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1962-12-21 第42回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年十二月二十一日(金曜 日)    午前十一時七分開会   —————————————   委員異動  十二月二十一日   辞任      補欠選任    小柳 牧衞君  小林 武治君    湯澤三千男君  上原 正吉君    館  哲二君  植垣弥一郎君    松野 孝一君  西田 信一君    後藤 義隆君  増原 恵吉君    稲葉 誠一君  鈴木  強君    占部 秀男君  山本伊三郎君    大矢  正君  久保  等君   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     木内 四郎君    理事            大谷藤之助君            川上 為治君            平島 敏夫君            米田 正文君            藤田  進君            松澤 兼人君            小平 芳平君            大竹平八郎君            田畑 金光君    委員            井上 清一君            上原 正吉君            植垣弥一郎君            江藤  智君            太田 正孝君            加藤 武徳君            木村篤太郎君            草葉 隆圓君            小林 英三君            小林 武治君            小山邦太郎君            古池 信三君            郡  祐一君            斎藤  昇君            塩見 俊二君            杉原 荒太君            西田 信一君            増原 恵吉君            安井  謙君            吉江 勝保君            阿具根 登君            阿部 竹松君            亀田 得治君            久保  等君            小柳  勇君            鈴木  強君            戸叶  武君            豊瀬 禎一君            藤田藤太郎君            山本伊三郎君            石田 次男君            鈴木 一弘君            小林 篤一君            向井 長年君            須藤 五郎君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 中垣 國男君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    厚 生 大 臣 西村 英一君    農 林 大 臣 重政 誠之君    通商産業大臣  福田  一君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君    郵 政 大 臣 手島  栄君    労 働 大 臣 大橋 武夫君    建 設 大 臣 河野 一郎君    自 治 大 臣 篠田 弘作君    国 務 大 臣 川島正次郎君    国 務 大 臣 近藤 鶴代君    国 務 大 臣 志賀健次郎君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君   政府委員    内閣官房長官  黒金 泰美君    内閣法制局長官 林  修三君    人事院総裁   佐藤 達夫君    総理府総務長官 徳安 實藏君    経済企画庁調整    局長      山本 重信君    外務省アジア局    長       後宮 虎郎君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省条約局長 中川  融君    大蔵省主計局長 石野 信一君    大蔵省理財局長 稲益  繁君    厚生省社会局長 大山  正君    通商産業省石炭    局長      中野 正一君    通商産業省鉱山    保安局長    八谷 芳裕君    運輸大臣官房長 広瀬 真一君    運輸省鉄道監督    局長      岡本  悟君    労働政務次官  田村  元君    労働省職業安定    局長      三治 重信君    労働省職業訓練    局長      村上 茂利君    自治政務次官  藤田 義光君    自治省財政局長 奥野 誠亮君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十七年度一般会計補正予算  (第1号)(内閣提出衆議院送  付) ○昭和三十七年度特別会計補正予算  (特第1号)(内閣提出衆議院送  付) ○昭和三十七年度政府関係機関補正予  算(機第1号)(内閣提出衆議院  送付)   —————————————
  2. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず委員異動について御報告いたします。本日湯澤三千男君、館哲二君、松野孝一君、小柳牧衞君、後藤義隆君、稲葉誠一君及び占部秀男君がそれぞれ辞任され、その補欠として上原正吉君、植垣弥一郎君、西田信一君、小林武治君、増原恵吉君、鈴木強君及び山本伊三郎君がそれぞれ選任されました。   —————————————
  3. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 昭和三十七年度一般会計補正予算(第1号)、昭和三十七年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和三十七年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き質疑を行ないます。阿部君。
  4. 阿部竹松

    阿部竹松君 きのうに引き続いてお尋ねする前に、きのう保留になっておりました、わかりますか、委員長、きのう保留になっておりました件について、委員長にお願いしておりました自社両党の経過報告書と、それに通産大臣質疑応答の中で、審議会の件について、通産大臣答弁が食い違っておると私が判断したわけですが、その後速記録ごらんになって、通産大臣がどう判断されたか、その二つの点について、一つ委員長から、一つ通産大臣から御説明を願います。
  5. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 昨日御要求関係資料につきましては、両党におきましていろいろ努力されました結果、社会党のほうからは今日資料は出ております。御用意できておるようですが、まだ自民党のほうはできておりません。
  6. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えを申し上げます。  昨日も申し上げた次第でございますが、われわれといたしましては、閣議決定に基づきまして審議会強化してそうしてこの計画をこれにかけましてその上で実施をいたして参るということを当初申し上げたわけであります。これに対しましてあなたから、それでは合理化は全然できないかという御発言が、その速記の中に出ているのでございます。そこで私が申し上げましたのは、まあ合理化は今の審議会にかけてもできるのであるけれども、しかし、これは強化してそうしてかけるつもりである、今まで四つ部会がございますけれども、それに今のところ二つ追加する予定であるけれども、まあそれについてはまだよく調査もしておらないので、また、その後二つ別にこれは法律の改正を必要とすると思う部分があるのでありますが、そういうことも考えておりますので、そこでこの二つはいわゆる現在の法律強化できる、こういう考え方に立ちまして処置をいたすのでありますが、これらについても調査をいたしておりますので、そこでそういう意味で私は御発言を申し上げておったのでありますが、合理化ができないからという御質問があったのに対して、私が、合理化は現在の法律でもできるんです。また、現在の審議会にかけてもいいんです。しかし、今度有沢調査団答申がでました。そうして内閣としてあのような方針をきめたのでありますから、そこでこれは強化をしてやったほうがいい、こういう考え方に立っているわけであります、ということを申し上げたつもりでございます。その意味で申し上げておったうちに、あるいは私の言葉が足りない、あるいは表現が悪かったために、誤解を招いた点があったとすれば、これは適当に修正なりあるいは何らかの誤解を解く措置をとらしていただきたいと、かように考えているのでありまして、真意は、ただいま申し上げましたとおり、合理化というものは現在のある法律でできるんだ、しかも現在すでにその法律に基づいて審議会ができている、四つ部会があるので、合理化審議会というのもある、合理化部会というのがあるが、それにかけてもできるんであります。しかしながら、今度有沢調査団報告があり、閣議決定によって強化するということであるから、それを、その強化するということなら、法律強化しなければならない部面と、法律を待たずして強化できる部面とあるので、まずさしあたりは、法律によらざる部面において強化をいたしまして、そうしてその審議会にかけて措置をいたして参る、かように申し上げたわけでございます。
  7. 阿部竹松

    阿部竹松君 通産大臣のただいまの御答弁ですがね、私が読んだ速記録誤りがなければ、四十二ページ、四十九ページ、五十八ページと、あなたは三度にわたり御答弁をなさっている。この三度とも全部違うわけです。あなたもおそらくごらんになっただろうと思うわけですがね、しかし、今の答弁、そういう趣旨を私が昨晩からお尋ねしているのではない。特に閣議決定閣議決定の、きのう官房長官も補足説明しておりましたが、中立委員のみをもって構成する、こう明確にあなた方が御決定なさっている。今ある石炭合理化臨時措置法の中の審議会というものはこれと全然違うわけです。特に政府答申をする際にあたって有沢調査団長は、この審議会というものは大事なポイントですよと言って答申をいたしましたと私ども報告している。これは参議院の当時のエネルギー対策委員会商工委員会合同会議で明確に有沢さんがおっしゃっているわけなんです。そうすると、必要があればとか、私の考えとか、そういうものでは通産大臣、全然ないわけなんです。速記録をここに持ってきておりますから、ひとつ、私の言うことが間違いであれば熟読いただきたい。もう一度、石炭局長が今耳打ちに来たようですから、局長から十分聞いて、間違いのない答弁をお願いしたい。  そこで、さいぜんの、委員長にお願いした、戸叶発言から始まりまして、きのうの総理大臣に尋ねましたところの、総理大臣が知りませんという、こういう衆議院段階における、自民党社会党との了解した点について、私どもが知っておる点、間違いのない点をこれから、文書にしておりますので、池田総理大臣以下各閣僚に御承知おき願うために、これから朗読いたします。特に黒金官房長官は、きのうの言明と反するような個所が相当出てきます。したがって、もし私のこれから朗読する文章に間違いがあれば、反証する点があれば、黒金長官とこういう約束をしましたよという点について、知りませんということであれば堂々と反論していただきたい。  まず、その問題となった了解事項ですが、こういうような条文になっております。   「石炭政策についての政府答弁のための自・社了解事項、  一、六千万トンの需要確保現状からみて、非常に困難であるが、政府としては、雇用の安定、国際収支エネルギー安全保障を考慮し、需要拡大について極力努力する。  二、増強維持並びにボーダーラインにある炭鉱強化育成するため、特別の融資制度を設ける。  三、炭鉱スクラップ計画については、当該炭鉱経済性地域に及ぼす影響等を考慮して、十分に検討し、その方途を講ずる。自由民主党日本社会党昭和三十七年十二月十七日」 これが問題の本文であります。  そこで、これから今までの質疑の中でも若干触れましたが、その内容について詳細に朗読してみたいと思うわけであります。   「石炭政策についての政府自民党との交渉経過臨時国会再会以来、石炭政策について社会党政府自民党との間で交渉が行われていたが、その中心課題は、(1)石炭需要拡大。(2)雇用生活の安定、の二点であった。特に当初は山本幸一代議士黒金官房長官との間で交渉が行われ、雇用生活の安定に関するものとしては、就職促進手当支給期間三ケ年後、更に政府は責任をもって処理する点で話合が出来、需要の安定については三、四回の交渉があったが、妥協しなかった。しかるに、十二月十六日の夕刻頃黒金官房長官より、秘密裡に六、〇〇〇万トンとその裏付けの問題について話し合い、その際の窓口を鈴木幹事長にしたい旨連絡があった。十六日午後五時より、自、社両党国会対策委員長会談を開催し、席上、自民党側より、予算委員会を開催し、直に休憩する。個別接渉では進展しないのでトップ会談幹事長書記長)を開いてはどうか、または、四者(幹事長書記長国会対策委員長会談をしてはどうか、との話があった。社会党側当方の申入れの内容がある程度達せられる見透しがなければ、委員会に応ずることはできないという意見を述べ、対立し、双方持ちかえった。社会党側は、当方要求自民党幹事長説明するため、成田書記長が、多賀谷氏とともに幹事長室に出むき、前尾幹事長鈴木幹事長、中村副幹事長竹山国会対策委員長らと話し合いがもたれた。席上、六、〇〇〇万トンに対する考え方幹事長より述べられ、秘密会談として次の提案がなされた。「六〇〇〇万トンの需要確保は、現状から見て、非常に困難であるが、政府としては四・六の閣議決定趣旨に基き、需要拡大について極力努力する。」社会党側としては文章中、四・六の閣議決定趣旨に基き云々が、その意味が不明確であるので、この点を明かにするため、再度折衝をもった。その会談最中に、さきに自民党側民社党に同様の説明をした内容を、民社党が一方的に新聞記者に発表したことを知ったために、その不信行為厳重抗議を申入れて、会談を中止した。八時四十分頃になり、自民党側は、民社対外発表に遺憾の意を表示して、更に話合いを進めたい旨の申し出があり、その後、第二項につき自民党からの提案が行われた。「増強維持並ボーダーラインにある炭鉱強化、育成するため特別の融資制度を設ける」社会党側は二項を了承する条件として三項について行った。「炭量を有し、地域経済に著しい影響を及ぼす炭鉱スクラップ計画については慎重に検討し、再建の方途を講ずる」この項について、「炭量」を「経済炭量」とする主張が自民党側からなされ、社会党側から「可採炭量」とすることを主張して、対立のまま会談は明日にもちこした。  四、十七日に入って前記三項につき、通産省福田大臣よりの要求として、文字中、「炭量」とあるのを「経済炭量」と訂正することなくしては呑めない旨、鈴木幹事長より連絡があり、社会党はこれに反対し「可採炭冠」と改めることを再提案した。   しかしついに妥協に至らず、交渉は全くとん挫した。  五、十七日午後四時頃、勝間田社会党政調会長始関自民党石炭特別委員長に対し交渉し、再び話し合うということとなり、鈴木幹事長を交え、当方は多賀谷氏を加えて再交渉し、ついに前記了解事項」の通り妥結をみた。なお、就職促進手当については折衝の過程で、この問題は黒金官房長官山本幸一社会党国会対策委員長との間で話合いがまとまったもので、自民党としては、政府との了解事項として石炭特別委員会審議の中で、解決をはかってもらいたいという申し出があり、これを勝間田清一氏より黒金官房長官連絡し、確認の上、自社間の了解事項よりとりはずした。その際   鈴木氏との交渉で、最後の仕上げとして、幹事長書記長会談(四者会談)を午後六時衆議院常任委員長室で開催することをきめ、残余の問題(黒金氏に提出してある社会党要望書)は引き続き、幹事長書記長会談で進める。書記長幹事長会談が開かれると同時に、予算委員会石炭対策特別委員会を再開するの三点で妥結した。  六、午後六時の約束時間に、成田勝間田社会党代表常任委員長室に行ったが、自民党側は来なかった。この時、自民党代議士会が紛糾しておったために、午後七時二十分頃、勝間田氏は鈴木幹事長にメモを通じ、四者会談の開催時間を求めたところ、鈴木氏より、八時にやりたいとの返答があった。八時、成田勝間田社会党代表常任委員長室に行ったところ、八時二十分頃、前尾幹事長鈴木幹事長が出て来た。  七、成田氏より、石炭問題とは無関係であるが、内閣委員会単独給与法案を通過せしめたことを非難し、参院段階で善処することを要望し、前尾幹事長より、参院でとり上げてきたならば、好意的に扱う旨約束されたので、成田氏は、社会党の国対に連絡のため中座した。その間勝間田政調会長と、前尾鈴木正幹事長との間で、(1)原文の照し合せ。(2)三項目首相答弁にするか、六〇〇〇万トンを首相答弁とし、他の二つ自社了解事項にするかを相談、結局三項とも「石炭政策についての政府答弁のための自社了解事項」にすることに決定したのであります。(3)日付は十七日とすること。(4)文書自由民主党日本社会党と併記すること。(5)文書を各一通保管することとし、これを復写することを決定した。なお、鈴木幹事長より、予算委員会を開くことを要求勝間田氏は了承した。成田氏再び常任委員長室に帰り、〇・一を前向きで解決してもらいたいと要請したところ、前尾鈴木正幹事長は、それならば、一切を白紙にかえす」といって席をけって退席した。  八、そこで成田勝間田氏と二人で幹事長室に面会を申し入れたが、前尾氏は民社に行き不在中、しかし勝間田氏が単独で、再び民社より帰った前尾幹事長に、幹事長室で面会した。このとき前尾氏は、白紙にかえすことをやめて再び申し合せを実現する旨を確約し、また、幹事長書記長会談を続行することを確約した。そこで午後十時頃、成田勝間田両氏は再び常任委員長室に行き、前尾鈴木両氏を待った。  九、なかなか前尾氏等が来ないので、十時三十分頃、勝間田氏が電話総裁室にいた前尾氏に請求、前尾氏は、「党内が冷却するまでしばらく待ってくれ」とのことであったので、それならば、常任委員長室に待っていてもいいかとたづねたところ、「よろしい」との回返があった。成田勝間田両氏は、前尾氏の確約を信じ、常任委員長室に引き続いて待った。  十、十八日零時十分頃、鈴木氏が来て、「池田総裁裁断により、申し合せを白紙にかえすことになった」旨、一方的に申し出た。成田勝間田氏は一方的に公党の約束を破棄することはゆるされない。高度の政治的立場から、党首会談提案鈴木氏は総裁に相談して来ると言って一旦帰った。  十一、零時三十分頃、鈴木幹事長、再び常任委員長室に現れ、「総裁と相談したところ、白紙にかえす態度に変りはないので、党首会談をする必要はない」との総裁の言を伝えて来た。」  以上でありますが、これで内閣総理大臣池田さんと官房長官黒金さんが知らないということはないはずなんであります。この文章誤りがあったら指摘していただきたい。
  8. 黒金泰美

    政府委員黒金泰美君) 今お話しございましたことについて、私に関係する点を申し上げます。  今お話しのあります中で、山本さんなりあるいは勝間田さんが、当初のころ私どもにお申し出のあったことは事実であります。しかし、この問題をどう扱うかということは、党と党との間の問題でありますために、そこに御指摘ありましたとおり、党のほうに移しました。したがって、その後の党の折衝につきましては、昨日申し上げたとおり、六千万トン云々について両党間に話がついたという連絡を受けまして、総理に御報告いたしました。ところがその後に、需要拡大についての努力だけではあまりに抽象的に過ぎるというので、さらに両党間の交渉が進められておる、こういう御連絡もあり、最後に、いろいろな経緯があって、結局意見が一致を見なかった、かようなことでございまして、その間の内容は了知いたしておりません。
  9. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私に関することは、昨日来申し上げたとおりでございます。
  10. 阿部竹松

    阿部竹松君 そうしますと、この点についてはもうお尋ねいたしませんが、十八日零時十分ごろ、鈴木氏というのですから鈴木幹事長だと思いますが、鈴木幹事長が来て、総裁裁断により申し合わせを白紙に返すことになった旨、成田勝間田社会党代表申し出たということは、総理が知らない。その次に、零時三十分ごろ、同じく鈴木幹事長常任委員長室で、党首会談について総裁と相談したところ、白紙に返す態度に変わりがないので党首会談をする必要がない、これが総裁の言だから、こういうことで伝えられておるわけですが、これ二つとも全然知らないと、こういうことですか。もうこれ以上お尋ねいたしません。
  11. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 昨日お答えいたしましたとおり、自民党社会党との折衝が決裂いたし、白紙に返りました、こういうことを聞きましたから、それならば、成規の手続をとって予算委員会を開いてもらいたい、そうして、社会党の参加を求めて表向きに論議すべし、交渉はしなくてもいい、これは私が言ったのであります。それだけでございます。
  12. 阿部竹松

    阿部竹松君 黒金官房長官にお尋ねしますが、今の言明によりますと、あとは党だと、こういうことであなたは答弁を回避したような言明をなさっておるが、しからば、私ども山本幸一代議士との話し合いの中でまとまったという点が三、四カ所出てくるわけです。それは、あなたが党に話をしてみましょうという程度で山本幸一代議士と話をしたか、それとも了解したということで話をしたか、あなたの答弁のいかんによっては重大な問題になってくるが、その点を明確に御明示願いたい。
  13. 黒金泰美

    政府委員黒金泰美君) 山本さんからお話しありました点は、党の御決定になっておりまして、私どもでとやかくできる問題ではございません。党の交渉におまかせしました。
  14. 阿部竹松

    阿部竹松君 党の交渉にまかした……。二人で了解したと話しておるんです。こういう話を官房長官として伺いましたから、それは伝えましょうということで、党の政調会なり幹事長連絡したんですか。あなたは了解したと、こういうことで話がついたのじゃないですか。
  15. 黒金泰美

    政府委員黒金泰美君) 自民党社会党とでお話し合いになるべき筋合いのものでございますから、お申し入れを受けて自民党のほうにおまかせいたしました。
  16. 阿部竹松

    阿部竹松君 特にその四項目、四項目と言われておりますが、就職促進手当、この点について山本幸一代議士と話して、最後は取りはずす云々のことについて社会党勝間田政調会長とあなた電話連絡等をやったことはありませんか。私は検事や何かでないのです。国会正常化のためにお尋ねしているんですから、お互いにですね、野党、与党と分かれておっても、お互いにまあ人格を尊重しなければならぬ。ですから、あなたは内閣官房長官として私どもは信用しているんです。簡単な、党の決定ですからといって、官房長官約束電話一本でほごになることはあり得ない。そんなことで国会正常化なんてないでしょう。その点を明確にイエスかノーでけっこうだ、理屈は要らぬ。
  17. 黒金泰美

    政府委員黒金泰美君) 先ほど来申し上げましたように、後の交渉は党のほうに引き継ぎまして、私はその経過あとから聞いております。
  18. 阿部竹松

    阿部竹松君 党と党との交渉をする以前に、あなたが山本幸一代議士なり社会党勝間田政調会長と話をして、党と党と話し合ってもらいたいとあなたが言ったのか。それともあなたが一応了承を与えているのか。どちらですかと聞いているんです。あなたと山本幸一さんとの話が全然まとまらなかった。勝間田政調会長とも話がなかった。なかったらなかったでけっこうです。どちらですか。
  19. 黒金泰美

    政府委員黒金泰美君) 先ほど申し上げましたとおりに、山本さんからも勝間田さんからもお申し出があったことは事実でございます。しかし、この問題は党と党で御折衝になるべきものと思って、党におまかせをいたしました。
  20. 阿部竹松

    阿部竹松君 そうすると、あなたはただ取り次いだだけ、全然話がなかった。そうすると、私が今朗読しました黒金官房長官云々というところは三、四カ所出て参りますが、それはこういう僕の朗読した内容でなくして、あなたが単に、それは党と党とで話して下さいと、言うならば、議員秘書的役割を果たした、それにすぎない、こういうことですか。
  21. 黒金泰美

    政府委員黒金泰美君) お申し入れを受けたことも事実であります。党のほうにお伝えを申した。向こうにおまかせをした次第であります。
  22. 阿部竹松

    阿部竹松君 総理大臣並びに官房長官からいろいろお伺いいたしましたが、これがうそであればうそである、それは正しいというように、いずれでもけっこうですから、判断していただきたかったわけですが、やはりそういういずれとも明確な答弁がない。したがって、やがて衆議院段階でも問題になろうかと思いますが、とにかく私に与えられた時間がもうございませんから、これで打ち切ります。  そこで、最後通産大臣にさいぜんの点ですね、あの点もう一度お伺いしますが、全然違う答弁をなすっているわけです。私は通産大臣を責めようと思いません。しかし、さいぜん申し上げましたとおり、今度の有沢さんの出された答申、この答申の中心点はこの審議会がどう動くかということによってこれは決定するほど重大な問題を持った審議会なんです。私の個人の考えとか、必要があればとか、そういうあなたは蛇足をつけてものを申しておるようですが、そういうものでは絶対あり得ない。もう一度ひとつあなた方の閣議決定と相待って、答申の中にこういうことが書いてある。これは中立委員に限定しているのですから、いろいろ説き去り説き来たって、労使間の利害の接近に役立たせるものとする。これは経済性ばかりでなく、この審議会を通じて労働組合と経営者との間の潤滑油的役割まで果たそうとするのがこの審議会なんだ。あなたの個人の考えとか、必要あればとか、そういう審議会じゃない。特に現在ある石炭合理化臨時措置法の中の六章の七十一条にあるようなあの審議会とは全然違うということをあなたは理解しておらぬですか。
  23. 福田一

    国務大臣福田一君) お説の項は、閣議決定によりますと、「石炭鉱審議会を改組、強化し、石炭政策の重要事項に関する調査審議の体制を整備し、各部会による審議体制を強化するとともに、中立委員のみをもって構成する審査会を設ける。」、こうなっておるわけであります。そこで、このうちで前段の各部会による審議体制を強化するということにつきましては、私は現在あります石炭合理化臨時措置法によりましてこれはできると解釈いたしておるのであります。そこで、中立委員によることはどういうことをするかといいますと、これは経理審査会を設けるということが中心になるのでございまして、そうして、われわれとしては、皆さんのお考えのとおり、鉱区調整ということも大事である。鉱区を調整したり経理を審査したりするような部会というものが必要であると思いますが、ここに言っておる中立委員のみをもって構成する審査会を設けるということになりますと、これは法律改正を行なうことが必要である、こう思っておるわけでございます。そこで、私が申し上げておりましたことは、今までにこの法律に基づきまして基本問題部会、それから合理化部会、生産性部会、価格部会というのがございまして、それが動いておることは、皆さんもすでに御承知のとおりであります。それを今どういうふうに変えていこうかということは、これは強化しなければいけないということを先ほど来申し上げておるのでありますが、その強化のやり方としては、基本問題部会、需給部会合理化部会雇用部会、技術部会、資金経理部会、こういうような六つくらいの部会を設けたがよかろうかと考えておりますが、まだ考えはきめておりません。大体の考え方を言っておるわけであります。そこで、そういうことは今までの法律でやっていけるのであります。しかし、法律改正を必要とする部面もあるということを申し上げたわけでございまして、私の申し上げましたことは、要するに、今有沢調査団報告もあり、閣議決定もあったのでありますから、そこで、これの改組をしてそしてそこにかけるつもりであります。しかし、すでに現在の法律に基づいて審議会を作っておられ、そしてこれには合理化というものもあるのでありますから、あなたから合理化は一切できないかという御質問に対して、それはかけていけないというわけじゃございません。しかしながら、閣議においてそういうことにきまっておりますから、強化をしてそしてこれをかけるようにしたいと考えておる、かように申し上げたわけでございます。
  24. 阿部竹松

    阿部竹松君 部会を幾つ設ける設けないというようなお話は、石炭特別委員会があるのですから、そこで聞きます。ここで聞くのは、その合理化審議会がどう運営されるのか、通産大臣はどう見ておられるかということをお尋ねしておるわけです。何も部会を五つにするとか六つにするとか、昨晩も言ったとおり、そんなことは今聞いておらない。あなたはそれしか答案用紙を持っておらんから、審議会のことしか言わんのかもしらん。ですから、何べん時間をかけてやっても同じことを堂々めぐりしている。そのことはまたあと石炭委員会でお尋ねしましょう。  その次に、最後にお尋ねするのは、政府の出された方針でいくと、日本の埋蔵量炭の中でどれくらい放棄することになりますか。日本の石炭は埋蔵量二百億トンとも言われ、百六十億トンとも言われている。そのうち百億トンを放棄することになりませんか。数字をあげてひとつ最後に御説明願います。
  25. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいま阿部委員からもお話のありましたとおり、二百万トンとも言われ、百六十万トンとも言われているのであります。(「何だ、億だ」と呼ぶ者あり)億と言われているのでありまして、そういうその基礎がもうすでになかなか動いておりますから、そこで、その基礎をどこに置いて、そうしてどれだけを捨てることになるか、こういうふうなことよりは、今前向きの考え方として、とにかかくその数量はこれはなかなか調べても正確な数字が出ないでしょう。しかしながら、われわれとしては、少なくとも五千五百万トンは毎年掘っていくという建前でこれを処理していく。そうして、これが需要確保できるならば、それ以上にでも確保するような工夫をしていきたい。こういう考え方で処理をしていく、こういうわけでございます。
  26. 阿部竹松

    阿部竹松君 日本の埋蔵量が幾らあって、そのうち可採炭量が幾らあって、そろばん玉に合うのが幾らあって——そのくらいは通産大臣、あなたはおわかりのはずだと思う。これはほんとに知らないかどうか私わかりませんけれども、そういう日本の埋蔵量が何億トンあって、そうして掘れる石炭が何トンあって、外国から油が入ってきてどうなるかということを判断して法律を出すならけっこうです。しかし、全然何も知らんで法律を出して石炭産業がどうだなんて、おこがましいです。私は、もう少し真剣にやっていただきたいということをお願いして、質問時間がないからやめます。
  27. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 阿部委員質疑は終了いたしました。   —————————————
  28. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に、戸叶君。
  29. 戸叶武

    戸叶武君 この臨時国会が、衆議院のあらしを持ち込まれまして、国会正常化の問題で終始しなければならないというのは、まことに残念でございます。私たちは、今、日本だけでなく、世界の大きな経済変動の中に、私たちの経済政策なり外交政策というものが、どう持たれなければならないかという重大なときでありますが、その中で特に私は日韓会談にしぼって池田さんに質問をする次第でありますが、池田内閣の外交の中で一番不明朗なのは、日韓会談であります。池田内閣は最近において、何ゆえ日韓会談の早期妥結を急ぐのか、この理由を明らかにしてもらいたいと思います。
  30. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本と韓国とは、歴史的に地理的に文化的に非常に密接な関係がございます。また、かつては一国をなしておったのであります。しかるに、そういう状態にある国が国交が正常化していないことは、まことに不自然であり、両国にとって不幸な事態でございます。われわれは過去十年余りこの不自然な不幸な状態を正常化すべく努力しておったのでございまするが、韓国におきましてそういう機運が盛り上がらず、じんぜんとして十数年を過ぎたのであります。しかるところ、最近に至りまして韓国におきましてもわれわれと同様両国の正常化をはかろうという機運が盛り上がって参りました。私は、いい機会でございまするから、十数年来のわれわれの方針をこの際実現することを期待して努力を重ねておる次第でございます。
  31. 戸叶武

    戸叶武君 最近におきまして、十二月十七日の深夜のできごとというものは、日本の政治史の中において最も怪奇に満ちたできごとのあったときであります。それは、先ほど同僚の阿部君が質問いたし、かつ、自民党並びに社会党間の石炭問題に対する話し合い内容も発表しておりますが、ちょうどあのころに大平外務大臣が大臣室で池田首相と会い、対日請求権問題解決について大筋の了承を得たということでありますが、その大筋の了承を得たというのはどういう内容ですか。
  32. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 御案内のように、日韓国交の正常化の前提に横たわる幾つかの懸案があるわけでございまして、私どもは予備交渉の場面でこの諸懸案の合理的な妥結の方法につきまして検討をいたしておるわけでございます。そして、そのうちの一つにいわゆる請求権問題があるわけでございまして、私は側面から請求権問題の交渉につきまして予備交渉に臨んでおる代表諸君をお助けをいたしておるわけでございます。この各種の懸案の問題点につきまして、重要なことにつきましては時々総理大臣と御相談を申し上げておるわけでございます。しかしながら、私ども態度は、この全体の懸案に納得が参りまする妥結の成案を得た上で政府として最終的な断案をお願いをする手はずにいたしておるわけでございまして、ただいまはそういう交渉の過程にあるわけでございます。その過程におきまして時々御相談を申し上げるということは当然のことでございます。
  33. 戸叶武

    戸叶武君 池田首相の説明によりますと、韓国側は日韓会談に対して機運が盛り上がっておると言いますが、日本の国内においては、キツネに鼻をつままれたようで、国民は、日韓会談がどうなっておるのか、さっぱりわからないのであります。そういう不明朗な形において外交が今進んでおるのでありますが、十七日の夜に石炭問題で両党の首脳部においてある妥結がなされたのにそれをけ飛ばしてきたのは、一面においてそのころ日韓会談の大筋を了承して、これは日韓問題でもって社会党とどうしても激突を避けられない、それならばひとつ——あなたの官房長官黒金さんが毒を食らわばさらまでをという表現をして新聞に出て有名ですが、ここでひとつ石炭の問題でぶつかって、その間に陽動作戦の間に日韓会談をまかり通そうというような全く権謀術数によってこれが取引されたんじゃないかという印象が強いのですが、その点について池田さんの説明を願いたい。
  34. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そんな権謀術数は私にはできない相談でございます。日韓問題にかかわらず、いろんな外交問題につきましては特に私は注意をいたしておりますので、外務大臣から随時いろいろな報告を受けるとか報告を求めるわけでございます。
  35. 戸叶武

    戸叶武君 韓国側では、大体この日韓会談のスケジュールというものができておるのでありまして、二十一日までにはこれを池田首相の了承を得て、二十二日に朴議長が国際・国内問題について重大記者会見を行なうということまで公表され、それまではっきりしないと重大な問題が起こるぞというようなPRもなされておるのであります。韓国側においてはスケジュールがきまっており、政府はそのスケジュールに乗っていかなければならない。国会においては日韓問題に対する十分な審議がなされない。このように、国会を無視して韓国側との取引によってそのベースによって日韓会談を運ばしていく予定であるかどうか、その点を承りたい。
  36. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 韓国側のスケジュールは、私どもは関知するところではございません。私どもは、国交正常化の前提に横たわる諸問題をしんぼう強く、また、国民が納得がいくような解決の方法がないものかと苦心をいたしておるわけでございまして、そういう過程にあるわけでございます。
  37. 戸叶武

    戸叶武君 このことに関連して思い出すのは、あのケネディ発言です。ケネディ発言も、あのコンテインという一字を問題にするのではなく、あの演説の内容に盛られておるものは、現在はアジアにとって非常に危険な時期であるという想定のもとに、米国の盟邦としての日本がいかなる役割を果たせるか、将来具体的考慮を払ってほしいとの要請が行なわれておるのであります。その要請は抽象的なものではないと思います。ケネディはアジアでの共産主義の拡張をどのようにして封じ込むかについて具体的な提言を行なっていると見なければならないのでありますが、外務省ではことさらにコンテインを阻止と訳しているが、コンテインは故ダレス国務長官のコンテインメント・ポリシーに通ずるものがあるのでありまして、一般の通念としては共産主義に対する封じ込め作戦とは解されないのでありますか、これに対する総理大臣並びに外務大臣の御見解を承りたい。
  38. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はその席に御承知のとおり列席しておりませんが、外務省の報告を聞きますと、アジアにおける共産主義の拡大をプリベントする、こういう言葉使いであったと私は列席者に聞いております。もともとこのコンテインメント・ポリシーは一九四七年のジョージ・ケナンの「フォーリン・アフェアーズ」に出た論文から出ておるのであります。コンテインということは、お話のとおり、ダレスは使っていない。ダレスはロール・バック政策、巻き返し政策で、ダレスの巻き返し政策はジョージ・ケナンのコンテインメント・ポリシーから出ておる。しかして、今回のケネディ大統領の昼食会における演説は、コンテインという言葉は、アメリカは中南米その他でコンテインしておる、そしてアジアにおきましての共産主義の拡大は今後プリベントしなければならない、こうなっていると私は聞いておるのであります。それが日本に対してコンテインしなければならないというふうにとられておるということは、列席者も意外に感じておったようであります。したがいまして、そういうふうに私は御了承を願いたいと思います。私はそう了承しております。そうして、ケネディ大統領がアジアにおける共産主義拡大を阻止するという大統領の世界観は私はわかります。しかし将来日本とアジアにおける共産主義の拡大を阻止することについて相談したい、考えたいということもケネディとしては必然のことであります。しかし、われわれ日本国が日本国としていかなる共産主義の拡大防止策をとるかということはわれわれの考え方であります。何もケネディ大統領から押しつけられるものではない。日本人自身が考えなければならぬ。そうして意見が一致すれば、共同で防止策をとることは何ら差しつかえない。われわれの考えでいく、私はそう了解しております。
  39. 戸叶武

    戸叶武君 池田さんが今説明したのは、重大な過失があります。あなたは、プリベントという言葉をケネディが用いたと言いますが、コンテインです。外務省から資料を取り寄せて下さい。アメリカ政府のほうにおけるザ・ホワイトハウス・オフィス・オブ・ザ・プレス・セクレタリーのザ・リマークス・オブ・ザ・プレジデント、この中に明確に記載されておりますから、外務省のほうで持っているでしょうから、その原文を至急こちらへよこして下さい。池田さんは、うそを言わないと言いながら、ときどきうそを言いますから、確かめるために、資料をこちらへ提出して下さい。
  40. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) さっそく取り寄せさせます。
  41. 中川融

    政府委員(中川融君) ただいまの御質問は、資料をお届けするということだと思います。ここに資料を持っておりますから……。
  42. 戸叶武

    戸叶武君 ついでに読んで下さい。
  43. 中川融

    政府委員(中川融君) これは非常に長いものですから……。
  44. 戸叶武

    戸叶武君 その問題点。
  45. 中川融

    政府委員(中川融君) 全部は読めませんが、今の御質問の趣旨は、コンテインという言葉、プリベントという言葉、この二つが出てきているわけでございますが、このコンテインという言葉、プリベントという言葉と、両方がケネディ発言に出てくるわけでございます。したがって、両方使っておりますので、コンテインという言葉もプリベントという言葉も、結局同じ意味で使っているのじゃないか。それで、コンテインということは、たとえば共産主義をコンテインする。今あるものをそこに要するにそれ以上発展しないように封じ込めるという場合であれば、封じ込めという訳が適当でありましょうが、共産主義が発展することを封じ込めるというのでは、論理的にちょっとおかしいので、やはりこれは、共産主義の発展を阻止するという翻訳のほうがより適切である。かような考えから、外務省といたしましては、このケネディ発言におけるコンテインという言葉を、共産主義の発展をコンテインするということでありますので、阻止するという訳語を使ったわけでございます。
  46. 戸叶武

    戸叶武君 私は、そのプリベントを使ったところを問題にしているのじゃないのです。ブリベントとコンテインを別々に使っているところに問題があるのです。私の問題にしているのは、日本語に訳しますと、アワー・プロブレム・ナウというところから、われわれの問題は今や、言うまでもなく、膨脹主義者スターリニスト・フィロソフィと結びついた中国における共産主義勢力の勃興に伴い、ある意味で、われわれの一つの大問題は、アジアでの共産主義の拡張をどういうふうに、そこでコンテインを用いてあるのです。そこを問題にしているのです。外務大臣から御説明を願いたい。
  47. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 用語上の解釈につきましては、今条約局長から御説明申し上げたとおりでございますが、先ほども総理から言われましたように、問題は、ケネディ大統領がどのようなお考え方であるかということと私どもがどのような措置をとって参るかということとは別問題でございまして、私のほうで問題にすべきことは、日本自体のとるべき姿勢であろうと思うのでございます。私は、先般の参議院の本会議におきましても申し上げましたとおり、この言明がなされましても、日米関係の基調に改変を求めるものではないという確信に立っておるわけでございまして、私どもは、この言明がありましたことによりまして日米関係の基調が変わるものというふうには考えていないわけでございます。
  48. 戸叶武

    戸叶武君 ただいまの問題はきわめて重大な問題でありますから、その資料を、委員長、外務省のほうから当委員会に提出してもらいたいと思います。  次に、池田首相は、衆議院で、勝間田代議士の質問に対して、アジアにおける共産主義の脅威を阻止するために、日米両国が盟邦として将来いかに対抗するかを相談するのは当然である。共産主義の浸透をできるだけ阻止するのは私の年来の信念であると述べておりますが、その阻止するというのは、外務省のほうでは、プリベントを使いましたか、コンテインを使いましたか、承ります。
  49. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは直接外務省に関係したことではございません。私の言でございます。
  50. 戸叶武

    戸叶武君 これは、国会における速記録をアメリカの国会図書館で全部翻訳されているのです。これはアメリカ国会図書館でもって、あとで取り寄せますが、その前に、英字新聞なり、外務省がほかの大・公使館なり何なりにどういうふうな翻訳をして渡したか、その資料もついでにこちらへ御提出を願います。  国際外交の時代に、雑音を発するような形で、国際的に通用しない言葉をやたらに乱発されては困るのであります。このように驚くべき反共主義者としてこり固まっている池田内閣のその一の子分とも言うべき大平外務大臣、田中大蔵大臣以下六人もの経済閣僚を前にして、昼飯の時とはいえ、ケネディ氏が何ゆえにあのような刺激的発言をわざわざなされたのでしょうか。私は、ケネディは池田内閣に対して若干の疑惑を持ったからではないかと思うのでありますが、現に、あの席におった田中大蔵大臣がショッキングだと受け取ったのであります。これは新聞にも出ています。日本の国内にも大きな反響があって、池田さんよりも、まずアメリカの国務省がびっくりしたほどです。ショッキングの点において間違いはないと思うのですが、池田さんは、あれは何でもない、大したことはないと言っていますが、これは、池田さんの感覚と世界の世論の受け取る感覚とはちょっと違うのであります。あのケネディの演説によると、アジアにとって非常に危険な時期であるという認識の上に立っておりますが、池田さんも、ケネディさんと相通ずるものがあるので、そのように非常な危機に直面しているというふうに現在は感じておりますか。
  51. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) アジアにおける問題は、ラオス、南ベトナムあるいは中印国境問題等、いろいろな問題があるということは、世界各国の人が日本人以上に関心を持っているということは確かでございます。
  52. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま戸叶さんの御質問を承っておりまして、その席におりました一員として、委員長のお許しを得て発言をいたしたいと思います。  問題にしておられる点は、私自身は、少しも言葉の問題は大切な問題でないと思いますけれども戸叶さんは非常に重大な問題だとおっしゃいますので、もしそのようなお考えでそれからあとの御議論を組み立てになるということになりますと、それはいかがかと思いますので、申し上げておきます。先ほど御指摘になった個所に使ってある言葉は、プリベントという言葉ではなくて、コンテインという言葉だということをおっしゃいましたが、私は演説を自分の耳で聞いておりましたし、その後のテキストも自分で読んでおります。そこに使ってある言葉はプリベントという言葉であって、コンテインという言葉ではございません。
  53. 戸叶武

    戸叶武君 これはちょっと持ってきて下さい。その資料を持ってきて読んで下さい、そこにあるのを。聞いたときにそうじゃないが、あとからアメリカ政府の出したのはコンテインという言葉が使われたというのです。私は、ケネディが、あのときは即座の演説と思いますが、アメリカ政府は、日本の政府のようにやたらにミスプリントはやりません。ケネディの少なくともやる演説にはコンテインという言葉が使われておったので、これは外務省の資料だけではなく、これはアメリカから出ている資料です。
  54. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私がワシントンで見たテキストと違います。
  55. 戸叶武

    戸叶武君 これは池田内閣にとって重大なことであります。国会提出資料委員会要求として、条約局長も持っております十二月三日第二回日米貿易経済合同委員会出席の日本側閣僚歓迎午餐会におけるテネディ大統領のあいさつ、こういうように正式に出されたものが、アメリカで見た資料とは違うと言うのですか。こういうふうに黒を白と言い、白を黒と言うような形では、国会審議にならないと思いますが、アメリカで見た資料と外務省からここに出した資料と、両方をあわせてみたいから、提出をお願いしたいと思います。委員長、取りはからって下さい。
  56. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私が耳で聞いたこと、及びワシントンでその場で入手いたしました資料を持っておりますから、後ほど委員長に御提出いたします。
  57. 戸叶武

    戸叶武君 宮澤大臣は、池田内閣の中においては知性のある感覚派であります。やはり感度が過ぎて間違ったのかと思いますが、問題は、ショッキングだと受け取った田中さんなんというものは、この閣僚の中では相当心臓の強い方で、そうショッキングと受け取るはずはないのです。これは宮澤さん、私はこの演説を読んでいないという認定のもとに、先ほどの一つの言葉をどうこうと言っておりましたが、私は全部読んでおります。読んでいるから心配なんです。ケネディは非常に危険な時期という認識の上に立って、池田さんに聞くと、非常な危機じゃない。いろいろな問題がある。いろいろな問題があるというのがアジアに国を存している日本の総理大臣の正しい認識だと思うのです。いろいろな問題があるという認識と非常な危機の上に立っている認識とは違うと思うのです。キューバ問題でケネディが興奮した状態と、今の日本のアジアに置かれている立場とは違うのです。アメリカが頭にきたときに、日本が、アジアの問題はそうではない、いろいろな問題があるから、われわれが率先して平和共存の態勢を作り上げるという説得力を持つのが日本の総理大臣なり国務大臣の役割だと思いますが、大卒さんは、私は池田さん以上にある意味においては尊敬しているのだが、あのときの演説を聞いたあとにおきまして、大平さん、それからそこのショッキングの田中さん、この人たちがあのあとでもってアメリカ側と四者会談をやって、それから新聞記者会見をやったと思うのです。
  58. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど私が申し上げましたとおり、私どもの問題は、日本がどういう姿勢をとるかということでございまして、ケネディ大統領の言われた片言隻句じゃございません。したがって、私どもといたしましては、日米関係の基調に変わりはないということを申し上げておるわけでございまして、これが変わるような事態が起これば、問題にしていただきたいと思いますけれども、私どもは、この御発言によって日米関係の基調は変わらない。したがいまして、そのときに私は何らショッキングな印象を受けなかったのでざいまして、むしろこの発言が東京において問題になったということに対してショッキングを感じたのであります。
  59. 戸叶武

    戸叶武君 ショッキングな田中さん。
  60. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) お答えをいたします。  私は、国会が非常に短い会期でありますから、一々自分のことが出ても申し上げないというつもりでおりましたが、御指名でありますから申し上げます。私はショッキングな発言として受け取ったということは言っておりません。私が帰ってすぐ、羽田の会見で、テレビ、ラジオを通じて、この報道は間違いであるということを申し上げました。私は、御承知のとおり、あまり英語がうまくありません。うまくありませんというよりも、昼食会におけるスピーチが全部わかるほど英語にたんのうではありません。ただ、そのときに、国務省側の同時通訳という、非常にうまい人が通訳をいたしましたので、私は話を聞いておって、特にその中で私の名前が二回か三回出ておりますので、私も注意をして聞いておったわけでありますが、これは、あなた方が受け取ったほど私は強くは受け取っておりません。なぜかといいますと、これは、IMFの総会に出ましたときに、IMF総会で、同趣旨と言うと語弊があるかもわかりませんが、低開発国の援助というような問題に対して、自由諸国家の中心である主要工業国がどういうふうな負担をしなければならないかという演説をされたわけでありますが、私はそのときのニュアンスとほとんど同じく取ったわけであります。同時にその後、大統領にホワイト・ハウスでもってよばれて行ったときも、これに近い話があったと思うのです。だから、演説の中で、この問題に対しては、前に大蔵大臣とこの席でお話をしたときも申し上げておりますということが明らかに言われておるわけであります。私は、そういう意味で、ショックを受けたというような事実はないということを明らかに訂正をしております。それでは、なぜ一体報道機関がそのように感じたのかということをその後考えますと、毎日新聞の石塚特派員でありますが、よく話はわかりました、話はわかりましたが、東京においては相当大きく報道されておりますよと、こういうことが電話でありましたときに、私は今のままのことを申し上げたのですが、日本では相当大きく、またショッキングな記事として扱われておりますよ、あなたはこれに対してどう思いますかと言いましたから、まあそう言われれば、昼食会というような席で、正規なテキストを持って演説をするような公式の席じゃなく、いわゆる昼食会のあいさつとしては多少ショッキングなものかなと、こういうことを私はその石塚君との談話の中で、石塚君の前提に対して言っただけであって、私がショックを受けたというような、また、ショッキングな演説であるというようなことは全然ありません。ないことを明らかにいたしておきます。
  61. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 一言だけ申し上げさしていただきます。  両方のテキストを比較いたしました。間違っておりませんでした。私がさっきテキストの違いがありますと申し上げたのは誤りでありまして、戸叶さん御指摘の個所に使ってある言葉は、プリベントという言葉が使ってあります。
  62. 戸叶武

    戸叶武君 宮澤さんは正直に認めたのだと思いますが、いずれにしても、この問題はあとを引きますから、委員長資料の問題をひとつとりまとめを願います。
  63. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいまの御要求資料は、政府要求しまして、お手元に届くようにいたします。
  64. 戸叶武

    戸叶武君 田中さんは非常に遠慮深い表現だが、われわれに正直に心境を語ったと思います。それは、私はわからないのだという前堤で、ある程度は私はわかっておったのだと思います。私はあの演説を読みまして、あの中におきましてケネディの要請しているのは、日韓会談の早期妥結、日中貿易の拡大阻止、中共封じ込め、NEATO及び太平洋全地域安全保障の名による防衛並びに経済協力、こういうことであります。私はあの内応を見て、あの一事だけじゃなくて驚いたのです。これはやはりああいう席ですから、非常にケネディは激しい感情を押えながらも、用語その他を気をつけてやっておりますが、大体日本側に要請した説教です。参勤交代じゃあるまいし、六人もの大臣ががん首そろえて行って、それを承ってごちそうを食べてきたでは国民は済まないのです。そのほうがショッキングなんです。アメリカのケネディがどう言ったとかこう言ったとかじゃない。即座に、アジアの問題は日本のほうがよく知っております、私たちの言うことをあなたのほうは聞いてくれと言って即座に立ち上がってアメリカ側に了解を取りつけるのが日本の外務大臣として資格であって、ケネディのところへまかり出て、ごちそうはもらった、はい、さようでございますと言うて引き下がるような大平さんとは思いませんから、そのとき、大平さんはいかなるあいさつをやってこれに対応したか、それを承りたい。
  65. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど申しましたように、ケネディ大統領の御発言に私はショッキングな印象を受けませんでしたのでございます。したがいまして、ショッキングな印象を受けた前提で応酬するというようなことはいたしておりませんです。
  66. 戸叶武

    戸叶武君 おとぼけの名人の無感覚派の外務大臣を今日日本の外務大臣にいただくことは非常に私は不幸で、今まで大平君というのは尊敬しておりまして、感覚派の宮澤さんと大平さんがついておれば池田さんもそうあやまちはないと思ったが、片方は感覚派過ぎるし、片方は無感覚派過ぎるし、これはえらいことになったと思います。そこで池田さんの今度の国会における施政演説で、平和への要請や、中立主義の主張が非現実的であると断定した演説が、われわれにとっては非常にショッキングであったのでありますが、これは今の国際情勢というものに対する妥当な認識を持っていないのじゃないでしょうか。ヨーロッパに行きましたときに、池田さんは今までアメリカを見ていた感覚だけでなく、ヨーロッパ的な感覚から世界を見る私は視野を養ってきたと思うのです。ところが、日本に来てもろもろの人々から雑音が入ると、またもとの地金に戻って、こういう非現実的であるといいますか、世界の今日動いている大勢というものは池田さんの感覚とは逆じゃありませんか。私は十月二十二日ケネディ演説が行なわれたときにワシントンにおりましたが、あのような興奮した演説をケネディがテレビでやりながらも、演説の最後にはフルシチョフと話し合いをやろう、国連の安保理事会で話し合いの場を持とうという建設的な提言をしておったがゆえにあの危機というものを切り抜けたのだと思うのであります。あなたが石炭問題をけ飛ばせというのとはだいぶ違うと思うのです。話し合いの場を求めていったところに、一本調子の昔のダレス的な外交と違う、ケネディすらも柔軟性を持っていると思うのです。しかもラオスの問題の解決でも、統一中立政権を作ってあの危機を防いでいるじゃありませんか。また、中印国境の問題でも、コロンボに東南アジア、アフリカの六カ国が集まって、中共とインドを説いてその危機を食いとめるために努力しているじゃありませんか。この中立平和外交というものが世界の危機を食いとめる現実的な外交路線として強力に動いているというこの事実を無視して、あなたは中立外交、中立主義は非現実的であると断定したその根拠はどこにあるかを承りたい。
  67. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本のおかれた立場から申しまして、日本では中立主義が非現実的であるということは、私は組閣以来もう本会議の施政演説でも二回言っておることでございます。中立主義でなければ話し合いができないというのじゃない。日本は自由国家群の一員でございます。しかし、共産主義の国ともいろいろの経済交流その他はやっていく、これはもう当然のことでございます。
  68. 戸叶武

    戸叶武君 日本の今石炭問題というのは、貿易の自由化のあらしの中において最大の課題です。この問題で、自民党社会党が国内の大問題で話し合いができないような政治的な態度をとるところの池田さんが、国際危機の中へ入って、どうして話し合いの場を求めることができるのか、私は疑問です。今の池田さんの姿勢というものは、内政外交を通じて硬直した姿勢でありまして、私は吉田内閣の末期、岸内閣の末期を覚えておりますが、末期的症状はいつでもこうであります。私は、池田内閣の余命は幾ばくもないと予感するものでありますが、まだ命脈のあるうちに、次をお尋ねいたしますが、日韓会談の問題でありますけれども、朝鮮民族の悲願というのは、南北朝鮮の統一であります。国を隣にする私たちとしては、朝鮮の民族が政治の貧困、また、国際情勢の犠牲のもとにさいなまれている現状を見るに忍びません。私たちの生活を削ってもこの人たちを助けたいと思います。しかしながら、小乗的な考え方でもって、南北の統一の悲願を打ち砕いて、南北を統一させないようなてこ入れをやるような日韓会談というものを阻止しなければならないと、私たちは思うのであります。池田さんは、これを非現実的と思うかもしれませんけれども、オーストリアの永世中立でも、ラオスの統一中立政権でも、いろいろな経験の上に立って、それを乗り越えてあの悲願というものは達成されたものです。池田さんは、朝鮮の分立を永久化するような政策に加担するのか、米ソ対立の激化、アメリカと中共の激化をさらに激化せしめるような役割をするのか、それとも朝鮮民族の悲願を受け入れて、そうしてこの人々のために、骨が折れることだけれども、ベルリンや、東西ドイツの統一よりも決して困難ではない、この悲願を達成してみようという方向へ外交を持っていくのか。これは今、日本の外交の岐路に立っています。どうぞあなたの心境を承りたい。
  69. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国際的に日本が硬直しているというお話でございますが、これは言葉を返すようでございますが、世界の人の考えとは違っていると思います。日本の外交は、今や非常に弾力的に明るく、前向きにどんどん進んでいっているのであります。戦後初めてこういう状態になっているのであります。外交的に硬直しているということは全然ございません。これは世界の人が見ている日本に対する考え方とあなたとは逆でございます。そうして、また(「池田個人の考えだ。」と呼ぶ者あり)私個人じゃございません。各国の新聞その他をごらんになったらおわかりでしょう。非常に弾力的に前向きで、明るくなってきていることは事実でございます。硬直ではございません。そうして、朝鮮、韓国問題につきまして、いろいろお話がございますが、われわれは、先ほど来申し上げておりますように、国連の方式によって統一されることを願うものであります。日本人が一番これは願っておりますが、いかんせん、今の事情では北鮮がきかない。そうして、今日日本との特別の関係あるところは、この現実を早くよくすることが日本の務めだと、私は考えているのであります。いたずらに、できもしないことをやって、そうして理屈を言っておったら、十年前のあの平和条約を結ぶとき、全面講和でなければいかぬといって反対された、あのことを今もまだやっているということが硬直じゃございますまいか、私はそう思います。
  70. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 戸叶君の質疑は終局いたしました。(「まだある。」「続けろ。」と呼ぶ者あり)理事会の申し合わせだから、またあとでやって下さい。戸叶君の質疑は終了いたしました。  正一時より再開し、鈴木一弘君より質疑に入ります。  それまで休憩いたします。    午後零時三十分休憩    ————・————    午後一時二分開会
  71. 木内四郎

    委員長木内四郎君) これより予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。鈴木一弘君。
  72. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は、日韓問題と石炭問題そのほかについて伺いたいのですが、実際ならば、第一日目の終わりごろに私の質疑の順番が回ってくるはずであったのが、今までの混乱で延期になったあげく、ぎりぎりのところで質疑をさせられるという状態、はなはだ遺憾に思っております。  質疑に先だってそのことを先に申し上げて、まず、日韓問題について外務大臣に尋ねたいのですが、政府は十二日に統一見解を発表しておりますが、その統一見解のうちに、有償無償の経済協力で請求権そのものを解決しようとしていくと、もちろん、請求権問題は、請求権そのものを経済協力方式で解決するものである、こういうように言っておりますが、その政府の統一見解というのは、公式の席で伺うわけですが、これでよろしいわけですか。
  73. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 請求権につきましては、その実態に即しまして、純法律的な取り上げ方をしまして解決するのが本筋でございまするが、法律関係はもとより、事実関係も不確定な部分が多くて、多くは推定を加えなければならないような状況になりまするので、請求権問題を請求権を通じて解決するということでは、この問題の解決は非常に至難だと考えまして、別途に経済協力方式というものを考え、そういうことを実行する結果として請求権問題は解決したというようにならないものかということで、目下折衝中であるということでございます。
  74. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、十二日に新聞にも発表になっております意思統一という、まあ統一見解というものはこれでよろしいということですね。  そこで、次に聞きたいのですが、前に、高い次元でもってこの問題の解決をはかるということを言われておったわけですけれども、高い次元ということは、ただ単純に今言われた経済協力方式というような、請求権をそれ自体では解決しにくい法律関係が、事実関係が薄いからということでやっていくと、そのことを言われるのか、あるいは友好通商条約のような国交回復に関しての基本条約というものの締結がどうしても必要でありますけれども、そういう基本条約の締結のようなものも含んでいくのかどうか。その点について……。
  75. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 過去に拘泥することなく、将来にわたって日韓悠久友好関係を祈念いたしまして、経済協力をやるということによって、いわゆる請求権問題というものは解決したというようなことにならないものかという判断でございまして、いうところの高い次元とか、新しい工夫という意味は、そういう願いを込めたものでございます。
  76. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、高い次元という中に、経済協力方式等でやっていきたいというお話でありますが、基本条約の締結というようなものは含まれない、こういうように大体解釈してよろしいですか。
  77. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) もろもろの懸案の仕上げを待ちまして、それを、どういう形式で両国の関係を締結し、一括国会に御審議を求めるかということにつきましては、すべての懸案の仕上げの状況を見まして考えたいと思っておるわけでございます。
  78. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 外交の問題でございますので、非常に発表しにくい面も多々あるだろうと思います。  そこで、李ラインの解決ということが今非常に大きな問題でありますが、その解決を前提とした漁業協定、私どもは、一括解決によるより、むしろ李ラインの解決ということを先にすべきである、こういうように考えているわけなんですが、それにしても、今の御答弁から考えれば、すべての請求権問題そのほかを全部含めてまとめたような、一括の形でもって解決をしていきたい、こういうような考え方である、そういうような受け取り方をしてよろしいですか。
  79. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) さようでございます。
  80. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そこで次に、有償無償の経済協力ということが先ほども出ておりますが、新聞にも発表されている。そのほかに、わが国にとっては、対韓の焦げつき債権というのが約四千五百七十三万ドルという巨額に上っております。その政府間債権ということでありますが、その解決の処理を、新聞では、長期支払いでということが出ておりますけれども、これは、有償無償というものの中に入れるような考えなのか、それからはずしていく考えなのか、あるいは別個のものとして考えられるのか。
  81. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 対韓債権でございますので、この際に、明確な、国民の納得のいくような解決をはかりたいと思っております。
  82. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 明確な解決ということは、私どもは、無償の中に入れるなりあるいは有償の中に入れると、入れて、ワク外であってはいけないというように思うのですけれども、できるだけ明確な解決ということでありますので、ワク外であっても、その扱い方が、有償という場合のような、長期返済というような形ですか、そういうものと歩調を合わせたような形にするという意味ですか。
  83. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) なるべく短い期間の間に御返済をいただくような解決の仕方だと思っております。
  84. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その問題はそれくらいにいたしまして、次に、李ラインの問題について、これは、朴議長が十二日に新聞記者に対しての回答で、韓国の特殊事情から考え、また、資源を保護するという大局的な立場から、国際法規や慣例に、いわゆる国際海洋法にたがわないという範囲で、国防上、漁業上の現実的なある線を維持するのは妥当である、こういうような言い方をしているわけですが、向こうの態度がいろいろでありますけれども、わが国としては、一体李ラインにかわる新ラインというものについて、差しさわりのない程度で、どういう態度でいかれる方針がおありなのかどうか、伺いたいと思うのです。
  85. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 漁業問題につきましては、双方の間で新しく漁業協定を結びまして、資源の保護と日韓双方の漁業者の共存共栄をはかるような仕組みで考えておるわけでございます。
  86. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 漁業問題を考えてということですが、国防上の問題が向こうから出ているわけであります。それも、漁業上の見地から、向こうがいかなるラインを引こうとも、わが国としては、そういうラインにもこだわらずに漁業の操業ができると、そうして漁民を安心させていきたい、こういうような考え方があるということですか。
  87. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 全くそのとおりでございます。
  88. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 再び、今度は総理大臣に伺いたいのですが、私ども考え方では、李ラインというものを先に片づけるべきだ、しかる後に請求権そのほかの問題を解決すべきだ、何といいましても、今までのやり方を見ておりましても、前の李承晩の政権のときには、絶えず人質をとってはおどかして、われわれに交渉を迫る、あるいは会談を非常に困難な難所に追い込めておる、それでは、一体朴政権になってどうかといえば、やはり同じように、先日は、大野さんが行かれたときには、三十三人の釈放ということが十二日にされておりますけれども、また十九日には、韓国に下関の漁船が拿捕されるような状態、言いかえれば、圧力交渉を受けているような感じを私たちは受ける。のど元にあいくちを突きつけられて、そうして早く請求権を解決しろというような、まるで、何というのですか、ふんなぐっておいてから物を取ろうというような、二重三重にこちらのほうが圧力を受けているような感じを、これは国民の全般としては受けざるを得ないということです。そこで、そのほかにも、国際法規や慣例の上から考えても、李ラインというものがそもそもはなはだおもしろくないということはわかっております。そういう国民感情の上から考えてみましても、韓国とのこれは請求権の解決あるいは国交の正常化の問題、けっこうでありますけれども、それ以前にまず、一括解決の場合であろうとも、李ラインを先にすべきじゃないか、これは当然の声であろうと思います。その点について、強く強く、政府のほうとしては国民の声を反映して押すべきである、このように思うわけでありますが、総理のそれについての所見というものを伺いたいのです。
  89. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) たびたび申し上げておりますごとく、請求権問題も法的地位の問題も漁業権の問題も、全部一体としてきめるべきものでございます。したがいまして、いろいろな問題で、この三つなり四つなりが進み方はいろいろ違いますけれども、これは、その国その国の要求によりまして進み方の程度は違いますが、全体としては一体としてきめることになるのでございます。漁業権、李ライン問題がきまらずに請求権問題を確定するということはいたしません。
  90. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 総理答弁、大体わかるのですが、向こうの言い方では、請求権の問題を解決していく、それから、あるいは韓国側の言うとおりであれば、李ラインについて考えたいというような、まあ私どもから言えば不穏当と言っては悪いですけれども、そういうような、まだあいくちがちらついているような感じがしてならないということでございます。その点、一括してやられる中においても、李ラインというものについて、漁民の声もある、また自分の家族の中の働き手を失われて非常に迷惑している、こういう方々もありますし、現在でもまだかなりの未帰還の数が、百七十六隻もあるというような状態であります。その点について一そう努力を続けて、李ラインの問題について、一括解決の中でも特に強く打ち出してもらいたい、このように思うのでありますが、それについての総理の所見を伺います。
  91. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のとおりでありまして、私はその方針で行っております。   —————————————
  92. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいま委員の変更がございました。  大矢正君が辞任され、その補欠として久保等君が選任されました。   —————————————
  93. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に、石炭問題に入りたいと思うのですが、何といいましても、一番最初に需要拡大が大事である。それから始まっていかなければ、産炭地の振興にしても、離職者対策にいたしましても、石炭問題は片づかないわけでございますけれども、現在大手炭鉱十八社の状態を見ておりましても、三十六年末で、実質の赤字が五百億円に上っておるという状態であります。その五百億円に上っておるという実質の赤字を一体どういうふうに解決していったらいいか、打開する方策があるのかどうか。それについて、これは通産大臣でけっこうですが。
  94. 福田一

    国務大臣福田一君) 仰せのごとく、十八社の炭鉱におきまして五百億円余の赤字が出ておることは事実でございます。そこで、政府といたしましては、政府の金融機関を通じて、またこの事業団のほうを通じまして、そうしてこれに財政資金を投入いたしまして、できるだけその金融措置を緩和する方法を講ずると同時に、一方において需要確保いたしまして、そうしてまた、炭価等も安定させる政策をとって参りまして、できるだけ、一面において合理化をはかりつつ、この炭鉱の経理が改善されていくような方途を講じていきたい、かように考えて処置をとっておる次第であります。
  95. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私の尋ねていることとちょっとはずれている答弁のようでございますが、合理化を進められる、また、需要拡大を考えていくということはけっこうですが、五百億円というものについては、具体的に次に広げてお尋ねしていきたいのですが、十二日に、通産大臣は、衆議院予算委員会でもって、今後四十二年までの間に、民間から一千億、国から一千五百億、計二千五百億円に上るところの資金というものの融資を考えていかなければならないという説明をされております。そういう計画をお持ちのようでございますけれども、その中にその五百億というものが入っておるのか、あるいは五百億円は別であって、別の方法でもって解決するということでいかれるのか、その点について具体的に五百億円は一体どういう解決をしていくのかということについてお尋ねしたい。
  96. 福田一

    国務大臣福田一君) 仰せのように、スクラップ・アンド・ビルドをずっとやっていく場合におきましては、少なくとも二千五百億円くらいの融資を必要とすると考えております。しかし、そのうちには、ただいま申されました五百億円を全部含んでいるわけではございません。ほとんど今後やっていく上での、スクラップ・アンド・ビルドをする上での必要な資金ということでございまして、そうしてそれができた暁において、順次経理内容が改善されていく、そういうわけでありますので、その経理内容を改善するには、さっき言ったような、いわゆる炭価の安定と需要確保ということを十分やっていかなければならない、かように考えているわけでございます。
  97. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 つまり二千五百億円、これは、いわゆる設備資金と整備資金としてスクラップ・アンド・ビルドに使うような考え方であるということでありますが、そうすると、五百億は別である、私どもとして考えることは、それが大きなブレーキになっていたんでは、これから荷物をかかえて大手が伸びていこう、あるいは炭価の安定あるいは需要の安定というものを施策されてもそれに追いつけないものも出て来る。それまでの間に息切れがするということも出て来る。それでむしろ五百億円というものについてはたな上げしていくという考え方をとったらどうか。あるいはそのたな上げした場合においては、一体利子補給等も考えてあげなければならないと思いますが、少なくともそのような考え方のような具体策というものは今あるかどうか。これはひとつ通産大臣と大蔵大臣の両方から伺いたいと思います。
  98. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。大手十八社の推定赤字が五百億と言われておるわけでありますが、これに対して、ただいまの御発言ではたな上げするか利子補給をするか、あるいは一般会計に繰り入れる等の打ち切り措置をとるのかどうかというお尋ねでありますが、現在利子補給をしなければならないとか、一般会計に繰り入れて赤字補てんをしようというような考えはございません。今まで国会で明らかにいたしております石炭鉱業の再建築につきましては、高能率優秀炭鉱をだんだんと育成、強化していこうという考えでありますので、一般会計財政投融資を通して、各般の施策を行なっておりますので、これが合理化を行なっていきますと、今の計画では四十二年までにこの赤字五百億も解消して黒字になるという見通しをとっておるわけでございますので、この計画そのもので直ちにそれでは解消するとも考えておりませんが、いずれにしてもただいま申し上げたような調査団の答申の線に沿った措置をとることによって、赤字解消をはかりたいという考えでございます。
  99. 福田一

    国務大臣福田一君) ただいま大蔵大臣から申されたとおりでありますが、鈴木さんのおっしゃる意味は、そういうような赤字をかかえておったのでは、一方で金を借りてもやっていけないような場合が起きやしないかということを御心配になっておられるのではないかと思います。万一そういうような事態が生じる場合におきましては、それはもう例の石炭鉱審議会にかけまして、そしてどうしても、それがうまくいかんという場合には、審議会決定でもって何らかの措置をとるということも、これは十分考慮していくべきであると、こう通産省としては考えております。
  100. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その問題は、そのくらいにいたしておきますが、今まで石油供給についての非常に見通しが甘かったと、この点は先ほども、三十年あるいはそのほかの時点のときの見通しについて、これは失敗であったというふうな意味のことを総理も申されておったのでありますけれども、石油の供給の見通しが甘くて、三十四年に立てた五カ年の合理化計画も結局重油価格の見積りが間違っておった、あるいは石炭をトン当たり千二百円下げよう、三十八年までに下げようというような基本路線というものが出ておったのでありますが、これが結局、最近のように重油が六千五百円とかあるいは石炭が、所得倍増計画によっての物価の値上がりもありますし、あるいは賃金の高騰ということで、とうていまあ三十八年——明年度には千一百円の値上げが困難になった。そういうわけでその見通しというものがくずれて、再び今回の調査答申あるいは石炭対策大綱というものを立てる、こういうことになったんだと思います。はなはだ甘い見通しだと思います。そこで今後再び、今石炭対策大綱を通して調査団の言うように五千五百万トンというものを確保していこうと、こういう考え方でありますけれどもエネルギーの構成からいっても重油は伸びてくる、あるいは石油は伸びてくるということははっきりしております。そこでその見通しどおりいくというようなものが画然としたものがあるのかどうか、これはひとつ通産大臣からお答えいただきたいと思います。
  101. 福田一

    国務大臣福田一君) お説のとおり、重油といいますか、石油が非常に安値になりましたために石炭需要を圧迫いたしたことは事実であります。そこで御質問は、今後原子力等との問題等を考えてくるというと、はたして今度、今やっておるところの石炭対策がもう一度そういうような問題を起こすようなおそれはないかということだろうと思うのでございますが、われわれといたしましては、今後このエネルギー需要はだんだんふえてくる予定を立てておるわけであります。また毎年これはふえてきております。そこで、そのふえてきておる分をどれがカバーするかということになりますというと、どうしても経済性ということからいきますと、やはり油といいますか、石油関係がカバーすることになろうかと思いますから、そこで四十二年とか四十五年とかいうときのエネルギーの状態を見ますというと、油の占める比率はどうしても石炭の占める比率よりはうんと多くなっていくということは、これは考えないわけにはいきません。しかしその場合におきましても、比率は下がっても石炭の五千五百万トンという最小限の数字というものは、これはあくまでも維持する、そうしてその間に、この四十二年あるいは四十五年に至るまでの間においても、できるだけひとつ石炭需要が伸びるようた工夫はわれわれとしてしていくべきである。そうして国内資源によるいわゆるエネルギー確保するという考え方もやっていきたい、こういう方針で進むということを申し上げておるわけでございます。
  102. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 五千五百万トンは絶対確保するというように、絶対と言っては悪いかもしれませんが、絶対確保するというはっきりしたお答えをいただければ、非常に——少なくも先ほど来の四日間の空白を衆議院で演じた場合も、これを六千万トンにまで伸ばしたい、五千五百万トンも非常に困難である、そういうようないろいろな観点が出ているわけです。そこで五千五百万トンを非常に困難だけれども確保したいという、そういうように私どもはとっている。へたをすると、経済性を考えた炭量でゆけば、三千万トンも割ってしまうのではないか、あるいは五千五百万トンどころか、石炭に引き取らせても四千万トンまでいくのも危ないんじゃないか、こういう不安を持つのは当然でありまして、そこで政府の今までの答弁から聞いていると、非常に不安を禁じ得ない。しかも重油の値段にいたしましても六千台がぎりぎりというけれども、さらにダンピングというおそれも、これはないわけじゃないと思いますし、そういうような点から考えて、五千五百万トンの確保ということが非常に大事である、第一段階といたしましては。さらにそれ以上、六千万トンでもいけばけっこうでありますけれども、非常に困難だという今までの御答弁でありますので、五千五百万トンかいっぱいだろう。そんならばその確保が第一条件、それがせっかく言われておりながら、それもくずれてきて、将来五千万トンになり、四千万トンになるということであれば、これは非常に考えなければならぬことになるわけです。そこで、とにかく確保するというのが絶対的なものであるかどうか、非常に今の時点ではむつかしいとは思いますけれども、それについての見解をもう一ぺん伺っておきたい。
  103. 福田一

    国務大臣福田一君) お説のとおり、困難なことは予想されますが、政府としては絶対に確保するという建前で、もし確保できなかったときには、どうするんだという場合においては、何らかの措置をとってでもそれだけは確保していく、こういう考え方でございます。
  104. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 確保できないときには、何かの措置をとっても確保するという御答弁でありますので、これはそのくらいにしておきます。  次に、将来起きてくる問題として石油の問題だけでもこういう見通しであった、先ほども通産大臣が触れておられましたけれども、原子力発電ということが、これから起きてきております。そのコストというものの見込みは一体どうなるのか、これも十年間、約一九七〇年代になれば、一体どういうことになってくるのか、石油専焼とか、あるいは石炭専焼の発電に比べて、見合うようになってくるのは、一体どのころになってくるのか、その見通しがおわかりだったら、お伺いしたい。
  105. 福田一

    国務大臣福田一君) これは見通しでございますが、アメリカの原子力発電の事情等を考えてみますというと、大体火力等と見合ってくるのは四十二年くらい——まあ四十二年になれば重油ともほとんど見合うということがいえるかもしれません。重油と見合うくらいになってくると思います。したがって、その単価の点でありますが、今のところ重油は二円八、九十銭ということでありますから引き合う。大体その前後まで伸びて、四十三年、四十四年、四十五年くらいにはこれがその程度の原子力発電ができる可能性が強いという感じを持っております。
  106. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 非常に重要な問題にぶつかったわけでございますが、アメリカでは四十二年ころ重油とも見合うであろう、こういうことが言われておる。しかもこちらとしても、さらにそれの先においては見合うようになる、こういうことになりますというと、再び石炭企業が決定的な打撃を受けるんじゃないかというおそれが出て参ります。四十二年には電力に三千万トン、こういう計画石炭対策大綱で出ておりますけれども、これを確保することも非常に困難になるということが考えられてくるわけです。そこで、そういうように企業のほうでいえば原子力のりたくなる。しかもこれは、どこまでコストが下がってくるか見当のつかないものでありますし、そのときには電力の三千万トンの確保も非常に困難になるということでありますと、今の立てている石炭対策大綱というものが根本からくずれ去るという危険性を生じやすい、非常に将来のことでお答えにくいかもしれませんけれども、一体そうなっても断固として石炭については確保していきたいと、こういうような考え方かどうかですね。
  107. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えします。そういう事態になりましても、石炭については五千五百万トンを確保するという考えであります。それではどうしてできるかといいますと、エネルギーというものは、このいわゆる経済の発展に伴いまして順次エネルギー需要がふえて参ります。その場合に、そのふえる分は原子力、あるいは重油でカバーをされていくでありましょうが、しかし五千五百万トンの石炭の分については、これはもう必ず確保していく、こういう立場をとるわけでございますから、この需要が、エネルギーを必要とする量が減った場合には、これはそういう大きな、今おっしゃったような問題が起きるかと思いますが、われわれといたしましては、四十二年ごろには重油はおそらく七千万トン前後必要になるんじゃないかという予想で——現在はまだ四千五百万トン前後であります。そういうようなことから考えてみますというと、今申し上げましたように重油の量はふえて参りますが、それだけエネルギーの量がふえるということでございまして、エネルギーの必要量がふえるということでありまして、したがって、エネルギーを必要とする量はずいぶんふえますけれどもが、しかしその間において石炭の占めておるウエートというものは減っても、絶対量は減らないようにしていく、こういう考え方でございます。
  108. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 通産大臣の言われるように、エネルギー需要が非常に拡大して、そうしていけばいくであろうと、そして石炭については断固確保していく、こういうお答えでありますが、将来の問題でございますので、今後のわが国のエネルギー政策としても、対策としても非常に重要な問題でございますから、総理から覚悟のほどを伺っておきたいんです。
  109. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 通産大臣のお答えのとおりでございます。そうして、今度の合理化をやりますれば、石炭の品質並びに価格につきましても、相当競争力がふえることを期待しておるわけでございます。結論といたしましては、あくまで五千五百万トンは確保するということが国のため、経済のためにもいいことであります。またできることと思っております。
  110. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その問題は、せっかく努力をせられていくと思いますが、次に観点を変えて同じく石炭のことでありますが、通産大臣に初めに伺いたいのですが、第一次エネルギーの供給の構成比というものが、現在電力が三十六年度で二三%、国内炭が三割、輸入炭が六・八、石油が三六%、こういうことでありますが、先ほどのお話だと、特に石油の比率が伸びてくる、こういうようなお話でございます。  そこで、現在石油会社がわが国に非常に多くありますけれども、その資本構成が海外資本の入っているものが何社くらい、その資本のうち何%程度を海外資本に占められているのか、それが一つと、それから民族資本だけのものは何割くらいあるのか、またその資本はどのくらいあるのか、その二つの点について伺っておきたいと思います。
  111. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをいたします。外資系の会社がどれくらいあって、その占めておるパーセンテージがどうかというお尋ねかと思いますが、外資系の石油会社の企業数は、外国系会社で一〇〇%外資によっているものが三社、直接外資提携をいたしておりますものが六社、間接に外資と関連を持っております会社が三社、合わせて十二社でございます。わが国における石油会社の全部の数は二十三社でありますから、二十三社のうちで十二社が外資系、こういうことになるわけでございます。
  112. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 資本構成の中で、資本がどのくらいで何%くらい——今の外国の外資一〇〇%の三社というのはわかっているのですが、外国資本が直接入っている六社、間接に入っている三社、これは何%程度外資が入っているのですか。それについてのお答えがなかったのですけれども
  113. 福田一

    国務大臣福田一君) 外資系の会社の資本金の総額は、先ほど申し上げました十二社で四百三十九億三千万円、そうして外資系会社の外資の総額はそのうち幾らかといいますと二百七十一億五千九百万円、そうして外資系会社の資本金総額に対するいわゆる外資の比率というものはどうかということになりますと、六一・八%ということに相なっております。
  114. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それから、いま一つ伺っておきたいのですが、原油あるいは重油でもって外国から入って参ります、サウジアラビア、あるいはイラン、イラク、あるいはアメリカから原油が入ってくるわけでありますが、その原油を入れる先でございます。向こうの相手側でありますが、国は別ではありますけれども、会社の系統は同じじゃないか、こういうふうに考えられるわけであります。大体どこの国の会社の資本によるところの原油を買っているのか、それが多いかということについて伺いたいのですが……。
  115. 福田一

    国務大臣福田一君) 日本の原油の買付先の地域別の輸入量を三十六年度について申し上げてみますと、中東地域におきまして、三千四十二万六千キロリットル、これが八〇%に相なります。南方地域が五百四万九千キロリットル、一三・三%、北米地域が五万二千キロリットル、これが〇・一%でございます。ソビエトが二百五十万六千キロリットル、これが六・六%でございます。合計いたしまして三千八百三万三千キロリットルに相なるわけでございます。  次に、原油買付先の会社の資本系列でございますが、これも三十六年度を比率といたしますと、米国系が二千六百七十六万二千キロリットル、これが七〇・四%であります。英国系が五百九十一万六千キロリットルで一五・六%でございます。それからソ連が二百五十二万八千キロリットルで六・六%、その他が二百八十二万六千キロリットルで七・四%ということに相なります。
  116. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今通産大臣から二つ資料についていろいろ御答弁いただいたのですけれども、それを見てみますというと、わが国の中では二十三社のうち大きいところの会社十二社のうち、海外資本によるものが六一・八%の海外資本が資本総量の中に入っているということでありますし、今度は原油の買付先を見てみますというと、米国七割、英国系が一五・六%、ソ連が六・六と、こういうことであります。そこで私は非常にこれは危険な点があると思いますので、これは総理に伺いたいんですけれども安全保障の面から考えて、エネルギー安全保障ということから考えてみますと、エネルギーの海外資源が多くなるということは、これは非常に考えものだ。そこで今のように海外系の資本が多い、あるいは一国に、一つの国の系統によるものが多いということになりますというと、やはり石油が入ってきて、そうしてほかのエネルギーをすべて追放するとか、あるいは民族資本をことごとく倒した後において、石油のために今度はダンピングを行ない、そのあとで今度上げられる、そして国内の資源の石炭などというものが駆逐されるというようなことが起きてきやせぬか。そこで値上げも今度は自由に行なわれるようになって、国内の産業というものが大きく動かされるということが、これは考えられるわけであります。そこで海外資源に動かされるということが起きてくるということは非常にこわいことであるし、しかも海外資源が多くなって、たよっている間は、何かあったときにも、あるいは政策的にも、あるいは外交のかけ引き、あるいはそのほか外交的にもエネルギーをストップさせることもできますし、現在のように十二社のうち六一八%が海外資本であるということであれば、これは精製工場においても、国内の精製工場の閉鎖であるとか、封印であるとかというような非常手段まで行なわれるということが考えられるわけです。そこで安全保障という立場から、わが国の国内における第一次エネルギーということになれば、水力か石炭ということであります。その石炭確保するということが非常に必要である。その安全保障の立場から、五千五百万トンという数字が、それが最低のものであるのか、あるいは安全保障の面から考えたときに、第一次エネルギー確保するには石炭は最低炭量を一体どのくらいに押えるべきなのか、また、そういった問題について、エネルギー安全保障の問題についてはどういう考え方で今後政府は進もうとしているのか、この点について総理から明確にお願いしたいのですが。
  117. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 非常にむずかしい問題でございますが、しかし、大事な問題でございますから申し上げます。  まず石油についてでございますが、これは石油の資源が世界各地に非常に不平等にございます。今申し上げましたように、英米系と申しましても、これはやはり中近東から出るのが世界の大部分でございます。南方のほうから出る……。それをアメリカ、イギリス系がもうずっと数十年以前から確保しておるのであります。この問題を一時に変えるということはなかなかむずかしい。ところで、日本が敗戦後どういう措置をとったか、日本の力だけではできませんので、外資系を入れて、あるいはヒフティ・ヒフティ、あるいはそれ以上のものもありますが、極力日本の資本でやろうといたしましてもできない。しかし、中には大きいのが二つ、小さいのが三つほどございますが、大きいのは大体英米系のと匹敵する程度になっております。しかし、この大きいものでも、一つは今なかなか経営困難である。これはある程度の資本提携を必要としておりまするが、資本金の三分の一近くは外資を今度新たに持つようになる、このことは日本の置かれた戦後の状態でございますが、それでは日本だけかと申しますとそうじゃございません。イタリアなんかにおきましてもこれは資源がございませんので、ほとんど英米系のほうからとっております。それからフランスも、ドイツも、ベネルックス三国もみなそうでございます。英米系のあれです。ただフランスは、最近アフリカのほうに油田を発見しましてそれを利用してある程度補っておりますが、これはソ連、ルーマニア糸を除けばほとんど石油資源は英米系のもので支配されておるという状況でございます。今度もヨーロッパに行ってみましても、日本と同じように、エッソその他の外国会社の看板だけであります。会社の内容を聞きましても大体日本と同じような状況、これはもう既成事実でやむを得ぬ。そこでわれわれとしては、日本としてやはり石油資源を持たなければならぬというので、アラビア石油とか、北スマトラ石油に資本をつぎ込んで、できれば本年は五百万トンでも、来年八百万トン、再来年一千万トンをこえるような日本の資本での石油確保に努めておるわけでございます。ですから、原料買い入れの改善をしていかなければならぬことはお話のとおりであります。これは徐々に考えなければならぬ。  次に、石炭の問題でございますが、五千五百万トン確保すると申しておりますが、これはなかなか私が言っているようなにむずかしいことでございますが、これはやらなければいけない。しかし、世界の状況を見ますと、イギリスにしても、あるいはドイツにいたしましても、五年先、十年先の分はやはり現状より少ないことでいっております。ドイツなんかも相当計画では少なくなりましょう。イギリスもそうで、ベルギーもそうなっております。ですから石炭現状のままの五千五百万で確保しようということは、ヨーロッパ並み以上に努力をしなければならぬということであるのでございます。しからばエネルギーと安全性からいって、自分のところのものを経済を無視してやるというわけにはいきません。エネルギーの安全を確保するために経済全体がこわれていくようなことではいけない。もちろん地下資源の開発等につきましてはできるだけの努力をいたしますが、エネルギーの安全性のために経済性を全然無視するということはできません。両方考えながら極力努力していくということに落ち着かざるを得ぬと思うのであります。物事の安全性と申しますと、エネルギーにつきましては石油の問題がありますけれども、私は五千五百万トンあるいは水力電気を考えますれば、よその先進国、アメリカは違いますが、そう日本が非常に安全性がないというようにも考えません。また、その他の問題にしても、食料なんかにつきましては、私はよその国よりも非常に安全性があると思っておりますが、これは安全性を確保しながら経済の原則に、経済性をやって国全体をよくしていくというよりほかにはないと思うのであります。エネルギー問題につきましてもそういう方針で進んでいきたいと思います。
  118. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 インドネシアであるとか、あるいはそのほかのほうから入れるのを資本を投下して五百万トンを八百万トン、そういうふうに漸増していく計画のようでありますけれども、現実に現在のところでは、そのようにゆっくりしているよりさらに急がなければならないのじゃないか。もっと、石油の場合にいたしましても、アラビアだけでなくて、さらに東南アジアとの提携も必要でありますし、東南アジアの石油を、現在のように一%にも満たないというような状態でなくて、さらにふやしていく、もう少しテンポを早めるというふうに持っていくことをしなければならない。また最後に、経済性を無視してはとうていできないというお話でありましたのですが、一体、安全保障の上から見ると、経済性を無視してはできないということになりますというと、今度は電力に三千万トン取らせるということも、その確保目標も、あるいは鉄鋼、ガスの需要確保していくということも、そういう経済性を無視してはできないということになって参りますというと、鉄鋼、ガス、セメントというのは非常に不安定な産業でありますし、そういう面からせっかくの石炭対策大綱の長期計画というものにひびを入らせるというふうなことにもなっていかないか。むしろ石炭よりも石油に行く、動くというものが多くなってくるのじゃないか、そういう心配もあるわけでありますが、その点についての考え方をもう一ぺん伺っておきます。
  119. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 経済性を無視してはできませんが、経済性はある程度まげていくことは当然のことでございます。したがいまして、電力関係でも昭和三十八年には二千五十万トン、四十五年には三千万トンと、こう政府の大綱にもなっております。その間をひびを埋めながら行くというのが今度の考え方でございます。
  120. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それから先ほどの総理答弁の中で、いわゆる資本のわが国からの投下でございますが、石油に関するさらにテンポを早めていくというような努力はどう考えられておりますか。
  121. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは資本だけの問題ではございません。今まで外国から入れておったのもあります。また、ソ連のほうからいろいろ要求もあります。で、アラビア石油は掘れば相当掘れますが、やはり今の状態を徐々に直しながらいくことが主でございます。資本ばっかりの問題ではないと思います。
  122. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今の問題については徐々にではなくて、もっと安全保障という国家の存亡危急に関する問題でもありますので、さらに力をかけてテンポを早めていくというような対策というものを立てていただきたいと、こういうふうに思うわけです。その程度にいたします。  今の電力三千万トンの問題について、今度は通産大臣に伺いたいのですが、非常にこれについては、石油専焼の場合に比べればかなりの不当損失というものを九電力に負わせなければならぬという場合が出て参ります。その不当損失については一体どういうふうに対策を今回立てようとなさっておるか、プランを伺いたいと思います。
  123. 福田一

    国務大臣福田一君) この問題につきましては、衆議院予算委員会でも申し上げておいたのでありますが、ただいま予算の編成をいたします段階におきましてこれらの問題もあわせて処理をする、政府としては、とにかく適当なそれに対する処置をとる、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  124. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 適当な処置というものの内容をちょっと聞かしていただけませんか。
  125. 福田一

    国務大臣福田一君) 政府において、電力業界がこれを引き取るように、これを納得するような措置という意味合いでございまして、その具体的内容は、ただいま研究をいたしておりますので、申し上げる段階ではございません。
  126. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 具体的内容が早くきまらなければせっかくの石炭対策大綱も動かないわけであります。具体的な内容というものはいつごろまでに大体でき上がってくるか、その時期だけをひとつお伺いします。
  127. 福田一

    国務大臣福田一君) 予算の編成を目途といたしております。
  128. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に、三十八年度にはスクラップ・アンド・ビルド計画でどのくらい閉山になり、あるいはどのくらい、何トンくらい減らすと、こういう見込みですか。
  129. 福田一

    国務大臣福田一君) これは審議会にかけて、しかる後に決定をするということになっておりますので、この問題についてもただいま調査をいたしておる段階でございます。
  130. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 審議会にかけて調査するのはわかるのでありますけれども、非常に、スクラップというか、閉山のほうが早くなるような傾向も……産炭地に行きますと、早くうちのところも何とかならないかという声も坑内に勤めている人から、経営者から、聞かれるわけであります。非常にテンポが早まるような気持がいたします。そこで、大体の、現在通産大臣が見た上で、見込みというものも、もうすでにある程度あっていいのじゃないかと思うのでありますけれども審議会だけにまかせて——だけにというわけではありませんが、審議会答申は当然またなければならぬでしょうけれども、全然無計画というとおかしいですが、閉山の見込みというもの、見つもりというものは現在のところはないわけですか。
  131. 福田一

    国務大臣福田一君) この問題は、雇用の問題その他とも関連をして、非常に大きな問題でございますので、軽軽に計画なしにこれを申し上げるわけにはいかないのであります。したがって、今調査をいたしまして、審議会にかける段階においてこれを考慮をして参りたい、かように考えておるわけであります。
  132. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に、産炭地振興事業団。先日の答弁からも十一億残っているというような、十一億円ですか、どうしてこういうふうにこれは残っちゃったわけですか。すでに当初において十億出ているわけでありますけれども、それが残ってしまっている。どういう理由で事業が行なわれなかったのか、これについて、これはひとつ通産大臣からお伺いします。
  133. 福田一

    国務大臣福田一君) 法律通りまして、予算も通りましてから、この事業団のいわゆる構成人員の問題あるいは事務所の問題その他いろいろなことをなるべく早くやるようにいたして参ったのでありますが、それが大体九月前後までかかりまして、そしてその後今度はいよいよその事業団としてどういう仕事をどういうやり方でしていくか、無責任に、何といいますか、野放図にやっていくわけにはいきませんので、そういう調査をするというようなことを考えていきますというと、ようやくそのいわゆる仕事の仕方をきめる方向がきまったのが実は十二月一日、一部分でございまするが、十二月の一日でございます。調査のほうはどんどん進めておりますが、貸付の分については十二月一日からやっております。その後見ておりまして、どんどん申し込み等もございますので、なるべくすみやかにこれを処理して所期の目的を達するようにいたしたいと考えておるわけでございます。
  134. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、この十一億は、この事業団の年度内でもって大体消化できる、こういうふうに考えてよろしいわけですね。  そこで、この産炭地振興事業団についてですが、細則、施行細則のようなものですか、そういうようなものがないというように伺っていたわけでありますが、それで今も十一億円も残ってしまったというわけでありますけれども、何というか、措置方法といいますか、あるいは細則といいますか、そういうものを完備したわけでありますか。
  135. 福田一

    国務大臣福田一君) 完備をいたしたわけでございます。
  136. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 最後に労働大臣に、この石炭のことの最後で伺いたいのですが、昨日の石炭対策特別委員会で石田委員の質問に対して、失業対策関係の原価の引き上げや物価の変動、あるいは客観情勢の変化がある、そういうのがあれば、離職者の就職促進手当を増額するつもりがあるか、こういうのに対して、四百五十円で生活の安定をはかれない情勢になったときには、当然手直しを考える、こういうような御答弁があったようでありますが、それでよろしゅうございますか。
  137. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 四百五十円という金額は、現在の物価その他の情勢を基礎にしてきめたものでございます。したがって、前提が変更になりますならば、当然考えるべき問題だと思っております。
  138. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは非常に重要な問題でもありますので、その問題についての総理のお答えをお願い申し上げます。
  139. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 労働大臣の答えたとおりでございます。
  140. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に給与担当大臣に、今度は公務員の給与引き上げの問題で伺いたいのですが、どうして勧告が五月一日から実施になっているのを、それを十月一日から実施にしたのか。今まで昭和三十五年度から連続ずっとおくれております。毎年のようにおくれておりまして、今年度も五月一日実施というのが十月一日実施になってきた。どうしてそうなっていったか、その理由について一応お答え願いたいと思います。
  141. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これは今年度の財政事情から考えまして、他の重要な施策もございまするので、それらに要する経費を勘案いたしますると、五月一日実施ということになりますと、一千億以上の費用が要りますので、今年はとうてい困難である、こういう理由で十月一日実施を決定いたしました。
  142. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、技術的な問題でなくて、財政的な問題でもっておくれた、十月一日実施に踏み切ったと、こういうわけですね。そこで、財政事情ということでありますが、公務員の状態から考えてみれば、人事院だけがたよりであります。現在争議権もありませんし、そういう人事院の勧告だけがたよりとなっているわけでありますので、その点が私どもとしては、財政事情によるのかもしれませんが、まだ財政事情のほうだけでは、何となくすっきりしないものがある。どうしてできなかったのかということを非常に不思議に思うわけでありますが、今回は十月一日ということで一応出ておりますけれども、私どもとしては、財政事情によるというような考え方ではとうてい納得できないものを持つわけで、そこで今度財政の問題から、今の問題とは別に、今度は自治大臣にこの人事院の勧告について伺いたいわけでありますが、地方公共団体の要望として、人事院の勧告が毎年度半ばにある、こういうことに非常に不満を持っているわけであります。どうしてかといえば、その当該の年度内でもって予算を執行していく、それに非常に障害を生じている。財政運営を混乱に陥れるというような心配が出てくる。そこで一体どう考えるか。これをもっともっと勧告を少なくも年度の予算編成の前なり、あるいは入った当座くらいのときに勧告を持ってほしいという公共団体の要望が強く出ておりますけれども、それについてどのようにお考えになっていらっしゃるか、これは自治大臣と人事院の総裁と、両方にお願いしたい。
  143. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 年度の半ばで勧告が出ますと、ある自治団体によっては予算を相当使ってしまっている。あるいは、おそくなれば使われてしまうというようなことで、自治団体が非常にまあ不都合を感じていることは事実であります。できれば年度前に勧告をしてもらって、予算措置ができるようにできれば一番いいと、こう考えております。
  144. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) お答え申し上げます。  私どもも、各方面からそういうお言葉を拝聴しているのでございまして、研究をいたしておりますが、ただ問題は、やはり予算編成についての時間的の問題と、それから勧告そのものに要する時間的の問題とをどうかみ合わせたらよろしいか。たとえば国の予算の場合で申し上げますと、八月末までには各省から次の年度の予算の要求を出さなければならない。そういうような点とのかみ合わせについて、いろいろむずかしい条件がございまして、目下苦慮いたしておる次第でございます。
  145. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 自治大臣からは、でき得れば年度内にしてもらいたい、そうして予算編成に間に合うようにしてもらいたいという強い要望が出ておるわけでありますが、総裁のほうの答弁としては、非常に苦慮しているということであります。そこで、これは人事院の総裁に伺いたいんですが、技術的なことでもっておくれていくのか、あるいは、次のそのときの予算編成に間に合わせるとなれば、どうしても見込み勧告でなければならぬということで苦慮しているのか、技術的な問題なのか、あるいは時間的な問題なのか、その点について伺いたい。
  146. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) ただいま申し上げましたのは、主として技術的の面から申し上げたわけでありますが、それ以外の点につきまして、勧告は毎年一回ということで、その一回の時期が前年の時期とどの程度のずれでいいものかどうか、大体同じ時期でなければいかんのじゃないかという問題も実はある。それからただいまお示しの、予測の勧告ができれば非常に楽なんでございます。ただし、その場合に、われわれとしてどうしても不安定な要素を組み入れて勧告せざるを得ない。そうすると、それ自体が勧告の非常な弱味となりますね。そこにまたなかなかむずかしい問題があるということで、予測のほうはどうもいかがかと考えております。
  147. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 予測の勧告は非常にむずかしいかもしれませんが、しかし、技術的な問題だということであれば、できる限り能率を上げて、詰めていけば、地方公共団体にとっても、途中でもって予算の執行に支障を来たすというようなことがないようになってくるわけです。少なくもそういう面について努力を続けてもらいたいと思うのです。くどいようでありますが、もう一度その点を伺っておきます。
  148. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) おっしゃるとおり、従前から検討を続けておりますし、今後も検討を続けたいと思っております。
  149. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に、同じく人事院総裁に伺いたいんですが、行政管理庁が公務員の人事管理に関する監察結果というのをまとめております。まとめて検討を依頼しておりますけれども、その中に、国家公務員法によって公務員の任免、給与など、人事管理に反映させるための勤務評定を実施していないところがある。具体例をあげていろいろ言われております。そこで、現在の勤務評定というものは行なわれていない。そこで、まじめな職員でも昇給のときには一律であったり、あるいは特別昇給などにはこの勤務評定が利用されなければならんということになっておりますが、あとからつじつまを合わせる、そういうような面もあるということであります。そこで、今の勤務評定というものが活用価値があるものなのかないものなのか、あるものなら、行なわれたでありましょうし、そういう面で活用価値、利用価値というものは全然ないんじゃないか、このように考えるわけでありますが、その点についての見解をお願いしたい。
  150. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) お答え申し上げます。公務員法の建前といたしまして、本人の勤務の実績あるいは能力の実証というようなことが一つの大きな要素になっておりますので、当然勤務評定もその判定の資料として相当の大きな意味を持っておると存じております。
  151. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、活用価値があると、こういうことですか。
  152. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) そのとおりでございます。
  153. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それではどういうわけで、一体各省でその勤務評定の方法をやらないのか、勤評を実施しないのか、非常に不思議に思われるわけでありますけれども、その点について、これは全部の省にわたることでありますので、現在の勤務評定というのは活用価値があるものなのか少ないものなのか。あるという総裁答弁でございますので、それならどうして行なわれないのか。また、行なって、人事行政あるいは特別昇給等についての正確な——まじめに働けば特別昇給が行なわれるというような励みを持たせていくような姿でなければならないわけでありますが、そういう行き方ということについて、総理はどういうふうに考えていらっしゃるか、伺いたいと思います。
  154. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 勤務評定の実効を上げることを強く期待しておるのであります。ただ、行政管理庁の報告では、十分に上がっていないという報告も聞いております。今後は十分に効果を上げるよう努力していきたいと思います。
  155. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 十分に効果を上げるように努力されるということでありますので、将来どうなるか見守っていきたいと思いますけれども、現在の勤評の方法が、いろいろ見て参りますというと、多少クイズ的みたいなところもあるし、あるいは、はなはだ方法としてよくないような面もあるというふうにも思われます。その点について、これを検討して改善していくというような意図が、これは人事院総裁に伺いたいのですが、あるかどうか。
  156. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) ただいまの制度では、非常に各省の自主性を取り入れる余地を残しておりまして、勤務評定の形式というものは、そうかた苦しいものは考えておりません。したがって、各省の当局者と人事院とが協議して、最も適切な様式を考えて実施していく、こういう形になっておりますので、その面を通じて今後も努力して参りたいと考えております。
  157. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 公務員の人事行政、いわゆるこういうような勤務評定、人事管理というものについて、これは基本的には、私どもとしては、あくまでもまじめに働き、またよくやっていくというような人についてはどんどん考えていかなければならぬ、あるいは学歴にも左右されず、たとえ小使であろうとも今小使という名前はありませんけれども、まじめであればどんどん抜擢できるようにしていくという、そういう意味では、さらに試験制度までも考えていくのがほんとうではないか。昇任試験の問題、そういうようなものまでございます。そういう点について十分今後の検討をお願いしておきます。  それから次に、失対の問題でちょっと労働大臣に伺いたいのですが、失業対策について、今月の十五日ですか、政府のほうでは、失対を打ち切ることは困難であるけれども、合理的に進めていきたいと、こういうことを言われたわけでありますが、雇用審議会答申が今月の初めにあるというような話であったのが、いまだに出ておりません。一体どのころに雇用審議会答申が出る見込みなんでしょう。
  158. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 今回予算を要求するに際しまして、予算の査定数口前に中間報告がございました。しかし、最終的な報告は、おそらく年末までにはあるものと期待しております。
  159. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この前の四十一臨時国会のときに、失対打ち切りということは考えないというふうなお話であった。ところが、十二月十五日では、失対を打ち切ることは困難であるけれども、合理的に進めでいきたいというふうな政府言明が出ているわけでありますけれども、一体合理的ということは具体的にはどういうことを意味されておるのですか。
  160. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 失対の打ち切りということは、これは現在でも、政府としては考えておりません。ただ、失対事業の現状から見まして、これをできるだけ改善いたして参りたい。すなわち、現在無差別に失対事業に従事させております失対該当者を、いろいろ分類に応じまして、それぞれ適切な仕事について賃金を与えるような、そういう内容の多様化によりまして、合理的に考えていきたいと、こういう考えでおります。
  161. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 少し内容にわたってあれでございますけれども、老人とか婦人、病弱者については、前には生活保護法等に組み入れたいという話があったのでありますけれども、そういう点については、やはり同じ考え方ですか。
  162. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 老人、病弱者等でも、個人に働く意思があり、また働く能力があるということになりますと、失業対策事業の賃金の日額と生活保護の給与の日額には隔たりがありまするので、できるだけそういう人々に適した仕事を考えて、引き続き雇用するようにいたしたいと思っております。
  163. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 時間が参りましたようですから、簡単に申し上げますが、現在の失業対策の人々を打ち切っていくというような考え方でなくて、いわゆる多くを雇用状態に入れたいという考え方のようですが、そのほかに私どもとして考えることは、たとえば経済的に余裕のある各都市もございます。そういうところの臨時職員として、あるいは正規の職員として常用的にやって、そうして事実上の失業対策の対象になってくるわけでございますけれども、そういうような考え方というものはお持ちでないかどうか、それだけを伺っておきたいと思います。
  164. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 失業対策事業として行なわれます事柄の内容につきましては、地元の自治体の自主性をできるだけ認めていくようにいたしたいと、かように存じております。したがって、今後お示しのような点につきましても、十分に研究してみたいと思います。
  165. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 鈴木委員質疑は終了いたしました。   —————————————
  166. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に、大竹平八郎君。
  167. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私は、まず総理大臣に、最近の国際情勢に関しましてその所信をお伺いいたしたいと思うのであります。  池田総理が、あなたに最も近いといわれるところの大平外務大臣が就任以来、何か最近の国際情勢下に対しまして新しい外交方針を打ち出そうとするような意欲がわれわれには感ぜられるのであります。たとえてみまするならば、最近起こりましたキューバの問題に対するところのあの声明の内容、当時におきまして、私どもは参議院から派遣をせられて欧米に出張中でございました。その当時の自由主義陣営内の論説を見まするというと、ケネディ大統領に対しまして全面的に強い支持を与えた声明を出しており、かたがた日本政府側のあの談話に対しましては、いろいろな批評を私どもは聞いたのでございます。それから、最近におきまして、あなたが外人の記者会見におきまして言われました中に、たとえば、今まで中共貿易に対してであるけれども、中共貿易と、それとその政治を混同するというアメリカの態度というものは理解ができないというような、こういう談話も私どもは聞いているのでございます。一部からは、あなたのこの問題に対しまして何か高姿勢という批評もあると思うのでございますが、私どもは、むしろそれは日本の外交の自主性をあなたが持っていきたい、そういう意思にほかならない、かように考えております。したがいまして、従来の自民党内閣の一貫して参りました対米一辺倒の政策というものを変えていくのじゃないか。それからさらに、あなたがヨーロッパに参りまして、各地で談話を記者会見の中に発表をいたしておるものを見ましても、日本はあくまでも東南アジアの指道者的立場をとっていきたい、必ずしも米国一辺倒ではないというような談話も私どもは見受けているのでございます。それから最近の、これはあと通産大臣、外務大臣に質問申し上げますが、中共の前向きの積極的な政策等も考えまして私どもはそういうような感じを持っているのでございます。世界の情勢はキューバの問題以来東西の均衡は多少変わったと申しましても、米ソの対立は続いております。そこにヨーロッパにはEECというものが非常に積極的に、しかも非常な期待を持たれつつ大きくなりつつあることは言うまでもないのでありますので、最近韓国の問題も妥結をするというように私ども聞いておりますので、この際、本院を通じましてあなたの率直な外交方針というものを明らかにしていただきたいと思うのであります。
  168. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私が組閣以来の外交方針は一貫しております。お話の点のキューバ問題に対しましての私のケネディ大統領に対する回答は向こうも満足しております。また、イギリスの回答あるいはフランス、イタリアの回答と比べて何ら変わりないので物議をかもしていないと私は考えているのであります。そうして私は、敗戦後、占領治下においてはやむを得なかったけれども、独立して、しかも日本がこういう立場になったならば、やはりアメリカとの関係と同様な関係を欧米に持ち、そうして私は東南アジアに対して指導的立場ということを言ったことはございません。東南アジアの発展は即日本の発展、東南アジアの繁栄なくして日本の繁栄はないということを言ったのであります。指導的という言葉を使っていないと思いますが、いずれにいたしましても日本独自の外交をしていく。その独自の外交が即日米関係がいよいよ密接になる。そうしてまた、それがヨーロッパの自由諸国との関係が密接になる。また、独自の外交によって近隣の共産圏とも、相互の立場を尊重して内政不干渉、そうして経済的にやっていこう。日本の置かれた立場を基本にして各方面と適当な外交を進めていきたいというのが私の外交方針でございます。
  169. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 東南アジアは御承知のとおり、米ソの谷間にありまして、その最もいい標準がラオスの問題においても明らかでございます。それからさらに向米一辺倒としての国民政府台湾があり、あるいは韓国等があるのでございます。しかしながら、あなたがヨーロッパに行かれたその成果というものは、これは私どもも認めております。したがって、また、東南アジアといたしましては、私が前段に申し上げましたような世界情勢の中におきまして、その国のイデオロギーのいかんを問わず日本に期待するところが非常に大きいのであります。これらに対しまして、東南アジアに処していくという点におきまして重ねてあなたの御所信を伺いたい。
  170. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 東南アジアは各国いろいろの事情がございましょう。しかし、私が昨年パキスタン、インド、ビルマ、タイ、これを回りましたことは、私は東南アジアに対する考え方をきめる上に非常によかったと思います。また、それが今度ヨーロッパに行っていろいろ話をしますときにも非常に効果があったと思います。いずれにいたしましても、東南アジア諸国いろいろその立場は違っております。違っておりますが、日本としてはどういう立場をとろうとも、東南アジアに対しましては先ほど申し上げたように、特別の関係がある。お互いに助け合って、そうして経済開発、民生の安定に努力いたしたいと思っております。
  171. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 中共問題に対しましては、私は先ほど申し上げたとおり、非常に政府が積極的に前進している、これに対しまして今後外交方針としてどういうような方針でいかれるか、この点もあわせて伺いたい。
  172. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先般、外人記者会見で中共問題について、また、アメリカの態度に対しまして批判をした言葉は向こうにも伝わりまして、たぶんニューヨーク・タイムズの記事にも載っておったようでございますが、大体私の気持はアメリカのほうもわかっているようでございます。中共に対しましての私の気持は従来申しておりますとおりでございまして、国際的問題といたしましては、国連の場を通じて審議されることになっている、これに従っているのであります。しかし、中国と日本との歴史的、地理的、経済的関係から申しまして、貿易はこれは促進していくという考えで進んでおります。
  173. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私の過去の長い経験から申しますならば、貿易というものは貿易それ自体で決して発展するものでないのでありまして、ことに中国貿易等はそこに一つの大きな文化的交流とか、あるいは文化的寄与、たとえて申しまするならば、かつて漢口の地区におきまして、アメリカ、イギリス、ドイツを初めといたしまして大学から幼稚園まで九十六もあった。そうして初めてそれによって中共貿易の隆盛というものが各国に見られたわけなんでございますが、そういう意味であなた方そこまでてこ入れをして、文化的な交流、寄与という点までてこ入れをして今後中共貿易に対処するお考えがあるかどうか、この点を伺いたい。
  174. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申し上げておりますように、国際問題として今継続しております、また、台湾を承認しておりまする関係上、普通の国のように文化的交流をあわせてやるというところまでいけるかどうかということはお互い考え方の問題だと私は思います。それはさきの国会でも通信あるいは気象等々、できるだけやっていきたいという考えは持っているのでございます。
  175. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 外務大臣いかがですか、今の問題について。
  176. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 貿易のたとえば拡大をやりたいということを総理が言われる、私としてこれをどう具現するかの問題でございますが、共産圏に対する貿易はひとりわが国ばかりでなく、自由圏の諸国も貿易関係を持っているわけでございます。したがいまして、わが国が不当に御遠慮申し上げる筋合いのものでもないと思っておりまするが、しかし、わが国が特に中国に対しまして特別のフェーバーを与えてまでやるという性質のものでもないと思うのでございまして、世界並みのフェアな貿易という関係においてやるのが妥当だと考えております。
  177. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 通産大臣にお伺いいたしますが、あなたが高碕さんとお会いになりました節、一つとして、五カ年以内の期間で輸出入が総合的に均衡するようにする、それから延べ払いの期間は西欧並み、かつ他の第三国に認められる範囲にする、それから延べ払いの保証は中国銀行による、第三国銀行の保証を必要としない、それからさらにプラント輸出は今回の貿易計画と別扱いとして、別途に交渉をするというように新聞は伝えておるのでございますが、これは第三項まではともかくといたしまして、第四項のプラント輸出の問題ということになりますと、これは貿易といたしましても画期的なんであります。今までも自由主義諸国陣営の低開発国からはそういう要請というものが非常にあったのであります。政治的にはまだ交渉もこれは認めていない、国交回復もしていないというのにあたって、このプラント輸出を認めるということは、これは非常な問題を自由主義陣営に投げかけるのでございますが、この問題に対してあなたは、高碕さんにどういう言質を与えられたのか、この際はっきりお示し願いたいと思います。
  178. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えいたします。先ほど申されましたことは、高碕さんから御質問がございましたのに対しては、私はそういうようなお答えをいたしておることは事実であります。なお、プラントの問題につきましては、いろいろの事情等もございますし、これはまあひとつ今回はどういう事情であるか、向こうの希望等もよく聞いてきた上で、政府としてもそれに対して何らかの、その場合向こうの態度を、あるいは条件等というようなものもよく聞かせてもらって、その上で処理をするようにわれわれの態度をきめるようにしたいと思います、こうお答えをしておったわけでございます。
  179. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 この高碕、寥承志の覚書は、これは一般の新聞で報じておるのでありますが、このプラント輸出を中心にいたしまする別の覚書がたしかあるはずなんであります。これは新聞も発表をいたしておりません。それから私がただいま申し上げたような空気というものは、すでに昨晩の毎日新聞の報道を見てもおわかりのとおり、米国でも非常に大きな問題になっておるのでありまするが、この発表せられた以外に取りかわした文書というものがあるはずでございまするが、この際明らかにしてほしいのであります。
  180. 福田一

    国務大臣福田一君) 御承知のように、この問題は民間の取引ということでございまして、われわれといたしましては、政府の関係する分において、われわれが周知しなければならない分について、まあ高碕さんにお願いをいたしておったわけでありまして、政府として、これをしてきてもらいたい、こうしてもらいたいと申し上げておらないことは御承知のとおりでございます。したがいまして、私たちとしてこの際そういうような動きがございましても、われわれからこれを発表することは不穏当かと存じますので、これは差し控えさせていただきたいと思います。
  181. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それならば率直にお伺いいたしますが、この取りきめは御承知のとおり、いろいろ各品目によって取りかわされておるわけであります。それだけでも私どもが長い間扱った立場から申し上げまするならば、他国の貿易にないような日本も大きな譲歩をいたしておるわけでございます。  そこで、このプラント輸出というものが、倉敷レイヨンか大日本紡績か知りませんが、それを認めるということになりますと、これは事実上借款と同じなんです。これをあなたのほうは政府貿易に踏み切ったということなら、これはわかる。ところが、今総理もお話のとおり、外務大臣もお話のとおり、また、あなた自身も今おっしゃったとおり、決してまだ政府貿易に踏み切っていない。しかるにこのプラント輸出ということになりますと、当然輸出入銀行というものが介在しなければならない。輸出保険はあなたのほうでつけてやらなければならぬ。どう見てもこれは実質的にわれわれは政府貿易だと断定をせざるを得ないのでありまするが、このプラント輸出というものは、あなたはお認めになったのかどうか、この際はっきりひとつ伺いたい。
  182. 福田一

    国務大臣福田一君) そのプラント輸出の条件等については、まだ十分には了承いたしておりませんが、しかし、われわれが承知しておる限りにおいては、なかなかこれを認めることは困難ではないか、かように考えておるわけであります。
  183. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 制限時間が短いものでありますから先に端折りますが、そこで伺いたいのは、第二回の日米貿易経済合同委員会におきまして、これは項目のうちに、たしかその他とあったと記憶いたしておるのでございまするが、中共貿易の問題につきまして、何らかいわゆる友好国としてアメリカからあなた方にお話があったかどうか、また、会談内容一つの協議事項としてこれが出たかどうか。これはあなたでも外務大臣でもよろしいのですが、お伺いしたい。
  184. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) その問題は、われわれの貿易経済合同委員会の議題になっておりませんし、全然論議されたことはございません。
  185. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 先ほどのプラント輸出の問題は、国際的に影響するところが非常に重大でございまするが、ただいま福田大臣のはっきりした答弁がありましたので私は了承をいたします。  そこで、私は政府にぜひお願いをいたしたいことは、最近は経済界でも、むろん国会でも、中共貿易というものが非常に大きく取り上げてこられております。また、今池田総理からお話もあったように、非常に前進しつつある。しかしながら、過去の実績をごらんになりますというと、この終戦後の中共と日本との貿易というものは、私は数字は持っておりますが、ここであげませんが、きわめて微々たるものです。その一体原因というものはどこにあったかということ、それはどこにあるかということを、いま少しく私どもは一般国民にその真相というものをPRする必要があるのではないか。と申しまするのは、私は長い間中国に関係をいたしておりますが、大正の末期に私どもは中国の奥地を歩いた。単身歩いて山の中でしまの着物、その当時の遠州じまの着物を着て、そして手甲きゃはんをはめて埼玉県の農村を歩いているような格好をして歩いた。これは何か。これは富山の薬売りです。そのくらい当時といたしまして、日本の商品というものが中国のすみずみまで入っていった。どんな山奥に行きましても仁丹の広告はある。それからまた、九省の会と言われる揚子江を上って六百マイル、漢口に参りますというと、私は一つの例をあげるのでございまするが、あそこに一日集まる卵が、鶏が一ピクル千六百個、それからアヒルが千四百個、これが個数にいたしますると八百万個から一千万個というものがあの漢口の町に、今のようにトラックがあるわけではございません、あの幹川をこんな小さい船で持ってくるとか、あるいはかついで持ってくるとか、そして一日五百万個を消化する工場がアメリカ、イギリス、ベルギー、この三カ国であったのでございます。これは一つの例でございますが、それくらい中国の物資というものは豊富であった。そしてその当時揚子江沿岸におきまして、その貿易の覇を争ったのは日本とアメリカとドイツでございます。もうアメリカなんか敵ではなかった。そこでそのときに日本の中小企業というものが、三井や三菱で取り扱うことのできないものがある、これは泥だか食べものだかわからないようないわゆる土産品というものはたくさんあった。そういうものが中小企業のいわゆる専売貿易として、主として大阪の商人を中心にして行なわれるということを私どもはよく知っておる。それは三井、三菱もどうにもできないような、そして今日まで大きな、中国貿易で盛んに財をなした。その人たちが、中共貿易が一たび行なわれるということになれば、一九三六年に日本の貿易の二〇%を占めた中国貿易、そしてまた自分たち自身が大いにそれによって産をなしたその夢というものが忘れられない。だから、それでわっと政府にとにかく中共貿易をこうしろああしろという声が政治運動として出てくる。ところが、御承知のとおり、今の中共は政策を根本的に変えた。これはかつての中国というものが農業第一主義であったからよかった。ところが、最近は変えまして重工業中心になって、そこで自然災害による最近の三年間のあの状態は、物資なんか実際なかなかない。だから、この事態というものを政府がその真相をもう少しPRする必要があるんじゃないかというのですが、この点について御見解を承りたい。
  186. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のとおりでございます。私は岡山へ行きますときに車中談で申しましたが、中共貿易はするけれども、そう期待はできない。これは台湾とは一億数千万ドル、韓国とも一億数千万ドル。しかし、五千万ドルやることはたいへんだ。買うものもあまりございません。向こうが買うのにはあまり外貨はございません。だから、やりますけれども、多くを期待することはできない。ことに最近の中国の貿易は全体で往復で十三、四億ドルで、多いときは二十五、六億ドルございましたから、半減いたしております。非常に今としてはそう多くを期待できません。しかし、多くを期待しなくても、両国の置かれた立場で有無相通ずるということは、私は賛成なのでございます。これにたいへん期待するわけにはいかない。たとえばタイなんかも一億数千万ドルやっておりますが、中共とその三分の一やるということはなかなかむずかしいということはよく存じております。
  187. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 総理、今の数字は違いますよ、往復で二十何億ドルというのは。
  188. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 中国全体の貿易は、三、四年前は全体で二十六億ドル、今は十三億ドル。それは各国とも半減に近い。ソ連とも減っております。
  189. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それでは大蔵大臣に行きますよ。私は、通商政策あるいは関税というような問題に関連いたしまして大蔵大臣の所見を伺いたいのでありますが、昨年来の国際収支の改善対策によりまして、国際収支は均衡を回復いたしまして、金融引き締め政策も解除をみたのでありますが、国際経済のいわゆる強まる自由化の潮流とそれからあるいは地域統合等の動き、こういう点を考えてみますると、わが国にいわゆる封鎖経済からの急速な脱皮を迫りつつあることは、御承知のとおりであります。去る十一月に行なわれましたフリードマンIMF為替制限局長の対日年次協議の講評を通じて見ましても、明年二月の理事会におきまして八条国への移行の勧告がなされることは必至でございます。近い将来ガットの立場からも一そう自由化の促進というものが要請をされる情勢にあるわけであります。貿易為替の自由化を中心としました一連の課題は、わが国経済の実力から見まして、まず私どもは苦難の道を歩かなければならぬと思うのでございまするが、この難局を打開するため、貿易為替あるいは関税の政策について、政府はいかなる具体的見解をお持ちであるか。  まず第一は、わが国の貿易は、御承知のとおり、輸出入とも米国に依存する度合いというものが非常に大きいのであります。しかも、毎年数億ドルに上りまするところの対米輸入超もみておりまする現状であります。わが国の貿易を拡大し、国際収支の均衡を保持するためには、この対米片貿易の是正、それから欧州市場の一そうの開拓、東南アジアとの貿易関係の改善が急務であると考えられますが、通商拡大法のアメリカの成立、ドル防衛措置強化と、米国の貿易政策の新たな展開を前にいたしまして、対米片貿易是正のため、先般行なわれた日米貿易委員会におきまして政府は日本の立場をいかに主張せられたかという点につきまして伺いたいと思います。
  190. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。  おっしゃるとおり、三十六年度は、日本経済の拡大の結果、対米片貿易になりましたことは、御指摘のとおりであります。年度で申しますと、三十六年上・下を通じて、輸出が十二億ドル、輸入が十九億ドルでございますから、相当大幅な入超でございます。しかし、昨年からの国際収支改善、また、輸出振興策をとりました結果、三十七年すなわち今年の下期は輸出が七億八千八百万ドル、輸入が七億六千百万ドルと、対米貿易は輸出が二千七百万ドルばかり多くなったわけでございます。こういう趨勢を続けまして、十月の数字は、輸出が一億三千二百万ドル、輸入が一億一千八百万ドル、一カ月千四百万ドルの黒字ということになっております。日米経済閣僚会議でこの問題を議題にして相当突っ込んだ意見をいたしました。先ほどのどなたかの御発言で、演説だけを聞いてきてさっぱりというようなお話もございましたが、私たちはそうではなくて、もう二十時間にわたる三日間の会議では、こちらが約三分の二くらい非常に強い主張をして参りました。その中に今の日米貿易の問題を強く取り上げ、各閣僚とも日本の立場を十分説明をし、相当理解を深めたと、こう考えているわけであります。これからの趨勢としましては、ただいま申されましたとおり、自由化に進んでいかなければならぬことは当然でございますし、八八%自由化をいたし、残りの一二%に対しても可及的すみやかにできるだけ早く自由化の方向をたどらなければならないということになりますし、また、関税の一括引き下げ等に対しましても、基本的には同調しなければならないことは当然であり、また、八条国移行も時の問題であるというような事実を前にして考えますときに、アメリカと日本との貿易に対しては、今の状態ではなく、相当変わった形で貿易政策をお互いが立てなければならないということを強く言ったわけであります。特にアメリカが今ドル防衛とかバイ・アメリカン、シップ・アメリカンというような政策を強行している限りにおいて、日米間においてはなかなかうまい調和ができないので、私は、バイ・アメリカン、シップ・アメリカンというような政策は、あらためてひとつ別な角度から——こういう表現でした。新しい視野、新しい角度から別の立場からひとつ考えてもらえないか。日本も三十年前にバイ・ニッポン政策をやって失敗した例がございますが、アメリカも歴史を十分考えられながら対日貿易というものに対する十分な検討を要請したいということを言ったわけであります。  もう一つ付け加えて言いますと、アメリカが対外援助の自分のワクの中でせめて他国に援助する分だけでもアメリカの品物を使いアメリカの船を使うということによって海外に流出するドルを防衛しようという考え方もわからなくないけれども、アメリカが直接低開発国に対しての貿易を行ない品物を出すようなことを考えるよりも、日本を含めた主要工業国との間の貿易に重点を置くべきである。そうして、低開発国との貿易その他に対しては、日本等を中心にして貿易拡大ということを真に考えてもらわなければ困るのだということを私は十分説明をし、通商拡大法に対しても、いやしくも日本の対米貿易に対してこれを拘束したり、マイナスをもたらすことのないように十分の注意を喚起をいたして参ったわけであります。
  191. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 今の問題に関連をいたしまして、福田通産大臣に、貿易市場の構造あるいは改善等が当然必要になってくるのではないかと思うのでありまするが、所見を伺いたい。
  192. 福田一

    国務大臣福田一君) 貿易市場が順次変化をしていくであろうということはお説のとおりだと思いますが、ただいま私たちが考えておりますこと、また、先ほどの日米貿易経済合同会議において私が特に主張いたしましたことは、アメリカは関税の引き下げをやることによりまして世界の貿易を拡大するという考え方を持っておられる。われわれはその趣旨は全面的に賛成であります。そのことには賛成でありますが、今日日本がどういう待遇を受けておるかというと、欧州におきましてはなお日本が自由化をいたしましても相当の差別待遇が残っておる。これについては、われわれはぜひともこの差別待遇をなくするように骨を折っている次第であるが、こういう差別待遇が残っておるときに関税の引き下げをやってみたところでどれだけの効果があるでしょうか。また、アメリカとの関係におきましても、日本が自主規制によって対米輸出のまず四〇%ぐらいは何らかの制限を受けておるというような形になっておる。こういうような規制を受けておるときに、私たちが双方が関税の引き下げをやったといっても、どういうような効果が出てくるでしょうか。これを考えていただいたならば、関税の引き下げには全面的に賛成であるけれども、日本の貿易が非常な阻害をされておるということをよく認識をしていただきたい。これは双方にいろいろの事情もあることであろうが、われわれとしてはアメリカがすみやかにそういうことをよく認識をされて、日本が欧州において差別待遇を受けておることをできるだけ少なくするように協力をしてもらうと同時に、国内的にもそのようなわれわれに対して自主規制をするような措置をなるべく少なくするようにしてもらいたい等のことを述べておいたのでありまして、これがまあ今後におきましてもわれわれとして当然努めていき打開をしていかなければならない方策ではないか、かように考えておるわけでございます。
  193. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 重ねて大蔵大臣にお伺いいたしますが、八条国へ移行する場合、経常取引の為替制限の撤廃で問題になりますのは、自由化のおくれている貿易外取引の自由化でございます。特に貿易外収支で、最近海上運賃を初めいわゆる逆調の幅というものが著しく大きくなってきておる。これを是正をいたしまして自由化を進めていくために政府はいかなる御方針をお持ちであるか伺いたい。
  194. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。  経常取引の自由化が進みますと、為替面での制限ができなくなりますから、ますます今よりも苦しくなる面があるのは事実であります。その意味においては、貿易外収支に大きなウエートを持つ海運及び観光等外貨収支の面に対しては格段の施策を行なって参らなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  195. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 八条国への移行は資本取引の自由化を直接義務づけるものではございませんが、八条国への移行によりまして国際収支上の理由によるところの為替制限が撤廃された場合、日本の通商航海条約の内国民待遇条項によって米国資本の流入を規制できなくなるわけであります。わが国産業界に対しまするところの米国資本の支配というものは非常に強まるのでございます。現在でも株式・証券を中心にいたしまして相当強まりつつあることは御承知のとおりでございますが、この点、明年十月の条約更新期を控えまして、政府は外資法の改正を初めといたしまして資本取引の自由化の問題等につきましていかなる具体的処置を持っておられますか、お伺いいたしたいのであります。
  196. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。  八条国移行は、御承知のとおり、IMFその他、他の機関から要請をせられるものではないのでありましてフリードマン氏がもう十四条国にとどまるだけの理由がないと言われておりますが、八条国の移行そのものについては日本政府みずからが決定をするわけでございます。  なお、八条国に移行をしてもすべてを自由化するために一体一年でやるのか二年でやるのか三年でやるのかということは、各国の状況及び日本の国内産業の状態を十分慎重に見きわめた上で八条国移行を決定するわけでございます。  なお、八条国に移行すれば資本の流入等国内産業に相当の影響があるであろうことは予想せられるのでありますので、国内産業保護の立場から十分慎重な態度をとっておるわけでございます。八条国になったからといってすベてが自由でなければならないというわけではないのでありまして、国内産業保護の立場からやむを得ざるものに対しては慎重な配慮をすることは当然でございます。外資法の問題その他に対しては、自由化に対応し、八条国移行の問題等とも関連をし、慎重に検討中でございます。
  197. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 いま一点財政政策につきましてお尋ねいたしたいのでございますが、明年度予算の増加財源には税の自然増収を二千五百億あるいは三千億と見込んでおるといわれておるのでありますが、その編成経過を見ますると、経済成長率を安易に上下することによって何か機械的に自然増収を増減し、単に数字の上のつじつまを合わせるというような操作的印象を受けるのでありますが、明年度の経済見通しと経済運営の基本的態度はここ一両日中におそらく決定せられるものだと思うのでございまするが、この際、大蔵大臣の構想をひとつ示していただきたい。
  198. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。  現在予算は編成中でございまして、閣議で最終案の決定がいたしておりませんので、つまびらかに申し上げることは差し控えたいと存じますし、また、ここで申し上げるほど最終的な数字が固まったわけではございません。ただ、せっかくのお尋ねでありますから、基本的な考え方を申し上げますと、あくまでも健全均衡の基本線を貫いて参るつもりでございます。しかし、産業経済の状態、ただいままで申された自由化に対応しての国内産業の育成保護強化という面もございますし、輸出振興を第一義に考えておるのでございますので、財政投融資及び民間資金の活用等、積極面を加味して参りたいと考えております。先ほど申されましたが、来年の経済見通しにつきましては何か上げ下げをしておるようなお話でございますが、そのようなことはございません。深刻に今年度下期の経済の推移を見きわめつつ来年度の経済成長率の姿を的確に捕捉をし、また推定をし、それに基づいて健全均衡の基本をくずさず、税収の推定を今行なっておるわけでございます。
  199. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 時間がございませんので、また別の機会に財政問題をお尋ねするといたしまして、荒木文部大臣いらっしゃいますか。  私は毎回本委員会でお尋ねをするのでありますが、いつも時間がなくて十分申し上げられないのでありまするが、青少年の非行の問題なのでありまするが、最近の統計によりますと、青少年の犯罪が著しくふえておるわけでございます。検挙人員の数から見ましても、三十四年に十三万九千のものが、三十六年には十六万、それから起訴をせられた者は二十数万の起訴のうちに一万人いる。非常におびただしくふえておると同時に、また犯罪の性質というものは非常に変わってきておるわけでございます。  そこで、これの原因は、私は、家庭生活の変化とか、あるいはおとなと少年との考え方の断層とか、あるいは余暇時間の増大と消費生活の豊富とか、マスコミの影響とか、あるいは少年の身体的な成熟とか、あるいは戦時及び戦後の混乱期の影響とか、こういういろいろの原因はあると思うのでございます。  先般私ヨーロッパへ参りましたときにも、特にこの問題に関心を持ちまして、いろいろ各国の状態も伺ったわけでございますが、たとえてみまするならば、日本と同じように敗戦をいたしました西独でございますが、戦争で二十万人両親と別れております。それからまた、六人に一人は東部から逃亡をしてきておる者でございます。また、二十五万人の浮浪者というものがいたわけであります。それから五万三千人の浮浪児がいて、非常に少年の犯罪というものが多くなってきたわけでございまするが、最近その対策といたしまして、御承知のとおりドイツは各州が非常に強いのでありますが、各州に諸種の青年団というものが生まれまして、西独のいわゆるユーゲントリンクというようなものに総括せられまして、大体五百万人おりまして、非行少年の防止のための成果というものが非常に上がっておるのであります。それからまたイタリアでございまするが、経済、生活環境というような点からいって、私どもはイタリアに特に非行少年が多いと思ったのでありまするが、非常に少ないのであります。いろいろ原因を聞いてみまするというと、まず第一は、これは池田さんがどこかの歓迎会で申されたのでありますが、カソリック教の影響でございます。御承知のとおり、あそこは九〇%がカソリック教徒でございます。そこで、家族制度的な点が強くて、そして宗教的な問題から家庭教育というものが盛んであり、そして日曜には必ず祖先のお墓参りをするというように、これまた政府が非常に上手にこれを指導しておる。それからまた日本と違って繁華街というものが少ないというような点もございまするが、各国ともそれぞれその成果というものを上げておるのでございまするが、こういう点に対しまして、日本の今の現状から考えまして、文部大臣はいかに考え、またいかに処置をせられていくか、これを最後にお尋ねする次第であります。
  200. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  御指摘のとおり、日本で青少年犯罪あるいは非行事件等が非常に近来多くなり、悪質になりつつあるということも私は承知いたします。まことに遺憾であると思います。その原因につきましても、大竹さん御自身質問の中で御指摘になりましたようなことが原因であり、遠因であり、また、相互が相寄り相助けて青少年の犯罪、非行事件を起こす原因になっておろうかと、さように私も思うのであります。  したがいまして、どう対策を立てるかということといたしますれば、まず第一は、何といっても家庭教育、親がもっとしっかりすべきじゃないか、しつけをすべきじゃないか。自分の生活体験に基づいたこれと思うことを善意をもって教え込むという意味のしつけ、これが私は戦後忘れ去られておるのじゃなかろうかと思う節々があるのであります。それからさらに、学校教育が青少年の犯罪、非行事件等の今後に対する対策として重大であるということは申すまでもないところであると思います。学校教育面からいきますと、この委員会でも一両回お答えしたことがございますが、大竹さんの御指摘になりました中にあったと思いますが、戦後の学校教育、特に義務教育の中においての徳性の涵養ができなかった、もしくは忘れられておるがごとき状態が続いたということも考え合わせまして、徳性を涵養する道徳教育がもっと充実し展開されておらねばならないと思うのであります。さらに、いわゆる社会教育の場におきましても、これまたおとながあらゆる職場において、マスコミも含めまして、本気で青少年のために親身に善意をもってこれを誘導するという努力が必要であろうかと思うのであります。特に教育の場におきましては、文部省にもむろん責任がありますから、責任の範囲のことはベストを尽くしたいと思いますけれども、教える先生も先生らしく徳性涵養には真剣に取り組んでいただきたい、かように考えておるのであります。
  201. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 大竹委員質疑は終了いたしました。   —————————————
  202. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に、田畑金光君。
  203. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は、民主社会党を代表いたしまして、主として石炭問題について政府の所信を承りたいと思います。  石炭調査団が約半歳にわたりまして現地調査を行ない、また、各方面の意見を聴取しながら客観的な資料に基づいて検討を続け、十月の十三日に政府に大綱の答申をいたしましたが、われわれといたしましては、私企業を前提とする今日の段階において、この答申趣旨はやむを得ざるものありという立場をとっております。しかしながら、問題は、政府がこの答申を完全に実施して当面する石炭の隘路を打開するかどうかということだと考えております。そういう立場から、われわれは政府考え方なり施策を強く監視していきたい、こう考えております。私たちといたしましては、調査団の答申の中に、なるほど雇用の面、国際収支の面、あるいはエネルギー安全保障の面等等から結論を出しておると規定しておりますが、しかし、四月六日のあの閣議決定をなされた当時の客観的な情勢ということを振り返ってみました場合に、われわれは雇用の面から申しまして多くの疑問を持つわけです。その意味からいたしまして、当然石炭需要確保をどの程度今後政府維持されるかということが一番基本的な問題になってこようと見ております。  そういう立場で私はお尋ねするわけでございますが、まず最初に私お尋ねしたいことは、十一月二十九日政府石炭対策大綱をきめておられます。そうして、第一に需要確保対策を掲げておられますが、「石炭需要確保は、石炭鉱業の自立と雇用安定のための基本的な課題である。このため、石炭需要確保には最大限の努力を払うものとし、」、このように言われて、幾らの石炭確保をなされるかということを明示しておりません。調査団の答申は明確に数字を明示しておるが、政府の対策大綱には数字の明示がない。これは、政治的な考慮によってこのような内容になったのかどうか、まずそれを承っておきたいと思います。
  204. 福田一

    国務大臣福田一君) お説のように、需要確保の面ではそのように書いてございますが、しかし、これの一番の前文におきまして、調査団の答申を基本としている、こういうふうにうたっておるのでございまして、その調査団は五千五百万トンという数字を表わしておるわけであります。しかしながら、私たちとしては、五千五百万トンでいいという考えではなく、できるだけふやしていけたらふやしたいという考えはもちろんあるわけでありまして、そういう場合において、各年ごとの、三十八年、三十九年、四十年、四十一年というような各年ごとの需要その他も変わってくると思います。そういう場合において、五千五百万トンは必ず確保するが、できればまあその上にも確保できたらというような感じをもってその数字を入れなかったわけでございます。
  205. 田畑金光

    ○田畑金光君 私、総理大臣のお考えを承りたいと思いますが、先ほど来の質疑応答でおおよそ政府考え方を聞いて理解したつもりでおりまするが、確認という意味において私はさらに総理の見解を承りたい。   〔委員長退席、理事平島敏夫君着席〕  エネルギーの問題を論議する場合に、経済合理性の問題を離れてはもちろんあり得ないと思います。また、消費者選択自由の原則を無視するわけには参らぬと思っております。少なくとも経済の合理性を考え、エネルギー消費者選択自由の原則を尊重しながらも、なおかつエネルギー安全保障あるいは経済全体の今後のあり方ということから見ました場合に、われわれといたしましては、石炭需要の問題について一体どのような考え方で取り組んでいくべきかということが一番大事な問題だと考えておるわけです。その意味におきまして答申を見ますると、「五千五百万トン強の精炭の需要は十分確保されるものと考える。この数量の確保は、わが国エネルギーの総合バランスの上からも、またエネルギー安全保障という観点からも最小限必要である。」と、はっきり調査団の答申は「最小限」と、こう言っております。最大限ではありません。したがって、今後の石炭需要というものは五千五百万トンの確保をはかることは当然政府の責任であるが、さらにそれ以上について需要確保措置政府が行政措置その他によって確保することは当然調査団の答申を尊重する精神である、このように私は考えますが、この点そのように考えて間違いがないかどうか、総理の見解を承っておきます。
  206. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私が見るところでは、五千五百万トンがこれはもう楽に確保できるとは思っておりません。非常な努力を要します。で、あらゆる努力をいたしまして五千五百万トンを確保いたします。しこうして、その努力がもっとうまくいき、また、いろんな行政に助けられてそれ以上になることは、これは多々ますます弁ずでございます。そこで、お話のように、できるだけの努力は私はしていこう、こういうことを常に考え、また申し述べているのでございます。
  207. 田畑金光

    ○田畑金光君 そこで、私は、石炭需要確保の一番大事な面は、言うまでもなく、政府の強い行政措置による電力とか鉄鋼とかガス、こういう産業分野に対する長期の引取契約というものが政府の考えているようにあるいは調査団の答申が示しているように完全に守られるかどうかということが将来の需要確保の面で一番大事な問題になると見ておりまするが、電力業界、鉄鋼業界等との話し合いは、政府の努力によって了解済みに達しているのかどうかをこの際承っておきます。
  208. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをいたします。  各業界との話し合いは進んでいるわけでございまして、われわれといたしましては、五千五百万トン確保の線において大体今後協力を得るものと考えているわけでございます。
  209. 田畑金光

    ○田畑金光君 話がついているというようなことですから、われわれとしても了といたしますが、先ほどの公明会の鈴木議員の質問に対しまして、通産大臣答弁が明確になっておりません。電力、鉄鋼業界に対する引取数量の増大に伴う負担の増大については、国において所要の措置を講ずることになっているわけです。電力業界の負担増というものが、当初は、三十八年度を例にとりますと、千八百万トンの予定でございましたが、今度の答申によれば二百五十万トンふえることになっておりまして、したがって二百五十万トンだけ電力業界はよけい石炭を引き取らなければならぬことになっております。どの程度の負担増になるのか、これをひとつ承りたいと思います。
  210. 福田一

    国務大臣福田一君) 電力の場合におきましては、三十八年度において十八億前後、これが四十二年度になりますと五十三億前後になると思います。そこで、私が先ほど申し上げましたことは、電力業界におきましては、政府措置をするということであればわれわれとしては引き取ります、こういうことを明言いたしているのでありまして、その措置はではどうなっているかということについては、ただいま予算の関連において具体化をして参りたい、かようにお答えをいたしたわけでございます。
  211. 田畑金光

    ○田畑金光君 電力については負担増について幾らになるかということが明確になりましたが、鉄鋼業界についてはどうなるのか、どの程度の負担増になるのか。来年は鉄鋼の引き取り分が八百十万トン。これも今の鉄鋼の不況では百五、六十万トンは引き受けがたいというような話も業界ではなされているやにわれわれは聞いておりまするが、話がついているということですからけっこうです。どの程度負担増になるのか。さらに念を押したいことは、電力あるいは鉄鋼等についても、負担増については政府の責任において明確な措置がなされるのかどうか。
  212. 福田一

    国務大臣福田一君) 鉄鋼におきましては、三十八年度で八億八千万円、四十年度におきまして十七億六千万円、こういう数字に想定されるわけでございます。これにつきましても話を進めている段階でございます。
  213. 田畑金光

    ○田畑金光君 今の財源の問題は、後ほどまたお尋ねいたしますが、次にお尋ねしたいことは、政府の政策大綱にも明示されておりますように、増加引き取りを可能ならしめるためには、石炭火力発電所の建設を促進し、これに要する資金については国において所要の措置を講ずる、こういっておるわけです。この点は文字どおり、今後の石炭火力の建設等にあたって、建設費については、政府が従来以上の財政金融その他の措置をやる用意があるのかどうか、これを承りたいと思います。
  214. 福田一

    国務大臣福田一君) 電力業界、あるいはその他において、火力発電をやるという場合におきましては、これは相当の負担増を伴う問題でございますので、そこで、そういう場合においては、開発資金、その他の資金を通じて援助をしていきたい、かように考えております。
  215. 田畑金光

    ○田畑金光君 通産大臣も御存じのように、低品位炭の火力発電所が、各地にあるいは完成し、あるいはまた建設途上にあるわけです。また九電力のそれぞれにおいても、石炭火力専焼の発電所も建設されておるわけです。どの程度の石炭専焼火力発電所が現在できておるか、その建設にあたって、建設費については、どの程度政府として金融面等に、たとえば開銀の資金を振り向けるなどという点で措置をとられておるか、これを承りたいと思います。
  216. 福田一

    国務大臣福田一君) これは電力会社に対しまして、水力発電をやります場合にも、火力発電をやります場合にも、一定の資金ワクを見て、処置をいたしておりますので、そのうちで火力にどれだけ、水力にどれだけという画然たる分は、今数字を持っておりませんけれども、私が申し上げておりますのは、今後やる場合においては、その分について、特に開発資金等の援助をやって、いわゆる負担の軽減をはかるようにして参りたい、かように考えておると申し上げておるわけであります。
  217. 田畑金光

    ○田畑金光君 大臣の答弁は、私は数字をもってお答え願えたはずと思うわけです。たとえば低品位炭火力発電として、九州電力の苅田発電所の建設、これはすでに動いておるわけです。また今、西日本共同火力が建設中で、来年の三月運転開始、また北九州の、電発で今建設中の若松火力発電所の建設、これもやがて操業するでしょう。さらにまた常磐炭田においては常磐共同火力発電が、三十六年の十月に第一期の工事を完成して、これが運転を始めて、操業をやっておるわけです。これらの建設事業を見ますと、たとえば常磐共同火力の例を引けば、建設の総工事費が百六十二億三千万に上っておるわけでございますけれども、開銀の資金はわずか十九億三千万、一二%前後の手当しかやっておりません。西日本共同火力を見ましても、若松の発電所の建設を見ましても、ほとんど同じような資金措置しかやっていないわけで、こういうことでは答申趣旨に相反すると私は考えるわけで、三十八年度の予算措置等において、こういう面について政府としては、どういうお考えを持っておるか、この際、池田総理のひとつ御所見を承りたい。
  218. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 九電力会社の一年の投資額は相当の額に上っております。三千億前後に相なる。これを財政投融資で大部分のものをやるか、あるいは引き続いて開発銀行でやることがいいか。これは全体として、電力債の償還について政府は協力しておるのであります。今後におきましても、開発銀行の金は、そう期待できないから、九電力を主体とした電力債によってまかなっていきたいと思います。
  219. 田畑金光

    ○田畑金光君 それから、この答申を見ますと、九電力以外の電力用炭需要確保をはかるため、産炭地における石炭火力発電所の建設を推進する、こういうことを申しております。御承知のように、昨年の八月三十一日にエネルギー懇談会は産炭地発電ということを答申しておりますが、これはいろいろな事情から立ち消えになったわけでございます。   〔理事平島敏夫君退席、委員長着席〕 調査団は、また同じような産炭地発電の答申を進めておりますが、この点について政府は、どう考えておられるか。
  220. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えいたします。  産炭地の発電につきましては、その地域によりますと、送電線の関係等を考えました場合に、揚地で発電したほうが経済的であるという調査が出ております。もとより産炭地の近所で電気を使う場合には安くなるわけでございますから、今後におきましても、そういうふうに経済上、地域において発電をして参ったという場合におきましては、大いに産炭地の発電を強力に推進していくべきだと思いますが、現在のところでは揚地発電のほうが合理性がある、こういうふうになっておるわけであります。
  221. 田畑金光

    ○田畑金光君 もう一度、火力発電の問題についてお尋ねいたしますが、先ほど私が申しました低品位炭発電の問題、たとえば常磐共同火力を例にとりますと、この火力ができたことによって、年間百四十万トン前後の低品位炭の消費が可能になっておるわけです。さらにまた、今後十七万五千キロの火力を二基建設するならば、常磐炭田の石炭需給問題についてはおおよそ解決のめどがつくと言われているわけであります。私は一例を申し上げたにすぎません。その他の地域においても同様なことがあるわけであります。  こういう場合には、やはり既存の火力の増設なり、あるいは新設なり、こういうようなことについて政府は積極的に今後進められる準備があるかどうか、これをお尋ねいたします。
  222. 福田一

    国務大臣福田一君) 先ほども申し上げましたが、電力業界といたしましては、三十八年度に二百五十万トン、以下順次、石炭をよけい引き取るわけであります。それは火力発電をしていく、重油専焼を一部変えていく、こういう方法以外にないわけであります。したがって、今後もその地域における電力会社が、こういう問題について考えてくれるものだと思います。しかし電力会社以外でありましても、個々の事業が火力発電をやってそうしてそれが引き合う、あるいはそれが合理性があるという場合等々も起こり得るということも考えられます。そういう場合には、またわれわれとしても適当に処置いたしたいと思います。
  223. 田畑金光

    ○田畑金光君 今の点は、一般論としてのみお答えになっているが、私のお尋ねしているのは、低品位炭の対策とか、あるいは石炭需要確保の面で、石炭専焼火力の発電所が各地に建設され、あるいは建設中になっているわけです。そういうような火力発電については、今後政府はこれを増強する、あるいは新設する、積極的に今後取り組む用意があるかどうか、こういうことを申しておるわけです。
  224. 福田一

    国務大臣福田一君) その点につきましては、今後の経済情勢いわゆる電力会社に引き取らせる分というのはさまっておるわけでございますから、それ以上に、こういうようなことをすることは経済性がある、あるいはまたそれを進め得る状況下になってきたというような場合においては、もちろん私はそれを進めることにやぶさかではございません。考え方からいえば、そういう火力発電をできるだけ作って、そうしてこれを使うようにすれば、石炭需要拡大できるのではないかということについてはよくわかるのでありますが、それがいわゆる総理が言っておられる経済の合理性というものと、どうマッチしていくかというようなことも考え合わせて処理をしていかなければなりませんので、火力発電をやるという御趣旨には、もとより私たちは賛成いたしており、また機会があれば、そういうふうにいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  225. 田畑金光

    ○田畑金光君 答申によると、一般炭の需要減退防止のために、来年の十月末に期限がくる重油ボイラー規制法の延長措置の可否を政府部内で検討するように、こういうことになっておりますが、昨日この点については通産大臣にお尋ねして、通産大臣の見解は私見として賛成だということを言っておりましたが、この際、総理の見解を承りたい。
  226. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 石炭問題のうち重要な問題でございますので、重油ボイラー規制法あるいは重油消費税あるいは原油関税の問題等々とかね合わせて、できるだけ早い機会に結論を出したいと思います。
  227. 田畑金光

    ○田畑金光君 ただいまの総理答弁によりますと、急いで検討するというお話でございますが、十二月二十日の、昨日でございますかの夕刊によれば、重油消費税は見送りで原油関税引き上げでいこう、こういうような総理並びに大蔵大臣の見解が一致されたと報道されておりますが、これは当然重油消費税の創設のいかんということが、今度の答申の中に大きく盛られた内容でございまして、政府としては、そういう情勢のもとで、また来年度の予算編成の関係もあるので、この結論を出されたものと、政府というより池田総理並びに蔵相の間では、このような話になったと考えますが、重油消費税を見送って原油関税の引き上げでいくという、これは、その方針であるのかどうか、大蔵大臣、ひとつ承りたい。
  228. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) こういう重大問題は、私としては閣議できめたいと思います。したがって、最終的な結論は出ておりません。
  229. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) ただいま総理が述べられたとおりでございますが、私はきのう総理に原油関税と重油消費税との問題について、私の考え方を申し述べたわけであります。しかしこれは三十八年度予算決定以後、閣議で行なうときにあわせてきめるべき問題でありますので、最終的にいずれをとるかは閣議決定でございます。
  230. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は総理大臣に、もう一度お尋ねしたいわけでございますが、私たちも、結論的に申しますと、重油消費税の創設には反対で、原油関税引き上げ措置で財源措置等をやるべきだということをすでに明らかにしております。政府のこの方針は、たまたまわれわれの考え方とも一致するのでございますが、なるほど閣議決定によって諸施策は決定されるでございましょう。私のお尋ねしたいのは、このような方向で重油消費税は見送り原油関税の引き上げでいく、あるいはボイラー規制法についても答申の線を尊重しながらやっていく、こういう方向でいかれるのかどうか、総理からあらためて承りたいと思うわけです。
  231. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 有沢調査団答申には、重油消費税並びにボイラー規制法について検討すること、こうなっておるのであります。で、検討いたしております。ただ、重油消費税というのは、ドイツその他にも例がございますが、一般中小企業に及ぼす影響がかなり原油関税よりも強い、そういう点等を考えまして、大蔵大臣から相談を受けたときに、そういうことも考えられるという程度の返事をいたしました。これは十分検討いたしたいと思います。あなたのおっしゃる、重油消費税よりも原油関税のほうがいいのだという考え方は私は大多数が賛成すると思います。
  232. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は、総理大臣の御答弁ですから、もう少し明確な御答弁を願いたいと思うのです。質疑応答を聞いておりますと、答弁をお聞きしても、別に総理大臣というわけでもなく、各閣僚とも、えたいの知れない答弁ばかりで、つかみどころのない答弁が多いわけです。やはりわれわれといたしましても、こういう国会質疑応答の中からこそ、政府の方針をはっきり知りたい、また国民に政府も示してもらいたい、そういうような角度で私は、池田総理はもちろん各閣僚とも答えていただきたいと、こう思うのです。こういう話をしますと時間をとるから、この辺で終わりますが、この点……。  そこで、当初重油消費税創設を大蔵省のほうで考えられた節、大体、キロリッター当たり六百円、百億の財源措置を考えられた、こういうことでございますが、原油関税引き上げ措置によるならば、百億の財源を生み出すのに、どの程度引き上げれば財源の確保ができましょうか。
  233. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 重油消費税を検討した結果、百億という数字を明確に目標にして決定したわけではありませんが、ただいまの御質問にそのままオウム返しでお答えするとすれば、百億前後原油関税で取る場合には、約五%の引き上げということになります。
  234. 田畑金光

    ○田畑金光君 通産大臣にお尋ねいたしますが、結局、鉄鋼とか、あるいは電力に対する石炭引き取り増に伴う負担増の措置は、結局、関税の払い戻し、原油関税の払い戻し等々の措置によっておやりになる予定なのかどうか、あるいは一般財源によって補給金その他の措置によっておやりになる方針なのか、通産大臣としては、どういうような心がまえでおられるか承りたい。
  235. 福田一

    国務大臣福田一君) その問題につきましては、ただいまいろいろ研究をいたしておる段階でございますから、予算編成に際して決定をしていただきたい、かように考えておるわけであります。
  236. 田畑金光

    ○田畑金光君 まあひとつ、いつまでも研究中では済まされぬと思うのですが、もっと通産大臣、大事な石炭問題を所管されておられるし、しかもこの国会は、石炭国会として開かれた国会とすれば、もっと私は政府の積極的な御意向を承りたいのでございますが、時間の関係でひとつ、この程度でやめざるを得ないのです。  次に、労働大臣にお尋ねしたいわけでございますが有沢調査団答申を見ますと、「雇用の安定とは、石炭鉱業に働く労働者のすべてが石炭鉱業の内部においてその雇用維持するということではなく、石炭鉱業に働く労働者が将来他の産業の労働者に匹敵する近代的な環境と労働条件のもとで安定した職場を得るよう措置すること」を眼目としておる。このように規定しております。調査団の答申が完全実施をはかるということになれば、炭鉱労働者の労働条件も、一般産業並みに確保できるのだという前提に立っておるわけです。四十二年度までに炭価は横すべりです。三十八年度さらに二百五十円前後の炭価の引き下げを——コストの引き下げをやらなければならない。しかし三十七年度すでにトン当たり百数十円の赤字を大手でも予想される。こういう状況のもとで炭価を押えて、そのような条件のもとにおいての近代的な労働条件の確保ができるかどうか、これは通産大臣に承りたい。同時に労働大臣には、最低賃金一万六千円、答申が出ております。大手ではこの答申はほとんど役に立たないと思っておりますが、中小炭鉱の場合、中小炭鉱にこそ最低賃金の答申が必要になっておるわけです。しかし二年先に、これが見送られておる。すぐ実施する、指導するような御用意はないのかどうか、これを承りたい。
  237. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 仰せのとおり、先般石炭鉱業におきまする最低賃金の告示をいたしましたが、これは中小炭鉱につきましては明後年まで延期をいたしております。しかしこの趣旨石炭産業の雇用条件をできるだけ維持改善していきたいという趣旨でございますので、政府といたしましては、最低賃金の適用のない中小炭鉱につきましても、でき得る限り行政的措置をもちまして、その賃金水準の維持改善に努めたいと存じます。
  238. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをいたします。労働条件の維持向上ができるかどうかというお話でございますが、ただいまやりますようなスクラップ・アンド・ビルドによりまして、そうして今までの二十六トンというのを四十トン前後まで上げたという形になったときにおいては、相当石炭鉱業自体が経営的にも充実してくるわけであります。そうすれば、その段階、それに応じて順次いわゆるこの労務者といいますか、従業員のお方の待遇改善も措置し得る、かように考えておるわけでございます。
  239. 田畑金光

    ○田畑金光君 労働大臣にお尋ねいたしますが、雇用促進手当四百五十円の頭打ち、これは失業保険金に見合って各自の額が支給される仕組になっております。したがって、失業保険法の改正等によってその最高額が引き上げられるような措置がなされた場合には、当然雇用促進手当等についても検討さるべき問題だと考えます。また家族持ちの炭鉱離職者が生活しながら雇用の就職活動を進めていく上には、どうしても四百五十円では少な過ぎる、そういうような問題が起きた場合には、当然これは考えらるべき、検討さるべき問題と思うが、その点どうでありましょうか。
  240. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この就職促進手当の日額は、従前の収入の六割を基準としてきめるという点におきましては、失業保険の給付金と同様でございます。しかし、最高額につきましては、失業保険の場合は七百円であるのに対しまして、この手当は四百五十円になっておるわけでございます。なぜ四百五十円で頭打ちにしたかということになりますと、昨日来申し上げましたとおり、この財源が全額国費によるものであるという特別なものであります。また失業対策事業の賃金日額等との均衡からも四百五十円程度が適当だ、こういう趣旨できめられたわけでございます。したがいまして、失業保険の給付金の最高額の七百円と面接に関係がある問題ではございません。したがいまして、政府といたしましては、ただいまの段階では、この金額をもって適当であると、かように存じております。
  241. 田畑金光

    ○田畑金光君 現在の段階でどうする、こうするというのでなくして、将来失業保険の最高額の上昇、あるいは物価高その他経済の諸条件の動きによっては、当然雇用促進手当についても検討さるべきだと思うが、あらためて労働大臣の見解を承りたい。同時に、職業訓練手当についても、これは低過ぎると思うが、今後職業訓練所において、離職者が職業訓練を受けていくには低過ぎると思うが、この点はどういうお考えであるか。また半年間の入所期間では、技術の修得が困難であるというのが各訓練所におる、現に仕事を、技能の修得をやっておる方々の共通の希望意見、一年ぐらいにせめて延ばしてもらいたい、この点はどうでしょうか。
  242. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 物価の変動その他の理由によりまして、失対事業の賃金の日額等に大きな変更がある、かたがた現在の四百五十円では、この手当の本来の目的でございまする就職活動の促進並びに離職者の生活の安定という趣旨を達し得なくなるのであります。その場合におきましては、当然この金額は改定されるべきものと考える次第でございます。  次に、訓練手当でございますが、現在の日額三百円は、必ずしも十分でなく、このために訓練の実を十分にあげ得ない点がありはしないか、かように存じまして、目下これの増額について検討中でございます。さらに訓練期間の最大限六カ月を延ばす必要はないかという御質問でございますが、ただいま、一年まで延長する措置について、これまた研究をいたしております。
  243. 田畑金光

    ○田畑金光君 企画庁長官にお尋ねしたいわけですが、近く、新店業都市建設促進法に基づいて新帝業都市の指定等についても、追って現地を調査され、結論を出されると聞いておりますが、この点について、いつごろに予定されるか、その基準並びに今後の運営の方針について承りたい。
  244. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 数日前に指定の基準を審議会決定いたしましたので、それに基づきまして年度内は基本調査をいたしたいと考えます。そしてその後に関係各大臣の協議を遂げましたならば、明年度に入りまして、しかるべく指定をいたしたい、こういうふうな手順を考えております。
  245. 田畑金光

    ○田畑金光君 政府としては、後進地域の開発なり、今申し上げましたように、新産業都市の建設と地域的な経済格差の解消、あるいは経済的二重構造の解消等についていろいろ考えておられるようでありまするが、これから繁栄する町を作ることもけっこうです。しかし、炭鉱地帯のように、これから滅びていく地帯の、その繁栄を維持するということも私は大切だと思います。そういう意味合いからするならば、たとえば閉山、縮小等でさびれていく炭鉱地帯等については、新産業都市建設促進法に基づいて新産業都市の指定ができるならば、優先的に考慮すべきだと思うが、このようなことについて総理並びに企画庁長官の御見解を承りたいと思います。  さらに、時間が参りましたので、私はこの際、池田総理にILOの問題について同時に承りたいと思います。  池田総理は、先般ヨーロッパ旅行から帰られた直後、たしか閣議において、次の通常国会では、ぜひともILO八十七号条約の批准をしたい、するように協力してくれ、このような話をなされたと聞いております。私も、実は今回国会を代表し欧米諸国を歩いてみましたが、特にスイスのジュネーブに行ったときに、いろいろ話を承ったわけです。かつて石田労相がILO会議に出席されたおり、モース事務総長が石田さんにこんなことを言ったということを私は現地で承りました。今日ILOの問題は、労働者の自由や権利擁護の問題よりも、むしろ後進国をどう引き上げるかという問題に移ってきている。後進国をどの陣営がつかむかというような問題に移っている。この点から見たとき、アジア、アフリカ諸国とヨーロッパ先進諸国との関係は、植民地と非植民地との関係があったので、しっくりしない面がある。この点日本が一番いい地位に、立場にあるのだ。日本がこれから、こういう東南アジア、アフリカ諸国の指導的な立場に立つことを、これらの国々は期待している。しかるに日本がILO八十七号条約を批准していないことが、あたかも日本は、結社の自由がないように、これらの国々に見られており、その点、日本とソ連が結社の自由がないという点では、東西両横綱であるといわれているわけです。ILOの本質も、第二次世界大戦後変ってきております。私は、労働時間の短縮の問題について、ことしの六月の理事会等においても、時間の短縮に関する勧告等がなされておりまするが、日本政府は、これについて棄権をしております。私は、そこで、池田総理が今回ヨーロッパ諸国を旅行されて、いろいろEEC諸国との今後の貿易通商の増進の面、あるいはまた、日本を紹介する面において、それなりの成果をあげられたものと考えますが、しかし、ヨーロッパ諸国は、なお日本に対し疑惑の念を持っております。日本が今後、これらの諸国に貿易、通商を拡大するためには、どうしても私は日本の商品がダンピングだという誤った印象をぬぐい去ることが大事な問題だと考えております。そういう意味におきまして、ILO八十七号条約は、ぜひひとつ総理がヨーロッパ旅行から帰られた閣議の席上で発言されたそのとおり、次の通常国会において、ぜひ成立を期すべきものだと私は考えますが、総理の御見解を承っておきます。
  246. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 産業都市の指定につきましては、いろいろな条件を考えて結論を出したいと思います。  ILO八十七号の法改正並びに通過は、私年来の考えでございます。ぜひ提出し、審議を終わりたいと思います。
  247. 大谷藤之助

  248. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 大谷君。
  249. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 ただいま……(議場騒然、聴取不能)
  250. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 静かにして下さい。  大谷君ほか三名から、質疑打ち切りの動議が出ましたが、その採決前に、委員長の不信任の動議が藤田君ほか三名から提出せられました。よって委員長は本席を平島理事に渡り、退席いたします。   〔委員長退席、理事平島敏夫君着席〕
  251. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 委託を受けました理事の私が、委員長の職務を代行いたします。  藤田君ほか、三名の方の提出の、委員長木内四郎君不信任動議を議題といたします。  まず、委員長不信任動議の趣旨説明を求めます。藤田君。
  252. 藤田進

    藤田進君 私は、本院の予算委員長木内四郎君に対する不信任動議の発議者の一人として、その趣旨説明をいたします。  木内委員長は、本第四十二回の国会開会以来、委員長理事打合会等をもって今日までやって参りました。その間における委員長委員長理事打合会並びに本委員会の運営については、われわれも信頼を持ってやって参りましたが、特に昨日あたりから私ども諸般の面において、委員長に対する疑義を抱いていたところでございます。その諸般の点については、ただいまからるる申し上げたいと思いますが、実は御承知のように、委員長理事打合会を持って、これを前置主義として、各会派の時間の割当あるいはその質問者の順位、休憩、開会、散会等を含む一切の運営を委員長理事打合会でやって参りました。本日も、今朝委員長理事打合会を持って、そして開会並びにその後の運営が決定せられているのであります。従来きまりまして、今日現実に生きている運営の案は、次のようなものであります。  本日は、公明会、第二院クラブ、民主社会党、これら三派からの御提案もあり、特に阿部竹松委員質疑につきましては、持ち時間はかなりあるけれども、さらにまた次に予定いたしました戸叶武君の質問につきましても、時間は相当あるけれども、しかし、院の、特にこの本予算委員会の運営の円満をはかりますために、社会党に対して特に要望がございました。それは本日、社会党の持ち時間をやって参りますと、本日午後かなりの時間をさくことになるので、ついては社会党阿部委員並びに戸叶委員の持ち時間はできるだけ短縮をして、残りの時間は、あと質疑者が二人用意されておりますから、この山本伊三郎委員及び豊瀬禎一委員に対して時間を与えるということとし、大体の時間を、社会党阿部並びに戸叶委員質疑終了を十二時半——正午過ぎ三十分の時間で終えてもらいたいと、こういう御意見があったのであります。これに対して当初自民党のほうでは理事会において、社会党は一応たな上げをして、今朝からは公明会、第二院クラブ、民主社会党、この三派が既定の質疑順位に基づいて質疑を継続するという、そのことを委員長から直接、理事会がまとまらないままに予算委員会のこの席において、賛否を聞いた上で、その決にしたがって、本日の運営をしたいという昨夜からの自由民主党意見を主張されたのが今朝の理事会でございます。しかし、このような無理な、かつてない、前尾幹事長は異例なことをやるということは、けさの新聞で承っておりましたが、そのことが出たのかどうかは別として、そのような異例なことは、これは正常な姿ではないという趣旨自由民主党を除く各会派の意見によりまして、ついに阿部並びに戸叶君の時間を制限して、あとに残して、そして正午過ぎ三十分の十二時半に社会党は終わるということにきまり、もちろんその後は、各委員の手元に配付されている鈴木委員、大竹委員、先ほど済みました田畑委員、済みますれば山本伊三郎委員になり、また豊瀬禎一委員になり、最後に須藤委員になって、各会派一回りはするという、生きているお手元にあるこの印刷物のように取り運ぶことは当然のことであります。しかし、私ども場内でいろいろうわさなり——委員長代理、よく聞いてもらいたい、与党理事等に、いろいろ折衝を場内交渉でもって見ますと、どうも田畑委員質疑が終われば、今朝来きめてきたことを一切ほごにいたしまして、何らの協議もなしに質疑打ち切りを動議として出すやに聞いたのであります。  そこで、そのような無謀なことをすべきではない、昨日あるいは今朝にかけて、全会派ともそれぞれ会派内でまとめて努力して、ここまで正常にやってきて、しかも明日会期末、二十二日の午後一時——明日の十三時に、予算委員会としては質疑を終了し、引き続いて討論採決をやるということで、全理事の全会派の了承を得て、時間割はきめられていることでもありますし、何らのこの変更もないことであるのに、突如として田畑君の質疑が終われば、直ちに質疑打ち切りの動議を出すというような動きは、これは穏当ではない、衆議院が行なったような、あの自由民主党単独の強行突破ということは良識を持つべき参議院としてとるべきではない、このようにるる申し上げたところでありますけれども、どうもその正論が受け入れられそうにはない。これを私は予想し、おもんぱかりまして、本日三時に、委員長木内四郎君の手元に対しまして、口頭並びに文書をもって、私は次のような委員長に要請、要求をいたしました。それはでたらめであれば、どうぞ木内委員長の手元にあります書類を見ていただけばいいのでありますが、そういう人はないと思いますので、討論を続けますが、第一に木内委員長に対しましての要求は、しかじかの以上申し上げた、簡単に行ないますために繰り返しませんが、いろいろな動きがあるので、田畑民主社会党代表委員質疑が終われば、暫時自後の運営のために休憩を委員長はとるように取り計らいを願いたい。もしその休憩をとるということが困難であるならば、日本社会党としては、既定——この運営に基づきまして、山本伊三郎君を立てて質疑を続行する用意がありますと、さらに申し上げたのは、山本伊三郎君の持ち時間は、かなり戸叶君等の持ち送りで残りますけれども、しかし明日一時までには質疑討論を終了して、本予算委員会では議了するということに前々からきまっておりますから、したがって山本伊三郎君の持ち時間が長いために、どうも予算委員会の終了は明日十三時にはおぼつかないという心配があるならば、山本伊三郎君の持ち時間は、きわめて大幅にこれを短縮いたしまして運営に協力をいたしましょうということも場内交渉で申し上げ、木内委員長に対しても申し上げたところであります。  ところが、これに対して私は、将来いろいろ紛糾をかもし出しますことが目的ではございませんために、したがって、委員長には同時に文書をもって以上の、すなわち休憩をとること、もし休憩が困難であれば、山本伊三郎君の大幅時間短縮をしてでも質疑を継続し、その間に相談をして、予算委員会の運営をはかろうという委員長に対する要求、要請、申し入れについて、受け入れがたいという事情が委員長にあるならば、田畑委員質疑が終了する前十分、委員長から御回答を賜わりたいということも、口頭並びに文書で申し上げたところであります。  ところで、御承知のように、木内四郎予算委員長からは、事務局を通じまして回答がございました。その木内委員長からの御回答は、次のような御回答がございました。要求、希望いたしました田畑君の質疑終了前十分というのはかなりずれまして、たしか六分前ぐらいであったかと思いますが、その御回答は、今文書並びに口頭で聞いたあの趣旨については応じがたいと、そこで私は、木内委員長のところに参りまして、それは困ると、その間に、与党並びに野党の各理事も委員長席に集合されまして、るる相談していたことは、本委員会におられます方々は、その目でごらんになったとおりでございます。そこで、私どもといたしましては、予算委員会の運営を能率的に、かつ国民が聞こうとするところを真剣に、政府と、そして委員の間に質疑をかわして問題を明らかにしていくという、この趣旨、本旨にのっとりまして、委員長に対して、るる要請をいたしましたが、以上のような状態でございました。  本来、この木内四郎委員長は、私どもいろいろ長いおつき合いをいたしまして、長野県長野市に今日も住まわっておられ、風光明媚でもあるし、人情豊かなところにおいでになる方であって、もとより悪人ではございませんと思うんであります。しかしながら、肝心かなめなときに、本参議院きっての最古参でもございましょう、その経歴という、実にりっぱなこの木内委員長に対して、いやしくも重要な案件である不信任案を出すということは、きわめて耐えがたきを私どもは耐えて出しているゆえんのものは、それは木内委員長が、この重大な段階において、その判断を誤れば、本参議院におきましては与党、野党の別ではない、第二院である参議院も、この立場というものを広く国民から批判されることは、これは当然の結果でございます。それを私は非常に心配いたしまして、るる委員長に協力かたがた事後の運営について要請をいたしましたが、委員長はその間に、いろいろ胸中苦慮されていたことを私も受け取るのであります。本予算委員会は、自由民主党委員ごらんになってもわかるように、大かたの方々が、かつて長年予算委員長をされ、あるいは国務大臣として国政の枢機に参画され、あるいは議院運営委員長として院の運営のベテラン等が多数おられるこの与党議員の中において、与党理事としても、なかなかこの運営をはかるについては、困難をきわめた事情はわかりますけれども、ただ単に、一党一派の無理押しのその決定なり、突き上げに基づいて、院の運営をはかるということは穏当でもないし、お互いに謙虚に話し合い、かつ円満に能率的にこの予算委員会を進行させることが最も大切であるという趣旨からこれを考えてみますと、まさに予算委員長のとられた、すなわち事前に予算委員長不信任案なるものは、事務局に対して時間を確認し、あらかじめ提出をしておき、かつ委員長にも、そのような無理をなさると問題が起きますよと申し上げたにかかわらず、突如として大谷藤之助委員であったかどうか、喧騒でもありますし、よくわかりませんが、何か質疑打ち切りらしき動議を提出され、これに指名をしようとされた等を考えますと、私どもといたしましては、ここに今後の運営のことを考えますときに、木内委員長を信頼して、この委員会を運営するということは、国家のために適当でない、かように考えまして、委員長不信任案を提出いたしましたわけであります。  なお、本委員会において、重要な案件が提案されておりますことは、皆様御承知のとおりであります。昭和三十七年度の予算に対する補正第一号、また、衆議院段階におけるかような事態、内容としては石炭問題、あるいは公務員の給与の問題であるとか、各省庁に関連する補正予算の内容であるとか、それぞれ問題があり、あわせて日韓の交渉は、かなり重大な段階に進展をしておるように、私ども見受けるのであります。こういう時期においては、まだあす一日を残している状況下におきまして、もっともっと与えられた時間は十分に消化させる、こういうことが適当である。私はその意味において、できることならば、この委員会は、今議題となりました委員長不信任案が成立通過いたしましたあとは、新委員長のもとに、あるいはこれは本会議の問題になりますか、あるいは代理のままでおやりになるか、いろいろ問題があとに残るわけでございます。これらについて理事会で相談をし、かたわら以上申し上げた、もろもろの重大案件について、残された明日の時間、でき得る限り本会議等の時間等も十分見はからいまして、継続して質疑を続けたほうが最も適当である、このように私は、あわせて代理委員長にも要請しながら、申し上げる者でございます。さらに、つけ加えて申し上げます。
  253. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 藤田君、簡単に願います。
  254. 藤田進

    藤田進君(続) 従来、予算委員会におきましては、時間の割り振りをいたしまして、今回は全体の時間が、たしか三百三十六分でありまして、およそ残されている時間というのは、半分以上なのであります。特に昨晩などは、与党川上委員について、私ども質疑を継続されるように理事会で提案いたしましたが、これは取り下げられておりますので、したがって、さらに時間は余っておりまして、わが党は百二十分、前日残りました十八分を加えて百三十八分の持ち時間に対して、その大半が、まだ残されているわけでございます。こういう状態では、今後の委員会運営というものがきわめて憂慮されるし、間近に控えた、予算委員会を通常国会で持つ場合のことを考えると、与野党その他の理事会の決定、申し合わせというものは、確実に履行されるという建前からも、私どもは与えられた百三十八分、その大半が残されているのであるから、これを継続して、明日、本会議に間に合うように予算委員会を終了するように取りはかりたいと思うのであります。このことが木内四郎委員長において受け入れられなかった点に、私ども、与党というなかなかむずかしい、与党理事としても苦労したかもしれないが、そういう事情はあったといたしましても、委員長としての判断を誤ったのではないか、かように私どもは考えるものであります。
  255. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 藤田君、簡単に願います。
  256. 藤田進

    藤田進君(続) したがって、私どもといたしまして、この際……
  257. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) あと二分に制限します。
  258. 藤田進

    藤田進君(続) 従来の各国会における質疑討論の、時間内に、時間割並びにその質疑の順序等を振り返ってみますと、三十七回の記録をここに持っております。いずれの国会におきましても、あらかじめ理事会が了承し各会派に配分いたしました時間は、それぞれ十分消化いたしまして、そうして円満に本会議の議題に予算委員会から持ち寄られていることであります。それがなぜ、第四十二回国会、本国会におきまして、かような異例な措置をとらなければならないのか。この点は、私ども了解しがたいところであります。(議場騒然)
  259. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 御静粛に願います。藤田君、あと一分で……。
  260. 藤田進

    藤田進君(続) 非常に簡単に申し上げまして、その意を尽くしませんが、しかし大方の皆さんおわかりのとおりでございます。後ほどこれは賛否の討論も十分行なわれることと思いますから、私は、本不信任案に対して、満場の御賛成をお願いいたしまして、趣旨説明にかえる次第であります。(拍手)
  261. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) これより討論に入ります。  御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。時間は五分に制限いたします。(発言する者多し)討論について五分に制限いたします。  亀田得治君
  262. 亀田得治

    ○亀田得治君 私は、詳細な不信任の理由につきましては、ただいま藤田君から御説明がありましたので、私はその中で、特に今回の委員長のはからいについて遺憾な点について一点触れてみたいと思うのであります。  それは、政党間の約束はきわめて重要でありまして、簡単にこれを破ることは許されないのであります。ところが、先だって来の審議の過程においても、やや明らかになりましたごとく、あるいは世上においては、大体わかっておることでありますが、今回石炭の問題についての自民党社会党間の話し合いというものが、ほとんど妥結の状態において、わずかのことにへ理屈をつけまして、そうしてこれが破棄された事実があるわけであります。私はこの点は、きわめて今回の予算案の審議の関係で重要だと考えるのであります。なぜならば、もし自民党社会党間の、そういう話し合い経過、ほとんど妥結いたしました結論、そういうものが明確になりまするならば、当然今提出されておりまするところの補正予算案というものは、その線に沿って一部変えられなければなりません。あるいは今後の運用の面におきましても、重大なやはり影響が出てくると考えるわけであります。そういう立場から社会党は、その事実関係を明確にしてもらいたい。こういうことを再三この委員会要求をいたしたわけであります。ところが総理大臣は、それに対して知らぬ存ぜぬ、この一点張りで通してきたのでありますが、しかしながら、そんなことは許されないことでありまして、そこで私たちは、委員長に対して、この事実関係というものを明確にするために、両党の関係者、これを委員会に呼んで、そうして明らかにすることを要求したことは平島さんも御存じのとおりであります。ところが、この私たちの主張というものは、事実を明らかにするという問題でありますから、決して意見の対立の問題ではない。したがいまして、自民党を除きましては、他の会派の方々も、なるほど社会党のおっしゃることは、そのとおりだというふうな考え方が相当持たれてきたやに私たちは感じます。いろいろな折衝の末、それでは仕方がないから両党から、この問題の経過についての文書を出そうではないか、こういうことが理事会においてはかられまして、そのようになったわけでありまするが、いまだに自民党側からは、何も出てきておらぬのであります。  そこで私は、委員長の取りはからいとして、はなはだ残念に思いますることは、もし委員長が参議院の予算委員長という自負心を持っておられまするならば、こういう筋の通った要求、理事会における、そういう話し合いというものは、必ず実現できると思うのであります。しかるにもかかわらず、与党に遠慮をして、そうして参議院の予算委員長としての立場というものを忘れまして、そういう点についての努力をいささか——いささかではなく、はなはだしく欠いたようでありまして、私がこの不信任動議に賛成をいたしまするこれが第一の理由なんでございます。  そこで、私の申し上げることが、いかに正しい理由であるかということを明らかにするためには、もう少しその間の事情というものを明確にしてみる必要があるのでございまして、まず私は、その点について皆さんに訴えたいと思うのであります。自民党社会党との間で、ほとんど妥結いたしました了解事項というものをまず読み上げます。
  263. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 五分の時間が過ぎました。
  264. 亀田得治

    ○亀田得治君(続) 「石炭政策についての政府答弁のための自社了解事項。一、六千万トンの需要確保は、現状からみて、非常に困難であるが、政府としては、雇用の安定、国際収支エネルギー安全保障を考慮し、需要拡大について極力努力する。」これが第一項であります。「二、増強維持並びにボーダーラインにある炭鉱強化、育成するため、特別の融資制度を設ける。」これが第二項であります。「三、炭鉱スクラップ計画については、当該炭鉱経済性地域に及ぼす影響等を考慮して、十分に検討し、その方途を講ずる。」これが第三項であります。そして署名は、「自由民主党」「日本社会党」こういうふうに署名の仕方もきまりました。日付はもちろん十二月十七日、こういうふうに了解事項というものができ上がったわけであります。  ところが、この重要な了解事項に至る経過というものを、もう少し皆さんに申し上げないと納得がいかないと思いますので、その点について、若干お話をいたしたいのであります。
  265. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 簡単に願います。
  266. 亀田得治

    ○亀田得治君(続) 第一は、臨時国会再開以来、石炭改築について社会党政府自民党との間でいろいろ交渉が行なわれましたが、もちろんその中心課題は、その第一は石炭需要拡大、第二は雇用生活の安定、この二点であったわけでございます。特に初めは山本幸一代議士黒金官房長官との間で交渉が行なわれまして、そうして雇用生活の安定に関するものとしては、就職促進手当支給期間三カ年後においても、さらに政府は責任を持って処理する点で話し合いができました。しかしながら、第二の需要の安定につきましては三、四回両者の間で交渉がありましたけれども、残念ながら妥結はしなかったのであります。しかるに、十二月十六日の夕刻ごろになりまして、黒金官房長官から秘密裏に、六千万トンとその裏づけの問題について話し合い、その際の窓口を鈴木幹事長にしたい旨の連絡があったのであります。
  267. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 時間が参りました。時間がきております。
  268. 亀田得治

    ○亀田得治君(続) 今、私が申し上げておるのは、われわれ予算委員の中で、客観的に調査した結果に基づく資料なんですから黙って聞きなさい。
  269. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) もう時間です。
  270. 亀田得治

    ○亀田得治君(続) 十六日の午後五時より、自・社両党の国会対策委員長会談が開催されまして……
  271. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 結論に入って下さい。
  272. 亀田得治

    ○亀田得治君(続) その席上、自民党側より、一、予算委員会を開催し、直ちに休憩する。二、個別折衝では進展しないのでトップ会談、すなわち幹事長書記長会談を開いてはどうか。あるいは四者会談幹事長書記長、国対委員長会談を開いてはどうか。そういう話が自民党側よりあったのでございます。
  273. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 亀田君、時間です。
  274. 亀田得治

    ○亀田得治君(続) そういうことで、社会党側は、当方の申し入れの内容がある程度……
  275. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 制限時間が過ぎました。
  276. 亀田得治

    ○亀田得治君(続) 達成の見通しがなければ、委員会に応ずることはできないという意見を述べ、対立をいたしまして、その時は双方持ちかえったのであります。ところが社会党は、当方要求自民党幹事長説明するため、成田書記長が多賀谷氏とともに幹事長室にわざわざ出て行きまして、前尾幹事長鈴木幹事長、中村副幹事長、竹山国対委員長らと話し合いをいたしました。その席上で、六千万トンに対する考え方前尾幹事長から述べられまして、秘密会談として次のような提案がわれわれになされたのであります。ここが非常に重要なところです。聞いておいて下さい。  六千万トンの需要確保現状から見て非常に困難であるが、政府としては四月六日の閣議決定趣旨に基づき、需要拡大について極力努力する。こういうことが前尾幹事長より提案をされました。これはきわめて重大でありまして、そこで社会党側といたしましては、その文章の中で、四・六の閣議決定趣旨に基づき云々とありますが、その意味が不明確でありまするので、この点を明らかにするために、再度自民党側折衝を持ったわけであります。ところがその会談の最中に、先に自民党側民社党に同様の説明をした内容を、民社党が一方的に新聞記者に発表したことが知らされましたために、その不信行為厳重抗議を申し入れて……
  277. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 亀田君、時間超過……。
  278. 亀田得治

    ○亀田得治君(続) 会談を中止いたしたのであります。ところが、八時四十分ころになりまして自民党側は、民社の対外発展に、はなはだ遺憾であったという意を表し、さらに話し合い社会党と継続したい旨の申し出がありまして、その後、第二項につきまして、自民党から次のような提案があったのでございます。これも重要な点でありまして、その中身を申し上げますと、増強維持並びにボーダーラインにある炭鉱強化、育成するため特別の融資制度を設ける。
  279. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 亀田君、簡単に願います。時間超過十分。
  280. 亀田得治

    ○亀田得治君(続) こういう提案がありました。社会党側は、第二項を了承する条件といたしまして、さらに第三項について、次のような提案を行なったわけであります。それは、炭量を有し、地域経済に著しい影響を及ぼす炭鉱スクラップ計画については、慎重に検討し、再建の方途を講ずる、つまり、この項につきまして、「炭量を」というのを「経済炭量」とする主張が自民党側からなされましたが、社会党側は「可採炭量」とすることを主張いたしまして、未解決のままそのときは会談を中止して、明日に持ち越したわけであります。  十七日に入りまして、前記三項につきまして、通産大臣福田氏よりの要求といたしまして……
  281. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 亀田君に注意いたします。時間十五分を過ぎました。
  282. 亀田得治

    ○亀田得治君(続) 「炭量」とあるのを「経済炭量」と訂正するのはのめない旨、鈴木幹事長より連絡があり、社会党はこれに反対し、ぜひ「可採炭量」と改めることを再提案したのであります。——まあ、委員長、もう少しで終わりになりますから——しかし、ついにこのときには妥結に至らず、交渉は相当難航いたしました。しかしながら、十七日午後四時ごろ、勝間田政審会長が始関自民党石炭特別委員長交渉いたしまして、再び話し合うこととなり、鈴木幹事長を交えまして、当方は多賀谷眞稔らを加えまして、再交渉をいたしまして、前記了解事項のとおりついに話し合いがついたのであります。ところが、その際に非常に重要なことがさらにつけ加わったわけでありまして、つまり、就職促進手当については、折衝の過程で、この問題は黒金官房長官山本幸一前国対委員長との間で話し合いがまとまったもので、自民党としては、政府との了解事項として、石炭特別委員会審議の中で解決をはかってもらいたいという申し出がありまして、このことを勝間田清一氏より黒金官房長官連絡をし、お互いに確認の上、自社間の了解事項より取りはずしたのであります。つまり、実質的にはこの点も了解されたわけでありまするが、ただ形式上、この了解事項文書からはずすことに相なったわけであります。先を急ぎますので、省略をいたしまして、結論に入ります。そこで、午後六時の約束の時間に、成田勝間田両氏常任委員長室に行きまして、そこで最終的な自民党側との文書交換をすることに相なったわけであります。勝間田成田両氏は、約束どおり午後六時に常任委員長室に出かけて行きました。ところが、そのころ自民党側では代議士会が開かれておりまして、これはたいへん……。
  283. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 亀田君、簡単に願います。
  284. 亀田得治

    ○亀田得治君(続) 混乱していたようであります。そこで、午後七時二十分ごろ、勝間田氏は、鈴木氏にメモを通じまして、四者会談の開催時間をいつごろにするかということで意見を聞いたところ、鈴木幹事長よりは、八時ごろにやりたいという返答があったのであります。そこで、社会党は、鈴木幹事長の言われるとおり、成田勝間田両氏が再び八時ごろ常任委員長室に出かけて参りました。前尾幹事長鈴木幹事長が来られましたのは、約二十分おくれて、八時二十分ごろでございました。そこで、成田氏より、石炭問題とは無関係であるが、内閣委員会単独給与法案を通過せしめたことを非難するとともに、参議院段階でこの問題について善処することを要望したところ、前尾幹事長より、参議院で取り上げてきたならば好意的に扱う旨の約束がなされたのであります。そこで成田氏は、社会党国会対策委員会連絡のため中座いたしたのでありますが、その中座の間におきまして、勝間田政審会長と前尾幹事長との間に、すでにきまっておりまするところの原文の照らし合わせを始めたわけであります。そこで、両者の、(「やめろ」と呼ぶ者あり)途中でやめるわけにいかぬ。照らし合わせの中身につきまして若干申し上げなければなりませんが、第三項を首相答弁にするか、六千万トンを首相答弁とし他の二つ自社了解事項にするかを相談したところ、結局三項目とも石炭政策についてのこの政府答弁のための自社了解事項にすることに決定いたしたわけであります。つまり、この時点におきまして自社両党間の実質的な合意というものが成立したことは明確なのでごいます。ところが、そのころ成田書記長が再び常任委員長室に帰りまして、そうして〇・一の問題につきましてもう少し明確な線で解決をしてもらいたいという話をいたしましたところ、前尾幹事長らは、それを理由といたしまして、それならば一切を白紙に返すという態度に出て、退席をされたわけであります。しかし、これははなはだ遺憾な事態でありまして、社会党側といたしましても、自民党の……。
  285. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 時間が超過しております。
  286. 亀田得治

    ○亀田得治君(続) こういう横暴な態度に対しましても、なおしんほう強く……
  287. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 中止を命じます。
  288. 亀田得治

    ○亀田得治君(続) しかるに……
  289. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 亀田君、中止を命じます。
  290. 亀田得治

    ○亀田得治君(続) 委員長会談を提唱いたしたのであります。(発言する者多し)
  291. 大谷藤之助

  292. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 大谷君。亀田君、中止を命じました。
  293. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 私は……(議場騒然)……討論を中止し(議場騒然)……の動議を提出いたします。(「採決々々」「討論中だ」と叫ぶ者あり、その他発言する者多し)
  294. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 大谷君の動議に賛成の方の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  295. 平島敏夫

    ○理事(平島敏夫君) 起立多数。成立いたしました。  これより採決をいたします。(議場騒然)……起立……(議場騒然)……否決……(議場騒然)   〔理事平島敏夫君退席、委員長着席〕
  296. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 速記をつけて。
  297. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 ただいま審議中の予算三案につき、質疑を終局し、直ちに討論、採決に入り、討論は各党会派一人とし、発言は一人五分以内に制限することの動議を提出いたします。
  298. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいまの動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  299. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 起立多数。よって質疑は終局いたしました。また、討論の時間は、各党各派一人、一人五分以内に制限されました。   —————————————
  300. 木内四郎

    委員長木内四郎君) これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。松澤兼人君。(「総理がいない」「閣僚全部そろえなければだめだ」と呼ぶ者あり)
  301. 木内四郎

    委員長木内四郎君) この際、政府に一言御注意申し上げておきます。こういう重要な際でありまするので、閣僚の出席につきましても特に御注意を願いたいと存じます。
  302. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私は、ただいま議題となっております昭和三十七年度補正第一号外二件につきまして、日本社会党を代表して反対の討論を行なおうとするものであります。  討論に入る前に一言触れておきたいことは、この参議院の予算委員会で明らかになりましたように、われわれは衆議院における自民党の一方的な強行方針によって多大の被害を受けているわけであります。われわれは予算委員会におきましていろいろと政府を追及いたしましたけれども政府は知らぬ存ぜぬと言うだけでございまして、われわれに対しまして何ら問題の核心に触れる答弁をしておらなかったことは、皆さんすでに御承知のとおりであります。われわれが、かりに新聞記事を中心といたしまして、あるいは池田総理、あるいは黒金官房長官福田通産相その他に質問いたしましても、新聞の書いていることが間違いであるというようなことをしらじらと申しまして、われわれが今日政府がこう言ったと考えているにかかわらず、政府は、そういうことを言わない、あるいはそういうことを知らない、こういう態度で終始されていることが、われわれが良識をもってこの参議院の予算委員会を推進していこうとする場合におきまして非常に障害になったということは、これは、われわればかりでなく、おそらくは自民党の各位もよくそこのところは御理解願えると考えるのであります。  この国会石炭国会であるといわれ、石炭問題を中心としてわれわれは臨時国会の召集を要求いたしまして、政府もいろいろとその対策を講じられまして、予算及び法律案をそろえて提出されてきたのであります。しかも、衆議院におきましては、石炭対策特別委員会におきましては、わずかに十五分の審議をしただけであって、あとは強行採決であります。さらに、予算委員会におきましても、重政農林大臣の失言問題から端を発しまして、四日あるいは五日の時間を空費いたしているのであります。予算の核心に対するわれわれ日本社会党の十分なる質疑もいたされないまま、強行採決によって、単独審議によりまして、われわれ参議院の前にこの関係法律案及び予算案というものが送られて参ったのであります。われわれは、衆議院におけるこのような一方的な強行方針によりまして、初めから審議をしなければならないという非常に困難な状態に陥っているわけであります。われわれは、こういう点を考えてみまして、いかに池田総理が、低姿勢であるとか、あるいは寛容と忍耐であるとか言われましても、実際現われて参りました結果というものは、非常に高姿勢であり、野党の言うことは何らこれを取り入れない、取り上げない、こういう方針で参られていることを、よく承知しなければならないと考えるのであります。石炭対策に関しまして、今申しましたように、衆議院審議の段階において単独審議を行なったという、こういう非民主的な方法によって、われわれは非常に困難を来たしているわけであります。この予算委員会が開始されまして、その衆議院における問題、これを中心にして論議しなければならないということは、実質審議に入り得なかったわれわれといたしましては、まことに遺憾にたえないところであります。  事態がここに至ります経過につきましては、すでにわが党同僚の議員諸君がこの席上においてるる申し上げたとおりであります。今回の石炭問題としましては、政府みずからも、もちろん石炭産業の重大な危機に際しているというこの認識の上に立っていろいろと方途を講ぜられているのでありますが、いざ国会のふたをあけてみますと、政府は現下の石炭危機の実情をどこまで認識しているかということについて、非常にわれわれを疑わしめるものがあるのであります。政府が尊重したと言われます有沢調査団答申の最大眼目であります五千五百万トンの需要確保にいたしましても、十一月二十九日閣議決定石炭対策大綱におきましては、その数字というものが全く出ておらないのであります。この国会における説明につきましても、五千五百万トンは努力目標である、こういうことでお茶を濁しているのでありまして、あの炭鉱の悲惨なる状態は、ニュース、新聞、ラジオ等において、だれもが国民として知っているわけであります。そういう実際に即したきめのこまかい対策というものを、この政府決定によりますところの石炭対策大綱というものを通じて、何らその片りんをもうかがうことができないことは、まことに残念なことであります。さらに、本会議予算委員会におきましても、五千五百万トンの確保の具体的な裏づけを追及いたしてみまして、有沢答申提案いたしておりますような、ボイラー規制法の存続であるとか、重油消費税の創設につきましては、やるのか、やらないのか、これがさっぱりとわからないのであります。これから検討するという程度の答弁に終始しているのであります。このような状態では、肝心な石炭需要確保がはたしてできるかどうかということは、われわれ国民として非常に疑問にたえないところであります。政府石炭対策の予算を提出したということを言っておりますけれども、一方的に石炭産業における労使休戦の約束を破棄して、今後は首切りは御勝手次第というようなふうに石炭資本家代表に通告しているのであります。で、全国の炭鉱に働く諸君が、これを聞いてがく然とし、憤激し、上京して政府の真意をただし、あるいは国会に請願をしようと集まってきたことは、まことに当然のことと言わなければならないのであります。わが社会党は、両院を通じて、政府の真意を確かめようと幾たびか試みたのでありますが、そのつど、検討中、検討中と逃げ回り、あげくの果ては重政農林大臣の無責任な発言となり、正式な審議の方法は事実上封ぜられてしまったのであります。そこで、時局はまことに重大であるから、話し合いで解決すべきだとして、日本社会党自由民主党との間に話し合いが始められたのであります。この両党の間の折衝は、十二月十七日午後に参りまして、六千万トンの需要確保に努力することとなったのであります。これを初めとする四項目の基本的な了解が両党の責任者の間で妥結いたしまして、あとは事実上調印するということ、あるいは案文の整理だけが残されているという状態にこぎつけられたのであります。四日にわたる折衝経過をここで申し上げる時間はございませんけれども、先ほど阿部委員なり亀田委員なりからその折衝経過及び成文につきましては申し上げたところであります。ところが、最後の段階になりまして、池田総理が——池田総理は知らないということを言っておられますけれども、われわれが朗読いたしました経過報告によりますというと、池田総理裁断によってこの妥結が御破算になったということであります。その後は、直ちに、池田総理の言われるいわゆる正常なルートに乗せて、委員会、本会議単独採決、会期延長ということになってしまったのであります。  以上は客観的な事実を申し上げたのでありますが、平素寛容と忍耐とを看板にし、一昨年の三党首会談において単独審議はいたしませんと全国の国民の前に公約されましたその公約というものは、池田総理自身によって破られたのであります。全国民は池田総理不信行為に怒り、池田政府並びに自由民主党のかくのごとき議会民主主義のルールに対する挑戦は絶対に許しがたいものであると考えるのであります。参議院予算委員会の段階におきまして、わが社会党が以上の経過についてただし、総理がこの間の事情を承知しておられるかどうかということについて重ねて追及いたしたのでございますが、総理内閣官房長官通産大臣は、あらかじめ口を合わせて、この天下周知の両党間の交渉を、内容について知らない、相談を受けたことがない、交渉が決裂した後に報告を受けただけであると強弁しているのであります。しからば、今日もし十七日夜原則的に妥結しておった四項目を再検討されたならば、政府として同意し得るものではないかという質問に対しまして、これまた、政府原案を変更の余地は少しもない、こういう答弁であります。これでは池田首相は、警職法の審議における岸信介総理と何ら異ならない。忍耐と寛容の看板は、全く偽わりであって、池田内閣もまたファシズム、独裁に通ずるものであるということを、おのずから証明しているものであると考えるのであります。  現在わが国は重大な問題に直面しております。あるいは日韓会談を中心とする国際関係、あるいは石炭、消費者物価の値上がりを中心とするところの経済問題、あるいは公務員の給与、こういったような現実に国内的及び国際的な問題をかかえ、そのさ中において今回の臨時国会が招集せられ、開会せられているのであります。  日本経済について申し上げますならば、まさに重大なる危機に直面していると申さなければなりません。池田内閣が所得倍増の名のもとにあおり立てた大資本優先の過剰設備投資のために、わが国経済は深刻な様相を呈しているのであります。  第一に、国際収支の問題であります。政府が昨年九月以来とって参りました引き締め政策によりまして、貿易収支はようやく黒字基調となりましたが、アメリカがドル防衛、バイ・アメリカン等の政策を一そう強化しながら、日本に対しては一〇〇%の貿易自由化を求めていることに、さらに加えて、欧米諸国の今後の景気見通しが楽観できないこと、これらの諸国の日本の低賃金に対する警戒心が依然として強いことなどから見て、今後もコンスタントなわが国の輸出が続けられるであろうということは、期待することはできないのであります。しかも、アメリカに対する外貨借款の返済等を考えてみると、わが国の今後の国際収支は、依然として予断を許さないものがあるのであります。  第二は、物価上昇の問題であります。これは自然に物価が上がったといえるようなものではないのであります。政府が物価抑制の方針に反して、公共料金等の引き上げを行ない、その結果として、現在のような物価の値上がりという状態が出ているのでありまして、物価の値上がりは、低所得階層などにその被害が最も大きく現われているのであります。勤労者は、名目賃金の若干の上昇を見ておりますけれども、それにつれて租税負担が重くなり、租税の自然増収なるものは、ほとんどが勤労者の源泉所得税からしぼり出されているということは、まことに重大な問題といわなければなりません。  第三は、過剰生産の問題であります。政府の金融引き締めと、今日まで無計画な過大設備投資によって、ここに本格的な過剰生産、過剰供給による不況を呼び起こしておるのであります。したがって、現在の不況は、戦後の何回かの不況と比較して、比べものにならないほど深刻な問題であります。鉄鋼、繊維、紙、パルプ等は、大幅な操業短縮をやっているにかかわらず、市況は回復せず、造船、機械は大幅に受注が減り、さらに加えて石炭、金属鉱山、合成化学等の産業では、合理化の嵐が吹きすさんでいるのであります。そうして失業者の最後の頼みの綱である失業対策事業は、政府によって打ち切られようとしております。  こうした状態に追い打ちをかけるように、IMF八条国への移行、あるいは一括関税引き下げの圧力がアメリカから加えられております。これらは、日本の勤労者の生活にとって、また農業、中小企業をも含めた日本の全産業にとって、まさに死活の重大な問題であるといわなければなりません。これに対して、池田内閣は、依然として対米従属を深めるばかりであって、日中、日ソ等の貿易を伸展させるということについては、きわめて消極的であり、あるいは前向きの姿勢をとるといいながら、米国の圧力に屈して、何ら見るべきこれらの共産圏との貿易の振興をいたしておらないのであります。すでに財界や自民党の一部にさえ、こうした日本経済の危機打開のために、真剣に日中、日ソの貿易打開に努力している人々があるのに、池田内閣は、アメリカの一喝に屈して、特に日中貿易の問題につきましては、何ら誠意を示しておらないのであります。国民の批判をよそに日韓会談を進め、日本の炭鉱労働者の首切られる人に対しては、財政の支出を出し渋り、韓国の朴軍事政権てこ入れに対しては、惜しげもなく支出しようとしているのであります。こういうようなことは断じて許すべきではないのであります。  このときに、本院に提出されたのが昭和三十七年度予算の第一次補正であります。ところが、この補正予算は、すでに私の述べた日本経済の危機に対する何らの対応策となっていない。したがって、日本社会党は、もちろん内容的にも数々の矛盾と、あるいはその欠陥とを含んでいるものであると指摘し、われわれは断じてこれを承認することはできないと言っているのであります。  次に、石炭政策の問題であります。この臨時国会石炭国会だと言われているのであります。総理みずからも、閣議におきまして、石炭対策大綱というものが画期的なものであると言明しております。しからば、この画期的な対策は、当然今次補正予算は、画期的な予算額として計上すべきであるにもかかわらず、その画期的な石炭対策費は、特別会計を合わせても七十七億五千万円にすぎない。いかに臨時補正的な性格を持っている予算だからといっても、これでは石炭国会の名に値しないものであります。雇用安定を出発点とした石炭鉱調査団は、結局企業の安定を前面に押し出し、大量の首切りの決定版を答申しているにすぎません。政府石炭対策大綱は、この首切りをやりやすくするための画期的大綱となり、三十七年度補正予算は、大なたをふるって排除した労働者の離職対策に、おざなりな資金を計上しているにすぎないのであります。たとえば離職者援護対策として、新たに就職促進手簡制度を設けて、休職期間中に生活の安定をはかるとしておりますが、その額は、一日四百五十円で頭打ちであります。月一万三千四百七十円の生活保護費並みで一体生活の安定がはかられると考えているのかどうか。全く対策の名に値しないものであります。また、産炭地域住民の切実な要求も、この予算では完全に無視されております。これは産炭地域振興対策費としてわずかに一億五千万円が追加されているにすぎません。需要拡大と安定のために、雇用安定をはかるための時間短縮と、その賃金の国家保証、やむを得ず離職する者に対する一時金の支給、再就職に至るまでの生活保障として平均賃金の八〇%保証、職業訓練の拡大強化、住宅確保等、きめのこまかい対策が予算化されてこそ、初めて石炭対策が画期的な政策といえるのであります。政府の政策は、かかる点において十分な配慮が払われておらず、われわれとして断じて承服することができないのであります。  さらに、重大な問題点は、特別会計予算補正が、食管会計における消費者米価引き上げを含んでいることであります。これもわれわれの承服できないところであります。ここにあらためて述べるまでもなく、現在の食糧管理法では、米の生産者価格は、農民の再生産を確保することを旨として定め、消費者価格は、消費者の家計を安定せしめることを旨として定めることになっております。つまり生産者と消費者の二重価格制度をとっているのであります。その差額は一般会計から補てんすることになっており、農民と消費者に対する二重の社会政策費であります。これを食管会計の赤字と称して、政府、与党が大騒ぎすることは、食糧管理法の精神を知らずと申して過言でないのであります。  さらに現在の食糧管理の経費には、食糧庁の事務、人件費、食糧証券の金利、米の輸送費、倉庫料などが含まれております。これらは三十七年度食管予算では五百億円以上に上っているのでありますが、これは食糧管理という政府の行政責任に属するものであって、当然一般会計で負担すべきものであります。  さらにまた、このたびの消費者米価引き上げにあたって特選米という制度が設けられました。これは根本的には、金持ちはうまい飯を食え、貧乏人はまずい飯を食え、という、まことに残酷な考え方であります。さらに重大なことは、政府は、特選米制度を契機として大規模精米施設を作るなど、米穀業者の整理と系列化を進めようとしており、他方、特選米と普通配給米との区別をつけるために、生産者米価に銘柄格差や地域格差をつける方向に進もうとすることが予想されるのであります。こうなれば米の統制撤廃につながるものであり、米も含めた農産物の輸入自由化が迫られている現在、今後の情勢はまことにきびしいものがあると言わなければなりません。こういう点を考えてみて、われわれは食糧管理会計の補正につきましても、賛成することができないのであります。  以上申し述べました理由に基づいて、本補正予算に対して、われわれは反対しなければなりません。  内容的に申しますと、まず、公務員に対する給与改善費であります。政府は、本年八月十日に行なわれた人事院勧告を尊重したと称して二百十九億の給与改善費を計上いたしております。しかし、ここには根本的な問題があります。  第一に、七九%の引き上げは、なお民間給与と比べて依然として大幅に差があるということであります。これでは団体交渉権及び団体行動権の権利を奪われている公務員の利益を守るべき人事院勧告として、また、それを受けた政府措置としてもきわめて不穏当であります。  第二に、初任給の引き上げ及び中だるみ是正など、給与体系についての是正を行なったと政府は称しておりますが、しかし、依然として特権官僚と一般公務員との給与の格差はいよいよ大きくなり、いわゆる上厚下薄の傾向が拡大されているのであります。さらにこれは一般民間をも含めて、賃金体系に職務給の概念を導入して労働者の陣列に分裂のくさびを打ち込もうとする陰険な労務対策であると言わなければなりません。  第三に、人事院は五月一日から給与の引き上げを勧告しているにもかかわらず、この実施を十月一日に引き延ばしております。これで勧告の完全実施などとはまことに笑止千万であります。  私どもは以上の理由からこの給与改善費を容認することはできないのであります。
  303. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 松澤委員、時間がだいぶ超過しております。お早く願います。
  304. 松澤兼人

    ○松澤兼人君(続) 経済の問題について申し上げますと、第一は、経済外交の問題であります。海外から、自由化に引き続いて諸国間の関税一割引き下げの動きが伝わっております。われわれは、これは基礎の脆弱な日本経済にとってまことに容易ならざる問題であると考えるのであります。この背景をなす世界経済の情勢、すなわち、EECの体制確立に伴い資本主義国内部における国際競争がいよいよ激しくなっている情勢を認識しなければなりません。表面的には相互協調をうたいながら、実質的には競争対立ますます今日激しくなって参っているのであります。戦後の世界経済の発展は、いわば第二段階に入っているのでありますが、この点に関する政府の認識はまことに甘く、外交、軍事面における対米従属は、いよいよ経済の政策におきましても、そのことが明らかになっているのであります。  このような経済の事情を考え、さらに第二に、高度成長政策につきましては、先ほど申し上げたとおりであります。農村と都会、あるいは資本家と労働者の経済の格差というものが、いよいよ著しくなっておりますことは、すでに周知のことであります。われわれは、こういう点を考えまして、今回の補正予算につきましては、断じて承服はできないのであります。  以上数点につきまして申し上げましたが、以上を通じまして、まことに今回の石炭対策にいたしましても、公務員給与にいたしましても、日韓会談の問題にいたしましても、政府の現在とられ、また将来とられようとしておりますところの政策に対しては、国民として非常に危険な、あるいは国民の運命をかける重大な問題であるということを深く認識いたしまして、政府の今回の補正予算に、断固反対の意を表明するものであります。(拍手)
  305. 木内四郎

  306. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私は、補正予算三案に賛成するものであります。  その理由をきわめて簡単に申し述べたいと思います。今般の補正の内容が給与改善費であり、また経済問題をこえて大きな政治問題になっておりまする石炭対策費の問題であり、さらに必要欠くことのできない災害復旧費等であるからであります。  ただ、この際、政府にその措置を要望いたしたいことは、今回の補正を加えますと、本年度の予算は、歳出入とも二兆四千八百十四億円という大型予算になるのでございます。したがいまして、勢いインフレを助長し、あるいは物価高を招くことの危険がきわめて多いのでございます。せっかくの給与増額も、追いかけてさらに増額を余儀なくされないように、政府におかれましては格段の配慮を求める次第でございます。  それから石炭対策中最も緊要な点は、二十万人に近い人たちの運命の問題でございます。この二十万人に近い人たちを石炭鉱業の中で雇用するといたしまするならば、石炭の価格をどうしても高くせなければならないのであります。石炭の価格を高くするということは、他のエネルギー等の関係からいたしまして、需要拡大ということは、絶対に期待ができないのでございます。そこで、石炭価格が安いことによって利益を受けまする産業に再就職を与える措置をとることが肝要ではないかと思うのでございます。さらに最近の雇用状況を見ますると、中学校あるいは高等学校の新卒業者に対しまする需要がきわめて旺盛であり、他面におきましては、高年令者に対する需要ということが少ない点でございます。そこで、今後新卒業生を多数雇用する会社に、その一割とか、あるいは二割をこの中高年令者によって充足をすることを、この際特に政府に望みたいと思うのであります。  また、政府が考えておりまする開銀資金の貸付などの際、炭鉱離職者の再雇用をすることをできるだけ徹底すること、そして最善の措置を要望いたしまして、本補正案に賛成をいたすものであります。(拍手)
  307. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 小平芳平君。
  308. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は、公明会を代表して、ただいま議題となっております昭和三十七年度一般会計補正予算等の三案に反対の討論をいたすものであります。(拍手)  今回の補正予算は、公務員の給与改定にしても、石炭対策にしても、年末が押し迫り一日も早く解決していかなければならない問題であります。しかるに、国会における審議は、各方面の注視を集めていたにもかかわらず、国会正常化問題等について、長時間の論議を費さなければならないなど、非常に不満に思っているのであります。今後は、予算の審議には十分に審議を尽くせるよう努めなければならないと痛感をしているものであります。  さて公務員給与も石炭対策も、一日も早い施策が望まれているのに、あえて反対する理由を、次の二項目にまとめて申し上げたいのであります。  第一に、公務員の給与改定について、政府はなぜ人事院の勧告どおり五月一日に実施しないのか、はなはだ了解に苦しむのであります。過去にも勧告どおり実施されたことがあったかどうか。いつも何カ月も置き去りにされているのであります。このような政府の扱いにも、また、これをどうすることもできない現行の人事院のあり方にも、強く不満を持っているのであります。さらに今回の給与引き上げの額も、決して満足のものではありません。政府は、公務員に対して綱紀の粛正等要求するかわり、賃金その他の人事管理にも最大の注意を払っていくよう要望するものであります。  第二に、石炭対策について、エネルギー対策が、将来にわたって総合対策ができていない、その場のがれといわなければなりません。いろいろ事情はあったにしても、七万人にも上る大量の人員整理が急激に行なわれなければならないなどというのは、実に政治の貧困がもたらした結果と言わなければなりません。(拍手)これらの人々に対する離職者援護措置も、はなはだ不十分であり、冷酷であるとの批評もなされているゆえに、政府に対し、もっとあたたかい施策を要求するものであります。  さらに産炭地域の振興対策も、わずかにボタ山整備事業を加えるというようなおざなりなものであります。過去における三池の争議に見られましたように、すでに産炭地域には失業者が多く、その上さらに大量の人員整理があるなど、社会不安の原因ともなっているのであります。こうした欠陥の生じないよう、経済の成長が個人々々の家庭に幸編をもたらすものでなければならないと考えるものであります。  以上のような理由をもって反対いたします。(拍手)
  309. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 向井長年君。
  310. 向井長年

    ○向井長年君 私は、民主社会党を代表いたしまして、政府提案の本年度予算補正三案に対しまして、反対の意向を明らかにいたしたいと存じます。  本国会は、石炭対策をめぐって大混乱を招き、重政失言、自民、社会両党の執行部の二転三転した交渉経緯など、醜を天下にさらしたものと言うても過言ではないと思います。——私は、民主社会党だけがひとり正しいというのではありません。国会運営の健全化を目ざす議員全体の自己反省として、本院はどうしても国民の信託にこたえ、石炭政策の確立をはからなければならないのであって、各種政策補強のためにも、補正予算を一千億円規模で編成せねばならないと存じます。この立場に立って政府補正予算案を検討した結果として、政府案に反対をするものであります。  政府案は、当然大幅補正をすべき歳出項目について、石炭政策の場合にはすこぶる消極的であります。生活保護基準の引き上げや、日雇い登録労務者給与引き上げを無視し、また公務員給与改善については、人事院勧告の完全実施を無視しておるのであります。政府案は、当然補正をなすべき問題を、財源がないから割愛したのではなく、余裕財源があるにもかかわらず、必要項目の補正を故意に見送っておるものであります。  本年度租税自然増収額は、前国会で大蔵大臣が言明したとおり、一千億円を確実にこえることが明らかなのであります。税収並びに税外収入を合算すれば一千二百億円をこえるものと見られるのであります。このような余裕財源を持ちながら、政府は、経済不況下の不況産業と国民生活の実態に即した予算補正を行なおうとしていないのであります。  私は、政府に対し、政府案の欠陥を指摘したいのであります。  まず、石炭対策については、わが党書記長自民党幹事長会談において、わが党側より要望した四点が、今や自民、社会、民社三党を通じての政策ベースになっていることを政府は深く銘記されたいと思います。  すなわち第一は、国内炭の需給規模の拡大に積極的に努力し、少なくとも答申の線である、五千五百万トンの線を上回らせること。第二は、炭鉱離職者の再雇用について、政府が責任を持ってこれを確立すること。第三に、就職促進手当の頭打ちを廃して、失業保険の給付額に見合う金額を支給すること。第四に、本年度五千五百万トン・ベースにおける過剰炭に対し、貯炭融資を行なうこと。その融資規模を当面百万トンとすること。以上の四点が本日現在における政府の政策ベースと言わなければなりません。この四点を政府が認める限り、政府案の石炭対策費はきわめて不足していることは言を待たないところであります。  政府は、第一に、石炭鉱合理化事業団に対する出資の増額、出資を受けた事業団の近代化資金貸付ワクの拡大と資金コストの引き下げ並びに不良炭鉱の整理促進。第二に、石炭対策の新規政策として、産炭地域対策の補強、すなわち産炭地域の中小企業売掛金の不良債権に対する財政融資、市町村財政を補強するための産炭地域特別地方交付税の創設、生活保護、失対事業の国庫負担額の引き上げ等を行なうべきであります。第三に、離職者対策として、就職促進手当は、一世帯三・五人家族を基準として、月額二万円の支給、職業訓練手当は六百五十円を支給、離職者に対する生業資金貸付制度の創設等、明年一月より直ちに実施すべきであります。  石炭対策費のほかの歳出補正については、政府案から漏れている政策補強費として、高校急増費の追加、日雇い登録労務者の給与と生活保護基準の引上げを明年一月より実施をすべきであります。  さらに、公務員給与改善は、人事院勧告どおり、今年五月より実施し、これとは別に、勤続二十五年をこえる高校、中小学校の先生方であって、校長、教頭に就任されていない人々のためにも、給与を格上げする措置が必要であると存じます。また、不況産業に対する財政投融資として、海運業に対する出資、非鉄金属鉱業、石炭鉱業並びに中小企業に対する融資が必要であるかと存じます。  わが党は、今回の補正規模は、政府案より約四百八十億円増額して、約一千二十一億円とし、歳入歳出の収支を均衡する一千億円補正を実施するよう、政府に要望するものであります。  また、財政融資の追加として、これとは別に、中小企業政府関係金融機関に五百億円、中小非鉄金属鉱山の近代化資金を十五億円、炭鉱山元の過剰貯炭融資五十億円、石炭鉱合理化事業団融資追加百十五億円、合計六百八十億円の融資を追加すべきであります。  私は、以上のような組みかえを政府に要望し、これを取り入れない政府案に対しては、反対の意向を明らかにするものであります。  討論を終わります。(拍手)
  311. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 須藤五郎君。
  312. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、日本共産党を代表して、怒りを込めて、昭和三十七年度第一次補正予算三案に反対するものであります。  本補正予算の審議にあたって政府自民党のとった態度は、醜いやみ取引と謀略に終始し、衆議院においては、単独審議という暴挙に訴えたのであります。しかも、本日、本委員会において、日本共産党を代表しての私の質問は、自民党質疑打ち切り強行によって、発言を封じられたのであります。自己の党利党略のために、当面する全国民的な大問題に対して、天下の公党であるわが党が、政府の見解をただし、その反人民的、反民族的諸政策を追及する当然の権利さえも奪ったのであります。かかる暴挙をあえてして通過をはからねばならぬところに、本補正予算の正体が隠されているのであります。  本補正予算は、石炭対策、公務員の給与改善、災害対策のためのものであると称されております。しかし、その内容は、羊頭をかかげて狗肉を売るたぐいであります。いや、毒まんじゅうを無理やり口に押し込もうというものであります。本補正予算の中心をなしている石炭対策費及び石炭四法案を見るならば、本補正予算の性格は、一目瞭然であります。結局、炭鉱労働者七万人の大量首切りと殺人的な労働強化、低賃金、中小炭鉱の取りつぶしを国家権力と法律によってしゃにむに強行するというのがそのねらいであります。就労手帳であるとか、就職促進手当であるとか、それらは全郡この殺人的な計画をごまかすための手段にすぎないのであります。しかも政府は、そのごまかし資金をさえ値切りに値切ろうとしているのであります。いわゆる石炭対策費総額三十一億円余りのうち、労働者のために使う金は、わずかに二億六千万円しか計上されておりません。そうして他方三井、三菱、住友を中心とする大資本に対しては、膨大な合理化資金を国家予算と法律によって保証しようとしているのであります。このようにして引き出された国家資金が、一体何に使われているのでありましょうか。そのほとんどは石炭産業以外のもうかる事業に使われ、炭鉱のその意味における設備の近代化には使われていないのであります。これは過去十数年の実績が示しているところであります。これが独占企業の実態であります。この補正予算及び石炭四法案のどこに炭鉱労働者や産炭地住民の生活と権利を守り、わが国の民族資源である石炭産業を維持し発展させようとする態度の一かけらでもありましょうか、どこにもないのであります。それだけではありません。わが国の石炭産業を今日のように荒廃さした真の原因にメスを入れようとしていないのであります。真の原因とは何か。それはアメリカ石油資本による日本のエネルギー支配であります。三十四年十二月以来の政府石炭合理化五カ年計画は、このようなアメリカか支配を積極的に進めることを前提としてやってきたものであります。そのため資金面その他を通じて独占企業だけを生き残らせ太らせるだけに努力を集中し、一切のしわ寄せと犠牲を石炭労働者、中小炭鉱、産炭地住民に転嫁してきたのであります。そうして、今日の悲惨な状態を作り出してきたのであります。政府は、この根本的原因を除去しようとしないどころか、今回さらにそれを強めようとしているのであります。政府が今日強行しようとしている合理化案の基礎となった石炭調査団の答申案によれば、昭和四十二年には日本のエネルギーの約六〇%を輸入エネルギーにたより、事実上アメリカの石油資本の手にゆだねることにしているのであります。こういう態度では、わが国の民族資源である石炭産業を真に自主的、平和的に発展させることは絶対にできないのであります。こういう売国的な立場に立っているからこそ、炭鉱労働者七万人も十万人も首切り、その家族を含めて数十万人を路頭に迷わせるような殺人合理化計画を平気で断行することができるのであります。中小企業の五人や十人死んでもかまわないと言った、かつての池田放言どころの騒ぎではありません。これこそ人殺し、国こわし政策そのものであります。政府エネルギー革命論などと借りもののごまかし理論を使っているが、日本では、石炭がますます必要だし、石炭産業を発展させる道もあるのであります。現に福岡でも北海道でも、炭鉱地帯の中で、学校に燃料がなく、子供が寒さにふるえているではありませんか。政府はそれを放置しているだけであります。石炭労働者と民族資源、石炭産業を救うための金もあり道もあるが、現に総理はこの十七日、アメリカのかいらい朴政権に、有償無償五億ドル、約二千億円をつぎ込むことを決定しているではありませんか。また、ケネディの中国封じ込め政策に基づくビルマ抱き込み工作にも、莫大な資金をつぎ込もうとしているのではありませんか。ファシスト朴政権、戦争放火者に金をつぎ込み、海一つ隔てたわが日本の国土福岡では、日本国民を死の苦しみに陥れようとしているのであります。  わが党は、池田内閣の日韓会談を推進し、石炭産業を荒廃に導いて、アメリカ帝国主義に日本のエネルギー産業を売り渡そうとする政策に対し、断固反対し、国民の統一と団結の力によって、これを粉砕することを誓うものであります。
  313. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 以上をもちまして、討論通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決を行ないます。昭和三十七年度一般会計補正予算(第1号)、昭和三十七年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和三十七年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して問題に供します。  三案を可決することに賛成の方の御起立を願います。   〔賛成者起立〕
  314. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 起立多数。(拍手)よって三案は多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  なお、三案の議長に提出する審査報告書の作成につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  315. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時三分散会