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1963-05-22 第43回国会 衆議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年五月二十二日(水曜日)    午前十時二十三分開議  出席委員    委員長代理 理事 松本 俊一君    理事 安藤  覺君 理事 正示啓次郎君    理事 福田 篤泰君 理事 古川 丈吉君    理事 戸叶 里子君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       宇都宮徳馬君    菅  太郎君       椎熊 三郎君    岡田 春夫君       帆足  計君    細迫 兼光君       森島 守人君    受田 新吉君       川上 貫一君  出席国務大臣          外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         法務事務官         (入国管理局         長)       小川清四郎君         外務政務次官   飯塚 定輔君         外務事務官         (アメリカ局         長)       安藤 吉光君         外務事務官         (条約局長)   中川  融君         外務事務官         (情報文化局         長)       曾野  明君         外務事務官         (移住局長)   高木 廣一君  委員外出席者         専  門  員  豊田  薫君     ————————————— 五月二十二日  委員西尾末廣君辞任につき、その補欠として受  田新吉君が議長指名委員に選任された。 同日  委員受田新吉辞任につき、その補欠として西  尾末廣君が議長指名委員に選任された。      ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件(原子力潜水艦寄港問題  等)      ————◇—————
  2. 松本俊一

    松本(俊)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長所用のため、指名によりまして理事の私が委員長の職務を行ないます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  松本七郎君。
  3. 松本七郎

    松本(七)委員 先般から問題になっておりました原子力潜水艦寄港問題についてアメリカ政府から報告が来るはずになっておるのですが、まだ来ないのでしょうか。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま照会中のはまだ参っておりません。
  5. 松本七郎

    松本(七)委員 それでは、それはいつごろ来る予定ですか。今週中には当然来ると私どもは予想しているんですが。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 まだ何日ともきまっておりません。
  7. 松本七郎

    松本(七)委員 それは催促はされているんですか。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 しょっちゅういたしております。
  9. 松本七郎

    松本(七)委員 それで、一体向こう回答はどうなんですか。その催促に対しては無返答なのか、それとも、いつごろ到着する見込みだとか、そういう返事は何もないんですか。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 できるだけ早くと先方も言っておりますから、遠からず来ると思います。
  11. 松本七郎

    松本(七)委員 外務大臣御存じかどうか知らないけれども、私どもの聞いたところによると、日本寄港問題についての反応なりあるいは反対の気勢、そういうものを考慮して、アメリカ政府としてはこの際見送ることも考えておる、そして、いきなり原子力潜水艦でなしに、大臣御存じの昨年建造された原子力貨物船サバンナ号を一応寄港させる、そうしていろいろな安全性についての保証書を日本政府を通じて日本科学者に検討してもらう、そういう一段階を経たらどうか、そういう意見アメリカ政府のほうには出ておるということを聞いておるのですが、大臣、何かそういうことは聞かれておりますか。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうお話は一切聞いておりません。
  13. 松本七郎

    松本(七)委員 そういう話を含めて、私はアメリカ政府にもう少しはっきりした回答要求してもらいたい。というのは、われわれの要求に対して、ただなるべく早くじゃ済まない。一体、日本国民の心配しておるこの問題についての報告書を早急に出すのかあるいはいつ出すかもわからないような状態でずるずるべったりに引き延ばしながら、今言うようにサバンナ貨物船寄港でごまかそうとしておる。つまり、日本科学者学術会議の声明その他の動きがなかなか活発なので、一応日本科学者に何らかの資料を提供するというような手を経ようという動きがあると聞いているんです。私どもの知った範囲ではそうです。したがって、そういう問題を含めて、いつごろ回答を出すつもりなのか、少し強硬に政府は交渉してもらいたい。どうですか。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 商船の入港問題などということは全然聞いておりません。したがって、いま問題になっておる原子力潜水艦寄港問題と全然別個の問題だと思います。  それから、アメリカ照会中の資料でございますが、再々にわたって催促しておりますので、遠からず参るものと思います。
  15. 松本七郎

    松本(七)委員 あなたのほうが報告催促貨物船寄港と無関係でやられることは御自由です。私どもはそういう情報も聞いておるし、早く催促してもらいたいという私ども要求を取り上げて政府としてもひとつ催促してほしい。この点ここで約束してください。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 御要請をまつまでもなく、こちらのほうで催促しております。
  17. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、この前の委員会戸叶議員から質問したことなのですが、核兵器定義ですね。だいぶ前に参議院に出されたあの資料がこの前再度出された。あのとおりだという答弁がこの前の委員会であった。ICBMとか本来的に核弾頭をつけなければ使用できないようなものは核兵器だ、通常兵器兼用のものは核弾頭をつけたときが核兵器だ、こういう解釈というものは日本独自のものなのか、それとも国際的にも通用するものか、この点を伺いたい。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 私の伺っておるところでは、この間お答え申し上げたような解釈でただいままで国会答弁に当たってまいりましたが、いまの段階においてそれを変える必要はないということでございまするし、私ども解釈国際的にも理解され得るものだと確信しております。
  19. 松本七郎

    松本(七)委員 国際的に理解されるかどうかお聞きしておるのではないのです。外国でもそういう定義を下している根拠があるかということです。あればそれを示してもらいたい。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 核兵器問題、核問題というのは、日本におきましては特にセンシチブな問題でございまして、私どもは、それに対処いたしまして、国民の誤解があってはならないというわけで、この間申し上げましたような一貫した定義に基づいて処置いたしておるわけでございます。外国核兵器をどのように定義しておるのか、私はよく存じませんが、核問題は日本にとって一番深刻な問題でありますから、日本政府といたしまして細心かつ周到な態度で臨まなければならぬという確信に基づいて、この間申し上げたような建前をとっておるわけでございます。
  21. 松本七郎

    松本(七)委員 大臣外国がどういう定義をしているか知らないとおっしゃるが、日本アメリカ安保条約を結んでいるのでしょう。そして事前協議の条項があるでしょう。そして、いままでの政府の御答弁によっても、その事前協議をやるときの一番の中心の問題は核兵器持ち込み、こう言っているでしょう。その核兵器が何かということを、相手国アメリカ定義さえ知らない。これじゃやれないじゃないですか。少なくともアメリカくらいはどういう定義をしているか、大臣知っていなければ話にならないでしょう。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、この前も申し上げたように、いま政府がとっておる態度アメリカ側了解を得ておりますので、アメリカもそういう理解に立っておるわけでございます。安保条約の運営上そういう基本的な態度で双方いっておるわけでございまして、何ら支障はないのです。
  23. 松本七郎

    松本(七)委員 それじゃアメリカ日本定義理解しているということだけであって、核兵器問題というのは日本ばかりじゃないですよ。ソ連ともいろいろな交渉がある。核停問題で交渉する。NATOでもある。そういう場合に、アメリカ核兵器というものはどういう定義に基づいてこれをやっているのですか。日本政府定義と同じ定義で臨んでいるという根拠がありますか。そこを伺いたい。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 それはアメリカのことでございまして、私はよく存じませんが、わが国の核兵器持ち込みを認めないという考え方根拠として、日本政府アメリカ政府はこういう了解によってやっておりますということで、私は必要で十分じゃないかと思います。
  25. 松本七郎

    松本(七)委員 それが十分じゃないのです。もともと、安保条約の審議のときの状況を考えてみても、単なる日米関係じゃないのです。米ソ関係、いろいろな国際情勢のもとで日本核兵器を持ち込んだりあるいは核武装することによってどういう危険が生ずるか、日本の安全ということから考えて持ち込むことは困るのだ、それから、なしくずしに核武装されるというようなことも、これは日本が知らなくても外国に知られた場合に国際緊張を激化させ、あるいはその結果一たん事があるようなときに日本報復爆撃対象になる、そんなことは困る、迷惑千万だということで、せめては事前協議というところまでこぎつけているわけです。それならば、ただ日本解釈アメリカ理解したということだけでは私は十分でないと思う。やはり、第三国なり国際場裏において核兵器というものがどういう定義をもって見られておるかということを十分考慮できなければ、対策が立たないと思うのです。この点は決して十分じゃないと私は思うから、いままでもし十分と思ってやっておられたとするならば、この際考え方を改めてもらいたいと思います。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 いままでやって参りましたことで必要で十分である、こういう意見であります。
  27. 松本七郎

    松本(七)委員 それでは伺いますが、この間F105の問題でここで楢崎君が質問いたしました。私はあのあと党調査団として現地へ行ってきたのです。福岡の市長さんは阿部源蔵さんですが、決して社会党じゃない。市会も非常に強硬にF105の撤去問題をいま取り上げております。県でもおそらく取り上げることになるだろうと思います。阿部さんが上京されて外務大臣あるいは黒金官房長官質問書を出しております。これはごらんになったでしょう。あの中で阿部市長も、F105の持ち込みというものは当然安保条約にいう事前協議対象にすべきじゃないかという質問書を出しておる。それに対して両者の回答は、これは対象にならないと言われる。その理由もつっ込んで聞かれておるのですが、その理由は、対米信頼を阻害するという回答が出されておる。そういう問答でいいんですか、大臣事前協議対象にすることを要求すること、そのことが対米信頼上おもしろくない、そういう解釈をされておる。非常に向こうでは問題になっておる。どうでしょう。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 阿部市長が御上京されて、私もお目にかかりまして質問書を受けました。それで、本件につきましては、こういうようにエキサイトしておりますので、われわれの返事はできるだけ場当たりでなくて親切にして差し上げる必要があると思いますので、いま調達庁方面とも相談をしておりまして、近く回答を出す予定で用意中でございまして、まだ回答は出していないと思います。
  29. 松本七郎

    松本(七)委員 それは、あなた、話が違う。あなたの言われるのは、阿部さんの質問の中の一部の、騒音の防止だとか、あるいはそれの補償だとかいう点でしょう。もう学校は全く窓をあけておられない。ものすごい音です。だから、窓を全部締め切らなくてはならない。そうすれば、いろいろな環境から言っても全教室に冷房装置でもつけねばなるまいと言われておるのですが、そういうことについてできるだけ考慮しましょうということであって、いま言う中心の問題は、事前協議対象にぜひすべきだ、この阿部市長質問に対するあなたの回答を聞いておるのです。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、御質問まつまでもなく、私ども事前協議対象にならぬということは国会を通じてたびたび申し上げておるわけでございまして、阿部さんに対して別な回答をするわけにまいりません。
  31. 松本七郎

    松本(七)委員 いままでの政府態度はこういうふうにやってきたから、もうそれで了解しろ、その態度が問題だと思う。F105を受け入れておる現地市長が、どうしても事前協議対象にしてもらわないことにはどうにもならぬという気持ちになっておる。決してわれわれの陣営だけがそういうことを言っておるのではない。そういう点も考えますし、また、私ども再三申し上げ、いまも触れたように、これは単なる日米だけの問題ではない。日本の安全ということから考えてこれを取り扱う気持ちがほんとうにあるならば、やはり事前協議対象というものはなるべく広げるべきだ。それを、なるべく狭くしよう狭くしようという態度だ。現にF105を受け入れてこれは非常に危険だということを身近かに感じておる現地の人の声、そういうものを聞けば、これはなるべく事前協議対象というものは広く解釈することによってやったほうがいいんじゃないですか。そういう危険があるからこそ事前協議というものは入れたのでしょう。それならば、協議するのですから、協議くらいなるべく広く解釈してひんぱんにやった方がいいと思うのですが、そうすることが日米関係にまずいという大臣解釈なり考え方というものは一体どういうものか、了解できない。
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 条約並びにそれに基づきます公文を特に拡大解釈するとか特に縮小解釈するというような意図はございません。ただいまあります関係条約につきましては、厳正に解釈・適用していくべきものと心得ておるわけでございます。  それから、政府はこれは事前協議対象にならぬということを申し上げておるわけでございまして、それに対して事前協議対象にしてくれという御意見は承りますけれども、私どもといたしましては、政府がとっておる方針につきましてできる限り御理解をいただくような努力をしてまいりたいと思っております。
  33. 松本七郎

    松本(七)委員 大臣御存じでしょうが、世界非核武装地帯の設置問題がだいぶ前から出ておりますね。たとえばポーランドのラパッキー外相が提案した欧州における非核武装地帯、そういう場合の核兵器定義はどういうふうになるのですか。
  34. 中川融

    中川政府委員 非核武装地帯協定というものは、実はまだできていないわけでございます。いろいろ宣言などをした例はございますが、いずれも、核兵器ということだけでありまして、その核兵器のさらに詳しい定義、これは要するに常識にまかせていると見ざるを得ないわけでございます。もし将来ジュネーブの一般軍縮会議などがはっきり結末がつきましてこの国際間の軍縮条約でもできますれば、そこで核兵器についての一つの章ができるわけでありましょう。そうすれば、核兵器が何であるかということについては詳細な定義国際間にできると思いますが、いまのところはそれはまだできておりません。したがって、国際間に通用する核兵器定義というものは、先ほど大臣が申されましたように、いままだ常識にまかされておるものだと思うわけであります。現在日本のとっております解釈は、政府といたしましては、これが国際間の常識でもある、かように考えてとっておるところでございます。  なお、アメリカはもちろん十分承知して、それに基づきまして日本アメリカとの間は従来三年間新安保条約によりまして行動しておるわけでございます。
  35. 松本七郎

    松本(七)委員 そういう協定条約がないから、またはっきりした定義はないといういまの中川条約局長答弁ですが、それでは常識として外務大臣に伺いたい。この非核武装地帯の設置だとかあるいは核停問題でいままでよく言われてきた、つまり核兵器製造ばかりじゃない、使用はもちろん、貯蔵一切を禁止しようということによって初めて核兵器停止というものが完全にできるわけですね。そうすると、そういった方向でこれからずっと進んでいくとすれば、日本政府のいまのような解釈では、世界における非核武装なりあるいは核停の協定なんというものに矛盾すると私は思うのです。というのは、日本政府解釈では、核弾頭さえつけなければ核兵器ではない、装備としては核弾頭はつけ得る装備であっても、これをつけない間は核兵器ではない、こういう解釈です。およそ無意味だと思うのですね。完全な核停協定を結び、またこれを実施するためには、核弾頭をつけ得る装備もすべてこれ核兵器だという定義の上に立って初めて全面的な禁止というものができるわけですね。核弾頭だけ一応製造貯蔵も禁止して、一切核弾頭を禁止しておきながら、それをつける装備だけ自由にしておったって、そんな装備は意味はないのです。ですから、ひっくるめたものであって初めて一貫して核停止ができる。その点どうでしょう。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 私も兵器専門家じゃございませんけれども常識といたしまして、飛行機なら飛行機核弾頭をつけなければ機能を発揮し得ない、単一の目的のために設計され、製造され、使用されるというものでございますれば、松本さんがおっしゃることはよくわかるのでございますけれども、今度の105みたように、多目的でございまして、核弾頭をつけなくてもその他の目的機能を果たす能力を持っておるというような場合は、私どもがいまとっておる解釈でちっとも支障はないと考えておりますし、これは常識だろうと思っておるわけです。
  37. 松本七郎

    松本(七)委員 だから、その兼用兵器であって、そしてそれを事前協議対象にもしないというところに問題があるのであって、理屈から言って、われわれの言うように、日本の安全を完全に保障するのには、むしろ非武装、中立のほうがこれからの国際情勢を考えてもいいんで、それは核兵器はまっぴらごめんだし、できるだけ事前協議も広く対象にして、そしてこれを協議でもって拒否できるようにしていくということが筋が通ると思うのです。あなた方は、ある程度は武装はして、そして安保体制に基づいて軍事力による安全保障に協力していくという立場をとっておられて、そこは政府国民の前に公言されておるわけです。そして、なお、核兵器持ち込みはしない、こう言われるわけです。そして、今度のF105の問題にしても、もう日進月歩の兵器の発達、いつまでもF100をそのまま置いておくわけにいかない、進歩するのだから、これと105を入れかえるのだ、単なる機種の変更だ、こういう答弁が出てくる。その論法から言えば、どんどん兵器が発達していく、そうすると、やはりできるだけ軍備を持って、そして、協力するのに、できるだけおくれた兵器のほうがいいという論理は立たない。やはりある程度進歩に応じてやろうということが外務大臣答弁の中にももうすでに出ておりますね。そうならば、いざ事があるときには、アメリカ側から要求してくるのは当然だと思うのです。おまえのほうはもう少し協力せよ、そういう要求から、いつまでも核兵器を持たないのは何事だ、NATOでさえはっきり打ち出しておるではないか、こういうことになると思う。したがって、日本政府としても、いまでこそ、国民があなたの言うようにセンシチブだし、非常に反対も強い、そういうときにこれを受け入れるのだと言えないから、あなたはいつまでも核兵器持ち込み反対だと言いながら、実際には、いざ事があるときにはいつでも水爆を積んでF105が行動できるように、あるいはいつでもこれを持ち込めるような、実質的にはそういう方向に進んでいく準備をしておるということに客観的にはなる。その点はやはりみんな国民は敏感に感じて、事前協議の問題も105をめぐって非常に要求が強くなっておると思うのです。この点、もしそういうようにいざというときにはこれは核兵器持ち込みもやむを得ないのだという方針があるならあるで、それを正々常々と国民に訴えるということによって国民の審判を仰ぐという方法がとらるべきだと私は思うのです。それを、ある程度なしくずしに事実だけつくって、国民があきらめたときにそういう態度に出られるというのでは、民主的でないと私は思います。この点の考え方をこの際伺っておきたい。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 核兵器の現実の持ち込みということについて、なしくずしにそのような情勢をつくっていくという意思があるのではないかということでございますが、そんなことは毛頭考えておりません。ただいままでアメリカからそんな申し出もございませんし、また、そういうことを協議するという意図先方は持っていないわけでございます。私どもも、日本といたしましては、核兵器持ち込みは認めないという不動の方針で進んでおるわけでございます。取り越し苦労はしないようにひとつお願いしたいと思います。
  39. 松本七郎

    松本(七)委員 F105でたとえば何か事があるときに水爆を積もうというときにはどうなるのか、アメリカのほうから事前協議要求してくるのですか。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 当然です。
  41. 松本七郎

    松本(七)委員 いざ事があるときにはそんな時間的余裕がないのが今日の兵器の特色だと、この間も委員会でやられました。これはこの間楢崎君が持ち出した問題ですが、後ほどまたどうせ問題になると思います。  次に私はスレッシャー号沈没原因を少し伺っておきたい。何らか詳報が入ったでしょうか。
  42. 安藤吉光

    安藤政府委員 スレッシャー号沈没事故が起こりました直後に、アメリカ大使館に対しまして、これの詳報、あるいは直ちに設立されました調査委員会の経過あるいは結果がわかり次第こちらに知らしてもらうように要請してございます。当時新聞にも出ましたようなリコーバー中将が言ったこととか、いろいろな人が言ったことについては、当時資料をもらいました。現在なお調査委員会は続行中のようでございますが、その後特に最初にもらいました資料を変更するようなものはございません。と申しますのは、最初にもらいました資料によりまして、リコーバー中将は、原子炉破壊によるものではないということを申しております。理由といたしましては、原子炉というものは、破壊が起こり得ないように、爆発防止装置とかその他種々の安全装置があるから、爆発する可能性はないということを言っておりますし、それから、汚染も、当時いろいろな機構の上からあり得ないということを、言っておるとともに、海上のいろいろな浮遊物、手袋だとかプラスチックの破片だとか、そういうものを検査しても、また、水を検査しても、あるいは海底のコアリングと申しますか、土とかそういうものをとって検査しても、なかった、そういったことがずっと出ております。その後それを改めるような報告とか連絡はございません。
  43. 松本七郎

    松本(七)委員 それは、この間のロイター電では必ずしもその通りじゃないでしょう。やっぱり原子炉爆発によるものという可能性があるのじゃないかという報告をしておりますよ。このときの様子をいろいろ報じているのですが、第一は非常に突然だということ。全くの突然だったために、乗り組み員が合い図する間もなかった、もちろん浮きを出すというような余裕も全然なかった、そういう情勢を報じて、結局この突発事故原因原子炉の突然爆発ではないか、このために放射能は海上に拡散された模様だ、そして、こういった原子炉爆発は従来もしばしば起こっており、一九六一年の一月にはアイダホ州の原子力研究所でも軍用原子炉爆発して三名死亡した、そしてこの原因は核分裂反能の制御装置の故障によるものであったと言って、これに似た事件をこうやって四十件ばかり発表している。だから、もしそうだとすれば、このスレッシャー号事件もやっぱり米国の原子炉の不完全さから来ているという可能性は十分あるわけです。おそらくそういうところが今後アメリカでも調査委員会でなお研究してくることになるだろうと思うのです。それから、もう一つは、いまアメリカ局長の言われたリコーバー中将が、乗り組み員の訓練が不十分であったということを前から再三指摘していたし警告もしてきた。この間だいぶ前にここで参考人意見を聴取しましたときに、私はこのことを陳述者に聞いた。そして、専門家の方も、原子力潜水艦航海技術においては訓練不足はないと思うけれども原子炉の操作においては訓練の不十分さというものは自分たちもアメリカ資料で承知している、こういう証言があったのです。これはリコーバー中将が前から指摘しておった。それも私はこの間参考人の方に質問したのですが、本年の一月二十二日のニューヨーク・ヘラルド・トリビューン、これに発表されたビクター・ウィルソンの論文、この中で、原子力潜水艦の父といわれているリコーバー中将がこの点を特に指摘してきたという論文が出ていたわけです。そうだとすれば、このリコーバー中将の言っておったことが全く正しかったということが、今度の事件で証拠立てられたことになるわけです。こういった点について大臣意見を聞かしてほしい。
  44. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカの方で事故原因調査委員会が設けられて活動を開始しておるようでございますので、私どもはその成り行きを注目いたしておるところでございます。問題は、原子力潜水艦寄港という問題、それにからまる安全性の不安という問題でございますから、それを解消するという努力を最大限やらなければならぬ。したがいまして、スレッシャー号事件の事故原因というものについても、われわれは非常に関心を持っておるわけでありまして、先方からの権威のある御返事をちょうだいすれば、それで判断しようということでございますが、ただいままでのところ、先方からこの事故原因ということにつきましてわれわれのほうにまだ返答は来ていません。
  45. 松本七郎

    松本(七)委員 アメリカ側の判断を尊重するのもけっこうですけれども、やはり日本学術会議でああいう声明も出ているし、その声明の性格なり当否は別として、ともかく日本科学者も非常に心配しているのですから、日本科学者意見をできるだけ尊重する、そして最大限にやはりアメリカ側資料要求して日本独自の判断をやるということを特にこの際要求もしておきますし、それから、大臣としてもこの点を特に尊重してやってもらいたい。この点をひとつ御答弁を願います。
  46. 大平正芳

    大平国務大臣 当然のことでございまして、そのように心得ております。
  47. 松本俊一

    松本(俊)委員長代理 帆足計君。
  48. 帆足計

    ○帆足委員 私は本日主として出入国の問題を伺いたいのですが、その前に、ただいまの松本委員質問に関連いたしまして一言お尋ねしたいと思います。  このたびの原子力潜水艦の入港の問題は、専門家の伝うるところによりますと、軍艦大和七千隻ないし一万隻くらいの実力を持つ、すなわち戦力を持っている潜水艦が入港しようということでございますから、百年前のペルリの黒船が下田の港に入ってきたと同じくらいの大きな歴史の断層を形づくる問題でございます。したがいまして、政府も、またこれを監視する国民も、ともにこれに対して慎重な態度をとらねばならぬということは当然のことでございますから、外務大臣は、私ども監視役たる野党からぎゅうぎゅう問い詰められますから、気を悪くなさらないで、慎重な態度をとって、国民を納得せしめるだけの御努力を払う義務があると思うのでございます。また、私どもは、ただいま野党の立場に立っておりまして、政府を監視し、それを批判する立場に立っておりますから、相当きびしく政府に詰め寄ることが国の利益に沿うゆえんである、こう思っておりますが、政府側のほうはこれを受けて説明し釈明する立場でありますから、ひとつ懇切丁寧に誠意をもって御答弁のほどお願いしたいと思うのでございます。  第一にお尋ねしたいことは、学術会議のことは新聞等で詳しく拝聴しておりますし、過ぐる科学技術委員会においても十分な問答がなされておりますが、原子力委員会のことについては、詳しく存じておりませんので、原子力委員会の最近の政府に対する勧告なり結論、また政府との連絡はどのようになっておりますか、一言伺いたいと思います。
  49. 大平正芳

    大平国務大臣 本問題が提起されてからは、終始原子力委員会と御相談をいたしまして、アメリカ側照会をし、その回答につきましても原子力委員会の方に吟味してもらっておりまするし、また、御相談の上再照会をいたしておるわけでございまして、私どもときわめて緊密な連絡協調を保っておるのでございます。
  50. 帆足計

    ○帆足委員 今日までのところでは、原子力委員会は、ただいま提出されているアメリカ並びに日本側からの資料においては、これに対して結論が出ない、すなわち、寄港合理性の確認ができないといういま段階であるというふうに聞いておりますが、外務大臣はそのように承知しておられるのでございましょうか。
  51. 大平正芳

    大平国務大臣 御相談の上照会作業をやっている段階でございます。原子力委員会として独自の決定をしたというようなことは聞いていません。
  52. 帆足計

    ○帆足委員 私どもが承知しております限りにおきましては、原子力委員会は今日まで提出されております資料情報をもってしては満足できないというふうに伺っておりますから、この上ともアメリカと強力に御折衝を願いたいのでございます。  次に、このたび入ってまいります潜水艦はノーチラス型と聞いておりますけれども、新聞その他専門家の伝えるところによりますと、単なるノーチラス型でなくて、その構造、兵力、破壊力とも数歩前進いたしましたスレッシー型であるというふうに伝えております。一たびこれに核装備をいたしました場合は戦艦大和一万隻以上の破壊力に匹敵する偉大な力を持っておると伝えておりますけれども、一般的に抽象的にノーチラス型と聞いておりますが、これはどういう型の潜水艦でありましょうか。政府がただいま確認されている点を伺っておきたいと思います。
  53. 安藤吉光

    安藤政府委員 米国から打診のございましたのは、通常の原子力を推進力とする潜水艦でありまして、核兵器は積み込んでいないものの寄港ということを申してきております。そして、向こうといろいろ話しております間におきましても、向こうはノーチラス型ということをたびたび引用しております。
  54. 帆足計

    ○帆足委員 専門家の言によりますとそれには多少疑問があるようでございますから、さらに御調査のほどをお願いしたいと思います。  先日週刊新潮という週刊誌を読んでおりましたら、たぶんアメリカの新聞記者でございましょうが、外国の新聞記者が、最近の特に批判者側の原子力潜水艦に関する問答や質問を見ると高等学校の生徒の質問のような感じがするというふうに出ておりまして、私はまことに愛らしい記者もおるものかなと思って拝読しましたが、どうもその方々の議論をわれわれが率直に聞きますと、キャバレーのおやじのような議論でありまして、まことに俗論というか無責任のような議論のように拝聴いたしまして、外国の新聞記者諸君も、他国の問題については、その国を憂うる国民が慎重に考えておるのであるからというくらいのことは少し勉強したらよかろう、最近教養が少し低くなった傾向があるのではないか、こういう感を抱きまして、一言申し添えておきます。  さて、それでは、なぜ原子力潜水艦が横須賀なり佐世保の港に寄らねばならぬか。先日私は、休養のためならばさしあたり日本にお立ち寄りにならなくても風光明媚なハワイの港を御推薦したほうがよかろうと、こう申しましたが、これは必ずしも皮肉で申し上げたのではなくて、ペルリの黒船ならば、薪炭を補給し、また二百十日のあらしを避けますために緊急避難で下田の港に入り込むということも必要でございましょうけれども原子力潜水艦は数カ月、長くは半年も海中をもぐることができるのでありますから、最初から計画的に寄港地を御選択になれば、何も平和憲法下の日本の港にいま急いで立ち寄る必要はなかろうとたれしもが常識的に思うのでございまして、きわめて常識的な質問政府にしたわけでございます。それに対しまして、政府側は、懇切に説明せねばならぬお立場であるにかかわらず、来なくてもよければ来てもよかろう、こういう答弁で、これでは私は多少政府側の釈明において欠けるところがあるような気がしたのでございます。来なくてもよければ来てもいい、来てもよければ来なくてもよいではないか、これならば水かけ論でありまして、おそらく国民投票をすれば半数以上は来なくてもいいという投票が出るでしょう。議席の数で言えば三分の一の議席がこれに懐疑の目を持ち反対であり、国民投票をすれば、六割、七割、八割は、今日までの与えられた材料のもとでは、そういう物騒なものは来なくていいということになろうと思う。来なくてもよければ来てもよかろうというようなことならば、私は、礼節として他国の港にとにかく当面急いで来る必要はないではないか、こう申した次第でございまして、私の言うことのほうが常識にかなっておるように思うのでございます。  そこで、たって来ねばならぬという以上は何か理由があるのであろうと思います。今日の原子力潜水艦は、地上の核兵器基地がいまや海上に移動し、集結し分散し隠れることのできる機動力のある核兵器基地としてこれにかわりつつある。戦略家はこぞって、ポラリス潜水艦並びに原子力潜水艦に注目して、核兵器原子力潜水艦の戦略こそは今後世界戦略にどういう変化をもたらすであろうかと、かたずをのんで検討しているいま重大問題でございます。過ぐる日に、B29が太平洋の荒波を一またぎの溝に変えたときに、神州不滅の国はヨーロッパのまっただ中に置かれたと同じような状況に入って、たちまちにして歴史の試練を受けて、御承知のように、旧時代的な観念と迷信を持っていた一大軍国主義勢力は、気温と風圧が高くなりいたたまれなくなって氷河の間におっこちてしまったマンモスのように没落し、そして蒸発してしまったことは記憶に新たなところでございます。B29のあとに音より早いジェット機があらわれまして大きな戦略上の変化をもたらして、新日本憲法が保守勢力に対して若干じゃまになり始めたことも、これも御承知の通りでございます。ロケットが発達したために、ロケットの落とし子として中米の一角にキューバという小さなかぐや姫のような国が生まれたことも、御承知の通りでございます。いまや長距離弾道弾と核兵器潜水艦に戦略が移ろうとしておるこの戦略の及ぼす影響はどういうことであろうか。世界に対してプラスであろうかマイナスであろうか。日本にとってそれがよいことであろうか悪いことであろうか。よいことは、悪いことを伴い、悪いことにはまた一脈の末路も伴うのでございますが、それを慎重に検討するのには、われわれとしても情報を集めなければならぬ。これは相当の時間を要する問題でございます。戦艦大和一万隻に匹敵する巨大なるマンモスが東京湾に近づこうとするときに、これに対して半年くらい慎重に検討するということは、私は当然のことであろと思うのでございまして、政府は少しものごとを軽率に考えるくせがあるのでなかろうかと思います。また、保守政党の立場として、これに対してわれわれのようにはっきりした態度をとれないといたしましても、野党の良心的な質問をたてにいたしまして、そしてやはり慎重な態度をとって、アメリカから甘く見られないように、あたかも原子力潜水艦の問題を討議しておるときに綿織物の問題がことごとにわれわれに不利に解決されることのないように、あるいはまた、この問題を私どもが自主的に討議することによって、やはり、保守政党は自由世界全体を考慮するというものの、なお日本国民は祖国というものを第一義に考えておるということをアメリカの諸君に肝に銘じて知らせる必要があると思うのです。アメリカの祖国はアメリカであって、われわれの祖国は日本であるということを、よくアメリカの諸君に知らせる必要があると思います。週刊新潮の外国人のあの随筆に、一体、どの日本の新聞記者が、または日本の評論家が立ち会ったか知りませんけれども、まことによい評論家が立ち会ったらしく、最後にはこういうことを書いておりました。まあいろいろアメリカさんや外国人さんが雑音を立てて批評をくださるけれども日本のことは日本人にまかしてください、われわれが慎重に資料を集め、われわれが自主的に判断いたしますから、あまり安っぽいことをいろいろ言わないでもらいたい、こう同席のある日本人が言った。このことばはまことに傾聴に値することばであるから、この日本人の聡明な判断に私は譲ろう、こういう結論になっておりまして、私は金四十円で週刊新潮を買いましたけれども、その最後のことばで、その日一日はよい気持ちがいたしました。日本人というものはこういうものでありまして、わが祖国を愛する。これは野党のみならず与党にもそうあってほしいと私は思うのでございます。(「論理が逆だ」と呼ぶ者あり)——逆であってほしいと一そう切望する次第でございます。  さて、そのような観点から、一体、この原子力潜水艦は何のために急いで日本に寄らねばならぬか、外務大臣のもう少しはっきりした御所見を伺いたいと思うのでございます。
  55. 大平正芳

    大平国務大臣 いま帆足先生の御論調を拝聴しておりますと、あなたの御指摘のように、時代がだんだん転移してくると、兵器というものも異常な発達をみてきたということは、そのとおりだろうと思うのでございます。しかしながら、私どもは、かかる核兵器というものの戦争抑制力というものに期待を寄せておるわけでございまして、こういう精強な兵器があって初めて平和が守られておるのが現実の姿だと思うのでございます。また、通常の兵器の領域におきましても日進月歩であることは御指摘のとおりでございます。これはあくまでも戦争を抑制するという目的に奉仕しておるわけでございまして、戦争ということが起こらないように、それを抑制する措置として発達しておるものと思うわけでございます。  それから、寄港目的でございますが、これは、たびたび申し上げておりますように、休養と補給が目的である。それ以上の目的を持っていないものでございます。しかし、従来その寄港先方が要請してきなかったということは、おそらく日本人の感情を配慮されてのことであったと思うのでございますが、あなたも御指摘されるように、時代がだんだん進んでまいりますし、艦船の推進力として原子力が普及してまいったという歴史的な経過を踏まえた上で、もうそろそろ日本人にも御理解をいただけるという判断のもとに要請があったものと私は思うわけでございます。休養や補給であればよそでもいいじゃないか、それはそのとおりでございまして、今日までそうであったわけでございますが、もう日本のほうにも原子力を推進力とする艦船が出入いたしましてもこれを受けとめるだけの御理解があるという判断に立っての要請であったと思うのでございます。したがって、私は、休養とかあるいは補給ということは、そのまま文字どおり掛け値なしにお取りいただいてちっとも差しつかえないのじゃないかと考えておるわけでございます。したがって、特にこの寄港を断わらなければならぬということが、どういう理由に基づくのか、そういう理由をだんだん解明して御理解をいただきますならば、ごく日常のこととして御理解いただき、受けとめていただくようになるだろうと思うのでございまして、そのための努力を重ねておるということでございます。
  56. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの御答弁では、戦艦大和一万隻にも匹敵する原子力潜水艦が東京湾に入らねばならぬ理由国民を納得せしめる説明にはならぬと私は思うのです。そういう御説明で、そして休養のために原子力潜水艦の水兵が陸上に上がってくるならば、私は百年前の生麦事件に決して賛成するものではありませんし、現在でも一切の暴力に反対するものでございますけれども原子力潜水艦の水兵が再び生麦事件にあわないとは保証できないと思うのです。ただいまの外務大臣の言われるような理由をもってただ来るならば、そして国民の大多数が反対であるのになお押し切って来るというならば、これはアメリカとしてもアイゼンハワー大統領が御遠慮なさったときのように御遠慮なさるがしかるべきであります。少なくとも国民の大多数が十分に納得するまで、すなわち、たいへんなことでございますから、納得するまで十分な時間をお与え下さることが必要であるまいか。現在の外務大臣の御答弁のようなことでは、直接外務大臣のお人柄を知って始終話し合っているわれわれが納得できないのでありますから、外務大臣とはどういう方であろうかと遠くからラジオやテレビを見ている国民の一般の方々には一そう私は納得できないのではあるまいかと思います。したがいまして、この問題は保留いたしまして、私は寄港目的をもっと検討いたしまして次回に質問いたし、外務大臣にもっと研究してもらいたいと思います。  さらに、先ほど松本委員からお尋ねしました核装備定義でございますが、核装備定義については、はっきりした国際定義がない。日本アメリカとの間に共通の定義もない。これでは困るのでありまして、これは本会議でも申しましたが、首を取りはずしてあるマネキンはマネキンでないかと、こういう問題であります。私は、首だけを取りはずしておる程度のものであるならば、これはやはりマネキンの一種であると、こう見るべきであると思いますが、外務省の法律の専門家はどのようにお考えですか。
  57. 中川融

    中川政府委員 核兵器というものの定義をどうするかという点につきましては、いま国際的な定義条約等できまっておりません現状では、これはやはり常識によって解釈する以外にないわけでございまして、それに基づく解釈日本政府はとっており、アメリカもそれを十分承知して、従来その解釈によって日本は処置してきておるわけでございます。それでは、頭のないマネキンがマネキンかということでございますが、これは、核兵器とマネキンとはやはり事情が違うと思うのでございます。したがって、必ずしもそのたとえで核兵器を律するわけにはいかないと思うのでございますが、この核兵器におきましては、いわゆる核弾頭というものが非常に重大な要素を占めることはもちろんでございまして、ただいま御比喩におとりになりましたマネキンにおける頭と、核兵器における核弾頭と、その重要性がはたして同じであるとは必ずしも思えないわけでございます。したがって、その核兵器はどういう理由核兵器と言われるかというゆえんのものを考えてみますれば、それはやはり核爆発力というものが中心になるわけでございまして、要するに、この核爆発力を使って殺傷破壊に用いるものにその要素を求むべきこと、これは当然でございます。したがって、核弾頭が要するにその作用をするものでございますので、核弾頭こそ核兵器である。また、核弾頭を積む以外にほかに全く用途のないいわゆる中・長距離ミサイルというものもやはり核兵器に同じと考えるべきである。しかし、核弾頭も積めれば通常兵器も要するに積むことができる、こういうものまで全部核兵器とがんじがらめに考えてしまうのは行き過ぎでありまして、やはりそれは核弾頭を積んだときに核兵器であると見るのが当然であるという常識解釈をとっておるわけでございます。
  58. 帆足計

    ○帆足委員 外務省の諸兄は、私が戦略論を聞いたときには、孫子の兵法を読んでいるかと言ったら読んでいないような顔をしながら、詭弁を弄するときには、白馬は馬にあらずなどと、荘子を読みかじりをしてそういう詭弁を弄する。そこで、私はまず問題をはっきり区別して聞きたい。いまの二つの比喩の相互関係の前に、首のないマネキンはマネキンとお考えであるかどうか、まずこれを第一問として常識論としてひとつお答え願いたい。
  59. 中川融

    中川政府委員 どうも、その御質問は、国会におきまして正式の返事といたしまして政府からお答えするだけの要するにいろいろな要素の備わった問題でもございません。むしろ一般の国民の方々の常識によって判断される一般社会通念の問題であると思いますので、ちょっと私からこの席上でお返事申し上げるのは適当でないと考えるわけでございます。
  60. 帆足計

    ○帆足委員 名答のごとく見えて名答でないというか、あなたはいま核装備というこの重大な用語を常識で解決なさると言われる。しからば、常識によって答えられるならば、あなたはこの問題についてどの程度の常識を持っておられるか、一応メンタルテストをする必要が私は外務委員としてあると思う。したがって、首のないマネキンはマネキンと常識でお考えになるかどうか。アン・エグサンプルとして、とにかくあなたは常識という用語を使ったが、常識という用語はたとえばこういうことであるかということをお尋ねしたわけですから、重ねてお答えを願いたい。
  61. 中川融

    中川政府委員 政府といたしましては、常識をもってある事柄を解釈いたしましてその解釈によってある行動をとりある判断をする必要があるという場合には、やはり常識に基づいて解釈するわけでございます。これは政府が行政を行ないます上にそういうことをしなければやっていけませんからするのでございますが、ただいまの御質問の首のないマネキンがマネキンであるかという点は、政府としては実はいまそういう解釈を下す必要のある状況にないわけでございまして、したがって、こういうことにつきましていま公式の解釈を下すということは適当でないと考えるわけでございます。
  62. 帆足計

    ○帆足委員 この質問は勝負があったと思います。条約局長としては答えにくいでしょう。これを答えると、あとは核連鎖反応でまことに都合が悪いことだと思う。そこで、もうこれにとどめまして、その次は、それでは、核兵器日本に当面導入しないと言われる。まことにけっこうなことです。一体なぜ核兵器を導入なさらないのか。保守党の中の一部の、外務大臣よりはるかに頭の悪い諸君には、核兵器なんかをどんどん入れて一朝非常の際にボタン一つ押せるようにしておけばいいではないかという、ほとんど大脳の欠除したような議論もあるようでございますが、しかし、聡明な政府は、せめて核兵器だけは入れてはならぬ、こう言っておるのは、一体どういう理由で入れてはならぬと言われるのか。われわれもそれに賛成ですけれども、保守党の立場からの教えを受けたいと思うのです。
  63. 大平正芳

    大平国務大臣 核兵器は持ち込んでよろしいというまでの国民的確信が熟していないと判断いたしておるからです。
  64. 帆足計

    ○帆足委員 頭脳明晰なる大平大臣は、大事なことになるとことばを濁されるが、私はもっと科学的に合理的に端的にお答えになればいいと思う。核兵器を入れるだけ国民の世論なり気持ちが熟していない、まるでイモの煮えかげんを論議しているようで、それでは、国民気持ちが熟したら、そういうようなムードになったらお入れになるのか。これはムードできめるべきことではないと私は思う。やはり、日本の安全を考え、そして戦略を考えて、合理主義的に現実に即して、核兵器を入れるといろいろな国際緊張を激化する、報復爆撃のおそれもある、それから日本自身が指導力を持ってない核兵器などうかうかと入れることは危険でもある等、いろいろな七つ八つの重大な理由が重なって、この点において与党と野党とがさすがに国を思う心で一致しているのではあるまいかと思う。ただ、与党の中にはどうも始終しりがふらふらしておる向きがあって、そして、国民気持ちがまだ熟してないというようなことを言われる。私はその御答弁には半ば不満でございます。国民気持ちが熟してないし、同時に日本に対して危険である。であるのに、核兵器を入れないと言いながら、核爆共用の明確な兵器について、これを入れようとしている。サブロックにしろ、単に魚雷用のものに使われるにしても、ちょいと隠せるほどのもので、ほとんどスイカほどの大きさのものをちょんと入れさえすれば、それは直ちに長崎の原爆と同じことになる。そういう両用のものを入れるということについて野党が心配するのは当然のことであって、私は、当面の段階では、明らかに魚雷なら魚雷専用のものに限ってもらいたい。両方使えるものは、やはりたてまえとしてはあぶないと認定する、野党が承知しない、こういうふうに答えてしかるべきであるのに、なぜ態度を不明確にされるか。とうていわれわれの理解し得ないところである。これについて御答弁をお願いしたい。
  65. 大平正芳

    大平国務大臣 非常に明確なのでございまして、先ほど松本委員の御質問にもお答え申し上げましたとおり、兵器として多目的なのでございまして、核弾頭をつけなければ効用を果たさないというものであれば、われわれの核兵器定義でも当然それは核兵器に入っているわけでございます。しかし、他の目的がより充実した機能を果たすようになるという兵器ができてきておるわけでございまして、それが旧式のものに置きかえられるというにすぎないと存じておるわけでございます。したがって、ちっともこれは詭弁を弄しているわけでもなく、明々白々なことを申し上げておるわけでございます。また、日本の都合によって、核兵器の発達に対して単一の目的のものだけにしてくれという注文を出すのも、きわめて非常識であろうと思います。
  66. 帆足計

    ○帆足委員 この問題について長く時間をとるわけにまいりませんから、最後に、事前協議のことですが、核兵器を導入してないから事前協議はこれをしない、しかも核兵器の場合は目下導入はお断わりしてあって、それをアメリカが了承しておるから事前協議はもはや開く必要もない、こう言う。私どもが承知しておるのでは、重大なる兵力の配置、集結、移動が行なわれたときは事前協議をする、こう承っておりました。それでは、いま政府答弁されるようなことなら、もう事前協議というものは必要ないのでしょうか。または、事前協議ということについて、もう一ぺんさかのぼって、どういう場合にのみ事前協議はあり得るとわれわれは考えていいのでしょうか。正確にひとつお答えをお願いします。
  67. 中川融

    中川政府委員 事前協議が行なわれますのは、安保条約第六条の実施に関する交換公文で事前協議はこういうときにするのだということが規定してございます。あれで予定しております三つの事態が起きた場合に行なわれるわけでございます。
  68. 帆足計

    ○帆足委員 三つの事態とはどういう事態ですか。
  69. 中川融

    中川政府委員 三つの事態と申しますのは、合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域を使用すること、この三つの場合が事前協議対象でございます。
  70. 帆足計

    ○帆足委員 それでは、戦艦大和一万隻にも匹敵するほどの戦力を持っておる潜水艦の入港は、重大なる戦力の配置の変更になぜ当たらないのでしょうか。
  71. 中川融

    中川政府委員 この三つの場合につきましての解釈は、日本アメリカの間で条約交渉の際におきましてはっきりしておるのでございまして、配置における変更でありますが、重要な変更でなければいけません。重要な変更といたしましては、大体一個師団以上の配置の変更ということになっておるわけでございます。さらに、装備における重要な変更というのは核兵器持ち込みの意味である、こういうことがはっきりしておるわけでございます。したがって、それに該当しない場合は事前協議対象にはならないわけでございます。
  72. 帆足計

    ○帆足委員 この項については私は質問を終わりまして、あとの問題をちょっと御質問しますが、私どもは入港する潜水艦の型、性能等について正確に了解し得ていない。それから、核装備定義について政府の御答弁を納得していない。寄港目的に至っては、ちゃらんぽらんであって、何だかさっぱりわれわれは理解し得ない。いま何個師団以上動いたら事前協議と言いますけれども原子力潜水艦の持っている能力は何千、何万個師団に匹敵する力である。その潜水艦が水先案内としていま入港しようとしておる。これを事前協議しないというのは、われわれ納得できない。この四つの問題について私はもっと研究をいたしまして、そうして、日本国民の憂慮するところの立場から、重ねて次回に同僚議員とともに質問をしたいと思います。ただいまの問題については遺憾ながら政府とわれわれとの見解は峻烈に対立しております。国の重大事件に対しましては、一党派の問題よりも、国に対してそれが有利であるか不利であるか、危険であるかないかということをとにかく率直に言う政党、率直に言う議員が必要でございますから、私どもは納得いくまで外務大臣質問戦を続けますので、そのように御了承のほどお願いいたします。  次に御質問いたしますことは、それほど与党・野党として対立した問題ではございません。この問題につきましては、私は穂積議員とともにいろいろ研究いたしました。ここに六法全書も持ってきております。まだ入管局長が御入室になっていないということはまことに残念でございます。もちろん、私どもは立法府の議員でございまして、行政府の方のように事こまかに存じませんし、また、行政の内容にみだりに干渉しようとする気持ちはございません。しかし、立法の精神とそれから平和と貿易の国としての日本の国柄から言って出入国管理のことを伺いたいのでございますけれども、出入国管理令で厳重に戒めてある各種の犯罪的人物または国の治安を撹乱するようなおそれのもる人物、そういう憂いのある方々以外に対しては、貿易の国として、また風光明媚な国として、できるだけ寛大に友情を持ってもてなさねばならぬと平素思っておる次第でございます。したがいまして、その筋道を離れて、単なるいやがらせ、単なる煩瑣なことなどがありますときは、外務大臣並びに法務大臣によりまして、常識的に心得ておられまして、緩急よろしきを得ていただきたい。先日この趣旨は野田外務委員長にもお話し申し上げたことがありますけれども、また、ただいま盛んにやじを飛ばされておりました同僚議員諸君とも、こういう問題についてはわれわれ兄弟のごとく意見が合うのでございまして、それほど大きな意見の違いはないのでございます。したがいまして、逐次申し上げますから、ひとつ参考にしていただきまして、また、互いにはなはだしく理解が不十分の問題がありましたならば、私どものほうでも一方的に断定して不可能なことをむやみに政府に迫って大臣・次官の貴重な時間をつぶさせるようなことは極力控えますから、大臣、次官におきましてもまた、われわれが誠意をもって説きますことのうち、合理的なことで、同時に貿易国日本としてそれは適当であるとお考えになりますようなことにつきましては、いますぐ解決がつかなくても、直ちに否定的態度をとられてわれわれと正面衝突しますよりも、懇談を重ね、また時勢の推移に応じて逐次緩急よろしきを得て解決するように、お骨折りを願いたいと思う次第でございます。  順序不同で申し上げますが、第一は、オリンピックが近づきまして、オリンピックにつきましていつも問題になりまする社会主義圏の選手諸君に対する入国は、私はできる限り寛大にしていただきたい。それから、その選手諸君が、オリンピックが済みましてせめて一週間、十日、また二週間、箱根も見たい、雲仙も見たいと言いますようなときには、それが善意で日本の風土に対する賛嘆と愛情から出ております場合におきましては、適当な選手監督が世話をするでありましょうから、またオリンピック委員の方もたぶん接待役として随伴するでありましょうから、そういうときにごたごたのないように若干の便宜をはかる。もちろんケース・バイ・ケースでありましょうけれども、自由民主党政府でありますから、いまからそういうリベラルなお心がまえをお願いいたしたい、これが第一でございます。  第二は、選手以外にお客さんが来ると思います。選手を入れてお客さんは一人も入国させないということではどうもなりません。やはり、日本の旅館の収容力には限界がありますから、人数等において多少の制約等もおのずから起こるでありましょう。また、社会主義圏に対しまして、ばらばらではいろいろ身辺保護上困るというようなお考えがありますならば、見物に来られる方々のリーダーに最も政府の信頼される相当の地位のある適切な方が団長として観光団として来られ、またオリンピックのほうの方が案内役として適切な保護及び案内にも当たる、そういう条件ならば、社会主義圏からの見物のお客さんを一定の範囲において許すということは、私は条理に合ったことではあるまいかと思います。これも御研究願いたいと思います。  第三には、ひとつこれらは事務局においては書きとめておいていただきたいと思うのです。議員の質問は最高の国民の意思の質問でありますから、おろそかにお考えにならずに書きとめておいていただきたいのでありますが、よく、貿易視察団などが日本にまいりまして、何の悪意もなしに、気候がいいから、また風土が美しいから、そうして調印式までに疲れたから一週間、十日箱根で休みたい、熱海で休みたいと言いますようなときには、野党の者、与党の心ある者が非常にあっせんにつとめて、すったもんだのあげくやっと数日間滞在延期になるということが始終でございます。この問題も多少はケース・バイ・ケースでございますけれども、大体大臣並びに次官においてお心がまえのほどがあるならば、ああこの使節団はこういう使節団である、こういう団長がおって、こういう世話人がおられるから、一週間ゆっくり箱根で遊んでいらっしゃい、二十四時間以内にパスポートを出すようにしましょう、こういうこともできることでありまして、そういう便宜をおはかりなさることが必要であろうと思う。これも多少は緩急よろしきを得る問題も中にはあろうかと思いますけれども、今日の行き来は、貿易、スポーツ、また文化の交流の問題でありますから、そして非常によく調査の上入国を許可しておる現状でございまするから、その程度のことはひとつ心がまえのうちに入れておいていただきたい。  第四に、指紋を取る制度がございますが、私は、外国のお客さまに対して、敷島の大和のこの観光の国において、外国人からやたらに指紋を取るという趣味は趣味としてはあまり好まない。これはヤンキー好みの趣味でございまして、手にいれずみをしているアメリカの諸君が趣味としているところだから私は好みませんけれども、しかし、あのとき以来やたらに不良外国人が出入いたしますから、そういう悪いやつを取り締まるために指紋も余儀ないとすれば了解される節もあるのでございます。しかし、素性正しい人間に対してやたらに指紋を取るということは、私は必ずしも好ましくないと思っております。また、どういうようないきさつか、社会主義圏のお客さんは指紋を取られることを絶対に憎むのでございます。一つは、これは私の独断でありますが、われわれも長い間入獄の苦しみを受けました。そういう思い出のためか、あるいは風俗人情の相違か、とにかく、回教徒が豚を食わないというのに、口の中に豚を押し込むとするならば、回教徒はその国を憎むでしょう。指紋をきらう国民に対して無理に指紋を強制するということはやぼなことであろうと思いますが、今日の段階において、社会主義圏から参ります使節団は必ず責任者である団長がついておりまして、かってに自由行動をすることは原則として許されておりません。また、おむね精選された教養ある人物が参っております。使節団がかたわら革命指導をするとか他国の政治に干渉するがごときことは三十年前の夢物語でありまして、いまや平和共存の時代にそういうことはまかりならぬということはすでに社会主義圏の憲法になっておることも、すでに聡明な外務大臣は御承知のとおりでございます。四十年前の第三インターナショナルの時代とはいまは異なるのでございます。公安調査庁や内閣調査室の教養低い調査官殿たちは、戦争前の低き教養をもって御熱心のようでありますけれども、いまは民主憲法の時代、国際連合の時代でございまして、平和共存の時代でありますから、三十年前の誤った鯨尺かかね尺を用いましてメートル法の今日事を誤らざらんことをお願いする次第でございます。もしそれ革命の秘密の暴挙をしたいならば、香港ででもどこででもやれるのでありまして、文明の発達した今日、何も使節団がそういうことをしなければならぬ理由はごうまつもないのでございます。したがいまして、そういう錯覚をお持ちにならないように。しかりとするならば、そういう特別の使節団の人たちに対して、滞在日数が延びたからといって指紋を取る必要もなかろうと思います。また、留学生の場合には特別に選ばれた秀才が参るのでございまして、その人数は指を屈して数えるほどの人数でございます。そういう学生諸君またはプロフェッサーから指紋を取る必要もなかろう。すなわち、指紋を取る動機は、わっとばかりに不良外人が日本に入りましたときの整理整とんのために指紋を取ったのでございます。したがいまして、私の記憶しておりますところによりますと、法務大臣が特別の必要ありと認めた場合はそういう手続をしないでよいという一項目があったやに記憶しております。いまもその場所を一生懸命さがしておりましたけれども、われわれしろうとでありますから場所がまだ見つかりませんが、あったことを記憶しております。したがいまして、その条項をお使いくださいまして、もうそういうやぼなごたごたはこの際なるべく少なくし、むしろ皆無にしていただくことをお願いしたいのでございます。  第五番目には、学術、文化、貿易等の使節に対しては、それが国に有益なる限りは、少なくとも国益を阻害しない限りは、国交未開始国または社会主義圏からも来られるお客さんに対してはできるだけ寛大にお迎えしよう、こういう御答弁をいただきまして、これは速記に書かれておるとおりでございます。当時はそのように速記に書きとめてくださったと思って満足いたしましたけれども、人間は、不言実行と申しますが、有言実行が大事でありまして、速記録にとどめただけではなくして、ぼつぼつ実行の段階に移っていただきたい。と申しますのは、たとえば北朝鮮についてもそうです。これは私の個人の見解でありますけれども、北朝鮮と南朝鮮との問題のごときは、直ちに私は解決つかないと思うのです。ましてや二つの軍隊があるのでありまして、この点については、互いにまず貿易と文化のことについて両者が懇談会を持つというような時期が相当期間続くことがむしろ望ましいことではあるまいか。話は横道にそれますが、南朝鮮は国連が管理しているはずでありますが、ダレスのおじさんが心臓が強いものですから、いつしかダレスさんの属国のようになってまいりまして、まことに遺憾なことであって、これにだれも文句を唱える人がないのは、私は世界の七ふしぎの一つであると実は思っております。朝鮮は国連の公平な管理下にあるのではなくしてアメリカが自由自在にしているというふうにだれしも思っているような状況でございまして、ソ連までがそれをほったらかしているのは一体どういう理由であろうか。あのときに国際連合をしばらくボイコットをしたその失敗のために遠慮して発言しないのであろう。こういうことを聞けばソ連の代表は気持ち悪くするかもしれませんけれども、気持を悪くしようとしまいと、事実は事実であります。私はそういう感想を持っております。したがいまして、これはもう一ぺん再検討して、朝鮮については、お世話をしている国際連合の公平な国々で小委員会をつくって、その小委員会の許すワク内においてアメリカは若干のことができる、こういうふうにするのが大義名分であるのに、アメリカはかって放題のことをして、国際連合に加盟しておるわれわれにすら報告がない。アメリカの行動半径に対しては、日本国際連合の一員でありますから、また極端に言えば私も発言力を持っておるわけであって、アメリカの司令官、おまえ少し出過ぎているよ、こうわれわれが主張するならば、日本政府にそれが反映して、そうして、アメリカちょっと出過ぎている、公平にやったらどうだ、あまり李承晩なんかに深入りしないほうがいいよ、そのくらいのことは言い得るような、そういう国際連合であってほしい。そうであるならばこういう悲劇の繰り返しをしないで済むものであろうと思うくらいであります。それは余談といたしまして、とにかく、南朝鮮、北朝鮮、もちろん二つの朝鮮を固定したわけではありません。一つの民族でありますけれども、二つの政権があることは厳然たる事実でございます。したがいまして、私どもは二つの国とそれぞれ事務的に関係を持っておることは必要なことであろう。政府が北朝鮮とも貿易を許されておられますその英断に対して、私は心ひそかに敬意を表している次第でございます。だとするならば、北朝鮮からも南朝鮮からも今度は一緒になってオリンピックに来られるように。そうして、国歌を歌うと二つの国歌があって衝突するから、アリランを歌うことは全くゆかしきことであって、アリランならばわれわれも知っておりますから、一緒に歌いたいと思っているくらいでございます。時代はそういう方向に向かいつつありまして、先日は北朝鮮からスケートの選手が来ました。スケートが来てなぜバスケットボールの選手が来て悪いか。バスケットボールの選手は来たけれどもバレーの選手が来たら悪い、そういうことは私はないと思います。したがいまして、たとえば崔承喜さんが長い間日本におりまして日本人からも親しまれておる。石井漠さんの弟子でありますが、崔承喜さんの踊りぐらいは日本でも見ることを許してもよい時期が近づいたのではあるまいか。実は先日、いまはなき岩本議員と一緒に朝鮮に参りましてこのバレーを見ました。そのオペラはすばらしいものでありまして、朝鮮のこの崔承喜劇団のバレーは、まさに東洋第一、北京もはるかに及ばない、私はそう思います。まず、アジアで優秀なのは、東京の歌舞伎と北京の京劇、インドの踊り、そして朝鮮のオペラ、それから、皆さんは御存じないかもしれませんけれども、琉球のおとめ劇団の歌舞伎や踊りは、これまたすばらしいものでございます。いずれも第一流のものでございます。したがいまして、私は切に東京で崔承喜さんのオペラを見たい。この芸術的な気持を外務大臣が無視するということは、私はよもやあるまいと思いますけれども、スケートを観賞することができて、なぜオペラを観賞することができないか。しかも、そのオペラの題目は、政治的なオペラでなくて、古くから伝わっているゆかしい昔の物語でございます。こういう問題をひとつ御研究願いたい。それから、国交未回復国との間に対して厳重な制限があるということでありますけれども、かつて国交未回復国がたくさんあった場合に、必ずしも一律にそうではなかったのでございます。それを、あとでだんだんへ理屈をつけまして、そして、北朝鮮との問題が非常に複雑な政治問題がありますために、国交未回復国との関係はどうも都合が悪いというところにさや寄せしたのでありますから、ひとつ次官におかれましてその文献をもう一ぺんお繰りくださいますれば、これがいかにへ理屈であるかということを発見されて驚かれることであろうと思うのでございます。  さて、その次に赤十字の問題でありますが、朝鮮人帰国の問題は、すでに八万人をこえました。当外務委員会の席におきましては、当時、宇都宮さんでありましたか、櫻内さんもそうですが、三万人をこえましたら私にごちそうしてくださる、五万人をこえたら、栄典法が出たら栄爵もくださる、しかし栄典法は社会党が不賛成だから困るなという冗談話もあったくらいでありますが、内閣調査室では、けしからぬことには、五千人をこえることはあるまい、こういうばかな調査を発表しましたが、いまや八万人をまさにこえようといたしております。八万人の一種の移民でありますが、この海外移動ということは、大きな歴史の一こまでございまして、それに伴うたくさんの現象は、もっと政府として御研究に値する問題であろうと思います。これは人道の問題と別でありますけれども、財政の問題から言いますれば、生活保護法、教育費等は非常にたくさん要らなくなっておるのでございます。私は、それらの経費をもちまして、もっと社会福祉に力を尽くすとともに、また、日本にとどまっておって正直でまじめに働こうとして職のない朝鮮の友に対しては、外国人としての誇りを持って暮らしてもらいたいと思うと同時に、かつては日韓併合で日本の政治に従った方々でありますから、前にはわれわれのきょうだいであった、その同胞としての心持ちをもって朝鮮の人たちに対処することが、よき国民としての心がけであろうと思うのでございます。したがいまして、八月は近づきましたけれども、この問題について事情の認識を欠くために、いつもごたごたを起こすという愚かなことはやめていただきたい。したがいまして、八月の帰国延長問題がまた起こりましたときには、十分に日赤の島津さんと相談していただきたい。岩木さんがなくなりましたことはまことに痛惜の至りでありますけれども、与党の岩本代表委員がおなくなりになりました今日、私もお助けいたしますけれども、日赤はよく事情を存じておりますから、日赤とよく相談をして、詰まらないことでジャーナリズムを騒がすことのないようにしていただきたいと思います。  それから、もう一つは、いわゆる里帰りの問題でありまして、まだ中国に多数の日本人が残っております。朝鮮にもおります。その人たちがおとうさんやおかあさんが死んだようなときは里帰りしたいと言うております。また、日本におります朝鮮の諸君も、ときとしては里帰りをしたいという場合が非常に多いのでございます。したがいまして、すべて無条件というわけには最初はいかなくても、一定の基準を設けてでも、この人道の問題についてはこれから研究に着手していただきたい。  約十ばかりの問題を述べました。それに対して、さすがに外務省の御答弁だ、法務省の御答弁だと同僚の議員諸君が感ずるような御答弁がいただけますならば御答弁をいただきたいし、多少やぼではあるまいかという御答弁ならば、この際いただかないでおいて、むしろあとで、穂積委員がこの問題については詳しい専門の知識を持っておりますから、穂積さんとよく研究いたしまして、これは党利党略の問題ではなく、島国日本、観光国日本の問題として超党派の問題でありますから、互いに誤解のないように、よく外務次官さんとも、入国管理局長殿とも、また法務次官殿とも相談いたしまして、昨今の国際緊張のことも現実として考慮に入れながら、どういうことが前より半歩でも前進になるか、歴史は日に日に新たに進んでおるのでございますから、今日の事態が去年とかおととしと同じであってよいわけでもございませんので、したがいまして、そういう点を御相談して、多少でも問題を明るい方向に善処していただきたいと思っておる次第であります。  以上をもちまして、長きにわたりましたが質問の要旨にかえさせていただく次第であります。これには決して与野党はございません。人道と論理に基づいて誠心誠意話し合いながら進みたいという趣旨でございますから、お心持ちのほどだけ伺いまして、あとの折衝が円滑に参りますよう、よろしくお願いする次第であります。
  73. 小川清四郎

    ○小川政府委員 お答え申し上げます。ただいま数々の御質問がございまして、私ども法務省の関係者といたしましていろいろお教えを願ったわけでありますが、とりあえず私ども法務省関係の御質問につきましてだけお答え申し上げたいと存じます。  まず第一番に、オリンピック関係の問題がございましたと思いますが、オリンピックの関係の、特に国交のない国からの入国者の問題でございますが、この問題につきましては、最近特に関係の諸官庁とも相談をしておりまして、できるだけ先生の御質問の趣旨に沿いたいという努力をいたしておるのでございますが、ただいまのところ、事務当局の関係におきましてはまだはっきりした結論に到達しておりません状況でございます。  次に、指紋の問題について御質問を承った次第でございますが、これは外国人登録法に規定がありまして、一年をこえる場合についてだけ指紋を取るという規定になっております。もちろん、十四歳未満の子供につきましては免除をしております。そこで、たとえばオリンピックに関連して入国してこられた方々につきましては、その前後を含めましてもちろん一年をこえることは予想されませんので、ほとんど問題はないかと存じますが、ただいまの御質問の中で、たとえば教授、学生、留学生等についてもこれをはずしたらどうだ、はずすべきだというふうな御質問でございます。この点につきましては、法務大臣がかつて国会でおっしゃったように私は伺いましたのでございますが、その点につきましては実は私どもよく承知をしておらないのでありますが、ただ、法律的に見ますと、この外人登録法の改正を経ません限りは、一年をこした場合にも指紋を免除するという取り扱いはいたしにくいのではないかと思っております。将来またどういうふうなことに相なりますかわかりませんが、現行の外人登録法のもとにおきましては、一年をこえる滞在者につきまして指紋を免除するというふうな扱いはできないのではないかと存じております。  それから、オリンピック大会のみならず、一般的に国交のない国からの入国者について時勢の進展とともにもう少し幅の広い考え方をすべきであるという御質問でございますが、この点につきましては、前々から私どもも、帆足先生からの御質問もございましたし、始終検討をいたしておるのでございますが、国交のない国につきましては原則として出入国管理令におきましてもこれを認めておりません。ただし、個々のケースにつきまして、場合によりまして、その渡航目的その他について十分検討してお受けしておるケースも相当ございます。ただ、先ほど仰せのごとく、正しい入国目的で滞在を許されておりながら、その滞在期間が短い、足りないというような場合に、そのつど非常にもんちゃくを起こしておるが、その点についてはもう少し広い気持ちで寛大に扱うようにというような御質問でございます。しかし、ただいま申し上げましたように、原則といたしましてこれを認めないというたてまえで来ております。その理由といたしましては、もちろん外交上、国内上諸般の事情を勘案いたしましてきめました次第でございます。そこで、ただいまいろいろ問題がございますけれども、一応、国交のない国からの入国につきましては、そのスケジュール等をよく勘案いたしまして、ほとんど御希望に沿うように特別な許可をいたしておる次第でございます。ただし、先ほどのお話のように、たとえば突然健康を害していましばらく滞在したい、あるいはせっかく来たのだからほんのしばらくの間だけ観光していきたいというふうな御希望につきましては、そのつど認めてきておる次第でございまして、全般的な問題としてでなく、個々のケースにつきましては、できるだけの配慮と申しますか、考慮を私どもとしてはいたしておりますので、その点は特に御了承をお願いいたしたいというふうに考えておる次第でございます。  それから、里帰りの問題につきまして最後に御質問並びに御意見がございましたが、この点につきましても、全般的な問題と関連をしてまいりますので、私どもといたしましては、諸般の情勢を十分に考慮して、ただいままでのところこれを認めることにつきましては必ずしも全般的に全面的には踏み切っておらない次第でございます。この点も、いろいろ政策上の問題もございますし、私どものほうの関係法令の扱いだけでもまいらない面も多々ございますので、将来の問題といたしましては十分検討を続けてまいりたいと存じておる次第でございますが、ただいままでのところはそういう状況でございます。
  74. 帆足計

    ○帆足委員 時間がありませんし、外務大臣もお出かけだそうですので、事務当局のほうでは、きょう申し上げましたことを速記録になりましたらお目通しくださいまして、さらに御研究をお願いいたします。  それから、指紋を取ることは、取り調べの必要から起こったことで、昔はなかったことです。ところが、ちょうど回教徒が豚を食べないように、社会主義圏の人たちがこれを非常にきらいますし、いま問題になっているのは、交換教授、留学生などが一年たつと帰らねばならない。指紋のためにわざわざ一ぺん帰って、またこっちへ来て、そうして滞在期間の更新をする、そういう手段までとらねばならぬ。バレーの先生などが来まして、これは非常に愛されたいい先生ですが、やはり困った。したがいまして、私は、法務大臣が特に認めたるときはという条項があったと記憶しましたが、それがないとすれば、入国管理令を改正しましてその条項を入れて、法務大臣外務大臣協議して取らないようにするとかしなければならぬ。これは一種の宗教的理由と同じですね。そういう方法でも講じたらどうであろうかと思いますので、私どものほうでも研究いたします。  それから、里帰りの問題につきましては、これは国際赤十字とも私は話し合いました。多少人道の問題になりかけております。したがいまして、国際赤十字に陳情して問題になるよりも、もう少しひとつ緊急の場合のことを御研究願ったらいかがであろうか、こう存じておりますから、御検討願いたいと思います。  それから、もう一つは、赤十字の問題でありますが、オリンピックのときにスケ−トの選手が参りましたけれども、新潟に赤十字代表が約百回参りましたのに、東京赤十字の社長のところにあいさつに来ることができません。しかし、葛西赤十字副社長などは、仁川から上陸いたしまして、そうして平壌赤十字を訪問して日本人を連れて帰ったのでございます。こちらからは向こうの赤十字を訪問することが許される。しかし、向こうからは東京赤十字を訪問することは許されないということは、私はこれは片手落ちであろうと思います。しかし、南朝鮮との問題等もありまして、多少むだな摩擦を避けたほうがいいというので、その時期を選定しようというお心持ちのほども、事のよしあしは別として、客観的事実としてわれわれは理解し得るわけでございます。赤十字の島津さんも、それから田辺副社長も、これを切望いたしまして、最もよい時期に政府の御了解を得たい、こう申しております。これは人道に関連する問題でありますし、その使節に対しては、一定のスケジュールのワク内でけっこうでございますから、赤十字の仕事というスケジュールのワク内において御許可くださいますことを研究していただきたい、こう思う次第でございます。  いずれも二つの世界の緊張の間におけるボーダーラインの問題でありますが、人道と平和と赤十字、また親子人情の問題等に関しまする点については、外務大臣は格別御理解のある方と伺っておりますので、藤山前ヒューマニスト外務大臣に引き続きまして、よろしく御理解のほどをお願い申し上げまして、きょうは御答弁いただかなくてもけっこうでございますが、逐次必要に応じましてこの点を御要請いたそうと存じておる次第でございます。
  75. 松本俊一

    松本(俊)委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後零時十分散会