、わが国経済の再建の途上においてさまざま便宜な要因があって、そこで悪いながらも一個の商慣習として歩積み、両建のことが行なわれてきた。しかしながら、今や経済の正常化並びに国際貿易上わが国企業の競争力の強化、こういうような立場から、正常なる取引の限界を越える歩積み、両建というものはなくすべきものであるとお考えになっておるのでございますか。この点に問題を集約いたしまして御所見をお述べ願いたいと思います。
  92. 山際正道

    山際参考人 私はまさにその通り考えております。
  93. 春日一幸

    ○春日委員 この問題について、昨日本委員会金融委員会においても若干大蔵当局との間に意見の交換を行なったのでございますが、大月銀行局長の述べられるところによりますと、そのような趣意に基づいてすでに十数回の通達を金融業者に発した、しかしながら、現在日銀総裁お述べのごとくに、いろいろな悪い慣習が改められていない、こういう御答弁でございました。従いまして、このことはすみやかに是正がされなければならぬと日銀総裁はお考えでありますか、いかがでありますか。
  94. 山際正道

    山際参考人 私もなるべく早い機会にこの問題を解決することが望ましいと考えております。
  95. 春日一幸

    ○春日委員 しかしながら、われわれがこのような意見を述べておりますのは一、二年ではございません。実に過去七、八ヵ年、十年間くらい以前から同じような意見を強調いたして参ったのでございます。大蔵委員会の要望にこたえて事務当局がしかじかの措置をとってはおられるのでございますが、十数回にまたがる通達にもかかわらず金融機関で、今山際日銀総裁指摘されるがごとくになおその悪い慣習が改まってはいない、こういうことは、一体その理由はどこにあるか。私どもはその根源を突きとめて必要なる施策を完遂しなければならぬと存ずるのでございます。  そこで、私考えまするのに、この問題については昨日の小委員会においても若干意見の応酬があったのでございまするが、とにかくわが国は法律に基づいてすべての事柄が措置せられるのでございます。歩積み、両建を禁止する銀行法の特別の取りきめはございません。従いまして、法律に禁止されていないというだけの理由でもって、通達の効果が上がっていないと思うのでございます。私は私なりにそのような禁止立法を行なうことも適切であろうと考えますが、しかし現行法体系の中において、その実効を上げる措置はないかといろいろと検討いたしてみますると、独占禁止法の各条項において、そのような不公正な取引とおぼしき取引行為を禁止いたしておると思うのでございます。すなわち独禁法第二条第七項の第五号「自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引する」行為、これは不公正取引である、このような不公正取引は独禁法違反の取引である、独禁法違反の取引があると思料したとき、審問審決するにあらざれば、その有権的結論は得られないでありましょうが、そのような「規定に違反する事実があると思料するときは、公正取引委員会に対し、その事実を報告し、適当な措置をとるべきことを求めることができる。」こういうことは独禁法の条文の中に明記いたしておるのでございます。  私はここで総裁にお伺いをいたしたいのでありまするが、とにもかくにもその事業家というものが金融機関から融資を受けまするのは、事業資金が必要であるがゆえに融資を受けるのでございます。その受ける融資を、金融機関みずからが優位な立場にあることを利用して相手に不利な取引をしいるの行為、すなわちこれだけのものを別建預金するにあらざれば、あるいは何パーセントのものを歩積み預金するにあらざれば云々ということで、現在のこの悪習慣がずっと継続的に行なわれておると思うのでありますが、これは明らかに独占禁止法第二条第七項第五号が禁止しているの行為であると思うのでありますが、日銀総裁の御見解はいかがでございましょうか。
  96. 山際正道

    山際参考人 実は現行の歩積み、両建がいかなる必要に応じていかなる形で行なわれておるかということがそう的確にはまだわかっておりません。実は今回大蔵省と相談をいたしまして、大蔵省の御施策協力をいたしまして、私の方からも人を出しまして、まずその実情調査に当たりまして、しかる後これを理想的な状態に直すためには、あるいは法律によるのがいいのか、他の行政手段によるのがいいのか、適当な方法は何であるかということを実は協議をすることにいたしておりますが、何分にも多年にわたる習慣でありますので、かえってこれが混乱梗塞状態を起こしてもどうかと思いますので、実情調査の上、その措置は大蔵省とさらに相談の上考えたいと思っております。
  97. 春日一幸

    ○春日委員 このような意見が本委員会において論ぜられること一再ではございません。しかも長い年月をかけて同じように論ぜられ、これは多くの人、わけて中小企業の大いなる非難事項でございました。さすがの日銀総裁もようやくにしてその事態を認識されて、かくのごときことはなくすることが望ましい、望ましいというようなことではなくして、いけないことである、いけないことであるならばなくさなければならない、日本銀行総裁というようなわが国金融の総元締めの最高の責任者というような方は、自分の事業の遂行上いけないことがあると思料したときには、やはりその公的責任感の上に立って、これをなくすることのための有効的確な措置を大蔵省との問に講じられなければならぬと私は思うし、少なくとも国家公務員というものは、それだけの職責を課せられておると思うのであります。昨日の大月銀行局長の答弁によりますると、十数回の通達を出した、効果はいまだ上がらない、こういう状態です。私は今や国際経済競争力をわが国企業に確保いたしますことのためには、おりしも再建途上において必要ありとして認められたこういうようなものは、何らかの措置によってすみやかに一掃しなければならぬ。私は日銀総裁の責任において、この事柄はやってもらいたいと思うのです。この点いかがでございますか、御決意のほどを一つお示しを願いたいと思います。
  98. 山際正道

    山際参考人 私はかねて解決を要する問題と考えておりますし、たまたま大蔵省と共同して実地調査に当たるという機運になって参りましたこの機会において、十分にその成果を上げたい覚悟でございます。
  99. 春日一幸

    ○春日委員 これは平岡君が調査にじんぜん日をかすということなく、断固としてこれをやってくれと言われております。どうか一つそういうような意味合いで、断固たる決意を持ってやってもらいたい。  わけて私はこの際委員長を通じて要請をいたしたいのでございまするが、実はこのようなアクセントで、またこのような内容の問題をずっと論じてきた。断固としてやるというような日銀総裁の決意表明は、本日出たのが初めてであります。しかし今まで善処する善処すると大蔵大臣も言い、銀行局等も河野君以来ずっと述べて参りました。十数年を経過して参ったのでございます。私はこの際委員長を通じて調査を求めます。すなわち独占禁止法の第四十五条の手続規定によりますると、「何人も、この法律の規定に違反する事実があると思料するときは、公正取引委員会に対し、その事実を報告し、適当な措置をとるべきことを求めることができる。」こうございます。従いまして本委員会を通じ、大蔵委員春日一幸は、こういうような事実がありと思料されるので、従って公正取引委員会において全金融機関にまたがりまして、そのような実態調査を行ない、本委員に対して委員長を通じて報告されたい。このことを強く要請いたしておきたいと存じます。  なおただいまこの問題につきましては、日銀総裁から断固たる決意の表明がございましたので、実効が最もすみやかに上がることを期待して私の質問を終わります。
  100. 臼井莊一

    臼井委員長 ただいまの春日一幸君から委員長に対する希望につきましては、後刻理事会においてはからいたいと存じます。  毛利松平君。
  101. 毛利松平

    ○毛利委員 私は昨年の八月二十九日の当委員会において、日本銀行と相互銀行取引の問題について、山際総裁の所見を承りましたが、本日は金庫も加えて五点にしぼって所見を伺いたいと思います。  その前に、先ほどの質疑応答の中に現われました二、三のことについて、簡単に御所見を伺いたいと思います。IMF十四条から八条移行に伴う問題、ガットの十二条から十一条に伴う問題からくるところの日本の遭遇せる運命と、従って貿易為替自由化は、孤立して生きていけない日本の環境にあって、どうしてもこれを行なわなければならぬ、これはもうかなり徹底したところの世論だと思いますし、またやらなければならぬ問題だと思います。先ほどの総裁のお言葉の中に合理化の徹底ということを強調なさいましたが、私は産業界における過去のまた今日遭遇せる事態に対して、反省と自覚と決意と意欲のもとに、自主的に合同整備――合同という言葉を総裁の言葉の中にくみ取りたいのでありますが、これに対する御意見一つと、日本の現状は、過去においても同様でありますが、自由化を控えての直接の大問題と、さらに貿易輸出振興こそは日本の長期最大の重点国是でなければならぬ。これのいまだ不徹底もありますけれども、重点でなければならぬ。これの基礎条件というものはあくまでも国際競争力の強化にある。この基礎条件の強化という点については、先ほども春日委員からもおっしゃったように、わが産業界の金利負担があまりにも大きい、この一点。さらに金利のみならず合理化、合同に対して資金需要を思い切って回す、さらにややもすると会社、法人の中においては使わなければ損だという風潮がなきにしもあらず。いかにして自己資本の充実、内部保留をなすか、税制面の改正、直接税に重点を置いているわが日本は、間接税をもっと考えなければならぬ、直接、間接いろいろありますが、そうした先ほど申し上げましたような、この自由化に対処する決意の基礎条件の中に、国際競争力の強化、これの条件の整備ということからいくと、一体どこからこれが生まれるかという意味におきまして、私は日本の明治以来のプロブレム、浜口雄幸内閣の金解禁、さらに最近ではドッジ・ライン、次にくるものは今度の自由化、それほど大きな、あらゆる産業界に、金融界はもちろん、影響する重大問題ではないか、この認識が国民の中にも政府の中にもあるいは金融界の中にもまだまだ足りないのではないか、こういう工合に考えるものでございます。この終戦後のドッジ・ライン以来の大きな課題を今背負っておるのだ、この認識に立てば、おのずから解決が生まれるのではないか、こういう決意、認識論が必要なのではないか、こう考えるのでありますが、総裁の所見を承りたいと思います。
  102. 山際正道

    山際参考人 日本における経済の発展の段階において、いろいろ経過しました事実によって、現在の段階が過去の重要な段階に比すべき非常に大事な時期であるという点については、御所見と全く私は考えを同じくいたします。それに対して、はたしてしからば、産業界あるいは金融界が同じような決意を持っておるかということにつきましては、私は漸次その認識は徹底してきつつあると考えておりますし、また私どもとしても、ぜひともその風潮は助長いたしたいと考えております。現在、日本の産業の海外競争力を強化するために、いろいろな施策を講じなければならぬということを通産省を中心としてお考えでございますから、金融界はぜひともその線において、その達成に協力をするという態勢をかまえております。それにつきましても、日本銀行といたしましても、できるだけ協力の態勢でいきたいと考えております。そのほか金利の負担の問題とか、資金供給の問題、いろいろ関連する事項が多うございまして、日本があらゆる条件において国際水準のもとに産業界を進めていこうというためには、解決すべき問題が非常に多いと思うのでありますが、いずれも関連のある非常に重要な問題でございまして、日本銀行としましては、その許された機能の及ぶ限りにおいて、これらの問題の達成に協力をいたしたい覚悟でございます。
  103. 毛利松平

    ○毛利委員 先ほどの質疑応答の中でもありましたが、さらにもう一言、デノミネーションの問題につきまして、いろいろ世間では誤解をしておるようであります。直ちにやるような受け取り方をしておる者もあります。政府の御意向におきましても、日銀におきましても、当分やる意思がないように先ほど受け取りました。貨幣価値の維持こそは経済の基調であります。さりとて、今日のこのデノミネーションとデバリュエーションの誤解を何とか――やるにしてはもちろんでありますが、やらないにしても、この誤解が非常にある。これを一つ啓蒙すべきではないか。日銀におかれましても、総裁発言が波紋を描いておる。やるにしてもやらないにしても、この二つの意味が非常に国民に誤解を受けておる。これがまた経済界にいろいろな影響があることも事実であります。これらの誤解のないように啓蒙してもらいたい、こう考えておりますが、総裁の御意見はいかがですか。
  104. 山際正道

    山際参考人 ただいまお尋ねの点はまことに私も同感でございます。これは私の考えでは、政府とか日本銀行とか当路にあるものが申しますよりも、一般各界の産業人なり経済人、また一般の消費者その他の方々にみずからの問題として御研究を瀬って、その間におのずからその機運が醸成されていくという経過が最も望ましいのでありまして、今後そういう機運の来たらんことを実は望んでおるような次第でございます。
  105. 毛利松平

    ○毛利委員 本論に入りまして、五つの項目をごく簡単に御質問いたします。  相互銀行も信用金庫も非常に預金量がふえまして、本年一月末の現状が、相互銀行において一兆八千六百四十八億円、信用金庫において一兆六千五百三十七億円という金額に達しております。中小企業関係の専門銀行として地位も高くなり、また業界における貢献も非常に大きいものがあるであろうと思うのであります。つきましては、日本銀行準備預金制度の適用と、政府保証債の引き受けをさせるということを新聞紙上などに見受けるのでありますが、その時期の問題もありますけれども、われわれが新聞紙上で見た感触といたしましては、普通銀行に適用しておる準備預金制度と同じような率が適用されるのではないかと思うのであります。また政府保証債におきましても、金庫と相互において五十億円ずつを引き受けさそうというように受け取っておるのであります。つきましては、普通銀行との間に――いろいろ問題の分析はありますけれども、この準備預金制度に預けた金は無利子になっております。特に相互銀行におきましても、金庫におきましても、中小企業の零細な金を集めて、そして中小企業の機関として存立の意義が大きくなっておることは私の説明を要しないところであります。この制度の実現については非常に望ましい姿であるとは思いますけれども、同列に扱うことは多少無理があるのではないかと私は考えております。従いまして、現状の普通銀行の率を見ますと、預金残高二百億円をこえるものにあっては、定期性預金については百分の〇・五、その他の預金については百分の一・五預金残高二百億円以下のものにあっては、定期性預金に対して百分の〇・二五、その他の預金に対しては百分の〇・七五となっておりますが、現在の相互銀行なり信用金庫の経営力ないし負担力、こうしたものから見まして、たとえば預金残高二百億円以上のものに限って適用するとか、準備率を預金残高二百億円以下の普通銀行の半分程度に引き下げるとともに、激変緩和意味において経過期間を設けて、漸次この目標率に近づけていくというような配慮が絶対に必要じゃないか、こう考えております。御所見を承りたい。
  106. 山際正道

    山際参考人 最近において中小金融機関の資力が非常に充実をいたしまして、金融界におけるウエートが非常に高くなって参っておることは御指摘通り考えております。従いまして、金融制度といたしまして、これらの機関に対しても準備預金の制度を設けるべきではないかという考え方は、実はわれわれもそのような考え方で研究を進めております。しからば、いかなる準備預金制度がこれらの機関に適用するのに適当であるかという問題につきましては、それら金融機関の特殊性を十分考慮いたしまして、今鋭意検討を進めつつある段階でございまして、もっぱら大蔵省と御相談をいたしておりますが、まだ申し上げる程度の草案もできておりませず、先ほど申し上げました通り、いつから実施するということもきまっておりませんしいたしますから、御指摘の点はまことにごもっともと思いますが、それはとくと考慮いたしまして、適切な措置に出たいと考えております。
  107. 毛利松平

    ○毛利委員 政府保証債の引き受けの点でありますが、金利状況を見ますと、これが逆ざやになる。たとえば相互銀行の掛金並びに預金原価というものが八分二厘で、信用金庫の預金原価が七分二厘五毛についておる。政府保証債の利回りは七分九毛六糸であります。こういう逆ざやの問題についてもどういう御処置をなさる御方針であるかということと同時に、また十分の配慮をすべきではないかと思うのでありますが……。
  108. 山際正道

    山際参考人 すでに申し上げましたように、これら中小金融機関がその資力を非常に充実して参りました以上は、やはりその資産の流動性を確保する意味から申しましても、ある程度債券に投資を向けるということも必要かと実は思うのでございます。しかし、だんだんお話しの通り、非常な特殊性を持っておりますので、無理をしいるべきでないことはむろんであります。最も適当な段階においてこれを措置すべきことは申すまでもございません。この点につきましても、鋭意研究はいたしておりますけれども、まだここで申し上げるような梗概を得ておりませんので、とくと今後それらの点について十分検討を重ねたいと考えます。
  109. 毛利松平

    ○毛利委員 次に、日銀取引の拡大の件でありますが、金融調整のためオペレーションが現在行なわれていることは事実でありますが、相互銀行、信用金庫等に対しても、こういうような資金量の拡大と地位の向上に照らしまして適用する意思があるかどうか。適用してはどうかと私は思うのでありますが、現在日銀との取引関係を調べてみますと、相互銀行七十二行中当座取引が三十九行、歳入代理店が二十四行、信用取引が一行となっております。これが相互銀行の現状であります。さらにまた金庫では、五百三十四金庫中当座取引を認められているものは五金庫であります。歳入代理店の取り扱いを認められているものは一行であります。そのほか全信連が信用取引を認められております。金庫においては、資金量の問題もありましょうけれども非常に少ないといえる。全体としてのオペレーションの問題をどうお考えになっておるか。私の考えではオペレーションの方ももはや入れていいのではないかということと、相互と金庫の行数や金庫数をもう少し、日銀との取引拡大の意味でふやすべきではないか。また、金庫も相互も納税貯蓄組合とか納税準備金の預金業務を扱っております。これらの人々が税金を納めにいく場合にせっかく取引があっても他行に行かなければならないというような実情から、さらに資金需要に照らして貯蓄の増強をはかろうとする場合に非常な不便を感じておる。こういった点もあわせ考え日銀との取引の拡大をいま少し幅を広げてはどうか。
  110. 山際正道

    山際参考人 だんだん申し上げました通り金融界におけるこれらの機関の占める地位が高まって参りましたのと、内容が漸次堅実強化されて参っております事実にかんがみまして、日本銀行といたしましては、逐次これら機関との取引の拡大に進んで参るつもりでございまして、現にお取り上げになりました本行との取引関係も比較的新しく設定されたものが多いのでございまするし、またお話の歳入代理店に指定するというようなことも、これも今後はやはり研究してその実現を期していくべき問題と考えております。これらは逐次その内容等を審査いたしまして、なるべく御期待に沿えるように努力をいたして参りたいと存じます。
  111. 毛利松平

    ○毛利委員 最後に、かりにオペレーションが認められた場合に、日銀取引のない相互や信用金庫が債券売買の場合に具体的にどのような方法があり得るかという問題についても御意見を承りたい。
  112. 山際正道

    山際参考人 今やっております日本銀行債券売買方式は非常に限定的な、いわゆる市場操作ともいえないかもしれぬような相対取引でやっておりますので、同じような方式で非常にたくさんの金融機関をやるということは事務的になかなか問題がございますので、相なるべくはすみやかに社債市場というものを確立いたしまして、その市場に対する売買において調整するということが望ましいのであります。しかしながら、市場の育成につきましても、前段申し上げておりまする通り、いろいろ問題、準備等がございます。一方金庫等が必要とする、また債券類の購入等につきましてもその手段が他の機関を通ずる場合とはいろいろ異なったことがあり得るかと思います。これらはいずれも前向きの方向において、とくと実際に適応した方法考えていきたいと思っております。
  113. 臼井莊一

    臼井委員長 これにて山際日本銀行総裁に対する質疑は終了いたしました。  山際総裁には御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼申し上げます。  次会は明三月一日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会致します。    午後一時五分散会