○内田政府
委員 ガンの問題がわが国におきまして非常に重要でありますことは、私ただいま岡先生並びに
齋藤先生のお話を承りまして、一そうその感を深くいたしましたが、同時に、
科学技術庁でこの
ガンに対する総合
研究を八つの大きな総合
研究の課題の一つとして取り上げておりながら、
科学技術庁としてはその総合
研究の総合調整の有効な手段を持っていないということを、私は痛切に感じております。というのは、先ほどからのお話でもわかりますように、
ガンに対する
研究が、その大半は学界、ことに
大学の
研究所における問題になっておりまして、
科学技術庁の権能が
大学の
研究室における
研究の調整に及んでおりませんから、
科学技術庁といたしましては、
ガンに対する総合
研究を総合
研究課題の一つとして取り上げましても、それによって行なわれる各省の連絡
会議というものは、結局
科学技術庁と
厚生省との二人の連絡
会議的なものに終わっておるというようなかっこうにあるのではないかと思うのであります。
また、SICが
制ガン剤として有効か無効かという判定の問題を離れまして、SICにかかわらず、
ガンに対する
研究というものはこれから幾らでも進歩させなければならぬ問題でありますので、各省や
学者がそれぞれ権威主義と申しますか、そういう陰に隠れて進歩発展を妨げるというようなことは非常に遺憾でありますから、たとえば、できるならば、
厚生省の
がんセンターも、東大の付属の
ガン研究所も、
金沢大学の
ガンに関する
研究施設、これらのものを全部集め、そして
科学技術庁所属の航空宇宙技術
研究所のように、あるいはまた他の
科学技術庁所属の
基礎研究所のようなことをやったといたしましても、おそらくいまの段階では一つにまとめられた
研究所を支配する学界の流れというものをそこできめることはできないような気持ちが私は実はいたしておりまして、一つの矛盾を感ずるのであります。
私は、これは
結論として申し上げるのじゃありませんが、岡先生が先ほどから熱心に言われますように、何かそれらを一まとめにして一つの方向づけをする
機関、機構、たとえばいま
科学技術会議というものがありますが、この中に一つの分科会か
専門部会のようなものを設けて、これには
文部省も参画しておりますから、各
大学の各派閥を代表する先生、あるいは
厚生省方面の各
種類の施設を代表する
方々にも加わっていただくことができると思う、そういうような機構がいいのか。あるいはまた、先ほどからたびたび問題に出てまいりますところの
日本学術会議の中にある
特別委員会、
学術会議は先般来問題になっておりますように、政府の
機関でありますから、その
学術会議の
特別委員会みたいなものの
構成、運用によって何らかの目的を達し得るか。あるいはさらに、
日本癌学会というような
学会の機構がある、これに対して何か
文部省から
指導的な
立場をとってもらうということで解決できるか。それらの問題をもあわせて考究すべき問題ではないかと思いまして、これはこのままにせずに、
ガンに対する総合
研究の進歩のために、
科学技術庁もさらにより高い
立場でぜひ考えてまいりたいと思います。これはあるいは私の個人的見解になるかもしれませんが、私の
意見として申し述べさしていただきます。
齋藤先生のただいまの第二点でありますが、SICの
制ガン剤としての有効か無効かを判定するために
科学技術庁が
研究調整費を使うということは、これは適当でないが、あなたの言われるように、たとえば
ガン患者の血液から取った血漿を無菌培養して、その菌の
状態が変化をしていく過程というものが実際あるかどうかというような、そういう全く技術的な
研究というものは、SICの有効、無効から離れて、これはその
研究を押えておる必要はないのでありますから、
厚生省とも十分相談して、民間のある種の団体にそういうことをさせて
研究調整費を出すまでもなく、
厚生省には
がんセンターもあるでしょうし、あるいはその予防衛生
研究所もありましょうし、その他の
厚生省の
国立病院付属の
研究施設もありましょうから、そういうところでどうしてやれないかということを、さらに私
どもは
厚生省とも十分打ち合わせをいたし、これがどうしてもやらない、やれないという場合には、
齋藤先生のおっしゃるように、民間の信用ある団体の、これも一つじゃなしに、複数のそういう
研究機構を選んで、それらに複数のいまの血漿無菌培養の
研究をしてもらうということを考えてもいいじゃないかという気持ちもいたしますので、さらにこの点につきましては、いま申し述べますように、
厚生省方面との打ち合わせを続けさしていただきたいと思います。
それから、日米科学
委員会においてこの
ガンの共同
研究を、いまのようなSICにからまる問題を直ちに日米共同
研究の課題として取り上げるかどうかということは、これはいましばらくこの日米科学
委員会において、
ガンに対するパネルの検討にゆだねてまいりたいと考えております。