○村田
説明員 若干技術的にわたると思いますので、私から申し上げます。
先ほど
局長のほうから
説明がございましたように、動力炉開発専門部会におきましては、昨年九月以来あらゆる型式の動力炉について、わが国の動力炉計画としてはどういう型を選ぶのがよろしいかということを慎重に御
検討になったわけでございます。この
検討の段階で、経緯をやや詳しく申し上げますと、まず既成の炉、つまりガス・クールド・リアクターと申しますのは、現在すでに導入いたしておりますいわゆるコールダーホール改良型、並びにこれからつくる予定の二号炉の対象となっております軽水型炉、こういったものはすでに
民間で
実現規模のものが導入されてございますし、かつまた、それぞれの開発を進めてきました本国において十分な
研究開発もなされておりますので、そういった型のものは、諸外国の
研究成果を十分見守っていくということにいたしまして、それからもう
一つ、将来の動力炉としまして高速増殖炉というものがあるわけでございます。この開発につきましては、諸外国の
状況等も勘案しました結果、相当長期を要するであろう、つまり基礎的
研究からの積み上げが相当期間かかるであろう。しかも、その技術的内容は、いわゆる熱中性子炉とはまた異なる面が多々あるわけでございますので、この点は、将来の日本の
原子力発電計画ともにらみ合わせて、別の計画で慎重に進めていくことが必要であろうという結論に達しまして、その結果、現在の時点におきましてわが国が国産動力炉計画に着手するとすれば、いわゆる新型熱中性子炉の中から選ばれるべきであるということが、まず出たわけでございます。
次いで、新型熱中性子炉の中にもたくさんの種類がございますが、その中で技術的な
検討の結果、一応
検討の対象となりましたのは、黒鉛ナトリウム炉と、それから高温ガス冷却炉と、それからただいまお話し申し上げました重水減速炉、この三つが、新型熱中性子炉の中でわが国で開発する場合に一応対象として
検討すべき炉型であろうということが結論として出てまいりました。
しかしながら、これら三つの型の炉は、それぞれ技術的な内容が非常に違っておりますので、並行してこれを取り上げるということは、
資金的にも、人的にもできません。そこで、専門部会としましては、さらにそれらの中からしぼるとすればどれが最も優先的な可能性を持っておるかということを慎重に御
検討になった結果、提出されました報告書によれば、まず黒鉛ナトリウム炉につきましては、これは液体ナトリウム金属で冷却することを特色といたす原子炉でございます。液体ナトリウムというのは非常に発火性もございますし、取り扱い上危険性も大きいわけでございますので、その技術は十分開発してから取りかかる必要がある。たまたま世界の
状況を見ましても、将来の動力たるべき高速増殖炉では、いずれもナトリウムを冷却材に使う
方法でやっておりますので、先ほど申し上げましたように、将来わが国でつくる高速増殖炉の計画を進めていくといたしますと、その際にナトリウム冷却技術というものを織り込んでやるほうが能率的であろうということを申しております。
次に、高温ガス冷却炉でございますが、高温ガス冷却炉につきましては、
石川先生御指摘のように、従来半均質炉というような呼び方で
日本原子力研究所において
研究が行なわれてきました型式の炉がこれに属するわけでございますが、高温ガス冷却炉といいますものも、これをさらに分類いたしますと、二つに分かれまして、
一つは燃料といたしまして酸化ウラン等を使いまして、それを普通われわれがいま使っております炉と同じく金属の被覆材の中に入れて、そして燃料使用として使うという型でございまして、イギリスで開発しておりますアドバンスド・ガス・クールド・リアクター、俗称AGRと申しております型、あるいはオークリッジで開発しておりますEGCR、エクスペリメンタル・ガス・クールド・リアクターというものが大体こういう系統に属するわけでございます。いま
一つの高温ガス冷却炉は、燃料を非常にこまかい粒にしまして、減速材の黒鉛の粒子と十分緊密にまぜ合わせまして、これをたとえばダブレット状錠剤のような形に成型いたしまして、これを黒鉛のさやの中におさめまして、そして炉心におさめる、こういう形で、非常に高い温度のガスを使います。そういう運転
状況の炉が
一つ考えられるわけでございまして、いわゆる半均質炉もこの系統に属するわけでございます。専門部会のこの評価によりますと、まず、最初の金属の被覆を使いましたガス冷却炉の場合は、すでにイギリスにおきましてAGRというものが完成いたしておりまして、電気出力で三万キロワットのものが動いております。またEGCRにつきましては、冷却材にヘリウムを使うというような点で大量のヘリウムが要るといった技術上の開発の点で、一応候補者となり得ると思うが、材料等の面で
検討の余地があるだろうという言い方をいたしております。他方ほんとうの
意味での平均質炉に属します高温ガス冷却炉につきましては、ただいま申しました燃料と、減速材であります黒鉛の粒と十分まぜ合わせて高温で運転するというような
関係から、通常燃料の濃縮度がかなり高くなってまいるわけでございます。たとえばイギリスでやっておりますドラゴン計画あたりでも、濃縮ウランの濃度は九〇%程度になっておるわけであります。半均質炉を進めましても、相当高い濃度の濃縮ウランが必要になってくるわけでございます。そういった点において、非常に高濃縮ウランの供給という点で問題があるということを専門部会では指摘いたしておるわけでございます。
他方、重水減速炉の場合は、先ほど原
子力局長のほうから御
説明いたしましたように、核燃料の有効利用と申しましょうか、そういうような点から見まして天然ウランで十分これが稼働できるという利点を持っております。わが国のような核燃料資源の
状況等におきまして、天然ウランで稼働でき、しかも将来これが大型化できるという可能性を持っておる。この点ではコールダーホール改良型よりも非常に大きなポテンシャリティーがあるわけであります。
それらの点を勘案しまして、専門部会では、はっきりした形でどれが一番よろしい、あるいはこれだけがやるに値するということは、現在までの評価では時間的な問題もございまして結論的には言えないと思いますが、大体以上のような評価をもって、それぞれの型式に対する日本でやる場合の目安というものがつけられるのではなかろうかというふうに申しておるわけでございます。
このような報告書を受け取りまして、
原子力委員会におきましては、先ほど申し上げましたとおり、将来の動力炉を開発する上に、国産動力炉として基礎から運転まで一貫して行なう相当膨大な
資金が必要なわけでございますが、そういうものとして取り上げるに値する炉といたしましては、取り上げていきます上の目的の一番大きなものとして、やはり核燃料政策との結びつきを優先的に取り上げるべきではないかという御判断から、以上三つ申し上げました中の重水減速炉を選ばれたわけであります。