-
-
○倉石
委員長 これより会議を開きます。
この際、おはかりいたします。
理事松浦周太郎君より
理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○倉石
委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決します。
続いて
理事の補欠選任をいたしたいと存じますが、これは先例によりまして
委員長において指名するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○倉石
委員長 御異議なしと認めます。
それでは、
理事に
森山欽司君を指名いたします。
————◇—————
-
○倉石
委員長 結社の自由及び団結権の保護に関する条約(第八十七号)の締結について承認を求めるの件、公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案、地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案、
国家公務員法の一部を改正する法律案及び地方
公務員法の一部を改正する法律案の各案件を一括して議題といたします。
この際、先般ジュオーブにおける国際労働会議に御出席の田村
労働政務次官が帰国されましたので、その御報告を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○倉石
委員長 それでは、さようにいたします。
速記をちょっととめてください。
〔速記中止〕
-
○倉石
委員長 速記を始めて。
それでは、前会に引き続き質疑を継続いたします。
質疑の通告がございますので、これを許可いたします。多
賀谷真稔君。
-
○多賀谷委員 まず、労働大臣にお尋ねいたしたいのです。
いまも田村政務次官から報告がありましたように、現在ILO問題は、世界の注視の中でこの審議状態が続けられておるわけです。しかし問題は、審議をどうしておるかという問題でなくて、結論をどうして出すかという問題だ、こういうことをいま報告されたわけです。
そこで、政府は一体八十七号条約について基本的にどういう考え方を持っておるか、これをお尋ねいたしたいと思うのです。それは、政府がかねがね八十七号条約に
批准いたしますからということでILOに報告しておるから、ILOからいわばやかましく催促がくるのであって、政府の方針はもう
批准をいたしません、こういうように言えばILOからはやかましく言ってくることはないだろう、こういうこともいわれておるのですが、八十七号条約というものは、はたしてそういう性格のものであるかどうか、お尋ねいたしたい。
-
○大橋国務大臣 八十七号条約は、ILOといたしましては基本的な条約であると考えられておるわけでございます。したがいまして、日本政府がILOに加盟をいたしまする以上は、この条約については少なくともできるだけすみやかに
批准すべきものであるという考えを基本とすべきはもとよりでございます。したがいまして、政府といたしましても、この問題は一日もすみやかに
批准すべきものであるという考えのもとに進んでまいっておるのであります。
-
○多賀谷委員 政府の方針が変わりました、もう
批准をいたしませんと言えば、ILOからはいろいろレポートの要求があったり勧告をなされるということはないわけですか。
-
○大橋国務大臣 政府といたしましては、すみやかに
批准をすべきものなりという一貫した考えで進んでまいっております。また現在もさような考えでございます。
-
○多賀谷委員 私は、八十七号条約というのはいわば一九一九年のILO旧憲章の前文にあり、そうして付属文書の中に、緊急にして重要な問題として処理しなければならない問題の一つにあげられておる。ですから、本来結社の自由、団結の擁護という問題は、ILOでは、加盟国は当然この原則を順守すべきであると考えておった。ところが、現実の問題は、結社の自由あるいは団結の擁護が侵害される事件が相次いで起こった。そこで、これはやはり条約の形式をもってしなければなかなか実施が困難であると考えて、一時これが議題になり、条約の形式をとろうという動きがあった。これは労働大臣御存じのとおりであります。しかし、もうすでに当時は全体主義体制がかなり台頭しておった時代でありますから、それが実現をしなかった。そこで、戦争の終わりにフィラデルフィア宣言が行なわれ、そうして一九四七年に労使の問題として翌年それが議題になり、翌年八十七号条約ができ、さらにその翌年に九十八号条約ができたわけです。
いわば八十七号条約というのは、最低賃金制の条約であるとか、労働時間短縮の条約であるとかというように、その条約によって新しい権利が発生するのでなくて、少なくともILO加盟の国は当然その憲章を承認をして加盟したわけですから、むしろ当然の義務として八十七号条約は
批准すべき性格のものである、こういうように考えるわけです。ですから、八十七号条約の結社の自由に関してだけは結社の自由事実調査調停委員会ができておる。さらに予備審議として
理事会の中に結社の自由委員会が設けられた。
ですから、この条約は
批准をしようと
批准されていない状態であろうと、そういう結社の自由、団結の擁護が侵害された事件というものは
批准の有無にかかわらず取り上げられるわけです。この点どういうように理解をされておるか。日本政府が
批准をしますと言っておるからILOから勧告を受けておるのでなくて、そういう結社の自由を侵害をする事件が起きれば必ずこれは問題になる、こういうように判断をしておりますが、そのとおりでしょうか。
-
○大橋国務大臣 ILOの精神といたしましては、まさにお説のごときものであると存じます。ただ、しかし、これも条約の一つでございますので、現実には条約の
批准ということがありまして初めて条約違反ということが成り立つのではなかろうか、かように存じております。
-
○多賀谷委員 それは条約並びに勧告適用専門家会議等では、
批准をされた条約について国内法との抵触の点をいろいろ指摘してきておる。しかし、結社の自由委員会というのは——
批准をしていない日本国に対してILOから勧告があっておるという事実は
批准の有無にかかわりない、ほかの条約と違うという点はこの点なんです。日本国は
批准をしていないのですから、普通の条約であるならば、八十七号違反の問題についてILOからとやかく言われる筋合いじゃない、こういう議論も出てくるのです。ところが、これが普通の条約でない、基本的な条約であるから、しかも必ずしもことばは適切ではないでしょうけれども、これは創設的な規定でなくて、いわばILO憲章を承認し加盟している国の確認的な規定である。確認的な条約でありますから、
批准をしておろうとおるまいと結社の自由委員会でやかましく言われるわけです。さらに、いままであまり例はないのですけれども、結社の自由の事実調査調停委員会においても問題になり得る、こういう可能性があるわけでしょう、どうですか。
-
○大橋国務大臣 最初にお答え申し上げましたごとく、この条約の目的といたしております結社の自由ということはILOの基本原則でございます。したがいまして、ILOに加入をいたしたという事実はこの基本原則を承認し、この趣旨に従って行動するという前提のもとに行なわれたものでございますから、条約の
批准があるといなとにかかわらず、日本国といたしましてはあくまでも結社の自由を擁護する責任を負うておるものと考えてよろしいと存じます。
-
○多賀谷委員 私はまさにそのとおりだろうと思う。ところが、そのことが十分認識されていない。私はそれが問題だと思うのです。一体与党の中でそのことが十分認識をされておるかどうか。とにかく
批准をしておろうとおるまいと、少なくとも結社の自由あるいは団結の擁護に対する侵害事件が起こったならば問題になるのだ、これが基本的な問題である。このことの認識がされていないところに今日条約
批准が遷延をした理由があるわけです。
現に、はなはだ失礼ですけれども、わがILO特別
委員長の倉石氏がこの前NHKの放送討論会でそういうことを言っておる。それは、すなわち、日本政府がその
批准をしますと言うからILOからやかましく言われるのであって、方針が変わりました、もう
批准をいたしませんと言ったならば、ILOからやかましく言われることはないのだ、これは全国九千万の国民にテレビを通じて放送されておるのです。そういう認識で
委員長がつとまるかどうか。これは私はきわめて重大な問題だと思うのです。そういう認識があるものですから、与党の中でもいろいろな議論が起こっておる。
そして今度出された国内法、これは一体何ですか。各省の不服を全部入れて、アンケートをとって、そしてそれをさらに盛ったような改悪法案を出しておる。この点で日本政府の認識が非常に足らない。これについて特別
委員長から釈明があればお聞きいたしたい。
-
○倉石
委員長 適当な時期に申し上げますが、どうぞひとつ質疑を続行していただきます。
-
○多賀谷委員 特別
委員長は知っておってそういうように放送されたと思いますけれども、これはいやしくも政党の討論会ですから、そして知らない国民は、いやしくも
河野・倉石会談の自民党の責任者ですから、そういうように勘違いをするのじゃないか。ですから、八十七号条約は
批准しなくてもいいのだ、こういう議論が起こるのです。
批准をしようとしまいと、そういう違反事件が起これば何回もくるのです。ですから、その点をまず明確にしておく必要があると思って質問をいたしたわけですが、再度大臣から御答弁願いたい。
-
○大橋国務大臣 たびたび申し上げたとおりでございます。
-
○多賀谷委員 では、八十七号条約と抵触する国内法はどういう法律のどういう条文であるか、これをお聞かせ願いたい。
-
○大橋国務大臣 政府といたしましては、ILO八十七号条約をすみやかに
批准いたしたいということは、先ほど来申し上げたとおりでございます。
批准をいたしまする以上は、国内法を十分に検討いたしまして、この条約の趣旨、精神を全うし、条約履行の義務を忠実に実行いたしてまいる上からいって必要なる国内法規の改正をしなければならぬことは当然であると存ずるのでございます。かような意味におきまして今回関係法案を提出いたしたわけでございまして、関係法案全部が条約施行に必要だ、かように判断をいたしております。
-
○多賀谷委員 私は条約施行に必要だということを聞いておるのではありません。八十七号に抵触をする国内法規はどういう法律のどういう条文ですかと聞いておる。
-
○堀政府委員 八十七号条約に違反します条文は、公労法におきましては御承知のとおり四条三項、地公労法におきましては五条三項でございます。それからさらに国家
公務員につきましては、従来の
国家公務員法の解釈及び運営の実態にかんがみまして九十八条二項、それから同じような考え方に基づきまして地方
公務員法の五十二条一項、こういう規定は条約に違反するということは明らかであると考えております。
なお、それに関連しまして、
国家公務員法、地方
公務員法の細部的な規定におきまして条約の精神に違反するという規定もございます。それらの具体的な問題につきましては、関係の当局にお聞き願いたいと思います。
-
○多賀谷委員 その後段におっしゃったことをもう少しはっきりしていただきたいと思います。あなたがおっしゃいましたのは公労法四条三項、地公労法五条三項、従来の運営、解釈その他を一緒にして
国家公務員法の九十八条の二項、地方
公務員法の五十二条の一項、こういうことですか。
-
○堀政府委員 私のただいま申し上げたとおりでございます。なお、もう少し細目について申しますと、たとえば公労法におきましては四条一項ただし書き、それから地公労法におきましては五条一項のただし書き、これも八十七号条約の精神に違反するものではないか、このように考えておるわけでございます。
なお、
国家公務員法、地方
公務員法につきましても、同様の細目的な点につきまして問題があると思います。これはただいま申し上げましたように、各当局が来ておられまするから、それからお聞き取りを願います。
-
○増子政府委員 まず
国家公務員法につきまして申し上げますと、条文といたしましては、いま他の政府委員から申し上げましたように、九十八条関係が中心でございますけれども、その点につきましてまず申し上げます。
現在の
国家公務員法には、公労法の四条三項のごとき明文の規定はございませんけれども、現行法のもとにおきましては、この解釈、運用に当たってまいりました人事院の取り扱いとしまして、職員団体の役員はすべて職員中から選任すべきものとされております。職員でないものが職員団体の代表者となることが認められないものとされておるわけでございます。また、法人たる職員団体につきましては、登録の取り消しが行なわれた場合には法人たる地位を失ない、解散するものとされております。これらの点はILO八十七号条約に規定する労働者団体の代表者選出の自由及び行政機関による解散または活動の停止の禁止の原則の趣旨に沿わないものと思われるわけでございます。
また、現在消防庁に勤務する職員につきましては、警察官と同様に結社の自由を認めていないのでございますが、消防庁に勤務する職員の職務の実態からいたしまして、地方公共団体の場合の消防職員とは異なりますので、国家
公務員である消防庁の職員につきましては結社の自由を認めないこととしております現行法は、条約の趣旨に照らして適当でないというふうに考えたわけでございます。
これらの点が直接に条約八十七号の規定に抵触するというふうに考えられるものでございます。
-
○佐久間政府委員 地方
公務員法につきましては、ただいま
国家公務員法について御答弁のありましたのと同じ趣旨でございます。条文で申しますと第五十二条第一項におきまして職員団体の組織に関する規定がございますが、職員団体は職員でなければ結成できない、したがってまたその役員も職員でなければならないという解釈をいたしております。法人たる職員団体の取り消しがありました場合の解散につきましては五十四条でございますが、これも
国家公務員法について御説明のありましたと同じ趣旨でございます。
-
○多賀谷委員 まず公労法四条三項、四条一項ただし書き、地公労法五条三項、五条一項ただし書き、これは明らかに違反していますね。ところが、
国家公務員法は、この
国家公務員法ができたときには、国家
公務員以外の者でも組合に加入することができる、さらにまた役員も国家
公務員以外でもよろしい、こういう解釈がなされておったでしょう。
-
○
佐藤政府委員 お答え申し上げます。
国家公務員法の九十八条第二項の「職員はこれらの組織を通じて、代表者を自ら選んでこれを指名し」という点についてのお尋ねだと思いますが、はっきりしたことは実は記憶いたしておりませんけれども、いまお話しのような解釈も当然成り立ち得るのであって、あるいはそういうことで最初は出発しておったかと思います。いずれにせよ今日の解釈は、先ほど他の政府委員が申しましたようなことで、これはやはり職員でなければ代表者になり得ないということに確定いたしておるわけであります。こうなりました事情についても、これもたいへんうろ覚えで恐縮でございますけれども、当時の総司令部の意向なども入ってのものでなかったかと考えます。要するに、この文字の読み方はなかなかいろいろな読み方があり得る、解釈のやりようがあるということを申し上げておきます。
-
○多賀谷委員 この法律の解釈とか、あるいはその後の人事院規則の変更とか、これは私は法律の問題じゃないと思う。現行条文からいえば、「代表者を自から選んで」というのはILO八十七号条約と同じ条文ですよ。ですから、いまきわめてあいまいにお答えになりましたけれども、
国家公務員法ができたとき、この条文で
公務員以外の者をみずからの代表者として選ぶことができるという解釈をしたのでしょう。そうしてそのように運営をしたのでしょう。これもはっきり明確にお答え願いたい。
-
○
佐藤政府委員 初めはどうもその方向で解釈をしておったということは事実のようでございます。
-
○多賀谷委員 どうもあいまいに、事実のようでございますというお話ですが、労働問題懇談会のILOの八十七号の答申を書く際にいろいろ論議をされた中の速記録でも、はっきりそういう事実が述べられておる。ですから、この九十八条の二項を変える必要は全然ないのでしょう、解釈を変えればいいのですから。どうなんす。
-
○
佐藤政府委員 この解釈につきましては、先ほど申しましたように、現在の解釈は一応確定しております。また、他の法令の関係においても、そのような解釈でまいっておるという一つの既成の事実があるわけでありますから、何らの動機なしに、率然としてこれを改めましたというわけにはちょっとまいらぬと思います。
-
○多賀谷委員 ですから、八十七号条約を
批准をし、かつ公労法、地公労法を改めれば、当然国家
公務員だけが別の解釈をするわけにいきませんから、いわば解釈は
国家公務員法の立法当時に返る、こう考えてよろしいでしょう。
-
○
佐藤政府委員 理屈を申しますと、かりにILOのこの条約だけが成立して、
国家公務員法がそのまま取り残されたという場合を考えますと、それは条約のほうが権威を持ちますから、当然
国家公務員法のただいまの条文は意味が変わってくる、解釈を変更せざるを得ないことになるというふうに申し上げ得ると思います。
-
○多賀谷委員 そういたしますと、結局九十八条の二項は変更する必要がない、こういうことになりますね。
-
○
佐藤政府委員 私ども人事院の立場としては、そのように考えております。
-
○多賀谷委員 きわめて明確になりました。
そこで、この消防職員のうちで、「(消防庁の職員を含むものとする。)」というカッコ書きは、これは非常に問題になる、こう思いますが、そこで地方
公務員の関係でお尋ねいたしたい。地方
公務員の消防職員は、これはILO八十七号の結社の自由の例外規定として掲げられておる軍隊、警察、これ以外であるけれども、なぜ消防職員を残したか。これは八十七号条約に抵触しないかどうか、これをお尋ねいたしたい。
-
○佐久間政府委員 消防職員につきましては、沿革的に条約で申しております警察官という範疇に入るものと解釈いたしておるわけでございます。
-
○多賀谷委員 それはどこでそう解釈しているのですか。そうして、各国ともそういうような解釈をしているかどうか。これは団結権ですからね。争議権とは違うのですから、はたしてそういう解釈が成り立つかどうか。これをお尋ねいたしたい。
-
○堀政府委員 八十七号条約第九条のいわゆる「警察」という範囲をどのように解釈するか、こういう問題でございます。これは第九条によりますれば、条約に規定する保障を軍隊、警察に適用する範囲は、国内法令で定める、このように規定されておるのであります。したがって、軍隊、警察につきまして、その範囲は各国が自由に定めるところ、このように解釈されるのでございます。結局なぜこのように各国の国内法令の規制にゆだねたかという趣旨は、国の治安警察、こういうような範囲がどのようになるか、こういう問題は、各国の特殊性を考え合わせて各国がきめるべきである、このように考えられるわけでございます。
そこで、いまのような解釈にかんがみまして、先ほどお話しもございましたが、労働問題懇談会におきましても、この問題をいろいろ御審議になったわけでございまするが、その労働問題懇談会の小委員会の報告によりますると、このようにいっておるわけでございます。「消防職員及び海上保安庁または監獄に勤務する職員の取扱いとの関連について条約第九条は、軍隊及び警察についてはその適用を除外し、各国の国内法令の規制にこれをゆだねているが、本条約において軍隊とならんで警察を除外している趣旨は国の治安確保についての警察作用の特殊性を考慮したものと解され、従って、わが国における消防、海上保安及び監獄の作用は、その歴史的な経緯、現行の法制からみて、右の条約にいう警察に包含されるものと解することを妥当と考える。」このようにいっておりますのも、私の申し上げました趣旨からであると思います。
-
○多賀谷委員 現在の法制は、消防職員は警察と考えていますか。
-
○堀政府委員 私が申し上げましたように、条約第九条の警察という範囲は国内法令で定める、ここでいっております「警察」というものは、治安警察というような意味から申しまして、各国が従来の沿革からいたしましてどのような行政作用をその中に含めるかという問題は各国の取り扱いにまかせる、こういうふうにいっておるのであります。したがいまして、ただいまお話しがございました警察が国内法の解釈上、その中に消防を含むかどうかという問題とは別に、条約自体の解釈といたしましては、もう少し観念を広くして考えておるところである、労働問題懇談会におきましても、そのような御議論であったように私は記憶しております。
-
○多賀谷委員 八十七号条約からは、警察、軍隊の範囲をその国内の法令によってきめるということはありませんよ。軍隊及び警察の要するに保障ですね、保障の範囲あるいはその保障する権利、そういうものについては、これはその国内の法令できめる、こういうのです。軍隊及び警察の範囲を自由自在に縮小するという考え方は出てこないのですよ。その点は誤解があるわけじゃないですか。
-
○堀政府委員 ただいま申し上げましたように、第九条の解釈につきまして、その保障の範囲を関係の国内法令で定める、こういうことになっておるわけでございますが、その趣旨は、ただいま私が御答弁申し上げたような趣旨である、このように考えております。これはその後結社の自由委員会の五十四次報告の九十三項を見ましても、そのようなふうに取り扱うべきである、このようになっておると思いまするし、また労働問題懇談会、これは先生御承知のように、各方面の学識経験者を網羅してできました権威のある委員会でございまするが、ここにおきましても同じように解釈しております。先生のただいまの御意見と私どもの考えと若干の食い違いはあるようでございますが、それはこの問題につきましては、ただいま申し上げました結社の自由委員会の五十四次報告の第九十三項の趣旨から申しましても、それから労働問題懇談会、これは明確に私の申し上げた解釈をとっておるのであります。御意見の相違はあると思いまするが、私といたしましては、私の申し上げました解釈が正しい、このように考えております。
-
○多賀谷委員 残念ながら労働問題懇談会の小委員会も、当時は資料不足で、いま読んでみると十分な検討がされていないと思う。結社の自由委員会のその後の五十四次、五十八次、六十次、六十四次、六十六次の報告書を読んでごらんなさい。学者先生にそういうことを言っては、はなはだ恐縮でありますけれども、当時は十分な資料が来てなくて、その中で論議がされておりますから、きわめてあいまいな議論がなされておる。第一、
公務員については、全体的に見ると八十七号条約から適用除外もあり得るように書いてあるでしょう。
公務員法については法律は現行法に抵触するところがないけれども、実際
公務員については八十七号条約を
批准しても適用されないのだというような意味のことが書いてある。ですから、それほど当時は認識がなかったのですよ。ところが、その後相次ぐ提訴事件について結社の自由委員会でいろいろ検討をされておる。ところが、その検討をされている状態を見ると、残念ながら当時の学識経験者といわれる方もILOについてはきわめて資料不足で、知識が少なくて十分な検討がされていないということは、われわれが当時の報告書を見ても明らかにわかる。ですから、あなたがいま小委員会のような話をされるけれども、小委員会で、たとえば登録制度の問題にしても、交渉の問題にしても、その後指摘された問題が残念ながら論議されていないのです。これらはきわめて大きな問題だと思う。ですから、労働問題懇談会小委員会のことであなたが逃げようったって逃げられませんよ。私はその点は十分問題にしなければならぬ点だと思うのです。
ですから、どうして消防が入らないか。ものの考え方が、団結権というものと争議権というものが頭の中で混乱をしておるのじゃないか。消防が火事があるのに争議したらたいへんだという考え方があるから、消防は除外だ、こういう考え方になるのでしょうが、私はそれは間違いだと思う。団結権だ。ですから、団結権の問題については消防を除外するという根拠はない。軍隊にしても、警察にしても、そういう考え方はあるわけですけれども、軍隊、警察は八十七号条約で明記をされておりますから……。私はこの範囲を拡大をすべきじゃないと思う。結社の自由というILO憲章の基本問題であり、基本的な人権について除外例を設ける場合はシビアーに解すべきだと思うのです。軍隊、警察の範囲をいたずらに拡大するということは許されないと思う。もう一度大臣から御答弁願いたい。
-
○大橋国務大臣 多賀谷さんの申されることはよくわかりますが、政府といたしましては、ILO八十七号条約の除外の条項にあります警察というものは、形式的に考えずに、国の行政作用という点から実質的に考えておるわけでございます。したがいまして、消防という行政作用は実質的な警察行政の範疇に属するものでございます。したがって、消防職員は警察行政の一つであるところの消防行政に従事する職員でございますから、これは実質的には警察職員である、こういう意味で八十七号条約の除外例の警察という中に該当する、こういうふうな解釈をもって立案をいたした次第でございます。
-
○多賀谷委員 私はこの点は、条約を
批准された場合に、はたしてこれが問題になりはしないか、こういう問題点としてここに提起をしておきます。
-
○
野原(覺)委員 大事な問題ですから、関連を……。
-
○倉石
委員長 関連は、そのつど打ち合わせてやることになっておりますから、あとで願います。
-
-
○倉石
委員長 あとで相談いたしてからやりますから……。
-
○多賀谷委員 いま指摘をいたしまして、答弁を願いましたように、要するにこれは消防庁の職員を除けば、あなたのほうの考え方によれば、
国家公務員法、地方
公務員法は解釈だけ変えればいい。私は必ずしもそうは思っていないけれども、あなたのほうの考え方からいけばそうです。そこで、公労法四条一項ただし書き、四条三項、地方公労法の五条一項ただし書き、五条三項だけが問題になる、こういうことが政府の答弁からはっきりしたわけです。
そこで、私はささいな問題から入りたいと思いますが、チェックオフの禁止、これがどうして八十七号条約と関連があるのですか。
-
○佐久間政府委員 チェックオフの禁止は、労使相互不介入の原則、自主運営の原則の趣旨からいたしまして適当でない、かように考えているわけでございます。
-
○多賀谷委員 このチェックオフは、八十七号条約の精神の相互不介入の原則に違反しますか。
-
○佐久間政府委員 条約の規定に直ちに違反するとは考えておりませんが、条約の精神にかんがみまして適当でない、かように考えております。
-
○多賀谷委員 ILO結社の自由委員会は、チェックオフは八十七号条約の精神から見て適当でない、こう言っておりますか。
-
○佐久間政府委員 ILO委員会からは、この問題については審議する必要がないという回答をいただいております。
-
○多賀谷委員 佐久間さん、ぼくは、あなたは大臣でなくて政府委員ですから、大体勉強してこの委員会に臨んでおるだろうと思った。ところが全然この報告書を読んでいないじゃないですか。あなたの言うのと逆ですよ。とにかくチェックオフは、これは労使が協定によってきめるべきものである、これが原則ですよ。そう言っているでしょう。どうですか。
-
○堀政府委員 ただいま結社の自由委員会の報告書のお話がありましたが、私のほうにも関連いたしますから、私からもお答えしたいと思います。
ILOの結社の自由委員会五十八次報告四百二十四項にはこのように述べております。「任意的なチェックオフが労働協約による交渉事項であることは、一般的に承認された慣行であり、使用者はかかる協約を締結するか否かについて自由を有するのが通常である、と本委員会は考える。」こういうことでございます。
そこで、なお補足して申し上げますと、以上のようなことでございますから、このようなチェックオフ協約を締結するかいなかについて、これは使用者の自由にまかされている、こういうことでございます。
ところで、地方
公務員につきましては、これは申すまでもなく
公務員、地方
公務員でございます。その給与等につきましては、地方公共団体の当局がいかなる便宜を供与するかという問題になるわけでございまするが、たてまえから言いますると、税金によってまかなわれておりますので、地方公共団体において行ないます作用は、そのようなものは原則として含まれない、たてまえとしてはそういうことだろうと思うのでございます。
ところで、そういうような観点からいたしまして、これは国家
公務員についても同じような問題があるわけですが、国家
公務員につきましては、御承知のように人事院規則におきましてチェックオフは禁止されておるのでございますが、それとの関連から申しましても、たてまえはチェックオフは認めない、こういうように考えたのが今度の地方
公務員法の改正案のその規定の部分の考え方であろうと思うのです。ただ、それにつきまして、条例等で特別の定めがある場合を除く、このような規定があるのでございます。そういうような例外を認めつつこのような規定を設けたのが今回の改正案の趣旨である、このように考えます。
-
○多賀谷委員 どうもILOに報告する場合と、この国会で答弁されることが非常に食い違うんですね。ILOはこういうことを言っているのです。これはいまお話がありました六十六次報告です。「本委員会は、一九六一年十一月の会議で、任意的なチェックオフが労働協約による交渉事項であることは、一般に承認された慣行である。使用者がかかる協約を締結するかいなかの自由を有するのが通常であるとの見解を表明した」、こういうことを言っているのです。ですから、ILOとしてはチェックオフというのは八十七号条約の精神にそぐわないというのじゃなくて、これは労使自由の問題だ、干渉することはいけないという精神なのです。
続いて、これ以上の審議は必要でないというのは、次のようなことを言ったからです。すなわち、「一九六二年一月二十二日付書簡の中で、日本政府は、地方公共団体は任意的なチェックオフに関する規定を含む協定を地公法適用下の職員団体と締結するかいなかを定める条例もしくはその協定を締結する決定権をその代理人に委任する条例を、地方公共団体は改正法案のもとでは制定し得ると言明している、」これで審議する必要がない、こう言っている。要するにチェックオフの協定を結んでもよろしいのだ、条例できめればできるのだ、これを条件にILOの結社自由委員会は認めておるのです。
ですから、あなた方が言われるのと反対ですよ。チェックオフを制限するのじゃなくて、チェックオフを認めるということを条例で許す余地を与えなければ、八十七号条約で労使慣行を阻害する問題なんだ、こう言っている。まるきり違うでしょう。結社の自由委員会では逆に言っているんですよ。チェックオフの問題について政府は干渉しちゃいかぬ、ただし日本のこの条例はチェックオフを認めてもよろしいという条例を含んでおるのだ、こういうことを言っておる。あるいはそういう協定を結んでもいいということを含む条例なのだ、だから日本の問題についてはこれ以上審議する必要はない、こう言っているのです。自治省、どうですか。全然話が違うでしょう。逆ですよ。八十七号条約に違反をする問題は、逆にチェックオフを禁止することが労使の慣行と自主権を害するのだ、こう言っている。どういうようにお考えですか。
-
○堀政府委員 ただいまお話しのようなやりとりがあったことは事実でございます。
そこで、結論を申し上げますと、であるから日本政府の今回提案しておる地方
公務員法改正の原案、これでいいんだということを言っておるわけでございます。私が申し上げましたように、条例で例外を認めるという規定があるからそれでいいんだ、このように言っておるわけでございます。
-
○多賀谷委員 結論は同じでも、ものの考え方が違うのです。この改正案でいいんだということは、公共団体と当該職員団体が、チェックオフの協定をしてもよろしい、こういう条例でなければならぬという意味ですよ。ですから問題は、チェックオフがいいんだということを承認した条例ならよろしいということですよ。
-
○堀政府委員 私どもは、残念ながらそのように解釈いたしておりません。要するに先ほど申し上げましたように、チェックオフ協定を締結するかいなかについて使用者は自由を持つ、こういうことが五十八次報告の中でもいわれております。それからただいま御指摘のありました六十六次報告、三百八十二項、三百八十三項におきましても、「地方公共団体はそのような協定を締結するかいなかを使用者として決定することをみずからまたは代理者の自由にゆだねる旨の条例を制定する自由を有すると日本政府が述べている、」そこでそれでいいんだ、このような事情にかんがみて、これ以上この問題についての申し立ては審議する必要がない、このように言っておるわけでございます。
したがいまして、チェックオフ協定を結ぶかいなか、その判断は使用者の自由である、こういうことでございます。
-
○多賀谷委員 ですから、使用者の判断でチェックオフを自由にできる、こういうことでしょう。それを前提としてこの改正案についてこれ以上審議する必要はないと結社の自由委員会は言ったわけでしょう。ですから、しからば何のためにあなたのほうでわざわざ条例でなければ給与の差し引きができない、こういう規定をしたか。要は率直に言うならば、この改正案を出したときとILOから言われたときと、答弁が食い違っておるのですよ。ですから、八十七号条約の相互不介入の問題を乱用、拡大してそれを規定しようとした意図をむしろチェックされておる。しからばそういう協定が立法者の、いわば
理事者の意思でできるというならば、何も条例という必要はないでしょう。立法者がいやならば協定しないのですから、それをなぜわざわざ条例ということに書いたのですか。
-
○堀政府委員 その内容につきましては、自治省の当局からお答えがあると思いますが、要するにこの規定を設けました趣旨は、現在の
国家公務員法に基づく人事院規則等との均衡に基づきましてこのような規定を設けたものである、このように了解しております。それで政府の原案のこのような規定は、ILOの考え方としても矛盾はしない、この規定はILOの八十七号条約に違反をしない、こういうことをいっておるのがただいまのやりとりでございます。なぜそれを設けたかというのは、私がただいま申し上げた一般的な理由からであると思いますが、なお具体的には自治省のほうから御答弁があると思います。
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○佐久間政府委員 チェックオフと申しましても、組合費だけでもございませんし、いろいろ態様があるわけでございますから、それらのどういうものを認めていくかにつきまして、労働基準法では法令と書いてございますので、地方
公務員につきましては、法律または条例ということにいたしまして、条例でございますから、当然議会の審議も経るわけでございますから、それらの公正妥当な判断に待つのがよかろう、かような考え方をいたしておるのでございます。
-
○多賀谷委員 あなたは先ほど、八十七号条約は相互不介入の原則に立っておる、だからチェックオフを禁止したい、こういう趣旨で出したのだ、こうおっしゃった。ところが、結社の自由委員会は、それは八十七号条約の問題ではございません、こう言っただけでなくして、本来これは団体交渉事項です、労使が自主的にきめるべき性格のものです、こう言ったわけです。そこで、このチェックオフの労使自主的にきめるというその慣行並びに精神を阻害しない限り、あなた方出そうとする改正案もいいでしょう、こういうことになっておるわけですからね。ですから、チェックオフは結局八十七号条約の相互不介入とは関係がない、こう考えてよろしいですか。
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○佐久間政府委員 チェックオフが相互不介入の原則に全然関係がないというふうには考えておりません。やはりこれは一種の便宜供与の態様であろうと思うのでございます。しかしながら、それを認めるかどうかにつきましては地方公共団体の自主的な判断に待とう、こういう趣旨でございます。
-
○多賀谷委員
ILO条約の結社の自由委員会が日本の正式な改正案について議論をしておる。この議論によれば、結局八十七号に関係ないどころか、チェックオフはむしろ労使自主的な問題である。それを阻害するようなこの法律はむしろ八十七号に違反をするおそれがある。だから、日本政府は、いや、それは阻害いたしません、チェックオフは自由なんです、ただそれを条例で書こうとしておるのです、こう言って答弁を切り抜けたわけです、そういうことでしょう。もう一度御答弁願いたい。
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○佐久間政府委員 先ほど申し上げたとおりに、チェックオフは相互不介入の原則という点からいたしまして関係があると私どもは考えております。しかし、これを認めるかどうかにつきましては地方公共団体の自宅的な判断に待とう、こういう考え方でございます。
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○多賀谷委員 相互不介入の原則に違反するという——ILOは違反しない、こう言っておる。この点は問題があるし、さらに、あと立法者の自主的な意思にまかすなら、何も条例は要らぬでしょう。わざわざ条例ということを書く必要はないでしょう。現行法でいいでしょう、相手方の一方が拒否すればできないのですから。しかも、権力を持っておる
理事者のほうが拒否すればできないでしょう。何で条例の必要があるのですか。
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○佐久間政府委員 チェックオフと申しましても、先ほど申し上げましたように、いろいろな種類があるわけでございますから、
国家公務員法の規定の仕方も参考にいたしまして、この際法律または条例という定め方をすることが適当であると考えておるわけでございます。
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○多賀谷委員 これは大体立法者よりも議会側が——地方議会ですよ——保守的と見ておるのですか、反動的と見ておるのですか。そうでしょう。それ以外に区別する必要ないでしょう。立法者がノーと言えばできないのです。それを条例でやろうというのは、立法者はやりたいけれども、議会がうるさいから、議会のほうがとめてくれるだろうという期待を持っておるのですか、この法律は。どうなんです。
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○佐久間政府委員 議会は保守的でもございませんし、革新的でもございません。住民の公正な意思を反映した機関であると考えております。
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○多賀谷委員 私はこれでも承服できない。これはひとつ統一見解をしてもらいたい。先ほどの答弁は、相互不介入から出ておる、それは八十七号条約の精神だ、こうおっしゃる。ところが、結社の自由委員会では、これは団体交渉事項である、自主的にきめるべき性格だ——これの調整をまずしてもらいたい。これはあとから、統一をして答弁を願いたい。国務大臣は一人しかおらぬから、労働大臣から御答弁を願いたい。
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○大橋国務大臣 先ほど自治省の政府委員から、チェックオフの問題につきまして、労使の相互不介入の原則というたてまえからいって必ずしも好ましいとは思われないということを申されました。政府といたしましては、国家
公務員につきましてはすでにさような考えを持っておりまして、そういう意味で、現在の
公務員法におきましても、人事院規則によってチェックオフが禁止をされておりますが、この条約
批准に際しましても、この禁止は引き続き存続させることが適当であると判断をいたしたわけでございます。しかしながら、地方公共団体につきましては、公共団体の当事者があるわけでございまして、その各団体の対職員組合のいろいろな実情から見て、相互不介入の原則に照らして支障があるかないかということも、いろいろ団体ごとに事情も違っておるだろうと思います。これらはすべてその団体に自主的に判断させることが適切であるのでございますから、したがいまして、チェックオフについては、その自主的な判断を基礎として、権限的には
理事者限りの扱いにせず、このことは公共団体にとりまして重大な事項でございますので、住民の意思を代表する議会の議決による条例の形でこれを取りきめていくことが一番望ましい、こういう趣旨で立案をいたしたのでございまして、この考え方につきましては、ILOの結社の自由委員会におきましても全面的に賛同をしておることは、先ほどお述べになりましたとおりでございます。
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○多賀谷委員 これはひとつあとから、相談をして統一見解を出してもらいたい。私はむしろ政府干渉になる可能性があると考える。大体この賃金直接払い、全額払いの原則というのは、封建制を打破するためにやった条文ですよ。これはいわば基準法の賃金支払いの二四北条の規定ですね、これを
国家公務員法の場合に人事院規則に入れたわけですよ。こういう、最初全然予定をしなかった条文を利用してチェックオフを禁止するなんというものの考え方が、私は非常にけしからぬと思うのですよ。
人事院にお尋ねしますが、この昭和二十四年六月十三日、人事院規則で給与の差引という規則を出したときには、どうだんですか、チェックオフを禁止しておったのですか、おらなかったのですか。
-
○
佐藤政府委員 この規則ができましてチェックオフが禁止されたと考えております。
-
○多賀谷委員 事実上はやっていなかったでしょう。賃金の中から組合費を差し引いてやっておったでしょう。これを規定するときには、この条文というのはそういう意図でなくて、要するに賃金の全額支払いの原則、基準法をこのまま採用したわけですよ、人事院規則になかったから。こういうことでしょう、立法経緯は。
-
○
佐藤政府委員 いまお答えしたとおりでありまして、それまでは認められておったのが、この規則ができて認められなくなった、そういうことのように思います。
-
○多賀谷委員 こういう基準法の条文を持ってきて、それをチェックオフの禁止に使うなんというものの考え方が、私は三百代言的な解釈だと思うのです。こういうねらいはチェックオフの禁止だ。ところが、その条文は、いわゆる封建制を打破するために基準法がきめたその規定をそのまま持ってきた。そうしてそれでチェックオフを禁止するという、こういう考え方そのものが、意図が、私は非常にけしからぬと思う。これは地方
公務員法でも同じですよ。条文をすらっと読んでごらんなさい。ですから、これ以上申し上げませんけれども、そういういままでの官僚のやった悪い点を、新しい科学的な人事行政をやろうとする人事院がやっておったところに非常に問題がある。私はこういうように指摘をしておきたいと思います。
次に、在籍専従の問題に移りたい。チェックオフと同じように、私は在籍専従の問題も、これはもう八十七号条約とは無縁のものだと思う。これについて一体どういうようにお考えですか。これはわが国特有のものだという話が流布されておりますが、わが国特有のものですか、この在籍専従という制度は。
-
○堀政府委員 在籍専従の問題につきましては、これは八十七号条約制定の際の審議経過等にも出ておりまするが、——在籍専従を認めるかどうかという問題について、それを認める義務を使用者に負わせるものではない、このようにいっておりますことは御承知のことだろうと思います。
ところで、わが国の公労法、地公労法それから
国家公務員法、地方
公務員法関係におきまして、在籍専従という制度が従来も存続しておったわけでございまするが、これは要するに公労法四条三項、あるいは地公労法五条三項等の制度がありまして、職員でない者は組合の役職員になれない、このような規定がありまして、そのために、そういうような制度がありまするにもかかわらず在籍専従を認めないということになりましては、組合の運営に非常に支障を来たす、こういうことになっておったわけでございます。今回この制度を八十七号条約
批准に伴いまして削除する、こういうことになりましたわけでございます。したがいまして、この機会に本来公の業務、公共的な業務に専念するという
公務員あるいは公社の職員の身分上の特殊性に基づきまして、そのたてまえを貫くという観点から在籍専従制度を廃止するということにしたわけでございます。ただ、その場合におきまして、過渡期における混乱を防止いたしまするために三年間の猶予期間をつけた、こういう趣旨でございます。
-
○多賀谷委員 そういたしますと、役員は必ず除籍されなければならぬ、こういうことになりますね。しからば、職員でない者しか役員に就任できない、こういうことになるのですね、逆にいいますと。これは八十七号条約に違反しませんか。
-
○堀政府委員 違反するとは考えておりません。専従の場合をさしております。
-
○多賀谷委員 私は専従の場合を聞いておるわけです。ですから、逆に専従になろうとするならば職員をやめなければならぬわけですから、籍はないわけでしょう。籍がないということは、いまのような日本の雇用情勢、ことに終身制のまだ強い情勢、そうして
公務員の場合は、ましてや出たり入ったりまた出たりというわけにはいかない。こういう情勢のときに役員になろうとすれば、親族会議か何か開いて将来の身分を十分考えなければならぬということになるでしょう。そういうことは、形式は別として、逆に実質的には役人をやめる、そういう勇気がなければ組合幹部になれないということになるでしょう。これは実質上団結権の侵害じゃないかと私は逆に言いたいのであるが、どうですか。
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○堀政府委員 大体本来のたてまえから申しますれば、この在籍専従の制度は非常に変則なものである、このように考えておるわけでございます。なぜ
公務員及び公社職員についてこのような制度が残っておったかと申しますと、先ほど申し上げました四条三項、五条三項等の関連から残っておったわけでございます。そこで、今回このような規定が削除されるのでありまするから、過渡期におきましては若干の混乱を予想されまするから、三年間の経過規定を設けると同時にこのような制度を廃止する、このようにいたした次第でございます。
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○多賀谷委員 しからば、八十七号条約を
批准をした国で、役員が職員でなくてもよろしい、こういう制度をとっておる国は在籍専従ではありませんか。
-
○青木説明員 お答え申し上げます。フランスはすでに
批准をいたしておりますが、フランスにおきましては官吏法で派遣勤務という制度は認めております。ただし、その他の諸外国につきましては、ちょっと外国立法例その他がはっきりいたしておりませんので、資料を持ち合わせておりません。
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○多賀谷委員 私が調べたところによると、われわれも十分な資料を持っていないのですけれども、いまおっしゃったフランス、ベルギー、さらにイタリア、これはおのおの専従制度がある。イタリアは派遣期間を一応一年間としておるが、無限に更新ができる制度になっておる。さらに、フランスは短期が五カ月、長期が五カ年、そうして、それは派遣制度として更新できる制度になっておる。それからベルギーも、組合活動に参加し得る者については、これは専従期間を設けて、一応賃金は政府が出したのをあとから組合で精算する制度をとっておる。ところが、ベルギーもフランスもイタリアも、ともに八十七号条約の
批准国です。そうして日本のいう公労法の四条三項と地公労法の五条三項の規定はない。ですから、八十七号条約を
批准をし、そうして職員でなくても役員になれるという制度がある国において
批准の際に問題が起こってないのですね。日本だけなぜ問題になりますか。結局在籍専従というのは八十七号条約とは関係がないわけです。どうです、労働大臣から御答弁願いたい。
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○大橋国務大臣 政府といたしましては、地公労法五条三項の改正に伴いまして、従来五条三項によって理由づけられておりました専従制度というものは、五条三項が削除される以上はそれと同様に検討されるべきものだ、それが国民の感情である、かように存じて立法府で御審議をお願いしておる次第でございます。
-
○多賀谷委員 国民の感情とおっしゃいますけれども、現在日本の民間労組というものはみな在籍で専従しているのです。戦後できた組合並びに戦後の幹部というものは大体そうですよ。戦前の方は弾圧を受け、会社からおっぽり出されたわけですからそういう状態はないが、戦後の労働組合、現在の幹部というものはほとんど在籍ですよ。そういう現状から見ると、これは
公務員に特有な制度ではないか。しかも、いわゆる逆締めつけ、公労法四条三項とか地公労法五条三項とかいう規定を民間に適用をすることは、これは不当労働行為であるということを、たしか昭和二十五年にあなたのほうで通牒を出されておるのですね。すなわち労働協約の中で、従業員でなければ役員または組合員になれないということをいわば労働協約の締結の問題として経営者のほうが強く干渉をすることは不当労働行為であるという通牒を出しておるのですよ。ですから、民間労組の実態は別として、制度的には民間労組では自由に役員は選べることになっておる。民間労組ではいわば在籍専従ですよ。
ですから、その制度でいまきておるのに、
公務員だけに特殊な制度をつくる必要はないじゃないか。ましてや、現在の国家
公務員、地方
公務員の任用、採用については、御存じのようにきびしい条件がある中で、組合幹部になるためにはやめなければならぬのだというような状態は実質上組合の弾圧になるおそれがあるじゃないか、私はこう言っておるわけです。しかも、外国の立法を見ると、在籍専従のあるところでも八十七号条約は
批准しておるし、八十七号条約を
批准した際に問題になっていない。なぜ日本だけが問題になるのか。これは結局政府が組合を弾圧しようという意図があるからでしょう。およそ八十七号条約と無縁のものですよ。どうですか。
-
○堀政府委員 諸外国と異なりまして、わが国にはいろいろな特殊性があることは御承知のとおりでございます。その特殊性と申しますのは、各組合が産業別等の組織でなしに企業別組合が多い、こういうことでございます。したがいまして、民間等におきまして、お話しのような在籍専従制度が日本においては相当普及しておるわけでございます。民間でこのようなことが普及しておるということ、これは労使の話し合いにまかせるべき問題でありますから、私どものほうからこれについてとやかく言うべきものではないと考えまするが、
公務員及び公社の職員につきましては、法律上もはっきりと職務専念義務というものがあるわけでございます。したがいまして、そういう職務専念義務がある
公務員及び公社の職員におきましてこういう制度をなぜ認めておったかと申しますると、それは先ほど申し上げましたように、公労法四条三項あるいは地公労法五条三項、あるいは
国家公務員法、地方
公務員法がそれに準じて解釈されて運用されておったということからやむを得ない制度であったというふうに考えるわけでございます。したがいまして、今回、そのような関係の規定を削除することに伴いまして、これを本来のたてまえに戻すということが適当であろうと考えまして、いまのような原案を提出して御審議を願っておるわけでございます。
そこで、これにつきましてILOにおきましても結社の自由委員会で問題になったわけでありまするが、これは結社の自由委員会五十四次報告の百七十五項以下三項ばかりに分けて書いてございまするが、要旨は、——現行法が存続する限り、現行制度が維持されてのみ職員団体はその執行部を組織することができると考える。しかし職員以外の者を今度役員に選任することができることになったのであるから、使用者は在籍専従を認める義務はないと考える。以上のような考えに立って、これ以上この問題については審議する必要はない、——こういう結論を出しておるわけでございます。
-
○多賀谷委員 私は、八十七号条約と直接関係してあなたのほうが在籍専従の問題を出されるから、問題にしておるのです。全然別個の問題として在籍専従の問題を出されるならば、これは政府の意図はそうだ、こういうように思うのです。現に条約を
批准をした国で、しかも
公務員で、公労法四条三項、地公労法五条三項のような規定のない国でも、在籍専従が依然としてあるじゃないか、だから八十七号条約とは無縁のものだ、こういうことを言っておるわけです。それをあたかも、八十七号条約に直接抵触するとはおっしゃらないけれども、それに直接関連をして在籍専従の問題を排除しようというのはおかしいじゃないか、それは便乗ではないか、こういうように私は申し上げたいのです。現実に他の国でもやっているのですからね。しかも今度、全然企業別組合でないかというと、企業別組合的なものがあるでしょう。今度の地方
公務員法を見てごらんなさい。同一地方公共団体で組織する職員団体あるいは地方
公務員以外の労働者の団結については、
国家公務員法にも地方
公務員法にも何も書いてない。そういう制度のもとにおいて、何か産業別の労働組合ができて、それが同じような権利を持っておるというような想定のもとに、なぜこれだけを考えられるのか。
国家公務員法、地方
公務員法を全部なくしてあなたのほうは労組法一本でいく、団結はどういう範囲でも自由です、法律の保護も同じように受けます、こう言われていないでしょう。言われているのですか。言われていないのに、国家
公務員は国家
公務員だけ、地方
公務員は地方
公務員だけ、しかも地方
公務員でも地方公営企業の労働者は別だ、あるいは同一公共団体に属さないものは別だという取り扱いをしておきながら、なぜこの在籍専従だけは産業別組織が
確立したような想定のもとで行なわれるのか、それほどいまの日本の政府の直接雇用する
公務員というのは、労働組合の先導者として労働条件についても指導的だ立場において、政府はまず
公務員からやってみようというような政策を立てられておるのかどうか。そういう状態でないでしょう。この点一体政府はどういうように考えておるか。とにかく新しい労働組合政策並びに労働条件の向上は政府が率先をして、自分の雇用する労働者には適用をする、こういうお考えであるかどうか、これらをあわせて御答弁願いたい。
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○大橋国務大臣 外国におきまする
公務員の専従制度がいかなる理由によって行なわれておるのかは、私は不敏にして詳しく存じません。しかしながら、わが国の
公務員の専従制度は、これは先ほど来、政府委員から申し上げましたるごとく、地公労法五条三項というような規定また国家
公務員についてもこの趣旨で解釈すべき諸規定、これらの規定を前提とし、このもとに認められておるのでございます。したがいまして、専従制度とこれらの規定というものが、私どもは法律的には不可分のものと解釈するのが
公務員法上妥当であると、こう思いまするので、その前提となりまする職員団体への加入資格が変わってまいりました場合においては、これと相伴っておる専従制度にも再検討を必要とするのは、これはもとより言うをまたないと、かように認識をいたしております。
-
○多賀谷委員 労働行政にたんのうな大橋労働大臣の言とも思われません。それは日本の労働組合は、この公労法四条三項、地公労法五条二項のような規定のない時代で毛布籍専従はあったわけでしょう。どうですか。
-
○堀政府委員 ちょっと、具体的なこまかな問題ですから、私からお答え申し上げます。
先ほど申し上げましたように、わが国においては諸外国と異なりましていろいろな特殊性がありまして、在籍専従がわりに普及しておるというわけでございます。その意味において、ただいま多賀谷先生が申されたような事実はあったわけであります。ただ
公務員、公社職員につきましては、これは職務専念義務というものがあるわけです。それにもかかわらずなぜ在籍専従制度が認められたかといいますると、大臣が答弁いたしましたように、四条三項、五条三項というような規定があったからであります。したがいまして、これを削除する以上は、
公務員、公社職員の本来の姿に戻すということはやむを得ないことである、このように考えております。
-
○大橋国務大臣 多賀谷さんの御質問は、公労法の制限の前から専従制度があったじゃないか、こう言われますが、実は労働組合法はありましたけれども、職員の労働組合につきましては、
国家公務員法ではっきりいたしますまでは、自然発生の状況にあったことは終戦後御承知のとおりでございます。
国家公務員法で一応の規定はできたのでございますが、問題はいわゆる専従職員でございまして、これについては当初
国家公務員法は何らこれを予想した規定は置いておらなかったのであります。しかしながら、実際上必要であると見えましてそういうことが行なわれておった。しかも、何ら法規上のとりきめがないままに行なわれておったのでございますから、普通の月給をもらいながら、しかも役所の仕事につかずに組合の仕事ばかりしておる。これは
公務員たる者は公職に専念しなければならぬという本来の
公務員法の基本的の義務に違反するような違法状態であると考えられたのでございます。そこで、この状況を是正いたしまするために
公務員法の改正が行なわれまして、現在の専従制度が
確立をいたしたのでございます。その当時には、すでに公労法というようなものができ上がっておりまするので、それとの関連においてこの新しい専従制度の合理性が裏づけられた。したがって、先ほど申し上げまするように、これはやはり職員の加入の資格、職員団体の加入資格の問題と関連してこの規定が存在しておる。したがって、一方が廃止される場合には、他方もやはりその運命について再検討するのは当然だ、かように存ずるわけであります。
-
○多賀谷委員 私は、まず在籍専従禁止の問題は、これは明らかに便乗じゃないか。いま言いわけをされておりますけれども、歴史的に見ると、労働組合ができた、しかも
公務員にもできた、あるいは国鉄その他の職員にもできた。そうしてそれはあらかじめ労組法が予定をしておった。だから労組法については、あるいは労調法についても、
公務員に対するいろいろな法令的な予定をした条文が置いてある。そのときは在籍専従であった、そうしてそのときは、これはいわば職員でなくとも役になれた。そうして
国家公務員法もできた。
国家公務員法はできたけれども、そのとき職員でなくとも役員になれた。そして在籍専従とあった。
ですから、在籍専従とそのいわば逆締めつけの条文とは一致してたいのですよ、法律の発生過程を見ると、それをいまごろあなたのほうが、それは公労法四条三項、地公労法五条三項が在籍専従の前提であった、こうおっしゃるのはふに落ちぬ。それは詭弁です。法律の発生過程を見てごらんなさい。
国家公務員法ができたときには、法律の解釈としては職員でない者も入れたし、あるいはまた役員も自由に、これは外部から選ばれたわけです、事実問題は別として、法律問題としては。そのときには在籍専従はあったわけですね。ですから、何も不可分のものじゃないのですから、不可分になったというのは、いまごろあなた方がこの法律を提案をするときに、いわばその理論的根拠をここに求めようとしておる。ところが、全体的な各国の法制の問題、組合のあり方の問題あるいはILO八十七号条約をめぐっての問題を見ると、何も不可分の問題でもないし、そこに理論的根拠を置くのはおかしい、こういうことになるわけです。ですから、私の聞いておりますように、在籍専従と逆締めつけの問題は不可分じゃないでしょう。そういう法制の時代が日本にかなり長く続いたでしょう。
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○大橋国務大臣 先ほど来申し上げたごとく、
公務員法ができ、そしてその改正が行なわれ、逐次職員団体についての規定が整備をされていったわけでございます。この過程において専従制度というものが法制化されたのでございますが、その法制化の理論づけといたしましては、やはり職員団体の加入資格の制限というものがその背景をなしておるわけでございます。さように私どもは解釈をいたしておるわけでございます。
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○多賀谷委員 解釈は別として、現実の問題として在籍専従制度があったけれども、逆締めつけの制度がなかったという時代があったでしょう。事実問題を聞いているのですよ。
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○大橋国務大臣 その場合におきましては、制度が整っておりません。したがって、労働組合法の労働組合の活動と
公務員法の
公務員の公職に専念する当然の義務というものが調整をされていない。したがって、
公務員法から見れば、それは一つの違法状態として放置されておった。そういう形であったのでございますから、国家の法制といたしましてはこれを整理整とんする必要がございます。そこで、先ほど来申し上げたような趣旨でこの専従制度が認められたわけでございます。
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○多賀谷委員 それは労組法の時代、それから
国家公務員法ができた時代、
国家公務員法ができて、そうして九十八条の二項を曲げて解釈をして逆締めつけの規定をいった時代、おのおの違うのです。
国家公務員法ができて、いわゆる
公務員の職務専念の義務を規定したときでも逆締めつけでなかった時代がある、私はこう言っているのですよ。だから前提条件じゃないでしょう、逆締めつけというのは。どうでしょう。
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○大橋国務大臣 なるほど沿革的にはそういう時代も、短期ではありますが、あったわけでございます。しかし、その場合には
国家公務員法の公職専念義務というものが厳として存在しております。その
国家公務員法に違反する状態が存在しておったわけでございます。したがって、その違反を是正するために専従制度が規定されたわけでございます。
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○多賀谷委員 違反する状態じゃないですよ。専従制度というものがちゃんとあった。専従制度があったけれども、そのときは逆締めつけの規定はなかったわけですね。逆締めつけの規定は、結局解釈論としても逆締めつけの規定ではなかった、そういう時代があるでしょう、こう言っておるのです。
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○大橋国務大臣 現行法の解釈として先ほど申し上げたとおりでございます。
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○多賀谷委員 現行法じゃない、そういう期間があったでしょう。
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○大橋国務大臣 そういう期間の歴史的にあったことは、先ほど来歴史的に申し上げたとおりでございます。
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○多賀谷委員 どうも大臣理解が違うのですが、私は、労組法の時代は、これは全部労組法によっているのです。逆締めつけの規定もないし、解釈も起こらない。そのうち
国家公務員法が制定になって職務専念の義務が規定をされて、そして在籍専従の取り扱いがなされた。しかし、九十八条の二項というのは逆締めつけを規定したものではない、こう解釈された時期があるんだ。だから、結局逆締めつけというのは在籍専従の前提条件になっていないじゃないか、こう言っておるんですよ。
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○大橋国務大臣 なるほど当時はそういう解釈でそういう扱いでございましたでしょう。しかし、その後いろいろ解釈が変更になりましたことは先ほど申し上げたとおりでございまして、現行法の解釈を先ほど来繰り返して述べておる次第でございます。
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○多賀谷委員 私はこの点はこじつけだと思うんです。根拠がないものですから公労法四条三項、地公労法五条三項廃止に関連をして説明をされた。現実に在籍専従が不承認になれば組合の団結権というものは侵害される、あるいは組合の行動というものは制約されるでしょう。この事実をお認めになりませんか。
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○大橋国務大臣 組合の役員は在籍でなければならぬということは別に組合法上当然のことではございません。したがって、在籍専従がなくなれば在籍でない役員によって運営されるということで、組合の権利利益は別にどうこうということは私はないと思います。
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○多賀谷委員 それは組合がかなり発展をし、日本の雇用情勢が非常に変わり、
公務員の採用その他の問題がいまのようにシビアーでなければ、私はそういう状態が起こると思う。ところが、現実の問題として、現時点においては組合の行動が制約されるでしょうと聞いておる。どういう判断をされますか。
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○大橋国務大臣 組合は専従でない役員あるいは在籍でない役員によりましていままでどおり運営されるわけでございます。何らこれの自由を妨げる理由はございません。
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○多賀谷委員 和歌山地裁昭和三十四年九月二十六日、東京高裁の昭和三十六年七月十日の判決、和歌山教組事件に対する専従不承認処分について地裁並びに高裁はどういう判断をしておるか。それは裁判所は専従不承認処分によって教育
公務員の勤労者としての権利を侵害されるものであると判じておるのです。ですから客観的に見ると、現時点における在籍専従禁止の問題は労働組合の行動権を制約し団結権を侵害するものですよ。これをどういうふうに判じておられますか。それをしたいためにやるのでしょう。
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○大橋国務大臣 下級審の判決を引用されておりますが、その判決に対しましては現在上告中でございまして、最終審の判決を待ちまして適当にお答えいたしたいと思います。
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○多賀谷委員 最高裁の判決がまだ出ませんから裁判所の個々の判決に対する批判はわれわれも避けたいと思うけれども、少なくとも地裁と高裁、二つ出た判決はともに、専従を認めなければ勤労者としての権利保護に支障を来たすものであると言っている。これが客観的なものの見方ですよ。組合を弾圧しようとするから在籍専従で一生懸命になっているわけでしょう。逆に言えば在籍専従の禁止を一生懸命叫んでおる人は、客観的にいえば組合を何らかの形で弱めようという勢力ですよ。そういう意図のもりにこの法律が出たということになると、私はこれはゆゆしい問題だと思う。日本の組合の現状からすると、現実問題としては権利侵害になるのです。それは欧米のような状態において発達すれば別です。その欧米においても、御存じのように
公務員については派遣職員であるとかあるいは専従職員であるとかといって、更新規定を含む在籍専従制度があるわけですからね。ですから、これは少しあなたのほうの行き過ぎじゃないですか。
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○大橋国務大臣 政府といたしましては、冒頭に申し上げましたるごとく、今回の条約
批准の措置は、ILOの基本原則でありまする労働者の結社の自由を尊重するという趣旨からやっておることでございまして、現在の労働組合を弾圧するとかあるいはその活動を制限するなどということはおおよそ政府の意図とは真向こうから反対する考え方でございまして、毛頭さような考えはございません。
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○多賀谷委員 私はこの点はどうしても承服できない。まず政府の意図がそうだ、それから前提条件である逆締めつけの排除が必ずしも関連をしない、この点において問題を保留しておきます。
次に、全然また無関係な問題として政治活動の制限の問題が起こっておる。しかも、これはあとから申し上げますけれども、今後の政治活動の制限の問題を扱うのは人事局である、こういうことになりますと、一体
公務員の政治的な中立性ということも政治活動の制限の一つの問題として、もう一つの問題としては、側面は
公務員といえども個人としての市民権の問題として、おのおの二つの問題が競合をし、その調整を見なければならぬことは私もわかるわけです。わかるわけでありますが、現在人事院といういわば政府から準独立をした機関によって扱われている問題を、今度は政府直轄の人事局がこの問題を扱う、こういうことになりますと、どういうことが起こるのでしょうか。私はきわめて重大な問題だと思う。反対党のほうの支持をした者は政治活動の規制にかかる、当時の与党に味方した者は政治活動の規制にかからぬ、こういう事態が起こりますよ。かつて日本の警察をして、当時の政党内閣は自分のほうに有利に利用した時代がある。これは大橋さん十分御存じのとおりですが、こういう問題を防ぐために人事院が独立した機関としてその政治活動に対する解釈あるいは扱い方をやっておるわけですね。これが時の内閣が握るということになると、私は、これは基本的な問題になると同時に、日本の官吏制度そのものを崩壊させることになりはしないか、こういうように思います。これが一体八十七号とどう関係がある。まずこれが第一点。
第二点は、今度の扱いで法律をつくる。法律をつくる間現在の法律並びに規則が凍結するというけれども、扱いは人事局になるのでしょう。これを一体どういうようにお考えになるのか。この二点、お聞かせ願いたい。
-
○大橋国務大臣 結社の自由に関しまする条約の
批准に際しましては、国内の組合の自由を尊重いたしまするとともに、国家
公務員の組合に関連いたしましては当然行政事務の運営の公正を期するということが必要でございます。したがって、このために従来各省それぞれになっておのました
公務員に対するいろいろな各省の仕事を統一管理いたしまして、政府の責任体制を明確にいたしますために内閣に人事局を置くことに相なりました。この人事局を置くに関連いたしまして、従来とかく問題のありました
公務員の政治活動につきましては、御指摘のごとく現行
公務員法におきましては人事院規則によっていかなる制限をもなし得るように全権をゆだねられておるのであります。しかし、
公務員の政治活動というものは国民としての基本的権利にも関係ある重大な問題でございますから、人事院規則というような行政規則に全権的に委任することは適当ではない、むしろこれは国会の御審議をいただきまする法律によって規制することが適当だという意味で、
公務員の政治活動についての制限は今回の法案におきましては全部法律でなければならないということにいたした次第でございます。
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○多賀谷委員 その経過処置の扱い。
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○大橋国務大臣 しかしながら、法律を同時に今回の改正案とあわせて提案するべく政府の準備が整っておりません。したがいまして、政府の準備が整い、国会の御審議を得て法律として確定いたしますまでの間は現在の人事院規則をそのまま法律としての効力を付与するということにいたしまして、今後は現行の規則を人事院が行政的にかってに変更することを許さない、こういう趣旨でございます。
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○多賀谷委員 その経過処置の場合は人事院が扱うのですか。
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○大橋国務大臣 政治活動の制限は法律でなければできない、こういうことになっておるわけであります。その法律のできるまでは現在の人事院規則を法律とみなして制限する、こういうことでございます。
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○多賀谷委員 取り扱い者……。
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○大橋国務大臣 取り扱い者は現行どおりでございまして、現在は取り扱い書は各省大臣がやっておりますが、今後は内閣に人事局を設けまして、各省いろいろな扱いを統一して扱うようにいたしたい、もって政府としての責任体制を明確にいたしたい、こういう考えでございます。
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○多賀谷委員 私の質問に必ずしも的を射た答弁ではなかったと思います。私は、基本原則として人事院規則において政治活動の規制の内容を規定すべきでなくて、むしろこれは基本的人権の問題もあるから、法律論でやるということは立法議論としては正しいと思う。それは人事院に白紙委任状を渡すべきじゃない、立法論としては。しかし、いま政府の考えている意図というものは何かというと、あなたのおっしゃるとおり残念ながら
公務員の政治活動を基本的人権であるから認めてやろうという意図じゃない。逆に、いま政府のやろうとする、また自民党代議士会で紛糾をして論争をされておる内容なるものは、要するに、とにかく時の政党内閣に最も忠実で、政治的な発言をしないような、こういう従順な公僕をつくろうという意図でしょう。ですから、その意図から考えれば、私は三分の二の絶対多数を持っておる与党が国会において法律で制定しようということは十分察知できる。そのことはむしろ基本的人権を制限するという方向に事実問題はいっているのです。
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○大橋国務大臣 政府の提案に賛成をしておられまする党の方々は、いろいろお考えはあるかも知りません。しかし、政府が考えておりますことは、先ほど私がここで政府を代表して申し上げたとおりでございまして、
公務員の政治活動の制限ということは基本的人権にも関する重要な人権の制限であるから、これは行政規則でありまする人事院規則のごときものによってきめるべきではなく、国会の御審議をいただく法律によってきめるべきものなり、かような考えで改正案を提出した次第でございます。
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○多賀谷委員 政府の意図も違うでしょう。それはこの立法も、政治活動については岸内閣の時代と池田内閣になってからの出し方は違うのですよ。要するにこれは、自民党代議士会で吹き上げられてやっと調整をしてできたのです。それはいかに隠そうとしても厳然たる事実ですよ。ですから、隠された意図ではなくて、これはあらわれた顕著な意図ですよ。ですから、私は単に大橋さんが法律論で逃げられようとするけれども、立法論としては確かに正しい、立法論としては正しいけれども、現在の政府並びに与党の意図というものを考えると、私は承服できない。ましてや今後時の政権が握るすなわち人事局がこの政治活動の規制について事務を管理するということになりますと、一体どういう状態が現出するか。これはおそるべき状態が現出しますよ。要するに
公務員の基本的人権というものは全く抹殺されてしまう。この法律ができてその扱いはさらに政令で行なうわけでしょう。政令は人事局で行なうのでしょう。そういうことを考えれば、
公務員の政治的中立性というものは逆に曲げられてしまうことになるのではないか、基本的人権の抹殺はもちろんのこと、こういうように考えますが、どうですか。
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○大橋国務大臣 政治活動は法律できめるが重要な部分を政令に委任するというようなことならば、むしろ現在の政府から独立性を持った機関であります人事院規則のやり方をそのままにやったほうが私は適当であると思います。政府が政治活動の制限を法律できめようという趣旨は、一から十まで皆さんの御審議をいただいて、皆さんの御納得のできた、つまり国民全体の承知されるそういう形で丁寧にきめるべきものだ、こういう考えでございまして、重要な部分を政令に委任するというようなことは初めから考えておりません。
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○多賀谷委員 私は法律できめる重要な部分を政令できめると言ってないのです。それは重要な部分を法律できめられるでしょう。しかし、政令でやるとかあるいは解釈でやるとかいうことは内閣が人事局でやるのではないか、こう言っているのですよ。いまでも人事院の根本運用方針というものが問題になっている。だから、それを何とかして人事局に移してかえようという、これは憶測かもしれませんけれども、意図があるように考えられる。だから、政治活動規制というきわめて重大な問題を、——しかも過去の日本はあやまちをおかしているわけですよ。過去の日本はあやまちをおかしているのに、それを自分の内閣で、時の政党内閣が自由に判断をし、自由に解釈をするという余地があるような制度をつくるべきでないでしょう。それは法律で定めても全部人事院で扱わすのですか。
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○大橋国務大臣 まず解釈の点からお答えいたしますが、法律をつくった以上、その法律の解釈は最終的には何と申しましても裁判所できまるべきものでございます。
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○多賀谷委員 そんなことを聞いていない。まず第一次的には……。
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○大橋国務大臣 第一次的にも最終的にも、解釈というものはとにかく裁判所できまるのでございまして、政府が自由自在に解釈するというようなことは、これは現在の政治のたてまえからいって考えられないところでございます。
次に、人事院がやっておることを人事局で扱うというふうな御質問でございましたが、政治活動の制限につきましても、現在のところは監督機関は任命権者、すなわち原則的には各省大臣がやっておるわけでございます。各省各省によりまして多少取り扱いのニュアンスが違ったりいたしまして、政府全体としての責任体制がはっきりいたしておりませんので、内閣にはこれらを統轄するために人事局を置いて、そこでもって人事行政を全般的に調整していこう、そして責任体制を明確にしようという趣旨でございます。したがって、末端の執行機関等については別に変わりがあるわけではございません。ただ人事局で連絡調整をはかっていくという趣旨でございます。
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○多賀谷委員 そうすると、根本基準の実施については何できめるのですか。政令できめるのですか、人事院規則できめるのですか。
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○大橋国務大臣 ちょっと、根本基準というと、何のことでございますか。もう一度承りたいと思います。
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○多賀谷委員 人事院の業務の中に服務の根本基準というのが現在ある。その根本基準については人事院規則できめる、こういうようになっているわけです。そこで、それは今後はこの政治活動の規制の法律が新立法として出た場合、それは何できめますか。政令でやりますか、人事院規則でやるのですか。
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○大橋国務大臣
公務員法の委任によりまして、政令できめることになります。
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○多賀谷委員 私はそれが問題だと言っているのです。それは第一次案、しかも国会へ提案された案は、政治活動については人事院規則ということを提案された時期があるのです。ですから、そのことを考えれば、これをまたいわゆる政令に譲った。政令は内閣が出すわけですよ。ですから、こういうものの考え方が、要するに政治活動の規制の方向にいっているじゃないか。少なくとも中立性を保たなければならぬといいながら、与党に有利なような政治活動をなさそう、あるいはまた与党に不利な政治活動は一切禁止しようという意図があるのじゃないか、こう考えるわけです。
これだけひとつ答弁を願って、私はあとに回したいと思います。
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○大橋国務大臣 何か政治活動につきまして、政府は与党の都合のいいような制限をやるんじゃないかというように言われますけれども、これはあくまでも
公務員法の趣旨から申しまして、公正妥当な国民的立場で人事行政を管理することは当然でございます。
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○倉石
委員長 この際、根本的な問題でございますから、私から多賀谷君にお答えいたしておくことがいいと思いますが、私が
委員長に就任前に行ないましたことばについて先ほど御指摘がありました。私が申しておりますのは、政府がILO当局から条約
批准をすみやかにやってもらいたいという要求を受けるのは、先ほど多賀谷君が言われましたように、八十七号条約というのはなるほどILO憲章にかんがみましてもなかんずく重要な案件であるには違いありませんけれども、そのゆえに政府が
批准を要求されていると理解いたしておらないのであります。御承知のように百七カ国余り参加国があるILO機構の中で、八十七号条約を
批准しておる国はたしか六十七カ国くらいではないかと思います。したがって、ILO機構の中で重要な立場を占めております日本政府としては、でき得る限り数多くの
批准を完了することが望ましいことではありますけれども、わが国にのみ八十七号条約を強く要求してきているのは、やはり日本政府がしばしばこれに対する態度をILO総会において表明いたしておるからだと理解するわけであります。したがって、わが国の実情はこういうことであるということを表明して政府が態度を変更することはあり得ることである、そのことについて国内的干渉は受けるべき筋合いのものではない。しかし、
批准がおくれるということによっておそらく考えられるのは、九十八号条約とも関連がありますので、公労法四条三項、地公労法五条三項の問題が当然クローズアップされてくると思います。われわれはやはりILO機構に協力いたしておる国家でありますから、もちろん結社の自由を阻害しておるような法律は持っておらないほうがいいのでありますから、この問題についての解決をすみやかにわが国がやらなければならないことも差し迫った問題であると存じます。それはおのずから別な角度で論議されてくる当然な問題だと思います。したがって、私は、政府がただいまILO当局から迫られてきておるその根源は何であるかといえば、政府の態度を国際的に表明いたしておるからだ、こういうことを説明いたしておったわけであります。したがって、ただいま
委員長に就任いたしましても、八十七号条約が非常に重要な案件であり、政府もすみやかにこれを
批准いたしたい、こういう態度で本委員会が開かれておるのでありますから、基本的には多賀谷さんと考えが違っておらないと思います。基本的な問題でありまして、誤解を生ずるといけませんから釈明いたしておきたいと存じます。
この際、暫時休憩いたします。本会議散会後再開いたします。
午後一時十八分休憩
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午後五時三十一分
開議
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○倉石
委員長 休憩前に引き続いて会議を開きます。
質疑を継続いたします。多
賀谷真稔君。
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○多賀谷委員 八十七号条約と関係のないものとして人事院の改組の問題があります。これは後ほど質問をいたしたいと思います。
そこで、私は八十七号条約に関連をして各国内法の問題について質問をしたいと思います。
まず第一に、八十七号条約第二条、労働者及び使用者はみずから選択する団体を事前の認可を受けることなしに設立をし、こういう文句がある。日本の国家
公務員並びに地方
公務員の登録制度はこの事前の認可に該当するのではないか、こういう疑問を持つものですが、これについて御答弁を願いたい。
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○増子政府委員
国家公務員法の改正案も地方
公務員法の改正案も同様でございますが、職員団体の設立そのものにつきましては全く自由でございまして、登録制度は自由に設立された職員団体についての規定でございます。そういう意味で、設立につきましてはそのことについて事前の認可を要するという仕組みではないというふうに考えておるわけであります。
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○多賀谷委員 登録制度が組合が活動をするための実質上必要な条件であれば、登録制度は八十七号条約に規定する事前の認可になるのでしょう。
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○増子政府委員 改正法案における登録制度につきましては、先ほど来の御質問の中でも問題があったわけでございますが、職員団体がその目的とします勤務条件の維持、改善等に関します活動につきましては、登録というものがなければ、すなわち登録されていなければそれらの活動はできないというふうに考えていないわけでございます。
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○多賀谷委員 現行法ではどうですか。
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○増子政府委員 現行法のもとにおきましては職員団体は登録をしなければならないことになっておりますし、また、交渉は人事院規則によりまして登録された職員団体を通じてのみ行なうことができるというふうになっておりますので、登録という制度が職員団体の活動については非常に大きな条件になっておるということでございます。
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○多賀谷委員 そういたしますと、現行法の登録制度というのは八十七号条約に違反しておる、こういうことですね。
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○増子政府委員 登録された職員団体のみによって行なわれる、それ以外の職員団体の交渉その他の活動が全部禁止されているということでありますれば問題になるわけでございます。
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○多賀谷委員 ありますればという、こういう仮定のお話をされております。現行の
国家公務員法の法律の条文そのものは、私が先ほど来申しておりますように、消防職員の問題を除けば比較的問題がない。しかし、取り扱い方として国家
公務員の場合は人事院規則で交渉手続をきめておる。その交渉手続によって、登録された職員団体のみ行なう。正確に言いますと、「交渉は、人事院に登録した職員の団体によってのみ行なわれなければならない。」この人事院規則からいいますと、これは八十七号条約違反になるでしょう。
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○増子政府委員 法律の手続といたしまして、その手続として定められたものをそのとおり解釈いたしますと、お説のようになるわけでございます。ただ、事実問題として、登録されない職員団体には一切の活動を認めていないかというと、現在でも登録されない職員団体が要求書等の提出ということは現健に行なわれているわけでございます。その意味におきまして、そういう実態をあわせ考えまして、その点で条約に抵触するということではないと考えておるわけでございます。
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○多賀谷委員 この人事院規則の交渉の手続をすなおに読めば、これは違反になるでしょう。
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○増子政府委員 そのおそれは十分にあると思います。
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○多賀谷委員 次に、地方
公務員法の交渉手続の問題はどういうように解釈をされますか。八十七号条約に違反する事項でしょう、どうですか。
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○佐久間政府委員 交渉の手続に関する規定につきましては、違反するところはないと考えております。
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○多賀谷委員 これは、あなたのほうは盛んに国家
公務員と地方
公務員を同一に扱うのだということを先ほどから説明されておりますけれども、五十五条の「登録を受けた職員団体は、」途中にいろいろ条件が書いてありまして「当該地方公共団体の当局と交渉することができる。」こう書いてあるわけです。これは
森山委員も質問をされておりましたが、現行制度では登録された職員団体だけが交渉をする権利を持っておるわけでしょう。どうなんですか。
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○佐久間政府委員
国家公務員法の解釈と同様に考えております。
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○多賀谷委員 ですから、
国家公務員法と同様に考えれば、八十七号条約違反の問題が起こるでしょう。
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○佐久間政府委員 登録を受けておりません職員団体につきましても、交渉に応ずることは妨げないものと解釈いたしております。
-
○多賀谷委員 それはどこから出るですか、そういう解釈が。
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○佐久間政府委員 登録を受けた職員団体は交渉することができると規定いたしておりますので、登録を受けた職員団体につきましてははっきりと権能のあることを規定いたしておるわけでございますが、そうでない職員団体につきまして別段禁止の規定がございませんので、先ほど申し上げましたように解釈をいたしておるわけでございます。
-
○多賀谷委員 国家
公務員は交渉手続において、交渉は人事院に登録した職員団体によってのみ行なわれなければならぬ、こう規定しておるでしょう。これと同じようにあなたのほうは地方
公務員の場合は解釈するというのですから、法律論としては同じように扱うというならば、結局登録された職員団体のみが交渉の権利を有するということになるでしょう。ですから、法律の条文は地方
公務員の場合は国家
公務員と違って法律に明記してあるわけですから、当然八十七号条約違反という問題が起こるでしょう。どうですか。
-
○佐久間政府委員 現行法の解釈といたしましても、先ほど申し上げましたように、登録を受けてない職員団体に対しましても交渉に応ずることは妨げないという解釈をいたしておりますので、条約違反の問題は起こらないものと存じております。
-
○多賀谷委員 先ほど増子さんのほうから、人事院規則は登録されたもののみを規定しているのだ、しかし事実問題としてはそういうようには必ずしも取り扱っていない、とこう言う。これは事実問題の話なんですよ。法律の立て方としては、登録された団体のみが交渉する権利を有するということになっておるのでしょう、これは。一体登録をされない団体はどういう権利で交渉するのですか。
-
○佐久間政府委員 登録を受けた職員団体はできると規定しておるわけでございますので、登録を受けた職員団体のみができるという規定をいたしておりませんので、先ほど申し上げましたような解釈をいたしておるわけでございます。
-
○多賀谷委員 国家
公務員と同じだと、こうおっしゃる。国家
公務員と別と、こう言えば別ですよ。あなたは国家
公務員と同じように扱っているという。その国家
公務員の人事院規則は、「交渉は、人事院に登録した職員の団体によってのみ」——のみと書いてある。「行なわれなければならない。」そうすると、国家
公務員と同じように扱っているということは、登録された職員団体とのみ交渉するのだということになるでしょう。どうなんですか。
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○佐久間政府委員 国家
公務員の場合と同様に取り扱っておるということを申し上げたわけでございますが、法律の規定の上から申しますと、御指摘のように地方
公務員法には、「のみ」ということは書いてございませんので、法律上も私どもは非登録団体と交渉に応ずることは妨げるものではないというふうに解釈をいたしておるわけでございます。
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○多賀谷委員 そうすると、
国家公傷員とは扱いが違うわけですね。法律論として扱いが違うわけでしょう。
-
○佐久間政府委員 実際の扱いは同じようでございますが、法律上は違うということでございます。
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○多賀谷委員 そうすると、何のために五十五条の規定があるですか。未登録の職員団体というのはどういう法律の規定に基づいて交渉しているのですか。
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○佐久間政府委員 五十二条におきまして「職員は、給与、勤務時間その他の勤務条件に関し当該地方公共団体の当局と交渉するための団体を結成」することができるという規定がございます。それに基づいておるわけでございます。
-
○多賀谷委員 そういたしますと、団体の結成ができるということになれば、当然団結権に付随した権利として交渉の権利が生まれる、こう解釈してよろしいですか。
-
○佐久間政府委員 ただいま申し上げましたような団体を結成することはできるわけでございますが、五十五条の規定がございますので、当局が積極的に交渉に応ずるたてまえになっておりますのは、登録を受けた職員団体であるというふうに解釈をいたしておるわけでございます。
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○多賀谷委員 当局は登録されたとされないのによって、積極的と消極的という差別をつけますか。
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○佐久間政府委員 登録は、職員団体がこの法律に定めております要件を満たした民主的な団体であるということを公証する手続でございますから、そういう手続を経た団体につきましては積極的に交渉に応ずるたてまえであるというふうに解釈をいたしておるわけであります。
-
○多賀谷委員 ですから、未登録と登録された職員団体とは差があるわけでしょう。一つは積極的にやる、一方は積極的にやらない、こういうのですから、差があるでしょう。
-
○佐久間政府委員 そのとおりでございます。
-
○多賀谷委員 だから八十七号条約違反だと言っている。登録制度は組合活動によって実質上差をつけてならぬとある。差をつけた場合には事前認可になる。だから八十七号条約違反だと、こうなる。ところが、あなたは交渉においては、なるほど交渉はできるけれども、一つは積極的にやる、一方は積極的にやらないんだということになれば、いわゆる組合の活動のうちで交渉という活動が一番大きいのですよ。その最も大きい交渉という権利が差別を受けるということになれば、当然八十七号条約違反になるじゃないですか。
-
○大橋国務大臣 自治省の政府委員からもいろいろお話がございましたが、その意味につきまして、誤解を避ける意味で補足をいたしたいと思います。
団体交渉権そのものは、登録した団体と未登録団体との間に何ら差異のあるべきものではございません。しかしながら、御承知のように登録という手続によりまして職員団体の構成並びに運営が当局に対して公認をされておるということがいえると思うのでございます。したがいまして、登録によって公認をされております職員団体に対しましては、団体交渉の相手方となる当事者といたしましては、その団体が職員団体の実体を備えておるということを無条件に承認をして、直ちに交渉に取りかかることができるのでございます。しかし、登録によって、その辺がはっきり公認されていない団体につきましては、当事者といたしましては、その団体が職員団体であるかどうかということを十分検討いたしまして、職員団体であると確認をいたしましたならば、登録団体と同じように交渉権を認めて交渉に応ずるのでございますが、その辺、つまり取り調べを要するかどうかという点に若干のニュアンスがあるわけでございます。
-
○多賀谷委員 では、登録をされた職員団体と未登録の職員団体については、ILOについて、職員団体が実際に交渉を行なう場合の条件についても、登録を受けた職員団体と登録を受けていない職員団体との間に何らの差別を設けていないということを日本政府は申し出るのですね。結局、そういうことになりますと、交渉の条項のところに、なぜ、登録をされたと書かれますか。これは意味ないでしょう。どうですか。
-
○大橋国務大臣 団体交渉ということにつきましては何ら差別がないのでございますから、交渉をすることができるかどうかということを区別するということになりますと、いまおっしゃったように、登録をされたということによって区別するような書き方は、これは意味がないどころか不適当であると思うのでございます。ただ、そこにありますのは、登録された団体については、もはやそれは職員団体であることは公に認められておるのであるから、職員団体であるかないかというようなことをとやかくいわずに、直ちに交渉に応ずるべきものなり、こういうことをはっきりいたしたわけなのでございまして、そういう意味で、登録というものは大いに意味があると存じます。
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○多賀谷委員 どうも登録されたというのは、パスポートを持っておる団体かどうかというようなお話でありますけれども、こういう誤解を持つ条文は、私ははっきり訂正されたらいいと思うのです。現実の扱いにしても、非常に御苦心なさって答弁をされておる。この前の
森山委員の質問にも、
森山委員自身が、政府が現実に行なわれておる状態と別の議論を立てられておる。それはそうなんですよ。法律の条文がそうであるし、あるいは市町村によれば、登録されてない場合は、市町村長は拒否するかもしれませんよ。拒否をしても、遺憾ながら不当労働行為の適用を受けない。だから問題にされないのですけれども、こんなまぎらわしい条文は直したほうがいいです。登録された団体と登録されない団体が、交渉について何ら差別がないのならば、これは当然登録されたという文句を、現行法でもそうでありますけれども、改正案についても直されたらどうですか。私は、こういう点は率直に大臣もお認めになったほうがいいと田ふうのです。これはむしろ、岸内閣時代から出したこの改正案が、その後、ILOでいろいろ問題になって、苦心惨たんをして日本政府が答弁をしたのがいまのように変わってきたのですよ、私をして率直に言わしめれば。五十四次の報告から五十八次の報告の経緯を見てみますと、だんだん変わってくる。最初は積極的にやる、そうして未登録の場合はそうでないと言いながら、終わりになってきますとこれは全然差別がない、こういうことになってきたのですから、これは率直にお認めになったらどうですか。
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○大橋国務大臣 提案者といたしましては、せっかく提案いたしてありますので、いろいろ苦心をして説明をいたしておる次第であります。
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○多賀谷委員 最近は政府みずから出されている法案に対して修正を出されることがありますからね。今度の国会でもあった。今度の国会でも政府が改正案を出した、そうして、政府みずからが修正案を出された問題もあるのです。これはわれわれがこの国会で認めましたから……。ですから、私は、そういう条文については率直に認められたらよいと思うのですが、どうですか。
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○大橋国務大臣 政府といたしましては、せっかく苦心をして曲がりなりにも解釈をつけておりますので、この上はひとつ委員会の御審議をいただきたいと思います。
-
○多賀谷委員 いま政府は非常に苦心をして御答弁なさっておりますから、
その点はむしろ委員会においてわれわれの判断で修正すべきではないか、こういうように思います。
次に、八十七号条約第二条の「これに加入する権利をいかなる差別もなしに有する。」こういういわば無差別加盟主義の問題について質問をいたしたいと思います。組合員の範囲というのは本来組合自体が決定すべきものであろうと思う。団結権あるいは結社の自由の基本的な原則は、組合自体が組合員の範囲を決定する、これが大きな原則ではないかと思いますが、どういうように御判断になっておられますか、お聞かせ願いたい。
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○大橋国務大臣 原則的にはさようだと思います。
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○多賀谷委員 そこで、今度の公労法、地公労法、さらに
国家公務員法、地方
公務員法、おのおの一般組合員の範囲について規定をされておりますが、ことにいわば管理職の場合、まず第一に、公労法、地公労法において従来管理、監督の地位にある者または機密の事務を取り扱う者、こういう範囲が、今度公労法によっては労組法第二条第一項の規定を準用されておりますが、これについて、なぜそういうようにされたか、お聞かせ願いたい。
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○堀政府委員 使用者の利益を代表するような地位にある者が一般の職員の構成しております組合に加入するというようなことは、やはりその一般の職員の組合の自主性を阻害することになるであろう、このように考えております。したがいまして、使用者の利益を代表する者自体はそれ自体において組合を結成することは当然できるわけでありますが、その利益を代表する者が一般の職員の組合に加入するという場合には、その組合はいわゆる労働組合法における労働組合としての救済を与えられない、このように取り扱われるというたてまえにしたわけであります。
-
○多賀谷委員 私の質問が徹底していないようですけれども、私がお聞きしておりますのは、従来、公労法、地公労法では「管理又は監督の地位にある者及び機密の事務を取り扱う者」ということで非組合員の範囲を規定しておる。ところが、今度公労法、地公労法を改正して、いわば労組法第二条のただし書き第一号を使っておる。すなわち、会社の利益を代表する者——詳しく言いますと長くなりますから、略しますけれども、要するに労組法の規定を使われておる。そうして
国家公務員法、地方
公務員法には組合員の範囲が規定されていなかったのに、今度はいわば管理職としていままで公労法あるいは地公労法にありました規定を使われておる。これは一体どう違うのですか。なぜそういうようになさったのであるか、お聞かせ願いたい。
-
○堀政府委員 ただいま御指摘のように、従来の公労法におきまする利益代表者の範囲、それから労働組合法におきまするいわゆる利益代表者の範囲、これは表現が多少違っておりまするけれども、内容は全然同じである、このように解釈し、そのように取り扱ってきております。そこで、これは八十七号条約制定の際における審議経過においても若干問題になったことでありまするが、私いまちょっと、どこにありましたか記憶にございませんけれども、審議経過の中に、——若干の国においてこのような利益代表者を一般職員の構成する組合に加入できないことにしておる例もある。これは要するに一般の職員の組合がその自主性を阻害されないようにするという配慮だから、そういうことは妥当と認められる、という意味の表現が審議経過の中にあったと記憶しております。そういうような意味におきまして、この公労法、地公労法関係におきまして、利益を代表する者がみずから労働組合を結成できることは、これは当然そうしなければならないし、従来の公労法あるいは地公労法のこの部分に関する規定は八十七号条約に違反すると考えまするから、それは削除して自由に組合を結成できるということにいたしたのでありますが、それらの利益代表者が一般職員の組合に加入することは、これは一般職員の組合の自主性を阻害することになるという見地から、その場合には一般の労働組合法におきます取り扱いと同様に、そういうような組合につきましては労働組合法にいういろいろな救済を受けない、このように取り扱いたいと考えておるわけであります。
-
○多賀谷委員
労政局長は私の質問に答えてもらいたいと思う。質問をしないことをどんどん答弁して、肝心なところを一つもお話にならない。もうあなたも事務次官になったら国会で政府委員として答弁することはないのですから、最後の答弁ですから、親切に答弁をしてもらいたいと思うのです。
要するに、利益を代表する者も団結権を禁止してはならぬということを私は聞いているのではないのです。これはILOで初めからそうなっている。ところが、公労法の場合は、いままで管理、監督、機密の事務を取り扱う者というのが非組合員の範囲であったのを、今度は労組法の条文を書かれておる。そうして
国家公務員法、地方
公務員法には逆にいままで公労法にあったものを入れられておるのはどういうわけか、こう聞いておる。
-
○青木説明員 法律問題でございますので、私からお答え申し上げます。
現行公労法におきましては、先生御存じのように、公労法は労組法の特別法になっておりまして、公労法適用の三公社五現業の職員につきましては労組法の二条の適用は現在もございます。そうしてこの公労法第三条を見ていただくとおわかりになると思いますけれども、資格審査に際しましては、労組法二条、労組法五条二項及び公労法の四条一項の規定、これに適合するものを資格あるものとして扱っておるわけでございます。したがいまして、現行法のもとにおきましても、労組法二条一号の規定は、公労法の適用を受けます三公社五現業の職員には適用があるわけであります。今回、公労法の四条一項ただし書きは、ただいま先生御指摘のように八十七号条約に抵触いたしますので、これを削ることといたしました。その関係で資格審査の面では公労法の四条一項ただし書きは削る。今後それが削られたあとの労組法の二条一号及び労組法の五条二項、これが資格審査の要件になる、こういうことでございます。現行法のもとにおきましても労組法二条一号の規定の適用があったわけでありまして、今回の改正によって新たにこれを適用するというような関係のものではございません。
-
○多賀谷委員 そうすると、労組法の第二条ただし書き一号の規定と現行公労法四条一項ただし書きの規定とは、どう範囲が違いますか。
-
○青木説明員 われわれといたしましては、先ほど
労政局長がお答え申し上げましたように、表現は若干違いますが、範囲については異ならないというふうに解釈、運用をいたしてまいっております。
-
○多賀谷委員 私は、団結権のない者、すなわち公労法四条一項ただし書きの団結権のない者が組合員の範囲を云々されることはないと思う。あなたは、労組法の二条ただし書き一号が適用になる、こうおっしゃるけれども、団結権のない者がその適用を云々されることはないでしょう。初めから団結権がないのですから。これは、あなたのいまの答弁は詭弁ですよ。初めから団結権のない者がどうして組合員の範囲を云々されますか。団結できないのですからね。ですから、実際は公労法四条一項ただし書きが動いているのですよ。
-
○青木説明員 公労法の四条一項ただし書きは、使用者の利益代表者に対して団結を禁止しておる禁止規定でございます。一方労組法の二条のただし書き一号は団結自体の禁止ではございませんで、そういう禁止をされておる者であれ、あるいはどうであれ、事実問題として使用者側の利益を代表する者が一般の職員の結成する労働組合に加入している場合には、労組法上の労働組合として労組法に認められております一定の手続あるいは救済を与えないと言っておるわけでございまして、団結を一方で禁止されておる、禁止にかかわらず、なお一方でそういう人たちが一般職員の結成いたします労働組合に加入しておるという場合は、これは法律的にあり得るわけでございまして、そういう団体については労組法の規定いたします手続ないし救済を与えないという仕組みになっておるわけでございまして、禁止と資格審査の面におきまする加入を許す者というものとは、論理的に別段矛盾しないものと考えております。
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○多賀谷委員 条文を読んであなたは答弁してくださいよ。結成だけではありませんよ。「管理又は監督の地位にある者」は加入することもできないのですよ。禁止規定でしょう。法律で加入することもできない者がどうして組合員の範囲を云々されますか。ですから、公労委の決議によって労働大臣が告示をするものは、いわば非組合員の範囲といわれるものは、結局団結権の範囲において告示をしているのです。ですから、団結権のない者、加入することのできない者がどうして入ることができますか。法律の条文からいえば入ることはできないのですよ。ですから、公労法については労組法の二条一号というものは動かないのです。
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○青木説明員 先生ただいま御指摘のとおり、公労法の四条一項のただし書きにおきましては結成及び加入を禁止しております。法律的に結成も加入もできないわけでございますが、事実問題として加入しておる場合ということは、これはあり得るわけでございます。労組法の二条ただし書き一号におきましても、参加を許すものは労組法上の労働組合と認めない。法律的に書いてございましても、事実問題としてそういう利益代表者が入っておる場合があり得るわけでございます。そういう事実上入っておるものの法律上の取り扱いを規定しておるわけでございます。
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○多賀谷委員 どうも私は、この関係法の整備について、ただ整備条文が抜けておるから、要するにその法律が両方とも適用されることになっておるからということではそういう議論は成り立たないと思うのです。それは本題じゃないのです。私が言っていることは、一体なぜ同じような条文にしたかということ、それから
国家公務員法についてはいままでなかったところの条文を、公労法のいわゆる非組合員の団結権が禁止されたものを同じ条文を持ってきたか、どうもこの点が私ははっきりしないのです。特にこの点についてその理由があればお聞かせ願いたい。
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○増子政府委員
国家公務員法におきましていわゆる管理職員等の組合、一般職員の組合に対する加入を制限する規定は、御指摘のように今回の改正案において初めて入ったわけでございます。これを入れることにいたしました理由は、先ほど他の政府委員から説明がありましたように、職員団体の自主性確保の観点からが主でございます。なおその表現を管理、監督または機密の事務に従事する者というふうにいたしましたことは、もちろん現行法の公労法の規定の表現を踏襲したということでございます。
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○多賀谷委員 そうして、公労法のほうはこの条文の規定のしかたを捨てておるわけです。ですから、私はどうもそこに何か意味があるのかないのか、これがよくわからないのですよ。これは率直に、わからないから質問しているのです。従来ありました管理、監督、機密の事務を取り扱う者という条文をなくして労組法の適用を受けさしておる。ですから、団結権を禁止することは、これは八十七号条約違反ですよ。一般組合に入れないこの人たちは別に組合をつくることはけっこうです、こう言うならば
国家公務員法も公労法も同じような条文にしたらどうか、こういうことを言っておるわけです。
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○堀政府委員 先ほど申し上げましたように、従来の公労法四条一項ただし書きの表現と、組合法二条一号でございますが、これの表現と、表現は違っておりますけれども、内容は同じである、このように解釈しております。そういう意味から、今回公労法、地公労法の関係におきましては、ただいま申し上げましたような取り扱いにしたわけでございます。
国家公務員法におきまして公労法の規定をたまたま取り入れてありますけれども、それは先ほど申し上げましたように、他意があっていたしたわけではなくて、二条の一号と公労法の四条一項ただし書きというものの内容は、表現は違いますが、内容は同じである、何らの他意があるというようなものではないわけであります。
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○多賀谷委員 そういたしますと、
国家公務員法、地方
公務員法のいわば一般組合員の範囲は、労組法二条ただし書き一号、これを入れてもいいわけですね、同じことでしょう。
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○増子政府委員
国家公務員法、地方
公務員法におきまして、いわゆる管理職員等と一括しておりますものの内容につきましては、そのことばによって表現される実体につきましては、先ほど来御説明ありましたように、労働組合法の場合と同様に考えておるわけでございます。ただ、
国家公務員法がその範囲、ただいま問題になっております点を表現しますにつきましては、労働組合法の規定によらずに現行公労法の規定の表現に従ったということでございます。
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○多賀谷委員 どうもあなた方が言っておることは終始一貫しないですよ。公労法のほうはその条文を捨てておるわけでしょう。「管理又は監督の地位にある者及び機密の事務を取扱う者」という条文を削除しておるのですよ。そうしてやり直しておる。すなわち労組法の条文にしておるわけでしょう。そうして今度、捨てた条文をあなたのほうは
国家公務員法及び地方
公務員法に拾ってきてそれを入れておる。どうも日本の官庁はばらばら作業して、そうして別々に条文をつくったというような感じですね。これは一貫すべきでしょう。
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○増子政府委員 公労法と労働組合法の関係は、先ほど他の政府委員から申し上げましたように、一般法と特別法といいますか、そういうことで公労法に別段の規定がなければ労働組合法がそのまま適用されるという形になっておりまして、この二つの法は密接な関係にあるわけでございます。なお
国家公務員法の職員団体にきつましては、一応これとは別個の法体系ということでございまして、その表現につきましては、これは立法技術上の問題でございますからいろいろの表現方法がとられ得ると思うのでございますが、現在の公労法は、御指摘のように結社を禁止される条文として掲げてあるわけでございますけれども、それをそういう趣旨でなく、その管理、監督等の職員も結社といいますか、いわゆる労働組合が結成できるんだ、それだけでできるんだという意味をあらわすために、技術的な観点から労働組合法の規定をそのままこれにかぶせるという方法をとったわけでございます。
公務員法のほうに、職員団体の結成につきましてのいわゆる自主性担保の観点からの規定を入れるというだけでございまして、従来の結社禁止をここで改めるというようなことではもちろんないわけでございますが、その表現の場合に、現行法で公労法に規定がございます表現を立法技術の上でとったということにすぎないわけでございます。その間におきまして格別矛盾、不統一ということもないかのように私どもは考えておるわけでございます。
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○多賀谷委員 これはいま
労政局長が話をしました労組法の、正確にいえば二条の一項ただし書き一号と、あなたのほうの「管理若しくは監督の地位にある職員又は機密の事務を取り扱う職員」というのは同じと考えてよろしいですか。
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○増子政府委員 実体としては同じものを考えておるということでございます。
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○多賀谷委員 しからば「機密の事務」という機密というのは、労組法にいう「使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項」こう解釈してよろしいですか。
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○増子政府委員 そのとおりでございます。
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○多賀谷委員 どうも立法技術上、公労法でもいままで管理、監督、機密の事務を取り扱う者という表現を使っておったのですけれども、しかし、団結権の禁止は八十七号条約違反ですから。しかし、一般組合には入れない、そういう意味ではそういう条文を設けてもいいと思うのです。それはお捨てになって労組法の条文を適用され、あなたのほうは公労法で削除される条文をそのまま適用される、これはどうも不統一でありますけれども、これは同じものだということですから、われわれは同じものだということで理解をしていきたいと思います。
次に大臣にお尋ねいたしますが、先ほど組合員の範囲というのは組合が自主的にきめるのだ、これが原則である、こうおっしゃいましたけれども、組合員の範囲というものを政府がきめようとしているのはどういうわけですか。
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○大橋国務大臣 ちょっと御質問の意味がよくわからないのですが……。
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○多賀谷委員 政府と言ったが、ちょっと訂正しておきます。ここでは国家
公務員の場合は人事院、それから地方
公務員の場合は人事委員会または公平委員会、こういうことになっておる。要するに、管理職等の範囲を人事院規則で定める、あるいは地方
公務員の場合は人事委員会または公平委員会で定める、これは八十七号条約の基本的な原則の違反じゃありませんか。範囲を定める、範囲を決定するというのは違反じゃありませんか。
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○大橋国務大臣 この範囲は労使間の中立的な機関で定めるがよい、こういう考えでございます。
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○増子政府委員 ただいまの御質問は、いわゆる組合員の範囲を自主的に決定する、しかも無差別加入のたてまえということに関連する御質問かと思うのでございます。なるほど無差別加入ということを絶対的に推し進めますと、管理、監督の職員等の範囲を制度的に定めまして、それが一般の組合には加入できないのだということになります限りにおいては、一種の差別というふうにこれは考えられると思うのでございます。ただし、この無差別加入の問題につきましては、先生も御承知のようにILOにおける条約・勧告の適用に関する専門家委員会でも各国の実施状況をつぶさに検討いたしておるわけでございます。その委員会の報告中にもこの問題は取り上げられているのは御承知のことと思うのでありますが、各国の状況を見まして、いわゆる職業に基づく差別ということで、使用者側の労働組合に対する干渉行為を阻止するため差別を設けている例は、特にドミニカ、キューバ、ハイチ、及びスエーデンに見られるというようなことで、これらの国においては管理的、監督的な職員は労働者と同一の団体に属することができず、かえってみずからの団体を設立する権利を有するということを指摘いたしております。それからなお、これは一九五七年の報告でございますが、五九年の報告でも同様に、
批准国における実施状況を見た上の委員会の結論にも、「多かれ少なかれ第二次的な差別」というような見出しでいまのことをいっておるわけでございます。そういう意味におきまして、条約の適用の問題としましては、形式的にはある種の差別であるけれども、多かれ少なかれ第二次的な差別であるということで、この点を直ちに条約に抵触する差別であるという結論は、いずれの場合でも出していないということでございます。
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○多賀谷委員 私が聞いておりますのは、組合員の範囲というのは本来組合自体がきめるべきものであるのに、非組合員の範囲を規則できめるというのはおかしいではないか、こういうことを聞いているのです。
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○大橋国務大臣 先ほど私が自主的にきめるというのはあくまでも原則であります。この原則に対して、管理、監督、機密の事務を取り扱う者は加入すべからずという、これは必要に基づく例外的措置が法律によってきまっているわけです。したがって、その法律を具体的に適用するにあたっていかに当てはめていくかというその際に、その認定を何びとにさせるかという問題で、これは組合が組合員の範囲を自主的にきめるという原則にはかかわりのない事柄であります。
-
○多賀谷委員 範囲そのものをきめるべきじゃないでしょう。範囲の原則をきめる、あるいは基準をきめるというならそうでしょう。範囲をびしっと第三者がきめるということは許されることでしょうか。ですから、組合が自主的に組合員の範囲をきめるという一つの原則と、要するに管理、監督の地位にある者が一緒に組合に入ると組合の支配介入になるおそれがあるという例外処置、これをどうして調整するかという問題ですね、あなたのほうの立論の立場に立って私が言えばです。そうすると、範囲をびしっときめるということはこれは違反である。この団結権の侵害じゃないか。大体こういう範囲になりそうですよとか、範囲そのものじゃないですよ、範囲の原則であるとか基準であるとか、それをきめられることは私はわかる。しかし、範囲そのものを規則できめるということは、これはいわば加入の自由、あるいは組合員の規約並びに規則作成の自由、さらに言うならば組合の規約を唯一の根拠として範囲そのものをぴしゃりきめるということは、こういう条項に違反するのじゃないか。これを言っているわけです。どうですか。
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○大橋国務大臣 そういう原則に対しまして、管理、監督あるいは機密の事務を扱う者は例外とするということがILOにおいても認められた事柄でございます。したがって、そのことを申しておるのでございまして、そのことがこの
国家公務員法で規定をされ、そこでその
国家公務員法に規定されておる管理、監督あるいは機密の事務を取り扱う職員というものはいかに解釈すべきであるか、これを人事院規則その他第三者機関によって具体化してもらう、こういう趣旨でありまして、これはILOの原則によって認められている範囲内の事項であると考えます。
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○多賀谷委員 これは、人事委員会または公平委員会が、事実問題として規則で定めるということは、個別の組合員というのと同じでしょう。現実問題としてはそういうことになるでしょう。
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○佐久間政府委員 人事委員会、公平委員会は個々の地方公共団体にございますので、当該地方公共団体の職員につきましてその範囲を定めることになるわけでございます。
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○多賀谷委員 ですから、その当該地方公共団体の職員団体の構成員の範囲をきめるということは、私は、これは組合の自主性を阻害しておる。組合の規約というのは組合が自由に作成をする権利がある。ですから、労働大臣のおっしゃることは、全然自由であって、そうしてどんな経営者も入れてもいいんだ、こういうことは私は考えておりません。それは利益代表者を削除したほうが組合のいわゆる自主性を保つ意味においていいんだ、支配介入のおそれがあるから、こういう意味で私は了解をするわけです。ところが、範囲そのものをきめるということは、これは私は越権じゃないか、こういうように考えるわけです。ですから、これは組合の自主性ということを考え、規約のいわば作成の自由ということを考え、そうして八十七号の第二条の、「その団体の規約に準拠することを唯一の条件として、これに加入する」ということ等を総合して考えるときに、この範囲の決定というものは最終的には当該組合が持つべきものだ、こういうふうに考えるわけですが、どういうようにお考えですか。
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○大橋国務大臣 問題は、
国家公務員法の加入禁止の条項の実施の問題であると思うのでございます。すでに無差別加入の原則ということは、管理、監督、機密職員につきましては制限をいたしておるのでございまして、この制限は法律で行なっておるわけでございます。事柄の性質上、このことはILOの原則には必ずしも反しないという扱いであることは御承知のとおりでございます。しこうして、その法律によって禁止されておりまする管理、監督、機密の職員の範囲を具体的に限定しようという手続の問題だと思うのでございます。この手続をもし法律においてもっとことこまかに規定する労をいとわなければ、法律そのもので直接規定することもできるでございましょうが、この
公務員法におきましては、人事院あるいは人事委員会、公平委員会等に細目の規定をつくることをゆだねたわけです。このことは私はILOの原則に違反しているとは思い委せん。その場合において、法律の定めておる範囲を具体化する手続をいかなる機関によって実施に移すかということは、これは単なる政策的な問題ではないか、こう思います。
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○多賀谷委員 私は、範囲そのものを規則できめるというのは、これは組合の自主性を侵していると思う。ですから、大体基準となるもの、要するにモデル、モデルをきめるべきですよ。範囲そのものをぴしゃっと規則できめるということは組合の自主性を侵している、こういうように考えるわけです。どうですか。
-
○大橋国務大臣 私は法律の規定というものは、これこれの範囲、すなわち機密、管理、監督の事務に従事する職員、これは一般の組合に加入してはならないということをきめておるわけでございます。したがって、それは法律で一応の基準を与え、それを具体化することまで法律が自由に決定できる事柄である。で、どういう方法で最終的な手続を採用するかということは、法律上どういう方法にすればILOの原則に違反になるというような事柄ではなくて、これはもう全く便宜的な政策的な問題だと思います。ただし、その場合におきましても、使用主に一方的に決定させるというようなことは、これは事柄の性質上適当ではございません。しかし、労使の話し合いによってきめるとか、あるいは中間機関によって仲裁的にきめてもらうとか、あるいはまた法律そのものによって直接にきめるとか、いろいろきめ方はあろうと思います。これはまあ政策的な問題で、どれでなければならない、またどれをとったらば違反であるというような事柄ではないと思います。
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○多賀谷委員 これは組合の基本的な原則の問題ですよ。組合法をつくる場合に、組合員の範囲をだれにするかということは、これは組合の基本的な問題である。この権利は最終的にだれが持つかというと当該組合です。その当該組合で持つ権利を法律によって侵害するというのは問題があるわけですよ。ですから、組合の範囲と言われるけれども、むしろそれは基準とかモデル、そういうものをお考えになっておるのじゃないかと、こう聞いておるのです。
-
○大橋国務大臣 法律において加入制限の範囲をきめるということは一向差しつかえないことだと思います。単なるモデルだけではなく、範囲そのものを法律できめて一向差しつかえないと思います。
-
○多賀谷委員 しからば、その人事院規則で組合員の範囲を決定されて、その一般の組合員の範囲外に出ておるいわば管理職と認定された人が、当該組合に入ったらどうなりますか、一般組合員にどういう問題が起こりますか。
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○大橋国務大臣 それは、組合としては成り立っておるでございましょうが、しかしそれは加入禁止規定があるので、その組合は、加入禁止規定によるところの当然の法律効果を受けなければなりません。
-
○多賀谷委員 どういう法律効果が起こるわけですか。
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○大橋国務大臣 一般の労働組合ならば、労働組合法上の保護救済を受けないというような法律効果を生ずるわけでございます。
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-
○大橋国務大臣
国家公務員法におきましては、登録を得られないという法的効果を生じます。
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○多賀谷委員 問題は、チェックする方法を、あなたのところへ登録を届け出たときに起こる問題ですね。それだけですね。ですから、労組法の場合も、労働委員会の救済を組合として受けられないという場合だけでしょう。個人は受けられるわけですよ。交渉もできるわけですよ。ですから、この管理職員の範疇に入る人が、一般組合に入っておって、その一般組合員は登録のときに問題になる、こういうように解していいわけですか。
-
○大橋国務大臣 そのように解しております。
-
○多賀谷委員 この範囲そのものの決定というものは、これは私は国家権力が介入すべきでなくて——国家権力ではない、人事院は別だ、あるいは人事委員会は別だと、こうおっしゃればその議論も成り立つけれども、要するにそのものが決定すべきでなくて、これはやはり組合が最終的にはその責任において決定するというのが当然ではないか、こういうふうに考えるわけです。しかし、政策的な問題としてあなたのほうでこの管理職の範囲、管理職について一般組合に入れない、こういうことをおっしゃっておるのですから、私はこの人事院規則できめる場合には、あくまでも一種のモデル的な規則である、あるいは範囲の基準である、こういうように解釈すべきが妥当じゃないかと思うのです。そもそもこの労組法とか
国家公務員法とか公労法というものは、いわば指導的な立法なんですよ。何か刑罰的な立法のように考えられると間違いが起こるのですよ。労働組合を育成強化するための立法なんですからね。ことに管理職の範囲を厳格にいうことは、これは管理職なる者が一般の組合員に入っておればその一般の組合員の自主性を阻害される。だから、一般の組合員の中に管理職が入っておることは支配介入になるおそれがあるから禁止する、こういうことなんですよ。ですから、そういう立法の精神から見ると、私は範囲そのものを、当該組合員が入れたいというのにその人事院規則でぴしっと禁止をする、規制をするということ自体が問題があるんじゃないか、こういうように考えるわけです。ですから、この労働立法というものをひとつ考えていただくならば、そのことは自明の理だ。なぜ管理職というものをつくって、それで一般組合員と別個にしたかというのは、これは当該一般組合員の自主性を侵すおそれがあるからですよ。いままで問題になったのはむしろ相互不介入ですよ。そういう精神からむしろ法律論を論ずべきであって、何か警察治安立法のようなものの考え方をされるのは間違いじゃないか、こういうように考えるわけですが、ひとつ御答弁を願いたい。
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○大橋国務大臣 先ほど申し上げましたるごとく、加入禁止職員の加入ということは、その組合の登録を拒まれる要件になっておるわけでございます。したがって、この要件はやはり
国家公務員法の禁止規定に伴う当然の効果でございまするから、組合に対しても、あらかじめはっきり承知しておいていただくほうが適当である、こう存じます。したがいまして、できるだけ詳細に規則できめて迷わないようにいたしておくということが、労働行政としても適当であると思うのであります。
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○多賀谷委員 行政官庁としては便利がいいかもしれませんけれども、私は基本的なものを忘れて、労働行政をすべきじゃないと思うのです。私はこの点はひとつ再考をお願いいたしたいと思うのです。
次に、私は登録についてお聞かせ願いたいと思います。登録の場合に、なぜ構成員の要件を厳格にされておるのか、私は意味がわからないのですが、一体どういうようにお考えですか。
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○増子政府委員 改正法案における登録制度、これは現在でも登録制度そのものはあるわけでございますが、改正法案における考え方といたしましては、職員団体というものが通常いわゆる民主的な職員団体として、あるいは職員の勤務条件の維持改善を目的とする団体として通常具備すべき条件、そういうものを満たしておるかどうかということを確認する手段として設けたものでございます。なお、職員団体の構成員の要件につきまして、登録の要件としてこまかに規定いたしておるわけでございますが、この点は職員団体の一般的な定義の問題と関連いたしますが、そしてこの点に関しましては過般
森山先生から御質問があったときにお答えいたしましたように、職員団体としましては、その目的からいたしまして、職員がその構成員になるということが通常のたてまえであろうというように考えておるわけでございます。つまり職員としての勤務条件に縁もゆかりもない者がそこに多数入ってくるということは考えられない。通常の場合に職員が職員だけでつくるということがたてまえであろうということで、そういう趣旨を登録の際には明らかに一応点検するという意味におきまして、登録の要件として詳細に規定いたしておるということでございます。
-
○多賀谷委員 どうも登録、非登録の場合あまり差別がないというなら、そんな登録の要件はやかましくする必要はないですよ。大体登録と非登録とどれだけ差があるのですか。
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○増子政府委員 一般的には、先ほど申し上げましたように、職員団体として通常具備すべきであろう条件を具備しておりますれば問題はないわけでありますし、それを、考え方としましては、一々問題になったつど組合を個別的に検討するというやり方もあるわけでございますけれども、一般的にこのように要件を具備しておることを確認する制度というものは、実際問題としてはきわめて有効なあるいは便利な制度であるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、登録された職員団体は、先ほど来大臣からも申し上げましたように、交渉等の関係におきましてはこれに積極的に応じていくということの一つの目安になるわけでございます。なお、この制度のもとにおきましては、法人格の取得等の問題があるわけでございますが、いずれにしましても、職員団体の登録ということば、登録によって職員団体としての必要な要件を十分具備しているということをいわば確認する制度ということでございます。
-
○多賀谷委員 ことに登録をされる要件として構成員の資格を非常にシビアーにしておるわけです。八十七号条約を
批准するにあたっては、私はこんなにシビアーにする必要はないんじゃないかと思うのです。こういうことをすれば、結局登録をしない組合のほうが実際上多くなりますよ。その交渉においても差がないということになれば、登録をしない組合をつくるようなものですよ。法律の権威を疑われる、その制度の権威を疑われる。少なくとも構成員の問題は主として登録にのみ問題があるのですからね。管理職を除いて一般の構成員、要するに解雇をされた者であるとか、この場合には私はこういう規定を置くことは、逆に言うと未登録組合をよけいつくるようなものだ、こういうように思います。なぜか。たとえば役員の場合は、結局役員になるためには職員をやめなければならぬでしょう。あなたのほうの考え方は、在籍専従を廃止するのですから、役員になったら職員をやめなければならぬでしょう。そうすると、一回職員をやめると、もう組合員に帰れぬわけですね、そうでしょう。本人の意思に反して職員を罷免されたわけじゃないでしょう。本人の意思でその職員をやめたわけですからね。そうすると、役員になった者が次には役員にならなかったら、組合員にもなれないということですよ。こういう守られぬような登録制度というものはおかしいじゃないですか。逆に言うと、在籍専従の排除と変わらないですよ。
-
○増子政府委員 改正法案の登録要件が非常にきびしくなったというふうに仰せられたのでありますけれども、この点は実は現行法におきます登録の要件は、構成員に関してはもっときびしいわけでございます。現職職員だけしか構成員としても、また役員も認められていないわけでございます。改正法案は、むしろ代表者は、役員は職員でなくても、登録されることによって、現行法を変えるとともに、いわゆる免職処分等を受けました者につきましてもその言い分について係争中である場合は、これは登録された職員団体の構成員として認められるわけでございます。その点は現行の登録要件よりは緩和されておるわけでございます。ただ、見通しとして、この登録を受けるものが多いか少ないかということはいろいろ見方があろうかと思います。ただ、私どもの立場から考えますと、従来は非職員が役員であるというようなこと、あるいは一たん免職された職員等がなお組合に残っておるということが登録を拒否される事由になっておったわけでございますが、今後はこれが登録拒否の事由にはならないという点はございます。したがいまして、この改正法案の登録のもとにおきましては、むしろ登録されないというような職員団体はきわめて少ないのではなかろうかというふうに考えております。そういう意味で職員団体はおおよそ登録をしてもらえるのではなかろうか、またそれを私どもは期待いたしておるわけでございます。
-
○多賀谷委員 八十七号条約を
批准するという前提ですから、そのことを忘れては困るわけです。
それからもう一つは、あなたのほうは在籍専従を排除するという考え方に立っているでしょう。そうすると、役員は職員でないわけです。役員になったとたんに職員をやめなければならぬ。役員は職員でない。役員は構成員になれない。そうして役員であるうちは組合に関連を持つけれども、役員をやめれば職員でないわけです。しかも、その人は本人の意思に反して職を奪われたわけでないですから、組合員になれない。こういうような状態になるんですよ。一方あなたのほうは在籍専従を廃止するという前提に立っておる。ですから、役員になった以上は職員でない。本人は職員たりたくともなれない。そういう状態の中でこの登録制度に厳格な規定を置くということはおかしいでしょう、こう言っておるんですよ。第一あまり効果のないものにこんな長い条文を入れておくことが間違いですよ。
-
○増子政府委員 法律の改正規定等につきましては、お説のような立場からいろいろ御意見もあろうかと思うのでありますが、ただお述べになっておられました中で、私どもと考えの違いますのは、役員になれば職員をやめなくてはならぬというふうに御指摘になったのでございますけれども、もちろんそれは役所の仕事をちっともしないで組合の仕事ばかりやっているという、いわゆる専従役員の場合はまさにそういうことになるわけでございますけれども、実は職員団体はたくさんございますけれども、いわゆる在籍専従の役員を持っておるというのは非常に少ないのでございます。大部分の組合におきましては、いわゆる在籍で非専従の役員、つまり勤務時間外に組合運動をやっている役員という形も相当多いのでございます。
-
○多賀谷委員 どうも理論が立ってないですよ。もう少しすっきりとした理論構成をされたらいいと思う。一方においては在籍専従を廃止するといいながら、登録制度の要件としての構成員は職員でなければならぬ、それからそれを八十七号条約を
批准するということの前提だという。その登録というものはどれだけの効果があるかというと、たいした効果がない。一体何のためにこういうものをこの改正法の中に入れておくのか、登録の条文の占める量が第一多いですね。
しかも、ILOから指摘されていることを直していないでしょう。ILOはこの改正案についてこまかい点も指摘しておりますね。たとえば「全員の多数決」、これはおかしいから、比較多数に直しなさいと言っている。こういうこともその後黙ってほおかむりしているでしょう。地方
公務員についてもそうです。なぜ政府は直さないのですか。こういうことをちゃんと指摘している。指摘されておって、何度も改めて出す機会があったわけですから、こんな簡単なことは直したらどうでしょうか。
-
○増子政府委員 登録制度につきましては、先ほど来申し上げておりますような趣旨において、改正案ではその内容等を詳細に規定いたしたのでございます。これらの御批判はいろいろとあろうかと思うのでありますけれども、登録制度を置く以上は、このようなものが必要であったというふうに考えておるわけでございます。
それから、最後に御指摘になりました全員の投票という問題でございますが、これは現行法におきましては人事院規則で規定されている事項でございますので、この人事院規則の条文をそのまま法律化したという形でございまして、現在の人事院規則の運用におきましては比較多数説、いわゆる比較多数主義といいますか、そういう考え方によって行なっておるわけでございます。
-
○多賀谷委員 そうなっていない。条文は全員の多数決となっておるんですよ。全員の多数決、これは地方
公務員でも、ないですよ。
-
○増子政府委員 これは人事院の解釈でございまして、いま申し上げましたように、比較多数主義ということで、現在も運用されておるわけでございます。
-
○多賀谷委員 そうすると、この条文は比較多数と同じだ、こういうように読んでよろしいのですか。
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○増子政府委員 さようでございます。
-
○多賀谷委員 どうも登録制度の資格要件というものは、登録制度そのものが組合活動に実質上影響がないとおっしゃるからあまり問題ないにしても、その影響のないものをこんなに長い条文を入れておくことも私はおかしいと思うんですけれども、それ以上に、この点についてえらくやかましく構成員の範囲を厳格にして、しかも在籍専従を排除するという理論構成が私は納得できない。これはあとから再度私は質問をいたしたいと思うのです。
そこで、文部大臣が見えておりますから、時間の関係があって、一緒にお聞きいたしたいと思います。
このILO八十七号条約の第六条「この条約第二条、第三条及び第四条の規定は、労働者団体及び使用者団体の連合及び総連合に適合する。」こういう規定があります。そこで、日教組という団体は、文部大臣と交渉できますか。
-
○荒木国務大臣 現行法律制度のもとにおきましては、いわゆる団体交渉をする立場にはない、文部大臣との関係においてはさよう理解しております。
-
○多賀谷委員 国家
公務員の事項についてもございませんか。
-
○荒木国務大臣 たとえば東京大学の教職員組合があったとしまして、それが正規の届け出をしたものでありますれば、交渉権はあろうと思います。
-
○多賀谷委員 日教組という団体の中に国家
公務員である教職員が入っておったと仮定しますね。これは現実に入っておるわけです。この日教組の国家
公務員の教職員の労働条件について文部大臣と交渉ができますか。
-
○荒木国務大臣 制度上の団体交渉というものはできないものと思います。それは日教組それ自体が法律、制度上は任意団体であって、正規の職員組合じゃない、こう理解されますから。
-
○多賀谷委員 そのことは八十七号条約違反になりはしませんか。今後は八十七号条約を
批准するにおいては、要するに連合または同盟、これは単位組合と同じような適用を受けるということに原則はなっておる。そうすると、その連合体は、その構成員の中に国家
公務員があれば当然文部大臣との交渉ができるわけでしょう。
-
○荒木国務大臣 今度の八十七号条約を
批准いたしまして、それに伴って法律、制度が改正された後に、おっしゃるようなことになれば、むろんそういうことでございましょうけれども、現在まだ
批准もしておりませず、現行法に準拠して申し上げる限りは、以上お答えするとおりだと存じます。
-
○多賀谷委員 いま
批准をしようとして改正案の論議をしておる。今度の改正案ではどうですか。
-
○荒木国務大臣 政府案として八十七号条約
批准に関連して提案しております法律が原案どおりに通過したといたしまして、その場合にどうだ、こういうお尋ねかと思います。これは改正法案上職員団体だと思います。ただし登録の関係からいいまして、交渉をする交渉権を持った職員団体ということにはなり得ないのじゃなかろうかと思います。
-
○多賀谷委員 大臣見えておられませんでしたけれども、登録、非登録にかかわらず職員団体は交渉できるという答弁がさっきからあったのです。でありますから、おっしゃるように改正案によれば職員団体ということでありますから、当然登録、非登録にかかわらず、国家
公務員の問題については交渉できるわけですね。
-
○荒木国務大臣 その辺の解釈は労働省で解釈していただかないと、私にはちょっとわかりかねる部分だと思いますが、改正案の登録についていろいろな条件があったと記憶しておりますが、その限りにおいては、国家
公務員たる教職員というものは、日教組の中に入ったとしましても、数の上からいいましてほとんどりょうりょうたるものであるわけでございますから、従来の労働省の解釈からしますれば、国家
公務員の職員団体ということには考えられない、そういうふうに考えます。
-
○多賀谷委員 おかしいでしょう。先ほどは改正案によれば今度職員団体になると思う、ただし登録はおそらくされないと思う、だから交渉されないのだ、こうおっしゃった。ところが、いまはそうでなくて、登録と交渉の問題についてはひとつ労働省で解釈してもらいたい、しかし職員団体にはなり得ないじゃないか、りょうりょうたるものであるから。こういうことでは違うじゃないですか。
-
○荒木国務大臣 あまり正確なお答えはいたしかねますが、御指摘のような案件として考えまして、やはり日教組というのは地方
公務員の職員団体、そういうものだと思います。
-
○多賀谷委員 大臣よくおわかりになっていなくて、事務当局のことばを聞いて、そのときどきに答弁されていますから違っておる。
大体政府当局はきわめて勉強不十分ですよ。私はいまから質問したいと思いますけれども、第一、各省ばらばらで統一がとれてない。ですから、私は、明日よく勉強してきていただいて、さらに八十七号条約の各条文と国内法との関係を詳細に聞きますから、御答弁を準備してきてもらいたい、こういうように思います。
-
○倉石
委員長 明五日は午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後七時六分散会