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1963-06-04 第43回国会 衆議院 商工委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月四日(火曜日)    午前十一時二十九分開議  出席委員    委員長 逢澤  寛君    理事 小川 平二君 理事 岡本  茂君    理事 白浜 仁吉君 理事 中村 幸八君    理事 板川 正吾君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君       浦野 幸男君    小笠 公韶君       大高  康君    海部 俊樹君       金子 一平君    笹本 一雄君       始関 伊平君    正示啓次郎君       田中 榮一君    中川 俊思君       藤井 勝志君  早稻田柳右エ門君       岡田 利春君    北山 愛郎君       久保田鶴松君    久保田 豊君       多賀谷真稔君    中村 重光君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         内閣法制局参事         官         (第三部長)  吉國 一郎君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  小沼  亨君         通商産業政務次         官       廣瀬 正雄君         通商産業事務官         (大臣官房長) 渡邊彌榮司君         中小企業庁長官 樋詰 誠明君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    加藤 悌次君         通商産業事務官         (中小企業庁指         導部長)    影山 衞司君  委員外出席者         議     員 田中 武夫君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    小鴨 光男君         専  門  員 渡邊 一俊君     ————————————— 六月四日  委員仮谷忠男君辞任につき、その補欠として小  笠公韶君議長指名委員に選任された。 同日  委員小笠公韶君辞任につき、その補欠として仮  谷忠男君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月三日  物価値上げ抑制等に関する請願有馬輝武君紹  介)(第三九九二号)  同外一件(村山喜一紹介)(第四一八三号)  同外一件(矢尾喜三郎紹介)(第四二〇六  号)  同(松井政吉紹介)(第四二〇七号)  同(湯山勇紹介)(第四二〇八号)  同(横山利秋紹介)(第四二〇九号)  同(稻村隆一君紹介)(第四二三〇号)  同外十九件(片島港君紹介)(第四二六七号)  同外一件(勝澤芳雄紹介)(第四二六八号)  同外一件(中村英男紹介)(第四二六九号)  同(八木一男紹介)(第四二七〇号)  中小企業基本法制定に関する請願宇野宗佑君  紹介)(第三九九三号)  同(小沢辰男紹介)(第三九九四号)  同(黒金泰美紹介)(第四〇五七号)  同(江崎真澄紹介)(第四〇五八号)  同(小笠公韶君紹介)(第四〇五九号)  同(藏内修治紹介)(第四一三六号)  同(鴨田宗一紹介)(第四一四〇号)  同(中村梅吉紹介)(第四一四一号)  同(永田亮一紹介)(第四一四二号)  同(保利茂紹介)(第四一四三号)  同(山田彌一紹介)(第四一四四号)  同(田中彰治紹介)(第四一六二号)  同(海部俊樹紹介)(第四二二六号)  同(田中榮一紹介)(第四二二七号)  同外一件(中村幸八君紹介)(第四二二八号)  同(濱地文平紹介)(第四二二九号)  同(天野公義紹介)(第四二六三号)  同外一件(伊藤卯四郎紹介)(第四二六四  号)  同(飯塚定輔紹介)(第四二六五号)  同(加藤鐐五郎紹介)(第四二六六号)  信用組合の出資者保護に関する請願加藤鐐五  郎君紹介)(第四〇二〇号)  中小企業金融拡大等に関する請願兒玉末男  君紹介)(第四〇六〇号)  同(滝井義高紹介)(第四〇七〇号)  同(有馬輝武紹介)(第四〇九三号)  同(加藤勘十君紹介)(第四〇九四号)  同(加藤清二紹介)(第四〇九五号)  同(勝澤芳雄紹介)(第四〇九六号)  同(坪野米男紹介)(第四〇九七号)  同外一件(中村英男紹介)(第四〇九八号)  同(村山喜一紹介)(第四〇九九号)  同(八木一男紹介)(第四一六三号)  同(鈴木茂三郎紹介)(第四一八〇号)  同(吉村吉雄紹介)(第四一八一号)  同外五件(山本幸一紹介)(第四一八二号)  同(河野正紹介)(第四二〇三号)  同(松前重義紹介)(第四二〇四号)  同(矢尾喜三郎紹介)(第四二〇五号)  公共料金等引上げ政策中止等に関する請願(  川俣清音紹介)(第四一〇〇号)  松本、諏訪地区を新産業都市内陸地帯指定に  関する請願下平正一紹介)(第四一二二  号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第四一四九号)  同(井出一太郎紹介)(第四一六八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  中小企業基本法案内閣提出第六五号)  中小企業基本法案永井勝次郎君外三十名提出、  衆法第一〇号)  中小企業組織法案永井勝次郎君外三十名提出、  衆法第二号)  中小企業基本法案向井長年提出参法第四  号)(予)  中小企業指導法案内閣提出第七六号)  中小企業信用保険法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一一九号)  中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第一二三号)  下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法  律案内閣提出第一六七号)      ————◇—————
  2. 逢澤寛

    逢澤委員長 これより会議を開きます。  まず、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  理事会において御協議願いましたとおり、内閣提出中小企業基本法案永井勝次郎君外三十名提出中小企業基本法案及び中小企業組織法案、並びに向井長年提出中小企業基本法案予備審査)、以上四法案について、来たる六月十二日、参考人より意見を聴取することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 逢澤寛

    逢澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選、手続に関しましては、委員長に御一任願うことに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 逢澤寛

    逢澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  5. 逢澤寛

    逢澤委員長 内閣提出中小企業基本法案永井勝次郎君外三十名提出中小企業基本法案及び中小企業組織法案向井長年提出中小企業基本法案、並びに内閣提出中小企業指導法案中小企業信用保険法の一部を改正する法律案中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律案、及び下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案、以上八案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。小笠公韶君
  6. 小笠公韶

    小笠委員 前町の質問で、政府案第十九条の規定によっては解決し得ない分野が、中小企業中小企業以外のものとの間においてあることを指摘したのであります。この分野というか、問題の場面をどう取り扱うかということは、中小企業対策として最も困難な場面であると思うのであります。特に現在の法体系のもとにおいて、そう思うのであります。中小企業立場からいたしますと、大きな力を持つ中小企業者以外のものの進出でほんとに苦しい、何らかの手によって中小企業以外のものの活動をチェックしてほしいところなのであります。そうすれば、中小企業立場がはっきりし、安心できるのであります。そこで、いわゆる事業分野確定という問題が起こってくるのであります。事業分野確定を考えるにあたりまして、まず考えるべき点は、第一は、憲法第二十二条、すなわち基本的人権との関係をどう見るか。第二は、経済社会の絶えざる進歩向上との関係をいかに見るべきかということであります。憲法第二十二条が保障する職業選択の自由の例外でございます「公共福祉に反しない限り」の規定解釈いかんが、大きなかぎになるものと思うのであります。職業選択の自由は、日本国民基本的権利であり、基本人権の中で最も重要なるものの一つであります。前回、この「公共福祉に反しない限り」について、その解釈を伺ったのでありますが、重ねて具体的に伺いたいと思うのであります。  まず第一は、産業政策上の見地から、特定業種産業維持発展のため、その種専業新設増設等許可制とすることができるかどうかということであります。第二は、たとえば百貨店法第三条は、第一条を受けまして、百貨店新設増設等許可制をしいておりますが、中小企業特定業種の部門において、このことが可能であるかどうかということ、これが公共福祉のためとなるかどうかということであります。さらに社会政策的な考慮を加えまして、たとえばある業界が、大企業等進出によって中小企業の多くのものが危殆に瀕し、または危殆に瀕するおそれがある場合に、緊急避難的に、一定の期間を限り特定要件のもとに新規事業開設等制限し得るかどうかということであります。この二点について、法的な御説明を伺いたいのであります。
  7. 吉國一郎

    吉國政府委員 憲法第二十二条の職業選択の自由に関します「公共福祉に反しない限り」という点につきましては、先般、御質問に対してお答え申し上げたわけでございますが、今日は、具体的な問題として御質問いただきましたので、お答え申し上げます。  第一の、事業許可制の問題でございますが、もともと憲法上の公共福祉という字句の解釈につきましては、一義的に、一般的な定義というものは不可能でございまして、それぞれの事案に対しまして、具体的な事情をかれこれ勘案いたしまして、公共福祉に適合するかいなかということを決定せざるを得ないということだろうと思います。結局、具体的な問題につきまして、たとえばある特定事業種類について許可制をとる必要があるかどうかという場合に、現段階におきまする国家社会におけるあらゆる関係する利益を比較考量いたしまして、実質的な、公平な見地から、均衡調和のとれました共同利益ははたして何であるかということから判断するほかはないと思います。したがいまして、一般的に、およそ産業政策上の理由事業許可制をとり得るかということにつきましては、当該事案によっては、許可制をとることが公共福祉に適合するという場合がありましょうし、また事案によりましては、そこまで許可制をとるということは、全体の公平の見地から、均衡調和を得ていないではないかという場合もあり得ると思いますので、一般的に産業政策上の理由から事業許可制をとり得るかどうかということは、一義的にはきめ得ない問題ではないかと思います。  第二の問題、私、あるいは先生の御質問の理解を誤っているかと思いますが、産業政策からさらに突き進んで社会政策的な意味をも持たせ、中小企業相当部分あるいは大部分危殆に瀕するような場合に、緊急避難的な意味においてある制限を他の企業に対してなし得るかという趣旨の御質問かと存じますが、この場合、緊急避難的な意味においてと仰せられましたように、その場合におきましては、当該中小企業相当部分危殆に瀕しているという一つの事実と、その制限をすることによって他の企業が受けまする利益というものを比較考量いたしまして、その最小限度の必要に応じて他の企業制限することが、公共福祉に反しない場合も十分あり得るというふうに考えられまするが、これもまさに具体的な事案によって違うと存じまするので、ただいまから将来を見通して、こういう場合にはできるとかできないとかいうことは、これも一義的にはきめ得ない問題ではないかと思います。
  8. 小笠公韶

    小笠委員 そういたしますと、公共福祉という見地から、中小企業中小企業者以外、一般社会利害との調和点公共利害調整というような見地から考える場合の価値判断でございます。その価値判断をする場合に、どこに目安を置いて価値判断をするかという、ここに問題がしぼられてくると思うのでありますが、その価値判断のしかた、これを、量的な立場から価値判断をしていくのか、質的な立場に立って価値判断をしていくのかという問題が出てくるのであります。私は、国民基本人権としての職業選択という問題と競合する場合であります。したがいまして、その価値判断は非常に慎重にやらなければいかぬと思うのであります。それはなぜかといいますと、基本人権を侵す場合は、あくまでも慎重かつストリクトリーにものを考えなければ、連鎖反応を呼ぶ場合少なしとしないからであります。この場合における価価判断目安をどこに置かれるか、重ねて伺いたい。
  9. 吉國一郎

    吉國政府委員 職業選択の自由に関しまして、「公共福祉に反しない限り」ということの判定を質、量両面にわたっていかなる基準において行なうかというようなことは、憲法基本に触れるむずかしい問題でございまして、私どもがお答えできるような問題ではないと思いまするが、一応ただいままで憲法学説等で述べられておりますことを要約して申し上げますと、もともとこの公共福祉ということばでございますが、これは自然人の個別的な利益に対しまして、それを越え、場合によっては、それを制約する機能を持つような公共的な利益意味である。その概念の内容は、先ほども申し上げましたように、事柄の性質上、一義的に定義することはできないけれども、それぞれ具体的な事案ごとに決定しなければならないというのが、基本的な考え方でございます。  日本国憲法におきます公共福祉には、これも学説上の議論でございますので、あまり詳しく申し上げるのもなんであるかと思いますが、二つの側面があるといわれております。  一つは、各人がそれぞれ基本的人権を持っておりまして、その基本的人権の中には、個人的な性格を持っておりまして、他人には関連することが少ない。しかし、場合によっては他人に関連する場合がある。他人に関連する場合がありまするならば、必然的に甲の基本的人権と乙の基本的人権衝突をする。その場合に、その甲、乙両者が、これも憲法規定によりまして、各人の平等が認められております。各人の平等が認められておりますから、各人基本的へ権は平等に尊重されなければならないということは、結局各人基本的人権相互衝突調整しなければならない。ここで一つ基本的人権相互調整と申しますか、平等にすべての人に基本的人権保障するというような考え方が出てまいります。  もう一つは、憲法自由権保障だけを目的とするということになりますならば、ただいま申したような平等に基本的人権を共有できるように調整するということだけで十分でございましょうけれども、そのほかに、参政権であるとか、俗に社会権といわれるような、基本的な人権保障しておるわけでございます。特にその社会権というような権利に対しましては、国民生活保障のために、立法上あるいは行政上のいろんな措置を必要とする。その場合には、各人自由権、特に憲法の二十九条でございますとか、あるいはただいま問題になっております二十二条のような規定によりまして保障されております経済的あるいは財産的と申しましょうか、そういうような自由権に対する制約がある程度存在する。どうしてもそのような社会権保障のためには、財産権のような自由権のある程度の制約は生じなければならない。このような考え方社会、国家的な公共福祉と申しましょうか、そういうような二つの原理があるというふうに考えられております。先般も申し上げましたように、憲法の二十二条の「公共福祉に反しない限り」という規定の存在の意味でございますが、これはほかの基本的人権規定については、公共福祉ということは規定がない。ところが、第二十二条なり第二十九条の二項については、「公共福祉に適合するやうに」とか、「公共福祉に反しない限り、」という文言があるのは、このような経済的あるいは財産的な自由権については、他の基本的人権に比べて、非常に社会、国家的な公共福祉によって制限される場合が多いということを表明したものだというのが通説でございまして、そこから、この第二十二条の場合につきましても、他の基本的人権に比較いたしまするならば、やや制限される場合が多いのではないかという程度のことでございます。具体的な場合にどういうメルクマールで判断するかということにつきましては、結局、当該事案性質にかんがみまして、現段階におけるあらゆる関係のもろもろの利益を比較考量いたしまして、実質的な公平の見地から均衡調和のとれた点を発見する以外にはないということであろうと思います。
  10. 小笠公韶

    小笠委員 事業分野確定のもう一つの要点であります経済進歩向上という問題との関連をどう考えるか、こういう場合にあたりまして、私は、今日のように技術革新経済発展のはなはだしい時代におきましては、一つ分野をくぎづけすると申しますか、他のものの入ってくる競争を隔絶するという問題は、相当いろいろな角度から慎重に考えられなければならないと思うのであります。言うまでもなく、昔は人力車で動いておった。それがいまは自動車になってきておる。現益、日本人生活に非常に必要であったげた製造業というものが、順次スリッパになり、くつになるというような形で、げた産業が衰微の方向に動いておる。こういうような進展の過程において、一つげた産業あるいは人力車産業というものが固定して安定していくというふうな場合に、その中における進歩がどうして維持、推進されていくかという問題を同町に考えなければ、国民生活向上一般消費者立場から見て問題があるのではないか、こういうふうに考えるのであります。  かく考えてまいりますと、事業分野確定の問題は、中小企業の安定という観点から考えますれば、はっきり割り切ったほうがよいようにも考えられるのであります。だが、立場を変えて、より高い国民生活向上社会生活発展という見地に変わってまいりますときに、必ずしも安易に考えにくい問題である、こういうふうに思うのであります。そこに社会生活向上経済発展との調和点をどうとるかということを考えなければならぬ。この点はよく考えて、われわれは結論を出すべきであると思うのであります。  そこで、社会党の案の第十八条についてお伺いいたしたいのであります。  社会党のほうの第十八条におきましては、「中小企業者事業分野確保」と題しまして、分野確保規定を宣言し、第十九条において、この分野確定要件規定いたしております。この十八条を見ますときに、三つの条件がある。それは、中小企業者存立基盤を擁護すること、第二は中小企業者分野として適切であること、そうして経済秩序維持を守るということ。この中で最も重要な問題をなすのは、中小企業者存立基盤を擁護するというところに基点があると思うのであります。いかなる産業でも、その存立基盤の強化、安定をはかるということは、当然であります。この意味から、この十八条に規定する存立基盤を擁護するには、特別の要件といいますか、内容をお持ちであろうと思うのであります。したがいまして、この存立基盤を擁護するという意味に、特別の条件といいますか、前提条件を置かれておるかどうかということをまず伺いたい。  と同時に、第十九条に参りまして、十九条は、各種の指定要件を列記しておりますが、その中に、四行目でありますが、「経済的に中小規模企業形態による経営にも適切であり、」云々と書いてある。この「経済的に中小規模企業形態による経営にも適切である」とは、同時に大企業による経営にも適切であるということを意味しておる。そこで、この分野確定する場合におきまして、いかなる中小企業がこういう要件に該当すると認定せられる基準をどこに置かれるか、これをお伺いいたしたいのであります。
  11. 田中武夫

    田中(武)議員 ただいまの小笠委員質問に御答弁申し上げる前に、憲法の二十二条の問題につきまして、私の見解を明らかにいたしておきたいと思います。  いま、中小企業事業分野確保する、こういうことは、憲法二十二条の精神に反するのではないか、要は公共福祉とは何か、こういうお問いであったと思います。そこで、公共福祉とは、先ほどあなたもおっしゃいました量か質か、私は双方とも含むと思っております。量で考える場合もあるし、質で考える場合もあっていいのではないか。ことに少数の大企業経済的な力による圧迫に対して、産業分野における多くの数を持つ中小企業利益を守ること、まさに公共福祉であると考えております。  そこでもう一つ。あなたは産業進歩政策にあたっての考え方についてお話がございましたが、私は、産業政策を立てるにあたって、その進歩を考えることは当然であります。わが党の基本案をごらんいただけばわかるように、われわれは、まず中小企業が専門化して、そして技術向上さしていく、これがわが党の基本案の大きな柱でございます。政府案のように系列化を考えておるのではありません。したがって、中小企業といえども、十分技術的進歩が考えられると考えておるのであります。  緊急避難の問題でございますが、御承知のように、正当防衛緊急避難は違いまして、緊急避難で考えるべきことは、避くべき被害とそれによって相手に与える損害の均衡を考える必要があると思います。そういう点から見まして、多くの中小企業がそのために倒産なり破産をしていく。このような大きな被害を避けるために行なうもの、すなわち、そのことによりこうむる自己の被害よりも相手方の受ける損失が下回る場合は、当然緊急避難の原則が適用せられてしかるべきではないかと考えております。  そこで具体的な質問でございますが、そういう上に立ちましてわれわれが考えておりますのは、まず、中小企業が従来やってきた、また中小企業がやるのが当然である、たとえば二次製品、三次製品、例をあげてみますならば、紡績大企業下着数までつくっている、あるいは製紙会社便せん封筒の類までつくっているというような場合において、便せんとか封筒、こういうものは本来が中小企業であり、かつまた中小企業が行なうのが適切ではないか、こういうようなものを考えておるのであります。  なお、この基本法が通過いたします際に、これに関連して、単独法といたしまして、中小企業産業分野確保に関する法律を用意いたしております。それも、いま申しましたような精神の上に立っておりまして、先ほどおっしゃいましたようないろいろの要件、及び十八条、十九条の中において基本的なことをやって、小さなことはその単独法にまかせたい、このように考えております。
  12. 小笠公韶

    小笠委員 この問題は非常にむずかしい問題でございまして、なおいろいろ掘り下げなければならないと思うのでありますが、時間の都合もありますから、先に進みます。  私は、中小企業事業分野の問題に関しまして、いま申し上げましたように、なお考慮検討すべき分野が残っておると思うのでありますが、いずれにいたしましても、中小企業中小企業者以外のものとは、それぞれの事業活動の間におきまして、中小企業への不当な侵害ということがなくとも、深刻な利害衝突とか、当事者間の紛争の発生が予想されるのであります。政府案十九条予想のほかに、こういうものが起こり得ると思うのであります。こういう場合におきまして、政府は、これらの紛争というものをどういうふうに調整して、経済界の安全といいますか、静穏を期していこうとするのであるか。従来、団体法によりまして、団体協約の場合に調停あっせん規定があり、さらに小売商業調整特別措置法によりまして、特定の場合に調整行為というものが規定されておるのであります。本案につきましては、この件につきまして、社会党案で明確に規定されておるようであります。しかし、政府案におきましては、この点について何も触れておられませんが、私は、そういう事態に対して政府はどういうお考えをお持ちであるかということを伺っておきたいと思います。
  13. 田中武夫

    田中(武)議員 ただいまの、大臣の答弁の前にちょっとつけ加えておきたいのですが、大企業が二次、三次製品進出してくるということは、利潤の問題です。ところが、中小企業の方は、生活の問題です。まさに基本的人権にあたる生活の問題です。したがって、これは当然憲法でいう公共福祉に合致すると考えております。
  14. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 中小企業と大企業との間にいろいろ問題が起こりました際には、従来から、団体法によるいろいろな規制命令でございますとか、あるいは小売商業調整法によるあっせん、調停ということがあったわけでございますが、われわれといたしましては、今後も原則としてこのようなあっせん、調停といったようなことで、できるだけ内面指導的な方向で紛争を調停していく。これを制度的にきちっと割り切ってどうこうするということにつきましては、いま先生御指摘がございましたように、いろいろなむずかしい問題等もございますので、さしあたりの段階は、あっせん、調停というかっこうで解決するように努力したいと考えております。
  15. 小笠公韶

    小笠委員 次に、中小企業対策として、近代化に対する一方の柱としての、その環境を改善するという問題に関連してぜひ考えなければならぬものは、独占禁止法の運用の問題であります。独占禁止法、いわゆる私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律、この法律の運用との関係をいかに考えていくかという問題があると思うのであります。この法律は、言うまでもなく公正かつ自由なる競争の場を確保して経済民主化を達成しようといわれております。この法律の運用は、経済が比較的に静穏な時代においては比較的楽でありまするが、今日のように国際的関連を持ちながら激動をしておる時代におきましては、この運用は容易ではございません。わが国がIMF八条国への移行を前にいたしまして、為替、貿易の自由化を急いでおりますが、今日、これに関連して、独禁法の問題が話題にのぼっておる。さきに公取委員長に就任した渡邊君は、独禁法の再検討の時期にあるというような趣旨を新聞で話されておる。私は、今日の欧米の各企業が、技術革新によって次第にその経営規模と事業規模を拡大し、かつその設備は極力自動化しようとする趨勢にある。これによってコストを切り下げる方向に努力をいたしておるのであります。わが国におきましても、こういう問題があることは当然であります。しかるに、中小企業の近代化は、いまだそれほど進んでおらないのであります。遺憾なことでありまするが、このままでは中と大との格差の問題は、是正の方向よりも、逆の方向に行く心配なしとしないのであります。私は、そういうふうな意味から、中小企業近代化について、先日申し上げましたように、ぜひとも極力急いでいただきたいということを重ねてお願いするわけであります。もちろん、独禁法の運用について、中小企業立場ばかりからこれを論ずることは適当でないとは思いまするが、この独禁法の運用について、私は、どんな観点から、この流動する日本経済の中にあって、どういう腹がまえで進んでいくかということをお聞きいたしたいのであります。独占禁止法第一条は、ごらんのとおりに、私的独占の禁止とかいろんな方法を列挙し、もって「雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者利益確保するとともに、国民経済の民主的発展確保する。」ここに目的が置かれ、その目的達成のために、不当なる私的独占の禁止、不当なる取引の制限等が列挙せられておるのであります。私は、この点から考えますると、独禁法の立場である目的から見ると、その方法のいろいろな点に重点を置くと、目的と相沿わないような事態が起こるようなおそれのある経済時代に入っておる。そこで、この問題につきまして、政府は独禁法の運用についてどういうふうな考え方を持ってやっておられるのかというふうなことを特に伺いたいのであります。そしてこの運用に際して、中小企業立場をどう考えて、これをどう守っていくという心がまえを持っておられるかということをお伺いいたしたいのであります。
  16. 小沼亨

    ○小沼政府委員 たいへんむずかしい根本的な問題でございますが、ただいまも仰せになりましたごとく、独禁法では、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法の禁止という三本の大きい柱を土台としまして、過度の経済力の舞中を排除しながら、白田公正な競争を促進して、一般消費者利益を擁護し、あわせて国民経済の健全な発達をはかるという趣旨を目的とし、その趣旨に沿って運用しておるわけでございますが、八条国移行、貿易の自由化のさらに進展してまいります場合には、外国との競争、わが国の取引分野におけるいろいろの諸事情が変わってくるという実態はございますので、そういう実態を見きわめながら、独禁法の大目的を達成するように運用するという趣旨は、どこまでも変わってこないのではないかということでございます。ただ、その際に、さらに激しい競争で、中小企業等におけるいろいろな競争面の不利益なり、過度の競争ということでさらに激しくなってくるわけでございますが、たまたま中小企業基本法という大きな中小企業擁護の立法が企図されておりますので、私どもとしましても、その中小企業基本法が成立しました場合には、その精神をくみ取り、われわれの所管しております、たとえば不公正な取引方法の面で中小企業が不利を受けるという点につきましては、下請代金支払遅延等防止法あるいは不当景品類及び不当表示防止法、そういったものを運用することによりまして、十分中小企業の保護をはかりたい、かように考えております。
  17. 田中武夫

    田中(武)議員 いま小笠委員がはしなくも質問せられた点は、基本的なものだと思うのです。と申しますのは、小笠委員、自民党の小笠さんが、政府案に対して、格差を広げていくんじゃないか、こういうように言われたことは、大きな問題だと思います。われわれは、常にそれを言っておるわけです。しかも、本委員会において先日採決をいたしました中小企業投資育成株式会社法は、中小企業間において、なお格差を広げていこうというものであります。さらに御承知のように、政府特定産業振興臨時措置法なるものを出して、ますます大企業中小企業の周の格差を広げようとする政策をとっております。  そこで、いま小笠さんの言われるように、中小企業を守っていくために、格差是正のために、われわれは、市場支配的事業者の経済力濫用防止法を出しておるわけです。あわせて与党においても御検討願うことを希望いたします。
  18. 小笠公韶

    小笠委員 ただいま公取から非常に抽象的なお話がございましたが、私は、この問題について、そういう抽象的な答弁でなしに、あなたも経済の実態が動きつつあり、したがって、独禁法の運用もまた影響があることを認められておる。その認められたところにおいて、具体的措置をどう打ち出すか。その場合に問題になるのは、中小企業のあり方をどうつかむか、こういう問題であろうと思います。この問題については、むずかしい問題でありますので、私は、早急にひとつお考えを願いたいと思うのであります。  それでは、環境の整備の問題に関連いたしまして、下請問題がございまして、先ほど田中議員からもお話がございましたが、この問題につきましては、経済発展技術進歩によって社会分業はますます拡大されるのでありまして、こういう問題が広がってくるということをわれわれは考えております。この間におきまして、最も大事な問題につきましては、これまで代金の支払い遅延の防止法等によって措置せられてまいりましたが、問題は、親と下請との関係をいかに近代化するか、下請企業にどう自主性を持たしていくかという問題であろうと思うのであります。この問題につきまして、政府は本法案でその点を特にうたっておりますので、ここに重点を置いて施策が進められるべきものと思うのでありますが、私が特にこの問題に関連してお伺いいたしたいと思いますのは、系列の問題であります。最近の経済の動きによって、商業部門による系列化、金融機関による系列化等の問題が、順次出つつあることであります。この系列化特定の商業部門あるいは金融機関との系列の問題につきましては、私は、中小企業の自主的存立という意味から見ましても、ここに重大な問題が多いと思うのであります。この点は、特に今後の施策に十分なる配慮を実は願いたいと思うのであります。  中小企業を取り巻くいわゆる環境の整備、改善の問題に関しましては、このほかに、需要の拡大をどうはかっていくかという問題があることは申し上げるまでもありませんが、この販路の確保、拡大に関連しまして、三法律案はいずれもうたっておるのであります。これは社会党案の二十条、二十一条におきまして規定いたしておりまして、その中で社会党案二十条におきまして、「一定割合」云々と規定いたしておりますが、この一定割合とはどういうところをおよそ考えておられるかを、ちょっと伺いたいのであります。
  19. 田中武夫

    田中(武)議員 「一定割合」として具体的に数字をあげなかったのは、中央官庁と地方官庁において割合が違うのではないか。最初アメリカ等の立法例を見まして、二〇%程度ということも考えたのでありますが、ところによっては、すでに二〇%をこえているところがあります。したがって、この法律が成立いたしましたときに、われわれは、引き続いて中小企業の官公需の確保に関する法律というのを用意いたしておりますが、そこでは審議会を設けて、予算が通れば、そこで本年度は何%というようにやりたいと考えておりますが、中央と地方とは若干事情が違う。したがって、中央官庁においてはこの程度、地方官庁においてはこの程度と、このようにやるべきではないかと考えております。
  20. 小笠公韶

    小笠委員 話題を転じまして、三案を通じて共通の、しかも特色的な立法の一つは、小規模事業者に関する規定が整備されたことだと思うのであります。政府案二十三条、社会党案の四十四条から四十八条、民主社会党案の第二十条、第十一条というのが、それぞれに該当いたしておりますが、この問題は、もう申し上げるまでもなく、日本の中小企業の中で、数的には最もたくさんを占めておる、その経営基盤はすこぶる弱く、ことばは悪いが、生業にひとしいようなものも多いのであります。こういうふうな部門につきましては、経済合理主義、あるいは近代科学経営方式というものが、適用しにくい分野であります。私は、中小企業対策一般が、これらの部門に受け入れにくいような状況が多いのではないか、こう心配いたすものであります。  そこで私は、この問題に対して、政府は、これまで団体法による小組合というふうな問題を中心として、組織化をどう進めてこられたか、また、これからどう進めていこうとせられるのであろうかということを伺いたい。と同時に、私は、こういうふうな小規模事業におきまする最も大きい問題は、金融問題だと思うのであります。しかも、金融に縁の遠い層といわなければなりません。そこで一つの提案として、これらの小規模事業に対して、無担保の非常に簡易な手続によって、少額——たとえば三十万円以下を貸すような英断を考えられないだろうか、こういうふうなことを考えるものであります。特にこれらの各法律案規定の中で特色的な問題は、この小規模事業に働く人々の生活向上をうたっておることであります。これは全く新しい、けっこうなことだと思うのでありますが、この部門に働いておられる人々の給与は、その経営者自身が、他の産業部門に比較して、所得も生活水準も低い。したがって、そこに働いておられる人々もさらに低い、一般から見ると、二分の一あるいは三分の一くらいといわれておるのであります。ここに働いておられる人々の所得の向上をはかるために、政府は具体的にどういう考え方、具体策をお持ちであるか、これもあわせて伺いたいのであります。
  21. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 中小企業の中でも非常に多数を占めております規模の小さな方、いわば生業に準ずるような事業を営んでおられるという方々の問題は、まさに中小企業の一番大きな問題じゃなかろうか、そういうふうに存じております。われわれといたしましては、いま先生の御指摘になれましたように、小組合あるいは協同組合といったような、小さな方々単独ではなかなか経済単位になれがたいというような方々が、何らかのかっこうで組合を結成するというようなことで協業されるということによって、できるだけ経済単位になり得るようなほうに結合していただきたい、そういうふうに思っております。  それから金融につきましては、これは国民金融公庫法につきまして——とかく国民金融公庫、中小企業金融公庫、それから商工中金、この三つの機関が、それぞれ毎年同じような伸び方で伸びるというようなことで現実にやられてきたわけでありますが、われわれといたしましては、地方に圧倒的な数を占めているということ、また金融で困っておられるという実情等から見まして、今後国民金融公庫の資金の拡充につきましては、特段の努力をする必要があると思っておりますし、またする決心でございます。  それから、この金融につきましては、昨年度から小口保険の制度をつくっていただきましたが、今年さらに小口保険の保険料を二分引き下げたというようなことによりまして、できるだけ保証を受けて簡単に金が借りれるという方向について努力をしているわけでございますし、また、小規模の事業者につきましては、税負担を軽減するために専従者控除というようなものをつくりまして、ことしは五千円だけにとどまりましたが、さらにこれをもう少し拡大していく、大企業あるいは中堅企業とバランスがとれてない面があるならば、これをとれるように十分な税法上の措置をとりたいというふうに考えております。  それからなお、小口の国民金融公庫等につきましては、必ずしも損保を請求しないで、保証人で貸すというような道も講じておりますが、今後さらに金融を受けやすいように、できるだけ実情に即した措置をとっていきたいと考えております。
  22. 松平忠久

    ○松平委員 いまの小笠君の質問に関連して、若干私のほうからも御質問したいと思うのです。  いま中小企業庁の長官から御答弁がありましたけれども、われわれ非常に納得のいかない点がございます。それは、いわゆる小規模事業、われわれは勤労事業といっておるのですが、これを組織化するということに関して、かつて小笠君なんかも委員となって中小企業団体組織法の審議をしたことがございまして、そのときに勤労事業協同組合という組合をつくることに与野党で一致をしたのであります。ただ小笠君の提案で、これを小組合にするという名称の変更を、そのときにいたしました。当時これを育てていくためには、金融上あるいは税法上の優遇措置を講じなければならないというので、その点についての条文も規定をいたしまして、法律に明記がしてあるわけであります。その後川上君が中小企業庁の長官のころに、この条文についてはあくまで至急これを実行に移していく要があるというので、税法上の問題あるいは金融上の問題について、われわれがその実現を要望したいきさつがございます。当時川上君の答弁は、こういう答弁であった。まだ小組合ができておらぬのに、そういう優遇措置を講ずるというのは、どうかと思う。そこで、二十か三十できたときに大蔵省と折衝して、税法上あるいは金融上の問題を実現させていきたい、こういうのが川上君が中小企業庁長官当時の考え方であったわけであります。当時、われわれは、一応これをもっともとして了承いたしましたけれども、しかしながら、そういう優遇措置を講じなければ、小組合をつくるというものはないのであります。法律に明記してあるから、これを実現していって、そしてその恩恵があるというので小組合というものをつくっていく、つまり組織化ということが刺激されていくというふうにわれわれ考えまして、その後何回となく国会において、これは予算委員会においても問題になったところでございますが、政府はこれに対して、この条文に適合したような優遇措置を今日までほとんど講じておりません。法律に明記してあるにかかわらず、政府がやらない、こういういわゆる法律違反というか、怠慢というか、そういうことが、団体組織法ができて以来ずっと続けてきた態度でございます。したがって、中小企業基本法を制定するにあたっても、明確なる条文をまずつけて、それを実現するということでなければならぬわけであるのみならず、もしもかりにこれがあいまいなことであるということになるならば、明文があってさえやらない政府の態度であるから、あいまいなことが規定されるならばますますやらなくなるというのが、今日まで私たちが中小企業の問題を取り扱ってきたところの経験からきておる結論であります。  そこでお伺いいたしたいのは、政府案において、中小企業の中の小規模企業について一カ条あるわけでありますが、これに対しては、いま長官の説明は、いままでこういうことがあった、ああいうことがあったと言って、今日までやってきたことを言っただけであって、この中小企業基本法ができた場合に、小規模企業に対してほどういうことをするんだという明確な答えがいまありません。わが党案においては、その点についてはっきりしたものが出ておるわけであります。したがって、金融の問題、税制の問題、並びに政府案の中における社会的、経済的不利な条件を是正するというのが、政府の根本的な考え方一つになっております。社会的不利な条件一つは、言うまでもなく社会保険の問題であります、労働福祉対策であります。これらの具体的な問題について、私は、この際、政府側の具体的な考え方、今後基本法を制定した場合にはどうするのかという、そのことがなければならぬわけでありますから、それについてお伺いしたい。そのことは、いま小笠君の答弁にはなかったので、私が質問をするわけであります。  なお、田中君も、それらの点についての見解をひとつ披瀝してもらいたいと思います。
  23. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 まず小組合に対する税法上の問題でございますが、われわれといたしましては、小組合に対して税法上特段の措置を講じなければならないという趣旨は、これは大体小組合ということばで代表されております規模の小さな方は、一般的に非常に収入が低いのではないかということで、低頭所得者に対しては、その所得の低いということに応じた措置を講ずべきであるということで、小組合であるから特別のということではないというふうに解釈をいたしておるわけでございます。これにつきましては、中小企業の中でも特に小さい方々に対しましては、三十七年度も、地方税、国税ともに基礎控除を引き上げる、あるいはその他税率を少しずつ低めるということについて、毎年努力をしてきたわけでありますし、われわれといたしましては、基本法の成立を契機にいたしまして、さらに担税力の乏しいと思われる小さい方々に対しましては、今後とも合理的な税制がしかれるように、税制調査会のほうによく事情を御説明いたしまして、新しい税制をつくっていただきたい、そういうふうに考えております。  それから金融につきましても、これはわれわれも決していまの国民金融公庫の金で十分というふうには思っておりませんが、基本法ができたということが一つの契機になりまして、われわれの従来いろいろ希望しておりましたことに対して、さらに大きな力づけと申しますか、バック・アップになりまして、小規模事業に対する十分なる財源も確保しやすい、こう思いますので、基本法制定を一つのモメントといたしまして、中小企業対策、特に小規模企業対策を確立していきたい。改善普及事業等につきましても、さらに今後これを進めることによりまして、中小企業の中の一番小さな方々をまずいろいろな施策の対象になる程度にまで育て上げるということについて、できるだけの努力をしたいというふうに考えております。  それからいろいろな保険関係等におきまして、五人以下のものについては、いま任意包括制度——強制的にこれに加入すべきであるということになっておりませんが、われわれといたしましては、たとえば失業保険でいまやっておりますように、一部の事務組合というようなものをつくりまして、そして実質的に事業主が払い込みの能力もあり、あるいは給与体系等もある程度整っておるというようなものにつきましては、そこに働いておる方々が大企業で働いておる方々と同じような恩典が受けれるように、この事務組合等を活用するということによって、そこに働く人々の福祉向上をはかっていきたいと存じております。
  24. 田中武夫

    田中(武)議員 小笠委員と松平委員の御質問にお答えをします。  いわゆる零細企業対策でざごいますが、私は、中小企業と申しましても、企業性の強いものと勤労性の強いものがあると考えております。たとえば若干の従業員とともに店主または経営主が労働している、こういうものをわれわれは勤労事業と定義をいたしておるのであります。そこで、先ほど小笠委員も印されましたが、この種の事業には経済政策が乗りにくいんじゃないか、こういうことであります。まさにそのとおりでございまして、中小企業政策経済政策だけでやっていこうとする政府案は、したがってそれに乗りにくいということ、零細なものは切り捨てられるという、農業基本法と同じ思想が出てきておるのであります。そこでわれわれは、特にいま小笠さんが御指摘になりました第五竜の四十四条から四十八条までの間に、ことに四十六条の二項におきまして、いわゆる経済政策に乗りにくいものについての事業の転換指呼等も行なう、こういうように規定をいたしておるのであります。  次に、組織の問題でございますが、われわれがともに提出をいたしておりまする組織法をごらんいただけばわかると思いますが、勤労事業に対しましては、特段の組織形態を考えておるのであります。  また、そこに働く労働者の問題でございますが、小笠さんの言われました賃金についても、われわれは、まず中小企業基本法をわれわれの考えておりますようなうんと幅広い、そして政府もうんと資金をつぎ込む、こういうようなことによって、中小企業、ことにいま申されましたような零細企業、われわれが言う勤労事業、これの水準を上げていくことは当然であります。同時に、一面、今日の最低賃金制のごときまやかしでなく、ほんとうの意味の最低賃金制を設けるべきではないかと考えております。  さらに金融の問題でございまするが、わが党案の四十九条二項をごらんいただきますればわかりますが、特に零細企業のために、われわれの言うところの勤労事業のために、別ワクを設けて、おっしゃるような弊害がないように考えておるのであります。  また、松平委員の申されましたように、これらに働く労働者のための社会保障あるいは福祉厚生の問題でありますが、特に六十条では、社会保険につきまして、すべてのものが入らねばならない、入れねばならない、こういうように規定をいたしておるのであります。  以上、御答弁申し上げます。
  25. 小笠公韶

    小笠委員 小規模事業の問題は、これはどなたも、うんと力を入れていかなければいかぬということについては、御同感を得られることと思います。したがいまして、私は、経済性にとらわれず、社会政策的な意味を加味して、うんと努力してほしいという要望を申し上げて、次に移りたいと思います。  私は、労務対策について伺いたいのでありますが、今日中小企業の当面しております諸問題の中で、最も重要かつ深刻な問題は、労働問題であります。この問題は、第一に、労働力確保の困難性の問題であります。特に最近のような労働需給になりますと、すでに中小企業に定着しておる労務者も、他の職場に離れていく傾向がありまして、ここに中小企業の労務需給は、いよいよむずかしくなっておるのであります。私は、この労務の充足の問題の中で、特に新しく中学あるいは高等学校を出られる、いわゆる新卒の入手問題が、最も大事な問題だと実は思っておるのでございます。  今日、新卒に対する需要と供給の関係は、約三分の一が充足されておるにすぎません。しかも、中小企業におきましては、この平均充足率をはるかに下回っておるのが現状であります。今日の労務問題につきまして、いろいろ問題がありまするが、工場経営の機械化、オートメ化に伴いまして、この新卒の入手というものが、経営の能率を上げる上におきまして、最も重要な問題であります。中庸年齢層よりも、こちらに充足問題の力点があると思うのであります。私は、職業訓練、あるいは職業紹介、広域職業紹介等えといわれておりますが、この入手難の中で、新卒を中小企業にいかに割り当てていただけるかという問題を第一に伺いたい。  それと同時に、今日の経営は、相当の技術水準なくしては行ない得ないのであります。どの企業でも、専門技術者の入手に困難を感じている。中小企業技術確保難は、新卒以上に深刻であります。私は、この点について、労働者は、これまで中小企業に対して、新卒の充足、特に技術者の充足にどんな手を打ってき、今後どういう手を打っていくか、その方針をまず伺いたいのであります。
  26. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 小笠先生の御指摘は、われわれ労働政策の非常に問題になっておるところであります。特に最近の経済の成長過程におきまして、中小企業におきます求人難が相当な隘路になるということも、事実でございます。これにつきまして、いろいろ実態を調べてまいりますと、地域別に、新規学卒者の採用は、非常に片寄っている。そのために、特に中小企業に得られないという、地域別の格差というものが出ております。したがいまして、全国需給調整会議というものを労働省に開きまして、地域別に片寄らないという方策について、現実に処理しております。それから集団求人の方式というようなものによりまして、できるだけ中小企業に対して労務者を充足させるという方向もとっておりますけれども、基本的には、先生御指摘のとおりに、求人条件あるいは労働条件の低さというものも、大企業との間において大きな影響を持っておるということも事実でございますので、これは中小企業の労務管理の近代化対策というものを通じまして、それらの隘路を取り除くという方向を考えております。  それから受け入れ態勢におきまして、大企業と比較して福利厚生施設が整備しておらないということも、求人難の大きな原因である。こういう点につきましては、雇用促進事業団の融資その他の融資によりまして、中小企業庁とも連絡をとり、そういうものの整備拡充をはかっております、今後、ますますこれを充実化したいというふうに考えておるのでございます。  なお、技術者の確保については、これは全国的に見て、絶対的に寡少であるということは事実でございますが、できるだけ中小企業に参ります若年労働者を対象といたしまして、企業内の職業訓練を集団的に共同によって実施していく。このための補助金、そういうものを交付いたしまして、できるだけその質の向上をはかっていく。こういうことでいろいろの対策を練っておるわけでございますが、この基本法におきましては、これらの対策を総合的に充実していくことが必要ではないかと存じておるわけでございます。
  27. 小笠公韶

    小笠委員 いまの問題に関連いたしまして、受け入れ態勢の関係で、厚生施設の整備の問題が一つ要件になりますので、特別の御配慮を願いたいと思いますが、私は、中小企業における労使関係を考えまするときに、一つの問題は、秩序ある労使関係の確立について、これまでの中小企業経営者の方も、労働組合法を中心とする労働法規に習熟することが比較的少ない。そういう点から、起こらなくてもいいトラブルが起こっておる例が少なしとしないのであります。すなわち、中小企業政策におきまして、労働法規を中心とした労働教育の欠如を思うのであります。私は、そういう意味から、今後の中小企業における労働問題の指導のしかたという問題が、大事であると思うのであります。これらの問題について、労働省の労働政策の一環としての中小企業対策をどういうふうにこれからやっていこうとせられておるのか、伺いたいのであります。
  28. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 最近中小企業の労働争議が、特に増加しておるという傾向が見られます。その中身をいろいろ検討してまいりますと、やはり労使間における人間関係の問題、あるいは労働法規に対する無理解というような、つまらないところから労働争議というものが急激に起こってくるという事態が見られるわけでございます。労働省といたしましては、これらの問題について、公正中立の立場から、いろいろ資料その他によって中小企業者に対する啓蒙、指導をやっておるわけでございますけれども、特に中小企業の協同組合、そういう集団的な組織というものを通じまして、今後も、それらの過去の中小企業におきます争議の事例その他を収集いたしまして、これらの健全な、いわゆる民主的な労使関係の確立について、教育、指導を積極的に推進していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  29. 小笠公韶

    小笠委員 私は、目下提案されております三中小企業基本法案の中に流れております若干の問題について、質疑をいままでしてまいったわけでありますが、この法律の誠実な実施を約束するものとして、問題があると思う。それは私は人の問題だと思う。同時に、発言力を持つ組織の問題だと思うのであります。現在の産業経済に関するわが国の行政組織は、おおむね産業別に、縦割りに各省庁に分属されておるのであります。したがって、中小企業行政も、関係各省庁に分割所掌されておるのであります。中小企業庁は、中小企業一般の企画、調査、あるいは統括という任務を持つことになっておりますが、しかも通産省の一部局として、通産大臣の所管に属しておるというのが、現状であります。通産行政は複雑多岐であり、常に新しい問題をかかえておることも、御承知のとおりであります。通産大臣は、歴代、中小企業問題にその情熱を傾けてきておられますが、他方、大企業の問題も、自分の責任であります。大企業中小企業との利害調整をはからなければならない立場にあるのであります。そこで、中小企業立場からの強い発言も、時によってはしにくい場合が少なしとしないのであります。日本の行政を規定しております憲法七十二条を受けての内閣法第四条は、「内閣がその職務を行うのは、閣議によるものとする。」と規定しておるのであります。したがって、行政の最高機関としての閣議において、中小企業立場を自由に、公正に主張することが、中小企業にとって最もいい機会であると信じておるものであります。政府案第二十六条は、「行政組織の整備及び行政運営の改善に努める」と規定いたしておりますが、いかなる方向で行政運営の整備、改善をはからんとしておられるのでありますか、私はお漏らしを願いたいと思います。
  30. 廣瀬正雄

    ○廣瀬(正)政府委員 中小企業基本法の制定にあたりまして、今後ますます中小企業の施策につきまして行政組織を整備拡充していくということは、当然のことでありまして、したがいまして、従来とも、政府は、中小企業政策のためには、行政組織の強化に十分意を尽くしてまいったのでございますけれども、今回基本法を制定することを契機として、御承知のように、先般中小企業庁設置法の改正をいたしまして、中小企業庁等の整備強化をはかることといたしております。今後も、中央機関並びに地方機関の整備拡充、さらに行政運営の改善ということについては、十分意を尽くしてまいりたい、かように考えております。
  31. 田中武夫

    田中(武)議員 ただいまの小笠委員の御質問の趣旨は、まことにそのとおりだと思います。そこで、われわれといたしましては、わが党提出基本法第八条で、中小企業省の設置を明確にうたい、この基本法とともに、中小企業省設置法案を内閣委員会の方で目下審議をしてもらうように提出をいたしております。したがって、われわれは、いま小笠さんがおっしゃいましたように、あるいはもう一歩遊んで、中小企業のための独立をした省といいますか、そういうものがあって、中小企業のための予算もそこでやるべきでないか。したがって、少なくとも国務大臣をもって長に充てるべきである。現在の通産省設置法によりますと、中小企業庁は、二部になっておりまして、そしてそれぞれの職務は、中小企業庁全般としてこれをやるのでなく、中小企業庁の何部はこういうことをやる、何部はこういうことをやるというように、ばらばらに書いてあります。そういう点を排除して、省として昇格をさせ、一本の政策を立てるように考えております。
  32. 小笠公韶

    小笠委員 中小企業基本法案に関しまする私の質問をいたしたいと思いましたおもなるものは、以上をもって終えたいと思うのでありますが、最後に、中小企業の海外進出の問題について、政府の御意見を伺いたいと思うのであります。  低開発諸国の産業開発が、いまや大きな世界政局における課題であることは、申し上げるまでもありません。特に東南アジア諸地域におきましては、中小企業の育成が、じみではあるが、その産業培養の前提となるものだと思うのであります。私は、そういう意味から、中小企業対策の一環として、中小企業の海外への進出は、積極的に推進さるべきものと思うのであります。ところが、今日東南アジア諸国を歩いてみて、日本の中小企業進出はまれであります。出ておりましても、これに対する援助の措置が少ないので、非常に困難な状態におちいっておるものも見受けるのであります。この意味から、私は、援助措置というものに対して、政府が将来強い施策を打ち出して、世界政治の中における日本経済の役割りを進めていくというふうにしたらいいのではないかというふうに考えておりますが、この点につきまして、政府側の御意見を伺いたいと思います。
  33. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 確かに東南アジア等に対しましては、中小企業というものが、企業として進出するのには一番適切な産業が多いかと存じます。ただ、それに対して、いま御指摘のように、現実問題としてあまり出ておらないということは、行ってもし失敗した場合、向こうで失敗し、帰ってきても生活基盤を失う、ひょっとして失敗したらという心配から、決心がつかないのではないか、こういうふうに思っております。これにつきましては、ただいま先生御指摘のような万一の場合の援護措置と申しますか、何か国のほうである程度めんどうを見てやる以上、あとまでめんどうを見切れるような何らかの体制の確立ということが、絶対必要であろうかと思いますので、基本法の成立に際しまして、われわれは、具体的に、こういう方面につきましても、施策を進めるように努力していきたいと考えております。
  34. 松平忠久

    ○松平委員 関連して。その問題について、私は若干意見がございます。  第一はジェトロの運営について、もう少し考えなければならぬと思います。これについては、すでに政府部内においてそういう機関があるわけでありますから、これはもともと中小企業のために設けられた機関でありますけれども、実際は中小企業活動とあまり結びついておりません。そこでこのジェトロの運営のしかたを今後再検討していただきたい、かように考えておるわけであります。これが第一点であります。  第二点は、保証協会のようなものを、海外進出に設けなければならぬということなんです。保険法がありますが、これでもカバーできません。そこでこれをつくるには、二つのやり方がございます。  一つは、国際協定によって保証条約というものを結ぶということであります。もう一つは、保証条約を結ばなかった場合において、リスクを日本だけでカバーするという制度をつくるということでありまして、これは前から私が質問したりなんかしておったのでありますが、いまから半年くらい前に、たしか何かで企業局長と懇談したときに、それは非常にいい制度だということでもって、企業局でその制度についての各国のやり方を調査して、日本としてどういうやり方をとっていったらいいかということを企業局で考えたい、こういうことを言っておりました。私は、リスクをカバーする方法としては、現在イギリスが採用している方法が一番いいのではないか、こういうふうに思っております。そこで、この点について、中小企業庁と企業局との間に何らかこれを法制化していくような話し合いの糸口というものがあったかどうか、この点を伺っておくと同時に、もしなければ、政務次官がここにお見えでありますので、そういういきさつがありますから、これを具体化していただきたい、かように考えております。
  35. 廣瀬正雄

    ○廣瀬(正)政府委員 中小企業の海外進出につきまして、大いに奨励し、援護していくことにつきましては、先刻長官から御答弁をしたとおりであります。それに関連いたしまして、ジェトロも、まさに海外中小企業の援護に重点を置いてできたものであるから、そういうことを十分に考えてもらいたいという松平委員の御指摘でありましたが、その点はつまびらかにいたしませんので、十分検討いたしまして、御趣旨に沿うように努力いたしたいと思っております。  さらに、中小企業の海外進出について保証制度の必要性を強調されたのでありますが、中小企業庁と企業局との間にまだ具体的なそういう話は進んでいないようでございますけれども、十分調査、研究いたしてみたいと思っております。
  36. 小笠公韶

    小笠委員 以上をもちまして、私の質問を終えることにいたします。
  37. 逢澤寛

    逢澤委員長 次会は、明日午前十時より開会し、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十六分散会