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1963-06-07 第43回国会 衆議院 商工委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月七日(金曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 逢澤  寛君    理事 小川 平二君 理事 岡本  茂君    理事 白浜 仁吉君 理事 中村 幸八君    理事 南  好雄君 理事 板川 正吾君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       浦野 幸男君    大高  康君       海部 俊樹君    神田  博君       佐々木義武君    笹本 一雄君       正示啓次郎君    田中 榮一君       田中 龍夫君    山手 滿男君     早稻田柳右エ門君    岡田 利春君       久保田 豊君    小林 ちづ君       多賀谷真稔君    中村 重光君       西村 力弥君    横山 利秋君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         通商産業政務次         官       廣瀬 正雄君         中小企業庁長官 樋詰 誠明君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    加藤 悌次君         通商産業事務官         (中小企業庁指         導部長)    影山 衛司君  委員外出席者         議     員 田中 武夫君         衆議院法制局参         事         (第三部長)  浜中雄太郎君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    柏木 雄介君         大蔵事務官         (銀行局中小金         融課長)    吉田太郎一君         専  門  員 渡邊 一俊君     ————————————— 六月七日  委員小松幹君及び山口シヅエ辞任につき、そ  の補欠として中村重光君及び横山利秋君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員横山利秋辞任につき、その補欠として山  口シヅエ君が議長指名委員長に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業基本法案内閣提出第六五号)  中小企業基本法案永井勝次郎君外三十名提出、  衆法第一〇号)  中小企業組織法案永井勝次郎君外三十名提出、  衆法第一一号)  中小企業基本法案向井長年提出参法第四  号)(予)  中小企業指導法案内閣提出第七六号)  中小企業信用保険法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一一九号)  中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第一二三号)  下請代金支払遅延等防止法の一部をする改正法律案  (内閣提出第一六七号)      ————◇—————
  2. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中小企業基本法案永井勝次郎君外三十名提出中小企業基本法案及び中小企業組織法案向井長年提出中小企業基本法案予備審査)、並びに内閣提出にかかる中小企業指導法案中小企業信用保険法の一部を改正する法律案中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律案及び下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する律案、以上八案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許可いたします。田中榮一君。
  3. 田中榮一

    田中(榮)委員 前回質問に引き続きまして、質問を行ないたいと思います。前回質問で、私は、中小企業者に対する保護規定について、何か一般的な、抽象的な、道徳的な規定基本法の中に一カ条くらいほしいと申し上げたのでありますが、それに対しまして、福田通産大臣から各条の規定をあげまして、これらはいずれも中小企業保護のための規定であるという御説明がございまして、その点につきましては、私は了承いたしたのでございます。たとえば第三条、第六条の規定から申しましても、もちろん中小企業はこまかく保護されておるのでありまするが、ただ、取引実態を見ますると、必ずしもいわゆる法律上の取引であるとか、形の上にあらわれないいろいろな商慣習というようなものがあるのでありまして、それは前会で私がリべート制に例をとって申し上げたのでありまするが、こうした問題につきましても、大企業中小企業に対する圧力に対して、何らかこれを排除するようないい方法はないでしょうか。こういう際に、何か抽象的な、一般的な、道徳的な保護規定があるならば、その規定を適用いたしまして、そうした商慣習でも、悪い点があったならば、これをひとつできるだけ改善をしていきたい、こういう意味で申し上げたのでありまするが、中基法全体を拝見しますと、いずれも中小企業保護規定には間違いないと私は考えておりますので、そういう点から中基法精神を十分にくみ取って、中小企業者の利益を十分に保護し、また、これらの育成強化に万全の策を立てていただきたいということを要望いたしまして、この質問だけを一応終わりたいと思っております。  次に、それでは企業庁長官に御質問申し上げたいと思いまするが、現在の中小企業基本法の中の、中小企業輸出振興の事柄につきましては、第二十一条に、「国は、中小企業が生産する物品輸出振興を図るため、中小企業が生産する輸出に係る物品競争力を強化するとともに、輸出取引の秩序の確立、海外市場の開拓等必要な施策を講ずるものとする。」という規定がありますので、これを根幹にいたしまして、今後いろいろな関連法令等も公布されるものと私は考えておりまするが、現在中小企業輸出に関しましては、輸出入取引法というものがありまして、これの適用によりまして、ある程度輸出入振興のためには寄与しているものと考えております。しかしながら、この輸出入取引法のねらいというものは、主として輸出業者貿易業者等中心が向けられまして、いわゆる中小企業メーカーに対する措置というものがまだ十分に規定されてないのでありまして、この点につきましては、やはり中小メーカー過当競争防止に対する措置であるとか、いろいろな規定がなくてはならないと思うのでありまするが、それに関連いたしまして、将来、この二十一条という規定精神からいたしまして、中小企業輸出振興するためのいわゆる中小企業輸出振興促進法といいますか、振興法といいますか、そういうような特定法律をつくる必要があるのではないかということも考えられまするが、そういう点につきましては、何かお考えはないでしょうか、どうでしょうか。
  4. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 中小企業輸出振興につきまして、いま直ちに、この基本法の制定に引き続きまして、特定法律をつくるというところまでは考えておりませんが、御承知のように、わが国の輸出の中で、現在五〇%以上のものが中小企業の手になる製品でございます。今後ますます貿易重要性を加えた際に、中小企業輸出振興については、先生指摘のとおりに、われわれとしても一そう力を尽くされなければならない、こう思っておりますが、たとえば現在、輸出するための新規製品試作について、まだわずかではございますが、試作品に対する補助の予算的な措置というものを講じております。それから国際見本市の参加というような際にも、政府として特別の経費の支出ということをやっておりますし、また、中小企業輸出見本市というものを毎年行なっているというようなことで、中小企業製品の品質の改善宣伝というものにつきましては、政府としても、いろいろいままで意を用いてきたところでございます。今後は、元来ジェトロというものが中小企業輸出振興のための機関というものでございますが、御承知のように、必ずしもその実体は一〇〇%そのようには使われていないというような面等もございますので、このジェトロを一そう活用し、あるいは陶磁器、雑貨輸出センターというようなものを一そう活発にするというような、国内における活動と同時に、とかく中小企業メーカーが大商社等のために圧迫されて、せっかくの輸出のための手形割引制度というようなものも十分に恩恵に浴さないというような点もございますので、そういうことのないように、たとえば信用保証協会あるいは商工中金というようなところで保証した手形は、輸出手形として扱ってもらうというような措置を逐次講じておりますが、そういう金融の面の措置等につきましても、できるだけ力を入れるということによって、まず経済的な裏づけの面で中小企業輸出振興をはかりたいと考えております。また、海外へ出させますためには、どうしてもデザインの向上等が必要でございますので、現在も外国人のデザイナー二人を招聘いたしまして、国内各地を回ってもらって指導してもらっているような状態でございます。
  5. 田中榮一

    田中(榮)委員 私が質問した趣旨は、そういう枝葉末節——と言っては失礼かもしれませんが、いろいろそうした施策ということよりは、むしろ根本的な中小企業輸出に関しての、一つ過当競争防止するとか、あるいは何かそうした中心的な、メーカーに関する一つ根本法規というものが考えられぬかどうかということを御質問したわけであります。  それに関連しまして、先般新聞紙上で、現在大蔵省といろいろ御折衝になっておるということを聞いておりますが、輸出振興に関して新しい税制優遇をやりたい。通産省の方針として、いま大蔵省といろいろ折衝されておるということでございますが、その中には、輸出損失準備金考え方、それから市場開拓準備金考え方、それから特別償却制度を拡大する、それから輸出振興積み立て金制度というようなものもあるわけでありますが、その中で特に中小企業振興に最も関係の深いのは、輸出振興積み立て金制度ではないかと私は考えております。ことに雑貨のような、いわゆる現行の特別償却制度の対象になる設備を持ってないような中小企業者につきましては、通産省では何か組合でもつくらして、そこで積み立て金を設定して、そうしてそれによっていろいろ市場開拓調査宣伝輸入制限運動などの最も適切なる事業にこれを使用させたい。これは現に、たとえば浅草橋付近輸出おもちゃ屋があるわけなんです。このおもちゃ屋なんかも、相当北米、南米等輸出品を出しております。各店ごとに、できれば積み立て金でもお互いに出し合って、そうして市場開拓並びにその調査研究でもやりたいという希望が、非常に強いわけなんです。ですけれども、積み立て金に対しましては、相当な課税がかかるわけであります。そのために、それがなかなかできないということですが、何とか組合に対して一それを償還するとかしないとかいうことでいろいろもめているということですが、それはそれとしまして、こうした組合員お互い積み立て金をつくって、それを出し合って、将来輸出振興のための市場開拓調査宣伝、そういうものにやりたいという場合、その組合をつくらして、その組合に出資してそういう事業をしようとする積み立て金に対しては、課税をなるべく低減する、あるいは免除するという措置をとることが必要ではないか。これはいま大蔵省といろいろ折衝されておるという話ですから、ひとつ強力に話を進めていただきたい、こう考えております。
  6. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 御承知のように、輸出所得控除制度というものが来年廃止になりますので、通産省といたしましては、いま先生指摘のような、何らかの意味においての積み立て金制度というものをぜひ創設することによりまして、輸出振興をはかりたいということで、せっかく努力いたしておりますが、これは一般の税制全体に関係のあることでございますので、さらに今後大蔵省とよく折衝した上で、われわれの要望を聞いていただくよう努力したいと考えております。
  7. 田中榮一

    田中(榮)委員 それでは渡邊公取委員長がお見えになったようでございますから、下請取引適正化ということにつきまして、この中小企業基本法案の第十八条の問題につきまして、ひとつ御質問を申し上げたいと思います。  中基法の第十八条には、「国は、下請取引適正化を図るため、下請代金支払遅延防止等必要な施策を講ずるとともに、下請関係を近代化して、下請関係にある中小企業者が自主的にその事業を運営し、かつ、その能力を最も有効に発揮することができるようにするため必要な施策を講ずるものとする。」、こういうことになっております。  そこで、現在の下請代金支払い状況でございますが、この下請代金支払遅延等防止法が出ましてから、支払い代金遅延がどの程度に防止されておったかということについて、実は質問をしたいと思うのであります。  その前に、現在親事業者の数が、公取のお調べによりますると、八千八百三十六、それから下請事業者数が、三十二万二千九百五十六となっております。これは公取のお調べによった数字でございますから、間違いないと思うのでありますが、これらの関係からいたしまして、今日、この下請代金支払いというものが、現実の問題としましては非常に遅延をいたしております。ことに中小企業者はまことに弱いものでありますから、親事業者に半年以上十カ月のサイト手形を押しつけられましても、これに対して何ら苦情を申し述べる勇気もない、またそれを述べようとする努力もできないという情けない状態でございます。これはすでに現実の問題としてどう解決していいかということは、非常にむずかしい問題であります。しからば、中小企業者公取委員長もしくは中小企業庁長官にその旨通告して、親事業者調査をしてもらい、そしてそれによって適切な措置を講じてもらう道は、この法によって開かれておるのでありますが、現実の問題としましては、通告をするということにはたいへんな勇気が必要でございます。まかり間違えば、次の注文は断わられる。したがって、みずからの首をみずからの手で絞めていかねばならぬというような、まことに苦境におちいるものでありますので、これを取り締まる主管庁公取委員会も、この措置については非常に苦心をされておるということは、よくわかっておるのであります。なかなかそう簡単に右から左にこれを取り締まるということがきわめて困難であるということは、私はよく了承いたしておりますが、この規定の中にも、今後これについて施策を行なうということが書いてあるのでありますが、渡邊公取委員長は、長い間大蔵省で苦労をされた苦労人でありますので、もう下請代金遅延については、一から十まで、何から何まで御存じのはずでありますので、「必要な施策を講ずる」とうたわれておりますが、これについて何かよい名案があるならば、ひとつ数えていただきたいと思います。
  8. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 御承知のように、現在下請代金支払遅延等防止法というものが、独占禁止法のいわば特別法のような形でございまして、独占禁止法におきましても、御承知のように、不公正取引ということで問題として取り上げ得るのでございますが、その基準がかなり抽象的になっておりますし、それをより画一的なものとして、はっきりした姿のものについては手を打つということが、この下請法の主たるねらいである、こう思っております。  お話しのように、現実にそうした支払遅延という事実がございましても、なかなか下請業者の方のほうからその事実を公取のほうに申告できないような非常につらい立場にあるということで、この法律がありましても、実際の効果をあげることにつきまして、むずかしい問題をはらんでおることは、御説のとおりでございます。したがいまして、現在まで公正取引委員会としてやってまいりましたことは、幾つかございます。  まず第一に、親会社に対しまして定期検査をやる。その場合におきましては、まずもって一応こちらのほうから照会状を出しまして、そうして支払い遅延状況といいますか、あるいは支払い状況、これをまずとるということをやっております。特に重点を置いておりますのは、下請関係の非常に多い業種について、それを中心とした照会状を出しております。書面照会で見まして、これは相当遅延状況がひどいという場合におきましては、すぐに私のほうの職員を派遣しまして立ち入り検査をいたしまして、そうしてその実態をつかまえるということをやっております。  それから書面審理の上では、いささかそこまで至らぬ点もありまして、まずもって裏づけのような意味におきまして、下請業者の実情を今度は別途聞いて歩きまして、いわばそこに裏づけ的なものをもって立ち入り検査をやっております。そうして立ち入り検査の結果といたしまして、相当の支払い遅延状況が出たという場合におきまして、なぜその遅延状況が出たかということを一面においては検討いたしますと同時に、この遅延状況というものがほんとう改善できるかできないかというようなことについても、いろいろ話し合いもし、検討もしてみます。そうして私のほうにゆだねられておる権限といたしましては、そうした支払い遅延のあった場合におきましては、これに対して勧告をする。さらに、その勧告を聞かなかった場合におては公表するということが許されておるわけであります。したがいまして、私のほうといたしましては、一応の遅延状況を見まして、それによって勧告をする、あるいは勧告に至らないまでも、その前に会社のほうでもって、確かにこれはその点が行き届かなかったから、したがって、この点は直しましょうといって、相当その実があがりそうな場合におきましては、行政指導によりまして少し様子を見るというようなこともいたしております。勧告はそうたくさんはございませんが、過去において何件かいたしました。また公表ということにつきましては、これはいろいろ問題もございますので、相当慎重にやっていかなければならぬと思っております。そういうふうな状況で一応下請法の施行としてはやっておりますが、これの根本的な問題を見てまいりますと、どうしてもやはり一番大きなのは、親会社のほうの資金繰りが必ずしも十分でないということがあるようでございます。その場合におきましては、二色ありまして、いわば設備などの投資に大きな金を使ってしまって、流動資金的なものが乏しくなったという場合もありましょうし、あるいは親会社そのものがいささか不況の波にあおられて、そうして経理状況が悪くなって、そのしわが下請にいったものもあるようでございます。したがいまして、公取でやっておりますそうした遅延防止といったようなことも、もちろん今後とも私は必要だと思いますが、基本的には、そうしたもとを正すという問題もおそらく政府としてはぜひ考えなければならぬ問題じゃないか、かように考えております。
  9. 田中榮一

    田中(榮)委員 この表によりますと、三十七年度におきましては、勧告等が百六十一件されておりまするが、漸次勧告数が多くなったことは、これは非常に不況を示すという一面におきまして、公取としても非常に努力をされておることが、この数字によってわかるのであります。しかしながら、この百六十一件の勧告をした中に、法第七条の第三項でありますか、公表に値するものも、中には一件、二件はなきにしもあらずじゃないかと私は思うのでありまするが、かりにそうした悪質なものがあった、勧告を何回出しても従わざる場合におきましては、やはり断固一懲多戒の意味におきまして、一件ぐらいは公表をして、ひとつ他の親事業者にも反省をさせるという意味におきまして、私は、百六十一件の中には、一件ぐらいは公表しても支障のないような悪質なものがあるいはあるのではないかと思うのでありますが、その辺はいかがなものでございましょうか。
  10. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 いま田中委員のお示しになった数字は文章の書き方が不十分なせいか、多少誤解されている点があると思います。と申しますのは、勧告ということをやりましたのは、カッコに書いてあります十二件でございます。百六十一件の中で十二件は勧告措置をとりまして、残りの数のものは、いわば行政指導というといろいろあれでありますが、私のほうが勧告に至るまでもなく、会社のほうでもって、確かにいままで苦しくてこういうことをしましたけれども、下請法法規から見てこれはいけませんから直しますというようなことで、一応勧告にまで至りませんで措置した分が、大部分でございます。勧告の数は十二件、まあこれはいささかもう少しというものもないのではありませんが、少なくとも過去においてやりましたのは、十二件であります。したがいまして、公表ということも最後手段としては当然私は考えるべきものだと思っておりますが、公表しますと、その会社そのものが将来信用状態としてどうなるか、相当慎重に考えなければならぬ問題がありますし、公表してしまいますと、実はそれで私の方の手もおしまいになってしまいますものですから、あとは要するに、いわば片方の独占禁止法による審判といいますか、不公正取引方法による審判といったような問題に譲らざるを得なくなりますので、もちろんこれを行なわないつもりはございませんが、行なうについては、相当慎重な態度で対処すべきではないか、かように考えております。
  11. 田中榮一

    田中(榮)委員 現実の姿を見ますると、私の知っているある中小企業者でありまするが、昨年の五月に注文品を納付いたしまして、それから検収が十一月にありました。検収がありましてから四カ月目に、半年払いの手形をもらっておるのであります。それでこの規定の上では、六十日以上になった場合においては支払い遅延利息を払わなくてはならぬということになっておりますが、現実には、その支払い遅延利息なんか払っているものは、まあ少ないのじゃないか。大体額面の手形だけでもって処理しているという状況でありますから、その支払い遅延利息をもらうよりは、サイトの短い手形を早くもらうというのが、中小企業ほんとう要望でございます。といって、これはやはりこのままの状態ではどうしても中小企業が救われない、このままの状態で置くということも、これもまあ非常にこの中小企業を苦しめる最大の原因でありますので、何か公取委員会のほうでは、組合団体交渉権といいますか、個人個人が言うことができないから、組合もしくは連合会からその親事業者のほうへ交渉させるような内面指導をされておるということも聞いておるのですが、そういうようなことが効果があるのでしょうか、ないのでしょうか。その辺をひとつお伺いしてみたいと思います。
  12. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 私が承知しておりますところでは、先ほどお話のございましたように、個々下請業者がそういう事実があり、もちろんその下請業者としましては、親会社のほうに相当催促するのでしょうが、払ってくれない。それで最後手段として公取へ申告するという手があるのでございますが、先ほどのお話のように、へたなものの言い方をすると、将来の注文に差しつかえがあるというので、皆さんごちゅうちょになっている。そこで、そうした個人の問題でなくて、組合のようなものを結成していただいて、その組合のほうから、あの会社支払い状況は悪いということを私のほうへお知らせ願うとすれば、個々下請業者の方に御迷惑のかかることも万あるまい。そういった意味におきまして、いわば協力団体といったような姿のものをお願いをしまして、そうしてその協力団体の方々にいわば支払い状況が特に悪い会社というものを監視していただく、それで私のほうへいろいろ情報を提供していただくというようなことを、私のほうとして一応やっておりまして、約十五くらいの協力団体ができております。これは相当の効果をあげているというふうに思います。
  13. 田中榮一

    田中(榮)委員 もしそういう措置効果があると考えられたならば、こういう措置をどしどし拡充されまして、今後支払い遅延ができるだけないように、できるだけお力添えをいただきたいと思います。  それからもう一つお伺いいたしたいと思いますのは、現在の支払い遅延下請代金ですね。これは製造委託と、それから修理委託となっておりますね。ところが実際の場合におきましては、商事会社等がメーカーから物品を購入して、これを販売して利ざやをかせぐような場合、それから土建会社等が、資材を多量に買い付けて支払い代金遅延するというような場合もある、そういう場合においては、相当手形が出るわけですが、これを物品購入の代金のところまで拡大するということは、非常に危険なことなのであろうか、それともどういうようなことであろうか、将来これを拡大したらいいか悪いか、そういう点をひとつ御意見を承りたいと思います。
  14. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 お話のように、現在下請法でもって処理し得ることになっておりますのは、製造委託修理委託——おそらくこの問題が特に強く出てまいりましたのは、親企業下請、これは普通の物品販売の場合と違いまして、親と子との間でもって、系列とも言えませんが、下請にすれば、あすこがお得意先だ、割合お得意先が固定したような仕事であって、したがって、そこから縁が切れると、ちょっとよそへ行きようがない単純な物品販売でございますので、あすこに売らなければここに売るという自由がきく——その自由のきき方も程度問題でございますが、特に下請の場合は、そうした関係が顕著である。それだけ親会社のほうは下請に対して支払い遅延をしても割合に平気でいれるといったような、きわめて顕著なものをつかみまして、おそらくこの下請法というものに限定したのではないかと思います。これは実際問題としまして、行政力の限界もございまして、そうしたきわめて起こりやすいものについて特に重点を置きながらこうした取り締まりをしていくというのは、それなりに一つの行き方だと思っております。さらにこれを広げますと、正直言いまして、効果が、その必要がないとも思いませんけれども、薄くなってくるということも実は考えなければならぬ問題ではないか。したがいまして、お話のような点につきまして、私のほうでもさらに勉強もしてみますが、特に現在扱っているものと同じような性格自体に相当の弊害が強いというものがあれば、やはりそれも考えていかなければならぬ問題であろうと思いますが、一般論として申しますと、広く拡げることが、ある意味においてはいいのですが、しかし、逆にそのためにほんとうに必要な面についてちょっと詰め方が浅くなりはせぬかという点が実は心配されまして、やはり狭く深くいくか、広く浅くいくか、現在でも正直言いましてあまり深くいききれない事情がございますので、それらを勘案しながら、いまのお話の点は慎重に検討していきたいと思っております。
  15. 田中榮一

    田中(榮)委員 なお、現在のこの中小企業問題の中でも、実際問題として下請代金支払い遅延という問題は、これはもう何とかしてもらいたいという考えを中小企業者全部が持っていながら、これをよう言い得ないというところに、この問題の解決が非常に困難な点があると思うのであります。そこで、いま私が申し上げたような点、たとえば物品購入の代金までこれを広げていいかどうか、これはひとつ十分御研究願いました上で、十八条にも、政府としても十分その施策を講ずるということを明定されておりますので、こういう点につきましては、慎重にひとつ御検討の上、最も適切なる施策をどしどし実現に移すように御努力を願いたいと思います。  私の質問は、実はまだあるのでございますが、社会党の横山委員が、たいへんお忙しくて、ぜひとも質問をさせてくれということでございますから、この際、私は横山委員質問の権利を譲りまして、一応私はこれで中断をいたします。
  16. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 横山利秋君。
  17. 横山利秋

    横山委員 大臣にお伺いをいたしたいと思います。  顧みますと、この基本法がこの国会へ三党それぞれ上程されるまでには、かなりの年月をかけて、各党ともそれぞれ検討いたしてまいりました。私もその一人ではございましたが、この基本法という中小企業にとりましては抜本的な法律案が国会に上程をされて、ここに中小企業の本来あるべき姿を、また将来あるべき姿を議論をする経過になったことは、まことに私ども欣快にたえないと思うのであります。その意味におきましては、たくさんの質問がございますけれども、まずその前提になります二、三の問題について、お互いに意思統一をそれぞれする必要があろうかと思います。その意味では、大臣にまずお伺いをいたしたいのは、政府から出されておりますこの法案の考え方であります。考え方の第一になりますのは、この法案がかりに出ないとするならば、中小企業は今後どういうような推移をたどるであろうかという展望について、お互いに意見の相違はないであろうかということであります。展望と申しましても、たいへん広範囲な問題でございますから、この法案がなかりせば、現状のままで推移するならば、日本の経済構造の中における中小企業の相対的な地位というものは、どういう変化をたどると思っておられるか、また技術が非常に進歩をしていくことは自明の理であるけれども、その中において同様、格差の問題はどういう変貌を遂げるであろうか、また特にわれわれが注意をいたしております零細企業というものは、今後の経済構造の中でどういう状況になるだろうか、これが非常に意見が違っておったのでは、この政策をわれわれがここで立案し、あるいは国会を通過するに従って、国民の中にも意見の違いがあるのではなかろうか。ですから、こういう法案を提出しなければならないという中には、今後の経済構造の中における中小企業の地位、大企業との格差、零細企業の展望というものをどういうふうにお考えであるか。これは大臣としてのお考えでもよろしいし、あるいは政府が今日まで発表したものでもけっこうでありますが、お聞かせを願いたいと思います。
  18. 福田一

    福田国務大臣 お説のとおり、わが国の中小企業をいかにしていくべきかということについては、長い間、与野党の間においても、政府の間においても、研究を続けてきたところであります。ただいまの御質問は、この法案がなかりせばいかなる方向に中小企業が向いていくであろうか、この法案を提出した基礎、すなわち、政府の信念を述べろというお考えかと伺ったのでありますが……。
  19. 横山利秋

    横山委員 信念ではありません。科学的な展望をお聞きしたいのです。
  20. 福田一

    福田国務大臣 私は信念を含めて申し上げてみますと、御承知のように、今日、日本の中小企業は、私は、まず諸外国においては例がない、諸外国においてはこのような中小企業のあり方というものはないと思っております。それが、どうして日本においてこういう中小企業が存在するというか、また政治的、経済的使命を持っておったかといえば、やはり日本が、地理的に地域が非常に狭いところへたくさんの人がおる、しかも各地域ごとに独立した経済が、封建時代に行なわれておったその続きがいままで残っておるということであると、私は考えております。ところが、今日の状態になってきますと、日本の経済は世界の経済と交流をしつつ発展をしていかなければならない宿命をいまや帯びておるのでありまして、それがいわゆる自由化というようなことになってあらわれたり、関税の一括引き下げとか、OECDの加盟とかいうような、いろいろないわゆる経済外交上の問題がここに出てきておるのでありますが、そういうようなところへ突入してきた。しかも、日本経済自体というものは、先ほどあなたが御説明になりましたように、大企業中小企業の間には格差がある、中企業と小企業の間にもまだ大きな格差があるというような時代である。したがって、これを是正していくのでなければ、国民経済を全体として円満にといいますか、正しい姿、完ぺきな姿で育成していくことができない段階にいま入っておる、こういう認識の上に立ちまして、この法案を提案をいたしました。そうしてそのねらいといたしますところは、いわゆる格差の是正を通じて中小企業者自体の生活向上をはかると同時に、そこに入っている人たちの生活の向上をもはかっていく、そうしてこの中小企業が日本の経済の中に占めておる役割を十分果たすと同時に、大企業との間においても円満な活動を続けることができるように、しかも大企業から圧迫を受けることがないようにしていく、こういうように申し上げてみればたくさんございますが、法案自体の前文や第一条に書いてあることをただ私は申し上げてみたにすぎないかと思いますが、そういうような事態である。したがって、この法律は、現段階においてはぜひとも必要である、中小企業を育成していくという面においてぜひとも必要なんだ、こういう考え方のもとに本法案を提案をいたしておる次第でございます。
  21. 横山利秋

    横山委員 大臣、ひとつ時間がかかりますから、私の注文することだけお答え願いたいのです。信念や対策を聞いておるのではない。これからこの法案がなかりせば、中小企業はどういう推移をたどるであろうかという点を三つに分けてお伺いしておる。一つは零細企業はどういうことになっていくか、あるいは格差はどのくらい開いていくか、あるいは経済構造全体の中で中小企業がどうなっていくか、その分析がなされておるのかいなかということをお伺いしている。
  22. 福田一

    福田国務大臣 小企業がどうなる、あるいはまたこの経済の中で中小企業の格差がどうなるかということは、このままにしておけば、格差がますます開く可能性がある。したがって、この格差を縮めるために必要である、こういうふうに考えておるわけであります。
  23. 横山利秋

    横山委員 大臣に申し上げますけれども、少なくともこの基本法というものは、長期にわたって中小企業をどうするかということなんです。抽象的な作文のようなことを議論しておったのでは、私はだめだと思うのです。大体このまま推移するならば、日本における零細企業はどういう推移をたどるか、あるいは格差はどのくらい開くか、経済構造の中において中小企業はどういうふうな相対的地位を占めるか、こういう科学的分析というものがあって、だからこうするのだという問題にまで発展しなければ、何となくあぶないだろうでは、基本法では済みませんよ。私はこんなお考えはないと思うのでありますが、大臣が御存じにならなければ、中小企業庁長官でもいいのですが、短いことばでけっこうでございますから、どういう推移をたどるのかという点を簡潔にお伺いをいたします。
  24. 福田一

    福田国務大臣 やはりこの見通しというものは、そういう数字でもってここに出してみて、それがはたして正当なものであるか、その数字をつくる基礎データが何であるかというようなことからやっていかなければならないということになれば、私は、なかなかそこに数字的な表現は困難であると思います。したがって、私は、格差が開くであろう、このままにしておくことは困るであろうということでお答えをいたしておるのでありまして、これ以上に数字的に説明せよといわれても、ちょっとお答えいたしにくいかと思います。
  25. 横山利秋

    横山委員 それはおかしなことだと思うのですよ。私は、何もてにをはをつけて一千六百六十六とか、格差が五〇%とか、そうかっちりした話を必ずしも聞いておるのではない。大臣に、大体この政策の基本になっておる展望というものがあるだろう、そのあるものを出したらどうだ、こう言っておるのです。何となくあぶなくなりそうだ、だから基本法案を出したのだ、これでは済みません。じゃ逆にお伺いをいたしますが、格差を縮めると言っていらっしゃるが、この格差をどのくらいからどのくらいに縮めるという目標でございますか。
  26. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 一番の問題は、中小企業の中でも、特に規模の小さな小規模企業の方々の生産性をいかに高めるかということでございますが、一応政府として持っておりますのは、御承知のように、所得倍増計画におきましては、基準年次におきまして、大企業の一〇〇に対します生産性が二六であったわけでございますが、それを四九まで高めたいということを一つの目標にいたしまして、現在施策を進めておるわけでございます。
  27. 横山利秋

    横山委員 それじゃそれでひとつ議論を発展させますが、零細企業はそれでよろしい。あとの問題はどうなりますか。いま私がお伺いした、全体的に大企業と中企業、経済構造の中における中企業の相対的地位、こういうものはどうですか。政府の政策目標は何に置かれますか。
  28. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは一番小さな四人−九人というところの四九ということを申し上げたわけでございますが、あと五十人以下のもの、あるいは百人以下のものは、これはすでに出ておると思いますが、大体三十人以下の、現在基準年次三三%というものを五七%まで上げる。三百人以下の六五%を七四%まで上げるということで、大体下になりますほど上げる率が多くなるわけでございますが、ほぼ現在あります欧米並みの中小企業の生産性格差の程度まで十年間に縮めたいということを、一つのメルクマールとしてやっております。
  29. 横山利秋

    横山委員 その点については、大臣、この基本法の政策目標として基本法に裏打ちされておることと考えてよろしいのか。いまお話がございましたのは、所得倍増計画の中小企業委員会の報告の中に盛られておる数字でございますが、その数字というものが基本法の骨格になっておると考えてよろしいですね。
  30. 福田一

    福田国務大臣 今日の段階において数字をあげるということでございますれば、これは所得倍増計画の小委員会できめた数字になっておりますが、これは一つの目標である。しかし、これで十分であると考えるべきではないと私は思っております。私が数字を特に言わないのは、できるだけこれ以上にもっと格差を縮める工夫を努力すべきである。こんなことで満足すべきでないという感じを持っております。しかし、これは最低限の目標としなければなりません。ただ、横山さんは非常に数字的にものをきちっと詰めて議論をしなければいけないという、非常に学者的というか、経済学者的なものの考え方で御質問があったように私は聞いておるのですが、いままでの諸外国においても、経済の問題を論じたとき、数字を言って、そのままいったことはほとんどございません。外国においてもそうでございます。日本においてもそうでございます。私は、数字よりは信念、何としても中小企業というものを大企業と格差をなくして、みんなができるならば平等の収入、平等の生活というようなところに持っていくというのが、政治信念でなければならない、私はこういう感じを持っておる。そこで、あなたに対してことばの上で抽象的なことを申し上げたのでありますが、どうしてもそういうような数字の、まず一応の目標がなければならないということでございますれば、私はこの数字を肯定することにやぶさかではございません。しかし、私は、これより以上にやりたいという意欲に燃えておることをつけ加えさせていただきます。
  31. 横山利秋

    横山委員 私は、この数字はあとで議論をいたしますけれども、何かやはりめどがなくてはならぬ、そのめどは一体何だ、基本法の政策目標とするものは何だという点をはっきりしたいのであります。しかし、いま大臣のおっしゃるように、この数字を最低限として政策目標を置いておるということに、一応内容は別として、政府の趣旨はわかりますから、次に議論を進めたいと思います。  長官にお伺いいたしますが、この基本法を実施する上において、基本法の裏打ちになっております予算と定員はどれだけです。私がお伺いしたいのは、おそらくこの近代化法なり、あるいは何々法なり、別途の法案によって裏づけられておる定員や予算を云々するわけではございません。簡明直截に、この基本法を積極的に運営するにあたっての定員と予算は、どういうことになっておるか、お伺いしたい。
  32. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 まず定員につきましては、現在御承知のように、関係各省、通産省の中の各原局が実際の仕事に当たっておるわけでございます。中小企業庁といたしましては、法令の運用といったような横の面から、総括的な仕事をやっておるわけでございますが、中小企業庁には、現在百五十二名の定員がございます。先般設置法の改正をお認めいただきましたので、七月一日からさらに十一名増加するということになりますが、この百六十三名の人間をもちまして、省内の各原局並びに関係各省と連絡をとりながら、基本的な法制の拡充をはかり、具体的な行政は、それぞれのつかさつかさの所管の部局にやっていただくということになっております。  それから中小企業関係の予算は、各省合わせまして全体で約百十八億でございますが、二千七百万が基本法の直接の施行費ということになります。
  33. 横山利秋

    横山委員 大臣にお伺いしますが、通過いたしました設置法の一部改正は、七月一日から次長一人置くこと、それから振興部を計画部にすることであります。百六十三名という定員は、基本法を前提にしていない。現在までの百五十二名というものは、基本法なかりしときの問題です。今度増加いたしました十一名というものは、振興部を計画部にしただけで、別途の問題だとぼくは思っている。いかに初年度といいながら、二千七百万で基本法全体が運用できるとお考えでございましょうか。定員が、基本法が通過することによって基本法の裏打ちになる増員というものが一人もないということで、一体基本法が運用されましょうか。
  34. 福田一

    福田国務大臣 この基本法規定をいたしておりますのは、中小企業者が何とかして自分で立ち上がるように熱意を燃やしていかなければならぬのだというような根本の理念とか、あるいは中小企業者がそういうことになった場合には、金融上あるいは税制上その他の問題で、大いに国が地方公共団体、金融機関と協力するというような根本の方針をきめておるわけでございます。そうしてこの基本法に基づいて、これからいわゆる実体法といいますか、具体的な内容がきまっていくわけであります。そこで人員の問題になりますと、やはり実体法がきまってきた場合には、もちろんそこに仕事の量が特にふえてまいるのでありますから、それに伴う人員の増加ということがすぐ必要になってくるのでありますが、この基本法は、いま申し上げたような、いわゆる理念を明らかにすることによって、そうしてそれをみなが認めることによって、今後は一つ一つの問題について実体法をきめていこう。もちろん実体法をきめるのも、今度法案で幾つか出しておりますが、これだけでは足りません。まだまだ今後出していかなければなりません。また、今度出したものでも、もっと追加していかなければならないかもしれません。それに従って人員をふやすということは必要であろう、また施行上の経費をふやすということは必要かと思いますが、さしあたり、この基本法といたしまして、これを御承認願いましても、いま申し上げましたような二千七百万円程度をもって実施できるのではないか、かように考えておるのであります。ただ、中小企業というものに対する予算の問題につきましては、毎年国会において御議論を賜わっておるのでありまして、この程度では十分ではないではないかというようなお話も、いろいろ承っております。このことについては、われわれとしても必ずしも十分と考えておるわけでありません。したがって、こういう法律がなくても、今後もますますふやしていくべきであります。この法律ができた以上、これは順次その面における人的な面においても充実をはかっていくということについては、われわれも皆さんと同じような意見を持っておるわけであります。
  35. 横山利秋

    横山委員 大臣、それは自分でお話をなさりながら、やはり心の中にひっかかることがあるでしょうが。一人も定員がふえぬ、二千七百万円だ、そうしてこれは理念を説いたにすぎない、そういうことで、まあこれから実体法をつくるからしばらく待ってもらいたいでは、全国民、特に中小企業者要望しておる基本法としては、まことにおさみしい限りではありませんか。なるほどそれは、基本法は骨格をつくるものだ。しかし、今日の中小企業は、修身や、あるいは絵や、あるいは抽象的なことを言って基本法に期待しておるのではないのですよ。特に、中小企業政策についてはしかりです。これは大臣、ずいぶん身をもって御体験のとおりだと思う。中小企業問題についてだけは、お題目ではだめだ、修身ではだめだ、理念ではだめだという声は、まさにこれ天の声、地の声、人の声ですよ。それはあなたが一人もふやしませんわ……。(「いやそんなことは言ってない。」と呼ぶ者あり)だってそうじゃありませんか。百五十二名は現在の定員じゃありませんか。十一名は何ですか。振興部を計画部に変えただけではございませんか。それは中には兼務でやる人もあるだろうと思う。思うけれども、これでは基本法を堂々と上程をして、国会を通過したら中小企業の諸君も期待してくれたまえなんて言えるでありましょうか。  もう一つ私が考えますのは、やはり大臣がおっしゃるように、この基本法というものを、各省全部にわたっておるものを、ある意味においては政治力をもって各省を押えて、たとえば政府案の二十条、(「国等からの受注機会の確保)」、「国は、中小企業が供給する物品、役務等に対する需要の増進に資するため、国等の物品、役務等の調達に関し、中小企業者の受注の機会を確保する等必要な施策を講ずるものとする。」、これは大蔵省の仕事で、私のほうの仕事ではない、こうはおっしゃいませんでしょうね。中小企業が通産大臣の所管であるならば、これを堂々とやるということになるでありましょう。これはたとえばの話です。こういうことで、一つには人間を確保しなければならぬ。予算を確保しなければならぬ。そうしてそれを裏打ちされるものとして機構を確保しなければならぬ。私どもが中小企業省を設置しろということについて、いろいろ御意見があるらしいのですけれども、この基本法を実現する体制というものが、どうしても必要です。各省全部またがっているものを総括して、この中小企業に関してはおれらの言うことを聞けという体制がなくてはならぬじゃないですか。その体制については、一言も触れてはいないのですね。どうやってこの基本法を運用しようとするのかについては、私はまことに寒心にたえないと思う。そういう点についてはどうお考えですか。
  36. 福田一

    福田国務大臣 それは、政治をやるやり方ということに相通じてくるかと思うのであります。あなたのおっしゃるのは、一つ法律ができたら、それに基づく体制というものがなければならない、こういうお考えのようでありますが、まず第一のことから申し上げてみますと、定員はもちろん十一人、二千七百万のうちでふやします。これは純増でございます。それから中小企業というものについて、中小企業庁というものが全部やっておるわけではないのであります。たとえば繊維の問題、あるいは鉄鋼の問題、これにはみなそれぞれ原局があります。そして鉄鋼のうちには、中小企業がたくさんあるわけです。繊維の場合にも、中小企業がたくさんあるわけです。そしてその繊維の問題を取り扱うときに、やはり中小企業のことをよく考えてやる。これはいままでもやっておりますが、こういう法案ができれば、なおその点には力を入れることになります。これは当然のことです。それが精神的な態勢、いわゆる政治的な態勢でございます。そこに法律ができたという意味がしみわたってくるわけです。いままではその仕事に対して五であった力が、意欲を燃やしてやるということになれば、七になり八になってくるということで、やはりそういうような中小企業に対する対策が、全体として、通産行政全般あるいはその他の役所全体を通じてやはり盛り上がってくるというところに、法案の意味が出てくるのだと思うのでありまして、そのことは、国自身がこういう面においては十分努力しなければならないということをちゃんとここにうたっておるわけでございますから、いまのあなたのおっしゃったような、いわゆる精神的緊張といいますか、努力というものは、この法案によって加えられるものである、かように私たちは考えており、また加えていくつもりであります。
  37. 横山利秋

    横山委員 長官にひとつお伺いをしたいのですが、長官は、通産大臣の指揮下にある中小企業庁長官として、自分がこの基本法律案の骨格の一人となって今後運用をするということになるかもしれないという立場から、ぜひ率直な意見をこの際、隣に大臣がおすわりになっていらっしゃろうとも、言っていただきたいと思うのです。なぜ基本法をつくらなければならないのかという、その感想であります。なぜ基本法をつくらなければならないのか。今日まで国会始まって以来、いな、さかのぼれば明治以来、中小企業の問題が国会で論じられなかったことはないですね。いつの国会でも、中小企業の問題は論じられてきた。けれども、数々の問題があって、いつもいつもこの国会で団体法、この国会で基本法、この国会で中小企業がこの法案によって救われると言いながら、いつかなその実効をあらわすことがない。たとえば業界の批評をいろいろ聞いてみますと、百貨店法は、しょせん百貨店保護法になった。あるいはまた下請代金支払遅延等防止法は、沈香もたかずへもひらず、法はあれども実際に何らの運用はされていない、こう言われておる。それから団体組織法があれだけ大きな声で騒がれて通過したけれども、実際に団体組織法が効果をもたらしたか。いかなる団体が、新聞にもラジオにも言われて、団体組織法が運用されたか。だれもそうは信じない。そうでしょう。いま公取委員長がお帰りになった。公取は一体何をしたか。はたして中小企業を守ったか。きょう配付されましたこの資料を見ますと、たとえば支払遅延防止法にあっては「公正取引委員会事務局経済部下請課の担当であるが、同課の人員は課長以下十一名であり、他には、大阪、名古屋、福岡の地方事務所に二名ずつの兼任担当官が配置されているに過ぎない。」公取は一体これで中小企業を守り得るか。公取があることを知っておる中小企業者は、地方にはだれもいない。そこでこの基本法が話題になったのであるけれども、こういう状況が続く限りにおいては、またいまのお話のような理念を説いただけでは、この基本法も決して実効があるとは思われない。私が言うのは、この基本法が全き運用をされるためには、やはり機構がなければならぬ。もちろん政治力もその中になければならぬけれども、機構がなければならぬ。もちろん予算も定員も配置をしなければならぬ。そういう点について、あなた、自信を持ってこの基本法を提案し、これによって刻下の中小企業問題の根本的解決へ現状のままで資すると思うかどうか。あなたは将来にとおっしゃるかもしれぬけれども、将来充実する基本法の理想図というものは、どういうものなのか。それはいつごろになったら達成できると思われるのか。大臣のお話をもってしても、さしあたりは理念だ、これから定員もふやし、これから法案もつくっていくのだ、こうおっしゃるけれども、ほんとうの担当者として、あなたはどういうお考えでこの基本法をいま爼上にのせておるのか、ひとつあなたの偽らざる心境を、周囲に顧慮することなく聞かせてほしい。
  38. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 われわれといたしましては、中小企業の国民経済における重要性ということから、今後ますます中小企業が本来の使命を十二分に発揮できるように、強健な体質につくる必要があるという必要性から、この法律をつくったわけでございまして、行く行くは大企業との格差を是正することによって、そこに働く中小企業の従事者たちにも、大企業とあまり差のないような生活水準が維持されるようなことを招来することができるようにということを目標にして、この法律をつくっているわけでございまして、特にこの法律を今国会にお願いいたしましたのは、先ほど大臣も申し上げましたように、中小企業が、自由化でありますとか、あるいは技術革新でありますとか、最近の高度成長に伴う労働力不足であるとかいうようなことから、いろいろ従来の存立の基盤に大きな変化を生じつつございますし、またこのままに置いておいたのでは、その変化が一そうはなはだしくなるというふうにも見受けられるということから、いかにして中小企業中小企業本来の使命を発揮することができるか、また、そのためには何をすべきかという方向を明らかにするために、この法律をつくったわけでございまして、そのためには、まず第一番目に必要なのは、中小企業者の自覚であり、同時に、また、中小企業と非常に密接な関係を持って育っております大企業、あるいは一般消費者、すべてひっくるめて国民経済全体の健全な発達であろうか、そういうふうに思うわけであります。  そこでわれわれといたしましては、産業政策という面から考えていきます際に、大企業中小企業が、常に対立というかっこうではなしに、相協力し、相助け合って育っていくものである、そういう基本的な認識に立っておるわけでございまして、そういう意味から申しますと、今回十一人の人員を増加していただきましては、その中には次長一名ふやしていただいたわけでございます。わずか一名ではございますが、それによりまして、通産省内における各原局とのいろいろ円滑な事務の折衝、あるいは関係各省とのいろいろな交渉といったもの、並びに対外的ないろいろな面でのルートも、いままでよりも非常に大きなパイプがつながれるというようなことになりまして、各業界の実態に即しながら、統一的な中小企業政策を増進していくというために、今回の増員並びに機構改革は、相当の意味を持つのではないか、そういうふうに思っておるわけでございます。もちろんこの基本法ができたからというので、それですぐに中小企業がよくなるというようなことではないと存じますが、しかし、われわれは、この基本法に盛られている基本的な観念で進む以外に、中小企業を今後健全に育て上げ、ひいては国民経済の一そう円滑なる伸長、発展を願う道はないという確信のもとに、この法案を出して、御審議願っておるわけでございます。
  39. 横山利秋

    横山委員 中小企業庁は、私どもの内閣の手で生まれました。続いて保守党内閣になって、政府中小企業政策に不満を漏らして、長官は席をけって辞職して、京都で知事になっておられます。以降、中小企業庁に対する期待は非常に大きいにもかかわりませず、何が中小企業庁というものが影が薄れて、そうして結局実力のないところだ、何とか各省のやっていることに中小企業庁が陳情をして、なるべく中小企業者のことを考えてもらうところだ、こういう印象を受けておるのは、まことに私は遺憾千万だと思っております。はたして原局と中小企業庁とか対決して、同等の立場で争ってやっているかどうか、これをあなたは、世間がどう見ておるか、御存じでございましょうか。私は、今回この中小企業基本法が立案され、画期的な法案となろうとするときに、ぜひひとつ長官たるものは度胸を据えて、性根を据えて、言いたいことを言ってもらわなければ、できるものではない、この法案が絵から実際の法案になるものではないと、私は率直にいって考えておる。まあ言いづらいか、言いにくいかどうか知りませんけれども、あなたのいまの答弁には、私は非常な不満を表明しておきます。  お待ちかねのようでありますから、田中議員にひとつお伺いをいたしたい。率直に言っていささか八百長のきらいがあるかもしれませんけれども、これはやはり与党の皆さんもお聞きになりたいところだろうと思うから、きわめて辛らいお伺いをいたしたいと思うのであります。  問題の焦点は、この社会党案というものが、一体、どういう性格を持っておるものであるかという点であります。つまりこの社会党の基本法案というものが、現在の保守党内閣においてと、それから近き将来と予想される社会党の政権のもとについて、それからさらに将来と思われる社会主義の政権のもとにおいて、この社会党の基本法案というものが、どういう性格を持っておるのか。俗説によりますと、社会党は、いま予党に先べんをつけて出したのであるけれども、これはいまの自民党政権のもとにおける、資本主義下においての問題であって、社会党政権のもとにおいては、これはまた別途な変貌を遂げるであろう。中小企業者はそれによって非常な圧迫を受ける可能性がある。さらにそれが社会主義政権になりまするならば、この法案は雲散霧消するであろう、こういう俗説があるのでございますけれども、田中議員のお考えを承りたいのであります。
  40. 田中武夫

    田中(武)議員 横山君の御質問にお答えをいたしますが、まず最初に、横山君が本日の質問の第一に申されたこと、それから触れてみたいと思うのです。横山君は、もし中小企業基本法なかりせばどうなるか。私は、現在の保守党政府、政策が続いていく限り、高度経済成長政策が続いていく限りにおいては、中小企業と大企業、あるいはそのうちには生産性、技術いろいろありますが、格差はますます広がっていきましょう。そうして大企業のいわゆる封建的な形の中における系列下に入らない限り、中小企業はつぶれていくのではないか、ことに零細企業にあっては、切り捨てられていくということが目に見えております。そこでそのことのないように一口に一言うならば、いままでの中小企業政策は、いわば保護に重点を置かれておりました。中小企業保護でありました。それを一歩進んで、振興政策と申しますか、私は、従来の保守党の中小企業政策転換の意味において、わが党中小企業基本法は、その価値があるものと考えております。したがって、一番柱は五つありますが、御承知のように、二重構造の解消、こういうこと、あるいは経済の民主的な運営、こういうことに重点を置いております。  そこで、それでは一体いま出しておるのは、社会党のいかなる段階におけるものか、こういうことでございますが、私は、現在わが党が出している基本法案は、わが党が続く限り、もちろん時代の推移によって修正をし、あるいは直していく必要はあるかもしれませんが、基本的においては変わるものではないと考えております。あるいは社会党政権、あるいは社会主義政権のもとにおいてはどうか、こういうようにいわれ、またそういう心配があるようでございますが、御承知のように、わが党綱領二十七項に「わが党の任務の規定は、わが党の性格と構成を明かにする。」、こういうようにうたっておりまして、そうして「わが党は、労働者階級を中核とし、農民・漁民・中小商工業者・知識層その他国民の大多数を組織する勤労者階層の結合体である。」、こういうようにうたっておりまして、社会党がいわゆる政権を持てば、あるいは社会主義政権になれば、中小企業はつぶすのではないか、こういうような心配もあるようでございますが、わが党綱領が存する限り、そういう御心配はございません。  なお、すでにわが党政策として、経済政策といたしまして、あるいは社会党政権下の政策といたしまして、重要な基幹産業、たとえば電気、石炭、鉄鋼というようなものにつきましては、国営または国家管理ということを打ち出しておりますが、中小企業の問題につきましては、そのような御心配になるようなことは、いまだかつて打ち出した覚えもございません。
  41. 横山利秋

    横山委員 いささか雑談になりますけれども、自由民主党の石田博英氏が中央公論に掲載いたしました論文を拝見いたしますと、いまから五年後には保守と革新の票が入れかわる。某一流新聞が電子計算機を用いてその保守と革新の入れかわりを計算いたしましたところ、約七年という統計数字が現われ、また著名な評論家の懇談会、座談会等を聞いておりますと、どんなに長くても十二年の間には保守と革新が入れかわる、こういう話がございます。五年から十二年、私どもにとりましては実は非常に長過ぎるのでありまして、もう次の選挙かその次の選挙には、そちらにすわらしていただけるような気がするわけです。しかし、それはそれといたしまして、十年の歴史、五年の歴史というものは、きわめて短いのであります。この社会党の中小企業基本法というものの立案の趣旨というものが、今日からいまお話のように社会党政権下を展望して、社会党の政権下におきましても、この中小企業社会党案というものが実現をされる、こういう展望の立案と拝聴してよろしゅうございますか。
  42. 田中武夫

    田中(武)議員 御質問のとおり、そのように理解していただいていいと思います。ただ、時代が変わることによって、たとえば中小企業の定義の基準に三千万円としておるのが、中小企業全体がレベルアップしまして、あるいはそれを五千万円あるいは一億というようなことはあり得ましても、その中心に流れるところの思想は変わりません。
  43. 横山利秋

    横山委員 浜中法制局第三部長がお見えになっておりますので、私どもの聞きたい点をちょっとお伺いをいたしますが、この前の委員会でございますか、田中さんが、社会党案の問題の焦点であり、政府案にないところでございますが、社会党案十八条、十九条の事業分野の確保の点の質問をされて、あたかも憲法違反の疑いがあるのではないかという質問があったやに聞き及びました。私どもはそうは思わないのでありますけれども、いささかてまえみそになるかと思いますので、意見の表明は私もしませんし、田中議員にもお伺いしないつもりでございますが、ひとつ法制的な見地から、この十八条、十九条と憲法の関係についての御意見をお伺いたいと思います。
  44. 浜中雄太郎

    ○浜中法制局参事 ただいまお尋ねの点でございますが、職業選択の自由、あるいは生命自由、及び幸福追求に対する国民の権利につきましては、憲法の保障するところでございます。しこうしてその保障は、絶対無制約のものではございませんので、憲法自身におきまして「公共の福祉に反しない限り」という制約がなされているのでございます。したがいまして、営業の自由につきましても、公共の福祉に反します場合には、これについて所要の規制を加えるということは、憲法の容認するところであると申して差しつかえないと思います。  そこで、中小企業基本法案の社会党案でございますが、その事業分野の確保の規定には、中小企業者が圧倒的に大多数を占め、そしてその生産実績が相当部分にわたり、また経済的に中小規模の企業形態による経営も適切であり、またその事業の分野に大規模事業者が進出することが中小企業者事業活動を著しく圧迫すると認められる事業の分野岸中小企業者事業の分野といたしまして、その分野に対しまして大規模事業者が進出をし、あるいは事業の拡張をいたしまして、大多数に上る中小企業者の利益を著しく阻害すると認められるような場合にこれを規制しまして、中小企業者の存立基盤を擁護いたしますことは、憲法の公共の福祉の要請に資するゆえんであろうかと思います。また、現行の百貨店法におきまして、百貨店業に対しまして許可制をとっておりまして、百貨店業を営もうとする者は、通商産業大臣の許可を要することになっております。その許可の申請があった場合に、通商産業大臣は、百貨店業の事業活動が中小商業者の商業の利益を著しく害すると認める場合におきましては、その許可をしてはならないという規定になっております。社会党のこの法案の規定も、その規制の態様につきましてはともかくといたしまして、その考え方の根本におきましては、これと同様の趣旨に基づくものであろうか、かように存じております。したがいまして、私どもは、社会党の中小企業者基本法案は、憲法に違反するということは考えておらない次第でございます。
  45. 横山利秋

    横山委員 きわめて理路整然、明白にして寸分の疑いもいれないところで、納得をいたしました。  大蔵省から柏木財務調査官お見えになっておりますか。政府案の二十四条、資金の融通の適正円滑化の項目をうたっています。ここで言っておりますことは「政府関係機関の機能の強化、信用補完事業の充実、民間金融機関からの中小企業に対する適正な融資の指導」、この三項目にわたっておるのでありますが、このこと自体については何ら新しいことではなく、現にいま政府がなされておることだ、こう理解してよろしいか。
  46. 柏木雄介

    ○柏木説明員 いま先生からお話しがありましたとおりのことでございまして、そういう機能の強化、あるいは整備拡充を今後も続けてまいるという趣旨でございます。
  47. 横山利秋

    横山委員 そういたしますと、この二十四条は、現行の資金の融通適正化を十分に進めるということであって、別にこの二十四条によって新しい金融の構想が生まれておるのではない、こう理解してよろしいか。
  48. 柏木雄介

    ○柏木説明員 二十四条自体によって新たなる措置が行なわれるというのでございませんで、こういう趣旨に沿うて今後政府措置をいたしてまいるということでございます。
  49. 横山利秋

    横山委員 長官にお伺いをいたしますが、どうも事大蔵省関係に関する問題については、二十四条を初め二十五条、税制、金融につきましては、私も大蔵委員でございますから十分にわかるわけでありますが、今日以上新しい課題がここには何らあらわれていない、こういう点について、ちょっと奇異な感じがするのです。中小企業政策というものは、税と金融、組織と大企業との問題、過当競争の問題、近代化の問題、社会保障の問題、大きく言ってまず七つか八つが大黒柱になる。その中で中小企業者が最も関心を持つものは、実際問題としてむしろ税と金融なんです。その税と金融について、まあ一応書いておこうという感じしかこの中にあらわれていないということは、何としたことであろうか。一体基本法について、大蔵省はどういう考えなのか。全く熱意も誠意もその方面についてはあらわれていないではないか。商工委員会といい、あるいは大蔵委員会といい、この中小企業の税と金融については、毎年々々新しい提案、新しい問題、新しい創意くふうを与野党ともこらしておる。しかし、どんなに創意くふうをこらしてやってみても、やはりだめだったという効果しかあらわれていない。資金量をふやしたところで、相対的にはふえていない。その比率としてはあんまりふえていない。この際、たとえば相互銀行や信用金庫の預貸率八五%を変える方法を考えるとか、日銀の別ワク融資を考えるとか、集中融資を規制するとか、あるいは債券発行銀行をふやすとか、あるいは国庫金の指定預託制度を拡充するとか、あるいは相互銀行、信用金庫のコールの問題を規制するとか、あるいは金融機関の中小企業の比率を確定するとか、あるいは零細企業向けに特別の制度を設けるとか、何らかこの基本法の議論を中心にして出てこなければならず、政府案には当然それが大黒柱として出なければならぬのに、いままであったことをただ載せておるという感じは、何たることでありましょうか。これで一体基本法の二つの大きな骨格ができ上がるのでありましょうか。一体この政府基本法の中で、中小企業者がずっと見ていって、ああこれだな、こういうことがこれから芽を出すのだということがどこにありますか。最も私が指摘したいのは、金融と税制であります。何らの新鮮味がないではないか。一体これでいいのかどうか、どう思っておるのですか。
  50. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは基本法でありまして、個々の実定法ではございませんから、この法律からすぐに権利を発生し、義務を課するといったようなものでないことは、これは私が申し上げるまでもなく、先生よく御存じのとおりだと思います。基本的な金融並びに税制に対する心がまえをまずここで明示したわけでありまして、いままでの施策を単にうたっているだけにすぎないじゃないか、こういうお話でございますが、私は、いままでの施策を拡充するということ、これにも非常に大きな意味がある、こう存じますが、たとえばこの基本法を出すということに関連いたしまして、金融のほうの関係につきましては、信用補完の一つといたしまして、近代化保険の創設といったような新しい制度につきましても、別途信用保険法の改正という形でこの国会に同時に御審議をお願いしているわけでございますし、われわれといたしましては、この基本法に盛られた精神にのっとりまして、いまの保険法の改正といったような実定法を逐次新しく創設するなり、あるいは改正するなりということでやっていきたい、こういうふうに思っておるわけでございまして、さしあたりこの国会に出しております金融関係では、新制度としてはいまの近代化保険の新設でございますが、同時に、本年度から小口保険につきまして日歩二毛、それから第一種保険につきましては日歩一毛の保険料の引き下げということもやっていただいておりますし、また保険公庫に対する三十億の出資による保証協会の保証能力の拡大ということについても、予算措置を講じていただいておるわけでございます。今後は、財投の拡充、あるいは民間機関と政府機関との協調融資といったようなことにつきましても、従来以上に進めていくということによって、金融の円滑化をはかると同時に、中小専門の民間金融機関の育成、あるいは金融市場の適正化先生がただいまいろいろ御指摘になりましたような点につきましても、これから具体的な措置をそれぞれの実定法に基づいてきめていくというふうに考えております。  それから税制につきましても、何ら新しい措置がないじゃないかというお話でございますが、過般御決定いただきました近代化促進法によりまして、近代化を急速に必要とするというふうに指定されました業種につきましては、その全固定資産につきまして五年間二分の一の割り増し償却ということによる、そういう企業資本の充実につきましての特別措置規定していただきましたし、また同族会社に対する留保金課税の軽減、あるいは専従者控除の引き上げといったようなことも、今年度措置をしていただいているというほかに、これも先般御決定いただきました投資育成会社の創設によりまして、今後自己資本だけでは必要な増資等ができないというものに対する中立的な機関による援助ということについても、別途措置を講じていただいておるわけでございまして、われわれは、この基本法制定を一つの契機といたしまして、今後必要に応じ、実定法を制定するなり、あるいは財政上、予算上の必要な措置を講じていただく。それからまた金融機関にも、できるだけ金融の正常化をはかりながら、中小企業に潤沢に金が流れていくようにということについて努力していきたいと考えております。
  51. 横山利秋

    横山委員 だめですよ、そんな言い方は。そんなことだったら、この基本法政府案を全部省略して、第一条だけ書いて、つまり中小企業を大群にしますということだけ響いておけばいいということになってしまう。そうじゃないでしょう。基本法基本法たるゆえんは、骨格を幾つも幾つもとり出して、この骨格がこの条のこの項にあるから、それによってこの実定法ができていくのだ、こう言わなければならぬ。これによってわれわれが頭の中に入れられるのは、あの法律を面さなければならぬな、この法律をこうしなければならぬな、こういう点に与野党の意思の疎通がはかられる。第二十四条や二十五条の中に、何がイメージとして浮かんできますか。何にも浮かんでこないじゃありませんか。あなたがいま例に出したことは、何にも基本法関係なく出てくるじゃありませんか。少なくとも政府案の中を見ましても、イメージの浮く条文が中には少しはある。けれども、事中小企業にとって一番重要な金融、税制について、何らのイメージもない。何らの示唆もない。これによってどの法律がどういうふうに変わっていくかという感覚は、ゼロじゃありませんか。中小企業税制、金融を大事にします、これからよくいたします、こんなことなら、ここに書く必要はないのです。かえってじゃまだ、これは。そうでしょうが。じゃまですよ。こんなものは書いてもらわぬほうがいいくらいだ。書くくらいだったら、お互いに国会の意思としてこういうことがきまったんだから、ここからすぐにあの法律は改正しなければならぬな、こういう示唆が与えられなければ、この法律は全く有名無実じゃありませんか。大臣どうですか。長官より大臣に一ぺんお伺いしましょう。
  52. 福田一

    福田国務大臣 私は、やはりこの法律においてこういう規定を出すことに、非常に意義を見出しております。それはこういうことなんです。金融とか税制という問題について、いわゆる抜本的な改革の考え方がここにあり得るとすれば、いまあなたのおっしゃったようなことをここに書けば、それで意味が通ると思います。しかし、金融というものは、できるだけ円滑にこれをはかっていくんだ、税制というものは、なるべく税の負担の軽減をはかっていく、こういうことだろうと思う。その軽減をはかるとか、円滑化をはかっていくということは、ことばの上では確かに、ただ円滑化をはかるということだけでは意味がないじゃないか、そんなこと書く必要がないじゃないかと言うが、しかし、ここに中小企業のために特にそういうことが必要であるということで取り上げておることで、その円滑化の度合いを進めていくことに非常に意義がある。たとえば、これは例が当たるかどうか知りませんが、歩いていくことにしようという場合と、自動車を使っていくことにしようという場合とでは、たいへん意味が違う。しかし、歩いていく場合と自動車を使う場合、自動車を使わなければだめだということが書けないならば、歩いていくということを書かぬでもいいじゃないか、こういうことになるかと思いかすが、歩いていくということにも、横山さん御存じのように速度というものがある。一時間に二キロで歩くのも速度でしょうし、四キロという場合もあるし、六キロもある。そうすると、二キロより六キロのほうがいいから……(「基本法は自動車です」と呼ぶ者あり)それは社会改革ということを考えない限りは、まだできることではない。自由主義経済のこの段階において、いまの税制の姿においてやっていくという場合ならば、やはり私はそれは歩くという段階において考えていく、こういうことになるだろうと思います。これはいま自動車がございますから、自動車でやっていくんだというのが、税制であり、あるいはまた金融の問題であるとすれば、その形において自動車を使った場合でも、スピードにはちゃんといろいろな限度がある。二十キロの場合もあるし、五十キロにもある。いまは五十キロで行っておるものを今度は八十キロ出していくことにしようじゃないかということならば、そこに意味が出てくると思うのであります。いま大蔵省は、ここにこういう条項を並べたことは新しい制度を入れたことではないと言うておるけれども、しかし、現在の制度をいかに活用していくかという精神、理念という意味においては、私はりっぱに意味を果たしておるものだと考えておりますし、大蔵省が言うておるのも、そういう意味と私は解しておるわけでございます。
  53. 横山利秋

    横山委員 抽象的な、歩いているか自動車かのやりとりはしようとは思いませんが、大臣のおっしゃることを中小企業者が聞いたら、非常に落胆するだろうと思う。基本法というものが画期的な意義を持つといわれているだけに、いままでのように歩いているところをちょっと走るのだというくらいでは、基本法に対する国民の期待を裏切ることだ。ここは、いままで量の増加にとどまっておったものを、質の増加に少し切りかえようという気持がなければ、歩いているのだ、自動車ではないよと言われれば、失望すると思う。問題は抽象的なことでなく、具体的にお伺いしますと、たとえば金融でありますけれども、金融の中で、何回も何回もいままでやっては結局実効があがらぬから、ひとつこの全体をながめてみて、たとえばこのコップの中に資金量がこれだけしかない。この全部を見ずに、いままでは、この一%のやつを二%にする、三%にしたから、こういうことだけ。ところがコップの容量はだんだん大きくなっているから、一%はなるほど二%に中小企業の投資はふえたけれども、全体からいくならば、ちっとも相対的にはふえていないというのが、今日までの実績であります。したがって、コップがどのように大きくなろうとも、その中小企業向けの財政投融資なり資金最というものは、そのパーセントを確定をしなければだめだ、こういう考えなんであります。そういう考えがこの中にあるのかないのか、お伺いします。
  54. 福田一

    福田国務大臣 私はなるべくふやしていきたいという考え方はありますけれども、しかし、いまのいわゆる金融というものの考え方において、銀行は損をしても何でも貸さなければいけないという理念は立てられないだろうと思うのです。そうしたら、それをはずさない限度においてできるだけふやしていく、こういうことで考えていくよりほかしかたがない。もしその量をパーセンテージできめてしまった場合において、もし銀行から、損しても貸さなければならないんですか、こういわれたときに、実際問題の処理はどうしたらいいか、こういうことが出てくると思うのです。そこで私が先ほど申し上げたように、歩いていくか自動車でいくかという質の問題、これが非常に大きくなる。しかし私は、質の問題は、できれば質も変えていったらいいと思う。また量の問題から質へできるだけ努力をしていく、こういうことであっても、私は法律意味があると思う。法律というものは、抜本的にものを変えてしまう場合も効果がありますが、漸進的にそれをよくしていくという場合においても、法律効果は十分あるものだと思います。この点からいいますと、いまの金融の問題について、あなたは、パーセンテージをきめて、それまでは貸さにゃいけないんだというような考え方にならなければ、実効があがらぬじゃないかとおっしゃいますが、その問題をきめるということになれば、こんな中小企業基本法だけの問題でなくなる。これは金融制度全般に通ずる一つの大問題をここで考えなければ、そこまでは踏み切っていけないのではないか、こう考えておるわけであります。
  55. 横山利秋

    横山委員 大臣は、金融の情勢についてあまり御存じないようで、失礼な話でありますが、現にいま全金融機関の中における中小企業金融というものの実績があり、そしてある程度大蔵省としても、その大体の趨勢を見はからいながら、このパーセンテージはいま少なくなっているからふやさなければならぬという一応のめどを持っておるわけであります。私は、それをあなたの反問されるように、絶対五〇なら五〇と抜き差しならぬものにしろとまで言うわけではないわけです。しかしながら、一応の中小企業の資金を増加させるためには、あるべき姿というものを全資金量の中でめどを打たなければならぬではないか。それが絶対のものというわけではない。しかし、そういうことをしなければ、意味がないではないか。一%が二%になったら、これはふえたことにはなる。けれども、全体的の資金量の中から見たら、ふえたことにならぬ。これが今日までの実績ではないかと言っているわけです。したがって、この全資金量の中で中小企業の占める資金量、財政投融資の中で中小企業向けの比率、そういうものについて、ここにそのめどを打って、それに政府がやるべきではないか、こう言っておるわけです。
  56. 福田一

    福田国務大臣 ただいまの御質問で、御趣旨はよくわかりました。そういう意味であれば、確かにわれわれもそういうふうに努力をいたしたいと思います。それは横山さんが御指摘になるまでもなく、銀行というものは、大きな金を貸したほうが効率があがる、小さい金を貸したらあまりもうからないというような面もありますし、それが事実の問題としてそういうことが行なわれておるということも、われわれは知らないわけではありません。したがって、銀行マンがもっといわゆる国民経済といいますか、正義感といいますか、そういうような益だけじゃなくて、ほんとうにいいものであれば必ず貸してあげるんだ、たとえ一円の金でも申し込めば貸すんだ、そういう銀行マンとしての正しい正義感を持つように、われわれは指導していくということについては、十分努力をいたさなければなりません。そうしてできるだけ中小企業にもりっぱに金が回るように努力するということでございますれば、全面的にあなたの御意見に賛意を表したいと思います。
  57. 横山利秋

    横山委員 残念ながら金融業界においては、大臣の希望され、私の申し上げている意見に、利害の問題から、なかなかそうはならないのであります。したがいまして、これを実現いたしますためには、どうしても政府の中でめどをつくる。そして政府がそういうところがやれるようにする。つまりこの基本法の中でめどをつけ、そのよって立つ根拠を明らかにする、こういうことをしなければだめだと私は思う。その点はいかがですか。
  58. 福田一

    福田国務大臣 パーセンテージをきめるのではなくて、そういうふうに銀行マンが処理をしていくようないろいろの施策を講じていくべきである、こういうことでございますれば、私は、十分その意味もわかりますし、今後大いに努力をしていきたいと思います。また、大蔵省としても、そういう考えでおると私は思う。いま大蔵大臣はここにおいでにならぬけれども、そういう考えであると私は確信をいたしております。
  59. 横山利秋

    横山委員 私の言っておることをよく腹に置いていらっしゃるかどうかまだわかりませんが、銀行というところは、そういうことができない状況である。公共性があるといえども、なかなか利害の問題があって、そうはしない。したがって、政府がそういうことをさせなければならぬ。しかし、政府がやるについては、政府もよって立つ根拠を明らかにしなければならぬ。したがって、基本法の中でその芽を出していかなければならぬ。それについては大臣は賛成なさいました、こういうことで理解してよろしいのですね。
  60. 福田一

    福田国務大臣 私は、法制的に銀行に強制して、銀行マンの行動、貸し出しのときの態度、そういうものを法制的にきめる、たとえばもしそういうことをしなかったら、それは罰金を課するとかなんとかというような、そういうことまでするという意味ではないと思う。そうすれば、銀行マンというものはかくあるべきである、いわゆる道義感をもっと明らかにする。そうしてそういうことをどうしてもしなかった場合にどうするんだ。いまのところ、やっぱり利益というものを銀行も追求しておりますから、いま言ったような一件でもって百万円貸す場合と、たった一万円借りに来たのと、手続としては同じだ。しかし、百万円貸したほうが効率があがるから、まずそっちのほうを先に貸してあげるんだというのが、いまの銀行の姿であると思うのです。確かにそういうことはあります。全部の銀行がそうだとは言いませんけれども、やはり考え方としてそういうことです。そこに欠陥がある。だから、そういうことを是正するのに、そういうことではないんだ。やはり銀行というものは、社会性というものを十分に認識して、いわゆる社会正義の立場から銀行経営をやっていかなくちゃいけないんだ、こういうことを十分に認識させるということであれば、私は全面的に賛成をしております。しかし、今度はそれを法制的に制裁でもって、それをやらなかったときにはその銀行をつぶしてしまうんだ、こういうような——何かつぶさないまでも、罰金を課する、そういうことになってくると、これはなかなか技術的にもうるさい問題があると私は思うのであります。これは適当にわれわれとしては今後も大いにそういうふうにしなければならぬと思っておりますから、いいお知恵があれば拝借をいたしてもけっこうでございますけれども、いまのところ、そこまでのいい知恵が出ておらないというところだと私は思っておるわけであります。しかし、あなたの御趣旨はよくわかります。気持はよくわかります。パーセンテージをきめて貸さなければいけないんだということじゃないんだ、一応目標をつくる、そしてそこまで努力をしなければならないんだ、こういうことでございますれば、私たちとしては御趣旨に賛成である、こう申し上げておるわけであります。
  61. 横山利秋

    横山委員 どうも大臣は、社会党の法案についてお読みを願ってないようですね。いい知恵をお聞かせ願いたいとおっしゃるが、いい知恵は社会党案に載っているんですよ。この知恵は、決して、あなたがえらい警戒しながら言うように、やらなければつぶすと、どこにも書いてないのです。それからまた、ぎりぎりしぼったような言い方をしてない。金融というものは、私どもも大臣と同じように、そう強制的にできるものではないということは百も承知をしておる。したがって、一定のめどをとって、そのめどというものも、弾力性のあるやり方については十分の配意をして、私どもの法案が出されておるんでありますから、今晩お帰りになったら、ようもう一ぺん社会党案をごらんになれば、これは政府案よりも社会党案のほうがいいわいということになるのは疑いないと、私は思っておるわけであります。ぜひひとつ御検討願いたい。
  62. 福田一

    福田国務大臣 私は、何も法案を見ていないというのではない。私は、これは政府側としてそういうことがいいかどうかわかりませんが、いまお話がありましたから、質問の内容を明らかにしていただくためにお伺いするのですが、これによりますと、「国は、中小企業者に対する金融の円滑化を確保するため、金融機関の融資総額の一定割合以上が中小企業者に対して貸し付けられるようにするための措置を講じなければならない。」その「措置」とは、どういうことをおさしになっていらっしゃいますか。
  63. 横山利秋

    横山委員 私に対して御質問でございますから、それでは御答弁申し上げます。  大臣、こういう措置は、必ずしも日本ばかりじゃございません。ほかの国も例がございます。それから一定割合ということは、これは政令できめるのですから、その点について、そう無理なことだとか、そんなことはございません。措置しなければならぬということは、行政指導の場合もございます。通達する場合もございます。それに違反したらどうかということは、ここには書いてございません。しかし、それは通常大蔵省がいつも銀行に対しておやりになるような、何といいますか、穏やかにものを言ってきゅっとにらむと話が済むというような行政指導は、十分の効果をあげておると私は考えています。したがって、ここにあります条文は、きわめて弾力性のあるものでございまして、決して大臣が御心配になるようなことではない。いわんや一部にございますような憲法違反なんということは——まあこの点については憲法違反とおっしゃる方はございますまいけれども、そういうことはございません。
  64. 福田一

    福田国務大臣 そういうことでございますれば、われわれが二十四条に雷いてあることと何も違いはございません。これは、中小企業に対する適正な融資の指導等必要な施策を講じなければならないと書いてあります。いまあなたがおっしゃったのも「措置を講じなければならない。」どこに根本的な違いがあるでしょうか。
  65. 横山利秋

    横山委員 いけません、いけません、そういうことではいけませんよ。政府案二十四条と社会党案四十九条との偉大な違いがございます。それは一定の割合を持つということであります。これほど大きな意味を持つものはないと私は思っております。いま、なるほど大蔵省が、大体年間における実績を見ながら、少し足りないぞという行政指導をしておることは事実であります。しかし、それは何ら法律の根拠はございません。私どもは、いままで政府としてやっておることが、一%を二%にした、それでふえたのだという言い方から、全体の中で何%だという、だれにもわかるような、国会でも議論がすなおにできるような議論のしかたに変えるわけであります。このことを二十四条と何も変わりないとおっしゃるのでは、いささか私は遁辞だと思うのです。これはいけませんよ。
  66. 福田一

    福田国務大臣 いま私が申し上げたのは、その措置の問題について申し上げておる。できるだけわれわれはもっと中小企業にも金融をふやすようにしなければならない。それからあなたのほうは一定割合というものをきめるのだ。それは確かに相違しております。その点はおっしゃるとおりだと思うのです。ただ私は、措置の問題を申し上げたので、強制力を持つ措置がありましょうかということを先ほどお互いに話をしておったので、その意味において私は相違がない、こう申し上げたのでありますから、誤解のないようにお願いします。それから、そういう場合に、たとえば経済の運行の問題でございますけれども、一定のパーセンテージというものは、確定不動のものであるべきではないと私は思うのであります。それは経済の情勢の変化により、あるいは中小企業が、いままでは三千万円だったのを五千万円に上げたり、一億に上げれば、全部変わっていくのですから、そういうものは確定不動のものではない。そういうことはおおよそ良識的に考えて、そういうパーセンテージの問題よりは、一番大事なことは、中小企業の人が申し込んできたときに、これは必要なものだと思うならば、金額の多少にかかわらず、なるべく早く貸し付けてやる。これが一番のポイントになるだろうと思う。必要性の問題、ここに一番大きな問題があるのであって、そうしてパーセンテージをきめることが根本ではないが、まあパーセンテージをきめるということが、それをするための一つ手段になると思う。だから、私は、根本の理念においてはあなた方とあまり変わっておらない。ただしかし、一定の割合を政令できめるというようなことになりますと、ちょっと問題がそこに起きてくる可能性があると思う。この点は、あなた方のおっしゃるように、一定割合というものを政令できめるように法案を改正したほうがいいという御趣旨でございますれば、私としてはそこまでは踏み切るわけにはいかない。またそういう必要はない。むしろそれよりは、できるだけ実際の問題に合ったように、金を貸せるように努力をするというほうがいいのである。かように考えておるのであります。そしてそれは割合をきめたからといっても、なかなかそれだけできまるものではない。割合をきめたって、パーセンテージはさめたら、損な人にでも貸すのですか。私のほうは、損がわかっておる、担保がなくても、あるいは信用がなくても、金を貸さなければならないのですか、こう言われたときは、どうなるでしょう。そこが一番の問題になってくるだろうと思うのです。
  67. 田中武夫

    田中(武)議員 先ほど来政府案の二十四条とわが党案の四十九条について論議が行なわれておりますが、私は提案者として申しますが、政府案の二十四条とわが党四十九条は違います。しかしながら、横山委員が言われたように、必ずしも政令できめるということを考えておりません。これは「国は」で始まって「措置を講じなければならない」となっている。私は、まず適切な行政指導で行なえるのではなかろうか、それができなければ、次の強い段階にいくというのです。さらにもう一つ違うところは、現在、中小企業に資金のワクがいかない。それは、裏から見れば何かというと、系列による集中金融なんです。そこでわが党五十二条には、それを押える規定がございます。したがいまして、この点に関する限り、銀行法改正を考えております。
  68. 横山利秋

    横山委員 ちょっと時間を取り過ぎるようですが、この問題について念のために大臣に聞いておいてほしいのですが、ちょうどいまから六年ばかり前、三十二年の不況時でありました。大蔵委員会におきまして、与野党が相談をいたしまして、何とかひとつ中小企業に財政投融資と中小企業向け買いオペを当時の池田大蔵大臣にやらせようじゃないかという話がありまして、全く超党派的に話がまとまりまして池田大蔵大臣に申し入れましたところ、快く話が成立をいたしました。そしてたしか両方で約三百五十億になんなんとしたと思います。私ども与野党とも、非常によかったなというわけで、大手を振って選挙区へ帰りまして、今度は大蔵委員会の実績があがりましたと言って、気持よく吹いて回ったわけであります。ところが、その年の経済企画庁の全金融機関の中小企業向けの貸し出し実績を見ますと、驚いたことに、前年よりも中小企業者に対する貸し出しは激減いたしております。大企業に対する貸し出しは、前年よりも激増しておったわけであります。この皮肉、このわれわれの失敗というものを与野党とも話し合いました結果、こういう一%を二%にふやすというやり方ではもうだめなんだということを、与野党そのときに確認をしたわけであります。しかし、与党の皆さんは、与党の立場がございますから、それを表立ってわあわあ言うわけにはいかない。しかし、こういうやり方でわれわれが中小企業公庫やあるいは市中銀行に買いオペをやって中小企業者に回すといったって、これはだめなんだ、やはり全般をとらえなければだめなんだということが、そのときの結論であります。それでいま中小企業金融を論ずるにあたって、私は、その質と量とを同時に論じなければ、こういうような政府案の二十四条では、旧態依然として、まあ一%が二%にふえたからいいなということにとどまってしまう。私は繰り返し申しますが、たとえば五〇なら五〇にきめ、それをしなかったら罰だとか、つぶすとか、あるいは未来永劫変わらないとか、そんなことは常識的にも言っておるわけではありません。けれども、今日までの中小企業金融が、いわれながらうまくいかなかったというところにそういう一面があるから、これは社会党案の四十九条をはじめ第一節についてお考えをなさるべきときだ、これなくして金融を論ずるわけにいかないじゃないか、こう言っておるわけです。これはいささか意見になりますが、御意見があれば伺います。——よろしゅうございますか。  それでは金融については、大臣も相当御意見を述べられましたから、時間がなくなってまいりましたので、ひとつ大臣に聞いてもらいたいもう一つのことがございます。それは政府案を中小企業者が、大体どういうふうに見ているかということであります。あなたの耳元には、おそらく基本法だから、たいへんいいものが通るらしい、法をこの国会で通してくれという話ばかりだと実は思うのであります。そう言っては失礼でありますが、こんなものではだめだという声は、なかなかあなたのところには通らないと私は思っておる。私が集約をいたしました政府案についての中小企業者の意見は、特に大臣に聞いてもらいたいところだけですから、最もきわ立った問題だけになるかもしれませんが、こういう意見です。  第一に、経済の骨格の変更をしよう。つまり中小企業者はこれではいかぬ、大企業に対して何とかしなければならぬという、そういう盛り上がっている雰囲気があるけれども、何かこの法案はそれを中和させてしまう、そういう感じがする、こう言うわけです。大企業に対して、百貨店に対して、あるいはスーパーマーケットに対して、わっと盛り上がってくるものを、何か絵でそれを中和さしてしまう。われわれの盛り上がる力というものを、ずっと前で前進をさせないような結果になってしまいはせぬか。事実これは絵でありますから、大臣がおっしゃるように、これができたって、しばらくはまだだめなんだよ、人間もふえないよ、予算もふえないよ、こういうことなんでありますから、絵だけもらって、ありがとうございました、さようなら、しばらくは待ってくれ、こういう中和力にしかならないのではないか。  第二番目に、中小企業と大企業と比べてみますと、大企業に対しては、特定産業振興法案、これはきわめて具体的であります。きわめてボリュームをもって動き出しておる。政府にとっては全力推進だ。ところが、こちらのほうはきわめて抽象的で、きわめて具体的でないのであります。その対比について非常な不満を持っておる。これが第二であります。  第三番目は、中小企業者努力といっておる。われわれに努力しろと条文に書いてある。何条でございましたか、六条ですか、なぜこういうことを書くのだろうか。なるほどこれは理屈としてはそうかもしれぬ。けれども、何かおまえさん方がしっかりやらぬからうまくいかないのだという、中小企業者に対する逃げ道をつくっておるような気がする。ほかの法案にこういうことがあったかというと、どうもないような気がする。労働者に対して、労働立法の中でこういうことをいっておるだろうか、農業基本法でこういうことをいっておるだろうか、という点について疑問を持っています。  それからその次は、先ほど中小企業庁長官が、零細企業のベースをもっと引き上げる、こういう政策目標をお示しになった。ところが、政府案のどこにその零細企業について書いてありますか。小規模企業はと定義をつけ、そしてあとずっと目をさらのようにして見回しても、最も中心を置かなければならない零細企業に関する施策が、何らないではないか。何ら新鮮味のあるものはないではないか。章を一つ設けて、小規模企業はこうだといいながら、それについての施策に何ら新しいものがないとは何たることであろう、こう言っておる。  それから第五番目に、事業の転換に関する条項がある。これは社会党案にもある。私のほうが、ある意味では具体的かもしれぬ。けれども、そういうと勘ぐり過ぎるかもしれないけれども、むしろここに政府案の運用の焦点がきておるのではなかろうか。しかもこれは、私どもの案は、政府の政策によって生ずる中小企業——政府のほうは、それに何らの関係もなく、抽象的にいっておる。きわめて広範に網をかけておるけれども、それに対して具体的な施策がないではないか。  それから紛争処理のないこと、大企業に対する政府の決意のないこと、この法案の中の紛争処理の項目が全然ない。いま中小企業が、最も不満を漏らしておる大企業に対してどうするのだということについての、何らの文句もないし、その決意がない。私は、いまの中小企業問題は、大企業中小企業のけんかだけとは思っておりませんよ。しかし、その中の大黒柱の一つである大企業中小企業、この中小企業をよくするためには、大企業を押えなければならない。それを押えなければならないにかかわらず、その押えるべき大企業に対する決意というものがこの中にないとは、何たることであるか。  最後に、中小企業省のないことは、しょせん中小企業政策を政府全体に推進する力がないのではないか。これは冒頭に私申しましたけれども、そういう点については、結局全体の推進力が、推進する機構というものが、この法案の中にみなぎっていないではないか、そういう不満というものが、中小企業者の中にあるわけであります。  時間の関係上、全部一つ一つ例をあげてお話をするとよいのでありますけれども、だいぶ話が進行してまいりましたので、七項目にわたって、いまの中小企業者政府中小企業基本法に対する不満というものを列挙いたしまして、御感想がありましたら、承りたい。
  69. 福田一

    福田国務大臣 私のところには不満がこないだろうというお話でございますが、この法律についても、いろいろ中小企業者のほうから不満がきておりまして、そういうこともよく知っております。ただ、私たちは、いまの段階において、中小企業者を何とかして先ほど申し上げたような形で生かしていかなければならないという最高限度をここに明らかにいたしておるというのが、この法案だと解釈いたしておるわけであります。したがって、いまあなたがお示しになりました七項目について一々ここで私が申し上げると、むしろ質問にお答えするよりか、討論になる可能性があると思いますから、これは避けさせていただきますが、しかし、たとえば特定産業とこれはずいぶん違うじゃないかというお話でございましたが、特定産業だって、決してそんな強権的な、圧力的な、しかも具体的なものを特にきめておるわけではありまん。中小企業基本法以上にはきめておりません。救済の方法についても、むしろこの基本法のほうが実は手厚いのであります。それは法案を対比してお調べを願えばわかることだと思います。  それから中小企業者努力をしなければならないというような努力目標みたいなことを掲げたのはおかしいじゃないか、こういうことでありますが、これはよく誤解があるのでありまして、基本法というものをつくると、統制になれた中小企業者、いわゆる昔の戦争時代にやっていた経済になれておる人には、とにかく政府というものは何でもやってくれるのだ、政府がきめたら政府がその責任を持つべきだというような思想が、ややもすれば流れておるのであります。そういうことではやっていけない。自由主義経済のたてまえからいえば、統制ではございませんから、自分が本気でやる気にならなければだめですよということを、この際再確認するということ、明らかにしておくということが、中小企業者が今後自由主義経済の中においてりっぱに立ち上がっていくのに一番大事なことである。だから、この点をひとつ強調しておきたいというので、この条文を入れておるわけであります。  そのほか、いろいろございましたので、一々申し上げているとあれでありますが、とにかく私たちとしては、そういういろいろな御意見があることも、実は十分聞かしていただいております。しかし、横山さんも仰せになったように、この問題はずいぶん長い間やったのですが、とにかくこれはなかなかむずかしい。中小企業というものは、非常に雑多で種類が多いとかあるいはまたそれの横に流れる一つの原則を考えるのに非常にむずかしいいろいろなことがあって、今日までこの法案が提案できなかったのです。しかし、われわれは、そういうことをもう言っておれないというので、決意をいたしまして、一年有半にわたっていろいろ調査をした上でこれだけの法案をまとめて出しておるのでありまして、私たちは、決して単なる条文の羅列あるいは考え方の羅列をしておこうというのではないのでありまして、この法律がまず出て、そうしてそれに基づく実体法を一つ一つきめて、大いに推進していこうということでございますから、ひとつ横山さんあたりも、その政府の意図するところを中小企業者に大いに教えてやっていただきたいと思う次第でございます。
  70. 横山利秋

    横山委員 これが最後質問になるかもしれませんけれども、単なる考え方の羅列や意見の羅列や意見の羅列ではないとおっしゃるけれども、私どもにとりましては、この政府案の一体どこを議論したらいいのか、どこに新しい政策の芽が出ておるのかという点について、議論のしようがないんです。例としては、先ほど申しました税制、金融みたいなものです。これを突き詰めていくと、いろいろな考え方があるらしいのであります。こういういままでどおりのことが書いてあっても、話をしていくと、何かほかの考え方、ここで常識的に考える以外の考え方も、政府の側にあるらしいのであります。らしいのでは、議論になりません。また、逆に、こういう条文の中からそういう新しい別なものが飛び出るようなことは、私どもは許しません。そんなばかなことはないのであります。これは基本法であり、基本法にもたれて実体法ができるならば、基本法は明確にその実体法に示唆をなさなければなりません。それが、こういうふうに書いてあって、あとからいろいろなものが出てきます、考え方や意見の羅列ではありませんというのであるならば、ひとつそれを明らかにしてもらいたい。私の要求いたしますのは、二つであります。政令を出してください。それから政府がこの基本法によって改正すべき法律案、これは内容はそんなに詳しくなくてもいいのでありますけれども、法律案を全部本委員会へ提出してください。それがなければ、いままでのような御議論では、これはどこを一体議論したらいいのかわかりません。政府が何を考えているかわかりません。この常識的な条文の中でほかの問題が出てくるというようなことは、私どもは許しませんから、やはりとの条文にもたれて、われわれがこの委員会の審議を通じて想像し得るようなものが、ここに書いてなければならぬと私は思う。ことばというものは、たとえば政府金融機関の機能の強化ということの中で金融機関の再編成が行なわれたのでは、これが基本法にもたれたものだということは許しませんよ。したがって、この基本法がよって立つ基盤は何であるかということを最初に確かめましたが、この基本法は何を将来引き出そうとしておるのかという点について、政令と、政府が今度改正をしようとする、今後改正をしようとする実体法と、その要綱を全部出してください。それでこの基本法を議論しましょう。よろしゅうございますか。
  71. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 この基本法が非常に抽象的で、このままでは何をいっているかわからないという御意見でございますが、われわれといたしましては、一応中小企業の今後の進むべき道というものをはっきりするという意味においては、これで一応必要にして十分な内容を持っているというふうに確信いたしております。それから、この法律自体で権利、義務を創設するというものではございませんが、たとえばこの国会におきましても、近代化促進法、あるいは高度化資金融通特別会計法、あるいは指導法、または保険の改正法といったような一連の法律提出いたしまして、御審議願い、あるものは通していただいておるというわけでございまして、今後も、この基本法の趣旨にのっとりまして成案を得次第、逐次法制化できるものはここに持ち出しまして法制化したい、そういうふうに考えておりますが、それにつきましては、この基本法によりまして設置されます政策審議会におきまして、この基本法精神を十二分に化かすために具体的にどういう措置をとるべきかというようなことにつきまして、十二分な御意見を承った上で、政府関係の各省庁の十二分なる理解、協力というものを得た上で、実効力のある措置をとりたいというふうに思っておるわけでございますので、いまこの基本法で何をねらわんとしておるかというようなことを明らかにするような政令をとおっしゃることであれば、これは大体まず前文にわれわれのねらいははっきり書いてございますし、それを具体化して第一条に目標として掲げ、さらに第三条にその一条の目標を達するためには、とこう書いてあるわけで、これで政府が出す基本法としての一応のと申しますか、十分なる内容をここに網羅しているというふうに確信しております。
  72. 横山利秋

    横山委員 ほかの法律と違いますよ。ほかの法律なら、読めば大体の骨格がわかりますよ。どんな政令が出てきそうか、あるいはどんな通達が出そうか、これは何のことだかわからないと言っているのですよ。何のことだかわからない。しかもあなた方の答弁を聞けば、この中からとんでもない——とんでもないというのは、必ずしも悪いという意味じゃないのですよ。必ずしも悪いという意味じゃないけれども、何が出てくるのか何もわからないと言っている。だから、この法案が、政府基本法というものが、どういうことになるのか、その政令と、それから何も政策審議会で審議を経なくても、あなた方、この条文を議論しておって、将来予想さるべき法律の改正、その内容といったものを出しなさい。それでなければ、この基本法は何を示唆し、何を将来やろうとしておるのか、何もわからないと私は言っているのです。出しなさいよ、それを。
  73. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 目下のところ、政府としてきまっておりますものは、この国会に出した九本の法案ということでございます。それ以外に……(横山委員基本法は通ってないのですから、何も関係ないですよ。何も通ってない法案に、いま通したら関係あるなんてばかなことはない」と呼ぶ)これは基本法体系として、基本法体系の一つ法律ということで、それぞれの法律が……(横山委員「そんなかってな……」と呼ぶ)これは政府としては、そういう考えのもとに出しているわけでございます。(横山委員「通らなかったらどうする」と呼ぶ)これは、われわれとしては通していただけるものと考えております。
  74. 横山利秋

    横山委員 そんなばかな、かってな判断は許しませんよ。基本法が通って、それによって実体法が出てくるのです。いま出ております中小企業関係法律基本法体制だというのは、あなた方がかってに名づけておることであって、これはこの法案が通らなければ、あれは関係なく、あれだけで生きるわけです。この法律が示唆するものは将来何かといっているのです。この法律によって将来行なわれんとする施策は何か、それがきわめて不明確であるから、あなた方が考えておられる中小企業関係のこの各条文によって生ずべき法律の改正は、何と何であるか、それを出しなさい、こう言っている。それでなければ、この基本法は抽象的で、何を言っているかわからないじゃないか、こう言っている。
  75. 福田一

    福田国務大臣 実はこの中小企業基本法の問題については、社会党の方から、昨年の暮れ、あるいは臨時国会等においても、御質問がございました。それに対してわれわれが常にお答えしておったことは、基本法に伴って十本内外のこれに関連のある法律を出すつもりであります、こういってずっとお答えをしてきておるのでありまして、政府考え方といたしましては、これに伴う法律、これと関連性を持った法律として提案いたしておるのであります。しかし、それを、そんなものは関連がないのだとお考えになるかどうかというのは、それはおのおののお方のとり方でございますから、われわれは、これを制限するわけにはもちろん参りません。また、あなたに反撃をするというか、反対をする意味で申すのではありません。政府考え方としては、中小企業基本法を出して、それに関連のある法律を順次出していこう、さしあたり今度の国会には十本くらい出したいということは、昨年の暮れにもしばしば申し上げており、また社会党の方々の御質問にもお答えしておるわけでありまして、われわれとしては、そういうつもりで提案をいたしておるということを御了解願いたいと思います。
  76. 横山利秋

    横山委員 納得できません。委員長にひとつお伺いをするといっては失礼な話でありますが、委員長にひとつ御意見を伺いたいと思うのでありますが、私ども国会議員としては、法案を審議する際に、その政令の提出を要求する権限があると思うのであります。さらに、この法案が、いまお聞きのように非常に抽象的でございまして、委員長も非常に中小企業問題には卓見を持たれておると思うのでありますけれども、将来われわれが何を招こうとするのかについて、意見が分かれると思うのであります、この条文によっては。したがって、よかれあしかれ、政府の意見というものが、政府の考えというものが、どういうところにあるのか、問題をしっかりさせて、政府のこの条文によって生ずるものは何かということをしっかりさせて、それで議論をしませんと、われわれの中でも、与党の中でも、この条文によってこういうことが生まれるんだよ、こういうことがあるんだよと、かってな熱を吹くおそれがあると思うのであります。私どもは、政府の出してきます案を一つ一つ爆砕するというけちな考えはありません。与野党とも共通な場で政府の考えは何かということをしっかりさせて、別に私はそれを政策審議会へ出す前に云々ということを言うのでなくて、政府は、この条文によってどういうものが出てくるかというものを出すべき義務がある。われわれは、もちろん要求する権利がございますから、私は引き下がりませんけれども、政府としては、親切にそうなすべきである。ほかの法律より最も抽象的であるこの法律については、当然そうしなければならぬと私は考えるわけでございますが、いかがでございましょう。
  77. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 委員長としての考え方を申し上げますが、ただいま横山委員の御指摘の点に対する政府の答弁は、私は適切だと思います。ただ、その表現のしかたに舌足らずの点があったと思います。横山委員の御指摘は、この基本法に対する関連法律を過去すでに六、七本通しておりまして、この法律は過去のものであって、もし基本法が通らなんだ場合には、この基本法には関係のないものである、こういうような御指摘でありましたが、それは一つの議論でありまして、私どもは、先ほど通産大臣が答弁しましたように、これは昨年の暮れから数次にわたって、関連法によってこれを明快にするものだということを言っておりますから、そこで、その点は、私は通産大臣の言ったのがいいと思うのです。ただ問題は、まだこれから出す法律が明確にはされておりません。(「五、六十本ある」と呼ぶ者あり)五、六十本とは聞いておりません。二、三十本はあるということは、抽象的には聞いております。聞いておりますけれども、過去にすでに法律となっておるものについては、おそらく野党の方々もその点の了承はできておるものと思いますから、これからの問題として何ぼあるのかかということは明確には言っておりませんが、しかし、これらの点について何らか意思表示をすべきであるという御意見は、委員長もさように考えております。
  78. 横山利秋

    横山委員 まことに委員長お話は明快で、この委員長の明快な御意見には敬意を表します。  それでは、委員長にお願いいたしておきたいと思います。前段の点については若干意見もありますけれども、委員長の御裁定に服します。後段の問題でございますね。私のお願いしております政令を提出すべきこと、それから将来この法律案が予想する法律の政正要綱——もちろん私もかっちりしたことまで言っているわけではありませんし、大体与党の皆さんも、それぞれの演説会や座談会で言っていらっしゃるし、テレビでも言っていらっしゃるのですから、政府として予想し得るその法律案の名前と改正の要綱をお出し願うようにお取り計らいをお願いいたしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  79. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 つとめてさようにいたします。
  80. 横山利秋

    横山委員 ありがとうございます。私の質問はこれで終わります。
  81. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 久保田豊君。
  82. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 この際資料をお願いしておきます。少しめんどうですが、控えていただきたい。  第一、国、政府機関並びに政府関係団体、会社等、それから地方団体、そういうものが年々出しておる物資並びにサービスの受注量、発注量を、大分けでよろしゅうございますから、物資はどういう物資とか、あるいはサービスはどういう物資ということと、それを受けておるほうの受注者が大企業であるか、中小企業であるか、これも大分けでけっこうです。これの最近のものを出してもらいたい。これが一つ。  第二は、大企業並びに中企業、小企業の階層区分に基づく税の負担実額は、どのくらいになっているか。たくさん税がありますが、その税のうち、特にお願いしたいのは、法人税、所得税、事業税、市町村民税、これの負担の実額は、階層別にどうなっているかということ。並びに租税特別措置による減免の階層別の実態はどうなっているか。これは関係があるものですから、二つ統一したものを出してください。  第三、大企業、中企業、零細企業、階層別、業種別、金融機関別の設備投資の貸し出し実態、並びに現在の残高は、どうなっているか、これの階層別にはっきり出るようなものを出してもらいたい。  第四、大企業下請企業実態調査があるはずです。ここに遅延防止法のものがありますけれども、こういうものでなく、大企業下請というのは実際どのくらいあるのかということですね。これは全部でなくてよろし。たとえば日立とか、東芝とか、あるいは自動車産業、特に下請を非常によけいやるような、主として機械ないしは造船、そういうものが多いと思いますが、そういうものの一つ企業が、どのくらいの下請を持りておるのか、こういうものの実態調査があるはずです。これを出してもらいたい。  第五、大企業の系列下に入っている下請実態調査。この系列下というのはいろいろな意味がありましょうが、主として資本系列でけっこうです。原料とか、技術とか、そういうところまでいけばけっこうですが、そこまでいかないと思いますから、資本系列を中心にしたいわゆる系列下の中小企業、これがどういう業種、並びに、どういう実態にあるのか、これをひとつ明らかにしてもらいたい。  もう一つ、同じようなことですが、スーパーマーケット、スーパーストア、SSDDS、あるいはこれに類似の新しい流通資本といいますが、こういうものの最近における種類や業種や数やその売り上げの実態、こういったものがあるはずです。これを一つ出してもらいたい。  第七、輸出中小企業との関係、これは二色あろうと思う。中小企業がみずからつくった製品輸出する場合と、大企業輸出製品の中に部品その他のかっこうで加わっている場合があろうと思う。部品その他のかっこうで加わっている輸出ということについては、なかなか実態が明らかにならないと思う。しかし、できるだけそれに近い、そういうものの実態がほぼ推測できるような程度の調査をひとつ出してもらいたい。  それから最近よく雑誌その他に言われておるように、ここ二、三年の間、中小企業、特に部品メーカー等が、いわゆる自主性を確保したということがあるわけです。というのは、独特の部品をつくって、一つ会社に従属せずに、自主性を持って各会社のやつをやったというような、これは数字よりも、むしろ実態の明らかなものはどういう業種であるのか。特にその場合にどういう種類のものをつくり、特にどういう資本構成ないしは資本規模、生産規模を持っておるか、こういう点についての実態調査があるはずです。これをひとつ出してもらいたい。  それから第九、中小企業者の協業化や、あるいは寄り合い企業ないしは合併新会社、つまり中小企業ないしは零細企業が生きていくための、伸びていくためのいろいろな新しい企業形態ができてきているわけです。これの実態が明らかになったら、これの調査も出してもらいたい。その際、特に政府ないしは政府機関が、これに財政ないしは金融その他いろいろな地方団体も含めて、こういうものに対してどれだけの援助をして、それらがどういう効果をあらしておるか、こういうことに連関をする調査を出してもらいたい。  それから大企業中小企業とで働く労働者の年齢別の構成がどうなっておるのか、その年齢別の構成に見合うところの平均賃金の状態はどうなっておるか、これを一表にして出してもらいたい。  それからもう一つ中小企業者あるいは零細企業者が、そこで働いておる労働者のために、いわゆる社会保障とまでは言えないけれども、特別の福祉施設、特に住宅あるいは共同給食その他のものもあります。特に法律に基づかないもので、こういうものをいまやっている場合が相当あるようです。そういうものの実態が、これは全部の統計ができなければできなくてもよろしゅうございますが、実態が明らかになれば、そういったものはどの程度に進んでおるかということをひとつ調査して出してもらいたい。  最後にもう一つ、所得倍増計画の中における中小企業に関する計画をさっきお話しがありました。生産性はどのくらい伸ばすとか、あるいは輸出でどういう地位を持たせるとか、そういうものをまとめて、これもひとつ出してもらいたい。たいへんたくさんになりますけれども、これを出してもらいたい。この審議をするには、実際にはどうしてもこの程度の資料がなくてはできません。
  83. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 非常にたくさんの種類の御要求がありました。中には早急に出せるものもありますし、また、われわれがつかもうとしていま努力してなかなかつかめないものもございますから、できたものから提出させていただきたいと思います。できるだけ早く出させていただきたいと思います。
  84. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 次会は、来たる十一日、火曜日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時四分散会