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1963-02-13 第43回国会 衆議院 商工委員会 第7号
公式Web版
会議録情報
0
昭和三十八年二月十三日(水曜日) 午前十一時二分
開議
出席委員
委員長
逢澤 寛君
理事
小川 平二君
理事
首藤 新八君
理事
中村
幸八君
理事
田中 武夫君
理事
岡本 茂君
理事
白浜 仁吉君
理事
板川 正吾君
理事
松平 忠久君 小沢 辰男君 神田 博君 笹本 一雄君 山手
滿男
君 北山
愛郎
君 小林 ちづ君
山口シヅエ
君 海部 俊樹君 齋藤 憲三君 林 博君 早
稻田柳右エ門
君 久保田 豊君
中村
重光君
伊藤卯四郎
君
出席国務大臣
通商産業大臣
福田
一君
出席政府委員
通商産業事務官
(
通商局長
) 松村 敬一君
特許庁長官
今井
善衞
君
中小企業庁長官
樋詰
誠明君
通商産業事務官
(中小企業庁振
興部長
) 加藤 悌次君
—————————————
二月十二日
金属鉱物探鉱融資事業団法案
(
内閣提出
第八三 号) は本
委員会
に付託された。
—————————————
本日の
会議
に付した案件
通商産業
の
基本施策
に関する件
——
——
◇—
——
——
逢澤寛
1
○逢澤
委員長
これより
会議
を開きます。 この際、
大臣
及び
通商産業省当局
に申し上げます。本日の
会議
は十時より開会する予定でありましたが、
政府
の御
出席
がおくれ、開会が大きくおくれましたことは、大
へん
遺憾に存じております。今後、かかることのないように十分御留意をお願いいたします。
通商産業
の
基本施策
に関する件及び
経済総合計画
に関する件について、
調査
を進めます。 質疑の通告がありますので、これを許可いたします。
山口シヅエ
君。
山口シヅエ
2
○
山口
(シ)
委員
私は、昨日
大臣
の御
答弁
の中にわずかに漏らされておりました
スーパーマーケット
につきまして、関連の質問をさせていただきたいと存じます。 すでに昨日、わずかな御
答弁
ではございましたが、
大臣
には、今回
小売業者
がおそれをなしておりますところの
外国
の
スーパーマーケット進出
に対しましては、いろいろ御
調査
もなさり、また、
小売商
のためにも喜ばしい
お答え
を出されているようでございますが、この
スーパーマーケット
の
あり方
というものは
——
これはもちろん、私は
アメリカ
での
あり方
を申し上げておるのでございますが、非常に高度な
資本力
によりまして、この大きな
資本
の力が、
消費者
のために
日常消費物資
の
価格
を押えているような
実情
にございます。これらのものが
万が一日本
に入って参りました場合は、昨日の
大臣
の
お答え
のように、そう簡単には
解決
のつかないことが多々起きてくるのではないかと、私は憂慮をいたす次第でございます。 そこで、私がつい最近見て参りました
アメリカ
の
小売部門
、いわゆる
市場
の
実態
を、私の目で見た
程度
のものでございますから、それほどの
参考
にはならないと存じますが、私がこの目を通しての
意見
でございますので、
大臣
に特別お時間をいただきまして聞いていただき、また、それを通して、あるいはまた
大臣
が今まで御
調査
なさいました中から、いろいろとお
生み出し
になりました御
意見
を伺いたいと考える次第でございます。 実は、私は、十年前に
アメリカ
に参りました。そしてここ十年、全く
アメリカ
へ行く機会がございませんでしたが、ごく最近、二カ月ほど行って参りました。それも実は、国会からの派遣ではございませんので、私は、これは社用で参ったのでございます。そういう意味で、大
へん小売部門
の勉強ができました。まず
最初
に、あちらへ参りまして私が驚きましたことは、十年前も今回もちょうど同じ時期に参りましたのですが、あのあり余るほどとれるはずの
オレンジ
の実が、十年前に行ったときのように安く、しかも自由に買えなかったことでございます。これは
品不足
になっておりました。そして非常にお高くなっておりました。前回参りましたときは、五十セントも出しますと、
袋一ぱい
、盛んにとれる時期には買えたのでございます。それが今回は、一個の
オレンジ
も相当の
価格
で、これには驚きました。
最初
の理由は、これはカリフォルニア州近辺に、特に
ロスアンゼルス周辺
に
宇宙産業
が集中したために、それらの畑がなくなってしまった。そのために
オレンジ
が高くなったのだということを簡単に聞かされておりましたが、だんだん
小売市場
の
様子
を深く知るにつれまして、そうではないということがはっきりして参ったのでございます。そしてこの
小売市場
が、すでにもう全く
スーパーマーケット
、それから
ストア
というものに切りかわっていることは、私も
承知
でございました。十年前に参りましたときには、ちょうどこれらの
全盛時代
と申しましょうか、
ストア
がふえ、いよいよ
スーパーマーケット
などもふえつつある時期でございました。この
歴史
を私は少しばかり勉強いたしてみましたらば、
スーパーマーケット
というのは、三十年ほど前にマイケルカレンという人が思いついた
小売方法
だそうでございます。三十年前と申しますと、もうよほどこの
スーパーマーケット
も
歴史
を重ねております。三十年前に
セルフサービス
というものを思いつき、いわゆる
薄利多売
の方針をこの方が打ち出したそうでございます。そこでこの
時代
は、マイケル・カレンという人は、
小売価格
の
粉砕者
、あるいは
小売商
をつぶす敵であると、大
へん
なもんちゃくが当時起きたということを私は聞いております。その二十年後の
アメリカ
は、もうこれの大
全盛時代
、そしてこのたび三十年目、ちょうど十年間おいて参りました今日の
アメリカ
の
状態
は、いよいよ
スーパーマーケット
というものが
飽和点
に達して、そろそろこの
スーパーマーケット
の形が一段と飛躍して、ほかの形で生まれつつございました。もちろん
ストア
というものは、私が十五、六才ごろのことだったと思いますが、この
ストア
というものを盛んにいたしましたのは、いまだに残っております
ストア会社
の
ウール・ワース
でございます。私が十五、六才のころよくおやじなどから聞きましたが、
ウール・ワース
が
日本
の
製品
をたたいて買いに来た。そしてこれを向こうに持っていって一ドル・
ストア
などで安く光る。安く売るよりも、むしろうんと
利益
を上げて
日本
の
製品
を売るのだなどということを聞いたものでございます。当時私も覚えがございますが、そのまねをして
日本
に十銭
ストア
というものがございました。この十銭
ストア
は、
日本
の
社会機構
が成功させませんでした。私が
子供心
にこれらに物を買いに行った覚えがありますが、とうとうこの
ストア
は成功しないで終わっているようでございます。ところが、この
スーパーマーケット
というのは、ただいま
日本
で全盛期を見ているのではないかと思います。これに
消費者
が非常に便利を
感じ
て、この
スーパーマーケット
のあるところは、むしろ
消費者側
は
スーパーマーケットびいき
であると言っても過言ではないと存じます。そこで、今の
日本
の
スーパーマーケット
の
あり方
は、全く
外国
の
機構
とは違いますから、ただいまの
スーパーマーケット
の
あり方程度
では、さして
——
とは言い切れませんが、そう大きな
心配
もいたしません。
小売商
がここで大飛躍をいたしまして、これらのものと妥協することなく、大きくここは切りかえていく。そういうことにおいて
日本
の
スーパー
に打ち勝っていく。いや、肩を並べて
小売商
がまた
商売
を続けていくということも、不可能なことでは決してございません。しかし、
アメリカ
の
スーパーマーケット
の
機構
というものは、まことに驚くべきもので、私はこの目で見てきて、それこそびっくり、ぎょうてんをいたしました。この
スーパーマーケット
は、御
承知
のように、大
へん成績
を上げまして、
アメリカ
で一位を占めておりますというのが、
AアンドP社
と申します。それから
太平洋沿岸
で大
へん幅
をきかしております、いわゆるこれまた好
成績
を上げております
スーパーマーケット
がセーフウエイ、これが
日本
に入ってくると申すので、
小売商
が大
へん
おそれをなしております。赤いSと
日本
では申しておるようでございますが、
セーフウェイ
でございます。まだまだ何社もございまして、これらのものがほとんど
日常食料品類
、いわゆる
生鮮食料品売り上げ
の大部分を占めております。そしてこれらの特に大きな、一位、二位、三位、四位、五位
程度
の
売り上げ
を占めております。
会社
は、
各地
域的に
本部
を持っているようでございます。
各州
に
本部
を持っております。そしてこの
各州
の
本部
が、その州にまことに近代的な
機械設備
を持ち、
加工工場
、あるいは
冷凍工場
、あるいは
冷蔵庫
または貯蔵庫というようなりっぱなものを持っております。そしてここに貯蔵をし、これらを直結の
小売部門
、いわゆる
スーパーマーケット
に流しまして、売りさばいております。言うならば、これは
機構
の、一本化でございます。
流通機構
の一本化と申しましょうか、いわゆる
一貫作業
でございます。そして初めから終わりまで、このような
状態
で売りさばかれております。
生産
から
小売
までが直結いたしております。この
様子
を見たときに、私は、何か背がぬれるような思いがいたしました。そしてなお驚きましたことは、農産物のいわゆる
生産面
までが
自営
でございまして、まあたとえてみれば、ピースという豆などは、広大な畑で、非常に近代的な
機械
を使ってつくっております。そのそばに
カン詰工場
、
冷凍工場
、あるいは
冷凍
のもう
一つ
前の、そこまで冷たくしてしまわない、新しい
機械
を備えつけておりまして、まさにとりたての夏の
状態
をこわさずに、
消費者
の口まで運べるという
設備
も持っていたようでございます。こうして何から何まで
日常
でやっております。そして今までは、
スーパーマーケット
というものは
食料品中心
でございました。そして
ストア
が
衣類
、などをおもにやっておりました。
外国
の
ストア
は、
一般大衆
の
衣類
その他いろいろと売りさばいて、食べるものの
関係
の方は
ストア
にまかすという割り切ったやり方をやっております。
デパート
は、
日本
の
デパート
と少々
傾向
が違いまして、
デパート
に買いに行くような
方々
は、特に
高級品
を求めて集まる
お客
さんということで、
高級品
を売る
デパート
、
一般大衆
の
衣類
その他あらゆる
必要品
を売っております
ストア
、それから大体
食料品一式
、そういう消粍品を売っております
スーパーマーケット
と、こういう行き方をいたしております。 さて、こういう
状態
で
アメリカ
の
小売部門
も三十年の
歴史
を重ねてきたようでございますが、ここに驚くべきものが生まれております。それは略して
SSDDS
と呼んでおりますが、
セルフ・サービス・ディスカウント・デパートメント・ストア
と申しまして、大
へん
これは大きな
規模
のものでございました。これは聞くところによりますと、
ストア
、
スーパーマーケット
を一緒にしたものだということでございました。ところが、中をいろいろ調べてみますと、これはまた驚くべきもので、その
程度
のものではございませんでした。これに加うるに
デパート
というような
感じ
のもので、大きさは千坪近くございます。ちょうど
デパート
が平家になったような
状態
でございまして、ただいま申し上げましたように
セルフ・サービス・ディスカウント・デパートメント・ストア
と申しますのですから、
品物
もたくさん並んでおります。その上
セルフサービス
でもあるし、
価格
が安いということでございます。そしてこれらの
調査
をいたしておりますうちに、特に大きな
規模
のものは、中には弁護士さんなどの事務所もございました。
一般スーパーマーケット
のような
状態
のものが、その建物の一番奥に用意されております。ここで売っております
生鮮食料品
は、
原価
を割るほどの安い
価格
で売りさばかれております。奥の方に
日常食料品
を買いに来た方たは、出るまでにどうしてもその横に広がっている
デパート
のようなものを見ずには帰られないという順序になっております。そうすると、おのずと出てくる間にその途中に陳列されたものをいろいろ見る。途中に陳列されておりますものは、特に
高級品
が出口近くに並んでおりまして、中には自転車からモーター、モーターボートまで並んでおりました。こういうようなものは、相当な
利益
を上げて売っているようでございます。テレビはもちろんのこと、
電気冷蔵庫
から、ありとあらゆる
——
もう、
ディスカウント
・
ハウス
に入りますと、もうすべてのものが用を足せるという
仕組み
のものでございました。これを
アメリカ
の
人たち
は
ディスカウント
・
ハウス
と呼んでおります。これが出現するようになりましてから、
アメリカ
の
ストア
も、
スーパーマーケット
も、
デパート
も大
へん
な
騒ぎ
をし出したのでございます。
デパート
は、より以上
高級品
をねらって、ごくお金を持つ
方々
のための存在に切りかえていこうといたしております。それから
ストア
は、これに対して今盛んに
知恵
をしぼっている最中でございます。
スーパーマーケット
は、もう
アメリカ
では
飽和点
に達し、こういうものが生まれてきたために、何とか
海外
に伸びていこうという
状態
であったように私は気づきました。そしてそのことを詳しく聞いてみますと、現在はカナダなりロンドンなりに提携して進出しているということでございます。そこで、
日本
に進出する気持があるかないかということを私は冗談に聞いてみましたところが、こういうことを申しておりました。
日本
は、大
へん市場
としてはすばらしいところだそうでございます。特に面積が狭いところに
人口
が密であるということを申しておりました。一たび
東京あたり
に店が出せるならば、この
人口
の多いところに、また、これらの都市は集中しておるので、
アメリカ
の非常に広い領土の中で
商売
をすることから見れば、まことに都合がよい。その上に
日本
は大
へん景気
のいいブームが起きているそうで、特に
日本人
は気前がよい。
アメリカ人
のように、お野菜
一つ
買うのにやかましいことを言わないそうだ。さぞ
商売
がしよいだろうということを申しておりました。それからもう
一つ
は、やはり
日本
の
人件費
が安いということ、こういう
商売
をするのには、
日本
では
人件費
が安いから、おそらくやりよいことであろというようなことを取り上げて申しておりました。私はこれを聞きましたときに、少々
自分
のところの
商売
にも
関係
もございますので、小
商売
のために
心配
をいたしました。特に、ただいま
日本
の
傾向
は、
小売屋
さんが、一人でも二人でも
お客
が参りますと、まるでカモがネギをしょってきたような
騒ぎ
をして、このわずかの
お客
さんを逃がさないように無理なサービスをいたします。これが
消費者
にはまことに迷惑でございまして、
スーパーマーケット
に
消費者
は吸収されていきます。まあたとえてみますならば、おミカン
一つ
買うにいたしましても、
小売商
の店先に参りますと、なかなか
自分
で好きなものをよることできません。
小売屋
さんは、しおれたのから袋の底に先に入れます。上っかわに生き生きとしたのを入れるという、まことに
経済観念
の強い
主婦
には迷惑な次第でございまして、勢い自由におミカンもなぜられる、好きな大きさのが買えるという
スーパーマーケット
や
デパート
の
地下室
の
食料品部
に行ってしまうといりことで、まことに
小売店
の
方々
にはお気の毒であります。私は、
スーパー
の入ることを極度に反対するものではございませんし、こういう形で
小売部門
が発展することにおきまして、
消費価格
が安定すると思います。そして買いよくなっていくと思います。不当なもうけがなくなっていくと思います。
アメリカ
の場合は、高度な
資本力
によりまして
流通機構
が一貫され、いわゆる一体、一本化されまして、これらのものを
資本
の力で押えております。それでも
消費者
のためにけっこうだと思いますが、ただいまの
日本
の
機構
は、まことに複雑でございます。
小売屋
があり、小
卸屋
から大
卸屋
からブローカーがこれに介在いたしまして、まことに複雑でございまして、これらの複雑さが一そう
小売屋
を
零細企業
にいたしております。この複雑さも、
外国
の
スーパーマーケット
がねらっております
一つ
のポイントであるということを、私は忘れてはならないと存じます。 そこで、農作物が
自営
、そして
工場
、それから
小売
とただいま申しましたが、これは、
一貫作業
と申しましても、いろいろな
機構
と申しましょうか、組み合わせでございまして、必ずしもこれが
一つ
の
会社
の傘下のものであるとは言い切れないで、ある
会社
のものは、
資本力
によりまして、
系列化
と申しましょうか、お百姓さんを
自分
の
系列化
に入れて、ほかの
会社
にはでき上がったものを納めさせない。必ず
AアンドP社
に納めさせる、あるいは
セーフウェイ社
に納めさせるという、
系列化
と申した方がよろしいかと思いますが、こういう形が、やはり
資本力
によって強化されておりました。何から何まで途中のトンネルがなくなっておるという形のものでございます。それでも、ただいまの
アメリカ
の
市場
では、
SSDDS
には追いつかない。この
セルフ・サービス・ディスカウント・デパートメント・ストア
と申しますのは、もうつぶれかけた
電気会社
の
製品
をたたいて買って、これを
原価
を割るような
価格
で
自分
の
ハウス
に持ってきて売りさばくなどということもやっておりまして、これは
一貫作業
ではなく、もう
一つ資本力
を持って、傾きかけた
会社
のものをすっかり買い取るとか、あるいは
資本
の力によりまして、
スーパーマーケット
以上の仕入れの
方法
で、より安く、
薄利多売
で
一般消費者
を吸収していくという形のものでございます。世界はただいま
薄利多売
の
傾向
にどんどん進んでおりますし、
資本主義国家
におきましては、大きな
資本
の力でいろいろな形のものが生まれて参りまして、激しい競争をいたしております。こういうような勢いを持ったものが万々が一
日本
に入って参りました場合は、昨日
大臣
のおっしゃるように、
小売商
を擁護するだけではとうてい
解決
のつかないことが、私はたくさん起きてくるのではないかと存じます。
大臣
の昨日の
お話
では、そのつど
知恵
をしぼる、よい方向に
対策
を講じていくという
お話
でございますが、やはりここは
自由化
に先だちまして、
自由化対策
というものを遅滞しないようになさらなければならないのではないかと、これは私が
アメリカ
を見て申し上げる
意見
でございます。これに対しまして、
大臣
から一言御
意見
が承れればしあわせと考えております。
福田一
3
○
福田国務大臣
ただいま、
山口
さんから、実地に
自分
の目でごらんになった
スーパーマーケット
なり
SSDDS
なり等々についての非常に詳しく、また実際に即した
お話
を聞かせていただきまして、私としては大
へん参考
にさせていただいたと思いまして、まずもってお礼を申し上げたいと思います。 ただ、仰せの
通り
、これに対する
対策
は、これからわれわれとして十分に研究しなければならないのでありますか、私
たち
が今すぐにその問題について、たとえば法制的に何かするとか何とかいうところまで今のところ踏み切っておらないことは、まだ
実態
をよくつかんでおらなかったということもございますが、実は
日本
の
特殊事情
というものを考えてみておるわけであります。
山口
さんからそういう
アメリカ
の詳しい
事情
、あるいはその他の国の詳しい
事情
がございましたが、私は、
日本
は
アメリカ
やイギリスとはいささか違っておる面があると思う。それは、狭いところにたくさんの人がおる。そして一応
小売業
というのは
——小売業
にもいろいろございますけれども、小さいところは、
だんな
さんがどこかへ勤めにいっていて
奥さん
が店番をするというような
小売業
から始まりまして、
自分
のうちの兄弟でやっているというような
小売業
から、人を一人なり二人なり三人を使ってやるというところぐらい、まあもっとたくさん使っておるのもありますけれども、大体そういうことになる。ところが、
日本
の場合は、
人手不足
という面は
アメリカ
ほどひどくはない。それから、
お話
にもありましたように、賃金もそれほど高くないということもありますし、そういうこともあるのと、やはり
セルフサービス
という
精神
が、
子供
のときからしつけが
——
実は
アメリカ人
などというのは
子供
を育てるときから、
一つ
になったときから、もう
自分
でちょっと歩けるようになれば、
自分
のことは
自分
でしなさいという
精神
が非常に徹底しております。ところが、
日本
の場合は、いささかこれと違いまして、あなたにこういうことを申し上げては恐縮ですけれども、
奥さん
はやはり
だんな
さんの世話をするような
仕組み
に一応なっているかと思うのであります。それから、そればかりではなくて、非常に私は残念に思うのですけれども、
日本
では道徳心というものがあまりない人が相当あるわけであります。ここにおいでになる方
たち
にそういうことを申し上げては恐縮なんですけれども、実は私がかつて
小売
などをやってみますと、すぐ盗んでいってしまう。これにはもうまことに閉口をいたすのでありまして、これは、あなたの御
体験
も伺わせていただくので、私も
体験
を申し上げてみたいと思うのですが、物を持っていくという妙ちきりんな癖がございまして、そのためにつぶれたなんという店がずいぶんあるわけであります。この
セルフサービス
というのもけっこうなんですけれども、なかなか
日本
にそううまく当てはまるかどうかということを考えてみなければいけない。
日本人
というのは、どうも少し何かこうちょっと
名前
が出ると、すぐその
名前
に飛びついてみたくなる。そこがまた
日本人
のいいところでありますが、同時にまたそれで失敗する場合もあると思うのでありまして、私は、
日本
では
スーパーマーケット
もなかなかいい、また将来は
SSDDS
というような、今あなたがおっしゃったような
ディスカウント
・
デパート
メントというようなものもいいんじゃないか、そういうふうに発達していくかと思いますが、しかし、今の
状態
では、
小売業者
が集まって、そして、
主婦
が物を買いにでも行った場合に、あっちの店へ行って
野菜物
を買って、こっちへ行って
カン詰
を買ってなんて、とてもあっちへ行ったりこっちへ行ったりするのはめんどうでたまりません。そこで一定の
場所
へ行くと、一応
日用品
が買えるというくらいのことはしないといけないのじゃないか、こう私は思っておるわけであります。だから、まあ
共同市場
みたいなものから始めて、そしてそれをだん
だんな
れさせていって、将来
労働力
の
不足
というようなことも出てくることもありますから、そこからやっていくくらいが
日本
の
実情
には合うのじゃないかというような
感じ
が、実は私はまだ抜け切らないわけであります。そういうところがありますので、そういう面からもう一ぺんよく検討してみたい。ただし、今あなたの
お話
の
通り
、膨大な
資本力
を持った
海外
のものがやってきてそういうことをやり出すということになれば、とにもせよかくにもせよ、それはもうそこへ
消費者
が集まることは明瞭でございますから、特に珍しいもの好きだから、今度できたからちょっと行こうなんというものから、中には
品物
を
一つ
くらいあっためてやろうというとんでもない
不心得者
から、みんな集まられた日には大
へん
なことになると思うのでありまして、そういうこと等、も考えますと、これはなかなか重大な問題ですから、われわれとしてはこれは非常に注意をしていかなければならぬと思いまして、この間申し上げましたけれども、
大阪
の方へ
企業局
から人をやって、大きな商社に何かそういう
計画
がないかということを聞かせてみました。ところが、
住友
商事が
セーフウェイ——
今あなたの
お話
しになりました、
アメリカ
では二番目のこれがいわゆる
スーパーマーケット
になっておるかと思うのでありますが、これと
住友
が提携をして、そうして
スーパーマーケット
を
各地
にやろうという
計画
を一時したことはあったけれども、現在においては、
自分
がやるというよりは、
各地
の
小売業者
でそれを希望するものがあれば、それに金を貸して、
場所
も、家も建てさせて、そうしてそこでそれをやった場合には
セーフウェイ
と
住友
の
合弁会社
から
品物
を仕入れる、こういう
仕組み
でやらせよう。しかし、それだけじゃないので、
東京
や
大阪
くらいは、一店くらいは店を持ちたいということも考えておるようですが、私は、まあ
東京
や
大阪
に一店ぐらいそういう店ができるのも、
一つ
の刺激になって、場合によっては、そういうものも
——
どの
程度
のあれがあるのか、
場所
、
規模
等にもよりますけれども、そう大きなことでもなければ、あるいは
一つ
のあれとして考えられないわけでもないと思っておるわけです。しかし、それが大きく影響するということになりますと、これは非常に注意をしなければなりませんが、私は、そういう意味合いでもう少しこれは
日本
の
実情
というものとにらみ合わせて考えていきたい。そこで、
小売業者
が協業をする、一緒になって何かやる。ビルディングでも建てて、下は全部
市場
にして、上は貸すというような工夫でもするようなことをやらせる。それを一体何軒ぐらいの戸数があるところでやれば大体ペイするかということも、研究させたいと思っております。単位として、どんな小さいところでもそれをやっていいというわけにもいかぬかと思うのです。そうすれば、そういう基礎的なデータができれば、この町ならばこういうものは何軒つくる、それ以上はつくってはいけないという規制の手段も、ここに
一つ
出てくるかと思うのです。そこら辺から
一つ
スタートさせなければいかぬじゃないかというので、今度中小企業基本法をつくるにあたりましても、実はいろいろ
調査
をいたしておりますが、今言ったような観点からもう一ぺんこういう問題も研究してみたい。私は、この
スーパーマーケット
がもし出ていって、一ぺんに
小売業者
がつぶれると、一番影響を受けるというのは、戸数にして三千か五千くらいの町だろうと思う。こういうところに出ていったら一たまりもないじゃないかということを
心配
するのですが、そういったところでも、今言ったような式でやれば、何軒くらい置いたらいけるかというようなことができれば、私は、そういう形から今度は法律的にも何か規制をしていくような工夫もできるのじゃないかと思っておりますので、どろぼうを見てなわをなうのではだめだとおっしゃる意味もよくわかるのですが、それは
日本
の
実情
もよく考え合わせながら、拙速にならないようにもしたい、こういう考えもございまして、昨日のような
答弁
をいたしておるわけであります。ただいま、あなたからそういう
アメリカ
の
実情
等もお知らせいただいて、十分
参考
にさせていただいて、今後誤りない措置をとるようにさせていただきたい、かように考えます。
山口シヅエ
4
○
山口
(シ)
委員
大臣
、まことに恐縮ですが、ちょっと私の説明が足りないところがあったようでございます。ただいま、
日本人
の国民性が
スーパーマーケット
のような形態のものを発展させない、簡単に
大臣
の
お話
を集約しますと、そういうような内容だったと思いますが、実はこの
スーパーマーケット
というのと
ストア
というのとは違いまして、
ストア
というのは、大体衣料品が中心でございまして、いい、お値段の高いものではオーバーコート、それから寝具類、そういう
日常
必要であっても比較的値のかさむもの、こういうものが
ストア
には売られております。もちろん、自転車なども出ております。テレビ、ラジオなども出ている。大きい
ストア
になりますと、電気器具も出ております。ここいらは全部店員がついておりまして、買う方
たち
を監視いたしております。この
セルフサービス
の
スーパーマーケット
と申しますのは、御
承知
のように、
日本
でもこのごろそうやっているようでございますが、車のついたざるのようなものを押しながら、自由に
品物
を入れて、出てくるときに、ちょうど飛行場に入りますときに入場料を払わないと飛行場に入れないような、一人入るとくるくると
機械
が回るような
設備
が出入口についておりまして、入った以上は勝手に抜け出せないような
——
やはり人間の足りない国のことでございますから、すべて
機械
化されておりますが、やはりある
程度
監視もついているようでございます。今
日本
でマーケットと申しますと、非常に整備されておりませんで、
小売屋
さんが集まって、
自分
の
売り上げ
に神経を集中させているような
状態
でございますから、そういう形態の
スーパーマーケット
は少ないようでございますが、
外国
では大体そういう形をとっております。
日本
も、そうして整然と
機械
化してやられると、たとい
一つ
くらいポケットに隠したいと思っても隠せないようなことになるのではないかと思います。ですから、そういう面では、これはやはり
スーパー
の発展しない理由にはちょっとならないのではないかと考えております。 それからもう
一つ
私が申し上げたいのは
住友
さんはどの面をおやりになるのか。今
スーパーマーケット
が盛んに使っておりますのは、パテントをとりました
機械設備
でございます。いわゆる貯蔵器、貯蔵庫とも申します。このごろ、貯蔵は、冷たく氷のようにしてしまうよりも、その一歩前の、新しい
方法
で、新鮮なものを大衆に供給いたしております。そういうパテントを持っております近代的な
機械設備
、こういうものを
日本
に据え付けておやりになるということになりますと、先ほど話が半端になりましたが、
オレンジ
が一年中同じ
価格
で同じ
状態
で食べることができるのです。そのかわり、なくなったときの
価格
も同じだし、とれるときも
価格
は同じであるという物価の安定が得られます。しかし、比較的たくさんとれるときでも、高いものを食べるという計算に相なります。それからただいま
アメリカ
の
スーパーマーケット
は、
ストア
をしのぎまして、ぼつぼつ
衣類
品を始めるようになりました。その
衣類
品が、やはり自家
工場
でございまして、比較的スケールの小さなメリヤス
工場
だとかくつ下
工場
を持って、それを直接売っております。この
スーパーマーケット
で売っております婦人用のナイロンのくつ下が、何と三足一ドルでございました。
日本
ではとうてい及ばない
価格
で、しかも、
一般大衆
はそれで間に合わしているようでございます。しかし、中流、上流階級になりますと、
スーパー
のくつ下などははけない。くつ下は一ドル以上出して
デパート
で買わないとだめなんだということを言っておりますが、
一般大衆
は、三足一ドルのくつ下をけっこう買っております。私も
参考
に買って参りましたが、
日本
の一番お安いものよりもいいようでございます。こういうことが、私はおそろしいのではないかと存じます。
住友
がどの部門をおやりになるのかよく存じませんが、そういう点で、
日本
の経済全般のために私は大きな
心配
を持つものでございます。ちょっと深く申し上げてまことに恐縮でございますが、
一つ
その点もつけ加えて御
意見
を聞きたいと思っております。
福田一
5
○
福田国務大臣
実は私も青山の近所を
通り
ますので、あそこにいわゆる
スーパーマーケット
でしょう、今言ったようにかごの中に入れて物を買ってきて、出口のところで払う式のところに、こういうこともあるので、実は興味をもちまして入ってみました。だから、あなたのおっしゃる意味はよくわかるのですが、そのやり方なんですね。そういうふうに
機械
化でもされてきちっとやればいいと思うのです。そうなると、
設備
費にずいぶん金がかかる。そういう種類のものがどの
程度
できるかというようなこともございましょう。ただ、私が、概念的に
日本人
はそういうところがあるからということよりは、私が今重点を置いているのは、むしろ今
日本
にそういう面での
労働力
が余っている。風俗、習慣が欧米といささか違う面があるので、
アメリカ
でうまくいくからといって、
日本
で必ずしもそれが受けるかどうかという問題もありはしないか。所にもよりますし、都会などとまたいなかとも違いますから、いろいろあると思うのですが、そういうことも研究してみたい、こういうことを申し上げたわけでございまして、そう変な意味で、私が申し上げているいわゆる道徳の問題は、大きく取り上げていただかないようにお願いをいたしたいと思うのであります。
住友
が今考えておりますのは、大体共同仕入れ、仕入れの面ということを特に考えておるようでございます。でありますから、今言われましたように、
生産
から販売までの、
一貫作業
というようなところは、まだ何も考えておらないように見受けられるのでありますが、しかし、むずかしいことは、冒頭にあなたも仰せになったように、経済の、政治の根本の大きな目的は、やはり何といってもよい
品物
で安いものを一般国民に提供するというのが、
一つ
の大きな問題であると思うのであります。その場合に、
スーパーマーケット
ができることによって、
流通機構
が非常に安定化し、また、安定した食料あるいは衣料等が
消費者
に供給されるのであるということになれば、その姿自体を否定するということが正しいかどうかという問題を、私はまず考えなければいけないと思います。そういう意味からいえば、これは必ずしも悪いとはいえないのではないかと、大きな意味で私は思うのであります。ただし、それが
日本
の経済が持っている、いわゆる
小売業
という
一つ
の層を急激に圧迫したり、あるいはまた、そのために社会問題を起こすというようなことになってはいけないから、その
対策
というものと並行して考えていかなければいかぬというところに問題点があるのではないかと私は考えますので、まずそういう意味で、
政府
としても、今度はわずかではございますが、協業化資金というものもつけました。しかし、こんなもので満足しておるということではなくて、まだまだもっと大いにやらなければいかぬと思います。そういう意味からいけば、中小企業基本法等も今度出しておりますが、こういうものも認めていただき、それに伴ういろいろな具体的な法案等によって、こういう面も順次法制的にも整備をするし、予算的にも今度はそれに力を入れていく、こういう方向で処理をしていったらいいのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
山口シヅエ
6
○
山口
(シ)
委員
よくわかりました。終わります。
逢澤寛
7
○逢澤
委員長
首藤新八君。
首藤新八
8
○首藤
委員
時間がだいぶ窮屈になってきたから、私は金利の問題と関税の二つだけについて質問をいたしたいと思います。 今さら私が申し上げるまでもなく、
日本
の企業体で一番大きな弱点は、金利が非常に高いということであります。特に最近、経済が異常に躍進したが、自己資金がそれに伴うていない。大部分が外部からの融資によって営業している。そうしてこの大部分の融資に対しては、ことごとく金利がついておるわけであります。特に貿易の
自由化
によって、素っ裸で国際的に相撲をとらなければならぬ、真剣に相撲をとらなければならぬという
時代
が到来したのでありますから、
政府
は何をおいても、
外国
の
状態
とにらみ合わせて、
日本
の業者に多少でも隘路があるということであるならば、その隘路を取り除くという施策を強行しなければならぬと私は思うのです。しからば、一体今何が一番大きな隘路かというと、非常に金利が高いということです。これは議論の余地がないと思うのです。ところが、その金利に対して、先月でありましたか、総理並びに大蔵
大臣
は、金利を下げていくと言われた。まさに私はそうあるべきだと思う。ところが、肝心の日銀が、
政府
の意向とは相反するような総裁談話を発表して、そうして自来一カ月以上経過したにもかかわらず、一向引き下げをやるような気配がない。これが私は非常に問題だと思う。いやしくも
政府
がそういう方針を立てて、しかもそれを一般に発表したというならば、日銀がかりに独立の機関であっても、やはり
政府
は内面指導をやり、そうして
政府
の方針とマッチするような政策をとらなければ、私は国民が
政府
に対する信頼を失ってくると思う。しかも、現実に金利が異常に高い。各企業体もこのためにどのくらい苦しんでおるか、こういうことでありますから、
大臣
は、これに対してどういう意向を持っておるか、またどういう
対策
をとってきたか、まずこの点から伺ってみたいと思います。
福田一
9
○
福田国務大臣
金利の問題に対するお考えにつきましては、今申し述べられたことについては、私は全面的に賛成でございます。また、おっしゃる
通り
だと思っております。ただ、日銀と
政府
との
関係
につきましては、御
承知
のような特殊の
事情
というものもございますし、また、私自身が大蔵
大臣
でもございませんから、直接担当の者ではありませんので、この問題について具体的な
意見
を述べることは差し控えさせていただきたいと思いますが、仰せのような欠陥が一部においてあるやに私も考えております。ただし、金利の問題について、私は今もそうでありますが、昨年来
日本
のいわゆる
自由化対策
という点から考えてみても、結局産業に力をつける。産業に力をつけるというと、それじゃ今産業は何で一番困っておるか。結局金利の重圧にあえいでおるというのが、あなたもよくおわかりの
通り
、私もそう思っております。ただこの金利の引き下げを急激にやりますと、それがたとえば株に影響したり、あるいはその他にあまりにも刺激をすることによって消費ブームを起こしたりするというような悪影響もありますので、これをどういうふうに秩序あり、またあまり経済に悪影響がないようにして金利を引き下げるかということが、実は
一つ
の大きな問題じゃないか、こう私は考えております。 それともう
一つ
、金利について、これは金利の話が出ましたから申し上げるのですが、私が実は今も大いに不思議に思っておることは、例の歩積みというものでございまして、これがすこぶる金利が高い上にまたその金利を高くしているような
実情
にあります。これは私はしばしばそういうことの是正を要望いたしておるのでありまして、今ここで申し上げるわけにはいきませんが、私は、適当な機会に
一つ
どうしてもこれだけは是正をせにゃいかぬ、少なくとも私の
関係
しております中小企業
関係
の金融等について、一番大きな問題になっているんじゃないか、こういうふうに考えておるわけであります。今、首藤さんの
お話
しになりましたような金利、一番大もとのいわゆる日銀と
政府
との
関係
というようなことも非常に大事である。しかし、このことは、私が申し上げるのもいかがかと思いますが、総理も非常に
心配
し、何とかしたいという意図を持っておられるようでございます。ただ、私としては、通産
大臣
としての立場から言うと、それをどういうふうにするということは、これは大蔵
大臣
じゃございませんから、申し上げてあやまちを犯してもいけませんし、誤解を生ずるおそれがありますので、御
意見
には賛成でありますが、どうするという具体的な
方法
は、この場においては差し控えさせていただきたい、こう考えるわけであります。
首藤新八
10
○首藤
委員
大臣
が大蔵
大臣
でないから、具体的なことは差し控えたいということ自体が、私はどうかと思う。少なくとも産業の振興をやらなければならぬ責任
大臣
が、今産業の振興に金利がいかにブレーキをかけているか、この問題を
大臣
はよく知っておられるはずです。それならば、閣議の席上において、具体的にこういう影響があるんだ、かようなことで産業が振興しないんだ
——
日本
の産業はあげて金融機関のために奉仕しておると申し上げても、私は過言でないと思う。これほどの大きな影響のあるものを、主管でないから遠慮するということは、少し憶病過ぎる。もう少し活発に、積極的に閣議の席上にこの問題を持ち出して、そしてすみやかにこれが実現するような方向へ持っていかなければならぬと私は思うのであります。 これは私から詳しく申し上げなくても、
大臣
も知っておると思うのですが、大体現在の普通の金利は、二銭七厘から八厘です。ところが、戦前は十円札があった
関係
で、百円札は珍しかった。終戦直後に百円札が普通の兌換券になってきた。千円札はなかった。今日は、一万札が普通の扱いの対象になっておる。物価は大体五百倍です。ところが、その五百倍の物価に対して、兌換券は十円の千倍の一万円札が発行されておる。そうして金は、五百倍の呼び値だけは高くなっておる。従って、金融機関は、物価が五百倍になったからといって、五百倍の人は使っておらぬ。兌換券を大きくした
関係
で、さして戦前と変わらぬ。そして五百倍の金利だけは取っておる。むしろ見方によれば、これよりはなはだしい暴利はないと私は思う。こういう点から見ても、これが全産業に非常な悪影響を与えておる。ことに中小企業は、自己資金がない。どうしても他の方面からの融資を仰いで営業を続けておるというのが、現実の姿であります。しかも、その融資は、一般銀行からのいわゆる二銭七厘、二銭八厘の融資の量はきわめて少ないのでありまして、それよりもはるかに高い、あるいは何倍かの町の金融業者に依存して営業している者がきわめて多い。全く金利のために働いておるということをはっきり申し上げても、私はちっとも間違いでないと思うのです。従って、今度の基本法に対しましても、中小企業の育成のためには、金融と税制、自己資金を強化させることがまず前提条件だという考え方に立っておる。従って、この二つが非常に重要であるけれども、税制の方はもうすでに予算が決定しておりますから、今さらこれを追及したところで、もう一年待たなければならぬので、これはしばらくおきますが、金利の方は、
政府
の考え方次第でいつでもできる問題だと私は思う。それを株式の方に対する刺激が多いとか、あるいはまたほかの面に対する影響が大きい
——
あるいはインフレということを考えておられるかもしれませんけれども、今日のように
生産
性が異常に高くなって、物資が豊富のときには、金利が下がったからといって、それがためにインフレになる
心配
はごうまつもないと私は考える。むしろ現在は、過剰で困っておるという世の中です。この際に、金利が下がったからといって、それでインフレが起こるというようなことは、全く考えられないことであります。ただ考えられるのは、株式が、相当刺激を受ける。しかし、株式が多少刺激を受けたからといって、一昨年来の暴落の反動として、ある
程度
の高揚は、これはやむを得ないと思う。また、一昨年の八月はダウは千八百円で、まだ今日は千五百円台であります。上がったところで、一昨年の
価格
までまだ相当の幅がある。いわんや当時の
日本
の経済力と今日の経済力と比較してみると、はるかにく今日の方が拡大しておることも、また争われない事実であります。そういう面から、株式は多少上がるかもしれないということを配慮いたして金利の引き下げを延ばすということは、
日本
の全産業のために大きなマイナスだと私は思うのです。従って、こういう小さいことに関心を持たず、思い切って
一つ
金利引き下げに積極的な工作を続けてもらいたいということを、特に申し上げておきたいと思います。そこで、もう
一つ
の問題は、関税の問題です。昨年、私はこの
委員会
で、カナダが暫定緊急関税ということで一方的に関税の大幅引き上げをやった。私が
関係
しておることは、ゴムのはきものの
関係
ですが、もうすでにたび重なる関税の引き上げによって、それと自主規制によって、数量を規制されておる。そこで
生産
は減ったわけ、関税は上がったということから、この上がった関税を吸収するところがないのだ。いわんやナカダと
日本
の
関係
は、貿易は
日本
が入超ですよ。
日本
が出超ならば、多少はそれは気分的な遠慮をしなければならぬ点もあるかもしれないが、
日本
は大幅な入超です。一体何を遠慮するのか。どこにも遠慮する必要はないでしょう。もしカナダがそういうことをやるならば、カナダからの輸入をほかの国に転換して、そしてカナダの反省を求める。打つ手はたくさんあると私は思うのです。それにもかかわらず、一方的に関税を引き上げられて、それに黙々としてついていくということは、あまりにもだらしなさ過ぎるじゃないですか。ゆえに、すみやかにさようなことのないようにやってもらいたいということを
通商局長
、あるいは外務省の経済局にも私は申し上げた。善処するということであったが、一向目的は達成していない。従って、昨年のカナダ向けのはきものの輸出は、以来三分の一に減ってしまったじゃないですか。ところが、今度はまた、昨年来うわさをされておりました
アメリカ
の関税、これは昨年の十二月のガット総会に、
アメリカ
からウェーバーを申し込まれた。そうして一月一日から関税の大幅引き上げがあるじゃないかということを非常に
心配
されておりましたが、幸いに年末のガットには申し込みがなかった。ところが、今度は二月のガット総会で、
アメリカ
からウェーバーを申し込んだら即時実施されるかもしれぬということで、多分先般来
アメリカ
との間に関税交渉をされておることは、あるいはそういうことを含んだ交渉かとも思うのですが、これは一体どうなっておるか。その中に、はきものが入っておるかどうか。
一つ
この点をはっきり
お答え
いただきたいと思います。
福田一
11
○
福田国務大臣
米国並びにカナダに対しまして、一般的にいいますと、この間の日米経済協力閣僚
会議
におきましても、この間またカナダからフレミング
大臣
がやってきましたときにも、今あなたの
お話
しになったような点を私は強く主張しました。ただ、事実問題として、今、
日本
に対しては大体三億ドルの輸入であり、
日本
の輸出は一億二千万ドル、二億三、四千万ドルの輸入に対して一億二千万ドルほどの輸出ということになっておりますが、それは御
承知
のように、原料、小麦とか、そういうものが一番大きいものです。小麦の方の
関係
を聞いてみますと、カナダの小麦がいいからということもございまして、簡単に、じゃオーストラリアに変えたらどうかということが考えられるか。オーストラリアにもこの間行っていろいろ調べましたが、向こうは買ってもらいたいと言っておりますが、これがまた、こっちは五千万ドルほど売って、向こうから二億ドルほど
日本
が買っておるというような片貿易のところばかりでございまして、そう簡単に変えたらどうという効果が直接出るかどうかという問題もございます。実は、これはああいう
会議
の内容を全部ここで申し上げるわけにはいかないけれども、私は強くその点を主張いたしました。そうしてすみやかに緊急関税をやめてもらいたい。これはまだ具体化はしておらないかもしれぬが、向こうも緊急関税はできるだけ早くやめるからということを約束したというような段階でございます。
アメリカ
の問題につきましても、この間も実は、
日本
が相当な自主規制をやっておるというような
実情
等も述べ、強く
アメリカ
に要望もいたして参りましたが、今の
お話
の点は、これは
アメリカ
が関税の分類を変えるという問題がございまして、その分類を変えますと、今言ったはきものに影響を与えるということになるのでございます。詳しいことは
通商局長
から述べさせますが、一月三十日以来、駐米大使館を通じまして、今仰せのような、そういうことは困る。もしそういうことをするのだったら、何らかこちらとして措置をしなければいかぬだろうということを強く申し入れておる段階でございます。内容につきましては、
通商局長
から説明をさしたいと思います。
松村敬一
12
○松村(敬)
政府
委員
ただいまの米国の関税簡素化法に関します御質問でございますが、今
大臣
の仰せられましたように、一月三十日からワシントンで交渉しておりまして、それには今首藤先生御指摘のスポンジのぞうり、ゴム底のビニールぐつ、その他のビニールぐっというものを含んで交渉をしております。関税簡素化法は、
アメリカ
としては、分類を直しまして、関税を簡素化するということを直接には目的としたものでございますが、その結果、分類の変更になりまして、一部従来の関税が非常に高くなるというものがありますので、特にガットにおきまして譲許を約束いたしたものについては、この引き上げは
日本
としては承服できないということで、非常に強力に交渉しております。ガットの原則から申しますれば、もしそういう関税の引き上げがございました場合には、やむを得なければ補償要求ということで、別の関税を引き下げることによって引き上げを補てんするという形になっておりますが、それは関税全体から申しますればそれで補てんという形は出ますけれども、直接対象となりますスポンジぞうりその他につきましては、それだけ関税が高くなるという結果になりますので、
日本
の方としてはそれは望ましくないということで、第一案といたしまして、今申しますような譲許関税の据え置きということにつきまして、交渉中でございます。
首藤新八
13
○首藤
委員
私の聞いておるところによると、現行関税は一二・五%、これを一挙に二〇%に引き上げたいというのが、向こうの意向だということでありますが、これに間違いありませんか。
松村敬一
14
○松村(敬)
政府
委員
御指摘の
通り
に、現在の税率が一二・五%で、分類を変えましてほかの分類に入りますと、二〇%という分類になるということでございます。
首藤新八
15
○首藤
委員
しかもそれは、新しい関税は、FOBに向こうは考えておるということであります。そういたしますると、業界の打撃は全く深刻なものでありまして、これはこの前も申し上げたのでありますが、いわゆる中小企業の一般的な現状として、非常な雇用難に陥っておる。また、
設備
の近代化が行なわれていない。そこで
生産
性は非常に落ちてきた。ベースアップはやられてきた。そこでコストが非常に高くなっておるのが現在の姿であります。この際に約八%も関税が上がってくるようなことは、全く致命的な影響を与えることは、
通商局長
も大体了解できることと思うんだが、この際、どんなことがあっても、こういう不当な関税の引き上げに対しては断固として反対の態度を堅持して、かような不当引き上げを実現しないように、どこまでも努力してせられたいと思いますが、見通しはどうですか。その点だけ伺っておきたいと思います。
松村敬一
16
○松村(敬)
政府
委員
初めの御指摘のございましたFOBと現在の課税の基準との違いでございますが、現在の税率では、いわゆるASPと申しまして、
アメリカ
ン・セリング・プライス、向こうの同種商品の米国内の卸売
価格
を課税
価格
というふうにしておりますけれども、実際上はFOBを
価格
基準として課税をしておる模様でございます。そういう意味におきましては、課税のもとの
価格
は、今度のやり方によりましてもあまり違っていないかと思いますが、それは別といたしまして、御指摘のように、一二・五%から二〇%と申しますと、七・五%の引き上げになるわけでございまして、 〔
委員長
退席、岡本(茂)
委員長
代理 着席〕 御指摘のような非常な悪い影響があると思いますので、目下旧税にぜひ据え置くべきだということで強く交渉いたしておりますけれども、見通しにつきましては、目下交渉中でございまして、まだはっきりした情報を得ておりません。
首藤新八
17
○首藤
委員
私らが
心配
するのは、今までの経過から見て、今度もこちらの方から譲歩するのではないか。いたずらに犠牲だけは
日本
の中小企業者が負担する、これでいいかどうか、実は問題であります。しかも、引き上げられた分がどこかに吸収される余地があればともかくでありますが、もうどこにも吸収する余地がない。かように大幅な関税の引き上げが行なわれますれば、輸出の面では、カナダと同様に激減することは火を見るより明らかであります。そういう点から見ると、貿易の
自由化
、貿易の振興という根本方針から考えましても、私はまことに遺憾である。しかも、それは
政府
のいわゆる
対策
がよろしきを得なかったという批判も受けなければならぬと思いまするが、批判はともかくとして、実際に中小業者がこれがために非常に圧迫を受ける。この
実態
をよく認識してもらわなければいかぬと思う。その上に立って、もう
一つ
は、先ほど申し上げた
アメリカ
との
関係
も、貿易上では
日本
は入超であります。何も遠慮するところは
一つ
もないのであります。しかも、今日までたびたび自主規制を求められて、何回かの自主規制をやってきたあげくでありますから、特に深刻な影響がある。こういう点もあわせて考えて、どこまでも
一つ
がんばってもらいたいということを強く要望して、私の質問を終わります。
岡本茂
18
○岡本(茂)
委員長
代理 ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕 〔岡本(茂)
委員長
代理退席、
委員長
着席〕 〔速記中止〕
逢澤寛
19
○逢澤
委員長
速記を始めて下さい。 次回は明後十五日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後零時三十一分散会