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1963-06-27 第43回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月二十七日(木曜日)    午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 寺島隆太郎君    理事 安倍晋太郎君 理事 佐々木義武君    理事 中曽根康弘君 理事 山口 好一君    理事 岡  良一君 理事 西村 關一君    理事 山口 鶴男君       赤澤 正道君    齋藤 憲三君       前田 正男君    石川 次夫君       内海  清君  出席政府委員         科学技術政務次         官       内田 常雄君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   森崎 久壽君         総理府技官         (科学技術庁研         究調整局長)  芥川 輝孝君         総理府事務官         (科学技術庁振         興局長)    杠  文吉君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   島村 武久君         総理府技官         (科学技術庁資         源局長)    井上啓次郎君         厚生 技官         (環境衛生局         長)      五十嵐義明君  委員外出席者         原子力委員会委         員       駒形 作次君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局次長)  村田  浩君         通商産業技官         (石炭局炭業課         長)      佐伯 博藏君     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  科学技術振興対策に関する件(科学技術行政  に関する問題)  公害防止促進に関する件      ————◇—————
  2. 寺島隆太郎

    寺島委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について、調査を進めます。  この際、公害防止促進に関する件について発言を求められております。これを許します。佐々木義武君。
  3. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 私は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党共同提案にかかる公害防止促進に関する決議案を提出いたしまして、その趣旨説明をいたしたいと存じます。  まず、案文を朗読いたします。公害防止促進に関する決議(案)  最近工場事業場等施設の拡大、作業その他各種の人為的原因にもとづく公害激増傾向が著しい。また、スモッグ等新たに発生しつつある現状については未だ明確な対策が講じられていない。  よつて政府はこれらの公害増加傾向にかんがみ、左記事項の速やかなる実現を期すべきである。     記  一、公害防止に関する諸法令並びにその運用につき、実情に即して機動的に検討を加え、公害防止上遺憾なきを期するとともに、その対策実施強化促進するため、関係行政機関の密接なる連絡調整体制整備を図るは勿論、その基盤となる科学技術上の調査研究強化推進を図ること。   特に、騒音および自動車排気ガス等による公害防止に関し、なお一層その対策を推進すること。  二、国立防災科学技術センター等官公立試験研究機関機能を充実し、特にスモッグ対策早期確立に資するため科学技術庁研究合同会議を設けること。  三、公害防止に関し、必要なる財政上、資金上及び税制上の優遇措置を講ずること。   右決議する。  以上でございますが、この決議案に対しまして、若干の趣旨説明申し上げたいと存じます。  本件に関しましては、前文にもございますように、最近公害が非常に激増傾向にありますとともに、また新たにスモッグのような問題も発生しておりまして、それが対策の急務を要望されておるのでございます。  この際、当委員会におきましては、この記の一にございますように、まず一つ提案といたしましては、現在までありました公害防止に関する諸法令、たとえば大気汚染水質汚濁騒音防止公害地盤沈下等に関する凡百の対策諸法令があるのでございますけれども、これらの諸法令実体並びにその運用に関しましては、いろいろ実情が変わってまいりますので、その変わった実情に即しまして、機動的に検討を加え、その措置に万全を期していくべきではなかろうか。また、各行政機関連絡あるいは調整等必要なのはもちろんでございますので、その施策の万全を期するために、連絡調整体制整備をはかり、また、こういう公害問題に関しましては、その科学技術的な原因等の究明が非常に重要なことでございますので、それが調査研究強化推進をはかっていただきたい。特に騒音及び自動車排気ガス等による公害防止に関しましては、最近の事例ではありますけれども、これに関してもいろいろ施策が講ぜられておりますが、なお一そうその対策を充実してもらいたい。  さらに、国立防災科学技術センターのような官公立試験研究機関がたくさんあるわけでございまするが、この機能を充実いたしまして、特にスモッグ対策のような新しい現象に対しましては、科学技術庁研究合同会議といったようなものを設けまして、真剣に討議をしていただきたい。  さらに、この公害防止にはいろいろ財政上あるいは資金上、税制上諸般の施策が必要なわけでございまするけれども、これに関しましては、特段の優遇措置を講ずる必要があるのじゃなかろうか、という意味をもちまして、先ほど朗読いたしました決議案を三党共同提案したのでございます。  この提案を、ぜひ皆さんの御賛同をいただけるように切に念願いたしまして、趣旨説明を終わりたいと存じます。
  4. 寺島隆太郎

    寺島委員長 本件について発言を求められておりますので、これを許します。山口鶴男君。
  5. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ただいま佐々木委員から説明のございました三党共同提案にかかわるところの公害防止促進に関する決議案につきまして、賛成討論を申し上げたいと思います。  最近の科学技術の進歩、さらには産業経済の非常な伸展によりまして、従来四大工業地帯といわれました既成の工業地帯はもちろん、現在新しく新産業都市として発展の途上にありますところの四日市あるいは水島その他のコンビナート地帯におきましても、公害状況というものが非常に顕著になってまいっておるのが現状だと思います。  内容といたしましては、スモッグもございます。あるいは地下水のくみ上げによる地盤沈下の問題もございます。さらには工場等が排出をいたします汚水の問題もございまするし、さらには騒音の問題もあるわけでございます。  このようないわゆる公害は、現在の新しい事態でございまして、欧米はもちろんソ連等あらゆる国々におきましても、この公害防止につきましては、非常な力を入れておりますことは御案内のとおりであります。  しかるに、わが国におきましては、最近に至りまして、ばい煙等規制法も一応できました、あるいは地下水のくみ上げ規制汚水規制等につきましても法令等ができつつあるわけでありますけれども、しかし、これらの運用が適切にいっておるかというと、そうではありません。ばい煙等規制法につきましても、すでに各地の自治体が実施をしております条例より規制がゆるいという問題がありまするし、これを通産省が規制をいたしましたのでは十分な効果があがらないことは当然といわなければなりません。  そういう意味で、特に私どもといたしましては、内閣に関係行政機関の密接なる連絡調整体制というものを確立をいたしまして、特に科学技術上の調査研究強化を進めることが必要ではないかと主張してまいったわけでございます。さらに、今回防災科学技術センターができたわけでありますけれども、この機能を充実いたしまして、スモッグ対策確立に大いに力を尽くしていただくと同時に、さらにはそのための財政上の措置、ないしは公害を防止するために各企業がそれぞれいろいろな施設をいたすことになるわけでありますが、特に中小企業等につきましては、十分な資金的の手当てあるいは税制上の優遇等がなければ万全を期し得ないことはもちろんであります。  したがいまして、今回佐々木委員から提案をせられました決議は、まことに時宜に適するものと考えまして、心から賛意を表する次第であります。  同時に、つけ加えて希望を申し上げるのでありますが、政府におきましてもこの決議を十分に尊重いたしまして、実施面において大いに誠意を示していただくことを心から御期待を申し上げまして、賛成討論といたす次第であります。
  6. 寺島隆太郎

    寺島委員長 本件について他に御発言はありませんか。——他に御発言もないようでありますので、直ちに採決いたします。  ただいま佐々木義武委員より御提案のとおり公害防止促進に関する件を本委員会決議とするに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 寺島隆太郎

    寺島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  この際、ただいまの決議に対する政府の所信を聴取いたします。科学技術庁内田政務次官
  8. 内田常雄

    内田政府委員 大臣が病気欠席でありますために、私から政府を代表いたしまして、ただいまの御決議に対しまして政府考え方を申し述べさせていただきたいと存じます。  ただいま御決議のありました事項につきましては、その趣旨に沿いまして関係機関と十分なる連絡をはかり、政府といたしましても極力これが実現につきまして努力をいたしてまいりたい所存でございます。
  9. 寺島隆太郎

    寺島委員長 なお、ただいまの決議につきましては、関係当局へ参考送付いたしたいと存じますが、その手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 寺島隆太郎

    寺島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  11. 寺島隆太郎

    寺島委員長 この際、連合審査会開会申し入れの件についておはかりいたします。  すなわち、本委員会におきましては、科学技術振興対策に関し、原子力潜水艦寄港問題に対して調査をいたしておりますが、外務委員会においても国際情勢に関し、同問題について調査をいたしておりますので、この際、外務委員会に対し連合審査会開会申し入れをいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 寺島隆太郎

    寺島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会開会日時等につきましては、外務委員長協議の上、公報をもってお知らせいたします。      ————◇—————
  13. 寺島隆太郎

    寺島委員長 次に、科学技術行政に関する問題について質疑の通告がありますので、これを許します。岡良一君。
  14. 岡良一

    岡委員 いまいただいた「原子力委員会月報」をちょっと拝見いたしますると、この前の委員会石川次夫委員が申しておったことがここに出ておるわけです。要するに、日米間における原子力平和利用協定に基づいて専門家会議が開かれた。これは五月十三日から二日間行なわれた。先般の委員会石川次夫委員が指摘しておったのは、これが全く一種秘密会というような、任意に参加できないような形で、人員を非常に制限をしておるということで、当局の見解をただしておったわけです。ところが、いまここに出ております日本側参加者の名簿を見ますと、日本原子力研究所また原子燃料公社からそれぞれ若干名出ておる。そのほかは、古河電気、日立製作所、三菱原子力工業、三菱金属鉱業、住友電気工業、東京芝浦電気、こういういわば民間会社から出ておる。  実は私、大学教授諸君からしばしば耳にするのですが、やはり大学もいまは研究炉がないので、非常に苦心しながら原子力の分野において、あるいは物理的に、あるいは化学的に研究をやっておるわけです。したがって、アメリカの進んだ研究の成果などもできるだけじかに聞きたいという強い希望を持っておる。ところが、今度の会議では、民間企業諸君は入っておるけれども大学のプロフェッサーは全部オミットされておる。これに対して、学術会議原子力関係特別委員会諸君も非常に批判的な空気のように私は見受けておるわけです。学術会議は、御存じのとおり、原子力研究開発利用については平和と民主、公開という三原則を政府申し入れておって、いまもってそれらを基本的な三本の柱にしておるわけです。ところが、両国の政府間協定に基づく研究協力会議には、全然大学諸君が入っておらないというようなことになりますと、たとえそれが善意のものであっても、大学教授諸君にしてみれば、やはり非常に批判的にならざるを得ないと私は思うのです。いわば今度の原子力潜水艦の問題でも、問題を隠しておるから、ついつい輪に輪をかけていろいろな誤解が生まれてくると思う。この点は内田さん、ぜひひとつ——これはおそらく政府間協定に基づく研究会議だから、一種の原本みたいなものは役所に保存してなければならないと私は思う。こういうものは、やはりそれを真摯に閲覧をしたいという研究意欲に燃えた人たちには閲覧に供する。また今後こういう会合があったときには、それぞれの大学教授諸君も、希望があれば参加さしてやるというような計らいをぜひとっていただかないと、原子力研究開発が、産業界と学界という二つのレールの上に乗って円滑に進むべきものが、一方のレールだけでいわゆる脱線の形態でこういう協力会議が持たれるということは、原子力基本法のたてまえからいっても民主的な研究ではないと私は思う。ぜひひとつ、今後の運営においては御注意を願いたいということを心から要望いたしておきたいと思います。何か御意見があったら、ひとつ……。
  15. 内田常雄

    内田政府委員 ただいまの岡先生の御所見は、私、政治家としてはまことにごもっとものことだと考えますので、今後の課題として、日本側当局及びアメリカ側関係方面とも、先生並びに私が賛成いたしました方向につきましてそれが取り入れられるような検討をいたしてみたいと考えております。
  16. 寺島隆太郎

    寺島委員長 次に、齋藤憲三君。
  17. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 科学技術振興に関して御質問を申し上げますが、発明奨励に関する助成金交付の条件というものをひとつお示し願いたい。あれは一体どういうことで交付をするのか、それをひとつ御説明願いたい。
  18. 森崎久壽

    森崎政府委員 ただいまの御質問に対しまして詳しく御説明ができませんので、関係局長を至急呼んでおりますから、後ほどお答えさせていただきたいと思います。
  19. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 それでは、その問題は当該局長が出席するまでお預けにしておきます。  日米科学技術合同委員会においてもさらに継続して重要研究課題になっておりますガンの問題、これはぜひひとつ今国会において、われわれがかねてこの委員会において主張しておるような解決方向に持っていっていただきたい、こう思うのであります。  最近私が手に入れました「アサヒグラフ」というのを見ますと、ここにまた再びガンの問題が大きく取り上げられておるのであります。それから、たくさんの週刊雑誌を集めてみましたが、これにもガンの問題が取り上げられておる。その取り上げ方は——いわゆるガンの大家と称せられました田崎勇博士ガンのためにこの世を去られた。ここにも来て大いにわれわれと一問一答せられた方でございますので、私は心からその御他界に対して弔意を表しておるのでありますが、これを読んでみますと、ますますガン対策というものは緊急を要するのではないかというような世評になってきておるわけであります。特に私がこの問題をさらにこの委員会においても御考慮を願いたいと感じましたことは、この「アサヒグラフ」の大きなガンに関する記事の最後に、こういうことが書かれておるのであります。八木沢氏は日本抗生物質学術協議会というむずかしい会議の会員であられるそうですか、やはりこの田崎勇博士がなくなられましたために、問題となっておりますSICがまた大きく論議の対象になっておる。  ところが、SICガン効果があるとかないとかいうことは、私が毎度申し上げておるとおり、この委員会関係のない問題だ。ただ、この委員会としてあくまでも科学技術立場から追及していかなければならないことは、SIC鼻くそにひとしいものである、このSIC注射薬培養方法が間違っておるのだ、インチキなんだ、だからSIC鼻くそにひとしいのだ、こういう議論がいままであったわけであります。それに対して牛山博士は、断じて培養方法にあやまちなし、これは正しい方法なんだ。だから、両者のいずれが正しいかということは、科学技術振興立場から厳重に検討して解決をすべきであるというのが、私のこの科学技術特別委員会で取り上げたガンの問題に対する結論的要求なんです。それをいつまでたってもやれない。そんなばかな行政というものは一体世の中にあるのですかという質問に対しても、確答はない。一体こういうくだらないことを——くだらないと言えば語弊がありますが、簡単な問題を科学技術特別委員会の問題にして、そして解決ができなかったということになったならば、科学技術振興に対する行政的措置というものは一体どういうものであるかという疑問が生まれてくるわけです。  ところが、私が主張したのと同じことをまたこの「アサヒグラフ」に大きく掲載しておる。どういうことが書かれているかというと、  「SICにしたって、ビールスようのものが発育して枯草菌に似たようなものになり、それから抽出したものだというのでしょう。ビールス球菌になり、桿菌になるなどとは、ウサギがサルになり、サルがヘビになるというのと同じです。どのように培養したところで、球菌はあくまで球菌であり、桿菌はあくまで桿菌です。また菌を培養して一定方法で抽出しているというが、培養液から何を抽出しているのかわからない。要するに「SICとは何か」といわれても困る。わからないわけですよ。」  ですから、このSICというものに対する批評は、依然としてインチキだという批評です。ところが、一方は、大きく牛山博士の写真まで出て、「私の確信はくずれない」という大きな見出しがある。一方はインチキだ、一方はおれの確信はくずれないという。  私は、自分自身でできるならこういう問題は解決したいと思って、いまSICを多量に原価購入して、ガンでも絶望状態になっている病人をさがして、医者に頼んで実験をやっている。実験をやると、どんどんなおる人もいる。だけれども、私はそういうことではないと思うのです。科学技術的な立場からこの問題を検討していくには、牛山博士SICというものをつくるその過程が正しい過程でもってこれをつくっているか、また田崎勇博士がかつて言われたように、あれは間違ったインチキ方法なんだということが正しいのか。これほど世評を惑わしている問題は、私はあまりないのではないかと思う。いやしくも生命を尊重しない者はないのでありますから、何をさておいても自分の命はほしい。その命がほしいのに対して、一方ではこのSICはりっぱな学術的、医学的な体系からいっているのだ、一方では鼻くそだ、こんなひどい医学界における問題は、私はあまり聞いたことがない。もし厚生省がこういう問題を解決できなかったとしたならば、科学技術庁科学技術振興立場において解決せらるべきものだと思う。それでなくても、日米科学技術合同委員会においては、共同してガンの問題を研究しようということになっているわけでありますから、これに対して何らの処置も講じ得ないということになってはいけないと思うのです。ひとつ御当局の御答弁をちょうだいいたしておきたいと思います。
  20. 芥川輝孝

    芥川政府委員 ただいまの問題は、齋藤先生のおっしゃいましたとおり、昨年来いろいろとこの委員会におきましても御指摘を受け、私のほうといたしましても、問題が重要であると存じまして、この処理を進めたいと考えているわけでございますが、何ぶんにも厚生省が専管してやるべき問題でもございますし、したがいまして、われわれのほうの考え方といたしましては、科学技術庁主導権をとりましてやるという態度ではなく、厚生省とよく協議いたしまして、そうして厚生省解決案を応援する、そういう考え方でただいま問題の解決を進めているわけであります。問題が非常にデリケートな要素を含んでいるようでございまして、厚生省もなかなか具体的な対策に進めないというふうな状況になっているわけでございます。
  21. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 私は、御承知のとおり、厚生当局にもこの実験を早く行なうべきであるということを要求いたしましたが、杳として回答がない。むしろそれはできないという立場におられるようであります。私はこのSICなるものの実体を知りたいと思いまして、一晩がかりで上諏訪まで参りまして、そうして翌日まで培養設備その他を私は全部調査をし、かつみずからもその菌の発育状態を顕微鏡で見てきたのでありますが、これは私がしろうとでありますから、それが正しいとか正しくないということは言えないわけであります。言えないわけでありますけれども、いやしくもその専門家が、あれだけの設備をもって大量に製造しておるところのその方法が、はたしてインチキであるかインチキでないかぐらいは、ちょっと実験をすればわかることだと私は思うのです。非常な微妙な問題であるとか、あるいは厚生当局協議をしてやるとか、そういうことでなく、いわゆる科学技術振興に対する問題の一つとしてガンを取り上げている以上、この方法インチキであるかインチキでないかぐらいは、科学技術庁研究費を出して、適当なところへ五カ所でも十カ所でも、その培養方法が正しいか正しくないかの実験をやらせるくらいは何でもないことだと思う。岡良一先生に伺うまでもなく、一体この世の中細菌培養をやっておるところの人は何ぼいるんですか。それはおびただしい人が細菌培養をやっているんです。その細菌培養無菌状態においてやるということは、生物化学においては常識なんです。ですから、そういうところで実験を数カ所において行なわせれば、医者SIC培養方法というものははたしてインチキであるかインチキでないかくらいは、私はわかると思うのです。それがやれないのか、やれるのか。いろいろ局長が前々から答弁があるけれども、それがやれるのかやれないのか、いずれやるつもりか、やるつもりでないのか。厚生省と話し合ってやるんだやるんだというけれども、さっぱりやらない。私はずいぶんしんぼうしていままで待っておったけれども、もう国会は終わりですよ。国会が終わるというと、来年までぶん流すだろう。その間にかくのごとく対立したところの説によって、病体を抱く人々の悩みというものはたいへんなものだろうと思うのです。  ですから、きく、きかぬは別にして、牛山SIC培養方法が正しい培養方法であるか、正しくない培養方法であるかというのは、最近何万の人が培養をやっておるんですから、それはやれるのかやれないのか、やる気があるのか、やる気がないのか。それをひとつ御答弁を願います。
  22. 芥川輝孝

    芥川政府委員 やる気があるのかというようなことでございますが、問題の重要性にかんがみまして、それは前回に申し上げたと思うのでございますが、厚生省の案に従いまして科学技術庁は応援するというふうなことはこの前も申し上げたのでございます。ただ、具体案がまだ成案を得ませんので、時間がかかる点、はなはだ恐縮でございます。ただ、問題といたしましては、聞くところによりますと、制ガン剤に対する事情との関連におきまして、厚生省も簡単に案をまとめきれない、そういうふうな状況にあるようでございます。はなはだ解決のおくれておる点、申しわけないと思いますが、私どもといたしましては、厚生省が適正な試験法案を立案されるのを待っておる、こういう状況になっておるわけでございます。
  23. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 いや、私はそういうことを言っておるんじゃないですよ。制ガン剤としてSICがきくかきかないかというのは別問題だというのは、何回もぼくは言っておるんです。どうしてそういうことに答弁を持ってくるんですか。私は、SICというものが制ガン剤としてきくとかきかないとかということは、この特別委員会に関する問題じゃない。ただ、この培養方法が正しい培養方法であるか、培養方法でないかということは、科学技術のたてまえから検討をする必要のある問題であるし、また簡単に検討のできる問題である、だから、それをひとつやってくれ、こういうのです。それはわかるでしょうか。SIC制ガン剤としてきくとかきかないとか、そういう問題じゃないのですよ。  それは、とにかく厚生行政として非常に重大な問題であろうけれども、ある一つの液体をある一つ培養基に無菌状態において培養して、そこからどういうものが発生してくるかということの検討というものは、科学技術のたてまえからいえばたいした問題じゃない。それは生物化学であって、科学技術の範疇の中に入って、どうしてもこれは取り組んでいかなければならない問題であるからです。それは何もSICガンにきくとか、ガンにきかないとかいうのじゃないのですよ。  一体、ここに書いてあるとおりに、SIC培養方法では、初めは点菌であり、球菌にそれが生長して、枠菌にそれが生長してくるのだというのです。オタマジャクシはサルにならない、サルはヘビにならない、それはインチキだ、こういっているのだから、その過程細菌学者数名に依頼して検討を加えてみるということは、科学技術立場からやれば何も厚生行政の範疇に入らない。どんどんやれるわけです。一体なぜそれがやれないのです。それをしもやらないで、一体ガン問題なんかを科学技術研究問題として取り上げているのですか。どうしてそういうことをやれないのですか。それをひとつ私は、はっきり御答弁願いたいと思う。
  24. 芥川輝孝

    芥川政府委員 科学技術庁がやれないかという点につきましては、設置法のたてまえ上やれないのではなくて、重要問題の研究促進するという立場をとっておりますので、そういう意味からいえば、科学技術庁がやれるというふうに考えております。  ただ、ただいま御指摘の、何と申しますか、病理学の問題という表現が適切かどうか、私には正確にわかりませんが、そういう問題につきましても厚生行政の一環として秩序ある姿勢をとっておられる次第でございます。したがいまして、科学技術庁としては、厚生省の立案を待ってこれを推進したいという態度をとっておるわけでございます。ただ、おっしゃるとおり、非常に問題も長くなりまして、私のほうも何とかこれを促進したいというふうに考えておるわけでございますが、申しわけないのでございますが、ただいままで成案を得ておらないという状況でございます。
  25. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 では、政務次官にひとつお尋ねいたします。この問題は、長官にも、厚生省協議をして早くこのいわゆる培養方法の真偽というものを見きわめてもらいたいということを要求してあるわけです。いまお聞きのように、SICという注射薬が制ガン剤として効果があるとか効果がないとかいう問題じゃないのです。そういう問題じゃないのです。われわれの追及しておるのは、ただ、ガンにかかったところの人の血液をとって、そして一分間に三千回転くらいの遠心分離器にかけて、赤血球と血漿水を分離せしめて、この血漿水をポリタミン培養液培養すると、最初にあらわれてくる微生物は点であらわれてくる。それがしばらくすると球菌に生長していく。さらに数日たつとそれが桿菌に生長していく。それをタンク培養して、そして代謝産物を精製してSICの注射薬をつくっているわけなんです。これに対していまの医学者は、点菌が球菌になり、球菌桿菌になるということは、サルはヘビになったりヘビはサルになったりすることだから、絶対あり得ないことだ、だからSIC培養方法というものはインチキだ、こう言っているのです。  ですから、問題は、その血液をとって遠心分離器にかけて、そうして血漿水をポリタミン培養液培養する、その過程無菌状態でやればこの問題は解決するのです。ぼくに言われたって、ぼくにやれますよ、何でもない話だから。それを、一体、細菌学者が、専門的に毎日やっておる人が何万とおるわけでしょう、世の中に。どうしてこの真偽がわからないのですか。そういうことすらわからないというなら、あなた、科学技術の進歩発達なんというものは口にしないほうがいいと思うのだ。しかも、科学技術庁は、ガンアメリカとの共同研究にまで持ち込んでいっている。このガンにきく、ガンにきかないというのは別問題で、この注射薬の培養方法の真偽いかんということすら解決ができないなんて、そんなばからしいことを口にしながら、そして大きな顔をして科学技術振興なんて唱えたって、人は笑うと私は思うのです。何でもない話です、これを解決するのは。そんなに金も要らぬことです。どうして一体それができないのか。もしそのできないという原因がはっきりするならば、そのできないという原因を除去しなければいかぬ。私はそれがやはり民衆に対する政治のあり方でなければならぬと思うのです。こういう点に対して、政務次官の確固たる——長官がおられれば、長官に前々から私はこれを要求してあるのですから、御答弁をいただきたいのですけれども、御出席がないから、ひとつ政務次官から御答弁願います。
  26. 内田常雄

    内田政府委員 この問題につきまして、かねがね齋藤先生の御熱意には非常に私は敬意を表しておりますし、また私自身、個人的な立場から申しますと、実は私の友人の、三楽オーシャンという会社がありまして、成田という専務がおります。その娘さんが幼くしてガンで死にました。その過程においてSICの問題が取り上げられたときに、いまのSIC鼻くそ論が出まして、成田君は非常に憤慨しておられるというのは、おそらく齋藤先生御承知だろうと思います。  その問題は、政府もさることながら、医学界なり、細菌学界なり、薬学界なりで、どうして自主的に取り上げられないのかということにつきまして、齋藤先生同様、私は非常にふかしぎに思っております。これは齋藤先生みずからがおっしゃるように、そのSICそのものが制ガン剤として有効か無効か、いかなる効果を持っておるかという問題に入る前に、いまの細菌培養のその過程検討ということはきわめて簡単なことでありますから、だれがやってもわけなくできるはずでありまして、科学技術庁には試験管を持っておるようなそういう研究室はありませんが、政府といたしましては国立病院もあれば、あるいはがんセンターもあれば、あるいは大学の付属病院もあれば、それの研究室もあるわけでありますから、どこかで齋藤先生のおっしゃるその細菌培養過程検討ぐらいのことは、当然私は取り上げてしかるべきだと思います。金がないというのであれば、これは私は科学技術庁が持っております御承知の特定研究調査促進費、これは二億数千万円もありますから、いつも出しますから——それをくれといってきてもおらぬのであります。  だから私は、どこに一体この問題のガンがあるのか。それこそガンがあるのか。厚生当局にあるのか。あるいは日本の医学界全体にあるのか。どこかでこの問題を取り上げて、科学技術庁でひとつ調整費を出してくれというのが出るのを私は待っておる。私の気持ちとしては待っているような状態で、私も非常にもどかしいと思う。さらに私は、この当面の主管庁であり——この細菌培養過程というものは新しい技術でも何でもない、研究室で試験管を振ればできるわけでありますから、それをやる官庁なり仕組みがあるわけですから、一そうこの推進方を突き合わせて、金がないなら金を出すということで、科学技術庁といたしましては、そういう総合調整の立場の一環として、ぜひ進めてまいりたいと、かような気持ちでおります。
  27. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 これは、昭和三十七年十二月一日、  「別冊の要望書を衆参両院の社会労働委員会科学技術振興対策特別委員会並びに関係官庁等に御配布相成りたく存じますので、貴殿において然るべくお取計い下さいますようお願い申し上げます。」  岐阜大学教授医学博士千島喜久男、東京歯科大学助教授医博森下敬一、東京新宿日赤産院院長医学博士鈴木武徳以下二名、五名の連署を持ったこの要望書というものを関係官庁全部に私は配付したのです。衆参両院の社労及び科学技術特別委員会に全部配付したのですよ。それは、  「ガン研究推進のため、SICを含む諸問題の客観的な検討政府に要望します。」  だれもやる人がいなかったら私がやりましょうという要望書です。やりたいという人はたくさんいますよ。こういうものを関係当局は手にしながら、知らぬ顔をしているのだ。それで私は言うのですよ。一体政府は、やりたいやりたいと言っているけれども、さっぱり積極的にやる意図は一つもない。一体こんなことをやれないで、科学技術庁なんかは要らないです。こんな問題も手をつけてやれないような科学技術庁が、どうして一体大きな顔をして科学技術振興に取り組むことができるのです。やろうと思えばやれるでしょう。やる意欲がないだけの話じゃないですか。そうじゃないですか、政務次官。やれないのなら、局長くらい取りかえてやらしてください。
  28. 内田常雄

    内田政府委員 科学技術庁みずからがそういうことをやる組織になっておらない、科学技術庁科学技術振興について総合調整する、あるいは推進をする立場から、こんなことは簡単なことでありますから、科学技術庁みずからがやらなくても、厚生省の医務局なり、あるいは先ほど申し述べましたように国立病院なり、あるいはそれの付属研究室、大学の付属研究所というようなところで当然やるべきことだと思います。ガン対策の総合的推進ということになりますと科学技術庁ということでありますけれども、いま齋藤先生が要望される限りにおいては、そんなことは大科学技術庁がやらなくても、厚生省なりあるいは大学研究室がやれるはずであります。なぜやらないのかということは、私はもどかしく思いますので、今度私の責任で関係機関に問い合わせて、なぜやらないかということを突きとめてみたいと思います。
  29. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 もちろんガン研究というものは科学技術庁としては総合的に推進すべきものだ。だから、いやしくもガン研究推進の途上においてSICというものがあらわれてきて、それの培養方法の真偽というものが世の中に問題になっておるならば、科学技術庁は、率先垂範して適当な機関にこれを要求してやらせるというために調整費というものを持っておるのであるし、また総合官庁としても科学技術振興のために権力を持っておるわけなんです。何ぼ要求しても、やらないのです。馬というものは水ぎわまで引っぱってくることができるけれども、馬に飲む意思がなければ飲ますことができないのです。私は水を飲みにくる意思がない馬と思っておる。何ぼ要求しても、やりやせぬ。いま政務次官が、政務次官の責任においてやるというなら、なるべく早くやってください。こんなことは、やろうと思えば幾らでも早くやれるのですから。この問題が科学技術特別委員会の問題になったのは、いまの委員長の前の委員長の時代なんです。そんなに年月食っておるのです。そういうマンマンデーのやり方でもって、日進月歩の科学技術振興というものに対処するわけにはいかないじゃないか。こういうものは、やれるものならどんどん早くやったらいいじゃないかというのが私の主張なんです。これは政務次官の責任ある御答弁をひとつお願いいたします。
  30. 内田常雄

    内田政府委員 どうも私に映ずるところでは、水を飲まない馬は科学技術庁ではないのでありまして、科学技術庁はこの問題を推進しようと思いましても、日本の医学界の主要な筋、あるいはそれにいろいろな牽連を持つところ、厚生省の医務行政当局というようなものが水を飲まない馬ではなかろうか。水を飲みたいからと馬のほうが言ってくれば、いまお話がございましたように、私のほうには研究調整費もありますから、これは先般の中性洗剤の毒性とある意味では同じような問題で、私は総がかりででも解決しなければならぬ問題だと思いますけれども、馬のほうがさっぱり水飲みに私のほうに寄ってこないというところに問題があろうと思います。なぜ飲まないか、それを私ができるだけ究明してみたいと思います。  しかし、馬は政府の馬ばかりではなしに齋藤先生もおっしゃるように、あるいは民間研究機関でもそんなものは銭さえよこせば直ちに研究する、研究の馬の能力がある、こうおっしゃるわけでありますから、そういう道ももちろんありましょうけれども、こんなことは決心一つで簡単なことでありますから、政府の機関で何ぼでもできるのでありますから、それを差しおいて、いきなり民間研究機関に科学技術庁から研究を委託するということもいかがかと思いますので、さらにこれを突き詰めてまいりたい、かように思います。
  31. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 私はくどいことを申し上げるようですが、ガンに関する関係を追及しておるのじゃないです。SIC培養方法を追及しているのです。ですから、岐阜大学の千島喜久男という先生、これは明らかに国立大学の教授でしょう。これをやりたいと言っているのですから、やらしたらどうですか。何も民間じゃない、大学研究室です。それから、東京歯科大学助教授の森下敬一という人も名前を連ねている。ですから、こういう人に幾らでもSIC培養方法の真偽いかんという問題で調整費を出して、やらせたって、その結果は直ちに正しいものだと認定しなくたって、またそれを一つのファクターとして研究を頼む、幾らでも推進方法がある。  それをどういうわけか、局長厚生省の指示によって——厚生省の指示といっても、厚生省やる気がないのですよ。これも政務次官のおっしゃるとおりに、水を飲む気持ちのない馬なんだ。二匹とも水を飲む気はないのだから、いつまでたったって、問題は解決しないわけです。だから、三週間か四週間で解決する問題を、もう足かけ三年もおっぽり出しておいて、そして週刊雑誌の興味中心の記事が世評を惑わしていることにただ漫然と対処しているということは、われわれとして恥ずかしいのですよ。だから、それをひとつ解決しておいてもらいたい。
  32. 内田常雄

    内田政府委員 齋藤先生のお話もわかりました。ただ、おことばのうちで、大学先生大学研究所でやりたいという、その馬に対しては科学技術庁研究調整費は使えない仕組みになっておりますことは、先生御承知のとおりであります。大学にかかる研究につきましては、科学技術庁の調整権限も、また調整費を出すようなそういう利益を与える面も、これが活用できないことになっている。しかし、やろうと思えばこれは道はあるわけでありまして、民間研究所に対しまして委託費あるいは調整費を出しまして、研究主任にその大学先生をお願いすれば、それはもう一向かまわぬのでありますから、厚生省もどこもやらぬ、学界でもやらぬということになりますれば、それは先生のおっしゃるように、やりたいという大学先生があるのでありますから、それにはまっすぐに金がいかなければ、私が民間研究所に対して研究委託費を出して、それにその大学先生を委嘱してワン・クッションでやらせるという方法もあるだろううと思います。これは全く先生のおっしゃるとおり、まことに簡単明瞭単純なことでありまして、なぜそれをやらぬかということにつきましては、私はしろうとでありますし、またかねての経緯を知りませんけれども、何かあるにきまっていると思いますので、さらにその水を飲まない馬を中心に調査に当たらせていただきたいと思います。
  33. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 それでは、この問題は政務次官の御言明を信頼いたしまして、一応その成果を見守ることにいたします。  先ほどお願いいたしました発明奨励の補助金を交付する過程説明をひとつお願いしたい。
  34. 杠文吉

    ○杠政府委員 お答え申し上げます。発明試験費補助金を交付しますにつきましては、毎年科学技術庁の告示をもって、都道府県を通じまして申請を行なわせているところでございます。この申請にあたりましては、発明実施化試験費補助金交付規則というものが科学技術庁告示で出されております。その第三条によりますと、もちろん予算の範囲内で出されることば当然のことですが、その技術の内容は非帯に優秀であって、かつ実用的効果が期待できるものであるということ。それから二は、企業化の段階に達していない企業化の段階に達していないというのは、企業化すでに間近な事業ならば実施化としては金を出しませんということであります。第三番目には、発明実施化試験の補助金を受けたその対象になるものが、その会計年度内に試験を終わるということでございます。だから、一カ年限りで試験は終了する見込みのあるものということであります。それからまた、これにつきましては、特許または実用新案の登録がなされておることと同時に、あるいは登録はまだなされてないけれども、出願中のものであってもよろしいが、大体通るような見込みがあるというようなものであるということが第三条に規定されております。そのようなものに対しまして、私のほうとしましては受付を行なってこれをどうきめるかということですが、そのときは発明奨励審議会というものが科学技術庁設置法によってきめられておりまして、その発明奨励審議会にはかりまして、その審議会で選定をしてもらいまして、その選定をしてもらった中から科学技術庁が独自の立場に立ちましていろいろ調査いたします。実地にわたって調査いたしまして、その人が事業を遂行する能力があるかどうかというようなことを調べまして、それを技術的に調べることは当然でございますが、また会計的にも調査をいたしまして、それが適当であるという場合に科学技術庁の庁議にはかりまして、庁議決定をもちまして補助金の交付をするというような手続になっております。
  35. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 きょうはまだほかにも御質問があるようですし、科学技術振興全般に関して御質問申し上げますと、少なくとも私は二十時間くらいは時間をちょうだいしなければならないように思いますので、きょうは不適当だと思いますから、なるべく他の質問者のじゃまにならないように、もう少しお尋ねをしておきたいと思います。  この発明実施化に関する補助金の交付は、ただいま局長の御説明になりましたので了承いたしました。ただ、私のお伺いいたしたいと思いますのは、この発明実施化に補助金を交付しておいて、その目的とするものは何らの進展も見ないし、また本人が進展する意図がないという場合に、一体この助成金というものはどうなるのか。それをひとつ伺っておきたい。
  36. 杠文吉

    ○杠政府委員 お答え申し上げます。原則として申し上げますが、大体二年間を限って出すということでございますが、一年間たちましてもなお、ただいま御指摘になりましたように、なかなかはかどらない。そのような場合におきましては、われわれのほうとしては催促をいたします。催促をいたしますと、たいていの場合においては、いまの熱意がないということよりも、やはり一年間でやるという見込みが多少無理であったというような場合が多うございまして、そのような場合にはぜひもう半年延長してくれというようなことを申し入れてまいりますので、そのような際に延長を認めております。  たとえば一つの例をあげますと、ある課題につきまして昭和三十四年の八月三十一日に補助金の交付決定をいたしておりますが、これはその会計年度の三十五年の三月三十一日までに完了しなくてはならぬ。ところが、その期間になかなか完了できないというので、第一回には昭和三十五年七月三十一日まで再度延長を申し入れて、それでもなおかつ試験の結果が出ていないというようなことがございましたので、私のほうからも人をやって、いろいろ督促したりしまして、ようやくにしてことしの一月になって、その三十四年に出したものの終了の報告がきた。ところが、終了の報告がきましても、はたして先生の御指摘になったように所期の目的どおりに達成されておるかどうか問題になっておるような事例もございます。それでいま盛んに私どものほうから人をやって調査をしておるというような事例がございまして、もしもさっき御指摘のように熱意等もなく、あるいはそこにどういう機械を入れるといって、機械が入ってなかったりした場合には、もちろん金を返させる、返還を命ずるというような措置をとることになっております。
  37. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 この問題に質問の矢を向けますと、これは勢い特許行政の実態というものにも触れていかなければならないので、非常に問題が大きくなって、なかなか一時間や二時間では解決しないと思いますから、私は希望だけを述べて、次の適当なときにこの問題をこの委員会検討を加えさせていただきたいと思うのであります。  それは、発明契励実施化補助金を交付いたしましても、本人がほんとうにやる意思がなくて交付金を受けたということなら、公金詐取になりはせぬかと私は思う。こういう事例もたくさんあると思う。たくさんといっては語弊があるかもしれませんけれども、私はそうじゃないかと思うような事例も知っておる。ですから、特許をとって、そうして特許の理論を検討するときわめてりっぱな特許理論である、だからこの実施化に対しては補助金をやってもいいというので補助金をやる。そうするとさっぱり特許の理論を実施に移さない。移す意思がないのか、移せないのか、これもひとつ検討を加える必要がある。もし理論特許をとって、現実の工業的価値をあらわすだけの能力がなくて補助金をとったというならば、これはある意味において公金詐取だ。そういう問題が起きてくると同時に、一体特許行政というものは、どれだけの検討を加えて特許を許可しておるかということ、これは私は重大問題だと思う。それは理論的に組み立てておるけれども、はたしてそれが実現可能であるか可能でないかという、そこまで検討を加えて特許を許可するのか、理論さえつじつまが合えば特許を許可するのか。その特許行政の根本を私らは承らなければならないと思うのです。ということは、できもしない理論を組み立てて——いわゆる想像力によるところの特許というものを認めるというならばこれは別ですけれども、工業的な価値があるかないかということを前提としてやるということになれば、ほんとうの特許というものは、いわゆる特許審査機能においてある程度の実験をやってみるとか、ある程度現実的な面に当てはめてみて、実際これは可能であるということを認めて特許を許可するとか、そこに私は特許というものを道具にしていろいろな罪悪が行なわれる面があると思っておる。これはほんとうの知能犯だ。  ですから私は、特許行政のあり方と発明奨励実施化補助金の交付というものは、今後の検討において非常に大きな行政的なテーマじゃないかと考えておるわけですが、そういう点について局長は何か考えたことがありますか。もし何か考えたことがありましたら、簡単にひとつ言っておいてください。
  38. 杠文吉

    ○杠政府委員 確かに御指摘のとおりに、私のほうの発明奨励補助金の交付の歴史は非常に古いわけです。中には、特許はとっているが実施化ができていないというようなことがございますが、いまの特許のあり方につきましては、各国それぞれの特色を持っておるようでございまして、私は特許庁当局者でございませんので何とも申し上げられないのですが、私のほうの考えるところでは、日本の特許制度というものは理論的な特許ではなかろうか、そういうふうに考えております。したがいまして、それがいいか悪いかというようなことは、目下特許制度についての審議会が行なわれておりまして、私もその委員として入っておりますので、いろいろ議論が重ねられておるところと承知しておるわけでございます。
  39. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 いま局長は、局長立場において、日本の特許は理論特許ではないかと思いますとおっしゃいますけれども、理論的に特許庁に特許を申請してごらんなさい、こういうことを言うてよこすのです。官庁またはこれと同等の権威あるところの実験証明書を一カ月内によこせ、と言ってくる。理論特許だというなら、そんな実験証明書をよこせなんという必要はないと思う。ところが、官庁またはこれと同等の権威あるところの実験証明書をよこせ、その期間は一カ月だ、と必ず言ってくるのですよ。  ですから、私は、理論特許であるとは言い切れないと思うのです、工業的価値があるというところで特許というものは認めるのですから。まあ、きょう特許庁の説明を聞くとまた長くなりますから、それは内部において検討してもらいたいと思うのです。  だから、理論だけは特許をとっているけれども実施不可能な特許というものも相当あるのじゃないか、もし理論特許だけを許可していけば。そういうものに非常にいい特許だということでもって実施化補助金をどんどんやったら、それは公金詐取に追い銭をやるようなものであって、私はそこに非常に罪悪が生まれてくると思います。これはひとつ内部で検討しておいていただきたい。  もう一つ質問申し上げておきたいのは、これは調整局長ですが、調整費を交付して、そうして実験を行なって所期の効果をあげたものは一体どういうふうな処置を講ずるのですか。
  40. 芥川輝孝

    芥川政府委員 私ちょっと御質問趣旨を取り違えておるかもしれませんが、調整費は各省庁の出しましたテーマを総合いたしまして、一つ課題をまとめて、それに対する研究所要経費を出すわけでございまして、その結果どうするかとおっしゃいますのは、たとえば、かりに中性洗剤のような場合には、調整費の結果によるLDと申しますか、例の人体有害の限度はこういうようなものであるということを公表いたしまして、無害説、有害説に対する国としての正当な意見を出す。それで、それをよく国民に周知徹底せしめるために、厚生省を通しまして保健所等を活用するというようなことをやっておるわけでございます。
  41. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 いや、私の御質問申し上げておるのは、たとえばこれは私直接関係をした問題でありますが、ラテライトからクロームを抽出してやるという製錬ですね。これはインドネシアの大統領から原料が送られたので、調整費をもって検討を加えてもらった。まさしくラテライトの含有するクロームはある製錬法をもって行なえば抽出することができる、いわゆる脱クロームができるという結果が発表されておる。そうすると、これは私はどういうふうにこの結果がなるのかと思って見ておると、結果を発表しっぱなし。  いやしくもラテライトというものは、私が申し上げるまでもなく、取り残された一つの大きな世界的資源であって、東南アジアを中心として世界的に分布されておるラテライトの埋蔵量は二百億トンと称されている。将来はこれを原料として製鉄が行なわれるだろうということと、もう一つは対外経済協力の立場から東南アジアの資源を活用するという意味から、ラテライトの中に含まれている脱クロームというものが問題になって、これを除去しようということで、調整費を出してもらってやったら、脱クロームができるわけです。科学技術的な立場においてそういう実験を行なって成果を得た。せっかく国費を使った調整費の問題でありますから、これを科学技術庁でその実験結果によってさらに問題の解決に歩を進めるべきものだと私は思っておるけれども実験があると実験結果を発表しただけで、それでおじゃんです。科学技術行政というものはそういうものかというのです。科学技術推進のための調整費を使って、世界の問題になっておるラテライトの脱クロームができるという見通しがついたら、さらにもっと踏み込んでいって、その問題を解決するためにやるというのが科学技術振興に対する行政のあり方だと私は考えている。脱クロームができたというその実験結果を発表して、それでわがことなれりとしておくのが、それが科学技術庁のやり方かどうかということを承りたい。どうですか。
  42. 芥川輝孝

    芥川政府委員 ラテライトの問題につきましては、実はただいま資料を持っておりませんので、正確なことを申し上げられませんで、記憶で申し上げて恐縮でございますが、ただいま御指摘のとおり資源的には非常に世界的にございますが、ただ資源の均一性に乏しいという点がございます。そこで調整費をもちまして実験をいたしました分は、幸い好結果を得ました。  そこで、これをただいま先生のおっしゃるような工業化まで進めるかどうかという点につきましては、これは別の角度から、と申しますのは、科学技術以外の経済的の問題も相当入ってまいると思いますし、また、これは科学技術庁だけでこれを推進することもむずかしいという問題があるのではないかと考えております。  なお、これを契機として、というのでは少し言い過ぎかと思いますが、時期的に並行いたして、各製鉄所の間で、通産省がたしか中に入りまして、共同のラテライトの開発に関しまする研究会を設けて、そしてラテライトの有効利用について問題を推進しているというふうに聞いておるわけでございます。  したがいまして、使いました調整費につきましては、ただいま申し上げたようなことを契機にいたしまして、これを若干伸展させるのに効果があったのではないかと考えている次第でございます。
  43. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 私はほかの調整費を使った問題というのは知らないものですから、ラテライトの生産を例にとってお尋ねをしているわけなんです。一体調整費を使って、ある一つの工業的な見通しを持つ実験をやり、その成果を発表する。とにかくラテライトの問題というものは脱クロームにあるのだ。もちろんラテライトというものは均一性を欠いているか知らぬけれども、同じ性質のものが何億トンあるかわからないのです。ですから、科学技術庁を通じてやったラテライトの試験というものは一種類じゃない、二種類やっているはずなんです。ともにラテライトから脱クロームができているのです。それからつくった鋼鉄の性質も検討されている。  そうすると、これは一つの例ですよ、調整費を出して実験をやった、結果を発表する、あとは業界がとりつこうがとりつくまいが、それはかってだという態度でいくのか。たとえばラテライトから脱クロームに成功したということであるならば、その脱クロームに成功した線というものはあくまでも科学的に追求していって、これを心棒として製鉄業界の進歩発達のために、科学技術庁科学技術進歩の旗じるしのもとにこれを進めていくというのがあなたのとるべきところの科学技術行政のあり方かどうか。こういうことを聞いているのです。
  44. 芥川輝孝

    芥川政府委員 ただいま御指摘の問題でございますが、これは予算書その他を見ますと、形式的には予算編成時期に予見されざる事項で緊急に解決すべきものに調整費を使う。したがいまして、次年度はこの継続は大体ないというのがたてまえになっております。しかし、実際の運用にあたりましては、ただいま先生の御指摘のように、大体科学技術の問題は長期にわたるものが多い。そこで、最初の頭が何らかのことで予見されざる事項に該当して出てくる。したがいまして、とりあえず調整費で研究を進め、さらに引き続きましては、各省庁がその次の年度におのおのの研究費を取ってもらいまして、それによって開発を進める。そういう形が一番望ましいのではないかというふうに考えて、この運用をはかっておるわけでございます。たとえば、例の豪雪のときに豪雪の課題を設定して調整費を出しましたが、あの継続は、やはり各省庁で三十九年度におきましてその予算を立ててもらいたいと考えておるわけでございます。そういう例を申し上げますと二、三はあげられるのではないかと思います。一応頭だけは出しまして、できるだけ長期計画のもとにその研究を進めてまいるというふうなのが望ましいと思っております。ただ、問題の性質上次年度に継続しないものも多々あることは事実でございます。
  45. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 いまの問題ですが、これは資源局長にも関係があると思うのでありますが、ラテライトというような二百億トンも埋蔵しておるというところの大きな資源です。しかも、日本に最も近接した土地にある資源、どうしても将来は日本はこれにたよらなければならないという運命づけられたところの資源です。そういうものを前提として考えてみるときに、いま局長は、調整費でもって実験をやって、その結果関係官庁にこれを移して、そうして予算措置を講じていく、こういうお話のようでございますが、一体それでは、これは一つの例ですが、調整費でやられたラテライトの脱クローム実験というものの工業化助成金の要求を、どこかの製鉄会社、あるいはこれに関係ある会社が要求すれば、科学技術庁はどういうふうに取り扱いますか。
  46. 芥川輝孝

    芥川政府委員 ただいまの点、ちょっと私が持っております資料では確信を持ってお答えできないので恐縮でございますが、工業技術院からいまのような研究の面に対しての見積もりと申しますか、予算が出てまいりました場合には、私どもといたしましては、科学技術の総合的推進の立場から、見積もり方針の調整のときに、これは国として推進すべき課題であるとして、これを科学技術振興費の中で大きく取り上げることはできると考えております。
  47. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 いまの問題で、資源局長はどう思いますか。
  48. 井上啓次郎

    ○井上政府委員 資源局におきましては、鉄源の問題といたしまして日本が資源的に不足しているという現実がございます。したがいまして、粉鉱の処理というものが大きな問題となっております。資源調査会におきましても鉄源小委員会を設け、その中で粉鉱の資源的な見方、これの開発に取り組んでおりますが、現実にいまわれわれが調べている関係では、世界的な視野から見ておりますが、技術ができても、それを工業化するときのステップというものに多々問題があるものがございます。ラテライトもその一つでございまして、その難関を突破しなければ工業化はできないという段階にあるものと私は考えております。  したがいまして、研究促進する、そしてその成果を応用し、さらに促進すると同時に、そういうような工業化に資するために難関になる問題を解決する努力をするのが、齋藤先生の御質問の御趣旨に最も合うかと思いますので、これは科学技術庁だけの問題ではございませんで、特に工業化となりますと民間企業との関連も多うございます。また、それを監督指導しております通産省との関係も深くありますので、そういった関係が集まって、その開発、工業化についての問題点を究明し、それを解決する努力をやる機構なり、あるいはそれを促進する方策なりというものを確立することが必要だと考えております。
  49. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 これは総理大臣にでも質問しなければならない問題かとも思いますが、たとえば海外経済協力基金に百数十億の金を積んでおる。それを対外経済協力のために使うとすれば、結局経済の根底をなすものは技術である。漫然と商取引ばかりをやるわけにはいかないのですから、技術というものを根底としてやる。  そうすると、たとえば東南アジア諸国に対する経済協力の一環として、その国の資源を開発する何が一体あるかというと、大きな資源としてはラテライトがある。そのラテライトを開発するというのは、ラテライトの一番問題である脱クロームをやらなければならない。その脱クロームをやれば、その国において製鉄をやって、その製鉄によって経済協力の基盤も広げる。そういう意味で、科学技術庁の調整費を使って、金属材料技術研究所がこの試験研究に当たったわけですね。脱クロームができたのです。脱クロームができたら、脱クロームができたという前提の上で、さらに対外経済協力のいわゆる東南アジア諸国の資源開発というものに一歩どっかで踏み込んでいかなければ、これは使いっぱなしでは死に金になってしまいます。それをぼくは聞いている。  政務次官、私の質問、よくわかりますか。科学技術振興というものは、何も日本国内に限った科学技術振興ではないのです。対外経済協力なら対外経済協力の面においても、日本の科学技術というものは振興していかなければならないわけです。そのような重要な職責をもって金を使って、そして実験をやって、脱クロームができたというその現実があるならば、さらに一歩を進めて、ラテライトの開発というものは、資源局その他科学技術庁全般の問題として推進していかなければ、金は死に金になってしまうと私は思うのですよ。そういうものは一体、一歩でも半歩でも前進するものかなと私は見ていると、全然前進しない。それであの問題はどうなったかというと、報告書はあります、報告書を示しただけで、あとはおじゃんだ。そんなことをわれわれ国民として要求しているのではない。国家の金を使って重要な問題に解決を与えたならば、その解決の線においてさらに前進をするという行政を要求しておるのです。これが科学技術に対するところの積極的な行政であるべきだと私は思うのです。そういう点、一つもないんだ。何でもしり切れトンボなんだ、と私は思う。そういうことで一体、科学技術行政というものはいいのか悪いのかということなんです。これは総理大臣にでも聞かなければならぬだろうと思うけれども、私は重大な問題が山積している科学技術振興の今日において、積極性を欠いた——さっきも話の出た、水を飲む気もないような科学技術行政をやられたら、日本はたまったものではない。それで月給をもらっている人はいいかもしれぬけれども、そのために、全体からいえば、そういう消極的な科学技術行政であっては私はたまらぬと思うのです。  ですから、これは一つの事例ですけれども、ラテライトの問題は明らかに脱クロームが先決問題だ。この脱クロームができて、そのラテライトが原料として使えるという製鉄方法があったら、それは国家の力でもって推進していく以外に私は科学技術振興というものはないと思うのだけれども、そういう点に対して——あまり悪口になりますからこれで私はやめますけれども、政務次官ひとつ御答弁願います。
  50. 内田常雄

    内田政府委員 齋藤先生のお尋ねの点は、非常に大切な点でありますけれども、同時になかなかむずかしい行政でもございます。科学技術庁でいまお話のように試験研究の結果新しい技術、新しい発明を握ったといたしましても、これを工業化するためには、やはり企業上の危険の問題があり、これは実験室では成功した、しかしこれにそう数十億の資金を投じて工業化して、はたして、それが経済的に成り立つかどうかという問題、そういう問題と関連いたしまして、この結びつきにいつも問題があるようであります。いまのラテライトの問題にいたしましても、クロームを抜く技術は満たされたといたしましても、これをほんとうに製鉄会社が自分のところの恥の資源として活用するような高炉なり、あるいはこれに関連する施設を思い切ってやれるかというと、まだそこに中間的な相当の工業化試験が要ると思うのであります。そこのつなぎをどうするかという問題がいろいろあるようであります。  科学技術庁におきましては、試験研究をしっぱなしということでなしに、それのごく小規模の実施化、さっきもお話に出ました発明実施化試験費、これはせいぜい数十万円から二、三百万円どまりでありますが、その発明実施化試験費の補助までは出すけれども、工業化するための資金調達とか補助とかいうのは、そこまで科学技術庁がやるだけの仕組みを持っていない。  そこで、これはここに資源局長がおりますが、資源局というのは資源調査会の事務局にもなっておりまして、資源調査会の問題にも移しまして、ここに民間企業からも代表が出ており、関係官庁からも代表が出ておりまして、そうしてこれの工業化実施などにつきましては関係各方面に報告したり、勧告したりする仕組みになっておりまして、あとの段階はそれぞれ行政官庁、たとえば通産省でありますとか、厚生省でありますとか、あるいはまた民間企業における開発銀行、長期信用銀行等々を活用する段階に入るのであります。  いまの科学技術庁の仕組みは、資源局なり資源調査会等の機構を通じて、できるだけ発見された技術、発明というものを工業化の方向に向かわせる材料を提供するというところでおしまいになっております。  ただ一つの例外は、これも齋藤先生御承知のように、新技術開発事業団というものが科学技術庁に付属しておりまして、実施化ができたそういう発明を本格的にやらせる。やらせるといっても、科学技術庁みずからもできないし、また発明者もできないから、それは既存の有力会社に委託してやらせる。その委託費を国が見てやる、こういう特殊な仕組みがございます。しかし、これはせいぜい年間五億か六億の企業資金をこの新技術開発事業団が持っておるだけでありまして、たとえばきょうもあとからお話が出ると思いますが、石炭利用技術の開発について科学技術庁の資源調査会などで推進をしたいと思っておる三つの分野につきましても、これをやるためにはやはり十数億の資金が要るということで、そこのやはりつなぎに問題がありますので、これは科学技術庁としてできるだけやらねばなりませんが、あとは行政官庁である通産省あるいは産業官庁との連絡調整において、その方面で推進をしていく以外にいまのところないだろうと思います。でき得る限り発明や研究の成果がただそこでとまってしまって死蔵されるということがないようにしなければならないことは、仰せのとおりだろうと思うのでありまして、でき得る限りそういう方向に推進するような努力をいたしたいというふうに考えております。
  51. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 政務次官は、あまりこのラテライトの問題について深く検討を加えられたことがないように思います。部下に命じて十分このラテライトの問題を一ぺん解剖していただきたい。これにはいろいろな経緯があります。それですから、経過をよく分析していただきたいと思う。ラテライトから脱クロームする方法は、これは石炭の新しい利用方面にもつながっておる重大問題で、製鉄法を科学技術庁において検討すればおのずから浮かび上がってくる問題であるということを私は期待しておったのです。これはいまの製鉄法の中で、石炭のガス化によって新しい製鉄法ができるということは、もうみんなの知っている事実となってきた。特にメキシコではナチュラルガスでもって日産八百トンの海綿鉄をつくっている。そういう方向に対しては、石炭の新しい利用方法としても考究をしていかなければならない。ラテライトから脱クロームするという問題に関連した製鉄法というものは、広範囲な科学技術の進展を意味しているわけなんです。  そういうことがわかっておりながら、ちっともそれに対して手を染めていかないということに私は不満がある。何のために研究する国家機関なんです。何を一体やっておるのですか。一体政府当局はあの国家機関の中をくまなく歩いて、どういうような研究をやっているか、リストでもつくっておられるかどうか、私はそれすらもあやふやだと思うのです。ですから、そういう過程から見て、これだけの金を使ってこれだけの結果が出ているんだから、この点において一歩二歩と前進してくるだろうとわれわれは期待しておるが、さっぱり前進というものがない。理論的にいってだめなのか、それがだめならほかにりっぱな方法があるかというと、りっぱな方法はない、それが私は科学技術というものの立場における行政的見解ではないかと思うんですよ。  ですから、それは一ぺん、政務次官、部下に命じて全部前のラテライトの関係を洗って下さい。そうすると、どういう問題が出てくるか。必要によったら私も全部資料を出しますよ。いままでの経緯も説明いたします。いろいろな問題があったけれども、私は、いろいろな人的な経緯というものにはなるべく触れないで、科学技術進展のためには実験の結果だけを尊重して前進していくという道がいいと考えておりますが、結果が出たって尊重しないのですから、何とかかんとか文句をつけなければならぬということになってくるわけなんです。  ただいまお話がございました新技術開発事業団も、われわれも一生懸命になってその効果が発揮されるようにつくり上げたものでありますが、一体新技術開発事業団はどういう仕事をやっておるのですか。脱クロームをして、この二百億トンの資源に新しい角度から有効性を認めるという調整費でやった結果が出たら、新技術開発事業団でまっ先に検討を加えて事業ができるかというと、中間工業試験をやるという立場くらいはとったっていいだろうと思うが、聞いてみるとノーコネクションです。何もコネクションはない。あったら能力のない人間がおるわけじゃないですから、何らか問題になるはずです。一体世の中に二百億トンの埋蔵量を持っておるラテライトを完全にこなし得るという目標を持って工業化を促進する以外に、そう大きな問題があるですか。私はないと考える。そういうことは問題にならないですよ。だから、私は非常に疑問を持ち、不快を感じておるだけの話。ですから、これ以上は言いませんが、ひとつ政務次官において、ラテライトの過去及び現在いかになりつつあるかということを御検討願いまして、科学技術振興立場からこれに善処されんことを要望いたしまして、私の質問は一時やめます。
  52. 寺島隆太郎

  53. 石川次夫

    石川委員 原子力委員会にお尋ねをしたいと思います。これは別に委員会でなくてもいいという気もいたしたのですが、一応こういう機会にこういう立場で、はっきりさしておいた方がいいんじゃないかという考えで御質問申し上げるわけでございます。  国産動力炉の型は、どういうふうに決定をされておりますか。しかも、その決定までに至る経路というようなことについて、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  54. 島村武久

    ○島村政府委員 国産動力炉につきましては、先般長官の所信表明等でも御説明申し上げましたところでございますが、三十八年度予算にも研究費をとりまして、三十八年度から国産動力炉の計画に取りかかっておる。国産動力炉の型式につきましては、原子力委員会に動力炉開発専門部会というものを設けて、本年三月末ごろまでに結論をお出し願うことをお願いいたしまして、専門家に御検討いただいておったのでございますが、若干延びまして、五月の二十日に専門部会からの報告書が提出されました。原子力委員会におきましては、その専門部会の報告書を慎重に検討いたしました結果、今月の十二日の原子力委員会におきまして、国産動力炉開発についての大綱を決定いたしたわけでございます。  この決定によりますと、国産動力炉の型式は、核燃料の有効利用と、またその供給の安定化という点から考えまして、重水減速型を選ぶことといたしましたわけでございますが、専門部会の答申にもございまして、同じ重水減速の型の中でも何を冷却材に使うかということにつきましては、さらにもう一年と申しますか、三十八年度中にいろいろ検討をいたしまして、その上で結論を出すということにいたしておるわけでございます。言いかえますと、重水減速型につきましては、ガス、水、水蒸気、それから有機材、この四つにつきまして概念設計を行ないまして逐次検討を進め、三十八年度末、あるいは三十九年度に若干かかるかもしれませんが、これまでにそれをしぼって、一つのはっきりした型式を定め、さらに研究の進展をはかってまいりたいと考えておるわけでございます。  私がただいま申しましたのが、ごく簡単でございますけれども、国産動力炉の型式を原子力委員会においてきめますまでの概略の経過とその結果の概要でございます。
  55. 石川次夫

    石川委員 ついでに伺っておきますけれども、高温ガス冷却炉というのが相当研究課題になって、ずっとテーマに載っておったと思うのです。このほうは一体どういうふうな理由で消滅したのですか。これを不適格と判定をされたというようなことについて御説明願いたい。
  56. 村田浩

    ○村田説明員 若干技術的にわたると思いますので、私から申し上げます。  先ほど局長のほうから説明がございましたように、動力炉開発専門部会におきましては、昨年九月以来あらゆる型式の動力炉について、わが国の動力炉計画としてはどういう型を選ぶのがよろしいかということを慎重に御検討になったわけでございます。この検討の段階で、経緯をやや詳しく申し上げますと、まず既成の炉、つまりガス・クールド・リアクターと申しますのは、現在すでに導入いたしておりますいわゆるコールダーホール改良型、並びにこれからつくる予定の二号炉の対象となっております軽水型炉、こういったものはすでに民間実現規模のものが導入されてございますし、かつまた、それぞれの開発を進めてきました本国において十分な研究開発もなされておりますので、そういった型のものは、諸外国の研究成果を十分見守っていくということにいたしまして、それからもう一つ、将来の動力炉としまして高速増殖炉というものがあるわけでございます。この開発につきましては、諸外国の状況等も勘案しました結果、相当長期を要するであろう、つまり基礎的研究からの積み上げが相当期間かかるであろう。しかも、その技術的内容は、いわゆる熱中性子炉とはまた異なる面が多々あるわけでございますので、この点は、将来の日本の原子力発電計画ともにらみ合わせて、別の計画で慎重に進めていくことが必要であろうという結論に達しまして、その結果、現在の時点におきましてわが国が国産動力炉計画に着手するとすれば、いわゆる新型熱中性子炉の中から選ばれるべきであるということが、まず出たわけでございます。  次いで、新型熱中性子炉の中にもたくさんの種類がございますが、その中で技術的な検討の結果、一応検討の対象となりましたのは、黒鉛ナトリウム炉と、それから高温ガス冷却炉と、それからただいまお話し申し上げました重水減速炉、この三つが、新型熱中性子炉の中でわが国で開発する場合に一応対象として検討すべき炉型であろうということが結論として出てまいりました。  しかしながら、これら三つの型の炉は、それぞれ技術的な内容が非常に違っておりますので、並行してこれを取り上げるということは、資金的にも、人的にもできません。そこで、専門部会としましては、さらにそれらの中からしぼるとすればどれが最も優先的な可能性を持っておるかということを慎重に御検討になった結果、提出されました報告書によれば、まず黒鉛ナトリウム炉につきましては、これは液体ナトリウム金属で冷却することを特色といたす原子炉でございます。液体ナトリウムというのは非常に発火性もございますし、取り扱い上危険性も大きいわけでございますので、その技術は十分開発してから取りかかる必要がある。たまたま世界の状況を見ましても、将来の動力たるべき高速増殖炉では、いずれもナトリウムを冷却材に使う方法でやっておりますので、先ほど申し上げましたように、将来わが国でつくる高速増殖炉の計画を進めていくといたしますと、その際にナトリウム冷却技術というものを織り込んでやるほうが能率的であろうということを申しております。  次に、高温ガス冷却炉でございますが、高温ガス冷却炉につきましては、石川先生御指摘のように、従来半均質炉というような呼び方で日本原子力研究所において研究が行なわれてきました型式の炉がこれに属するわけでございますが、高温ガス冷却炉といいますものも、これをさらに分類いたしますと、二つに分かれまして、一つは燃料といたしまして酸化ウラン等を使いまして、それを普通われわれがいま使っております炉と同じく金属の被覆材の中に入れて、そして燃料使用として使うという型でございまして、イギリスで開発しておりますアドバンスド・ガス・クールド・リアクター、俗称AGRと申しております型、あるいはオークリッジで開発しておりますEGCR、エクスペリメンタル・ガス・クールド・リアクターというものが大体こういう系統に属するわけでございます。いま一つの高温ガス冷却炉は、燃料を非常にこまかい粒にしまして、減速材の黒鉛の粒子と十分緊密にまぜ合わせまして、これをたとえばダブレット状錠剤のような形に成型いたしまして、これを黒鉛のさやの中におさめまして、そして炉心におさめる、こういう形で、非常に高い温度のガスを使います。そういう運転状況の炉が一つ考えられるわけでございまして、いわゆる半均質炉もこの系統に属するわけでございます。専門部会のこの評価によりますと、まず、最初の金属の被覆を使いましたガス冷却炉の場合は、すでにイギリスにおきましてAGRというものが完成いたしておりまして、電気出力で三万キロワットのものが動いております。またEGCRにつきましては、冷却材にヘリウムを使うというような点で大量のヘリウムが要るといった技術上の開発の点で、一応候補者となり得ると思うが、材料等の面で検討の余地があるだろうという言い方をいたしております。他方ほんとうの意味での平均質炉に属します高温ガス冷却炉につきましては、ただいま申しました燃料と、減速材であります黒鉛の粒と十分まぜ合わせて高温で運転するというような関係から、通常燃料の濃縮度がかなり高くなってまいるわけでございます。たとえばイギリスでやっておりますドラゴン計画あたりでも、濃縮ウランの濃度は九〇%程度になっておるわけであります。半均質炉を進めましても、相当高い濃度の濃縮ウランが必要になってくるわけでございます。そういった点において、非常に高濃縮ウランの供給という点で問題があるということを専門部会では指摘いたしておるわけでございます。  他方、重水減速炉の場合は、先ほど原子力局長のほうから御説明いたしましたように、核燃料の有効利用と申しましょうか、そういうような点から見まして天然ウランで十分これが稼働できるという利点を持っております。わが国のような核燃料資源の状況等におきまして、天然ウランで稼働でき、しかも将来これが大型化できるという可能性を持っておる。この点ではコールダーホール改良型よりも非常に大きなポテンシャリティーがあるわけであります。  それらの点を勘案しまして、専門部会では、はっきりした形でどれが一番よろしい、あるいはこれだけがやるに値するということは、現在までの評価では時間的な問題もございまして結論的には言えないと思いますが、大体以上のような評価をもって、それぞれの型式に対する日本でやる場合の目安というものがつけられるのではなかろうかというふうに申しておるわけでございます。  このような報告書を受け取りまして、原子力委員会におきましては、先ほど申し上げましたとおり、将来の動力炉を開発する上に、国産動力炉として基礎から運転まで一貫して行なう相当膨大な資金が必要なわけでございますが、そういうものとして取り上げるに値する炉といたしましては、取り上げていきます上の目的の一番大きなものとして、やはり核燃料政策との結びつきを優先的に取り上げるべきではないかという御判断から、以上三つ申し上げました中の重水減速炉を選ばれたわけであります。
  57. 石川次夫

    石川委員 非常に参考になりますけれども、また同時に、専門的で理解しにくいところがたくさんありますが、このビスマス冷却半均質炉は、いままで原研でもって研究を進めておったわけでございます。高温ガス冷却炉は、専門部会でもって一応却下、といっては語弊があるかもしれませんが、それよりは重水減速炉のほうが有望であるということで採択したということになりますと、勢いここでその半均質炉の研究は一応ピリオドを打った、こういうふうに理解してよろしいのではないかと思いますが、その点は一体どうでございますか。
  58. 村田浩

    ○村田説明員 先ほど私の申しました中にやや不十分な点があったかと思うのでございますが、いまの半均質炉を含みます高温ガス冷却炉の場合には、専門部会の報告におきましては、なおその型式の炉に、現在の世界的な開発の段階から見まして高速増殖炉ほどではないかもしれませんが、ほぼそれに相当するくらいの基礎的な研究をまだ重ねていかなければならない段階にある。したがいまして、この型式の炉を国のプロジェクトとして取り上げますと、非常に小さな、いわゆる実験炉というところからつくって、この実験炉が完成しまして運転した経験をもう少し大きなプロトタイプ、原型炉と申しますか、電気の出力でいいますと二、三万キロワットとかそういった大きさかと思いますが、それくらいの炉をつくりまして、さらにその経験を生かしまして将来の大型炉につなげるべき動力試験炉をつくっていかなければならぬ。こういうことでございまして、そのような研究開発の段階を通っていきますと、この計画の一応の目標の年限としております一九七〇年代の半ばごろに実用化するものと考えるという前提と時間的にも狂いがくるであろうということが指摘されておるわけであります。燃料政策の面とただいまのタイム・スケジュールの面と、両方の面から考えまして、残念ながら半均質に属します高温ガス冷却炉が最有力となっておらなかったわけでございます。  そこで、御質問の、これまでやってきました半均質炉の研究でございますが、専門部会の指摘にもございますように、この型の炉は世界的に見ましてもまだまだ基礎的な面で十分詰めていくべき要素が多いわけでございまして、そういった点では、すでにカナダでかなりの程度基礎的な面が開発されております重水炉と比べましても、なお未知の要素が多いわけでございますので、そういう点につきましては、せっかくここまでやってきたものでありますから、今後ともある程度の努力を続けて原研におやりいただく。ただし、その努力の大きさは、もちろん今回国産動力炉としてお取り上げいただきましたプロジェクトと比べますと、大きさの上で小さくなるわけでございますが、現時点においてすっぱりとやめてしまう、そういう必要は必ずしもないのでなかろうか。つまり相当の研究要素がございますし、それはある程度の努力をさいてやっていただくことはそれだけの意味があるものというふうに考えております。
  59. 石川次夫

    石川委員 それからちょっとはずれるかもしれませんが、原子力研究所のほうの学者の方の意見によりますと、いろいろの意見がありますけれども、炉の研究の対象があまりにも型が多過ぎるのではないか。したがって、これを集中的にやらぬと、あちらこちらデータを集めることに急であって、新しいものを開発をしていくという余裕が、とうてい現在の原子力研究所の中にはない。何とか集中的に研究を持っていかないと、ほかの国の技術に追いついて追い越すことはできないのじゃないかという意見がもっぱら聞かされる。そういういろいろの議論はあっても、やはり外国の技術よりもおくれている面が多々あるわけでありますから、炉の型というものを大体きめて、それで集中的に研究をまとめて進めていくということが現在の段階として必要でないかということがいわれているわけでございます。そういう点で、半均質炉についてもやはり考え直す段階にきているのじゃないかということを私個人としては考えております。  これは一つの意見でございますが、話を振り出しに戻しまして、専門部会で重水減速炉ということに大体の決定をしたのは五月二十日というふうにいま御説明を受けたわけでございます。それをきめるに際しては、当然冷却材というものも含めての決定を見たのではないかと思うわけでございますが、冷却材だけが残って、三十八年、今年じゅうにまたあらためて検討するというのはどういう理由に基づくのでしょうか。
  60. 村田浩

    ○村田説明員 重水減速型には、すでにある程度の規模の炉ができ上がっております型としまして、重水減速重水冷却型というのがございます。これはカナダですでに電気出力二万キロワットの炉が動いております。昨年の四月以来動いておるわけでございます。しかしながら、重水減速型で重水冷却と申しますと、燃料の面ではいろいろ利点がございますが、同時に非常に高価な重水を多量に使わなくてはならぬという不利な点がございます。そこで、最近同じカナダにおきましても、重水の減速であって冷却材として他のものを使う、その中には有機材、それから普通の軽水、それから蒸気といいましょうか、蒸気冷却というもの等を考えて、相互に比較検討を行なっておるようでございます。カナダ以外の国におきましても、たとえばユーラトム等においては、重水減速の有機材冷却をひとつやってみようということがプロジェクトに取り上げられておるようでございます。イギリスにおきましては、重水減速の蒸気冷却という型を取り上げてやろうといたしておるようでございます。  これらに対しまして、専門部会にもいろいろお願いいたしてまいりましたけれども、このいずれの冷却材をとるかということは、まず重水減速型をとるかどうかという判断に比べますと、一段下の問題になるわけであります。と同時に、その判断をするためには相当こまかい技術データを必要とするわけでございます。その技術データは一応、いわゆる概念設計と申しましょうか、予備調査と申しましょうか、そういう技術的なデータを集めた上で判断するほうがよろしかろうという趣旨で、また時間的な制約もございますために、専門部会の報告では、これらにつきましての最終的な結論は、三十八年度に原子力研究所で行なわれます概念設計の結果に待つようにいっておられるわけでございます。
  61. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 関連して。いま私ちょっと外に出ていたので、よくわからなかったのです。けれども、日本の半均質炉の研究は、われわれの承知しておるところでは、これは原研独特のプロジェクトであって、この半均質炉を完成することによって、日本独特の原子力発電用の炉の完成を期し得られるのだということで、従来半均質炉の独特の型の研究をやっていたわけです。それが途中において、不適当だとか不適当でないとかいうことが出てきた。どうなんだといって私質問したところ、いや、まだまだ研究の余地があるんだということであったが、いまお話を承っておると決してまだ研究をやめたのではないけれども、これではどうもまだ行き先が見当がつかないから、このプロジェクトは一応正規のものにしないで、他の方法によって日本の原子炉の研究体制のいわゆるオーソドックスな型をつくろう、こういうふうに変わったのですか。
  62. 村田浩

    ○村田説明員 専門部会の審議の経過におきましても、まず第一に国が多額の資金を投入いたしまして、国産動力炉の開発をする意義をどこに置くべきであるかということが非常に詳しく審議されたわけでございます。長期計画をつくりました二、三年前、つまりそのとき半均質炉が出てきておったわけでございますが、当時に比べまして、最近の世界の原子力発電開発の状況の中で技術的に若干変わってまいった点、あるいは発展してまいった点はどういうことかといいますと、当時予想しましたよりも動力炉の型、規模が非常に大きくなってきたことであります。当時は昭和四十五、六年くらいにおきましてもせいぜい三十万キロワット程度でとどまるだろう、こう考えておったわけでありますが、最近の発展の状況齋藤先生もよく御承知のとおり、すでに計画としては三十万キロをこえる炉がたくさん出てきておりますし、昭和四十五、六年ごろを目標といたしますと、一基百万キロワットに近い動力炉が建設されるという状況になってきております。これらはいずれも軽水型、あるいは従来のいうガス冷却型でございます。  それで、そのような規模の大型化というのが可能になった、これは技術的な発展であります。そういたしますと、たとえば蒸気、温度、条件等が他の新型炉に比べて若干劣りましても、大型化によります経済的な利点というのが非帯に出てまいりまして、それらによって得られる発電コストというものは、当初の予想以上に下がってくることがだんだん明らかになってきたわけであります。  そういたしますと、他方で国産動力炉を開発いたしていきまして、昭和五十年ころに相当大型の国産動力炉ができたといたしますときに、技術的にはできたけれども、経済的には全然問題にならぬということでは、せっかく開発しましたものが実際に役立たないわけで、その際に、いわゆる電力事業者等からも十分な魅力をもって取り上げられるようなものにいたしたいわけです。そうなりますと、この動力炉の規模は、昭和五十年ころにはおよそ百万キロワットくらいのものができるくらいの大型化の可能性のあるものを取り上げるべきだという点が非帯に強調されました。特に電力業界等の専門家からの意見としては、そういう要請が非常に強くあったわけでございます。そういった点から見てまいりますと、いわゆる半均質炉型等におきましては、昭和五十年ころまでに百万キロワットの動力炉をつくるというところまでは、タイム・スケジュールとしては、とてものことじゃないが、いかないということは、これまたかなりはっきりしてまいったわけであります。そういったような点から、さらに核燃料の燃料政策の点を考えまして重水炉が選ばれた、こういう経過でございます。
  63. 石川次夫

    石川委員 そうしますと、結論的に質問いたしますが、専門部会のほうでは重水減速型ということに決定はいたしましたけれども、冷却材について若干の問題点があるので、検討を加えて、今年じゅうに結論を出して、その専門部会の結論というものを尊重して、正式に炉を決定する、こういうふうに理解してよろしいですか。
  64. 村田浩

    ○村田説明員 若干違うかと思うのでありますが、専門部会の報告では、いずれの冷却材にも問題があるからそれを検討しろということではなくて、ガス、有機材、蒸気、軽水というものにつきまして、どれを冷却材とするのが最も技術的経済的にすぐれているかということは、原研のほうで概念設計等をやってデータをお出しにならないとわからないでございましょう。したがって、データをお出しになったところで一つにしぼって、一つにしぼられたものについて、いわゆる原型炉——出力としまして大体三万キロワットから五万キロワットくらいのものを考えておりますが、そういう原型炉をつくる計画の細目をきめていくべきであるという御意見でございまして、原子力委員会の決定もその線に沿って決定をいたしておるわけでございます。
  65. 石川次夫

    石川委員 時間がだいぶたっておりますから、結論的に申し上げます。  そうすると、専門部会の意見を尊重してきめる——結局私がそれをあえて申し上げるのは、そう言っては失礼でございますけれども原子力委員会の中には基礎物理の専門家はございません。そのことがいい悪いということは私申し上げておるわけじゃございませんけれども、実は原子力委員会としても、もちろん経済的な立場原子力の発展を考える人もあるのでしょうし、それからエンジニアリングの立場研究する人もあるでしょうし、いろんな構成は必要だと思いますけれども、私個人の考えからいうと、原子基礎物理の権威者が一人も入っておらぬということに非常に不安を覚えておるということを率直に申し上げます。そういう観点からいたしますと、原子力委員会は技術的な問題に対して断定をできるだけの組織もないし、専門部会というものを尊重するというたてまえにもなっておるし、それだけに専門部会というものを大いに活用をして、今後とも意見を尊重しながら進むべきものではなかろうか、こういうふうに考えるので、あえて私は御質問したわけです。  同時に、話は非常に飛躍するようで恐縮でございますけれども、たとえば当面問題になっております原子力潜水艦の寄港の問題の安全性というものを検討する場合においても、私は原子力委員会それ自体で結論が出し得るとは考えておらない。これは、それぞれ原子力委員会に所属するところの、特に原子炉安全審査部会というふうなものもございます。そういったものの安全性に対する意見というものを尊重しないと、原子力委員会それ自体で簡単に結論を出し得ないのじゃないかというふうに考えますけれども、その点は、原子力委員会の駒形さんがお見えになっておりますが、どういうふうにお考えになりますか。
  66. 駒形作次

    ○駒形説明員 原子力委員会といたしましては、いろいろな問題につきまして、その関係専門家を集めまして、そして慎重に審議をしていただきました結果でございますから、専門委員会の決定というものを大いに尊重してまいりたいと思っております。  ただ、いま問題になりました国産動力炉の問題につきましては、村田次長から詳細説明がありましたごとく、若干のなかなかむずかしい問題もありまして、突っ込んだ調査をやらなければわからぬ面もあるわけであります、なおまた、いろいろ、いわゆる重点をどういうところに置くかというような問題もありますので、そういう問題につきましては、原子力委員会として、専門委員会が出されました意見の幅の中におきましてやはり判断を下さなければならないことも出てまいると考えておるのでありますけれども、いま申しましたような場合に、専門委員会の結論に対しましては、原則的にこれを大いに尊重してまいりたいと考えております。
  67. 石川次夫

    石川委員 実はいま答弁の中になかったわけですが、当面非常に問題になっております原子力潜水艦の問題でも、やはり専門家の意見を尊重しないで、原子力委員会だけでは結論が出ないんじゃないかということを念のために申し上げておきたいのです。  ということは、ここは申し上げる場ではないと思うけれども、自由民主党で「原子力潜水艦のすべて」というパンフレットが出ておる。私は読んでみて、あ然とするようなことばかり出ておる。別にここで自由民主党と討論するつもりはございません。たとえば制御棒が減ったという問題については、技術が進歩をしたのであって、進歩をした技術を知らない日本の原子力科学者というものは、あきめくらも同然だというような書き方をしております。これは非常に学術会議の連中を憤激さしておる。というようなこともありましたけれども、これはきょうの私の議論の対象にはもちろんなりません。そういうようなことがあって、私も、こういうふうなパンフレットが世の中をまかり通るということになりますと、日本の科学というものの発展のために非常な障害になると考えざるを得ないので、非常に憂えておる。それをここで申し上げてもしかたありませんけれども、そういった考え方のもとに、強引に原子力潜水艦の冷却水は飲めば飲めるという考え方があの中には出ておるんですね。  こんな非科学的なものがまかり通るというふうな考え方を前提として、原子力潜水艦は安全である、寄港には何らの不安がないんだというような結論が出るということに対して、抵抗できるという意味ではありませんけれども、厳正に科学的な立場で判断ができるよりどころというものは、一応原子力委員会である。しかし、原子力委員会それ自体は、原子基礎物理の専門家先生方がいらっしゃらない。原子力委員会が意見があれば、その意見を十分に政府としては尊重するというたてまえになっておる。したがって、原子力委員会が結論を出す場合には、原子力委員会だけではなくて、そういう専門部会なり関係者なりの意見を十分聞いて結論を出さなければならぬという責任があるということを、ここで一言つけ加えておきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  68. 岡良一

    岡委員 島村さんもおられますから、先ほど内田政務次官に申し上げた点をもう一ぺん繰り返してみたいと思います。  この間の委員会石川次夫委員から、先般日米研究協力専門家会議というものが開催されたが、その出席者については非常な限定があったということについて御質問がありました。きょう「原子力委員会月報」を拝見いたしますと、日本側参加者の名簿というものが出ております。この中には古河、日立、三菱、住友、東京芝浦等、いわば民間における原子力産業部門の代表の諸君が参加しておる。ところが、大学教授諸君が一人もこの中には見当たらない。これは少なくとも日米両国間の原子力に関する協力協定に基づいて、相互の情報の交換をするということであれば、学術会議にもやはり原子力に関する委員会ができておるのだから、その人たちを全部入れろ、そんなことではなくても、やはり学術会議等とも連絡をとられ、大学教授諸君にも参加をしてもらうというような形で、今後日米間における協力会議というものを持っていく必要があろうと私は思う。ひとつこの点は、今後の運営において十分注意をしてもらいたい。これは御返事は要らないけれども、ぜひやってもらわなければならぬ。こういうことでは話にならぬ。  私が質問申し上げたいのは、齋藤さんの趣旨とちっとも変わらないことなのです。ただ、最近の科学技術の進歩に伴って、たとえばきょう委員会決議した問題でも、公害防止といえば通産省にもまたがる、厚生省にもまたがる、ものによっては建設省にもまたがる、非常に多くの官庁にまたがっておる。ところが、日本の官庁というのは、やはり従来からの悪いくせである割拠主義がある。ときには権威主義が多いというようなことから、科学技術の進歩に伴い、行政の中に科学技術の成果を生かす仕組みというものが足らない。これが私は日本の現実の政治の一つの大きな不幸だと思う。ところが、そういう任務をもって生まれたのが科学技術庁なのだからい科学技術庁としてはもっと積極的に、科学技術庁のもとに研究された成果というものを行政の上に生かしてもらいたいと私は思うのです。  これは卑近な例なのですが、ことしの冬、大雪が降った、気象庁は十二月の初めにもう長期予報で、一月の中旬には石川県に大雪が降るということを知らせている。さらに一月四日には、一月十一日から大雪が降るといっている。十一日から二十四日まで毎日毎日大雪警報、風雪注意報、二十四日になったら北陸線が動かない。国道も自動車が通れなくなった。そうなったら、あわてふためいて日本じゅうの除雪機械を取り寄せる、自衛隊に来てもらうといったけれども、全然道が通わないものだから、汽車が通わないものだから、何も通えない。これなんか、私は非常に卑近な例だと思う。せっかく気象庁が地方行政当局にそういう注意を与え、住民に注意を与えながら、結局ほうって、そのままになげうたれて、汽車も通わず、自動車が通わなくなってから、あわてふためいてやるようになる。私はそういう立場から、もっと日本の行政の中に科学技術研究の成果というものが生かされるということが必要だと思うのです。  そういうことから、昨年の国会以来、御存じのように、石炭の問題が非常に焦点になって、今度の国会でもそれに関連する法律もすでに着々成立している。ところが、あの考え方の基礎にあるものは、いわば石炭というものは、特にエネルギー源としては、もはやだんだんと他のものに取ってかわられつつあるというような考え方が基礎になっている。しかし、はたしてそうなのだろうか。科学技術の発展というものは、何もよその国のまねをすることだけが科学技術の発展じゃないだろう。やはり日本列島の地下に眠る資源を何とか日本人自身の研究によって開発していくという努力があってしかるべきじゃないか、そう思いまして、実は科学技術庁に御相談を申し上げたら、すでに科学技術庁のほうでも、こういう研究をやっておられる。  たとえば電力用炭あるいは製鉄用炭などがだんだんと減ってくるから、五千六百万トンにするか六千万トンにするかということが与野党の一つの争点になる。しかし、事実、低品位炭でも、あるいは非粘結炭でも利用の道があるということになれば、これは私どもとしてもそれを利用し得るように技術を開発し、また事実上実用化するように国が援助するという形にすることが、この石炭問題の解決における非常に建設的な解決だと私は思う。  そういう意味で、資源局長が来ておられますので、低品位炭なり非粘結炭なり、日本の地下に眠っておる石炭資源の利用の道について、研究の成果をこの機会に御発表願いたい。
  69. 井上啓次郎

    ○井上政府委員 ただいま御要望のありました石炭利用技術の開発について、せんだって資料として提出しましたものの概要を御説明申し上げます。  わが国の石炭鉱業の近代化、合理化につきましては、御案内のように、石炭対策大綱に従いましてそれぞれ対策は講じられていますが、今後さらに生産構造の高度化をはかり、需要の確保安定に資するためには、新しい観点に立った石炭利用技術が先行的に確立されることが必要だと思います。  石炭利用技術につきましては、言うまでもなく生産、保安、輸送及び利用の各面から推進しなければなりませんが、特に石炭需要の確保安定に資するためには、石炭利用技術の開発を積極的に進めなければならないと思います。アメリカ、イギリスにおきましては、三、四年前から石炭需要の拡大を目途といたしまして、国費をもって石炭利用技術の開発に力を注いでおります。  このような石炭利用技術の重要性にかんがみまして、資源調査会及び資源局におきましては、かねてから総合的な調査を進めておりまして、当面重点的に技術開発すべき石炭利用技術として、資料に掲げましたように三つの分野を取り上げた次第であります。  資料として出しました概要の終わりに一覧表がございますから、ごらんいただきたいと思います。  第一は、電力用石炭のスラリー輸送と、スラリー燃焼を主体とする新しい利用技術であります。この一連のスラリー技術は、径一ミリ程度の石炭を水とまぜ合わせてスラリー状といたします。言いかえればどろ状といたしまして、陸上ではパイプライン、海上ではタンカーで輸送し、火力発電所ではそのまま燃焼せしめるという方法であります。  この技術の効果としましては、石炭の輸送コストが大幅に低下します。したがって、発電のコストが重油専焼並みになるということが予想されております。一応の試算によりますと、北海道の石狩炭田から京浜地区までの輸送費を見ますと、現在トン当たり千七百円から千八百円程度でございますが、スラリー輸送では約千円ぐらいになりまして、それらの発電コストは一キロワットアワー当たり三円以下になると計算されております。こういうように新しい観点から見ると、スラリー利用技術はすでにアメリカにおいて実用化されていますが、わが国ではまだ未開発の分野でありますので、この際実用化を目ざした技術開発が必要と考える次第でございます。  その第二は、炭田ガスの回収と低品位炭の完全ガス化とを組み合わせたガス利用技術であります。炭田ガスの回収は、炭坑保安の上からも、かつ未利用資源の活用の上からも有意義であります。これと組み合わせて、四千カロリー以下の低品位炭を完全ガス化して、都市ガス用とか化学原料用、あるいはまた直接製鉄の還元ガスとして利用することは、資源の総合利用から見まして非常に重要なことであろうと考えておる次第であります。  御承知のように、炭田ガスは、部分的にはすでに回収され、利用されております。また、低品位炭の完全ガス化は、南ア連邦や豪州においては実用化されておるわけであります。このようなガス利用の構想は立地条件あるいは経営条件がそろえば、わが国でも実現する可能性があると思います。事例としましては、炭田ガスを多く埋蔵しております石狩炭田が対象になろうと思いますが、これを具体的に実現性を検討する必要があろうと思いまして、ここに取り上げた次第であります。  その第三にあげましたのは、原料炭の分野でありまして、国内一般炭を利用して製鉄用コークスを製造する特殊技術でございます。現在溶鉱炉に用いますコークスは、主としてアメリカから輸入されます。強粘結炭五四と国内産の弱粘結炭四六を配合してつくっていますが、わが国の製鉄用コークスの値段は、諸外国に比べましてかなり高い現状であります。このままでは価格の安い豪州から輸入される弱粘結炭に押されまして、国内の弱粘結炭の需要が減るおそれがあると思います。そこで、国内の弱粘結炭はもちろんのこと、一般炭を利用しまして、強度の大きい割安な製鉄用コークスを製造する新技術の開発がぜひとも必要となるわけであります。そういうような要請のもとで、ねらいはどこかといいますと、輸入する強粘結炭を減らしまして、そのかわりに国内炭を用いることにあります。しかし、御承知のように炭質が違いますので、それぞれの特色に応じた方式を取り上げなければなりません。そこにもあげました三方式のうちで原炭装入の方式と、加熱成型の方式は、国内で試験的にはある程度成果が得られております。常温成型の方式は西ドイツですでに実用化されておるものであります。これらのコークス製造の技術を確立して企業化するにあたりましては、いままでのように個々の小規模な実験では十分この見きわめができませんので、相当大規模な技術開発をする必要があるわけであります。もしこういう技術が実現すれば、国内炭の弱粘結炭はもちろんのこと、一般炭も相当増加して使えるということが考えられますし、反面、強粘結炭の輸入外貨の節約にも役立つものと考えます。  こういう、いままで述べました三つの分野で利用技術を取り上げたのですが、言うまでもなく、これは一つの今日の段階において重点的に取り上げなければならない技術的なものとしてここに取り上げた次第でございますが、これを生産技術として実用させるためには、技術的な面から、また経済的な面からその見通しが得られなければならない。したがいまして、ここでいう技術開発は、当然実用規模に近い一貫したシステム、そして十分余裕のある開発資金を投入することが必要な条件になります。  そのやり方としていろいろことが考えられますが、蓄積された技術基盤を重視して政府資金による国のプロジェクトとして委託方式を採用することが望ましいと考えております。この件につきましては、通産省の担当当局ともいろいろ相談をして、この行政的な措置を講ずるよう連絡しておりますが、実は現在石炭鉱業審議会の技術部会におきまして、石炭技術の推進について審議中でありまして、本件もこの対象になって検討中であります。近く答申もあろうかと思いますが、科学技術庁といたしましては、当面開発すべき石炭利用技術につきまして、いろいろ緩急の度合いもあると思いますけれども、積極的な措置が講ぜられるよう関係各省ともよく連絡しながら努力したいと考えている次第であります。  以上簡単でございますけれども、資料の内容を御説明申し上げました。
  70. 岡良一

    岡委員 それで、通産省から来ておられますが、今度石炭のいろいろな法律案に伴う予算というのは、総額どれくらい支出することになっておりますか。
  71. 佐伯博藏

    ○佐伯説明員 炭業課長の佐伯でございますが、石炭局長がちょっと所用で参りましたので、代理で失礼さしていただきます。  石炭の技術開発につきましては、従来は工業技術院の試験所その他で試験をいたしておりましたが、昭和三十五年に中間規模の試験をいたすという意味で、財団法人石炭技術研究所というものをつくりまして、石炭技術振興補助金を毎年交付して石炭技術の振興開発というのを進めてまいりましたが、昭和三十八年はそれを倍額いたしまして、約一億百五十万円の補助金を出しまして、石炭の生産技術と利用技術の開発につとめておる次第でございます。先ほど科学技術庁のほうからもお話がございましたように、それでは必ずしもまだ十分でございませんので、現在石炭鉱業審議会の中に技術部会を設けまして、どういうテーマを研究すればいいかそれをいかにして開発すればいいかということで慎重に審議をしております。科学技術庁とも十分な連絡をとって進めていきたいというふうに思っておる次第でございます。
  72. 岡良一

    岡委員 産炭地振興等、今度石炭がうらぶれてきたからというので、いろいろな法律案が国会に提出され、可決されているのだが、それに伴う予算は総額一体どのくらいのものか。
  73. 佐伯博藏

    ○佐伯説明員 石炭対策の全般的な予算につきましては、通産省の中だけでございますと、先ほどお話がございました産炭地振興、それから炭鉱を近代化していくための近代化資金その他を合わせて約百二十億円程度でございますが、そのほかに離職者対策その他として労働省その他のほうにも予算がございます。この点正確な数字は存じませんが、労働省関係のほうにも相当予算がついております。
  74. 岡良一

    岡委員 これも一つの災害だと私は思うのだ。重油がだんだんはびこってきて、石炭がうらぶれていくというのは一種の災害なのだが、災害復旧は、日本の政治のあり方では、原型復旧の程度というような形で、積極的なものがない。いまの場合でも、石炭で迷惑をした人たち、迷惑をした自治団体に対して若干のお金を交付して産炭地を振興するというようなことで話が終わりになろうとしておる。  いまお聞きすると、厚生省、労働省関係以外でも百二十億とか。そういうようなお金を、何も私は、いま局長説明されたその全部をやってもらいたいというわけではなく、またすぐやるべきだと思っても、なかなかやり得るものではない。審議会が慎重に検討中だというが、ぜひこういう面をもっともっと技術の開発をしていく。これにはやはり小規模なものではだめだと思う。かりに民間の大きな高炉を実験用に使うから供出しろといっても、供出するものではないから、それは研究費か何か出してやらなければいけない。相当な費用が要ると思うのだが、こういうようなものを思い切ってひとつ政府のほうがやって、国内資源を生かし、また産炭地においても、さらにこうした幾多新しく進歩した科学技術というものを導入しつつ、産炭地に新しい希望を与えていくような政策を推し進めるのが科学技術庁の仕事だと思う。そういう決意を持って——私もしろうとだから、何も多く言うことは持たないが、ぜひひとつあなたの御決意のほどを聞かしてもらいたい。
  75. 内田常雄

    内田政府委員 石炭問題に関する試験研究をも含めまして、今日の石炭対策というものが、いま岡先生からも仰せられるように、あと始末的な対策のにおいが何となくするようなふうにも私も感ずるのでございます。あと始末だけで百何十億というような金を使うということよりも、むしろこれだけ資源があるのでありますから、この資源を積植的に、しかも経済的にも成り立つような方面に生かしていくという面に使うことが賢明であることは言うまでもないことでありまして、私ども科学技術の面をあずかるものといたしましては、あと始末的な方面に石炭対策の金を使うよりも、できる限り他の利用の面、いま井上局長からお話のありました石炭利用の技術面のみならず、さらに進んで石炭の生産、ことに輸送、それに利用の面とあわせまして、総合的な各方面の石炭に関する研究調査、技術の開発というものをやりまして、そうしてこれを前向きの面に生かしていく。資源も人も生かしていくという面には、ぜひひとつ努めるようにいたしたい、かような考えをもちまして、政府の部内におきましても努力をいたしてまいりたいと考えております。
  76. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 関連して。私かつて落選中、科学技術庁の顧問を拝命いたしておりました際、顧問会議でちょうど石炭需要問題が出ましたので、科学技術庁はいち早く石炭問題に取り組んで、科学技術的な立場から、日本の二百億トンに余る埋蔵石炭の運命を決定すべき準備をやるべきであるという意見を出したことがあるのであります。それから指折り数えて何年かなりますが、いま資源局長からようやく科学技術庁立場で日本の石炭に取り組む片りんをうかがうことのできましたのは、まあおそきに失したという悪口のかわりに、相当の御努力に対して敬意を表しておいたほうがいいんじゃないか、そう思っておるわけであります。  ただ、私は、先ほどもラテライトの製鉄に関連して、石炭の利用という点に触れたのでありますが、第一、日本の石炭問題を解決する際に、石炭だけを考えて、そうして石炭問題を解決しようという従来の立場は、ある意味において私は完全じゃない、そう考えておるわけであります。  第一、いままでの不完全な日本の地質調査の結果によりますと、炭田地帯におけるガスの埋蔵量と石油地帯におけるガスの埋蔵量とどっちが大きいかということになると、非常に疑問があると思う。むしろ炭田地帯におけるガスの埋蔵量のほうが大きいのではないか。そういうことは私から申し上げるまでもなく、専門の方は御承知のとおりでございますが、大体石炭地帯における天然ガスと炭田地帯における天然ガスの成因というものは同じに見なければいけない。ですから、結局石炭地帯であるとか、あるいは石油地帯であるとかいうことの地質的な区別をして、同種鉱物の決定をいたしておるところのいまの鉱業法は、根本的に考えが違うのだということは私は正しいことだと思うのであります。そのために可燃性天然ガスの鉱区の設定という点になりますと、紛淆を来たして、遂に炭層をはさんで上下百メートルにあるところの炭田ガスは石炭ガスだという、世界に特殊なガスが生まれてきたわけであります。  こういうような観点から参りますと、私は日本の石炭を考えるには、まず第一に、炭層地常におけるガスの賦存状態というものを的確に把握する必要がある、こう私は思っておるのであります。資源局においてそういう点にはお気づきのこととは思うのでありますが、いままでの御調査において、天然ガスの賦存状態というものは、炭鉱、いわゆる石炭層にあるのか、あるいは石炭層以外の層にも炭田ガスというものはあるのか。そういう点、御調査なさったことがあるならば、ひとつその結果を簡単にお漏らし願いたいと思います。
  77. 井上啓次郎

    ○井上政府委員 炭田ガスの埋蔵量につきましては、昭和三十五年通産省の地下資源開発審議会で調べられたものがございます。その調べによりますと、日本全体で約四千七百億立方メートルあるというふうに出されております。これを天然ガスに比べますと、天然ガスが約四千三百億立方メートルですから、とんとんの状態でございます。地区的にも非常に特徴がございまして、北海道はいま申し上げた四千七百億立方メートルの中で三千六百億立方メートル、ほとんど大半が北海道に偏在しておるような状態であります。その賦存状況につきましても、これは学問的に申しましてなかなか問題があろうと思いますけれども、いまいろいろな調査をしておりますけれども、決定的なものは出せない段階でございます。いま先生が御指摘のように、岩石型もございますし、炭層型もございます。しかし、問題になって、これから対象として大いに開発を要するものとしては、炭層型に特に重点を指向しなければならないだろうと考えておるのでございます。  したがいまして、構造の問題あるいは成因の問題というようなものも研究を進めなければなりませんが、そういうような炭鉱の保安というもの等とも関連し、未利用資源の利用という面からもこの点は大いに推進していきたいと考えておる次第であります。
  78. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 その四千七百億立方メートルというと、石油換算四億七千万トン、これは膨大なエネルギー資源として考えなければならぬということになるわけですね。しかし、私の知っているところによれば、一体四千七百億立方メートルの積算というものはどういう調査結果から生まれてきたか。これはある意味においては、悪いことばで言えば、非常に当てずっぽうが加わっているのではないかと思われるわけであります。また、寡聞にして、炭田ガスの調査費を何億、何十億とかけて調査したということを聞かないわけでありますから、これは大体の推測であって、あるいはこれより少ないかもしれないし、もっと多いかもしれない。そういう点、どこでどういうふうな調査計画のもとに将来実行されるのであるかということを、ひとつお示しを願いたい。  これは石炭問題を解決する意味において、石油換算四億七千万トンにも匹敵する天然ガスがあるという想定ができたら、袖手傍観して、これを放置しておく手はないから、これは積極的に開発しなければならぬ。それに対して、どういう決意を持って昭和三十九年度にこの天然ガスの調査開発費を盛り込むかということ。  もう一つは、いま天然ガスの賦存状態、これは過去において可燃性天然ガスの調査において、いままで秋田県には構造性ガスがないということ。秋田県は天然ガスを開発して、これを大きな近代的工業の原料とし、あるいはカロリーの高い燃料を必要とする特殊産業のエネルギー源にするのには、構造性ガスがない。新潟は構造性ガスがある。われわれは秋田県人でありますから、秋田県の天然ガスの開発を一生懸命推進しようとしても、どこか知らぬが、構造性のガスが秋田県に職域ないからだめだという説によって押えられていた。ところが、最近秋田県の天然ガスの供給源というものはだんだん枯渇してきたために、非常な驚きをもって熱心に開発をいたしましたところが、新聞で御承知のとおり、構造性ガスの非常に大きなものが見つかった。私はおとといこれを見に行ってきたのであります。そうしますと、ないないと言っておった構造性ガスの大きなものが秋田県にも発見されるということになりますと、いままでの天然ガスの賦存に対して、全部構造性ガス的な、御承知のとおり背斜構造の上部にあるガスの探求というものをやらなければならぬ。いままでの水溶性ガスというものが一体どこからきておったかということの研究もしなければならぬ。これはそういう点では、非常に大きな資源的な問題がここに持ち上がったと思っているわけです。  そういう意味から炭田ガスというものを、いまお話を承ってよく私はわからぬのですが、ひとつ炭田層に向かってボーリングをやる。一体ガスは炭層にだけあるのか。もし炭層にだけあるとすれば、石油になぞらえると石油混合のガスということになる。炭層地帯だって、やはり水の中に含まれている水溶性のガスがあるかもしれない。あるいは背斜構造のてっぺんに構造性ガスがあるかもしれない。一体そういうことはいままで調べたことがあるのですか。
  79. 佐伯博藏

    ○佐伯説明員 お答えいたします。  先ほど資源局長からお話がございましたように、炭田ガスの埋蔵量調査というのは地下資源開発審議会、現在は鉱業審議会と名前を変えておりますが、地下資源開発審議会で、予算はわずかでございましたが、二年間にわたりまして、主として机上調査をいたしまして、統計的方法によって四千七百億立方メートルあるということを出したわけであります。それに並行いたしまして、炭層にボーリングをいたしまして、炭層のガス圧をはかってガスの埋蔵量を実験的に出すという方法もいたしております。これらの報告は少しおくれておりまして、ことしの秋には報告書ができ上がる予定になっておるわけです。四千七百億立方メートルを出しました根拠は、現在石炭を掘りますとそれに伴ってガスが出ますものですから、それを統計的に詳細に調べまして、それに石炭の埋蔵量をかけ合わせて出したわけでございます。石炭の埋蔵量は約二百億トンでございますので、それにかけ合わせて出したわけでございます。  それから、石炭ガスは石油ガスと若干違っておりまして、主として石炭の中及び石炭に吸着され、また石炭の孔隙の中に自由ガスとしてございますのと、炭層の上側の岩石及び下側の岩石の中に自由ガスとして存在しておるのでございまして、これは吸着ガスが多いところとフリー・ガスが多いところとは炭田によって相当の違いがございますから、それらを一応実験方法等で出しておるわけでございます。したがいまして、いずれにしましても、石炭層及び石炭層の上下盤の近くにございますガスをわれわれは炭田ガスと申しておるものですから、石炭の採掘に伴って大部分出てまいるということになりまして、炭田ガスだけをうんと多く取り出すということは実際には不可能ではなかろうかと思います。石炭の採掘に伴いまして炭田ガスが出てまいりますのを、なるべく高濃度のまま捕集するということでやっていきたいというふうに思っておる次第でございます。
  80. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 炭田ガスの性質は、ここで論議しても始まりませんし、私もしろうとですからやめまずすれども、かりに炭層をはさんで上下百メートルを石炭ガスと名づけるということになりますから、この賦存状態はやはり特殊の賦存状態もあるかもしれない。要するに炭田地帯に対して千メートルとか三千メートルとか層序試錐を方々でやってみて、その地殻構造から炭層の成因を調べて、はたして炭田ガスというものは炭層だけに付随したガスであるのか、あるいはもっと大きな間隙を縫った場所にガスが累積されるかということも、調べてみなければわからない。  しかし、何にいたしましても、四千七百億立米というものの見通しがついておるならば、これは何とかして開発をしなければならない。その開発に対する科学的な技術的な立案というものがあってしかるべきだと思う。ただ石炭が二百億トンある、それに付随した換算をすると四千七百億立米の炭田ガスがある、これをガス化すれば特殊製鉄の原料になる、そういう抽象観念論的な考え方は、科学技術庁としては尊重すべきものではない。四千七百億立米あるとすれば、これをどういうふうにして採取するか。そして、石炭のガス化とともに、どっちがどっちでもピーク時を補って何百万立米を常時供給することができるから、ガス還元による製鉄が年産百万トンできるとか、こういう具体的な調査ができ上がって初めて石炭に対する科学技術的な一つの見通しができるのだ、そう思っておるのであります。そういう見通しはいつごろまでにできますか、ひとつお答えを願います。
  81. 井上啓次郎

    ○井上政府委員 いま齋藤先生が御指摘のように、ガス抜き技術、これは非常に大事なことでありまして、もちろんガス抜きの技術は現在までもかなりの発展はしておりますけれども、さらにこれを向上さすということ、及びそのガスを貯蔵するということも大事なことでございますが、ただいま私が説明いたしましたのはほんの概要でございまして、前に資料として出した石炭利用技術の開発についてという中には、ある程度の技術的な開発のポイントというものも示してございます。いまお話しのように、炭田ガスだけでそうこうするということでなしに、それを一緒にして低品位炭のガス化というものと一緒にしまして、両方相まってガス利用工業に使おうという考えでございますので、その詳細につきましては、かなり試算的にはやっておりますが、実際には地区をきめまして相当詳しく調査をしなければなりません。  したがいまして、現在の段階では、三十八年度では一部机上プランでございますけれども、三十九年度の予算では実地踏査もいたしまして、ある程度の青写真ができるようなものにしたいということで考慮中でございます。齋藤(憲)委員 これで質問をやめますが、四千七百億立方米の炭田ガスがあるということをはっきりと審議会か調査会ですか、お認めになりましたならば、それに伴って炭田ガスの開発を促進すべき具体的な調査方法確立する。同時に、炭田におけるガス抜きの完ぺきを期してガス爆発の災害を防ぐ。ガス爆発の災害を防ぎ、そのガスをもって有効な生産事業の原動力にするということになれば、まさに一石二鳥なんです。四千七百億立米の炭田ガスがあるということなれば、これをいかにして活用するかということこそ石炭の存在を価値づけることにもなるし、斜陽族をして斜陽族たらしめない一つの大きな考え方とも思いますから、そういう点におきましては、通産省におかれましても、省議において十分練られて、三十九年度の予算にこの具体策が行なわれるようにひとつ努力をしていただきたいということと、科学技術庁においても、その点に対しては総合的な見地から、三十九年度の予算に炭田ガスを早く活用し得る具体策を遂行し得るに足る予算措置をやっていただきたい。これだけをお願いいたしまして、質問を終わります。
  82. 寺島隆太郎

    寺島委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十八分散会