運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1963-05-21 第43回国会 衆議院 商工委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年五月二十一日(火曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 逢澤  寛君    理事 小川 平二君 理事 岡本  茂君    理事 白浜 仁吉君 理事 中村 幸八君    理事 南  好雄君 理事 板川 正吾君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       宇野 宗佑君    浦野 幸男君       大高  康君    海部 俊樹君       神田  博君    藏内 修治君       小平 久雄君    笹本 一雄君       始関 伊平君    田中 榮一君       田中 龍夫君    藤井 勝志君       村上  勇君    山手 滿男君     早稻田柳右エ門君    岡田 利春君       北山 愛郎君    久保田鶴松君       久保田 豊君    多賀谷真稔君       中村 重光君    西村 力弥君       田中幾三郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         内閣法制局参事         官         (第三部長)  吉國 一郎君         総理府総務長官 徳安 實藏君         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         通商産業事務官         (大臣官房長) 渡邊彌榮司君         通商産業事務官         (企業局長)  佐橋  滋君         中小企業庁長官 樋詰 誠明君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    加藤 悌次君         自治事務官         (財政局長)  奥野 誠亮君  委員外出席者         議     員 田中 武夫君         専  門  員 渡辺 一俊君     ――――――――――――― 五月二十一日  委員小沢辰男君、岡崎英城君、萱野和太郎君、  小平久雄君、齋藤憲三君、首藤新八君、林博君  及び伊藤卯四郎辞任につき、その補欠として  仮谷忠男君、宇野宗佑君、正示啓次郎君、藤井  勝志君、大高康君、久保田藤麿君、佐々木義武  君及び田中幾三郎君が議長指名委員に選任  された。 同日  委員田中幾三郎辞任につき、その補欠として  伊藤卯四郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十七日  市場支配的事業者経済力濫用防止に関する  法律案田中武夫君外十名提出衆法第三十七  号)  特定産業振興臨時措置法案内閣提出第一五一  号)  採石法の一部を改正する法律案内閣提出第一  五二号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  特定産業振興臨時措置法案内閣提出第一五一  号)  市場支配的事業者経済力濫用防止に関する  法律案田中武夫君外十名提出衆法第三七  号)  採石法の一部を改正する法律案内閣提出第一  五二号)(参議院送付)  下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法  律案内閣提出第一六七号)  中小企業投資育成株式会社法案内閣提出第一  一六号)  派遣委員からの報告聴取      ――――◇―――――
  2. 逢澤寛

    逢澤委員長 これより会議を開きます。  去る五月七日より五日間にわたって、東北地方金属鉱山等を実地に調査してこられました派遣委員より、報告を聴取することにいたします。派遣委員白浜仁吉君。
  3. 白浜仁吉

    白浜委員 それでは、東北地区金属鉱山実情等に関する現地調査の結果を簡単に御報告申し上げます。  去る五月七日、議長の承認を受け、東北地区金属鉱山実態を把握し、今後の金属鉱業問題の審議に参考とするため、藏内、松平伊藤、三委員と私の四名が、五月七日より十一日に至る五日間の日程をもって、宮城、岩手、秋田の三具に行ってまいりました。  視察してまいりました個所は、網倉鉱業所大上森鉱山花輪鉱山十和田鉛山鉱業所小坂鉱業所等でありまして、小坂鉱山においては、坑内に入り、作業の実態をつぶさに視察してまいりました。帰途、帝国石油株式会社八橋油田、石油資源開発株式会社白竜号における海洋掘さく状況を視察し、その間、各鉱業所等において、関係各位より説明を聴取するとともに、陳情等を承ってまいりました。  今回、私どもが現地に出向きまして痛感いたしましたことの第一は、金属鉱産物貿易自由化に対処し、金属鉱業に携わる方々、経営者労働者を問わず、一体となってこの危機を突破せんと日夜努力を続けられていることでありまして、この御努力に対して衷心より敬意を表するとともに、今後なお一そうの御努力をお願いしてまいりました。  第二は、地元においては抜本的な金属鉱業政策樹立を熱望していることであります。さきに制定を見ました金属鉱物採鉱融資事業団法につきましても、金属鉱業政策の一環として一歩前進したもので、まことに喜ばしいが、さらに今後は事業団業務範囲を拡大し、自主探鉱等が行ない得るように措置すべきであるという声が強く、さらに近く審議される予定の金属鉱業等安定臨時措置法案に対しては、多大の期待を寄せて注目していることであります。  第三は、探鉱重要性についてであります。今回視察してまいりました花輪鉱山小坂鉱山等においては、長年の探鉱が実を結び、新鉱床を発見し、鉱山自身が若返り、きびしい現実のもとにあっても、活気に満ちていることが感ぜられたことであります。新鉱床の発見は、ひとり鉱量の増加にとどまらず、従来の低品位で古い鉱床を延命させるという好結果をもたらすものであり、探鉱必要性を痛感いたした次第であります。  次に、現地における陳情のおもなるものを申し上げます。  一、金属鉱業政策早期確立。  二、金属鉱物探鉱融資事業団業務の拡大。  三、国における探鉱事業の推進、特に地質調査所を活用し、金属鉱床密集地域の試掘を早急に実施すること。  四、鉛、亜鉛自由化については、国内体制整備されるまで延期すること。  五、流通機構整備、特に鉱産物にかかる国鉄運賃の引下げ、並びに鉱山物の錯綜する花輪線輸送力を強化すること。  六、金属鉱業近代化に必要な資金を確保するとともに、経費の節約をはかるため、特に火薬の使用についてはアン・ホーの採用を許可されたい。  七、硫化鉱の滞費が激増している現状であるので、これが対策を早急に講ぜられたい。  八、中小鉱山に対する育成保護補助金等の増額。  九、離職者については、石炭鉱業離職者に準ずる取り扱いをするよう具体的な措置を講ずること。等々であります。  なお、大土森鉱山につきましては、昨年六月、資金難等の原因により廃山しているが、現在十五名で坑内維持等を行なっており、鉱区が細倉鉱山と隣接している関係上、細倉鉱山に買収されることを希望し、そのあっせん方を要請しておりました。  当委員会におかれましては、今後の審議に際し、以上の陳情趣旨を十分検討され、金属鉱業が第二の石炭産業とならざるよう、特段の措置を講ずべきであると存ずる次第であります。  以上で御報告を終わります。  なお、詳細は、別途報告書委員長のもとに提出いたしますから、御了承をお順いします。
  4. 逢澤寛

    逢澤委員長 以上で派遣委員報告は終わりました。
  5. 逢澤寛

    逢澤委員長 ただいまの報告に関連して発言を求められておりますので、これを許可いたします。松平忠久君。
  6. 松平忠久

    松平委員 ただいまの報告に関連して、大臣に一言申し上げたいと思います。  第一点は、ただいま報告にありました通りに、失業の、いわゆる離職者対策でありますけれども、昨年、石炭産業に関連して、大臣閣議において、非鉄金属鉱山離職者についても炭鉱離職者に準ずる措置をとる、こういうことで閣議決定を見ておるわけであります。ところが、今日労働省におきましては、その手続その他について何らの具体的な取り運びをしておらないという現状のようでございます。したがって、いま報告にありました大土森にいたしましても、非常に悲惨な状態になっておりますので、一体これはどういうふうになっているのか。で決定はしたけれども、専務手続というものが非鉄金属については行なわれておらぬので、実際にはその閣議決定が効いておらないというふうに見えるわけであります。したがって、早急にこの問題の解決をひとつはかっていただきたいと思うが、大臣の決意をこの際お聞かせ願いたいと思います。
  7. 福田一

    福田国務大臣 お話のとおり、非鉄金属の問題については、石炭に準じて扱うということにいたしておりますので、石炭と同様にはなかなかいかぬ面もございますが、労働省関係雇用促進事業団法の一部改正を行ないまして、これはもうすでに法案が通過しておりますが、これによって、住宅問題あるいは雇用促進の手当てというような点については、石炭と同じような措置がとれるように処理をいたしたわけであります。しかし、これだけでわれわれは十分だとは考えておりませんので、今後とも実情に応じて労働省ともよく連絡をとりまして、雇用関係の万全の措置をとるように努力いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  8. 松平忠久

    松平委員 この問題については、事務的に通商省労働省との間にもう少し具体的な話し合いを進めていただきたいと思う。したがって、その話し合いの進んだ過程において、私は事務当局に対して質問をしたいと思います。  もう一点は、きわめて立大な問題だろうと思うのですが、いまの報告の中にありましたけれども、日本の銅、鉛、亜鉛、または単独にやっておる硫化鉱の問題などは、ほとんど山もと硫化鉱滞貨してしまって、硫化鉱のために銅、鉛、亜鉛というものがとまっておるという状態であります。この硫化鉱の問題は、肥料の問題ときわめて密接な関係があるので、肥料政策とともに解決をしていかなくちゃならぬ問題であろうと思いますが、この硫化鉱滞貨に対して、一体当面どういう措置をおとりになろうとしておるのか。滞貨金融というようなことも、山もとから要望している。でありますけれども、これだけではとても解決できる問題じゃございません。したがって、これは肥料の合理的な、もっと大きな立場に立った肥料政策というものと関連して、硫化鉱の問題を解決しなくちゃならぬと思うが、これに対する大臣の考え方を承りたいと思います。
  9. 福田一

    福田国務大臣 お説のとおり、硫化鉱相当滞貨をしておるのでございますが、その事情は、御承知のごとく、硫安に対する需要がそれほど伸びておらないので――一つは、硫化鉱を出たところですぐ肥料にするようなくふうができると一番いいわけでありますが、その場合には、たとえば地熱とか天然ガスを利用して硫化鉱に結びつけて企業化してはどうかという問題も研究したことはあるのでありますが、なかなかこれも、今日のように硫安自体があまり需要が伸びない段階においては、工業化してみましても、せいぜい四十ドル前後くらいにしかいまのところ見込めない。もちろん四十ドルということは、非常に安いことになるのでありますが、それだからといって、それで長くやってみてはたしてプラスになるかどうか、また、業界その他に過剰肥料を出すことによって影響をどのように与えていくかというような問題もございまして、こういう点は、いまいろいろ研究している段階であります。したがって、硫化鉱滞貨の問題については、確かにわれわれとして今後対策を考えなければならないのでありますが、値段の問題よりは、需要がそれだけついていかないという実情もございますので、これらの点をよくにらみ合わせた上で対策を立てていくよりほかに方法がないのではないか、こういうことになっておるわけであります。お説のとおり、しかし、これを等閑視するわけにはいきませんので、今後とも十分研究をさせていただきたいと考えております。
  10. 松平忠久

    松平委員 日本のいま申しましたような非鉄金属の鉱山問題の解決をはかるためには、どうしても硫化鉱の問題の解決をはかっていかなければだめだと思う。硫化鉱の問題の解決をはかるには、肥料工業の再検討をいままで加えておったんだけれども、なまはんかでありますので、これに再検討を加えなければならぬということと、日本貿易政策を考えなければならぬと思います。水溶性肥料としては硫安がいいことは一致しているところであるが、要するに、水溶性肥料を使うような地点に硫安を向けていくよりほかに方法はないと思う。したがって、南方の水田とか中共の水田、実際をいいますと、こういうものに向けていくように考えていくよりほかに方法がない。もう一つは、固形硫酸でもつくっていく、いまの研究をもう少し進めていくという以外にはないと思うが、われわれがいろいろ現場で聞いてみると、三十ドルくらいで硫安ができるのではないか、専門家意見としてどこまでそれはほんとうかわかりませんけれども、そういう意見も聞いたことがございます。  したがって、この問題は、肥料法案も出ておるようでありますから、その際にもう少し質問をして、政府の総合的な対策樹立するような方向に議論を進めてまいりたいと私も思っておりますので、この問題については、大臣に今後の総合的な対策樹立にひとつ熱意を傾けていただきたいことを申し上げて、私の質問を終わります。      ――――◇―――――
  11. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、去る十七日に付託になりました内閣提出特定産業振興臨時措置法案、及び田中武夫君外十名提出市場支配的事業者経済力濫用防止に関する法律案の同案を一括して議題といたします。
  12. 逢澤寛

    逢澤委員長 まず、特定西北振興臨時措置法案について、通商産業大臣より趣旨説明を聴取することにいたします。福田通商産業大臣
  13. 福田一

    福田国務大臣 ただいま上程されました特定産業振興臨時措置法案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  御承知のように、わが国は、国際経済の一翼をになうものといたしまして、貿易、為替の自由化を順調に推進し、さらに関税の一括引き下げの動きに対しても、原則としてこれを受け入れていく方針を固めております。  このような国際経済環境の変化に対処しつつ、国民経済の健全な発展を確保していくためには、申すまでもなく、かかる情勢に敏速に適応し得るよう国内体制を十分整補しておくことが必要であります。ひるがえってわが国産業実情をながめますと、過少な規模企業が多数乱立し、そのため規模利益の追求が徹底せず、それとうらはらをなしてとかく過当競争の弊に陥りやすいという事情があり、国内産業体制は遺憾ながらいまだ十分整備されているとは申しがたいのであります。したがいまして、政府といたしましては、自由化までに残された短い期間中に、時期を失しないよう、早急に企業規模適正化を通じ産業活動効率化をはかっていくことが必要であると考えます。  わが国産業の包蔵するこのような欠陥を是正し、産業活動効率化するための努力は、まず産業界において行なわれるべきことは当然でありますが、わが国産業資金調達の方式をも考えますと、その努力を実効あらしめるためには、産業界と密接な関係を持つ金融界からも協力を得る必要があり、さらに国民経済の健全な発展を確保し、国民の福祉の向上につとめるという見地から、政府も民間における努力を助長する必要があると考えられます。  そこで、政府といたしましては、企業自主性をあくまでも尊重しつつ、企業規模適正化を通じ産業活動効率化するための助成を行なうことにより、特定産業振興をはかることとし、その法的裏づけといたしまして、この法律案提出した次第であります。  次に、この法律案主要点について、御説明申し上げます。  第一は、この法律適用を受ける特定難業の選定に関することであります。特定産業の指定は、あくまでも産業界自主性を尊重して、その申し出を受け、審議会意見を聞いて行なうことといたしております。  第二は、政府産業界及び金融界は、企業規模適正化を通じ産業活動効率化して特定産業振興をはかるための基準について討議し、政府及び産業界の合意に基づいて基準決定することであります。  この振興基準では、規格の整備生産専門化設備適正化事業共同化合併等に関する特定産業ごとの一般的な方針が定められ、企業自己責任に基づいて行動するときの好ましい判断材料を提供しようとするものであります。  第三は、特定廃業を悩む者、政府関係金融機関及び銀行が産業活動効率化するために努力ないし留意すべきことを明らかにしていることであります。  第四は、政府助成に関することであります。  振興基準は、政府も参加して作成されたものである以上、その円滑な実施をはかることは、国策にも適合することでありますから、振興基準で定められた方針に従って産業活動効率化するため必要と慰められるときは、政府は、資金の確保につとめるとともに、法人税または登録税軽減措置を講ずることといたしております。  第五は、合理化のための共同行為の特例に関することであります。  合理化のためにする一定の共同行為が、あくまでも振興基準で定められた方針に従って産業活動効率化のために行なわれる限り、これを許容してゆくことが必要と考えられますので、公正取引委員会の認可を要件として、ここに独占禁止法との調整をはかることとした次第であります。  第六は、合併に関する判断基準を公表することであります。これは、企業合併しようとするときに、独占禁止法に抵触するかどうかを自主的に判断することを可能ならしめることによって、企業合併を円滑ならしめようとする趣旨に基づくものであります。  その他、振興基準内容を常に公正かつ適切たらしめるために、その作成にあたっては十分関係者意見を聞くこととしたほか、政府産業界及び金融会から振興基準を変更すべきことを請求し得る規定を設けるなど、所要の規定整備いたしております。  なお、本法案は五年間の限時法といたしております。これは、貿易自由化等により経済事情が著しく変動しつつある期間について、産業活動効率化を有効に促進するため、本法案規定するような措置を講ずることが適当であるという趣旨に出るものであります。  以上、本法案趣旨の概略を御説明申し上げましたが、要は、自由化後のわが国経済成長のにない手たるべき産業確立発展をはかるため、競争力培養に向かってみずから努力する産業界に対し、政府はもとより、金融界からもまた応分の協力を期待し、激動しつつある国際経済環境の中で日本経済の占めるべき名香ある地歩をすみやかに築いてまいろうとするものであります。  何とぞ慎重に御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  14. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、市場支配的事業者経済力濫用防止に関する法律案につきまして、提出君より趣旨説明を聴取することにいたします。提出者田中武夫君。
  15. 田中武夫

    田中(武)議員 日本社会党拠出市場支配的事業者経済力濫用防止に関する法律案につきまして、提案者を代表し、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  御承知のように、日本経済の最も特徴的な現象は、高度経済成長政策によって、産業構造重化学工業化が進み、大資本中心として、資本生産の集中、系列化がきわめて強化されてきたということであります。言葉をかえて申しますと、今日の日本経済は、すでに独占資本の支配する体制が確立されているということができるのであります。  もちろん、過小な規模企業が多数乱立し、過当競争弊害も一部に見られるところでありますが、これらの現象は、主として中小企業の側面についていえることであって、資本面でも、生産面でも、独占的な大資本成長は著しく、中小企業との格差をますます拡大しているのが、今日の偽りのない経済情勢であります。  しかしながら、このように独占資本が支配するわが国経済は、高度成長政策を破綻させてきたばかりでなく、物価問題、労働問題、中小企業問題、農業問題等々に多くの矛盾を現出しているのでありますが、その矛盾の根源が実に独占問題にあることは、いまさら申し上げるまでもないと思うのであります。  第二次大戦後、世界各国は、この独占弊害解決するために意を用い、その有効な方策として独占禁止法を制定してまいりました。そして、この独占禁止法の精神は、さらに強く現在の経済活動の上に反映されているのが、世界的趨勢であります。ところが、わが国におきましては、戦後の一連の経済民主化政策も、次々と剥奪され、独占禁止政策は一貫して大幅に緩和もしくは廃止されるという逆の努力が続けられていることは、きわめて遺憾であるといわざるを得ないのであります。  ただいま政府から提案されました特定産業振興臨時措置法案も、こうした逆コースに拍車をかけ、たくみに独禁法の骨抜きをはかって、さらに、独占寡占体制を確立し、独占資本利益を一そう高めることをねらったものであります。この法案は、政府独占的大企業との結合を明文をもって宣言し、政府は税制、金融その他あらゆる面での援助を公約し、カルテルを認め、合併を奨励し、独占禁止法適用を除外することとしており、この結果、中小企業には企業整理を、農民には高い農業資材を、一般消費者には物価値上げを、労働者には首切り合理化をもたらそうとしているのであります。  現在、従業員千人以上の大規模卒業所は、事業所数で全製造業事業所数の〇・三%を占めているのにすぎないのに、収益では全体の三二%を占めているのであります。また、最大五社で市場の五〇%以上を占めている業種は、バター、チーズ、ビール等の食品、ナイロン、テトロン、ビニロン等合成繊維硫安尿素等肥料、銑鉄、粗銅、各種鉄鋼製品、アルミ、セメントをはじめ軽三輪、乗用車、トラック、造船、重電機等わが国生硬産業のほとんどにわたっているのであります。現行独禁法のもとにおいてさえ、このように大資本中心とした寡占体制が確立され、中小企業者農林漁業者労働者一般消費者に重大な影響を与えているのであり、特にこれら大資本の行動は、物価高騰の大きな要因となっているのであります。  今日、政治の立場にある者として、最も大切なことは、さらに独占寡占体制を強めることに努力することではなくて、独占寡占のもたらす弊害を除去することに意を注ぐべきであると思うのであります。本法案提出した理由も実はここにあるのでありまして、独占寡占弊害、危険に対して、公正取引委員会の機能を強化し、独占禁止法の逆用を適正にすることを念願としたものであります。  市場支配的事業者経済力の乱用の防止に関しましては、すでにイギリス、西ドイツ、ノルウェー、オランダ、ベルギー等においても存在しているところであります。わが国独占禁止法も、その一部については規制しておりますが、きわめて不十分でありますので、少なくともこの程度の規制は必要であるとして、独占禁止法を補完する意味で提案した次第であります。  次に、この法律案内容について御説明申し上げます。  第一に、この法案では、公正取引委員会が商品または役務の供給量設備規模資本額等がその取引分野における支配的事業能力を有する事業者市場支配的事業者として指定し、これらの支配的事業者が、取引上優越した地位を不当に利用して行なう行為につきましては、現行独占禁止法違反行為とみなして規制するほか、積極的に価格引き下げ等措置をもとらせるようにいたしました。  第二に、国内会社であって、その総資産が百億円をこえるもの、または、外国会社であって、公正取引委員会が指定する基準に該当するものは、毎事業年度業務状況その他必要な事項に関する報告書提出させ、公正取引委員会は、市場支配的大企業活動状況を調査し、それを一般に公表することといたしました。市場支配的大企業が、その言うごとく公益に合致した活動をしているならば、これは何ら拒否する理由はないと思うのであります。  第三に、公正取引委員会に、市場支配審議会を置き、この法律の施行に関する重要事項について調査審議し、公正取引委員会に建議することができるようにいたしました。  最後に、公正取引委員会は、この法律の運用状況及びこの法律の目的達成上必要な意見を国会に報告することとし、これによって、市場支配的事業者の規制について万全の対策を期すこととしたのであります。  以上、本法案趣旨を簡単に御説明申し上げました、が、要は、すでに今日、独占寡占体制を確立している市場支配的事業者に対して、その経済力の乱用を防止することにより、常にその犠牲となっている中小企業一般消費者利益を保護し、もって国民経済の健全な発達をはかりたいと念願した次第であります。  何とぞ慎重に御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げまして提案説明を終わります。(拍手)      ――――◇―――――
  16. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、同じく去る十七日に付託になりました内閣提出採石法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。
  17. 逢澤寛

    逢澤委員長 まず、通商産業大臣より趣旨説明を聴取することにいたします。福田通商産業大臣
  18. 福田一

    福田国務大臣 採石法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  採石法は、昭和二十五年に、当時国民経済上の重要性が増大しつつあった採石業について、その事業の安定と健全な発達の基礎を与える目的のもとに制定されたものであります。  その後、最近において、採石業がますます活況を呈するに伴い、採石による公告も増加する傾向がうかがわれますが、一方これを取り締まる現行採石法の監督規定は、これらの公害の実態に対応して適時適切な防止措置を講ずるには、必ずしも十分ではないと認められるに至ったのであります。  このたびの改正は、その監督規定の強化整備という点を取り上げたものでありまして、その主要な改正点は次のとおりであります。  まず第一は、採石業の監督命令について、新たに次の二種数のものを追加したことであります。  その一つは、公害を一定の施業計画との関連で事前に適切に処理するために、公害を生ずるおそれのある採石業者に対して、国が認可した公害防止方法に従って作業を行なわせることとした点であり、いま一つは、事態が緊急であり、公害を防止するため、他に方法がないと認められるときは採石業者の公害を生ずるおそれがある部分の行為を一時停止させることができることとした点であります。  改正の第二は、現在、採石業に着手したときは、通商産業局長に、その旨を事後届け出すべきこととなっておりますが、これを事業着手前に、採石方法の概要について届け出なければならないこととし、公害の未然防止に資することとしたことであります。  第三は、採石業の監督に関し、都道府県知事が通商産業局長に対して、必要な措置命令をとるよう請求することができることとし、これにより両者の協力関係が一そう緊密となり、有効適切な指導監督が行なわれるよう配慮したことであります。  これらの点を改正することにより、発生する公告の態様と程度に応じた効果的な指導監督措置がとられ、今後の採石業の健全な発達に資するものと期待されるのであります。  以上が、この法律案提案理由及び要旨であります。  何とぞ慣用御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  19. 逢澤寛

    逢澤委員長 以上で、本案についての趣旨説明は終わりました。      ――――◇―――――
  20. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、去る十五日に付託になりました内閣提出下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。     ―――――――――――――
  21. 逢澤寛

    逢澤委員長 まず、総理府総務長官より趣旨説明を聴取することといたします。徳安総務長官。
  22. 徳安實藏

    徳安政府委員 ただいま議題となりました下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び概要を御説明いたします。  下請代金支払遅延等防止法が制定されましてから、すでに六年余を経過することになりましたが、この間政府関係機関におきましては、この法律の積極的な運用に鋭意努力いたしますとともに、昨年は本法の改正強化を行なう等の措置を講じまして、下請代金の支払遅延防止等にかなりの効果をおさめてまいりました。  しかしながら、本法制定時と現在とを比較いたしますに、この間、国民経済発展に伴いまして企業規模も大幅に拡大して参りました。また、たまたま今国会に中小企業基本法案提出せられ、御審議をお願いしている経緯もございますので、この際本法により保護の対象とされております下請事業者の範囲を改める必要があると考えられ、ここに本改正法案提出いたした次第であります。  次に、本改正法案の概要でございますが、親事業者及び下請事業者の定義を改めまして、下請事業者の範囲を拡大しようとするものでございます。  何とぞ慎重審議の上、御賛同あらんことをお願いいたします。  なお、法案内容はきわめて簡単なものでございますので、後日公正取引委員会より詳細に御説明申し上げたいと存じます。
  23. 逢澤寛

    逢澤委員長 以上で、本案についての趣旨説明は終わりました。  なお、ただいま説明を聴取いたしました各案についての質疑は、後日に譲ることといたします。      ――――◇―――――
  24. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、内閣提出中小企業投資育成株式会社法案を議題とし、審査を進めます。  質疑に入りまする前に、政府委員より前回の答弁について発言を求められておりますので、これを許可いたします。
  25. 加藤悌次

    ○加藤(悌)政府委員 前々回の当委員会におきまして、田中武夫先生から投資会社が保有いたしております投資先の中小企業の株式を、本来の目的を達成いたしました暁に一般の市場に放出する場合の処分について、その処分は八条の何号で読むのか、こういう御趣旨の御質問があったわけでございますが、その御質問に対しまして、私は、その八条の一号、二号に掲げておりますところの新株の引き受け並びに保有という条項で当然やれるものであって、第四号の附帯事業でこれを読むのではない、こういう表現を申し上げたわけでございますが、これは私の誤解に基づくものでございますので、きょうあらためて、そのような場合の株式の処分は、第一項の四号の附帯事業ということで読むのだというふうに訂正させていただきます。
  26. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、質疑の通告がありますので、これを許可いたします。田中武夫君。
  27. 田中武夫

    田中(武)委員 中小企業投資育成株式会社法につきまして、残余の質問を続けていきたいと思います。  まず、お伺いいたしたいのですが、すでに提出をしておられます中小企業基本法第一条の規定の中に、格差是正ということをうたっておられます。この格差是正は、大企業中小企業との間のことなのか、中小企業相互間のこともいうのか、いかがでございますか。
  28. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 格差是正は、大企業中小企業の間の格差の是正はもちろんでございますが、さらに中小企業の中におきますいわゆる中規模企業と小規模あるいは零細企業との間に存在する格差というものも是正するということにいたしたいということでございます。
  29. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、本法案は、中小企業基本法の精神にのっとって提出された、こういうことでありますが、中小企業相互間、いわゆる中小企業の中において格差を拡大さす結果になると思うのですが、この点いかがですか。
  30. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 これは、この前、冒頭に松平先生からの御質問、御指摘もあったわけでございますが、中小企業政策というものがこれだけで行なわれる場合には、この法案によって育成されます会社というものは、原則として五百万円以上、むしろ中堅規模に属するというものでございますので、この法案に関する限りは、中小の中の中と小との間にあるいは格差が拡大されるといったようなことになるかとも存じます。しかし、これはほかの諸先生一方から再三御指摘がありましたように、われわれといたしましては、他の中小企業政策と合わせて総合的な中小企業政策を進めていきたい。税制であり、あるいは金融であるといったような本来の中小企業政策につきましては、特に小規模事業者につきましては、細心の配慮を払いながらこの政策を進めていきたい、こういうふうに存じております。これだけ取り上げますと、ここで取り上げられる比較的規模の大きいもの、それからそうでない零細な企業との間に格差ができるということは、これは否定できないと思いますが、その欠陥は本法以外の諸施策で埋めて、全体の格差をなくするように努力いたしていきたいと思っております。
  31. 田中武夫

    田中(武)委員 中小企業政策は、何もこれ一つでないことはそのとおりであります。しかし、少なくとも、本法案提出理由として、中小企業基本法の中における精神から出てきたんだと言う限り、一条の格差是正ということに反する、少なくともこの法案に関する限りは、中小企業間に格差を生じ、零細なものは切り捨てていくという思想が出ると思うのですが、どうですか。その他税制、金融の面と言っておりますが、特に、政府の言う小規模事業者、俗に言う零細企業者、われわれの言うところの勤労事業者、そういうものに対して、金融、税制その他、中小企業の中でも特にそういうものに対してあたたかい、幅広い政策があるなら、言っていただきましょう。
  32. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 これは、この法案の対象として投資され、育成されるものとそれ以外のものとの間には、おっしゃるとおりの現象があるいは起こるのではないかと思いますが、しかし、これはあくまでも中堅企業と大企業との間の投資育成、あるいは中堅企業を育て上げるということによりまして、その中堅企業にさらにいろいろ仕事の関係でつながっておりますたくさんの小規模専業あるいは零細事業というところまでが、経営が安定して、そうしてだんだん生産性の向上ができる、そういう方向に持っていきたいということをねらいといたしております。まず、それぞれの中小企業活動グループの中の母体になるような中堅者が育つ、強くなるということは、それと一緒に仕事をしている、それからいろいろ注文難を受けているといったような方々にとっても、事業分野が安定するということになるのではなかろうかということで、直接の効果のほかに、いわば中小企業の中におって、親企業的なものが強くなるということからくる反射的な利益ということも、当然出てくるんじゃないか、そういうふうに考えているわけでございます。  それから税制、金融の点につきましては、これは本年度のたとえば専従者控除といったようなもの、ことしはわずか五千円というものだけにとどまりましたが、われわれといたしましては、さらにその専従者控除を今後拡充するというようなことでやっていきたい、こういうふうにも思っておりますし、金融につきましては、国民金融公庫の資金源というものを増加いたしまして、一五%程度の質し出し増が行なわれるようにということを目標に、予算の措置を講じております。それからまた小規模事業一般につきましては、いろいろな施策を講ずる前に、あまりにも前近代的な経営をやっているといったような面も多々ありますので、商工会あるいは商工会議所等によります経営指導、指導員による経営改善普及事業を通じまして、できるだけまず近代的な経営に踏み出すようにという指導もいたしておますし、さらにまた金融の面におきまして、ことしから小口保険の料率を二厘引き下げたというようなことでありまして、もちろんわれわれは十分とは思っておりませんが、小規模事業者につきましても、今後さらにできるだけの努力をしていきたいと考えております。
  33. 田中武夫

    田中(武)委員 たとえば小規模事業者に対する商工会における経営指導員のことなんかは、以前の問題です。中小企業基本法が出る前からやっている。少なくとも中小企業基本法が出て、しかしこの法案中小企業基本法の精神にのっとって出たという限り、中小企業間の格差是正をうたいながら、格差の拡大をはかっているということには間違いないのですよ。それは認めたのでしょう。どうなんです。
  34. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 先ほど申し上げましたように、この取り上げられる企業そのものが強くなるということになりますと、これはここで取り上げられる企業は、大体中小企業の中でもまあ中堅的な企業で、その下にさらにいろいろ下請的なものを持っておる例が、非常に多いのでございます。そこで、この取り上げられる会社につながる系列と申しますか、受注関係に立つ会社といったようなものは、自分の仕事に注文をしてくれる親元が強くなるということで、これは反射的効果は当然あり得るというふうに考えておるわけでございます。
  35. 田中武夫

    田中(武)委員 どうもたよりない答弁です。反射的効果なんということは、こんなことは期待できない。あるいは期待可能であったとしても、それは答弁になりません。しかし、これはこの程度にしておきますが、私が言わんとするところは、政府の考えておることは、中小企業相互間にあっても、より大きなものだけを育成していくという考え方であることだけは確認をしておきます。違いますか。
  36. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 われわれは、各方面の格差の是正ということをあくまでも根本方針として努力しておるつもりでございます。
  37. 田中武夫

    田中(武)委員 これ以上やってもお互い突っぱり合いになると思いますが、少なくとも中小企業庁長官は、本法に関する限り、中小企業者のうちでも中堅的なものを育てるのだということに、これははっきりと確認をいたしました。  次にお伺いをいたしたいのですが、これも松平委員等もちょっと触れましたが、たとえば中小企業金融公庫法を改正する。これでも改正していますが、十九条の業務の範囲を広げていく、あるいは開発銀行に特殊な部門を設ける、これも特殊法人ですから、法改正をすれば、こういう会社法をつくらなくてもできるのではないか。たとえば中小企業金融公庫は、金融だけではなしに、そういう対象になるような企業の株式保有等ができる、あるいは育成ができるということにすればできる。あえて本法を必要とした理由いかんということです。  さらにもう一つは、先日松平委員も申されておりましたが、これは大体一割の配当だというのですね。中小企業金融公庫その他については、一割以下、六分五厘なり七分五厘の利息で済むのですよ。企業は、私は、こういうことよりか、やっぱり金融の円滑化を望んでおると思うのですよ。そういう点について、どう説明するか。特に本法案を必要とし、こういう会社を三つもつくっていく、あるいはそれ以上つくっていくという必要は、どこにありますか。
  38. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 これは投資業務、またそれに伴う育成業務という特殊の仕事をいたしますので、一般的な金融を業とする中小企業金融公庫に片手間にやらせるというよりは、むしろやはりこういう特殊の機関というものを設けて、そしてやらせるほうがいい。それからまた、政府が直接出資するというよりは、われわれといたしましては、将来できるだけ民間の機動力といったようなものに期待して、この投資業務という非常にむずかしい業務の円滑な施行ということを進めていきたいというふうにも考えておりますので、政府出資も避けて、公庫からこの特殊の会社に出させるということにしたわけでございます。
  39. 田中武夫

    田中(武)委員 そのほうがよりベターであるということであって、理論的に、そうでなくてはならない、こういうことじゃないのですね。
  40. 加藤悌次

    ○加藤(悌)政府委員 この問題を正式に政府として決定いたします前に、できるだけ関係の業界の方の御意見を伺ったほうがいいのではなかろうかということで、前にも御説明申し上げましたが、昨年の夏、約半年間にわたりまして、金融懇談会というものを設けまして、いろいろ御意見を伺ったのであります。そのときの大方の御意見は、つまり純粋に国策会社的なものにするのか、あるいは将来は逐次民間的な色彩を多くしてまいりまして、将来は民営の色彩の非常に濃いものにしていくか、こういう議論があったわけでございますが、議論の結果は、やはり将来は逐次民営の方向へ移行していく、とりあえずその最初の発足の当時に、国の産業政策の面の問題もございますし、あるいは資金的なバック・アップの問題もございますので、国が、間接的ではございますが、中小企業金融公庫を通じて出資をする、あるいは貸し付けをするというかっこうでバック・アップする必要があるだろう、こういう結論になりまして、いま御審議を願っているような形態になったわけでございます。
  41. 田中武夫

    田中(武)委員 絶対的にそうであるという根拠でなく、話し合ったり、いろいろ関係者と相談をした結果が、よりベターだ、こういうことだと了解をいたしましょう。  そこで、次にお伺いいたしたいことは、第二条におきまして、東京、大阪、それから名古屋、こういうところに本店を置く。すなわち、複数の会社を考えておられるわけなんです。複数の会社がいいのか、あるいは単数であって、それが必要に応じて支店、出張所をつくっていくのがいいのか、こういう問題があると思います。これは最後の目的は、結局証券、いわゆる株券を引き受けてやり、これを育成し、第二部上場株程度に持っていこうということです。そうすると、証券取引所は、大阪は関西に本社があるものだけを扱うのですか。そうではないと思います。そうするならば、株式譲渡自由の原則、こういう考え方からいっても、私は、一本であって全国を管轄するといいますか、やっていく、しかし、東京あるいはどこかだけで、本店一カ所では十分じゃないというなら、支店を置けばいい。あえて三カ所にした積極的な理由をお伺いいたしまa。
  42. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 この会社法案をつくるまでに、いま振興部長から申しましたように、いろいろ各方面の御意見を伺ったわけでございますが、このときにも、まず問題になったのは、全国一社にして必要なところに支店を設けるというかっこうでやるか、あるいは複数の会社をつくるかということだったわけでございます。この会社の性格といたしましては、いわゆる国策会社というよりも、できるだけ民間的色彩を将来だんだん多くしていって、その機動的な経営のさえというものにまつということとも関連いたしまして、また、中小企業の投資事業の性質上、この会社の運営は、それぞれの地元の中小企業と密着して行なわれる必要があるのではないか。さらに、中小企業の投資育成といったようなことにあたりましては、それはそれぞれの地元の財界あるいは地元の都道府県庁といったようなところが、自分自身のところの経済的な繁栄というようなことで、全国一本でつくる場合よりもより関心度を高め、資金を集める上においても有利ではないか。また、東京、大阪あるいは名古屋というようなところが、お互いにいい意味での競争をいたしまして、そうして自分の地元の中小企業を育てるといったような、いい意味でのコンペティション――競争もあろうか、そういうふうに考えられるので、民間的な色彩を取り入れるということとも関連いたしまして、複数にしようということになったわけでございます。
  43. 田中武夫

    田中(武)委員 議論はやりたくないのですが、純理論的に考えた場合は、全国一本、法人一つのほうがよりベターである、私はそう思います。先ほどは、金融公庫法を改正してやれないかということについて、このほうがよりベターである、こういうことだったが、今度は、これはこれよりベターでない。断言いたします。どうです。
  44. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 これはいま申し上げたように、議論としてはいろいろあったわけでございまして、われわれといたしましては、この議論の過程において、一本のほうがいいという説、これももちろんございました。それから複数にしたほうがいいのじゃないかということで、先ほど私が申し上げたようなこともありまして、民間の権威者等の御意見も伺いました結果、大多数の方が複数にしたほうがよかろうということで、こういうことになったわけでございます。
  45. 田中武夫

    田中(武)委員 これは大臣に答弁をしていただきたいと思うのですが、最近国会内におきましても、あるいはまた一般の意見といたしましても、公社、公団、事業団、特殊法人――これは株式会社も含みます、そういうものが多過ぎる、整理をすべきじゃないか、こういう意見が強く出ておることは、御承知のとおりであります。しかるに、本国会だけでも、この種のものが十三ですか、新しくつくろうということが出ております。しかも法律一本でそのような特殊会社を――現在三つですが、五つも六つもつくっていくということになりますと、そういう公社、公団あるいは株式会社形式による特殊法人についての考え方並びにそれの人事がいま問題になっておりますが、この新たにできる東京、大阪、名古屋の各会社に対してどういう人事を考えておられるのか、これが一点。  さらにもう一つは、京浜、中京、阪神、北九州等を俗に四大工業地帯といわれております。私は一本でいくという意見でありますが、こうして三つにやれば、いわゆる京浜、東京、中京すなわち名古屋、阪神すなわち大阪、この三つはありますが、なぜ四大工業地帯といわれておる北九州には持っていかないのか、今後どのように考えておられるか、お伺いいたします。以上の点、大臣に答弁を求めます。
  46. 福田一

    福田国務大臣 お説のとおり、公社、公団というものがよけいできることは好ましくないという原則については、私もそのように考えております。しかし、今度つくりますのは、公社、公団の弊害が言われておるのは、天下り人事といいますか、役所の人がそれにすぐに関係して、総裁になるとか理事長になるとかいうようなことがしばしば行なわれる、これがいかぬというのが、一つ理由でございます。そういう点を考えてみますと、われわれとしても十分考えてみなければなりませんので、今度の人事では、この投資育成会社の首脳部には、いわゆる役人を入れない、民間人でもってやらせる、こういうような方針で臨んでいく考えでございます。  また、もとへ戻りますが、公社、公団はいかぬといっても、全然これからそういうものは認めないという意味ではないだろう。やはり必要なものはつくらなければいけません。これはそう御了解願いますが、今度の場合には、いま言ったような弊害を特に除去する方法によって処置いたして参りたい。  それからお説のとおり、これを一つにするということは、りっぱな一つの考え方であろうと思います。しかしまた、ただいま長官が言ったような考え方に基づきまして、私たちとしては、比較検討した結果、三つにしよう、こういうことにいたしたのでありまして、したがって、そういうことになった以上は、今後の方針としては、やはり複数制をとるのでありますから、必要に応じてこれを増加することによって、どの程度うまくいくか、やってみて、その事情等を見た上で、今後も増設するということも当然あり得るという考え方で臨んでいきたいと思っております。
  47. 田中武夫

    田中(武)委員 そういうことですが、特に四大工業地帯といわれておりながら、そのうちの三大工業地帯に置いて、あとの一つについては、特別に考えがあるのかないのか、あるいはどういう理由ではずしたのか、そういうことをお伺いしておるのです。
  48. 福田一

    福田国務大臣 ごもっともな御意見でございまして、北九州に置いたらいいじゃないかというお考えかと思うのでありますが、これは予算の関係もございまして、どうも六億という金をそうこまかく割ったのじゃ効果も上げられないというようなこともあったわけでございますから、将来は、その予算措置等ともにらみ合わせながら、ふやしていくということにわれわれは決して反対をしておるわけではございません。
  49. 田中武夫

    田中(武)委員 これは二つが三つになったのですから、予算の関係等もあってということで、一応はこの三つということを前提といたします。そうしますと、この三つですね、東京、名古屋、大阪で、全国の管轄はどうするのか。たとえば大阪に本社を有するものは、東京へはこられないのかどうか。これが一点です。  さらにもう一点は、たとえば東京が北海道まで見るということであるならば、先日の久保田委員質問にありましたが、地方自治体が中小企業育成のために出資をするということは、その府県に所属するものなんです。したがって、東京は出資する、だがしかし、北海道は出資しない、そういうときに、北海道に本社を持つものは申し込みができるのかできないのか。もしできるとするならば、それじゃ、東京都だけが出資をしておるならば、東京都からいえば、地方自治法の精神に相反することになる。したがって、あらかじめ東京は何児、何県、何県としておいて、その符帳府具に全部出資せしめる方針なのか、こういう関係を――管轄ということがいいか悪いか知りませんが、三つの分担地区とその府県の関係、並びに地方自治法との関係を明らかにしていただきたいと思います。
  50. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 まず管轄区域でございますが、一応われわれはこの三社で全国をカバーしたいと思っておりますが、特に明文をもってはっきりそういう中小企業投資育成会社の管轄はどこそこというふうにはやらないつもりでおります。原則として、大体東京の会社は関東以北、大阪の会社は関西以西、名古屋の会社は中部地方のものを見るということが、現実問題として非常に多かろうと思っておりますが、実際にあたった場合に、本社と工場との所在地の関係とかいろいろございまして、あまりそこを厳密にぴしっとやっておきますと、かえって動きにくいということもあろうかと思いますので、大体原則としては東日本、中日本、西日本というところでやるというつもりで取り上げていただきたいと思っておりますが、具体的な場合には、この三社の会社同士でよく打ち合わせをしてもらいまして、自分のところでどこそこを取り上げるがどうだということで、中で相談していただくということによって、この会社に出資を希望するという方々の御希望に沿うようにやっていきたい、そういうふうに考えております。  それから出資をしない県に対してこの会社が金を出すということは、出資した県のほうから見ると、自分の県の金をもってよその県のものを育成するということになって、そういうのは筋が違うということから、むしろそういうことをすべきじゃないというような議論も出るのじゃないか、こういうことも、ごもっともでございます。しかし、われわれといたしましては、政府が三分の一以内ということになっており、また地方庁もそれと同額以上ということになっておりますが、実は民間には、三分の一でなしに、もっとたくさん出してもらいたいということをいま言っているわけでございまして、それはさしあたりは、たとえば東京都が大部分出して東京ができたという場合に、まず取り上げられるところはここであろうというふうに思っておりますが、これもまだ全部の県に当たったわけではございませんが、東京都以外の道府県というようなところにおきましても、自分らのほうもぜひ一口乗って、こういう会社協力すると同時に、地元の企業を育ててもらいたいといったような御希望のところも、いろいろ聞いております。現実問題としては、一審最初に大部分は東京、名古屋あるいは大阪という地元の都府県がお出しになるということから、そこが一番対象になろうかと思いますが、しかし、理屈としては、この前久保田先生からもそういうことにはならぬだろうというお話がございましたが、われわれは、政府の出し分あるいは地方庁の出し分以上の分を財界――これはもう日本経済全体につながっているわけでございますので、そういうところにも期待いたしておりますが、その金を出さなかった児というものは絶対取り上げないかということになりますと、やはり中でこれはこの際できるだけ早く取り上げたほうがいいというものにつきましては、取り上げる。と同時に、将来だんだんそういう県に対しても、この会社に対して応分の御協力を願うということについていろいろと交渉をし、具合の議決を経て出資していただくという方向に努力していきたいと考えております。   〔委員長退席、小川(平)委員長代   理着席〕
  51. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど申しましたように、この法律は、中小企業相互間において格差拡大をはかる、同時に、地域格差においても、それの拡大をはかっていくということになります。これは認めざるを得ないと思います。さらに先日の久保田委員質問に対して、地方自治法の条文をあげてお答えになりました。しかし、地方自治法は、いわゆる自分の自治体ということが頭にかぶるのですよ。それが三分の一以下であろうがなんぼであろうが、たとえば東京都が出した金を東京都以外のところに使うということは、先ほど申し上げておるように、地方自治法の精神からいってどうなんです。
  52. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 地方自治法の関係、不勉強で申しわけございませんが、現実の問題としては、諸先生御指摘のように、さしあたり金を出さない県というものの中小企業を取り上げてここで育成していくということは、この当座は起こらない。まず東京、大阪、名古屋というところで金をお出しになれば、そこの区域の方を取り上げるということで手一ぱいであろうかと思われますので、さしあたり金を出していただいた県の企業を取り上げるということで発足いたしまして、いま先生の御指摘になりましたこと、あるいはこの前久保田先生のお話しになりました点等は、さらに地方自治の法律関係といったようなものをもよく検討いたしました上で、法律にもとらないような運営ができるという方向に出資その他やっていく、また会社の設立目的というものにのっとりまして、もしその間に法律的に矛盾があるということであれば、その矛盾解決について、関係方面とさらによく協力して検討していきたいと思っております。
  53. 田中武夫

    田中(武)委員 先日、あなたは地方自治法第二条の規定、精神に基づいて答弁せられたわけです。ところが、それは中小企業育成のため云々、こういうことは、他の府県を指さしていない。自分の中をいうておるのでしょう。もしいまの答弁だとするならば、それじゃ、東京都と愛知県と大阪府だけをさしあたって取り上げるということになる。それでこの法律はいいのですか。そういうような特定地域だけをまず取り上げていく法律には、われわれは賛成できません。たとえば川崎はどうなりますか。東京都ですか。違うでしょう。横浜はどうなんですか。神奈川県で金を出すのですか。これは東京都だけ、愛知県だけ、大阪府だけということが、まず出発のときのお考えなんですか。
  54. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 それぞれの地域の中核になるのは、いまの三都府県であるということは、間違いないと思てっおります。しかし、同時にわれわれは、兵庫県に対しまして、あるいは神奈川県に対しまして、岐阜県に対しまして、その他いろいろ――と申しますよりも、全国の都道府県に対しまして、こういう会社をつくった、それについては、皆さん方のところにも該当する企業があると思われるので、ひとつこの法律の精神にのっとって、県会等によく御説明いただいて、そして応分の出資をしていただくようにやっていただきたいというふうにお願いしてありますし、東京、大阪、名古屋あるいは愛知県というようなところだけで出発するということではございませんで、もう少し広い範囲から資本金を集めるということでやっていきたいというふうに考えております。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員 そこがおかしいのですよ。あなたのいまのような行き方でいくならば、この間の久保田さんへの答弁と抵触する。地方自治法第二条の基本原則をもってあなた方は答弁せられたのです。だから、地方自治法の基本原則でいうならば、出資した県だけということになる。それならば、なぜこの法律は全国を見ると、こう言うのです。地方自治法の精神、基本原則との関係をはっきりしてください。
  56. 加藤悌次

    ○加藤(悌)政府委員 地方自治法との関係におきましては、まさに先生のただいま御指摘のとおりでございまして、地方自治法で規定いたしておりますのは、当該地方公共団体の管轄区域内のことのみをいっておるのであります。問題は、この投資会社を運営してまいります場合に、当該地方公共団体から出ている出資金というものが、この投資会社の出資の資金源のすべてではないことは、先ほど長官から申し上げたとおりであります。地方から出ている金が、そのままそっくり当該地方へ還元されなくてはいけないかどうか、あるいはその地方の出資が一部入っている機関の金が、当該府県のほかにいってはいかぬかどうかという問題は、非常にむずかしい問題だと思いますが、私どもは、これは例がいいかどうかわかりませんが、たとえば愛知県が、地元に東海製鉄ができたわけでありますが、この東海製鉄に対しての出資ということもやっております。これなんか、形式的には、東海製鉄は愛知児にございますので、まるまる還元ということがあるかと思いますが、そういった例から見ても、必ずしもこれが全然違法であるということにはならないのではなかろうかというように解釈しております。  それからもう一つは、全然出資をしていない県の中小企業から、投資会社の対象として取り上げてほしいというふうな企業があった場合、どうするかということでございますが、これは原則的には、そういうものもこの投資会社は当然取り上げなければいけないというふうに考えておるわけでございます。ただ、その場合には、自分の県が全然出資をしていなくて、そういう要望が現実にある場合には、焦心あれば水心と申しますか、おそらく自分の府県からも応分の出資をいたすというふうな申し出があるということを、実は期待いたしておるわけであります。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 これはおかしいですよ。あなたの言われた後段のは、出資をしていないところでも取り上げるのだ、これはあたりまえのことで、この法律はそうなっているのです。しかし、それなら、出資をしたところの府県側から見て、地方自治法からいってどうなのか。それが三分の一以上でないからいいとか、それが十分の一以下だからいかぬとかいうことは、地方自治法のどこに書いてあるか。地方自治法の精神との関係において、はっきりしたことを言ってください。  それから、じゃ、こちらのものについては出さぬからといっても、いまの話じゃないが、金の区別がつくかということです。府県の出すものに番号でもつけておきますか、一万円札に。どうするんです。
  58. 久保田豊

    久保田(豊)委員 関連して。これは大臣にお聞きしますが、これは非常に重要な問題を含んでおると思うのです。そういうのは、こういう地方自治体が、いわばこの構想は、最後は、公共性よりも、むしろ利益をはかる会社です。そういうものにどんどん出すということは、地方自治法の二条から出てくるかということが第一点。いまの製鉄会社に出すとかなんとかいうことは、このごろ至るところにそういうことをやっている。うまくいっている際はいいにしても、それでも問題がある。それは何かというと、会社がもうけて配当をするという場合に、これは会社なり何なりは、地方自治体に対する配当の保障なんてどこにもない。そういう場合に、個人のもうけ仕事――個人というか、民間資本のもうけ仕事に地方自治体がどんどん出していいという原則は、どこにもない。補助金とかなんとかということなら、これは別ですけれども、そういうものにどんどん出資をしていいという原則は一つもないということと、いまお話のあったように、出さない県へ出したところの県が出すということは、そう簡単に、いまの地方自治体の実態から見て、承知をするはずがないということが第二点。これはいま田中さんの質問の要旨です。  もう一点は、こういうことをやっては、たとえば新産業都市の配置をするとか、地方開発、低開発をやるという場合の精神と違っているじゃないか。こういうことをやれば、ますます東京、大阪、あるいは名古屋に、少なくとも中堅企業が集中せざるを得ない。根をおろしてしまう。大企業をだんだん地方に分散させなければ都市が行き詰まっておるというので、わあわあいっている。その際に、一番問題になるのは関連企業、つまり中堅企業が地方に育っていないということで、その育成ということをやっている。ところが、そういう中堅企業の地方への分散ということは何ら考えないで、逆に中堅企業は東京、大阪、名古屋にますます足どめをさせてしまう。そうして地方産業都市へ工業過密状態を分散させようということは、できることではない。そういうことに対する政策上の考えなり、あるいは法制上の考えなり、私は一つも統一してない法案だと思う。いまの答弁というのは、全く事務当局の便宜主役、ごまかし主義の答弁にしかすぎないと私は思う。そういう点について、地方自治体なりと十分なる調整がついておるのか、政府としてのはっきりした方針がついておるのか、大臣の答弁を聞いておきたい。   〔小川(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど久保田委員の言ったのと同じような理屈で、工業団地をどこにつくるのか。これもやはり地域格差とか、大都市集中を避けるということでしょう。ところが、さしあたって、全国といったって、東京、大阪、名古屋だけなんです。そういうような中小企業に対する基本的原則にも反するのです。
  60. 福田一

    福田国務大臣 私は、久保田さんのただいまの御質問は、地方公共団体がそういう経済行為関係のあることをしてはいけない、それは地方自治法と相反するではないかという御質問だと思うのでありますが、しかし、地方自治体でも、その種の経済行為を全然やってないかというと、たとえば電力事業をやっているところもございます。その場合に、電力事業をやって、その電気は必ずしもその地域だけに行っておるわけではありません。よその地域へ供給しておるような場合もあり得る。そのほかにも私は例はあると思いますが、自治体がそういう経済行為に一切関係してはいけない、または株を持ってはいけない、こういうことではないと私は思うのであります。また、時勢というものは順次変わっていくのでありまして、必要に応じて地方公共団体が融通的な措置をとっていくということを禁止するのがいいかどうかということは、私は、これは議論の分かれるところになろうと思うのであります。法律というものは、何でも法があったならば絶対にそれは動かせないというものじゃございません。たとえば慣習法というものは、法律がなくても、法律と同じような効果をあらわす場合もあるのでありまして、法自体の解釈も、その時代の推移に応じてある程度は変えられるということが、いわば融通性のある政治だろうと私は思っておるのであります。それが完全に原則と相反するということであれば、これはいけないでしょう。しかし、地方公共団体が自分の地域内における中小企業の育成ということに金を出すことがいけないという原則は、成り立たないのではないか。  そこで今度の問題は、前に返ってまいりまして、東京や大阪やあるいは多古屋におけるそういう会社が、投資をしない府県の中小企業利益を均てんさせるということの是非の問題が出てくるわけでありますが、私がいままで見ているところでは、どの府県でも、中小企業の育成ということにはそれぞれ非常に関心を持っておられますから、おそらくはこのうちの、たとえば東京に加盟するか、あるいは大阪の方に入るか、あるいは名古屋に入るか、あるいは三つの全部に入るか、そこいらはどういう形で出るかは知りませんけれども、自分のところの中小企業を育成するためには、応分の金を出してくださる、そういうふうな措置をとられるものであると私たちは考えておるわけでありまして、そういう点でも、事実上はあまり不便もないし、また、法制上もそういうことができるものであるという観点に立って、私はこの法案提出いたしておるわけであります。
  61. 久保田豊

    久保田(豊)委員 いま私の質問しているのと焦点が違う。地方自治体なり国なりが、いわゆる民間企業に対して金を出して悪いということはないわけです。しかし、それは公益性というものを考えて、ちゃんと出し方の形がきまっておるわけです。出資ということについては、地方自治法にはっきりした規定はありません。この出資をする場合に、こういうふうな、将来は民間に移すんだ、要するに、採算ベース、商業ベースに乗せるんだ、そういうものに出資という形で乗せることがいいのかどうか、地方自治体の金を出すことがいいかどうかという問題なんです。それならば、地方自治体でもって出資したものに対しても、国の、中小企業金融公庫の出資分についてと同じように、詳細な保証規定があるべきである。ところが、地方自治体の出したものについては、何も保証規定はないじゃありませんか。うまくいったときにも問題は起こります。しかし、同時に、へたにいって、全部この債権というものが無価値になった場合に、どうしますか。最近では、ほとんど法律上のはっきりした明文に基づかない出資分が、非常に道路関係とかその他によけいになっている。あるいは今度新産業都市なんというものをやるという場合には、事業団というものができて、その事業団には、当然府県なり市町村なりが出すということになるでしょう。その場合においても、この明確な規定というものはない。こういう点について、政府部内における便宜主義で、一つも一貫した方針がない。一貫した方針があれば、はっきり法律で明文を規定すべきであります。してないから、この点に関してどういう考えを持っておるかということが一つ。  もう一点は、国がせっかく一カ所に千五百億という銭をかけて工業の過密状態というものを分散させようというか、つまり地方分散という政策をとっているときに、こういうふうに東京、名古屋、大阪の三つだけにやってしまったのでは、ますます過密地帯を過密にするような政策になるのじゃないか。その点の調整が一つもついていない。いろいろありますが、東京で出したものも、どこでもかまわぬ、管轄区域はきめない、どこでも出すといったって、これは東京の都なり何なりが、そんなに簡単に承知するわけがない。あなた方がそんなことを言ったって、都民からいえば、自分たちが出す金が他県の中小企業に投資されることを黙っておるわけがないと思うのです。特に中小企業の支店とか、あるいは工場とか、分工場とか、そういうところにいく可能性はない。むしろ新産業都市なり何なりで大きな工場なんかを分散させるには、それを培養させる、つまり関連の中小企業の健全なものが、地方で発達することが必要なんです。そうすれば、そういうところから当然金が出てくる。そういう地方自治体が金を出すということは当然でしょう。その金の出し方が問題であるということが一点と、そういう基本の政策等がちぐはぐじゃないか、この点はどうするのか。そういう点が一つも、中小企業対策としても国の全般の対策と調整がついておらぬじゃないかということを、この前からお聞きしておるわけです。この点はどうなんでしょう。
  62. 福田一

    福田国務大臣 前段の地方自治法との関係は、法律問題でございますから、法制局から答弁させたいと思います。  後段のお話の、三つの都市にこういうものをつくるといったら、そこにばかり中小企業をますます育成させることになりはしないかということでございますが、先ほどもわれわれが申し上げましたように、各府県がやはり応分の出資をしてくれますし、したがってまた、この法律ではどこにでも融資ができるということになっておるのでありますから、そうすると、二十万円しか出資しないで百万円持っていったのではひどいとかなんとかという議論はあるいは起こり得るかもしれませんが、しかし、そういうことを言い出したら、もうなかなか際限がなくなるのでありまして、東京都でつくった宿泊所へよその県の者が来て泊るのはおかしいじゃないか、オリンピックをやるのは東京で、東京の人だけが使ったらいいじゃないか、これは極端な例を申し上げて恐縮でございますが、そういうものではない。やはり地方公共団体というものは、ともに相助けつつ国全体の利益の面も見ながらやっていくということが、当然その公共団体の中に含まれておる。これは便宜に区域を分けているだけでありまして、国全体の利益を増進するというための地方自治体であろうと思うのであります。そういう点から考えてみますと、それほど厳重にこの問題を取り上げることも――実際問題として、私はこのようなものに東京の人がたくさん出すといえば、それはおもなものは東京へいくということはあるでしょうが、しかし、やはり地方へももちろん出資がいくようになるというように運用されるものであると、期待をいたしておるわけでございます。
  63. 久保田豊

    久保田(豊)委員 いまの点は、はっきりした法的な規定なり何なりをせずに、運用、運用という、その運用が、非常にある意味においては危険を持っているわけです。公金を扱うのですから、実際問題の運用というところに逃げるところに危険性があるわけです。うまくいったときも問題が起こる。たとえば地方自治体の持っている株の処分をどうします。この会社がうまくいって、一株千円なら千円で受けたものが二千円も三千円もするという場合の株をどうするかというようなことは、地方自治体については何ら規定がないじゃないか。へたにやれば、これはまた地方自治体の混乱のもとになります。へたにいって、この会社が赤字、赤字ということになってくれば、株も無価値になりますよ。その場合の責任はだれがとるのか、こういう問題もいろいろ出てきますし、これと似たようなことが、各地に、いろいろなことに、最近は非常に強くなっておると思う。こういう点についての政府の確たる方針と、その方針に基づく法文の改正なり何なりをはっきりしなければいけないということを言っているわけです。いまのような実際の運用、運用で、当分の間は適当にやっていきますということでしょう。そういういいかげんなことでは、私はこの問題は解決しない、こう思うのです。
  64. 田中武夫

    田中(武)委員 ちょっと関連して。私は、大臣答弁のあげ足をとるわけではないのです。だがしかし、いまの大臣答弁で重要なことがたくさんありますよ。たとえば地方自治体は国の云々ということは、憲法の精神からいってどうかと思うのです。それからコモン・ロー、すなわち慣習法の問題も、法令運用についてカバーして――私は、何も地方自治法から出せないと言っているのじゃないのです。出したやつが地方自治法の精神に反するじゃないか、こう言っておるのです。大臣相手にそういう法律論はやめますが、そういったこと、ことに法律規定がなくても、弾力性がある――もちろん、時代に即応して解釈の幅を広げることはよろしいです。しかし、規定のないことをやるという考え方は、どうかと思うのです。ことに憲法との関連があるような考え方については、聞き捨てならぬと思うのですがね。
  65. 吉國一郎

    吉國政府委員 地方自治法に関連いたします法律問題につきまして、前回の委員会におきまする論議を私聞いておりませんので、あるいは的をはずれたお答えを申し上げるかもしれませんが、その場合は、御指摘によりましてさらにお答えいたしたいと思います。  地方自治法によりまして、地方公共団体、都道府県なり市町村なりが、一定の民間会社、株式会社に対して投資ができるか、その株式を保有することができるかということが、質問の第一点でございましたが、地方公共団体は、国と同様に、公法人として非常に広い、一般的な権利能力、行為能力を持っておりまして、地方自治法の第二条の規定によります地方公共団体の目的の範囲内におきましては、その目的を遂行するために、あらゆる法律上の手段を講じ得るというのが、現在の考え方でございます。先般、あるいは中小企業庁のほうから申し上げたかもしれませんが、第二条第三項で地方公共団体の事務を例示しておりますが、その中で、産業振興というようなことがあげられておりますが、その産業振興という事務を処理するために、種々の法律上の手段を講じて事務を処理してまいるわけでございますが、その一つ方法として、あるいは民間に対して貸し付けを行なう、例示いたしますれば、現在ございます中小企業近代化資金の貸付けのごときはこれでございますが、また、会社を設立して、この会社に出資をして、会社活動を通じて産業振興をはかるということも、地方公共団体のとり得る範囲内のことであるわけであります。このようにして出資をすることは、一応でき得ると考えられるわけであります。  第二に、たとえば甲乙丙という三県が出資して中小企業投資育成会社ができたという場合に、甲乙丙の三県に所在いたしますような中小企業の株式を取得することは、問題ないと思います。ところが、甲乙丙という出資者でないという府県に所在する中小企業の株式を取得できるかというのが、問題の第二点であろうと思いますが、この場合、甲県なり乙県なり丙県なりの出資いたしました目的が、それぞれ甲乙丙三県内の中小企業振興というために、政府が設けましたこのような会社に出資をして、その会社を通じて自己の県内に所在いたします中小企業の株式を取得してもらい、それによって当該中小企業の自己資本の充実を促進して、ひいてはその県内の産業振興しようということでございますが、かりにそこに出資しておりません丁なる興の中小企業に出資をいたしました結果、甲乙丙の各県の出資の目的が阻害されるというようなことになりますならば、これは中小企業の投資育成会社を設けましたことからいいましても、先ほど申し上げました地方自治法の精神から申しましても、やや範囲を逸脱することはあるかもしれません。あくまでも甲県、乙県、丙具なりが出資をいたしましたのは、自己の具内、甲乙丙の県内にございまする中小企業の育成をはかるということでございますので、その中小企業の育成をはかるいう目的が達成できないように、丁県に所在いたしまする中小企業の株式をこの八会社が取得する結果、そういうことになるというような場合には、これは、この投資会社がそういうような株式の引き受けをいたすことは相ならぬと申すべきだろうと思いますが、実際問題といたしましては、その出資いたしました三県以外のところに出資をすることは、この三県の出資目的に違背するというような結果を招来することは、まあ万々ないと思います。ただ、極端な場合を申し上げますと、地方自治体が三分の一までは持ってるわけでございますので、かりに東京都なら東京都が三分の一持ったという場合に、他の神奈川県なり、あるいは横浜市なり、千葉市なりが全然持たない――まあそんなことは考えられないと思いますが、かりにそういう場合がございましたときに東京都以外の株式を取得すること、ができるかと申しますと、残りの三分の一は中小企業金融公庫でございますし、残りの三分の一は民間でございますが、この三分の一という出資をいたしました東京都の見通しが非常に誤まったというような結果になるようなことは、おそらくこの会社としても運営して参らないということに相なると思います。  それから第三点といたしまして、地方自治法によってそのような取得ができたとしても、その結果が非常に値上がりしたという場合にどうするかとか、あるいはこの投資会社の株式が非常に価値が下がってきた場合にどうするかというお話でございましたが、もともと出資をいたします場合、この中小企業投資育成会社に都道府県なり市町村が出資をいたします場合には、それぞれ都道府具の議会あるいは市町村の議会の議決を要するわけでございまして、そこで出資をすることが適当であるかどうかについて、当該議会において慎重に御検討に相なることと思います。また、その結果が非常に値上がりを来たした場合に、もう自己の県内あるいは市町村内においては、中小企業に対する投資を手控えてもよろしい、もう完全に資本の充実がはかられたという認定のもとに、この株式を他に売却するということも、これはあり得ましようが、その渇く口においても、やはり地方自治法によりまして、都道府県なり市町村の財産の処分でございますので、議会の議決を要することに相なりますので、十分な自治体内部における監督によって、疑義が生ずるようなことはないと考えられるのであります。それに関連いたしまして、この会社業務の通常につきましても、事業に関する規程の中で相当詳細に規定がされることとなる予定でございますので、その点は、政策問題でございますから、私が申し上げる限りでございませんが、先ほどの会社三社の業務の区域をどうするかという問題でございますが、これも必要がございますれば、会社事業に関する規程の中で規定をして、相互に重複することがないように、あるいは相互に食い違いが生ずるようなことがないように、調整が十分はかられると思います。これは、政策的にそのような決定がなされました後において、会社通商産業大臣の認可を受けて定めなければならない規程の中にそういう事項を盛り込むことによって達成できる、そういうこうに私どもは考えております。
  66. 田中武夫

    田中(武)委員 私の関係しておる点は、答弁第二点です。答弁第二点の前段は、けっこうです。さすがに法制局らしい回答です。だが、後段は必要ないです。これは法律解釈でありません、であろうということです。地方自治法第二条の一番頭にかぶっておるのは、「地方公共団体は、法人とする。」二項で、「その区域内におけるその他の行政」云々となっているのです。その区域内ということになっているのです。したがって、東京都の出資する金は、あなたおっしゃるように、基本原則にのっとってできます。だがしかし、それが他の府県のほうへ使われるということは、二条の「その区域内」というのに反する。あなたは甲乙丙丁の例をあげましたが、そのとおりなんです。したがって、先ほで来私が言っているような点で、一体どう運営するのか、こういうことになるのですが、これは地方自治法との問題、ないし地方行政委員会、ないし自治大臣、自治省、これとの関係がはっきりしない限り、これ以上審議は進められません。法律でもはっきり結論が出たのだから……。
  67. 逢澤寛

    逢澤委員長 それでは暫時休憩します。    午後零時四十六分休憩      ――――◇―――――    午後二時二十二分開議
  68. 逢澤寛

    逢澤委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  中小企業投資育成株式会社法案についての質疑を続行いたしますのでありまするが、まず、休憩前に行なわれました田中武夫君及び久保田豊君の質疑に対する政府の答弁を聴取することにいたします。吉國法制局第三部、長。
  69. 吉國一郎

    吉國政府委員 午前中問題になりました点につきまして、休憩中、自治省及び通商産業省の当局と協議を行ないまして、ほぼ統一的な見解を取りまとめましたので、それについて御説明申し上げます。  問題になりました第一点は、地方公共団体が株式会社の株式を取得できるかという点でございますが、その点につきましては、午前中にも申し上げましたように、地方公共団体の地方自治法によって与えられました目的の範四内におきまして、いかなる法律上の手段をとるかということは、公法人として完全な権利能力、行為能力を持っておりますので、あるいは貸し付けの方法をとる、あるいは出資の方法をとるということはあるわけでございまして、当然産業振興に関する目的を達成するために、場合によっては株式会社の株式を収得するということも可能であるというふうに考えております。  それから第二点の、この中小企業投資育成会社に対しまして、ある都道府県が出資をした場合に、その出資をしない都道府以内の中小企業の株式をこの会社が引き受け、それを保有することはできるかという点でございますが、この点につきましては、けさほど申し上げました例を同じくとりますと、甲乙丙という都道府県が出資をいたしました場合に、丁という都道府県内の中小企業に対して投資ができるかということでございますが、この場合も、この会社業務といたしましては、一応丁の区域内の中小企業の株式を収得するということも可能である。しかし、この中小企業投資育成会社が甲乙丙の三府県から出資を受けております以上は、甲乙丙の三府県内の中小企業に投資することをこの会社業務運営上優先的に執行してまいるということは、その甲乙丙の三府県の出資をいたしました目的を達成するために、実際問題としては要請されると存じまするが、出資をしておらない丁という都道府県の区域内の中小企業に投資をすることが不可能であるということはないと考えております。
  70. 逢澤寛

    逢澤委員長 引き続き、質疑を許可いたします。田中武夫君。
  71. 田中武夫

    田中(武)委員 いまの法制局の御見解ですが、不可能ではないというだけではちょっともの足りないので、その根拠をひとつ聞かせてください。
  72. 吉國一郎

    吉國政府委員 甲乙丙の三府県が出資をいたしまして、この出資をいたしました目的は、それぞれ甲乙丙の三府県内の中小企業の株式をこの会社に取得してもらい、保有してもらうことが、自己の区域内の中小企業の自己資本の充実、その健全な成長発展をはかるという趣旨にかなうわけでありますが、それは、この中小企業投資育成株式会社ができ上がりましても、甲乙丙の三具のみを目的とするということはないわけであけでありまして、中小企業投資育成株式会社は、この法律に書いてございますように、東京を本店とするものでございますならば、東日本の範囲内における中小企業に対する投資及びその育成をはかるという目的でございますので、会社ができ上がりました暁は、そういうことに相なります。ただ甲乙丙の三具から出資を受けておる。甲乙丙の三具は、自己の区域内の中小企業にその中小企業投資育成会社が投資をしてくれて、その結果として自分のところの中小企業の健全な成長発展がはかれるということを意図しておるわけでございまして、あくまで重点的にはこの甲乙丙の区域内の中小企業ということに相なると思いますが、この会社の目的といたしましては、丁なり戊なりという、出資してない地域の中小企業に対する投資ということもできるということでございます。
  73. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、やはり法律的に根拠のある答弁をしてもらいたいのです。できるというだけではいけないのです。積極的な点でいうならば、たとえば地方自治法の二条二項の区域内というのは、いかなる読み方をするのか。あるいは同法九章三節支出の各条文との関係、そういうことについてはどうなんです。
  74. 吉國一郎

    吉國政府委員 地方自治法の節二条第二項なり財務の規定につきましては、ここに自治省の財政局長が出席しておりますので、そのほうからお答えいたします。
  75. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 第二条第二号の読み方に一つの疑問を抱いておられるように拝聴いたしたわけであります。第二条では、普通地方公共団体は、その公共事務を処理する、こう書いてあるわけであります。さらに正確に言いますと、公共事務と委任事務とその区域内のその他の行政事務でございます。公共事務という場合には、住民の福祉の増進に寄付するような事務、投資育成会社に出資するということが、住民の福祉の増進に寄与いたしてまいりますならば、この第二条の条項に合致する、こう考えるわけでございます。その投資育成会社がどういう範囲に活動していくか、これは投資育成会社のきめることだと考えるわけであります。その活動が、出資した団体の住民の福祉に何ら寄与しないということであれば、出資が適当であるかどうかが疑問になってまいるわけでありますけれども、その投資育成会社活動が出資した団体の住民の福祉の増進に寄与してまいります限り、その活動が出資団体の区域外に広まりましょうと、それは問題にはならないことであろう、かように考えておるわけでございます。
  76. 田中武夫

    田中(武)委員 二百二十八条以下、九章三節の各条との関係は……。
  77. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 地方団体の支出が当該団体の区域以外に影響を及ぼすような支出であってはいけないというような性格の規定は、どこにもないわけでございます。たとえば地方団体の子弟の勉学に寄与するために、東京に学生寮を設置している場合もあろうかと思うのでございます。あるいはまた、地方団体が九磁力会社の株式を現に取得いたしております。いままで地方団体が電力卒業を経営しておった。それが戦争中の電力統合によりまして、その統合された会社の株式を取得することに変わったわけでございます。それが今日までも続いておるわけでございまして、増資のつど、地方債の許可もいたしておるわけでございます。地方財政法に、地方団体が出資をいたしまする場合には地方債を許可することができるように書いてあるわけでございますけれども、そういう対象にも含めてまいっておるわけでございます。
  78. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほども発電ということを例にあげられたのですが、これは公共事業なんですね。この投資育成会社業務というのは、公共性がありますか。広い意味ではあるかもわかりませんが、その対象になるのは個々の企業なんです。その点はどうですか。
  79. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 地方団体の最近の活動がだんだん活発になるにつれまして、積極的に住民の福祉の増進をはかろうというようなことから、かなり経済的な活動の範囲を広げてまいってきておるように思うのであります。一番手っとり早い話は、たとえば信用保証協会に出資いたしまして、信用の拡大に努力いたしておるわけでございます。あるいはまた埋め立て事業をやりまして、立地条件のよい公共川地を造成する。そうして工業を誘致する。それらを通じまして自分の団体内の経済活動を活発にし、住民の所得の増大に寄与しようというようなことで努力をしてまいっておるわけでございまして、いま投資育成会社をつくって、そこで基礎の弱い会社の株式を収得する。そしてその会社の自立的な活動を盛んにならしめ、そのことはひいては関連産業を盛んならしめ、その地域の経済活動を活発にするということになり、住民の福祉の増進にはね返ってくるのじゃなかろうか、こういうふうに私どもは判断をいたしておるわけでございます。
  80. 田中武夫

    田中(武)委員 地方自治法の二条には、基本原則をうたっている。私は、金は出せないのだとは言っていないのです。出し得る、こう考えておる。それはそのとおりなんです。そしてこの二百二十八条以下に、地方自治体の支出のことについて規定がしてある。したがって、たとえば東京都が投資育成会社東京本社に出資することは、私はかまわぬと思う。しかし、そこが今度東京都以外のところへ事業を伸ばすときには、そこはあなたは中小企業投資育成会社のやることであって、そこで地方自治法との関連性は切れるのだ、こういう答弁だったと思う。まあそれは私もわからぬことはない。と同時に、たとえば二百三十一条ですか、寄附又は補助ということで、こういう規定があるのは、いわゆる基本原則によって、こういうものは出したらいいのだ。そして特に支出の面においてこまかい規定を盛っておる。しかも補助金と寄付金、こういうことはかまわないのだと書いておるという裏を読むと、みだりな出資をしてはならぬというように読めると思うのですが、そのような関係はどうなのです。
  81. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 最初に具体の例で申し上げますと、日本住宅公団法がございます。日本住宅公団に、地方団体が相当数出資いたしております。住宅公団の活動は、当該団体だけではございませんで、相当の範囲に及んでおるわけでございます。なおまた、出資の点については、地方財政法の第五条に地方債の対象の事業をあげておるわけでございます。その中に、特に出資の規定を置いてあるわけでございます。地方財政法の第五条の第一項二号でございます。したがいまして、出資ということも、地方団体の活動の一態様として法律規定しておるということでございます。
  82. 久保田豊

    久保田(豊)委員 問題は、公共事業という範囲ですね。これはいまのようなあれからいくと、地方の産業を盛んにして、それによって一般のあれということになれば、これは一般的になるわけなんだね。しかし、公共事業という以上は、――それはどんな私企業といえども、その私企業が盛んになって、その地方の人が、たとえば就職の点、あるいは仕事がよけいになるだろうという点で利益を受けることは、これは当然ですよ。そういう場合に、無制限に出資ができるというものじゃなかろうかと思う。公共事業というものと私企業というものとの限界ということが、非常に最近はぼやけてきておる。そうして同時に、問題は、出資をした先についての監督権なり、指導権、あるいは関与権とか、そういうものとか、あるいは――出資をした金は、いずれにしてもそれは公金です。その公金の保護に対してはどうするのか。あるいはその果実が出てくる、あるいは損失が出てきた場合に、 そういったものの処理をどうするのか。これは、地方団体について非常に大きな関係を持ってくると思うのです。こういうものについての最近のあれは、非常にぼけてきておるように思うのです。ですから、いろいろ問題ができるのだ。ですから、私の知っているある温泉場ですが、そこの温泉場のボス連中が、主人連中が、ロープウエーをつくったのです。ところが、そのロープウエーが、計画が間違っておったので、赤字でどうにもならぬ。ところで、今度は借金をしなければならぬ。その場合の借金の保証を町がした。こういうべらぼうなことができてくる。それに類したような仕事が、次々にできてくる。聞いてみると、赤字でしょうがないから、まず第一に保証ということだけを――これは金を出すのは保険会社らしい。ところが、その保険会社から、町の保証がなければだめだと言われて、町議会のボス連中がそういうことをして、ほかの連中は知らぬものですから、無理押しをしそうなところなんです。いまのところ、私どもはそれに文句を言ってやっておるのだが、その次は何かというと、町へ移してしまおうではないか。もともと赤字のものを、それを町に移してしまおうという形ですね。ところが、それはどうかというと、温泉地ですから、そういうレクリエーション設備があれば、客が来るという名目です。それは悪くいった場合の例です。よくいった場合は、ある道路公団が非常にもうかっている。予想よりも四倍も収入がよけいになる。それで、今度はその施設はどうかというと、それは県がやはり保証して金を出している。あるいは一部出資をしておるようだ。そうしておいて、その裏ではどうかというと、町村から五十円くらいでもって土地を何百町歩というものをやって、それを今度はそれとうらはらの会社をつくって、それを全部町に移して、五十円でとった土地が五千円もしている。それで役人というか、地方のおも立った連中はどうかというと、会社と公共事業みたいなもの、この事業と、両方の役員をしている。だから、もうかればかってに利益を取ってしまうということになりがちだ。こういうふうなことが次々に起こってくる可能性がある。これだってそういう危険はあると思うのです。したがって、そういう場合には、地方公共団体が出費する公共事業というものはどういう性格のものかということと、その公共小業に対する地方公共団体の責任はどうか、責任の限界というものを明確にしなければならぬ。同時に、監督というか、関与というか、そういう点を明確にしなければいかぬ。果実が出た場合、あるいは損失が出た場合に、これに対しまするはっきりした処置がなければ、いまのように、いろいろのそういう事業に、めちゃくちゃにこの二条の公共専業という解釈をかってに広げてやるということは、私は納得できない。そういうことをやれば、公共団体はそのこと自体から乱れる。これは当然です。そういうことについては、この法律においても、国の出したものについては――国の出したというのは、中小企業公庫が出資した分ですが、これについては、一条はっきり設けて、こまかい保護規定というか、取り扱いの原則を立てておる。ところが、それと同額もしくはそれ以上を期待しておるという地方団体については、何ら規定がない。あとは地方村政法なり地方自治法によるというだけです。これじゃ何もはっきりしない。この法案だけじゃないけれども、こういう点について、もっと突っ込んだものを、当然国の政策としてこれはやらなければならぬ。そうしなければ、地方自治体というものは、いまの体制でいけば、だんだん独占資本になり、あるいは独占資本の間接の手伝い役になってしまう、こういうことにならざるを得ない。しかも、その結果は、非常に不明なものが出てくる。地方自治体をますます悪くする結果になってくる。ただ、法律の何条によって、拡張解釈すればこうできますというようなことじゃないと思う。まあ当面法律を改正しないということになれば、公共事業の範囲をどうきめるか、いまのあなたのように、ただ地方住民といっても、これによってやる会社はどれくらいかというと、少なくとも対象会社は、法律的にいえば全部で十五万幾らあるわけです。――もっとよけいある。六十万ぐらいある。そのうちで年に百はいかないわけです。当初一画では、二十五と二十五と十五というんですから、大体において六十五しかいかない。これをいわゆる一般住民と見れるかどうかということが問題だ。投資会社がかりにうまくいったにしても、そういう少数のいわば私企業的なものに投資をするもの、これは数からいったら、中小企業対策にならぬと私は思う。大臣の答弁は、最初はしょうがないから、新しく今度ぼつぼつやって、うまくいったらでかくする、こういうことですが、しかし、この全体の構想は、少なくとも法律的に該当する対象企業というものは、うんと数が多い。しかし、せいぜい千くらいしか考えておらない。そういう千の中小企業に地方公共団体なり国の金を出すなら出していいですけれども、それには明確な一つ理由づけなり、それに対する規定というものがなければいかぬと思うんだ。ところが、それが何もない。こういうあれでは、ただ単にこの解釈をどうするとかこうするとかいった法律上の技術解釈の問題でない。そういう点についてひとつも――実はあなたはせんだっておらなかったから、あなたの下の課長さんに聞いてみると、出してもいいし、出さぬでもいい、禁止の規定もない、出していいという積極的規定もない、こういう電話の返答だった。そういうあやふやなものに依存して地方の産業開発なり産業助成をやっていくということは、私は間迷いだと思う。それならそれではっきり補助金なり何なりということで明確にして、全部損がいっても何があっても間違いないということにして明らかにするのが、行政の一番根本になると思う。こういう点については、まず、公共事業という解釈をどう解釈されておるか。ただ単に住民の利益になるということでは、じゃ住民の利益にならぬ事業があるか、それぞれ即応を立てれば、どんな個人企業といえども住民の利益になる。住民の利益になるから成り立っている。もし公共事業と非公共事業との区別をつけるとすれば、だれがつけるのか、何を基準にしてつけるのかということを明確にしなければならぬ。どんな事業だって、需要のある限り、いわゆる公共の必要に、ある意味で地方住民の利益に直接、間接役立っていることは間違いない。こういう点の解釈をまず第一点に伺いたい。  それから立法政策として、いまのようなあやふや基準でやっていくことがいいかどうかということです。  それからもう一つは、この会社をどう理解するのか。いま言ったように、対象は、少なくとも法律上の対象ではなくて、通産省の考えている対象としても、これは製造業でやるということになれば、製造業は、日本には十六万ある。そしてその合弁会社がある。そのうちで、これの対象になるのは一万一千くらいしかない。そのうちのこれでもって直接やるのは、十年くらいたってから千くらいの目標だ。とりあえずは六十五か七十の事業しかない。そういうものに地方公共団体がどんどん金を出す。しかも、それに対しては何ら明確な規定も何もなしに、国が出すからしかたがない――この法律には、国の出資分の取り扱いについては、かなり厳格な規定がある。しかし、その見返りの裏は何かというと、関与権を非常に強くしておる。その関与権の見返りとして出しておると見ても差しつかえないように思える。ところが、地方団体については、関与権その他は、普通の株主権行使以外には何もない。そういうのをやることはおしかいと思う。この点について、いままでどれだけやっておるか。これはそういう点についての言いわけではなくて、基本の考え方を検討しておるならば、検討してあるようにはっきり出してもらいたいし、検討してなくて、これから検討しますなら検討しますでよろしい、はっきりしてもらいたいと思います。
  83. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 久保田さんの地方団体のことについていろいろ御心配していただいている結果のおことばは、私も、ごもっともな点が非常に多いと拝聴いたしました。  地方団体が経済的な活動に入ってまいりますと、それが私益に属するか、公益に属するか、なかなか判定のむずかしい問題だろうと思います。しかし、基本的には、地方団体の活動の是非について議会が設けられ、その議会の判定にゆだねられているわけでございますので、議会の認定したところでそれを判断するよりいたし方がないであろう、こういうふうに考えているわけでございます。具体の例を申し上げて恐縮なんでございますけれども、東北の湯沢市でございましたか、その辺の地域だったと思うのでありますが、ばく大な陶土があるけれども、これがなかなか企業化されない。そこで、市が出資してタイル会社を設立したことがありました。それを地元で処理する方が、陶土のままで関西方血に送っていってそこで企業化するより、地域の産業発展に役立つし、住民の福祉の増進にも寄与する、こういう判断でやったようであります。タイル会社に出資をしてそういうような製造工業を始めることが、はたして公益に属するのか、私益に属するのかという議論も出てくると思うのでありますが、そこはやはり議会の判断にゆだねるよりいたし方がないのではないか、私たちとしてはこういうふうに考えているのであります。事経済活動でありますので、その経済活動がさらに公益に寄与するのだから、積極的に地方公共団体が自分の行為にしていくのだ、こういうことになってくるんだろうと思います。そこで最近は、先ほど来申し上げましたように、そうい行為がかなり多くなってまいっております。出資という行為が多くなってきております。出資した先についても、地方公共団体が深い関心を持つべきである、また持たせるようにすべきではないかということで、先年地方自治法を改正しまして、地方団体が出資をした先につきましても、その出資額が総資本の四分の一をこえています場合には、監査委員が監査できるのだ、こういう規定を設けたわけであります。したがいまして、相当な出資であります場合には、地方団体が、将来にわたりまして、その会社活動がはたして住民の福祉に寄与しているかどうかということについて深い関心を持っていける、そういうような体制をとることにしたわけでありますが、出資の点につきましては、将来とも、いたずらに私益をはかるというようなことのないように、私たちのほうで十分な留意をしていかなければならないと考えております。  いまの問題になっております法律案につきましては、御指摘のように、中小企業金融公庫の出資でいいかどうか、われわれもかなり疑問にした点であります。国が積極的に出資すべきでないかということも、いろいろ議論したわけでございますけれども、いろいろな事情がありまして、こういうかっこうになっているわけでございます。こういうかっこうになりましても、私たちといたしましては、やはり地方団体がいろいろな行政を総合して主管いたしておるわけでありまして、先ほど信用保証協会のことを申し上げたわけでありますけれども、そういうことだけでなしに、いろいろ産業の助長に関連するような仕事もやっているわけでありますので、地方団体がこういう形をもってそれらの企業活動に深い関心を持つ、そのことが、いろいろそれらの企業発展に役立てていくことができるのではないか。だから、地方団体がこういうことを希望するなら――この出資は地方団体が希望し、議会の議決を得て初めてできる行為になっておりますので、希望するなら、そういう道を遊ぶことにしておくことが、これまた一つ方法ではなかろうかというふうな判断をいたしまして、自治省としても賛成をしたというような経過になっておるわけでございます。
  84. 久保田豊

    久保田(豊)委員 地方議会の判定にまかせる、これはちょっとおかしいじゃないか。なるほど、それは確かに民主主義だから、地方議会の判定にまかせるといえば、一つの言いわけにはなる。しかし、ほかのいろいろな国の事務なり地方行政の専務は、大体においてそういった議会の判定をする場合の基準というものを間違いのないように示して、そうしてそのワクの範囲をこえて判定をするという基準がないのです。その基準が、公共事業というようなことで、そして地方住民の利益になるものということで、解釈はどうでもなる。ですから、これこれの事業は公共事業として見て、公益性を十分に持っていかなければならないとかなんとかいう基準を与えるということは、これは当然のことだろうと思う。それなら、ほかの面において地方自治体を自由に脚放しにしておるかというと、そうではない。ほとんど地方団体が身動きのできないようにあらゆる面から縛り上げておいて、こういう面だけはきわめてぼけて、かってに地方自治団体の議会が認定をすればいいというような、ばかなやり方は私はないと思う。特に、これは私益と公益の違いというものの判定が非常にむずかしい。そうしてしかも、これは利権にからんだりいろいろなことにからみやすい事業が大部分です。それならばこそ、そういうことについてははっきりした基準一つ示して、そのワクの範囲において地方議会の判定にまかせるというのが、これは当然だろうと思う。ところが、特にこの面については穴をあけてあるというふうに私らは考える。  それからもう一つ、これらに対する監督というのは、監査の対象になるけれども、監査の対象というだけでは、これは話になりませんよ。監査なんというものは、あとでへたにいったときに文句が出るだけの話であって、これの運営その他がいろいろ問題になる。そういう場合に、監査ではなくて――そうして監査が出て、監査の結果がまずく出たって、これはおそらくしりぬぐいはできない場合が多いのです。ですから、私は、そういう点については、もう少し、地方自治体自体が何らかの出資をするという以上は、これはくれてやった金ではありませんから、出資をした金ですから、そういったものに対しては、個々の法律なり、一般的な保護規定なり、取り扱いの規定なり、これを明確にすることが当然じゃないかというふうに思うわけですが、この点はどうです。
  85. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 第一点は、公益の範囲を明確にしろ、こういうことであったようでございます。私たちは、地方団体の活動をあまり硬直的に規定してしまうということはいかなるものだろうか、こういう心配をいたしておるわけでございます。むしろ適当でない活動がございました場合には、助言の規定を活用いたしまして、積極的に勧告をするというような方向をとるほうがよろしいのではなかろうか、こう考えておるわけでございます。なおまた、出資の財源を地方債に求めるような場合には、許可権限を持っておるわけでございますので、ここで、こういうのなら許可になる、こういうのは許可にならないというけじめ、これはだんだんと許可の実績を通じて地方団体にもわかってまいってきておる、こう考えておるわけでございます。  第二点は、監査するだけでは意味がないじゃないかというお話でございました。監査した結果は、御承知のように、これは議会にも報告をすることになっておるわけでございます。その結果穏当でないということになりますならば、出資先に出しておる役員について注意を喚起するなり、役員の更迭を考えるなり、その出資先の活動を地方団体が期待しておるような方向に向けさしていくということが可能である、こういうように存じておるわけでございます。
  86. 中村重光

    中村(重)委員 そこで、樋詰長官に私はお尋ねするのだけれども、今の質疑の中から疑問が出るのは、私が、先日の委員会で、中小企業金融公庫が優先株だ、これについては注文できわめて明確に保障があるわけですね、ところが、地方公共団体の出資分に対してはその保障がなくて、第二義的な扱いです、これでいいのかという質問に対しては、今まで、東京、大阪、名古屋、そういう関係の財界の人たちと話し合いをしたところが、自分の県の中小企業者振興、育成に役立つのだから、これに対しては差しつかえないというような意見だということだった。  ところが、いま議論されたのは、この投資育成会社に出資をしない、その株を引き受けない他の府県の中小企業者の株を引き受ける場合、これは、事情は私は違ってくると思う。私の質問に対するあなたの積極的な答弁は、自分の県の中小企業者振興、強化に役立つから、節二義的に扱われてもやむを得ないのだということです。よその県の中小企業者、そういうものの振興ということになってくると、事情が私は変わってくると思う。だから、あなたのこの前の答弁は、きわめてあいまいになる。もっと明確にしてもらわなければ困るわけです。また、奥野局長とされても、あなたの答弁されている地方住民というのは、当該府県の地方住民というのが一応考えられるわけです。いまの問題は、他の府県がこの投資会社に出資していない府県の中小企業者に対してその株を引き受けるという場合になってくると、いまの地方住民の福祉という問題と事情が変わってくるのだ。そういう場合でも差しつかえないというふうにお考えになっておるか、そういう場合も予想してこれに賛成されたのか、その点をひとつ伺ってみたいと思います。
  87. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 国の株式と地方庁のほうの株式との間に取り扱いに差があって、国のほうが非常に保護の度合いが強い、県の場合は万一の場合のしりぬぐいをかぶせられやしないかといったような御懸念をお持ちのようでございますが、これは、この前の審議の際に申し上げましたが、国が出しておりますのは、これはいわば一種の確定利付債券のようなかっこうで、しかも将来利益があった場合に、その利益の中から消却する。利益がなければ、これは当然にいつまでも政府は持たざるを得ない、配当も受けられないということでございます。それで、われわれといたしましては、国民経済上、産業構造の高度化に役立ち、また国際競争力の強化に貢献するといった業種の中から、将来妥当な長期的な設備計画を有し、現在の技術陣、経営陣といったようなものも、人的要素も十分であり、あるいは収益の状況その他から見ても、将来大体うまくいくであろうと思われるものを取り上げるということでございますので、大体政府関係の持ちました株につきましては、将来五、六年たてば配当もできるようになりましょうし、やがて利益をもって消却されるということになろうか、こう思いますが、その際にも、あくまでも額面に対して消却をし、配当を受けるということにとどまり、それ以上の利益につきましては、これは地方庁並びに民間の株主の方々に全部帰属させるというようなことをやっているわけでございまして、この選定が非常にまずくいきまして、会社が赤字にでもなるというようなことになった場合、その場合には、あるいは県の方にもいろいろ御迷惑をかけることがあるかもわかりません。その際には、国の方も、利益がないのでございますから、全然同じ条件であるということになります。われわれといたしましては、この会社がうまくいくように十分な選定をいたしてまして、そして国も返していただき、またこの出資をしていただきました地方庁、民間に、国には六分五厘なり額面だけしかいかないわけでございますが、それ以上の配当がいき、またかりに残余財産の分配といったような場合にも、額面の二倍、三倍といったような残余財産が分配されるというふうに運営をしていきたい、またそれは十分に可能であろうというふうに考えておるわけでございます。それで一番の問題は、相手方の選定の基準というものを明示させる必要があろうか、こう思いますが、これにつきましては、事業規程に、まず第一にどういう選び方をするかといったことを明示するということによりまして、出資をしていただきます地方公共団体、あるいは民間の方々に対しましても、御納得いただいた上で、この会社の目的達成に御協力いただけるようにというふうにやっていきたいと思います。
  88. 中村重光

    中村(重)委員 奥野さんの答弁はあとから伺いますが、今のでは、私の質問に対する答弁にならないのですよ。私の言ったのは、地方自治体の債権確保ということは、この中小企業金融公庫と比較いたしまして、第二義的になっているわけですね。それで納得するのか、それでよろしいのかという私の質問に対しては、関係都道府県といろいろ話し合いをした結果、自分の府県の中小企業者を強化することに役立つのだからそれでよろしいということであったのだ。それは、当該府県の中小企業者の場合、それでいいと思う。しかし、投資育成会社に出資をしていない、関係のない府県の中小企業者の株を持つ場合は、事情は変わってくる。それに対してどういうふうに考えるのか。あなたの、私の質問に対する積極的な理由というのは、いま私が申し上げたようなことであった。その関係のない府県の中小企業者ということになると、事情は変わってくるでしょう。そうしますと、あなたの答弁というのは、完全な答弁ではないということになる。そうすると、この法案全体の問題に関係してくるのだから、その点は明確にしてもらわなければ困るのだ、こういうことです。
  89. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 出資をしていない府県の会社、それに対しましても――これは地方庁が出資した分、少なくともその分をその地方に還元しなければならないということは、これは当然かと思いますが、政府の出資した分、あるいは民間が出資した分というようなものをもって出資されない府県の会社の株を持つことができるかどうかということにつきましては、先ほど法制局のほうからも、これは可能であるというふうに統一見解を申し上げたのでございまして、これは出資しない県、そこに所在する会社の株式を持つということも、これは理屈としてはあり得ると思います。ただ、実際問題としては、これはまず出資をしていただいた県の企業が大多数取り上げられるということになろうかと思いますが、しかし、これは出資しない県の企業を取り上げていけないかどうかということについては、取り上げることも可能である、こういうことでございますし、われわれは、実際問題としてそういう県がありました場合には、その県のほうにお話しをいたしまして、できるだけ応分の出資をするように、ひとつ府県会等の議決を経て取り上げてやっていただきたいというふうに考えております。
  90. 田中武夫

    田中(武)委員 やっていると、また変わってくるのですよ。それをやっておると進みません。見解としては、私はやはり奥野局長の見解がいいと思うのです。出資はできる。そして出資してから先は育成会社がやることであって、それは府県とは関係ございません。今度は、中小企業育成株式会社は、出資した県とかしない県とかに関係なく、いわゆる三つの本社でもってそれを全国に及ぼすようにやっていくのだ、そう答えなくては、これはどこまでも進みませんよ。
  91. 中村重光

    中村(重)委員 投資育成会社は、株は満ぱいするのですよ。いいですか。そうすると、あなたのほうにいけばまた応分の出資をしてくれるかもしれぬというのでは、それでは手続はどうするのだという問題が起こってくるのです。ですから、私が質問したことに対して、きょういろいろ議論されたことでは疑問が起こってくるから、あいまいになってくるのです。そういう点を明確にするのでなければだめだということです。
  92. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 法律論といたしましては、先ほど自治庁のほうからも見解を述べていただきましたし、法網局のほうからも統一見解でやっていただきましたように、とにかく出資を受けていない県に対するものにも、投資育成会社としては当然その株を持ち得るということでございます。だから、法律論はそういうことだということを、先ほど統一見解として申し上げたということでございまして、あと、これは言わずもがなのことかもしれませんが、実際問題として、これはわれわれとしては、全国の府県に御協力を願いたいということで、目下できるだけ応分の御出資を願いたいということを別途言っているということでございます。
  93. 久保田豊

    久保田(豊)委員 あなたの見解をひとつ聞きたいのですが、なるべく公共事業の範囲というものを中央が規制をしないで、地方自治体の議会の議決にまかせる、そのほうがいいと思うというなら、私はこれはおかしいと思う。それなら、すべて自治体に対してもそうしたらいいじゃないか。そういうほんとうの自治を生かすというなら、そうしたらいい。ところが、そうではなくて、ほかの仕事については、ほとんど中央の統制というか、ワクというか、そういったものが強くて、地方自治体は、実際にあらゆる面から身動きできない。そうしておいて、こういう面ばかりかってにやりなさいなんて、そんなはかな――これがいいなんということでは、どうにもならない。それはさっきのような実例もありましょう。いい、悪いもあるけれども、しかし、こういうことは一般化してくる問題です。私は、どうしてもこれに関しては一応中央の明確な規定を――それはどの程度にするかということをあまりこまかく押えることは別だけれども、今日の段階においては、公共事業と称するものは、こういう程度のものな、ば出資をしてもいいとか、それに対する監督も、いわゆるこの監査だけをすればいいというわけではない。監査をしてみてと言うけれども、しかし、この会社は、監査を受ける対象になりますか。これは普通の会社の形から言えば、株主権の行使ができるだけでしょう。中央の政府のほうは、これは非常に関与権をよけい持っています。だから、いろいろできる。ところが、地方庁は、単なる株主権を持っておるだけじゃないですか。監査の一般的な対象になるということばかりだ。そこで、地方庁としての監査権と株主権と両方の行使をする、これの関係はどうなるのかと聞いたら、なお混淆するだけじゃないですか。この法律のたてまえから言うと、私に言わせれば、監査権はないということだ。中央は非常に大きな関与権を持っておりますが、地方は単なる株主です。それの見返りとして、出したものについては、ここはこうしておる、利益が出なければ最終段階までいい、こういうようなことで、そこは逃げ道をつけておる。そして、地方のほうでそれの出資を出していないところはと言ったら、これは地方庁に話をしてそこから出資をしてもらうようにする、こう言っておる。実際問題に合わない。これは中小企業庁長官に聞きますけれども、要するに東京が出して、たとえば神奈川へその投資をしたいという場合に、神奈川県のほうに話をして出資をしていただく。これは株主総会の決定でしょう。そんな、企業が借りたいと言ってきたらすぐ投資ができるということじゃありませんよ。実際問題としては、そんなことはできない。ですから、これはいやおうなしに東京都だけにならざるを得ないじゃないですか。実際扱うものには、あなたの言うようにはできない。法律趣旨と実際の構造とが合っていない。そしてもう一つは、地方行政の全体の姿を、これからどう調和するかということです。私は、必ずしも出資が全面的に悪いとは言ってない。しかし、そういう実例が多少出ておるから、いまの段階では、法律ははっきりしなくてもよろしい。しかし、少なくとも政府として、こういうものの将来に対する態度として、方針ぐらいは打ち合わせてはっきりしておいてもらいたい。そして、そういう方針で、これは将来修正するとかなんとかという保障があれば、この点はよろしいということを言っておる。一つ一つずつやってくれば、幾らでも問題が出てきて、それは地方自治団体に対しても、ほんとうに悪影響を及ぼす、こういったことがいまのように野方図にやられては、間違いが起こってくる可能性が多いので、この機会に、できれば政府のそういったことに対する取り扱いの基本の見解というものを統一して示してもらいたい。そうすれば、いま法律ですぐどうこうということをせぬでも、われわれとしては了承をする。将来の問題として保障がつけば、了承してもよろしい、こう言っておるわけです。
  94. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 地方団体の活動で公益を逸脱するような行為、これはいろいろ現実の問題としてあるだろうと思うのでございます。そういうことは、いろいろ御注意をいただきまして、御注意をいただきましたならば、積極的にそういうことについての注意をわれわれは促していきたい、こういうふうな考え方をしているわけでございまして、今後におきましても、そういう意味でお教えをいただければしあわせだ、こう存じております。  第二点は、この投資育成会社について、監査できるかどうかというお話でございました。先ほども申し上げましたように、地方団体の出資額が四分の一をこえておりますと、監査ができるわけでございますので、投資育成会社については、そういうところが相当数だろう、こうわれわれは考えておるわけでございます。
  95. 逢澤寛

    逢澤委員長 ちょっと述語をとめて。   〔速記中止〕
  96. 逢澤寛

    逢澤委員長 それでは速記を始めてください。  引き続き、質疑を行ないます。それでは政府の統一見解について、御説明を願います。樋詰中小企業庁長官
  97. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 出資をしていない県の中小企業の株を持ち得るかどうかという点が一番の焦点だと思いますが、これにつきましては、法制局、自治省と相談して、そういう県の中小企業についても投資育成会社は株を持ち得る、そういうことにいたしております。  それからなお、久保田先化の御指摘になりました基準がはっきりしないということにつきましては、今後通商省と自治省とで十二分に相談いたしまして、明確な基準をつくるというふうに努力していきたいと考えております。
  98. 松平忠久

    松平委員 いまの統一見解の中の後段の分だけれども、基準はこれからつくるというわけなんだ。ところが、いまの質疑応答の中で言うならば 基準は、持ち株を持っている都道府具の持ち株の範囲内だけはやれるのだ、それから持ち株以外の金もあるから、それはほかの投資をしてない県にもやれるのだということを言っておったけれども、そういうようなことで基準をつくるというのかどうか。それはどういうのですか。
  99. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 先ほど久保田先生のお話しになりましたのは、県が出資をし得るという公共性というようなものについての基準ということだと考えます。それにつきましては、自治省の方で、よく御検討いただきまして、きめていただきたい、そういうことであります。
  100. 田中武夫

    田中(武)委員 この問題をやっておると、また答弁に対する質問ということで問題がそれます。現にそれております。そこで、ただいまの統一見解に基づいてまたやるということにして、課題として残るのは、いわゆる地方団体の行なう出資その他のことの公益性、この範囲だと思うのです。それは、この法案と直接関係がないものは別に定める、こういうふうにしてもらう。そうして、少なくともこの投資育成株式会社に投資することは、これは公益のためのものである、こういうようにして、そうして奥野局長が言ったように自治体は投資育成会社に投資するのであって、投資育成会社が次にどういうような行動をとろうが、それは第三者的な関係にあるのだ。そうして今度中小企業庁は、投資育成会社は、出資があるなしにかかわらず、全国同じように見るのだ、この確認がなれけば進まぬが、そういう確認はどうですか。
  101. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 そのとおりでございます。
  102. 久保田豊

    久保田(豊)委員 いまの問題に関連して。私は、いまの法律解釈、いま答弁であれば、この法案を通す必要はないのです。しかし、実際はそうはいかないのです。そこで、あとは通産省の行政方針をどう調整するか、大臣のはっきりした保障がなければいけませんよ。その点はどうなんですか。問題は二点です。公共事業というものに対する――これだけではありませんけれども、私はこれは通産省と自治省だけできまるものではないと思う。ほかの関係のものもたくさんあります。自治省が中心になって閣内の意見を統一するということが、私はやはり第一点だと思うのです。これに関係しては、要するに出資をしない県の中小企業にも実際はいくようにするのか、いくようにしないのか、これを方針として明確にして、さっき言ったような法律解釈のもとに、そういう行政方針というものをはっきりしていくということが必要である。この点はどうなんですか。
  103. 福田一

    福田国務大臣 ただいま中小企業庁長官が申し上げましたとおり、出資をしておらない府県の中小企業に対しても貸し付けができる、こういう解釈で臨んでまいりたい、かように考えております。株を持ち得る、こういう考え方でございます。そういう方針で指呼をいたしてまいるつもりでございます。
  104. 田中武夫

    田中(武)委員 株式の引き受けができるというだけではなくて、しておろうが、しておるまいが、平等に見るんだ、こういうように言っていただきたいのです。
  105. 福田一

    福田国務大臣 お教えをいただいて恐縮ですが、私たちとしては、株式を持っておるとか、おらないとかということは別といたしまして、とにかく本社が東京にあって、そうしてどこの府県に出すか知りませんが、議会の議決で出資をされました以上は、先ほどあなたがおっしゃったように、投資育成会社の首脳部の運営にその資金をまかせる。そしてそのまかせるやり方というのは、いわゆる株を持っておらない府県の中小企業に対しても、出資するといいますか、株を持ち得る、こういうことにいたしたいと思います。
  106. 田中武夫

    田中(武)委員 その点は、大臣の答弁で一応了解をし、また大臣の答弁のように運営してもらう。この法律が、格差拡大のために、これは中小企業間だけではなく、今度は地域間に移って、そういうような役割をせぬように、ひとつ希望したいと思うのです。実はそういうことで、業務問題は二条でとまっておるのです。  次に、いろいろ聞きたいと思うのです。飛んでいきたいと思うのですが、たとえば事業の範囲の三号「依頼に応じて、経営又は技術の指導を行なう」、こういう点について、先日来の論議を聞いていると、この三号の仕事は、コンサルテーションというか、コンサルティングだ、こういうようなことになっておるのですが、そうですか。
  107. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 そのとおりでございます。コンサルテーションを行なうということでございます。
  108. 田中武夫

    田中(武)委員 コンサルテーションというのは、日本語に訳すと何ですか。診断ですか。
  109. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 コンサルテーションと俗にいわれておりますあれでございますが、いろいろ企業の経営内容を調査、分析いたしまして、そうして所要の指導を加えるということを、俗にコンサルテーション、会社に対するコンサルテーション――企業の経営内容あるいは技術内容を調査、分析いたしまして、どこに欠点があるかということを見つけ出しまして、そしてそれを是正するように必要な助言を与えるということをいっておりますが、私のほうも、コンサルテーションだけではなくて、一般的にいろいろな相談を受けることもありましょうし、常時株主としてこれに対して指導を行なうということもありますので、厳格な意味でのコンサルテーションだけではございません。一般的に技術並びに経営に対する指導を行なうということでございます。
  110. 田中武夫

    田中(武)委員 よくわからぬのですが、その後に指導というのが出てくるのと違うのですか。だから、コンサルテーションというのは、調査あるいは診断ということであって、三号のいう「経営又は技術の指導」ということは、そのあとにくる範疇じゃないですか。ところが、いままでのところはイコールという答弁であったから聞いておるのですが……。
  111. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 おっしゃるとおりでございまして、まず内容現状を調査し、分析する、それに基づいて診断をして、診断した結果を指導するということでございます。
  112. 田中武夫

    田中(武)委員 それでいいんだが、いままでの答弁が少し範疇が狭くやられておったので聞いたのです。  先ほど来いろいろ問題も出ておりますが、結局これは法制局にもの申すというかっこうになるのです。いつも言うことなんですが、この種公社、公団、あるいは特殊法人、これはみんな同じタイプがあって、目的と事務所、それから業務範囲、それくらいで、あとは全部ぱっと入れておる。これは優先株なんかでちょっと違っておりますが、あとは同じタイプになっておるのですよ。これはどうなんです、法律技術として一つの型があって、そこへ目的と主たる事務所と業務の範囲を書くだけで、あとはみな一緒だ。同じようなことが出てきておる。たとえば罰則の面いっても、いつも問題になる。私がこれから罰則のことを聞いたら、きょうじゅうに採決にならぬことは明らかです。これは何べん言っても直ってきていないですよ。それからもう一つ、いつものことながら、こまかいことになると業務方法書、これでいうならば九条の業務規程にまかせきりです。たとえば地域管轄がどうなるかとか、あるいは配当をどういうふうに考えておるかとか、いろいろな実際問題になると、全部業務規程によって定める。こんなものを審議するのはばからしいようなことなんですよ。特に罰則の中で、収賄の規定があります。刑法との関係はどんなふうになるのか。同じです。どこが刑法と違いますか。百九十七条と同じ刑量ですよ。ここの役員、職員が刑法でいう公務員になるのかならないのか、そういうことによって、わざわざこういう規定を設けなくてもいけるのじゃないかと思うのですよ。積極的にこの規定を置いた理由はありますか。
  113. 吉國一郎

    吉國政府委員 ただいまの御質問の第一点の、このような特殊会社あるいは特殊法人の法律一つの型にはまっているではないかということでございますが、公庫なり、公団なり、あるいは事業団、あるいは特殊会社と申しますものにつきまして、やはり法律上の制度といたしまして、同じような業務、あるいは同じような組織を持っておるものにつきましては、法律上の規定といたしましても、同様な規定でなければ、法律上のいわば安定性を害するというような趣旨から、各省で法律案を立案いたします場合に、その公庫なり、公団なり、あるいは平楽団、特殊会社の性格にかんがみまして、従来の立法例のうち、どの特殊法人に近いかということから判定をいたしまして、従来の立法例に徴して、それにならって立法をするということが、やはり全体の法律秩序が整々と有機的に成り立っていなければならないという要請を満たすゆえんであるというふうに考えております。ただいまの罰則の収賄罪の規定でございますが、御承知のように、刑法の二十五章の「涜職ノ罪」に規定してございますが、収賄及び贈賄の規定は、公務員に関する規定でございまして、公務員と申しますのは、刑法の第七条におきまして「本法ニ於テ公務員ト称スルハ官吏、公吏、法令二ニ依リ公務ニ従事スル議員、委員其他ノ職員ヲ謂フ」ということになっておりますので、この会社の役員または職員は当然公務員ではないわけでございますので、特別な規定を要するわけでございます。この場合に、公庫等につきましては、この公庫の役員なり職員なりを「法令により公務に従辞する職員とみなす」という規定で、刑法のわいろ罪の規定をそのまま適用するという形をとっておりますが、それによりますと、量刑等におきましても、現在の規定よりもずっと重い規定になりますので、この特殊会社につきましては、そこまできつい罰則を科する必要はないということで、公務員の収賄罪の規定よりも一段と低い罰則の規定にいたしたわけでございます。
  114. 田中武夫

    田中(武)委員 量刑は同じことでしょう。
  115. 吉國一郎

    吉國政府委員 この法律案の第十七条の規定は、刑法で申しますと、第百九十七条に当たるわけでございます。それから第十八条は、第百九十七条ノ二、その二カ条が刑法のその二カ条に相当するわけでございますが、刑法におきましては、そのほか、第百九十七条ノ三のように、公務員が前二条の罪を犯し、よって不正の行為をなし、または相当の行為をなさざるときとか、あるいはまた、公務員が職務上不正の行為を行ない、あるいは相当の行為をなさなかったことに関してわいろを収受、要求、もしくは約束し、または第三者にこれを供与せしめ、あるいはその供与を要求し、あるいは約束したときであるとか、また公務員がその在職中請託を受けて職務上不正あ行為をなし、あるいは相当の行為をなさなかったことに関してわいろいろを収受し、またはこれを要求し、もしくは約束した場合というような規定がございますので、そのような規定が公務員とみなすことによってかぶってまいりますので、この法律案におきまする第十七条、十八条の罰則よりも重いことになるということでございます。
  116. 田中武夫

    田中(武)委員 一段と低くしたのではなしに、私は狭くしたいということじゃないかと思うのです。それはどっちでもいいけれども、いま百九十七条の三のうち、第三は不作為による犯罪を言うておるわけです。これはあってもなくてもかぶってきますよ。だから、刑法と同じような内容のものを積極的にここに入れたのは何か。それは、この会社の役員、職員、監査役は、刑法にいう公務員にならない、公社、公団ではないから。ということは、公社、公団については公務員とみなすということが別にあるから……。それでいいじゃないか。それ以上の答弁をするから、おかしなことになる。  そこで、聞き出したら切りがないのだが、私の不満なのは、いつも言うことだが、二十条の各号に職員の該当する行為ありゃなしやということになると、一号ほどしか出てこない。これはここで私が質問をやめてかりに採決に入ったとしても、この規定を了承したものでないということだけははっきり言うておきます。いつまで言っても同じことだが、もう少し形の変わったことはできないのか。この規定は、行為者を罰するという上に立っているのでしょう。そうすると、行為をやる可能性のあるものを考えなければならない。可能性のないものが入っていることはおかしい。しかし、もうこの程度にしておきます。まだたくさんありますが、一々聞いておると、こちらのほうがおかしくなってくる。約束――といったって何もないけれども、これは通産大臣と自由民主党に一本頂けておくということで、私は質問をおきます。
  117. 逢澤寛

    逢澤委員長 他に本案についての質疑の通告がありませんので、おはかりいたします。本案についての質疑を終局するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 逢澤寛

    逢澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  119. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、討論に入るのでありますが、通告もありませんので、直ちに採決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 逢澤寛

    逢澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  採決いたします。本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  121. 逢澤寛

    逢澤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     ―――――――――――――
  122. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、本案に対し、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三派を代表して、中村電光君外九名より附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者より趣旨説明を聴取することにいたします。中村重光君。
  123. 中村重光

    中村(重)委員 ただいま議決されました中小企業投資育成株式会社法案に対し、附帯決議案を提出いたしますとともに、自由民主党、日本社会党及び民主社会党を代表して、決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     中小企業投資育成株式会社法案に対する附帯決議   中小企業投資育成株式会社は、将来必要に応じ、三都市以外の中小企業の集中する主要地にも配置するよう考慮すべきである。  以上であります。  中小企業資本を充実して、その成長発展をはかる趣旨の本法案に対しましては、賛意を表するものでありますが、ただ懸念させるのは、本法の運用いかんによっては、企業間の格差及び地域間の格差がむしろ拡大するのではなかろうかという点であります。  特に、地域間の格差の問題につきましては、本案のごとく、東京、名古屋、大阪の三都市のみに投資育成会社を置く場合は、これらの都市から遠隔の地にある中小企業に不利が生ずることが心配されるのであります。  将来、本法によって育成をはかる必要のある中小企業は、三都市以外、たとえば北九州地帯などにも集中的に存在しているのでありまして、これらの中小企業を積極的に成長せしめる必要性は、三地区の場合といささかも変わらないと存じます。  このような趣旨によりまして、三投資育成会社事業の運営上、企業間並びに地域間の不公平を極力避けることを強く要望するとともに、必要に応じ、三都市以外の地にも投資育成会社を配置するよう考慮すべき旨の附帯決議案を特に提出した次第であります。  何とぞ全会一致の御賛同をお願いいたします。(拍手)
  124. 逢澤寛

    逢澤委員長 以上で説明は終わりました。  採決いたします。本動議を可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 逢澤寛

    逢澤委員長 御異議なしと認めます。よって、本動議のとおり附帯決議を付するに決しました。  この際、通商産業大臣より発言を求められておりますので、これを許可いたします。福田通商産業大臣
  126. 福田一

    福田国務大臣 ただいまの附帯決議の趣旨は、十分尊重いたしたいと存じます。どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  127. 逢澤寛

    逢澤委員長 おはかりいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願うことに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 逢澤寛

    逢澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次会は、明二十二日午前十時より委員会を開会することといたします。本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十二分散会