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1963-06-12 第43回国会 衆議院 社会労働委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月十二日(水曜日)    午前十一時十七分開議  出席委員    委員長 秋田 大助君    理事 小沢 辰男君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 藤本 捨助君    理事 柳谷清三郎君 理事 大原  亨君    理事 河野  正君 理事 八木 一男君       井村 重雄君    伊藤宗一郎君       上村千一郎君    浦野 幸男君       尾関 義一君    久保田円次君       久保田藤麿君    佐々木義武君       壽原 正一君    田澤 吉郎君       田中 正巳君    古川 丈吉君       前田 義雄君    松浦周太郎君       松山千惠子君    森田重次郎君       吉田 重延君    米田 吉盛君       米山 恒治君    小林  進君       五島 虎雄君    島本 虎三君       田邊  誠君    滝井 義高君       中村 英男君    長谷川 保君       吉村 吉雄君    井堀 繁男君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 西村 英一君  出席政府委員         厚生政務次官  渡海元三郎君         厚生事務官         (大臣官房長) 熊崎 正夫君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      尾村 偉久君         厚 生 技 官         (医務局長)  尾崎 嘉篤君         厚生事務官         (社会局長)  大山  正君         厚生事務官         (年金局長)  山本 正淑君  委員外出席者         厚生事務官         (社会局施設課         長)      瀬戸新太郎君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 六月十二日  委員上村千一郎君、亀岡高夫君久保田藤麿君  及び米田吉盛辞任につき、その補欠として佐  々木義武君、壽原正一君、尾関義一君及び吉田  重延君が議長指名委員に選任された。 同日  委員尾関義一君、佐々木義武君、壽原正一君及  び吉田重延辞任につき、その補欠として久保  田藤麿君、上村千一郎君、亀岡高夫君及び米田  吉盛君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正す  る法律案内閣提出第三四号)  老人福祉法案内閣提出第九八号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第一一〇号)      ————◇—————
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案老人福祉法案、及び船員保険法の一部を改正する法律案の三案を一括議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。田邊誠君。
  3. 田邊誠

    田邊(誠)委員 前回に引き続きまして、この法案の具体的な問題とする内容についてお伺いをしたいのでございますが、前回委員会で資料の提出を要請しておきましたところが、本日御報告がございました。拝見をいたしますると、いろいろと御苦心のあるところが読み取れるのでありますけれども、また一面においてきわめて不十分な点が多いのでございます。特に第一線福祉事務所職員特殊勤務手当支給状況について、前回私が危惧をいたしましたのが、この御報告の表を見ましても如実にあらわれておるわけでございまして、支給しておる部面が数の上ではかなり多いのでありまするけれども、しかしその内容たるや、第一線の苦労をしておる人たち、あるいは今後社会福祉を現実的に進める指導的な立場にある人たちに対する報労としてはきわめて微々たるものであることを、実は非常に遺憾に思うのでございます。局長にお伺いいたさなくても私の言うとおりであろうと思うのでありますけれども、最初に私はこの表を見せていただきまして、これは社会福祉主事特殊勤務手当にいたしましても、一人平均に直しますと一万四千六百六十六円であります。身体障害者福祉司特殊勤務手当にいたしましても、都道府県の分は一人平均一万五千五百二十円、精神薄弱者福祉司特殊勤務手当については一人平均一万六千八百円、いずれも都道府県分であります。市町村分はこれをさらに下回っておるという状態でございますが、実は私は、これは一カ月分の特殊勤務手当であろうと最初に読み取っておったのでありますけれども、よくこれを拝見いたしますると、どうもこれは一年分のトータルであるというふうに考えざるを得なかったのでありますが、その点は間違いございませんか。
  4. 大山正

    大山(正)政府委員 年額でございます。
  5. 田邊誠

    田邊(誠)委員 大臣、いまお聞きになっておわかりのとおり、第一線人たちに対する特殊勤務手当というのが、たとえば市町村分について見れば、社会福祉主事の一人平均は一万一千八百二十六円、身体障害者福祉司手当は一万二千三百円であります。これは一カ月に直しますと千円を割るという数字になる部面もあるわけでございます。いろいろな設備もない、足もない。勤務時間はありましても、ある場合には度外視をしてかからなければならない活動もあるわけでございまして、われわれとしては、超過勤務手当その他の通常の手当のほかに、当然これらの指導的な役割りを果たす人たちに対する優遇策を講ずべきである、こういうふうに実は念じておるわけでございますが、現在の状況についてはこれはきわめて不満というか、これだけではどうにもならぬ手当支給じゃないかと思うのでございまして、これについては、ひとつ今後大幅な手当支給について当然御考慮があってしかるべきであると思いまするけれども、大臣の所見はいかがでございますか。
  6. 西村英一

    西村国務大臣 御承知のとおり、この福祉的な業務、なかんずく身体障害者あるいは精神薄弱者というようなものを預かることは、ただ単に金を出して施設を管理するということだけでは、どうしてもうまくいかない面があるのでございます。というのは、人の面でございまして、非常に手がかかるわりあいに収入が少ない、報いられるところが少ないというのが一般の批評でございます。ことに身体障害者にいたしましても精神薄弱者にいたしましても、これから重度のものを預かろうという場合におきましては、特にその感が——施設の面よりは人の面ということに重点を置かざるを得ないのじゃないかと私は考えておる次第でございます。御指摘のように、まことにこの交付金でやっておる金は少ないのでございますが、今後は自治省と十分連絡をとりまして、あるいは大蔵省とも十分連絡をとりまして、認識を新たにいたしてもらってひとつ職員の所遇については十分の考慮をしたい、かように思っておる次第でございます。
  7. 田邊誠

    田邊(誠)委員 手当支給ばかりでなくて、人員の配置自身も、一事務所について、いま申し上げたような各種指導的な役割り人たちというのが、大体十人平均ぐらいしか配置されておらないというような状態でございまして、山間部を受け持つような場合には十分な指導が行き届かないというのが、この配置の不十分さにもあるわけでございます。これまた実質的な改善と並んで、当然十分な方針を立てられるべきであると実は考えておるわけでございます。そういう方向へ向かっていただくことと考えまするけれども、いま現業職員のいろいろな問題を取り上げて考え方をお聞きをしてまいったのでありまするが、私はせんだっての委員会でも申し上げましたように、老人福祉担当職員、現場で具体的な指導に当たる人たちが拡充強化されなければならぬと同時に、国の機構の全体の面に照らしてみても、この老人福祉対策を一元的にやるという必要からいいまするならば、私は政府機構の面でも考えていかなければならないことが多いのではなかろうかと思うのでございます。局長がおいででありまするけれども、もちろんこれは社会局中心となってやっていただかなければならぬことはおわかりのとおりでありまするが、私は厚生省社会局がその中心部隊であるなしにかかわらず、国の全体の老人対策に対する考え方からいいまするならば、たとえば医療の問題はもちろん、住宅の問題、あるいは税金の問題、あるいは年金の問題、あるいは労働の問題、こういった取り上げてまいりました各種の問題が実は含まれており、これを総合的に考えてその対策を練らなければ、ただ単なる所得保障をするということだけでは不十分だということは、私が指摘をし、また大臣局長もお認めになったとおりであります。そういった点からいいまするならば、私は、老人福祉法という形の上ではきわめてかっこうのいい法律案を提案いたしました政府考え方からいいまするならば、老人対策に対する政府機構の面でも、もう少し取り上げていかなければならない部面が多いのではないかと思うのであります。これは麻薬対策の際に特に申し上げましたけれども、やはり日本の役所の機構というのが、縦割りの面では、上と下との関係といいましょうか、わりあいに円滑にいくのでありまするけれども、横の連絡統合という面が非常に欠けておるのであります。これが一大欠陥であることはだれしも疑わない事実でありまするけれども、私は特に老人対策というものが、ただ単に社会保障という問題だけではなくて、日本の生産的な部面にまでこれを考えてみまするならば、きわめて積極的な政治の面における政策の一端ではないかと思うのであります。こういった面からいいまするならば、私は厚生省なり厚生省社会局なりが、ただ単に手がけるということだけではなくして、いま申し上げたような各種の問題を、ひとつそつのないように、落ちのないようにこれを総合的な見地から取り上げて推進をしていくという機構というものが、あるいは機構が直ちにできないといたしましても、連絡機関というものが必要ではないかと私は思うのであります。これはアメリカ日本とはいろいろな行政機関機構が違いますから、一がいに比較はできませんけれども、アメリカの場合は、老人福祉対策の中で各政府機関の間の調整、統合的な面を確保するために、各省次官室老齢対策特別補佐官というのを置いておるということがいわれておるのであります。このくらいの熱意、努力がなければ、ほんとうの意味におけるところの対策推進にはならぬと考えるというその立場から——名目はどうであれ、直ちにそういう機構ができ得べくもないということは現実にわかりますけれども、やはり何らかのそういう連絡統合機関なり、あるいは機関までいかないにいたしましてもそういう会議なり、こういったものが政府の中で考えられていくことは当然必要ではないかと私は思うのでございますけれども、ひとつその点に対するお考えがあればお示しをいただきたいのであります。
  8. 西村英一

    西村国務大臣 詳しいことは後ほど政府委員から御答弁いたしますが、大体の私の考え方ですが、いま機構の面のことがいろいろ行政の問題になっております。たとえばいま老人行政を一元化したらどうかということですが、御承知のとおり今度の法律案では老人行政一部分をとらえたのでございまして、生活保障だとかあるいは医療問題、あるいは労働問題というようなものは、それぞれの法令、それぞれのまた分野においてやるということになっておるから、その連絡機関を十分につくったらどうかということは、もう十分考えられます。私もこの法律が通過いたしましたならば、さようなことを考えたいと思っております。  また、これはお話には出ませんでしたけれども、児童行政の一元化ということもいわれております。しかしそれは、縦の面でとらえるか横の面でとらえるか、いろいろ問題があるわけでございます。福祉の面でとらえれば厚生省、教育の面でとらえれば文部省、労働の面でとらえれば労働省、治安の面でとらえれば警察庁、こういうふうにいまなっておりまするから、ややともするとその間に間隙ができるのでございます。そういうようなことでございますから、私はこの法律の通過によって、労働行政としてこの中に取り入れられねばならぬものはひとつ取り入れて十分にやるとともに、いま御指摘のありましたように各省行政のばらばらになっておるものは、これはひとつ横の連絡協議会等を持ちまして十分な連絡をとっていきたい、かように考えておりまするが、政府委員もいろいろ考えておると思いますから、意見がありましたら述べさせたいと思います。
  9. 大山正

    大山(正)政府委員 老人福祉に関する審議会——日本の従来の行政機構から申しまして、審議会制度一つ連絡調整機関になっておるわけでございますが、今回の法律案立案にあたりまして新しい審議会を設けることもいかがかと考えまして、すでにあります社会福祉審議会の中に老人福祉分科会を置きまして、ここに民間の学識経験者の方あるいは関係官庁の方をお願いしまして連絡調整をはかっていこう、こういう考え方でおるわけでございます。そういうありきたりの審議会機構のほかに、ただいま先生御指摘のような一つの行き方もあろうかと思いますが、日本行政機構でどのようにこれを取り上げていっていいかまだ熟した考え方を持っておりませんが、御指摘のように、この法案で扱っております具体的な措置老人福祉のごく限られた一部分にすぎませんので、関係の他の行政官庁とはひとつ十分連絡をとってやっていきたい、かように考えます。
  10. 田邊誠

    田邊(誠)委員 実はこれは、いま労働省所管法律案審議をようやく始めたところの職業安定法緊急失業対策法の中でもって、中高年齢層失業問題、雇用問題というのが非常に重要視されておるわけでございまするが、そういった面で実は私はせんだっても学識経験者の方々に、この問題を考えてみた場合にも、中高年齢層の雇用、失業の全体的な問題、いわゆる失業周辺の問題、こういった問題を取り上げなければいけないんじゃないか、同時並行的に行なわなければいけないんじゃないだろうか、こういう話をしてそういう意見を承ったのでありまするけれども、労働省の側には私はそういうふうに強く叫ばなければならぬと思います。またその反面、この老人福祉を直接担当するところの政府機関である厚生省の場合は、実は反対の面でありまして、いわめる労働の面やあるいは住宅の面や税金面等の、老人福祉所得保障中心的な問題のほかにあるいわば周辺にある問題も、一緒にひっくるめて考えていかなければ本来の意味における目的を達成するわけにいかない、こういうことになろうかと思うのでありまして、実は相関関係があるわけです。したがって私は、いま局長からお話しのありましたような従前の機関を活用することもまた一つ方法であると思います、そういう学識経験者を含めたいろいろな諮問機関なり、あるいは一つ政府の外郭的な機関としての審議会なり会議なりというものを活用することももちろん必要でありまするけれども、それよりもいま必要なことは、行政機関の中における具体的な仕事をする場合のそういった連絡調整ではないか。これなくては、前段のいろいろな意見が聴取されても、これが具体的に実行されるという部面でもって実効をあげるわけにはいかないと考えるわけであります。いままでの考え方は、それはそれとして必要性を強調してもらうことはもちろんけっこうでありますけれども、私は、具体的な行政を進める上にあたっての連絡統合というのを、この際ひとつ声を大にしてもらわなければいけないんじゃないかということを強調しているわけでありまして、その点に対する考え方は、大臣から幾らか片りん片りんらしいものが示されましたけれども、竿頭一歩を進めて、具体的な構想なり考え方というものがあれば、さらにひとつお示しをいただきたいのであります。
  11. 大山正

    大山(正)政府委員 老人福祉推進するにあたりまして、厚生省社会局が一応中心と申しますか、所管推進役というように自分たちとしては考えておるわけでございますが、その問題が、住宅の問題あるいは労働の問題、あるいは年金の問題その他にいろいろ及ぶのでございますので、それぞれ具体的な問題にあたりまして関係当局と十分密接な連絡をとり、機構といたしましてはさらに次官会議なり閣議なりという機構があるわけでございますので、従来の機構を活用いたしまして、われわれとして老人福祉各省行政全般に反映しますようにひとつ努力していきたい、かように考えております。
  12. 田邊誠

    田邊(誠)委員 具体的な緒についた御意見というところまで行きませんので非常に残念でありますけれども、私はいまからそのことを考えておかないと当然壁にぶち当たる結果になるだろう、何かびっこな形福祉対策というかっこうに将来なったときではおそいのではないかと憂慮するものですから、この法案が成立をするそういう機会をねらって、いまからひとつぜひとも御検討をいただきたい、こういうように考えるわけでありまして、大臣に特にこの点は希望しておきたいと思うのであります。  はしょりまして次の問題に移りまするけれども、健康審査については後ほどまたほかの委員からいろいろと御発言があるのではないかと思いますので、私はこの点は深く触れないでおきたいと思います。しかし老人病気にかかる率というのはきわめて高いわけでございまして、有病率の中で老人世代の占める割合というのは、平均比較をして非常に高いことは、厚生白書なりあるいは労働省の広報を見ても発見することができるわけでございます。そこで六十五歳の老人に対して健康審査を行なうというように今度法律で規定をしておるわけでございまするが、しかし一般的に見ましても、いま非常に顕在的な、あるいは潜在的な病気にかかっておる老人が多い中でもって、この健康診査というのは重要な意味合いがあるだけに、まかり間違いますときわめて形式的な、きわめてうわべだけのものにおちいりがちだと私は思うのであります。この健康診査は「毎年、期日又は期間を指定して、」となっておりまするけれども、一体どのくらいに、たとえば何カ月に一回あるいは何週間に一回、六十五歳以上の老人に対して健康診査をするという御計画でございましょうか。
  13. 大山正

    大山(正)政府委員 健康診査につきましては、六十五歳以上の者に対しまして期日または期間を指定して市町村長が行なうということにいたしておりますが、今年度の予算と申しますか、計画といたしましては、六十五歳の者、七十歳の者、七十五歳の者というように五歳おきにいたしまして、年に一回この健康診査を実施するという考え方でございますので、六十五歳以上の者につきましては五年に一ぺんはこの健康診査を受けるというようなことになるわけでございまして、ただいまのところ内容といたしましてはまだたいへん手薄ではございますが、そのような計画にいたしております。
  14. 田邊誠

    田邊(誠)委員 これはどうも驚くべきことを聞いたのでありまするけれども、この法律ができて健康診査が受けられるというのでたいへん喜んでおったのではないかと思うのですが、いまお聞きをすると、一年に一ぺんというのだけれども、六十五歳の人は六十五歳で受けて、七十歳になるまで受けないわけですな。——ははあ。これはたいへんなことですね。そうすると、一回健康診査を受けますると、向こう五年間はその生命については保証してくれるわけですか。
  15. 大山正

    大山(正)政府委員 国の制度といたしまして、法律に基づいて市町村長にやっていただくという健康診査としては、ただいまお話し申し上げましたように六十五歳のときに一回、それから七十歳のときにまた一回というような形に相なるわけでございます。もちろんそれ以外にいろいろ個人としては受けられると思いますが、制度としての一斉健康診査はそのような形で行なうという計画でございます。
  16. 田邊誠

    田邊(誠)委員 これはざる法だ、ヤマブキ法案だなんて言っておったけれども、これはとてもその名に値しない内容だということを私はいま発見をして、非常に残念に思っておるわけです。形式に値しないほどの——一年に一ぺんというならまだあれですよ。私は月に一ぺんとは言わないけれども、年に二、三回くらいは必ず受けさせてくれるのじゃないかと思っておったのでありまするけれども、これは私どもの感覚と全くけたはずれの違いがあるわけでございます。それならば一体これでもって老人病気を発見し、それに対する手当てができ、健康診査を受けることによって安心をし、あるいは五年くらいは長生きができるという具体的な措置をされるわけではないでしょう。一体健康診査をして病気が発見された、あるいはまたこのままいったならば病気にかかる危険性が非常にある、そういう場合に、自宅療養にしても入院措置にしても、これは国がめんどうを見てくれるわけじゃないんですね。
  17. 大山正

    大山(正)政府委員 健康診査の結果、いろいろ異常があるというように認められました場合には、市町村長が必要な指導を行なうということが二項に書いてあるわけでございますが、内容といたしましては、もちろん医療費につきましては社会保険なり、あるいは生活保護法による医療扶助なりというような医療費負担方法をとるということに相なるわけでございまして、老人について特別の他の医療費負担方法ということまでは、まだ考えておらないわけでございます。したがいまして、健康診査の結果何か必要があるという場合には、市町村長医師を紹介する、あるいは生活保護適用の必要があるようなものについてはその適用をする、それ以外につきましては社会保険によってやるように指導するというような形によって、老人の健康をできるだけ確保していきたい、かような考え方でございます。
  18. 田邊誠

    田邊(誠)委員 私は、「健康診査を行なわなければならない。」という規定づけを今回いたしましたので、そのためにはずいぶん医師不足の面、特に僻地診療施設不足の現状、そういった点からいいまして、これはたいへんないろいろな派生的問題がありはしないかと、実はそういう面で心配をしておったのでありまするけれども、五年に一回ではそういった心配もないようでございまして、大臣いかがでございましょう。この老人福祉法案なるものが提案をされて、新しく画期的だといわれる老人福祉対策を進めるのだという政府考え方の中で、特に一項を起こしまして、ひとつ健康診査を行なわなければならないぞ、老人の健康についてはひとつ政府なり地方公共団体が必ず精密な診断をして、おまえたちの健康について監視をしてやるぞ、めんどうを見てやるぞ、こういうふうに法律の中に一項を起こしたにしては、ちょっとお粗末過ぎるではないかと思いますけれども、大臣いかがでございましょう。これでは法律が泣きはしませんか。
  19. 西村英一

    西村国務大臣 あなたのおっしゃるとおりです。実はこれは、六十五歳以上の人に定期的に毎年やるということが老人に対する最も親切なやり方です。しかしそれには、御承知のように国の財政とともに、地方公共団体財政も要るのであります。ことしは、いままでになかった費用健康診断のために五千万円の国費を組んでおります。それは三分の一ですから、地方公共団体には一億円の負担がかかるのでございます。しこうしていまおっしゃいましたように、それをやるための僻地における医療関係というような問題もありまするから、こういうことは新たに制度をつくりまして、やはり徐々に進まなければならぬ、そのようなことでそうなっておるのでありまして、私はこれが今回のことで万全だというわけではありません。徐々に進めていきたい、かように考えておるのでございますし、来年はさらにこれをもう少し期間を詰めましてやる、また地方公共団体にもその費用の用意をしてもらう、あるいは僻地に対する医療関係もそれにふさわしいような体制を整えていかなければならぬ。何さま非常に大人数の老人を一斉に新しい制度でやるということについては、一ぺんにできない。しかし新しい制度を開いたということに特段の意義があるということで御了承願って、はなはだ羊頭拘肉ではないかということでございますが、それはそういうものに終わらせないのだということを御了承賜わりたいのでございまして、あなたのおっしゃるのは私はもっともだ、かように考えておる次第でございます。
  20. 田邊誠

    田邊(誠)委員 大臣がそういうふうに率直に非を認められるかっこうですから、これは常識的にいってほとんど通用しないことですから……。そこで私どもは、実は年に二、三回なりやってもらうという考え方でおったわけですけれども、現実には五年に一ぺんということです。そこで百歩下がって、実はきょうも特にお願いをしておきたいと思っておるわけでありますけれども、この種の問題は、もちろん最初から一〇〇%望むことは困難だというふうに私どもも思っておるのです。それならばそれでもって、一体何年かの計画を立て、構想を立てて、その構想なり計画にこれを具体的にのせていく、こういう見通しがなければいかぬと私は思うのです。いま大臣の言われることは、私はその片りんであろうと思いますけれども、どんなものですか、一年に一ぺんというのは。私どもから言わせれば、問題にならないほど不満な点でありますけれども、一年に一ぺん、一体どのくらいの期間——来年には一年に一ぺんやるのですか。そういうようにならぬですか。何年計画でもって一年に一ぺんなり一年に二回なり、そういうふうに近づけるという、こういう具体的な年次計画というものがおありでございましょうか。それなら私はまだまだ、安心をするといいましょうか、将来に希望を持つことになるだろうと思うのでございますけれども、この問題に限ってではございませんけれども、とりあえずそういった御計画がございますならば、ひとつこの際お聞きしておきたいと思います。
  21. 大山正

    大山(正)政府委員 ただいまのところ、まだそのような具体的な計画を持っておりませんが、できるだけすみやかに、お話のような線に持っていきたい、かように考えます。
  22. 田邊誠

    田邊(誠)委員 ぜひひとつそういうふうにお取り運びを願いたいと思うのです。せっかくこういうものができたけれども、内容をよくお伺いをすれば、あいた口がふさがらぬといったかっこうでは、これは困るのでありますから、そういった年次計画をもって期待に沿えるように御配慮いただきたい、こういうふうに私は考えるわけであります。  それでは資料をいただきました中で、老人福祉施設職員配置基準及び建物規模比較表というのがございますけれども、一括してお伺いします。この表には出ておりませんけれども、いままでの基準も大体私は承知をしておりますが、老人ホームの中でもって、一体事務費というのは老人一人当たり——養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホームに今度は新しく事務費を配分されるわけですが、これはどのくらいになるのでしょうか。  第二番目は、この施設にいろいろな職員がおりますけれども、職種別に標準の給与は違うのでありますが、これをおしなべまして、三つの種類のホームの標準の給与というのは、地域的に級別があればまたそれをお伺いいたしますけれども一体どのくらいなのか。  第三番目に、今回特に強調いたしております特別老人ホームの中でもって、私がさきの委員会指摘をいたしました医師の問題でありますけれども、現在の養護老人ホームの医師は嘱託でありまして、まことに貧弱な給与しか支給しないということでありますが、特別養護老人ホームの場合は医師は常勤でありますが、定員百人の場合における医師の一人の給与は、一体標準はどのくらいなのでしょうか。  第四番目は、軽費老人ホームについては、栄養士と医師が、常勤はもちろん嘱託の場合も、七十五人の定員でもって配置されないようになっておりますけれども、一体こういう老人施設をつくる場合に、栄養士なり医師なりというものが、常勤であれ嘱託であれ、これはどうしても必要ではないかと私は思うのでありますし、栄養士の場合も当然だと思うのですが、七十五人の定員だから栄養士は置けないということですか、あるいは何人以上になれば、軽費老人ホームに栄養士が配置になるのでしょうか、その点に対してひとつお伺いしたいと思います。
  23. 大山正

    大山(正)政府委員 事務費の一人当たりの経費でございますが、昭和三十八年度の計画といたしましては、養護老人ホーム一人当たり四千百四十五円、特別養護老人ホームは一人当たり七千七百三十円、軽費老人ホームは四千円であります。  それから職種別の給与でございますが、標準的な給与といたしまして、寮母が中心になろうかと思いますが、寮母の給与の予算単価は一人当たり一万九千百円、これは養護老人ホームの場合です。それから特別養護老人ホームの寮母につきましては二万七百円。それから特別養護老人ホームの医師の給与でございますが、予算単価といたしまして、常勤の場合三万一千四百円。それから軽費老人ホームにつきまして、栄養士、医師がおらないということでございますが、軽費老人ホームは、比較的健康な老人が入っているというようなことで特に医師等は置いておらないわけでございますが、栄養士につきましては、ただいま先生からも御指摘がありましたように、大体七十人から七十五人の収容力でございますので栄養士を特に置いておらないという形でございまして、百人以上のような施設ができた場合には、また別に考えなくてはならぬかと思いますが、現在のところ大体この程度の規模でございますので、事務費の中に算定基礎に入れておらない、こういうことでございます。
  24. 田邊誠

    田邊(誠)委員 これは、各細目にわたって意見を述べてもいいわけですけれども、大体おわかりでしょうからやめますが、これでは非常に不十分だ。医師の給与にしても、これでもってりっぱな医者が来るようになろうとはお考えになっておらぬと思います。これはやはり、インターンを終えた医者が、とりあえず腰かけで来るというようなかっこうになるだろうと私は思います。老人病というものは、非常にいろいろな研究材料になっておりますけれども、実はいろいろ複雑な、むずかしいものが含まれているだろうと私は思うのであります。そういった点からいいまして、実はかなり経験のある医者を配置しなければ本来の役目を果たせないと思います。そういった点から、これは要望で終わっておきますが、この点はぜひひとつ。これは足らぬですから。  それから経費老人ホームは、比較的健康の老人と言いますが、将来を考えますとそうでもありませんよ。ですから、七十五人くらいのところはやはり栄養士が——医者は、私はどこからか臨時に呼んできたり、また医者にかかるということは、軽費老人ホーム入所の場合はあるいはできるかもしれませんが、栄養士については、いまその必要性が叫ばれている時代ですから、老人の栄養食の問題について、栄養士を一人くらい配置することは当然だと思いますので、この点はよく考えておいてください。いますぐということはできないにいたしましても、近い将来において、これはぜひ解決をしてもらわなければならぬ問題だろう、こういうように思うのでございますが、そういった点でお願いしたいと思います。  全般的な給与の低さというものは、これは御承知のとおりであります。私はこの点に対してあえて強調いたしませんけれども、人がだんだん来なくなります。たとえば県庁でもって厚生関係をやっておった職員がやめて社会福祉協議会に入るとか、老人ホームの職員に入るとか、大体コースはきまっておるのです。老人が相手だから年寄りでいいというわけにはいきません。さきの老人クラブの問題も含めて、老人福祉の問題を積極的にやろうという意欲のある者を幾らでも吸収するようなぐあいにならぬことには、これはもういかにかけ声をかけても人の面で突き当たるだろうと思うのです。そういう面で、給与全般の問題、人の配置の問題についてはぜひ具体的にひとつ前進をしてもらわなければならぬ、こういうように思います。これは精密な年次計画とは言いませんけれども、大蔵省との折衝の中でも特に強調してやってもらいたい、私はこういうように考えるのでありますけれども、大臣、一言いかがですか。
  25. 西村英一

    西村国務大臣 仰せのとおりでございますから、十分将来は気をつけて、注意をして予算をとりたいと思います。ただ御案内のとおり、三十七年までの老人に費した経費が三十五億円、三十八年は四十七、八億で、十二億、三〇数%の増でございます。それでこれぐらいしかできないのでございます。いまあなたがおっしゃいました健康診断の問題、施設の問題、施設につとめる職員の処遇の問題等、いろいろあるわけでございますが、老人福祉をしてやろう、こういう政府の意図でございますから、十分今後留意をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  26. 田邊誠

    田邊(誠)委員 予算が幾らかふえたということで満足されない、こういう御意向のようでございます。ケネディ教書とまでいかなくてもよろしゅうごさいますから、ぜひひとつ画期的な対策というものが、この法案と並んで具体的に予算の面で進められることを私は望みたいと思います。  資料をいただいた中で、老朽民間社会福祉施設の整備方針というのがございます。これはいままで私が申し上げたような観点から言いますならば、おそまきであっても今後五カ年間で緊急整備をするという計画性ができたということは、非常にいいと私は思うのです。そこで時間がもったいないようですから、五つばかりまとめて質問をします。  第一番目に、この緊急整備の対象になるところの施設は一体どのくらいでございますか。  第二番目に、建物の保存度四千点以下の整備をすることになるわけでありますけれども、この四千点以下の整備でもって一体全体の何%くらいが——坪数で言っておりますが、施設の数の面ではどのぐらいが整備されるかっこうになるか。  第三番目は、こうやって整備をされるので、私は一歩前進にはなろうと思いますけれども、しかし五年間にはまた四千点以下のものがふえてくると思うのであります。実はこれに追加をしてだんだん生じてくる施設の数というものは、五年後にはどれぐらいにまでふえてまいりましょうか。  四番目は、三番目と引き続いて、そういう状況から見て——これはお答えをいただいてからでなくてはほんとうはいかぬのですけれども、予測をいたしまして、当然老朽度が多くなってくる施設が生ずるわけでありますが、この五ヵ年間を終わったあとにおいても、引き続いて整備計画を実施される御用意がございますか。五つ目はちょっと別の観点ですから、あとで聞きます。
  27. 大山正

    大山(正)政府委員 最初の御質問の施設数は、現在の坪数は資料に差し上げてございますが、大体二百六十施設ぐらいというように考えております。  それから保存度四千点以下が大体どのぐらいの数になるかということでございますけれども、一応の推計でただいま申し上げました二百六十ぐらいの施設ということになっておりまして、現在までにその形での改築を希望してきておりますものが、昭和三十八年度分として二百二十七きておりますが、これがはたして厳密に言いまして四千点に該当するかどうかということをただいま再調査中でございまして、大体今月二十日ごろまでにこれをまとめるという計画をいたしております。  それから五年計画が済んだら、あとでまた四千点以下になるものが相当出るのではないかということはごもっともでございまして、これにつきましては、どの程度出るかという調査はまだただいまのところいたしておりませんが、私どもといたしましては、次の問題にもからむわけでございますが、やはり引き続いて何らかの処置を講じなくてはならぬ、かように考えております。
  28. 田邊誠

    田邊(誠)委員 繰り返して意見を申し上げないでおきます。私は、これは民間の社会福祉の先端を行っておった人たちから見れば、非常に一歩、二歩前進のことだろうと思うのですが、隴を得て蜀を望むという意味合いで申し上げるわけではありませんけれども、これを実施されてもなおかつ当該法人は四分の一の負担になりますね。これはいままでから見れば、もちろんいいわけです。しかも利子補給も考えられておるので、当然いいわけでありますから、そういった意味合いで否定いたしませんけれども、実は戦前、戦後を通じた民間施設のいままでの状態とは違ってきて、一方において国を主体としたところの社会保障が進んでくると同時に、こういった社会福祉施設を民間の一人の篤志家がぽんと金を出してつくらせる、また建物をよくするために一人が多額の寄付金を出すという時代は過ぎてしまったと思うのです。また、そういうことは非常に困難なことになってきたのではないかと思う。ですから、金持ちが社会福祉法人を経営して、何か個人的な感覚なり慈善事業という形でやるという時代は過ぎてきたし、大臣もそういったことではいかぬということを言われたと思うのです。そういった点から見ますと、当該法人が四分の一の負担くらいで、一体どういうふうなぐあいにしてこの負担分を返却しようとしているか。大体の趨勢というか、現状についてはおわかりでございましょうが、一言でいえば、どこからか寄付をもらってきてそれに充てているのだというかっこうになろうかと思いますけれども、私は現状というのはなかなか楽観的でないのじゃないか、いろいろなくふうをしているのじゃないか、苦しんでいるのじゃないかと思うのであります。この現状を把握されて、これで竿頭一歩を進めろというように私は実は言いたいところでありますけれども、今後のこの種の問題を含めての民間施設のあり方についてお考えがあれば、ひとつ承りたいと思いますし、それと関連をして、私自身も含め、実は私の父親なんかを含めまして、戦前における民間の社会事業というものは先覚的な役割りを果たしたと思います。またいまでも地方公共団体が経営をしている施設と比べてみて、いわばあたたかさといいましょうか、そういった面で言うに言われぬ妙味があると思います。思いますけれども、私は趨勢としては、民間施設というものはだんだん地方公共団体の市町村立なり国立なりに吸収され、またそういう方向に漸次移行すべきものではないか、私はこういうふうに考えておる者の一人であります。そういった点からいいまして、この負担分を返却させることは、いままでより前進なんだから当然である、こういう考え方だけではなくて、将来に向かって、既設のものはだんだんにそういう方向に政府めんどうを見て待遇を変えるけれども、政府所管の方向あるいは公共団体の所管の方向に持っていくということも考えてやらなければならないのじゃないか。その考え方からいいますならば、この四分の一の法人負担ということも将来はその負担分をさらに少なくしてやる、こういうことも、将来のあるべき姿からいいまして私は必要になってくるのではないかと思うのでありますけれども、ひとつそれらの問題を含めてお考え方があれば伺いたいと思います。
  29. 大山正

    大山(正)政府委員 最初に、現在四分の一の自己負担分をどのようにしているだろうかという御質問にお答えいたしますが、大体やはり共同募金なりあるいは法人の理事さんたちが拠出され、あるいは寄付金によるというようなものが大部分であろうかと思います。一部に収益的な事業を付帯的にやりまして、その収益によってまかなうというのもございますが、それはごく一部である、かように考えております。それで、この問題にからんで、民間社会事業のあり方というものは一体どうなんだというたいへん根本的な問題でございますが、このような施設を設けて収容するということは、私どもも、お話しのようにやはり公立でやる、また施設にどうしても入れなければいけない人たちが残っている場合には、公がこれを施設しまして入れるという責任がある、かように考えております。ただ一面において、民間の社会福祉事業家の方で篤志家で、ぜひ民間事業としてやりたいということは、これは望ましいことでございまして、国としてもできるだけ援助していかなければいかぬ。その場合にどの程度まで援助するか。民間社会事業の施設なり運営費全部を公で見るということでは、一体民間社会事業の意義というものがどこにあるかというような問題にもなるわけでございます。民間社会事業には、ただいまお話しのように公立、公営では言うに言われないような、公立、公営とは違う一つのいい面があるわけでございまして、さらに盛り立てていかなくてはいけないように考えておるわけでございますが、戦前のような財閥が、何か寄付をしてやるというような社会事業の形態ということは今日では考えられませんので、一体この自己負担分をどの程度に考えたらいいか、またどうしてこれを負担していったらいいかということは非常に大きな問題でございまして、その間に、たとえば公立にして民営にしてはどうかというような議論もございますし、あるいは民営のものについては何か減価償却費のようなものを見たらどうかというような考え方もございますし、また今回のような老朽復旧のやり方として、国が、あるいは公が復旧、改築に際しては大幅に財政的にも見て、法人の負担分を極力少なくしていくというような考え方もいろいろあるわけでございまして、どういう方式が最も民間社会事業のあり方として妥当なやり方かというようなことを、実は私どもも非常に悩んでいるところでございますが、ただいま私どものほうの関係社会福祉審議会に小委員会を設けまして、これらの問題を、根本的にひとつ考え方をきめようじゃないかということで、せっかく御検討願っておるような次第でございます。
  30. 田邊誠

    田邊(誠)委員 各種の問題を含めていろいろと質問が残っておるわけでありますけれども、他の委員の質問もございましょうから、私は残余の問題については省きまして質問を終わりたいと思いますけれども、いままでいろいろと質問してまいりました点から見ましても、いわば名目だけの社会福祉対策というものがこの法律で進んだといたしましても、その内実が伴わなければ何にもならぬわけでございまするから、私はこれを契機にして内容を埋めていく、こういうことが考え方としては当然とられていくべきではないか、こういうことを期待をいたしまするし、私どももそういうふうにお願いをしたいところなんであります。厚生白書の三十七年度版を見ましても、老人の今後のいろいろの対策について、その四四ページに今後の問題点としていろいろと書かれてございます。私どもは、これらの問題点があることは当然だろうと思いまするけれども、これをどうやって解消し、解決をしていくかということについて、質問するごとに申し上げてまいりましたけれども、たとえば老人ホームの収容にいたしましても、四十五年くらいまでの間にはめどをつけるように計画を立てるというお話もございました。あるいはまた、整備計画にいたしましてもしかり、あるいはホーム・ヘルパーにいたしましても、その給与を含めてまだまだ充実しなければならない問題がございます。あるいは健康診査は先ほど申し上げたとおり、こういったかっこうでありまするから、ひとつこれらの政府自身が問題点として出したその中には、所得保障ばかりでなく、住宅の問題や、あるいは特に施設に入ることを好まない人たちに対する住宅の問題、あるいはまた社会に復帰したいという希望、欲求に対する充足の問題、こういった問題を、簡単な意味におけるところの年次計画ではございませんけれども、やはり一つの目標点を定めて、それに一歩一歩近づけようという、こういう計画性というものがこの問題についてないと、どうしてもおくれがちになるだろうと思うのです。大臣も先ほど言われましたように、何といっても大蔵省という予算をはじき出すことの渋い役所が控えておりますので、予算折衝もなかなかたいへんだろうと思うのでありまするけれども、われわれはこういう構想に立っている、これに近づけなければ所期の目的を達成できないのだ、こういうことの中で、ただ単に目の子勘定で予算折衝をするのでなくて、その計画の一環として予算を確保する、こういう方向にならなければ、私は全体的な前進ははかれないと思うのであります。そういった意味における計画性というか構想というものを、この老人福祉の問題に対して、この法案審議成立と並行してぜひとも確立してもらいたいと願っておるものでございます。これなくしては絵にかいたもちになるわけでございまして、こんな法律が通ったからといって喜ぶべきことはない、こういうことになるわけでございますが、そういった実のある計画をお立てになる御意思がおありであるかどうか。いままで一つ一つの問題に対してお伺いをいたしましたけれども、それを含めましてひとつ総合的に年次計画あるいはそれに類似をするところの構想、こういったものを、いま御用意をされておらぬということは先ほど伺いましたが、今後御用意になる御決意なりお気持ちがおありであるかどうか、この際大臣からお考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  31. 西村英一

    西村国務大臣 老人福祉をやるからには、やはりその理想像を描いてやることはもちろんであります。今度の場合も全然考えないことはありませんので、いろいろ考えておるのでありますが、まだ十分な数字を書くところまでに至らないのであります。しこうして、ただいまも問題になりました老人の健康保持の問題の計画性、あるいはこの施設に対する計画性、いろいろなものをこれから立てていかなければならぬと思います。どうしてもそういうものなくして、ただ思いつき思いつきにやるわけにはいきません。今回の法律の提案の趣旨は、主として老人福祉を考える場合のその基本的観念というものに、どちらかというと重きを置いたのでございまして、そういう面からいきまして、予算も十分ではございませんが、一歩踏み出したということでございますから、十分今後はひとつ理想像を描いて、その計画性を持って進みたい、かように考えておる次第でございますので、何とぞ御協力のほどをお願い申し上げる次第であります。
  32. 秋田大助

    秋田委員長 この際、午後一時まで休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      ————◇—————    午後一時五十六分開議
  33. 秋田大助

    秋田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。河野正君。
  34. 河野正

    ○河野(正)委員 今日まで老人福祉の問題につきまして、わが党の田邉委員のほうからきわめて具体的な、しかもうんちくを傾けた質疑が行なわれてまいりました。時間もございませんけれども、私も、角度を変えまして老人福祉に対しまする若干の質疑を行なってまいりたいと思います。  御承知のように、老人問題に対しまする戦後の特殊事情といたしまして、いろいろ問題点はございますが、その一つは、経済的な事情でございまするインフレーションの問題がございます。それからさらには、家族制度の変革の問題がある。戦後家族制度が廃止されて、老人の扶養に対する考え方というものが非常に変わってきた。第三には、新旧思想の対立、さらに問題となります点は住宅問題、特に極度の住宅難、こういうもろもろの理由によりまして、家庭から老人の場というものがだんだん失われてまいったのであります。しかし、そういう責任というものは単に老人にあるのではない。いま申し上げますようにインフレーションの問題にいたしましても、家族制度の変革の問題にいたしましても、思想の対立の問題、住宅難の問題にいたしましても、いずれもそれは老人個人の問題ではなくて、国あるいは社会、そういうものが一切の責任を負わなければならぬたてまえであるというふうに考えます。したがって、もちろんそういうたてまえからこの老人福祉法が提案されたというふうに私ども理解いたしますし、またそういうたてまえから、国や社会というものが老人問題に対して積極的に取り組む責任というものが生まれてまいったというふうに思うわけでございます。そこでいろいろと具体的に法律案の中で規定が行なわれるわけでございますけれども、いま申し上げまするように、まずわれわれは老人対策推進するにあたりましては、基本的な姿勢というものが一切の老人福祉というものを解決する道でございますから、基本的な姿勢が悪ければこれは絵にかいたもちに終わりますし、仏つくって魂入れずというようなことに終わりましょうしいたしますので、政府老人福祉についていろいろと御善処していただくことはけっこうでございますけれども、問題は、要は老人問題に取り組みますところの姿勢というものが、きわめて大きな使命を持つであろうということを痛感いたすわけでございます。そこで、この点は非常に重大でございますから、大臣のほうから、ひとつ老人対策に対しまする姿勢の点について御見解のほどをお聞かせ願いたい。
  35. 西村英一

    西村国務大臣 最も大事なことでございますので、法律にも大体基本的な理念としてうたってあるわけでございます。したがいまして、それによりまして御了解ができるのじゃないかと思われますが、大体こういう法律をもって老人福祉をわざわざやらなければならぬというのは、御承知のとおり老人人口がたくさんふえてきて、その方面の行政としてひとつ何か行なわなければならぬと思うのですが、その前の理念は、法律の第二条あるいは第三条にうたわれてあるように、やはり老人を敬愛し、かつ健康で安定した心配のない生活を送らせる。それから老人は能力がないものでありますから、困っている方には徹底的な援護をしてやるということはもちろんですが、ただ援護をしてやる援護をしてやるではいけないので、老人にも本人の希望あるいは能力に応じて職を与えるのだ、国家が何でもかんでも金を出して老人を喜ばせるということでなしに、老人老人としての能力をあくまでも発揮してもらう、なお立つことができないような人は徹底的な看護と治療をしてやる、こういうことに尽きるのではないかと思うわけでございます。
  36. 河野正

    ○河野(正)委員 この老人福祉対策というものは、もちろん文字どおり老人福祉のための対策でなければならぬことは当然でございますけれども、しかし私は、もう一つの大きな意義があろうかと考えます。それはどういうことかと申しますと、老人対策を立てることが、すなわち老人の扶養に当たりまする家族の援助にも通じてまいる、こういう点が一つの問題であろうかと考えますし、それからもう一つは、やはり年をとれば国ないし地方公共団体が何かと援助してくれる、老後に対するある程度の保障が行なわれるということになりますと、必然そこから労働意欲といいますか、勤労意欲というものがおのずから出てまいる。こういう老人そのものの対策であるけれども、そのことが老人の扶養に当たらなければならぬ家族の援助ということに通じてくるし、さらに勤労意欲、労働意欲、一生懸命働けば将来国ないし地方公共団体、社会というものが守ってくれる。そういうことで、老人対策という問題は単に老人そのものの対策じゃなくて、老人を包みまする扶養家族、あるいはさらには若い世代の人々、こういう面にもきわめて大きな影響をもたらすであろう。そういう意味で、この老人対策というものは単に老人そのものが対象でございますけれども、基本的な考え方としては、やはりいま申し上げまするような点について、十分思いをいたさなければならぬというようなことを私どもは痛感いたすわけでございます。そういう面につきまする配慮が行なわれて老人対策というものが考えられなければならぬ、こういうふうに私は考えるわけでございますが、その点、大臣から、簡単でよろしゅうございますから、ひとつ御所見をお聞かせいただきたい。
  37. 西村英一

    西村国務大臣 仰せのとおりでございまして、老人福祉を増進するということは、ひいては、老人ではない現役の方々の励みに非常になるということでございまして、その御意見は私も賛成でございます。老人福祉を進めれば、必ずその現役の方々の非常ないい影響にもなる、こういうことはもう当然反映をしていく、これは社会生活でございますから、当然その他のほうにいい影響がある、かように思う次第でございます。
  38. 河野正

    ○河野(正)委員 私はいま大臣の御見解も伺ったわけでございますけれども、その対策を進めるにあたりましては、そういう三面における一面ではなくて、三面における影響力を持つというたてまえで、この問題の具体的な対策推進というものをはかっていただかなければならぬと思う。こういうふうに思いますので、その点については、特に今後の行政上の配慮の中で、十分留意をしていただきますように要望をいたしておきたいと思います。  それから、これはいずれの場合でも言えることでございますけれども、りっぱな法律をつくりましても、その裏づけが十分でなければ、先ほど私が御指摘申し上げましたように、仏つくって魂入れずという結果に終わってしまう。これはしばしば言われることでございますけれども、日本の役人の方は法律づくりというものがなかなかじょうずである。ところが、その実施の裏づけというものがきわめて不十分である。これは老人福祉法に限らず、いずれ老人福祉法に対しまするところの附帯決議につきましても、いろいろと検討を進められておるわけでございますけれども、やはり内容的になお幾多の問題を残している。たとえば一例でございますけれども、児童福祉法の例をとりましても、法律の中身はりっぱでございますけれども、なお不幸な子供たちがたくさんおって、特に重症の精薄——こういう重症の精薄というものは二十万といわれておりますけれども、施設に収容されておりますのはその三%、約八千人程度である。それからさらには、保育所のない市町村が千をこえている。具体的にいろいろと午前中にも検討されたことでございまするけれども、養老施設におきましてもそのとおりでございます。そこでわれわれといたしましては、なるほど今回の老人福祉法というものが一歩前進の施策であるということにつきましては、肯定するのにやぶさかではございませんけれども、しかし要はその内容の問題、裏づけの問題というものが、私はきわめて重要な点であろうというふうに考えます。時間がございませんけれども、一、二御指摘を申し上げておきたいと思いますが、たとえば生活保護法に基づきまする養老施設の昭和三十七年四月現在におきます状況というものは、大体施設の総数が六百四十一、それからその定員が四万二千五百五十六、現在員が四万一千四百五十八、その中身を、これは若干問題点がありますから御指摘を申し上げますと、都道府県施設数が四十七、定員が五千八百四十一、現在員が六千百四十、市町村関係が、施設数で四百二十一、定員が二万二千二百五十四、現在員が二万八百六十九、それから一般の社会福祉法人関係施設が百七十三、定員が一万四千四百六十一、現在員が一万四千四百四十九、この三十七年四月現在におきます養老施設の実情を見てまいりまして、私どもが若干奇異に感じますことは、当然養老施設に入れなければならぬ、ところが、なお未収でございます老人というものが三万人くらい残っておる、こういうことがいわれておる。ところが私がいま御指摘を申し上げました資料によりますと、施設の中で定員が四万二千五百五十六であるにかかわらず、現在員というのは四万一千四百五十八というふうに、千九十八名実は定員を割っておるわけです。施設があっても、二万人なお入れなければならぬという人がおられるのに、現状を見てみると、いま私が御指摘申し上げましたように定員一ぱいに入っていない。定員一ぱい入ってないならば、もう未収容の人が残っておらぬということだろうと思うのですけれども、未収容の人は三万人残っておるというふうに厚生白書にも指摘をされておる。こういう点に私はかなり疑惑を持たざるを得ないと思うのでございますが、こういう状況というものがどうして生まれてまいったのか、ひとつお聞かせいただきたい。
  39. 大山正

    大山(正)政府委員 養老施設の定員に対しまして、現在員が若干定員を下回っておるわけでございますが、その原因として考えられますのは、建ててまだ間がなくて、十分入っておらないということもありましょうし、それからこういうような施設でございますので出入りがどうしてもございますので、その間の若干の欠員というものはどうしても数字にあらわれてくるということもございまして、千名くらいの欠員というものは常時あるのがむしろ普通ではあるまいかというふうに考えられるのでございますが、ただ先生御指摘のように、たとえば地域的配分が適当でないということのために、ほんとうは入りたい人がおるにかかわらずあいておる施設があって、あきっぱなしのままであるというようなことも考えられますので、これらの点については十分ひとつ注意してまいりたい、かように考えますし、また未収容の人数というものはたいへんとらえにくいところでございますが、過去における調査その他の資料によりますと、やはり三万ないし四万ぐらいの未収容者がまだある。この種の施設として三万人ないし四万人分ぐらいは今後なお増設する必要がある、かように私ども考えておる次第でございます。
  40. 河野正

    ○河野(正)委員 いま局長からお答えを願ったわけですけれども、そういう説明では納得のいかぬ資料になっておるわけです。どういうことかと申しますと、なるほどいま局長がおっしゃいましたように、新設早々でまだ十分収容するゆとりがなかったとか、あるいは異動があったために千名程度の欠員はやむを得ぬ数字であろう、こういうお答えでしたけれども、実は私はこの数字を見ていろいろ検討を加えたのですが、納得できないわけなんです。なぜなら、たとえば都道府県施設の場合には五千八百四十一の定員に対しまして六千百四十、これは二百九十九定員をオーバーいたしておる。ところが市町村の施設になると、逆に定員が二万二千二百五十四に対して二万八百六十九というふうに、このほうは千三百八十五欠員を出しておる。それからもう一つ、私が一番奇異に感じ、局長の御答弁に納得できぬ点は、地域的な問題でそういう欠員が出てくるだろうということ、そうだといたしますと、都道府県の場合には地域的に、たとえば非常に遠いとかあるいは居住地から離れておるとか、そういう理由なり隘路があって若干欠員が出てくる、これは若干わかる。ところが市町村というものは同じ市町村ですから、老人を収容する場合はわりあい立地条件的に恵まれている。そういう配置の点から見て恵まれておるところの市町村において、千三百八十五名の欠員ということですから、いま局長が答弁されましたようなことではどうもすっきりしない点がある。これは都道府県段階でも、若干新設早々の問題があって時間の余裕がないので欠員がある、市町村段階でも、多少数的に相違はございますけれどもこれにも欠員がある、こういうことならわかるわけですけれども、都道府県施設ではオーバーしておる、市町村の場合には非常にたくさん欠員がある。ところが地理的な条件を考えますと、市町村段階の立地条件としては恵まれておるだろう、こういうふうに考えられるわけです。厚生白書の数字というものは、私どもが納得するような数字にはなっていない。そこでもう少し納得のいくようなお答えを願わないと、縦から見ても横から見ても、この数字については納得できない。ひとつそれに対する御解明を願いたい。
  41. 大山正

    大山(正)政府委員 ただいまお述べになりました数字につきましての原因と申しますか、分析になりますので、具体的にもう少し当たってみませんと実は的確なお答えはできないと思いますが、一応考えられますことは、県の施設としましては県内全般を対象としまして入れる。しかも県の施設が非常に少ないために、むしろ定員をオーバーしてでもぜひ入れたいという人がたくさんおる。ところが市町村立ということになると、どうしても自分の市町村の管内の老人が主たる対象になりますために、自分の管内だけの人口から見ると、老人がその施設の定員に比べまして必ずしも十分なくてもいいというような場合があるために、このような欠員があるのではないかと一応考えられますけれども、なおこの点はいま少し分析して検討してみたいと考えます。
  42. 河野正

    ○河野(正)委員 大臣、いまのお答えをお聞き願ってもわかりますように、まだ収容しなければならぬ老人がたくさんおる。ところが実際施設状況を見ますと、欠員がたくさん生まれておる。これは明らかに矛盾しておる状況だと思うのです。私ども後ほど附帯決議の中でも、施設を拡充しなさい、もっと施設をふやしなさいというような附帯決議をつくる予定になっておるわけですけれども、ところが、つくりましてもいまのように欠員が出てくるようなことでは意味がないので、さればといって収容する老人がおらぬのかというと、さっきおっしゃるように三万以上もおるということでございますから、私はこれはやはり行政上の運用の円滑さを欠いておる結果が、そういう結果になってあらわれておるというふうに考えるわけでございまして、したがって私は、これはやはり行政上のミスであろう、何か行政上手落ちがあるだろうというふうに理解せざるを得ないわけですね。ですから、私どもそういうことを追及するのが目的ではございません。せっかく施設が足らない、施設をつくるというのですから、その施設が少なくともみんな喜んで入ってもらうということでないと、せっかく施設をつくっても意味がない、こういうことでございますから、ひとつそういう点については今後とも格段の御留意を願って、そういう矛盾が生まれてこぬように努力してもらいたい。ひとつ大臣のほうで、ぜひそういうような御努力を行政上の面にあらわしていただくように、時間がございませんから要望しておきます。  それから、きょうの資料をいただいてちょっと感じましたことは、施設が足りないという問問点が一つございますが、ところが現在ある施設が非常に老朽化をいたしておる。施設が少ない上に、現在ある施設も非常に老朽化をしておる。それからもう一つ問題点がございますのは、非耐火性の施設が、耐火性施設と比べますと非常に多い。そこで、今後解決策としては、施設をだんだんふやしていただくということが一つでございましょう。それはもちろんさっき申し上げましたような疑問点がございますから、運営の面としても当然検討されなければならぬと思いますけれども、と同時に、いま私が御指摘申し上げましたように老朽度の高い施設がかなり多い。それから非耐火性のものがかなり多くの比重を占めておる。そこでそういう三つの問題を解決していただかなければならぬわけでございますけれども、その中で若干問題がございますのは、この緊急整備の対象として建物の保安度——一万点を満点としていろいろ検討が進められておるようでございます。ところがこの保安度一万点を満点として、四千点以下の建物というものが緊急整備の対象になる。このことが適切であるかどうかという点、この一万点の中で四千点ですから半分以下ということですね。ところが御承知のように、老人を収容するのでございますから、これは一般の若い人を収容するよりも、からだが不自由であるとか、その他いろいろ問題点がございますから、したがってこの老人の収容施設というものは、一般の収容施設よりもさらに細心の注意を払わなければならぬし、細心の注意を払った施設でなければならぬ。それがさっき申し上げますように非常に老朽度の高いもの、あるいは非耐火性のものが多い。そこで私ども、そういうものを一切早急に改善してもらわなければならぬ。ところが、その緊急整備の対象というものが一万点の中で四千点以下ということになりますと、どうも私ども、はたしてそういうことで適当なものであるかどうか、特に老人の場合は、肉体的にも精神的にもかなり問題点のある人が多いわけですから、私はやはりこの緊急整備の対象になります保安度の問題については、若干再検討を加えていただかなければならぬのではなかろうかというように考えるわけでございまするが、そういうようなことについてどういうふうにお考えになっておりますか。これはひとつ大臣のほうからお聞きしたい。
  43. 西村英一

    西村国務大臣 もちろん四千点というのはもう少し上げまして——まだ悪い建物がだいぶあるのであります。ただ、なかなか財政上の理由で一ぺんにやれないので、少し点数を下げまして考えたので、規模から言わせればもう少し点数を上げてやりたかったわけです。しかしこの制度をつくりまして、老朽建物はずいぶんいままで厚生省で問題になっておりましたが、なかなかいい方法がない。いい方法というのは、個人負担ができぬ、自己負担ができぬということであります。自己負担ができないのですから国家がやればいいのです。国家が買い取ってしまえば問題はない。また地方公共団体が買い取ってしまえば問題はないのでありますが、そういたしますと運営の面でいろいろ問題が起こるので、実は老朽建物の建て直し、整備について非常にいろいろな問題があったわけですが、いろいろな交渉の結果金をしぼりまして、とりあえず、もう非常に危険で収容の方に危険が及ぶというようなところもあるのだから、ひどいところからやろうじゃないかということでやったのでございます。三十億程度の金でやったのでございます。いまあなたがおっしゃいますように、相当ひどい建物もあるということは十分了知をいたしております。したがいまして、この計画は、完成すればさらに引き続いて考えなければならぬし、またいままでの民間の福祉施設が、やはりだんだん形が変わっていこうと思います。これは従来の民間でやるということから、国家の責任、地方公共団体の責任というもののほうがこれから重くなってくるのではなかろうか、かように考えておりますし、もしそうであるとするならば、国家がさらにたくさんの金をつぎ込まなければならぬという結果にもなるわけであります。今回の老朽の建物改築については、万全ではございませんが、とりあえず緊急なものを先にやるということから出たのでありまして、さように御了承を願いたいと思います。
  44. 河野正

    ○河野(正)委員 これは先ほど私が冒頭に指摘いたしましたように、せっかくりっぱな法律をつくっていただいても、その内容というものが整備、充足されなければ仏つくって魂入れず、絵にかいたもちに終わるわけですから、ひとつ特に老人という特殊な事情でもございますので、いまの緊急整備の点につきましては今後とも格段の御努力をお願いしたい。時間がございませんから、そういう要望を申し上げておきたいと思います。  それから、時間がございませんからだんだんはしょって進めてまいりたいと思いますが、平均寿命というものがだんだん延びてまいりましたことは、これはもう周知の事実でございます。大体日本におきましても、明治二十年、三十年時代におきましては男子が四十二・八、女子が四十四・三であったのが、今日、昭和三十六年におきましては男子が六十六、女子が七十、こういうふうに非常に平均寿命が延びてまいりました。この平均寿命が延びてまいりましたと同時に、私どもがここで当然考えてみなければならぬのは、成人病との関係でございます。言葉をかえて申し上げますと、われわれは、毎日毎日の生活というものがわれわれの生命力をすり減らしていく、こういうふうに申し上げても過言ではなかろうと思います。そこで、年をとりますと年をとるだけ生命力をすり減らしていくわけでございますから、そのことは、ことばをかえて申し上げますと疾病と関連をしてくる。   〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕 したがって、われわれが老人福祉の問題を検討するについて考えなければならぬ点は、平均寿命が延びれば延びるだけ、成人病に対してどういうふうに取り組んでいくかということが、きわめて重要な課題となってくるだろうというふうに私は考えます。この老人福祉法の中でも老人の健康保持という点があるわけでございまするが、成人病とこの老人の健康保持との関連、このことは、いま私が御指摘申し上げますようにきわめて重大な点でございます。そこでこういう点について、ひとつ老人福祉法を検討されるに際してどういうふうにお考えになってまいられましたか、その辺の御見解をこの際承っておきたいと思います。
  45. 西村英一

    西村国務大臣 もちろん老人福祉でございまして、これに老人がただ単に長生きをするということじゃなしに健康で長生きをする、また健康なら長生きをしますけれども、健康を保つということが大事であります。老人特有の病気はガン、高血圧、心臓病、これを成人病というのでしょうし、河野さんも専門家でございますから十分おわかりでございましょうが、非常に日本も進んだと思います。ことにガンありの研究が非常に進んでおるし、もしかりに今後何年かの間にガン等のことがもっと詳しくなりますれば、寿命はさらにずっと延びることと思います。私たちのほうの老人福祉をやる場合に、健康な生活をさせる、不健康でただ長生きをしても、命だけ延びたって値打ちがないと思います、生きているうちは健康で働いてもらうということが主眼になりまするから、十分その辺は検討しなければならぬと思います。健康診断を全部やるというのも、そういう趣旨でございます。しかしガン、高血圧、心臓病に対する厚生省対策いかんということになれば、私どもの政府委員が参っておりますから、政府委員から答弁させたほうがいいと思います。
  46. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 この老人福祉法のほうでは、六十五歳以上で、すでにこういうような成人病がある程度発生しておる者で適切な医療保護を受けないでおるという者を、できるだけ健康診査で発見して適切な医療保護を与える、こういうところに中心を置いてございます。しかしこれらの成人病、いわゆる老人病でもございますが、これはやはり伝染病のように急に、老人になって新たに感染をして起こったものはない。全部若いときからの長年の間の、ことに青壮年から以後の生活様式等の影響がたまってこうなるということでございますので、成人病対策としては、これらの発生予防等のほうに重点を置きませんと根本対策は成り立たぬということでこういうふうに分けまして、一般の厚生行政の中における成人病の予防対策あるいはこれの研究、それから発生して以後の老人階級の医療保護を中心とした援護、こういうふうなことでいくというふうに大体進んでおるわけであります。
  47. 河野正

    ○河野(正)委員 この老人福祉法に基づいて六十五歳以上の老人に対しまする健康管理が行なわれるというようなこと、あるいはまた、いま尾村局長からお答がございましたような方策等ございますけれども、私どもそういう点だけでは、この問題が解決するというふうには理解をしないわけです。と申しますのは、この成人病は長い年月を経て発生してくるわけです。それには日本の風土あるいは生活慣習、それから最近公害問題等が非常に多いわけでございますが、そういう産業立地の諸条件、こういういろいろな因子が重なって、成人病というものがだんだんと発生してくるという過程を持つわけでございます。したがいまして、こういう成人病は、個々人の注意あるいはまた摂生をやるということだけでは防止することができないという、いろいろな因子があるわけです。それらにつきましては、当然国が対策を講じなければならぬという面もございます。ところが、いま私が申しまするように日本の風土、生活慣習あるいは産業立地という諸条件が重なって出てくるわけでありますから、単に国だけが考えても十分でない。そこで地方公共団体にも考えてもらわなければならぬ。それから産業立地、たとえば空気の汚染とか、洗剤の問題とか、河川の汚洗とか、いろいろございますが、そういう面から考えますると、やはり一般企業の協力ということも当然考えなければならぬ。そこで国も公共団体もそれから一般の企業も、こういうものが三位一体となってこの問題を解決しなければ、成人病対策の完ぺきを期するということは言えないだろうと私は考えるわけです。たとえば部分的には老人福祉法がある、あるいは厚生省でガンならガンに対する対策をやる、そういうことだけでは、やはり成人病対策のすべてというふうには言えないだろう。いま申しまするように、国なり地方公共団体、さらには企業、こういうものが一体にならなければならぬ。それならそういう三つが一体となるような対策が今日行なわれておるかというと、私は必ずしもそうではなかろうと、残念ではございますけれども指摘せざるを得ない。やはり成人病の根本的な対策というものは、単に老人福祉法とか、あるいはその他の一片の法律だけでは十分でないわけでございまするから、いま私が申し上げまするように、連帯的な関連においてこの問題を解決するという方向で取り組んでいただかなければ、私は成人病対策の完ぺきを期することは不可能だと指摘せざるを得ないのでございます。この点は大臣にも十分お聞き取り願って、将来はそういう方向で具体的に推進していただかなければなりませんので、ひとつ大臣からも御所見を承っておきたいと思います。
  48. 西村英一

    西村国務大臣 御質問の要点ははっきりつかめませんが、やはり老人福祉の生活環境あるいは生活様式、社会全般にそういうものが整わないと完全な成人病対策にならないのじゃないか、それはもうお説のとおりでございます。したがいまして、生活様式、生活環境あるいはそのためには産業のあり方、いろいろなものがみな関連して成人病というようなことになるのでございますから、最もそれは大切でございます。しかしそういうことはわかりましても、みないい環境であればいいということだけはわかりますが、その組み合わせにおいてどうすればいいのかというようなことは、なかなか一言で尽くすわけにはいかないと思います。したがいまして、私のほうの厚生省といたしましては、つまり病気にならない社会環境をつくる、病気にならないように生活様式を改善するということは、これと並行して当然考えなければならぬ、かように思っております。
  49. 河野正

    ○河野(正)委員 いま大臣からもいろいろ御所見を承りましたが、具体的に解決策についてお尋ねをして前進をはかりたいと思います。この点は特に私は指摘をしておきたいと思うのですが、それは成人病の一つの特色としてあげられる点の中に、成人病で死亡いたします患者の八五%が医療施設の外で死亡をいたしておる。成人病でなくなる人が不幸にしておられるわけですが、そのうちの八五%というものが、たとえばがんセンターだとか、あるいはいろいろな専門病院だとか、そういうところでなくなられるのではなくて、そういう施設外で不幸にして息を引き取られる、このことは、成人病対策成人病対策といろいろ言われますけれども、実際に成人病対策の恩恵に浴さない人がいかに多いかということを示しておるというふうに私は考えるわけであります。そこで、国が成人病対策としっかり四つに取り組むということになりますと、成人病でなくなる人は、全部そういう国の施設の中でなくなるということが一番望ましいと私は思う。自分の家でなくなる人がおられることも否定できませんけれども、しかしできるだけやはり成人病は施設に収容して、施設で具体的な治療をやる、こういう形が私は一番望ましいと思うのです。ところがいま申し上げますように、成人病でなくなられる人の八五%はいろいろな施設外でなくなられている、これは厚生白書も言っておるわけでありますけれども、成人病の一つの特色であろうかと考えます。その解決策として今日東京でもがんセンターが設立されておるわけでございますけれども、私はやはり八五%の施設外でなくなられる方々を、できるだけ国の施策の中であたたかい処置をするということになりますと、がんセンターあるいはその他一般総合専門施設というようなものをどんどん拡充してもらわなければならぬであろうと思う。たとえばこのがんセンターをブロックごとに設立する、あるいはもう少し突っ込んで言いますと、都道府県ごとにがんセンターというものを、一例ではございますけれども設立をしていく、そういうことになりますと、いまの八五%という数字がだんだん減少していく、そのときに初めて成人病対策一つの軌道に乗ったというふうに理解すべきではないか、こういうふうに私は考えるわけでございまして、今後具体的にどういう施策を考えておられますか、この際ひとつ承っておきたいと思います。
  50. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 成人病死亡者の相当多くの方々が医療施設外でなくなられておるという御指摘は、まことにそのとおりでございまして、われわれといたしましてもこの面、努力をしなければならぬ点だと思っております。  御承知のとおりに脳溢血の死亡などは、高血圧等でずっといままでおられた方が突然なくなられる場合、自宅で不慮の事故が起きるというようなことがかなり多い場合もございますし、また入院しておられました高血圧の患者の方が、いろいろ手を尽くしてみたが、最後は自分の家で死にたいというふうにして、病院から帰られる方もあったりしておるようなこともありますが、なくなられるときは、できるだけ医療機関でなくなることができますように設備を拡充することが必要だと存じます。現実に申しまして、三十一年と三十六年だったと思いますが、五カ年間の間隔をおきましての一日の入院患者数を比較してみますと、若い患者層の伸びが一割、二割の伸びに対しまして、五十歳、六十歳の方々が二倍、三倍にふえておるというような点で、老人の方々の——成人病とも必ずしも限りませんが、入院がだいぶ多くなってきておるというような点も認められてはおりますが、さらに一そうこういうような点について重点的に努力していきいたと思っております。  いま御指摘のガンの関係につきましては、御承知のとおりに東京のがんセンターを整備拡充していくということと、またガン研の病棟も近日完成いたしまして来月再開することになると思いますが、さらに各ブロックごとにがんセンターをつくっていくように、昨年から本年にかけまして関西と東海地区にいま建設を始めております。行く行くは各ブロックに第二次センターと申しますか、そういうものをつくっていく、また各府県にも、御指摘のとおりに漸次そういうふうな専門施設をつくっていくように努力していきたいというふうに思っておるわけでございます。
  51. 河野正

    ○河野(正)委員 いまのがんセンターに関連して、一言だけこの際御指摘を申し上げておきたいと思いますが、そういう成人病患者を収容いたしますには、午前中の田邉委員の質疑の中にございましたように、老人が非常に多いわけですから、したがって、精神的にも肉体的にも一般の人から比べますと非常に劣っておる、そこで特に成人病に対します対策というものは格段の配慮が必要になってくる。ところが、最近私が承知いたしました例によりましても、がんセンターあたりの治療というものがどうも非常に非能率的だ。わかりやすく一例を申し上げますと、入院をしてコバルトの照射を受ける、ところが病室を出て実際コバルトの照射を受けるまでに二時間も三時間も待たせる、そういうことでは、何のためにがんセンターに入院したかわからぬ。せっかく今度老人福祉法を制定して、老人に対してあたたかい手を伸ばしていこうというのが厚生大臣の親心でございますけれども、実際現場に出てみると一つも厚生大臣の方針というものが貫かれておらぬ、こういう点を私ども耳にして、実は非常に残念に考えるわけです。もともと成人病の場合は慢性疾患でございますから体力的にも非常に衰えておる、抵抗力がないわけでございますから、この診療の能率というものは、成人病に対しましてはきわめて大きな意義があると私は思うのです。ところが、一例でございますけれども、いま私が指摘いたしますように、どうもそういう能率の面においてお役所仕事というものは欠けている面が多い、こういうことでは困るのであって、老人福祉法で今後お年寄りに対しましてわれわれが敬意をささげていこう、あたたかい手を伸ばしていこうということになりますならば、やはり現場においてもそいう方針というものをきちっと貫いてもらわなければならぬ。この点は苦言になりましたけれども、そういう実例がございます。私は率直に言って注意をした実例がございますので、そういう点については今後厚生省でも、いまひとつ厚生省の方針が現場のすみずみ、末端に至るまで行き届くように配慮していただきたい、こういうふうに考えます。
  52. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 がんセンターの運営につきまして御指摘を受けましたこと、まことに恐縮でございますが、御指摘のとおりにガンの患者は老人の方方が多くて、われわれといたしましてもできるだけ親切に、医療技術として高度のものを研究すると同時に、患者の立場になって親切にやらなければいかぬ、こういうふうに考えておるものでございまして、その観点から、医師、看護婦の数もほかの病院よりもずっと多く見ておるということ、またその訓練等につきましても、一挙に患者を入れたりなどしますと混乱が起こってはいけないと思いまして、徐々に患者を入れていくというふうに配慮しております。また、院長も毎朝八時ごろから出勤いたしまして陣頭指揮をしている。私どももときどき出かけていきまして——これは少々行き過ぎかと思いますが、これくらいつとめておるわけでございますが、いまの御指摘のような事態が起こっておりますこと、まことに申しわけなく思っております。これは一つには、開店して一年以上になっておりますが、まだ整備、建築をやっていたり、人員も増員をしているというような中で、部分々々のアンバランスとか、お互いの協調の訓練の足らないという点があったりすると思います。外来に対しても、たとえばものによっては待ち時間を少なくするように予約制をやってみるとか、いろいろ改善に努力しておりますので、いまから一そう注意をし、指導するつもりでございますが、またお気づきの点があれば、ひとつお教えをいただければありがたいと思います。
  53. 河野正

    ○河野(正)委員 そういうことを追及することは目的ではございませんけれども、しかしせっかく老人に対するあたたかい手を伸ばしていこうというのが老人福祉法の精神でございますから、この際そういう点についても格段の御留意を願いたい。特にいまのような問題は、運営の中で適切に処置しようと思えばできるわけですね。たとえば時間割りをして大体きめられた時間に病室を出すということでございますと、これはもう全然時間を浪費することなく治療を受けられる。これは運営の中でも適切にやろうと思えばできるわけで、簡単なことですから、そういう精神をひとつ貫いていただきたい。  それからこのことと特に関連して、いまの具体的な事項ではございませんけれども、成人病対策と特に関連して、もう一点注意しなければならぬ点は、リハビリテーションの問題であります。この成人病の場合は慢性の形をとるわけですから、したがってそういう方々に対して身体的な機能というものを最大限に回復さす、そして社会復帰をさせる必要がある、そのことが老人に対してもきわめて重要な点と思うのです。ところがそれは、いままでの日本対策なり方針というものが非常におくれておった。そこでまず成人病の治療というような点について重点が向けられたかもわかりませんけれども、欧米諸国の実例等から見ましても、やはりリハビリテーションにこの際力を注ぐべき段階が来ているのではなかろうかというように思うわけですけれども、この点は日本は非常におくれておる。ですから、今後成人病対策を進めるにあたっては、リハビリテーションについて今後は大きな力を注いでいただく、そのことが私は今度の老人福祉法の精神にも合致する方策だというように考えるわけでございますけれども、この点は非常におくれておるし、ほとんど見るべきものがないというのが実情でございます。でございますから、この点は今後リハビリテーション、アフター・ケアについては大いに力を注いでやっていく、こういう方針を大臣からお聞かせいただきたい。
  54. 西村英一

    西村国務大臣 アフター・ケアの問題は、あらゆる項目で重要になってきておりますから、十分今後も検討をいたして充実していきたい、かように考えております。
  55. 河野正

    ○河野(正)委員 どんどんはしょっていきますが、この成人病対策の大事な点としてもう一点だけ御指摘を申し上げておきたいと思います。それはこの老人福祉法の中でも明らかにされておりますように、この法の精神というものが老人の健康の保持、さらには生活の安定ということが具体的に示されているわけです。ところがいま申し上げますように、年をとりますとどんどん生命力というものがすり減らされていく。したがって、病人になる場合が非常に多くなる。そういう病気になる機会というものが非常に多くなるということは、医療費がかさんでいく。医療費というものにかなり多くの負担をかけなければならぬ。ところがお年寄りでございますから、健康保険にいたしましても、国民健康保険にいたしましても、給付というものが十割でない。自己負担というものが必ずついてくるという場合が非常に多いわけです。そうしますと、なるほど法の精神では健康の保持と生活の安定ということが明示されているけれども、実際には年をとると病気になる機会が非常に多い。しかも医療給付というものは、いま申し上げますように自己負担というものが非常に多い条件に置かれておる。そうしますと、この法の精神から非常にかけ離れる条件下に置かれているというのが、今日の実情であろうというように考えるわけです。そこで西ドイツをはじめといたしまして西欧諸国では、老齢年金の受給者に対しましては、年金のほかに医療給付を行なっておる。西ドイツ、フランス、オーストリア、イタリア、イギリス、こういうのがそうだそうでございますが、老齢年金を受け取る人は、年金のほかに医療給付も受けることができる。そうして病気になっても一切国がめんどうを見てくれる。こういうたてまえが実は望ましいと思うのです。と同時に、これは時間がないから一応触れてだけおきますが、そういうたてまえからいきますと、私どもかねがね言っておりますように、健康保険の場合にも、本人はそうでございますけれども、家族の十割給付というものが当然考えられなければならぬ。そういうような医療の面についても、一切お年寄りに対しては負担をかけないという方策が当然とられなければならぬ。そうして初めて私は老人対策というものが完ぺきを期し得られる、こういうふうに考えるわけでございますが、これは将来の問題と思いますけれども、しかしやはりこの理想は着々と達成されるように努力してもらわなければならぬことだと思いますので、この際ひとつ医療給付という面について、将来厚生大臣が格段の御努力をなさっていただく御所信を承っておきたいと思います。
  56. 西村英一

    西村国務大臣 老人福祉医療給付との関係いかんという問題でございます。この法案につきましては、医療給付のことは他の法律に譲っておりますけれども、むろん密接な関係がある問題でございます。特に老人の所得等につきましては非常に密接な関係がありますが、今回この法案が通過いたしますれば、さらに十分な検討をいたしてまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  57. 河野正

    ○河野(正)委員 実はきょうは五、六時間分ということで用意しておりましたけれども、自民党の理事との打ち合わせの結果、はしょって質疑を終わるというふうな話し合いも私自身いたしておりますので、そういう話し合いに御協力する意味で、あと老人と雇用の問題とか定年制の問題、失業の問題、収入の問題いろいろございますけれども、こういう点につきましては、いずれまた別の機会にいろいろとお尋ねをし、御所見をお聞かせいただきたいというようなことで、一応話し合いの取りきめに従いまして、たくさん質問が残って残念でございますけれども、私の質疑はこれで終わりたいと思います。
  58. 藤本捨助

    ○藤本委員長代理 長谷川保君。
  59. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 両党の話し合いがあるそうでありますから、重要な点だけをピックアップいたしまして御質問を申し上げます。  すでに前の質問者からもお話があったことでありますけれども、今回の法案を見ますと、法案としては実にりっぱにできておる、これは長年私どもが要望しました大体の要点というものを、よく整えてあると思います。ただ、さきにも質問者からお話がありましたように、問題はこれをどう実施するかという点で、いわば児童憲章のようにりっぱにはできたけれども、実際には児童の福祉は守られておらぬというような実態が出てくるのではないかということを非常におそれるものです。せっかくこれだけの法案をつくったのでありますから、実のあるようにやってもらいたいと思うわけです。いただきました資料にも出ておりますし、たびたび方々で触れられていることでありますけれども、今日日本の六十歳以上の老人の自殺というものは、婦人におきましては世界第一位、これは十万単位自殺率は四七・七、これを二位のデンマークに比べましても二倍であります。スエーデンに比べて約四倍であります。男子におきましても、昭和三十二年のWHOの年報によりますと、七一・六という実に驚くべき数でありまして、これは世界第二位になっておりますけれども、その上にハンガリーがあるのでありまして、ハンガリーはああいうような特別の国でありますから、日本は世界第一位といってよろしい。こういうような中でありますから、厚生省も、特に老人福祉につきましては十分な配慮をしようとしたであろうと思いますけれども、幾ら法案をつくりましても、実体が整わなければこの不幸なことがなくならない。昭和三十五年に四千四百三十人という自殺者が六十歳以上の老人にあったというようなこと、これは私ども政治を相当する者にとりまして、まことに何とも申しわけのないことなのでありまして、今回の法案がほんとうに実のあるものにしてもらいたい、こういうように思うのであります。  まず第一に、先ほども同僚委員が触れられました健康診査の問題でも、予算とこの法案とを比べてみまして、一体何をするのであろうかといぶかるのであります。先ほどのお話でございますと、六十五歳以上の年寄りは五年に一ぺん診査を受けるということを伺って、とてもたまげたのでありますけれども、いずれにいたしましても、一体この健康診査というのは何をやろうとするのであるか、この実体を明らかにしてもらいたいのであります。
  60. 大山正

    大山(正)政府委員 健康診査につきましては、本年度はとりあえず六十五歳の方、それから七十歳、七十五歳という五歳刻みに一応計画をしたわけでございまして、それらの方々につきまして一般的な健康診査をまず行ない、さらに精密検査を必要とするものにつきましては精密検査を行なう。その後の医療の問題につきましては、本人が医療機関あるいは保健所等の指導なり、あるいは医療機関の治療を受けるというような指導をするということでございまして、とりあえずの形として一斉健康診査を本年度から始めたい、こういうような考え方でございます。
  61. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 私は、たとえば小学校におきます健康検査と同じようなものをやられてはかなわぬと思うのであります。健康診査をやるという以上、年寄りに対してやるのでありますから、これはたとえば年寄の死因から見まして、中枢神経系統の血管の損傷、悪性腫瘍、心臓病あるいは肺炎、気管支炎というようなものが死因の大きなものになっておる。また病気のほうから申しますと、神経痛、リューマチというようなものが、御承知のように非常に多いのであります。したがって、少なくともこれらに対する検査はやらなければいけない。といたしますと、たとえば血圧の測定あるいは当然悪性腫瘍の問題ですぐ考えられますのは胃ガンであります。そうすると、胃の検査というものをしなければならない。心臓病、心電図その他というようなものが出てくる。こうなってこなければならぬと思うのです。それをやらない。ただ聴診器と打診で見ていくというのは、そういうようなことをやるなら全く意味をなさぬし、老人をばかにした話だと思うのです。老人が一番心配して熱望しているのは、まず胃ガンの検査であります。心電図あるいはレントゲン——ガストロ・カメラまでいくいかぬは別といたしまして、そういうようなことをやっていくということになり、あるいは肝臓の機能検査というようなことをしていくとすれば、いわゆる成人病検診者でありましても、少なくとも一人千五百円かかるだろう。一体何をやろうとするのかを聞きたい。と申しますことは、私は予算を見まして予算は何人やるかわかりませんでしたから、その点は伺わなければわかりませんけれども、少なくとも六十五歳以上の人口というのは、五百八十四万という人間がおるわけです。これに対して三分の一補助ということで、先ほどもお話しありましたように、五千万円予算がついているわけです。だからこの三倍といたしまして、一億五千万円という形になるわけです。さらに国で出しますのは五百万人といたしまして、これだけやるとすれば一人当たり十円、三倍にして三十円という形になる。これをいま言ったように六十五歳の人、七十歳の人、七十五歳の人と分けてやるのだといたしましても、何人やるのであるかわかりませんからはっきりいたしませんけれども、いずれにいたしましても、まず全体の五分の一をやるにしたところが、とにかくこの予算を市町村、県段階に出しますものをみな入れましても、五分の一やるといたしましても百五十円にしかならない。だから何をやるのか私はわからない。先ほど申しました健康診査の問題を見ましても、一体何をなさるつもりか、その内容を聞きたい。
  62. 大山正

    大山(正)政府委員 一般検査といたしましては、問診、視診、聴、打診のほかに、尿検査あるいは血圧測定といったようなことを考えております。   〔藤本委員長代理退席、委員長着席〕 それから一般検査の結果、さらに精密な診査を必要とするというようなものにつきましては、血圧検査、心電図の検査、レントゲン検査といったような必要な診査を行なうことに一応考えまして、予算を組んでおります。
  63. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 御承知のように、胃ガンなんというものは、もう自覚症状が出たというときには手おくれで、どうにもならぬということになるわけでありまして、当然レントゲンの胃の検査ぐらいはちゃんとしてやらなければいけない。おそらく老人たちが一番熱望していることだと思う。それぐらいのことはやはり考えなければならないのであって、問診、聴打診ぐらいなことをやっておったのでは、これは老人たちに羊頭狗肉といわれることになるだろうと思うのであります。ことに貧しい方々に対しましては、その方たちは自費でもってそういうことをやることはもちろんできませんし、あるいはまた国民健康保険でやることはできないのでありますから、特にそういうことをしてあげる必要があるのであります。一体いま、予算の内訳ですけれども、これはどういうように考えておられるのか伺いたい。と申しますことは、まず私のおそれますのは、例によって例のごとく、学校の校医に対しては、まるでばかにしたような報酬しか上げておらぬ。そうなりますと、同じようなことをもしここで厚生省が考えているとすれば、ろくなことはしないぞということになってしまうわけであります。だから一体健康診査の予算の内容というものはどういうようになっているのか、一人当たりどう考えているのか。
  64. 大山正

    大山(正)政府委員 一人当たりの予算の単価といたしましては、一般検査につきまして一人二百円、それから精密検査につきましては一人当たり千四百四十円というように考えております。なお精密検査につきましては、負担能力のある方につきましては若干の徴収をする、負担能力のない方につきましては全額公費で行なう、こういう考え方でございますが、所要経費は千四百四十円というように積算いたしております。
  65. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 それで何人やることになるのです。一般、精密ともに言ってください。
  66. 大山正

    大山(正)政府委員 一般検査につきましては四十万一千人、それから精密検査につきましては、大体二〇%が精密検査を要するであろうということにいたしまして、なおそのうち困窮の者は六〇%くらいだろうというような考え方で、四万八千人を一応計上いたしております。
  67. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 一体これを担当してやる医師は、どういうように準備するのでありますか。
  68. 大山正

    大山(正)政府委員 市町村長が行ないますので、原則といたしましては、その市町村内における開業医の方その他医療機関の先生をお願いするという形を考えておりますが、なおそれにつきまして、いろいろ保健所等に、必要があれば指導、助言、協力を求めるということにいたしております。
  69. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 十条の三項によりますと、「都道府県の設置する保健所の長は、市町村長が第一項の健康診査に関し指導、助言その他の協力を求めたときは、これに協力しなければならない。」ということになっておるわけでございますけれども、まず開業医がやるにしましても、二百円でこれをやれということにつきまして、これはやらなければならぬということになってくるのでありますから、まずそれで彼らが納得するかどうか、少なくとも親切な、誠実な検査をするかどうかということが大きな問題でありますが、もし市町村長が協力を求めれば、保健所はそれに対して協力しなければならぬということになる。大体保健所にそういう協力をする余裕があるのかどうか。今日保健所の職員の充足率から考え、ことに医師不足——これは私どもの近くの保健所でも医師がおりません。非常に協力を求めてくるが、こちらも協力する余裕がありませんから、最近協力しませんと、逆に保健所が変な意地悪をやってくることがあります。そういう事態です。だから一体保健所に協力の余裕があるかどうか、この点を伺いたい。
  70. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 この十条の三項の「指導、助言その他の協力」のお話でございますが、これは老人健康診査それ自体とともに、あとの生活指導というようなことが非常に必要になるかと思います。ことにガンですと手術問題がありますけれども、その他はあと急激になおすというのではなくて、生活それ自体を指導して安穏に暮らさせるということに中心があるものでございますので、どうしてもこれは町村長中心で、したがって、できれば身近におる開業医、医療機関があとの指導ができるようにということで、診査もそれを中心にやる、こういうことに考えております。したがって、この協力というのは、保健所が直ちに保健所管内の数カ町村の老人を直接診査するということは中心に考えておりませんので、むしろ村内に適当な開業医、専門家がいなければ保健所が、それの町村の雇い上げなりあるいはそこに受けに行かすような強いあっせんをするというようなこと、それから診査計画のプランニング、これらを専門家としてめんどうを見てやる、こういうふうな方向を中心に考えておるわけでございます。直接の個々の診査技術そのものは、保健所長並びに予防課長等もこのほうの専門家は少ないのでございます。いいかげんなことではいけないと思う。むしろそういうことを中心に考えておる、こういうわけでございます。
  71. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 今日医師の数が足りない。開業医諸君は、都市には相当にございますけれども、山村僻地あるいはまた農村地帯にはなかなか医師不足しておりますから、私はこの計画をやるについても、ずいぶんたいへんだと思うのであります。ことに、いま結核検診すら満足にできないという事態の中にまたこれが加わっていくと、容易なことではない。でありますから、先ほど申しましたように、事実協力のできないものを協力を求めてくる。こちらにその余裕がないのに、協力しないということによって、保健所のほうは非常にばかげた意地悪をしてくる、いたずらをしてくるという傾向がないではない。私は、そういうことについても十分厚生省が監督してもらいたいと思います。保健所自身に医者がないので、こっちへ協力を求めてくる。協力する余裕がないから断われば、非常に意地の悪いことをやるというようなことが事実ありますから、こういうような法律をおつくりになるとたいへんじゃないかと思うのです。ですから、これは厚生大臣、その点でよほど腹をきめてかかりませんと実際できませんよ。  それからいま一つ、ここで厚生省に考えてもらいたいことは、いま国民健康保険なら国民健康保険で精密検査をする場合に、国のほうで費用を出すやつならかまいませんが、一般の国民健康保険で成人病の健康診断をします場合に、不幸にして病気があれば精密検査の金を払います。けれども、病気のない場合には払わない、みな本人が負担しなければならぬということになる。やむを得ず病気の疑いありというようなことでごまかして金を取らなければならぬ、こういうのが実態です。ですから、こういうようなことにつきましても、やはり国民健康保険なら国民健康保険で精密検査を受けられるような制度に変えませんと、病気の疑いありということでごまかして取るというのが実態です。だから、ここまで老人福祉を考えていくならば、いまの金のある人は出してもらうということだけでなしに、出してもらうとするなら、困窮者の限度を一体どこに置くのか、これを考えなければいけませんけれども、これはよほどうまく事実とマッチするようにやりませんと、実際にできません。それでは余力のある人は出してもらうというその水準は、一体どこへ置くのですか。たとえばごく貧しい人は、精密検査をする場合に生活保護医療扶助でできるのか、どこでやるのか、どこに一体水準を置きますか。
  72. 大山正

    大山(正)政府委員 福祉年金のいわゆる所得制限でございますね。あの線を一応基準にしまして、福祉年金を受けられるような方は全額無料でやるというふうに考えております。
  73. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 そうすると、そこにいま申しましたボーダーラインのところが出てまいりますね。困難な問題が出てまいります。これは法実施について一段の努力をしてまいりませんと、せっかくこの法律をつくっても役に立たぬという不公平な線が国民の中に相当出てきますから、この点について十分考えていただきたいと思います。ついでのことでありますけれども、保健所の職員の充足等につきましては、さらに一段の御尽力を願わなければならぬと思います。  それから、同僚議員が聞かなかったところだけを伺いますが、特別養護老人ホームのことでございます。これはいま施設がきわめて少ないわけであります。既設のものは、予算を見ると二カ所、今度新たに四カ所つくるという予算が出ているようでありますが、これは公立のものでありますか、それとも社会福祉法人のものでございますか。
  74. 大山正

    大山(正)政府委員 一応公立を優先的に考えてはおりますが、予算としましては、法人立でももちろん補助するという考え方でございますので、現実に希望がありましたところを参酌してきめたいというふうに考えます。
  75. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 これは私も経営しておりますけれども、非常に困難な仕事でございまして、しかも必要な仕事でございます。今日やはり入所の希望者は非常に多いのでありますが、とうてい受け切れないというのが実態であります。非常に困難な仕事でありますために、ほんとうに実態を見ると、やろうという希望者があまりあるまいと見ておるのでありますが、実態はいかがでしょうか。
  76. 大山正

    大山(正)政府委員 御指摘のように、実は一般的な要望が非常に強いわけでありまして、各県といたしましても、なかなか困難な仕事ではあるけれども、これはどうしてもやらなければいかぬというような気分がかなり強いようでございますので、今後この方面の施設がかなり伸びるのではないか、また伸ばす必要がある、かように考えております。
  77. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 伸ばす必要があり、伸ばさなければならぬのでありますが、実態は、ほんとうにこれらの老人が喜んで入るようなものをつくることは実に容易なことではない。そこでこの措置費は一体幾らになっておりますか。
  78. 大山正

    大山(正)政府委員 事務費としましては、特別養護老人ホーム一人当たり一カ月七千七百三十円、それから保護費と申しますか、中に入っている方の費用としましては、一月一人当たり六千百七十五円、これは一般の養護老人ホームに比べて、事務費の場合には一般の場合が四千百四十五円であるのに対して七千七百三十円、それから生活費のほうは、養護老人ホームの場合が四千七百十円に対して、特別養護の場合には六千百七十五円、これはかなり高い一応水準になっております。
  79. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 この実態は、実に老もうの人が入ってくる。今度老人福祉法でも、身体及び精神の異状のある人々を保護するという立場が書かれてあるのでありますが、老もうの人が入ってくるし、大部分の人は中風の後遺症と見て差しつかえない。でありますから、半身不随というような人です。ここでこれを看護していくことは容易なことではない。実態を見ておりますと、老もうで、一日のうちに何べんでも手をうんこになすりつけるという人がいる。それから夜でも昼でもさびしがって、大きな声をする。したがって、看護している者もほかの者も寝られない。特別なところに置かなければならぬ。それで看護の人を始終呼んでいる、こういう人が相当出てくる。ですから、これは容易ならぬことです。しかし、いま申しましたような保護費あるいは事務費というものは不十分だ。これは実態をよく調べてあげるといいと思う。そうでないと伸びません。たいへんです。  そこで、もう一つこれをやるについて考えておかなければならぬのは、いまの中風の後遺症等を持っている者に対して、やはり物理療法を行なう施設をそこにつくる必要がある。たとえば温泉だとか——温泉といっても入浴のできるお湯の施設、その中へ入って看護人がマッサージをしてやる、手足を動かすくふうをしてやる、あるいはアメリカでも私は方々で見てきたのでありますけれども、お湯が回る施設だとか、あるいはその他のいろいろな医療機関設備をやる必要がありますし、それからマッサージ等をやる必要がある。だからそういうものを施設する場合に、そういうものに対する診療報酬というようなものを出すくふうをする必要がある。これは医療機関として指定されているわけでありませんから、たとえそういうものを設備し、治療をやりましても、その金を取れないでございましょう。だからその金を出すところは、いまでもないわけでございましょう。出す方法は何かありますか。私はそれをぜひ併設する必要があると思うのです。
  80. 大山正

    大山(正)政府委員 ただいまリハビリテーションの問題につきまして、身体障害者あるいは精神薄弱者等につきまして、かなりリハビリテーションの問題が重要に認識されてまいりまして、今回厚生省でも学院を創設したわけでございますが、そういうような技術者の養成と相まちまして、お話のような施設老人につきましてもやはり考えていかなくてはならぬというように考えております。現在でも若干の養老施設でそのような施設を持っておるところもございますが、十分ではございません。逐次そういうものも備えていくことが理想であろうというように考えます。またそのための費用は、施設の保健衛生費といったような面で組んでいくことが適当であろうというように考えますので、今後そのような人並びに施設の充実と相まって考えてまいりたいと思います。  なお、先ほど措置費につきまして数字を申し上げましたが、一級地、東京を標準に申し上げましたので、その点は特にお断わりしておきます。
  81. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 いま保健衛生費というものも、事務費の中に入っておるのでしょうね。それで保健衛生費は、いま一人当たり幾らぐらい入っておりますか。
  82. 瀬戸新太郎

    ○瀬戸説明員 特別養護の保健衛生費は、一人当たり年六千円になっております。
  83. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 そういうような点は、今後大事な施設をやっていきます上に一つの急所でございますから、ぜひ御尽力をいただきたいのであります。  先ほども寮母の給与を伺いましたが、この寮母の給与というのは、年間、たとえばボーナス等を入れての月割りの給与でありましょうかどうか。と申しますことは、この仕事におきまして、先ほども申しましたように非常に困難がありまして、職員の要員の確保が実に困難なことになる。したがいまして、先ほど寮母で二万幾らというのを伺いましたが、これはボーナス等も入っての月割りの額ではないかと見たのでありますけれども、この点はどういうことになりましょうか。何しろこのほうは、やはり大部分が看護婦としての資格を持っている者の中で、しかも優秀な人でなければできない、普通の看護婦ではとてもできないというのが私が実験した結果でありますけれども、先ほどの給与はどういうような給与になっておりますか。
  84. 大山正

    大山(正)政府委員 先ほど申し上げました寮母の給与は本俸の額でございますので、そのほかに期末手当等は、国家公務員並みの月数で出る、こういうことになっております。
  85. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 それではもう一つ、二つ、まだ明らかでない点を伺っておきたいのであります。老人家庭奉仕員というのが、資料によりますと全国で二百七十九人でありますが、この仕事もまた非常にいい仕事だと思うのですが、これを急速にふやすべきだと思いますけれども、これに対して厚生省はどういうような御方針でおられますか。全国で二百七十九人でありますから、これはいまのところ問題にならないと思います。しかし仕事としては、すばらしくいい仕事だと思うのです。非常に適切な仕事だと思います。これを急速にふやす必要があるが、いかがでありましょうか。
  86. 大山正

    大山(正)政府委員 昨年度は、御承知のように二百七十九人でございますが、本年度の予算といたしましては五百七人に増員しておりまして、来年度以降さらにこれを増員してまいりたい。少なくとも市の段階までは早く設置できるようにしたい、かように考えております。
  87. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 これは私も実は数年前から数年間やってみました。非常に喜ばれて、いい仕事です。けれども、残念ながら一人の人が一日にそう何軒も歩けません。親切にやればやるほどそうです。でありますから、これについてはやはり急速にふやす必要がある。いま、パートタイム希望の看護婦というのは、ずいぶんたくさんございます。病院へ入りますと夜勤その他がありますので、時間が制限されますのでなかなかむずかしいのでありますが、しかしパートタイムの看護婦は、希望の人が相当ございます。こういうものを生かして使うべきだ。これは昼間だけやってもらえばいいわけです。しかもパートタイムでやってもらえばいいわけです。ですから、こういうものをどんどん使えば——こんなものは予算さえ出せば、百倍にしようと二百倍にしようと、そんなことはわけないと思うのです。ぜひそういう方面に目をおつけになっていただきたい。パートタイムの看護婦を病院へ使えというお話もありますけれども、これはむずかしいのです。なぜむずかしいかというと、この諸君は夜勤はできない。たいがい主人持ち、家族持ちですから、夜勤ができない。夜勤ができないパートタイムの人が病院にたくさん入ってきますと、そうでない者に夜勤の負担が非常にかかってくる。ほとんど一日おきに夜勤をしなければならないということになってくる。そうなると、看護婦さんのほうはいやだということになる。非常に病院は困る。だから、もっとこういう人たちに目をつけて、こういう方面に活用なされば非常にいい仕事ができるのではないか。私も三人ほどの者にこの仕事を、すでに数年前に数年間やらしてみました。こんなに喜ばれる仕事は珍しいのです。それでまた非常に効果的な仕事です。看護だけではございませんで、もちろん家政婦的な仕事になりますよ。しかし、そういう任務を与えてやればいいのでありまして、パートタイムで募集すれば職員はずいぶんたくさん来る。ぜひひとつそういう方針をとってもらいたい。  もう一つ伺いたいのは、養護受託者の問題であります。これもまた私は、できればすばらしい仕事だと思うのです。子供における里親、できればずいぶんすばらしい仕事だと思うのですが、これはなかなかむずかしいのではないか。しかし、できないとは言えない。たとえば近所の親しいおじいさん、おばあさん、この人たちはいわゆる故老という形になっている。その人たちめんどうを見るということは、できないことはないと思う。積極的にこちらが行政、政治としてやってまいりますれば、できないことはないと思う。これもできればすばらしい仕事だと私は思うのです。いま実態はどうなっているのか、あわせて諸外国の例はどうなっているのか、伺いたいのであります。三十八年度でわずかに全国で百人分という予算でありまして、これまた単なる芽としては了解できますけれども、実態を上げるものとしては了解できないのであります。しかしこれもやりようはあるのではないか。
  88. 大山正

    大山(正)政府委員 養護受託者につきましては、現在の例といたしましては、若干の養老施設でその施設から付近の民家の方々にお願いしてやっていただいているという例が、千葉県その他に若干見られております。諸外国といたしましては、数字までははっきりいたしませんが、かなり行なわれている。ことに若い夫婦の人が、自分の共かせぎで出る留守宅の留守居というような意味も兼ねまして、老人の方を養護しているというような例があるように聞いております。この仕事は、お話しのようにたいへんむずかしい仕事で、はたしてこれを奨励いたしましても、そういうことが日本で十分行なわれるかどうかということが非常に疑問でございますが、確かに考え方としてはいい制度であり、そういう希望者があればたいへんいいことではあるまいかということを考えまして、テスト的に百人分だけ予算を組んでみたという程度でございます。
  89. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 ぜひその線は進めてもらいたいのであります。  最後にもう一つだけ伺って、時間の制約があるそうでありますからやめたいと思いますが、二十六条におきます設備の補助でありますが、ことに社会福祉法人立のものに対する補助の問題。この点は、前にも私、大臣にも予算委員会等で伺い、また注文したことがあるのでありますが、この施設、設備の補助、たとえば建物、先ほどもちょっとお話がありましたが、当然老人ホームは、今日厚生省の方針といたしましても不燃質のものでやるという形になっております。この建物の坪当たり単価を一体どのくらいに見ているのか、今日実情と合わないのではないか、その点を非常に心配しておるわけであります。
  90. 大山正

    大山(正)政府委員 建設補助の場合、単価は、予算上といたしましては統一単価で五万円ということに組んでございますが、実施にあたりましては、土地によって若干違いますが、最高五万八千円までを実行単価として現在考えております。ただ、それをもちましても不燃性の建築は非常にむずかしい。これは予算査定上統一単価になりますので、たいへんむずかしい問題でありますが、われわれとしてはぜひこれを引き上げるように努力したい、かように考えております。
  91. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 これはぜひ引き上げてもらわぬと、実際において、せっかくいい企てがありましても、国の方針がありましてもできないということになります、 御承知のように、今日施設が単独でもって募金することは困難であります。もしそうするとすれば、やはり専門の募集人を置かなければならぬ。そうするとまたこれに対する非常にたくさんの経費を要する。おのずから共同募金にたよるという形になっておるのでありますけれども、たとえば先般来事情を見ておりますと、あの自転車競走の会のほうで出します金なども、自己資金がなければ出さぬというような方針をきめてきたようであります。こういうところでは、実際においてできないという形になってまいります。やはりこういう点につきましては、まず何よりも十分な——結局国と県等で四分の三の補助があるといたしましても、実際の建築費を見ますと、実質的には四分の三の補助が二分の一の補助にしかならぬということになるのであります。われわれは、四分の三の補助をすべきだという決議をここでしまして立法いたしましても、実際においては、立法者の意思とは違いました二分の一の補助しか行なわれないということになるのであります。これらにつきましては大臣に特段の御尽力をいただいて、なおいろいろなそういうような補助団体がありますけれども、補助団体に自己資金がなければ一切補助しないというばかりではなくて、そういうことも必要でありましょうけれども、モーターボートとかあるいは自転車競走会というようなところで出しますものは、むしろそういった行き方ではなしに、あるいはその他の共同募金にいたしましても、自己資金がなくてもそれを出すという形にしませんと、社会福祉法人におきましてはとうていできない。もしやらせればきわめて粗末な施設になってしまう。そうすると老人はやはり安心してここにおれないという形になりますから、これらの点につきまして、特段の御尽力をいただきたいと思うわけであります。  時間の約束があるそうですからこれを守りまして、私の自余の質問は全部省いて、またいつかの一般質問のときにさせていただくことにしまして、一応終わります。
  92. 秋田大助

    秋田委員長 井堀繁男君。
  93. 井堀繁男

    ○井堀委員 たいへん時間も詰まっておるようでありますが、本法案はわが党にとりましては重要な政策の一つとして、かつて三十六年の十月に要綱を公にし、続いて昭和三十七年の三月二十日には老人憲章、そして老人福祉法の要旨などを公表いたしまして世論に問うたのであります。幸いにいたしまして今回、政府提案というような形で世に出るようになりましたことは、まことに喜ばしい次第であります。ただ、手放しに歓迎できませんことは、社会保障制度審議会からもきびしく指摘されておりまするように、今日の段階においてかかる重要法案が、きわめて主体性のみならず積極性を欠いておるという批判は、確かに適切な批判であると思うのであります。しかしながらわが党といたしましては、せっかく誕生いたしました本法案が、最も近い将来に内容も充実したものになることを念願しつつお尋ねをいたしてみたいと思うのであります。時間の制約がありまするから、重要だと思われる部分だけを取り上げてお尋ねをしてまいりたいと思います。したがいまして、質問の場合に十分私どもの考え方を述べてお尋ねするのが当然であり、また親切な御答弁をいただくことになると思うのでありますが、残念ながら時間の制約を受けておりまするから、端折ってお尋ねいたしますが、御答弁はひとつぜひ急所に触れた御答弁を賜わりたいと、前もってお願いをいたしておきます。  政府案の基本理念というものは、私どもが八つの項目に分けて憲章を公にいたしましたものにかなり接近してきたものであると思うのでありますが、この基本理念の中について幾つかの疑問をわれわれは差しはさむものであります。全体をお尋ねする時間もございませんので、たとえばこの法案の重要な役割りともいうべきものは、日本の家族制度の大きく変化を遂げつつある現社会にこれが適応することであると思うのであります。でありますからわれわれは、遠き将来の希望については、この法案にかなりの期待をかけることはできるのでありますが、現時点における日本の家族制度の大きな変革というものに対する十分な備えが、本法案にはないのではないか。具体的に言いますならば、日本の家族制度は、法律制度の上ではもうすでに終戦直後、憲法及びその他の法律によりまして老人は独立した生計を営まなければならないたてまえが強く要請されて、また現実の上にもそれがひしひしと迫っておるのであります。それに備える当然の法律として、老人福祉法というものが実は同時に立ち上がるべきものであったと私は思うのです。しかしこれは、その当時、日本の国民経済なり国の財政などから、これをささえるだけの力を持っていなかった時代でありまするからやむを得ないのでありますが、今日政府が、昭和三十八年度の予算編成にあたりまして、経済の見通しなり財政に対する基本的態度をわれわれに示しておりますこのことからお尋ねをして、本法案に触れていくのが当然であると思いますが、時間の都合がありますので、また厚生大臣は閣僚の一人としてこの問題には参加されておる方でありますから、詳しくお尋ねをしなくてもお答えができると思いますので、ひとつそのつもりで御答弁願いたい。  概括してみますと、日本の国民経済の規模、予算規模なり予算編成の内容にあらわれているところからいたしますならば、いま老人が家庭から社会へ激しい勢いで放出されておるのであります。それはある場合には就職を求めて、非常に悲惨な日雇い労働者になり、あるいは病身をひっさげて生活保護法の恩恵にすがらなければならぬというようなことは、私は国の責任を誤っていると思うのです。でありますから、これだけ経済力が伸び、財政規模が拡大された現実においては、老人に対しまして、何をおいても一番先に手を差し伸べなければならぬのは低所得層、それは老人の責任じゃないのです。年をとれば、だれでも労働能力を喪失することは当然であります。若い時代には日本経済の再建、特に戦後、働き盛りに、労働力はもちろんのこと、あらゆるエネルギーを社会の繁栄のために奉仕して、そしてその老後がいやされないというこの現実であります。このことは、私はひとり老人に対する国の義務というよりは、日本を新しく立て直す大きな原動力になるかいなかに問題があると思うのであります。本法案は、ながめますと、消極的な意味において老人保護が考えられておる。しかし、いま国が要請しております時点はもっと積極的な意義を持ったもの、それは、わが党の老人保護憲章と同様にこの基本理念の中に掲げてありますように、かつて社会の進展に寄与した者という短い文章でありますが、よく表現してあると思う。これは積極的な意味において日本の経済をささえて、日本の社会の進展のために、あらゆるものをささげ尽くしてきたのであります。こういうものに国が適切な措置を講ずるということは、言うまでもなく、その民族の繁栄の基礎をつくるのであります。いわゆる健全な思想を育成する具体的な政策でなければならぬと思うのであります。でありますから、少々の財源を惜しむことなく——思い切った処置を講ずるというたてまえが基本理念の中に欠けておる。これは社会保障制度審議会指摘しておるところであろうと思うのであります。こういう立場から判断をいたしまして、この中で法案を順次伺っていけばわかると思いますが、この基本理念の中の、いま申し上げた部分でたとえばこの老人保護の中で、そういう意味から一番先に取り上げなければなりませんのは、ここでは抽象的に社会活動に積極的に参加させようといっているのでありますけれども、法律内容の中には具体性がないのであります。もしおありであるとするならば伺いたいと思うのですが、社会的活動というのは、かなり広い意味があると思うのです。一つには、長い間国のために奉仕してきた人が、いま言う、やむを得ず労働能力あるいは社会活動から遠ざからなければならぬという、この事実を補うだけの措置がなければならぬ。老人にもできるよい仕事とか、あるいは老人の経験とか、長い間奉仕してきたそういう人々に対して、社会活動の中で、どこにどう迎えるかということがこの法案には欠けている。これがわが党の案と政府案との非常に大きな違いであるのであります。この点について、将来芽が出るようなものであれば多少しんぼうしなければならぬと思いますが、それが欠けておるのです。いまこの法案の中で、一番切実で、しかも適切な措置として取り上げなければならぬものがどの条文で、どこで将来そういうものを育成していこうとされるのか、お答えを願いたいと思います。
  94. 大山正

    大山(正)政府委員 老人福祉法を立案するためにあたりまして、一番大きな問題点、単に老人が安穏に老後の生活を送ればよろしいということでなくて、やはり過去の知識経験を十分に社会に役立てるように老人自身も活動していただくということが、老人自身の福祉のためのみならず、社会全般にとって一番大事なことではあるまいかというような観点から第三条の規定を立案したのでございますが、基本理念は、各省の施策全般にわたるような、老人問題全般についての指針というようなことで考えましたので、実はこれに相応する具体的な規定は規定しがたかったのでありますが、関連ある条文といたしましては、第十三条に、地方公共団体がそのような老人の参加できるような事業を実施するように、また、それらについていろいろ援助を行なうようにという規定を一条設けたのでございまして、十三条がいわばただいま御指摘の点を受ける唯一の条文のような形に相なっておるわけでございます。今後具体的な施策にあたりまして、労働の問題につきましては労働省でありますとか、あるいはわれわれの関係でありますれば民生委員でありますとか、その他の社会奉仕的な活動、そういうような面に老人の方々も十分知識経験を生かしていただくよう考えてまいりたい、かように考えております。
  95. 井堀繁男

    ○井堀委員 この法律は、言うまでもなく国がその責任をとると明言しているのです。地方自治体の協力を待つことはもちろんであります。自治の精神からそうありたいと思うことは、当然であります。しかしそれは、あとでお尋ねしようと思うのでありますが、今日の自治体の財政あるいは自治体の実態からいいまして、こういう大きな国の政策を地方自治体に移譲するという考え方は、本末を転倒していると考える。それで指摘をいたしたのでありますが、いみじくも十三条の規定を取り上げて御答弁いただいた。今後近い将来に、この点はちょうど背骨を失っている哺乳動物に背骨を植えるような性格のものでありますから、そういう修正を得られる機会を念願いたしたいと思うのであります。  次に、もう一つ重要な問題は、この制度を生かすか殺すかは、ここで言っております老人福祉のための担当職員、これを今後どういうふうに育成していくか、これがどれだけ大きな役割りを果たしていくかということは、この法律の中における重要な部分になってくるではないか。ところが、いままで社会福祉司あるいは地方の社会福祉関係に活動をしております職員は、他の国、地方公務員に比較いたしまして、冷遇されているとまではいかないまでも、及ばない部分がかなりあるわけであります。そうでなくてもこういう人たちは世の一番暗いところに生活をしておる人々でありますから、よほど力の——力というのは財力ではありません、政治力のすぐれた人で、専門技術、卓越した人が積極的な行動を起すことがなかったら、こういう制度というものは、どんなにいい制度をつくりましても生きてはいかないと思います。この点について、私はこの法律を見て、悲観をしているのであります。予算を見てなおさら悲観を重ねておるわけであります。少なくともこういう制度を画期的に起こそうとするときには、こういう人々の更生なり、活動の分野についてはもっとはっきりした法律的な規定を設ける、あるいは予算の裏づけをするなり、すべきではなかったか。これができなかったのに何かの理由があれば、この際伺っておきたい。理由があいまいであるならば、私どものほうもまた考え方を述べて、質問を続けていきたいと思います。この点をひとつ……。
  96. 大山正

    大山(正)政府委員 福祉事務所におきまして、特に老人問題を専門的に勉強し、またやっていくということのために、特に第六条に規定を設けまして、福祉事務所老人問題を担当する専任の社会福祉主事を置くように規定を設けているわけでございまして、これは他の福祉制度によります、たとえば児童福祉司あるいは身体障害者福祉司、あるいは精神薄弱者福祉司といったようなものに相当するものというように考えておるわけでございますが、まだ老人問題についての専門的な研究分野が十分開拓されておりませんので、今後そういう部分を十分ひとつ研究していくと同時に、これらの人に対する研修等を進めまして、実効があがるようにしてまいりたい。  また給与の問題につきましては、先ほど資料をお配りしましたが、社会福祉主事についての特殊勤務手当という制度がございますが、まだ地方において十分支給してない面もありますので、それらを十分支給するように、さらにその特殊勤務手当の率等も今後引き上げていくように、自治省とも十分連絡をとって努力してまいりたい、かように考えております。
  97. 井堀繁男

    ○井堀委員 これは具体的になおお尋ねするとよくわかるのでありますが、その時間がありません。たとえば老人指導ということばには無理があると思うのですけれども、老人のよき相談相手、そういう機能を意味して私は申し上げるのでありますが、そういう人によほどすぐれた人を得るということは、今日ではやはりいい条件を出さなければできません。それはいまの公務員の給与制度その他の障害があると思うのでありますが、こういう特殊の法律を予定する場合には、やはりそういうものに対する特殊の優遇処置を講ずるということは、決して不公平なやり方ではないと私は思うのです。そういうものに対する意欲がこの法案に欠けていることを指摘しておきたいと思っておるのであります。月並みな指導者を養成するということでは、この法案をせっかくいいものをつくっても、画竜点睛を欠くうらみがここから出てくるのではないか。これはよその例を見ましてもそうでありますが、こういう仕事に従事する人たちは、制度がよくならされて、予算が十分であって、施設が潤沢にあるところでありましても、こういう専門家については非常に熱心な地位の向上といいますか、実力の向上といいますか、そういうものに対して国や地方の公共団体が非常な力を入れている、こういう点について、この法案が画期的な一つ方法として考えるべきじゃないかという点については、私は非常に残念に思うのであります。たとえば老人の場合にいま一番心配されておりますのは、ここでも指摘しておりますが、いろいろな収容施設老人のための諸施設を設けられましても、たとえば養老院のような、有料、無料いずれをとるにいたしましても、無料の場合には恩恵的なものを与えるといったような感じがもしあるとするならば、これは大失敗だと思う。これは法案の基本理念の第一にも規定してありますように、国がやはり老人に対する尊敬の念を払うということは、要するにその国の文化の水準が高いことを意味し、その民族が将来発展することの基礎的な思想を盛り上げていくものであるということは、世界の共通した考え方であります。こういう考え方からいたしますならば、ここにも非常に遺憾な点を感ずるのであります。  なお、施設の問題についてお尋ねしなければならぬのでありますが、これは他の方からも質問があったようであるし、できるだけ予算をつぎ込んでそういう施設を充実し、拡大していくという御答弁もあったようであります。これについても私は、画期的な制度でありますから、画期的な予算の裏打ちを早くおとりになって、その立ち上がりを促進すべきではないかという感じがいたしまして、ここを具体的にお尋ねしようと思ったのですが、私に与えられた時間がだんだんなくなってきますので、要望だけを申し上げて、まとめて御答弁をいただきたいと思うわけであります。  さらに問題になりますのは、老人のいろいろな施設の中で問題になりますのは、先ほども指摘になっておりましたけれども、精神的に非常にもろくなっていると思うのであります。この点は、日本のように家族制度の中に囲まれた老人が、いきなり新しい制度の中に立ち上がるというような大きな変化の中に当面したということもありましょう。本質的に言えば、肉体が衰えてきますと同時に、精神的にも非常に弱体化しておるのであります。こういう関係からいたしまして、さっきの福祉主事の問題もありますが、いろいろな施設を講ずる場合にも、ただ一般の福祉施設と異なる点は、そういうものに対する高い理念、自由を尊重する、その意思の発露をやはり自由な姿で、しかも積極的にやれるようなものがそれぞれ補完されていなければならぬと思う。いままでのような養老院の考え方は、とんでもない制度だと思うのです。有料だからということで金さえ出せばいいという、あの考え方も私は誤っておると思います。こういう点に対する制度は、民主主義の発達した福祉国家を建設した国々においては、細心の注意と努力が集中されておるのであります。この法案にはそこにも大きな盲点があるのでありますが、こういう点につきまして、私はこの法案を通じてもっと改善をなされるべきではないかと思うのであります。そういう二点につきまして一応の考え方を伺っておきまして、なお詳細の問題については、別な機会を選ぶことができるかと思っておりますので、その原則の問題について、この法案に要するにどこまでそういう考え方、そういう方針を生かそうとされておるか、御答弁を願いたいと思います。
  98. 大山正

    大山(正)政府委員 老人福祉関係施設の充実につきましては、先般来いろいろな機会に申し上げたことでございますが、たとえば養護老人ホーム等につきましては、なお収容しなければならない人数が三万ないし四万くらいあるだろうというように考えられますので、これらにつきまして年次計画を立てて整備をはかりたい、かような考え方をいたしております。  それから施設内の老人の処遇につきましては、お話のように、これはあくまでも老人の人権の尊重、老人自体の福祉のために施設を設けるということでありますので、ややもすれば従来のいわゆる養老院という考え方から、暗い孤独な、卑屈な考え方ということがあるとすればたいへんふしあわせなことでありますので、それらを払拭して、十分老人福祉がはかられるように、施設とも十分連絡をとりましてその方向で進んでいきたい、かように考えております。
  99. 井堀繁男

    ○井堀委員 最後に、大臣一つお尋ねしておきたいと思います。  冒頭にも申し上げましたように、国の財政規模なり国民の経済能力というものは、こういうものを十分補完していくに足るだけの実力ができているはずであります。本年はもう予算が通ったことでありますが、次年度は、少なくとも先ほどお尋ねし、局長から御答弁がありましたような精神が盛り込まれたものになるように、ひとつ予算を大幅に増額されるような御努力が願われなければならぬと思うのであります。これに対するあなたのお考えを伺いたいと思います。
  100. 西村英一

    西村国務大臣 いろいろ井堀さんから、たいへんに御参考になる御意見がございました。とかく老人が社会の一員として取り扱われない、家庭から、あるいは社会から除外されるような傾向にありましたので、今回老人福祉法案を提案いたしたのであります。しこうして私たちといたしましては、あくまでも老人老人としての能力を発揮していただくとともに、また老人というものは当然ハンディキャップがつくものでございますが、これはあなたがおっしゃるように老人の罪ではございません。さようなものに対しては徹底的に、これは社会の責任、国の責任として救わなければならぬ、かように考えておる次第でございまするが、今年度は法律を出しまして、十分な予算をこれに対してつけたとは申されません。したがいまして、いまも局長が言いましたように、あらゆることにつきましてひとつ計画的にやって、老人福祉のために万全を期したい、かように考えておる次第でございます。
  101. 秋田大助

    秋田委員長 これにて老人福祉法案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  102. 秋田大助

    秋田委員長 ただいま委員長の手元に、松山千惠子君、河野正君及び井堀繁男君より、老人福祉法案に対する修正案が提出されております。
  103. 秋田大助

    秋田委員長 修正案の趣旨の説明を聴取いたします。松山千惠子君。
  104. 松山千惠子

    ○松山委員 私は、自民、社会、民社三党を代表いたしまして、ただいま議題となっております老人福祉法案に対して修正をいたしたいと存じます。    老人福祉法案に対する修正案   老人福祉法案の一部を次のように  修正する。   附則第一条中「昭和三十八年四月  一日」を「公布の日から起算して一  箇月をこえない範囲内において政令  で定める日」に改める。  何とぞ御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  105. 秋田大助

    秋田委員長 修正案についての御発言はございませんか。     —————————————
  106. 秋田大助

    秋田委員長 なければ、次に、老人福祉法案及びこれに対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に申し出もありませんので、直ちに採決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  これより内閣提出老人福祉法案及びこれに対する修正案について採決に入ります。  まず、修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  108. 秋田大助

    秋田委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  109. 秋田大助

    秋田委員長 起立総員。よって、内閣提出老人福祉法案松山千惠子君、河野正君及び井堀繁男君提出の修正案のごとく修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  110. 秋田大助

    秋田委員長 この際、松山千惠子君、河野正君及び井堀繁男君より、老人福祉法案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、その趣旨の説明を求めます。松山千惠子君。
  111. 松山千惠子

    ○松山委員 私は、ただいま議決されました老人福祉法案に対して、自民、社会、民社三党を代表いたしまして附帯決議をいたしたいと思います。  以下、案文を朗読いたします。    老人福祉法案に対する附帯決議   本法律案は時宜に適したものであるが、なお、今後その内容を改善すべき面もあるので、政府は左記の事項につき検討の上その実現に努力すべきである。      記  一、老人人口の増加のすう勢並びに家族居住分離の傾向にかんがみ、養護老人ホーム、軽費老人ホーム及び公営住宅等の建設を促進すること。  二、老人福祉施設職員等の処遇の改善につとめ、要員確保に特段の配慮をすること。  三、老人健康診断については開始年令の引き下げ及び回数の増加につき検討し、老人福祉施設内における諸施設の充実につとめること。 以上でございます。  何とぞ御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  112. 秋田大助

    秋田委員長 本動議について採決いたします。  本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  113. 秋田大助

    秋田委員長 起立総員。よって、本案については松山千惠子君、河野正君及び井堀繁男君提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、西村厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。西村厚生大臣
  114. 西村英一

    西村国務大臣 ただいまの附帯決議の御趣旨につきましては、政府といたしましては今後十分尊重してまいりたいと存じます。     —————————————
  115. 秋田大助

    秋田委員長 ただいま議決せられました本案についての委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  本日はこの程度にとどめ、次会は明十三日午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後四時十六分散会      ————◇—————