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1963-06-24 第43回国会 衆議院 建設委員会地方行政委員会農林水産委員会連合審査会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月二十四日(月曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員  建設委員会    委員長 福永 一臣君    理事 加藤 高藏君 理事 瀬戸山三男君    理事 二階堂 進君 理事 石川 次夫君    理事 岡本 隆一君 理事 中島  巖君       井原 岸高君    宇野 宗佑君       大沢 雄一君    久保田円次君       正示啓次郎君    堀内 一雄君       兒玉 末男君    佐野 憲治君       日野 吉夫君    山中日露史君       田中幾三郎君  地方行政委員会    理事 小澤 太郎君 理事 纐纈 彌三君    理事 丹羽喬四郎君 理事 太田 一夫君    理事 二宮 武夫君       宇野 宗佑君    大沢 雄一君       金子 岩三君    久保田円次君       田川 誠一君    松井  誠君       山口 鶴男君    門司  亮君  農林水産委員会    理事 足鹿  覺君 理事 東海林 稔君       安倍晋太郎君    金子 岩三君       草野一郎平君    倉成  正君       中山 榮一君    角屋堅次郎君       栗林 三郎君    中澤 茂一君       山田 長司君    湯山  勇君       稲富 稜人君    玉置 一徳君  出席国務大臣         建 設 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 篠田 弘作君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁水         資源局長)   崎谷 武男君         農林事務官         (農地局長)  丹羽雅次郎君         建設政務次官  松澤 雄藏君         建 設 技 官         (河川局長)  山内 一郎君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君  委員外出席者         建設事務官         (河川局次長) 鮎川 幸雄君         自治事務官         (財政局財政課         長)      茨木  広君         専  門  員 熊本 政晴君         専  門  員 越村安太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  河川法案内閣提出第一七〇号)      ————◇—————   〔福永建設委員長委員長席に着   く〕
  2. 福永一臣

    福永委員長 これより建設委員会地方行政委員会農林水産委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行ないます。  河川法案を議題として審査を進めます。     —————————————  河川法案   〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 福永一臣

    福永委員長 本案の趣旨につきましては、お手元に配付いたしました資料により御承知願うこととし、直ちに質疑に入ります。  質疑通告がありますので、順次これを許します。宇野宗佑君。
  4. 宇野宗佑

    宇野委員 本日は非常にたくさんな質問通告がございますから、ごく簡単に一、二点事務的な問題に関しまして政府の御所信を明らかにしていただきたいと思います。  過般私は地方行政委員会におきまして、いまや日本経済自体広域性を持つに至ったがために、当然それを裏打ちするものとして、行政自体もまた広域化しなければならないということを力説申し上げたのであります。そうした意味合いにおきましては、今日ここに河川法案の大改正が提案されましたことに対して、私は賛意を表するものであります。  そこで、ひとつ大きな問題ではございましょうが、一点だけ大臣お尋ねいたしておきたいと思います。すなわち、ただいまも申し上げましたとおり、わが国経済がそうした意味合いにおいてだんだんと広域化しなければならないという立場から考えました場合に、特に経済の伸びによっていろいろと会社、工場等もそのワクが広がりつつある現状であります。したがいまして、特に工業用水の問題、あるいは都市過密地帯における一般用水の問題等々から考えましても、水というものの重要性は、今日まで論議された以上のものを持つに至ったのであります。ところが、わが国降雨量は年々歳々約六千億トンしかない。六千億トンしか降らないが、しかし工業は伸びる。また、人口もそれに伴って伸びていくという現状考えてみますと、ここに当然河川法改正も必要でございましょうし、また、一方におきましては、先年衆議院並びに参議院を通過して成立いたしました水資源法案も必要でございましょうし、あるいはダム建設も必要ではございましょうけれども、わが国といたしましては、そうした水に関する総合的な法律として、過般の参考人意見にも多々ございましたが、将来基本法ともいうべき、総合水法というふうなものを準備されておられるのかどうか。あるいは今回のこの河川法が、言うならば水に関する基本法であるのかどうか、この点に関しましてお伺いをいたしておきたいと思います。
  5. 河野一郎

    河野国務大臣 御意見でございますけれども、まだそこまで研究はいたしておりません。と申しますのは、元来が国土全体について総合的に考えなければならない事態にきておると私は考えます。しかし建設省国土省ではございません。国土全体についてこれをやるということは、一体どこでやるか、だれが考えるかということについては、今後大いに研究をしなければならぬと思いますけれども、建設省はそこまでいくのは行き過ぎだという気持もありまして、内々の総合的なものの考えは持っておりますけれども、建設省それ自身としてそこまでいくことはどうか。たとえば水資源にいたしましても、御承知のように各省連合でこれを経済企画庁にあっせんをしてもらうというようなふうに、政治情勢は必ずしも一建設省で扱う問題ではないというふうにも考えられますので、御意見は私はけっこうと思いますけれども、そう考えておらぬのであります。
  6. 宇野宗佑

    宇野委員 続きまして、では少しく具体的な問題で御所見を明らかにしていただきたいと思います。  第四条の一級河川指定に関してでございますが、すでに水資源開発法案審議の際にも、わが国一級河川とおぼしきもの、つまり重要河川とおぼしきものとして、利根川あるいは揖斐川、木曾川あるいは淀川並びに筑後川というふうな四、五川がその該当河川として数えられておったのでございますが、今回は現行河川法を抜本的に改正して一級並びに二級河川とするというふうな、言うならば重大指定がここに明らかにされたわけであります。  そこでこの法案をめぐりまして、いろいろといままで知事会におきましても、特に上流知事会におきましては、水資源のあの法案と同様に強い反対意向もあったように承っておるのでありまするが、それに関しましては、建設省もよく知事会意向を了とせられまして、漸次改正改正を積まれまして、今回このような新しい法案をお出しになったのでございます。したがいまして、私は特に滋賀県でございますが、滋賀県と申し上げると、いままではたいてい水といえば頭に来てしまって、反対反対立場をとってきたのでありまするが、しかし、あの水資源法案審議場面と今日の河川法審議場面とでは、およそその意味を異にいたしております。つまり琵琶湖特殊性ということを考えました場合に、今回の改正に関しましては、滋賀県議会といたしましても、当初はいささか疑問を抱いておったのでございまするが、今日提案をされておる法案意味合いならば、大体滋賀県としてもよかろうというふうなところまでまいったのであります。ところが、このことに関しましては、ずいぶんと政令段階がきめるというふうなことが書かれておりまするが、いまだその内容が明らかにされておりません。  そこで私は、この第四条に関しまして当局の御所信のほどを承っておきたいと思うのでありまするが、当然琵琶湖は今日淀川水系であって、現行河川法におきましても、また、新河川法におきましても、湖としての地位は与えられておりません。それは国家行政上やむを得ないかもしれません。しかしながら、おそらくその重要性から申し上げるならば、当然一級河川琵琶湖自体指定されることと存じます。しかし、琵琶湖指定されたならば、その琵琶湖をつくっておるところの、つまりその琵琶湖に流入していくところの幾つかの河川があって、その河川が、言うならば上流において水源を培養して、その水を琵琶湖にためまして、それを淀川から流しておるというふうなことを考えてまいりますと、今日琵琶湖に流入するところの河川は、大体直接流入するのが九十八本、それを合わせて、現行河川法に基づく準用河川は三百四十本ございまするが、当然私は琵琶湖一級河川指定があると思います。しからば、そこに流入する準用河川の三百四十本も、当然琵琶湖をつくるその上流の水であるという意味合いにおいて、一級河川指定が受けられるものであると、私は考えますが、この点は政令段階ということになっておりますので、いまもしそのようなおつもりがあるのならば、この際明らかにしていただきたいと思います。
  7. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知のように、わが国土全体を通観いたしまするに、非常に特殊性のある地域と申しますか、地帯もしくは河川というようなものが各所にございます。したがって、各知事さんがそれぞれの立場においていろいろの御要望、御要請のありますことも事実でございます。いまここに述べられました琵琵湖につきましてもその例だと思うのでございまして、琵琶湖から川が流れる、その流れていく川を一級河川にする、したがって琵琶湖もその範疇に入る、それから上の各河川がどうなるかという特殊な問題でございます。これらにつきましては、いずれ地元の御要請、御意見も十分拝聴いたしました上でしかるべく善処いたしたいと思います。
  8. 宇野宗佑

    宇野委員 大臣の御答弁は了といたしますが、局長のほうはいかがでございますか。
  9. 山内一郎

    山内一郎政府委員 ただいま大臣の言われたとおりでございますが、淀川水系がかり一級河川になったといたしました場合には、従来の準用河川区域までは一級河川区間考えたい、事務的にはそういうふうに考えております。
  10. 宇野宗佑

    宇野委員 次に問題になりますのは、一級河川指定を受けた場合に、地元知事意見を聞いて建設大臣がその管理権の一部を地元に委任することができるという条項が第九条に示されております。したがいまして、琵琶湖といえば御承知のとおり日本で一番大きな湖であります。だから、その重要性から考えましても、当然一級河川指定は受けられるだろうと思いますけれども、やはり一県のみにおいて琵琶湖が存在し、その周辺に八十六万の県民が住んでおるということを考えますと、当然第九条に示されておるとおり、琵琶湖自体一級河川指定を受けると同時に、その管理に関しては、知事大臣より委任を受けられてもよい地域ではないか、かように私は考えるわけであります。私はなぜこのような具体的な問題を提示するかと申し上げますと、いろいろと上流県において問題がある、この河川法に関してはそれぞれ流れ川であるとか、あるいはたまり水であるとか、また高いところであるとか、低いところによってそれぞれ立地条件を異にいたしますから、これに対して賛成であるか反対であるかというのならば、まず、それぞれ自分立場でこれを当てはめてみて、当局所信を明らかにしていただいて初めてそこにこの河川法意味というものがわかってくるのじゃないかと思いますので、詳しくお尋ねいたしておるわけであります。したがいまして、いま当然流入する河川事務当局としては一級河川区間になるであろうというふうな御答弁でありました以上、琵琶湖自体に関しましても、その区間のどこら辺を知事に委任されようとしておるのかということを、事務当局でけっこうでございますから、御答弁を賜わりたいと存じます。
  11. 河野一郎

    河野国務大臣 本案施行になりました際に、地元意見を十分尊重して御要請に応じて結論を出すということは、全国的にみな同じ扱いをするつもりでございます。
  12. 宇野宗佑

    宇野委員 次に、第十六条に関しましてお尋ねいたしておきたいと思います。  第十六条で工事実施基本事項に関しまして示されておるわけでございますが、ほとんどの条文におきましては関係都道府県知事意見を聞くというふうなことが明らかにされておるわけであります。しかしながら、この十六条によりますと、これも水資源開発促進法にも非常に関係があると思いますが、十六条には都道府県知事意見を聞くということが書かれておりません。もちろんこの意見を聞かなかったならば、基本事項というものも当然制定せられないと思いますが、この点に関しましては、たとえ法で明らかにされてなくても当然のことではございましょうけれども、なぜここには都道府県知事意見を聞くということが抜かれたのかということだけをお尋ねしておきたいと思います。
  13. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知のように、全国的に河川全体にわたっての問題でございますし、水資源の場合は特定の河川、先ほども申し上げましたように、いろいろな条件河川がございますために、地元意見を十分承って善処することが適当であろうという意味地方知事意見を聞くということにいたしておりますが、そこで次に問題になりますことは、地方知事意見も聞く、聞くということは一体どういう意味だ、この間も、聞いてそのとおり実行するのかどうだということになりますが、地方の御意見を十分拝聴いたしまして、さらにこれを河川審議会にかけ、そして結論を出す、こういうことにいたしておりますから、そこで管理者といたしましては、これらの意見を総合して結論を出すというように御了承いただいたらけっこうだと思うのであります。
  14. 宇野宗佑

    宇野委員 続きまして法第八十四条についてお尋ねしておきたいと思います。  これは河川審議会の制定に関する条文でございますけれども、特にこのうちには都道府県知事を任命するというふうなことも書かれておりますけれども、このうちの水利調整部会というものに関しましては、当然知事が果たす意味合いが大きいだろうと私は思うのであります。なぜかならば、いまも大臣お話しになられましたとおり、当然知事意見を尊重する、あるいは知事意見も聴取してこの河川審議会にかけるのだということでございますから、こうしたことが順調に行なわれれば、河川法改正というものに関しましていままで疑点を抱いたり、あるいは小さな考え自分の県だけのことを考えて、広域経済に移りつつあるところの今日の情勢を知らず、ただ単に自分の県だけの利害得失でものを考えていた知事さんも、大きな視野を開いていただいて、新しい意味合い国家行政あるいは新しい意味わが国経済にも貢献していただけると思うのでありますが、この河川審議会等あり方に関しまして、大臣はどのような所見を持っていらっしゃるか、この機会に伺っておきたいと思います。
  15. 河野一郎

    河野国務大臣 河川審議会委員の任命もしくは委員資格等についていろいろ御意見がございます。私といたしましては、一応従来の審議会委員あり方を基礎にいたしまして、そしてこれに加えなければならないと思われる諸君をそこに考えております。ただし、いまお話しのように、それならば当該委員の中に直接の利害関係者が入った場合に、審議会の議がどういうことになるかということでございますが、これは従来とてもないことはございません。たとえば一番やかましくもめます肥料審議会米価審議会等におきましても、農村の代表の諸君が入られましてもおのずから正しい結論が出ておりますので、これは当該利害関係者が加盟されましても、それは意見意見として十分御開陳になることでございましょうが、これが審議会という場合には、第三者の諸君もおられますし、他の諸君もいろいろ御討議の結果、結論としては正しい方向が従来出ているのが慣例である、そこに審議会のよさがあると私は考えますので、必ずや、従来非常に調整に手間取ったものが、この審議会によってある程度スムーズに調整がつくのじゃないかということを私は期待しておるわけであります。
  16. 宇野宗佑

    宇野委員 最後に、もう一点だけお伺いしておきたいと思います。  法第九十三条でございますが、ここには廃川敷地等譲与に関する規定が明らかにされております。しかしこの条項におきましては、ただ単に二級河川の廃川敷地譲与に関する規定が明らかにされておるだけでございまして、一級河川に関しましては何ら示されておらないのでございますが、なぜ示されておらないのかということに関してお伺いいたしておきたいのであります。なぜかならば、当然一級河川のうちにおきましても、重大なる区域に関しては知事にその管理権を移管してあげようというような親心もあるわけでありますから、私といたしましては、一級河川、二級河川の区別なく国有財産として存在する必要があるものを除いて、そのほかのものは極力都道府県に帰属せしむべきであるというのが私の考え方でございますが、この点に関しましてひとつ御所見を明らかにしていただきたいと思います。
  17. 山内一郎

    山内一郎政府委員 廃川敷地の処分の問題につきましては、原則は国有財産法で一切やることになっております。したがって、一級河川、二級河川とも国有財産法大蔵大臣が県に譲与できる、こういうようなことになっておりますが、河川管理体系が、一級河川建設大臣、二級河川都道府県と、こういうようなたてまえになっておりまして、そういう管理体系からいきまして、二級河川だけは特例法を設けたほうが非常にいいんじゃないか、こういう点から二級河川だけは建設大臣都道府県譲与できる、こういう特例を設けまして、非常に取り扱いを便にした、こういう次第でございます。
  18. 福永一臣

  19. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 地方行政農林建設委員会合同審査でありますので、私は、主といたしまして今回の新河川法がいわゆる地方公共団体、具体的には都道府県等地方団体の権限と非常に関係をいたしてまいる場合が多いわけでございまして、そういう観点から幾つかの点につきましてお尋ねをいたしてみたいと存じます。  その前に、私は、ただいまの宇野委員の御質問とも関連をいたしましてお尋ねをいたしてみたいと思うのですが、従来水であるとか空気というようなものは、無限であり、要するに必要に応じて利用する、そういう観念が確かにあったと思うのです。特に日本におきましては、他の文明の進歩いたしましたヨーロッパ各国とは違いまして、日本の場合、非常に降雨量が多く、多雨多湿地域ということになっているわけであります。したがいまして、日本水資源というものは非常に豊富だと常々言われてまいったわけでありますが、それが最近における都市の集中、あるいは新しい産業開発によるところの新産業都市建設、いろいろな形におきまして水の需要が非常に増大をした、こういうことが言われておると思うのであります。そういう中で明治二十九年以来、都道府県がこの管理を握っておったのが、新しい経済進歩、社会の進歩に適合しがたくなった、こういうことが言われておるかと思うのでありますが、要は、降雨量が非常に多い、多雨多湿地域といわれましたこの日本水資源が、それでは一体どの程度利用率利用されておるのか、私はこれが問題じゃないかと思うのです。水については、現在東京都の水道が非常に不足をいたしておる、あるいは大阪におきましても、地下水をめちゃくちゃにくみ上げたことによって地盤沈下が起きておる、あるいは新しく工業が発達をいたしました四日市においてすら、地下水のくみ上げ過剰によって地盤沈下が起きておる。したがって、工業用水あるいは水道用水不足をしておる、こういうことが言われておると思うのでありますけれども、問題は、それではわが日本においては、この水というものがどの程度人工の手によりまして利用されることになっておるのか、それがヨーロッパ各国利用率との比較においてどの程度になっておるのか、これがやはり私は問題じゃないかと思うのであります。したがいまして、この点は事務当局でけっこうでありますから、日本の水の利用率がどの程度であり、ヨーロッパ各国に比べてどのようになっておるのか、この点をまずお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  20. 河野一郎

    河野国務大臣 こういうことを申し上げたらば、かえっておしかりを受けるかもしれませんが、河川法改正を水の利用に非常に重点を置いて、利水意味からこの河川法改正を急いでおるというふうにお考えいただくと、私としては非常に遺憾なのでございます。と申しますのは、何と申しましても、従来災害が起こればこれを改良し、もしくは治水の面をそこに完ぺきを期するというような行政で今日まで来ております。災害復旧、それをさらに進んで改良復旧程度まで来たというのが今日の状態でございまして、災害でもなければ、ほとんど全体の河川にわたって治水計画が立ってないというような状態にあるのが今日の事情であると同時に、地方府県財源が公平に全体に平等にいっていない、しいて申せば、そういう事態の起こりやすい府県財源が乏しいというような面もありますので、これを全面的にひとつ治水をする、なるべく治水完ぺきを期するというような意味合いからいたしまして、どうしても河川法改正をして、そうして主要、重要の河川については、全流域、水系を通じて治水計画を立てるということに第一に重点を置いておるわけでございます。その結果として、そこに水の利用度が増してくるということに実は主たる思想を持っておるわけでございます。  第二には、水の利用度について御質問でごさいましたが、これは御承知のとおり、日本のように国土の実態からいたしまして、非常に雨は降る、山が海岸に近いということから、すぐ海に流れ込むというような事情にありますために、なかなかその利用が困難でございます。したがって、この実情を十分把握して、いまのままにおきますればすぐに水が川に注いでしまって利用が困難であるというような点をどうするか、つまり多目的ダムをなるべく多数備えて、そうしてダムから貯蔵した水を順次治水の面もしくは利水の面、両面を通じてこれを完ぺきを期するように処置するという意味合いにおいて必要じゃないかというふうに考えておりますので、むろんいま事務当局からそういう統計がありますれば御説明をいたしますけれども、私自身がこれを計画いたしましたのは、欧米に比べて日本の水が利用度がどうであるかということには深い考慮は実は持たずにいたしたということを率直に申し上げて、御了承を得たいと思うのであります。
  21. 山内一郎

    山内一郎政府委員 一年間にわが国で降ります降雨量の総量は六千億トンといわれております。そのうち現在農業、工業用水上水道用水には約七百億トン利用されております。したがって、利用率は十数%、外国の例に比較いたしましてだいぶん低い、こういう現状でございます。
  22. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大臣がおられませんので、事務的なことを先に聞こうかと思うのですが、ただいまの大臣のお答えでありますと、結局治水が重要である、治水が十分にできますならば、その当然な見返りとして利水も十分にいくんだ、こういうお話がございました。その理由として、現在の地方自治団体のいわゆる地方財政が十分でないということを申しておられたようでありますが、この点は私は話がたいへんおかしいと思うわけです。大体、都道府県治水事業をまかせると、財政力が貧弱であるから十分に管理が行き届かぬ、そういう点に問題があるならば、手をつけるとすれば、当然早急に地方財政を充実するという方向で問題を解決するということが正道ではないかと私は思うのであります。したがいまして、結局、地方財政計画において、治水基準財政需要額の見方が不完全であるということになれば、当然それを充当すればいいのであって、またさらには、現在直轄工事をいたします場合の負担率が三分の二であるけれども、これを四分の三に引き上げていく、あるいは五分の四に引き上げていく、いろいろな形で負担率を増大していって、地方財政に対する圧迫の度合いを引き下げていけば、管理権ということは別にして、治水ということは、そのような理由からいたすということであるならば、私は十分できるだろうと思うのであります。先ほど大臣の御指摘のような理由が主たる理由だといたしますならば、地方財政計画云々のほうは、所管が自治省でありますから、私は建設省にそのことをお尋ねすることは筋違いでありますから聞きませんけれども、そのかわり、建設省としてなし得る、現行体系で地方自治団体財政力が貧弱である、特に治水を十分にやらなければならぬ山間僻地をかかえておる後進県の財政力が貧弱であるとするならば、まずもって国庫負担率を引き上げる、こういう点を検討してしかるべきではないかと思うのです。そういう点はいままでどういう努力をなされました。この点をひとつお聞かせをいただきたいと思うのです。
  23. 山内一郎

    山内一郎政府委員 先ほど大臣から治水の点のお話がございましたが、現在のように台風がやってくるとすぐ災害が起きる、これはやはり全国の河川治水施設が貧弱である、これを解消するにはどういう方法がいいかということは、いろいろな観点から考えられますが、国の負担率の引き上げ、これももちろん重要であります。したがって、従来からもいろいろ努力をしてまいりましたが、今回の法案におきましても、従来一級河川に相当いたします上流におきまして二分の一以内の補助でやっておりましたような事業も、一級河川にした場合には下流の大臣管理区間と通じまして全部一様に三分の二にする、こういうように負担率の点ももちろん考えているわけであります。  なお、重要なことは、やはり水系一貫した計画をつくること。現在の河川法ではその点は十分じゃございませんが、まずもって一級河川の責任者というものを大臣にきめまして全体の計画を作成する、その計画に基づいて事業を実施していく、こういうふうに治水管理体系というものは非常に密接な関係といいますか、それをやらなければやはり治水完ぺきを期することはできない、こういうふうに考え法案を作成した、こういう次第でございます。
  24. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 水系で一貫した計画のもとに総合的な治水工事をやるためにこの法案を提案された、こういうお話でありますが、しかし、今回の法案を見ると、利根水系なら利根水系全部が、支流も含めていわゆる水系全般が一級河川なら一級河川ということにはならぬわけでしょう。この点はどうですか。
  25. 山内一郎

    山内一郎政府委員 その点は、利根川水系全部ひっくるめまして一級河川にする、こういう考え方でございます。
  26. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 しかし、この法律を見れば「「一級河川」とは、国土保全上又は」云々とありまして、「重要な水系で政令で指定したものに係る河川で政令で指定したもの」、ですから利根水系というものを政令でかりに指定しても、区間についてはさらに政令できめるのでしょう。とすれば、結局利根水系全部が一級河川ということでなくて、支川においては二級河川になる、あるいは二級河川でない市町村の管理する河川ということになる場合もあるわけでしょう。そうではないのですか。
  27. 山内一郎

    山内一郎政府委員 一水系水系ごとに一級河川、二級河川をきめていく、こういう考え方でございます。したがって、一級河川水系上流には二級河川はない、こういうたてまえでやっております。
  28. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 指定区間というものはないのですか。
  29. 山内一郎

    山内一郎政府委員 もう少し申し上げますと、重要な水系一級河川指定をいたします。そのうち重要な河川、政令できめる河川でございますが、やはり従来から河川法で取り扱っているような区域につきまして、これはやはり当然河川法で取り扱うべきである、こういうことで考えまして、一級河川のその区間というものはやはりそういうふうにきめてまいるわけでございます。そこで、そのうち知事さんに委任してもいいであろうという区間、これも管理の内容によりまして委任する事項をきめるわけでありますが、その一級河川河川のうち知事に委任する区間というものをきめますが、やはりそれは一級河川には違いない、そのうち知事に委任する管理内容というものをきめまして、知事さんにやっていただいたほうがいいというものはやっていただく、こういうたてまえでございます。
  30. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうなってくれば、今度はいわゆる工事の負担区分、これも当然違ってくるわけですね。そうでしょう。それも四分の三ですか。たとえば利根水系一級河川指定をする、その中に支川がたくさんあります。その支川のある部分を知事管理を委任をするといたします。その場合の国庫補助の負担率というものは一体どうなるか。
  31. 山内一郎

    山内一郎政府委員 知事に委任する区間における工事の国の負担率の割合、これは大臣管理区間と同様でございます。したがって、一級河川を通じまして、知事の委任区間であろうとも、大臣管理区間であろうとも、全部三分の二、こういうたてまえでございます。
  32. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうすると、具体的にお尋ねしたいと思うのですが、利根水系一級河川として指定をいたしますね。そうした場合に、群馬県内に流れておる川というものは、これは、すべての道はローマに通ずるというわけではありませんけれども、群馬県の場合、すべての川は利根川に通じます。そうすると、群馬県にございます利根川に流れ込んでおる水——水系ということばを使えば利根水系だろうと思うのですが、群馬県で利根川に流れ込んでおる川は全部これは一級河川であり、たとえ知事にある程度区間を委任をいたしましても、全部工事の負担区分については、いまお話がございましたような負担割合でもって措置をする、こういうことになるわけですか。
  33. 山内一郎

    山内一郎政府委員 そのとおりでございます。
  34. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ところが、私は直接聞いておったわけではないから具体的にはよく承知をしていないのでありますが、久保田議員が建設委員会において河川法についていろいろお尋ねをしたそうであります。知事意見を聞くという条項がございますね。そこで、群馬県がそんなに一級河川がいやならば一級河川からはずしてもいい、そうしてその場合、群馬県がいわば国の負担率が下がって損をしてもそんなことは知りませんよ、こういう筋の御答弁をされたということを聞いておるのでありますが、この点は一体どうなんですか。
  35. 山内一郎

    山内一郎政府委員 その点、私もはっきり記憶がございませんが、一つの水系一級河川か二級河川になる、ただ一級河川でも上流区間というものはきめるわけでございますから、その区間からはずれるということはあり得る、こういうことだと思います。
  36. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そういたしますと、水系の総合的な治水工事ができるといいましても、やはり区間によって都道府県管理をするところもできてくる。そういたしますと、従来の、いわば河川法によるところの指定河川準用河川、そういうものについて国が直轄工事をいたしております。こういうことで、実態からいきますならば、そんなに大きな差異はなくなってくるのではないですか。もちろん国の負担率につきましては、従来三分の二でありましたものが四分の三に、今度、治山治水十カ年計画ですか、それが終了するまでは負担率が上がってくるということ、これは違ってくるでありましょうが、現実にはそう違った姿にはなっていないのじゃないかと私は思うのです。  そこで、私はお尋ねをしたいと思うのでありますが、現在の河川法におきましても、この法律の第八条によりまして、主務大臣建設大臣が直接工事をおやりになることができるわけです。それがいわゆる直轄工事だと思いますが、そうなりますと、直轄工事をやって、たとえば多目的ダムなら多目的ダムをおつくりになる、そうした場合の利水関係につきましても、これは河川法の第六条でございますか、建設大臣が握るということになってまいるわけですね。それからまた、都道府県が工事を実施いたします場合についても、国庫補助がつくわけでございますから、そうなりますと、県が補助金の申請をやる、そうしますと、現在の体系におきましても補助金という一つのルートを通じまして、これは建設省の治山治水十カ年計画なら十カ年計画にのっとっておやりになっていくわけでありますから、当然どこの県でどういう工事をやっているということは、全部建設大臣が握っておられるわけでありまして、そういう意味で総合的な治水事業というものが行なわれていなかったということは、私は言いがたいと思うのであります。現在の法律においても、これは建設省意向によってすべて行なわれているわけでありまして、何か建設大臣意向に反して、県が一応補助金申請はして、計画の承認を受けたものをかってほうだいに変更して、建設省の意に従わないような工事をやったという事例がたくさんあるのですか。そうでなければ、私は現在のところ、現在の法体系においても、やはり建設省が握った一貫した治水工事というものが行なわれておった、かように確認をしてもよろしいんじゃないかと思うのですが、この点はいかがでございましょう。
  37. 山内一郎

    山内一郎政府委員 現行法におきましても、建設大臣管理あるいは工事できるという例外規定はございます。これはあくまで例外規定でございまして、原則は都道府県知事管理、こういうことになっているわけでございます。したがって、直轄工事をやる場合に、これはやはり計画をつくるわけでございます。水系一貫の計画の概略はつくりますが、やはり重点直轄工事をやる区間の計画、こういうことに相なってくるかと思われます。したがって、水系一貫の管理あるいは計画をはっきりだれかがやる、一級河川の場合は建設大臣でございますが、そういう場合はやはり現行法では不十分である、水系一貫としてやるためには、やはり管理権といいますか、それを建設大臣がとりまして、そのもとで一貫した計画をつくり、なお実際の工事にあたりましては区間をあげてやる。これもやはり一貫した管理というたてまえからそういうふうにやるようにする。これが新しい河川法考え方でございまして、その点だいぶん現行河川法とは違うわけでございます。そういう新らしい観点から法案考えた、こういうわけでございます。
  38. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 しかし、現在都道府県が施行している工事についても、それぞれ個所ごとに建設大臣の査定を受けまして、そうして工事の実施設計書というものを提出して、それにのっとってやっているわけですから、実態はあまり変わらぬのじゃないですか。それは、国が握ればそのほうがいいといえば、それはその程度の問題でありましょうけれども、しかし、現在のところ、すでに補助金というルートを通じまして、全国の計画というものはみんな握っておられるのですから、私は、水系ごとの総合的な治水計画をより強力に進める必要があるということになるならば、何も管理権まで手をつける必要はないのであって、現在の実施計画、そういうものに若干の不備ありといたしますならば、そういうところを手直しをしていく。特にいままで、そういった国の計画書に従ってやらぬで、かってに都道府県でもって事業を変更してやったという、そういうことはないでしょう。そういうことをやれば、これは会計検査なり、行管なり監査をいたしまして、その点は指摘をいたしますでしょうから、そういうことはあまりなかったと私は思います。そういった現行法の体系で、もっと詰めるべきところは詰めるという努力をせぬで、一足飛びに管理権ということになるのは、やはり飛躍があり過ぎるのじゃないかと思います。なぜ現行法をもっと手直しをして、水系ごとの一貫した治水工事の進捗が必要だというならば、そういう観点からの問題の処理の方法をお考えにならなかったのか。重ねて、実施計画書に違反した事例等が具体的にありましたら御指摘をいただく中で、さらにお答えをいただきたいと思います。
  39. 山内一郎

    山内一郎政府委員 従来、県でやります工事は、国が一部負担をいたしまして、補助工事としてやっておるわけでございます。したがって、建設大臣の実施認可をとってやっておる、こういうことでございまして、それに違反してやっていることがあるかどうかというお尋ねでございますが、そういう点は、改良工事については私はほとんど記憶はございません。ただ、申し上げたいのは、そういう補助工事を個所ごとにやっておりますが、それはあくまでその個所の計画といいますか、その線にやっておるわけでありまして、やはり水系一貫した計画の中のその個所ということにならないと、ほんとうの計画にはならない、こういうことを考えまして、一級河川管理者大臣のもとに一貫した計画をつくって、その計画に基づいて知事に工事をやってもらう部分をつくる、こういうことにいたしませんと、徹底的なことはできない、こういう考え方でございます。
  40. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そういたしますと、これはあまり画期的な変更ということじゃないと思うのです。今度新河川法になりましても、水系一級河川として指定をする、しかし、区間によっては都道府県管理をする個所もできるわけであります。そうなれば、今度はそれに対しては当然国が水系ごとの計画に従って、国の補助金を出して、そうして都道府県に工事をさせていくということになるわけでありますから、問題は、いままでの計画が水系ごとに治水計画がきちっとできておって、その計画に従って補助金をつけ、それに従って工事計画等もしさいに建設省が点検をして、そうして進めていくならば、現行法でも、水系ごとの一貫した治水計画というものは、当然なし得たと思います。そういう点について建設省が怠慢をしておって、何か管理権を握らなければ、一貫した計画が進まぬがごとき考え方をとることは、私は本末転倒ではないか、こう考えるのです。大臣がまいりましたからお尋ねしたいと思うのでありますが、現在の制度においても、国がそれぞれチェックをしておったわけでありますから……。
  41. 河野一郎

    河野国務大臣 わかりました。お答えいたします。  最初に私が申し上げましたとおりに、現行河川法におきましては、たとえば重要河川におきましても、水防上危険なところを指定をして、そうしてこれを管理するということにいたしておりまして、なるべく金のかからぬ方法で、そうして効果をあげるというようなことに重点が置かれておりますことは、御承知のとおりであります。ところが、私いつも例に出すことでありますが、たとえて申し上げますと、私が具体的に視察いたしたところでは、今回大阪−名古屋間の奈良経由の国道を計画いたしております。この道路で下がってまいりますと、伊賀の上野地帯、これから関へ入るところに川が流れております。この川は相当の川でございますけれども堤防がありません。そのわきに現に舗装したりっぱな道路がついております。一体こういうことはどうなんだろうかということになりますと、川のほうが非常におくれておる。道路は、いま申し上げるように、各地各所にますます完備されてまいります。ところが、これらを総合的に、治水の面におきましても、道路交通の面におきましても、一貫した国土計画を立てていかなければいかぬという感を私は非常に深くいたしまして、河川については、従来のように水防の面からだけじゃない、治水の面は全体を通じていかなければいけないのだ、したがって、重要な河川については、従来のように、河口だけは指定するけれども、上のほうは個所ごとに指定するようなことではだめなんだという感を深くいたしまして、そうして重要な河川は国でやろう、さらにまた治水の観念を——明年から治水新五カ年計画を立てるつもりでおりますが、新五カ年計画を立てる上におきましても、従来とは感覚を一変して思い切った国内全体を通じての水防計画を立てていこう、こういうことになりますと、先ほど申し上げましたように府県によって、これに投入していただける県の財政が一定いたしておりません。したがって、国のほうとしては相当な予算を取りましても、予算を通じて県がこの裏づけをしてもらうことができるかどうかということになりますと、必ずしも従来の例からいってそういかないというような面もございますので、国としても四分の三までは出すがいい。実は初めは、私は全額と思いましたが、これは地元負担の従来の慣行もありますし、また、行政の上においてそういうふうな考え方は捨てるわけにはいかぬそうでございます。これは財務当局意見として私は尊重いたしました。そういたしますと、地元の負担というものがどうしてもついてくる。したがって、なるべく地元負担を少なくして水防の万全を期する必要があるということにいたしますと、ここにどうしても河川法全体にわたっていかなければならぬという結論に達したのです。お話のように、いままででもいけるじゃないか、大したことはないじゃないかというお話であれば、いままででも絶対にいけませんということは申し上げません。国全体がそれに御協力願って、これには各地各様で、これを優先的に見ていただくということになればできるでございましょうけれども、御承知のとおり、道路にいたしましても、現に国道全体——国内に御旅行になっていただければ、道路も幅の広いところもあれば幅の狭いところもある。同じ一級国道でも、いいところもあれば悪いところもある。これらは県の責任者が道路に興味を持たれるか、水防に興味を持たれるか、それぞれの県の予算等の関係もありまして、現在のような状態になっておる。これじゃいかぬという意味から、いずれ明年は道路につきましても私は改正案を出して御審議をいただこうと思っておりますし、新五カ年計画も、道路治水両面にわたってやらなければいかぬと考えておりますので、この際河川法改正を提案いたしておるということについて特に御了承いただきたいと思うのであります。
  42. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 御指摘がありましたように、都道府県によって、その府県が道路に力を入れるとか、治水に力を入れるとか、住宅に力を入れるとか、あるいは工場誘致に力を入れるとか、重点の置き方により確かにばらばらな施策が行なわれておる点はあろうかと思うのです。しかし、大臣がいま御指摘になりましたような事例だといたしますならば、たとえば伊賀上野の近くでありますか、そういう個所がありまするならば、現行河川法の第八条によって、当然二府県にまたがる河川であり、建設大臣が必要と認めた場合には、直轄でもって工事をなし得る道は一般に開かれているのです。それからまた、さらに、そう当該府県財政力が弱いということになりますれば、そこに問題があるといたしまするならば、建設大臣は実力者大臣でありますから、単に建設省だけという狭い視野にこだわることなく、たとえば水源県地方財政力が弱いということなら、その財政力を強化するために、これは閣議において大いに御発言をいただいて、そして交付税率を引き上げるなり、あるいは治水に関する基準財政需要額を十分ふやして、当該府県財政力を強化する中でこの治水の工事を万全にしていく、こういうことが私はなし得ると思うわけであります。したがって、いきなり管理権の問題に手をつけるというのでなしに、現行体系において、たとえば水源県の財政力が弱ければそれを強化する、こういう観点をなぜお考えにならなかったか、この点ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  43. 河野一郎

    河野国務大臣 なぜ考えなかったかとおっしゃるけれども、考えろという世論のほうが圧倒的多数であるという事実は御認定いただけると思います。考えろという人のほうが多数である、考えるなという人のほうが少数であるという場合には、私は民主的に多数に従った。河川法改正については、今日世論は圧倒的に支持しております。この多数の意見に従って私は河川法改正を提案するのは正しいものの考え方だと考えております。
  44. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 世論の帰趨がどうあるかということについては、これはいろいろ主観もあろうかと思います。私も、新河川法建設大臣がお取り上げになりまして以来の各新聞社の論調あるいは社説等もいろいろ拝見してまいりました。オリンピックを控え、東京都の水道が非常に枯渇しておる、この現状を打破しなければならぬ、あるいは地下水のくみ上げによって地盤沈下が起こる、この地下水のくみ上げによって起こる地盤沈下というものは、大会社が自分の会社の利益のために、かってに地下水をくみ上げ過ぎるというところに私はむしろ本質的な問題があると思いますけれども、とにかく工業用水が足りない、こういう面もあることは事実でありましょう。ですから、治水、それに従うところの利水を解決しなければいかぬ、こういう主張は確かにございます。しかし、一面において、いま大臣御存じのように、臨時行政調査会において、国と地方との事務配分を一体どうする、これは地方制度調査会でも十分議論しておるところであります。それから、現在日本地方行政のネックとなっておるところを解決するためにどういう点に手をつけるべきかということは、臨時行政調査会でいろいろ議論しておる。また、首都圏の問題についてどうするか、この点についても同じような機関においてやはり検討なされておるわけであります。したがって、そういう機運があるわけでありますから、私は新聞論調等も拝見いたします。やはり自治権の尊重というたてまえで、治水利水は重大であるけれども、自治権の侵害という点については、やはり十分な配慮をしなければいかぬ、こういう記事も各新聞社の論調の中には相当多いのであります。ですから、私の考えを申し上げますならば、現行の体系において治水利水に不便がありといたすならば、その面の解決に力を尽くしていただく、そしていわゆる権限配分の問題については、いま私が指摘いたしましたような各省機関において根本的な検討をいたしておるわけでありますから、その十分な検討にこれをまかせていく、こういうことが私は妥当ではないかと思うのであります。建設大臣は特に——単に建設行政に限らず、日本の国政全般についても十分な広い視野をお持ちでありますから、こういう点についても十分思いをいたしてもよかったのではないかと思うのでありますが、その点はいかがでありましょう。
  45. 河野一郎

    河野国務大臣 地下水が非常に影響しておる、地下水のくみ上げについては順次制限を加えつつあるということは御承知のとおりであります。その影響のあるものは、それぞれはそれぞれの面によってこれを押えてまいるということは、当然しなければならぬことはやってまいっております。いま各種の審議会、調査会等で審議中であり調査中であるということでありますが、その点も私はその動向については十分考慮をいたしつつ、しかしその調査会で調べておるから、その結論が出るまで待つということはどうかと思います。それまでは行政担当者としては一切待たなければならぬということになれば、行政は全く停滞すると思います。それはそれ、その結論が出ました場合には出ました場合ということで考えていくべきであって、たとえば審議会において広域行政を、結論が出ましても、必ずしもそれが正しく実行できるか、実行できない、それじゃ待っておるか、待っておるわけにはまいらぬ、全体はもちろん待つ必要がありましょうけれども、その中の部分部分につきましては、むろん行政担当者としては結論を得てやってまいることが妥当であろうと私は考えるのでございます。これは一部の府県知事さんの中には反対の御意見もございます。しかし、他の知事さんの中には賛成の人も、あるわけであります。これは賛否半ばいたしておると申しますか、賛成のほうが実は多い。私も相当の数の知事さんにお目にかかっております。ことにまた地方自治とおっしゃいますけれども、今日の広域の市長さん、自治を担当しておられまする地元の市町村長に至りましては、ほとんど大多数の人が賛成をしていらっしゃいます。そういうような実情でございますので、私は自治権を侵害してこれをやることはいかぬじゃないかという御意見は、そのままちょうだいするわけにはまいらぬ、私も各地方の責任者にも相当の数の人にお目にかかっておりまして、その結果実はやれということに結論を持ったのでございます。
  46. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私も、何も臨時行政調査会が結論を出すまで、水系ごとの一貫した治水計画を進めることはストップをかけろなんということを申しておるわけではありません。この点は、大臣がいらっしゃらない間にも、河川局長さんともいろいろと議論もいたしたわけでございますが、問題は、その水系ごとの治水が十分いかないということならば、負担率を上げるなり、あるいは水源県の財政力に問題があるとするならば、その強化に力をいたすなり、あるいは建設省がいま補助金を出して国全体的な工事計画を進めておるわけでありますから、その計画が水系ごとに一貫性を欠いておるといたしますならば、その点について建設省自体として善処をいたしていくとか、あるいは補助金の負担率をもっと引き上げるとか、いろいろな形において打つべき手は幾らもあるじゃないか、そういう点を積極的にお直しになることについては、私は大賛成であります。そうして権限配分の問題については、しかるべき機関の答申にまつ、これが合理的な解決じゃなかろうか、かように私は申しておるわけであります。  同じことを繰り返すことは恐縮でありますから、さらに先へ進んでお尋ねをしたいと思うのでありますが、そういう形で水系ごとの一貫した治水計画が必要だといたしますならば、河川法を手直しするだけでは私はできないと思うのです。当然治水関係ある他の法律といいますと、多目的ダム法もございます。それから水資源関係の二法もございます。さらには砂防法もあれば地すべり等防止法もございます。そういった法律、たとえば多目的ダム法なら多目的ダム法を例にとってもいいと思うのでありますが、これについて今後一級河川、二級河川という形で分かれていった場合には、アロケーションの関係は一体どうなるのか、この点はこの法案では何らはっきり書いてないだろうと私は思うのです。そうでしょう。砂防法の場合も、砂防工事は一体その水系一級河川と二級河川になった場合にはどうなるのか、この点もわからぬと思うのです。そういう意味で私は、完全に総合的な水系ごとの治水計画を進めるということならば、なぜ多目的ダム法、水資源二法、砂防法、地すべり等防止法、こういったものの改正案を一緒に提示なさらなかったのか、きわめて遺憾に思うのであります。この点はいかがでしょうか。
  47. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知のとおり、河川法基本法でございますから、まずこの法案について御審議を十分いただきまして、そしていまお述べになりました他の法律の中で改正の必要の点につきましては、すみやかにその法案を整えて御審議をいただくという所存でございます。
  48. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 しかし、具体的に一級河川、二級河川ということになった場合には、多目的ダム法との関連は一体どうなるのか。一級河川に多目的ダムをつくる場合、二級河川につくる場合、国の負担あるいは発電会社の負担、関係都道府県のアロケーションは一体どうなるのか。その辺の構想だけは私はお示し願えると思うのです。そういうものが、多目的ダム法においても、水資源二法においても、砂防法とか地すべり等防止法においても、一級河川と二級河川になった場合はこうなるんだという、一応の見通しというものをお出しにならなければ、審議にならぬでしょう。この点は一体どうなんですか。事務当局でけっこうです。
  49. 山内一郎

    山内一郎政府委員 多目的ダムは、御承知のように、直轄でやるダムの法律でございますが、今度の河川法改正一級河川と二級河川と分かれるわけでございます。したがって、現在やっているものは、二級河川になった場合でも、これは暫定的に昭和四十四年まではできる。しかし、それ以後につきましては、現在の法案では、これはもう都道府県知事がおやりになる、こういうふうに改正されている内容でございます。したがって、一級河川については、従来の多目的ダム法を働かせまして、やはり直轄の洪水調節並びにほかの目的のダム関係の法律の点につきましては、同様に進めてまいる、こういうふうに現在のところは考えておるわけでございます。
  50. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 負担割合は、現行法と今度は、二級河川になった場合とどう違いますか。同じですか。
  51. 山内一郎

    山内一郎政府委員 負担の割合につきましては、河川法に今回、直轄工事でございますので原則的には三分の二、昭和四十四年までは四分の三、こういうふうになるわけでございます。したがって、それに関する多目的ダム法の負担の点については、当然今後の施行法によりましてあわせて改正するわけでございます。  なお、ただいま御質問のアロケーションの問題、この点についても十分検討してまいりたいというふうには考えております。  二級河川につきましては、先ほど申し上げましたように、直轄工事はできない、したがって、多目的ダム法を働かせる余地はなくなってくる、こういうふうに考えます。
  52. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうすると、現在多目的ダムの施行を計画しておる、それが二級河川になれば、四十四年までは三分の二ですか、従来の負担割合でもって暫定的にやっていく、それ以後はわからない、こういうことですね。アロケーションについては検討するというのでありますが、しからば他の関係の法律は一体どうなりますか。
  53. 山内一郎

    山内一郎政府委員 たとえば砂防法につきましては、やはり河川法改正されましたあと改正していかなければならないのじゃないか、こういうように考えております。ただいま御指摘もございましたように、一級河川水系の砂防工事あるいは二級河川の砂防工事、これをどういうふうに取り扱っていくか、こういう点については改正することが考えられるわけであります。
  54. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そういった改正案要綱は、この河川法案審議に非常に関係があると思うのでありますが、今度の衆議院段階における審議のうちに、一応建設省としては、こういう改正要綱を考えておるという原案を御提示いただけますか。関連法案全部についてです。
  55. 山内一郎

    山内一郎政府委員 河川法ができました場合に、関係する法律の改正すべき事項、これの基本的な問題は考えておるわけでございます。その点についてはお示ししてもようございます。
  56. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大臣どうですか。責任を持って衆議院の審議中にお示しをいただけますね。
  57. 山内一郎

    山内一郎政府委員 ただいまちょっと勘違いをいたしましたが、一級河川という字が現在の河川法にはございません。したがって、ほかの法律で一級河川という字を使う場合、これは当然改正しなければいけない、そういうような形式的な点については、現在準備をしております。ただ、それ以外に、基本的にどういうふうに砂防でやっていくか、そういうような点につきましては、やほり関係方面もたくさんございますので、現在のところは構想程度である。この点については今後十分検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  58. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大臣お尋ねをいたしましたら、局長が出まして、さっきの御答弁とはだいぶ違ったような御答弁をされて、非常に困るのでありますが、大臣、一体どうなんですか。
  59. 河野一郎

    河野国務大臣 事務的なことと考えまして、事務当局から答弁いたさせましたが、いま事務当局が答えましたように、他の関連法の中に一級河川という字がないから、これらについて変えるべき点は変えるということは、当然きめております。ただし、基本的な問題、今後砂防をどういうふうにやっていくかというようなことについては、いま構想を練っておるということでございます。
  60. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうなりますと、基本法であるという前提に立ってまずこれを出した、しかも、これを出した目的は、水系ごとの治水工事を総合的に進めていくというきわめて雄大な理由だったようでありますが、お尋ねをしておりますると、どうもしり切れトンボのような感じがなきにしもあらずであります。単に字句的に一級河川云々ということではなくて、とにかく、およそ水に関係する、河川関係をする法律というのは多数あるわけでありますから、やはりこれがこの基本法たる新河川法ができました場合に一体どうなるのか、この点を明確にお示しをいただかなければ、われわれといたしましても審議をいたす場合に非常に不安であります。この点はひとつ構想程度というようなお話ではなしに、少なくとも多目的ダム法、水資源二法、砂防法、地すべり等防止法、こういった法律について、水系が変わりました場合に、一級河川の場合においてはこの法律の関係はこうなる、二級河川関係においてはこうなるといった要綱を、国会の審議中に責任を持ってお示しいただきたいということを特にお願いを申し上げておきたいと思います。  それでは、あとに大ぜい質問者もおられますから、他の問題に移りたいと思います。  基本法だというふうに言われたのでありますけれども、この法律を拝見いたしますると、わずかに第十六条へいきまして河川工事等のところに「河川管理者は、その管理する河川について、」「当該河川河川工事の実施についての基本となるべき事項を定めておかなければならない。」こういうことが書かれておるだけでございます。治水と、しかもそれとうらはらの利水と二つの問題があるかと存じますが、しかし、基本法であると言われるこの法律を見ますと、わずかに工事実施計画のみをおつくりになるということだけしか書かれていないのであります。そうして利水等の問題はどうなるかということをずっと拝見をいたしたのでありますが、第三節へ参りまして、「流水の占用の許可」「河川の流水を占用しようとする者は、建設省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。」こういう規定だけでございます。工事実施についてわずかに基本計画を定めるだけであって、利水については基本計画の基の字もなくて、建設省令でもって定めるところによって許可を受けなければいかぬ、こういう規定しかないようであります。これでは、先ほど大臣基本法であるという趣旨を申されたのでありますが、それにしてはいかにもお粗末ではないかという感を免れぬのでありますが、利水に関して水系ごとに基本的な計画というものはお定めにならぬで、場当たり的に流水の占用は許可していく、こういうことになるのでございますか。
  61. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知のように明治二十九年から今日まで河川、水、これらについて法律が改正されずにまいっておりますために、また、この改正が非常に複雑であったために、これが改正が困難であったために、付随する法律がいろいろあることは、先ほどからお述べになりましたとおりであります。いま利水については、たとえば水資源法というようなものによって水資源をどういうふうに利用するかというようなことがついております。そういうものによってこれをいろいろ制約しております。さらにまた、御承知のように、一番複雑多岐であって、めんどうのありまする農業用水というようなものにつきましては、各種の慣行もありますし、各種のものがございます。したがって、問題は、現状のままで置いていいじゃないかという認識に立つか、少しでも世の中の変化に即応して、これを可能な限りにおいて使いやすい法律、実情に合う法律に直していくことがいいか悪いかの問題だけであります。それはいま申しましたように、農業用水に関するものを一ぺん全部洗い直してみたらどうか、これをやり直してみたらどうか、基本的に考え直してみたらどうかということになりますと、はたしてそういうものがよくできるかどうかという問題だと思います。私は、少なくとも私並びに現在の行政の面に立つ者の責任において可能な限りをやった。私は、それについても初めは相当のものを持ちましたが、これを調整してまいりますと、各方面からのいろいろな御意見もあります。どうしてもこの御意見は尊重して、現状で置いたほうがよかろうということについてはいろいろ妥協しております。したがって、御指摘のように、一体やれという立場に立って議論されるか、やるなという立場に立って議論されるかという問題だと思います。やるなという立場に立って議論されれば妥協したものがみな悪い。しかし、やるとすれば、もっと非難が多かろう、もっと反対論が多かろうということになると思います。したがって、法の精神はどこまでも河川法基本法であるということについてはどなたも御異論がない。ただし、その中で、先ほどもお述べになりましたが、一体なぜ砂防についてもっとやらないか。これは御承知のとおり、農林砂防もあれば、河川の砂防もある。その調整をするだけでもなかなか容易なことでない。私もいろいろ努力しておりますが、なかなか結論に達しません。そういうことをやっておってだんだんおくれることが、世の中のためになるかならぬかという問題である。そういう意味において、可能な限りこの際私はこの改正をしておいたほうがいいじゃないか、皆さんの最大公約数で改正した方がいいという立場に立っておりますために、いろいろ御批判もあろうと思います。しかし、そういう点も大体御了承できる程度のところで改正をしております。さらにまた、次に改正される時期もあるでしょう。今度は、五十年も六十年もたたないで、五年に一ぺんとか十年に一ぺん世の中の変化に伴って法律が改正されてくる、そうなるべきものだと思います。しかし、一応そう話をしておこうという意味で私は出しておるのでありますから、やはり理想的に、基本的に不十分の点もあろうと思います。しかし、そういう点も、私はあえてこの程度でやっておくこともいいのじゃないかという点において提案しておることは御了承願いたいと思います。   〔「わかる」と呼ぶ者あり〕
  62. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 わかるというお声もあるのですが、どうも初めのお話は、水系ごとの総合的な一貫した基本計画にのっとって治水の万全を期していくという、きわめて雄大なお話でありましたから、これに関連したお話を聞いていくと、やはり方々に突っかかったから妥協せざるを得なかった、その点は不備だ、こういうお話になっていくわけであります。竜頭蛇尾ということがありますが、初めのお話では、構想まことに雄大でございまして、非常に感心をいたしたわけでありますが、具体的に詰めてまいりますと、どうもしり抜けといいますか、非常にしり切れトンボに終わっているような点があるという気がしてなりません。  そこで、大臣お尋ねしたいと思うのですが、それでは、今回の改正案を出しました、どうしても直さなければならぬ、この基本的な点はどこですか。
  63. 河野一郎

    河野国務大臣 最初に申し上げましたとおりに、少なくとも水系ごとに行政を一貫しようじゃないか、その中で地方に委任して可能のものは委任しようじゃないかということでございます。これによって治水利水について一応の筋を通そうということでございます。
  64. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 治水についていろいろお尋ねしたのですが、利水について現行法でぐあいが悪いという点は一体どこでしょうか。
  65. 河野一郎

    河野国務大臣 これはいまさら私がここで申し上げるまでもなく、現在利水の面において、各地、各所においていろいろ不便があり、不満があり、議論があり、物議を起こしておるということは、一々枚挙にいとまがないのであります。
  66. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いろいろ紛争があり、物議があり、不満がある、こういうわけであります。よく例に引かれることですが、矢木沢ダムなんかの問題がありますね。計画をして着手をするのに十年以上の日子がかかったというようなことをいわれているわけです。私は事務当局お尋ねしたいと思うのですが、矢木沢ダムが一応の計画を立てて工事の着手に移るまでに十年以上の日子がかかった、その主たる原因は一体どこにありますか。それからまた、水に関連していろいろ紛争が起きたといいますと、これは有名な蜂ノ巣城がございますね。あの下筌ダム、あれがいろいろ紛争になっておる原因は一体どこにあるのか、この点ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  67. 山内一郎

    山内一郎政府委員 東京都が、だいぶ前、十年以上前かと思いますが、非常に水に困りまして、水道用水でございますが、小河内を建設したあと、さらに水源を求めるとすれば利根川水系に求めざるを得ない、こういうことで矢木沢の調査を始めた。これが初めかと思われます。その際、東京都から群馬県にいろいろ話があったのでございますが、なかなか話がつかないでずっと終戦後まで延ばされている、そういうような情勢でございまして、ごく最近になりまして、矢木沢ダムを多目的ダム法によって建設を始めるということでいろいろ話し合いをして、その結果やっと始まったばかりでございます。そういうふうに、数県にまたがる河川、その場合の水利権というのは、現在各知事さんがおのおのの区域を担当されている、こういう点はなかなかうまくいかないのではなかろうか、こういうふうに考えます。  なお、下筌ダムでございますが、これは水利の問題といいますか、現在水没地の補償の問題で難航している、こういう次第でございます。
  68. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 矢木沢ダムは、私の出身地の県でありますから、私も県会議員をいたしておりますときから関係をいたしておりまして、いろいろ事情は聞いておるわけであります。これは現行法が——群馬県内を流れておる川の管理権が群馬県の知事にあった、したがって、群馬県の知事がかってほうだいなことを言って、東京都に水を分けることについて難色を示した、そういう単純なことだけであの問題について割り切ることは、非常に実情に即さぬのではないですか。局長も御指摘をいたされましたように、これは多目的ダム法でおやりになる、そのもとの権限は何かといえば、現行河川法の六条、八条に従っておやりになればできることなんであります。ですから、国が、東京都という、国の首都という重大な問題について、水利について何とかしなければいかぬ、こういうお考えに立ちますならば、当然現在の法律によるところの権限を発動せられてやればできたはずだと思うのです。その場合問題は、その水を一体どう使うか、これは東京都の上水道にお使いになるのも工業用水にお使いになるのもけっこうだと思います。また、群馬県として農業用水に使いたいという希望、これもけっこうだと思います。問題は、その水の使い方で、その場合には、農林省とすれば、当然農林省が計画いたしております土地改良事業、そういうものにのっとってこの水を農業用水として使いたいという希望もあったでしょう。上水道ということになれば、厚生省としての御希望もあったでありましょう。それから工業用水ということになれば、通産省がみずからの行政の上に立ってお考えになる立場もあったでありましょう。また、建設大臣とすれば、現在の法律体系によっても、毎秒一トンの農業用水、一日二千五百トンの工業用水については建設大臣の許可が必要なわけでありますから、そういう点から建設大臣がこれに対していろいろと参加する道もあったと思うのであります。したがって私は、矢木沢ダムの問題を事例としてお引きになります場合に、単にあれが管理権知事にあったからという理由ではなしに、各省がそれぞれ進めておる計画、各省のいろいろなお立場、こういうものとからみ合って複雑に作用した、こういう点があったのではないかと思います。  そこで、私は大臣お尋ねしたいと思うのでありますが、この問題が単に管理権にあったというふうに割り切ることは間違いじゃないか、あの問題を解決するために、建設大臣並びに各省大臣がより調整的な立場をとって決断をいたしますならば、十分できたはずではないかと思うのでありますが、この点は一体どうお考えでしょう。
  69. 河野一郎

    河野国務大臣 矢木沢ダムについていろいろ実情があったものと考えます。それはお話のとおりであったかもしれません。しかし、少なくとも今後におきましては、先ほども申し上げましたように、水の利用度を増すためには多目的のダムをなるべく多数設けて、そして治水利水に裨益するということが必要であると同時に、さらに広域的にこれを利用するということについて思いをいたす必要があるだろうという意味合いで、たとえて申しますれば、農業用水でつくりました愛知用水が、工業用水に変わろうとしておるというほど時代は変わりつつあるのでございますから、そこに何省の所管であるとか、何省がどうであるとかいうことでなしに、順次政治の上におきまして、中央におきましても、これらを広い範囲において考えていかなければなりませんし、地域的に考えても、広い範囲で考えていかなければならぬというふうに、時代の変化に即応してすべてを考えていく必要があるという意味合いから、この際なるべく簡単にしておいたほうがいいという意味でございます。
  70. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そこでお尋ねしたいのですが、こちらからお話もあったように、結局これは知事から管理権を取り上げたからといって決して解決する問題ではないと思うのです。現に水資源二法によって利根水系水資源開発促進法指定する河川となりまして、これは総合的に水資源公団が工事を進めて、治水はもちろん利水の問題についても解決していくという河川に該当いたしておると思うのです。  そこで、経済企画庁の水資源局長がおられると思うのでありますが、矢木沢の問題を解決するためには現在の水資源公団でやることになっているわけでありまして、これは何も管理権が群馬県知事あるいは建設大臣に移るということには全く関係がなく仕事が進んでいくのではないかと思うのでありますが、この点はいかがでしょう。
  71. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 ただいまの御質問でございますけれども、矢木沢ダムに関しましては、どういうふうに建設していくか、どういうふうに水を使うかということは、すでに一応基本計画が片づいておりますし、その後着々と事業は進んでおることでもございますので、直接群馬県知事管理権云々という問題はさしあたりはないと思います。さしあたりはございませんけれども、今後利根川水系におきます矢木沢ダムのほかのダム、いろいろなことをやっていきます上におきましては、ただいままでたびたびお答えがありましたように、基本的には水は広域に考えるという点からいたしまして、水資源開発促進法のたてまえからいたしましても、管理権が国にあったほうがベターである、こういうふうに考えております。
  72. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それはおかしいと思うんです。たとえば、群馬県に限らず、利根水系上流県である栃木県でもけっこうでしょう、そこへ持っていって水資源開発公団がいろいろお仕事をなされる、それには開発促進法によって基本計画をお立てになって仕事を進めていくと思うのでありますが、そうした場合に、何も管理権建設大臣に移ったからといって、現行は知事にあるからといって、基本計画さえ定まればどんどん仕事は進んでいくのではないですか。私は変わりがないと思うのですが、どうでしょう。
  73. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 ただいまお答えいたしました中で、矢木沢ダムにつきまして、さしあたり別に問題はないと申し上げましたが、たとえば公団が仕事に着手いたしましたあとでも、やはり河川管理権が県知事にあるか国にあるかということは、その後の工事の進め方、工事に対する注文なり監督なりというような点で違ってまいる。先ほどのお答えは、むしろあるいはその意味では端的に、矢木沢ダムにつきましては別に今後支障はありませんと申し上げましたが、そういう意味では違ってまいると思います。でございますので、矢木沢ダムほか新しいダムをつくってまいります上におきましても、やはりこまかい点で、水資源開発促進法は時限法であります、河川法河川管理の基本を定めたものでございますが、今度の河川法改正によりまして、いままでの基本構想にありますように改正されたほうが、時限法である水資源開発促進法の運用におきましても事業が円滑に行なわれるということは、私ども十分に予想できると考えております。
  74. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私はいまの御答弁は全く逆じゃないかと思うのです。しからば伺いたいと思いますけれども、各地に建設省なり水資源公団なりが多目的ダムをおつくりになっておられます。どこでも問題になるのは水没地の補償の問題であります。その典型的な例が下筌ダムだろうと思いますけれども、問題は、ではいま群馬県内で矢木沢ダムにしろ、あるいは薗原ダムにしろ、下久保ダムにしろ、いろいろ工事を実施しようとなされておるわけでありますけれども、水没地の問題について非常に紛争がございます。これは何も高く売りつけろというような——そういう考えも全然ないと私は否定は申しません。そういうお気持ちも地元の人たちにありましょう。しかし、非常に問題なのは、農民の人たちが、水没をする、その際に、金さえもらえればいいというのでなくて、できれば代替地をもらいたい。金は一時であって土地は一時ではない、永久でありますから、単に一時の金をたくさんもらうということよりは、今後営農を続ける代替地をもらいたいとか、あるいは、全部は水没しない、一部分水没した、その場合に、他に就職して賃金をとる場所を与えてもらいたいとか、あるいは水没をしたことに関連をいたしまして道路のつけかえをどうするとか、あるいはその地域の総合的な開発を一体どうしてくれるとか、こういった主張といいますか、希望というものが非常に多い、かように自分の経験から考えておるわけであります。そうなりますと、問題は、他に代替地をさがすということになれば、これは建設省だけでやろうったってできっこない。したがって、水の行政というものは、縦割りの行政では至難である、これはやはり横割りといいますか、総合行政といいますか、こういうものでなければ問題は解決をしない。したがって、各省のダム建設につきましても、これは栃木県の五十里でもそうです。栃木県という地方自治団体がこれに介入をいたしまして、水没地を一体どうするとか、その地域産業計画は一体どうするとか、そういう観点から水没者に対して納得をさしていく、これが私は通常の例ではないかと思います。それでは建設省だけで水没の問題一切解決をしろ、それで十分に進みますか。
  75. 河野一郎

    河野国務大臣 いまさら申し上げるのもどうかと思いますけれども、県におやりいただくことはもちろんでございます。しかし、その際に、いまの農地の場合にいたしましても、やはり建設省から県、県からまた農林省、上がり下がりして、そして総合的に片がつくということになっておるのが現状でございます。それを建設省だけでできぬじゃないか。むろんできません。できませんけれども、今度の法律によりまして各省の御了解は十分得ております。したがって、各省と協議をしてやります。協議をしてやりますから、その際に、そういう点について御協力を願うのにより便利である。むろん県なしにものができるわけではありませんから、知事の御意見は十分承ってやるということにいたしております。すべての行政は県も国も一体でなければできません。しかし、その際にだれが一体その直接の責任者になるか、管理者になるかという問題だけでございます。したがって、それが県の御協力がなければいかぬことは当然でございますが、その責任者には建設大臣がなって、各方面の調整をとってまとめていくほうが便利であろうという意味でこうしておるのでございます。
  76. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 下筌ダムはどうも県がそういう形でめんどうを見ていないと私は聞いておるのでありますが、群馬県の場合は建設省にかつておられました人が現在技官でおりまして、この人を中心にいたしまして、県が総合行政という立場から、もちろん管理権が県にあるということもあったわけでございましょうし、水資源開発二法に指定をされてその地域ダムをつくるということになれば、これは管理権は県からは離れるようなかっこうになるわけでありますけれども、いままでのそういう慣習からまいりまして、当然県が骨身を惜しまず協力をすると申しますか、そういう立場から問題解決に非常に力を尽くしておるというのが実情じゃないかと思うのです。ですから私は、建設省管理権が移ったからといって、そういう水没地をめぐるところの紛争が、よりベターに解決をされるというふうに割り切ることは、危険じゃないかと思うんです。建設省のお考えも聞いてみたいと思うのですが、あわせて——水資源局長のお答えは、先ほどそういうお答えでございましたが、あわせてお聞かせをいただきたいと思います。
  77. 河野一郎

    河野国務大臣 いろいろダムの個々の例についてお話しでございますが、これは御承知のようにダムにつきましてもケース・バイ・ケース、建設省もしくはそれぞれにおいて要望がございましてやっておるのが今日わが国現状でございます。地元からぜひともつくってくれという場合もございます。したがいまして、条件はいろいろ複雑でございます。それは先ほど申し上げたように、わが国の場合にはこの利用の方法もしくはその実情によって非常に複雑である。したがって、ケース・バイ・ケースに考えなければならぬ場合が非常に多いということを申し上げたのはそのゆえんであります。したがって、一つの方向でこれを割り切るということは、他にもいろいろな特例というものがみなございますから……。しかし、総じて考えますのに、私は、今回ここに御審議いただいておりまする方向をまず定めておいて、そうしてそれぞれの重要度もしくはそれぞれの打開の方法に御協力いただくようにしてまいることが必要であろう、こう思うのでございまして、これを一つの方向でこうであろうああであろうというふうにおきめになりますと、また、当然他にそれと違った例が出てくるということでございますから、これはそういうように広くお考えいただくことが適当じゃないかと思うのでございます。
  78. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 ただいま水没地の補償の問題、総合開発の問題、それから管理権の問題のお話がございましたが、私ども、水資源開発促進法あるいは公団法によって仕事を進めてまいります際に、もちろん水没地の補償その他含めまして、総合開発あるいはかわりの土地を見つけるということも含めまして、いろいろ現地の実情に即して公団としても仕事を進めてまいらなければならないことはお話しのとおりでございます。ただ、おことばを返すようでございますけれども、その場合に、県知事管理権を持っていたほうが補償がうまくいくとか、あるいは総合開発がうまくいくとか、そういうふうなものではないのじゃなかろうか。やはり川は広域に考える、河川の総合開発ということを考えます際に、やはり上流、中流、下流、それぞれの立場考えまして、現地におきましても、また、各方面の利害関係を総合いたしまして考えていくわけでありますが、その点につきましても、補償の問題につきましても、やはりどうしても管理権地元になければならぬということにはならぬのじゃなかろうか、かように考えております。
  79. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 水資源局長にさらに重ねてお伺いしたいと思うのですが、原則的に話をしておったのでは、いろいろあれかもしれませんが、ではなぜ上流県知事が、あるいはその上流県知事に限らず、住民全体が、今回の河川法の問題について非常に大きな懸念を持つか、私はその理由を水資源局長も十分お考えになっておられると思うのです。私の考えは、先ほど大臣にもお尋ねをいたしたのでありますが、今回の河川法治水について、いわゆる河川工事について基本計画を定めるということは書いてあります。書いてあるけれども、利水についての基本計画という問題については全く触れておりません。それで、水資源局長もよく御存じのように、水資源開発促進法で基本計画を立てる、その場合に、管理権を持っておる都通府県からいろいろな希望条件が出ます。それがかえってじゃまで、建設大臣管理権を持っておったほうが、基本計画を定める場合に便利じゃないか、こういうことを水資源局長は言いたいのだろうと私は思うのでありますが、問題は、少なくとも経済企画庁ということになれば、それでは日本国土全般を考えた場合に、いま東京都に水が足らない、それでは何でもかんでもいま東京都に水を持ってくることが大切だ、そういうことだけで——東京都という都会が、世界一の大都会になるというようなめちゃくちゃな膨張を続けておるわけでありますが、そういった都会に対して人口が集中するという問題もさっぱり手をつけずにおいて、そしてとにかく水を東京都へ持っていけばその場だけはしのげるのじゃないか、こういうことでは問題は解決しない。やはり日本国土全体の総合計画を立てていく。そうすれば工場分散とか、あるいは建設大臣がいま進めておる官庁街の分散とか、いろいろなことがやはり問題になるのだろうと思います。そうした場合に、それでは現在水資源の、いわば上流にあるところの群馬とか栃木というような後進県についても、その県が将来開発を進めていく場合に、当然工場誘致もしなければならぬだろう、そうした場合に、工業用水もこの程度はやはり確保しておきたいのだ、こういうことを考えるのは、その地域開発計画を進める場合に私は当然ではないかと思うのです。ところが、そういう問題について、今度の新河川法を見ても、それでは利水について、国土全体を総合的に開発をしていくという場合の配慮というものがあるかといえば、全くありません。工事の基本計画は立てて、治水利水だけはどんどんやっていくけれども、それではこの水源県に対して総合開発を一体どう進めるか、これについては全く——もちろんそれはこの法律とは関係ないと言えば、そうかもしれませんけれども、そういう配慮が、この法文全体を見ても、さっぱり流れておらぬ。こういうところに私は問題の一つの焦点があるのではないかと思います。  それで、私は水資源局長さんにお尋ねをしたいと思うのですが、問題は、そういう後進地域開発計画の促進について、日本全体が、政府全体が、親切なプランを示してやっていく、そういう配慮があるかないかというところにやはり問題があるのではないだろうか、こういうふうに考えます。特に経済企画庁立場から、いま私が申し上げたような点についてお考えがあればお聞かせをいただきたいと思うのであります。だからといって、そういうブウブウ言うようなかってな要望を押え込むのに、水利権を大臣のほうに持ってくれば問題は早く片づくではないかというふうに割り切った考え方を経済企画庁では持っておるのか。この点もひとつあわせてお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  80. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 水資源開発促進法でも、もちろん緊急に広域に水を必要とする地域に水を供給することになっております。その場合に、総合国土開発計画、後進地域開発を含めまして、そういう計画を十分に取り入れて総合して考える、これは当然の立場でございますし、私どももさように考えておるのでございます。先生お話しの、上流県開発のために水をとっておかなければいけないので、そのために上流が文句を言うのは企画庁としては困るのだろう、こういうお話でございますが、いろいろな計画がございまして、それに上流、中流、下流、いろいろな意見が出てまいります。それを総合調整してまいるわけでございますので、その辺が私どもの仕事のやり方の一番むずかしいところでございます。ですから、川を広域に考えるということがやはり私どもとしては一番大事なことだと思っております。
  81. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それでは、水資源開発二法によって総合的に水を開発利用するという大看板で進めました水資源公団についてお尋ねしたいと思うのですが、国が出資をしましたお金は一体幾らですか。
  82. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 昨年度三億、今年度二億でございます。
  83. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 たった五億。五億で、利根水系淀川水系を含めた膨大な工事が一体できるのですか。あとの資金は一体どうしているのですか。
  84. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 出資というお話でございましたので、三億、二億と申し上げました。これは政府出資金でございます。そのほかに、もちろん政府の預金部からの借り入れ金その他ございます。公団の事業量としては、昨年四十億、ことし百十億でございますが、そのうちの約半分ぐらいは借り入れ金がついている、かように考えております。
  85. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 工事量のうち政府資金から、財政投融資からまかないます資金と、それから東京都に水を持っていくという場合の導水路その他については、自治体に持たせる部分が相当多いと思うのですが、この点は、一体昨年、ことし幾らぐらいになっておりますか。
  86. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 ことしは東京都に水を引きます導水路が計画されましたので、この場合には、東京都がかなり負担能力があることを考えまして、借り入れ金のほかに東京都が公団に金を出して公団が仕事をする、かようにしております。
  87. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 数字でもってお示しをいただきたいと思うのですが、矢木沢ダム、それから下久保ダム——水資源公団が実施をいたします工事ですが、全体計画で資金が幾ら、そのうち水資源公団自体が借り入れ金として政府資金からまかないます資金が一体幾ら、それから、東京都をはじめとする地方自治団体に持たせます資金が一体幾ら、この数字を、二つのダムを対象にしてでけっこうでありますから、工事量全体についての資金計画をひとつお示しいただきたいと思います。
  88. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 ただいまの御質問で八木沢ダムで申しますと、三十八年度で十五億でございますが、そのうち、国の治水関係の交付金七億、それから東京都の関係の負担金が約四億、そのほかに電気の受託金が四億六千ということになっております。  それから導水路の建設費用でございますが、三十八年度におきまして五十二億、そのうち東京都の負担します分が二十八億でございます。あと借り入れ金でまかなっていく、こういう計画でございます。
  89. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そういたしますと、水資源公団が実施をいたしております工事、三十八年度についても、導水路並びにダム建設で、工事量全体が六十七億になりますね。そのうち、自治体に持たせる分が三十二億、約その半分近くに当たっているじゃないかと思います。私は、水資源公団、水資源二法に基づいて利根水系淀川水系というものを指定をし、これについて総合的な治水利水の工事を進めていくという、特に水資源公団の場合は利水が中心でありましょうが、非常に大きな構想を持った仕事にしても、国が出資をいたします金額は、昨年、本年でわずか五億であり、資金量の大部分も自治体に持たせる、こういうような形で仕事を進めているという現状を拝聴いたしますと、結局、水資源公団というものができましても、当然都道府県がやるべき仕事について、単に肩がわりをしているだけの話であって、積極的な意義が非常に乏しいのではないかということを残念に思うわけであります。しかも下筌ダム現状については、いろいろ御存じだと思うのでありますが、あの紛争の解決に当たって、総合調整を進めているところの地方自治体が果たした役割りが大きいということも、これは水資源局長さんはよく御存じだと思うのです。そういたしますと、先ほどお話しがありましたように、管理権が中央に移るか自治体にあるかというようなことによって、水資源公団あるいは基本計画のお仕事が非常にやりやすくなるかどうかというようなことは、先ほど私が指摘したような、上流県がたまたま将来の開発のために水をある程度確保しておきたいというようなことを注文をつけるのがなくなるだけの話であって、実質的にはあまり意味もない話じゃないかということを、私としてはどうしても訂正するわけにはいかないじゃないかと思うのであります。  そこで、今度は、河川局長さんにお尋ねいたしたいと思うのでありますが、下筌ダムは、何であんなに大きな紛争になったのですか。
  90. 山内一郎

    山内一郎政府委員 先ほども簡単には触れましたが、水没地の補償の問題といいますか、現在は主としてダム地点の土地の所有者とその補償関係、こういうことで現在紛争中であります。その他にもいろいろございますが、現在の焦点はダム・サイトの土地の所有権者との補償の関係、こういうことでございます。
  91. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 熊本県は、この問題解決のために積極的に関与し、努力をいたしておるのですか。
  92. 山内一郎

    山内一郎政府委員 ちょうどダム・サイトが大分と熊本県の県境にございますが、両県とも紛争の解決のために努力をしてもらっております。
  93. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしましたら、今度はあそこは管理権建設大臣に移った一級河川ということになるかならぬか知りませんが、一級河川になって管理権建設大臣の手に握られたという場合には、問題解決は早い、こういうふうにお考えですか。
  94. 河野一郎

    河野国務大臣 その問題は、建設大臣管理権が移ったからすぐ解決するというふうには必ずしも考えておりません。
  95. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そういたしますと、河川管理権が移りました場合に、ダムの構築というような問題についていろいろ紛争がある、しかし、これは大臣も言われたように、ケース・バイ・ケースであって、都道府県管理権を持っておったほうが、親身になって都道府県がこれに関与し、積極的に水没地の代替地等の問題の解決あるいはその地域の雇用の促進というような問題の解決に当たるために、かえって問題がスムーズにいくという場合もあるし、それから下筌ダムのごとく、建設大臣の手に移ったからといって問題の解決がよりベターになるという見通しもないし、いわゆるケース・バイ・ケースであって、いいこともあろうが、悪いこともあるかもしれぬ、これは管理権の所在が一体どこにあるかということであまり変化のあるものではないのだ、建設当局のお考えは大体そういうことだ、こういうふうに理解してよろしいわけですね。
  96. 河野一郎

    河野国務大臣 問題の性質から、いまのように割り切っていただくことは非常に迷惑でございます。これは事情おわかりのとおり、特定の、最もめんどうのような紛争のありますものを持ち出して、これはどうだ、これはどうだと言えば、そういうわけにはいきません。先ほど申し上げたとおりでありまして、ダムごとに原因が違っております。違っておりますものを、総じてどうだと言えば、総じて管理権建設大臣になったほうがよろしいという解釈はありますけれども、しからば、このダムはどうだとおっしゃれば、そのダムの紛争の原因がみな違いますから、違うものをもって、建設大臣がやるほうがいいとか、知事がやるほうがいいというわけにはまいらぬ。しかし、いずれにしましても、みんなで協力してやらなければいかぬということだけは明瞭でございます。
  97. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 最後のお答えが私は非常に重要だと思うのです。やはりみんなで協力をして、総合的に問題の解決を進めていく、私はそのことがやはり一番問題じゃないかと思うのです。そうなりました場合に、いま全国知事会等で、いろいろ私どものところに希望、要望等を言ってまいっているわけであります。過日の参考人の陳述を——たまたま国会の事態がああいうことでありましたから、私ども全部聞くわけには参らなかったわけでありますけれども、新聞その他の報道を通じましてそのときの模様を拝聴いたしておるわけであります。それは知事さんの中にも、大臣御指摘のように河川法改正といいますか、新河川法方向について賛成であるというような御意見の方もあることは、これは私も決して否定するものではございません。しかし、知事会全体といたしますと、問題は、私が先ほどしばしば指摘をいたしましたように、現行河川法の体系でいっても、問題を解決しようとする努力をいたしますならば、これはなし得るのではないか。いま直ちに管理権に手をつけるということは、地方自治の本旨、また水の行政が縦割りの行政ではなく、総合行政だという立場から、まずいのではないか。これが知事会の公式的な意見としては出されておることは、大臣も否定はなさるまいと思うのです。知事会の公式的な意見、要望というもの……。そうなりますと、しかも、その知事会の中で特にそういう御主張をされるのは、これは利水県というよりはむしろ水源県であることは私は当然だろうと思います。そうした場合に、これから管理権大臣が握られて、こうして治水を積極的にお進めになるためにいろいろな構築物をおつくりになる。あわせてそれが利水とも関係をしてまいります。そうした場合に、大臣の言われたように、みんなが協力をするというたてまえ、それからいけば、何か今度の管理権大臣に移ることについて——これは現在の河野建設大臣であれば、実力者大臣であり、全般についても非常に積極的なお見通しを持っておやりになるから、安心ができるかもしれませんけれども、建設大臣河野さんの専売特許であるわけではないので、だれがなるかわからぬわけでありますから、それを実質的に動かしていくのは建設省のいわばお役人ということになるわけであります。そうした場合に、何か水行政というものが官僚的な方向が強くなって、そうして現在の地方自治の本旨にのっとって総合行政をやっているというたてまえが非常にくずされていく、そういうことについて非常に不満を持っている。水源県の地域に今度いろいろな構築物をおつくりになるという場合に、いま大臣が言われたように、みんなが一致協力してこの仕事を進めていくということに、はたしてプラスになるのかマイナスになるのか、私はおのずから結論ははっきりしているのじゃないかと思うのです。この点は一体いかがでしょう。
  98. 河野一郎

    河野国務大臣 議会でそういう御発言がありますことが、地方に不安を与えるゆえんであるのではなかろうか、私は建設大臣立場を離れて、衆議院議員として、建設省の役人がどっち向くだろう、こっち向くだろうというようなことを、少なくとも議会は見のがしてはいかぬ。議会が、そういう方向に向いてはいかぬということについてきびしい態度で監督する以上は、そういう方向にいくはずがない。ますます民主主義の発達してまいります時代におきまして、官僚主義がだんだん力を持つだろうというようなことを私は想像したくないのであります。いまお話しでございますが、最初に建設省から出しました、私が出しました案につきましては、各知事さんからいろいろ御意見がございました。そこで私は、その御意見を十分いれまして、そうしてこれについて相当の修正を加えました。これは先ほど申し上げたとおりであります。そういうふうに各知事さんと談合いたしました結果、知事さんの御要望をいれようということで、最大限に私は知事さんの御要望をいれておるつもりであります。したがって、いよいよこれを実施する段階になりましたならば、おそらく私はどの知事さんもそう反対はないのじゃないかというふうに思うのです。たとえばこの川によって得る収入はどうだ、これはもとどおりに、全部現状どおりもとに戻しましょう、将来の分についても県の収入にいたしましょう、それぞれの河川については、知事さんの御要望があれば、それぞれの管理を委任いたしましょう、これも知事さんの御要望があれば十分御要望にこたえてよろしいと私は思います。それから、どうしてもこの川は自分のところでやっていきたいというようなことであるならば、よほど問題がない限りはそれでいいのじゃないかと思うのです。国としてぜひこうなければならぬという問題のある河川はごくわずかだ、しかも、それはいずれも、いまの利根川水系淀川水系というふうに、水資源として、適用河川として順次これを指定してまいることになるだろうと思います。いずれそういうことと思いますが、ただこの法案につきましては、基本法でございますから、それを総じて方向を示しておるということでございまして、個々の問題につきましては、たとえばいまだんだん御主張になっております利水の問題等につきましては、いずれもこれは水資源をどう扱うかという問題をこの法律によって順次適用を受けていくようになるだろうと思うのでございます。ただ、最初から私が申し上げますように、治水の面については、どこまでも万全を期したいということから、私はこの法律を実施することによって、河川の改修もしくは水防の強化の上において、国家の負担が少なくとも百数十億、もしくは現状のままにおきましても二百億近いものがふえていくだろう、それだけ地方地元民の負担が減るだろうということだけは間違いがないと思うのであります。そういう意味において、私はぜひ世論の要望にこたえてこの法律を実施したいという情熱を持っておるわけでございます。
  99. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いろいろお話がございましたが、たとえば負担が、国の支出いたします資金が、百数十億ないし二百億ふえるだろう、その分だけ都道府県の負担が減るだろう、住民の負担が減るだろう、こういうお話でありますが、問題は、現在の地方財政制度は非常にぐあいが悪くて——ぐあい悪くというか、ぐあいよくというか、見方によって違うかと思いますが、できておりまして、では国庫補助率が三分の二から今度は国が直轄でいたします場合に、一級河川四分の三ということになる。そういたしまして水利使用料はそのまま都道府県に入る、こうなりますと、それではその分だけ、国庫負担率が上がった分だけまるまる都道府県の財政に寄与するかということになりますと、現在の法の体系では、その分だけ河川に関する基準財政需要額が減ってまいるわけであります。そういたしますと、交付税の算定の計算からいきますならば、その分だけやはり落ちるわけでありますから、その分だけ地方財政に寄与するというようにお考えになることは誤りだと思います。きょうは自治省が来ておらぬようでありますから、この点はまたあとで、国庫負担率が上がることについて、その分だけ地方財政にどういう影響があるだろうかということは、あらためてお尋ねいたしたいと思いますが、その分だけまるまる都道府県財政力の強化ということになることはないのだ、このことだけはひとつ十分御理解をいただきたいと思うのであります。
  100. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、現在の地方負担において水防、治水が非常に不十分である、これは年々歳々起こりまする水害によって御承知のとおりであります。したがって、これだけ地方現状どおり負担していらっしゃっても、これだけ中央から負担率を増してまいれば、現在どおりにおいて地方の水防力が非常に強化することになるということは考えられるのではないかと思うのであります。
  101. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 具体的なことは自治省が参りましたならばまたお尋ねするといたしまして、先ほど大臣から御指摘をいただきました官僚云々のお話でありますが、この点は大臣お話しのとおりですね。私ども国会がそういう点の監督についてやはり力を尽くしていくことがわれわれの任務でないかというお話は、そのとおりでございまして、特に河野建設大臣が、日ごろからそういう点につきまして非常な御熱意を持っていることにつきましては、私ども非常に尊敬をいたしておるわけでございまして、その考え方は、私はそのとおりだと思うのであります。ただ、私は、大臣がせっかくそういうりっぱな考え方を持っておるにかかわらず、残念な事例を幾つか耳にしておるのであります。それは、今回の河川法の問題について、当初、都道府県知事がいろいろと反対をいたしました。知事会としては反対をいたしました。現在におきましても、部分的には知事会の御意見は取り上げられたとはいうものの、原則的には知事会の要望があのような姿になっておることは、大臣も御存じのとおりであります。ところが、現在、都道府県知事というのは、——私は、この点は都道府県知事の姿勢が悪いといわざるを得ないと思うのでありますが、国の補助金をもらう、あるいはいろいろな、たとえば新産都市指定等について陳情に出かけてまいります。そういう立場から、何か、各省に対して都道府県知事が弱いような立場に思っている知事さんが多いことを、私は非常に残念に思うのであります。たまたま、そういう気持ちに便乗するということはどうかと思いますけれども、そういう形で、あなたのところで新産都市指定を受けたいのならば——建設省は、少なくともこの指定については行政大臣立場にあるわけであります。大臣が言われたのじゃないと思いますが、たまたま建設省のある局長にある知事さんが会ったところが、この新河川法に賛成するかどうかということと、建設省行政大臣立場でこの新産都市指定について賛成をしていくということと同じなんだ、こういうことを言われた某局長があったそうであります。それから、さらに道路の補助金あるいは住宅の補助金等をもらいに、各県の知事あるいは各県の部長等が、建設省のそれぞれ該当の局長のところを訪れる、そうした場合に、この補助金の問題と、新河川法に対して、あなたの県がどういう態度をとるかということとは関係があるのだ、こういうことを言われた人もある、こう言うのです。私は、大臣が直接そういうことを、言ったことはないだろうと確信をいたします。また、大臣局長をしてそういうあほうなことを言えと言ったようなことはないと思うのであります。しかし、現にそういう局長がある。こういうことについて、先ほどの官僚制云々という大臣念願のお考え方として一体いかがでございましょう。
  102. 河野一郎

    河野国務大臣 どういうことの間違いか存じませんが、たとえばいまお話しになりました新産業都市は、総じて河川法賛成の地域でございます。新産業都市指定を受ける県知事さんは、大体、われわれが調査するところによりますれば、河川法が云々される県ではございません。(発言する者あり)御発言でございますが、私は皆さんの御質問を明確にするために申し上げておるのでございます。私も新産業都市選定の関係閣僚の一人でございます。したがって、新聞等でも御承知のとおり、われわれが調査いたしております新産業都市は港を持たないところは少ない。それは、よくないじゃないか、いいじゃないかという議論はあります。議論はありますけれども、方向としては、海岸線に沿ったところに新産業都市指定重点が置かれておることは間違いございません。したがって、海岸線のあるところに河川法反対府県は少ないと思います。おおむね賛成でございます。したがって、河川法賛成、反対に、新産業都市の問題が持ち出されるということは、私は想像できません。ただし、他の道路とか住宅というようなことは、これは私は存じませんが、しかし、少なくとも私が建設省をお預かりいたしております以上、局長が賛成であるとか反対であるとかいうことは、問題ではございません。すべては私の全責任においてやります。したがって、知事さんが、局長さんがどう言ったとかこう言ったとかいうことをもって云々されることは、知事さんの御反省をいただきたい。もしそういう御意見があったならば私はいつでもお目にかかりますから……。私は知事さんの面会の御要望のあった際、決してこれをお断わりしたことはない。なるべく時間をさいて知事さんの御意見を承ることにしております。しかし、遺憾ながら私のところに反対と言っておいでになった知事さんは一人もございません。はなはだ遺憾だと思います。しかも山梨県の知事さんのように、全く見当の違った反対論を述べておられる、これではしかたがない。私が承ったのはこれ一つでございます。どこの知事がどうだ、どこの知事がどうだとおっしゃれば、私は一人々々の知事さんについて、人を通じて、もしくは私自身がお目にかかって、いかがでございますかと言って伺っております。ところが、この法律を改正して、最終的にこういう法律案で国会に提案しようと思うがどうであるかと言って私が伺って御了解を得て、だんだん多数の知事さんの御了解を得ております。最初は確かにお話のようでございましたが、最終的には多数の知事さんの御要望も相当考慮いたしてやっておることでありまして、多数の知事さんの意見を無視して法案を提案いたしたというようなことは決してございません。
  103. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 河野建設大臣は実力者大臣ですから、中央に直結すると称する各都道府県知事さんが、大臣の前へ出て堂々とその所信を述べるということは、相当心理的に抵抗を感ずるではないか。中央に直結するなんと言っていない人は別かと思いますけれども、そういうことを言う人は抵抗を感ずるではないかと私はひそかに感ずるのであります。それはそれといたしまして、調査をしてみたところが、新産都市指定の県の知事さんは大体賛成のようだというのでありますか、建設省ではどの県がこの新河川法について賛成なのか反対なのかということを御調査なされたのでありますか。また、何か調査をするということは、調査のしかたによりましては問題があるではないかと思うのであります。いま一つ、局長さんでそういうことを言っている方が現にあるわけであります。そういうことについて、建設省の各局長さんを監督する立場にある大臣として、そういうことを述べる局長がはたして適切であるとお考えになるかどうか、この点もあわせて——御答弁が落ちたようでありますので、お聞かせ願いたいと思います。
  104. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、各知事さんが賛成であるか反対であるか調査をいたしたことはございません。私は多数の知事さんに御面談申し上げたことは申し上げております。したがって、あの知事さんはどういう御意見であるか、この知事さんはどういう御意見であるかということを、人を通じまして、また、私自身が承っておる知事さんは相当に多数ございます、こう申し上げたのであります。  それから、局長の中に、そういうことを行政上申し上げた局長があるとすれば非常に遺憾でございます。不適当でございます。ただし、まさか局長ともあろうものが、行政処理の必要上そういうことを申し上げるとは私は考えないのでありますが、これはよく調査をいたして善処いたします。
  105. 福永一臣

    福永委員長 この際、午後一時半まで休憩いたします。    午後零時五十九分休憩      ————◇—————    午後一時四十四分開議
  106. 福永一臣

    福永委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山口鶴男君。
  107. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 最初に自治省のほうがお見えになっておるそうでありますから、事務的にそちらを先にお尋ねしようかと思います。  今回の新河川法によりまして、一級河川指定されました水系の工事負担につきましては、四十四年度までは四分の三ということになりまして、現行の三分の二から見ますと、確かに国庫の負担率は上がるわけでありまして、百六十億ないし二百億、現行の工事量をもっていたしましても、それだけ国が支出する分がふえ、相対的に都道府県の負担というものが減少するのではないかという建設大臣のお話があったわけでありますが、問題は、確かに国庫負担の額は二百億円程度増加するかもしれません。それからまた知事会等の要望が一部いれられまして、当初案では水利使用量は国が取り上げるということだったのでありますが、これも都道府県の手に残されたわけであります。そうしますと、何か百六十億ないし二百億というものが、そのまま都道府県の財政に寄与するように考えられるのでありますけれども、しかし現在の地方交付税法のたてまえから申しますならば、国の負担がそれだけ増加をいたしますならば、当然それを地方財政計画上には国庫負担の増という形で見込むわけでありますから、したがって都道府県治水に要する経費というものは相対的に減少してくる。そうなりますと、国の支出金はふえますけれども、結局交付税で見るところの基準財政需要額というものは相対的に減ってくるわけでありますから、地方財政に対して百六十億ないし二百億円というものが、そのまま寄与するということにはならぬのではないか、かように私は考えるのでありますが、この点ひとつ自治省の財政当局のお考え方をお聞かせいただきたいと思うわけであります。
  108. 茨木広

    ○茨木説明員 今回の河川法改正されますと、具体的に河川指定等については政令段階をもって確定することになっております。したがって、それらの確定を待ちませんと、幾らの額が国庫補助としてふえますかということは、最終的には確定しないというふうに考えておりますけれども、一応全体の筋といたしましては、ただいまお話がございましたように、四十三年までの間におきましては、改良事業費について四分の三という暫定の制度がとられますから、したがってその分については地方負担が減ってまいると思います。そこでその帳じり全体の問題については、現在の仕組みにおいては、御案内のように地方財政計画全体といたしましては、帳じりを合わせるわけでございますが、それは毎年その年その年の事業量に応じまして計算をしてみるわけでございます。ただし、現在の河川の経費の状況を見てみましても、地方負担額と水利使用量、それから基準財政需要額に織り込んでおりますもの、こういうものを合算してみますと、地方負担額に対しましては、なお全体としては足りぬ部分が出てまいるわけであります。それらの分については、地方債でもって補助事業債あるいは直轄事業債の形で措置しておるわけでございます。したがって、国庫補助がふえてまいりますと、その分が減らしてよくなるのではないかという考え方をいたしております。したがって、全体としてみますと、やはり地方団体といたしましても、今回の改正によって益する部分が財政上は出てくるのではなかろうかというふうに考えております。
  109. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それに関する概略の試算というものはまだやっていませんか。
  110. 茨木広

    ○茨木説明員 先ほど申し上げましたように、河川の何本が指定になるかという点がまだ未決定でございますので、そういう意味での正確な試算は、申し上げられるようなものはでき上がっておりません。
  111. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 建設省事務当局お尋ねしたいと思いますが、大臣が百六十億ないし二百億と言いましたが、もちろん幅があるわけですけれども、その一級河川を一体何本にした場合ということを一応計算をしなければ、百六十億ないし二百億という試算はできぬはずだと思うのでありますが、この場合一級河川の何本の水系を一応指定するのか、百六十億ないし二百億というものに見合う水系指定のお考え方というものは一体どうなっておるのふ、この点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  112. 河野一郎

    河野国務大臣 私は百六十億ないし二百億という用語は用いません。そう決定づけられると非常に残念であります。私の申し上げましたのは、詳細に申し上げますとこういうことです。現行の重要河川指定いたしておりまするものを、三分の二を四分の三に切りかえますと、大体百億くらいの国庫負担の増になる。これは大蔵当局の御意見でした。そこで私は新たに新五カ年計画を実施するつもりでございます。したがって、その際には、現行の個所よりも、水系ごとに全体的にやってまいりますから、広範にわたることは当然でございます。そういう推論からいたしまして、百五、六十億ないし二百億くらいの負担の増になるだろう、こういうことを申し上げたのでございまして、これは初めからおわかりのとおり、あくまでも知事の御意見を承りつつ河川審議会の議を経て一級河川指定をいたすのですから、少なくとも四、五十河川指定をしていただ九なければいかぬだろうと考えておりますけれども、結論は、いま申し上げますように、それぞれの機関の議を経ていたすことになりますから、いまにわかに申し上げられません。
  113. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大臣のその点は了解をいたします。一応負担率の変更と、それから治水計画の変更によって、およそこういう見当になるだろう、こういうお話だそうであります。しかもそれが指定については、都道府県知事意見を聞いた上で河川審議会の議を経て決定になるのだから、何本ということを特定するわけにいかぬ、そういうお答えの筋道は一応わかりますが、ただ問題は、ただいまの自治省の財政当局のお答えにもありましたように、国の負担金がふえるから、そのままイコール地方自治団体の財政に寄与するということにはならぬ、この点は基準財政需要額の見方あるいは起債のつけ方、そういう関係においてその違いは出てくるのだ、こういう点はよくわかりました。したがいまして、今回の負担金の増がそのまま地方自治団体財源を豊かにするということにはなってまいらぬ。この点は私のほうでもよく理解をいたしたつもりであります。  そこで、次にお尋ねをいたしたい点は、先ほど、各県の知事意見等を大臣がいろいろお伺いをいたした、それから、もし局長の中で、私が指摘をいたしましたような、いわば行政的にやや行き過ぎるような点があれば、十分調査して善処をしたいという大臣のお答えでございましたから、この点は理解をいたします。私の聞きましたところでは、そういうやや行政権の乱用に近い局長さんがおられるというお話だそうでありますから、この点は十分御調査の上善処をしていただくことを、特にお願いいたしたいと思います。  そこで、今回の改正がもし行なわれたということになりますと、直接管理に伴いまして、建設省の仕事というものが相当ふえてまいるのではなかろうかと思うのであります。第一に河川台帳もおつくりにならなければならぬわけでありましょう。そうして一級河川管理につきましては、都道府県知事に委任されました以外の問題については、これはいろいろと管理をいたしてまいらなければならぬことになるかと思うのであります。この場合、まず河川台帳を一級河川についておつくりになるわけでありますが、これは一々建設本省まで台帳というものを一般住民は見に行かなければならぬのでありますか。この点はどうでしょうか。
  114. 河野一郎

    河野国務大臣 これはすでに委員会でお答えいたしましたとおりに、副本と申しますか、控えを各府県に備えつけますから、県までお出かけになって見ていただけばよろしいかと思います。
  115. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それから建設大臣管理をいたしております一級河川について、いろいろの工作物をつくる、また利水というものについて許可を求める、こうした場合に、これは建設省直接ではなくて、地建でよろしいということになるわけですか。
  116. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。重要な問題につきましては本省で行ないますが、なるべく地建で事の済むようにいたしたいと考えております。
  117. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしました場合に、一般住民の側から考えました場合に、地建へ参る、それからその問題が上水道関係ということになれば、この法律にも書いてありますが、当然それぞれの機関の長と協議することになるわけでありますが、そういたしますと、いままでは管理権知事にございましたから、窓口は一つであったわけでありますが、今回は地建へ参る、さらに上水道であれば厚生省の出先、あるいは農業用水であれば農政局、あるいは工業用水関係は通産局と、それぞれの地方出先というものとの協議ということになるわけでありますが、その場合に、事務上現行よりも住民側から見て簡素化されるということになるのですか。私がこの法律を拝見しました場合には、かえって非常に煩瑣になるように思うわけでありますけれども、この点住民側から見ますところの窓口、あるいは事務手続の簡素化、こういう点では一体どういうことになるのですか。
  118. 河野一郎

    河野国務大臣 水につきましては、非常に複雑な点もありますし、従来の慣行もございまして、これらを尊重いたしておりますから、そういう点につきましては、窓口等につきましては、いずれも従来どおりということに考えております。
  119. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 従来どおりということには全くならぬのじゃないのですか。管理権が県にあります場合の現在の状態と、それから一級河川によって管理権建設大臣の手に移りました場合と、事務手続が従来の方向と全く同じということは理解しがたいのですが、この点はどうでしょうか。
  120. 河野一郎

    河野国務大臣 それは各省の例をおとりになりましたから、各省については従来どおりと申し上げたのでありまして、建設省の場合におきましては、地方建設局という意味でございます。
  121. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、いままで長野県なら長野県の県庁に行って、長野県を通じて各官庁の出先といろいろ協議なされた。ところが今回は、いわば一級河川ということになれば、ばらばらと関東地建まで出て行く。この点のまず窓口としてお願いに行くところがいわば遠くなった。東京都民の場合は別でありましょうけれども、あとは全く同じであって、窓口については、地建なら地建ということにしぼられるならば——建設省ということになれば、全国みな東京へ集まるということになりましょうが、この点までは地建にまかすということになれば、地建まで行けばよろしい。この点都道府県の県庁へ行くのがそれだけいわば遠くなる。ほかのところは変わらぬ。こういうことになるわけですね。
  122. 山内一郎

    山内一郎政府委員 新しい河川法によりまして窓口はどういうことになるかというお尋ねでございますが、地方建設局にやらせる場合でも、やはりそれに関する事務所、これは現在工事事務所が方々にございますが、そういうような事務所を各県に持っておりますので、そういうところを通じてやれば、これはもうわざわざ東京まで来なくてもいい、そういう方向で進めたいと思っております。
  123. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それから、この河川法が施行になりました場合には、建設省がとにかく一級河川については管理をいたしてまいるわけでありますから、当然事務量というものが相当ふえると思うのであります。この点のいわば人員といいますか、これはおおよそどの程度の人員を必要とするのか。もちろん河川の数がまだ確定をしないという不確定要素はありましょうけれども、一応四十ないし五十というものを想定いたしました場合に、管理事務がどの程度ふえ、それからこれに伴う人員がどの程度増加をするか、この点の一応の目安というものは当然あろうかと思うのでありますが、この点はいかがでしょう。
  124. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知のように何本建設省管理するかということが不確定である。同時にまた、府県知事にどの程度委任するかということが不確定でございます。したがって、不確定要素が非常に多いのでございまして、これらはいずれも本法施行後に各府県知事とも打ち合わせをし、審議会の議を経て、そして具体的なものを握って考えていく、こういうつもりでおるのであります。
  125. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 先ほど私が指摘をいたしましたが、関係法令についても非常に影響するところが多くて、しかも今国会に、一応私どもの審議中に関係法令の改正すべき大綱についても御提示をいただくということでありますが、とにかくまだいまのところどういうところにどういう改正があるかということは不確定であります。それからまた、この法律を見ましても、政令に委任をいたします事項というのは非常に膨大であります。さらには建設省の省令にまかせるところも相当あるわけであります。そういう点で、私どもが審議をいたします場合にも非常に支障があるわけであります。当然前に、建設委員会におきまして、政令等についての見通しについてもお尋ねがあったかと思うのでありますが、私、地方行政委員でございまして、建設委員会審議には参加いたしておりませんのでわからぬわけでありますが、政令に関しましては、大体この衆議院の審議段階においてどの程度のものを用意し、御提示になるという御予定になっておりますのか。この点もあわせてお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  126. 山内一郎

    山内一郎政府委員 政令もたくさんございますが、その内容については検討いたしております。現在まとめつつある段階でございますが、至急に出すような準備はできます。
  127. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 当然それは衆議院の審議段階においてお出しになる意味において、早急というお答えだったわけでしょうね。
  128. 河野一郎

    河野国務大臣 できるだけ早くという意味であります。
  129. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 審議段階という意味ですか。
  130. 河野一郎

    河野国務大臣 なるべく早く出すということであります。
  131. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 なるべく早くというのではなくて、やはり審議に間に合うかどうかということが、当面とすれば一番問題ではないかと思うのであります。この点は、建設委員会のほうがむしろ所管でありますから、当然建設委員のほうからすでに御要求があって、御説明をされているか、あるいは今後その点の具体的な時期についてはさらに御追及があるかと思うのでありますが、ついででありますから、早急と言われましたが、審議段階というふうに理解してよろしゅうございますか。くどいようで恐縮でありますが、その点だけひとつお聞かせ願いたいと思います。
  132. 山内一郎

    山内一郎政府委員 審議の段階で出すようにいたします。
  133. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 その点は明快なお答えがありましたが、ただ国会には衆議院、参議院両方ありますから、当然いまのお答えは衆議院の審議の段階というように、いま私どもの問答は衆議院でありますから、そう理解してよろしいわけですね。
  134. 河野一郎

    河野国務大臣 もう今明日のうちに出す所存でいるわけでございます。
  135. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 その点は了解をいたしました。  そこで問題になるのは、人員についてもどの程度かということは、不確定の要素が非常に多いので、不確定だということでありますが、現在の各都道府県におきましては、管理権知事にございますから、その意味で、都道府県において河川管理の仕事に従事をしている職員というのは相当多いわけであります。これらの人たちが、将来新河川法が動き出しまして管理権建設大臣の手に移りました場合に、当然建設省のほうの人員はふえてまいるでございましょうけれども、都道府県の事務というものは相対的に減ってまいるわけであります。そうした場合に、各都道府県の人員については一体どうなるのか、こういう点はやはり非常に該当の人とすれば心配するのは無理はなかろうと思うのでありますが、こういう点、一たんこういう河川法をお出しになって、不確定要素が多いということは私も承知はいたしますけれども、およそ四、五十本というのは——どっちが入りどっちがはずれるかという入れかわりはあろうと思いますけれども、およその量というものは、私は当然政令等を御用意なされ、それからまた、全般のこの法律案が動き出した場合の状況というものについても検討をせられるわけでございましょうから、およその考えのお示しは当然あってしかるべきではないかと思うのですけれども、この点はどうなんでしょう。
  136. 河野一郎

    河野国務大臣 河川をよりよく管理するということが本法のねらいであります。したがって、中央地方を通じて人員はふえても減ることはない。また、地方のこれに関係していらっしゃるお役人さんで、中央に帰りたい人はあっても、中央から地方にかわりたいという人は私は非常に少ないと思います。したがって、地方の人に不満を与え、不安を与えるということはないと考えております。
  137. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いろいろお尋ねしたい点は多いのでありますけれども、お聞きいたしましたところ、建設大臣は時間に御予定があるそうであります。したがいまして、まだ地方行政関係で多数大臣お尋ねをいたしたい人がおられるようでありますから、こまかい点については、なお大臣がお帰りになりましたあと事務当局お尋ねをいたしたいと思います。大臣に対する質問のほうは一応ここで終わっておきたいと思います。
  138. 福永一臣

    福永委員長 次に太田一夫君。
  139. 太田一夫

    ○太田委員 大臣お尋ねをすることを先にしてくれという御要望でありますので、とりあえず大臣に主要点だけお尋ねをいたします。  先ほどの質問と若干重複している点があるように思いますけれども、聞き漏らした点もありますので、御了承いただきたい。  最初、本法改正の理由でありますが、何か新しい時代には新しい河川法という意味のことを非常におっしゃっていらっしゃるのですが、どうして現行法がそんなにきらわれているかという点について、もう少し大臣の腹を割っての率直な御意見を承りたいと思います。どうして現行法はそんなにきらわれ、現行法ではいかにも欠陥があるがごとくに言われるのは、どういうわけでありましょう。
  140. 河野一郎

    河野国務大臣 現行法は、御承知のとおり、あらためて申し上げるまでもなく、明治二十年代に制定されたものである。その当時の政治、経済、社会情勢のすべてと全く違った世代になってきた。経済あり方につきましても、政治のあり方につきましても、第一に申し上げれば憲法自体が変わったということ等々から考えまして、その後これに付属する法律をいろいろつくらなければならないほど、現行法については取り残されたものもあるということでございまして、この際ひとつ基本法である河川法を抜本的に改正しようじゃないか、しかも世論の要求が非常に強いことは御承知のとおりであります。したがいまして、これが調整につきましては、あまりに本法が時代離れしたものでありますが、一躍して数十年間を飛び越えて法律の改正をするということになりますと、その飛躍が大きいだけに、そこにいろいろな問題が起こってくることは当然でございます。したがって、一挙にこれをすべてということはいきかねる点がありますこともやむを得ぬと考えますが、ぜひこの程度まではという最小限度を今回調査、検討いたしまして、ここに本法案の御審議をいただいておるようなわけでございまして、どこかといえば、ここに改正を提案いたしておりまする点すべて、それらの点について現行法では適当でないと考えて、出したわけでございます。
  141. 太田一夫

    ○太田委員 それはおそらく大臣としてはそういうことをおっしゃらなければ、これを提案なさった意味がないんですから、そういうことをおっしゃる理由はわかるのです。けれども、七十年来取り残されておるとか、そのままになっておる、時代離れがしておる、こういうことをおっしゃいましたけれども、七十年の間に一回も改正せられずにいたということなら話はわかりますけれども、その間に改正はずいぶんしているのでしょう。実情に合うように、実際の運用には不便のないように改正されてきたのだ。ただ、今日この改正案の主体が何かあるかといえば、管理権だけの問題、こういうふうに私は思う。だから、その間に改正されておるのですから、七十年ほうりっぱなしになって、お蔵入りになっている法律というわけではないのですね。この点大臣どうなんでしょう。
  142. 河野一郎

    河野国務大臣 そこに非常に誤解があるわけであります。御意見、御議論を承っておりますと、水利権もしくは利水の点に非常に大きくウエートをお置きになっていますが、今日国家的に考えて、いかに治水が重大であるか、治水にいかに重要な面があるかということは、私が申し上げるまでもないことであります。しこうして治水計画を立てるにいたしましても、治水の抜本的な考慮を払うにいたしましても、現行法におきましては、御承知のとおり、一貫した治水計画が立てにくい。先ほど来申し上げますように、地方負担もしくは地方財政等において不均衡がある。これらを対象にして全体的な案が立てにくいというような点がございますので、私といたしましては、むしろ治水重点を置いてこの案を立てたということを御了承いただきたいと思います。
  143. 太田一夫

    ○太田委員 これは最初のころにあなたのほうの瀬戸山さんに対してお答えになった中にも、これまでの河川行政は実に不完全なものであったので、これを国家の直轄のもとに行なうことを第一の理想とし、目的としたのである。この治水ということがもしも第一の目的であり、理想であるということになるならば、あなたのおっしゃるとおりに、現行法では治水計画が立てられない。では、今度の新法によりますと、治水計画が立てられるようになっておる、何条にそれが立てられるようになっておりますか。
  144. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知の通り、水系を定めまして、水系ごとに抜本的な治水対策を立てるという所存でございます。
  145. 太田一夫

    ○太田委員 だから大臣水系ごとに抜本的なものを立てたいというお気持ちはあるが、この法の中にはその保証がないのです。かりに、一級河川のものだけを取り上げてみましても、大臣管理権があるようなことになったことによって、治水上の事業量が飛躍的に増大をした、そうしてその利水の処理が合理化されるというような可能性がその中から見出されない。見出されないからこそ、みんな心配しておる。大臣治水治水とおっしゃるが、実はこれは水の配分に対する法律じゃないか。配分をするのに、地方の自治体の知事ではまことに住民の問題がどうだ、こうだとややこしいことばかり言うから、ずばりとやってしまおう。そのずばりの目標は何だといえば、あなたのおっしゃるとおりに、世の中が変わってきた。いわゆる都市が膨大化して上水道の水が不足である。例をとれば、東京の水だ。東京の水道の水をずばりとろうじゃないか。工場ができた。新産業都市。工場ができたが、工業用水は、何だかんだといって、住民の問題じゃない。農業用水なんか、ほったらかしておいて、工業用水をとるのに、ずばり大臣権限でやったほうがいいということで、大臣管理建設省直轄という一級河川構想が生まれたのではないかといって勘ぐる人が非常に多いわけです。それに対して、そういうことじゃない、あくまでも治水の総合計画を樹立するのが本来の改正の目的だと言い切ることが、大臣としてできるわけですか。
  146. 河野一郎

    河野国務大臣 申し上げるまでもなく、政治は客観性が必要であります。国民の世論の背景に立って政治をやるべきものと考えます。そういたしますと、治水についてこれだけの重要性があるという客観性、これを醸成するためには、いま申し上げますように、川のことを川だけ、川だけといってやったのでは、なかなか客観情勢もしくは世論の支持が受けにくい。そこで、河川全体にわたって、水の利用全体、治水利水、その両面にわたって私はものは考えていかなければならぬという意味で、それに対する全国民諸君の理解と協力を得るためには、この処置が必要である、こういう意味で、いまお話しのように治水治水といって、それだけ申しても、政治は建設大臣だけではございません。各方面の全体のムードの中に目的達成をすることが必要であります。したがって、治水利水合わせてここに問題の解決をするということが、国民的な要請にこたえるゆえんであるという意味でございます。
  147. 太田一夫

    ○太田委員 だから、その点においては、治水利水を抜本的に改正をし、合理化するという国民的要望にこたえようということにおいては、われわれも同感なんです。大臣のおっしゃるとおりに、これはあってほしいと思う。そのためになぜ知事管理権があってはいけないのか。知事管理権があってもできるじゃないか。六条一項の規定もあれば、八条の規定もあるじゃないか。なぜ建設大臣の直接的な処分ができないのか。六条一項並びに八条を発動いたせば、何でも思うままにできるじゃないか。それを今度の場台は、ただ形を変えてそれを表面に押し出してきたにすぎないのでありますが、さらに、それに便乗して、知事の——したがってそれを裏返しにすれば、知事のいままでの管理権というものは不都合だという立場に押し込められておる。これは長年、七十年来ほったらかしになっておった河川法だとおっしゃいますけれども、七十年来河川と住民との間に立って地方自治、地方政治の完ぺきを期してきた知事としては残念だと思うのです。現行法に何も瑕瑾もなければ不都合も支障もないのに、裏と表を逆にして、いままで表になっておったものを裏にして、御用済みだから知事管理権はもう廃棄いたします、こういうことじゃ少々水くさ過ぎやしませんか、どうですか。
  148. 河野一郎

    河野国務大臣 あなたのおっしゃるようなことであるならば、世論は決して支持しない。戦前と戦後の憲法の違いもございますし、府県知事あり方、性格にも変化がある。十八年間の経緯にかんがみまして、水もしくはこの行政について世論が強く要求し、社会党の皆さんも河川法改正は常に御主張になっておったと私は考えます。内容についてはいろいろ御意見もございましょうけれども、河川法改正はいかぬとおっしゃった人は私はどなたもないんじゃなかろうか、こう思うのでございます。
  149. 太田一夫

    ○太田委員 私はかくのごとき形態に河川法を変えるべきだ、知事管理権は不十分だという声を寡聞にして知りません。それはおそらく大臣のひが目ではありませんか。あなたは物事に直感力のあり過ぎる人だから、あまりほんとうのことを言うと議論には負けると言ってはなんですが、少々河川法というものの何であるかに感づかれて、たとえば奈良県へ行って、あるいは三重県の伊賀上野へ行って、山の奥へ行って、何かあなたの直感的にひらめかれたものがあるであろう。それを伊賀へ行ったからといって、水遁の術によってその河川法を変えて、一挙にあなたの思うことをずばりとやろうとなさることは、それが波及する影響を考えてもらいたい。地方住民がこれで不安を持たなければよろしい。私は一番問題になりますのは地方住民の不安だと思う。あなたは、日本国民は賛成しておるとおっしゃるけれども、私は賛成しておらないと思う。社会党の一部に賛成意見があると言うが、社会党の賛成意見というのは、だれやらがいま個人名をおっしゃいましたけれども、それも私は少々誤解だというのです。社会党においては、こういうことをやるのは住民の立場からいって問題があるのじゃないか、これを言うのです。  そこで、ちょっとついでに飛躍するかもしれませんが、水防法という問題でお尋ねをいたします。水防の責任者はいまどこですか、だれですか。
  150. 河野一郎

    河野国務大臣 水防の責任者は、第一線の水防管理者でございます。申し上げるとどうかと思いますが、私も大きな川の沿岸に長年住んでおるわけでありますけれども、この沿岸の住民は治水完ぺきを期してくれということでございまして、こういうふうに慣行の水利権についてはそのままであるということに明確にいたしました以上は、沿岸の住民に不安を与えておることは少ないのじゃないかと私は思う。知事さんには一部——決して私は全部賛成だとは申しませんけれども、沿岸の住民諸君で、より堤防をよくしよう、水防を完ぺきにしようというふうに努力いたしておるものに対して、不安が増すとか心配がふえるとかいうことはあり得ないのじゃなかろうか、こう私は思うのでございます。
  151. 太田一夫

    ○太田委員 沿岸の住民は、堤防をよくしてくれ、水をきれいにしてくれ、それはもうずっと先祖代々言うているのです。しかし、いままで建設大臣は、その基本工事計画に対しては一々チェックしていらっしゃったはずだ。ところが、ある河川においては、一億くらいの改修費の予算を要求しておるにかかわらず、金がないからそれは三千万円でしんぼうしなさいということから、なかなかもって予算がつけられなかった。そのために、何々河川改修期成同盟会というものができて、そうして中央、地方に陳情なんというのが盛んに行なわれるようになっているわけです。何もこれは管理権知事にあることと、大臣が直轄に持つことと、別に関係ないじゃありませんか。
  152. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほどから申し上げますように、府県に財政的な負担の十分でない県のあることはお認めいただけると思います。間々そういう県に治水の不完全なところがあるというふうに考えられる節がある。したがって私は、これを一貫してやることがいいのではないか、こう申し上げておるのでございます。いままでの河川法と今度の河川法と、そういう面においてどこが悪くなったのか、どこに地方沿岸住民に不安を与える点があるのか、そういう点は私は絶対ないのではなかろうか、こう思います。
  153. 太田一夫

    ○太田委員 沿岸の者に不安を与えるものはないとおっしゃいますけれども、必ずしも、この河川法を理解をして、これならば絶対洪水の心配ない、水害の心配ないと確認した人というのはないのです。あなたのほうの関係の方は、ことさらそういうようにおっしゃっているけれども、これはほとんど見ない。そこで私は水防のことをお尋ねしている。水防の責任者は水防団体だとおっしゃるけれども、水防の団体というのは具体的には市町村でしょう。その次は県でしょう。市町村と県とが責任を持っているのでしょう。大臣、違いますか。うしろに聞かなくても知っているのでしょう。
  154. 河野一郎

    河野国務大臣 ちょっと申し上げます。黙っているとおっしゃいますけれども、私は全部知っておりません。お答えするときは、事務当局意見の打ち合わせをすることは親切だと私は考えます。また、私の意見事務当局意見と違うといけませんから、事務当局意見を聞いて、完ぺきを期してお答えを申し上げるのですから、私は常に事務当局意見は聞きます。  私、建設大臣として全国の水防の最高責任者でございます。その次に府県、その次に前線はいま申し上げますとおり市町村長にお願いいたしてやっております。したがって、国も相当の予算を組んでそれぞれこれは補助して、中央、地方を通じて全体の水防の責任を持つということにいたしております。
  155. 太田一夫

    ○太田委員 第一次的には市町村、第二次的には県知事、これはいなむべからざる現行水防法上の体系ですよ。一般普通河川において、市町村の活動、いわゆる水防団体の活動というのは、これは第一線の義務を負うたものであります。次には、それの活動の基本計画というのは、県が県議会にはかってきめるのです。それはもちろん建設大臣がそういう意味において大きな監督権とか指示権があるというならば、現行河川法上全部あるのだから、そのことが表面に出るならば、河川法を変えなくたって、いまでも全河川に対してあなたは一番最高の責任を持っておるわけです。何も変える必要はありませんよ。第一線が出てきたところに今度の変更があるのだから、水防ということになれば市町村と県ではありませんか。
  156. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、水防は第二義的であって、治水が第一義と心得ます。水防の必要のないように治水完ぺきを期するという方向にいきたいということでございまして、雨が降った、すぐそれ水防ということではなしに、安定感を得る河川をより多くしょうということに努力いたしたいと考えております。
  157. 太田一夫

    ○太田委員 しからば治水計画の基本的な御計画は何でございますか。先ほど山口君に対するお答えは、たとえば砂防法にいたしましても、森林法にいたしましても、各省に関することであって、話がまとまらないから、そのうちに協議して何とかするのだ、こういうことでありますから、こんなのは間の抜けたことだ、少なくとも治水の基本的な立場というのはまだ確立されておらぬのじゃありませんか。
  158. 河野一郎

    河野国務大臣 それは話が違います。河川については、今度の水系をちゃんと定めて基本的な治水計画を立てていく。その治水と申しましても、山の上の一粒雨の降るところから合わさって川になるのでありますから、その砂防工事の先に至るまではまだ農林砂防あり、山林砂防あり、河川の砂防もございますから、そういうものの打ち合わせも順次いたして完ぺきを期する所存でございます。いますぐここで出せということでございますから、それは目下検討中でございますと、こうお答えしたのでございます。
  159. 太田一夫

    ○太田委員 そうしますと、大臣一級河川指定区間制度といいますものは不要になりますね。指定区間制度というものはあくまでも建設大臣が直轄でやる必要があるのじゃありませんか。
  160. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知の通り、一級河川につきましては、その上流地帯におきまして、府県知事とよく談合いたしまして、委任をして適当であるというものにつきましては委任をしてまいる、こういうことでございます。
  161. 太田一夫

    ○太田委員 知事と談合して委任したほうが適当であると思うものは委任をするとおっしゃるならば、利水権などは完全に委任してよろしいし、現在の河川水面占有であるとか、河川敷の占有許可、砂利採取等というものも、全部委任していいわけですね。一々小さなものまで、管理権といって、あなたのほうが全部建設大臣の直轄でございますとおっしゃることも必要でないような気がする。その点はどうですか。
  162. 河野一郎

    河野国務大臣 もちろんさようでございます。小さなもので委任してよろしいものについては委任する所存でございます。
  163. 太田一夫

    ○太田委員 そうしますと、現行法体系上では、先ほど山口君がちょっと言いましたけれども、河川行政監督令第二条によりまして、発電用ダム、それから都市水道の水、それから工業用水、農業かんがい用水というのは、それぞれ一つの大きさというものをきめまして、それは建設大臣が占有の認可をするのだと書いてありますね。それも、それ以上のものをあなたがおやりになるのであって、それ以下のものは現行どおりだ、こういうことでございますか。
  164. 山内一郎

    山内一郎政府委員 一級河川管理の問題でございますが、知事の委任区間をきめまして知事さんにやってもらったほうがいいというものは知事に委任をする、こういうたてまえでございます。したがって、水利権のお話がございましたが、これは水系一貫してどうしてもやる必要がございます。したがって水利権は大臣がやるのでございますが、知事委任区間の小規模なものでやはり知事さんにやっていただいたほうがいいという点については、知事に委任をする、こういう予定をしております。
  165. 太田一夫

    ○太田委員 局長、余分なことをあなたは言わなくたっていいのですよ。大臣は、現行やっているような小さなことは知事にやらせるのだとおっしゃったのに、あなたが指定区間だけの小さなものなんて、わざわざ小さくする必要はない。そうでしょう。大臣が言ったことをなぜあなたは制約したのですか。局長としてそういうけしからぬことはないでしょう。大事な問題ですよ。直轄一級河川について、砂利採取等、小さなアユをとるとか何か、ちょっと川をせきとめる、工作物をつくるのに、なぜそんなものを一々大臣に持ってくるのですか。これは当然現行やっているとおりに、一級河川管理権の作用の中の各種工作物あるいは占用の許可なんというものは知事でけっこうじゃありませんか。これは大臣答弁のとおりです。小さなものはそれでいいでしょう。アユの一匹なんか何ですか。
  166. 河野一郎

    河野国務大臣 誤解があるといけませんから明確にいたします。大臣の答えなければならない問題は大臣が答えますけれども、いまお尋ねになりましたような話の中で、小さな川の砂利の問題、支流の砂利の問題まで一々建設省がやらなければならぬことはない。また河川が非常に重要な河川である、常に水害が起こるというような場合には、小さな河川でも大臣が直接やる場合もございます。これらはいずれもケース・バイ・ケースでございます。しかし、おおむね私は無理に小さなものまで大臣がやる必要はない、こう答えました。なお、事務当局のいろいろ事務運用上につきましても、話し合いの報告をいろいろ受けますと、各省との間においてどの程度までどうするかということを目下打ち合わせ中と聞いております。それらは各省との関係もございますから、それをどの程度までのものはどうするということは、いずれ各省打ち合わせた上で具体的に行政はするということを明確にいたしておきます。
  167. 福永一臣

    福永委員長 ちょっと申し上げますが、ほかにもまだ大臣に対する質問の希望者があると思います、七人ばかりありますから。そこで、大臣は四時までにどうしても所用があって外出しなければならぬというので、そこのところは事務当局大臣と分けて、ほかの人にもちょっと譲っていただけませんか。
  168. 太田一夫

    ○太田委員 委員長はそうおっしゃるけれども、いまの一級河川管理権というものを具体的にここであらわして説明してくださいということは、そんなこと局長などが答弁されてこうこうでございますと言っても、大臣がそんなのは違うとおっしゃれば、それでしまいじゃありませんか。大事な点ですよ。これは事務当局の答える点じゃありませんから……。
  169. 福永一臣

    福永委員長 いいです。質問してください。
  170. 太田一夫

    ○太田委員 私の時間を何時ころまでにしてくれとおっしゃれば、そのつもりで急いでやります。——三時までやります。  大臣、ここが大事なところで、眼目でございますから、ここと思えばまたあちらという、牛若丸の戦法で答えていただいては困るので、しっかりお願いします。  一級河川管理権の発動であるところの小水利権、この認可は現行どおり知事でよろしいじゃないか。また、水利でないところの砂利採取、水面占用、小さな工作物、こういうことも県知事でよろしいじゃありませんか。こういうことを私はお尋ねしておるのです。
  171. 河野一郎

    河野国務大臣 あらためて明確にお答え申し上げます。  一級河川におきまして建設大臣管理いたします部分につきましては、全部大臣が水利権につきましては管理いたします。そのうちに、委任区間につきましては、たとえばいま水利権の問題でございますが、水利権につきましては、ごく小規模のものにつきましては地方にこれを委任いたします。ただし、主要な、重要な水利権につきましては、これは建設大臣において管理いたします。
  172. 太田一夫

    ○太田委員 そうでしょう。そういうことを大臣はこの改正案では考えていらっしゃるでしょうね。あなたは主たるものは治水だとおっしゃった。治水計画をお立てになることが、少なくともこの新河川法の真のねらいであるならば、管理権の発動である区々たる占用許可の問題に、あなたのほうが前面に出てくるだけの積極的な理由はない。それは、現行知事が行なっている許可が非常に不当であるという場合、不当な事例がたくさんあって困るというならば話は別ですが、一向にその点において間違いがあったから河川法改正したとは書いてない。それならば変えぬでもいいじゃありませんか。何でそこまでこまかいものを取り上げてしまうのですか。
  173. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、こまかなもので世論もしくは河川審議会等において地方に委譲してしかるべきものであるというようなものについて、これを建設大臣管理するはずはないのでございます。これは従来の経緯にかんがみまして、建設大臣が広域に管理したほうがよろしいというものについて管理する、こういうことでございまして、決して理由なくただ建設大臣の権限を拡大しようというような意図は毛頭ございません。
  174. 太田一夫

    ○太田委員 建設大臣の権限を拡大する意図は毛頭ないとおっしゃったから、そのことを私も信じます。それでけっこうだと思います。治水上の基本計画を基本法たる河川法でやる。またあわせてそのための利水の問題についても考えなければなりませんから、大規模水利については建設大臣がこれを掌握する。これはそれでいいじゃありませんか。だから、指定区間に限る小水利だけを知事に委任するというがごときは、これは委任せざるにひとしいものです。一級河川全体にわたって、小さなものは、現行大規模といわれる河川行政監督令第二条に規定する以外のものは、小水利ですから、一級河川全体にわたって知事の認可に属せしめておいて何ら不合理はない。どうしてそれをあなたが無理してとらなければならぬですか。
  175. 河野一郎

    河野国務大臣 治水の面におきましては御理解いただけたようでございますが、利水の面についてだいぶ御議論があるようでございます。そこで水利権の問題になりますが、たとえば現に行なっておりまする各種の多目的ダム、全国にありまする多目的ダム、この所在地は一体おおむねどういうところにあるかということをお考えいただければ、いまのような御発言はないのじゃないかと思うのであります。多目的ダムをいま全国で建設中でございますが、これらのダム建設は、いずれもそれぞれの主要河川一級河川指定をするだろうと思う河川の中で、それぞれの支流に属するもので知事に委任をしてもよろしいというような部面に、いまのようなものが各地にあるということになりますと、本法の目的の一部でございます、また世論の要請が非常に強力でございまする水の利用度を増すという多目的ダム建設して、水の利用度を増せという世論の要請にこたえることにならないと私は考えるから、そうお答え申し上げたのであります。
  176. 太田一夫

    ○太田委員 とにかく毎秒一トンにも足りない小さな水をとる。この認可を建設大臣がやる。それから砂利をとろうとしたら、それは建設大臣が——砂利なんか一級河川の本流に幾らもありますよ。あなたがやる。それで、水が最も有効に利用され、水というものを、いわゆる水害を防ぎ、治水完ぺきを期せられることになるのですか。そんなところにあるわけじゃないんじゃないですか。やはり治水工事というものをいかに総合的にやるか、計画的にやるかという、治水工事の計画をしっかり立てられることだと思う。利水ということについては、どっちみち大規模水利がふえてきたのですから、大規模水利についてはあなたのほうでおやりになってけっこうです。小さな砂利をとることまで、桟橋を設定することまで、ほんとうの農業用水を引くことまで、何でそんな簡易水道の水源に至るまで、あなたのほうが直接可否を判断される必要があるのでしょう。どうしてもぼくはわからない。
  177. 河野一郎

    河野国務大臣 そこで、先ほど来申し上げておりますように、いまお話しになっておりますような、だれが考えてもわからないようなことを、政治の上で行なわれるわけがないのであります。だれが考えてもわからないようなものは、わかるように直すのが政治でございます。私は、どういう法律をつくりましても、そういうものをつくろう、そういう行政をやろうとは考えておりません。ただし、いまも申し上げますように、多目的ダムをつくって——これは本流でなしにいずれも支流になります。府県に委譲する場所になると私は思います。そういうところに多目的ダムをつくって、そしてまず第一に、平均流水によって治水完ぺきを期する。第二に、この水を利用するということはどうしてもやらなければならぬことでございます。そうして、どうしてもやらなければならぬことについては、多数の支持を得て、了解を得て、協力を得てやることにいたしたい、これが目的でございます。
  178. 太田一夫

    ○太田委員 少々この点について押し問答をしましても意見は一致しそうもありません。私は、その支川あるいは上流とか支派川にそういう小さな水利あるいは管理権等の問題が出てくるのじゃなくして、あなたが想像されている一級河川の直轄区間に多数それがあるということを、あなたは忘れていただいては困るので、そういうものも本法のたてまえでは建設大臣が直接に認可をするというたてまえになっているように思いますので、もしそうでなかったならば、政令その他によって現行知事の認可権を尊重をして残されることを希望します。  ただ、治水上の問題について理解があったとおっしゃったので、少々気になるのですが、五十二条などにおいて、洪水調節のためのダムの操作の必要な措置などというものは、あなたのほうでは命令することもできない。勧告をするという非常になまぬるい表現が出ておりますけれども、治水重点があるならば、こういうことは折り目切り目を正して、そういう水が出たときには放水しては相ならない、やったなら罰則だ、ここまで踏み切らなければいかぬじゃありませんか。
  179. 河野一郎

    河野国務大臣 ダムの水を流せというようなことを命令する、罰則を設ける、こういうことは緊急中の緊急の問題でございます。したがって、あらかじめそういうふうなことを命令をするというようなことは、かえって弊害が起こるのじゃなかろうか。命令する以上は、それに対しての補償が必要でございます。いたずらに国費を使わなければならぬ。しかもその機宜の処置を建設大臣がとれるだろうかと申しますと、台風の方向というようなものを予知することはできません。現在の科学をもってはなかなかむずかしい。ということであれば、現に集中豪雨等につきましても、その例は今日間々各地において見聞いたしておるところでございます。これをあらかじめ予知して命令するというようなことは非常に危険でございます。したがって、勧告をして、その勧告によって行政上遺憾なきを期してまいることが、行政の妙ではなかろうか、こう考えております。
  180. 太田一夫

    ○太田委員 勧告というようなものが、あなたのおっしゃるように、行政上の妙味によってそれが災害の発生を防止することに役立つということならば、何をか言わんやでありますから、別に問題ないけれども、だれが見ても、こういう非常の際におけるダム操作などについて勧告をするというよう々なまぬるいことでは、いささか今日の河川現状から見てあぶないことではないだろうか、冒険ではなかろうか、不徹底ではなかろうかと思うわけで、ここは少なくとも何か指示をする、命令をするというところまで踏み切られるべきであると思いますが、あなたが行政上の妙味によってそういうことは絶対させない、そんな心配は起きませんと断言されれば、あなたの実力もあることでありますから、それは信用してもいいです。いいけれども、表現としては非常にあぶないことだと思う。そこで、そういうような水が出た、あるいは平時の場合は問題ありませんけれども、急に災害がある場合、あるいは天災等の場合においては、河川というのはたいへんなんです。そこで、あなたは、水防の問題で建設大臣は責任をとるとおっしゃいましたけれども、ほんとうに水が出た、水防団が出る、消防団が出なければならない、地域の者は避難しなければならぬというときに、どういう形で——建設大臣のそこの指揮権、監督権というのは義務ですね。監督義務、これは発動されるのですか。一つの想像をしてください。いままでは行政的には市町村と県でありましたが、県という段階が抜けてどうしますか。水防団だけが孤立した場合には、あなたは管理権と水防団の水防義務との関係を実際にどうなさるつもりですか。あなたが一々河川に出られるわけにはいかないでしょう。
  181. 山内一郎

    山内一郎政府委員 一級河川の中でも知事委任区間を設けることは御承知のとおりでございますが、この区間につきましては、水防関係は従来どおりでございます。それ以外の直轄管理区間と申しますか、これは建設大臣が責任を持ってやる管理区間でございますが、その区間につきましては、大臣が県並びに市町村長あるいは水防管理団体とよくあらかじめ水防計画に基づいて打ち合わせをしておきまして、それに従ってやる、こういうふうにしたいと思います。
  182. 太田一夫

    ○太田委員 局長はそうおっしゃるのですが、大臣どうですか。管理権と水防義務の関係は、そういうふうにやはりワンクッション、ツークッションを置くのですか。あなたまで行くには、県を督励し、市町村を督励し、そうして場合によってあなたのほうが消防団まで話をなさるおつもりですか。これは実際その河川が危険だ、破堤の心配がある、洪水の心配があるというときの模様をちょっと想定してみますると、建設大臣の水防義務の責任というのは、どういうふうに発動されるか。これはおそらく想像できません。ほとんど県と市町村にまかせざるを得なくなるだろうと思いますが、その点いかがですか。
  183. 河野一郎

    河野国務大臣 行政系統的には、ただいま河川局長からお答えしたとおりでございますが、実際は、御承知のとおり、いまのことでございますから無電を使ってもやっておりますし、または各種の電波を用いてやっておりますことも御承知のとおりであります。さらに、地方建設局もしくはそれぞれの出先の機関も、建設省としては河川ごとに相当のものを持っております。これらと相協力して指導して今日やっておることも御承知のとおりでございます。
  184. 太田一夫

    ○太田委員 そうすれば、いままでこれをやっていたのは県知事でありますから、したがって県知事のほうはそういう義務はなくなりますね。
  185. 山内一郎

    山内一郎政府委員 水防法に関する規定につきましては、この河川法ができた直後でも従来どおりでございます。したがって水防の第一線の責任は市町村、水防管理団体、それにさらに水防警報とか、そういう点については知事、なお洪水予報全般につきましては従来どおり国が責任を持ってやる、こういうことでございまして、水防法のたてまえは現行どおりということでございます。
  186. 太田一夫

    ○太田委員 それは河川管理権知事にあるからじゃありませんか。管理権なくして水防の義務は負うのですか、直轄一級河川について。
  187. 山内一郎

    山内一郎政府委員 現在も河川法と水防法と両方法律がございます。お互いに関係はなく——関係といいますと河川ということにはございますが、管理権があるからということではなくて、水防法のたてまえといたしましては、第一線は市町村長ということでございまして、河川管理ということでなくて、市町村長が責任を負っておる、こういうたてまえでございます。
  188. 太田一夫

    ○太田委員 だから局長、あなたはそう言っていますけれども、これは大事な点だ。あなたのほうが今度新河川法を提案されて、いままでの体系とがらっとお変えになった。管理権一級河川においては建設大臣が直接持つとおっしゃった。水防責任も直接お持ちになってしかるべきじゃありませんか。いままでと何も変わりはない、それで市町村がやれ、県がやれ、そんな虫のいいことがありますか。それは幾ら考えても、いままでのように実際管理権知事にあるときの姿と、管理権建設大臣に移った場合と同じだというような虫のいいことをおっしゃっては、地方の県当局としても納得できませんよ。そこに何かあるのでしょう。違わなければならぬでしょう。
  189. 河野一郎

    河野国務大臣 いまもお答え申し上げましたように、現に管理権知事にあるとか建設大臣にあるとかいうことと水防とは関係がないとは言えない、水防の責任は国民全体、沿岸の諸君全体、われわれ国民として国土を守るという意味において水防法が制定されております。したがって、第一線の当面の責任は水防管理者もしくは市町村長、それを後援し指導するのに知事、さらに建設大臣ということに水防法で規定しております。この法律はこの法律で今後もそういうことでやっていく。しかし、この新河川法が実施されました暁において、水防法において直す点があるとすれば、そのときに考慮するということでいいじゃないか、こう考えております。   〔「了解」と呼ぶ者あり〕
  190. 太田一夫

    ○太田委員 自由民主党の各位は了解されるそうでありますけれども、少なくとも住民の気持ちから申しますと了解できません。少なくとも管理者が、そのすべての、日常におけるところの河川管理の細大漏らさざる責任を持っていらっしゃるというたてまえからいって、さて水害の際、非常時の際だけは、それはおれのほうは間接的である、直接的にはおまえらがやれというようなことが通りますか。これは住民としては非常な不満を持っております。いまのお話でありますと、水防法は改正する必要がないというお話でございますね。これは非常に暴論だと私は思いますが、あなたはほんとうに水防法を改正せぬでいいと思っていらっしゃるのですか。
  191. 河野一郎

    河野国務大臣 あとから速記録をお読みいただくとわかると思いますが、私は改正する必要がないとお答えしたのじゃありません。必要があれば改正いたしますとお答え申したのであります。
  192. 太田一夫

    ○太田委員 私のお尋ねするのは、水害の際の管理者たる建設大臣の水防責任の負い方についての問題です。あなたはいまとは変わらないとおっしゃった。知事にやらせるのだ、市町村と知事だとおっしゃった。それでは私は理解できないと言っておるのです。そこのところを改正するというならいいですよ。そこのところが現行法ではいけないから、今度は直接建設大臣が責任を負う——それはわれわれは、さてとなれば、水防団員でなくても、わらじをはいて出かけて行って防ぎもいたしましょう。しかしそのことと水防責任とは違う。近代法体系が治水であり、同時に水というものが住民と直結していたいままでの実態から考えて、住民の気持ちというものと離れたところの改正が良策である、いいものだとはどうしても考えられない。そこのところを直接大臣が責任を負って水防活動をするという御決意がほんとうにおありなんですか。
  193. 河野一郎

    河野国務大臣 どうも誤解があるようですが、水防法という法律が現に実施されて、それに基づいて、来月の十七日には全国水防大会が利根川で行なわれます。それには私も出席いたします。そして水防の訓練もやります。そういうことはやるのでございますが、しかし当面の責任は地元の人に負ってもらうことにいたしております。この法律が成立して、そして水防法に支障があるということであれば、これは今後において検討して改正いたします。こうお答え申し上げておるのでございます。御承知のとおり、これまでの水防におきましても、豪雪におきましても、自衛隊の諸君があれだけ活動しておられる。これらに負うところは非常に多い。別に法律に何も書いてあるわけじゃございません。これは国家全体としての責任においてやるわけでございまして、水防のように不時の災害ということには、法律、われわれの知恵の及ばぬところに問題が起こることがしばしばあります。こういうことについては、だれがどうだとか、法律に書いてあるとか書いてないとかということじゃないだろうと私は思うのでございます。みんなで万全を期する必要がある。法律に欠点があればこれは直すということはあたりまえだ、こう思うのでございます。
  194. 太田一夫

    ○太田委員 都合のいいときは人の善意に信頼する、頼まれれば越後から米つきに来る、頼まれれば自衛隊が出ていくから、自衛隊が活動していままでたいへんな功績を残しているから、そういうこともやるのだから、みんながやるのがあたりまえだろうとおっしゃるけれども、それなら管理権というものにしましても、あなたは知事を信頼し、地方住民の気持ちを尊重して、現行法上における運用を円満にするというところに重点を置かれたらいかがなものであるか。そうすればこれは障害もなく——あなたは各知事は過半数が賛成しておるとおっしゃるけれども、知事会そのものは数次にわたって反対だということを言っておる。もしそうでなかったら、知事会は、同意します、あの反対を取り消しますという公式声明を発すべきだ。だから、都合のいいところだけ善意ということではいけません。川のそばにおる者は、あなたでなくても、私もすぐそばに矢作川が流れておりますから、雨が降れば住民は避難の準備をし、すぐに提防にかけつけて土のうづくりや何かを始終やっております。それは善意です。これは水防団員でもなければ、そういう義務を負っているわけではありませんが、はたの者は父祖伝来いざという場合には水を警戒するという習慣があるのです。そういう善意があるのです。そういう善意に信頼しておるだけでは、これは解決できない。法体系において責任と義務というものは明らかに区別しておくべきだと思います。時間がきておりますから、水防のことについてあなたはあとで会議録を読めばよくわかると言われますから、一度吟味させていただきますが、どうも水防責任を逃げていらっしゃるようだ。いままでどおり市町村と県知事に押しつけて、管理権だけあなたのほうがいただこうという、少々虫のいいことを考えていらっしゃると思うので、私はあとで検討させていただきます。  もう三時ですが、ひとつ一級河川の費用負担の問題、先ほど山口君がちょっとお尋ねしましたけれども、そこまで、あなたのほうが思い切って一級河川というものを直轄という思想に強く裏づけしようとするならば、なぜその改良工事費全額国庫負担の原則を貫いて——管理費用については全額国の負担とすと書いてある。その本則どおりやって、あとカッコの中で都道府県が三分の一負担するとか、あるいは管理費の二分の一負担するとか、何だかんだけちなことを言わずに、全部国の負担にするほうがいいじゃありませんか。承ったところによると、あなたのほうは金がないからということだけで、この法律はこう変わったんでしょう。理想は全額国庫負担、金がないから地方都道府県に負担させる、こういうことですね。
  195. 河野一郎

    河野国務大臣 この点も、最初に申し述べましたとおりに、行政のたてまえからいたしまして、受益者と申しますか、一部は地元で負担するということが、われわれのやっております政治のたてまえ、財政のたてまえが、道路といい、すべてこういうことになっておりますので、その原則にのっとって一部を地元で負担していただくということにいたしたわけでございます。
  196. 太田一夫

    ○太田委員 それは初めからその方針でおやりになったならわかるんですよ。初めは全額国庫負担じゃありませんでしたか。それを、大蔵省のほうが、それを出すには少々金が足らぬ、予算がないから三分の一は出せと言い、四十何年までの間はこれは四分の一でよろしいが、それから先は三分の一を出しなさい、こういうことになったのは、受益者負担じゃないです。受益者負担というのはだんだんとなくするという思想じゃありませんか。今日の財政法からいうてだんだん受益著負担の思想はなくしていこうというときに、改正すべき河川法がまた全額から後退して、三分の一であろうが、四分の一であろうが、地方に負担させるというのはとんでもない話だ。それなら大工業用水とか大規模利用者から取ったっていいじゃないか。  それからもう一つ、この一級河川を御指定なさる場合に、二府県以上にまたがって重要な影響を持つ河川に限定をしなかった理由ですね。これはどういうことですか。そういうことは書いてないですね。二府県以上にまたがって重大な影響を持つ河川とかいうような条件がないのは、これはどういうことなんですか。何かこの意味があるんですか。
  197. 河野一郎

    河野国務大臣 二府県にまたがる河川が重要で、一府県の川が重要でないということにはなりません。したがって、そういう規定は設けません。
  198. 太田一夫

    ○太田委員 だから、あなたが、そういうふうに、どの川でも、あなたの改正治水にあるのだ、治水重点だとおっしゃるなら、あなたのほうはもっと治水に力を入れて、この法文の中で確かに私のほうは治水の責任を負います、水防の責任を負います、金もしたがって私のほうで出しますと、徹底すべきなんです。一府県の中に関係する川など、これは最も県知事にまかすに適当な川である。それをあなたのほうが何もかもやろうというのは、管理権をあなたのほうが握るということ以外に特段の意味がないじゃないかということで、痛くない腹を探られるわけですね。あなたはそんな痛い腹を持っていらっしゃると思わないから、痛くない腹を探られることになると私は申し上げるのですが、どうして一級河川を、いまのように都道府県の中だけを流れる川までも指定する気持ちになられたか。これは少なくとももっと重要な河川、二府県以上にまたがる、そういう重要な河川というような意味に限定なさる御意図はないか。また、同時に、これに関連して、それじゃあなたはいまどれくらいの川を——五十とか六十とか先ほどおっしゃったんですが、あなたが覚えていらっしゃる河川の名前だけでいいですが、こういう河川一級河川とするということを、ちょっと御記憶にあるだけでよろしいですから、ひとつこの際発表していただきたい。
  199. 河野一郎

    河野国務大臣 法律で二府県にわたると書くことは適当でないということは、先ほど申し上げましたとおり。たとえば北海道におけるごときは全部一道でございます。石狩川のごときは当然一級河川になるだろうと私は思います。私はここでどの河川がどうと言うわけには参らぬ。(太田委員「石狩川だけですか」と呼ぶ)それはほかにも、河川審議会の議を経ましてきめることでございますから、これをあらかじめ私がどれがどうということを申し上げることは適当でない。申し上げることは差し控えたいと思います。
  200. 福永一臣

    福永委員長 次に、東海林稔君。
  201. 東海林稔

    ○東海林委員 私は、今度の新しい河川法と主として農業水利の関係につきまして数点お伺いいたしたいのでありますが、大臣が非常に時間をお急ぎのようでございますので、ごく基本的なことだけを大臣にお伺いいたしたいと思います。  御承知のように、従来の利水関係のうちで、歴史的に見ましても非常に古いのが農業用水であり、また現在の段階においても、農業用水自体の重要度ということは、私どもは依然として変わらないと思うわけです。しかし、最近わが国産業構造の改善なりあるいは国民生活の向上等によって、新たに発電でありますとか、あるいは工場の用水でありますとか、あるいは飲料水等、そういう面で非常に水の利用というものがふえてまいりました。この非常に限られた水をどういうふうにふえてきた需要にマッチするように適正に配分するかということが、非常に重要な問題になっておるわけでありまして、今回の河川法改正の一つの理由もそういう点から出たんじゃないかと考えられるわけです。そこで、今回のこの法案を見てみますと、私ども、主として農業に関連している者の立場からかもしれませんが、これはひがみではないと私自身考えておるのでありますが、どうも農業用水というものが軽く見られているんじゃないか、軽く扱われているんじゃないかというような心配の念があるわけです。一般農民の中にも、御承知のように農民はわりかた感度が鈍いので、ものの判断がおくれがちなんですが、最近新河川法につきましていろいろと新聞やテレビ等で論ぜられるようになりましてから、この問題に関心を持つようになってまいったのでありますが、最近やはり私と同じように、何となく農業用水の将来について不安だというような気分がだいぶ出てきておるわけです。   〔福永建設委員長退席、瀬戸山建設委員長代理着席〕  そこで大臣にお伺いいたしたいことは、この新しい法案を作成するにあたりまして、利水の面において農業用水の位置というものをどういうふうに基本的にお考えになってこの法案の作成に当たられたか、その点を明確にしていただきたい、こうお願いするわけです。
  202. 河野一郎

    河野国務大臣 私も長いこと農林大臣をいたしましたが、農業用水の重要であることは、また、わが国が農業を経営いたしますのに、水がいかに重要であるかということは、十分承知をいたしております。そういう意味におきまして、既存の農業用水については、これは優先的に尊重いたします。ということは、法律にも明らかにいたすところであります。今後土地の開発、造成等に必要な多目的ダム、これは農林ダムということよりも、むしろ現在各地に建設されておりますように、ダムの新設はおおむね多目的で建設いたしております。こういう場合を想定いたしましても、農業用水は新たに造成する場合におきましても、私は、多目的で造成することのほうが、より強い角度で造成されるんじゃないかと思うのであります。そういう意味におきまして、水の利用度を高めるというような意味から申しますと、先ほど来治水利水かということで御議論がございます。いま申し上げますように、利水の面におきまして、農業用水については第一義的にこれを考えて、運営されることについては私は何ら疑いがない、こう確信いたしております。
  203. 東海林稔

    ○東海林委員 農業用水を従来のもの並びに今後必要とするものについても、これを最も重要なものとして考えていくという、はっきりとした大臣の弁明がございました。この点は非常に私は感謝申してもいいと思うのでありますが、ただ法律の中で、そういう御趣旨であるとするならば、もう少し考うべき点があったんじゃないか、こう思う点が幾つかあるわけです。こまかいことはあとで事務当局といろいろと相談いたしたいと思うのであります。  そこで、大臣にお伺いいたしたいことは、たとえばこの法案の当初の案の発表以来、いろいろと議論があり、特に知事会等からこの地方行政の関連等についてはいろいろ御意見が出て、先ほど午前中から大臣のお話もありましたように、ある程度そういう懸念を取り入れて、その調整をはかって、今回の提案になったというふうにお話がありましたし、私もそういう点は一部認められるわけですが、先ほど申しましたように、農業関係者の意見というのはどうもスローモーでございまして、これまで建設大臣に対して、農業関係者としての意見を率直に十分申し上げて、法案作成の段階においてそういう点を十分御考慮いただくというような配慮が欠けておったように私には見られるわけです。そこで、私は国会の審議を通じて、こういう農業関係のものにつきましては、今後ぜひ若干の修正をしていただきたいというような考えを持っておるわけです。もちろんこれは、大臣から申しますれば、国会の権威においてやるべきことで、建設大臣がとやかく申すべきことじゃないということにもなるかもしれませんが、しかし、実際問題として、いろいろと法案の修正等の問題を考えた場合には、与党の国会の修正を受ける前に、与党の立場から言いますれば、やはりこの政党政治の建前から、所管大臣意見も十分尊重しなければならぬということが、これまでのわれわれの経験から考えられるわけです。そこでいろいろと事務当局ともこれから研究をしまして、ぜひ農業関係としてこういう点は修正していただきたいというような点があり、また、事務当局としても、それは妥当じゃないかという観点に立った場合には、ある程度国会で修正するということにつきまして、これは国会の問題ではあるが、しかし所管大臣としても特に異議をはさむものではないというような態度をとっていただけるものかどうか。そういうふうにお願いしたいわけですが、その点について大臣からちょっとお伺いしたいと思います。
  204. 河野一郎

    河野国務大臣 第一に、この法案の作成過程にあたって、農林方面の配慮が足らなかったじゃないかということでありますが、これは十二分に農林事務当局と打ち合わせをいたしまして、農林大臣ともしばしば懇談いたしまして、最終結論を得たのでございます。したがって、私は十分に配慮してあると考えますけれども、しかし、御審議の過程におきまして、修正案がもし両院を通過するというようなことでありますれば、私はもちろん院の御決議を尊重して、われわれとしてもその院の御意思に従ってまいるべきものだと考えます。
  205. 東海林稔

    ○東海林委員 先ほどの第一の答弁で尽きておるような点ではありますが、念のためにお伺いしたいと思いますことは、慣行水利権の尊重の問題でございます。これも建設省で立案された当初の案と、今度提案された案の中には若干の変更があるようでございますが、当初私ども聞きましたのは、慣行水利権はこれを認めるが、これは三年以内に届け出る、そして十年たって届け出ない場合には消滅するんだ、こういうような案だったそうであります。今度は届け出の義務ということはつけてありますが、届け出なかった場合にどうということは出ておらぬようでございます。御承知のように、従来慣行水利権につきましては、いろいろと裁判の問題等もございまして、判決例等もあるわけでございますが、それによりまして、慣行水利権は物権的なものだということを大体認められているのは御承知のとおりでございます。そこで、私どもは、これは届け出しなかったから消滅する、こういうような性格のものではないと考えておるわけでありますが、先ほどの大臣答弁で、一応尊重されるということははっきりしたわけですけれども、この点は非常に重大な問題でございますので、大臣からはっきりその点を御確認をいただきたいと思うわけです。そういう趣旨での御答弁をひとつお願いします。
  206. 河野一郎

    河野国務大臣 御主張のとおりに私も考えております。当初は、水利権を整理確定するために、ある期限の間に届け出してもらおうではないかというようなことのために、そういうことを考えた者もあるようでございますけれども、結論としては国会へ提案したようにいたしておるわけでございまして、これを尊重することはもちろん最初に私がお答えしたとおりでございます。ただ、台帳を今度つくることでございますから、相なるべくはそれによって明瞭にした方がいいんじゃないか。そのほうが、多目的ダムをつくるとか、上流において水の量をどうするとかいうようなことを計算いたします場合に、非常に間違いがなくていいだろう。計算したあとでそういう水利権があったのかというようなことになりますと、誤差が出てくるというようなこともありますから、貴重な資源でございますから、それを有効に使うために、なるべく台帳は正確を期したいと考えておりますので、農業慣行水利権等につきましては、なるべく正確に届け出していただきたいという強い希望は持っておりますけれども、それを怠ったからというて、どうこうというようなことは、これはいまお話しのとおりでございます。
  207. 東海林稔

    ○東海林委員 もう一点だけ確認の意味お尋ねしたいのですが、今後の新しい農業用水の水利についても十分尊重するというようなことを先ほどお話しいただいたわけですが、ただその場合に、その水源を主として多目的ダムとの関連において大臣のお答えがあったのでございますが、御承知のように現在農業基本法に基づいて農業構造改善をやっておって、その基本的な事項の一つとして基盤整備事業をやっておるわけです。その観点から、新たな水利事業というものを相当今後考えなければならぬと思います。その場合に、必ずしも水源を多目的ダムにのみ依存するということにいかない場合もあり得ると私は思うわけです。これまで河川管理知事がやっておったという場合は、わりかた総合行政の一部としての農業についての知識といいますか、理解というものが相当あった。ところが、一級河川となった場合に、今度は河川管理を専門としておって、農業関係については専門外の建設省がおやりになるのだ。もちろん重要事項については農林大臣と協議するというような規定もございますけれども、そういう点についてやはり農民の中で若干不安があるわけです。そこで、先ほどのお答えでいいわけですけれども、ただ多目的ダムと関連してだけお答えになりましたので、その点が少し気になりますので、一般的に、新しい農業基盤整備のための水利については、今後とも十分尊重する考え建設大臣としても持っておるのだという点を、もう一度確認の意味でお願いいたします。
  208. 河野一郎

    河野国務大臣 たまたま多目的ダムという用語を用いましたが、後半に述べましたように、土地の造成、新たな農業構造の改善等に必要な意味において水を利用するという場合に、これに水が十分に利用されることに協力をいたすということは当然のことでございまして、それに必要な施設を農林大臣において計画される場合には、優先的にこれに同意をし、実行されるということに協力申し上げるということを、明確にいたしておきます。
  209. 東海林稔

    ○東海林委員 自余の質問事務当局にお願いすることにして、大臣に対する質問は終わります。
  210. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 次に、松井誠君。
  211. 松井誠

    ○松井(誠)委員 大臣がお帰りになります前に、二点ばかりお尋ねをいたしておきたいと思います。  私は、やはり地方行政、特に地方自治の立場から、この河川法について根本的な疑問を持っておるわけであります。この点については、先ほど来、各委員から同じような疑問が表明をされたわけでありますが、やはりその点についてもう一度確かめておきたいと思うのです。と申しますのは、先ほど大臣も御答弁になりましたように、現在地方制度調査会あるいは臨時行政調査会で、国と地方との事務配分の問題が根本的に検討されておる、そしてその結論が出るのは必ずしも遠い将来ではないという現在の段階なんです。そしてこの河川法というものの一番大きな変革の中心というのは、いままで府県にまかせられておった権限が中央に吸い上げられるということです。この府県における水の行政、あるいはそれに関連をする行政というのは、府県行政の中で相当大きなウエートを占めておるわけです。したがって、事務配分の問題が根本的にいま再検討されようとしておるそのときに、この府県行政の中から相当大幅なものを吸い上げるということが、一体どういう意味を持つのかということをお尋ねをいたしたいわけです。  そういうことについて、先ほど大臣は、そのような結論が出るまで待ってはおれないのだという御答弁でありました。それはそれで、私はそれだけ切り離して考えれば理由がないことはないと思いますけれども、しかし、その御答弁がそのまま容認をされるためには、私はいろんな条件が満たされなければならないと思うのです。一つは、ここでこの府県行政から大幅に取り上げたこのことが、いま作業が進んでおる地方制度調査会なり臨時行政調査会なりの事務配分の結論に対して、一つの既成事実として事実上の圧力にならないかどうか、ならないという具体的な配慮が一体されるつもりなのかどうか。もう一つ、答申が出て、さて答申を尊重するという立場から、もしその答申の結論とこの河川法に書いてある考え方とが食い違った場合に、答申尊重のたてまえから、もう一ぺんこの河川法考え方を再検討をするという御配慮があるかどうか。そういうことがはっきりしないと、ともかく結論が出ないから、まあまあ急ぐのだからやったらいいじゃないかということだけでは、私は十分納得できないと思う。ですから、いまの二点について、ひとつ御答弁をいただきたいと思うのです。と申しますのは、現実にこれが動き出して、府県行政がそれだけ吸い上げられる。そうすると、もう地方制度調査会でもそれを一つの既成事実として認めるという危険性があるんじゃないか。あるいはそういう既成事実が一つの圧力にならなくて、地方制度調査会がいわば適正な事務配分という結論を出したときに、現実にはこれが一つの既成事実になって、その答申というものが軽んぜられるという懸念があるのじゃないか。そういうことがはっきりしなければ、結論が出るまで待っておれないから、まあまあやるんです、出たら出たときにまた考えましょうということではいけないのじゃないですか。私は地方自治という立場からその点を心配するものですから、あらためてお伺いいたしたいと思う。
  212. 河野一郎

    河野国務大臣 制度の調査会は、いずれも既成の事実の上に立って、これをどう調整、分配するか、あんばいするかということを御調査願っておるものと私は考えます。したがって、これら既成の事実が生まれることのいなやによって、調査会の結論が左右されるとは考えられないのであります。  第二点は、この調査会の答申をどう扱うかということは、総理大臣から、もしくはその調査会を設置されました人からお答えをすることが適当でございまして、私からこれをとやかくお答えをすることは適当でないと考えます。
  213. 松井誠

    ○松井(誠)委員 大臣建設大臣であると同時に国の行政大臣であるわけですから、したがって、現在の地方自治というものをどう考えるかという点については、やはり基本的なお考えというものをお持ちになっておる必要があると思うのです。現在全国の知事会あたりから盛んに、いま私が申し上げた点を中心にして、基本的な反対というものが起こっておるわけです。私は、これは単なる行政官庁同士の権限争いの問題ではなくて、やはり知事のうしろにおる住民の立場、つまり地方自治という立場からの反対である、そのように理解する限りにおいて、私たちはやはり支持しなければならぬと思うのです。ですから、そういう基本的な立場考えると、大臣が、それは審議会関係した総理大臣なり何なりが意見を申し上げるべきだという形でお答えを逃げないで、やはり地方自治について私は基本的にこう考えている、したがって、地方制度調査会の事務配分の問題については、その答申の内容にもよりましょうけれども、しかし地方制度、地方自治というものを守るという基本的な立場からの答申は、これは当然尊重しなければならぬということぐらいは、御答弁になってしかるべきだと思うのです。いかがですか。
  214. 河野一郎

    河野国務大臣 まことに失礼ですが、前段お答え申し上げたとおりで、それ以上答えることは適当でないと考えます。
  215. 松井誠

    ○松井(誠)委員 あるいはいまの御答弁が率直な御答弁かもしれません。それだけに私たちは心配をするわけです。先ほど大臣が、この河川法で既成事実ができる、そして審議会というものはそういう既成事実を材料にして答申をつくるんだ——それはそのとおりです。しかし、その既成事実が現実に圧力になるという、そういう現実を大臣はお考えになっておるはずなんです。だから、いまのように、答申は尊重して、この河川法と食い違った結論が出るならばもとに戻すという御答弁はできない。できないということは、これを一つの既成事実として、それからいわばそれを土台にして答申ができるということを初めから予期しておる、期待しておるというように私は考えるわけです。それだけに、国と地方との適正な事務配分というものが出てきたおかげて、その適正な作業というものが乱される、混乱を起こすということになりはしませんか。これ以上大臣にいまの点についてお答えを求めても無理だと思いますので、私はそのようにはっきり御答弁ができないということ自体に、地方自治から見て一番大きな問題があるのだということだけを申し上げておきたいと思うのです。  もう一点は、先ほど太田委員から御指摘になりましたけれども、この緊急時における建設大臣の権限について、それは現実にはなかなか適切な具体的な措置、指導というものがむずかしい、だから、あらかじめ法律できめておくということになると、それに基づいて発動するということになると補償が要る、だから、そういうことにしないで、いわば行政指導によってそれは解決したいのだというお話でありましたけれども、これは何か私、お聞きしておりまして、責任を回避することばだとしか受け取れないわけです。これを一つの強制力をもって、公共の福祉のためにまさに必要なんですから、したがって、そういう場合に思い切った強制の措置をとることこそが必要だと思うのです。そうしてそういうことができるということが、もし建設大臣が権限を持つということが意味があるとすれば、最大の意味ではないかと思う。それをその最大の権限というものを行使しないで、言ってみれば一番大事なときに、勧告という形で逃げる。しかし、ここで法律的な強制としておいて、しておいたから何でも強制しなければならぬわけではなくて、事実上勧告でももちろんいいわけですから、しかし最後の切り札としては強制措置というものを考えるという形になっても、少しも行政指導上格段の違いが出てくるわけではない。しかし最後には伝家の宝刀を抜くんだという具体的なものがあってもいいじゃないか。私はこまかいことはあとでまたお伺いをしますけれども、何かこの法律では、先ほど東海林委員からもお話がありましたが、ある意味では私権というものが不当に軽んぜられている。その私権というのは、言ってみれば名もない人民の私権というものは非常に軽んぜられている。しかし一面では私権というものが不当に保護されているのではないか。その一つが非常に遠慮がちな勧告という形で出てきているのではないですか。何か補償をしなければならぬから書くわけにはいきませんと言いましたけれども、いま一番必要なのは、その補償をするかどうか。それは法律上強制措置でやれば補償が必要でしょう。しかし、必ずしも補償を伴うような強制措置だけが必要だというわけではないわけですから、したがって強大な建設大臣の権限、握ったその最大の効果として、私はむしろこれを再考されてもいいのじゃないか。念を押しますけれども、その点についてもう一度お答えをいただきたいと思います。
  216. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたとおりに、どういう場合に放流すべしという命令を出すかという意味になりますと、これもまたそのケース、ケースによって非常に違いがある。しかも、いまのように集中豪雨もしくはそれによって流水の集中度というようなものについての予見度が非常に困難でございます。したがって、これは勧告をするという程度で目的が達せられるのじゃないか、むしろそれによって、いまの行政力を十分に発揮することによって目的が達せられるものとわれわれは解釈いたしまして、十分話し合って、こういう事態なら流水しなさい、放流しなさいということでいけるんじゃないか。それを、いまの場合に、こちらがそういう勧告をしても言うことを聞かないというような場合が想像いたしかねます。それをがんとして命令でないから聞かない、沿岸の諸君にどういう迷惑をかけようが、自分の水だけを大事にして流水を阻止するというようなことがあるとは考えられませんので、十分懇談をして勧告をするという程度で目的が達成できるという判断に立っておるわけであります。
  217. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私もこれでやめますけれども、いまのように、そういう関係者の善意というものに信頼をするならば、こんな膨大な法体系というものは要らぬわけです。やはり大事なときにはぴしっとやるということがなければならない。ことにいまのような問題の場合、緊急を要する場合、事人命に関するというような場合に、善意の話し合いだけで事を解決しようということだけならば、こんなものは要らないと思う。そうではなしに、やはりそういうときにこそ伝家の宝刀を抜くというものが必要ではないかと考えましてお伺いをいたしたわけですけれども、時間も参りましたので、私の大臣に対する質問は一応終わります。
  218. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 門司亮君。
  219. 門司亮

    ○門司委員 時間の関係もありますから、率直に簡単に申し上げます。  最初に聞いておきたいと思いますことは、この法律でいう審議会の設置でありますが、今度の国会で御承知のように地方行政連絡会議というものができて、おのおのブロックの知事さん、それから建設省、農林省その他の出先の機関の長の諸君が集まって、その地方におけるいろいろの問題を協議するような法律が実は出されておって、地方行政委員会ではこれは一応通っております。この法案日本を九つに分けておりますから、一級河川というのはこの中にみんな入ると思うのです。そういたしますと、この審議会の協議事項と、それから建設省の出先機関が地方行政連絡会議との間に話をする、その関係は一体どうなりますか。その辺の調整がどういうふうに行なわれておるのか。もしできれば建設大臣からも地方自治大臣からも御答弁を願いたいと思うのですが、これは協議会が二つ重なってこんがらがるようなことがあっては因ると思いますので、念のために聞いておきたいと思います。
  220. 河野一郎

    河野国務大臣 いま一級河川指定の場合の審議会の問題についてお尋ねでございますが、これは法律に書いておりますとおりに、一級河川指定する場合にはこの議を経て行なうということにしております。したがって、地方連絡協議会にはその諮問はいたしません。これだけでやります。
  221. 門司亮

    ○門司委員 大体法律を読めばそういうふうに解釈できるのですが、ただ私が心配しておりますのは、地方連絡協議会にあなたの出先の機関である建設局なら建設局の機関の長が入っております。同時に地方連絡協議会のほうは知事が主宰する、こういうことになっておりますので、いまの御答弁だけでは——建設大臣としてはそういう御答弁になるかもしれませんが、いずれこれはあとで自治大臣のほうにお聞きをして、この間の連絡が円満にいくように話し合いを進めてもらいたいと思います。  それからもう一つこの機会に聞いておきたいと思いますことは、この河川法をずっと読んでおりまして、この河川法の全体を貫くものの中に、私の気持ちからいって一つ欠けている点がありはしないか、こう考えられるのであります。要するに河川行政ということと水の行政というものが、この法案ではどうも私にははっきりしない。私がなぜそういう回りくどいことを言いますかというと、河川というものについてのものの考え方と、水というものについてのものの考え方は、おのずから私は違うと思う。この法律の中で欠けておると思われますることは、水をどう涵養するかという場合に、要するに水源の涵養の問題にちっとも触れておらない。洪水が出たからどう始末するかということはこれでよろしいかもしれない。しかし、洪水が出ないようにするのにはどうしたらよいか、水が平均してできるだけスムーズに流れるように、一ぺんにたくさん流れないように、水自身調整して流れるような形をとろうとするならば、涵養林の問題があると思う。今日の日本の山に降った水が、川までの間に流れる時間が非常に短くなっておる。戦前は六時間から七時間かからなければならない水が、二時間か三時間で出ている。いわゆる一ぺんに降った水が一ぺんに押し流されているところに、今日の河川が非常に荒廃している原因があると考えるならば、この河川法の制定には涵養林の問題を考えるべきではなかったか。この問題については植林その他伐採の中などできめられておるから、それでよろしいという大臣のお考えであるかどうか。私どもは、この法律案だけで洪水が調整されようとはなかなか考えられないのであります。その点について、もし大臣の御意見があったら、伺っておきたいと思います。
  222. 河野一郎

    河野国務大臣 治山が治水と相並行して重要であることについては同感でございます。治山につきましては現に所管が農林大臣にございますと同時に、直接の砂防は建設大臣において行なっております。したがって、私建設大臣になりましてから、治山の面におきまする砂防の役人と治水の面におきます建設省の役人との人事の交流等をいたしまして、つとめて両者の間の融合をはかりつつ治山の実を達成いたしたい、治水の実を達成いたしたいということについては、及ばずながら努力をいたしておるつもりでございますが、これはまた別に十分考慮いたしまして、そうして完ぺきを期したいと考えております。
  223. 門司亮

    ○門司委員 その辺、どうも官僚のなわ張りと言うとまたおこられるかもしれませんが、事実上の問題としてなかなか調和がうまくできないんじゃないか。河川法というような明治三十九年とかあるいは二十九年ごろの法律がいまだに生きておって、これの改正ができなかったというふうな、ことほどさように水利という問題は複雑であったからできなかったんじゃないかと考えられる。しかし、この問題を根本的に解決しようとするには、やはりこういう画期的の法律をこしらえられる場合には、少なくともこの法律の中に水をどう涵養していくかという問題が含まれておらなければ、この法律はちぐはぐになるんじゃないかと思う。そうしてほんとうに日本治水あるいは水利というものの目的が達せられないんじゃないか。これは何と言っても、これからこれだけは農林省がやるんだ、これからこれだけは建設省がやるんだということでは、いまの官僚のなわ張りを見てまいりますと、この法律だけでは不完全であると思う。これは農林省の管轄であるかもしれないが、農林省の所轄であるからといって、水利と治水を完全にやっていこうとするのに、根本である水の解決がこの法律に一字も見えていないところに、私は非常な危惧を持つものである。そうしてこの法律の効果が一〇〇%発揮できないんじゃないか、こういう心配があるわけでありますが、そういうことに修正される、あるいはいまの大臣のお考えだけで万全を期するというようなことだけでなくて、法律自体をもう少ししっかりした法律に直すというようなお考えはございませんか。
  224. 河野一郎

    河野国務大臣 その点は十分われわれとしても考慮しなければならぬ点であることについては、私も同感でございます。しかし、すべてを一気にいたしますと、なかなか最初から——私が申し上げておりますとおりに、この法案につきましても、とにかく最大公約数を求めて可能な分の改正をしていくということで、まず第一次の改正をするという所存でございます。その他いろいろの点において御意見もありましょうと思います。しかし、それらの調整は今後にまって完ぺきを期したいということが、今日の行政の段階においては、まず私の努力においては、まあまあこの辺で一応御審議をいただきまして、御指摘の点につきましては今後に最大の努力を重ねて、順次完ぺきを期していきたいと考えております。
  225. 門司亮

    ○門司委員 私は、いまのことは法律を完ぺきなものにしていきたい。そうしませんと、日本のように雨量が非常に多くて、水がたくさんあって、そうして水飢饉を至るところにこしらえておる。同時にまた、将来工業が発展していこうとする場合に、都市が大きく発展していこうとする場合に、水の使用量は非常にふえていく。同時に、反面には、むだな水を流すことによって被害が非常に大きい。どうしてもこれは調整する必要がある。そうするには、こういう画期的な法律をこしらえられるならば、官僚のなわ張りもあろうかと思いますが、これは日本行政の一番悪い面でありますから、少なくとも実力者大臣としての河野さんには、そのくらいの切り抜けばできそうなものだと思うのです。これは国の一つの基本法といっても差しつかえないと思うのです。非常に大きな法律だと思うのですが、その法律で涵養林のほうはあとで考える、そっちは農林省でやっておるんだというようなことでは、私はこの法律の効果は望み得ないと思う。しかし、大臣の時間もございませんから、これ以上押し問答はしません。  その次にもう一つだけ聞いておきたいと思います。いままでもいろいろ話を聞かれたと思いますが、その中で知事会その他等から非常に反対意見を申し述べて、陳情書その他を私どものところへたくさん持ってきておるわけです。この知事会との関連は、十分にこの法律の施行にあたって了解がついておりますか。その点をひとつ伺っておきたいと思います。
  226. 河野一郎

    河野国務大臣 お答え申し上げます。なるべく多数の知事さんに直接お目にかかってお話し合いをいたしたつもりでございます。しかし、それぞれの知事さんに全部御了解を得るということに至らないことは、はなはだ遺憾でございます。地元関係その他において御了解の困難な知事さんも一、二いらっしゃるようでございます。しかし、比較的多数の知事さんにはお目にかかって、われわれとしてその意見を取り入れることのできるものは十分取り入れたつもりでございますが、何分にも過去の慣行と申しますか、利害相反して、そして同一河川におきましても、上流知事さん、中流、下流の知事さんの中でも意見が食い違いますために、いろいろの問題がありましたことは御承知のとおりであります。そういうものを一つにまとめろとおっしゃっても、これはなかなかむずかしい。そういうために、これをひとつ別の角度から調整をしてまいるというところにも、この法律のねらいの一部があるということに御了承いただいたらどうかと思うのであります。
  227. 門司亮

    ○門司委員 もう一つだけ聞いておきたいと思いますが、私はいまの大臣の御答弁だけでは満足できない。こういう地方の自治体に関係のある法律というのは、非常にむずかしいのでありまして、何といっても、国のどんな仕事でも、地方の住民の協力がなくて満足に仕事の行なえるはずはございませんので、少なくとも地方の自治体の言い分というものは十分にひとつ聞いていただきたい。そうしてその上で円満にこの法律の効果が発揮できるように努力をしていただきたいと思います。  それからもう一つ聞いておきたいと思いますことは、これは農林大臣をおやりになっておったという角度から、ひとつこの機会に御意見を承ることができれば幸いだと思いますが、水利の統制をしていこうとするには、水をどう使うかということが非常に大きな問題になろうかと私は思います。ところが、この法律の中にも、水の使い方等についてはほとんど触れておらない。たとえば今日の日本の農業用水というようなものは、実態からいえばかなり使い過ぎているのではないか。あんなに水がなくても、水稲の栽培はやり方によってはできるのではないかという気がする。こういうことを申し上げておりますのは、一つの例をとってみましても、たとえば北九州市ができて、あそこにたくさんの水を使うことにこれからなろうかと思います。ところが遠賀川の水だけではどうにもならない。しかし遠賀川のあの流域の耕地をほっておくわけにはいかない。こういう面から、あの川の水を節約して、北九州市の完全な工業の発達を見ていこうとするときには、どうしてもどこかで節約をしなければならない。水の節約をするには、今日の農業用水というものが、従来三百年だか千年だかわかりませんが、旧態依然たる農法がずっと続けられてきておるところに、水の浪費がありはしないかと考えられる。そういう面について、かつて農林大臣をやっておいでになりました河野さんとしては、何かの抱負がおありだと私は考えておりますが、この機会にそれを承ることができれば幸いだと思います。
  228. 河野一郎

    河野国務大臣 誤解が起こるといけませんから最初に申し上げておきますが、農業用水につきましては、先ほどお答え申し上げたことに尽きると思います。これはいやしくも農業経営に不安を与えるような言動は慎むべきではないか、こう思うのであります。ただし、現に農村におきましては、構造を改善し経営について研究を加えまして、いま極力営農方法は改善されつつあります。そういう営農方法の改善もしくは経営の改善によって、むだな水を農村が要求するようなことはないはずでございます。わが国の営農が水を基盤に置いておりますこの事実、この長年にわたる習慣というものを一朝にして変えて、そうして直ちにこれを工業用水に変換をする方法を講ずるというようなことは、軽々にここで発言をすることは不謹慎だ、こう私は考えます。ただし、水の利用については、非常に貴重なものでございますから、これを十分各方面の理解と協力を得つつ万全を期してまいるということは、あくまでも努力をしなければならぬことである、こう考えます。
  229. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、こう解釈しておいてよろしゅうございますか。従来の農村の持っております、ことばでいえば水利権といいますか、使用権といいますか、それは必ず確保されると解釈しておいてよろしゅうございますね。
  230. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 この際五分間休憩いたします。    午後三時四十五分休憩      ————◇—————    午後四時三分開議
  231. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行します。門司亮君。
  232. 門司亮

    ○門司委員 自治大臣にこの法律案に関係して一つだけお聞きをしておきたいと思いますが、この法律の八十条に書いてあります「建設省に、河川審議会を置く。」「審議会は、この法律によりその権限に属させられた事項を調査審議するほか、建設大臣の諮問に応じ、河川に関する重要事項を調査審議する。」「審議会は、前項に規定する事項について関係行政機関に対し、意見を述べることができる。」そうして審議会の組織が書いてあります。この審議会は、むろんこの法律に書いてありますような形であって、しかも八十一条には「関係行政機関の職員及び地方公共団体の長のうちから、建設大臣が任命する。」こういうふうに実は書いてあります。この中央に設けられる審議会意見と、それから先ほど自治省所管で、いわゆる地方行政連絡会議というものができております。地方行政連絡会議のほうは御承知のように知事が主体になって出先官庁との問に協議を行なうことになっておる。ところがこの建設省に設置される審議会審議する事項は、やはり河川という、地方自治体に最も関係の深いものを審議している。したがって、建設省に設けられたこの審議会意見地方行政連絡会議の意見との間の調整は一体どこでされるのか、その点をひとつ聞いておきたいと思います。
  233. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 建設省に設けられます審議会は、関係者のほかに学識経験者等を加えまして、広い立場から審議するわけでありますが、それが一地方の利害と衝突する、あるいは意見の一致を見ないという場合におきましては、これは数府県にまたがるもの、少なくも複数以上の府県にまたがるものにつきましては、やはり先ほど提案いたしました連絡会議の議題になるというふうに考えております。
  234. 門司亮

    ○門司委員 私もそういうふうに解釈しているからこれは問題になりはしないかと実は考えるのであって、一方においてはこの連絡会議でそういうものが審議されておる、一方のほうでは本部といいますか、建設省本省のほうでこういう審議会ができておる。この連絡会議の意見建設省審議会意見とが食い違った場合が必ずしもないわけではないが、そういう場合にだれが一体どこで調整するのか、その点をひとつはっきりしておいていただきたいと思います。
  235. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 いろいろ民主的に地方において議論をされることは、非常にけっこうなことであると思います。それが審議会であろうと連絡会議であろうと、それは十分に審議を尽くし、民意を尊重するというたてまえにおいて議論をされるということを、むしろわれわれは歓迎をしておるのであります。しかし、最終的にはやはり関係閣僚の話し合いにおいて、閣議において決定するということになろうと考えております。
  236. 門司亮

    ○門司委員 どうもそうなると、この法律の八十条以下というものはなかなかめんどうな問題だし、それから連絡会議のほうもなかなかめんどうな問題だという、こういうことになって、両方とも結局決定権がないといいますか、連絡会議のほうも決定権というほどのものはないかもしれませんが、きめるわけにもいかない、しかし、審議会のほうでもどうもきめ切れない。あとは中央というよりもむしろ関係大臣の間でということになると、私はこの法律の運営についてはかなり複雑なものというか、なかなかむずかしい問題ができてきて、より以上地方行政を混乱させる危険性があると申し上げても、あるいは言い過ぎかもしれませんが、私どもにはそういうふうに考えられる。この点いまの大臣答弁では、そうした場合はひとつ大臣大臣の話し合いでというようなことで、あるいはきまりをつけられるということになると、両方の——また審議会というものの権威がどういうものだか一向わからないのと同時に、いたずらに地方行政を複雑にするだけであるというように私ども解釈をせざるを得なくなるので、これも御答弁願えるかどうかわかりませんが、いまの御答弁で大体終わっていると思いますが、もう一つ念のために聞いておきたいと思いますことは、両方の、片方は審議会であり片方は連絡会議、そうしてそこでおのおの話し合われたことが食い違っておる、食い違ったことを調整するのは閣議あたりでという、こういうお話でありますが、そうなりますと、きめられたものが私は円満に遂行する上に困難が出てきはしないかと考えられます。したがって、そういう場合に、これは国の仕事として自治体にそれがおろされてくる。御承知のように今日の自治法から申し上げてまいりますと、一たん国の仕事としてきめられた以上は、その仕事を遂行しなければその知事に対する罷免権を総理大臣は発動することが法律的には一応できる。そうなってまいりますと、ますます地方行政がやりにくくなりはしないか。審議会できめられる、あるいは連絡会議できめられたものが食い違ってきて、そうしてそれが閣議に持ち込まれて、一応きめられるかもしれない。きめられたものが執行される。執行される場合に当該府県知事はどうも自分の気に沿わないからということで、また連絡会議との間の話し合いにもそむくからというようなことで、この事業を渋るというようなことがあると、その次に出てくるものは知事の罷免権というものが発動されるような危険性すら考えられはしないか。この問題は大きい問題だけにそこまで発展しやしないか。小さい問題ならそこまで発展しないで、何も知事さんもそう我を通さないかもしれないが、問題だけに国のほうも一歩も引けない。地方の自治体もそう国の言いなりになっていられないというような事態になってくると、自治法に定める最悪の事態としての公選された知事の罷免権を総理大臣が発動するということになりかねない、こういう気がするのですが、その点はどうでしょう。そういう危惧はないという大臣の御答弁ならそれでいいのですが、どうも私はそこまで発展する危険性がありはしないかと思うのです。
  237. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 いろいろ世の中のことですから心配すれば切りがないわけでありますが、審議会というものは大体におきまして建設大臣の諮問機関でございます。そこに地方自治団体からも、学識経験者からもいろいろ入れまして審議をするわけでありまして、治山治水並びに利水というような国の大目的、あるいはまた地方民の重大なる関係というものから見ると、ただ一地方なら一地方、一知事なら一知事というものの立場だけを、そこで主張するというわけにはいかないだろう。そのために公平な立場から審議会を設けておりますから、審議会そのものはむしろ選挙制度審議会のように、非常に強い意見政府に押しつけるような結果にはなるかもしれないけれども、審議会同士の中で分裂するほどの意見の相違というものは、むしろ私はないのじゃないかと考えております。しかし政府の諮問機関でございますから、あくまでも民主的に地方公共団体の代表者も入れまして相談をして、それでもまとまらないということになれば、先ほど申し上げましたように、諮問機関でございますから、答申がまとまらないということはないと思いますが、そういうような場合がもしあれば、やはり関係閣僚をまじえた懇談会等にあいて、意見をまとめるということは必要であろう。私どものほうは、むしろまとまらないということよりも、あまりまとまり過ぎて強い意見が出過ぎるのじゃないかということを心配しておる、そういうことでございます。
  238. 門司亮

    ○門司委員 私もそうだと思うのですよ。この法律に定められた審議会は諮問機関でございますから、そういうことに私はなろうと思います。しかし、これは採用するかしないかは、政府のかってだというと怒るかもしれませんが、大体あまり国民に都合のいいようなことは採用されないのです。選挙制度の審議会だって地方制度審議会、この審議会の答申もあまり政府は実行してくれないのですよ。片っ方のほうは審議会程度である。片っ方の連絡会議のほうもやはり何も完全に行なわなければならないという義務づけたものでも実はないわけであります。両方とも形の上からいけば、片っ方は諮問機関であり、片っ方は連絡会議だといって、何もたいした拘束力は両方とも持っておらぬ。しかし、少なくとも実施にあたっては都道府県知事というのは、やはり責任を持ってやらなければならぬことになるわけでありまして、したがって、いずれの協議会も拘束力は持たない。協議会にいたしましても取り上げられる問題が食い違っておるときには、そういう問題が起こってくる。地方連絡会議の意見と諮問機関であるこの審議会意見が、食い違っておる場合に、政府はどういう態度をとるかということについて、いま大臣の御答弁のように、最後に関係閣僚会議ででもきめようというお話になろうかと私は思います。両方の意見をここで調整されることになろうかと思う。  そういうことがありますことのために、ただその場合に知事会のほうがかなり強く意見を申し述べておりますので、たとえば関係閣僚で相談を願って、そうしてものがきめられた。これを施行する場合に、都道府県知事が少しサボタージュユすることもなかろうと思いますが、しかし、地方の実情に沿わないという考え方があれば、私は知事はそう進んでやらないと思う。そうすると、この法律できめられた計画も、かなり遅延するということばで申し上げたほうがよろしいかと思いますが、そういうことになりはしないかと思う。だから、もう少し調整をどこかでうまくすることができないかということです。大臣がさっき申し上げておりますように、責任を持ってそういうことはないのだと言い切れるなら、私はそれでもいいと思うのです。
  239. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 門司さん非常に御心配のようでありますが、審議会のほかに数府県にまたがる場合には、地方連絡会議というようなものの意見も徴するでありましょうし、そういうような民主的な方法によりまして協議をする場合、まとまらないから、またその上に調整機関を置くということは、いたずらに屋上屋を架することでありまして、連絡会議におきましても審議会におきましてもまとまらないものを、別の審議機関でまたまとめるということは、事実上あり得ないのではないかと私は考えております。  そういうことでありまして、私自治大臣立場から申しますれば、地方自治団体のいろいろな利害関係というものを十分に考慮して、しかもなお大きな国並びに国民全般の立場において、そういう視野に立って、一方において自治大臣であると同時に、一方において国務大臣としてのまた職責を果たしていかなければならないというわけでございますから、どちらにいたしましても、そんなに間違った結論を出すというようなことは万々ないと思うのであります。しかも、その審議結論の対象となるべきものが審議会意見であり、また連絡会議の意見でありますから、まとまらないと申しましても、ほんのわずかな部分においてまとまらないということが考えられるわけでございます。そうしますと、おのずからそこには常識、理論、またいろいろな点からよく話していけば、まとまる可能性は私は十分にある。どちらの意見も十分に聞きまして、どちらの利害もあまりそこなうことなしに地方の利害も守る、また国家的ないろいろな観点からの施策も考えまして、政府はその場合に関係閣僚において十分に懇談してやっていけば、それ以外の調整機関というものは、私は必要でないと現在のところ考えております。しかし、これも何も固定した意見でございませんから、国会なりその他におきまして、そういう問題が起こったときに、具体的に何らかの調整機関を設けるというような御意見の出ましたときには、私はそれに対してまで反対しようという考えは持っておりません。
  240. 門司亮

    ○門司委員 こういうふうに解釈してよろしゅうございますね。念のために聞いておきますが、この河川審議会で行なわれます、いわゆる協議事項、審議事項というものは、地方行政連絡会議でもこれを審議する対象になるのだ、同時にまたその意見は、政府においては重要視されるのだというように解釈しておいてよろしゅうございますね。
  241. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 それは審議会におきまして対象にならないと申しましても、数府県もしくは複数の県にまたがる場合において、地元住民なり地方公共団体府県知事なりがこれをしてはいけないということは、言えないと思う。そういうことに必然的になると思います。そういう意味におきまして、私は審議会の規則がどういうふうになっておるかはつまびらかにいたしておりませんけれども、当然数府県にまたがるときにはなる、こういうふうに考えております。したがいまして、審議会地方連絡会議の話し合いということも当然あり得る、結論的に言えば、門司さんのおっしゃったとおりで私はよろしいと思います。
  242. 門司亮

    ○門司委員 その辺がちょっとはっきりしないのですね。  委員長、これはやはり建設大臣と両方一緒におって聞かぬと……。  御承知のように地方連絡会議のほうにも、建設省の出先機関の長が参加しておるわけです。そしてきめられるのですね。だから、一面においては建設省意見も実際は代表していると言って差しつかえないのです。そうすると審議会のほうにも知事の代表者がお入りになっておる。ここできめられたことが食い違っている場合には、両方で一つであるべきものが、連絡会議と審議会があることのために、二つの意見がかりに出てくるというときの意見調整をどうするかということですが、どうもその辺やはり建設大臣に来てもらわぬと、ぐあいが悪いのです。どういうふうに調整されるのか、御答弁が願えるならしておいてもらいたいと思います。
  243. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 御承知のとおり審議会河川法改正のための直接の審議機関でございます。地方連絡会議はそういうような特定の目的を持たない。要するに、地方の広域行政なりあるいは広域の地方開発のために設けられている機関であります。しかしながら、河川行政といえども、広域行政並びに地方開発に影響がないわけはありません。必ず直接、間接の影響があるわけであります。したがいまして、審議会審議会としていろいろな審議を進められる。その場合関係者が全部入っております。しかし、またそれとは別に、地方連絡会議がその問題について協議するということは一つも妨げてないわけであります。たまたまその意見が食い違うか、食い違わないかということは、その場になってみなければわからない。両方から委員が入っているのですから、あなたのように食い違うということを前提にして議論することは、私は必ずしもあなたに同調しているわけではありません。だから食い違った場合にはどうするか。それはやはりその内部において調整していく以外に方法はない。だから、食い違うのだから、その上にまた一つの調整機関を設ける。その調整機関でまとまらない場合は、また調整機関を設けるというのでは、屋上屋を架して地方行政は渋滞し、国務は渋滞し、とうてい煩にたえないと私は考える。だから、その場合におきまして、最終的には諮問機関でありますから、やはり関係閣僚が懇談して審議会にも出ていったらいいと思う。選挙制度審査会などには自治大臣が出席しまして、いろいろ意見を述べております。そういうことがございますから、私は述べてもいいと思うし、また向こうからいろいろな意見を聞いてもいい。結局において、個人的な利益のためにやっているのではなくて、国家的な利益のために、また地方的な利益のためにやっていることでございますから、私は話がつかないというようなことはまずないだろう、こう考えております。
  244. 門司亮

    ○門司委員 これだけでやめますが、私は地方行政といいますか、自治体の立場から考えれば、この法律の審議会というようなものはやめて、むしろ連絡会議ができて、連絡会議をほんとうに活用していこうとするならば、そこには建設省意見は入っております。それからその他の機関も全部入っております。ただ入ってないのは学識経験者というような人が入ってないといえば入っていないかもしれません。しかし、いずれにいたしましても、当該地方の利害関係であることに間違いないのでありまして、北海道の事件を鹿児島の人がお考えになるよりも、北海道における住民の意思決定というものがとうといんじゃないか。決してこれが間違ったことを決定するようなものではなかろうと私は思う。したがって、この河川法に基づく審議会は、そういう意味からいえば、ややもすれば官僚独裁ということばは、あるいは言い過ぎかもしれませんが、中央独裁の仕事になりはしないか。むしろこれは地方行政連絡会議の意見を聞いて、これを政府がまとめていくというように直したほうがよろしいんじゃないか。そうすることのほうが、各都道府県知事意見、言いかえますならば、利害関係の最も深い地方住民の意思が中央に反映して、それに基づいて中央はこれをきめていくというほうが、より民主的であり、より平和的である。この法律はどうしてもそういう形で地方住民の意思よりも、むしろ中央の意見のほうが強く反映する危険性を持っているということが私は考えられるので、いままで聞いたわけでありまして、自治大臣はこういう意見についてどういうお考えでございますか。私は、むしろこの法律の中にかりにこういう条項を入れるとすれば、建設省地方行政連絡会議の意見を聞いてこれを定めるというふうに書いたほうが、むしろ平和的であり、民主的である、そして地方の自治体の住民の意見が十分に尊重される、こういうふうに私は私なりに解釈するのだが、大臣意見はどうです。
  245. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 最も深い関係地方に持っておる問題でございますから、地方意見を十分に聞くということは必要でございます。しかしながら、明治二十九年以来改正されなかったおもなる理由は、地方地方の利害関係ばかりを主張し、また関係省におきましてもそういう自分たちの立場だけを大臣が主張しておったために今日まで、こういうことは言い過ぎかもしれませんが、まとまってこなかった。しかしながら、治水の面から見ましても、いまの地方の自治団体の財政力をもって完全なる治水を行なうということはなかなか無理であります。治水を完全に行なわないということになれば、年々にくる災害に対して対処することができません。利水の面におきましても、東京都一千万の水道の問題が利根川の上流にある一県知事の意思によって左右される、あるいはまた地方における新しい産業都市工業用水の水がそういうことであるということでは、新しく発展していく日本の国の姿から見て少しおくれているのではないかということで、今度、新河川法改正に踏み切ったわけであります。私自身は、地方の自治体の固有の権利と申しますか、歴史的なものも守って、しかもなお一方、二分の一の補助が三分の二になり、三分の二の補助が四分の三になり、あるいは全額国庫負担になるということを期待いたしまして、この案に賛成をし、治水の面から申しましても、そういう観点から、利水の面に関しましても一地方の自治団体だけの利害関係ということを考えないで、広い視野からこれを判断するという立場に立って賛成をいたしておるわけであります。したがいまして、門司さんの言われるように、地方行政立場だけから申しますと、なるほど地方意見だけ聞いたらいいじゃないかという御意見があるかもしれませんが、それが今日までの、ある意味における一つの考え方をなしてきたわけです。地方意見を十分に聞くと同時に、やはりそういうことに関係のない、いわゆる学識経験者を入れまして、広い国の視野から国民的経済、あるいはまた福祉の視野からこれを見るという意味もあって、審議会というものは専門的に設けられたものと考えております。そういう意味におきまして、審議会そのものの運営が官僚的になるということは、これはなるほど事務的には局長などが出てやりますけれども、しかし、実際には政令事項でありますから、閣議決定事項であります。したがって、そのために官僚化するというふうには考えておりませんし、一方、また、先ほど申しましたように、地方意見は十分に参酌される、こういうことからいいまして、地方立場も、また広い国の立場も学識経験者によって代表せられるという意味において、私はこの案に賛成をしておるわけでございます。
  246. 門司亮

    ○門司委員 どうも自治大臣としてはもう少し考え方を考え直してもらいたいと思う。いままでできなかったということは、いろいろな関係があったと思います。しかし、今度の国会で、私どもはこういう法案自身には反対をしてきたのですが、地方行政連絡会議というものができて、そうして大体九つに分けておるでしょう。そうすると、この川の問題についてほとんどそれにまたがるものはない。そのブロックの中でやれるのです。知事さんもその中へお入りになり、国の各出先機関も全部入って、さっき申しましたように、入っていないのは、学識経験者が入っていないといえばいえるだけです。全部そこで協議する。そうしてそこの協議でととのったものは、そういままでのような不見識なものではなくなると思う。何のために一体地方連絡会議などあなたはこしらえたのです。こういう問題の解決がつかないくらいなら、連絡会議なんか何にもならない。民主的に考え地方住民の意思を十分に尊重することになれば、地方連絡会議でそういうものが審議され、協議されて、そうして東京の水は一体どうするか、利根川の水以外にないじゃないかというような話し合いができれば、その中から自然にいままでのような各府県別にいがみ合っていた問題を、こういう地方行政連絡会議の場で解決していこう、そうすることのほうがより民主的である。その場合に、費用をどうするかということになれば、何も都道府県が出したから、国が出したからどうということはない。結局国民から取るのは同じ税金です。国民の負担はちっとも変わらない。その場合に、国が施行することがよろしいというなら、その施行の過程において国が施行すればよろしいのであって、少なくともこういう審議会で、こういう河川の問題も上申する、あるいは一級河川をどうきめるとか、あるいはどうするかというようなことは、この地方行政連絡会議にもう少し権威を持たして、そうしてそれの決定を国が尊重していくというような形がとらるべきじゃないかというように考えるから、自治大臣としてのお考えをお伺いした。建設大臣としてのお考えはさっき聞いたのですが……。
  247. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 地方連絡会議は、御承知のとおり、日常のいろいろな地方問題について今後地方の自治問題を推進していくという意味でつくられておるわけであります。この河川法審議会は、とにかくこれを通すまでの、いろいろ政令その他に関する専門的な事項あるいはまた学問的な立場、あるいはまた地方自治の立場から地方連絡会議に比較いたしまして、法律ができるまでのきわめて暫定的な機関である、そういう意味でつくられておると私は考えます。だからといって地方連絡会議というものの存在の価値が低くなったりするということはないと思います。そこにやはり学識経験者というものを入れる必要が私はあると思います。だから、地方連絡会議は国の出先機関と地方の自治体の長が集まりましてやることで、これは相当長い期間、もちろん次にかわるべきいい案が出るまでやる、片一方は法案ができるまでの審議会、そこにやはり区別をして考えなければいけないのじゃないか。私はもちろん自治大臣でございますから、地方の問題につきましては、日夜肝胆を砕いて門司さんと同じように考えております。しかし、自治大臣であるからといって、何も地方のひもつきになる必要は私はない、やはり大所高所から考えまして、国務大臣として、この言い分は知事会のほうが間違っているとか、いろいろなことを考えてやるべきであって、自治大臣が自治省の官僚のひもつきになったり、府県知事のひもつきになったのでは、私は国務大臣としての職務を果たせない。私は、そういう観点から今日まで良心に従って行動しておりますから、どうかその点御了承願います。
  248. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 松井誠君。
  249. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私も大臣に簡単に一点お伺いをいたしたいと思います。いまちょうど門司委員に対する御答弁の中から出てきましたけれども、私は何も大臣知事会のひもつきになれとかというようなことでお伺いをするわけではございません。しかし、知事会が少なくとも猛烈に反対をしておった、その反対を正式に取り下げたという公式の表明はないわけです。その反対の理由としていろいろあげられておりますけれども、これはもう地方行政にとって、あるいは自治大臣として、重要な関心を持たなければならない理由が述べられておったわけですし、その基本的な点は、いろいろ折衝があったにしても、でき上があったこの法律案では、基本的な反対立場というものは、やはり変わらないような仕組みの法律案ができ上がっておると思う。そういう意味大臣に、国務大臣よりも前に自治大臣としてのお考えをお伺いをいたしたいわけです。私たちは、知事会反対をしているから、自治省もそのしり馬に乗るべきだというようには考えません。しかし、知事会反対の理由というものが、やはり地方行政にとっては非常に重要であって、そしてそれは、地方自治を守るという立場から、なるほどもっともだという理由であるならば、これはもう自治省としても大いにその点の支持、協力はもちろんしなければならぬ。   〔瀬戸山建設委員長代理退席、福永建設委員長着席〕 それで知事会で言っておる理由はいろいろありますけれども、一つの重要な理由は、いま地方制度調査会あるいは臨時行政調査会で、国と地方との事務配分が基本的に再検討されておるという段階で、重要な事務配分に変更を及ぼすようなこの河川法の制定というものは、けしからぬではないかという理由が一つの大きな理由だと思う。自治省はその地方制度調査会に事務配分についていろいろ諮問をしておる。これは何もだてや酔狂でやっておるわけではないでしょう。いま国と地方との間において、どのように適正に事務配分をしたらいいかという根本的な再検討をやっておる。ところが、この法律案では、いま知事の権限にされておる水に関する行政の大幅な引き上げというものが企図されておるわけです。そこで、私はお伺いをしたいのは、このような法律案ができる、そうしてそれは地方制度調査会なり臨時行政調査会なりの作業に対する事実上の圧力になる。そしてその結果出てきた答申案というものは、この河川法の一つの現実を踏まえて、それを肯定するような形になって出てきたのでは、元来意図しておった適正な事務配分という、その作業が撹乱をされるではないか、撹乱をされないという保証はないではないか。そこで、もし幸いにしてその答申が、この河川法の制定にもかかわらず、それに乱されないで適正な事務配分の答申をする、そしてもしその中に、この河川法に書いてある府県知事の権限と矛盾をするような形の事務配分の答申が出たとすれば、その答申尊重のたてまえから、この河川法をもう一ぺん検討する意思はあるかということを、実は先ほど建設大臣にお伺いをした。しかし、そのことについてはお答えはできませんという話でした。私はそれは非常に正直なお答えだと思うのです。しかし、そのような事情であるからこそ私は心配である。つまり、いま行なわれておる、せっかく地方制度調査会その他でやろうとしておる事務配分の作業について、頭から水をぶっかけるようなそういうことについて、一体自治省は黙っておっていいのか。何のために地方制度調査会というものにそういう諮問をしたのか、根本的な疑問が出てくるわけです。ですから、そういう意味で、われわれは地方行政立場からこの河川法についての一番根本的な疑問の理由というのは、そこなんです。ですから、そこの点について大臣のお考えをひとつお伺いいたしたい。
  250. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 いま仰せになりましたとおり、事務配分の問題につきまして地方制度調査会に政府が諮問をしておるということは事実でございます。そこで、この間地方制度調査会におきましても、ただいまの御意見と同様に、事務配分の諮問をしておりながら、政府河川法改正を強行するということはおかしいじゃないかという意見が出たそうであります。その意見も出ましたが、またそのほかに、事務配分の全体としての意見は、諮問は確かに出ておるけれども、直接的に河川法というものの改正に関する諮問が政府から出ておるわけではないんだ、だから、諮問の出ておらないものに対して答申というものも出るわけがないのであるから、これは政府の一つの施策といたしまして、地方制度調査会に出ておる事務配分の問題とは別にやっても差しつかえないじゃないかという意見が多数を占めて、そしてそういう申し入れをしようという意見もあったそうでありますが、最終的にはその申し入れはされておらないわけです。そういうことを私は聞いております。  私のほうといたしましては、知事反対理由を十分に——これはもちろん文書で来ておりますから、十分読みました。いろいろ研究してみました結果——これをここで申し上げてみます。おもなる理由が三つあります。総合的な反対理由といたしまして、「一、総合的な都道府県行政を混乱させる、河川関係ある治山治水、砂防、農業、漁業、上水道工業用水道、発電、港湾等の諸行政は、河川管理権知事にあることを前提として組み立てられているので、河川管理権を国に引き上げることによって都道府県行政の総合性が失なわれ、混乱に陥るのみならず、事務の複雑化と行政の渋滞を招くことになる」というのが、第一の知事会反対でございます。しかし、私たちの考えをもってしますと、むしろこういうふうに重要な河川について国が施策を行なう、そしてそうでない面につきましては知事に権限を委譲するということによって、治水治山あるいは利水の面において能率が非常にあがることはあっても、府県行政を混乱させるというようなことは絶対にあり得ないという、私たちはそういう結論に達しておるわけであります。  第二は、「河川行政は後退し、住民ははなはだしく迷惑する」というのでありますけれども、いままでの河川行政は、補助金もわずかでございますし、そういう点におきまして行き届かない面が非常にありました。先ほど門司さんが言われましたように、すべて地方税といい、国税といい、国民の税金によってなっているとはおっしゃいますけれども、やはり国の補助というものは別の角度からされております。そういう意味において、補助率が引き上げられる、助成が増すということは、私はむしろ河川行政が前進することであって、国民の福祉に合うことである。  第三は、「行政の官僚化を招き、民主化に反する」こういうようなことであります。これは、そういうことはないのでありまして、先ほど申しましたように、重要なる河川の許可権というものを建設大臣が持つのであって、それ以外のものは知事に委託するわけでありますから、決して官僚化するということはありません。  「膨大な国家行政組織と人員が必要となり、国家財政上きわめて不経済となるおそれがある」という第四の論点につきましては、大部分の点につきまして許可権以外の必要な問題については、地方自治体にまかせるということでありますからそういう心配もありません。こういったように、知事会の重大な反対議論というものは、われわれが冷静に考えまして、これは長い間の一つの知事の権限を守らんとするものが大部分——みながそうだというわけではございませんが、そういうふうに見受けられますし、そういう心配は全然させないようにして私たちがやろう、こういうことでございますから、まあ、いろいろな批評もございましょうし、また、自治大臣としてはなぜ地方自治体の意見をもっと聞かないかという御意見もあるかもしれませんが、私の感覚をもっていたしましては、この際、この河川法改正をやる、そして地方の負担も少なくし、治山治水あるいは利水の効力もあげていくということのほうがいいというふうに考えて賛成しておるわけであります。でありますから、地方行政関係地方自治の関係も十分考えて、私はそういう結論に達しているわけでありまして、それを無視してやっておると言うんでは決してございません。
  251. 松井誠

    ○松井(誠)委員 いまの地方制度調査会の中でいろいろの議論があったというお話でありましたが、河川法について諮問を受けたのではないから、したがって河川法についてとやかく言うべきではないであろうという、そういうきわめて形式的な議論がまかり通るということ自体、私はこの河川法の出現がすでに地方制度調査会に一つの圧力になっている現象であると思う。そうでなければ学識経験者ともあろうものが、そういう妙な形式論とさえ言えないような非常に幼稚な議論でこの大事な問題を回避するはずはないと思う。それだのに、そういうような河川法について諮問を受けないんだから、河川法について意見を言えないではないかなどという子供だましの議論が出てくること自体、私は地方制度調査会の答申の前途に、もうすでに何かめどがついているような気がする。われわれは、この広域行政というものを処理するしかたとしていろいろあると思いますけれども、先ほど大臣は、利水の面でいろいろ、いわば各府県がなわ張り根性がある、そういうこともあって、この際やはり建設大臣に権限を取り上げたほうがいいんだという趣旨のことを言われましたけれども、広域行政というものを処理する方法としてめんどうだから、中央に吸い上げろという形でこの広域行政を処理するという考え方は、これは建設大臣やその他がおっしゃるなら別ですけれども、しかし自治大臣として、この広域行政を処理をするしかたについて、府県にまかしておいたのではなかなからわがあかぬから、したがって、中央に吸い上げるんだという形式で、広域行政を解決されようとする考え方には、私は大きな疑問を持つ。連絡会議のような考え方で、原則として府県同士の話し合いというものに重点を置く、そしてだめな場合には、中央はやはり調整という権限は持つべきですけれども、そういうものを初めから放棄してしまって、めんどうだから引き上げろという形では、これは便利であるかもしれません、急ぎの間には合うかもしれませんが、ほんとうに民主主義の小学校だという地方自治を大事にするという立場から言えば、根本的な疑問が残る。ですから、なるほど治山というものは大事に違いないし、急を要するに違いない。しかしそれは、中央に吸い上げるということによってしか解決できないかどうかということを、私はひとつ自治省がクッションになって考えていただきたかったと思うのです。お考えになったに違いないと思いますけれども、いまの知事会のいろいろな要望についての大臣の御答弁を聞きますと、そういう地方自治というものを一つのクッションを置いて考え直し、見直したという痕跡が、残念ながらあまり見当たらぬと思う。  そこで、その広域行政について、話がちょっと横道にそれますけれども、各都道府県を越える広域行政の必要というものを私たちはもちろん認めるわけです。しかし、そのときに、そこから権限を取り上げて中央に吸い上げるということが、広域行政処理の最大の方法というようにはまさかお考えになっておらぬと思いますけれども、先ほどのことばの中でちょっと心配になりましたので、その点をちょっとお伺いをいたしたいと思います。
  252. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 地方から権利を吸い上げて、建設大臣の所管にするということだけを見られますと、何だか地方行政に対する熱意、愛情というものが足らないようにお考えになるかもしれません。しかし、それはそうじゃないのであります。たとえば、根本的に申しますと、利水治水と両方ございますが、われわれはまず治水の面に少なくも七割くらいのウエートを置いております。地方は、現在のまま府県の財政においてわずかな国庫補助によってやっているよりも、最初は御承知のとおり全額国庫でやるということでございますから、これはもう非常にいいことだということで、まず最初は賛成をいたしました。ところが、その後におきまして大蔵省の反対がございまして、四分の三ということになりまして、私は地方自治の立場から、そんなばかなことはないということで反対したのでありますが、まあそういうことを言うことはいいか悪いか私はわかりませんけれども、ところが、やはり総理大臣が中に入りまして、総理の仲裁裁定といいますか、それには従わざるを得ないということで、四分の三でも一歩前進であるからということで私は賛成した。これは治水の面からです。今度利水の面から申しますと、現在たとえば利根川の上流は群馬県でありますが、一千万の人口を持っておる東京都の水道の問題でも、群馬県の知事承知してくれなければ水道を速急に引くとか、あるいはオリンピックに間に合わせるとかいうことはなかなか困難です。そこで、従来の行きがかりはいろいろありましょうが、群馬県をおいて東京の水道の問題を解決するということになれば、一方において、群馬県知事の自治体の権限というものに対して多少の制限があるかもしれませんが、それによって受ける東京都の地方自治体としての利益というものは非常に大きなものであろう。それからまた、岐阜県知事が四日市とか名古屋の工業地帯工業用水を出すということをなかなか承知しない。しかし、岐阜県も地方自治体であり、愛知県も三重県も地方自治体であるということからいえば、地方自治体同士の話し合い、融通によってそれを解決していくということは、必ずしも地方自治体に対して冷淡であるということにはならぬと私は考える。地方自治体の水を全部国に持ってきてしまうというのではないのですから、それは地方自治体にやってくれというのだから、私はちっとも差しつかえないと思う。だから、群馬県のひいきをしなくて東京のひいきをしたから、地方自治体に対して冷淡であるとか、あるいは岐阜県にひいきをしなくて名古屋や四日市にひいきをしたから、地方自治体に冷淡であるという理屈は成り立ちません。私はどっちもひいきをしておりません。ただ冷静に考えて、オリンピックまでに東京の水道を間に合わしたい、あるいは工業地帯として発展する名古屋、四日市にはできるだけ工業用水をやりたい、こういうふうに考えておるだけでありまして、いまおっしゃるような地方自治体に対する愛情が足らないとか、あるいはまた施策が足らないとか、研究が足らないとかいうことは、自分ではないと思っております。しかし、ないと申しましても、私自身は自治大臣になりまして日も浅いことでございますから、長い間地方行政に携わっておる諸先生から見て、あるいはそういう点もあれば今後大いに反省していきたい、こういうように考えております。ひとつどうぞよろしくお願いいたします。
  253. 松井誠

    ○松井(誠)委員 先ほどこの地方制度調査会や臨時行政調査会の答申とこの河川法というものとのギャップについてどう考えるかということをお尋ねをしたわけですけれども、その点についての具体的な御答弁がないわけです。われわれは、地方公共団体である市町村なり府県なりというものに、もっと財源とともに仕事の委任を多くして、そうすることによって地方自治体の行財政を充実する、そういう基本的な立場を持っておる。したがって、答申がそういう線に沿って出されるということを期待をしておるだけに、それと逆な方向をとろうとするこの河川法地方行政に対する根本的考え方に不満を持つわけです。ですから、単に地方制度調査会の答申の間近いいま、河川法をやるのはけしからぬじゃないかという、手続論という問題ではなくて、地方自治を拡充しようというその点から見て、うしろ向きのこの河川法案というものを、自治省として一体どう考えるのかということにつながるわけです。ですから、答申との関係を、単に手続論としてのつかまえ方ではなしに、地方自治を拡充するというたてまえから、この新河川法は一体どういう位置にあるのかということをお伺いいたしたいわけです。
  254. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 地方制度調査会のいろいろな内部のいきさつにつきましては、私も全然知らないわけであります。ただ、そういう話を聞いたというだけでございまして、それが前向きであるかうしろ向きであるかということは、はっきり申し上げまして、私の関知する限りでありません。ただ、ただいま松井先生のおっしゃいました、うしろ向きの河川法改正とおっしゃいましたが、私はそれは逆にとっているのです。
  255. 松井誠

    ○松井(誠)委員 地方自治の立場からです。
  256. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 地方自治の立場から言いましても、私は前向きだと考えておる。そこに認識の相違がございますから、もし私の認識に誤りがあれば、あとでひとつゆっくりお教えいただきたい、こう思うわけであります。私はどう考えましても、今回の河川法が、自治大臣立場から言いましても、地方行政立場から言いましても、知事立場から言いましても、間違いないと思うのです。ということは、私がここで言うのがいいか悪いかわかりませんが、知事がずいぶん陳情に来ます。そこで私が、君ほんとうに反対しているのかと聞きますと、いやほんとうは反対じゃないんです。実は私のほうの河川課がなくなるということをおそれている。河川課さえ存続させてくれれば、その仕事さえ残してくれれば反対じゃないとか、ほんとうは私のほうはもらうほうだから、反対じゃないけれども、知事会が決議するから反対していると、個人々々に話しますと、そういう意見が非常に多いんです。だから私は、これは知事会という一つの名のもとに決議はされておるけれども、利害関係は各府県とも相当違いがある。そうすると、決議そのものに対して十分なる回答を与えるということができさえずれば、知事会はおさまるということは、私は初めからそういう考えです。また、事実おさまっておるのです。だから、むしろ衆議院、参議院の委員会のほうが、地方行政という一つの問題を基礎として、その地方自治を守ってやろうという意識が非常に強い。これはありがたいことでございますが、知事会の利害関係は、必ずしも諸先生のお考えになるほどそう統一したものでないという認識を私は持っております。
  257. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私は、大臣には知事会意見をなぜ支持するかという理由を言わなかったが、しかし、建設大臣にはあらかじめ言ったんです。というのは、知事会意見は、単に官庁同士の権限争いという意味ではなくて、そのうしろにおる住民の立場地方自治を守るという立場知事会は発言をしておると理解をするし、その限りにおいては、われわれは支持するということなんです。もし知事会が、単に河川課がなくなるとかなんとかいうことの内心の理由もあって——しかし、大義名分は地方自治云々ということであるとすれば、それは私はけしからぬと思う。われわれが知事会を云々するのは、つまりそこに盛られておる地方自治を守るという、そういう立場を支持するのであって、河川課がなくなるかどうかという、そういう役人のセクショナリズムというものを、そのまま認めて支持するわけではないのです。これは建設大臣には初めからはっきり言っておる。知事会意見だから、何でもかんでも賛成をしなければならぬということではない。しかし、知事会意見は何を踏まえておるかというと、先ほど言ったように、地方自治というものがだんだん狭められてくる、それを防ごうという、少なくとも公式にはそういう基本的な立場をとっておる。その限りにおいて、われわれは尊重しなければならぬということであって、裏話にどういうことがあるか知りませんけれども、われわれは何も裏話で話をしようというわけではないんです。ですから、そういう意味で、知事の本心は大したことはないのだからというようなことで、肝心な地方自治の立場というものを、自治大臣が放棄をしたような形で御答弁をされると問題だと思いますので、そのことだけを一言申し上げて私の質問を終わります。
  258. 篠田弘作

    ○篠田国務大臣 もちろん、あなたのおっしゃるとおり、地方自治を守るという、そういう前提のもとに知事会は一致して反対しておるわけであります。私もそういう意味において、十分検討しておるわけであります。ただ、そういう裏話も奉ったということを、口がすべりまして申しわけありません。やはりしょっちゅう知事がお見えになるものですから、ついそういうことを申し上げましたが、たてまえは、あくまでも地方自治を守るということでございます。どうぞ御了承願います。
  259. 福永一臣

    福永委員長 東海林君。
  260. 東海林稔

    ○東海林委員 私は、先ほど建設大臣に、本法案と農業用水との関連についてお尋ねしたところ、大臣から、従来の農業用水はそのままこれを尊重するのだ、今後必要とする新しい農業用水についても、優先的にこれを考えていくのだ、こういう御答弁があったわけでございますが、法案の内容を見ますと、必ずしも建設大臣の比較的明確な御答弁とは一致しないような点もあるように思うのでありまして、そういう点を三、四点お尋ねしてみたいと思うわけであります。  大体法案の順序でいきたいと思うのでございますが、最近ダムが新設された、あるいは河川によっては砂利や砂の過度の採取があった、また、場合によっては、これは比較的例が少ないようでありますが、河川改修工事の結果として、河床が著しく低下したために、これまでの農業用水の取り入れでは取水が困難になって、これを改造しなければならぬというような事例が各地にございまして、その場合の経費の負担が問題になっておるわけでございます。今度の法案によりますと、四十一条、四十二条、四十三条ともに、「水利使用の許可に係る損失の補償」というような規定があるようでございますが、ちょっと読んだだけでは、あまりはっきりしませんので、お伺いするのですが、ダムをつくったために河床が低下したというような場合に、農業用水の取り入れ口を改修するという場合に、ダム建設者はその補償をするのかどうかという点。それから、砂利や砂を、これは許可を受けて採取するわけですが、そういうことによって河床の低下した場合には、一体だれが補償するのかどうかという点。それから、国の河川改修工事によって、そういうような支障が起きた場合には一体どうなるのか、そういう点を、各原因別にひとつ明確にしていただきたいと思います。
  261. 山内一郎

    山内一郎政府委員 河川に関するいろいろな行為、あるいは工事等によりまして影響があるわけでございますが、その場合に、農業関係の施設あるいは使用にどういう影響があったか、あるいはあった場合にどうするかというお尋ねでございますが、ダム施行、あるいは砂利の採取、工事によるものと、三つに分けてお尋ねでございますが、ダムの施行だけで河床の低下が明瞭である、こういう場合には、ダムの設置者に補償させるというのがたてまえだと思います。なお、砂利採取あるいは工事によったものも同様な考え方でございますが、その原因がなかなかはっきりいたしませんので、河川管理者が工事することによりまして、従来とれなかった水をとれるようにするとか、あるいは床どめ堰堤をつくるとか、こういう点につきましては、河川管理者も、工事をやることによりまして、河川の正常な機能を保つようにする、こういういろいろな方法によってそういうものを解決したい、こういうように考えております。
  262. 東海林稔

    ○東海林委員 この第四十一条の規定でいった場合には、いまの砂利採取というような場合の補償も含まれるのでございますか。それから、いまの御答弁だと、国の河川工事の場合にも、何か入るような御答弁のようにも解釈できるのですが、四十一条でそういうふうに解釈できますか、その点はっきりしてもらいたい。
  263. 山内一郎

    山内一郎政府委員 四十一条は、二十三条または二十六条による許可のものでございまして、二十三条は、御承知のように流水の占用の許可、それから二十六条は工作物の新築等の許可でございますので、砂利の採掘はこの条文には入りません。
  264. 東海林稔

    ○東海林委員 そこで、そういう場合にはどうなるのかということをお尋ねいたしているわけです。入らないとすれば、一体この法案の中ではそういうことは考えていないのか。もっとも私が読み違えてどこかに書いてあるのを見落としているのかどうかしりませんが、どういうふうになっているのか。
  265. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 ただいまのお尋ねの点でございますが、水利使用間の相互の問題についての調整の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、調整ができておりますし、また、工事によって相手方にいろいろな原因を与え損害を与えるような場合がございましたならば、それについての補償の規定も明示しておるわけでございます。ところが、それ以外の砂利の採取等によりまして、その原因によって相手方に損害等を与えました場合は、これは一般の法律、民法その他の不法行為その他のものによって、その原因関係の明らかな場合は、それによって処理される、こういうふうに考えておるわけでございます。
  266. 東海林稔

    ○東海林委員 いまのは一般的に不法行為によってというような説明ですけれども、はっきりした建設大臣の許可を受けるなり知事の許可を受けてやった結果でしょう。それは不法行為ということにならないのじゃないですか。したがって、一般のそういう法律において、こういう補償の要求ということは非常に困難なのじゃないかと思うのです。その点はどうですか。いまのお答えのようなことでそれはできますか。
  267. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 ただいまの点でございますが、許可をする場合には、許可権者としての河川管理者は、そういうことが起こらないような配慮のもとに許可をすることを原則として考えておるわけでございまして、また、その許可自体が、そういういろいろな損害を与えるというようなことに対しまして、許可権者に対しましていろいろの不服等の問題がございましたならば、それにつきましては、行政不服審査その他異議の申し立て等によって、許可権者に対していろいろ抗議をなし、また不服の申し立てをいたす道が開かれているわけでございます。しかし、いまお尋ねの点は、許可を受けた者同士の相互関係の問題でございますので、それはこの河川法以外の一般法規によって処理をするというふうに考えておるわけでございます。
  268. 東海林稔

    ○東海林委員 わかりませんが、そうすると、さっきの話では、不法行為に基づくものなら当然損害賠償の請求ができるのじゃないかというようなお話だが、いまのはぼやけて、ほかの法規で処理するというのですが、どういう法規によって処理するのですか。具体的にはっきり言ってもらわないとわからないのです。
  269. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 民法によりまして、不法行為によります場合には、民法の不法行為の責任によって処理されると思います。
  270. 東海林稔

    ○東海林委員 知事なり国の許可を受けてやったものを、民法の不法行為によって処理できるのですか。あなたはもっとはっきりしないと、それはおかしいよ。
  271. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 ただいまのお話は、許可自体が必ず損害を発生するというようなお話でございますが、許可をいたします場合には、そういうことがないような配慮のもとに、また原則として、お互いにそういう損害を与えないという考慮のもとに許可をいたしているわけでございます。ところが、許可されたものが、許可の内容に違反したり、いろいろまた別な条件によってお互いに迷惑をかける、こういうようなことはあり得ると思いますので、そういう場合には、相互関係をいろいろと処理します一般の民法なんかによって処理される、こういうふうに考えておるわけでございます。
  272. 東海林稔

    ○東海林委員 そうすると、いまの問題は、不法採取によって農業用水に非常な損害を与えたような場合には、これは当然補償される、これはわかりました。そうすると、許可をする場合にはそういう他の水利使用者に迷惑をかけない範囲で許可しているのだから、許可の条件が守られた場合にはそういう事態は起こらないのだ、こういうふうなことに理解するしかしようがないのですが、それでいいのですか。
  273. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 ただいまお話のとおりに考えておるわけでございまして、許可をする際には、相手方の既得の水利権者あるいは既得の施設等に損害を与えないような方式で許可をする、もし損害を与えるような場合につきましては、特に水利使用関係については、十分それについての補償問題を解決して、未然にそういうことがないようなことをして考える、こういうように考えておるわけでございます。
  274. 東海林稔

    ○東海林委員 その問題は大体わかりました。  次に、緊急時の措置の中に、渇水時における水利使用の調整という問題が、五十三条ですか、ここに出ているのですが、御承知のように、現在水利の使用関係というものは、非常に複雑になってきておりまして、たとえば利根川等について見まするならば、この関係者の数は非常に多いと思うのです。特に農業用水関係関係者は非常に多いわけでありますが、緊急を要する場合に、これらの人たちがみな相談をして調整をはかるというようなことで、また、それが困難な場合は、あるいは一方から申し立てがあった場合には、それについての調停を行なうというようなことになっているわけでありますが、具体的に、緊急な場合に非常に多数の関係者に一体どうして相談させるか、どうして意見の一致を見るかというような点が非常に問題だと思うのでありますが、この立案にあたってはそういう点どういうような予想のもとに書かれておりますか。その点はっきりさしてもらいたい。
  275. 山内一郎

    山内一郎政府委員 予想されないような渇水時になりました場合に、従来水利権を持っている者が所要の水利が使用できない、こういう事態が発生するかと思います。昭和三十三年にも利根川水系で同じような事態が発生したのでございますが、その場合にどうすればいいか。その場合、やはり上流の発電用のダムの貯留をした水、これを発電しないでも下流の方へ放流して下流の緊急事態に備える、こういうような方法しかないかと思われます。したがって、御要望される方々は非常に大勢おられますが、要するにそれの対策としては、発電のダムの放流をする、こういうことでございますので、昭和三十三年にも、建設省が問に立ちまして、関係府県、発電会社など、水利使用をされる方々のいろいろなあっせんをした、こういうことでございまして、そのあっせんがしやすいように新しい法案でそれを取り入れて考えた、こういう次第でございます。
  276. 東海林稔

    ○東海林委員 こういう場合には、単にあっせんというようなことでなく、何かこういう非常事態については指示をするというようなことまで法案に書くことはできないものでございましょうか。そのほうがより適切じゃないかというような気がするのですが、その点いかがでございますか。
  277. 山内一郎

    山内一郎政府委員 指示をいたすということになりますと、発電会社の発電用のダムに貯留している水を出させる、こういう事態になると思います。したがって、当然補償の問題に入ると思われますが、実際その補償はだれが払うかというような問題、法案の作成にあたりまして、関係各省でそういう点をいろいろ協議をいたしたのでございますが、あるいは下流でその非常用の水を使った人が金を出したらどうかというような点も議論の対象になりました。しかし、そういうことはとてもできない、従来水利権の権利を持っておられる方が、非常の場合に権利以内の水を使うという場合でございますので、非常な補償の金をだれが払うかというような問題がございまして、事実上は、昭和三十三年にもやりましたように、建設省のあっせんで十分目的を果たしたような次第でございますので、今後の運用よろしければ、これで十分かと思われる、こういう点で現在の法案のようなことになっているわけでございます。
  278. 東海林稔

    ○東海林委員 これは非常に緊急時の対策でございますから、ことに渇水時なんて一つの天災でございますから、たとえば天災で災害があった場合に、相当な国の負担をやってそれに対処するというような思想があるわけですから、それと同じようなことで、下流の関係者に負担させるというようなことを考えるからいまのような困難なことになるのだと思います。当然これは国が指示して、ある程度国で補償するというような考え方に立てば、きわめて迅速に適切な措置ができるのじゃないかというふうに思うわけです。これは見解が違うといえばそれまでのことでございますが、少なくとも私はそういう見解を持っておるわけですから、今後においても検討していただきたい、このことをお願いします。  時間がありませんので次に急ぎますが、先ほど大臣は、十分農業用水のことを尊重し考えるというようなことでございましたが、私は全体にそういう点があまりはっきり出ていないということを申し上げたいのです。ことにその具体的な一つとして審議会の構成の問題でございますが、そういう点に農業用水関係の従来長い歴史を持った権利者の代表というものがはっきり入るということが出ていないということは残念なんです。  そこで、まずお尋ねしたい第一点は、委員の学識経験者という中に、当然そういう農業用水関係等の全国的な代表の立場の者が入るべきだと私は考えておるわけですが、そういう点一応考慮されておるかどうかという点がまず一つであります。  それから第二の特別委員でございますが、特別委員については、私は特定の河川関係を持っている重要な土地改良区等の理事長あたりは当然入るべきじゃないかというように考えるわけですが、これには地方公共団体の長のうちからということが書いてありますが、私は少なくとも特別委員条項の中には、そういう点を明示すべきじゃないかというような見解を持つわけです。御承知のように、土地改良区の中には、何万町歩というような広い面積に関連し、また、組合員も何万人というような大きい団体もあるわけでございますから、そういう大きいものについては、特定河川の特別委員について法案の中に明示していいのじゃなかったかというように感ずるわけでありますが、以上の二点についてお答えをいただきたいと思います。
  279. 山内一郎

    山内一郎政府委員 審議会委員のうち学識経験者につきましては、ただいま御意見のありましたとおり、利水関係者ももちろん入れるつもりでございます。  なお、特別委員につきまして、直接の利害関係者を入れなかったのはどういうことかという御質問でございますが、関係都道府県知事と市町村長は入れることになっております。その方々に代表で発言してもらったほうが、さらに妥当な審議ができるのじゃなかろうか、こういうような見解で関係都道府県知事と市町村長を入れる、こういう案になっているわけでございます。
  280. 東海林稔

    ○東海林委員 初めの第一点はわかりました。ぜひそういうようにお願いしたいと思います。  第二点の、地方公共団体の長が入るから、それを通じて意見が反映されるじゃないかというようなお話でございますけれども、特別委員でございますから、これは間接的に反映させるというようなことでなしに、特別委員の原則としては、私はやはり直接利害関係者意見を反映さすということが、特別委員を特に設ける趣旨じゃないかと思うのですが、その点もう一度お答えを願いたいと思います。
  281. 山内一郎

    山内一郎政府委員 ただいまの点も、水利調整に関して特別委員の特別参加をお願いするというわけでありますが、やはり既得の水利権者と新しい水利権申請者との間の問題でございまして、どうすればもっとよく総合的に水資源開発されるかというところに審議会審議重点があろうかと思われます。したがって、直接利害関係者を入れるのも一つの方法ではございますが、先ほど申し上げましたように、やはり関係都道府県知事と市町村長を入れまして、一応利害関係者の御意見をこなしていただいて、いろいろ御審議に参加していただいたほうが、妥当な審議ができるのじゃなかろうか、こういう考えで原案ができておるような次第でございます。
  282. 東海林稔

    ○東海林委員 いまのお答えですと、さっきの第一問に対する答弁と若干矛盾するようなんです。審議委員の中の学識経験を有する者の中には、土地改良関係などの者も当然考えておるというお話であって、私は満足したのですが、特別委員になりますと、何かそれを入れるのがじゃまになるから入れないのだ、そういうものの意見は、地方公共団体の長を通じて反映させたらいいじゃないか、こういうようなお話でございます。もちろんこの特別委員の場合にも、学識経験者の中に入れていただくことも一つの方法であるが、しかし、より特定の河川に関することであるから、そういうことを明示したらいいじゃないかという積極的なことを私は言いましたのに、いまの答弁では、かえって後退してしまって、この特別委員の場合に、学識経験者の中にもそういうものは入れないというように解釈されるような御答弁ですが、その点はどうなんですか。
  283. 山内一郎

    山内一郎政府委員 審査会の委員利水関係をよく御存じの学識経験者を入れる、これは先ほど申し上げたとおりでございます。これは非常に専門的、全般的の問題といいますか、河川審議会全般の審議を進める上におきまして、そういう専門の方を入れないで、逆にあるいは都道府県知事あるいは各省が代表する、こういうことになりますと、全般的、基本的な審議は円満にいかないと思います。そういう意味審議会委員には学識経験者でなおかつ利水関係の方も入れる。個々具体的な問題になります水利調整の点につきましては、先ほど申し上げましたとおりでございます。
  284. 東海林稔

    ○東海林委員 いまの点は意見が食い違うわけですけれども、意見が食い違っておるということは私は不満ですけれども、次に進みます。  次に、経過措置に関連してでございますが、先ほど大臣も、従来の慣行水利権はあくまでこれを尊重する、こういうことを明確に御答弁になりました。そこで問題は、この報告義務を、一応政令に定めるところによって義務づけておるわけでありますが、報告を出さなかった場合に、具体的にはどういうふうに処置されるか、その点をもう少し説明をしていただきたいと思います。  特に私は、それと関連してここに一つの心配がありますのは、ほかの条項のところに、公共の用途に必要な場合は慣行水利権であっても制限することができるというような規定もございますので、そういう点と関連して慣行水利権者が心配のないようなはっきりした御答弁をぜひお願いしたい、こう思うわけです。
  285. 山内一郎

    山内一郎政府委員 慣行水利権の点につきましては、附則の第六条によっておりまして、第二項で八十八条の規定を準用する、こういうことでございますので、届け出をしていただく、こういう規定でございます。届け出をしなかった場合にどういうことになるかという点については、この法案には触れておりません。ただ、水利調整の項におきまして、水利使用の申請があった場合の通知というのがございますが、これは従来水利権を持っておられる方々に新しい水利権の申請が関係がある、こういうような場合には通知をしなければならない、こういう通知の義務の規定がございます。したがって、あるいは届け出をされなかった場合に、河川管理者は十分調べはいたしますが、あるいは通知漏れになるおそれがないとほ限らない、こういうような点で、届け出をしなかった場合には、規定はございませんが、この法律によりましてひとつ運営よろしきを得て届け出をしていただくように十分運用をしてまいりたい、こういうように考えております。
  286. 東海林稔

    ○東海林委員 これは当然届け出するように御指導願い、また届け出を関係者にもしていただくことを期待するわけですが、何と申しましても、非常に数多くの慣行水利権がいろいろな形であるわけですから、必ずしもそれが具体的には行なわれない場合もあり得るだろう、その場合にも、先ほどの大臣答弁でも、いまの答弁でも、慣行水利権というものは権利としてこれはあくまで尊重されるのだ、ただ、その場合に、反面、届け出てあれば通知を受けるであろう、権利はある場合によっては認められない場合がある、その程度のものだ、こういうふうに理解していいわけですね。だから、あくまで慣行水利権は尊重される、物権として尊重されるというような従来の形はそのままだというふうに、この点はくどいようでありますけれども、念を押しておきたいと思います。
  287. 山内一郎

    山内一郎政府委員 従来の慣行水利権は現行法でも尊重して、特別の規定を設けたわけでございますが、その点は今後も十分尊重いたしましてやることには間違いございません。
  288. 東海林稔

    ○東海林委員 先ほどもちょっと申しましたが、公共のために慣行水利権に制限を加えるというような条項があるようですが、この制限は全面的な制限まで予定しておりますか。それは一部の制限ですから一部だけですか。全面的にそういうことが考えられるような法律になっておるのですか、その点ちょっとはっきりしませんので、お伺いします。
  289. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 水利権に対する制限の問題でございますが、これは今度の法案の七十五条におきまして全般的な問題として取り上げておるわけでございます。七十五条におきましては、河川管理者の監督処分を一項、二項に定めておりますが、たとえば二項二号に「許可に係る工事その他の行為又はこれらに係る事業の全部又は一部の廃止があったとき。」こういう規定がございまして、こういう場合には、この法律に基づく許可その他の問題について制限ができるということになっておるわけでございますが、これは慣行水利権だけの問題ではなくて、この法律上許可を受けました水利権全体についての規定でございます。ただ、先ほどからお話がございますように、慣行水利権につきましては、全く法定水利権と同様に効力を持つようになっておりますので、当然許可水利権と同様な規定がされてくる、こういうことでございます。
  290. 東海林稔

    ○東海林委員 私もそういう解釈で質問しておるわけですが、そこで心配になるのは、この四と五の運用によっては非常にこれが制限されるおそれがあるということを心配するわけですよ。それでこれは制限だけでなしに、全面的な制限というようなことも、この四と五によって考えておるのかどうか、その点を私は伺っておるわけです。ここの中に入るだろうということを、あなたのいまの答弁のような解釈のもとに質問しておるわけですから……。
  291. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 ただいまの御指摘の四号、五号でございますが、「河川工事のためやむを得ない必要があるとき。」と「公益上やむを得ない必要があるとき。」には、先ほどのような制限がかかってくるわけでございます。ただ、これはあくまでも河川工事のため全くやむを得ない場合でございまして、この場合におきましては、次の七十六条にもございますように、第四号または五号によって処分をした場合において、相手方に損失を与えるような場合には、通常必要な損失の補償をする、こういう原則の上に立って、相手方に迷惑をかけました場合には補償するという立場をとっておるわけでございます。なお、五号の場合には、もちろん水利使用調整規定が働きまして、相手方が補償する場合もございますが、それ以外の場合、河川管理上等の必要であります場合には、通常必要な損失補償をする、こういう規定でやっておるわけでございます。
  292. 東海林稔

    ○東海林委員 これは非常に厳格に考えてもらわなければいけないと思うのですが、そこでただいまありました七十六条の「通常生ずべき損失」というのですが、これは農業水利の場合でいえば、「通常生ずべき損失」というものをもう少し具体的に説明してもらいたいと思うのです。これは非常にわかったようなわからないような法律用語でございますので、その点もう少し具体的に説明してもらいたいと思います。
  293. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 河川の工事によりまして、堤防等をつくりましてそのために農業せき等をつくることができなくなりましたような場合には、当然そのせきに対する損失またはそのせきによって得た利益に対する損失を補償するというようなことでございます。
  294. 東海林稔

    ○東海林委員 そうすると、もう少し具体的に言いますと、それが全面的にせきをつぶさなければならぬというような場合には、従来それによって増収を得ておった、その増収が今度は期待できなくなった分を補償する。それから、そうでなしに、取り入れ口の改修をやれば従来どおりの機能が発揮できるというような場合には、取り入れ口の改修工事費を負担する、そういうような考え方のもとにこの通常の損失、そういうふうに考えていいわけですか。
  295. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 通常生ずる損失補償につきましては、ただ河川法だけの問題ではなく、一般的にもある規定でございます。将来の利益等の算定の基準その他についてもいろいろ一般的な基準があるわけでございますが、そういう基準の原則に従って通常発生する損失を補償するという考えをいたしておるわけでございます。
  296. 東海林稔

    ○東海林委員 農地局長にひとつ最後にお尋ねしたいと思うのですが、今後の河川管理と関連して、農政上に関係あるような問題については関係大臣と協議するということで、農林大臣に協議ができるわけでありますが、農林大臣建設大臣と折衝し、意見を述べる場合に、これは農林省だけで意見をまとめて述べるというようなことになるのでありますか。それとも、農業関係の適当な団体あるいはその他適当なものに意見を十分求めた上で、農林大臣としての見解を表明するというようなことになるのでありますか、その点をひとつはっきりしてもらいたいと思います。
  297. 丹羽雅次郎

    ○丹羽政府委員 お答えいたします。  三十五条その他に関係大臣が協議を受ける規定がございまして、それにかかわります部分は、水利の占用の許可から工作物の許可等いろいろなケースがございまして、その事柄の内容によりまして、特定の地域の特定の工作物の影響とか特定の許可についての影響ということでございますれば、事柄の性質上当然その地域におきます土地改良区あるいは県庁の農林漁業担当者の意見を——体的な問題でございますから、十分聞いて処理する、また、そうせざるを得ない、かように存じております。
  298. 東海林稔

    ○東海林委員 終わります。
  299. 福永一臣

    福永委員長 松井誠君。
  300. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私は、河川敷地の使用の問題について法律的な疑問を持っておりますので、お尋ねをいたしたいと思います。  御承知でしょうけれども、たとえば信濃川なんかに非常に広大な河川敷地がありまして、そこは事実上広い農地として利用されておりますけれども、その根拠が薄弱でありますために、しょっちゅう紛争を起こしておるわけです。そういう点がこの河川法で具体的にどうなるのか、あるいはならないのかということを実はお伺いいたしたいと思うわけです。  今度のこの法律で河川区域という規定がございますけれども、この河川区域の範囲というのは六条の一項の一号、二号のほかに三号がありまして、三号は「河川管理者指定した区域」ということで指定という特別な行為が必要になっておりますけれども、この一号と二号には必ずしもそういう行為が必要ではない規定のしかたになっております。私が心配しますのは、こういうことでこの河川区域というものが不明確になりはしないか。どこまでが河川区域で、どこまでが河川の保全区域ですか、そういうようなけじめをどこでだれがやるのかということを最初にお尋ねをいたしたいと思います。
  301. 山内一郎

    山内一郎政府委員 この法案で、河川区域につきまして、ただいま言われましたように三号までございますが、一号は「流水が継続して存する土地」あるいはそれに状況が似ているような土地ということでございまして、自然の状況からこれは通常だれが考えても河川である、こういう区域をいっているわけでございます。二号は、「河川管理施設の敷地」でございますので、たとえば堤防の下はこれは河川区域である。三号は、一応改修済みといいますか、堤防がすでにつくられている河川につきましては、大体両岸に堤防がございます。その堤防の間の土地でございますが、一号の区域はもうすでにあらかじめ河川区域になっておりますので、堤外の土地におきまして、一号の区域と「一体として管理を行なう必要がある」その間の上地、こういうことで、これの認定は、河川管理者指定する、こういうことになっておるわけでございます。いずれにいたしましても、河川台帳ではこれをはっきりしたい、こういうふうに考えております。
  302. 松井誠

    ○松井(誠)委員 その河川台帳で明らかにする場合に、いままで現行の河川法でどういうことばを使っておるか私よく知りませんけれども、一応その河川区域の認定という処分があって、範囲が明確になっておると聞いておりますが、今度の新しい法律で河川区域の範囲というのは、事実上従来までの範囲と変わらない取り扱いになるのか、あるいはこの指定のしかたその他によっては、移動があり得るというように予想しなければならないのか、その辺はいかがですか。
  303. 山内一郎

    山内一郎政府委員 現行法では、地方行政庁の認定によりまして区域をきめているわけでございますが、私有地といいますか、その河川の中あるいは周辺にございまして、認定をいたしまして河川区域にした場合には、「私権ノ目的トナルコトヲ得ス」、こういう条文もございまして、なかなか区域を明確にできないという現状でございます。今回におきましては、ここの第六条に明らかでありますように、一応一号、二号、三号、こういうことで、私有地がその中にございましても河川区域にはする、ただ私有権は認めて従来どおりになっている、こういう考え方で、多少取り扱いが違っているわけでございます。
  304. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうしますと、いままで私有地であって、したがって認定できなかった部分も、この新しい法律では私有地のままで河川区域という認定をすることがあり得る。したがって、いままでよりも範囲が広がるということがあり得るわけで、むしろそういう私権の設定があるところを河川区域にするということのために、新しくこういう仕組みをつくったというように考えるべきなんですか。
  305. 山内一郎

    山内一郎政府委員 従来の方法でまいりますと、いわゆる河川区域にしたいような、すべき土地の区域につきましても、私権のあるために河川区域にできない。たとえば、堤防の堤外地といいますか、そこに私有地が残っておりますが、これは河川法の取り扱いの範囲に入ってこない、こういうことになのまして、河川管理上非常に問題点が多くなっているというような現状でございます。今回は、それは一応河川区域の中に入れますが、私権は認めておる。ただ、公共の福祉のために当然受認しなければいけないというような行為制限、これはやはり受ける、こういうようなたてまえでできているような次第でございます。
  306. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そのことをお尋ねをする前に、ちょっと問題が戻りますけれども、この第二条の「河川は、公共用物であって、」云々というこの「公共用物」ということばでありますけれども、これは法律的にはたとえば私権の目的となり得るかなり得ないか、そういう点からはこの公共用物というのはどのように考えるべき性格のものですか。
  307. 山内一郎

    山内一郎政府委員 河川は公共用物であるということでございまして、先ほどの例もありますように、私有地を河川区域にした場合、やはり当然なすべき範囲しかいたしませんので、河川は公共の用に供せられるものである、そういうことに私有地もなってくるかと思われます。したがって、私有権は認めておきますが、先ほど申し上げましたように、この条文でもわかりますように、公共の福祉のために受忍しなければいけないというような範囲内におきましては、やはり行為制限を受けざるを得ない、こういうたてまえからいまの河川法案考えておるわけでございます。
  308. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私権の目的にはなり得るけれども、しかし公共の目的のために制限をされるという趣旨だということを伺いましたけれども、第二条の河川というのは、河川区域あるいは河川保全区域という、そういう土地とは関係がなくて、河川という定義が四条にあるようですけれども、この公共の水流及び水面を河川という、その河川という意味ですか。この二条の河川というのは、河川区域なり河川保全区域なりという土地も含めて河川というのですか。
  309. 山内一郎

    山内一郎政府委員 河川の定義は第三条に書いてございますが、この法律におきましては、一級河川及び二級河川をいう、それにさらに河川管理施設を含む、こういうような定義をしておるわけでございます。
  310. 松井誠

    ○松井(誠)委員 この四条一項の「公共の水流及び水面をいう。」というのは、河川の定義とどういう関係になりますか。
  311. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 ただいま河川局長からお話がありましたように、第三条で、河川の定義が一級河川と二級河川河川管理施設を含むということになっておりますが、さらに一級河川の定義は、この四条で、公共の水流及び水面をいう河川である、こういうふうに限定をいたしておるわけでございまして、こういう限定を受けた河川、一級、二級ともそうでございますが、そういう公共の水流及び水面をいう河川一級河川、二級河川指定されました場合にこれを河川、こういうふうに考えておるわけでございます。
  312. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうしますと、第二条の河川というのは、四条に指定された場合の河川とは違って、三条に書いてある河川の定義だ、しかし、河川は何かということは、実はこの三条から出てこないので、ただ管理施設を含むということがはっきりしておるだけで、河川とは何かという定義は出てこないのですね。第二条の河川というのは、水だけなのか、水の敷地河川区域というものも含むのかということをお伺いしたい。
  313. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 現行の河川法におきましても、河川は流水と敷地からを考えておりますが、この河川法案におきましても同様に流水、敷地または砂利等も含まれる場合もございますが、そういうものを河川というふうに考えております。
  314. 松井誠

    ○松井(誠)委員 その敷地はこの河川法にいわれる河川区域というように理解をしていいのですか。
  315. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 第六条に規定してありますように、その河川敷地は六条によって指定された区域考えておるわけでございます。
  316. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうしますと、この二条によって、河川区域も公共用物ではあるが、私権の目的になり得る。その私権の目的になったままで河川区域の認定が行なわれる。その場合に行為の制限があるということですけれども、これに対する補償というのはどこに規定がございますか。
  317. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 この河川区域になりました場合の行為制限の問題でございますが、これは第三節の河川の使用及び河川に関する規制という節に入っておるわけでございます。その中で特に敷地関係いたします条文は、第二十四条それから二十五条、二十六条、二十七条等でございますが、二十四条と二十五条は、土地の占用の許可あるいは土石等の採取の許可に関する制限規定でございます。この制限規定は、この第二十四条にありますように、かっこ内におきまして河川区域内の土地で「(河川管理者以外の者がその権原に基づき管理する土地を除く。)」こういうふうにいたしまして、二十五条も同様でございますが、河川管理者の権限の及ばない土地については、まず除外をいたしておるわけでございます。ただ二十六条、二十七条は、これは工作物の設置の規制であり、それから土地の掘さく等の許可に関する規制でございますが、これは民有地、国有地とを問わず規制がかかるわけでございますが、この点につきましては、河川の公共用物としての性格に基づきまして、これは当然受忍すべき範囲に属するものというふうに考えておるわけでございまして、したがいまして、この点の補償は考えていないわけでございます。
  318. 松井誠

    ○松井(誠)委員 具体的にどういうところが指定をされるかわかりませんけれども、堤外の土地で、しかも私権の目的になっておった土地が、今度河川区域ということで指定をされるということもあり狩るわけです。しかもそれは補償がないということになりますと、これは私人の私権の保護という点からいって、相当ゆゆしい問題ではないかと思うのです。先ほど私権の保護には非常に欠くるところがあって、一方また、非常に寛大過ぎるところがあると言ったのは、一つはこういうことなんですが、これはたとえばそのあとの河川の保全、河川の予定地ですか、そういう場合には補償の問題があるようですけれども、河川の保全区域の場合にも、補償の問題はないようでありますけれども、あわせてその点お伺いいたします。
  319. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 ただいまの御指摘でございますが、堤外の土地というのは、これはこの前もここで問題になりましたが、これは河川管理上特有のことばでございまして、堤防と堤防との間の区域、水の流れているところの区域をいっておるわけでございます。したがいまして、それは堤防の外ではないわけでございます。その区域は、先ほど申し上げましたように、河川の公共的な性格によって、当然その区域の制限は受忍さるべきものであるというふうに考えておりますし、また、河川保全区域につきましても、これは従来河川付近地といっておった区域でございますが、この区域につきましても、河川に準ずるような区域考えておりまして、今度の法案におきましては、その区域指定する場合には、厳重に法律上制限をいたしておりまして、原則として五十メートル以内というふうに制限をいたしております。そういう区域内におきましては、従来どおりこれについての私権の制限も、これは公共的な河川管理上必要であるという立場から、これについての補償の規定を設けていないわけでございますが、河川予定地につきましては、これは河川管理上の立場からなす規制でございますので、その規制に対しまして通常の損失補償ということは考えておるわけでございます。
  320. 松井誠

    ○松井(誠)委員 河川の保全区域河川の予定地などにいろいろ行為の制限がありますけれども、最初私が申し上げたように、それこそ河川区域内に広大な、事実上農地になっておって、それの返還を県のほうから求める、農民のほうは、そういうわけにはいかぬといって反対をするという紛争がときどきあるわけですけれども、あれは具体的にどういう根拠に基づいてやっておるのか、私つまびらかにしませんが、今度の法律でこの河川区域、そこに所有権がないという前提で、私人の所有権がないという場合に、第二十四条の正式な河川区域内の土地の占用の許可という権原がある場合には別ですけれども、そうでない場合には、この経過措置で具体的にあのような農地というものはどうなっていくのかということをお伺いしたいと思います。
  321. 山内一郎

    山内一郎政府委員 ただいまのお話の、堤外の土地が私有地であるのか、あるいは官有地であるのかよくわかりませんが、官有地であれば従来どおりでございまして、当然河川区域に入るような土地につきましては、やはり行為の許可をとらなければいけない、こういうことになると思います。  私有地につきましても、先ほど申し上げましたように、河川区域指定すべきところはやはり指定をいたしまして、行為の制限を受けるようになる。先ほど御質問の返還というのは、意味がよくわかりませんが、今後の取り扱いはそういうふうに考えております。
  322. 松井誠

    ○松井(誠)委員 返還というのは、個人の所有権を持っていないから農地を引き渡せという要求の場合のことなんですけれども、この経過措置によって、たとえば二十四条で新しく占用の許可を得べき者が、今までこの八十七条の経過措置によって、単に届け出でいいということになるのじゃないですか。何か今のお話では許可を要するというような御答弁でしたけれども……。
  323. 山内一郎

    山内一郎政府委員 先ほどは今後の新しい使用という点で御説明をしたのでございますが、現在許可をとって耕作をされていた方、これは経過措置によりまして期限が切れるまで、あるいは条件どおりやられる場合には、従来のとおり、こういうように経過措置で書いてあるとおりでございます。
  324. 松井誠

    ○松井(誠)委員 さっきの河川保全区域ですけれども、これは最大限五十メートルといえば、相当広大な土地になるわけですけれども、これが河川の維持、その安全ということのために必要な場合に、その指定をするという条件ではありますけれども、必要な最小限度の区域に限るという、こういう抽象的な規定で、しかも指定をされた場合には、補償の要求ができないということになりますと、具体的にどういうこの保全区域指定がなるのかはっきりわかりませんが、公共の福祉という名前で不当に私権が制限をされるという、そういう懸念はございませんか。
  325. 山内一郎

    山内一郎政府委員 不当に私権の制限をしないように十分考慮してつくってあるつもりでございますが、なお、区域の長さといいますか、それについても五十メートルをこえないように、最小限度のことを考えて、案をつくっているような次第でございます。
  326. 松井誠

    ○松井(誠)委員 五十メートルというのは、長さといいますか、その河川区域の境界から五十メートルですから、幅ということになるわけですね。そうしますと、その五十メートルという最大限がいつも指定されるわけじゃないでしょうけれども、河川区域というのは、言ってみれば堤防の内側であるとすれば、河川の保全区域というのは、堤防の外というのが普通の状態ですか。
  327. 山内一郎

    山内一郎政府委員 堤防の外でございます。そこで、ここにも書いてございますように、河川管理施設、堤防のないところは河岸でございますが、堤防のあるところは堤防をさしているわけでございますが、それを保全する最小限度、こういうふうに考えているわけでございます。
  328. 松井誠

    ○松井(誠)委員 この制限される行為の土地の掘さくというのは、もちろん農耕なんかは入らない、農地としての使用なんぞは入らないわけなんでしょうね。
  329. 山内一郎

    山内一郎政府委員 普通の耕作方法によりますかんがい、そういうものは入らない、こういうふうに解釈しております。
  330. 福永一臣

    福永委員長 次に山口鶴男君。
  331. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 時間もだいぶ回っているようでありますから、具体的の問題で、なおかつ、地方行政関係のありまする問題に限定をいたしまして、二、三お尋ねをいたしたいと思います。  まず、第一は、この法律の四条でありますが、四条の規定を拝見いたしますと、一級河川指定のしかたが書いてあるわけでありますが、この場合、第二項、第三項におきまして、都道府県知事意見を聞かなければならぬ、しかもその場合には、当該都道府県の議会の議決を経なければならぬ、こういう規定になっております。そういたしますと、水系指定をする、そして一級河川、二級河川ということになっていくわけでありますが、この場合、建設省のほうで、これは一級河川が適当だろうと思いまして、都道府県知事意見を聞くわけでありますが、この場合、都道府県知事意見が、一級河川にすることは反対である、こういう意思表示をいたしてまいりました場合には、当然その河川については一級河川指定をしない、こういうことになろうかと思うのでありますが、この点は一体どうでございますか。
  332. 山内一郎

    山内一郎政府委員 意見を聞くことになっておりまして、意見は十分尊重してやりたいと思っております。ただ数府県流れるような大河川の場合には、大多数の知事さんが賛成、一県だけが反対、こういうような場合には、意見を聞くのがたてまえでございますが、意見をよく尊重して、もし反対されるような場合には、十分お話し合いをいたしまして、当然なるような川は一級河川にしてまいりたい、こういうように考えております。
  333. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そういたしますと、一つの府県関係するだけの河川の場合は、これはその県の知事反対だということになれば、当然これは指定をしない。二府県にまたがる、あるいは三府県以上にまたがる、こうなった場合に、そのうちの一ないし二の府県反対だという意思表示をした場合には、当該府県と十分意見調整をした上で措置をしていく、こういうふうに理解してよろしいわけですね。
  334. 山内一郎

    山内一郎政府委員 そのとおりでございます。
  335. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そういたしますと、一府県の場合は、建設省一級河川にしようと思っても、ならぬ場合が当然出てくる。また、二、三府県にまたがる河川についても、一ないし二府県反対という意思表示をした場合には、いろいろ意見調整をするけれども、府県意見は尊重していく、無理押しはしないということになりますと、二、三府県にまたがる河川の場合におきましても、一級河川でない場合が当然出てくるわけですね。そういたしますと、先ほど建設大臣が非常に強調せられたのでありますが、水系ごとの総合的な治水行政を推進をしていく、こういう点からいって、相当大きな支障が出る場合もあり得るかと思うのですね。どうしてもこれは一級河川でなければ総合的なあれをやらなければいかぬということになっても、この規定がありますると、それが実質的には実現できぬ、こういう場合もあるわけですね。そうすると、当初建設省考えましたような水系ごとの総合的な河川行政を進めるという点について、大きな差しつかえも出る場合もあり得ると思うのですが、この点はいかがでございましょうか。
  336. 山内一郎

    山内一郎政府委員 法律にも書いてございますように、「国土保全上又は国民経済上特に重要な水系」、こういうことでございまして、概括的には法律に書いてあるわけでございます。この範囲内で知事さんの意見を聞き、審議会意見を聞いてやっていく、こういうたてまえでございます。
  337. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、四条によるところの「政令で指定したものに係る河川で政令で指定したものをいう。」政令が二つ重なっているわけでありますが、この政令の書き方が問題になるわけですね。この政令は、一体具体的にどういう規定を置こうとなされているわけですか。今明日中に具体的に御提示になるそうでありますが、とりあえずこの点をお示しをいただきたいと思います。
  338. 山内一郎

    山内一郎政府委員 この政令は、具体的な固有名詞を書くことになっております。たとえば利根川水系、それの小貝川、鬼怒川、それは河川のほうになりますが、そういうふうに具体的の名称を書く、こういうことでございます。
  339. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 この場合、政令が二つつながっておりますが、この政令は二つですか、一つですか。
  340. 山内一郎

    山内一郎政府委員 一つといいますか、二つといいますか、実際に政令で規定いたします場合には、利根川水系の小貝川、鬼怒川、渡良瀬川、こういうことでございます。
  341. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 利根川水系あるいは遠賀川水系ということで政令で指定したものというと、結局政令が二つ使ってありますね。この関係はどういうことになるのですか。別な政令になるわけですか。
  342. 山内一郎

    山内一郎政府委員 政令は二カ所に使ってございますが、実際に政令をきめます場合には、一つの政令の中に入る、こういうふうになります。
  343. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうすると、固有名詞を書くだけだということになるわけですね。
  344. 山内一郎

    山内一郎政府委員 固有名詞を書きまして、第四項に書いてございますが、政令においては水系ごとにその名称及び区間を明らかにする、これが加わるわけでございます。
  345. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それで大体ここに書いてありますことの内容はわかったわけであります。そういたしますと、次に第九条へまいりまして、「(一級河川管理)」というところでありますが、ここでは知事に委任するところの指定区間の定め方が書いてございますね、この場合の都道府県知事に委任する指定区間というものは、建設省令で定めるところによりその旨を公示しなければいかぬということになっていますが、そういう方法で指定をするわけですか。
  346. 山内一郎

    山内一郎政府委員 まず都道府県知事意見を聞きまして建設大臣指定区間指定する、こういうことでございます。
  347. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そういたしますと、これは建設省令で定めるところにより建設大臣指定するわけですね。この場合の手続としては、法律または政令ではなくて、都道府県知事意見を聞いて建設大臣が定める、こういうことになるわけでございますか。
  348. 山内一郎

    山内一郎政府委員 そのとおりでございます。
  349. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そこで、自治省の行政局長お尋ねしたいと思うのでありますが、地方自治法の規定によりまして、都道府県あるいは市町村という地方公共団体の固有事務が列挙してございます。それからそのほかに機関委任事務、あるいは団体委任事務、どういうものについては地方公共団体に仕事を委任するかということが地方自治法にずっと書いてございます。その場合に、都道府県知事に仕事を委任するという場合におきましては、当然法律または政令に基づかなければならぬということに相なるかと思うのでありますが、いまお尋ねをいたしますと、都道府県知事にこの管理を行なわせまする指定区間につきましては、法律または政令の規定というものがないようでありますが、この辺、地方自治法の規定と相反する違法な規定ではないかと思うのですけれども、いかがですか。
  350. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 御指摘になりましたように、国の事務を都道府県知事に委任をいたします場合には、地方自治法の百四十八条の規定によりまして法律またはこれに基づく政令の根拠が必要であるということになっておるわけでございます。第九条に規定いたしております管理の事務の範囲でございますが、第九条第二項で、政令で範囲を規定いたすことになっておりまするので、差しつかえないのじゃないかと考えておるわけでございます。ただ、御指摘になりましたように、さらにそういう管理の一部を行なわせる区間そのものの指定も、政令でやったほうがいいんじゃないかという御説かと思いますが、その点は、立法論としては一つの行き方かと思いますが、事務そのものの範囲につきましては政令で定めておりますし、かつ、この法律またはこれに基づく政令でやらなければならないといたしました趣旨が、委任を受けます者の意思を無視してかってに仕事をしょわせてはいかぬという趣旨でございますので、この法律では、区間指定いたします場合につきましては、あらかじめ関係都道府県知事意見を聞いてやるという手続を法律自体に定めておりますので、そのような点からいたしまして、地方自治法の規定の上からいって差しつかえないものと私どもは理解しておるわけでございます。
  351. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 行政局長の御答弁は、これは建設省行政局長ならけっこうでありますが、自治省の行政局長としては私は非常におかしいと思うのです。第一、あれでしょう、ここで指摘をすることはちょっと場違いな問題になるかと思うのでありますが、たとえば農林省が進めております農業構造改善事業がございますね、あれについても、私ども社会党としては、当然地方自治法の規定からいって法律または政令でもって明確にこれを規定すべきじゃないか、こういう主張をいたしておるわけであります。ところが、現実にはあれは農林省の省令か何かでやっているわけですね。そういうものをほったらかしておくのは、これは大体自治省の責任ですよ。そうじゃないですか。自治体の間には少なくとも地方自治法違反ではないか、こういう声があるのですからね。それとまた同じように、仕事については政令で定めるところにより云々とありますけれども、少なくとも指定区間の定め方についても、当然その仕事の内容もそうだけれども、どこが指定されるかということの手続が、このままでは建設大臣の一方的な意思によってきまる——もちろん都道府県知事意見は聞きますけれども、法律ないしは政令の根拠というものではなくて、あくまでも建設省令で定めるのですからね。そうなってくれば、少なくともこの規定指定する場合には、法律とはいわぬでもけっこうでありますから、この法律は政令というのが多過ぎて、うんと書いてあるのですから、当然政令で定める、こういうことでなければ、地方自治法のていさいからいって悪いということぐらいは自治省として言うべきではないのですか。どうですか。
  352. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 農業構造改善事業につきまして御指摘のありました点につきましては、私どもも現在農林省の通達で相当細部にわたる事項を規定いたしております点につきまして、法律の精神からいたしまして若干意見は申しておるわけでございます。ただ、補助金を補助をする前提の要件を定めておるということで、地方公共団体に強制をいたしていないということでございますので、もし地方公共団体に強制するような場合には、必ず法律または政令の根拠を書かせるということで話し合いをいたしておるわけでございます。  河川法につきまして、先ほどのお尋ねの点でございますが、立法論といたしましては、あるいは区間そのものも政令で指定するということもよりよいかとも思うのでございますが、区間指定そのものにつきまして相当弾力性を要するという実情もあるようでございますし、区間指定につきましては、先ほど申し上げましたように、法律で十分関係都道府県知事意見を聞いてやる手続を定めておるわけでございますから、事務そのものの範囲について政令の根拠がございますれば、地方自治法の規定の上からいって差しつかえないものではなかろうか、かように解しておるわけでございます。
  353. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 どうもその点が、先ほど言いましたように、建設省行政局のようでありまして、不満であります。あらためてこの点は法制局を呼んでお尋ねしたいと思いますから、この点は保留をいたしておきましょう。  そういたしますと、指定区間の工事については都道府県知事に委任するということになります。そういたしますと、結局は従来の工事形態といいますか、そういうものとほとんど全く変わらぬというかっこうになるわけですね。しかし、なおかつ、水利の許可権というものは建設大臣になっていくんじゃないかと思うのでありますが、その辺は相矛盾すると思いますが、この点はいかがでございましょうか。
  354. 山内一郎

    山内一郎政府委員 この法案では一級河川管理建設大臣が行なう、これは原則になっております。したがって、全部やるのがたてまえでございますが、知事に委任した方がいい、事務の繁雑といいますか、事務量もたくさんになりますので、知事に委任した方がいいというものは、区間を定めて委任をしていこう、こういうたてまえでございます。したがって、従来とはだいぶ違う、こういう考え方でございます。
  355. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、指定区間にいたしました場合の水利の許可権については、これは指定区間ということに建設省令で指定されれば、水利権もそれにタイアップをして都道府県についていく、こういうことに理解してよろしいわけですね。
  356. 山内一郎

    山内一郎政府委員 その委任及び管理事務の内容でございますが、これは重要でございますので政令できめていこう、こういうたてまえでございます。
  357. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうすると、こまごまとした、砂利の採取権というようなものは別といたしましても、流水の占用、いわゆる水利の許可というようなものは、その政令の中には入っていかない、こういうふうに理解をしてよろしいわけですね。
  358. 山内一郎

    山内一郎政府委員 水系一貫としてどうしても考えなければいけないもの、これは河川の計画をつくる、あるいは水利権の問題があるかと思います。そのうち計画をつくるというような面につきましては建設大臣が全部やるべきである、こういうふうに考えております。  なお、水利権につきましては、知事委任区間については非常に小さいといいますか、大規模な開発に支障がないとか、あるいは水利調整に支障がないというような範囲の小規模な水利権の許可権といいますか、これは知事さんに委任した方がいいであろう、こういうことになっておるわけでございます。そのほか、砂利あるいは敷地の占用は、全面的に知事さんに委任したほうがいいと思われますので、今後いろいろ各省間で相談をいたしますが、そういうふうになると思います。
  359. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そういたしますと、知事の委任区間であっても、特に重要な水利の許可というものは、知事に委任せられました区間のその水系重要性なり、流水、水利の持つ重要性なり、そういうもので結局建設大臣に残されるものもあるし、都道府県知事にまかされるものもある、平たく言えばこういうことになるわけでございますね。
  360. 山内一郎

    山内一郎政府委員 そのとおりでございます。
  361. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 どうも水利に関する限りは、非常に建設大臣の権限について固執をせられておるようでございまして、この点は意見もございますが、意見があるということで先に進みたいと思います。  次に、先ほど大臣お尋ねをいたしましたのですが、河川の台帳です。副本をつくって都道府県の県庁にこれを置くようにすると言っておるのでありますが、相当膨大なものになるだろうと思うのであります。どのくらいの期間でこの副本を作製し、一般住民の閲覧に供するというような形になるという、事務的な一応の見通しというものはいかがでございますか。
  362. 山内一郎

    山内一郎政府委員 非常に河川台帳をつくる事務も膨大でございまして、だいぶん時間がかかりますが、逐次できたものから県庁に副本を置きまして、ここに書いてございますように閲覧に供したい、こういうふうに考えております。
  363. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、その台帳そのものを整備するのにも相当な期間がかかるで亙りましょうから、副本を都道府県に整備するという問題も相当期間を要するということになろうかと思うのですが、この点は、住民の側から申しますならば、河川台帳がいつまでたっても閲覧できぬということは非常に不便なことでありますから、大体、国というしかも限られた人員でもってこういう河川台帳をつくるというところにそもそも無理があって、現在の管理形態のほうがよろしいんではないかというような気持ちもいたすのでありますが、この点はそういった事務的な問題だけお尋ねをいたしまして先へまいりたいと思います。  そこで、工事実施計画というものをつくるわけでありますが、これは一体具体的な内容はどういうものを基本計画でおつくりになるつもりでございますか。現在の治山治水十カ年計画とはどういう点において違ってまいるわけでありますか。
  364. 山内一郎

    山内一郎政府委員 この工事実施基本事項と申しますものは、河川工事をやっていく上におきまして基本となるべき事項、ここにも一例として計画高水流量というのがあがっておりますが、これに類するようなものでございまして、河川の縦断計画あるいは横断計画、堤防と堤防の幅を幾らにすべきであるか、あるいは多目的ダムをつくります場合には、そこにおける洪水調節容量をいかにするか、こういうような計画高水流量の全般的な配分等、ほんとうに計画をつくるための基本事項、こういうことでございます。ただいま言われました治山治水十カ年計画といいますのは、そういう計画に基づきましてできました事業を何年でどのくらいの規模でやるかというような事業実施の面が主になっているわけでございます。
  365. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 先ほども大臣お尋ねをいたしたのでありますが、現在の工事の施行状況を見ましても、結局、直轄でいたしまする場合は国が三分の二を持ち、三分の一を都道府県にいわば直轄事業の分担金という形で持たせます。それからさらに、都道府県がみずから実施をいたします場合には、国が補助金を出し、都道府県が工事を実施いたしておるわけでありますが、この場合においても、当然補助金の申請をいたします場合には、工事実施計画を建設省に出して、その認可を得て、しかもその監督のもとに都道府県が工事を行なっているわけであります。そういたしますと、いままでの治水のための基本計画というものも当然あったんじゃないかと思うのです。そういうものと、今回第十六条でうたいますところの基本計画というものは一体どこが違うわけなんですか。
  366. 山内一郎

    山内一郎政府委員 従来は現行河川法によっておりますので、直轄工事をやる区間の計画を主体といたしております。その場合にも、全般的には概略考えますが、具体的に上流地域のどこに堤防をつくるというような計画ではなかったわけであります。補助工事の県の申請の場合に、一々その個所につきまして、その個所についてはいいであろう、こういう補助金の申請の場合の認可をいたしておりましたが、今回は水系一貫としてこういう工事実施基本事項をつくりまして、それに基づいて計画をつくり、なお、知事委任区間というものを設けて、その計画に基づいて知事に工事をやってもらう、こういうふうに根本的に変わっておるわけでございます。
  367. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そういう点で若干変わった点は理解をいたすのでありますが、結局新河川法を提案いたしました理由といたしまして、水系ごとの一貫した総合の治水計画が進まなかったということを言われておるわけでありますが、いま御答弁がありましたように、現行河川法におきましても、建設省のほうで本腰を入れて、その水系全般の治水計画をおつくりになり、県がたまたま申請をしてきたから場当たり的にその個所だけ一応計画をチェックしていくということでなしに、直轄工事はもちろんそうであいますが、水系ごとに基本的な計画を定めて直轄工事を進めていく、それからまた、都道府県が実施をいたしまする補助工事についてもある程度の基本計画というものを国が定める、こういうことにいたしますならば、私はやはり現行の体系においても総合的な治水計画というものは進んだはずではないかと思うのです。こういう点はむしろ私は河川法提案の口実にするというよりは、むしろ建設省当局治水という重要な仕事について、本来私が指摘いたしましたように進めるべきであったのに、むしろこれをなまけておった——と言っては恐縮でありますが、やや総合的な実施の計画に欠くるところがあった。何か権限がおれのほうにこなければ、基本計画は立てない、何か都道府県に権限があったんじゃ、何もそれはほっておけばいい、こういうことでは、私は少なくとも建設省としての責任は果たせなかったと思うのでありますが、この点はいかがでしょう。
  368. 山内一郎

    山内一郎政府委員 現行法におきましては、例外的に、御承知のとおり、建設大臣管理をすることができる、こういうたてまえでございますので、やはり全面といいますか、水系一貫して全部管理建設大臣がやる、こういうことになりますと、例外と本則が逆になると思います。したがって、そういうような点は、やはり新しい河川法で十分御審議を願ってやらない限り、例外を本則にするということは、やはり法律の根本的な考え方が違うのじゃないか、こういうような点から、新しい河川法案をつくったような次第でございます。
  369. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私も建設委員でありませんから、こまかいことは知りませんが、たとえば道路についても主要地方道、それから都道府県が現在管理をいたしております二級国道、こういうものについても、道路整備五カ年計画とか、あるいは十カ年計画という形で、全般的な計画というものを建設省はおつくりになって仕事は進めておられるのではないのですか。といたしまするならば、この管理権というものが、道路と同じように、知事にあるかどうかということでもって、全体の計画をおつくりになるのにさしつかえがあるということに私はならぬのじゃないかと思うのですがね。その点私の認識不足でありますか、お答えをいただきたいと思います。
  370. 山内一郎

    山内一郎政府委員 治山治水あるいは道路でも同じでございますが、五カ年計画というようなものは、おのおのの法律に基づきまして、今後五カ年の間にどういうことをやるか、事業の規模は幾らにするか、こういうような計画だけでございます。その基本になるのは、やはりおのおのの基本法でございまして、河川法においても、だれが水系全般について計画をつくるか、こういうような基本的な事項は、やはり法律で明確にしない限り、そういうような根本的な計画といいますか、いわゆる事業計画はつくりますけれども、基本的な計画をつくる、こういうたてまえで新しい河川法考えておる、こういう次第でございます。
  371. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 この点は、現行法でも踏み込んで建設省のほうである程度水系ごとの一貫した方向を出して——もちろん都道府県が申請することは間違いありませんが、現在都道府県のやり方を見れば、やはり都道府県財源が苦しいという点もありましょうが、できるだけ直轄工事でもってやってもらいたいというふうに申請をしてまいるのが私は従来の例ではないかと思うのです。そういたしますと、結局実情としては、おもな水系については、できるだけ直轄工事にしてもらいたいという都道府県意向もあるわけでありまするから、したがいまして、現行法の体系では、もちろん国が直接管理をするのは例外規定ではありますけれども、現実的には、相当重要な水系については、大体例外規定がいわば一般的なかっこうになっているのじゃないか、こういう実情も考えまして、御意見を申し上げたわけであります。  関連をいたしまして、費用の分担の点についてお尋ねをしたいと思うのですが、結局、河川行政管理費でありますが、管理に要する経費は二分の一負担をするということになっておるようでありますが、この場合の管理費については、人件費は当然この管理費の中に入るわけでございますね。
  372. 山内一郎

    山内一郎政府委員 この点は、まだ詳細に財政当局と詰めてはおりませんが、人件費も入るというふうに解釈をしております。
  373. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そういたしますと、たとえば一級河川につきましても二分の一管理費を負担する。それには当然人件費も入るということになりますと、地方建設局で一級河川管理をいたしておる国家公務員の人件費、これも都道府県が二分の一を負担をするというきわめておかしな形になるかと思うのでありますが、この点はいかがでしょうか。
  374. 山内一郎

    山内一郎政府委員 この点は、先ほど御説明いたしましたように、財政当局とは最後まで詰めておりません。ただ、現在直轄工事をやっております負担の問題につきましては、工事事務所の人件費、これは入れまして県にその三分の一を負担してもらう、こういう建前にいたしております。
  375. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 自治省は財政当局が来ていないのですが、行政局長さんがおられますが、この間の国家公務員の管理に携わる人件費についてはどういうような御意見がございますか。
  376. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 私、主管でございませんので、たいへん恐縮でございますが、答弁を差し控えさしていただきたいと思います。
  377. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 この点どうもはっきりしないと困ると思うのですがね。何か今回の河川法改正が、都道府県の財政について非常に地方財政考えて大いに恩恵を与えるかのごときお話をずいぶん承ったのでありますが、結局こういう形で国家公務員の人件費についてまであるいは持たせるかもしれぬというふうな点について、まだ明確ではないようでありますが、当然そういうことも考えられる、こういう点を残しておられるということについては、非常に遺憾に思うのですけれども、これはいつごろこの財政上の問題については御意見がまとまるわけでございますか。
  378. 山内一郎

    山内一郎政府委員 従来の例からいきますと、先ほど申し上げましたように、直轄工事関係している人件費は含めております。したがって、それと取り扱いを同じくするかどうか、こういう点につきまして大蔵省と詰めている段階でございます。これは至急詰めたいと思っております。
  379. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、直轄工事の場合は国が持つ分が三分の二ですね。そうすると、人件費を持つという場合にも当然三分の二国が持っておったというかっこうになりますね。今度の場合は、管理については二分の一でしょう。そうすると、人件費に関する限りにおいては、従来よりも大幅に後退をする。もしそうなれば、二分の一人件費を持たせるということになれば——ということでは、私は非常につじつまが合わぬと思うのです。しかも管理権は国に取り上げるという形がありながら、なおかつこれでは非常に筋違いではないですか。
  380. 山内一郎

    山内一郎政府委員 従来は県でやっておりました管理の一部を国でやるようになった、こういうことでございます。したがって、従来は国の負担というのはなかったわけでございますが、今回建設大臣管理の一部をやるようになった。この点につきましてその何分の一を国があるいは県が持つかという点でございますが、いろいろ検討いたしました結果、まあ従来の維持工事とか、いろいろな点を勘案しまして管理に要する費用は国が二分の一、県が二分の一が妥当であろう、こういうことで案ができておるわけでございます。
  381. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 その辺は二分の一、たいへん建設省地方財政に関する限りは非常に御理解がございまして、治水に関する限りは都道府県にこういうものを持たしておることは、特に水源県のごとき財政能力の乏しいところにおいてはなかなかたいへんで、治水工事がうまくいかない。したがって、今回国庫負担率も引き上げて、そして治水が十分にいくようにしてやろう、こういうお話であります。けっこうでありますが、しかし人件費については、直轄工事でやっておりました場合は三分の二持っておったけれども、今度、直轄工事になりますものもあるし、それから新しく国の事務になる分もありましょうが、これについての人件費は二分の一に後退をするということであっては、地方財政に対して非常に御理解のある建設省の御態度としては、首尾一貫しない。当然この管理費についても三分の二持つようにするか、この点についてはひとつ十分な御考慮をいただきたいと思うのであります。  それから、同じく財政に関係する問題といたしまして、三十二条、これは知事会の御意見等を十分尊重したということになっておるのだろうと思いますが、いわゆる流水占用料の徴収等の問題でありますが、この徴収は都道府県がいたすのでありますか、建設大臣がいたすのでありますか、この点は法律に明確な規定がございません。一体どちらでございますか。
  382. 山内一郎

    山内一郎政府委員 三十二条に書いてございますように、都道府県知事は徴収することができるというたてまえで、都道府県知事が徴収することになっております。
  383. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうすると、この点は従来の方法と変わらない。そういたしますと、従来栃木県なら栃木県、長野県なら長野県であがりました水利使用料については、これはそのまま当該県の財政収入になっていく、こう理解をしてよろしいわけでございますね。
  384. 山内一郎

    山内一郎政府委員 そのとおりでございます。
  385. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 従来、河川使用料につきましては、水源県の県が集まりまして発電税というような法定外普通税を起こして、そして財政強化をはかっていきたいというようなことを幾たびか政府に要望いたしたことがあるわけであります。しかし、この問題につきましては、発電会社等の大反対があったせいかどうかわかりませんけれども、結局発電税創設という運動については国が認めなかったわけであります。そういたしますと、今回の場合は、管理権の問題を通じまして、政府都道府県の間にいろいろやりとりがありましてこういうことになったわけでありますから、ますますもって法定外普通税を創設をいたしまして、後進県の財政収入を強化しよう、こういうようなことについては全く不可能になってしまうのではないかと思うのでありますが、この点は自治省もおられますから、建設省河川局長さんのお考え、並びに自治省の財政局長さんがいないのであれでありますが、行政局長さんもおわかりでありましょうから、その間の経緯、それから今後の見通しについてお聞かせをいただきたいと思います。
  386. 山内一郎

    山内一郎政府委員 所管外でございますので、御答弁は御了承願いたいと思います。
  387. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 まことに恐縮でございますが、所管外でございますので、遠慮さしていただきたいと思います。
  388. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうすると、所管はどこですか。私はしろうとでよくわからぬが……。
  389. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 税務局でございます。
  390. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 自治省の税務局ですね。それではその点はきょうは来ておらぬようでありますから、あとでまたお尋ねすることにいたしましょう。  次に、四十六条の問題でありますが、相模川で釣りをやっておりました方が水害にあったというような事例がございました。いろいろと問題になったことがあるわけでありますが、この場合に四十六条で「ダムの操作状況の通報等」という規定がございます。先ほどからいろいろとお話があったのでありますが、かつての相模川のような事件、これに関連する問題といたしましては、いろいろやりとりがあったのじゃないかと思いますが、これについては罰則の規定はありませんね。通報しなければいけないということでございますが、通報を怠った場合等の罰則については、私もいろいろ見たのでありますが触れていないようであります。この点はなぜ罰則を御考慮にならなかったのか、お聞かせいただきたいと思います。
  391. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 罰則の規定につきましては、法務省の刑事局と十分相談いたしまして、一般の刑罰体系でやるべきものはそれに準じまして、その均衡を保ってこの罰則に掲げるようにいたしておるわけでありますが、それ以外のものにつきましては罰則をかけていないわけでございます。なお、そういうものに違反した場合の措置といたしましては、この法律及びこの法律に基づく命令違反ということになりまして、一般的な監督規定を働かせるということに考えておるわけであります。
  392. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 この点は、先ほどから洪水時の緊急措置等の場合についての勧告を指示命令にしたらどうかというような議論のあった点と関連する問題かと思うのでありますが、その点のお答えについてはありましたが、この点については触れておらなかったようなのでお尋ねしたわけであります。人命尊重ということを考えてまいりますならば、しかも相模川等で現に具体的な事例も起きた問題でありますから、当然通報等を怠った場合の罰則規定というものはあってしかるべきではないかと思うのであります。前の勧告、指示の問題は、損害補償の問題等で問題があるからというお話がございましたが、この問題については、そのこととはだいぶ趣を異にする問題だと思うのでありまして、こういう通報を怠ったためにいろいろ不祥事が起こるということは当然予測される問題でありますから、先ほど松井委員から御指摘がありましたが、一般住民の権利その他につきましては、いろいろ制限等もあるけれども、何かダムの設置者というような大きな資本といいますか、そういうものに対する制約というものが非常にゆるいという感じを私ども受けるわけでありますが、罰則規定を設けなくても差しつかえないんだという積極的具体的な理由をもっとお聞かせいただきたいと思うのです。
  393. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 申し上げるまでもなく、罰則は国民の権利に非常に関係の深い問題でございまして、罰則をかけます場合には、当然その罰則が成立する要件というものが明確になりました場合、その違反行為に対して罰則をかける、こういうことになっておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、罰則につきましては法務省の刑事局と十分相談いたしまして、罰則をかけ得る内容のものについては当然罰則をかけ得るようにいたしますし、その他の問題につきましては、罰則の要件等が不明確というものにつきましてはこれをかけないようにした。しかし、その他の監督規定を十分に考えておる、こういうことでございます。
  394. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 だいぶ時間もあれですからこの程度で終わりにいたしたいと思いますけれども、特にこの際、私お願いいたしておきたい点は、指摘をいたしました地方自治法との関連、それからまた、地方公共団体に対する人件費の負担区分、この問題についてはより明確なお答えをいただきたいと思いますので、この点はまた建設委員会等に出ましてお尋ねをする機会もあろうかと思いますので、この点につきまして明確なお答えだけは十分御用意をいただきますようにお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  395. 門司亮

    ○門司委員 関連して。ちょっといまの受益者負担のことについて当局に聞いておきたいのですが、現在一級河川、国庫河川で利害を受けるとかいうことで、御承知のように水害予防組合のようなものができています。そうしてこれから税金と同じような形で金を徴収している。こういう組合はどうなりますか。この法律ができるとなくなりますか。受益者負担というところで現在組合があるでしょう。なければどこそこにあるということをはっきり言いますが、これは河川の改修に伴って、たとえば横浜の中にあります鶴見川は国庫河川ですね。いまあの河川については水害予防利用組合という組合があります。そして河川の中心から両方何メートルというところで地主家主から三段階ぐらいに分けて費用の徴収が行なわれますね。こういうことほどうなりますか。この法律ができるとなくなりますか。
  396. 山内一郎

    山内一郎政府委員 その工事に要する費用をだれが負担するかという問題ですが、現行法も、工事によって違いますが、国と都道府県と、こういうことでございます。新しい河川法案におきましても国と都道府県、それ以外のものは負担しない、こういうように法律上はなっております。
  397. 門司亮

    ○門司委員 いや、私の聞いておりますのは、受益者負担と書いてあるでしょう。そうして国の場合は建設大臣がきめる。地方の場合は都道府県知事が条例で定める。こう書いてありますね。それは結局、受益者負担というものの形が、いま申し上げましたような利用組合というようなもので徴収されているものがなくなるのか。そうしてこの法律に基づいた建設大臣なり地方の条例のあれであらためてこしらえるのか。いままでのそういう既存の組合というものはなくなるのかということです。
  398. 山内一郎

    山内一郎政府委員 この法案で受益者負担と考えておりますのは、たとえば多目的ダムをつくりまして下流の方に流量が、平水量といいますか渇水量がふえてまいります。その場合に、下流に発電があれば従来よりも水をよけい使えるようになる、こういうような非常に限定されたものが明らかに利益を受ける、こういう場合に受益者負担金をかけよう、こういう趣旨であります。
  399. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、こう解釈してよろしゅうございますか。これはいまお話のありましたような、要するに水利統制をしていくことによって利益を受ける者、現在既存のものは、さっき申し上げましたような、災害をいかに予防するかということで、いろいろ運動したりあるいはこまかい仕事をすることのための地元の負担がそういう形で行なわれておるということ、それとは関係ないんだということに解釈してよろしゅうございますか。
  400. 山内一郎

    山内一郎政府委員 ただいまあげたような例に限って考える、こういうふうに考えております。
  401. 福永一臣

    福永委員長 これにて建設委員会地方行政委員会農林水産委員会連合会審査会は終了いたしました。  これにて散会いたします。   午後六時四十六分散会