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1963-02-12 第43回国会 衆議院 商工委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月十二日(火曜日)    午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 逢澤  寛君    理事 岡本  茂君 理事 首藤 新八君    理事 白浜 仁吉君 理事 中村 幸八君    理事 板川 正吾君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君       小沢 辰男君    神田  博君       小平 久雄君    齋藤 憲三君       笹本 一雄君    始関 伊平君       田中 榮一君    中川 俊思君       南  好雄君    山手 滿男君       久保田 豊君    小林 ちづ君       多賀谷真稔君    中村 重光君       山口シヅエ君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    山本 重信君         通商産業事務官         (通商局長)  松村 敬一君         中小企業庁長官 樋詰 誠明君     ————————————— 二月七日  委員笹本一雄辞任につき、その補欠として西  村直己君が議長指名委員に選任された。 同日  委員西村直己辞任につき、その補欠として笹  本一雄君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員浦野幸男辞任につき、その補欠として濱  田正信君が議長指名委員に選任された。 同日  委員濱田正信辞任につき、その補欠として浦  野幸男君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月十一日  中小企業振興資金等助成法の一部を改正する法  律案内閣提出第六八号)  中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律  案(内閣提出第六九号)  中小企業近代化促進法案内閣提出第七〇号)  中小企業指導法案内閣提出第七六号) 同月九日  プロパンガス容器計量器必置に関する請願  (松平忠久紹介)(第六七四号)  ガソリン価格値上げ反対に関する請願)(渡邊  良夫君紹介)(第六九五号)  中小企業工場集団化制度に関する請願高田富與  君紹介)(第八四六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律  案(内閣提出第六九号)  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件      ————◇—————
  2. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 これより会議を開きます。  経済総合計画に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許可いたします。久保田豊君。
  3. 久保田豊

    久保田(豊)委員 いろいろ御質問したいのですが、時間がありませんから、特に政府の三十八年度の経済見通し経済運営基本的態度について、重要な点を二、三企画庁長官に御質問をいたします。  第一に御質問をいたしたいのは、過般の予算委員会でも、わが党から勝間田委員質問をいたしまして、あなたがお答えになっておりますが、大体今までの経過をずっと見ると、政府経済見通し実績とは非常に大きく食い違っている。これは政府も認めざるを得ない、こう思うのです。これに対して、池田総理は、見通し実績と食い違っても、そんなことは問題じゃないのだ、経済成長さえ十分に行なわれておれば、それによって国民生活の向上もできるし、格差の解消その他もできるのだから、まあ見通しの狂いとかなんとかいうことは問題ではないのだというふうな、無責任な答弁をされておるようであります。しかし、これからは、たとえば自由化一つ考えてみましても、今までの政府政策なりあるいは見通しの違いが、すぐ日本のどこに響いてくるかといえば、国際収支に響いてくる。そうしてしかも、それによって国内景気段階が、政策的にどうしてもゆがめられるというか、抑制をされてこざるを得ない。しかも今までは、つまり為替の制限という中で、そのワクの中でやったから、国内限りでどうやら済んだ。ところが、これからはそうはいかないわけです。六日の勧告にも、その趣旨がはっきり述べられております。こういうところから見て、経済見通しなり、あるいは計画——とはいえないまでも、それと実績とをどういうふうにマッチさせるか、一致させるかということは、これからの経済運営基本に関する問題だと私は思う。  そこで政府に第一にお聞きしたいのは、少なくとも今までは非常に大きく食い違ってきた。その食い違いを生じた原因について、政府としてはどのような反省をしておるのか。また、なぜそういうふうに大きな食い違いが出てきたのかということについて、どういうふうにこれを見ておるのか。この点を第一にお聞きしたいということであります。  それからそれに連関して、毎年こういう経済見通しを立てられるわけですが、特に本年度の場合、政府経済見通しというものは何を基準にして立てられておるのか。もちろん非常に複雑な現象ですから、単純な一本の基準というわけにはいかないだろうが、しかし、何かのはっきりした基本がなければ、基準というものがなければ——何を一番土台として見通しを立てるかということは、非常に重要な問題です。あるいは企業収益率を見るのか、あるいは輸出入バランスを見るのか、国際収支のあれを見るのか、あるいはいわゆる民間設備投資なり何なりを標準にして立てていくのか、こういう点を明確にしないことには、見通しも、経済運営も、うまくいくわけはないと思うのです。今までは、比較的この点については政府がいいかげんなことを言って、国会だけうまく乗り切ればあとはまあいいということになったと私は思うが、これからはなかなかそうはいかないというふうに思わざるを得ないのです。そこで、この二点について、まず第一にお伺いをいたしたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最初お尋ねについてでありますが、過去数年間の経済見通しがなぜ事実とこれほど離れたかということについて、大別いたしまして二つ理由があると考えるわけでございます。一つは、まず生産の面について申しますと、わが国が、世界各国相当おくれて技術革新設備更新というものに乗り出したわけでございますが、その速度なり幅なりについての測定、この測定が正確でなかったということが一つだと思います。それは、一つには技術革新速度と深さの幅の問題でございますが、もう一つは、新たに資本が投下されました場合に、それがどれくらいの生産になって一年間に返ってくるかという、いわゆる資本の効率と申しますか、この算出計数についての考え方が、統計的にも、これは実はいまだに確立されておらぬわけでありますが、確立されておらないということ、それから次に、投下された設備のどれだけがネットのプラスであって、どれだけが古い設備のかわりに、いわゆる更新という形で置きかえられるかということの比率測定が困難であるということ、それからもう一つは、資本を投下いたしました場合に、それがどのくらいの期間生産力となって現われてくるか。つまり建設勘定として寝ておる期間はどれくらいの長さであろうか、この三つのことがいずれもはっきりいたしませんために、基本にありますところの技術革新の幅と速度が不明であるということに加えて、これらが生産面での、つまり鉱工業生産伸びについて、私どもがしばしばこれを過小に評価した。これが第一の原因であると考えます。  第二の原因は、そういう経済構造変化に伴いまして、消費伸びというものが、私ども考えておったよりもはるかに大きかったということ、なかんずく初任給と申しますか、若年層の新たに労働市場に入ってくる人たちの給与の測定、それからきますところの国民経済全体の消費伸び見方、これが小さかった。この二つが、大別して、従来の見通し実績と比べておおむね下回った、それも相当下回ったという大きな原因であるというふうに考えておるわけであります。この点は、私どもも大いに反省をいたすべきことであって、三十八年度の経済見通しを立てます場合に、それならば幾らということは申せませんけれども、ともかく従来、そういうことについての見通しが過小であったということは、反省をいたしております。  それから三十八年度の経済見通しをどういうおもな要因に基づいてしたかというお尋ねであったわけでありますが、まあいろいろな要因を総合したわけでございますが、やはり一つは、今申しましたように、消費伸びをどう考えるかとしうこと、これが一つの大きな要因でございます。それから次には、民間設備投資が三十八年度はどういう動きをするであろうか、これが第二の要因でございます。財政につきましては、計数になって現われておりますから、今申し上げることを省略いたします。筋三には、海外経済市況並びにわが国生産施設生産能力等から考えまして、輸出がどうなるであろうかということ、及び生産活動に必要な原材料その他を中心とした輸入はどういうふうであろうか。取り出して申せば、その三つが大きな要素であると申し上げていいのではないかと思います。
  5. 久保田豊

    久保田(豊)委員 政府としては大体そういうことになると思うのでありますが、その中で、やはり一つの一番基本的な問題が落ちておるのではないかというふうに私は思うのです。それはどういうことかというと、海外状況なり何なりが今までと相当基本的に変わっておると私は思うのであります。と申しますのは、何といいますか、最近のアメリカヨーロッパ状況を見ましても、世界的に見て資本主義社会経済伸びというものが、一つの大きな曲がりかどに今日きているということが、はっきり私は言えると思うのです、形はいろいろになってきておりますけれども。そういう海外要因について、これをどう見るか。従来と同じような見方では、これは非常に大きなそごを来たすのではないかというふうに私は思うのです。こういう点の見方、今日の世界経済基本的動向をどうつかまえておられるかという点をお聞きしたいというのが一つ。  第二には、国内一つの問題としては、ともかくちょうどことしは政府のいわゆる所得倍増計画の三年目になるわけです。三十四年から始まったいわゆる設備投資の波といいますか、高揚時代からいいますと、これが五年目になろうかと思います。こういう点から見て、少なくとも三十六年度に設備投資が四兆幾らというふうに政府の統計ではなっておりますが、そういうふうな非常に高い設備投資の水準というものが、今お話しのようないろいろな要因ですね。特に私どもから見ると、これは政府見通しを誤った高度成長政策で太鼓をたたき過ぎた。それで、本来設備投資なり何なりをしようという段階にきておったものが、むちゃくちゃに設備投資をしたために、こういう大台が出て参った。それから総合してみると、所得倍増計画の四十五年の目標は、実質的にはすでに今日、生産力としてみればできておる。少なくとも三十四年以降本年度までの民間設備投資を総勘定してみると、十八兆何がしになります。三十四年度を除いて、五年度以降を見ても、十六兆近くになる。政府見通しました高度成長計画では、御承知通り、十六兆というのが一つの目安、だったはずです。すると、それだけのものを十年間でやるやつを、前の四年間で、やってしまった。ことし三兆五千億やるとすれば、それ、だけの投資がすでに行なわれてしまうという情勢になってきておる。それによる国民総生産にいたしましても、ことしの計画で見れば、二十兆何がしになっております。これは最終のあれになりましょうけれども、しかし、これには御承知通り、今新しくこしらえた工場が、相当操短をやっておるわけです。この操短率か、世間は、はっきりしたことはわかりませんが、今日七五%くらいの操業で、二五%くらいの操短率だ、こうもいわれておる。昨年度の政府経済報告によると、所得算出計数というか、そういうものが一五七くらいと書いてあります。そんなに高いかどうかわかりませんけれども、そういう両方の点から見て、ことしの二十兆というのは、操短なり所得算出計数なりを正しくつかまえてやれば、四十五年を目標としておる二十三兆というものが、生産能力としてはすでにことしの暮れには完成をする。それに到達するということになっておる。こういう計算が当然成り立つと想うのです。  それからもう一つ大きな国内変化は何かというと、それは何といっても日本産業構造が軍化学工業化したということです。その重化学工業比率がどのくらいになるかわかりませんか、しかし、大体におきまして、少なくとも六二、三%から六四、五%くらいになるのではないかと私どもは見ております。そうしてきますと、これに見合ういわゆる有効市場というものが、どういうふうになるか。それと、海外状況と、日本貿易構造なりあるいは消費構造なりというものを正確に踏まえた場合に、どういう今後のあれを立てていったらいいかということか、単なるいろいろの数字のつじつまを合わせるということではなくて、当然基本的な問題になってきやせぬか。この点の観点をはずす限り、私は、非常に今後の貿易自由化状況の中では、あるいは今後の海外情勢の中では、非常に困難な、矛盾が大きくなるというふうに考えるわけですが、この点について長官はどういうふうに思っておられるのか。これは、私どもから言うと、一番根本原因は、何といっても高度成長政策による民間設備投資の行き過ぎであります。しかも、非常に高い四兆というレベルが出てしまって、これは簡単にあの国民経済計画で言えば、いわゆる所得倍増計画で言えば、大体今の段階では二兆程度の民間設備投資段階だと思うのです。それが倍になっておる。すでにこの段階では、単なる量の問題ではなくて、非常に基本的な問題を含んでおるというふうに私は思うのです。そういう点をどういうふうに把握され、認識をされ、今後、どう調整するかということが、私は一番根本の問題だと思うが、この点についてどう考えるか。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず最初に、海外経済情勢見通しをどう考えておるかということでございますが、これは見通しの範囲をいずれにしても出ないわけでございます。まず、アメリカにつきましては、今度の減税法案がどういう姿で決着いたしましょうとも、まず景気はひどい後退をすることはない、むしろ、除々ではあるが拡大方向に向かうであろうというのが、昨年末私ども経済計画を立てましたときの、たまたま日米経済合同委員会などがございました関係もありまして、米国における実務家、学者、大多数の人々の判断であるように思います。その点は、現在も変わっていないというふうに承知をいたしております。それからヨーロッパにつきましては、フランスイタリア経済には、なお本年も相当伸びを期待してよかろうと思いますが、その他につきましては、伸びを期待することはむしろできない。共同市場並びに英国を含みまして、やや経済停滞ぎみではないかと考えるのが常識ではないかと思うわけであります。ラテン・アメリカにつきましても、アフリカにつきましても、大きな変化を期待することはできないと考えます。そういたしますと、やはり残りますのは、最後の二つを含めまして、いわゆる低開発国経済動きはどうであるかということでございますが、この点は、一次産品価格というものが、やはり一向に上がっていく気配を見せない。むしろ、一次産品輸出するのに相変わらず苦労が続いておる状況でございますから、大きな購買力を期待することは不可能であろうというふうに考えるわけでございます。総じて世界経済全体を突っ込みまして、これはいかにも乱暴な話であるかもしれませんが、まずまずひどい停滞があるとは思いませんけれども、そう大きな伸びがあるとも考えない。わが国輸出としては、前年度三十七年度ほどの伸びを期待することは無理でありますが、なお世界貿易の中において、もう少しシェア拡大することは可能であろう。大まかにそういうふうな考え方をしておるわけでございます。その辺は、六%とか七%とかいう伸びを考えておるわけでございます。  それから第二段の問題でございますが、確かに過去において、冒頭に申し上げましたように、民間企業設備投資というものが、私どもの予想をはるかに上回っておる。三十八年度は三十七年度ほどにはいかないであろうというふうに考えておるわけでございますが、しかし、もう一つの問題は、大企業設備投資はある程度一巡をしたといたしましても、これから先、中小企業設備更新というものがどうなるかという問題が残されております。そうしてこれは、機会さえ与えれば、相当伸びが今後あるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。久保田さんの仰せになりましたように、所得倍増計画目標をかなり経済伸びが上回っているではないかとおっしゃることは、その通りでありますが、三十三年度価格あるいは三十五年度価格で考えまして、一年ないし一年半くらいは先にいっておるということは申し上げて差しつかえないと思いますが、四十五目標年次目標をもはや達成するに近いではないかというところまではいっていない、こういうふうに思っておるわけでございます。
  7. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今の計算基礎が、測定基礎が、価格や何かいろいろ変わってきますから、そういうところに置いてくれば、多少そういうあれがあるかと思います。思いますが、基本的には、私は、この三年間で、ことしの民間設備投資が予想通りいった場合には、かなり四十五年の目標に近づいてくることは間違いない。ところが、ほかの要件がこれに伴わないという点が問題の中心だろうと思う。輸出入にしましても、あの計画に基づけば、大体二十二兆の国民総生産がある場合に、大体輸出入とも百億ドル近くの規模にならなければならぬ。しかも、その内容は、重化学工業がほとんど六〇%以上輸出入内容を占めてこなければならぬ、こういうことになるでしょうし、特にあなたの商工委員会におきますいろいろなあれを見ても、公共投資、つまり社会資本の形成というものは非常に立ちおくれておると言っておる。おくれるわけですよ。片方で設備投資がどんどん伸びている。立ちおくれているのではなくて、民間投資の方が行き過ぎたから、結局バランスがとれなくなったということに私はなると思うのであります。こういういろいろなひずみが至るところに出てきておるというのが今日の状況であって、今お話のありましたように、ことしの世界経済の単なる景気見通しという点からいえば、あなたのおっしゃるようになるかもしれない。しかし、アメリカにしましても、景気そのものは、生産そのものは落ちないかもしれない。しかしながら、外貨事情は悪くなっております。そのほか、どうも減税も、最近の状況では、だんだん資本家減税日本でいう政策減税の力に近づいていくような傾向にあるようです。これでは、新しい投資を刺激してやるというふうな格好にはならないのじゃないか。むしろ対外的には、非常にきびしい線がこれから出てくることは、当然だろうと思う。景気がいいから、あるいはそんなに景気が悪くないから、日本輸出伸びるということにはならないのじゃないか。特に日本側事情からいえば、アメリカは軽工業ないしは軽機械の輸出市場としてはさることながら、重工業品市場としてはほとんど価値を持っていない。しかも、原料品としては、重化学工業はほとんどアメリカに依存している、こういう状態です。欧州にいたしましても、EECがだんだん強くなってくる。その中で、ドイツあるいはイギリス等はすでに頭打ちで、イギリスあたりはこれからますます停滞という傾向が強くなってくるのじゃないか。フランスは、今のところまだ停滞傾向は出ておりませんけれどもイタリアにはすでに出ておる。こういうのは、イギリスEEC参加が不調になった今日の段階で、景気動向そのものではなくて、どういうふうに国際市場に出てくるかというふうなことも、国内構造変革と結びつけて考えた場合には、相当深刻な問題になるんじゃないか。ただ単に、景気もそう大して上向きもしないが下向きもしない、だろう。だから、日本輸出努力によって輸出が多少量的にふえるだろうというふうな観測は、ことし一年はそれでごまかせるかもしれない。しかしながら、来年、再来年ということになると、私は相当はこれが行き詰まってくるという問題がありはせぬかというふうに思うわけです。こういう問題について、ここで結論を出せといっても、無理な話です。これは議論をすれば、どうでも水かけ論で逃げることのできる問題であります。われわれの見方が正しいのか、あるいはあなたの見方が正しいのか、これはお互いが論点を変えていけば、指標のとり方、評価の仕方を変えれば、どうにでもなる問題です。しかし、そういう基本的な問題が、私は、少なくともことしの後半においてはある程度日本国内経済動向にはっきり出てくるんではないかというふうに思いますので、こういう点については、一つ経済運営の点で慎重な——政府としては今まで以上に、ただ国内で政治的にごまかすために、池田さんのようなああいう無責任な発言でごまかしていくということは、これは間違いです。少なくともそういう点について、政府が真摯な態度をもって対処するということが、内閣の評判はある程度落ちるかもしれませんけれども、私は国民生活なり国民経済を正しく指導していく道ではないかというふうに思うので、この点は一つ要望として、単に国内経済問題としてだけ、あるいは政治問題としてだけ、こういう問題を取り扱わないように御注意を申し上げておきたいと思うのであります。  その次に、今度具体的な問題でお聞きいたしますが、ことしのこの計画によりますと、民間設備投資は、大体において三兆五千億ということになっております。これはどういう根拠から出してきたのかということであります。それから、さっきあなたのお話では、大企業については、設備投資も一巡して、あまりこれからやる機会がなかろう、やっても過剰投資になりはせぬかという危険があるのではないか、しかし、中小企業等は、政策機会を与えれば、これに対する設備投資機会はある、またやる必要がある、そういうことを見込んで三兆五千億という数字が出たようなお話だった。しかし、私が一番心配するのは、そうじゃない。これから自由化の中で外国へ立ち向かっていく日本独占資本の体制からいいますと、そういう中小企業に対する設備投資もある程度いくだろうが、ちょうど今石炭その他に見られるような、スクラップ・アンド・ビルドの方向へ全般にいわゆる投資が片寄っていきはせぬかということが、一番問題だと私は思うのであります。というのは、もっとはっきりいえば、いわゆる能率の悪い工場、あるいは労働集約的な工場、こういうものはどしどしぶっつぶして、そうしてかわってオートメ化したところの大規模工場へ集中的に投資を振り向けていく。まああとで問題になる企業整備の問題ももちろんありますけれども、単にそれだけでは追っつけない問題が多々ある。少なくとも生産一つの単位といいますか、これを相当高度化して、いわゆる合理化投資といいますか、そういう方へ投資が集中をされる結果におそらくなるんではないかというふうに心配をされるわけです。そうなってくれば、中小企業との格差はますますひどくなる、あるいは農業との格差はますますひどくなる。あるいはそのほかに、いろいろの格差問題というものはますますひどくなる。しかも、その結果はどうかといえば、雇用関係に大きく響いてくることは、これは言うまでもありません。国民経済全体と本年度の三兆五千億の投資内容いかんということが、非常に大きな問題です。高度成長政策というか、所得倍増計画が当初問題になったときも、自民党の皆さんでさえ、シェア拡大のための投資というものはいけないというようなことを言っておった。実際はそうではない。なるほど合理化投資もあった。技術革新投資もあった。あったけれども、結果としてはむしろシェア拡大投資が一番よけいになって、それが行き過ぎになったということは事実であります。そこで多少前年度よりは落ちてはおりましょうけれども、三兆五千億の投資は、どの方向へ向けていくかということは、なかなか政府の思う通りにはいかないでしょうが、これについて政府なり企画庁なりがよほど明確な方針なり計画を持っていなければ、ますます日本経済のアンバランスというものはひどくなってくるよりほかはないと思うのであります。しかも、中小企業以下の国民全体が、非常に苦しむ結果になることは明らかである。  そこで私がお聞きしたいのは、第一に、三兆五千億の基礎はどこにあるのか。三兆五千億の民間設備投資を、政府はどのような方向で、これをあるべき姿へどういうふうに配分をしてやっていだという計画を持っておるのか。それを具体的にするのには、どういう政策を用意しておるのか。この三点をここではっきり言えるなら、言っていただきたい。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど一巡云々と申しました意味は、しかしながら、中小企業においてはまだ緒についておりませんでということを申し上げるつもりで申し上げたわけでありまして、確かに完全に一巡をしたという意味ではなかったわけでございます。たとえば鉄鋼業などについてはしばらく新規の設備投資意欲はないと考えますが、合成繊維でありますとか、あるいは石油化学でありますとか、セメントでありますとか、電子工業、電力にもそういう気配がございますが、これたついては、金融情勢が静穏になれば、やりかけた仕事をさらにやりたいという意欲がかなりあるということは、ただいま仰せられた通りでございます。それに比べて、中小企業全体の問題がある、こう申し上げるのが正確であると思うのでございます。  そこで、そういう一つ一つの項目ごとの三十八年度の生産見込みというものは、通産省で一応業種別にはじいておられます。これは相当詳しく出しておられます。それが一つの参考になるわけでございます。もう一つは、サンプル的に取り出しまして——各会社が来年度における投資計画というものを持っておられるわけでございますから、それがやはり一つの参考資料でございます。そういうようなものを総合いたしながら、過去からの傾向線を描いてみまして、機械の受注の見通しども一つの参考になるわけでありますが、それでまずこのくらいではなかろうかということを考えておるわけでございまして、きちっと三兆五千億という数字が出てくるかといえば、それは正直を申し上げて、なかなかそういうふうには出て参らないということは、つとに御存じの通りであろうと思うわけでございます。  それからそういう傾向の中で、先ほどお触れになりましたことにちょっと関係をいたすのでございますが、数年いたしますと——現在の操業率か、私どもは七九くらいと見ておるのであります。しかし、これは久保田委員の仰せられたのと大差はございません。そういうようなことで、日本経済はどうなっていくのか。前段に仰せられましたことは、やはり大局的には、現在一次産品が売れないで、従って、購買力がついてこないいわゆる後進地域について、第一次産品を世界的規模でどういうふうに価格を維持し、数量を維持してやっていくかということを考えることが、わが国経済のこれからの伸びを解決する一番基本的な問題であろうと思うのであります。しかし、実現が数年先になりましょうとも、やはりこの問題を長期的には解決しなければ、わが国産業構造重化学工業化ということも、なかなか困難でありますし、操業率をこれ以上上げるということも、なかなか困難でありましょう。こういうふうに考えております。
  9. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私も、三兆五千億の基礎がそう正確なものでないことは、承知しております。問題は、三兆五千億は、各業界でこうやっておるから、これを集計してこうなったというのではなくて、いろいろ内外の情勢についてことしないしは先の見通しもある程度立てて、今日の段階でどう規制をしていくのか。私が申し上げましたように、大企業合理化投資、あるいはもっといえば支配投資です。自分のシェア拡大のための投資になります。そういうもので、片一方において中小企業ないしは弱みをもった大企業の悪いものをどしどしつぶしていく、こういう行き方では困る。これに対して、政府としてはどういう方針なり計画をお持ちになっておるか。この点をお聞きしておるのですが、この点のお答えがないわけです。これはどうですか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、やはり一つ自由化の問題であるというふうに考えておるわけであります。それは自由化のためにシェア拡大するという要素もございますけれども、今度は逆に、いかなるものも自由に輸入をされるというような状況においてコストというものを考えなければ、生産ができないということ、つまり買った方が得ではないかというような消費者側の選択が——消費者と申します意味は、需要者側の選択があるという意味でございますが、この自由化ということが、むやみに設備を拡張してもだめだというための逆に一つの要素になると思いますし、それから開発銀行等を通じまして、国としても、これからのわが国経済構造の変革を考えながら、前向きのもの、うしろ向きのもの、おのおのある程度の誘導的な投資基準はあげられるわけでございます。
  11. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それをもう少し具体的に言えませんか。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、たとえば自動車工業なら自動車工業について申しますと、自由化に備えて、車種の制限でありますとか、あるいは標準化でありますとか、コストの低減ということをやるべきところでありますが、現在のところは何となく、今久保田委員のおっしゃいましたように、シェア拡大という方に事が向きそうな心配すらあるわけでございますから、こういうものでありますとか、石油化学でありますとかにつきましては、やはり政府として一定の助成策なり奨励策なりを考えながら、シェア拡大でなく、生産性の向上というふうに企業が動いていく、そのように誘導をするということは必要であるというふうに思うわけであります。
  13. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今もお話しのように、必要であることは政府も認められているので、その計画なり政策なりというものをもう少しはっきり具体化して、明確なものを出す必要があるんじゃないか。これは、今の政府の行き方からいえば、非常に困難だろうと思います。少なくとも今までの池田内閣の行き方からいえば、そういうことにあまり政府として権力介入するのはまずい、こういうお考えがあって、自主規制でいくの何のということを言っている段階ですから、非常に困難だと思いますが、これは必ずしも権力介入でなくとも、やり方はいろいろあろうと思うのであります。そこでぜひ一つ明確に、その具体的な三兆五千億の投資をどういうふうに実際は誘導するか、どういうふうに配分していくか、どういう方向に重点を置いていくかということは、私は非常に重要な問題だと思いますので、これについては、いずれ設備投資その他についての皆さんの方の調査計画も立てられるでしょう、はっきりといずれかの機会にお示しをいただきたいと思うのです。  そこで、その次の問題に移ります。その次にやはり問題になるのは、あなたのごあいさつの要旨の中でも、いわゆる社会資本の立ちおくれということを非常に言われておるわけです。ことしの政府の予算や財投あたりを見ましても、これに非常に重点を置いていることは明らかです。これはまあもっともで、さっき言ったように、そういう点をほとんどネグレクトして民間設備投資を野放しにやってしまった結果が、こういうところにしわ寄せになってきたと私は思うのであります。民間投資との関係を見ますと、三十五年度は、民間設備投資が三兆六百九十五億、それに対して公共投資が一兆三千七十八億、パーセンテージは四二・六になっております。三十六年が、民間設備投資が四兆五百四億、公共投資が一兆七千四百一億、四三%になっております。それから三十七年度は、これは見通しでありますけれども民間設備投資が三兆六千億、これに対して公共投資が二兆三百四十億、五六・五%になっております。三十八年度、これは計画見通しですが、民間設備投資が三兆五千億、これに対して政府のいわゆる公共投資が二兆三千七百億になっております。そのパーセンテージを見ると、六七・七になっておるわけであります。こういうふうに民間設備投資に対する公共投資のパーセンテージは、非常に急速に上がっておるわけであります。しかも、実際には立ちおくれておるというのが実情です。これは立ちおくれは、私も率直に認めます。一体政府は、民間設備投資公共投資内容はいろいろあるでしょうが、これを連関させた計画を持っているのか、見通しを持っているのか。しからば、これに対して、今後の設備投資なり何なりの方向に対して、政府としてはどういう公共事業なり民間なりの計画を持って、どの程度、いつこれをバランスをとらせるつもりか。これについては全然ないじゃないか。ことしはむしろ設備投資公共投資をよけいしたのは、そうじゃなくて、そういう計画を持ったやり方ではなくて、とにかく国内重化学工業がどんどん進んできた。鉄のごときは、中型鋼のごときは、七〇%の操短率でもまだとても追っつかないというような、操短が非常によけいになってきた。もうからない。新しい市場国内につくっていこう。海外の期待が持てないから、市場をつくるための、大企業のための人為的な市場造成ですね。このにおいが実は非常に強い。これはおそらく来年も続きましょう。来年は、単にことしのようなやり方ではいかぬから、おそらく結局国債発行ということになるでしょう。その危険性は私は非常にあると思う。一体こういうことについての政府としての計画は、あるのかないのか、これを私はお聞きをしたい。  もう一つ、これに連関してお聞きをしたいのは、こういう公共投資をやる場合は、必ず出てくる問題が国民の立場から三つある。一つは、インフレになって物価が上がってくることです。これは当然そうなります。一つは、はっきり言いまして税金が高くなること。一つは、地方公共団体が非常に困ってくることです。御承知の、あなたの主管になる例の新産業都市のごときも、一カ所千五百億だ、こう言う。ところが、補助金の率はどのくらいあるかというと、まあ総ならしをすれば、五割いかないでしょう。四割なんぼ。そうすると、とにかく八百億何がしのものを今度県なり市町村が負担しなければならぬ。今の負担力からいって、できっこない。だから、われわれは、どうしてもこれの政府の補助率を上げていかなければ、とうてい地方団体というものはやっていけないということを主張して附帯決議をつけたわけなんですけれども、今のところ、まだその作業はほとんどできてない。ただ金を貸してやって専業団をつくってやればいいじゃないか、こういう考え方です。地方公共団体が財政的に非常に圧迫をこうむってくる。この三つの問題は当然避けられない。まだいろいろの問題が出てきますけれども。これに対して、政府は、まず民間設備投資公共投資とはどういう割合でどうやっていくかという計画見通しくらいは持ってやってもらわなければ、どうにもならぬ。これについて、どんなふうにお考えになっておるのか。また、計画なり見通しなりがはっきりあるのかないのか。これで見ると、めちゃくちゃだという方が私はほんとうだと思う。しかも、事態はもう一日も放置できないような事態に、交通関係にしても何にしてもなっておることは事実です。これらは何年でどう解決をするのか。この点からいうと、さっき私が最初に申しましたのは、所得倍増計画で、今の段階では——二兆円程度の設備投資段階なら、あの程度の公共投資でもどうやらおっつくでしょう。ところが、基礎が倍になってしまっている。四兆台というものが出ている。ところが、片方はそうでないものですから、この計画がちぐはぐになる、そういうことになるから、今のようなことになります。一体こういう点について、政府ははっきりした計画なり政策を持っておるかどうか、私はお聞きしたい。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国民所得倍増計画では、最初の数年間、少なくとも現実の問題として行政投資民間設備投資の三分の一くらいである。そうして目標年次にはそれを二分の一程度まで引き上げたい、こういう計画を持っておるわけでございます。そこで、昭和三十五年あたりで申しますと、非常に民間投資が大きかったために、先ほどおっしゃいましたような率になったわけでございますが、その後、民間設備投資の鎮静に従って、あるいはまた逆にそういう状況においては公共投資が可能でありますので、行政投資がふえて参ります。そうして先ほど御指摘になりましたような五〇%というような数字が、昨今出てきたわけでございます。これはしかし、非常に正直を申しますと、政府も財政投融資を通じて行政投資に大いに努力をいたしておる結果ではありますが、他方で民間設備投資が過去数年のような異常な伸びを示さずに鎮静をしたというために、その行政投資比率が少しずつ上がってきたという面もあると思います。いずれにしても、その行政投資民間設備投資の大体五〇%ぐらいのところに持っていきたいというのが、基本的な考え方でございます。これは、所得倍増計画にもそのように書かれておるわけでございます。  それからそういうことをした場合に、先行投資に従ってインフレが起こるか、国民の負担がふえるか、あるいはもう一つは地方団体に重荷がかかっていくであろうとおっしゃいますことについては、第一点は、それはしかしながら、民間のいわゆる公共投資が進むということは、全体の経済生産性を上げることでありますから、公共投資民間設備投資と相補わずに、競合をして、そうして原材料の値段が上がっていくというような形にならない限りは、むしろ年産性はそこから上がると思いますから、インフレになるというふうには考えません。  それから第二に、国民の税負担が上がっていくであろうとおっしゃいます点につきましては、たとえば昭和三十八年度あたり、あるいは七年度の秋からと申すべきかと思いますが、いわゆる日本銀行のオペレーション等によって、財政投融資が一定の時間を置いて日本銀行のオペレーションにつながるというような形にいたしておりますから、その対象が電力債あたりまで広げられますならば、そういう形で所要の資金量の調達ができると思いますので、これを租税の形で国民に新たに負担をしていただくという必要は起こらないというふうに考えるわけでございます。  それから地方団体の負担でございますが、これは現実に地方の立場からいえば、本来国でやるべきものを地方にいろいろな形でかぶせておるという、こういう御不満は、私はもっともだと思います。けれども、新産業都市その他によるところの先行投資公共投資は、やがてはその地方の所得となって現われるべき性格のものでございますから、それに所要の資金を融資してやれば足りるのであって、地方団体にその全部を交付税その他の形で交付をするという必要はないであろう。長期の融資をしておけば、それがやがて生産力になり、所得になって、当該地方に返ってくる、このような考え方をいたしております。
  15. 久保田豊

    久保田(豊)委員 まあそこら辺は非常に問題があります。私ども、今の長官の御意見にはにわかに賛同できません。しかし、いずれこれはこまかくあとで法案について審議をする機会がありますから、きょうは時間の関係でやめておきます。  もう一つお伺いをいたしたいのは、今のお話でも、必ずしも財政インフレにはならぬ、だから、物価騰貴は起こらないというようなことを言っておられますけれども、どうもことしから、日本経済は、政府の財政政策と結びついて、財政インフレないしはそれに基づく物価騰貴ということが、当然出てくる情勢になっておる。政府もそれを意識してやっておられるんじゃないか。言葉の上ではそんなことはないと言っておられますが、どうもそう見ざるを得ないと思うのであります。と申し上げますのは、ことしの財政規模は、私が言うまでもなく、御承知通り、非常に大きくなっているわけですね。大体予算面では四千二百三十二億円の増で、去年の当初予算に比べて一七・四%の増です。しかも、財政投資については二千四十五億円、去年に比べて二二・六です。そのほかに、今お話のありました買オペの対象になる政府保証債の発行が、これは正確かどうかわかりませんけれども、約千八百八十二億、これに外債の五百六十八億を加えて二千四百四十億というものが、昨年出ておらないものが新しく加わっております。こういうのも含めてみますと、財政規模は、少なくとも当初から非常に大きくなっておることは明らかであります。しかも、これが何に中心に使われるようになっておるかというと、これは御承知通り政府の財貨並びにサービスの購入分がうんとふえて、四兆四千八百億、約四兆五千億、前年度に比べて約一四%ということになっております。これは重化学工業品を中心とした国内市場の有効需要の、何というか、造成策としか見られないのであります。もちろん、それによって今言ったような、いろいろなさっきから問題になっております立ちおくれが克服されて、バランスをとっていく要因になっておることも事実でありますけれども、直接の経済効果としては、人為的に国内重化学工業中心とする有効需要の振興策としか見られない。重化学工業の発展というのは、輸出でもってやるか、外国でもって売るか、それでなければ、設備投資で、いわゆる投資投資を生むという格好で食っていくか、それでなければ、公共投資、少なくとも政府の財貨並びにサービスのあれによって増していくか、これだけしか方法はないわけです。ところが、輸出の方は、ことし六、七%ふえるといっておりますけれども、その中で一番ふえにくいのは重化学工業品の輸出であります。ですから、これはいろいろプラントとかその他で政府としても考えておると思いますが、その程度のことでもって、今の国際市場で、はたして重化学工業品の輸出市場になるかどうかということは疑問です。これはあまり期待できないということでしょう。しかも、さっきのお話のように、少なくとも民間設備投資は、下手をやればますます生産力の過剰を来たす。これも今までみたいにめちゃくちゃにやれない。しかも、片方においては四兆という台がすでに一つ出ておるから、これはあまり急速にやることはできない。そこで、どうしてもこういうふうな財政投融資によって政府による国内の新しい需要を起こす以外にない、こういうことになってきたと思うのですが、この点は、政府はどういうように弁解されますか。これが一点。  それから、これから出てくるのは、三十七年度並びに三十八年度の財政余裕財源というものは、非常に少ない。これは政府もいっておる通りであります。このままでいくと、さらに雪だるま式に——その雪だるまの程度はいろいろになりましょうけれども、これをやっていく以外には、少なくとも重化学工業化した日本の独占企業の操業度を上げていく方法はない。そうなれば、来年は、いやだって国債発行ということになる。もうすでに国債発行の前触れが、ここに政府保証債の増発という格好になって出てきておりますししかも、この結果は、ことしで見ても、たとえば民間の資金と政府の資金との出入りを考えてみれば、散超が三千七百五十億という、近来まれな散超を初めから予定しておる。おそらくこれからいけば、年末の日銀券の発行増は、ここ二、三年の通例であった二千億じゃとまらないと思う。少なくとも三千億ないし三千五百億は、当然恒常的なベースでふえてくるということにならざるを得ない。もっとよけいになるのじゃないかと私どもは思う。これでは、どうしてもいわゆる財政インフレの方向にここで踏み切るということにならざるを得ないと思うが、国債が国民経済生産に比べて非常にパーセンテージが少ないから、日本としてはもっと国債をどんどん出していいじゃないかという池田さんの御意見もある。あるけれども、外国と違う点は、外国では、民間の日銀借金というようなものはないのです。日本では一兆数千億も民間企業が借金している。その前提の上で国債と国民経済とのバランスを考えなければ、これはもってのほかということになる。その事実をごまかして、ただ外国は何十%ある、だから、日本はうんと国債を増してもいいという議論は、これは子供だましです。私はそう言っていいと思う。池田さんにも似合わぬ、経済専門家にも似合わぬ乱暴な発言だと私は思う。こういう民間の日銀借金がうんとある中で、しかも、それが通貨発行のおもな保証じゃないですか。その上、今度は国が国債を出して借金をどんどんしていったら、どうなりますか。いやおうなしにインフレにならざるを得ない、こう思うのですが、その転換期をなしておるのがことしの政府の財政政策であり、経済政策だと思う。この点について、長官はどんなふうな見通しを持っておられますか。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まさに問題点を御指摘になったと思います。三十八年度の予算を組みますときに、財政当局が非常に苦労をして、いわゆる金づくりということをいろいろな方法でやろうと試みたことは、その通りであります。それは形は、久保田委員のおっしゃったことと同じことにな承るかもしれませんが、考え方は、需要を起こすということでなく、この際所得倍増計画に言っておりますところの先行投資公共投資をちょうど行なうのにまさに格好の環境であり、時期である、こういうふうな判断をいたしたわけでございます。その点は、首相の所信表明にもそう述べられておりますが、まさにそういう好機であるというふうに考えたわけであります。その結果は、仰せのように、民間の需要を刺激するに役立つであろうとおっしゃいますことはその通りであると考えますが、私どもは、民間のいわゆる景気てこ入れのため財政投融資について工夫をしたのではなくて、目的はやはり先行投資を、おくれておりますから、この際充実をしたい、民間設備投資との競合が起こらないでやり得ると考えてやったわけでございます。  そこで、しかし、そういう資金の調達の仕方をすると、将来歳入補てん公債を出すようなことになるのではないかとおっしゃいます点については、先般予算委員会等で御質問もあり、総理大臣もそれにお答えをしておったわけでございますが、私が考えますのに、総理大臣がお答えをしておったことは、それは学問的に、あるいは経済学的に考えれば、わが国の場合、公債が非常に少ない。三千億とか四千億とかいうものは、少ないのであるから、公債を出すということが一がいに悪であるというふうには自分は考えておらない、こう申し上げたように聞いております。これはやはりある意味で経済学上の、あるいは財政学上の議論でありまして、私は、将来とも歳入補てん公債を出すというようなことは、今のわが国経済として適当なこととは考えません。やはり歳入補てん公債というものに一度手を触れるということになりますと、それから将来起こり得る危険というものを考えなければなりませんので、学問上の問題としてはともかく、現実の政策として、歳入補てん公債を出すということは適当でないというふうに考えております。
  17. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私は、おそらく単に歳入補てん公債だけにとどまらぬのじゃないか。つまりことしあたりにしましても、予算上の直接の歳入補てん公債というよりも、財政投融資の財源として、これと結びつけてやるという、今の全体の財政規模といいますか、そういうものも含めた政府の資金調達力といいますか、そういう中でいくと、表面上の歳入補てん公債は避けても、これと実質上ほとんど同じものをどんどんやってくる可能性というか、そこに追い込まれざるを得ないというふうに私どもは考える。現に、ことしの産投なり政府保証債の発行の計画自体が、そうなっておるじゃないかというふうな点を申し上げておるわけであります。  そこで最後にもう一点お聞きしたいのは、物価、特に消費物価が上がらないという見通しがありますか。政府のこの計画では、二・八。去年は一・一という計画だったけれども、実際は相当上がった。ことし二・八というと、去年の約二倍半です。当初から二倍半見込んでおって、そうしてあなたのこのあいさつを見ると、この中に物価対策として載せておるのは、公共料金の値上げ抑制、それから消費物資の供給力の増大、流通機構の整備を初めとして云云と、長期の総合計画を立てると言っておりますけれども、私ども今見たところじゃ、物価政策については、政府はほとんど無能に近い。そう言っちゃ失礼ですが、ほとんど格好ばかりだ。実効の上がるようなことを一つもやっていない。ですから、ことしはどのくらいになる。六・四%ですが、そういうことになる。何かほかの統計で見ると、消費者物価は七・幾らという数字になるようです。しかも、インフレ要因といいますか、値上げ要因は、ますます強くなっております。こんな程度のもので、はたして消費者物価の抑制ということができるのかできないのか。私は、この点をもう一度、具体的にどういう政策を用意されておるのか、ここらもはっきりお聞きをしておきたいと思います。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は、私どもも一番心配いたしておるところでございまして、その点が、従来の経済政策の運営で一番難点であったと申しますか、欠点であったということはよく認識をしております。それで従来の——ここ二、三年の消費者物価の上がりを見て参りますと、大体値上がりを一〇〇といたしますと、そのうちで三〇ないし四〇が生鮮食料品の値上がりに基づくものでございます。この点については、過般来じみな対策をいろいろやってきております。生産につきましても、流通につきましても、やっておりますが、幸いにして昭和三十八年は、相当の供給力の増加があるようでございます。たまたま豪雪等のために輸送その他について支障を生じておりますし、また一部のくだものについては先の生産に不安がございますけれども、総体的には供給が相当ふえておる、流通機構も改善されておるということでございますから、この点についての安定を期待し得る限り、経済情勢全体は、GNPの伸びといい、あるいは先ほど仰せられましたような設備の稼働率でございますから、経済が非常に伸びたときのように消費者物価を上げる要素は少ないというふうに考えるわけでございます。従来、個人消費支出の伸び消費者物価の指数の伸びとには一定の関連性がございまして、消費支出が一割伸びましたときには、過去、七、八年の経験では、消費者物価は大体二ないし三くらいの伸びでとまっておるということでございます。従って、さらに申し上げましたような生鮮食料品についての対策が、私どもの思っておる通り参り、そうして公共料金等についていろいろ抑制の方針をきめておりますので、それが貫かれ、しかも、全体の経済見通しが先刻申しましたようなものであるとすれば、私は、二・八%という消費者物価の値上がりは、ここでとめていけるというふうに考えております。そのためにあらゆる努力をいたすつもりでおります。
  19. 久保田豊

    久保田(豊)委員 少なくともことしの全体の経済状勢、景気動向は、確かに政府の言うように、前半期は停滞、後半期はゆるやかな上昇ということになるかもしれません。かりになったとしましても、ほかの経済要因その他をずっと考えていきますと、二・八%程度では、今の程度の政府の対策では非常に困難ではないか。あなた方は、毎年同じようなことを言われておるわけです。この計画で大丈夫でございますと言って、年末になると、どうもいろいろやってみましたけれども、そういきませんで、三倍なり五倍なり上がりました、こういうことをここ二、三年、毎年言われておるのです。ですから、そういう言いわけでなく、ぜひ私は、ことしの経済情勢の全般をすなおにごらんになって、ほんとうに打つべき手をぴしぴし打っていただくことをお願いしておきます。  それから、時間がありませんから、もう一点だけ長官基本的な問題でお伺いしておきますが、政府の三十八年度の経済見通しを見ても、あなたのごあいさつの中でも、大体ことしの経済を総括して、新しい安定成長への地固めをする年、こういう規定をされております。そこでお聞きしたいのは、新しい安定成長というのはどういうことなんですか。もっとはっきりお聞きしたいのは、政府所得倍増計画との関係はどうなるのか。政府所得倍増計画は、少なくとも過去二年半の実績の中では、当初から大狂いにくずれた。基準が違ってきた。これを取りまく国際環境も、全く変わってきた。こういう際でありますから、あの十カ年計画七・二というもの——ことしも最初計画では九%の成長率を維持するというのが目標でしょうけれども、これはすでにこの計画でもくずれているのです。ところが、去年までの実績は、そんなものではなかった。しかもさっきいったように、私の方の計算で間違いかもしれませんけれども、少なくとも価格等をある程度捨象してみれば、四十五年の目標に今日の段階でもって国内経済のあれが非常にすでに近づいてきておることは事実です。その行き過ぎから、あらゆる意味でのアンバランスが非常に強くなってきておる。国際情勢も変わってきておる。こういう際ですから、私は、もし言葉だけの、新しい安定成長というふうな言葉でごまかしていくのでなければ、今の所得倍増計画というものを根本から改定して、新しい条件と環境のもとで、日本経済が真にこの言葉で言う安定成長に値するような計画を立てる時期だと、私は思う。昨年も藤山さんあるいは佐藤さんにいろいろ聞いてみますと、結論は、政府は、とにかくことしの経済見通しはわかるが、来年はわからないということです。ことしだけ何とかいけばいいという、このくらい無責任な、しかも国民から見れば頼りないいわゆる所得倍増計画というものはありやせぬ。この三年間で状況がすっかり変わったと、私は思うのです。あなたの言われる、あるいは政府の言われる、ことしは新しい安定成長への地固めだというなら、言葉だけでなく、所得倍増計画なるものを改定する、はっきりいろいろの条件というものをもう一度評価し直した上で立てるのが、経済政策を健全に今後運営する土台だと思いますが、どうですか。この点の用意があるのか。単に言葉だけで、新しい安定成長への地固めをするという政治用語を使ってごまかすつもりか。本気にこういう作業をして、そして安心のできる、国民が信頼のできる新しい経済見通しなり計画を、この際立てる決意があるかどうか、この点をはっきりお聞きしたいと思います。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 新しい安定成長と申しました意味は、過去の成長の結果、先ほど久保田委員も御指摘になりましたように、国内経済にいろいろなゆがみが出てきた。公共投資のおくれもそうでありますし、いわゆる日本経済の二重構造というものも、解消するに至っておりません。消費者物価の上がりが大きいために国民生活が脅威を受けておる、このようなこと、こういうゆがみを直すための基盤をことしつくっていきたい、こういうことが、私どもがああいうことを申しました基本的な理由でございます。  そこで、所得倍増計画との関係で、現実の経済成長相当先へいっておるではないか、しかもそれもややゆがんだ形でいっておるではないかと仰せられるのは、その通りだと思います。何ゆえにそれがそうなったか、最初に立てました倍増計画見通しがどうして狂ってきたかということ、それからさらに、それならば将来について計画を考え直すべきではないかとおっしゃいますことは、私はごもっともだと思います。少なくとも経過しました年次に関する限り、私ども、何ゆえにこういう見通しの違いを生じたかということについて検討いたしますために、すでに相当大がかりな作業を始めております。数ヵ月を要すると思いますが、民間の有識者の御参加も願いまして、その作業を実はすでに始めております。そういう作業をいたしますと、それが将来に向かってどういう投影をするか、どういう投写を描くかということは、おのずから出てくると思うのであります。その場合に、それを新しい倍増計画として国民にごらんをいただくことにするのがよろしいか、あるいはそれはそれとして、いずれにしても見通しでありますから、しばらくそういう作業を続けていく状態にしておいた方がいいかということは、私は、やはりそのときの時点における経済情勢その他を勘案しなければならないと思います。と申します意味は、過去の誤りは発見できると思うのでありますが、これから先、また同種の、あるいは違った種類の誤りを犯さないとも限らないわけであります。計画をつくりますと、やはり計画はそれ自身で歩き出し、いろいろな作用を各方面に及ぼすということもございます。従って、最善を尽くすつもりでございます。そして自信のあると思うものができましたときに、それを新しい計画として世論に問うかいなかということは、そのときの経済情勢その他を勘案してきめるべきであると思います。いずれにいたしましても、その時期は、作業の進展から見まして、ほぼ数カ月先、秋ごろになるというふうに考えております。
  21. 板川正吾

    ○板川委員 その点に関連して質問したいのですが、予算委員会から企画庁長官の要請があるそうですから、簡単に一、二だけ質問いたします。  企画庁の予算を見ますと、所得倍増計画のアフター・ケアを行なうのだということで、相当の予算を組んであります。経済計画所得倍増計画経済指標としての価値を失ってきたということは、今るる久保田委員が主張した通りだと思う。主要な指標はほとんど狂ってしまって、これは経済指標としての役に立たない。だから、政府もアフター・ケアで当面これを糊塗しようと考えておられると思うのです。そこで私は、この倍増計画はここで練り直すべきだと思う。しかし、所得倍増計画、十年後の経済計画を立てるということは、いろいろまたあやまちを繰り返すようなことになるかもしれません。しかし、四年なり五年なりの中期の見通しを立てるということは、経済企画庁の当然の任務じゃないでしょうか。所得倍増計をつくってみたが、どうもなかなかうまく当たらない。つくると、シェア拡大競争ばかりあって、かえって経済界の混乱を起こすから、経済指標としての価値を失う。そこで所得倍増計画は、あるいはことによったら今回限りでおしまいにしようというような口裏のようでありますが、十年後の計画というのは別としても、中期の四年なり五年なり程度の経済計画というものは、当然立てるべきじゃないでしょうか。その辺をあやふやに言っておる点が、経済企画庁長官に対して不満なんです。日本経済は、今度の新産業秩序の問題からも論ぜられていますが、もっと計画性を持たなければならない。その計画性を持たせるためには、少なくとも四年ないし五年の政府経済指標というものが必要です。だから、いさぎよく、従来の所得倍増計画は、初めてのことであって、なかなかうまくいかなかったので、今度反省をして、アフター・ケアでなく、初めから練り直すような取り組み方をすべきじゃないか、こう私は思うのですが、いかがですか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 アフター・ケアをやるようにいたしましたのは、確かに指標としての意味を失っておる。それはなぜであったかということをまずきわめたいわけでありますが、最善を尽くせば尽くすほど、予想し得る能力の限界が、だんだんはっきりしてくるというのが事実だと思うのであります。いかに反省しても、まじめにやっても、どうも当たらなかったではないかということが、やればやるほどそういう自分の限界というものがわかってくるような点もございます。それで、自信があると思いましても、それがリードするかわりに、ミス・リードするというようなことにもなったりいたしますので、それでともかくアフター・ケアをやってみて、これはもう必然に、それなら先はどういう趨勢になるのかというのは、その作業の中から出てくるわけでございますから、それを国民各位にも、ある程度の誤差はあるものであるということをわかっていただいた上で、それでもやはり役に立つということであり、しかもそれが適正な情勢ならば、これは世の中の世論に問おう、こういうことでございますけれども、どうもいかに反省をいたしましても、ちゃんと当たるというわけにはなかなか参りません。その辺を悩んでおります。
  23. 板川正吾

    ○板川委員 経済計画を発表したけれども、これは当たらぬぞという指標では、それは出す必要はないと思う。そんなものは、出しても混乱ばかり起きると思うのです。しかし、この経済計画性を持たせるというあり方、たとえばフランス経済計画の問題、あるいはイタリアにおける同様な経済計画の問題を考えても、結局政府が、経済基本的な政策に対しては、国家が干渉していいと私は思うのです。ただ、今の経済秩序の中には、資本家の自由にまかしておくということの中ですから、たとえば設備投資の問題にしろ、とにかく資本家の自由にまかしておく。そういう秩序の中にあるから、計画性というのがしょっちゅう狂ってくるんだと思うのです。ですから、その経済秩序全般に、国家がもっと発言権を持ち、大きなワクを——やはり規制をしていってもいいんじゃないか。そういう中からならば、私は、政府経済計画というものは一つの価値を持ってくると思うのです。経済計画というと、どうも統制というふうに見られがちである。しかし、われわれは、経済計画性を持ち、総合性を持つということと統制とは違うと思う。経済の秩序を持たせるために、ヨーロッパでも、西ドイツのようなエアハルトの自由主義経済という式もあり、フランス計画経済という方式もある。しかし、最近のヨーロッパ地域における経済伸びを見ますと、イタリアやあるいはフランス、この総合的な計画経済を持っている国の方が、成長率が高い。西ドイツの方が、かえって成長率のテンポといりものは下がってきておりますね。ですから、総合的な経済計画性を持つということは、私は、経済の発展の段階からも必要だと思うそういう意味で、経済企画庁というのが私は止まれたと思うのです。この所得倍増計画が、第一回目が失敗したから、もうこれっきり、こういうようなことはやめて、とにかく資本家の自由な、野放した経済秩序でやっていこうというような行き方では、この設備投資の例に見られるように、過剰投資、あるいはむだな投資、こういうようなことが行なわれて、国家の経済としてもずいぶんマイナスの面があると思う。ですから、私は、この辺で経済企画庁がしゃっとして、もうちょっと総合的な経済計画性を持たせるような方向に進むべきものだ、こう思うわけです。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府の各省が長期計画を立てます上でも、民間企業がそういうことをされる上でも、やはり指標として何かが必要だということは、しょっちゅう私どもにおっしゃるわけでございます。ですから、自由な人々が自由に経済を営んでいく結果、その姿はどうなるであろうかというような指標を与えること、及びそれについての従ってという部分で、若干の誘導をするというようなことは、自由主義経済の中においても、十分あり得ることと思います。ただいま御指摘の点は、私はよくわかりますので、先ほど久保田委員に申し上げましたような心がまえを持ちながら、もう少し作業を進めてみたいと思います。
  25. 板川正吾

    ○板川委員 もう一点企画庁長官にお伺いしますが、企画庁長官が、東京都営のバス、あるいは都市交通の問題、料金値上げに関連しまして、賃金が非常に高いから、料金価上げはしてはいかぬ、こういうような決定を下されたということを聞いておるんですが、私ども、別にバス料金を上げろとか、交通料金を上げろという意味で言うんじゃありません。ただ、賃金が高いから、これはけしからぬというその言い方はどうかなと思って、実は賃金の内部を比較してみたんですが、この問題については、一つ企画庁の資料をあとでいただきたいと思うのです。賃金の決定は、労働時間の関係、あるいは家族構成の関係、あるいは勤続年限の問題、こういったものを比較しないで、ただ手取りだけ、月給袋の中がこういうふうに違うから、給料は非常に高いんじゃないか、こういう判断を下されることは、私は一面的だと思うのです。特に都市交通の場合には、労働時間が一割五分くらい非常に長い。年令も高い。家族構成も多い。これで民間の私営交通の賃金と比較すると、そう大差はないんですね。最近は、都市交通内で、車掌のごときは、応募者がなくて、車はある、運転手はおるが、車掌がいなくて自動車がとまっておる、あるいは電車が間引き逆転を、されている、こういうような情勢であるわけですね。この従業員が集まらないということば、どこに欠陥があるか。一千万をこえるほどの人口がおって、車掌が集まらないということは、やはり給与が作業の条件に見合ってない、魅力がないからだと思うのです。ですから、こういう点の企画庁の主張というものを、資料と一緒に出していただきたい。あとで、機会を得てその問題について質問したいと思います。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 承知いたしました。資料を後ほどお届けいたします。      ————◇—————
  27. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 次に、昨十一日、本委員会に付託になりました内閣提出中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。
  28. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 まず、通商産業大臣より趣旨の説明を聴取することにいたします。福田通商産米大臣。
  29. 福田一

    ○福田国務大臣 ただいま提案になりました中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案の提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  中小企業信用保険公庫は、中小企業信用保険業務と各地の信用保証協会に対する融資業務を行なうことにより、信用力の薄弱な中小企業君の信用補完に寄与してきているのでありますが、現状においては、中小企業者の信用保証協会に害せる期待はますます大なるものがありまして、政府としても、当公庫を通じ、信用保証協会の保証機能を一そう拡充、強化する必要があると考えられるのであります。かような趣旨に基づきまして、今回、中小企業信用保険公庫法の一部を改正しようとするものでありますが、その概要は、次の通りであります。  すなわち、中小企業信用保険公庫に対する政府出資を昭和三十八年度において三十億円増加し、これを当公庫の融資基金に充てることにより、信用保証協会に対する融資業務を拡充し、その保証機能の強化をはかろうとするものであります。  以上が、この法律案の提案理由及びその概要であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同下さいますようお願い申し上げます。
  30. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。      ————◇—————
  31. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 次いで、通商歴業の基本施策に関する件について、調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許可いたします。久保田豊君。  その前に、ちょっと久保田委員に申し上げますが、通商産業大臣に対しては、参議院の商工委員会から午後一時に出席されたい旨の申し出がありますので、お含みの上でどうぞお願いいたしたいと思います。
  32. 久保田豊

    久保田(豊)委員 通商産業大臣にいろいろお聞きしたいのです。非常にことしのこの国会では、通商産業大臣の所管事項で重要問題がたくさんあります。しかし、その多くは法案その他の形であとで審議の機会があると思いますので、それらについては一つきょうは省いておきます。そこで、当面の問題でありまする貿易自由化、御承知通り、六日にIMFの八条国移行の勧告が出たようであります。これに連関して、重要な問題についてお聞きをいたしたい、こう思うのであります。これは新聞の伝えるところによりますと、青木大使も帰ってきて、それから経済閣僚の全機が十四日に行なわれるということでありますので、まだなかなか通産大臣としてははっきりした意見が言えない部面が多いと思うのでありますが、一つ通産省としての考え方というものを、大臣としてできるだけはっきり述べていただきたいと思うのであります。  これは私が言うまでもなく御承知通りで、この八条国移行の勧告が出ました以上は、これは日本の対外の経済関係が質的に変わった段階にきているということは、言うまでもないことであります。そこで、これにどう対処するかということが、非常にこれからの日本経済の持っていき方に重要な問題であろうと思います。そこできょうは、その中で、私は対外的な関係で、直接に接触面の問題だけをお聞きをしてみたい、こう思うのであります。  第一は、現在残っておるのは、二百五十四品目が制限品目になっておるわけです。新聞の伝えるところによりますと、大体来年の八月ごろに八条国移行を日本としては宣言するつもりだ、こういっておりますが、この場合に、二百五十四品目をそのままかかえて移行宣言ができるはずはない。そうすると、当然ことしの四月なり、あるいはことしの十月なり、十二月なり、そういう段階を追うてこの二百五十四品目のいわゆる制限品目を自由化していかなければならぬということになると思いますが、これは新聞の伝えるように、百品目、これだけは八月以降も残すという考えなのか。あるいはその辺は、どういう順序で品目の自由化を広げていくのか。これらに対する通産省としての考え方があろうと思うので、これを第一に、時期と品目をどう、やっていくのかということを明らかにしていただきたい、こう思うのです。
  33. 福田一

    ○福田国務大臣 お説の通り、八条国移行の問題が迫ってきておりますので、これに対処していかなる措置をとるかということについては、われわれ今いろいろ研究もいたしておるところでありますが、しかし、この問題は、御承知のように、自由化をしていくというスピード、それから品目をどういうふうにして整理をしていくかということば、これは国内の産業にも非常に影響があることであります。従って、国内の産業で、どうしても自由化をした場合に対抗処置がとれないというようなものもあり得るわけでありますから、そういうこと等も考慮しながら、具体策、それに対する対処策もきめなければいけません。そういうことば、今後われわれとして慎重に対処していくべきものであって、今まだそういうブラシをきめておるわけではございません。しかし、研究はいたしております。どういうふうにして処置していくか。もちろん、ものによりましては、順次すでに自由化をする方向できめておるものも一、二、ございますけれども、しからば、何月にはどれ、何月にはどれをやる、こういうようなことはまだきめておらぬわけでありますから、今ここであなたにこれを申し上げるわけにはいきません。ただ、一般的な方向といたしましては、御承知のように、二国間の問題になってくるわけでありますが、日本に対しては相当差別待遇をしておるところがあるわけであります。こういうような差別待遇をしておるところに対しては、できるだけその差別待遇をなくするように、経済外交を今後も強力に推進し、それに応じてこちらも考える必要がある。それからまた、私としてはこの間も事務当局に命じておいたのでありますが、アメリカとかカナダというような国々に対しては、私たちは相当自主規制ということをやっておるわけであります。しからば、海外から今度は品物が入ってくる場合において、それが大きく日本の産業に影響するというような場合において、私たちの方が自主規制をしておるのに、向こうがさっぱり自主規制をしないというのでは、これは非常に片手落ちではないか。自由化ということだけでもって、向こうは自由化せい、そういうような自主規制は、やらないというようなことでは、非常な片手落ちが起きる。だから、私たちとしては、自由化をする場合においても、二国間の場合において、場合によっては相手国に対して自主規制を要請しなければならぬ品目も出てくるだろう。これらの問題をよく調べた上で処置をいたすべきである、こう考えて今調査を進めておる段階でございまして、たとえば十四日に経済閣僚会議をいたすことになっております。青木大使からも、お話通り、報告は聞くことになっておりますが、そこで具体的な計画をきめるということはない。しかしながら、一般的にどういうふうにしてこれに対処していくかというような方針については話し合いが起きると思いますが、要は、結局日本の産業に力をつけるということが一番大きいのじゃないか。一番大きい問題はそこに帰着する。自由化して非常に困る、海外からどんどん品物が輸入されて非常に心配だというのは、こっちの産業に力がついていないときにいわれる言葉であり、こっちの力がついておれば、何も遠慮する必要はない、さっさと自由化してしまった方が得だともいえるわけです。しかし、そういう場合に、産業にどうして力をつけたらいいかというような問題等々もございます。これはまあ予算措置、あるいは法制措置、税の措置等いろいろありましょうが、こういうものもあわせて研究をし、また、できるだけ早くそれを実行に移して、そして産業に力をつけていく。どうしても力がつかないものがあった場合においてどう処置するかということを今後検討していくのだ、こういう方向で考えておるわけであります。通産省としては、今言ったような考え方でこれに対処していきたい、かように考えておるわけでございます。
  34. 久保田豊

    久保田(豊)委員 その程度の抽象的なことを実はお聞きしているわけじゃないのです。そんなことで処理できる、抽象的なことで乗り切れる段階ではないと思うのです。通産省としても、これから調査いたしますといったって、今まで、だってずいぶん調査しているはずですよ。今まで大体の計画なり通産省の大体のめどというものはついていなければ、これからの対策というものは出てこないと思うのです。ですから、問題は今御指摘のようにいろいろありますが、私は、どうもこれから研究して、国内のそういう力を強めながらやりますということでは済まないと思うのであります。第一に、この四月までには八八%を九〇%にするのですか、しないのですか。するとすれば二%です。品目のとりょうによってうんと違ってくると思います。砂糖をやれば九〇%になる。あるいは石油なりその他二、三をやれば、七%ぐらいはすぐ伸びる。ですから、この四月までには九〇%にするのかしないのか、この点はどうなのです。来年の八月が大体移行宣言の時期とするならば、それには九〇%そのままであなたはほおかぶりしていくつもりですか。それでは通るまいと思う。そうすれば、何%までは持っていくというめどがあるのか。そこらの見当もつかないで、これから研究して、よく相談しましてやりますじゃ、これはあまり今日の時点の情勢の逼迫さから見て、そんなことでは、国会はごまかせるかもしれませんけれども、実態はごまかせない。そうしてぽかぽかと出されたのでは、私は国民は迷惑だと思う。そうではなくて、少なくともこの国会中には、この自由化が大体八月なら八月に移行宣言を日本としてするというならば、それまでに対処する対策はこれとこれとこれについてはこうだということを明確にして、国会を通じてはっきりする。それの方が政府の責任じゃありませんか。この点はどうなんですか。
  35. 福田一

    ○福田国務大臣 お答えを申し上げます。  四月までに九〇%をやるという方向は、何もきめてはおりません。現に今度のIMFの会合その他におきましても、日本が八八%の自由化をやったということについては、一応これを承認もし、一応評価をしております。そういうようなことでありまして、日本が何も努力してないと言っておるわけではないわけであります。また、今日までの外国が自由化をしておりました姿を見てみても、たとえば西ドイツにしてもどこでも、IMFの勧告があってから三年も三年もまだそれができなかったという例もあるし、おのおの各国には経済事情があるのであります。日本にも日本経済事情があるのでありますから、私たちは、IMFの会合においても、日本の特殊事情というものは当然主張すべきである。何も外国にそう言われたから、IMFに言われたからといって、何でも頭から、ああそうですか、ああそうですかとこっちが聞いて、それに従っていくというような経済外交では、私は困ると思うのです。だから、日本の自主的な立場で主張をしていくというこの観点に立たなければならないと思うのでありまして、私たちは、そういうつもりで、すべてのことについて、いろんな産業の問題を、実は研究をしているので、今久保田さんにそうおっしゃっていただいても、案がないのに示せと言われても、どうも案の示しようがない。しかし、案がないというのは案を立てないということかというと、案を立てないということじゃない。また、実行のやり方をきめないのかというと、きめないのではありません。しかし、適当な時期にきめていけばいいのでありますが、何もIMFがそう言ったからといって、急にあわてふためいてそんなことを発表しなけば日本経済が、やっていけないというような感じは、われわれは持っていない。IMFに対しても、言うべきことは堂々と言う。私は、この前アメリカに行って、経済閣僚会議に行ったときにも、実は大いに言うべきことは言うてきたつもりであります。決してそういうことは遠慮しておりませんから、その点はあまり御心配は要らないと私は思う。しかしながら、それだからといって、ほおかぶりでこれがいける、こうは思っておりません。従って、順次それはやっていかなければならない。まあそれぞれ分に応じて順次これをやっていく、こういうことで少しも間違いないのじゃないか。あなたが非常に御心配をいただいておるお気持には感謝はいたしますけれども、われわれは、われわれの気持において極力一つ日本経済に支障を来たさないように、そして日本経済伸びるような工夫をしていくということでやらしていただきたい、こう考えておるわけであります。
  36. 久保田豊

    久保田(豊)委員 非常にりっぱな心がまえですが、自由化かこれだけ問題になって切迫して、いつ勧告があるくらいのことは通産大臣御承知のはずだが、あなたの商工委員会に対するあいさつを見ると、自由化やIMFの問題については一言も触れておりません。それと同時に、あとで私ずっとお聞きしていきますが、国内ではえらそうなことを池田内閣は言われるが、外国に対してはしり抜けだ。そうして押されればへいこら、へいこらついていく。これじゃ困るのです。ですから、ここらでもって出たとこ勝負じゃなくて、もう少し自主性を持って、はっきりとした方針というものを立ててやるということが必要ではないか。特にもう一つは、政府自由化対策というのは、私は実は非常におくれておると思うのであります。このおくれておる点については、あとでまた一つ具体的に質問をいたしますが、全体として抽象的に言えば、おくれておる。混迷しておると言ってもいいかもしれない。ですから、私は、そういう抽象語でなく、一つはっきりした点を明らかにできるものならしてもらいたい。十五日というか、あるいは十四日以降検討されるということでしょうか、もう八条国移行の勧告がいつ出るか、その内容がどうかくらいのことは、もっとずっと前にあなた方はわかっておるはずです。従って、大筋の基本的な対策というものは立っていなければならぬはずです。今言った制限品目を、どういう順序で、どういう時期に、はずしていくのか。日本としてそれに合わせて日本国内産業の強化をしていく、国内産業が強化しましたら自由化をいたしますなんと言ったって、通りはしませんよ。外国の方から圧力がくればへい、へいと言ってしまうのですから、通らない。そうではなくして、ここまでやるから、その前に国内の産業の強化はこの程度までは持っていくというめどがあって、初めて国内産業の強化策も現実に具体的になってくる。強くなりましたら、そのときに応じて自由化をいたします、そんないいかげんなことで安心できるものではない。私は、品目については時間がありませんからこのくらいにして、どうせ来年の八月に全部一〇〇%するということではなかろうと思います。特に農産品等については、これはそう簡単に自由化できるものではないことは明らかです。しかし、日本の環境からいえば、片方において米英その他から自由化を強要される。日本重工業品を出していくについては、低開発国の一次産品自由化を受け入れなければ貿易バランスがとれないという問題がある。こういう点から見てくると、しかも、こういう低開発国は、おそらくガットの場を通じて、日本に第一次産品自由化の要求を強く出してくる。それに応じなければ、日本重化学工業品は買わないという態勢になってくることは明らかです。従って、農産物等についても、どういう対策をとるかということを政府はもっと真剣に考えるべきです。今のようないいかげんな構造改善計画なんというごまかしをやっておったって、追いつくものではありません。こういう点の見通しはどうかという点もありますが、これらについてこれ以上あなたに聞いても、いつ何を自由化しますということは言えませんから、やめましょう。この点、もしお答えがあればいただきたい。  次は、いずれにしても来年の八月に一〇〇%の自由化ということではないでしょうが、何%やるのか。あるいはそれまでの間の自由化の制限品目をどういう形で残すのかという問題も、一つの大きな問題だろうと思います。これは普通いうウエーバーで行くのか、あるいは残存輸入の制限方式で行くのか、こういう問題ですが、どっちが日本としてとるべき道か、またどの品目についてはどうするのかというような点についての検討も、ほぼできておるのじゃないか。今日の時点においてか、これから先引き続く時点においてかということは、青木大使の意見も聞かなければわからないですが、少なくとも今までの調査なり研究の中で、どの方式で行くかということについては、政府はほぼ見当がついておらなければならないと思いますが、どうなんですか。
  37. 福田一

    ○福田国務大臣 およそ自由化の問題ということは、貿易に関係のあることであります。貿易の関係ということは、各国相互間の商売の問題であります。およそ商売の問題というものは、それはお互いに公平にやり合うということが原則であるべきだと思うのであります。そうしたならば、各国が今までどういうふうなやり方をして自由化をしたか、また、日本が今後自由化をやっていく場合においてはどうするかということは、やり方を間違えれば、日本は信用をなくするから商売上損するという問題がある。また、やり方を間違えば、今度は日本の産業がつぶれて、日本が損するという問題があるのであります。そういう商売の一種のかけ引きに属するものであります。しからば、これはこちらに相当な自信ができ、これをやってもできるということになって初めてやる、またそういうことをきめていくのが、私は正しいのだと思うのであります。何でもそういうことはIMFに言われたら——もう大体の予定としては来年の秋ごろということを予定しておりますが、何でもかんでもみんな自由化しなければならないということはない。まだ各国も一つもやっておりません。よその国がやっておらないのに、日本だけが全部自由化をさせられるというような不公平なことは、あり得ないと思います。だから、自分のベースにおいてやるべきことなんだ。従って、自分のベースにおいてやるべきことは、商売ですから、あらかじめそうそうこまかい品目を一々、これはこうします、あれはこうしますなどということは、言われるべき段階ではない。そもそも自由化の問題は、九〇%というような話があって、今度八八%を昨年の十月にやった。なるほど日本相当やってくれたということをIMFも認めておる。また、日本が自主規則をしておるのに、そうどんどん——自主規制は片方でされておる、片方は自由化されてくるというのじゃ気の毒だという空気も、国際的にはある。だから、決して私はあなたにでたらめを言っているわけじゃない。ちょっと気の毒だなという空気もあるわけです。こういうことをにらみ合わせながら、やっぱり日本の自主的な立場を守りつつ、しかも、国際経済の中において信用を失わないようにしながら商売をふやしていこう、こういうことなんですから、私は、何も今ここできまって——事実きまっておりません。私が了承していないのに通産省で案がきまっているはずがない。だから、私はきまっていないと率直に実はお答えを申し上げておりますが、しかし、それはしないという意味じゃない。やはり自主的にそういうことを考えながらいろいろやっていくんだ、こういう気持で申し上げておるのでありまして、事実あなたも、農産物なんかとてもできないだろう、こう言われる。日本には日本の特殊事情がある。もし自由化ということが絶対の使命だったら、農産物だろうが何だろうが、どんどんやらなければいけません。そういうことじゃない。やはり日本には日本の特殊事情があるから、それは各国も認めざるを得ない。やっぱりお互い同士友情的なものがあるわけなんで、そういうことを考えてみると、農産物以外のものについても、日本としてはそれはできるだけ減らしていくということはあるけれども、何でも向こうが言うたから来年の秋までにはこれだけやらなければいかぬ、こういうふうなものの考え方でいくよりは、やはり諸般の情勢をよくにらみ合わせながら、日本の自主的な判断に基づいてやっていく。引きずられるやり方にはしたくない。また、それでいけるんじゃないか、こういう見通しでおりますということを申し上げておるのでありまして、もちろんあなたの仰せの通り自由化するには力をつけなければいかぬ。力をつけるには、じゃいつ力がつくんだ。私らの目標で十月にと思っても、十二月になるかもしれない。そういうときに、あらかじめ十月にやると言って十二月になれば、日本はうそをついたということになる。そうではなくて、力のついたものから順々に、ぼつぼつ力を出していって、終局の目的としては、世界の大勢に応じて、世界の人にあまり笑われないような形でやっていく、そういうことで差しつかえないのじゃないか、こう考えておるわけでございます。
  38. 久保田豊

    久保田(豊)委員 お気持はそのまま尊重いたします。要するに、自由化を進めていく場合、残すものについて、ウエーバーでいくのか、残存輸入制限方式でいくのか、この点はどうなんですか。具体的にお答えをいただきたいと思います。
  39. 松村敬一

    ○松村(敬)政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、御指摘のように、ウエーバーでいくか、残存輸入制限方式でいくか、両方の方式がございますが、ウエーバーの方式につきましては、西独がかつていろいろウエーバーを取ることの交渉をいたしまして、なかなか簡単に、手続を経て承認を得られなかったというような事実もございまして、ウエーバーという手続で、正式に、何年以内の間は自由化しなくてもよろしいということを特定の品目についてガットのメンバーに認めさせるということは、なかなか現実の問題としては困難が多いのではないかと考えております。これはむろん国々の事情にもよることでございまして、今大臣の言われました、日本が非常に差別的な輸入制限を受けておるではないか、そういうことに対するほかの国の同情と申しますか、やむを得ないというような空気をある程度見当がとれますれば、ウエーバーを申請するという方法もあるかと思いますが、いずれにしても、ガットの場で申請する、しないというようなことは、あらかじめ各国の意向等を打診してきめるべきではないかというふうに思っておるわけでございます。従って、現在どういう品目についてウエーバーの申請をするとか、あるいはそうでなしに、残存輸入制限方式でございますれば、一国ごとに、二国間が話をしてワクを準備して広げるという形で相手を了承させる。その後者の方が、やり方としてはより容易ではないかというふうには考えておりますけれども、しかし、あらかじめウエーバーの手続をとらないというようなことは、これはまたきめる必要もないことでございますので、そのときの情勢に応じましてウエーバーの方法を講じたらいいと考えております。
  40. 久保田豊

    久保田(豊)委員 特に輸入制限を置く方式で問題になるのは、農産物だと思います。これをウエーバーでいくのか、輸入制限方式でいくのか、どっちがいいのかということは、相当これはむずかしい問題だろうと思う。この点について、今ここですぐはっきりしたお答えは無理かと思いますから言いませんが、一つ十分慎重にやってもらいたい、こう思います。  その次に問題になるのは、今ガットで進めております五年間に五〇%の関税の一括引き下げ、これも御承知通りイギリスEEC加盟がくずれましたので、今ガットそのものが少し混乱をして、作業がおくれるようであります。しかしながら、アメリカとの関係その他から見て、日本はこれに対する方策というものを早く立てなければいかぬと思うのです。そこで、関税の一括引き下げがあった場合に、日本の産業なり経済にどういう影響が及んでくるかということについて、具体的な御検討がもうすでにできておられるのではないかというふうに思います。それに基づいて、これに対してどう対処するかという政策も、これはもう立っておらなければならぬと私ども思うのですが、この点については、どんなお考え、見通しを持っておられるのか、これも聞いておきたいと思います。
  41. 福田一

    ○福田国務大臣 その問題につきましては、寄り寄り研究はいたしておりますが、もちろん、ガットの場でありますから、われわれの方ももちろんこれに参画しなければなりませんが、日本の場合におきましては、日本事情がございます。フランスフランス事情がある。あるいはもしインドならインドの事情があるわけでありますが、そういう場合において、日本の場合は、先ほども申し上げましたけれども、自主規制なんということを大いにやらされておいて、関税の方は引き下げたわ、どんどん向こうから物が入ってくる、自主規制はそのままだ、こういうことになったのでは、これは全く一方損、こっちの一方損ということになるわけです。そんなことでは、とてもたまったものじゃない。われわれとしては、もちろん、関税引き下げをして貿易を盛んにするという根本アイデアには大いに賛成はしますけれども、現実の問題として、こういうことが行なわれておる間は、そう簡単に納得するわけにいきません。応諾するわけにはいかぬ。これはもちろん、堂々とそういう点は主張するつもりであります。それから、もし関税引き下げをやる場合においてもそれぞれおのおのの国、おのおのの産業の立場があります。これは日本だけではありません。もうすでにそういうことはどこでもやっておる。だから、この問題は、まとめるのがなかなか大へんだ。この間、カナダとの閣僚会議があったときにも、私はそのことを言った。閣僚会議の席上でもそういう話が出ましたから、それはそうかもしれない。だんだん関税引き下げをする方向には非常に賛成する。しかし、日本の立場から見ると、こういう問題がある。これはかりにもしインドならインド、オーストラリアならオーストラリア、あるいはそのほかの国々についても、みなそれぞれの立場があるから、一律引き下げというやり方、何でも方程式か何かで割り切るようなやり方でやろうと思っても、なかなかむずかしいんじゃなかろうか。しかし、みんながそういうことをだんだんやっていこうということにはわれわれは賛成して、もちろん協力することはします。しかし、特殊事情というものは認めてもらわざるを得ないでしょうということを、はっきりわれわれも言うておるわけなんです。今後のやり方としても、大体そういうことになると思います。しかし、貿易は、なるべく関税障壁なんかなくして、みんな自由にやろう、そこで、国際分業でよくて安いものを各国の人が買えるようにするのがいいんだという思想は、私も否定するものではない。これは当然了承する。しかし、やり方については、そのためにこっちが参ってしまう、こっちの産業が参ったり、こっちがお手上げになるということは、私は困ると思う。そこで、各国の事情を十分調査してやらなければならぬようになるのじゃないか、こう思いますが、日本としては、私としては、そういうような立場をとっていくべきだと考えております。しかし、これはまだ政府として確たる方針をきめたわけじゃないので、通産大臣の意見いかんということでございますから、私としては、そういう方針で、もし意見を求められれば述べるつもりである、こう申し上げておるわけであります。
  42. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今の問題にもいろいろ問題がありますが、これは次の機会に譲ります。  その次にお伺いしたいのは、つまり欧州各国のガット三十五条の援用撤廃問題です。これはイギリスとの間ではどうやらできた。きょうの新聞を見ると、ベネルックス各国との間にも近くできる。あと残るは、フランスイタリア、この二つですね。しかし、イタリアはガットの三十五条を適用していないわけでしょう。そうすると、フランスということになるのだが、これはこの前池田さんが向こうに行かれて、各国へ行ってこの約束を取りつけてきたというので、非常にこれは大きく吹聴されたわけで、けっこうだと思うのです。これに対してどんなふうにやっていくかという問題も、一つの大きな問題ですね。イギリスの例のように、ガットの三十五条の適用はとったが、あとセンシティヴ・アイテムといいますか、これとか、あるいはセーフガード、こういうものもあわせて結局やるようになろうと思いますが、これに対しては、通産省としてはこれはまた非常に複雑な、いろいろなめんどうな問題ですが、どうしてもやっぱり八月までには少なくともこういう問題の一般的な解決をしておかなければ、移行宣言は非常に困難だろうと思います。この点はどういうふうに進められるつもりで考えておられるのか、これについて具体的なプログラムがあれば言っていただきたい。経済外交をただ盛んにするといっても、問題はこういう具体的な問題ですから、これに対してどうするかという点を明らかにしていただきたいと思います。
  43. 福田一

    ○福田国務大臣 フランスの場合につきましても、外務省を通じて今交渉いたしておりますが、しかし、やはり貿易というのは商売のことですから、一挙にすべて解決がいくかというと、なかなかそうはいかない。だから、やっぱり少しでも得なようにやっていかなければいかぬ。もちろん、よけい得なのがなおいいわけでありますが、そういう意味で今交渉をしておるわけであります。お説のように、英国流にセンシティヴ・アイテムがある程度残ることになるかもしれないけれども、前より少なくなったということなら、三十五条も撤廃され、またアイテムも少なくなるということならば、それだけ得ですから、そういうものをできるだけ減らす、制限をできるだけ減らすという方向で交渉をさせておるわけであります。詳しいことは、最近の事情を私はまだ聞いておりませんが、そういう意味で交渉を続けておる段階でございます。
  44. 久保田豊

    久保田(豊)委員 このガットの三十五条ですが、これはこういう形でアイテムを残したり、その他いろいろなことになってきて、実際の効果はどうなんですか。撤廃になった場合と、アイテムなり何なりが残った場合と、実際の効果はどうなんです。
  45. 松村敬一

    ○松村(敬)政府委員 ガットの三十五条を援用しておりますと、日本とその国とがガット関係にないということになりますので、日本側からガットの規定を使いましていろいろ権利を主張するということができないわけでございます。そういう意味で、ほかの国が三十五条撤廃をすることが、日本とのガット関係を正常にするという意味できわめて望ましいわけでございますが、ただ、関税交渉をいたします場合に、普通であれば、ガットの関税交渉でございますので、三十五条を援用しております国と日本との間には関税交渉が行なわれないのではないか、実行できないのではないか、こういう懸念が一、二年前はあったのでございますが、昨年の関税交渉で、ヨーロッパEECの諸国も、ガット三十五条を援用はしておりますけれども日本と関税交渉をやることは差しつがないとえいうことで、実際上は関税交渉が行なわれたわけでございます。そういう意味におきましては、久保田委員御指摘のように、三十五条を撤廃させられなかったからといって、ガットの非常に重要な部門である関税交渉をその国とすることができないということではございませんので、三十五条をやめさせる効果というものがそれほど致命的なものだというようなことでは必ずしもないと思いますけれども、しかし、いろいろな意味において、国の正規のメンバーとして扱うかどうかということになりますので、三十五条を撤廃することが望ましいことは、これは問題ないところでございます。ただ、御指摘のように、そのために非常に多くの品目を要注意品目として残すというようなことでございますと、これはかえってそのためにマイナスになるという部門も一あるわけでございまして、その点は、日英の場合には、従来から比べまして非常に品目も詰まって参りまして、私どもの判断としては、三十五条をそういう形で撤廃することは、十分意味があると考えるわけでございますし、ベネルックスとも相当話が進んでおりまして、ベネルックスもかなり品目が詰まっておりますので、この交渉は妥結さした方が日本にプラスが多いのではないかと思っておりますが、フランスにつきましては、まだ品目の詰めがあまり進んでおりませんので、相当のいろいろなむずかしい交渉を今後行なう必要があると考えております。
  46. 久保田豊

    久保田(豊)委員 大臣あまり時間がないようですから、飛び飛びになってどうも要点の突っ込みが足らないですけれども、一応問題点をおさらいのようなことで聞いておいてもらいたい。  その次に問題になるのは、欧米各国の日本に対するいわゆるガットなり何なりに基づかない輸入制限といいますか、そういうものが、実際に欧州各国でどのくらいあるのか。アメリカについては、まあ雑誌その他によりますと、全輸入品目について四〇%くらいのものをこっちは自主規制をしておる。特に繊維については九八%を自主規制をしておるにもかかわらず、それに対してさらに制限を強化しようとしている、こういうふうな実況のようですが、これらをどういうふうに今後制限あるいは自主規制、こういうものをやっていくのか。そうして特に自由化が進んでくる中で、相手がいわゆる日本の商品の輸入制限をしている、あるいは日本が向こうに対して自主規制を求めるというような品目なり何なりについての検討たり交渉なり、あるいはそういう行き方が、はたして今後通っていくのか、通っていかないのか。もちろん、今のあなたのお話のように、貿易は商売ですから、損をするばかはない、得をするようにやるに違いないが、しかし、やはり相手のあることですし、かけ引きということなら、両方の全体の計算の上でなってくるということになると、ある品目については非常なしわ寄せになってくるという結果も出てこない限りではない。それで、いわゆるガットなり何なりに基づかない欧州各国の輸入制限をしておるのは、どのくらいあるのか。あるいは特に自主規制をしている品目に対して、相手方の出方については今後どう対処していくのか。特にアメリカについて、私はどうも納得がいかぬ。これはおそらく日本の財界人のだれもが、そう言っておられるのです。あれだけ自主規制をしておるにかかわらず、アメリカ内の経済事情から次々に追い打ちをかけてきておる。これに対して、どうも日本政府態度がはっきりしない。これは原吉平さんもはっきり書いております。エコノミストの中に、日本政府は、貿易については、特にアメリカについては、自主性が何もない、もうちょっと根性を持ってもらいたい、それでなければやっていけません、こうはっきり書いておりますよ。こういう点について、どういうふうにお考えになっておるのか。こういう点が非常に——実はさっきのお話で、非常に勇ましい御発言にかかわらず、民間では、池田内閣というのは、欧米に関する限り、特にアメリカに関する限り、貿易の自主性もろくろく言えない、そうして何でも、向こうさんから言われれば、へい、そうでございますかと言うだけではないかという、非常な不満になっているわけですね。私ども見ておってもそう思う。日本アメリカとの経済関係から、日本がもっと堂々と強いものを出してびしびしやれるんじゃないか。特に貿易自由化の進む環境の中で、それをやらないことには、日本経済の少なくとも貿易面その他についてのいわゆる安定、バランスの確保はむずかしくなるのではないかというふうに思うのですが、この欧米に関する輸入制限なり、自走規制の問題について、どう対処されるか、お伺いしたいと思います。
  47. 福田一

    ○福田国務大臣 欧米とおっしゃいますが、大体自主規制をやっているのはアメリカでございます。片方は、差別待遇を行なっているわけであります。そこで、むしろ御質問の趣旨は、自主規制の問題にあるかと思うのであります。差別待遇の問題は、これは経済外交を通じてやるよりいたし方がない。自主規制のことについては、この間の十二月の日米経済閣僚会議のときに、実は四〇%という数字も、通産省で全部品目別に出しまして、これだけになるじゃないかという資料を出して反省を求めている事実があります。だから、そういう数字が出てきたわけです。私たちは、今後も、そういう自主規制というものは、なるべくやめてもらいたいという主張は繰り返すつもりであります。だからこそ、私は、この間も、通産事務当局に対しまして、自由化をする場合には、こっちが自主規制をやっているから、向こうも自主規制をやってくれたらいいじゃないかということを言うておるわけであります。それから、たとえば今、綿製品の問題、毛製品の問題、いろいろ出てきております。出てきておりますが、これはわれわれ決して弱腰というのではありません。弱腰という意味でそういうことを言っているのではなくて、相当強く向こうに要望しておるわけであります。しかし、業界の方から言えば、どんどん自分らのシェアがふえていく方がいいという考え方を持たれることば、これはその業界の人としては当然のことであります。しかし、全体のあれからいって、自主規制はしても順次ふやしていくというようにしてもらいたいと向こうが言っておるわけであります。もしあなたの方でそういう自主規制をしないでやるというと、アメリカ国内関係が非常に騒いで困りますというような事情もあるし、やはりアメリカ経済にも大きな影響を与える。そのこと自体は、日米間の経済関係を円満にやっていくゆえんにはならないのじゃないか、こういうことが言えます。これは私は、日本でも同じことではないかと思います。農産物なんかこっちはストップしているけれども、そんなばかなことはないじゃないか、どんどん入れさしたらいいじゃないかといったときに、それは困りますと、同じことを書っております。貿易というものは、みんなお互い同士が自分に都合のいいようなことをある程度言うということは、これは私は認めてやらざるを得ないと思う。しかし、それだからといって、こっちがだんだんふえていくものを、そんなものは滅らせというようなことになっては困るから、自主規制をやっているけれども、どの品目も、漸次二%なり三%ふえてきているわけです。それがあまり急にふえてきては困るということを言うているのが、今の実情であります。だから、私は、その業界の人がそういうようなお気持で見られるのもよくわかるわけでありますが、しかし、全体としてバランスをとって貿易をやっていくという意味から言えば、一ぺんにそうふやせなければ絶対いけないのだという理屈が成り立つかどうか、ここは非常に問題だと思います。やはり商売関係ですから、そこら辺はお互いに業界も理解をし、そういう事情もよくわかってもらわなければいかぬと思っております。私は、原さんにもよくお会いしております。だから、原さんからそういうお話があったとき承ってもおるし、われわれも、おっしゃる通り、そういうことでは困りますよということは、向こうに強力に言っておるけれども、それでは、今輸出している分を五割も十割もふやせ、こっちはどんどんできるのに、なぜふやさないのだ、こう言われたからといって、そう簡単にいくものではない。そこにはおのおの限度というものがある。そうしてやはり取引をするということは、仲よくした方が得なんですから、仲よくやるということも一つの大きな要素であるということを考慮に入れながら、われわれとしてはやはり強く主張すべきことは主張していく、そういうところでやっておるわけでございまして、決して自主規制をけっこうでございますといって認めているわけでもなければ、そういうやり方が正しいと思っておるわけでもございません。まあ今後といえどもアメリカに対しても、カナダに対しても、一つ自主規制はできるだけだんだん減らしてくれ、そういうことはやめてもらいたいということを根気よく——これは一ぺんにというわけにはいかぬ。根気よく言い続けていく。と同時に、どうしても自主規制が残っていくような場合には、こっちが自由化する場合、あなたの方も一つ自主規制して下さい、こういうようなことも言うべきではないかというので、事実どの品目を自由化した場合にどういうことを言うたらいいかということを今調査をさしておる、こういうわけでございます。
  48. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今の点は、綿製品に関しては、大臣の言われることはちょっと事実と違うようですね。結局、いわゆる国際協定できまったものをアメリカが認めない。こっちはどんどん入れようというわけではないのですから、ちゃんと約束をしたものを実行してくれというのであって、むちゃくちゃにこっちがよけい伸ばすから向こうが困るといってやっておるのではないし、また、向こうの綿製品の生産額なり輸出額と日本から入るものとのパーセンテージを考えてみたって、アメリカが今度のような措置をとってきたということは、私は、これは明らかに不当だと思う。みずから約束をしてやったものを、自分からまた都合の悪い点だけを抑えてくれということですから、これはやはり強力にやらなければいかぬし、今お話のありましたように、欧米諸国に対しては、今後の自由化の進展に応じて、こっちも自主規制はある程度するが、同時に、向こうに対しても堂々と自主規制を報復的にやるべきじゃないか。特に私は、アメリカに対してはそのくらいの腹がなければだめだと思う。今まではそういう輸入制限ができましたからいいですが、自由化されてきたら、またどしどし——どしどしといっても、そんなにめちゃくちゃにやれないでしょうが、やる必要があるのじゃないか。そのくらいの腹がまえを持ってやらないことには、とてもアメリカ側の今のような出方というものを正常に戻すことは——話し合いだけでうまくいけばいいですけれども、とかくそうばかりはいかない要素が多々出ておりますので、これは考えていただきたい、こう思うのです。  時間がありませんから、もう一、二の問題にしますが、特にこの商品の自由化だけでなくて、これから資本取引の自由化ということも行なわれる。そこで一番今度問題になるのは、資本取引の自由化になった場合に、基本的に、この点は、日本政府の方策というものは、全く私は立ちおくれておると思うのです。ですから、今のたとえば外為の管理法にしましても、外資法にしましても、根本から改めなければ用をなさぬ時期にきておりますが、当面の一番問題としては、利潤ないしは果実のいわゆる送金が自由化されるということになれば、向こうの企業がどんどんこっちへ出てくるということに当然なると思う。これに対しては、少なくとも政府として、外資法の改正ということでやるのか、あるいは何でやるのか知りませんけれども、いずれにしても、はっきりした対策を立ててなければ、日がたつに従って、これに対する不安動揺というものは、国内では強くならざるを得ない。特に中小企業のごときは、この点がやはり一番問題ではないかと思うのです。スーパー・マーケットのごときは、すでにそういう格好が出ておる。ですから、この利潤ないし果実の送金の自由化について、それに当然そこから出てくる向こうの資本のこっちへ入ってくることについて、どういう方式でどういう制限を加えていくのかということだけは、明確にしておかなければいかぬと思いますが、これは通産省の所管ではなくて大蔵省の所管だと思いますけれども、しかし、通産省としてはこれに対してはっきりした考えを持っていなければならぬと思いますが、どうでしょう。
  49. 福田一

    ○福田国務大臣 先ほどの綿の問題について、国際協定があるから、その問題について、われわれは、アメリカの方が少し無理を言っておるのじゃないかという意味で抗議をしておる。あなたがおっしゃる通りのことを言っておるわけですから、そこは考えていただきたいのでありますが、私が言うているのは、総括的に書って、日本はどんどん経済成長しておりますから、輸出も四十八億とか五十億ドルだったものを、今は四・五年の間にはもう九十何億ドルにしようというくらいどんどん伸ばそうとしておるから、やはり伸ばせるというところにはどうしても向こうからまた反撃があるということは、これはやむを得ないことだと思うのです、しかし、私たちとしては、そういういわゆる筋の通らない形で押えられるのは困るということは、今後も強く主張いたしますから、この点だけは一つ誤解のないようにしていただきたいと思うのであります。  それで今度は、ただいまのいわゆる経常取引が自由化されて、果実、いわゆる資本に対する利子とかあるいは配当所得をどんどん送れるようになるのじゃないか。来年からは、受諾したときそれが送れるようになるが、これに対する対策いかんということであります。これはもちろん通産行政にも大きな影響がございます。また中小企業の問題にも大きな影響があるわけであります。ただ、考えてみなければならないことは、その点は非常にみんなが心配されておりますけれども、今まで外資が入ったので——もちろんその制約を加えておるからでありますが、外資のおかげで日本経済がこの程度まで発展してきたということも考えてみなければならない。ということは、言葉を返して言えば、いい外資ならば何も断わる必要はないわけです。いわゆる日本経済の秩序を乱し、あるいは中小企業に大影響を与え、悪影響を与えるというものは、これはもうチェックしなければならないということは、われわれもその通り考えておるわけであります。今お説にありましたスーパーマーケットの問題ですが、住友とセーフウェイとの間で、いろいろ今までの間に共同会社をつくりました。そうしてその会社を通じて、住友が物を売ったり買ったりしております。ところが、今度は、それを全国の主要な都市でもスーパーマーケットをつくろうかという計画があったことは事実ですが、そういうことにつきましては、その後われわれの方でいろいろ調査してみますと、小売業その他からの非常な反撃もありますし、そうして実際問題としては、そういうことをやるよりは、むしろ小売業者に金を貸して、その小売業者がスーパーマーケットをつくった場合に、その小売業者は住友なりあるいはセーフウェイと一緒になった会社から品物を仕入れる、こういうふうなやり方をしてみてはどうだろうか、こういうような方向に今方向転換をいたしつつあります。もちろん、全部が全部やめたというわけではなく、一カ所や二カ所は全国のうちでそういうものをつくりたいという考えもあるようでありますが、そういうことに相なっております。そこで私たちとしましては、この問題は非常に大事でありますから、企業庁の者を大阪までやりまして、いわゆる三社五綿という商社を中心にして、おもな者を集めて、そういう計画があるかどうかということを調べさせました。ところが、今のところそういう計画はないようであります。  スーパーマーケットの問題について今お話を申し上げたのでありますが、お説の通り、しかしながら果実を自由に送金できるという形になりますと、外資が入ってくるという可能性が多分にあるわけでありますから、その場合に、いいものだけが入ってきてくれればいいけれども日本経済を乱すようなものが入ってきたのでは困るという問題もございますので、これに対しては、われわれとしても何か措置すべきじゃないかというので、目下われわれのところだけではございませんが、大蔵省も含めていろいろ研究をしておるという段階であります。
  50. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それが新聞で伝えられておるところでは、政府としては当面ケース・バイ・ケースでいくんだということのようですが、これはケース・バイ・ケースでは非常に困る。どうしても外資法なり何なり、はっきりした基準を早くきめなければいかぬ、こういうことを申し上げておるわけであります。ケース・バイ・ケースでは、これはあなたの趣旨には沿うかもしれぬけれども、私はいかぬと思うのですが、どうですか。
  51. 福田一

    ○福田国務大臣 私は、ケース・バイ・ケースというのは、今、来年なら来年のところまでは、そういうふうな考え方で処置をしていくということを言うておるわけであります。その後においてケース・バイ・ケースでやれるかどうか、また、どういう方法があるかということを今研究しておる、こういう意味でございます。
  52. 久保田豊

    久保田(豊)委員 時間もあまりないようですから、もう一点だけお聞きしますが、次に共産圏貿易の問題です。  これは昨年来、総理も、あなたも、共産圏貿易については前向きでいくんだ、こういうことを盛んに言われておったが、最近の傾向を見ると、またうしろ向きになってしまったと言わざるを得ない。しかも、この点は、どうも日本政府の自主性のないところでありまして、あなたの言う自主性なんかは、どっかへ吹っ飛んでしまったように思う。  第一にお聞きしたいのは、ソ連に対して日本から、これは日本鋼管だと思いますが、例の輸送用パイプが成約になっておるわけです。これに対してNATOと米国の国務省から、これをするなというような要請がきておる。当時、これに対して、あなたも、政府の閣僚諸君も、アメリカがそんなことを言ったって、NATOがそんなことを言ったって、そんなことはおれの方で勝手にきめる、言うことは聞かぬぞと言わんばかりの新聞声明をされたが、その後のあれを見ると、契約分の五千トンだけはいい、あとは取り消すというようなことで、どうもこれが今雲行きがあぶなくなった。はっきり破約になったかどうか、そこまでは聞いておりませんけれども、あぶなくなった。この経過はどうなんですか、これが一つ。  それからもう一つは、やはりルーマニア向けのトロール船だとか、チェコ向けの鉱石の運搬船だとか、ソ連向けの漁工船の二十八隻とか、これに対して、従来は、この前河合ミッションが行ったときに成約をされたものを見ると、大体頭金は三割、そうして延べ払いの期間が六年、こういうことが、常識になっておった。ところが、今度は政府の方から、頭金は四割から五割にしろ、そうして延べ払いの期間は三年から四年だ、こういう注文をあなたの方では出しておられるようです。これに対してあなたは、商売だから掛売りがよけいになっては困る、掛売りは少なくするように、これは商売の常道だからするんだと言うが、どうもこれは単なる商売上のかけ引きとは考えられない。現在、二百五十億の延べ払いが、ソ連に対してはあると思うのです。それに対してああいう条件をのむはずがない。のむはずがないものを、少したってから新しい成約についてはこういう新しい条件を出してくるということは、どうも単なる商売としては考えられない。それからさらに、ソ連向けの化学合成繊維のプラントの商談が進んでおった。これに対して外務省から、対ソ・プラントの延べ払いは、これは大いに排除しろという申し込みを行なわれた。これも一月十八日でしたかに、日本の化繊協会の方では、自重いたします、つまり商談を取りやめるということを言っておる。これらを見ると、どうも前向きどころじゃない。うしろ向きで、しかも、それは輸送用パイプに現われたように、日本政府の自主的判断じゃない。これははっきり言ってアメリカなりNATOなり、その裏にはアメリカの石油資本があるでしょうが、この連中から押えられてとうとう腰がくじけてしまった、こういうことになるじゃないですか。  さらに、中国の貿易についても、塩安の後払いの問題については、政府の方はこれは認めないというふうなことを言って、この案がうまくいかない。後払いを認めないということになって、これらのプラントの方は期間が五年以下だということになると、今の中国の外貨の持ち工合から見て、例の三カ年なり五カ年の相互バーター方式はくずれてくるのじゃないか、実行不可能になるのじゃないかと思われるが、これもこの前あなた方が行って、ケネディさんから中国封じ込めというお札をもらってきた。これを後生大事に守られるのじゃないかと思うのですが、ここらで日本政府としては、そんなアメリカやNATOの言う通りにはしておりませんという返事になろうと思うが、どう考えてもここらは自主性がないと思う。この間の事情なり今後に対する方針なりを明らかにしてもらいたいと思う。
  53. 福田一

    ○福田国務大臣 先ほど来申し上げておるように、貿易というものは商売でございます。商売というものは、相手によって変ずることは当然であります。向こうが金を持っておるとか、持っていないとか、あるいは信用があるとかないとか、あるいはまたそういうことでなくても、一ぺんこれはやっておく方が将来よけい物を買ってもらえるようになるんだとか、いろいろの要素を含めて貿易というものはすべきものだろうと思うのです。そういう原則に基づいてやっておるわけでございまして、われわれは、前向きも何もございません。そこで具体的な例で申し上げてみますと、ソビエトの関係におきまして、例の鋼管といいますか、パイプの問題が出て参りました。しかし、あれは外務省を通じまして、NATOの方でこういうことをきめたからよろしくということを言ってきたということで、われわれの方にも連絡がありましたから、われわれの方としては、そういうことを言うてきたということを商社の方に伝えたことは事実であります。しかし、これは自主的にあなた方がきめることで、日本がNATOに入っていないのに、入っていないところがきめたからといって、何もわれわれはそんなところに左右される筋合いはないと思う。これは実は私も事情がよくわからないので、私の言い過ぎになるかもしれぬが、これは各社とも——八幡なら八幡にしても、各社それぞれ各国と取引があるだろうと思う。その場合に、そういう商売上のかけ引きもあって、片方やると片方に買ってもらえないということになっては損でしょうから、そこは自分の利害関係でそれぞれやればいいじゃないかと思っておるので、これを法制的にわれわれがとめたということは一つもございません。  それから先ほどお話がございました船の輸出について、河合ミッションが行ったときは六年の延べ払いにしてきたじゃないか、それを今度は三年と言ったとか四年と言った、チェコとかそういうところへ輸出するときには少し短縮したという話がありますが、私はそういうことを言っておる覚えはございません。しかしながら、それだからといって六年を認めてはおりません。何もそういうことはやはりおのおのがよく研究をし、相手が払ってくれるかどうか、外貨の事情とか国際信用力、そういうものを見てやる。たとえば商売をされる場合でも、呉服屋さんが物を売る場合には、現金でなければ絶対売らぬ人もあるし、三カ月払いでいいという人もあるし、いろいろあるわけです。それは私は、それぞれの国がそういうことを相手によって変じたからといって、何も商売の意味では悪いとは思いません。そういう意味で、決して一定の不変の規則というものをつくるのが商売の原則だとは、私は思っておりません。また、そういうふうに今後も指導していくつもりであります。  それから、ただいまは化繊協会の何かお話がありましたが、あれは全然誤報であります。化繊協会ではそういうことをきめておらぬということを、その後聞いております。新聞の誤報と承っております。  それから中共の問題でありますが、中共問題につきましては、ただいまいろんな問題について研究をいたしておる段階でございまして、何もわれわれは最終的に態度をきめておりません。また、塩安の問題につきましては、すでに後払いを認めまして、商談は成立をいたしております。そういう事情でございまして、決してケネディさんに飯を一ぺん食わされたからといって、あなたがおっしゃるようにへいこらなんと言ってきた覚えはありません。ここにケネディさんが来ても、これを言うだけの自信を持っております。決してそういうような、日本人として——あなたも私も同じ日本人、日本人をそれほどいくじのないふぬけのように言わぬでもらいたい。われわれにだってやはり魂があるわけであります。ちゃんとそれ相応のものを持っておる。決してアメリカを憎むとか、あるいはアメリカをけ飛ばすというようなことはない。われわれはどこの国とでも仲良くしようというのですから、お互い相互に信頼しあいながら、友情を持ちながら商売をしておるということは、当然のことでありまして、それだからといって、何でもかんでも、アメリカというと、すぐまるでわれわれは頭を下げているように言われることは、ちょっとこれは日本人のプライドのためにも、こういうことは言わぬでもらいたいと思います。
  54. 久保田豊

    久保田(豊)委員 これでやめますが、今のお話で、輸送管の問題についてはこう言ってきたよと言っただけであって、すでに成約ができておるものを解約するはずはありません。何らかのそれ以上の行政指導——それは確かに法律に基づいてやめろとかなんとかということではありますまいが、少なくともすでに成談ができて、ソ連向けの、八幡はプラントもつくっている。それは五千トンで打ち切ってあとはパーにいたしますということは、商売人が普通ならするはずはありません。それは私は常識だと思います、これは商売ですから。  あとの問題については、延べ払いについてそういうはっきりした新しい条件を出しておることはないと言われれば、それまでの話であります。しかし、今お話のように、あなたも日本人、私も日本人ですから、何もアメリカの方でどうこう言ったからどうこうということではないでしょうが、世間一般の印象は、どうも日本の、特に池田政府は、アメリカに対しては腰がないというのが、一般の通念です。そういう誤解を与えないように、もっと私は明確にしていただくように特にお願いをしておきます。そういうことを申し上げて、あるいは失礼になった点があれば、それは訂正してもよろしゅうございますけれども、しかし、どう考えても、今の態度は、私どもには自主性がほんとうにあるというにはどうも疑わしい面が多分にありますので、この点は、あなたがそういうことはないということですから、これは一応言明を信頼しますけれども、もっとはっきり——だれか見てもこれははっきり自主性があって、やっちょるわいというようなことにしてもらいたいということを要望しまして、私の質問は、きょうはこれで終えておきます。
  55. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 次会は明十三日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十五分散会