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1963-06-10 第43回国会 衆議院 社会労働委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月十日(月曜日)    午後一時四十四分開議  出席委員    委員長 秋田 大助君    理事 小沢 辰男君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 柳谷清三郎君    理事 大原  亨君 理事 河野  正君    理事 八木 一男君       岡崎 英城君    亀岡 高夫君       藏内 修治君    坂田 道太君       田川 誠一君    田澤 吉郎君       田中 正巳君    高橋  等君       濱地 文平君    早川  崇君       松山千惠子君    八木 徹雄君       米山 恒治君    淺沼 享子君       小林  進君    五島 虎雄君       島本 虎三君    田邊  誠君       滝井 義高君    中村 英男君       楢崎弥之助君    長谷川 保君       肥田 次郎君    吉村 吉雄君       井堀 繁男君    本島百合子君  出席政府委員         労働事務官         (職業安定局         長)      三治 重信君  委員外出席者         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  和田 勝美君         参  考  人         (日本労働組合         総評議会事務局         長)      岩井  章君         参  考  人         (京都労働対         策室長)    小川広之介君         参  考  人         (大阪市立大学         教授)     近藤 文二君         参  考  人         (九州大学教         授)      正田 誠一君         参  考  人         (金沢市長)  徳田与吉郎君         参  考  人         (全日本自由労         働組合中央執行         委員長)    中西 五州君         参  考  人         (全国民主自由         労働組合中央執         行委員長)   馬場 大静君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 六月十日  委員上村千一郎君、亀岡高夫君久保田円次君  、久保田藤麿君、古川丈吉君、前田義雄君、米  田吉盛君、島本虎三君及び楢崎弥之助辞任に  つき、その補欠として高橋等君、岡崎英城君、  田川誠一君、坂田道太君、藏内修治君、濱地文  平君、八木徹雄君、肥田次郎君及び小林進君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員岡崎英城君、藏内修治君、坂田道太君、田  川誠一君、高橋等君、濱地文平君、八木徹雄君  及び肥田次郎辞任につき、その補欠として亀  岡高夫君、古川丈吉君、久保田藤麿君、久保田  円次君、上村千一郎君、前田義雄君、米田吉盛  君及び島本虎三君が議長指名委員に選任さ  れた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  職業安定法及び緊急失業対策法の一部を改正す  る法律案内閣提出第八九号)      ————◇—————
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出職業安定法及び緊急失業対策法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  この際、おはかりいたします。  本案について、日本労働組合評議会事務局長岩井章君、京都労働対策室長小川広之介君、大阪市立大学教授近藤文二君、九州大学教授正田誠一君、金沢市長徳田与吉郎君、全日本自由労働組合中央執行委員長中西五州君、全国民主自由労働組合中央執行委員長馬場大静君の七名の方々から参考人として意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     —————————————
  4. 秋田大助

    秋田委員長 参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、御多忙のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本案につきましては各方面に広く関心が持たれておりますが、当委員会におきましても、この機会に、本案に深い御関係をお持ちになるあなた方から忌憚のない御意見を伺い、審査参考といたしたいと存じます。  なお、議事規則の定めるところによりまして、参考人方々が発言なさいます際には、委員長の許可を得ていただくことになっております。また、参考人委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、以上あらかじめお含みおき願いたいと存じます。  なお、議事の整理上、御意見をお述べ願う時間はお一人十五分ないし二十分程度とし、参考人各位の御意見開陳あと委員質疑にお答え願いたいと存じますから、よろしくお願いいたします。  まず、岩井参考人よりお願いいたします。岩井参考人
  5. 岩井章

    岩井参考人 私は総評岩井であります。全国労働者失業者立場から意見を簡単に述べたいと思います。  御承知のとおり、この失対制度改正については、すでに雇用審議会審議されてまいりました。私はこの委員の一人として審議に参加をいたしたのでありますが、いわゆる労働省構想には基本的に反対をしてまいりました。したがって、構想を具体化したところのこの改正法案についても反対をするものであります。私は雇用審議会の場でも強く申し上げてきたわけでありますが、この問題はたいへん根の深い、影響の大きい問題だということを最初に指摘したいのであります。ですから国会でも十分に時間をかけて、できれば一年間くらい慎重に審議をしていただきたいと思うのであります。  この失対制度改正ということはなぜ重大な問題なのか、表面的には筋の通った話のようでありますが、当事者にとりましては、実は生命にかかわる問題だと言えると思います。そんなことはないだろうという人に申し上げたいのでありますが、すでに失対打ち切り構想が発表をされてから、失対労働者の中で、前途を悲観して七人ほどの自殺者が出ているのであります。原因がはっきりしていない、不明だというならば、あとで全日自労の中西委員長からその遺書を発表してもらうと、なおはっきりすると思うのであります。しかも一方では、いわゆる正常化攻撃の矢面に立った浜松の職安課長が、ノイローゼが高じてやはり自殺をしております。このほうは遺書がないそうでありますが、前後の事情から、失対改正に間接的に抗議されたのではないかと判断されます。私はまず、この辺の事情委員各位に十分認識していただきたいと思うのであります。  最近労働省のPRでも、また全部とは言いませんが、一部のマスコミや知識人といわれる人の言い方の中にも、若干気にかかることがあります。たとえば失対はなまけている、職業訓練をさせるのがなぜ悪い、失対より通常の雇用のほうがいいではないかというような言い方を聞くのであります。私はこれらの意見を俗論であるとか、しろうとの議論であると言って無視する気は毛頭ありません。しかし、失業者のことを本気に考えるのでありましたら、事実を調べて、正確に把握して意見を述べていただきたい、こういうふうに思うのであります。非行少年をつかまえて、子供が悪い悪いと言うだけでは問題は解決をいたしません。失対労働者がいま死にもの狂い反対しているのはどこに原因があるのか、この辺をぜひ冷静に各位にお考えを願いたいと思うのであります。  この二法案問題点について、私の意見を簡単に述べてみます。詳しい内容に触れての意見は、あとで全日自労の委員長から出されると思いますので、私は基本的な問題についてだけ申し上げます。  その第一点は、今度の改正によりますと、失業者は、自分で希望しても失対に入ることができなくなるという点であります。労働者は首を切られると、しばらくは、不完全なものですが、失業保険金で食いつなぎます。しかし、五人未満の事業所ではこの失業保険もないのであります。そこで失業保険がなくなったり、初めからもらえない場合は、生活保護か失対就労かということになります。働く能力がある者は条件のよい失対を選びます、というよりは、これよりほかに生活手段がないからであります。もしここで失対に入る道が閉ざされたということになれば、生活権を奪われることになり、われわれは死にもの狂いで戦うほかなくなるのであります。そのほこ先は、政府はもちろん、首を切った資本家にも向けられ、再就職するまで失業中の生活保障を頑強に要求して戦うことになります。私は、このような事態は資本の側でも望むところではないと思うのであります。なぜなら、政府失業者生活について、その責任個別資本に負わせるということを意味するからであります。雇用審議会でも、財界代表委員はこう言って意見を述べました。東電会長の青木さんは、この構想失業対策が薄くなるので、失業問題が先鋭化するから財界としては心配であると正直に述べております。また富士製鉄の社長である永野さんは、今後の合理化により発生をする失業問題について、政府は本格的に取り組んでいないのではないかという強い不満を表明しております。このような財界側意見は、われわれとは立場は違いますが、失業問題について国なり政府なりがもっと責任を持ってやるべきであること、今回の失対制度改正は、むしろ失業対策の後退を意味していることを強く指摘しているものと考えます。  第二点は、失対に入らなくても訓練を行ない、もし就職できなければ手当を出すからよいではないかという点についてであります。実はこれについては、訓練を行なうということが、安定した就職賃金といったものにどれだけ結びつくかということが疑問であります。実はこの訓練は、すでに神奈川県などで行なわれた実績があるわけでありますが、私が神奈川現地を調査したところでは、訓練種目は十何種目もありますが、どうやら期待が持てそうなものは、自動車運転くらいなものであります。これは訓練が終わると資格あるいは免許というものに結びつくから、信用するだろうと思うのです。訓練ならどんなものでもよいとは言えないわけでありまして、今度の改正のように、業者への委託訓練まで含めて拡充することは、訓練の質という点で問題があるのではないか。早い話が、自民党先生方には経営事情を知っておられる方が多いと思いますが、いまのような訓練を受けた失対労働者に高い賃金を払って、本工として雇い入れてくれる人が何人おられるのか、むしろお聞きしたいと思うくらいであります。また就職できなければ手当を出しますというが、一人一日二百六十円では、失対賃金生活保護以下の水準お話になりません。したがって、雇用審議会でも有沢会長が強調されていましたように、失対に入るか訓練を受けるか、また手当をもらうかということは、失業者の選択にまかせるというのが当然だと思います。もし政府の言うように、訓練手当がよければ、失業者は黙っていても当然そちらへ行きます。私は、政府が強制してまで訓練だ、手当だという言い方には、悪いものを押しつけるという裏があるとしか判断できません。  第三点として、市長会意見書というものが出ております。これは労働省構想賛成らしいのでありますが、どうもその理由が私にははっきりわかりません。こう言っておるのであります。失対労働者は盆暮れに市役所に押しかけてきて困る。しかし労働者使用者に、労働条件の問題で陳情に行くのは当然であります。どこの経営者でもやられているところであります。そういう感情的な問題ではなく、ここに一つの事実を申し上げてみたいと思うのであります。  これは岡山市の例でありますが、小中学校のプール建設の場合、失対事業でつくると、業者の請負よりも市の負担ははるかに少ないという事実であります。二十五メートル・プールでは約百万円、五十メートル・プールでは約四百万円もの経済的な利益があるということを発表しておるのであります。また失対の能率もよく、市民に感謝されておるのであります。このような例は、道路舗装用水工事の場合でも同じことが言えます。私は、岡山革新市長だからこうなるということではなく、どこの町でも同じような状況ではないかと考えるのであります。いずれにせよ、建設業者のもうけのために失業者生活を犠牲にするという考え方は、断じて賛成できません。  第四点は、今度の失対制度改正について、その考え方の基本があいまいであるという点であります。政府は、失業者手当を出すということは、失業手当制度という近代的な失業対策に一歩近づくものであると言っています。なるほど内容はお粗末きわまるものであるにせよ、とにかく働かなくても失業者手当を出すということは新しい考え方であると言えましょう。ところが、一方では、いまの失対に働く者はもっと能率をあげて、賃金をそれに応じたものにするという。さらにまた、老人や婦人については社会保障並み賃金にするという。このように制度性格が混乱しているのは、ほんとう失業者生活を保障するという一貫した筋が通っていないからではないかと思います。すでに雇用審議会では、昭和三十四年に完全雇用の答申第二号というものを答申しております。これは審議会の二、三名の労働者代表がかってにつくったものではありません。多数の資本家学識経験者が参加して、満場一致で答申したものであります。御承知のとおり、この中には最賃制確立臨時工制度の廃止、時間短縮、社会保障拡充ども早急に実現することが強調されておるのであります。そしてさらに、日本では特に必要な不完全就労の解消について、積極的な政策が必要だと指摘しているのであります。したがって、これらの政策をサボっておいて、幾ら失業対策制度だけいじってみましても、問題の解決にはならないと思うのであります。  第五点は、未解放部落の問題であります。これらの地域では青年層でも一般雇用から締め出され、生活手段としては失対が唯一のものとなっておるのであります。しかもこれに入るのにさえ、高知の話でありますが、一年も二年も順番を待たなければならないという実情なのであります。このような状態の中で、もし失対を取り上げたならばどんなことになるか、現地事情を説明するまでもなく、よく御理解いただけるものと存じます。  第六点として、最後に申し上げたいのは、失対問題は何か失対労働者、すなわち全日自労だけの問題で、一般労働者総評全体の関心が薄いのではないかという見方についてであります。いま全国労働者は、青天井のようにとどまるところを知らない物価高に苦しめられておるのであります。賃金上昇ではとても追いついておりません。そこでわれわれは、大幅賃上げとともに、全国一律一万円の最低賃金制確立を強く政府に要求して戦っておるのでありますが、しかし政府は、これに対して失対制度をつぶすという攻撃を示しておるのであります。もしこの改正で失対がつぶれると、やっと一万円に達したばかりの失対賃金水準は再びその組織的基礎を失い、失業者生活はさらに一そうみじめなものとなるでありましょう。このことは、当然全労働者賃金水準にも重大な影響を及ぼすことになります。したがってわれわれは、賃金闘争と同じ関心でこの問題を見ざるを得ないのであります。もし政府自民党がこの法案改正を強行するならば、総評は人道主義的な立場に立って徹底的にやはり抵抗しなければならない、このように考えるのであります。  私は以上述べました理由によって、本改正案につきましては絶対に反対するものだ、こういうふうに強調いたしまして、私の公述意見を述べる次第であります。
  6. 秋田大助

    秋田委員長 岩井参考人のお時間の都合上、岩井参考人の御意見に対する質疑だけ先に取りまとめて行ないたいと存じます。
  7. 小沢辰男

    小沢(辰)委員 私は、岩井さん時間もおありにならぬようでございますので、一、二点だけお伺いをしたいと思います。  この法案に、あなたもお触れになりましたように、私ども就職促進措置を裏づける手当の支給というものを実はつくっておるわけでございます。これは炭鉱離職者に対する就職促進手当とともに、一種の私は失業手当制度のはしりだと思う。将来における本格的な失業手当制度への前進のための萌芽だ、私はこういうふうに理解をすることもできるのじゃないかと思う。このような画期的な意味を持つ改正、これに対して反対であるようでございますが、総評は失対事業の規模の拡大ということを主張されておる。しかるに一方においては、失業手当制度というものの創設を主張しておられる。この二つの主張というものは一見矛盾するように思われておるわけでございますが、一体どのような失業対策のあるべき姿というものを考えておられるのか。この就職促進手当失業手当制度というものについての創設考えている原案に対する意味からいいまして、あなたの失業対策に対するあるべき姿を、ひとつ御所見を承りたい。まず第一点にそれを伺います。
  8. 岩井章

    岩井参考人 先ほども言いましたように、失業手当という制度について、フランスでもイタリアでもやっていますように、その一般的な意味での進歩性といいますか、そういうものについて総評も肯定をしておるのであります。ただ先ほど、あまりほめた言い方をしなかったのは、あまりにもそれにしては額が少ないのじゃないか。それは最初の出発だから額のことは重点でない、こういうお考えなのかもしれませんが、私たちから見ると、やはり失業手当制度というものを出発させるならば、それをもって最低生活ができる程度のものを支給すべきじゃないか、これが問題なんです。いま御指摘になったのは、単にそれだけの問題ではなく、失業対策全体についてということなんですが、私はこの法律の中で一番ポイントはどこにあるかというと、有沢会長のしゃべったことを先ほど言いましたように、各種の手当をつけるから、希望者はそちらのほうに水が低きに流れるように流れていく、そういうやり方であるならば少しも否定をいたしません。ただ問題は、一番中心的なことだと思うのですが、だれでも希望しておっても失対制度に入れない、ここがやはり一番中心じゃないか。だから現行やっている失業対策それ自体、私はさっき神奈川県の実例を見たというお話をいたしましたが、いまの失対事業というものは、一体これが何であるかということは、私自身にも明確につかみ得ないほど複雑なんであります。端的に言いますと、社会保障なのか事業能率を追求する性格のものなのか、この辺を私は実は国会委員各位に十分調べてもらいたいと思っているわけなんです。ところが現実では、非常に、どっちとも言えるようなあいまいな形である。私の見た神奈川県の事業のところでは、何百人という事業主体でありながら、わずかに道具というのはトラックが一台とどろを運ぶコンベヤーが一台、あとはシャベルがおそらく一人に一つくらいずつあると思うのですが、そういうやり方をしておいて、片一方では失対は能率があがらない。大体聞いてみると、能率をあげてはならない。これは県のお役人が言うのですが、そういうやり方になっているわけです。それは別に県のお役人の問題ではなく、いまの制度が一体どういうものかということがはっきりしない。せっかく皆さん方国会改正というか、この問題を再検討するならば、ここをしっかり討論してもらわなければいかぬのではないか。労働省で出しておる、政府で出しておる原案は、相変わらずそのあいまいさを残しておる。私は基本的に言えば、失対事業に働いている人が民間にできるだけ移っていくということを、一般的な意味では否定はいたしません。ところが、さっきも申し上げましたように、はたしていま働いている人たち訓練を受けて、どれだけの事業がその人々を雇ってくれるか、そういう保証は一つもない。小田原の訓練所を見た限りでも、そういう実例は少しもあらわれていない。ですから、この問題は確かに労働者経営者政府、そういう対立があるのですが、その対立よりむしろもっと根本的なところまでさかのぼって、全体で意見一つにまとめる方向をとるべきでないか。だから冒頭に言いましたように、この国会政府が提案をしたからどうしても通す、こういうやり方をせずに、もう少し広く意見を徴するといいますか、そういうやり方をぜひやってもらいたい。これは絶対反対という以前の問題として、基本的にそう考えます。しかし当面、ここでどうしても通すというなら、やはりこれは幾つかの欠点があるのだから、あいまいさがあるのだから私としては賛成はできない、こういう立場を先ほど申し上げたわけであります。
  9. 小沢辰男

    小沢(辰)委員 ただいまの岩井参考人の説明の中に、わが党として非常に重要な問題がございます。確かにおっしゃるように労働原案では不徹な点がある、しかしながら、あまり徹底をしますと——わが党はもう少し徹底をしたほうがいいという考えも実はあった、しかしこれはむしろかえって混乱を起こすもとになるから、できるだけ徐々に、自然な形でそういう考え方に持っていくべきだというような考えもあったことは事実であります。むしろその意味では、労働省皆さん方を庇護し、皆さん方組織の中でこれを育成し、いわば協力母体としてかわいがっておられる団体のこと、人たちのことも考えまして、実はいろいろと苦心をした作だと私どもは見ておるわけであります。これらの点については同僚委員からさらに質問があると思いますので、私はこれを同僚委員に譲りまして、時間もありませんからもう一点だけお伺いさしていただきます。  実は全日自労は、御承知のとおり組合員二十二万、総評傘下では民間組合として非常に大きな組織になっておるわけでございますが、労働組合というものを組織して、あるいは労働組合を正常にこれから発展さそうという場合には、こういう失業者組合というようなものが年々ふえるというようなことではなしに、逆に常用がどんどんふえて、それらの方が常用としてしっかりした労働組合組織に入っていくということが、ほんとうの姿じゃないかと私は思う。その意味において、皆さん総評のただいまの御意見でも何か奇異に感ぜられますのは、失業対策事業拡大をやって、全日自労のむしろ組織拡充というようなことを強く推しておられるような印象が世間に出ております。これは、はなはだ私は労働組合の姿としても遺憾だと思う。したがいまして、このような形で発達するというのじゃなくて、むしろ政府考え方のように、できるだけこれを常用に吸収をしていく努力をお互いにして、そしてそれらが組合の中で組織され、皆さん傘下に入っていくという姿のほうが私は正しいと思う。それについては、あなたはどう考えますか。
  10. 岩井章

    岩井参考人 それはさっきも小沢さんそのことをおっしゃっていたらしいのですが、全日自労というものが大きくなるほうがいいのか、本来的にこういうものがない、少なくも小さくなるという方向をとるのがいいかということは、これは抽象論としてははっきりしています。つまりこれは、ないほうがいいのははっきりしています。つまり失業者というものが一人もない、一人もないといっても実際にはなかなかむずかしいのでしょうが、少ないほうがいいのにきまっております。ただ、私が委員皆さんに反論してはいけないということになっているらしいのですが、実際の経営者立場に立ってみると、それでは一たん失業した人が何か腕に職をつけた場合に、そう唯々諾々と雇えるほどの、これは経営者の気持ちというよりは経済的な事情にあるだろうか、そこを私は逆にぜひ委員皆さん考えてみていただきたいのであります。もちろん国の法律の中で、身体障害者のことについて何%以上雇えというようなことが、たしかほかの法律であったような記憶もしておるのですが、この失対の場合にも、そういうことをしてもらうことができるかもしれない。しかし現実は、御存じのとおりオートメーションとか機械化とというものが進めば進むほど、雇用というものはむしろ拡大はしていないのであります。かりに拡大しましても、私が先ほど意見の中でも述べましたように、将来の職の保障とか、あるいは常用工であるという保障というものは少しもない。おそらく私は、失対事業に働いている人たちに一人残らず聞いてみればわかると思いますが、いまのまま喜んで、けっこうだ、こういう気持ちで働いている人はほとんどないと思います。やむを得ずその中に生活せざるを得ない、これはぜひこの委員会でも、私は現地を見ていただくとわかると思います。だから私が、質問された以外のことをちょっとしゃべるのですが、今度の問題が、全日自労の組合運動が悪いというところから問題がかりに出たとするならば、この法改正は非常に見当違いをしているんじゃないか、労働運動のあり方がいいとか悪いとかいうことであるならば、十分この法律以外のところで話し合いをすべき問題じゃないか。むしろこの法律をすることによって、ほんとうに私たち総評ががんばるのはその意味なのですが、労働者の中で一番みじめな貧しい生活をしている連中を、さらに食えないところに押し込んでしまう。それであるがゆえに、私たちはこうやって皆さんになまいきな意見を言うのですが、そういうことを中心にぜひこの国会でも審議をしていただきたい。私は心から委員各位にそういう観点をぜひ貫いていただきたい、そういうことを御質問にお答えして、私のお願いを申し上げておきたいのであります。
  11. 秋田大助

    秋田委員長 澁谷直藏君。
  12. 澁谷直藏

    ○澁谷委員 私からも岩井さんに一、二点お伺いしたいと思いますが、岩井さんは、たしか内閣の雇用審議会委員もやっておられると思いますから、この問題についての十分な御理解を持っておられると思うのでありますが、私はまず第一にお伺いいたしたい点は、この問題は、言うまでもなく突然として起こってきた問題ではないのでございまして、昭和二十四年、制度発足以来もう十三、四年たっておるわけでございますから、制度発足当時の社会経済情勢と、現在の社会経済情勢との間には非常に大きな変化があるということは、これは岩井さんもお認めになると思うのです。そういった中で、何とかしてこの現状を打破しなければならないという声は、これはもう大体、日本全体の世論と言ってもいいのじゃないか。そうして労働省原案が、いろいろな部外の学識経験者その他の意見参考にいたしまして発表されたわけでございますが、それに対して、珍しく日本の中央の各新聞の論説が、ほとんど例外なく、今回の政府原案というものは現状に対する大きな前進である、改善策である、こういう方向で論説を下しておるのでございます。これが一つ。  それからもう一つは、当面の失対事業事業主体でありまする都道府県、それから市長会、町村長会という日本の代表、これはもう自治団体全部でございますが、この三つの機関が、あげてこの政府原案の成立を期待しておることは厳然たる事実でございます。そういったような中において、私は率直に言って、これは日本の公正なる世論を代表する意見ではないかと考えておるのでございますが、これに対して岩井さんどうお考えでございますか。
  13. 岩井章

    岩井参考人 新聞の論説が書く書き方についてどうかというよりは、そのことをあれこれ触れませんが、市長会でもそれから知事会でも、この問題についていろいろ意思表示をしておることは、私も雇用審議会のメンバーの一人ですからよく知っております。ただ、私たちの同僚の委員である東大の相原氏が、この問題について、つまり市長会なら市長会が、なぜこの失対制度の問題について再検討を希望しておるのかということを、かなりの県にわたって調べたその報告が審議会になされました。それによりますと、いまの澁谷委員の観点がどこにあるかわかりませんが、財政的な面で行き詰まっていて、そこで失対制度の再検討を要求しておるのではない、こういう報告が、特に市町村段階についての幾つかの県を実地に調べた結果が雇用審議会に述べられておるのであります。私は、確かに市長会の中で改変を要望しておる意見があることも知っています。しかし同時に、またどこにその問題があるのかということについて市長会意見をいろいろ調べてみますと、いろいろさっきも私が言いましたように、盆暮れに押しかけて来ることがたいへんどうもわずらわしい、ここにやはり一つ問題点があるのではないかというふうに考えるわけであります。これは私をして言わせれば、非常に貧しい生活をしておる以上は確かに問題——労働問題の面で押しかけるということはあたりまえに起こるわけです。しかし、わずらわしさというものがあるとするならば、それは失対制度改正という問題とは本質的に違う問題であって、労働運動の面でこういうふうにしてもらいたい、ああいうふうにしてもらいたい、そういう問題なのではないか。私は先ほども小沢委員の質問にお答えをしましたように、いまの失対制度というものが、これはこれから将来ずっと現状でいいかどうかというふうに質問されますと、いいとは思わない。これは審議会の討論の中でもその意見を表明しております。しかし、今度の政府原案というものを見た場合に、それではいままで確かに国民の中からいろんな意見が出ておる問題に対して全部答えたことになるのかどうか、私もさっき言いましたように非常にあいまいな、不徹底なものがあると思います。ですから、先ほどから結論的に申しましたように、一年くらいぜひこの国会の中で十分審議をしてもらいたい。その過程で、労働団体の一つとして総評からも、この問題についての意見を出す用意があるということを雇用審議会でも述べておるのであります。だから私は、何でもかでも現状がいいというふうにはちっとも思っていない。しかし、だからといって、この改正案が非常にいいものだというふうにはちっとも思えない。むしろ幾つか先ほどから指摘しておりますように、非常に困難さというものをかえって増大させるのではないか。ですから、いやなことばなんですが、政府としては提案したメンツがあって、という気持ちはわかりますけれども、もう少し雇用審議会なり全体の会議にかける度量が必要ではないか。しかも有沢会長から証言してもらうとよくわかりますが、一番のポイントは、御本人が希望してそこに行くならよろしい、そこのところが、保障がやはりないのです。全日自労が、言いにくいことをみんな言うと、幹部がみんな共産党である。したがって、その連中が全部何でもやっておる、こういうふうに思っておるとするならば、非常に皆さんの認識が違うと思います。やはり個々の人々がどの道を選ぶかという自由を与えた上で、訓練なりあるいは民間に再就職という方向をとる、これを私はこの国会ではぜひ基本線としてやってもらいたいと思うのです。それを強制的にやるからこそ、先ほど自殺者の例をお話ししましたが、幾つかの問題が起こる。ですから、私たち総評ががんばる——がんばるというか、その問題について強い関心を持っている意味というものを、ぜひ国会の中でも十分取り上げていただきたい、私たちのほうからも相談する用意がある、いつでもこのことを申し上げているわけなんですが、そういう点をぜひ委員から、一番貧しい労働者のことなんですから、慎重にあたたかい配慮を加えていただきたい、そういうことを繰り返し繰り返し皆さんにお願いをしたいのであります。
  14. 澁谷直藏

    ○澁谷委員 では最後に、時間がないようでございますから、私はただいまの岩井さんのお話を伺って、非常にこの参考人意見を聞く機会を持ったことがよかったとしみじみ思うものでございます。いままで私は、岩井さんが総評の陣頭指揮に立たれて絶対的にこの法律案反対である、それで今度の国会では絶対これを粉砕するという立場で、まあネジを巻いておられるという情報を聞いておったわけでございますが、ただいま伺ってみますると、岩井さん自身が、この失業の状態にある労働者というものが一番みじめな状態で、一番ふしあわせな状態に置かれておる労働者である、したがって、こういう状態というものはとにかく一日も早くなくする方向にいくについては自分としては賛成だ、こういうことをおっしゃっておられる。したがって、岩井さんの御立場は、今回の改正法案については無条件の絶対反対という立場ではなしに、いろいろこの法律案を実施するについてなお解明されない不安の点が一ぱい残っておる、そういう点を十分ひとつ国会で論議をして、そういう不安を解消してやってもらいたいという立場でございますので、私はその岩井さんのただいまの御意見に対しましては敬意を払うものでございます。  それからもう一つ岩井さんがただいま陳述の中で、何かこの法律案が通った場合に、労働省が、失業しておる労働者の自由意思というものを押えつけて強権をもって何か役所の思う方向にそれを指示していく、こういうようなことが非常に心配だというお話でございましたが、かりにもそんなことがもし実行されるとしたら、これはもうたいへんなことでございます。労働者の職業選択の自由は、言うまでもなく憲法が保障しております基本的人権でございますから、これをじゅうりんし、押えつけて労働省役人がかってな方向に指示していくというようなことが行なわれるはずはございません。また私どもは国民の代表といたしまして、そんなことをよしも労働省がやるような意図があった場合は、与党の立場から、これはもう絶対そんなものには賛成するわけはないわけであります。岩井さんも十分にひとつこの法律案を検討していただけば、そういったような、強権をもって労働者の自由意思を押えつけていくといったような要素は絶対にないはずでございますから、この点はひとつ十分に御了解をいただきたいと思うのでございます。その他、実は岩井さんにはいろいろお伺いしたい点があるのでございますが、ほかの参考人も待っておるようでございますから、以上をもって私の質問を終わります。
  15. 秋田大助

    秋田委員長 ほかにございませんか。——吉村吉雄君。
  16. 吉村吉雄

    ○吉村委員 一つだけお伺いします。この失対事業の問題というのは、実は私は失対事業それ自身の問題ではないというふうに考えておるわけです。もし、先ほど来岩井参考人も触れましたように、日本の今日の状態の中で社会保障政策が充実しておったり、完全雇用方向が指向されておったり、あるいは正しい意味での最低賃金制というものが確立しておったとするならば、国会やその他で議論するまでもなく、この失対事業をめぐる諸問題というものは、解決しているはずだと私は、考えます。  ところで、今回政府から提案されておりまする法案の中では、特にいま雇用問題の中で一番重要だと考えられております中高年齢労働者に対する雇用対策というものが中心になっておるようでございますが、岩井参考人は、総評の事務局長として、今日まで各企業におきましていわゆる合理化というものがどんどん進められておって、たくさんの労働者が配置転換あるいは解雇のうき目をみているわけですけれども、その中で中高年齢者が占めている割合は相当多いというふうに考えます。したがって、これら企業から締め出された中高年齢者のその後の状態というものは、一体どういうふうになっておるのか、総評として把握している実績があれば、この際お聞かせを願っておきたいと思います。  それから第二点は、先ほども岩井参考人のほうから述べられましたけれども、今度の改正法案の中で特に問題だと思いますのは、職安所長の権限というものが非常に拡大されている。こういう点で、いわば登録失業者の今後の就職にあたっていろいろな義務づけというものが行なわれる、しかもその職業訓練というものをやっていこうとするわけですけれども訓練種目は、たしか今日の状態の中では十三、四種目くらいしかないと思うのです。こういう状態の中で、職業安定所長が、本人の意向というものを重視しないで、あなたはここに、あなたはここというふうになっていく傾向にあるわけですけれども、こうなってまいりますと、いま議論をされておりまするように、職業選択の自由というものはあったにしても、現実の問題としてはそれが保障されないということになりかねない。かりにこの法案が通るとしても、最低条件として私は、本人の希望と行政機関である職業安定所の意見というものが食い違う場合においては、これを処理するための何らかの苦情処理的な機関というものを置くくらいのことがなくてはならないのではないか、これが職業選択の自由のための最低条件ではないかと私は考えるのですけれども、こういうこともこの法案の中にはない。こういうことでございますが、この点についてはどのように考えられますか。以上二点をお伺いしておきたいと思います。
  17. 岩井章

    岩井参考人 先ほど澁谷さんがおっしゃった、この法案について私たち総評はどう見ているかということを、先ほど私はかなり正直に言ったつもりなんですけれども、この法案を通すことには絶対反対なんです。それは先ほど言いましたように、現状の失対制度というものはどのみち再検討して本格的に直さなければいけない、そういう弱点を持っていることは否定をいたしません。ただ雇用審議会でも、実を言いますと満場一致でなしに、かなり激論した結果、多数で通された答申なんでありますが、そういう傾向にあらわれておるように、一般の世論としても、この法案をもろ手をあげて賛成をしているというような状況ではないと私は思うのであります。ですから、先ほど申し上げましたように少し時間を置いて、十分国民全体の意見を徴する、そういうやり方をするならば総評としても意見をそこへ述べる用意があるということを言ったのでありまして、いまのこの法案は、私たち労働者側というか、働いている一番貧しい連中に少しでもよい結果を与えるとは少しも信ずることはできない。したがって、この法案が通されることには絶対反対なんであります。ですから、提案している政府・与党の側で、私はここはしばらく話し合いの期間を持ってもらったらどうか、そういうことを心から念願しているのであります。ですから、いま吉村委員から質問がありましたように、これはお答えするまでもなくはっきりしているのですが、最近の石炭の失業者の状況を見ましても、何%という数字はここへ持ってきませんでしたが、中高年の就職というものはほとんど実を結んでいません。審議の過程で、私は特に、そのことは家の問題が決定的だということをしばしば言っているのであります。私どもも中高年の人々が就職できることを希望するのですが、別居生活というようなやり方では、これはもうとてもできません。委員各位も御想像がつくと思いますが、それはもう子供や女房と離れて三カ月以上どこかに働いているというようなことは、できないのであります。ですから、政府でもこの点は関心を持っていられると思いますが、同時に、家のことも進めてもらわないと、全然絵にかいたもちになってしまうのではないか、こういうことを感じます。  それから就職の自由というのは、澁谷さんからあるんだというふうにおっしゃったのですが、職業選択の自由というよりは、失対に入りたいという人に対しては、訓練課程を経なければだめなんだ。それがある以上は、職業選択の自由以前の問題として、食うか食わないかというところに、ある程度労働者の自由というものを与えていないんじゃないかと思うのです。ですから、このところをこの法律で、いや失対制度にいくか訓練にいくか、全く自由なんだということになるならば、これは大いに検討してみなければなりません。しかし私が雇用審議会で知っている限りでは、どうしても訓練課程を経なければ失対制度にいけない、こうなっているのですから、ここが私にとってはどうしても納得のいかない一番の焦点なんです。
  18. 秋田大助

    秋田委員長 ほかに御質疑はございませんか。     —————————————
  19. 秋田大助

    秋田委員長 それでは引き続き参考人から意見を聴取いたします。小川参考人
  20. 小川広之介

    ○小川参考人 労働策室長と申しますと、京都市の場合には、失業対策事業一般労政をやっておるポストの仕事です。私は京都市でこの仕事を担当しましてからちょうど十年になります。そしてまた、京都市長会及び失業対策事業関係都市協議会でこの問題が取り上げられてから、ずっと研究会の幹事の代表としてこれに参画をしております。その点で、全国市長会及び失対関係都市協議会が取り上げた経過というものも、この際一通り申し上げまして、市長会の基本的な態度はあと金沢市長から申されますので、私は実務に関係しておる者の立場から、主として具体的な例をお話し申し上げ、その具体的な例が今度の法改正とどういう関係にあるかということに対する私の考え方を申し上げて、御審議参考にしていただきたいというふうに思っております。  先ほども話が出ましたように、全国知事会、全国市長会全国町村長会、都道府県議会議長会、全国市議会議長会、全国町村議会議長会、いわゆる地方の六団体が一致して現状の失業対策事業の形では困るということで、失対事業の改革を中心議題として持ち上げましたのは三、四年以前であります。それでその当時、失業対策事業というものをば市町村がやらなくてはならない義務的な仕事であるかどうかというようなことも、市長会及び協議会の中で検討されました。義務的な仕事でなければ、この際失対事業を返上すべきではないかというようなことが議論の中心になった段階もあります。しかし、そういうことが論議されておる過程で、もちろん一部の中小都市の、失対適格者の少ない、しかも比較的能力の高い労務者をかかえておる都市の市長は、固有事業というものがこの失対事業によって肩がわりをされる恩典、比較的高い、高率の補助事業であって、しかも一般の公共事業よりは補助条件その他のワクが比較的ぬるい、そういう点で、自分の都市においては失対事業を返上する意思はない、失対事業によって、先ほど岩井さんの言われたような固有事業が肩がわりをされておるということの主張をされる市長さんも一部にあったことは事実です。しかし、その市長会なり協議会の中で論議をされましたときに、その返上論が支配的になった場合に、義務的事業としての責任はなくても、地方自治体の持っておる性格から、住民対策としてたまたま住民が救済されるこういう法律があるのに、それを取り上げないということは、住民対策として地方自体には許されない問題ではないかということが議題になりまして、それで市長会としましても都市協議にしましても、あるべき姿、こうしてもらいたいということの考え方をまとめて、積極的に関係方面に要望すべきではないかということに落ちつきまして、市長会では、一昨年から東大の大河内教授外三名のその道のベテランの諸先生に、一年間の調査研究をばお願いしたわけであります。その結論に基づきまして市長会意見書というものをまとめ、そうして六団体と連携を持ちながら、労働省政府の各関係方面に、こういう形で改革をされないと、やはり地方自治体としては、失対事業をこのまま続けていくことは非常に困難であるということの強い運動が行なわれたわけであります。そういう形で地方六団体の意見は大同小異でございまして、積極的に強くうたっておるもの、あるいは消極的な表現もありますが、今度法改正でうたわれておる方向に、大きなワクの中には入ることで六団体の意見は大体一致しております。その具体的な問題については、先ほど申し上げましたように、あと金沢市長から述べていただきます。それで一つ一つ、現実に失対事業に実務的に関係をしております私としまして、この法改正とどういう関係にあるかということをば、私の知っております限りのことを申し上げます。  先ほど問題になりましたように、労働者のあるべき姿が、失業者という形であるべきか、常用労働者であるということとどちらがいいかということについては、岩井さんも、失業者よりは常用労働者であるほうがいいにきまっておると言われました。そのことは、どの人も否定される人はないと思います。しかし、かりに現実に、それでは常用化への道が完全にいまの日雇は労働者に断たれておるかどうかということが問題です。京都の例で申し上げますと、今年度、京都市地域の全産業が求人申し込みをば職安にいたしましたものに対する充足率は二八%です。三割足らずしか労働者が得られない。しかも一方に日雇い労働者が残っておる。その問題はどこにあるのかということです。それは結局、皆さまも御承知のとおり中高年齢層ということの問題であります。京都にも労働者構想によります三者構成の労使懇談会がありまして、私もその委員の一人として出ておりますが、そこでも中小企業の経営者から、この求人難に対する何らかの打開の方向をばこの懇談会の中心題目として取り上げてもらいたいということが強く叫ばれております。それで私は経営者の諸君にも、ほんとうに求人に困っておるならば、やはり中高年齢層の問題に取っ組むべきではないかということをば主張いたしました。それほど求人権に困っておっても、中小企業がなぜ中高年齢層を採らないかということの原因ですが、結局若年の労働者に比較して仕事の能力が低い、一言で言えば若い人と比較して使いにくいということが主たる原因のようです。それからすでにいろいろな変わった形での人格が形成されているので、しろうと工として新しい工程に乗せても、なかなかなれにくいというのが求人者側の言い分です。また求職者側の日雇い労働者の諸君がなぜ常用にいかないかということになりますと、問題になります中小企業が賃金が低い、大企業に比較して労働条件その他が安定していない、それからいまさら年がいってしろうと工として行くのはおっくうであるということが、主たる原因のように私は聞きました。そのことは、結局は職安が職業紹介のパイプとしての役割りを果たすという点で欠けているのではないか。十分な方策がとられていないのではないか。現在の職安の窓口というものは、大部分日雇い労働者の日雇い雇用のための窓口という仕事に追い回されて、常用化への就職の業務が非常に欠けております。その点でもし職安の窓口が強化されて、パイプの役割りを果たすということになれば、日雇い労働者の相当多くは常用化への道が開かれるのではないか。それから日雇い労働者であるがために、常用化される労働者として行く場合に、就職のための支度その他いろいろのものも要る。いわゆる月二回払いあるいは月給制になるということで、現在日雇い労働者として日々に賃金を受けているということからくる一つの隘路がある。これの一部はすでに労働省で打開されておりますが、年がいって、いまさらしろうと工として行くのはおっくうだということが主たる原因のように思います。京都市の場合で、その点で成功している例を申し上げるわけでありますが、私は京都市の失対事業を担当しまして、京都市の主として現場関係の正規職員に、日雇い労働者からすでに八百人程度の登用をいたしております。それがいま京都の現場関係の中堅の職員として仕事をしておるわけでありますが、これは失対事業の現場において当たり番、いわゆる同じ現場に紹介するというシステムをとり、そしてそこの中から正規職員として採り得るような能力のある人をば臨時職員に採用し、現在では全部正規職員に採用している。こういう点で、仕事の過程で何らか親切な道を開けば、この中高年の失業者の少なくとも新しい職場へ行くおっくうな気持ちというものは排除する道があるのではないか。その点を市長会その他の団体も強く主張いたしまして、今度の法改正案の中には、都合によっては民間業者の工程に乗せて委託訓練をやって、そしてそこに適応する者は正規の手当あるいはまた委託費も出し、また就職の支度金も出してそこにはめていこうということをわれわれも主張し、ここにも取り上げております。こういうことが実現すれば、いまの日雇い労働者の相当部分の常用化への道というものは開き得ると、私は私の経験を通じて感じております。  それから先ほど岩井さんも言われました、新規に登録を申請する者に対してすなおに失対事業に入れないのではないか、なるほどこれが今度の法改正一つ問題点であります。しかし先ほど申し上げましたように地方団体六団体も、やはり住民対策としてこの問題を取り上げるならば、まず常用化への道を開くべきであるというその筋を通して主張しております。それが要求が入れられて、法改正の中にそういう方向が取り上げられた一つの理論的根拠だと私は理解しておるのです。それでわれわれも主張し、雇用審議会でも条件がつけられ、結論としていま提案されておるものは、まずそういう過程はたどっても、これは民間雇用へは不向きな人であるという人は、もちろんいまやっておる一般の失対事業に吸収するということがうたわれておりますし、日雇いよりは常用工がいいという前提に立つならば、まずその求職者に対して常用化への道を講じて、それがいけなかった場合に失対事業に吸収するという方向が、やはり日々雇用よりは常用のほうがいいという前提に立つならば、私はそうあるべきだと思います。もちろんこれは、運用の面について相当問題はあると思います。その点についてこれらの対象となる労働者に対して、親切ないろいろの実際面の運営というものが得られるように私からも強く希望しますし、もちろん委員の諸先生からもそういう御要望はあると思いますが、一応日雇いよりは常用のほうがいいという前提に立つならば、やはりそういう形が妥当であろうというように私は考えております。  それから次に、高齢者の就労事業の問題でありますが、実際に私は十年間失対事業の担当者としまして見ておりまして、七十歳、八十歳になった老齢の日雇いさんが、夏は炎天——京都は特に暑いのですが、三十六度、三十七度というような炎天で仕事をしておる、冬は零下五度、六度のところで仕事をしておるということは、これは明らかに人道上間違いだと思っております。そういう点で、京都の場合、いまの法で許される一般失対事業の中で、年寄りだけをば希望者を募って、昨年から老人だけの現場というものをば開いております。もちろん現行の失対法では、雇用対策というたてまえに立っておりますために、歩掛かりの計算できない種目というものは原則として許されません。老人だけのグループをつくりましても、おのずからその種目は限定をされます。しかし老人だけがプールされるということのために、現実に京都の日雇い労働者の高齢者からは感謝をされております。これはあとで、中西さんは中西さんの立場からいろいろお話があろうと思いますが、現実に感謝をされており、しかもまだ五、六百人から、その現場へ入れてくれという強い要望の申し入れを受けております。これは全民労はもとより、全日自労の過半数の高齢者の労働者からも、現実にその老人現場に入れてくれということの申し込みを受けております。そういうことで、やはり老人を老人の就労現場に別にプールをし、しかも今度の場合には、ノルマをはからない、いわゆる歩掛かりをとられない、事業種目事業主体の自由にまかすということの方策がとられまして、屋内作業その他も自由にやられるということの形で、社会保障制度確立していない今日の状態においては、憲法二十五条を理想的に読む福祉国家というものがまだ遠い将来である今日の状態においては、生活保護には現実に追いやれないこれらの老人の諸君を、やはりその能力に応じた形において就労させるということは当面絶対に必要であるということをば、私は私の経験で確信をしております。  それからもう一つ、現在の法の運用では、世帯主ということが適格の条件になりまして、五人以下の場合に一人、六人世帯以上の場合に二人ということの制限を加えられております。そのために、特に関西では、先ほども問題に出ました同和問題とからむわけでありますが、たとえば京都市の例で言いますと、京都市の人口比率は、同和地区の居住者は三・五%、百三十万の中に占める同和地区の居住者は四万余りです。失対の適格者の中には五〇%を占める。その原因はいろいろ問題になるもろもろのものがあると思いますが、現実にやはり同和地区の諸君の就職の場が、民間全体ではやはり完全な形で開放されていない今日の状態というものが、結局五人世帯以下では一人だということで、世帯を分離して、夫婦協議離婚をしましてそういう形でやっておる。そのために、失対の三十五万のその背後には六、七十万の子供さんたちがあるわけでありますが、その子供たちは、おとうさんとおかあさんがそういうことのために戸籍を分離しておるというような現実の悲劇の問題があります。今度の法改正雇用対策の方針にとりますので、そういう制限がはずされることになります。これも私の経験から見た今度の改正の非常に顕著な問題だと思っております。  そのほか賃金問題については、もちろんいままでPWの一割、二割安いということの賃金制度をとっておったものをば、やはり同一賃金の法則に基づいて出す。これはいままで一割、二割安くしておったことは、結局失対を吹きだまりにさしてはいかぬということでやったわけですが、そのことが、結果としては賃金が安いのだから働かなくてもいいということもまた反面出たわけです。その点で、新しい法においてはわれわれの主張が通って、その低賃金づけをやめております。  そういう面で、やはり結論から申し上げますと、完全な形における福祉国家ができるまでは、やはり失対事業の果たす役割りというものは非常に大きい。そして大きいならば当面どうあるべきかということの立場に立つならば、一〇〇%われわれの要求がいれられたとは考えませんが、大体当面の策としては、今度の法改正案というものは、われわれ市長会あるいは全国協議会においてはこの法のワク内において改正をしてもらうべきではないかということをば、態度をきめました。そういう点で、理想的なあるべき形というものと比較しますと、足りない面は相当ありましても、いまの時点で、非常に深刻な問題であるこの日雇い労働者の当面の打開策として、この法案をぜひ今国会において成立させていただきたい。これは単に三十五万の日雇い労働者だけではなしに、私もかつては日雇い労働者のような家庭に育った一人でありますが、六十万、七十万という子供たちがその背後についております。理論は理論として、完全な福祉国家ができるまでは一切のごまかしはやめるというような理想論を唱えるのじゃなしに、やはりこのものを言えない六、七十万の日雇い労働者の子供の生活というものを私は見ておりますので、そういう人たちのことも考えて、当面の打開策として、この法案の成立のためにひとつ御協力をお願いしたいということをば申し上げておきます。(拍手)
  21. 秋田大助

  22. 近藤文二

    近藤参考人 私は大阪市立大学につとめております近藤文二でございます。  昨年の八月に社会保障制度審議会は、「社会保障制度の総合調整に関する基本方策についての答申および社会保障制度の推進に関する勧告」をいたしたのでございますが、その中で失業対策の問題に触れまして、「この際政府は、現に失業対策事業就労している者の生活を不安にしないように配慮しつつ失業問題を根本的に掘り下げ、完全雇用の見地にたった西欧流の本格的な失業対策確立すべきである。そしてこれにともなう財政的支出は惜しむべきではない。」このように申しているのでございますが、今回の職安法並びに緊急失対法の改正はこの趣旨に沿ったというふうに、私正直でございますから理解いたしまして、基本的な意見としては賛成でございます。  この改正反対されます方々は、現在の失対事業を廃止してしまう、あるいは打ち切る、そして現に失対就労者として働いておられます三十四万人の中から、若壮年層は民間一般雇用へ転換をはかって、老人、婦人、病弱者等は生活保護に切りかえていくのだから反対である、とおっしゃるのでございますが、私はどうもその反対論は、今回の改正内容を誤解しておられるからではないかというふうに考えるものでございます。  率直に申しますと、私たち学校に関係しておりますような、何ものにもとらわれないものの立場におりますところの者が五人ばかり、労働大臣から頼まれまして、そしてこの失業対策問題をひとつ調べてもらいたいということであったのでございますが、これは実は六人おって、そのうち一人なくなられまして五人になったのでございますが、五人の者が各自の考え方で研究をして、結論を申し上げる、したがって共通の結論になるというわけにいかぬだろうというふうに申しておったのでございますが、研究を重ねてまいりますと、偶然五人の研究員の意見が一致したのでございます。その研究員の考え方は、要するに現在の失業対策事業に働いておられる方に対しまして、歴史的な失対事業というものを見てみると、どうも本格的な就労の場所を与えるという考え方に立っていないようである。結局その最初考え方は、再就職の機会を待期する場として失対事業というものを考えられたようでございますが、実際やってこられたところを見ますと、たとえば低率賃金の原則だとかあるいは日々紹介——継続して紹介すればいいものを、日々職安のほうで紹介されるというような形で、いわば賃金を低くし、またいやがらせをやって、そうしていやな者は自然に一般就職の場に出ていくように仕向けるようなかっこうになっておる。それはどうもおかしいのであって、むしろ積極的に、失対で働いておられる方に対して常用の職場を発見して、転職するように訓練し、あるいは雇用を奨励する。労働市場の自然の動きのままにまかしておいて、いま申したような低率賃金の原則とかあるいは日々紹介等のやり方をしておるのでは基本的に間違っておるのではないか、こういう考え方をとりまして、現に働いておられます方々と直接お目にかかったりして、いろいろと聞いてまいったのでありますが、結局三つばかりの層に分けることができるのではないか。  一つの層は、肉体的に見ても技能的に見ても十分働く能力を持っておられるようである、ただそれを十分就職のあっせんを従来やらない、失対の窓口と就職のあっせんとがばらばらになっておるというようなことでこういう形になっているのだから、そういう方々常用の場を望んでおられるに違いないのだから、ひとつ職業相談なり転職訓練なりを十分やっていただいて、訓練期間中は訓練手当を出す、しかもその訓練手当は、扶養家族の方も生活に困らないような内容手当を出す、さらに手当を出して訓練をしていただいたあと就職ができない期間は待期の手当を出す、さらにまた就職の支度金を出すというようなことをやって、常用の再就職の場に一日も早くついていただくようにする。それから中にはすでに普通の激しい労働にはつくことができない、しかし軽い労働ならばつけるというような、年齢がある程度高いとか、あるいは御婦人のような方、御婦人といってもいろいろあるわけでございますが、いま申し上げたような肉体的に見て労働力が総体的に低いというような方々には、先ほど申し上げたようなやり方ではむずかしいから、そういう方々には失対事業を残しておいて、そこでもって働いてもらうが、しかし失対の事業やり方は、今日のようなやり方でなく、普通の就労の場にもっと近づけるように近代化していくべき必要がある。たとえば適格条件というようなものはおかしいじゃないか、一つの所帯に一人しかとらないということはおかしいので、夫婦とも働くとおっしゃるならば、夫婦とも働いてもらうべきだ。また継続して仕事があれば、わざわざ日々紹介をするというようなことはやめろ。いな日々紹介をやるために現場に行くまでに疲れてしまわれ、現場へ行くと働くだけの労力を失ってしまわれるという、こんなやり方はいけないのじゃないか。だから継続紹介の形をとる。もちろん低率賃金の原則というようなやり方は間違っておる。したがって、地域的に、作業的に賃金というものをもっと正確につかんで、たとえば期末手当のようなものも、本来は賃金でございますから賃金の中に繰り入れるとか、あるいは期末手当を認めるならば、期末手当としてしっかりしたところのものを認める。こういうようなやり方でもって、国も積極的な責任をとって失対事業というものの近代化をはかっていくべきである。これは何も失対打ち切りではなくて、先ほどからお話に出ておりましたが、岩井さんでも認めておられるような、いろいろ欠点のある失対事業やり方を変えろということでございますから、これをどうして失対打ち切りだとおっしゃるのか私はわからぬ。悪い失対をよい失対にするということなので、悪い失対をいつまでも残しておけという意見が、どうも私どものような正直者にはわからないのでございますが、わからぬことはわからぬままでいたし方ございません。  さらに、私個人的に研究をいたしておりますところの社会保障の問題に関連があるのでございますが、全く働く能力を持っておられないような非常な高齢者、あるいは病気にかかっておられるような方が失対の仕事についておられるのであります。こういう方々に、あなた方そういうお仕事をされるのは無理じゃないかというお話を申し上げましたところが、遊んで生活保護のお世話になるのはいやだ、やはり人間である限り働いておりたい、こうおっしゃるのであります。これはまことに無理からぬ話でございまして、社会保障制度としての生活保護法を改善したということだけでは話の筋道が合わないのでございます。そういう方々には、そういう方々に向いたような職場をつくって提供するというのが必要であって、本人さんが、年をとっておるけれども自分は生活保護法はいやだ、やはり老人ならば老人向きの職場で働かしてくれとおっしゃるならば、そういう職場をあっせんする、あるいはできなければつくりまして、そういう人たちをそちらの方向へ持っていくということは、まさしく今日の失対事業をよりよくすることでございまして、私たち研究員は、失対に働いておられる方を、今日のようなわけがわからぬような状態に置いておくということに対しては義憤を感じたわけでございます。この点が、どうも反対をなさいます方には通じないようでございまして、通じさせるだけの力がわれわれにないのか知りませんけれども、ひとつこの際、そのほうの最も専門家の中西さんがこれからお話しになりますので、いろいろとお教え願いたいと思うのでありますが、実は中西さんは全日自労を代表してではないかと思うのですが、お書きになっておるものがございます。それを拝見いたしますと、労働省に対しまして五カ条の要求をなさった。  その要求は、まず常用であるというところへ就職促進をはかるならけっこうだ。その次に、賃金最低一万五千円を保障する。それから第三に、社会保険や退職金制度が完備しているところ、そこへ世話をしろ。それから、もしそういうところから離職しなければならなくなったときは、失対事業へ戻ることができるように認めなさい。最後に、本人の自由意思を尊重するということ。この五カ条を出しておられるのでありますが、これは私、まことに正しい文句だと思うのであります。そのこと自体には少しも異議はないと思うのでありますが、ただ現実の問題として考えますと、いろいろ問題が出てくる。と申しますのは、賃金最低一万五千円を保障するということをおっしゃっておるのでございますが、私は最低賃金制度を本格的なものに一日も早くしたいという希望を持っておる一人でございまして、その場合に、失対関係のほうから出ていった人だけに一万五千円を保障するというのは、ちょっと私には理屈がわからぬような気がするのであります。それから、その他の点につきましては、今回の改正は大体この御主張をいれておられるように私は解釈しております。たとえば常用であるという点でございますが、今度の就職促進手当をお出しになるような場合には、あるいは事業主にお金を出されるような場合には、その事業主は、雇われる場合には必ず常用労働者として雇わなくてはいかぬ。それから社会保険も、日雇い失業保険でなく一般失業保険にはいれるようなところでないといけない。退職金制度が完備しているところとなるとちょっと問題がございますけれども、社会保険に関する限りは、大体労働省側の考え意見が一致しているらしいのでございます。それから、離職して失対へ戻れるかどうかというのですが、これは私、今度の新しい失対では戻れることになっていると思うのです。この点についても誤解があるのじゃないかと思うのですが、訓練を受けられるあるいは訓練を受けた後に職場が見つからぬ、こういうような場合は新しい失対に入るということにならざるを得ないと思うのであります。  それから先ほどからしばしば問題になっております本人の自由意思の尊重の問題でございますが、これはどうも私にはわからぬのでございますが、職業指導、職業紹介、いろいろなことを今度おやりになります。ことに訓練のための措置もやられるのでありますが、特に就職促進の措置に関する計画とかいろいろな基準は、岩井さんのお入りになっている中央職業安定審議会意見を聞いて定めるとありますけれども、こまかい問題は中央の職業安定審議会におはかりになっておきめになるらしいのであります。これが問題なんです。中央職業安定審議会がしっかりしているか、しっかりしていないかが問題なんで、私はしっかりしているものという前提で話をしている。これがしつかりしていないというなら、話はまた別であります。そういう意味におきまして、中央職業安定審議会を中心に、どのようにこの制度が運営されるかというところにポイントがあるのでございまして、法律改正は一日も早くこれをやって、そしてその運営が実に進歩的であるということを政府がお示し願うことを切に私は望んでやまないものでございまして、それらの点について、どうも私の理解が反対される方の理解と違うような気がしてしかたがございませんので、その点、ひとつ国会先生方よろしく御検討の上、私のような考えを持ってお進め願いましたら、おそらく与党も野党も同じ結論になって、法改正賛成されるのじゃないかと私は感じておるのでございます。  そのほか、たとえば賃金の問題等につきましても、賃金審議会ができてそこでいろいろ研究して、それで労働大臣がきめる、このやり方は、賃金問題に対する基本的な団体交渉権というようなものを剥奪することになりはしないか、こういうお考えがあるのですが、先ほどからお話しのあったように、非常に貧しい人々なんです。こういう人々の場合は、団体交渉でいくよりは、政府最低賃金制度をつくりまして、そして政府の力によって賃金をきめるというほうが、地域的に考えても、業種別に考えましても、りっぱなものができるのじゃないか。しかしこれも、賃金審議会がどういう考えの動き方をするかによって変わってまいるかと思うのですが、その賃金審議会の検討が正しいものであるとするならば、あえて団体交渉権云々を言われる必要はない。もしここでそういうことを言われるとするならば、最低賃金制度そのものに対しても反対立場をおとりにならなければ、どうも一般的な団体交渉の関係がわからぬ。  それからもう一つは、社会保障との関係でございますが、法律案のほうを拝見いたしますと、非常に年寄った失業者就労する人につきましては、同一地域における類似の作業に従事する労働者に支払われる賃金及び社会保障制度による給付の水準等を手がかりにされるようになっておりますが、このあと社会保障制度というのは、生活保護法であるというふうに解釈すれば問題が出てくるかもしれませんが、社会保障制度生活保護だけではございません。したがいまして、考え方を私流に申し上げますと、一応同一地域の類似の作業の賃金を前提にするのだが、それでは低いというような場合には、社会保障制度のいろいろな考え方からもっと上げなさい。たとえば、現在のやり方でございますと、一つの世帯から一人しか出られぬ。ところが、今度は一つの世帯から二人、老人夫婦が来られてもその新しい仕事につかれるとなりました場合、その収入は現在より私はふえると思うのであります。だから、これをただ生活保護のほうへ引っぱり込んでしまうのだという読み方は、あまりにも残酷な読み方でありまして、私は残酷物語はあまり好きませんので、そういうようなものをなるべく前へ進めていきたい、こういう意味において、この案の精神は、反対考え方とちょっと違うのであります。いろいろそういう問題がございますが、要するに、先ほど申し上げました中西さんの要望を聞きますと、基本的には制度改正反対しておられない、ただ今度の改正の中身について問題がある、こういうことでございますので、中身についてただすべきはただして、一日も早くこの改正案国会先生方によって成立いたしますことを望みまして、私の意見口述を終わりたいと思います。(拍手)
  23. 秋田大助

  24. 正田誠一

    正田参考人 九州大学の正田でございます。  私、九州で仕事をしておる関係もございまして、この失業対策事業の問題にどうしても取りかからなければならなくなったのが、およそいまから十年ぐらい前のことでございます。御承知のように、昭和二十八年以降九州の石炭産業に非常に深刻な不況が襲ってまいりました。そして炭鉱の失業者が失対事業に入っているけれども、きわめて低劣な条件に置かれている。さらに三十年、三十一年、景気は回復に向かい、神武景気というようなことがいわれましたけれども、そういう情勢の中でも、失業対策事業に入っておる人たちは、ほとんど浮かばれないという実態にぶつかったからでございます。その後、石炭産業だけでなく、そのほかの産業についても若干勉強いたし、あるいは九州だけでなく、それ以外の地域についても勉強する機会を持ちまして、先ほど近藤先生が文字どおり義憤を感じたとおっしゃいましたけれども、私どもも十年前に、このようなひどい失対事業の現状というものについて義憤を禁じ得なかったのであります。それでは失対事業をどうすればいいかということは、もちろんわれわれ学校の人間が、にわかにどうこう意見を持つわけにはいかない問題がたくさんございましたけれども、勉強している間にこのことがわかりました。それは、失対事業がきわめてひどいものであり、まずいものである。けれども、それは失対事業を、この点を直す、あるいはこの点をこっちに向けるというふうな改善をますことで、どの程度改良できるかという点が問題なのである。実はその点では、非常に限界が低いものだということを勉強させられました。たとえば特別失対事業につきましても臨時就労にいたしましても、あるいはその後の炭鉱離職者の緊急就労事業にいたしましても、程度の違いはありますけれども、みんなそれぞれ、失対事業の現状がいろいろの点で思わしくないから、このような改良をしてみたらどうか、あるいは雇用対策としてこのような方法を講じてみたらどうかという、いろいろな努力がされたのでありますけれども、しかしこれは必ずしもいい成果をあげなくて、また当初予定されておりましただけの事業量にも達しなくて、年々だんだん低下するというような実態を見ております。そこで、この十四年ないし十五年にわたります戦後の日本の失対事業の経過を勉強しました中から、私は次の四つくらいのことを教訓として学んでいるわけであります。  何かと言いますと、日本の失対事業が今日のような状況になっておる一番根本的な理由は、第一が、失業に対する社会的な保障が欠如しているために、あらゆる災いが生まれてきておる。これは何も私の発明ではなくて、皆さま方が十分指摘されておるところでありますが、それを現地では特に強く教えられておるわけであります。  第二番目には、安定雇用と申しますか、雇用を安定させる政策的な努力、この点がきわめて不十分である。不十分というよりも、雇用の量なりあるいは雇用の方法なりということはいろいろいわれるけれども雇用を安定させるという点について、政策としてはほとんど見るべきものがなかった。このことが、失対事業を今日のような事態に持ち来たしていることの第二の理由であるということであります。  それから第三番目の理由は、これも指摘されておるところでありますけれども、失対事業で働いておる人たちの状況を見ますと、失業者であっても労働者であることには違いありません。しかしこの失業者労働者として持つべき基本的な諸権利、これが長年の失業の間に、あるいは過酷な労働生活条件の中で、きわめて深刻に侵害されている。そのことが、失対事業が今日のようにきわめて低劣な、そしていろいろな点でまことにまずい問題をたくさんに持っているという事態を生み出しておるのだというふうに考えております。  第四番目は、これも指摘されておることでございますが、賃金あるいは労働生活の関係につきまして、失業者が家族扶養の負担を持っており、この家族扶養の負担に対してこたえるということがきわめて長い期間無視されている。最近は無視できない——あるいは今度の法改正についてもその点が先ほども強調されましたけれども、しかし戦後の十四年間を見てみますと、基本的な性格としては、家族を扶養する負担、これが失業者には固有のものとしてくっついている、このことできわめてたびたび無視されてきた。大体この四つのことが、失対事業を今日のような状況にした最大の理由であるというふうに考えております。  そこで、失対事業についてさまざまな改善意見が出されており、賛否両論がございますけれども、私どもが勉強いたしましたところでは、失対事業を失対事業だけとして技術的にいろいろ改善をする、あるいは技術的に雇用対策あるいは社会保障というようなことを部分的に取り上げるいろいろな努力がされておりますけれども、失対事業がまともなものになるか、あるいは先ほどから言われておるように、もう失対事業のように時代おくれのものは必要でなくなるというような事態になるかどうかというのは、いま申し上げたような四つの点がどれだけ充実されるか、どれだけ発展をするかということによって規定されるのだ。逆にこの四つの条件が少しも前進しないならば、あるいは非常に重要な点でこれが無視されるならば、失対事業というものは解消することができない、こういう性格を持っておるというふうに理解しております。そしてその結果として、どういうことが結論として出てくるかというと、いまのような四つの条件が欠けており、きわめて低劣であったことの結果として、失対労働者の実態というのは失業を何度も何度も繰り返し、そうしてその失業のたびごとに段階的に転落していく、これは仕事の面でも転落していきます。生活の面でも転落していきます。また次の再就職のための条件を封じられていきます。そうしてその結果として滞留する。こういう一つのかなり特殊な失業の型をつくり出してきておる。そうして失業対策事業における一つの難点として、いろいろな点で滞留的な現象が根強いということがいわれますけれども、それは失対事業を取り巻く、日本失業状態が、段階的に転落し、滞留せしめるような事態を少しも改めていない。そうして改めないだけでなくて、高度成長といわれ、経済の拡大といわれておる中で、段階的に転落させるその力むしろ強化しておる。その結果が、今日の失業情勢についてきわめて解決の困難な問題を生み出しておるのだ、このように理解しているわけであります。  そこで失業対策事業及び職業安定法の今般の改正意見につきましても申し上げたいことは、これらの点からして、第二の問題としまして、雇用失業の情勢についてどういうふうに問題を取り上げるかという点で、もっと問題を明らかにする必要があるのじゃないかというふうに考えております。どういうことかと申しますと、すでにこれまで触れられましたことでございますけれども、経済の拡大雇用拡大の反面において、後退産業や後退地域、ここでは失業の問題は一そう深刻化しておることはみなよく承知しておるところでありますが、それだけでなくて、成長産業やあるいは前進地域においても合理化、それから集中化、過剰生産、こういった条件が表面化いたしまして、過剰労働力の排出というものがきわめて強力に行なわれるようになってきております。私どもは抽象的な人間でございますから、こういうことを言ってしかられるかもしれませんが、失業対策の勉強をいたしますと、古典的に、失業対策について一番大切なことは何かと言うと、失業者をなるべく出さないようにすることだということを私どもは学生のころから勉強してきておるのでありますけれども、今日、あるいは合理化といわれ、あるいは自由化に対応する態勢といわれて、失業者をどのように出すか、これを規制するかという点については全然その規制が行なわれておりません。けれども、やはり今日のこの失業情勢、雇用情勢を見ますと、わが国においても労働力を排出する、これを全く手放しにしていいのかどうかという問題が、この失業雇用問題について一つ出てくるわけであります。  それから第二番目の問題といたしましては、今般の改正案におきまして雇用促進あるいは訓練手当、あるいは求職活動に対する手当といったような点で、いろいろな手当が考慮されております。先ほどの御意見では、これは十分ではないかもしれないけれども、やはり失業手当法というものに結びつくべき、あるいはそちらの方向に進むべき画期的な措置だという御指摘がございましたけれども、この点がどうであるかはあとで触れるといたしまして、このような失業手当法等々によりまして失業者がはっきりと表面にあらわれ、そうしてまた、それがたとえば失業保険の期間が切れるとどこかに消えてしまうというのではなくて、もっと長く労働市場の中に失業者としてあらわれておる。失業がこれまでよりももっと明らかに出てくる、またもっと大量に出てくる、また失業の持っておる性格がもっと鋭く出てくる、こういう問題があるわけでありましょう。そこでそういう意味からいたしますと、よく指摘されておりますように、先ほども小川さんからお話がございましたが、統計でいっても、求人の窮迫しているところでは求人対求職の割合が一対一だ、あるいは実際の企業では三割程度しか求人を充足することができない、絶対的な労働力不足というようなことになって、これは十数年前の緊急失対が行なわれた時代とすっかり条件が違ってきているんだというふうに言われますけれども、これは部分的でございますが、産業をとりまして企業別あるいは職種別に若干の調べを見てみますと、やはり比較的に社会的に見て位置の高い職種や、あるいは条件のいいところに対して殺到率は非常に高いのが現状であります。したがって、失業者にもしこのような安定した雇用に適応できるような方法を与えて、そうして本格的な技能労働者として働くことができるような、そういう方法を講じたならば、おそらく殺到率一対一というようなことではなくて、非常にたくさんの求職率があらわれることは明らかであります。だからその点で統計ももちろん重要であります。また長年にわたる変化について、御専門の方々が十分検討されているとは考えますけれども、なお一そうここに失業がどのようにあらわれるか。また失業者が職業とどう結合するか、今日の条件のもとではそれがきわめて制限されておる、きわめて結びつきにくい、こういう点をもっと現実に即してつかまえて、その上で今日の雇用失業情勢を十分に論議していただきたい、こういう希望を持つのであります。  それから三番目の問題といたしまして、先ほども申しましたけれども、今日の失業対策事業について指摘されておりますような失業対策事業に固定化する、あるいは失業者就職希望をとってみるときわめて低い、きわめて不活発だ、このような雇用情勢のもとで、このような労働情勢のもとで固定化したり就職希望が低いのは、これは何かほかに原因があるのじゃないかというような指摘がございますけれども、私ども若干勉強した限りでは、それはこのように理解されます。何かと言いますと、今日の失業対策事業就労が、決して安定したものでないことは言うまでもありません。またその条件がきわめて低劣なものであることも言うまでもありません。にもかかわらず、それよりももっと不安定な零細企業やあるいは拾い仕事のような、あるいは全くのあてがいぶちのような、そういう不安定な労働のまっただ中にさらされておる、失業状態、半失業状態の中にさらされておる、そしてその中であるいは生活保護あるいは失対事業、こういうものにやむを得ずしてしがみつかざるを得ない、こういった事態があらわれているわけであります。これは安定雇用政策雇用をもっと安定させ、あるいは安定した職場というものについて、これを政策、努力をもってもっとこちらの方向に充足するということをやるならば、このような滞留性というものは非常に大きく改善されるわけであります。しかしそれをやらないなら、いまのような客観的な条件として、もっともっと不安定な、もっともっと無権利な事態があるとしますと、これはにわかに解決できるものではない、こういうことがわかるわけであります。  以上によりまして雇用失業情勢の評価につきまして、全般的に見まして雇用拡大し、あるいは近代化しておることは、私は決して否定するものではございません。しかし、失業対策また職業安定は、その中のまずい点、その中の難点をあやまつことなく十分な把握をして、その上に問題が立てられることを必要とする、その意味では雇用失業情勢はきわめて深刻な問題を、いま申しましたような三つ、四つの点で持っておる、これは決して楽観を許されないのじゃないかというふうな判断を持っておるわけであります。  三番目の問題といたしましては、失業滞留の問題の中で中年層、高年層の問題が取り上げられております。そしてこれが最大の問題だというふうにいわれるわけだし、また事実そうなのでありますけれども、先ほど申しましたように十年ぐらい前からこの問題にぶつかって、その後の経過を見てみますと、さっきもちょっと申しましたけれども、一人一人の——全部ではございません。もちろん全部当たる能力はございませんが、できるだけの失対就労者の人について、ただ単なる統計的な調査じゃなくて、少し詳しく身上調査のようなものを聞かしてもらっていろいろな勉強をいたしますと、この人たちが実にたびたびの失業をしております。そして実にいろいろな就労の機会を求め、何とかして雇用生活を安定させたいという個人的な努力の歴史を持っております。三回、五回、十回というような失業と半ば失業したような状況、そういう生活の歴史を持っております。そしてその結果として滞留をしてきておる、そういう問題があるわけであります。そこから出てまいります問題は、これから先の中年層、高年層に対する対策の問題と、それからこれまですでに戦後十八年といってもよろしいのですが、昭和二十四年以来の十四年をとってみましても、すでにこの十四年の間にこれだけの生活の歴史を持って沈んでいき、これだけの失業と苦難の歴史を持っておるそういう中年層、高年層の問題というのは、にわかに解決できない非常にたくさんの問題を持っておるのだということをまず念頭に置いてかかる必要があるように考えるのであります。  その点からいきますと、就職促進の措置はもちろん必要なのでありますけれども、言われておりますような就職促進の措置が、それがどの程度生活水準であるかというような、家族の収入水準というようなことである程度の目安をつけてはかり、あるいは職業訓練就職訓練等々につきまして財政的な措置がとられましていろいろな用意が考えられておるようでありますけれども、このようなもので処置できるものは、おそらく今後あらわれていく中高年層労働の中で比較的に職業訓練やあるいは新しい職種に対して適応性の高い人たちに限られるわけでありまして、これまでの既存の滞留をしておる中高年層については、ほとんど解決の方法にならないということは明らかであります。また今後あらわれる中高年層の失業者についても、そのような適応性が必ずしも十分でないというもの、これは先ほどからいろいろ論議されておりますように、相当に考えておかなければならない問題であるわけであります。  それでもう一つ角度を変えますと、このような点で心配する必要はないと言われるかもしれません。しかし問題の解決はきわめて困難だといたしますと、現在まで行なわれておるこのような解決困難な層がどこのところに落ちついていくかというと、その基準線は生活保護基準線であります。その意味で、生活保護基準線にこれが収斂するという危惧は決して思い過ごしではないのであります。もし思い過ごしであるとすれば、それを明らかにもっと高いところ、それは生活保護基準を上げるのでもけっこうですし、あるいは生活保護基準をうんと上回るようなちゃんとした基準というものを設定するのでもけっこうでございますが、その危惧をなくするためならば、その点は明確な、そして相当高度な基準線が、すなわち失業を保障する基準線が明らかにさるべきではないのかというふうな考え方を持ちます。その意味では、なるほどいろいろな御意見がございまして、御趣旨はけっこうだ、就職促進や職業訓練就職手当についての御趣旨だけはけっこうだと申し上げたいのでございますが、私がいま申しましたような意見の結論としましては、御趣旨はけっこうというふうに申し上げられないのであります。むしろ現在の状況、今後の展望といたしまして、生活保護基準への収斂ということをどのようにして解決していくのかという点が明らかにさるべきではないかというふうに考えます。   〔委員長退席、柳谷委員長代理着席〕  中高年層の第三の問題といたしまして、やや角度を変えまして、今度は失業の層を少しくとらえておく必要があるかもしれません。それはこれまで雇用労働者であった人たち失業する場合、あるいは自営の業者人たちがその業を失う場合、あるいは農山漁民、農林水産関係といったような人たちが業を失う場合、あるいは自立営業の人たち失業という場合には、またもう一つ解決の困難な問題が出てくるのであります。そしてまた適応の困難な問題が出てくるのであります。こういう点も一つ考えておく必要があるのではなかろうか。そしてそれらの最も解決困難な問題が老年層の失業という形で出てくることは、皆さんも御指摘のとおりであります。したがって、いまの中高年層の問題の最後の問題としては、さまざまな失業対策考えられますけれども、それにもかかわらず、やはりここには、この中年層、高年層の人たちの世代では解決ができないような部分、そういう失業層が残る。このことを、われわれは非常に残念だけれども、やはり考えなければならないと思うのであります。その意味で、中高年層の問題に対してさまざまな御意見がございますけれども、この点では、おそらく問題のほんの一部分を取り上げるにすぎないことになるのであるというふうに考えるわけであります。  第四番目に、もう締めくくりでけっこうなんですけれども、これまで申し上げましたことを締めくくりまして、私はこの職安法の改正と失対法の改正につきまして、このような理解を持ちます。  一つは、職安法の改正によりまして就職を促進する、職業訓練をする、また求職活動を活発にする、さまざまな方法をとりまして失業労働者の動員をはかる、あるいは流動化をはかる、こういう方向一つとられる、これが特色だというふうに考えられます。しかしその流動化が、たださまざまな指導や、職安あるいは労働者等の認定権や、あるいは課程の設定やといったようなこと、指定や指示や、そういうことで十分に成果をあげ得るかどうかといえば、これはもうおわかりのように、それを成立させるかどうかの一番根本は、失業を保障する制度というものと安定雇用を確保し、拡大する政策、この二つが前提になるわけでありまして、このことを前提としてもっと明確に出すことが、今日の重要な問題ではないかというふうに考えます。  それから失対事業法につきまして、これを分割して、一方では雇用対策としてはっきりと割り切ったものにする——もちろんここにも問題はありますが……。それからもう一つは、社会保障の領域にこれを適用する、こういうふうに政府原案では示されておるようでありますが、その雇用対策といわれる場合に、これが安定雇用という名に値するかどうか。耳なれないことばでありますが、通常雇用あるいは通常就労ということばが使われておりますけれども、これは私はどうも意味がわからないのであります。やはり普通のこういう法律などでやる場合、意味を通そうとすれば、それは安定雇用でなければならない、安定就労でなければならないということは明らかであろうかと思いますが、ここでいわれております雇用対策としてこれを実施するという場合に、これが安定雇用の名に値するかどうか、この点はもっと十分に検討する必要があるのではないかというふうに考えるわけであります。  以上のような問題がございます。それで先ほどから御意見が出ておりますように、もちろん一挙にすべてがよくなるというわけにはいかないから、漸次改善していくという意味で、たとえば手当制度というものを改善する、あるいは労働省の努力あるいは一般民間の協力あるいは失業者本人の活動、こういうことを通じて、みんなが一体になって問題の解決に向かっていくんだというふうに主張がされておりますけれども、私は、その手当制度が決して無意味だというのではなくて、これはもちろんあったほうがよろしいでしょう。しかしそれにもかかわらず、このような部分的な手当制度によって、先ほどから繰り返し申し上げておりますような失業の保障あるいは安定雇用ということを、きわめて不十分なままで失対事業を大幅に転換するということは、非常に大きな破局的なアンバランスを起こすことは明らかでありまして、それを実際の雇用失業賃金との関係を通じていきますと、おそらくこれまでよりもはるかに直接的に、直線的に低賃金労働、あるいは就労とは言えないような不完全な就労、こういうところにこれを結合することになって、その意味では非常にゆゆしい事態を惹起するんだということが言えるのではないかと考えます。  以上によりまして、私はこの法案改正案につきましては、どういうふうに勉強してみましても、賛成いたしかねるのでございます。そして今日の情勢で失対事業というような時代おくれのものという主張がされますけれども、なるほど失対事業は決して時代の先端を切っているものじゃなくて、時代おくれであります。それじゃなぜ失対事業がこのような時代おくれの事態であらわれてきておるか、そして労働者が苦しんでおるかというと、それは失業保障や安定雇用政策、これが欠除しておる。この非常な時代おくれ、これが最大の原因であるんだということ、そこから考えますと、失業を保障する法制的な措置ということを、これを国際水準などを勘案いたしまして、もっと明確な形でぜひとも提起すべき段階に、日本雇用失業対策の情勢は、そういう段階にあるのではないかという意見を持っておるのであります。(拍手)   〔柳谷委員長代理退席、委員長着席〕
  25. 秋田大助

  26. 徳田与吉郎

    ○徳田参考人 私は金沢市長徳田与吉郎でございます。  ただいま当委員会で、いろいろ審議継続中の職業安定法並びに緊急失業対策法の一部改正につきまして、私どもがいろいろ考えておりますことの一部を、この失対事業を施行いたしておりまする市長の一人としてよりも、むしろ市長会の代表として若干意見を述べさしていただきます。  御承知のとおり、現行の失業対策事業は、緊急失業対策法第二条の定義によりますと、「労働大臣が樹立する計画及びその定める手続に従って、国自ら又は国庫の補助により地方公共団体等が実施する事業をいう。」こうなっております。すでは全国五百五十五の市がありますが、失業対策事業を施行しておりますのが約四百六十のほとんどに及んでおります。ここでよく皆さん方に御了承を願いたいことは、この第二条に規定してありまするように、これはどこまでもやはり失業対策という一つの大きな問題を取り上げて、しかも国みずから、あるいはその他地方公共団体がやると、こうなっておるのでございまして、これがだんだん国あるいは公共団体の中でも力のあるものが薄れていって、一番力の弱い市町村段階へ事業がだんだん押し詰まってくる、こういうことを一つ前提に頭に入れておいていただきたいと思っております。その四百六十の事業主体を持つ市で組織されております失業対策事業関係都市協議会というものを昭和三十年につくりまして、それからこうした問題についてはいろいろ施行実施いたしておりまするときに問題がありますので、改正したいと今日までいろいろと努力をしてきて、皆さん方にもいろいろ意見を申し上げる機会があったと思っておるわけでございます。昨年の五月、ようやく労働省が失対事業調査研究会を設けていただきまして、現行制度の再検討に取りかかっていただいたのでありますけれども、本会は、これまでこのことについては、いま申し上げましたとおりたびたび各種の意見を集めまして、再三再四関係の都市が集まりまして検討をいたしてまいったのでありますが、その意見を集約いたしますと、まず第一番には、現行法を早く改正してもらって、確固たる労働行政の樹立をしてもらいたい。先ほど申し上げたとおり、これはどこまでも失業対策という大きな問題を含んでおりますので、力の弱い市町村にしわ寄せをするような現行法は、ひとつ早く改正してもらって、そうして根本的に、先ほどからここでそれぞれの立場の方が御議論になっておりまするような問題を早く解明していただきたい、これが第一点であります。  次に、それでは現行法をどのように改正していただきたいか、こういうことになりますと、まず第一番には、やはり事業については国の責任を明確にしてもらいたい、これが第一点でございます、先ほどから申し上げておりますとおり。国がまずこの大きな問題の責任の所在を明確にしてほしい、このことがまず第一点でございます。  それから第二番には、現在の失対労働者をすみやかに就業せしめて、真に失業者の更生に資することを主眼とすること。これもさっきから議論になっております。もうこういう失対に働かなければならぬような人を早くなくしてほしい、それがわれわれ地方の市長としての強い念願でございます。  第三に、この事業能率をはかるために、労働条件とかあるいは財源等について国が十分に考えていただきたい。国の責任ではありまするけれども、やはり私どものところに住んでおる住民の問題でございますから、私どもとしてもこれは心配していくのは当然でございます。しかしやはり何といっても限られた地方の財源の中でやる仕事でございますから、できるだけ仕事が能率化されなければいかぬ。公共事業の一部の中にこれを入れていくわけでありますから、やはり能率のあがるように法律改正をしていただきたい。これも強いわれわれの念願でございます。  第四番目には、これは申し上げるまでもありませんが、どうしてもそういうことでもなかなか救われない方に対しては、社会保障を強化していってもらいたい。単に失対で収容できない方が、やはりこの失対の就労者としてたくさんおられます。したがいまして、どうか社会保障というものをもっと強化して、そうしてそういう方はそのほうで収容していく。働ける人はもっと他のはっきりした職場に転換してもらう、こういう方向へ進んでいただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  以上が大体、私どもが法の改正について考えておる問題点でございますが、さらに一、二補足いたしますと、まず第一番には、事業を改善するためには、この能率をあげるというような問題、あるいはその他、何といいますか、それぞれ能力の違った人を同一にかかえる事業をやっていく、こういう前提におきましては、労働者労働力の程度に応じて区分し、この区分に従って適正な対策を立ててもらいたい。やはりいろいろその中には年齢の相違もございますし、能力の相違もある、これを画一に就労させることにはいろいろ問題がその中に包蔵いたしておりますので、現在でも相当これは区分できるようにはなっておりますけれども、さらにこれをもっと明確にやっていただきまするならば、実際にこれを施行しておりまするわれわれといたしましても、いろいろな問題が相当なくなるというふうに実は考えておるようなわけでございます。  それから二番目には、これも問題に相なっておりましたが、手当の問題でございます。これも明確になっておりませんので、事業を施行しておりまする団体としては、常にその時期が来ますと問題は相なっておるようでございまして、この点われわれは強く法改正の中には何か基準を設けまして、そうしてそういうトラブルがそのたびに起こらないようにしていただきたい。もちろんそれは事業主ではありまするけれども、普通の事業と違いまして、われわれは企業者ではないのであって、どこまでも公共事業をやっておるのでありますからして、一般の労使の関係のように、一ぺん一ぺんにこの善意のある人々と年に何回かいやな思いをしなければならぬということは、われわれ市長はこれはかまいません、しかし働いておるそれぞれの担当の職員というものは、非常にこれで難儀をいたしております。このことについては詳細に申し上げませんけれども、これはもうすでに十分皆さん方は、そういう点については耳にしておられることと思いますから、ここで繁雑は避けようと思います。  それから三番目には、やはり何といってもこれは職業安定所の機構をもっと強化していただきたい。そうしてできるだけ新たに就労しなければならないような人、あるいはそういう就労しなければならないような人であっても他に適当な仕事があれば、そこへ直ちにあっせんしていただけるような、安定所というものをもっと強化していただきたいということでございます。  申し上げればまだまだありますけれども、大体以上の三点が最も私どもの頭の中にある重要な問題点でございます。  それからもう一つ申し上げますと、非能率という点については、これはどなたもお認めになっておると思います。その理由は別でありますが、ともかく失対事業能率があがらないということは、例外もありましょうけれども、大体はそうであります。先ほど総評の事務局長も、最初能率があがるんだとおっしゃっておられたけれどもあとの質問のときには能率のあがらないことを十分認めておいでになりましたが、なぜ能率があがらないか、こういうことを私どもはいろいろ考えておるのでございますけれども、やはり賃金が問題になってくると思います。賃金が適正であるかどうか、こういうこともおそらく能率に大きな影響を持ってまいっております。この問題につきましては、今度の法改正によって賃金審議会を設けて、適正な賃金にそこで是正されるものとわれわれは期待いたしておるわけでございまするし、また同時に、手当等の問題につきましても、ここではっきり区分していただきまして、われわれ市長と市民が、あまりこの問題についてわかるとかわからないとかいうような議論のないように、国がはっきり何かめどをつけてもらいたい。これは私どもが事務を遂行する上においての強い熱望でございます。これは要望ではなしに、熱望でございます。失業対策の課長になり手がないという事実を前提に置かれて、そしてこれは御勘考を願いたい、こう思っております。  それからその次には、老齢者、病弱者、こういうような方を、一番労力を要する土木事業就労させなければならぬというようなことがやはり問題になってくると思います。こういう意味においては、やはりこういう人々は、何か他に適当な区分をして職場を与えることが御本人に対しても最も必要であろう、こういうふうに私ども考えております。事実いろいろな事態がございます。八十以上の方が就労しておられることも現実でございます。六十五以上の方は三割くらいおられます。こういう方が土木事業に、お若い方と一緒に仕事をする。これはだれが考えてみても不合理な問題でありまして、どこまでも区分をしていかなければならぬということは、当然だと私ども考えておるわけであります。  なお念のために若干申し添えますと、私どもが調査しました資料によりますと、回答が二百八十市ありまして、大体その就労人員の五割が五十歳以上の方のようでございます。平均は大体五十一歳、六十歳をこえる方が三割ほどおいでになる。これらの人たち及び病弱者、婦女子等には、現在の賃金を下回らない賃金で、ひとつ特に団体労働を必要としない事業を与える必要がある、こういうふうに私ども見ておるわけでございます。また失対事業に十年以上定着している人たちもあるわけでありまして、こういう人たちにも、いつもこういうところに定着しないで、何かりっぱな定職というものを与えられるような機会を与えることが必要だ。そういう意味において、今度の法改正にはやはりある程度そういう教育をするとか、あるいは訓練をするということは、私どもとしてはどうしてもやっていただきたいというふうに実は考えております。  それから最後に、これは働く人とは別の問題でございますが、われわれ自治体として、この失業対策というものについては財政負担が非常に過重に相なっております。はなはだしいところは、市の歳出額の三割以上が失対事業につぎ込まれておるという事実がございます。これはきわめて寡少な例でありますから一般論とお考えになると困りますが、ある市では、そういうところに税金を出すならば、もう市税は納めないという問題を起こしたところもあるようでございまして、三割以上も歳出を食うということになりますと、その自治体としては成り立たない姿でございます。一割くらいはざらにありまして、これは二十四、五もこういう都市がございます。こういう都市は、もちろんそういう客観情勢で多数の失業者がお出ましになって、そういう対象の方がずいぶん多い、こういうことが一番根本の原因にはなっておるわけでございますけれども、やはり国が三分の二とか三分の一とか費用の負担分をきめる基礎が、実際と一致しないということも一つの大きな問題点でございます。  それから手当というような問題も、今日まであまりはっきりいたしておりませんので、やはりいろいろ乏しい財政ではおりますけれども、気の毒な人を目の前に見ておると、ついつい手が出てきて、あとで締めくくりがつかなくなる、こういうことで非常に財政が食われておるということも、まぎれのない事実でございます。  以上、非常に弱小な市町村のほうに失対事業がウエートをだんだん持ってきて、そのために地方が財政的に非常に困っておるという事実も、ひとつ今度の法改正の場合には御考慮に入れておいていただきたい、こういうふうにわれわれは考えております。  本来この法律は、これは私どもが申し上げる必要はありませんけれども、同時多発の失業者を公共事業の中に吸収するということが、二十四年に法が制定されたときの基本的な法の精神だと明記してあります。だから、これは時代の推移もありますが、この線を相当ずれてきておるのじゃないか。さっきもいろいろ議論がございまして、明確でないということがしばしば論ぜられておりましたが、私どもとしてこの点を明確にしていただきたいのであります。しかし私ども立場からすれば、やはりかわいい住民がいろいろそういうことになるのだから、痛しかゆしで、あまりはっきりしたことを申し上げるとはね返ってまいりますので、その辺はよろしくひとつお考えを願いまして、そうしてわれわれも困らないというふうにやってもらわないと困るというふうに考えております。  以上、大体私どもが申し上げた考え方は、今度の法律改正の中にはだいぶ織り込んであるようでありますから、私どもとしては一日も早くこれを通していただきたい。内容につきましては皆さん方で御検討になりまして、一日も早くこれを改善していただきたい。その改善の要旨は、何といっても地方財政を圧迫しないように、それから現在就労しておられる人、将来就労せられるような立場にある人を不利にしないという立場において、一日も早くこの法案改正していただきたい。これが私どもの強い念願でございます。  以上、陳述を終わらせていただきます。(拍手)
  27. 秋田大助

  28. 中西五州

    中西参考人 職安法と緊急失対法の一部を改正する法律案国会審議されておるわけでありますが、この問題について、私たちこの事業に十数年間、あるいは数年間働いてきた者の立場から、私たちがこの問題に対して非常に大きな危惧を持っておる、自分の将来や子供の将来の問題について深刻な不安を持っておるということを、ここで率直に皆さん方に訴えを申し上げたいと思います。  まず第一に、そういう立場からこの法律審議を、ほんとうに貧乏な、やっと失対事業にすがりついてその日その日を生活しておるという立場から、皆さん方がひとつ真剣に論議をしていただき、そして審議をしていただくことを心からお願いをしたいと思います。  まず第一点でありますが、現行失対事業は、御承知のとおりに昭和二十四年のああいうドッジ・プランによって日本資本主義がやみとインフレの経済から基本的に立ち直ろうとする中で、百数十万の失業者を生んだわけであります。その失業者を一時的に就労させるという目的で現在の失対事業がつくられました。これはたびたびの方から申し上げられているとおりでありますが、そういう場合に政府は、そのつくった失対事業にどういう役割りを、どういうことを期待してこの失対事業をつくったのであろうか。まず第一は、そういうたくさんの失業者をいわゆる失対事業就労させることによって、一時ここにプールのように失業者をためておく、そしてその失業者をいつでも資本が必要なときに使用できるような、そういうため池としてこれを考えたわけであります。そういう立場から、たとえば緊急失対法の中には、第十条の中に、同じ仕事をしても失対事業で働いた者の賃金は、民間で同じ仕事をしておる者の賃金より必ず下げておかなければいけないという低賃金率原則がきめられてあるわけであります。その低賃率原則というのは、御承知のように、一般のそういう日雇い労働者賃金を基礎にして、それでも食えないのになお失対事業に働く場合は下げなさい、だからここではわれわれ失業者を食わさないように、生かさないように、しかし殺してしまってはいけないから、まず殺さないように、こういう水準賃金その他の労働条件を一切きめておるわけであります。そういう状況の中で、手当の問題も、賃金の問題も、あるいは月間に働く日数の問題も、すべてが人間らしい労働者的な生活ができないような立場でこの法律が組まれております。法律だけでなしに、労働省の運営、地方自治体の運営も、すべてそういう立場で現行失対事業が営まれてきたわけであります。  私は昭和二十五年八月に失対事業就労をいたしました。そのときに私が受け取った賃金は百六十二円でございました。月のうちに働ける日数は十二日でございました。そしてそういう状況の中で、私たちは、自分の生活を守るためにはいやおうなしに団結せざるを得なかったのであります。そして市役所や県庁や、そういうところへ私たち生活を何とかしてください、こう言って私たちはみんなの団結を固め、労働組合をつくって、そういう運動をしなければ子供を養うことも、家族が食うこともできなかったわけであります。たとえばその二十五年八月に、私たちは初めて——私はいまなお記憶に鮮明であるわけでありますが、ちょうどお盆が参りました。市長さんのところへ行って、何とか五百円の越盆手当がほしいということを、私たちは代表を選んで市長さんに申し上げました。市長さんはこう言いました。日雇いには手当を出すようなことはどこの法律にも書いてない、だから日雇いには手当を出すことはできない。私たちは、それはよくわかっております、しかしこのお盆を、隣の子供たちは新しいげたをはいて迎えるのに、私たちの子供は迎えられないではないですか、だから法律にあろうとなかろうと、私たちはそういうものがどうしても自分の生活を、家庭を守っていくためには必要なのです。こういう五百円のささやかな要求に対して、最後に市長は私たちに百名以上の警官隊を向けて、そして私たちは——三百名、四百名と市役所へ押しかけた私たちの仲間は、その市役所からほうり出されてしまいました。こういう状況を皆さん考えていただくならば、私たちが、いろいろそれは行き過ぎという批判もあったでしょう、やり過ぎという批判もあったでしょう、しかし私たちはそういう戦いを、とにもかくにも手当をふやしてくれ、あるいは就労日数をふやしてほしい、あるいは賃金を上げてほしいということを、一貫してこの十数年やらざるを得なかったわけであります。その戦いの中で、いわゆる現在失対に働いておる私たちは、自分の生活を守る道が何であるかということを、事実で示しました。ごらんのように、われわれの組合である全日自労に二十三万という組合員が現在参加をしておるわけであります。こういう戦いの中で、私たちは失対事業の中で生活を守る以外に方法がなかったわけですから、そういう戦いを進めてまいりました。そして私たちの十数年間の戦いの中で、たとえば手当が二万円、三万円というようにわりあいに出るようになりました。賃金も、そこらあたりの十人や五への工場の労働者と比べると、必ずしも失対賃金がまずいということではなくなってまいりました。就労日数も二十二日というふうな方向全国的な平均が出され、その上にさらに自治体に御無理を申し上げて、二十五日働くというようなところが出てまいりました。そういう状況の中で、現在政府は失対事業の、私たちから見れば打ち切りであるというような法案を出してきているわけであります。そういうことで、もちろん私たちは、現在の失対事業を続けていくことを好ましいということは毛頭考えておりませんが、しかしここまで私たちがいろいろあれしてつくり上げてきた失対事業の中で、最低生活をするという私たちのかすかな期待を、この法案改正によってぶち砕こうとしておるところに、私たちは最大の懸念を表明しておるわけであります。  二番目に、私はこの法案に対する私たちの態度を申し上げたいと思います。私たちは、現在の失対問題というのは、単に失対問題、三十五万人のわれわれの仲間の問題ではないと考えております。また家族を含めても百十万人の問題だけではないと考えております。労働省の資料やあるいは雇用審議会の資料を見ましても、全国で一万円以下の賃金で働いている労働者は、現在なお六百万人おります。さらに家族従業者やあるいは自家営業者を入れるならば、私たちとほとんど同じような、極端な低賃金労働と無権利な労働に追い込まれている労働者は、なお一千万を下らないわけであります。こういうような一千万の労働者の中の、私たちはごく一部分であります。私たちは、日本の経済や日本資本主義が、そういう根本的な問題点を含んでおるということをまず指摘しなければならないと思います。その形は、たとえばほんとう意味での最低賃金制ができていないということ、あるいは臨時工、社外工、日雇いというような雇用が、この高度経済成長の中でもなおふえておるという事実、池田さんは、自由陣営の三本の柱と言って、その一つである日本は世界でもまれな高度成長によって日本の国力は増進した、日本の権威は非常に高まったと言われておりますけれども、その高度経済成長の中でもなお一千万という食うに食えない労働者、半失業者がおるということを、私たちはまずよく知っていただかなければいけないし、失対問題というのは、その中の一部分の問題であると思います。その問題を解決しないで失対制度をどれほどいじくってみても、私たちは基本的な解決はできないだろうと考えます。  まず私たちは、全国一律の最低賃金制がどうしてもつくられなければならない、失対賃金とかつかつのような業者間協定を百五十万人適用さしてみても、二百万人適用さしてみても、それは日本の低賃金の問題を克服する手にはならないと私は思います。臨時、社外工、日雇いというような、こういう不安定雇用が野放しに許されておるような状況の中では、私は問題は全然解決しないと思います。  また社会保障が現在のような状態でありまして——ここにもこの間九州の大牟田の、私たち組合員の竹下さんという自殺をされた方の遺書を持っておりますが、全部読み上げると時間がかかるので省略をいたしますけれども、どういうことが書いてあるかというと、死んでいくのは皆さんにまことに申しわけない、しかし、私はからだが弱ってきておるし、もう自分の老後の生活にはほんとうに明るい見通しと自信が持てません、これ以上皆さんに迷惑をかけることは私として忍びないから、私のこのことがわかるならば、皆さんはきっと大騒ぎをされるだろうけれども、一足先に私はおじゃまをいたしますと、こう言って自分の老後の生活ほんとうに見通しと明るい将来を望むことができない竹下さんは自殺をしていったわけであります。こういう老人の深刻な、特に貧乏な老人の人たちの深刻な問題があるのです。政府は国民年金制度をつくられました。しかし国民年金制度では、遺憾ながら千円か千百円の老人に対する保障が出されるだけであります。こういうふうな社会保障制度の不確立の問題、こういう問題が日本のいわゆる不完全就業や失業と貧乏の根本的な問題であると私は思います。ここから問題を解かないことには、その一部分として失対の中へ来ておる人たちの問題を何ぼ考えてみても、問題を解決することはできないであろう。まずこういう立場から、私たち最低賃金制確立や臨時、社外工や日雇い制度の禁止、あるいは老人の生活の保障を含めた社会保障制度確立、こういうものがない以上は、またこういうことこそが、一千万の失業者や半失業者や貧乏な人たちに対していまほんとうの救いになるのであって、こういうことを今度の政府案の考え方、あるいは雇用審議会や、あるいは山中調査研究会あたりの考え方の中には、この考えがきわめて不十分であります。不十分であるだけではなしに、政府案になれば、ほとんどその考慮はありません。そういう法律が何ぼ論じられても、そこの根本から直されないことには、幾らでもそういう人は出てくるわけであります。いま失対へ来ていない人でも、浜で一本釣りしている人でも、農村で日かせぎをしている人でも、そこらあたりの十人や二十人の中小企業で働いている労働者でも、失対のわれわれの仲間とちっとも変わらないのです。そういう人たちの問題として、まず失対問題を考えていただく必要がある。そういう立場に立たなければ、日本のこの失業の問題や貧乏の問題を解決することはできないと思います。  そういう政府案の致命的な欠陥、私たち反対をするのは、そういう立場政府案が立っていないからであります。そういう立場政府案が立つならば、全日自労はもろ手両足をあげて賛成いたします。ほんとうです。  私たちは、最低賃金制の問題についても、大橋労働大臣と二度、三度交渉いたしました。大橋労働大臣は、現在の業者間協定のこういう最賃制はきわめて不十分だということを認められ、われわれが主張するような全国一律の最賃制がいいということを認められながらも、私がいまそういうことをやるならば、自民党の中で完全に浮くだけではなしに、問題になりません、こういうようなことをわれわれの交渉の中で正直に申されておりますけれども、そういう点を考慮してみても、ほんとうにそういう点でこういう失対問題の改革について論じられるならば、その点をまず基本的に論じていただきたい。池田内閣が、あるいは自民党がそういう基本政策をまず示していただきたい。それは漸進的にやっていくというような言い方をされておりますけれども、漸進的にやっていくと言うてやられた政府最低賃金法が、その一番いい証拠ではありませんか。そういう点で、まずこの点を明らかにしないような立場は、すべて労働者に苦しみを与える案であるということを私たちは明確に申し上げておかなければならないわけであります。  第二に、私たちは、そういういま申し上げたような立場に基本的に立ちながらも、政府案が実施されることによって私たちの仲間がいろいろ当面の利益を受けられるということであるならば、私たち全日自労はこの案に反対することはありません。たとえば根本的に最低賃金制ができない、あるいはその他いろいろの欠陥がありましても、現在の政府案が私たち三十五万、家族を含めても百万の私たちの仲間の人たちを少しでもよくする方向だということならば、私たちはこれほど強く反対はいたしません。私たちは自分のことですから、そういうふうに現在の政府法案をもうひっくり返し、でんぐり返し研究をいたしております。また労働省の大臣以下とも数十回の交渉をこの問題で重ねてきております。私たちも、もしその中で仲間が救われるということであるならば賛成をしたいわけです。しかしながら、私たちは、この法律案が通るならば、われわれの仲間の生活はよくならないという結論に達しておるわけであります。一そう現在の失対よりもひどい生活の状態の中に追い込まれるという見通しと確信があるから、私たちはこのように強硬に反対をしておるわけであります。  以下、そういう点について、なぜこの政府案がよくならないかというような問題点について、ごく大ざっぱにしか触れることができませんけれども、主要な点について申し上げてみたいと思います。  第一点は、今度の政府案の骨格をなすものの一つ就職促進の措置であります。これは職案法の改正の中心点をなすものでありますが、これは言うならば新しくこれから職安を訪れる失業者に対して、職安所長に非常に強い権限を与え、職業指導や職業訓練民間雇用へのそういう失業者人たちの転換を促進する。その場合、職安所長に非常に強い指示権を与える。そして職安には雇用促進の指導官を置き、そしてそういう場合に、民間雇用がうまくいかない場合には手当を与える、あるいは訓練期間中には訓練手当を与える、こういう形で職安における就職促進の措置を推進しようというのが政府案の考え方であります。私たちも、失業者が職を与えられるということに決して反対をするものではありません。職業訓練や職業指導を強化するということ一般に対して、われわれ全日自労が頭からこれに反対しておるものではありません。私たち反対をするのは、まず職安所長がきわめて強い指示権を持つということであります。たとえば私が失業者で職安に行ったといたします。私の事情をいろいろ調べて、職安所長は、あなたは訓練を受けなさい、訓練所に入りなさいという指示を与えます。しかし私がもしその訓練を受けず、職種その他について、あるいは将来の見通しについて不同意の場合に本人の意思が通るかといいますと、通りません。結局職安所長の強い指示権で、その失業者は、はいここに行きなさい、こうしなさい、ああしなさいということで、すべて命令をされ、指示をされていくわけであります。そういう強い指示権だけではなしに、たとえば卒業したといたします。そして職業訓練所を出て民間に適当な職業がない場合に、政府は三百二十円の手当を出すと言います。失業期間中の手当を出すことを考えております。ところが皆さん承知のように、現在失対事業で働けば四百五十円あるいは四百八十円、こういう賃金がもらえます。三百二十円という、そういう低い手当でわざわざがまんしなければならないことはないわけです。だから、一般に職がないのですから失対事業に入れて下さいと言っても、これは職安所長の指示権ではねられてしまう可能性が非常に強いわけであります。そういう形で、実際には失業者が失対事業に入れない事態をつくってしまう。入れない事態からどういうことが起こってくるかと申しますと、職安所長の指示権で、非常に低賃金で無権利な中小企業やそういうところに失業者がどんどん送り込まれていく。そういうふうにこの新しい就職促進の措置というものが役立つだろうというふうに私たちは見ております。それが日本不完全就労をなくし、完全雇用政策を前進させるという立場から考えてみた場合、こういう雇用政策が、皆さん前進になるのでしょうか。無権利な低賃金労働者失業者を一ぱいそういうところに、職安所長の強い指示権で、あなたはあすこに行きなさい、ここに行きなさいという形で、きわめて無権利な低賃金労働者をつくり出していく。それは資本家の要請でしょうけれども、そういうことが前進的な雇用政策方向と言えるでしょうか。これは私が一番初めに申し上げたことと非常に関連をしておるわけでありますけれども、そういう雇用政策を、前向きの失業政策雇用政策と言うことは私はできないと思います。非常に無権利で低賃金労働者をたくさんつくり出す、そういう雇用政策以外の何ものでもないではありませんか。この点について、私たちはいろいろ申し上げなければならないことがたくさんあるわけでありますけれども、そういう点で私たちは、政府やり方徹底的に、やはりこれが日本雇用政策失業政策を前進させるものでないから、反対をするわけであります。  先ほども岩井さんとの問答の中で問題になっておりましたけれども、いわゆる失業手当制度というものは新しい政策の芽ではないか、だからこれをつぶすのはけしからぬじゃないか。しかし、政府案による失業手当というのは、いま職安の窓口にこれが出てきた場合にどういうふうに役立つであろうか。これは三百二十円です。一日失業者失業中の手当としてもらえるのは三百二十円です。この三百二十円の手当の低さ、あるいはその手当をめぐるいろいろの支給制限その他職安所長の権限があるわけですから、そういう点を考えるならば、失業手当というのは、日本の低賃金体制を一そう強化するために私は役立つと思います。それ以外に何の進歩性もないと思います。そういう点をわれわれは明らかにして、先ほど近藤文二先生が、私が書いておる論文の問題、五条件の問題、五項目の問題についていろいろ申されました。私たち全日自労も、何でもかんでも反対ではありません。現在の失業者が定職化をしていくという、この基本的立場賛成であります。最低賃金制がない中でも、前向きの雇用政策であるならば私たち賛成をいたします。賛成する最低条件として、私たちは、われわれの失業者雇用される場合に常用雇用でなければいけないということ、最低一万五千円以下のところではいけないということ、社会保険や退職金その他の人並みの最低の基準は完備していなければいけないということ、もしそこを首切られたときに、即時無条件に失対条件に戻さなければならないということ、あくまでもすべて本人の自由意志をこういう場合にも尊重しなければいけないということ、この五条件を私たち労働省と交渉してまいりました。これをいれるならば、最低賃金制がなくてけしからぬのだけれども、この五条件を新規にいれるならば、私たちは前向きの労働政策として、一歩前進として評価をいたしましょう。これほど皆さん、私たちは柔軟なる態度をとっているのです。これほど私たちはものわかりのいい態度をとっておるのです。ところがこの五条件について、遺憾ながら労働省とは基本的に了解に達することができませんでした。第一の常用雇用であるという点についても、基本的には意思統一はできておりません。労働省常用雇用という定義は期間に定めのない雇用である、こう言われております。期間に定めのない雇用なんていうのは、そこらあたりの五人、十人の町工場に行けばたくさんございます。きわめて無権利で低賃金ですけれども、あの町工場の労働者、期間に定めのない、労働省から見れば常用雇用であります。いま正田先生は、安定雇用というのが正しいというふうに指摘をされましたけれども、そういう立場から見て、私たちはこういう五条件について、たとえば私たちが二番目にあげておる一万五千円の問題については、これは最賃制の関係があってだめです、こう労働省は言っています。そうでしょう。私たちが誠心誠意この問題を前進させようとしても、こういう問題ですら皆さん意見が合わないのです。最賃制社会保障確立や臨時、日雇い制度の禁止ということだけで私たちががんばるならば、多少それは私たちが基本線過ぎるということが言われるかもしれません。われわれ決して基本線過ぎるとは思っていませんが、そこまで条件を下げても労働省はのめないじゃありませんか。私たちはそういう五つの条件最低の現在の雇用政策を前向きにする保障であると考えておるわけですけれども、そういうふうに現在の事態はなっております。そういう点で、私たちは現在のこの政府案の骨子の一つになっておるいわゆる雇用促進の措置、就職促進の措置というものがきわめて反動的であり、日本失業や貧乏を一そう強くするものと言わざるを得ないわけであります。  第二番目に、政府案の基本的な問題点は、現在の失対事業の幾つかの改革点をあげております。それは私たちが問題にしておるだけでも失対事業の二分化あるいは失対事業民間請負化、あるいは失対事業制度の再検討という問題、あるいは新しい失対事業に入り得る資格の問題、あるいはそういう新しい失対事業賃金の問題、あるいは期末手当の問題、労働時間の問題、さらに運営管理規程の問題、こういうふうにあげますれば非常にたくさんの問題点があるわけでありますが、時間もあまりないので詳しく申し上げることができないのがまことに残念でありまするが、私たちはこの失対事業のいわゆる政府改革案というものをどう見ておるか。一口に言うならば、非常に激しい労働強化がわれわれの中にくるであろう、その象徴的なあらわれは、失対事業をこれから民間請負化するという条項であります。これは緊急失対法の改正の中に出ておる問題点でありまするが、本来失業者を失対事業に吸収するというのは、それは事業効果をあげなければいけないという問題もあるでしょう。あるけれども、最大の問題は、緊急失対法の第一条に述べられておるように、失業者生活を安定させ、経済の興隆に寄与するということが私は最大の問題であろうと思います。そういう立場から、これまで失対事業はいわゆる民間請負を禁止し、直営主義をとってきたわけであります。ところが今度の法改正では、失対事業をそういう形で全部民間の請負師の手にゆだねられるかもしれないという心配を私たちに与えております。こういうようなものは、失対事業が基本的に否定されていくことである。そこらあたりの土建業者に追い回され、こづき回され、しかも賃金は安い、そうすればこんな失対事業はやめざるを得なくなっていくわけであります。たとえば年寄りの高齢失業者就労事業というのがつくられておりまするが、この事業でも、皆さんこういう年寄りを、先ほどからもいろいろ言われておりますように、こういう年寄りの人を気の毒だから、いわゆるそういうところへ、軽い仕事へ入れるんだという名目はいいんです。それならなぜそういう年寄りを民間団体に請け負わしたり、民間の請負に出そうという法律を同時につくっておるのですか。私が、名前をあげて悪いけれども、和田失対部長と交渉したときに、失対部長は、養鶏屋さんへそういう年寄りを雇ってもらおうということもその一つ考え方だと言いました。養鶏屋さんは、社会奉仕で鳥は飼うておりません。自分がもうけるために、自分が食うために一生懸命で卵を産まして、それで収益を上げようとしております。そういうところへ、気の毒だというてわれわれの仲間を追い込んでいこうというような、こういうふうにとれる法案を、ほんとうに年寄りのためだと考えることができるでしょうか。私はできないと思うのです。皆さんが、ことばの本来の意味ほんとうに年寄りのことを考えていただくのであれば、まず国民年金のああいう中で年寄りの人たちほんとう生活できるように、老後をできるように考えてください。また失対事業の中で、そういう年寄りの人たちを、私たちもそういう人たちが軽い仕事につくということに全然反対ではないのです。私たちも、ああいう人たちを炎天の中や寒空の中で車を引っぱらしたりスコップを持たしたりしておることを、決していいとは考えておりません。できれば私たちは、ああいう年寄りの人たちには、それに合うようないわゆる軽易な作業につけてあげたいと考えております。ところが、この政府案によるならば、そういう人たち賃金は、生活保護にリンクしてきめていくと書いてあります。生活保護はいま東京でひとり者で幾らもらえるか、皆さん承知だと思います。生活保護にリンクしていく、そういう年寄りの賃金というものは、結局私はそういう立場法律で認めるならば、いろいろの人がいろいろに言うけれども、結局この年寄りの人たちは食っていくことができないだろうと思います。そうしていろいろやかましく言われて、そしてしまいには、私は失対事業ではもうこれ以上働けません、だから私はしようがないから生活保護へ変わっていきますというような結果になることは、私はきわめて明らかであると思います。こういう心配が、申し上げればたくさんあります。賃金の問題でも、その他期末手当の問題でも、運営管理規程の問題でもいろいろ問題はたくさんあります。私にもし時間を与えていただくならば、そういう問題について私は三時間でも四時間でも皆さんお話をすることができると思います。
  29. 秋田大助

    秋田委員長 中西参考人にお願いいたします。だいぶ時間が経過いたしておりますので、結論に入っていただきたいと思います。
  30. 中西五州

    中西参考人 それではなるべく早く終わります。
  31. 秋田大助

    秋田委員長 ちょっとおはかりいたしますが、徳田参考人がどうしても時間の都合で退席したいというおことばがありますが、いかがでございましょうか。——よろしゅうございますか。それでは御苦労さまでございました。
  32. 中西五州

    中西参考人 三番目に、私たちが現在の政府案をめぐって問題にしている問題点は、いわゆる団体交渉権の問題であります。先ほど団体交渉権について参考人の方からいろいろ指摘がありましたけれども、私たち労働組合法上の立場からいいましても、基準法上の立場からいいましても、私たち組合には完全な団体交渉の権限がございます。ところが実際は、政府労働省の態度は私たちに団体交渉権を認めていないわけであります。そして団体交渉権がないだけではなしに、人並みの生活がないわけであります。だから、そういう中で私たちがどうしても人並みに、あるいは自分の生活を守っていこうとするならば、これは市役所や県や労働省に対して、あるいは職安に対して、私たちが団体行動をせざるを得ないというのは当然の理屈であります。私たちに月三万円、五万円の給料が与えられておるならば、そういう失業保障でも与えられておるならば、何ぼわれわれ中央部が旗を振ってもおそらくそれはついてまいりませんでしょう。しかし団体行動をする以外には、いま私たち生活を守る手はないわけであります。みんなそう信じているのです。そういう中で、団体交渉権を不当に私たちからはぎ取っておるという問題であります。ここが、全日自労の運動がとかく激烈化しやすいというのは、一つはそういう市長さんやあるいは労働省を含めて当局者の人たちが、私たちを一人前の労働者として扱わない、待遇しない、と同時に私たちに生きるだけの最低のものを与えていない、こういうところに基本的な問題があり、いろいろそれは批判されるような行動にも出ざるを得ないような問題が伴うわけであります。だから、そういう意味で私たちはこの失対法の改正をめぐって、やはりこの団体交渉権の問題、こういう問題は基本的に私たちは明らかにされなければならない問題であると思います。  さらに、最後にこの法案審議にあたって、特に私は一、二の要望を申し上げておきたいと思います。  一つは、この前の社労委員会で大橋労働大臣が、この法案が通らないならば、二割ぐらいの首切りが起こるであろうというふうな脅迫的な言明がなされました。私はこれを非常に遺憾に思います。何もそう言う必要はないのです。従来の資料を調べてみましたが、昭和二十四年以来、失対事業の運営の根本的なやり方として、もし失業者がその年度期間中に多発するとかいろいろの事情があるならば、政府は補正予算を組むなり予備費の流用によってそういう問題を処置をしてまいりました。この法案が流れたからといって、何も二割の首切りだとかなんとかいって、あの資料もきわめて不正確でありますが、ああいうような脅迫的言辞をわれわれにかける必要は毛頭ないわけであります。失業者がふえれば補正予算その他でふやすというのが、従来の政府の一貫したたてまえであります。それをいまさら、ことしだけなぜそういう脅迫的な言い方をしなければならないのか、そういう脅迫で、われわれがわれわれの意思をひるがえすと期待されてそういう脅迫的な言辞を言われるのであれば、私はその期待は効果がないというふうに申し上げる以外はありません。こういう点は、いやしくも問題を前進させようとする労働大臣としてあるまじき言動であるということを私はここで指摘せざるを得ないわけであります。  第二に、この問題について、私は参考人という立場でありまするが、同時にこの当事者を代表する者として、特に社労の委員会皆さんにお願いをいたしたいと思います。皆さんの手元にお配りを申し上げましたように、私たちはこの政府案をめぐって、私たちのきわめていろいろ心配になる点、政府案でよくならないだろうという点、この問題をめぐってこのような私たち意見をまとめております。この意見の中で、私がいま申し上げたのは一つか二つであります。私がきょう触れることができなかった問題点は、あと何十というほどたくさんこの中に指摘をされております。したがって、私たち全日自労の組合員あるいは日雇い労働者全体が心配をしておる問題で、私がきょうここで申し上げることができなかった問題点について、どうぞ社会労働委員会皆さん方は、われわれ国民の代表として、われわれの運命を握る皆さん方立場に忠実であっていただきたいということを強く要望申し上げたいわけであります。聞くところによると、ろくすっぽ審議もせずに、十三日ごろには強行通過をされるという話を私たちは新聞その他で聞きました。審議の経過をふり返ってみまして、私たちが何十とあげておる問題について、国会審議をされなしで、もし強行通過をされるということならば、全国の日雇いにとってこれほど遺憾なことはないと思います。そういう意味で、私たちが提起をしている何十かの問題点について、社会労働委員会が、国権の最高の立場にある皆さん方責任を十分果たしていただいて、とにもかくにも慎重審議をしたけれどもこうなったという話を、全国のわれわれの仲間に皆さん方の口を通じてしていただけるように、私は心からお願いをしたいと思います。  以上で私の陳述を終わります。
  33. 秋田大助

  34. 馬場大静

    馬場参考人 全民労の代表として申し上げます。  私、本日われわれ失対労務者三十何万人の重大な問題でありますから、参考人として要請がありましたからお伺いいたしましたが、けさほど来いろいろ国会審議の状態を見ておりますと、国民としての立場からはなはだ遺憾に思うのであります。国会の中の、われわれの最高の権威である政治家が、参考人を招集して、しかもこういうぶざまな状態であるということは、私はほんとうに遺憾と思います。発言の内容を見ましても、先ほど石川県の市町会の代表がお帰りになるときでも、質問をするに値しないというような発言も漏らされておりました。いやしくも国会の壇上にある、いわば政治家の最高権威者であるならば、もっと真剣に討議していただきたい、私はこれを念願するものであります。したがって、不満ではありますが、何とかして、われわれがいままで申し上げた点、また私がいまから申し上げる点を慎重にお聞き取り願って、慎重審議のほどをお願いいたしたいと思うのであります。
  35. 秋田大助

    秋田委員長 傍聴席は御静粛に願います。
  36. 馬場大静

    馬場参考人 現在、御承知のように、われわれ失対労務者は、緊急失対法制定以来すでに十五カ年を経過しようとしております。その中で私が強く申し上げたい点は、何ら身分の保障も何も考えられず、無権利のままに拘束されて、いわば暗黒にひとしい労働者として働かされてきたということであります。緊急失対法の中を見ますと、なるほど法律にはそういう点はうたわれておりませんが、運営上その他の面において、基準法から除外されるというような面が多く今日まであるのであります。その中において、われわれは今日までにいろいろな要求も提出し、かつまた権利としての要望もしておりますが、何ら取り上げられなかったという点は、やはり現在の緊急失対法というものが今日いかに悪法であるか。昭和二十四年当時に占領軍政策として緊急失対法を制定して、その当時には社会保障的な見地で、生かさず殺さずという方法をとってまいったのでありますが、それが何年かたつにつれて、漸次われわれが国民の批判の的にのぼってきた、その批判の的にのぼってきた結果、労働省はどういう施策を講じてきたかと申しますと、責任を全部われわれに転嫁してきた。市町村自体の批判というものをわれわれに転嫁して、われわれの組合運動がすさまじいから、あるいはあまりにも先鋭化しているからということで、いろいろ批判のまなざしをわれわれに向けて、そうして今日に至っております。その中で現在われわれが言えることは、すでに最初の発端は、社会保障という見地が強かったにもかかわらず、漸次世論の批判を受けて、今日能率本位をもととするような失対事業に転換してきた。これは最初の緊急失対法制定の当時から見れば、大きな変貌であると言えるのであります。少なくとも緊急失対法の中に言われている点は、生かさず殺さずで、これは働いて賃金という立場でもらい得る賃金であるか、あるいは生活資金という立場でもらい得る賃金であるかと申しますと、最初は少なくとも生活資金という面が濃かったのではないか。その点が漸次能率をもととしなければならないという面に変わりつつ今日に至っている。こういう点から見ますならば、この緊急失対法というものは、いまここで改正をするというよりも、数年前に改正さるべきであったと思います。昭和二十七年にはわれわれ全民労という組織はありませんでしたが、民主団体という立場で赤松常子氏を紹介議員といたしまして、参議院に失対法改正の請願をいたしたことがあります。その中で、われわれは失対法の改正はこうすべきだということで、まず第一に身分の保障、やはり労働者としてのその後の無権利状態を改めて、基準法に認められた権利のある状態、世間一般労働者並みのものを認めらるべきだということで失対法の改正を要望したのでありますが、それが審議の対象にならずして今日に至ったわけであります。われわれといたしましては、先ほども申し上げましたように、今日改正法案なるものが出されるのならば、むしろ全民労が結成される以前にそのことはやはりなさるべきが当然ではなかったか。むしろあわてふためいた改正のあり方ではないか、こう実際は考える次第であります。しかしその時期を失したとは言いながら、やはりわれわれが念願している立場から言うならば、当然改正はなさるべきである、こう考えております。われわれ全民労は、今日まで労働省あるいは大蔵省等にもいろいろ交渉を行なってまいりましたが、その交渉の中におきましても、身分の保障に関する予算の裏づけ、こういう問題についても今日まで再三再四交渉はしてまいりました。しかしながら、何らそれに関する回答は得られないまま今日に至ったのであります。  過日、われわれ全民労が労働大臣と会見したときに明快な回答をいただいておりますが、われわれ全民労が、失対打ち切り絶対反対を唱えてそういう戦いを組んだのは、あとにも先にも一回でございます。昨年の八月八日の全民労の神奈川における全国大会において、当時労働省が打ち出しておる失対調査特別研究会というものは、首切りを対象とし、失対事業をなくするための、いわば悪策をめぐらした上での調査委員会ではないかというような推測をいたしまして、初めて全民労がかつてない絶対反対の旗を打ち立てました。しかしその後、八月八日の労働大臣会見、あるいは九月十八日の労働大臣会見の中においていろいろ労働大臣と話し合いをしてみますと、絶対に失対事業を打ち切るのではない、現在の三十五万人の適格者を首切るということは絶対にいたしませんということを、議事録には示されておりませんが、労働省との交渉なり、あるいは国会の中の交渉においてはっきりわれわれは回答を受けております。そういう面に立ちまして全民労が今日とっておる態度というものは、労働省は失対事業を打ち切るのではない、あるいは首を切るのではないと責任ある大臣が確約をした以上は、われわれは法の改正にこれを前進せしむべきではないかというような結論に立ちまして、われわれ全民労といたしましては、まあふつつかな頭ではございますが、全民労労働プランというものを実はつくり上げまして、当然その中で失対法の改正に即応するあり方をわれわれは政府に示していくべきだという考えのもとに今日漸次方向を向けております。  しかし、これに対して労働省がわれわれに回答しておる内容は——全民労の労働プランは、先ほど来申し上げますように、身分の保障の確立が第一点であります。その身分の保障の確立の第一点の中で、あくまでも政府事業団か公団を設置して、われわれ三十五万人の仲間を全部、老いも若きも全部完全雇用の形で従業員にせよというのが、全民労労働プランの中の主たる目標でありましたが、この点については困難だということで、その後の進展は見ておりません。しかしながら、われわれ全民労といたしましては、その後果敢に労働省あるいは大臣と折衝いたしておりますが、いかんせん、われわれの思うような方向に持っていかれてないというのが現在までのあり方であります。その中におきまして労働省は、今回、雇用審議会等の答申案に基づきましていろいろ失対法の改正というものを打ち出してまいっておりますが、従来の失対事業というものは、失業者が再就職するまでの一時的たまり場として運営せられ、しかもこれに対する就職促進の法律措置が何ら今日までとられていなかった。これはまことにけしからぬ無策なあり方であったのではないかと感ずるのであります。今回の法の改正に対しまして、いままでの状態から見れば、そういう点でやや法律的に、何となく初めて措置がとられようとしておる点は前進的ではないかという見方をいたしております。  さらに第二点は、従来の失対事業社会保障的においが強く、そのために十条二項による低賃金原則やあるいは主たる家計の担当者のみ失対事業に入れるというようなことがなされておりましたが、こういう面も今回の改正では是正され、同一地域における労働者としての賃金も、十条二項のいままでの低賃金原則と申しますか、一割、二割下回らなければならないというこの原則論をはずして、同一地域における同職種の賃金を支払おうというような点は、これはやはり前進的な意味を持っているのではないか、こう見てとっております。さらに従来の失対事業は、労働対策の面と社会保障的な面が混淆されて、いわば今日まで生かさず殺さずの方法がとられ、そのしわ寄せがわれわれにきておったのでありますが、改正案の中にはこの二つの部分を完全に二分化して、労働分野と社会保障分野とはっきり区分して、今後の対策を立てていこうという点は前進的ではないか、むしろ先ほど来総評岩井事務局長が言われておりましたが、過日岩井事務局長の論文として書かれている、労働月報と思いますが、その三月号を見ますと、はっきり二分化することが正しいのだという主張が載っております。その二分化という面は、やはり労働分野と社会保障分野という面が個人的に言いあらわされている。われわれもそう感じております。少なくとも今日生かさず殺さずの立場をとる中において、六十歳以上の者が相当あるわれわれの仲間の現状から見ますならば、今日のような土木事業一本の作業につかしめているということは、最も過酷であると私は思う。その過酷な面を切り開くためには、今回のこの法の改正をどうしても行なって、その中で社会党、自民党方々、あるいは民社党の方々も慎重審議していただいて、われわれが納得し得る、われわれが有利な立場に置かれるような改正がなされることを、われわれとしては念願をいたしているのであります。現在東京の例を言えば、二万七千人の適格者が東京都内にいることを聞いておりますが、その中で六十歳以上が六千人からおられるということを東京都自体から聞いております。こういう方々をわれわれがどう見るか、私たち全民労という立場は、少なくとも全民労という労働組合をいつまでも失業者組合としてとどめておくということはしたくない、もう少し労働省は、われわれの雇用促進というもの、あるいは雇用安定というものを基盤に置いて、民間事業なりいろいろ各方面にわれわれの職場を見つけ出して就職させるような方向に動く、こういうことが望ましいのではないか、われわれを定職につかしめるために、労働省政府はもう少しがんばってもらいたいという要望を今日まで長くわれわれは続けてまいりましたが、その点が今日まであまりなされなかった。今回の改正法案の中には、今後入ってくる失業者人たちには訓練を施して、いわば定職につかしめ、なおかつ定職につかしめ得ることのできなかった場合には、最終的に失対の適格者としてその権利を与えようという考え方が持たれておるようでありますが、私は今日の社会情勢、雇用の状態というものは、そう甘くないと見ております。少なくとも炭鉱の失業者、われわれの仲間から、中高年齢層も喜んで訓練を受けたからすぐ雇用してやろうというような事業主が、そうやすやすとあらわれるとは思っておりません。そういう中で労働省が企画されたその考え方は、甘いとは見ておりますが、いままでになかったことを漸次ここに考えて、われわれの問題を多少なりとも処理しようとする考え方には、私たちはあえて反対する意図を持っておりません。少なくともこれをもっと大幅に予算なり等を生かして、前進せしめるような方向に持っていってもらいたいという念願を持っております。  さらにわれわれといたしましては、いま申し上げましたように、今回の法の改正というものにつきましては、全面的にこれに反対するものではありませんが、全民労が要望しておる改正法案内容とはいささか一いささかと申しますよりは、大幅な食い違いはあります。その食い違いの第一点は、身分の保障というわれわれのいう第一点が、何ら法の改正の中にうたわれてないということがまず不満でありますが、これは過日、二十七日の労働大臣会見の中において、大臣がわれわれの十一名の代表者の仲間の前ではっきり言われた確約のことばは、法の改正の中にはその身分の保障をどうするということはうたっておりません、しかしながら、法の改正後、漸次あなた方の仲間は固定化していきますということを言明されておる。固定化するということはどういうことかという質問に対しまして、いわば紹介も長期紹介にこれを行なう、さらに賃金も日額払いから月給制にしたい、こういうことを労働大臣はわれわれとの会見の中で確約されておる。さらに身分の問題についてはどうかというと、有給休暇も与え、さらに退職金という問題も漸次政府責任において考えていかざるを得ないでしょうということを、これは確約と申しますか、そういうことばを言明されておる。そういうことをわれわれは——三治局長もそばにおったのです。はっきり聞いておりますから、聞かないとは言わせません。そういうことを団体交渉の席上において労働大臣が確約したことは、議事録もこういう速記録もないのでありますから、大臣がかわれば空白になってしまうかもしれない。われわれは、社会労働委員会の席上において、私がいま申し上げた点を社会労働委員方々から大臣を呼んで追及をし、その確約がとれるならば、今回のこの改正法案にあえてわれわれは全面的な反対をする必要はないじゃないかという考えも持っております。そういう面で、どうかひとつわれわれの今日の失業状態を甘く見ないで、もう少し国会先生方に十分検討していただきたいことは、われわれの身分の保障の面、その中におきまして賃金の面、少なくともこれは月給制です。月給制の中で、労働大臣がこれも答えました。その答えた文句は、これはおそらくみんないたんですから知っておると思いますが、労働大臣はこういうことばをもって答えたわけです。生活賃金、いわば生活のでき得る賃金を、月給を差し上げるようにしなければならないということを、大臣ははっきりわれわれの目の前で答えております。生活のでき得る月収制ということは幾らかということは、全日自労は一万五千円、われわれは総評最低賃金一万二千円というような線で、一応一万二千円といううたい方をしておりますが、これは全国平均賃金最低一万二千円といううたい方を全民労はしておりますから、その点については全日自労の一万五千円はわれわれの一万二千円と多少の幅はあると思いますが、考え方において何ら全日自労と変わりのないことではないか、こう考えております。そういう面で、われわれのこういうふうな考え方を十分に社会労働委員会におきましても御検討願いまして、今後正常な、われわれがほんとうに喜んで働き得る、国民から批判を受けない失対の就労者となり得るような法案改正にこれを持っていっていただきたい、こうお願いをいたすのであります。また、改正法案が通過した後は、賃金審議会というものを設置されるということがあり、その中でいろいろな問題が処理されるということを聞いておりますが、少なくとも日雇いの賃金をきめるほど世の中にむずかしいことはないと私は思います。なぜむずかしいか。おそらく日雇い労働者というものは、政治のやり方が悪いから失業者が出てくるわけです。失業者が出てくれば、当然雇用するものは安く使おうとする考え方を持ってくるのではないか。そうなれば、当然われわれの意思と雇用する側の意思とは一致しない。その一致しない点を、ただ天下り式に学者グループによって賃金審議会を設置してきめつけて、われわれに押しつけられても、われわれとしてはこれを喜ぶというたいこ判は押せないということにもなりますから、少なくとも、賃金審議会を持つとするならば、われわれの仲間の代表も入れて、われわれが甘んじて受けて、喜んで働き得るような、正常な賃金審議会を設置していただくならば、何らわれわれ反対するものではない。しかしながら、これは決して、一から十までいろいろ申し上げてみましても、今日の政権は自民党が担当しておるのです、自民党が政治をつかさどる以上、われわれが十中の八、九、一〇〇%の要求をしても、これを受けてくれるはずがない、はっきり申し上げれば。だから、われわれ労働組合として考えることは、一〇〇%われわれの要求に応じないから、一〇〇%要求に応ずるまでわれわれはこれに甘んじて法の改正を拒否しておるかというと、これは私たち全民労としては断じてできない。少なくとも自民党の政権の中にわれわれの考え方を漸次盛り込まして、そうして漸次われわれの考え方、要求貫徹をせしめるように、社会党の労働委員、民社党の労働委員先生方に極力示唆していただいて、法の改正をぜひともひとつ本国会において通過させていただくようにお願いしておきたい、こう思います。  以上です。(拍手)     —————————————
  37. 秋田大助

    秋田委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。吉村吉雄君。
  38. 吉村吉雄

    ○吉村委員 まず小川参考人にお伺いします。徳田参考人がいないもんですから、やや徳田参考人に対する質問のつもりでございますけれども市長会に関係をしておる団体でもありますので、今後の審議上お伺いをしておきたいと思うのです。  先ほど徳田参考人意見の中に、今日までの失対事業というものは非常に地方財政を圧迫しておった、本来国が責任を持って実施をしなければならないはずのこの種事業によって、地方財政というものが非常に圧迫されておったという話がありました。今回の改正案の中で特に問題と考えますのは、職業訓練なりその他をこれからやっていこうという場合に、その訓練手当の額については、全部国が負担をするということにはなっておりません。これまた地方団体が負担をする、国が補助をするという従来のたてまえを貫いておるわけでございますが、そういたしますと、労働省考え方から申し上げますと、現在の失対就労者はそのままかかえていきたい、さらに新しく職業安定所に来た労務者については、先ほど申し上げましたように職業訓練その他の方向をとっていきたいということになりますから、地方財政は従来以上に圧迫される材料というものが出てくるのではないかというように考えられますけれども、この点については、小川参考人はどういうふうに考えておられますか。  それから第二点は、いまの失対事業につきましては各方面からたくさんの批判があるのでありますけれども、特に先ほど徳田参考人が述べられた意見の中には、非常に非能率で困るという意見が強く打ち出されております。しかしこの失対事業の持っておる本質というものを考えてまいりますと、失業者をできるだけ多数ここに雇用せしめる、就労せしめる、その場合には婦人であろうとあるいは年配者であろうと、そういうことは区分しないでやっていかなければならないという法のたてまえになっておりますし、しかもそこで行なわれようとする事業種目というものは、従来までの例から申し上げますとほとんど土木事業に限られておったということでございますから、能率があがり得るはずがない。そういう条件を備えておったというふうに言い得ると思うのです。さらに加えて、その賃金というものを考えてみますと、PWよりも一割ないし二割低くきめなければならないという状態であり、労働者の諸権利というものがほとんど認められていない、きめられる賃金というのは非常に安い、そのきめられた賃金でやっていかなければならないという仕組みになっていたわけでございますから、他の民間の同種の企業と比較をするというわけにはいかない事業であったというふうに私は考えるのです。その限りにおきましては、能率がさがる必然性を持っておったというふうに私は考えるのでございますけれども、そのことが非常に批判の材料になるということは、表面を見て事の本質というものを十分に見きわめていない議論のように承ったのでございますけれども、この点は一体どのようにお考えになられますか、お伺いをしておきたいと思います。
  39. 小川広之介

    ○小川参考人 十分にお答えできないかもしれませんが、最初に申し上げましたように、今度の改革についてはずっと事務局的な形で参加しておりましたので、私が大体承知しておりますから申し上げます。  財政負担が非常に重い。徳田市長も申し上げておりましたように、歳出額の三割を占めておるというようなところも現実にあります。財政の悪い都市におきましては大体人件費が五〇%以上を占めるというのが今日の状態です。それで事業費の中の五〇%の三〇%を失対が占めるというような都市においては、現実的にはまた生活保護費が一〇%程度を占めるということになって、失対費と生活保護費で大部分を占めるというような顕著な例が相当あるわけです。しかしいま私が申し上げましたように、失対労務者の能力が比較的よくて、しかも数の少ないところでは固有事業が肩がわりしておるということで、比較的問題にならない都市というものも部分的にはあるわけです。しかし全般的には、市長会としては財政的な負担には耐えられないということが、やはり失対改革を要望した一番大きな原因です。それが今度の改革案では、それでは財政負担がどう軽くなるかということの問題ですが、一応労働省考え方では、現在の失対労務者の中で四万程度民間就職への道を開き得る、いわゆる訓練の対象になるのではないかという目安を持たれておるのです。これはいろいろの見方がありますが、私が申し上げましたように、やはり職安の機能というものが活発に動くならば、あるべき職安の機能が発揮されるならば、相当数がまだ民間へ行き得るというように私自身も確信しております。その過程に乗ります労務者のための訓練費、関連費というものは、市町村は今度の改革案では負担をいたしません。そういう意味では、その対象になる労務者のための経費というものが、地方の負担としては小さくなるわけです。  また失対事業というものは生活保護と違いまして、遊んで賃金をもらっておるわけではありませんから、その関連の問題が若干あります。  少し横道にそれますが、それでは現在の失対事業というものが——次に言われました能率の点に関連するのですが、それでは事業をやってもらったそのものが、単費負担をしておるものと財政的な負担でどうなるかということの問題です。それで大体京都地方の事情で申し上げますと、現実に京都市内でやっておる失対事業の実態、これは全国的なレベルから見ますと、決して労務者が特に悪いというような状態ではありません。それであって大体失対の歩掛かりの三倍程度にかかる。失対の歩掛かりということは、公共事業のうちの災害歩掛かり、公共事業の歩掛かりの八〇%程度、その八〇%の三倍かかるということは、要するに公共事業の歩掛かりの四倍以上がかかるということになるわけです。それで京都市地域の現在の失対の賃金は五百七円です。五百七円かける四ということは、現実に公共歩掛かり、経済的効果だけから見れば、一人の労務者に払う金は日額二千何ぼに相当するということが出てきます。そういう点から特に京都のような地区——これは大都市、中都市失業者の多いところはみなそういう状態に置かれておるわけですが、単費の負担と経済効果という点から、やはり経済効果的には不経済工事であるということになるわけです。そういうことになりますと、やはり民間雇用のための措置がとられて、その経費は一切国が持つ、市町村には負担させないというようになればそれだけ財政負担は軽くなるということ、それからもう一つ、新たに求職をしてくる人に対しての経費というものに対しても、市町村は改正案では負担をいたしません。それも同じような意味で、結果論として地方財政の負担が減になるということになるわけです。  それから能率のあがらない点ですが、能率があがらない点は、必ずしも一〇〇%自由労働者の責めだけではありません。これは日々紹介という形をとっておりますために、希望紹介といいまして、早く行った者がいい現場にありつけるというところでは、朝の六時ごろから職安に出てきます。それで実際に現場で就労するのは八時半ごろということになると、そのために非常にロスが多くて、そのための消耗度が高いというようなことで、日々の紹介という形が能力を低くしておる一つ原因です。それで今度の改正案では、継続紹介ということをしまして、半月間なら半月間、一カ月間なら一カ月間、二十二日なら二十二日の就労は同じ現場へ直接行くということになれば、八時半に現場へ行けばいいということが結局能率を若干高めることになるのではないか、これは当然そうなるのですが、改革案でその能率の低い点はかなり緩和されるというように思っております。  以上であります。
  40. 吉村吉雄

    ○吉村委員 他の質問者が相当おりますから、いろいろいまの答弁の中でもお聞きしたいことがあるのですけれども、次に馬場参考人にお伺いをいたします。  馬場参考人の御意見の中では、必ずしもこの法案賛成するものではないけれども、前進的な意味でと、こういうことが非常に多いのでありますが、その中で身分保障というのは、全民労の最も強く要求した事項のように意見は受け取れました。さらにその一環として、現在の失対労務者を公団もしくは事業団に全員雇用せしめる、こういうことであったわけでありますが、今回の改正案の中にはそのような事項というもの、その片りんというものはほとんどうかがわれない、こういうふうに私は見ておるのでありますけれども労働大臣との交渉の中で、たいへん重要なことがいま言明をされたわけであります。その真偽の点については、これからの委員会で十分事を明らかにしていかなければならないと思います。しかし何と申し上げましても、その労働大臣との交渉なりあるいは折衝等におきましても一番問題となるのは、それが労働大臣と全民労委員長との協約の形は取り得ない、こういう状況が一番問題であると思うのです。そのことは、すなわち失対労務者の労働者としての諸権利というものが否定されておる、こういうところに問題があるはずでございますから、先ほどの馬場参考人労働大臣との交渉についても、最終的になかなか信頼が置けないということの原因というものは、いま言ったように労働者としての基本権というものが認められていないというところにあるはずです。今回の法案の中を見ましても、これらの点についてはほとんど改善をされているというふうには私は考えるわけにいかない。先ほど馬場参考人も言われましたけれども、たとえば労働者の最も重要な問題であるところの賃金の決定等についても、団体交渉どころか、賃金審議会の中にも労働組合の代表が入っていないというのが現在の法案です。こういう法案であるのにもかかわりませず、なおそれが前進的であるというように言われますけれども、たいへんこの点は問題ではないか。労働大臣のその言明が実現をするということが前提となって、初めて馬場参考人意見というものは生きてくるものというふうに私は理解をいたします。そういう限りにおきましては、この法案労働基本権を全く否定をしておるということから見て問題が多いのでございますけれども、それでもなおかつ前進的なものとというふうに考えられるかどうか。  さらに、労働大臣の先ほどの交渉内容というものが具体的に裏づけになってこない場合には、馬場参考人としてはこの法案反対だということになるのかどうか、この点をひとつお聞かせ願っておきたいと思います。
  41. 馬場大静

    馬場参考人 先ほど申し上げました全民労の労働プランの中には、事業団、公団を設置して、完全にその中に雇用せよというような内容になっておりますが、この点については、もう政府は、おそらくほとんど不可能だということで今日まで回答しております。しかしながら、現在の法の改正の中で、はっきりしていない点は確かにこの雇用主、われわれがいままで身分の保障の確立ができなかったという面は、われわれを雇っておる相手主がはっきりしていなかった。こういうふうなところにやはり身分の保障の確立の問題もぶつかって、今日までなされなかったのではないか。そういう点から申しますならば、法の改正の中にはそういう面がはっきりうたわれておりませんから、そういう問題について労働大臣にもただしましたが、この点については、今後おそらく雇用主というものは政府か地方自治体か、この点をはっきりしていただいて、そうしてわれわれは完全な雇用主を取りきめていきたいというように考えておりますが、先日の労働大臣の会見の中では、法の改正の中には身分の保障という問題については法にうたっていないけれども、漸次この改正法案が通過した後にはそういう現場は固定化し、あるいは賃金は月給制あるいは基準法に定められたように有給休暇、退職金等も漸次考えていかざるを得ないでしょう、これは政府責任においてやらざるを得ないと私は思っていますということを、労働大臣ははっきり答えられておりますから、一応そういう答えが、われわれの間に取りかわしただけではなくて、この社会労働委員会の中で明確に議事録に回答がなされるものであるならば、法の改正の中にはうたわれなくても、運営面あるいはそういうものの中でこういう問題は解決していけるのじゃないか、こう考えております。全民労が漸進的であるというのは、取り上げて言うならば二つか三つしかないということになります。要は、いままで、休業手当あるいは訓練手当というものも考えも何もしないでいたものが、いわば漸次今後の失業者に対しては訓練を施し、訓練手当あるいは失業手当、こういうものを施すというものの考え方は漸進的ではないか。  さらに賃金の問題に関しては、先ほど申し上げましたように、十条二項というもので、われわれはいままで低賃金の中でどんなに技術をあらわして事業の効果をはかってきましても、それはあくまでもその地域における一割、二割の低賃金の中で、われわれは過酷な労働に追い込まれておったのでありますが、それを今度ははずして、そうしてその地域におけるいわば同等の賃金で支払うというようなことは、これは法の改正の中においては漸進的ではないかという受け取り方をしております。そういう意味です。
  42. 秋田大助

    秋田委員長 田邊誠君。
  43. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 ごく端的に正田参考人近藤参考人にお伺いをしたいと存じます。  最初正田参考人にお伺いをいたしますけれども、先生もおっしゃいましたように、現在日本雇用失業問題というのはきわめて大きな問題になっておるにもかかわらず、これに対する的を得た積極的な国の施策としての対策が、十分講ぜられておらないところに非常に大きな問題があると思うのでございます。三十四年の雇用審議会においては、その当時における雇用状態というのはきわめて深刻であり、楽観を許さないという答申を出しておるのでありまするけれども、その後いろいろな失業対策問題調査研究報告——近藤先生もその一員でございまするが、等の報告やその他を見ますると、政府考え方の中に貫いておるのは、現在雇用状態はきわめてよりいい方向に向かっておる、こういう機会をねらって失対問題というのを解決することが必要だというふうにうたっておるのですけれども、これは現在の日本雇用状態というのをきわめて皮相的に、きわめててまえがってに見た見方ではないかと私は考えておるのであります。政府が言っておるように、たとえば今年の二月の状態の中でも、完全失業者は五十二万人と言っておりまするけれども、これだけとらえてみましても、実は昨年の同期に比べて六万人の完全失業者が増大をしておることは見のがせない事実でございまするし、さらに生産人口、労働に従事できるところの十五歳以上の人口との比率においても、就業者の数というのは、パーセントにおいて昨年の同期である昨年の十二月、一月、二月に比べて、今年はやはりその失業率は減っております。私はこういった点から、日本雇用状態というのは決して前途に楽観をはさむべきものではないというふうに考えておる一員でございますけれども、それに対する先生の御意見を承りたいと同時に、問題は、日本雇用状態というものはきわめて不健全なものである、不完全なものである、いわゆる労働の質の問題が非常に低いものである。たとえば完全失業者五十二万人以外は働いておると言われておるけれども、実際はこの完全失業者といわれる人たちの約十倍ぐらいというものは、働く時間にしても所得にしても、あるいは仕事の継続性という点からいっても非常に不安定な、不完全な状態にある、こういうことが実は考えられなければならぬと思うのでございます。実はこの状態というものは、もちろん経済の二重性からくるものでありますけれども、これを除去し、この経済基盤を拡大する中でもって、不完全な就業状態というものを取り除くという雇用政策がまず先行しなければ、いかに就業手当を与え、あるいはまたいわゆる低賃金率というものを幾らか改善するようなスタイルを見せましても、実際には、結果的にはこれが失業の固定化になり、そうしてまた失対事業に逆戻りをしなければならぬ立場労働者を追い込める、こういう結果に私はなろうと思うのであります。ここにいわゆる雇用失業状態の量的問題と、同時に将来の問題として考えなければならぬのは、やはり雇用の質の向上という問題をこの際抜本的に考える、これから出発するのでなければ、いかなる施策といえども当面を糊塗するものにすぎない、こういうふうに私は考えるものでございますけれども、この点先生の御意見を承りたいのであります。
  44. 正田誠一

    正田参考人 ただいまの御意見とほぼ同じでございます。初めの問題につきましては、これは統計的な問題もありますけれども、自営業などが大幅に減っております。雇用労働者がある程度ふえております。それで雇用労働者がふえるというのでもって、家族従業あるいは自営業などに比べると、ある意味で近代的な労働関係になっておるということが指摘されるのでありますが、やはりそこで自営業の減少のところに今日では非常に深刻な問題が起こっております。それでただいまの御意見と同じに、これは必ずしも量の面だけでなくて、自営業の減少の面、それから雇用労働者の質の面、この両面で今後よほど努力をしなければならぬ問題を含んでおるというふうに考えます。  それから第二番目の問題は、その雇用の質、雇用水準の問題でありますけれども、これは今日一番重要な政策でございましていろいろな設備投資政策あるいは経済の拡大政策が行なわれますとき、雇用の質の引き上げのための政策がもっと先行するということが、ひいては失業対策事業だけでなくて、日本雇用水準を高めるために基本的に重要だというふうに考えます。
  45. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 いろいろ聞きたいのですけれどもあとの方がございますから、次に近藤先生にお伺いをいたします。  今回の緊急失対法等の改正は、いろいろな問題はあるけれども、現実的に見た場合には必要な点が多い、特に中高年齢層の就業に対して選当な職場を与える、またつくってやる、こういう観点からも一歩前進ではないか、こういうお話がございました。私は近藤先生が一員でございますところの、政府から委託をされました失業対策問題調査研究会の研究報告というものをいろいろと読ませていただきまして、考え方はわかったのでありますけれども、私はこの中で、政府は必ずしもこの報告どおりに考え方をまとめておるとは受け取れない点が内容的にはあるわけでございます。それは一応おくといたしましても、いろいろな改善施策は必要である、こういうふうに言われておりまするけれども、それと並んで非常に重要な問題として提起をいたしておるのは、失対周辺の問題でございます。いま私は正田先生にもお伺いをいたしましたけれども、そういう原則的な問題と同時に、この報告書にありますように、具体的にこの失対問題の周辺において、それと関連をして解決しなければならない、また解決を迫られている問題が非常に数多くあると指摘をされておるのであります。たとえば失業保険制度の問題にいたしましても、その給付金の期間あるいは五人未満の強制適用の問題等、いろいろの面で実は改善をしなければならない。これをしなければ、たとえば失対事業から外に出された、不安定な職場に就職したけれども、またその職場の状態でもって職業を奪われたという者に対して、やはりそれに対するところの補完的な制度というものが確立をしなければ、これは全日自労や全民労の委員長が言われましたように、そこで働く労働者失業に悩む労働者に対して安心感を与え、喜んで職業につかせることはできないだろう、こういうふうに私は考えるわけでございます。特に中高年齢層については、現在私がいま申し上げたような雇用状態でございますだけに、これは非常に問題が多い、あるいはまた最低賃金制の問題にいたしまし七も、現在はほとんどこれが業者間協定の中でもって、有名無実の状態におちいりつつある、こういうことに対する再検討が必要であるというようにこの報告書がうたっておることは、きわめて注目をしているわけでございます。したがって、いわばこの失対制度の刷新と名のついているところの考え方というものと並行いたしまして、これらの施策というものが同時並行的にとらえていくところに、実は日本の失対問題の解決に向かっての一つの注目をすべき前進態勢というものがあるのではないかと考えるわけでございます。近藤先生はこういう報告を出された一員といたしまして、それらの失対周辺の問題を解決するところの具体的な施策というものが、この二法を提案した政府立場の中でもって、現在具体的にとらえつつあるというあなたは確認をされ、また信頼をされてこの問題に対して御意見を出されておるのかどうか、この点をまずお伺いしたいのであります。
  46. 近藤文二

    近藤参考人 ただいまの先生の御質問に関連いたしまして、最初正田先生にお聞きになりました点でございますが、いかにもわれわれの報告では、現在は労働力不足の声が高いから、ちょうど失業問題解消の時期だというふうにはいっておりますが、最後のところで、いま先生の御指摘になりましたように、周辺の問題をいま非常に重要視しているわけです。したがいまして、特に中高年齢層だけをとらえますと、労働力が不足かあるいは余っておるかという問題は、若年労働者の場合と同じように、労働力不足というふうには言い切れない。若年層の労働力不足がだんだん中高年齢層のほうにおける労働力で緩和されるという面は一部ありますけれども、私はそれほど楽観いたしておりません。したがって、いま先生の御指摘になっております周辺の問題に対して政府がどう考えておるか、それが前提になってものを言わないと、おまえの言うことは筋が合わぬ、こういうふうにきめつけられますと、まことにそうでありますと言わざるを得ないのであります。しかし、私は政府を社会党の先生よりはもうちょっと信用しておるのでございます。(「失礼だ」と呼ぶ者あり)いや、失礼でございましたら失言として取り消さしていただきます。最近賃金の問題一つとらえましても、私、大阪府の最低賃金審議会の会長をやっておるのでございますが、業者間協定ではだめだ、だからもっと本格的なものにしろということで、実際いろいろと意見も述べておるわけなのでございますが、政府のほうでもそっちの方向を向いておるというふうに、その点では私は確信しておるわけです。だから、近い将来に法律改正はやらなくても、社会党の先生方が主張しておられるような方向に向いていっておるというふうに私は信用しておるのですが、先生方はそれを信用しておられないのではないかと私は誤解したので、いま失言を申し上げたわけでございます。  それからもう一つ社会保障の関係からいえば失業保険の問題がございます。これもつい最近ここで御審議になりました結果、一歩前進したと私は考えておるわけであまりす。それから生活保護法の基準の問題にいたしましても、私もここまでおそらくいまの自民党政府は上げないだろうと思っておったのでございますけれども、たとえば東京都の四人世帯で一万二千二百二十三円が一万四千二百九十九円に上がるというような形で、少しずつ上がっていっておるというわけで、周辺の問題はある程度前向きに動いておるというふうに私は感じておるわけなんです。しかし、この程度ではもの足らないということは、これは先生方とむしろ同じ意見に立っておるのでございますが、ただその場合に、周辺のほうの問題が完全にわれわれの希望するような形になるまで失対のほうを待っておるという行き方と、待たずにこちらも進める、あちらも進めるという行き方がある。逆に申しますと、私は今度の改正によりまして逆に進められるのではないか、たとえば政府のほうの考えでは、これは来年の四月からということになるのですが、失対の賃金として一万円くらいのもの、それから職業訓練手当一万二千五百五十円、それから就職指導手当九千百五十円というものをお出しになってある程度バランスをつくっておられる。ところが、来年の四月から失対の賃金は幾らできまるかという場合に、少なくともこれより上回るものでないとちょっと筋が合わぬように私は思うのです。そうしますと、来年の予算のときには相当上げなければならぬ問題が起こる。その上に、先ほど申しました中高年齢層の人たちが失対のほうに入る率がもっと多くなる。たとえば適格条件をはずしてしまいますと、いまでは御主人一人しかやれない人が、今度は奥さんも一緒に入るということになりますと、相当予算がよけい要るだろう、そういうことを見込んで自民党政府がこれをやられたというのは、私は非常に進歩的だと思って感心しておるのです。私はそういうふうな理解のしかたをしております。これは見通しで、私の見通しが間違っておるかもわかりませんが、一応そういうふうに見ております。  それから、いま申しました賃金の問題でも、先ほど私の言い方がちょっとまずかったかもしれませんが、団体交渉によって上がっていくというのが普通の賃金の上がる場合の原則でございます。こういうような失対事業の場合は、これは私個人としては、法律にはっきり出ておりませんけれども、国が最終責任を持つべきものだという考え方です。そうしますと、団体交渉の相手方は国である。だから組合の方が国に対して団体交渉をおやりになって上げていく、それを労働大臣が判断してきめられるというようなかっこうになれば、決して労働者の権利を認めないということにはならないのではないか、私はそういう判断です。そしてその意味から申しましたら、賃金審議会がきめるのは、失対の人がやっておられるような一般の日雇いの人の仕事というものを前提にすれば、その職種の最低賃金をそこできめていくんだ、それが相当高い賃金になれば、民間の同じような業種の賃金がまた逆に上がっていく、そういう方向組合労働大臣のほうへ団体交渉を、ここにおられるような方がうまくやられまして、先ほどの馬場さんのように、労働大臣のほうから非常に重要な言質を取っておられるということになれば、社会党の先生方反対されるのはおかしいような感じをちょっと持っておるのですが、これは私の個人の感じ方ですから間違っておるかもしれません。答え以上のことを申し上げてえらい失礼でございます。
  47. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 ほかの問題をお聞きしようと思いましたけれども、ちょうど私の質問以外の賃金の決定問題に対する再度の御意見がございましたので、その問題に対してだけお伺いをいたします。  近藤先生のせっかくのいろいろな御意見の開陳がございましたけれども賃金、それ以外の労働条件もそうですが、これは労使の間の話し合いでもって当然きまるべきところの大原則というものは、やはりいかなる法律でもってもこれを制約することのならぬことは、世界の趨勢そございます。いまILO八十七号条約の批准をめぐっていろいろな話が出ておりますけれども、国家公務員、地方公務員等の政府が直接雇用しておるところの労働者に対しても団体交渉を認めろということは、これはどなたも認めざるを得ないところまでまいっておる。そうなってまいりますならば、いかに日々雇用労働者であろうとも、これは当然その賃金等の決定権を対等において持つというのが原則であります。あなたは何かいろいろな団体交渉をやったりあるいは折衝をすれば、最終的にきまる場所がどこであってもいいような御発言でありますけれども、これは政府自身が労使対等の原則というものに対して、公務員とは違って労働三権を認めておるわけですから、模範を示す時代が来ておるのです。そういった点からいいまして、いままで以上に、これが一歩前進の態勢でもって労使対等の原則とその団体交渉を煮詰めていくことに対して認めるという方向にいくならば、これはもちろんいいわけでありますけれども賃金審議会等によって労働大臣がきめる。その場合に、労働者意見というものを正確に伝えるという場が、これは法律的な意味じゃ額面どおり受け取ればないのです。これでは、政府を信頼されるという先生の御意見でありますけれども政府を信用しまいが信用しようが、問題は、実はきちんとその原則というものが明確化されなければやはり労働者は安心はできない、これは私は現在の資本主義の中で当然のことだと思うんです。これに対して先生の先ほどの意見の開陳とただいまの御意見に若干のニュアンスの違いはありますけれども、私の言っている点がもしお認めいただけますならば、この今回の改正案あるいは現在の政府考え方、こういうものに対しても、現在の時代に即応した前進の態勢であるというふうにはどうしても受け取れない。これはおわかりであろうと思うのでありますけれども、ひとつもう一度この点に対しても——どうも先ほど私は、せっかく学識経験の先生の、二十世紀におけるところの学者の意見としてはいささか受け取れない御意見を承りましてたいへん奇異に感じたのでございますけれども、この点に対して社会党が反対をする意向は何かという御意見もございましたけれども、これは労働者にとって基本的な権利でございます。当然認めるという、こういうことに対して学者の方々の当然そういう方向にいくところの御意見が承れると私は確信をして、そういった点で信頼をいたしますので、ひとつ御意向を再度承りたいと思います。
  48. 近藤文二

    近藤参考人 私申し上げましたのは、団体交渉権というものを基本的に認めるということは国家公務員の場合でもそうあるべきだ、これは同じような考え方をいたしております。問題は、その団体交渉の相手方なんでございますが、現在の場合は事業主体が個々ばらばらにあって、その個々ばらばらの事業主体と団体交渉をやっておられる。したがって非常にアンバランスができる、賃金の中においても労働条件においても。それでは困る。いやしくも国が責任を持ってやるこの新しい失業対策事業の上では、国が実は雇用していると同じような性質を持つべきものではないか、だからたとえ国が直営事業でやらなくとも、事業主として団体交渉に当たるのはむしろ国であるべきだという意味において、団体交渉権を認めればいいというふうに私は考えますので、従来のような団体交渉権がなくとも、団体交渉権を認めないという論理は成り立たない、こういう考え方なんです。だから国が最終責任を持ってこの失対事業をやる限りは、国が当事者となって団体交渉に応じて、そしてある地域のある職種についての賃金はこういうふうにきめる、そのときの参考にする材料を賃金審議会が出す、こういう形のものでないかと思いまして、私は賛成いたしておるわけです。その点が法律の中でぼやけておるならば、これは法律をまたそういうふうに変えていただく必要が起こるかしれませんが、大体この法律を読みますればそういう精神である、少なくとも私たち研究員の場合には、そういうような考え方で団体交渉権を否認するというようなことは毛頭考えておりません。二十世紀ではございませんので……。
  49. 秋田大助

  50. 島本虎三

    島本委員 近藤先生、それから正田先生、それと同時にそれに関連して中西参考人にもお聞きしたいと思います。  近藤先生にまず聞きます。いろいろと御議論がございました中に、冒頭に今回の法案には賛成するということを前提にいろいろ示されたわけでございます。その理由をいろいろ承りまして、そして先生のことばで言うと義憤を感ずるような表現もあったわけでございましたが、その中で今回の基礎になった失業対策調査研究報告、ここに五人の先生が名前を連ねてやっております。その報告書の一番最後に、最低賃金制度と完全雇用政策並びに社会保障制度の合理的な作用がなければ失業対策事業の効果は期し得ないから、これはもう両面を相唱えてやるべきであるということをはっきり載せてあるわけでございます。これは以前山中先生からもこの意味のことを承った、そうしていま出されたこの案に近藤先生は賛成されたわけでございます。五人の委員のうちの一人になっておるわけでございます。そして同じようなこの問題についての御意見の中で、正田先生の場合には、ことに現在の問題で既存の中高年齢層に対してはこれはもう何もならないんじゃないか、失業を保障する制度が最も必要なんじゃないか、こういうように言っておられるわけです。そうすると、前の答申書とは少しずれてきているんじゃないかというふうに疑問を持つわけです。それと同じく正田先生の発言の中には、雇用対策の中で、これは単なる安定雇用に値するかどうかがわからぬ、ただ単に通常就労にすぎないじゃないか、安定雇用でもないのにこれは少しおかしいという表現があったわけです。そうすると、完全雇用の点においてもいまだしの感がある。社会保障の面でも、それから完全雇用の面でも——もっとも最低賃金制の問題等につきましては同じように言われておるのですが、依然としてその問題については、中西参考人の言われました例を五つまであげております。常用雇用の問題と、一万五千円の問題と、退職金と社会保険の問題、それから失対無条件復帰の問題と、本人の自由意思の問題をあげておられる。この中の一万五千円は、これはもう認めるなんておかしいような表現があったように思っておるわけでございます。そうすると、三つ備わらないのにこれを賛成したということになると、両先生の間にも意見の食い違いがはっきりあらわれておって、私どもはこれを理解するのには困難を感ずるわけでございます。ことに中西参考人の言ったこの五つの問題は、現実の面でこれがなければ生活できませんぞという、いわゆる生活するための最低限度の線を示して述べられた、それに対しても反対だということになると、将来のまだ構想もできないし、現実の問題もはっきりしないのに、これに賛成されるということになると、いよいよもって私は理解に苦しむわけでございますが、この辺を明確に御三人の参考人からひとつお答え願いたい、このように思うわけでございます。
  51. 近藤文二

    近藤参考人 明確に答えられるかどうかわからないのでございますが、正田先生は非常に学問的に抽象的におっしゃっておるわけなんですが、一体完全雇用政策というのは何かということになりますと、これは非常にむずかしいわけなんです。それで雇用の問題につきましては、今回のこの対策では雇用をつくるというよりは、現にある雇用就職をさせるようにするというやり方になっております。この点は私、はなはだ遺憾な点である。私、今度の改正が一〇〇%いいからこれでもう何もしなくていいということで賛成しておるのでございません。一歩でも二歩でもこれは前進だという意味において賛成しておるのでございますから、その点は誤解のないように願いたいのですが、完全雇用考え方は、摩擦的な程度失業はしかたがないが、それ以上の失業を出さないように国が雇用政策をやるという場合に、国みずからが雇用の場をつくって、そうして就労の機会を与えるという方法と、それから現にある雇用あるいは民間雇用を増進させるという方法がありまして、日本の場合は、問題によってはやはり政府みずからが雇用の場をつくる必要があるという意味において、社会投資を通じて公共事業をもっと大いにやらなければいけない、これは私当然いろいろな他の開発その他の問題等から出てまいりまして、そういう面において雇用の場をおつくりになるというふうに考えておるわけなんです。それから民間雇用の場合は、要するに技術を身につけて、そして安定した雇用につけるように指導なり教育をする、その指導、教育のやり方が官僚的になると、これは問題がありますけれども、だから私は運営に非常に注意しなければいけないということを申し上げているのですが、方向としては、この中に盛られておる方向を通じて、ある程度また完全雇用政策につながっているのじゃないか、そういうような考え方完全雇用政策と今回の改正とは矛盾しない。少なくともこういう政策を行なっていけば、逆に言えば、この結果非常にたくさんの失対就労者が出てくるとすると、政府はもっと本格的に雇用をつくる必要を感ずるというふうになるのであって、こっちのほうから攻めていくというやり方のほうがむしろ周辺の問題解決に役立つので、周辺の政策が立たなければこっちも進めなくていいのだという考え方には、どうも賛成いたしかねるのであります。あるいは私の答弁は、ちょっとまずいかもしれませんが……。
  52. 正田誠一

    正田参考人 近藤先生は私どもの大先輩でございまして、そしてまた実際の社会保障の問題についてもたいへん豊富な体験をお持ちでございますから、ただいま近藤先生から御意見のありましたことに私ももちろん反対ではございません。しかし先ほどの参考意見で申し述べましたように、わが国の場合は、一つ失業をなるべく出さないようにするという点について、これまで非常に欠けておる点があった。だから、いまにわかに完全雇用ということばを使う勇気を持っておりませんけれども雇用失業問題を長期的に確実に改善していこうとするならば、少なくともそれらの点についてもっと力を尽くすべきじゃないか、そういう意味賛成いたしかねると申し上げたわけでございます。
  53. 中西五州

    中西参考人 いまの完全雇用方向に一歩進むのじゃなかろうかという一つ問題点でございますが、私は完全雇用を議論する場合に、特に日本の場合、その量的な側面だけで問題をとらえたら非常に大きな誤りをおかすであろう。現在政府が出しておる失業者統計は、御承知のように完全失業者の数は三十万から四十万の線であります。それでは日本失業率を言うならば、一%未満という世界の資本主義国の中でも類例を見ない、完全雇用に近い状態であります。そういう完全雇用、いわゆる雇用の量的な側面だけをもし見るならば、日本の現在の雇用情勢というのは、アメリカでも四%から五%ですから、それで五百万、七百万という完全失業者がいるのですから、その大先輩のアメリカから比べれば、日本は何ぼかすぐれた状態にあるわけであります。しかし私は、日本の場合には雇用の問題、特に完全雇用を論ずる場合に、雇用の質的な側面が決定的なポイントであろうと思います。  御承知のように日本では、先ほども申し上げましたように、臨時、日雇い、社外工、こういうような雇用形態があるわけです。問題は、こういう雇用形態を前進させる政策なのか後退させる政策なのか、そういう臨時、日雇い、社外工というような制度、そういう方向へより強める政策なのか、それをほんとうに縮めて減らしていく政策なのか。日本雇用政策の根本を論ずる場合は、そこを論じないことには私は問題にならないと思う。  そういう立場から就職促進の措置を考えてみた場合、職安所長が非常に強い指示権を持って、職安に来た失業者に、ああしなさい、こうしなさいと、いろいろ言うわけです。そうして私たちが出している最低最低の五条件すら認めない中で、職安所長にそういう強い指示権持たした場合にこれは一体どういうことになるか。新しく職安へ来る失業者は、言うならば失対事業にすらはいれない、しょうがないから、安くても食わぬわけにいかない、生きないわけにいかないから、しぶしぶ、職安所長の顔色を伺って、安い賃金でも、手当はなくても、時間が長くても働きに行く。こういうことに、政府のいわゆる就職促進措置というのは私は役立つと思うのです。そういうふうにならないという保障があるなら、私はそういうふうにしてもらいたいと思うのですよ。なぜかと言うなら、そういうふうにならない保障は、私たちが出している五つの条件を少なくとも政府がオーケーをするならば、私はそういうふうにならないという保障があるということを明確に言えると思うのです。そういう、雇用政策を量的な問題だけから論じて——量的な問題だけから論ずるなら、日本の現状というのは超完全雇用です。世界の資本主義国の統計を見れば、皆さんにお配りした中でも出してございますけれども、超完全雇用です。そこで問題は解決しないというのが現在の実情ですから、結局そういう雇用政策はいわゆる前進的な雇用政策にはならない。  それに相応じて最低賃金制の問題、これは先ほど申し上げたとおりです。山中委員会の報告には、失対周辺の問題が出ております。だけれども、私たちは、現在まで労働省と交渉した中で、少なくとも、最低賃金制業者間協定というようなやり方でなしに、大きく前進をして、現実に六百万人もおる一万円以下の労働者、こういう状態が早急になくなるという見通しはないではありませんか。そこに持ってきて、そういう雇用政策就職促進の措置を講じられ、最低賃金制はない中で、六百万人の一万円以下の労働者がなおおる。しかも、この自由化の中で、農業からたくさんの中高年労働者が出てこようとしている。農業だけではなしに、合理化の中でも、現実に福岡や北海道の炭鉱労働者が示しておるように、炭鉱労働者は半分も実際は就職ができないのです。政府の統計で言えば六割、七割というような数字が出ていますけれども、一年足らずの間に、半分は自分の家へ帰ってきておるのです。なぜそういう状態が起こるかと言えば、それは失業者を再就職させるためのルート、この保障、安んじて政府のいわゆる広域職業紹介のルートに乗れるような保障がない。言ってみれば賃金条件も全然違う、何もかも条件が自分の期待しておったのと違うから、荷物をまとめて帰ってこざるを得ない、こういう状態が起こるわけです。だからそういう点で、私たちはやはり山中委員会が提起している周辺の問題を非常に重要視してもらわなければいけないし、そういう方向に一ぺんにいかないという議論があるわけですが、私たちは、一ぺんにいけないなら、失対問題だけをなぜこんなに急ぐのかと思います。この改革案だけ、なぜしゃにむに私たちと基本的な了解も何もつかないのに、基本点で全日自労との了解、あるいはいま全民労の馬場委員長が言われたように、了解も何もつかないのに——まあ全民労は期待をしてまかすというような条件らしいのですけれども、私は正直なところを言って、それほど信用ができないのです。私はそういうことでこれまでの政府労働省を信頼することができない、そういう立場から、この問題については、何と考えてみても、私たちはこの政府案が前進的な雇用政策であり、失業政策であるというふうに考えることができないのです。政府完全雇用政策賃金政策、そういうものが当面の問題として日本労働者に非常に重要であるだけに、そのことと離れがたく今度の政府案というのは結びついております。ですから、もしこの失対法の政府改正案が通るということは、政府完全雇用政策立場に立たないということ、あるいは賃金政策でも社会保障政策でも、やはり池田内閣の政策はきわめて後退的な政策であるということを、私は事実をもってこの法案は示しておると思うのです。
  54. 島本虎三

    島本委員 では第二番目、これもやはり近藤参考人中西参考人にお伺いしますが、いまのいろいろ御意見は十分理解することはできませんですけれども、重大な参考になりましたこの山中委員会といわれる失業対策問題調査研究会報告の、この中を通してでき上がってきたのが今回の改正案である、こういうふうに理解した上に立って、一歩前進しているから私はこれは賛成だと、先ほどのおことばがあったわけでございます。そういたしますと、この中で期末手当その他の手当賃金と二つに分けろという答申があって、今回それは出されておるわけです。そういたしますと、期末手当それから年末手当、こういうのは一応了解できますが、いままでのこの失対といわれるこういうような各層がいろいろ働いているのは、北は北海道から南は九州の果てまでございまして、いろいろその違いが現在まであったということです。これを二つにはっきり分けてやって、現在より前進したという結論が出るのか出ないのか。たとえば北海道の石炭手当は、これはすぐどこにも入らないで置いていかれてしまいますが、こういうような場合は賃金に入れないとこれは困るでしょうけれども、そうなった場合はどうなるのか。これは前進なのか後退なのか。この面からだけ見ると後退だと言わざるを得ないし、その点ははっきり中西参考人のほうから、これはもう言えるのじゃないかとも思うのです。この中で手当賃金と二つにしか分けなかった、その手当の中に石炭寒冷地を全然お入れになっておらないで、現在前進であるという根拠を明確にしてもらいたい。それと同時に、中西参考人のほうには、こういうような状態に置かれておって、これも賃金の中へ入ってやられる場合は、今後いろいろな場合に失対へ残る人のためには、これはまた体系の上からいっても困離なような状態になるのじゃなかろうか、苦しいというよりは、めんどうくさい状態になるのじゃなかろうかと思われますが、こういう状態に対しては、ほんとうに前進だということばはあなたから聞けないと思いますけれども、しかしこういうのはどういうふうに皆さんのほうでお考えになっておるのか、この点に対して明確にしてもらいたいと思います。
  55. 近藤文二

    近藤参考人 お答えいたします。  現行では、賃金につきましては同一地域における同一職種に従事する労働者に通常支払われる賃金の額より低く定める、こうなっておるからそれはいけない、だからその地域の類似の作業に従事する労働者賃金を考慮して地域別に作業内容においてきめる、政府の今度の改正法案ではこうなっております。これは私の解釈では、賃金というものを基準賃金というふうに限定されますといまのような御質問が起こりますが、北海道は当然寒いところでございますから、その地域においては寒冷地域に出るものは当然賃金として考えるべきものだと私は了解しておりますので、いままでのようなもやもやしたものがはっきり賃金の中に出てくるという意味で私は前進だ。しかしこれは各地方のものをきめる際、賃金審議会がどういうふうに考えるかによってわかりませんけれども、私はおそらくそんな非常識なことをやるような人は委員にならぬだろう、こういうふうに考えております。
  56. 中西五州

    中西参考人 賃金の問題と手当の問題ですが、まず今度の法案の中で、いわゆる失対賃金の決定のしかたで、同一地域の同一職種の普通労働者に支払われている賃金よりも一割ないし二割下げなければならぬという失対法十条二項の削除があるわけです。この削除があれば、言うならば日雇いの賃金はよくなるのではなかろうか、こういう考え方か、あるいはそういう意見を言う人があるわけですけれども、私たちは、それはあるよりはないほうがいいには違いないと思いますけれども、実態はこれは賃金審議会その他でいろいろ、法案はそこあたりのきめ方を相当そちらに委任をしておりますけれども、私たちはあまりこのことに、この条項がとられたからといって、日雇いあるいは失対労働者賃金はよくならぬだろうと思います。それは依然としてこの法案の中にありますように、失対賃金のきめ方は地域における同一職種に働いておる労働者賃金を基準にしてきめると書いてありまして、これが大体くせ者なんです。これが大体昔から申し上げた、いわゆる土方は流れ者で、東北の土方が食えないで、農村の労働者が食えないで、あるいは貧農が食えないで北海道へ流れていく、あるいは東京へ流れていくというような形で、土建産業における賃金ほど一人的賃金、その者だけが食う賃金ということで規制をされてきているわけですから、われわれは、馬場委員長も言われましたように、言うならば少なくとも人間らしい最低生活を保障するという考え方が多少でもこの中にあるならいいですよ。そういうものがないですから、失対賃金をきめる基準は依然として、低賃率原則はなくなったけれども、同じ地域における同じ仕事をしている者の賃金を基準にしてきめる。これはそこでPWの問題とも関連してくるわけですけれども、おそらくそういう新しい、PWにかわって一つのそういう民間の日雇い労働者賃金実態調査が行なわれて、それがやられて基準にされていくことになると思いますけれども、そういう立場からいろいろ私たちは問題を考えてみた場合に、もしよくなるというならば、少なくとも人たるに値するような生活ができる賃金をやるということをきめて、初めてそういう方向へ一歩前進と言える。もともと今の日雇い労働者とか、ああいうようなのは食えないのですから。皆さんも御承知のように、いま東京へ来てああいうビル工事——私はきのうも電車に乗って、とび職の人と一緒にすわりましたので、一日幾らもらえますか、千円もらえるのですかとその人に聞いたら、ああいうビル工事の高いところで仕事して、かっこうは勇ましい、若い人ですが、千円もらえない。結局聞くところによると七、八百円らしい。それは土方の中でもまだいいほうです。そこらあたりの雑役や運搬夫、掃除婦となると、民間賃金はもっと低い。そこらのビルあたりの掃除婦は東京で幾らもらっておりますか。失対賃金と同じじゃありませんか。いまの失対は女の人、そういう人を基準にしてきめられるじゃありませんか。そういうことがないという保証があると言えない。だから私はこれをもって改善だと言う人たちに、実際の姿を見てもらいたい。それほどわれわれ日雇い労働者失業者、あるいは半失業者のまわりに動いている問題は、そんな単純な問題でないのです。そういう点と、今度の労働省法案の中で、政府法案の中で、そういう賃金に関連して、山中委員会では、手当の問題は本来これは賃金に繰り入れるべきものだから、順次賃金に繰り入れていきなさいということを言っている。今度の政府法案では一応夏季、年末などの特殊の場合に払われるこの手当の問題は別に定めるという形で、これも賃金審議会というものに委託をしているわけですけれども、この手当の問題を先ほど市町会の代表の方あるいはその他の方が申されましたけれども手当の問題は、いま全国的に非常にアンバランスの問題が多いのです。全国的に見ますと、年間失対で働いてもらう夏季、年末の手当が、最高のところは四万をこえております。これはもちろん政府の分、自治体の分、県の分全部を含めてですが、最低のところは政府の二十三・五日分と、あとほとんど自治体から二百円か三百円しか出ていない、こういうアンバランスができているわけです。これは主としてどうしてそういう状態が起こってきたかというと、一つは当局側の理解の程度、日雇い労働者やそういうものの生活の実態に対する理解の程度がある。もう一つは、そこの組合の団結の強さがある。私もそういう中で十年以上運動をやってきたものでございますが、こっちが日雇いのこの労働運動を通じて、私が痛切に感じることは、とにかく人にそら頼みの期待をしたり、人の良心を期待をしたり、そういうことをしておったのではほんとうに生きていけない、自分の生活をよくできないですよ。政府の良識やあるいは政党の良識、あるいは国会の良識に期待をしておったら、そんなものは死んでしまわなければなりません。ただ一つのたよりは、自分たちが団結して、市長さんには申しわけない、確かに私たち申しわけないと思うのです。こういう状態に置いておるのは一にも二にも政府責任だ、国の責任だと思いますけれども、私たちは市長さんに率直に言わざるを得ない。無理言うた力が強いところは、たくさん出るわけです。先ほども金沢の市長さんでしたが言われておりましたけれども、非常に苦しい生活を見ておるとやはりつい出したくなる。出すとやはりそれがだんだん既成事実になって積み重なってくる、こういうふうなことを申されておりました。私はあれは偽らぬ声だろうと思います。われわれもらうほうだって、これはほんとうに言うならば、ひったくって取ってくるようなものですから、これはほんとうにわれわれもそういう点では、考えてみれば市長さんには悪い気がします。これは気の毒な気がします。しかしそれをあきらめておったのではできないのですから、結局そういう執念の強いところほど、団結の強いところほど手当は高い。そういうものが、不幸にしていろいろの条件の悪いところは手当は低い。おそらくこのアンバランスは非常に激しいものです。問題は、そういう中で政府は一定にきめるというわけです。どこに線を引く、一番低いところに線を引くならば、これは大問題が起こると思います。一番高いところに線を引いても、これは大問題が起こると思います。それはやはり自治体の財政やいろいろの関係で、全部最高のところへ右へならえしていったって、これはいろいろ問題が起こるでしょうし、いずれにしろ政府考え方は、われわれが察するところ、こういうふうに傾斜をしている中で一つの線を引きたいという考え方が強いように私たちは思います。どこで引かれるか、これは大問題であります。下で引かれるほど、私たちがいままで食うに食えないでそういう事態にそういう実績をつくってきたものが否定されてしまう。この法案の中には、そうならないという保障は何も書いておりません。賃金審議会のようなあまり生活にお困りにならぬ方だけにいろいろ議論していただいても、私たちは、そういう賃金審議会を信用するわけにはまいりません。私たちにいい答申がなされるであろうというふうな期待すら、私たちは持つことができません。そういうことをいろいろ考えますと、この手当の問題をとっても、私たちは今度の法案が前進だというふうに言うことはできないと思います。島本先生の石炭手当の問題もそれと同じような形であらわれておりますから、私は同じようにそれは前進ということができないと思います。そういうことで、私たちはやはりこの法案をしさいに論議をすればするほど、この法案に強い不安を抱かざるを得ないわけです。残念ながら全国の日雇い労働者は、私たちのそういう不安あるいは全民労の馬場さんが言われたような不安、そういうものをいま強く持っておるということであります。そういう中でやはり政府はそれを十分——いろいろ政府もPRに一生懸命のようでありますけれども政府は私たちを理解させることが、われわれ本部におる役員を納得させることができないのですから、まして組合員を納得させることは現在できていないと思います。そういう状態の中で強行されれば強行されるほど、私は事態は悪化すると思います。決してこれはおどかしやそういうあれで申し上げるのではなしに、その点は十分ひとつ考えていただきたい。いま全国の私たちの仲間は、この政府の案は悪くなると思い込んでおります。何ぼ大橋労働大臣が二万首切るぞ、四万首切るぞとおどしても、そのおどしでいま私たちは、大臣の言うとおりに、政府の言うとおりになろうというふん切りをつけるというわけにはいきません。こういう点を十分考えていただきたい。この問題はそれほど日雇いの労働者の当事者が強い不安を持っておる。それを政府あるいは自民党皆さん方が、基本的にその不安を解消していない中でこの法案が強行されれば、やはりそれはいろいろの不祥事態を生む可能性がある。私は残念ながらそういう事態について責任を持つことはできませんし、私は皆さんに望むのは、ひとつ慎重審議をしていただきたい。そしてそういう不安を解きながら、なおわれわれ全日自労はこの問題について真剣に政府労働省と話をしようと思っております。いろいろ交渉をして進めていこうという強い熱意を持っております。強い熱意を持っておりまするが、残念ながら労働省当局には、そういう点でわれわれのそういう強い熱望にこたえてくれるような態度がまだ十分ではありません。もちろんわれわれは、大橋労働大臣がいろいろの点で努力されたという事実は認めますけれども労働省の局長以下の人たちが、われわれの持っておるそういう基本的な問題点について、ほんとうに話し合う態度になっていない現在の状況を、私たちはこの問題を解決する上で非常に遺憾に思います。そういう点でぜひ法案審議を特に自民党先生方にお願いをしたいわけでありますけれども、どうぞ私たちのそういう不安を解決する中で、この法案の議論をひとつ進めていただきたい、ぜひそういう仲間の不安を取っていただきたいと思います。
  57. 島本虎三

    島本委員 三問目、これは簡単です。近藤先生にだけです。やはり先ほど私が確かめたように、先生が入っておったいわゆる山中委員会という失業対策問題調査研究報告書、これを重点的に考え、これからできてきたのが今回の改正案だと思っていたのです。したがって、これは末尾にはっきりあるように、最低賃金制度と完全雇用政策社会保障制度の併進の中にこれが解決をはからなければならないというふうに理解しておったわけです。それを私は、その中で出てきたことばで、先ほど中西参考人が言った一万五千円ではこれはもってのほかであるという印象を受けるような御答弁があったわけですが、これは社会保障としての線より低いというのか高いというのか、またこれだけではだめなんだ、社会保障の線とはどういう関係があって一万五千円というのはだめだというふうに先生はお答えになったのか、この辺の考え方を明確にしておいていただきたいと思います。これで私は質問を終わります。
  58. 近藤文二

    近藤参考人 私の先ほどの発言の中で、一万五千円という金額が高いとか低いとかいうことは申していないつもりでございます。一万五千円でも、あるいは一万二千円でも同じことなんですが、そういう数字をもってここで要求された場合に、その数字を法律なら法律の中へ取り入れて打ち立てるということはそれは無理じゃないか。というのは、私の考えでは賃金審議会で一応賃金の率をきめますと、これが同じ職種の最低賃金になる。先ほどの全日自労の委員長のお考えとちょうど逆なんでございますが、むしろこれを高くして、民間のいま低いのを高くするべきだ。日雇い労働者の場合は、民間のほうは途中でピンはねをやられておると思うのです。こちらの場合にはそういうことは起こらないというような問題等もございまして、むしろこちらにてこ入れをしていくという意味で、金額をきめるということで政府に約束させようという要求は無理じゃないかという意味なんでございますから、一万五千円が高いからいかぬということは決して申しておりません。それは職種によって、賃金審議会できめるときに、非常に強い労働でしたら一万五千円くらいの線があるかもわかりません。そういう意味で申し上げておるのですから、あるいは誤解がございましたら、ひとつお許しを願いたいと思います。
  59. 秋田大助

    秋田委員長 八木一男君。
  60. 八木一男

    八木(一)委員 近藤参考人にお伺いいたしたいと思います。いま各参考人は各委員の非常に有益な御論議を伺っておったわけでございますが、幾ぶんダブるかと思いますが、その点お許しをいただきたいと思います。  実は失業保障の問題ですが、いままで日本の国において行なわれてきた失業保障は、ほとんど内容はありませんけれども、その問題の内容が、やり方失業保障というものを故意に放置をして、それを停とんをさして、あるいは逆行をさして、そして失業者がしかたがなしに労働の安売りをする、低賃金で安売りをする、あるいはまた悪い条件のところにしぶしぶ行くというような態勢が方々でとられているようにしか思えない。憲法二十五条によってあらゆる社会保障が進められなければならないときに、そこの中で失業保障というものを非常にりっぱなものにすることは、憲法において国に課せられた義務であって、政府は一生懸命やらなければならないときに、先日衆議院で、われわれは反対はしたけれども、残念ながら可決になった失業保険法の問題でありまするが、近藤先生は、一歩前進だとただいま評価をしておられる。ところが評価も逆の評価をしなければならない点があることを、近藤先生は専門家でおありになるから十分御承知だろうと思う。その中において、たとえば保険料の自由な上げ下げを、労働大臣が審議会に聞くのみで、国会にはからないでそれをすることができるというような改正点、いわゆる改悪点があったわけであります。そういうことは何を意味するかと言えば、いま失業保険の会計が黒字になっておる、そういう状態であれば、黒字だからかまわないからといって保険料を下げる要件になる。保険料を下げることは、いままで法律改正をしなければできないところを、労働大臣の権限でやることができるようとする条項であります。保険料を下げるということは何を意味するか。これは多くの資本家にとって、何万人とか、何千人とか何百人の労働者のための資本家の負担分の保険料をまず軽減することができるということが、第一の資本家の利点であります。それとともに、そのように保険料を下げることによって、失業保障が当然前進をしなければならないことを停とんをさせる。停とんをさせることによって失業者が、失業保障がないから、余儀なく労働の安売りをしなければならないという条件をつくることになるわけです。現に近藤先生が幾ぶん一歩前進と言われた、先日衆議院で、われわれが反対したにかかわらず可決をされたその失業保険法において、いまのすぐ前においてもそのような思想があらわれておる。すべて失業保障を放てきをしておる、そういうような状況があります。そういうような背景で、ものをこの問題について考えてみる必要があるのではないかと私ども考えます。失業対策事業は、いろいろの方々が言われたように、雇用問題であるという人もあるけれども、実質的に失業保障の代行の役割りをしているということは明らかであります。失業手当制度ができておらない、失業保険は五人未満のところには適用されておらない、失業保険が適用されている人たちでも三カ月、六カ月で失業保険の給付は打ち切られる、しかも失業保険金というものは非常な低賃金をもとにしてきめられているので、失業保険金そのものも非常に少ないということから、初めから失業保険法の適用を見ていないものは、失業期間中食うことに非常に困難をきわめる。失業保険金を受けても、給付期間の切れたものは非常に困難である。そこで失業保障がないままにほうり出されましたときに、非常に大きな重大な社会問題が起きてるという状態で、このような緊急失対法というものがあるわけです。緊急失対法が失業保障をなおざりにした精神は非常にまずいのでございますけれども、現在の事態においては、失業保険にある程度代替し得るものを持っておるわけであります。そのものを扱うときに失業保障を完全にやるという方向で、中学校を卒業して直ちに就職がなければすぐ失業保障、失業手当の適用を受ける、あるいは定年というような非常にけしからぬもののために職を失ったり、老齢で職を失ったりしたときに失業保障を完全に受けられる。途中の失業はもちろんであるというような制度が一方において確立されるならば、このような方策もわれわれは具体的に前進だと見なければならないと思いまするが、そういうような方策が一切やられていない状態において、このような失対事業を変えていくということに非常に大きな問題点があります。新しく就職した人は、この法律案が通りましたならば、直ちに失業対策事業の紹介を受けることができない。その間は、失業手当は現在の失対の賃金よりも少ないという状態であります。先ほど近藤先生は、手当が出るから翌年度は失対の賃金は上がるだろうと言われたが、それよりも少ない手当しかもらえない、しかもその手当をもらうときには、職業安定所長の指示をもってきめた方向で、自分が不適当であると思っても甘んじてその職業指導を受けて、甘んじてそのような不安定な雇用へ行く危険な道を歩まなければこの手当はもらえない。手当がもらえなければ食えないから、それは自分は不本意であってもそのような方向に、いやいや、しぶしぶながら追いやられる。職業選択の自由を奪われるということになるわけです。そういうような改正案は前進の改正案とは断じて言えないと思いまするが、近藤先生の御見解を伺いたいと思います。
  61. 近藤文二

    近藤参考人 八木先生の一番最初の、今度の失業保険法の改正は前進でないというふうにおっしゃっておりますのは、おそらく第三十条関係の保険料率の弾力的変更等の件だと思います。これは実は二つ意見がございまして、八木先生は、これは国会ではからずに、中央職業安定審議会意見を聞くということになっておると思いますが、ある程度の幅の間で自由にやられるようにするということは、直ちに給付の面にも影響を及ぼすというふうにお考えになっておると思うのです。こういうやり方をしたから、給付がさらによくなっていくのを阻止するというふうに考え考え方、私は必ずしもそういうふうに考えないで、そういうことを前進させながらも保険料率を下げるというようなことが、失業者の数の場合出てくると思うのです。この弾力的変更は、下げる場合と上げる場合、両方ございます。そういう意味において、八木先生のような御意見も確かにあります。そういう心配も、そういう考え方からすれば出てくると思うのですが、私はこの問題について、もし先生がそうおっしゃるならば、前進でないが、また後退でもない、妙な言い方でございますけれども、その辺でひとつごしんぼう願って、ほかの面では前進しているのではないか。これは社会保障制度審議会八木先生からいろいろお教えいただいてだいぶ問題になったのでございますが、きょうは失業保険法の問題まで私は準備しておりませんので、それ以上詳しいことは、へたな答弁をしたらやられますので、この程度でお許しいただきたいと思います。  それから手当の問題でございますが、御承知のようにイギリスは、失業者が非常に出てまいりましたときに、失業保険の延長で支給しておったのをやめて、失業扶助と失業保険と二本建てにしたことがございます。あの場合の失業扶助は、ミーンズ・テストをやっております。今回こちらで問題になっておりますのはミーンズ・テストがありません。そういう意味で、私はむしろイギリスでやったような失業扶助よりはこちらのほうがいいのじゃないか。ただ問題は、先ほどから何回も出ておりますように、職安の所長さんのやり方一つで非常に危険なことが起こりはせぬかという心配は、私は正直で、職安の所長さんを信用しておるのですが、そういうふうに皆さんおっしゃると、これはうっかり信用できぬなという感じも持ちますけれども、そこは運用の問題で、その点については有沢先生のおられる安定審議会のほうで一定の基準をお示しになるのです。そういうものに万遺漏なきようにされれば、職業選択の自由の原則を認めないような職安所長のやり方はおそらくないだろう。もしそんなことをやられたら、労働大臣のほうから注意をされやせぬかというふうに私は思っておるのですが、これはちょっと議論になりまして、実際問題としてどっちのほうへいくかということについては、私は判断できません。私はそんなに悪い方向にいかないで、むしろいい方向にいくものというふうな解釈をして、前進というふうに理解をしております。その辺ひとつ、この程度でお許しを願いたいと思います。
  62. 八木一男

    八木(一)委員 引き続き近藤先生に御質問申し上げたいと思います。  失業保険法の問題は、近藤先生ああ言われましたので、また別の場でやるようにいたしたいと思いますが、私は、この三十条関係は明らかに猛烈に改悪であるというように理解をいたしております。その理由としては、実は、いま上げるほうは国会にはからなくても上げて、それであとで了解はできる、ところが下げるほうはできない、ところが今度は上げ下げできるようになったということは、下げるためにやったとしか解釈はできない、そういう意見でございまするが、それ以外の点で申し上げますと、今度は職業安定所長の判断の問題であります。近藤先生は、性善説を信じておいでになるようでございますが、私も性善説は信じたいわけでございますが、なかなか信じ切れない点があります。ことに非常に気の毒な立場にある人に対しては、世の中一般は非常に過酷なんです。非常に日の当たる人や、方々おつき合いが広いような人にはみんな人のいい状態を示されますけれども、非常に気の毒な人に対しては、大体冷酷な人が多いわけです。そういう点で、この問題非常に心配なんです。  それからその次に、そういうふうに、もしほんとう政府が善意を持ってやっていられるならば、なぜそれを選択の自由を許さなかったかという問題であります。政府のやっている訓練が、あるいは指導が、あるいはその手当が、あるいはその後の就職させることがよいものであれば、自由を許しても、そのことに当たる失業者の人はよいほうを選ぶでありましょう。選ばせないというところに、いやでもそっちに押しやる、労働者を動員をする、強制労働をはかるというような非常に危険な意図があるかもしれないという心配が抜け切らないのです。ほんとう政府が自信があるならば、百人のうち一人が、政府ほんとうに自信がある場合において、政府の意図を理解しないでも、九十九人が理解していくでありましょう。そうなればそれでいいわけであります。それを自由を許さないで、それが済んだあとでなければ失対事業に紹介をしない、就労所側に紹介しないというところに政府側の自信のなさ、もっと言えば自信のない以上にほんとうにいいことをやれないけれども、むりやりにやらすんだというような意図を含んでいるという疑いが濃厚に持たれるわけであります。なぜそこを踏み切れなかったか、その踏み切れない要因が何であるか、踏み切らせない勢力は何であるかということまでほんとう徹底的に考え詰めないと、この問題の背景はわからないわけであります。普通の判断であれば、そういう意見ならば直ちに自由を許そうということになろうと思う。それがならない。ならない勢力は何を考えているか。そこまで突き詰めなければ、この問題ははっきりわからないわけであります。それについて近藤先生のもう一つの御意見を伺いたいと思います。
  63. 近藤文二

    近藤参考人 八木先生のいまの御質問は、非常にむずかしい御質問で、私のようにそういう窓口事務をやったことのない者にはわからないのでございますが、自由を許さないというふうにおっしゃっておりますけれども、自由を許さない——職安所長の権限は確かに強化されるでしょうが、所長の言うことを聞かなかったら何にももらえないというのではないように思うのでございますが、その辺がちょっと、私には実際の運用のやり方がわからないので、問題は中央職業安定審議会がどういう基準、どういう手続をつくるか、その基準なり手続のつくり方に非常に重要な問題があると思うのです。だから法律の上だけでは一応こういう形になっておっても、この審議会の基準が、八木先生のほうからいっても、それはわけがわかっておるというような基準、手続をつくれば御賛成を得るし、かりに法律八木先生のおっしゃるような形にしておいても、この審議会のほうの意見を聞くというのは必ず入ると思うので、それが入った場合に、そっちのほうで非常に詳しい基準や手続をつくれば結局効果は逆になる、こういうふうに思いますので、その辺ひとつ国会でよく御研究願って、むしろ私たちに教えていただきたいと思います。
  64. 八木一男

    八木(一)委員 討論でございませんので、その点についてはそのくらいにいたしますが、大体審議会というものの任命権が政府なりに握られているので、その構成が、大多数の場合政府側のペースに乗った構成になる。来られた方は、まじめにそのことをやっていただこうとしておられると思いますが、非常に貧困な階層のことを、学者として有名であっても御存じない方が多い、実感のない方が多い。ことに失対事業に非常に関係のある部落の大衆の実態については、ほとんど知らない方が多い。知らない方ばかりだと断言してもはばからないぐらいの状態であります。そういうようなことでございますから、非常に心配が多い。そういう心配がないようにしなければ、こういう法案は非常に危険だということになろうと思うわけであります。  続いてもう一点だけ御質問をいたしますと、老齢者の就労事業のことであります。老齢者就労事業について、近藤先生は生活保護でなしに、他の社会保障の何らかのものによってそれがきめられるだろうというふうに、非常に政府に対して善意で楽観的に言われました。しかし斯界の権威者である近藤先生が、たとえばほかの制度、厚生年金法というようなものとこれがバランスがとられるような情勢にあるとはお思いにならないと思います。無拠出の国民年金とあるいはリンクするかもしれませんが、これは生活保護の中の老齢加算というものをくっつけた、そういうものとリンクするだけになろうと思います。ですから、現に先ほど中西全日自労委員長がこのものを確かめたところ、このものについて、生活保護法にリンクをされるという解釈をしておられることは言われました。私も労働省の諸君にこの問題を聞きましたならば、はっきりといたしておりませんけれども、この社会保障というのはどういうことかといえば、まだ生活保護その他、はっきりその他が言えないわけです。まさにいまの現状では生活保護にリンクするということになるわけです。生活保護にリンクするということになれば、生活保護というものがあらゆる点で非人間的なものであって、憲法二十五条の精神に、実態に合っておらないということは近藤先生百も御承知であります。そういうようなものにリンクされるものであったら、これは老齢就労事業が、軽作業の労働をさせるという点において前進であると認められても、そのような賃金生活保護にリンクするようなものになれば、とんでもないことになるわわであります。どなたか参考人の方が、年とっておっても仕事がほしいと言われたということを例にあげられました。そういう方は十人に一人ほどおられます。しかしながら、大部分は恵まれた人の話であります。ほんとうにくたびれた人は、十分な給金さえあれば、六十、七十になれば働きたいというようなことは言いません。七十になっても働きたいという人は、有名な学者であるとか有名な役人であったとかいう人が、自分の経験をあとでやる場を持ちたいということで言うことであって、疲れ果てた労働者は、六十五になれば、十分な生活資金があったら働きたいというようなことは言わない。それにもかかわらず働いているというのは、生活保護では食えないから働いているわけです。それで失対事業で働いておるわけです。そこで二分割されるその問題について心配があるから、いまの賃金より下げませんということは、ほんとうにするかどうか知りませんけれども労働省がいまの賃金より下げませんと言っても、物価が上がる、生活水準が上がったときに、一般就労事業は当然それと一緒に上がらなければなりませんでしょう。そのときに、たったいまはかりに労働省意見を信頼するとして変わらないとしても、それにスライドをしてあるいはどうだ、それだけ上がる保証があるかどうか。いまの労働省の態度では、その保証は私どもはないと思います。そういう意味において、たったいまの時点ではなしに、来年では、再来年では、この同じような状況にある人たちは、いまより比較的に見て安い賃金に押しやられる、非常に苦しい生活に押しやられるということになって、実際に生活保護の低い水準に押しやられるということになるわけであります。軽作業に変わって老人向きの仕事をするということはいい点でありまするが、その人たちは、そういう仕事の問題ではなしに、食べるために、生活をするために老人に向かないような仕事でも働いておるわけです。その人の願望は、少しでも人間らしい生活をしたいということが願望であります。その人たちの気持ちをほんとうに理解しないで、安くて軽い作業にしてやったら親切だろう、賃金もストップしよう、実質的に比例的に下げようということは改善では断じてないと思いますが、近藤先生の御意見を伺いたいと思います。
  65. 近藤文二

    近藤参考人 先ほどの御質問の関連事項でございますが、私、中央職業安定審議会意見を聞くということでお答えしておりましたので、先生がその中には学者だけというふうにおっしゃったのは、もう一つ賃金審議会と一緒にしておられたと思うのです。安定審議会のほうは岩井さんもお入りになっておるし、労働者の代表の方もお入りになっておるので、そっちのほうの問題はうまくいくのではないかということを申し上げたのであります。  それからいまのお尋ねの点では、結局この法律案ができますと、第十一条の二の第二項ですか、「同一地域における類似の作業に従事する労働者に支払われる賃金及び社会保障制度による給付の水準」、これの解釈ですが、これはやはり社会労働委員会先生方がよく政府にお聞きただしになって、どういう内容かということを御判断願わぬと、私は政策当局と違うのでこの解釈はわからぬのですが、私がなぜ特に社会保障制度と書いて生活保護制度と書かれなかったのかということから判断をいたしまして、たとえば失業保険とかいろいろな社会保障が出てくる、それとの関係も入るのじゃないか。それからもう一つの読み方は、足を引っぱるということに社会保障制度による給付の水準がなかったら事じゃないかと思っておったのですが、どうも「及び」という字の解釈からいきますと、足を引っぱるのではなしに、ことに私、適格要件の問題からいきますと、社会保障のほうはわりに生活保護の面でも家族でいきますね。こっちのほうは一人だけということになりまして、そういうような関係から、むしろ「同一地域における」云々のほうでは低いものしかできない、お年寄りだから。それをこっちのほうで幾ぶん上げていくように善意に解釈して、「及び」以下を読んでいるのです。この辺はひとつ委員会の席上で政府の御意見をお聞きになって、先生のお気持ちをおただしいただきたい。  もう一つ、先生がスライドのことを強調しておられる、いつも先生はスライド論者で、私もスライド論ですが、毎年一回調査しまして、賃金審議会が毎年きめることになっていると思います。当然スライドはその場合起こる、こう判断をいたしております。
  66. 秋田大助

    秋田委員長 滝井義高君。
  67. 滝井義高

    ○滝井委員 実は正田先生がおられると非常によくわかるのですが、私がこの法案反対をする理由はきわめて現実的なんです。というのは、私、福岡県ですけれども、現在福岡県で一般失対に従事している人が、全国の失対労務者のたぶん一割程度です。いまニコヨン大学に入学して十年になるけれども、卒業ができぬという。ところが同時に、このニコヨン大学に入学をするのは高等学校の入学試験よりもむずかしいのです。もう一ぱい待っているということです。この現実、三万から三万四、五千の一般失対労務者がおって、なおそれに入らなければならぬという人がうんとつかえておる。高等学校の入学試験よりもむずかしいという状態があるということが一つ。いま一つは、福岡県は今度は緊急失対がある。緊急失対は全国でワクが七千人で、福岡県が五千人です。ところが五千人の緊急失対のワクになお現在三、四千人がすぐ入りたいと待っておるわけです。これはまだ入れないでおる。そして今度政府が、予算では四百四十万トンつぶすということだったが、今度五百五十三万トンつぶすことになった、その六、七割は福岡県です。今度の労働省の再就職計画を見てみますと、去年、三十七年から三十八年に炭鉱離職者就職できずに一万八千四百人繰り越した。そうして今度さらに三十八年から三十九年に繰り越す分が、もう来年に繰り越す分がきまっていて、一万八千六百人です。三十七年から三十八年に繰り越したのが一万八千四百人で、三十八年から三十九年に繰り越すのが一万八千六百人ですから、二百人繰り越しが多い。これらの者が職業訓練所に入りたいと思っても、職業訓練所がまた満員ではいれない。これに今度は失対の労務者の中から三十五万の二割はこういうところに入れる。現在でも入れている。これは新しく農村や中小企業から出てくる分はあとになるわけです。こういう実態があるのですが、近藤先生はこういう問題を御解決になる調査研究会のメンバーであったわけですが、実はこの問題を有沢さんに質問したけれども、有沢さんは答えができない。一体、炭鉱離職者職業訓練に入れ、一般失対の二割程度のもの、あるいはその他農村なり中小企業から出てくる人たち職業訓練に入れるといっても、訓練所がないのですね。こういう不可能なことを可能であるような装いをして出しても、とってもできないという現実をまのあたりに見るわけです。こういう点をどうお考えになるのか。近藤先生はその専門家でいらっしゃるし、研究会のメンバーでもありますから、そこらあたりをひとつ御説明願いたい。
  68. 近藤文二

    近藤参考人 有沢先生でもお答えしにくいことを私に答えろということは、ちょっと無理だと思うのでございますが、実は私のざっくばらんの感じでは、今度の予算ではおそらくとても問題にならない、うんと予算が要るだろう、来年度はたいへんなものになるだろう。そういうものをやろうとされるから私は賛成しておるのです。逆に申しますと、これはおそらく来年あたり大蔵省はびっくりするだろうと思っているのですがね。それで、滝井先生いまおっしゃったような予算で一応今度きまっていますから、強化されますが、その場合、はいれない人は就職指導手当をもらうほうへ当然行くことになりはしないと思うのです。したがって、これはまた非常に予算が要ることになるのじゃないか。しかしその辺は政府から答えていただきたい。私はそういう感じを持っておりますが、政府はいろいろ考えを持っているだろう。ひとつその辺でお許しを願いたいと思います。
  69. 滝井義高

    ○滝井委員 実ははいれない人でなくて、手当をやるというのは、職業訓練を終えなければだめなんです。
  70. 近藤文二

    近藤参考人 いや、そうじゃなく、訓練をする必要のない人は直接……
  71. 滝井義高

    ○滝井委員 いや、する必要がないのでなくて、必要があるわけですから。
  72. 近藤文二

    近藤参考人 もしそういうふうに指導手当ももらえない、訓練もできないから、訓練所へ入るまで待っている間、それは待期手当ということになりはしませんか。その辺は政府のほうにお聞きいただきたい。
  73. 滝井義高

    ○滝井委員 そこらは非常に問題があるところで、研究会でおやりになって、答申をされて、それに基づいて政府がおつくりになっておるように思うものですから、われわれは先生たちの報告を相当権威のあるものだと思っているわけです。五人の日本で有力な学者の諸先生方が御検討になって、五人が意見の一致を偶然見たということもありますからお聞きした。しかしこれは政府に聞きます。  次は、私たちがどうも納得のいかない点が三点あるのです。  まず第一点は、いままでは賃金の額を労働大臣が定めておったわけです。今度は賃金となったわけですね。賃金となると、賃金の支払いのしかたその他非常に範囲が広くなるわけです。ちょうど医療協議会で診療報酬の額というのを、診療報酬の参考に資するために、こういうふうにすると非常に範囲が広くなる。それと同じで、賃金の額をいままで労働大臣がやっておったが、今度は賃金をやるわけです。その賃金賃金審議会意見をお聞きになる。しかしここは公益だけです。いわゆる学識経験者だけですが、こういうようなことになっておるわけです。非常に範囲の広いものをおきめになると、正田先生が言われたように失業者労働者なんです。そしていままではPWよりか低い額と、こうきまっておったのだけれども、今度はPWを考慮するだけなんです。そこでわれわれの地区でどういうことが起こっているかというと、いまわれわれの地区では、四百二十五円の失対の賃金が、今度は米が上がったりベースアップがあったりいたしましたから七・八か九、上げました。そして三十三円上がって四百五十八円になったわけです。ところが中小企業の代表が市役所に押し寄せてきて、四百五十八円は高い、こんな高い賃金で日雇いの皆さんを使いよったらわれわれ中小企業には来てがおらぬ、全部日雇いに行ってしまうのだ、だから賃金を下げろ、こういうことになってきたのですよ。そこで、こういう形になると、私実は日雇い者諸君の身体検査をしてみたところが、全部栄養失調ですよ。四百五十八円だというと、一人三千円ですよ。二十二日ですから一万七十六円ですね。これはちょうど東京の生活保護が、ことし一七%上がると一万四千二百八十九円ですが、これは四人になっておるのですから三千五百円です。これは福岡あたりの三級地から二級地に直しますと失対と同じです。そうすると、六十歳のおじいさんの食費は幾らかというと、東京で一食二十五円です。そうすると、われわれのような三級地とか二級地になりますと二十一、二円くらいですが、これでは食っていけない。ですけれども、この人に通常雇用と同じような労働をさせようとしたら、全部間違いなくへばってしまう。日雇いは栄養失調でしょう。そして温度の高い日光の下でやったら、日射病になって全部だめですよ。だから、これをもし通常雇用の形で働かせようとするならば、少なくとも最低生活をやれるような栄養を食べさせなければいかぬ。これは少なくともいま国立病院あたりにやる給食の経費ですね。これは大体病院に入院した患者が百五十四、五円です。やっぱりこの程度の一日の食費を最低——これでも低いと言っておる、結核患者の皆さんは。この程度のものを食費に充てるという形をとらぬことには話にならぬわけです。だから、ここらあたりが、いわゆる生理的に言って連関していかないのですね。やっぱり通常の雇用をやらせようとすれば、いまのような五百円以下の賃金ではどうにもならぬ。こういう点があると思うのですが、これは近藤先生非常に社会保障の専門家で、ヒューマニズムの精神に富んでいらっしゃると思うのだけれども、問題は、現在の賃金よりかそんなに一倍半にもなる、たとえば六百円とか七百円になるということは、私はちょっと不可能じゃないかと思うのです。それは先生が言われるように、大蔵省は脳溢血を起こすようにおったまげるのじゃないかという感じがいたします。しかしそれをやらなければ、いまの日雇いの諸君は、ある人がストップ・ウオッチを持っていってはかったら、三時間四十五分しか働いていないとおっしゃるけれども、いまの賃金ではそのくらいしか働けないのです。こういう点を一体どうお考えになるのかということです。賃金審議会学識経験者をしてつくらせる。しかしそれは地域のPWを考慮するのだということ、PWを廃止しても、依然としてPWは生きているわけです。こういう点、近藤先生としては賃金のきめ方その他について、どういうお考えを持っておられるのかということですがね。
  74. 近藤文二

    近藤参考人 PWは、従来のPWをそのまま使うというようなことはおそらくあり得ないと思います。新しく調査をして、そうしていま滝井先生のおっしゃったように、やはり生活賃金的な要素が入りませんと実際上働けないわけですし、それから賃金そのものを定める場合には労働大臣は審議会意見を聞くとございますから、その場合には、たとえば賃金の裏になる労働時間の問題等が出てくるかと思うのですが、もう一方のほうは、「賃金の額は」云々というところに、考慮してのところは額になっております。だから、この辺は失業対策事業賃金審議会がどういうような判定をするか、その前の前提になる調査がどういう調査であるかというようなこととの関連で、私たちは滝井先生がいまおっしゃったように、仕事をやったら半病人になってしまうというのだったら話になりませんし、それから生活保護の金額を先生は二十何円とおっしゃったのですが、今度の改正で一日分の食費は、東京都は一人当たり七十円で地方は五十円でございますね。これでは足らぬというのが一般の世論なのです。どうしてやっているかということは問題なのですけれども、それをそのままの形で、かりにこの賃金をきめるときに生活賃金の要素に入れるというようなことはおそらくないと思います。だから、ここは賃金審議会委員の方の良識を待たねばならぬ。非常にむごい人が委員になったら、それは何をか言わんやでございます。それ以上のことは、私のほうからちょっとお答えしにくいと思います。
  75. 滝井義高

    ○滝井委員 生活賃金的な要素という、この御発言だけで私はけっこうだと思います。これさえしっかり腹に入れてもらって賃金をきめる。先生の言われたように、いまの失対の賃金というものは、生活保護よりかぐっと上げてこなければならないことになるわけです。ところが、いま劣等処遇の原則というのですか、労働省と厚生省が互いに引っぱり合いっこしている。失対の賃金を上げると生活保護を上げなければならぬ。生活保護を上げると失対の賃金を上げなければならぬ。だから、大蔵省はこの二頭立ての馬車をうまくあやつりながら上げないようにしております。だからこの点は、生活賃金的な要素が入るという参考意見をいただければけっこうなわけです。  もう一つは、職業訓練をてこにして今度の失対の制度を運営しようとしておるわけです。特に失業多発地帯だけは、就職促進措置を受けなくても入ることができるので、これは例外です。原則は全部措置を受けることになるわけです。そうして今度は就職する場合には保障がないのです。過去十ヵ年間における日本雇用状態をお調べになると、従業員が五百人以上のところ百人以下のところに、一体どういう状態で過去の雇用がいっているかということ、大体ここ七、八年の状態を見てみますと、従業員が百人以下のところに五百万くらい勤務しておる。五百人以上の大企業のところには百万くらいしか行っていないのです。そうしますと、今度職業訓練を受けていくと仮定してみても、いまの日本職業訓練所の実態は、近藤先生少しごらんになっていただくとわかりますが、みな機械が古いのです。それから指導する技術者も、失礼な言い分だけれども優秀な人は少ない。優秀な人はみんないいところに行ってしまっておる。大企業は技術者が不足しております、あるいは熟練工が不足しておりますので、そこに行ってしまっておる。そこで半年か一年くらい受けるのは単能工なのです。そうしますと、こういう人たちがそんなに大企業には行けないのです。やっぱり雇用の多い、所得倍増計画などの雇用の多い中小企業に行くと、こういうことになる。非常に不安定なんですね。さいぜん中西君なり馬場さんも言われておったようにやっぱり安定職場、身分を保障してくれないことには話にならぬということを言われておりましたけれども、ここらあたりが、たとえば炭鉱離職者についても政府はなかなか保障しないのですね。いわんや炭鉱離職者よりかそう言っては失礼ですけれども、どちらを尊重するかというと、これは鉱炭離職者のほうを、政府政策でがたがた言ったことから幾分尊重しておるわけです。重点を置いておる。それがうまくいかないのですから、いわんやここらがうまくいくということはあり得ないわけなんです。何か職業訓練所にちょこちょこやって、その場を濁すだけの形になる可能性がありはしないかという杞憂ですね。私あえて杞憂と言うのですが、そこらあたりの杞憂については、近藤先生あえて御心配ないとお考えになっておるかということなんですがね。
  76. 近藤文二

    近藤参考人 私もその点は杞憂いたしております。ただ今度の場合は、先ほどもちょっと申し上げましたように、私の理解している範囲内では、普通の社会保険にも入っておるというようなところで、少なくとも一年くらい常用という約束のところしか紹介されないというようなこともちょっと聞いておりますので、もしそれでもやはり一年くらいたってから戻ってくるという場合には、こちらの新しい失対のほうへ受け入れられるはずなんですが、受け入れを拒否されるとなると、その人は一体どこへ行くかという問題が起こるのですが、それは受け入れられるたてまえだと私は理解しておる。大阪あたりにも集団就職できた若い人で、一年余りでやめる人が非常に多いのです。どこへ行っているかというと、非常に悪い、不良の少年になるのもありますけれども、仲間の紹介でいいところへみんな動いていっておるという傾向がございますので、一度常用で成績をあげたら、またほかへ行くということも考えられやせぬかと思うのです。この辺は非常にむずかしい問題なんですけれども、したがって、私いろいろお答えしておりますが、政府のほうでお答え願わなければいかぬことを、私かわりにやってしまうということになるとたいへんなことになるので、私は参考人でございますので、その点ひとつ……。
  77. 滝井義高

    ○滝井委員 参考人の御意見としてお聞きしておるので、決して政府のあれとして聞いておるわけじゃありませんから……。  最後に、今度の失対事業は、御存じのとおり二つに分けた。初めは三つくらいにするような意向のようであったけれども、私どもがやかましく言うので、失業者就労事業とそれから高齢失業者就労事業、これは高齢失業者等の福祉就労事業と、福祉がついておったのだけれども社会保障制度審議会にかけるのではないかというので、あわてて福祉を除いたようなんですけれども……。賃金のきめ方は、前者はPWですね。後者はPW及び社会保障の給付になっておるわけです。ここなんですが、これを一体どう考えたらいいかということなんです。前者はPWだけ、後者はPW及び社会保障の給付、こうなっておるわけです。そうしますと、これはお年寄りだからといってそう安い賃金をやるというわけにはいかぬと思うのです。さいぜん以来の先生等のお答えを聞いていると、現在よりは低くはならないんだ、こうおっしゃるわけですが、いま四百五十八円いただいておるわけです。いま社会保障的な賃金というのは四百五十八円です。そうすると、これより低くならないということで、それに及びPWですから、PWを加えると、結局失業者就労事業賃金は一体どこが違うか、こういうことになる。前のほうが生活賃金的な要素を入れていくというと、あと生活賃金的な要素です。ただこの場合に、労働能率その他が幾ぶん違うということになるのかもしれないけれども、どうもそこらあたりが——一体どういう賃金の区分をすべきかということについての先先の個人的な見解でけっこうなんですが……。
  78. 近藤文二

    近藤参考人 私個人の考え方で申しますと、高齢者の場合は、同一地域における類似の作業に従事するということになると、高齢者では非常に軽作業ということになる。そうすると、先生のおっしゃっている四百五十八円より下がると思うのです。それで現在と同じくらいなところへ持っていこうとすれば、何かほかのものを持ってこなければいけない。そういうようによくするために「及び」をつけたというように私は解釈しているのです。これはそうなるかならないか、政府のほうに聞いていただきたいと申し上げているのですが……。
  79. 滝井義高

    ○滝井委員 それは社会保障的な賃金、給付というものがあるのですね。この前先生は生活保護だけではないということを言われておったのですが、専門家としてお考えになるものでは、どういうものがあるでしょうか。
  80. 近藤文二

    近藤参考人 先ほどもちょっと申し上げたのですが、たとえば失業保険というような問題が一つあるではないか。これは御承知のように賃金に対して比例するわけですが、失業保険最低の金額がございますね。ああいうものを持ってきたんでは何にもならぬとおっしゃるかもしれぬけれども、そういうような問題とか、いろいろ考えていけば、たとえば傷病手当金のようなもの、不具者の場合は廃疾年金の問題もありますし、病人なら傷病手当の問題もあります。考慮すればいろいろあるが、それを含めて社会保障制度というように考えたのではないかと、私は善意に解釈しております。
  81. 秋田大助

    秋田委員長 井堀繁男君。
  82. 井堀繁男

    ○井堀委員 参考人の方にはたいへん御迷惑だと思いますが、あらかじめ理事会で申し合わせの上、わが党からもそれぞれ質問を予定いたしておったので、わが党の立場から参考人皆さんに一、二重要な点をただしてその責任を果たしたいと思いますから、御協力を願いたいと思います。時間の都合もありますから、かいつまんで要点だけをお尋ねいたしたいと思うのであります。労働組合の関係につきましては、まことに残念でありますが、時間の都合もありますので、いずれまた参考資料をちょうだいいたしまして、その上で皆さん立場を理解いたしたいと思うのであります。近藤参考人と小川参考人に、同一の問題についてそれぞれの立場からお尋ねをいたしたいと思いますので、お答えをいただければ幸いだと思うのであります。  今度の法律案の中に、私どもがぜひ明らかにいたしたいと思いながら、それが依然として不明確になっておる点が一つあるのであります。これは、この法律の歴史的使命といいますか、時代の所産とでも申すべきか、雇用政策かあるいは社会政策か、またそのいずれをも加味したものであるというふうにもとれるような過渡的な一つの所産であると思うのであります。ところが、今日、日本の経済なり産業なり社会の一切の制度や構成というものが正常化され、国際的な地位において問題が処理されるような段階に至りまして、こういう状態の法律がそのまま運営されるということは、いろいろな意味において問題を起こすのはけだし必然といわなければならぬと思うのであります。それが今日まで放置されたということは、政府責任が追及されなければならぬと思うのであります。この法律改正の中で、その方向は一応理解ができないでもないのであります。すなわち、失対の、いま最も重要な問題であります生活最低を保障することのできないような労働の場などというものは、近代社会にあり得るものではないのであります。これは戦後のあの混乱した、衣食住にこと欠く敗戦国の現状を露呈した一つ政策で、また法律化されたものであることはよくわかるわけなんです。でありますから、こういう制度というものはとっくに改廃、改善されなければならない問題であったと思うのであります。しかし、過去を言いましてもせんないことであります。そこでこの際、そういう立場から改正政府は今国会に出したのでありますから、その精神を貫くようにわれわれは慎重な審議をいたしまして、その時代の要求に沿うような法律になすべきであると思うのであります。こういう点から判断いたしますと、政府案は隔靴掻痒というよりは、こういう目的を達成するのにはなお多くの欠陥があると思うのであります。それを一挙に改めさせることが最も望ましいのでありますが、政治力の関係その他もありまするから、私どもはその中において最良の道を選びたいとわが党は態度をきめておるわけであります。こういう立場を明らかにしてお尋ねするわけでありますが、具体的には、一体この法律改正によって、これは政府原案でありますが、政府原案のままでもし法律になりまするならば、この法律でいっておりまするように、就職の促進の措置を、たとえば職業訓練、その訓練を実施するためには就職指導手当とか訓練手当というようなものをここに問題にしたことは、私は一つの進歩だと思うのです。しかしその精神はあくまで日雇い労働者の前時代的な実情を考慮して、その人が次の新しい正常な職場につける措置を講ずる間、最低生活が保障されるという措置でなければ、そういう精神は貫けないということはだれでも理解のできることだと思うのであります。この点に対して、私は政府案に対しては非常な不満を持っておるのであります。でありますから、せっかく就職指導手当訓練手当という制度を設けて、労働能力の高い者、あるいは一定の訓練を施すことによって高い労働力を発揮できるような人を養成するということは、確かに急所であると思うのであります。しかし、そういう状態に実際置かれるような改正でなければ、こんなものは他の法律と違って、理想を掲げて満足するような法律ではないと思います。こういう点に私は、労働団体が非常な不満の声をあげておると思うのであります。この点、政府は要するに十分反省しなければならぬと思うのでありますが、政府には、これからは審議の過程を通じてわれわれはひとつ徹底的な究明をいたす所存でありますが、せっかく参考人方々に御多用中おいでいただいて貴重な御意見を拝聴いたしました。その中で小川参考人お話は、確かに長年の聞こういう仕事に取り組んで御苦労なさっておりましたその経験がよくにじみ出ておると思おのであります。そういう点で実は私は質問をひとつ試みたいと思うのであります。  近藤参考人お話の中では、私が以上申し上げた点について完膚なきまでに論議をされて政府に答申をされ、あるいは意見をそれぞれの形で述べられているものと判断するのであります。こういう点で、実は小川参考人には具体的にお尋ねいたしたいと思いまするが、この法案でいいまする二つの形がここに——二つじゃなく複雑かもしれませんが、大きく分けて、時間を節約する意味で私の考えを前提にしてお尋ねいたしますと、一つ労働能力が訓練によって引き上げることのできる人、健康体あるいは比較的訓練に耐え得るそれぞれの条件を備えておる人々、あるいはその他安定した職業につきたいという人々のために一つの措置をとろうということは、先ほど申し上げたとおりであります。しかしここでも指摘しておりまするように、この失対に従事しておりまする多くの人々が老齢であります。それから正常な労働に耐えられないような体力の上での弱点を持っておるわけであります。特に私がここでお尋ねをしようと思いまする問題は、女子労働の実態であります。全部の中で四割をこえる。さらにその女子労働の就業の内容などを見ますると、おおむね夫と死別あるいは離別といったような母子家庭の婦人が大半である。こういう角度から見ますると、雇用政策の対象としてはあまりに問題が深刻だと思います。さりとてこれを社会保障の線でという、たとえばいま言う生活保護法の対象にするのには、本人の良心やあるいは積極的な建設的な意欲を満たすのには、あまりむごい仕打ちになると思うのであります。こういう状態のものをこの際画然と二つの方向へ成長させようという意欲を、私はきっと近藤先生をはじめとする学識経験者の間から政府に答申されたものと思うのであります。私はこの点について、実は小川参考人に伺いたいのでありまするが、そういう二つの種類のもので訓練をされて、再就職のできる人たちは、これは賃金その他の問題で政府にわれわれはいろいろな角度から迫らなければならぬと思いまするが、あとの高齢者、女子、それから体力の弱い者、こういう人たちを一体どういうぐあいにこの法律は処理していくかということについて明確を欠いておる。そこで先ほど小川さんのお話の中で京都実例をおあげになりましたが、お年寄りだけの職場を与えてそのグループに手厚いいろいろな処置をなされた経験を漏らされておりました。いままでの制度の中でも、そういうくふうを地方でなさっておいでになる。今度はそういうものを公然と法律の中で処置をしていけるものでなければ、この法律の精神は生きてこないと私どもは思ってそういうものを期待いたしておるわけでありますが、小川参考人の経験の中から、この法律の中でそういうものを一体どこに期待しておいでになるか、またさらにどういう点に——法律もそうでありますが、その法律の精神を生かしていく行政措置の中で何を求むべきであるかという点について、いい機会でありますからお漏らしいただきたい。  近藤参考人につきましては、先ほど申し上げた総括的なものについて、われわれがこの法案審議するにあたりまして、こういう点に重点を置いて、こういう点に皆さんの答申案と法律になりました姿との相違があるというような点をお聞かせいただければ幸いだと思います。  たいへん前置きが長かったのでありまするが、以上の点について御両人の御意見をお漏らし願いたいと思いまます。
  83. 小川広之介

    ○小川参考人 私の考え方を申し上げます。  雇用対策か社会保障かということについては、いままでにも主として近藤先生から申し上げられておるので、かなり御了解願ったと思いまするが、結局社会保障雇用対策かということが、やはりこの問題の取り上げ方の当初に相当問題になったわけであります。それから市長会なんかの中でも、その点はっきりと区分すべきである、そしてそれに対して地方自治体のこたえ方というものの態勢を立てるべきであるということで、市長会の場合には、大河内先生外三名の先生にお願いして調査をしてもらったのであります。先生の考え方も、やはり先進国並みの福祉国家というものが確立するまでは、そういう形で現実に割り切るということはなかなか困難であるということが一つの筋として出ております。現在京都地方におきまして、単身者の生活保護給付額というものは四千何ぼになるのですが、失対で働いておれば、私のほうのいわゆる老人現場というところで働いておりましても、失対保険金を含めて月収約一万円になります。それが八十になって労働能力が全然ないという形でも、少なくとも失対労務者として働きたいという意欲、少しでも自分の労働能力を使って、生活保護基準よりは多くの収入を得たいという考え方もやはり強いものであろうというふうに考えます。そういう点でなかなか割り切ることは困難であるということの結論を市長会でも答申し、知事会その他からも要望し、そして労働省考え方も結局そういう形で割り切られて、いま井堀委員のおっしゃった二つのもののうち、前者は雇用対策的なものであり、後者は、形式は雇用対策の形をとっておっても社会保障的な要素の相当濃厚なものであるという形に分かれた。そしてその趣旨においては、われわれ市長会及び関係都市協議会でも大綱的には賛成をして、この法案を通過することを望んでおるわけであります。  それでは老齢者、女子労務者というものを具体的にどうするかということの問題ですが、私が最初に申し上げましたように、テスト的に京都、大阪、神戸の京阪神の三都市が、女六十歳以上、男六十五歳以上の希望者だけを募って、とりあえず現行の失対事業の中で老人だけのグループをつくって仕事をさしてみようという方法を三都市連絡会できめて、希望者を募ると相当多数の希望者がある。京都の場合、収容できない希望者がありました。しかし先ほど私が申し上げましたように、現行法におきましては、やはり雇用対策としてのそのものが貫かれておりまして、いわゆるノルマの計算できないような種目はやらさないというような原則に立っておりますがために、老人だけのグループはつくっておりますけれども種目としての取り上げ方はいまの一般失対の中の種目のものである。先ほど中西委員長が、九州で日雇い労務者が自殺された話をされました。私も日雇い労務者と十年ほどつき合っている人間として、非常に残念に思っております。もしわれわれの要望しておるこの新しい老人就労事業というものが実施されておったならば、私はその人はそういう形で自殺をしなかったのではなかろうかというように私流に考えております。遺書も先ほど伺いました。病気だから、とうてい私のからだではついていけない、御迷惑ですが先にということでしたが、そういう意味で、社会保障的な役割りをこの老人就労事業に入れるならば、種目というものは事業主体に無条件にまかしなさい、ノルマの計算ができない仕事であっても、それは八十歳なら八十歳の老人にできる仕事というものは、事業主体で選びますからまかしなさいということの主張が、今度の改正案の中には通っております。一切事業種目の取り上げ方はまかして、ノルマは問わない。事業主体責任においてその労務者に向く一つ事業をやれということです。それで結局、いま問題になっております老人福祉法というものが非常に完備された形で確立するとか、あるいはまた社会保障制度確立するということになれば、もちろんこの失対事業というものは自動的に消滅していきます。反対理論の中に社会保障制度確立最低賃金制確立完全雇用確立ということができるまでは失対事業はやめてはならぬということですが、そういうものが確立すれば、自動的に失対事業は消えていくわけです。そういう完成された福祉国家というものが目の前にできるかどうかということが問題ですが、やはりもろもろの条件というものを見ます場合に、そういうものが完成することは、やはり相当時間がかかるのじゃないかというように私は考えております。それならば、矛盾だらけのこの現状のままに置いていいのかどうか。結局そういうことのために、先ほど中西委員長の言われたような自殺される労務者も出るわけなんです。それでせめてそういう形の出ない形のものをいま当面の形で考えるべきじゃないかということで、いま改正案として出ております老人福祉事業というものは、そういうものの確立するまでの過渡期の当面の対策として非常に効果的なものだと思って、ぜひ通していただきたいということを実務家として私は強く感じております。  それからまた反対運動の中に言われておった、また中西さんの御発言にもありましたが、一万円以下の労働者日本に現在六百万おる、だから何かこの失対の法改正というものが、そういうもののほうに失対の労務者を近づけたり、そういう労働者賃金が上がることを阻止するような役割りを果たすのではないかというような危惧を持たれているように私は伺ったのですが、すでに皆さんも御承知のように、就職手当でも月額九千何百円というものを出します。訓練手当でも一万二千五百円というものを月額出す。そういうことで八千円、九千円というところへ現実に労働者を追い込むことができるのかどうか。またそういうことをしようとして月額一万二千五百円も九千何百円も使うということになったら、およそこれはナンセンスの国費の乱費であって、そういう手当がきめられておるということは——その労働者就労する対象となる一つ事業賃金の基準というものは、これは私自身が明言はできませんが、おのずから常識的に想像されると思うのです。そういう意味では、私が先ほど申し上げたように、日雇い労務者であるよりは常用工であるほうがいいということが肯定されるならば、この法改正というものは非常に進歩的な役割りを果たすものであるというように私は考えております。それで老人の問題にはそう申し上げましたが、それから井堀委員が問われておった、老人ではない、女子労務者の問題ですが、京都の場合半数は女子労務者です。たまたま京都には、そこそこ時間をかけて訓練をすればそこそこ賃金のかせげる、いわゆる郷土産業というものが相当あります。主として家内工業から出発したそういうものですが、女子向きの仕事があります。しかしやはりそのことを覚えるためには、少なくとも半年ないし一年間の訓練を必要とします。私も染色関係の工員の出身でありますので身をもって体験をしているのですが、そういうものが六カ月とか一年とか職業訓練をされないことには収入にならないということが、ここの求人難の一番大きなガンになっているわけですが、たまたま今度相当期間訓練手当を与えるという道が開かれますと、労務者自身もその間手当をもらって常用の工員になりますし、それから今度の国会でいま大きな法案として問題になっておる中小企業——中小企業の困る点はいろいろありますが、私が先ほど申し上げたように、求人難ということも中小企業のいまの盲点の一つです。そのことの一部が、間接的にこの法改正によって緩和されるということの役割りも、京都の場合には特に顕著であります。そういう点でこの法改正が、われわれが要望をしておった立場からいきましても、一〇〇%のものではないということはみなが申されているとおり、私もそのとおりです。しかし理想というものが確立するまでは何もしない、そういうことであっていいのかどうか。私はまことに失礼な申し上げ方をするのですが、構造改革論というものも、骨子はそういうところの共通点をもって成り立っておるのじゃないかというように思うのです。それで理想的なあるべき社会というものは、それを理想社会として持たれ、それに一歩一歩前向きのものであったら進めていくということに立つということで御了解願えるならば、政府から提出しておりまするこの議論の説明を十分にお読み願いますと、私の申し上げていることが幾ぶんかは御了解願えるのではないかと思っております。  それでこの機会に非常に失礼なことを申し上げますが、日雇い労働者諸君といえども労働組合というものをつくっております。この労働組合というものはどうあるべきか。私は戦前戦後三十年ほど労働組合の幹部としての生活をしております。それで労働組合というものは、日本の場合にはやはりいまでも終身雇用制というものが原則になっておって、そして現状を守るということが何か一つの意識的、無意識的に基盤になったような労働組合運動のあり方というものが、やはりまだ濃厚にあるとぼく自身思うのです。たまたま日雇い労働者の諸君は失業者という形で労働組合をつくった、その場合に、やはり労働組合一つの原則である組織を守るということと、この問題の取り組み方について非常にデリケートな問題であろうということも、私が過去に労働組合の陣営におった人間だけに考えております。しかし、もう皆さまが論じられておりますように、日雇い労働者の諸君というものは、やはり日本の一番底辺に働く形でおる、日本の中の一番底辺の人たちです。やはりその人たちの一番底辺を、実際に前向きの姿勢であるならば上げるということにまず取っ組むべきではないか、そういう点でひとつこの法案の趣旨も十分に御審議を願いたい。そういう意味では、私の十年間の失対事業の担当者をしておった経験、また戦前戦後三十年労働運動に加わっておった一つの経験からいって、これは非常に進歩的な、一歩も二歩も前進の法案改正だと、私の経験で正直に申し上げて確信をしております。どうかひとつ十分に御検討を願って、底辺におる日雇い労働者全体のために特別の御配慮をお願いしたいと思います。
  84. 近藤文二

    近藤参考人 前に私たち失業対策問題調査研究報告として労働大臣の手元に提出いたしましたものと、今回の政府原案とどの点が違うかといういまの井堀先生の御質問でございますが、法律の上に出ております面におきましては、ほとんど違いがないのではないか。ただ、私たち考え方では、「肉体的、技能的にみて能力水準の相対的に高いもの」のほかに、B層である「軽労働には耐えるが、肉体的労働力が相対的に低く、年令的にも高年令層に偏るもの」の中から、やはり通常の就職の道を提供したほうがいいような人があるから、それはA層の人と同じように、主として就職のあっせん、訓練をやるほうがいいだろうという考え方を出しておったわけでございますが、実際問題としてこれは非常にむずかしいということで、今回は大体B層に当たる方は新しい失対事業の中に残すという考え方をとっておられますので、これは今度の改正に対して反対を主張しておられます方の御意見のほうにむしろ近い方向をとっておるのじゃないか。  そういう点のほかに、法律の上に出ていない問題としましては、たとえば先ほどからしばしば御質問を受けました周辺の問題でございますが、これは周辺の対策、最低賃金制度とか完全雇用政策をどの程度政府がおやりになるかということは、これは直接ここでお答えするのでなしに、やはりその方向を向いて同時に進んでおられるという前提で了解すれば、それほど違っておるとは思いません。  その他の点では、たとえば「作業用の資材、機械、設備等についても、これに要する費用を可能な限り増額して事業の近代化を図るべきである。」これはいまかなり重要な問題だと思うのですが、この機械、設備が非常に原始的なものを使っておられるから、労働の強化というようなことになっている場合もあると思うので、そういう面に対して相当やはり国が金をお出しになる必要があるのじゃないかという問題等を提供をしておるのでありますが、これは法律の問題じゃなしに運用の問題、運営の問題だと思うのです。したがいまして、今後残されたいろいろなむずかしい問題は、どういうふうに管理しておやりになるかというところにかかっておりますので、その辺がうまくいけば、私先ほどから何回も申しておるように、これは前進、少なくとも前向きの改正である、こういうふうに了解できるのではないか、この程度でよろしゅうございますか。
  85. 井堀繁男

    ○井堀委員 時間がございませんので、実はもう少し突っ込んでお尋ねをいたすべき問題でありますが、たいへんおそくなって申しわけございませんのでこの程度にいたそうと思うのでありますが、もう一つ特に近藤参考人にお尋ねをいたしたいと思いますのは、学者としての立場から、この法案をやはり一つのけじめをはっきりつけなければならぬものじゃなかったか、その点がその答申あるいは意見書を拝見いたしましても発見できません。それは先ほど小川さんのお話の中にも出ておりましたように、労働組合立場からいたしますならば失業者の団体、しかし他面には公務員の特別職としての実体もだんだん持っておる。ところがこの法案は——日本労働法の体系のどの中から見ましても、日本労働者という定義は雇用関係の中に規定されておるのであります。この法律だけはその点があいまいなんです。この改正の際、学者としては、少なくともこの雇用関係については明らかな一つの定義をどっちかにとるべきではなかったか。どの中にもそれが拝見できません。しかしそれは、その実態が、たとえば日本の耕作農民のように、財産がありましても労働なくして所得を得ることができないものは、雇用関係の中にあるとなしにかかわらず労働者だという考え方がいいと思うのであります。そういう点にも日本労働法体系の中にはまだ多くのものが取り残されている。こういう失対労働者の場合の問題をこの段階において処理するときには、少なくとも学者の間に、どうしてこの雇用関係の問題をきちりとけじめをつけなかったのであるか。そこには何か難解な現実があるから避けておられたのだろうし、あるいは学問的にそういう問題を処理するのには何か困難があるのだろうが、そのいずれともが、われわれ実は今日不明のままでおるわけであります。こういう点をはっきりして実は政府案に取り組みたいと私ども考えておりますので、非常によい機会だと思いますので近藤先生にひとつ学者としてのこの点に対する御意見をお漏らしになっていただきたいと思います。
  86. 近藤文二

    近藤参考人 その点は、一つ考え方は、国が最終責任を持つという意味におきまして、就職の機会も国がつくってそれを提供するということになりますと、はっきりと国に雇用される人たちということになると思います。そこまで割り切って失対事業というものを考えていったらどうかというような考え方もあったのでございますが、実態は、やはり地方自治団体あるいはそれに準ずるような事業主体のもとにおいても失対事業というものをやる必要がある。特に、特別失対のような場合は民間事業主体になる。そうすると、事業主体が分かれるわけでございますね。その事業主体ごとに雇用関係があるという考え方でいきますと、てんでんばらばらになってしまう。現状がそういう形である。国が最終責任を持つ以上、われわれとしては、真に失対事業に働く人がやはり最低生活が営めるようにするという観点から言えば、またその意味も含めて国が大幅の補助をするのでございますから、先ほどちょっと申し上げましたように、私は、むしろ事業主体というのはほかにあっても、最終責任は国が持つのだから、国に雇用されていると雇用契約にはならないのだけれども、国と労働組合との団体交渉というようなかっこうに持っていったほうがすっきりするのではないかという感じ方なんですが、これは研究の中でもいろいろ意見がございまして、その辺がはっきりした結論になっておりません。これはお読み願ってもわかりますが、つまり地方の自治団体の活動と国の活動とのからみ合いでございます。それから民間事業も全然オミットしてしまって、全部国がやる事業にしてしまうというわけにいかないものですから、そういう点に非常に複雑なものがある。そのもの自体が複雑ですからこういう複雑なかっこうになるので、一般の近代的な労働法だけで割り切れないところに失対事業の特質があるという、学者としてははなはだ変な答弁で相すみませんけれども、大体その辺でおわかり願いたいと思います。
  87. 井堀繁男

    ○井堀委員 たいへん御迷惑でございますが、そこで最後に……。先生がせっかく本案に対して進歩的なものだとしておきめになった、その一つのきめ手の中に、なお私どももそうありたいと希望をかけております点についてお尋ねをしてみたいと思います。  こういう改正によって訓練を受けて、次の就職の機会を与える場合に、これは一般の職業の紹介と別個に扱うのか、あるいはいままでの職安法の中でいう一般の職業紹介と同じナースにするかということについて、この法律はどっちにもとれる。だから失対の中からでなくて、一般の人が職業訓練を受けて就職あっせんをする、紹介をする、そこでいまの失対事業の中から適格者を出してそれを訓練して就職させるというのは、これはもちろん法体系の上から言えば、法の前に二重の取り扱いをすべきでないという原則論もありましょう。しかし、この法案が将来よい芽をふくかふかぬかは、そこに特別の措置が講じられる改正でなければならない。こういう制度を改善していく、すなわちノーマルな姿に持っていく過程としては、これが一番大切なところではないか。この点は政府にいずれただす所存ではありますが、学者としてそういう点について十分御検討を願えたものと思うのでありますが、この点も実はいままでの資料の中からはくみ取ることができぬものでありますから、この点について学者グループの間のお話し合い、あるいはお考え方等がおありでありますならばこの際ひとり……。
  88. 近藤文二

    近藤参考人 こまかいことは、私だいぶ前のことで忘れたのでございますけれども、原則としては、やはり平等に扱うというのが当然だと思います。私らの間では、こちらのほうで訓練を受けられた人は、雇うほうでむしろあと回しにするおそれがありはしないか、一般のほうを先にして、こういう人たちあと回しにするおそれがありはしないか、こういうことがあっては困る、だから少なくともこの訓練を受けた人のほうを優先的にということになると問題が起こると思いますが、少なくとも同じように扱うべきである。その辺が非常にむずかしいところなんで、そこらあたりは、基準をおつくりになる安定審議会先生方とか政府のほうにひとつよろしく確かめてくださいませんか。私、きょうはえらい目にあいましたので、どうも……。
  89. 秋田大助

    秋田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位にはまことに長時間にわたり有意義な御意見をお述べいただき、ありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  本日はこの程度にとどめ、次会は明十一日午前十時より委員会委員会散会後理事会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後八時十四分散会