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1963-06-05 第43回国会 衆議院 商工委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月五日(水曜日)     午前四時二十三分開議  出席委員    委員長 逢澤  寛君    理事 小川 平二君 理事 岡本  茂君    理事 白浜 仁吉君 理事 中村 幸八君    理事 南  好雄君 理事 板川 正吾君    理事 田中 武夫君       浦野 幸男君    大高  康君       海部 俊樹君    金子 一平君       神田  博君    始関 伊平君       正示啓次郎君    田中 榮一君       田中 龍夫君    中川 俊思君       藤井 勝志君    山手 滿男君     早稻田柳右エ門君    岡田 利春君       小林 ちづ君    多賀谷真稔君       佐々木良作君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         中小企業庁長官 樋詰 誠明君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    加藤 悌次君         通商産業事務官         (中小企業庁指         導部長)    影山 衛司君         労働事務官         (職業訓練局長)村上 茂利君  委員外出席者         議     員 田中 武夫君         専  門  員 渡邊 一俊君     ————————————— 六月四日  委員浦野幸男君及び中村重光辞任につき、そ  の補欠として西村直巳君及び小松幹君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員西村直巳辞任につき、その補欠として浦  野幸男君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業基本法案内閣提出第六五号)  中小企業基本法案永井勝次郎君外三十名提出、  衆法第一〇号)  中小企業組織法案永井勝次郎君外三十名提出、  衆法第一一号)  中小企業基本法案向井長年提出参法第四  号)(予)  中小企業指導法案内閣提出第七六号)  中小企業信用保険法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一一九号)  中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第一二三号)  下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法  律案内閣提出第一六七号)      ————◇—————
  2. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中小企業基本法案永井勝次郎君外三十名提出中小企業基本法案及び中小企業組織法案向井長年提出中小企業基本法案予備審査)、並びに内閣提出中小企業指導法案中小企業信用保険法の一部を改正する法律案中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律案、及び下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案、以上八案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。田中榮一君。
  3. 田中榮一

    田中(榮)委員 私は、政府提案にかかわりまする中小企業基本法案社会党から提案にかかっておりまする中小企業基本法案、並びに政府提案の関連する諸法案内容につきまして、逐次質問をいたしたいと存じます。時間がたいへん迫っておるようでありますので、勢い私の質問も多少急ぎますので、あるいは答弁のほうも、そのお含みでなるべく簡単明瞭にひとつお願いを申し上げたいと思います。  今日、わが国中小企業というものは、非常に苦境におちいっております。しかしながら、今日、わが国中小企業がまだ不完全ながらも存立をしておるということは、学者の説によりますると、わが国中小企業不完全競争性がその中小企業自体の中に残っておるというようなことで、他の諸外国に比しまして、このため中小企業存立がまだ著しく傷つけられてない、いわば温室の中にある中小企業である、そういうようなことで、今日日本中小企業がかろうじて存立をいたしておるような状況であります。低賃金労働力の供給が容易であるということと、国内の市場が非常に分断せられて画一性を失っておるということ、こうしたことが、すなわち今日日本不完全競争性をあらわして、中小企業というものがまあまあ存立しておるということであります。しかしながら、最近におきますわが国高度産業経済の著しい伸展に伴いまして、産業構造が急に高度化されていくにつれまして、中小企業も当然高度化に即応するとともに、積極的にこれを推准する必要に迫られておるのであります。一方、また貿易自由化によるところの影響によりまして、この傾向というものは特に著しいのであります。したがいまして、わが国中小企業が、不完全競争性からようやく完全競争性への推移になったと考えて何ら差しつかえないと思っております。したがいまして、いまやわが国中小企業は、新産業体制に入ったものであると考えて支障がないと思うのであります。  このような状況のもとにおきまして、現在の中小企業というものが、どういう点が脆弱であるかと考えてみますると、大企業中小企業との格差が非常に大きいので、この格差を是正していかねばならない。すなわち、二重構造を解消するということであります。これは社会党提案されました中小企業提案の理由の中にも、はっきり示されておるのであります。第二は、中小企業生産性が非常に低いので、これを高めていかねばならない。第三には、中小企業生産品付加価値が低いので、これを是正していかねばならない。第四には、過当競争ために、中小企業がその過当競争の戦線から脱落をしていきまするので、この脱落をできるだけ防止していかねばならないということ。第五には、労働力の需給の逼迫から、近代化合理化が迫られておるということ。第六には、設備が古いので競争ができない。そのために、ぜひともその設備近代化する必要に迫られておる。第七には、貿易自由化のしわ寄せが中小企業を襲いまして、経営近代化合理化が迫られて、国際競争力に対する抵抗力をぜひとも確保していかねばならないということであります。第八には、新しい技術の革新によって、新技術の導入が必要になってまいりました。第九には、中小企業が、これを強くするためには、ぜひともその組織強化し、整備いたしまして、団体的におのおのの体質改善をしていかなくては、個別企業努力だけでは不可能である。組織の力によってみずからの経常改善をし、その地位の向上をはからねばならない。中小企業の強力なる組織化が絶対に必要であると考えられるのであります。第十には、貿易自由化影響で、先ほど述べましたごとくに、新産業体制といったような混合経済の構想や、独禁法改正による大企業カルテル強化の要望などが、一方において起こっておるのであります。これに対処いたしまして、中小企業間におきましては、将来伸びる見込みのない企業を転換せねばならないか、あるいはまた近代化ため適正規模ため協同化、協業化、企業合同等を行なわねばならないかといったような問題が起こっております。さらに第十一には、中小企業経営の安定と従事者生活水準向上に迫られておるのであります。企業間の格差が、この大きな制約になっておるのであります。これを取り除くことが、刻下の急務であらねばならないのであります。第十二には、中小企業労務者対策としては、福利施設を設置し、最低賃金制の確保と福祉事業並びに社会保障制度確立に迫られておるのであります。第十三には、中小企業経営合理化体質改善ために、自己資金の蓄積が必要である。それがためには少なくとも税制適正化の必要に迫られておるのであります。  以上申し上げましたような背景のもとにおきまして、われわれは、中小企業基本法案というものを今後審議していかなければならないと思うのでありますが、すでに農業基本法におきましては、昭和三十二年に、政府農業基本法制定ため調査会が設置せられまして、たぶん三十四年かと思いましたが、これが成立いたしたのであります。農業基本法が成立するためには、三カ年の調査期間を置きまして、ようやく成立いたしたのでありますが、中小企業基本法におきましては、以上申し述べましたような背景のもとに、事情の急激なる変化によりまして、全国中小企業は、このままでは生きていけない、何とか体制を変えていかなくてはならない。それがためには、中小企業を今後育成強化するところの基本法とも言うべき、憲法とも言うべき何らか中心となる根本法規が必要であるというようなことからいたしまして、一昨年、わが自民党におきましても、商工議員連盟等組織されましてもっぱら中小企業基本法案の策定にかかりまして、昨年の通常国会におきましては、与党、野党そろって議員提案の形式によりまして、中小企業基本法案国会提出いたしたのでございます。このことは、好むと好まざるとにかかわらず、客観的情勢がさようにさしたものでありまして、中小企業基本法案を成立させるということは、全国民の一つの声であり、しかも、これが国民運動として展開されてきておるのであります。かような情勢のもとに、今回、政府におかれまして急速に中小企業基本法案提案されましたことは、まことに時宜に適したことと考えておるようでありますが、ただ、その内容につきましては、私どももいろいろ検討の余地があろうかと考えております。中小企業基本法案の前文の末尾に、「中小企業の進むべき新たなみちを明らかにして、中小企業に関する政策目標を示す」、かように掲げておるのでありますが、私ども、この中小企業が今後進むべき新たな道をこの基本法によって明らかにしていただき、また中小企業に関する最も重要なる政策目標をこの基本法の中に掲げていただいておる、かように確信をいたしておるのであります。  そこで、私はまず福田通産大臣にお尋ね申し上げたいことは、かような必要に迫られました情勢下におきまして、中小企業基本法案提案されたのでございます。先ほど申し上げましたように、全国中小企業者は、この中小企業基本法案が成立することを、あたかも干天に慈雨を求めるごとくに、みなこれを渇望いたしておるのであります。しかも、新産業体制に突入しまして、この基本法案ができた場合におきまして、通産省が従来のような安易な、しかもマンネリズムにおちいった中小企業振興に関する政策を立てておったのでは、私は、全国中小企業というものは非常に失望するのではないか、かように考えるのであります。その意味におきまして、私は、三十九年度におきまして、あるいはその後におきまして、通産省として中小企業に関するいかなる施策をお立てになるのであるか、その決意のほどをまず第一にお伺いしてみたいと思うのであります。
  4. 福田一

    福田国務大臣 ただいま御説明をいただきましたように、日本中小企業は、不完全競争といいますか、特殊の事情があり、しかも十三の項目をあげて述べられましたような必要性に迫られておる。しかも、一方においては、自由化あるいは関税一括引き下げ等世界的規模において日本経済が移り変わっていく段階における日本中小企業、こういう考え方に立ってこれからの施策をやっていくわけでございます。したがって、われわれといたしましては、中小企業基本法というものは、その施策の方向を示すものではございますが、この法律に基づきまして、今後の施策については、いままでとは違った格段努力をいたしてまいらなければならぬと思います。特に中小企業のいわゆる合理化近代化を促進をする、そういう意味において、税制金融の面については特にわれわれは予算面その他においても努力をいたさなければなりません。その他いわゆる小企業のものに対する手厚い保護というような面についても、従来とは格段の変わったやり方——同じことをやるにしましても、力の人れぐあいによってうんとものごとは違ってくると思うのであります。大いに力を込めて、そしていわゆる中小企業というものの育成といいますか、今後のそういうような世界的な規模の中における日本経済、その中における中小企業を育てていくという意味格段努力をいたしてまいりたい、かように考える次第であります。
  5. 田中榮一

    田中(榮)委員 最近各省所管事項の中で、いわゆる基本法ばやりでございまして、先般観光事業法本法というものができまして、農業には農業基本法観光には観光事業基本法、今後中小企業には中小企業基本法というようなものが制定されるのでありますが、この基本法ができたからといって、私どもは、これによって直ちに予算が増額されるということは考えられないのであります。しかしながら、基本法ができた以上は、基本法中心にして何か新しい政策が策定せられ、それによって新たな予算計上される、それによって中小企業は、基本法ができたからこういうふうなことになったという、一つの期待を持っておるのではないかと思うのであります。そこで、この中基法ができまして、通産省だけが力こぶを入れてやりましても、ほかの省がこれに協力態勢ができておりませんと、せっかくできましたけれども、それは絵にかいたぼたもちになってしまうおそれがあるのであります。少なくとも通産省が、その主管省としまして中小企業基本法を成立させる。それに関連いたしまして、社会党の案によりますと、中小企業基本法提案説明の中に、五本の柱を立てております。まず第一は、二重構造の解消と経済民主化、第二は、自主的な協同化、第三は、個々の中小企業に対する積極的な助成、第四には、中小企業労働者所得増大、第五には、さらに中小企業者労働者農民相互間の調和の五つの柱を明確に提示してうたっておりますが、私どももまた、別な考え方によりまして、この中小企業にはやはり五つの柱が必要であろうと思っております。その一つ金融であります。その次は、すなわち租税負担の問題でございます。それから第三には、労働力をいかにして確保するかという問題であります。その次は、いわゆる税制適正化といいますか、合理化といいますか、税制をなるべく適正化いたしまして、中小企業負担の軽減をさせていただきたいということであります。それから第四には、設備近代化であります。第五には、産業分野を明確にここに確立をしてもらいたい。この五本の柱を私は立てておるのでございますが、この五本の柱を立てる上におきましては、それぞれあるいは労働省、あるいは大蔵省、あるいは厚生省、場合によりましては運輸省各省権限に属する所管事項がみんな異なっておるのでございます。今日、各省にまたがっておるがために、その実効が伴わないというような例が間々でございます。たとえば観光事業におきましては運輸省農林省厚生省、建設省、労働省、各方面にまたがっておるがために、その効果があがらないという例が間々あるのでございます。したがって、この中小企業の問題につきましては、いま私が申し上げました五本の柱をいかに解決するかということにつきましても、いずれも各省権限に属するのであります。したがって、私は、今回この基本法ができましたならば一体内閣としてどのような決意を持っておるか、きょうは総理大臣がお見えになっておりませんので、この意向をお伺いすることはできませんが、まず大蔵省のお考えを聞きたいと思います。  それは、第一に通産省予算でございますが、本年度におきましては、一般会計予算総額二兆八千五百億八百万円、その中で通産省の占める予算の額が四百三十億六千八百万円。しかるに、農林省予算というものが、二千五百三十一億二千七百万円であります。中小企業事業所数が、三百五十二万五千五百二十七事業所でございます。この事業所でこの通産省予算を割ってみますと、一事業所当たりが一万二千二百十六円、こういう数字になってまいります。それから農林省関係では、農家数が六百五万六千五百三十四戸となっております。その農林省の三十八年度予算が二千五百三十一億二千七百万円、これを六百五万で割ってみますと、農家一戸当たり経費が四万一千七百九十四円。そういたしますと、農林省農家一戸当たり予算数字が、中小企業者の約三倍強、ことばをかえて言えば、四分の一強ということになるわけでございますが、農家に対する予算計上中小企業者に対する予算計上とにおいて、かように大きな差があるのであります。しかも今日中小企業の実態は、いわゆる国の産業経済基幹産業、その母体として重要な役割を演じておる中小企業者、それに対する国家の予算計上のしかたがかように差異のあるということは、われわれとしましては納得のできないところであります。この点につきましては、私は田中大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思うのでありますが、大蔵大臣御欠席でありますので、主計局長の御意見はいかがでございましょうか。——主計局長もお見えになっていないそうでありますから、ただいまのことにつきまして、通産大臣からひとつ御答弁願いたいと思います。
  6. 福田一

    福田国務大臣 大蔵大臣からお答えをすべき事柄ばかりと思うのでありまして、また他日大蔵大臣からお答えをいたすかと思いますが、通産省としてではなく、政府中小企業に対する基本的態度はいかがあるかということにつきましては、昨年私が閣僚に任ぜられて通産大臣になった直後から、どうしてもこの中小企業基本法だけは通さなければいけない、そうして中小企業育成をはからなければいけないということは、池田総理が就任早々私にも言われたことでございまして、その後も一貫して、政府としては中小企業育成ということについて努力はいたしておるつもりであります。したがって、今後もそういう方針で臨むことに変わりはないわけで、むしろ変わりがないというよりも、基本法を通して一そう熱意を込めてやるようにいたしたい、かように考えております。  なお、ただいま御説明がございました予算の問題でございますが、そういうような比率の点から見ますと、確かに相違がございます。われわれは、これについて満足いたしておるものではございませんが、ただ中小企業の場合におきましては、いわゆる金融というものが、御承知のように非常に大事なことであり、またそういう面での施策も相当いたしておるわけでございまして、直接これを育成していく国の経費というものと、またこれに必要とする資金なり何なりを供給していくという面から考えてみますと、私、数字はいまここに持っておりませんけれども、あるいはその比率はいま御指摘のものより幾分よくなるのではないかと思いますが、いずれにしても、私たちとしては、今後、大いにいま仰せになったような趣旨を体して、農家に比して中小企業が軽く扱われることのないように、これに対しても同様な国の施策が行なわれるように、大いに努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  7. 田中榮一

    田中(榮)委員 私は、内閣としての一貫した施策実施をする上におきまして一もちろん、関係大臣は緊密なる連絡をとっていただくことはもとより必要でございまするが、それと同町に、また一面、その施策お互いにちぐはぐのないように、そごのないように、またお互い政策が相反するようなことのないように、円満に実施をするためには、各省間に何らかの連絡機関といいまするか、あるいはこれが運営を円滑にしかも完全に実施するための何らかの連絡機関というようなものを設置して、これを十分に効果あるように実施するの御意志があるかどうか、その点につきましてお伺いしてみたいと思うのであります。
  8. 福田一

    福田国務大臣 中小企業育成していく上において、各省が緊密な連絡をとる。ところが、各省の間で、たとえば農業と商業との関係において利害の衝突を生ずるおそれがある、あるいは労働省関係その他の役所との関係で、そういうような問題が起きないとは限らない。したがって、そういうような場合を想定して、何らかの連絡機関をつくっておいたらどうか・こういうお考えと承ったのでありますが、それも一つ考え方でございますけれども、まずさしあたり、立法の過程におきましても、実は各省との間でいろいろ打ち合わせをいたしたこともございます。また各省としても、何も中小企業に対して横を向いておろうというような考え方ではないやにわれわれはいま理解をいたしております。しかし、御趣旨を体して今後も緊密に連絡をとって、いま仰せになったような欠陥を露呈しないような行政をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  9. 田中榮一

    田中(榮)委員 私は、この中小企業基本法の中で特に重要と認められることは、やはり何と申しましても金融でございます。金融の道を中小企業者に講ずるということは、中小企業者としましては最も要望するところでございますが、基本法の第二十四条には、「民間金融機関からの中小企業に対する適正な融資指導等必要な施策を講ずるものとする。」ということになっております。しかるところ、農業基本法第四条によりますると、円滑なる融資の道を講ずるということがはっきり規定されておりまして、政府みずからが融資の道をはかりますということを、農業基本法の第四条にははっきりうたっておるわけであります。農業基本法第四条第二項の中には、「必要な資金融通適正円滑化を図らなければならない。」ということをうたっております。しかるに、中基法第二十四条には「資金融通適正円滑化を図るため」にとなっておりまして、そしてその内容につきましては、政府みずからが資金融通するのじゃなくして、あるいは民間金融機関からの中小企業に対する適切な融資指導とか、そうした必要な施策を講ずる。要するに、政府みずから資金融通いたしますというはっきりした規定がこの中にうたわれてないということは、私どもとしては非常にさびしく思うのであります。あるいはそうではない、それはおまえの間違いである、第五条を見てみろ、第五条の規定の中には、はっきり国は財政上の措置を講ずるとあるからして、予算措置のほかに、財政投融資等資金ワク拡大等につきましては、政府としても十分努力をするんだ、こういうふうにあるいは御答弁があるかと思うのでありまするが、私どもとしましては、この中基法明定する上からには、やはり国みずからが融資をするということの責任ある態度をはっきりととって、この規定の上に明定をしていただくことが望ましいのであります。農基法には、すでに第四条第二項に「円滑化を図らなければならない。」と、融資の道をはかるべく義務づけられている規定が置かれておるのでありますが、中基法第二十四条の中には、何らそれが明定されなくて、ただ第五条に財政上の措置を講ずるということで逃げておるのでありますが、この点に関する大臣の御見解を承ってみたいと思います。
  10. 福田一

    福田国務大臣 財政資金の問題については第五条、それから第二十四条でございますが、われわれとしては、書き方の問題でございますから、おしかりを受けて恐縮でございますが、われわれとしては、いま田中委員仰せになったようなことがこの条文の中にあらわれておる、かように考えておるのでございまして、「国は、中小企業に対する資金融通適正円滑化を図るため政府関係金融機関の機能を強化、……等必要な施策を講ずるものとする。」「信用補完事業の充実、……等必要な施策を講ずるものとする。」こう受けていくわけでございますから、ただいま仰せになったようないわゆる農業基本法の場合と同じようなことが、ここに大体規定されておる。ただ問題は、農業と違いまして、中小企業の場合には、民間金融機関からの融資というものが非常に大きなウエートを占めておるものでございますから、それもここに規定をいたさなければならないので、ここに「民間金融機関からの中小企業に対する適正な融資指導」という言葉でこれをあらわしまして、国の財政融資はもちろんのこと、国の中小企業金融公庫とか、国民金融公庫その他政府金融機関は、そういうことを十分にやる。また、いわゆる信用保証協会等の利用等の問題をもっと充実してやる。同時にまた、民間の金融機関をうまく指導をして、中小企業にできるだけたくさんの金が融資されるような適正な融資指導を講ずる、こういうふうな考え方でこの条文をつくっておりますので、ひとつその点は御了解を賜わりたいと思う次第であります。
  11. 田中榮一

    田中(榮)委員 実は前回議員立法として提案された中には、そうしたことのニュアンスが出るような文句が明定されておったのでありますが、今回はそれが削除されておったのであります。ただ、私どもが第二十四条を拝見しますと、人の資金をあっせんするとか、あるいは中小企業に対する適正な融資指導をするとかといったような、何となく他力本願的なことのみのように見えるのでありまして、この点は、中小企業の連中も若干失望するのではないかと思うのであります。どうせ政府融資をあっせんするならば、農基法のように、円滑化をはからねばならぬというように、はっきり態度を示していただいたほうが私はむしろよかったのではないかということも考えるのであります。これは私の見解でありますから、いま通産大臣の御答弁で私は一応了といたします。  なお、私は、もう一つ通産大臣にこれは意見として申し上げてみたいと思うのでありまするが、今度の中小企業基本法案をざっと見て感じますることは、現在大企業から小企業がいろいろと圧迫を受けておるということは、通産大臣もよく御存じのことでございますので、私から一々こういうことを説明する必要はないと思います。たとえばその一つが、いわゆる下請代金の支払いが遅延をするという点。それからもう一つ、これは大臣御存じであるかどうか存じませんが、現在の大企業メーカーが、御売り等に対しましてリベートというものを出しております。これはもう商慣習で、いかなる大事業も、大メーカーも、その販売網に対しましてリベートを出しておるのでありますが、大体五分程度のリベートを出しておる。そのリベートを出す場合におきまして、その支払いが、大体半年払いか一年払いである。しかも、その支払いが、五五%を払って、あとの四五%はとめ置く。しかも、その支払いの場合においては、一本の通知で、おまえさんのところのリベートは百万円だ、五十五万円はキャッシュで渡すけれども、あとの四十五万円は私のほうへとめ置きますということです。なぜそうするかというと、半分だと、この大企業メーカーのほうにおきまして利益勘定に入りまして、法人税がかかるのです。今度は逆に五五%、五十五万円のリベートを中小企業がもらいますると、これは五五%の——現在の法人税そのほかいろいろの諸税がかかりまするが、二百万円以上におきましては、大体五五%の税金がかかるのであります。その税金を、百万円の分について税金が取られるのであります。こうしたことは、リベートならば、毎月決算のときに支払うべきものが、半年あるいは一年の後に支払われる。しかも、とめ置かれたリベートというものは一大企業がこれを見返りにして一担保として融資を受ける。これが今日、全国的にこのリベートのとめ置いた数字をもし合算をいたしましたならば、私は、数十億にのぼる額になると思うのであります。これがもし月々中小企業に手渡されたといたしまするならば、中小企業金融というものがそれだけ潤うのでありまして、これのごときは、リベートでありますから、一種の贈与であります。これは一方的の恩恵でありまして、これは中小企業がこれに対して抗議を申し込み、あるいは異議の申し立てをすることのできない弱い立場にある。これはちょうど下請代金支払い遅延と同様な姿でございまするが、かようなあらゆる点におきまして、中小企業というものは大企業から目に見えないいろいろな圧迫、不利というものを受けておるのであります。そういう場合におきまして、この中小企業基本法案の中に、しからば中小企業基本法案が、大企業に対して中小企業をどういうように保護しておるかということを探してみますると、ほとんどないのであります。ただ一カ条だけ、中小企業基本法の中に、法第三条第一項第五号の規定がわずかにあるのであります。その第五号の規定と申しますものは、「中小企業の取引条件に関する不利を補正するように過度の競争の防止及び下請取引の適正化を図ること。」、こういう一つ規定がありまして、これが大企業より中小企業を保護する規定と思われるのでありますが、そのほか、中小企業を大企業から保護するような、せめて道徳的規定でもよいから何かはしいと思うのでありまするが、これらにつきましては、何ら保護の規定のないということは、私はまことに残念に思うのであります。この点は、他の法条をいろいろ解釈をいたしまして、そういう保護の趣旨がこれにあらわれておるのだということになればそれは別でございますが、私どもは、下請代命支払い遅延につきましては、その特定の法律がありますし、それによって保護されておりますが、これとても、あとで御質問申し上げますが、ざる法中のざる法でありまして、これによって全然保護されていないということであります。こういう点から申しますと、私は、この中小企業基本法というものは、何か肝心な一つのくぎが一本欠けているのではないかというような気持がいたすのでありますが、その点につきまして、福田通産大臣の御所見を承りたいと思います。
  12. 福田一

    福田国務大臣 仰せのごとく、大企業中小企業に対して何らかの圧迫といいますか、不利益をもたらしておるような事例は、私ども承知をいたしております。ただ、いま御指摘になったようなりリベートの問題等は、実は私寡聞にして存じておりませんが、おそらく御指摘のことはあるかと思うのでありますが、こういうことは、今後ひとつ大いに研究いたしまして、是正をいたしたいと考ええるのであります。  なお、中小企業に対する大企業の圧迫を是正する、はねすというような措置について、御指摘のような条文があるのでありますが、その趣旨を受けまして、十七条、十八条、十九条というようなもので、大体その趣旨を明らかにさせていただけをのではないか、かように考えておりますが、しかし、いわゆる大企業中小企業を圧迫することというものは、これはぜひとも是正すべきことでございますので、条文の問題は別といたしましても、今後ひとつ大いにそういうことのないように努力をいたしてまいりたい、かように考える次第でございます。
  13. 田中武夫

    田中(武)議員 ただいまの田中さんの政府に対する御質問は、政府案の一番欠けたところをついておると思います。したがって、私が、当委員会及び本会議において、わが党案を提出いたしましたときの提案説明にも言っておるように、大企業ため中小企業基本法である、われわれはかように見ておるのであります。田中さんの御意見ごもっともでございます。
  14. 福田一

    福田国務大臣 答弁答弁をしてはまことにあれでありますが、私たちは、決して大企業擁護のためにこういう中小企業本本法を出しておるのではありません。また下請の問題につきましては、第十七条の「国は、中小企業の取引条件の向上及び経営の安定に資するため中小企業者が自主的に事業活動を調整して過度の競争を防止することができるようにその組織を整備する」、これは組織の力を借りて大企業をはね返せるような措置を講ずるようにせよということであります。第十八条では「下請取引の適正化」ということで、「国は、下請取引の適正化を図るため、下請代金の支払遅延の防止等必要な施策を講ずるとともに、下請関係近代化して、下請関係にある中小企業者が自主的にその事業を運営し、かつ、その能力を最も有効に発揮することができるようにするため必要な施策を講ずをものとする。」、こういうふうに明らかに規定をいたしております。また、「事業活動の機会の適正な確保」については、十九条においてこれを規定いたしておるよなわけでございまして、その点は誤解のないようにひとつお願いいたしたいと思います。
  15. 田中榮一

    田中(榮)委員 本件につきましては一応留保いたしまして、なおまだ大蔵省関係、他省関係についての質問が相当残っておりますが、時間も迫っておりますので、私の質問は、本日のところはこれをもって打ち切りまして、後日に譲りたいと思います。
  16. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 次会は、明後七日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十分散会