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1963-02-18 第43回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年二月十八日(月曜日)    午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 安藤  覺君 理事 福田 篤泰君    理事 松本 俊一君 理事 戸叶 里子君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       宇都宮徳馬君    川村善八郎君       北澤 直吉君    森下 國雄君       黒田 寿男君    河野  密君       楢崎弥之助君    帆足  計君       細迫 兼光君    森島 守人君       受田 新吉君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         内閣法制局長官 林  修三君         外務政務次官  飯塚 定輔君         外務事務官         (大臣官房長) 湯川 盛夫君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         外務事務官         (国際連合局         長)      高橋  覺君         大蔵事務官         (為替局長)  村上  一君         通商産業事務官         (通商局長)  松村 敬一君  委員外出席者         外務事務官         (欧亜局中近東         アフリカ部長) 杉浦  徳君         外務事務官         (経済局次長) 中山 賀博君         外務事務官         (条約局参事         官)      須之部量三君         農林事務官         (農地局参事         官)      橘  武夫君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 二月十一日  委員田澤吉郎辞任につき、その補欠として  松野頼三君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員松野頼三君辞任につき、その補欠として田  澤吉郎君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員岡田春夫君及び西尾末廣君辞任につき、そ  の補欠として楢崎弥之助君及び受田新吉君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員楢崎弥之助君及び受田新吉辞任につき、  その補欠として岡田春夫君及び西尾末廣君が議  長の指名委員に選任された。 同日  理事菅太郎君同日理事辞任につき、その補欠と  して古川丈吉君が理事に当選した。     ————————————— 二月十四日  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国ニュー・ジーラン  ドとの間の条約締結について承認を求めるの  件(条約第六号)  国際労働機関憲章改正に関する文書締結に  ついて承認を求めるの件(条約第一一号)  国際連合特権及び免除に関する条約締結に  ついて承認を求めるの件(条約第七号)(予)  専門機関特権及び免除に関する条約締結に  ついて承認を求めるの件(条約第八号)(予)  国際原子力機関特権及び免除に関する協定の  締結について承認を求めるの件(条約第九号)  (予)  国際地震工学研修所を設立するための国際連合  特別基金援助に関する日本国政府特別基金  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第一〇号)(予) 同月九日  日中国交回復等に関する請願外十四件(黒田壽  男君紹介)(第八三〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国ニュー・ジーラン  ドとの間の条約締結について承認を求めるの  件(条約第六号)  国際労働機関憲章改正に関する文書締結に  ついて承認を求めるの件(条約第一一号)  国際連合特権及び免除に関する条約締結に  ついて承認を求めるの件(条約第七号)(予)  専門機関特権及び免除に関する条約締結に  ついて承認を求めるの件(条約第八号)(予)  国際原子力機関特権及び免除に関する協定の  締結について承認を求めるの件(条約第九号)  (予)  国際地震工学研修所を設立するための国際連合  特別基金援助に関する日本国政府特別基金  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第一〇号)(予)  国際情勢に関する件(日韓及び日中問題)      ————◇—————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。  菅太郎君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお、理事辞任に伴う補欠選任につきましては委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認め委員長は、理事古川丈吉君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 野田武夫

    野田委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  戸叶里子君。
  6. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はこの前の委員会総理大臣の御出席をお願いしておりましたが、おいでになりませんでしたので、総理大臣に対する質問ができませんでした。そこで、きょうはこの続きをお願いしたいと思っております。  きょうはあとから穗積委員から韓国政情不安定の問題等について質問がありますので、私はこの点についてはいたしませんが、一点だけお伺いしておきたいことは、今日のように朝に夕に韓国政情が変わっている、こういう国と、今なさっているような日韓会談というものが続けられていって、もしもそれが何らかの妥結を見た場合には、おそらく、民政移管になったあと国会ができたあとにおいて、その会談でまとまったものというものも認められないと思いますけれども、今日のような政情不安の韓国と、なお交渉をそのまま続けられていくのかどうか、この点だけをお伺いして、この前質問してお答えいただけなかった問題に触れていきたいと思います。
  7. 池田勇人

    池田国務大臣 日韓関係国交正常化は、われわれ多年の念願であります。従いまして、このわれわれの多年の念願を実現すべく、向こうさんもこれに乗ってきておられる。われわれは誠意をもってわれわれの多年の念願を実現しようとしておるのであります。韓国における政情について云々されておりますが、われわれは、今の政権を適当な相手としていっておるのであります。政情の変化につきましては、私はとやかく申し上げることは差し控えたいと思います。
  8. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ただ、私が気になりますことは、この間池田さんの親書を持って行かれた大野さんが、日本に帰られて、最初に羽田での記者会見でおっしゃったことは、韓国に政党が結成されたり議会が復活してはとてもむずかしくなるから、早く日韓交渉を進めるのだということをおっしゃっておるわけです。こういう点から見ましても、そういう考え方もと韓国との交渉をやるというならば、即座にやめるべきではないか、こういうふうに考えるわけで、大野さんは池田さんの親書を持って行かれたのですから、池田さんとしてもそういうふうな大野さんと同じ考え方を持ってやっていられるのじゃないかと思いますが、この点だけを確かめておきたいと思います。
  9. 池田勇人

    池田国務大臣 革命後の韓国におきまして、ほんとう民主主義政治体制ができる場合におきましては、いろいろの問題が起こってくることは、われわれも予想しなければなりません。しかし、これはあくまで韓国民の支持している韓国政府ということを相手にしてやるべきだと考えております。
  10. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この問題はあとから他の議員から伺いますので、私は、そのものずばりで、この間お答えいただけなかった問題に入りたいと思います。  一月二十九日の予算委員会で、大平外務大臣は、勝間田さんに答えまして、請求権の問題と経済協力との関係いかんということであるが、「これは全然無関係でございます。」と、これはその後におきましても何度もお答えになっておられます。請求権有償無償経済協力とは全然無関係である、こういうことをお答えになっていらっしゃるわけでございます。ところが、同じ日に池田総理大臣の御答弁を伺っておりますと、「分離国家に対して、その分離国家繁栄、ひいて韓国日本との関係、これをよくし、両方繁栄に導くために、請求権という条約上の権利を消滅させるために、無償あるいは有償のあれをやるということは、請求権変体でございます。変体というのは、請求権がそういうものに変わってくるということでございます。」、こういうふうにおっしゃって、請求権基礎を置いてこのように変わってきたものだということを答えておられます。このことは、総理大臣、お認めになりますか。
  11. 池田勇人

    池田国務大臣 請求権問題が有償無償経済協力に変わってきておる、全然別のものになったのであります。それはもうそのときの答弁で申しておるはずでございます。
  12. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、請求権問題が有償無償経済協力に変わったわけですか。請求権が変わってきたわけですね。
  13. 池田勇人

    池田国務大臣 請求権という問題が有償無償ということに変わってきた、そして、請求権条約によってなくなってしまう、こういうことなんです。
  14. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、請求権というものがあって、それが有償無償経済協力に変わったわけですね、請求権の土台は。ちょっと、うしろの林さん、だまっていて下さい。目ざわりになりますから。
  15. 池田勇人

    池田国務大臣 平和条約第二条並びに第四条によりまして、請求権という問題があるわけです。その請求権という問題をいろいろ討議していくとき、両方の意見が合わぬから、請求権問題というものはやめて、そして、かわりに有償無償経済協力に変わってきたわけです。そして、請求権問題が、今あったものがなくなってしまった、——なくなるということは答えております。
  16. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、請求権問題が変わって有償無償経済協力になったわけですね。
  17. 池田勇人

    池田国務大臣 請求権問題は変わって、すなわち、なくなって、そして有償無償経済協力になってきた。
  18. 戸叶里子

    ○戸叶委員 だといたしますと、大平外務大臣の言われる、請求権とは全然別個のものが有償無償経済協力であるというのと、池田さんの言われる、請求権があって、それが変わって、それが基礎になって有償無償経済協力になったというのとは、違うじゃありませんか。
  19. 池田勇人

    池田国務大臣 違いありません。請求権という問題を討議しておったところが、解決つかぬから、それはやめて、その請求権問題が有償無償経済協力に変わったのです。経過的に説明すればそう説明するのであります。今請求権問題はどうかというと、なくなってしまった。有償無償経済協力になった。なくなったということをはっきりさすためには、やはり、両国条約で、これはなくなるということを規定しなければいけない。私は請求権問題の経過的のことを話しておるのであります。請求権問題というものは、話をしようとしたが、なくなった、そして有償無償経済協力に変わってきた。請求権はどうなったかというと、有償無償経済協力根拠でも何でもない。もう甲というものがAというものに変わってきた。よろしゅうございますか。これを変体と言う。もうなくなって変わってきておる。甲というものがAというものに変わってきた。そういうことを経過的に変わってきたと言うのであります。
  20. 戸叶里子

    ○戸叶委員 「請求権がそういうものに変わってくるということでございます。」と答えていらっしゃいますよ。請求権がそういうものに変わってきたというのですね。そうすると、有償無償経済協力にいつの間にかくるっと変わってしまったわけなんですね。
  21. 池田勇人

    池田国務大臣 経過的に言えば、変わってきたということは、前の分がなくなって、そして新しいものが出てきた。ちょうど、甲か乙かと言っておるときに、甲と乙がカテゴリーが変わってきてAとBになってきた。それを経過的に変わってきたと申しているので、前の分がなくなった。なくなったということは、やはり条約ではっきり言っておかぬといかぬ。こういうことでございます。
  22. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、今回の有償無償経済協力平和条約四条との関係は一体どういうことになるわけですか。
  23. 池田勇人

    池田国務大臣 そこで、私が言った、変わってなくなったということが必要なんです。随伴的にこれはなくなった、こういうのと、経過的に変わってきたというのと、——平和条約四条の規定によって請求権というものを法的根拠のあるものでやっていこうという話をしたのですが、事実関係も何にもわからないし、法律的根拠そのこと自体が両方並行線で、これじゃいかぬというので、請求権問題というものを変えて有償無償に変わってきたわけなんです。カテゴリーが変わってきた。そこで、それじゃ、変わってきたということになると、もと請求権がこっちへどのくらい移っているかということがありますから、そこで私が言っているのです。甲か乙かということじゃなしに、AかBかということでございます。全然中に入っておりません。
  24. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、平和条約四条にいうところの請求権というものにこだわっていては少しも進まないから、これが突然に変わって有償無償経済協力になって、有償無償経済協力になると同時に、この平和条約のあの韓国請求権というものがなくなるのだ、しかし、それはなくなるといっても両国の間で話し合ってなくするんだ、こういうことになるわけですね。そうしますと、平和条約請求権というものは韓国はもうなくてもよろしいということになるわけですね。請求権有償無償経済協力というものは、池田さんは、これは請求権もとにして変形したのだとはおっしゃいますけれども、経済協力というものは請求権とは全然別です。そうですね。経済協力は、請求権なんかがなくたって、いつだってできることだと思うんです。そうでしょう。だけれども、今度の場合は平和条約四条に基づいてやったとおっしゃるわけですね。そうしますと、平和条約四条のどこに基づいて有償無償経済協力というものが出てきたわけなんでしょうか。
  25. 池田勇人

    池田国務大臣 前からお話している通りでございまして、平和条約四条によりまして請求権というものを議論、討議したわけなんです。並行線で片づきませんから、今度別の視野から経済協力ということで両方合意になれば、——なればでございます。そのときには平和条約四条請求権はなくなる、こういうことにしようとしておるのであります。
  26. 戸叶里子

    ○戸叶委員 平和条約四条はなくなるというのは、韓国との間の話し合いですね。そうすると、この平和条約四条に書いてあるのは、請求権処理日本国とこれらの当局との間の特別取りきめの主題とすると書いてあるわけです。それによって日本韓国との間で話し合って、そして特別取りきめとするわけでございますね。そうですね。そうだとすると、この平和条約四条には、請求権処理ということは書いてあるけれども、有償無償経済協力処理ということは書いてないわけです。とすると、この平和条約四条とは別の問題と考えていいわけですね。
  27. 池田勇人

    池田国務大臣 経過的には別の問題になりますから、今言ったように、両国間で、第四条請求権はこれで消滅するのだ、なくなるのだということを書く必要があるわけであります。もう首尾一貫するわけでございます。
  28. 戸叶里子

    ○戸叶委員 だとしますと、この平和条約四条というものはこれで全部片づいたということになるわけですか。どういうことになるわけですか。
  29. 池田勇人

    池田国務大臣 日韓間においては、そうしなければ、何のためにやるのかわかりません。
  30. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、日本韓国との間の話し合いにおきまして、韓国平和条約四条にいう請求権は放棄いたしましたと言うわけですね。
  31. 池田勇人

    池田国務大臣 放棄したという文句になりますか、どういう文句になりますか、それは両方話し合いできめますが、とにかく、四条請求権はこれで解決した、こういうことを両者合意すれば、それでいいと思います。
  32. 戸叶里子

    ○戸叶委員 放棄したというふうに言わなければ、解決したということの中にはいろいろな意味が含まれてくると思うのです。だから、その間に、韓国との間の話し合いで、韓国請求権の問題はこれでもう何とも言いませんということをはっきり条約の中でするわけでございますか。
  33. 池田勇人

    池田国務大臣 それは当然でございましょう。そんなことをしないような外務省なら、これはほうっておかれやしません。これは国会もあるわけでございます。
  34. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、この平和条約四条の中に書いてあるところのサッチ・エリアというのはどことどことどこをさすか、お伺いしたいと思います。
  35. 池田勇人

    池田国務大臣 これは二条によってきまっております。そこで、大韓民国とやった場合に、その協定効力はどこまで及ぶかという問題が起こってくると思います。そうでございましょう。だから、大韓民国とわれわれはやるわけでございます。しこうして、われわれとしては、大韓民国というものは三十八度以南を有効に支配し、その三十八度以南を合法的な独立国認めておりますから、それによってやっておるわけでございます。
  36. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この間、やはり予算委員会におきまして、総理大臣が、平和条約四条北朝鮮請求権はありますということをおっしゃったんですけれども、そのことはお認めになりますね。
  37. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の点がはっきりいたしませんが、はっきりおっしゃって下さい。
  38. 戸叶里子

    ○戸叶委員 二月二日の予算委員会で、北朝鮮請求権について、「平和条約四条の(a)項によりまして、双方請求権があると私は考えております。」、こういうふうに答弁されております。そのことは、韓国には四条に基づいて請求権があったけれども、これに肩がわりするものができた、北朝鮮にも四条の(a)項で請求権がある、こういうふうにおっしゃっていますが、それはお認めになりますですね。
  39. 池田勇人

    池田国務大臣 私らは今三十八度以南大韓民国交渉をやっておるのであります。大韓民国とやれば、三十八度線以北北鮮の問題は片づくか片づかぬか、こういう問題になりますと、われわれは、北朝鮮は国際的には独立国認められておりません。しかし、大韓民国は国際的に認められております。しかもそれは三十八度以南でございます。従いまして、韓国日本とのこの協定というものは、大韓民国相手としているのでございますから、三十八度以北の分は適用にならぬと心得ております。従いまして、平和条約四条によって北鮮の方の分はそのまま残ると私は解釈しております。従って、北鮮政府が今度合法的に国際的に認められるか、あるいは、われわれの念願するように、南も北も一緒になる場合におきましては、三十八度線以北の分につきましての両者の請求権は残るわけでございます。それを言っておるのであります。
  40. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、三十八度線以北請求権平和条約四条で残るということをお認めになったわけでございますね。
  41. 池田勇人

    池田国務大臣 その通りであります。
  42. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、平和条約四条にあるところのオーソリティズという中には北鮮も入っているわけでございますね。
  43. 池田勇人

    池田国務大臣 事実上のオーソリティには入っておりましょうが、国際的には認められておりません、独立国としては。
  44. 戸叶里子

    ○戸叶委員 国際的に認められておらなくても、総理大臣解釈としては、四条の(a)項によって北鮮請求権があるということをお認めになった以上、ここにあるオーソリティの中に北鮮もお認めになったことになるじゃありませんか。
  45. 池田勇人

    池田国務大臣 第四条オーソリティのうちに北鮮は入っておりません。御承知の通り平和条約を結ぶ以前において、一九四八年十二月の国連決議によりまするオーソリティというものは、大韓民国でございます。従いまして、あそこのオーソリティ大韓民国と心得ております。ただ、事実上大韓民国支配が及んでおりませんから、いわゆる常識的に言う地域的なオーソリティのうちには入っておりましょう。しかし、条約オーソリティのうちには入っていないと考えております。
  46. 戸叶里子

    ○戸叶委員 条約オーソリティに入っていないとおっしゃいますけれども、池田総理答弁では、はっきりおっしゃったことは、北鮮請求権がある、その根拠平和条約四条であるということをおっしゃっておるわけです。平和条約四条の(a)項には何と書いてあるかといえば、サッチ・オーソリティズということが書いてある。しからば、日本語四条の(a)項にあるということと、英文四条の(a)項の言葉とは、私は同じと解釈していいのではないかと思いますけれもど、この場合だけ、日本語の場合には四条の(a)項によって請求権があるということを認めていて、英文の方のオーソリティの中に入らないというのは、一体どういうわけでございますか。
  47. 池田勇人

    池田国務大臣 サッチ・オーソリティズというものを朝鮮だけにお考えになるからいけない。サッチ・オーソリティズというものは、台湾政府も入っておるのであります。しこうして、あのときのオーソリティというのは、平和条約に署名した四十八九国、そして、そのうち四十カ国が一九四八年の国連決議に参加しておるのであります。あのときの条約上のオーソリティというものは、今大韓民国をさしておるのであります。あるいは台湾をさしておるのであります、サッチ・オーソリティズというのは。しこうして、今私の言った請求権の問題につきましては、大韓民国とやっておるわけです。大韓民国支配権というものは北鮮に及んでおりません。大韓民国請求権問題を片づけた場合において、それが大韓民国支配の及んでいない北鮮にまで効力があるかといえば、効力があると言えますまい。そこで、北鮮というものは、あの条約オーソリティではない。事実上のオーソリティがあそこの地域にあるということを示しておるのであります。しこうして、私がこういうことを言うゆえんのものは、ヴェスティング・デクリーというものは三十八度以南でございます。三十八度以北に及んでおりませんから、平和条約によりまして北鮮日本に対して請求権があると同時に、われわれはヴェスティング・デクリー支配されない日本請求権が南朝鮮と違ってあるということを申し上げております。
  48. 戸叶里子

    ○戸叶委員 だとしますと、平和条約四条に基づいて北鮮請求権を要求してきた場合には、それを日本は受けるわけでございます。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 だから、私が先ほど言ったように、南北の朝鮮が統一されるか、そうしてそれが国際的に認められた統一が行なわれるか、あるいは、万が一北鮮ほんとう条約上のオーソリティ認められ、すなわち国連その他国際的に独立認められた場合におきましては、三十八度以北請求権というものが、第四条に基づく請求権というものが出てくる、こういうことであるのであります。
  50. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういうふうに答弁なさるならば、予算委員会におきまして、平和条約四条(a)項に基づいて北鮮に現在のところは請求権はないけれども、将来はあるというふうにお答えになれば、私たちはわかったと思うのです。ところが、そうではなくて、この平和条約四条の(a)項に基づいて北鮮請求権があるということをおっしゃっているから、私ども、それをその通り読んだとするならば、当然これはこのオーソリティの中に入るのではないか、こういうふうに解釈をしたわけです。だとすると、池田さんのおっしゃるのは、現在のところはないというふうに、こういうふうにお考えになっているわけですか。
  51. 池田勇人

    池田国務大臣 地域的の問題と国際法上の相手の問題と、こんがらがらしちやいかぬ。そこで、やはり、ああいうときの質問応答だけでは十分でないから、外務委員会ではっきりする必要があるということでいっておるのであります。この点をよく質問者の方も答弁者の方も十分こういう問題ということをきめてやらないと、当座の質問、当座の答えではいろいろな疑問が残りますから、こうやって審議をしていこうというのであります。われわれは、あくまで、外交交渉上のオーソリティ相手と、それから支配権の及んでいる地域的のオーソリティというものを別に考えておりますから、おわかりいただけると思います。
  52. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は、国連韓国承認している、その四十八年の独立認めそして平和条約に調印した国が朝鮮の唯一の合法政権として韓国認めているのだ、それをオーソリティと呼んでいるのだ、こういうふうにおっしゃっているわけですね。そうすると、一九五〇年にやはり国連の安保理事会におきまして、——安保理事会といえば日本の国と平和条約を結んだ国もあります。その国がやはりオーソリティズ・オブ・ノースコリーアという言葉をたびたび使っておるわけでございます。だとすると、この言葉のオーソリティズ・オブ・ノースコリーアというのは、韓国の場合に使うオーソリティというのと違うのですかどうですか。この点をはっきりさせていただきたいと思います。
  53. 池田勇人

    池田国務大臣 それで、私が初めから申し上げておりますごとく、平和条約を結ぶ場合におきまして、一九四八年の十二月に合法的政権として認められたのは大韓民国でございます。従って、われわれはそれを相手にいたしておるのであります。あるいは安保理事会の一つの国が北朝鮮オーソリティと呼んだからといっても、われわれはそれを日本相手方としてのオーソリティとは認めておりません。地域的のそういうものがあることは認めておりますけれども、条約上のオーソリティとして認めていないのでございます。
  54. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この問題は私まだ質問したいのですけれども、時間の関係でこれ以上しませんが、ただ一つお伺いしたいことは、韓国の憲法によって、韓国は、今回の有償無償経済協力というものは朝鮮半島全体に及ぶものだというふうに理解をしておりますけれども、日本の場合は、今までの質疑応答等々を見てもはっきりしておるように、北朝鮮には請求権がありということは一応認めているわけですが、この間の韓国日本との話し合いはどういうふうになっているか。韓国の方は朝鮮全体にわたる有償無償経済協力と言っておるけれども、日本の方ではそうではない。その辺はどういうふうな話し合いになっているかを説明していただきたいと思います。
  55. 池田勇人

    池田国務大臣 その点につきましては、国会でもたびたび申しております通りに、韓国はそういうことを言っておりますが、交渉にあたっては、われわれは、大韓民国は三十八度線以南支配している合法政府として取り扱うように外務大臣に命じております。外務大臣もそれによって交渉しております。
  56. 野田武夫

    野田委員長 森島守人君。
  57. 森島守人

    ○森島委員 私、質問に入る前に、外務省の外務行政全般の問題について一言だけ触れてみたいと思います。  池田さんは、国会における所信表明演説の中で、日韓問題は国民の納得のいく線で解決するということをはっきり言っておられます。外務大臣も同様の所見を繰り返しておられますが、はたして現在のやり方で国民が納得しているかいないか、私は非常に疑問だと思う。外交上の秘密だとか、交渉中の過程では答弁ができないということをしばしば繰り返されておる。しかも、池田さんは、交渉の折衝中においてはそういう問題に触れることは百害あって一利なしとまで極言されておるようでございます。また、自民党においては、PR要綱をも決定して国民の納得を得るように努力するのだということになっておりますが、政府側においても、あるいは与党側においても、国民の納得を得るために何ら努力をされたあとがないと私は思っております。この点に関する総理の御感想を求めたいと思います。
  58. 池田勇人

    池田国務大臣 交渉過程におきまして、これは発表した方が双方のため、また両国民のために理解を得る上に必要だというものにつきましては発表いたします。そして、また、交渉の経過において、これはまだ発表することは早い、かえってそれによって誤解を招いたり交渉がまとまらなかったりというようなことがあってはいけないという問題につきましては、発表を差し控えております。私は、あくまで、これは両国民間のことを処理するのでございますから、両国民の納得を願うようにできるだけのことは発表いたします。しかし、納得する上において、発表が早過ぎたり、また、それによって工合が悪いというものは、外交上の秘密として差し控えたい。あくまで、両国民、両国政府の円満な了解のいくような方法をとるように努力いたしておるのであります。
  59. 森島守人

    ○森島委員 今の御説明、一応わかりますけれども、たとえば請求権の問題、経済協力に変わったとおっしゃいますが、その経過を見ますと、昭和二十八年十月ですか、日韓会談が決裂いたしました。そのときを見ますと、日韓双方の相違は三千万ドルぐらいだったと思っております。朴・池田会談によってこれが七千万ドルになり六千万ドルになったといわれておりますが、この点については、総理はそういう発言をしたことがないとおっしゃっていますが、かりにこれを、新聞諸報が一致しておるのですから大体正しいと見ますと、一夜にして倍以上になってしまった。さらに五億ドルということになりますと、二十倍、三十倍の多額な金額になるのですが、この点については、政府は、交渉の過程も何ら発表しないし、国民の納得のいくような説明をしておりません。一夜にして二十倍、三十倍になるのは一体どういう経過でどういう折衝方法で行なわれたということは、少なくともこの際国民の納得を得るがためにこれを公にすべきものだと私は思います。この点に関する総理の所見を求めます。
  60. 池田勇人

    池田国務大臣 朴議長と私との会談は、発表いたしましたように、金額はもちろん、——とにかく、法律的根拠のあるものについて一つ話をしようというときに、金額の出ようはずがないじゃありませんか、常識的に。全然金額に触れておりません。どういう計算をしようかというもとをつくっただけであって、金額が出ようはずがありません。ですから、政府として、少なくとも池田内閣といたしましては、韓国日本との間の請求権の計算を有権的にしたことはないのです。私は、あなたの言うように、三千万ドルとか七千万ドル、全然知りません。これが実情でございます。
  61. 森島守人

    ○森島委員 それは形式的に御説明になれば今の通りかもしれません。私も、それだから、総理が七千万ドルという発表をしたことはないとおっしゃる、このことを前提としております。しかし、それが一躍して五億ドルにはね上がったのですから、この間の経過は、少なくとも外務省の当局としては交渉の経過なり成り行きを詳細に国民に説明しなければ、私は国民は納得しないと思う。この点について大平外務大臣の所見を求めます。
  62. 大平正芳

    大平国務大臣 何千万ドルかの仮定の数字がありまして、それが五億ドルになったのはずいぶんふえたじゃないかということでございますが、先ほどの戸叶先生と総理とのやりとりの中にもございましたように、経済協力請求権とは全然別問題である、五万ドル云々は請求権に依拠した数字ではないということをまず大前提として御了解いただきたいと思います。  それから、先ほど総理の言われましたように、請求権の問題を法律的根拠によりまして片づけることが一番公明であり、それが最善の道であることも私どもよく承知いたしております。従いまして、そのような努力をいたしたわけでございます。たびたび国会を通じても御説明申し上げておる通り法律的根拠という言葉は一つでございますけれども、日韓双方に法律的根拠に対する見解が根本的に食い違うわけでございます。そもそものスタートから、日韓併合の評価についてさえ違うわけでございますので、従いまして、わが国が制定いたしておりまする実定法の効力というものを韓国側はお認めにならないというような状況のもとにおきまして、法律的根拠によってある種の計数をはじき出すということは不可能だと私どもは判断いたしたわけでございます。しかしながら、それじゃもうできないからほうっておくかということになりますると、日韓間の国交の正常化というのはいかにかしてやり遂げなければならない歴史的な課題であるというように私どもは考えておるわけでございます。この国交の正常化をやり遂げるという前提に立つ以上は、そういう前提を認めないお立場から申しますとまた所論が全然違ってくるわけでございますけれども、私どもは、何とか納得がいく方法において国交正常化というものはなし遂げられないかという立場に立ちまして苦慮をいたしておるわけでございます。そこで、問題は、法律的根拠によってこの請求権という青い鳥を見出すことができないとすればどうするかということを考えた結果、これはもう双方請求権について云々することはやめようじゃないか、もうこれは双方でなくなったという確認をし合おうじゃないかということに大筋の合意が得られておるわけでございまして、問題は、経済協力ということにつきましては、わが国の求償諸国に対する立場からいたしましても、また低開発国に対する協力の立場から申しましても、われわれはすなおに経済協力をするという友情行為を先方にお示しするというように考えておるわけでございます。そういうことの了解によりまして、先方が請求権を主張しないということに相なりますれば、第四条にいう請求権処理がつくわけでございますから、こういう筋道をたどったわけでございまして、そういうこと以外に一体請求権を片づけることができるかといいますと、私ども、不敏にいたしまして、これは今申しましたような理由で不可能でございますから、このような措置をとったということでございます。これは申しませんでも御承知のように、私ども、鋭意国民の世論に訴えて、そういう考え方でいくより方法は遺憾ながらございませんということは、国会に対しましても、また国民に対しても、可能な範囲におきまして努力してきておるわけでございます。
  63. 森島守人

    ○森島委員 池田総理は、この前タイ国に行かれましたときに、九十六億円を一度に有償から無償にしてしまったといういきさつもございますが、この際経済協力という名のもとに五億ドルという非常に多額な金を国民に押しつけるわけです。払う国民の側から見れば、どういう理由でどういう経過でこういうことになったかということをはっきりしていただかなければ、私は国民が納得しないと思う。その点に関する交渉の経過なり何なりをもう少し国民に親切にお示しになることが私は必要だと思う。そうでなければ国民が納得いたしません。特に、自民党のやり方を見ますと、合わせて二で割るというのが大野さんの方式だというふうにいわれておりますが、双方から出た数字を合わせて二で割ればもっと少ない数字になるというふうにも私は考えておるんです。これに対して外務省は何ら国民を納得させるだけの資料も出さなければ説明もしないということでは、私は、これは秘密外交、官僚外交の極致にあるものだと思うのです。大平さんの説明はなかなか懇切です。何言っておられるかわからぬけれども、懇切です。それを見ますと、私は、はなはだ失礼な言い分かもしれませんけれども、いんぎん無礼の典型じゃないか、こういうふうに思っております。こういうことでは、国民の意思を反映して国民の利益をはかる外交とは言えない。私はここで古いことを持ち出して相済みませんが、日本と満州国とソ連との間で北満鉄道の譲渡交渉がございました。そのときの廣田外務大臣のやり口を見ますと、議会で求められるまでもなく、進んで数字までも明らかにして、国民の前に納得を求められた例があるんです。私は、むしろ、今の時代に立った近代政治家である大平外務大臣は、この廣田さんの故知に学ぶべきものだと思うのでございます。今の外務省のやり口は、絶対に私は賛成できません。  そこで、もう一つ伺いたいのは、昭和三十六年の一月の二十幾日と思いますが、わが党の当時の江田書紀長が池田さんに参議院で代表質問をやっております。そのときに、日韓会談に関連して経済協力をやるかということを問いましたら、池田さんは、絶対にやりませんという答弁をいたしております。江田書記長は、これを心に銘じておくということで、さらに念を押しております。そういたしますと、予算委員会質問がありましたときに、池田さんは、経済協力をやるのはあたりまえじゃないか、無償有償の借款をやるのはあたりまえじゃないかという、まるで問題をすり違えて、顧みて他を言うというふうな答弁で言いのがれをしておられますが、私は、今回の経済協力国交正常化をした上でやるのか、あるいは、今申すようにすりかえたのだということでないなら、これが解決の一項目になるのかどうか、この点をはっきり一つ明示していただきたいと思います。
  64. 池田勇人

    池田国務大臣 昭和三十六年の一月の江田君の質問は、現状において経済協力をやるかというふうな御質問と私は心得たのであります。これは、国交正常化すれば、経済協力をやるのは、隣国でございますので、当然のことでございます。江田さんが、もし、日韓国交が正常化してもなお経済協力はやらぬか、こういう御質問だったら、私はやると答えております。今の状態で論議しているときに、私は経済協力はしないということを言っただけのものであります。外交というものが、国交正常化していないときと正常化した場合とはすっかり変わってくることは、当然ではございますまいか。
  65. 大平正芳

    大平国務大臣 私が非常に秘密にやっているような御印象でございますが、それは大へん恐縮に存じます。私は決して秘密にしようと思っていないわけでございまして、先ほど総理から御答弁がございましたように、できるだけ国民の御納得を得るように最善の努力をするのが私の務めだと思います。ただ、交渉過程におきまして、全部洗いざらい事前に、協定ができる前に開示して、討議を、御批評を求めろということでございますれば、これはにわかに賛成いたしかねます。従って、私は、全交渉過程を見ながら可能な限り御理解を求めるべくPRに努めたいと思いますが、いずれにいたしましても、本案件は、もしそれができますならば国会に御提案されるわけでございますから、その段階になるまでの間には全部洗いざらい御審議を願うように心がけておるわけでございまして、これができ上がってしまったあとで沈黙を守るというような、そういういんぎん無礼なことはしないつもりであります。
  66. 森島守人

    ○森島委員 私は、でき上がる前に国民の納得を得るように最善を尽くせということを言っておる。今の御答弁とは食い違うかもしれませんが、私は、事前に国民の了解を求めなければ、五億ドルになるこの多額の金を血税から払えと言うのですから、政府のやり口は、よらしむべし知らしむべからずという一語に尽きておると思うのです。  池田さんの今の答弁を見ますと、国交正常化をした上は有償無償経済協力をやるのは当然だ、こう言っておられます。先ほど来の質問応答を見ますと、請求権の問題が形を変えて経済協力になったのだとおっしゃる。江田君の質問も、私は詳しいことは今速記録を持ってきておりませんのでこれは留保いたしますけれども、江田君の質問は、少なくとも日韓会談に関連して経済協力有償無償の借款を与えるかどうかというに尽きておったので、今池田さんのおっしゃるのは筋が違っておる、こう私は思っております。  そこで、私がお聞きしたいのは、請求権問題なら日韓会談解決の、項目として入るのかどうか。池田さんは、国交正常化したあとなら経済協力をやるのはあたりまえだとおっしゃっているが、それだと、請求権問題というものは日韓会談の一項目として入る道理がないじゃないですか。私は、その辺の前後の関係がどうなるか、一つここではっきりしていただきたいということを求めておるのであります。
  67. 池田勇人

    池田国務大臣 日韓会談の正常化後の問題、正常化後と申しますか、同時問題でございまして、私は、両国が世界に位し、そして隣国の関係で、正常化されたときに、またそれを実現するために経済協力をするといったことは当然のことだと思います。
  68. 森島守人

    ○森島委員 この点は小さな問題のようですけれども、解決の実際方法になりますと、同時に行なわれる、国交正常化の前か後という問題は、私は大きな関係があると思う。これは小さな問題のようですけれども、解決方法といたしましてははっきりされておかなければいかぬと思う。池田さんの流儀でいけば、国交正常化の後には有償無償の借款をやるのは当然だ、これは私も何ら異論はございません。しかし、今度は請求権の問題にかえて経済協力という線を出してきておる。これは池田さんが前言を取り消したと言わざるを得ないと思うのでございまして、私は池田さんの国会における答弁が変わってきたということを言わざるを得ないのでございます。  私は、時間の関係もありますので、請求権の問題はこれくらいにいたしまして、竹島の問題をお聞きしたい。  竹島の問題につきましては、韓国の最高首脳者は常に、議題外である、論議の対象にならぬのだということを言っております。私ここに新聞の切り抜きを持っておりますが、本年の二月十二日の新聞によりますと、崔外務長官は、竹島問題に特に触れていまして、「正式に提議されたこともなく、論議の対象にもならない。」ということを、きわめて明確に答弁しております。もう一つは、昨年の十二月十三日の新聞によりますと、朴議長は、「竹島問題は日韓会談とは別個の問題であり、従って、この問題は会議成立後、国交が正常化してから外交的に解決すべき問題だ。」という態度をとっております。これは二つの例にとどまりません。幾多の例がございますけれども、こういう言明をやっておる。それに対して外務省ははたしてどういう趣旨の応酬をしておられるか、その点をはっきりしていただきたい。
  69. 大平正芳

    大平国務大臣 先方がどのような御見解をおとりになるか、私どもといたしましては、国交正常化の前提に横たわる懸案の一つと心得ておるわけでございまして、この問題にめどがつかなければ、全体の懸案についてまとめる意思はございません。しからば、どういう状態が国交正常化の時点において竹島問題の解決かということになりますと、私どもの考え方では、すでに本国会において申し上げております通り、ヘーグの国際司法裁判所にこちら側が提訴し、先方に応訴していただくというようなことが一つの解決の方法じゃないかということで、非公式に先方にその意図は申し上げておるわけでございます。従って、国交正常化の時点において竹島の帰属を白か黒かはっきりさすという解決は一番望ましいことでございますけれども、司法裁判所にかかりましても二、三年かかるわけでございますから、私どもは、正常化の前提で竹島問題を解決する方法につきましては、少なくとも双方に何らの意見の扞格がない状態にしておかなければならぬと思っておるわけでございます。最小限度そこまでのことはちゃんとやっておかないと、国民に申しわけがないという観点に立っておるわけでございます。そして、予備折衝の途上におきましても、この問題がときどき話題になる程度でございまして、本格的な討議にまだ入ったわけではございませんが、私どもの念願といたしましては、そのようにしなければならぬと考えております。
  70. 森島守人

    ○森島委員 私は今外務大臣の所見に全幅的に賛成するわけにはいきませんが、この問題を非公式に意見を発表しているのだ、向こうに通じているのだとおっしゃっていますが、何ゆえにこの問題を特に取り上げてもっと明確に交渉を進められぬかという点を私伺いたいと思います。
  71. 大平正芳

    大平国務大臣 どの懸案から先にして参るかという選考の順序は、これは交渉を進めて参ります場合の技術的な問題でございまして、いずれ正式な会談でこれを取り上げまして、私が今申しましたような方向において解決をはかりたい、こう思います。
  72. 森島守人

    ○森島委員 二、三日前の朝日新聞によりますと、予備折衝の段階において委員会を三つも四つも開いておられます。特に、私は、竹島問題のごときはその委員会の一つとして早急に折衝すべき問題だ、こう思っておるのでございますが、外務省が特にこの問題を切り離しておるところに、私は何らか理解のできぬところがある。おそらく、ほかの問題がきまれば、これだけきまったんだからということで、この問題を差しおいて食い逃げされる危険があるのではないか、こう思っております。  また、もう一つ、漁業問題にいたしましても、請求権問題にいたしましても、個々に切り離して予備折衝の段階で委員会でやるということが、はたして外交交渉上いい方法であるか悪い方法であるか、私非常な疑問がある。非常にむずかしい問題を幾つも持っておるのですから、これを総括的に取り上げてやれば、相互に妥協し得る点も出てくるのではないか。そういう方法をとらずに、請求権ばかりやるから、そこで請求権につきましては韓国側のペースにすっかり巻き込まれておるのです。私は、現在の交渉方法でいったならば、その懸念が非常に大きい、こういうふうに思っている。  前内閣時代から、委員会を三つ設けて、竹島の問題を全然除外しているというところに、交渉方法としては非常にまずい点がある。これでは竹島問題についても政府が譲歩をせざるを得ないような立場に追い込まれるのじゃないかというふうに懸念しておるのでございます。なるべくすみやかに委員会を同時に開くなり何なりしておやりになる方がいいんじゃないか、こう思っております。それは外交技術上の問題だとおっしゃいますけれども、外交問題というものは技術上の問題が非常に大きくものを言うことがあり得るのです。その点から、特にお考え願いまして、竹島問題についても明確なる態度をとっていただきたい、こういうふうに要望します。  もう一つだけ私お聞きしたいのは、池田さんも、前臨時国会前の新聞記者会見において、在韓代表部の問題に特に触れておられます。これはやはり平等の立場でやるのには置かねばいかぬのだということになっておりますが、その後一体どうなっておりますか。
  73. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもはそれを希望いたしておるわけでございますが、先方が合意するまでには至っておりません。先方の理由とするところは、せっかく日韓交渉が進んでおるわけでございますから、代表部を置くということによって何かそれがずれるような印象を国民に与えてはいかぬから、なるべく国交正常化をはかることの本筋を急いで進めようじゃございませんか、こういう態度でございます。まだ先方の合意を得ていないことを非常に遺憾に思いますけれども、実情はそうなっております。
  74. 森島守人

    ○森島委員 新聞記者会見において総理がこの問題を特に取り上げておられる。私はこの前大平外務大臣にもこの点を指摘して質問をしたことがございますけれども、事ごとに韓国に譲歩をしいられるというふうなやり口でおやりになっておっては、日本国民に対して有利な解決方法をとることはできぬのじゃないか。しかし、直ちに代表部を置く置かぬという問題については、私は必ずしも賛成はしておりません。けれども、そこの点等に関する折衝ぶりから見ましても、非常に、私は、屈辱的と申しては相済みませんけれども、事ごとに日本の主張を退けられて、韓国側のベースにのみ引きずり込まれておるという印象を受けざるを符ない。私は、この点特に交渉を進められる上において留意し、関心を持って進められんことを希望せざるを得ないのでございます。  要するに、私は、一つ一つ切り離して交渉するから、その問題に関する限りは譲歩に譲歩を重ねておるのが日韓会談の現状であって、韓国側のベースに巻き込まれて交渉を引きずられておるというのが現在の外務当局のやり口じゃないか、こういうふうに信じておるのであります。おそらく、この点につきましては、国民も一様に感を同じゅうするものと信じておるのであります。現に、山口県の漁業代表の方が、日本の泣きどころは漁業問題だ、それから韓国の泣きどころは請求権の問題だ、これを切り離して交渉するから請求権の問題については韓国のベースに引きずられて不利なる条件をとられたんだという感想をテレビで漏らしておられましたが、私はこれは全然同感でございまして、もっと強い態度で主張すべきことは主張して交渉を進められんことを私は切望してやまない次第でございます。   私の質問は時間の関係もございますから、(「竹島をまだ答弁していない。いつ正式に出すのか」と呼ぶ者あり)——では、その点を、御要求もありますから、竹島の問題については、日本の態度を公式にいつ韓国へ提示されるか、非公式の話し合いではだめですから、公式にどの限度において日本の態度を明らかに正式な要求として提示されるか、この点だけ質問いたします。
  75. 大平正芳

    大平国務大臣 森島先生の御要望、ごもっともと思います。私どもといたしましては、先ほど申しましたような方針で竹島問題に臨んでおるわけでございまして、交渉を進めていく段取りといたしまして、ただいまの御要望はとくと承りまして、十分な配慮をしてみたいと思います。
  76. 野田武夫

  77. 穗積七郎

    穗積委員 時間がだんだん少なくなって参りましたから、私はあらかじめお尋ねしたい問題点を明らかにして、誠意のある御答弁をお願いしたいと思います。一つは、韓国政情並びに経済情勢が非常に不安定かつ危険な状態になってきておりますが、これに対する政府の見方並びにこれに対する態度についてお尋ねをいたしたいと思います。それから、もう一つは、漁業問題について今後の政府の考え方をこの際明らかにしておいていただきたい。それから、最後に、ちょっと日韓会談とはずれますけれども、うらはらの関係にありまする中国との貿易の問題について、これもいろいろありますけれもど、時間の都合上一点だけ特に総理にお尋ねをいたしたいと思います。   順を追うてお尋ねをいたしますが、政情不安の判断について政府はどう考えておるかということをお尋ねする前に、日韓会談を通じまして、政府の態度として、政情の安定を見きわめて、そして交渉を検討していくという態度をおとりになりますか。あるいは、先ほどもちょっと話が出ましたが、不安定であるからかえって妥結を急いで韓国の現政府に対するてこ入れ援助を急ぐ、こういう交渉の態度もあり得るわけでございます。もとより、国民として申せば、かねてお話のありますように、合理的なかつ納得のいくということを基本にいたしますならば、安定を見きわめてしかる後にこれに対する対処をすべきだと思うのです。政情不安の問題をどう見るかという問題に入る前に、総理の会談に対する根本的な態度を関連してお尋ねしておきたいと思います。
  78. 池田勇人

    池田国務大臣 私は朴議長日韓正常化につきまして努力しようということを約束しておるのであります。この両君の気持で今日韓交渉を進めております。朴議長がいろいろな困難を克服しながら国内をまとめ、また日韓交渉の妥結をはかっておられる努力に対しましては、私は多といたしております。従いまして、こちらが、向こうの政情が不安だとかあるいは安定だとかいう批判は、私は加えたくないと思います。
  79. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、従来の交渉の態度に何らの変化を生じていない、方針を変えるつもりはないというお気持でございますか。
  80. 池田勇人

    池田国務大臣 誠実をもって交渉妥結に進んでおります。
  81. 穗積七郎

    穗積委員 私の質問に対して率直にお答えがないわけですけれども、国民としては、はなはだしく不満を感ぜざるを得ないわけです。今度の政情不安というのは周知のことで、あなたが今おっしゃるように朴議長と、あるいは大平外務大臣は前情報部長の金鍾泌を相手にして特に深入りをされておるわけです。その朴・金ラインというものが、いろいろな理由で、これも明確にすべきだと思いますが、非常な不安どころか累卵の危うき状態に直面をしておるわけです。そうであるならば、当然、相手政情を見きわめて、しかる後にあらためて態度を検討していくというのが常識だと思いますが、いかがでございましょうか。
  82. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、それは常識と考えていません。朴議長が厳然として存在し、そして民政移管のときにはいろいろ問題があると思うのですが、それによって今までの交渉をここで打ち切るとかなんとかいうことは、国際的にも私は常識的でないと思います。
  83. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだ意外な、われわれとしては不満な御答弁でございます。  それでは、外務大臣にお尋ねいたしますが、今の韓国政情不安の問題は一体どの程度に見ておられるか。見通しはどうであるか。さらに、その根本的な原因はどこにあるかということをわれわれとして探ってみるならば、ファッミョ的な少数軍部勢力による警察国家体制である。これに対する国民の非常な不満が増大しておることが一つ。もう一つは、韓国の経済が根本的に行き詰まり、国民生活も非常な窮迫状態に陥っている。この二つのことが私は今日の政情不安の大きな理由であると思うのです。ですから、単に韓国の革命政権、革命勢力内における権力争いであるとか、あるいはまた一時的な動揺であるというふうな浅い見方では、見通しにおいて大きな誤りを来たすと思うのですが、外務省はこれらの韓国政情並びに経済情勢に対してどういう分析と判断をしておられるか、まずそれを伺いたいと思います。
  84. 大平正芳

    大平国務大臣 一般的に申しまして、多くの新興国家がその成立途上経済的にも政治的にも困難な状況のもとに苦悶を重ねるということは、今までもありましたし、また、あり得ることであると思っております。問題の韓国でございますが、穂積先生は、いろいろな反政府、政府批判勢力が出て参っておる事態を重視されておるようでございますが、私は、民主主義の道程として当然だと思うのです。政府に対する批判勢力が出てくるということは民主主義の道程に当然あることでございまして、むしろ一部権力者の弾圧のもとに国民が沈黙を守らなければならぬような事態こそ不幸な事態だと思うのでございます。今韓国は、先ほど総理も言われました通り、民主化の過程におきましていろいろ苦悶を重ねておられる状態だと思うのでございまして、十分の理解と同情を持ちまして見守っておることが正しいと思います。  それから、私どもの態度でございますが、今言われました通り、私どもといたしましては、どんな状況にございましても、どうすれば日韓の間にあるべき正常化ができるかということにつきまして、外務省としてどの瞬間においても懈怠してはならない責任だと思うわけでございまして、終始変わらないぺ−スでもってこの問題に対処していくのが正しいやり方だと考えております。
  85. 穗積七郎

    穗積委員 今までの予備会議において、韓国側代表から、一月以来表面化して参りました非常な極度な政情不安、経済情勢等について何らかの説明があったと思うのです。こちらからも調べたかと思うのですが、その事実はございますか。
  86. 大平正芳

    大平国務大臣 先方の代表は、憂慮すべき事態ではないという判断で、その判断を私どもに伝えられております。
  87. 穗積七郎

    穗積委員 外務省側はそれをうのみにして信じておられるわけですか。
  88. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、私どもといたしましては、日韓の間の正常化はいつの日かだれかがやらなければならぬ問題でございまして、そういう歴史的な課題であって、現在外務省を預かっておる私といたしましては、瞬時も等閑に付してはいけないという態度で臨んでおるわけございます。
  89. 穗積七郎

    穗積委員 国の存在は直ちに消え去るものではないでしょう。しかし、その国の人民を代表する政権の移動あるいは変動というものは常にあるわけなんです。従って、この重要な国交正常化並びに諸懸案の問題を解決すべき会談においては、その政権を相手にしてやるわけでしょう。その政権が人民から遊離し、孤立し、あるいは消滅するかもわからない、そういう状態の中において、一体どこを相手にしておやりになるのですか。その不安を、国民に対して、何も心配するな、他国のことだから、その国内の政治情勢についてそういうことを気にするのは誤りであるという態度は、私は、根本的に日本の自主性を失い、合理性を失った交渉態度であると思います。この点について総理のお考えを伺います。
  90. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは、日韓国交正常化両国繁栄を祈念してやっておることでございます。そして、革命政権もいろいろ問題はありましょうが、これは、あなた方が前に言っておられた民主化の方向をたどって進んでおるのであります。その間のいろいろな産みの悩みがあることを見て、これはいつ倒れるかわからぬぞ、こういうふうなことは、ほんとう日韓を正常化しようとするわれわれから言えば、私は出てこない結論だと思います。あくまでも現政府と話し合いをし、そして一歩でも二歩でも十歩でも前進さすということがわれわれの務めだと考えております。
  91. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、今まで政府並びに与党は、日韓交渉を合理的なものだと説明するために、国民に向かって、現在われわれが相手にしておる政権は安定しておるということを一体なぜ御宣伝になりましたか。韓国の今日の政情はいつどういう変化を生ずるかわからぬ、それがあたりまえだ、そういう不安定な状態であるけれども、やらなければならぬからやっているのだという説明は一ぺんもなかった。今まで、事あるごとに、——たとえば、顕著な例を申し上げますというと、張勉政権の末期に自民党の野田議員を団長とする使節団が行かれた。この中には外務省の当時の責任者も入っておる。今度は大野伴睦氏を団長とする使節団が行かれて、そして同様に朴政権は安定磐石であるという説明を国民にされ、そしてこの日韓会談の合理性・安定性というものを特に主張されたわけでしょう。ところが、これは舌の根がかわかない間に二回ともひっくり返っておる。それに対し、外務省の人々あるいはこの団の人々は非常に悔いかつ恥じて、情勢判断の誤り、責任を痛感しておるということが、国民には仄聞をされておるわけです。これは当然のことだと思うんです。それでは、なぜ一体今まで日韓交渉の合理性を国民に示すために特に相手政権の安定性を強く主張なさいましたか。
  92. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは、先ほど申し上げましたように、朴政権と話をし、朴政権と交渉しておるので、不安定なものと考えておりません。また、それが韓国の事情によってどうこうなりましても、われわれの日韓交渉に対する誠意、これは私は韓国並びに国民はわかっていただけると思います。いたずらにいろんなことを想像しながら右顧左眄することは、私はとらないところでございます。
  93. 穗積七郎

    穗積委員 いたずらにとは何ですか。私どもは現実を言っているのです。われわれ、社会党なり私個人、勝手に想像をたくましゅうして杞憂をあなたに訴えておるわけではありません。そうじゃなくて、現に起きておることです。起きておる事実を言っているのです。いたずらにわれわれはそういうことを言っているのではない。特に、先ほども触れましたが、政治活動の一部自由が解除されるようになって、選挙を控えておるそのときにおける民主党ほか野党の諸君、有力者が、ことごとく、現在行なわれておる日韓会談については、これは完全なる民政移管後にやるべきである、そうでなければわれわれはこれに反対せざるを得ないという態度を明確にしておるわけでしょう。それじゃ、あなた方がお結びになった条約は、わが国においても批准手続をとらなければならない。かの国においても、民政移管後の時期になるでしょう。その時期に国会承認、国民の了解を得なければならぬわけでしょう。それが得られなかったらどうなりますか。これが一点。  それから、もう一つ、今までいろいろな対外的な経済援助の場合に政府が特に主張されたのは、その国の経済安定性の問題、すなわち、供与いたしました経済援助の保証の問題ですね。安定性の問題、これが、相手国に対して経済援加をするかしないか、供与を与えるか与えないかの重要な判断の基準として主張されてきたところでしょう。これは根本的にくつがえります。あなたの主観では朴政権に義理立てをしてやろうというお考えであって、それはあなたの主観です。とこわが、日本国民としては、それでは納得するわけにいかぬ。これは、あなたの言う合理性もなければ、国民の納得を得る交渉の態度でもないと思います。特に、今の二点のことについて、たとえ交渉を妥結されて、そういうふうに進められても、供与をいたしました経済的な援助に対して、何らの安定性も保証もない。それから、こげつき債権に対しても、ああいう交渉の状態では、これに対する保証も得られない。そして条約そのものが国会承認を得ることがはなはだしく不安定な状態になっておるわけです。あなたの行こうとする行き先は袋小路じゃないでしょうか。その危険が非常に多くなってきているのではないでしょうか。お考えを伺いたい。
  94. 池田勇人

    池田国務大臣 見通しの点につきましてあなた方と違っていることは、これは遺憾なことでございます。しかし、今日韓交渉をしておりまして、向こうの政権が倒れるとか、あるいは今度できた政権が承認しなかったらどうだというふうなことは、私は考えるべき問題じゃないと思います。今正式に韓国を代表しておる政権と交渉して、そうして両国民の繁栄のために努力するということは、隣国として当然のことだと思います。なおかつ、今度妥結いたしまして、そうして経済協力その他したときに、担保とかいろいろな問題がありましょう。これはケース・バイ・ケースでやるべきで、政権の問題とは別でございます。条約締結されれば、これは別の問題になってくるのであります。なお、こげつき債権その他につきましては、今交渉して、大体の目鼻をつけるように努力いたしておるのであります。
  95. 穗積七郎

    穗積委員 私の言うのは、無償有償の供与が、すなわち日本から見れば経済的な投資でしょう。向こうはこれを賠償と考えておるかもしれません。いずれにいたしましても、日本側の解釈からいけば、これは無償有償の経済供与になっておるわけですね。そうなれば、当然安定性が問題になるでしょう。それは、政治の安定性だけでなくて、経済の安定性が、われわれがこの供与を与えるか与えないか、日韓会談の第一の中心問題で、この請求権に関する有償無償の供与、この経済的な話し合い、これは安定性がなくてなぜそういうことができますか。つぶれるかもわからぬ中小企業に国庫の資金を無制限に何らの保証手だても考えないで一方的に放出するという政策をおとりになりますか。ましてや、外国に対してはそうじゃないでしょう。あなた方が今まで特に対外的な経済供与の問題についてこれをやるかやらぬかという大きなメルクマールとして主張されたのはそのことです。あらゆる委員会でそのことを主張しておりますよ。これはおかしいと思うんですね。特に経済の専門家をもって任ずる両大臣が、そういう安定性の問題、安全保証の問題を考えないで、いたずらに乗り込んでいくということは、私は、政治的にも経済的にも日本の利益にとって何らのプラスにならない、こう思うのです。
  96. 池田勇人

    池田国務大臣 国交正常化の場合におきまする無償経済協力というものにつきまして、これは条約上当然できるものでございます。また、有償の問題につきましては、いろいろな支払いの問題等もございます。また、両方独立国家になった場合の一般の民間の協力につきましては、これはケース・バイ・ケースに安定性というものがございます。今、韓国がクーデター後民主政治の産みの悩みのとき、向こうが非常に苦しんでいるから交渉をやめろということは、もう出発点が違っていて、われわれはとにかくできるだけ両方繁栄のために努力しようということでいっておるのであります。向こうがちょっと政局が不安定ということでやめてしまえということは、私はとらないところであります。
  97. 穗積七郎

    穗積委員 私ども社会党は、初めから、日韓会談はやるべからず、やるならば、南北統一政権の樹立を促進し、その実現を待って、国交回復を含む日韓会談は進めるべきであるという考えを持っております。自民党並びに政府は別々に考えておられる。日韓会談は進めようというお考えを持っておられる。その根本の違いはさることながら、その政府並びに自民党の政策・方針からいきましても、少なくとも、日韓会談の現状から見て、相手の政治的・経済的安定性を勘案しながら、その見きわめを立ててやるという態度は当然なことじゃないでしょうか。少なくとも、相手政権並びにその不安定の根本原因の情勢・成り行きを静観した後に態度をきめるべきのが当然な論理じゃないでしょうか。だからこそ、今まで国民に対して、相手政権を安定している安定していると言って特に宣伝されたわけでしょう。当然なことじゃないでしょうか。
  98. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは、朴政権は安定した政権としてやっておるのであります。そうして、先ほどから申し上げておりますように、いろいろな国内事情はありましょう。あなた方は初めから反対だから、安定しておっても不安定だ不安定だ、だからやめろ、こう言っておる。それとはわれわれは違うのです。韓国を代表しておる朴政権は安定したものとして取り扱っておるのであります。しこうして、また、不安定なら交渉できないわけであります。だから、安定しておるとして取り扱ってやっておるのであります。
  99. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、外務大臣にお尋ねいたします。日本の利益を守り、日本の利益になるための外交交渉をしている外務省が、相手政権の不安定と並びに経済情勢の混乱というものに対して無関心であるはずはない。これは、よく調査をし、分析をし、見きわめを立てて、しかる後に臨むのが、一般的に言って当然だと思うのです。そういうことに対してあなたは当然だとお考えになりませんか。そういうことはおやりにならないのですか。
  100. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもといたしましても、深甚なる関心を持ちまして、可能な限り政情なり経済の把握に努めております。私どもといたしましては、今御指摘の通り日本の利益ということを最大の眼目に置いておりますことは、お教えを受けるまでもなく、私どもの当然の責任だと感じております。
  101. 穗積七郎

    穗積委員 総理もお聞きの通りです。それが当然な態度でしょう。そこで、この現在の事態、今後の見通しに対する情勢の判断について、総理は、私どもと意見の食い違いがある、こう言われる。そういう研究をされたものであるならば、日本外務省の情勢判断を伺いたいのです。総理が言うように朴政権は安定しておるのか、その政権の基礎になっている国民生活並びに韓国の経済情勢は安定繁栄しつつあるのかどうか。上り坂にあるのか下り坂にあるのか。上り坂にあるとお考えになっておるから、朴政権は安定しておるからあくまでこれとやるのだ、こういうことでしょう。それは、われわれの判断が違うなら、——私は時間がありませんから言いませんが、これは去年の国会でも私が指摘したところです。すでに去年、一年前の正月にわれわれがキャッチすることができた情報でも、軍部の一部と、反朴、反金の軍部の一部あるいは旧民主党の一部の諸君の計画によるクーデターまたは政権転覆の計画というものが五つ外へ出ております。そのことを私どもは当時外務委員会において指摘をして、そして、韓国政情並びに経済情勢について慎重に検討、見きわめをすべきである、こういうことを言ったら、それは慎重に検討することは大事なことであるけれもど、実は代表部がないのでできないのだ、しかしでき得る限りのことをやっておるということであった。ところが、そのことが今日われわれの指摘の通り現われたじゃありませんか、もっと深刻な形で。外務省は一体その後、昨年以来われわれが指摘したのですから、われわれの今日言っていることが誇大妄想であり危惧であるか、あなた方の言う情勢判断が正しいか、ここで決着をつけていただきたいのです。われわれの判断が日本の利益にならない、いたずらなる空想であり幻想であると言うならば、それを基礎づけるだけの、——私どもは不十分ながらいろいろなデータを持っておりますから、説明いたしましよう。しかし、それは時間がありませんから、政府が安定しておるというなら、安定しておるという情勢判断の基礎になるものを示していただきたいのです。われわれは納得いきません。
  102. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほども私申し上げました通り、新興国家が、しかも民主化への過程にあるときには、いろいろなことが起こったし、また、起こり得ると思います。従って、穂積先生と見解が違いますのは、韓国内にいろいろな勢力がいろな立場に立っていろいろな行動をとられておること自体を、これが政情が非常に不安定とごらんになるわけでございますが、私どもといたしましては、民主化過程においてそういうことは当然じゃないかと思っておるわけでございまして、そこの評価があなたと私は違うと思うのでございます。  それから、経済が、不作を受けて、しかも通貨改革そのものも順便に参らなかったというような事情で相当の困難に直面していることは、私どもも承知いたしているわけでございます。しかしながら、日本がアジアに位いたしまして、隣接する国々との国交はどうあるべきか、それに対する態度はどうあるべきかということにつきましては、先ほど総理からも言明がありました通り、私どもは、いかにすれば国交がうまくいくか、関係国民の繁栄を庶幾できるかということについて終始誠心誠意考えていくというその態度それ自体は、私は、日本政府として当然とるべき態度であると考えております。
  103. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、われわれは朴政権を相手にしてあくまで交渉を続ける、何となれば、今までやってきた相手であり、しかもそれが安定している、こういう総理の御判断。それがもうわれわれの判断ではない。現実がすでにぐらついてきておる。それに対してあなたは何らの説明を加えることができないじゃありませんか。朴議長は、日本の新聞でもすでに報道されているように、去る十三日には大統領の立候補を放棄した、断念をした。その理由は何かというならば、地方を視察してみて、経済的不安がこれほどひどくなっているとは思わなかった。すなわち、民主化の過程において多少のジグザグはありましても、発展進化する方向ならよいけれもど、そうではなくて、朴自身が現実に経済なり何なりを視察しても、もう崩壊の方向へ向かっておるという判断をしたわけでしょう。それから、もう一つは、金鍾泌が握っておりました中央情報部、これは、CIA、すなわち、秘密警察あるいは憲兵警察でございましょう。これは、約三万の秘密要員を抱え、野戦一個師団に当たるだけの予算を持って、ちょうどアメリカのCIAをまねたような活動をしている。これに対する大衆の反発が、朴議長自身が見てびっくりするほどである。こういう情勢ではとうてい自分が責任上やっていくわけにはいかぬ、自信がないということで変わった。それから、最近になって、きょう発表だと言われておりますけれども、発表になればわかるでしょうが、その後アメリカの大使並びに在韓の軍部の一部が動いて、そして、朴が辞任すればあと非常な混乱をするということで、無理やりに立てようとしている。しかし、一部にはすでに、前大統領、総理であった許政、これをかえ玉として考えてみたり、あるいはまた、野党の方では、尹前大統領を候補者として考えてみたり、そういういろいろな動揺が根本的にあるでしょう。総理が相手としている朴政権そのものに動揺があるわけです。こういうことで交渉を進めることが国会並びに国民の納得がいくというふうにお考えでしょうか。私どもはどうしても考えられない。第一、今までこの政権が安定していると見てきて責任を持って吹聴された政府・与党は、この際この事態に対して責任をとるべきだと思うのです。池田総理はどうお考えでしょうか。
  104. 池田勇人

    池田国務大臣 日韓正常化を今するのは反対だというあなた方の立場からの議論に私は賛成できません。われわれは、今の現状において、日韓国交正常化両国繁栄を心から念願し、その努力を続けておるのであります。しこうして、民政移管の場合におきまして、いろいろ政情に問題があること、これは当然のことであります。問題があるからといって、われわれの正常化の熱意をやめろということは、これはとるべき策でない。われわれは向こうの政情の安定化を望みます。しかし、安定化を望むから、今の状態が不安定だからといって、今までやりかけた仕事をやめるというものじゃない。われわれは、当初の考え通り日韓正常化にできるだけあらゆる努力を進めていくことが日本政府としての立場であります。向こうの政情民政移管の場合にいろいろごたつくということはあるでありましょう。それかといって、もとをなくするということは、私はとらない。あなた方の、それを得たり賢しとして、われわれの念願した正常化をやめろということには、私は賛成できない。
  105. 穗積七郎

    穗積委員 この事実は意見の相違ではないですよ。事実は事実として一つしかない。その事実はあなたも認めざるを得ないわけです。今日の不安定の事実を前にして、少なくとも、政府は、日本国民の側に立つならば、慎重に情勢の分析・検討をして、そしてこれは中止すべきである、われわれはそう思うのです。そうじゃなくて何でもかんでもやるのだということになれば、アメリカに縛られているか、あるいは、韓国に対して、不安定なる韓国であればあるほどこっちが乗り込んでいって、かの国の支配をたくましくしようとする野望を持っているか、どちらかでなければ、不安定であってもやるということにならぬと思うのです。そう言われる以上は、あなたはそういうことを言わず語らず国民に語っているわけです。静観、検討、しかしてこれは中止すべきであるとわれわれは思いますが、いかがでございますか。
  106. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど来申し上げております通り、今いろいろな政治的・経済的に悩みはございましょう。ございましょうが、今日韓交渉を打ち切るだけの気持は持っておりません。誠意をもって続けていきたいと考えております。
  107. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、時間が参りましたので、漁業問題は楢崎委員が特に質問をしたいということですから、私はこれにも触れておきたいと思いましたが、譲りまして、一点だけ、中国との貿易、高碕・廖承志覚書、並びにその取りきめ事項に伴う貿易問題についてお伺いしたいと思います。  塩安を初めといたします延べ払いの個々の交渉が進んで、このあれは輸銀で認めるというところまでいっておりますが、その他のものについてもケース・バイ・ケースで前向きでおやりになることが当然であると思いますが、いかがでございましょう。
  108. 池田勇人

    池田国務大臣 日中貿易の拡大は、われわれの望むところでございます。しかし、これは、あくまでやはり、日本の立場と申しますか、経済的立場、全般的に考えていかなければなりません。従って、塩安につきましての二十万トンの輸出は、日本の塩安事業の実態から見まして、そしてまた他国に塩安を輸出した例はあまりございませんので、いわゆる一年半のあと払いということを認めました。しかし、問題の鋼材、ことに特殊鋼、農機具の問題につきましては、制度上は認められないことはございません。しかし、延べ払いというのが中共のようにあと払いということになりますと、これは他国にそういう例がない。中共だけあと払いということはいかがなものか。塩安は、日本の生産状況から申しまして、他の国との取引があまりございませんから、特例を認めた。他の国との例のありますものにつきまして、あと払いという制度は今まで日本でやったことはない。そこに問題があるのであります。われわれとしては、できるだけ輸出をしたいという気持を持っております。もし中共にあと払いの方法でやったならば、農機具その他のものも、ほかの国全部あと払いということになったときを考えますと、なかなか前向きに行こうといったっていき得ないのであります。今その点につきまして関係各省で審議いたしておる状態でございます。
  109. 穗積七郎

    穗積委員 あなたはむろんごらんになったと思いますが、取りきめ事項、これは相互に発表しないということになっておりますから、私は申しませんが、われわれが承知しておるところでは、プラント輸出にしても同様の取りきめ事項を取りかわしておるわけです。現にケース・バイ・ケースでと昨年の臨時国会のときに外務大臣はお答えになったと思いますが、ビニロンのプラントの商談がすでに相当進んできておるわけです。これについては、私はこの際当然踏み切って認めるべきだと思います。それがないから、池田さんの中国貿易前向きというものは、実は空文に終ってしまって、全く無責任なものになる、こういうふうに言わざるを得ないと思いますが、プラント輸出については、当然これまた前向きでお考えになることと思いますが、この際念のために伺っておきたいと思います。
  110. 池田勇人

    池田国務大臣 ビニロンのプラント輸出は昭和三十二年の秋にも話があったと思います。各国の例を見まして、その翌年長崎事件でやめたわけです。今、ビニロンのプラント輸出をやるかどうかということにつきましては、やはり各国の例を見ながら、また日本の状況から考えまして、これまた検討を加えておりますが、ただいまのところ結論は出ておりません。
  111. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、時間がありませんから、最後に一括してお尋ねしますから、簡便にお答えいただきたい。  一つは、一番の焦点は今のプラントでございますが、この延べ払い並びにプラントについては、今までの国会答弁では、ヨーロッパ並みにということになっておるわけです。ヨーロッパの例が何であるかということについては、この際私どもも多少の調査をいたして資料を持っておりますが、これはきょうは申しません。これは一つ外務大臣並びに関係経済大臣との間でこの問題は少し討議をしてもらいたいと思っております。その上で総理は前向きで判断をされることを希望しておきます。そこで、こういう延べ払い、ブラントについては、ヨーロッパ並みという原則はくずれておりませんね。それを一つお尋ねしたい。  それから、もう一つは、日本がソビエトにやったものも参考にして、これより後退しないことはわれわれは当然のことだと思いますが、この点、ヨーロッパ並み並びに対ソ貿易並みであるかという点。  それから、第三点にお尋ねしたいのは、貿易上の人事の往来についてです。これは相手は非常に寛大に入国も認め、滞在期間の延長も認めておりますが、日本外務省は、これに対してはなはだしく最近窮屈な態度をとっております。入国並びに友好的な商談のための滞在期間の延長、こういうものについては、相手同様、相互主義で友好的かつ便宜を与える努力が私は必要だと思いますが、この三点について総理並びに外務大臣からお答えをいただきたいと思います。
  112. 池田勇人

    池田国務大臣 中共貿易に対しましては、ヨーロッパ並みという原則は、私は考えております。原則でいきたい。  しかし、中共に対してソ連並みというわけにはいきません。これはやはり事情が違っておる。  それから、人事の交流につきましては、できるだけやはり積み上げ的に両国の交流はしていきたいと考えております。
  113. 野田武夫

    野田委員長 ちょっと御注意申し上げますが、総理の出席時間が大体あと一分か二分で切れるわけでありますが、あと三人の質疑通告者がございますから、総理に対する質疑はあとできれば数分間でお願いせぬといけないと思いますが、御了承を願います。その意味において一つ質疑を続けたいと思います。  楢崎弥之助君。
  114. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、現在行なわれております日韓会談のうちで、特に漁業交渉問題にしぼって御質問をしたいと思うわけであります。  御承知の通り、季ラインの水域というものは、西日本の漁民にとってはまさにこの十年恐怖の海であったわけです。特に、私は、国が福岡県の博多である、以西底びきの出る東湊町というところに住んでおり、漁民の家族の人たちは、船が出るたびに、自分たちの夫やあるいは兄が無事に帰ってくるようにということを絶えず願って、その出船を見送っております。従って、この漁業問題というものは、本来国交正常化の問題とは関係なく解決さるべきであった問題でありますが、特に請求権の問題と取引でこれを解決しようという政府の態度は、われわれとしては全く遺憾千万であるところでございますが、いずれにいたしましても、この漁業問題のうちで特に一番重大であるのは、やはり安全操業の問題であろうと思います。従って、私は総理にずばりお尋ねをするわけですが、現在行なわれておる日韓の暫定漁業協定交渉の問題、何らかの形で、李ライン撤廃あるいは李ラインに類似するものを全然認めない立場で、安全操業の確約が協定的に明確にならなければ、この漁業協定は解決あるいは締結調印しないかどうか、この点をまず第一番にお伺いしたい。
  115. 池田勇人

    池田国務大臣 漁業問題につきましては、われわれの主張が通らなければ、漁業問題のみならず、法的地位、あるいは有償無償経済協力もやらない考えでおります。しこうして、今までの季ラインというものは、あなたのおっしゃる通り、非合法的なものだ、これを撤廃と申しますか、新しい漁業協定によりまして、国際的に見てこれは適当であるというところまでこぎつけたいと私は考えております。
  116. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 国際的に適当であるということは、一九五八年あるいは六〇年に行なわれた国連の海洋法会議等に現われておる例の領海十二海里という考え方以外に、公海の自由を束縛する何らのライン、そういうものは絶対に認めない、そういうことが協定的に有権的に確約をされ保障をされなければ、漁業協定締結はあり得ない、調印はしない、そういう態度であるかどうか。
  117. 池田勇人

    池田国務大臣 十二海里の海洋法会議あるいはイギリスとノルウェーとの協定等を参考にいたして妥結いたしたいと思います。ただ、公海の自由に反するようなことは全然認めない、こういうお話でございますが、公海の自由につきましても、両国協定の上でお互いにいろいろ合意の上で制限する場合もあり得ることは、漁業問題で各国にその例が多いところでございます。われわれは、そういう両者の納得いく点で協定することは公海の自由の原則に反するものではないという考え方を持っております。従いまして、十二海里を認めても、公海におきまして、両方協議の上、これが両国民のためになり、魚族の永久的保存に必要な措置とすれば、これは公海自由の範囲内においてやることはあり得ると思います。
  118. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ただいまの総理のお話は、一般的な国際漁業協定の場合なのか、あるいは、今度の今行なわれておる日韓漁業協定の中で、時と場合によっては両国の合意ができれば十二海里以外に調整なり抑制の水域を設けることもあり得るという御答弁なんでしょうか。
  119. 池田勇人

    池田国務大臣 あなたの公海の自由というものについての解釈が私の解釈と違っておってはいかぬと思って、そういうことを言ったのでございます。これは、今そういうことで協議しておるわけではございませんが、一般的の原則を私は言っただけであります。
  120. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は今日韓漁業交渉に限って御質問をしておるわけです。あの水域に十二海里以外は公海自由の原則を確保する、従って、一方的なそういうほかの漁業独占、あるいは国防ラインを認めるようなことは絶対にしない、協定的にもそれはさせないということを確約できるかどうかということをお伺いしておるわけです。
  121. 池田勇人

    池田国務大臣 これはもっと幅広い点で言っておりますが、今日韓交渉で十二海里の問題が出ておるかどうか、私の外務大臣に指示した気持は、公海自由の原則は守るべし、そうして、ほかの国際的の一応認められた線によることが妥当だ、こう言っておるのであります。しこうして、交渉のあれでございますから、十二海里だけであとは絶対に許さぬのだということは、これは、日本がこういう海洋国として置かれた場合を考えますと、やはり全体的に事を運ばなければいけません。しこうして、日韓問題につきましてそういう問題というものが出ておるかどうかまだ聞いておりませんが、私の漁業に関する考え方は、やっぱり国際的に納得のいくような方法でやるべきだと考えております。
  122. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 本年二月七日の予算委員会で、わが党の横路委員質問に対して、この国防ライン問題でございますが、外務大臣はこう答えております。「国防ライン云々は、私ども周知しないのでございます。韓国がどういう範囲において警備をして参るかということは、韓国のきめる問題でございまして、日韓の間できめるべき性質のものではない」、こう説明をされておる。しからば、これは昨年の十二月六日に日韓予備折衝の漁業専門家会議で初めて韓国側が漁業協定の具体的な案を示したといわれておりますけれども、その中に、あるいは文書でなり口頭でなりこの国防ラインの話が出ておるということが報道されておる。そこで、その国防ライン問題と関連して横路委員質問したわけです。あなたは、国防ライン問題はそれは韓国の問題だからこの交渉の対象にならないという答弁をなさっております。じゃ、漁業協定を結んで、国防ラインは韓国が自由にきめることだから、われわれ周知をしない、そういうお答えですけれども、総理大臣、そういう考えで漁業交渉を進めておることについてどう思われますか。
  123. 池田勇人

    池田国務大臣 私は国防ラインというものを聞いたことはございません。一般に国防ラインというものは国際上ありましょうか。私聞いたことございませんが、国際法上納得のいくような方法でいくというのであります。
  124. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたは総理大臣でこの国防ラインというものを知らないとおっしゃいますけれども、季ラインは知っておられますか。李ラインは、最初は李承晩宣言によって漁業の保護の問題と関連をしてこれを宣言された。しかし、その後、韓国側の態度は、漁業の独占ラインであると同時に、これが国防上のラインであるという態度を明確にして参りました。これは、一九五四年四月十四日、日本の外務省に対して韓国代表部から口上書が出ておる。この中でも明確になっております。ですから、李ラインは国防上の意味を持った水域だということを言ってきております。従って、それと関連をして今度は李ラインのかわりに国防ラインということが考えられておる。従って、国防ラインを知らないからということの意味は、私は重大であると思うのです。知らないから、これは向こうが勝手にやるのだといって、勝手にやったときにはどうされますか。無視をされますか、あるいは黙認をされるか、どうでしょうか。
  125. 池田勇人

    池田国務大臣 李ラインという問題を、向こうは国防ラインとかあるいは漁業権の保護とか言っているかもわかりませんが、こういうものがよくないからやめろというので話をしておるのであります。それでいいのじゃございませんか。李ラインを撤廃したあと、また今度国防ラインという名のもと韓国がどうこう言っているということは、私は聞いていないのであります。これは外務大臣に答えさせます。
  126. 大平正芳

    大平国務大臣 横路さんの御質問に対しまして私がお答えいたしましたのは、警備艦がどういう範囲で航行するかというようなことは、日本の海上保安庁の警備艦も警備に回っておるわけでございますが、それは漁業の安全操業の問題とは全然別問題でございまして、私どもが申し上げているのは、公海におきまして排他的に一方的な権利を行使するということは許せないということでございます。従って、あなたが今御指摘になっている李ラインといい、国防ラインといい、そういうものは公海において安全操業をはばむ排他的な権利を行使しておるわけでございますから、そういうものは許せないという立場に立っておるわけでございます。従って、どういうところを警備艦が走るかというようなことは、向こうさんがきめることで、日本交渉しなければならぬという問題じゃないじゃありませんか、こういうことでございます。
  127. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、私は心配をするわけです。李ラインというものは、一つは漁業独占のラインとしての性格を持つ。もう一つは、国防ラインとしての性格を現実に持ってきた。そのために拿捕問題も現実に起こってきた。そこで、現在行なわれておる漁業交渉が、漁業問題としてのラインは解決できても、国防上の李ライン的なラインが残るのではないか、こういうわれわれの心配です。そこで、今あなたのおっしゃいますように、向こうが国防上警備艇をどう云々とおっしゃいますけれども、もしそういうことが今後も起こるとするならば、依然としてスパイ容疑なりあるいはいろいろな形で日本の漁船を検問するというその不安なり危惧は残るじゃありませんか。どうでしょう。
  128. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう公海におきまして排他的な権利を行使するということはいけないことでございまして、そういうことを認めるつもりはございません。
  129. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、いけないならばいけないように、今度の漁業交渉の際にそれを漁業協定とは別個の何らかの協定で明確にしなくては漁業協定締結調印はあり得ないかどうかということを私は聞いておるんです。
  130. 大平正芳

    大平国務大臣 当然のことでございます。
  131. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 当然のこと、つまり、われわれもそう思います。この安全操業の問題、拿捕の心配がなくならなくてはこの漁業交渉の解決はあり得ない。こういう意味で、何らかの形で、その李ラインの撤廃、それに類するものを絶対認めないという立場の確証が協定の中に得られる、そうしなければ漁業問題の解決はあり得ない、このように私は確認をいたしておきたいと思います。  次に、総理のおられる間にちょっと聞いておきたいと思います。現在行なわれております漁業協定交渉の問題は、北の方、朝鮮人民共和国との関係はどうなるのでしょう。現在行なわれておる漁業協定がもし成立したとして、どうなるのでしょう。
  132. 大平正芳

    大平国務大臣 当然、韓国との交渉でごございまして、日韓の間のそういうもんちゃくをなくしようということが主眼でございます。
  133. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その協定と北の朝鮮人民共和国との関係はどうなるのでしょうか。つまり、言いかえれば、朝鮮人民共和国の沖合い漁業についてはどのようにお考えでしょうか。
  134. 大平正芳

    大平国務大臣 今日韓交渉をやっておるわけでございまして、韓国が現実に支配を及ぼしていない地域をどう取りきめましても、それは実効があがりません。私どもは、韓国が有効に管理している地域の問題を解決する、こういうことでございます。
  135. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、北の方の沖合い漁業は無法状態である、こういうことでありますか。
  136. 大平正芳

    大平国務大臣 現在の日韓交渉の問題にはなっていないということであります。
  137. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 無法状態であるかどうかを聞いておるのです。
  138. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国の有効に管理する地域におけるいろいろな問題を討議いたしておるわけでございまして、北鮮地域のことに韓国支配が及んでおりませんので、韓国とお話し合いいたしましても実効はあがらないということでございます。
  139. 野田武夫

    野田委員長 楢崎君、ちょっと御注意しますが、なるべく総理だけに質問を集中していただかぬと、すぐ帰られますから……。
  140. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 無法状態かどうかをお尋ねしておりますが、その点はあとに譲りまして、過去、これは一九四七年から日本漁船の拿捕問題が起こっておるわけです。この拿捕問題の損害賠償の件は、過去のいろいろな委員会で、韓国に対して損害賠償の請求権がある、留保する、それを念頭に置いて交渉するということを言われております。そうして、大平外相は、昨年の九月二日の外務委員会で、わが党の戸叶委員質問に対して、この賠償の問題は、請求権問題の一つだから、請求権問題の交渉の過程の中で解決をするということを答弁されております。また、この船舶問題というものは、これは過去の第四次日韓会談の節、それから引き続いて第六次の会談において、これは分科会を四つつくっておるわけですが、その中の請求権委員会の中に船舶小委員会が設けられ、従って、これは請求権問題の一つとして位置づけられておる。そこで、請求権問題は、はっきりしておるように、有償無償の形で一応の合意に達したということであれば、この賠償権問題、この船舶問題には、置籍船の問題と、置水船の問題と、朝鮮戦乱中の石炭輸送船の問題、それから拿捕の損害賠償の問題の四つが含まれておるわけでございますけれども、その四つのうちのこの損害賠償権問題は、これは請求権問題が合意に達しておるとするならば、またあなたの昨年の答弁通りとするならば、この問題はもう解決したわけですが、その中でつまり随伴的に解決をしたことになるのでしょうか、どうでしょう。
  141. 大平正芳

    大平国務大臣 季ラインの水域におきまして韓国側に拿捕されてまだ帰還していない日本漁船の返還請求権でございますが、これは平和条約四条に基づく請求権の問題ではないわけでございます。従いまして、漁業問題一般として解決する方針でございまして、せっかく今交渉しつつあるわけでございまして、平和条約四条にいう請求権の問題ではないという立場をとっておるわけであります。
  142. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間がないそうでありますから、それはまだ問題はございますけれども、次に移りたいと思います。  船舶問題のうちのおもに置籍船の問題でございますが、これは、第五次会談のうち、昭和三十六年の三月十日、船舶小委員会で、韓国側から返還を要求しております船舶リストについての双方の突き合わせが行なわれたというふうに聞いております。この置籍船の問題のうち、韓国が要求していたものの中には、つまり、現在韓国の主権が及んでいない北側の港の置籍船の問題は一体どうなっておりますか。
  143. 大平正芳

    大平国務大臣 その双方の船舶に対する請求権というのは、御案内のように、懸案としてあるわけでございます。従って、私どもといたしましては、請求権問題一般の解決の中に含ませて解決いたしたいということでおるわけでございまして、一切の請求権がこれで終わったという中に船舶の問題も含めて処理いたしたいということで進んでいるわけであります。
  144. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、質問を続けたいと思いますけれども、総理の時間があるそうでございますから、また次に外相に質問を留保したいと思います。
  145. 野田武夫

    野田委員長 受田新吉君。受田君に申し上げますが、総理の出席時間の関係上、総理に対する御質問は一括して御質問願います。
  146. 受田新吉

    ○受田委員 短時間にお答え願いましょう。端的に御質問します。  今度の日韓交渉の過程において、韓国の不法行為により拿捕された船及び船員の損害に対する補償は、日韓会談の過程においては、例の平和条約四条の規定とは全く別個の性格であるということを前提にされ、どのような交渉をされておるか。
  147. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の通り、これは平和条約四条には関係ございません。その後の問題であります。従いまして、漁業問題についての交渉の一環として交渉を進めておると心得ております。
  148. 受田新吉

    ○受田委員 過ぐる十二日の新聞報道によると、政府はこの損害賠償請求権を一応放棄せざるを得ないのではないか、そして、かわりに日本政府がこれらの損害に対して国内として補償するという方法をとるのではないかという判断がされておるのであります。そのようなことがあり得ないかどうか。
  149. 池田勇人

    池田国務大臣 韓国に抑留された漁民並びに漁船に対しましては、ある程度善後措置をしておると私は記憶しております。しかし、漁業問題解決に対して、その損害賠償請求権を放棄したとかなんとかということはまだ聞いておりません。
  150. 受田新吉

    ○受田委員 現に、あなたも閣僚として、昭和三十二年の十二月に、暫定措置として、賠償の内払いとして、これらの死亡者に対して七万五千円の特別交付金を出しておるのを御存じですね。そういうことを考えると、今後これらの被害を受けた人々に対する補償は、交渉の過程で実を結ぶか、もしそれが得られなかったら政府が別に責任をとるという方法をとることになるのですね。
  151. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題につきましては、日韓交渉妥結後、問題を取り上げて検討いたしたいと思います。
  152. 受田新吉

    ○受田委員 内払いであることははっきりしておるので、別途に補償の制度を採用するということは間違いございませんね、いずれにしても。
  153. 池田勇人

    池田国務大臣 あのときの閣議決定をまだ十分よく覚えておりませんので、この交渉が妥結してから後に、問題を取り上げて、どう措置するかを考えてみたいと思います。
  154. 受田新吉

    ○受田委員 いま一つ、この問題に関連をするわけですけれども、あなたの政府は、この拿捕による被害を受けた人々に対する補償を請求権とは別個にするということになれば、別の法的根拠が要ると思うのです。これはどういうところで法的根拠を発見するか、御答弁願います。これは総理に御質問するのですから、ほかの方は御答弁要りません。
  155. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、この問題につきましては、漁業問題が解決したとき、新しい問題として検討していきたいと思います。
  156. 受田新吉

    ○受田委員 昭和二十八年でしたか、李ライン設定当時の農林水産委員会で、この拿捕による損害は年間約七十億円と言われておる。これを十年間計算すると大体一千億に近い金になってくるわけですが、この莫大な被害に対して国内補償をするという場合は別の負担が要ることだし、もし請求権を放棄したとするならば、日本からそちらに皮える三億ドルのほかにプラス一千億円というものが計上されるという形になりますね。
  157. 池田勇人

    池田国務大臣 外国の不法行為によりまする国民への損害について日本政府が直ちにそれを補償するという考え方は、今まで言っていないのでございます。御参考までに申し上げておきます。
  158. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、政府は、拿捕された不法行為による損害に対しては、あくまでも平和条約請求権の問題とは別途の形であちらと請求権をどう行使するかの相談をする過程であると了解してよろしゅうございますか。
  159. 池田勇人

    池田国務大臣 これは平和条約以外の問題でございます。しこうして、外国の日本国民に対しまする不法行為による損害賠償を、わが国政府が直ちにそれを賠償しなければならぬという法の建前になっていないということを御参考に申し上げます。従いまして、日韓交渉が解決したあとに、新しい問題として検討いたします。
  160. 受田新吉

    ○受田委員 私がお尋ねしているのは、今度の日韓交渉の過程で、請求権、つまり不法拿捕による損害賠償の請求権平和条約四条の規定とは別個の問題として交渉を今後続けるのかどうかということです。
  161. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほども答えた通りでございます。
  162. 受田新吉

    ○受田委員 それでは、私はこの問題で総理にお尋ねをすることはもうよします。  いま一つ新しい問題として、あなたはこの間アメリカのUPIの社長トマソンさんでしたかと会談されましたね。そのときに、中共承認問題についてはアメリカの側に属しておると、こういうお答えをされたのは事実ですか。
  163. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカの側というのではございません。それは、アメリカも日本も、台湾政府承認し、条約も結んでいる、イギリスとは立場が違う、イギリスは中共を承認しているが、中共の国連加入問題については、今度は、承認しているイギリスが、やはり重要問題としてわれわれと同じ立場をとっている、こういうことを言ったわけでございます。
  164. 受田新吉

    ○受田委員 しかし、イギリスは現実にソ連の側の提案にも賛成しておりますよ。あなたは、この二またをかけることになっているのを、一方だけ言われたって、片手落ちですね。
  165. 池田勇人

    池田国務大臣 存じております。重要問題として取り扱うことにつきましては、われわれと同じ立場でございます。
  166. 野田武夫

    野田委員長 受田君、この問題に関連することだけ言って下さい。
  167. 受田新吉

    ○受田委員 あと一分か二分ちょっとがまんして下さい。一党の代表質問ですから。  それで私は、あなたが非常に勇気をもって外交問題なども処理され、日韓会談なども勇気をもって臨まれていることには一応敬意を表します。しかし、問題は、中華人民共和国というこの国に国連の代表権を付与しようというこの動きに対しては、少なくともあなたは大所高所から良識をもって日本の自主外交を進めていかなければならぬ。それをあなたはアメリカ側に属する立場をおとりになるような印象を談話ででも発表してはいけません。  いま一つ、少なくとも、中華人民共和国の現状を見たときに、経済、交通その他を考えて、少なくともこの際中共に代表部を設置する要請をされると同時に、何らかの形で政府の意図を持った駐在員を派遣して、これが、あなたが心配されるようなあちらとの政府承認の前提ということの懸念があるならば、取りきめをりっぱに文書で行なって、そういう意図でなくして、あちらへ何らかの形の駐在職員あるいは代表部を置くとか、こういうことをやる段階ではないか。これは、思想と経済は別という立場からも、あなたとしては一つの大きな外交方針はここで出される必要があると思います。
  168. 池田勇人

    池田国務大臣 誤解があってはいけませんから申し上げておきますが、アメリカとこれから一緒に進むというのではございませんよ。台湾に対して両方とも同じように承認しておるという結果を言っただけです。そうして、国連に対しての取り扱いにつきましては、日本独自の考えでいっております。  私になりましてから、日中貿易もあなたのお考えのように進めていくことにやぶさかではございません。従いまして、正式に承認ということではございませんが、わが党の方々が行かれるとにおきましては、私はいろいろ向こうの様子も十分聞いておりまして、先ほどのお尋ねにありましたように、積み上げ方式でだんだん交流ということも私はけっこうなことではないかと思っております。ただ、代表部とかいうことになりますと、これは承認の前提になりますので、十分国際の情勢を考えないと、今直ちに結論は出ないと思います。
  169. 受田新吉

    ○受田委員 これで終わります。今の代表権の問題です。そうしますると、あなたは、中華人民共和国の国連における代表権の問題は、今の段階では、重要問題指定ということに関係しても、すべて白紙で良識をもって臨むという立場をおとりになるのかどうかということと、今御懸念された、中共に代表部を置くということが承認の前提となるとおっしゃったけれども、そういうことを文書で、そのような意味ではないのだ、親善を深めるという軽い意味だということを文書で交換してやるという手もありますね。この二つの問題について、大局から総理大臣の抱負経綸をお伺いして、私の質問を終わります。
  170. 池田勇人

    池田国務大臣 国連において中共承認問題は重要問題になっておる。そこで、受田さん御存じと思いますが、中共や台湾政府自体も非常にジレンマになっているのじゃございませんか。われわれが非常に重要問題として検討しなければならぬと同じように、中共自身も相当検討を加える必要がある。私は、白紙、良識という第三者の立場でなしに、やはり、日本はどうあるべきか、両国がどうあるべきか、世界の情勢はどう進むべきかということを見きわめながら、白紙、良識というのじゃなしに、客観的ではございますが、常に重要問題として検討していきたいと思います。  ただ、政府の代表について文書でこう書いたらいいといっても、そういうものじゃなかなかいきますまい。あなたと私との文書の取り扱いというふうには、外交というものはむずかしいもので、いかない。そんなに簡単に割り切れるものなら楽なんです。御承知の通り、中共と貿易をしようというときに、今ではそうあまりエキサイトしていないようでありますが、台湾なんかの問題もございますので、やはり、多角的に全世界的の問題でございますから、簡単にはいきにくいところがむずかしいところでございます。
  171. 受田新吉

    ○受田委員 これで結論にします。今のあなたの御答弁で、外交技術が大へんむずかしいことは私も承知しているのですけれども、そういう心がまえを持ってあなたが外交政策をお進めになるということが私は大事だと思うのです。私が申し上げたような、何らかの足がかりをつくらなければ前進しませんわね。そこに代表部あるいは駐在員を置くとか、軽い意味でこういう機関を設けることが必要であると思います。この点は、本委員会にも、すでに国連専門機関に置く職員の特権付与の条約承認も求めてきておられるわけなんですから、そういう意味で、軽い立場の人を特権を付与してあちらへ派遣するというような、そういう足がかりをつくる熱意を示していただくことを私は要望しているのです。何かの形で、あなたが総理在任中に、このアメリカに片寄ったような印象を払拭して、おれはアジアの盟主だぐらいの非常に大きな構想で、中華人民共和国の立場を考えていただくことが、私は総理の責任ではないかと思いますので今申し上げたわけです。御了承いただいたから、これで質問を終わります。      ————◇—————
  172. 野田武夫

    野田委員長 次に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国ニュー・ジーランドとの間の条約締結について承認を求めるの件、国際労働機関憲章改正に関する文書締結について承認を求めるの件、国際連合特権及び免除に関する条約締結について承認を求めるの件、専門機関特権及び免除に関する条約締結について承認を求めるの件、国際原子力機関特権及び免除に関する協定締結について承認を求めるの件、国際地震工学研修所を設立するための国際連合特別基金援助に関する日本国政府特別基金との間の協定締結について承認を求めるの件、以上六件を一括議題とし、政府より提案理由の説明を聴取することといたします。大平外務大臣
  173. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま議題となりました所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国ニュー・ジーランドとの間の条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  本条約締結交渉は、昨年七月以来行なわれ、両政府間で折衝を重ねた結果最終的合意に達し、本年一月三十日ウエリントンにおいてわが方在ニュー・ジーランド原大使とニュー・ジーランド側ホリオーク総理大臣兼外務大臣との間でこの条約に署名を行なったものであります。  この条約は、十九カ条からなり、わが国が従来各国と締結している租税条約とほぼ同様の内容のものでありまして、OECDの租税条約典型をも参考としております。この条約の主たる内容は、配当については相互に一五%の軽減税率とし、航空機を運用する相手国の企業の利得については免税、船舶を運用する相手国の企業の利得については、五〇%免税とし、特定の移動する業務についてはこれを恒久的施設とみなし、さらに、教授、留学生、短期旅行者に対して広い範囲で免税を認めることとしたこと等であります。この条約を通じて日本ニュー・ジーラン両国間の経済、学術、文化の面にわたる交流が一そう促進されるものと考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、国際労働機関憲章改正に関する文書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  一九六二年六月二十二日、国際労働機関、ILO第四十六回総会本会議は、機関憲章の一部を改正し、機関理事会の構成員の増加等を規定する同憲章の改正文書を採択いたしました。  この改正は、国際労働機関理事会構成員の数を現行の政府代表理事二十名、使用者代表理事及び労働者代表理事各十名を、それぞれ、政府代表理事二十四名、使用者代表理事及び労働者代表理事各十二名に増加し、これに基づいて政府代表理事のうち非常任理事国の任命する理事の数を現行の十名から十四名に増加すること、並びに使用者代表理事及び労働者代表理事の選挙について、「使用者の代表者二人及び労働者の代表者二人は、ヨーロッパ以外の国に属する者でなければならない。」とする現行規定の削除とを内容とするものであります。  この改正文書は、機関憲章第七条に掲げられているわが国をその一国とする十の主要産業国のうちの五カ国を含む全加盟国の三分二の批准または受諾があったときに効力を生ずることになっております。本年一月十八日までにこの改正文書を批准または受諾した加盟国の数は二十三であり、この中にはカナダ、インド、ソ連の三つの主要産業国を含んでおります。  国際労働事務局は、本年六月の第四十七回機関総会において行なわれる理事改選に先だって本改正文書が発効することを強く希望しており、わが国といたしましても、この改正文書の内容は妥当と認められますので、これを受諾いたしたいと考えるものであります。  よって、この文書締結について御承認を求める次第であります。次に、国際連合特権及び免除に関する条約締結について国会承認を求めるの件、専門機関特権及び免除に関する条約締結について承認を求めるの件並びに国際原子力機関特権及び免除に関する協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を一括御説明いたします。  国際連合特権免除条約及び専門機関特権免除条約は国際総会で承認され、各加盟国の加入を要請されたものであり、原子力機関特権免除協定国際原子力機関理事会で承認され、各加盟国の受講を要請されたものであり、いずれも、これら条約及び協定の当事国がその領域内において、それぞれ国連専門機関または原子力機関、その職員及び加盟国代表者等に対して特権及び免除を与えることを規定するものであります。  わが国は、国際連合への加盟の実現に先だちまして、一九五二年、国際連合及びその職員等に対し特権及び免除を与えるために、ただいま提案中の国連特権免除条約の規定を部分的に適用する趣旨の特権及び免除に関する協定国会の御承認を得て国連との間に締結した次第でございます。  しかるに、わが国が一九五六年に国際連合に加盟しまして以来、国連及び各専門機関主催会議の本邦開催が多く、これらの機関からの援助受け入れも増加する傾向がございますが、一九五二年の協定では、これら国際会議に参加のため来日する加盟国の代表者には国連の要望する特権及び免除を与える法的根拠がないので、会議開催、援助受け入れのたびごとに関係機関との協議の結果便法を講ずるほかない状態であります。原子力機関の場合も事情はほぼ同様であります。  今回御審議をお願いいたしますこれら諸条約は、すでに多数国の加入または受諾を得ており、むしろ特権免除の供与はすでに国際慣行化している現状でございますが、国連に対する協力を外交政策の基本として、国際連合専門機関、原子力機関の活動を積極的に支持して参りましたわが国としましては、先ほど御説明いたしました不便を除き、各分野におけるわが国の国際協力をより円滑に遂行するために、国連特権免除条約、専用機関特権免除条約及び原子力特権免除協是を締結することがぜひ必要であります。  よって、ここに国際連合特権及び免除に関する条約専門機関特権及び免除に関する条約並びに国際原子力機関特権及び免除に関する協定締結について御承認を求める次第であります。  最後に、国際地震工学研修所を設立するための国際連合特別基金援助に関する日本国政府特別基金との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  昭和三十五年七月に、国際連合経済社会理事会において採択された地震災害対策における国際協力に関する決議に基づいて、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)は、特別基金に対して、国際的な研修所をわが国に設立するために基金の援助をわが国に与えることを提案し、同年十月あわせてわが国政府が同基金の援助を申請するよう示唆して参りましたので、政府といたしましては、従来主として東京大学内において行なわれてきた地震学及び地震工学の国際訓練センターを拡大強化することとし、翌三十六年六月特別基金に対して本件研修事業に対する基金の援助を申請いたしました。  これに対して、基金事務局は、ほぼ申請通り援助供与を内定いたしましたので、昨年二月以来ニューヨークにおいて交渉を行なった結果、五年間に特別基金は約七十六万ドルの援助をわが国に与え、わが国は約百五万ドルを分担することになり、本援助に関する協定を十月三十一日署名した次第であります。  さらに本援助による事業の実施細目については、わが国政府、特別基金及び実施機関たるユネスコの間に合意される実行計画に譲られておりますが、わが国は昨年五月以来、ユネスコ側と実施細目につき交渉いたし、十月一日付でユネスコと十月三十一日付で特別基金との間に、実行計画の署名を終えた次第であります。  本件協定及び実行計画の締結によりまして、地震学及び地震工学の分野におけるわが国の国際的技術援助が拡大強化され、東南アジア、中近東、ラテンアメリカ等の地震国である低開発諸国の経済、社会、文化面に寄与するのみならず、わが国の本件分野における国際的進歩にも利益をもたらすものと考えられます。  よって、ここにこの協定締結について御承認を求める次第であります。  何とぞ、御審議の上、以上六件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  174. 野田武夫

    野田委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十四分散会