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1963-06-12 第43回国会 衆議院 商工委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月十二日(水曜日)    午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 逢澤 寛君    理事 小川 平二君 理事 岡本  茂君    理事 白浜 仁吉君 理事 中村 幸八君    理事 南  好雄君 理事 板川 正吾君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       浦野 幸男君    大高  康君       海部 俊樹君    仮谷 忠男君       金子 一平君    神田  博君       藏内 修治君    佐々木義武君       笹本 一雄君    正示啓次郎君       田中 榮一君    田中 龍夫君       山手 滿男君  早稻田柳右エ門君       岡田 利春君    北山 愛郎君       久保田鶴松君    久保田 豊君       多賀谷真稔君    中村 重光君       永井勝次郎君    春日 一幸君  出席政府委員        通商産業政務次官 廣瀬 正雄君         通商産業事務官         (大臣官房長) 渡邊彌榮司君         中小企業庁長官 樋詰 誠明君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    加藤 悌次君         通商産業事務官         (中小企業庁指         導部長)    影山 衞司君  委員外出席者         参  考  人         (慶応義塾大学         教授)     伊東 岱吉君         参  考  人         (東京商工会議         所中小企業対策         委員長)    石田謙一郎君         参  考  人         (全国中小企業         団体中央会専務         理事)     稲川 宮雄君         参  考  人         (大森工場協会         相談役)    川端 文夫君         参  考  人         (商工組合中央         金庫理事長)  北野 重雄君         参  考  人         (東京信用保         証協会理事)  田山 東虎君         参  考  人         (全国商工会連         合会会長)  竹内 敏栄君         参  考  人         (中小企業研究         所所長)    中島 英信君         参  考  人         (日本生活協同         組合連合会副会         長)      中林 貞男君         参  考  人         (日本専門店会         連盟常任理事) 宗像平八郎君         専  門  員 渡辺 一俊君     ————————————— 六月十二日  委員山口シヅエ辞任につき、その補欠として  永井勝次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員永井勝次郎辞任につき、その補欠として  山口シヅエ君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業基本法案内閣提出第六五号)  中小企業基本法案永井勝次郎君外三十名提出、  衆法第一〇号)  中小企業組織法案永井勝次郎君外三十名提出、  衆法第一一号)  中小企業基本法案向井長年提出参法第四  号)(予)      ————◇—————
  2. 逢澤寛

    逢澤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中小企業基本法案永井勝次郎君外三十名提出中小企業基本法案、同じく中小企業組織法案及び予備審査向井長年提出中小企業基本法案、以上四法案議題として審査を進めます。  本日は、四法案審査のため、参考人として慶応大学教授伊東岱吉君東京商工会議所石田謙一郎君、全国中小企業団体中央会専務稲川宮雄君、大森工場協会相談役川端文夫君、商工組合中央金庫理事長北野重雄君、東京信用保証協会理事田山東虎君、全国商工会連合会会長竹内敏栄君、中小企業研究所所長中島英信君、日本生活協同組合連合会会長中林貞男君、日本専門店会連盟常任理事宗像平八郎君、以上十名の方方から御意見を聴取することとなっております。  なお、日本生活協同組合連合会会長中林貞男君は、都合により後刻お見えになる予定でございます。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、四法案審査のため、御多用中にもかかわらず、わざわざ本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  御承知のごとく、本委員会におきましては、ただいま議題となっております中小企業基本法案等法案の外、中小企業関係法案審査もいたしておるのでありますが、中でも中小企業基本法案につきましては、いずれも中小企業の発展をはかるため、そのあるべき方向並びに基本施策をうたったものでありまして、去る二月七日に内閣及び日本社会党から本院に提出されましてからも、ひとり商工委員会のみでなく、今会期における国会の最も重要なる案件一つといたしまして、去る二月十九日の本会議において趣旨説明、質問が行なわれました後、商工委員会の儀に付せられ、連日委員会において鋭意審査中のものであります。参考人各位は、それぞれ中小企業関係者として、また学識経験者として深い造詣をお持ちのことと存じますので、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただければ、幸いに存ずる次第でございます。  なお、各案についてはあらためて提出者からは説明をいたしませんので、あらかじめ御送付いたしました資料によって御了解願いたいと存じます。  参考人各位には、最初十五分程度順次御意見を述べていただき、そのあとで委員質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは参考人伊東岱吉君よりお願いいたします。
  3. 田中武夫

    田中(武)委員 議事進行。  ただいま委員長がおっしゃったように、この中小企業基本法関係法案重要法案でありますので、したがって本日も、お忙しいところを、多数の各界代表並びに本問題に関する権威の方に来ていただいておるのであります。したがって、いつもの委員会のように途中で出たり入ったり——これはやむを得ない事情のある方はしかたがないといたしましても、そういうような状態であっては困るので、あらかじめ委員長から、途中退場等は、万やむを得ない場合を除くほかは許さない、こういう確認をしていただきたいと思います。
  4. 逢澤寛

    逢澤委員長 御趣旨に沿って善処いたすことをお約束いたします。  なお、伊東参考人は午後所用のため早く退席されますので、伊東参考人だけは陳述が済んだ後直ちに質疑をしていただくことにいたします。  それでは伊東参考人
  5. 伊東岱吉

    伊東参考人 公述に先立ちましてちょっと申し上げたいのですが、私もときおりこういう公述で頼まれて参ることがありますが、きょうみたいに一時間もおくれたということは初めてなのであります。公聴会というのは、いわば国民の声を代表から聞くということだろうと思うのです。しかも、この基本法案というようなものは、国民大多数の利害に最も関係するものであります。それをこんなに待たせるということは、はなはだ遺憾である。われわれには退場戦術も何もありませんが、これから公聴会をもっと尊重していただきたいということを申し上げておきます。  そこで、この基本法案政府社会党民社の三つの案でございますが、時間がたいへん制約されておりますので、それぞれの私の感じました特徴、それからいろいろ問題点をごくかいつまんで申し上げます。  政府案につきましては、この中小企業問題を、ことに中小企業構造高度化近代化合理化規模適正化、あるいは共同化集団化、こういうふうな点に非常に重点を置いてこれが構成されておる、こう思うのです。そして第三章以下の、ことに環境整備あるいは不利な取引条件是正、大企業との関係というようなものについては、たとえば中小企業以外のものというような、いささか非常に広く述べておるようなところもありました。このほうはどうも非常に抽象的であって、またその関係関連法案も強いものが出ておりませんから、いささかこれは弱いのではないか、こう思われるわけです。さらに零細企業あるいは零細商業小規模事業について特別な考慮を払うとはいうものの、はなはだ簡単過ぎる、こう思うわけであります。  これに対して、社会党案並び民社党案は、その焦点を大企業との関係で相当しぼっておりますし、さらに対等な取引関係あるいは不利な取引条件、この是正ということに焦点を強く当てておられる。ことに社会党案では、二重構造を解消することを目的とするということをはっきりうたっております。同時にまた経済民主化の大きなねらいを持っておるというところが特徴であろう、こう思うわけであります。さらにこの社会民社党案とも、中小企業者の自主的な組織というようなものが、その条文のまず最初のほうに出てまいります。そういうこの問題を解決していくについての中小企業者の主体的な組織化、このことを非常に重視しておるということは、私は非常に賛成なのでございます。  さらに、この零細企業に対する社会保障等の問題、こういう問題も、政府案においてはどうもあまりはっきり見られておらぬのに、これが社会党案あるいは民社党案においては相当強く出されておるということが、やはり比較した場合の特徴であろう、こう思います。  さらに、この中小企業庁を省にするということについて、これは中小企業者多年の要望でありまして、これが野党案においてははっきりうたわれておるということがやはり特徴であろうと思う。  さらに、これは少しこまかいことになりますが、中小企業政策審議会がいろいろ重要になってまいると思うのでありますが、この委員について、これはいままでも、いろいろな国家の重要なことをきめる代表において、中小企業というものが軽視される、あるいは無視されるという傾向があった。それだけに、この中小企業法案でありますから、これをはっきり中小企業代表を出すということをうたう必要があるのではないか。もちろん政府案においても中小企業代表学識経験者として求めるでありましょう。しかし、中小企業代表の全体に占める比率であるとか、消費者代表あるいは労働者代表、あるいは大企業代表学識経験者、いろいろあると思いますが、その比重等はやはり相当はっきり考えておかなければいけないんじゃないか、こう思うわけであります。  ところで政府案について、産業構造高度化ということをねらうこの構想はもちろん私は賛成なのでございます。これが一つの柱となるということは大事であろうと思います。しかしこれだけではやはりまずいのではないか。そこで、政府案においても第三章以下に述べられておるのですが、社会党案あるいは民社党案において非常に強く述べられた、先ほど申し上げたところ、こういうものが兼ね備わって、この中小企業基本法案はいいものになるのではないか、こう思うわけです。もちろんそれぞれ政党の立場があります。立場はありますけれども、これは中小企業をいかによくしていくかということにおいては、その立場を越えて共通のものがある。そういう意味からいっても、ここでその各案を妥協させる、さらにそこにいろいろ織り込むということも十分可能である、こう私は考えておるわけです。  ところで、政府案につきましては、これから政府案中心に簡単に申し上げますが、政府案につきましては、これが憲法であるということで、必要な施策を講ずるというような言葉で、その具体的な内容は関連法規に求めておるわけであります。関連法規を見ていきませんと、ほんとうのところその性格なり具体的な生き方がわからない、こういうものでありますから、本年度もすでに政府案において最も重要視しましたこの産業構造高度化近代化、こういうことについての関連法規が出ておりますから、これをいろいろ拝見してみまして、近代化促進法、あるいは近代化資金助成法、あるいは高度化資金特別会計に設けること、あるいは指導法、あるいは投資育成会社というようなものを拝見しまして、私はこれらのいろいろ具体的なやり方については問題があると思いますが、こういう法規が必要であるということは当然のことであります。  ただここで心配いたしますことは、その財政的裏づけを拝見しますと、本年度中小企業対策費が非常にふえたというものの、全体の予算の中のわずか〇・三%。中小企業国民経済的な重要性なりその寄与率からいって、あまりにも話にならぬような貧弱さでございます。こういうふうな財政的裏づけの貧弱なものを、ここで中小企業近代化といっても、これを配分いたしますときに気をつけなければならぬことは、中小企業の上層なりあるいは中小企業の中で非常に成長的なもの、つまり国経済成長政策から見て前向きに最も重要だと思われるようなものだけに集中されてしまう、こういう危険があるのではないか。ここら辺が非常な問題だと思うのです。  いま申しましたことは、また中小企業定義にも関することでございます。中小企業定義の問題は、私どもが学問的に考えております中小企業のいろいろな階層なりあるいは大企業階層なりの理論的な分析というものを背景にする必要はありますけれども、それそのものであっては、政策的には、つまり実際的な政策的には必ずしも妥当ではない、こう思うわけです。もちろん基本法案においては、この定義あるいは範囲というようなものは、いろいろ実態に即して考えていく、また時代の趨勢とともに変わっていくこともあり得るということは、うかがわれるのでありますが、このたびの政府案において、たとえばいままでの資本企一千万円であったものを五千万円に上げる、あるいは商業において三十人のところを五十人に上げる、こういうふうに上へ上へ上げていく傾向がここに見られるのであります。もちろん従業員三百人というところへまいりますれば、統計的に資本金は約五千万円になってくる、こういうことは当然でありますけれども、私が心配いたしますことは、やはり政策目的に従って、この規定が考えられなければならぬ。たとえばきょうも新聞紙上にちょっと出ておりましたが、下請関係であるとか、その他いろいろ大企業との関係というふうなものに、あるいはいまのように広げる必要もありますが、しかし一番中心となる財政資金をいろいろ使って行なうということにつきましては、財政資金そのものが先ほど申したように非常にわずかなワクであって、定義だけを広げますと、これはアメリカにおいてもある学者がいろいろ問題にしておったのでありますが、とかく資金は上にばかりいってしまうという傾向があるわけでございます。したがって、この政策を裏づける資金ワクとその配分とを考えながら、定義は考えられなければならぬ。この問題は、何よりも財政配分において、大企業中小企業との関係におきまして、もっぱら焦点が大企業に向かいやすい、こういう傾向にあるのであって、中小企業に対する正当なといいますか、配分がなされていないということからくるのであります。さらに金融につきましても、今日の非常な高度成長下で、中小企業と大企業との間には配分の上で不均等が非常にひどい。設備投資等におきましても非常にひどいのであります。こういうふうな財政金融を通じての資本の集中というようなことが、二重構造をいよいよ深めるという傾向があるのであります。したがって、これを積極的に是正していく、二重構造を何とか縮めていこう、あるいはほんとうに直していこうというならば、大企業の急成長をもたらすような設備投資以上に、中小企業設備投資がなされなければならない。中小企業資本装備率を高め、労働生産性を高めていかなければならぬということは当然のことであります。かつての所得倍増計画のときにおきましても、中小企業小委員会の方々はこの点を非常に重視しまして、中小企業に対する大企業との関連における資金配分計画を出されました。それに基づいて財政投融資はこれこれの割合でなければならぬというようなことを、しかも政治的な実現性を考えて非常に遠慮しながら申し上げたのでありますが、それすら、政府所得倍増計画においては、それが発表されたときに削除されてしまっているというような過去のこともあるのであります。そういう点から考えましても、この基本法ほんとうに実現していこうとするならば、そういう全体の財政なり金融なりの配分の思い切った変更といいますか、そういうことが絶対必要だと考えておるものでございますから、そういうことからいいましても、たとえば財政投融資なりあるいは金融なりについての一定比率中小企業に向けるという、これが野党案には出ておりますが、これは一定比率といっても、動く経済のことでなかなかむずかしいかもしれませんが、そのことは年々いろいろ変えていくということも可能であります。これはやはり考えていただきたいと思うわけです。  さらに官公需の受注ということにつきましても、私先年アメリカ中小企業庁長官からつぶさに聞いてまいりましたが、これはもっと政府案においては明確にうたってもらいたい。もちろんこれはまず実態調査から始めなければならぬものでございましょうけれども、やはり中小企業から取ったものを財政を通じて中小企業へまた戻すということなんです。もちろん中小企業から取り上げたもの、あるいは中小企業の預金というふうなものを全部中小企業へ戻せということは、必ずしも可能じゃない。この不均等が非常に強いのでありますが、そこでもちろん政策的配慮等が入るでありましょうが、いままでのところでは、あまりにもそれが大企業に集中し過ぎるというようなことが、中小企業との格差をひどくさせる原因でありますから、この点はもっともっと強く考える必要があると思うわけであります。  さらに、中小企業と大企業との領域分野確定の問題ですが、これは実をいうと、今日のような技術革新がどんどん進んでおる、そしてあらゆる構造が変化していくというときには、非常にむずかしい問題でございます。しかし、こういう変化を通じながらも、ある分野は非常に中小企業に適当であって大企業には不適当であるという分野も出てきております。もちろん大企業はどこへでも出られるようであるけれども、必ずしもそうじゃない。つまり適正規模というようなことから考えましても、そういうものが徐々にここへ出つつあるということでありますから、この分野はそう一挙に明確にさい然ときめるなんということはできないかもしれませんが、これはやはり慎重に考えながら分野確定の問題を進めていかなければならぬ。その場合に、日本特徴は、大企業が、大企業自体の経営的な意味からいえば、自分の経営に適しない領域系列下請関係で出ていく、そして優秀なものを系列下請化しながら進出するというようなことがあるわけであります。そういうわけですから、た、だ分野確定するということだけではなく、系列下請関係対等化、これが非常に重要なことになってくるわけであります。  こういったふうな点がまず焦点で、大事な私の言いたい根本でありますが、さらに、先ほど申したような、限られた資金をもって、しかも国策に順応しながら中小企業近代化していこうとしますと、とかく先ほど申したように成長産業重点がかかり、さらにまたその中の伸び得るものだけに重点がかかる傾向があるわけです。いわば、教育にたとえて言えば、秀才教育みたいな傾向になってくる。あたりまえの普通の中小企業の一番多くあるものは、そこまで伸び得ない。そういうふうなものはだんだん取り残されてしまうという傾向がある。つまり自然にまかしておいてもだんだん格差はひどくなる。競争の結果なるのでありますけれども、これがあまりにも秀才教育的な方向重点的に限られた資金でやりますと、いよいよかえってそれを促進してしまう傾向がある。私は、全体の構造近代化していくこと、これは絶対必要だと思いますけれども、その間に格差がいよいよできてくるということであっては困るので、したがってそういうふうな方向をとるならば、もっともっと、先ほど言ったような背景となる財政資金をふやさなければならぬと同時に、もう一つ重要なことは、それによって生ずる社会的な影響について、社会保障的な施策なり社会政策なりあるいは企業の転換の問題がいよいよ重要になると思いますが、こういう問題について十分な考慮を払う、そういう条項が必要であろう、こう考えるわけです。  野党案についていささか懸念されることは、もちろんそういうつもりではないと思いますけれども、中小企業保護、ことに零細企業保護ということにばかり強く焦点を当てますと、今度は、いまのダイナミックに動いていく情勢を、あるいはむしろ保守的にチェックしてしまう、こういう問題があります。私は、低賃金でなければ成り立たない、しかもほかに何にも社会的な分業としての取り柄もないような、そういうふうな零細企業というものは、そこの従業員にとっても、そこの御主人にとっても、これはあまり意味のない存在だ、こう思っております。そういうふうなものは、一挙にうということになると社会問題になる。その社会問題の救済の措置が十分できておらないだろうから、一挙にはやれませんけれども、やはり欧米でももう一つ社会的通念になっているような、スウェッティング・システムの伴うような、そういう家内工業や何かは、むしろ社会の害悪というか、やがてはなくしていかねばならぬ、近代化させていかなければならぬ存在だ、こういうことなのでありまして、やはりそういう考え方がなければならぬ。つまり保護政策も、やはりここで一つの限界、もっと具体的に考えてみなければならぬということがあります。そういう点で政府案の非常に前へ進めようというものと、この両方の助け合いが必要なんじゃないか、こういうふうに考えておる次第であります。  最後に、少し時間を超過して恐縮でございますが、特定産業振興法というものがいま考えられており、大企業中心とした新しい産業秩序が、自由化を迎え、OECD参加を迎えて考えられておりますが、これとの関連であります。たとえば近代化促進法等は、特定産業振興法やり方等を見ると非常に共通の点がありますが、しかしここで大企業の場合には非常に問題があるのです。たとえば独占禁止法に穴をあけるというようなことも、へたをやると合理化という以上に独占というか、国内で一つ独占をつくりながら競争してしまう、こういう懸念があります。何よりこの中小企業基本法関係しながら考えることは、大企業の中で合併なり、あるいは品種の専門化なり、こういうものが起こってくる、あるいは部品共同購入とか、部品のいろいろな買い方の共同化が起こるとした場合の中小企業への影響でございます。ことに大企業の再編成が進むと、たださえいままで系列とか下請、これも何段階かになってありますから、これが非常に影響を受ける。たとえばこの品種をいままでこの地域のある工場でつくっておったが、それをやめてこちらに集中したというようなときに、その下請力たちはたいへんな影響をこうむるわけです。こういうふうなことについて、特定産業振興法においては中小企業者の利益を害しないことというようなただし書きがありますが、これはよほど中小企業に関心を持たれた方がもっと具体的に強く考えていただかないと、基本法をつくっておきましても、これが一方でくずされてしまうということがあるわけです。こういう点で、基本法は絶対必要である。必要でありますが、基本法であまりあいまいにしておいてきめ手がなくなっては困る。何らかそこに中小企業の地位を上げ、二重構造をなくしていくようなきめ手が絶対必要である。この関連法規というようなものができるだけ早く充実したものができ、さらに皆さんの力で中小企業に対する財政配分なり金融配分なりの不均等是正されるという方向をとられることをお願いして、私の公述といたします。(拍手)
  6. 逢澤寛

    逢澤委員長 それでは伊東参考人に対する質疑の申し出がありますので、これを許可いたします。松平忠久君。
  7. 松平忠久

    ○松平委員 伊東先生にきわめて簡潔に二点ほどお伺いしたいと思っております。  第一点は、中小企業基本法案というものを策定するその背景となる現在の経済のあり方、こういうことについて、われわれは、構造的に二重のようなかっこうのものがある、日本資本主義の発展がそういうふうにしてしまっておるんだ、したがってこの断層を埋めていかなければならない、こういう考え方であるわけでございます。ところが、このストラクチュアの問題については、それが一軍であるというような説もあり、三軍にも四重にもなっている、ひずみがある、こういう説もございます。しかしながら、いわゆる大企業——国家権力の非常な保護を受けて発展してきた日本資本主義のもとにおいては、構造的にそこに一つの仕組みのようなものが、都合のいい仕組みが大企業にはできているけれども、中小企業はそういう仕組みからは全然取りはずされておるのだ。そういうことで、いまおっしゃいましたように、財政投融資なりあるいは金融配分等につきましても思うようにならないという、そういう一種の構造的な欠陥がある。こういう判断に立っておるわけであります。その点に関する先生のお考え方をお伺いしたいと思います。  第二点は、日本資本の横暴と申しますか、そういうものをチェックするというような意味で、独禁法というものがございます。しかしながら、また今日の段階においては、独禁法ではなかなか処理し切れない。大企業中小企業、あるいは中小企業相互間においても、いろいろな紛争があるわけでありますが、今日の場合、たとえば中小企業等協同組合法におきましても、組合交渉権というものはございます。団体組織法にいたしましても、いわゆる団交権というその権利は認めておるのでありますけれども、しかしながら最終的にこれを判定するような機関はございません。したがって、法律はありますけれども、不備でありますために、ほとんど弱いものが泣き寝入りをしておるというのが、今日の状態ではなかろうかと思う。これを独禁法に基づいて公取でこの解決をはかるということも困難である。したがって何らか新しい制度を求めなければならないという考え方にわれわれは立っておるわけでありますが、中政連の案を見ますと、公正経済委員会というような名前で同じようなアイデアが出ています。そこで、私のほうは、調停委員会ということで、それらのいろいろな紛争なり、あるいはいざこざというものを交通整理をしていく、秩序を与えていくというような意味で、しかも最終決定権を持っておるというような独立の機関が必要ではないか、こういう観点に立っておるわけでありますが、この問題についてはただいまお触れになりませんでしたので、この二点についてお伺いしたいと存じます。
  8. 伊東岱吉

    伊東参考人 二軍構造ということばは、われわれ学会でもたいへん議論がある。ただ現象的に見て二重構造ということばを使うと、大企業中小企業、さらには農業との関係があるわけでありますが、その格差なりあるいはその関連なりがわかる、わかりやすいという意味で、通俗的な意味で私も二軍構造ということばを使うわけです。中小企業なり大企業との関係からいえば、二軍ではなくて、もっともっといろいろな、三重にも一四重にも言えるような関係があるわけです。私は、企業階層というものをわかりやすくするために、いささかきめつけたようなことを言いますけれども、大企業中小企業中小企業の中で中小資本資本以前の零細企業、こういうふうに分けております。中小企業と大企業との境目は、いわば社会から自己資本を多く集めるようないまの全体の機構の中にそれが利用できるかできないか。ことばをかえて言うと、きめ手としてはほんとう意味の株式会社になっておるかいないか、第二市場上場というものは、いわばそれに向かっておる過渡期みたいなもので、中堅企業とも言うことができるのでありますが、そういうふうに考え、その大企業というものの中で、大企業というものがグループをその中でまた一部つくってまいりました。非常に巨大なものをつくってくるとグループ化ができてくるし、それがまた銀行を通じて社会資金を集中する機構ができるというようなことで、それは産業別に見ましても、その巨大企業が、オリゴポリといいますか、わかりやすく、独占的な価格といいますか、独占的な行動と申しますか、そういう傾向を持つようになる。だからここでまた大企業の中に独占的なそういうグループができる。ですから、そういうふうな関係ができて、縦にいろいろなしわ寄せなり、あるいは独占価格と過当競争価格というふうな問題がここへ出てくる。こういうことが三重構造を深める原因だと思いますが、しかし、そういうことたけならば、欧米でもみんな似たようなことが幾らかある。ところが、日本の場合の特色は、それを非常に縦にずっと貫いてくる。こういう縦の系列といいますか、それはやはり大きくいえば大企業中小企業ですが、その関係が対等でないというところにあるし、もう一つは、この一番下の労働条件というようなものに、いままで非常に格差があったということから、上から、また中小企業の中でも下へ下へと、こういうような下請関係等に一つのしわ寄せができる、こういうようなことから二重構造が深められ、さらに日本銀行貸し出しであるとかオーバーローンであるとかいうことを通じて、資金がまた非常に頂点のところに集中するようになるというようなことが、二軍構造を深めた原因であろうと思うのです。でありますから、そういう問題を解決しようとするならば、いま申したような点に十分な配慮を払った基本法がつくられなければならぬ、私はこう考えておるわけです。  それから第二点の、紛争のあった場合の調停委員会のようなものでありますか、これは私は社会党案賛成であります。これは中小企業団体では全中協が由来常に考えてきたことでありまして、私もいろいろ相談に乗ったことがありますが、いままで独占禁止法の運用を公取にまかしておりますが、ここにやはり大企業中小企業との関係のいろいろな紛争を処理するためには、中小企業代表が入って、そして中小企業が、下請なんかについてもそういうものがないと、その下請支払い促進法等にいろいろな問題がありますが、一番の弱い点は、大企業中小企業が実力的には非常に押えられており、へたすれば大企業から出入り差しとめということになるとこわいものですから、いろいろな問題があっても一言えないという点にあるわけです。ですから、そういう点で、やはり国家が当然こういうことは、支払い遅延であるとか、そういう下請へのしわ寄せは誤りである、これは欧米じゃ財界の常識としても、私が少し話すと、そんなばかなことがあるかとすぐ言うぐらいですから、そういうことを国家が確認してやる、そうして同時にここに中小企業代表が出ていて、そして中小企業者が非常に安心していろいろ訴えられるというようなものがどうしても必要だ、こういう意味で、先ほど松平さんの言われたような案には全面的に賛成なのであります。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 伊東先生に、いまの松平さんの質問と同じようになりますので、関連してお伺いいたしたいのです。  と申しますのは、わが党の第二条に二重構造の解消ということばを使っております。政府案の第一条は格差是正ということばを使っておる。実はきのうあたりも、通産大臣との間に、この問題についてだいぶ議論をしたわけなんです。ということは、いわゆる構造的なものが大企業中小企業の中にあるのかないのか、いうならば中小企業、大企業、そして先生の言われたように、いわゆる中小の中でも零細というようなものがありますが、これはただ単に数といいますか、資本金十億に対して一千万円だというような数だけの問題であるか、それとも質的なものがあるのかないのか、こういうところに論議がくるんだと思うのです。そのことがひいては、わが党の十八条ないし十九条のいわゆる中小企業の事業分野の確保ということに関連をしてきますので、二重構造の解消ということと格差是正ということは、私の考えでは、いわゆる中小企業と大企業とは体質的な違いがある、構造的なものがあるという意味に私は感じておるのですが、先生の御意見を伺いたいと思います。
  10. 伊東岱吉

    伊東参考人 政府案格差是正として、個別企業の体質を高めながら、そういう形で大企業との差を縮めていこう、こうしておるわけです。もちろんこれは二重構造解消に非常に重要な一つのよりどころです。しかし、私が先ほど申し上げたことからもうおわかりと思いますが、それだけでないものがある。なぜかというと、そういう体質を上げることができないのは何かというと、その前に構造的なものがあるのですね。そこでやはり国家の役割りなりそれが出てくるのであって、両方相まっていかなければならない、こういうふうに私は考えております。
  11. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、正示啓次郎君。
  12. 正示啓次郎

    ○正示委員 伊東先生に二点だけお伺いをいたしたいと思います。  第一点は、非常にはっきりとおっしゃいました、財政資金の全体のワクが非常に窮屈なときに、今回の政府案あるいは社会党民社党の案もそうでございますけれども、いわゆる資本の限界を上へ上げておるわけでありますが、こういうことをするとどうも上のほうへ片寄ってしまうおそれがある、こういう御趣旨でございます。そういうことのないようにこれはむろん配慮いたさなければならぬのでありますが、ただ御承知のように、日本中小企業金融機関は、いわゆる国民金融公庫、中小企業金融公庫あるいは商工中金というふうにございまして、それぞれ小さいところ、大きいところ、中くらいのところというふうにやっておるということは、先年御承知のとおりであります。それが一つ。それからもう一つは、政府案におきましても、御承知のように第二十三条に特に小規模企業という一条を設けております。こういう点を考えれば、必ずしも先生のおっしゃったようなこともない。すなわち機構的にも、小さいところにも十分手の回るような金融機関を別に持っているということ、この基本法におきまして特に小規模のものに考慮をめぐらすということを書いておるわけでありますが、こういう点をあわせてもう一度さっきの点——むろんこれは財政資金を豊かにすることに越したことはないわけであります。それもやらなければいかぬわけでありますが、そういう点を考えつつ、なおかつこの国家全体の生産性、年産規模というようなことを考えると、実は大阪あたりの公聴会では、五千万円ではとても少ない、一億にせよというような意見が圧倒的でございました。先生は学究でいらっしゃいますが、大阪あたりの実際に即した意見はむしろそういうことでございましたのですが、その点について、もう一度私の質問をお考えの上で、どういうふうにお考えになるか、お答えをいただきたいと思います。
  13. 伊東岱吉

    伊東参考人 先ほど私は、何でもかんでも定義を引き上げることはいけないのだということを申したのではございません。たとえば金融であるとかあるいは中小企業対策費というようなものの原資を考えて、そこでその配分をどうするか、こういうことを考えなければならぬということを言ったので、何でもかんでも定義を広げてはいけないと言ったのではありません。ですから、先ほども下請なんかの例でも言いましたが、つまり政策目的にそれぞれ沿って、あるときにはもっと広げる必要があるし、あるときには資金がもうすでにこれだけしかないなら、そこで重点的にどっちへやるか、あるいはそれを分ける場合どういうふうにするか、こういう問題だということを申し上げたのです。ですから、できればこの基本法が通れば、十分な調査をして、それぞれの、中小企業といっても中と小、あるいはさらに零細がありますが、こういうもののあるいは大との関係での国民経済的な寄与率を考え、同時にまたそれのそれぞれ必要とする必要度というようなものを考えながらこの配分をする。ですから配分も、民社党案には零細企業に特別考えることが出ております。こういうふうに階層的にやはり考えなければいけないのではないか。そうしておかないと、行政の実際を見ておると、実際には零細企業のためにやると言っていながら、私なんかよく調べてみると、零細企業とはいわれないような業界の強いところにいってしまったり何かしている場合が非常に多いのです。もちろんこの中小企業政府関係の三公庫は、それはそれぞれ分業でやっております。これはけっこうなことです。ただその間にどういうふうに資金を分けるかも、先ほどのような全体の国民経済の中におけるそれぞれの地位、役割り、必要度を考えながら見なければならない。ただ一方の民間銀行に至ると、これはまさに非常に大企業集中をしてしまうということはご承知のとおりだと思いますし、それから私は、財政投融資全体のワクですね。この中で中小企業へくるものがあまりにも——最近ふえております。ふえているけれども、全体から見たらば、やはりその必要と二重構造をだんだんなくしていこうとするものがあまりにも少ないのではないか、  こういうふうに考えるわけです。
  14. 正示啓次郎

    ○正示委員 最後にもう一点。社会党民社党の案も非常によく御研究になっておられるわけでありまして、われわれ敬意を表するのですが、先生がおっしゃったように、やや行き過ぎますと、現状を固定化するというふうな傾向が見られるのではないかということ、それからおことばの中になかったのですが、社会政策経済立法を一緒にしようというような傾向もやや感じられるというような点であろうと思うのであります。  さて、われわれ政府案を支持する者といたしましては、基本法というものは相当弾力的に幅の広いものにいたしておきまして、たとえばいま具体的にお話しになった官公需の確保の問題とか、あるいはその他のたとえば専業分野でございますか、これは法律ではっきり規定することはなかなかむずかしいと思うのでございますが、そういうふうな具体的な問題は関連法規あるいは年々の予算ということで考えていくことが実際に即しておる、われわれはどうしてもそう思うのであります。これを憲法とも言うべき基本法で大きく規定することは非常にむずかしい。結局現状固定ということになってしまいはしないか、大きく流動しておる現実に沿わないのではないかという点を、われわれは非常に心配をいたすのです。そういう意味から、基本法のキャラクターからいって、やはり政府案のような幅の広いものにせざるを得ないのではないかと思うのですが、その点について最後に御所見を伺いたいと思います。
  15. 伊東岱吉

    伊東参考人 もちろん実際の問題としては御趣旨のようなことが必要だと思うのです。ただ、政府案ではあまりにそれがばく然とし過ぎているのではないか。ことに中小企業の取引の不利のところで、ただ中小企業以外のものと、こうやっておるのです。そうすると、私どもから見て、大企業中小企業、このしわ寄せなり、その競争なり、これからくる問題と、農民の農業協同組合からくる問題、あるいは生活協同組合あるいは購買会、購買会には大会社のもありますけれども、そういう勤労者なり農民なりとの問題、これとは非常に質の違う問題だということです。その扱い方も考えなければならぬ。こういう問題がすべてごっちゃになって同一平面で論ぜられてしまうと、どうも私は読んでいて、何か大企業ということをあまり言いたくないので、ぼやかしているのではないかという気が卒直に言ってしてしまったわけです。ですから、これは相当基本法でも明確にしなければいけないことだと思うのです。そういうことでございます。
  16. 逢澤寛

  17. 久保田豊

    久保田(豊)委員 伊東先生に二点だけお伺いをいたしたいと思うのです。  伊東先生は、いまのお話の中で、結論は基本法としては政府案を基礎にして、そして政府案に抜けておるところを野党案でひとつ補完をして、法案としてははっきりしよう、そしてさらにそれの関連法規というものをもう少し具体的に明確にしろ、そうすれば使いものになるだろう、しかし、それだけではだめだ、それを裏づける政府の予算上の措置なり財政投融資ワクなり、さらに金融上のワクをもっと大幅にしないと、結論としては結局絵にかいたもちになり、特に恩恵を受ける者はだれかということになれば、国の立場から見て必要なもの、つまりそれをもっとはっきり言えば、大企業の利益に奉仕する者にある程度の国が援助をするだけにとどまるだろう、その点が一番心配だ、こういうふうに大局からお伺いしたわけであります。そこで、私が基本的にお伺いいたしたいのは、私ども同じように、法案としては、先生のお考えになっておるように、まだ具体的な問題はいろいろあると思いますが、法案としてそういうものがはたして完全なものができるかどうか、さらにこれを裏づける予算なりあるいは政府財政投融資なり、特にいわゆる金融面でいま中小企業の二更構造を解消するなり、あるいは何なりという、中小企業者の望んでおるような、また国の経済が均衡がとれるような大きなワクなり、それの民主的な運用ということが——現在のようにつまり政府というものか、大企業のと言っちゃおこられるかもしれませんが、大企業代弁者によって握られており、財界の実力あるいわゆる独占資本によって握られておる中で、そういう条件の中でそういうことかできるかどうかという点であります。私はやはり少なくともある程度政権の性格を変えなければ、先生のおっしゃるようなことはなかなかできないのじゃないか、その点を抜きにして抽象的ないろいろの法律をつくってみても、あるいはむずかしいのじゃないかという点がありますので、この点について先生の基本的な御見解をひとつお伺いしたいのと、もう一つは、貿易自由化がいよいよ完成の段階になるわけであります。したがって、外国からの資本の流入や、あるいは商品あるいは工場企業等の進出で非常にたくさん入ってくる。しかもそれは、多くの場合におきましては、国際条約によって一定の規制を受けておるという際に、いろいろの形はあるにいたしましても、中小企業保護、育成というふうな立場から、これら外国の資本なり、商品なり、企業に対して、日本として現制をすることが、はたして今日の状況のもとにおいてできるかどうか、こういう二点について先生の御意見をお伺いしたい、こう思うのです。
  18. 伊東岱吉

    伊東参考人 たいへん根本的なむずかしい問題であります。ただ私はこういうこと、たけ申し上げたいと思います。中小企業基本法は、これは政府案の欠点といいますか、政府案では先ほど言ったように三章以下が非常に弱い。そこを補い、つまり野党側にある根本的な点を入れながら、やはりどうしてもつくることが必要なんじゃないか。政権がいろいろあろうとも、この基本法案というものがあって、それがよりどころとなって、中小企業者はまだ非常に弱いですけれども、これがいろいろ要求したときにまただんだんと実現していける、こういうものがやはり必要なんじゃないか、こういう意味で何とか皆さんが折り合ってつくっていただきたい、こう思っておる次第です。  第二のほうの問題は、いささか専門外でありまして、またいま外国資本等の問題が非常にむずかしい問題になっておりますか、これができるかどうかというようなことについては、私はまだここで責任あることを十分申し上げるまでになっておりません。
  19. 久保田豊

    久保田(豊)委員 もう一点だけお伺いしますが、先生もお触れになりましたが、政府の態度は、一方におきまして、中小企業基本法によって、ざっくばらんに言えば、中小企業に対して従来よりは体系的な保護というか、育成策をとっていこう、経済的な地位なり利益を守っていこう、こういうのであります。それと同時に、並行いたしまして、御承知のとおり、特定産業の振興臨時措置法というふうなことで、大資本の国際競争力を強めるという形におきまして、独禁法に穴をあける。現在もうすでに独禁法のある中でも、大企業独占資本の支配力というものがあらゆる面で非常に強くなっています。この二本をやっているわけです。先生のおっしゃったように、独禁法の、いわゆる大企業独占力の強化ということに対して、よほどのしっかりした規制をしなければ、中小企業基本法をつくっても背抜きになるぞ、こういう御趣旨と承ったわけであります。この点についての連関なり、その規制なるものは、いまの中小企業本本法にあらわれた方向と、特定産業振興臨時措置法にあらわれた方向とは、まさに全く逆であります。しかもどちらが経済情勢上力を持つかといえば、特定産業の法律が通る通らないにかかわらず、私は独占資本の政治、経済上の支配力というものが強くなるのは今日の必然の勢いであって、これに対してどういう規制を加えたら、しかもそれは中小企業基本法と連関をして加え得る法律上の規制はどういう点があるかという点をあわせて、先生のお考えをお聞かせいただきたい、こう思うのです。
  20. 伊東岱吉

    伊東参考人 御説のとおりに考えておりますが、その具体的な規制をどう加えるかということについては、まだそうこまかく考えておりませんが、特定産業振興法というようなものは独禁法を非常にゆがめていく、そしてそれの運用のいかんによっては、先ほど実は申したのですが、現実の大企業合理化という名前と——常に経済は両方を持っていきますから、国際的な目的という面からそうなっていながら、国内では非常に中小企業に対して、あるいは消費者に対して独占的な圧力になる、こういう傾向があることは確かなんです。日本中小企業は国際的な中小企業だ、大企業は国際的には中小企業だというふうに言われますけれども、国際的にはこれは強めなければいかぬ。しかし、国内において、実はそれが国際的な中小企業と思われるようなものが、国内ではなかなか強い独占力を持つ。これは相対的な関係ですから、これはそういう意味で国内においての独禁法をゆるめるのには反対なんでございます。どうもあまり複雑な国際関係の問題になりますと、私もまだ具体的にどうなっていくのだろうかということについて十分な責任ある見通しを持っておりませんので、これ以上は申し上げられません。     —————————————
  21. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、東京商工会議所中小企業対策委員長石田謙一郎君から御意見をお聞きすることにいたします。
  22. 石田謙一郎

    ○石田参考人 最初に私、実はこの参考人で出るときにお願いしておったのでありますが、きょうは最低賃金の経営者側の全国大会がありまして、私もその幹事の一人でございます。そこで午前中はお許しを得てこちらへ参りましたが、午後からは向こうへ出なければなりませんので、私は午前中だけで退席をさせていただきたい。この点を委員長にまずお願いを申し上げておきます。  それから、私どもは商工会議所の中小企業対策を、私自体中小企業者でございますので、そういう見地からやっておるものでございますが、実はここしばらく、十年以上私は委員長をつとめておるのでありますが、国が中小企業、特に小規模企業を含めて、こういうふうな基本的な法律をつくるというふうに動いていただいたことについては感謝をしておるわけであります。  いただきました資料で、社会党なり民社党の案もいろいろ拝見したのでありますか、私はむしろこういう法律のいろいろな、政府案社会党案民社党案というもののいろいろなことについては、先ほどの伊東先生のような御適任な力がございますので、むしろ私どもが中小企業基本法という法律にどんなものを期待するかということを、これからいただきました十五分間で申し上げてみたいと思うのであります。そしてその基本に、商工会議所で考えており、またいままでいろいろ陳情その他でお願いしました基本は、とかく今日まで中小企業対策が、経済政策社会政策が混淆されているのじゃないか、やはりこれは分けていただくほうがいいのじゃないかということを、かねてお願いをしてまいったわけでございます。なぜそういうことを申すかと申しますと、やはり中小企業といえども、先ほど伊東先生の中に、日本の大企業中小企業だというおことばがありましたが、まさにそうであろうと思いますが、それにしても、いままでのような鎖国経済でありますと、戦後しばらくの鎖国的な姿をとっておりますと、世界の国々から見て、その経済的な生産性というものに差がありましても、何とか生きていけたわけでありますが、今日のように貿易自由化というものがどんどん進行されまして、もうすでに八九%だということになりますと、やはり日本の大企業中小企業、あるいは小規模企業、ひっくるめて世界の経済市場にほうり出された形に相なります。そこでやはり何といっても何とか立っていかれる企業をつくることが一番必要じゃないか。これが産業構造の中で、大企業は大企業らしく、中小企業中小企業らしく生きていかれる道、またあるいは小企業と申しますか、あるいは社会党さん言のわれるように勤労企業者と申しますか、あるいはわれわれが常に申します生業と申しますか、こういう形のいろいろな階層が、それぞれおのおのの適当な立場でいきたい、そしてそういうふうにいけるためには、どうしても基本法という法律をつくっていただくほうがいいんじゃないか、私どもはこのように考えておったのでもります。そしてその基本といたしましては、すでに欧米諸国のように中小企業が整理されてしまいまして、国の産業構造の中において占める中小企業の比重が二、三割しかない国と、日本のように五、六割が中小企業者によって何とか産業構造の中でいろいろなものを受け持っておる国との差があるのではないか。そこで、二重構造であるか三重構造であるか、私どもにはそういうふうな学問的なことはわからないのでありますが、とにかく生業に類する小規模企業、これらの生産性が非常に低い。大企業から比べて二六・七%、四分の一しかないという事実、そしてこれに伴う勤労者が、最近初任給引き上げで幾らか上がりましたが、やはりまだ五〇%、大企業から比べれば半分しか給与がもらえない。いわゆる中小企業でありますが、二、三百人のクラスの方方でも生産性が七〇%くらい、賃金はようよう七五・六%。生産性と賃金とのアンバランスをとっている現状から見ますと、どうしても何とかこれらを直していただかなければならぬ。これが実はいろいろな意味から御指摘になったところの格差是正ということになるのではないか。簡単に申せば、世界の市場で何とか生きていくために生産性の格差是正すること、そしてその是正と同時に、働く人の賃金の格差をできるだけ欧米各国並みに、そう差のないようにする。アメリカのように、大企業を一〇〇としますと、格差がありましても次の低いほうで七五%、二五%しか賃金に差がないようであります。生産性では、アメリカでは、御承知のように大企業といわず、高いものから低いものを比べますと八九%、一割の生産性の差と、賃金の格差が二割五、六分あるというふうな、少なくともこのくらいまではぜひ何とかいきたい。いくためにはやはり、われわれに対していたずらな保護を私どもはお願いするのではありませんが、何とか育成すること、指導すすること、助成すること、これをぜひやっていただきたい。これらがこの基本法の中に盛り込まれてあるように私どもには見受けられるわけでございます。そこで、基本法の全体の考え方については私どもはそのように考えておるのだということを申し上げるとともに、格差の問題もそのように素朴に考えて、何とか中小企業の経営者、三百三十万と称せられるこの経営者も生き、同時にこの企業の中に働いておられる千五、六百万といわれる方々、いわゆる勤労者の方々も、ともに何とかいまのような極端な格差のないようになりたい。そうかと申して、この自由経済の時代に、生産性を無視してそれが達成できるとは思いませんので、何とかそういう意味から中小企業者の自力と同時に、適当な育成、指導、助成をしていただいて、大企業に近い生産性に近づき、同時に働く人々にも何とかできるだけ高い給与を差し上げたい、こんなように考えて、それで基本法の成立を特に切望いたしておるものでございます。  こんな点から、私は、特にこの基本法の全体の中でちょっと薄いのではないかと思われる点を一、二申し上げてみたいと思うのであります。と申しますのは、最近盛んに流通革命ということばが出まして、東大の助教授のお話でありますと、今後日本の百三十万と称せられる小売商は、その大部分がいろいろな意味で極端に斜陽化するであろうというお説がありまして、いま盛んにもめておるのでありますが、この商業対策と申しますか、流通に対する対策という問題がちょっと薄いのではなかろうか。もちろん載っておりますが、少し薄いというような感じかいたします。もちろん商店街に対する法律はできましたが、それに対してこういう点でもう少し考える余地があるのではなかろうかという点が、私どもは、この基本法全体を拝見して考えておるわけであります。  それからもう一つは、中小企業者に対して組織をさせるということは、もちろん必要だと思うのであります。こんな点から、団地か何かは適切な方法だろうと思うのでありますが、これらも実は中小企業実態の調査というものがやはり基本法になるのではないかというふうに考えますので、現に毎年最近は、やっておられまするが、この実態調査中小企業実態がどうであるか、それからこれが毎年どう動いていくかという動態調査、この二つかやはりほんとうは基本の中に織り込んでいただくことが必要ではなかろうかという点が考えられるのであります。  もう一つは、中小企業者の一番弱いのは、つくることよりは、市場に対する予測あるいは将来に対する需要の予測、こういう問題が実は中小企業ではなかなかできませんでございます。御承知のように、アメリカあたりでは、こういう問題については、非常なたくさんの研究所なりあるいはそういうふうなものをやりまするものがございます。ニイルセンでやっているようなことがありまするが、とてもいまの見本の中小企業ではこれらはできない。ましてや国のこれからのあり方がどう変わっていくか、その結果として中小企業の商工両業者がどうあらねばならないかというような問題については、なかなか中小企業の個々の業者もあるいは団体もとうてい力が及ぶものではございません。これらの点から、よく申しまする市場調査と申しまするか、マーケッティング・リサーチというような問題、こういうふうな問題なりあるいは将来の需要予測、これらに対してもっと力を入れていただくくふうができないものだろうか。なかなかこれはむずかしい問題ではありまするが、こういうふうなものが中小企業実態の調査と、それが動いていく姿と、それから今後国がいろいろ需要供給、流通の部面でどうなるだろうかという予測、同時に、日本の中と日本の外と両者の市場調査、こういう点については、こういうふうなものが、相当力を入れていただきますると、かなり伸びるのではなかろうか、中小企業がこのようなことによって体質の改善がかなりできるのじゃないかというふうに私は見受けられますので、この点がどうも少し軽く見られているのではなかろうかというふうに考えておるわけであります。  そこで、こういう点から、具体的な、特に中小企業の範囲の問題にちょっと触れてみたいと思うのであります。実は、商工会議所は、かねてから中小企業資本金の範囲を一億円にというお願いをしておったのでありまするが、いろいろな事情からむずかしいというので、五千万までは中小企業の範囲たというふうにお願いをしてきました。理由としては、先ほど伊東先生も触れられましたように、われわれが調べますると、三百人前後の製造業では、償却資産が平均いたしますると四千七、八百万、五千万近い姿を示しておるそうでございます。こんな点から、ぜひ五千万の資本にしていただかないと無理じゃなかろうか。それから、御承知のように、戦前の株式会社の制限が二十万円というのがございましたが、これから見ましても、どうも三百倍と見ましても六千万、あるいは五百倍と見れば一億という姿も出てまいります。それから最近ちょっと問題になっております香港フラワーの問題、これは非常に零細企業だと思うのですが、これらも実はなぜ日本の造花というものが完全に香港に圧倒されて、輸出を全部向こうに持っていかれ、日本の中でも国内需要さえも五、六千万最近輸入されておるのでありますが、した理由は、この香港フラワーのプラスチックのあの花型が二十万円一型かかる。これをたくさん持たなければならぬ。そうかといって、これは競争のものでありますから、これは組合がこの型を持つというわけにはまいりません。このようなことで、どうも金というものの姿がだいぶ違ってきているのではないか。五千万というものはたいへん多額のようでありまするが、しかし、どうもいまの日本実態から申すと、ちょっと考えさせられる額ではないか。私どもは機械工業でありますからなんでありますが、機械工業の中のちょっと専門機械を買いたいと思いますと、ワンセット三千万くらいでございます。一台で千万くらいの機械はざらにございます。こんなふうに考えますと、どうもちょっとこの問題には問題があるのじゃないか。  それからもう一つアメリカのSBAでございます。中小企業庁でございますか、これらの資金も目下SBAローンではたしか二十五万ドル貸していただけると思うのでありますが、これらも九千万円を貸していただけます。もちろんアメリカ中小企業日本中小企業は力も能力も違いますか、それにしても、あちらも人数の上では二百五十人ぐらいというのが中小企業の一応の範囲になっておるようでありますが、こんな点からも、まあまあ現状では伊東先生の御指摘のとおり、あまり一ぺんに飛び上がることもどうかと思いますので、なんでありますが、少なくとも五千万にはしていただかないと困るのだというふうに私どもは考えております。ただし、そのために、いわゆる財政投融資資金が、いろいろな形で流れるときに、中小企業の上限にだけ流れるという心配は、実は私どもないんじゃないか。しかし、少なくともそのくらいまで中小企業の条件を上げていただくことが、目下のところ必要じゃないかというふうに考えておるものであります。  それから、私どもがかねて考えておりますことは、いろいろこの中にも盛られておりますところの生産の分野、あるいは流通の問題にもからんでまいりますが、分野の問題でございます。これらもやはり一応考えなければなりませんか、ただ問題は、あくまでも非常にむずかしい問題をはらんでいるんだ。下請代金遅延防止法という法律も出ておりますか、実際はあれを適用された例がほとんどございません。新聞広告も出せるようになっておるのがないというのは、結局どうもあれを適用していただきますと、その筋を通す意味ではたいへんありがたいのでありますが、実際は仕事をいただけない、下請系列からはずされるということになりますので、ちょっと無理な点がある。簡単にいえば、あれは一種の道義立法で、大企業に対して道義的に反省していただくための法律であり、それはそれなりに効果があると思うのであります。なかなかいろいろな形で、中小企業と大企業というふうな形での分野の調整あるいは代金遅延の問題、その他はたいへんむずかしいのじゃないか。これがそうでないほかの問題でありますと、地方労働委員会あるいは中央労働委員会というような形であっせん調停ができるだろうと思うのでありますが、たいへんむずかしい問題がひそんでいる。ただし、だからほうり出しているとは思わないので、何らかの形で、これらの点は大企業に対して反省と申しますか、求めていただく必要があるんじゃないか。どんな仕事でも、その需要がふえてくれば、大企業は取り込むというこの姿は、やはり是正を必要とする。このように考えておりますが、ただ具体的にしからばどうするかというと、ネコに鈴をつけに行くのはたいへんむずかしいので、だれが鈴をつけるか、どういう形でつけるか、たいへんむずかしいというふうに申し上げるより道がない。そして、こんな点から、私どもは、いままでの日本中小企業の対策が、確かに政策的にもその内容的にもおくれていることを事実として認めなければなりません。先ほどいろいろお話もございましたように、本年度中小企業の予算も百億をわずかこえたぐらいで、まあまあ、どう見ましても十分しているとは思わないのでありますが、だからしかし法律が要らないというよりは、やはり法律は法律として、われわれ中小企業者を指導、育成、助成していただく法律をつくっていただき、この法律の精神に従って内容をできるだけ早く充実していただく、このようにお願いを私どもはいたしたい、かように考えておるのであります。  なお、投資会社その他は通りましたが、まだ中小企業指導法案その他が残っておりますようでございます。信用保法案あるいは協同組合法等たくさん残っておりますが、やはり私は、これらも、この中小企業基本法と、これらをめぐる法律でございますので、何とかできるだけ御努力いただいて、法律を至急御制定いただくようなほうに持っていっていただきたい。この点を特にお願いをするものでございます。ありがとうございました。
  23. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、全国中小企業団体中央会専務理事稲川宮雄君から御意見をお聞きすることにいたします。
  24. 稲川宮雄

    稲川参考人 全国中小企業団体中央会の専務理事稲川でございます。  中小企業基本法につきまして意見を申し上げたいと存じます。  まず第一に申し上げたいと存じますことは、この中小企業基本法は、ぜひとも今国会において成立をさせていただきますようにお願いを申し上げたいということでございます。私ども中小企業基本法をつくる必要があるということを決定いたしましたのは、昭和三十五年の広島における全国大会の際でございまして、今日からすでに三年前からこれをお願いしておるわけでございます。その後私どもの団体におきましては、基本法の構想に関しまして特別の委員会を設置いたしまして、いろいろ案の内容を検討いたしまして、昭和三十六年八月にこれを発表してきたのでございますが、なぜ基本法がぜひとも必要であるか、なせ早くこの国会において成立をお願いしたいかということは、私から申し上げるまでもないと存じますが、まず第一には、大企業中小企業との間に非常に大きな格差存在しておる。これは、日本国民経済の発展の上におきましても、いわゆる均衡的な発展の上において非常な支障を生ずる。どうしてもこれを縮小しあるいは解消していかなければならないということでございます。大企業中小企業との間におきましては、格差であるのか二面構造であるのかという問題もございますけれども、私は、単なる格差ではなくして、これは二重構造であるというふうに考えておるのでございます。格差というものが、一時的な過渡的な現象であれば、それは格差でございますけれども、それは構造的な内容によって出てきたものでございますから、これは二軍構造といわなければなりませんし、この二軍構造ということばは、企画庁から発表されましたところの経済白書に明確に出ておることばでございますから、私は、二壁構造によって格差が生じておる、それをどうしても解消していかなければならないという必要があると存ずるのでございます。ただこの格差の解消ということは、大企業を押えつけることによって格差を解消するというのではなくて、やはり中小企業のレベルを引き上げることによって解消すべきものであるというふうに考えるわけでございます。第二の理由は、経済が非常に変動してまいります。その変動は、単に量的な変動ではなくて、質的な変動、言うならばそれは構造的な変動が起こっておりますので、この変動に合わせまして中小企業が発展していきますためには、どうしてもこの際中小企業のいくべき道を明らかにし、中小企業対策の基本であるべきところの法律が必要である、こういう観点でありまして、それは私から申し上げるまでもないことだと存ずるわけでございます。こういう意味におきまして、今国会での成立をわれわれは熱望しておるのでございます。  第二点に申し上げたいと存じますことは、この基本法がどういう形において成立するかということでございますが、私どもは、政府案中心にして成立を見たいということを希望しておるのでございます。政府案中心としてということは、政府案というものが非常に完備したものである、申し分のないものであるという意味において申し上げておるのではないのでございます。特別委員会におきましてこういう問題をいろいろ検討したのでございますが、その際に問題になりましたことは、基本法は画期的なものであり、よほど内容に思い切ったものを盛らなければなりませんので、そういう意味においては、むしろ議員提出のほうが適当であるという意見も相当に強かったのでございます。しかしながら、いろいろ審議いたしました結果、こういう基本法というものは中小企業の憲法とも称すべきものでありますし、またアメリカなどと違いまして、臨時措置法とかそういうものは別といたしまして、やはり慣例としてこういう性格のものは政府案提出されるということに従来なっておるというような点、さらにまた、従来議員提出でありますと、施行の責任を持っておりますところの政府がどうも熱意が入らないということを言った人があるのでありますが、私どもはそういうことはないと思いますし、そういうことがあってはならないと思います。法律でありまする以上は、議員提出であろうと政府提案であろうと、それは同じものでありますから、そういうことはもちろんあり得ないと思うのでありまするが、ただこういう法律を実際施行していきますのは政府でございますから、施行の責任を持っておりますところの政府で御提出になるということが、やはり案を成立させる上におきましても、今後施行の上におきましても適切ではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。  第三に申し上げたいことは、それでは政府案の内容についてはどうかということでございます。先ほども申し上げましたように、私どもは政府案が申し分のない完ぺきのものであるとは考えておりません。むしろ、前の国会に提出されておりました自民党の案を含めまして、議員提出の案のほうが中小企業者の気持ちにマッチする点が多いというように考えるのでありますが、先ほど申し上げましたように、やはり政府案というものを中心にして成立をはかっていただきたいという結論になっておるわけであります。どういう点で政府案について意見があるかと申しますると、内容がきわめて抽象的である、具体性に欠けておる、こういうことでございます。しかしながら、一面から考えますると、これは基本法というものの性格から申しまして、ある程度抽象的になることはやむを得ない。私どももいろいろ案を考えたのでございますが、やはり抽象的にならざるを得ない点があるのでございまして、こういうような点につきましては、今後関連法規を十分に整備していただきますとともに、また行政の実施面において十分に勘案をしていただくということでいけるのではないかというふうに考えるのでございまして、この点をこういうふうに直さなければ、基本法として成立の価値がないというふうには考えていないのでございます。よりよく改正していただくということについては異存はないのでございますけれども、どうしてもこの点はこういうふうにしなければ、現在の政府案では成立の意味がないというようには考えていないのでございまして、問題は、むしろ今後の関連法と行政の方針にあるというように考えておるわけでございます。  第四点として申し上げたいと思いますことは、これはやはり今後の希望でございまするけれども、政府案は、全体を通じまして、経済の合理主義の上に立っておる感じが強いのでございます。経済の合理主義というものは、現在の経済組織のもとにおきましては当然でございまして、私どもが案を考えました際にも、この点を最初に取り上げたのでございます。しかしながら、経済合理主義だけで中小企業問題を解決することはできないというのが、私どもの結論でございます。したがいまして、政府案におきましても、社会的、経済的不利の補正ということがございまして、単に経済合理主義だけではないということも書いてございまするので、法文としてはそれでよろしいかと思うのでありまするけれども、実際問題といたしまして、どうも経済合理主義が強過ぎるのではないか。むしろ中小企業の中で圧倒的多数を占めておりますのは、小規模零細事業でございますから、そういう小規模零細事業に対しましては、単なる経済合理主義だけではなくして、もう少し社会政策的な点も加味していただく。これは法律ではありませんか、今後の実施面において、あるいは関連法において、十分お考えをいただきたいということを考えるわけでございます。なぜかと申しますと、小規模零細事業は、社会的にも中堅階級でございまするし、また健全なる階層でございまして、単に経済的な合理主義だけでこれを割り切っていくことのできない大きな存在である、というふうに考えるからでございます。  最後に、再び今国会においてこの基本法がぜひとも成立することをお願い申し上げたい。それは中小企業の発展のためだけではなくして、日本国民経済の発展の上におきましても、この際基本法が成立しないということは非常なるマイナスであり、単に中小企業者の失望にとどまらないからであります。  たいへん簡単でございますけれども、以上意見を申し上げた次第でございます。
  25. 逢澤寛

    逢澤委員長 ありがとうございまし  次に、大森工場協会相談役川端文夫君から御意見を聴取することにいたします。
  26. 川端文夫

    川端参考人 ただいま紹介をいただきました川端文夫であります。私は民社党の立場からいろいろ検討いたしておるものでありますが、前提に申し上げたいことは、基本法を今国会において修正の上成立せしめていただきたいということを、まずもってお願いするものであります。そこで、当面、国会運営のことをも考慮いたしまして、政府案を善意に見ながら、私の意見を申し述べてみたいと考えるのであります。  今日の近代国家といたしましては、民主的に考える場合においては、どうしても国民全体の均衡のとれた発展と、安定というものか前提になければならぬと考えておるものであります。ところが、わが国の最近の経済の動向を見ますと、経済発展の過程においては、常に中小企業が発展の犠牲としわ寄せをしょわされて今日までまいっております。しかしながら、この基本法の提案に対して、政府は前文においてこの事実を明らかに認められておられることは、一応私は敬意を表さなければならぬ問題だろうと思います。また同時に、経済の二重構造に対しての是正なくしてはという、この日本経済の発展に対しても、政府はこの事実を認めておるということを、私どもは前提に考えたいのでございます。しかしながら、今日日本中小企業が置かれておる経済社会上の地位におきましては、過当競争であり、大企業の圧迫であり、並びに常に経済政策の上においては国家の施策の上に二義的に扱われてまいった、非常な不利の立場におったことを認めていただきたいと思うのであります。いままでのように中小企業政策が、税制の上においても、金融の上においても、あるいは近代化の問題に対しても、ばらばらの施策であってはならない。ばらばらの施策でありまするために、一方に行なわれておりまする、先ほどから言われておったような大企業に対する優遇処置のこの比較の上においては、実質的には中小企業政策とうたいながら、常にさいの川原の積み重ねを繰り返している。経済効果といわゆる政策効果が非常に薄いものになってまいっておったことをも認めていただきたいと思うのであります。今回政府及び民社社会の三党案が、これらの現実的な事実を十分差目されて、これらの基本のいろいろの問題を総合した意味においての基本法を成立さすという考え方を持たれたことに、まずもって敬意を表しておきたいと思います。  時間の関係もあるようでありますから、以下私は五点ばかりの問題に関して意見を申し述べて見たいと思うのであります。  第一点は、先ほどからもいろいろな参考意見が出されておりましたように、小規模企業あるいは零細企業の問題でありましょう。日本中小企業の大半は、私が言うまでもなく小規模企業者でありましょう。また中小企業従業員の数からいきましても、大半は小規模企業で働いておるのであります。したがって、基本法には、必然に主たる対象を小規模企業に置くということを、明確にされなければならぬと思います。ところが、政府の案を見ますると、第二条の中の中小企業の施囲、いわゆる定義では、中小企業者はいわゆる資本金五千万円という最大限を規定されているだけであって、小規模企業者の問題に対しては非常に軽く扱われている点、これらの問題を考えますと、先ほどからの参考意見でお聞きになりましたように、現在政府の出されている基本法だけで見ますると、どうしても小規模企業者は常にあと回しにされる危険を感ずるものであります。すでに法人格を持っておる大企業に近い企業が、おもに政策の恩恵を受けるに至るであろうことは、火を見るより明らかであろうと信じます。したがって、基本法では、小規模企業を主たる対象として、近代化も立ちおくれておる、資本蓄積も務働条件もおくれておるのであるから、まずもって小規模企業に対する政策基本法中心に考えるという考え方を特っていただきたいことをお願いしておきたいと思います。  なるほど政府案は、第四章第二十三条の一条だけに小規模企業の条項がありますが、全体のごく一部にしか取り扱われておりません。私たちはこの点大きな不満があることを申し上げておきたいと存じます。したがっていまの範囲の中に小規模企業に対する重要なテーマを明らかにして列記しておいていただきたい。このことが、せっかく生き抜こうとしておる日本中小企業、特に小規模企業者に対する将来生きるための軌道を敷いていただく画期的な法案になるであろうことを、私たちは考えたいのであります。このことば、小規模企業当並びに単に企業者のみでなく、家族及び従業員全体の強い熱望であることをも考えておいていただきたいと存じます。  第二点は金融の問題であります。これも多く言われておりますから、私は重復する点を省きますが、政府案は、第五章で金融の適正円滑化と企業資本の充実ということばをあげておられますが、今日やはり中小企業者金融上において最も苦しんでおるものは何かといえば、一つは歩積み両建ての問題であろうと思います。先ほどからお話がありましたように、下請関係において今日六カ月という手形が横行いたしておりますように、契約の道義が全く地に落ちてまいっております。この点については、金融政策全体の問題として当然措置されるべき問題でありましょうから、この基本法という名前だけでなく、これらの具体策に対し、打開策に対して、急いでこれを解決してもらいたいことを指摘するのみにとめておきたいが、政府案は、何ゆえに中小企業金融資金の確保という問題を避けられるのか、これらの問題をどうして明記しないのかという疑点を明らかにしてもらいたいと存じます。今日、市中金融財政投融資を合計しての貸し出し額は、大企業六〇に対して中小企業四〇であるということは、皆さん御存じのとおりでありますが、特に近代化に対する長期的設備金融面だけを取り上げてみますと、七対三を割って、今日八対二に近くなっております。したがって、中小企業金融に、特に基本法の中に、小規模企業金融は何より資金の絶対額をふやす考え方を生かしながら確保するということを、明らかに入れていただきたいと思います。特に当面の問題といたしましては、政策金融を担当しておる国民金融公庫、中小企業金融公庫や商工中金の賞金源を、少なくと本現在より倍増していただきたいことをお願いしておきたいと存じます。これは将来やるということでなく、ことしからやっていただかなければ、基本法というものに対してのありがたみが薄くなるということをもつけ加えておきます。この点は百のお説教よりも実行を特に強調して、おきたいと思います。  第三点は、産業分野の確保に対していろいろの御議論のあるところでありますが、これを明確にしておいてもらいたいということであります。中小企業基本法を貫く精神がやはり明らかにならなければ、本物にならないと思います。大企業の圧迫を排除するための基本法をつくるのだという考え方を、精神の根本にしていただきたいと思います。政府案の第三章、事業活動の不利補正という規定のみで、大企業にいろいろ行なっておられる政府の助成策と比較した場合に、全くから念仏に終わってしまうおそれがあります。基本法に独立条項を明らかにして設けていただいて、国家の義務で中小企業と大企業との事業調整を行ない、大企業よりの圧迫を排除するという点を明確につけ加えていただきたいと思います。私は一つの例として申し上げたいのは、最近販売機構のいろいろな問題の中に、代理店制度の発達が、販売機構の独占化という問題が、非常に著しい横暴をきわめつつある実例を申し上げたいと思います。たとえば電機製品メーカーをやっている会社、東芝とかナショナル、これらの会社が最近石油ストーブあるいは石油熱器まで売り出しております。しかし、自分のところでつくっているのではありません。下請につくらしたものに対してネームを張っているだけで、膨大な販売機構を利用いたしまして——ナショナルは全国に二万五千店の代理店を持っておるといっておりますから、一ヵ月に二個ずつ売っても五万個売れるわけでありますから、こういう自分の販売機構を利用いたしまして、せっかく中小企業が開拓した分野を、いろいろこれをとざして独占化していく傾向があります。さらに商業の部面はおいては、これも先ほど言われておりました大資本によるスーパーマーケットヘの進出等を考えた場合に、やはり中小企業の働き場所を明らかにするということを、何としても基本法の精神に入れていただきたいと思います。この点は個々の企業の問題の具体例ではありませんが、経営全体にいかなる産業分野を保障するかの産業構造上の長期展望に立って、その発展と安定のためにきめていただきたいと思います。これすなわち、私は、新しい産業秩序確立の時期として、産業分野確定、確保に特段の配慮を願いたいことを、特にお願いしておきたいと存じます。  第四点は、中小企業組織の問題であります。政府案は第三条で中小企業者の自主的努力を助長するとしておられますが、努力の主体は、自主的努力をするにしても、個々でやっては意味をなさぬのでおりますから、やはり組織でなければなりません。その具体的な組織の問題を明らかにされないと、単に組織化というかけ声だけでは意味がないと思います。その意味において、私は、今日基本組織に協同組合がありますが、基本法の実施にあたっては、組織としては多くの不便が協同組合法の中にあると思います。言うまでもなく協同組合は御存じのとおり同士的な結合体であって、加入脱退自由であります。したがって現在は非常に狭うなってまいります。私は、業種別にあるいは地域別に単一の同業組合組織に切りかえすることが、最もこの基本法を実施する面に効来があがるだろうと信じます。この同業組合を補完する意味において、これを補完する意味においての協同組合や企業組合の強化育成こそ大事であろうと思っております。  第五点には、私は、労務、労働問題について施策を考えていただきたいと言いたいのであります。政府案の第十六条に労働に関する施策という条項がないわけではありませんが、中小企業の労働問題は大企業の労働問題と若干性質が違っております。それには企業内における労使問題——労働者、資本家の問題以前の問題、むしろ企業の経営的、経済的弱さから生ずる悪い労働条件をいかに改善するかということが最も必要であろうと思います。私は、時間がないから一つの例を申し上げて、不公平を指摘しておきたいのであります。皆さんは、温泉地や保養地におかれて、寮と称する安い宿屋の乱立していることを御存じで、ごらんになっていると思います。健康保険組合の問題を一つ考えても、政府管掌健康保険組合と民間の健康保険組合との格差、ここにも、大きなものと小さなものの、恵まれるものと恵まれないものの非常な不利益、不公平がまざまざとあるわけであります。この際、法のもとにおいてはすべてが平等で権利が受けられるという強い決意と、そのあたたかい施策を労働対策に講じていただきたいと思います。私は、その意味において、中小企業者従業員のためにまずもって何をすべきかといえば、やはり福利厚生事業に関する関連法を一日も早く出していただきたい。中小企業は、最近需要供給の関係で、賃金よりは福利施設が非常におくれているのでありまするから、これの立法に対して熱意を示していただきたいと思います。  終わりに私が申し上げたいことは、今国会に政府と二党の案がせっかく提案されておりまするから、できるだけ相手方の長所をさがしながら、小異を捨てて共通点を見出し、何とか中小企業者が喜ぶ、中小企業者のためになる基本法を成立させるという前提をとって、努力していただきたいと思います。御存じのように、貿易の自由化の大勢を前にして、中小企業近代化従業員の生活保障を考えない基本法意味をなさなくなりますから、これは必要であると同時に、時間的に急ぐという問題点であることを申し上げておきたいと思います。私は、政府、自民党が、多くの業界から歓迎されておりまする、今日民社党が出しておる案を十分取り入れられて、修正に応じて基本法の成立に誠意と熱意を示していただきたいことを心から要望申し上げまして、私の陳述を終わりといたします。どうもありがとうございました。
  27. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、商工組合中央金庫理事長北野重雄君から御意見をお聞きすることにいたします。北野君。
  28. 北野重雄

    北野参考人 まず総論的なことを申し上げたいと思います。  日本中小企業国民経済の中で大きな比重と役割りをになっておりますことは、多言を要しない次第でございます。しかしながら、一般的に申しまして、中小企業は大企業に比べて生産性が低く、中小企業に従事する人たちの所得が大企業に従事する人たちに比べましてきわめて不均衡でございまして、いわゆる企業格差是正問題が常に問題にされてきたのであります。ところが、最近になりまして、貿易の自由化あるいは技術革新などの進展によりまして、国民経済の需給構造が大きく変わってきておりますし、さらにまたその上経済の高度成長によりましで、労働事情も著しく窮屈になってきておりますので、従来中小企業をささえてきました基盤に大きな変化が生じてきておるのであります。このようなむずかしい事態に直面しております中小企業の問題を根本的に解決していくためには、どうしても今後の中小企業に対するいろいろな施策の基本的な方向づけをここであらためて打ち出す必要があるのではないかと思うのであります。従来中小企業に対するいろいろな施策は、相当多岐にわたっておりまして、その施策の数なり種類の上では、決して貧弱なものとは思いませんけれども、それらのいろいろな施策の有機的な総合性という面におきましては、やや欠けるうらみがあったのではないかと思うのであります。このような意味で、今回今後における中小企業施策方向づけを行なう基本法が打ち出されましたことは、まことに時宜を得たものと思うのであります。  ところで、政府提出基本法案の基本的な姿勢の問題でございますが、一般的に申しまして、従来の中小企業対策は、経済政策社会政策とのけじめがはっきりしないうらみがあったのであります。その点は、今回提出されました政府法案は、小規模事業に対する社会政策的な配慮を行ないながらも、基本的には中小企業問題を産業構造政策の一環として取り上げておられまして、経済合理性を基盤とした立場で打ち出されていることは妥当であろうと思います。ただ、ここで特に申し上げたいことは、現実には三百五十万といわれる膨大の数の中小企業者存在しておりますだけに、これらの中小企業者のすべてを経済合理性のベースに引き上げていくということは、きわめて困難なことではないかと存じます。したがいまして、今後の具体的な施策を進めていく上で、経済合理性の面があまりに急激に打ち出されますと、その間にいろいろな摩擦あるいは混乱を牛ずるのではないかに存じます。したがいましてこの点につきましての運営上の配慮が特に必要ではないかと思うのであります。  なお、基本法は今後における中小企業施策の基本的な方向づけを行なうものであり、言ってみれば中小企業のための憲法ともいうべきものである点からいたしまして、その内容が抽象的な形をとっていることはやむを得ないと存じます。しかしながら、要はその裏づけが問題になるのでありまして、今後具体的な施薬を提出いたしまする実定法、すなわち関連法につきましては、そのときどきの経済情勢の変化に応じながら、今後逐次強力に、またできるだけすみやかに打ち出していくことが必要であろうと思います。ことに貿易為替の自由化なり金融の正常化など、経済環境の変化が非常なスピードで進んでまいるようでございますから、そういう点からいたしましても、今後制定されるべき関連法なり、特に予算なり財政投融資など、基本法の現実的な具体的な裏づけとなりますいろいろ措置を、できるだけ早く、また強力に実現していただくことを、強く要望いたしたいと存ずるのであります。  以下、政府提案の基本法案の内容につきまして、二、三意見を申し上げたいと存じます。  第一に申し上げたいことは、先ほど石田参考人からも触れられましたが、調査統計の充実についてであります。政府提出基本法案最初に取り上げておりますのは、中小企業構造高度化の問題でございます。これに対する具体的な施策中心となりますのは、近代化促進法であろうと存じます。近代化促進法では、業種別基本計画を土台といたしまして、計画的に中小企業界の高度化をはかっていくという考えでありますが、従来とかく総合的な計画性に欠けるうらみがありました中小企業近代化対世から見まして、このような新しい考えが打ち出されたことは、大きな前進と言うことかできようと思います。ただ業種別基本計画国民経済の中で有機的な総合性を持つことが大切であると思うのでありますが、そうした計画を立てますためには、中小企業分野における名和の調査統計が十分に整備される必要があると思うのでありまして、この点に特に御配慮を願いたいと存じます。  第二に申し上げたいのは、事業の転換対策についてでございます。今後の経済情勢の変化に伴ないまして、業界の一部には事業の転換を余儀なくされるものがかなり出てくる心配が濃厚なのであります。かような摩擦あるいは混乱をできるだけ避けますために、近代化促進法でも、あるいは金融のあっせんとか、あるいは雇用の対策とか、いろいろな専業転換対策が用意されておるわけでありますけれども、貿易自由化の急速な進展を目の前に控えておりますたけに、専業転換対策は焦眉の急と考えるのでありまして、それに対する資金の手当てあるいはその他のいろいろな転換のための制度の設定等は、できるだけ早く、しかも具体的に御検討願う必要があろうと思うのであります。  第三に問題となりますのは、過度競争の防止、下請取引の適正化、大企業との分野調整などのいわゆる環境整備の問題でございます。この中で特に分野調整問題につきまして、一言意見を申し述べたいと存じます。  最近、一部の大企業の中には、中小企業分野への進出を行ないまして、中小企業界に相当の脅威を与えている場合があるのであります。もちろん理論的に考えてまいりますと、技術条件とかあるいは需要の条件などの変化によりまして、従来は中小企業のほうが適当であった分野につきましても、あるいは大資本で行なったほうが明らかに能率的であり、また消費者大衆を含めました国民経済的な視野に立って見れば、大企業がやったほうがより合理的であるという場合もあるいはあるかもしれません。しかし、一方でよく考えなければなりませんことは、大企業がやりましてもそれほど実質的な効果かないいわゆる付加価値生産性性の面では、特に大企業がやっても、あるいは中小企業がやっても、それほどの変わりはない、ただ大企業の持っておるトレードマークとか、あるいはネームバリューというような関係で、大企業製品が中小企業製品よりも有利であるというような関係で、中小企業製品を圧迫するというような問題も出てくるようであります。ただこういったいろいろな色分けということになりますと、理論上一般論としては言えるのでありますが、実際問題になりますと、こういった色分け、判定ということはなかなかむずかしいのではないかと思います。なお、かりに大企業でやったほうが国民経済的な観点から見てより合冊的であるという場合でございましても、あまりに大企業の進出が急激でございますと、中小企業に大きな混乱、摩擦を生ずるということが少なくないのであります。こういう点からいいまして、基本法の第十九条に、中小企業者の利益の不当な侵害を防止し、中企業の現業活動の機会を適正に確保するというふうに打ち出しておられまして、この法案の態度はまず妥当なものと考えるのであります。ただその具体的な施策につきましては、中小企業分野といい、あるいは大企業分町といいまして、それらはいずれもそのときそのときの技術条件なり需要条件に応じまして変わってまいるものでございますから、それぞれの分野をあらかじめ法律で固定的に確定しておくということは、むずかしいのではないかというふうに考えるのであります。この非常に大事な問題でありながら、しかも非常に困難なこの分野調整の問題につきましては、できるだけ早く弾力性のある、また合理的な解決方法を用意していただく必要があるのではないかというふうに考えるのであります。伺いますと、政府当局でもすでにいろいろ検討しておられるということでございますが、これもまたできるだけ早く具体策を打ち出していただきたいのであります。  さらに、環境整備の問題に関連いたしまして一言つけ加えたいのは、いわゆる流通革命の問題でございます。現在非常な勢いで進行しております流通構造の変化は、国民経済構造合理化するというふうな傾向からいたしまして、その一つのあらわれといたしまして、ある程度は自然の勢いとも考えられるかもしれませんけれども、従来から、中小商業問題につきましては、政府施策がやや不十分のうらみがあるのであります。それだけに、特に一般小売り商等につきましては、現在非常な不安、動揺が見受けられますだけに、行政当局とされましては、できるだけ早く今後の中小商業問題についてその具体策を検討されまして、できるだけその間に無用の摩擦あるいは混乱等を引き起こさないように、十分の御配慮をお願いいたしたいと存じます。  第四に、組織化対策について申し上げたいのであります。中小企業構造の高度化あるいは環境整備などを推進する手だてといたしまして、その中心をなすものは組織化対策ではないかと思うのであります。膨大なしかも雑然と存在しております多数の中小企業をできるだけ広く拾い上げながら、それらを経済合理性のベースに引き上げていくのには、中小企業組織化を推進することが何よりも重要たろうと思います。特に問題となりますのは、今後中小企業の内部にいわゆる階層分化の傾向がますます激しくなってくる心配があるのであります。この場合に、中小企業の中で比較的日の当たらない力の弱い人たちを、適正な経営規模の単位にまで引き上げまして、できるだけ経済的合理性のベースに引き上げていくというためには、組織化対策以外にとるべき方法がないのではないかと思うのであります。この意味におきまして、基本法が、第十二条におきまして、本業共同化のための組織の整備、第十七条におきまして過当競争の防止、第二十七条におきまして中小企業団体の整備といったふうに、いろいろな施策重点として組織化を打ち出しておられますことは、これは妥当であろうと思うのであります。ところで、中小企業組織の形態には現在いろいろなものがあるわけでありますけれども、これを大きく分けますと、施設的な機能を持っております事業協同組合と、調整的な機能を持っております商工組合、この三つの系統に分けることができると思うのであります。後者、すなわち商工組合につきましては、三十七年五月の改正で、設立要件の緩和とかあるいは事業範囲の拡大といったような、大幅な改善を見たわけでございますけれども、前者、すなわち専業協同組合につきまして、もっと施設組合的な機能を千分に発揮できるような方向を考える必要があるのではないかと思うのであります。現行の事業協同組合は、相互扶助精神に基づきますところの人的結合性というところに基礎を置いているのでありますが、経済背景の変化に伴いまして、いま一歩資本性を加味する考え方を打ち出しまして、共同卒業を中心としたより結合性の強い組織というものを考えていく必要があるのではないかと思うのであります。  最後に、中小企業金融問題につきまして申し上げたいのであります。  第一に申し上げたいことは、政府関係金融機関の機能の充実でございます。政府関係金融機関の機能を大別いたしますと、一つは量的な補完機能でございます。第二は政府施策の誘導機能であろうと思うのであります。中小企業が慢性的な金融難に悩まされております現実は多言を要しないのであります。これは民間金融機関の制度上の問題とも関連するわけでございますが、いずれにいたしましても、採算的に劣っております小口の中小企業金融を、民間金融機関の金融だけで十分まかなっていくということは、とうてい困難でございまして、ことに設備資金など民間金融になじみにくい長期の金融につきましてはもちろんでございますが、現在では、短期の金融につきましても、政府関係金融機関の量的補完の機能に待つところが大きいのでございます。ことに景気変動に伴います金融逼迫時におきましては、民間金融のみによりまして中小企業に対する金融のしわ寄せ問題を解決することはきわめて困難であることは、前側の金融引き締め時の事例によりましても明らかでございます。しかも、どうもたびたび繰り返される心配のございます金融の引き締め、これが残念ながら中小企業者の設備近代化の意欲をそのたびにくじけさせてきたのであります。こういう事実を考えますと、中小企業格差是正をはかる上からいいまして、政府関係金融機関の量的な補完機能の充実ということは、きわめて重要なことではないかと考えるのであります。  政府関係金融機関の第二の機能は、政府の諸施策金融面から誘導する、いわば呼び水的な機能でございます。基本法にも盛られております協業化、近代化などの施策を推進するための金融面における具体的な裏づけをいたしまして、政府関係金融機関の機能の充実はきわめて重要であろうと思います。この場合特に問題となりますのは、金利問題であろうと思います。現在進行しております金融正常化の一環として、金利水準は一般的には低下の傾向をたどるでございましょうけれども、その場合におきましても、民間の金融市場におきましては、優良な企業と弱小な企業との間に金利面の格差がすでに相当出ておりまして、しかもこれが今後もややもすればその格差が開いてくる心配さえもあるのであります。しかしながら、協業化とか近代化といったような国家施策の誘導という役割りを持っております金融につきましては、できるだけ低金利であることが望ましいのであります。またそうでなければ、とうてい政策効果を期し得ないと思うのであります。ところが、従来同じ政府施策の誘導を行なう金融につきましても、個別企業近代化などを進めるための金融に比べまして、組織化推進をはかる金融、言いかえればいわゆる組合金融のほうが金利か著しく割り高になっておるのであります。こうした点は、前にも一言申しましたように、従来の中小企業に対するいろいろな施策の間に、有機的な総合性を欠いていた一つの端的なあらわれではないかというふうにも考える次第であります。今回基本法が打ち出されましたのを機会といたしまして、このような政府施策の矛盾を是正していただくように、早急に財政措置を具体化していただきたいと考える次第であります。最後に手前みそのお願いをいたしまして恐縮でありますが、何分よろしくお願いいたします。
  29. 逢澤寛

    逢澤委員長 意見の陳述の途中ではありますが、時間もだいぶ経過いたしましたので、暫時休憩いたします。午後一時四十分より再開いたします。  午後はまだ陳述の済んでいない参考人の諸君から御意見をお聞きいたします。その後委員からの質疑を行なう予定であります。なお、与党委長の諸君にお願いを申し上げますが、きょうは大ぜい参考人の方々も見えておられますので、定刻にお集まりをいただくようにお願いを申し上げます。    午後一時三分休憩      ————◇—————    午後一時五十分開議
  30. 逢澤寛

    逢澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  中小企業基本法案等法案について参考人の方から意見を引き続きお聞きすることにいたします。東京信用保証協会理事田山東虎君にお願いいたします。
  31. 田山東虎

    田山参考人 参考人田山東虎でございます。私は戦前から中小企業を続けておるものでありますが、肩書きのように、信用協会の保証の審査に携わっておりまするその実際面、あるいは体験に基づいての本案に対する意見を申し述べたいと存じます。  まず政府案につきましては、総評的に、第一には本案の内容と国の予算との関係関係法案との見合い、政府の機構の諸点から、基本法としては不十分であると思われまするので、これから口述をいたしまする事柄などを御検討をいただきまして、より充実したものを本会議で成立をさせまして、混迷下にあえぐ中小企業に、今後の指標を明らかにするとともに、展望を与え、決意を促していただきたいと存ずるのであります。  第二には、本案中格別に御留意をいただきたいと存じまする小規模の企業につきまして、配属が不十分である、同時にまた、その配慮の規定もまた中小企業一般としてこれを取り扱われることに若干の不満があるのでございます。  第三には、条文中に大企業よりの圧迫の害を認めておりまするのに、全文を通じまして、圧迫排除に積極性が乏しい。公平な第三君による調整裁定の処理機関に関する規定の明記はぜひほしい。こういう点と分野の確保につきましても、同様にこれを規定をしなければならないように思うのであります。  第四につきましては、共同化組織に関しまして、これを強化促進するための条文の付加、あるいは関係法案考慮してほしいという点でございます。  以上第一項から四項を柱といたしまして、部分的にその理由を御説明申し上げまして、その中において日本社会党に関しまする案についての意見を口述することといたします。  第一項におきまして、国の予算に触れまする点は、本案の性格というものを摘出する上におきまして必要であると考えるからでありまして、すなおにお聞き取りをいただきたいと思うのであります。近代化の促進や、あるいは資本の育成に関しまする政府の措置につきましては、生産性の向上、なかんずく二重構造是正に画期的、効果的なものであると、私はこれを受け取っておるのでありまするが、しかしまた、そのねらいとするところは、中規模の企業で特定の業種について政府が特別の援助を行なおうとするものでありましょう。ところで、今年度中小企業関係の予算は、他の参考人の方からも触れたようでありまするが、たいへん少ないものでありまするが、しかもその大部分は、以上のような指摘された特殊のところに事実上は向けられるわけであります。このことは、特定の業種について、その企業の規模が政府の期待する域に達し、あるいはまたこれに近づきつつある少数特定の中規模専業への対策に重点を置かれることであって、他方その資本あるいは設備か非力であるものに対してはこれを軽視するという、こういう結果になろうかと思います。政府案は、中小企業定義では、資本を五千万円以下と規定をしておるのでありまするが、このことは、本案の成立後その運営にあたりまして、前に申し上げまするような重点と軽視につながるものであってはならないと存じます。すなわち、施策と受益につきましては、特定、不特定を問わず、均等公平でなければならない。この点を明らかにしまするためには、資本金五千万円と規定いたしまする場合に、政府は予算技術によりましてその区分を明らかにしていただくのがよいのではないか、こういうように考えるのであります。なお、右の定義の中で商業サービスの資本は一千万円と定めておることに対しましては、これはその額が少な過ぎるという見解でございます。今日流通機構の面は大きな変動期に遭遇をいたしておるのでありまするが、その任務たるや依然として重要であります。これを一千万といたしました根拠は、帰するところ、これは商業実態の分析を誤った結果ではなかろうかと心配をいたしておるのであります。私の体験と実際面はすべて東京都という範囲内のものでありまするがゆえに、あるいは偏見と見られないでもありませんが、現に資本が一千万円をこえ、またはこれをこえようとする態勢にある数というものはかなりのものでありまして、それらの企業実態というものは、まさしく中小企業の性格、内容であり、将来ともこの姿を脱し得ないものと判断されるのでございます。万が一一千万円でこれを制約される場合に、これらの人々は基本法による恩恵は受けられませんし、頼みとする融資にいたしましても、市中金融機関内での暗い真空の谷間に歩むことでありましょう。よって、商業サービス面の資本金を三千万円と規定いたしまする社会党案こそ、その実態を理解するものとして、この点は賛成であります。  次に、政府機構の点につきましては、中小企業省設置規定を設けておりまする社会党案に大いに賛成であります。すなわち予算の確保、内閣における中小企業面の発言力の強化の上からも、ぜひこの実現に御努力をいただきたいのであります。事例をあげますると数限りがございませんが、まず下請代金支払い遅延防止法が施行されたその実態を見ていただきたいのであります。政府がどのように中小企業偏重の方策をとろうとは申せ、当然本法に適用されるべきたくさんの事件がありますのに、大網一匹の魚も捕え得ず、法はいたずらにその権威を失っている。業界は、この事実をもって、これは公取の責任と見るものはございません。中小企業全体の立場を擁護する内閣にその策なきを悲しんでおるという、これがほんとうの声であります。つけ加えまするが、大企業下請の支払い遅延、これはもう慢性化をいたす傾向となっておりまして、中金の理事長さんもおいでになっておりますが、中金の窓口はこれが姿を変えた長期の手形となりまして、その件数、額割り、さながら中金は大企業の外郭資本系に堕したという観すら呈しておるではございませんか。したがいまして、中小企業省の設置は、予算確保の拠点として必要であるばかりではございません。右のような事例を含めまして、政府中小企業への姿勢を正しくしていただくために必要であり、本案の成果を期待しまする上で特に必要かと存じます。  次に第二には、中小企業に関する、特に小規模企業に関する規定と、その地域規定、これらについての不満のあるところを指摘いたしたいと存じます。政府案で第二十三条に資本の制約がございませんのは、この範疇にある数が最も比重を重く占めていること。したがいまして法文適用に弾力性を持とうとする趣旨に解せるのであります。しかりといたしますならば、資本も一応これを規定いたしまして、両建て適用が望ましいと考えるのでございます。東京都は、中小企業対策の一環といたしまして、資本金百万円以下のものにつきまして特別な金融制度を施しておることは御存じのとおりであります。小規模企業はすべての面で本法の対象の中核体と見られまするが、第三条第一項の施策規定だけでは私は不満であります。さらに労働対策、あるいは福祉対策等におきまして、社会政策的見地からの施策をお考えいただきたいと存じます。別途といたしまして現行の税制を改めまして、徹底した税率引き下げを講ずべきものと存じます。なお、本項に当たると思われまする社会党案による勤労事業者の定義は、大差がないように思われます。ただ社会党案につきましては、詳しくそれらの内容が明記され、しかも国や公共団体の義務規定などまで設けられてあるところを、私は評価をいたしたいと存じます。  第三には、紛争処理機関を規定することの必要な理由を申し上げたいと思います。格差是正を推進する場合に、実際的にも客観的にも社会背景はこれを無視できないものと思われます。すなわちこの場合に、かりに下請の単価をめぐって、経済的合理性という企業基本理念と実情との間には誤差がありますから、当事者間の利害離反が紛争として生ずるのはふしぎではございません。といって、下請における生産というものは毎日の生活にかかわるものでありまするし、紛争によって親企業からの発注がとまるということになりますれば、下請企業は破滅を招くわけでございますから、閉鎖かしからずんば死かという窮地の場合も起こり得ることが予想されるのであります。もしこれをしも調整裁定を規定しないといたしまするならば、どのようにしてこれの解決を求むればよいのか、教えていただきたいと思うのであります。なお、商業の面につきまして処理機関の必要な事例はたくさんございまするが、これは省略させていただきます。かような点から、私は、この点につきましては社会党案賛成でございます。  以上のような意見説明を集約するにあたりまして、政府案並びに社会党案あるいに民主社会党の案は、その内容におきまして共通の広場がかなり見受けられるのでございまして、いま御指摘を申し上げましたる個所や要望の事項等につきまして、とくと御考察を賜わりたいと存ずるのであります。  最後に、わが国の中小企業は、政府案で強調をされる企業の努力は、これを指摘されるまでもございません。ただそれを一本の柱として戦い抜いてきたところでございます。大企業のごとく常に政府の豊かなる援助によって今日あるものではございません。過重な税金に泣き、大企業独占資本の重圧に耐え、これがために大多数のものは企業体質というものが著しくゆがめられたものになっておるのであります。すなわち営業利益の大半は営業外費用としての手形の割引料である、あるいは利子支払いの形におきましてあまりにも多くその利益を蚕食されておる、二重搾取をされておるという、この厳然たる事実であります。このような異常体質というものは、これをやはり鋭く分析することが必要でありまするし、また矯正されなければなりません。けだし、中小企業基本法が目ざしておる格差是正といい、あるいはまた二重構造の解消というも、その作業はこのあたりに暗礁があるのではないかという気がいたします。
  32. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、全国商工会連合会会長竹内敏栄君より御意見をお聞きすることにいたします。
  33. 竹内敏栄

    竹内参考人 ただいま御紹介いただきました私は全国商工会連合会の刑会長竹内でございますが、新潟県の連合会会長並びに単価の商工会の会長をやっておるのでありまして、これから申し上げることはあるいは非常に視野が狭いかもしれませんが、最低線に実際に苦しんでいる小規模の声をぜひ政府並びに先生方に聞いていただきたい、かように思うわけでございます。現段階におきましては、ほんとう政府並びに先生方がお考え以上に、われわれの仲間は苦しんでおるのでございます。大資本の圧迫あるいはまたスーパーあるいは農協その他いろいろな提案理由にもあったと思うのですが、そういう面からいたしまして、先生方のお考え以上に苦しんでおるのでございますから、ぜひとも一日早くこういった法律並びに関係法案をつくっていただきたい。これが真の叫びでございます。せっかくおつくりいただいても、われわれ仲間が死んだあとでいかに高価薬を与えていただいても、これはほんとうに残念なことでございますから、ぜひとも早くおつくり願いたい、こういうわけでございます。  第二点は、われわれの中小企業は、三百五十万の八九%が小規模でございますが、そのまた六〇%がわれわれ商工会の傘下の会員でございます。そこで、せっかくおつくりいただくこの基本法並びに関係法案が、ぜひともこの小規模に重点的につくられるようにお願いいたしたいのございます。  そこで、私はこれから、特に小規模の立場から、一、二の意見を申し上げたいと思うのでございます。  大体政府の条文自体につきましてはわれわれは賛成でございますが、特に小規模対策が、基本法並びにその関連法案の中で、いかに位置づけられ、また整備され、国の助成政策と相まって方向づけられるかということについて、重大な関心を持っておるものでございます。  まず前文においても、私ども小規模事業者が、他の産業並びに勤労者とあらゆる面で均衡する生活水準の向上をはかることに積極的にあっていただきたい、かように考えるものでございます。  次に、第三条の国の施策につきましては、いずれも当を得たことでございまして、われわれは大いに賛成しておるものでございますが、ただその中に災救助に対する措置がございませんので、ぜひともこれを織り込んでいただきたい。毎年起こります風水害はもちろんのこと、昨年、新潟等におきましては、雪害対策等におきましても、ほんとう中小企業者の受けた被害というものはばく大にのぼっておるわけでございますので、これはぜひとも国の施策に考えていただきたいと思うわけでございます。すでに前にできました農業基本法等については、これがうたわれてあるわけでございますから、ぜひともわれわれの基本法につきましても、必要な資金あるいは税の減免等についての措置を織り込んでいただきたい、かように思うわけでございます。  次に、第十四条の商業及び十九条の事業活動の機会の適正を確保するというふうにありますが、従来はややもするとこの小売商業というふうなものが非常に軽視されておりますので、この件につきましては、全国商工会連合会としましても、小売商業振興法(仮称)の制定を政府並びに各政党に御要望申し上げてあるわけでございますが、基本法の中につきましても、ぜひこういうものをひとつ十分に取り込んでいただきたい。いわゆる小売商に対する助成並びに指導というもの、あるいは金融税制上の措置というものについても、ぜひともこれを零細なものにはっきりとうたっていただきたいというふうに考えるわけでございます。  なお、十九条には、ただ単に必要な施策を講ずるとありますけれども、これだけでははなはだ抽象的で、しかも微温的でありますので、少なくともこれらについては、その規制措置あるいは調整措置あるいは行政措置の整備等を強力に実施できるように、施策を打っていただきたいと思うのでございます。  なお、二十三条には特に商工会は関係が最も深いのでございまして、商工会の組織等に関する法律の御趣旨をさらにここで生かし、経営改善普及事業をますます強化され、商工会関係の予算の大幅増額を要望いたしたいのでございます。経営改善普及事業の強化なくしては、小規模卒業の改善発達はなかなか望み得ないと確信するものでございます。また、実際商工会も運営してみますと、現行法においては一部に支障がありますので、いずれ一部の改正を要望をしたいと思うのでございますが、これらにつきましては、あとで御質問がありますればお答えさせていただきたいと思います。  二十四条の資金の融資の適正化でございますが、これは先ほど来各参考人の方からも御発言もあり、あるいはまた商工中金の理事長さんからもお話がありましたが、何といっても政府三公庫の資金が一番零細企業にはありがたいのでございまして、これには歩積みだとかあるいはその他のものがございませんで、直ちに借り入れられるわけでございます。最もこの零細な業者が現在喜んでおりますのは、三公庫の中でも国民金融公庫が一番多く利用されておりますが、残念なことにはこの資金黄がはなはだ少ないという点でございます。あるいは中小公庫あるいはまた商工中金等にしましても、従来は製造業者に重点がありましたので、今度小売商の店舖改造等につきましても、それと並行して大幅に重点的にひとつ願いたい、かように思うわけでございます。しかし、政府の三公庫があれば万事足りるというふうなことは決してございませんので、たとえば県庁の所在地に支店があるというふうなことで、遠隔の地域からなかなか僅少な金で一日を費やすとかあるいは一泊というふうなことができませんので、むしろ私はこれには大幅にやっていただくことがまず一つでありますが、それ以外に民間の中小企業専門の金融機関があるわけでございます。たとえば信用金庫等があるわけでございますが、こういうものにひとつその連合会を通じまして政府財政投融資が流れれば、地域の零細企業は身近な金融機関から非常に早く金が借りられる。たとえばいろいろ前文にもございますように、設備近代化資金等についても、字句に書いてありましても、自分の近くでしかも気やすく借りられるには、そういうものもひとつ別にお考えいただきたい、こういうふうに思うわけでございます。同時に、これと並行いたしまして三公庫の代理所等もたくさんつくっていただきまして、僻地の零細企業でも手軽に借りられるようにお願いいたしたい。それには、まず何といいましても、三公庫に対する大ワクがなければ、店舗だけふえましてもだめなわけでございますから、ぜひともそういうふうにお計らいをいただきまして、民間の組合員がつくった協同組合による信用組合等を大いに考え直していただきたいと、かように思うわけでございます。なお、信用保証協会等につきましても、他の府県はわかりませんが、おおむね県庁の所在地にのみ事務所がございまして、広い新潟県等につきましては、ほんとうになかなか利用しにくいというふうな面もありますので、こういうものは、何らかの方法で、ひとつ商工会であっせんのできる、あるいは代行のできるようなところまで持っていっていただければ、なお一そう最低線の人は喜ぶのでなかろうか、かように思うわけでございます。  最後に、第二十八条に、中小企業政策審議会の設置等についてありますが、従来のものはいずれも最低線の最も数の多い人の代表委員から抜けているように思いますので、今回の基本法はもちろんのこと、それに関連いたします法律等につきましても、こういう審議会が設けられる場合においては、ぜひとも最も数の多い小規模事業者の代表、すなわち商工会等から代表を出していただきたいと思うわけでございます。  まことに簡単でございますが、小規模事業者の代表といたしまして、願いをいたす次第でございます。御清聴ありがとうございました。
  34. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、中小企業研究所所長中島英信君から御意見をお聞きすることにいたします。
  35. 中島英信

    中島参考人 私はただいま御指名をいただきました中島英信でございます。中小企業研究所の所長をいたしておりますが、中小企業団体の関係から、日本中小企業政治連盟の相談役をいたしております。  いま中小企業者が非常に待望をしております中小企業基本法につきまして、政府並びに与党である自民党におかれても、また社会党及び民社党の方におかれても、この制定に非常に熱意を持っておられて、非常に長い間にわたって御研究を続けられて案をおつくりになったということについては、心から敬意を表するのであります。委員の皆さんも御専門の方がそろっていらして、中小企業問題には皆さま非常に通じていらっしゃいますので、あまり長い前置きは必要でないと存じます。現在わが国の中小企業に与えられている基本的な課題は、二重構造あるいは企業格差を解消して、中小企業の自立、安定、向上をはかることであり、また経済発展に即応して企業近代化をはかり、生産性を向上させることであって、それらを通じて中小企業の従事者の生活水準を向上させるとともに、国民経済の健全な発展に資するということにあるかと思います。そういう見地から、簡単に私の所感を申し述べさしていただきます。  最初政府案について申し上げたいと思います。今回の中小企業基本法政府案を拝見しますと、中小企業に関する施策が総合的に体系化されておりまして、いろいろ新しい施策が盛り込まれております。現在の中小企業問題の一つ焦点を生産性等の格差にとらえて、これを物的生産性と価値生産性の両面にとらえて、各種の施策系列をこれに対応さしてあるようでありますが、こういう考え方も私は十分にうなずけることと存じます。ただ、先ほどほかの参考人の方も言われたように、これで一〇〇%完ぺきであるかというと、それはなかなかそうはいかないかと思うのであります。さらに十分なものにするためには、いろいろつけ加えられる必要の点も若干ございますし、なお多少問題なのは、この政府案というのは、中小企業の現状の分析というのはわりあいに私の正確に確かにしておられると思うのでありますが、この施策方向を立てるときに、若干のずれもあるんじゃないかという感じがいたすのであります。  それで、第一の点は、この基本法の中核になっているのは、この第三条の国の施策であるかと思います。つまり前文や政策目標にうたわれてきたいろいろな考え方というものがここに要約されて、その項目がはっきりと打ち出されておりまして、これに従っていろいろ具体的な施策が展開していくということになっておりますから、その意味において一つ焦点がこの第三条の国の施策にあると思うのでありますが、この第三条第一項では設備の近代化をはじめ八つの項目が並んでおります。そこで問題は、私は第二項に一つあると思います。私はこの第二項というのは削除されたらよいのではないかと思うのであります。もしどうしても削除できなければ、やはりここで私は二壁構造の解消なりあるいは企業格差の解消という文句をはっきり入れられる必要があるのではないかと思うのであります。その削除をしたらどうかという意味は、この前文において、また第一条の政策の目標において、中小企業政策に対する基本的な考え方をはっきりと打ち出しておられます。ですから、この第三条でもう一度これを繰り返す必要というのはないのではないかと思うのであります。もしどうしてもこれは削除できないということになりますと、これは私かなり重要な意味を持ってくると思うのであります。つまり、それは重複しているわけではないんだ、どうしてもこれはここにうたわなければならぬということになりますと、その意味というのは私はかなり大切な意味を持ってくると思うのであります。と言いますのは、ここで第二項は「前項の施策は、経済社会的諸事情の変化を考慮して、産業構造の高度化及び産業の国際競争力の強化を促進し、国民経済の均衡ある成長発展に資するように講ずるものとする。」とありますが、ここで中小企業施策の指導的な観念として、産業構造の高度化と産業の国際競争力の強化という二つを非常にはつきりと打ち出しておられます。私は、もちろんこれは、わが国の産業経済政策を考える場合に、当然重要な目標であると思います。今後日本経済は、ますますこの産業構造を高度化していかなければなりませんし、現在のような貿易及び為替の自由化の状況のもとにおいて、日本の産業の国際競争力を強めるということは、非常に私は重要であると思います。ただ、中小企業政策を考える場合に、これだけでよいのかということが、私は問題になるかと思うのであります。つまりこれは重要な重点でありますけれども、これだけを強調するということになりますと、若干の危険性がある。少なくとも中小企業者をいろいろ不安におとしいれるのではないかと思うのです。産業構造の高度化及びその国際競争力の強化ということたけであれば、これは大企業、中企業、小企業全体を通じて産業政策一つ方向でありますし、これだけをうたい出すなら、特に中小企業政策というものでなくてもいいわけであります。むしろこれは一般産業政策そのものである、むしろこの政策のいろいろな影響を受けてくるものが中小企業であるという意味において、こういう中小企業立場から考えますならば、これに対応するものを考えるというところに、中小企業基本政策に要請されているものがあるのではないかと思うのであります。これは決して抽象論ではなしに、非常に私は現実的な問題ではないかと思います。と言いますのは、関連法で中小企業投資育成株式会社法が出ておりますが、あれはどういう企業に投資をするかという場合に、やはりこれは自由化工業本位になるように承っております。軽工業なり商業、サービス業は当然除外されていく。もちろん軽工業の中には例外があります。また中小企業近代化促進法を取り上げてみましても、現在中小企業業種別臨時措置法によっていろいろな業種が指定されておりますけれども、これが全部指定されることにはならないようなふうに伺っておりますが、こういう業種指定をする場合にも、この第三条の二項の原則というものは当然働いてくる。それは業種の選定をする場合に、何らか基準が必要であるということはわかりますけれども、この第三条の二項が業種の選定をする場合にも働いていくことになります。したがって、どうしても重化学工業であるとか、あるいは軽工業の小でも、輸入防遏あるいは輸出の増進に関連のあるものは含まれてきますけれども、その他のものは取り残される。いわんや商業、サービス業においては、らち外に置かれるおそれがあるわけであります。こうなりますと、中小企業の大部分というものは、やや置き去りにされた形になり、あるいはやや軽く見られて、特定の産業なり特定の業種が重要視されることになりはしないかと思うのであります。これでは中小企業対策の本旨という点から見て、若干問題があるように思うのであります。きょう、どなたでしたか、参考人の方が、中小企業対策は秀才教育だけではだめだというお話がありましたが、その点は私も実は同感でありまして、秀才教育も必要でありますけれども、ただ秀才教育だけではいけないのではないか。むしろ秀才のほうは普通の一般的な産業政策を援用するだけでもこれは伸びていく。まして天才的企業になれば、放任しておいてもどんどんこれは大きくなっていくわけであります。この中小企業対策というものを要請する一番の根拠というものは、やはり大多数の中小企業の実情であり、これがどこにいくかということにあるのではないかと思うのであります。  以上で第一を終わりまして、第二点として申し上げる点は、以上申し上げたこととちょっと関連しますけれども、そういうような点の出てくる一つの基礎として、この基本法の根底にある考え方であります。たびたび国民経済成長発展という群集が繰り返されております。私は今日国民経済成長ということは非常に大切であると思います。現在世界各国における経済政策の重要な理念とされておりますし、わが国においても当然経済成長をはかっていくということは重要であります。ただ人間のからだでも、からたが大きくて背が高ければいいというだけのものではなくて、体は小さくても、非常に頭がよくて、心臓その他内臓も強くて、筋肉も非常にしっかりしているという人間もあって、これは社会的にも非常に有用であると思うのでありますが、ただそのスケールだけを問題にするわけにはいかない。からだが大きい、骨格がどうであるとか、筋肉の構がどうであるとかということだけを目標にするわけにはなかなかいかないと思います。特に中小企業の場合においては、やはり公正な経済的な秩序を要望しておるわけであります。また個人の経済活動の自由というのは、やはり中小企業の最もねらうところであると思うのであります。アメリカ中小企業政策の基本が自由企業政策にあるわけでありますが、日本においても、やはり中小企業というのは大部分が個人企業であり、個人の経済活動の自由というものは尊重されるということに基本が置かれなければならない。さらに重要なことは、やはり経済政策といえども、その最高の目標というのは、生活水準を高め、国民の福祉を実現することであると私は思うのであります。そういう意味からいいますと、経済政策の理念としては、そういったものをあわせてとったときに、初めて健全な形になるのではないかと思うのであります。特に中小企業は、従事者の総数からいって千八百万人をこえておりますし、家族を合わせれば、ある意味国民の半ばをこえているという重要な人口の部分を占めておるのであります。したがって、これらの生活の福祉を実現するということは、国の経済にとっても非常に重要なものであるというふうに考えます。その意味で、第一条の政策の目標等も、この中の最後に「中小企業の従事者の地位の向上」という文句が入っておりまして、こういう点私は非常にけっこうであると思います。しかし、できるならば、この場合明確に中小企業の従事者の所持及び生活水準の向上というように、その内容をもう少しはっきりとなさったらいかがであるかと存じます。この点は、先ほどほかの参考人の方も、竹内さんですか、おっしゃいましけれども、農業基本法あたりには、こういう点についてはかなりはっきりと、農業従事者が他産業の従事者と均衡する生活を営むことを目標として、その地位の向上をはかるというふうに、非常に明確にこういう観念が打ち出されておりますけれども、中小企業の場合においても同様にお考えになってよろしいのではないかというふうに存じます。  第三の点でありますが、これもいままでいろいろな方がお述べになったので、ごく簡単に触れますが、全体的な感じとしまして、零細企業対策が不十分であるかと存じます。現在中小企業というのは、一口に中小企業と言いますけれども、中小企業の範囲はだんだん拡大していきますし、したがって、その内部に中企業、小企業零細企業の質的な差が出てきておるということを見ることができます。従業員を一人か二人使っておる零細企業と、従業員三百人くらいを使って年間十数億の売り上げをしておるような企業とは、これはかなり質的に違っておる。したがって、こういう中小企業の内部における階層的な分化の現状に即してやはり対策も立てられなければならないということは、階層別の対策を必要とするのではないかと思います。そういう意味で、零細企業対策にもう少しきめのこまかさが要るよりに感じます。もちろんそういう点を考慮されて「小規模企業」という章を特に設けられておりますので、考慮されておることはわかりますけれども、できるならばこれをもう少し内容に具体的なこまかさがあってよいのではないかと思います。  それから、第四点といたしまして、過当競争対策でございます。これは第十七条に出ておりますが、この内容を拝見しますと、中小企業団体法というような組織法に規定されておる対策の範囲に大体尽きておるようでありまして、できるならば、この点についてはもう一歩前進されてはいかがかと思います。たとえば企業登録制をしくとか、最低価格制をしくとかいう問題があるかと思います。今日低賃金労働者に対しては最低賃金制がありますが、所得の少ない低所得の零細企業に対しては、最低価格制ということも考えられるかと思います。きょう午前中に出られた石田参考人は、いま最低賃金関係の会合に出ておられるわけですが、私も実はそれへ出る予定だったのですが、陳述が午後になったのでこちらに残りましたけれども、おそらく最低賃金制というのは今後ますますその施行が拡大し、強化されていくと思います。こういう状況で零細企業がその立場を守るには、やはりこれは最低価格制といったようなものを考える必要があるのではないかと思います。  第五点は、十九条に「事業活動の機会の適正な確保」というのがございます。この内容も私は非常にけっこうだと思います。多小中小企業界にはいろいろ意見もございますけれども、私は大体基本的な考え方においてはこの方向で考えられるべきものかと思っております。ただいかにもこれに対するきめ手といいますか、これを保証するものがないのではないか。その意味で、ここに盛られておる施薬を政府がおやりになるにつきましては、その施策を裏づけるものとして、その行政的な処理に当たる機関というものがあってもいいのではないか。たとえば中政連案の中には公正経済委員会というのが提唱されておりますけれども、そういう名称はともかく、公正経済委員会というようなもので、中小企業を取り巻くいろいろな不公正な取引条件是正、あるいは大企業あるいはその他のものとの間の紛争の処理であるとか、そういった問題がたくさんありますので、そういう点から見て、この項目をさらに裏づけるものとして、そういう行政機関を設置されたらばよろしいのではないかと思います。  それから第六点は、下請及び系列化の問題であります。この条文を拝見しますと、「下請取引の適正化」ということをあげられておりますけれども、企業系列の問題に触れておられないのであります。実際現在において、技術革新あるいは流通革命あるいは消費革命等によって、中小企業の基盤は非常に変動しつつありますけれども、ここへ出てきておる大きな問題は、やはり系列化の問題であると思うのです。この系列化に対する対策というものがはっきりと打ち出されていない。もちろん機械工業のようなものにおける系列というのは、下請というものとほぼ同じ内容のものになりますから、それはよいと思いますけれども、原料産業を親工場にした系列というものもありますし、特に現在では、この商業部面においても、系列化の問題というのは相当大きな問題になっておると思うのであります。その意味において、ただ下請取引の適正化というだけではなしに、下請取引、企業系列の適正化というふうに、系列化の問題を加えられてはいかがであるかと思います。  第七点でありますが、これはサービス業の問題であります。商業については特に第十四条でありますか、ここに一章を設けられております。おそらくサービス業はこれに入っているということであるのかもしれませんけれども、この文章をよく読んでみますと、どうもサービス業というのは入っていないような感じに受け取れるのであります。今日中小企業におけるサービス業というのも非常に大きな割合を占めておりますので、もし商業に関するものをここにおあげになるならば、商業及びサービス業とするとか、何かの方法においてサービス業を含むということをはっきりとされて、それに応ずる施策をお加えになってはいかがであるかと思います。  第八点でありますが、二十条に官公需の問題が出ております。これも従来のわが国における中小企業施策の中には出ていなかったものでありまして、こういったものが基本法に盛られたということは非常にけっこうであると思います。しかし、これもできるならばばく然と国等の受注機会を確保するということだけでなしに、一定割合以上を中小企業のために確保するという意味で、この一定割合というようなことばを挿入されて、中小企業者にも安心を与えられるし、またいろんな施策を実際に講ぜられる場合に、一つの考え方を明瞭に打ち出されるということが必要ではないかと思います。  実はその他いろいろ申し上げたいこともございますけれども、時間の関係もございますので、おもな点だけを拾ったわけでありますが、最後に政府案に関して一つ申し上げたいのは、中小企業政策審議会であります。これはいろいろな法案関連して審議会がたくさんできて、現在日本にはずいぶんたくさんの審議会があるかと思います。これはもちろん諮問機関としてある程度の役割りを果たしておりますし、重要でありますが、私は、中小企業政策重要性という点から見て、これにかえて中小企業者の中から選ばれた代表者をもって組織する中小企業経済会議というようなものを設立して、これによって中小企業政策に関するいろいろな討議をここで行なうようにしたらよいかと思うのであります。ここにいらっしゃる委員の先生方は、皆さん国会議員として非常に有能で、またよくその選挙民の意向を代表して活動されていらっしゃるわけでありますが、中小企業者はまたこれに対して自分たちの実際の生活の中からいろいろな要望を持ち出すわけであります。その意味において、この中小企業経済会議のような、これは一種の機能会議でありますけれども、消費者代表であるよりもこれは生産者代表であるし、個人代表であるよりもこれは組織代表になります。地域代表よりもこれは職域代表になりますけれども、こういったものを活用して、こういう職能会議的なものをつくりあげていくということは、今後科学的な、近代的な政治機構をつくりあげていくという面から見ても、非常に重要性を持つと思うのでありますが、特に中小企業問題あるいは中小企業政策のように複雑な内容を持つ問題について、こういう会議を活用するということに非常に意味があるのではないかと存じておるわけであります。  以上、政府案を主にして申し上げましたけれども、時間の関係社会党及び民社党の御案について十分に意見を申し上げることはできませんけれども、一言だけ申し上げますと、私は三案を拝見しまして、わりあいに共通点も多いのではないかというふうに考えました。普通保守、革新という二つの政党のいろいろな対立の関係がおありになるようでありますが、ただ中小企業政策に関しては、わりあいに同一の点も持っておられるような感じを持ったわけであります。  一、二感じた点を申し上げますと、組織の整備の問題を取り上げておられるのは、社会党民社党両方でありまして、これは非常にけっこうだと思います。たとえば社会党の案と民社党の案というのは、かなり案の内容が違っておるようであります。ですから組織を整備するということは非常にけっこうでありますが、これは、理論的にも実際的にも、いろんな検討を必要とするのではないかというふうに考えます。  それから、中業分野確定でありますが、これも非常に中小企業界の要望というのは、事業分野確定ということにかなり強く出ております。両党の案というのは、そういったものをお取り上げになっておられると思いますが、これはおそらく中小企業者というのは、この二つのものに対しては相当に期待を持っておるかと思います。ただ率直に、これは私個人の意見でありますが、率直に申し上げて、やはり経済というものは絶えず変化し、絶えず発展しておるわけでありますから、中小企業保護するということは、経済の発展を停滞させ、阻害するものであってはならないと思うのであります。しかし、それはほっておいていいという意味ではなしに、先ほど北野さんからお話がありましたけれども、大企業がその経済的な合理性を無視して中小企業分野に進出するとか、あるいは経済的な合理性を持っておっても、非常に急激に圧迫を中小企業に加えるならば、当然中小企業はその経営が倒れてくる。やはりそこに大きな社会的緊張を生ずるおそれもありますので、そういう意味からいいますと、これを放任しておくことはできない。その意味で調整が必要だと思うわけであります。これに対しては、実際的にこれを処理するために調整的な機関が必要だ。この点で調整委員会の案が出ておりますが、この調整委員会の案には、私も、先ほど申し上げたような同じ趣旨でもって、賛成をいたすわけであります。  その他、時間の関係でいろんなことを申し上げることはできませんけれども、私は政府及び自民党の方々のいろんな熱意と御努力に期待し、また社会党民社党の方々もこの中小企業のために基本法の成立に非常に御活躍をなさっておられますので、本国会において、中小企業者が待望するような、また国の経済政策としても非常に合理性を持っておるような中小企業基本法が制定されることが、非常に望ましいと思っておるものであります。
  36. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、日本生活協同組合連合会会長中林貞男君から御意見をお聞きすることにします。
  37. 中林貞男

    中林参考人 私はただいま御紹介を受けました日本生活共同組合連合会中林と申します。したがって、私はこれまでの公述人の方と違いまして、消費者の立場から中小企業基本法など本日問題になっております四法案について、意見を述べさせていただくわけでございます。したがって、これまでの公述人の方と違いまして、消費者という立場で、しろうとのわけでございます。そうしてまた生活協同組合と中小企業は、対立物のようにとかく言われがちでございます。しかし、私らは、決して中小企業と私たち生活協同組合の運動は、対立したり、敵対関係にあるものでは決してないというふうに考えております。また、国民の一人として、私たちも、中小企業の振興ということについては、大きな関心を持っておるものでございます。ただ、私たちは、中小企業の問題と取り組む姿勢なり態度というものが、最も基本的に重要な問題であるのではないかというふうに考えておるわけでございます。今日、政府から提案されておりますところの中小企業基本法が出てまいりましたところの背景というものを私たち考えてみますと、それはやはり今日の日本経済の高度成長、そうして特に貿易、為替の自由化、その中におけるところの対外競争力の強化というような観点から、この法律が出てまいっているのだと思いますが、そういうような背景から出てきているだけに、政府案中小企業基本法は、何といってもやはり中小企業の上層部に焦点が合わされていて、そうしてやはり大資本中心とするところの系列化の促進という色彩を非常に強く持っているんじゃないか。これまでの参考人の方のお話の中にもありましたが、そういう印象を非常に強く受けるわけでございます。そしてまた、政府案においては、よく新聞などにも出ておりますが、それを通じての官僚統制というようなにおい  が非常に強いのではないか。ことに中小企業基本法、その法律だけを見ますと、あまりはっきりしない点もいろいろあるのでございますが、これに関連して出てまいりますところのいろいろの関連法案というようなものを見ますと、内容的なねらいとして、非常にわれわれも教えられるもの、また、重要なものを持っていながらも、その取り組む中において、非常に官僚統制のにおいが強いのではないかというような印象を私たちは受けるのでございます。  特に、消費者の立場からこの中小企業基本法というものを見てみました場合に、やはり私は、一つ問題点を指摘せざるを得ないのでございます。と申しますのは、いま、各方面においても消費者行政ということなり、物価の問題、消費者の問題が、非常に大きく問題になっております。私も、政府の一、二の委員会委員として出ているわけでございますが、そういう中において、今日、経済の高度成長という中において、消費者行政なり消費者の問題がなおざりにされている、ネグレクトされているところに、非常に大きな問題があるのではないか。今日、物価問題がやかましくなってまいっておりますのも、やはりそういう政策の面におけるところの欠陥というところから、いろいろと問題がかもし出されているのではないか、そういうようなことを考えますと、最近の経済立法というものの中においては、やはり経済の高度成長ということに焦点が合っていて、一般の国民生活というものがとかくなおざりにされて、ネグレクトされている面が非常にあるのではないか。たとえば今度のこの政府案によるところの十九条の規定などを見ますと、やはり中小企業の育成とその権益の確保というところに焦点が合わされていて、他の農業協同組合なりあるいは私たちの生活協同組合なり、そういう消費者の自主的な経済活動というものとの関連において、非常に問題を持っているんじゃないか。その他の最近の経済立法の中において、その問題に焦点を合わせるがために、他の国民生活との関係において、いろいろ無理な規制がなされてきている面が非常にある。そういうところから、私は、最近問題になっておりますところの消費者行政なり、物価の問題なり、いろいろの問題が出てまいっているのではないかというふうに考えるわけでございます。そういうような点から考えますと、私は、今度の中小企業基本法というものの中においても、十九条その他において、もっともっと広い視野で、私たちも中小企業の育成ということについては十分配慮はしなくちゃならないが、そういう点についてもっと慎重な配慮があってしかるべきではないかというふうに考えるわけでございます。そしてまた、私は何回かヨーロッパへ行ってみまして、日本において一番欠けているのは、消費者の自主的な経済活動と、生産点におけるところの問題は、日本においてあらゆる面において最近非常に重要視され、取り上げられているわけでございますけれども、国民生活の場におけるいろいろな問題がなおざりにされ、たとえば私たちのやっておりますところの生活協同組合の運動あるいは農業協同組合の運動というようなものについても、ヨーロッパ各国におけるところの政府なり政党の取り組んでいる取り組み方というものと、日本の現状を見ましたならば、私は日本において非常に問題を持っているのではないか。したがって、今度の基本法におきましても、中小企業の育成、そのことについては私らも賛成なんでありますけれども、その取り組み方において、私はもっともっとお考えをいただきたい。そしてまた今度の基本法においては、先ほど申し上げましたように、もっと零細な、日本において一番二重構造の中において苦しんでいる零細な中小企業者の問題が、もっともっと積極的にとらえられてしかるべきではないか。それらの点につきましては、これまでの参考人の方からも述べられたわけでございますが、特に十五条において、企業整備と申しますか、配置転換のようなことが促進されるということになるわけでございますが、そういう場合におけるところのあたたかい施策というようなものが、もっともっと考えられなければならないし、また中小企業に働く従業員の問題についても、もっともっと考えられないと、ほんとう中小企業の育成、その基本法の性格として、私は問題があるのではないだろうかというぐあいに考えるわけでございます。そして特に最近の日本経済の中において、大企業中小企業との関連の問題においても、もっと積極的な意欲ある方針というものが、私は政府案にもあってしかるべきじゃないか。その点は、社会党なり民社党の案と比較しました場合において、政府案は非常に抽象的であって、そしてそういう面において私は欠けている点があるのではないかというぐあいに、政府案社会党案民社党案を見ました場合において、そういう点を感ずるわけでございます。ことに私たち生活協同組合に関係をしております立場からみますと、流通革命というようなことの中において、デパートの進出とか、スーパーマーケットの中だとか、いろいろ商業革命ということばの中において言われているわけでございますが、そういう中において多数の商業者はどういう立場に置かれているかというような点についても、もっと積極的な施策政府によってとられなければいけないのではないだろうか。そういうような点になりますと、私たちは、生活協同組合も一つ経済基盤でございますので、一般の商業者の方が苦しんでおいでになりますと同じような苦しみになり悩みというものを私らも持っているわけでございまして、そういうふうな観点から今度の基本法を読ませていただきますと、私は、やはり何かもの足りないものを感ぜざるを得ないのでございます。私たちも、中小企業近代化なり組織化ということは、積極的に今日の段階においては進めなければならないというふうに考えるわけでございますが、そういう点についても、私は、政府案においては非常に欠ける点があるのじゃないか。社会党案においては、そういう点は積極的に触れられている。したがって、これまでの参考人の方もおっしゃいましたけれども、私はきょうこの委員会に来まして、これまでも何回か公聴会に参るわけでございますが、私も、どなたかがおっしゃいましたように、この中小企業の問題ということが、今日の日本経済において重要な問題であるだけに、政府提案ばかりじゃなく、野党の側からも積極的なる法律案が出ていることは、日本の議会政治の中において非常に進んた形であり、国会の審議の中において諸先生方、もちろん専門家の方でおいでになるわけでございますが、こだわることなく、ほんとう中小企業の育成という立場から、りっぱな中小企業基本法が止まれることを私は切望せざるを得ないのでございます。  最後に、私、先ほど申し上げました消費者の立場から今後のことを考えました場合に、ひとつぜひ要望を申し上げたいと思いますのは、政府案にあります審議会の規定でございますが、やはり生産点の問題と申しますか、経済の問題についていろいろ審議をなさいますときに、ぜひ消費者の代表もお加えをいただいて、そうして消費者の意見というものも十分お聞きをいただいて、中小企業対策が正しく進められるように、諸先生方にご配慮をいただきたいということをお願いいたしまして、非常に簡単でございますが、私の意見を終わらしていただきます。
  38. 逢澤寛

    逢澤委員長 ありがとうございました。  次に、日本専門店連盟常任理事宗像平八郎君から御意見をお聞きすることにいたします。宗像君。
  39. 宗像平八郎

    ○宗像参考人 ただいま御紹介にあずかりました日本専門店会連盟の宗像でございます。私は、小売り商団体の立場から、現在御審議中の中小企業基本法案について、二、三の意見を述べさせていただきます。  私どもが一昨年以来主張、要望してまいりましたのは、実は小売り商業基本法でございました。なぜわれわれが単独立法として小売り商業基本法の制定を要望してまいりましたかと申しますると、同じく中小企業と申しましても、中小工業と中小商業とはむろん共通の面も多々ございますけれども、質的に非常に違った著しい差が実はあるのでございます。そういう点を無視して、中小企業として一律にこれを律するということは、政策の面で非常な問題が起こるんじゃないかと思いました次第でございます。  まず、わが国の小売り商の実態につきましては、諸先生方はすでに御調査済みと思うのでございますが、昭和三十五年度商業センサスによりますというと、わが国に百二十八万八千店の小売り商がある中で、常時従業者、すなわち店主、家族従業員、店員を含めまして一人から二人という、いわゆる生業形態の家族労働に依存しております零細小売り店が実に九十二万店、全体の七一%を占めております。また、三人から四人という、これもほとんど零細小売り店でございますが、その数が二十五万店、それを合計しますと、わが国の小売り商の九〇・七%は、実は零細小売り商なのでございます。中小企業基本法は、いわゆる経済政策立法でございまして、弱者保護社会政策立法ではないのだというふうに聞いておるのでございますが、わが小売り商に関する限りは、九〇・七%は経済政策の線に沿いがたい、いろいろな制約条件を特っております小売り商が大部分なのでございます。そういう点から申しまして、私どもは、小売り商業基本法というものを単独立法として制定していただきたいというふうな要望を実は特っておったのでございますが、諸種の事情から、単独立法の成立は不可能である、もしもわれわれの主張の趣旨が新しく制定されます中小企業基本法の中に余すところなく盛られるならば、あえて単独立法を固執するものではないという立場に立って、これを撤回したのでございます。私どもの考えます中小企業基本対策の大きな柱は、一つは先ほど来公述人の皆さま方からるる御説明がございましたように、いわゆる二重構造の解消の問題が一つ、もう一つは、日本の高度成長に即応でき得る中小企業構造の高度化の問題であろうと思うのでございます。この二つの要請が、中小企業基本法の二本の柱として絶対要請されるのではなかろうかというふうに考える次第でございます。  ところで、わが国の小売り商問題についていろいろ分折検討いたしますと、そもそもわが国の小売り商が、今日のごとく、全く過剰零細性——その経営規模が単に零細であるばかりでなしに、生耐性がきわめて低い。たとえて申しますと、小売り商の九〇・七%を占めておりまする零細小売り商の生産性、すなわち、従事者一人当たりの年間売り上げ高を統計的に検討してみますと、小売り商全体で百二十五万円、一人から二人という超零細小売り店になりますと、常時従業者一人当たりの年間売り上げ高は、実に七十五万円でございます。ところが、百貨店のほうは、三十五年におきまする百貨店の従業者一人当たりの売り上げ高を見ますと、四百七十七万円になっております。さらに、昭和三十七年度の百貨店の従業者一人当たりの年間売り上げ高は五百九十三万円、六大都市のごときは七百八十四万円、日本化繊協会の調査によりますと、日本のスーパーマーケットの生産性、すなわち従業者一人出たりの年間売り上げ高は、五百十三万円となっております。  ついででございますから、アメリカのスーパーマーケットの生産性を申し上げますと、日本にやってくるであろうと予想されたセーフウェイ・ストアズの従業員一人当たりの売り上げ高は五万六千ドルでございまして、日本のお金に換算して二千四十八万円、こういうふうなぐあいでございまして、全くその生産性が隔絶しておるのでございます。つまり一人から四人までの零細企業の生産性と、五人から二十九人までの中小小売り店の生産性、さらに三十人以上の大規模小売り店の生産性、この三段階において生産性の断層がはっきりとあるのでございます。こういった生産性格差日本の二軍構造の底辺に群がっておりまする小売り商のこのような状態がもたらされましたそもそも原因は、一体どこにあったかというのがわれわれの重大関心事であるわけでございます。それはつまりわが国の小売り商が、いわゆる大企業の進出、並びに生協、購買会、あるいは農協等の進出によって、ますます狭隘化しつつある小売り市場の中で、わが小売り商部門が何らの制限もなしに開放されておったという点に、大きな問題があったのではないかというふうに考えるわけでございます。  もう一つの点としてわれわれが指摘しておる点を申し上げますと、第二の点は、大規模小売り商と中小小売り商の資本構造に大きな差をつける経済背景といたしまして、わが国には制度的な資本集中機構が根強く形成されているということでございます。大企業と中小小売り商の間に見られる著しい生産性の格差は、一体どうして生まれたかといいますと、大企業のほうが、相対的に、一そう多くの割合の資本独占的に調達することができる。したがって、高い資本集約度をもって近代化、大規模化ができるからにほかならないのでございます。わが国のように、企業資本の銀行依存度の高いところにおきましては、大企業と銀行資本との密接な結びつきこそ、大企業による独占的な資本の調達、高度の資本集中を可能にする最大の要因であろうと思うのでございます。たとえば法人企業統計年報によりますと、日本の全産業のうち、短期借り入れ金は、資本金一千万円以上の企業が、約六八・三%利用しております。そして資本金一千万円以下の中小企業は、三一・七%しか利用しておりません。資本金五千万円以上の企業をとってみましても、五六・七%を利用しておるのでございます。それでは、長期借り入れ金はどうなっているだろうか。資本金一千万円以上の企業が、八六・五%利用し、一千万円以下の中小企業は、二・五%しか利用していない。これが法人企業統計の示す数字でございます。  いま宮城県の仙台市におきましては、いわゆるスーパー旋風が起こっております。仙台市には、現在スーパーマーケットが三十五ほどございます。そこに昨年末、日本のSSDDSといわれます、セルフサービス・ディスカウント・デパートメント・ストアという、いわゆる遠藤屋というセルフサービスの割引百貨店が開店いたしまして、ものすごい廉売合戦を展開しております。そこへもってまいりまして、長崎屋という衣料スーパーチェーンが東二番町の丸栄という寄り合い百貨店を買収いたしまして、そこにチェーンストアのなぐり込み作戦をかけたのであります。そこでたちまちにして仙台全市はスーパー旋風のあらしに巻き込まれまして、大問題を惹起しつつあるのでございます。その遠藤屋と大手商社の伊藤忠商事が直結いたしまして、資本金の二〇%を提出し、非常の重役を送り、しかも市中銀行に対しては、二行に保証をするというような条件によって提携が成立いたしました。そうして東北大衆に二十二カ所のSSDDSの建設を昭和四十一年までに終わる。そのSSDDSは、百貨店法規制すれすれの千四百八十平方メートルでございまして、所要資金が五十七億円、一スーパー当たりの建設費が一億五千万円というような数字が、日本経済新聞の四月二十日号にはっきり出ております。  われわれが中小企業基本法に期待いたしました、いわゆるいままでの小売り商政策というものは、環境是正対策に終始しておったが、降りかかってくる火の粉を押しのけるというような、そういううしろ向きの姿勢ではだめなんだ、積極的にスーパーと対決できる、あるいは百貨店と対決できる小売り商業の確立こそが、そういう前向きの政策こそが、今後の中小企業基本法の柱でなければならないというふうな観点から、実は中小企業構造高度化という点にわれわれは非常な期待を持っているわけでございます。幸いにして今度の政府案にも、第三条四号にその点が盛られました。しかし、その予算の裏づけをお聞きいたしますと、政府が一億四千万、県が一億四千万、二億八千万が無利子で借りられる。所要資金の半分が無利子で借りられるといったようなことで、いわゆる共同のスーパーを中小企業が団結して展開する、高能率の近代的な合理的な小売り企業に対する政府の積極的な施策であるというふうに理解したいのでございますが、一スーパー当たりの建設費が、一億七千万円、SSDDSに対して伊藤忠商事は一億五千万円、五十七億円の巨額の金を動員いたしまして、全日本に百個のSSDDSを建設しようとする計画を発表しております。こうした緊迫した情勢下にあって、二億八千万円というような高度化資金で、はたして事態の解決ができるだろうか、私は、そういう点についていろいろ検討したのでございます。もちろん国民の税金をお借りするのでございますから、多額の借り入れ金を期待することはできません。これがモデルとなり、呼び水となって、中小企業間から起こりますそういう企業合同、共同スーパーの機運が推進されるならば、非常にわれわれは喜ばしいことだと思うのでございますが、現実にそういう問題が刻々とわれわれの面前に押し寄せてきている事実を考えますと、事は急を要すると思います。  また、日本の百貨店でございますが、百貨店の昭和三十七年度の衣料品売り上げ高は三千八十四億円に達しまして、三十七年度の百貨店をも含めました全日本の衣料品小売り店の総売り上げ商の三八%のマーケット・シェアを特つに至ったのでございます。その小売り業におけるビッグ・ビジネスである京浜地区、京阪神地区の大百貨店で、スーパーマーケットに関係を特たない百貨店は、一社もございません。三越だけが最後に残ったのでありますが、岩瀬社長がなくなりまして松田社長になりますと、傍系の二幸と三井農林が提携して、やはりスーパーマーケットに乗り出し、都内及び郊外に二カ所の土地を買収したと新聞は伝えております。こういうように大手商社、百貨店等の日本における巨大企業が、とうとうとして流通未端の主力経路となるであろうスーパーマーケット市場に向かって押し寄せてきております。日本の有名なある学者、ベストセラーとなった流通革命論のある学者は、流通革命とは大資本によるチャネルの制覇であると言い切っております。中小企業が共同してやったって、スーパーは成功しない。なぜならば、中小企業はただ単に手が不足であるというだけではなしに、人材がいない。ゼロは百加えてもゼロである、こういう極論を言っていらっしゃる学者もあるわけであります。もしも流通革命のにない手として、いわゆる大資本によるチャネルの制覇、流通経路の制覇が、日本における流通革命だとするならば、現在御審議をいただいております中小企業基本法は、どんな意味を特つでありましようか。そういう点を考えますときに私は、一介の小売り商の団体の者でありまして、非常に視野が狭うございます。国家全体の機構、あるいはいろいろな法律技術的な問題はわかりません。しかし、現実われわれが当面しております緊迫した事態から考えますと、もしも中小企業構造高度化を志向するのであれば、もっともっと積極的なかまえがあってしかるべきじゃないかというふうに私は考えます。もちろん中小企業基本法のねらいは、いわゆる経済政策重点でありますから、前向きの企業合同、さらに人材の養成という点にもっともっと力を注いでくださいまして、中小企業基本法が、現在窮迫しつつある小売り商の実態に即応できますような目標を、ぜひ樹立していただきたい。  最後に、この関連法案として中小企業指導法が成立する見通しのように聞いております。中小企業には人材がない、経営スタッフがないということが中小企業の致命的な欠陥であるとするならば、ぜひこの法律も早急に御成立をいただきまして、われわれ中小企業が力を合わせてこの流通革命と対決でき得るように、何分御配慮をお願いしたいと思います。
  40. 逢澤寛

    逢澤委員長 以上で、各参考人からの意見の陳述は終わりました。     —————————————
  41. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、委員からの質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。田中榮一君。
  42. 田中榮一

    田中(榮)委員 午前中御質問を申し上げようと思ったのでございますが、いろいろの御都合で伊東さんと石田さんのお二人はお帰りになりましたので、やむを得ませんので、なお午後引き続いて御開陳をいただきました参考人の方々にお伺いしたいと思いますか、ただやはり委員の側にも時間の制限がございますので、各位の方々に逐一お伺いしたいと思うのでありますが、それができませんので、重点的にお伺いしたいと思いますから、その点を御了承願いたいと思います。  先ほど来、十人の方々の御意見をずっと伺っておったのでございますが、十人の方々、ほとんど全部の方々が、中小企業基本法案というものは、現在中小企業の置かれたこの現状から見まして、このままの状態では中小企業は非常に不振に陥るおそれがある、経済の高度化並びに労働力の逼迫、そのほか貿易の自由化の問題等、あらゆる問題から考えて、この際、中小企業の振興をはかるために、中小企業基本法を今国会において、この政府案か、あるいはまた適当な長所を取り入れてぜひとも成立を希望するという非常に力強い御意見を伺ったのでございまして、この点は、私どももたいへん意を強うした次第であります。ただここでちょっとお断わり申し上げておきたいと存じますのは、ただいま政府案として中小企業基本法案が出ておりますが、実は昨年の国会におきまして、われわれ自由民主党におきましても、議員立法の形式で自由民主党案なるものが国会に提案されておりまして、それが今度政府案提出されましたので、一応これを引っ込めたわけであります。と申しますのは、自由民主党案におきましても、やはり社会党の案と同様に、相当具体的な案も含まれておったのであります。したがって、法文も相当多くの法文が掲げられておったのでありますが、しかしながら、いろいろ慎重に党として検討いたし、また政府の意向を十分にただしました結果、現在の政府案である三十三条、まことに縮まった法案でございまして、きわめて抽象的だという御批判もあったようでありますが、われわれといたしましては、大体政府案が妥当であるという確信を持ちまして、そして現在政府案を支持しておる次第でございます。もちろんこの三十三条に縮めた政府案に対しましては、われわれは真剣に一条一条政府と問答いたしまして、その結果、この三十三条の政府案でわれわれ自由民主党から議員立法で出しました案そのものが十分に運営できる、こういう確信を持ちましたので、実は議員立法で提案したものを引っ込めまして、政府案賛成いたした次第であります。  そこでまず稲川さんにちょっとお伺いしたいと思うのでありますか、稲川さんは、政府案はどうも経済合理主義の上に立っておって、経済合理主義だけを通しておって、社会政策的な事柄が含まれていないというお話でございましたけれども、私は、この経済立法というものは、やはり経済合理主義といいまするか、経済政策というものを中心にして立法すべきものである。社会政策的立法というものは、別の観点から別の法律をもって規定すべきものじゃないかと考えておる。ただ本法案につきましては、あなたの御指摘のように、若干社会政策的な見地からもそういう意向を含ませておるので、この点は了とすべきである、こういう御意見が開陳されたのでありますが、あなたのお説といたしましては、経済立法というものの中にも、やはり社会政策的立法の要素を含ましても差しつかえないという御見解でございますか、その点をひとつお伺いしてみたいと思います。
  43. 稲川宮雄

    稲川参考人 ただいまの田中先生の御質問にお答え申し上げます。  私どもは、今回の中小企業基本法というものは、純粋なる経済立法のみであるというふうには考えていないのでございまして、中小企業を振興するためには、もちろん経済立法としての性格が中心でございますけれども、同時に社会政策的なものもこれに加味していただくことが必要である。政府案にありますところの経法的、社会的不利の補正ということが、大体それに該当するのではないかというふうに考えておるのでございまして、その社会政策というものはどういうものであるかということにつきましては、私どももいろいろ詳しい具体案をつくっておりまして、零細企業対策というものを出しておりますので、詳しく御説明申し上げますると時間がかかりますけれども、たとえば零細企業に対しましては、損失補償制度をとっていただきたいとか、あるいは中小企業の退職共済資金につきましては、もっと政府の助成を手厚くしていただきたいとかいうような点におきまして、社会政策を加味する余地は十分にあるし、それがもう少し今後の関連法規において盛り込まれていかなければならぬのではないか、こういうことを申し上げたわけでございます。
  44. 田中榮一

    田中(榮)委員 今度の中小企業基本法案の前文でありますか、この最後に、「ここに中小企業の進むべき新たなみちを明らかにし、中小企業に関する政策の目標を示すため、」、こうなっております。そこで私は、もちろんこの政策の目標という中には、社会政策的の方向においては、たとえばこのあとにありますとおり、福利施設を十分にやらなくてはならぬとか、そういうようなことは一応うたっておるわけです。しかしながら、この基本法の中に、社会政策的なそうしたこまかい、あるいは賃金制であるとか、あるいは厚生施設であるとか、そういうようなことを入れることは、全体の中小企業振興という点からいいますと、少しおかしくなるんじゃないか。やはりそれはそれとして別な法律をもってやるというんなら、私は話がわかるわけでありますが、この基本法の中に、いわゆるそうした社会政策的な、社会保障的なものをさらに具体的に入れるようなことになると、少しウエートがそっちの方に重くなってしまって、肝心の中小企業の進むべき道といいますか、政策の目標というものが、少しぼけてくるのではないかとわれわれ考えておりますが、その点いかがでしょうか。
  45. 稲川宮雄

    稲川参考人 お答え申し上げます。  先生から御指摘のとおりでございまして、この基本法といたしましては、社会的、経済的不利の補正ということかございますので、大体この条文さえあれば、それであとは関連法規で別に立法していただく、また政府の施錠において十分それをやっていただく、そういうことで、基本法の中に一つ一つ具体的なことを入れるということは、憲法的性格から申しまして、少し困難ではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  46. 田中榮一

    田中(榮)委員 それでは、北野重雄君にちょっとお伺い、してみたいと思うのでありますか、北野さんは、政府提案の中小企業基本法案というものは、やはり経済合理主義が少し強く打ち出されているというような御意見でございまして、この点につきましては、いま稲川さんからもお答えがございましたので大体わかったのでありますが、基本法だから、抽象的になるのはやむを得ないかが、関連法規を一日も早くつくってもらえたならば、それで大体中小企業基本法としての効果を発揮できるだろうといまお話があったのでありますが、私どもも、基本法である以上は、やはりある一定の期間というものはそれを朝令暮改的に直さずに、中小企業としての進むべき安全な道を示し、政策の目標を示すいわゆる根本法規でありますので、この法規の中にあまり具体性を入れるということは——ことに経済現象というものは常に流動して動くものでありますから、そうした動くところの経済現象に対処するためのいわゆる対策樹立の意味の法制につきましては、関連法によってこれをひとつまかなっていったらどうか。また、経済事情の変化に即応した体制をとるためには、関連法規に手をつけて、基本法規というものは、あくまでその目標を掲げるいわゆる憲法であり、基本法である、こういう考え方でおるのでありますが、北野重雄さんは、どういうふうに思っていらっしゃいますか。
  47. 北野重雄

    北野参考人 ただいま田中先生がお考えをお述べになりましたが、私もそのとおりだと思うのであります。まあ憲法的な法律でございますから、絶えず流動いたします経済情勢に応じて、この基本法を毎年毎年変えるというようなことはできないと思うのであります。そういった経済情勢の推移を見ながら、今度は関連法のほうで、しかしそれもなるべく早くやっていただいて、もし関連法がその後の経済情勢の変動にそぐわなくなれば、すぐまたそれを改正していくというようなことで、弾力性を持たしていただきたい。そういう意味から、基本法はある程度抽象的になるのはやむを得ないというふうに考えます。
  48. 田中榮一

    田中(榮)委員 午前中開陳をされました伊東岱吉教授の御意見の中にもあったのでございますが、田山東虎君の御陳述の中に、大企業中小企業との間のいろいろな紛争を処理解決するために、紛争処理のための適当なる機関の設置が必要であるということを御開陳になったのでありますが、これにつきまして、何か田山さんに具体的な構想等が、もし少しでも具体化されたものがありましたならば、ひとつお示しを願いたいと思うのでございますがいかがでございましょうか。
  49. 田山東虎

    田山参考人 田中先生にお答えを申し上げます。  格別これが具体的なものがあるというわけではございませんで、ただ事例をあげまして、先ほどは下請と親会社との関係において、一つ社会的な背景、さらに先ほど御指摘がありましたように、企業についてはやはり経済的合理性に基づく企業の理念、こういうものの間にやはりどうしても誤差があるから、争いは起こるのが当然なんだ。その紛争をどうして解決するかという場合に、やはりこれは公平な第三者によるそういう機関を設置することが必要なんだ。先ほど実は、私は工業関係のことについて必要だという事例をあげたのでありますか、もし時間が許しまするならば、御案内のように、田中先生も私も、東京都石油業協同組合のそれぞれ関係顧問等もやっておりますし、数ヵ月前に起こりましたあの精製元売りとさらに小売商の関係、しかもその中に通商産業省も、あのように価格の問題で入っております。それにもかかわりませず、あのような全国的な乱売によりまして、販売業者がたいへんな迷惑をこうむっておることは先生が御存じのとおりでありまして、これは内容をお話し申し上げますれば非常に専門的になりまするから、先生がその事情をお知りになっておるという前提に立ちまして、やはり商業の面におきましても、あのような問題を調整裁定することが必要なんだ。そのために、私はやはり社会党のほうにおいて特に規定づけておるような、そういう規定というものは、どうしてもこの基本法の中に盛らなければならない、こういう実は考え方でございます。
  50. 逢澤寛

    逢澤委員長 ちょっと質疑者に申し上げておきまするが、稲川参考人は急いでおられますので、稲川参考人に対する質疑がございましたら、先にお願いをいたしたいと思います。
  51. 田中榮一

    田中(榮)委員 それでは最後に中島英信君にちょっとお伺いしてみたいと思います。  中島英信君は、第三条の第二項の規定に関しまして、これは第一項の中に逐条的にいろいろ事項が掲げられておる。そこで第二項の中に「前項の施策は、経済社会的諸事情の変化を考慮して、産業構造の高度化及び産業の国際競争力の強化を促進し」云々と、こう書いてある。その第二項のことは、これはむしろ繰り返す必要はないのではないか、もしこれが重復してここに置くということに何かほかの意味があるということならばまことに重大である、むしろこういうことによって中小企業者に非常な脅威を与えるのではないかという御説明だったのでありますが、私はこの規定は第二項の「前項の施策は、経済社会的諸事情の変化を考慮して、」ということに重点を置きまして、今後一応こうした条項については十分基本法の中に盛って、そうして政府としても助成すべきものは助成する。しかしながら、今後経済現象というものは常に流動いたしますので、「経済社会的諸事情の変化」というものは当然起こってくるのでありますから、この変化を考えて「産業構造の高度化及び産業の国際競争力の強化を促進し、」云々と、こういうふうにうたっておるものと私は考えております。そこで、このことを「産業構造の高度化及び産業の国際競争力の弧化を促進し」とうたいましても、私は、中小企業に対しては何ら脅威を与えるものではないと思うのであります。それはなぜかと申しますと、すでにこの第九条には近代化をうたい、それから第十三条には共同化をうたい、第十五条には事業の転換を示しておるわけであります。それで実はだんだんこうした自由化が迫り、それから近代化がどんどん進み、それから労働力が逼迫してくると、いろいろの事情から中小企業としても転換を余儀なくされるものがあるのではないか、その場合に、転廃業ということをこの規定の中にうたうことは、業者には非常に大きな不安を与えるのではないかというような考え方もあったわけであります。しかしながら、よく考えてみますと、そういうことは、当然これはわれわれとしても予想し得ることであり、また将来起こり得ることであります。そのことをくさいものにはふたをするようなかっこうで、それを全然伏せてしまって、伝廃業のことも全然規定しないということは、これはむしろ中小企業のためによくないことである、そういう考え方から、すでにこの社会党の案の中にも、転業に対してはこういう措置を講ずるとなっておる。政府案の中にもそれが講じられておるわけですね。そういう規定まですでにうたっておるのでありますから、私は、この産業構造の高度化、それから国際競争力の強化促進をうたっても、これは戦時統制経済下における転廃業と違いまして、強制的に権力によって転廃業を命令するのでありませんし、そういう点から申しますと、私は中小企業には何ら不安、脅威を与えるものでなくして、むしろこれを置くことが、私は中小企業基本法案としては懇切丁寧である、かように考えておるのでありまするが、あるいは私の誤解かも存じませんが、その点、ひとつお示し願いたいと思うのであります。
  52. 中島英信

    中島参考人 実は先ほど申し上げたことを繰り返すようなことになるかもしれませんが、削除してという意味は、第一条の「政策の目標」かございますね。これがはっきりあれば、これで第三条の「国の施策」の指導観念としては十分ではないかという意味なのです。むしろこれは、あることによってどういう問題が出るか。その点で産業構造の高度化とか、国際競争の強化ということは、日本の現在の産業政策として、私はやはり重要な目標であると思います。ですから、これは否定するわけではないのです。ただこれだけをうたうと、反射的に出てくる問題があるのではないか。その意味は、こういう意味です。さっき申し上げたように、中小企業投資育成株式会社法でも、小小企業近代化促進法でも、この原理は私は働いていくから、対象がしぼられると思うのです。対象がしぼられるということは、大部分の中小企業というものは、取り残されるか、あるいはやや軽く見られて、特定の産業なり特定の業種にその施策が集中していくことになる。現在やはり中小企業の人たちはこの点に非常に不安を持っているというのが、私は事実ではないかと思うのです。その意味で申し上げたのであります。  転換の方は、私は御説に全然同感なのです。これはやはり中小企業の中でも、多少転換を必要とするものは、私はあると思います。ですから、その点については、はっきりと事業の転換をうたわれたということについては、むしろ私はこれは非常にいい、と言うよりも、必要である。どうしても転換しなければならぬときに、たとえば行田のたびならたびというのは、 日本の生活様式が変わっていくと、全部の企業がそのまま生きていくことができない。ばらばらになって、あすどうやって食えるかわからぬというふうになって転換していったのでは困るので、これにやはりある程度援助措置をされるということは、いいと思いますね。その点は、いまおっしゃった点についても、全く同感でございます。
  53. 田中榮一

    田中(榮)委員 私の質問は、これで終了いたしました。
  54. 逢澤寛

    逢澤委員長 春日一幸君。
  55. 春日一幸

    ○春日委員 あなたは中央会の専務理事をされまして、特にこの法案の中にうたっておりまする協同組合の自主的組織、これはいかにあるべしと期待されておるか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。御承知のとおり、現行制度によりますると、中小企業の自主的組織は、環衛法によるもの、事業協同組合法によるもの、団体法によるもの、いろいろございまして、その機能と成果はさまざま特異性がありといえども、大体において同工異曲のものであると断ずることができると思うのでございます。したがいまして、中小企業諸団体の中には、やはりこの自主的組織というものについて、何らかの形で整備をしてほしいという要望がなければならぬと思うのでございます。われわれも、中小企業運動の指導者として、各地域においてそのような声をしばしば耳にいたすのでありまするが、あなたは、やはり中央会の専務理事として、一個の組織論をお持ちになっておると思うのでございますが、現存のこういう幾つかの法律か錯綜する中において、名和の協同組織がある、これは煩瑣にたえたい。わけて監督官庁において、指導の方針もいろいろ違っておるから……。このような法律の錯綜や制度の重複、これが中小企業の自主的組織の健全なる発展を阻害する面が甚大ではないかと思うのでございますが、これに対するあなたの御見解はいかがでありますか。  なお、あわせてお答えをいただきたいと思うのでありますが、わが民社党案によりますると、中小企業の基幹組織、これを新しく同業組合法、こういう制度を設けて、業種別、地域別の基幹組織を設けて、これに共同事業と調整事業が行なえるようにする。同時に、その補完組織といたしまして、現行のいろいろな事業協同組合でありますとか、その他の形のものをそれに集約をして、基幹組織と補完組織合わせてこれを一本として、健全なる発展に資していきたい、こういうふうに考えておるのでありますが、これに対する稲川さんの御見解をお述べ願いたいと思います。
  56. 稲川宮雄

    稲川参考人 春日先生の御質問にお答え申し上げたいと存じます。  御指摘がございましたように、現在組織に関しまする法律が非常に多岐にわたっておりますので、私どもは、やはりこの組織に関しまする法律はできるだけ一本に整備をするということが必要であるというふうに考えておりまして、そういう意見もすでに出しておるわけでございますが、これは現在の政府案基本法によりまして今後の整備をしていただけるもの、こういうふうに期待をいたしておるわけでございます。  なお、ついででございますから申し上げますると、社会党のほうで出していたたいておりまする組織に関しまする御一見は、まことに適切でございまして、私どもは、従来協同組合というものを中心にいたしまして、そうしていろいろ調整事業等が必要な場合には、特定の協同組合にその機能を与えていくということが、二重加入等を防ぐ上において適当であるという考えを持っておったのでございますけれども、しかし、その後のいろいろの実情から申しまして、どうもこの全体の広い地区をとりまして、全体の業界の発展をはかってまいります現在の商工組合あるいは同業組合的な、そういうものの組織の方針と、同志的に五人でも十人でも集まりまして、共同経済行為をやりまして、そうしてお互いのレベルを上げていくという協同組合的な組織とは、やはり性格が非常に違っておりますので、したがいまして、組織方針というものも、どうしても違わざるを得ない。したがいまして、二重加入という弊害は生じてまいりますけれども、これは割り切りまして、やはり二つの制度というものが、どうしても大きく分けまして必要ではないかというふうに最近は考えを変えておるわけでございまして、その点におきましては、民社党でお出しになっておりますところの同業組合と協同組合、これはやはり二本が必要ではないか。ただし同業組合が、いま基幹とおっしゃいましたが、基幹でありまして、協同組合かその補完作用をするという、主と従のような関係ではなくして、やはり両方の組織というものは、同じ重要性を持って両立さしていくということが必要ではないか。ただ産地などにつきましては、そういった同業組合的なものと協同組合的なものとを二つ分けてつくるということは、これは重複いたしまするし、その必要もございませんので、そういう点におきましては、同業組合を中心にいたしまするか、あるいは協同組合を中心にいたしまするか、いずれかを中心にいたしまして、両方の機能を一本でいくという制度が必要ではないか。しかし、これは産地とかあるいは特定の場合に限定されるのでありまして、一般論で申しますると、広い地区の、たとえば県単位をとり永して、広い範囲の業者を集めていく、調整的だ、あるいは業界全体の発展をはかっていくところの同業組合的なもの、商工組合的なものと、それから同志的に経済行為をやりまして、レベルを高めていくところの協同組合というものの二本建てが、やはり必要ではないかという考えを現在持っておる次第でございます。
  57. 春日一幸

    ○春日委員 さすがにわが党の案に対して相当の御理解をお持ちのようでございまするが、ただ、この基幹組織とその補完組織との関係は適当ではなくして、やはり両方とも並置並存的な形においてこれを運営せらるべきであるという御意見については、私は、それではいままでと大差ないではないかと思うのでございます。お読みいただいたと思うのでありますが、同業組合は、言うならば団体法の例の調整組合的なものであって、一つの府県において一個これを認める、こういう方針であり、そこにおいて調整事業、共同事業を行なっていくのでございます。補完組織は、やはり同志的協同組合組織、これは五人でも七人でも、地域的に同志的にやっていけるというのでございますから、そういうようなものが基幹組織と並列に置かれては、これはまた運営というものかなされ得ないのでございます。それぞれの権能、機能というものか同じものであっては、これは意味をなさないのでございます。しかし、この問題については、あなたもお急ぎのようでございます。いずれにしても、わが党の同業組合法を一ぺん御検討を願いまして、適当な機会にあらためて中央会としての御意見をひとつ御明示願えれば幸いと存じます。  お伺いをいたしたいのでありますか、御迷惑がかかってはいけませんから、この次にいたしましょう。
  58. 逢澤寛

    逢澤委員長 どうも御苦労さまでございました。  次に、永井勝次郎君。
  59. 永井勝次郎

    ○永井委員 中小企業についての権威ある皆さま方から、いろいろ貴重な御意見を拝聴させていただきまして、ありがとうございました。各参考人のお話を総合いたしますと、政府案よりは社会党案がより皆さま方の御希望するところの方向をとっておるという確信を深めた次第でございまして、この脈も、わが党案を御理解いただきまして、ありがたくお礼を申し上げる次第でございます。  そこで、三つの点について御意見を伺いたいと思うのであります。  第一点は、政府中小企業基本法は何かピンぼけしているのではないか、こういう点についてであります。御承知のように、中小企業といえば、日本の全産業の工業の面においても九九・五%、あるいは商業、サービス等の分野におきましては九九・六%、大企業というのは〇・五%ないし〇・四%にすぎない、こういうふうに、大部分が中小企業が対象である。そしてその中小企業の中で、常時従業員が製造業の分野で十九人以下という零細な業態の階層が、数字をいまここに持っていないのですが、八五%か八七%、ほとんどが零細だ。商業関係では、九十何%が常時従業員九人以下という零細なものだ。そういうふうにいたしますと、中小企業基本法というものの焦点は、ほとんど大部分を占めておる零細のところに合わせる、これが、中小企業基本法というからには、その量、賢両面から見て正しいねらいではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、その点はいかがでありますか。この点について北野さん、宗像さん、中島さん、田山さんから所見を伺いたいと思います。そしてこの中小企業の中におきまして、たとえば資本金一千万円から五千万円の間が、約一万戸あります。それから五千万円から一億円の間が二千戸弱である、こういうふうに、上のほうをだんだん伸ばしていきましても、その対象となるところは非常に少ない。大部分は先ほど申しました階層である。そういたしますと、さらに中小企業基本法というものの焦点は、先ほど言った量、質大部分を占めておるところに焦点を合わせるべきものではないか、こういうふう考えるわけであります。この点について意見を伺いたい。  第二点は、事業分野の問題であります。こういう膨大な、そして非常に力関係が異っておる……。
  60. 逢澤寛

    逢澤委員長 御発言中でございますが、永井君にちょっと……。参考人にお尋ねになるのだから、あらかじめだれにこのことを聞きたいということを御明示を願いたいと思います。
  61. 永井勝次郎

    ○永井委員 事業分野については田山さん、それから中島さんに御意見を伺いたいと思います。  膨大ななにがあるのですから、それが一緒にやれるわけじゃありません。長い時間かかってやっていかなければならない。そうすると、一部は近代化して一部はおくれておるということになると、そこのところに弱肉強食が起こる。先ほど来お話がありましたとおりに、中小企業の対象になるところはこんなに膨大だ。そうすると、上のほうから大企業はどんどん下がってくる。下のほうからは副業的な、たとえば年金をもらって退職したというような人が、幾らかの年金で商売を始めるというように、どんどん下のほうから流れ込んでくる。上からと下からと中小企業基本法の対象となる階層が常に動揺して、そして一部を近代化したと思うと、また近代化されない部分がどんどんあとからやってくる。こういうふうに無制限なノーズロース的な対象では、中小企業の諸対策というものの基盤が常に動いて、底なしの沼のような状態ではいけないじゃないか。そこでやはり事業分野をある程度確保いたしまして、そしてその中における施策の対象をきめて、その中から諸施策を進めていくのでなければ、常に動揺やまない、何が何をやったかわからないという結果になるのではないか。現実には、たばこにいたしましても、酒にいたしましても、これはやはりちゃんと販売なら販売のなにがきまっておる。あるいはビールなり酒なり、こういうものの製造関係でも、ちゃんときまっておるというふうに、そういうところに業態は安定しておるのでありますから、そういう一つの事業分野というものを確保しながら、乱雑になっていた従来の中小企業の内容を整備しながら、その中から近代化していく。そして一定の段階にいったら、その中でまた発展的にその事業分野を考えていってもよろしいのではないか。段階的な一つの発展過程としてそういうものが必要ではないか、こう思うのであります。その点についていかがでありますか。  第三点は、格差是正、生産性の向上の問題でありますが……。
  62. 逢澤寛

    逢澤委員長 永井先生に御相談申し上げますが、このくらいで一応回答してもらってはいかがですか。——まず前段につき申して北野参考人から……。
  63. 北野重雄

    北野参考人 永井先生の第一点でございますが、確かに中小企業と一言で印しましても、現実の姿といたしましては、小規模零細企業というものが非常に数が多いわけであります。そういう方々の立場も、十分考えなければならぬ。そういう点は、先ほども陳述のとき申し上げましたように、基本法案自身におきましても、小規模事業者につきましては、特に社会政策的な配慮もするという考えが出ておるわけです。ただ、私一個の考えでございますが、中小企業基本法案をこうして打ち出します以上は、中小企業の中でも、中略企業ありあるいは小企業あり、零細企業、この全部をやはり対象にして基本法としては組まれなければならない。ただ関連法の中には、たとえば投資育成会社法案のように、特に中堅企業と申しますか、あるいは中堅企業になり縛る企業を対象にするというふうな特定な目標による法律もあろうと思いますけれども、基本法自体としましては、やはり中小企業というもの全部についての基本的な考え方なり施策方向を示していただく、これが必要ではないかと思うのであります。
  64. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、宗像平八郎君。
  65. 宗像平八郎

    ○宗像参考人 永井先生の御指摘のように、小売商業に関する限りは、九〇・七%は実は一人から四人の零細小売り店でございます。したがって、それがやはり小売り商の基本対策の対象とならないというようなことでは困ります。ただその九十二万店の超零細小売り店、二十五万店の零細小売り店、それと五人から二十九人までの中小小売り店、これを同一同律に振興対策を講ずるという点には、問題がございます。逆に、中小企業基本法経済政策立法であるから、零細小売り店は、社会政策立法の対象として関連法規でこれを処理する、対処するというような考え方には、賛成できないのでございます。その零細小売り店のうちにも、近代化しようとしても近代化し得ないいろいろの制約条件がございまして、そういった層がやはり相当あるのでございます。もちろん近代化しようとする意欲もなし、近代化しようとしてもし得る能力もない、そういう階層に対しましては、やはり社会保障制度を十分に考えながら、成長産業のほうにその労働力を吸収する、そういった業種転換の方途も、これはやむを得ないのでございますが、そういった零細小売り店の中にも、やはり小規模ながら、一つ社会存在として使命を果たしたいという意欲に燃えつつある小売り店も、たくさんあるのでございます。そういう小売り店に対しましては、やはり中小企業基本法において、近代化しようとする意欲のある零細小売店に対しては、十分なる政策の充実をいたしまして、金融的にも、税制的にも、あるいは規模拡大のための高度化資金の投入等によりまして、近代化への道を開くのが、やはり中小企業基本法の使命じゃなかろうか、そういうふうに考えます。
  66. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、田山東虎君からお答えを願います。
  67. 田山東虎

    田山参考人 分野の確保という点の永井先生の質問に、私はごく具体的な例で申し上げたいと思うのであります。実は新宿を中心といたしまするあの辺に、約三十数軒のくつ下の製造業者がございます。いずれも非常に零細なものでありまするが、しかし、その沿革と申しますか、仕事を始めた年限というものは、非常に古い歴史を持っておるということに、私数年ほど前に驚いたのでありまして、ある方などは、先祖から始まりまして、明治二十八年からこのくつ下の仕事が始まったのだ、連綿として今日もまたその事業が続けられておるという、こういう実は仕事でありまするけれども、終戦後、これもまた流通革命のいたすところか、御案内のように、綿糸であるとか、あるいはまたナイロンの糸というようなものが、配給割り当て制度に変わってまいりました。特に歓迎をされる原糸であるナイロンの糸に至りましては、さまざまな関係において、究極は通産省がそのワクを抑えておる。こういう形で二、三の大手筋がその原糸のもとをつかんでおるという実態の中において、一体東京都のこの小さな仕事を行なっておるこういうくつ下界というものは、どういう状況であったかと申しますと、私は毎日そのころテレビに白ダイという、たしかあれは補助足袋でございましたか、たいへんなスポンサーで、非常に宣伝等を行なってくつ下の販売を進められたことは、御存じのとおりであります。  もとのお話に戻りますが、私は、こういう古い歴史を持った零細なくつ下の方々が、どういう関係か、役所のほうからその原糸の割り当てを受けることができない。どうすればこの原系を、高い価格ではなしに、中間くらいの価格でこれを仕入れることができるか。そうすれば、われわれの企業というものはきわめてスムーズに行なわれる、こういう角度から、いろいろ通産省などにまいりまして知慮を借りまして、実は城西靴下工業協同組合というものを指導をいたしたのであります。そういう関係から、当時やみ値で一ポンド千二百円もいたしましたるその原糸は、ちょうど原価がたしか六百二十円であったかと思いますが、その中間くらいの価格で原糸を仕入れまして、ともかくこの工業組合によりまして軌道化したという、実はこういう実例があるのであります。今日非常にメリヤス関係におけるところの機械関係は、たいへん発達をいたしましたが、聞くところによりますと、日本におけるこういうメリヤスのくつ下の編み機というものは、その生産が多いとか少ないとか申しましても、やはり依然として一台一台の生産というものは、大企業であろうと、あるいはこのような零細な方であろうと、実はその能率には変わりはないわけであります。どこが違うか。原糸は同じである。ただいろいろ新しい染色が施されたり、工夫があるゆえに、価格に非常な高低がある。ところが、先ほど申しましたあれほど宣伝をいたしておりまする白ダイの会社は、一体どのようにして生産を行なったかと申しますると、実はこういう新宿を初め、あるいはまた豊島等ございまするが、そういう小さい業者のところにこの原糸を渡しまして、それを適当に安い価格で仕切りまして、自分のところへ持ってまいりまして、そうしてこれをあのように販売をいたしておったというのが、現実でございます。  この分野の確立というようなものにつきましては、流通革命の今日におきまして、実は正面にいって、商業関係において分野を確立すべしという確信あるお答えをすることに実はまだちゅうちょするわけでありまするが、ただいまのような、だれが考えましても、これは中小企業の明らかなる分野である。ところが、それに対しまして、たとえば、そういうものに対しては、原糸を一ポンド千二百円で売る、自分のほうならばそれを六百二十円だ、こういう実は原糸の形において、この企業を圧迫している。そうしてそれに乗り出すという、こういうやり方を見た場合において、どうしてもこの零細企業分野というものは、そういう大きい業者によって蚕食さるべきではない。私はこういう事例を身近に感じておりまして、そのほかいろいろな事例等もあるかと思いますが、ともかくもこういう分野というものは、広い産業界にはかなりあるように思うのでありまして、ひとつ基本法でも制定され、分野の確立というようなものが規定づけられた際には、どうかひとつこの問題を国会等においても、この業種については、十分御検討をいただきたいと存じます。
  68. 逢澤寛

    逢澤委員長 質疑をなさる方に申し上げまするが、質疑者がまたあと四名おられますので、その点御勘案の上、大体五時ごろまでには終了する予定でありまするから、御質疑をお願い申し上げます。
  69. 中島英信

    中島参考人 永井先生の御質問にお答えしますが、政府案はピンぼけじゃないかというお話でございましたが、私は、別にピンぼけだとは思っていたいわけです。これは自民党の方たちにも、中小企業問題に明るい方がおられますし、政府のほうも、非常に有能なスタッフを集めて案をつくられたと思います。しいて言うならば、あまり優秀過ぎた人たちが集まったために、むしろピントが合い過ぎたかもしれぬ。もうちょっとソフトフォーカスでもいいところがあったということは、先ほど申し上げたとおりであります。  第二の、零細企業中小企業対策の最も主要な対象になるのじゃないか、この点は、私もそのように思います。中小企業というときに、絶対的な中小企業と、大企業との関係で相対的な中小企業とがあると思うのですが、その意味から言うと、中小企業政策というのは、一貫して私は絶対的な中小企業から目を離すわけにはいかないと考えるわけであります。  第三点で、範囲のものでございましたが、この点はまたちょっと逆に考えております。というのは、現在のよりに経済成長し、発展していくに従って、大企業、巨大企業というのは、ますます発展していきます。したがって、それとの相対的な関係で、中小企業問題というのは当然起きてくる。これは日本の場合を歴史的に見ても、世界各国の状況を見ても、すべて共通でありますし、各国の中小企業政策は、すべて中小企業に対する範囲を拡大してきているということは、そういうやはり経済発展の上から生ずる非常にはっきりとした根拠があるんだと思うのであります。したがって、今日のように、この自由化に対処し、あるいは国際的なブロック経済に対処して、日本経済を進めていく場合に、この中堅企業対策というものは、やはり非常に重要になると考えるので、その点からいいますと、零細企業対策と並んで中小企業育成の政策を打ち出すということそれ自体は、むしろ非常に必要になってきているかと考えるわけであります。その意味では、企業の範囲が広くなることはやむを得ない。私は、むしろ資本金一億くらいまで必要だと思っております。その理由は、一つには、そういうふうに総体的に中小企業の範囲か拡大していっているということが一つと、第二は、中小企業と大企業と分ける一つの目安というのは、資本の調達力にあると思うのですが、今日資本金一億円以上のものは、証券市場を利用して自己資本を調達することができますけれども、それ以下のものはできない。この点ではっきりとここに一つの線が引かれている。もう一つは、従業員三百人ととりますと、これはやはり資本金一億円ぐらいになると思うのであります。今日従業員三、四十人のところで資本金三、四千万円というところは少なくないのでありまして、実際に今日の事業活動の実態を見た場合に、従業員三百人に対応する資本金というものは、一億円ではないかと思います。この意味からいいますと、私は範囲が広がっても差しつかえない。もし原資が足らなければ、財政投融資にしろ、その他民間資金にしろ、中小企業に十分にこれを投入することを考えて、中小企業政策としてはやはり前進的であるほうがよいのではないかというように考えおります。
  70. 永井勝次郎

    ○永井委員 最後に、生産性向上における格差是正の問題でありますが、この中小企業基本法によって格差是正ができるのだ、こういう方向をとられているわけでありますが、それならば、生産性向上のための設備投資などを見ますと、これは大企業のところに集中投資されていて、中小企業分野はほとんど三〇%以下だ。そういうところから見ても、このような状況なら、ますます格差は拡大していくだろう。それから中小企業の中で、設備投資資金でありますが、中小企業ワクが、いままで資本金一千万円というのが五千万円まで上がった。上のほうに上がって、それだけ貸し出しワクがふえてくるわけでありますが、それに比例して資金量が、政府の機関なり、あるいは商工中金なり、あるいは市中銀行における中小企業対象の資金ワクというものがふくれていくならばこれは別なんですが、そう大してふくれないということになれば、上にいっただけ中小企業の中において集中融資されて、下のほうはさらに資金量が減ってくる、そういう関係になると思うのです。そういたしますと、設備投資はますます困難になる、こういう関係で、格差是正に対する先行きの見通しというものは、なかなか楽観を許さない。そうして共同化ということになって、大きな施設を必要とする。それを商工中金でまかなうとすれば、口数を少なくして集中しなければ、それらの事柄が完成していかない。そうすると、セレクションして、少数にしぼって仕事を完成させる、こういうことになって、中小企業全般からみまして、ますます困難な条件が出る、こう思うのであります。でありますから、したがって、この中小企業ワクを上へ上げれば、それに比例して資金ワクがもっとふくれていく。それから格差是正という本来的な中小企業目的がなににあるのですが、それが裏づけになって、もっとどんどんふやしていくということで、少なくとも政府機関及び商工中金、ことに共同化が促進される今日においては、商工中金の資金ワクが飛躍的に拡大されなければ、これはここで言ってみても格差是正はできない、逆になる、こう思うのでありますが、この点について北野さんのお考えをお伺いいたします。
  71. 北野重雄

    北野参考人 確かにただいま永井先生のおっしゃったような心配が、多分にあるわけでございます。それだけに、てまえみそになって恐縮でございますが、特にわれわれのほうの資金源を拡大するように、もちろん私どもは自己調達の資金もあるわけでございますから、そのほうをまず努力いたしておりますが、それの足らないところは、できるだけ政府財政資金で補っていただくという必要があろうと思うのであります。ただ、いま御指摘のような、とかく金融機関としては、力のある大きなところに偏しがちなきらいがございます。商工中金といたしましては、特に政府関係金融機関でもございますだけに、かねがねそれを非常に戒めておりまして、大口化を常に抑えるように努力いたしております。できるだけ広く、また零細金融のほうにも、全体のワクからみましてもよけいに金が流れるように努力いたしております。なおまた、そういう比較的力のあるいわゆる中堅企業につきましては、かりに融資をいたします場合にも、私どものほうはできるだけ少なくいたしまして、一般の民間金融機関、特に市中銀行のほうで主として見てもらって、そしてわれわれ組合金融の面で見なければならぬ面はそれを補っていく、こういう考えでやっておるわけでございます。したがいまして、御指摘の中小企業者の範囲を広げるという問題でございますけれども、私も、実は従来のように資本金が一千万円以下というのでは、あまりに小さ過ぎると思うのであります。大体伺いますと、従来は従業員規模というものを主にしておったわけであります。そして従業員規模三百人以下という規模につきましては、資本金規模からいきますと大体五千万円をこえるわけでございますから、従来も、そういった方々がかりに資本金が一千万円を三えておりましても、従業員が三百人以下であれば、たとえば中小公庫あたりでも融資の対象になったわけでございますから、今度の基本法におきまして、万一これが一千万円、かつ、三百人以下ということになりますと、従来の対象であったものがはずれるものができるわけであります。そういう点からいたしまして、私は、政府原案をまだ不十分と思うくらいでございますけれども、若干資本金規模を上げていただく。しかし、そうだからといって、現実の政府施策の運営なり、あるいはまたわれわれ金融機関として仕事をやります上におきましても、それがために零細企業が割りを食うことのないように、特別の考慮もし、また資金源その他についても考えていただく必要があろう、かように考えております。
  72. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、浦野幸男君。
  73. 浦野幸男

    ○浦野委員 五時までに終わるということで、あとまだ久保田先生、春日先生が御質問なさるようでありますので、ごく簡単にしぼって御質問を申し上げたいと思います。  まず最初に、北野さんにお伺いいたしたいと思いますが、実は今度の中小企業基本法案政府案に対して、あまりにも具体性がないという声は、大阪においても、あるいは名古屋においても、また今日この東京公聴会においても、同じような意見が各参考人から出されたわけであります。一方、政府案といたしましては、ほんとうの基本であるから、これに対してこれから関連法案でいろいろと肉づけをしていこう、こういうことで一応進められておるわけでありますが、特に今日も、どなたの参考人からも、中小企業のうちいわゆる零細企業、二人、三人あるいは五人でやっているような零細企業に対しての具体性がないというお戸が、非常に多いわけでございます。  そこで、私は北野さんにお尋ね申し上げたいことは、今日、日本経済が高度に成長して発展をしつつある。そこで、先ほど中小企業は三百五十万というお話もございましたか、このたくさんな企業が、それぞれに競争をして生き抜くために努力をいたしておるわけでありますが、そこへ百貨店とかスーパーマーケットとか、こうした企業がどんどんと進出してくる。そこで根本的な問題でありますが、これからの日本企業が、この基本法なり関連法をつくって、いまの中小企業を何とかして生かしていくという方向で努力をすべきであるか、あるいは少しでもこうした企業を大型化していくということに方向を進めていくべきであるか、これからの施策の方針、方向をお伺いいたしたいと思います。  それから、それに関係いたしまして、先ほど事業の転換対策をぜひとも具体的にせよ、こういうお話がございました。事業の転換対策というものは、現在やっておる事業を転換して、他の業者と協業をしていくことを意味せられるのか、あるいは全然その業種から離れた方面に転換をしていく指導をせよという意味なのか、あるいは全然変わった仕事、いわゆる社会の要請する産業に転換をしていく方向に指導せよといわれるのか、この二点をお伺いいたしたいと思います。
  74. 北野重雄

    北野参考人 最初の御質問でございますが、この基本法にもその精神があらわれておりますが、やはり日本経済の全般の産業構造の高度化に伴いまして、中小企業につきましても、いままで生産性が低いだけに、それぞれ業種、業態に応じましての生産適正規模というようなものを検討いたしまして、それを何らかの方法で業界に派しまして、そして業界の自主的な努力、特に共同組織を利用しての適正生産規模に引き上げていくという業界の努力、またそれを政府なり関係機関が助けるということで、大型化と一言に言いますと語弊があるかと思うのでございますが、それぞれの業種に応じての適正規模に持っていくということが、必要ではないかと思うのであります。それに関連いたしまして、現にあります中小の商工業をいまのままの姿で維持し、安定していくということは、とうていできないと思うのであります。それができれば問題は非常に簡単でございますけれども、やはり経済の動きというものは、経済の合理性にのっとりまして、どんどん変化をしてくるわけでございまして、それは生産面におきましても、流通面におきましても、その方向に向かっていかざるを得ないわけでございます。また、そうすることが、日本国民経済全体としての大きな発展になるわけでございますが、やはり小さな零細企業の方々も、できるだけその力を結集されまして、いわゆる共同化等によりまして、その生産性を高められるように努力をしていただく、それを助成するという方向で考えていかなければならぬのじゃないかというふうに考えます。  第二に御質問のございました事業の転換につきましては、具体的の場合によっていろいろ考えられると思うのであります。従来やっておられました事業で、その製品の品種を転換するというふうなことがやれる場合もございましょうし、たとえば機屋さんの場合に、いままで絹、人絹をやっておられたのが、化繊、合繊、特に合繊に転換した方がいいというような場合もございまして、その場合に若干の設備の置きかえが必要になるというような場合もございます。また場合によりましては、将来の需給関係から考えまして、残念ながら当然衰退していくような企業につきましては、やはり思い切った事業転換、場合によっては百八十度の転換も必要じゃないかと思いますが、そういった場合にも、なるべくならば、その人たちがいままでやっておられました経験なり、技術なり、あるいはまたその持っておられる設備が、若干なりとも有効に使えるという方向の業種なり製品を考えるということが、必要ではないかと思うのであります。また、場合によりましては、その企業者も、残念ながらその事業としてやっていかれることがとうてい困難である、ことに生業的な零細企業には、そういう場合もございましょうから、その場合には、他の事業に転職をされるというふうな場合も、必要ではないかと思うのであります。この転業対策につきましては、いろいろきめのこまかい政府の誘導なり助成の措置が必要と思うのでありまして、やはり国が、都道府県あるいは市町村、その他商工会議所、商工会、あるいは中小企業団体中央会といったような指導に当たられます機関とよく連絡しまして、それぞれ地元地元におきまして、それぞれの業者が転換すべきいい方向を打ち出しまして、それがスムーズに転換できますような、いろんな金融その他の措置を講じていくことが必要だろう、かように考えております。
  75. 逢澤寛

    逢澤委員長 参考人の方々に申し上げまするが、委員からの質疑も要領よく簡潔に申し上げまするから、恐縮でありまするが、答弁も要点的にお願いいたしたいと存じます。
  76. 浦野幸男

    ○浦野委員 それでは時間がありませんので、質問を田山さんと中島さんに一つずつお願いいたします。  最初中島さんにお願いいたしまするが、過当競争の問題から触れられまして、中島さんは登録制ということを申されましたが、この登録制ということの意味を少し幅広くお願いいたしたいと思います。
  77. 中島英信

    中島参考人 登録制の問題は、過当競争のときに申し上げたのですが、登録制そのものは、もっといろいろな全般的な小、零細企業対策の一つの点になると考えておるわけです。企業登録制には二通りあるかと思いますが、一つは純粋に登録するたけである。一つは営業制限の含みをもってやる登録制とありますか、私の申し上げたのは前者のほうでありまして、純粋の登録制であります。今日、零細企業の中には、政府のいろいろな施策についてもほとんど何も知らないというのがおられる。またその意見を反映することができないところもある。したがって、政府がいろいろの施策をやっても、それがなかなか浸透しない場合もありますので、基本的には、そういう意味で登録制をやって、これを一つの基礎にして、この実態を明らかにすると同時に、この上に立って企業基準制であるとか、あるいは零細企業の最低価格制味を考える一つの基礎になるという意味において、過当競争対策の一環になるというふうに考えたわけであります。
  78. 浦野幸男

    ○浦野委員 田山さんは下請企業の調整機関の問題で触れられましたが、この調整機関という問題は、社会党案にも民社党案にも相当強調されておるわけでございまするが、私がいま聞き取りました田山さんの調整機関というものの置き方と、社会党民社党案の考えておられることと、多少違うような気がいたしまするが、田山さんは、大企業下請企業との関係の調整機関を申されたのですが、大企業下請企業だけの調整機関の意味か、あるいは中小企業全般の調整機関の意味か、そこのところをちょっとお伺いいたしたいと思います。
  79. 田山東虎

    田山参考人 お答え申し上げます。  実は、ちょうど田中榮一先生からも調整機関設置につきましての御質問がありました際に申し上げたわけでございます。これもあながち大企業下請との関係だけに起こる問題ではございませんで、商業関係分野におきましても、調整を必要とされる、あるいはまた裁定を必要とされる。実はこれは同業関係におきましては、調整関係のものは商工組合のようなところでやるように政府のほうでは指導をしておりますけれども、実際面におきましては、その商工組合等で調整を行なうことのでき得ないようなもの、しかもそれが業界等に及ぼす影響というものが非常に甚大だということが実は数々ありますので、特に大企業下請との間にそういう問題が起こることのみを処理するというものではございません。
  80. 逢澤寛

    逢澤委員長 次は久保田豊君。
  81. 久保田豊

    久保田(豊)委員 時間がございませんから端的にお伺いいたしますが、まず第一に北野さんにお伺いしたいと思います。  いろいろ法律をつくることも大中でありますが、この法案の真の目的とする二重構造の解消なり、あるいは格差是正をやるということは、結局最後は設備投資なり何なりの資金の問題が、一番重要な根幹をなすと思うのであります。ところで問題は、日本ではそういう意味で、いわゆる企業資金といいますか、そういうものが非常に寡少なんです。それに大企業中心として高度成長政策をやるから、一般国民的ないわゆる資金の蓄積というものを、銀行その他を通じて大企業に集約していく。したがって、中小企業には回らない。ですから、格差はいつまでたっても、開くことはあっても、少なくなることはない。こういうことが今日の実情だと思います。これを根本的に改めるのには、いまの政権なりいまの経済制度では、なかなかできないことは明らかであります。そこで考えられることは、そういう設備資金関係に回し得る年間の資金というものを、国全体として各金融機関を通じて測定をして、そうして政府計画を立てて、これを大企業のどの業種にどういうふうにするか、あるいは中小企業の上級のものにどうするとか、あるいは中小企業零細企業のほうにはどう回すとかいうふうな、大きな資金配分を円滑にやるということ以外にはないと思うのであります。しかも、それは法律で各民間金融機関を規制しようとしても、これは今日では規制はできないと思います。また規制をするような法律をつくれるような今日の政治情勢ではない。そこで問題は、政府なり、政党なり、あるいは金融機関なり、それぞれの各階層代表なりが、そういうことを話し合って、少なくとも各銀行の自主調整をどの程度責任を持ってやれるかということに帰するかと思うのでありますが、それが今日の限度であろうと考えるわけであります。一番温和な形でやるとすれば、それです。それ以外には、よほど大きな政治的なフリクションを覚悟で、力関係でとるということ以外にはなかろうと思います。政府関係の三銀行の資金を増額するということもあれですが、これもいまの段階で急速に倍にしろ、三倍にしろと言ってみたところで、いまの政治情勢なり金融情勢の中では困難ではないか。したがって、いまのような暫定方針というものか、やはり一番具体性を持つのじゃないかと思うのでありますが、そういう点の可能性があるのか。もし可能性があるとすれば、具体的にはどういう構想でやったらいいかという点について、特に金融の専門家としての御意見をお伺いしたい。  さらに、この点については中島さんも非常に御研究のようでありますので、もし中小企業立場から、こういう問題について何らかの対策があり得るとすれば、ひとつお示しをいただきたい、こう思うのです。
  82. 北野重雄

    北野参考人 実は、私、金融の仕事に携わっておりますが、いわばしろうとのような人間でございまして、ただいま久保円先生から大へんむずかしい御質問をいただいたのでございますか、仰せのとおり、いまの段階では、法律的に中小企業設備投資に幾ら幾ら回せというわけにはなかなかいくまいと思いますので、やはり行政指導といいますか、そういったことで、都市銀行、地方銀行も、大企業のほうにばかり資金を流すんでなしに、できるだけ中小企業の——しかも設備投資意欲は最近特に旺盛になってきておりますから、貿易自由化を控えて国際競争力を増さなければならぬというので真剣になっておられるわけでございますから、いわゆる市中銀行も、できるだけその面に流していただくように考えてもらうということ、これはやはり政府のほうでいろいろ申し入れをなされれば、ある程度いくんじゃないか。現に一昨年来の金融引き締めの際にも、政府当局からそういう申し入れがございまして、ある程度効果があったと私思うのであります。そういったことで、できるだけ中小企業、特に設備近代化のための設備資金を豊かにするように、各金融機関いずれも真剣に考えていただく。それからもう一つは、私どものほうの政府系の金融機関、現在三機関で、現在中小企業のほうに回っております設備資金の三割程度まかなっておるわけでございます。まだまだ不十分でございますけれども、設備投資に関する限りは比較的シェアが大きいわけでありますので、やはり財政資金をふやしていただくということも必要でございます。それからやはり政府のほうで全体の設備投資のいろいろな見当をつけられます際に、率直に申しまして、十二業種とか、大きな企業設備投資の必要資金の申し出は聞いておられるようでございますけれども、中小企業についての設備投資の需要というものがなかなかつかみにくいという関係もございますが、これは特に御努力願って、ほんとうに必要な資金量がどのくらいになるかということも考えられまして、それは優先的にでも確保できるようなことを十分御配属願いたい、かように考える次第であります。
  83. 中島英信

    中島参考人 それじゃ、ごく簡単にお答えいたします。  第一は、財源の問題であると思いますが、現在の日本は、国民所得と通貨量という関係から見た場合に、国民総生産あるいは国民所得に対する通貨量というものは、私は比較的少ないと思います。この点では、これをふやすということが一つの問題であって、やはりインフレーションを生じないような範四内において、日銀の通貨供給の方式を変えるとかいうような問題もあります。それからもう一つは、その資金量の中においても、政府資金と民間資金配分がアンバランスになっているんじゃないかと思うのでありますが、そういった点を是正するというような問題があるかと思います。  第二の計画性の問題ですが、これは自由経済を基調にして漸次一種の計画性を盛っていく方向はとられておりますが、今度の基本法では、計画ということばが出てきますが、これはやはり一つの避けがたい方向であると思います。現在中小企業金融公庫あたりで、中小企業の、ことに設備資金その他の資金の調査をやっておりますが、ああいったものがだんだん積み重ねられていきますと、中小企業関係でも、この設備投資資金の予定というものは、たんたんとつかめるんじゃないかと思います。  第三の配分の点でありますけれども、財政資金をどう使うかという場合に、やはり財政投融資配分の問題は、現在の状況で中小企業への配分が少ないんじゃないかと思うのですが、これをふやすということだと思います。それから民間資金の場合には、これはアメリカ金融関係の法律の中に、ステートによると、やはり大口金融規制の考え方がしばしば出ているようでありますけれども、日本でも、戦後初めの時期に銀行法の改正なんかとからんで、大口融資の規制の問題等が出ておったと思いますが、私はやはり依然として過大であると思います。一つは、やはり巨大な資金を特定の大企業だけにやるということについては、若干規制をする必要があると思うのですが、もう一つは、その他の部分で、中小企業の中でも各階層別の、これは民間機関に強制することは困難でありますけれども、行政指導その他によって、資金配分はやはり適正化していくという対策があるかと思います。  最後に、これと関連して税制の問題があって、中小企業設備投資資金を外部資金だけによらずに内部資金でやっていくというためには、やはり企業内における留保、社内留保でやる。それから減価償却等の資金を十分に設備投資に使う必要がある。そのためには、償却の期間を短くすることによって減価償却の資金、内部資金をつくり出す、減税によって企業の自己資金をつくり出すというような対策を、金融政策とあわせてとる必要があるのではないかと思います。
  84. 久保田豊

    久保田(豊)委員 中島さんにもう一点お伺いをいたしますが、いまの中小企業対策としてみまする場合に、工業においては下請関係の規制をどうするかということが、やはり現実問題としては一番大きな問題になってくると思うのであります。下請代金の支払遅延防止法たの何だのつくってみたけれども、これは全然使いものにならぬ。なぜならぬかといいますと、こんなものでかりに紛争調停の機関をつくりましても、そこへ出せば注文を落とされてしまって、オミットを食うというところに一番の問題がある。したがって、労働組合がたとえば争議をした場合に、争議をしたということを理由に首にした場合においては、不当労働行為でもってあくまで首だけは確保する。同じように、下請が調停機関に出したからといって、下請の注文を取り消されることはない。もしそれを理由にして取り消した場合においては、親会社が、親のほうが相当の損害賠償を出すという規定までいかなければ、この紛争調停機関なり何なりは生きてこないのだ。紛争調停機関をつくっても、おそらくここに持ち出す人は、下請業者ではほとんどないということになるだろうと思います。この点について、今日の状況からはたしてそういう法制ができるかどうかということと、もう一つは、なおそれにかわるようないい方法があるかどうかということ、何といいますか、いま下請がほとんど野方図に従っておるということなんです。これに対して、何らかの筋を通す、そして下請企業者の自主的な立場を強化するような整理の方法は、必要ないのかどうか、こういう点はどういうようにお考えになるかという点が一点。  もう一点は、商業関係では、いまいろいろお話がありました中で、中島さんとさらに宗像さんにもお聞きをしたいと思いますが、百貨店の問題は、どうやら不十分ながら一応規制ができた。しかし、それを縫って、いろいろの形においてやはり流通面にどんどん入ってきた、大資本がどんどん中小企業、特に小売り業の領域を食っておるというのが実情であります。こういう形とか、スーパーストアの問題、あるいはメーカーの直売形式、こういうものの系列、こういう問題がまだいろいろたくさんありますけれども、どういう方法か、なかなか画一には言えないと思うのでありますが、これをどう規制していくかということが、やはり政治の根本の問題であろうと思う。その場合に、大資本がそういう形で入ってくる分野の形の規制ということは、現実に今日のように単なるシェア拡大ということだけでなしに、技術革新に裏づけられた新商品なり、新製品なり、何なりに裏づけられた流通過程の合理化——合理化というよりも、むしろ大資本の支配が強まっている中では、なかなかむずかしいのではないかというように思うのです。ですから、これに対しては、やはり中小業者の対抗策というものを、政府がもっと思い切った徹底的なあれをやってみるほかない。しかし、いまの段階では、これに対する言うべき施策がほとんど何もないということが、問題であろうと思うのであります。何かこういう点について、さっきお話の仙台の遠藤屋と伊藤忠の問題、私も読みましたけれども、たいへんな話だ、しかし、あれに対してどう対処する方法があるのかということですね。これをひとつ、何かお考えがあれば、聞かせていたたきたい。  それから竹内さんに、同じ問題でありますが、特に零細な商業者の場合、商工会の場合は、要するにこういう大都会なり地方の中都市でなく、商工会議所のない町村関係がほとんど大部分でありますか、こういうところにおいては、この法案に示されたようなある程度のいわゆる近代化合理化をやろうとしても、なかなかできないし、やってもあまり効果がないんですね、全体としては。いま商工会が診断や、それから店舗の改造やその他いろいろとやっておりますけれども、まあ私ども、そういうほんとうに零細な連中に会って、町村関係の連中に会って聞きますと、それだけやっても売り上げがふえない、こう言うんですね。たとえば店舗の改造を、診断の結果、こうしたらいいというので五十万円かけてやった。やっても二割くらいしかふえない。ほっておいても、一生懸命自分で飛んで歩けば一割は年々ふえていっておる。ところが金をかけてやって、やっても二割ふえない。そしてまた、大きなものをつくってもなかなか人は寄ってこない。つまり非常に市場が限定をされておるわけです。しかも、その限定された市場が、付近の大都市のマーケット——デパートとかあるいはいま言ったスーパーあたりで、いま御承知のとおり農村の兼業者が多いものですから、家族がほとんど全部町へ仕事に行っているわけです、ですから、少しまとまったものはすぐそっちから買ってくる。ですから、いままでのように、衣料関係では二キロが大体において範四だとか、あるいは食料品は五百メールだとかいっても、これがそのままいかないわけですね。こういうところにおけるいわゆる生業的な、ほんとうの零細な商工業者に対するほんとうの国の施策というのは、私は、まあ減税の問題とそれから金融の点でもっと楽にしてやるということ以外にはないと思うのですが、何かそういう点について……。いまの商工会系統の、やれ診断だ、指導だということばかり幾らやったって、効果がない——これが効果が全然ないことはありませんよ。ないが、しかし、少なくとも腹のふくれるような効果が出てこないということが問題になると思うのですが、この点について、何かお考えがありましたら、お聞かせをいただきたい、こう思うのです。
  85. 中島英信

    中島参考人 これもごく簡単にお答えいたします。  最初下請の問題ですが、確かにおっしゃることがあって、親工場にやかましく言ってくると、じゃおまえのところに注文を出さないとやられると困るということがありまして、その点で、先ほど私が申し上げた公正経済委員会というようなものをつくった場合には、その委員会が自発的に調査する。特にそうして実際にその下請企業に親工場からのそういう疎外的な行為が起こらないように考慮する必要があるのではないか。  それから、それ以外に、御指摘のようにいろいろな問題があります。一つはやはり下請業者の自主的な対策もいいと思うのですが、これにやはり経営的な対策と、やや広い社会経済的な対策とあろうかと思いますが、これは基本的には、やはりいま大企業下請に対する支払いは悪いのですが、ここはどうしても頼まなければならぬというところは、やはり比較的いいんですね。経営的な対策というのは、やはり下請自体の体質の改善があるだろうと思うのです。もう一つは、そういった問題に対する共同対策も考えなければいかぬ。  第三点は、やはりそういった問題に、大企業中小企業以外の第三者機関を置いてこういった問題の解決に協力する必要があって、こういった問題は、きょう慶応の伊東教授のお話にもありましたように、諸外国にほとんどその例を見ないような状況だろうと思います。こういったものに対しては、私は世論をやはり高めていくことが必要だろうと思います。最終的な問題としては、やはり経済の基盤自体がどういう形になるかということが影響すると思いますので、こういう対策かいいかと思います。  それから商業関係では、宗像さん等その他専門家がおられますから、私はもうごく簡単にしますが、ポイントは二つあると思うのです。スーパーマーケットとかあるいはSSDDSといったものが進出してくる一つの秘訣というのは、いわゆるおとり販売ですね。価格差政策だと思うのです。アメリカの独禁法体系の一環に、御承知のようにロビンソン・バットマンというのがあるのですが、あれは差別価格政策に対する抑制する法律だと思います。ですから、これに対する法的規側の一つ方向というのは、明らかに私はその方向にあると思うのです。自主的な対策としては、これはまあ宗像さんあたりからお話があるでしょうが、たとえばボランタリー・チェーンストアとか、そういうふうな対策があり得るかと思います。
  86. 宗像平八郎

    ○宗像参考人 非常に大きな問題でございまして、短時間でお答えできるかどうかわかりませんけれども、百貨店なりスーパーなんかが発展するというのは、やはり百貨店形態、スーパー形態そのものが、消費者を動員する力を持っている、あらゆる面で消費者の購買力を吸収動員し得る力を持っているという面が、非常にあるわけでございます。したがって、これに対する対策は、みずからが百貨店化し、百貨店のいわゆる顧客動員力というものを小売り商の組織の中に、あるいは経営の中に導入する、そういった寄り合い百貨店的な方向、あるいは共同スーパーをつくって、みずからがスーパーとして対決するという方向、正面作戦といいますか、そういう方向が基本的にあるわけでございます。ただ問題は、百貨店にいたしましても、いわゆる特売というものを通じて実は百貨店というものがあれだけの販路を持ったのでございまして、その特売というものが、いまスーパーマーケットのやっておりまするロス・リーダーというおとり商品作戦でございまして、いわゆる原価あるいは原価を割って売る物をおとりにして、そして安うらしく見せるというスーパー商法があるわけでございます。そういうスーパー商法の中には、先ほども中島さんがおっしゃったように、不公正取引と見られる面が多々あるわけでございます。百貨店にしましても、スーパーにしましても、そういった百貨店の展開する不公正取引、あるいはスーパーの展開する不公正取引というものは、やはり法的に、あるいは行政指導によって規制していく措置、方向——これはアメリカにおきましても州法によってアンチ・チェーンローというものがありますが、そういう法的な措置が必要であろうと思います。ただ問題は、やはり百貨店なりスーパーマーケットというものが、合理的な、近代的な小売り機構として、十分社会的合理性を持っておるわけでありますから、それに経営的に対決する、ただ政治的に抑制するというたけでなしに経営的にそれと対決するという前向きの姿勢が、必要だと思います。それには個々の力ではだめなので、いわゆる同志連鎖店運動、ボランタリー・クループ——アメリカにおきましても、チェーンストアの売り上げ高が、食料品については全体の四〇%ございますけれども、ボランタリー・グループの売り上げ高は四九%というように、逆にチェーンストアを追い越しているという実情もございます。また、西ドイツにおきましても、ボランタリー・グループというものが非常に発達しておりまして、たった二つのボランタリー・チェーンが、食料品売り上げ高の五七%を売っているという事実もあるわけでございます。そういったほんとうの同志同業者——競争関係にない同志同業者が団結することによって、個々の店は狭くても、大経営の魅力によって経営的に対決していく。しかも、その個々の単位が専門店化の方向をとりまして、そしてスーパーマーケットや百貨店のまねのできない専門店としての深い——所得水準か上昇し、消費水準が上昇しますから、最低必要限度の生活品だけで消費者は生きているのじゃありませんから、そういう面のハイファッションの高級専門店というような方向としても、いき得る道は十分にあるのじゃないか。要は、中小企業がそういった大規模化、共同化、連鎖店化するということが基本目標であって、今度の基本法の中にも、私はその点が最重点に盛られておるというふうに理解しております。そういう面に対しましては、金融的に大いにバックアップしていただきまして、そして中小企業の共同で展開するそういう百貨店化、連鎖店化の方向によって、この問題の解決に近づいていくよりほかないのじゃないかというふうに考えます。
  87. 竹内敏栄

    竹内参考人 お答えいたします。  確かに国全体から見ますと、いま先生のおっしゃったような地域もあると思いますが、まだ発足日が浅くて、従来から、任意でもいいから相当活発にやっているところは、この法律制定とともに、三年の歩きで非常に効果を上げております。しかし、ところによりましては、法ができてからやっと商工会をつくっているようなところは、非常におくれておりますので、全体を通じて、まだ商工会のレベルが同一でなく、したがって、先生の見られる場所によっては、いろいろな御意見もありますが、しかし、いままで何にもない、あるいはまた、すべて何か聞く、勉強するというふうな機会もなかったのが、これによって全部、一日一日いろいいなこれからのあり方だとか、あるいはまたものの流れのあり方というふうな、世の中の動きというのも知ってまいりましたので、私のところは二十七年からやっているわけですが、一人の店舗ではだめだということを全部自覚いたしまして、やはり共同でやろう。しかも商工会にみんなが集まって——私のほうは新潟市から四十分ほどの距離しかないのですが、最近においては、五十万で、店飾改装とおっしゃいますけれども、それをやって、土地の人が楽しめる、買いものだけでなしに、見て楽しめるというふうな店舗がずっと並びました関係上、以前とは全く違つてきております。また、ストパー等に対しましても、いろいろの方法があるわけですが、全部のものを一つの店舗であんなに安くやれませんので、一店舖において二点、三点等については、いろいろな方法で従来の仕入れ先から特別目玉の商品を出してもらいまして、共同でチラシを入れまして、一応お客が全部やれば、ほぼ金物屋さんには金物のバケツの安いのが出る、原価以下に出るというふうなことも最近やっておりますので、都市集中というものは、努力によってある程度防げるのだ。御承知のように、消費人口はきまっておりますから、もちろんそこには限度がありますが、傍観しておるようなことでなしに、今度のこの商工会法によりましてその世話をやいてくれるというふうな機構ができましたので、肴々と戦果をあげているような実情でございます。  なお、付言して申し上げますが、零細企業の一番要望するものは、安い金利で、歩積みもしないで借りられる政府金融機関がほしいということです。わずかなのに金を積む、それがどうしても市中銀行ではうまくないので、自分たちの力でつくった金融機関、金庫でもよい、信用組合でもいい。私のほうはちょうど十年たっております。まず自分たち商工会でひとつ信用組合をつくろうということで、二十七年につくりまして、現在六億ちょっとになっております。これたけで第四、北越の支店にやや匹敵する預金ができました。と同時に、他の一般金融機関のサービスが非常によくなります。ただお願いするでなしに、自分たちの力を結集しまして、金融機関も持ったほうがいいのではないか。それには、どうしても政府のいろいろな施策が直ちに流れるように、代理業もやらしていただくことが一番いい。他の銀行は、それをたてにして問々いろいろな条件を出しますけれども、自分たちのつくった信用組合や金庫にはそういうことはあり得ないわけですから、こういうこともひとつ考えていただくことが必要ではなかろうか。もう少しこしんぼういただければ、もうあと一年か二年のうちには相当の戦果があがるものと考えておりますので、なお一そうの大幅の助成を願って、御期待に沿うようにやってみたいと思っております。
  88. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、春日一幸君。
  89. 春日一幸

    ○春日委員 重複を避けまして、新しい二、三点についてお伺いをいたしたいと思うのであります。  それは、まず零細金融についてでございます。この基本法を全体として流れる集約的な政策目的は、やはり格差を解消するというところにございましょう。そのためには、中小企業の中の比較的上位にありますものは、これは生産性を向上せしめることをはかり、いわば近代化とか、合理化とか、高度化とかいうことがはかれるでございましょうが、しかし底辺にありますところの零細なりわい業、これはやはり底上げをするということになると思います。底上げをするための具体策いかんということになりますと、結局は税金をまけて金融をつけるというところに、当面政策が集約されると思うのであります。そうすると、零細金融政策的に強化をしなければ相ならぬのございます。したがいまして、わが党案にはさまざまな具体策をうたっておりまして、そうしてこの各民間金融機関に対する貸し出しシェアを法律で明文化すること等もありますが、特に政府関係金融機関について、中小企業の中でも特に零細企業に対する特別ワクを制定することをうたっておるのでございます。  そこで、北野さんにお伺いいたしたいのでありますが、はたして現行制度のもとにおいて、商工中金なりあるいはまた中小企業金融公庫、国民金融公庫のごときは、普通の最高額が五十万、特殊の場合は百万、法人の場合は百万、特殊の場合に二百万と、そのマキシマムについて法律上の制限がございますので、これは重点的に零細金融になると思うのでありますが、ところが、商工中金と中小企業金融公庫については、そういう制約がございません。あなた方は、やはり政府関係金融機関という政策使命を別にになわれておるといたしましても、やはり一個の金融機関としての性向を持たれておりますので、まず信用度の高きものから、貸し倒れの心配のないものからというところに、その貸し出しの重点が置かれると思うのでございます。信用度の低きもの、担保力の少なきもの、貸し倒れの心配のあるもの、こういうものについてはやはり敬遠されるということは、金融業務上当然の帰結と思うのでございます。しかしながら、この中小企業基本法は、そのようなものに対して一個の政策上の補完措置を講じていきたいというのがねらいでございますから、これが何らかの制度によって、中小企業の中でもなりわい業、零細企業者に対する国家的資金が現実に給与されるような方途を講じなければならない形に相なると思うのでございます。そこでお伺いをするのでありますが、商工中金といたしましては、現行制度のもとにおいて、あなた方の自主的な単なる配意、こういう人たちにも、基本法ができたんだから、できるだけ金を貸すようにしようという単なる自主的な配意、国民金融公庫のように法律による制限ではなくして、単なるあなた方の配意、これだけによって、この政策の意図いたしておりますところの業務ですね、零細金融業務、こういうことを実施することができるとお考えになっておりますか。これは実情に照らしてありのままの御判断、たとえば全国にありますあなたのところの窓口機関が、それぞれの零細金融の申し入れを受けまして、信用度も低く、担保力も少なく、しかも五万、七万、二十万というような借り入れ申し込みに対して、基本法がここにあるんだから、この国家宣言に基づいて、割証を政府が買っておるから、われわれは協力しなければならぬという自覚の上に立って、この政策目的が円滑に実施されるという確信がお持ち願えるのであるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  90. 北野重雄

    北野参考人 商工中金の関係だけを申し上げますと、私どもも、いままでもできるだけ零細金融には努力いたしたいということで、一つの方法といたしましては、小口多数転貸ということで、組合を中心にいたしまして、一組合員二十万ないし五十万というようなものは、できるだけ簡素な手続で、組合自体、あるいは組合の役員を信頼してやるという方向をとっておるわけであります。それ以外には、信用組合も二百数十が私どもの代理店になっておりますので、私どもの店舗が少ない欠点をそれによって補いまして、信用協同組合にできるだけ代理貸しの形、あるいは固有資金の貸し付けの形でやっていただく。そうしてなお現在の段階では、御承知のように、どうしても資力、信用の点からいいまして無理な場合でも、ぜひお貸ししなければならぬというような場合には、信用保証協会の保証つきで出すというようなことをやっておるわけでございます。しかし、率直に申しまして、私どものそういった努力なり特別な配慮というものだけで、はたしてこの数多い零細企業の方々に御満足のいくだけの金融をつけられるかといいますと、非常に無理かございまして、やはり何としても政府におきまして特別の方途をお考え願う必要があるのではないか、こういうふうに考えております。
  91. 春日一幸

    ○春日委員 非常に率直な御見解の表明を得まして、けっこうだと思うのでありまするが、どうかわれわれがこの法案を審議する上におきまして、このことも重要な一個の検討対象に相なっておりますので、願わくは後日でけっこうでありまするが、あなた方の総貸し出し件数の中において占める、すなわち五十万円以下の小額金融の件数の割合、それからあなた方の総貸し出し金額の中に占めまする五十万円以下の零細金融の金額の割合、これをひとつ資料として本委員会に御提出を願いたいと思うのでございます。  次は、小島英信さんにお伺いをいたしたいのでございまするが、この中小企業基本法なるものは、まあ言うならば生産性を向上して、所得格差、これは産業間、企業間、階層間の格差を解消することを意図といたしておると思うのでございます。したがいまして、法律の中にも明文化されておりまするように、まず近代化、それから高度化ということがうたわれておりまするから、このことは、集約的に中小企業設備投資を結局刺激する、というよりも、設備投資を国家的規模において大きく推進するという結果に相なるであろうと思いまするし、そのことなくしては、この法案の意義はない、また効果も上がらないと思うのでございます。そういたしますると、ここに国民総需要という一つの絶対量がございます。この中において、御承知のとおり、昭和三十二年以来、わが国の大企業設備投資に狂奔いたしました結果、いまどういう事態にあるかと申しまするならば、言うならば設備過剰でございます。そのために、鉄鋼関係におきましても、あるいは化学肥料関係におきましても、あるいは繊維関係におきましても、事実上操業短縮が行なわれておるのでございます。こういうような中において、今度のこの政策によって、要するに中小企業全体の設備投資、これがあらゆる国の施策が集約されてわあっとここに集中して参りますると、これは当然のことといたしまして、生産過剰に相なります。生産過剰の帰結といたしましては、これは不況事態を招来するおそれなしとは断じがたいのでございます。一体ここでどういうような形においてその事態を回避いたし得るかということをざっと常識的に判断いたしまするならば、当然片方に需要の拡大をはかるといたしましても、それは大企業設備投資、それから中小企業のそのような政策的な、国家的な支援によるところの設備投資のよってもたらした成果を消化するだけの需要の造成というものは、なかなか困難であろうと思います。そういたしますると、国全体の施策からいたしましては、当然のこととして大企業の所得は非常に多いのである。それがすでに既定の事実として多いのである。中小企業基本法は、中小企業者の所得を大企業に近づけるためのことにあるのでございまするから、したがって、中小企業設備投資は、そのような結果になるとしても、これをやっていかなければならぬ。そうすると、この際、大企業設備投資について、当然の帰結として、一定のチェック措置を講じていかなければならぬ、規制措置を講じていかなければならぬ。このことは、当然経済政策論議として、これは問題として出てこざるを得ない事柄であると思うのでありまするが、あなたの御研究の結果によりますると、これはどのようにお考えになっておりますか。
  92. 中島英信

    中島参考人 非常にむずかしい御質問をいただいたと思うのですが、確かに設備投資の点にいろいろな問題がございます。順序はちょっと逆になるかもしれませんけれども、中小企業設備投資が盛んに行なわれた場合に、生産過剰になるのではないかということ、確かにそういう面があろうかと思いますが、設備投資の場合にもし内容を分ければ、非常に単純な設備更新、単なるリプレースメントがありますし、もう一つ近代化というのはあります。もう一つは、ただ生産力拡充のための設備投資というものがあると思うのです。したがって、単に生産力拡充のための設備投資であれば、これは生産量がますます増していくということによって生産過剰になりますけれども、質的な改善を行なうための設備投資の場合には、もちろん生産性は上がるかもしれませんが、しかし、必ずしも量的な増大を伴わない場合もある。その意味で、中小企業近代化設備投資という場合に、その内容について若干分けて考える必要があると思うのであります。  それから最初言われた、全体として国民の総需要というものはきまっているではないか、確かにそのとおりでありまして、従来のように、設備投資設備投資を産むというような形で経済成長を遂げてきたという形は、現在やや壁にぶつかっている。しかし、それに従って、やはり新しく消費支出なりあるいは財政支出によって新しい有効需要を生み出すという方面に必然的に政策が転換してきたと思うのですが、しかし、ことしまた景気が転換すれば、また新しい政策が出てくるかもしれません。ですから、国の経済政策として有効需要対策というものを考えれば、非常に発展的に、非常にダイナミックに考えていく必要がある。ですから、その点は必ずしも非常に消極的でなくてもいいと思うのであります。しかし、先ほど私最初の陳述のときに申し上げましたように、いたずらにただ経済成長すればいいということだけではないと思いますので、国の経済政策の理念というものをやはりここらではっきり確立するということが、中小企業対策との関連で特に必要だと私は思うのです。これはちょっと質問からそれますけれども、私は、零細企業に対して社会政策が必要であるとは思っていない。零細企業対策に対して経済政策が必要である。私は、経済政策の目標というのは、経済というのは、結局人間の活動であると思うのです。究極の目標は、やはり人間が生きていくことにあると思う。したがって、その生活水準を高めるための政策こそ、ほんとう意味経済政策であると思うので、私は、零細企業に対してこそ、ほんとう意味経済政策を必要とするというふうに考えておるわけです。ですから、私は、そういう点で、この設備投資関連した問題についても、いろいろな対策が、きめをこまかくやっていった場合には、あり得るというふうに考えております。  それから第三番目の御質問は何でしたか。
  93. 春日一幸

    ○春日委員 大企業設備投資を制限する必要があるかどうかということです。
  94. 中島英信

    中島参考人 それは私は、ある程度あると思います。しかし、それは現在いろいろの審議会等である程度の調整をやっておりますね。これは自主調整だけでもなかなかいかない点もあると思いますけれども、現在そう言う人も方々にあるし、大企業の中でも自主調整が必要だと言う人もあるのですから、その点では可能性の根拠というのは、経済界の中にもあるし、考え方の中にもあると思うのです。必要かどうかということになりますと、私は、ある程度はその必要があるのではないかというふうに考えます。
  95. 春日一幸

    ○春日委員 重ねて申し上げてなんでありまするが、生産性を向上することによって所得格差の減少、圧縮をはかる、こういうのでありまするから、したがいまして、生産性の向上はいい品物を安くつくるということにあり、おのずからそういう手段を尽くす結果として、生産性が増大されていくということは、もう経済活動の当然の帰結でございます。いい品物を安く、しかもいま左でどおりの数量というようなことは、これはあり得ないことでございますので、生産性向上はやはり量的増大を当然もたらしてまいるものであるということば頭に置いて、さて日本経済全体として考えまするとき、この間海外新市場の開拓とか、あるいは政策的有効需要の造成とか、いろいろな方途が講ぜられるといたしましても、なおかつ、それがこのような形で国家的宣言によって、中小企業関係の生産性増大にわあっと全中小企業者が集中されました場合、また、そうしなければ事実上中小企業基本法の意義は何らなくなってしまうのでありまするから、その場合、そこに一個の生産過剰、生産過剰から来たるところの不況事態、それを本前に阻止することのためには、すでに大いなる所得を得ておりまする人々に若干のごしんぼうを願うことのためのより大いなる設備制限——現在繊維界の設備制限もございまするし、いろいろの設備制限がその趣旨においてなされているのでありますから、そういうことを中小企業基本法との関連において、関連法規の中において何らかの措置を講ずるの必要があるように私は考えますが、その点についてはなお御検討願うことにいたしまして、最後に、私川端君にお伺いをいたしたいのでありまするが、政府案によりますると、この社会的また経済的制約のもとにおいて、今日の中小企業の困窮がもたらされたものとされておるようであります。そこであなたは、現在の所得格差を発生せしめたところの原因、これは一体何であるか、いわゆる社会的制約というものは一体どのようなものであるのか、これをどういうふうにお考えになっておりまするか、お答えを願いたいと思います。
  96. 川端文夫

    川端参考人 この点は、おそらく政府原案の中にそのような文章をお使いになっておらぬけれども、少なくともいままでの経済政策では、だんだんと格差が大きくなるからお気の毒だという前提が腹にあっての考え方であろうと思います。したがって、午前中の私の陳述の中においても、やはり大企業の圧迫を排除するという前提と、もう一つは、やはり産業分野の確保、資金の確保というような問題を明確にしてもらいたいということを申し上げておったわけでありますから、私は、今日の経済に二軍構造なり格差の発生いたしました原因は、経済政策の中に不公正な競争をせしめた原因があったということを前提に考えて陳述いたしておるものであります。おそらく政府も、その点を、断わりは言わぬでも、腹ではお考えになっていただいているものと、善意に申し上げている次第であります。
  97. 春日一幸

    ○春日委員 では終わりまするが、この点は、私は非常に重要なポイントではないかと存じます。と申しまするのは、この経済的、それからまた社会的諸制約、これを一体どういうような現象としてとらえておるかというのでございます。すなわち、資本主義的な政策、たとえば金融において、あるいは税制において、あるいは予算の盛り方において、大企業がいよいよ繁栄し、中小企業かさらに困窮を重ねていくような形で税制、金融、それから財政が行なわれておったのか、それとも対等の立場でそういう施策が行なわれたにもかかわらず、さらに弱きものに対しては若干のささえを行なうという意味合いにおいて施策をこらしておったにもかかわらず、こういうような大いなる断層を生じたものであるのか、私は、この点は非常に大きな問題であると思うのでございます。したがいまして、私ども民社党案においては、これは冒頭宣言に明確にいたしておりまするように、現在のこのような所得格差の断層は、長年にわたる資本主義的な偏向の政策のあらわれである。国はその反省の上に立ってと、こううたいまして、したがって、政府案ではこれの不利を補正するといっておりますが、われわれは、悪かったからこれをため直す、悪かったことを悔い改める「是正」ということばを使っております。政府案は不利を「補正」ということになっておりまして、補正ということでは、事実上これは言うならば、いままでお気の毒であったから、ちょっとおわびのしるしに保護をするという、総合的に修正した保護法の寄せ集めみたようなものになってしまいまして、こんなものならば、基本法でも何でもないわけであります。  どうか、そういう意味公述各位に特にお願いを申し上げたいのでありますが、審議はまだ序の口でございまして、ほんとうにその足らざるところを補うのか、それとも悪かったからここに悔い改めてこれを是正するのか、是正するならば是正にふさわしい具体策が出てこなければなりませんが、単なる補正するならば補正する程度、ちょいとばかり補えばそれでいいという形に相なってまいりまして、中小企業基本法の機能、効果というものに決定的な結果をもたらすものと考えますので、どうか各界の世論醸成の中において、十分御検討の上、主権者国民各位とされましての国会に対しまする適当な意思表示を、後日強くちょうだいすることを期待いたしまして、私の質問を終わることにいたします。
  98. 逢澤寛

    逢澤委員長 他に御質疑もないようでございますので、この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわりませず、長時間にわたり、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。本案の審査に資するところきわめて大なるものがありました。委員会代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。(拍手)  次会は公報をもって御通知することといたし、本日はこれにて散会いたします。   午後五時二十七分散会