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1963-03-19 第43回国会 衆議院 社会労働委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月十九日(火曜日)    午前三時五十六分開議  出席委員    委員長 秋田 大助君    理事 小沢 辰男君 理事 齊藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 藤本 捨助君    理事 柳谷清三郎君 理事 大原  亨君    理事 河野  正君 理事 小林  進君       井村 重雄君    伊藤宗一郎君       亀岡 高夫君    仮谷 忠男君       田澤 吉郎君    田中 正巳君       淺沼 享子君    五島 虎雄君       田邊  誠君    滝井 義高君       八木 一男君    吉村 吉雄君       井堀 繁男君    本島百合子君  出席国務大臣         労 働 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局給与課         長)      平井 迪郎君         労働事務官         (労政局長)  堀  秀夫君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      大島  靖君         労働事務官         (職業安定局         長)      三治 重信君  委員外出席者         文部事務官         (大臣官房人事         課長)     安達 健二君         文部事務官         (大学学術局学         生課長)    笠木 三郎君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  大野雄二郎君         参  考  人         (日本育英会理         事長)     緒方 信一君         参  考  人         (財団法人学徒         援護会理事長) 阿原 謙蔵君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月十九日  委員松浦周太郎君、松山千惠子君及び米田吉盛  君辞任につき、その補欠として仮谷忠男君、田  澤吉郎君及び亀岡高夫君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員亀岡高夫君仮谷忠男君及び田澤吉郎君辞  任につき、その補欠として米田吉盛君、松浦周  太郎君及び松山千惠子君が議長指名委員に  選任された。     ————————————— 三月十三日  港湾労働者雇用安定に関する法律案島本虎  三君外十一名提出衆法第二八号)  生活保護法の一部を改正する法律案八木一男  君外八名提出衆法第二九号) 同月十五日  家内労働法案吉村吉雄君外十一名提出衆法  第三〇号) 同月十八日  療術の制度化に関する請願安藤覺紹介)(  第二四一三号)  同(石田博英紹介)(第二四一四号)  同(一萬田尚登紹介)(第二四一五号)  同(遠藤三郎紹介)(第二四一六号)  同(賀屋興宣紹介)(第二四一七号)  同(簡牛凡夫君紹介)(第二四一八号)  同(小金義照紹介)(第二四一九号)  同(小島徹三紹介)(第二四二〇号)  同(佐々木義武紹介)(第二四二一号)  同(佐伯宗義紹介)(第二四二二号)  同(重政誠之紹介)(第二四二三号)  同(關谷勝利紹介)(第二四二四号)  同(田中伊三次君紹介)(第二四二五号)  同(田邉國男紹介)(第二四二六号)  同(高見三郎紹介)(第二四二七号)  同(竹山祐太郎紹介)(第二四二八号)  同(中村幸八君紹介)(第二四二九号)  同(永山忠則紹介)(第二四三〇号)  同(西村直己紹介)(第二四三一号)  同(濱田幸雄紹介)(第二四三二号)  同(藤本捨助君紹介)(第二四三三号)  同(松永東紹介)(第二四三四号)  同(松山千惠子紹介)(第二四三五号)  同(森清紹介)(第二四三六号)  同(柳谷清三郎紹介)(第二四三七号)  同(山田彌一紹介)(第二四三八号)  同(米田吉盛紹介)(第二四三九号)  同(西村榮一紹介)(第二四七三号)  同(門司亮紹介)(第二四七四号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第二四九三号)  同(石山權作君紹介)(第二四九四号)  同(勝澤芳雄紹介)(第二四九五号)  同(勝間田清一紹介)(第二四九六号)  同(久保田豊紹介)(第二四九七号)  同(栗林三郎紹介)(第二四九八号)  同(實川清之紹介)(第二四九九号)  同(坪野米男紹介)(第二五〇〇号)  同(藤原豊次郎紹介)(第二五〇一号)  同(三木喜夫紹介)(第二五〇二号)  同(安倍晋太郎紹介)(第二五三七号)  原爆被害者救援に関する請願加藤勘十君紹  介)(第二四四〇号)  同外一件(勝澤芳雄紹介)(第二五九五号)  原爆被害者救援に関する請願兒玉末男君紹  介)(第二四四一号)  同外二件(河本敏夫紹介)(第二五九六号)  同(本島百合子紹介)(第二六五七号)  同(田口長治郎紹介)(第二六七七号)  医療改善に関する請願外十三件(島本虎三君紹  介)(第二四四二号)  同外二十件(島本虎三紹介)(第二五三九  号)  同外十四件(島本虎三紹介)(第二六五二  号)  人命尊重に関する請願外一件(白浜仁吉君紹  介)(第二四四三号)  同外三十件(中曽根康弘紹介)(第二五四〇  号)  同外百十三件(灘尾弘吉紹介)(第二五九九  号)  全国一律一万円の最低賃金制法制化に関する請  願外二件(岡田利春紹介)(第二四四四号)  同(岡田春夫紹介)(第二四四五号)  同(小松幹紹介)(第二四四六号)  同(島上善五郎紹介)(第二四四七号)  同外十三件(永井勝次郎紹介)(第二四四八  号)  同外一件(松平忠久紹介)(第二  四四九号)  同(三木喜夫紹介)(第二四五〇号)  都市清掃事業改善に関する請願阪上安太郎君  紹介)(第二四五一号)  同(杉山元治郎紹介)(第二四五二号)  同(野原覺紹介)(第二四五三号)  同(肥田次郎紹介)(第二四五四号)  同(松原喜之次紹介)(第二四五五号)  失業対策事業打切り反対等に関する請願外九十  八件(永井勝次郎紹介)(第二四五六号)  同外一件(西村力弥紹介)(第二四五七号)  同外二件(三宅正一紹介)(第二四五八号)  同(鈴木茂三郎紹介)(第二四五九号)  同外四件(田邊誠紹介)(第二四六〇号)  同外二件(有馬輝武紹介)(第二五〇五号)  同外三件(堂森芳夫紹介)(第二五三五号)  同外一件(三宅正一紹介)(第二五三六号)  同外一件(太田一夫紹介)(第二六〇三号)  同(川上貫一紹介)(第二六〇四号)  同(志賀義雄紹介)(第二六〇五号)  同(谷口善太郎紹介)(第二六〇六号)  同(湯山勇紹介)(第二六〇七号)  同外十五件(矢尾喜三郎紹介)(第二六五三  号)  業務外災害によるせき髄障害者援護に関する  請願山口シズエ紹介)(第二五〇三号)  同(永山忠則紹介)(第二五九八号)  業務上の災害による外傷性せき髄障害者援護に  関する請願山口シヅエ紹介)(第二五〇四  号)  同(永山忠則紹介)(第二五九七号)  元南満州鉄道株式会社職員の戦傷病者戦没者遺  族等援護法適用に関する請願外一件(小沢辰男  君紹介)(第二五三八号)  失業対策事業打切り及び療養費払い反対等に関  する請願外十九件(川上貫一紹介)(第二六  〇〇号)  同外十九件(志賀義雄紹介)(第二六〇一  号)  同外十四件(谷口善太郎紹介)(第二六〇二  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  労働災害防止に関する法律案内閣提出第一  一二号)  労働関係基本施策に関する件(日本育英会及  び学徒援護会における労働問題)      ————◇—————
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  この際、私より一言申し上げたいことがございます。  すなわち、去る十三日の当委員会の席上、一部委員の間に不穏当な言動のあったことは、私の遺憾とするところであります。  なお、委員会定足数についてしばしば論議がかわされましたが、当日の出席委員の確認については、若干の不注意のあったことを反省し、定足数の確保については、委員長は一そうの善処をいたしたいと存じます。つきましては、今後私といたしまして、厳正公平の立場に立つはもちろん、一そう慎重に民主的な委員会の運営を期し、もって委員長の職務を忠実に遂行する覚悟でございますので、この点各位の御了承と御指導、御協力のほどをお願いいたす次第でございます。  内閣提出労働災害防止に関する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 労働災害防止に関する法律案について質問いたしたいと思います。この法案は新しい法案で、非常に多くの問題点を含んでおるわけで、私としては相当の時間を必要とするわけですが、きょうはまず、とりあえず総論的なところを質問させていただきまして、なお次回に各論的なところを質問させていただきたいと思います。  まず、日本労働災害というのは、欧米諸国に比べて非常に多いわけです。アメリカの三倍、イギリスの二倍といわれるように非常に災害が多いわけです。そこで政府としては、多分昭和三十七年であったかと記憶をいたしますが、産業災害防止の五カ年計画をお立てになって、そうして今後災害半減させようという方針をお立てになったようです。しかし、すでに昭和三十三年に一度五カ年計画立てて、三十七年の終わりまでに相当災害防止をはかろうという御計画があったと記憶しておりますが、三十三年にお立てになった産業災害防止の五カ年計画成果というものは、一体どういう状態になったか、どういう成果があったのか、まずそれを御説明願いたいと思います
  4. 大島靖

    大島政府委員 前回樹立いたしました産業災害防止五カ年計画は、昨年で一応終了いたしたのであります。この計画の骨子は、当時の産業災害件数半減いたすという目標でございました。ただ、その後における雇用量増加によりまして、遺憾ながら半減目標には到達し得なかった。ただ死傷件数におきましては、大体ここ数年間におきまして四割から五割程度の間の上昇を示したのでありますが、一方雇用労働者の数は、大体七割から八割程度までふえておるわけであります。従って災害率と申しますか、私どもの方では死傷年千人率と申しておりますが、雇用労働者伸びに対しまして、死傷件数伸び方の比率をとってみますと、労働者千人当たりの率におきましては、大体八割程度にまで減少して参った。従って、総じて申し上げますと、計画におきまして目標といたしました絶対件数減少雇用労働者増加のために必ずしも到達し得なかったけれども死傷千人率、災害率におきましては相当顕著な減少を見た、こう言えると思うのであります。あわせて前の産業災害防止五カ年計画成果として私どもが特に申し上げたいと思いますのは、全国的にやはり安全に対する全般の関心というものが非常に高揚され、また関係者における体制整備というのが相当進捗を見た、こういったことが五カ年計画成果として考え得られるのじゃないか。従って、今後新しく発足いたします新しい産業災害防止五カ年計画におきましては、さらにこの災害率減少というものを積極的に推し進めて参りたい、かように考えております。
  5. 滝井義高

    滝井委員 死亡の方は八〇%くらい千人については減少しておるけれども産業災害自体については、昭和三十三年に少なくとも半数災害を減らすというその目的は達成できなかったというお話でございますが、一体その達成できなかった根本的な問題点というのはどこにあるかということです。災害に対する関心というか、安全衛生に対する関心というものが非常に高まった。しかし、たとえば三十六年を見てみましても、三十三年八十六万件の災害に対して、八十一万件くらいありますね。三十七年はどのくらいかちょっとわからぬのだけれども、おそらく大して変わらぬのじゃないかと思うのです。八十万件かあるいはそれ以上になっておるかと思いますが、そういたしますと、八十六万件あったものが、半分の四十三万件くらいに減らそうとして五カ年計画をお立てになった。ところが依然として三十六、七年になっても八十万件台だ。こうなりますと、一体その根本的な原因というものは、どこに大きな原因があるのか。死ぬ方は減った。安全衛生に対する関心も高まった。しかし、依然として災害発生というものは八十万台だ、こういうことになりますと、その根本的な原因が、何か本質的なものがどこかに横たわっているような感じがするのです。そういうものに対する分析とか検討というものが行なわれていると思うのですが、それは一体、簡単に要約して言ったら、どういうところに原因があるのでしょうか。
  6. 大島靖

    大島政府委員 ただいまお尋ねの産業災害が減らない原因として、私ども災害の現況を分析いたしました結果を申し上げますと、まず第一に、基本的には雇用労働者の数の増加がございます。それから第二に、やはり特殊の、災害率のきわめて高い業種がある。たとえば鉱業でありますとか、林業でありますとか、貨物取扱業、あるいは建設業、こういった特殊に災害の高い業種がございます。この業種は、もちろんこの作業の自然的な性格からいたしまして災害の多いということもございますが、同時に、まだまだ努力の至らない点が多いという点がございます。それから第三に、ただいま滝井先生おっしゃいました約八十万件の災害、これは一日以上の全災害になるわけでございますが、この中の約七割というものは中小企業における災害中小企業、ことに小企業における災害率というものは、大企業に比べまして約倍になっておる。中小企業災害率は、大企業に比べてきわめて高く、かつ絶対件数においても約七割という数字を占めております。この方面におけるまたわれわれの努力の不足を痛感いたすわけであります。それから第四に御報告申し上げたいと思いますのは、全災害の約半数は、新しく職場に入った方々によって起こっておるわけでございます。さらに、新しく職場について六カ月以内の方々をとってみますと、全災害の大体三割から四割程度はこの新人工員方々、従って、新入工員に対する安全教育必要性ということが痛感されるわけであります。さらに各種の事情によりますが、重大災害——一時に死傷三人以上が出ますような重大災害減少がなお見られないという現状であります。こういった大体四つないし五つ災害特徴がございます。この特徴を通じて見まして、やはり一つには、安全施設のまだ不十分な点、それからもう一つは、安全教育の不十分な点、さらに、この両者共通して産業界における安全体制整備がまだ不十分である、こういった点が、ただいま先生指摘問題点であろうかと存じます。
  7. 滝井義高

    滝井委員 大体災害原因というものが、雇用労働者がだんだんふえてきておるという第一の原因をおあげになったわけですが、これは各論になりますから、もう少し次回にでもここらあたり突っ込んで質問させていただきたいと思います。雇用労働者増加の傾向が、もし災害発生の非常に大きな原因だとすれば、今後日本における技術革新が進み、雇用近代化が進むということは、農村なり中小企業から、雇用労働者にずっと増加をしてくるとということを意味するわけです。従って、雇用労働者がだんだんふえるということをもって災害防止することができないということになると、これは大へんなことになるわけです。そこで、増加する雇用労働者に対してどういう措置をとるかということが重要な対策になる。安全施設安全教育という問題に、これは対策としては関連してくると思いますが、そこらあたりの問題を、もう少し将来明白にしなければならぬところがあると思うのであります。それから特殊の産業鉱業とか林業とか貨物建設業、これは昔から激しい肉体労働をやらなければならぬところだから、こういうところに災害が多いという、これも昔ながらの状態で、昔からここが多いところなんです。半減方向に持っていくといっても、ここらあたりが依然として減っていないということは、問題として残るところだと思う。それから中小企業、これも昔から中小企業災害が多い。なぜならば、安全設備その他について金をつぎ込む余裕がないから、これも昔ながらの問題です。そうすると、新しく職場に入った人が災害が多いということ、これも昔からの問題ですね。重大災害、これはやはり同じように昔からある問題です。そうすると、今局長のおあげになった五つ問題点というものは、これは依然として資本主義とともにある問題なんですよ。これを一体どう減らすかということが今の問題だけれども、どうも五カ年計画をおやりになっておるけれども、それらのものが大して減っていない、依然として原因はここにあるのだということになると、その原因は無限、永遠に続いていく可能性のあるものを含んでおる。そこで抜本的におやりになるためにこういうものをおつくりになったのか、こういう新しい労働災害防止に関する法律案に盛っておるような労働災害防止団体をつくれば、こういう五つの問題が解消するとお考えになって、これをおつくりになったのでしょうか。
  8. 大島靖

    大島政府委員 私ども過去五年間にわたりまして、産業災害防止五カ年計画実施努力を続けて参りまして、さきに申しましたように、災害率相当顕著に減少いたしましたし、また安全に対する体制整備あるいは関心の高揚というものも、また相当見るべきものがあったと思うのでありますが、ただ残念なことは、先ほど来先生が御指摘のように、災害の絶対件数が相変わらず増加をしていくという点であります。この点は雇用労働者増加が非常に大きいためでございますが、いかに労働者がふえましても、この災害の絶対件数だけは何とか減少方向に持っていきたい。これが私ども行政担当者としての何よりの願いであります。もちろん、先ほど来申し上げました災害各種要因につきましては、旧来からの問題であります。問題でありますけれども、なおこれらの問題点災害の大きな要因であり、原因であることは事実でございます。これらの点を、従来の努力に増してこの際画期的な飛躍と申しますか、やはり努力を倍加いたしまして、災害の絶対件数減少方向へ向けていきたい。こういう意味合いにおいて、今回の新立法措置をお願い申し上げておるわけであります。もちろん新しい工夫、努力を要することでありますが、総じて私どもが行なっております安全行政のほかに、さらに業界全体における質的な体制整備というものを一つこの際お願い申し上げたい、こういう趣旨でございます。
  9. 滝井義高

    滝井委員 労働省としては、今までその災害防止のために、今お述べになった五カ年計画をおやりになってもなお減らなかった原因というものは、昔ながらの原因五つ続いておるわけですね。そのほかに、もう一つ、急激な技術革新によって、労働者がその技術革新に対応できなかった、肉体がそれに順応できなかったという面もあると思うのですが、そういうものは、あるいは新入工員新入社員が新しい機械になれなかったというような面にも含まれておるかもしれませんけれども、急激な技術革新というもので、古い職工さん、古い層の働き手が新しい技術、新しい機械設備に対応できなくてできることもあると思います。そういうものも含まれておりますが、一体その労働災害防止のために、労働省としてはこの五カ年間にどの程度の金を入れたのでしょうか。
  10. 大島靖

    大島政府委員 私、ただいま五カ年間の予算の合計は持っておりませんが、たとえば今回の三十八年度予算におきましては、総計いたしまして大体三億八千万程度予算を計上しております。今回は特別多額予算を計上いたしておるのでありますが、今こまかい数字を持っておりませんで、はなはだ恐縮でありますが、五年間といたしましては、大体十億程度の金をつぎ込んだのではなかろうかと存じます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 その予算の三億八千万とおっしゃるのは、たとえば労災補償費を払うとか、年金福祉事業団に持っていくとかいう、すでに災害の起こった後につぎ込む金ではなくて、実際に災害防止するために一体幾らの金をつぎ込んだだろうということなんです。
  12. 大島靖

    大島政府委員 災害が起こりましてあと予算は、先生今御指摘通り補償費の支払いとかそういうことでありますが、この金額は、先生御承知の通り非常に膨大な額になるわけであります。先ほど私が申し上げました数字は、全部災害防止予防のための経費でございます。今申しました来年度の予算案に計上いたしております三億八千五百万円は、今回の新立法に基づく団体に対する補助金一億五千万円、それから災害防止に関する行政指導の強化が一億一千万円、それから安全研究所衛生研究所経費が一億二千五百万円、この総計が約三億八千万円になるわけであります。これはすべて予防のための経費でございます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、労働災害防止対策費交付金一億五千万円は労災特別会計からお出しになるのですね。それからあと行政指導の一億一千万と安全関係の一億二千五百万というのは、一般会計から出すのですか。
  14. 大島靖

    大島政府委員 三億八千六百万円のうち、労災保険で出しますお金が二億五千五百万円であります。従って、これを差し引きました一億三千百万円が一般会計の負担であります。先生、これは予算は各所に分散しております。
  15. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、ことしは一億五千万だけが新しいもので、あと五年間に十億程度でございますから、二億程度ずつ出したということになるわけですね。そうすると、その二億程度出したものは、全部一般会計からではなくて、やはり一億程度労災から出し、一億程度一般会計から出したということになるのですか。
  16. 大島靖

    大島政府委員 三十七年度の予算額では一億九千万円でございます。そのうち、労災から出しましたお金が約八千万円でございます。今五年間で十億と申しましたのは、大体この一億九千万円を一年ずつにして約二億と申し上げて、五年で十億と申し上げたのであります。それよりも若干下回る数字だろうと思います。
  17. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、昨年は一般会計から一億一千万円程度、それはそれぞれのところに分散をされておるということですね。——わかりました。それはあとでまた触れますから、そこだけちょっと聞かせてもらっておけばよろしいです。  そうしますと、大体過去の労災の減らなかった原因ということがわかったので、その原因について各論のときに少しく追及していきますが、きょうは総論ですから、もう一回もとに返りますが、当然こういう原因によって災害が起こって参るについては、今度労働災害防止計画をお立てになって、同時に、それに対応する今度は基本計画実施計画をお立てになるわけです。その場合に、労災保険料の率が五年ごとにきめられることになるわけです。その五年ごとにきめられることに対応して、おそらく基本計画も五年ごとにということになったのかもしれませんが、一応それに符節が合っておるわけですが、一体この基本計画というものは、どういう方向でお立てになるのですか。これを読んでみますと、「労働災害減少目標その他労働災害防止に関し基本となるべき事項を定めた」と書いておるのですが、すでに基本計画がおできになっておれば、資料として見せていただきたいし、できていなければその構想はどういうものか、概要を御説明願いたいと思うのです。
  18. 大島靖

    大島政府委員 基本計画については、この法案ができましたあとに、この法律に基づく基本計画ができるわけでございますが、実は昨年の夏、内閣産業災害防止対策審議会におきまして政府に対する建議がございました。その中で、政府はこの際、新しい産業災害の五カ年計画立てなさいということをおっしゃっておるわけです。それに基づきまして昨年の十月二十三日に、閣議了解をもって、新しい産業災害防止五カ年計画について一応決定いたしております。この骨子は、昭和三十八年から昭和四十二年までの五カ年間に、災害発生率をおおむね半減することを目標といたしまして各種の施策を講じ、措置をするという趣旨でございます。昭和三十六年の実績によりますれば、産業全体の合計の災害率、すなわち死傷年千人率が二一・〇五になる。これを、昭和四十二年の目標といたしまして、この災害率を一二・三〇まで減少せしめていく。こういう基本的な災害減少の五カ年計画目標を、昨年の十月に政府といたしましては策定いたしたわけであります。
  19. 滝井義高

    滝井委員 問題は、基本計画が四十二年に一二・三〇まで災害の率を引き下げていくということは、一応目標としてはわかるのです。そのわかる目標に対して、さいぜん御指摘になりましたような、たとえば鉱業とか林業とか貨物輸送、建設業あるいは製材、こういうところが相当多いわけですね。そうしますと、それらのものについて、当然年度別の防止計画と、その裏づけになる資金ですか、そういうものがきちっとしてこないと、幾ら基本計画立てても、また三十三年と同じようなことを繰り返すことになるわけです。今度は相当予算もおかけになっておやりになろうという気持なんでしょうが、だとすれば、何かこの基本計画の概要を資料としてちょっと示してもらいたいと思うのです。というのは、内閣の方の産業災害防止対策審議会等の意見を見てみましても、これは学校教育から職場の教育、それから事業主の教育に至るまで、相当緻密なものにならないと、この計画というものほうまくいかないと思うのです。同時に、そういう計画ができたならば、その年度年度の実施計画というのが、一体どうそれに対応していくのかということなんです。  御存じの通り、今まで過去、内閣がずいぶん経済計画をお立てになったわけです。そして初年度は、基準年度をお書きになるわけです。そうして四十五年なら四十五年の十年先の目標をお立てになるわけです。しかし、中間過程がちっともはっきりしないのです。中間過程がはっきりしないものですから、池田内閣ごとく、所得倍増計画というものが第一年度、二年度で大きな間違いを起こす。合っておるのは、私がいつも言うように人口の増加だけだ。あとのものは合っておるものはない。鳩山さんのときも同じです。池田さんは数字の神様だ、経済はおれにまかせろという池田さん自身の数字が全部間違いで、合っているのは一つもない。合っているのは、厚生省の人口問題研究所から出す人口の推計だけ合っている。あとは合っていない。だからあなたの方も、これから本格的にやろうとするならば、中間過程を明らかにする必要がある。これは大蔵省がいやがります。なぜならば、それだけ予算もきちっととられていくからです。しかし、これは予算をとらなければ絵にかいたもちになるのです。私はそういう点で、まず問題点としては、基本計画をお立てになったならば、それは第一次年度、第二次毎度というように、こういう目標はきちっと定めなければならぬ。二一・〇五を一二・三〇まで減らそうとするならば、少なくとも五カ年間には二ずつくらいは減らしていかなければならぬのですから、第一年度二、第二年度二というように減らしていかなければ、とても一〇は減らぬわけですからね。そういうきちっとした計画をお立てになって、そして第一年度の予算は三億、第二年度は五億、こういう予算の配分をしておいてもらわぬと、第一年度だけは予算は三億組んでおります、しかし一体先の方はどうなんだ、先の方はまだわかりませんということでは、これはいかぬと思う。そのことは、大蔵省はいやがります。なぜならば、大蔵省は五年間予算をきめられる、拘束されるから、いやがるのです。しかし、きまったことを、最後には大臣の政治力で実行してもらわないことには災害が減らない。だから中間過程というものがいつも抜けている。ですから、これは頭でっかち幽霊ですよ、しりすぼみですよ。だから私はこの胴体をはっきりしてもらわぬと、幽霊じゃ困るのですね。そういう点でもう少し、きょうなければ、次回にはあなた方がお立てになる——この法律が通ってから立てるというけれども法律は公布の日から九十日を越えない範囲だから、もしこれが四月になって通れば、六、七月になればやらなければならぬのだから、従ってこれはもう、大体そのくらいの計画というのは、これだけのりっぱな法案をおつくりになるのですから、できておらなければならぬと思うのですが、それはどうですか。
  20. 大島靖

    大島政府委員 ただいまの滝井先生基本計画の策定並びに年次計画の策定についての御指摘は、私どもも非常に感銘を持って伺ったわけであります。たとえば、先ほど私が申し上げました全産業合計二一・〇五の千人率を一二・三〇に五カ年間に下げる。これを年率に直しますると、毎年八・八%ずつ下げていくことになるわけであります。しかしそれは、ただいま御指摘のように算術計算でございまして、この過程というものが大事であるという御指摘でありますが、この点につきましては、私どもも、先生指摘の点は十分注意をいたしまして、今後毎年の計画、これをやはりはっきり立てて参る。そしてそれによって年間大体八・八%ずつ下げていくという、おおむね五カ年間の推移というものを毎年の年次計画によってチェックしていく。たとえば中小企業災害率を下げていくという場合に、最初はなかなかむずかしくてそう進まないであろうけれども、だんだんこの進み方が多くなるようにする。たとえば災害率の非常に高い業種におきましては、これは最初からかなり減るかもしれないけれども、あるいは後半に至っては比較的減る率が少なくなるかもしれない、こういった先生のおっしゃる胴体の部分というものを、できるだけはっきりしていくように努めて参りたいと思います。  さらに、先ほど御指摘のありましたように、重要な産業別の減少計画というものも必要であろうと思います。さらに業種によりましては、中小企業と大企業との間に災害率の非常に格差のございますものについては、規模別のまた計画も必要であろうかと思います。要するに、ただいま先生指摘のような具体性を持った実行性のある長期計画と年次計画、こういうことに努力をして参りたいと存じます。
  21. 滝井義高

    滝井委員 その労働災害防止計画の中における基本計画と毎年つくる実施計画というものの、何かシェーマというようなものはできていないのですか。さいぜんあなたが御指摘になったように、原因ははっりしてきたわけです。これから五カ年間に、日本雇用労働者がどの程度増加していくということもわかるわけです。農村からどの程度の人が出るのかということも、大体推計ができているわけです。産業近代化、同時にそのことは、雇用近代化をはからねばならぬので、家事従事者とか単独の事業主とか、あるいは農家からどんどん近代的な雇用労働者になっていくことはさまっておるわけですから、わかるわけですよ。それから災害の起こる重要業種もわかっている。ということになれば、大体五カ年間の計画のあらましの模型図というようなものはできるのじゃないですか。それを次回にでも資料として出してもらいたいと思うのです。
  22. 大島靖

    大島政府委員 基本計画並びに実施計画の内容についての大体の青写真はないかという御質問でございますが、たとえば先ほど申しました昨年十月にこしらえました五カ年計画におきましては、全産業災害率の五カ年間の減少目標と並びに各年間の減少率、それからそれをさらに各産業別にこまかく砕きました減少計画並びに年間減少計画、それからさらに規模別に砕きました計画、こういう計画にいたしております。さらに、今度この法律に基づきます基本計画並びに実施計画につきましては、今申しましたような全産業並びに産業規模別の詳細な減少目標と同時にこれを実現すべき具体的な対策、これも基本的な事項についてはやはりこの計画の中で定めたいと考えておりますが、大体私どもの方で考えております基本計画並びに実施計画の具体的な図表と申しますか、青写真を次回に提出いたしたいと思います。
  23. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ一つその青写真を出してもらいたいと思うのです。それによってなおこまかい点は質問さしていただきたいと思いますので、その点は次回に譲ります。  そうしますと、今度は基本計画なり実施計画を五年ごとあるいは毎年おつくりになるときに、中央労働基準審議会の意見を聞くことになっておるわけです。これは一体、どうして労働者災害補償保険審議会の方の意見はお聞きにならないのか。同じ労災保険事業の運営に関する重要事項は、労働者災害補償保険審議会に聞くことになっている。それから基準法の施行及び改正に関する事項を審議するためには、労働基準審議会の意見を聞くことになるわけですね。この場合に、いかなる理論的な根拠で中央労働基準審議会というものを選んで、そこで労災の方から金を出しておきながら労災の方は置いてきぼりを食わしているのか、この点はどういう理由ですか。
  24. 大島靖

    大島政府委員 この点は、ただいま御指摘のように、労働基準審議会と労災保険審議会と両者に関係がございます。労働基準審議会の方は、基準行政全般についてのいわば諮問機関。労災保険審議会につきましては、この法案では、こうした自主的安全団体につきまして、労災保険から毎年一定のお金を出していくという問題があります。さらに基本的には、こういった災害防止活動というものが、そもそも労災保険のいわば支出を減らすための災害予防計画とその作業でございます。従って、労災保険の方にも事実上関係することはもちろんでございます。ただ両方に審議するということになりますと、また両者の意見の問題がございますので、この法案につきまして労働基準審議会並びに労災審議会で御説明申し上げましたときも、私どもとしては、基本的な形として基準審議会を選んで御諮問申し上げる、ただ事実問題として、もちろん労災審議会の方にも支出の面で御審議を願わなくてはいかぬのでありますが、その間、労働基準審議会と労災保険審議会と事実上の連絡を保ちながら、法律的には労働基準審議会に諮問する、こういう形にいたしたわけであります。
  25. 滝井義高

    滝井委員 ことしの予算の三億八千六百万のうち、二億五千五百万円は労災から出すことになっていたわけです。一般会計からは、ばらばらと一億三千百万円ですね。そうしますと、労災会計からは倍の金を出しているわけです。それは減るかもしれないけれども。基準法といえば、これは全部のものですから、一般会計的な要素があるわけです。労災といえば、労災に加入をしておる事態です。金はよけいに出させたけれども相談はしなかった、もちろん意見は聞いたかもしれぬけれども法律の上ではない、こういうところに、私何かちょっとおかしいところがあると思う。やはり労働災害を減らそうとすれば、労災法の運営をやっているところの意見も聞くのが私は正当じゃないかと思う。それならば、一般会計から私は金を出すべきだと思う。金の出し方について私はちょっと疑問を持つわけです。そういう点で、中央労働基準審議会の意見はお聞きになっているけれども、せっかくある、しかも労災防止をするのに労災保険審議会の意見はお聞きになっていない。お聞きになる必要もない。この条文の中を見ますと、どこにもそういうものはないんですよ。この法律というのは、労災保険の運営上重要な関連があるわけです。それをお聞きにならぬ。そして中央労働基準審議会の意見をお聞きになるということは、何かちょっとおかしい感じがするわけです。ちょっとそこらが、今の御説明では私としては納得のいかないところがあるのです。
  26. 大野雄二郎

    ○大野説明員 労災補償の審議会の仕事は、労災補償保険事業の運営に関する重要事項ということに労災保険法で相なっております。今度の法案がこれを変更するものではございません。そして従来労災保険から支出いたしますいろいろな事業につきましては、慣行上重要な事項として、概括の線はそのつど御審議願っております。従いまして、先生の御指摘のように、本計画の樹立、施行にあたりまして、労災保険から支出いたします金につきまして問題が起きました場合には、必ず労災保険の支出金額を、予算の問題といたしまして労災保険にかけられるということになっております。
  27. 滝井義高

    滝井委員 労災保険事業の運営に関する重要事項、すなわち災害が半分に減るということは、労災の運営に重要な影響を及ぼしてくる。何となれば、メリット・システムだから五年に一回保険料を決定する。ところが、これが五年後に災害が半分に減ったということになれば、その保険料はがたっと下げていいわけです。これは労災保険の運営に重要な関係があるわけですよ。従って、金を出すときには意見を聞くけれども、重要な計画——これは計画は、私は竜を描いて眼を入れる眼に当たると思うのですよ。だからその眼を入れる災害防止計画その他については、労働基準審議会に聞くけれども労災の方の審議会にはそれは何も聞かない、金を出すときには幾分相談はするというけれども、それでは納得がいかない。それならば、ここで中央労働基準審議会、労働者災害補償保険審議会の意見を聞く、こうやっておいていい。これは当然三者構成ですからね、だから金を出す方の意見もやはり聞くことが、私は必要じゃないかと思うのです、少なくとも金のことについては。そうすると、そういうことがどこにもない。見てみますと、条文の中にどこにもないのです。それで縁もゆかりもない——と言ってはおかしいけれども、金を出していない中央労働基準審議会の意見を聞いておる。金を出す方からの意見は聞いていない。しかもそれは二倍の金を出しておる。これは金がなかったらば、この法律は何の役にも立ちませんよ。これは私はあとでだんだん触れていきますけれども、問題は、これは一般会計だけから出しておるなら、こんな意見を言わないのです。しかし一般会計ではなくて、労災保険特別会計から金がいっておるところに問題がある。問題があるから、その金を管理する、少なくとも金を管理しなくてもその運営を管理する労災保険審議会の意見を聞くべきじゃないかという、そういう意見なのです。
  28. 大島靖

    大島政府委員 ただいま労災部長から御説明申し上げましたように、この法律施行については当然労災保険からのお金の支出がありますので、その意味合いにおいて、労災補償保険審議会にかかるわけでございます。そこで、この法律に基づく基準審議会にもかかるわけであります。それはこの計画そのものとしてかかるわけです。しかし同時に、基本計画等につきましても、当然そのお金を出す要素でございますから、そのお金を出すという意味合いにおいて、労災審議会の方で御審議を願うわけであります。従って、事実問題といたしまして、両方の御審議を願うことに相なると思います。
  29. 滝井義高

    滝井委員 言葉の上ではそれでいいです。ところが、条文の上ではそうなっていないわけです。これはごらんになってみると、労災の審議会のことはどこにも出ていないのです。そして出ているのは、中央労働基準審議会の意見を労働大臣は聞くことが義務になっておるわけですね。だから私は、ここを——ともに三者構成ですよ、この審議会は。この中央労働基準審議会も労災保険審議会も、ともに三者構成で対等のものです。従って、金を出す方の意見も労働大臣は当然聞いて、防止基本計画その他、私は衆知を集める方がいいと思うのです。ところが、そういう意味では金を出さない基準審議会だけの意見を聞いて、金を出す方の意見を聞いていないということについては、この法文にちょっと瑕疵があるという感じがするわけです。
  30. 大島靖

    大島政府委員 その点は、労災保険法の方におきまして、こういう全額の予算の支出につきましては当然審議をすることになる。従って、この法律ができましても、その規定は相変わらず動いておるわけでありますから、その点はこの法律で書かなくとも、そちらの方で当然かかる、こういうふうに私どもは読んでおるわけであります。
  31. 滝井義高

    滝井委員 それはそうは読めないんですよ。金を出すのですから、国会が議決したらそれまでですよ。一億五千万円だけ今度交付金を出しますね。これは予算が通ったら、かけなくてもいいのです。労働大臣は義務にならない。それは予算を出すことは重要事項でないといえば、それまでになってしまう。認定の問題なのです。ところが、条文に中央労働基準審議会の意見を聞いて基本計画立てなければならぬということになると労働大臣はしゃにむにこれは意見を聞かないと違法の措置になる。聞かなければならぬ。私の言いたいのは、問題はそこにあるのです。一方は条文にあるが、一方は条文にない、こういうことなのです。これは私は一つ問題点だと考えておるわけです。あなた方は、金を出すときにはお聞きになると言うけれども、それは義務ではない。聞かなくていい、金を出すのは。そういう一つの、どうもちょっとふに落ちない問題点があるわけです。またあとでだんだん関連してくるのですから、そこは追及しません。  次の問題は、労働災害防止を目的とするこの法律は、事業主の団体による自主的活動を促進するための措置を講じておるわけですね。すなわち、その措置一体何だというと労働災害防止団体だ、こうなる。そうすると、その労働災害防止団体は、中央労働災害防止協会と労働災害防止協会、片方を中央協会といい、一方を協会と、こういうことになっているわけですね。これは人格は法人になっているわけです。そうしてその会員となる者は、これは事業主の団体がこれをつくることになるわけです。なるほど労働災害防止するためには、おやじ教育、いわゆる事業主の教育が非常に重要だということは、私も主張いたしております。ところが、労働災害防止するのは、一体事業主だけでできるのかどうかということです。当然、さいぜんの中央労働基準審議会を見ても、あるいは私の問題にいたしました労災保険、審議会を見ても、すべて三者構成になっているわけです。ところが、こういう労働災害防止団体だけ、一体何で事業主だけで構成しなければならぬか。当然こういう懐は——しかも労保険の金というのは、これはもう事業主が出したら労働者の金ですよ。いわばもう運命は労働者にしかいかない。事業主にはいかない。それはメリット・システムですから、事業主が災害を減らした場合には、幾分余れば保険料が返ってくる可能性はあるかもしれぬけれども、その金の運命としては、大体災害を受けた労働者に帰着すべき性格のものなのですね。幾分、労働省が、宿舎を建てたり、それから労働福祉事業団で病院を建てたりすることはありますが、しかしそれにしても、労働者災害防止するための福祉的なところに入れている。だから金の運命は労働者に帰着するものだ。ところが、その金を使って、そうして災害防止団体をつくろうとする場合に、一体なぜ労働者団体なり組合を入れないで、事業主の団体だけ加入せしめるのかということになるのです。一体災害防止労働者の協力なくしてできるという認識が、私はどうもおかしいと思う。従って、この法律では事業主だけでなぜやらなければならないのか。その理論的根拠はどこにあるのか。
  32. 大島靖

    大島政府委員 ただいま御指摘のように、労働災害防止につきましては、単に経営者のみでなく、労働者の協力を得なければ所期の目的を達し得ないことは、私ども先生と全く同意見であります。ただ、安全衛生は、労働基準法によりまして使用者の義務に相なっております。すなわち基準法におきましては、使用者は安全衛生についてこれこれの措置を講じなければならない、こういう建前になっております。従って、労働者が使用者と全然同じ立場に立って安全衛生管理に参加するということは、つまり同じ立場で安全衛生管理の責任を負うような形になりまして、基準法の定める責任体系にはちょっと沿わない形になるわけであります。労災審議会におきましても、安全衛生については、労働側としては団体交渉を通じて発言すれば足りるのであって、使用者と同等の立場で参加するということは、かえってこの関係を混乱さすんじゃないかという御意見もございます。しかしながら、もちろん先生指摘のように、労働者あるいは労働組合の協力を得ますことは非常に大事なことでありますから、本法施行の関係で、三者構成でやります基準審議会の意見を聞くことにいたしましたり、あるいは災害防止規程の作成につきまして直接労働者の意見を聞く、こういうふうな所要の措置はもちろん講じておるのであります。ただ団体につきましては、先ほど来申し上げましたような理由で使用者の団体にいたしておるわけであります。ただ総じて、実際問題といたしまして、安全衛生の問題について労使協力してこの万全を期していきますことは、もちろん先生指摘のように大いに必要なことだと思うのであります。
  33. 滝井義高

    滝井委員 労働災害について安全衛生上の措置を講ずるのは、今の基準法なりの建前から見れば、当然これは事業主の責任でございます。しかし、これは労働災害防止するために事業主の団体による自主的な活動を促進する、こうなっておるわけです。事業主だけで災害防止を目的にする団体をこの法律でおつくりになる、こういうわけなんでしょう。それならば、もっとさらによくするために、労働者もこれに加えた方がいいわけなんです。この法律の目的をごらんになっても、基準法等と相待ってやるわけですから、基準法は基準法です。基準法は事業主がおやりになったらいい。そして外につくる団体は、労使が一体になって産業災害防止する運動をやる。その目的は、この法律の目的から出てくるいわゆる労働災害防止団体中央協会の業務をごらんになると、どういうことをやるかというと、「事業主、事業主の団体等が行なう労働災害防止のための活動を促進すること。教育及び技術的援助のための施設を設置し、及び運営すること。労働者の技能に関する講習を行なうこと。情報及び資料を収集し、及び提供すること。調査及び広報を行なうこと。」こういうことは、労働災害防止する労働団体も当然考えなければならぬ問題点なんです。従って、これは労使一体になってやることの方がいい。私がなぜこういう主張をするかというと、こういう事業主ばかりの団体ができると、これは選挙にも利用されるわけです。しかも労災の金を出しておるわけです。たとえば、ここであまり例を言いたくないんですが、今全国安全何とか協会というのがあります。これはまだ国の金が出ておるかどうか知りませんけれども、あるわけです。これはやはり事業主ばかりがつくっておるのです。そうすると、これは選挙に利用されてくるわけです。そこで中央労働災害防止協会というものを事業主だけでやると、そういうおそれが出てくるのです。災害防止するためにできた団体が、選挙に利用される団体になったら大へんなんですね。今度私たちも痛切に感じたのは、北九州の市長選挙で、八幡製鉄が下請をぎゅうぎゅう締め上げた。そうして、もしおれの方の言うことを聞かなければ発注しない、こうまでやられるわけです。こういう形が出てきたわけです。なぜ一体そういう形が出てくるか。それは八幡製鉄におけるあの七色の煙を出す煙突に集塵装置をつければ、一本について千万円くらいかかる。二百本あれば二十億円になる。こんなものを、社会党が市の天下をとってやられたら、大へんだという杞憂なんです。全くの杞憂なんです。社会党が天下をとったって、そんな無茶なことをやるはずはない。会社の経理なんかも考えますし、住民の福祉も考えまして、ちゃんとやる。そういうことがあるわけです。だから、私たちはこの問題については反対です。事業主ばかりでやるなら、私一人でもこの法律は通さない。だから労使双方が入る、そういうふうに修正をしてもらわなければならぬ。そうしないと、労働者の金を出すのですから……。そうして労使一体になって、産業災害防止するという方向に向くべきだと思う。そういう方向に向かないと、これが事業主だけの団体になると大へんなことになる。必ず選挙に利用します。殷鑑遠からず、幾らでもあるのです。だから、たとえば、隣に柳谷さんがおると怒るかもしれぬが、国の金が出ておる国民健康保険団体、それから社会福祉団体、こういうものは自由民主党の現役の代議士が全部会長になってきておる。こういうものができると、やはりそういうおそれがある。そういうことは明朗でないのです。われわれの税金にひとしい金が出ておるところの会長に、現役の代議士がなる。そうすると、やはり予算の取引は、一種の体のいい収賄、贈賄の形になってくる。だから、それは予算を現役の代議士が行ってとってくるわけですから、それはフェア・プレーじゃないわけです。大政党だから、そういうけちなことをやらなくても自由民主党、絶対多数をとれますよ、今の社会党の状態では、率直に言って。だから、そういう点では、やはり国保連合会なんというものは、現役の代議士なんかは入らぬという政治的な良心が必要なんです。こういうものも、ほんとうに災害減少させようとすれば、労使一体にならなければだめだ。労使協調をほんとうにやろうと思うならば、こういうところからフェア・プレーをやっていかなければならぬ。そうでなければ、私は全部一般会計から出すべきだと思う。そうして厳重な会計検査を受けるようにして一これでも受けられるけれども、やはり一般会計からやる、労災からは出さない。そういう形に持っていかないと、やはり不明朗になってくる。従って、今の理論は、労働基準法で安全衛生その他のものは事業主がやるんだから事業主の責任だけれども、これは何も事業主の責任ではない。外につくる団体ですから、労使双方が入っていい。労働者は入っていけないですか。入ったら何か労災防止に大きな支障がありますか。むしろ逆じゃないですか。労働者を入れて、お互いにここは悪いところがあるといって、現実に働いている労働者からその資料をそこに出させる、そうしてフランクな立場で事業主がこれを受け入れてもらって、直していく。これは主として啓蒙宣伝的な役割を演ずるのですから、まさか労働災害防止団体が、各企業に行って金を助けてやるわけにいかぬのですから、啓蒙宣伝的な役割、いろいろな機械器具の試験研究をやって、こういう機械器具を用いた方がいいとか、こういう方向安全教育をやった方がいいとか言うことが主だと思う。それならば私は、労使一体になってやるべきだと思う。この点は、大臣は一体どうお考えになっておるか。
  34. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 滝井さんの御意見は私、非常に参考になることが多いので傾聴いたしておるのでございます。この法案の骨子、特に協会の構成につきましては、労働者の代表をも含めました労働基準審議会でも非常に賛成であるということで、全会一致できまった事柄でございますので、私、労働者と事業主が一緒になってこういうことをやるということは、理論的に悪いとは思いませんが、今までの日本産業界の実情から申しまして、まず発足にあたりましては、一応事業主の責任においてこれをスタートさせ、その後実情に応じて逐次内容の整備をはかっていくということが実際的ではなかろうか、かように存ずる次第でございます。
  35. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この団体は、事業主から会費をとって運営をしていくわけですね。
  36. 大島靖

    大島政府委員 新たにできます中央協会並びに協会は、「定款で定めるところにより、会員から会費を徴収することができる。」という規定が一条入っております。従って、労災保険の経済から支出いたしますお金と、それから会員から徴収いたします会費と、この両方でまかなっていく建前になります。
  37. 滝井義高

    滝井委員 徴収することができる、それは何条ですか。
  38. 大島靖

    大島政府委員 十五条です。
  39. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、「することができる。」ので義務的にこれは徴収することになるのですか、それとも一億五千万円の交付金で——ことしこの協会にいくのは一億五千万円ですね。そうすると、それでまかなうことになるのですか、実際に徴収するのですか、どちらですか。
  40. 大島靖

    大島政府委員 私どもの予定といたしましては、大体一億五千万の支出するお金よりも、会費の方がおそらく多くなるだろうと思います。ただ、中小企業等との関係も考えまして、「徴収することができる。」という規定にいたしておりますが、事実問題といたしましては、やはり会費を徴収して、しかも相当の会費を徴収してそれ自体の活動の資にも充ててもらう、こういう予定であります。
  41. 滝井義高

    滝井委員 時間がないそうですから……。この会員になるものは法人または団体ですね。だからこういうことにると、ますます中央協会あたりは労使双方でやるべきだと、私は結論的にそう感じます。きょうはこれ以上やりません。  一つ最後に言っておきたいのは、今通産省で高圧ガスの取り締まりをおやりになるために、高圧ガスの取り締まり法というのを出しておるのです。これは最近高圧ガス関連産業の非常に急激な技術革新によって、高圧ガスの使用がふえてきたわけです。われわれの家庭でもガスをどんどん使うプロパンガスその他を使うわけです。特にLPGですか、こういった燃料が普及してくるにつれて、それの爆発その他による事故というものが相当多くなってきたわけです。そこで通産省としてはやはり保安協会を設けますね。そしてこの保安協会はどういうことになるかというと、大臣の任命する会長と会員の選挙する評議員が中心になって、会費と検査手数料でまかなっていくわけです。これと同じようなものですね。一体これとの関係はどうなるのかということです。これは同じ関係にあるわけですね。片一方の方は、保安協会というものをお設けになる。これは通産省所管ですよ。当然高圧ガスだって、今後産業における技術革新が進んでいけば、こういうものも労働省が握っておかなければならぬが、これだけは通産省が握っているのですよ。向こうも今度の国会にお出しになっておる。最近になって出した。高圧ガスの取り締まり法というのを最近お出しになって、近く通産にかかります。やはりそれは、保安協会を設けて業者の指導をしていくのです。手数料とそれから会費でまかなっていく。ところがこちらの方は、会費と労災の方でやっていく。同じくやはりこれも労働災害が起こり得るわけです。それから一つ、これは販売が加わってくるわけですね。しかし販売だって、今あなたの御指摘のように、零細な中小企業に多いというのはこういうところであって、同じです。今後われわれの家庭の燃料その他にプロパンガスその他がずっと普及してきますと、これは相当大きな問題になるわけです。労働災害でなくても、これは労働災害的な様相を帯びてくるわけです。店員が自転車のうしろに乗せて持っていっているうちに、爆発したなんということがあり得る。この関連は、一方の通産省のとる保安協会の形態と、あなた方の中央協会、協会の形態と、幾分違うわけですよ。同じ政府の中で災害防止するのに、こういう違った形はどうもちょっと解せないところがあるわけです。この関係はどうなっておりますか。
  42. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 これは両々相待って目的を達するわけでございます。
  43. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、こういう高圧ガスをつくる業種は両方に入るのですね。両々相待つならば、両方に入りますね。
  44. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 そういうことでございます。
  45. 滝井義高

    滝井委員 これは強制ではないわけですね。そうしますと、一方の通産省の方に入った——高圧ガスの方は相当範囲が広いのです。これをみてみますと、高圧ガスとは、溶接、切断用の酸素、溶接、アドバルーン用の水素、アンモニア合成用原料や自動車燃料としてのメタン、合成繊維原料や、溶接、切断用のアセチレンなどの圧縮ガスと、家庭用、工業用燃料のLPガス、硫安、それから塩安などのアンモニア製品原料としてのアンモニア、上水道殺菌用塩素などの液化ガス、こういうことになる。非常に範囲が広いのですよ。しかもこれらのところは、最近相当新しい技術革新のために、取り扱いその他がやはりめんどうなもの、だから、災害が起こっておるところなんですよ。そうすると、こういう業態は、労働省の方と通産省の方と、両方保安を保つためにおつき合いをしなければならない。なるほど両々相待てばいいのですが、加入する本人にとったら、これはなかなか大へんだと思うのです、会費を二重に払うわけですから。その業種々々にまとまって、業界の団体が加入していくということになるから、そうすると、通産省からも監督を受け、労働省からも受ける。これはけっこうなことかもしれませんが、やはり業者にしたら、なかなかそうはいかぬところがあると思います。
  46. 大島靖

    大島政府委員 ただいま御指摘の高圧ガスの問題と類似の問題といたしまして、やはり通産省との関係におきまして、たとえば火薬類取締法の関係、あるいはさらに広く申しますと、たとえば電気設備の関係、これは一方において労働災害の問題でありますとともに、一方におきまして、製造からさらに広く流通、消費の段階に至る安全の問題があるわけでございます。従って、その意味におきましては重複をいたすわけです。ただその点につきましては、私どもの方といたしましては、火薬の問題につきましても、高圧ガスの問題につきましても、従来も通産当局と私どもの方の安全課と十分な連絡をとって参っておりますが、今後とも連絡を緊密にいたしたい。  なお、御言及になりました保安協会の問題につきましては、これは私の承知しておりますところでは、検査の代行が主眼と聞いておりますので、この問題とは直接の関係はないのではないかと思いますが、さらに詳細、通産当局とも御連絡をとっていきたいと思います。
  47. 滝井義高

    滝井委員 内容を見ますと、やはり保安体制整備するということがあるのです。もちろん器具、機械等の検査等もやるのだろうと思いますけれども、たまたま時を同じくして、一方は、保安協会という形で高圧ガス取締法の中に出てくる。一方はその労働災害防止として通産に出てくる。しかも片一方は労災の金を入れる。それではこっちも労災の金を入れてもいいことになるのです。(「火薬取締法がある」と呼ぶ者あり)火薬取締法と関係があるといったって、こっちは全部の業態を含んでいる。こっちは単独だけの形なんです。単独か、すべてのものを含んでいるかという違いだけであって、ここに働く労働者にとっては同じだ。たまたま一方は通産、一方は労働だという関係になる。労働大臣の言うように両々相待ってというならば、こっちにも金を出してもいいのじゃないか。何も悪いことはないのです、労災はたくさん金が余っているのだからという関係になってくる。ところが、通産省の方は、われわれとは何の関係なしに商工委員会ですっといく可能性もあるわけなんです。こういう形ならば事業主だけでいいのです。会費をとって検査手数料でやっていくのだ、事業主だけでやります、これならいい。ところがこちらは、形はそういう形をとっておるけれども、金は労災の金から出しますよというところが、問題が少し違う。  きょうは、あとまだあるそうですからやめますけれども、まだたくさんこの法案について問題点を持っておりますが、時間がありませんから、一応このくらいにしておきます。      ————◇—————
  48. 秋田大助

    秋田委員長 労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。     —————————————
  49. 秋田大助

    秋田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  労働関係基本施策に関する件、特に日本育英会及財団法人学徒援護会における労働問題について、それぞれ参考人として日本育英会理事長緒方信一君及び財団法人学徒援護会理事長阿原謙蔵君から意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     —————————————
  51. 秋田大助

    秋田委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。吉村吉雄君。
  52. 吉村吉雄

    吉村委員 実は大へん時間もおそくなったのですが、これは開会がおくれているわけですからやむを得ないと思うのです。特におそくなったのにもかかわらず、きょうこの問題を私が若干明らかにしておきたいと思うのは、このごろ公庫、公団あるいは事業団、こういうものが大へん数多く設立をされるわけでありますが、これらの公庫、公団の労使関係の問題については、監督官庁が政府であるということのために種々問題をかもしており、かつ労使の関係というものの解決を複雑にしているきらいなしとしません。従って、労使の関係を正常にしていくために、法律的にどういう欠陥があるのかというようなことを把握して、そうして労使の関係というものをできるだけ正常ならしめたい、こういう気持から、きょうは特に参考人の方々にも来ていただいて、種々問題点を明らかにしていきたいというふうに思っておるわけです。従って本日は、育英会あるいは援護会の方々、この問題でございますけれども、しかし波及するところは政府関係の機関のすべての労使問題に触れるわけですから、そういう点については十分御配慮をいただいて、労使関係というものを正常にしていくためにどうしたらいいのかということは、理事長という立場、理事者の立場からも、一つあまり問題をはぐらかきないで、今日の事態というものを正当に述べていただくようにお願いしておきたいと思うのです。さらに文部省の関係者、あるいは大蔵省の関係者等にも来ていただいておるわけでございますから、それぞれの関係官庁としましても、先ほど申し上げましたように、政府関係機関の労使問題というものが非常に複雑化していく原因というものを突き詰めて、これを排除していく、こういう立場から私、いろいろ疑問点を質問していきたいと思いますから、そういう観点に立って今日の事態というものを明らかにする、こういう気持で御答弁をお願いをしておきたいと思うわけです。  まず初めに、育英会の理事長にお伺いしたいわけですが、さらに学徒援護会の方の理事長さんにもお願いをしておきたいと思います。育英会並びに学徒援護会の理事者側とそれから職員側との労使の問題について、どういう法律の規制のもとにこれを行なっておるか、どういう法律に基づいて労使の問題を扱っているか、ここの理解していることをお伺いしておきたいというふうにまず考えております。
  53. 緒方信一

    ○緒方参考人 ちょっとかぜを引きまして、お聞き苦しいかもしれませんが、私からまずお答え申し上げます。  今の御質問は、われわれがわれわれの団体の労働組合に対して、基づく法律はどういうものを考えてやっているか、こういうお話でありますが、これはもとより一般の労働組合法その他の労働関係法律でありまして、公務員の関係とは非常に違います。公務員は、それぞれ公務員法に職員団体の規定がございますが、われわれ政府外郭団体でございますけれども、その労働組合としては一般の労働組合ということに相なっております。
  54. 阿原謙蔵

    ○阿原参考人 大体ただいま育英会理事長がお話しになった通りと思っておりますが、ただ、援護会の場合は財団法人でございます。その点で多少違っております。しかし財団法人ですが、全額国庫補助になっておりますから、その点で相当監督官庁の監督を受けるという立場になっております。
  55. 吉村吉雄

    吉村委員 今の援護会の理事長さんのお話によりますと、大体育英会の理事長さんのお話と同じではあるけれどもという前提でありますが、私の質問しているのは、労使関係についてあなたの理解はどうかということを聞いておるわけです。監督官庁の監督を受けるということは、その通りだろうと思います。ただ理事者の立場から見て、どういう労働法の適用や受けて、労使関係を取り扱おうとしておるかということを伺っているわけですから、その点についてだけお答えを願えばけっこうです。
  56. 阿原謙蔵

    ○阿原参考人 それにつきましては、一般の労働法によってわれわれは規制を受けております。
  57. 吉村吉雄

    吉村委員 それで次にお伺い申し上げたいのですが、育英会にせよ、あるいは援護会の方にせよ、今まで労使の間に賃金の問題で相当長期間紛争があるのではないかというふうに聞いております。従って、この職員の賃金をきめるのにあたって、今答えられましたように、労働組合法の精神に基づいて当事者としての立場で交渉に当たってきたものというふうに理解をいたしますけれども、今までの賃金決定についてはどういう考え方で当たってこられたか。さらに、今日なお紛争の状態があるやに私は聞いておるのでありますけれども、これらの経営について、育英会並びに援護会の方の経営をお聞きしておきたいと思うのです。
  58. 緒方信一

    ○緒方参考人 賃金決定について紛争があるとは必ずしも考えておりませんけれども、組合の方から要求があって、それに応じまして私どもも待遇改善について努力しておる、その過程において組合一交渉しつつ進めていく。ただ御承知のように、政府関係のわれわれのような団体におきましては、予算の決定等は団体自身が決定できないのが実態であります。でございますから、なかなか組合と普通の民間の企業体等との関係のようにはいきにくいという点はございます。しかし、それは必ずしも紛争とは私どもは考えてないわけでございまして、なお今日交渉中である、こう申し上げておきます。
  59. 阿原謙蔵

    ○阿原参考人 ただいまの点につきまして、賃金の決定は労使間の協定によってきまるということについては、その通りでございます。それにつきまして、現在大へん遺憾でありますが、組合の要求がございますのに対しまして、私どもは、それに対する十分な回答ができないというところにおきまして、現在交渉を続けております。これは、大へん長引いておりますことにつきましては非常に遺憾でございますが、われわれといたしましては、できるだけ折衝を続けまして、そうして何とか妥結に達したいというために今努力いたしておる次第でございます。
  60. 吉村吉雄

    吉村委員 この英育会の定款の十三条ですか、これによりますと「任免、給与、分限及執務ニ関シ必要ナル事項ハ会長之ヲ定ム」と、こういうふうになっておりますから、当然職員の給与の問題あるいは任免その他の人事の問題等については、育英会の方として自主的な判断をもって対処しているというふうに私は理解をいたします。それでこの賃金の問題に関しまして、今理事長は、紛争というふうには考えていないということの御回答でございますが、では現在のこの育英会の職員の賃金並びに学徒援護会の方の職員の賃金というものが、他の公団等の職員の賃金に比べてみて、あなた方としては妥当なものというふうに考えられておるのかどうか、ここを一つお聞かせを願っておきたいと思うのです。
  61. 緒方信一

    ○緒方参考人 この賃金が妥当かどうかという問題は、私は非常に断定的に申し上げることは、簡単にはむずかしいのじゃないか、かように考えます。その勤務の実態とそれに対する賃金というものは、これは見方によって非常にむずかしいことじゃないか、かように考えます。前提として申し上げたいことは、私の方の団体は、人件費を含めまして事務費は全額国庫補助でございます。それから仕事の内容は、これは全く公務に準ずるものと考えます。従いまして、賃金を考えます場合に、私はやはりよるべきところは公務員の賃金とどうか、高いか低いか、ここが一番基準として考えられる点じゃないかと思います。ただ客観的に、これを実態的に私がここで申し上げることは非常にむずかしいわけでございまして、何かと比較してみるならばそういうことじゃないか、かように考えております。私どもの現在の賃金といたしましては国家公務員の基準に若干上回っておる、ただしかし、いろいろなほかの面におきまして、たとえば退職後の年金等につきましては、これはございません。従いまして、それを両方を比較いたしました場合に、実態的に長い目で見てどうであるかということは、非常に判定困難じゃないかと私は考えます。だだいまお話に出ました公庫、公団でございますけれども、私も公庫、公団の賃金の実態というものを、内容に入ってまで詳しくつかみ得ません。各団体の、各機関の賃金というものを実態的に把握することは非常にむずかしいことじゃないかと思います。名目的に規定等に出ておりますことと実態とがはたしてどうなのかということもございまして、しかし公庫、公団に比べまして、名目的には私の方の団体の方が低い、かように考えております。
  62. 阿原謙蔵

    ○阿原参考人 その点について私の方の立場から申し上げます。  私どもは文部省の外郭団体の中の一つとして、できるだけ給与の改善をやりたいということを考えております。特に私どもといたしましては、やはり所管も同じでございますし、もちろん成立の沿革とか、そのときの事情とかいろいろ違いますけれども、現在の立場におきまして、育英会さんの給与水準まで何とかして努力したいというつもりでやってきた次第でございます。現在の状態が必ずしも妥当であるというふうには考えておりません。
  63. 吉村吉雄

    吉村委員 育英会の理事長にお伺いしますが三十七年の参議院の文教委員会で育英会の問題、あるいはその他の振興会の賃金の問題、こういうものが取り上げられまして、現在の賃金の水準ではやはり低いと思う、従って公庫、公団並みに引き上げたいと思うという趣旨の答弁が、理事者側あるいは文部省の担当の方からなされております。その事実を知っておられますか。
  64. 緒方信一

    ○緒方参考人 承知しております。
  65. 吉村吉雄

    吉村委員 その公庫、公団並みに引き上げたいということのためにどういう努力をなさいましたか、そのことをお聞かせ願いたい。
  66. 緒方信一

    ○緒方参考人 これは私から申し上げた方がいいかどうか、あるいは文部省全体にも関係がございますから、文部省の方から申し上げた方がいいかと思いますけれども、お尋ねでありますから私から一応申し上げますが、文部省関係の外郭団体相当数ありまして、その賃金について、やはり私の方と同じような問題がどの団体にもあるわけであります。労働組合からは改善の要求が出ているということでございますので、何とかこれの改善をはかりたいということで努力いたしておるわけであります。そのやる方法といたしまして、育英会だけでやるということじゃなしに、やはり各団体共同な立場でいろいろ考えていこうじゃないかという意味で各団体から委員が出まして、給与調査委員会という名前のものを文部省で世話してつくってもらいまして、いろいろ案をつくったり、要求もございますように公庫、公団並みということを目ざしまして、実態に即しつつそこに近づけていこうというので、予算要求等も提出いたしておるということでございます。今日までその線で努力しておることは間違いございません。先ほど申し上げましたのは、実態的に一体どうだという御質問がございましたために、私は意見を申し上げたのであります。
  67. 吉村吉雄

    吉村委員 その公庫、公団並みにしていきたいというために、文部省の方の関係者等にも予算要求をしたというお話ですけれども、文部省の外郭団体の職員の賃金なり、あるいは人事なりについての監督官庁である文部省としては、育英会の理事者側の要請を受けてどういう措置をされたのか、お伺いをしておきたいと思います。
  68. 安達健二

    ○安達説明員 文部省の所管の特殊法人等が約九つございますが、そのうちの二つが財団法人で、あとは福祉法人でございます。そのうちで、新しくできました公立学校共済組合を除きまして、八つの特殊法人等の職員の給与について根本的に検討する必要がある、こういう観点からいたしまして、昨年三月ごろからでございましたか、以来、先ほど緒方理事長からお話がございましたように、文部省関係の団体の職員の給与の調査研究会というものを開きまして、約二十数回に及んで検討いたしました。その考え方といたしましては、やはり公務員の体系というものとの関連においては、どちらかといえば公庫、公団に近いような形の方がよいのではないか、こういうような大体の結論でございました。そうしてその改善の方策といたしまして、退職金等の関連もございまして全体的に調整する必要もあろう、こういうようなことで、とりあえず三十八年度予算にそういう要求をいたしたわけでございます。それにつきまして大蔵省といろいろお話し合いをいたしまして、三十八年度予算につきまして、その給与の改善に要する経費といたしまして大体四%の経費を計上する、そうしてそれを一度にということでなしに、計画的にそういうような方向に持っていくという考え方におきまして、その使い方につきまして目下大蔵省と打ち合わせをいたしておる次第でございます。
  69. 吉村吉雄

    吉村委員 公庫、公団並みに近づけるということを、いわば年次計画的にということで、三十八年度の予算の中には四%の予備費的なものですか、そういうことで検討していくというお話でありますが、そうしますと、それは文部省の外郭団体全部についての予備費の予算というものが四%、こういう意味に解していいわけですか。
  70. 安達健二

    ○安達説明員 さようでございます。先ほど申し上げましたように、公立学校共済組合は別であります。そのほかの団体につきましては大体四%という額で検討する、こういうことになっております。
  71. 吉村吉雄

    吉村委員 そうすると、先ほど学徒援護会の理事長の方からお話がありましたけれども、学徒援護会の方としては、育英会の職員並みに上げたい、こういう御意向のようです。それから育英会の方は、さらに公庫、公団並みにしていきたい、こういうことでございます。ですから、今の大蔵省の考え方からいきますと、現在の予算の中に四%ずつということでいきますと、やはり将来においてこの格差というものは残っていく、こういう理解をしなければならないと思うのですが、そういう理解に立っていいのですか。
  72. 安達健二

    ○安達説明員 その点につきましては、なおよく大蔵省と相談をいたして参りたいと思っております。
  73. 吉村吉雄

    吉村委員 それからこれは大体四%の予備費を運用することによって、公庫、公団の職員に対して三十八年度の場合、一体どのくらい上がるということになるのですか。この差をどのくらい縮めることになりますか。
  74. 安達健二

    ○安達説明員 公務員の基準と公庫、公団の基準というものの比較の問題があるわけでございますが、公庫、公団と申しましてもいろいろ種類がございまして、見当といたしましては、公務員の基準の一五%増しというようなものが大体のめどじゃなかろうか、こういうように考えられるわけでございます。そういたしますと、それを数年と申しますか、計画を大蔵省と相談いたしておりますが、その一五%の中の四%ぐらいというような関係になるわけでございます。
  75. 吉村吉雄

    吉村委員 大蔵省の関係の方がおいでになっていると思うのですが、この四%の増額の問題は、当然文部省の方から大蔵省の方に話が通じていると思うのですけれども、この場合、大蔵省としてはどういうふうに対処をしようとしておるのかお伺いをしておきたいと思います。
  76. 平井迪郎

    ○平井(迪)政府委員 御質問の点につきましては、先ほど文部省の安達課長から御説明申し上げましたように、昨年来の懸案でございまして、漸進的にこれを改善して参るという基本方針につきましては、私どもも異存はございません。そういう方針に基づきまして、三十八年度の予備費計上等も行なっておるわけでございます。その場合におきまして、理論的に申しますならば、できるだけ早い方が望ましいということはもちろんでございますが、同時にまた、過去の退職手当に関する既得権というものも尊重するという問題もございまして、それとのかね合いにおいて、ある程度漸進的に問題を処理するという考え方に立っているわけでございます。
  77. 吉村吉雄

    吉村委員 では育英会並びに援護会の方の理事長さんにお伺いしますけれども、そうしますと、あなた方の方としては、組合の方に対しましても大体公庫、公団並みの給与に引き上げていきたい、こういう趣旨のことを言っておるようでありますし、そのためにいろいろ努力をされておる。しかし、それが昭和三十八年度の場合には、四%の予備費の運用ということでやれということになっておる。こういう実情でありますけれども、それで一体、公庫、公団の職員並みに引き上げていこうというあなた方の気持というものを満足させられておるのかどうか、この点は一体どうですか。
  78. 緒方信一

    ○緒方参考人 私どもとしましては、これは毎次をかけましてもその目標を達成したいということで努力いたしておる次第でございまして、それはなるべく早い方がいいと思いますけれども、今の四%の積み上げによって目的を達成したい、かように考えております。
  79. 吉村吉雄

    吉村委員 これは一昨年の十二月五日でありますけれども、文部省関係の特殊法人等の諸団体の職員給与水準については、公庫、公団その他の政府関係諸団体のそれに比して非常に低い、従って、これらの団体の給与水準との均衡をとるように引き上げるとの要望書的なものを、文部省に出しておるというふうに聞いておるのでありますけれども、要望書を出したか出さないかは別といたしまして、今までのあなた方の答弁からしますと、公庫、公団並みの給与水準に近づけていきたい、こういうなお話であります。しかし、四%程度の予備費でやっておったのでは、これはなかなか、あなた方の要望というものは実現をしないということになるだろうと思うのです。  そこで、私は労政局長にお伺いをしておきたいのですけれども、現在の、この文部省の外郭団体の労使関係の使用者側の当事者というのは、理事長でありあるいは会長、こういう方々がその責任者になっております。しかし、この組合法上の団体交渉の当事者である理事長あるいは会長という方々は、事をきめるのにあたって、自分の判断によって事をきめられないで、文部省の意向をまず聞かなければならない、あるいは文部省から大蔵省の意向を聞かなければならない、こういうようなのが実情になっているということが、今までの質疑応答の形ではっきりしたわけです。こういう形態が、組合法上の労使関係という点から見て、一体これでいいというふうに考えられるのかどうか。私はあなたが来る前に、冒頭に申し上げておいたのですけれども、今この公庫、公団あるいは事業団というものはどんどんとできつつある。この労使関係というものは、このごろ非常に紛争が多くなっている。その最大の原因というものは、何か法的に欠陥があるのではないか。こういうことを明確にしていかないと、次の紛争を減少せしめるための施策というものはつくり得ないという観点から申し上げておるわけですけれども、今の形態でも明らかなように、どうも当事者能力としての、ほんとうの当事者能力らしいものを持っていないのではないか、そういう条件を持っていないのではないかというふうに私は考えるのです。こういう点を、一体労働局長としてはどのように考えられているか、一つ明確な答弁をお願いしておきたいと思うのです。
  80. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいま御指摘の育英会並びに学徒援護会、振興会というようなものを含めました、いわゆる政労協関係の公団あるいは事業団その他の会の労使関係につきましては、これは法律上は、御承知のごとく一般の労働組合及び労働関係調整法の適用があるわけであります。従って、一般民間の企業へ事業場と同じように、労働組合法等に基づきますところの権限が、労使ともに与えられておるわけでございます。ただ、この間の特殊事情といたしまして、これらの公団、事業団その他の団体は、国あるいは地方公共団体等からあるいは補助金、あるいは交付金、あるいは出資金というようなものを受けております。その関係上、主務大臣の監督を受けるという建前になっておるわけでございます。従いまして、その関係から、労働法上一般民間の事業場同様に扱われるわけでありますけれども、一面において、今の補助金、交付金あるいは出資金というようなものが交付されておる関係からいたしまして、主務大臣、監督官庁の監督を受ける、こういうことになっているわけでございます。従って、そのような特殊な事情を考え合わせまして、もとより労働三権は民間同様にあるわけでございまするが、労使が交渉をされますときに、その公団、事業団あるいはほかの団体の置かれましたそういう特殊な事情というものを、労使ともに念頭に置かれまして、交渉を尽くされるということが望ましいわけでございます。実際の問題といたしまして、ただいま先生の御指摘のように、この二つの面からは問題があるわけでございますので、その運営上、必ずしもうまくいっておらない面もあると思うのでございまするが、これは、たとえば使用者側におかれましては、労働者側と交渉されるときに、あらかじめ主務官庁、監督官庁と十分に連絡をおとりになっておやりになるというようなことも一法でございましょうし、その他いろいろな、今後研究すべき問題があると思うわけでございます。これらのような特殊性がございまするので私どもといたしましては、さしあたりは今のような気持で、労使当事者が、その置かれた特殊性というものを考え合わせて、交渉を行なわれることを期待するわけでございますが、いろいろ問題点がございまするのでこれらの点につきましては、これは関係者お互いに今後研究すべき問題点相当ある、これは私どもも認めざるを得ないところでございます。今後またこれらの運営をどうやっていくかということは、関係者が十分研究しなければならない問題だと思っております。
  81. 吉村吉雄

    吉村委員 今後研究をするということでございますけれども、先ほども育英会の理事長、あるいは援護会の理事長も明言いたしておりますように、かくありたいという考え方を明確にしている。明確にしておるにもかかわらず、監督官庁の認可なり許可なりがなければやっていけない。これは明らかに労働組合法上の当事者能力としての資格を失っている、条件を失っている、こういうことになるわけです。こういうことについて、どう労使の関係を安定させていくかということが、労働省としてのとるべき措置でなくてはならないはずですから、これは今後研究する、今後研究すると言うだけでは、損をするのは労働者だけなんです。ですから、こういう点についてはもう少し的確な方針というものをきちっと立てなければ、かえって紛争を拡大していくだけに終わってしまう。今後の研究ということは当然やってもらわなければならないと思うのです。これは早急にその対策立ててもらわなければならないと思いますが、この点は、大臣はいませんから労務局長の方から、もっと明確な答弁を要望しておきますけれども、この間、そういうことについて何らかの措置をとるというのは、立法的な措置をとらざるを得ないと思いますけれども、この間の労使関係というものが非常に不安定、かつ労使が正常な意味での団体交渉ができ得ない、こういうことについて、行政官庁である労働省としては、その間にも何らかの措置をとらなければならないはずだ、こういうふうに思いますけれども、この点については一体どのように措置をされようとするか、お伺いをしておきます。
  82. 堀秀夫

    ○堀政府委員 お話のような問題点はございますが、今私もこの席で拝聴しておったところによりますと、これらの団体の従業員の給与その他の労働条件を改善していくという方向については、理事者も十分御熱意があるように拝聴したわけでございます。ただ、今のような予算の制約がありますので、これを一朝一夕に労働者側の要求通りに実行するということは、さしあたりはむずかしい面があると思うのでございまして、今年度の問題といたしましては、現在ありまする予算というものを十分に検討していただきまして、その間においてなるべく、できるだけの改善を行なうということについて関係官庁及びこの団体の間で御連絡の上、方法を検討していただくことが適当ではないか、このように思っております。
  83. 吉村吉雄

    吉村委員 先ほど育英会の理事長の方からだったと思いますけれども、文部省の方からですか、お話がございましたが、文部省の外郭団体の職員の給与の問題を抜本的に研究するために、調査研究機関を設けて検討中だというお話がございました。これが発足をされたのはいつごろかわかりませんけれども、私の知る限りでは、相当長期にわたっておるように思われるのです。その間、この調査研究会は、文部省の外郭団体の職員の賃金がどうあるべきかということを検討するわけでしょうから、その間は職員の賃金というものは一体どういうふうにして措置をされようとするのか。私の知り得る範囲では、調査研究会で結論が出るまでは、この点については回答でき得ないという回答が、育英会の方からも、あるいは学徒援護会の方からも組合側になされている。これでは調査研究会という機関は、団体交渉というものを遷延せしめるという結果になりかねないというふうに私は思うのです。このことについては、一つ労政局長の方からも、こういうあり方についての見解を述べてもらいたいというふうに思いますし、文部省の方でも、一つこういうふうな機関をつくって検討するのはいいと思うのです、検討するのはいいと思いますけれども、その間、全然自主的な団体交渉が進んでいかないということについて、むしろこれは組合の方に対してあなた方は不当な労働行為を行なっているという結果になりかねない、こういうふうに思いますけれども、これに対するところの見解、これを一つあわせてお伺いをしておきたいと思います。
  84. 安達健二

    ○安達説明員 これらの団体の職員の給与の問題は、俸給という問題のほかに、退職金の問題等がございます。俸給の方、今お話しございましたように大体公務員水準でございますが、退職金等につきましては、大体三倍というような計算になっておりますので、そういうような点も彼比較量して慎重に検討する必要があるということでございまして、その間二十数回非常に熱心に御審議をいただきまして、その結果が、まあ多少少ないというようなきらいはございますけれども、三十八年度予算に予備費として計上されましたということにつきまして、その努力が実ったというふうに私どもでは考えておるわけでございまして、われわれといたしましては、現在の制度のもとで許されておる限りの努力をいたしたつもりでございます。
  85. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいま文部省からお話がありましたが、抜本的な問題については目下調査会でいろいろ御検討中のように伺っております。私どもはこの作業の促進方を期待いたしますと同時に、さしあたりの問題につきましては、これはやはり限られた予算の中において、最善の給与改善を行なうということでいくよりやむを得ないのではないか、このように思います。
  86. 吉村吉雄

    吉村委員 私の申し上げているのは、こういうことなんです。労働組合法の適用を受ける使用者あるいは労働組合というのは、自主的な団体交渉をもって事を解決する。こういうことになっているということは、理事長それぞれ認められたところです。あなた方の出している組合に対する回答書というものを見ますと、いろいろな組合の賃上げ要求に対して、現在、文部省の外郭団体の職員の給与については、調査研究会というものを持って調査研究しておる、従ってそれまで待ってくれという回答しかしていないということは、あなた方自体が解決すべき問題を、この調査研究会ができたことによって団体交渉を遷延せしめておる結果になっているのではないか、こういうやり方が、実は労働組合法の適用を受ける労働組合として妥当かどうかということが、一番問題だということを申し上げているわけです。これは理事者側として一体どういうふうに考えられておるか、ここは少し明確にしていただかないと、当初のあなたの答弁と食い違うことになる。実際は悪意はなくやっているでしょうけれども、結果としてそうなるというところを僕は問題にしておる。どうですか。
  87. 緒方信一

    ○緒方参考人 これは御説の通り、組合は労働組合法の適用を受ける団体でございますし、その賃金の決定につきましては労使で対等に話し合ってきめる、これが原則でございましょう。その原則と、それから先ほどから申し上げます実態との間の若干の食い違いがある、これが実態でございます。でございますから、先ほども労働省からもお話がありましたけれども、現在の制度のもとにおいてできるだけの努力をして、労使ともに、その実質上の制約のもとにそれを念頭に置きつつやっていくということが妥当な道だろうと私は考えます。従来組合側の要求に対して出している回答というものは、そういうふうになっております。すなわち現実に文部省におきましてそういう研究会をつくりまして、そこで研究をしておりまして、その結論が出てからということで回答をいたしておるわけでございますけれども、三十八年度の予算としては四%の予算がついた。それを今度どう使っていくかという問題は新たにございますが、それにつきましては、現在組合ともいろいろ話し合っておるというのが今までの段階でございます。
  88. 吉村吉雄

    吉村委員 労使の当事者というのは、あなた方の方の立場というものは、もちろん文部省なり大蔵省なりといろいろ研究をして、それで回答を出していかなければならぬ、それはあなた方の方の事情なんです。組合側が関知する問題ではないのです。あなたは労使関係の中の一方の当事者だとするならば、あなたの責任において回答しなければならないはずなんです。あとあなたの方の家庭の事情の問題は、何も組合が、とやかくということを言っているわけではない。組合が問題にするのは、あなたの方の家庭の事情によって問題が前進をしないということになるならば、これは組合法から見るならば不当労働行為的になる。こういうことになるということを私は申し上げているわけなんです。そのことをあなた方の方では正式な回答書として、組合の賃金の要求については現在こういうことで検討していますという回答は、組合側に対する自主的な回答になっていない。あなたは当事者の役割というものを放棄している回答になっているのじゃないか、こういうことを私は申し上げているのです。どうですか。
  89. 緒方信一

    ○緒方参考人 これは先ほどから申します通りのことでございますが、現在の制度のもとに私ども最善を尽くすとすれば、それはそういうふうな回答に相なるかと思います。でございますから、私はきょうは参考人で参っておりますけれども、制度的にももしいろいろ改善しなければならぬ点があるならば、これは一つお教えを受けたいと思います。しかし、現在の制度のもとにおきましては、政府予算で人件費がきまるわけでございますから、政府に要求して、それを待って初めて確定的な組合との話ができるというのが、実態じゃなかろうかと思います。その実態のもとにおきましては最善を尽くしておるということでございまして、今も申し上げますように、この予算がきまったわけでございますから、それにつきましてこれから交渉していく、もちろん労使対等の立場で話し合っていくということでございます。
  90. 吉村吉雄

    吉村委員 だから私は、初めにあなたにお伺いをしたのは、今、あなた方の労使関係というのは一般組合法の適用を受けていますかということに対して、あなたは明確に、そうでございますという答弁をした。それはその通りなんです。現実の問題、現実の問題というふうに今あなたがおっしゃる現実の問題というのは、確かにそういう困難が理事者側にあるということは私も認めます。しかし、それはあくまでもあなたの方の家庭の事情の問題なのです。その結果労働者の方にそれがしわ寄せされるということは、とうていわれわれとしては容認もできないし、それは労働組合法の精神にも合致しない、こういうことを申し上げておるわけですから、従って、私があなたに対して強く指摘をしておきたいのは、かくしたいということを組合側に明言をした場合、あるいはこうあるべきだということを明言をした場合においては、あなたが責任を持ってそれを実現する、こういう態度でなくてはならない。その間にもちろん文部省なり大蔵省なりという壁があるでしょう。あるだろうとは思いますけれども、それはあくまでもお宅の方の実情の中だけの問題でございますから、別に労使の直接の場面の問題ではないのです。ですから、そういう点から見て参りますと、今あなたが、現実の問題としては原則的に運用ができ得ないということを、再三強調されておるわけでございますけれども、だといたしますならば、その原則的な、いわゆる労働組合法上の運用というものができ得ないというこの現実というものを、何らかの形によってこれを打破していかなければならない、労働組合法の適用を受けるほんとうの労働組合らしい労使関係にしていかなければならない、こういう努力をあわせてやっていくということが、なくてはならないはずだと思うのです。そうではなくて、結果的にそれが労働者の側にだけ犠牲をしいるということになったのでは、これは一方の当事者としての能力を果たしていない、こういうことに極言をされてもしょうがないのじゃないかというふうに思うわけです。私はこの際、監督官庁である文部省の方の見解もあわせてお聞きしておきたいのですけれども、こういうような機関をつくることによって、労使の直接交渉というものが阻害を受けているというのが、今日の実情のように考えられる。あるいはまた、文部省で監督をしておるところの育英会の理事者側としては、こういうような機関があるから、その機関で結論が出るまでは賃金の問題について回答でき得ない、こういう態度をとっていることについて、監督官庁である文部省としては一体どういうような理解をしておるのか、それからいま一つは、労働省としては、こういうような労使関係のあり方について、一体どのように考えておるか、この両方から一つ御回答をいただいておきたいと思います。
  91. 安達健二

    ○安達説明員 従来これらの団体の給与につきまして、それぞれの団体ごとでいろいろ話をされておっても、なかなからちがあかない。だからむしろ一緒になって研究していい策を見出して、そして一つ共同で要求をする態勢にする方が、より一そう効果が上がるということが一つございます。それから給与体系自体をどのように考えるかということも、これはよくじっくりと相談してみなければならない、こういう趣意に出たわけでございまして、われわれとして、それを押えるためにやるというようなことの意思は毛頭ございません。それからその委員の中には、各団体の給与関係の理事諸公がみな入っておられるわけでございます。それらの人たちの立場において、各団体ごとの実情等も十分披瀝し、隔意ない十分な討議をして、いい結果を見出し、その実現に努力しよう、こういう考え方でございまして、ただ文部省だけがやるという、監督官庁という立場でなしに全体になってやるという考え方でございますので、今申し上げました二つの点のいずれから見ましても、これらの団体の職員の給与の改善をはかるということ以外の意図は、一つもございません。
  92. 堀秀夫

    ○堀政府委員 先ほどもお答え申し上げました通り、さしあたりの問題といたしましては、これらの団体が文部省から補助金を受けておるという関係からいたしまして、その予算の面の制約を受けることはやむを得ないことであると考えます。ただ、今後の問題といたしましては、ただいまお答えありましたように、文部省と関係団体の間で、鋭意これらの給与のことについて抜本的に御検討中とのことでありますから、すみやかに結論が得られることを期待しておる次第でございます。
  93. 吉村吉雄

    吉村委員 文部省の監督官庁としての立場から、外郭団体の職員の給与をどうすべきかということを検討されることは自由だと思います。しかし、本来の意味から言うならば、その間の団体交渉というものが阻害をされる、影響を受けるということは、これは労働組合法に対する違反行為になります。このことは、十分監督官庁である、文部省としては考えてもらわなければ困ると思うのです。私どもの知っておる範囲におきましては、この調査研究会というものはいろいろなことをやっている。やっていろ間においては全然交渉というものが前進をしない、ここで結論を出すまでの間はどうにもならないという回答しかできない、こういうことですが、正常な団体交渉というものを前進させないための機関になっておるのではないか、ここを私どもとしては問題にするわけです。だから、本来の労使関係というものは、あなた方の家庭の事情でいろいろなことを研究するのは自由だと思うのです。しかし、その間は従来通りといいますか、いわゆる労働組合法に基づいたところの労使関係、こういうものをやはりずっと継続できるような監督の仕方、指導の仕方をしていくというのが、監督官庁である文部省としてのあり方ではないかと思うのです。ところが、現実にそうなっていない。なっていないから、調査研究会というものを設けたけれども、それは単なる遷延策のように職員としては受け取らざるを得ない、こういうふうになっていると思うのですけれども一体どういうふうにお考えになっていますか。
  94. 安達健二

    ○安達説明員 先ほど来お話がございますように、これらの団体の職員の給与につきましては、年度の予算によって制約をされておるわけでございますので、それを改善するためには、やはり予算という形においてその要する経費を計上するということが先決でございまして、そういうことからいたしますれば、この場合、そういうやり方をせざるを得なかったということでございます。  それから、先ほど申し上げましたように、これは文部省だけの者が集まって研究しておるのではなくて、団体の代表者も入って、監督官庁と団体とが一緒になってやるということでございます。単なる監督官庁という立場でやっているのではございませんので、決して労使関係を阻害するというような意思もございませんし、またわれわれとして、そういうことがあろうとは考えていないわけでございます。
  95. 吉村吉雄

    吉村委員 では、育英会並びに学徒援護会の理事長にお尋ねしますが、この調査研究会というものは、だいぶ長い間検討を続けておるように承ります。今の答弁でもそうです。そうしますと、その間いろいろの過程があって、調査研究会の考え方というものが出ておるように思うのですけれども、そういう点については、あなた方の団体交渉の相手である組合側に調査研究会の今の状況というものは、交渉の過程で話されておることがありますか。
  96. 緒方信一

    ○緒方参考人 大綱についてはだんだん話をしておると思います。先ほどからおっしゃいますように、調査研究会はまだ結論を出していない、つまり予算の原案もできないという過程におきましては、これはやはり研究中でございまして、結論が出ておりませんので、おっしゃるような回答をいたしておりません。これは今度予算がきまりまして四%ということになりましたあとは、いろいろと話し合いをしておるということでございます。ただ、その四%の問題にしましても、それをこれからどういうふうに、最後の目標に到達するために使っていくかというふうな問題は、まだ現在よくきまっていないわけでありまして、それらにつきましては、意見を十分聴取はいたしております。  なお、現在予算はきまりましたけれども、これはちょっと私は、お教えを受けたい点でございますけれども吉村先生がさっきからおっしゃっておりまする労働関係が、一般の労働組合法の適用を受けて、まさに対等の立場で労使が話し合っているというその労使関係にございませんで、一面また最初に私が申し上げましたように、特に育英会といたしまして、事務費、人件費は全額が国庫補助でございます。でございますから、その年度の予算が確定いたしませんと、それについて具体的な確定的なことを言うことは、非常に困難であります。われわれは現に四%で組合と話をしておりますけれども、まだ予算も実は確定いたしておりません。これは国会がおきめになることであります。国会の議決によって予算がきまるわけでございますから、その場合に予算の計上がございましたら、それに基づいて話をしていく、こういう段階でございまして、そこはどうしても二つの問題があるわけでございますから、これはむしろ私はお教えを受けたいと思うのでございます。
  97. 阿原謙蔵

    ○阿原参考人 調査研究会の経過につきましては、そのつど大体組合にお話ししております。われわれといたしましては、せっかくできた研究会ですから、その結論が早く出ることを一日千秋の思いで待っておりまして、しょっちゅう監督官庁には、なるべく早く結論を出してもらいたいということを督促している状態でございます。
  98. 吉村吉雄

    吉村委員 文部省の考え方を少しお尋ねしておきますけれども、四%の予備費的なものを計上して、これでやりなさい、こういうことで、まだ国会の方ではさまっていないといっても、そういうことをやっておる一方においては、根本的な対策をやっておるのだという話でありますけれども、私は労使関係というものをほんとうに正常に、組合法に基づいた運営をしていくためには、きちっと予算のワク内で人件費はこれこれというきめ方をしておく、そこに大へん問題があると思うのです。団体交渉の当事者としての理事者の立場とすれば、若干の余裕を持って交渉に臨み得る、こういうような形でなくてはならないと思うのです。ところが、お宅の万で要望をしたものがまた削られて、そうしてこのワク内でやれ、こういうのが現在の姿でありますけれども、これで労働組合法上の労使関係ということは、使用者側の理事者としては非常に困るのではないかというふうに私は推測をするのですが、その点は一体どういうふうに考えておりますか。
  99. 緒方信一

    ○緒方参考人 これは予算編成の問題でございますから、そういうゆとりを持って組まれるということが、はたして可能かどうかという問題があると思います。ただ、先ほどから申しますように、労働組合法の立場と、それから予算に制約される立場との両方の矛盾点については、先ほど申し上げた通りでございます。現在の制度のもとにおきましては、制約を受けつつ労使が交渉をしていくというほかに私はないと思います。ですから、両者がその制約があることを念頭に置きつつ健全な話し合いをしていく、これが今許されておるわれわれの道であろうと思います。
  100. 吉村吉雄

    吉村委員 ですから、あなたも矛盾を認められておりますけれども、本来の意味での労使関係というものを、労働組合法上の使用者側の団体交渉の当事者というふうに正当な姿で運営をしていくためには、先ほど私が申し上げたように、若干のお金があって、予備費的な、運用金的なものがあってやっていくというようなことでなくてはいけないように思いますけれども、あなたは一体どのようにお考えになられますかという質問をしているわけです。
  101. 緒方信一

    ○緒方参考人 予備費的なものとおっしゃる意味でございますけれども、人件費としては、やはり毎年きまった予算があるわけでございますから、それに予備費的なものという予算の編成の技術の上におきまして、私はよくわからないのでございますけれども予算の前提のもとにやっていくということが……。
  102. 吉村吉雄

    吉村委員 交渉の当事者の立場になって考えた場合には、予算にきちっときまっておる、あと一歩もはみ出さない、これでは、あなたがお認めになっておるように組合法上の当事者としてお困りでしょうから、そうでなくするためには、若干運用的なお金というものがあった方がいいのではないか、そうしなければ労働組合法上の使用者としての当事者能力を果たし得ないのではないかというふうに私は考えますけれども、あなたは、そういうことを運用されてきて、私のそういう考え方に同調できるかどうかということを質問しているわけです。
  103. 緒方信一

    ○緒方参考人 私どもは、交渉と申しますか、予算の要求の過程におきまして、われわれの要求する案をつくりまして政府と交渉する。でございますから、その過程において組合の要求を聞きつつやるわけでございますから、私は、今の制度でその点はいいのじゃないかと思っております。
  104. 吉村吉雄

    吉村委員 あなたの先ほどおっしゃっておることと、今の御答弁とはだいぶ矛盾しますね。あなたは先ほど、予算の制約を受ける関係で、原則的な意味での組合法上の労使関係ということはなかなかでき得ないという答弁をなさいました。だから私は、その原則的な運営をしていくためにはどうあるべきかということの一つの方法として、理事者であるあなたが運用でき得るような余裕的な財源、こういうものがあったならば、正しい意味での使用者としての当事者能力というものを果たし得るようになると思う、こういうふうに考えるけれどもどうかと言ったら、現在のままでいいということは、先ほどのあなたの答弁からすると、だいぶ食い違っておるのじゃないでしょうか。
  105. 緒方信一

    ○緒方参考人 それはどうでございましょうか、予算の実際の交渉の過程におきまして、われわれは一つの案を立て、それにつきまして政府予算を査定するわけでございまして、われわれの大体の要求は、今度も方向としては認められているわけでございます。それも一挙にはいかない、四%でそれを積み上げていこうということになったわけでございまして、私は、そういう了解が政府との間に行なわれまして、これからまた年々の折衝がございましょうけれども、それでやっていけばそれでいいのじゃないか、かように申しました。
  106. 吉村吉雄

    吉村委員 組合と使用者の交渉の中でいろいろ組合の方から要求なり何なりが出る、本年度の予算は、これできまりました、あとは一歩ももうどうにもできませんということをあなたがお認めになるのであるならば、あなたの今の答弁でいいと思う。しかし、労働組合との交渉の当事者としては、そういうものであってはいけないのではないですか。やはり交渉の当事者というものは、相手の言い分なり何なりを、場合によっては聞かなければならないときもあるでしょう。そういうのが交渉の当事者だと思うんです。政府がこうきめたから、あとはどうにもならないのだ、予算を要求したけれども、そのうちの八〇%認められた、このワク内でこれは運用していくのであるということであるならば、団体交渉の当事者としての能力がなくて、政府の言うことをそのまま組合に伝えるという仲介の役割になってしまうと思う。そうでなくて、ほんとうの意味の団体交渉の当事者能力というものを名実ともに備えるためには、あなた方の方で若干の運用金的なものを持っているか、あるいは予算要求の場合に若干余分な要求をして、認められるという姿でなくてはならないのではないか。そうしなければ、あなたが、原則的な意味での労使関係というものは、組合法上の制約を受けるけれども、現実にはなかなかでき得ないというこの矛盾は解決しないじゃないですか。
  107. 緒方信一

    ○緒方参考人 それは最初から申し上げますように、民間の労働組合であれば、その会社が、人件費の原資を自分で調達しておる、こういうことでございましょう。でございますから、そういう姿が、労使対等の賃金を決定する立場としては一番好ましいと思います。そういう立場がわれわれに許されるならば、それは好ましいことに違いありません。しかしながら、これは国費でございますから、それはやはり予算できちっときめていかなければ、それはまたその面からの問題が起こってくるのではないか、かように私は申し上げるわけでございまして、私どもといたしましは、今日までも、要求においてこっちの意見を十分述べておるわけでありまして、それによって政府がきめて、きめた場合には、やはりきちっとした予算が組まれるということが私は好ましいと思います。
  108. 吉村吉雄

    吉村委員 そういたしますと、育英会の理事長さんは、大体現在育英会の職員の労働組合との交渉にあたって、いろいろ賃金の問題を初め多くの問題がある、この問題について監督官庁である文部省に、たとえばこの予算をこうしてもらいたい、ああしてもらいたいという要望を付している、全面的にあなた方の要望は文部省によって認められておる、こういう理解に立っておるということですか。
  109. 緒方信一

    ○緒方参考人 それは必ずしもそうは言えないと思います。要求と、それに対する政府側の考え方という問題とあると思いますから、それによって調整をしたものが予算として組まれる。こういうことなんです。
  110. 吉村吉雄

    吉村委員 ですから、現在の状態はどう思うのですか。
  111. 緒方信一

    ○緒方参考人 現在の状態はまだ進行中でございますから、さような点まで到達しておりませんので、はっきりいたしません。
  112. 吉村吉雄

    吉村委員 だといたしますると、公庫、公団並みの賃金に引き上げることを妥当と考えます、こういうことについて文部大臣初め文部省の方々、あるいはあなた方としても、労働組合に対してそういう回答をなされておる。これに対して、本年度は、文部省の今の説明によりますと、四%程度の予備費をもって運用をしなさい、こういうことでありますけれども、それでいいと考えられておるとするならば、組合側に対する最初の回答、あるいは文部省に対する要望、あるいは参議院におけるとこの言明等は、だいぶ食い違ったものになると考えられるのですけれども、こういう点は一体どういうふうに理解をしているのですか。
  113. 緒方信一

    ○緒方参考人 それは私ども、希望といたしまして、なるべくすみやかに改善がはかれることをこの前も表明いたしたわけでございますけれども、今度は予算が四%と確定すれば、そのワク内でやるよりほかないと思います。
  114. 吉村吉雄

    吉村委員 そういう考え方では、労政局長にも少し注意をして、よく指導に当たってもらわなければならないと思うのですが、たとえば公庫、公団並みの賃金にしたい、希望としてはそういうふうにありたいということを考えておりながらも、予算がきまればやむを得ないのだというような態度であるとするならば、あなたは文部省なり政府の言うなりになっているというだけにすぎないと思うのです。それは、もうほんとうの意味での団体交渉の使用者側の当事者能力をあなたは失っておる、今の答弁の趣旨からすれば、こういうふうに極言をされてもしょうがないと思います。こういうような考え方で労使の問題に当たっているということは、私は非常に重大なことではないかというふうに考えますけれども労政局長、この点は一体どうですか。
  115. 堀秀夫

    ○堀政府委員 私は、この育英会の労使間において交渉された場合に、どのような要望があり、どのような御回答があったかという点は、必ずしもつまびらかにいたしませんけれども、おそらく将来の問題として、公団、事業団並みに引き上げることに努力したい、このように言われたのではないかと思うのでございます。かりに本年度は、理事者側がどんなことをしても公団、事業団並みにするという回答をされまして、しかもそれが実現できなかったならば、これはやはり当事者能力という問題もありましょうが、必ずしもそのように言われたのではないのではないだろうか。要するに、将来少し長い目で見ての当事者の希望とさしあたり本年度の措置、このように御回答をされたのではないか、このようにも思うのでございます。その点は、私実際つまびらかにいたしませんので、この場でどちらがどうであるか、はっきり申し上げるわけには参りませんけれども、おそらくそのような経緯であったのではないか、このように拝聴した次第であります。
  116. 吉村吉雄

    吉村委員 だいぶ時間も長くなりますから、一つ確認をする意味で育英会の理事長さんにお伺いしたいのですけれども、先ほども少しお尋ねしましたが、一昨年の十二月五日に、あなたの方の組合との間に交渉が長引いて、ストライキを組合側で行なったという事態があったことを記憶されておると思うのです。その際に、文部省の外郭団体理事者側が全員でもって署名捺印の上で、文部大臣、大蔵大臣あるいは大蔵省の主計局長、こういう方々に対して、公庫、公団その他の政府関係諸団体のそれに比して著しく低いので、これらと均衡をとるように引き上げるという趣旨の要望書を出したというふうに、私は組合側から聞いておるのでありますけれども、こういう事実はございますか。
  117. 緒方信一

    ○緒方参考人 あると思いますが、私は実は昨年の二月からポストについておりますから……。あると思います。
  118. 吉村吉雄

    吉村委員 理事長がかわろうとかわるまいと、あなたの方の責任者はのがれるはずはない。そういう答弁については一つ注意してもらいたいと思いますけれども、あったものと思いますという話でありますから、お認めになっておると思うのです。この趣旨は、今の経緯からいたしますると、公庫、公団並みであった方がいいということ、それは何年かかってもそうなればいいのだという趣旨のようには、私は解釈できない。非常に均衡上問題があるから、不均衡であるからこれを何とかしなければならない、こういう趣旨の要望書のように見受けられるわけです。だとするならば、たとえば、それは期間が長くかかってもいいのだという場合と、できるだけ早くという場合とは、だいぶ違うと思うのです。公庫、公団と同じような仕事をやっているんだから。早急に同じような賃金にしたい、こういう気持があるとするならば、それはできるだけ早くやっていきたいということに変わりはないと思う。で、具体的になりますけれども一体四%引き上げることによって、公庫、公団の職員との賃金の差はどのくらい埋まることになるのですか。
  119. 緒方信一

    ○緒方参考人 私、急に出て参りましたので、詳細な資料を持って参っておりませんから、金額で幾らということは申し上げかねます。
  120. 吉村吉雄

    吉村委員 私は、あなたの答弁の中で一番問題になるのは、再三申し上げましたけれども、かくありたいということは組合側にも話し、また監督官庁の文部省にも話し、文部省は大蔵省と折衝する、こういう過程を通じて職員の賃金はきまる。しかし、予算があなた方の方の要望通りにきまらない場合がある。きまらないという場合にはやむを得ないんだという態度であなた方は組合との交渉に臨んでおる、そういう態度をとっておるから私は問題にするのです。それではもう団体交渉の当事者能力、資格はない、こういうことを言っても過言ではないと思うのです。問題は、そういうことでなくて、組合側に対して言明をし、あるいはその他の関係者に対して要望した問題については、全力をあげて実現をしていく、こういう態度でなくてはならない。監督官庁からそれはだめだと言われればその通りになっていく、そういうことでは、とてもじゃないが、今日の労使関係は前進していかないんだ、こういうふうに考えますから、この点については十分再考していただいて、事に当たっていただきたいと私はこの際要望をしておきたいと思うのです。賃金の問題についてはこの程度にしておきますが、あなた方が当初認められておりますように、労働組合法上の労使関係というものは、非常にやかましく、また厳格なものであるはずです。監督官庁からこう言われたからこうだというだけで済むのだったら、労働組合法は要らないはずです。従って、こういう点についての法的な欠陥については、労政局長も認められておるように早急に是正をしていただかなければなりませんけれども、しかし、その是正が行なわれるまでの間は、たとい現実の問題で苦しくとも、やはり組合法の適用を受ける当事者としての役割は、果たしてもらわなければ不当労働行為になりますから、この点は十分注意をしてやっていただくようにお願いしておきたいと思うのです。  次は、組合の運動についての理事者側の干渉的な問題について、私はその事実があるかどうかを確かめておきたいと思うのです。育英会の職員の服務規程の十条によりますと、職員は休憩時間を自由に利用することができる、これは当然のことが書いてあるわけですが、何かここしばらくの間でございますけれども、組合の運動の面で、お昼休みに職場の中でいろいろ話をすることはやってはいけないという趣旨のことを、交渉なりの場で、理事長かどうかわかりませんけれども、とにかく言明をしておるということがあるのですが、そういう事実はあるのですか。
  121. 緒方信一

    ○緒方参考人 その事実関係は具体的にちょっと申し上げかねますけれども、こういうことじゃないかと思います。それはおそらく、休憩時間中に職場懇談会を持ちたい、あるいは組合の大会と申しますか、そういうものをやりたいという申し出があって——これは、やりたいというのは、事務室を使いたいということがわれわれの方に交渉があるポイントでありますが、それにつきまして、従来認めておった事実がございます。ところが、休み時間は一定にきまっておりますけれども、その休み時間を越えて行なわれるという事態が何回か続きまして、そのために、そういうことは困る、そういうことであれば事務室等を使うことは困るということを示したことがあると思います。ただ、そういうことを職場の中でやってはいかぬということを示した意味ではございません。今申しますように、勤務時間をきちっと守ってくれということでございまして、現在はその点、組合も改めまして休み時間通りにやっておりますが、申し出があった場合には、その実績に基づきまして事務室を使うことを認めております。
  122. 吉村吉雄

    吉村委員 そうしますと、従来の慣行といいますか——労使の関係というのは、ある程度までは慣行というのが尊重されるわけですから、五分、十分勤務時間中に食い込んでおっても、これが認められるということがそのままになっているということは多くあったろうと思うのですが、そういう点が、何か業務の改善等の問題、合理化というのですか、そういうことを契機にして非常にやかましくなった、そういう事例は別にないわけですか。
  123. 緒方信一

    ○緒方参考人 私は、就任しまして以来、勤務状態相当やかましく言っております。勤務成績を上げるようにやかましく言っておりますが、これは不当なことを言っているつもりは一つもございません。従来やや超過をしたということがあったかもしれません。それは認めることがあったかもしれません。しかし、これは漸次改むべき問題と思いまして、何回かそういう実績を見てこっちから警告をして、そうして今申しましたようなことを組合に伝えているということであろうと思います。お話のように育英会が今世間でもいろいろと関心のまとになっており、返還の問題等がございます。これは困った学生に国費でもって奨学金を貸していき、それを取り立てるという大事な仕事をやっておるつもりで、私ども一生懸命やっております。返還の成績等を上げることが、今後の育英奨学事業の発展のためになると考えますので、その点についてはやっきになっている次第でございます。従いまして、それに従事する職員につきましては、誠心誠意勤務時間を守ってやっていくことが必要だと思いますので、そういう勤務の適正を期していくという点につきましては私かたく言っておりますから、あるいは受ける側で、今おっしゃいますような感じを若干受けていると思っております。しかし、不当に組合の活動を押えるという意味でそういうことを申し上げたのではございません。
  124. 吉村吉雄

    吉村委員 勤務を厳正にすることばかり要求をして、賃金の方の解決が先ほどのようなことでは困るわけで、そういうことが、かえって問題を輻湊させることになると思うのです。やかましくするのは、いわゆる規程の範囲内で行なうということはよいと思いますけれども、それには、人を使用する者として、労働者の要望なりあるのはその賃金なりについて、他の公社、公団並みにやっていくくらいの積極的な解決への努力、熱意というものがうらはらにならない限り、一方的な押しつけになり、職員側としてはかえって理事者側に不満を持ち、こういうことが紛争の材料になっていくと思うのです。そういうことについて、あなたの方で職務の厳正ということを主張するのは、それはそれでよいと思いますけれども、従来の慣行というものが無視されたり、あるいはちょっと行き過ぎになって組合側を刺激する、こういうことになっているところに問題があるのではないかというふうに考えますから、そういう点についても十分注意をしていただきたいと思います。昼休みの時間についてやっていないということであります。もちろん、それがあったら大へんなことでございますから……。なお、従来の慣行等についても留意をして、あまり刺激的なことのないようにやっていただくよう、強く要望しておきたいと思います。  それから、援護会の阿原さんですかにお尋ねをしたいのです。援護会の職員については、一号俸引き上げる協定書をだいぶ前に取りかわしておるようであります。この事情は、先ほどの関係から見ますと、育英会並みにということから出発したのかどうかわかりませんけれども、組合側との間に、現在の号俸より一号俸引き上げるという協定を結んだやに聞いておりますが、その時期はいつごろで、その事実があるかどうか、その点はどうですか。
  125. 阿原謙蔵

    ○阿原参考人 その事実はございます。二月十五日にそういう約束をいたしました。それは大体育英会並みにしたいということで結んでおります。
  126. 吉村吉雄

    吉村委員 その協定書以前に、一号俸の引き上げの問題については、組合との間に交渉をされたということはありますか。
  127. 阿原謙蔵

    ○阿原参考人 その点につきましては、われわれは前から、念願といたしまして、育英会並みにいたしたいということを組合と話し合っておるわけなんです。一昨年私の方で争議がございまして、そのときにやっと育英会並みにあらゆる財源を投げ出しておるわけであります。その後昨年になりまして育英会さんの方が一号上げられまして、それ以後われわれといたしましては、ぜひその育英会の線にいきたいといういう立場で組合と折衝を続けておるわけであります。われわれも努力したいということは、しょっちゅう組合に話しておるわけです。それで今われわれの念願しておるのは、何とかしてこの際、三十七年度の予算におきまして、できるなら育英会並みの線まで努力したいということを申しておるわけです。
  128. 吉村吉雄

    吉村委員 そうしますると、三十七年度のいつから実施をするようになっているかどうかわかりませんが、監督官庁としての文部省の方は、当然了解を与えているということになりますか。
  129. 安達健二

    ○安達説明員 そのことにつきましては、最近伺いまして、その財源等につきましてどうするかよく検討しまして、また大蔵省の方とも御相談をいたしたいものだ、かように考えておるわけでございます。
  130. 吉村吉雄

    吉村委員 そうしますると、文部省の方の了解が完全に得られていなかったけれども、自主的にこの交渉はまとまってこういう協定ができた、こういうふうに判断してよろしいですか。
  131. 阿原謙蔵

    ○阿原参考人 その通りでございます。
  132. 吉村吉雄

    吉村委員 これは先ほどの調査研究会との関連からいたしますと、あなたの方の考え方からすれば若干問題じゃないかという気がしますけれども、文部省の方としては、各外部団体の賃金の問題については、それぞれの権衡をとるように調査研究中である、そうすることが正しいという趣旨の答弁が繰り返されたわけです。私は、そういうこと自体は家庭の事情でしょうからという話をしたわけですけれども、今のお話からしますと、援護会については、特別にそういうことをやっていくという自主的な交渉、その結果を監督官庁としては認めているということになりますが、それは総対的な給与ベースがどうあるべきかという調査研究会の報告からすると、どういう関連を持っておりますか。
  133. 安達健二

    ○安達説明員 調査研究会におきましては、給与体系全体をどすかるかこういうことに主眼を置いておるわけでございますして、その目標ができたあと、これをどのようにして実現していくかにつきましては、各団体におきましてそれぞれ家庭の事情と申しますか、事情も違うわけでございますので、それぞれに応じた方法によりまして、各団体等の特殊事情も考慮してやっていくべきものである、かようなわけでございます。従いまして、会の今の理事長のお話の点につきましては、私ども事前には承知いたしておりません。しかしながら、これは給与研究協議会の問題とは直接の関連がないものと考えておるわけでございす。
  134. 吉村吉雄

    吉村委員 私は、こういうあり方は本来の意味でいいと思っておるのです。いいと思っているのですけれども、先ほどの育英会の問題からしますると、文部省の態度は若干おかしいのじゃないかと思うのです。育英会の場合には、予算がきちっときまっておるので、あとはどうにもしょうがないという理事長の答弁であった。ところが、援護会の場合には、自主的にきめたものがついこの間報告になったから、これから云々という話でありますが、監督官庁の立場で見ますならば、当然そういうものは事前に話があって、了解を得た上でなされていくというものではないかというふうに、今までの質疑応答の経過から見ますと私は考えます。ところが、きまってからこうなったということでありますが、あなた方の文部省としては二つのケースがある。話をきめてからあなた万に持ち込まれる場合と、それからきめる以前に相談をされるという場合と、二つがあるように経理上から考えられるのですけれども、そのどちらでもいいという態度をとっておるのですか。
  135. 安達健二

    ○安達説明員 私どもに連絡なしにそういうことが行なわれたことにつきましては、私どもといたしましては一応遺憾だと思っておるわけでございます。
  136. 吉村吉雄

    吉村委員 そういう態度は、きわめて私は遺憾だと思います。ですから、先ほど来も問題にしておりますように、文部省は、外郭団体の労使の団体交渉というものを、監督官庁という名のもとにこれを制約しようとしておる。これは労働組合法に対する明確な不当労働行為になるわけです。だから私の方の考え方からいたしますならば、自主的に団体交渉がまとまったものはあなたの方としては容認をする、そういう立場ではなかったならば、労働組合法上の労使関係というものは成立をしない、こういうことになるでしょう。ところが、それを黙ってやったものはけしからぬという、そういう思い上がった態度でおるから、どうも外郭団体の方はごきげん伺いをして、あなたの方の意思のままに動かざるを得ない、こういうことになりかねないと思うのです。今の答弁は、労使の関係という点からみますと非常に重要な意味合いを持っておると思うので、もう少し明確に、あなた方の立場を明らかにしていただきたいと思うのです。
  137. 安達健二

    ○安達説明員 先ほど来お話がございましたように、援護会につきましては全事業費が国庫補助であります。従って、国庫補助といたしまして事業費の使途その他についての制約等もあるわけであります。そういうような関係におきまして、予算につきましては事前に認可を要するというような定款にもなっておるようなわけでございます。ただ、援護会の方で行なわれました案につきましては、おそらくは欠員の状況等も勘案していろいろ御研究になった結果であろうとは私ども考えておるわけでございます。従いまして、私どもといたしまして、援護会でおやりになりましたことの結果等につきましてはなおよく十分検討し、いいものならばそういうものを実現するように努力する、こういうことも一面ございますると同時に、これらの給与改善につきましては、国庫の予算の制約というものもございますので、やはり両者は密接な協力によって改善いたすように努力するのが当然であろう、かように思いますので、先ほど申し上げたような答弁をいたしたわけであります。
  138. 吉村吉雄

    吉村委員 出資団体であろうと、あるいはそうでなかろうと、いずれにしても国の機関の外郭団体としての職員の立場、労使の関係というものについては変わりはないのです。だから文部省で、片方は出資団体であり、片方は補助団体であるからということでいろいろな制約をつけようという考え方は、実はあなた方の事務的な立場から言えば必要かもしれませんが、社会労働委員会の立場から言いますと、労働組合というものから言いますと、そういうことは非常に不当労働行為的になりますよ。そういうことを強調しておるのが、こちらの立場なんです。ですから、本来の意味で言うならば、この調査研究会というものについても非常に問題を内包している。それから今のあなたの答弁からいたしますると、この点については、文部省は、労使関係というものを全然理解なしに外郭団体に接しているのではないか、こう考えられてしょうがないわけです。外郭団体のそれぞれの理解者の方々といえども、おそらく文部省に関係のあった方が大半だろうと私は推測します。今の状態からいいますと、やはり監督官庁の意向を聞かなければ何にもできない、自分の主張するべきことすら主張しないでいるような傾向が非常に強いわけですから、そういう中で、監督官庁がほんとうの意味での労使関係を度外視して、単に監督を強化する、こういうことのためにだけ、あるいは財政的な面についてだけ拘束を深めようとすると、非常に労使の関係というものは不安定になるし、そのことが労働組合上の不当な行為にもなるわけですから、こういう点については十分配慮をしていただかなければならないというふうに私は考えます。再三申し上げますけれども、どういう立場にあっても、一般組合法の適用を受ける労働者団体と一方の使用者の関係については、監督官庁なるがゆえにそれを制約してもいいような考え方、こういうことだけは捨ててもらわなければ困りますし、労働関係調整法の趣旨からいたしますると、労使関係というものは、なるたけ当事者の交渉でこれを促進していくということについては、政府の義務としてこれが明記されているところでもありますから、こういう点については特段に、一つこの委員会を契機に配慮をして、あまり干渉がましいことのないようにしていただくように強く要望しておきたいと思うのです。  それから今の一号俸の引き上げの問題も、だいぶおくれてこれがここまで来たやに私は聞いておりますから、文部省があとからこういうことはいけないなどということのないように、これはそんなことしたらそれこそ大へんなことになりますから、大蔵省の方も、そういう点については、財政を預かるところではありますけれども、労使関係で生まれた結論については、妙な制約がましいことを事前においても事後においてもしないように、特に注意をして、この協定については約束通りさかのぼって早急に実施をさせる、こういうことにしていただきたいと思うのです。  それから最後に、労政局長に要望しておきますが、先ほど来申し上げていますように、人数の面から見ますと、この育英会あるいは援護会の労働者の数というものは非常に少ない。少ないけれども、しかしこの問題の持っている性格なり内容というものは、他の公社、公団あるいは国策会社、こういうところの労使関係と同じような性格を持っておって、これは新しい労使の問題としてこのごろ提起されている問題であることは、労政局長は十分御承知の通りだと思います。先ほども御答弁がありましたけれども、こういうような政府に関係をする団体の労使関係がどうあるべきかということについては、むしろ労働省としての監督を十分強化して、そうして正常な意味での一般組合法の適用を受ける正当な姿の労使関係を確立するように努力していただきたいということを要望して、質問や終わりたいと思います。
  139. 秋田大助

    秋田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明二十日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後六時五十三分散会