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1963-05-17 第43回国会 衆議院 外務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年五月十七日(金曜日)    午前十時二十五分会議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 安藤  覺君 理事 正示啓次郎君    理事 福田 篤泰君 理事 松本 俊一君    理事 戸叶 里子君 理事 松本 七郎君       川村善八郎君    森下 國雄君       岡田 春夫君    河野  密君       西村 関一君    細迫 兼光君       森島 守人君    受田 新吉君  出席国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君  出席政府委員         外務事務官         (移住局長)  高木 廣一君  委員外出席者         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 五月十七日  委員高橋等君、勝間田清一君及び西尾末廣君辞  任につき、その補欠として川村善八郎君、西村  関一君及び受田新吉君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員川村善八郎君、西村関一君及び受田新吉君  辞任につき、その補欠として高橋等君、勝間田  清一君及び西尾末廣君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  海外移住事業団法案内閣提出第九九号)      ————◇—————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  海外移住事業団法案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。西村関一君。
  3. 西村関一

    西村(関)委員 海外移住事業団法案審議にあたりまして、過日の本会議におきまして質問をいたしまして、外務大臣その他関係大臣から御答弁をいただいたのでございますが、何しろ時間の制限等がございまして、十分に意を尽くして御質問申し上げることができませんでしたし、また、御答弁も時間の制約等がありまして満足な御答弁をいただくことができなかったのでございます。きょうはそのときにお伺いいたしました諸点並びに聞き漏らしましたいろいろな問題につきまして順を追うてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  まず最初に、先般も申し上げましたように、本法案の御提案趣旨につきましては、私どもといたしましても必ずしも反対ではございません。移住行政統一強化をはかっていくという点につきましては賛成を申し上げるにやぶさかではないのでございまするが、この前の本会議においても伺いましたように、かねて懸案でございました移住基本法と申しますか、海外移住法と申しますか、この基本的な国の移住に関する理念及び根本的な施策をきめます法律案がまだ提案されておりませんし、また、ドミニカ移民問題等もございますし、いろいろ海外に出まして援護を要するところの移民の方々の問題等を取り扱います援護法提案もまだ見ないという現状でございますが、これは、大臣お答えによりますと、次期国会には提案する用意である、こういう御答弁でございますが、何ゆえ今回同時に御提案になることができなかったか。やはり、関連のあることでございますから、双方法案をよく見きわめまして、そうして両方から審議をしていかないと、本法案だけを取り上げてやるということはどうも私は不十分であるというふうにいまだに考えておるのであります。この前の大臣の御答弁では、目下鋭意成案を急いでおる、次期国会には出す用意があるということでございますが、何ゆえおくれておるのでございましょうか、その点をまずお伺いいたしたいと思います。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 西村さんも御承知のとおり、海外移住審議会の御答申を尊重いたしまして、その答申の線に沿いまして、とりあえず予算関係法案として事業団法案を御提案申し上げたわけでございます。それで、審議会の御答申を、移住基本法と申しますか移住法と申しますか、そういう中にどのように取り入れるか、そしてその表現はどうすべきか等につきましても、目下鋭意関係省と協議いたしておるわけでございまして、お約束申し上げたとおり、次期国会提案の予定で進んでおるわけでございます。なぜおくれたかと申しますと、事業団法予算との関係があるし、予算編成自体事業団法成立との関連におきまして先行して措置してまいらなければならぬということがございましたので、そのことを取り急ぎやらしていただく。決してその他の仕事を懈怠しているわけではないのでございまして、目下各省と打ち合わせを急いでおるところでございます。要すれば移住局長から経緯を説明させます。
  5. 高木廣一

    高木政府委員 ただいま大臣から御答弁がございましたとおりでございまして、最初事務当局考えておりましたのは、移住基本法移住援護法移住事業団法と三つ考えておりましたのですが、移住基本法は、移住基本的なあり方、国の政策のあり方というものを規定するということで、どうもこれだけでは一つ法律とするのはおかしいのじゃないかというような意見法制局にございまして、その後、現在では、基本法援護法と合わせて、援護法は、国の援護あり方、国がどう援護をするか、国の援護の義務とか、そういうような基本方針を書いておるわけでありますが、この二つを合わせたものを移住法といたしまして現在案をつくりまして、関係各省でいま協議しておるのでございます。ただいま大臣が言われましたように、この移住法は、移住審議会答申にのっとりまして、この精神をどこまで法制化していくかということでございます。それで、事務的には表現の問題とかそういう問題でいろいろ打ち合わせております。それから、法律技術的には、労働省との関係で、ごく技術的でございますが、現在移住者民間あっせん業者がございます。この海外旅行業者がそれを兼ねてやっておるわけでございます。これを職業安定法そのものだけで規制するか、あるいは、職業安定法は国内だけでございまして移住に適用される部面が非常に少ないのでございます。それで、移住法を基礎にしてやるかという問題で、労働省のほうで、少し研究さしてくれ、自分のほうはいま非常に多くの法案をかかえているので、急ぐけれども少し時間をかしてくれということで、延びておるのでございます。それ以外にはたいした問題はございません。
  6. 西村関一

    西村(関)委員 予算関係等もあって事業団法案を先へお出しになったということでございますが、予算も大事でございますし、また団体統合ということも大事でございますが、国の移住行政に関する基本的な考え方を打ち出してまいります海外移住法案というものがまず出まして、それが国会審議されまして、それにのっとってこの海外移住振興会社海協連との統合がなされてもおそくはない、むしろそのほうが順序ではないかと私は思うのでございます。それが、まずこの団体統合だけを考えるところの、一元化をはかるところのこの法案が出たということにつきましては、事務的にいろいろ労働省との折衝の過程にある、まだそれが十分な結論に達していないという事情もわかりますけれども、しかし、まず基本的な法律が出て、そしてそれにのっとって本法案審議されるというのが私は筋道ではないかと思うのでございます。  それから、労働省とのお話がございましたが、労働省だけじゃなくて、通産省とか大蔵省とか、あるいはまた特に農林省との関係などがまだ若干あるんじゃないかと思うのでございますが、これは、この前、大臣お答えにも、また農林政務次官お答えにも、その点は十分の了解点に達しているという御答弁でございましたが、まだそれが十二分に話し合いがついていないというふうに考えられる節もあると思うのでございます。そういう点もおくれている原因じゃないかと思いますが、いかがでございましょうか。  まず第一点は、基本的な法律をまず審議して、それからこれをやるべきじゃないかということと、その次は、おくれている原因は、単に労働省との話し合いがついていないというだけじゃない、特に農林省との関係においてまだ問題が相当あるのではないか。それは逐次私はお尋ねをしてまいりますけれども、そういうような点につきまして、移住局長からお答えをいただいてけっこうでございますが、いかがでございますか。
  7. 高木廣一

    高木政府委員 海外移住法事業団法関係は、片方のほうは実務機構法律でございます。それから、移住法のほうは、移住方針の、精神のほうでございます。それで、非常に極端な言い方をしますと、この移住方針が右向きか左向きか、どちらに向いても、この移住機構は能率化され、そして統一的な機構でやっていかなければいけないということが言えると思うのであります。そういう意味において、事業団法はある程度移住法と独立しておる次第でございます。それから、移住審議会答申におきましても、そういう意味におきましてはこの機構の点を最も重視しておりまして、現在の移住のいろいろの不備の点は、行政一元化と、それから自主的な公的実務機関整備強化というものが必要であるということで、これに一番重点が置かれたわけでございます。そして、われわれといたしましても、昨年のドミニカ問題の前向きな解決方針というものからも、どうしてもこの機構整備強化というものに重点が置かれなければいけない、これは一日も延ばすことができない、こういうふうに思いまして、基本法援護法と、三つとも最初から出すつもりでおりましたが、事業団のほうは予算関係でもございますので、全部われわれとしてはできるだけ早くというつもりで、事業団のほうから出した次第でございます。  それから、事業団法をつくります場合には、事業団監督という問題で、結局移住行政一元化という問題にまで関連していくわけでございます。そして、移住に関しましては、関係各省設置法と、それから、昭和二十九年の閣議決定というのがございます。それで、二十九年の閣議決定が若干不明瞭なところもございましたので、このたび、一番関係の深い農林省との間に、外務大臣農林大臣との申し合わせ設置法ワク内におきましてこれをはっきりさす申し合わせができまして、そのあと外務農林次官が相当詳細にわたっての覚え書きをかわしまして、両省間にはいささかの意見の差もございません。  ちょっと簡単に御説明申しますと、移住につきまして農林省は非常な関係があるのでございますが、省といたしましては、外務省設置法では、外務省任務の中に、「外務省は、次に掲げる国の行政事務を一体的に遂行する責任を負う行政機関とする。」として、第九号に、「海外における邦人保護並びに海外渡航及び移住あっせん」というのが外務省任務になっております。それから、それに対する外務省権限は、第四条の十八号が一般的な海外における邦人の生命、身体及び財産の保護。それから、第十九号が移住関係権限ですが、「日本人の海外渡航及び移住に関し、あつ旋、保護その他必要な措置をとること。」とあります。これに基づいて移住局事務というものが規定されておるのであります。それから、農林省設置法によりますと、農林省任務といたしまして、農林畜水産業改良発達及び農山漁家の福祉の増進をはかり、もって国民経済の興隆に寄与することを目的として左に掲げる業務を行なうということで、非常に具体的に書いてありまして、結局、農林省移住関係するところといたしましては、「農山漁家の生活の改善及びその社会的経済的地位の向上を図ること。」というのがこれに該当する任務でございます。そして、権限といたしましては、農林省権限は非常にスペシフィックに書いてございます。「中央卸売市場につき認可を与えること。」、「小作関係その他の農地利用関係の争議の調停に関与すること。」というふうにありまして、十七号の、「農業協同組合農林中央金庫、農林漁業金融公庫その他本省の所掌事務に係る団体につき許可又は認可を与えること。」というのがこれに該当すると思います。これに基づきまして農林省事務規定ができまして、農政局事務として、「農業者海外移住に関し、その募集選考及び教育並びに移住地調査を行なうこと。」というのがありまして、これを考慮に入れまして、外務農林大臣は、「海外移住事業団監督は、外務省一本で行なう。事業団と別に農業者海外移住に関し農協等が行なう移住者募集選考、訓練の監督は、農林省が行なう。」、こういうふうにはっきりといたしまして、それから両次官でさらに詳細に申し合わせをしたというのが実情でございます。  そして、この外務省が一本でやるという趣旨は、何も外務省が独占してやるという考えでは毛頭なくて、この前も大臣から御説明がありましたように、従来の海外移住仕事の難点は、外務省農林省関係各省があまりにこまかいことに干渉し過ぎる、したがって、実務機関である海外協会連合会あるいは移住振興株式会社責任を持った推進ができなくて、ほとんど会議会議で追われているということであるので、移住審議会答申でも、この事業団をつくれということが書いてございます。そうして、できる限り政府権限を制限して、技術的な点その他の点はこれにまかして、政府最小限度指導監督を行なうべきであるということがございます。そういう意味におきましては、外務省といたしまして、関係各省も、事業団に自主的に責任を持ってやらす、外務省は、予算を組むこととか、あるいは関係各省と寄りまして事業団基本的方針を協議する、大ワクをきめてこれを事業団に授ければ、あと事業団が自主的にやっていく、これがうまくいかない場合にはそのヘッドを通じてやり方を変えるということで、あまりこまかいことをやらない、そういうことによって従来の弊害を除去し、かつ、海外移住というものが、二年や三年、長くて四、五年でかわる役人では十分やっていけない、一生を移住のためにささげる熱情のある人がやらなければならないという立場からも、自業団に優秀な人を入れて、それが自主的にやっていくという考えで、これは何も外務省が独占的にやっていくことではなく、事業団を中心にやっていくということで外務省一本となっておる。この点は関係各省も十分了解しております。  なお、そう言いましたからといって、政府移住関心を少なくするのではなく、事業団実務を一本でやっていくということに政府としてやり得る援助、保護はできる限りやっていく。たとえば、外務省といたしましては、外における外交交渉による移住推進のための援護、これは事業団がやりきれない面もあると思います。また、農林省におきましても、事業団農業知識のある人を吸収してこれが自発的にやっていってもらうようにし、なおそれでも足りない場合、必要な場合には海外農地調査なんかは農林省専門家も派遣してもらう。こういうような構想で関係各省了解している次第であります。
  8. 西村関一

    西村(関)委員 私もこの審議会答申案は熟読いたしました。そして、なるけどりっぱな答申が出ておるというふうに感じておるのでありますが、いま局長は、この答申の骨子はむしろ機構整備統合簡素化、そして実際に仕事をやりやすいようにするということが重点である、御答弁の中にそういう意味のおことばがありました。それも確かに重視されておることは認めますし、また、答申をまつまでもなく、その点が従来の移住行政の反省の中でだれもが感じておるところでございます。しかし、同時に、移住基本的な理念とか、それから、ここにもあげておりますような過去の業績に対する反町、特にこの答申の中には主務官庁あり方の中でいろいろ問題点指摘されておりますが、そういう点について、外務省主務官庁としてこれをもう少し明確にしていくということ。それは東畑会長共管説もあり、いろいろありましたけれども、大多数の方が外務省一本にすべきだという点に落ちついておるという点がありますけれども、従来からいろいろ問題がありまして、その問題になっておる点が、この審議会におきましてもいろいろ論議されてこの答申の中にもにじみ出ておると思うのでございます。私はどちらが主でどちらが従ということは申しませんが、私の言いたいのは、この前の本会議においても申し上げましたように、これは車の両輪のようなものである。どちらを欠いても移住行政は全うできないというふうに考える。むしろ、海外移住法出してこれを論議して、同時に並行してこの移住事業団法案審議すべきであるという考え方をいまも私は変えることができないのであります。  なお、農林省との関係につきましては、農林省設置法の第九条を局長はただいま引用せられましたが、今回この事業団設立に伴いまして、従来の農林省所掌事務として海協連に対する指導監督権というものは事業団に移されることになるわけでございますが、そうなりますと、農林省設置法の第九条の第二十号に規定いたしております移民行政に関する事務分担の区分が不明確になる。どのようなぐあいに分担をするのであるかということなどもどうも私には理解ができない点なんでございます。そういうような点につきましては、なお農林大臣出席を求めまして次回にいろいろお尋ねいたしたいと思いますが、この事業団法案をお出しになりました趣旨が、より移住行政を前向きにし、移住を伸展させていこういう御意図から出ておるということは、十分に私もくみ取っておるつもりでございますが、しかし、今日の移民の不振というものはおおうことができない事実だ、実績が示しておると思うのでございます。これに対して当面の責任者であるところの局長はどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。現在、この移民実績というものは、三十七年度の移住送出者実績というものは減っておる。それは私が御指摘申し上げるまでもなく局長よく御存じだと思うのでございますが、これは一体どういうところにこの原因があったか。その原因をカバーするためにはどうすればいいかということが、団体統合よりももっと大事なことだ。この不振を解決する道は団体統合だけしかないというふうには私は考えないのです。それも一つの道だと思いますが、一体、当の責任者として局長は、この送出者の数が非常に減っているということに対しましてどういうふうにお考えになっておいでになりますか。
  9. 高木廣一

    高木政府委員 仰せのとおり、三十七年は非常に減りました。政府特別貸し付け移住軒が二千三百名以下になった次第であります。これの最も大きな原因は、やはり昨年度の、ドミニカ移住者集団帰国というものが精神的に与えた影響、それから、現在の移住機構不備もあると思います。その機構の中には、われわれを含めて移住担当者の不十分ということもあると思います。それから、もう一つ、そういうものを離れて大きな原因は、何といっても日本全体の景気、人手不足、特に農村からの極端なほどの労働力の都市への流出、それから、外の事情といたしましては、日本移住者の八割以上行っておりますブラジル、しかもこれは大部分が呼び寄せでございましたが、そのブラジルが、昨年は特に為替が下落し経済が不安定になるということで、さらでだに雇用条件等日本よりも不利なブラジルになかなか行きにくくなったということも一つ原因でございます。  それから、この海外移住が非常に減りましたのは、実は日本だけではなくて、ヨーロッパ諸国も同様でございます。戦後ヨーロッパ海外移住は非常な勢いで出たのでありますが、ここ数年は急激な減りようでございます。昨年度ヨーロッパから海外移住した移住者、これは欧州移民政府間委員会というのがありましてこれが世話をしていますが、それに聞きますと、全ヨーロッパから三万余りしか出ていない。オランダのごときは一時は年に三万から五・六万出たのですが、昨年度は八千を割っている。逆に、最近では、オランダはもちろん、ヨーロッパでも一番大きな移住者送出国でありましたイタリアが、労働力が不足いたしまして、ヨーロッパ諸国あるいは海外移住した者に帰れというような広告を出すというような実情になっておりまして、世界的な先進国労働力不足というものも影響を与えていると思います。  しかしながら、そういうことを申しましたからといって、われわれの責任考えないのじゃなくて、むしろ、われわれの移住体制移住に携わる者の人的の充実というものこそ、こういう時期においてさらに十分力を入れていかなければならぬことだと思っております。そういう立場からも、この事業団法はすみやかに実現するようにしていただきたいと存ずるのであります。
  10. 西村関一

    西村(関)委員 実にひどいと思うのですね。大体一万名から八千名を予定して予算が組まれておるのです。それが三十七年度におきましては二千二百一名という数字が出ております。しかも、そのうちの三百八十六名は沖繩県人であります。指名で呼び寄せられたものが八百五十一名、その残りのうち、公募自営が五百六十、公募雇用が四百四で、半分以下だ。これが三十七年度の実績でございます。これでは、移住局という機構を持ち、また振興会社並びに海協連その他地方海協等々の組織機構がありまして、二十数億の国費を使って、あまりにひどいと私は思うのです。こういうようなことで、ただ二つ団体一つにするということだけでこの劣勢を挽回するということがはたしてできるかどうか、もっと基本的な根本的な解決をしなければならぬ問題があるのじゃないかというふうに私は思うのでございますが、局長はどうしてもこの法案を通してもらいたいと言われるが、私どもも、これは冒頭に申し上げておるように、態度は賛成なんです。そういうことをしなければいかぬということは前から感じておったのでありますが、しかし、それだけにたよってこの移民劣勢を挽回するということが可能であるかどうか。なおもっと真剣に取り組まなければならぬ問題があるのじゃないか。この現実の数字局長責任でございますよ。これだけの国費を使って、たった千名そこそこしか公募移民を送り出すことができなかったということは、これは非常に大きな問題だと思うのでございます。その点、大臣はどうお考えになりますか。
  11. 大平正芳

    大平国務大臣 容易ならぬ問題だと思うのでございまして、事業団法をつくって送出機構整備してまいるだけで事足れりというような考えは毛頭持っておりません。西村委員が御指摘のように、移住というものの基本的な考え方、そして、それに対する理解、協力という雰囲気がゆう然とわいてきて実務を肉づけていかない限り、いまの退勢を挽回するということは私は非常に至難だと思います。したがいまして、御指摘のように、順序といたしましてまず移住法というものをりっぱに仕上げて、そして、行政機関関係者はもとより、国民一般へのPRが先行すべきが筋だと思います。  そこで、先ほど申しましたように、移住審議会答申理念が宣明されておりまするし、あのような考え方は非常にすぐれたものだと思うわけでございまして、いま私どもが作業いたしておりますのは、それを法律事項とそうでないものとに分けて、あるいはより理解を深める意味でどういう表現にすべきものかというようなことでやっているのでございまして、移住法基本の骨組みと理念というものは答申に示されておるわけでございます。したがって、私どもは、それに寄りたのみつつ、さしあたって取り急いで事業団設立を急ぎたいということで御審議を願っておるわけでございます。這般の事情は御了解をお願いいたしたいと思うのでございます。  繰り返し申しますれば、送出機構整備というようなことで事足れりとは毛頭思っておりませんで、あらゆる施策をこれに並行してやらなければなりませんし、しかもそれは相当周到な非常にこまかいところまで配慮したものでなければならぬと思うわけでございまして、そういう立場から私どもはいまから鋭意新しい決意でかかっていかなければならぬ問題であると心得ております。
  12. 西村関一

    西村(関)委員 いま大平外務大臣が言われましたように、移民に対する国民的な関心がもっと高まり、さらに、そうするためには、その衝に当たるところの各関係者が、さらに熱意を持って、より深い関心を払いつつ、どうしたならば国民移民についての関心を深めていけるかということで、やはり関係者がもっと真剣にならなければいかぬと私は思うのです。そうでないと、ただ日本国民のあり余っているところの人口を海外に送り出すのだという考え方が少しでも残っておりますと、それこそ、労働人口が足りなくなってくると、海外に出る者がいなくなるというような現象がたちまち起こってくる。もちろん、理想ばかり言うことはできませんので、現実にはそういう現象もあり得ると思いますが、優秀な日本国民を開発を待っているところの海外の各地に送り出す、そういう基本的な考え方で真剣に取り組んでいかなければならない。日本で食いつめた人間、海外へ出て一旗上げようという者を送り出すのではなくて、日本の国内においても優秀な有能な人材を個人的に集団的に海外の開発を待っている地域に送り出して、そこでその国のために貢献をし、ひいては世界平和に貢献するという、非常に崇高な理念に立った移住行政というものが行なわれなければならぬ、また、国民の間にそういう関心を浸透させていかなければならぬと思うのであります。戦前は、いろいろな問題がありましたけれども移民に対する国民関心というものは、現在よりももっと深かったと思う。国もまた、これに対して、いろいろな問題はございましたけれども、非常な熱意を持って移民を送り出した。でありますから、今日の中南米諸国におけるところの移住実績というものが築き上げられてきたのだと思うのです。多数の中にはそれはいかがわしいいろいろな問題もあったと思いますけれども、現在に比べるならば、国も、また国民も、もっと熱心だったと思うのです。  私は、そういう意味におきまして、移住行政に当たっておられる移住局責任というものは重いと思います。前からもそうでありましたけれども、特に今度は外務省一本になり、今度の法案によりますと外務省権限が強化されるということでありますが、そうであればあるほど、外務省はこの移民に対する熱意をもっと持ってもらわなければいかぬ。先日も田原委員が言われましたように、移住局に転任することは何か格下げのような考え方外務省の役人の中にはいまだに残っている。もしそういうことがあるとするならば、これでは移住行政というものは発展しないのがあたりまえだと思うのです。むしろ、移住行政をやる人は、さっき局長も言われましたように、生涯をかけて、そしてその仕事に使命を感じ、自信と誇りを持って生命を打ち込んでやる、そういう考え方の人材がきゅう然として集まってくるようにしなければならない。これは、本省だけでなく、海外においてもそうだし、地方においてもそうだし、そういう人材を掘り起こしてきて、そして、そういう人を登用して、しっかりやらせるということをやらないと、ただ団体統合するだけでは、私は問題の解決にはならないと思うのです。  先ほどの局長のことばにこだわるようですけれどもヨーロッパにおける移民の成績もだんだん悪くなってきておるということを言いますが、それはやはりその国の人口密度とかあるいはその国の状態とかによっていろいろ違います。だから、一がいにそれでもって日本移民劣勢を弁解する理由には毛頭ならぬと私は思うのです。そういうことを比較するならば、私も、イタリア国政府移住政策のこと、あるいはいまあげられましたオランダ国の移住政策のことを申し上げなければならぬ。そして、それと日本移住政策との違いをここで言わなければならぬ。そういう時間はございませんが、私は、そういうことで局長が言いわけなさることはよろしくないと思う。もっと謙虚に、移住行政の盲点がどこにあるか、どこに不振の原因があるかということを、当の責任者である局長は謙虚に反省してもらわなければいかぬと思うのです。そういう実績に対する反省の上に立って、今後の移住行政をどうするかということを審議しなければ、ただ二つ団体一つにしたからそれでいい、そういうことではないと思います。そういうことでは前向きにならぬと思うのです。この現実の数字を踏まえまして、これは三十六年度の三分の一の数字であるということも、ドミニカだけの問題ではないと思うのです。もしドミニカの問題が影響しておるというならば、私はまた後にドミニカの問題についてもどのように事後措置がなされたかということを伺いたいと思いますが、それが原因だとするならば、ドミニカの移民のアフターケアの問題、あるいは帰ってこられました方々の援護の問題、そういうことが完ぺき過ぎるほど完ぺきであっても、移民の全体の今後の発展ということを考えるならば、これはやらなければならぬことだと思う。それもまだ十分にできていないという大臣の御答弁が本会議においてございましたが、私の承知しておるところでは、大臣の御答弁とはだいぶ違っておる点があるようでございます。いまはその問題に触れませんけれども、しかし、私の言いたいことは、そういうことをほったらかしておいて、そして団体統合だけを急ぐというのでは、私は問題の解決にならぬと思うのです。その点、局長、いかがですか。
  13. 高木廣一

    高木政府委員 ただいま先生がおっしゃったとおりでございます。私自己弁護のために言ったのではございませんで、むしろ、そういう情勢であればこそ、一そうわれわれは努力しなければいかぬと思います。  それから、団体統合だけがねらいでないことは、先生の御承知のとおりでございます。実は、従来の海外協会連合会というものは民間団体であったということで、これは二十九年の閣議決定ではすみやかに法制化するということになっていたのですが、おくれていたのです。そういう点で、非常に待遇が悪いのです。そうしますと、いかに熱意のある人でもなかなか行きにくいということで、海外移住事務機関の人にもいい人がなかなか得がたいという点もございまして、今度の事業団になりますことによって、職員の身分も安定し、安心して移住に熱情のある人がやってこられるという点をわれわれとしてはねらっておるところでございます。  結局、移住推進は、移住推進する人の素質にあり、熱意にあることだと思います。もう一つは、いま先生がおっしゃったとおり、移住の正しい理念というものを国民全体が把握する必要がある。そういう意味において、移住法のすみやかな制定というものはわれわれも必要であると感じておりますし、これは決してなおざりにしておるわけじゃなくて、なるべくすみやかに法制化するところへ持っていきたいと熱願しておる次第でございます。先生のおっしゃったとおりでございます。
  14. 西村関一

    西村(関)委員 予算の面からは大体一人に対して幾らというところから積算して出ておると思うのです。こんなに減ったのでは予算が余ってしょうがないじゃないかと思うのですが、その点はどういうふうな処理をしていらっしゃるのですか。
  15. 高木廣一

    高木政府委員 ちょっと三十七年度の予算について御説明を申しますと、三十七年度は移住振興費として十三億円あったのでございます。そして、そのうち移住者渡航費貸し付け金というのが一番多いのでございます。それが七億一千八百万円。その他、移住者に対する支度費補助金とか、それから、問題が起こった場合の送還費、それから、海外における移住者援護のためのいろいろの施設、これはボートからグレーダー、トラック、さらには学校の建物から先生の費用とか、こういうような移住者のための費用全部合わせますと十億ございます。十三億のうち十億がこれらの移住者予算になって、それ以外に、事務費として、移住局海協連地方海協、これらの事務費・人件費を全部合わせまして三億幾らございます。そして、昨年度七億一千八百万円を計上した渡航費貸し付け金でございますが、これは、実は、前にも繰り越しがございまして、これを合わせますと約九億くらいの渡航費貸し付けの余裕がございました。それが結局六億ばかり使わなかったのでございます。したがって、本年度の移住振興費は十億になりまして形式上三億減った形になっておるのですが、六億繰り越しましたから、実質的には移住者援護のための費用は三億ふえているというのが実情でございます。
  16. 西村関一

    西村(関)委員 私が二十数億の国費と言ったのは、これは外務省だけではなく農林省とか運輸省、大蔵省関係を合わせると二十三億七千六百万円になるという頭で申し上げたわけです。局長のいま言われたのは外務省の十億何ぼということで、そういうような予算的な措置をせられたということにつきましては一応了解をいたしますが、予算の点につきましては後ほどまたいろいろお伺いをすることにいたしたいと思います。  移住実績につきまして、いまお伺いしたような現状に対して、どこにその不振の原因があるかということにつきまして、私は本会議においても申し上げましたが、現地の声を聞くべきである。現に入植せられ、そして何十年も苦労して営々と今日の基盤を築き上げてきた現地の日系人の方々の声を聞くべきであるということを私は申し上げたのです。大平大臣もその点は私の意見賛成をせられて、十分にその声を聞いていきたい、こういうことをお答えになったのでございますが、現地の邦字新聞紙などを取り寄せて読んでみますと、今度の移住事業団法について相当不信の声が出ておる。それは移住局長もお読みになっていることだと思いますが、どういうところにそういう不信の声が出てきておるのか。おそらく、これは、今日までの移住実績があがらなかった、そういうことに対する日本政府のやり方についてもう一つ納得がいかない、信頼が置けないというところから、いろいろな意見が出てきておるのだと思うのです。これは一部の声じゃなくて大多数の現地日系人の声がそうであると思う。私は向こうの邦字新聞がどういう性格の新聞であるか知りませんけれども、そういうものにたよるほかに知る方法がございませんし、また、その中に名前を出しておられる方々も、相当知名な方、社会的地位や信用のある方の名前も出ておりますから、そういうものを読んで一応現地の表情を知らなければならぬというふうに考えておるのでございますが、それらを読んでみると、今度の法案についても相当批判が出ておる。これは局長も御存じだと思いますが、先ほどから申し上げておりますように、どういうわけでそういう批判が出ておるか一々具体的に申し上げてもよろしいけれども局長は御存じだと思いますから、そういうことに対して謙虚に過去の実績なり過去のやり方に対して反省をする、そうして改むべきところは改めていく、その上に立ってこういうことをやっていこうということを確信を持って国民にもまた海外にあるところの日系の方々にも訴えていくということをしないと、不信の声をそのまま押えつけておいて、——押えつけるという御意図はなかろうと思いますが、それをほったらかしておいて、そうしてこの法案だけを通そうというのでは、私は問題の解決にならぬと思いますが、局長は現地の声をどのようにお聞き取りになっておられますか。
  17. 高木廣一

    高木政府委員 ただいま先生がおっしゃいましたように、移住事業団法あるいはわれわれが現在も考えております移住法のいろいろな問題につきまして意見が出ております。そうして、また、われわれといたしましても、この事業団法を制定します場合に、現地の意見というものを大いに尊重しなければいけないということで、出先の大公使を中心として現地の意見も聞いておるのでございます。現地では、若干の誤解があって、いま先生のおっしゃったような心配を新聞に載せていたと思います。それは、移住事業団というものができると、これは国が移住仕事をモノポライズして民間に何もやらせないのではないかというような心配だったようでございます。これは非常な誤解でございまして、その後相当解けております。むしろ、現地では、早く移住事業団法が通り、移住法が通って、移住の体制が確定されることを望んでいるのが全体の意見でございます。それで、いまの誤解の点は、われわれのほうにも啓発する点で努力の足りなかったところもあると思います。それはあとになりまして出先公館で現地の人を集めていろいろ御説明をしたりいたしまして大体理解されていると思います。それで、この移住事業団のわれわれの構想は、移住推進政府が壟断ずる考えでは毛頭ないのであって、実は、移住はむしろ民間の自発的な運動であるべきである、しかし、国が援助しなければ民間ではできないところを事業団が一本でやっていこうというのがねらいでございます。そういう意味におきまして、現地の団体、これは日系人だけではなくてブラジル団体になっているところもあります。たとえばブラジルあたりではコチア農協などはブラジル団体でございますが、こういうものの協力も得なければいけないということではわかったのでございます。ただ、まだ若干誤解というか、はっきりわからないで希望しておるのもあります。たとえば、事業団をやめてブラジルの農協に補助金をくれたらいいじゃないかということで意見があったのですが、最近また、新聞を見ておりますと、そういうことは日本政府として補助金を出せないだろう、また、かりに補助金を受けて日本の意のままに動くようでは、ブラジルの農協としての存在価値はあり得ないのでおかしいじゃないかというような意見も現地では出てきておりまして、だんだんと現地ではその点についてわかりつつあるというふうに思います。しかし、なお、先生がおっしゃいましたように、現地の全幅の協力というものが必要でございますので、われわれとしてまだまだ力が足りませんので、十分現地と連絡して今後の運営に万全を期したい、こういうふうに思っております。
  18. 西村関一

    西村(関)委員 確かに誤解があると思います。誤解は解いていかなければならないと思いますが、それにはやはり在外公館のあり方というものも再検討しなければならぬと思うのです。これもあとで若干触れたいと思っておりましたが、たまたまその話が出ましたから申し上げますけれども、どうも今までの在外公館のやり方というものが、めったにそういうことを言う人はなかったけれども、中には天皇陛下の命によるということを言う人もあった。自分は外務大臣の命令によってこれをやるのだということで、命令ずくで在外邦人に対していろいろ指示をなさるというきらいが従来なかっとは言えないと思うのです。でありますから、公正な声が在外公館を通じて局長なり大臣のところまで来ているかどうかということに対しましても、私はまだ信用が十分に置けないのでございまして、これはまことに申しわけない次第ですけれども、そういう点は在外公館のあり方ということとも関連がございますから、これは後ほどまたその点はお尋ねをしてまいりたいと思いますけれども、いま局長のお話しになりましたコチア産業組合の理事長の井上・ゼルヴァジオ・忠という方の文章を見ますと、従来の移住のおもな欠陥を八つばかりあげておられます。その八つばかりあげておられる中には、私が考えましても納得のいかないところもございますが、また、中には考えなければならない大事な点を指摘しておられると思うものもあるのでございます。もちろん、この中に書いてございます一元化をやれということは、今ここにかかっております法案趣旨でもございますので、その点は、今までの欠陥を是正する上において、この井上という方が言っている問題点一つ埋めていくことになるわけでございますが、諸手続の事務が非常に官僚的であって、常に決定がおくれて、機動力が欠ける、あるいは、移住者への経済援助がきわめて不十分である、それから、アフターケアがほとんどなされていない、業務担当者の多くが親身になって世話をしようとする親切な態度が見られない、また、日本の農協、ブラジルの日系社会その他に協力を求めようとしない、民間の自発的な協力さえ拒否しがちである、こういうことがあげられておるのでございます。この意見の中には謙虚に反省しなければならぬ点があると私は思うのです。ずいぶん長い文章ですから、一々私が指摘することはできませんし、また、するまでもなく、局長は御存じだと思いますが、こういうような意見に対して、やはりすなおに反省していただくということが大事だと思うのです。第一、出先の公館の方々が不親切だと言われることは、これは日本政府の致命的な恥だと思うのです。やはり、ほかのことはできなくても、ほんとうに親切であるということを言われてほしいということは、われわれ議員としてもみんなの願いです。存外の同胞から外務省の出先は不親切だということを言われることは、われわれも非常に残念です。そういうことのないようにしなければならぬ。これは私は誤解もあると思うのです。誤解もあると思うが、やはり外務省の出先の方々の心がまえの問題だと思うのです。命令ずくで仕事をやるということ。田原委員は、鳥なき里のコウモリなんということを言われました。私はそういう方々ばかりではないと思っております。海外を回ってみまして、それこそ寝食を忘れて在留同胞のためにほんとに三時間か四時間くらいしか寝ないでやっておる人にも私は出会いました。それはりっぱな人もおります。けれども、全体として、そういう外務省官僚のエリート意識と申しますか、それは非常に大事ないい面もありますが、しかし、ほんとにしもべとなって仕えていくということ。これは在留同胞の保護という大事な任務を帯びている在外公館に勤務せられる方々としては、そういうことがやはり大事だと思うのでございます。そういうような点につきましては、私はこの機会にもう一度念を入れて外務当局の考え方を聞きたださなければならぬと思うわけでございます。なお、今の井上さんがあげておられますような民間との協力、これはどうも十分でなかったと思う。一つのルートを通さないというと、おまえらはおまえらでかってにやれ、極端に言いますとそういう傾向がなきにしもあらずであったと私は判断するわけなんです。そういう点につきまして大平外務大臣の御所信を承りたいと思うのです。
  19. 大平正芳

    大平国務大臣 今移住行政不備、不徹底につきましていろいろ御開示がございました。私は、この問題に携わりましてからまず第一に考えましたことは、まず外務省自体が、他をあげつらうことなく、一つ総反省の上に立たなければならぬということでございました。よく旧悪をいろいろあげつろうて、自分を弁護していくということはありがちなことでございますけれども、そういうことをやっておったのではいつも低迷していくだけでございます。まず外務省がひとつ大きな反省の上に立とうじゃないか。私も移住局長も、いま先生がお示しになったように虚心になろうじゃないかということを決意したのです。話は別でありますけれども、大体、政府がいろいろ民間に協力を求めるにいたしましても、政府の方が旧態依然としていては、民間に御協力を求めても、しんからの協力は得られぬと思います。労使関係を見ましても、労働組合の出方、動きがこうだというのをいろいろあげつろうておってもいけないので、やはり管理者の方がちゃんとした姿勢にならないと労使関係がうまくいかないように、やはり行政の場合にはまず主体の方から一ぺん始めようじゃないか、そのように申したわけでございます。しかし、これはひとり移住行政ばかりでなく外交全体としての姿勢について言えることでありまして、今御指摘のように、外務省がエリート意識を持って、霞ケ関に外交を一元化してというような十九世紀的な考え方ではいけないのじゃないか。活発に国民的活力を海外に展開していくのでございますから、それがすなおに順便に出ていくように、外務省はサービスをしようじゃないか。したがいまして、たとえば外務省を通さなければ何もやらぬというようなことではなくて、関係各省、民間の団体が活発に海外的な交流接触を行なうようにしむけていきまして、それが順便にまいりますように外務省はサービスしてあげるということの方がよほど気がきいているのでございまして、そういう意味で、外務省がひとり高くとまっておるというようなことでなくて、サービス精神に徹しようじゃないかと申しておるわけでございます。移住行政についてもまず外務省が総反省するということにしようじゃないか。なるほどいろいろ欠点はございますけれども、私が伺うところによりますと、外務省の諸君の中でも非常に移住ということに心血を注いでおられる方もございまして、キャリアとして多彩な未来を約束されておる方が、進んで海協連に入って、生涯を移住行政にささげようという決意をけなげにもされておる方もございます。最近若干人事の異動をやりましたけれども、前の会計課長をしておりました佐藤君も進んで移住局に行って仕事に打ち込みたいというようなことで、そういうことも出てきておるわけでございます。関係各省の問題あるいは移住を担当しておる団体の問題をあげつろう前に、まず外務省がちゃんとした姿勢になることが第一だ。先生が注意されておる方向も私はそうだと了解するわけでございます。  そこで、次の在外公館の問題でありますが、在外公館も一貫したそうした精神でやってもらわなければいかぬと思うわけでございまして、これは容易ならぬ仕事でございますけれども基本的な方向として私どもがそれにスティックしていまからやっていこうということは、そういう決意で臨んでおるわけでございます。ごらんになっていただまましてそれでもいろいろ足らないところがたくさんあるだろうと思うのでございますし、私がいまことばですんなり申し上げるようなぐあいに実態はなかなかいかぬと思うのでございますけれども、しかし、そのかんぬきをはずしたらたいへんでございますので、それをひとつかたく踏まえてみんなの協力を得てやっていきたい、それは根本的な私の考え方でございます。
  20. 西村関一

    西村(関)委員 いま大平大臣の言われましたお考えに対して私は全幅的な信頼を持って、そのような方向に進められることを心から期待をするものでございます。いまお話しになりました、将来を約束されている若い方が移住に使命を感じて生涯をなげうって海協連に入られたということ、私もその方のことを知っております。たぶんその方のことだろうと思いますが、私もその方にお会いいたしました。いろいろ巷間伝えられているその方に対する誤解らしいもの、いろいろなものが私の耳へも入ってまいりますので、実はおいでをいただいて意見の交換をしたことがございます。私は私なりに単なる流説をうのみにしないで直接当の本人にも会って真意をただしていくという努力をいたしてまいっております。そういうことでないと、きょう責任ある質問を申し上げることができないのでございます。いま外務大臣のおっしゃったその方だろうと私は推測をいたしておりますが、確かに一面見上げたけなげな考えを持ってこれから多難な移住の問題に取り組んでいこうとしておられる方もあるということは、私も承知いたしているのでございます。しかし、私は、全体としてまだまだお考え直しをいただかなければならぬ点が多くあるのじゃないかという点から申し上げたので、その点についての外務大臣の御決意なりまたお気持なりを伺いまして、私はそのような方向に進められることを心から期待をするものでございます。  さらになお突っ込んでお伺いをするのでございますが、移住に関して二つの流れが現在まだあると思うのです。一つは、国内の事情とか国内の開拓とかいうようなものとは区別をいたしまして、広い職種の移住考えていこうとするところの、外務省を中心とした考え方。これは私も先ほど申し述べましたが、優秀な日本人を、各職種にわたって、必要とするところの諸国、諸地域に移していこうという考え方。もう一つは、日本の国内の農業の問題、農業基本法下にある日本農政との関連におきまして、農業者を中心とした移民推進していこうとする農林省を中心とした考え方。やはりこの二つの流れが現在もあると思うのです。これはどちらがいいとか悪いとかいう問題でなくて、現実にはその二つの流れがあると思う。この二つの流れに対しまして、これの一致融合、調和をはかっていくということが非常に大事なポイントでないかと私は思う。どちらがいい、どちらが悪い、一方を立てて一方を退ける、こういう考え方では私は成功しないと思うのです。両方やはり理由があるのでございます。また、両方とも大事な問題を含んでいるのでございます。いままでの状態を見ておりますと、この二つの流れが融合するのじゃなくて、むしろ衝突をし、ときには波乱を起こし問題を引き起こす。これは国内においても海外においてもそういう事態が起こってきておるということは私はいなめないと思うのです。私は、移住の問題は、ただ事務処理の機構だけではなしに、ただ団体統合だけではなしに、この考え方に対するお互いの、長所を取り合って、その現実に即した施策を行なっていくということが大事だと思うのでございます。現在の状態としましては、何といっても農業移民が大宗でございます。将来は別といたしまして、現在は八割ないし九割が農業移民が中心でございます。ですから、そのことを無視するわけにはまいりません。そういう点から考えますと、この事業団法ができたならば、農林省は少しわきへそれていってしまって、事業団に対する監督も十分にしがたい、したがって、間接的な連絡しかつかない、外務省を通じての連絡しかつかないというような心配を、これは私は農林省から聞いておるわけじゃなくて、私自身がそういう心配を若干しているわけなのであります。現実は農業移民が中心でございます。大部分でございますから、そういうことの不便やそういうことの欠陥を埋めていく方策を一方において講じないと、いま審議しているところのこの法案から見るというと、直接の監督権は農林省にはありません。そういう点についてどういうふうにうまく調和をしていくか。将来は農業移民が中心になっていくというふうには私は考えませんが、現在の状態におきましては、まずここしばらくの間はそういう状態が続くでしょう。ですから、そういう具体的な点について、そういうことは毛頭ないと思いますが、農林省の側を排除していくといったようなことがかりそめにもあってはならない。そういうことはないと私は確信をいたしておりますけれども、しかし、問題は残るのですから、その問題をどのようにして解決していくか、関係各省との協力、特に農林省との協力というものがどのように実を結んでいくかということはやはり心配なのです。農林省外務省とのなわ張り争いというような印象をこの上与えてはいけないと思うのです。いままであったのですから、この上与えてはいけないと私は思うのです。その点についての配慮が、これは本省においてそうであるばかりでなく、在外公館においてもそういう配慮がやはり必要だと思うのです。たとえば、農林省のだれかが行った場合にも、外務省の人が行ったと同じように在外公館では取り扱うとか、また便宜を与えるとかいうこと、これは当然のことではございますけれども、当然のことが当然でなかったというのがいままでの実態でございます。そういう点について、この上ともなわ張り争いをやっているのだというような印象を国の内外に与えるようなことでは、私は移住行政は前向きにならぬと思うのでございますが、局長はどういうふうなお考えを持っておいでになりますか。
  21. 高木廣一

    高木政府委員 ただいま先生のおっしゃいました点は一番大きな問題でございます。そういう意味において、われわれ大いに反省して、そうして協力してやっていくということが、これからの成功の一番もとだと思います。その点につきましては、実は、この前も、これは三月五日付ですが、外務次官農林次官がさらに大臣以下の詳しい申し合わせをいたしまして、その最後に、「外務農林両省は、海外移住事業団設立を機とし、海外農業移住事業につき、相互に協力してその円滑なる推進に努めるものとする。」、協力精神を盛り上げるということが一番のあれであるということがうたわれたのでございます。われわれは、いまおっしゃったとおり感じております。ただ、そう感じましても、それが不十分である点を十分認めますので、今後もその点は理解し、十分誠意を尽くすようにいたしたいと思います。  なお、外務省の出先は、ブラジルのリオデジャネイロには農林省から書記官が行っておられます。サンパウロ、日本人が一番多いところでございますが、ここには技師系の農林省の方が領事として二人行っておられる。こういうようなことで、今後とも外務農林移住に関して十分協力していくべきことは、おっしゃるとおりであると思います。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 局長から、あらまし御説明がありましたが、いまの移住政策の二つ考え方、方向をどう調和するかということでございますが移住審議会の御答申の中で、一番最初に政策理念というのがございまして、ここに非常に鮮明に考え方がお示しいただいておるわけであります。「国民日本とは事情を異にする海外における創造的活動の場を与え、これを通じて、直接、間接に国民の具有する潜在的能力をフロンティアにおいて開発し、その結果相手国への開発協力と世界の福祉に対する貢献となって、日本及び日本人の国際的声価を高めることにならなければならない。」、こういうお示しがありまして、そのあとに続いて、「移住は従来のように単なる労働力の移動とみられるべきではなくして開発能力の現地移動とみられるべきである。」という基本理念をお示しになっておるので、私はこれは非常に感銘を受けたのです。  それで、いま西村さんが御指摘のように、農業移民が中心であるということでございます。今後もそうだろうと私は思うのです。ただ、日本国内におきましては、いろいろ経済構造が非常に急速に変わりつつありまして、農業あるいは中小企業等不完全就労の状態にある労働力が開放されてだんだんと第二次・第三次の事業部門に非常なスピードで移動しておるのが実態でございまして、それを通じて経済構造がだんだんと高度化していって近代化していく過程にあるわけでございます。その限りにおきましては、農村における労働力というものはあり余って外へ出す余力があるかというと、日本経済成長という中ではそういう労働力をちゃんと勘定に入れて第二次・第三次部門の拡充をはかりつつあるわけでございますから、私はあり余った労働力はないと思うのでございます。したがって、ここにお示しのように、単なる労働力の移動という観念でなくて、開発能力の現地移動で、しかもそれはわが国の国民的な活力というものを新しいフロンティアにおいて開発して相手国に協力し世界福祉に貢献する、それで日本人の国際的声価を高めるというようにお示しになっておる以上は、このお示しになった政策理念で、いま先生が指摘された二つ考え方というものはこの次元で統合されていくのではないかというように思うわけでございます。したがって、私どもがやってまいる場合も、なるほど外務省主務官庁ではございますけれども基本的に外務省はもう総反省の上に立っているのだから、従来のように一々はしの上げ下げまでいろいろ干渉するようなことはやめてくれ、こういうことで、法律にもありますように、外務省に各省の方々との委員会を設けまして、そこで大方針をきめる。それから、外務省移住行政のスタッフは、私はもう広い気持で農林省初め各省から来ていただこうと思っております。つまり、われわれはサービスの世話役だということでありまして、農林省初め各省の自主的な御協力ということがもう何らのさわりがなくできるような雰囲気と仕組みをつくっていきたいということを念願してまいっておるのでございまして、私どもがなわ張り根性で何でも移住はおれのほうでやらなければいかぬのだというようなけちな根性はやめようじゃないかという気持で進めていっているわけでございます。その点はだんだんと農林省その他各省の方々にわかってきていただいておるようでございまして、最初に申し上げましたように、もうわれわれが謙虚にならないと何も問題が進まぬと思いますので、そういう気持でおります。
  23. 西村関一

    西村(関)委員 だんだん大臣のお気持もよくわかってまいりましたが、日本の農村の余剰労働力海外に出すという考え方が一部にあるということに対しては審議会答申の大方針によって問題は解決するのではないか、私もその通りだと思うのでございます。それも一つですが、そういうことを感ずれば感ずるほど基本的な海外移住法の制定が早く望ましいので、答申の線に沿うた基本法に匹敵するような海外移住法を早く制定しなければいかぬ。そうでないと、やはりいま私のちょっと指摘したような二つの流れの混乱がまたぞろ出てくる。それゆえにこそ、私はその基本的な法律の制定を早くやらなければいかぬということを冒頭から申し上げているわけなのであります。とともに、まだ、現状においては、いまの日本の産業構造の中で全部のいまの日本の農村の余剰労働力が消化されるかどうかということについては、私も若干の見解の相違がございます。たとえば、戦後食糧増産を目的とした開拓の入植が行なわれましたが、これは早々の間に行なわれたために不良開拓地というものが相当できている。これは大平さんも御存じだと思う。そういうところで劣悪な環境の中で営農をやっている人たちが相当まだ多数あるわけなんです。北海道においても同じことが言える。しかも優秀な農業技術を持っている。そういう人たちがその開拓地を他に転用して海外に出るということも、これまた一部において考えられる具体的な問題ではなかろうかと私思っているのでありまして、そういうようなこと等もありまして、基本的な大方針は答申の線に沿うてきめられるといたしましても、そういうこぼれているところはやっぱりこれを消化して生かしていかなければならぬと私は思うわけなんでございます。そういうことでありますがゆえに、特に農林省との協力体制についての意見を申し述べたのでございますが、大臣は大きなお気持で農林省の優秀な人をもその方針をきめる場合の機関に入ってもらってやっていくのだということで、私も安心をいたしました。そういうお気持が海外の出先の大使館、公使館、領事館に至るまでしみ通ってまいりますように、そういう点にはぜひ今後も格段の御留意を願いたいと思うわけであります。  それから、事業団そのものについて若干の御質問をいたしたいと思いますが、大臣が十二時に御退席になるということで、まだ三分の一も質問をしておりませんので、中途はんぱになりますから、一応次回に私の質問を保留いたしまして、きょうの質問はこれで終わらせていただきます。
  24. 野田武夫

    野田委員長 それでは、本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十四分散会