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1963-02-08 第43回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和三十七年十二月二十四日)( 月曜日)(午前零時現在)における本委員は、次 の通りである。    委員長 野田 武夫君    理事 安藤  覺君 理事 菅  太郎君    理事 正示啓次郎君 理事 福田 篤泰君    理事 松本 俊一君 理事 岡田 春夫君    理事 戸叶 里子君 理事 森島 守人君       愛知 揆一君    赤城 宗徳君       池田正之輔君    宇都宮徳馬君       川村善八郎君    北澤 直吉君       椎熊 三郎君    田澤 吉郎君       高碕達之助君    古川 丈吉君       森下 國雄君    稻村 隆一君       勝間田清一君    黒田 寿男君       帆足  計君    穗積 七郎君       細迫 兼光君    松本 七郎君       西尾 末廣君    川上 貫一君 ――――――――――――――――――――― 昭和三十八年二月八日(金曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長代理 理事 福田 篤泰君    理事 安藤  覺君 理事 松本 俊一君    理事 戸叶 里子君 理事 穗積 七郎君       宇都宮徳馬君    川村善八郎君       椎熊 三郎君    森下 國雄君       岡田 春夫君    河野  密君       帆足  計君    細迫 兼光君       受田 新吉君    川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務政務次官  飯塚 定輔君         外務事務官         (大臣官房長) 湯川 盛夫君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局北東         アジア課長)  前田 利一君         外務事務官         (経済局次長) 中山 賀博君         外務事務官         (条約局外務参         事官)     須之部量三君         専  門  員 豊田  薫君     ――――――――――――― 昭和三十七年十二月二十五日  委員稻村隆一君辞任につき、その補欠として河  野密君が議長指名委員に選任された。 昭和三十八年一月二十九日  委員勝間田清一辞任につき、その補欠として  横路節雄君が議長指名委員に選任された。 同月三十一日  委員北澤直吉辞任につき、その補欠として江  崎真澄君が議長指名委員に選任された。 二月一日  委員江崎真澄君及び横路節雄辞任につき、そ  の補欠として北澤直吉君及び勝間田清一君が議  長の指名委員に選任された。 同月二日  委員北澤直吉辞任につき、その補欠として江  崎真澄君が議長指名委員に選任された。 同月五日  委員江崎真澄辞任につき、その補欠として北  澤直吉君が議長指名委員に選任された。 同月八日  委員西尾末廣君辞任につき、その補欠として受  田新吉君が議長指名委員に選任された。 同日  委員受田新吉辞任につき、その補欠として西  尾末廣君が議長指名委員に選任された。 同日  理事岡田春夫君及び森島守人君同日理事辞任に  つき、その補欠として穗積七郎君及び松本七郎  君が理事に当選した。     ――――――――――――― 一月二十九日  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国オーストリア共和国との間の条約  の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国政府グレート・ブ  リテン及び北部アイルランド連合王国政府との  間の条約締結について承認を求めるの件(条  約第三号)  航空業務に関する日本国アラブ連合共和国と  の間の協定締結について承認を求めるの件(  条約第四号)(予)  航空業務に関する日本国政府クウェイト政府  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第五号)(予) 同月三十一日  日本国グレート・ブリテン及び北部アイルラ  ンド連合王国との間の通商居住及び航海条約  及び関連議定書締結について承認を求めるの  件(条約第一号) 同月二十二日  日韓会談即時打切り等に関する請願川上貫一  君紹介)(第二八〇号)  同(志賀義雄紹介)(第二八一号)  同(谷口善太郎紹介)(第二八二号)  日韓会談即時打切りに関する請願志賀義雄君  紹介)(第二八三号)  日韓会談打切り等に関する請願川上貫一君紹  介)(第三〇九号)  同(志賀義雄紹介)(第三一〇号)  同(谷口善太郎紹介)(第三一一号) 二月二日  完全軍縮協定締結等に関する請願外十件(岡田  春夫紹介)(第四一七号)  日韓会談即時打切りに関する請願田中武夫君  紹介)(第四一八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月一日  核実験反対等に関する陳情書  (第一八号)  同(第一九号)  ソ連抑留漁民早期釈放に関する陳情書  (  第二〇号)  非核武装に関する陳情書  (第二一号)  非核武装地帯宣言に関する陳情書  (第二二号)  非核武装宣言等に関する陳情書  (第二三号)  同(第二四号)  同(第二五号)  同(第二六号)  日ソ平和条約締結促進に関する陳情書  (第二七号)  韓国抑留二幸栄丸、敏丸及び金比羅丸即時  釈放に関する陳情書  (  第二八号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  国政調査承認要求に関する件  日本国グレート・ブリテン及び北部アイルラ  ンド連合王国との間の通商居住及び航海条約  及び関連議定書締結について承認を求めるの  件(条約第一号)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国オーストリア共和国との間の条約  の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国政府グレート・ブ  リテン及び北部アイルランド連合王国政府との  間の条約締結について承認を求めるの件(条  約第三号)  航空業務に関する日本国アラブ連合共和国と  の間の協定締結について承認を求めるの件(  条約第四号)(予)  航空業務に関する日本国政府クウェイト政府  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第五号)(予)  国際情勢に関する件(日韓及び原子力潜水艦寄  港問題)      ――――◇―――――
  2. 福田篤泰

    福田(篤)委員長代理 これより会議を開きます。   委員長所用のため、指名によりまして理事の私が委員長の職務を行います。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  本委員会といたしましては、国際情勢に関する事項について調査をいたしたいと存じますので、この旨議長承認を求めたいと存じますが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 福田篤泰

    福田(篤)委員長代理 御異議なければ、さよう決定いたします。      ————◇—————
  4. 福田篤泰

    福田(篤)委員長代理 理事補欠選任についてお諮りいたします。  理事岡田春夫君及び森島守人君より理事辞任いたしたいとの申し出があります。これを許可するに御異議こざいませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 福田篤泰

    福田(篤)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお、理事辞任に伴う補欠選任につきましては委員長に御一任願いたいと存じますか、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 福田篤泰

    福田(篤)委員長代理 御異議がございませんので、委員長は、穗積七郎君及び松本七郎君を理事指名いたします。      ————◇—————
  7. 福田篤泰

    福田(篤)委員長代理 次に、日本国グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の通商居住及び航海条約及び関連議定書締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国オーストリア共和国との間の条約締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の条約締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国アラブ連合共和国との間の協定締結について承認を求めるの件及び航空業務に関する日本国政府クウェイト政府との間の協定締結について承認を求めるの件、以上五件を一括議題とし、政府より提案理由の説明を聴取することといたします。太平外務大臣
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま議題となりました日本国グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の通商居住及び航海条約及び関連議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  日英両国間の戦後の貿易関係は、最恵国待遇の保障がないまま毎年更新される貿易取りきめによっていましたが、政府は、両国間にガット関係を設定し、最恵国待遇相互に保障することの重要性にかんがみ、英国によるガット第三十五条の対日援用撤回を実現することを眼目として、両国間に新たな通商航海条約締結するための交渉昭和三十一年以来行なって参りました。この交渉は、当初貿易条項の取り扱いについて難航を続けましたが、わが国が対英貿易障害除去のために払った努力が漸次効果をあげ、また、わが国経済の成長の結果、わが国輸出市場として再評価されるに至ったという情勢発展により、英側より、ガット第三十五条の援用撤回し、最恵国待遇原則として与える用意がある旨を表明するに至りました。自来その他の条項についての交渉も進捗して、昨年池田内閣総理大臣の訪英の際両国間に最終的に意見の一致を見て、十一月十四日ロンドンにおいて、本条約及びこれと不可分の一体をなす署名議定書並び貿易関係に関する第一議定書及び第二議定書署名調印されるに至った次第でございます。  この条約は、国民の出入国、国民及び会社の事業活動、産品の輸出入等については最恵国待遇原則とし、身体、財産の保証、租税海運等事項については原則として内国民及び最恵国待遇を保障することを骨子としており、通常二国間の通商航海条約で規定される条項と基本的には同様の内容が詳細に規定されております。  次に、貿易関係に関する第一議定書は、いわゆる輸入品のはんらんの場合に輸入国輸出国と協議してとることができる対応措置を定めたもので、一般にセーフガードと称されております。  第二議定書は、従来輸入制限を継続してきた若干の品目条約発効即時に自由化すれば関係産業が重大な損害を受けるおそれのあるものの過渡期間における輸入制限について規定しております。  この条約締結英国による対日ガット第三十五条の援用撤回により、日英両国間の通商関係はますます緊密となり、かつ安定した基礎の上で発展することが期待されます。  よって、ここに本条約及び関連議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国オーストリア共和国との間の条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  本条約締結交渉は、昭和三十六年四月二十七日より六月十三日までの間ウイーンにおきまして二回にわたって行なわれ、両政府代表団の間で、大綱につき実質的合意に達しました。その後引き続き両政府間で折衝を行なった結果最終的合意に達し、同年十二月二十日ウイーンにおいて在オーストリア内田大使オーストリア側全権委員との間で署名調印いたした次第であります。  本条約は、二十五カ条からなり、わが国が従来締結したアメリカ、スエーデン、デンマーク、ノルウェー、シンガポールとの諸条約とほぼ同様の内容のものでありまして、特許使用料及び利子に対する課税率を二〇%を限度とし、また、教授留学生短期旅行者等に対する広い範囲免税措置について規定しております。これらの規定を通じて日本オーストリア両国間の経済、学術、文化の面にわたる交流が一そう促進されるものと期待いたしております。  オーストリア側におきましては、昨年三月批准を了しております。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  わが国連合王国との間の所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための条約締結交渉は、通商航海条約締結交渉と並行して昭和三十一年以来行なわれてきたところ、昨年九月最終的合意に達しましたので、同月四日東京において木大臣モーランド日英国大使との間でこの条約署名を行なったものであります。  この条約は、二十四カ条からなり、わが国が従来各国締結している租税条約とほぼ同様の内容のものでありまして、OECD財政委員会欧州諸国相互間のこの種条約の典型として作成した勧告案をも参考としております。この条約の主たる内容は、配当については、日本側は一五%の軽減税率とし、英側は税制が異なるのでわが方の軽減税率に対応して所得税付加税免税することとし、特許使用料及び利子については、両国とも一〇%を限度として課税することとし、船舶及び航空機を運用する相手国企業の利得につきましては、両国とも地方税を含めて免税することとし、さらに、教授留学生短期旅行者に対して広い範囲免税を認めること等を規定しております。日英間には通商航海条約署名され、両国間の全般的な通商関係が安定した基礎の上に発展するものと期待されているこの際、租税の面から、両国間の経済、技術及び文化の面における交流を一そう促進することとなるこの条約締結は、きわめて重要な意義を有するものと考えます。  連合王国側においては、すでに議会はこの条約批准について承認を与えております。  よって、ここにこの条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、航空業務に関する日本国アラブ連合共和国との間の協定締結について承認を求めるの件及び航空業務に関する日本国政府クウェート政府との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由一括御説明いたします。  これら二協定につきましては、わが国航空企業がかねて計画しておりましたクウェートカイロ等を経由する南回り欧州線の開設に関連いたしまして、政府は、アラブ連合共和国及ばクウェート両国政府に対しそれぞれ航空協定締結交渉の申し入れを行ないましたところ、両国ともこれに同意して参りました。よって、アラブ連合共和国とは一昨年十一月に東京交渉を行ないました結果、協定案文について合意が成立いたしましたので、昨年五月十日に東京協定署名を行ない、また、クウェートとは昨年六月末からクウェート交渉を行ない、同年十月六日に東京協定署名を了した次第であります。  これら二協定は、いずれも、わが国相手国との間に民間航空業務を開設することを目的とし、業務の開始及び運営についての手続と条件を定めるとともに、それぞれの国の航空企業業務を行なうことができる路線を定めているものでありまして、さきにわが国締結した米国、英国、タイ、インド、パキスタン等との間の航空協定と形式においても内容においても大体同一であります。これらの協定締結により、わが国航空企業は、アラブ連合共和国及びクウェートヘの乗り入れを行なう権利を持つこととなりますほか、わが国とこれら両国との間の政治上経済上及び文化上の友好関係も一そう促進されることが期待されます。  よって、ここにこれらの協定締結について御承認を求める次第であります。  以上、五件につきまして、何とぞ御審議の上すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  9. 福田篤泰

    福田(篤)委員長代理 この際、大平外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。大平外務大臣
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 今国会では外交上たくさんな案件を御審議いただく予定に相なっておるわけでございます。私を初め外務当局、ベストを尽くしまして御審議に御協力申し上げる決意でおるものでございますが、何とぞ十分御指導、御協力を賜わりますようにお願い申し上げる次第でございます。  私は、本国会の当初、外交演説で、昨年一年間の外交を、二国間、それから経済外交国連外交というような分類に沿いまして、これを回顧して、本年の若干の展望というものを申し上げた次第でございまして、この機会にあらためて私から特に御審議参考に申し上げるようなことはないのでございます。しかし、外交演説が行なわれまして以来、若干の変化が、国際情勢日本をめぐる情勢変化がございましたので、本日はその点につきまして簡単に私どもの考えておるところを申し上げて、御審議の御参考にお願いいたしたいと思います。  外交演説がありましたときは、ビルマ賠償検討交渉は、交渉のちょうど山にかかった段階でございまして、こういう方向でやるのだということは申し上げておきましたけれども、結果について申し上げる段階でなかったのでございますが、その後急速に話が進みまして、ビルマ政府との間にイニシアルの交換を終えたのでございまして、目下その要項に基づきまして協定案文作案中でございます。骨子とするところは、双行賠償が一九六五年の三月末に満了いたしますので、一九六五年の四月一日から、今度交渉によって妥結いたしました経済協力を実行することになるわけでございます。一九六五年四月一日から開始するというのは無償経済協力でございます。この無償経済協力は、一億四千万ドルを一九六五年四月一日以降十二年用に均等で共与しましょうということでございます。ビルマ経済発展段階と申しますか、今の経済の構造から申しまして、ビルマ側が一番魅力を持っておられますのは無償協力でございまして、日本が現に各国に対して与えておる有償経済協力条件というものでは、なかなか実際動かない事業もございますので、現に現行協定でお約束をいたしておりまする五千万ドルも全然今まで実行されていない状況を見ましても、先方といたしましては、通常借款よりも無償経済協力魅力を感じられておったことは、想像にかたくないところでございます。従いまして、有償無償合わせまして二億ドルでやりましょうという合意に立脚して交渉を進めたのでございますが、今申しましたような事情で、無欲の経済協力で当方としてもできるだけ努力をすることにいたしまして、先方が大して興味を示さない普通借款の方は若干金額を少なくするというような形でまとめたわけでございます。しかしながら、ちょうど去年からビルマの七カ年計画というものが始まっておるわけでございまして、ビルマは当面非常な外資を要求されておる事情もございますので、有償経済協力の方は現行賠償協定が満了以前でもこれを動かしていくということに合意いたしておるわけでございます。目下細目につきましては協定案をつくっておりまして、これはおそらくそう遠からずでき上がると思いますので、でき上がり次第提案いたしまして、御審議をお願いする予定でございます。  それから、第二点として、外交演説後の事件としては非常にショッキングな事件でございましたけれどもEECに対して英国加盟する交渉が突如として中断されたことでございまして、この全体のEECがどうなっていくか、英国加盟交渉が将来どういうことになるのか、また、この事態が日本に対してどういう影響を及ぼすかというような点につきましては、なまなましい一件でございまして、今私どもも全機能を動員いたしましていろいろ調査し、検討し、かつ判断いたしておる段階でございます。従って、自身を持ってこの問題の全体の評価をするということは今まだ用意が十分でございませんが、ただ、私どもが今まで勉強したところによりましてかいつまんで申し上げますと、イギリス加盟交渉が中断した動機は、イギリスEECに対する加盟条件の中で、経済的な理由、特に温帯農産物EEC輸入に伴う条件につきまして、英国と特にフランスとの間に見解の大きな懸絶があったということが直接の原因であったとは思えませんで、非常に政治的な理由が直接の動機であったのではないか、こう思うわけでございます。その後の状況を見ておりますと、フランス側では、これは失敗でない、これは延期であると言っておりまするし、フランス当局も非常に慎重に言動されておるようでございますか、いましばらくして、この興奮がさめてまたこの話はコンティニューするのだというような、非常に慎重な姿勢でおられるようでございます。英国側は、当面の当事者であっただけに、衝撃が大きかったとみえて、フランス特にドゴール大統領に対する朝野の非難が公然と行なわれておるようでございますが、しかし、他のEEC加盟五カ国との間の話は依然続けておりまするし、英国全体がEEC加盟を断念したというような状況にはなっていないようでございます。フランスを除くEEC加盟五カ国では、若干のニュアンスの相違はございますけれどもEECへの英国加盟を振り切ってしまったという姿勢ではないようでございまして、この興奮がさめたあとにはまた何らかの話のよりを戻そうではないかという動きが見られます。特に、マクミラン首相がイタリアを訪問された共同声明によりましても、御案内通り空気であるようでございます。アメリカ衝撃は確かに大きかったと思うのでございますが、アメリカも急にフランスEEC等に対する刺激する措置はとらないでいこうという空気でございますし、先般ギルパトリック国防次官が私どもに語ったところによりましても、対西欧政策は変えないのだということを申しております。ただ、通商拡大法で規定されておりましたEEC条項が頓挫したということは、通商拡大法の運用上大きな変化でございます。英国加盟しない場合に、EEC条項、すなわち、英国を含めたEECアメリカとの輸出額が全世界の輸出額の八〇%以上を占めるものにつきましては関税をなくしようというようなこと、あの条項は、EECだけに適用いたしますと、航空機その他一、二の品目になりますので、実際上EEC条項というのは動かないことになるわけでございます。従って、アメリカといたしましては、かねて提唱いたしておりますように、関税一括引き下げ交渉というものに力点を置いて通商拡大の方途を求めるというように出てくるのではないかと思うのでございまして、関税一括引き下げ交渉というものの重要性が非常に高まってきたということになるのではないかと思うのでございます。  一方、わが国といたしましては、従来、御案内のように、英国とも、あるいはEEC加盟各国とも、二国間の通商交渉を精力的にやって参りました。英国とは、それが結実いたしまして、本日御審議をお願いいたしました通商航海条約締結となったわけでございますが、その他の交渉も現に続けられておるわけでございまして、ベネルックス三国との交渉フランスとの交渉等も鋭意続けてきておるわけでございます。従いまして、英国EEC加盟失敗、中断によりまして、われわれの姿勢が変わるわけじゃございません。今までの二国間の交渉を地道にやって参り、そして、それを促進していこうということでございます。きのう大蔵大臣が発表されましたように、IMF理事会で八条国移行勧告がございましたが、その理事会の席上におきましても、各国の代表がこぞって、対日輸入制限、差別待遇を撤廃しろということを、IMFでも非常に強調されたようでございまして、フランスの代表もそれに同窓を示しておったということは、新聞紙上で御案内通りでございます。従って、私どもは、今までこのEEC加盟各国との二国間交渉は従前通り姿勢で続けて、しかもそれをできるだけ早く促進していきたいと考えておるわけでございます。英国とは、今申しましたように、三十五条の援用撤回も踏み切っていただいたし、これから、英国日本との貿易というものは、この安定した基盤で拡大を見ることと思うのでございます。従って、直接わが国は今度のEECに対する英国加盟中断ということによって深刻な影響はございません。従来のペースで西欧との間の貿易は拡大の方向をとっていくものと思うのでございます。  それから、その次の問題といたしまして、きのうの早朝三時に行なわれましたIMFの第八条国移行勧告でございますが、政府は、これを受諾する決意をいたして、その旨発表いたしたわけでございます。今後の手続は、御承知のように、IMFの決出がガットにもたらされまして、ガットわが国と自由化の交渉をやらなければならぬわけでございますが、どういう方法によるものか、すなわち、ガットにウエーバーを求める方法によるのか、それとも、自由化リストを出しまして、二国間または多数国間と日本との間で交渉を進めるか、この手順をどういうふうにしていくかはまだ未定でございまして、早急に政府部内におきまして意見をまとめたいと思っておるわけでございます。いずれにいたしましても、ガットの場において私どもがいろいろの困難な事情を訴えまして、できるだけ円滑な八条国移行への手順をきめていかなければならぬと考えております。この八条国移行並びに自由化の促進と関連いたしまして、先ほど申しました差別待遇撤回交渉というものは、世界の世論にもなってきておるわけでございます。私どもは、既定の線に沿いまして、ますます精力的にその方面の努力をして参りたいと思っております。  それから、おとといアメリカの国防次官がお見えになりまして、総理大臣初め関係閣僚と懇談を持たれました。これは、私からも御発表申し上げておりました通り、国防次官としての定期的な世界旅行の一環のようでございまして、私どもは、アメリカ側の要人がたびたびお見えになりまして、世界情勢について意見の交換をする機会を持つことは、けっこうなことだと思っております。今度の御旅行では、EECに対する英国加盟中断という事態以後のアメリカの世界政策につきましてとかくの観測が行なわれておるけれども、これは確固不動であるとういことを力説されておりました。日米の協力関係につきましては、特別の提案はございませんでした。極東の情勢につきまして先方の意見をいろいろ聴取する機会を持ったわけでございます。日本の防衛力増強に対する要請というようなものはございませんでした。要するに、できるだけ要人の交流によりまして理解が深まり、あるいは情報の交換が的確に行なわれることはいいことだと思っておるわけでございます。  以上、外交演説がございました以後生じましたおもなる問題につきまして、私の考えておりますところを御報告申し上げた次第でございます。
  11. 福田篤泰

    福田(篤)委員長代理 ただいまの大臣の発言に対し、穂積君より議事進行の発言を求められておりますので、これを許します。穗積七郎君。
  12. 穗積七郎

    穗積委員 ただいま外務大臣から、今国会における政府外交問題に対する取り組みの態度並びに本会議における外交演説後の諸問題についての報告をされたことについては、これを多といたします。私どもも、今年度は日本外交経済の行き詰まりとともに非常に重要な転機に立っておるというふうに判断をいたしております。そういう点については、重要なる段階であるということについては、政府を代表するただいまの外務大臣のお考えと同じでございますが、内容及び情勢の判断並びに今後の外交の路線につきましては、これは最も重要であるだけに十分討議すべきたと思うのです。そういうふうに、今国会における外交問題の重要性を特に強調されまして、政府並びに国会との間における相互信義を深める、あるいはお互いに問題の正しい前進のために協力を求められるということであるならば、これは委員会の問題でもありますけれども、この際一言申し上げて、政府の認識なり御努力をお願いしたいと思います。  実は、大臣もお聞きになっておるかと思いますが、私どもも、今国会における外交審議ははなはだしく重要な段階に来ておるというふうに考えましたので、衆議院における外務委員会冒頭におきましては、特に外務大臣だけでなく総理その他の関係大臣も積極的に御出席をいただいて、そして、今申しました軍事的な面あるいは経済的な画、これに即応いたしまして十分意見の交換、審議を深めるべきだという態度をとってきたわけです。ところが、外交問題の重要性を主張されながら、きょうは、政府の方はどういう御都合か知りませんが、あらかじめ与党の委員長並びに理事を通じて、本日の冒頭の委員会におきましては、池田総理自身も外務大臣とともに御出席をいただいて、今お話のありましたような重要な一般の外交情勢の検討、並びに大きな日本外交の路線の問題については直接審議をされる、そういう努力を約束されたのですけれども、けさほどの理事会で報告を受けますと、理由はわかりませんが、総理の御都合ということで、御出席をいただかなかったわけです。今申しましたように、外務大臣から冒頭に事の重要性を指摘されておるわけですから、これはいささか政府の態度としては私ども不満足に思うわけです。ですから、次の機会には、委員長からの要望にこたえて、ぜひとも総理並びにそのほかの必要とする関係大臣も外務大臣と御同席になって、真剣に外交情勢の分析並びに方針の審議に当たっていただきたい。このことを強く要望するわけでございます。  なお、一言申し上げておきますと、今お話がありましたEEC問題であるとか、あるいは、アメリカの国防次官が、今後日本との間に定期的に問題を検討して、そして安保条約に伴う内容の充実化をはかっていこう、こういうような御意見のようですけれども、われわれは、これらの情勢につきましては、実は資本主義諸国間における内部的な矛盾と対立というものがやはり相当深刻に現われてきておるというふうに思うのです。たとえば、日本の当面の外交の重要問題である日韓会談にいたしましても、そのうらはらをなします、対ソ、対中、対その他の社会主義諸国との貿易促進の問題にいたしましても、この二つのいささか相対立するかのごとき外交政策が、二面外交というものが出てきておることも、今の日本資本主義経済の本質的な矛盾といいますか、苦悩というものの現われではないか。さらに、ヨーロッパ、EECらしめておる。さらに、もう一つは、アメリカEEC諸国との関係にいたしましても、アメリカのこの間のナッソーの協定前後、やはり、アメリカ側は、核兵器の独占を背景として自由主義諸国間におけるヘゲモニーを持とうとしておる。これに対して、フランス並びにドイツか強い抵抗を示しておる。こういうことは、言うまでもなく、今の資本主義諸国間における経済的な行き詰まりと矛盾、その対立の形が現実の中で発展してきているのではないか。そういう点についても、これは忌憚なく率直に、政府国会、または政府と野党との間でも審議を深めることが、今おっしゃったような重要なる転機に立つ日本外交の路線を誤らしめないための政府の態度ではないかと思う。われわれ国会もその責務を強く感ずる次第でございます。  以上、簡単でありますが、一言申し上げまして、重要であればあるほど、一つ早い機会に、たびを重ねて総理並びに関係大国も外務委員会に出席されて、積極的に率直に、十分時間をかけて討議され、実行されることを、今のお言葉に関連をいたしまして強く要望いたしておきます。そうでないと、今おっしゃる言葉がまことに空文といいますか、からの言葉になるわけですから、私どもも大臣の今の御発言を伺いまして強く感じましたことを率直に申し上げまして、われわれもこの審議協力をいたしますから、政府も今の精神で協力されることを強く要望いたしまして、ごあいさつといたします。      ————◇—————
  13. 福田篤泰

    福田(篤)委員長代理 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。  戸叶里子君。
  14. 戸叶里子

    戸叶委員 今穗積委員から総理の出席がきょうなかったことに対しての言葉があったわけですが、外務大臣自身、外交問題で非常に重要な国会であるということをおっしゃったその内容、関係を見ましても、どうしても、今穗積委員の言われたような形での委員会が進められていかないと、審議にいろいろ支障が来ると思いますので、どうか政府として努力をしていただきたい。このことを委員長並びに外務大臣にもよく申し上げておきます。ことに、きょうは、外務委員会の最初で、総理と外務大臣が出ていただけるということで始めましょうというので、きょうまで待っていたわけでございますから、それが総理が来られないということになりますと、今後非常に問題が残るのではないかと思いますので、この次はぜひともこの点をお考えになっていただきたい。これをまず要望したいと思います。  私は、今の外務大臣のお話の中でずいぶん問題があったと思いますが、そういう問題はあとにいたしまして、日韓問題について主として質問をしたいと思いますが、ただ一点だけ、今説明された中で伺っておきたいことは、ギルパトリック次官が日本を訪問された、しかし、それは定期的な世界旅行の一環として来られたのであって、大したことはないのだけれどもEECイギリス加盟ができなかった後のいろいろな国の考え方などを聞いて歩き、日本との関係においては特別の提案もなかったし、それから、防衛力増強の意見も向こうで述べなかった、こういうふうなことを今おっしゃったわけでございますが、そのほかに何かお話し合いをされたようなことがなかったかどうか。たとえば、極東情勢についての判断、こういうふうな問題についてはお話し合いがなかったかどうかを伺いたいと思います。
  15. 大平正芳

    大平国務大臣 極東情勢について先方がどのように見ておるかは、もちろん私の方から聞いたわけでございます。そういう話はございました。
  16. 戸叶里子

    戸叶委員 それに対してどういうふうに見ているかという質問に対して、どういう答えがあったでしょうか。
  17. 大平正芳

    大平国務大臣 極東が不安定な状態にありますし、ベトナム、中印国境紛争等が未解決の状態にあることはごらんの通りだ、一つの事件が起こりますとまた連鎖反応が起こるということでございまして、自分たちとしては、極東が一日も早く安定の方向に向かうことを希望しておるということでございました。私どもといたしましても、その限りにおきまして全然意見の違いはないわけでございまして、極東情勢は依然不安定なきびしい状態にあるという御認識でございます。
  18. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうような問題にからんで、日本の基地というようなものを日本人としてはできるだけ早くこれをなくしてもらいたい、こういうふうな考え方を持っているのでございますけれども先方としてはそういうことに何か触れられたかどうか、この点も伺いたいと思います。
  19. 大平正芳

    大平国務大臣 基地問題には一切触れませんでした。
  20. 戸叶里子

    戸叶委員 アメリカとしては、在日米軍というようなものを少しでも減らしていくとか、基地をだんだんなくしていくとかいうような考え方はないかどうか、この点は日本政府としてそうしてほしいというような意見を述べられなかったかどうか、この点を伺います。
  21. 大平正芳

    大平国務大臣 基地問題についての言及はなかったわけであります、今回の会談では。
  22. 戸叶里子

    戸叶委員 中共の問題などについて、日本としては中共に対しては前進した政策をとっていくというような態度を少しずつ示していると思います。それに対して、アメリカ側の、たとえばケネディの昼食会の中国封じ込めというようなああいう演説から見ましも、何か中共問題について消極的な態度というものが見られなかったかどうか、この点も念のために伺いたいと思います。
  23. 大平正芳

    大平国務大臣 これは、ケネディ大統領の御発言がございまして、いろいろ取りざたされておったのですけれども、私どもの態度ははっきりしておるのです。御案内のように、安保条約というのは日米の安全保障協力の約束でございますので、そのフレームの中で私どもは考えればいいわけなのであります。それを変えろという要求は先方から局しもないわけでございます。問題は経済協力の面で、弾力的に日本が処置いたしておるわけでございますから、それは、日本政府といたしましても、既定の経済協力の展開はもっと積極的にやらなければいかぬという既定方針で進んでおるわけでございます。従いまして、わが国といたしましては、今とっておる姿勢にちっとも問題はないわけでございまして、事中共に関してその拡大を阻止するために日本がどうすると申しましても、安保条約上そういうことはできないわけで、軍事面ではできない約束になっておるわけで、それを変えろというような要請も一向こうからないわけでございます。従いまして、私どもは、どなたが来られて、どういうお話があろうとも、そういうことは関係ないわけで、私どもの既定の姿勢には変わりはない、さような考えを堅持いたしておるのであります。今回の御来日につきましても、そういうことで、私ども姿勢に少しも変わりはたいし、先方も、ここをこうしてくれああしてくれというような要請はございませんでした。
  24. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、そういう問題より、むしろ、アメリカから相当の力のある人が来た場合に、日本として、たとえば中国の問題にしても、中国の国連加盟の問題を促進させるべきであるという意見も積極的に吐くべきではなかったか、こういうふうに考えるわけでございますけれども、そういうふうな機運さえも見られなかったというふうに理解していいわけでしょうか。  それから、もう一つの点は、アメリカの要人が今回来て、そして極東の状勢は不安全であるというようなことをいろいろと言われたということに、私たちは非常に心配するわけでございます。なぜかと申しますと、今、日韓会談が始まっておりますけれども、これも一つは反共軍事体制というものをつくるのじゃないかというような、懸念が、国民の中には非常にあるわけでございまして、このときに、アメリカからしかも防衛関係の責任者が来られたということは、NATOに対応しての何か防衛関係のことを考えるような空気日本につくっていくのではないかということを非常に心配するわけでございますが、今の外務大臣の御答弁を伺っておりましても、そういうことがあるのではないかというふうに考えますけれども、極東の情勢が不安定だということにからんで、何かそこに防衛の問題あるいは韓国との問題というようなことに触れられはしなかったかどうかということを、念のために伺いたいと思います。
  25. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国の問題には一切触れられませんでした。それから、極東の情勢が不安定である、どういうふうに不安定なのか、私どもといたしましてもいろいろ知っておかなければいかぬと思うのです。そういう意味で、私が先ほども申し上げましたけれども、あらゆる方面の方にできるだけよけい会いまして、彼らの持っておるインフォーメーションというものをできるだけ聞きとめておくということが必要だと思います。そういうことを怠っては、私はいけないと思います。
  26. 戸叶里子

    戸叶委員 大平外務大臣の御答弁は、私の伺っておることと違うのです。極東の不安な情勢というものを向こうが話した、そういうふうなところから勘案して、何かの防衛体制というようなものを、だんだんに日本に、新しい形の防衛体制あるいはNATOに対応するようなものをつくり出させようとするような考え方があるのではないかということを考えますが、そういうことはどういうふうにお感じになりますかということを伺っているのです。
  27. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、防衛力増強について、ここをどうしてもらいたいこうしてもらいたいというような具体的な要請はなかったということを私は申し上げておるのであります。これはあくまでもわれわれが考えることでございますから、その点ははっきりいたしておるわけです。私は、防衛問題を考えるにあたりまして、われわれがめくらであってはいけないので、できるだけ広く意見を求め、情報を求めて、われわれがしっかりした情勢を把握しておくことが必要だ、そういう意味で、ギルパトリックさんばかりでなく、いろいろな要人が各国から来られて、克明に見解を聞いておくということは私の責任であると思います。
  28. 戸叶里子

    戸叶委員 私もそれはいいと思います。各国の責任者からいろいろな意見を聞くということはいいことですけれども、ただ、日本の今日の外交を担当されている方々の基本的な方針というものが、ややもすると一方に偏した外交方針をとっておられるために、アメリカ一辺倒になる。そこから出てくるいろいろな懸念というものがあるわけでございまして、やはり、この時期にギルパトリック国防次官が来られたということは、何か私どもは非常に不安なものを感じるのだということを申し上げているわけでございます。  そこで、先ほど外務大臣は、日本外交経済外交国連外交というふうなことをあげられまして、この経済外交についてもあとの機会で十分に私どもば質問したいと思いますが、さらに、今度のギルパトリック次官が来られたということによって、何か、防衛外交と言ってはおかしいかもしれませんが、軍事外交というようなものも一本加えて、そうして政府が力を入れるのではないかというような気がするのですが、どうかそういうことがないように、今のうちから十分に要望をしておきたいと思いますが、いかがでございますか。
  29. 大平正芳

    大平国務大臣 私が先ほど申し上げましたように、われわれは安保条約という条約機構を持っておるわけでございまして、その範囲内で私どもがやって参っておる。そういう基本に何ら変改はないわけでございますから、今戸叶さんの御心配のような転換というようなことはあり得ないことでございますので、その点は御安心を願いたいと思います。
  30. 戸叶里子

    戸叶委員 安保条約を忠実に守っていくということの内容自体が、軍事外交になる危険性が非常にあるわけでございますから、こういう点は十分に注意をしていただきたいと思います。  そこで、私は日韓会談の問題に入りたいと思いますが、日韓会談でまずお伺いいたしたいことは、三十六年の十一月の池田・朴会談で日韓会談というものが一歩前進したわけですね。その場合に、請求権の問題は、法的根拠のあるものとか、あるいは事実関係の的確なものというようなことで、一歩前進したわけだと思います。その当時、私どもは、それが七千万ドルくらい、こういうふうに一応了承していたわけでございますが、最近、政府の方では、七千万ドルなんて一言も言った覚えはありませんとか、それは根拠がありませんと、こういうふうに打ち消しておられるわけですけれども、それでは、その当時、池田・朴会談での法的根拠のあるものとして考えて発表されていた数字は一体どのくらいのものを考えていたのか、これを説明していただきたいと思います。
  31. 大平正芳

    大平国務大臣 池田・朴会談の了解は、できるだけ早く国交は正常化しようじゃございませんかということが一つと、それから、諸懸案の中で一番問題なのは請求権だが、請求権は法律的根拠のあるものに限ってやろうじゃないかという二つの了解があったと思うのでございます。その後、その了解に基づきまして、われわれ外務省といたしましては、先方と法律的根拠を見出すべく両方の見解の討議を行なったわけでございます。ところが、この法律的根拠に限って片づけようという場合には、法律的根拠について双方が合意することが必要なんでございます。日本側が、これが法律的根拠に合うぎりぎりのものだと考えましても、先方はそう考えないというのであれば、これはまとまりがつかぬわけでございまして、予算委員会でも申し上げたのでございますが、一例を申し上げますと、朝鮮銀行から地金を日本の統治時代に二百四十九トン搬出しておる。だから、これは事実ははっきりしておるのです。事実ははっきりしておるんだが、その搬出が合法か非合法かということで、これは日本が朝鮮銀行法に基づきましてそのときの正当な相場で金銀の売買をした、そのことは合法である、こう日本側は主張するわけです。しかし、韓国の方では、それは日本が勝手につくった法律であって、われわれはそういう実定法の効力を認めるわけにいかぬ、従って、搬出それ自体が非合法だ、こういう主張なんです。従いまして、法律的根拠によって問題を片づけるとすれば、その法律論が同一の根拠に立たないとできないわけでございます。これは非常にティピカルな法律論の対立の一つの例でございますが、もろもろの例はたくさんございます。一方、これは事実関係ははっきりしておるのですけれども、事実関係がはっきりしていないものがあるのです。たとえば、徴用工なら徴用工は、雇用の事実を確認しなければいけませんし、雇用関係があって賃金を支払いしたかしないか、事実を確認しなければいかぬし、そういう事実関係を現在の時点ではっきりさそうと思っても、物理的に不可能な条件もあるわけでございます。あるいは、たとえば郵便貯金なら郵便貯金で、これだけの金額ということがほぼ推定がつきましても、一体日韓の間で韓国人と日本人がどういう割合になっておったか、北と南の関係がどうなっておったかとなりますと、推定の方法がまた彼我の間に意見が違うということでございまするので、せっかく池田・朴会談での法律的根拠によってやろうじゃないかという了解で進めてみましたけれども、しかし、それが、事実両方の見解が合わない、また、合わし得ない、事実関係の立証さえ困難だというような問題にぶつかったわけでございます。従いまして、今お尋ねの七千万ドル云々ということでございますが、つまり、どういう法律的根拠によるか、どういう事実を選択して基礎としてとるかによりまして金額が違うわけでございます。それはもう先生もよく御想像つくと思うのでございます。従いまして、政府は、これが日本政府の見解としてこのくらいが妥当であろうということをきめたことはないのであります。こういう根拠でとればこうなる、こういう根拠でとればこうなると、幾つもの答案が可能なのでございます。そういう試算もしてみたのです。その一、二が、どこからか漏れて、あたかもこれが日本政府の見解であるように流布されたわけでございますが、日本政府としてはそういう不謹慎なことはしていないのでございます。その点は、私はずいぶん予算委員会でも御説明申し上げたのでございますが、しかし、その、こういう根拠でとればこうなる、こういう根拠でとればこうなるというような試算を試みたことも、どうしてもと御要求されたわけでございます。それは、私は、ある時点において正直に解明して提出しなければいかぬと思っておりますが、しかし、そういう方法で請求権というものについて彼我の見解をたぐっていけば何か合意に到達できると見るのは無理で、幾らやってみても平行線の面が多くて妥結ができない、こういうことにいつまでも時を費やすということは賢明でないと判断いたしまして、経済協力の方法をとったわけでございます。  もう一度言い直しますと、七千万ドル云々なんというものが日本政府の見解であるということで発表するというような不謹慎なことはいたしていないということは、お認めいただきたいと思います。
  32. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣に申し上げますけれども、大へん懇切丁寧に説明して下さるのはありがたいのですけれども、時間がありますので、なるべく簡単に伺いたいと思います。  今のお話によると、七千万ドルというのは根拠がない、七千万ドルよりほかにもいろいろあったのだけれども、そのうちの一部が漏れて七千万ドルというふうに出ていったにすぎない、こういうふうに了解してよろしいわけですね。そうすると、もっと多かったということになるわけですね。何かの法律的根拠というものを頭に置かれて、その法律根拠というものは考え方が違いますから、日本の場合と韓国の場合とは話し合いをしてみなければわかりませんし、総額もおそらく違うでしょう。違うでしょうけれども、ともかく法律的根拠に基づくものでやろうじゃないかということの声明だけは事実だったわけですわね。だから、そのときに頭に置いた数字というものは七千万ドルじゃないのだ、もっと多かったけれども、その一部が漏れたんだ、こういうふうに了解してよろしいわけですか。
  33. 大平正芳

    大平国務大臣 予算委員会で申し上げた通り、根拠のとり方によりまして、前提のとり方によって幾らでも数字が出てくるわけです。それで、一つの前提に立てば七千万ドルという数字も可能じゃないかということなのでございます。
  34. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで、池田・朴会談というもので、正式に法律的根拠のあるものということで声明をした。そうして、今度はいつの間にか経済協力というふうな形に大平・金会談でなっていったわけですね。しかも、金さんは、その当時、アメリカへ行く途中に寄るというような形で日本に寄って、そして話し合いをして行ったわけです。そこで、私は、大へん不可解なのは、一国の最高責任者がこういう形でいこうといって声明を出しておいて、その後うやむやのうちに経済協力に変えられた、こういうことに問題があるのじゃないかと思うのです。もしも経済協力ということでいこうというならば、池田・朴会談で一応は法律的基礎のあるものということで話をつけて声明も出したけれども、これはやはり、話が進まないから、今度は経済協力というような形、あるいはほかの形でいくんだというような声明が当然なされるべきではなかったか。池田・朴会談でははっきりした声明をしておいて、それかうやむやになってしまって、いつの間にか金情報部長が日本へ来たときにたまたま大平さんと会談をやって、そして今度のような形をとるようになった。これは一国の責任者が一度声明したことに対するけじめのつけ方としては少しおかしいのじゃないか、こういうふうに思いますが、この点はどうお考えになりますか。
  35. 大平正芳

    大平国務大臣 それは御心配ないようにやっておるのです。つまり、池田総理にも、朴議長にも、こういう考え方でどうでしょうかという御相談を申し上げて、それ以外に道はなかろうというような御了解を得ておるわけでございます。
  36. 戸叶里子

    戸叶委員 御心配のないようにやっているとかなんとかいう問題じゃないと思うのです。一度最高の責任者がそういう声明を出したのですから、やはり、今度は、その最高の責任者が、そういうことはまずいのだから、こういうふうにするのだということを国民に知らせるべきではなかったかということを言っているわけです。それがうやむやのうちに、今度は大平・金会談ということになり、しかも、その金さんというのは正式代表で来ないうちに、そういうことがきまったというところに問題があるのじゃないかと思いますが、この点はいかがですか。
  37. 大平正芳

    大平国務大臣 うやむやのうちにちっともやっていないのです。やはり、総理演説でも、私の演説でも、その趣旨はよく書きまして、国会を通じて国民に申し上げておるわけでございます。
  38. 戸叶里子

    戸叶委員 大平外務大臣がそういうことを発表されているのは知っておりますけれども、最初に池田さんと朴さんが、はっきり、法的根拠のあるものに限っていたしましょうということをおっしゃったのですから、そのあとの収拾を、やはり池田・朴会談で、これでは進まないからこうだということをけじめとしてすべきではなかったかということを申し上げているわけでございますけれども大平外務大臣は、いやそれは私が外務大臣だから引き受けてやったのだからいいとおっしゃれば、それはそれまでですけれども、私らの考えとしては、最初に最高責任者がこうだということをおっしゃったならば、それを変更するならば、当然その最高責任者がそれを取り消すべきではなかったかと思うのですが、この点、けじめのつけ方というものが少し私どもにはあいまいにとれるので、この点をもっとはっきりさせておくべきではなかったかという意見なんです。
  39. 大平正芳

    大平国務大臣 そのけじめのつけ方でございますが、これをうやむやの間に、やみくもにやってしまおうという気持はちっともないのでございまして、国会を通じてはっきりと、法律的根拠に基づいてやるべく努力はしました、しかし、これこれこういう理由で、それは百年河清を待つというようなことになる、従って、これは別な工夫をこらさなければならぬということになりまして、こういう考え方でいくことにいたしましたということを申し上げているので、私はちゃんとけじめはつけてあるつもりでございますが……。
  40. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣としてはけじめをつけられたとお思いになるかもしれませんが、私どもとしては、一応、トップ・クラスといいますか、最高責任者の発表として出されたものですから、やはり、最高責任者が、今度は外務大臣の段階にまかしますとか、あるいは今度はそれでは進在ないから内容を変えますとか、こういうふうな声明を一度出すべきではなかったかということを私どもは考えているわけでございます。その点に外務大臣と私たちとの食い違いがあるわけですが、外務大臣は、自分はあとを引き受けてさっさとやって、国会にも報告したからいいとおっしゃるかもしれませんが、私どもの目から見れば、最高責任者同士できめたことなんですから、それが変わるときには、最高責任者が、今度はこういうふうな形でいきますというような発表、その内容が変わったという発表をすべきではないか、変わったというその相談をすべきではなかったか、こういう点を私どもはけじめをつけるべきだというふうに考えておるわけです。この点をよくあとで考えていただきたいと思います。  そこで、請求権の問題でいろいろ問題があるわけですけれども、今回の請求権と平和条約四条との関係というものは、今までの質疑応答を聞いてみますと、いろいろと変化をしてきております。私は、その変わりをずっと速記録で読んでみて、何か一貫性がないように思うのです。ことに、池田総理大臣、——きょう私はそういう意味でも池田総理大臣に来ていただきたかったんですが、池田総理大臣は、一月二十九日の衆議院の予算委員会で、日韓両国とも繁栄に導くために、請求権という条約上の権利を消滅させるために無償あるいは有償経済援助をやることは、請求権の変形でございます、と言っておるわけです。請求権がそういうものに変わってくるということを言っていて、そうして、請求権というものを認めて、これの変形としての有償無償経済協力だということを言っておられるわけです。ところが、外務大臣の方は、去年の十二月十一日のころは、黒田委員が補正予算のときに質問され、岡田委員がそれに関連質問をされて、それに対する答弁として、最初は、第四条の請求権と関係があると考えていない、こういうふうにおっしゃったんですけれども、だんだん質疑応答の結果、請求権の問題に関連した交渉をやっているわけでございまして、第四条と無関係の交渉であるというように私が申し上げたとすれば、それは間違いでございますから取り消します、こういうふうにおっしゃった。その後だんだん変わって参りまして、そうして、今度は、無償及び有償経済協力を行なうこととし、このような経済協力を供与することの随伴的な結果として平和条約の請求権の処理が同時に一切解決したことを日韓間で確認するものでございます。こういうふうにおっしゃる。そうして、きのうの横路委員に対しても、平和条約四条の請求権とは無関係だ、こういうことを言っていらっしゃるのです。  そこで、池田さんの方は請求権の変形だと言うし、大平外務大臣の方は、請求権とは無関係のものだ、こういうことを言っていらっしゃるのですが、一体この関係はどういうふうになっているのかということを私は実はきょうは総理と外務大臣と両方に伺いたかったんですが、一体これはどっちがほんとうなんですか。この点を確かめておきます。
  41. 大平正芳

    大平国務大臣 平和条約第四条の請求権の処理は、平和条約では処理について両当局で取りきめをするようにということが書いてあるわけでございます。しからばどういう方法で処理するかということについては言及されていないのです。従って、私どもが考えておりますところは、請求権の処刑はしないと国交の正常化はできないわけでございますから、いかにかしてやらなければならぬ。しかし、請求権自体を法律的根拠に基づいて探り出てる、そして両方が合意するということは、事実的にも法律論的にもむずかしいということになりましたので、全然別な方法で経済協力をします、従って、その随伴的結果として韓国の方は請求権はなくなったものと確認いたしますというような方法において処理しようというのが、われわれのただいまの考え方でございます。従って、経済協力という事実と請求権というのは無関係なんです。ただ、経済協力することによって、請求権というものを主張しないというか、なくなったものと確認するという随伴的な結果が生じて、それが平和条約四条にいうところの請求権の処理になるのだ、こういう立脚点に立っておるわけでございます。総理大臣が変形と言われたのは、どのように御理解されたのか、つまり、条約との関係におきましては私が申し上げた解釈に政府ば帰一いたしておるわけでございまして、何か請求権というものがあって、今度は経済協力で事柄が片づくから、あるいはそれを変形と見てもいいじゃないかというようなお考えであったのではないかと思いますけれども条約の解釈論といたしまして、私が申し上げたことが政府の統一した見解であるというようにおとりいただいてけっこうでございます。
  42. 戸叶里子

    戸叶委員 条約の解釈論として、大平外務大臣のおっしゃる通りをそのまま認めたとしても池田さんとの考え方は根本的に違っております。よくその文句を読んでいただきたいと思います。池田総理大臣のおっしゃるのは、請求権の変形ですと言っているのですよ。そうすると、請求権をもとにしたものだということになるわけです。請求権が経済協力の中に入るわけですよ。ところが、大平さんの場合には、これは全然無関係ですとなっているのですよ。それがどうして同じに解釈できますか。できないじゃないですか。
  43. 大平正芳

    大平国務大臣 条約解釈論としては一致しているのです。そういう経済協力というものを実体的にどう見るかということで、これは請求権の変形みたいなものじゃないかというような感じ方をされたのかもしれませんけれども条約の解釈といたしましては、私が先ほど申し上げました解釈で、帰一いたしておるわけです。
  44. 戸叶里子

    戸叶委員 だから、私はきょう総理大臣に来ていただきたかったのです。外務大臣が条約の解釈は一致していますとおっしゃっても、一致していないのですよ。予算委員会で当然問題にされるべき問題だったのですけれども、池田さんが、前後の速記録を読んで見てもおわかりになりますけれども、はっきりと、請求権は経済協力の変形ですと答えている。このことは今の大平外務大臣の解釈とは全然別ですよ。池田さんの解釈は、経済協力の中に請求権がある、請求権が変わってこうなったのだというのです。ところが、無償協力というものと全然別個のものが請求権だ、請求権と全然別個のものが無償協力だというのが大平外務大臣の答弁です。この辺がはっきり違っております。私は、今の外務大臣の御答弁では納得できないのです。外務大臣がどんなに政府条約解釈は一致しておりますとおっしゃっても、明らかにその点が違っておるのですから、そこにやはりごまかしがあると思うのです。これはどうですかといって外務大臣にお聞きしても、外務大臣は、それは池田さんは私と同じ考えですとおっしゃるしか、おっしゃりようがないと思うのです。  ですから、委員長、今度この問題をぜひともはっきりさせていただきたいと思いますから、なるべく早く総理大臣を呼んでいただきたいと思います。
  45. 岡田春夫

    岡田(春)委員 関連して。  私今ちょっと座をはずしておったので、あるいは前後するかもしれない  が、この間の臨時国会の予算委員会で私が黒田委員の質問に関連して伺ったときに、この問題が出ているわけです。大平さんが、それについて、最初は請求権問題は第四条に関係はございませんと明確に答弁をされた。それは速記録に残っておる。それをあとになってお取り消しになったわけですね。お取り消しになった点では、ここにありますが、「請求権の問題に関連した交渉をやっているわけでございまして、第四条と無関係の交渉であるというように私が申し上げたとすれば、それは間違いでございますから取り消します。」、このように大平さんははっきり取り消されたわけです。関連があるんだということに一応なったわけです。ところが、先ほどからの質疑応答、それから昨日の質疑応答、予算委員会における質疑応答を聞いておると、関連があるがごとくして関連がない。そこの点、非常に重要な点なんですが、問題は関連があるがごとくして関連がないというように印象を与える。私たちがそう思うのはこの点だと思うのです。経済協力なり、あるいはこの前の国会においてあなたの言われた、請求権問題という言葉でつかわれたこのこと、あるいはまた、実数から言って三億ドルプラス一億ドルというこの数字ですね。その数字の中の根拠として、請求権にかかわるものが根拠としてあるのかどうかという点なのです。その根拠の中にそのものが入っているんだとあなたがお話しになるのならば、これは明らかに第四条に関係があるということ。ところが、あなたの今までの御答弁を伺っていると、経済協力と請求権とは一応別個であります。条約の処理上においては、あなた条約の処理上でこうしようというのでしょう。簡単に言うと、無償供与三億ドルを与えます、有償供与三億ドルを与えます、その次の条章に、第四条に規定されておる請求権はこれによって、一切放棄いたします、——それは放棄でもどういう言葉であっても、要するに放棄という意味のことを韓国側に書かせる。こういう形式を通じて第四条に関係があるんだというようにあなたは技術的にやろうとしておるんでしょう。技術的にこういうことをやったって、国民あるいはわれわれにとっては、これは技術的ながまかしをやったのであって、今ここで松本委員と私語をいたしておりましたが、松本委員のお話によると、何々の借金を返してもらうのに、飯を食った、飯を食ったんだから借金はいいじゃないかという話にした、こういうことなんではないのか、こういうことを言われた。だとは断言して言わぬ。ないのかという感じを述べられた。ですから、それならなおさら請求権と経済協力との関係がないということが立証される。飯を食った額というものはどんぶり勘定です。経済協力と請求権とには関係がない。ただ、その場合に、飯を食ったということと話し合いをつけたというところでは関係はあるかもしれない。しかし、経済協力それ自体と請求権の間に関連はないということは明らかですよ。その点が明確にならないから、関係がないではないかとわれわれは言っておる。この点について外務大臣としてはどういう見解をおとりになるのですか。
  46. 大平正芳

    大平国務大臣 経済協力と請求権とは無関係なのです。あなたの御理解の通りです。経済協力をやることによってて、請求権は、つまり四条にいう両方で取りきめて片づけなければならぬという請求権が消えちゃうんです。だから、四条にいう請求権の問題は片づいたということに両方合意しようということでございますから、矛盾はしないと思うのです。
  47. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、条約の方式としてそういうものを二緒にすること自体は、私は問題があると思う。これは第四条に基づく請求権の放棄ということを明文上に明らかにする、これは南朝鮮もそれを認めるという、そのことはサンフランシスコ条約の第四条に基づく規定に関することです。経済協力というのは、何もその問題に関係してこれが行なわれるものに限っているべきものではない。別途において、たとえば韓国にこの後において経済協力がまた行なわれるかしれませんね。そういう経済協力と同じものとして扱うならば、条約の扱いとしてもおのずから別個にするのが当然です。この前払が予算委員会で伺っておるときには、あなたは、今日の交渉はサンフランシスコ条約に基づく交渉だ言われましたね。それならば、第四条の問題はサンフランシスコ条約に基づく交渉としてやらなければならぬ。経済協力の問題は、性質上おのずから違う問題ですよ。そういう問題としてこれは処理しなければならないし、それによって国民をごまかしちゃいかぬと思う。それなら、あなた、はっきりした方がいいですよ。第四条の請求権は放棄いたしましたということをはっきりしました、別途の交渉において経済協力というものは別途にきめました、それが結果的には南朝鮮においてどういう結果になるかということは、これはまた別の問題として、少なくとも国際法の論議の問題としては、それを一緒にするということは一貫性を持たない。筋が通らない。これは、もっと言うと、あなたは請求権の問題を解決する自信がないからこういうごまかしをやっておる、こう言われても仕方がない、こういうことになってこざるを得ないと思う。こういう点はどうですか。
  48. 大平正芳

    大平国務大臣 現在の請求権を、先ほど私が申しましたように、どういう方法で解決せよということは平和条約に書いてないのです。だから、向こうがそれを主張しない以上、なくなったと認めるということも先方の自由でできることでございます。それだけで、あなたがおっしゃるように平和条約第四条の問題が解決がつくわけであります。経済協力は全然別個の問題でございます。ただ、経済協力をすることによって、向こうがそういう決議をされるという外面的連関はありますけれども、しかし、平和条約の処理はきちんとつく、また、つけなければ交渉の意味がないわけでございますから、そんなようにやっているわけです。
  49. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私は関連ですからこれ以上やりません。
  50. 戸叶里子

    戸叶委員 今の問題ですけれども、平和条約の四条は破棄しましたということがなければ、平和条約というものは依然として残っていくと思うのです。だとすれば、その処理の仕方だとおっしゃいますけれども日本と韓国との間で結んだ協定というものは、平和条約とどっちが優先するかという問題も出てくると思うのです。そして、その両国の間ではいいかもしれませんけれども、平和条約四条そのものはあとに残って問題が出てくるのじゃないかと私たちは考えます。この点はどういうようにお考えになりますか。やはり、二国間の協定の方が優先して、平和条約はそのまま死んでしまうというようにお考えになるわけですか。これはとんでもないことだと思うのです。
  51. 大平正芳

    大平国務大臣 平和条約に基づいて韓国の主張すべき請求権はそこでけりがつく、韓国に関する限り片づくと思うのです。また、片づけるようにしなければならぬと思うのです。
  52. 戸叶里子

    戸叶委員 片づくと一人でおきめになっていても、片づかないから、そこが問題なんです。さっきの総理の答弁との食い違いがありますから、私は、この問題は保留にしておいて、今度総理がいらっしたと夢にもっと深く追及したいと思います。  そこで、もう一つ、やはり同じような問題があるのですけれども、勝間田さんが平和条約四条でオーソリティの問題を取り上げられました。このオーソリティというものに北鮮は含まれない、こういうふうに外務大臣は答弁されておりますけれども、その通りですか。これは韓国だけの問題だというように解釈されているわけですか。
  53. 大平正芳

    大平国務大臣 その通りです。
  54. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、オーソリティという解釈は、オーソリティにはいろいろあるわけですが、一致していないわけですか。オーソリティといっても、どうしてここで韓国だけのことをおっしゃるのでか。
  55. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、たびたび申しあげておりますように、平和条約締結され、また、国連といたしましては、韓国を唯一の合法政権と認める、そして各国もこれに同調されることを希望するという決議がありまして、日本も韓国を合法的な政権として、われわれは今交渉いたしておるわけでございます。従って、そこにいうオーソリティは韓国政府であるということに立脚してやっているわけです。
  56. 戸叶里子

    戸叶委員 平和条約において韓国を認めている、あるいは平和条約を認めた国が韓国だけをオーソリティとしているからそうだということなんですね。ところが、ほかの国でも、同じアメリカの陣営に属する国でも、北鮮のオーソリティという言葉を使っているわけです。たとえば、一九五〇年六月二十五日の安保理事会において、オーソリティズ・オブ・ノースコリーアという言葉を使っています。それから、その後においても、オーソリティズ・イン・ノースコリーア、オーソリティズ・オブ・ノースコリーアというように、国連会下の国々が北鮮のオーソリティズという言葉を使っているわけです。だとすれば、そのオーソリティズというものは、このオーソリティズというものとどういうように違うのですか。
  57. 中川融

    ○中川政府委員 条文の解釈でございますので、私から申し上げますが、オーソリティズという言葉を平和条約の四条で使っております。日本語の訳として当局という言葉を使っております。これはもちろん普通名詞でございまして、オーソリティズという言葉自体から何をさすということは当然には出てこないわけであります。北朝鮮の政権につきまして、国連の決議でオーソリティズという言葉を使っておるということも事実でございます。四条では、施政を行なっている当局との間に請求権についての取りきめを行なうという規定でありますので、これから受ける第一次の印象としては、現実に施政を行なっている北朝鮮の当局もこれで権利があるのじゃないかというふうに一応考えられるようでございますが、しかし、平和条約全体の思想からいたしまして、朝鮮国の独立を認めたということは、二つの朝鮮を認めたことではない。これは当然考えられるのでございまして、やはり朝鮮半島が一つの独立国になったということを平和条約で認めておると解釈せざるを得ないと思うのでございます。従って、第四条からして、北と南と両方に当局があるから、その両方と財産権、請求権の交渉日本がやるということになりますと、日本は二つの朝鮮政府というものを結果的に認めるということになるわけでございまして、そういうことは四条が要請しているとは解釈できない。やはり、これは日本承認し得る朝鮮国の政府交渉せよということであろうと考えざるを得ないのでございます。それから見まして、この第四条にいうところの、施政を行なっている当局ということは、朝鮮に関しましては、やはり日本承認し得る朝鮮の政府、朝鮮国の政府ということであると考えざるを得ないのであります。それからいたしまして、この平和条約当市国のほとんど大部分は、その当時、一九四八年の国連の決議に基づきまして、大韓民国政府承認していたのでございます。また、日本も、平和条約発効と同時に大韓民国政府の在外事務所、代表部を認めまして、これと日韓交渉を実は平和条約発効以前から行なっているのでありまして、日本ば明らかに大韓民国政府の方を承認したわけでございます。しかしながら、もちろん、北の半分につきましては、大韓民国政府が管轄権を法律的にも及ぼしておりませんから、従って、策四条のいわゆる請求権に関する交渉は南だけについて大韓民国政府と行なっているというのが現状でございます。北については白紙の状態であるということは、将来北につきまして日本承認し得るような当局ができました際は、やはり四条に基づいて北について交渉し得る権利がその当局にあると考えるのでございますが、現在では、そういう当局は、四条のいうような当局は日本に関してはまだ存在していない、かように考えておるわけでございます。
  58. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうふうにおっしゃいますけれども、おっしゃること自体が何が何だかさっぱりわからないのです。この間の予算委員会ではっきりおっしゃったことは、北朝鮮にも請求権がありということをおっしゃいましたれ。そうすると、ありというのはどこから出てきてありというふうに認められたのですか。このオーソリティを認められたからありとしたのじゃないですか。
  59. 中川融

    ○中川政府委員 オーソリティの権利ということよりも、現実にそこに住んでおる朝鮮の人の日本に対する請求権、これは事実上いろいろあるわけでございますが、それについての解決はまだできていない、日韓間に交渉が妥結いたしましても、その分はできていない、こういう意味で、請求権が未解決のまま残っておる、先方の請求権はまだ残ることになる、かような答弁になったわけであります。
  60. 戸叶里子

    戸叶委員 それじゃ、二月の二日の予算委員会で池田総理大臣が、北朝鮮の請求権は、「平和条約第四条の(a)項によりまして、双方請求権があると私は考えております。」とおっしゃっているわけです。それはオーソリティを認めているからそうおっしゃったわけではないですか。すなわち、四条の(a)項によって請求権あり、こうはっきり断定していらっしゃるのですよ。
  61. 中川融

    ○中川政府委員 それはその通りであるわけでございまして、北の半分については、そこの政府当局というもの及びそこの住民というもの、これらの人々あるいはこれらの当局が日本政府に対しまして、あるいは日本国民に対しまして、何らかの請求権を持っていることは事実でございます。また、日本側も同時にそういう請求権があるわけでございまして、これは交渉する相手がまだおりませんので交渉できないままに残っておる、かような自体でございます。将来何らかの形でそういう交渉をするような時期が来れば、四条に基づく交渉ということが行なわれると考えます。
  62. 戸叶里子

    戸叶委員 今できない、そうおっしゃることは、どういうことですか。四条に基づいて請求権ありとはっきりおっしゃっておる。そういうのは詭弁というのじゃないですかね。ちょっとわかりませんね。四条(a)項によって北朝鮮にも双方の請求権ありとはっきりおっしゃっておる。記録も残っているのですよ。それでもなおかっこのオーソリティズの中に入らないという意味は、どこにあるのでしょうか。
  63. 中川融

    ○中川政府委員 二つの朝鮮国家を認めることができないということから、四条によって権利のある施政当局というものには、まだ今のところ北鮮当局は入らない、かように考えるわけでございまして、もしそういう事態が将来来るということになれば、そのときには交渉が行なわれるということでございます。
  64. 戸叶里子

    戸叶委員 二つの朝鮮を認めないというところからこの中に入らないとおっしゃるのと、それから、池田さんが言われた、この中に入るという条約上の解釈とは違うわけですね。はっきり違っていますよ。それをこじつけて一緒にして、ここでは北鮮は入らないのだ、入らないのだけれども、四条の(a)項で請求権があるのだという矛盾したことを結びつけようとするから問題がある。
  65. 中川融

    ○中川政府委員 池田総理が予算委員会で言われたことの通りのことを、私が言っておるわけでございまして、池田総理も、決して、現在北鮮当局が四条に基づいて権利があるということを言っておられないのであります。もしそういう権利があるならば、今交渉しなければいけないわけでございますが、交渉ができないということを言っておるのは、要するに、四条に基づいて北鮮当局が現在請求権について交渉を要求する権利ありやいなやという問題につきましては、池田総理も否定されておるわけでございます。しかしこれは将来残る問題であるということを言っておられるのでありまして、私が言ったことと同じであります。
  66. 戸叶里子

    戸叶委員 権利があるということは、請求することができるということなんですよ。そうでしょう。そうじゃないですか。権利があるということは、請求することができる。それは今しろと言うのじゃないのです。いつか請求してくるかもしれない、その権利があるということをはっきり認めていらっしゃるのです。
  67. 中川融

    ○中川政府委員 権利があれば、今請求できるわけでございます。しかし、請求できないということは、権利がないわけでございます。
  68. 岡田春夫

    岡田(春)委員 関連。  条約局長、もう少し条約に即してやらなければだめです。それこそ、あまり言いたくないけれども、三百代言式にそういうことを言っちゃだめです。それじゃ、四条に基づいてオーソリティズが北にあるということは条約局長は認めるわけですね。
  69. 中川融

    ○中川政府委員 四条に基づくオーソリティズは、もう平和条約発効と同町に請求し狩る権利のあるオーソリティでありますから、従って、現在そういうオーソリティは北については存在していない。しかし、この北の問題が白紙で残るということを言っておるわけでございまして、将来いずれかの時期には、日本交渉し得るようなオーソリティができる場合には、これはやはり四条に基づく交渉が行なわれ得る、かように考えます。
  70. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは日本政府として言うこと。向こうが請求した場合はどうするのですか。
  71. 中川融

    ○中川政府委員 向こうが請求いたしましても、日本政府の解釈及び平和条約を結んだ大多数の当時国の解釈といたしまして、おそらく同じであろうと思いますが、北鮮当局は四条にいう当月じゃない、こういう解釈でございますので、日本としては、そういう交渉の申し入れがありましても、応じ得ないわけでございます。
  72. 岡田春夫

    岡田(春)委員 もう一点だけ伺いますが、四条の英文を読みますと、こうなっているのです。あなたはさっきから意識的にあれしたわけじゃないでしょうけれども、はっきりしておきますが、オーソリティズ・プレゼントリー・アドミニスタリング・サッチ・エリアズ、——二つの地域ですね。あなた、オーソリティズだけではなくて、二つの地域と書いているのですよ。エリアズですよ。これはどういうようにあなたは解釈するのですか。
  73. 中川融

    ○中川政府委員 第四条は、日本から分離いたしました地域全体に適用する原則でありますので、いろいろな地域があるわけでございます。従いまして、それらの地域、複数を支配する当局と、これも複数になっておるわけでございます。要するに、そういう意味で複数になっておるということでございます。
  74. 岡田春夫

    岡田(春)委員 四条の(b)項の場合は、朝鮮の場合ですね。違いますか。
  75. 中川融

    ○中川政府委員 四条の(b)項も、書く方といたしましては抽象的に書いてあるわけでございまして、朝鮮とは限らないわけでございますが、しかし、現実に具体的に問題になる、つまり、日本の財産が没収されたという意味では、南鮮だけに実際上は意味のある規定だと思います。
  76. 岡田春夫

    岡田(春)委員 四条の(b)項というのは、朝鮮以外にございますか。
  77. 中川融

    ○中川政府委員 四条の(b)は、日本から分離された地域、第三条地域まで含んでおりますが、日本から分離された地域、及び、日本の潜在主権がありますけれども日本の施政から離された地域、これらにおきまして合衆国軍政府により日本財産について何らかの処理が行なわれた場合、その効力を承認する、こういう規定でございます。観念的には、従って、どのような指令により、どのような処理が日本財産について行なわれましても、日本はそれを承認しておるわけでございます。具体的にいろいろの指令、たとえば琉球でありますとかあるいは南洋群島でありますとか、いろいろな処理が行なわれておるわけでございますか、日本の私有財産を没収するまでの処置は行なわれていない。従って、具体的に直接問題になるのは、やはり軍令三十三号が適用になりました南鮮地域である、かようになるわけであります。
  78. 岡田春夫

    岡田(春)委員 関連ですからもうやりませんけれども条約上の規定の中に複数として明文上明確になっている。しかも、この四条というものは、この平和条約の中につけられた経過を考えると、これは当然朝鮮の問題ですよ。これはあらためて私から申し上げる必要はないと思う。その場合は、当然、朝鮮にオーソリティズというものが二つあるという現実の上に立って、しかも二つの地域としてのエリアズというものをこれに入れて、複数にしておるのだと私は考えざるを得ないわけですよ。そういう点をことさらに無理に解釈なさると、きょうは私は関連ですからあまり言いませんけれども、あとで本格的に私は質問させていただきまずから、そういう解釈では通用しないと私は思います。  私の意見だけを申し上げておきます。
  79. 戸叶里子

    戸叶委員 これは非常に重大な問題ですから、あといろいろと深く質問しなければならないと思いますが、一点だけ伺っておきたいことは、国連で使うオーソリティで、そして、しかも講和条約に使っているオーソリティズ、それの中にどういうオーソリティズとどういうオーソリティズがあるのですか。その定義を聞きたいのです。それは、安保理事会でオーソリティズ・オブ・ノースコリーアという言葉を使っておるときのオーソリティズ、それから、南鮮のこの場合に、四条の(b)項は韓国だけだということを条約局長はおっしゃるわけですが、この場合のオーソリティズ・オブ・サッチ・エリアズ、こういう場合のオーソリティズ、こういうようなときに、同じ国連で使うオーソリティで、違う場合のオーソリティというのは、どういう場合ですか。
  80. 中川融

    ○中川政府委員 オーソリティズという言葉は、先ほど申しましたように、普通名詞でございます。要するに、日本語に訳せば当局というような訳が一番いいのではないかと思います。国連で使うオーソリティズという言葉、その使う場合々々によって、いろいろ前後の関係からその意味を把握することになると思いますか、当局あるいは政権とか、そういうことに訳するのか一番適当な訳じゃないかと思います。
  81. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうふうに聞いたのではないのです。国連で使う場合にも、オーソリティズの中に幾通りか解釈があるわけなんですが、この場合にはこういうふうに解釈して、この場合にはこうなんだというふうに解釈するわけですか。
  82. 中川融

    ○中川政府委員 同じお答えを繰り返すことになりますか、やはり、オーソリティズという一つの普通名詞でございますので、それを使う場合には、前後の関係から見て、具体的にどういう政府なり当局なりを意味しておるかということは、そこから出てくるわけでありまして、オーソリティズという言葉自体が国連で完全に一つの場合にだけ使うということもないのではないかと思います。従って、それ以上のことはどうも私ちょっと御答弁できかねます。
  83. 戸叶里子

    戸叶委員 それから、もう一つ伺いますけれども、池田さんが、北朝鮮の請求権は平和条約四条の(a)項によって双方ありと考えますと、おっしゃったのは、英語方にはよらないで、日本文の方にだけよっているというふうに解釈するわけですか。これはどうしても英語と日本語とついているわけです。正文が英語なんですから。だから、四条によってはっきりあるとおっしゃったからには、このオーソリティズの中に北鮮が入るというふうに解釈しなければ出てこないのです。どう解釈してもそれは出てこないのですよ。そうじゃないですか。池田さんの答弁だけで考えてみて下さい。条約局長、池田さんの答弁だけでお考えになれば、このオーソリティの中に北鮮が入っているとしかとれませんね。とれますか。日本語の方だけで考えろとおっしゃるのですか。ただそれだけ確かめておけばよろしいのです。別に条約局長の考え方でなくて、池田さんのこの文句から言えば、普通に読めば、このオーソリティズには両方あるなと考えるのは当然でしょうね。そうじゃないでしょうか。
  84. 中川融

    ○中川政府委員 池田総理の言われましたことは、北鮮についての請求権は残る、残るということは、結局、あるということを前提とするわけですが、要するに、残るということを言われたのでございまして、私はそれには全然同じ意見でございます。
  85. 戸叶里子

    戸叶委員 ちょっと待って下さい。今そういうことを聞いているわけじゃないのですよ。はっきりと、池田さんは、北朝鮮の請求権は平和条約四条(a)項によりまして双方請求権ありと考えると言っている。二月二日の予算委員会速記録の八ページをごらんになって下さい。ちゃんと書いてあるのです。だから、この言葉から見れば、このオーソリティズの中に含まれるとしか解釈できないでしょう。それだけを伺っているのですから、それだけでけっこうです。私見をおっしゃらなくてもいい。この言葉から、なおかつオーソリティズの中に北鮮が入っていないというのだったら、私もちょっとこんがらかってくるのですけれども、その辺だけちょっと……。
  86. 大平正芳

    大平国務大臣 総理大臣も用心深く北朝鮮のと言っているので、北朝鮮のオーソリティとは言っていないのです。
  87. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうことじゃないのですよ。北朝鮮の請求権は平和条約四条の(a)項によりまして双方請求権ありと考えます、こうおっしゃった。ということは、四条の(a)項によるというのです。四条の(a)項に何か書いてありますか。今議論したようなことが書いてある。だとするならば、ここから見れば、池田さんのおっしゃった通りをそのまま解釈すれば、オーソリティズの中に北鮮が入っていますねというのですから、おかしくないでしょう。
  88. 大平正芳

    大平国務大臣 今の北朝鮮のオーソリティに対日請求権があるとは言うてないので、北朝鮮の請求権はある、そして、われわれが相手にできるオーソリティができれば、それはまた相談になる場合もありましょう、こういうことだと思うのです。
  89. 戸叶里子

    戸叶委員 今不思議なことをおっしゃいましたね。北朝鮮の請求権と北朝鮮のオーソリティの請求権と二つあるのですか。北朝鮮というものを、今オーソリティズ・オブ・ノースコリーアといって表現しているわけでしょう。ノース・コリーア、だけではなくて、オーソリティズ・オブ・ノースコリーアとおっしゃっているわけでしょう。ですから、当然北朝鮮という中にはオーソリティズという言葉は入っているわけですね。北朝鮮ということの中には、オーソリティズ・オブ・ノースコリーアのことを言っているわけでしょう。そうじゃないのですか。
  90. 大平正芳

    大平国務大臣 それは現在の北鮮のオーソリティをさすものじゃないという解釈に立っているということです。
  91. 戸叶里子

    戸叶委員 これ以上議論していっても議論は尽きませんから、今度総理大臣がいらっしゃったらゆっくりその点も追及してみたいと思います。  そこで、ちょっと一点だけ伺っておきたいのですが、政府もはっきりと北朝鮮の請求権がありということも認めておりますし、それから、韓国の方では三億ドル、二億ドルということをきめたのですけれども、韓国の方の了解としては、三億ドルなり二億ドルなりの有償無償経済協力というものは、これは南朝鮮だけのものであるという了解の上に立ってのきめ方でしょうか。それとも、これは朝鮮全般にわたってのきめ方だというふうな了解なんですか。どちらで交渉されているわけですか。
  92. 大平正芳

    大平国務大臣 私ども、申し上げておるように、韓国に対する経済協力と心得ております。
  93. 戸叶里子

    戸叶委員 韓国の方も自分の国の三十八度線以南だけだという解釈のもとにやっているわけですか。まさか北の方まで及んでいるというような考え方でやっているわけじゃないんですね。
  94. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国に対する経済協力ということで先方も受け取っておると思います。
  95. 戸叶里子

    戸叶委員 ただ、私が心配いたしますのは、韓国の新しい憲法の三条で、韓国の範囲、朝鮮の範囲というものが規定されているわけです。その点は御存じですね。それには、大韓民国の領土は韓半島及びその付属島嶼となるというふうなのがあるわけです。だとするならば、日本はこの韓国の憲法を無視して財産請求権というものを討議している、こういうふうに理解してよろしいわけでございますか。
  96. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国を相手にしてやっておるわけでございまして、韓国が現に領有するところの範囲が広がっていけば、そこに有効に働くと思いますけれども、現に支配する地域を前提としてやっているわけです。
  97. 戸叶里子

    戸叶委員 ただ、韓国の憲法では、韓半島全部を韓国と見ているわけです。そういう観点の上に立って、請求権の問題と取り組んでいる。日本の場合は、南朝鮮、そして、北朝鮮にもありと言っているわけです。そうすると、その間に食い違いができやしないか。その点、韓国との話し合いはついているわけですか。韓国の憲法によらずに日本はこれをきめたんだということは、話し合いはついているわけですか。
  98. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国を相手にいたしておるわけです。
  99. 戸叶里子

    戸叶委員 それじゃ、韓国の憲法ということも認めた上でやっているわけですか。
  100. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもは韓国政府を相手に交渉しておるということで、御理解いただきたいと思います。
  101. 戸叶里子

    戸叶委員 政府の中には憲法もあるわけですね。
  102. 大平正芳

    大平国務大臣 ええ、ございましょう。
  103. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、北朝鮮との請求権の問題や韓国の請求権自体の問題にいろいろ議論が残ると思います。この議論は残しまして、私の質問を打ち切りたいと思います。
  104. 福田篤泰

  105. 川上貫一

    川上委員 非常に時間がありませんから、私の方もまとめて質問しますから、御答弁の方も焦点だけを端的にお答えをお願いします。  私の質問いたしたいと考えるのは、原子力潜水艦の問題です。外務大臣も御承知のように、世界の歴史において、今のアメリカくらい莫大な軍事費を計上しておる例はないと思うのです。たとえば、これまた御承知のように、ミサイル関係、だけで百五十億、ドルという莫大な経費を計上しておる。この金はNATOの全軍事費に相当する。これがミサイルの費用だけなんです。このことは、どういうことかというと、最近の世界の情勢、平和勢力の増大がありますが、これに直面して、核戦争でこれに対抗しよう、こういうアメリカの力の政策の一そうの拡大、これを表わしておるものだと思う。アメリカは、その新しい政策の一部として、ヨーロッパ、カナダ、極東にかけて、多角的核戦力の創設という名前で、各種の核兵器を配置しようとする政策をとってきている。これは、それらの国々の軍事体制をアメリカの一方的な核戦力に完全に従属させるという政策だと思うのです。こういう政策に基づいて、アメリカは、これまた御承知のように、トルコやイタリアなどにおけるミサイルを撤去しました。それにかわるポラリスを配置する、こうするのでありますが、今回の日本に対する、原子力潜水艦基地の要求は、明らかに、新しいアメリカの戦略の一環を日本に背負わせるものであるということは間違いないと思う。しかるに、政府の方では、このアメリカの要求を受け入れるというお考えのようです。すなわち、非常に強力な攻撃用戦略兵器である原子力潜水艦に基地を提供するのです。外務大臣はどう考えておるか知らぬが、日本を公然とアメリカの、原子力兵器の常設基地とする。これが問題なんです。これは単に従来の日本の基地の量的な増大というものではないと思う。新たにアメリカの、原子兵器の飛地となる。これが今度の問題であって、非常に重大な危険がひそんでおる。外務大国、これをどうお考えになっておるか。重大と思うておられぬのか。原子兵器の基地を提供する新段階に入っておる。この点についてのお考えをお聞きしたい。
  106. 大平正芳

    大平国務大臣 私は、そういうように重大とは思っておりません。艦船の推進力として、原子力を使っておるというにすぎないのでございまして、私は、装備の重大な変更であるとは思っておりません。
  107. 川上貫一

    川上委員 そうしたら、この原子力潜水艦というのは、水雷を持っていますか、機雷を持っていますか、何を持っていますか。
  108. 大平正芳

    大平国務大臣 魚雷を持っておると思います。核装備はいたしていないと思います。
  109. 川上貫一

    川上委員 その魚雷の爆発源は何ですか。魚雷は何こ発するのですか。
  110. 大平正芳

    大平国務大臣 兵器の知識はございませんが、私の確信するところでは、核装備はしていないと思っております。
  111. 川上貫一

    川上委員 魚雷は何で爆発するか、わからないというのですか。
  112. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう操作の問題は私はよく存じませんが、よく調べまして御報告いたします。
  113. 川上貫一

    川上委員 原子力潜水艦を入れておいて、その魚雷や機密が何で爆発するかということも考えないで、核兵器ではないとどうして言えるのですか。
  114. 大平正芳

    大平国務大臣 私は、艦船の推進力として原子力を使っておると承知いたしておるわけでございます。これは推進力としての原子力を使っておるわけでございまして、これが核装備であって装備の重大なる変更であるというように私はとっておりません。
  115. 川上貫一

    川上委員 外務大臣は何も知らぬ。魚雷や機雷がどういう爆発源を持っておるか知らぬ。こんなことで、原子力潜水艦の基地を認める、これでいいですか。この爆発源は核なんです。これは御承知ありませんか。ほんまに全然知りませんか。知っておって言わぬのですか。ほんまに知らぬなら知らぬでよろしいから、ほんまに知らぬと言って下さい。
  116. 大平正芳

    大平国務大臣 兵器がどのように操作されておるか、私は存じませんけれども、原子力潜水艦というのは、政府も申し上げております通り、百回以上も各国の港に寄港いたしておりまするし、これは核装備をしていないノーテラス型の潜水艦であるので、安全上も別に支障はないと聞いておるわけでございます。
  117. 川上貫一

    川上委員 なるほど、この原子力潜水艦はノーテラスで、ポラリス潜水艦でありませんから、ポラリスは持っておらぬ。しかし、これは魚雷と機雷を持っておる。この魚雷の名前はベティです。この魚雷は核魚雷。これは詳しい資料を出せというたら幾らでも出します。その威力は、広島の原爆の約三倍です。また、ルルという機雷を持っておる。この機雷がやはり核機雷。この威力は、水中およそ半径二キロの間の潜水艦を完全に破壊する。また、この機雷は、海湾に対して撃ち込まれると、一発で海湾はめちゃになり、汚染してしまう。これはどちらも核兵器なんです。ポラリスは持っておりません。これは核兵器なんです。これが言うところのノーテラス潜水艦です。これがどうして核兵器でないか。核兵器といえば、政府はどんなものだとお考えですか。核兵器というものをちょっと言って下さい。どんなものですか。
  118. 大平正芳

    大平国務大臣 核兵器を現在政府はどういうものとして理解しておるかということにつきましては、専門家によく伺いまして、あとで御報告さしていただきます。
  119. 川上貫一

    川上委員 そうすると、外務大臣は、原子力潜水艦の基地を日本が提供する、この原子力潜水艦は核兵器ではない、こう言うだけで、そんなら、核魚雷を持っておらぬのですか、持っておるのですか、核機雷を持っておらぬのですか、持っておるのですか。核魚雷と核機雷を持っておって、どうして核兵器でないと言うのですか。これは、外務大臣、技術上の問題じゃなくて、日本を核兵器の基地にするかどうかという問題なんですから、いいかげんな答弁では困ると思う。どっちなんですか。
  120. 大平正芳

    大平国務大臣 政府で検討いたしまして、これは核兵器ではないということに理解いたしまして、そういう前提に立って考えておるわけです。
  121. 川上貫一

    川上委員 アメリカが核兵器じゃないと言うたから、こういうのですか。核兵器じゃないと何で認めたのですか。あなたが核兵器でないとお認めになったその根拠は何ですか。
  122. 大平正芳

    大平国務大臣 政府の専門家の判断に信頼いたしております。
  123. 川上貫一

    川上委員 それはだれですか、政府の専門家とは。名前をあげて下さい。この次の委員会に出てもらいますから。
  124. 大平正芳

    大平国務大臣 政府各省で協議いたしまして、そういう判断に立っておるわけでございます。
  125. 川上貫一

    川上委員 だめですよ。政府各省でやっておる、そんなのはだめです。だれが核兵器でないということを証明したのですか、専門家で。その名前を言うて下さい。
  126. 大平正芳

    大平国務大臣 いずれにいたしましても、それが核兵器でないという判断の根拠につきましては、整えまして御報告いたします。
  127. 川上貫一

    川上委員 それでは、その報告を待っております。核兵器でないというか、私は、魚雷、機雷は、核魚雷、核機雷であるということを今簡単に言うたのです。しかし、これは時間がないから簡単に言いましたが、もっと詳しい説明を幾らでもします。政府がどうしてもそう言うのなら、私はここで委員長にこの問題についての公聴会を開くことを要求したい。これは、ぜひやらなければならない。日本が将来核兵器の基地になるかならぬかという重大な問題です。従来でも無制限な軍事基地をアメリカに与えております。これの量的な拡大と違うのです。今度の日本の原子力潜水艦の常設的な基地は、核兵器基地になる。この点について、繰り返して言うが、ぜひ一つ社会党も……。(「異議なし」「賛成」と呼ぶ者あり)公聴会を開くことを要求します。  そこで、もう一問だけですが、アメリカがこの核兵器を持ってくるので、これはアメリカにとってもきわめて重要なものである、また、日本にとっても、これは大へん画期的な基地になるのだという証拠は、池田さんが受け入れるという意思表示をなさると同時に、アメリカはどうした。直後にアメリカは重要な人を日本に派遣しておる。あなたはきのうかいつかお会いになったと思う。この人はアメリカにおいてきわめて重要な軍事的地位を持っておる人であって、これは、外務大臣御承知の通りギルパトリック国防次官です。これに続いて大統領特別補佐官が来るのです。これはマックジョージ・バンディ。また、ロストウ国務省政策企画委員長も来る。続けて来るのです。これはほかの用事もあるでしょうが、問題はそこじゃない。これは何を意味するか。原子力潜水艦の日本配置というものがきわめて重大なものであって、アメリカの世界戦略、日本アメリカの協調の上にきわめて重要なものであるから、このたくさんな要人を派遣しておる。ギルパトリックはすぐイタリアへ行くじゃありませんか。イタリアがミサイルを撤去してポラリスを持ってくるというのは、そこなんです。これが明らかに証明しているのです。こういう重大な問題をあなた方は国民の前にごまかそうとしておる。こういうことをやってごらんなさい。これからだんだんと公然と日本が核兵器の全面的受け入れのとびらを開こうとしておる。これはきわめて重大な問題なんです。ところが、それなのに、外務大臣は、よう知らぬ、専門家が言う。核兵器じゃないという話だ、こういうことで外交をなさって、日本の安全と平和が保てると思いますか。実際、私は、外務大臣一人がきわめて悪いのだとは言いませんが、なかなかいい人なんだが、日本の自民党政府を代表する外務大臣としては、もう少しお考えにならなければいかぬのじゃないですか。この結果、日本は、アジアと世界の戦争か平和かという問題についてどういう立場に置かれると思いますか。日本が今後どういうことになると思いますか。これをお考えになったことがありますか。私は非常に心配です。このノーチラス潜水艦が事実上核武装しておるにもかかわらず、これを知らぬ存ぜぬと言うたり、何か知らぬ核兵器ではないと言うたり、こういうことであっさりと受け入れようとしておる。国民にもこれをごまかしてしまう。こういう外交こそが、一切の日本の政治を誤らしておる、日本国民に非常な危険を与えておると私は思う。こんなことをしておいて、日中の問題とか世界の平和とか言えますか。これは日韓会談も性質は同じものです。  時間がありませんから、きょうはこれ以上私は聞きませんが、この次の委員会に、外務大臣が今おっしゃった核兵器ではないという、あなたの持っておられるデータ、それから、専門家の意見を聞いていろいろおっしゃるから、この専門家の名前、これを要求して、私の質問は一応終わります。
  128. 福田篤泰

    福田(篤)委員長代理 公聴会につきましては、次の理事会で御相談いたします。本日はこれにて散会いたします。   午後零時四十五分散会