運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1963-03-29 第43回国会 衆議院 外務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年三月二十九日(金曜日)    午前十時十六分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 安藤  覺君 理事 正示啓次郎君    理事 福田 篤泰君 理事 古川 丈吉君    理事 戸叶 里子君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       池田正之輔君    宇都宮徳馬君       岡田 修一君    川村善八郎君       田澤 吉郎君    帆足  計君       川上 貫一君  出席政府委貴         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君  委員外出席者         参  考  人         (航海訓練所教         授)      北川 次郎君         参  考  人         (中央大学教         授)      田村 幸策君         参  考  人         (立教大学助教         授)      服部  學君         参  考  人         (軍事評論家) 林  克也君         専  円  員 豊田  薫君     ————————————— 三月二十九日  委員愛知揆一君辞任につき、その補欠として岡  田修一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員岡田修一辞任につき、その補欠として愛  知揆一君議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十八日  日韓交渉即時中止に関する請願外一件(長谷  川保紹介)(第二七一六号)  日韓会談即時打切りに関する請願外四件(安宅  常彦君紹介)(第二七一七号)  同(片島港君紹介)(第二七一八号)  同(久保三郎紹介)(第二七一九号)  同(實川清之紹介)(第二九一八号)  同(阪上安太郎紹介)(第二九一九号)  同外二十五件(長谷川保紹介)(第二九二〇  号)  同外三件(赤松勇紹介)(第三〇三四号)  同外四件(石橋政嗣君紹介)(第三〇三五号)  同(實川清之紹介)(第三〇三六号)  同(太田一夫紹介)(第三〇三七号)  同(下平正一紹介)(第三〇三八号)  同外四件(田中武夫紹介)(第三〇三九号)  同(山口丈太郎紹介)(第三〇四〇号)  同(帆足計紹介)(第三〇四一号)  日韓会談即時打切りに関する請願田中武夫君  紹介)(第二九一六号)  同(帆足計紹介)(第三〇四二号)  日韓会談即時打切りに関する請願寛用浩之助  君紹介)(第二九一七号)  同(赤松勇紹介)(第三〇三三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件(原子力潜水艦寄港問題)      ————◇—————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  本日は特に原子力潜水艦の寄港問題につきまして参考人より意見を聴取することにいたします。参考人の方々は、航海訓練所教授北川次郎君、中央大学教授田村幸策君、立教大学助教授服部聖君及び単一評論家林克也君、以上の四名であります。  この際参考人の排様にごあいさつを申し上げます。本日は御多用中のところ御出席をいただきまして、ありがとうございました。本件につきまして忌仰のない御意見を承ることができれば幸いと存じます。  議事の順序は、時間の都合により、まず田村、林及び北川の各参考人より御意見を述べていただき、その後質疑を行ない、最後に、服部参考人よりの御意見を聞いた後、同参考人に対する質疑に入りたいと思います。なお、御意見の開陳は二十分以内にお願いいたします。  それでは、田村参考人よりお願いいたします。田村参考人
  3. 田村幸策

    田村参考人 御審議中の案件に対しまする国際法上のどういうところにこの問題が場所を持っておるかということにつきまして、私の理解するところを申し上げまして、何か御審議の御参考の一輪にでもなればまことに光栄に存ずる次第であります。  この問題を国際法上の一般のフォーミュラにいたしますと、こういうことになると思います。甲の国の軍艦が乙の国の国内におきましてその乙の国の人または物に損害を与えた場合に、軍艦所属国がどんな責任をとるか、こういうきわめて簡単なものになるのであります。もう少し詳しく具体的に申し上げまれば、原子炉を備えつけたアメリカ軍艦日本領土内において原子炉における事故から日本における人または物に損害を与えた場合に、アメリカ政府がどんな責任を負うか、こういう問題に帰着するように私は理解しておるのであります。在来軍艦でございますならば、たとえば、それがタンカーと衝突いたしまして大火災を起こし、付近に大きな損害を与えましたといたしましても、これは軍艦という治外法権を持った国家機関でありまするから、その待遇を受けるのでありまして、慣習国際法によりますれば、この軍艦を訴追することとか、これを差し押えるということはもとより許されませんので、ただこれはその外交機関によって国と国との間の交渉でその麦作を明らかにする以外に道はないのでございます。ところが、原子炉を備えつけました軍艦でありましても、軍艦たる性格には何ら変化はないのでありますから、軍艦行為に基づきまする対外責任に関しましては、在来軍艦の場合と全く同じ原則が行なわれねばならないのであります。ただ、原子炉を備えた軍艦の場合は、在来軍艦のごとく、これは私の理解でありますが、事故軍艦行為で起こるのではございませんで、軍艦そのもののコンストラクション、構造から起こってくるのであります。事故可能性の源泉が軍艦構造そのものの中に内在をしておるというが、在来軍艦から起こる事故と迷う点であるのではないかと思います。それからまた、もしも大きな事故が起こるならば無数の人命がこれに巻き込まれる、こういう点が一つの特色であるのであります。さればこそ、昨年原子力船運航者責任に関する条約というものが御案内のようにできましたが、その条約には絶対責任というものを規定しておるのであります。すなわち無過失責任過失の有無を問わず絶対にその責任を負う、損害が起これば必ずそれを賠償せねばならぬ、こういう原則を採用しておったのでありますが、それも今申し上げましたようなところから発生しておると信ずるのであります。  そこで、ちょっと、この問題を正確に評価するためには、やはり昨年の原子力船運航者責任に関する条約内容に言及せざるを得ないのでありますが、これは、御承知のように、四年がかりで、専門家がたくさん寄りまして国際原子力機関会議を何回かやってできたものでありますが、これによりますと、原子力事故というものはどんな性格のものか、いわゆる責任を問われまる原子力事故というものが非常に明らかになっておるのであります。それからまた、原子力損害とはどういう範囲のものに属するかというと、今申し上げましたように責任範囲無過失責任という絶対責任を負わされており、あるいは、その損害賠償額というのも天井がつくってありまして、一件ごとに十五億フラン、ドルにいたしますと一億ドルでありますが、そういうはっきりしたものがもうでき上がっておるのであります。従って、これは年月をかけて練りに練っておるのでありまして、国際的の今日の基準として、これにチャレンジすることは非常に困難でありますが、この条約は延前は軍艦も含まれておるということになっております。  でありますから、もしこの条約効力を発しまして日本アメリカもこれに拘束されるということになれば、それによらざるを得ない、それ一本になってくるわけであります。ところが、これに軍艦を含めるか含めぬかということは大へん長い時間をとったのでありますが、これにつきましては、アメリカソ連軍艦を含めることに反対をいたしまして、会議経過のうちでは除外例を設けようとしたのですが、ついにそれも破れまして、結局、アメリカソ連は、軍艦を含めるのならば自分らは調印をしないというので調印を拒絶したのであります。せっかく原子力船を持っておる両国調印を拒絶しておるわけでありますが、ことに、この条約効力を発生する条件には、アメリカソ連かどっちか一国が批准をいたしませんとこの条約効力を発しないのであります。従って、調印もしておりませんぐらいでありますから、むろんこれは望まれないことでございます。そういう運命で、まことにこの条約は心細いものになったわけでございます。従って、もし今のようなこの条約に書いてある原則が確立しておれば、それにのっとればよいのですが、結局、われわれは、アメリカ政府との間に、従来の慣習国際法によって軍艦としての取り扱いをして責任を明らかにする、こういう以外に、条約がないのでありますから、方法がないわけであります。  この点は、大へん時間をとってどうかと思いますが、申し上げさせていただきますと、これができますときの経過では、非常に長い時間、軍艦を入れる説と軍艦を入れない説と対立したわけでありますが、そのときに、アメリカは、比較的簡単な理由で、軍艦なんかを入れるのは非現実的だ、軍艦というのは大へんな相違のあるもので、それを同じ条約の中に書き込むことは非常にアンリアリスティックだという理由で反対したのですが、ソ連は非常にこまかい五つ理由をあげましてこれに反対しているのでございます。これは何かの御参考になると思うのでありますが、一つ理由は、軍艦を含めるということは軍事上の目的原子力を利用するということをみんなが是認することになる、そういうことは困る、それは国際原子力責任目的に違反する、これが一つであります。第二は、この条約民事責任を問うものである、損害賠償で、刑事責任は別になっており、もっぱら民事責任ばかりの条約であるから、それに国家責任を問うとかいうことは、これは国際法の問題であって、ここに含めることは困る、こういうのが第二の理由。第三の理由は、この条約によりますと、損害賠償を訴える場合には、船を持っている国の裁判所損害賠償を訴えられますし、また、原子力被害を受けた場所裁判所にも訴えられるというように、裁判管轄権複数制になっておりますので、ソ連に言わせますと、外国裁判所に訴えられることがある、外国裁判所の判決を受けたのを国内で執行せねばならぬ、こういうことは許されない、これが第三の理由でございます。第四の理由は、たとえば、空中衝突責任に関する条約などを見ても、軍の飛行機というものは除外されている、それから、海上人命安全条約の中にも、やはり軍の船は除外されているのですから、こういうときに軍艦を一緒に入れるということは同意ができない、これが第四。第五の理由は、これは大へん大事な点で、また非常に注意すべき点でありますが、次分らは、軍艦を除外したいというのは、軍艦から発した損害に対して責任を免れんとするようなつもりは決してないのであって、むしろ、軍艦を除外することによって、軍艦にとってこの責任というものは無制限なものになる、今の場合は一億ドル、十五億フランに制限されてありますが、これが無制限なままに残っておるので、かえって被害者の保証になるのだ、これが第五。こういう五つ理由をあげまして、この軍艦を除外することを主張しておるのであります。これに対しまして、軍艦を入れなくてはならぬ、これはイギリス、ドイツ、イタリアなどの大国がこれを主張しておるのでありますが、軍艦をぜひ入れなければならぬということであります。軍艦を入れないと、今もう原子力船というものがほとんど軍艦でありまして、原子力船軍艦でないものは、アメリカサバンナ号ソ連砕氷船レーニン号、ただ二台しかない、この二台のためにこんな大きな条約をつくるということはナンセンスだ、こういうのが一つ理由であります。それから、もし軍艦を除外しますと、軍艦から発生した事故の場合によ、いわゆる無過失責任ということの適用ができませんから、そうすると、どうしても過失を証明しなければならぬ。損害があった場合に、これは故意に基づくか、過失に基づいてこの損害ができたということを被害者が証明する義務があるわけでありますが、そういうようなことは被害行にとって非常に不利益である。それから、第三の理由は、被害者から言えば、それが軍艦から出たのであろうが、商船から出たのであろうが、損害は全く同じことである、それが第三でございます。その次は、今のように軍艦治外法権を持っておるというこの制度を今くずすということはとてもできません時代でございますから、そうすれば、そういう場合は条約の中へ明らかに書き込めばいい、この条約はここここは行なわれないのだということを中へ書き込めばいいので、一括して軍艦を除外することは困る、こういうような主張でございます。それから、ソ連の言う、軍事目的に利用することを是認することとなるという主張に対しましては、イギリスとかイタリア主張は、いや、それはもう現実原子力軍艦というものがあるのだから、これは現実にぶつかってこれに直面して対処する以外に方法はないのだというような、こういう議論が対立いたしまして、結局、結論は、今申し上げましたように、軍艦はこの中へ入れることに条約にはなっております。しかしながら、アメリカソ連もこれの調印を拒否し、いわんや、条約両国のいずれかが入らなければものにならないというようなことになっておりますので、結局、われわれは、今日の場合は政府の間の交渉に待つほかはない、こういうことであるというように理解しておるのであります。  それでは、そんなめんどうなことでなく、来てもらわなければ一番いいじゃないかというのが端的なことになるわけであります。一番原始的でありますが、これは鎖国をやれば一番いい。これが一番いい方法でありますが、慣習国際法によりますると、どんな国でも、特別な条約上の義務を負わない限りは、外国の軍船、それは今の原子力潜水艦であろうが在来軍艦であろうが全く差はないのでありますが、これを必ず自国の領土内に入れなければならぬ義務はありません。ところが、日本は今アメリカとの条約によってこれを入れる義務を負うておるわけであります。なぜ日本だけがそんな特別の義務を負うておるか、こういうことになるわけでありまするが、これは、御承知のように、安保条約によって、アメリカ日本を防衛するけれども、日本アメリカを防衛する義務を負っていないという、一方的な片務的なものになっておるのであります。この一方的であり片務的であるものを、双務的であり相互的なものに、相互性を与えるために、日本日本を含む極東の平和と資金の保持に寄与するアメリカのために基地を提供する、こういうことになっておるのであります。  原子力船現状は、いずれいろいろなお話がございましょうが、不幸にして現在のところは軍艦のほうがすでに多いのでありまして、ほとんどソ連も公表はしていないのでありましょうが、イギリス戦略研究所の毎年発表する年報がごぜいまして、大変権威のあるものとされておりますけれども、それによりますと、昨年の十月に原子力潜水艦というものが十隻ありまして、本年末までの建築程度は十五隻ないし二十隻でありますから、二十隻といいますと、本年松には三十隻ができるということになる、こういうことが書いてございます。それから、それによりますと、またソ連海軍の主力というものは潜水艦にあるのだということが書いてあります。総計四百十隻、そのうち極東にあるもの百二十隻、北極海にあるもの百三十隻、パルテック海八十隻、黒海六十隻、こういうふうに、ご承知のようにイギリスは非常にネービー・マインデッドで、海岸に非常に注意を払って、こまかい研究がしてあるのでありますが、アメリカでも、御承知のように原子力潜水艦六十一隻建造なる、こういうような現状のようであるのであります。イギリスも本年じゅうにやはり潜水艦が一隻できるというふうに言われております。  ところが、去年の国際会議事務次長をされた方が専門雑誌意見を発表されて、あの条約内容を説明して、アメリカン・ジャーナル・オブ・インターナショナル・ローに論文が出ておりますが、それを見ますと、原子力事故というものが非常に少ないのでありまして、これはあとで専門の方がお触れになりましょうが、それによりますと、原子炉ができて以来驚くべく少ないので、第一回は一九五七年にイギリスのウィンズスケールで起こっているのが一番始まりで、その次の第二回は、その翌年の五十八年、ユーゴのビンカで起こった事件、第三回は、六〇年にアメリカのアイダ・ホフォールというところで起こった事件、この三つのことが古いてあります。これは、イギリス、それからソ連製のもの、それからアメリカ型のもの、いずれも原子炉をつくる三国の例があげてあります。どの部分も事故を起こしておりますが、非常にこれが少ないのでございまして、アメリカ原子力委員会の発表によりますと、過去十五年間に死んだ者はアメリカでは四人しかいないというのであります。それから、イギリスで発表されたものによりますと、過去十一年にソ連をも含めて合計全世界で十二人だと書いてあります。これは非常に少ないわけで、東京の道路の上では自動車で殺される者の数が一週間ではるかにこれより多いのであります。決してわれわれはこの原子炉事故による放射能というものを過小評価するようなおろかなことはしないのでありまして、平静に事実を監視していく。ヨーロッパの先進国はずいぶん早くからこの問題と取り組んでおりまして、今のような条約までつくっておるのでありますが、ソ連が初めて、原子爆弾をつくった年は四九年でありましたが、このときに、ヴィシンスキーという外務大臣がおりまして、これが国連演説した。その一節の中に、ソ連は山岳を切りくずし、運河を築造し、砂漠に灌漑を施し、ジャングルやツンドラを切り開くために原子力を使用しつつある、こういう大みえを張った演説をしたのでありますが、これは、原子力が一瞬にして人類石器時代に逆戻りさすような偉大な破壊力を持つと同時に、反面においては、原子力は、建築的な、面におきましては無限な可能性を持っておるということをドラマチカリーに描写したものでありまして、多少誇張がございまするが、こういう時代が来ないとはだれも否定はできないのであります。おそらく、ヴィシンスキーの心境は、ダイナマイトを発明したノーベルが死の床でノーベル平和賞というものを遺言にして瞑目したのでありますが、そんなつもりであったのではないかということを感ずるのであります。  国連の第一回総会で原子力委員会ができたのですが、このときには原子力を平和的な利用目的にのみ制限せんとしたのでありますが、このときに委員長演説の中で言われたことを申し上げまして報告を終わりにしたいと思いますが、この委員長はこういうことを言っておられます。われわれは、生者か死者か、どっちかを選ばなければならぬ、われわれの任務はそれである、新しい原子力時代の暗黒な兆候の背後には、われわれが信念さえ持ってこれを利用すれば、人類を救済し得るような希望がそこに横たわっておるのだ、もしわれわれがそれに失敗するならば、すべての人間を永久に恐怖の奴隷に突き落とすことになる、われわれは自分をあざむいてはならぬ、世界の平和か、世界破壊か、どちらかを選ばなければならぬ、こういうことを言っておるのであります。この問題はやはり政治的に取り扱うことが許されないのでありまして、毛沢東のように、三億死んでも三億残るのだというような強靱な神経を日本人に期待することはできませんけれども、科学的なものでありますから、科学的にこれを取り扱うというのが、われわれ法律を学ぶ者にも一番とるべき道ではないか、こういうふうに考える次第でございます。(拍手)
  4. 野田武夫

    野田委員長 これにて田村参考人からの御意見は終わりました。  次に、林参考人にお願いします。
  5. 林克也

    林参考人 本日、原子力潜水艦につきまして、三つの点から御報告したいと思います。それは、まず原子力潜水艦種類という問題、それから、第二には、主兵器としてのサブロック装備艦についての問題、最後に、三つ目の問題といたしまして、現在の段階における潜水艦戦術的な任務が何であるかということを御報告するわけです。その中心になりますのは、やはり、今日原子力潜水艦核装備艦であるという問題に触れたいと思っております。  まず、原子力潜水艦極数でありますが、基本的に言いますと、御存じのように、ポラリス型のミサイルを積みましたミサイル原子力潜水艦と、攻撃型の原子力潜水艦、アタックド・サブマリンこの二つに大別されているわけです。従いまして、核武装の問題になりますと、第一番にポラリス型は問題になるけれども、攻撃型原子力潜水艦核装備と関係ないように言われておるわけでありますが、これは大きな誤りでありまして、後ほど申し上げるサブロックの問題と現在の戦術任務から考えますと、核装備艦になるのは今日の常識の問題であります。たとえば、一例を申し上げますならば、すでに、原子力潜水艦兵器として核装備するということは、二年前にアメリカ海軍から公表されまして、これは後ほど潜水艦戦術任務の問題につれて触れたいと思います。  まず第一番に、種類のことを詳細に申し上げますと、原子力潜水艦が出て参りますまでは、大体十種類の区別があった。もちろん、一番中心になりますのは、水上艦船攻撃する従来の潜水艦、第二次大戦まで行なわれました魚雷によって敵艦船攻撃する攻撃用潜水艦である。さらに、その後、我後になりますと、ミサイル・レギュラスI型を搭載する潜水艦、こういうガイデッド・ミサイルサブマリン誘導弾潜水艦が出てくる。そのほか、相手の潜水艦を探知してこれを攻撃する対潜水艦潜水艦サブマリン・キラー・サブマリンというのが出て参りました。俗称、潜水艦殺し潜水艦と言っておりますが、そのほか、レーダーピケット潜水艦、これはレーダーで探知を主目的にいたします潜水艦であります。そのほか、物次貝輸送、兵員の輸送、それから油の輸送などに使う輸送潜水艦等々あったわけでありますが、原子力潜水艦が出まして重要な問題は二つあります。それは、まず第一番に、今申し上げましたポラリス型のミサイルを搭載する戦略的任務に服する原子力潜水艦、もう一つは、戦術的任務に服します攻撃型の原子力潜水艦であります。  この攻撃型の原子力潜水艦と、それからポラリス型原子力潜水艦を通じて言えますことは、幾つかあるわけでありますが、共通の問題は、戦術的価値というものであります。これを先に申しますと、まず、物理的堅固さという意味においては、普通の対潜攻撃から免れることができる。それは、早く言いますと、非常にスピードが早く、深く潜航することができるということから、物理的堅固さが出て参ります。それから、移動の早さ、今日では実験用原子力潜水艦は別といたしまして、第一線の任務に服します原子力潜水艦は、水中で三十ノット以上の高速を発揮しますので、自由に場所をかえることができる。それは、第二の点として、所在場所秘匿性ということになって参ります。それからまた、非常に迫力が早いために、各種の潜水艦を各所に配置いたしまして、つまり、戦術任務あるいは戦略任務を持った潜水艦の分散ということが十分なし得る。それから、さらに、潜水艦は空母とか戦艦とは違いまして、今後の海上あるいは水中兵力中心として大量に建造することができる。それから、攻撃手段隠密性、これが非常に重要でありまして、三つ集中原則、これは兵学上よく使われる言葉でありますが、攻撃の撃を繰り返さないでも、一回の攻撃で十分な破壊力を発揮するということであります。それから、特定地域に対して破壊力を集中することができる。これは、攻撃力の集中という言葉にも置きかえられます。さらに、原子力潜水艦を部隊の中心として新しい海軍を建設する意味において、軍事的組織の集中性ということが可能になって参ります。  このように、原子力潜水艦は幾つか和知がありますが、今日では、基本的に、ポラリス型と、それから通常ノーテラス型と称しておりますが、一般の攻撃型原子力潜水艦、この二つに大別して考えなければいけないわけであります。  そこで、潜水艦のうち、ポラリス型は除きまして、攻撃型原子力潜水艦の主兵装サブロックについて申し上げます。これにつきましては、今までも何回か出ておると思いますが、一部にはこれはまだ開発中であるから実艦装備にはなっていないと言われていますけれども、ことしの二月二十八日にアメリカ海軍省が公表いたしましたことは、すべての原子力潜水艦サブロックの搭載を開始するということであります。従いまして、ここで一つの問題を出しますと、これから日本あるいは日本ばかりでなくて世界各国に配備されます原子力潜水艦は、サブロック装備の順序において配置されるものと考えるのが常識だと思います。問題はサブロックのことでありますが、このサブロック任務というもの、性能と用法というものをはっきり把握いたしますと、今日の攻撃型原子力潜水艦戦術任務というのがおのずから出て参ります。  まず、サブロックというのは、御存じの通り、サブマリン・ロケットを潜水艦から通常魚雷のように水雷発射管から撃ち出します。そうしますと、魚雷は一たん水面に出まして、今度はロケットが作動いたしまして空中に飛翔しまして、八海里であるとか十海里であるとか遠距離を飛んで参ります。そうして、そこでもって若水いたしますと、次には普通の魚雷のようにスクリューを回しまして、そうして、頭部に、相手の船の、これは潜水艦でも水上艦船でもよろしゅうございますが、相手の船のスクリュー音に感じて操舵する、かじをとりますところのホーミング・システムをつけている。それによって相手の艦船に命中するわけであります  このサブロックの用法は、今申しましたように、水中の敵潜水艦もしくは水上艦船攻撃用として使えるほかに、二つの重要な用法がございます。今申し上げたのは潜水艦に対する水中攻撃、それから相手の水上艦船に対する攻撃ですが、このほかに、もう一つは、対空火器として使えることであります。これは、水中から発射いたしまして、ロケットが作動して空中に飛び上がりますと、あらためて海面に届くのではなくして、敵の航空機を目標にして自動追尾し、これを撃墜するという新しい対空火器としての用法が開発されている。  それから、もう一つは、沿岸攻撃用として非常にすぐれた性能を持っているということであります。この点は、今後サブロックの重要な性能としてアメリカ海軍では特に重要視いたしておりまして、この四つの性能を持ち得たということの意味から、純決定兵器という言葉をアメリカ海軍では使っております。  その内容をもう少し申し上げますと、なぜこのようなサブロックという種類兵器が主兵器になったかということですが、原子力潜水艦は、いずれにいたしましても、水上速力あるいは水中速力がきわめて高速なために、通常の攻撃では撃沈することができません。まず対潜兵器として考えますと、たとえばポラリス級のミサイルを積んだ敵の原子力潜水艦が行動しているという考えを持った場合、これが水中を三十ノット以上四十ノットの局速で走りますと、従来のような爆雷あるいは対潜魚雷、こういうものを使っていたのでは間に合わないわけであります。これは水中速力を秒速に換算いたしますと簡単に出て参ります。一つの例をあげますと、たとえば何海里か前方に敵の潜水艦がいた、それを高性能のソーナー水中測内探深儀で探知したといたします。これを普通の魚雷でいたしますと、まず射程外へ行って命中しない。第二点は、たとい命中点に達しましても、魚雷に積みました普通の火薬の破壊力から言いますと、敵の潜水艦を撃沈するに十分な威力を発揮しないわけであります。そこで、これを核弾頭に装備いたします。アメリカの方では、この対潜魚需用の核弾頭の威力が大体二十キロトンと言っておりますが、これを使いますと、爆発点から一キロ以内の艦船は全部致命的な損害を受ける。これはっぷされてしまうわけでありますが、圧壊作用を受けます。この威力を計算いたしますと、水中における核爆発の威力は距離の立方根に比例いたしますから、それで算出いたしますと、一隻の潜水艦が行動している場合、この攻撃される側の潜水艦から見ますと、敵が撃つかもしれないから絶えず高速で連動するとして、攻撃する側の潜水艦は、敵を少なくとも爆発点から二キロ以内で捕捉いたしますと、このミサイルを積んでいるかもしれない敵潜水艦を撃破することができる。これは、今日核ミサイルが重要な意味を持ってくる中において、対潜核兵器というものが重要性を持ってくるゆえんであります。  さらに、今度問題を水上艦船に移しますと、従来、潜水艦の用途というものは、大体一般の商戦の攻撃海上破壊ということが第二次大戦までの主任務でありましたが、今日その核弾頭、サブロックを装備することによって、従来の火器にまきる水上攻撃効果をあげることができます。一例を申し上げますと、戦艦大和の十八インチ砲弾の一発の炸薬量は約三十四キログラム、一門について百発搭載していますから、一隻分九門の火薬の総量は三十トン前後になります。それで、原子力潜水艦の場合、たとえば戦時搭載を想定いたしますと、これは常識の問題でありますが、魚雷を装備する。その魚雷の弾頭というものは、通常弾頭と核弾頭等と任意に取りかえることができるわけであります。このサブロックを戦時二十発搭載いたしますと、その威力は戦艦大和二万二千五百隻に相当する破壊力になる。たった二十発でそのくらいになりますと、敵の船団あるいは艦隊が行動中、サブロックを搭載することによって、敵の艦隊に致命的な打撃を与えることができる。これが第二の要点であります。  第三の要点は、これをもし沿岸攻撃に使用いたしますと、従来の航空母艦あるいは艦船といったものの敵の沿岸に対する攻撃に比して十分な威力を発揮することができます。それは今申し上げたように核弾頭を装備した場合であって、その目的は、橋頭堡の確立のために敵の主力をたたくということ、あるいは敵の要塞を撃滅するというような任務に使われるわけでありまして、これは従来の航空母艦の艦載機あるいは戦艦、巡洋艦等の艦砲射撃を上回る性能を出し得るわけであります。  このうち特に注意しなければなりませんのは、サブロックは一九六一年までに開発が終わりまして、これは、兵器の順序といたしましては、計画から開発、それから実用実験段階、そして実用火器というコースを大体とるわけでありますが、サブロックの場合には、対水上攻撃あるいは対潜攻撃、それから対沿岸攻撃、この三つはほとんど完了いたしました。今開発段階にありますのは、対空火器としての用法、この四つ目だけが、まだ弾頭の不安定性、それから命中精度の問題というようなことから開発段階でありまして、他の三つの段階は現在のサブロックで十分任務に耐え得るというので、実用化装備が出たわけであります。  そこで、このサブロックがはたして核弾頭をつけているか、それから、サブロックを搭載する原子力潜水艦が絶えず核装備しているかどうかという問題でありますが、これは、今日アメリカがとっております抑制戦略、さらにそれを具体的に展開しております現在の統幕議長テーラー大将の柔軟戦術と称する方法、こういったものから考えていかなくちゃいけないわけでありますが、時間がございませんので簡単に申し上げますと、こういうことになります。  現在の潜水艦戦術的任務については、今申し上げたように、抑制戦略、あるいは具体的なテーラーの戦術問題から入っていかなくちゃいけないわけでありますが、それを単純に言いますと、こういうことになります。それは、抑制戦略の中で重要視されていますことは、まず第一義的な問題として、全面的な戦争を抑制するために絶えず全力報復をかけ得る体制を示す、これは昨年のケネディの大戦略でちゃんと説明されておりますが、この大戦略は三つ戦術目的を明らかにしております。第一番は全面的核攻撃。あるいは相手が奇襲をかけてくるかもしれない。かけてきた場合に、これに対して大報復を加える。要するに、これは全面戦争の場合を想定している。第二は極地戦争の場合でありまして、これは二つからなっております。それは、核兵器を使う局地戦争と核兵器を使わない局地戦争を想定している。三つ目の問題は、今日南ベトナム等で使用されておりますアメリカ軍から公表されておりますゲリラ戦術の用法であります。こういう三つ戦術任務の中から原子力潜水艦任務を想定いたしますと、こういうことが言えるわけです。それは、抑制戦略において、絶えず全面核攻撃というものを想定しなければならない今日、攻撃型原子力潜水艦においても絶えずその事態に即応する装備を行なう。これはアメリカの国防総省が絶えずいかなる艦船・航空機その他もこういった全面戦争、局地戦争、ゲリラ戦争にたえ得る装備をしていると言っていることからも百行される問題であります。それから、この抑制戦略の中で重要なことは、奇襲攻撃をさらに三つの問題に分割して考えている。われわれは、奇襲攻撃といいますと、ついハワイ真珠湾の奇襲攻撃を想定しがちでありますが、さらに、今日では、核戦争の危機から奇襲攻撃をこまかく分数しております。第一番目が予防戦争としての奇襲攻撃、これは明らかに相手を無警告でだまし討ちにする方法でありまして、予防戦争のための先制奇襲攻撃と言っております。第三点を先に申し上げますと、これは錯誤に基づく先制奇襲攻撃。これをもっと簡単に申し上げますと、今攻撃をしかけた場合、この錯誤という解釈が非常にむずかしいのでありますが、これはアメリカの資料で申し上げます。この錯誤というのは、今ここでやっても、相手はふだんえらそうなことを言って強そうなことを言っているけれども、報復してくる能力はないのであるという判断をしたときが錯誤であると言っております。従いまして、今ここで手を出してしまえば、相手は壊滅的打撃を受けて、攻撃が不可能になる、こういう形での錯誤に基づく先制奇襲攻撃。今二つ申し上げたわけですが、まん中に当たります二番目の先制奇襲攻撃、これが一番重要であります。それはどういうことかと申しますと、相手が奇襲攻撃を行なうことに決定し、従って、航空機あるいはICBMの発射命令が発動されて、液体燃料注入あるいは発射点の調整という発射直前の段階に入ったというような事態を平前に短時間のうちに探知し得た場合、直ちにこれに対して攻撃をする。この場合には、相手が背嚢攻撃の決意を決定し、かつ火戦に移したのであるから、その場合これに対して先制奇襲攻撃をやることは進法ではないということで、この非常に重要な点は、各国とも、先制奇襲を考えますときに、二番目の意味での先制奇襲攻撃をやるということが重要であります。  こういう段階の中で三つの戦争段階を考え、そして奇襲攻撃三つに分け、そして今日原子力潜水艦が各国各海域に派遣される。この点が今日の潜水艦に加わります大きな任務であります。従いまして、原子力潜水艦が今日非ポラリス型であるから核装備をしているかしていないかという問題は、現在の軍事学から言いますと、重要ではございませんで、核装備をしているのが当然である。その核装備を発効する場合は、大戦略が発動された場合、あるいは局地戦争であっても核兵器を使用する局地戦争の場合、この二つに限定されて絶えずそれに備え得る方法の装備はしているわけであります。  それから、さらに、非核戦争の場合には、これは当然通常弾頭、これは火薬を使いました通常弾頭あるいは通常無害というものを使用するわけであります。  以上のように、現在、原子力潜水艦の問題は、基本的には非ポラリス型とポラリス型と二つに分けて考えなければなりませんが、非ポラリス型であるから核装備をしてないというのは間違いであって、当然これは核装備をして、いかなる状態にも応じ得る潜水艦であるということを考えなければいけないということであります。   これで終わります。
  6. 野田武夫

    野田委員長 これにて林参考人からの御意見は終わりました。  次に、北川参考人にお願いいたします。北川参考人
  7. 北川次郎

    北川参考人 航海訓練所に職を奉じております北川でございます。  ただいま私は練習船の日本丸に乗船しておりまして、しばらくよそを歩いてきたばかりでありますが、原子力船の利用という立場から、この新しいエネルギーを船舶に利用することに関連いたしまして、その安全性を確保するため一端の責任を負うべき運航技術者としての立場から、原子力船の問題に関心を若干持ってきたものでございますが、今回問題になっておりますアメリカ原子力潜水艦の寄港に関しまして、その安全性をどう考えるかという私の意見を、私個人の立場で述べさせていただきたいと思います。  御承知のように、新しき原子力船時代に備えまして、一九六〇年のロンドンの国際海上人命安全条約において、今までの条約に新しく原子力船に関します第八章が設けられ、さらにこれに付属する勧告が出てきております。これによりまして、原子力船の運航に伴う安全の確保のために多くの国々が認めております一つのやり方というものは、原子力船外国の港に寄港しようとする場合は、その原子力船の安全説明書といいますか、セーフティ・アセスメントを相手国の政府に十分の余裕を持って提供いたしまして、その船が十分であるかどうかを詳細に検討してもらい、その結果、その国のよろしいという受け入れの承認を得てからその国に寄港させるいう手順であると考えられます。さらに、その原子力船がいよいよ港に近づき、入港し停泊するということにつきましては、受け入れ国側による一般船舶に対する安全上の監督と同時に原子力船に対する特別な監督に服するということになっておるわけでございます。  ここで私たちが解釈いたします原子力船の安全というようなものは、その原子力船海上または港において船員、旅客、公衆、水路、食物または水資源に関して放射線の不当な曝射や災害を与えないということであると認めていいのではないかと思います。ところが、軍艦はこの考え方を規定いたしました海上人命安全条約の適用を受けてないということになっておりますが、しかし、原子力船の場合、原子エネルギーの利用に伴う放射線の厄介な問題があることはいなめないのでありまして、そのため、原子力船では、一般船舶であると軍艦であるとを問わず、単に船自体の問題でなくて、第三者への影響ということを考えないわけにはいかないわけであります。  今日原子力潜水艦のことに関しまして問題になっております点は、私の把把握いたしますところでは、原子力潜水艦の安全性の問題と災害に対する補償問題であるというふうに考えますが、この点について、私、運航者の立場から意見を述べるわけでございますが、まず、原子力船の安全は、炉等の構造、機能、その安全性及び運転操作にあたりましての融通性と、さらに、原子力潜水艦そのものの運航上での事故防止、すなわち、運航に関する安全という点、及び、放射性物質取り扱い処理の上の安全性というようなものに考えていいんじゃないかというふうに考えます。  この件に関しまして、第一の原子炉及び船の安全性の問題でございますが、アメリカ原子力潜水艦軍艦でありますので、安全を評価すべき重要な資料を具体的に提供はできない、しかし、その安全性については十分保証すると言っておりますが、さらにその安全性を確保するように、いろいろな手段を通じまして十分な努力をしていただきたいと私は考えるわけでございます。これら質問に対する回答を解釈いたしました場合、専門家の立場の君方々に一応納得のいく線が出ますならば、私はその点に関しましては信じてよろしいのではないかというふうに考えておるわけでございます。  私がこういうふうに考えます理由は、ノーテラス号が一九五五年の一月十七日に就役をいたしまして以来、八年の時間が経過しておるわけであります。原子力潜水艦の隻数は、先ほどもお話がございましたように、大へん多くの数があるわけでございますが、この間に、原子炉自体に関連いたします事故が起こった例はこれまで聞いておらないわけでありまして、これは大きなよりどころではないかと私は考える次第であります。八年の歴史において、多くのいろいろな状況での運航や試験、こういうようなものが経験的に積み重ねられたと思うのでありますが、海難事故に報告をされております件数は若干ございますし、また、われわれが新聞や乏しいニュース・ソースから得られます事故以外に、こまかいいろいろな問題点がたくさんあったと想像されるのであります。しかし、これらに対しましては、そのつど、私たち船の技術のセンスで申し上げますれば、厳重にその原因及びそれが及ぼすべき影響とかいうような問題に関しまして審査を行ないまして、今後への先訓といたしますと同町に、こういうようなものがさらに今後の発達段階への改善及び改良というようなところへ積み、重ねられていくというふうに考えるのが当然な考え方と考えます。従いまして、原子力船のこの間の歴史におけるこの積み重ねは、素直に考えまして、安全性を向上する、いわゆる信頼度を高めるという方向に相当に寄与しておるのではないかというふうに考えます。  一部、ノーテラス型の潜水艦が非常に危険であるというような発言が責任ある筋から報道されたという記事などもあったように思いますが、これに関しましても、多くの大切な、よく訓練されました兵員をそこに乗せましていろんな行動をいたします場合に、運航上不安な状態で放置するということが、いかに軍艦であっても、はたして許されるかどうか。これはその表現のニュアンスのとり方がはっきりわかりませんが、私たち考えるのに、これは相当の安全性がある。ただ、いろいろな任務のために、その資金性に対する余裕はあるいは若干少ないかもしれないけれども、これをもってただちにその原子力潜水艦がきわめて不安定な不安なものであるという解釈は、私はとり得ないのであります。  原子力潜水艦が運航による海難をきわめて少なく押えていくということは、大へんな安全上の一つのファクターになると考えるわけでありますが、日本の港にも、これは原子力潜水艦ではないと思いますが、相当たくさんの潜水艦が出入りしておるというふうに想像いたします。ところが、こういう潜水艦が商船と衝突をしたとか海難を起工したというようなニュースは私たち聞いておりません。また、原子力潜水艦は百メートルも百五十メートルも深く潜航が可能であると聞いております。常識的に考えまして、これには耐圧の面で相当なセーフティ・ファクター、安全率を置いておるものだと考えてみますと、その海難に関しまして、たとえば衝突のようなものに関しましても、その抵抗力は相当強い、高いものだというふうに私考えております。港湾内での速力を低くして航行しておりますときの衝突その他の事故が直ちに原子炉事故に及ぶということは労えなくてよいと思いますけれども、それでも、原子力船原子炉を積んでいる以上、海難の絶無を期して、慎重な運航ということがぜひ必要だと考えることは当然であります。たとえば、沿岸への接近に関しましては、必要があるならば、航路の指定、あるいは、狭水道、港湾への航行に関しましては、浮上航行いたしまして、しかも昼間視界良好な状況において航行させるとか、あるいは、操縦性能を損じない程度のなるべくの低迷力を要求するとか、あるいは、航路筋の警戒ないし要すれば原子力潜水艦出入時の他の船の航行制限、こういうようなものを行なうことによりまして、私は海難も十分に防止し得るものと考えるわけでございます。  次に、放射性物質の取り扱い及び、破棄の点に関してでありますが、放射性物質による海水の汚染は、魚介、海藻数を多くとります日本では、ことに重大な一般国民の関心事であることはもろちんであります。原子力の利用に伴いまして必然的に起こります放射性物置の処理量の増大、これによります海洋投棄、海水汚染の度が高まるというような問題は、世界の人数にとって一連の悲しむべき事項であるということは間違いなく、国際機関でありますIAEAなどが中心になりまして、世界専門家を集めて熱心な御研究がされておるというふうに伺っておりますが、長い目で見た人数の安全というもののために、こういう放射性物資の取り扱いについて、納得のいくしっかりした基準が一口も早くできることを望むわけであります。  アメリカでは、海軍艦船の投棄基準が指示されておるようでありまして、これが問題になっております。これは省略をいたしますが、もちろん、アメリカ海軍といたしましても、この基準をきめるにつきましては、アメリカ原子力委員会や、国民の安全に責任を持ちます公衆衛生局の十分な検討を経て賛同を得たものであるというふうにされております。しかし、初期段階においては、その基準も相当に心配をせられ、あるいはきびしいものであったろうと想像するわけでありますが、長い間の多い実際の経験と検討の結果、だんだんとこういうふうなところに落ちついてきたものと思います。しかし、アメリカが万一軍事上の要求とかそういうような面から基準の上で無理をしているということが言われましても、先ほど申しましたように、きわめて人命を尊重いたします国であるといたしますれば、潜水艦そのものに乗っております人命、こういうような立場かも、その潜水艦の非常の状態での運営の場合を含めて、運航の場合で乗員を心配な状態に放置し、または公衆や水路、食物、水資源に対して放射線の過度の曝射を与えるようなことはよもややるまいというのが私の考え方でございます。聞くところによりますと、アメリカの基地でありますニューロンドンの港には原子力潜水艦が多く出入し在泊しているが、注意深い定期的なモニターの結果、問題になるような汚染は検出されておらないという報告でございます。ここを流れておりますテムス川の水は付近の工場の雑用水としてそのまま使用されており、その下流両岸は御承知のように海水浴場になっておりますが、沖を通ります原子力船を見ながら民衆は海水浴を楽しんでおるというようなこと、また、この水域でつりました魚を市民が食べておるということは、常識的なこれらの判断からしまして、その基準というものが必ずしも無理なものではないでないかというふうに考えるわけでございます。  アメリカ原子力潜水艦は多数の国にひんぱんに入港しておりますが、外国の寄港地で海水が問題になった、いわゆるディテクタブルな、検出し得る汚染を残したというようなこともないということを報告されておるようであります。しかし、日本側からこれを見まして、このアメリカ海軍の放射線の廃棄の規制はきわめてゆるいという批判がなされておるわけでありますが、もしアメリカ原子力潜水艦日本に寄港するような場合には、日本自体のきびしい規制や沿岸海域をほとんど漁場で埋めておりますところの実情などを十分に説明し、日本がこの廃棄物の処理にきわめてシビアな、慎重な処置をやっております実情をよく考慮いたしまして、放射性物費の投棄、排出、核燃料の交換等について、日本側の要望を潜水艦側で十分守ってもらう、尊重してもらうというようにしてもらわければならないと信じます。  そのほか、港内において核燃料物質の取りかえや、あるいは付近に災害を及ぼすような和知の港湾内における一次系機器の整備とかその他の作業などは当然制限せらるべきであり、在泊中の安全対策に十分に気をつけてもらう必要があると私は考えます。  さらに、在泊中の管理でありますが、在泊中は関係のない一般の人々や船舶の立ち入りを禁止するとか、あるいは警戒や、いざというときの救助艇の配備というような事故防止に努めますとともに、港湾停泊中潜水艦の周辺の海水及び大気に対する放射線汚染モニターの実施というようなことはぜひ必要な措置であると信じるわけであります。これとともに、万一事故が発生した場合における対策というようなものも十分周到に立てて、用意しておく必要があり、さらに、万々一災害が起こりましたような場合の補償につきまして、両国間の納得のいく話し合いをつけておくということが絶対に必要な前提条件になるというふうに考えるわけでございます。  以上述べましたような考え方で、また、責任ある方々が原子力の利用に伴う災害の重大さということを十分念頭に置かれまして、事故防止、事故対策ということを根本的に慎重にとっていただきたいということ望むわけでございますが、こういうようなことを考えました場合に、私は、まず原子力潜水艦はこれに関する限り安心してよいというふうな考え方を持っておるのでございます。  これで終わります。(拍手)
  8. 野田武夫

    野田委員長 これにて、参考人からの御意見の聴取を終わりました。  続いて質疑に移ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。  松本七郎君。
  9. 松本七郎

    ○松本(七)委員 三人の参考人の先生方に質問する前に、その前提となることを事実関係についてちょっとアメリカ局長にお答え願いたい。  それは、先般来、湯川秀樹博士等を中心にした原子物理学者のグループ、これらの方々が原子力潜水艦寄港問題について声明を出しておられる。また、原子力委員会でも、できればアメリカから原子力潜水艦の仕様書をほしい、あるいはそれができなければせめて保証書というようなものをほしい、そういう問題をめぐって、はっきりした意思表示がなされておる。先ほど、これは田村先生から、すべて科学的に扱うべきだというむ言葉もありましたし、北川先生の今の陳述の中にも、やはり、慎重にも慎重を期してやることが望ましいという、当然のことながらお言葉もありました。それじゃどういうところをたよりにしてその慎重を期すかということが今後の非常に重要な問題になりますので、これらの権威ある学者の声明なりあるいは原子力委員会の考え方に対する政府の見解、これを明らかにしておきたいということが一つ。  それから、もう一つは、アメリカは横須賀と佐世保の寄港を希望してきておるわけでありますが、聞くところによると、政府としては、佐世保の方が望ましい、横須賀は困るが佐世保ならいいというような、何か指令が意思表示をされたと聞いておりますが、そういう事実があるのか、もしあるとするならば、どういう根拠で佐世保を勧告されたのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  10. 安藤吉光

    安藤政府委員 ただいまお話のございました原子力委員会の勧告と申しますか報告と申しますか、二月二十日になされましたものをわれわれは十分承知しております。それからまた、最近新聞紙上で湯川博十等からいろいろ御意見を御提出になっていることも承知しております。われわれといたしましては、これらのものを十分尊重し勘案して処理していきたいという気持でございます。  さらに、佐世保、横須賀の問題でございます。これは別に具体的にそういったところをきめたわけでございません。ただ、一般的な問題といたしまして、御存じの通り、横須賀、佐世保は今米側に提供しておる施設でございます。従いまして、入るとすればそういうところが考えられるのは当然だという意味でございます。
  11. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それは両方のことでしょう、今のは両方を含めてでしょう。そうでなしに、佐世保の方がいいという意思表示をされたことがあるんじゃないですか。
  12. 安藤吉光

    安藤政府委員 ちょっと簡単に申しましたように、具体的にどちらがいいということをまだきめておりません。それで、佐世保及び横須賀が一応いろいろ新聞等に出ておりますのは、これは、御存じの通り、米側に提供してある施設であるという関係であろうと私は思います。
  13. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうすると、いずれにしても、両方同じように扱うという方針だと理解していいですか。
  14. 安藤吉光

    安藤政府委員 理論的にはそういうことになると思います。先ほども申し上げましたように、具体的にいつどこの港に入るというところまで話は来ておりません。
  15. 松本七郎

    ○松本(七)委員 私は最初に北川先生にちょっとお伺いしておきたいと思います。  先ほどのお話では、過去において事故がなかったから大体いいのじゃないかというようなお話のようでございましたけれども、その反面には、十分慎重な、技術的にも機構的にもすべてにおいて安心できるような体制が早く整備されるようにということだろうと思うのですが、そうなりますと、今外務省のアメリカ局長からも御答弁があったように、原子力委員会なりあるいは日本専門の学者の方々の意見を十分尊重してやるということに、これは常識的にも当然落ちつくところはそうなると思うのですね。そうしますと、今日の段階ではまだ原子力潜水艦の寄港を許すのは早いというふうに理解していいと思うのですが、特に私がお伺いしたいのは、そういう海上の安全についての御研究をされておる立場から、おそらくお目にとまったと思います。さっきもこれのことを言われたのじゃないかと思いますが、一月二十二日のニューヨーク・ヘラルド・トリビューン、これはちょうど当時はストライキ中で、特別情報か何かの形だったと思います。海軍少将リコーバーが原子力潜水艦の危険性について語っていますね。それから、去年の三月、エントランスという航空母艦で、原子力委員会委員を全部呼んで、艦上で危険性について説明している。その中で、機構だとかそういうもの以外に心配なのは、乗組員が使用についてまだ熟練度が非常に低い、従って、こういう点についても、焼きがらを放出するということばかりではなしに、扱い上の技術がまだ未熟なために危険だという趣旨のことも言っておるわけです。そういう点は、寄港を許す場合にはよほど慎重に研究しなければならぬ問題だと思うのです。これについての御意見を……。
  16. 北川次郎

    北川参考人 今お話のございました点でございますが、乗組員の技術がきわめて低いということが如実に原子力船の運航をまかせられない程度、いわゆる安全性を確保し得ないものであるということが明らかに認められました場合には、当然、私といたしましては、それは安全だと絶対に言えないというふうに思います。ただ、原子力潜水艦が危険であるというふうにはっきり言明が出ておれば、今のように日本に対しまして安全性においては必ず保証するというものときわめてうらはらになるということになりますので、ここら辺の真偽は十分確かめていただかなければならぬというふうに思います。私が申し上げましたのは、今までの安全性に対しまして今のようなことを一応信ずるという常識的のものを申し上げたわけでありますが、これは、そういうように信ずるから直ちに原子力船を入れてよろしいというような考え方を申し上げる意味ではないことを御了承願いたいわけです。私は、単に、そういうような状況において判断した場合に、この原子力船はまず安全と信じていいではないか、事故を起こさないと信じていいではないかという意味で申し上げたわけです。
  17. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうすると、今まで市政がないということと、それから、アメリカ政府が公式に安全だと言ってくるのとが、一つは安心する要素になるのですね。ところが、一面では、公式にアメリカ政府は安全だ安全だと言いながら、今申しますように、アメリカ専門家の中には、むしろ安全性を否定するような発言というものがいろいろなところでやはり出ている。そうなりますと、原子力船の寄港という問題は、いろいろな要素、政治的な考慮だとか、あるいは戦略的な考慮だとか、いろいろなことから要請が来るわけですが、それに対処する日本側の態度としては、やはりこれは慎重に科学的に研究しなければならぬということになりますね、田村さんも言われたように。そうすると、私どもの常識的な考えでは、やはり、そういった専門家原子力委員会だとか、あるいは科学者のグループ、そういう方に徹底的に究明していただいて、その結論を尊重しながらこれに対処するというのが現実的な措置としては最も正しいと思います。その点は御異論ないと思うのですが、それをもう一度お伺いしたい。
  18. 北川次郎

    北川参考人 その点に関しましては、私、異論はごはざいません。
  19. 松本七郎

    ○松本(七)委員 ありがとうございました。  それから、林先年に伺います。ノーチラス型ですね、これの正確な隻数は現在何隻でございますか。
  20. 林克也

    林参考人 ちょっとそれを調べますから……。
  21. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それでは、またあとでいいです。
  22. 野田武夫

  23. 帆足計

    帆足委員 いろいろ参考になることを伺いまして、大へん有益でございましたが、このたびの問題は、問題点が二つありまして、一つは、原子力に伴う危険性の問題にどのように対処するか、もう一つは、日本の安全という観点から、戦略的に見て一体この事件はどういうことを意味することであるか、日本の国民の利益の立場からどういうふうに考えるべきであるかという二つの点だと思います。  まず第一の点からお尋ねいたしますが、原子力潜水艦に危険が伴いました例は新聞等で私どもも多少拝見しておりますし、また、雑誌にも出ておりますが、アメリカ原子力船の実際面の設計に参加したH・F・クラウチという技師さんが、その有名な「原子力船」という書物の第十三章の冒頭に、今日の段階では、でき得る限り設計上の注意を払ったとしても、原子力船事故を皆無にすることはできないと思う、むしろ起こり得ると考えて対策を講じた方が実際的ではなかろうか、こう書いております。従いまして、湯川博士初め、この国の原子物理学者の皆さんが、これに対しては危険性という面についても慎重かつ自主的に日本国民の立場から検討すべきであるという声明が寄せられておるのであろうと思います。  そこで、お尋ねいたしますが、これまで原子力潜水艦事故は新聞でわれわれ散見するばかりでありますけれども、事故のこまかな報告はそのつど間髪を入れずアメリカの緊急報道センターに報告されておるということでございます。従いまして、その報告を拝見すれば、いろいろまた参考になる判断材料もあろうと思いますが、北川さんには御職務柄この緊急報道センターの資料をお目通しになっておられますかどうか、まずそれをお尋ねしたいと思います。
  24. 北川次郎

    北川参考人 私、実は、この問題が起こりますころ船でずっと行動しておりまして、最近に東京に入港したばかりでございまして、その間の事情も詳しくは存じておりませんのを非常に遺憾に思いますが、先ほど御指摘の資料は拝見しておりません。
  25. 帆足計

    帆足委員 それでは、ついでに政府委員にもお尋ねいたしますが、この報道センターはニューヨークにございまして、すべて現場から原子力潜水艦の故障並びに危険に対する実際的に起こった事件のすべてが詳細に報道されておるということでございますが、政府当局はその資料を把握しておられますでしょうか。
  26. 安藤吉光

    安藤政府委員 原子力潜水艦事故があったことは新聞等において承知しております。もっとも、この事故は、先ほど北川先生からお話がございました通り、原子炉に関するものではなく、通常の艦船に間々起こる種類のものであるということでございます。これらの事故の実際の状況、あるいはそれの取り扱いの方法等については、ただいま米側に照会中でございます。
  27. 帆足計

    帆足委員 今お尋ねしたのは、原子力報道センターの報道を受けた資料の一覧表を御入手なされておるかということをお尋ねしたわけです。
  28. 安藤吉光

    安藤政府委員 ただいま申しました通り、新聞その他の報道で述べられておるものについてはわれわれ承知いたしておりますが、先ほど申しましたように、原子力潜水艦に関する事故に関連いたしまして、その詳細をアメリカ側に今問い合わせ中でございます。
  29. 帆足計

    帆足委員 その緊急情報センターには非常に豊富な資料があるわけです。問い合わせるまでもなく、その情報をすでに得られておられるかということをお尋ねしたわけです。
  30. 安藤吉光

    安藤政府委員 アメリカに照会中でございますので、いずれ遠からず何らかのものを得ることを期待いたしております。
  31. 帆足計

    帆足委員 何か奥歯にもののはさまったような御答弁ですが、今問い合わせ中というのですから、やがて参って、よくそれをお調べになれば、どういうものであるかということがおかわりになろうと思います。  それから、第二に、賠償の問題が新聞に出ておりますけれども、私は、原子力の問題については、火車があったときの賠償などと違いまして、事の及ぼす影響は民族の永遠の命にまで影響することでありまするし、また、万が一のことがあれば悔ゆとも及ばずということになりますから、賠償のことはむしろ第二でございまして、汚染というものは、六億の人口が三億残るというような初等数学の問題ではございません。書物を読みますると、放射性のものが海に流れました場合に、それが東京湾のノリや魚介に吸収されましたときには、百万倍にも濃縮度を高めるということもあり得るということも伝えられておりまするし、また、大きな故障が起こりましたときは、暖流とともに流れますると、日本の沿岸漁業が全滅するということもあり得る、そういうことになっておりますからお尋ねしたいのですが、賠償の問題はさまつなことであって、むしろ、放射能の与える日本国民に対する影響をまず私は深く考えねばならぬと思いますが、これについて御専門北川さんはどういうお考えですか。
  32. 野田武夫

    野田委員長 質疑をなさる方々に参考に申し上げておきますが、ただいま愚見を開陳されました三参考人の方々は、時間の制約がございまして、非常に御退席を急いでおられますし、また、さらにあと四人の質疑の通告がございますから、そのあたりを一つ御勘案になって、時間についての御配慮を願います。
  33. 北川次郎

    北川参考人 私は、海水の汚染に伴いまして、そういう魚介、ことに海藻類が危険な程度に濃縮された影響をこうむるということに対しましては、人間の一人として大へん心配なことだと思いますので、こういうような汚染をもたらすようなものが出るとすれば、十分警戒しなければいけないというふうに考えます。
  34. 帆足計

    帆足委員 大へん参考になります学者らしい御答弁でございまして、政府当局も、賠償のことを交渉する前に、やはり根本のことを御検討なさった方がよかろうと思っておりますが、政府委員はどのようにお考えでしょうか。
  35. 安藤吉光

    安藤政府委員 われわれは安全の問題と賠償の問題とを両方同時にアメリカ側といろいろ話し合っておるわけでございます。
  36. 帆足計

    帆足委員 時間がありませんから簡単にお尋ねいたします。北川さんと林さんにお尋ねいたしたいのですが、一体、日本のような平和憲法の国、また、原子力に対して、広島、長崎など、いわば人知の原罪を引き受けたような国では、国民が非常に敏感でございますから、わざわざ原子力潜水艦が御寄港なさらなくても、御休養ならばハワイあたりで御休養なさればよろしきものを、なぜ日本に寄港せねばならないか、また、寄港の頻度はどのくらいとお考えになっておられるか、これは国民の良識としてお尋ねしたいのです。というのは、国民の良識に基づいて政治がきまり、国の方針がきまるものでございますから、まず北川さんにその点を伺いたいと思います。
  37. 北川次郎

    北川参考人 大へんむずかしい御質問でございまして、私、そういうことを全然考えておらなかったものでございますので、どういう常識で判断するかということは申し上げられないと思いますので、お許しを願いたいと思います。
  38. 帆足計

    帆足委員 率直な御答弁でけっこうでございます。それも非常な参考になります。  それでは、林さんに……。
  39. 林克也

    林参考人 原子力潜水艦、この場合には攻撃型原子力潜水艦としてお答えしますと、それが日本に寄港しなければならない理由というのは、ただ単なる巡回でなくして、これは当然アメリカ海軍極東戦略からきまってくる問題でありまして、現在第七艦隊に八隻の原子力潜水艦が配置されております。さっき松木さんから御質問がありましたのに関連しますが、ことしは原子力潜水艦は全部で二十五隻になります。去年までは二十隻あって、少なくとも現在までのところ二十一、二隻は就役段階に入ると思います。現在のところはフィリピンを基地にしておりますが、これが横須賀、佐世保というようなアジアの北の方にまで基地を必要とするということになりましたのは、一つは、この間から問題になっております中国に対するアメリカの戦略問題があると思います。  寄港の度数とか回数の問題ですが、原子力潜水艦の搭乗員は二種類に分けてありまして、昔の潜水艦のように、一回出撃いたしますと、三分の一が出撃して、三分の一が港内停泊、補修、整備、それから、もう一隊が戦場あるいは戦場から母港に戻る航海途上にあるという分担ではありませんので、今は、一隻の潜水艦当たり二組の搭乗貴のグループをつくりまして、一回出撃しますと少なくとも一カ月くらいは長時間行動に当たって、基地に帰って炉の補修をいたしまして、すぐ出港できるという、非常に機動性というものを重要視しておりますから、一隻当たりの寄港数は少なくなりましても、そのほかの全体の数の作戦行動から言えば決して少なくはないと思います。  それに関連しまして、もう一つ重要な問題があります。さっきも申し上げましたが、攻撃型原子力潜水艦は四つの任務を持っているということを申し上げたわけですけれども、その場合の対潜攻撃、相手の潜水艦に対する戦術任務が非常に重要性を持っております。この対潜任務のうち特に重要なのは、相手の潜水艦を撃滅する場合の戦術任務が幾つあるかということをアメリカ海軍の人が書きました資料がありますし、また、防衛庁の筑土一佐やその他の人が書いておりますので、整理いたしますと、大体、攻撃型原子力潜水艦戦術任務、そのうちの対港任務というのは五つからなっている。第一は相手の潜水艦基地に対する攻撃が重要な対潜措置である。さっき申し上げたサブロックが沿岸攻撃できるという重要性は実はここに関係しております。第二点は海峡封鎖。第三点は海上における相手の潜水艦水中撃滅という問題。それから、四番目は自国の船団護送。これは、いざ戦時というときには、NATOであるとか、あるいは共同防衛の立場にあります他の諸国に戦略物資の輸送その他をいたさなければなりませんから、当然船団護衛というものがある。相手の潜水艦に対する警戒措置を講ずる。それから、自分潜水艦泊地に対する敵潜水船の攻撃に対して対潜作戦行動をする。そういう意味を考えますと、日本の基地が重要であればあるほど、この攻撃型原子力潜水艦サブロックを装備して日本並びにフィリピンのこういった基地の周辺へ配置されることは非常に重要性を持ってくる、こういうふうに考えております。
  40. 帆足計

    帆足委員 これが最後ですが、ただいまの御説明を伺いまして、そういうことで休養と補給を求めて立ち寄る。しかし、休養を求めるのには、私ども一昨日の外務委員会でもこれを審議しましたが、日本は、売春禁止法もありますし、スモッグも深いし、交通事故も多うございますから、むしろ風光明媚なハワイを御推薦申し上げた方がよかろうと思いますが、私どもが意見を述べる席でございませので……。  もう一つだけお尋ねしたいのですが、私は、実際上これは事前協議のような形がすでに始まっているものと、事柄の性質上このように考えておりますが、核兵器の定義については、鬼が入れ歯をはずしてやってくる、しかし、入れ歯はできておっていつでもはめ込むようになっているとすれば、これはやはり核兵器ということになろうと思う。核兵器の定義は、核兵器をいつでもはめ込む設備になっておって、弾頭そのものは小さいけれども、どこでも、ポケットの中にも入れ歯のように隠すこともできますから、そういう設備のあるものは核兵器というふうに考えるべきでなかろうか。従って、この問題は、危険性とその問題とで、実際上事前協議がすでに持たれている形になっている。理屈は何と言おうと、必要に迫られて、政府は良心的立場に立つ限りは前協議をなさざるを得ない、こういうふうに考えられますが、御専門家として林さんは核兵器の定義をどうお考えか、さっきちょっと伺いましたが、もう少しこの点を御説明願いたいと思います。私のお尋ねしたいことはそれだけであります。
  41. 林克也

    林参考人 核兵器の定義は、言うまでもなく、核分裂の物質あるいは核融合の物質をつくってこれを弾頭としたもの、これは核兵器の一部分でして、核兵器と言う場合には、核兵器体系として考えなくてはいけないわけであります。そうしますと、弾頭とその発射装置と弾体との組み合わせ、並びにこれを運用しますシステム、通信、情報というものまで入って参りまして、それを核兵器体系という言葉で言っておりますが、私たちが核兵器と言う場合には核兵器体系で申し上げているわけであります。従いまして、原子力潜水艦の場合に特に考えなければいけないのは、先ほども申し上げました通りに、アメリカの基本戦略からきまってくる問題でありまして、特にそれがあるかないかということに私たちが直接介入するということは、これは不可能であります。理由は、国家安全保障法と原子力法がありまして、これはアメリカでも責任ある者が大統領の許可を受けなければ発表できない。その点で、去年の充用二日、アメリカの国会でギルパトリック次官が旨いましたことは、今日、戦略空軍及び戦術任務に服する各種の潜水艦その他航空母艦等はすべて一発以上の核兵器を装備していて、いかなる事態にも即応し得る体制にある、こう言っております。ですから、もうこまかいことはそれ以上不要でありまして、当然核兵器体系を装備している、こう考えております。
  42. 野田武夫

  43. 正示啓次郎

    ○正示委員 林参考人にお願いいたします。  ほかの参考人の方はすべて専門的に科学的に究明する必要があると言い、安全、損害の問題については保留でございましたが、林先生は非常に断定的で、アメリカの基本戦略から言って核兵器体系というところから一発は必ず持っておるのだ、こういう御発言であったようにうかがえるのでありまして、これは重大であります。御承知のように、政府及びわが自由民主党は、核弾頭というものは入れない、こういう根本的方針に立っておるのであります。そこで、外交の基本方針といたしまして、アメリカ日本とは深い信頼の関係に立っており、向こうの言うことを非常によく信用いたしております。また、日本も向こうに対しては信用されるということに立っておるわけであります。そうしますと、林参考人は、この際アメリカ日本の核兵器を持ち込ませないという政策を無視して核兵器を持ち込もうとしている、こういうように確言をされますかどうか、伺いたいと思います。
  44. 林克也

    林参考人 今私が断定しているようにおとり下すったのは大へん遺憾でありまして、私ももとは科学者でありますから、物事を申し上げるときは十分な資料で申し上げているわけであります。さっきのギルパトリックの言ったことは、アメリカの国会で申したことであります。その他のことは、ここで一々資料を申し上げてはおりませんが、全部アメリカ政府の公設資料を使って申し上げているわけであります。その点、もし資料を申せとおっしゃるならば、時間を御猶予下されば十分申し上げる用意がございますけれども、その点では、今おっしゃった通りに、私どもも心配を同様に感じております。と申しますのは、少し話が古いのですが、一九五五年の衆議院の外務委員会でオネスト・ジョンの持ち込み問題がございました。そのときに、これは亡くなった鳩山元首相にはお気の毒でありますけれども、外人記者団に、日本を守るためだったら核兵器を持ち込むこともやむを得ないという声明がありまして、問題になったことがあります。そのことはさておきまして、当時、国連軍司令官であったハル大将がアメリカに帰りまして、オネスト・ジョン問題でUPに特別インタビューをやっておる。そのときのUPの記事を申し上げますと、核弾頭装備のロケット砲、オネスト・ジョンの日本持ち込み問題は、今春私が東京出発前に取りきめたものである、私はこのロケット砲が日本の防衛に特に有効だと考えたので、これを日本に配備するようにワシントンに要請した、私はアメリカの新兵器に関して重光外相と話しく合ったが、オネスト・ジョンの核弾頭装備の有無と、それをいかに発射するか、それと原子弾頭をつけているかどうかの問題については話し合わなかった、なぜならば、日本政府当局者は米国が原子兵器日本に持ち込むことに反対しないと考えたからである、これは極東軍総司令官、国連軍総司令官のハル大将がアメリカでわざわざ申したことであります。これについてもう一つ申し上げたいことは、日時を申し上げますと、オネスト・ジョン問題が衆議院の外務委員会で問題になりました五五年七月三十日、そのときの園田外務政務次官の発言がございます。それは、去る三月二十五日ごろ外務省はアメリカ側から新兵器の打ち込みについて通報を受けた、米国としてはこれが問題になっているオネスト・ジョンの通報のつもりであったが、日本側は、いろいろ問い合わせた結果、オネスト・ジョンの通報だとわかった、こう午前中の発言では申したのでありますが、午後になりましてから、午前の発言は誤りであったから取り消す、ロケット砲オネスト・ジョンの通告は受けてなかった、こういうようなことが記録に残っております。ですから、私がいつも心配するのは、国会は、アメリカが持ち込むか持ち込まないか、それをいかにして判断するか、そういった判断の自主権をどういうふうに持つかという点をぜひ党派を越えてやっていただきたい。そのためにきょう申し上げたわけです。
  45. 正示啓次郎

    ○正示委員 いや、今の点はっきりしなければならぬことは異論はないのです。ですから、さらに伺うのですが、私どもも防衛庁あたりの専門家意見を予算委員会等でも聞いたのでありますが、まず第一に、いわゆる非ポラリス型は、核兵器としては核兵器ももちろん使い得るような可能性を持っておるし、通常兵器も使える、それから、先ほど特に多くの時間をさいて御説明になったサブロックの問題については、これは今日なお開発の途上にある、これが防衛当局の説明であったわけです。先ほど林参考人も、今なお対空関係においては開発の段階にある、こういうお話をなすったわけであります。そこで、この問題についてはいろいろと科学的に究明の余地があると存じますが、少なくとも、今回の符港にあたりましては、アメリカ政府を代表した正式の権限を待った者が、日本の政策をよく理解をいたしまして、核兵器は持っていない、こういうことを言っておるときには、われわれはそれを信用するという建前をとるのが外交の常識なんです。それに対しまして、基本的な戦略がこうあるからこうだろうということも、これは一つの早まった断定に陥るおそれがある。そこで、この点はなお究明を要するということについては異論はありませんけれども、理事評論家の立場はともかくも、外交の基本として、すなわち、アメリカ日本とは深い信頼の関係によって結ばれており、キューバの例のように、ソ連の代表がうそをついたというところからあの大事件が起こったことは御承知の通りでありますが、まさか、今日の日本アメリカとのこの重大な関係に、今度の原子力潜水艦の寄港問題に大きなうそが根本に横たわっているとは、私は考えたくない。しかしながら、もちろんこれは科学の鏡に照らしてはっきりさすことはいいのでありますが、そこにうそが前提としてあるということでは事重大でございますから、その点について林参考人の御所見をもう一度伺いたいと思います。
  46. 林克也

    林参考人 私は先ほどからアメリカがうそをついているとは一言も申しておりません。むしろ、私が先ほどもお願いするように申し上げました、一とは、オネスト。ジョンの先例もありますから、ただ単なる信用というのではなくて、そこはあくまでも具体的な事実で信用できるかどうかをきめていただきたい。それが日本の国会の任務だと思います。
  47. 正示啓次郎

    ○正示委員 林先生にもう一つだけ私は念を押しておきますが、基本的戦略から言って原子力を動力とする攻撃的潜水艇には将来あるいは現在も積んでおられるであろうという推定が一方にあるとしましても、この際、最終的には、やはり国と国とが責任を持って、核兵器を積んでおるか積んでいないかということによって明らかにすべきである、こういうふうにはお考えになりませんか。
  48. 林克也

    林参考人 それでは、一つ具体的な問題を申し上げますと、一九六〇年の六月十四日、真珠湾で原子力潜水艦サーゴが事故を起こしました。この事故は大したことはございませんでしたが、当時アメリカ海軍の説明によりますと、このサーゴは、ポラリスを積んでいないいわゆる原子力攻撃潜水艦、つまり、俗称ノーテラス型と言っているうちの一隻ですが、核弾頭を装備していたが、それについては異常がなかった、こうアメリカ海軍は公表しております。これは何かと言いますと、サブロックがまだ開発段階で、そうして、そのサブロックの核弾頭つきを搭載したことを初めてアメリカ海軍がこれによって公表したという例であります。ですから、私が先ほどからも繰り返しますように、私は、軍事専門家として、戦略の基本問題から断定しているのではなくて、戦略と戦術の具体問題で今日ではこうなっているのだということは、時間がございませんので資料の説明を省略した。科学的には幾らでも申し上げる準備がございますので、それはそれとして、どうか、国会の方では、厳正な科学的態度で、ただ信用ということだけでなくて、それを裏づける科学的態度をとっていただきたいということを党派を超えてお願いしているわけであります。
  49. 正示啓次郎

    ○正示委員 これで終わりますが、最後に、積めるということと積んでおるという事実は別であるということだけを申し上げまして、これを参考にしていただきたいと思います。
  50. 野田武夫

    野田委員長 戸叶里子君。
  51. 戸叶里子

    戸叶委員 お忙しいようですから、一、二点お伺いしたいと思います。  まず田村先生にお伺いしたいと思いますが、先ほど先生がおっしゃいましたように、原子力船運航者責任に関する条約、これに一番関係のあるソ連アメリカも批准をしていないということをおっしゃったわけです。それからまた、この前の国会におきまして、私ども海上人命安全条約審議いたしましたが、その中にも、原子力船については安全証明書というものを出すけれども、ほかのものは出さない、軍艦は取り除くということがはっきりしているわけでございます。そうしますと、原子力船の寄港を科学的に考えて認めてもいいという先年のお立場から言っても、少なくともこの条約に一番関係のあるアメリカなりソ連が批准をするというようなときまでは寄港はしない方がいいというふうにお考えにならないかどうか、この点をお伺いしたい。
  52. 田村幸策

    田村参考人 あの条約は、御承知のように、五十カ国が参加しておりますので、世界のおもな国はみな入っておりますが、ただし、調印をしたものは十一カ国です。これは実は小国ばかりでございまして、大国は一つ調印をしていない。日本もその国であると思いますが。そのいろいろの調印をしない理由にも、北欧三国が調印をしないのは、賠償額が少し高いからいやだ、責任が重過ぎるというので調印しないというようないろいろ理由がございますが、ともかく、世界的にああいう条約ができておりますので、今帆足さんからも、賠償のことばかりを言ってその前の方が大事じゃないか、人類云々とか、日本民族がどうとかいうお話がありましたが、しかし、世界の五十カ国がああいう条約をつくって、ちゃんと、原子力事故とは何か、原子力損害とは何かということをきっちり定義を与えておるのに、日本ばかりが、日本に寄港すれば日本民族に関係があって、それがなぜイギリスとかフランスとかイタリアに寄港した場合には民族に関係しないのか、そんなことはあり得ないのであります。それはやはり帆足先生がマニアにかかっておられる。私は、それでございますから、二カ国を除くほかの国はみんな軍艦も入れまして、そうしてあの条約の基準の通りにやってくれ、こういうようにでき上がっておるのでございますから、日本ばかり特例を求めるということはちょっと世界的水準ではないのでありまして、やはり幕末以前の状態であると思います。
  53. 戸叶里子

    戸叶委員 日本だけ特例を求めるというふうではなくて、一番関係のあるソ連なりアメリカが批准をしていないのだから、それをするまでいろいろな問題が片づかないのですから、批准をするまでくらいは、幾ら寄港を許すにしても待つべきではないかと私どもは思うのですが、この点をいかにお考えになるかということ、お答えは端的でけっこうです。  それから、もう一つは、今までのような形での軍艦とか潜水艦に関する国際法上の関係といいますか、そういうような基準では、原子力を使った場合には判断できなくなってくるのではないか。原子力を使った軍艦なり潜水艦なりが今日横行するようになれば、当然これは国際法的にも改正されていかなければならないのじゃないかと思いますけれども、法律学者の立場でこの点はどうお考えになるかを、簡単でけっこうですからお答え願いたい。
  54. 田村幸策

    田村参考人 今最後におっしゃった点は全く盲点でございまして、これはビキニの問題のときにも参議院でそういうことを申し上げたのでありますが、今申し上げました去年できた条約そのものがまだ新しい国際法にはなつていない。これからなるのでございまして、今までは、この条約ができるまでは学者はこういうことを言っておりました。ツレール事件と申しまして、カナダとアメリカとの国境のカナダ側の領分に大きな製錬所がありますが、そこから有毒な煙を出す。それが風の都合で毎日アメリカの方の領土にばかり来て、アメリカの穀物その他を荒らしてきた。これが問題になりまして仲裁裁判にかかったこれがちょうど原子炉から放射能をはき出してそれが害を与えるのによく似ておりますので、今までこの条約ができるまでは、その例をよくわれわれ学者は引いておったものであります。しかし、今おっしゃった通り、それではもう間に合わないのであります。それでございますから、これから新しい分野を開く。それが今度開けたのが今の条約であると私どもは理解しておるわけでございます。その条約は、今おっしゃる通り、ソ連アメリカも、軍艦を除けば、普通の分だったらあれで承認するかもしれぬ。軍艦というのは特殊の性格を持っているものでありますから、軍艦を入れてあの通りにやると、ソ連が言いますように、外国裁判所に訴えられるとかいうようなことは困るというのでございますから、それを待つということは全然別の問題じゃないか、こういうふうに理解しておるわけでございます。
  55. 戸叶里子

    戸叶委員 私が質問しておることは、今のような形の国際法では原子力時代においては適当ではないのじゃないかということでございましたけれども、それはお認めになったようでございます  そこで、その次に、北川先生に伺いたいのですが、先ほどの松木さんの質問ともちょっと関係があると思いますけれども、寄港する場合の保障の問題だとか、あるいはまたいろいろと科学的に専門家が納得するような線が出ればいいとおっしゃったのですけれども、軍艦ですから、軍の秘密を守るということで、現段階においてはいろいろな資料を出してくれないと思うのです。そうすれば、専門家が納得するような資料というものが、一体今の段階で得られるものでしょうか。とてもこれは得られないのじゃないかと思いますけれども、得られるというようなお考えでございましょうか。この点を伺いたいと思います。
  56. 北川次郎

    北川参考人 私が期待いたしておりますのは、原子力船の取り扱いについては、原子力潜水艦と商船とを問わず、一様にその国の受け入れ側が具体的な非常に詳細なセーフティー・アセスメントという資料によりまして詳しく検討して、自分の国情もその基準も考えた上で、これで大丈夫だということで認めるという基本的な考え方、これは軍艦といえども私は同じだと思います。しかし、私はっきりはわからないのでございますけれども、今までの諸般の情勢を判断して、運航者とで潜水艦を見ました考え方から、それらすべてを御検討いただかなくても、こういう程度ならばまあ事故は起こすまいというような考え方が出れば、——私は出なければだめだと思うのですが、ただし、私は、原子炉工学者でもございませんし、物理学者でもございませんので、具体的にポイントはどこであるかということは残念ながら申し上げられないわけでございますけれども、そういうものがあるのじゃないかという期待を持っておるわけでございます。もう一つの判断の足といたしまして、われわれ常識的に若干原子力も聞きかじりながら運航問題を考えてきた者の一人といたしまして、そういう程度の納得のいく線が出るのじゃないか、出ればいいではないかという考えで申し上げたのであります。
  57. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほどやはり専門家の納得のいくような線ということでございましたが、私、そういうような専門家が納得いく線というのは、今の段階で出てこないと思うのです。今学者の方々がみんな反対していらっしゃる。それはなぜかと言えば、科学的な基礎に基づいていると思うのです。片一方においては、原子力船の場合には安全証明書を出すわけですが、今度は出さないのですから、いつまでたってもこれは納得のいく線というのは出てこないと思うのです。今おっしゃったような形では、ちょっと答港は認められないのじゃないかと思いますが、この点はあとにいたしまして、一点だけアメリカ局長に伺いたいことは、先ほどからお聞きのように、林先生から科学的な資料あるいはまたアメリカの発表等に基づいてはっきり言われたことは、原子力潜水艦はノーテラス号でも核装備ができるということをはっきり言われたわけです。だといたしますと、今まで外称名がアメリカと折衝をしていたその折衝の内容、——今までの交渉というものは補償の問題に重点を置かれていたようでございますけれども、当然、これは、新しい角度で、核装備ができるのじゃないかという角度から寄港問題を取り上げていかなければならないと思いますが、この点はそういうふうになさるかどうか、伺いたいと思います。
  58. 安藤吉光

    安藤政府委員 原子力潜水艦の入港問題につきましては、安全と補償と両方関係しまして、向こうに質問書も出し、いろいろ話し合っている段階でございます。  少し事実関係が誤って新聞等に伝わっていること等についても、私ははっきりしておいた方がいいと思うのですが、サブロックでございます。これは、二月十八日に国防省が写真とともに発表しましたその説明に、はっきりと、これはビーイング・デベロップだということが書いてありまして、これは開発中でありました。その後確かめましたところも、これは依然として変わっておりません。それから、第二番目に、一九六〇年の六月十六日のハワイにおけるサーゴ号の事件でございます。これにつきましては、米海軍省当局は、その損害事故の原因等について詳細な発表をいたしております。しかしながら、核弾頭を積んでいたということは、実はちっとも言っていないのであります。真相は、APがそれをつけ足して、何か誤電を打ったということのようであります。われわれといたしましては、原子力潜水艦というものは、原子力効力で走るということが前提でございまして、それの要するに安全性の問題ということは、具体的にはいろいろ向こうと話しておりますが、申し上げ得ることは、すでに過去七年間、世界十三カ国の港に百回以上入っていて汚染も何も事故がなかった。米国においては、原子力委員会とか原子炉諮問委員会等が十分審査をしている。相当長年月、優秀な技術と膨大な金をかけてやったということも事実でございます。しかし、一方この問題がいろいろ懸念されている点もございます。関係各省と十分連絡をとりつつ、われわれとしてはこれを検討しておる段階でございます。
  59. 戸叶里子

    戸叶委員 これでやめますけれども、私、アメリカ局長に伺っておりますのは、先ほど林先生のお話にありましたように、アメリカの国会等において、核弾頭をつけられるということがはっきり証言されておるわけです。だとすると、今まで政府は補償の問題、安全性の問題については話し合ったでしょうけれども、しかし、核弾頭なり何なりをつけたものが日本に来る場合にははっきりとアメリカとの間で話をつけるというのですから、当無、今の参考人の御意見参考にして、そして交渉をやり直すべきではないかということを附いておるのですから、やるべきであるとかないとか、その結論だけでけっこうでございますから、お答え願いたい。それから、もう一つ、この前この委員会ではっきりとおっしゃったように、デンマークにおいてははっきり寄港を断わっておるわけでございますから、こういうふうなことも勘案されて、そしてイエスかノーかだけを答えていただきたい。
  60. 安藤吉光

    安藤政府委員 第一に申し上げたいことは、アメリカからこの問題についてアプローチがありましたときに、通常の原子力潜水艦を入れたいということでございます。御承知の通り、安保条約の関係におきまして、核弾頭を持った兵器を入れるときには再前協議をする、それから、日本としてもそれを入れる事前協議において承諾する意思はないということは、たびたび国会等においても声明されたことでありまして、アメリカ側も、日本の意思に反して持ち込むことはないということをはっきり断言しております。のみならず、今度問題になっておりますノーチラス型のものは、核弾頭を積んでこないということをはっきり言っております。そういったことを十分御理解願いたいと思うのでございます。
  61. 戸叶里子

    戸叶委員 アメリカのことだけを信用していられるアメリカ局長の答弁ですから……。  この問題はアメリカ局長に対してですから、またあとで御質問いたします。
  62. 野田武夫

    野田委員長 政府委員に対してはなるべくあとにして下さい。  安藤覚君。
  63. 安藤覺

    安藤委員 今日こうしてお忙しい中を参考人の諸先生方においでを願いまして御意見を拝聴いたしますゆえんのものは、御承知のごとく、このたびアメリカ側から原子力潜水艦を寄港させたい、これについてはたして承諾を与えるべきか拒否すべきか、これの態度をきめるにあたって、諸先生方の御意見をわれわれの判断する重要な資料にいたしたい、かように考えたからでございます。  そこで、お尋ねいたしたいと存じますが、問題を要約してみますと、先ほど安藤アメリカ局長も申しておりましたように、原子兵器を積んだ船は日本に寄港させない、原子兵器を一切日本に搬入させない、こういう態度はすでに打ち出しておるのだ、こういうことでございますので、問題は、今度寄港を求める潜水艦がはたして、原子兵器を積んでおるのかいないのかということの事実、真相を究明することがきわめて重要であります。この点については、先ほど林先生から一応御意見を明確に承っておりますので、今ここで問題にいたしません。  もう一つ問題になりますのは、今や、原子力というものが、単に兵器として開発されるのみならず、人類の幸福のために、平和利用において大きなる役割を演じ、開発に努力されつつあります。しこうして、陸上におきましては、すでにわが国におきましてもああした発電所まで準備せられつつあるわけでございます。海上におきましても、兵器としての航空母艦あるいは潜水艦というようなものにこの原子力推進機を使うだけでなしに、一般の商船においてもこれが利用されようとしております。また、現に日本政府におきましても、向こう九カ年間の継続事業において原子力を推進力とする商船をつくろうとし、その法律案も今国会に出ておる次第でございます。かような状況から考えまするときに、一体、原子力から発散される放射能の危険、この危険なことはすでに十分われわれも承知いたしておるのですが、これが、陸上においては、あの発電所、原子力研究所においてなされておりますように、完全に防止されておるのでありますけれども、潜水艦に限らず、あるいは前船におきましても、船の中においては放射能物質を完全に防ぐ科学装置の準備ができておるものなのかどうなのか、どういうものでございましょう。もう一つには、その廃物を海洋に捨てます。あるいはいずれかに捨てますしその捨てた廃物からさらに害悪が流れるというようなことが出てくる。この場合、この廃物の包装ということは、完全にこの害悪を流すことのない包装ができるものなのかどうか。これは、現在すでにこれらのものをやっておる国々において、海洋に投棄するなりあるいは地下に埋めるなり、いろいろな処置が行なわれると思いますけれども、陸上においてはすでに日本においてもそのことが準備されておりましょうが、海洋においてはまだ日本はその経験がございませんが、世界においてはどういうふうにしておるのか。この点については、願わくば物理、原子科学専門の先生がおいでになればその先生にお尋ねしたいのでありますが、ほかにおられませんから、林先生が一番お近くこれを御研究じゃないかと思いますので、一つ意見を承りたい。  それから、もう一つ、これは北川先生にお尋ねしたいのですが、先ほどの先生のお話を承っておりまして、乗組員の訓練の未熟さというようなことが先ほど話題になっておりましたが、日本までやってくるのには、いずれ太平洋上を縦横に馳駆してやってくるわけでありましょう。そうして、それが横須賀なり佐世保なりの小さい港に入って参りました場合に、海洋上において訓練して無事に航海を続けてきたその乗組員が、他から避けることのできない形において衝突なり損傷を受ければ別でございましょうけれども、みずから操縦を誤ったことによって事故を起こすということの未熟さというものがあろうかどうか。そして、もう一つには、先生が先ほどお述べになりましたような、細心な注意と諸般の準備において、航路を安全化するという場合において、それだけの準備がされた上においてなおかつ故障、事故を起こすということはあり得るか。言葉を変えて申しますならば、先生がおっしゃったような注意を与えていったときにおいては、百パーセント安全に港を出ていかせることができるかどうか。この二つの点について先生から御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  64. 林克也

    林参考人 原子力の放射能関係につきましては、今こちらに服部君が来ておりますから、後ほどの直間のときにそれをお答えいただきたいと思います。  私は、軍艦、これは潜水艦も含めますが、軍艦原子炉が破損をしたときに局限して申し上げます。  簡単に申し上げますと、それが戦闘中でない場合、たとえば座礁するとか、それから衝突によって船体が折れるという一枚が起こりましたときには、幾つかのブロックになりまして、前部の魚雷室であるとかあるいは後部の何々といろいろ分けてありまして、その中の原子炉のところに亀裂が入るとかあるいは折損、切断ずるという事故があれば、これは当然放射能が露出いたします。なぜかと申しますと、幾ら安全だと申しましても、どのくらい強力な鋼鉄で包んであったにしても、一平方センチ当たりどのくらいという衝撃荷重、つまり耐える限界がありますから、それをこえるような衝突条件があれば、当然放射能は出てきてしまうわけです。  それから、もう一つ、これは将来の問題として考えなければいけないと思いますのは、たとえば、ソビエトが極東潜水艦を多数持ってきたとします。これはさっきも参考人の方から出ましたけれども、その場合に、これは日本海上自衛隊も公表しておりますし、アメリカ海軍もしばしばこれについては公表しておりますが、対潜警戒というのは今軍事上非常に問題になっております。潜水艦を封鎖してしまうということは、今日本という地位で考えますと、こういうことがあっては困るのですが、かりに戦争が起こったという場合を想定してこの問題を考えますと、当然、この原子力潜水艦の対潜攻撃任務というのは非常に重要な任務一つでありますから、相手の原子力潜水艦が港から出るのを出口でとめる、あるいは、日本海から朝鮮海峡に抜けようとすると、そこでたたきつぶす。これは去年自衛隊が壱岐、対馬の海上で演習をやっておりますから申し上げますが、相手の、原子力潜水艦をこちらの原子力潜水艦が撃沈したとすると、たとえば七万キロの熱出力とか十万キロの熱出力に相当する原子炉破壊して放射能がまき散らされたと同じ現象を起こす。原子力潜水艦の対潜作戦ということを考えますと、あちらこちらで相当の放射能をまき散らす原子力潜水艦をお互いにたたきっこするような戦争が将来予想される。そうすると、われわれ、原子力の平和利用という点から考えますと、こうした軍艦に使われることは何とかして避けたい。あくまでも平和利用に限定すべきが将来の世界の動向じゃないか、こういうように考えておるわけです。
  65. 安藤覺

    安藤委員 そこで、お尋ねします。戦略としての立場からの御説明はよくわかりました。ただ、私もう一点お答え願いたいと思いますことは、戦争によるあるいはその他による事故を起こした場合の放射能の害悪というのは御説明の通りだろうと思いますけれども、日常平和な姿において航行し潜行しているときの艦内なりあるいはひいては艦外に及ぼしていく放射能の害悪というのは、どの程度までの安全性を持って包まれておるか、これをお尋ねしたいのであります。
  66. 林克也

    林参考人 そのことは実は服部君が専門的な立場から申し上げると思いますので、私は保留いたします。
  67. 野田武夫

    野田委員長 安藤君に申し上げますが、服部参考人がまた科学的な立場から御説明いたしますから、その点の説明はあとにいたします。
  68. 北川次郎

    北川参考人 先ほど御質問の原子力船の乗組員に対する放射線災害は完全に防止しておるかという件でございますが、私たちが解釈しておりますのは、これは原子力商船の場合でございますが、完全にどこに行っても絶対に放射線から安全である、ゼロであるというような場所はきわめて少ないと思います。私は専門でございませんが、それに対しまして、人間が職務を行ないますにつきまして、どの程度まではそのからだに被曝を受けてもいいという基準をきめまして、その基準内で十分仕事ができるようにさせております。船内も、設計の段階におきまして、どこではどれくらいの放射線がある、放射能があるということを詳細に調べまして、その範囲内での服務の基準その他も規制をされます。また、お客さんは安全なところに持っていくというように承知をいたしております。なお、原子力潜水艦の運航中に乗組員がどうだろうかという問題がございますが、私はこれはもちろん十分知っておりません。しかし、何年かのナショナル・ジオグラフィック・マガジンだったと思いますが、ノーテラスの乗組員について、これは非常にデモンストラティブに書いてあるので、真偽のほどは、はっきりどうであるかという数字的なものはわかりませんが、長い航海の間つけておりますラジウム、これは放射能を持っているわけですが、ラジウムの夜光の字のついておる時計を預かってしまって、お医者さんが毎日毎日被曝量を調べてみるという段階があるようであります。そのときに、原子力潜水艦に乗っておりました乗組員が受けました放射能は、地球の表面上で普通の人が受けました量よりも、水にもぐっておったためにかえって量が少なかったということがはっきりと証明されたということを記録で見ております。その程度の知識しか実は持っておりません。  それから、第二点の、乗組員の技術が非常に未熟であるというようなお話に関連いたしまして、長い航海をして日本へ入ってきたときに、ああいうような注意をした場合に完全に海難は防止し得るかという御質問でございますが、私、未熟と申しますのは、はたしてどの程度の未熟かちょっと想像ができないと思います。少なくとも私たちの、承知しております程度の乏しい資料でございますが、書いてありますところでは、乗組員の訓練は相当シビアな訓練を課しておりまして、しかも、金にあかしまして、ほとんど陸上での訓練の段階で、その仕事その仕事につきます人間につきまして、いろんな、これは実際の船に乗っておると同じような状態の、ことに問題は原子炉操作の関係が多いと思うのですが、問題をやります一つの練習盤がございまして、教官がいろんな問題、いろんな航海状態、これは非常事態も含めまして、運航状帳におけるいろんなケースを問題としてだしまして、それにすぐ対応するような訓練をやり、それによってよしとなった者を連れてくるということになっております。ただ、私たちが常に船乗りとして考えておりますのは、非常に監守当直的な勤務ではございますけれども、実際に連続された注意力と申しますか、全無絶えない注意力というようなものをある一点に集中しまして、たとえば三時間なり四時間当直を連続するわけでございますが、そういうようなときに、船の動揺だとか、潜水艦ですから動揺はないということが報告されておりますが、普通の商船の場合、動揺だとか、あるいは荒天のためのいろいろな振動、それから温度、それから外界の状況によりまして、からだの調子が悪くなり、注意の集中が乱されるというようなことをおそれますために、船乗りの訓練なんかといたしましては、日本においてもそうでありますし、外国においてもそうでありますが、一般の常識といたしましては、船員として欠くことのできない基本的な、そういう技術のもとになります体力、精神力というようなものが案外重大に考えられまして、それの訓練をする、その上にそういう技術の訓練を乗せていくというような基本訓練を非常で、技術に未熟ということが、どうも私、また申し上げてあれですが、はっきりわかりませんですけれども、少なくも原子力船を進航してくる責任の方方が、私たちの考え方から言いますと、あのような注意をいたします場合には、まずまず海難は防止し得るものだというふうに信じております。もちろん、人間のやることでございますので、突然脳貧血をするとか、あるいはとんでもない思い違いをやるというようなことがあるとは思いますが、これはまた、ただ一人が判断するのじゃなくて、二人三人でチェック・アップしてその事故を防止するという対策もとられております。運航上のいろいろな状況によりまして、操船は決して一様なスピードで一様な数字に合ったもので動かとということでございませんことを考えますと、これは人によることとは言いながら、まずまず間違いがない、ゼロとは申しませんが、心配するほどのものでないというふうに私は信じておるわけでございます。
  69. 野田武夫

    野田委員長 三参考人にちょっとお願いしますが、あと二人残っておられますので、大へん時間のことについてお約束の時間を伸ばしまして恐縮でございますが、簡単に質疑を終わらせたいと思いますから、御了承を願います。   川上貫一君。
  70. 川上貫一

    ○川上委員 時間が非常に切迫しておりますから、簡単に質疑をさしていただきます。  きょうは今まで三人のお方の意見を承って大へん参考になりました。ありがとうございました。  アメリカ原子力潜水艦の基地を日本に要求しておる。この問題については安全性をよく言われておるのですが、われわれは、安全ということは二つ考えておる。一つは、もちろん放射脂による汚染の問題。もう一つは、アメリカ核装備をしておる潜水艦の基地を日本に求めておる、日本アメリカ世界戦略における核戦争の基地にするという問題がいかに安全であるか安全でないか。この問題の方が私は大きいと思う。ところが、きょう三人の御意見を承りまして非常に参考になりましたが、私をして素直に言わせれば、遺憾ながらお二人の方はこの問題についてはあまり多く触れておられぬと思う。これは私の私見ですが、そこで、やむ得ず林先生にお聞きしなければならぬことになるのですが、そのお答えを願う前に安藤アメリカ局長に一つ開いておきたい。   あなたは、この前の委員会で、またきょうも、サブロックは開発中だとしきりに言っておられる。この意味は、サブロックの性能のある部分が開発中とおっしゃるのですか、全部開発中だから実用段階には入っておらぬとおっしゃるのか。この点をはっきりここで言うておいてもらいたい。  それから、もう一つは、ハワイで潜水艦が故障を起こして、そのときにアメリカ海軍当局は、核弾頭を持っておったが、これには故障がなかったという発表をしたという。このことについては私も質問をした。そうしたら、きょうもやはり言うておるのですが、あれは外国の新聞がうそを言うたので、そんなことはないのだと言っておる。この点についてもう一ぺんはっきり確認をしておきたい。  その二つのお答えを聞いて、林先生の御意見を、承りたい。
  71. 安藤吉光

    安藤政府委員 第一点の、サブロックについてでございます。これは、われわれは、写真も、そのとき発表されましたものも入手しております。それに、サブロック・イズ・ビーイング・デベロップト、開発中であるということが書いてあるわけでございます。   それから、第二点の、サーゴ事件でございます。これにつきましては、当作海軍が発表したことを詳細に調べました。ところが、十五日のAP電がそれにつけたして、この潜水艦は核弾頭を積んでおるというふうに書いて、あたかも米海軍がそれを言ったかのごとく伝えておる。これは事実に相違しておるということを言ったのであります。
  72. 川上貫一

    ○川上委員 アメリカ局長に二度も聞くのは悪いのだけれども、あなたは私の質問に答弁しておらないのです。あなたの言う開発中というのは、サブロックの有するあらゆる性能の中で、ある性能が開発中だというのか、実用一段階にまだ入っておらないというのか、これを附いておる。なぜ言うかというと、政府の答弁がばらばらなんです。海原防御局長は、潜水艦サブロックを持っておると言うじゃないですか。これは頭をひねったってちゃんと速記録にあるのです。あなたはどう言うておるのか。おそらく、ある性能の一部が開発中である、こう言うておるのだろうと好意で私は聞いておるのです。実用段階に入らぬ、全部開発中だと言うておるのか、これをはっきり聞いておきたい。そのあとで林先生の御意見を聞きたい、こう言うておるのです。
  73. 安藤吉光

    安藤政府委員 サブロックについて私が正確につかんでいるところは、先ほど申し上げた通りでございます。それで、ほかでいろいろ言われていること等を勘案いたしますと、これはスレッシャー号によって発射したというように受け取っております。
  74. 川上貫一

    ○川上委員 もう一問です。  林先生にお願いするのですが、これは参考人の方に言うべきことではないかもしれぬが、どうも政府の国会答弁がてんでんばらばらなんです。大平外相は、全然核装備はしていないと言う。そうかと思うと、海原防衛局長は、サブロックを持っておるのは一隻である、こう言うておる。安藤アメリカ局長は、サブロックは開発中であると言う。そこで、実用段階に入っておらぬというのかどうかと言うたら、きょうは答弁しない。はっきり答弁できるはずです。こういう状態で国会審議が困っておる。政府の答弁がばらばらです。そこで、重要な参考意見に私はしたいと思うから、この専門家であり権威である林先生のこれについての御意見を承っておきたいと思います。
  75. 林克也

    林参考人 そのことにつきましては、昨年の一九六二年度のアメリカの太平洋核実験で十九番目の原子力潜水艦スレッシャーが核弾頭の発射実験に成功したことを公表しております。これはサブロック用の弾頭なんです。問題は、サブロックがどこが開発中でどこが開発中じゃないのかということをはっきりしておきたいと思います。  これは、先ほど四つの用法というのを申し上げましたが、対潜水艦に使う場合と、水上艦船攻撃する場合と、沿岸攻撃に使う場合は、現在のサブロックで十分であって、これに核弾頭をつけることは当然でありますが、核弾頭でない普通の通常弾頭もつけ得る。ただし、威力は非常に減少する。これは、はっきりと両方装備しているから、そういう迷いが出てくるわけであります。問題は、四つ目が開発中で、この四つ目の開発中を、全部が開発中であるような印象を受ける発表が行なわれておるのであります。この点をはっきりしますと、サブロックの有効射程というものが、これは水中測的聴音装置のソーナーの性能によってきまりまして、現在のところ、二十海里、三十七キロ、こう言っております。これは、ソーナーで相手の潜水艦を遠距離に探知し、そしてそれにサブロックを打ち出していく。しかし、実際には、完全な命中精度というものは、核弾頭をつけた場合には、そういう厳密な命中精度は要らないわけでありますが、大体、現在のところ、実効十五海里、二十八キロであったら、有効な命中精度を得ることができる。将来、将来といっても近い将来、ソーナーの聴音装置を改良することによって、四十八キロメートルまでサブロックを使用することができる。これが現在二月十八日に実艦装備を開始した核弾頭装備、また、非核弾頭を装備し得るサブロックの状況なんです。  問題は、開発中と申しますのは、将来サブロックの有効射程を三百二十六キロまで延長しよう、これが開発段階であって、その三百二十六キロまで射程を改良いたしますと、これは対空火器としても使用し得る。問題はこの辺で、ロケット・ブースターをいかにするか。魚雷発射管の口径というものはきまっておりまして、そこにMK44という魚雷をつけて、またそこにロケット・ブースターをつけて、二十一サンチのアメリカの魚雷発射管に取りつけるというのですから、そこにもつと強力な対空ロケット火器をつけ得るかどうか、これが開発中で、そういう軍事科学の問題は、技術的な条件をよく限定して分析をしませんといけません。  それから、そういった発表がいかなる意図で行なわれるかを判断するということは、これまた慎重に分析しなくちゃいけないわけです。たとえば、一例を申し上げますと、先ほどサーゴのことでお話がありましたが、それは新聞記者の間違いだとか、つけ加えたとか、あやまちだとかいうことはよく利用される方法であります。たとえば、去年アメリカの司令官が日本に核兵器部隊がいるということをはっきり申しましたときに、あわててあとで、それはないという取り消しが行なわれた。なぜこういうことをやるかというと、今までこういう例が幾つかあります。その一つは、一応は言う。しかし、それを言いますのは、やはり軍事上の目的があって言うのであって、そして、ある程度までいくと打ち消して、これは新聞記者が勝手に報道したのだという言い方をする。それからまた、ときによりますと、先ほど申し上げたように、ギルパトリックが大統領の特別の許可を得てこれを発表するということ。たとえば国会でこういうふうにおっしゃる原子力潜水艦核装備の問題については、非常にデリケートでして、一番問題点になりますものは、アメリカでも、大統領の許可がない限り、数量、装備その他について具体的なことは言ってはならないことになっている。これは原子力法と国家保全保障法のせいであります。ですから、問題はそういう点で、もし、たとえばきょう参考人としてここに出席を命ぜられた私がそのことでどれだけの判断を持つかとおっしゃるならば、私は、もし日本国会の名において、その原子力潜水艦が何を装備していろか、その入港したときに立ち会えとおっしゃるなら、必ず責任を持って判断し得る能力を持っております。そのことは、昨年日本からプルトニウム利用の調査団がアメリカに行きましたときに、その参加名の一人が、——数人でありますから詳しくは知りませんが、ノーチラスがサブロックの実験装備をしている実艦の見学をした。そして、ノーチラスの中に入って見学を許された。つまり、今日では、サブロックがそういう意味で実用段階に入って装備を開始したその場合に、開発中でありましょうから、全艦に装備するわけはないのであります。その中で問題の性質というものをはっきり見きわめていかなければならない、こう思っております。
  76. 野田武夫

  77. 穗積七郎

    穗積委員 長時間ありがとうございましたが、時間がありませんので、大へん残念ですけれども、またの機会にして、きょうは簡潔に二、三の点についてお尋ねしたいと思います。  最初に、林参考人にお願いをいたしますが、先ほど来お聞きの通り、ポラリス型以外の原子力潜水艦核装備があるかないかということが第一の焦点になっているわけです。そうなりますと、単なる安全性の問題ではなくて、非常に日本の平和政策、アジアにおける戦争の問題とつながって、また違った角度から取り上げられなければならない。それについて、今の御説明で、大体、ノーチラス型におきましてもすでに核武装の実施段階に入っているというふうにわれわれは理解し得るわけです。  そこで、そのこまかいことは後日に譲るといたしまして、一つお尋ねいたしたいのは、他のアメリカ軍事同盟国と違って、日本では安保条約があっても事前協議事項にかかるので、核装備をした軍艦その他の武器の寄港または待ち込みについては、これは断わるのだ、アメリカもそれをしていないと言っておるから安心しろと、政府はこういうふうに言っておるわけです。この場合おきましては、実は潜水艦アメリカの基地を出ましてから極東諸地域を航行するわけです。その行動の途中に佐世保または横須賀へ入港をして、これを基地として利用する、こういうことの要求をしているわけですね。そういたしますと、日本核装備をした武器については、他の国と違って除外例として別に考えなければならないから、これを撤去するわけですね。撤去しなければならぬ。ほかの国に行くときには核武技をして寄港し、また演習をやる、あるいは実戦になった場合にそれを使うわけですが、日本の港に寄港する場合には、これは撤去しなければならぬわけです。そういうことがはたして常識的に考えられるものであるかどうか。そうなると、軍事的に見て、日本の寄港地の価値というものは全無なくなるわけでしょう。そういうふうにわれわれ常識的に考えられるわけです。従って、ノーチラス型の潜水艦にいたしましても、核装備をすでにしておる段階に入りましたときに、日本だけは除外をして海上航行の途中に撤去して佐世保へ入ってくるというようなことについては、技術的な可能性について疑問を持つと同時に、そうすると、日本の寄港地を設定をするアメリカの作戦上の価値は全然なくなる、むしろじゃまになるというふうにしかわれわれには考えられないのです。すなわち、日本のみは核武装潜水艦の寄港は除外例とするという約束になっておるから安心しろという言葉は、事実の行動の中においては全然保障されない、または無価値なことになるというふうにわれわれには考えられるわけですが、その点についてはいかがなものでございましょうか。これは技術的に途中で撤去することができるか、あるいは、作戦的に、撤去してそういうようなことをやって、日本の寄港地を設定する戦略的な価値があり得るかということですね、私は、これはないと思うのです。いかがなものでございましょうか。
  78. 林克也

    林参考人 そのために、先ほどケネディの大戦略や抑制戦略のことを申し上げたのですが、たとえば、現在アメリカが、これは当然想定としてはソビエトになってくるわけですが、世界戦争が起こった場合に相手のICBMがアメリカの本土へ落ちてくる、これは遠距離レーダーで爆発十五分前に探知できる、その十五分間に反撃に移る、これは報復戦略とか抑制戦略とよくアメリカのいろいろな資料では説明されております。その場合、一せいにアメリカ世界に配備している陸海空三軍の全部隊が戦闘行動に参加するわけです。その場合に、日本に寄るから、原子弾頭を小笠原へ置いてきたとかあるいはグアムへ置いてきた、フィリピンのスビグ湾に縫いてきたとかあるいは沖繩に置いてきたから、ちょっと戻ってとってくるというわけに参りません。これは原子力潜水艦の航海能力を幾らに置くかということでいろいろ時間が食い違って参りますが、たとえば水中速力二十ノットから四十ノットの範囲で計算すれば答えは算数ですぐ出て参ります。それは、簡単に言いますと、大体三十時間から七十時間のうちにグアムから日本にやってくる。そうしますと、最大速力で往復しても六十時間かかってしまう。六十時間の間に戦争が済んでしまいますから、抑制戦略をとっている現段階においては、全面戦略、極地戦略、これは非核戦争と核戦争を二つまぜます。それから、ゲリラ戦等のあらゆる事態に即応し得る装備、これが現代の軍事学の常識でありまして、これを無視しては当然問題にならないわけであります。ですから、今の御質問の点にあります、おろしてくるというならば、これは戦争が起こり得ないという前提条件がありまして、そうしてそれだけの外交上の保障措置があり、日本政府がそれを国民とともに納得できる取りきめができた場合には、これは別問題でありますが、そういうことを抜きにしまして、その問題だけでそれを判断していいかどうか、私は非常に疑問に思っております。  それから、もう一つ、事前協議の対象事項でありますが、これはたしか日本におります米軍に適用されるのが主であって、アメリカの戦略部隊、これはアメリカの統合軍、たとえば太平洋軍のような場合には、一々事前協議の対象事項にならぬように今までの国会の審議及び解説によって理解しております。そうしますと、原子力潜水艦は、在日アメリカ海軍部隊ではなくして、ハワイに基地を持ちます太平洋軍という戦略統合軍の一部隊であって、その一部隊の兵器、装備、内容、編成、任務等について日本政府内容を点検し、摘発しあるいは調査する権限は、これはほとんど不可能の事態であります。そういう前提を考えますと、その説明では合理的に納得がいかないと考えております。
  79. 穗積七郎

    穗積委員 関連いたしまして、もう一点お尋ねいたしますが、横須賀または佐世保等の日本の港は香港を求めてくるアメリカの必要性ですね。必要な原因並びに目的といいますか、そういうものは、単に極東諸海域における長期の航行、行動半径をとるために乗組員その他の必要とする油であるとか水であるとか食料であるとかいうものを補給するために寄港を求めるのではなくて、そういう点で必要性、目的があるのではなくて、むしろ、アジア全体、極東における対ソビエト、対中国の軍略的な必要性から寄港を求める、従って、その寄港というのは、言葉では寄港ですが、単なる寄港または一時的な入港ではなくて、アジアにおける軍事基地としての必要性あるいはその目的がこの際は非常に強くクローズ・アップさるべきではないか。その点で、アメリカが仮想敵国としているソビエトまたは中国に対する作戦行動に日本自身が基地を貸し、これに積極的に協力するという姿勢に入り込んでいく。すなわち、アジア、極東における核武装の作戦を、アメリカは最近強化しようとしておる。その一環としての入港でありますから、単なる領域に入港を認めるのではなくて、佐世保または横須賀をそういう核武装軍事基地として、むしろこれを積極的に提供するという結果になるという点を、われわれは非常に心配しているわけです。その点についての御認識といいますか、これはアメリカ極東作戦の一環において理解すべきものだと思いますから、これは単なる横須賀または佐世保の日本領海に入港を認めるというような単純なものではなくて、軍事基地を提供するという結果になるという認識に立ってこの問題の諾否をわれわれとしてはきめるべきではないか、こういうふうに考えるわけですが、それについての専門家としてあなたの御意見を承っておきたいと思います。
  80. 林克也

    林参考人 そのことにつきまして、先ほど第七艦隊に原子力潜水艦が八隻配備されているということを申し上げました。ただいま第七艦隊の属している太平洋軍というものは、単なる戦術部隊あるいは在日米海軍ではなくて、アメリカの統合軍の一つとしての戦略部隊であって、陸海空三軍からなっているということを申し上げたわけです。そこで、第七艦隊の戦術任務、区域についてアメリカ海軍の公表がありますから、それを申し上げますと、第七艦隊の行動区域は、東経九十度から西経百六十度までです。そうしますと、これは、ちょうどハワイの真西から、ずっと西になりますと、中国の全区域が入る範囲内。これは、国会で安保審議がありましたときに、極東範囲について非常に不明確な発言が多かったわけですが、これはアメリカで言っている。極東範囲、第七艦隊の任務区域とは、東経九十度から西経六十度までであるということで考えなければいけないと思うわけです。そうしますと、その中に入っております原子力潜水艦は、第七艦隊配属の部隊でありますから、当然この極東範囲で行動する。そうしますと、今日フィリピンのスビグ基地に八隻おりますのが、そこに集中しているということは幾つかの点で矛盾がございます。それは、たとえば原子力潜水艦が集中攻撃を受けるということもあり得るし、もっと重要なことは、それらの原子力潜水艦のその任務が十分活用できるように配備しなければいけない。そうすると、当然、今潜水艦は四隻で一隊を編成しておりますから、その四隻ずつの二隊に配備されて、編成されて、そうして南と北に分配されれば、それはちょうどいい配分になる。それが常破約に当然出てくるものだと思います。そして、新鮮な水であるとか食料であるとか野菜であるとかその他のレクリエーション、そういったことと、それから、兵器、弾薬、そういったことの補給とかは、潜水母艦というのがありまして、かなりの高度な施設と補給ができるわけであります。何も横須賀に入ったり佐世保に入らなくても、必要なときは十分できる。これが横須賀を選ばなければならないということは、必ずしも普通の寄港だったらあり得ないことである。当然、今日の段階では、特にケネディ政権の去年の発言以来問題になってわります対中国作戦、封じ込め政策という問題と関連した配備であろう。これは私だけの考えではございませんで、アメリカで最近出ました「中国戦略」という、きょうはその詳細なものを持ってきておりませんから申し上げられませんが、その本の中にそういうことは書いておりますし、イギリスの新聞なんかにもそういう点を指摘したものを読んでおります。また必要ありましたら、ここに参考資料として後日提出する用意もございます。
  81. 穗積七郎

    穗積委員 ありがとうございました。大へん重要な御証言をいただいて感謝いたします。きょうは時間がありませんからこの程度にして、もう一点だけ他の方に質問がありますからその問題に移りますが、なお続いて今後ともどうぞ国会の審議のために御協力をいただきたいことをお願いいたしておきたいと思います。
  82. 林克也

    林参考人 補足して、これは大へん僭越ですが、私だけの意見じゃありませんで、たとえば、艦船や兵器についての雑誌、それから、防衛年鑑刊行会から出ている防衛年鑑、そういう中に、現職の防衛庁の一等海佐であるとか、陸将であるとか、空将であるとか、あるいは福井静夫という旧海軍の造船技術者であった人たちが、サブロックあるいはその他の極東戦略についていろいろ書いております。その中にはやはり私の申し上げたのと同じような問題がはっきりと明記してありますので、御参考にしていただきたいと思います。
  83. 穗積七郎

    穗積委員 実は安全性の問題についてもお尋ねしたいのだが、これは、服部先生が午後にお残り下さるというので、一括して他の参考人にも聞くといいと思うのですが、時間の関係がありますから遠慮いたします。  最後に、田村先生に一つ国際条約上の原則についてお尋ねいたしますが、二国間の条約または多数国間の条約の場合、その条約の実施にあたっては、関係国が、わが国が入っておる場合はわが国が、それが条約通りまたは政治的な取りきめ通りに相手国によって実施されておるかどうかを調査査察する必要があると思うのです。そこで、その場合における締約国のこの査察調査の相互の自主権というものは、私は、国際条約の実施にあたっては当然原則として認められるものだと考えます。これは条約実施に関するごく基本的な常識的なことでございますが、この際大事な関連がありますから、その点について一点だけ田村先生の国際法学者としてのお考えを伺っておきたいと思うのです。
  84. 田村幸策

    田村参考人 条約に特別の実施手段が規定していない限りは、私どもの理解によりますれば、その締約国の誠意に待つ以外に方法はないのであります。よく労働条約なんかに、労働基準など条約に書いてあるものを守らない場合には、たとえば苦情を中央事務局に持ち出すことができるとか、理事会に提訴することができる、こういうふうなことが書いてあります場合はそれによりますが、それでない場合は、相手が条約を全部もしくは一部分でも履行するかしないかは相手の誠意に待つ以外にございませんので、それをこちらから査察をするとかいうことは、特別の条文がございませんければちょっとできないと思います。
  85. 穗積七郎

    穗積委員 それに関連して私どもの理解はちょっと違うのです。その場合における締約国の相互の役務、権利があるわけですから、その場合における権利、役務関係を条約通り行使しているかどうかに対して疑いを生じた場合には、締約国の一方は自主性を持ってその疑いを解明し調査し査察をする権限は留保されているもの、これは当然なことではございませんでしょうか。そういうことが特に規定してあれば別ですよ。それから、もう一つ重要な点は、締約国同士の中でそういう疑いを生じたときには、いつでもお互いに調査をする自主権というものを留保するのが、私は常識だと思う。いたずらに事をかまえて相手国に言いがかりをつけると思われるような疑いをかけるということは別ですけれども、その後のいろいろな具体的なデータの中で、条約が信義と誠実の原則に従って実行されていないという、他の調査によってそういう疑いの事実が具体的に現われておりますときには、正当な理由のあるときには、私は調査に関する締約国の自主性というものはあくまで確保されているというふうに理解しなければならないと思うわけです。これは、時間がありませんから、今あなたの御解釈は伺いましたけれども、われわれはいささかその点については原理上疑点を残しておりますので、他の機会にそれについての御意見をさらに立ち入って具体的な例の中でお尋ねしたいと思います。きょうはそれを留保いたしておきます。
  86. 田村幸策

    田村参考人 それを補足さしていただきます。今のように、たとえば非常に誠意を要する条約とそうでないものと、程度はございますが、たとえば、軍縮なんかの問題で、ドイツがベルサイユ条約を守るか守らないか、これは、非常に大きな問題でありまして、事案、そのときには、隠して、造反がずいぶんございました。こういうときにはやはり審査委員というものがちゃんと条約でできておりまして、それ以上のことは立ち入ってはできない。ただ、相手の方の条約違反があれば、ここの点は条約を履行していないではないかというようにこちらから抗議を申し込む、もしくは、非常に重要な条約目的に反する点があれば条約を破棄することもけっこうでございますし、たとえば今問題になっている査察というような問題にしても、軍縮上、このようなことも条約上できなければだめなのでございまして、そういうことがなければつくることができないということが一つの半面でありますが、条約に規定がない限りはできない、こういうことであるように理解しております。
  87. 野田武夫

    野田委員長 三参考人には御多用中のところ、長時間にわたり貴重な御意見を述べていただき、ありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次いで、服部参考人に申し上げますが、大へん長い間お待ちいただきまして恐縮でございます。引き続いて御意見を承ることにいたします。服部参考人
  88. 服部學

    服部参考人 私は立教大学原子力研究所に職を奉じております服部でございます。私、原子力の平和利用ということについて日夜研究を続けている人間でございますが、御存じのように、日本原子力規制法によりますと、原子炉を設置いたしました場合には、その運転の保安のために内閣総理大臣の認可を得て原子炉主任技術者というものが必要になっております。私は立教大学原子力研究所の原子炉主任技術者をいたしております。その職責上原子炉の安全性ということは最も関心を持っておることでございます。私はまた物理学者といたしまして原子炉の安全性という問題についてこれまでも勉強して参りましたので、その立場から安全性の問題について意見を述べさせていただきたいと思います。  私たちが原子力の平和利用の研究をいたします場合、もちろん、先ほどいろいろと御意見のございましたように、原子力というものは平和のために用いますならば非常に大きな可能性を持っている。人類の幸福のために非常に大きな可能性を持っているものであります。日本原子力研究は平和利用に限るということははっきりいたしております。日本原子力研究が始まりましたのは、ちょうど今から九年前の一九五四年だったと思います。この国会におきまして原子力予算が初めて出されたときから始まるわけでございます。その時期というのは、まさにまたくしくもビキニで第五福龍丸が水爆実験の灰を浴びたその時期て一致しているわけであります。そして、その時期のことを思い起こしますと、当時、世界原子力研究というものは、そのほとんどすべてが軍事利用のための研究である。平和利用の研究というものは非常にわずかしか行なわれなかった時期に日本の、原子力研究というのが始められた。そして、その時期に外国では軍事利用をやっているけれども、日本原子力の研究、開発利用というものはあくまで平和利用だけに限るのだということを宣言した。これが学術会議で声明されました原子力平和利用の三原則というものでございます。その三原則国内的な措置というものが原子力基本法という形になって現われております。もちろん、基本法というのは日本の法律でございますから、日本国内だけに適用するというのは当然のことでございますが、私たちのこの原子力を平和利用にだけ使いたいというのは、これは何も日本だけのことではなく、世界のすべての原子力開発利用というものが軍事利用はやめて平和利用の方向に進んでもらいたいという願いがあったわけでございます。そして、そのことによってこの原子力という問題は国際緊張の中でも非常に大きな役割を占めてきております。この原子力を平和のためのみに使うことによって、この国際緊張を幾らかでも緩和する方向に進みたいというのが私たち科学者の心からの願いであったわけであります。  ところで、この、原子力潜水艦の問題でございますが、これは、先ほど田村先生もおっしゃいましたように、原子力潜水艦というものは、原子炉を積んでいるから、原子炉を備えつけているということによって、軍艦という性格には全く変わりはないんだということでございます。まさに、その原子力潜水艦というのは、少なくとも原子力の平和利用ではなくて、これを潜水艦という軍艦のために利用している原子力軍事利用であるという点については、どなたも御異議のないところであると思います。  そして、簡単に申しますと、この原子力潜水艦原子炉というものは、もちろん詳細な数字は発表されておりませんが、大体出力にいたしまして五万キロワット程度の原子炉を推進機関として積んでいる。五万キロワットの原子炉と申しますと、これは、日本で現在開発しております動力試験炉というのがちょうど五万キロワットの原子炉でございます。要するに、原子力潜水艦一隻が動いているということは、動力用の原子炉が一台動いているということと同じことでございます。この原子力潜水艦の寄港が問題になっております横須賀に私たちの原子炉が置いてあるわけでありますが、その立教大学の研究用の原子炉というものは、出力百キロワット、原子炉としては非常に小さい、いわばおもちゃのような原子炉でございます。しかし、このような小さな原子炉を設置する場合にでも、これまでの日本原子炉というものは、設置する場合に、国産の原子炉であっても、輸入の原子炉であっても、すべて政府の自主的な安全審査というものが行なわれております。それがすでに、主としてアメリカでございますが、アメリカで長い間運転をして安全であったという原子炉につきましても、これを日本政府の自主的な立場から安全審査専門部会で審査する、現在では安全審査会という名前になっておりますが、安全審査会において自主的な審査を行なう。その許可があって初めて原子炉の設置ができる。そしてまた、私たちのような小さな原子炉の場合でも、この原子炉を運転するという場合には、やはり規制法に従って非常にきびしい規制を受けているわけでございます。これは、現在の段階において、原子力というものについて、国民に少しでも悪い影響がないように放射線から守って、しかもその原子力の大きな利益を求めていこうという場合に当然の措置であると私どもも考えております。  ところが、このたびの原子力潜水艦の寄港につきましては、これまでの新聞報道その他国会の御審議等を拝見いたしますと、どうも日本政府の自主的な安全審査というものができないのではないかというふうに判断されるわけでございます。もし自主的な安全審査というものをやらないでこの五万キロワットの原子炉が横須賀なり佐世保なりの港に入ってくる、つまり一時的にそこに大きな動力用の原子炉が設置されるということが安全審査がなしに行なわれる、一方では平和利用のための小型の研究用原子炉には非常にきびしい措置がとられているということになりますと、日本原子力は平和利用にきびしく軍事利用に甘いということにもなりかねないわけであります。これまでの原子炉の安全審査というものは、施設自体の設計、構造はもちろんでありますが、そればかりでなく、原子炉が設置される周辺地域の状況、環境といったようなもの、それから、原子炉施設の安全対策、さらに、万一の事故が生じたときの緊急対策、事故対策、こういった幾つかのものが不可欠の要素となっております。先ほども御意見が出ましたけれども、今度の原子力潜水艦原子炉が、外国の港に百回以上入港して、それで事故を起こさなかったから安全であろうといったようなことは、今までの日本の平和利用の原子力開発の場合はいまだかつて行なわれなかったことであります。ただ百回外国の港に入港したから安全だというようなばかげた安全審査で今後日本原子力が進められるということになると、これはゆゆしき問題であると私は考えるわけであります。  また、この際思い起こしていただきたいことは、先ほどほかの先生の御意見にもございましたが、ウィンズケールというところで原子炉事故を起こした。これは大へん有名な事故でございます。このウィンズケールの事故が起こります前に、イギリス原子力開発の責任ある地位にあったソールズベリー卿が、ウィンズケールの原子炉というものは本質的に安全な原子炉である、アメリカ型と違って安全性が高い、絶対事故を起こすことがないと声明したまさにその直後に、このウィンズケールの事故が起こったということ、これを思い出していただきたいということであります。この原子炉の安全性ということは、たとえば、昼間のうちに走れとか、航路をきめろとか、あるいは港では原子炉を運転していた方がいいのかとめておいた方がいいのかといった海難予防の措置、そういった枝葉のことでなく、もっと本質的な安全性、原子炉施設自体の安全性というものがまず検討されなければならないと私は思うわけであります。  もちろん、先ほども申しましたように、日本原子力基本法あるいは原子力規制法というものは日本国内法でございますから、これが外国軍艦に適用できないということも私存じております。しかし、この潜水艦の寄港する横須賀、佐世保という港は日本の港でございます。この原子力艦の停泊している回りに住んでいるのは日本人でございます。万一の事故で災害が起こった場合、その災害というものは、主権を越えて日本人の側に振りかかってくる問題であります。もちろん、日本でも原子力船の計画というものが進められていること、これは事実でございます。だから、日本でも原子力船の計画を進めているくらいだから寄港を認めてもいいじゃないかという議論をこれまでちらほら私耳にいたしております。それから、日本原子力船がつくられる場合、この日本原子力船というものは、当然日本政府の安全審査という段階を経るわけであります。そうしてまた、陸上の原子炉と違って、船舶に積んだ原子炉の安全審査のためにどういう措置が必要であるかということについては、これは専門家が今後検討すべき問題として残っているわけでございます。  現在のアメリカ原子力潜水艦、もちろん発表された資料は少ないわけでございますが、得られた範囲で、それではこの原子力潜水艦の現在積んでいる原子炉というものがどの程度安全性を確保しているものかどうかということを、得られた資料の中から考えてみますと、少なくとも私の立場からは、現在原子力潜水艦の積んでいる原子炉というものが、ほかの原子力閥船、サバンナ号であるとかそういった原子力商船、あるいは日本で計画されているような原子力船に積む原子炉に比べて、安全性というものの考慮が非常に欠けておるというふうに判断せざるを得ないのでございます。これにつきましては、私、先日、科学技術振興特別委員会でございますか、あそこでも意見を申し上げたわけでございますが、その後、先日、日本学術会議で放射能の海洋汚染に関るシンポジウムがございまして、その席で私が原子力船と海洋汚染について御報告をいたしましたときに、原子力局の方から、お前は原子力潜水艦原子炉は安全でないと言っておるけれども、それはほんとうに根拠があるのかという御質問を受けました。私は科学者でございますから、根拠のないことは決して申し上げません。私が現在の原子力潜水艦原子炉をほかのサバンナ号その他に積んである原子炉に比べて安全性が少ないと申し上げている根拠は三つございます。一つは、設計方針に、非常に航続距離を延ばすために超過反応度を大きくとっている。これは、平たい言葉で申しますと、原子炉の中に余分な燃料を一ぺんに詰め込んでおく、そして航続距離を延ばそう、こういう考え方がとられております。もう一つは、制御機構を簡単にするために制御棒の数を減らす設計にしている。これはそういう基本方針で設計したということが発表されております。そういう点は、ほかの原子炉と比較いたしますと、SL1という原子炉がございますが、これも一種の運用の動力炉であります。このSL1と、設計の基本的な考え方、設計方針というものが非常によく似ております。この点につきましては、これは私だけの判断ではございません。ちょうど現在イギリスから大ぜいの原子力関係の学者が来ておられますが、その中にイギリス原子炉の安全性を特に研究しておられるファーマー博士という方がございます。このファーマーさんに昨晩ちょうど私が会う機会がございましたものですから、原子力潜水艦原子炉の話を少しいたしました。実はイギリスでも現在ドレッドノートという原子力潜水艦がほとんど完成しております。これに積んでおります原子炉は実はアメリカ原子力潜水艦に積んでおります原子炉と全く同じものを積んでおります。ファーマーさんは、このS5Wという原子炉につきまして、ある程度のことを御存じだったようでございます。そして、私とお話しいたしました結果、このS5Wという原子炉は基本的な設計がSL1に似ているという点では私と全く意見が一致いたしました。決して私の独断で申し上げていることではございません。  ところで、申し上げるのでございますが、このSL1という原子炉は一昨年非常に大きな事故を起こしました。原子炉事故で人が三人死んだということは、この原子炉が初めてでございます。そして、この原子炉がなぜこういう事故を起こしたかということにつきまして、アメリカ原子力委員会は非常に大規模な検討をいたしました。しかし、結局、なぜこのSL1が事故を起こしたかということについてはきめ手がわからないということが最近発表されております。結局、平たい言葉で言いますと、原因不明の事故だったわけでございます。このSL1に非常によく似た設計方針でつくられた原子炉原子力潜水艦に現在積まれているのだということであります。  それから、もう一つ原子力商船のサバンナ号といったもの、これは確かにいろいろなデータが公表されております。そして、それを拝見いたします限り、確かに安全性ということに非常に留意しておるように見受けられます。そのサバンナ号の安全性を強調した論文と申しますか文書があります。ニュークレオニクス・ウィークという、かなり正確な情報を伝えてくれる雑誌がございますが、これの一九六二年の七月五日号に載っている記事でございますが、サバンナ号原子炉は、原子炉にコンテナがついている、しかも、そのコンテナの外側にもう一つ炉室がある、何重にも外側が囲まれているのだ、それで非常に安全性が高められている、ところが、海軍原子炉はコンテナがないではないか、この海軍のコンテナのない原子炉が走り回っているくらいだから、より非常に安全なサバンナ号は走り回っても大丈夫だろうという記事でございます。逆に申しますと、サバンナ号に比べて、原子力潜水艦原子炉というものは安全性に対する考慮が足りないということがアメリカの雑誌自身にも書いてあるわけでございます。私は決して私だけの勝手な推測を申し上げているのではなくて、アメリカ側で発表された資料に基づきましてこういうことを申しているわけでございます。  先ほど林先生からもお話がありましたように、潜水艦というのは軍艦でございます。しかも、相手の軍艦を沈めるというような目的のための攻撃用潜水艦というような場合には、少なくとも戦時にはそれが沈むということは当然考えておかなければならないと思います。また、そういった戦時でなくても、原子炉というものは当然事故対策というものを絶えず考えておかなければならない。事故につきましては、先ほど交通事故に比べて原子炉事故は少ないのじゃないかというお話がありましたけれども、私は、むしろ、現在の段階では、原子炉事故というものはほかのものよりも多いと考えております。と申しますのは、現在世界にあります原子炉というものは、まだ多分五百台をこえていないと思うのです。その中で三つも四つも事故が起こっております。先ほど田村先生ですか指摘されました、ウィンズケールの事故、それからユーゴのビンカ、これは原子炉の少し小さいものでございます。それからアイダホ、これはEBRのことをおっしゃったと思います。そのあとでも先ほど言ったSL1という大事故が起こっております。東京の町を何十万台の自動車が走っているか知りませんけれども、それと比べて、数百台の原子炉の中でもうこれだけの事故が起こっているということは、原子炉事故というものは決してそれほど少ないものではないというふうに私は考えるわけであります。  そしてまた、この原子炉事故というもので起こった特に放射能による影響というものは、非常に範囲が広まるおそれがあるということです。これはほかの交通事故あるいは火事といったような事故とは性格が違うわけでございます。そういった事故が起こらなくても、平常時の放射能の問題は当然考えておかなければならない問題でございます。現在原子力潜水艦がいろいろ放射性の廃棄物を出しておりますけれども、それのおもなものは、原子炉の冷却水と、それから、冷却水の放射能をとるために使ったイオン交換樹脂の二種類であるということが、これはアメリカの上下両院合同原子力委員会に提出された資料がありまして、数量その他がかなり古い数字ではございますけれども、発表された資料がございます。それによりますと、アメリカ原子力潜水艦は、現在沿岸から十二海里以上離れたところではほとんど制限をつけずに冷却水及びイオン交換樹脂を直接海洋投棄いたしております。先ほど安藤先生の御質問でございましたか、そういうものを完全に包装して捨てる方法はないのかというお話がございましたけれども、アメリカ原子力潜水艦はこれを直接海洋投棄しております。イオン交換樹脂等も、これは固体のものでございますが、これを直接海洋投棄しております。また、いろいろな包装をいたしましてこれを海中に投棄いたしました場合でも、先ほど申しました先日の学術会議の放射能による海洋汚染のシンポジウムで三宅先生が御報告されたところによりますと、せいぜい二十年から三十年しか寿命がないということが報告されております。先ほど申しましたように、十二海里以上ではイオン交換樹脂あるいは冷却水はかなりの放射能を帯びております。もちろん、そのほかの陸上の原子力施設、たとえば、燃料の精錬の工場であるとか、あるいは使用済み燃料の再処理プラントといったようなところから海洋に投棄されている。現在アメリカイギリスというようなところではかなりの放射性物質を海洋に排出いたしておりますが、それと比べますと確かに量や濃度も少ないかもしれませんけれども、日本で現在私たちが適用を受けております放射性物質の海洋投棄に関する基準と比べますと、この原子力潜水艦が実際に投棄している放射性物質の濃度というものは、大体百万倍から千万倍濃い濃度のものを投棄いたしております。数字で申しますならば、大体十のマイナス一乗マイクロキューリー・パー・ミリリッターという程度のものをこの原子力潜水艦は投棄いたしております。それに比べて、私ども立教大学原子力研究所では十のマイナス八乗マイクロキューリー・パー・ミリリッター程度のものしか流しておりませんし、また東海村の場合でも十のマイナス七乗マイクロキューリー・パー・ミリリッターで、百万倍から千万倍濃い濃度のものを直接海洋に投棄しているということは、日本でものを考える場合には当然問題にしなければならない点ではないかと思います。それから、十二海里以内の場合には、イオン交換樹脂は投棄してはならないことになっております。しかし、冷却水につきましてはある程度の条件をつけて海洋に直接投棄をしてもよいということが、アメリカ海軍省の訓令で出ております。そういった、平常時でも、放射能のたれ流しと申しますか、平たい言葉で言うとたれ流しという問題が、日本の基準で考えれば非常に問題があるのだということでございます。  それから、もう一つここの席で私が申し上げたいことは、これまでの日本原子力の平和利用の場合の安全性については、すべて専門家の判断というものにゆだねられてきたわけです。安全審査につきましても、初めは原子力委員会の下部機構でございました安全審査専門部会というものがこれに当たって参ったわけでございますが、この国会におきまして、原子力利用を推進する立場と国民を放射線から守る立場とは分けるのが望ましいということで、しかも安全審査の地位を確立せよという国会の決議に基づきまして、安全審査専門部会が現在では安全審査会という機構になっております。ところが、こういった安全審査会その他の専門家に今度の問題が全然知らされていないという点に問題がある。私たちもこの原子力潜水艦の問題は新聞を通じてしか知ることができない。まるで韓国の政治の情勢でも見ているようなものです。日本専門家というものがある意味でつんぼさじきに置かれているという点に問題があるのではないか。  先日、大学関係のおもな原子力関係の研究所の所長さん方の連名になった、湯川先生その他の声明が出されたわけです。これは新聞紙上等ではごく簡単にしか伝えられておらないようでございます。あまり長い声明ではございませんので、ちょっと時間を拝借してここに紹介させていただきたいと思います。「声明、わが国の原子力研究開発および利用は、国民の将来に少なからぬ福祉をもたらすとの確信のもとに進められて来た。唯一の原爆被災国であり、またビキニ水爆実験の際にも犠牲者を出したわが国の場合、放射能災害に対する国民感情には極めて厳しいものがある。そのなかにあって今日までわが国の原子力研究開発および利用を進めえたのは、原子力基本法のもとにその目的を明らかに平和利用に限定し、さらにまた原子力施設に対する審査と規制を実施して、公衆の安全保持に努力して来たからにほかならない。このたび米国原子力潜水艦の寄港問題に関し、国会において明らかにされつつある政府の態度を見るとき、われわれはつぎの事柄についてとくに憂慮せざるをえない。そもそも原子力の安全性は、施設自体の資金性の確保、事故時の緊急対策、およびそれらの努力にもかかわらず万一にも公衆災害を生じた場合の補償措置の確立により、はじめて十分の保証がえられるものであるが、そのいずれに関しても、対象とする施設の安全性の検討を行なうことが不可欠の要件であり、それなしには上述の諸措置の適正を期することはできないものと考えられる。その故にこそ、これまで原子炉を輸入するに当っては、輸入に先だってその都度、わが国において独自の立場に立って安全審査を実施して来たのであり、そのような努力を積み重ねることによって、近い将来に原子力発電を大規模に利用しうる社会的素地がつちかわれると期待されて来たのである。原子力潜水盤の寄港は、わが国の国内法の適用外であるとしても、この問題に関連して国民の安全を確保すべき原子力委員会責任は、国内原子炉施設の場合と何ら異なるところはないと考える。仮りにも、この点に関し、わが国において自主的な立場に立った安全性の検討と確認を行なうことなく、しかも不幸にして将来公衆災害が発生した場合を思えば、原子力委員会に寄せる国民の信頼は全く失墜し、その後のわが国の原子力平和利用の発展に著しい障害となるであろう。このような考え方に立って、われわれは、去る三月十一日、日本学術会議が、原子力潜水艦日本港湾寄港問題について政府に申し入れた勧告の重要性を認め、その申入れの内容を強く支持するものである。」、これに署名しておられますのは、もと原子力委員をしておられました京都大学の基礎物理学研究所長の湯川先生、それから、同じ京都大学で関西炉をつくっておる原子炉建築本部長の木村先生、東京大学の原子核研究所長の野中先生、名古屋大学教授のプラズマ研究所長の伏見先生、立教大学原子力研究所長の中川先生、そういった各大学のまさに平和利用を推進しておられる原子力関係の研究所の各所長の先生方、それに加えまして、この点私大事だと思うのでございますが、安全審査会の会長をしておられる山崎先生、それから、放射線審議会その他でやはり政府のこの問題の関係するいろいろな委員を勤めておられます檜山先生、田島先生あるいは三宅先生、こういった方々が名前を連ねておられるわけであります。つまり、こういった本来なら安全性について最も責任ある立場に置かれている先生方が全くつんぼさじきに置かれているというところに、この原子力潜水艦の今度の寄港問題についての大きな問題があるのではないかと私考えるわけであります。さらに、この声明を出されました二日あとの三月二十七日には、百五十三名の原子科学者の連名による声明というものも出されております。この声明は現在非常に急速に署名者の数がふえているという事実もあわせて御報告いたしておきたいと思うわけでございます。せっかくこれまで日本原子力というものが秘密をなしにしてすべてを明らかにするということで短時間の間にとにかく一応ここまで成果をあげてきたのに、この原子力潜水艦の問題を契機として、何か原子力委員会だけで秘密に事を行なうというようなことがあっては困るというふうに私たちは心配するわけでございます。  それから、安全性の問題と同時に、補償の問題というのがやはり論議になっているようでございますが、補償の問題と安全性の問題というのは当然全く別な問題でございます。補償を十分にするからといったところで、安全性というものは決して高まるものではございません。それから、この際もう一つ指摘しておきたいことは、放射能に関する災害というものには補償という考え方が非常にむずかしくなってくるという点でございます。現在の平和利用の場合につきましても、日本では、原子力損害補償法、——正確な名前を私覚えておりませんが、補償法という法律がございます。しかし、この法律に従って実際に被害を受けた人がいざ補償をもらおうという場合には、これはみずから立証しなければならないということになっています。原子力災害、ことに放射能の災害というものは、その原因と結果というものが非常に不明確であるということが特徴でございます。例を申しますならば、広島で放射能を浴びた方が最近になってその後遺症が現われるという例が今でも出ております。たとえば、私横須賀の住民の一人でございますが、私が十年先に白血病になったといたします。そのときに、これは原子力潜水艦が横須賀に出港したためなのか、あるいは私が原子力研究所に勤めているためなのか、その辺の原因というものは、十年あとになって白血病になったからといってこれを確かめる方法はないわけであります。そういう点で、補償すればいいじゃないか、事故が起こったら補償するのだという議論は全く成り立たないのではないかという点であります。  だいぶ時間もたったようでございますが……。
  89. 野田武夫

    野田委員長 服部参考人に申し上げますが、大へん時間も超過しておりますし、質問者がありますから、そのとき一つお述べ願います。
  90. 服部學

    服部参考人 それでは、結論を申し上げます。  その安全性を自主的に確認できないという場合にはどうするかという問題であります。安保で当然入ってくる権利があるんだとか、あるいは軍艦日本の主権が及ばないということは、私たち自然科学者も存じております。しかし、それならば申し上げたいのでございますが、黒いジェット、U2、これだってやはり安保の向こうの権利としては入ってくることが可能であるかもしれない。しかし、現実には黒いジェット機は日本には入ってきていないという事実。やはり、法律の解釈の問題だけではなくて、現実の問題を国民の立場に立って解決していくということが、これが国際政治であり、外交という問題であろうと私たち考えております。せっかく日本原子力というものがこれまで三原則によって秘密なしということでここまで進歩してきたこの際に、国際緊張というものを激化するようなことは避けていただきたい。これは、日本原子力の平和利用をさらに推進するという意味から言っても、この国際緊張を激化するような方向というものはどうかとっていただきたくないというのが、これが原子科学者の一人としての私のお願いでございます。(拍手)
  91. 野田武夫

    野田委員長 これにて服部参考人の御意見の開陳は終わりました。  これより服部参考人に対する質疑を行ないます。穗積七郎君。
  92. 穗積七郎

    穗積委員 お尋ねしたいと思ったことに対して、事前にすでに大部分のものは御意見を開陳していただきましたので、ただ、最後におっしゃった補償の問題が、実は、政府が入港せしめる場合に、国民に対する安心感を与える非常な口実といいますか、説明になっているわけです。その点は、私は、原子力潜水艦の放射能による原因でこの事故、災害が生じた、あるいは病気が起きたというようなことを立証することは、ほとんど絶望に近い状態ではないかというふうに推測しておったわけですが、それは、言うまでもなく、起きたすべてについて向こうが補償するのではなく、逆に、補償請求者の方から立証の責任があるわけですから、その点について、今おっしゃいましたように、われわれの心配と同様に、ほとんど立証の可能性は科学的には困難であるという点を、もうちょっと理由をあげて説明していただいておきましたら、この問題の理解に大へん参考になると思います。
  93. 服部學

    服部参考人 先ほど申したことでございますけれども、放射能災害というものにつきましては、まだまだわかっていない面というものがたくさんございます。何しろ、放射能というものを人類が見つけてからまだそれほど長い時間もたっておりません。せいぜい五、六十年しかたっておりませんし、特に、この放射線を非常に大規模に使うようになってから年月が非常に浅いわけでございます。そういう点から申しましても、放射線の人体に及ぼす影響、特に遺伝的な影響といったような問題につきましては、まだまだ解明されていない問題がたくさんあるわけでございます。そういう点が一つ。  それから、先ほども例を引きましたけれども、放射線をたくさん浴びたために白血病になったという場合でも、白血病という病気は、これは放射線を浴びなくてもなることがある病気でございます。白血病になった患者が、自分は放射線を浴びたために白血病になったのか、あるいは別な原因で白血病になったのかということは、これは白血病の症状からだけでは判定することはできないわけでございます。白血病になって、私はどうも放射能を浴びたためらしいと言っても、お前の白血病は別な原因で起こったのかもしれないじゃないかと言われれば、これを原子力潜水艦の影響であるということを実証することはできないわけでございます。そういう点に問題があるのではないかというふうに考えるわけでございます。  それから、もちろん、この災害の中で、明らかに因果関係のはっきりしているものも、ある程度のものはあると思います。たとえば、原子炉の平政によって放射能の汚染を受けたということがはっきりしているケースはもちろんあると思いますけれども、その影響の及ぶ範囲というものが非常に広がっている。たとえば、原子力潜水艦がイオン交換樹脂を捨てた、たまたまその喰い放射能が付着しているものを魚が食べた、その魚が泳いでいってどこかでつかまった、その魚をたまたま食べた人がその影響を受けたといったような場合に、これは時間的にもまた地理的にも非常に遠いところで結果が生ずるということがあり得る。これが、ほかの火事とか交通事故とかいったものと、この原子力災害との非常に大きな性格の違いではないかというふうに私は考えます。
  94. 穗積七郎

    穗積委員 これは衛生学者に伺うべきことだと思いますが、私は、放射能による人体災害は、白血病だけでなくて、ガンであるとか、あるいは白血球の低下であるとか、それから低血圧症を極度に生じてくるとか、いろいろな態様が、人体に及ぼす影響の中にあり得ると思います。それらについては、原子力学名のあなたにお尋ねするのはちょっと何ですけれども、われわれよりは非常に近いところにおられるわけですから、人体に及ぼす影響は、白血病だけでなくて、非常に多様で、多くの影響を持ち、いろいろな態様の病気に発現するというような考え、これは私は決して杞憂であったり取り越し苦労ではないように思いますが、御所見はいかがでございましょうか。
  95. 服部學

    服部参考人 私はお医者さんの方のことは専門ではございませんから、正確にお答えできるかわからないのでございますが、放射線を浴びて、放射線の人体に対する影響というものは、非常に大量に放射線を浴びた場合、それから、わずかずつの放射線を長い時間にわたって浴びた場合、それぞれ影響の現れ方が異なってまいります。もちろん、非常に大量の放射線を一時に浴びますと、たとえば数百レントゲンといったような大量の線量を一時に浴びますと、大体浴びた人の五〇%はすぐ死んでしまうというような、非常に激しい場合がある。それから、非常にわずかずつの放射線であっても、長い間、しかもそれが非常に広い範囲の人人に当てた場合の遺伝的な影響、こういったものは確率的な現象で起こってくるわけであります。たとえば、遺伝的な影響が、今までは百万人に一人かたわが生まれていたのが、放射線を多くの人がわずかずつ浴びるようになったために、百万人に二人、百万人に三人になる。放射線を浴びた人がすべて病気になるのじゃなくて、その中で放射線の影響を受けた人の出る確率がふえてくるという点が、この放射線障害の大きな特徴の一つであると思います。そういうわけで、確かに、先生のおっしゃるように、多種多様な現われ方をして参ります。  それから、もう一つ、久保山さんのときの例を思い出していただくといいと思うのでございますが、久保山さんは、最終的には、アメリカ側の判断は、たしか黄疸で死んだということにされております。確かになくなられたときは黄疸でなくなられたと思います。しかし、なぜ黄疸になったかというと、久保山さんは非常に大量の放射線を浴びて、からだの機能が弱ってしまった。そのために黄疸という病気が現われた。そういう併発症状ということを考えていきますと、やはりこれは非常に多種多様なものが現われてくるということは、当然考えられると思います。
  96. 穗積七郎

    穗積委員 もう一点だけ。一番大事な点は、先ほどもお話があり、私も他の参考人に御質問いたしましたが、自主的審査の問題です。これはあとで政府との間で審議を深めたいと思いますけれども、ちょっとお尋ねしておきたいのは、その安全性について自主的審査を日本側からやる場合に、船に科学者が乗り込む方法一つあると思うのですけれども、そうではなくて、こちらから要求するデータを全部そろえて、科学者がそのデータによって審査をして、危険性なり安全性の程度というものを判断することはできましょうか。  さらに、関連をいたしまして、一括してお答えしていただきたいのは、先ほどのお話でございますと、審査の具体的な方法についてはこれからまとめていく可能性が十分あるというふうにお話がありましたけれども、それらについては、日本の今の科学者ないしは、技術者の水準をもってすれば、自主的審査によって完全にその安全性の有無つまり安全性の程度問題かと思いますけれども、それは日本側において完全に審査能力を持っておるというふうにわれわれは理解していいと思いますが、その安全審査の日本側の自主性の問題についての方法、それから能力の問題についてお答えをいただきたいと思います。
  97. 服部學

    服部参考人 今お尋ねありました中で、学名が乗り組んでいって調べればわかるかどうかというお尋ねがございましたけれども、これは不可能だと思います。と申しますのは、大型の原子炉が何百日も航海をしてきた場合に、能が入っております。その外側に近づくことはできますけれども、中の原子炉の炉心を私たちが実際に目で見て検査するということは不可能であります。ですから、これは、設計がどうなっているか、構造がどうなっているかということを図面でまず調べる、それから、性能等についても、図面あるいはその計算というものを審査するということが、どうしても必要になるのではないかと思います。  それから、審査の具体的な方法につきましては、これまで日本の安全審査専門部会あるいは安全審査会で幾つかの原子炉の安全審査を専門家の方が行なってこられたわけでございます。もちろん、その過程の中でいろいろと問題の起こったこともございますけれども、しかし、現在の日本専門家の水準というものは、十分なデータさえ得られればそれを判断する能力は持っているというふうに考えております。ただし、必要とするデータがすべて公表されてくれないことには困るわけです。この辺は、常識で考えてくれとか、あるいは推定でどうだろうということでは、やはり自主的な審査ということにはならないんじゃないかというふうに考えております。
  98. 野田武夫

    野田委員長 服部参考人には御多用中のところ長時間にわたり貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  これにて本日の参考人に関する議事は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十五分散会