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1963-05-08 第43回国会 衆議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年五月八日(水曜日)    午前十一時五分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 安藤  覺君 理事 正示啓次郎君    理事 福田 篤泰君 理事 古川 丈吉君    理事 松本 俊一君 理事 戸叶 里子君    理事 松本 七郎君       菅  太郎君    椎熊 三郎君       森下 國雄君    岡田 春夫君       黒田 寿男君    河野  密君       帆足  計君    森島 守人君       川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務政務次官  飯塚 定輔君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (欧亜局長)  法眼 晋作君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君  委員外出席者         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 三月三十日  委員川村善八郎君辞任につき、その補欠として  高橋等君が議長の指名で委員に選任された。 五月一日     —————————————  日本国ビルマ連邦との間の経済及び技術協力  に関する協定及び千九百五十四年十一月五日に  ラングーンで署名された日本国ビルマ連邦と  の間の平和条約第五条1(a)(III)の規定に  基づくビルマ連邦要求に関する議定書締結  について承認を求めるの件(条約第二〇号)  日本国政府ニュー・ジーランド政府との間の  小包郵便約定締結について承認を求めるの件  (条約第二一号)(予)  日本国南アフリカ共和国との間の小包郵便約  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  二号)(予) 四月九日  日韓会談即時打切りに関する請願井岡大治君  紹介)(第三一七九号)  同(田中武夫紹介)(第一三八〇号)  同外二件(安井吉典紹介)(第三一八二号)  同外一件(石橋政嗣君紹介)(第三三五五号)  同外一件(田中織之進君紹介)(第三三五六  号)  同(三宅正一紹介)(第三三五七号)  同(山口丈太郎紹介)(第三三五八号)  同外二十九件(中村重光紹介)(第三三八三  号)  日韓会談即時打切りに関する請願實川清之君  紹介)(第三一八一号)  同(矢尾喜三郎紹介)(第三八三号)  日韓会談即時打切りに関する請願帆足計君紹  介)(第三一八四号)  同(長谷川保紹介)(第三二四八号)  日韓交渉即時中止に関する請願森島守人君  紹介)(第三一八五号)  戦時中の中国人強制連行に対する陳謝、釈明及  び遺骨送還に関する請願外三件(足鹿覺君紹  介)(第三三二四号)  同外八件(黒田寿男紹介)(第三三二五号)  同外二件(佐々木更三君紹介)(第三三二六  号) 同月二十日  日韓会談即時打切りに関する請願淺沼享子君  紹介)(第三五三七号)  同外一件(岡田春夫紹介)(第三五三八号)  同外一件(坪野米男紹介)(第三五三九号)  同外三件(島本虎三紹介)(第三六五一号)  同外一件(西村関一紹介)(第三六五二号)  同外八件(中村重光紹介)(第三六五三号)  日韓会談即時中止及び軍事基地撤廃等に関する  請願外一件(勝澤芳雄紹介)(第三五四〇  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国ビルマ連邦との間の経済及び技術協力  に関する協定及び千九百五十四年十一月五日に  ラングーンで署名された日本国ビルマ連邦と  の間の平和条約第五条1(a)(III)の規定に  基づくビルマ連邦要求に関する議定書締結  について承認を求めるの件(条約第二〇号)  日本国政府ニュー・ジーランド政府との間の  小包郵便約定締結について承認を求めるの件  (条約第二一号)(予)  日本国南アフリカ共和国との間の小包郵便約  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  二号)(予)  国際情勢に関する件(原子力潜水艦寄港問題  等)      ————◇—————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 まず第一にお伺いしたいのですが、きのうアメリカで建造中のスレッシャー号と同型の原子力潜水艦が火災を起こして、三人死亡したということを聞いておりますが、これについて外務省でわかっております情報を説明していただきたいと思います。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 新聞を通じてそういうことは承っておりますけれども、まだ公にワシントン政府あるいは駐米大使館からの通知に接しておりません。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務省の方には何の情報も入らないで、ただ新聞だけで知っているという程度でございますか。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 さようです。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 きのうのことでございまして、もう新聞社のほうで知っているのですから、外務省は、アメリカ大使館もあるのですから、そういう点ははっきりとお調べになる必要があるのじゃないかと思いますけれども、この点外務省はいかがお考えになりますか。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 当然そういたしたいと思っております。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 何か、アメリカ局長情報を御承知でいらっしゃいますか。さっきからおっしゃりたそうな様子ですが……。
  10. 安藤吉光

    安藤政府委員 先ほど大臣のおっしゃいました通り新聞情報がございました。ワシントン大使館からは、こういった新聞報道があるということはとりあえず言ってきておる、その程度でございます。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私どもが聞いたところによりますと、火事を起こして三人の死亡者が出たということさえ言っておるわけでございますが、こういう点から考えましても、原子力潜水艦危険性のあるものであるということがわかるのではないかと思いますが、外務大臣はこのことについてどういうふうにお考えになりますか。  それから、情報は大体いつごろはっきりとするか。そうして、はっきりされたならばなるべく早くこの外務委員会で報告をしていただきたいと思いますが、大体いつごろ情報外務省としておつかみになることができるかを説明していただきたいと思います。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 軍艦ばかりでなく、商船につきましても、絶対安全ということはなかなかむずかしいことだと思います。したがって、原子力推進力といたしておりまする潜水艦につきましても、いろいろな事故が過去において起こりましたし、今後も絶対に起こらないという保証はないと思います。問題は、原子炉というものの安全性が一体どういったものであるかということにつきましては、特別の関心を持ちまして、できるだけの調査をいたしまして、御理解を深めるようにいたしたいと考えております。  それから、いま御指摘の、情報をいつまでにというお話でございますができるだけ早く詳報を取り寄せたいと思います。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま外務大臣が、やはり絶対に安全であるということはむずかしい、こういうようにおっしゃった通りだと思います。原子炉安全性ということにつきましては、できるだけ研究をしてとおっしゃいますけれども、しかし、潜水艦の場合には、そういうふうなことは日本として知ることのできない問題でございますから、そこにも大きな問題があると思います。しかし、私どもは、もっと根本的な寄港そのものの問題についての質問をいま二、三伺ってみたいと思うわけでございますが、この間の本会議におきまして、帆足議員質問に対して、過去四回にわたって原子力潜水艦寄港問題はアメリカと話し合った、こういうことでございましたが、その後何らかの話はアメリカとの間に続けられておりますかどうですか。この点をまず第一に伺いたいと思います。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいまの段階で、政府部内で打ち合わせた結果によりまして、さらに照会をいたしてあることがございます。このほうはまだ回答に接しておりません。ただ、しかし、大使館科学アタッシェ等から終始こちらの疑点とするところについて説明を求めておりますことは事実でございます。したがいまして、私どもが過去において照会し、それで回答を受け、またいま照会中のことにつきまして回答が参りました暁におきましては、これを取りまとめまして、国会はもとより、国民に御報告しなければならぬと思って、鋭意努力いたしておるところでございます。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、帆足議員に答えられた後においても、数度アメリカとの話し合いをした、こういうふうに了解していいわけですね。  そこで、きのうの参議院外務委員会での大平外務大臣の御答弁を新聞で拝見したのですが、それによりますと、安全性について国民の一応の安心が得られるまでは政府としては軽率なことはしない、こういうことを言われておるわけでございまして、国民安心が一応得られるまでは軽率なことはしないということは、寄港の問題についても、当分の間これを認めるとかいうような急いだことはしない、こういうふうに了解してよろしいわけでございますね。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 それは当然のことでございまして、私ども、この問題が起こりまして以来、もうすでに五カ月もたっておるわけでございまして、その間にできるだけ最大限努力をいたしまして、安全性の問題、補償の問題等につきまして、ただすべきはただしまして、その実相国民に知らせて、御理解をいただくという手順を踏んでおるわけでございます。きのう申し上げましたことは、私どもが最初からとっておる態度でございます。問題は、全部の調査が終わりましてこちらがそのデータを国会に御報告いたしました段階で御質問をいただければよろしいのですけれども国会は、なかなかそういう寛容なところではございませんで、この問題が起こりましたときから、まだいわゆる照会中の段階においていろいろ御質問をいただいておるわけでございまして、大へん御不満な点があろうと思いますけれども、私どもは、いま申しましたように、最大限努力をいたしておる最中でございまして、そういうことは今後続けてまいるつもりでございます。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 国民の納得のしない点は、政府の言う安全性という問題だけではないわけです。日本寄港するということ自体に非常に不安を持っているわけでございまして、こういう点から申しますれば、きのう大平外務大臣参議院でお答えになったのは当然のことだと思います。そして、もしも外務大臣がいろいろアメリカと折衝をしたあげくこれを今度は寄港させるというようなことになったとすれば、私はこれは日がたつにつれてさらに国民反対感情というものは強まってくると思います。、不安による反対、そして、もっと根本的な、アメリカ戦略基地にしようとする、そういう考え方に対する不安による反対、こういうものがだんだん盛り上がってくると思います。したがって、私は、国民反対する以上はやはりこれは軽率には寄港は許さないのだ、こういうふうに外務大臣がおっしゃったものと理解をしていてよろしゅうございますね。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 私は、戸叶先生と若干見解を異にするわけでございまして、私ども最大限努力をいたしまして、国民にその実相をお伝えいたしまして御理解を求めるべく努力を続けるならば、私は、この反対の機運がだんだんと鎮静していくように期待をいたしておるわけでございます。また、そういうことのために最善の努力をしなければならぬと思っておるわけでございます。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 新聞等あるいはその他で外務大臣も御存じだと思いますが、専門家科学者あるいはまた学術会議でも寄港反対をしているわけでございます。したがって、こういう専門家の言われる意見あるいは学術会議での声明、こういうものは非常に貴重な意見だと思います。こういうものをやはりアメリカに提出して、こういう意見日本にあるのだから、こういう意見を無視して私たち寄港させることはできないのだ、このくらいのことは私は外務大臣としてアメリカに言ってもいいのじゃないかと思いますが、この点はいかがでございますか。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 政府部内の科学的な頭脳を動員いたしますばかりでなく、日本の国内に起こりましたいろいろな疑点に対しましては、私どもはそのまま先方照会をしております。全部の回答が得られておらない段階でございますけれども、ただいままでの経過を見ますと、回答があったものもあれば、これは回答できないと言ってきたものもございます。したがって、いわゆる軍事機密に属するものにつきましては遺憾ながら回答ができないというケースもございます。軍事機密の問題はただいままで国際慣例上認められて尊重しなければならぬことになっておりますので、この領域にわたる部面までも向こうに開示を迫るということは不可能に近いと考えております。したがいまして、その限度におきまして、科学者が自主的にみずから安全性を検証いたしたいというお気持ちは、科学的良心から出たことでございまして、私ども当然のことと思うのでございますが、遺憾ながらその領域につきましては十分な回答が得られないということで、科学者の御満足をいただくというわけには参らぬのじゃないかと考えております。これは、ひとり日本科学者ばかりでたく、どの国の科学者問い合わせがかりにあったとしても、アメリカ当局としてはそういう態度をおとりになるだろうと思うわけでございます。ただいままで十数カ国寄港いたしておりますが、その国々の科学者からはそういう御照会に接したことはないということでございます。ただ、わが国といたしましては、特別な国民感情を持っておる国でございますから、この問題について照会の労をとっておるわけでございます。そういうような結果は、いま申しましたように、御回答を詳細にいただいておるものもあれば、軍事機密に属するので遺憾ながらお答えできないというものもあること、これは国際慣例上やむを得ないと私は考えています。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 よく科学者の例としてよその国の例をお引きになりますけれども、問題は、日本の国の科学者です。いま外務大臣がおっしゃいましたように、日本の国は原子爆弾の被害をこうむった国ですから、そういうような国民感情から申しましても、また、続発いたしておりますスレッシャー号、また今度のスレッシャー号と同じ型のものの火事、こういうものから見ましても、日本国民としてはますます不安になると私は思うのです。こういうふうな国民感情、さらにまた日本科学者反対をしている、それまでも押し切ってこの寄港ということを認めるわけにはいかないであろうというふうに私ども考えますし、また、外務大臣にもぜひそういうことには耳を傾けていただきたいと思います。  さっき私が質問いたしましたことに対して、アメリカに、日本科学者なり学術会議なりの人たちがこういう声明を出しておりますということをお伝えになっていただけましたか。この問題についてこういう意見日本には強いんだということをアメリカとお話し合いになっていただきましたかということを伺っているのですが、この点はいかがですか。正式に取り上げてアメリカと話し合っていただきたいと思うのですが、この点はいかがでございますか。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 それは新聞等先方もよく承知いたしておることと思うわけでございます。いま戸叶さんがおっしゃった、私ども科学者意向を無視しているとかなんとかということは決してないのでございまして、科学者がそういう御希望を持たれることは当然だと思うのです。したがって、最大限その要請に応じて照会をいたしておるわけでございます。しかしながら、それは遺憾ながら限界があるということでございます。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 学術会議などの発表を見ましても、日本寄港することに対して反対をしているわけでございます。こういうふうな点を考えて、アメリカ新聞でおそらく知っているであろう、こういうふうな形でなくて、正式にこれを取り上げていただきたいと思いますけれども、正式に取り上げていただける御意思があるかどうか、この点を伺いたいと思います。もしもそういうふうな意見日本外務大臣を通してアメリカに伝えられるならば、アメリカとしては、やはり、そういうふうな国民感情があり、科学者反対をしているならば、いま急に無理をする必要はないというふうな考えにならないとも限らないと思います。外務大臣自身態度によるのではないかと私は思いますが、この点、そういう問題を取り上げていただけるかどうか、念のために伺っておきたいと思います。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 先方から、こういう声明が出たということは承知しておるということも言ってきております。取り上げろといえば取り上げますが、科学者の皆さんの声明を拝見いたしますと、つまり、自主的に安全性を検証するということが満たされなければ入港は望ましくない、こういうことでございます。したがって、私は、いま申しましたように、最大限努力をいたしまして、可能な材料をできるだけ取るようにいたしておるわけであります。それにはいま軍機の限界があるということでございます。こういうところをよく科学者に御説明申し上げたら、漸次科学者も御納得いただけるのではないかと考え努力いたしておる段階でございます。これは、寄港を認めるか認めないかという問題は、政治的な判断の問題でございまして、科学者の領分の問題ではないと思うのでございます。ただ、政治家といたしまして、できるだけ科学者要望に応じて最大限努力をするのが、そしてその科学的良心をできるだけ御満足いただけるようにするのが、私の当然のつとめだと考えております。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その要望を伝えるのがつとめだとおっしゃいますので、強くそれを向こうに訴えていただきたいと思います。  念のために申し上げますと、この茅東大学長ら世界平和アピール七人委員会の首相に対する要望で発表されたのは、「日米国民の真の友好のためにも寄港を取りやめるよう、むしろアメリカ政府熟慮反省を求められることを希望してやまない」、こういうふうな、積極的にアメリカ熟慮反省を求めるようにしてもらいたいという意向でありますから、この積極的な意見をぜひ伝えていただきたいということを重ねて私は要望したいと思います。  そこで、今度の寄港問題について、なぜアメリカ日本原子力潜水艦寄港を望んでいるかということの質問に対して、外務大臣は、これは給水乗組員レクリエーションのためである、こういうことを言っておられますけれども、この目的日本寄港したいのだ、こう言っていることは間違いないわけでございますか。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 そのように心得ております。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、日本アメリカ軍艦なりあるいは飛行機、軍隊が日本に寄ることは認めており、基地を提供することを安保条約によりきめておるわけでございますけれども、私ども安保条約に強く反対をいたしましたが、無理押しをしてあれを通しました。しかし、あの当時、私どもは少なくとも日本国民原子力潜水艦なんというものがあるということは予期していなかったと思います。政府もおそらく今日こんな国民が問題にしているような原子力潜水艦軍艦の中に含まれているというようなことは考えておられなかったのではないかと思いますけれども、これはそういうこともあり得ると思っていたというふうにお逃げになるかもしれませんが、そこで、問題は、安保条約の六条で示されておりますところは、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」と書いてあるわけでございますけれどもレクリエーションなりまた給水ということになるならば、何も日本の安全と平和に寄与するという目的からは直接に関係がないのであって、そういう面から考えるならば、むしろほかのほうで給水なりレクリエーションをすべきではございませんでしょうか。六条から考えましても、直接これは関係のあることではないと思いますけれども、この点はどうお考えになっておりますか、
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 いま御指摘の第六条の精神に沿っておると思うのでございまして、日本寄港いたしまして補給をしたり休養をしたりすることは、極東の安全のためにも関係があるとも思うわけでございます。よそでやるかどうかということはアメリカ判断の問題でございます。私は日本でそういうことをやられて決して差しつかえないと思っております。
  29. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はそういうふうに聞いているのではないのです、安保条約は安全と平和に寄与するために日本施設なり基地を使うということがしるされておるのであって、そうだとするならば、給水とかレクリエーションのために日本に寄るというならば、そしてまた給水なりレクリエーションのために日本に立ち寄るということを主張するならば、何かそこにほかの目的があるのではないかということを考えるのは、国民ひとしくそう考えるのは当然だと思うのです。給水レクリエーションだけならば、よそでやればいいのであって、そして六条の目的からも直接には反するというよりも遠いものであるのですから、何も日本を使わなくてもいいのではないか。しかし、日本をどうでもこうでも使いたいというのは、何かそこにアメリカ目的があるのではないかと考えない人はないと思いますが、この点は外務大臣どういうふうにお考えになりますか。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 原子力推進力といたします潜水艦も第七艦隊を構成いたしておる軍艦でございまして、これが日本寄港し、また日本の周辺にあって行動いたしておるということは、これはもとよりいま御指摘のように極東の安全と平和を守るためにあるわけでございまして、その他の目的が込められておるというものではないと思います。
  31. 戸叶里子

    ○戸叶委員 第七艦隊に属している毛のが日本ただ給水のためにあるいはレクリエーションのために来るということは、どうしても私どもは納得できないわけです。そして、アメリカが何がなんでも日本寄港するということは、アメリカが今後においてそういう潜水艦基地日本に置きたい、そういう考え以外にはないと思うのですけれども、結局、基地としてそれを指定するために一応レクリエーションなりあるいは給水という形で置く、こういうふうに給水なりレクリエーションというものと日本潜水艦基地とするものと同じに考えていいものかどうか、この点を伺いたいと思います。
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 ほかの軍艦なり飛行機日本施設を利用いたしまして給水をしたりレクリエーションをやっておるのでありまして、原子力潜水艦が寄るということもそれと一般でございまして、特別にこれを色めがねで見る必要は私はちっともないと思います。
  33. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それじゃ、結局給水なりレクリエーションということは日本基地とするということに理解していいわけでございますね。そういうふうに理解するといたしますと、やはりこれは非常に大きな問題になってくると思うのです。私どもはそういう目的アメリカが今度の寄港を申し出ているのではないかというふうに考えているわけでございますが、いま外務大臣のおっしゃることによって、ほかの軍艦なり飛行機と同じように、給水、乗り組み員のレクリエーションをしているのだから、今度の原子力潜水艦日本にそういう目的で寄るということも、結局は基地と同じ考え方に立ってもいいということになりますと、やはりアメリカ戦略体制の一環として私ども考えていかなければならない大きな問題になってくるんじゃないかと思うのです。  この問題はもっと根本的な問題としていろいろ今後においての議論の余地があるところと思いますが、そこで、それじゃ、いまの政府の立場に立って私どもが伺うといたしますならば、もしも原子力潜水艦寄港する場合には、あの潜水艦は聞くところによりますと七十七日以上も海の中にもぐっていることができるのだそうでございますけれども寄港するたびに日本に知らせるというのじゃなくて、一度寄港しつければいつ来たかわからない形で寄港を許されるということになるのでございますか。それとも、今度はどういう潜水艦寄港をして何日間くらいおりますということになるのですか。その点はどういうふうになるのですか。政府の立場に立って私どもが伺ってみますと、許すとしての立場に立って伺ってみますと、その点はどうなるかをはっきりしていただきたい。
  34. 安藤吉光

    安藤政府委員 米軍が日本の防衛に努力して協力しておる、その代償として施設を提供しているわけでございます。その施設軍艦が入りますときには、通常在日米軍司令部のほうに通報がありまして、そして防衛庁のほうにも連絡がございます。しかし、潜水艦の場合は、やはり安全対策等のことがございますので、できるかぎり日本に事前に通報してもらうようにいたしたいと努力しておるわけでございます。
  35. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、事前に通告してもらうように努力しているとおっしゃったのですか、していきたいというのですか。
  36. 安藤吉光

    安藤政府委員 していきたいと思いますし、また、現にやっております。
  37. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、日本はそういう考え方であっても、アメリカのほうがどういうふうに言うかわかりませんし、いつの間にか原子力潜水艦が入っているということも考えられるわけです。そうなってきますと、幾ら核弾頭をつける場合には事前協議の対象になるといいましても、第七艦隊に属するそういう原子力潜水艦でしかも核弾頭を載せているものがひとりでに日本の港に寄港をする、そして日本政府が一々通告されない、したがって、それが核弾頭がついているかいないかも調べることができない、そしてそういうことがあとになってわかる、あるいはわからないというような場合もあり得ることを私ども考えるわけでございますが、政府はあくまでもそういう核弾頭をつけている場合には事前協議の対象になるということをアメリカが言ってているのだからそれを信ずるよりしかたがないというふうにおっしゃいますけれども、私どもの立場からしてみれば、そういうふうなことがあり得るわけでございます。したがって、私たちは、この原子力潜水艦というものが結局日本基地にしようとしている、潜水艦基地に持っていこうとするアメリカ考え方、そしてまた、核弾頭をつけてくる場合には事前協議の対象にするといってもできないで、ずっとずるずるべったりに入ってくるという可能性もある、こういう立場から考えましても非常に不安を持つものでございまして、やはり、私たちは、科学者等の立場と同じように、そしてまた一般の国民と同じように、こういう問題は強く寄港を許すべきでないという考え方で今後運動を進めていかなければなりませんし、また、政府においても、そういう意見国会で議論されているということをどうぞアメリカに伝えていただいて、そしてアメリカ反省を促すようにしていただきたい、そういう問題は話し合っていただきたいと思いますけれども外務大臣の御決意のほどをちょっと伺っておきたい。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 外交関係というものは本来尊敬と信頼を基調にしなければならぬものでございまして、私どもアメリカとの間には条約はございまするし、その条約に双方とも忠実であるということが大前提でございます。私は、国会においてあなたのような御有力な方からアメリカがずるずる核兵器を持ち込むのじゃなかろうかということを言われること自体が非常に悲しいことだと思うのでございます。厘毫もそういことを私は考えていないわけでございます。ただいままでの安保条約の運営の実績を見てみましても、そういう懸念は一切ないと確信をいたしておるわけでございますから、私はお互いの不動の信頼の上に立って条約の運営というものはやらなければいかぬものと思っているのでございまして、初めから向こうがそれを破るかもしれないぞというようなことでは、とても外交関係を円滑に相互の利益のために展開してまいるということは私は不可能になると思うのでございまして、願わくはそういう議論が国会において出ないことをむしろ私は希望をいたします。
  39. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣は全くアメリカの言うことを信用していらっしゃいますけれども、間違って入ってくるということもあり得ると思うのです。第七艦隊にいるのですからね。ですから、そういうことを考えて、私どもがこういう意見を持っているということは、どうぞぜひ強く訴えていただきたいということを要望して、これは平行線になりますから先に進みたいと思います。  もう一点伺いたいことは、先ごろスレッシャー号が沈没いたしました。それに対して政府のお考え方としては、原子炉に原因がないことが明らかになるまではしばらくじっとして様子を聞いてみているのだというふうな発表もあったようでございますけれども、私どもは、むしろ、これは公海で行なわれた事故でございますから、日本としては直接に調査船なり何なりを出して、海流の動き、あるいは海水の汚染状態、こういう問題もやはり調べるべきではないかというように考えます。アメリカが言うとおりにこうでしたという報告を待たずに、これはアメリカの主権を侵すことにならないのですから、公海で行なわれたことなんですから、日本から調査船を出して、むしろそういう問題をも進んで調べる必要があるのじゃないかと思いますけれども、この点についてはどういうふうにお考えになりますか、伺っておきたいと思います。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 スレッシャー号の沈没事件に関連してただいままで承知しているところでは、これは通常の船舶事故であるというように伺っておったわけでございますが、御案内のように、先方におきましても権威者を網羅した事故原因の調査委員会が設けられておるようでございますから、それの調査の進行を待ちまして、私どもはその進行に注目いたしておるというのが今日の立場でございます。日本から大西洋の事故現場に調査船を出すというようなことは考えておりません。
  41. 戸叶里子

    ○戸叶委員 これはやはり海水に与える影響とかあるいはまた海流関係でこちらのほうにも影響がある場合もあり得ると思うのです。したがって、やはり、向こう調査発表を待たずして、日本は海にたよることの大きい国民ですから、調査すべきだと思いますけれども、全然そういう御意思は現在のところないというわけでございますか。将来においてもそういうことはしないというお考えでございますか。
  42. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカにおきまして権威ある調査委員会を設けてあらゆる準備をして調査を進めておるようでございますから、その経過を見守っておりたいと思っておりまして、わがほうから調査船をわざわざ出すというようなことは考えておりません。
  43. 戸叶里子

    ○戸叶委員 原子力潜水艦の問題は、あと同僚の委員も伺うようでございますから、一点だけ日韓会談について伺いたいのです。  先ごろ、新聞によりますと、韓国で野党の有力者であるユン・ポソン前大統領とか、それから許政元総理大臣を含む民間の有力な政治家たちが共同声明を出して、そして、日韓交渉を中止しなさいというふうなことを基本的な問題として、その間に、金鍾泌のやったことにはいろいろな不明朗があるとか、いろいろの声明を出しておるようでございますが、原則的な意見日韓交渉を中止しようということを言っておるわけでございます。いま政府日韓交渉をこのままもしも続けるとするならば、今後韓国の政情がああいうふうに朝令暮改のように変わっていくところですから、もし野党の勢力が勝った場合には、日本としても引っ込みのつかない問題になるわけでございまして、当然、こういう発表もある以上、やはり日本政府としてこの辺で日韓交渉というものは一応打ち切った形をとるべきじゃないかと思いますが、この点についての野党のこの声明に対してどういうふうなお考えを持っていらっしゃるかを、念のために伺っておきたいと思います。そしてあとでゆっくり日韓問題については質問したいと思っております。
  44. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国におきましても、政治活動の自由が認められて、政党活動も始まっておるようでございますから、わが国におけるように日韓会談に反対の議論が一部から出ることもあり得ることだと思うわけでございます。私どもといたしましては、従来から国会で申し上げましたとおり、韓国側が問題になっておる懸案につきまして建設的な御提案があれば、いつでも討議に応じるという態度を終始堅持いたしておるわけでございまして、今日の段階におきましても変わりはございません。
  45. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この問題は次の機会にゆっくり聞きたいと思っております。
  46. 野田武夫

  47. 帆足計

    帆足委員 先日の本会議での緊急質問で、原子力潜水艦寄港の問題につきまして、国民のだれしもが心配いたしております点をお尋ねいたしたのですが、私ども大臣の御答弁を伺いまして、時間の関係もありましたでしょうが、あまり懇切丁寧でない印象を受けまして、多少不満でございますが、その後、政府当局においては、世論の帰趨や科学者意見も参考にせられまして、現在のところ慎重な態度をとっておられるということを聞きまして、まあほっとしておるような状況でございます。新聞の社説を見ましても、五大新聞ともに社説はこの問題について十分慎重な態度をとってもらいたいというのが一致した意見のようでございますので、重ねて外務大臣にお尋ねいたしたいと思います。  これにつきまして思い出しますことは、私の住んでおります近所の渋谷地区におきまして、東海大学で実に小さな、手でかかえられるほどの原子炉を設備しようとしたのでございますけれども、国内における許容量基準の問題から考えまして、それすらも人口稠密の場所では適当であるまいということで控えるような結論になったわけでございます。政府としてはそういうような行政指導をされておりますが、聞くところによりますと、アメリカの国内における原子炉に対する監督基準、許容量基準と、それから放射能の問題に対して、きわめて厳格であり神経質である日本の基準との間には相当の開きがあるように伺っておりますが、その点につきまして、現在どういうふうになっておりますか、要点だけでも伺いたいと思います。
  48. 大平正芳

    大平国務大臣 この問題ばかりでなく、慎重にやらなくていいという案件はないと思います。すべて慎重にやらなければならぬ問題だと私は心得ておるわけでございます。  それから、いまの安全基準の問題につきましては、事務当局から答弁せしめます。
  49. 安藤吉光

    安藤政府委員 安全の基準については、私の承知しておりますところでは、米国におきましては、原子力委員会原子炉審査委員会、あるいは公衆衛生局、こういったところで、最高の専門家を集めたこういった会合で十二分に審査し、また検査し、そうして基準を設けておるというふうに承知しております。具体的な内容につきましては、私ちょっといま存じておりません。
  50. 帆足計

    帆足委員 私がお伺いいたしましたのは、日本が海産国であるという特殊性、原爆の試練を受けた特殊性等からいたしまして、日本における放射能関係の設備の許容最というものが非常に厳格である、それに対しまして、アメリカの基準のほうはそれよりもやや寛大である、そういうことで、両国の基準の開きがありはしないか、これをお尋ねしたわけなんです。
  51. 安藤吉光

    安藤政府委員 先ほども申し上げましたように、原子力開発について長年の期間と優秀な技術とそうして巨大な費用をかけて、これらの先ほど申しましたような委員会が相当検討してやった基準であると承知しております。日本の基準との比較ということになりますと、私、必ずしも一致していないのではないかと存じますけれども、しかし、これはやはり向こう専門家がそれで十二分だといった基準であるというふうに承知しておるわけでございます。
  52. 帆足計

    帆足委員 私がお尋ねいたしたいのは、それぞれの国情に従った基準であることはあなたの言われた通りでありますけれども、 日本における基準よりもアメリカにおける基準のほうがずっとゆるいという実情になっておると聞いておりますが、そうでしょうかということを伺っておるのです。
  53. 安藤吉光

    安藤政府委員 私、専門家でございませんので、具体的に数字とかそういったもので申し上げることができませんけれどもアメリカ専門家は、その専門的見地で、これで十二分である、安全であるというような水準を定めておるというふうに承知しております。
  54. 帆足計

    帆足委員 くどいようですけれども、私はそれを伺ったのではなくて、日本の基準とアメリカの基準との間に相当の開きがある、この事実に対してわれわれは後ほど検討いたしますが、その事実を御存じであるかということを伺っているわけです。
  55. 安藤吉光

    安藤政府委員 双方の基準に相違があるというものもあるやに聞いております。しかし、科学的に見てどちらが正しいかということにつきましては、専門家の間にいろいろ意見の相違があると思います。
  56. 帆足計

    帆足委員 どちらが正しいかでなくて、一般的に、アメリカの基準のほうがずっとゆるやかにできておって、日本のほうが非常にシビアに神経質にできておるように伺っておりますが、こまかなことを専門家でないあなたに伺っておるわけではありません。そういう開きがあるとするならば、これも検討すべき問題でありますから、どういうふうにお考えですかと、こう聞いたのです。
  57. 安藤吉光

    安藤政府委員 先ほども申し上げましたように、基準のいろいろなものの中には、相違しているもの、アメリカの方が日本のよりも少しくゆるやかなものもあるやに聞いております。しかし、先ほど申しましたように、それがいわゆる科学的な基準として正しいものかどうかということについては、やはり専門的にいろいろな意見があるように聞いております。
  58. 帆足計

    帆足委員 ただいまの点も、重要な問題でありますから、学者が憂慮し、研究したいと欲しているところであろうと思います。  それから、安全度の問題につきまして何回かの回答が来たことでしょうが、大体その回答はもう完了いたしたのですか、またさらに再照会中でございましょうか、伺っておきたいと思います。
  59. 大平正芳

    大平国務大臣 戸叶先生にお答えいたしましたように、いま照会中のがございまして、これはまだ参っておりません。
  60. 帆足計

    帆足委員 この安全度の問題につきましては、検査ということは軍機の秘密上許されないと聞いておりますが、その程度のことがどうして軍機なのでしょうか。それも伺っておきたいと思います。
  61. 大平正芳

    大平国務大臣 照会いたしまして回答が来たもの、あるいは照会中のもので回答を期待しておるものがございますことはいま申し上げたとおりでございますが、いままで参りました中で、これは回答できないというアイテムが、おそらくいうところの軍事機密だろうと思うわけでございまして、軍事機密が何かということの国際的基準というようなものがもしあれば、あるいは判然といたすわけでございますけれども、私どもといたしましては、先方がこれは軍事機密であると言われたら、ただいまのところ、それを信頼いたしまして、それについての回答は期待できないというように考えております。
  62. 帆足計

    帆足委員 せっかく政府が慎重な態度をおとりになって誠意ある回答を求めておられることは多といたしますが、その回答外務委員会なり科学技術特別委員会なりに公表していただけますか。または、かりに公表できないとすれば、原子力会議専門家会議に公表していただけますか。それも伺っておきます。
  63. 大平正芳

    大平国務大臣 これは、問題の焦点は、安全性等につきましてできるだけ科学者をはじめ国民の御理解をいかだくということでございますから、私どもとしてはもとよりこれを原子力委員会に提示いたしまして御検討いただくということは当然だと思っております。それがまとまりまして一応の完了を見ますれば、国会に対しましても御報告すべきものと思っております。
  64. 帆足計

    帆足委員 放射能に関しまする問題は、国民の健康に直ちに影響し、子孫にまで影響する問題でありますから、国民としてはできるだけ多くのことを知る権利があるわけでございます。これは民主主義の基本的権利でございますから、なるべく早くわれわれとしてもこういう回答質問書等は目を通しておきたいと思っておりますから、御了承願います。  それから、この原子力潜水艦は単に原子力汽船のようなものであると現段階では伺いましたが、したがってまた、防衛庁長官から、サブロック等の装備はないということを伺っております。核装備たるサブロックまたはポラリスの装備がないということが事実であるとしますならば、その点における国民の憂慮の気持は多少緩和されるだろうと思いますけれども、将来サブロックなりポラリスが装備された潜水艦が入港したいというときは、もちろん、核兵器導入を断わっている政府のことでありますから、当然断わると考えてよろしいでしょうか。
  65. 大平正芳

    大平国務大臣 そのとおり考えております。
  66. 帆足計

    帆足委員 その場合に、核装備ということばの定義ですが、私はこの前ファッション・ショーのマネキンガールを例に引いて、マネキンは一体となってマネキンである、ただ頭だけ、ちょっと隠せる小さな部分だけ隠して、そうして核はないじゃないかというようなことはちょっと論理にはずれる、すなわち、核兵器というものは核装備の一体を言うのである、その部品が二つ三つはずれているとか、頭の部分あるいは耳の部分だけがはずれているから核装備でないではないかということは、それは三百代言的な言い方であって、正確なものごとの定義ではない、こう申し上げましたが、外務大臣は核装備の定義をどのようにお考えでございますか。
  67. 大平正芳

    大平国務大臣 この間の本会議で御答弁申し上げましたように、核の分裂、融合反応というものを破壊力または殺傷力として使うというものを核兵器と心得ているということは、ここ数年来政府が終始一貫国会を通じて表明いたしてまいりました公式の考えでございまして、その基本的な考え方にちっとも狂いはございません。
  68. 帆足計

    帆足委員 それでは重ねてお尋ねいたしますが、そうすれば、核分裂物資の弾頭だけ、その核分裂物資のところだけをとりあえずはずしてあるからこれは核装備でないというような定義は成り立つものでしょうかどうか、承っておきたい。
  69. 大平正芳

    大平国務大臣 いま申しました政府の公式の見解に照らして判断いたしております。
  70. 帆足計

    帆足委員 具体的にお聞かせ願えればしあわせですが……。
  71. 大平正芳

    大平国務大臣 兵器とか装備とかいうものを軍事科学上どのように定義づけるのか私は存じませんけれども、基本の精神は、今申しましたような殺傷力または破壊力として使うということは、これはどういう形態であれ核兵器なんでございまして、そういうものの持ち込みは反対であるという態度は終始一貫いたしているわけでございます。この方針に照らして具体的なケースは判断を下すべきものと考えます。
  72. 帆足計

    帆足委員 この際その点を明確に伺っておきたいと思いますのは、核弾頭、すなわち核分裂物質の入っている部分だけ、そこだけをとればこれは核装備でないという言い方が世上ままあるやに承りますので、すべての核装備が整っておって、最後に、ピストルで言えば、たまだけが抜いてある、でありますからこれはピストルでない、おもちゃのピストルだ、こういう言い方が成り立つかということを一言だけ確かめておきたいわけです。
  73. 安藤吉光

    安藤政府委員 この核兵器の問題につきましては、かつて内閣委員会に提出した資料がございますが、簡単に申しますと、たとえばサイドワインダーとかエリコンのように、核弾頭を装備することのできないものはもちろん核兵器ではございません。それから、例をとりましてもう一つ、オネスト・ジョンのように、核と、核でないたとえば普通の火薬弾頭、いずれも装備できるといったような種類のものは、核弾頭をつけておった場合は核兵器と申されましょうが、そうでない種類の普通の弾薬による弾頭をつけておった場合は核兵器とは申せないわけでございます。それから、ICBMとかIRBMというように、本来核ばかり使う、装備されておるというものは、核兵器と言うべきであろうと思います。
  74. 帆足計

    帆足委員 その参議院に提出いたしました資料の写しをいただきたいと思います。  それから、ただいまのような場合に、たとえばサブロックのような場合は、私ども核魚雷専門と伺っておりますが、そうすると、その装備は、すなわちそのピストルは核装備とお考えでしょうか、ちょっと伺っておきます。
  75. 安藤吉光

    安藤政府委員 私たちが調べましたところによりますと、目下開発中で、まだ実際装備されておりませんけれども、その開発中のサブロックというものは、核弾頭もつけられるし、そうでない普通の弾頭もつけられる、両用につけられるものだというふうに承知しております。
  76. 帆足計

    帆足委員 両方につけられるからこれは核兵器でないといって持ち込む習慣ができますとゆゆしい問題でありますが、しかし、政府としては一応そういう答弁をしているということであるならば、この席で限られた時間で今議論をしても何もなりません。そこで、サブロックというものは両方に用いられる、そしてたまだけ抜いておいてこれを核兵器でないといって持ち込まれるおそれのある定義を政府はしておるということをわれわれは憂慮の念を持って今承っておきます。そしてこれにつきまして政府に再検討をいずれ要求せねばならぬと思いますけれども、ただいまはそういう新事実を承って、われわれは憂慮にたえぬと思います。核兵器と火薬両用のものならばこれは核兵器でないというならば、核兵器の持ち込みは新日本憲法の見地から、また国際緊張激発の見地から、また日本の安全保障の見地から慎もうという政府の国策がその一環からくずれるのであるまいかとだれしも思うわけでありますから、私は憂慮の念を持って今のことばを伺いました。いずれあらためてこの点を問いただし、われわれの意見を述べたいと思います。  学術会議の発言に対しまして、政府にとかくの雑音があるようでありますが、外務大臣におかれましては、学者が良心的見地からその意見を適当な方法によって発表することについては大いに傾聴にも値するという意味の御発言があった。私もごもっともだと思います。かつて、南洋のまだおくれておる島民が、あらしが来るたびに出る測候所の赤い信号を見まして、赤い信号が出るからあらしが来るというふうに錯覚をいたしまして、測候所の旗を襲ったという物語もあるくらいでございます。学者の発言というものは測候所の赤信号に匹敵するものでありますから、その憂慮すべき対象自体に対して目を向けることが必要であって、学者の言が気に入るとか気に入らぬとかいうことは、科学というものはおおむね常識に反するものでありますから、学者の意見はとにかく意見として十分に聞く必要があると思う次第でございます。  前回の外務委員会でお尋ねしましたアメリカ原子力緊急情報センターの資料はお取り寄せになりましたかどうか、伺っておきたいと思います。
  77. 安藤吉光

    安藤政府委員 先般帆足先生からお話がありました直後、在米大使館のほうに問い合わせておりますが、いまだ回答が来ておりません。もし何かそういうような情報でもお持ちでございましたら、いただいたらそれをまたもとにしてもう少し調べてまいりたいと思います。
  78. 帆足計

    帆足委員 それではその機関の正式の英語の名称はいずれお知らせいたします。  初頭に損害賠償について話し合いがあったということは、私どもは、これらの基本問題が十分に納得いかないうちに時期尚早である、むしろ不快な感を持って報道を受け取った次第でありますが、一体、損害賠償というものは、他のことならいざ知らず、原子力に関する問題でありますと、その損害というものはきわめて明確を欠くわけであります。何年後に放射能の、また白血病の症状があらわれる、そういうようなことは基準を発見することすら困難な課題でありますが、一体政府は何を基準にそれを御検討なさっておるか、参考のために伺っておきたいと思います。
  79. 中川融

    ○中川政府委員 原子力潜水艦が入港いたしました際に万一損害が起きた事態にどのような措置でこの損害を補償されるかという点についていろいろアメリカの体制について質問しておるのでございまして、損害の具体的な計算方法等を質問しておるのではないわけでございます。御承知のように、日本の国内法によりますと、原子力損害につきましては、要するに、限度の定めのない損害補償をするということになっておりますので、大体同じような考え方アメリカの法制ができているかどうか、そういうようなことを質問しているわけでございます。したがって、損害額の算定の方法まで照会しているわけではございません。
  80. 帆足計

    帆足委員 ボストン沖で沈没した原子力潜水艦のような珍事が始終あり得ることとはだれしも思わないことです。ただ、万が一ということで損害賠償のことも相談されると思いますが、そういうことを思いますときに、原子力潜水艦が今日なぜしいて東京湾ないし佐世保に立ち寄らねばならぬか、私どもはその点について了解に苦しむ次第でございます。また、日本学術会議、また日本国民の世論が外国から見れば多少神経質過ぎると言おうとも、原子力の放射能の被害を体験した国民原子力潜水艦に対して非常に神経質である、国際緊張の激化について神経質であることは当然だし、日本の立地的位置が、たびたび申し上げますように、ボストンとかフィラデルフィア、バンクーバーのようにアメリカのまん中か向こう側にあるならばとにかく、将棋をさしてだれしもわかることであって、敵の王か金の前に出ている歩のような地位にある四つの島にいて、そういうものをたやすく受け入れることが戦術的に見て安全にもなるけれどもきわめて不安全にもなるということは、ばかでない限りは、戦術のイロハを知る限りの人はその問題に対してやはり慎重な態度をとらねばならぬとだれしも思うことです。マッカーサー元帥自身がリーダーズ・ダイジェストにそのことはたびたび繰り返して書いて、日本はたとえアメリカにたよろうとも緊張の中に入り火中のクリを拾ったならば焼き滅ぼされるにきまっている、できることならば日本よアジアのスイスたれ、それはもう彼が繰り返し繰り返し語った言葉です。そういう状況であるときになぜしいて今立ち寄らねばならぬのか。  そこで、私はお尋ねしたいのですが、サブロックは今まだ開発されていない、しかし、サブロックができても、これは火薬、核兵器両用のサブロックであるから、それを載せたものでも同じであるという解釈をとっている。言うならば、ゆゆしいことであって、サブロックが十六発ポラリスと同じについたならば、一隻の潜水艦の破壊力は過ぐる欧州大戦のすべての破壊力を凌駕するほどのおそろしいものです。百年前に頭にちょんまげを結い、腰に日本刀をさしたおくれた民族のところにペルリの黒船が下田の港に近づいた。それにも別な意味でたとえ得るほどの私は歴史の一こまであろうと思います。それほど大きな戦術的意義を、また戦略的意義を持っておる原子力潜水艦が、まずその瀬踏みに横須賀の港、佐世保の港に入ろうか、こういうわけでありますから、戦略的に見ても政治的に見ても十分に検討しておかねばならぬ課題であろうと思います。それほどの大兵力の移動であるのに、かりに核兵器のことを除いて考えても、なぜ手続上、法制上、正式な事前協議の対象にならないのか、私は理解に苦しむのでありますが、外務大臣に、なぜ事前協議の対象にこれがならないのか、その点を伺いたいと思います。
  81. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもといたしましては、先ほど申しましたように、核装備、核兵器の持ち込みでございますとか、あるいは重大なる装備の変更という、安保条約にうたわれました条項を正当に解釈いたしまして、単に艦船の推進力として原子力を使っておるというようなものはそういう条項に該当しないというようなことで、事前協議の対象にはならぬという見解をとっておりますことは、たびたび本委員会を通じて申し上げておるところでございます。
  82. 帆足計

    帆足委員 そういたしますと、このたびの原子力潜水艦は、動力が原子力であるだけであって、そして火力の方は一体どういうものを持っておるわけですか。単に水の中を泳いで趣味の問題として歩いておるというだけのものではないでしょう。これはやはり軍艦の一種でしょう。そうすると、動力は原子力、それは一応別な問題である。それは放射能の損害に対する問題である。そうすると、戦術的、戦略的には一体どういうものですか。
  83. 安藤吉光

    安藤政府委員 ただいま米国が寄港させたいと考えているものは、いわゆるノーチラス型でございます。これは、先ほど大臣も申されましたとおり、原子力推進力とする潜水艦でございます。この装備は普通の魚雷を持っておるわけでございます。
  84. 帆足計

    帆足委員 それではお尋ねいたしますが、核装備の定義についてのわれわれの批判的意見はまた別な機会に譲るといたしまして、サブロックについては非常な破壊力を持っておるものであるけれども、目下開発中でこの船には載せてないから別問題であるという御答弁も防衛庁長官からいただきました。だとするならば、サブロックが載るような事態、またはポラリスが載るような事態になりましたならば、これは全然別個な問題としてまた対処なさる、これはいまの単に普通の魚雷を積み動力がただ原子力である潜水艦という問題とは異なる範疇としてお取り扱いになる、こういうことですか。
  85. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申し上げましたように、核兵器についての政府の公式の声明というものに照らして判断すべき問題でございます。
  86. 帆足計

    帆足委員 私は事前協議の対象になるほどの大きな戦略上の配置の変化だと思いますが、外務大臣はそれでは事前協議の対象になるものは何々というふうにお考えでございますか。そして、これほどの大きな、巨大な破壊力を持っておる、人類にとってのこういう化けものがなぜ事前協議の対象にならないと言われるのか、その点をお示し願いたい。
  87. 大平正芳

    大平国務大臣 今申し上げましたとおり、政府は、核の分裂、核の融合反応というものを破壊力または殺傷力として使うというものにつきましては反対、持ち込みも反対いたしておりますし、その日本政府意向というものはアメリカもよく承知いたしておるはずでございます。そういう基本の方針に照らしまして、たとえ先方から事前協議がございましても、日本政府としてはそういうものは認めるわけにまいりませんということを先方に申してあるわけでございまして、先方もそれをよく了承いたしておるわけでございます。
  88. 帆足計

    帆足委員 このたびのノーチラス型の潜水艦日本寄港を希望している潜水艦は何隻で、どういう種類で、大体の寄港の回数は年に何回で、一回の滞在日数はどのくらいと予想されておりますか。
  89. 安藤吉光

    安藤政府委員 先方より話がございましたのは、ノーチラス型の潜水艦であるということと、それから、もちろん核装備は持ち込まないということは、これはかねがね言っておるわけでございます。それから、頻度とおっしゃいますが、具体的にまだ話がきまっておるわけではございませんけれど、大体二カ月に一回くらいというように了解していいのじゃないかと思います。滞在日数は、普通の軍艦と大体同様でございまして、長くて数日間でございます。
  90. 帆足計

    帆足委員 そういうような潜水艦でありましたならば、十分政府の方も審議なさるでありましょうし、また、政府と多少意見を異にしておる野党がこぞってこれに反対しておる、学者の多くも反対しておるということならば、平和七人委員会で植村環女史、それから湯川博士などが発表されましたように、しいていま日本寄港なさらなくてもよいではないか、また、これに対して他国の中でかりに少数であっても三割なり四割の反対があるときに、反対を押し切って無理に他国領土に上陸して国民感情を害するよりも、それはハワイなり適当な港に行って、できることならば控えた方が、日米の正常な友好感情のためにもよくはないか、私はこの七人委員会意見のとおりだと思います。別に急いでこれをきめねばならぬ理由は何ら見当たらない。もちろん、ペルリの黒船のように、当時の技術をもってすればサンフランシスコから東京まで参りますのには一カ月も二カ月もかかる、薪炭の補給も緊急を要する、台風についての緊急避難もせねばならぬ、そういう状況ならばこれはもっともな話ですけれども、海中に少なくとも一カ月以上数カ月ももぐることができる能力のある原子力潜水艦であってみれば、こういうときはハワイあたりでゆうゆう自適なさる方が適当ではあるまいか。それとも、戦略的にまず日本の港に寄港して状況になれることが必要である、そうしてやがては別の原子力潜水艦を入港させる水先案内にする必要に迫られておるというのであるならば、それだけの理由を堂々と示して、日本国民のそれに対する判断を事前協議によって求めればよいのである。しかし、今日の段階においては断じてそういうことではない。ただ一般的なそれは問題であって、具体的に別に緊張が激化したわけでもなければそういう必要があるわけでもない。休養と資材補給のためであるというならば、私は、そう差し迫った必要でもあるまい、こう判断するのが常識であろうと思いますが、外務大臣は、それは急いで立ち寄る必要もないと君が言われるならば立ち寄って悪い理由もあるまい、こういう御答弁をされました。立ち寄って悪い理由もあるまいと言いますけれども、それはアメリカの領土であるならば御自由です。しかし、かりに社会党が三分の一でありましても、われわれはわれわれを支持している一千万の国民の信頼を得て発言をしているわけで、そういう批判勢力なしには民主社会というものは健全に進まぬわけであります。常に少数意見というものはあるわけです。三分の一の少数意見がこうして反対しておるのを押し切ってまでやらねばならぬ緊急必要性が友好国というアメリカにあるかどうか。そういう点からももう少し慎重な御考慮を願いたいとわれわれは思っておるわけです。別に珍しい意見でもありません。きわめて平凡で常識的な意見でありますけれども、われわれはそういう常識を尊重していただきたい。重ねて外務大臣にお尋ねしておきたいと思います。
  91. 大平正芳

    大平国務大臣 国会内外でただいま問題になっておる原子力推進力とする潜水艦寄港について反対または望ましくないという御意見がありますことはよく承知いたしております。これを大別すると、一つは、その安全性について懸念があるということ、それから、もう一つは、これが国際緊張を媒介する役割を果たすのではないかということかと思います。安全性の問題につきましては、私ども専門家意見を聞きまして確かめるべきものは最大限確かめてまいるように努力いたしておるわけでございます。それから、私は、この問題は国際緊張激化というようには評価していないわけでございまして、推進力原子力にかわったというにすぎないものと心得て、これがために国際緊張を媒介、強化するというものではないと思っておるわけでございます。したがって、政府努力によりまして、いま帆足先生がおっしゃったように反対が現にあるということは承知いたしておりますが、そういう反対ないし希望しない方々にできるだけ御理解をいただきまして、この問題について誠心誠意努力してまいりますならば、現在あるような反対論者もだんだん御理解をいただけるのではないかと思うのです。それで、そのように努力いたしておるわけでございます。社会党と政府与党との間に外交政策上の見解の相違がありますことは歴然たる事実でございますけれども、事原子力潜水艦寄港につきましては、ただいま表見的には若干そういうニュアンスの相違もございますけれども政府努力によりましてだんだん御理解をいただきまして、これは与野党との間にそんなに見解の相違を結局において結果するものではないと思っておるわけでございます。民主主義政治におきまして、野党、少数党の見解を尊重せよということは当然のことでございますし、私は日本社会党という政党の力量ということに対しましては最大限に評価をいたしておるつもりでございますし、十分傾聴すべきものは傾聴してまいるつもりでございます。御意見を十分伺いながら、それに対しまして私どもができるだけ御理解をいただくように努力してまいりますならば、ただいまある見解の相違というものはだんだんと狭まってくるものと思いますし、また、そうしなければならぬと思っております。
  92. 帆足計

    帆足委員 もう時間がありませんからこれで最後にしてやめます。  ただいまの御意見を伺いまして、私は率直に申し上げますと外務大臣はやや楽観なさり過ぎておりゃしないかと思います。もちろん、第一は安全性、放射能の問題、第二が戦略上の問題。第一の点について現在も慎重な態度をなされ、また研究を続けられるということに対しては敬意を表します。一そう原子力学者が納得するところまで御検討願いたいと思います。第二の戦略的見地につきましては、一つにはわれわれは国際緊張を激化すると思っておりますが、見解の相違とはいえ、国際緊張が激化されるとするならば、貿易国として与党の方としてもそれは好まないことであろう、私はやはり耳を傾くべき問題であろうと思うのでございます。  第二には、これが政府反対しておる核兵器導入の導火線になることをわれわれは心配しておるのでございます。特にサブロックが火薬、核兵器両用のものであるとするならば、将来そういう道程をたどって核兵器導入に至るおそれがありはしないか。潜水艦ほどのものが、しかも原子力潜水艦ほどのものが、単に火薬だけのものであって、普通の正常な昔の時代の潜水艦のようなことではおさまるまいということを心配しております。幸いにこれが杞憂であるならば邦家のためにしあわせでございますけれども、われわれが野党として言う言葉の中にもわれわれの心配と誠実さのあることは認識していただきたいと思います。  最後に一言だけ伺いますが、池田首相が沖繩に参る、また参らぬという報道を伺いました。私どもはこの報道を見まして、施政権返還ということは差し迫った問題でありますし、国会で決議した問題でありますし、六月には沖繩の戦争で死んだ方々の盛大な慰霊祭が行なわれることになっております。こいねがわくは、外務大臣または池田首相がこの慰霊祭に出席せられ、そして沖繩の英霊と申しますか痛ましき魂を慰められて、そしてまた島民を激励されて、基地の問題はいま直ちに問わぬとするも、日本本土と同じように新憲法及び日本の法律、日本の沖繩県民としての恩恵が受けられるようにすることが私は当然の政府の義務だろうと思います。基地があるからといって島民が治外法権の状況にあるということは遺憾なことであのまして、最近また不祥事件がひんぴんと起こりまして、ジープで殺されたり暴行を受けたり、その他の事件を聞きますが、いずれも治外法権でありますから軍事裁判にかかり、そして彼らに軽く同胞に不利に裁判が行なわれておれますこと、これ軍事占領下のならわしでございます。したがいまして、池田さんが沖繩に行かれるという報道を聞いて沖繩の県民が大へん喜んだというような記事などを読みまして、外務省がそれに反対しておられるということを聞いて、外務省は昔の戦争前の御殿女中であったときからあまり脱却していないのかななんて思ったりしまして、残念に思っておる次第でございます。外務大臣の御意見を伺いまして、私の質問は終わります。
  93. 大平正芳

    大平国務大臣 総理の沖繩訪問を希望する向きがありまして、そのことが一部の新聞に報道されたのでございます。総理がそういう発意をされて出た記事でないと思っております。私どもといたしましては、この問題は慎重に考えなければならぬ問題だと心得ております。
  94. 野田武夫

    野田委員長 川上貫一君。
  95. 川上貫一

    ○川上委員 私の約束の時間は四十分までということになって、時間が非常にない。そこで、私も簡明に質問いたしますから、どうか外務大臣も正確に簡単に御答弁をお願いしたい。  アメリカ原子力潜水艦寄港問題でありますが、この寄港について事前協議の対象にならないことについては、あなた方は安保条約日本はこれを断わる権利がないという意味の答弁をたびたびなさっておられると思う。それならば、アメリカがこと新しく日本政府に承諾を求める必要はないという理屈にならなければならぬ。ところが、今回アメリカ日本政府寄港の承諾を求めてきておると思う。これはどういうことになるのでしょうか。外務大臣にお聞きしたい。
  96. 大平正芳

    大平国務大臣 これは条約上の問題でなくて事実上の問題でございまして、日本が被爆国として特別な国民感情を持っておりますので、一応御相談があったものと思うわけでございます。私どもはかたい条約上の協議であるというようには考えておりません。
  97. 川上貫一

    ○川上委員 どうもそういう答弁を政府はなさっておるのですが、アメリカの国務省筋は五月二日にワシントンでこういう言明をしております。原子力潜水艦寄港要請の拒否は日本政府の自由である、さらに続けて、もし日本政府がこれを拒否するようなことがあれば、極東の安全にとって重大な結果をもたらす、こういう言明をしておるはずです。明らかに承諾を求めておるのであります。外務大臣の答弁は違うと思う。これはどうですか。
  98. 大平正芳

    大平国務大臣 そのように私は受け取っておりません。
  99. 川上貫一

    ○川上委員 その答弁じゃ困る。承諾を求めておるのでしょう。いないのですか。これははっきりお聞きしたい。
  100. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいままで寄港がなかったということは、先方において政治的な配慮から自制されておったと思うのでごいます。いまこの寄港問題について日本側もいろいろの照会をいたしておる段階でございまして、こういった間は先方においても自制されるのではないかと思っております。
  101. 川上貫一

    ○川上委員 どうもこの問題については承諾を求めてきておるとわれわれは確信しておる。ところが、政府はそう言わない。ここに問題がある。この問題がはっきりしなければ事態は進展しない。  そこで、ここにあらためて、アメリカの申し出、この申し出が口頭ならばこれの記録、文書の分はその文書の全文、それをこの委員会に提出されたい。これを要求します。この点についてはおそらく社会党さんのほうも御同調くださると思います。あらためてこれを要求します。委員長の方で適当に計らってもらえますか。
  102. 大平正芳

    大平国務大臣 本年の一月九日にライシャワー大使から私に口頭でお話があったわけでございます。格別に文書というようなものはございません。
  103. 川上貫一

    ○川上委員 口頭ならばその記録がとれておるはずなんです。外交問題だから、聞きっぱなしということはありません。文書があるならばその文書の全文、それを本委員会に出してもらわなければ事態はちっとも進展しない。ないではわからぬ。これに隠れて政府はいいかげんな答弁をしている。これじゃ困る。あらためてこれを請求します。
  104. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう文書はございません。
  105. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣いろいろ言われますが、原子力潜水艦が核武装をしておるということは世界の常識です。また、参考人の意見陣述でももう明らかになっておるのです。これはごまかしちゃいけないのです。したがって、この申し出は、それが口頭であろうと文書であろうと、安保条約の第六条の規定に基づく申し出ではない。これは安保条約による交換公文に基づく事前協議なんです。これはもうはっきり私はそうだと言って差しつかえない。ところが、あなたのほうでは事前協議じゃないということをこの前答弁しておられる。そこで、承前協議でないという証拠を出してもらいたい。この証拠の中には、アメリカが事前協議ではありませんと言うておることを聞かなければならぬ。日本政府は事前協議じゃないと思うということで、お思いになるのはかってですけれども、事実上事前協議だとわれわれは言っておるのだから、ここを明らかにするために、全く事前協議にあらずという確証を述べてもらいたい。また、品物があれば、文書があればこれを出してもらう、こういうことです。
  106. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいままで、アメリカ側から申し出がありまして、それを検討いたしましたところで、私どもとしては交換公文にいうところの事前協議の対象にはならぬというように解釈をいたしておるわけです。
  107. 川上貫一

    ○川上委員 あなた方がそう思うということを聞いておるのじゃない。確証を求めておる。事前協議にあらずという確証。われわれのほうでは事前協議に違いないと言うておるのですから、そうではないという確証を出してもらわなければ、いつまでこれをやったって解決つかない。だましちゃいかんです。国民を欺いちゃいけません。確証があるのですか、ないのですか。
  108. 大平正芳

    大平国務大臣 核兵器の持ち込みじゃございませんので、私どもは、もう当然のことなんで、これを事前協議の対象にするなんということは荒唐無稽だと思います。
  109. 川上貫一

    ○川上委員 それならばちょっとお尋ねしますが、アメリカ原子力潜水艦がいままで自由に日本の港に来ておるんじゃないですか。今度はあらためて寄港の申し入れをしておる。これまで原子力潜水艦日本の港に来ておる。これは外務大臣どうお考えになりますか。
  110. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことがあるはずがございません。
  111. 川上貫一

    ○川上委員 あります。例はたくさん持っておりますが、時間もありませんので、一つだけ外務大臣に聞いておきます。一九六一年四月にアメリカ原子力潜水艦のサーゴ号、これはハワイで事故を起こしたあの型です。これが横須賀に来ておる。来ておらぬと言うても、来ておる。これは、その年の四月十七日に、サーゴ号の乗り組み員のシャックという水兵が朝日放送の小島氏と会っておる。アマチュア無線局のカードを交換しております。また、彼は、小島氏と二人で、西銀座デパートの地階の五十七秒の写真ボックス、あそこで写真をとっておる。そのときに彼はこう言うておる。自分はサーゴ号の乗組員だ、かつて北極にも行った、——この北極に行った事実はここに写真にまで出ておる。今度も二カ月も連続潜航して横須賀に来た、いま横須賀におる、——この事実は一九六一年六月号の雑誌「ラジオ技術」に二人の写真まで入って詳細に出ておる。これはその写真です。この現場はここに「ラジオ技術」というものがある。うそだとかなんとかいう問題じゃないですよ。ちゃんと来ておる。写真までとっておる。写真がなかったらうそだと言うかもしれぬが、写真をとっておる。二人写っておる。これはどういうことなんです。来ておるじゃないですか。こちらにおるのがアメリカ潜水艦の水兵、こちらにおるのが小島氏です。これは明瞭です。政府委員は笑っておるけれども、笑わざるを得ないでしょう。この事実が出た。外務大臣、どう思いますか。来ておらぬと言うが、来ておるのです。
  112. 大平正芳

    大平国務大臣 川上先生にはときどきいろいろ情報を御提供いただくわけでございますが、私どもそういうことは関知いたしておりません。
  113. 川上貫一

    ○川上委員 私はこれ以上あまり言いませんが、私の情報は簡単な情報じゃない。国民に責任を負う国会議員です。これが委員会において政府質問しようとする。いいくらかげんの質問をしませんよ。あらゆる努力を払って、あらゆる研究を積んで、責任を持ってわれわれは質問しておる。川上さんはときどきいろんな情報を出すが、——そんなものじゃありませんよ。あなたの方こそ何も知らぬのだ。こういう態度ではだめだと私は思うのです。外務大臣国民をほんまに愚弄するつもりですか。きょうも潜水艦の問題については戸叶議員、帆足議員おのおの全部の委員会の時間を使うて質問しておる。これはいくらかげんな気持でやっておるのじゃありません。政府はうそばかり言う。いいかげんなことを言うておる。こういう政府態度だからうそが横行するのです。悪がはびこるのです。今日の日本の状態をごらんなさい。人づくりなんて言うておるが、この考えでどんな人をつくるのですか。政道正しければ人は育ちます。政道が間違っておれば人は育ちませんよ。うそ八百を並べて、委員会にいいくらかげんの答弁だけしておいて、これで一体日本国民の将来にどういう影響を及ぼすと思いますか。その上にのうのうと人づくりを言う。どういう人をつくるつもりですか。私は、外務大臣、真剣にお考えになる必要があると思う。国の将来と国民の希望をしんしゃくして、外務大臣としての責任を全うするために、この原子力潜水艦寄港を断然断わるべきだ。外務大臣としてこれだけのことをする、それは外務大臣の責任です。寄港を拒否しますか、拒否しないですか。これをはっきり言ってください。
  114. 大平正芳

    大平国務大臣 おことばでございますが、私は、国会に出てここで御答弁申し上げることにうそがあってはいけません。全責任を持って御答弁申し上げておるわけでございまして、それがいいかげんであるとかうそであるとかいうようなことは毛頭思っていただきたくないわけでございます。  潜水艦寄港問題につきましては、先ほどからるる御説明申し上げておるように、国内のいろいろな懸念に対しまして鋭意照会いたしておるわけでございまして、これが求められますならば国会にも御報告申し上げまして、御意見等をいただくつもりでございます。最大限努力をいたしまして、国民理解を得て、円満な解決をはかりたいというように考えております。
  115. 川上貫一

    ○川上委員 これで質問を打ち切ります。続けてこの問題についてはさらに質問しなければならぬところが残っておる。それをお含みの上で、きょうは時間が来ましたからこれで私の質問を終わります。
  116. 野田武夫

    野田委員長 次に、日本国ビルマ連邦との間の経済及び技術協力に関する協定及び千九百五十四年十一月五日にラングーンで署名された日本国ビルマ連邦との間の平和条約第五条1(a)(III)の規定に基づくビルマ連邦の、要求に関する議定書締結について承認を求めるの件、日本国政府ニュー・ジーランド政府との間の小包郵便約定締結について承認を求めるの件及び日本国南アフリカ共和国との間の小包郵便約定締結について承認を求めるの件、以上三件を一括議題とし、提案理由の説明を聴取することにいたします。大平外務大臣。     —————————————
  117. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま議題となりました日本国ビルマ連邦との間の経済及び技術協力に関する協定及び千九百五十四年十一月五日にラングーンで署名された日本国ビルマ連邦との間の平和条約第五条1(a)(III)の規定に基づくビルマ連邦要求に関する議定書締結について国会承認を求めるの件につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。  わが国は、昭和二十九年十一月五日に署名され昭和三十年四月十六日に発効いたしましたビルマ連邦との間の平和条約及び賠償及び経済協力に関する協定により、賠償として二億ドルを十年間にわたってビルマに供与することを約し、その支払いを実施してきましたが、ビルマ側は、昭和三十四年四月、前記の平和条約第五条1(a)(III)の規定に基づき、賠償の再検討を求めてまいりました。  自来、賠償の再検討に関する問題は、両国間における重要なる懸案となっておりましたが、昭和三十八年一月東京において、本大臣とアウン・ジィ前ビルマ連邦貿易工業大臣との間で交渉が行なわれました結果、同月二十五日原則的な合意に到達し、この合意に基づき、引き続き両政府間で行なわれた正式協定作成交渉の結果意見の一致を見るに至り、三月二十九日ラングーンにおいて、日本側は飯塚外務政務次官及び小田部駐ビルマ大使、ビルマ側はティ・ハン外務大臣によって、経済及び技術協力に関する協定及び日本国ビルマ連邦との間の平和条約第五条1(a)(III)の規定に基づくビルマ連邦要求に関する議定書が署名されるに至ったものであります。  この協定は、わが国がビルマ連邦に対し、現行の賠償及び経済協力に関する協定の終了する昭和四十年四月から十二年間に、一億四千万ドルにひとしい日本国の生産物及び日本人の役務からなる無償の経済援助を供与することを骨子としており、また、議定書によって、ビルマ連邦は、この協定の発効後は前記の平和条約第五条1(a)(III)の規定に基づく賠償再検討の要求を提起しないこととなるものであります。  この協定及び議定書締結により、両国間の長年にわたる懸案が最終的に解決され、両国間の友好関係は一段と強化されるものと期待される次第であります。  よって、ここにこの協定及び議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、日本国政府ニュー・ジーランド政府との間の小包郵便約定締結について承認を求めるの件及び日本国南アフリカ共和国との間の小包郵便約定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を一括御説明いたします。  ニュー・ジーランド及び南ア共和国は、いずれも、万国郵便連合の小包郵便物に関する約定に参加していないため、わが国とこれら両国との間では直接小包郵便物を交換することができません。よって、政府は、かねてよりこれら両国政府と小包の直接交換のための約定締結交渉を進めてまいりましたところ、約定・案文についてそれぞれ合意が成立しましたので、ニュー・ジーランドとの間の約定については一九六三年三月十五日に、また、南アフリカ共和国との間の約定については同年四月六日に、東京で署名を了した次第でございます。  これら二約定は、いずれも、わが国と相手国との間で交換する小包の種類、小包の料金、差し出し郵政庁が名あて郵政庁に割り当てる割り当て料金等、両国の郵政庁が小包の交換を行なうために必要な業務上の基本的事項を規定したものでございます。  わが国とニュー・ジーランド及び南ア共和国との間の小包交換業務は、現在それぞれ第三国の仲介によって行なわれておりますが、両約定の締結によりまして、小包は直接に交換されることとなり、公衆の受ける利便が増大することは言うまでもございません。  よって、ここに二約定の締結について承認を求める次第であります。  以上三件につき、何とぞ御審議の上すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  118. 野田武夫

    野田委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十二分散会