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松平議員 小笠君の、社会党の
中小企業基本法案に対する根本的な
考え方に触れる御
質問でございます。御
質問の趣旨は、二重構造の解消とあるが、二重構造とは一体どういうふうにこれを理解しておるか、どういう概念であるか、こういうことでありますが、ただいま申しましたように、これは根本的な問題でございます。私
どもも、
中小企業の現在日本に置かれておる
立場というものをもっと
分析いたし、それからそれぞれ学者の
意見等も聞いたわけでございますが、いま
小笠君の言われたように、ある学者は、日本は構造的には一重なんだというような学者もあります。さらにまた三重、四重の構造があるんだという学者もございます。しかし、われわれがそれらの学者の説も十分聞き、またわれわれがいろいろ経済の諸事象を
分析しました結論において、やはりこれは日本の経済のいろいろな仕組みの中に、
一つの経済的な断層がある、こういう結論に達したわけでございます。すなわち、その断層を埋めなければ、
中小企業の問題の
解決というものの一本の柱というものは欠けてしまうのだ、こういうふうに私たちは結論を立てたわけでございます。一昨年でございましたか、欧米へ行ったときに、
中小企業の問題についてもできるだけ
資料を集めたいというので、方々へ行ってまいりました。ところが、日本における二重構造的な、そういう問題の
解決に資するような
政策というものは、ほとんどどこの先進国にもございません。ベルギーは、
中小企業省という省がございますけれ
ども、しかし、その対象とするところは、われわれがいうところの
中小企業者ではなくて、職人階級の生活を上げていくために
中小企業省というものが存在しておるということでございます。ただイタリアが少し似ておるような気がいたしました。いわゆるコロンボ法、商工
大臣のコロンボ法というものができましたが、このコロンボ法というのが、わりあいに
参考になった。そこで、一体なぜ、日本には
一つの断層があるけれ
ども、先進国には断層がないかということ、これが大きな日本の特徴ではなかろうかと思います。それは、戦後における資本主義の発展
段階というものがそうさせてしまった、つまり日本の資本主義の発展というものは、御
承知のように、
政府権力と結びついて発展をしてきたわけでございます。したがって、明治を通じて今日に至りまして、ことに戦後は、破壊の中から日本が立ち直るということのために、大きな権力と大きな資本とが結びついて今日の発展をしてきたわけでございます。そこで、その中に取り残されたようなのが、いわゆるこの
中小企業の実態でありまして、そこで経済と申しますか、組織の問題にしても、あるいは金融の制度並びに税の制度、そういうものを、いわゆる経済の構造でございますが、そういう経済の構造が、
法律的にも、制度的にも、大企業に非常に有利な制度ができ上がってしまった。ところが、その反面においては、
中小企業はそういう大企業に都合のいいような制度の恩恵にはあずからないという仕組みがここに出てしまった。一例をあげれば、たとえば金融にいたしましても、御
承知のように、大企業ほど金融をするのに楽である。つまり低利な長期の資金というものを借り入れることは、大企業はできるが、
中小企業はできない。そして下へいけばいくほど、小さくなればなるほど金利は高いというのが、日本の実情であります。そういう
一つの金利
政策というものが、仕組みというものができておることは、皆さんの御
承知のとおりなのです。税金にいたしましても、租税特別
措置法
一つを見てみましても、戦後において基幹産業を復興しなければならぬという
考え方から、そういう
政策をとってきたわけでございます。今日もそれは続いておる。そのために、税制にいたしましても、大きなものは減免
措置があるけれ
ども、
中小企業にはそういうものはほとんどない。そうして家族労働者にいたしましても、ようやく妻に対して一万円の基礎控除というものを認めるという制度ができたということでありまして、子供の働いたものに対しての税金の免除というものは、今日ない。言いかえれば、
中小企業のほうにおける労働、これによって生計を営んでおる場合におきまして、それらの人が働けば働くほど税金を払わなければならぬような仕組みが、今日の税制でございます。そういった
法律制度によりまして、
一つの経済的な仕組みというものが、
二つの仕組みのようなものができ上がってしまった。それをわれわれは二重構造と称しておるのでございます。したがって、そういうものをやらなければ、穴を埋めていかなければならない。このことは、
政府案におきましても、いま
小笠君が指摘をなさいましたが、生産性の格差ということでございますが、この生産性の格差ということは、生産性だけではなく、いま
大臣から答弁がありましたけれ
ども、収益率も格差があるのだ、その他万般に格差があるということは、もう少し
分析してみたならば、その背景をなす経済環境というものに格差があるということにならなければならぬと思うのです。ただ、
政府案は、
分析をそこでとめまして、そして現象面だけとらえて、社会的、経済的不利という条件を克服していかなければならないという表現になっております。そのことは、私は言葉をかえて言うならば、もっと
分析すれば、その背景をなすところの経済の仕組みというものをある程度直していって、そうしてこの構造の断層を埋めていくということにしなければならぬことになるのじゃないかと思うのです。その点についての
政府案の
分析のしかたが足りないのじゃないか。そうして現象面だけとらえて、格差があるということと、社会的、経済的不利な条件――これは経済的だけではなくて、社会的な不利な条件があるということを
政府自体が認めているわけであります。そういうことから言いますと、私は、ここに明らかに、ことに戦後著しくなった点は、その構造的な二重ということが激しくなったということでございます。したがって、そういうふうにわれわれは
分析をしており、そういう概念で二重構造というものをこの中に取り入れてきたわけでございますので、ひとつ御理解をいただきたいと思います。