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大平国務大臣 今
国会では
外交上たくさんな
案件を御
審議いただく
予定に相なっておるわけでございます。私を初め
外務当局、ベストを尽くしまして御
審議に御
協力申し上げる決意でおるものでございますが、何とぞ十分御指導、御
協力を賜わりますようにお願い申し上げる次第でございます。
私は、本
国会の当初、
外交演説で、昨年一年間の
外交を、二国間、それから
経済外交、
国連外交というような分類に沿いまして、これを回顧して、本年の若干の展望というものを申し上げた次第でございまして、この機会にあらためて私から特に御
審議の
参考に申し上げるようなことはないのでございます。しかし、
外交演説が行なわれまして以来、若干の
変化が、
国際情勢、
日本をめぐる
情勢に
変化がございましたので、本日はその点につきまして簡単に私
どもの考えておるところを申し上げて、御
審議の御
参考にお願いいたしたいと思います。
外交演説がありましたときは、
ビルマ賠償再
検討交渉は、
交渉のちょうど山にかかった
段階でございまして、こういう方向でやるのだということは申し上げておきましたけれ
ども、結果について申し上げる
段階でなかったのでございますが、その後急速に話が進みまして、
ビルマ政府との間にイニシアルの交換を終えたのでございまして、目下その要項に基づきまして
協定案文を
作案中でございます。
骨子とするところは、双
行賠償が一九六五年の三月末に満了いたしますので、一九六五年の四月一日から、今度
交渉によって妥結いたしました
経済協力を実行することになるわけでございます。一九六五年四月一日から開始するというのは
無償経済協力でございます。この
無償経済協力は、一億四千万ドルを一九六五年四月一日以降十二年用に均等で共与しましょうということでございます。
ビルマの
経済発展段階と申しますか、今の
経済の構造から申しまして、
ビルマ側が一番
魅力を持っておられますのは
無償協力でございまして、
日本が現に
各国に対して与えておる
有償経済協力の
条件というものでは、なかなか実際動かない
事業もございますので、現に
現行協定でお約束をいたしておりまする五千万ドルも全然今まで実行されていない
状況を見ましても、
先方といたしましては、
通常の
借款よりも
無償の
経済協力に
魅力を感じられておったことは、想像にかたくないところでございます。従いまして、
有償、
無償合わせまして二億ドルでやりましょうという
合意に立脚して
交渉を進めたのでございますが、今申しましたような
事情で、無欲の
経済協力で当方としてもできるだけ
努力をすることにいたしまして、
先方が大して興味を示さない
普通借款の方は若干金額を少なくするというような形でまとめたわけでございます。しかしながら、ちょうど去年から
ビルマの七カ年計画というものが始まっておるわけでございまして、
ビルマは当面非常な外資を要求されておる
事情もございますので、
有償経済協力の方は
現行賠償協定が満了以前でもこれを動かしていくということに
合意いたしておるわけでございます。目下細目につきましては
協定案をつくっておりまして、これはおそらくそう遠からずでき上がると思いますので、でき上がり次第
提案いたしまして、御
審議をお願いする
予定でございます。
それから、第二点として、
外交演説後の
事件としては非常にショッキングな
事件でございましたけれ
ども、
EECに対して
英国が
加盟する
交渉が突如として中断されたことでございまして、この全体の
EECがどうなっていくか、
英国の
加盟交渉が将来どういうことになるのか、また、この事態が
日本に対してどういう影響を及ぼすかというような点につきましては、なまなましい一件でございまして、今私
どもも全機能を動員いたしましていろいろ
調査し、検討し、かつ判断いたしておる
段階でございます。従って、自身を持ってこの問題の全体の評価をするということは今まだ
用意が十分でございませんが、ただ、私
どもが今まで勉強したところによりましてかいつまんで申し上げますと、
イギリスの
加盟交渉が中断した
動機は、
イギリスの
EECに対する
加盟条件の中で、
経済的な
理由、特に
温帯農産物の
EEC輸入に伴う
条件につきまして、
英国と特に
フランスとの間に見解の大きな懸絶があったということが直接の原因であったとは思えませんで、非常に政治的な
理由が直接の
動機であったのではないか、こう思うわけでございます。その後の
状況を見ておりますと、
フランス側では、これは
失敗でない、これは延期であると言っておりまするし、
フランス当局も非常に慎重に言動されておるようでございますか、いましばらくして、この
興奮がさめてまたこの話はコンティニューするのだというような、非常に慎重な
姿勢でおられるようでございます。
英国側は、当面の当事者であっただけに、
衝撃が大きかったとみえて、
フランス特に
ドゴール大統領に対する朝野の非難が公然と行なわれておるようでございますが、しかし、他の
EEC加盟五カ国との間の話は依然続けておりまするし、
英国全体が
EECの
加盟を断念したというような
状況にはなっていないようでございます。
フランスを除く
EEC加盟五カ国では、若干のニュアンスの相違はございますけれ
ども、
EECへの
英国の
加盟を振り切ってしまったという
姿勢ではないようでございまして、この
興奮がさめたあとにはまた何らかの話のよりを戻そうではないかという動きが見られます。特に、
マクミラン首相がイタリアを訪問された
共同声明によりましても、御
案内の
通りの
空気であるようでございます。
アメリカの
衝撃は確かに大きかったと思うのでございますが、
アメリカも急に
フランス、
EEC等に対する刺激する
措置はとらないでいこうという
空気でございますし、先般
ギルパトリック国防次官が私
どもに語ったところによりましても、対
西欧政策は変えないのだということを申しております。ただ、
通商拡大法で規定されておりました
EEC条項が頓挫したということは、
通商拡大法の運用上大きな
変化でございます。
英国が
加盟しない場合に、
EEC条項、すなわち、
英国を含めた
EECと
アメリカとの
輸出額が全世界の
輸出額の八〇%以上を占めるものにつきましては
関税をなくしようというようなこと、あの
条項は、
EECだけに適用いたしますと、
航空機その他一、二の
品目になりますので、実際
上EEC条項というのは動かないことになるわけでございます。従って、
アメリカといたしましては、かねて提唱いたしておりますように、
関税一括引き下げ交渉というものに力点を置いて
通商拡大の方途を求めるというように出てくるのではないかと思うのでございまして、
関税一括引き下げ交渉というものの
重要性が非常に高まってきたということになるのではないかと思うのでございます。
一方、
わが国といたしましては、従来、御
案内のように、
英国とも、あるいは
EEC加盟各国とも、二国間の
通商交渉を精力的にやって参りました。
英国とは、それが結実いたしまして、本日御
審議をお願いいたしました
通商航海条約の
締結となったわけでございますが、その他の
交渉も現に続けられておるわけでございまして、ベネルックス三国との
交渉、
フランスとの
交渉等も鋭意続けてきておるわけでございます。従いまして、
英国の
EEC加盟失敗、中断によりまして、われわれの
姿勢が変わるわけじゃございません。今までの二国間の
交渉を地道にやって参り、そして、それを促進していこうということでございます。きのう
大蔵大臣が発表されましたように、
IMF理事会で八条
国移行の
勧告がございましたが、その
理事会の席上におきましても、
各国の代表がこぞって、対日
輸入制限、差別待遇を撤廃しろということを、IMFでも非常に強調されたようでございまして、
フランスの代表もそれに同窓を示しておったということは、新聞紙上で御
案内の
通りでございます。従って、私
どもは、今までこの
EECの
加盟各国との二国間
交渉は従前
通りの
姿勢で続けて、しかもそれをできるだけ早く促進していきたいと考えておるわけでございます。
英国とは、今申しましたように、三十五条の
援用撤回も踏み切っていただいたし、これから、
英国と
日本との貿易というものは、この安定した基盤で拡大を見ることと思うのでございます。従って、直接
わが国は今度の
EECに対する
英国の
加盟中断ということによって深刻な影響はございません。従来のペースで西欧との間の貿易は拡大の方向をとっていくものと思うのでございます。
それから、その次の問題といたしまして、きのうの早朝三時に行なわれましたIMFの第八条
国移行の
勧告でございますが、
政府は、これを受諾する決意をいたして、その旨発表いたしたわけでございます。今後の手続は、御承知のように、IMFの決出が
ガットにもたらされまして、
ガットで
わが国と自由化の
交渉をやらなければならぬわけでございますが、どういう方法によるものか、すなわち、
ガットにウエーバーを求める方法によるのか、それとも、自由化リストを出しまして、二国間または多数国間と
日本との間で
交渉を進めるか、この手順をどういうふうにしていくかはまだ未定でございまして、早急に
政府部内におきまして意見をまとめたいと思っておるわけでございます。いずれにいたしましても、
ガットの場において私
どもがいろいろの困難な
事情を訴えまして、できるだけ円滑な八条
国移行への手順をきめていかなければならぬと考えております。この八条
国移行並びに自由化の促進と関連いたしまして、先ほど申しました差別待遇
撤回交渉というものは、世界の世論にもなってきておるわけでございます。私
どもは、既定の線に沿いまして、ますます精力的にその方面の
努力をして参りたいと思っております。
それから、おととい
アメリカの国防次官がお見えになりまして、総理大臣初め関係閣僚と懇談を持たれました。これは、私からも御発表申し上げておりました
通り、国防次官としての定期的な世界旅行の一環のようでございまして、私
どもは、
アメリカ側の要人がたびたびお見えになりまして、世界
情勢について意見の交換をする機会を持つことは、けっこうなことだと思っております。今度の御旅行では、
EECに対する
英国の
加盟中断という事態以後の
アメリカの世界政策につきましてとかくの観測が行なわれておるけれ
ども、これは確固不動であるとういことを力説されておりました。日米の
協力関係につきましては、特別の
提案はございませんでした。極東の
情勢につきまして
先方の意見をいろいろ聴取する機会を持ったわけでございます。
日本の防衛力増強に対する要請というようなものはございませんでした。要するに、できるだけ要人の
交流によりまして理解が深まり、あるいは情報の交換が的確に行なわれることはいいことだと思っておるわけでございます。
以上、
外交演説がございました以後生じましたおもなる問題につきまして、私の考えておりますところを御報告申し上げた次第でございます。