運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1963-06-14 第43回国会 衆議院 外務委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月十四日(金曜日)    午前十一時十六分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 安藤  覺君 理事 正示啓次郎君    理事 古川 丈吉君 理事 松本 俊一君    理事 戸叶 里子君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       愛知 揆一君    上村千一郎君       浦野 幸男君    小澤 太郎君       大高  康君    金丸  信君       北澤 直吉君    久保田円次君       田澤 吉郎君    細田 吉藏君       森下 國雄君    河野  密君       東海林 稔君    田原 春次君       楢崎弥之助君    西村 関一君       帆足  計君    細迫 兼光君       前田榮之助君    森島 守人君       山中日露史君    受田 新吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務政務次官  飯塚 定輔君         外務事務官         (移住局長)  高木 廣一君         農林事務官         (農政局長)  齋藤  誠君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局北東         アジア課長)  前田 利一君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 六月十四日  委員愛知揆一君池田正之輔君宇都宮徳馬君、  菅太郎君、椎熊三郎君、高橋等君、岡田春夫君、  勝間田清一君、黒田寿男君、河野密君、帆足計  君、森島守人君及び西尾末廣君辞任につき、そ  の補欠として上村千一郎君、浦野幸男君、小澤  太郎君、大高康君、細田吉藏君、久保田円次君、  前田榮之助君、西村関一君、楢崎弥之助君、山  中日露史君、田原春次君、東海林稔君及び受田  新吉君が議長指名委員に選任された。 同日  委員上村千一郎君、浦野幸男君、小澤太郎君、  大高康君、久保田円次君、細田吉藏君、東海林  稔君、田原春次君、楢崎弥之助君、西村関一君、  前田榮之助君、山中日露史君及び受田新吉君辞  任につき、その補欠として愛知揆一君池田正  之輔君宇都宮徳馬君、菅太郎君、高橋等君、  椎熊三郎君、森島守人君、帆足計君、黒田寿男  君、勝間田清一君、岡田春夫君、河野密君及び  西尾末廣君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月十二日  所得に対する租税に関する二重課税の回避及び  脱税の防止のための日本国マラヤ連邦との間  の条約の締結について承認を求めるの件(条約  第二七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  海外移住事業団法案内閣提出第九九号)  国際情勢に関する件(日韓問題)     —————————————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  海外移住事業団法案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  森島守人君。
  3. 森島守人

    森島委員 この問題につきましては、各方面から、十分とは言えないかもしれませんが、幾多の質問がありまして、外務省の御方針等も明らかになりましたので、私はほんの補足的に二点だけお伺いしたいと思います。  第一点は、外務省中南米諸国に対する人事についてでございますが、基本的な方針としてどういうふうなお考えでおられますか、これを伺いたいと思います。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 私が就任いたしましてからまだ見るべき所要人事中南米にいたしていないのでございますが、私といたしましては、今後起こるであろう人事につきましては、中南米諸国に対し愛情を持ち、またラテンアメリカ諸国民に理解を持ち、またそれに十分の交渉能力を持たれた方々を、これは公館長ばかりでなく館員につきましても起用してまいるようにいたしたいと思います。
  5. 森島守人

    森島委員 この前、東海林君の質問に対しまして、外務大臣は、出先においては移住事業運営等について外務省として十分な人はない、しかし基本方針その他は外務大臣としてきめるのだから責任は持つ、仕事をやる人はおらぬということをおっしゃいましたが、この点私も実情はそのとおりだろうと思います。しかし、私が考えますところによれば、基本方針等についても出先からのいろいろな建言とか意見も出ることと思いますので、やはり主要公館には移民事業理解のある館員を配置することが必要だと思います。  この点について伺いたいのですが、外務省としては、特別に移民事業または中南米事業等に対しまして体験を有し知識を有する人を特別に任用する制度をおとりになっているかどうかということをお聞きしたいのでございます。
  6. 高木廣一

    高木政府委員 移住局長からお答えいたします。  中南米は、スペイン語ポルトガル語特殊語学のところでございますので、中南米に対しましては、これは特殊語学の人を養成いたします。これらの外交官はもっぱら中南米に在勤をいたします。その仕事のかなり大きい部面が移住関係お世話でございますので、これは移住者関係する保護とかその他移住地についてもいろいろ外交的立場からお世話しなければならぬことでございます。そういうことからいたしまして、仕事の上から、移住についての十分の経験を積んだ外交官がそこにおる。また、年限におきましても、たとえばベレンの総領事のごときは六年以上も在勤しておる。こういう者も各地におります次第で、移住の実際の営農指導とか、そういうものは事業団海協連がいたしますが、外交的立場からの側面援助については十分その人材がいるということは言えると思います。
  7. 森島守人

    森島委員 その点につきまして、いまの人員で十分だとお考えになっておりますかどうでございますか。
  8. 高木廣一

    高木政府委員 人員はできるだけ多いほうがいい次第でございますが、他の地域とも比べまして、また、移住仕事考えまして、必ずしも少ないとは考えられないと思います。なお、補足させていただきたいのでございますが、中南米、特にブラジルには、外務省だけでなくて、農林省からも、書記官、あるいはサンパウロでは副領事等が在勤しておりまして、これらがまた違う立場からの協力をしておるというのが実情でございます。
  9. 森島守人

    森島委員 大体私わかりましたけれども、農林省なんかから来ておる人は、機構的に制度的に、外務省省員になる、領事、副領事になるという制度ができておるのでございますか、どうでありますか。
  10. 高木廣一

    高木政府委員 南米に関します限り、ブラジルでは代々一等書記官農林関係から一名ずつ交代で来ておられます。それから、サンパウロにつきましても、今度一名帰りまして、そのあとにまた農林省から行くということになっております。なお、移住会社及び海協連現地職員の中にも、農林省経験を持った人が相当多数入っておるという実情でございます。
  11. 森島守人

    森島委員 私は、農林省方々外務省省員になられるという場合に、これは制度的に運用ができるように制度化しておりますかどうかという点をお聞きしておるのでございます。
  12. 高木廣一

    高木政府委員 できております。
  13. 森島守人

    森島委員 それならけっこうなんですが、私がもう一つ考え願いたいと思うのは、昔、満州におきましては、満州事情に明るい、経験のある人を、領事、副領事に採用した制度がございました。それから、朝鮮につきましては、朝鮮総督府の人を特に副領事に採用するという制度もありまして、これが円滑に運用されておったわけでございますので、もし必要があれば、外務省において、海協連の方でもけっこうですし、そのほかの方でもけっこうですが、特別に任用するという制度を機構的にお考えになったらどうかというのが私の重点でございますので、そのとおりに、制度がないならひとつ制度化していただくというふうにお運びをいただきたい、こう要望しておる次第でございます。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 さよう心得て処置いたしたいと思います。
  15. 森島守人

    森島委員 その次にもう一問だけお聞きしたいのは、これは地方のことになってはなはだ相済まぬのですが、野田さんも私の県の出身であり、それから安藤さんも私の県から出おるのでございますが、神奈川県において内山知事が五選を戦いましたときには、自分でなければできない仕事があるのだということを二つ掲げました。一つは、箱根における国際会議場の設置の問題であり、第二は、アルゼンチン南米神奈川村をつくるのだということで、予算を初年度に五億計上する、この二つが内山君が五選で戦った大きな問題だった。これは、野田さんも安藤さんも、河野さんのほうの闘将ですから、内山さんをお助けになったか、あるいは社会党の推しておりました若宮さんをお助けになったか、私は知りませんが、非常に奇妙なものです。ともかくも、この内山さんの構想というものは事前に外務省と御連絡があったのですかないのですか。この点をお聞きしたい。
  16. 高木廣一

    高木政府委員 この点は、外務省連絡ございません。内山知事全国の三、四県の知事さんと御一緒に南米をお回りになったときに、その土地をごらんになって、これを買いたいといろ意向をお示しになって、その後視察団なんかお出しになりましたのでございます。私のほうは非公式にそういう話を聞いて、内々、土地所有権の問題、あるいはこの可能性があるかどうかというようなことを現地に問い合わせたという実情でございます。
  17. 森島守人

    森島委員 この問題は、昨日の新聞を見ますと内山さんも放棄したようですから、問題が解決したと思いますけれども、内山さんがはたして外務省連絡があったのかないのかという点を私はお聞きしておきたかったのです。これは、場所もアルゼンチンのどことかと書いてありますけれども、土地が悪いということと価格が高いということ等から内山さんはこの構想を放棄したそうですから、問題は解決したと思いますので、私、その点はっきりいたしましたので、ありがとうございました。  私の質問はこれで終わります。
  18. 野田武夫

  19. 西村関一

    西村(関)委員 今日までだんだんとお伺いをいたしてまいりまして、私のお伺いをいたしたいことの枢要な点はほぼお答えをいただいたのでございますが、本日はなお若干の事柄についてお伺いをいたしたいと思うのでございます。  一つは、サンパウロ州の農業拓植協同組合中央会農拓協と言っておりますが、この農拓協移住者受け入れの問題でございますが、私は、現地の声として、農拓協は一千七百七十七戸の日本からの移住者受け入れワクを昨年の八月にブラジル政府INICから取りつけたというふうに聞いておるのでございますが、この受け入れワクの取りつけに際しまして在外公館が猛烈な反対運動をなさったというようなことが伝わっておるのでございます。この点につきまして、この機会外務省から真相を明らかにしていただきたい。そういう事実があったかどうか、もしあったとすれば、そういう反対運動といわずに何らかの意見INICになさったと思うのでございますが、その内容はどういうことであったのか、その真相を明らかにしていただきたいと思います。
  20. 高木廣一

    高木政府委員 お答えいたします。  本件につきましては、ブラジル大使館といたしましては、そのワクを取るということは、ブラジル団体である農拓協ブラジル政府に対する活動であって、日本政府として関与すべきことでないという態度をとっております。ただ、西村先生も御承知かと思いますが、コチア日本からの呼び寄せワクを前後二回にわたってブラジル政府から取っております。最初の千五百名のワクが終わりまして、二度目の千五百名のワクを取りまして、これはまだ三分の一ほどしか実施されておらないので、一千名でしたか、なかなか行けないという実情で、今日では、日本側からすれば、ワクの問題ではなくて、すでに取ったワクをできるだけ早く充足して送り出すということが問題でございますので、いま申しましたように、大使館としては、その問題はわれわれ関与すべきでないけれども、サンパウロ総領事館からは、ワクを取るよりも送り出すほうが問題である、そして、これを政治的に使ってそのワクを取ればまた日本政府から補助金が来るのだとか、そういうことで混乱せられないようにということは、サンパウロ総領事館から、農拓協ですか、コチアのほうとお話をしたということは事実でございます。
  21. 西村関一

    西村(関)委員 サンパウロ総領事館コチア話し合いをしたということは事実だと言われましたが、INICとの話し合いブラジル国政府との話し合いはどうでございましたか。
  22. 高木廣一

    高木政府委員 それはございません。
  23. 西村関一

    西村(関)委員 局長が責任ある立場からそういう事実はないと言明なさるのでございますから、私の耳に入りました現地の声が何らかの誤解と間違いからであったと思いたいのであります。ただ、この法案を審議するにあたりまして、前々から問題にしてまいりました点で外務省立場もはっきりしてまいった点でございますが、農拓協の行なう移民は、御承知のとおり、全国農協中央会、いわゆる全中がその系統組織を使いまして募集をし、選考をし、訓練を行なって、現地協同組合コチアのほうに送り出す、こういう形になっておったのでございますが、この事業団が成立したあかつきにおきましては、農協はやはりそういう方針募集をし、選考をし、訓練を行ないまして農業移民を送り出すことになろうと思いますが、そういう場合に、先日の委員会におきましても確認をいたしましたところでございますが、そのような形式移民でありましても、一応事業団を通して、そしてまた事業団から現地拓植地に送り出す、こういう形式をとることが事業団の趣旨にもかなうことでありますし、また、従来、間々、あつれきと申しますか、混雑と申しますか、スムーズにいってなかった点が、こういうやり方運営のよろしきを得るならば解決するのじゃないかというふうに私は考えるのでございますが、その点につきまして、この機会にあらためて御見解を承っておきたいと思います。
  24. 高木廣一

    高木政府委員 農拓協が従来同様あるいはそれ以上に日本からの移住受け入れ協力するということは、非常に好ましいことであります。それで、ブラジル側におきましては、今日農拓協がほとんどもっぱらコチアを中心にして、必ずしも全部を代表しておりませんので、これに、あそこの他の農協、たとえば南伯バンデランスールとかあるいは養鶏組合とかいうのがございますが、こういうものをあわせて、新しいほんとう全国的な農拓協ですかをつくるべしという意見が強くなっているように聞いております。われわれといたしましては、こういうブラジル側における民間団体の積極的な協力は非常に好ましい、こういうふうに思います。
  25. 西村関一

    西村(関)委員 ブラジル側の積極的な協力はもちろんでございますが、全中という国内全国的な組織日本の農民の大多数がその組織の中に入っております全国農協中央会組織を通じて募集をし、選考をし、訓練をして送り出す、こういうことを現在では農拓協がやっておるわけですから、そういう仕事に対して、もしかりに農拓協に対する従来からのいろいろな行きがかりや感情のもつれが若干はあったといたしましても、この際そういうものを一てきして、全中がやるこういう仕事に対しまして、政府事業団を通じて後援していく、そういうお考えを持っていただきたいと私は思うのでございます。現地の声を聞いて、現地の声に沿うようなやり方をしていくことはもちろんでございますが、現に全中がやっております。また、全中もそのことを望んでおります。この方式に対しまして、政府はこれに援助協力するということにやぶさかでないと思うのでございますが、この点いかがでございましょうか。
  26. 高木廣一

    高木政府委員 先ほどはブラジル側お話をいたしましたが、日本側といたしましては、全中がこれらの農拓協とタイアップしてやられることは好ましいことです。なお、全中だけではなくて、農業移住者の呼び寄せにつきましては、力行会とか、あるいは民間あっせん業者とか、これらも同じようにやっておりますので、こういう民間団体が全部摩擦なく協力できる体制が好ましい。それで、無理に体制化しなくても、民間団体日本国内においても積極的に活動しやすいように事業団運営されるべきである、こういうふうに思います。
  27. 西村関一

    西村(関)委員 私の伺っておりますのは、農拓協も非常に大きな団体でありますし、しかも全中がその背後にあってこれを支援している。もちろん、力行会もあり、その他の民間団体もございますが、それは、前々から本委員会におきまして民間団体との協力ということを強く要望してまいりまして、それらについてはもちろんしなければならないという御答弁があったわけでございますから、当然のことでございますが、農拓協であれ、力行会であれ、その他の民間団体に対して、政府事業団を通じてこれを支援する、協力する、こういう積極的な前向きなお考えをお持ちになって事業団運営に当たらしめるということでなければならぬと思うのでございますが、その点のお答えがございませんでしたから、重ねてお伺いをいたします。
  28. 高木廣一

    高木政府委員 支援するという意味が私によくわからないのですが、日本側において、国内におきましては地方海外協会等もございますし、これらのものが活発にできるように、あらゆる協力——支援という意味がわかりませんが、できる限りの協力、できる限りの援助はすべきであると思います。そして、たとえば全農中の場合ですとコチアとタイアップしております。したがって、コチア全農中がブラジル側日本側でタイアップして、そうしてコチアが要望する人をこちらから出すというようなことは、非常にいいことだと思います。それから、それ以外の力行会でございますと、現地にまた力行会がございます。これが日本側力行会とタイアップして、そうしてまん中の事業団を通じて移住者が統制とれて出ていくということが好ましい。それから、旅行あっせん業者も、同じように現地にこれを世話をする人がおります。これとのタイアップ、こういうことでございまして、われわれが現地及び日本側における民間活動をできるだけ活発ならしめることが好ましいし、それと協力することは好ましいと申しましたのは、そのようなことでございます。
  29. 西村関一

    西村(関)委員 おっしゃるとおりでありますが、私の伺っておりますのは、事業団それ自体が行なう事業の中で、外地においても、事業団の行なう事業が本流であって、他の民間団体のやることは亜流なんだという考え方があってはいけないと思うのでして、むしろ、大臣もしばしば言っておられますように、これはサービスでございますから、やはり民間事業に対してもサービスしていく、こういう意味から、どのような団体でありましても、これに対して支援していくということでなければならないし、在外公館もそういう精神に徹してお世話をしていき、協力をしていくべきではないかということです。支援ということばは、精神的な面ももちろんその根底になければ、支援ができません。何かそこに水くさい感情がまじりましては、支援になりません。これらの苦労をして困難な移住事業に当たっている諸団体に対しまして、現地公館はあたたかい配慮をしていく、また、事業団の行なう事業の中で、予算の許す範囲内における経済的な援助も行なっていく、こういうことが望ましいと私は考えるのでございます。従来から間々在外公館現地コロニア社会との間に摩擦があった、そういうことがもしほんとうであるといたしますならば、これでは移住仕事は成功いたしません。やはり、そこには、寸分のすきの生ずる余地のない緊密な一体的な状態になって仕事をしていく、いわゆる協力していくということがなければならぬと思うのでございますが、その意味のことを、私はもう一度この機会にあらためて外務省方針を聞いておきたいと思うのであります。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 西村委員の仰せのとおりでございまして、事業団というものが広く民間団体協力を求めなければ、移住事業が推進できないことは当然でございますし、また、進んでその御協力を願うように、可能な限り精神的にも経済的にも事業団が御相談相手になりまして、協力意欲を高めていただくように措置するのが当然のことでございまして、問題は、移住事業を推進するということが目的でございまして、事業団が排他的な精神なんかになっておったのでは、とてもこの目的は達し得られませんので、いまお示しのことは、事業団運営にあたりまして十分気をつけなければならぬことでございますし、私どもといたしましても、そのような方向に指導いたしたいと思います。  それから、在外公館のことに言及がございましたが、このことは当然のことでございまして、在外公館ばかりでなく外務省全体がサービス精神に徹しなければならぬということで、皆さんに私は御奮発をお願いいたしておる状況でございます。
  31. 西村関一

    西村(関)委員 次に、移住振興会社事業団への引き継ぎの問題でございますが、海協連移住会社資産並びに負債は当然一切をあげて事業団に引き継がれるということは、本委員会においても局長からそのとおりであると御答弁があったところでございます。このようなことが事務的に行なわれます場合に、譲渡税あるいは登録税がかけられるのだと思うのでございますが、それは相当膨大な金額になろうと思いますが、ブラジルアルゼンチン、パラグアイ、それぞれの国の法律事情によって違うかと思いますが、これはどのようにお考えですか。
  32. 高木廣一

    高木政府委員 先生のお尋ねは、現地における譲渡税のことかと了解いたします。ブラジルにおきまして名義を書きかえます場合に若干の譲渡税がかかります。ブラジル以外は、先方政府との話し合いで、これは全然税金がかからないし、従来からも正式な登録になっておりません。ブラジルにおきましては若干かかることは事実でございます。
  33. 西村関一

    西村(関)委員 若干というのは、どの程度の譲渡税がかかるのでありますか。この際一応聞いておきたい。
  34. 高木廣一

    高木政府委員 先方政府と交渉いたしましてできるだけ少なくすることにいたしておりますが、まだ計算はわかりません。
  35. 西村関一

    西村(関)委員 先日の委員会においての御答弁の中にも現地法人お話がございました。この事業団に引き継がれます場合に、現地法人との関係は、両団体現地法人、特に振興会社現地法人との間に結ばれております関係をそのまま引き継ぐということに相なるのでございますか。
  36. 高木廣一

    高木政府委員 現地法人はそのまま残りますから、出資者名義が変わるだけになるわけでございます。
  37. 西村関一

    西村(関)委員 簡単に出資者名義が変わるということで、事業団が発足いたしました場合に、事業団からあらためてその現地法人に出資するということになるのでしょうか。いままで出資されたものが引き揚げられてしまうと、その現地法人というものが成り立たなくなるきらいもございますが、それをまたあらためて出資するのですか。一応現地法人を解散して、あらためて現地法人をつくるのであるか。その点いかがでありますか。
  38. 高木廣一

    高木政府委員 現在われわれが考えておりますのは、移住会社事業団に実態は同じだけれども変わったということで、名義の書きかえをするということで考えております。
  39. 西村関一

    西村(関)委員 資産の処理をいたします場合に、そういうことで済まされるのでございますか。一応振興会社というものがなくなるわけですね。なくなって新らしい事業団に引き継がれるわけです。引き継がれる場合に、出資しておりました額をそのままにしておいて、名義の書きかえという便法で、はたしてブラジル国政府がそういうことを認めるかどうか。私は、前申しました民法の関係もございますので、念のため伺っておきたいと思うのでございます。
  40. 高木廣一

    高木政府委員 この点は、われわれも、現地法律家弁護士等とも相談をいたしておりまして、それはできるということであります。なお、御承知でございましょうが、最近になりまして、日本ブラジル移住協定も上院、下院を通りました。大体発効が一カ月以内という情報が来ております。これに基づきまして、われわれといたしましては、現在移住会社が得ている待遇以上のよりよき待遇を取ることをさらにやりたいというのが外務省考えでございます。
  41. 西村関一

    西村(関)委員 現地法律家意見を聞いて万遺漏のないように措置していきたいということでございますから、若干私には疑問が残りますけれども、これ以上この点についてお伺いすることをしないでおきたいと思いますが、その点御如才はなかろうと思いますけれども、非常に大事な問題でございますから、あとで間違いの起こらないようにやっていただきたいとお願いを申し上げておきます。  その際、移住振興会社が持っております民間の資本がございますね。この民間の資本の償却につきましては、民間の資本の処理につきましては、今度は民間の資本が入らないわけですから、これをおそらく移住振興会社が買い取って償却をする、こういうことにならないといけないと考えるのでございますが、そういう場合に、おそらく、この海外移住協力をいたしました民間資本が出資額よりは相当下回る、おそらく三分の一か五分の一か、それ以下の額として償却される、こういうことに相なるのじゃないかと思いますが、そういう場合に、このように従来から財政的に非常に協力してくれました民間資本に対し迷惑をかける、こういうことが今回の事業団の発足にあたって事実起こってくるのじゃないかと思うのでございますが、これは全体の中から考えるならばそう大きな問題でないとお考えであるかもしれませんが、民間協力を得て今日までやってきた、その民間の資本に対して損失を与えるということに対しまして、外務省はどのようにお考えになっておりますか。
  42. 高木廣一

    高木政府委員 外務省といたしましても、民間出資者は非常な協力をしていただいておりますので、その民間出資者の立場をできる限り尊重してやっていきたい。それで、実は、先般、移住会社創立の際の世話人の石川一郎先生はじめ全株主をお呼びいたしまして、今度の事業団法の御説明も申し上げて御了解を得た次第でございます。そして、民間出資は事業団発足前に会社が買い取る形になりまして、事業団発足と同時にできるだけすみやかに財産評価委員が定められまして、これが評価をするということになっておる次第でございますが、われわれといたしましては、民間立場を十分尊重し、従来の好意を無視せないような運び方をいたしたいと念願いたしております。
  43. 西村関一

    西村(関)委員 関係者をお集めになっていろいろ御説明になったということでございますから、一応の手順を踏んでおいでになるわけでございますが、しかし、こうなってまいりますと、民間の方は損をしてもしかたがないというような気持ちもまじってくるのは当然だと思うのでございますが、私は、そういう気持ちを与えたのでは、せっかく協力してくれた民間人に対して報いるところでないと思うのです。もちろんほかの面においてもうけてもらっているというところがあるかもしれませんけれども、しかし、こういう転換期にあたりましては、いま局長も十分その点は配慮していきたいというお答えでございますから、そのようにできるだけ民間資本の処理にあたっては厚い配慮を払っていただくということが願わしいと思うのでございます。  それから、先ほどの問題に関係をいたしまして、現地公館現地コロニア社会関係につきまして、従来ややもいたしますというと必ずしもしっくりいってなかったというような事例があるということを聞いておるのであります。これは、大臣お答えになったのですから、もしあったとしても、今後はそういうことは全然起こらないと私は思いますし、十分な御指導がなされるわけでございますから、その心配は杞憂に終わると思うのですが、非常にくどいようでありますけれども、高木局長承知の、サンパウロ市の近郊の桜植民地の問題。桜植民地を興しました現地の足立小平治、この方が岐阜村をつくるということで非常に努力をなすったのでありますが、海協連サンパウロ支部はこれに対して積極的な協力をしなかった、総領事館におきましてもこの桜植民地に対しては海協連の側に立ってあまり協力的でなかったというふうに聞いているのでありますが、そのときの、海協連サンパウロ支部長大沢大作氏と桜植民地の責任者足立小平治氏との間の誓約書が私の手元に参っております。これを見ますると、「桜植民地向け移住者の公募申請に当り左記事項を確実に実行する事を誓約致します。」という前文で、一から五までの事項が書かれております。一は「移住者入植前に幹線道路及び各ロッテに至る支線道路の整備」、二が「入植後住宅が完成する迄の仮収容所の建設整備」、三が「入植者の営農指導及び融資のあっせん等は、海協連総領事館を煩らわすことなく責任をもって実施すると。」、四が「公募に対する応募者が四十家族未満であっても不服を申立てないこと。」、五が「植民地より発生する問題はすべて責任をもって解決し総領事館海協連には一切迷惑をかけないこと。」、こういうまことに冷酷な誓約書を取られておる。こういうことでは、協力支援もあったものでないと私は思うのです。この点につきまして、私はこれだけの文書だけでは的確な事情をつかむことができないと思いますけれども、しかし、この文面からにじみ出ておりまするところの海協連支部及び総領事館の態度は、非常な苦労をしてそこに新しい岐阜村をつくるのだ、桜植民地をつくるのだということで非常に意気込んで来ておる同胞に対しまして、先ほど来大平大臣の言われておりまするようなサービス精神に徹するやり方だとは、私はどうも考えられないのです。これらの点につきまして、事情はいろいろあろうと思うのです。私は一々その間の事情について究明しようとは思いませんが、問題は先にさかのぼるようでありますけれども、こういうことから察せられるような不親切な取り扱いが事業団運営にあたってあってはならないというふうに考えます。その点につきまして局長の御答弁を求めます。
  44. 高木廣一

    高木政府委員 ただいまの文面だけを見ますと非常に冷酷なように見えるのでございますが、この桜植民地は、最初に土地をお買いになりまして、岐阜県とか長崎県とか各県と協力して出すお考えでございましたが、長崎のほうがだめになり、岐阜のほうもだめになった。しかし、せっかく土地も買う約束をして手付金を入れたということで日本へお帰りになりましたので、われわれも、岐阜県に交渉いたしまして、いろいろ県としても募集協力願うというようなこともいたしました。なかなか十分な御協力を得られないので、海外協会連合会が全国地方海協を通じて募集をお手伝いするということにしたわけでございます。そういう点で、海外協会連合会が募集までしてお手伝いする場合に、万一、そこへ入ったけれども十分な状況でないということで、入られた方々からまた問題を起こされるというようなことになっては困るということで、そんなことがあっても絶対何とかやるという御決心でございましたので、その御決心は十分認めていただきまして、なお、それ以外に、現地の海協といたしましても、移住会社からの融資とかあるいはその他できる限りのことをし、場合によれば保証のようなことまでやりまして協力している。われわれといたしましては、民間活動としてこういう移住の推進をしていただくのは非常にけっこうであって、できる限り協力いたしますと同時に、それが無責任にわたって入られた移住者が迷惑せられるというようなことのないようにだけはいたさないと責任が果たせないので、いまのような文章になったと思います、その文章の形だけからは、先生おっしゃったように非常に冷酷に響きまして、もっと表現を考えるべきであったかと思うのでございますが、実際はいま申しましたような実情でございます。
  45. 西村関一

    西村(関)委員 事情はいろいろあったと思いますし、こういう取りきめをなすった現地の支部長なり総領事のお考えは深いところにあったと私は思うのであります。しかし、現地移住して苦労してやろうという方々の受け取る側が、親心を親心として受け取らない、そういう場合がたくさんあると思うのです。そういう場合がたくさんあると思いますけれども、そこはやはり、きびしい態度で臨まれても、また、念には念を入れてきちんと詰めるところは詰めていかないとあとあと影響するところが大きいからという配慮をなさることが必要でございますが、十分に納得さして、十分に理解さしてやられるということが、そうでありましても私は必要であると思うのです。ただおまえのところはこうなんだということでは、そういう深い配慮があっても、それがそのまま受け取られない場合が多いと思うのでございます。私は、その点につきまして、いま局長の言われましたような事情があることは認めますし、依頼心ばかりを起こさしてはいけない、また、自主独立の精神を持って開拓にあたる、新しい村づくりにあたるということでなければならぬ、そういう意味から、場合によっては、シシがその子を谷底に突き落とすような態度も必要だと思うのでございますが、しかし、その背後には、やはり、あたたかい親心、大臣の言われますサービス精神だとかいったようなものがあって、そこから出たきびしい態度でなければならぬと思うのでございます。この点はもう御答弁は要りません。私はこの一つの事例をここに申し上げまして、今後の事業団運営にあたってなお十分の御配慮をいただきたいということをお願い申し上げる次第であります。  次に、私は、同僚の久保君が質問を申し上げたいということでございましたから、いままでの質問で触れてまいりませんでしたドミニカ引き揚げ者の事後処理の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  本会議におきましても、私はドミニカ問題についてお伺いをいたしまして、大臣からの御答弁があったわけでございますが、大臣答弁では、ドミニカ引き揚げ者の事後処理については、ほとんど全部と言ってもいいくらい解決したというふうに伺ったのでありますが、その後陳情をいろいろ受けまして、必ずしも大臣の御答弁のようにはなっていないということを聞かされたのでございますが、事実引き揚げ者の方々がその後どのように落ちついた生活をしておるか。これは、外務省としては、十分に関心を払ってお世話なすったことであり、関係各省とも連絡をとってなすったことであり、ドミニカの引き揚げ者の動静については十分に深い配慮を持って見守ってきておられる点だと思う。それがうまくきちんと落着しておりませんと、今後の移住を進めてまいる上においても非常に影響するところが大きい、こう思います。また、国会におきましても、ドミニカの問題は、四十国会でありましたか、非常に大きな問題になりまして、政府も責任ある答弁をしておられるところでありますから、その後のドミニカ引き揚げ者はどうなっておるかということを、具体的に数字をあげてお示しを願いたいと思います。
  46. 高木廣一

    高木政府委員 帰国いたしました移住者百二十七名の就職状況から申し上げます。自家営業者二十一名、職業訓練所入所者七名、児島湾干拓地入植者三名、南米再渡航者三名を除きまして、八十七名の方が就職済みでございます。夫就職者が六名ございます。その二名は、高年齢者、御婦人二人でございまして、これはその娘さんのところにおいでになります。それから、病気で長期療養しておられる方が二名ございます。それから、あと二人就職しておられない方がございます。そのお一人は、御家族が働いておられますが、御当主が働いておられない方、それから、もう一名は、就職をせられましたが、それをおやめになって現在就職しておられません。それ以外は全部就職のお世話をいたしております。必ずしも高額の職業とは申しません。十分ではないかもしれませんが、最近も、公営住宅に入った、自分はブルドーザーに乗っている、生活は決して自慢できるほどじゃないけれども満足しているといって、礼状なんかも来ております。それから、病人、訓練所入所者、就職者中低所得者に対しましては、生活保護を適用中でございますから、生活は一応安定しておるものと考えます。  なお、生活保護に関しましては、各県でも特別に考慮いたしまして、できるだけ寛大な考え方で、就職をしておられましてもできる限り生活保護を併用するように県で配慮しているようでございます。  それから帰国の方の住宅状況でございますが、自宅入居者二十九名、公営住宅入居者三十八名、就職先の社宅、工場、寮等入居者二十四名、それから、親戚同居、借家等入居者三十三名でございます。そのほかは、南米移住で住宅の必要のない者三名でございます。なお、社宅、借家入居者中には公営住宅入居申請手続中の者がおられて、公営住宅完成次第逐次入居可能の見通しでございます。いま申しました数字のあとで、最近入ったという礼状がまた一人から来ております。  それから、帰国者百二十七名中、家庭裕福で最初から生活保護の基準に乗らない者及び本人の意思によって適用を辞退された方が四十六名でございまして、これを除きまして八十一名が帰国直後は生活保護法、医療保護、教育保護の適用を受けておりましたが、就職等によりまして一定の所得に達した者は逐次支給を打ち切り、または削減せられた結果、現在、適用者は、病弱で就労不能者、訓練所入所者、就労者中低所得者を合わせまして三十七名でございます。  そのほか、国民金融公庫より事業資金五十万円の融資が実現した人が一名、岡山児島湾干拓入植採用決定者三名、それから南米再渡航者三名であります。  なお、ドミニカから直接南米に転住せられた方々は、ブラジルアルゼンチン、パラグアイに参られまして、その一部の方は相当の準備をして行かれて非常によくやっておられる。現在南米転住者は一応みな安定しておられるというふうに聞いております。  なお、ドミニカに残られた方々につきましては、帰られた方の土地をさらに割り増し配付を受けられたことと、それから、ドミニカは国有地を提供せられたのでありまして、これは十年ないし十五年たてばそこにおる限り所有権が得られるという約束で行ったのですが、最近になりまして、向こうの政府からその件に関する一札を取りまして、今後いかなる政府に変わりましてもその権利があらかじめ確保されているという実情でございます。  なお、ドミニカにおきましては、御承知のとおり、南米諸国との国交が再開され、アメリカの援助もできまして、日本人が生産いたしました農産物が輸出できるし、この輸出の関係でまた輸出農産物買い取り者からの融資も相当積極的に行なわれまして、現在かなり安定した状態にあるという実情でございます。  われわれといたしましては、この帰られました方々の保護救済につきましては、外務者が窓口になりまして、労働省、建設省、農林省、大蔵省の御協力を仰ぎ、また県及び地方海協の協力を得ましてお世話しておりまして、今後ともできる限りのお世話を続けていきたい、こういうふうに思っております。
  47. 西村関一

    西村(関)委員 ただいまの高木移住局長の御答弁によりますと、十分にということはできないけれども、ほぼ満足すべき状態に解決しつつあるという御答弁でございましたが、就職の点から申しましても、なかなかドミニカから引き揚げてこられた方が満足するような就職先を得るということは困難であると思います。現在の状態では、非常に低賃金で、将来希望を持つことのできるような職場でないというところにとりあえず落ちついているというかっこうの人が多いように思うのであります。裸一貫で引き揚げてまいった方々が今後どうして立ち直っていくか、どのようにして生活再建をやるかということは非常に大きな問題であると思うのでございます。特に、私は、子弟の教育について、現地日本の教育がおくれておったこれらの方々の子弟の教育、これは親たちにとっては大きな関心事であることは言うまでもございません。こういうことにつきましても十分な配慮が必要であると思いますが、いろいろな点についてハンディキャップを持っている人たちでございます。これをどのように所を得させていくかということは、外務省が窓口になって関係各省と緊密な連携をとって今後とも進めていく、こういうことでございますから、ぜひそれをやっていただきたい。そしてまた、不幸にして引き揚げて帰ってこられた方々に対して国ができるだけ手厚く迎えていくということが、ドミニカに残っておる人たちの定着、生活の安定、営農がうまくいくということとあわせて、この大きなマスコミによって宣伝せられましたドミニカ問題が逐次その後は明るい日の目を見つつあるということになりますと、これはまた今後の移住行政あるいは移住事業の進展の上において影響するところは非常に大きいと思うのであります。  このドミニカ引き揚げ者の雇用については、外務省は、十分一生懸命やっている、また心配をしておるのだと言っておいでになりますが、引き揚げ者の中には、まだまだこれでは子供の問題も困るし生活の問題も困るし、住居の問題は解決したというものの、親類や縁者の家におるということはこれ以上はたえられぬというような人もあるようです。そういうこと等もあわせて、ドミニカ問題につきましてはなお十分な行き届いた配慮をしていただきたい。この点大臣も御賛成であると思いますが、大臣の御見解を承っておきたいと思います。
  48. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりでございまして、本会議におきましてはあらましの状況を短時間に御報告申し上げましたので、意を尽くさなかったと思うのでございますけれども、なおいま御注意がありましたように個々の実態につきまして政府でなすべきことがございますならば、これは進んでいまもお示しのような精神お世話申し上げるべきものと心得ております。
  49. 西村関一

    西村(関)委員 これで終わりますが、いままで、本委員会を通じまして、私はあくまで政府の御方針協力を申し上げようという立場から終始質問をしてまいったつもりでございます。若干の問題になる点、心配になる点、——私の不勉強なために思い違いもあったかもしれませんし、至らない点もあったかもしれませんが、私は私なりに移住のことを真剣に考えて取り組んでおるつもりでございまして、私自身も青年時代に移住者の一人として苦労をした者でございますから、それだけにはだで移住の問題を取り上げておるつもりでございます。  いままでの質疑応答の中におきまして、政府当局は、私の質問に対し、また他の同僚の委員質問に対して誠意を持ってお答えいただいたということについては、私も心から敬意を表したいと思います。権威ある国会の委員会の審議でございますから、その一切は会議録にとどめられておるわけであります。ここで質疑応答の中で明らかになりました点、大臣以下がお述べになりました多くの大事な点につきましては、責任を持ってその御答弁の趣旨が生かされてまいりますように今後格段の御配慮をいただきたい。たとえ大臣がおかわりになりましても、その御趣旨が末端にまでしみ通ってまいりますように、また、事業団が発足する場合には、その運営の中の基本的な姿勢として、かまえとして、これが強くそういう一つの新しい伝統としてつくり上げられてまいりますように、また、この機会に他の省との間のいざこざというものが一切解消されて、一本の姿になって日本移住行政が前向きになりますように、そのことを特にお願い申し上げたいのであります。  最後に大平外務大臣の私の趣旨に対する御見解を承って、私の質問を終わることにいたしたいと思います。
  50. 大平正芳

    大平国務大臣 西村先生も御案内のように、移住仕事というのは、私は非常にむずかしい仕事だと思います。これは、単なる労働力の移転というような角度で取り上げるには、あまりに幅のある、深みのある問題だと思うわけでございまして、この問題を円滑に推進してまいるということは、容易ならぬことだと思うのでございます。そして、私どもがこの段階におきまして御提案申し上げ御審議をいただておることにつきまして、いろいろ究明され、御指摘がありましたように、決してこれは完ぺきなものではないと思うのでございまして、基本法の問題を初めといたしまして、今後なおいろいろ施策してまいらなければならぬ多くのものを含んでおると思うのでございます。したがいまして、私どもといたしましては、国会におきましてこの問題に御経験も持たれ御関心も持たれかつ御見識を持たれた先生方の御論議というものを虚心に聞きまして、そして、今後の施策を進めていく上におきましても、また今後の施策を新しく樹立してまいる上においても十分これをくみ取っていかなければならないという態度で本委員会に臨んだわけでございます。終始熱心に御論議いただき、微細にわたって御究明いただきましたことを、私は非常にありがたく存じておるわけでございます。  しかし、問題は、先ほど申し上げましたように、この問題は非常に奥深い問題でございまして、非常に困難な問題でございますので、事業団法そのものについて御承認を国会から取りつけましても、それは単なる一里塚にすぎないのでございまして、いままでの御論議をよく玩味いたしまして、今後の施策に万全を期してまいりたいと思います。  それから、御心配の各省間のいろいろな摩擦でございますが、これは、根本的に、私がたびたびお答え申し上げましたように、移民者にとりましても非常に御迷惑な話でございますので、お互いに相戒めて、こういうことがないように相協調していく。相協調していく場合には、それぞれの省がそれぞれの立場で排他的な気持ちがあるようなことであってはいけないというように心得まして、いま各省の間で何とか協力していこうという機運がようやく芽ばえつつあるわけでございますので、国会の御指導・御鞭撻を得まして、さらにこの空気をよくあたため育成していくように配慮してまいりたいと思います。  御審議をいただきましたことに対しましてお礼を申し上げると同時に、今後一そう御指導を賜わりたいと思います。
  51. 野田武夫

  52. 田原春次

    田原委員 海外移住事業団法案は、いろいろな角度から、法案そのものの審査、質疑、それから従来の状態並びに関係各省の状態等について相当質問が進んでまいりました。したがって、もしこの法案を通すとすれば、まず二、三もう少し聞いておきたいことがありますので、お尋ねいたしておきます。それは主としてこの事業団に従事する者の心がまえでございます。  まず、大臣は、この事業団に、どういう資格というか、能力というか、範囲の理事長を迎えるつもりであるか、何か腹案があればその構想示してもらいたい。
  53. 大平正芳

    大平国務大臣 まず第一に、事業団自体の中にあつれき・紛争を生むような人事ではいけないと思うのでございまして、事業団を新しい清新な事業体としてまとめ上げていくに足る資質を持たれた方でないといけないし、そういう意欲を抱いた方でなければならぬと思うのでございます。そのためには、なるべくとらわれない人がいいんじゃないかと存じまして、農林省系、外務省系というようなことではなくて、広く活眼を開いて人材を求めて、新しい団体としてきびきびまとまった活動ができるように、そういう資質を備えたお方をお迎えしたいものだと考えております。そして、その方がきまれば、その方の責任において、勇断において、そういう趣旨に沿った人事の配置をお考え願う、それがよほどのことでない限りは政府としてはあまり家父長的な一々干渉がましいことはやらぬほうがいいのじゃないかというような感じを私は持っております。
  54. 田原春次

    田原委員 従来、公社、公団、事業団、特殊法人、特殊会社等、国家的な仕事を分担する団体においてしばしば汚職、涜職等が起こっておることは大臣も御承知のとおりであります。たとえば、東北開発株式会社で汚職が起こりまして、いま検察庁から一年半かの求刑をされた者が出ておるようであります。なおまた、国鉄も、新幹線については用地の買収等について汚職が頻発し、それぞれ法のさばきを受けつつあります。日本国内において、新聞もあり、国会もあり、監視厳重な中において、なお公社、公団にはこういう間違いを起こす者がある。いわんや、海外移住事業団に至っては、ただ一つ団体であって、しかもその範囲は非常に広範である。ブラジル一国だけでも日本の二十六倍もある。そのほか、アルゼンチンも八倍もある。こういうふうなところに散在する、しかも多くは僻地に散在しておる新移住者サービスのために設けられておる従来の海外移住振興株式会社並びに海外協会連合会の役職員が、しばしばその権力を悪用していろいろな間違いを起こしていることは、われわれよく知っておるのでございます。これは、とかく、外務省出先にいたしましても、本省にいたしましても、なるべくこれを見のがし、そして国内で公表せぬようにする傾向があるように、まことにまだるっこしく私は考えておる。したがって、それであればこそ、せっかく十年近い年月を要し、多額の国費を使ったにもかかわらず、二つの団体とも、少しも成績があがらず、もっぱら内部抗争をいたし、あるいは派閥抗争をいたし、そして、その結果、この団体ではだめだということになって、ここに事業団発足の構想が生まれたものと思うのであります。よって、まず新事業団の発足に際して気をつくべきことは、第一は、海外移住者へのサービスを第一としなければいかぬ。そのためには、役職員の綱紀粛正をあわせて断行しなければいかぬと思いますが、ただいま大臣構想を伺うと、外務、農林系統からは出さぬというだけのことでありますが、はたしてそれ以外の者でどういう人を考えておられるか知らぬが、最近の海協連は全くめちゃめちゃでありまして、妖雲たなびくという感じがしておる。だれも仕事をしておりません。船が出るのに送りにも行かぬし、地方の海外協会から電話をかけても応答一つできないような状態であります。移住振興またしかりであります。したがいまして、彼らの最も関心を持っておるのは、自分たちが引き続き事業団に残ろうという非常なる策謀と陰謀とでありまして、怪文書が飛び、社会党に五万円持ってきたりするのもそのあらわれであります。そこで、やるならば、こういう弊害を一掃して、清新かつ誠実、清潔なる人をもって発足しない限りは、同じ病気を持ったものを二人を一人にいたしましても、効果はあがらぬと思っております。私はしばしばこのことを特に顔をおかして言っているのは、私心あるにあらず、りっぱなものをつくってもらいたいと思うからであります。大臣がもし理事長をどこからか推薦して持ってきた場合、来てみたが、どうも仕事はできぬからよしたということではいかぬと思う。いまの暗雲たなびく両団体のせり合い、人事の抗争、その背後には、おれはおれの姉が外務省の高級官吏のところに行っておるから首は大丈夫だというようなことで醜い争いをやっているものを、はたしてあなたは一掃し得ますか。一掃するだけの決意をまず大臣が持つ、そして、それを助けてやっていくような理事長を得ない限りは、うやむやになってしまうのではないか。国会がまさに終わろうとするころにわれわれが心配しているのはそれであります。不正、貧富、不義の徒は一掃するという大臣の強固なる決意があるかどうか、もう一度はっきりしてもらいたい。
  55. 大平正芳

    大平国務大臣 田原先生から力強いお示しあるいは非常に好意ある御鞭撻をいただきまして、大へん私は感銘にたえません。微力でございますが、いまお示しのような勇気を持ちまして、私の同僚と協力いたしまして最善を尽くしたいと思います。
  56. 田原春次

    田原委員 たくさん来ております材料の中から一例をボリビアにとりましょう。これだけ一つ申し上げてみます。ボリビアに某支部長が在任中に犯した数々の悪弊をここに申し上げます。  第一は、彼はサンファンの支部長で、あたかも自分がそこの大名のような気持ちを持って、ここではおれの命令を聞かぬ者は全部日本に追い返す、ここは封鎖国家である、こう宣言して、外部との連絡を断って、自分かってな計画をやる。たとえば、事務所を建てるにしても、ボリビアの風土に合わぬ自分の好みのものを建てて、いま迷惑しておるような状態がある。  第二点は、先日大臣も聞いたと思いますが、ボリビアの国教であるカトリックを圧迫して、日曜にも仕事をさせ、クリスマスにも仕事をさせるというようなことをこの男はやった。それで、地元でもたいへん問題になりまして、ボリビアの政府の間でも問題になっておる。こういうようなことをやっておる。第三は、そういう事情日本に訴えようとして手紙を書きます場合、非常に離れたところでありますので、一応郵便は海協連の事務所に集めて、それから投函するのでありますが、ある人は九通出したのに一通もついてない。みなこれは自分がかってに封をあけてみて、自分に不利なことを書いたものは全部破棄したらしいということが、本人が帰国して初めてわかったという事実がある。これは全く権利の乱用であるし、私文書のかってな開封は憲法にも違反すると思う。  それから、第四点は、先般の質問で申し上げましたように、せっかく財産を処理して一家あげてボリビアに移転し、ある者は商店を開いた。ところが、彼は、自分が支部長という立場から、生活協同組合をつくり、その組合長を兼任しておったのでありますが、そのほうの経営がうまくいかぬで、店を開いたほうがうまくいったので、これを追っ払おうといたしまして、地元の官憲にうそ八百を並べ、強制送還した。家族はそれではしょうがないからブラジルに移転しましょうと言ったが、ブラジルヘの移住も認めず、全部郷里に送還しておる。福岡県と香川県であります。私とあなたの県にその被害者は現在おるのであります。一方において募集宣伝をして旅費まで貸して出す。向うに行っておる海協連移住振興会社の職員は、サービス精神に徹しておるならば、サービスを主として相談にあずかるべきものを、自分があたかも大名か代官のごとき考えを持って、かってに放逐するに至っては、もってのほかである。特に、その村にわざわざ日本医師会と厚生省の推薦で医者を入れた。その医者と意見が合わずに、医者を精神異常者だと称して、これまた医者をも追放しております。この医者は現在佐賀県の国立病院に就職いたしまして、何ら精神異常でも何でもない。その人から詳細な報告が私に来ております。必要であるならいつでも参考人として出ますという手紙が来ておる。これはもってのほかのことで、病人もおるであろう村におきまして医者を追い出すということは、もってのほかである。そういうことをやるほうがよほど精神異常者と思わねばいかぬと思います。  第五は、かような横暴かってをきわめましたために、海協連のボリビア支部における予算について、昭和三十四年から三十五年までにおおよそ三万五千ドルの使途不明事件が起こっておる。ついに、外務省でもこれを調査しても調査できず、会計検査院がことしになりまして二名出張していま調査をしております。今月の二十一日に帰ることになっておる。その間、この男は、自己のさんざん乱費しましたあと始末のために、自己の腹心中の腹心をボリビア支部長代理に入れてつじつまを合わせようとしておる。しかしながら、村人はみな知っておる。村人のある者からの報告によりますと、三万五千ドル、合計一千四百万円の不当流用の一部を、何とニューヨークの銀行に貯金をし、日本のほうにも一部貯金をして、そうして自分の私財にしておるといううわさも立っておる。このことを責めますと、外務省では、刑がきまってからでなければそういうものは簡単に異動できませんと言う。行政上、実務上の失敗を、刑の確定まで待つなんということはできぬはずだ。明らかな事実があった以上は、これは断固信賞必罰でやるべきでございます。外務省の人たちがお上品で弱気で、そして何となしにそのままにしておるところに問題が起こってくる。  第六点は、これは第一回の質問でも申し上げましたように、その男がボリビアに赴任する途中で香港に寄港の際、自己の妻の堕胎をやらした。ドクター・ホフマンという人に堕胎さして、堕胎料を払っていなかった。したがって、船会社ロイヤル・ダッチ・オーシャン社の事務長スチープソンというのがしぶしぶと金を払っておるのでありますが、彼らは日本の役人というものはこんなにきたないものかと思っている。これは金額はわずか一万三千円でありますけれども、日本外務省の威信を失墜したことはなはだしいものであります。しかるに、弁護する者は、それはもう払ったからいいじゃないかということを言っておりますが、最近になって、私が暴露したから払ったらしい。  こういうことを続けてやっておる。こういうふうに、ただ一つのボリビアのある時期の問題をとらえましてもこんなにあります。したがいまして、いかに大平さんが清新強力なる新理事長を迎えてりっぱな人事をするなんと言っても、こういう妖雲たなびく海協連移住振興の人事をこのままにしておったのでは、何にもできません。このままでは必ず今度の事業団で旧海協連移住振興の派閥争いをいたしまして仕事は進みません。したがいまして、やるならば、まずそういう食官汚吏の首を切って、信賞必罰で、誠実清潔なる人物を持っていくよりないと私は思っておる。ここであなたがそれを約束できますか。もう一度私はあなたにお尋ねをしておきたい。
  57. 大平正芳

    大平国務大臣 先生がお示しのように、新事業団運営の基本はサービス第一主義に徹することだと思うのでございます。この精神を軸として運営に当たりますれば、そこに権力の悪用とかまた権力にまつわる汚職というようなことの温床が絶たれると思うのでございまして、まず第一にサービス第一主義に徹底的に徹するということで貫きたいと心得ます。  それから、いまお示しのような数々の忌まわしき事実、これが事実とすれば、これは許しがたいことでごさいますので、先ほど申し上げましたように、私も、そして私の同僚も、勇気を持って措置すべきものと心得ます。そういった点につきましては、今後私どもの施策の実行につきまして十分御監視いただくとともに、御鞭撻賜わりたいと思います。
  58. 田原春次

    田原委員 大臣の御答弁の中に、そういうことが事実であれば許しがたきものであるという、大平さんとしては珍しく激しいことばを出されたので、私は非常な期待をいたします。従来、あなたは、答弁いたしましてもひょうたんなまずで、はっきりしたことを言っておりません。これは日韓会談やポラリス問題を聞いておってもまことにそのとおり。しかしながら、事業団に対しての熱意を私は買います。そこで、しろうとであるを幸い、ずっと外務省で育ってきた人でないのを幸い、大なたをふるってやってもらいたい。これに対しましては、おそらく正義を愛する自由民主党の外務委員諸君においても賛成をし、悪い者は切れ、こういうことになると私は確信しております。切らなければ、そのときは私はまたあなたに文句をつけなければならぬと思います。  次に、第二の質問に移ります。これは、大体来たる十月を目標に第四回の海外日系人大会を計画しております。昨年の海外日系人大会に際しては、当時官房長官であった大平さんが池田首相代理としてこの大会に臨まれ、そして北中南米各国から来ております一世、二世諸君に面会されまして、また非常にいい激励のことばをいただきました。これは非常な好感を持たれております。あの官房長官が外務大臣になったことであるから、さだめしこの十月の大会はもっと盛大にやってもらえるだろうという期待を持って、しばしば手紙が参ります。早きはすでに去る五月に一組ロスアンゼルスから来て待っている状態です。御承知のように、北米が約百年、ブラジルが約五十年、ペルーが約九十年、こういう歴史を持ったところの一世、二世の諸君が、まぶたに浮ぶ郷里に何十年ぶりに帰ってくるのでございますから、帰ってまいりました場合に、国民及び政府があたたかい気持ちでこれを迎えることは当然と思います。決して私はそろばんをはじくわけではありませんが、去年だけでもブラジル日本人が郷里に送りました貿易外の収入が八百万ドルと言われております。そういう金を送ってくるから歓迎するという意味ではないのでありますが、それほどに彼らは自分の国に非常な好感を持って帰ってくるわけでありますから、どうか本年もできる限りの援助と便宜を計らってもらいたい。岸総理大臣のときは、岸さんは二度も出席して、ガーデン・パーティーにも出席しました。池田さんは、首相官邸でやったときに出席できずに、あなたが代理で夜のあいさつをされたのを私も聞いております。これは、一国の総理ですから、いろいろ忙しい行事もあるでありましょうが、せっかく楽しみにしておることだし、総理大臣に呼ばれてガーデン・パーティーでおことばをいただきたいという気持ちで来ておりますから、五分や三分の時間がさけぬわけはないので、ことしは必ず総理大臣以下各大臣が出るようにしてもらいたい。その点についてはどうです。お答えできますか。
  59. 大平正芳

    大平国務大臣 お示しのようにいたすつもりです。
  60. 田原春次

    田原委員 次は、北米、南米にて発行している日本字新聞の問題であります。日本から行きました方々で向こうの事情のわからぬ方は、主としてこの日本字新聞にたよるわけでございます。北米では、ロスアンゼルスで日刊が三社、サンフランシスコで日刊が二社、ポートランドで日刊が一社、シアトルで日刊が二社、ユタのソートレークで日刊が一社、コロラド州のデンバーで日刊が一社あります。ニューヨークとシカゴでは、週二回刊がそれぞれ一社ずつあります。ハワイは、ホノルルにおいて日刊が二社、ハワイ及びマウイ両島においてそれぞれ週二回刊等が出ております。なお、カナダにおいては、ニューカナディアン紙がトロントで日本語と英語で出しております。これは、前述各国の日刊も、もちろん日本語のほか英文ページを二、三ページ持っておりまして、彼らは日本からのラジオのニュースその他を聞きまして、それをその新聞に載せ、また、その国の大きな記事をその国の新聞からとりまして載せておりまして、在留日本人にとってはたいへんに便利な機関であります。しかるに、全体の在留邦人が少ない、そうして範囲が広い、そういうことで経営がまことに困難であるにもかかわらず、やっております。さらにまた、南米に行きますと、メキシコでは週刊日墨新聞、日本語とスペイン語とでやっております。ペルーでは、ペルー朝日新聞というのとペルー新報、これは日刊でありまして、どちらもスペイン語日本語の新聞であります。パラグアイでは、活字が買えずにいま謄写版でありますが、パラグアイ新聞というのと週刊も出しております。アルゼンチンでは、亜国日報というのとラプラタ報知というのがあり、週三回でありますが、やはり日本語とスペイン語の新聞を出しております。ブラジルでは、サンパウロサンパウロ新聞とパウリスタ新聞と日伯毎日という三つの日刊があります。そのほか週刊もあります。北のほうは、アマゾンに行きますとアマゾニアという旬刊の新聞を出しております。在留日本人の間の非常に便利重宝なる機関であります。しかるに、全体の発行部数が少ない、集金も非常に不便である、広告もなかなか少ないというので、苦労しております。そこで、せめて私の希望することは、一年に一回ぐらい、日本新聞協会のときでいいと思いますが、各国から交代でこれらの社の編集者等を招待いたしまして、変わり行く日本の姿を見せる、それから、ニュースの交換、広告の提供、あるいは必要に応じては増資、合併といったような問題も援助すべきであると思います。これはあなたの所管の中の情報文化局の仕事であります。先般情報文化局長を呼びましたが、来ませんから、あなたにお聞きしますが、そういうふうに在外の日本語の新聞に対してサービス並びに援助をすることは、やがては日本の姿を正しく二世、三世に理解せしめ、そしてその国との外交においてもたいへん日本側にとって有利な機関になるのじゃないか、こう思うのです。これらに対していままでも一回もそういう例がないが、海外日本字新聞代表を日本に招待して懇談するというような形をつくったらどうかと思うのですが、いかがでしょう。
  61. 大平正芳

    大平国務大臣 御意見もございましたので、私も日本字新聞の御指摘のものをいろいろ拝見いたしたのでございます。本委員会において御審議いただいておる法案にからまる審議の状況なんかも詳しく報道いたしておりますし、そればかりでなく、日本のただいまの政治、経済、文化、あらゆる面のことが私ども予想しておったよりはずいぶん詳しく報道されておるということで、実は驚いたわけでございます。したがいまして、こういう新聞担当者を招待するといういまの御提案は、私も十分に研究に値するものと思います。私どもはいま情報文化局を通じまして外国の有力な新聞社あるいは通信社に日本を見ていただくということをずっと続けてやっておるわけでございまして、いま先生がお示しのような日本系の新聞の関係者をお呼びするというようなことは、私どもただいままで気がつかなかったことでございますが、十分検討に値することでございますので、部内でよく相談をいたしまして、お示しのような方向にできる限り努力してみたいと思います。
  62. 田原春次

    田原委員 次は、南北米の日本移住地における日本語教育を担当している日本語学校の先生の問題であります。これは、国によりまして、向こうの公立学校在学中の者には外国語を教えてはいかぬというところもあります。また、国によりましては、放課後日本語を教えてもいいというところもあります。戦後それぞれの事情は違いまするが、その中におきまして、アルゼンチンでもボリビアでもアマゾンでも、ブラジル、北米、ハワイはもとより、それぞれ小規模な学校を父兄たちが建てまして、いろんな縁故をたどって学校の先生を雇って日本語の教育をしておるわけでございます。これは、その国に生まれました二世、三世等がその国におけるりっぱな市民になることを私どもは心より希望しておるし、また、りっぱな市民になっておりまするが、どうしても、日本語を知りませんと途中で非常に不便を感ずるようになる。現に、これは高木移住局長も知っておると思いますが、ブラジルの代議士の田村君はもう二期代議士に当選しております。しかるに、最初に当選するまではほとんど日本語を知らなかった。当選後に、自分は日系二世であるというのでブラジル政府からいろいろ交渉があるのだから日本語を知らなければいかぬというので、急に夜学校に行って日本語を覚えたということを本人からも聞いております。したがいまして、海外における日本語の維持、その教師の優遇ということは、たいへん大切なことなんです。私のお尋ねしたいのは、ただいまの海外日系新聞の代表を日本新聞協会の集会のころに一国一名ずつくらいでも呼ぶということと、続いて、夏休みを利用すればひまがありますから、一国一名か二名ずつでいいから、その日本語学校の先生をどこかで費用を負担して母国を訪問させる。そうして、教育研修をやるとか、変わった日本の姿を見せて、また教科書等について検討させて帰す。年々これをやりますと、自分も何年先にはなつかしい日本に帰ってこれるというので、その日本語の先生が非常に楽しみにする。これは、政党政派の問題でなく、海外におります人々に日本文化を知らせ日本語を覚えさせるようにする日本語学校の先生でありますから、第二問の新聞代表と同じような意味において、やはり定期的に日本語学校教師招待のようなものを計画すべきものであると思いますが、どういうお考えであるか、これを聞かしていただきたい。
  63. 高木廣一

    高木政府委員 南米移住地におきましては、小学校ないし中学校まででございますが、われわれの予算でこれらを補助しあるいは経営しているものがございます。大体の先生方は戦後おいでになってまだそう年数がございませんけれども、みな非常に熱心にやっておられます。外務省といたしましては、在留邦人と母国との連絡強化という意味におきまして、あるいは経済協力のほうの資金によりまして二世の優秀な人を日本へ呼ぶ、これは純ブラジル人と日系ブラジル人を呼ぶこともやっております。また、本年度は二世のお医者さんを日本へ呼ぶということもやっております。こういう傾向に応じまして、各県でも県費留学生という制度をだんだん盛んにやっていただいておりまして、二世の指導的な方々日本に来て日本の学校で勉強するということをやっておる次第であります。日語系学校の先生につきましても、将来十分検討いたしまして、先生のお考えになっているようなラインに進むようにいたしたいと思います。
  64. 田原春次

    田原委員 いよいよ私の質問を終わりますが、くどいようでありますが、海外技術協力事業団における人事の取り合い、海外経済協力基金における人事の取り合い、とかく高級人事・中級人事が適材適所でなくて勢力関係に左右される実例をまのあたり見ておりますから、そういうことを繰り返すことなく、大臣の言明のごとく、不正不義の者は一掃して、強力な陣営をもって、広く海外各国にあって心配しながら見ておる在留民たちを安心させ、進んではサービスに徹底するようにされることを希望いたしまして、私の質問を終わります。
  65. 野田武夫

    野田委員長 他に御質疑はございませんか。  御質疑がありませんので、これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  66. 野田武夫

    野田委員長 本案について西村関一君外九名より修正案が提出されております。  この際、本修正案を議題とし、提出者より趣旨の説明を求めます。西村関一君。
  67. 西村関一

    西村(関)委員 まず修正案の案文を朗読いたします。お手元にございますから、ごらんをいただきたいと思います。    海外移住事業団法案に対する修正案   海外移住事業団法案の一部を次のように修正する。   目次中「第四十一条」を「第四十二条」に、「第四十二条−第四十四条」を「第四十三条−第四十五条」に改める。   第二十一条第一項中第十一号を第十二号とし、第十号中「前九号」を「前十号」に改め、同号を第十一号とし、第九号の次に次の一号を加える。   十 民間団体が行なう海外移住に関する事業について援助及び指導を行なうこと。  第二十一条第二項中「前項第十一号」を「前項第十二号」に改める。  第三十七条に次の一項を加える。 3 外務大臣は、海外において農業に従事する者の海外移住に関し前項の命令をしようとするときは、あらかじめ、農林大臣に協議しなければならない。  第三十八条中第三項を第四項とし、第二項中「前項」を「第一項」に改め、同項を第三項とし、第一項の次に次の一項を加える。 2 農林大臣は、必要があると認めるときは、外務大臣を通じて、事業団に対じ、海外において農業に従事する者の海外移住に関する業務の状況に関し報告を求めることができる。   第四十四条を第四十五条とし、第四十三条を第四十四条とし、第四十二条中「第三十八条第一項」の下に「若しくは第二項」を加え、「同項」を「同条第一項」に改め、同条を第四十三条とする。   第七章中第四十一条の次に次の一条を加える。   (地方運営審議会)  第四十二条事業団は、従たる事務所を置いた場合には、必要に応じ、当該事務所に対応して、地方運営審議会を置くことができる。  2 前項に定めるもののほか、地方運営審議会の組織及び運営その他地方運営審議会関し必要な事項は、政令で定める。 以上であります。  この提案の趣旨につきましては、今日までの委員会の審議の中で明らかになってまいりました諸点について、政府答弁に基づきまして、これを法案の中に組み入れることがよりその趣旨に沿う行政を行なってもらうゆえんであると考えましたから、以上のような修正案を提案したのでございます。  これは、おわかりになりますように、四つの点から成り立っております。  第一の点は、民間団体が行なう海外移住に関する事業については援助及び指導を行なう。これもしばしば政府がそのとおりであると答弁せられたところでございまして、この点を明確にしておくということ。  第二点は、海外において農業に従事する者の海外移住に関しましては、外務大臣が前項の命令をしようとするときには、あらかじめ農林大臣に協議しなければならない。こういう一項を加えようといたしましたのは、農林省の設置法によりまして農林省が行ないます固有の業務の遂行にあたりまして、農林大臣立場考えるときに、外務大臣として事業団に命令をする場合には、特に海外において農業に従事する者の海外移住に関する問題に限って農林大臣に協議するということは当然であると考えたからでございます。  第三点は、第二点と同様の理由によりまして、海外における農業に従事する者の海外移住に関する業務の状況につきまして、事業団はこれらの状況につきましては報告書を外務大臣に出すことになっておりますが、農林大臣には出すことにはなっておらないのでございまして、これを、農林大臣は必要のある場合には、事業団に対して海外において農業に従事する者の海外移住については報告を求めることができるというふうに入れることが適当であると考えたからでございます。  第四点は、これも政府答弁の中でしばしば言われたことでございますが、地方の声を聞く、また海外の声を聞くということのために、従たる事務所が置かれまする場所、それは各都道府県並びに海外各地になろうかと思いますが、それぞれの従たる事務所が置かれるところにおいて、当該事務所に即応して地方運営審議会を置くことがその趣旨にかなうゆえんであると考えたからでございます。  以上の趣旨に基づきまして、本修正案を提案する次第であります。
  68. 野田武夫

    野田委員長 これにて修正案の趣旨説明は終わりました。  本修正案について質疑の通告がありますので、これを許します。受田新吉君。
  69. 受田新吉

    受田委員 ただいま日本社会党より提案されました海外移住事業団法案に対する修正案に対して、若干の質疑を試みたいと思います。  この修正案を拝見しますと、主として民間団体が行なう海外移住に関する事業についての政府の責任を明らかにしていること、また農林大臣の職権をある程度明文化されたということ、並びに地方運営審議会の設置の規定という、三つのポイントを認めることができるのであります。  ここでこの修正案に至った事情を明らかにしたいのでございますが、大体、政府が提案理由の説明として御説明になった中に、この移住実務機関としての民間団体のことがちっとも書いてなかったのでございますが、これは提案理由の説明に取り上げるほどの筋合いでなかったということになるのかどうか、お答えを願いたいです。
  70. 高木廣一

    高木政府委員 実務機関として十分取り上げなければいけないと思います。私の方の言葉が足りなかったのだと思います。
  71. 受田新吉

    受田委員 局長さんの御答弁で、この移住実務機関については提案理由の説明の中にもそういう民間団体の存在を明記すべきだったが、ことばが足らなかったというすなおな御答弁がありましたので、一応了承をさせてもらいますが、この民間団体の従来の移住業務に貢献した実態というものも十分尊重した形でこの移住事業法案に対する修正案がつくられたという点におきましては、私自身も共鳴をするものでございます。ただ、ここで、外務大臣の職権と農林大臣の職権が競合する規定が修正案に出ているわけでございますが、農林大臣に協議をしなければならないというような、あらかじめ協議事項を中に入れたかかる事業団関係法案が他にあるかないか、特にこれは政府委員から御答弁を願ったらいいと思うのでございます。
  72. 高木廣一

    高木政府委員 事業団の性格によりましてはございます。たとえば水資源公団のようなものでございます。
  73. 受田新吉

    受田委員 こうした大国策を遂行しようとする事業団に、関係大臣が協議して指示するというような形の事例もあると承っております。水資源公団以外にも事例があると思うのでございますが、水資源公団しかございませんか。特に、給与決定の際における規定などは、大蔵大臣と協議する規定が各公庫、公団等に列記してあるわけです。だから、協議事項の事例は、いま私が一例をひきました問題だけでも幾つもころがっているわけなんです。そういう次第でございますから、外務大臣の専管事項に協議機関たる大臣が介入したからといって、主務大臣の権限が侵されたというわけではないわけなんです。主務大臣は、現在の場合は大平さんがやられる、こういうことになることには間違いないわけなんです。ただ、こうした関係大臣のある程度の政策関与、事業団遂行に関与するということは、一面責任が分散するようでございますけれども、実績をあげる上には非常にそこに深い配慮がされるという場合があるので、外務大臣大平さんとしても、こういう規定があったとしても差、つかえはないという御配慮があるかないか、御答弁願いたいと思います。
  74. 大平正芳

    大平国務大臣 修正案は国会の問題でございまして、政府がとやかく言うべき性質のものじゃございません。ただ、政府としては、いまこの修正案について西村委員から御説明がありましたような精神によって、事業団の円滑な運営をはかりたいと存じておるわけでございますが、法文の修正という点につきましては、私からとやかく言うべき性質のものではないと思います。
  75. 受田新吉

    受田委員 私が大臣にお尋ねしておるのは、修正案の条文についてとやかく聞いておるわけではないので、農林大臣と協議する規定があって差しつかえないかどうかは、修正案が出ようと出まいと、大臣としての考え方が必要なんでありますから、別に修正案があるなしにかかわらず、農林大臣との協議規定が出ることははなはだ不都合であるというお考えがあるかないかは、これは当然大臣として答弁する責任があると思うのです。
  76. 大平正芳

    大平国務大臣 政府は一体でございますので、農林大臣と協議しなければならないという規定があろうがなかろが、政府といたしまして全体にわたりまして十分相談し、協力し合って政府の政策の一元的な推進ということをはかるべきものと私は思います。
  77. 受田新吉

    受田委員 規定があるなしにかかわらずそれを遂行したいという決意が表明されております。したがって、その精神は現状でも十分生かされるというお気持ちだと思うわけです。  おしまいの、地方運営審議会の設置でございますが、移住振興をはかるためには、直接移住者を送出する地方を無視して中央からのかけ声だけではとても成果はあがらないと思います。地方の留守家族会というふうなものにも協力をしてもらい、また、移住に熱意を持ったあらゆる人々のお知恵も借りる、こういう意味で、この移住事業団の地方における従たる事務所を置く場合の地方運営審議会、こういう形のものが実際は運営上あった方がよいと思いますが、これにかわるものを何かの形で政府考えておられるとするならば、そのことをお示し願いたいのであります。
  78. 高木廣一

    高木政府委員 運営審議会には地方の代表者も相当入れたいという考えでございます。これは移住審議会でもそういう御意見がございまして、中央の移住運営審議会に地方の代表を入れるべきであるということでございます。
  79. 受田新吉

    受田委員 構想としては一応幅広いものをお持ちのようですが、修正案の提案の代表者である西村委員から、この地方運営審議会の構成というものは一体どういうものを考えておられるか、御答弁願いたいと思います。
  80. 西村関一

    西村(関)委員 お答えを申し上げます。  大体中央の運営審議会の構成メンバーに準ずるという考え方でございます。
  81. 受田新吉

    受田委員 答弁として簡にして要を得ていると思います。こうした中央地方を通じてそれぞれ移住事業の遂行に協力するという体制に対するこういう規定を盛られておるということにつきましては、深く敬意を表する次第でございます。  これをもって質問を終わらせていただきます。
  82. 野田武夫

    野田委員長 これにて本修正案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  83. 野田武夫

    野田委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありせんので、直ちに採決いたします。  まず、本案に対する西村関一君外九名提出の修正案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  84. 野田武夫

    野田委員長 起立少数。よって、本修正案は否決いたしました。  この際、三十分間休憩いたします。    午後一時十六分休憩      ————◇—————    午後二時三十二分開議
  85. 野田武夫

    野田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  海外移住事業団法案について議事を進めます。  本案を原案のとおり可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は原案のとおり可決すべきもと決しました。(拍手)     —————————————
  87. 野田武夫

    野田委員長 この際、田原春次君より、本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、その趣旨の説明を求めます。田原春次君。
  88. 田原春次

    田原委員 私は、自由民主党、民主社会党及び日本社会党の各委員の間で慎重に審議を進めました本事業団法案の通過に際しまして、右三党と懇談の末、一つの附帯決議をまとめましたので、これを提案いたしまして御了承を得たいと思います。  まず、原文を読みます。    海外移住事業団法附帯決議案  一、政府は海外移住の基本理念及び振興策を明らかにした「海外移住法」を次期通常国会に提出すること。  二、事業団の監督に際しては、その自主的、積極的活動を行なわしめるよう配慮すること。  三、外務省は、農林省その他関係各省との連絡協調を密にする。特に外務農林両省は相互に緊密に連絡して農業者の海外移住の円滑なる推進に努めること。  四、移住地の状況については国会、関係各省及び国民一般に常に周知徹底せしめるよう努力すること。  五、事業団発足に当っては強力なる新理事長の下に、従前の弊害を一掃し、新に清潔、誠実なる人材を登用すること。  六、事業団の業務の運営に当ってはサービス精神を旨とし、内外の民間団体に積極的に協力を求め、その自主的活動を助長すること。  七、政府地方移住行政及び実務が都道府県を中心に統一ある行動をなしうるよう関係各省間の協調を図ること。  八、地方海外協会の職員の身分及び待遇についてはその安定と向上を図ること。  九、移住地においては、日系人社会及びその諸団体等の充実な協力を求めること。    なお各国の実情に応じ出先機関及び日系人をもつて構成する移住諮問機関を設けること。  一〇、事業団はその予算執行上及び事業遂行迅速、正確を期するため現地に代表部を設けること。 以上であります。  以下、簡単に各点について補足説明を申し上げます。  第一の、海外移住法の点は、昨年の十二月に答申をいたしました海外移住審議会からの移住三法、すなわち、海外移住基本法、海外移住者援護法、海外移住事業団法の三法に対し、今回は移住事業団だけしか出ておりませんので、至急検討を加え、次期国会に、前記二法案に準ずる、若しくはこれを統合した海外移住法を出してもらいたいという趣旨でございます。  第二の、監督の点であります。従来、日本海外移住振興株式会社、日本海外協会連合会に対しては、いわゆる過剰監督と申しますか、一から十まで、てにをはの詳細に至るまで監督しておりまして、十分な活動ができなかったという悩みが出ておりますので、今回、事業団に対しましては、その自主的・積極的な活動を行なわしめるよう、むやみに制限等を加えないように配慮してもらいたいという趣旨であります。  三の、農林省その他関係各省との連絡の点も、同様でありまして、移住者の九九%が農民であります以上、日本の農民送出上、農林省並びにこれに関係のある各種の農業民間団体等の積極的な支持がなければなかなか農民の送り出しは困難でありますから、たとえこの法案の条文にないといたしましても、精神を生かして、特に外務、農林両省は相互に緊密にやってもらいたいというのがわれわれの切なる希望であります。  四、移住地の状況については、けさほどの質問で申し上げましたように、ボリビアに日本封鎖国家をつくるなどというとほうもない考えを持つことなく、常によい点も悪い点も国会、関係各省及び新聞、テレビ、ラジオ等を通じ一般国民に周知徹底せしめることが絶対に必要でありますから、よい点も悪い点も知らしてもらいたいというのがこの点であります。  第五、事業団発足にあたっては、おそらく新たに理事長が出るでありましょうが、従来のごとく派閥に偏した海協連並びに移住振興の人事をそのまま受け継いだのでは、いかに強力なる理事長といえども一切仕事はできなくなりますので、その弊害を一掃しまして、新たに清潔、誠実なる人材を登用して本来の使命に邁進してもらいたいというのが第五点であります。特にこの点は必ず実行するように希望しておきます。  第六、事業団の業務運営にあたっては、たとえば、民間団体では、農村関係では全拓連あるいは日本力行会その他長年の歴史を持った募集、宣伝、輸送、訓練の機関がありますので、これらの活動を積極的に助長して、自己の手の及ばざるところ、足らないところを補いまして、多数の日本人を海外に出すように努めてもらいたい。  七、地方府県の移住行政が不統一であり、連絡がとれないでは、なかなか実際には行けませんので、これまた都道府県を中心に統一ある行動ができるように関係各省に協調を求めるようにしなければならぬということであります。  八、地方府県海外協会の職員は全く身分が安定しておりません。ことに待遇も悪いから、この機会に、事業団の職員にするかしないかは別といたしましても、十分なる支持を与えまして、その生活を安定し、一生を海外移住あっせんの仕事に努力できるようにしてもらいたい。  九、海外各国においては相当成功したりっぱな日系人社会ができております。並びに、農業団体、文化団体等をつくっておりますので、これらの団体経験を十分生かすようにしてもらいたい。そのためには、ブラジルアルゼンチン、ボリビア、パラグアイには出先の機関とともに移住諮問機関のごときものを設けて、そうしてそれらの人々の知識並びに経験を実務の遂行上に活用できるようにしてもらいたい。  一〇、事業団は、その予算執行上及び事業上、はるかに国内から離れておりますので、一円一銭に至るまで一々東京に伺いを立ててやるのでは適時適切なる仕事ができません。非常に有望な土地があってもすぐ買えるわけではありませんので、現地事業団の代表部を設けまして、ある程度の決裁ができるようにしたほうがいいのではないか、こういう意味の要望であります。  願わくばこの決議案の趣旨を尊重されまして新事業団を発足されるよう希望いたしまして、私の趣旨説明を終わります。(拍手)
  89. 野田武夫

    野田委員長 本動議について採決いたします。  本動議のごとく決するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、大平外務大臣より発言を求められております。これを許します。大平外務大臣
  91. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま御決議がございました十項目にわたる附帯決議は、新事業団運営自体はもとより、これを指導し督励し監督してまいる政府といたしまして心得べきことに対する剴切かつ周到なお示しでございますので、この御決議の趣旨を体しまして最善を尽くしたいと思います。(拍手)     —————————————
  92. 野田武夫

    野田委員長 おはかりいたします。ただいま議決いたしました本案についての委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  94. 野田武夫

    野田委員長 次に、国際情勢に関し戸叶委員より発言を求められておりますので、これを許します。戸叶里子君。
  95. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣がおいでになりますので、ごく簡単に一、二点お伺いをしたいと思います。  最近韓国が日本の漁船を盛んに拿捕しているわけでございます。そしてまた、それだけでなしに、聞くところによりますと、巡視船がつい最近韓国の警備艇によって威嚇されたということも聞いているわけでございます。そこでまず第一にお伺いしたいのは、日韓会談が始まってから一体どの程度の日本漁船が拿捕されたか、そして、つかまった人員がどのぐらいいて、そういう方々が一体どういう状態になっているのかということをこの際明らかにしていただきたいと思います。
  96. 前田利一

    前田説明員 北東アジア課長前田でございます。かわって御説明申し上げます。  現在まで韓国に拿捕されました漁船の総数は三百五隻、うち折衝の結果帰還してまいった船を除きまして、いまだ拿捕されたままの船が百八十三隻、その間抑留されました船員の総数は三千六百九十七名にのぼっております。これは実は四月末の現状でございまして、最後に抑留されておりました抑留船員も五月十六日の記念日に全員釈放になりまして、先月末帰ってまいったわけで、韓国には抑留漁夫は一名もいない、こういう事態になったわけでございます。  ところが、遺憾ながら、この六月に入りまして、御承知のとおり、六月の一日に一隻、それから十日に二隻、さらに十一日に一隻と、続けて四隻の船が拿捕されておりまして、その乗組員は全員で三十一名にのぼっておる、このように考えております。
  97. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、その三十一名の拿捕された人はまだ抑留中なのですか。
  98. 前田利一

    前田説明員 ただいまのお尋ねのとおり、抑留中でございます。
  99. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣、いま北東アジア課長が御説明になりましたように、一応五月の十六日で、拿捕された船それから抑留中の人が帰されたにもかかわらず、六月になってから、きょうまだ六月十四日ですから、二週間の間に四隻も捕えられて、三十一人も向こうに抑留されているという状態です。これで日韓会談の折衝はお続けになっていらっしゃるのですか。
  100. 大平正芳

    大平国務大臣 私の考えは、日韓折衝はずっと続けておりまするし、日韓の間の長い間に積もり積もった誤解と申しますか、理解の足らない点、そういう点が解きほぐされてまいりまして、いま御指摘のようなトラブルが起こり得ないような環境、そういうものは、国交があるないにかかわりませず、そういう状態を醸成してまいらねばいかぬということで、鋭意その方向に努力を重ねてまいったのでございまして、ようやく先月に至りまして抑留された漁業者が一人もないということになって、ほっと愁眉を開いておったやさきに、今月に入りましてそのような事態が起こりましたことをたいへん残念に思っておりますが、こういうことで本来の日韓の間の関係を改善していこうという努力においてひるむところがあってはいかぬと思うのでございまして、このこと自体につきましては厳重な抗議を通じまして先方の善処を求めなければなりませんが、それと並行いたしまして、従前どおり日韓間の関係の改善に努力をしてまいるつもりでございます。
  101. 戸叶里子

    戸叶委員 日本と韓国との間でお互いに交渉しているその最中に、しかも半月の間に四隻も船を捕まえていくというような国を相手に一体日韓間の関係を改善していくというようなことはあり得るでしょうか。国民としてはそういうことは考えられないと思うのです。話し合いをしている最中にどんどん漁船を拿捕して、そうして抑留者をつくっていく。そういうふうなことをしているのに、日本外務大臣が、日本と韓国との間を何とかよくしたいと言ったって、国民はとてもそんなことには賛成できないと思うのです。一体韓国は何のつもりでこういうことをされているのでしょうか。外務大臣、正式に抗議を申し入れなさったのでしょうか。もし申し込まれたならば、どういう形でいつ申し込まれて、そしてその返答は何であったか、向こうの意図するととろはどういうところにあったかということをお示し願いたいと思います。
  102. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓の間の問題というのは、戸叶さんも御案内のように、なかなか積年の関係でございまして、いろんなトラブルが過去において起こったということ、この当否は別といたしまして、事実であったわけでございます。それほど日韓の間というのはむずかしい関係にあると思うのでございまして、したがいまして、言うところの日韓交渉も十年以上の歳月をけみしていまなお解決に至らぬということ、それほどむずかしい問題であるということは、あなたも御指摘のとおり、私もよく承知いたしているわけでございます。さればこそ私どもは忍耐強くこの改善に努力していかなければならぬのでございまして、こういう事件が起こったからそういう交渉をやるべきじゃないとか、あるいはそういう事件を起こすような相手であるから相手にすべきじゃないじゃないかという御議論には私は賛成しないのです。私は、そういうトラブルがあればあるほど、勇気を鼓して、関係改善に、きわめて困難でございますけれども、鋭意努力していくのが私の任務であると思っております。  それから、御指摘の、六月に入りましての拿捕事件につきましては、そのつど、先方の代表部を招致いたしまして抗議し、先方の政府に善処方を求めておるわけでございます。最近では、きのうの午後、代表部の責任者においでいただきまして、厳重に善処方を求めておる次第でございます。したがいまして、この事件の全貌、原因、その他一体どうしてこういうことが起こったか、起こったときの状況、天候その他の詳報を受けまして、なお先方に善処を求め続けてまいらなければならぬと思っております。
  103. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣のお考えは、こういうふうな拿捕なり抑留なりすればするほど、こっちのほうから誠意を尽くして改善をするということでございますけれども、そういうふうなことをされてもなおかつ交渉の相手としてやろうというような意図が私どもにはとうてい理解できないわけです。国民としても、何も話し合いをしている間にやたらに船をつかまえたり人を連れていったりしないでもいいじゃないか、こういう感情が非常に強くなっております。そういうことを考えまして、いま向こうの意図するところぐらい何かお考えになったりお話し合いになったのかと思ってお聞きしましたら、それはまだわからないし、天候の問題、いろいろあるということでございました。このような問題が起きたときには、私は、日本外務大臣として、こういうことをするのだったらもう交渉はやめるぞというくらいの強い態度をぜひ見せていただきたい。そうでなければ、一体どういうことをやってくるかわからないと思うのです。やはり相手を見て外交交渉というものはやっていただきたい、こういうふうに考えるわけです。  そこで、第二の問題としてお伺いしたいのですが、十二日に何か巡視船が威嚇されたとかいうことを漏れ聞いているだけで、私どもははっきりした情報がわかりませんので、この辺のことを詳しく説明していただきたいと思うのです。何か、巡視船「のしろ」が、領海外、李承晩ラインの外にあったにもかかわらず、船長が連れていかれたとかということを聞いたのですが、この間の情勢について詳しく御報告を願いたいと思います。
  104. 前田利一

    前田説明員 御説明申し上げます。  私ども十二日の夕刻になりまして海上保安庁を通じまして聞くに至りました状況を、要点について御説明申し上げます。  御承知のとおり、拿捕を防止し安全操業を確保するという趣旨から、海上保安庁の巡視船の「のしろ」が、十二日の十五時、午後三時に、韓国の釜山の沖合いにございます牧之島の灯台から五・三マイルの地点、これは緯度・経度について申し上げますとこまかくなりますが、北緯三十五度〇二・九分、東経百二十九度一・二分、——先ほど先生の御質問の中に領海外であるとかあるいは李承晩ラインの外であるというお話がございましたですが、そういうことはいずれにいたしましても、五・三マイル、明らかに公海上の問題でございます。この五・三マイルの地点において業務を遂行中、急に釜山の港のほうから高速度の水上警察艇が接近してまいりました。先方が急速度に「のしろ」に向かってまいりましたので「のしろ」のほうでは、一応その業務遂行中の地点からさらに東のほうに移動しました。十五時二十五分に至りまして、先ほども申しました牧之島灯台から八・四マイルの地点においてわがほうの巡視船「のしろ」に先方の船が接舷してまいって、「のしろ」の船長に対して、いろいろ話し合うことがあるので韓国側の船に乗り移るように、こういうお話でございました。そこで、船長と先方の水上警察艇との間に、最初日本側の巡視船が業務遂行をしておった地点が領海の中でであるかどうか、こういうようなことについて話し合いが行なわれましたが、結局、先方は、言うなれば、領海侵犯ではないか、こういう考え方からこちらの行動を見ておったわけでございます。これに対しまして、「のしろ」の船長のほうでは、種々の計器を使って測定いたしました地点、先ほどの業務遂行中の地点が明らかに公海上である、こういうことで反駁いたしまして、その話し合いがつかない。そこで、結局もの別れということで、話し合いの続いている間に船も動いたわけでございますが、十六時三十分現在の位置をはかった結果、やはり韓国の海雲台というところから約五・五マイル、これも公海上にある、こういうことを双方確認いたしまして、署名して、十七時五分に至りまして先方の警察艇が巡視船から離れて行った。こういうのが先生お尋ねの十二日の事件の概略でございます。
  105. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣、いまお聞きになったようなことなんですけれども、この巡視船が領海外にあって、そしてそれははかってみなくてもそのくらいのことはわかるはずですね。ところが、それにもかかわらず、韓国警察艇が船長に対していろいろな尋問をして、そして話し合いをしてごたごたしたあげく帰したわけでございますけれども、巡視船といえば日本の国の公船ですね。この間も議論になりました国の公船ですね。この公船に対して、言わば、あなたは領海内にあるというような、いやがらせといいますか、何かそういった言いがかりをつけてきた、こういう形になったわけでございます。一体こういうことが日本の国として許しておいてもいいものでしょうか。このことに対して、外務大臣として外交上どういうふうにお考えになりますか。これがもし日本でなくてほかの国の場合でこういうふうな立場に公船が置かれていた場合には、やはりそこで、宣戦布告とまでいかなくても、そういうふうな形になったり、あるいはまた自衛権の行使というようなことになったり、法律的に言えばとんでもないことになるのじゃないかと思うのです。こういうふうなことを黙っていていいのですか。日本の公船がそういうふうに連れていかれて話をされて、そして帰されたというような侮辱を受けてもなお黙っていてもいいものかどうか、外務大臣にお伺いをしたいと思います。
  106. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘のように、事公船でもございますし、私どもといたしましては、事態を詳細に究明してまいりまして、その事件の全貌をはっきりつかまえた上で、日本政府として処置すべきことを処置いたしたいと考えております。
  107. 戸叶里子

    戸叶委員 事件が起きたのは、いま御説明のありました十二日ですね。そして十三日が過ぎてきょうは十四日ですね。それまでまだ何にも外務省として全貌はつかめないのですか。きょうまでつかめないというのは少しおかしいじゃないでしょうか。十二日にそういう事件が起きて、十三日一日あって、きょうもまた半日たっているのですけれども、全然全貌がつかめていないのですか。どういう形でいま事件の調査を進めておられるのですか。
  108. 大平正芳

    大平国務大臣 事実の究明は日本側でやることでございます。きのうの午後韓国のほうに事態の究明方を依頼してありますので、先方からも、いろいろ、その当時どういう事情で、どういう状況で、どういう意図でこういうことが行なわれたかという返答があると思うのでございまして、私ども、そういった事実を十分究明した上で処置いたしたいと考えております。
  109. 戸叶里子

    戸叶委員 いま北東アジア課長が説明されたことが事実であるとすれば、それ自体で私は大きな問題になると思うのですけれども、それ以外にまだ調査すべきことがあるのですか。どういうふうなことについて調査をされているわけですか。領海外において向こうの船がやってきて、そして船長をおろしていろいろと領海外であるかどうかを確かめる、領海外にあったにもかかわらず、領海外であるかどうかを確かめるというようなことをして、一時間近くも尋問をされて日本の船が帰された。こういうこと自体でも、先ほど外務大臣日本の公船であるから重大であるとおっしゃったとおり、重大な問題だと思うのです。にもかかわらず、なおさらにどうなっているかを調査するというのは、どういうことを調査しようとされておるのですか。
  110. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国の警備艇が接舷してきた、それがどういう天候のもとでどういう視界のもとで公海内であるのか公海外であるのか判明しなかったのか、そのあたりの事情をよく究明していただいておるわけでございまして、そういった関係を正確に周到に踏まえた上で適切な処置をとりたいと、思っておるわけです。
  111. 戸叶里子

    戸叶委員 いま北東アジア課長がはっきりおっしゃったのは、話し合いをしているうちに、公海上の問題である、領海外であるということがわかったので帰ってきたのだということをおっしゃったわけです。だとすれば、公海上で起きたことなんですから、いま外務大臣が、公海上のことか領海内のことか、こういうことの事態を究明してという、その御答弁は少しおかしいのじゃないですか。はっきりと北東アジア課長がおっしゃったのは、公海上のことであり、領海外のことだというのがわかったので帰ったというようにおっしゃった。だから、そのこと自体を考えてみても、日本の公船がこういう目にあうというのは許すべからざることであると考えますが、いかがでございますか。
  112. 大平正芳

    大平国務大臣 私はそういうことを申し上げているのではなくて、接舷に至るまでの先方の事情、つまり、公海内であるのか外であるのかなぜわららなかったのか、それはこういう事情でわからなかったというのであればまた話はわかるわけでございますけれども、あなたの話は接舷をしてから船上におきましていろいろ話し合ったことを言っているわけでございまして、私は、それに至るまでの過程を十分調べておく必要があると思うわけでございまして、いずれにいたしましても、この問題は、公船でございまするし、慎重にやらなければいかぬわけでございまして、私どもそれをなまけるつもりは毛頭ないのです。大事な問題でありますから、より周到にやらなければいかぬということを申し上げているわけであります。
  113. 戸叶里子

    戸叶委員 そういたしますと、きのう先方から代表者に来ていただいていろいろ抗議を申し込まれたということでございますけれども、外務省はそれに対する詳細な返答を待った上で、公船であるからいいかげんなことでごまかされるべきではない、当然何らかの措置をとるべきである、こういうふうに了解してもよろしいわけでございましょうか。そうしてまた、その返事はいつごろまでに来ることになっているのでございましょうか。
  114. 大平正芳

    大平国務大臣 そのように了解されてしかるべきだと私は思います。  それから、いつごろ返事が来るかは、時限を限ってあるわけではございませんが、遠からず、なるべく早く、先方のほうでおくれるようでございましたならば、こちらから督促してでも聴取しなければならぬと思っております。
  115. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一点だけ伺います。この問題がはっきりするまで、いま進められている日韓間の小委員会ですか、そういうようなものは当然やめてしかるべきと思いますが、この問題がはっきりしなくてもなおかつ続けていかれる御意思であるかどうか、その点伺いたい。
  116. 大平正芳

    大平国務大臣 このためにいま持っておりまする予備交渉というものを断ち切るという意図はございません。この問題もきのうの予備交渉の場面でこちらから申し上げたわけでございまして、私が冒頭に申し上げましたように、この事件というもはの不幸な事件でございます。が、しかし、こういうようなトラブルが起こらないようにどうやるかということについて、大局的な立場から交渉をどう進めるべきかについては当然私どもが考えなければならぬことでございまして、こういう一、二の件事があったということのために基本の姿勢を変えるというようなことはいたしたくないと思っております。
  117. 戸叶里子

    戸叶委員 私はもうこれ以上言いませんけれども、問題は、先ほども説明がありましたように、六月になってから四隻も拿捕されて、三十一名の人がまだ抑留されている。そのときにまた今度は日本の巡視船という公船がこういうふうな目にあって、なおかつ一方においては予備交渉か何かを続けているということは、どう考えても国民が納得できないと私は思います。こういうことをするから韓国が結局ますます強気になって、漁船を拿捕すれば巡視船もかまわない、公船もどうだというような強気になって出てくると思う。したがって、私は、この際この問題をはっきりさせ、厳重に抗議を申し入れ、拿捕された船を返してもらうようにし、抑留された人を一日も早く帰してもらう、そうして、この巡視船の問題については何らかの措置をとる、こういうことが行なわれるまでは絶対に交渉を進めるべきではない、こういうふうに考えますので、この点についてよろしく御考慮を願いたい。私は国民の一人としてこのことを強く要望をしておきたいと思います。
  118. 野田武夫

    野田委員長 関連質問の申し出がありますので、これを許します。森島守人君。
  119. 森島守人

    森島委員 ただいまの問題に関連しまして一、二点お伺いしたいと思います。  第一に、船舶が三百五隻、人員が三千何百名と言われましたが、これはいかなる期間において拿捕せられた数字でございますか。  それから、もう一つは、日韓会談開始前の数字と開始後の数字をお示し願いたいと思います。
  120. 前田利一

    前田説明員 先ほど御説明申し上げました拿捕漁船数、乗り組み員数は、いずれも韓国が日本の漁船を拿捕し始めましてからの総数でございます。つまり、いわゆる李承晩ラインが一九五二年の一月に設定されたわけでございますが、それ以前にかかわる拿捕もございますので、それをも含めた総数でございます。なお、今回の、昨年の八月からの第六次会談以降の数字につきましては、ただいまちょっと手元に取りまとめたものがございませんので、少しお時間をいただきまして御報告申し上げますが、そういうことでございます。
  121. 森島守人

    森島委員 こういう会談はきわめて友好的な雰囲気において行なわれなければ実効を奏さないということは当然わかり切ったことなんです。日韓会談に入るにあたりまして、拿捕等をしないという口約束でも韓国代表との間にできておりますかどうでございますか。これは外務大臣にお伺いしたいのです。
  122. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもは、会談をやるにつきまして、その時点以後こういうことがないことを心から希求いたしておりますし、そういうことはあり得ないことであるということで進んでおるわけでございますが、不幸にして間々そういう事件が起こっておるということもまた事実でございまして、そのつど先方の善処を求めておるわけでございます。問題は、双方の理解が進みまして、こういうトラブルが起こらないようにするということが第一の眼目でございまして、そういう状況を醸成してまいる上において私どもはいかにあるべきかというところに判断の基準を置きまして、今日まで個々のケースにつきまして善処してまいったわけでございますし、今後もそうしてまいるつもりでございますが、今日以後そういう不幸な事件の再発ということがないことを心から希求いたしております。
  123. 森島守人

    森島委員 こういう個々の事件の起きたたびにそういう希望を表明したりしておっても、きき目がないと思うのです。相手は韓国ですから、私は、交渉に入られるにあたってこの種の確約を韓国のほうから取りつけておくべきものだと思うのでございますが、私の聞いておるのは、個々のときに抗議をして拿捕したやつを釈放させるとかしないとかいう問題でなしに、特に外務大臣はこの種の事件の起きるのは非常に好ましくないとおっしゃっておるのだから、これは一括して、話し合いに入る前に、これだけのことはしないという確約をなすっておかれるのが、私は交渉促進上有利だと思うのです。これは意見の相違になりますけれども、今回の事件を機として、私は話し合いを中止するのがいいと思うのです。中止しないまでも、私は、外務大臣としてこの種の確約を一括的にお取りになることを希望してやみません。  それから、私が前回か前々回ここで外務大臣に御質問しましたときに、韓国の現在の政情というものは民政移管に至る陣痛だと、こうおっしゃいました。それからまた、私が、この現政権にはたして日本との間に確約ができましてもこれを実行する意思と実行する能力があるかと申しましたら、外務大臣は、現政権は実行する意思と能力とを持っておるのだということで、会談を中絶する意向はないのだとおっしゃいましたが、私は、こういう事件が次々と起きることは、韓国の中央政権の意図がいかにあろうとも、出先においてこれを順守するという意思もなし、また能力もないことを現実に示したものだと私は思うので、外務大臣のこれまでの韓国現政権に対する見方や何かは、あまりに私は甘いと思う。そういうふうな見方をしておられるからこそ何回もこの種の事件が次々と起こるのだろうと思うのでございます。  なお、もう一つ、民社党の受田委員から御質問がありましたが、日本の在外代表部を韓国に置くという問題も、私はきわめて重視すべき問題だと思うのであります。現に、池田内閣の改造直後において、日韓会談を始めるに先立って池田首相は第一回の新聞記者会見をやっておられます。そのときに池田さんは、相互平等な立場において日韓会談を始めるのだということを明言しておられます。新聞記者の質問に対しましても、その具体的内容として、ただ一項目だけ、日本の代表部を韓国に設けることが必要なんだということをはっきり言っておられます。これは当時の新聞記者会見の記録をごらんになりますればはっきり出ておるのでございますが、これに対しても外務大臣はずるずるべったりで、外務省からときどき人をやって、それで十分目的を達成するのだというふうな見方をしておられるし、これはいかに交渉しても向こうが申し出を聞かぬからしょうがないのだというようなお立場をとっておられる。  この漁船の拿捕の問題とともに、私は、韓国の現政権には日本と約束したことを実行する意思がありやいなや、能力がありやいなやの点についても非常に問題であると思う。この点について日本全国民も憤激をしているものだと思うのでございまして、私としては、現内閣、特に外務省においては、根本的に考えを直していただいて、日韓会談に対する根本的の対策をお立てになる必要があると思っております。そうしなければ、韓国の国民の性格としまして、弱いと思えばつけ込んでくるのは韓国民の性癖なんですから、こういう事件があとをたたないのではないかと私はおそれるので、その際日韓会談は一時中絶されることが、この種の事件を阻止せしめるに足る最も十分な措置であると信じておるのでございますが、外務大臣はこの点についていかにお考えになっておられるか、伺いたい。
  124. 大平正芳

    大平国務大臣 外交に御造詣の深い森島先生でございますので、釈迦に説法になるわけでございますが、私は、日韓関係というのは、これは外交問題の一つでございますけれども、日韓問題というのは、非常にディメンションの広い、非常にむずかしい外交案件であると思います。その点は森島さんも御同感いただけると思うのでございます。普通の国際的な常識によって一つ一つの案件が妥当に解決できる、そういうことで解決できるほどやさしい問題でないと申しますか、表現がやや正確ではございませんけれども、非常にむずかしい案件であると思うのでございます。そこで、私は、問題をこう考えているのでございます。要するに、戦後韓国人の日本に対する考え方、あるいは日本人が韓国人ないし韓国というものをどう考えておるかという場合、そういうわれわれの心の中にある日韓関係に対する感じ方というもの、これが直らないで、一応国交というような形ができても、両国の関係というものはなかなかうまくいかぬ。やはり、私が先ほど戸叶さんにも申し上げたように、お互いの理解というか、むしろ尊敬というか、信頼というか、友情というか、そういうようなものがだんだんと形成されてくるという実態的な改善がない限り、小手先で国交を改善しようといっても、これは木によって魚を求めるようなことになりはしないかとおそれるものでございまして、そういう観点から、私は、今日あるがままの日韓関係を見てみますと、私どもが誠心誠意敬意を持っておつき合いをする、それから、広く世界に目を開いて、日韓の関係はどうあるべきかということを日本人も考え、韓国人もまた同様に眼を開いて日本との関係はどうあるべきかと考えるということで、その考え方、感じ方がだんだん変わりつつあるように私は思うのでございます。そして、そのことは、お互いの心の中にある感じ方というものが、あるいは、あなたは、甘い、こうごらんになるかもしれませんけれども、私は、これは日とともによくなりつつあるというように、また、よくしなければならぬと思っておるわけでございまして、そういう関係の改善を事実上やっていく上におきましても、私の立場、私の姿勢、外務省の言動、外務省のわれわれの持つ感じ方というのは非常に大事なことでございますので、そういう実態的な関係をじみちに一日一日よくしていくという努力は瞬時も怠ってはならぬということ。そういう観点に立って、現在行なっておる交渉を打ち切るどころではなく、誠心誠意やるんだということがまたその事実上の関係の改善に役立つというように私は考えておるわけでございます。そして、そのことによって漸次先ほど申しましたように事態の改善に歩を進めておるというように私は感じておったのでございますが、六月に入りましてそういう不幸な事件が起こりましたが、これを早く措置いたしまして、そして、そういうことの再発というようなことにつきまして、先方がもうそういうことはできないんだくらいのそういうような気持ちに早くなっていただきたいということを希求いたしておるわけでございます。  韓国政府の能力あるいは意図というようなものにつきましてのことでございますが、これは、韓国の国民あるいは韓国の政府の感じ方、確信というものがおありになると思うのでございます。それについて私は論評を加える自由を持っておりませんが、少なくとも、日韓関係の進め方につきましての私の心境は、いま申し上げたようなことでありまして、外交界の先輩として森島先生にもとくとお考えいただいて、足らないところは教えていただきたいと思います。
  125. 野田武夫

    野田委員長 なるべく短い時間中という御要求でしたからお許しいたしたのですから、その含みでひとつお願いします。
  126. 森島守人

    森島委員 大局的なお気持ちはよくわかりましたが、それにも限度がありますから、ある程度で、——たとえば慎重に考慮するとおっしゃるが、今度韓国がとった態度で理解ができぬことがありましたら、厳然たる態度をおとりになることがかえって日韓関係をよくする近道であるとも私は思います。  そこで、私がこれも何回も申し上げましたが、歴代の保守党内閣が十年間にわたって二つの大失敗をやっておる。一つは在外代表部の問題、これは、平等でやるのなら、韓国の代表にいつでも京城へ引き揚げろということを求められれば、ある時期においては私は非常ないい結果があったと思います。もう一つは、日本が韓国と通商を断絶しましても何ら痛痒がないのですから、ある時期には通商関係を断絶するという思い切った措置に出られることも私は必要だったと思う。この二つの措置を歴代の保守党内閣がとらなんだということは大失敗であると私は思っておるのでございますが、大平外務大臣のこれに対する御所感を求められるならば幸いでございます。
  127. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどの私の答弁から御了解をいただきたいのでございますが、日韓関係の打開というものは非常にむずかしい問題であるという認識が一つと、そして、これを打開していく道は、事実上の生きた、今日あるがままの関係をよくしていくための理解を深め信頼を高めてまいるという方向に処置することであるというように私は考えておるわけでございまして、いま御提言があったような措置については、私はそういうことはやるべきでないと考えております。
  128. 野田武夫

    野田委員長 帆足計君。  帆足さんに御注意申し上げますが、実は、きょうは緊急質問でありまして、関連質問は遠慮していただきたいと思いましたけれども、せっかくのことですからお許しいたしました。まだもう一人おられますから、数分間のお含みでお願いいたします。
  129. 帆足計

    帆足委員 現地の痛切な立場から研究しておられる楢崎委員質問もありますから、簡単に申し上げます。  私は、いまの森島議員からの切々たる外務大臣に対する助言なり忠告に心から賛成するものでございますから、ことばを繰り返しません。また、外務大臣の御答弁伺いまして、非常に苦しい立場もよく理解できるのでございますが、とにかく、韓国の経済構成を研究いたしましても、また、政治分析をいたしましても、社会分析をいたしましても、現在のところ自立能力が非常に希薄でございまして、その責任の一つは、客観的に、南北分断という歴史の悲劇。もう一つは、アメリカの韓国に対する政策が残念ながら非常な失敗を来たしておるということにまでさかのぼらねばならない。そうしますと、結局、本来ならば韓国については国連の指導のワクのもとにアメリカが世話をしておるのでございますが、その辺の関係が明朗を欠いておりまして、韓国の背後の勢力というものが明朗を欠いておるところに私は一つの問題があると思っております。したがいまして、この問題につきましては、政府当局にも研究していただき、私どものほうでももう少し研究いたしまして、韓国の眼前にある困難な課題に対しまして、どのように日本が対処していくかということを、国連、アメリカの背景をも含めて外務大臣と話し合わねばならぬ、そういう問題にぶつかっており、そういう本質に触れた問題に繰り返し繰り返しぶつかっておることを痛感いたす次第でございます。  ところで、この現地の状況を私どもはかつて視察に参りまして、海上保安庁の諸君のなみなみならぬ苦労もよく知っております。当時、無線電信をふやしまして、そうして、こういう災いにあう前に早く難を免れるような万全の措置をとるための予算措置などいたしました。それらのことにつきましても、最近緊張がゆるみまして、こうたやすく拿捕されるというのは、一体どういうところに警備上、警戒上の手落ちがあったか、私は海上保安庁の意見も次回に聞きまして、そして努力の足らないところは努力してもらいたい、設備、予算の足らないところは補いまして、われわれの同胞がこうして罪なくして囹圄の苦しみを受けるということがないようにいたすのが外務委員会のつとめである、こう存じておる次第でございます。楢崎委員からの質問もありますから、きょうはこれにとどめておきまして、次回の外務委員会においてもっと具体的に海上保安庁並びに外務大臣に御所見を伺いたいと思います。  外務大臣は、韓国の背後にある国連並びにアメリカとの関係につきまして、一体どういう御調査なり御所見をお持ちでありますか。また、関係政府委員でもけっこうでございますから、一言だけお答えを願いたい。  海上保安庁のことにつきましては、私は次回に詳しく聞きたいと思ております。前回参りましたとき、超党派的にいろいろ審議いたしまして、相当の成果がその後あがったのでございますけれども、今後こういう事態が慢性的に続きますならば、われわれは戦争の手段は好みませんが、しかし、海上警察の問題をもう少し合理的にスマートに行なうことは必要だと思ておりますので、これは検討したいと思っておる次第でございます。  右について外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  130. 大平正芳

    大平国務大臣 国連と韓国との関係というのは、帆足先生もよく承知されておると思うのでございますが、予算委員会におきましても本委員会におきましても御答弁申し上げてあるわけでございますが、現に国連の朝鮮復興委員会というものが毎年開かれておるわけでございまして、国連軍が韓国に駐とんするということにつきましては、国連も現在の状態を認めておると承知いたしております。
  131. 帆足計

    帆足委員 ただいまの御答弁では私は不満足でございますから、私はさらに詳細な質問をしたいのでございますが、時間の制限もありますし、現地の楢崎委員からさらに痛切な緊急質問があろうと思いますから、次の機会に御質問をしますから、ひとつ、外務省のほうでも、国連、アメリカ及び韓国政府との関係について御答弁の準備をしておいていただきたいと思います。
  132. 野田武夫

    野田委員長 同じく関連質問の要望がございますから、これを許します。楢崎弥之助君。  楢崎委員に申します。いまのような事情でございますので、なるべく簡単にお願いします。
  133. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 関連質問ですから、簡単に質問いたします。  まず、十二日の、向こうの船が停船を命じて船長を呼び込んだときの状況ですね。私は説明がまだ足らないと思うのですが、あるいは発砲したのか、あるいは、発砲に類似する、小銃などをかまえて、そういう脅威のもとに船長を拉致したのか、もう少し明確にお答えをいただきたいと思います。
  134. 前田利一

    前田説明員 御説明申し上げます。  私ども海上保安庁から報告を受けたところによりましてお答え申し上げますと、先ほど御説明いたしましたように、釜山の港から韓国の水上警察艇が十五時十八分に約三十メートルのところまで接舷してまいって、その韓国の水上警察艇に装備されております機銃及び自動小銃をかまえて、先ほど申し上げました十五時二十五分に牧之島燈台から八・四マイルの地点で接舷した、こういうように聞いております。
  135. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういう場合に、小銃あるいは機銃をかまえて寄ってきたときに、逃げることはできないのですか。そういうかまえがあったから、とまって向こうの言うとおりになったというわけですか。
  136. 前田利一

    前田説明員 先ほど大臣からも繰り返し御説明、御答弁がございましたように、機銃及び小銃をかまえということでは、そのときの事実関係というものが必ずしもはっきりいたしませんので、ただいまの点も含めまして、何時何分にどういうようなことでという詳しい事情を、海上保安庁につきましても、さらに韓国側につきましても、いろいろ調べるようにお願いしてある、こういうことでございます。
  137. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 向こうのほうからの答えは時間がかかるとしても、海上保安庁側の状況説明はわかるじゃないですか。おとといの話ですから、海上保安庁側の説明をもう少し詳しく言ってください。
  138. 前田利一

    前田説明員 ただいまの点につきましては、いろいろ事実関係が最初からしまいまで相当こまかい点にわたりますので、私どもこの報告に接しました翌日以来、この点はどうか、この点はどうかというこまかい点につきまして海上保安庁にお願いしておるわけでございますが、私が出てまいりますまでのところ、ただいま読み上げましたそういう報告程度にとどまっておりまして、それ以上詳しいことにはまだ接しておりません。
  139. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうしてでしょうか。おとといの話でしょう。国内の問題でしかもこういう重大な問題がどうしてそんなにおくれるのですか。
  140. 前田利一

    前田説明員 私どもといたしましては、なぜそのように時間がかかるかということにつきまして、その理由を承知いたさないわけでございますが、海上保安庁といたしましても現に詳細に調査してくれているわけでございますが、何ぶんその巡視艇も海上に行動中でございましたりしたこともございまして、詳細な調査には時間がかかっておるのではないかと私どもも考えます。
  141. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 「のしろ」は八管所属でしょう。舞鶴ですね。その事件後どういう行動を現在までとっておるのですか。
  142. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことは海上保安庁のほうの仕事でございますが、いま楢崎先生がおっしゃるのは、取り急いで調べろという御趣旨でございまして、私どもも早く事実関係を明徴にいたしたいと鋭意努力いたしておりますので、しばらくお待ちいただきたいと思います。
  143. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 実は私は海上保安庁に問い合わせしたのです。そうしたら、一切は外務省にまかせてありますというお答えです。きのうもきょうも問い合わせた。だから、いまのような外務省側のお答えでは、私がおかしいと思うのも当然じゃありませんか。今後はすべて外交交渉になりますから、一切は外務省に報告してあるし、それから先のいろんな問題は外務省にまかせてあります、そういう海上保安庁側のお答えからすると、いまの外務省の作業では、とても私は納得できません。私はもう少し具体的にお答えいただけるのではなかろうかと思うのですが……。
  144. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもは問題を隠したり遠慮したりするつもりは毛頭ないのでございまして、事実を事実のとおり正確にかつ周到に取りまとめた上で処置いたしたいということを先ほど申し上げたわけでございます。いまの段階におきまして私も全貌をまだとらえておりませんし、これを外務省が懈怠しようという考えは毛頭ないのでございますから、しばらく外務省におまかせおきいただきまして、事実を明徴にする余裕を与えていただかなければいかぬと私は思います。
  145. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 こういう重大な問題ですから、間髪を入れずあらゆる手を尽くして早急に事態を把握するのが常識です。いまの外務省の作業ぶりは実に遺憾です。しかし、わかっておらぬと言われればそれまでですけれども……。  さらに、さっき領海外つまり公海上であるということがはっきりなったから抗議したとおっしゃいますが、外務省が言っている領海というのはどのように考えての領海なんですか。一応念のために聞いておきたいと思います。
  146. 大平正芳

    大平国務大臣 これは、国際的な三海里説というもの以外の領海の議論、たてまえを韓国がとったということは、私は承知いたしておりません。私どもは、ソ連のように十二海里説をとっておるところもございますけれども、一般的に三海里というのが領海と心得ています。
  147. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、いまの外務大臣お答えから言うと、日本側としては、いまこの「のしろ」問題で答弁になりました領海というのは、いまいろいろ国際海洋法会議で問題になっておおることはさておき、三マイルまでが向こうの領海で、三マイル外は公海だというたてまえのもとで進んでいらっしゃるわけですね。そうすると、たとえ韓国側が言う李ライン以内であっても、それが向こうからの接岸三マイル以外だったら公海であるという認識のもとに、いまこの「のしろ」問題を扱っていらっしゃるのですね。
  148. 大平正芳

    大平国務大臣 当然でございます
  149. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 さらに、先ほど森島委員から御質問がありましたが、李ライン宣言は五二年で、それ以前に終戦後四七年に七隻拿捕されておる。それ以来ずっと五一年まで、たしか私の記憶によりますと九十二隻拿捕されておる。抑留船員は千九十九名、うち三名死亡しております。これは李ライン宣言の以前です。これについては、簡単でよろしゅうございますから、李ライン宣言以前だからいろいろの場合がありましょうが、大体どういう理由で向こうが拿捕したか、御説明をいただきたい。
  150. 前田利一

    前田説明員 私どもが承知しておりますところでは、一九五二年一月十八日の李承晩ライン宣言以前に、韓国側によって拿捕されましたのは、主としてマッカーサー・ラインを越えて韓国側に入ってきたというような理由が多かったのではないかと記憶しております。そのほか領海侵犯などの理由をあげられたこともあったかと、そんなふうに考えております。
  151. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 最後に、外務大臣は聞き及びかどうか知りませんが、この日韓請求権の問題の会談が続けられておるときですら拿捕問題が起こっておる、そこで、福岡の底びきの漁船船員組合は、もう政府をたよっておれぬ、したがって、自分たちの乗っておる船で、もし韓国のそういう水上警察船が来るならば、それにぶつかって、突入をして、そして、向こうがやられるかこっちがやられるか、自分たちは向こうの船に乗り移ってでもあとに引かないという決議を実際に組合でしたのです。それほど拿捕の問題は深刻なんです。  まず私がお聞きしたいのは、そういう事実、船員たちがそれほどの強い決意を持っておるということを御存じかどうか。これは、やはりその後の経過でもう少し政府の出方を見てみようということで、その実際の動きはいま停止しておりますが、その決議は生きておる。こういう事実をまず御存じかどうか。  それと、いまわが党の三委員から言われましたように、これはとんでもない話です。私は、海上保安庁からの説明がさらに詳しく来れば、また伺いますが、こんなばかな話はないと思う。機銃や小銃を持ってきて、そういう脅威のもとに船長を一時間も自分の船のところに呼んでやるなんて、そういう事実を許しておいて、日韓会談も何もないです。国民感情から言ったら言語道断な話です。私は、この問題は、過去の例があるけれども、この際、断固たる態度で処置すべきだと思うのです。日韓会談を急ぐ政府の側から言えば、進んでおる最中だからというようなことかもしれませんが、この問題についてそんななまやさしい態度では国民は納得しないと思う。それは、先ほど三委員から言われましたように、この問題についての納得のいく処置がなければ、あるいは今後そういう拿捕なんという問題を絶対に起こさないという保証がなければ、会談は中止すべきです。何のために会談しますか。一方においてそういう事件が起こりながら、何で協力を結べるのですか。  私はこの二点について最後にお尋ねしておきたいと思います。
  152. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどの第一点の決議は、私もよく承知いたしております。また、当時新聞紙上でも報道されたことでございます。そのときに、私どもは、お気持ちはわかりますけれども、こういう事態を早く解決すべく努力いたしておるのでございまして、くれぐれも御自重をお願いいたしたわけでございます。  第二点の中止問題につきましては、先ほど私お答えしたとおりでございまして、楢崎委員の主張されるお気持ち、正義感、そういうものは私は十分わかります。しかし、前段であなたが御主張されたように、組合がそういう決議をしなければならぬというような事態、そういう事態をしょっちゅう繰り返しているわけなのでございます。そういう関係はいつまでも続けちゃならぬ、朝鮮海峡は静かな海にしなければならぬ、生産性の豊かな海にしなければならぬために、忍耐をもって私どもやっておるわけなんでございまして、これは、中止することによってそういう問題が片づくのでございますならば、これはどんなばかが考えても中止いたしますよ。しかし、私は、そういうことは、日本の大局の上から見まして、こういう問題を永久に解決しなければならぬ日本といたしましては、そういうことをいたすべきでないという確信の上に立ってやっているわけであります。
  153. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの外務大臣の御答弁では実に不満です。さらにいろいろ申し上げたいことがありますけれども、関連質問ですから、きょうはこれでやめておきます。
  154. 野田武夫

    野田委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十八分散会