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1963-06-05 第43回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十八年六月五日(水曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 寺島隆太郎君    理事 安倍晋太郎君 理事 佐々木義武君    理事 松本 一郎君 理事 山口 好一君    理事 岡  良一君 理事 西村 関一君    理事 山口 鶴男君       赤澤 正道君    齋藤 憲三君       石川 次夫君    原   茂君       内海  清君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  大來佐武郎君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   森崎 久壽君         総理府技官         (科学技術庁研         究調整局長)  芥川 輝孝君         総理府技官         (科学技術庁資         源局長)    井上啓次郎君         厚生技官         (環境衛生局         長)      五十嵐義明君  委員外出席者         化学技術事務次         官       鈴江 康平君         参  考  人         (大気汚染防止         工業協会副会         長)      春日  進君         参  考  人         (京都大学教         授)      庄司  光君         参  考  人         (川崎市立衛生         試験所長)   寺部 本次君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興対策に関する件(スモッグに関す  る問題)      ————◇—————
  2. 寺島隆太郎

    寺島委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  すなわちスモッグに関する問題について、大気汚染防止工業協会会長春日進君、京都大学教授庄司光君及び川崎市立衛生試験所長寺部本次君を参考人と決定し、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 寺島隆太郎

    寺島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中のところ、本委員会調査のためわざわざ御出席くださいまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  それでは、科学技術振興対策に関する件についての調査を進めます。  スモッグに関する問題について参考人各位から御意見を聴取することといたします。  最初春日参考人、次に庄司参考人、次に寺部参考人より、約十五分程度において御意見の御開陳をお願いいたしたいと存じます。  その後、委員各位の質疑をお願いいたしたいと存じます。  それでは、最初春日参考人より御意見の御開陳を願いたいと存じます。春日参考人
  4. 春日進

    春日参考人 スモッグの問題は、その原因につきましては非常に複雑でございますけれども大気がよごれておるということが原因しておることは確かでございまして、私が申し上げたいと思いますことは、大気汚染防止ということがスモッグ対策一つの大きな問題だと思いますので、大気汚染防止対策について二、三意見を申し述べたいと存じます。  煙が発生する、あるいは空気をきれいにしようという運動は、日本においても非常に古くから行なわれておったのでございまして、過去大体八十年の歴史を持っております。その間に、役所におきましても、あるいは民間におきましても、相当努力をいたしまして、燃焼指導、あるいはばい煙防止、あるいは燃焼管理というような仕事をいたしてまいったわけでございます。  しかし、最近の都市空気を見ますと、煙突から黒い煙がもうもうと出る。これ以上黒い煙は出ないというほど黒い煙を出しておるというような状態でございます。非常に空気がよごれておるというような状態であります。その原因はどこにあるかと申しますともちろん産業が発達したために汚染率が多くなった。あるいは人口がふえたために空気がよごれてきた。あるいは交通量がふえたために空気がよごれてきたということもございましょう。しかし、実際に、やればその効果のあがる方法がまだ残されておるということを見のがすわけには私はいかない、こう思うわけであります。大気汚染日本都市大気のよごれる性格というものは、やはり日本都市独特の性格というものがございます。したがって、対策を打つためには、そういう性格というものをはっきりつかんでいくことが必要だ、こう思うわけでございます。  その大気のよごれる性格の中にはいろいろのものが関係します。第一に、日本エネルギー事情というものも関係してまいりましょう。あるいは経済の状態、あるいは産業構造、あるいは都市構造生活様式気候風土というようなものがいろいろ関係してくるわけでございまして、そういう性格というものをつかんで対策をやらないことには、実施可能な対策というものは生まれてこない、こう思うわけでございます。大気汚染源というものは非常に複雑でございまして、その一々をつかんで対策を講ずるということは非常にむずかしゅうございまして、その汚染物の最も大きな、生活に直接あるいは間接に関係するもの、あるいは発生量の多いというものをまず対象としなければならぬということは当然でございましょう。  まず、その例をあげてみますと、燃料可燃物燃焼によって発生するもの、あるいは有害ガスの漏洩によって出てくるもの、あるいは加熱、反応その他の化学反応、あるいは化学処理その他から発生するものもございましょう。自動車から出るものもございましょう。あるいは薬剤を処理するために出るものもございましょう。あるいは粉体処理、あるいは自然、あるいは災害によるもの、あるいは最近の新しい近代的な汚染物発生もございましょう。そういういろいろの汚染物発生しますけれども先ほど申し上げますように、古い歴史を持って努力をしておるけれども、なかなか解決しません。  したがって、いま一番必要なことは、実行可能なことをやるということが非常に大切なことであって、理論的にこうすればいいとか、あるいは理想的にはこうすべきだというようなことのみを論じておることではございませんで、まず実行可能なことをやるということが大事ではなかろうかと思うわけでございます。  そこで、私は、七つの問題をそこへ取り上げてございますけれども、まず第一に申し上げたいと思いますことは、燃料の選択とその制限ということでございます。先ほど申し上げますように、汚染源の大きなものは、燃料燃焼というものが大きな原因になっております。したがって、都市空気をきれいにするためには燃料制限、非常に揮発分が多くてばい煙発生する傾向の多いものを押えるとか、あるいは硫黄の含有量の非常に多いものはある地域では押えるとか、そういう燃料制限ということを考えなければ十分にはいかない、こう思うわけでございます。  しかし、燃焼管理ということがございまして、うまくたくということによってばい煙相当に減少することができる、燃焼をうまくすることによってばい煙発生、あるいは汚染物をまだまだ防ぐことができると思うわけでございます。  大気汚染防止対策としましては、まず、発生するものを発生しないように処置をするということと、どうしても発生するものはこれを除去する、除じん装置あるいは集じん装置というものも必要でございます。そういう除じんあるいは除ガス装置普及研究というものが非常に必要でございます。現在、集じん装置、あるいはガスをとるいろいろな装置が考案されておりますけれども、これが非常に価格が高いとか、あるいは据えつけ面積を要するとか、あるいは作業影響するとかいうようなことで、普及率が悪うございます。もっといま必要なことは、一般中小企業にも適用できるような中規模用集じん装置研究、あるいはガスの除去の方法研究が非常に必要でございます。これはメーカーといわず、団体といわず、あるいは国といわず、こういう研究を大いにやることが必要だと存じます。  その次に、自動車排ガス対策ごみ処理という問題を申し上げたいと思うわけでございます。自動車相当汚染源になっておる。年々自動車の数もふえておりますし、これから排出されるガス汚染度というものも相当大きなものでございまして、これが対策を見のがしてはいけないと思うわけでございます。自動車から黒煙発生する原因が、ある団体において発表されておりますけれども、それによりますと、いわゆる燃料噴射ポンプあるいはノズルの調整不良ということが非常に多い。あるいは空気燃料の比率の調節が適正に行なわれておらぬというようなことが大きな原因をなして、一酸化炭素発生が非常に多いというように発表されております。すなわち自動車の整備に努力する、あるいは適正な空燃比で運転をするというようなことは、これは実際に実行の可能な事柄でございます。あるいは排ガスを再燃焼するというような研究も必要でございましょう。あるいは使用燃料研究も必要でございましょうけれども自動車の問題はやはり対策を強化しなければなりません。  これと同時にごみの問題。これは、大きな工場へ参りましても、ごみということになりますと、いわゆる主体からはずれるものでございますし、あるいは都市生活からごみというものは余分なものといういうに考えられて、これの処理については、相当熱意をかけてもいいという余地を私は残しておると思うわけでございまして、ごみ処理研究——ごみというものが非常に燃焼しにくいということがございますので、これの処理ということが非常に大事だと思うわけでございます。そういう研究が必要だと思うわけでございます。  それから現場実態調査という問題もございます。これは、実際ばい煙発生する、あるいは汚染物発生するその条件というものは非常に複雑でございまして、実際現場へ行かないとよくわからないということが多うございます。あるいはその設備が悪いとか、あるいは使用する燃料が悪いとか、あるいは作業が悪いとか、あるいは企業内容によって出るのだとか、あるいは技術が悪いとか、人員が不足するとか、あるいは立地条件が悪いとか、いろいろ問題がございます。これは時間がございますれば例をあげてお話しいたしますけれども、ともかく現場へ行って実態を把握しないと、その解決策は生まれてこない、こう思うわけでございます。この実態調査のためには、国としても相当の予算をかけて調査をしなければ、新しく打つ手は出てこないと思うわけでございます。  それから、指導センターをつくるということ。これは御承知のように、官庁指導するということは行なわれておりますけれども、これには限度がございます。したがって、民間のそういう指導センター、あるいは現場で自由に相談のできるような指導センターを考える必要があろう、こういうものをぜひつくっていくということが、大気汚染対策一つ方法だと思うわけでございます。  それと同時に、大気汚染共同防止組合と申しますか、地域的に、あるいは業種的に、自発的に——法律があるからやるのだ、あるいは条例があるからやるのだ、役所から命令されるからやるのだということではなしに、自分たち汚染物を出しておるという自覚のもとに、そういう自主的な団体をつくるということがまた非常に大事なことだと私は思うわけでございます。指導センター指導を受け、あるいは自分たち研究してやるというようなやり方が非常に大事でございます。ことに中小企業における燃焼指導燃焼管理という問題は、現在残されておる大きな問題でございますし、また、大気汚染についての汚染源を減らすという意味においても、非常に大事なことだと思うわけでございます。  法律ができ、あるいは条例ができて、実際に行なわれるわけでございますけれども、実際これを行なうのは都道府県の担当の方々、この方々監視するわけでございます。しかし、実際に法律あるいは条例を実施するためには、相当技術的な知識を持たないと実施できません。設備改善あるいは指導というものは、非常にむずかしい専門的な技術を要するものでございまして、そういう方々教育機関インスペクター教育機関というものが私は非常に大事だと思うのです。そういう方々と、また民間でぜひやりたいという監視員指導員、そういうものの教育が非常に大事ではなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。イギリスあたりにおきましては、やはりインスペクターの公な試験がございまして、そういう試験で合格したインスペクターが実際に大気汚染監視をやり、指導をするということが行なわれております。  それから、最後に私が申し上げたいと思いますことは、やはり国の助成という問題でございます。これは、ばい煙あるいは汚染物を防止することによって、あるいはこれを押えることによって、特別な利益を得ない。汚染源発生する工場あるいは事業場では、これによって特別に利益をするということが少ない。これは、原料として、捕集するとかいうことで利益を得るところもございますけれども、大部分がこれを除去することによって必ずしも利益を得ておらぬという状態でございますだけに、国としてこれを補助するということが非常に大事なことでございます。これは設備改善の面でも、あるいは研究の面でも、あるいは税制措置の面でも、あるいは融資の面でも、できるだけのことをやるということが必要でございます。ことに中小企業融資というような問題については、全額無利子というくらいな手まで打っていいのじゃないかというように私は考えるわけでございまして、いわゆる国の補助、助成というものが私は非常に大事だと思うわけでございます。  それと同時に、この大気汚染の問題は、まず役所が率先してやっていただかないと、なかなか一般民間がついていかないということがございます。官庁の庁舎、あるいは事業所、学校、病院、あるいは都や市の営業しているバス、そういうところからまずやっていただかないと、なかなか一般大衆もついてこないということでございますので、大いに官庁が率先してやっていただきたいと思うわけでございます。  よく、だるまさんに大きな目をかいて飾るということがございますが、大きな目をつけるということもけっこうでございます。監視をするということも必要でございますけれども、いま必要なのは、だるまさんに手と足を与えるということでございまして、金を与え、あるいは時間を与え、技術を与える、そして指導する、そして援助するということが非常に大事なことであります。ことに大気汚染の問題は、だれもが被害者であり、だれもが加害者ということでございまして、いたずらにセクショナリズムにとらわれておるということではいけません。みな協力してやらないとこの問題は解決しないというように思うわけでございまして、私どもも、この問題について、大気をきれいにするために、あるいは汚染物を除去するために、できるだけ献身的に努力していきたい、こういうように考えておるわけでございまして、二、三私見を申し上げて終わりにいたします。
  5. 寺島隆太郎

    寺島委員長 次に、庄司参考人より御意見の御開陳をお願いいたします。庄司参考人
  6. 庄司光

    庄司参考人 では、御指名によりまして、大気汚染あるいはスモッグ関係して考えておる私見を申し述べさしていただきたいと思います。一つは、現在の大気汚染現状をどういうふうに見ていったらいいかという問題であろうと思います。戦前からも、いわゆるばい煙の問題として、日本でも大きな都市においては問題になっておりました。また、特殊な問題としては、いわゆる足尾銅山の問題もあったわけですが、都市に限りますと、主として石炭燃焼による大気汚染あるいは局所的な小さな汚染ということが問題になっておったと思うのです。戦後におきます。大気汚染というのは、工場が各地方に分散しました関係から、都市の範囲も非常に広くなったことと、もう一つは、燃料とかあるいは燃焼事情が変わったという点、それから、化学工業、特に石油産業が非常に伸びたという点があるのでないかと思います。そして、この大気汚染現状の把握のしかたというものは、現在においては自治体、主として市がいろいろ調査をいたしております。  大気汚染の成分というものは非常にたくたんあるのですが、一つは、大きな粒子といわれているものを、降下してくる量によって判定しております。いわゆる降下ばいじん量。それから、小さな粒子については浮遊粒子としてろ紙法という方法でやっております。また、亜硫酸ガスについても測定をいたしております。  いわゆる降下ばいじんに関しては戦前からの記録があるのですが、戦争直後において降下ばいじんが減っておったのが、急激に伸びたのです。最近、大気汚染問題がやかましくなって、東京大阪尼崎その他のところにおいても、大きな粒の量というものは非常に——非常にというほどではございませんが、一応減っております。これは、一つ行政官庁指導と、市民運動の結果であると思います。特定な大きな会社がこの除じんに助力をいたしております。たとえば製鋼所というようなところが、多額の費用を出して除じん装置をつけるというようなことをやったのが、そのあらわれであると思います。  一方、浮遊粒子というもの、あるいは亜硫酸ガスというものは、先ほど申しましたように、燃料とか燃焼事情が変わる、特に石油系燃料を用いるとか、あるいは石炭においては、戦前とは違って燃焼方法が改良されておりますが、浮遊粒子とかSO2というものは、そういうふうにしますとかえって大きくなりますので、このほうの測定の結果では一向減らないという現状でごいます。  次にもう一つ先ほど申しました石油産業関係して大気汚染として社会問題がいろいろ起こっておるのは、四日市市の問題であるとか、あるいは特定産業において弗素のガスを出す問題であるとか、また、後に述べるような横浜ぜんそくというような、空気中の微粒子のために起こる現象が起こっております。また、あわせて申すならば、そういうような大気汚染の性状が変わるということによって、大阪東京においてもそうでありますが、いわゆる煙霧あるいは霧の発生が非常にふえております。その点は、どうしても大気汚染物性格が変わったというように解釈せざるを得ないのかとは思います。なぜならば、そういう大きな粒子については、戦前と比較してそう非常にふえているとはいえないからだと思います。  なお、これを外国に比して云々ということであります。なかなか学問的にしっかり比較はできませんが、少なくともイギリスあたり降下ばいじん量に比較するならば、やはり日本相当、それ以上よごれている都市が多いということができるのかと思います。  第二番目に、この影響についてございます。大気汚染関係する影響というのは、大気汚染物の非常に濃い濃度で事件が起こったような、ドノラ、ミューズのようなところでは明らかになっておりますが、普通の都市に存在するような薄いものが長く持続して、人体その他に働きかけるときの影響というものは、なかなかわかりにくいというのが世界的な現状でございます。また、ことばをかえて申しますならば、少なくとも人体に関する影響というものは、点、ポイントとしてつかまっておるだけでありまして、全体的にはつかまっておりません。  しかし、日本におきましても、亜硫酸ガスであるとか、あるいは浮遊粒子関係しましては、尼崎であるとか、あるいは京浜地帯において、医学者が、それの肺機能に及ぼす影響を一部明らかにしております。その他、ものに関係することといたしましては、紫外線の減少であるとか、あるいは植物に対する影響というものも明らかになっておるし、また自動車排ガスに特にあるといわれている発ガン性関係ある三・四ベンツパイレンに関係しても、若干の大学なんかにおいて研究されておるのが状態ではないかと思います。  ただ、私が考えますのには、こういうものが明らかにならなければ行政的に手を打たないというような考え方は非常にあぶないのでありまして、ある程度起こったならば、行政的に手を打てることはやってほしいというように考えております。しかし、こういう影響関係しては、何と申しましても、あまり日本は進んでおるとはいえないかと存じます。  第三に、こういうようなものに対して研究あるいは行政的な活動がどうであるかということであります。どこの国もそういう対策をやっておりますが、日本工場公害防止条例という、府県条例の形でいままでやってきておりますが、これはむしろ局所的な害、あるいは私害、パブリック・ニューサンスと申すよりプライベート・ニューサンスのほうに力が入っております。単独法として条例を持っておりますのは、大阪においては戦前にありましたが、戦後においては東京都においてばい煙防止条例を制定されて、やや大きな公害的な立場に乗り切られ、また昨年、通産省あるいは厚生省の提案だったと思いますが、ばい煙の排出の規制法ができて、やや公害的な立場に立っておると思いますが、まだこれも完全でない点があるのではないかと思います。  ただ、こういうような行政的な活動あるいは研究というものにおきましても、外国におきましては、大気汚染性格をよくつかまえて、また国として相当基本的にやっているという点を学ぶ必要があるかと思います。イギリスにおきましては、一九五二年のロンドンのスモッグ事件がありますし、また昨年の末にもあるというようように、必ずしもすべてが改善されておるとはいえないと思いますが、ビーバー委員会の報告に基づいて、クリーン・エア・アクト、いわゆる大気清浄法という、相当法規的にも完備し、また財政的にも裏づけたものをやっておるということは認めなければならないと思います。  また、外国におきまして、特にアメリカにおきましては、先ほどもお話がありましたロスアンゼルスその他においては、自動車の問題に着目して、このエギゾーストに対してアフター・バーナーその他のものを法律的に強制していこうというような、着実な歩みをなしておりますし、また大統領命令で、国全体のそういう方面のあらゆる関係学者を呼んで研究するというような、なかなか大きな歩みを示しておるというように私は考えております。  第四に、以上、現状影響研究、あるいは行政的なものについて述べましたが、広く全体の問題点として申し上げておきたいと思いますのは、大気汚染関係する研究体制というものが、日本ではまだ非常に弱い。と申しますことは、いわゆる大気汚染そのもの研究しておる人も少ないのでありますが、それを裏づけますところの化学であるとか、あるいは医学であるとかいうものが非常に弱い。たとえば、大気汚染関係しましては、肺の機能というような生理学的な問題も必要でありますし、化学関係しては、コロイドに関係したような学問も必要であると思いますが、そういうふうなものが非常に層が浅い。これは一気に解決することは困難でありますが、十分御認識していただく必要があると思います。それからまた、現実に、先ほども前参考人によって述べられましたように、大学におきましても、あるいは地方自治体におきましても、これに従事しておるところの技術者が、また官庁研究所においてもそうでありますが、非常に少ない。また、本省における技術官吏の数も非常に少ないという事実をはっきり認識しなければ、なかなかこの層を厚くしていく、また現実の問題を指導することは、きわめて困難だろうと思います。これは定員の問題にも関係があると思うのですが、そういうところをお調べいただきましたら、いかに少ないか、また大気汚染をやっております私どものような衛生工学科というようなものも、大学の中においては、そういう名を打ったのはわずかに北大と東大しかないという実情でございます。  それからもう一つは、ばい煙の排出の基準等に関する法律ができておりますが、ここにも技術者の手薄というような問題もありますし、あるいは国の研究機関のそういう担当者が少ないというような問題もいろいろありますし、あるいは通産、厚生の共管というような立場もございますので、この法規におきましては、やはり法的に認められた審議会というような形のものをつくり、徐々に技術的に、あるいは行政的に検討し改善するたてまえをとる必要があるのではないかと思います。  第五に、特にお願いしたい応急対策として考えておりますのは、スモッグ関係することです。外国においてスモッグが起こっておりますのは、地勢、というのは、盆地であるとか、それからまた、気象上霧が発生しやすいところというようなところに工業の排出物のために起こっておる例があります。これは最近都市の建設がやかましくなっておりますが、それをやりますところの都市計画において、大気汚染というものを防止するという位置づけが欠けておるということは、非常に私は遺憾であるし、このことが今後事件を起こさないために最も必要な処置ではないか、ぜひ御検討を願いたいと思っております。  それから二番目には、深い研究はともかくといたしましても、全体として大気汚染の状況をつかむために、一つは気象上からいうても、日本ではスモッグ発生しやすいような気象状況、地勢と組み合わしてそういう一覧表というか、鳥瞰図というものを、何としてもこれは作成しなければならぬし、またこれは比較的早くできるのじゃないかと思うことと、それからもう一つは、大気汚染関係ある、いわゆる呼吸器関係の疾病の統計というものをもっと完備しなければいけない。いわゆるロンドンの都区におきましては、毎日毎日の疾病が例年とどうなるかというところから、いわゆる四千人とか、昨年の数百人という数字が出ておるのです。日本においては、そういうものをすぐ取りそろえるということができないということは、非常に残念であります。私たちは目安を持たなければ、大気汚染を言うていたずらに国民を心配さすのも問題ではないかと思います。  それから三番目のことにつきましては、法律その他において経済負担の問題をよく考慮するということは、前参考人が言われましたので省略いたします。  四番目においては、先ほどの繰り返しでございますが、何としましても研究体制大学、それから本省の研究機関、あるいは地方自治体の技術者の層を厚くするということ。それからもう一つは、残念なことなんですが、日本においては、私ども大気汚染を若干研究しているのですが、大気汚染そのもの研究するというような人は少なくて、ほかのものとみな兼務してやっている。たとえば私にいたしましても、大気汚染研究しなければならないし、騒音も研究しなければならぬという、非常に層の浅さを御認識いただいたらけっこうかと思います。  それから、言い落としましたが、最初の、現状において、都市においてどこに力を入れるかという点におきましては、やはり都市全体としては、大企業において都市全体がよごされるパーセントというものをよく認識しないと大気汚染の問題が解けないというように存じます。  以上、簡単でございますが、考えている私見を述べた次第です。
  7. 寺島隆太郎

    寺島委員長 ありがとうございました。  次に、寺部参考人より御意見の御開陳をお願いいたします。寺部参考人
  8. 寺部本次

    寺部参考人 工業都市及びその周辺の大気汚染問題におきましては、非常に共通的な問題が多いと思います。それで私どもは、特に調査研究に従事しております川崎市における調査結果の概要をまず初めにお話を申し上げまして、そのあとに総括的に意見を申し述べたい、かように考えております。  お手元に資料を配付してございますが、川崎市と申しましても、東海道線以南に重点を置いた大気汚染が主体となります。まず何と申しましても、臨海地区におきます燃料消費量の集中的な増加と申しますか、神奈川県下の四千余の工場における石炭消費量のうち八五%が川崎の臨海地区で消費されますし、また重油におきましても八九%を占めておるわけでありまして、かかる燃料燃焼に基づく大気汚染問題が、やはり主として目立っておるということであります。そのほか燃料の消費に伴いまして、特にばいじんの降下、あるいは亜流酸ガス等が目立ちまして、これは工業都市一つの特徴かと考えられます。なお、この二つ以外に、浮遊粉じん、あるいは窒素の酸化物とか臭気とか、その他問題は種々ありますけれども、まず降下ばいじん、亜流酸ガス、浮遊ばいじんの三つにつきまして、状況をかいつまんでお話し申し上げたいと思います。  降下ばいじんにつきましては、比較的粒子の大きなもので、特に夏季におきましては、南風によりまして市街地に多く降下するという特徴があり、かつまた、大工場におきます燃料燃焼管理は比較的よろしいわけでありまして、微粉炭燃焼に伴う灰の降下というものが非常に目立っておるわけであります。かかる降下ばいじんは非常に多くございまして、昭和三十一年ごろに工業地帯で一カ月一平方キロ当たり六十八トンというような数字も、その後自治体あるいは企業側の努力によると思いますが、三十三年には四十二トン程度に減ってまいりました。一応減少のきざしが見えたのでございますが、やはり生産の増加に伴いまして、集じん設備その他の防止対策が追いつかない現象かと思いますが、最近漸次増加の傾向にあることは警戒を要することと思います。  それから、降下ばいじんの毎月の量と風向との関係を詳細に調べてみますと、その調査地点におきまして、どういう方向から発生源があるかということもある程度調べがついておるわけでございます。  次に、浮遊ばいじんでございますが、非常に粒子のこまかいスモッグ原因ともなるような浮遊粉じんにつきましては、従来調査がおくれておりますけれども、高性能のハイボリューム・エアサンプラーという装置によりまして調べましたところ、最高一立方メートル当たり二・二六ミリグラムというような数値が得られておりまして、これはシンシナチあるいはドノラ等に匹敵する濃度でございます。  次に、亜硫酸ガス測定でございます。これは工場周辺地帯はかなり濃度が高いわけでありますが、工場地帯の内部はともかくといたしまして、その周辺あるいは商業地、住宅地等の濃度を私どもは環境としては注目していかなくてはならないと思います。亜硫酸ガス測定法に、継続的に一カ月単位で汚染の程度を調べる二酸化鉛法という方法と、その刻々の濃度をPPM、百万分の一の濃度の単位で測定する腐蝕法と、二種類おもに用いているわけでございます。年間の経過、あるいは広い地域の大づかみの傾向を見るために二酸化鉛法の値をまず見ますと、これは特殊な値でございますが、三一ページの表七というところに詳細に出ておりますとおり、やはり工業地区におきましてかなり高い数値が出ております。この表を、私が提案いたしております「二酸化鉛法による亜硫酸ガス汚染度の判定標準」という、そのページの一番下の汚染第一度から第五度まで分類いたした表で判定いたしますと、三以上のところはかなり濃度が高いと私は考えておるわけでございます。やはり工業地帯並びにその周辺におきまして三以上のところが多い傾向にございます。また、英国におきますデータと比較いたしましても、最高、平均、最低の各値を見ますれております。と、非常に類似したような濃度が得ら  次に、大気汚染影響につきまして、私ども研究、あるいは川崎市を対象にいたしました種々の研究につきまして簡単に御紹介申し上げます。三二ページからございます。  まず、大気汚染度と市民の保健動向であります。図の四にありますように、大気汚染の濃厚な地域におきましては、大気汚染の比較的薄いところと比較いたしますと、住民の肺炎、気管支炎の死亡率、あるいは児童の学年別支病気欠席率等は、大気汚染の濃厚な地域において、また下級生ほど、両者が正比例の関係にあるというようなことが見られております。また、大気汚染の濃厚なときに、抵抗力の弱い病人、乳児、老人等にはその影響を否定することはできないと思います。ただ、こういう研究におきまして相関関係はある程度見られますが、因果関係まで裏づけるのには、さらに今後の研究を必要とすると思います。  それから二番目に、これは慶応大学の外山教授の研究によりますと、学童の肺換気機能大気汚染との関係がはっきりとあらわれております。工場地帯の大気汚染の濃厚な地域の学童の呼気最大流量でありますが、これは気道の狭窄を起こしているかどうかを見る測定であります。こういうものにおきましても、汚染地区の学童の気道が、汚染の激しい月に比例して狭窄状態になっていることを明らかに示しております。また、ぜんそく様呼吸器疾患と浮遊ばいじんとの関係でございます。これはいわゆる横浜ぜんそく関係して神奈川県で調べられた状況に見ますと、ぜんそく様の呼吸器疾患を持っている者のうちに、浮遊ばいじんによって誘発されるものが三分の一くらいあり、小児は特にこの影響を受けやすい。また、その土地の在住年数の少ない者に多い傾向がある。本患者のうち、発作と浮遊ばいじんが正の相関関係にあるものは準工業地域に多く分布している、というようなことが報告されております。  さらに、小児の気道性疾患と降下ばいじんとの関係についての調査を見ますと、あたたかい季節には少ない咽頭炎が、降下ばいじんの多いところにはあたたかい時期に高率であるとしう報告もあります。  さらにまた、川崎市における犬の肺の調査によりますと、犬の臓器、肺の全臓器大切片標本及び普通病理組織標本を見ますと、肺内の沈着ばいじん量が明らかに工業地域のほうが多い、田園地域のほうに比較して工業地域に非常に多いということ、かようなことが調査の結果わかっております。  それで、汚染の状況につきまして、最近の資料を若干ごらんいただきたいと思います。  資料ナンバー2の一ページには、地図の上に降下ばいじんの分布が載っております。いかに重工業地帯に降下ばいじんが多いかということが一目りょう然といたします。  二ページは、降下ばじん量の地域別年次別比較でございます。工業地域では一カ月一平方キロ当たり昨年度四十二トン、準工業が約二十三トン、商業地域が十五・八七トン、住宅商業地域及び田園地域が約十トン程度となっております。これをさらに年次別にグラフで見ますと次の三ページのとおりでございまして、先ほども申し上げましたように、工業地域におきまして、三十三年年と三十四年にかなり減少のきざしが見えました。これは集じん設備がある程度つけられまして、比較的粒子の荒いものがとれて、こういう地域に降下するばいじん量が減少した結果でありますが、三十五年、三十六年とやや増加の傾向にあることが注目に値する、かように考えます。  次の四、五ページは、冬季と夏季におきます分布を示したものでございますが、風向との関係が非常に深い状況でございます。  次の六ページは、川崎、横浜を含めた降下ばいじん発生源の重点がどういう地点にあり、かっこれがどういう分布をして流れてまいるかということを一月と七月にわたって示したものでありまして、こういう図を見ましても、やはり大気汚染調査にかなり広い範囲に調査網がなくてはいけないということが痛感されるわけでございます。  次の七ページもやはり神奈川県の川崎、横浜地区の降下ばいじんの分布図でございますが、川崎の重工業地帯に集中的に降下ばいじんが多いということが示されております。  八ページの表は、神奈川県におきまする燃料消費量等の調査でありますが、ここにおきまして川崎臨海地区の石炭、重油の消費量の多いことが目立ちます。もう一つ業種別に見ますと、第一次金属製造業の燃料消費、それから電気業における石炭使用量の多いことが、顕著な数値となっております。  ただいま降下ばいじんの資料を申し上げましたが、次に、冬のスモッグと非常に密接な関係のある浮遊ばいじんと亜硫酸ガスの浮遊の状態につきまして、資料ナンバー三につきまして、ことしの二月ごろの浮遊の教値を若干申し上げたいと思います。  浮遊ばいじん度が、二月におきまして、工場中心地あるいは周辺地区におきましても一・七八ミリグラム、あるいは多いところで二七七というような数値でございます。一立方メールト当たり一ミリグラム以上のところは、外国でも大気汚染のかなり濃厚な地域とされておるわけでございます。  それから次の亜硫酸ガス汚染度におきましても、ナンバー1の工場中心地帯はかなり多いし、またナンバー4のところは埠頭に近いところでございますが、いま申し上げたような石油あるいは石油化学工場の周辺におきましても、かなり高い値が見られております。  三番目に、亜硫酸ガス濃度のPPM単位の測定値を見ますと、ナンバー1の工場地帯の中心部では〇・六PPMというのが最高になっております。ナンバー2、ナンバー3は、工場地帯周辺の住宅、商業のある地帯の学校の付近ではかった値でありますが、〇・二七、約〇・三に近い値が出ております。これは、いままで出た値ではかなり高い亜硫酸ガスの濃度だと考えております。ナンバー4におきましては、港の付近でやはり〇・二五、最高〇・三四という値も示されております。それからナンバー5の国電川崎駅付近の商業地帯の中心地の冬季におきます亜硫酸ガスの濃度が、大体〇・二PPM程度を示しております。これはいわゆるスモッグ発生しているときの濃度と見て差しつかえない、かように考えております。  以上、川崎におきます大気汚染実態と申しますか、そういう点を申し上げましたが、もちろん前の資料に出ておりますように、主要工場におきましてかなり高額の集じん機も設置されておりますけれども対策につきましてはなお促進の要があると考えます。  以上を総括いたしますと、川崎市の大気汚染の特徴は、工業都市における一つの共通点が多いと思いますが、まず一番として、やはり重工業型で、ばいじんと亜硫酸ガス汚染が高い。二番目に、冬季は工場ばい煙にビルの暖房による煙がプラスされて、東京都心部に匹敵するスモッグ状態を呈している。三番目に、夏には南風の影響で市街地に工場等のばいじんを多く飛散することは、他の都市にあまり例がないと思います。四番目に、自治体の活動あるいは企業側の熱意によりまして、一時的に減少のきざしがあった降下ばいじん量が、生産の増加とともに再び増加の傾向にあることは警戒を要する点であります。五番目に、多くの研究の結果を見ましても、大気汚染が健康その他生活に及ぼす影響というものは無視できないものがあると思います。  さらに、これらの調査研究を通じまして感じますことを二、三申し述べさしていただきますと、まず一番といたしまして、いままでは降下ばいじんとか浮遊ばいじん、亜硫酸ガスにいたしましても、こういう三つのものが指標とされて大気汚染度の調査が大づかみに行なわれるわけでありますが、今後は、さらに有害ガスその他を含めまして、時間的な変化とか、あるいは最高濃度等を把握していく必要があると思います。しかるに現在では、この方面の試験研究者の人数が少ないと申しますか、前参考人のお話にもあったような、そういう研究者の層が薄いということを、やはり同じく感ずるものであります。三番目に、全国的に統一した常時観測のネットワークが必要だと思います。それと同時に、一つ大気汚染研究を総合的に行ないます総合モニタリングステーションといったような、あたかも原研の周辺に置かれておるようなものを、試みに大気汚染のばいじんのところで設けるとか、そういう方法によって調査していくことも必要ではないか、かように考えております。  以上、調査研究を主体とした実態と、若干の意見を申し述べさしていただきまして、私の話を終わりたいと思います。
  9. 寺島隆太郎

    寺島委員長 参考人の各位に一言ごあいさつを申し上げます。長時間にわたり貴重な御意見の聞陳を賜わり、本委員会調査のための多大の参考となりました。ここに本委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。まことにありがとうございました。  この際暫時休憩いたします。    午前十一時二十七分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕