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1963-06-14 第43回国会 衆議院 商工委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月十四日(金曜日)     午前十一時五十三分開議  出席委員    委員長 逢澤  寛君    理事 小川 平二君 理事 岡本  茂君    理事 白浜 仁吉君 理事 中村 幸八君    理事 南  好雄君 理事 板川 正吾君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       浦野 幸男君    大高  康君       藏内 修治君    佐々木義武君       笹本 一雄君    正示啓次郎君       中川 俊思君    藤井 勝志君       村上  勇君  早稻田柳右エ門君       岡田 利春君    久保田鶴松君       久保田 豊君    小林 ちづ君       多賀谷真稔君    中村 重光君       西村 力弥君    伊藤卯四郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         通商産業政務次         官       廣瀬 正雄君         通商産業事務官         (鉱山局長)  川出 千速君         中小企業庁長官 樋詰 誠明君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    加藤 悌次君         通商産業事務官         (中小企業庁指         導部長)    影山 衞司君  委員外出席者         議     員 田中 武夫君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    松井 直行君         専  門  員 渡辺 一俊君     ————————————— 六月十三日  委員春日一幸君辞任につき、その補欠として伊  藤卯四郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  金属鉱業等安定臨時措置法案内閣提出第一六  九号)  中小企業基本法案内閣提出第六五号)  中小企業基本法案永井勝次郎君外三十名提出、  衆法第一〇号)  中小企業組織法案永井勝次郎君外三十名提出、  衆法第一一号)  中小企業基本法案向井長年提出参法第四  号)(予)  中小企業指導法案内閣提出第七六号)  中小企業信用保険法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一一九号)  中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第一二三号)  下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法  律案内閣提出第一六七号)      ————◇—————
  2. 逢澤寛

    逢澤委員長 これより会議を開きます。  金属鉱業等安定臨時措置法案議題とし、審査を進めます。  本案は、金属鉱山に関する小委員会審査に付しておりました案件であります。  この際、同小委員長から報告を聴取することにいたします。金属鉱山に関する小委員長白浜仁吉君。
  3. 白浜仁吉

    白浜委員 ただいま議題となっております金属鉱業等安定臨時措置法案について、金属鉱山に関する小委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本小委員会は、先国会に引き続き、今国会においても、去る一月二十九日設置され、三月十五日第一回小委員会を開き、金属鉱業等の現状について政府より説明を聴取し、去る五月七日から十一日まで、東北地区金属鉱山について国政調査を行なったのでありますが、五月三十一日、金属鉱業等安定臨時措置法案が本小委員会審査に付され、以来六月六日、七日、昨十三日及び本日の四回にわたり小委員会を開き、審査を行なったほか、福田通商産業大臣及び政府委員と懇談を行ない、法案の取り扱い、特に附帯決議案作成について協議したのであります。その結果、本小委員会の結論として、附帯決議本案に付し、原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。  附帯決議の案文は、お手元に配付したとおりであります。     —————————————   〔参照〕    金属鉱業等安定臨時措置法案に対する附帯決議   政府は、自由化を迎え、緊迫しつつある事態に苦慮する金属鉱業等実情適確に把握し、その体質の改善を行ない、国際競争力を強化し、もつて、金属鉱業等の安定を図るため、次の諸点につき特段の配慮を払うべきである。  一、本法の趣旨充実を期するため、重要鉱業物滞貨買上げ機関を早急に設立するよう検討すること。  二、基本計画及び実施計画決定に当つては、これらの計画の裏付けとなる資金計画を明確にすること。  三、金属鉱業等の安定に協調する需要者側に対して、その負担の軽減を図るための措置につき検討すること。     —————————————  次に、その趣旨を御説明いたします。  御承知のように、銅、鉛、亜鉛等鉱産物は、国際流通商品として投機性を有するため、他の商品に比較し価格の変動が著しく、加えて、海外相場によって価格が支配される実情にある上、わが国金属鉱業は、比較的弾力性に乏しいのであります。かような実情から、自由化に対処して、本案趣旨のより一そうの充実を期するためには、特殊法人として滞貨買い取り機関を早急に設立し、これに対する資金的裏づけ等措置を講じ、不況時においても、国内鉱産物生産並びに価格の安定をはかることがぜひとも必要であります。  次に、資金計画については、基本計画実施計画を定める本案第三条、第四条には何ら明確な規定がないのでありますが、金属鉱業等の安定を期する上に、資金計画の重要なことはあらためて申すまでもないところであります。したがって、基本計画実施計画の策定にあたっては、資金計画を明確にするとともに、財政資金その他の資金対策が当然裏打ちされるべきであります。  最後に、本案により、需要者側は、金属鉱業等の安定のため多大の協力を行なうのでありますが、この協力体制は、結果的には需要者側のいわば不利益の上に成立するものであります。したがって、喜んで協力体制をとらせるためにも、需要者側について、本案とは別に所要の優遇措置を講じ、過重負担とならないよう考慮すべきであります。  以上が附帯決議趣旨であります。各位の御賛同をお願いいたします。  以上をもって金属鉱山に関する小委員会報告を終わります。
  4. 逢澤寛

    逢澤委員長 以上で小委員長報告は終わりました。
  5. 逢澤寛

    逢澤委員長 おはかりいたします。  本案についての質疑を終局するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 逢澤寛

    逢澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  7. 逢澤寛

    逢澤委員長 次いで、討論に入るのでありますが、通告もありませんので、直ちに採決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 逢澤寛

    逢澤委員長 御異議なしと認め、採決いたします。  本案原案のとおり可決するに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  9. 逢澤寛

    逢澤委員長 起立総員。よって、原案のとおり可決いたしました。
  10. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、白浜仁吉君外八名からの附帯決議を付すべしとの動議について採決いたします。  これに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  11. 逢澤寛

    逢澤委員長 起立総員。よって、本動議のとおり、附帯決議を付するに決しました。  この際、通商産業大臣発言を求めます。稲田通商産業大臣
  12. 福田一

    福田国務大臣 ただいま金属鉱業等安定理事措置法案に対する附帯決議が当委員会において決定せられたのでございますが、右附帯決議につきましては、決議趣旨を十分尊重いたしまして、善処をいたしたいと存じます。     —————————————
  13. 逢澤寛

    逢澤委員長 おはかりいたします。  本案に関する委員会報告書作成に関しましては、委員長に御一任願うことに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 逢澤寛

    逢澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  15. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、内閣提出中小企業基本法案永井勝次郎君外三十名提出中小企業基本法案及び中小企業組織法案向井長年提出中小企業基本法案予備審査)、並びに内閣提出にかかる中小企業指導法案中小企業信用保険法の一部を改正する法律案中小企業協同組合法等の一部を改正する法律案下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案、以上八案を議題とし、審査を進めます。  質疑通告がありますので、これを許可いたします。中村重光君。
  16. 中村重光

    中村(重)委員 政府並びに田中議員提出基本法案に対しまして質問いたしますが、本法案に対しましては、与党の三委員、並びにわが党の横山、永井委員から、全般にわたっての質疑が行なわれておりますし、かつまた東京、大阪、名古屋の三地区における公聴会におきまする各公述人から、問題の核心に触れた公述が行なわれておるわけであります。これに対しまして、大臣並びに樋詰長官から答弁が行なわれておるのでありますが、問題の中心である政策目標ということに対しまして、一番論議が活発に展開されておりますが、これに対しまして、大臣は、大企業中小企業との間に格差があることは率直に認められ、この基本法を提案するに至った趣旨も、その格差をなくさなければならない、これをなくすることにおいて国民経済の健全な発展をはかることができるのだ、こういうことであります。問題としてここへ出ておりますのは、この二重構造格差がどういう形で出ておるのかということに対しまして、政府社会党考え方基本的に違っておる、私はこのように感じておるわけであります。いま私がここで繰り返すまでもなく、大臣は、この格差というものは、大企業の圧迫、進出というものが否定できないとしても、大企業と協調する中において現在中小企業が置かれておる不利を補正していく、その中において格差を是正していくのだということでありますが、社会党考え方としては、この格差というものは、やはり構造的にとらえていくのでなければならない。現象的にこの格差をとらえて、ただ金融あるいは税制という形においてこれを補正としていくということであっても、さらにまた、この格差は一時的に縮まることがあっても、これが拡大をしていくということは否定はできないのだということでありますので、きわめて根本的な問題になるであろう、このように私は考えるのであります。  そこで、この格差の問題に対しまして、それが根本的か、現象的に生じておるかということから、政府政策目標社会党政策目標がそこで変わってきておるということは当然でありますが、まず大臣にお尋ねをしてみたいと思うのは、当面は格差縮小していくのだ、この格差解消するということが理想である、そういう考え方の上に立っておるようでありますが、この格差解消するということを政策目標の根本に置かずして、理想としてこの格差解消するというようなことが、中小企業の健全な発展をはかることになるのかどうか。結局、大企業設備投資をストップする、その他大企業が、今日優越的な地位を利用してあらゆる産業分野進出をしておるという点、あるいは税制の面において、金融の面において、中小企業より有利な政府施策を受けておるということをストップして、そこで中小企業に対する金融あるいは税制その他の施策というものが行なわれていくということになるならば、格差縮小ということは考えられるといたしましても、大企業には、依然としてさらに国際競争力を強化するとか、あるいは産業高度化をはかっていくというような施策を積極的に行なっていく。中小企業にもそれを行なっていくのだといたしましても、大企業の長足な発展というものにはとうてい追いつくということは考えられない、私はそう率直に感ずるのであります。そうなってまいりますと、格差縮小ということも、これは言うべくして行ないがたしということになるのではないか。ましてや理想とする格差解消というものは不可能であると、私は申し上げざるを得ないのであります。このことに対しこの大臣考え方をひとつ聞かしていただきたい。また、社会党提案理由その他でこのことに対しましての意見の開陳は行なわれておるのでありますけれども、数回にわたる公聴会等を通じまして、参考人の活発な意見展開等もなされておりますので、さらに提案者より、このことに対する御意見があれば聞かしていただきたい、このように感じます。
  17. 福田一

    福田国務大臣 ただいま御質問がございましたのは、政府は、中小企業基本法においては、格差縮小ということをまず第一にしておって、解消ということを考えておらぬのではないか、またそういうような縮小というようなことを考えておっても、今日のような時代においては、それは非常に実現しにくいではないか、こういう御質問だと思うのであります。私たちは、実を言いますと、しばしばここでも申し上げておりますとおり、産業というものが、大企業中小企業、中企業、小企業あるいは小々業とでも言いますか、そういうふうに断層的にあるのではないのであって、それはわれわれが、便宜にそういうようにそれをどこかで線を引いておるのである。したがって、傾斜的に——それが急傾斜であるかなるい傾斜であるかは別としても、傾斜的にずっと産業が並んでおる姿である。そのうちのある一定のところから以下を中小企業として取り上げていって、これに対する施策をするのであるが、数の上から言えば、それは大企業に比べたらはるかに多いものになりますから、数的には、問題はある意味では解決していくことになるけれども、しからば、今度は生産という面から見たらどうなるかといえば、大体半々ぐらいと思います。上と下とわれわれの考えるような線をとっていくと、大体半々ぐらいに工業ではなるのではないか、こういうような考え方でございます。いずれにいたしましても、それでは格差縮小するのが理想か、こう仰せになりますと、私は縮小するのが理想だとは思っておりません。格差解消理想でございます。ただ、格差解消するのが理想でございますが、それを実現していく場合に、順次これをやる形をとらざるを得ない。それはいろいろの財政的な制約を受ける場合もあるし、また自由主義経済の中における、その理論からくる一つ制約もあり得るでありましょう。しかし、ほんとうをいえば、自由主義経済の中にあっても、格差解消するということが理想であると私は考えておるわけであります。  そこで、そういう考え方で今度は日本国内経済をもう一ぺん見ましたときに、日本国内経済というものが、日本だけでやっていけるという場合でございましたら、大企業に回す金融を押えて中小企業のほうへ回せばいい、あるいは税制面で下のほうをうんとよくすればできるじゃないかというようなこともうなづけるわけでありますが、しかし、今日の事態はどうであるかというと、国内だけではない。国際的な競争を受ける。すなわち、自由化段階にきておるのでありますから、国際的な影響を受けるということになりまして、国内だけの産業をどう処置するかということですと、外から影響がないということであれば、かなりドラスチックな考え方解消の方向に向かい得る場合もあるのですが、今日では、自由化というもう一つ外からくる競争が激しいわけでございますから、それに対して産業が生き残っていくには、その産業に所属する大企業であろうと中小企業であろうと、みな相当な近代化をやり、あるいは合理化をやり、いろいろな努力をしなければならないということになるので、その場合に大企業はぼおっとしていてもやっていけるんだというような情勢ではないと、私たち考えておるわけであります。そうすると、大企業自体も、やはり自由化に対処して、まだ相当近代化をはかり、設備改善をはかり、あるいはその他のいろいろな施策をやっていかなければならない。それじゃ、それに関連しておる、あるいはそれと同じような種類の仕事を営む中小企業はどうだ、これはますますやらなければいけない、こういうことになるわけであります。そういう場合において、いままでに格差がある、その格差が、このままでほうっておいたのではますます開く可能性がある。私は開くおそれがあると思う。大企業のほうはどんどんやっていく、そういうことでは困るから、中小企業のほうもどんどん追いつけるように努力をしなさい。それについて、政府地方公共団体も大いに骨を折りましょう、あらゆる意味においてそういう骨を折りましょうというのが、この基本法考え方でございますから、いま、あなたが社会党の案とは違うじゃないかとおっしゃいましたが、違うということがありとすれば、大企業中小企業の間に断層がある、二重構造だ、こう考えるか。傾斜的に並んでおるのであって、これは便宜で一応ある程度切っていると考えるか。それにしてもその上のものと下のものとではだいぶ違いがありますから、それを一つ断層と見るべきだというのは、これは学説になってしまって実際問題にはならない。しかし、断層をもし認めるのであれば、断層は幾つもあると思うのです。小企業と中企業の間に、断層がやはり存在すると思うのであります。しからば、今度は中小企業基本法じゃなくて、小企業基本法というやつもつくらなければいかぬという理屈も出てくるかと思う。もちろんそれでも差しつかえない、そういうこともやっていい、悪いとは申しませんけれども、しかし、だんだんに育てていくということであれば、中小企業というものについてできるだけのことをする、そして小企業については特にまた手心を加えるくふうをするというようなやり方でやっていくのであって、われわれは決して解消理想にしていないわけではございません。その点では、おそらく社会党の皆さんと考え方を一にしておる。ただ、現象のとらえ方について意見が少し違う。そのとらえ方が違うがゆえに、政策面での相違が出てくるのではないか、こういうふうにわれわれは考えておるわけでございます。
  18. 田中武夫

    田中(武)議員 お答えいたします。  いま中村委員が御指摘になった点が、実はわが社会党案政府案との基本的な相違であろうと思うのです。先ほど大臣も触れましたが、法文でいうならば、政府案の第一条の格差是正社会党案の第二条の二重構造解消、こういう考え方がすべてにかかってくると思う。そこで、何回か申し上げましたが、大企業中小企業との間の違いは、いま大臣の言われたように、傾斜的なものであって、数的な違いである。たとえば一方が、何億という資本であり、何千という従業員がある。それに対して一方が、何千万、あるいは二百人、三百人だという数の違いである、こういうように認識しておられるようでありますが・私は、そうではなしに、数的な相違はその質的な相違から出てきたのだ、こういう考えで、大企業中小企業の間には、やはり二重構造がある。それを解消するということが基本になっております。したがってて、そこから出発いたしまして、たとえば事業分野の確保、こういう問題は、やはり基本的な考えの違いから出てくると思う。さらにまた、政府案が、経済合理性の追求といいますか、中小企業基本法経済政策に終わっている、こういうたてまえになっておるのに対しまして、わが社会党案は、経済政策とともに社会政策をも加味しておるところが違うのであります。  なお、大臣は、先ほど来二重構造ということについては、われわれ認めないんだといったような発言がございましたが、いま私手元に持っておりませんので、経済白書の何ページの何行とは申しませんが、政府の発行したところの、おそらく閣議を経て決定せられたと思うのですが、その経済白書に、二重構造ということが明記せられておるのであります。したがって、政府自体も、二重構造の存在を認めたものとわれわれ解釈いたしております。
  19. 中村重光

    中村(重)委員 大臣答弁を伺って感じることは、いまの御答弁というのは、いままでも何回か質問者に対して答えられた、社会党案との関係について、断層があると見るか見ないかという違いだ、傾斜的にはそれは格差はあるであろう、こういう御意見であります。ところが、政策目標の中に、いま日本経済の姿というものが非常に変貌してきた、こう言っておられるわけですね。それはどうして変貌したかというと、いわゆる貿易自由化の問題である、あるいはまた高度経済成長政策の中における技術革新技術革命といったようなもの——これは高度経済成長政策ということだけでなくて、国際的な経済の動向ということも、もちろん大臣がいま言われたような形で一つの変貌をもたらしたことになっておる、こう思います。だけれども、そういった技術革新であるとか、あるいはまた貿易自由化の中に、日本鎖国経済をやっていくというわけにはいかない、いわゆる開放経済である、そういう形に現在日本は置かれてきた。さらにまた、そういう中から資金的な面において、あるいは労働力の供給が中小企業に対しては非常に不足してきた。そういうように、現象的に問題をとらえてきている。そうなってくると、中小企業と大企業との格差は、そういう問題が起こってきたというそのことから——大臣はいわゆる断層ということは否定されるわけでありますが、そういう格差というものは生じてきたのかどうか。そうでなかったということは、大臣も認めなければならぬと私は思う。そうなってくると、大臣がこの格差を現象的にとらえておるということには、私は矛盾があると思う。大企業中小企業との中における経済格差、あるいは生産性格差、二重構造があるということは、大臣は歴史的に否定できない。そうなってくると、社会党が言っておる、いま提案者から御答弁がありましたようなことを否定することは、正しくないのではないか。その点は率直に認めて、いま大臣は、理想的には解消であると言われたのでありますが、当面は縮小にしても、理想的にはこれを解消しなければならない。その解消をするためには、やはり根本的な問題にメスを入れていく、その中から政策目標を打ち出していくということでなければ、理想とする格差解消ということにはならないのじゃないか。また、先ほど私が申し上げましたように、また大臣もいまお認めになりましたように、鎖国経済でなくて開放経済の中において、国際的に日本経済発展させ、安定をさせるためには、大企業も、設備投資を行ない、生産性を上げていかなければならない。そういうことになってくると、具体的には金融税制その他のあらゆる面において、大企業発展をはかっていかねばならぬ。こういうことになってくると、その格差というものは、なかなか当面の目標としておる縮小をする可能性がなくなってくるのではないかと私は思うわけです。ですから、その点について大臣のお答えを重ねて求めたいと思います。
  20. 福田一

    福田国務大臣 結局あなたのお話を詰めていきますと、封鎖経済というか、日本自由化をしない段階においては、二重構造は存在したじゃないか、そういうことを認めるべきだ、しかし、今日自由化されてきたので、それがますます開いてくるということで政府はこういうことを考えたんじゃないか、したがって、依然として二重構造を認めなければならぬじゃないか、こういう御質問のように私は受け取って、それについてお答えするのですが、私は、そこのところがちょっとどうしても、頭が悪いからわからないのかもしれませんけれども、社会党さんのおっしゃることがよくわからない。ということは、今度でも、政府案社会党案で違っておるところは、私たちは五千万円以下あるいは三百人以下、こういうことを言って、どっちでもいいんだ、こういう考え方社会党のほうでお考えになっているのは、三千万円以下、三百人以下、しかも両方が合わさらにゃいかぬ、こういうことを言っている。そうすると、われわれの考えている場合の数字社会党さんが考えておいでになるときの企業数字というものの差は、幾つあるかは別ですが、われわれがここら辺から施策したい、あなた方がここらでいいんだという、その間にある中小企業——中小企業といっていいかどうかわからない、その企業とそのすぐ下、ボーダーラインにある企業とで、一体言われるがごときそんな断層があるのだろうか。私は、断層とは見ないで、傾斜的に連なっておるのだと見たほうが、姿としては納得がいくという感じを抜け切らない。大企業というものがちゃんとして別にあって、全然それと性格の変わった中小企業というものがここにあるということであれば、これは私は、それに対する考え方を肯定すれば、社会党のおっしゃるようなものの考え方もうなづけるのであります。私は、何も法文を全然読んでないわけじゃない。それを基礎にしてお答えをしておる。ところが、いま言うように、われわれの見るところでは、産業というものは、なだらかに順々に並んでいます。資本金でいえば、何千億円から何百万円までの間ずっと並んでいると思うのです。その場合に、あなた方のとられる中小企業は三千万円以下だという。われわれは五千万円以下だという。それじゃ四千万と三千万との間に一体どういう断層があるか、三千百万と三千万との間にどういう断層があるのでしょうかということについて、はっきりしたこういう断層があるのだということを言うていただかぬと、われわれはそこの納得がいかぬ。われわれは、そこはずっと傾斜的に並んでいるんだ、だから、とり方で五千万が六千万になっても、そのときの事情では変わってもいい、しかし、そこに一つの特徴が出てくるんだから、やはりある程度の特徴があるという場合でも、百の特徴があったときに百一のほうはどうだ、あるいは九十五しかないものと百との間はどういうふうに見るのだということになると、断層ということばで表現するのがいいかどうかということは、かなり問題があるんじゃないかと思う。こういうことでございまして、これ以上は、あなたはあなたの御意見がおありだと思うし、われわれはわれわれの一つ考え方を持っておるので、いわゆる見解の相違ということに相なりますから、私はこれ以上はお答えしにくいと思いますが、少なくともわれわれの考えが御理解を願えれば、非常にありがたいと思っております。
  21. 田中武夫

    田中(武)議員 結論的に言えば、いま大臣がおっしゃったように、見解の相違ということになろう思うのですが、私のほうからも、われわれの考え方をもう少し補足しておきたいと思うのです。いま大臣のおっしゃったように、中小企業の範囲のきめ方が、政府案社会党案では違う。したがって、対象事業所というか、対象者がしぼられてくる。まさに社会党のほうは、しぼられるようにしております。限られたものにおいて手厚い施策を行なうには、対象をしぼったほうがいい。それから三千万円のあるいは五千万円ということはきめ方であって、傾斜の面におけるどこかをとらえたんだという御意見ですが、私は、そうではなくて、これは三千万円、五千万円のところではそういうことかしれませんが、中小企業と大企業との間には、体質的な違いがあると思う。なぜそういうものができたのかということになりますと、欧米と違いまして、わが日本は、明治の改革といいますか、あの明治の時代において、封建制の上に直ちに資本主義が入ってきた。十分に資本主義を発達させるためには、封建社会といいますか、封建制というものを十分払拭したところにおいて、ほんとうの意味で発達すると思う。ところが、そうでなくして、封建的な思想、封建的な制度を含みながら、抱きながら、資本主義が発達してきた。そういうことで、われわれの日本においては、諸外国の大企業とは違ったものが出てきておる。したがって、そこに構造的なものがある、こういう意味で二重構造といっておるのであります。さらにそのことによって、いま大臣のおっしゃるように、たとえば一企業が、現在三千万円、三百人ぐらいのものがぐんと伸びまして、たとえばかつての松下、かつての三洋電機のように、それが数億になり、あるいは数千人の従業員を持つことは、一向差しつかえない。われわれはそれをとめようとは思っておりません。しかし、国が施策する以上は、一企業が伸びるということに眼目を置くことでなく、そうでないものを対象とし——この前にも言いましたが、一人が百歩前進するという政策ではなく、百人が一歩前進するという政策、それはやはり構造的なものがあるという上に立って、その原因を除去する、そうして積極的政策と消極的政策とあわせ行なうことによって、その構造的なものを解消していくのだ、これが、われわれの考え方であることを明確にいたしておきます。
  22. 中村重光

    中村(重)委員 理論的にいろいろ展開してくると、これは見解の相違だというような形で大臣は終始する。そこで私は、法案全般にわたって質問したいと思っておりますし、時間の関係もあります。しかし、私がどうしてこの問題を特にただすかということは、やはりこの基本法というものは、政策目標が一番大事だと思うのです。大企業中小企業との格差経済の二重構造というもののとらえ方によって、この政策目標が変わってきましょうし、その政策目標によって具体的な施策というものが変わってくる。そこで、きわめてこれは重要であると私は判断をしますので、実はただしておるわけです。ただこの問題だけで大臣と理論闘争をしようなんという考え方で申し上げておるのではないんです。したがって、この問題に対しましては、一番真剣な取り組みをしなければならぬと思っておるのです。  そこで、理論的には見解が違うのだということで大臣が終始することは、大臣としては、数回の答弁を聞いてもそうでしょう、きょう終日やっておりましても、平行線だろうと私は思う。  そこで、端的にお尋ねをしますが、格差はどうして起こったのか。中小企業の対策も、大臣も、御就任後、少なくとも相当念頭に渇いて、あらゆる施策をおとりになっただろうと私は思う。前任の佐藤大臣もそうでありましょうし、前々からの歴代の通産大臣その他関係者も、中小企業という問題を決して軽視しようという考え方があったとは思っておりません。その度合いは別といたしましても、何とか中小企業の振興をはかっていきたいという気持はあったでありましょう。そのための施策もやったのでありましょう。ところが、そうおやりになったけれども、格差縮小したのではなくて、拡大の傾向にあるということは、何を物語っておるのか。やはりこの格差を現象的にとらえてきた、施策は講じたけれども、大企業に対する施策はより積極的にとられてきた、そういう当面の施策の中からは問題の解決をしなかったことを、率直に物語っておるのではなかろうか、やはり根本的にメスを入れる、根本的に解決する、こういう取り組みがなされなかったことが、今日中小企業と大企業との関係が是正されないし、中小企業の振興が行なわれていなかった原因をここに認めなければならないのではなかろうかと私は思います。したがって、ただいまお尋ねをしました格差は、どうして起こってきたのか、いままで施策をやったにかかわらず、どうして格差縮小しなかったのか、そのことに対しての大臣の見解を伺ってみたいと思います。
  23. 福田一

    福田国務大臣 私は、日本中小企業が、歴史的な、地理的な、また人口密度等の関係から、特殊の形をとっておることについては、先ほど田中さんから言われたことを否定も何もしておりません。そういう意味では、あなたとも同じだろうと思います。しかし、およそ事業というものには、大企業といっても、資本金がうんと要るもの、たとえば鉄鋼業だったら、いまの世界経済の中ではどれくらいの規模でやるのが一番合理的かというものがあると思います。その場合に、鉄鋼ではなくて、繊維産業だったらどうだ。繊維産業にしても、原料産業はどうなるかということになる。これにはやはり適正規模というものがある。それ以上にふやしても効果はありません。だから、百億でも大企業なら、一千億でも大企業、適正規模というものがある。だから、そういうものはある一定の適正規模があるわけで、中企業であってもうまくいく仕事もあると思う。そういう場合に、やはり適正規模があるわけですから、すべてのものを資本命で全部一緒にするなんということはできないことは、あなたもよくおわかりを願えると思う。そうすると、従業員の場合も、また同じようなことがいわれるわけです。この点は同じようなことが考えられる。資本金に応じて適正規模で仕事をするということになれば、大体これくらいの人が適正であるという数字が出てくる。それに応じてちゃんと仕事が成り立っていくようになると思うのであります。こういうことから言うと、やはり産業というものは、必然的に大きいものからだんだん小さいものに資本金あるいは人数等からずっと順次並べてみると、結局並ぶようになってしまうのじゃないかと私は思う。  そこでいまあなた方と私たちの間で真剣に検討されているものは何かというと、その仕事の中で所属しておる人が得る利益を平等にするようにしなければいけない、それが格差の是正といいますか、解消といいますか、問題なんだ。規模が問題じゃないので、規模の点からいったら傾斜的にこう並んでおるものを、一ぺんここら辺で切ってみますと、その格差は上のほうを平均したのと下のほうを平均したのとでは、こうなります。いずれにしても、その中の一人一人の得る所得あるいはまた付加値をどれだけつけるかというようなものであって、上のほうの人が三千人使っていて付加価値が百できるなら、三人しか使わないところでも百できるようにするのが解消だろう、これは一番いいわけであります。そういうふうに持っていくというところでわれわれは議論をすべきであって——これは私の考え方なんですから、あなたにそれをそのとおりのみ込め、どうしても承服せいと言わない。断層でもって事を考える必要はないのではないでしょうか。だから、大企業のうちでも、やはり格差というものがちゃんと出ております。同じ大企業でも、鉄鋼業と精油業とでは、ずいぶん違います。そしてまた、その利益率についても、うんと違っているわけであります。付加価値もまた違っております。そういうものが解消することは理想であります。どこでも同じようになる、これはもう一番いいことなんで、そう持っていかなければいけません。そういうことに努力するという意味で、私たちはこれを出している。しかし、その場合に、一ぺんにそういうことができるかと言えば、私は、社会主義経済をとっても、できないだろうと思っております。この付加価値全部一緒にするなんて、そんなことはとてもできるものではない。神さまや仏さまの世界でも、できないのではないかと思うぐらいむずかしいことだと思っている。ただ、そこに理想を置いてやらなければならない。理想はそこまで持っていかなければならぬ。そのためには、税制の面とか金融の面とかで、できるだけこういうふうにやりたいのだ、こうしてくれというようなことがあれば、適正規模のものまで持っていって、そしてどんどん仕事をさせるように国も協力する、こういうことでいくべきではないか。もしこれが社会主義であったら、ノルマを働かねばめしを食わせないなんということで——自由経済の場合には、本人が働く意思を持っていないのに、幾ら金をつけてやる、これを使えとか、税金をまけてやるぞと言ったって、もうけないことにはどうにもならないと思うのであります。そういうこをと考えてみると、断層としてものを考えた場合にいわゆる格差解消するといわれている場合も、われわれのように傾斜的であるという考え方に立った場合においても、施策としては私は共通なものがたくさん出てくると思います。ということは、いま言ったように、一人が持つ付加価値をできるだけ同じにしようじゃないか、所得を同じにするようにしようじゃないかという考え方でやるということは、これは何も社会党と自民党と意見が違うはずはないと思うのです。そこを断層としてごらんになるものですから、どうもわれわれもそこのところはわかりませんよ。ボーダーラインのところは一体どうするか。二重構造という場合に、異質のものがあるときに断層ということばを使うので、それだから二重構造ということばをもしあれすれば、何万という二重構造ができるのではないか。まあこれは理屈になりますけれども、そういう感触がするわけなんで、そこのところは、われわれはそういうふうに考えておりますが、それを直す手段としては何も皆さんと違っておらないのだから、ひとつ皆さんにも御支援を願って、この法案をぜひ通してもらいたいと言っているので、手段、方法がまるで違っていることをやってくれと皆さんに言うているのではないのだ、こういう認識に立っているのであります。
  24. 中村重光

    中村(重)委員 どうも大臣答弁を聞いていると、だいぶ矛盾もありますし、かつまた、私、提案者になっていないから質問しているのですが、社会党基本法の内容をどうもお読みになっておられない。そういうことでは、社会党案政府案とを比較して検討する資格というか、熱意に欠けていると思うのです。いろいろ御答弁がありましたが、私が端的に尋ねましたから、そのことを端的にお答え願えれば一番いいわけですよ。格差はどうしてできたのか。そしてまたいろいろ施策をおとりになったけれども、格差縮小しないで、拡大をする傾向すらある。それはどういうことなのか。そこをはっきり把握しておらなければ、中小企業基本法なんていう性格のものを出し、法律をつくっても、中小企業をほんとうに育成、強化していく、大臣が当面の目標とする、理想とする格差解消を期待するなんということは、ナンセンスになると私は思う。だからしてそのとこをお尋ねしたのですが、このことに対しては、非常に大事ですけれども、時間がありませんから、またほかの委員からそのことをやってもらうといたしまして、質問を進めたいと思いますから、その点をもう一回お答え願いたい。
  25. 福田一

    福田国務大臣 格差ができたのには、いわゆる封建制度の時代における一つの地域経済単位の地域性が小さかったということ、それからその後において相当な人口の増加があったということ、こういう狭いところに人口の増加があったということが、いわゆる中小企業と大企業ができた一つの原因である。もう一つは、近代化され、技術化された工業におきましては、どうしても大企業でやらなければうまくいかない仕事がたくさん出てきまして、それがまた一つ格差といいますか、そういう大企業中小企業を生んだ理由であると、私は理解をいたしておるわけであります。これがよって出てきた原因の追及ももちろん大事でありますが、しかし、これをどういうふうにしていくかという理想からいえば、われわれは、先ほど申し上げたように、生産性やあるいはまた付加価値性というようなものを平等にするようにして、所得も、できるだけ水準を——できるだけじゃなくて、理想は一緒にする、こういうところへ持っていって、そして施策をいたしてまいらなければならぬ、かように考えております。
  26. 田中武夫

    田中(武)議員 この問題は、質問者は打ち切るというので、念のためにもう一言だけわれわれの考え方を申し上げておきたいと思います。  と申しますのは、企業の中にあっても、いわゆる企業性の強いものといいますか、ほっておいても自然に一つの組織体として動いていく、こういう企業を、われわれは企業性のある企業だと考えます。同時にまた、そういうことでなく、勤労性の強いもの、これは社長といいますか、店主といいますか、経営者みずからがやはり労働者となるような範疇において一緒に働いておる。こういう企業性、勤労性というところに土台を持ちまして、やはり断層はある、体質的な違いはあるのだと考えておるのであります。したがって、前者の企業性の強いものについては、経済政策だけでやっていけるが、後者の勤労性の強い企業については、経済政策のみではやっていけない。政府案をとりましても、格差是正考えましても、勤労性の強いものに対しては、社会政策が必要である、このように考いておりますと同時に、政府案の前文の中にも「中小企業経済的社会的制約による不利を補正する」とある。したがって、こういった企業に対しては社会政策が必要であるということは、政府自体もお認めになっておるものだと考えております。
  27. 中村重光

    中村(重)委員 あとでまた、大企業中小企業あるいは零細企業との関係につきまして、先ほど大臣がちょっと触れられた適正規模といったような問題の中に出てまいりますし、下請の問題あるいは小規模事業等の問題にも出てまいりますので、その際にまたお尋ねしなければならぬ点が出てくるだろうと思います。  そこで、前文の中には「このような事態に対処して、特に小規模企業の従来者に対し適切な配慮を加えつつ、中小企業経済的社会的制約による不利を補正する」云々と、こうあるわけですが、これを受けて政策目標というものが出ておるわけです。ところが、この中には小規模企業のことに全然曲れてないわけなんです。私は、これは問題だと思います。そこでお尋ねいたしますが、社会党案には、中小企業者の経済的地位の向上、中小企業従事者の生活確保、このことが強く強調されておるわけです。農業基本法の中におきましても、他産業従事者との生活の均衡ということは強く強調しておるところでありますが、どうしてこの政策目標の中に、小規模事業者、中小企業者並びに従事者の生活の確保であるとか、あるいは所得の均衡というものをうたわれなかったのか。特に大臣が横山あるいは永井委員質問に答えて、大より中は弱い、中より小は弱い、だから、その弱いものにてこ入れをしてこれを強くしていくのだということをお答えになっておる。そのことが大臣の信念であるとするなら、政策目標の中にこのことは強く強調されるべきものではなかったか、私はこう考えますが、その点に対しては、大臣はどうお考えになりますか。
  28. 福田一

    福田国務大臣 私は、中小企業というものを対象にしての基本法でありますから、それに全部に合った条文をつくるのが当然であります。中小企業のこと、小企業のことを書くというのではない、中小含めて。だから、第一条からごらんください。どの条文においても、中小企業ということばであらわしておる。小を無視はいたしておりません。しかしながら、それでもやはり特に小企業については念を払わねばいかぬと思って、二十三条で小規模企業というものを取り上げておる。これは念のためでございまして、実際をいえば、基本のほうからいえばどういうものを言うのだということも必要でもありますが、そういう意味で条文も必要でありましょうが、中であろうが、小であろうが、われわれはそういうふうにとらえておるのでありますから、その産業に対する付加価値性をみんなに平等に持たせることを理念とする。みんなの産業、みんなの所得が一緒になるようなことにするのがわれわれの願いでございますから、したがって、条文はどの条文も中小というものを全部対象として入れておるわけでございます。
  29. 中村重光

    中村(重)委員 大臣がそのように御答弁になりましても、この第一条の政策目標を受けて、第三条の国の施策が出てきている。その中に、私はさらにお尋ねをしたいと思います。  そういう御答弁をなさっても、中小企業者の生活を確保していく、他産業の従事者と中小企業従事者の生活を均衡する、これが根本でなければなりません。そこから施策というものが出てこなければならぬ。大、中小だ、中小ではないのだ、こうおっしゃるけれども、やはりより根本的なものは、経済の二重構造というものはどこにあるのだ、どうして起こってきたのか、あるいはいま相当の時間をとって議論された格差の問題、こういうことは、結局はそれぞれの企業間の従事者の所得が均衡していない、ここにあるわけですから、やはりこの所得を均衡させる、生活を確保する、こういうことを政策目標に強調するということが、私は正しいと思う。しかし、大臣がそうだとおっしゃるならば、それでは国の施策の中に、どういうその積極的な面があらわれておるのか。私は、質問を通じてそのことを明らかにしていきたい、こう思います。
  30. 福田一

    福田国務大臣 政府案の第一条を見ていただきますと、終わりのほうになりますが、「中小企業経済的社会的制約による不利を補正するとともに、」こう言って、経済的、社会的不利を補正するということは、いまあなたの仰せになったようなことを含めておるわけでございまして、「補正するとともに、中小企業者の自主的な努力を助長し、企業間における生産性等の諸格差が是正されるように中小企業生産性及び取引条件が向上することを目途として、中小企業の成長発展を図り、あわせて中小企業の従事者の地位の向上に資することにあるものとする。」、こう言って、第一条で書いておりますので、これは決して小のほうを無視したわけでもなければ、小のほうが経済的あるいは社会的にやはり非常な制約を受けておる、損をしておるということを一応前提として、その不利を補正する、こう言っておるわけでありまして、これ以上は、あなたもそうでありますが、私も何も議論を申し上げようと思って言っておるわけではございませんが、気持の上で、これはもちろんわれわれだってそういうことがあることを知らないで基本法を出しておるわけでも何でもない。私は、そこら辺はあなた方とあまり違わないのじゃないか、こう思っておるわけです。
  31. 中村重光

    中村(重)委員 私は、第一条を読んで質問しているのですから、いま大臣が親切に御説明いただいた点を感謝します。あまり違わない、これはたいへんな違いなんです。違うから盛んに議論されるのでず。大臣が先ほど格差の問題にしても、理想的にはこれを解消するのだとおっしゃった。中小企業基本法というのは、中小企業者の憲法ですよ。中小企業者にビジョンを与えるのです。この基本法を見て、中小企業者は将来どうなるかという展望を知ることができるのですよ。それに基づいてのいろいろな計画も立ててくるのですよ。そんな簡単なものじゃありませんよ。これはあなたのほうで、特に不利の補正であるとか、あるいは理想とする格差解消することを強調しない。この不利を是正するというふうにとどめられるのか。それから中小企業の従事者の地位の向上ということも、どちらにもとられるようなあいまいな文句を連ねておる。所得を確保する、他産業と均衡させる、これをはっきりうたわずして何が政策目標ですか。何が中小企業者の憲法と言えますか。そういうあいまいな考え方の上にいこうとしておるところに、お尋ねしますきわめて危険性のある条文が連ねられておる、施策考えられておる、こう判断せざるを得ないのです。しかし、このことに対しまして、幾ら私が問題を指摘しても、あなたは提案者ですから、なかなかごもっともでございますとはおっしゃらぬ。あくまで自説を固持されるであろうと思う。そこで具体的な条文を通じてお尋ねしてみたいと思います。順を追うて一応お尋ねしてみますが、中小企業者の範囲の問題、これには先ほど大事が触れられたように、従業員三百名以内、資本金は五千万円以内、実はこういうことになっておるわけですが、ところが、これに対して、小規模事業者の定義というのをこの中小企業者の範囲の中にどうして明らかにされないのか、これはあとに出てきておりますが、社会党案は、はっきりこの定義の中に小規模事業者の範囲を出してきておる。で、特にこれを切り離された真意をお尋ねをしたいということ。それから本会議におきましても私は質問をしたのでありますが、従業者が三百名以内、資本金五千万円以内ということになってまいりますと、「並びに」ということでありますので、一方がその以内でさえあれば、一方は制限がない。いわゆる無制限である、天井知らずということになってまいります。したがって、資本金一億あるいは二億というものも、中小企業の範疇に入るということ。これが適当かどうか、秩序を保ち得ないという結果も起こってくるのではなかろうか、こう考えますが、その点に対しての見解を聞かしていただきたいと思います。
  32. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 まず第一段のほうの、なぜ定義の範囲の中に小規模というものを群かなかったかということでございますが、これは先ほど来大臣が申し上げておりますように、われわれは、すべての施策というものが中小企業に対するものでありまして、これらの施策がすみずみまで行き渡るように特別の配慮をしなければならないという配慮規定が、二十三条にあるわけでございます。ですから、これをたとえば中小企業のうち、中堅規模の企業についてはこうやるのだ、小規模についてはこうやるのだといって一々分ける必要はむしろないので、一応大きな中小企業という全体の範囲はとらえておりまして、しかも、施策ごとにその第一条の目標を達成することができるように定める、ケース・バイ・ケースで定めるのだというふうにもなっております。そこで御承知のように、鉱山の場合には千人でありますとか、いろいろな例外が現在でもあるわけでございますが、そういうような例外は、今後も企業の実態に応じて、上、下とも実態に合わした施策を講じていきたいと思っております。そういうことにいろいろな経済的な見地が直ちに適用されがたいといったようなために、特に経営改善普及事業の推進でありますとか、あるいは協同組合の組織化の推進でありますとかいうようなことをやる必要があろう。それによって実情からいろいろな施策が受け入れられるようにしたいということが二十三条に書いてあるわけでございまして、むしろ定義自体の中に小規模企業というものはこうだというふうに書いたりしますと、それじゃ中規模企業に対するもの、小規模企業に対するものと、いろいろ施策を分けなければならないというようなことになって、かえっていろいろな面において不都合が生ずることもありはしないか、そういうふうに考えております。
  33. 中村重光

    中村(重)委員 現在資本金は一千万円ということですね。ところが、従業員三百名以内の場合、資本金は一千万円というのを必ずしも固定をして施策をおやりになっておられない。いまの中小企業の中の中心的なものだという、いろいろな政策的な点があるんだろうと思うのでありますが、相当巨額な資本金を擁する企業も、中小企業の範疇の中に入れておやりになっておる。特にいままでの経験の中で、一千万円なら一千万円という資本金にしても、どうしても実際の具体的な施策をきめこまかくやっていく上については支障があるんだということを、実績の面から明らかにしていただきたいということ。  それから私がこれをどうしてしぼりをかけなければならぬと言うのかということは、たしかどなたか公述人も申しておったと思うのでありますが、やはり従業員が三百名でありさえするならば資本金は制限がないというような形に法律的に定義されておりますれば、資金の面におきまして、いわゆる金融の面におきまして非常な影響が出てくると思う、一線におきましても。自分のところの企業は、資本金は大きいけれども、従業員は三百名だから、当然中小企業の範疇に入るから、政府関係の金融機関からも金を借りる権利があるんだというような形になってまいりまして、もちろんそれをチェックするもの、これを決定するものは、それぞれの金融機関の責任者であるといたしましても、法律的にこれを否定するわけにはまいりません。実際において、その運用する人によりましては、そうした設備も行き届き、経済も健全である、そういう企業に資金が片寄ってくる。そういう企業は、いわゆる中規模企業でありますが、そういう企業に資金が集中していく危険性が免じてくる。これは否定できないと思う。そのことは、新たな企業間の格差、あるいは産業間の格差を生じてくることは、十分考えなければならないのじゃないか。そのことを考えてみますと、一方においては、しぼりをかけないことが便利であるという面があることは、私は否定いたしません。しかしながら、より以上にしぼりをかけないことにおいての弊害を生じてくるとするならば、そうした特殊なものは、政令か何かの措置をもって特別の扱いをするという形をとる必要があるのではないか。やはりここでは「かつ」という形でしぼりをかけることが適当ではないかと判断をするのであります。そのことに対しての考え方を聞かしていただきたい。これは事務的だけではありません。あなたの御答弁も受けますが、大臣考え方も聞かしていただきたい。同時に、社会党提案者からも、特に「かつ」とされた積極的な理由、並びに小規模企業、特に定義の中に同時に並行させなければならぬという、積極的な理由をあわせてひとつお答えを願いたい。
  34. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 まず、先生もいま御指摘になりましたが、たとえば五千万円以上の中小企業等におきましても、ものによりましては、まだ育成途上にあって、もう少しめんどうをみてやらなければならないといったようなものもあるわけであります。それからまた、最近いろいろやっております団地でありますとか、あるいは協同組合といったような組織的なものが中心になる場合にも、相当こういう財政的負担力のあるものが中心になって同業者が集まり、あるいは関係者が集まるという場合もあるわけであります。そういう場合に、お前は大企業だからだめだというので別な扱いをすることは、かえってその組織化を妨げ、関連事業にもマイナスを及ぼすこともありはしないか。もちろんわれわれは、三百人以下であれば、資本金が五億でも十億でも、実質大企業でも、中小企業としてのめんどうをみようということではありません。これは先ほど申し上げましたように、実際の実情に応じて、ケース・バイ・ケースで処理したい、こう思っているわけであります。金融等につきましても、実際の政府系の金融機関でめんどうをみなくても済むものは、町の市中金融機関のほうに行くように、これはこの前の公聴会におきましても、北野理事長からもそういうふうに努力しているというふうなお話がございましたが、われわれ政府としても、そういう努力をしておるわけでございます。それから、もしこういうことを画一的にやることによってかえって弊害が起こるというようなおそれのあるものは、たとえばこの前御可決いただきました近代化促進法によりまして、特別の割り増し償却ということをやっておりますが、ああいう場合に、たとえば資本金が五億だ十億だというところが、従業員が二百人とか二百五十人とかいうことでそういう恩典に浴するのは、いかにも少し保護が厚過ぎるというふうに思われますので、そういう場合には、はっきりと五千万円かつ三百人以下ということを、法律社会党の御主張と同じ規定を入れているわけでありまして、われわれも大ざっぱにワクを広げることによって弊害も起こるだろうと思われるようなものに対する予防措置は、それぞれの法律で別途考える。この基本法に基づくすべてのものを全部やろうということでないことは、すでに御可決いただいた法律の中に出ておるわけでございまして、このほかにも、たとえば近代化補助金といったようなものにつきましても、五十人以下の比較的小さな方に六一%、百人以下の方に八七%というものが、実績として比較的規模の小さい方に出ております。また、中小公庫におきましても、百人以下に対する貸し出しが七〇%に達しているということで、いま先生の御指摘のような、頭を広げたために全部上のほうに片寄ることのないようにということにつきましては、法律上も必要なものについては所要の措置を規定し、また実際の行政の運用上指導するということで、先生の御懸念のないようにやっていきたい。ただ、たまたま法律で規定したために、われわれが救ってやりたいというものまで救えなくなることがないように、実質大企業に手厚い保護がいかないようにということにつきましては、十分に先生のただいまの御意見を尊重いたしまして、今後この行政をやっていきたいと考えております。
  35. 福田一

    福田国務大臣 私は、中小企業の定義というのは、便宜のものであると考えております。実を言うと、私は、社会党さんの定義の場合も、便宜だと思うのであります。たとえば三千万円以下、三百人以下というふうにされても、もしその場合に、二千万円以下、二百五十人以下としたらどうだろうか、なるべく狭めたらいいじゃないか。二千万円以下二百五十人にした場合と、三千万円以下三百人にした場合と、一体どこが違ってくるか。もしあなたのほうが原案をそれだけしか出されないで、われわれのほうからそういう案を出して固執すると、やはり同じような矛盾が出てきやしないか。要するに、そこが実を言うと、根本的に議論として違ってくるところです。今度は五千万円にしたのと三百人以下にした場合、三千万円と三百人以下にした場合、あるいは二千万円以下と二百人以下にした場合、ずっとこうやって、その段階においてみんな格差があります。全部やってごらんなさい。数字をやらしてみれば、すぐ格差が出てくる。これは要するに便宜なんです。なぜそういうことをしているかというと、特徴はそこら辺が多いというところで出るのです。私は、便宜の議論でありますから、話し合いができる面がかなりあると思っておるわけです。ただ、先ほどお答えはしなかったけれども、社会保障的なことは、実はわれわれはこのあれではむしろ取り上げない。そういうようなことは、また別途の法律でやったらいいという考え方を持っております。私は、差の程度は、お互いに便宜できめたと思っておるわけです。そこにさい然たる区別が上と下とでどれだけあるかということになったら、私は断層論をとりませんがゆえに、どうしてもそこのところがわからない。こういうことを申し上げないわけにいかない。
  36. 田中武夫

    田中(武)議員 中小企業の範囲問題は、定義の問題とともに、いわゆる零細、わが党で言う勤労事業の定義をその範囲のところで明記した、こういう点についてのお尋ねだと思いますが、いま五千万円あるいは三千万円ということは、大臣は便宜的なものだ、こうおっしゃったが、必ずしも便宜的なものではないが、十分科学性を持ったものとは言えないと思います。ただし、大きく違うことは、政府案の五千万円並びに三百人とあるのを、われわれは三千万円かつ、三百人、すなわち中小企業の範囲を、その五千万円なり三千万円なりをもとに、従業員、両方がかぶるという規定をしております。そのことは、先ほど質問者が御指摘になりましたように、人さえ三百人以下であるならば、幾ら資本金があっても、これは中小企業か、こういうことでありますので、両方かぶるようにいたしました。今日、オートメーション化が進んだ近代産業にありましては、従業員三百人以下でも、優に市場を支配する生産も可能であり、資本金何十億という会社との競争も可能であると考えます。そういうものを入れるべきでない、こういうことで、「かつ」ということで両方にかかることにしています。したがって、五千万円とか三千万円は、十分に科学性のあるものである。お互いに、十分科学性のあるものでないということは言えないと思います。すなわち、「かつ」と「並びに」は大いに違ってまいります。さらに中小企業の範囲、すなわち、定義のところで、零細企業、わが党の言うところの勤労事業者を明記した、このことは、先ほど樋詰長官も言いましたように、そこへ入れるならば、別にいわゆる零細企業政策というものを入れねばならない、こうなりますが、まさにそのとおりでありまして、われわれは、そのために特に範囲の中に勤労事業というものを入れて、そして五章四十四条以下に勤労事業者に対する政策ということで入れておるわけであります。そこで、樋詰長官が先ほど答弁したのとうらはらになりますが、われわれは、特別に零細企業政策が必要であるという観点から、政府と違って、定義の中に勤労事業者というものを入れた、こういうことでございます。
  37. 中村重光

    中村(重)委員 政策的な答弁があったあとで大蔵省当局の見解を聞くのもどうかと思うのですが、金融税制上の問題として、大蔵省はこの点に対してはきわめて関心を持たれておるところだろうと思います。過去の実績もあり、さらにまた、いま樋詰長官の御答弁がありましたが、そういう「かつ」というしぼりをかけた、そのことは、例外的なものをしぼりをかけておるという形になっておる。やはり「並びに」という形になってまいりますと、私が申し上げたような中堅企業、優秀な企業金融が片寄っていく傾向は、否定することはできないと思う。ですから、過去の実績をいろいろ調査されたでありましょうし、これにつきましての検討はさらに必要だと思う。そこで税制金融の面から大蔵省のお答えをひとつ伺いたい。
  38. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 中小企業者の範囲につきましては、先ほど中小企業庁長官が申されたそれと同じような考え方を持っておりますが、つまり資本金が現在までですと、一千万円——三百人以下であって資本金が相当大きいという場合も、現実にございます。そのようなものにつきましては、特にそういうものに対する政府金融の必要があるかどうか、それらの機関におきまして十分審査いたしまして、金額的にもあまり大きな額を貸さないようにしております。全体として、私は、そういった中小企業の中の比較的規模の大きなものに金融が片寄る、特に政府の資金が片寄っていくということはないように配慮しているつもりであります。そういった一般的に大企業中小企業の中間的なものだと思いますが、そういったものにつきましては、民間の金融機関におきましても、相当程度融資に応ずる態勢をとっております。これは大銀行でありましても、そういったものを融資対象にしておりますから、さほど政府資金をもって育成、強化をはからなければならないというケースは、あまり多くないというふうに判断をしております。
  39. 中村重光

    中村(重)委員 大臣の先ほどの御答弁では、便宜的だというようなことであったのでありますが、社会党提案者からもお話がございましたが、私は、便宜的だ、こう簡単に片づけることはできないと思います。中小企業の範疇に入るか入らないかということで、相当政策的な形は変わってまいります。投資育成政策の問題にいたしましても、これはしかりでありましょうし、もちろんこれは一億円まで達すれば、それからここは引き受けないのだということでありますけれども、いろいろな面におきまして、税制の面、金融の面、これはもう政策上の関係が出てくるわけであります。なるほど三千万かあるいは、五千万かということになりますと、社会党提案者からもいまお答えがありましたように、その点については、科学性があって、三千万円が統計的に正しいとか、五千万円が正しいとか、そういうことはなかなかはっきり出てこないと思います。そこに便宜的ということばを大臣はおっしゃった、私はこう思うのであります。しかし、「並びに」とか「かつ」という問題は、これは問題の根本をなしておる、決してこれは便宜的だという形では片づけられないものがあると、私は思うのです。しかし、この点も平行線という形になるのかもしれません。したがいまして、この範囲の問題に対しましては、この程度にとどめて次に移ります。
  40. 田中武夫

    田中(武)議員 いま中村委員が言われたように、便宜的ということばはともかくとして、三千万円ということで、十分科学性を持ってきめたのではないということは申し上げました。しかし、五千万円でなく、三千万円にし、「かつ」としぼったことは、中小企業の範疇をしぼって、施策がより小さなものに重点的に行なわれるということを含んでおるということをつけ加えておきます。
  41. 中村重光

    中村(重)委員 第三条、国の施策の問題をお尋ねいたしますが、これは提案理由の中で大臣並びに樋詰長官は、この基本法の中核であるという確信の上に立って御答弁になっておられるわけであります。この中で、第三条の第二項が最も中心になるわけでありますが、ここでは産業構造高度化、あるいは産業国際競争力の強化を促進する、こういうことがうたわれておるわけであります。この第二項の考え方の上に立って、第一項各号が出てきておると私は思う。そこで具体的には、適正規模、さらには適正規模を考えて、企業の合併であるとか、あるいは合同であるとか、あるいは共同出資による企業の設立をやるのだ、こういうことのようであります。しかも、これはどういう企業を指定するのか、いわゆる第二項でいうところの産業構造高度化国際競争力の強化に役立つ企業である、こういうことでこれを指定するという形が出てまいりましょうし、また、そういう事業はどういう事業であるということを公表されるということになるのだろうと私は思っております。この点に対しまして、問題として出てまいりますことは、産業構造高度化をはかり、国際競争力の強化をはかっていく、こういう形になってまいりますと、どの事業も、どの産業も、政府施策の対象にならない。これは近代化促進法の中におきましても、業種を指定するということが関連法として先に審議され、通っておりますので、この審議の中においてもつまびらかにされておるところだと思う。私も、国際競争力を強化すること、産業構造高度化すること、そのことに対しましては賛成であります。しかし、特定の産業高度化する。そのための施策をやるということにおきまして、先ほどもちょっと触れたのでありますが、産業間あるいは企業間の格差が生じてくるという危険性は、これは否定できません。したがいまして、これらの点に対しての考え方を、まず聞かしていただきたいと思う。
  42. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは、第一条の本文に必要な施策を総合的に講じなければならないということをはっきりうたっておるのでございまして、いろいろな、金融にいたしましても、あるいは指導事業にいたしましても、これは単に産業経済だけでなしに、金融税制、社会、科学、あるいは技術といったような全部の点から、総合的に講ずるわけでございます。その際に、前文にも、一応こういうような国際競争力を強化して、国民経済の均衡ある成長発展を達成するということのためにも、中小企業発展が必要だし、中小企業発展なくして国民経済は立ち得ない、また国民経済の均衡ある成長発展の過程においてのみ、ほんとうに中小企業の健全な発展も成り立ち得るのだというようなことが、第一条の目的の中にも明らかに響いてあるわけでございます。  第二項は、いろいろな中小企業に対してとるべき施策が書いてあるわけでございますが、その際に、ただ中小企業の立場からだけということでなしに、これは前文にも明らかなように、一応世界的な観点からものを考えなければならないという意味で、これらのいろいろな中小企業のための施策をとる際には、国民経済の均衡ある成長発展に資するように配慮しながら、いろいろな施策を講ずるのであるぞということを規定したわけでございます。
  43. 逢澤寛

    逢澤委員長 暫時休憩いたします。  午後二時より再開いたします。    午後一時十九分休憩      ————◇—————    午後二時二十六分開議
  44. 逢澤寛

    逢澤委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  中小企業基本法案等八法案について質疑を続行いたします。中村重光君。
  45. 中村重光

    中村(重)委員 国の施策について、順次お尋ねをしていきたいと思います。大蔵省の銀行局長お見えですが、時間の関係もあるようですから、金融税制の問題に対してお尋ねしてみたいと思います。  その前に、まず大臣にお伺いいたしますが、この基本法を制定するにあたって、中小企業者が期待しておるのは、金融税制の問題、それから労働力の問題、基本法を制定してもらうことにおいて、いま行き詰まっておる状態のこの三つが改善されるのではないか、何とか中小企業が安定した経営をすることができるような道が開かれてくるのではないか、そういう期待があろうと私は思う。もちろん大臣としてもそうした期待にこたえることがねらいなのだということは、いままでの質疑の中において明らかにされたのであります。ところが、横山委員がただしましたように、この基本法を制定するにあたって、肝心の中小企業対策の予算措置というものが格別考えられていない。もちろん、部分的なことに対しましては、従来と異なった面があるということはわかるわけでありますけれども、少なくとも中小企業のいま行き詰まっておる現状を打開するということに対しましては、ほど遠いものがあるというように考えられるわけであります。そこで、金融上の問題といたしましては、具体的には、政府金融機関に対して政府資金を投資をし、あるいは財投の中からこれを融資をしていくことを積極的に行なっていかなければならないということは、申し上げるまでもないわけであります。ましてや中小企業関係の専門金融機関、具体的には地方銀行、あるいは相互銀行、あるいは信用金庫、こうした民間の金融機関に対して、中小企業に金が流れていくような、そういう配慮をやらなければならないのではないか、そのように考えるのでございますけれども、この基本法の中からはそうした積極的な面をうかがうことはできませんし、さらにまた、これと関連をして、いわゆる関連法として出されました数本の法案の中にも、そのような積極的な面があらわれていないということであります。この点に対して、大臣としては、中小企業者の期待に、いわゆるそのような重要な問題に対して、どうこたえようとするのか、まずその点を伺ってみたいと思います。
  46. 福田一

    福田国務大臣 お説のとおり、税金、金融労働力の問題は、中小企業の方が最も関心を持っておられるところであります。  そこで、金融の問題でございますが、これについては、中小企業金融公庫とか国民金融公庫には、ある程度資金の増額をいたしております。しかし、それは思ったほどではないということは、われわれも承知をいたしておるのでございまして、今後ますますそういう面においては努力をしたい。また、市中銀行につきましても、できるだけそういう面で努力をするようにさせねばいけませんが、しかし、問題は、市中銀行といえども、これは損をしてでも貸さねばいかぬというものではないので、そうなると、いわゆる信用を補完する仕事が一番大事です。いざというときには国が肩がわりをするような補完制度というものが非常に大串になるので、信用保証協会の資金の充実をはかる等、保証協会の強化によって信用を供与するということが、私は大事であると思うのであります。この点については、いささか法案において出しておりますが、しかし、これもあなたが言われるように、そんなことではというお考えでいられることもわかりますが、われわれとしては、この点においても今後も努力をしたい、かように考えております。  労働力の面におきましては、これは中小企業に働らく労働者に対する、いわゆる一定年限つとめた場合においても、退職金の問題とか、あるいはまたそこにつとめておった場合に、厚生施設の問題とかというようなことが、大企業に比べて非常に不安心であるということから、青少年層が、大企業のほうへ多く引き取られてしまうというか、そちらへ就職してしまうということが、一番大きな隘路になっておると思うのであります。そこで、こういう面につきましては、共同して何らかのそういう施設をつくったりする場合には、特に考慮をしようというようにいたしておるわけであります。これとて、十分な措置ができておると申し上げておるわけではございません。いずれにいたしましても、われわれとしては配慮はいたしておりますけれども、まだ十分ではないと思いますので、今後もひとつ大いにつとめていきたい、かように考えておるわけでございます。
  47. 中村重光

    中村(重)委員 そこで、具体的な金融の問題をお尋ねする前に、考え方をひとつ聞かせていただきたいと思うのでありますが、これは施策の面とも関連をしてくるのでありますけれども、御承知のとおり、物価の上昇というのが非常にはなはだしいものがあるわけでございます。この原因というものは、非常に多様的であり、また、問題点というものは深いものがあると思うのでありますけれども、私は、端に言って、大企業中小企業経済成長のアンバランスということが指摘されるのではないか、このように考えておるわけです。大企業に過度の設備投資を行たっていく、そうすると、生産性が上昇してくるということは、必然であるわけです。中小企業設備投資が、大企業との間に格差があるということになってまいりますれば、中小企業の後進性というものは、なかなか大企業に接近するような形にならない。こういうことでありまして、結局は、中小企業生産性が低いということは、中小企業生産をする物資というものは、勢い労働力の問題等々も関連をいたしまして、高い価格でもって生産をされてくる、こういう形になるわけでございます。いろいろと理論的に解明をしてまいりますれば、まだ問題点は非常にあるわけでありますが、そうした設備投資のアンバランスが、経済成長のアンバランスとなってくる、物価の上昇ということに深い関係を持ってくるということになると思うのでありますが、そうなってくると、中小企業に対するところの設備投資を増強していくということでなければならない、さらにまた、運転資金というものを多く中小企業につぎ込んでいくということにならなければならない、このように考えておるわけでございますけれども、設備投資の面におきましては、大企業と比較をいたしまして、その格差というものはなかなか縮小していない。さればといって、中小企業関係に、政府金融機関に対するところの政府出資あるいは融資という面からいたしましても、私が指摘いたしましたように、大臣答弁をされたように、ある部分におきましては、むしろうしろ向き金融というものすらあるということであります。これらの点に対しまして、具体的に、どのように大企業中小企業との生産性縮小するために金融面からてこ入れをしようとお考えになっているか、まず、その点に対しての具体的な考え方をひとつ聞かせていただきたい。
  48. 福田一

    福田国務大臣 私は、大企業中小企業という場合においても、その近代化をやっていく事業の内容について、やはりその事業事業によって適正規模というものがあるのじゃないかと思っております。また、大企業には適しないけれども、中小企業に適する仕事もないとはいえないのでございまして、したがって、一概に言うわけにはいかないと私は思いますが、要するに、中小企業の人たち設備近代化し、合理化を促進していこう、こういうことになった場合、金融面ならば、中小企業金融公庫にしても、国民金融公庫にしても、あるいは民間の場合に、計画を出して、それを信用を補完する場合においても、大体その計画というものが出てくるわけであります。具体的に個々のその店、その企業について計画が出るわけであります。それが合理性、いわゆるなるほどそうだという場合には、極力貸し出しができるように措置していくということが大事でございまして、一般的に大企業中小企業との格差を是正するといっても、機械的に、またはエレベーターみたいにぐっと持ち上げる、そういうことは、なかなかむずかしいと私は思います。やはり中小企業者が——実はいまのところ機屋さんなんかはわりあいわかりやすいのですが、機屋さんがいままで二十五台だったのを六十台にすると、総係費のほうはふえないで非常によくなる。いままでは木製だったけれども、鉄製に直すとこういう効果があるのだという計画が出た場合、それには金融してやる。そうしますと、これが三百台、五百台いあるいは一千台くらい持っている場合とやや匹敵する。場合によっては中小企業のほうが得する場合がある。総係費とか、また厚生施設費とか、そういうものが少ないから。具体的にそれを見ていくと、これは確かに生産性を向上させ、付加価値をよけいつけることになるし、また単純に言えば、もうかる、こういうことであれば、そういう仕事にはやはり金をつけてやる、こういうふうな考え方でやるのでなくては、一般的に、それじゃどういうやり方でやるのかと言われても、私は一つのフォーミュラというか、方式というものはなかなかむずかしいのではないか、抽象的に抜き出すのはむずかしいのじゃないか、こう思うわけであります。
  49. 中村重光

    中村(重)委員 考え方というものはいろいろある。しかし、いずれにいたしましても、金融問題というものは、中小企業設備近代化をはかっていくために、あるいは高度化をはかるために、これは不可欠の問題だと思うのです。ですから、やはり中小企業に資金をつぎ込むための具体的な施策というものが出てこなければならない。その具体的なあらわれといたしまして、先日本院を通過いたしました投資育成会社の問題も、その一つであることは認めるわけであります。いろいろ問題があるといたしましても、前向き法案であるという形において、私どもこれに賛成をいたしたのであります。ところが、私が問題として重視するのは、財政投融資の面におきましても、あるいは一般会計の中から支出しなければならない政府出資の問題にいたしましても、やはり中小企業基本法をつくったということは、いままでの中小企業政策をもってしては、格差解消にならない、中小企業近代化して、いわゆる産業高度化をはかり、国際競争力を強化するという形にならないという考え方の上に立って、この法律案を提案しておるわけですから、やはり具体的な金融的な施策があらわれてこなければならぬ、私はこう思うわけです。ところが、三十八年度の財政投融資の面を考えてみましても、国民金融公庫あるいは中小企業金融公庫に対しては若干の増額はありましたけれども、しかし、これは一般的な設備投資の増大等から考えてみまして、特別にこの基本法によって金融措置を講じたということにはならない。また、いま大臣の御答弁がございました信用補完の面におきましてもしかりだ。これでは、ほんとうに基本法を提案をして、これに関連する法律案を提案をして、そしてこれを制定をし、中小企業の期待にこたえるような施策をやるという形の、いわゆる前向きの施策ということにはならない、私はこのように考える。特に指摘したいのは、商工中金の一般会計の出資を二十億昭和三十七年度よりも減額をしたという、このうしろ向きの施策は、どういう考え方の上に立っておるのであるか、この点に対するお考えを伺いたいということと、大蔵省に対しては、商工中金の政府出資を三十七年度は二十億であったが、三十八年度に対してこれを全然計上していない、こういううしろ向きな政策があり得るのか、中小企業基本法を制定をすることに対しての熱意が、ほんとうに政府にあるのかどうか、そうしたことに対しての具体的な考え方を聞かしていただきたいと思います。
  50. 福田一

    福田国務大臣 金融の問題でございますが、しかし、私はこういうことであると思うのです。中小企業に対してできるだけ金融をするということは、やっぱり産業の合理性が前提の一つになっております。損してもかまわないから、近代化すればいいのだ、こういうことではない。まず、これが一つの大きな前提条件になります。もうかるということがわかっていた場合、そのときに金がつけられない、金がないということであってはいけないと思う。そういう意味からいって、中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工中金その他等々の諸金融機関を通じて、できるだけ多くの金をその方面に流してやるという施策をとることは、われわれとしても賛成である。昨年の予算においてそれが十分だとは、われわれもここで申し上げません。われわれも、いろいろのほかの方面と本考慮を払いながら、できるだけの努力はいたしましたことは申し上げられると思うのであります。  商工中金の点で、三十七年度には二十億出資をふやしたのに、今度はゼロだった、それはけしからぬ、こういうことでございますが、これはわれわれも、多いほうがいいわけでございますから、多きを希望しておりましたけれども、事実問題といたしまして、商工中金が貸してある金が返ってくるのを入れて勘定しますというと、資金量はやっぱり去年よりはふえることになってきます。そういうことで、方々ほかにもいろいろ金が要るからということで、これは政府としての問題でございますが、予算折衝においてああいう形になりました。それじゃおまえそれで満足をしたかというと、満足はしない。しかし、全体の形として国政を運営する上においては、やはりどっかで話し合いをつけなければならない。われわれとしてはできるだけやった、こう申し上げておるわけでありますが、今後においては、そういう意味において、いわゆる合理性があるというか、単純に言えば、もうかる仕事であって、近代化すればもうかるんだということであれば、また本人がそれをやるつもりだということであれば、それに対しては金融の道を極力講ずるように、また、したがって資金量もふやすようにしてやらなければならぬと思っております。ただ、資金量がどれだけ要るかということは、大体景気の動向、あるいは前年度の申し込みの状況、それから個々の地域におけるその産業の特殊性、その産業がもっともっとシェアをふやさなければならぬ産業であるか、一応いままでどおりやっておるところであるか、だんだんうまくいかなくなるところであるかというようなこと等を考慮に入れると、大体これくらいのものは要るというワクは出てきます。そういうことを十分考慮に入れながら、資金量をつけることに努力をいたしたい、そういうように考えております。
  51. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 中小金融に対する政府の財政投融資につきましては、今年度の計画としては、なるほど三十六年度あるいは三十七年度の金融逼迫時におきましては、政府が算術的に政府資金を追加いたしましたが、それに比べますと、伸びとしては十分なものとは思わないわけであります。しかし、これは金融情勢が非常に違っておるということで、引き締めをやりましたときには、政府資金の追加のみならず、買いオペ等も中小金融機関に行ないまして、大いに中小企業に対する資金的な圧迫を緩和するための措置をとったわけでございます、その後、金融調整が大体円滑に行なわれまして、昨年の秋以来、すでに公定歩合を四回にわたって引き下げをしておることは、御承知のとおりであります。こういうふうに、資金の需給関係から申しますると、だいぶ様相が変わっております。そのことは、当然財投計画作成の際にも予想されたことでございまして、当時から金利の引き下げは始まっております。おそらく金融情勢は、三十八年度においては、いままでの二年間に比べてはるかに変わった基調になるであろう。現に現在そのような情勢になっておるわけでございます。なお、政府資金のみによってすべての中小金融の需要を満たすということはどうしてもむずかしいことでございますから、やはり民間の中小金融機関の体質の改善を行ない、かつその資金の伸びをよくするということが必要であろうと思います。その点におきましては、三十七年度の実績について見ましても、一般の銀行よりも、中小企業金融専門機関であるところの相互銀行や信用金庫の伸びが非常に高いことは御承知と思いますが、これを過去五年間をとってみました場合に、大ざっぱに申し上げますが、銀行としては資金量になる預金が二・三倍にしかなっていない。それに比べまして、相互銀行の場合は三・三倍以上になっておる。それから信用金庫は三・六倍以上になっておる。信用組合においては四倍になっておる。こういうふうに、一般に最近におきます趨勢を見ますと、中小金融関係の金融機関の資金量の伸びが非常によろしい。そういうことで、これだけの引き締めが行なわれたにもかかわらず、さほどの重大な混乱なしに中小企業がしのげたのも、この背景に、こういった中小企業専門の機関の伸びが非常によかったということがあると思います。大企業からかなりしわ寄せを受けたにかかわらず、それに対する相当な抵抗力をつけてきておる。これはいろいろな原因はあると思いますけれども、やはりこういった中小企業等に対する金融機関に対する国民の信頼感が、非常に高まっておる。戦後ほとんど、相互銀行は重大なる問題がありましたけれども、一回も倒産するというようなことなしに、預金者を少しも傷つけておらないということから、非常によくなったと思いますが、今後も大体こういう基調は変わらないのじゃないか。でありますから、三十八年度の場合におきましても、私の見るところでは、やはりこういう趨勢で、銀行の伸びもかなり回復しましたけれども、しかしそれ以上に最近の伸びはいい。そういうことを考えまして、財政投融資計画というものは、そのつど、そのときの情勢に応じて弾力的に考えてまいりたい。ですから、設備投資の問題について御指摘がございましたが、本年度の場合、大企業につきましては、一部の業界においては投資を非常にふやすという意欲がございますが、かなり広範な範囲にわたっては、昨年度の実績を下回るという計画が多いように私ども見ておりまするが、中小企業は案外設備投資が多い。しかし、それらの資金はまず十分にまかなえるであろうというふうに、全体として感じておるわけであります。
  52. 中村重光

    中村(重)委員 まず、大臣の御答弁に対しては問題点が多いわけですが、高橋銀行局長のいまの御答弁のことばじりをとらえたり、またあなたをここで追及していこうという考え方を持っておりません。金融問題は非常に深刻な問題でありますから、ひとつ大蔵省の銀行局長として十分あなたに認識を深めてもらわなければならぬと思って申し上げるわけですけれども、設備投資の問題に対しましては、私は予算委員会において大蔵大臣質問をしておる。そして大蔵大臣からも、あるいは主計官からも、数字をあげての御答弁があった。具体的な資料も実は持っておりますが、決して設備投資中小企業が大企業を上回るという形ではございません。格差は決して縮まっておるのではなくて、中小企業設備投資というものは、大企業と比較して年々その比率は下がっておるということは、政府機関から出された資料によって明らかであるわけです。その具体的な資料の上に立って、予算委員会におきましては質問をし、大蔵省主計官もはっきりそのことを認めておる。したがいまして、いまの御答弁は、必ずしも大企業よりも中小企業設備投資が伸びておるのだという御答弁ではありませんでしたが、大企業との設備投資格差というものはずっと縮まりつつあるという印象を受ける御答弁であったわけでありますが、私は、実情はそういうものではないのだ、こう考えておるのであります。相互銀行の問題に対しましてはこれからお尋ねしてみますが、先ほど私がお尋ねしましたのは、商工中金への一般会計からのいわゆる出資が二十億、三十七年度と比較して少ないわけであります。三十七年度は、政府出資と財政投融資の融資と合わせまして七十億であった。それが三十八年度は五十億になっている。いわゆる政府出資は全然計上されていないということを、私は指摘しておるわけであります。中小企業金融というものは、決して緩和をいたしておりません。決してそれを削減するというような方向であってはならない。ましてや中小企業基本法を制定して、中小企業設備投資を行ない、生産性を向上させていかなければならない。その上に立って産業構造高度化をはかり、国際競争力を強化していく、大企業との格差縮小をしていくというようなことがこの基本法の中で明らかにされておる以上は、肝心の裏づけである予算面において、そのことが十分政府施策という形でここへ上がってこなければならない、こう私は考えるのでございますけれども、現実はうしろ向きの状態である。また、商工中金の二十億の政府出資は、いわゆる自己資金があるからだということが理由づけになっておるということであります。いまの御答弁のようではなかったわけであります。だから、自己資金があるという考え方であります。どういうような考えの上に立ってそのように見ておられるのか。自己資金があるということは、ほんとうに中小企業金融が緩和をする、借りなくてもいい、あるいは中小企業が、商工中金に対する商工債の引き受けとか、出資とかいうことを、中小企業金融が緩和するという形においてそういうことになっておるのであるか、そういうように認めておられるのであるか、まず、それらの点に対する考え方を聞かしていただきたい。
  53. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 商工中金に対する出資は、必ず毎年ある額をしなければならぬというふうにも考えておらないわけでありまして、前年度において行なわれた出資は、そのまま、発行限度の問題にしても、コストの問題にしても、今年度に影響しておるわけでありまして、三十八年度の場合としては、政府の出資がなくても、自分の組合員からの出資もできるであろうし、それから資金コストという点からいいましても、若干低下を見ておる。したがいまして、先般短期の貸し出しにつきましては、わずかではございますが、引き下げを行なったという状態でございまして、本年度出資がないからといって、商工中金が非常に経営上まずくなるという事実はないと判断されます。これは必ずいつもするとかしないとかいうことをきめてかかるわけでございませんで、三十九年度になってまたその必要があると認めれば、出資をあらためて追加するということも、十分なされるわけであります。商工中金の全体としての資金繰りの状況、コスト、そういうものを考えました上で、出資を必要とするかどうか、そのつど判断しておるわけであります。
  54. 中村重光

    中村(重)委員 時間の関係もありますので、商工中金自体の二十億の問題を論議をするということは私の本意でもありませんし、またそれだけの余裕もありません。しかし、考え方としては、特に認識を深めてもらいたいということで私が申し上げておるのは、なるほど三十七年度の二十億の出資というものは、三十八年度に影響を及ぼしてくるということはわかるわけであります。しかし、少なくとも設備投資というものが年々上昇していくということは、これは数字の上にも明らかになっておりますし、中小企業も出産性を向上していく、近代化をしていくということになってくると、中小企業金融というものを積極的に緩和していくという形のものでなければならない。ましてや中小企業基本法を提案するという形、その裏づけである金融であるがゆえに、普通の考え方をもって取り組むということは適当でない、こういうことを私は指摘したいので申し上げておるわけであります。  それから先ほどお答えになりました相互銀行、信用金庫の問題でありますが、御承知のとおり、いま新しい金融制度として、日銀の貸し付けというものを抑えていく、こういうので公社債を発行する、こういうやり方をとっておるわけであります。ところが、いまあなたがお答えになりましたように、信用金庫であるとか相互銀行の損金が非常に伸びておる。そういうことから、相互銀行や信用金庫に対しても、公社債を引き受けさせようという考え方をとっておられるようであります。ところが、私どもといたしましては、これらの金融機関というのは、民間においては中小企業の専門金融機関であるがために、そのやり方は中小企業金融というものを非常に窮屈にするという道に通じてくるのではないかということを実は心配をいたしておるのであります。まず、その点に対しての考え方を聞かせていただきたい。
  55. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 相互銀行、信用金庫の資金の伸びがよろしいと同時に、いま非常に目立っておりますことは、それらの中小機関がコールという形で——まあ一種の運用と考えているようでありますけれども、コールが非常に高くて、引き締めのときになりますると、日歩四銭というような状態でございまして、いまはそれに比べればだいぶ下がっておりますが、しかし、まだ月越しものとか面接銀行と取引をするコールというようなものにつきましては、二銭三厘、四厘というようなレートになっております。そういうことから、これを一つの逆用を考えまして、コールに中小機関が金を出す。この取引先は言うまでもなく都市銀行でございます。部市銀行が、自分の系列その他の企業に対する貸し付けの資金の不足をまかなっておるわけです。ですから、いまのコールという形で結局は大企業にも回っておる、こういうことになりましょうが、私ども、銀行の経営を健全にするためにはどうしたらいいかということで、従来から指導しておるのでありますが、資産の流動性というものを高めていかなければならない。この資産の流動性が、現在はコールという形で大部分が代用されているわけでございますが、こういうコール金利が非常に高いという状態をそのままにして存続させるような金融政策は、いろいろと支障がございます。これは大銀行においても流動性が非常に少ない、むしろマイナスであるとも言えるわけですが、なぜそうであるかというふうなことをいろいろ考えますと、結局コール金利がさか立らしておる。本来ならば一番低い金利であるべきである。それが長期の金利に匹敵するような金利になっておる。こういうことでは、金融の正常化はできない。そこで、社債の発行市場及び流通市場を育成していく必要がございます。それを育成することによりまして、いま貸し付けという形で行なわれておりますところの資金融通の今後増加する部分については、なるべく社債のほうを多くするということが必要であろう。また、コールを出しておる中小金融機関にとりましても、コールが下がるということになりますれば、それにかわって何を流動資産として持つかといえば、これは結局社債を持てば一番適当である。株式を持つということは、金融機関としてはあまり好ましくないということから、社債が流動資産として加わっていく。現金その他もございますけれども、ある程度は支払い準備金として保有しなければならない。その率が現在では少し低過ぎやしないか。これを若干高める必要がある、こういうことで先般来指導を行なっておるわけであります。しかし、これは徐々にやるべきことでありまして、一気には解決はできませんが、何しろコールに放出しておる額は非常に大きいのでありますから、これの一部が振りかわるわけであります。したがいまして、その場合には、中小金融に対する新しい圧迫要因にはならないものと考えております。
  56. 中村重光

    中村(重)委員 一般の金融政策という中におきましては、いまお答えになりましたような政策というものをおとりこまっておることはわかるわけです。考え方としてはわかっておるわけでありますが、もちろん私どもはそれに対する異なった見解も実は持っておりますけれども、そのことは時間の関係もございますから申し上げません。ただ、私が指摘したいのは、相互銀行、信用金庫は、日銀との信用取引がないということです。それに対して預金準備率というようなものも、いままでにも適用があったわけでありますが、今日では、これらの民間金融機関に対しては負担がさらに加重されるという傾向にある。公定歩合の引き下げの問題にいたしましても、あるいはまた高率適用制度の問題にいたしましても、日銀との信用取引がないために、直接的にはこれらの相互銀行とか信用金庫には関係を及ぼさない、こういうプラスの面というものはないのに対して、非常に負担が重くなるところのいわゆる公社債の引き受けであるとか、あるいはまた最近報道されておる都市銀行と地方銀行との協調融資の問題であるとか、中小企業金融に対して非常に窮屈になる。その反面、大企業金融が緩和していくという形に通じてくるわけでありますが、私は、中小企業に対してはむしろうしろ向きの金融政策というものが行なわれておるというふうに判断をいたしておるのであります。そうは考えておりますけれども、基本的な中小企業の政策を決定する基本法を審議いたしておるだけに、私どもは非常な関心を持たざるを得ないわけです。したがいまして、この点に対しての考え方を聞かせていただきたい。
  57. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いまの社債の問題を繰り返して申しますれば、いずれにしても、これらの中小金融機関が今日まで信頼を高めてきたと申しましたが、金融機関として当然要求される資産運用、これをおくらしておったのでは、やはり近代的な金融機関として一人前の成長をしたと言えないわけであります。何分支払い義務は非常に大切でございます。これは何も中小金融機関だけに要求しておるわけではございませんで、むろん地方銀行等もそういう指導方針でやっておるわけであります。預貸率という点も、ある程度まで、これ以上の貸し出しは危険である、行き過ぎであるということで指導しております。したがいまして、預貸率七八であるとかあるいは八一であるということを目標にいたしますならば、その残りのお金は何に使うのか。現金で置いておるわけではございません。それをいままではほとんど全部コールという形でやっていたのを、社債に置きかえる。全部ではございません、おそらくその一部ということになると思いますが、履きかえるということだけでありまして、ある程度の貸し出しはすべきでありますから、預貸率を下げるような指導はしません。だから、結局問題は、預金の伸び、預貸率のあり方によって、中小企業金融がその面で圧迫されるかどうかということはわかると思います。したがって、私ども、そういう点でいまのやり方が決して不都合だとは思っておりません。  それから日銀との預金取引が、一部の相互銀行及び信用金庫に認められております。それから準備預金も発動されておりますが、これはやはり金融機関として、できることならば中央銀行と取引を開くことは、むしろそれぞれの中小金融機関がかねてから要望しておったことでございます。預金取引をしたからといって何のプラスもないではないかとお考えかもしれませんけれども、これは地方銀行におきましても、日本銀行からは、貸し出しを受けていないのが大部分でございます。ただ、準備預金については、多小部市銀行と率は違いますけれども、同じような準備預金をやはり従来からやっております。つまりこういった普通の銀行と同じような中央銀行との関係の持ち方、これは金融機関の地位の向上という点では、やはり一つのプラスであると思います。それから全体の金融調整を考えます場合にも、これらの中小金融機関が、資金量においてもうかなりのものになってきております。相互銀行の中には、むしろ地方銀行をしのぐものさえ資金量においてはあらわれておるわけであります。そういう地位になりました場合に、これを全然中央銀行のいろいろな政策のらち外に置くよりは、内側に取り込んでいくということのほうが正しいのじゃないかというふうな考え方でやっておるわけでございまして、中小金融の貸し付けのワクを削るといいますか、それを圧迫するというふうなところまでは容易にいくものではない、金額としてはまだ微々たるものである、そういう意図を持ってやっておるわけじゃないということを御了解願いたいと思います。
  58. 中村重光

    中村(重)委員 考え方がそうでないとしても、現実に中小企業金融を緩和する方向に金融政策というものが積極的に進められるという形にならない限りは、現実的には中小企業金融が逼迫してくる、こういうことにならざるを得ぬと私は思う。いまいろいろ金融機関の地位を高めるというのか、健全な経営をやらせなければならぬ、それから金融機関全般の中から、こういう制度をとらなければならないのだという御説明があったわけでありますが、しかし、私どもは、やはり中小企業金融をどう緩和していくかという観点に立って質問をし、問題を指摘してくるということになってまいりますれば、現実にとっておる政策、これが確かに中小企業金融を緩和する制度であり、そういう方向であるということでない以上は、問題点としてこれを重視していかなければならぬ、こういうように考えざるを得ない。信用金庫であるとかあるいは相互銀行が、日銀との間に信用取引が行なわれてきている。中小企業金融の要求があるという場合に、そういう日銀の貸し付けという面において、中小企業に対してそういう機関から金が流れていくという制度がありますれば別といたしまして、そういう制度がない。ところが、反面におきまして、一般の金融政策の中から、むしろ中小企業にとっては直接的にはうしろ向きになるというような政策が進められてくるということになってまいりますと、やはり前向きの政策を要求せざるを得ない、こういうように判断をするわけであります。また、日銀の信用取引がないという形になってまいりますと、どうしても預金に求めてくるということになってくると、いわゆる小口の零細な預金を集めてくる、あるいはまた零細な金融を対象とするということになってまいりますと、そうした預金を吸収する上におきまして、貸し付けをするという場合におきましても、手数料は非常に多くなる。あるいは人件費も、それだけの要員が必要になってくるから、非常に経費もかさんでくる、こういう形になってくる。そうすると、いま大蔵省のほうでは歩積み、両建てを排除していかなければならぬ。さらにまた、政府金融機関を代理貸しという形においてこれを行なわしめるという場合においては、いわゆる政府金融をする場合に代理貸しをもってこれを行なう場合には、歩積み、両建てを行なうということになれば、断固取引を中止しなければならぬ。これは当然のことでありますが、そういう強力な対策をお立てになっておられる。こういうようなこと等を判断をしてまいりますと、やはり私どもは、中小企業に多くの資金が流れていくことが必要であるということと、それから金利をできるだけ引き下げていくというような考え方の上に立ちますと、できるだけ中小企業に対するそういう金融緩和、貸し付け金利の引き下げというような政策を積極的に行なってもらうのでなければならないのだ、こういうことで実はお尋ねをいたしておるわけであります。
  59. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いまのお話、私どもとしては、中小金融機関が今日まで非常に伸びてまいりましたが、これはやはり国民の金融機関に対する信頼が非常に影響しておる、そういう意味においては、体質改善をやり、かつ制度的に毛中央銀行とのつながりが深いというふうなことは、この信用においては決してマイナスにならぬばかりか、プラスになる、そういう意味で、近代的な経営をしなければならぬというような一番奮発心も出るでありましょうし、これは算術的に見ますと、確かに何百億でも準備預金をすれば、それだけ減ったのではないかということになりますけれども、問題はそういうことでなくて、今後何年にもわたって中小金融機関が、新しい近代的な中小金融機関らしくなっていく必要がある、そういう観点からこれを取り上げています。歩積み、両建ての問題も、やはり急激にはまいりません。非常に好ましくない話でございますけれども、やはり近代化をやり、そして体質を改善して、コストを引き下げる。コストを引き下げなければ、歩積み、両建てだけを一挙に解消した場合に、やっていけない、採算上とてもついていけないという金融機関が、たくさんあるわけでございます。戦後十数年の間にでき上がった悪い慣行でございます。しかし、これはもとをただすと、やはり金利体系は、実質的には非常に安い一銭六厘くらいの金利から、三銭でも四銭でも実はあり得るわけでございます。町の金融業者になれば、とてつもない高い金利もあるわけでございますから、金利の幅というものは、実際非常に広いものである。そういうことで、実態に応じたようないままでの経営のあり方をやっておる。しかし、借りるほうの側にとっては、一種のごまかしのようなものになる。表面金利はそう高くはないけれども、実質が商いというのが実態でございますから、これを漸次是正していかなければならぬ。そのためには、表面金利を下げるほうに専念するのではなくて、いわゆる歩積み、両建てというようなものを減らしていくというほうが、すっきりしたやり方であろうということで、金融機関の自主申し合わせがございましたが、大蔵省としても、これをだんだん計画的に歩積み、両建てを減らす。そのことは、たといその過程において表面金利を上げなければならぬような場面がありましても、実質金利としては必ず下がっていく方向にある。そうせざるを得ない。それに対応するためには、それらの金融機関がもっともっとコストを下げる努力をしなければならぬ。言ってみると、日本の成長が非常に早かったせいもありますが、資金需要は一般的に非常に強かった、ゆるむ時期が非常に少なくて、強い時期が多いということから、金利水準も非常に高いものになっておるわけですが、こういった全体の資金需要というものに対する調整もむろん必要でございますが、一方金融機関のコストの引き下げが何よりも大事なことであると思いまして、歩積み、両建てを減らすことによりまして、上からある程度圧迫をかげながら、いまでも合理化をしなければならないように誘導しながら、全体の正常化をはかっていきたい、こう考えております。
  60. 中村重光

    中村(重)委員 金融一般質問みたいになりますので、時間もありませんから、いろいろお尋ねしたいこともありますけれども、次に移りたいと思います。ただ、いまお答えがございました歩積み、両建ての問題、まずそれをなくすることが大事だ、これはもう当然なことであります。ところが、中小企業は非常に信用力が低い。あるいはまた、中小企業金融機関は、先ほど私が申し上げましたようないろいろな面から、どうしても預金であるとかあるいは貸し付けの場合におきましても、小口である場合におきましては、手数がかかってくる。いろいろな面から、どうしても歩積み、両建てを要求するというような形をなかなか払拭できない。やはりそれをなくするということは、政府が積極的にこれに協力し、指導し、また力を与えていく。政策的にそういう方向にいくように進めていかなければならない。これ以外には私はないんだと思うのであります。先ほどの商工中金の問題にいたしましても、いろいろお話がございましたが、現実には、商工中金は一つの貸し付けワクをきめられる。ところが、できるだけその支店なら支店の中で預金を集めて、出資金を多く集めて、あるいは商工債も消化させて、そういう中でできるだけ貸し付けをふやしていくようにしなければならぬというふうなことが要求されてきておる。そうすると、どうしても、さらに一そう預金を求め、出資を求めてくるという形になってくる。歩積み、両建てというものをほんとうになくするような方向に持っていくのではなくて、現実にやっておられるところの政策というものは、歩積み、両建てをほんとうになくするというような形に進んでいない。ただ指導する、これをやめなければならぬぞということを通達をし、あるいは要求はしておられるけれども、そうした中小企業金融を担当するような機関に対しては、どうしても政策的にはそういうものを緩和するような方向ではないというように、私どもは実は判断をいたしておるわけであります。しかし、これらの問題に対しましては、いずれまた適当な機会にお尋ねいたします。  ここで私がこの金融問題に触れましたのは、中小企業生産性を向上さす、大企業との間の格差を是正していくという面に対しては、どうしても、ただ中小企業に対して金を流していくとか、あるいはまた税金の面におきましてある程度の緩和措置を講ずるということだけでは、解決し得ない面もあるのじゃないか。もちろんそういうことは、積極的にやってもらわなければならない。しかし、大企業との関係というものが、いわゆる格差、二重構造、これらの産業間の格差企業間の格差というものが、今日中小企業をして非常に窮地に追い込んでいるということになってくると、一方大企業に対するチェックということ、規制ということも考えていかなければならないのではないか。そこで私どもがまず大蔵省の見解を聞きたいことは、大企業に対するところの集中融資という問題をなくするために、格差解消の立場からどのようにお考えになっておられるか、これをどう取り組んでいこうと考えておられるか、これらの点に対しての考え方をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  61. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 一般的な金融の理論としては、銀行が非常な大口融資をするということは、不健全であるということになっております。ところが、日本では御承知のように、極端なオーバー・ローンになっておりまして、そのオーバー・ローンのうちで典型的なものは、大企業に対するところの、おっしゃるところの集中融資であります。しかしながら、いまいろいろ自由化その他の問題を控えまして、格差是正ということも大事でありましょうけれども、これらの大企業等で量産というふうな点から言えば、規模はまだまだ国際規模にはるかに劣るから、これをもっと国際レベルに引き上げていかなければならぬというふうな問題も、片方にあるわけであります。この段階におきまして、にわかにそういった大口をストップする、これ以上貸してはならぬというような機械的な措置をとりますことは、私、日本経済全体の上から言えば、非常にマイナスになりはしないか、そういう考えでございます。急激にこれを改めるということはやりにくいことである、機械的な大口融資是正はとり得ないというふうに考えております。しかしながら、一方におきまして、金融のあり方としての問題といたしましても、大口の貸し出しにあまり偏しておるのではないかという点が、銀行の経営を不健全にし、また、場合によっては貸し出し過当競争の原因にさえなっておる、非常に行き過ぎた投資競争というものがある。それから金融機関の態度は、これまたいままでのような貸し出しの態度であってはいかぬということでありますので、私どもとしては、いまこれは検討中でございますから、まだ公表するところまでいきませんが、いずれこれは金融界と十分相談をいたしました上できめていきたいと思いますが、日本企業が、いざとなると、借り入れだけにたよって投資を強行するという点も改めさせる意味におきましては、資本構成が現在非常に悪うございます、大体三割足らずくらいしか自己資本がない、七割は外部負債であるというようなのが企業の普通の姿になっております、こういう資本構成をやはり是正していかなければいけない。それと銀行の貸し出しを何らかの形で結びつけまして、資本構成をこれ以上悪化させるような意味での貸し出しはできないようにして、むしろ自己資本の増資ができた場合にも、その場合の借り入れの借り増しをする額というものを抑えて、そして資本構成そのものを是正しながら、ついでに貸し出しそのものを、あまりいろんな事情を無視した貸し出しができないように、自動的にブレーキがかかるような、そういう仕組みを考えなければならないと思っております。たいへんむずかしいのでございますが、資本構成といいましても、業界によって非常にまちまちでありまして、たとえば商社のごときは、自己資本に対して十数倍という外部負債があるというような実情でござますからなかなかそれも械機的な方法ではいけないと思います。何らかの形でそういった貸し出し競争を招く原因になるような放漫ないままでのあり方を是正して、大企業の行き過ぎた借り入れ競争設備競争というものを押えていかなければいけないのではないか、そういうことで、ただいま研究中であります。
  62. 中村重光

    中村(重)委員 都市銀行が非常にオーバー・ローンである、ところが地方銀行は比較的にゆるやかである、こういうことから、都市銀行と地方銀行との協調融資という形が考えられておるようであります。このことは、中小企業と大企業との金融緩和の面において、どちらにプラスになるという判断の上に立ってそういうことを検討しておられますか。
  63. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 お尋ねの趣旨としまして、私どもは、大企業の行き過ぎた設備競争に基づく資金需要は、これは押えなければならぬと思いますけれども、大企業はすべて押えて、それを抑えたことによって中小企業が潤えばいいのだ、そういう観点だけからは、ものごとはきめられないと思います。大企業の中には、国際的な水準から見れば、先ほど申し上げたように、これからさらに設備をよくして、コスト・ダウンをしなければならない、生産性を高めなければいかぬというのもかなりあるわけでありますから、いまお尋ねの、地方銀行の資金を協調融資という形で大企業が使うという点に対しては、地方銀行の段階ですと、すべてこれが中小企業向けに金を貸さなければならぬというふうなのは、これはやはり行き過ぎでございまして、ある程度は、一部は当然大企業のほうに資金が回ってもしかたがない。ただ回し方が、いまの段階ですと、協調融資という貸し付けの形になります。これは経過的にはやむを得ないといたしましても、いずれ先々のことを考えますと、社債を保有するという形で大企業に金が回る。それが結局地方銀行のほうから見れば流動資産になるのだ。社債市場に出せばこれはいつでも処分できるという意味において、流動性を持つわけであります。一方大企業としては、それぞれの系列銀行の成長よりも、結局大企業のほうの成長力が商いのだ。系列の企業の成長の度合いが激しい。それで都市銀行の資金の伸びがついていけない。ですから、手一ぱいに貸し付けをしましても、なおかつ足らぬというような情勢が現在ある。その足りないところを一部分地方銀行から協調融資という形でもって引き出してくる、こうなると思いますが、この度合いがはなはだしくなれば、確かに中小企業を圧迫するということになりますけれども、ある程度のところは、地方銀行あたりはやむを得ない面もあるというふうに感ずるわけでございます。
  64. 中村重光

    中村(重)委員 私は、基本的な考え方はありますけれども、これは別といたしまして、大企業に対する融資をストップしろということは言っていないわけです。私どものこの基本法というものも、基本的な一つのあり方をべースとしまして、大企業の存在は存在として認めて、その弊害をなくして、ほんとうに大企業中小企業、いわゆる国民経済の健全な発展をはかるためには、どのような構造をここでつくべるきか、いまの構造をどう改むべきかという観点に立って、いろいろ議論が進められておるわけであります。  そこで、私が申し上げましたことは、いまあなたの後段の御答弁考え方は出たわけでありますけれども、どうしても都市銀行の貸し付けというものは大企業に片寄ってくる。地方銀行になってくると、中小企業に対する貸し付けというものは、都市銀行と比較して非常に高いわけです。ところが、都市銀行がオーバー・ローンであるということ、そこで地方銀行の資金を都市銀行に吸収をして、そしてここで協調融資という形で都市銀行を窓口にして貸し出してくるということになってくると、系列金融という形がそこに出てくるわけです。そうすると、どうしても信用力が高い大企業へとこの資金が流れてくる、こういうことになります。そこで私は、政府施策を新聞あるいほその他いろいろな機会を通じて知ります場合に、大企業のための金融政策その他のいろいろな政策は非常に積極的に取り上げられておるけれども、中小企業に対する金融を緩和するというような政策を私どもは知ることができない。そこで、いまの都市銀行と地方銀行の協調融資という、いわゆる系列金融という形になって、いまあなたが後段で御答弁になったような地方銀行、いわゆる中小企業金融というものを圧迫する形になってくる。また、地方金融というものを多く都市銀行に吸収していくことは、いわゆる地域間の金融面からくるアンバランスというものが出てきましょうし、産業間あるいは企業間のアンバラスというものが強く出てくるのだ、このことを心配しますがゆえに、実はいろいろと指摘をし、お尋ねをしたわけであります。まだいろいろとお尋ねしたいこともありますけれども、あまり時間がございませんから、いずれまた適当な機会にお尋ねをします。  ただ最後に申し上げたいことは、ともかく何といってもあなたのほうは、大蔵省として関係各省、特に中小企業の問題におきましては通産省、中小企業庁から、いろいろと中小企業金融緩和のために予算要求というものもあるだろうと思う。あるいは出資、融資という要求もあるわけです。しかし、あなたのほうが全般的な金融、特にいま産業構造高度化して、国際競争力を強化していくという形になってくると、当然窓口になるのは大企業であります。そういうことにどうしてもあなたのほうの重点が置かれる、こういう形になって、中小企業金融が圧迫されるということを私は考えますので、その点十分ひとつ配慮されて、少なくともこの中小企業基本法に対しては、あなたのほうも十分ひとつ責任を持たれ、中小企業の憲法であるこの基本法を制定するということは、ほんとうに中小企業の健全な発展をはかっていく、そして経済の二重構造を是正していくということは、当然政府全体の責任であるという考え方の上に立って取り組んでいただきたいということを強く要請をいたしまして、局長に対する質問は終わりたいと思います。  いろいろいまお尋ねしましたが、大蔵省銀行局長もおられることでありますので、この金融税制のいわゆる金融面においての社会党基本的な考え方、当面この中小企業の振興をはかっていくためにどのような取り組みをしなければならないのかということに対しての提案者考え方をひとつ話していただきたい。
  65. 田中武夫

    田中(武)議員 わが党案におきましては、第六章に金融税制政策を掲げまして、その第一節に金融政策、第二節に税制政策と分けて規定いたしております。その中心的な考え方は、まず第四十九条で、全体の融資ワクといいますか、この中において、中小企業向けにこれの金融の一定ワクを考えろ。さらに第二項におきまして、零細企業、わが党いうところの勤労事業に対しましては、さらに別ワクのものとして考慮しろ、こういうようにその態度をうたっておりますほかに、五十条以下にもいろいろ出しております。ことに、先ほど大臣が、特に中小企業に対しては信用補完制度が必要である、こういうことでございましたが、それは五十三条に信用補完制度の拡充ということ。さらに税制にいたしましては、勤労事業から得るところのいわゆる零細企業の所得は、勤労所得と同じような考え方によって基礎控除その他扶養控除等も考える。さらに零細企業については特別な減価償却を認める。そういったような態度で臨んでおりまして、要は、われわれといたしましては、いま中村委員がおっしゃいましたように、従来、大企業に対して、ことに系列的金融によって行なわれるために、資金が中小企業に回らなかった。したがって、中小企業に回すためには、できるだけ系列融資、こういうことを排除しながら、中小企業の資金の確保につとめていく、こういうように考えております。
  66. 中村重光

    中村(重)委員 税制の問題に対してお尋ねをしたいと思うのでありますが、基本法を制定するにあたっては、税制の問題、中小企業に対する税の緩和というものを抜本的に行なっていくということでなければならない、このように考えるわけでありますが、ところが、先般も与党の委員あるいはわが党の委員質問によっても明らかにされましたように、この税制ということは、第五章の中において取り上げられておりますけれども、実際に中小企業に対する税金の緩和というものは、特別の配慮が行なわれていないのではないか、このように考えるわけであります。そこで設備近代化のためにするところの税の特別償却、こういうようなことも考えておるようでございますけれども、近代化促進法あるいはその他の関連法案を見てみましても、わずかに割り増し償却を三分の一程度やるというような考え方の上っておるようであります。ところが、政府施策にあります、この高度化を積極的に進めていく、それから企業の合併であるとか、あるいはまた共同出資による企業の設立を考えている、こういうようなことで、特別に税金の面から、政府が意図しておるような企業合同、あるいはまた共同出資による企業の設立といったようなことに、中小企業者が積極的に情熱を燃やして政府施策に呼応していくということが期待できると考えておられるかどうか。まず、この点に対しての考え方をひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。
  67. 松井直行

    ○松井説明員 お答え申し上げます。  まず、現在の税法の中におきます中小企業のあり方、それに対する配慮がどういう基本的態度で行なわれておるか、将来に対してそれがどうなるかという基本的な考え方についてのお尋ねであったように思います。いま御質問の中に、私、二つの意味があると思います。一つは、御存じのように、基本的な税制の仕組みの中に織り込まれた場における中小企業に対する考え方、それから特殊な政策目的を達成するために行なう特別措置的なもの、二つを含んでおると思います。すでに御存じのように、中小企業に非人情的であったというわけでは決してないわけでありまして、以下申し述べますように、いろいろな手を打っております。基本的な課税の仕組みから申しますと、やはり税制基本的な考え方であります応分負担、いま法人税とか個人の所得税を中心にいたしましては、そうした面からの課税公平の措置という観点からは、御存じのとおり、個人につきましては基礎控除があり、かつ累進課税を持っておるということは、すでに小さな取得者には小さく、大きな取得者には大きいということであります。法人税におきましても、二百万を境にいたしまして、二つの段階税率をとっております。それから個人企業におきましては、また後ほど別に問題にされると思いますが、専従者の控除を承認するということ、それから同族会社にありましては、これは小さな企業も大きな企業もあるわけでございまして、特に小さな企業負担軽減の意味におきまして、百万円の基礎控除を承認しておるというような点におきまして、基本的な税制におきまして、すでに中小企業者に対する課税の配慮というものができておると思うのであります。ただ、その程度が十分であるかどうかという問題は別にあるといたしましても、基本的に考えておる。そのほかに特殊な政策的要請、社会的、経済的いろいろな要請がございますが、中小企業者の分につきましては、特に取得いたしました合理化機械等につきましては、初年度に三分の一の特別償却を承認するということもとっておりますほかに、本年三月にまた次のような改正をいたしております。御存じのように、基礎控除とか、配偶者控除、扶養親族、それから専従者控除の引き上げ、それから同族会社におきます留保所得課税の基礎控除分の引き上げ、それから中小企業近代化促進法という特別法ができましたにつきましては、特に中小企業者の機械設備につきまして、五年間、毎年毎年普通の償却のほかに三分の一割増しして償却してよろしいというような制度、あるいは中小企業の合併の場合における精算所得課税の軽減、これを特別措置としてとっておるわけでございまして、基本税制、特別措置を通じて、いままでにも相当な考慮を払ってきておる税体系になっておるということは、言い得ると思います。それがいままでの基本的な考え方でございますが、今後におきましても、そういう考え方は不動のものであると存じております。
  68. 中村重光

    中村(重)委員 問題点としてここで指摘したいのは、特別償却の措置にいたしましても、これは国の施策に基づいて、いわゆる産業構造高度化をはかる、あるいは国際競争力を強化するというために、この施策の対象とする業種あるいは企業というものを指定をする、こういうことですね。これに対して、計画をつくってこれを公表する。こういう対象になる企業に対しての金融あるいは税制措置というものは考えられている。また、これに対しては、個人でなくて、いわゆる法人であるという形になっておる。個人は対象になっていない。それから、そういう政府施策の対象外に置かれている企業設備近代化ということに対しては、特別の配慮というものが考えられていないのじゃないか。そういったような問題、それから償却期間というものが非常に長いということですね。率が低いということ。これらのことを私は指摘せざるを得ない。こういう形式的な特別措置、税の緩和というととで、中小企業はいま非常に重い税負担によって追い回されている。端的にいって、いま中小企業者は、資金と税金に追い回されておる。こういうような実態を緩和していくことができるとお考えになっておられるのか。まず、これらの点に対して聞かしていただきたい。
  69. 松井直行

    ○松井説明員 なるほど中小企業にも特別措置的なものがあるが、それは中小企業者の中でも何か特殊なものにだけ当てはまる措置になって、特殊な政策目的を実現するために特定のものの範囲に限定されておるのじゃないかというお話でございましたが、これにつきましては、次のようにお答え申し上げることができると思います。  先ほど申しましたように、基本税制のあり方の中に、すでに大きく取り上げることが可能であり、かつできると思います。昭和三十六年に、一般的な耐用年数の圧縮を行ないました。そのときには、およそ中小企業者が主として使うと思われる機械設備を中心にいたしまして、普通の一般的な減価償却を縮める範囲よりも一そう大きく縮めるという方法をとることによりまして、広く基本税制的な措置をとるほかに、先ほど申しました近代化促進法に基づく特別措置につきましては、これは担当の省であります通産省、中小企業庁あたりと十分協議いたしまして、近代化促進を特に必要とする、しかも十分な範囲にわたるものについて、この制度を適用できるという配慮は十分いたしたつもりでございまして、全体として不平等になっておる措置とはわれわれ考えておりません。
  70. 中村重光

    中村(重)委員 あなたの方では、特別な配慮というものをしている、こういう考え方のようです。私どもは、いま中小企業——また大企業を引き合いに出しますが、現実がそうでございますので言わざるを得ない。大企業中小企業を比較すれば、租税特別措置法の適用の問題にいたしましても、それは中小企業にも通じておるのだ、こうおっしゃる。おっしゃるけれども、現実には中小企業というものは、この租税特別措置法の恩恵というものはなかなか受け得られない、そういう仕組みが現実に行なわれておる。政策というものはそういうところに置かなければならぬ。法律はこうつくっておるけれども、現実にこの法律がどう消化されておるか、ここに問題の焦点を当てなければ、正しい政策というものは出てこない。金融の問題も、私が先ほど指摘したとおりである。税の問題におきましてもそうなんです。その制度を活用するためには、厳格な一つの経理上の規制というものがある。それに沿うためには、相当ないわゆる人件費を必要とする。こういう複雑な形であれば、金融担当の者を履くことによって、そういう経費がかさんできて、税金をまけてもらうことよりも、そのほうがかさむ、こういうような現実の場に中小企業が置かれておるということも、私は否定できない。そういう税の法律というものがどのような形で消化されておるかということに対する配慮が、あなたのほうにあるのかどうか。あるならば、これをどう対処していかなければならぬとお考えになっておられるか。それらの点に対して聞かせていただきたい。
  71. 松井直行

    ○松井説明員 特別措置が大企業偏重になっておるじゃないかという御質問でございますが、結果といたしましては、利用の重さ、範囲からいいまして、おっしゃるとおりだろうと思います。しかしながら、お読みになってもおわかりになりますように、たとえば企業の内部留保の充実をやるという項目の中に、貸し倒れ準備金、価格変動準備金等いろいろございますが、いずれの企業を問わずこれは利用できるというふうにつくってありますが、たまたまその利用の範囲が大きいということなので、最初から特に意図して大企業のみに当てはまるというものは、ごく僅少部分でございます。一方、特に先ほど申し上げましたとおり、中小企業のみを目的としたものもございますわけでございまして、一がいに全部最初から大企業偏重にのみできた租税特別措置法というととは、私は断定できないと思います。しかしながら、いまおっしゃいました趣旨にのっとりまして、これはいままでの税制調査会におきましても相当検討してまいりましたが、いかなる意味におきましても、特別措置というものは、幾分でも租税の公平負担ということを害する性質を持っておるものであって、それぞれ必要な政策的要請に基づいてとったものではあるけれども、はたしてどんなものがいま一番緊要なのか、そういう政策にマッチした税制度をとることがはたして効果があるかどうか、ひとつ機動的に判断し、改廃をし、なるべく整理をしていくべきものと考えるという基本的な答申の線に沿いまして、われわれも特別措置の扱い方というものを今後整理をしていきたいと思っておりますが、そのときにおきましては、やはり中小企業というものに対する政策要請の比重、強さ、緊急性というものを十分考慮いたしまして、残すべきものは残すということになるかとも思います。したがって、概括的に、結果としておっしゃるようなことになっておるとは言えると思いますが、最初から企図して大企業偏重にのみなる特別措置とは断定はできない。そういうものを企図したものではないということは言えると思います。
  72. 中村重光

    中村(重)委員 その点は私も認めたのです。法のそういう内容を見ると、おっしゃるとおりだということは、私がさきに申し上げたのです。ところが、現実にその法律というものを十分消化できない形になっておる。政治というもの、政策というものは、やはりその対象となるものがどういう立場にあるかということを十分念頭に置いて、それに適切な政策を当てはめていかなければ、政治でもなければ政策でもない、こういうふうに私は思うのです。長い間、租税特別措置法の中においてあなた方は経験をしておる。そうして先ほどお答えのように、法律はそうなっているが、現実にはなかなか期待どおりいってない、こういうことをお認めになったのですから、こういう中小企業基本法というものを制定するにあたっては、その租税特別措置法というものがほんとうに中小企業に役立つように、ほんとうに正しく適用されるように、内容を改めていくというのでなければならぬと私は思う。そういう点について、どのような検討をされたか、またどのような用意があるのか、具体的な考え方を聞かしていただきたい。
  73. 松井直行

    ○松井説明員 ことし三月の税制改正におきまして、すでに中小企業に対する配慮というものはいま申し述べたとおりにしてございます。今後の税制改正でどういう配慮をするつもりかというお話でございますが、基本的には、目下税制調査会で検討いたしておりますことでございまして、具体的にここで申し上げる段階にいっておりませんが、基本的な税法を考える場合とあわせて特別措置考える場合におきましても、いままで考えておると同じ、あるいはそれ以上に中小企業政策というものが非常に大きな比重を持ってくる重要なポイントであるということは間違いないと思うのでありまして、そういう線に沿った考え方で具体案が出てくるものと考えております。
  74. 中村重光

    中村(重)委員 いま租税特別措置法の問題に対しまして指摘をいたしましたが、そういう法律が、現実には中小企業の税の面からする緩和措置ということで正しく消化されていない、そういう仕組みになっておる。いま一つは、税額を申告する、これに対して税務署のほうでオーケーと言う場合は別として、なかなかうんと言わない。大企業に対しては特別の措置が講ぜられておる反面において——端的に申し上げると、税務当局において実際にやっておる否認ですね。調査によって否認がされておる。この場合、中小企業に対して非常にきびしいということです。大企業に対しては、これは専門の経理担当者がおって、水も漏らさぬというか、そういう処理ができておるということもありましょう。また政策的な配慮もありましょう。実際に昭和三十五年と三十六年の六月、同じ月を見ましても、資本金一千万以上の企業に対して、申告どおりに認められたものは九六%、否認されて税額が増加されたものは四%、その金額は百八十億。ところが一千万以下、いわゆる中小企業の範疇に入る企業でもありますが、それは申告どおりに認められたものは八一%、それから増加分は一九%、その金額は三百七十四億。この数字を見ましても、いかに中小企業が過酷な取り扱いを受けておるかが、私は明らかにされておると思うのです。これらの点に対しては、どのようにあなたのほうでは国税庁その他との連絡において対処しておられるのであるか。また実際に中小企業に対してそういう酷な取り扱いがなされておるとするなら、どのような行政指導をしておられるのであるか。またこれからやろうとお考えになっておられるのであるか。その点について伺ってみたいと思います。
  75. 松井直行

    ○松井説明員 税の執行に関する問題でございまして、国税庁長官からお話をするのが適当な問題かと存じますが、少なくとも大企業にはゆるやかな調査、それから中小企業にはきびしい調査で臨んでおる結果、否認件数にしろ、否認税額にしろ、かえって中小のほうが多いじゃないか、こういう御指摘かと存じますが、われわれ納税者の調査に臨みますときに、そういう差別はつけておりません。むしろ大企業というものは、複雑怪奇——怪奇いうことばはいかがかと存じますが、非常に組織も大きゅうございますし、企業会計組織も複雑になっておる関係上、普通の能力の税務職員でもって調査をいたしますときには粗漏の起こるおそれがあるということで、特別に訓練を受けた税務職員が長期間調査に当たるという態勢をとっておるわけでございまして、かえって大企業につきまして徹底をしていくという態勢はとっておるわけでございます。また、そういう数字が出るゆえんは、一面からそういうふうに御解釈になることもできるかと思いますけれども、その数字から全般的な判断をすることはなかなか困難かと存じます。いまおっしゃるとおり、大企業におきまして優秀な経理職員がおるということは、いい意味におきましては、税の要求する計算にのっとった計算をやる。ところが、中小企業者におきましては——むろん税理士その他専門会計士の援助を受けることは、これは大中を問わずあることでもございますが、むしろ大きな納税者がそうした専門会計士、専門家の援助を受けることが非常に多いのじゃないかと私は思います。そんなわけで、悪意ではなしに税法どおりの計算をしないがために否認を受けることが、中小企業に多いせいじゃなかろうかと私は想像いたしております。したがって、その数字をもって全部悪意の脱税と断ずることは早いのでありまして、うっかりした錯誤といいますか、単純な否認というものが案外中小企業者に多いのじゃないかと、善意に受け取ることもできるんじゃないかと思います。いま私はそういう数字を持っておりませんが、国税庁あたりでそれに関連した数字がございましたならば、別な読み方もできると思うのでございます。いまお示しになりました数字に関する限り、私そういう感想を持っております。
  76. 中村重光

    中村(重)委員 いろいろお尋ねしたいことがありますが、これまた時間の関係から省略をいたします。ともかく先ほども触れましたように、いわゆる金融税制、この点は、中小企業基本法等の制定にあたっては、中小企業者の非常に期待するところでもありますから、現実に政策を行なっていく上においては、課税の面において、徴税の面において、中小企業者がほんとうに健全な経営をする上に立っての配慮というものを十分なされなければならない。さらにまた、私が冒頭に申し上げましたように、中小企業近代化をはかっていくという上におきましては、特別償却に対しては相当重点を置いて取り組んでいただかなければならない。償却期間を非常に短くして、短い期間において償却を行なうという面、あるいはその率の問題等々については、特別の配慮をなされなければ、こういうことでは問題にならないんじゃないか。さらにまた、特別の政府施策の対象になるものだけが特別償却制度等の対象になるということであってはならないんじゃないか。すべてのことがそういうふうに貫かれておるようなので、これではいけない。いわゆる中小企業間の格差が新たに発生をするというような形になります。その点に対しての配慮をひとつ十分なさるように強く要請をしておきたいと思います。考え方をひとつ最後に聞かしていただきたい。
  77. 久保田豊

    久保田(豊)委員 関連して。いまの税について、大蔵省に特に要求をいたします。私も、この次にいろいろ議論をいたそうと思います。そこでその基礎資料として、これは通産省のほうにもお願いしたいと思いますが、いわゆる中小企業者並びに大企業者、零細企業者を含めまして、いろいろな税金がありますけれども、特にそのうちでもって所得税、法人税、事業税、市町村民税、府県民税、これの階層別の負担がどうなっておるかということを出してもらいたい。階層というのは、御承知のとおり、法人企業その他がありますが、人員なら人員でも、あるいは資本でもよろしゅうございます。これの階層別の負担区分が、実際の負担がどうなっているかという問題、それからもう一つ、組税特別措置による減免税額、これは国税並びに地方税を含めて、両方にわたりまして、これがいま言ったように階層別にどういうふうになっておるのかということが明らかになるような資料をひとつ出してもらいたい。できればその際に、特に法人等においてはこれはできると思いますけれども、粗利益なりあるいは純益でもよろしゅうございます、あるいは売り上げでもいい、何でもよろしゅうございますが、それを対象としたものができれば、それをつくってもらいたい。これをひとつお願いしておきます。もう一つ、十八日に私の質問があるようなことになっておるようですから、それまでにできるだけひとつ出してもらいたい。
  78. 松井直行

    ○松井説明員 二つの資料を御注文になったようでございますが、階層別には、ある程度どんな階層を選ぶか、いろいろ御注文があろうかと思いますが、これは現存の資料で何とかできるとは思いますが、もう少しあとで詳しくどういう階層、どんな分類でやればいいのかお伺いしたいと思いますが、第二の特別措置は、これは悉皆調査をやりますのは大へんでございまして、税務署を通じまして、われわれ特別措置の利用状況を集めておるのでございますが、これを階層別に分類するのはちょっとむずかしかろうと存じておりましして、全体として、たとえば幾ら利用しておるかということは推計で出るわけでありますが、現実の一人一人の企業者、一人一人の法人の利用状況を集めて、それを階層別に区分することは、やってできぬことはないのですが、大へんな作業にもなりますので、短時間では非常に不可能に近いことだろうと存じますが、それでなくて、何か御趣意に沿うものができるかどうか、別の観点でひとつ検討さしていただきたいと思います。
  79. 中村重光

    中村(重)委員 時間の関係がありますから、三、四点にしぼってきょうは終わることにいたします。  国の施策のことに対して、第三条、この点に対してお尋ねをしますが、中小企業の規模の適正化、事業の共同化、工場、店舗等の集団化、事業の転換、小売商業における経営形態の近代化をはかっていく、こういうもろもろの施策をずっと進められてくるわけであります。このことに対して、二項にいうところの産業構造高度化産業国際競争力の強化を促進をする、こういう考え方の上に立って、特定の業種を指定をする、そしてこのような施策を進める、こういうことを考えておるようでありますが、このことは公述人からも相当問題点として指摘されたところであります。産業間、企業間の格差というものが起こってくる危険性がある。いわゆるこれから取り残される中小企業はどうなるのか。こういうことが強く指摘されておりますが、長官としては、数回行なわれました質疑の中で、あるいは公述人から指摘されたこと等に対して、考え方もさらに深まった点があるだろう、あるいは認識を新たにされた点もあるだろう、こう思うのでありますが、このことに対しては、どのようにお考えになっておるのか。さらにまた、こういう基準をつくるということになってまいりますと、その基準はどういう基準なのか、またこれを公表するということでありますが、これを公表するという手続等はどういう形で行なわれるのか。一つ一つお尋ねしていきたいと思いますが、時間の関係がありますので、たいへん御迷惑をおかけいたしますから、一緒にお尋ねしてお答えを求めたいと思います。
  80. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 われわれといたしましては、過般御決定いただきました近代化促進法によりまして、従来の業種別振興よりも、さらに税制において、あるいは金融において、裏づけのある施策を逐次実施いたしたいということをここでおきめいただいておりますが、もちろんその対象業種以外のものにつきましては、たとえばすでに業種別振興法の指定に伴って、改善事項の策定されておるというものは、その示された改善事項に沿って実績があがるように、所要の裏づけを行政的に指導していきたいと存じております。まだ、若干改善事項の出てこないものもありますが、今月中に少し追加したいという業種等もございます。そういうものにつきましては、必ずしもこの前御決定いただきました近代化促進法だけではございませんで、いままでございます業種別振興法といったもので示されたいろいろな点につきましても、その方向でやっていきたい、そういうふうに存じております。特に、国際競争力の強化を緊急に必要とし、あるいはわが国の産業構造高度化上、非常に急いで強くしたいといったようなものにつきまして、それをほかのものよりもある程度手厚く施策を講ずるということもございますが、決してほかのところをほうっておくということではございませんで、逐次そういうような施策を進めていくというふうにやっていきたいと考えております。それから、たとえばこの前御決定いただきました近代化促進法の基準等につきましても、たとえばいわゆる将来のビジョンと申しますか、近代化促進計画、それも基本計画実施計画と二つございますが、この中におきまして、ものによって違いますが、大体三年ないし五年というあたりに一つ目標を置きまして、そのときにおけるコストの目標でありますとか、生産規模は少なくともこの程度であるべきだ、また、その際、その業種全体としての輸出はどのくらいになっているだろうか、また、生産の総量はどのくらいになっておるだろうかというような見通し等について、一応の大きなあれを立てまして、それにできるだけ近づくようにいろいろな具体的な各方面の施策をやっていきたいということで、基準といたしましては、いま申しましたような近代化促進法に基づくものは近代化計画というかっこうで出されますし、また、それ以外のものにつきましては、業種別振興法の改善事項という中でうたわれるということになるわけでございます。
  81. 中村重光

    中村(重)委員 この適正化の基準、これをどの程度に考えておられるのか。それから、公表するという形になってくると——指定をするということは近代化促進法の中において明らかになったわけでありますけれども、やはりそういう具体的な基準をつくるということになってくると、また別の措置が必要になってくるのではないか、このように考える。非常にこの点は重要であります。取り扱いとして官僚統制になる危険性がないかというようなことも、公述人からも言われたのでありますし、また質疑も行なわれたわけであります。こういう特別の施策を講じられ、この政府施策協力するものに対しては、税の面における特別の措置金融の特別の措置をやるのだ。ところが、政府の言うとおりについてこないものはもう知らないのだ。このような考え方の中におきますと、どうしても官僚統制的なことが出てくる危険性が私はあると思う。ですから、基準を具体的にきめるという場合に、民主的なきめ方というものがなければならないし、その基準も明らかにしていかなければならぬのじゃないか。まだ近代化促進法の中では不十分な点があるのではないか、そう思うのであります。まず、その点に対して考え方を聞かしていただきたいということと、それからその他のもの、いわゆる対象にならないものについては、ほうっておくというわけではないのだ、こうおっしゃった。しかし、そういう抽象的なことではだめなんですよ。いま中小企業者は、非常に心配をしている。これはどの公述人意見をお聞きになりましても、一人としてこの問題に触れなかった人はないでしょう。取り残された人はどうなるのか。企業転換ということを考えておるのだろうか。かといって、この企業転換もきわめてあいまいだ。自分のこの企業はだめだ、こういうので自発的にやめようというものに対しては、いろいろ政府協力をするのだという、きわめて抽象的なことばで濁されておる。また、予算的にもそういうような形はあらわれていない。何か雲をつかむような形に実はあるわけであります。そういうことで、中小企業者の不安、動揺というものは、私は無視できないと思う。きわめて重視していかなければならぬと思う。そういう抽象的なことでは困りますから、もっと正確なというか、明確なお答えを願いたい。しかもまた、これは少なくとも所得倍増政策によって進められておると思うので、そういうことであるならば、当然その倍増計画に沿った答えというものが出てこなければならぬと私は思う。所得倍増計画の中には、第一次産業はどうなるのか、第二次産業はどうなるのか、第三次産業はどうだということがはっきりしておるわけですから、そういう見通しの上に立って、計画に沿うておやりになったとするならば、当然そういう抽象的なものでなくて、具体的な答えというものが出てこなければならぬと思う。まず、もっと明確なお答えを願いたいと思う。
  82. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 一般的に、いわゆる中小企業に対する指導というようなこと、これはすべての中小企業にいくわけでありますが、特に今回一緒に審議していただいております中小企業指導法といったようなものの中にもございますが、われわれといたしましては、中小企業の面において一番欠けている人つくりという面においても、これは特別今回立法いたしまして、府県、あるいは五大市、あるいは指導委センターといったようなものを通じて、中小企業の管理能力あるいは技術水準を高めるということのために、一つのよりどころとなるべき法律をここにお願いしておるわけでございまして、この指導法等によりまして、また従来からいろいろやっております診断、あるいは一般的な指導、あるいは商工会、商工会議所によります経営改善普及事業といったような、いろいろな施策を従来からも講じておるわけでございまして、特に近代化促進法で取り上げた業種だけを考えて、それ以外のものに特別措置をしないというようなものではなくて、一般的には、指導法でありますとか、あるいは過般御審議いただきました中小企業近代化資金助成法といったもの、これはむしろ非常に小さな業種、小さな規模の方々に非常に多くいっていることは、午前中に申し上げたわけでございますが、全体の資金の八七%までが従業員百人以下のところに貸し出されておるといったようなことでございまして、そういう一般的な近代化のための資金の援助を地方庁と相協力しながら行ない、同時に、そういう政府と地方庁の金を誘い水として民間資金をそこにつぎ込ませるということについても、いろいろやっているわけでございまして、特殊の業種、あるいはこの中の優秀なものだけに施策を集中しているというわけではございません。それから、この十二条にございます公表しなければならない適正な規模というものにつきましても、たとえば近代化促進法等には、これは申し上げるまでもなく先生御存じだと思いますが、中小企業近代化審議会の意見を聞いて、これを公表するということになっておりますので、決してわれわれだけでかってにきめるというものではございません。これは結局需要と技術と両方の面をよく考えまして、どの程度の規模が一番適当であるかということをきめるというわけでございまして、それぞれの審議会という面で、学識者の御意見等も伺い、また中小企業代表者の御意見等も十分に参考とした上で、一番適正と思われるものをきめたいと考えております。
  83. 田中武夫

    田中(武)議員 いま樋詰長官からいろいろと御答弁がありました。しかし、中村さんの御指摘のように、いわゆる零細企業は一体どうなるのかということを心配しておる。私は、この点が政府案一つの欠陥ではなかろうかと思っております。政府案の前文の最後のところに、「中小企業の進むべき新たなみちを明らかにし」、こういうように明確に宣言をいたしておりますが、内容に至りましては、零細企業は一体どうなるのかということについて、新しい道を示していないのであります。したがいまして、政府基本法は、零細企業の切り捨て思想があるのではないかと心配しておるところは、中村君の御指摘のとおりであります。  そこで、わが党はどうやっているかと申しますと、まず、三十三条におきまして、衰退業種に対する措置ということをうたっておりまして、そういう衰退業種に対しては積極的に援助をし、及び応急的救済の手段をとる、こういうようにいたしておりまして、なお四十六条の一項及び二項と分かれまして、一項のほうは、そういう零細企業のうちでも経済ベースに合う、経済政策でいけるものを規定し、第二項におきましては、そういうベースに合わぬものは社会政策によって救っていくのだ、こういうようにきめこまかに規定しておるということを申し添えておきます。
  84. 中村重光

    中村(重)委員 いま、いろいろお答えがあったわけですが、社会党提案者から二つに分けて対策を立てておるというお答えがございました。自民党推薦の公述人も、この点が適当でないということを非常に強調しているのです。ですから、いま既往の法律を取り上げて長官はいろいろお答えになったわけですけれども、実際の中小企業に対する政策、これは政策でなくて対策なのだ、これでは中小企業は全然立ち行きできないのだ、こういうことは、長官も率直に認めておられる。また、答弁の中でもその点を特に強調し、明らかにしておられるわけであります。そうならば、いまこの政府施策の対象にしようというものは、その中小企業の中でも、昨日の公述人のどなたかの言葉を借りて言うならば、いわゆる優等生である。優等生はほうっておいても伸びる。だから、優等生教育というものは必要じゃないのだという、全く適切なことばであったと私は思うわけですが、その優等生でないものに対する特別の施策、教育というものが必要になってくる。中小企業の場合においては、政府がいま対象とするような企業というのは、非常に優秀な企業と私は判断をしておる。また、そういうことを対象に考えておられる。ですから、そういう企業も、いままで同じように、あるいはより以上に政府施策の対象になっておったかもしれない、取り扱いを受けておったかもしれない、それではならないからというので特別のことをお考えになるならば、その他のものはいままでの法律の中で何とかやっていけるのだという考え方は、適当でない。基本法をお出しになるならば、その点をはっきりして、いわゆる中堅企業のものはこうやっていくのだ。特定の帝業、特定の企業に対して特別に政策をやらなればならないならば、その他の企業者に対しての取り扱いというものも、基本法の中にはっきりあらわしていくと同時に、関連法をお出しになるという態度でなければならぬじゃないか。そういう特別なものに対しては、関連法までお出しになっておられる。ところが、ほんとうにいま最も苦しい状態に追い込まれておる企業者に対しては、特別の措置考えられていないということでは、きわめて不合理であり、不公平だ、こう私は申し上げざるを得ないわけです。いまあなたが、何とか考えるのだ、そういうことでこの中小企業の憲法である基本法を通そうという考え方は、間違っておると思う。これはもっと責任ある態度で取り組んでいただかなければなりません。
  85. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 中小企業対策の一番大筋は、先ほど来先生がいろいろお話になっておりました金融であり、税制であろうかと存ずるのでありまして、いわゆる特別措置というようなことで対策を講ぜられるということが、ある程度限定されるということになるのは、これは特別措置という名前からいっても、やむを得ないと申しますか、当然の帰結になろうかと思うわけでございまして、要は、先ほど大蔵省からのお話にございましたが、最も公平であるべき税制という中でも、時こそういう零細な方、大多数の非常に担税力の乏しいと思われる方々に対して特別のめんどうを見なければならないというのであれば、中小企業政策の重要性ということについて、これはわれわれいままでも努力しておるつもりでございますが、さらによく税制調査関係の方にも納得のいくように説明いたしまして、特別の措置というものが広く一般の中小企業者に及ぶように、言いかえますと、たとえば税率の関係といったものについても考えてもらうというようなことが、一番広くいくのじゃなかろうか。そういうことについては、この法律ができた機会にもよく関係方面にお話して、そういうような税制ができるように努力したいと考えておりますし、また、金融につきましても、先ほど来大蔵省のほうで、できるだけ中小企業のほうに金が流れていくようにということについては、いろいろ御不満の点等もございましょうが、通産省といたしましても、大蔵省としてもせっかく努力してきたところでございますので、いまここで具体的にどうこうするということははっきりお約束するわけにいきませんが、われわれといたしましては、昨年度に比べまして大体一五%程度の財政投融資関係の機関の貸し出しワクの増加というものがあれば、ことしは一般的な金融情勢等ともからんで大体やっていけるということで、これだけの措置を講じておるわけでございまして、これにつきましては、先ほど大臣も決してこれで満足しておるのではないということを言っておられますので、さらに充実するように努力していきたい、できるだけ一般的な税制金融という面で潤う方が多いように努力したいと思っております。この基本法を出しましたねらいは、中小企業の優秀な特別の優等生だけを育て上げるということでなくて、中小企業全体のレベル・アップということにあるということは、格差の是正をはかっていこう。解消理想ではあるけれども、とりあえず格差縮小をはかっていきたいということから、当然の措置でございまして、われわれは決して特殊のものだけの保護、助長ということを考えておるわけではございません。それから世界市場に直接つながっておるというような現状におきまして、第三条の第二項にも、常に産業構造高度化あるいは国際競争力の強化というような観点からもやらなければならないというようなことも書いてございますので、特別に何らかの手を打たなければならないということについては、それだけの手をプラスして打つということでございまして、特別の人間だけ対象にしてほかは何もやらないということではないという点について、御了承いただきたいと思います。
  86. 中村重光

    中村(重)委員 そういうことは考えておりません、了承してくださいとおっしゃっても、私は、あなたのほうで提案になった基本法をすなおに読み、これに基づいてお出しになった関連法をすなおに読み取って、ものを判断して言っておるのです。あなたが具体的にやろうとするものが、ここにあらわれておるものをやろうと考えてないと雷っておるのじゃないのです。あなたの頭の中には、そういうことをお考えになっておるかもしれません。まさか零細企業者を切り捨ててしまって、どうにでもなれ、そういう不人情な考えをあなた個人が持っておるとは、私は言わないのです。しかし、この政策の面にあらわれてないじゃないか。優等生教育じゃないと言うけれども、優等生教育をここではっきり出しておるじゃないか。優等生でないものに対する施策は具体的にあらわれてきてないじゃないか。基本法ならそれを明らかにしなさい、そして審議に応ずべきだと私は言っておるのです。その点がないので、これを指摘せざるを得ない。どうしても納得できないのです。お答えがあれば聞きます。
  87. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 優等生教育で、一般大衆のことは考えていないというお話でございますが、われわれは、この一条から全部すべての中小企業者にかかっておる。しかし、そのままでは受け入れがたい方がおるだろうということで、特に二十三条におきましては、社会政策的な配慮も必要であろうというようなことを込めてここに書いておるわけでございまして、この二十三条を置いたのは、ほかの方よりもむしろ特別受け入れやすいような施策をするために必要な考慮を払うということで、確かに現在の段階におきましては、小口保険でございますとか、国民公庫の金融とか、あるいは経営改善普及事業とかいったものに限られておりますけれども、今後この精神に沿って具体的に何をやるかということにつきましては、せっかく政策審議会もできることでございますので、先生の御心配のようなことが起こらないように、できるだけたくさんの中小企業者がほんとうに基本法制定の目的に沿って底上げがされるようにということについては努力したい、こう思っておりますし、また、いろいろな関係で当然需給との問題がございますから、需要がふえていかない、あるいは需要が絶対的に減るといったようなもの等もいろいろあると思われますので、そういうものにつきましては、今後マーケット・リサーチというようなことも十分にするということによって、先行きの見通しを持った一つの長期計画、展望というものを行ないまして、業界を指導する。場合によっては、そのためにある業種より有望な業種への転換というようなことも起こるかと思いますが、いずれにいたしましても、優等生だけを相手にするのじゃなくて、一般の方々すべてをやる、特に小さい方々についての配慮をする。たまたまこの国会で、非常に根本的なむずかしい問題でございますので、具体的な法律が出てないというだけでございますが、われわれの感じでは、そういうことで、いませっかく関係の各省の間では、税についても、金融についても努力しておるところでございます。政策審議会で十分論議していただきたいと思っております。
  88. 中村重光

    中村(重)委員 あなたのお気持ちはわかるのです。わかるのだけれども、その気持ちだけで法案の審議をやれといっても、無理だということを言っておるのです。だから、二十三条で明らかにしておるじゃないか。二十三条で何をくみ取れというのですか。ほかの優等生に対しては、具体的な関連法が出されてきておるじゃないか。しかも自民党提案の中小企業基本法に対する本会議質問を私がやったときに、当時の佐藤通産大臣は何と答えましたか。本会議の議事録を読んでごらんなさい。関連法が準備ができなかったから、やれなかったんだ、今度は十分それらのりっぱな関連法をそろえて御審議を願うことにいたしますと答弁しているでしょう。そして今度お出しになったのでしょう。それならば、あなたの方の対象に載せようとする企業はきわめて少数で、圧倒的な、優等生でないそういう中小企業者に対する措置があってしかるべきじゃないですか。それをお出しになって、あなたは、私の気持ちはこうです、なるほどその気持ちは具体的な形であらわれておると私たちに納得させるように準備されることが、責任ある態度ではありませんか。それができてないということだから言っているんですよ。社会党案が少なくとも政府の提案よりもより具体的であるということは、お認めになるでしょう。野党の社会党に準備ができるのに、どうして政府に準備ができないのですか。そういうことであなたが中小企業者を納得させようというお考えを持っておられるということは、たいへんな無責任ですよ。あなたがそういうことを中小企業の大会をお開きになってあいさつをしてごらんなさい、つるし上げられますよ。絶対にあなたを殺すような、そういうことはやらないでしようけれども、少なくともあなたは陳謝これつとめなければ帰られないという状態に遭遇するでしょう。だから、この国会の審議の中に、自分の気持ちはこうなんだからというだけで通そうとする考え方は無責任だ、こう言うのです。しかし、これは何ぼ繰り返しても同じですから……。そういうことでは納得はできないわけです。  そこで、第七の「中小企業者以外の者の事業活動の調整等によって中小企業の事業活動の機会の適正な確保を図ること。」これに対しては、あなたも大臣も、大企業の不当の進出を抑え、著しい弊害が起これば規制をするようにお答えになっている。これは非常に重要な点であります。さらにまた、自民党の提案の中には、大企業中小企業——特に大企業と書いてあったと記憶いたしますが、調整ということがあった。これは政府案の中からは消えている。いわゆるうしろ向きになっておる。私どもが指摘しておるのはこの点です。しかし、第七号の中にその片鱗があらわれておりますし、答弁の中にもそれが出ております。そこで不当の進出という、不当とはどういうことをさすのか。さらにまた弊害が起これば規制をするということは、政府はどういう具体的な規制を考えておられるのか。調整ということになってくると、当然調整委員会というものが考えられてこなければならないのであるが、これらの点に対しての具体的な考え方を聞かしていただきたい。
  89. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 この不当と申しますのは、国民経済的に見た場合に放置できないという意味でございまして、これはみんなそれぞれ適法、公正に活動しているという場合でも、そのために中小企業者が非常な苦しみにおちいるといったような場合には、緊急避難的にしばらくの間待ってくれ、あるいは程度をゆるめてくれというようなことが、具体的には調整ということになる、また不当というものを発動する具体的な場合になろうかと存じます。たとえず、現在や小企業団体法でアウトサイダーの規制命令というようなことをやっておりますし、また、小売商業調整特別措置法で小売商業者とその他のものとの間の紛争が起こったという場合には、その紛争をあっせん、調停する、あるいは県知事あるいは通産大臣が勧告をするといったようなことをやっております。われわれといたしましては、今後さらにこのような——基本的にはおのおのがみんな適法、公正に経済活動をやっておるわけでございますので、やっちゃいかぬということを犯しているという場合は非常に少ないのじゃないか、こういうふうに思われますが、なるべく自主的に話し合いをするというかっこうで、いわゆる行政指導で調整するというのが、結果的にもうまくいくのじゃないか、そういうふうに考えております。この点につきましては、非常に大きな問題でございますので、われわれといたしましては、この基本法を通していただきまして、政策審議会ができましたならば、その政策審議会あたりに、第一番目の問題として、いろいろなこういう大企業との間、あるいはその他の中小企業者以外のものとの間に事件が起こった場合には、どういうふうにやるのが一番いいかというようなことについては、御検討いただきたい、その上で具体的な措置をしたい、そういうふうに考えております。  それからなお、先ほど来底上げといってもさっぱり具体的な施策がない、こういうお話がございましたが、われわれとしては、その全体のあれを中小企業対策として考えておりますし、全部適正な規模に達するために小さな規模の方々はひとつ協業しておやりなさいということについては、わずかでございますがことしから予算化もしているというようなことで、その点もあわせて先ほどの答弁の不足を補わしていただきたいと思います。
  90. 中村重光

    中村(重)委員 どうあまり申し上げると、ちょうどあなたをいじめるようなかっこうになりまして、私も心臓が弱いのであまり言えない。それでは答弁にはなりません。納得できないのであります。それと、いままでもあなた方のほうでは、大企業の不当な進出というものに対しては、あなたの言われた意味の行政指導でいろいろおやりになってきただろうけれども、ほんとうはいままでできていないのですよ。だから、そういう重要なことを行政指導でできるほど、中小企業庁というものは、長官個人に対してはまことにお気の毒なことばですけれども、それほど権威のある機関にはなってない。それではだめですよ。だから、調整をする、規制をするならば、調整委員会をおつくりになって、そうしてそういう重要な問題を処理するということをお考えにならなければだめじゃございませんか。どうですか。
  91. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 いろいろな行政指導は、決して中小企業庁だけがやっておるのではないことは御存じのとおりでございまして、中小企業行政の大部分は、第一線部隊は各都道府県ということになっておりまして、府県知事にお願いしていろいろとやっていただいておるわけでございまして、われわれは、全国の都道府県、あるいは市町村、それから各省というものと連絡をとりながら、行政指導ができるだけすみずみまで行き渡るということをせっかく努力しておるつもりでございます。  それから紛争の調停等について、通産省あるいは中小企業庁というものだけではとてもさばけぬじゃないかというお話でございますが、これはわれわれといたしましては、同じ産業間というものに起こるいろいろな問題点でもございますので、それはやはり産業政策的な見地から、また国民経済全体というものを考えあわせて処理すべきむのでありまして、いますぐ先生の御説に同感を表するわけにはいかないわけでございます。
  92. 中村重光

    中村(重)委員 あなたの信念は信念として伺いますが、ともかく紛争の問題もそうです。この中に紛争処理の機関がないということは、まことに現実を無視した姿である、ほんとうに中小企業のことをお考えになっておられないということの証左だ、こう私は判断せざるを得ません。さらにまた、いま私がお尋ねしておるのは、あなた方の御答弁の中にあった点を取り上げて言っているのですけれども、国の施策の第七号にあること、これは行政指導ではだめだ。また、ましてやいまあなたが通産省や中小企業庁だけがやるのではなくて、これは地方自治体でやってもらうのだ、こういうことでは全然答弁になりません。しかし、時間の関係もございますので、、本日は留保いたしまして、これで終わりたいと思います。
  93. 逢澤寛

    逢澤委員長 次会は公報をもって御通知することといたし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十九分散会      ————◇—————