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1963-05-29 第43回国会 衆議院 建設委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年五月二十九日(水曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 福永 一臣君    理事 加藤 高藏君 理事 木村 守江君    理事 瀬戸山三男君 理事 二階堂 進君    理事 石川 次夫君 理事 岡本 隆一君       井原 岸高君    大沢 雄一君       金丸  信君    正示啓次郎君       砂原  格君    丹羽喬四郎君       堀内 一雄君    前田 義雄君       山口 好一君    兒玉 末男君       佐野 憲治君    日野 吉夫君       三宅 正一君    山崎 始男君       山中日露史君    田中幾三郎君  出席政府委員         建設政務次官  松澤 雄藏君         建設事務官         (計画局長)  町田  充君         建 設 技 官         (都市局長)  谷藤 正三君         建設事務官         (住宅局長)  前田 光嘉君  委員外出席者         参  考  人         (東京大学教         授)      有泉  亨君         参  考  人         (北海道大学教         授)      金沢 良雄君         参  考  人         (一橋大学教         授)      田上 穰治君         参  考  人         (都市不動産経         済研究所長)  宮下正一郎君         専  門  員 熊本 政晴君     ————————————— 五月二十八日  委員田中幾三郎辞任につき、その補欠として  片山哲君が議長指名委員に選任された。 同日  委員片山哲辞任につき、その補欠として田中  幾三郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  新住宅市街地開発法案内閣提出第一五三号)      ————◇—————
  2. 福永一臣

    福永委員長 これより会議を開きます。  新住宅市街地開発法案を議題として審査を進めます。  本案審査のため、本日は参考人として、東京大学教授有泉亨君、北海道大学教授金沢良雄君、一橋大学教授田上穰治君、都市不動産経済研究所長宮下正一郎君、以上四名の方に御出席を願っております。  この際、参考人各位一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多忙のところ本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございました。どうぞ忌憚のない御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。  議事の順序は、まず参考人各位より御意見を承り、御意見開陳が終わった後、委員各位より質疑をいただくことといたします。  なお、はなはだかってでございますが、時間の都合もございますので、御意見開陳はお一人十五分、これは参考人でございますが、お願いいたしまして、後刻委員からの質疑の際、十分お答えくださるようお願い申し上げます。  それでは御発言の順序委員長に御一任願うことにいたしまして、有泉参考人よりお願いをいたします。有泉参考人
  3. 有泉亨

    有泉参考人 お招きによりまして、新住宅市街地開発法案について意見を申し述べます。  私はある意味では関係者でもありまして、宅地制度審議会でこの案をつくるについて相談を受けた一人でありますので、若干身びいきがあるかとも思いますが、この案は、一言にして言いますと、たいへんけっこうな案だろうと存じます。問題になるのは、この案で、収用権施行者に認めていることと、それからそのほかに、なお新しい考え方として、土地建物等の先買い、それから土地買い取り請求というような制度がこれにつけ加えられている点が目新しい点でございますが、問題は、土地収用法によって収用した土地個人に売り渡す、そういう点が憲法二十九条の財産権の保障、公共の用のためには財産権を使用できるという、あの規定との関係で、はたして正しい意味公共の用に供することになるかどうかという点が一つ問題点だと思いますが、この点はあとから金沢さん、田上さんというふうな専門家お話があると思いますので、簡単に申しますと、財産権憲法の保障する範囲で十分に保護されなければなりませんが、土地という財産は非常に特殊なものであると私は日ごろ思っております。これはかけがえのないものでありまして、したがってまた、土地一定性格を持ちますと、たとえば農地になると農地法制限を受けるし、宅地としては建築基準法などの制約があるわけでございます。かってに住宅地のまん中に工場を建てられないというふうな制約を受けている。そういう特殊な性格のものである。特に日本のような国土の狭いところは、よけいそういう公の性格というものを土地そのものが持っているのではないか。したがって、また収用法も、土地収用法というので、土地を中心にして収用のことが規定されている。しかし、それにしても、売りたくない土地を買い上げて、それを造成して個人に売り渡す、こういうことですから、そこで単に土地であるということでなくて、やはりもう一歩それが公共の用につながるということを確める必要がある。そういう意味で、土地を特定し、それから買い上げた土地がほんとうに公共の用に使用されるものかどうかという公共へのつながり方をどこかで確かめておかなければならない。その点はこの案ではかなり配慮されております。と同時に、公共の用に供するものだとして使用してしまえば、あと収用されたものはどうなってもいいか。一たび収用権がかかれば、あとはどうでもいいという考え方は、これもまた少し行き過ぎかと思いますが、この案では、被収用者生活について、生活再建のためには施行者は十分な配慮をしなくてはならないということになっております。ダムサイトなどで収用された土地所有者が、あとでかえって生活に困ってしまうというような例があるわけですが、この法案に出てくる施行者は、そこでまだこれから事業を行なうわけですから、そこへはたくさんの人が住みついてくるわけですから、そこで何かの仕事なり生活が立つようにしてやる必要があると思います。ですから、この二十条は運用上十分に生かしていただきたい、こういうように考える次第です。  そこで、二、三、少し特殊な問題について申し上げますと、土地先買い権というふうなものを初めてこの制度わが国に導入したわけです。これは土地所有者にとってたいへん負担のように見えますけれども、しかし案をお読みいただければわかると思いますが、売ろうとする人、すでに売る意思のある人の土地をこっちに売ってくれということなのでして、制約は一月の間施行者が考える期間はよそへ売れないという、実質的には三十日というのが制約になるわけですけれども、普通の土地なら黙って売れるものが、三十日は待ってなくてはいけない。三十日間の制約を受ける。しかし、買うのは正当の値段で買うわけで、安く買おうというわけではありません。すぐに売ろうという人について、それをこっちで買おう、こういうのですから、非常にやっかいなことを規定したように見えますが、実はそれほど所有者にとって迷惑になる規定ではない。実際は、ある土地団地になるということが知れわたると、たちまちブローカーが入ってきて、その辺の土地を買いあさって、そしてそれがごねたりいろいろして中間で利益を得る。そういうものが出てきたときに、ちょっと待ったをかけておいて、適当な値段であればこっちで買おうということで、実際は運用上はかなり効果を発揮し得るのではないか。しかも土地所有者にとっては、すでに売ろうと決心をした人なのですから、それほどの負担ではないというふうに考えられます。  それから、買い取り請求権というのが十六条に規定してございますが、これは少してまえみそを言いますと、その宅地制度審議会で私ががんばって入れてもらった規定だと言うと少し強過ぎるかもしれませんが、なくなりそうなときに大いにがんばって入れてもらった規定です。それはどういうことかといいますと、現在使用制限がかかる。ここは道路になるというふうに道路計画が立ちますと、そこへは、たとえば二階建て以上は建てられないとか、地下室をつくってはいけないとかいう使用制限がかかるわけですが、かかったままで五年も十年もほっておかれる例がある。そういう場合に、日本法律のたてまえでは、それを補償する規定はありません。それはおかしいではないか。だから、ここは何か公共の用でいまに使われる、そうしてそれを使用するものについては制限がかかる、こういうことであれば、よそへ行ってちゃんと五階建てビル建てたいから、この土地は買ってください、その金でかわりの土地を買いますということを言わせなければ、そういう使用制限をかけっぱなしで補償がないということでは、もしかすると憲法違反ではないか。そこで、今度のこの仕組みの中に出てきましたのは、実はあまり働かない精神規定のようなものかもしれませんけれども、とにかく施行者が、たとえば大阪の千里山でしたか、大きなところをやるときには、だんだんやってきますから、長年かかるわけです。しかしそれにはワクをかけてやる。そうすると、さっきの譲渡のときの先買い権などがありますし、やっかいだ、そこで、それならいまのうちにそこの土地を買ってくれ、こういうことを申し出たときに適当な値段で買う、こういう手続を取り入れたのが十六条でございます。これもこの法律から、さらにその精神はそのほかの法律にまでも及ぼしていただきたいと思われる規定でございます。  時間があまりありませんので、ただ二、三気のついた点を申し上げますと、大体こういう土地造成するために土地収用する場合には、土地の上のものは買わないたてまえに従来なっております。首都高速道路公団が道路をやるという場合に、そこに大きなビルがあっても、木があっても、それは買わないで、それは移転するというたてまえですが、今度のものには、所有する者が工作物収用を請求できるというのが十七条の二項に出ております。しかし運用上は、ある木を一本移転するのにたいへん金がかかるので、移転するよりも買って切ってしまったほうが安上がりだというようなことがあるわけでして、移転したほうがいいのか、買って処分してしまったほうがいいのか、慎重にバランスをとってやっていただきたい。あまり高価なものを売りつけられて処理に困るというのだったら、むしろ移転してもらったほうがいいですし、移転費用がうんとかかるものだったら、買い取ったほうがいい。それを十分によく話し合いで運用するようにしていただけたらということが、一つの気のついたところなんです。  それから三十一条に、土地処分いたしますと、買った人は「二年以内に、処分計画で定める規模及び用途建築物建築しなければならない。」こういう規定がございます。ところがこれは少しあいまいな規定だと私は思うのですが、しかしあいまいでも、これを何とか適当に動かすように、省令か何かで手当てをされる必要があるのだと思う。というのは、よく県有土地を払い下げたり何かするときに、別荘地なら二年以内に建築しなくちゃいけないという条件がつくわけですが、当分ほっておきまして、二年目くらいになったときに基礎ぐらいを入れる、それでもう建築に着手した、それで条件を満たしたような顔をして、あとはほっておくということが起こるわけです。そういうことのないように——しかし今度の場合は、たいへん大規模住宅地を建設するわけですから、大きなアパート社宅、そういうようなものは建つかもしれません。そういうときに二年以内に完成しろと言われますと、買い取ってから設計して二年以内に完成しにくいものもあるかと思うのです。これは法律によって、着手すればいいというような取り扱い令、あるいは完成しなくちゃいけないというふうに書いてあるものなど、いろいろなようですが、その辺を建築物規模や何か勘案して、適当に運用される必要があろう、こういうふうに思います。  それから、もう一つ技術的なことを申し上げますと、次の条文に、買った土地の上にアパート建てるというふうな場合に、そのアパートを非常に高い値段で貸すことはできないように、条件をおそらくつけるのだと思います。それは三十二条の三項に「第一項に規定する承認には、処分計画に定められた処分後の造成宅地等利用の規制の趣旨を達成するため必要な条件を附する」、アパート経営でたいへんもうける、たいへん高い権利金を取るというようなことのないように、おそらく条件がつけられるのでしょうが、そういうふうなアパート社宅などを建てて、そこに人を入れる場合に、一々何か都道府県知事承認を受けなければならない、少しきつく読みますと、そういうふうに三十二条の一項は見えるわけですが、そういう種類の建物については、適当に届け出というふうなこと、承認というふうなことを免除できる手当てがしてあるのだろうと思いますけれども、たとえば三十二条の一号で「政令で定める者」は例外となっておりますから、そういうことでやられるたてまえかとも思いますが、その辺を省令か何かで適当にやられるように希望したいと思います。  もう時間がございませんので、あとはもう一点だけ申しますと、この法律の適用は、第三条で「人口の集中に伴う住宅の需要に応ずるに足りる適当な宅地が著しく不足し、又は著しく不足するおそれがある市街地」こういうふうな規定がございますが、私が思うのに、いま別に工業団地造成するというふうなことが行なわれておりまして、それはどうせ背後地がまだたくさんあいているところに持っていきますから、したがって著しく不足するおそれというふうなものをそういう際は認定しにくいのではないかと思うのです。しかしそういう工業団地造成を一方でするならば、この辺を少し適当に緩和して、それと一緒に住宅地造成する。そしてそれを全部買い取り式で、とにかくりっぱなものにする。そうすると、イギリスなどで言われているニュータウン、働く場所と住所とが結びついたプランができるのではないか、そういうことを考えるわけでございます。  どうも少し時間を超過いたしましたが、私の意見はこれくらいにいたしておきます。
  4. 福永一臣

    福永委員長 どうもありがとうございました。  次は、金沢参考人
  5. 金沢良雄

    金沢参考人 この法案につきまして、一番問題になります点、関心の持たれる点というのは、ただいま有泉先生からお話がございましたように、最終的に個人に譲り渡される土地収用するということが、憲法公共の福祉によると見られるかどうかという点かと思います。この点につきましては、すでにわが国立法としては、御承知のように首都圏市街地開発区域整備法にも、最終的に私企業に売り渡される土地工業団地造成についての収用権を認めた立法がございます。今度の法律案は第二番目に出てきたわけでございますが、この点について、一般的に私はこういうふうに考えております。  たとえ最終的な利用個人利用に供せられる場合であっても、それが国土利用が、ある公共目的のために総合的に計画される必要が非常に強い、そういう計画に基づいて行なわれる土地収用は、たとえ最終的にその土地個人利用に供せられるものであっても、その個人利用に供せられるということは、全面的に単なる私益のためということではなくて、その計画自身の持っている公共性を帯びて、そこに一定公共性が与えられていること、こういうふうに理解していいのではないかと思っております。したがって、そういう観点からこの法案を見ますと、まずまずいろいろの手当てが行なわれていることによって、公共利益による制限であるということが言えるのではないかと思われるわけであります。  その点は、まず第一に、三条で、この新住宅市街地開発を行なう区域が、どういう区域として定められるかということが、かなりしぼられておりますし、これが都市計画として実施せられるということになっておりますのが五条です。それからさらに、問題の処分でございますが、処分の点につきましては、処分計画についてのかなりきめのこまかい規定が二十一条以下にございます。それから今度は、処分した後の問題につきましては、先ほども有泉先生からもお話がございましたように、三十一条、三十二条あたりで、かなり制限が加えられている。つまりこれはその土地公共性からくる制限であろうと思われるのでございまして、こういう裏づけのもとに土地収用せられる。そしてその土地が最終的には個人に売り渡されるという場合であっても、憲法上の問題にはならないというか、違憲にはならないと解していいのではないかと存じます。  以上が最も基本的な問題でございますが、あと若干この法案に関連する問題について申し述べたいと思います。  その第一点は、これは主としてこの法律運用に関する問題でございますが、この市街地開発事業は、都市計画として決定され、実施せられるのでございますが、この点について、地元市町村協力というものが非常に必要であるということでございます。この点は、地元市町村考え方と国あるいは広域的な経済圏考え方というものがうまく一致すればよろしゅうございますけれども、そうでない場合には、問題が生ずるだろうと思われます。この点についての考慮が十分払われることが必要であろうと思われます。特に、この法案三条の四号でございますが、この区域指定につきましては、その当該区域建築基準法住居地域あるいは商業地域内にあって、その大部分が住居専用地区内であるということが条件一つになっております。ところが、この用途地域指定ということは、建築基準法四十八条二項によりまして、関係市町村の申し出を待って行なわれる、こういうことになっております。つまり、市町村側地帯制限のイニシアチブがある、こういうことになるわけで、この点が実際問題として運用よろしきを得なければならない。地元市町村協力が必要であるということの一つの大きなポイントであろうかと思われます。  次に、処分の点でございますが、二十三条処分計画につきまして、処分がいかにうまく行なわれるかということは、非常に重要な問題でございますとともに、先ほど申しましたようなこの事業公共性を末端まで浸透していくということのためには、この処分がまさに適正に行なわれなければならない。この点について、この法案かなりの用意周到な規定を置いておるわけでございますが、この点で一つ気になります点は、二十三条に、処分計画においては、これは「少なくとも次の各号に掲げる要件を備えた者を公募し、それらの者のうちから公正な方法で選考して譲受人を決定するように定めなければならない。」ということが書かれているのでございますが、はたして何が公正な方法であるのかということは、非常に抽象的であって、法律上わからない。この点について、御承知のように、いろいろの問題が、実際すでに持ち家政策でなしに、賃貸住宅政策についてもあるわけでございますから、できれば法律上具体的にその規定を置く必要があるのではないか。この公正な方法についての具体的な方法について、法律事項として明記しておくことが望ましいような気がするわけでございます。  それから次に、その処分に関連して第二の問題は、しかし、そういうような基準を幾ら定めておっても、具体的な処分の場合に、それがはたして公正に行なわれているかどうかということが、局外者にはわからないということではちょっと困るのでありまして、この点について、そういう具体的な処分がはたして公正に行なわれているかどうかについての、何らかの監視組織とか監視するべき仕組みというようなものが必要ではないかということでございます。  こまかい問題は以上の点にとどめまして、次に、この法案全体についての感想を一、二申し上げておきたいと思います。  その第一点は、この法案一つの新しいねらいは、いわゆる宅地分譲ということにあろうと思われます。これが住宅政策の一環として行なわれてくる、それを強力に推進するための役割りを負っておるというのが、この法案のねらいの一つであろうと思われます。ところが、住宅政策につきましては、これはできれば低所得者階層のための賃貸住宅政策の強力な推進がむしろ望ましいのでありまして、この点につきましては、聞くところによりますと、たとえば現在の公営住宅については、実際住宅の当たる人の三十倍から百倍の申し込みがあるということを聞いておりますが、現在なおかつそういう状態に賃貸住宅政策の面があるということを忘れてはならないと思います。ことに、この法案では、たとえば二十三条処分計画基準のところで、資格要件として譲渡の対価の支払い能力がある者であるということが規定されておりますが、命がなければ土地は買えない。土地も買えないような人が非常に多いのであるという認識が裏になければならない。もちろんこの支払い方法は分割払いというような方法が用いられるかもしれませんが、それにしても、現在金のない者に対しては、やはり賃貸住宅政策の方が好ましいということが言えるのでありまして、もしこの譲渡価格が非常に高いものについてくるというようなことになりますと、これはまさにこの法案のねらいとするところは、相当の所得階層には非常に有利な法案になるかもしれないけれども、一般の庶民階級にはちょっと指をくわえてながめているような法案にならないとも限らないということが注目されてよいと思います。その意味におきまして、もちろん政府住宅政策は、いろいろときめのこまかい対策が講ぜられなければならないということは言うまでもございませんが、この際特に賃貸住宅政策の強力な推進が、これとうらはらにはかられるということが必要だと存じます。  それから次には、この法案は、一つには宅地を大量に供給することによって、地価対策としようという面がかなりあるように思われますが、地価対策につきましては、この法案だけでなしに、もっとほかの方法がいろいろと根本的に考えられなければならないということであります。  それから最後に、これはこの法案に直接関係することではございませんが、およそ国土利用計画につきましては、総合性が確保される必要があるということについて、一言触れておきたいと思います。この点につきましては、現在各省国土利用に関連する行政というものが、いわゆる縦割り行政の域を脱していないといえるように思われます。建設省は宅地政策、通産省は工業立地政策、農林省は農地、厚生省は自然公園あるいは国立公園、文部省は文化財といったようなわけでございますが、こういったようなものを総合的に、どういうふうに国土利用計画をやったならばよいかということを総合的に判断していく必要が、今日のわが国では非常に強くなっているように思われます。この点について、この法律農地等との関係について、たとえば四十四条では農林大臣に協議するとか、あるいは鉄道等輸送施設について、運輸大臣意見を聞かなければならないといういうような、調整方法手段が講じられておりまして、これはまさに一歩前進であると思われますが、さらにそういう個別的な各省間の折衝ということでなしに、総合的な国土利用計画総合性を確保するための、総合調整仕組みが考えられなければならない。そういうものが一つ上にあって、そして初めてこういう法律が、公共性というものについての一般的な社会的認識を強めるゆえんになるのではないか、こういうふうに存じます。  以上で終わります。
  6. 福永一臣

  7. 田上穰治

    田上参考人 私は、この法案につきまして、すでに有泉教授金沢教授お話があったところでありますが、もう一度憲法関係につきまして簡単に意見を申し上げたいと思います。  憲法では、御承知のように二十九条にこの関係規定がございますが、ただ二十九条では、第二項のほうで、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」という条文がございます。そして第三項のほうで、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。」このように分かれているのでございます。ところで、第二項のほうは、普通の解釈、説明によりますと補償のことが書いてない。両方とも公共のためとか、あるいは公共の福祉ということ、これはほぼ共通でございますが、第二項には補償がない。第三項のほうには「正当な補償の下に」ということが出ております。そこで、第二項のほうは財産権の内容に関します一般的な制限法律できめるのであって、これを人民の負担と考えますと、一般負担に関するものであり、これに対して第三項のほうは、特別負担、特別なものであって、一般の国民あるいは財産所有者などにつきましては制限がかからない、だから、負担の公平ということから補償が必要になってくる、このように普通は考えるのでございます。  ところで、今回の新住宅市街地開発法案に関しまして簡単に申し上げますと、この中には、まず事業に関しまして、法案の第三条で、都市計画として市街地の開発が決定されますと、そこに、先ほども御指摘がありましたように、先買いの制度でありますとか、そのほかその区域内の土地所有者に対しまして、一種の公用負担というものが認められることになりますが、これは確かに財産権制限であり、したがって、これは特別なものであり、しかも重大なものであって、一般の社会生活で当然に忍ぶべき程度ではなくて、これを越えておるというふうに考えますと、何らかの形で補償の必要が出てくるように思われるのでございます。ただ、先ほども御指摘がありましたが、従来は、たとえば建築基準法で——今回の法案にもございますが、住居専用地区あるいはその他工業地域とか住居地域とか、そのほか都市計画法にもたしかございますが、そういった地域とか地区というものを指定して、その区域内の建築ないしは土地利用についての一定制限、つまり所有権制限的なものを加える、こういうことにつきましては、従来は格別な補償を考えていなかったのでございます。これは多少問題があるわけでありまして、憲法第二十九条第二項で考えますと補償は要らないはずでありますが、しかし、第三項のほうで考えますと、ある程度の補償が必要ではないかというふうに思われるのでございます。私はこの点で従来の制度憲法違反であるとは思いませんけれども、その土地に関する権利の制限の程度によりまして、特にそれが地主などに対して相当大きな負担というか損失を伴う場合でありますと、何らかこの点で特別な立法上の配慮が適当であるというふうに思うのでございますが、今回の法案については、先ほども御指摘のありましたように、そういった点につきましてもある程度の考慮が払われている。たとえば法案の十六条の買い取り請求のような形もこの一つだろうと思うのでございますが、私はこういう制度がなければ違憲であるというふうには思いません。しかし、立法としては、このような考慮が払われるということになりますと、単純に第二項の問題ということではなくて、そこに一種の補償という考え方が若干入ってくるということにおきまして、こういう考え方は、従来からあります他の法律、地域、地区による財産権制限規定したものについても、これを広げていくことが将来は望ましいというふうに考えております。  ところで、中心になるのは、この法案におきましては土地収用でありまして、この収用財産権に対する最も重大な侵害でございますから、正当な補償がなければなりませんし、また、憲法二十九条第三項によりまして、むろん公共の用に供するということが明確にされなければならないと思うのでございます。この点は、先ほど金沢教授も御指摘になり、有泉教授もちょっとお触れになりましたけれども、首都圏の工業用の団地造成につきまして、昨年の国会でこの法律が可決されたのでございますが、工業用団地の場合でありますと、そういう土地造成いたしましても、はたしてそこに工場が誘致されるか、あるいは工場が建設されるかどうか、この点で住宅ほどの確実性には欠けるように思いますし、この点が、従来から工業用の団地のための造成ということにつきまして、土地収用憲法上無理があるというふうにいわれていたのでございます。しかし、この問題も、工業用の団地につきましても、すでに国会で御審議がありましたように、国の立てる総合的な計画性ということから、そこに、先ほど金沢教授が言われましたように、公共性が考えられると私も思うのでございますが、今回の法案は、工場の誘致というようなことでなくて、住宅の問題でございまして、このほうは住宅用のつまり宅地造成されれば、それも場所によりますけれども、大都市の周辺の地域のようなところでございますと、まず確実にわれわれの常識ではいわば申し込み希望者が殺到する、公募によりまして当然すみやかに譲り受け人というものが出てまいりまして、これがその土地を買い受けまして、うちをつくるということが予想されるのでございます。そういう意味におきまして、私は、前の法律に比べますと、一そう今回の法案公共性を持つということが明白であり、憲法上の疑義もないと考えております。ただ、この場合、もうすでにおわかりのことと思いますので、簡単に申し上げますと、土地収用ということになりますと、そのための公共事業というものがある程度特定していなければならない。また、公共性かなり明白でなければならない。この点では、御承知のように今日の住宅事情がきわめて逼迫しておる。ことに都会に人口が集中いたしまして、首都圏、京阪神地域は特に極端でございますが、その他の都市の周辺におきましても、ある程度そういう状況が見受けられます。そして、これに便乗してというか、投機的な売買、そして農地宅地化という、そういうことに目をつけまして、無計画宅地造成がこれまでに行なわれている。これはきわめて差し迫った事情でございますから、このような、国の政治においても大きな問題を解決するということになりますと、これは単純にうちをつくるための敷地というふうなことはなくて、政治の上できわめて顕著な公共性があり、同時に、地域的にもおのずから特定するのでございまして、単純に一般の住民に対する、また、収用に至るほどの軽微な必要というのではなくて、きわめて重大な公益性があり、そしてその地域におきましても、おのずからそれがきまってくるわけでございまして、住宅事情の逼迫しているところではきわめて明瞭でございます。そして同時に、これが公益性を持つかどうか、公共のものであるかどうかは、これも先ほど御指摘がありましたが、結局宅地造成いたしましても、それを譲り受けてうちをつくるのは一般の市民、人民でございますから、それは個人的な用に供せられる。そういう意味において公共といえるかどうかという点でございますが、これは先ほどもお話がありましたように、都市計画として決定される。そしてそこには都市計画事業として造成が行なわれるわけでございまして、また、譲り受けたものにつきましては、建設義務その他、あるいは転売が制限されるとか、そういう点につきまして罰則があり、あるいは買戻権の特約が法律によって直接要求されるというふうなことを考えますと、これは単純に、宅地造成することだけが政府あるいは地方公共団体などの責任というのではなくて、造成されたものが総合的な計画に従って、公共のため、住宅政策のために確実にこれが用いられるということまで、法律では保障しているわけでございますから、その意味で、単純な私的な利益のためではなくて、公共のために用いるという憲法の条項に該当すると思うのでございます。もっとも、この点で、そういった公共のためでありましても、今度は、従来の財産権の主体について不当な行き過ぎた侵害、不当な負担をかけることになりますと、比例原則というか、バランスがとれない。必要の程度を越えて私有財産を侵すということになるわけでございますが、しかし、これは先ほどからお話をしておりますように、財産権については、憲法の保障は比較的ゆるやかというか、弱いのでございます。公共の福祉ということがいろいろな意味に使われますが、政治生活、政治活動に加えられる制限であるとか、あるいは一般の社会生活における、あるいは個人の内面的な精神的な活動、そういうものにつきましては、公共の福祉による制限はきわめて例外の場合と考えられるのでございます。ところが、同じ憲法の字句でございましても、二十二条とか二十九条の公共の福祉ないしは公共のための制限、これは特に広く弾力性を持って、幅の広い概念として解釈されるのでございます。このことは、日本だけでなくて、二十世紀の憲法として常識でございますが、単純な資本主義的あるいは自由主義、個人主義的な憲法論ではなくて、今日の憲法は資本主義を修正する段階に入っており、そのことが条文の上にもかなり明瞭に示されているのでございまして、二十五条の生存権を初めとして、労働者の団結権の二十八条の規定とか、そういったものと関連して考えますと、二十九条の「公共の福祉」は相当幅の広いものと見られるのでございます。そういう点で、従来も、土地所有者などにつきましては、確かに不利な面もございますが、しかし、先ほどから御指摘のように、二十三条その他においても、従来の所有者などの立場を相当考慮しておりますし、この程度になっておれば、一方で、明白な強い、緊急な公共の必要があるということを考えますと、この土地収用法案で認めておりますことは、憲法の二十九条の趣旨に合致する、このように考えております。  簡単に、以上のとおりで私の意見を終わります。
  8. 福永一臣

    福永委員長 次に、宮下参考人
  9. 宮下正一郎

    ○宮下参考人 私は法律の方は門外漢でございまして、三人の先生方からこの方面は詳しくお話がございましたし、この法案に対して根本的には御賛成の御意見もございますので、憲法解釈あるいは法律論的な解釈は省きまして、ただ一言つけ加えてみたいのは、憲法解釈といたしましては、ただいま田上先生からお話ございましたように、憲法二十九条が基本になると存じますが、しかし、国民経済あるいは国民生活というような重要な問題、さらにより高度のそういう問題から考えます場合、ただいまであれば、国民生活の基本としての住宅問題ということになりますと、第二十九条のその前に、憲法二十五条の生存権、それから国の保障という問題がさらに先行するのではないかというように考えておる次第でございます。それらの問題は省きまして、たいへん時代に即応した法案ができようとしておりますので、それでは、こういう住宅問題の非常に困難しておるときに、それがはたしてうまくいくかどうかということがより重要と存じますので、その方面のことを少し話してみたいと存じます。  第一に、住宅政策をやります場合の、住宅地開発を実施するについての基本的の問題は何かと申しますと、第一に、都市生活者の住宅建設でございますから、職場への交通時間、距離に制約されて、一定の空間、距離半径内で土地が確保されなければならないということ、第二は、国民所得の階級性というものは現実の問題でございますから、住宅地価格は、住宅難で困っている国民の所得に見合った価格で取得されなくてはならないということは、これはもう根本的な問題と存じます。ところが、現実の土地価格というものは、第一に都心の商業地のような最も高い価格を頂点といたしまして、ピラミット型に、遠くなるに従って安くなるという形で形成されておるのでございます。したがって、その中に工場だとか住宅だとかいう方面に利用されている土地があるといっても、その場所は安くないのでございます。  次に、住宅地価格はどういうふうにして形成されるかと申しますと、供給者競争というものはないのでありまして、所得階級無差別の需要者競争によって形成されるのでございまして、金のある者だけが買い得る価格になり、金のない者は、しかたがないから、環境が悪いとか、はなはだしく狭いとか、職場への時間、距離が遠いというようなことで地価の安い土地、あるいは家賃の非常に安い場所を求めて住むよりしかたがないというのが現状でございます。このようにいたしまして、職場への距離がはなはだしく遠くなく、そして地価が所得に見合った住宅地を確保するのにはどうすればいいかということが、法律上の収用権の問題の次にくる重要な問題でないかと存じます。  そこで、この法案の内容をずっと検討してお話し申し上げてみたいのでございますが、すでにそれぞれお話がございましたので、その中で、実は私も宅地制度審議会の専門委員で、意見を述べたことがございましたが、先ほど金沢先生から御指摘がございましたように、いわゆる低所得者に対する住宅問題がこの住宅地開発に織り込まれておるかどうかということを、非常に疑問に思っておったのでございますが、この法案の第二十三条に「処分計画においては、造成宅地等は、政令で特別の定めをするものを除き、」とございますので、それは何を除くのかというので、逐条審議のこれを拝見いたしますと、公営住宅、それから公団住宅は、これは別にやるというふうになっておりますので、そういたしますと、いま申しました公営住宅法によるいわゆる低所得者階層住宅建設地も、この法律で確保しようとする意図があることがうかがわれたわけで、その点非常に賛成をいたす次第でございます。  それに関連いたしまして、第二十四条を拝見いたしますと、いわゆる処分は、原価主義一木でもなく、時価主義一本でもなく、両方を織りまぜていくようになって、「常利を目的とする業務の用に供されるものについては、類地等の時価を基準とし、」とありますし、一般の自己資金で住宅建てられるものに対しては原価で、さらに、いまの公営住宅などに利用される土地は特別にというのでありますから、これはまあ特に安くという意味が含まれておるのじゃないかと思うのでありますが、そういたしますと、全体として見まして、利益を見ない独立採算制による政策的な分譲とでも申しますか、原価主義あるいは時価主義でない、しかも利益は見ないのでありますから、そういう配慮がなされておるように見えますので、このいわゆる低所得者の、ほんとうに住宅に困っておる者に対しては、この法案土地を提供して、賃貸住宅建てる。すなわち、公営住宅法に基づく住宅建設という配慮をお願いしたいのでございます。  そこで、私一番の問題と考えますのは、この法案の目的が、効果のある宅地供給ができるためには、地価対策が何としても重要じゃないかと考えるのでございます。何と申しますか、なかなかこの問題がうまくいきませんのは、土地という経済財の本質に対する一般の認識が非常に不足しておるのじゃないか。そのために、適切な地価対策もできず、あるいはこういう法律をつくる場合も、いろいろの議論が沸騰するということになるのじゃないかと思うのでございます。この席で何か土地経済論の講義でもするようなことを口ばしってはたいへん恐縮でございますが、第一に、土地は生産されるものでないということ。ということは、土地は本質的に商品でないということであります。このことが土地問題一切の基本になるのでございまして、その反面が、土地は生産するもの、いわゆる生産要素だということでございまして、土地の価格理論、評価理論はこの根本的な土地の本質から出発するのでございます。  次に、土地はすべて個別的だということ。これも非常に重要な問題でございまして、それを分析いたしますと、物理的には、これは地球表面上の一区切りだということでございます。さらに、経済的には、生産要素あるいは消費生活要素でございますから、利用主体によって価値、値打ちというものが一々違うのだということ、これも個別性であります。法律的には、土地は自然的あるいは経済的にそのように個別性を本質とするから、それが利用主体に結びつく、つまり私的支配の客体になるときは個別性を明瞭にしなければ争いが起こるので、物権規定というものが発達したのだと存ずるのでございます。さらに、それを外部に対して明示するための方法が、御承知の不動産登記法でございます。したがって、土地の価格は一物一価の法則あるいは需要供給均衡の法則、これは価格物価論全体に対してのそういうような作用がなしに形成されるものであるということになるのでございます。  地価対策は、国の価格政策の一つでございますが、価格政策は対象財、それの対象になる経済財の種類によって異なるのでありまして、米は米、土地土地、家は家というように種類によって異なるのでありまして、地価対策はこのような土地の本質を理解して立てなくてはならないのでございます。したがって、そうでありまするから、世界共通の問題といたしまして、不動産鑑定評価制度が発達しておることは御承知のとおりでございます。ドイツのごときは百年も前から、イギリスやアメリカでは大学に講座が設けられておる、こういう実情でございますが、日本だけは全く幼稚です。それらしいものはいままではなかったのが、本日の新聞を拝見しますと、ようやく今後不動産鑑定評価制度だけは閣議決定を見て上程されるようになるというように拝見しておるのであります。そして、価格問題としてさらにつけ加えたいのは、いわゆる不動産の流通機構としての不動産業界の問題でございます。これが実に放任の状態にございまして、そのためにいろいろの悪弊が起きておることは御承知のとおりと思います。これに対しても、宅地建物取引業法の改正案が出るということでございますが、その案を拝見いたしましても、まだまだそれでは十分でないのではないかと考えるのでございます。それはなぜかと申しますと、いわゆる土地の本質というものを十分に織り込んでおらぬということでございます。  さて、ところが、経済成長には宅地需要の増大というものが、これはもうわかり切った問題であったはずでございますしところが、それに対して手を打たなかったために、土地問題は現に見るように非常に困難な状態に追い込まれて、しかたがないから何とかやれというのが現状でございますが、このように世界でも類例を見ない地価高をどうして安定させるかということは非常に大きな難問題と存じます。それをやらないでいまの住宅政策をやりましても、はたしてうまくいくかどうかという疑問を持つのでございます。生産されるものでない土地の価格というものは、一度高くなると下げることはなかなか困難であります。私どもは、すでに経験いたしておりますように、初めての農村などへ参りまして、工場も住宅もないときに土地を買うときは非常に買いやすいのでございますが、少し家が建ちかける、工場ができかけるというふうになりますと、もっと高くなるだろうといって売り控えするのが現状でございます。さらに、政府が何らか計画を発表いたしますと、それ、いまによくなるから、いまのうちに買っておけというのが現状でございまして、いまの富士のすそ野のブームをごらんになってもわかる次第でございます。  そこで、不動産鑑定評価制度を確立するにあたりましては、単なる鑑定人制度をつくるだけでなく、地価の公示制度もやらなければいかぬということで、答申はされておったのでありますが、それが固定資産税関係や大蔵省の金の問題などで削除されたというふうに、新聞報道で拝見しておるのでございまして、一体政府は地価安定に対して真剣に考えておるのかどうかといわれておる状態でございます。それだけで決して地価安定ができるものではなかったのでありますが、一つの手がかりとして地価の公示制度というものを考えられたのでございますが、それももぎ取られたということは、返す返すも残念なことと存ずるのでございます。  さらに、地価安定対策住宅地開発計画を実施する上での最大の問題でございますから、あるいは税金対策そのほかいろいろな土地利用区分というようなことによって、それに突っかい棒をしていくということをしなければならぬのでございますが、いまの公示制度一つでき上がらぬようでは、とてもそれらはめんどいんじゃないかというふうに、実は考えておる次第でございます。  さらに、租税問題に対して、固定資産税あるいは土地増価税、空閑地税というようなことがいわれております。私も、それについて述べる時間がございませんが、何としても根本的な問題といたしまして、国税であった地租を固定資産税として地方税に移譲したということは、土地政策に対してばかりでなく、一切に対して大きな失敗じゃないかというふうに考えますので、そのことを指摘いたしまして、私の話を終わりたいと思います。
  10. 福永一臣

    福永委員長 以上で参考人の方々の御意見開陳は終わりました。  委員より質疑の通告がありますので、順次これを許します。石川次夫君。
  11. 石川次夫

    ○石川(次)委員 きょうは、参考人の皆さん、たいへんお忙しいところをおいでいただきまして、貴重な御意見を拝聴しまして感謝しております。  質問したいことは非常にたくさんあるのでございますけれども、まず田上先生にお伺いしますが、実は首都圏の中で東京都の過度集中を排除するという意味でこれを分散させるという目的を持った法律が出まして、首都圏の中に工場団地をつくるための収用権を用いるということが適法かどうかという点で、一度おいでいただきまして御意見を伺ったことがあるわけでございます。そのときの話と今度の新住宅地という問題をあわせ考えますときに、私たちは、どうしても土地というものは公共性を持たなければならぬ、特に住宅地あるいは住宅というものは、社会的資産だというふうに考えるべきだということから言いますと、この前の場合よりも今度の場合のほうが、憲法上疑義は少ないのではないかというふうに考えております。したがって、その点では多くの疑問を持っておりませんけれども、しかし重大な、いままでにない先買い権その他によるところの譲渡制限というふうなことで、私権の制限が加えられておるということは見のがせないと思う。それに対しまして田上先生は、ある程度の考慮は払われておる、たとえば第十六条というものが設けられて、それが緩和されておるというふうなことを背景として、憲法上は特に疑義が薄くなっておるというような結論の御意見があったと思うのでございますけれども、この私権の制限は、いままでにない画期的な制限だというふうにも考えられるわけでありまして、この十六条その他の、この法案に盛られた関係だけで、憲法上いわれている補償というものが十分かどうかという点については、私も多少の疑義、がないわけではないのであります。それで、たとえば租税の特例というふうなものを適用することになっておりますけれども、これは別にこの法案でなくても、このような譲渡制限あるいはその他のきつい制限がなくても、適用されているところの特例であったわけでございます。この法案では、それに一歩進んで、十六条程度のものじゃなくて、相当以上に、租税その他によって、私権を制限されている人たちに対して、特例を設けることが——憲法上疑義があるということを別にいたしまして、必要ではなかろうか。具体的にどうかということは、まだ成案を得ておりませんけれども、それだけでは不十分ではなかろうか。もちろん私は、この法案それ自体は賛成でございまして、社会党としても、こういうことをやるべきだという意見を積極的に出しておったという関係がありますから、むしろもっと強い形で出すという反面、そういう譲渡制限、私権制限に対するところの優遇措置といいますか、そういうものが必要ではなかろうかと考えるのでありますれども、この点についての御意見を伺いたいと思います。
  12. 田上穰治

    田上参考人 先ほど私の申し上げましたのが、ことばが足りなかったのは恐縮でございます。  私の考えは、憲法二十九条の第三項で私有財産公共のために用いることができるという、あの私有財産というのは、直接にこのような宅地造成事業を始める前、従来の地主あるいはその他土地に関する権利者の立場を考えたのでございまして、ただいま御指摘になりましたところは、むしろ宅地造成した結果、その造成された土地について新たに権利を取得した場合、その権利が完全な所有権その他のものではなくて一種の負担がついておる、そのことが何か私有財産を侵すものであり、何らかそういう点について代償のようなものを考える必要はないかという御質問のようにお伺いするのでございますが、私は、特に憲法上の問題になりますのは、造成された宅地につきまして新たに権利を取得する者の——もちろんこれも必要以上にその権利を制限することは、やはり人民の一種の既得権に対する侵害ということになりまして、憲法上の問題になるかと思いますけれども、しかしこれは、当初から宅地造成事業の趣旨というか、そういう公益の目的のために行なわれ、それに基づいて与えられた権利でございますから、その宅地造成のための公益的な目的によって制限を受けることは当然ではないかと私は考えているものでございます。もちろんそれが、そういった制限を受けない場合と、それから制限された場合とによりまして、たとえば土地の価格などにも影響があるとは思いますけれども、しかし、この法律あるいはこういった制度のたてまえから見まして、そういう制限は当然であって、その点で特に補償とかその他その土地を取得いたしました譲り受け人と申しますか、それについての特別な補償あるいはそれにかわるべき措置を考えることは憲法上は必要がない、このように思っております。  ただ、従来、こういう公益的な事業を実施いたしまする前に、完全な権利を持っておった者、財産権が、こういう公益のためであるといっても新たに制限を受けるという場合になりますると、そこに憲法上は二十九条の補償の問題が起きる、このように考えているものでございます。もう一度申し上げますると、この宅地造成事業を行ないまする以前に財産権を持っておった者と、それから事業の結果として造成された宅地を譲り受けた者の権利の保障というのは、一応区別すべきものではないかと考えております。
  13. 石川次夫

    ○石川委員 ちょっと私の質問もはっきりしなかった点はおわびしますが、もともと土地を所有していた人に対する制限は相当きびしいので——憲法としての問題じゃございませんから、田上先生に御質問するのは的はずれだったかもしれません。ちょっと問題を変えますけれども、この前参考人としておいでをいただいたときに、現在の憲法の原案になっておりました、マッカーサーから出ておりました原案では、何か土地だけは公共性を持っているんだというような意味の原案であった、それが最終的には削られて現在のような憲法になった、そういういきさつを聞きましたが、その原案というものがこの前はっきりしておりません。それがおわかりになっておればお聞かせを願いたいのと、それがどういういきさつで削られたかという点がおわかりでしたら、ひとつお知らせいただきたい。
  14. 田上穰治

    田上参考人 ただいまこまかいことはちょっと記憶ございませんが、マッカーサー案では、土地のみならずその他の天然資源については国有とするという独立的な条文がたしか入っていたと思います。これは西ドイツのボン憲法にも入っておりまするし、その他フィリピンの憲法とか、ほかにも例があることでございます。ところが、その条文が、つまり現在の二十九条にあたる規定のほかにもう一つその前のあたりであったと思いますが、別の条文があったのが削られたのでございます。その削られたいきさつは、実は二十一年の三月四日に総司令部に出しました日本側の案は、当初からそれを入れてなかった。これは何か幣原内閣の関係軒は、純粋の共産主義の規定であるように考えまして、あまり好ましくないというふうなつもりで削ったということを聞いております。しかし、削ったことにつきましては、総司令部で非常に強くしかられるのではないかという、内心は心配をしながら行ったそうでありますが、結局三月四日の夜の折衝では、先方は何も言わなかった。なぜ日本の案にこれが落ちているかということについての説明は求められなかったそうでありまして、これは問答も何もなくてそのままになってしまったということを聞いております。でありまするから、裏面の事情はよく存じませんが、結果的に申しますと、総司令部が特別に深い強い意味で要求をしたのではなくて、アメリカの系列というか、ほかの国の憲法にもそういうものがあるので入れてあったのではないかというふうに考えております。
  15. 石川次夫

    ○石川委員 有泉先生と宮下先生、ともに宅地審議会のほうに参画されておられたと思うのですが、そこでこの法案の答申をされる場合に、いろいろな関係法案をあわせて地価抑制の一翼にしたいということで考えられた。ところで、この案だけが出たということについては、地価抑制としては、これだけでは非常に弱い、われわれとしてはこう思うのでございますけれども、それは別問題といたしまして、この法案自体が目標としておる重点は一体どこにあるかということは、地価抑制ということが目標でこの法案が出されたものか、あるいはまた、宅地を確保するためにということでこれは考えられたものか、目的としての重点がどこにあったかということを一応お教え願いたいと思います。宮下さんにお願いします。
  16. 宮下正一郎

    ○宮下参考人 有泉先生の方がよく御存じなのでございますが、実は審議会では、この法案全部に対しては御相談を受けたわけじゃないのでございまして、収用権の付与と先買い権の問題、先買い権に伴って買い取り請求権という、この二つに対しての御相談を受けましたので、内容の全部に対しては何とも申し上げられないのでございますが、大体の説明といたしましては、自力建設のできる住宅を持っておらない国民を対象として大量の住宅地を開発して供給するということであったように存じます。先ほどちょっと申しましたように、それに対してはいろいろの意見も出まして、賃貸住宅をたくさん確保しなければいかぬとか、あるいは低所得者の公営住宅も盛り込まなければいかぬというようなことが出たのでございますが、大体の説明はそんなふうです。しかし、この法案の全部は示されておりませんので、どういう意図のもとにということは申し上げかねるのでございます。
  17. 石川次夫

    ○石川委員 その点はそれくらいにいたします。しかし、この法案は、住宅地の確保ということに一応の重点があると理解してよろしいと思いますけれども、やはり地価を何とか押えていこうという大きな目標の一環としてこれが設けられたものだということも否定できない。その点について、ここで質問する時間の余裕はございませんけれども、結論的に申しまして、地価の問題は、御承知のように住宅地だけの問題ではございません、物価全体にわたる問題でもあるし、公共事業あるいは地域開発の一つのガンになっておるということも大きな問題になって、現在では、新聞などでも、地価抑制ということは国際問題に次いで一番多く紙面をさいておるのではないかと思われるのでございますけれども、その中で土地行政というものを一元化しなければならぬ——これは金沢教授からもお話があったのでございますけれども、いまの宅地審議会なども、建設省に所属をしておるが、建設省の範囲内で住宅地のみを対象として考えるべき性質の問題ではないのではなかろうか、地価の問題とあわせて土地行政という問題を一元化するという必要がどうしても出てくるのじゃないかということについての御意見ですが、それは具体的の機構としてどういうふうに考えたらいいかという点について金沢先生の御意見を伺いたい。実は金沢先生には河川法の関係でまた御足労を願わなければならぬのじゃないかと思って大いに期待をしておるのでありますが、住宅地のはからざる別の問題で御意見を伺ってまことに恐縮でございます。
  18. 金沢良雄

    金沢参考人 ただいまの点でございますが、その必要性については私も十分に考えておりますが、具体的な構造、構図ということになりますと、いままでのいろいろの伝統その他があってなかなかむずかしいようにも思われます。ただ、忌憚のない考え方を申しますと、つまり土地利用に関する行政というのは非常にたくさんございます。ですから、これを一木の、たとえば国土省というようなものにまとめてやっていくということも一つ考え方ではございますけれども、それではあまりにも機構が膨大になるというようなことから、行政の実際面としては問題が出てくるのではないかと思います。そこでいわば次善的に考えられる総合調整方法としては、たとえば現在の経済企画庁あたりの総合開発局を国土局的なものに発展させていく、そして現在取り扱っております総合開発局の各開発関係法の運営のほかにといいますか、そういうようなもののほかに、国土利用に関する各省行政調整する機能を持たせていくというような考え方が、一つの次善の考え方になるのではないかというふうに思われるのであります。なお、その場合に、国土利用ということになりますと、非常に関連の分野が深うございますので、できればそこに学識経験者その他民間の声を聞くような仕組み、たとえば現在の国土総合開発審議会というようなものではなしに、もっとじみちな審議会、国土利用審議会というようなものを付置して、総合的な運営に資するというようなことが、一つの構想として浮かぶのでございます。
  19. 石川次夫

    ○石川委員 他に質問される方があるので、私も質問したいことはたくさんあるのですけれども、二、三の点にしぼりたいと存じます。  住宅の問題で、若干この機会に宮下さんの御意見を伺いたいと思いますが、御承知のように、日本の貯蓄率というものは、日本全体としても、個人の貯蓄率にいたしましても、世界一だと言われておりますけれども、それがほとんど住宅等には投資をされておらないようでありまして、高度成長の原因になっております投資が、昭和三十五年で言いますと、日本が三一%、非常に高い生産に対する投資率を持っておるわけでございます。こういうことの中で、住宅関係では総資本の形成の中でわずかに七%。これを西欧に比べますと、西欧では大体二〇%。ところが日本ではわずか七%。それから国民総生産に対しましてはわずかに二・二%ということで、どう考えても、世界の各国に比べて、住宅に対する投資率、投資額というものは少ない。たとえて言いますと、日本でも相当公営住宅はつくっておりますけれども、政府の資金は全住宅建設費用の大体一八%、ふえても二〇%以内ではないか。外国のように六〇%以上というところにはいっておらないわけでございまして、こういう点で、住宅に対する国のかまえといいますか、それが非常に欠けているのではないかというふうな印象を受けるわけでございます。その点につきまして、どうお考えになっておりますか。宮下さんの御意見をひとつ伺いたいと思います。
  20. 宮下正一郎

    ○宮下参考人 ただいまの御質問でございますが、国民経済の高度成長ということは望ましいことであり、大いにやらなければいかぬわけでありますが、それに伴って、そういうふうに国民経済が成長してまいりますと、職場と住まいの分離ということは必然的でございまして、小さい農村漁村ということであれば、これはもう職場も住まいも同じでございますが、高度成長するに従って、職場と住まいの分離というのは、もう避けることのできない現実でございます。したがって、職場の建設、つまり、企業であろうが、あるいは行政であろうが、そのほか一切の職場を建設するという場合には、それの延長として住宅の建設ということを根本約に考えなければいかぬということでございます。今度のこの法案も、単なる住宅難の解決というだけの意図でなされたのではないというふうに私考えるのでございまして、いわゆる満度成長に伴って、それの延長としての住宅を、つまり都市計画、あるいは国土計画、あるいは国民経済政策として考えておやりになられようとしておるというふうに考えておるのでございますが、この認識が十分に参りまして、これからは企業であっても、工場を建てる場合は、住宅を伴わせるという考え方にまで発展しなければいかぬのじゃないか。労働を買うという場合に住まいを提供するというのが、もうつけたりになるまで、世の中は変わっていっておるということでございまして、この認識が十分に参りますと、この住宅建設はもっと進むのじゃないかと存じますが、自民党さんのほうでも、三木さんの御発言といたしまして、何か一千万戸建てるというようなことを御発表になっておられたのを新聞で拝見しておりますが、とにかく、この住宅建設に対しては、もっと積極的にお考えになるという根本が——住宅は職場の延長であるという考え方が、もっと十分に認識されなければいかぬのじゃないかというふうに考えております。
  21. 石川次夫

    ○石川委員 それでは、具体的なこまかい点で宮下さんに二点だけ伺いたいと思います。というのは、市町村長の協力を得なければならぬということになりますが、東京都あたりの対策といたしまして、たとえば一時間以内と申しましても、他県にまたがることが多いと思うのです。他県で都市計画の審議会を設けまして、他県のほうで東京都に通う人の土地をこれだけ設定をしようというふうに自発的にやるということは、東京都知事ならば身近な問題として痛切に感ずるでございましょうけれども、他県にまたがりますと、都市計画審議会も県ごとに別にできておりますから、積極的にそういう意欲が出てこないということになりまして、この法案をせっかくつくりましても、東京都では非常に困っておる。しかし他県では、それほど広い住宅地について積極的でないということになりますと、この法案が実際には具体化され、生かされてこないといううらみがあるのではなかろうかという点が一つ。  それから、あと一つは、こまかい点でありますが、十年間は転売する等の行為は、都道府県知事承認を得なければならない。十年をはずれれば転売してもいいことになりますと、実際の都市計画を見ますと、十年間で完全に整備が終わることは少ないのではないか。そうすると、十年たったからということで、十年間でどんどん転売してしまうということになりますと、この法案もそういう点で画竜点睛を欠いてしまうのではないかといううらみがあるように思うわけでございます。この二点について承りたいと思います。
  22. 宮下正一郎

    ○宮下参考人 最初の問題でございますが、これはすでにいままで、ただ住宅だけ建てられて、職場は東京で、子供を連れてきて、学校だけ必要であるが、収入はさっぱりこの近県に入ってこないというようなことで、ずいぶん反対があったわけでございまして、これが一つの難関になっておったと存じます。この法案の地区の指定の場合に、この問題は非常に重要でないかと存じますが、これは非常に大きな問題としてお考えにならぬと、なかなか小手先ではいかぬと存じます。ということは、いわゆる広域圏経済というような立場からいきまして、行政区域をどうするというようなことまで参りませんと、どうもこの法案だけで単純に片づけるということはめんどいと思うのであります。しかし、そういう問題があって、しかも、いままでの衛星都市の建設というようなことでございますと、何としても、その地域に指定されたということでプラスが多いのでございますが、今度の新住宅市街地開発法案はいろいろな規制措置がとられておりますので、必ずしもその指定された地域の地主に有利になるとは限りませんので、抵抗が相当あるのじゃないかということを十分に考えて、いろいろ行政上の措置が必要じゃないかと考えるのでございます。  それから、あとの問題でございますが、これは何条でございましたか、十年間は他へ売ってはいかぬということでございますが、これは十年ではちょっと短いのじゃないか、そういう規定を設けるということの必要性は、先ほど先生方からお話がございましたように、例の農地法がしり抜けだといわれるのはそれがないからでございます。今度のこの法案はそういう点の配慮がありますので、いわゆるしり抜けにはなっておりませんが、十年ぐらいの年月というのはすぐたってしまうのであります。最初御計画になっても三年くらいかかるだろうということでございますし、しかもそれは、小さい面積でなく百万坪くらいを単位にしてというのでございますから、十年くらいすぐたってしまう。そうすると、十年たちますと、どんなに地価対策を講じておきましても、買ったときの土地価格よりも必ず高くなる。そうすると、十年たって解除されて売るということになりますと、最初売った者は安く売ったことになるので、早く承知した者はばかをみるということになりかねない。あと十年ほどで住宅政策全部が片づけばけっこうでございますが、まだ中途はんぱになって、それからの住宅地を確保しなければならないということになりますと、現在もそれで困っておりますように、一カ所に公団などが住宅団地をつくりますと、その周辺まで高くなって、二回目はできないというようなことを大きく繰り返すのじゃないか。つまり今度の計画は、いわゆる全面買収方式というものを実施しようというので大地積を指定されるということでございますから、そこら辺のところももっと年限を長くしておいて——必要がなくなればそれを縮めるというほうはやりやすいが、十年たって、もっとそれを延ばすということは、これはなかなかできないのでございますから、そういう点の御配慮が必要ではないかと考える次第でございます。
  23. 福永一臣

    福永委員長 岡本隆一君。
  24. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 有泉先生にお尋ねいたします。  先ほどの御説明の中でもって、使用制限がついたままで長期に放置されると、所有者が困るから、買い取り請求権をこの法律規定したのだ、こういうふうな御説明がございました。私どもしばしば聞いておりますのに、地方公共団体が郡市計画を定めまして、道路用地なんかにセンターを引きますね。私、古いことは存じませんが、古くはそういうところには建物建てることができなかったようでございます。ところが、政令が改正されまして、そこへ建物建ててもいいということになったのは、いま先生が言われた理由に基づくものだと思うのです。ところが、そうなってまいりますと、今度は相当の間に——このごろは建築がどんどん進んでおりますから、せっかく都市計画を立てましても、それを全然無視してそこへどんどん木造の家を建てられますので、そうしますと、今度は都市計画を実行します場合に、非常に補償費が高くつきます。だから、地方自治体のほうでは、できたら昔のように建物建てられないような制限が何とかつけてもらえぬだろうか、こういうふうな声も私ども聞いております。したがいまして、今度は都市計画法の中へ買い取り請求権というようなものを入れることができないものかどうか、また、入れることが憲法上あるいは他の法律との間に何か衝突を起こしはしないかということをお伺いいたしたいと思います。
  25. 有泉亨

    有泉参考人 先ほどちょっと申しましたように、その十六条というのはどれだけききめがあるだろうかということもありまして、買い取り請求のこの規定は落ちそうだったのです。しかし、精神としては、いまおっしゃったように、いろいろの使用制限が出てきますが、道路の場合、道路予定地に建ててもいいでしょうが、私の了解では、建てるものが制限されていると思います。それから官庁用の——この近所でも二階以上はいかぬとか、地下はいかぬというふうな制限がおりておりまして、それが長年あると思うのです。その所有者が、それじゃそこは建たないから、これを売ってどこかほかのところで同じような目的に合った建物建てよう、こう思ったときに、買い取り請求を認めれば——さっき田上さんも、そうしなければいけないとまでは言わないけれども、そうすることが望ましいと、だいぶ賛成してくださったのですが、そこで、ここに芽が出たので、おっしゃるように、これから先そういうふうな使用制限がかかった場合には、こういう規定を入れていただければだんだん普及するのではないか、こう考えます。
  26. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 非常にいい意見を聞かしていただきました。これは都市計画をやる場合に、いまのお話は非常に役に立つと思います。だから私どもも、そういうふうな方向で努力をしてまいりたいと思います。  それからもう一つ有泉先生と宮下さんの両方からお答えを願いたいと思うのでございます。この法律は、地価対策一つとして出されておりますけれども、地価対策としては、供給の面と需要の面と二つに対する方途を講じていかなければならぬと思います。これはその一部分でありまして、なるべく豊富に供給していこうという考え方で、地価を何とか押えようという考え方であろうと思うのでございます。しかしながら、いくら豊富に供給されましても、一面で需要が抑制されないとだめだと思うのでございます。  そこで、問題になってくるのは、土地の思惑買いの禁止であるとか、あるいはぜいたくな土地使用を抑制するとかいうふうな方法が講じられなければならないのでございます。お二人ともいまの宅地制度審議会委員をしていらっしゃいますが、宅地制度審議会においては、そういうふうな地価抑制策として、供給の面とあわせて需要を縮小させるという面をどうしてやっていくかということが論議されたのかされなかったのか、あるいは格間がなければ宅地制度審議会というのは、それ以外のことに議論を及ぼすことができないのか、あるいは意見として具申をすることができないのか。できましたら、これから後私ども建設大臣にも要求したいと思うのでございますが、宅地制度審議会の中でもう一度、一面で、どうしてより多くのものを供給するかということと同時に、今度は需要をどのようにして押えていくかという——ほんとうのつり上げはこれは思惑買いにあると思うのございますが、思惑買いと売り惜しみというものを、どうして抑制していくかという点について、宅地制度審議会で真剣に御討議願って、ひとつまた案として——かりに諮問がなくても、進言と申しますか、そういう形で、審議会のほうで問題として取り上げていただきたいと思うのでございまが、いかがでございましょうか。
  27. 有泉亨

    有泉参考人 私が便宜お答えいたしまして、あとから宮下さんから補充していただきます。  宅地制度審議会にどういう諮問があったか、いまはっきり覚えていませんが、とにかく、いま宅地がどんどん上がる、これを抑制しなくちゃならない、それには大量の宅地を供給することが第一であろうという、何かサゼスチョンがあって、それをひとつ考えてくれという諮問があったかと思います。それで、議論をしている過程では、最初は何でも出ました。ですから、最近新聞に出ています遊閑地税とか土地増価税とか、そういう税金のことも出ましたし、それから大量供給の方式についてどうしたらいいかという議論も出まして、一通りやっているうちに、まずあれはたしか二年の期限で委員を委嘱されたと思いますが、初めの一年の間に答申ができ上がりましたのが、これの答申と、それから土地評価の方の答申と二つでございます。それで、私どもは知らなかったが、最近新聞によりますと、また宅地制度審議会には遊閑地税と土地増価税の問題がかかるらしいということを新聞で知りましたのですが、おそらくまだ任期がございますし、諮問はもうきているのかもしれませんが、事務局がそれを整理して議論を進めるかと思います。ただ審議の途中では、遊閑地税とか税金の問題は、宅地制度審議会は、もう一元化こそしておりませんが、あらゆる省の人が傍聴にきておりますし、それから税の専門家もおりますし、一応各分野の人が現にいると思いますが、遊閑地税はあまり評判がよくなかったのであと回しになったと思います。しかし、私個人は、やりようでやれるのではないかと思う。ですから、この案も大量に宅地を供給する、それは非常に安いわけでして、千里山の例ですと、でき上がると梅田の駅から十五分から二十分のところで、しかも売り値は二万をこえない、一万から二万の間まででいくだろうと思います。東京付近でそういううまい土地があるかどうか問題ですが、安い土地を大量に供給する。そうする、そっちへ需要が流れて、そうして一般の地価も押えられるだろう。上がったものを下げるのは、宮下さん言われるようになかなかむずかしいでしょうが、上がるのを押えられる。審議会が開かれましたら、御趣旨はわかりましたから、もっといろいろ勉強するように委員としても要求したいと思います。
  28. 宮下正一郎

    ○宮下参考人 ただいまお話のございましたとおりでございますが、御質問の供給と需要と両方面から考えなければいかぬわけでございますが、先ほどちょっとお話がありましたように、供給をふやすということは、いわゆる生産される商品でないものですから、値段が高くなったからといって売り地が出てくるものじゃないのでございます。土地は、むしろ高くなるに従って、もっと高くなるだろうというので、いわゆる売り惜しみが出てくる。何か計画が発表されますと、きっと発展していって、いまに高くなるだろうというので、投機買いが起きてくる。しかも何かにこの土地利用されておりますので、売らなければならぬというものじゃない。ほかの商品ですと、どんなにがんばっておりましても、かりに電気料金であれば、電気料金をなかなか上げてくれぬ、あるいは交通、電車賃を上げてくれぬといっても、上げるのを許可しないからといって電車を動かさぬとか、電気をつくらぬとかいうわけにはいかぬのでありまして、安くてもこれは売らなければいかぬわけですが、土地だけはそうじゃないので、高くなる、なったから売らなければいかぬということがないために、供給を増進しなければならない。そこで必要な場合には、こういうような収用権の付与が必要になってくる。売らぬと言っても無理に買い取るという強制権が必要になってくるわけでございます。  それから、いまの需要を抑制するという問題も、この法案には盛り込まれておるわけでございまして、いわゆる先買い権というのがそれでございまして、区域指定されますと、他へ売ろうという場合には一応話をしてからでなければ売られぬ。  最後に、その場所は収用権の対象になる土地になるということでございますから、一般にそういうことのない土地のように投機売買が盛んに行なわれることにならぬだろうというわけでございます。  そのほかに、いろいろな問題を総合的にやらぬと、土地は非常に複雑であり利害関係が錯綜しておりますので、なかなか単純に何か一つでやるというわけにはいかぬものでございます。しかも、自由主義経済の上に立っておるのでございますから、いまさら統制をやり停止価格をやるというわけにもいかぬので、自由主義をたてまえにしながら、しかも地価を安定させるのにはどうしたらいいかということになるのでございますから、単純に一つではいかぬ。あらゆる方策を次々と打っていってそこへ持っていく。これは不景気になってくれば逆でございまして、私ども長い経験の間に、地価が下がって困ったことがあるのでございますが、地価が下がるのは、倒産者が相次ぐという時代には必ず地価が下がる。しかし地価を下げるために、わざわざ不景気にするというばかなこともないわけでございますから、そのままではなかなか地価は下がらぬ。しかも今度の景気の行き過ぎを是正する方法にしましても、昔ですと、私どもの長い間の経験では、倒産者ができて首つりまでできるようなひどいことになったのでありますが、すぐに世論がやかましいので手直しするというようなことで、不景気も深刻化しないということでございますから、総合的にやるという必要があるのでございます。それをやるには、先ほどお話しございましたように、土地行政のばらばらというのが何としても一番のガンではないかと思うのでございます。なわ張り争いというようなことになっておってなかなかすっきりした土地行政はできない。資本、労働、土地、これは生産の三要素でございますから、それぞれそういうぶんどり合いでなく、一本筋の通った行政組織が絶対必要じゃないかというふうに考える次第でございます。そういたしませんと、いまの供給、需要という問題もなかなかやれないわけですから、どこかにしり抜けができてくるというわけでございます。
  29. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 そういうことでありますと、いまおっしゃったように、道路ができるとか、工業用地が建設されるというようなことになると、その周辺が高くなる。高くなれば、売るんでなしに、逆に売り惜しみをして値上がりを待つというようなことが出てまいりまして、ますます土地が投機の対象にされていく。だから、投機の対象にならないように、持っておる土地が、時価と見合って、採算が合わないようになって、売らなければならないような形に持っていくということですね。たとえて言えば、いつかのエコノミストに出ておったのでございますが、固定資産税を正当な——正当なというと語弊がありますが、その当時売買されておる時価にきちんとかけていけば、とても停車場の前の土地を畑をつくっておったりしては、地価が高く、したがって固定資産税が非常に高いものにつくから、持っておられなくなるから、それを有効に使うように投げ出すであろうし、また市街地の中で、現在東京では、練馬のようにどんどん宅地利用されておる中に空地がたくさんある。杉並でもございますが、ああいうところの土地宅地としてどんどんはき出されてくるであろうというようなことを言っておりますが、そういうふうに土地を持っておられないように税制をつくっていくということが、国の政策として、ある一面、所有者に対して非常にきびしい所有制限をかけていくというような点で、政府としても控えておるし、また政党としても、そういう点で思い切った政策がとれないだろうと思うのでございますが、そういう点、先生方学問的にお考えになり、またその他の点からお考えになって、どういうふうにお考えになりますか。これは有泉先生田上先生へのお尋ねになろうと思うのでございますが、いかがでございますか。
  30. 有泉亨

    有泉参考人 私も同様な考え方を持っておりますが、ただ、なかなか技術的にはむずかしいらしいのです。そこで、もう少し勉強してみないとどうすればいいかということがきまらないのだと思いますが、たとえば遊閑地税をかけるといたしますと、その課税の標準としては、その土地を評価しなければならないのです。その面積へかけるわけにはいきませんから、これは幾らだということをきめなければなりません。それから、増価税といっても、そこに公共施設ができたために土地が上がった。そうすると、前の値段が幾らでいまは幾らだということが公にちゃんときまらないと、税はかからない。それをきめる方式がまず先行しなければならない。それが宅地制度審議会の中で評価に関する答申が先に出た大きな原因だと思うのです。まず評価がちゃんと行き渡らないと、あと税をかけるにしても、何にしても、技術的になかなかむずかしい、そういうことだと思います。そこがつかまれば、遊ばしておいて、そして値上がりを待っている土地にはたくさん税金をかけていいと思います。全く賛成でございます。
  31. 田上穰治

    田上参考人 私、格別意見がないのでございますが、土地利用を促進するという意味において、遊ばせている土地について、もっと重い税金をかけるということについては賛成でございます。ただ、一般的に申しまして、一応土地についての私有が認められているわけでございますから、税金についてもある程度の限度はあるのじゃないか。つまり、土地個人が持つことは非常に負担にたえないというような程度の重い税金でありますと、これはやはり財産権の特に重大な土地所有についての課税ということになりますから、そういたしますと、やはり財産権の保障ということから見て問題がある。しかし、いまの御質問のような御趣旨でありましたならば、私も賛成でございます。
  32. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 もう一つ金沢参考人へのお尋ねになると思うのでございますが、低所得者に対する賃貸し住宅がもっと建てられなければならぬというふうな御説でございましたが、この新住宅市街地開発法の中で、自分で建てるもの以外に、賃貸しをするものにも土地を売ってやることができるように——私もう一ぺん読み直さなければなりませんが、なっておるかどうか。そういうふうな一定の、たとえば家賃はどの程度にせよという制約のもとに、賃貸し住宅建てるものにも土地を売ってやるという制度にして、さらにまた、その賃貸しをするものに対しては、その住宅建設費を何分の一か国が補助してやる、こういうふうな制度にいたしますと、国や市町村が公営住宅建てるかわりに、国や市町村の持ち分を個人負担することによって、ある程度低いところの低家賃住宅というものを建てることができると思うのです。たしかドイツではそういうことをやっていると思うのです。だから、こういうふうな開発いたしました土地へ国が補助をして、金に余裕のある人に賃貸し住宅建てさして、十年とか二十年とか制限をつけて、その期間はこの価格で貸せ、こういうふうな形で、適正利潤が年間一割になるとかなんとか、その程度の適正利潤を見込んだところの低家賃住宅を建設させるというふうなことは、やれば大きな住宅政策の一面になると思うのでございますが、考え方としてそういう考え方が間違っておるでしょうかどうか、ひとつ御意見を承りたいと思います。
  33. 金沢良雄

    金沢参考人 私は、先ほど低所得階層の問題を申しましたが、先ほど宮下参考人からお話がございましたように、この法案全体としては、一つのいわゆる住宅街、町づくりである。だから、この計画の中には、もちろん公営住宅であるとか、公団住宅であるとかいうものも含まれてくるわけでございます。そういうふうに理解していいと思います。その点については、私もとよりこれはけっこうだと思うわけなんですしただ、私が先ほど問題にいたしましたのは、個人に譲り渡すところの宅地分譲でございますね。そういう事業が新しく今度これに入ってきている。だから、この事業計画全体が、何も全部が全部宅地譲渡になるということではないのはもちろんなんで、その一部分であるということでございます。ですから、この法案が同時に全体として賃貸住宅政策にも寄与するということはもちろん認めるわけなんですが、問題となる点は、先ほど言いましたように、個人に分譲される面での事業について問題にすればするということでございます。その点誤解のないようにお願いしたいと思います。  そこで、あとの補助政策の問題でございますが、この点につきましては、現在も公営住宅について、たとえば一種については建設費の二分の一補助、二種については三分の二補助というような政策がすでに行なわれておりますので、こういった方針はもちろんけっこうだと思うのです。そういったやり方、あるいは起債の面でそれぞれ配慮するとか、また、公団は債券発行権を持っておりますから、そういうような点を十分に考慮するとか、金融面での措置をやっていくということは必要だと思います。ただ、その場合に、宅地分譲の点について聞いておりますところによりますと、一つの理由は、公団とか公営企業が賃貸住宅政策では財政困難になっていく、財政困難になって、とにかく資金の回転を早くしなければならぬ、売ってしまえば回転が早くなる、そういうようなことがあるらしい。もしそういうことが宅地分譲のねらいということになってきますと、その辺は少し考え方がおかしいのじゃないかという気がする。ということは、それは何も公共の福祉の問題ではないわけです。しかし、そういうようなために、土地を売って、地方公共団体なりあるいは住宅公団が、回転資金を早く取っていかなければ困るのだということでは、それは公団の問題であり、地方公共団体の問題なんでありますが、住民そのものの問題ではないように思われる。つまりそういう政府機関なり地方公共団体が金繰りが困るというのが切実な問題なのか、低所得者が一時に金を出して土地を買えないような者がたくさんいる、そっちのほうが金繰りに困っているというのが問題なのであろうかということの認識の問題であろうと思う。その点で、住宅政策としては、もちろんこういった宅地分譲の政策も必要でありましょうけれども、これが行なわれる宅地分譲というところまでいくのには、賃貸住宅政策というものが現在の三十倍とか百倍の申し込みがあるというような状態をまず一刻も早く解決しておいて、しかる後にこの宅地分譲という線が出てくれば、これは大義名分が立つのではないかというのが私の考え方なんでございます。
  34. 福永一臣

  35. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 時間がだいぶおそくなりましたから、一点だけ、法律専門家のお三人と、それから特に土地問題を研究しておられる官下さんに、この際ぜひお考えを聞いておきたいと思うことがございます。と申しますのは、いままで地価の問題が非常にここでも議論になったのでありますけれども、いまや社会問題でもあり、大きな政治問題でもあると私ども考えております。これは先ほど来御質問、御意見がありましたように、非常にむずかしい問題で、しかも、むずかしいということで放置できない重要な社会問題、あるいはまた、一種の経済の問題でもあるかもしれません。きょうは住宅地の問題が主でありましたけれども、この際、せっかくですから承っておきたいと思いますことは、地価の問題は、現状におきましては、あまり議論といいますか、そういうことでなしに、相当思い切った政治をしなければならない、こういう段階にあると思っておるのです。長い間、特に当委員会におきましては、直接こういうことに関係の深い政策を論議いたしておりますから、委員会としてもいろいろ若心をいたしております。私個人としてもいろいろ苦慮いたしておるけれども、名案が出ないわけであります。と申しますのは、宅地ばかりでなくて、いま御承知のように、道路その他公共事業は、数年前からすると、予想以上と申しますか、画期的な事業を進めております。そこで問題は土地の問題であります。先ほど宮下さんからもお話がありましたように、土地は別に生産されてくるものではないので限度がある。一定の限度の中でこの土地利用することが必要である。たとえば道路をつくる場合、御承知のように今日まで人跡未踏の山の中に道路をつくっておる場合がたくさんあるわけです。そうしますと、ほとんど無価値であったところが非常な経済上の価値が出てくる。したがって、非常な高値を呼んでおる。今日の状況では、皆さん方には御説明を要しないのですけれども、たとえば一級国道あたり一キロ三億前後でできておったのが、もうすでに六億あるいは十億になんなんとしておる。こういうことでは、国家財政上からいっても、国費を投入すれば投入するほど、比率から申しますと、国民全体の利益のためにつくる道路の延長というものは伸びない。財政の効率が反比例してくるのが現状であります。その反比例してくる、財政の効率の落ちてくるのは、どういうことになるかというと、特定の個人利益を結果的にはかっておるようなことに現在なっておる状態です。これは一例を申し上げたわけでありますけれども、こういうことは社会通念から申しても、あるいは政治の面からいっても、財政のことは私は詳しくありませんが、財政の問題からいっても、これをいま議論しておるということは非常に怠慢ではないかという気がしてならないわけなんです。地価の問題は、先ほど来のお話のようにむずかしいいろいろな要素がありますから、そう簡単に竹を割るようにいかないことはもちろんで、総合的な施策をしなければならぬと思いますけれども、この際、思い切った措置をしなければ、それこそにっちもさっちもいかない状態になる、こういうことを実は憂えておるわけであります。  先ほど宮下さんのお話の中に、自由主義経済だからというお話がありました。もちろん議論するわけではありません。われわれの立場はもちろん自由主義経済、これを金科玉条としておるわけでありますけれども、土地、地価の問題に関しては——自由主義経済の根本はむずかしいことでなしに、資本と申しますか、個人が努力をして、それによって得たものが守られていくというところに自由主義経済のよさがあって、これは守らるべきものだ、こう思っております。ところが、人跡未踏のところに道路をつくったら、たまたまそこに土地を持っておったということで、一文の経済価値もなかったものが、それこそたいへんなものになってくるというのは、それは必ずしも自由主義経済で、その人の努力によって得たものではなくて、国民全体の恩恵あるいは国民生活全体を考えて国家が投資したからそうなったのであって、その人に多くの利益を与えるということは、決して公平の原則にのっとるものではない。むしろ逆に不公平の原則がここに行なわれておる、こういうような気がするわけであります。  ここでいろいろ申し上げる必要はないのでありますけれども、これはほんとうに私の私見というか私案のごときものでありますが、地価の問題は今日非常に問題になっておりますが、例の敗戦後の農地改革をしたと同じような、あれとはやや趣旨は違いますが、ああいった決意と努力をしなければこの問題は解決をしないのではないか、私はこういう私見を持っております。これは私の最終の結論ではありませんけれども、こういうことはどうであろうか。これについて、さっき憲法の問題のお話がありました、あるいは地価原則の経済論議がありましたので、ぜひ聞いておきたいと思うのは、この際全部とは申しません、たとえば道路住宅宅地の問題も入ってもいいと思いますが、国民経済の上から、あるいは国民全体の問題から、国家が投資する公共事業——住宅問題はいまの概念では公共事業といっておりませんけれども、厳格な意味で言うのではありませんけれども、国家が国民全体の問題について土地利用する場合には、いまのいわゆる商業主義でない方式をとってみたらどうか。私の一つの私見としては、固定資産評価の基準になっておりますものを基礎にして、もちろん固定資産が、先ほども指摘がありましたように、地方税になっておりますから、これも必ずしも公平に行なわれておるとは思いませんが、これは別途研究するとして、これは一律にはいかぬかもしれませんが、何十倍あるいは何百倍あるいは何千倍でもけっこうです、それは検討することとして、その範囲内において処理する、こういうことを法律によって規定する、こういうことをしなければ、私はこの問題は絶対に解決をしない。絶対という言葉を簡単に使ってはいけませんけれども、それくらいに考えておるわけであります。これは私の一つの私見でありますけれども、そういうことをやることが憲法上適法かどうか。それからもう一つ。宮下さんの研究しておられる地価経済論からいってそういうことが考えられないかどうか。この一点だけについて、法律専門家のご三方と、土地問題を研究しておられる宮下さんから、参考にしたいと思いますので、御見解を伺いたいと思います。
  36. 有泉亨

    有泉参考人 どうも私は憲法に違反するかどうかは、憲法専門家でないのであれですが、初めに意見を申し上げましたおりに、土地というものは非常に特殊なもので、それは土地がどういう性格を持っておるか、昔だったら、横須賀の近所には、軍港であるために家が建てられないというようなこともありましたし、いまで言いますと、農地の転用の場合など、法律上のいろいろの制限を受けているわけであります。そうしてほかの商品よりも比較的早く公の性質を持ちやすい。食糧難ということであれば日本じゅうの農地が公の性格を持って買われたわけですけれども、そしてあれは違憲ではない——相当の価格であったかどうかというので争いがありましたが、まず最高裁の判決では相当な価格、こうなったわけであります。ただ一律に固定資産税に何倍かで日本じゅうを一律にやるということで、それでいいかどうかとなると、やはり基礎になるものが少し弱いような——この町と隣の町でもうその評価のしかたが違うということで、基礎になるものが少し弱いと思います。だから、方式そのものとしては、しろうと考えでは、そうやっていいんじゃないかと思いますが、基礎になるものは、やはり少ししかっりしないと、足元でくずれて不公平が生ずるという心配がある、こういう気がします。
  37. 金沢良雄

    金沢参考人 いまの問題はたいへんむずかしい問題だと思いますが、その点は私、国民の土地に関する社会的認識というものが根本的に問題になってくるんじゃないかという気がいたします。先ほど田上先生が御指摘になりましたように、現在の憲法は十九世紀時代のただ単純なる自由主義憲法ではないというお話がございましたが、私も全く同感でございまして、そういった福祉国家的な観点からの国民意識というものが、土地について十分に発達してきておるような情勢がもし出てくれば、そういうおっしゃるようなやり方についても、憲法上は合憲であるというような判定が行なわれるようになるんじゃないかという気もいたします。  いま一つの問題、たとえば、いわゆる開発利益というものを私有してはならないという考え方がございましたが、この考え方は、現在でも、たとえばイギリスあたりでとられていることで、開発によるところの地価の値上がりというものは、これは個人のものでなしに、国民全体のものであるという考え方から、それを国庫に納付させるというようようなやり方があるように聞いております。これは話が違いますが、外為法の外貨割り当ての場合に、それがかなり独占権を得るものですから、その利益一定の部分は国庫に納付させるという法律ができておりました、今日はもう自由化で廃止されましたが。ああいった考え方と直接関係はございませんけれども、そういった何かによってたまたま割り当てが受けられたとか、たまたま道路ができたとかということで利益を得るものについては、それを国民全体のプールに入れてもらうという考え方は——これは特定輸入物資に関する臨時措置法でございましたか、そういうことは今日の憲法のもとでも可能じゃないかと思います。
  38. 田上穰治

    田上参考人 私も金沢教授が言われましたことと大体同じでございます。ただ、御質問の趣旨でございますが、たとえば国道等を建設するときに、その土地は従来そういう建設計画のなかったときは、山の中であって非常に安い土地であったのが、そういう建設計画が発表されて、その結果急に値上がりしたという場合に、従来の価格で土地を買い取る、あるいは収用できるという御趣旨であるといたしますと、私も一応賛成でございますが、問題は、買収される土地道路の敷地になる土地ではなくて、ほかにその周辺の土地をどうするか、周辺の土地の値上がりが予想されるのに、それとのアンバランスが生ずるというところが問題ではないかと思うのでございます。こういう問題が従来から土地収用法の適用にあたっても議論されておりまして、事業が行なわれるために、それから生ずる損失あるいは特別な利益、これをどうするかということでございますが、ひとり考えられますことは、その収用なりあるいは買い取られる従来の地主に対する補償なり、あるいは支払われる金額といいますか、そのほかに、その周辺の土地についての値上がり、あるいは逆の場合、土地の値が下がる場合もまれにはあるわけでございますが、それはしばらくおきまして、そういう場合、やはり土地の増価、値上がりについての一種の課税なりあるいは負担金のようなものによってこれを調整していくということも必要ではないかと思うのでございます。しかし、その場合にも、一体どの範囲までそういう負担金のようなもの、あるいは増価税のようなものを徴収、賦課することができるかということになると、非常にむずかしい問題でございまするし、また、その付近の土地でありましても、その地主が土地を直ちに売る場合には、それは値上がりによりまして相当な収入、利益を得るのでございますが、従来どおりその土地を持っているあるいはそこに住んでおってすぐには手放さないというような場合でありますと、さしあたっては、余分にそれだけの金が入ってくるわけでございませんから、そういう人にすぐ負担金なりあるいは課税をするということは、ちょっとまた困難があると思うのでございます。そういう意味で、御意見は私も全く同感でございまして、ある意味では不労所得の最たるものでございますから、当然国民の一人としてそういう利益を自分がほしいままにするということはよろしくないことでございますが、どういう方法でこれに対処するかということにつきましては、従来から私どもも多少考えておりますけれども、非常に技術的にはむずかしい。つまり私の思っておりますのは、実際にそういう収用なりあるいは買い取られる土地そのものの問題のほかに、それに隣接しておる周囲の土地はどうか。その場合に、それもいまの負担金その他の方法で、ある程度は利益を国庫にというか一般の公衆の利益のためにそれを使うことができると思いますけれども、それも直ちにそういったものを地主から特別に課徴することができるかどうかと申しますと、どうも絶えず売買をしているような土地でありますと、そういうことは簡単でございますが、長くそこに住んでおる、自分の住宅のために使っているような土地でございますと、これは相続なりあるいは譲渡するときでないと、現実には収入がないわけでございまして、そういうところも考えまして、大体御趣旨には賛成でございますが、方法については非常にむずかしい問題があると考えております。  憲法の議論といたしましては、御承知の二十九条の正当な補償、正当というところでございまして、これは先ほどの御指摘がありましたが、農地の判例についても少数意見がついておりまするように、ただ法律でもって地価を公にきめる、公定価格というものをきめて、それによって補償すれば正当であるかというと、そうは考えられない。やはりいまの憲法では、そういう場合に、法律規定そのものが二十九条の正当な補償という趣旨に適合するかどうかという点が問題になるわけでございまして、極端な場合には、法律そのものが憲法違反ということも起こり得るのでございますが、いわゆるマル公によって補償すれば常に正当な補償といえるかというと、そうはいえないと思うのでございます。そういう意味で結局時価というのがどうでございますか、つまりその財産をとられる者と、それからその以外の周囲の者との間のアンバランスを、われわれは非常におそれるのでございまして、全体として公平にある程度の負担ないしは利益を国家に還元するということであれば、けっこうなんでございますが、たまたま土地をとられる者だけにしわ寄せになって、そのほかの者は、何もしないで非常な地価の値上がりによって利益を受けるというようなことでありますと、結果的には憲法の趣旨に合わない。その点の対策が、むずかしいのでありますが、必要だと考えます。
  39. 宮下正一郎

    ○宮下参考人 たいへんめんどうな御質問でございまして、農地法が定められる当時、宅地法をつくろうといって、原稿だけはつくったように聞いておるのでございます。土地全体に対しての土地法体系と申しますか、森林に対して森林法がございますし、農地には農地法がございますが、宅地だけは法律がないのでございまして、土地法体系を整備する上に、宅地法というような基本法が必要だということは、これはもう前提として申し上げておきたいと存じます。  地価対策といたしましていろいろな方法が考えられるのでございますが、私先ほど申しました自由主義の中でといいますのは、いまのような自由放任主義では困るので、自由主義の中で公正な競争のできるようにならぬと、特殊の者だけが利益を得るということがいかぬという意味でありますが、統制経済までやらずにやり得るという方法というので、それではどうやるかということになりますと、最初に申し上げましたように、やはり土地というものの本質の認識が出発点になるのであって、安定した価格というものは一体何か、正常な時価というようなこともいいますが、正常な土地価格は一体どういう価格かということがはっきりいたしませんといけませんので、現在いわれておるそれは、正常な取引価格だというふうにいわれておる。正常な取引価格とはどういうことかといいますと、だれでも買い、だれでも売る価格だ、こういい得るのでございますが、それでは意味をなさないのでありまして、最初に議論が戻りまして、土地というものは生産される商品じゃない、生産要素だというようなことになりますと、生産要素として引き合う価格が、つまり土地の正しい価格だということになるのであります。  私は、外国へ行ったことはございませんが、行った人たちで不動産のことを調べてこられた方の一致した意見であり、また文献などでも同じように、外国では、土地だけの売買というようなことはちょっと考えられないところが多いそうでございます。ここら辺は土地だけで幾らぐらいするかという質問をいたしましても、ぴんとこない。建物と一緒に評価をいたしまして、そして土地は幾ら、建物は幾らというふうにあとから逆算していく、つまり土地、特に宅地は、何らかに利用されて初めて価値があるのだという考え方でございまして、土地だけの分譲というものでなくて、土地の上に建物建てて分譲するということでございます。つまり、土地は資産であって商品でない、何かに利用されるものだという根本的な観念でございます。そういう観念からいたしますから、外国ではそうばかげた価格には上がらぬということでございます。日本では、土地は商品だ、土地を買って値上がりを待って売ってもうけるのだ、もうけてもそれは何ら悪いことではないという観念が一般化しておりますから、そのためにこういう値上がりがあるわけでございます。  この点は、やはり法律の上にも、法律上の解釈の上にも、非常に欠陥があるのではないかと考えるのでございまして、憲法二十九条の二項の方をもっと強く打ち出す必要があるのじゃないかという考えを持っておりますが、それは専門でありませんのでやめます。  それでは、どういう方法でということで、固定資産税でやるとか、あるいは土地増価税、空閑地税、ドイツでは未利用地税、こう言っておるようでありますが、そういうのでやるという場合に、今の空閑地税、土地増価税というのは、技術的に非常にめんどうな問題がございます。それから固定資産税を時価に直せばよいではないかという、エコノミストに書いていらしたのがございますし、そういう話が出るのでございますが、これはちょうど所得税と同じような社会政策的なものが十分に織り込まれませんと、申し上げておりますように、大部分の土地は何かに利用しておるのでございまして、それが一律に、いま時一価が上がったから、その上がった時価で税金をかけられるとなったら、売るために持っておるのでない人がほとんど大部分でございますから、これはたいへんでありまして、財産の没収と同じ結果になるのでございます。空閑、つまり遊ばしておく土地だけにかける、これはいいわけですが、固定資産税ということになりますと、いまの社会政策的なと申しますか、そういう要素が税制の中に十分に織り込まれませんと、とんでもないことになるわけでございます。  そこで、私申し上げますのは、現在の固定資産税で、そういうようなふうにしてやればいいではないかということでございますが、これはいまは御承知のように市町村税になっておりますので、かりにそういう法律をつくったといたしましても、各市町村でそのようなことをやろうとなりますと、これはなかなかたいへんで、町長さんなど、とてもこれはやれるものではないと思うのであります。その例といたしましては、西ドイツでは未利用地税をやはり地方税でやっておるようでありますが、うまくやっておるところとできないところとがやはりある。これは地方税だからです。土地は先ほどお話がございましたように、最終的な土地の所有権、自然主義の所有権というものは、人民の代表たる国家にあるということ、これはもう厳然たる事実だろう。法律がどうなっておっても事実なんであります。それを地租を地方税に移すというようなことは、ちょうど明治維新に、——当時までは土地は私有じゃなかった。藩有、徳川家であっても、これは徳川個人土地ではなくて徳川家のもの、つまり藩有であった。それが、たまたま明治維新で私有に移したのでありますが、それほどひどいあれでないのでありますが、当時もそう私有にまで移さぬでよかったのではないかと思いますが、しかしこれは、いわゆる法律思想がそういうふうであったからしかたがないといたしましても、現在において地租を地方税に移す必要はないのではないか。これを国税にしておけば、今のように社会政策的な問題を十分に織り込むこともでき得たのではないかと思うのでありますが、いまのままではそういう点で実行は不可能じゃないかと思うのでございます。それから、道路などをつけるために、非常に利益を得る者の、その利益を社会、国家に取り上ぐべきでないかというのに対する方法といたしましては、現在でもやはり受益者負担制度というものがあるわけであります。これも一番道路に近いところ、それから離れるに従ってその受益の率が減るから、どんなような率でかければよいかというような外国の例もあり、研究された資料もあるようでありまして、十分に研究いたしますればそれらもできるわけであります。さらに、そういう問題に関連しまして一歩進めたいのは、国土建設のために道路をつくる、港湾をつくるというのには、ばく大な財政負担が必要なのでございますから、そのために、先ほどお話しございましたように、その周辺の地主だけにもうけさせるのでなく、そこからその利益を還元してその建設資金に充てるというような制度は絶対必要で、いわゆる受益者負担金というものでなく、そういう法律をつくるというまでいくようにならなければならないと存じます。そういうことも技術的に決してめんどうじゃないと存じます。
  40. 福永一臣

    福永委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、本案審議の上に非常に参考になりました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  次会は来たる五月三十一日金曜日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開くこととし、本日はこれにて散会をいたします。    午後一時十一分散会