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1962-12-13 第42回国会 参議院 文教委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年十二月十三日(木曜日)    午後一時二十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     北畠 教真君    理事            二木 謙吾君            吉江 勝保君            豊瀬 禎一君    委員            久保 勘一君            笹森 順造君            中上川アキ君            中山 福藏君            野本 品吉君            森田 タマ君            小林  武君            千葉千代世君            米田  勲君            高山 恒雄君   国務大臣    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君   政府委員    文部大臣官房長 宮地  茂君    文部省初等中等    教育局長    福田  繁君    文部省管理局長 杉江  清君   事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君   説明員    文部省大学学術    局教職員養成課    長       安養寺重夫君    文化財保護委員    会事務局長   清水 康平君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○教育、文化及び学術に関する調査  (当面の文教政策に関する件)   —————————————
  2. 北畠教真

    委員長北畠教真君) ただいまより文教委員会を開会いたします。  本日の委員長及び理事打合会についてお知らせいたします。  本日の委員会は、高校急増問題、事務職員、養護教諭充実問題、僻地教育対策教科書問題等当面の文教政策に関し質疑を行なうことに決定いたしました。  理事打合会決定どおり委員会を進めたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 北畠教真

    委員長北畠教真君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  4. 北畠教真

    委員長北畠教真君) それでは、これより高校急増問題等当面の文教政策に関し調査を進めます。御質疑を願います。
  5. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 まず、当面、全国的に行なわれております高校全員入学運動についてただしたいと思いますが、残念ながら大臣が来ておりませんので、先に具体的な対策についてただしておきたいと思います。前の予算委員会におきましても、このことにつきましてはいろいろ問いただしたのですが、その後、全国父兄の陳情、請願等の動きもありますし、また、全国知事会におきましても、急増対策という角度からこの問題を取り上げたいということは、文部省は御承知のとおりであります。まず最初にお尋ねしたいのは、全国知事会要求しておったいわゆる急増対策に対して、文部省はどういう評価をし、具体的にどういう予算措置をしたかお尋ねいたしたいと思います。
  6. 杉江清

    政府委員杉江清君) 政府計画府県計画との相違について見ますと、昭和三十七年度において約百七十二億円の相違が生じております。府県計画については、都道府県知事のまとめました数字に基づいてそのような差が生じております。しかし、この数字の中には、政府計画においては除外しておる、たとえば寄宿舎とか、体育館等数字も含まれております。そこで、政府計画に対応する数字といたしましては、百四十八億円になるわけでございます。で、このような差が生じておるから、これについて財政措置補正要求して参っておったのであります。ところで、文部省といたしましても、この府県計画実施状況について調査して参りました。それによりまして、単価構造については大体知事会の言っているのに近い線でこれは改定すべきものであるというふうに考えたのでありますが、生徒数については進学率伸び生徒数伸びについては、府県計画をそのまま認めがたい点も見出せたので、これを一定の基準によりまして検討し、ここまでは国として財源措置を保障をすべく、そのような進学率として六一・八%の数字考えて、それに応じて全体の事業量を算出する、こういうふうに考えたのであります。で、このような考え方は、文部、自治の両省の意見の一致を見たところでありますし、なお、自民党文教部会、また地方行政部会等においても御賛同をいただいたのであります。で、このように政府計画府県計画との差が単価構造比率生徒数伸び、これらについて修正いたしますと、政府計画と新しく今のような補正して考えました計画との差が八十一億になるわけでございます。この八十一億につきまして財源措置補正要求して参ったのであります。で、当初、文部省といたしましては、この財源措置補正は、この臨時国会における第一次補正と一応合わせて行なうことが適当であると考えたのでありますが、しかし、今国会においては、給与改定石炭対策に重点を置くので、このような経費は、第一次補正にはしないという政府方針決定されましたので、まあ第二次補正においてこの補正をしていただくこともやむを得ないという態度でおりましたところ、やはり地方の実情は第二次補正は相当おそくなるわけでございますので、それを待っているわけにいかぬ。この際、早急に財源措置補正をしてもらいたい、こういう要望が出たのであります。そこで、現在財源措置補正をするということになりますと、これは起債措置だけになるわけでございます。そこで、まあその数字等をめぐっていろいろ折衝を重ねましたが、とにかく急いで地方資金のやりくりをする必要がある。早急に現在その措置をする、そういう立場におきまして起債ワクの増の措置は、この数字に基づきましてかなりたんまりと出す、そういうことでひとつ今年度の補正措置を行なう、こういうことに政府方針決定いたしたのであります。その結果、すでに御承知のことと思いますけれども起債ワクの増として従来は五十億円措置されておったのでありますが、それに加えて六十億円の増の決定をみたのであります。そうして、そのほかに政府計画としても別ワクとして考えられておりました土地の買収費に対して、従来はおおむね四十億を措置するという了解があったのでありますが、これを六億ふやして合計四十六億円今年度措置する、こういうことになった次第でございます。以上、経過と現状を御説明申し上げました。
  7. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 あと政治的な判断なり、いきさつなりについては、大臣に聞きますので、努めて数字と照合しながら簡潔な御答弁をお願いしたいと思います。昨年の文部省要求は、大体一千二百億程度であったと思いますが、知事会の全体総合要求も一千四百五十億ですね。大体この三十六年度から四十年度までに到達する計画見通しとしても、総額においては全国知事会要求文部省とは大同小異の線で大蔵当局に対して予算要求をし、急増対策を進めているという方針に変わりはないだろうか。
  8. 杉江清

    政府委員杉江清君) 知事会数字については、先ほどのようないろいろな検討をしなければならない要素もありますので、そのままとは言いがたいのでありますけれども相当額増額をしなければならない、こう考えております。今までの政府計画では、総事業費を五百五億円と予定しておりました。これに対して現在私どもが改訂すべきものと考えて、明年度予算措置基礎考えております全体の事業費は約九百億円でございます。
  9. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 大臣が来たらばまた大臣にただしますが、あなたの事務当局としては、ひとつの基本態度について問題があると思います。というのは、荒木さんはこの委員会の席上で、高校全入運動というのは義務制でない限りナンセンスである、こういう誹謗の仕方をいたしまして、当委員会文部大臣としての不免職に対して指弾を受けたことは御承知のとおりであります。ところが、さきの臨時国会予算委員会において、池田総理は私の質問に答えまして、荒木大臣答弁したごとき、高校生選抜して優秀のものだけ入れるという質問をされるのは心外である、一人でも多くの希望者入学さして国の教育水準を上げるというのが政府責任でありますと、たんかを切りましたね。これは御承知のとおりであります。基本的に荒木大胆の当然選抜をして入れるべきであるという当委員会における答弁池田総理予算委員会におけるいわゆる優秀なものだけセレクトして入れていくという考え方は、総理としては質問そのものが心外であって、一人でもより多くの人間を吸収することが望ましい、この食い違いに対して、事務当局は、総理基本態度を受けて高校の全入問題を考え、あるいは高校当面の急造対策を進めていこうとしておるか、あるいは大臣の意向を受けてやっておるか、どちらですか。
  10. 福田繁

    政府委員福田繁君) 私、その総理の御答弁内容承知いたしておりませんけれども、もしそういう御発言でございましたならば、おそらく気持としてはできるだけ多数を入れたいというような御意思ではなかろうか、こういうように考えるのでございます。したがって、私どもとしては、大臣が再々この全入問題について当委員会でも御説明ございましたように、高等学校教育あり方として、全部希望者を入れるということでなく、やはり高等学校教育に適応する能力を持つものを入れていく、こういう建前をとって、その上でこの急造対策そのもの考えていきたい、こういう態度をとっておるわけでございます。
  11. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そうすると、福田局長は、やはり高校入学させるものは一定試験という経過を通して、一定の、いわゆる文部省が称する学力的な水準に達しないものは入れないほうが後期中等教育の当然のあり方である、こういう考え方に立って、急造対策、あるいは今行なわれておる全入連動を見ておる、このように理解してよろしいですか。
  12. 福田繁

    政府委員福田繁君) そのとおりでございますが、ただ選抜試験を実施するかしないかということは、これはまた別の角度から事情によって変わってくると思いますが、現在の中学校の成績について、内申とそれから選抜試験等と合わせまして高校入学者をきめるという建前になっております。したがって、そういう意味でございましたならば、さっきお尋ねになりましたとおりだとお答え申し上げたいと思います。
  13. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 あなたは約三カ月後の今日になって、予算委員会総理大臣が正式に高校全入運動に対する見解を表明したことに対して、今日もなお、よく知りませんが、多分そうでしょう、こういう議事録に残った、しかも学校問題に対する大臣見解を研究もしないでおいて、多分こうだろうと思いますがという答弁をするということは、非常に無責任というか、不見識だと思いませんか。当日の委員会においては荒木文部大臣も御出席でしたから、少なくとも大臣はそのことに対して自後どうするかということについては直接的には責任を問いませんけれども大臣一人がぽつんとあの席上に出ておったのではなかろうと思います。私のほうでは文部大臣出席要求をしていましたから、当然あなたが出ていなければその他の人々が出ておったはずです。総理正式答弁を全然知りませんけれどもといって、別個のそんたくをしてここで答弁するということの無責任さを感じませんか、御答弁願います。
  14. 福田繁

    政府委員福田繁君) もしその総理の御答弁にたがうようなことを私が申し上げているのであれば、いつでもそれは訂正いたします。それは速記録を調べまして御返事をいたしたいと思います。
  15. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 速記録を調べて御返事を求めているのではなくして、そのことに対する総理見解が表明されていることを、しかも、私はその席上で、文教委員会における大臣答弁とは食い違っていることを指摘し、総理がその考えであるならばといって念を押しております。所管大臣総理見解相違は、私は予算委員会で明確に指摘したんです。そのことを今日まで知りませんということが無責任ではないかと聞いているんです。お答え願います。
  16. 福田繁

    政府委員福田繁君) よく調査いたします。
  17. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 何を調査するんですか。
  18. 福田繁

    政府委員福田繁君) 私はその御発言を伺っておりませんので、速記録調査してお答えいたします。
  19. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 くどくは言いたくありませんが、当席上には、文部大蔵その他の閣僚が出席している正式の予算委員会ですよ。そうして文部大臣以下の出席要求を正式に私はいたしております。文部省からも質問事項については事前調査があった。その際に高校全入問題、急増対策について質問することは、項目だけは答えて内容については言っていない。それに対して、しかも当日の予算委員会所管大臣でなくて、総理に限定して質問を行なうという条件つきでした。その中で、総理に対する高校急増あるいは全入問題に対して、その事前質問通告していることを今日まで知らないということが無責任ではないかといっている、何を調査するんですか。見解相違についてあなたの所見をただすならば、それは議事録を見ないと答えにくい面がありましょう、私の言っていることを御信用にならないという前提に立てば。私があなたの責任感を聞いているのは、事前総理大臣文部当局にも、所管人々にも質問内容を通告しておいて、そのことをあなた方が今日まで知らない。しかも、文部大臣総理大臣との見解の違いか委員会で明らかに指摘している。そのことを今日まで所管局長が知らないというのは無責任じゃないかと、こう聞いているんです。何を調査するんですか、今から。自分の無責任調査するという意味ですか。あなたの責任感を聞いているんですよ。お答え願います。
  20. 福田繁

    政府委員福田繁君) 私はそういう御発言について記憶もございませんし、うかつかもしれませんが、そういう内容について今まで伺ったことはございません。したがって、よく調査いたしまして、もし責任があれば善処したいと思います。
  21. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 これ以上言いませんがね。当然、大胆ではなくて、所管局長としては、唐突に予算委員会質問したことじゃなくて、文教政策基本高校急増対策について質問したんです。ただし、内容については未決定だから詳しくは説明できない、こう文部省質問内容を聞きにきた人には言っています。だから内容の詳細について熟知していなかったということについては、私の連絡がそういうことですから了解するんですよ。しかし、高校急増に対して質問があり、それに対しての総理答弁総理に対する質問と限定されて予算委員会が運営されている。したがって、私は文部大臣には聞きませんでした。そのあと総理がどう答えているかを調べていないということは、所管局長としては、大臣が、こういう質問があったら、豊瀬君が文部大臣総理大臣意見が違うと言っておったがどういうことか調べておきなさいと言ったか言わないか知らぬけれども、言わなくてもあなたとしては当然質問事項については事前にわかっておるはずである、それがわかっていなかったとすれば文部省内の不統一の問題ですから、当委員会で私の関知するところでないでしょう。それを三カ月の今日に至るまで全然議事録も見ていないというあなたの怠慢を指摘しているのです、私は。そういう考え方だから、文部省が国の予算をもって資料を出しておる高校全入云々とはという、まことに牽強付会、世の多くの高校進学希望者を持つ父兄の心理を理解せず、よこしまな誹謗をしたプリントを出すのです。たとえその方法や意図するところが当面の文部行政と相いれなくても、父兄が、子を持つ母親が一生懸命で念願しておることがどういうことなのかということに対して耳を傾けるということは、教育行政が直接国民責任をもって進めなければならないという基本法精神からしても当然でしょう。そういう態度がないからこそ、あなたは総理大臣高校問題で答弁したことも今日まで調査していない。そのことが当初千数百億の、自民党、与党の連絡の上で三十七年度の高校急増対策予算要求しながら大なたをふるわれたというのは、高校急増に対する文部当局の、そうした何といいますか、不熱意ということがその基底にあるということを私は指摘して、後日、あなたが見ておらぬという一点張りですから、十分議事録を見て、その違いがあるかないか、あるとすればどう文部省として処理するかという検討をお願いしておきます。  次に、全国教育長協議会では、工業高校だけでなくて、普通高校に対する国庫補助、それから高校生奨学資金増額、こういった点毛施設設備校地買収に対する起債、こういったものを要求していますが、普通高校に対する国庫補助あるいは育英制度について三十七年度予算補正をする意図があるかどうか、三十八年度予算についてはどういう態度で進んでいるか、御説明をお願いいたします。
  22. 杉江清

    政府委員杉江清君) 普通課程に対する校舎補助金高校急増対策として昨年度の予算折衝において文部省は十分努力したのでありますけれども、その要求は通りませず、政府方針といたしまして、普通課程校舎については国は補助金を計上せず、工業に関してはその普通校舎について補助金を計上し、なお産業教育振興法に基づく工業に対する実験実習施設設備に対する補助金は計上する、そのほかは起債及び交付税積算基礎に繰り入れる、そういうことで財源措置をするということになったわけでございます。この方針明年度予算要求においてもとられたのでありまして、その結果、私どもとしては工業校舎について、一般校舎についての補助金として十七億円を要求しております。産業教育振興法に基づく実験実習補助金として約六十一億円を要求してございます。その他については補助金でなく起債交付税等措置がなされるものと考えております。
  23. 豊瀬禎一

  24. 杉江清

    政府委員杉江清君) 育英資金の問題は、まあ高校急増対策ではなく、一般的に育英資金増額してくれと、こういう要望だと私は承知いたしておりますが、その点、御質問の趣旨はどういうところにございましょうか。
  25. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 あなたは全国教育長協議会の代表のどなたから、一般的のみであって、高校急増に対する一環としては別であるということをお聞きになりましたか。
  26. 杉江清

    政府委鼻杉江清君) 私、実は教育長協議会幹事会等にも出席しておりますが、高校急増対策として育英資金増額要求し、それを本年度なお補正措置を講ずるという御要求があるということは私は実は承知しておりませんでしたので、また筋から言いましてもそういうことはないのではないかと、私はかように考えます。
  27. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 筋からないということはどういう意味ですか。
  28. 杉江清

    政府委員杉江清君) まあ高校急増という事態に対処して、いろいろ国として財源措置の問題としてなさなければならぬことは、それは広く考えれば広くは考えられます。しかし、その問題の、さしあたっての問題はやはり施設設備の、ことに施設の問題でございます。で そういう意味において今まで論議されてきましたのは、やはり施設設備に対する国の財源措置をどうするかということであって、それに高校急増ということによって、まあ生徒数はふえますけれども、それは育英資金全般の問題として本措置予算決定されておる、それに基づいて一応措置される、今後生徒数伸びていくことは当然育英資金算定基礎にはなって参りますけれども、それを本年度補正するという、そのような問題とは私は考えておりませんでした。
  29. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 筋というのは、しこりじゃなくて原則論のことですよ。僕らはそういう意味で筋というのですが、あなたは高校急増対策をセメントや木材でやろうと考えておるから、そういう筋としては違いますということになる、なるほどあなたの所管管理局ですからコンクリート木材しか御存じないのもやむを得ませんけれども、世に言うところの高校急増対策というものは、生徒がふえたから校舎を建て増すということではありませんよ。その当時の該当者が膨大にふえてきた、したがって、入学希望者もふえておる、これをどう収容していくかという一つ後期中等教育あり方の問題とも関連していきますよ。そうして文部省すし詰め学級にプラスして一割の生徒すし詰めにするという法律を作ったのも一つ措置であると思います。そうすると、当然一つの問題は育英資金単価ということにもなるけれども、同時に育英資金対象拡大ということは、冒頭から私が指摘しておるように、高校に希望する者をより多く選抜をするという形じゃなくて、より多く入らしていくということは、国の教育水準をアップする意味においてよりよいことだという考え方に立てば、当然、育英資金の、少なくとも、あなた方の考える領域においても、対象の増大ということは当然考えられませんか。
  30. 杉江清

    政府委員杉江清君) もちろん三十七年度予算要求する基礎として、また、その査定の基礎として、生徒数伸び考えられたはずでございます。そういうことを見て、三十七年度予算決定されたわけでございます。なお、それでは不十分な点もありましょうけれども、これは一般的に不十分であるということだと思いますけれども高校急増として、特にこの際、補正措置を講じなければならぬ課題だ、こういうふうに私は理解しておりませんし、そういう要望も、少なくとも、私のところには来ておりません。これは、私、所管でないからかもしれませんが、しかし、私は承知しておりませんでした。
  31. 福田繁

    政府委員福田繁君) ただいま補正の問題につきましては、管理局長からお答え申し上げたとおりでございます。私の承知しております範囲では、高校急増の問題と関連いたしまして、おっしゃるように、育英資金ワク拡大、これは考えなければならない問題であろうと思います。したがって、文部省としては、明年度以降におきまして、能力はありながら経済的な事情によって高校進学できないという者もかなりございますので、そういった意味で、明年度におきましては、現在の高校育英ワクは三%ですが、これを五%に引き上げるというような措置、あるいはまた、現在月千円というのもいかにも少ない、そういった点でこれを二千円に引き上げるというような、いわゆる高校生に対する育英制度を手厚くするという方向において予算要求もなされておるわけであります。現在は、それの実現に向かって努力しているという段階でございます。
  32. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 さすが、所管だけありまして、コンクリートの頭とは違ったことを聞きまして、一応あれしましたが、それでは十分でないということは御承知のとおりでございますので、さらに、そういうものの努力をしていただきたいと思います。ここで、時間の約束もありますので、私のこれに対する質問は終わりたいと思いますが、文部大臣一つだけ再度ただしておきたいと思います。御承知のように、六三制ができまして、小、中は義務教育になり、一応、義務教育の完成は中学校で終わる。そして、高等学校と展開していくおけですが、中学校教科課程高等学校教科課程高等学校大学、これは全く義務教育とは異なるものであるからという意味において、無関連に組み立てられておることでないことは、今さら私が申し上げるまでもないところだと思います。もっと積極的に申し上げますならば、中学校教科をこなすということは、高等学校教科に入り得る素地ができておるということであると思います。その意味においても、また、全国民教育水準をよりアップしていくという意味においても、できるだけ多くの進学希望者を、単に何らかの選抜方法によってふるい落としたエリートだけが高校に行くという考えではなくして、前期中等教育の、いわゆる中学校教科が、全義務制課程にあるものについて消化されるように努力されなければならないことは当然ですが、その努力とその要請を前提とすれば、高等学校進学を希望する者は、憲法や基本法にいうところの教育機会均等、また、その能力に応じてという意味も、私どもは、たとえば精神薄弱等の、あるいは身体が高等学校教育そのものにたえ得ない者でも、別個措置を、教育施設を施して高校等課程を設けて、義務制を終わったから直ちに社会にほうり出すということではなくして、能力に応じてというのは、いわゆる試験その他に合格した者を入れるという意味ではなくして、それぞれ個人の持って生まれた能力をより展開し拡充していくという意味が、能力に応じてということと機会均等の関連性において言えると思います。そういう立場に立つ際には、前回、若干私ども見解相違がありましたように、どうしても高校といえば、学力の落ちる者はふるい落としなさい、優秀な者だけ入れないと、あなた方が御答弁のように、高校のレベルが落ちます。これは当委員会委員のある人もそういう指摘をいたされましていろいろ論議になりました。そういう考え方に現在もなお立っておられるのか。それとも、少なくとも中学浪人の防止、ということが、一つは、国民の期待がかなえられないという観点からも、また一つには、青少年の不良化防止という意味からも、あるいは国の教育水準を全般的に臨めていくという角度からも、より多くの施設を、収容能力拡大して、一人で毛多く高校教育進学さしていくということは、義務制でないから、全入などとはおろかな運動であるといった考えではなくして、当然全国民的な希望であり、文部当局はこれに対する中学教育の充実、それを段階として高等学校への進学率の増大、やがては希望する者を全部収容していく、こういった考え方に立って、教育行政も、現場教師も、母親たちも、父兄も、ともに努力していくべき問題だ、このように私は理解するのですが、基本的に大臣見解をただしておきたいと思います。
  33. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 高等学校義務制でないことは、中学校とのせつ然たる差異があるところだと思います。さりとて、なるべくよけいに進学できるようにという努力をすること、そのことは必要なことだと思います。同時にまた、小中学校高等学校は違うと私は理解しております意味においてというのは、高等学校に行けば、だんだんと専門的な要素が入ってくる。したがって、適性能力というものが考えられなければ、高等学校の、少なくとも、現行制度上の教育目的を達することは困難である。そういうことがあわせ考えられて、そうして、なるべく多数が高校教育を受けられるように努力をするという考えに立って処理すべきものと思います。
  34. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 福田局長にお尋ねいたしますが、高校全入に対する文部省名のプリントが地方都道府県やその他に配付されておるのを委員会で私は入手したことがありますが、どの程度配付いたしましたか。
  35. 福田繁

    政府委員福田繁君) 私のほうで作成いたしまして、都道府県の教育委員会には参考に全部配付をいたしました。
  36. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 その中における高校全入運動に対する批判の基点が、ただいま文部大臣答弁された趣旨と若干異なって、もっと積極的に申しますと、意図的に希望しているような、あるいは義務教育でないんだから、いい者だけ入れて、あとは切り拾てていけばいいんだという、擁護ではなくして、そういう観点で貫かれているように私は読むのですが、局長は中を見ておられたならば、そのことに対する見解を承りたいと思います。
  37. 福田繁

    政府委員福田繁君) 大臣がただいまお述べになりましたとおりに私も考えておりまして、別にそのパンフレット自体が意図的に作られたというものじゃなくて、私は事実は事実としてそれを各都道府県の教育委員会に知っていただくために作ったわけでございます。
  38. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 その中の文章で、もし、ただいま大臣答弁の趣旨と明らかに違うという個所を指摘し、あなた方も納得することができれば、そのことを後日訂正して地方教委に流すということについてはやぶさかではありませんね。
  39. 福田繁

    政府委員福田繁君) よく検討してみたいと思います。
  40. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 単に文部省の独善的な見解でなくして、少なくとも、こういう言葉は悪いですが、現在の制度の中で高校入学するに困難を感じておる中学卒業生該当者並びに父母は、どう文部省が言おうとも、社会の態勢が受け入れがなかろうとも、高校入学したい、教育だけはよりよく受けさして、よりよい人間に成長さしたいという念願だけは何人もすなおに肯定できると思うのです。この子供や父母の純粋な期待と希望を、政治的な観点から、いたずらに、それは義務制でないから無理なんだ、能力がない軒が入っても落第すればだめじゃないか、こういった観点に立っておるやに受け取れるような趣旨に立って、国の予算を使って都道府県教育委員会に、他人が展開している、他の団体がやっている運動に対して誹謗するということは、現在の教育行政としては厳に慎しみ、かえってそうした父母、青少年の要求をより積極的に文部省というところが取り上げて進めていくということが、先ほど指摘しましたように、単に憲法、教育基本法の趣旨に沿うゆえんであるだけでなくして、現在大きな課題となっておる中学浪人、あるいは不良化が高校生よりも中学生に多く激増してきたという、この現象を正しくとらえていく際にも、きわめて重要なことであると思います。早急にあの文章に対して検討し、みずからそうした父母、青少年の純な気持に対して謙虚に受け入れる気持があったかどうかを反省していただきたいと強く要望します。  私は高校急増に対しては、以上で質問を終わります。
  41. 小林武

    ○小林武君 関連。簡単に一、二の点をお伺いしたいのですが、国の教育のレベルをあげるという、このことについては、先ほどからの御答弁で大体認めていらっしゃるようなんですが、そこで教育のレベルをあげていくということは、先ほどからの答弁によるというと、高校教育に適応するという、こういう見解ですね、レベルをあげていくということが、その高校教育に適応する者というものと関係して、どういうふうにお考えになっているのか、それをちょっとお聞きしておきたい。
  42. 福田繁

    政府委員福田繁君) 私ども高等学校教育の向上をはかっていくという意味におきまして、できる限り教育水準の向上を望むわけでございます。ところで、先ほど豊瀬委員の御質問にもございましたが、一般的に申しまして、中学を卒業して高等学校進学を希望する者は年々ふえております、したがって、親の立場から考えますと、できる限りたくさんの者が高等学校に入りたい、入れたいという気持はこれはもうだれしも持つものでございましょう。私どももそれは当然だと考えております。ただ、中学校の過程におきまして、たとえば知能程度の低い者、あるいは学業のおくれている者、そういう者がかなりおるわけでございまして、それを全部高等学校に入れて高等学校教育を施していくことについてはやはりこれは問題があると思います。したがって、現状から考えますと、進学希望者の大体九五%ないし六%程度が従来高等学校に入っております。したがって、私どもは急増期におきましてもできる限りたくさん入るように措置はすべきもの、こういうように考えておりますので、少なくとも今申し上げましたような過去のそういう九五%ないし六%という程度のものは、これはやはり今後高等学校急増対策とし七も考えていくべきじゃないか、こういうような立場において私どもは進めておるわけでございます。
  43. 小林武

    ○小林武君 文部省ですからあまり妙な答弁はしないだろうと思いますけれども、適応性ということはどうお考えになっておりますか。適応性についてあなたのおっしゃるようなばく然とした何パーセントとか何とかいうことでお考えになる、そうでなしに、一体その適応性というのは、もうすでに固定した一つの、この者はとにかく適応性がないのだと判定する基準を持っているのか、あるいはたとえばあなたのおっしゃる学業を非常に怠ったために現在の段階ではその適応性がないという、こういう教育の環境なり本人の努力によって伸縮するものですか。そういうものをやはり、そういう点で明らかにされなければならぬと思いますが、そういう点はあれですか、文部省は少なくとも今度の高校全入の問題を議論する場合に的確な資料をお持ちになって今のような御発言をなさっているのであったら、私はやはりここで明らかにすべき問題だと思います。高校全入問題が一体あたかも政治問題であるといったり、誤った教育問題であるという工合に議論される側に立っていらっしゃるのかどうか、その点については一つはっきりした見解を述べていただきたい。これは文部大臣一つお願いしたい。
  44. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 高校全入運動というのは、われわれ政治問題としての動きだと思います。第一、日教組が全入運動を提唱し始めたと思うのですが、高校全入運動全国協議会とかいうのがあるようですけれども、その名義人は務台理作氏がなっていると思いますが、その後変わったということを聞きませんのでおそらくそうだと思います。務台理作という人は、何度もここで指摘しましたように教師の倫理綱領を書いて与えた人の一人である。この人の考え方は、教師の使命は、まあ端的にいえば共産革命のお先棒かつぎを育成することにあるのだということを自分の責任において名前を出して主張している人、その人が高校全入運動の代表者であるというそのことだけをもってしましても、この点だけは私はおかしなことだというふうに受け取っております。社会党がどうお考えであるかはもちろん的確には存じませんけれども社会党がこれを、全入の問題をお取り上げになるということは、すでにして政治課題、政治課題であってならない法はないので、政治的にこそこれが論ぜられて、国会の場で全入とは何ぞや、それについて政府側ではどう考え、何をなさんとするかということは当然究明されてしかるべきもの、もとより国民が、日教組であれ、何であれ、国民的立場において運動されることは御自由でしょう、そのことをかれこれ言うことはないのですけれども、日教組という集団としてやっているとすれば、これはまさしく権利の乱用の姿であるというふうに私は解しておるのであります。
  45. 小林武

    ○小林武君 私はね、文部大臣にそういうことを——まあ言ってもけっこうですけれども、あまり質問の趣旨としてやったんではないのです。あなたのおっしゃった中に、あるいは先ほどの局長答弁の中にも出て参りました全入の問題でも高校急増対策の問題でも、共通の議論として出てくることは、どれくらいの率で一体教育する設備なり施設なりを政府が保障するかということにあると思う。そうすれば、当然その中に入学希望者、その入学希望者をどのくらいの一体率で入れるか、全員入れるとかという問題が出てこなければならない。そういう問題を中心にして、あなたのほうから高校教育に適応するということを言っておられる、このことは私は決して今の日本の問題とばかりは考えないんですね。少なくとも高校教育というものは後期中等教育というようなものをだんだん広げていこう、全員にこれを及ぼそうとしている傾向は、これはだれしも認めざるを得ないと思う。そういう一つの風潮の中で高校教育に適応するということを言い出したからには、文部省ですからね、高校教育に適応するということを、どういうものが一体適応すると言うのか。これは日教組が悪いとか、社会党がどうしたとかという問題じゃなくて、日本の教育の問題として、一体、文部大臣はどのように考えるか、文部大臣説明できなかったら局長でもだれでもけっこうですけれども、根拠のあるものをここで説明してもらいたいと、こう言っている。だから、そういうとんでもないところへ力こぶを入れておやりになると、かえって本筋からはずれますから、聞いていることを言ってもらいたい。
  46. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) まあ先ほど全入運動について文部大臣としてどう思うかというお尋ねと解しましたから、私は思っておることを率直に言ったわけであります。そこで、今言われました高校に入る適性能力という意味においてのお尋ねかと思いますが、義務教育でなしに、後期中等教育として別個のものとして扱っておる。それは、この程度までの学力、能力をつけたいということが学習指導要領で要求されておる。それを教育的に目的を達し得る角度から見て、この程度の各科目についての学力あるいは能力等がある者を入れたほうが教育効果をあげる上においてベターであることは当然のことと私は思います。それを、何か基本法が、具体的なものがあってそう言っておるのかどうか、この点は私が答弁能力がない部分でございますが、それは政府委員から要すればお答えを申し上げます。
  47. 福田繁

    政府委員福田繁君) 御承知のように、高等学校の学科なり、あるいは教育課程に従いましていろいろの教育内容を持っております。したがって、高等学校教育にたえ得るというようなことを申し上げましたが、それは高等学校入学する能力のある者というように御理解を願いたいのでございます。したがって、今申しましたように、高等学校の学科なり、あるいは課程に応じました教育にたえ得る、ついていける者、こういうような観点から、これは学校長が判定をして入学させる、こういうようなことになるわけでございます。私ども申し上げておりますのは、そういう趣旨から申し上げているわけでございます。
  48. 小林武

    ○小林武君 高校教育に適応するというのは、少なくとも文部省ではその適応するということの内容についてはっきりとした見解をお持ちにならないという今の答弁ですね。それでよろしいですか。
  49. 福田繁

    政府委員福田繁君) ただいま申し上げましたように、高等学校の学科なり、あるいは教育課程に応じてその学習にたえ得る者、ついていける者、こういうことを考えておるわけでございます。
  50. 小林武

    ○小林武君 そのことについての内容は明らかにし得ないわけだな、文部省として。それは学校当局がきめるべき問題だと、こういうことですか。
  51. 福田繁

    政府委員福田繁君) これは知能指数幾らからどうだというようなことは、画一的な比較はこれはできないと思います。高等学校のそれぞれの事情に応じましてやはり学校長がそれは判定をして、しかも中学校教育を通じて、この子供としては高等学校教育にたえ得るかどうかということを、これは見きわめて入学させるというのが妥当だと思います。
  52. 小林武

    ○小林武君 そうすると、高校急増対策の問題ですが、急増対策の問題として、学校の側なり親の意見なりというようなものによって高等学校に入れたい、こういうものは、全員それではそういうことがはっきりすれば文部省ではそれに対する責任を負わなくてはならないわけですね、教育をするということについて。そういうことになりましょう。あなたのほうで、希望者はどれだけあっても、一体高校教育に適応する君はこれだけだから、これだけの者に関しては国が責任を負うと、こういうのなら話はわかるけれども、あなたのほうで特別に今のところ何もないわけだから、高校教育にたえ得ると学校側が判定し、あるいは親が自分の子供の学業なり何なりを見て、これを高校に入れたいと言ったら、それを信頼するより仕方がないことかと思うのですけれども、その点についてはよろしいですか。
  53. 福田繁

    政府委員福田繁君) その問題について国が責任を云々という問題は私は起きないと思います。これは御承知のように、高等学校は都道府県の責任において設置管理しておる学校でございます。したがって、各教育委員会とか、あるいは学校当局は、それぞれの高等学校入学さしても適当かどうかということを判定をいたしまして入学させるおけであります。したがって、各学校ともに大体において選抜試験を実施して、そしてその結果によってこれを入学させるという建前をとっておりますから、かりに親が希望いたしましても入れないという場合もそれは当然あり得ることです。そういうものについて国が責任を負うというような問題ではなかろうかと思っております。
  54. 小林武

    ○小林武君 ちょっとあなたの答弁については納得がいかないのですがね、あれですか、あなたは設置者である県とか市町村とかいうものが、義務教育でないから責任をその点ではとらなければならないことで、国として後期中等教育には責任がないと、こうおっしゃるわけですか。私は教育の問題については、後期中等教育であろうが、大学教育であろうが何であろうが、  一つのやはり教育計画なり何なりをもって、それに対して国の責任というものが果たされない理由が私はないと思う。少なくともあなたのほうで示された予算の中にも、国が責任を負うという態度を明らかにされて、いろいろな面についての概算要求ですけれども、あるわけです。三十七年度の予算のあなたたちの組み立てを見ても、それは明らかなんです。その責任のないとおっしゃるのはどういうことなのか、もう一ぺんひとつはっきりしていただきたい。
  55. 福田繁

    政府委員福田繁君) 私が申し上げましたのは、それぞれの教育委員会なり、あるいは学校当局において、志願者の中から選んで入学させるという建前をとっておりますので、その落ちた者について、これを国が責任を持てというような、そういう意味にとりますと、これは責任の問題ではないということを申し上げた。
  56. 小林武

    ○小林武君 それで、私の質問がだいぶ悪かったようにおっしゃいますけれど、入学試験を今までやった、やって落ちた者について、文部省局長責任を負えなんとか、あるいは文部大臣責任を負えなんというばかなことを言っておるわけじゃない。高等学校進学希望する者は、少なくとも年々多くなっておるという事実は明らかだ、これは急増という問題が起こらなくてもふえてくる。それから将来、国が、日本の国力を高めようとか、あるいは日本の国の繁栄をとにかく高めようとするからには、教育の力を増す、これに待たなければならないということは、池田総理大臣もちょっとうるさいくらい強調されておる。そういうことになりますと、高校進学者の数というものはだんだんふえるわけです。そのふえるものに対して、あなたのほうで責任を負わなければならない。高校教育にたえ得ない者、後期中等教育にたえ得ない者というのは、一つのやはり基準がなければいかぬと思う、たえ得ない者ということを言うためには。少なくとも生れつきの者、あるいは教育の進歩の程度にもよると思うのです。国民のほとんどが文盲であるというような国と、そうでない国との間にも相当やっぱり考慮すべき問題が現実の政治の問題としてはあると思う。そういう点から配慮して、日本の今の現状からいえば、ほとんど全員に近いものがとにかく入学を希望している。その際、希望者の全員を入れるべきだというような方向をたどるというのは当然だと思う。これは国が大いに責任を感じてやるべきだと思うのですが、そういうことに対して、あなたは責任がないとは言わないでしょうね。
  57. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 国が責任を負うべきかいなかという課題は、今、初中局長が申し上げたようなことも、一つ責任を負うかいなかの課題だと思う。それは制度そのものが国として責任を負わねばならないことになっておるかいなかということからいけば、義務教育制度であるならば、一人でも漏れがあったのでは、漏れざるを得ないような人的物的設備しかしていないというのならば、これは国の責任問題だと言えると思います。それと同じ意味において、高校全入という希望があることに対して、責任呼ばわりをされるとするならば、責任はないということをさっき申したと思います。それ以外に、後期中等教育、先ほども申し上げましたように、なるべく多くの君が入ることを希望するということは、国全般の政治的な立場からいっても望ましいことであることには間違いない。だから、そういう政治的立場に立って、政府国民に対して政治的責任ということからいけば、落第したものは責任を負わぬという問題とは以外の、それ以外の責任課題があると思います。それならば、それを具体的に、今申し上げた、いわば政治的責任課題を、どう具体的にとらえるかとなりますと、ちょっとよりどころがないと言ってもいいくらいのばく然たる事柄だと思います。それでもなおかつ、なるべく多くをという希望は政府としても捨てるべきではない、そういうことから従来の実績主義的にならざるを得ないわけですけれども、たとえば三十五年度の実績によれば、進学希望者が六〇%だ、現実には九十数パーセントがどっかの高等学校には落ちつける、入学できるという結果を招来している。それが理想的状態ではむろんないでしょうけれども、そのことを一応便宜とらえまして、そうして前向きに三十八年度から始まる高校急増のピークにベストを尽くして対処するという政治的立場からの国としての国民に対する責任を、及ばずながら果たしている、果たそうと努力しているというのが現状だと思うのであります。そこで、先刻、政府委員から申し上げたかとも思いますが、今年度の補正予算あるいは補正財源措置プラス三十八年度の総予算を通じての努力をあわせまして、たとえば進学率は都道府県によって違いがあるようでございますが、平均的に言うならば、六一・八%ということを押えれば、どうやら三十五年度の実績である六〇%の進学率に見合う、六一・八%でほぼ同様の、入学率から言うならば、九六%ぐらいはその求めに応じ得るであろうということを極力実現することが田としての責任の具体的課題と、こういうふうに意識しまして、及ばずながら努力している、そのことと、二つの責任課題があろうかと思うわけであります。そういう意味での責任は、文部省としては当然感じながら努力すべきものと心得ております。
  58. 小林武

    ○小林武君 まあ二つの責任ということが、片っ方が政治的責任で、もう一つが何の責任なのか私は明らかでございませんけれども、これは文部省とか、文部大臣とかの見解では、そういう責任あり方もあるのかもしれませんけれども、これは一般国民から言ったら、二つになんか分けて考えない。それは、義務教育であるということと、それから義務教育でないということがあっても、少なくとも文部省自体の中にも、あるいは政府自体の中にも、私は高校の問題、いわゆる後期中等教育については、準義務制考えるべき段階がきたというようなことも議論されたと思います。されないとしたら、これはよほどどうかしていると私は思うのです。そういう段階にきて、私が心配するのは、政府自体が逆に、国民のほうからもっと入れてくれというような、中学浪人を出されてはたまらぬというような、特に現在のように、戦後のべビー・ブームのために非常に深刻な状想がきたときに、このときに父母全体から高校にひとつたくさん入れてもらいたい、全員入れてもらいたい、そのための急増対策政府責任を持ってやってもらいたい、こういう時期に、私は文部大臣発言の中に、たとえば運動をとらえて、これをどうも誹謗するかのごとき意見を述べられたり、あるいは事務当局から、何か志望者の中に高校教育にたえ得ないところのそういう者がたくさんに希望しているかのような発言をして、国民教育水準を高めるということに水をかけているような、そういう傾向が出ているようにわれわれは考えるのです、今までの答弁の中から。そういう点で心配するわけですが、まあこの点については、いずれまた具体的な問題で議論する時期もありましょうけれども、どうぞひとつそういう見解ではなくて、たくさん予算を取って、高校に入りたい者、入れたい親、あるいは日本の将来のために、ひとつ後期中等教育を完成させるというような角度で御努力をいただきたいと思うのです。
  59. 千葉千代世

    千葉千代世君 関連。文部大臣としては、全国のたくさんのお父さん、親さんたちが一生懸命になって高等学校生徒を入れたい、そのために文部省予算要求大蔵省にしているけれども、どうかこれが成功して、なおより一そう多く予算が組まれるようにと、こういう熱意で運動しているわけですが、それは文部大臣にとって何か迷惑ですか。
  60. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 一つも迷惑ではございません。高校全入運動高校義務教育制にしたらどうだと、かりに言われたとしましても、一つも迷惑とは思いません。ただ現行制度に立脚いたしまして、現実的に文部省の置かれた立場、なし得る限度、限界点ということだけをさしあたり念頭に置いて考えました場合に、特に将来立法措置その他を講じなくても、今にでもできそうな気持で言われることは、これは迷惑な気持もいたします。立法論等を含めた政治議論としてならわかりますけれども、ただ感情的にそう言われるということ、そのことは御自由ではあるが、よく理解しておっしゃっていただきたいという気持はいたします。迷惑とちょっと違いますけれども、わかっていただきたいと、お願いだけはしたい、こういう気持でございます。
  61. 千葉千代世

    千葉千代世君 何か言葉じりをつかまえて恐縮ですが、ただ感情的に言って問っているというふうにおっしゃるのですけれども、私少し御理解が足りないのじゃないかと思うのです。というのは、高校に全部を入れたいと、こういうお父さん、お母さんの熱望というものは、何も日教組が音頭をとったからとか、務台理作一人が温度をとったからとか、そんななまやさしいものではないということを知っていただきたいのです。というのは、私も方々歩きましてよくお母さん方の話し合いに出ますと、一番心配しているのは何かというと、今、高等学校に入る子供をかかえていると、一日に五時間も寝られないというのですね。そうしてもう子供のことで夫婦げんかが始まる、子供は勉強しなくちゃならない。そういう中で日曜もほとんど学校に行って、予備テストみたようなことをしている。ほとんど中学校でやっています。私もちょうどこの間、日曜日に、どんなかと思ってある学校に行ったら、先生は一生懸命、子供は一生懸命、朝から夕方までテストなんです。ですから、非常にこういう子供を持った親たちがせめてできることは何だろうかというと、やはり当局に陳情して、そうして誠意を披瀝して、一緒になってひとつ文部省をあと押ししてやろうではないかと、こういう気持は私は喜んで、やはりもろ手を上げて歓迎するのがほんとうの政治をするものの道ではないかと思うのです。特に全国の高等学校入学についての協議会でございますが、これはだてや酔狂で来ているのではないのです。この間私もお供をしまして文部省に陳情に行ったんです。文部省の中がわからないというもんですから、私は道案内で行ったんです。そのときにそばで聞いておったのですが、お母さん方はもう泣きながら、そんなに予算がないんなら、せめて学校の運動場にビニール・ハウスだけでもいいから入れてくれないかと、泣きながら言っているのです。ですから、私はああいう髪を見て、感情的にただやっているとか、それがだれかに扇動されてやっているとかということは一分一厘も感じられなかったのです。ですから、文部大臣の感覚と、私の感情が少しセンチメンタルなのかもしれませんけれども、私は何かいても立ってもいられないような気がしたのです。そういうふうなわけですね。今特に予算編成期でございますので、お父さん、お母さんが一緒になって、また当面子供を受け持っている先生方で、本気にならない先生はどうかしていますよ。文部大臣と同じ考え方で、感情的だからけしからん、だれかに扇動されたからけしからんとか、先生は教えるだけで何もしないのでなくて、一諸になって子供の願いをかなえてやろうという先生がほんとうの教育者じゃないだろうか、やり方についてのいい御意見があったら文部大臣から幾ら聞かしていただいてもけっこうなんですけれども、頭から、やれ倫理綱領がどうだの、お聞きもしないことを答えてですね、その点はそっちのほうが感情的だと思うのですが、どうですか。
  62. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) それは連動されるということは、さっきも申し上げましたように御自由であって、それにとやかく言うべき問題じゃむろんございません。ですけれども、全入とならば、全入できるように法律を改正する必要もございましょうし、予算措置をそれに応じて講ずる必要も出てくる道理でございますから、政治問題として国会の場を通じて論議し、究明し、そうして政府努力の足らぬところを糾弾し鞭撻していただいて、それに応じて努力をするというやり方以外に解決の方法がないことはきわめて明瞭であると思います。だから、そういうことをしていただくべきであって、ただ列をなしてわいわい言うことだけで解決するわけじゃないのですから、そこら辺が私少し感情的な気持も入っておるのじゃなかろうか、こういうふうに想像するわけであります。おまけに務台理作さんが先頭に来なさるからそういう気持がするということを先刻申し述べたのであります。
  63. 千葉千代世

    千葉千代世君 務台理作さんにこだわることはないわけなんです。私はそういうことを考えて言ったわけじゃありませんから。そんなことじゃなくて、私は日本だけがそうかしらと思って考えておったのです。この間、二カ月ばかり海外旅行の機会があって、特にアメリカの全土、北から南から東から西から、国務省に特にお願いしまして、高等学校入学実情を見せていただいたわけです。それに行きましたところが、中学校にいっておる子供は、はりはり勉強しておって自分の才能を十分生かしておって、そのまま高等学校にいかれるわけです。いかれないのは、今、小林委員が指摘したように、生まれつき何か不自由だとか、あるいは本人の希望、あるいは親御さんと先生が相談して、私は高等学校にいかないで、こういう適性があるから、あるいは適職な仕事でずっとやりたいというので、そういうふうな本人が親御さんと先生と御相談の上ですが、そういうふうにして自分の意思でいかないということはあるけれども、それ以外の子供は全部いかれるわけなんですね。それでまた大学の進入についても見させていただいたわけですけれども、その場合には、教育委員長さんでも大臣のほうでも、何か政治的といいますか、お父さんお母さんの全体の意思だといえば、その国の民度にもよりましょうけれども、当然のその国の仕事として遂行しておったわけです。それは向こうの国は向こうの国といえばそれまでの話ですけれども、しかし、いいことはまねてもいいのじゃないかということを考えたわけです。そういう観点で、国会の場を通して政治的にやればそれでものは解決するのだとおっしゃるけれども、それはなるほど私ども議会政治を是認しておればこそ、ここにきて申し上げておるわけですから、そのことは十分にやらなければ国民に相済まないわけですけれども国民人々々の自分の権利として、やはり憲法に保障されておるような教育機会均等の問題をどうするとか、あるいは自分たちの子供に対する教育の権限をどうするとか、それから国民人々々の希望というもの、そういうものをあらゆる場で反映する権利を持っておるわけなんです。そうすれば、お父さんお母さんが、持っておる権利とか何とかいう考えじゃなくて、権利としては当然のことであって、それを話し合ってひとつ陳情にいこうじゃないか、道が知れないから一緒に行ってみんなでお願いしようじゃないか。方々の県の様子をじかに当局に話そうじゃないかといってきたのに、徒党を組むとか、行列を作るとか、そういうことが頭にきてしまって、ほんとうの真意そのものをくむ姿勢が足りないということは、私は残念なわけなんですけれども、それはあくまでもそういうことはしてはならないとか、このことは好ましくないという御見解なんでしょうか。
  64. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) それはそう思いません。何度も申し上げましたように、そうなさることはむろん御自由でありますが、この間の具体的な課題にいたしましても、衆議院の、たしか村山議員がお話を持ってこられたと思いますが、村山さんにお目にかかって、ひとつよくお話を承りましょうということを御返事したわけであります。何百人、何千人の方と会えませんから、むしろ国民を代表しておる立場でせっかくおいで下さった代議士に、皆さんの御意向をかいつまんで系統的にお話しいただいたほうが時間の節約にもなると思いまして、そういうことを御返事したわけです。ですから集団で陳情することがけしからぬということを申し上げておるわけじゃむろんございません。
  65. 千葉千代世

    千葉千代世君 この質問は次に譲ります。
  66. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 小林さんの問題に関連。進学については相当の開きがあったと、その開きがあったというポイントはどういう点が違ったということですか。急増対策委員会考え方文部省考え方とは開きがあった。その開きがあったというのはどういうことが違ったのか、基本的にひとつ聞かしていただきたいと思うんですがね、進学率について。
  67. 福田繁

    政府委員福田繁君) 御質問の趣旨をよくくみとっていないかもしれませんが、おっしゃる意味をそんたくいたしますと、知事会等でいろいろ進学率の問題について主張しておりましたのは、大体今年の初めのころのデータに基づいたものでございます。したがって、まだ具体的に県の計画が進んでいないときに、いろんな予想と申しますか、希望的な数字でもっていろいろまとめたものがかなりあったと思います。したがって、どうしてもそういうものでございますから、側々の県の実情を考えましても、かなり膨大なものになっておったようでございます。ところがその後だんだんと夏を経て最近になりますと、各県の計画もだんだん固まって参りました。最近では少なくとも公立学校におきます限りは、ある程度コンクリートになったと思います。したがって、そういうものを私どもは各府県の教育委員会連絡しながら段階々々で数字を策定していったわけであります。もとよりぴちっと合うような数字は作れませんけれども、そういう作業をして進んで参りますので、まあ知事会等で主張しておりましたのは、今申し上げましたように、当初の一応の希望数字でありますから、それはその間に開きがあるのは当然だと、こういう意味でございます。
  68. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それちょっと私矛盾を感ずるんですが、さっき、これは小林さんの質問に関連があるんですが、知事会議の意見というものは都道府県の各個の意見ととっていいのかどうか、そう感じてないのかどうか、文部省としてはね。   〔委員長退席、理事吉江勝保君着席〕 そうすると、文部省には適正ということについては基準も何もない。それは都道府県の各個で考えることだと、こうおっしゃっておるわけですな。したがって、各個で考えておることが都道府県知事に十分なる連絡があって、県知事の見解が出たというならば、文部省は、それに進学の率を修正する基準も何にも持たないものが何で修正ができたか、これが聞きたいんです。その点はどうですか。
  69. 福田繁

    政府委員福田繁君) ただいま申し上げましたように、各府県は当初は非常にまあ希望的な数字でございますので、まあいわば将来も単なる希望に終わるような計画があったと思います。ところで今申しましたように、各県の公立学校に関する限りは、具体的に最近になりましてかなりきまって参りました。私どもはその状況を見まして、進学については、大体六一・八%程度に訂正するほうが適当だと、当初は六〇%にこれを考えておりました。そういうことで進学率を若干高めまして、府県の具体的な計画に対応するように訂正すると、こういうやり方をしたわけであります。
  70. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それで、そうなってくると前やったのはずさんだから、あとでやったのが適正だったと、こういうふうに私はあなたの答弁からとれるんですがね、あとの適正だったというのは学校当局がきめるんだと、さっきのあなたの御答弁からいくと、こうおっしゃるわけです。そうすると、全知事が言ったのは学校当局の意見じゃないんだと、知事が勝手にそういうことを言っておったんだと、まあこういうふうにしかとれないわけですね。ところが学校当局の意見知事会議で再検討した結果が、進学率相違をここで修正したんだと、そうすると、各都道府県の知事会の的確なその数字でやられたことに対しての意見と、文部省意見というものは、そのときに相違がなかったのかあったのか、あったのに文部省意見を加えられたのかどうか。その点はどうですか。
  71. 福田繁

    政府委員福田繁君) もちろん都道府県の教育委員会におきまして、計画をさらに固めていく際には、学校の意見も聞いておると思います。聞いておりますが、その際に、やはり従来、県なりあるいは当該の学校についていろいろの実績もございますので、そういう実情を十分織り込んで府県の計画というものはできたと思います。したがって、そういう実情に即した計画に、私どもは全国的な立場においてマッチさせるように計画を改訂する考えで進めておる、こういうことでございます。
  72. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 その判定は中央では何を基準にしたのですか。中央にはないと、さっきのあなたの答弁から聞くと、その点わからないのだがね。   〔理事吉江勝保君退席、委員長着席〕
  73. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) これは先刻、小林さんの御質問にもお答えしたようでございますが、知事会の当初の要望は、無論単価の変動、これも金額的には影響をもたらしております。それから校舎の坪数等に関しましても進学率もむろん影響をいたします。その進学率を見ます場合に、今まで進学率が現実にずっと戦後十数年の実情を見ましても非常に低かった県もあるわけであります。高校急増に便乗するというと語弊がございますけれども、無理からぬことではございますが、進学率のおくれを一挙に取り戻すということに必要な所要坪数を積算の基礎にされた県もあったようであります。その希望はわからぬじゃございませんけれども、やはりある程度実績に基づいて積み重ねをやるほかには、国全体を見ます場合には方法がないものでございますから、過去の立ちおくれをこの際一挙に取り返すという進学率向上は、現実問題としても、その都市には過去十年ぐらいの実績が正しければ——正しくないかもしれませんが——一応正しいと推定するほかない立場に立てば、あまりにも無理じゃなかろうかというふうなことを、それぞれの県に直接あれしまして、そうして実情に合うような話し合いをしましたことで修正されたのが相当ございます。それは当該県も納得の上でございますが、そういうことでずっと詰めて参りまして、そうして全国平均数値ではございますが、当初、年度初頭に考えましたのは、三十五年度を基礎にいたしまして一応六〇%の進学率を見ればよかろうという積算の基礎に立っておりました。ところが、昭和三十六年度、七年度と都道府県が現実の各府県の求めに応ずるために準備せられました高等学校の新設なり学級増、そういうものを今申したように詰めてみましても、それを想定してみますると、平均すれば、やはり一・八%ぐらいは進学率が高まるという点を押えて、国としての立場からも財源措置その他をすべきであるという結論に到達したわけであります。そこで進学率を六一・八%と一・八%だけ当初計画よりも率をふやしまして、合わせてまた単価の変動も、全国平均的な数字ではございますが、それをとらえて資金の増額分をはじき出しましてというふうなやり方をやって、三十八年度の予算及び地方財政計画に対処しよう、そういたしますならば、大体これは生徒急増を念頭におきながら、今申した進学率を確保し、そうして現実の入学率は九六%ぐらいは確保できそうだというところで、知事会のほうとも了解をつけまして、そうしてこの問題に向かって対処しつつある、そういうわけでございます。
  74. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 大臣にこれをお聞きしたいのですが、まあ公立と私学との格差が非常に大きいわけですが、根本的な問題として、基本的な考え方として、日本の場合はこの私学が大きなウエートを占めておるわけですが、この私学と公立との国庫の補助問題にしても、一体このまま放置しておいていいのかどうか。基本的にはやはりこれではいかぬとお考えになっておるのか、その点ひとつお伺いしておきたいと思います。
  75. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 御指摘のとおりに、私ども受けとめておりますが、まさに悩みの大きな種の一つだと思います。しかしながら、今直ちにどうしようという成案を見出しかねておるのが実情でございます。従来の私はこの委員会でもお尋ねに応じてお答えした記憶がございますが、一体私学をどう国の立場で受けとめるべきかということは、非常に沿革的なことでもあるし、私学の本質に関することで、軽々に結論を下し得ませんけれども、今日まで私が念頭に置きながらきております事柄は、国立、公立と違って、私学というものが別個にやはり制度上特許されて存在しておるゆえんのものは、少なくとも第一にはその所要資金、運営資金というものは国や都道府県のお世話にならない、民間の浄財をもって学校法人を設立して、その運営費も民間の浄財に仰ぎ、さらには学校施設を利用する生徒、学生の授業料をもってまかなうということで、会計上国なり公共団体から独立した独立自存の姿でいく。そのことが私学の特別の建学の目的なり、あるいは私学の特色なりというものを発揮する上に大前提として必要なことであるから、そういう条件のもとに私学というものは存在するであろう。しかしながら、一面私学といえども学校教育の場であることは明らかでございますので、その国なり公共団体という公共性の立場から見ました場合、国や公共団体がこれに一切ノータッチであらねばならないかどうか、当初は憲法との関連においても疑義があるという議論もあったそうですが、そのことは一応乗り越えて、今国なり公共団体の立場で私学に接触しております具体的な方法は、私学振興会を通じて低利長期の資金を提供するということで協力する。それからさらに科学技術教育が民族的な、国家的な急場に応ずる焦眉の問題でもあるということも含んでおると思いますが、それにまた非常に膨大な資金を必要とすることが、科学技術教育以外に比べまして比較にならないほどである。その重圧に耐えてもらう必要も公共性の立場からは要請されるとするならば、そういうことに限って、わずかではあろうとも国も助成金を国庫から出すということまで踏み切っていいんじゃなかろうかという線で今日にたどりついておる実情でございます。それ以上に、経常費を国やあるいは公共団体が負担してやったらどうだという議論もむろんございますが、やすきにつけばそれも一つ考え方とむろん思いますけれども、そうすることが一般的な、国対民間との相互関係において、国の経費あるいは公共団体の経費が特に経常費を支弁するという一般的な立場においてそそがれます場合には、会計検査だ、あるいは会計検査以外の行政面も私学に関与するということは必然的になるであろう。そのことそれ自体が、私学本来の独自性と申しましょうか、特色と申しましょうか、自主性と申しますか、そういう基本線にまで触れてくるおそれなきや。そうだとするならば、私学が独自に別個に存在するという価値が失われやしないだろうかというふうなことがあわせ考えられねばなりませんので、はたしてどこまで行き得るものか、現状のままで推移すべきかどうか等につきましても今後の検討は必要とするといたしましても、今にわかに結論に到達し得ていないというのが実情でございます。
  76. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 大体わかりましたが、これは先ほどからの高等学校全員進学という問題とは別に、結果的には、大学にしても高等学校にしても、足りないから私学に行くということになろうと思います。そうして父兄が三分の二の膨大な経費を使って子供を学校にやる。こういう点が基礎にならなければ、私は文部大臣の言われる、その現実の私学の立場、あるいは政府が私学に対して考えておるこの法律からの考え方と、それだけでは解決つかないと思うのですね。そういう根本的な父兄の負担というもの——今日公立があって入れるというならば——先ほどの適正というような問題についてはなかなか判断が下しにくいんですね。そういう判断の下しにくいものに対して、六〇%でいいんだというようなことにはなり得ないと思うのですね。これは大学にしても高等学校にしても、みなそうだと思う。そうなってきた場合に、これも父兄の負担をやっぱり均衡にすべきだ、こういう意味から、私は現行の法律がいかにあろうとも基本的に改正すべきだ、こういう見解文部大臣に率先して持ってもらいたいということを私は希望意見として申し上げて、これで終わりたいと思います。
  77. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 次の質問に移ります前に、審議と関連がありますので、前もって資料の提出を要求しておきたいと思います。  この前に私が、臨時国会のときであったと思いますが、要求をしておる資料の一つ文部省補助金を出しておる教育研究諸団体、その他の民間団体に出しておる補助団体名、当該団体に対する補助金一覧表の提出をお願いいたします。これはすでに数カ月前に要求しておるはずです。次に、これは前々委員会、十月一日の委員会ではないかと、記憶はさだかでありませんが、小規模学校におきましては、特に中学校において正式免許状を持たないで、教員不足のために免許状を有しない科目を教えております。十数科目ある中で六人の先生がおれば、二科目ないし三科目については、全然免許状を持たない教科を担当しておるわけです。これは教育効果からいっても免許法の趣旨からいってもいびつなことですから当然是正されなければならないと思いますが、各県別の、免許状を所有しないで——本人は当該科目については二級ないし一級の免許状を持っておるんですが、持っておりながら免許状を持たない科目を教えておる人数の、都道府県別の一覧表の御提出をお願いします。それから、前回の委員会で杉江さんに要望しておりました名城大学の訴訟の二十数件の内容について一覧表の提示を要求しています。今は原本だけありますということですが、次回に譲るように言っておりましたので、それの提出をお願いいたします。それから次に、養護教諭並びに事務職員につきまして、すでに定数基準法やその他の政令できまりまして、それぞれの配当があるわけですが、幸いに昨年の国会でしたか、文部省としては充実計画を発表したわけですが、これの審議と関係がありますので、都道府県別県費負担の事務職員、養護教諭充足一覧表並びに養護事務職員についても市町村の採用者の数、たとえば北海道で二百五十三名であるとか、福岡で何名であるとかといったような、いわゆる三十七年五月一日指定統計に基づく都道府県別の県費、市町村採用別事務職員、養護教諭一覧表の提出をお願いいたします。これは直ちに次の議題と関連がありますので、以上、資料の提出をお願いいたしまして、次の質問に移りたいと思います。
  78. 小林武

    ○小林武君 今の資料の問題に関連しましてちょっとお尋ねしたいのですけれども教育研究補助費というのは、本年度のこの予算の、この概算要求のときには、ちょっと聞き漏らしたのですけれども、これはどのくらい要求されているか。
  79. 福田繁

    政府委員福田繁君) 教育研究団体の補助として約一億円要求しております。
  80. 小林武

    ○小林武君 一億ちょっきりですか、それは。
  81. 福田繁

    政府委員福田繁君) 何百万か、四百万か、ちょっと資料を見ないとわかりませんが、端数はついておったかと思います。
  82. 小林武

    ○小林武君 これはたしか昭和三十五年からですか、その当時は三百万円ですか、と思いますが、これはどうですか。
  83. 福田繁

    政府委員福田繁君) ちょっとただいま正確な数が、資料がございませんので申し上げかねますけれども、当初から大体一千万以上あったと思っております。現在は千五百万程度でございます。
  84. 小林武

    ○小林武君 まあ私が調べたところだというと、三十五年は三百万ではないかと思うのですが、その後三十六年に四百五十万、三十七年度は一千三百六十九万一千円、このことはまあ文部省のほうが正確でしょうから、私の調査は誤りかもしれませんけれども、三十八年度に一億を突破したという、これは一体理由はどういうことになっておりますか。一千三百六十九万から一億百九十万ですか、幾らですか、私の調べだというと、そうなっておりますが、こういうふうに増加した理由はどういうことですか。
  85. 福田繁

    政府委員福田繁君) 従来、文部省におきまして補助して参りました全国的な団体ももちろんございますが、都道府県のいろいろ研究団体といたしましては、とても最近の研究を実施するには一千五百万程度の補助金では少ないということで、かねがねこれは増額要望が非常に強かったわけであります。そういった意味から来年度は千五百万から一億に少し飛び過ぎるわけでございますけれども、できることなら画期的に増額したい、こういう趣旨で要求したわけでございます。
  86. 小林武

    ○小林武君 そこで、豊瀬委員が先ほど要求いたしました資料なんですけれども、その資料をひとつぜひお出しいただきたい。その際、交付団体とか、交付金額いろいろございましょうけれども、この際、どういう一体実績があったか。少なくともこれは補助金等にかかる予算の執行の適正化に関する法律を適用されるのでしょう、どうですか。
  87. 福田繁

    政府委員福田繁君) 補助金であればもちろん適用されるわけであります。
  88. 小林武

    ○小林武君 そうすると、実績の報告というやつはできますね。実績の報告というものはできますか。
  89. 福田繁

    政府委員福田繁君) もちろん実績はあると思います。
  90. 小林武

    ○小林武君 その点の資料の報告はよろしいですな。
  91. 福田繁

    政府委員福田繁君) それはよく検討してみたいと思います。
  92. 宮地茂

    政府委員(宮地茂君) 補足いたしまして。先ほど豊瀬先生から御要求の資料でございますが、ただ一つ所持する免許状に関する教科以外の教科を担当する実情を府県別に出せということですが、この資料はちょっと調査いたしませんと出て参りませんので、調査をいたしたいと思いますが、しばらく日数がかかると思います。
  93. 小林武

    ○小林武君 実績の報告というものが当然法律によってなさなければならないことになっているんだが、そのことの資料の提供を検討するということはどういうことですか。検討しなければここには出せないというのはどういうわけですか。
  94. 福田繁

    政府委員福田繁君) そういう意味ではございませんで、もちろん文部省に報告がきているものは十分調査しまして、差し上げられるものは差し上げたい、こういう趣旨でございます。
  95. 小林武

    ○小林武君 出すということですね。なお、交付の条件、額の決定というのは、一体どういう手続を経て行なわれるわけですか。
  96. 福田繁

    政府委員福田繁君) もちろんこれは補助の目的がきまっておりますので、教育研究団体としてりっぱな研究をやっているというようなものに対しましては、予算執行の一般の場合と同じように初中等局の中でこれを十分検討しまして、大臣の決裁を受けて出す、こういうことになっております。
  97. 小林武

    ○小林武君 りっぱな研究というお話が出たが、これは当然りっぱな研究でなければならぬが、まあ、りっぱな研究という判定ですね、そういう決定をするにあたって、どういうことをやるのか、具体的にちょっと述べてもらいたい。もう一つ、第五条によって申請いたしましても交付を受けることのできない団体というものは、およそどのくらいあるのですか、比率としてどのくらいのものですか。三十七年度でけっこうです。
  98. 福田繁

    政府委員福田繁君) もちろんこの補助金を出す建前からいたしまして、たとえば初等中等教育に関する教科の研究とか、あるいはまたいろいろな学校の管理運営についての総合的な研究とか、いろいろございます。そういうものについて適切なものを選んでこれを出すという建前をとっております。ただ、現在は全国的に見ますと、非常にたくさんの研究団体が大小取りまぜてたくさんございます。したがって、今何パーセントということは申し上げられませんけれども、出しているものはごく一部で、対象になってないほうがたくさんあると思います。
  99. 小林武

    ○小林武君 それではひとつ、三十七年度において、一体交付を申請した団体の数がどのくらいあるか、この点もひとつ豊瀬委員の資料の中に一部つけ加えていただきたいと思います。よろしゅうございますか。
  100. 福田繁

    政府委員福田繁君) 数はわかります。
  101. 小林武

    ○小林武君 そこで、文部大臣一つお尋ねいたしますが、これは事実あったかないかだけをお話いただければけっこうです。八月の都道府県教育長並びに教育委員長の総会で、荒木文部大臣は、最近、教職員の間に日教組の運動方針を批判し、教育第一義的な立場で自主的に研究活動を推進しょうという気風が高まっているが、文部省は、こうした団体には積極的に援助し育成していく方針を明らかにした、こういう意味のことを大体言われたというのが、ある雑誌に出ていますが、そういう事実はあったのですかないのですか。
  102. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) そういう意味のことを申しました。
  103. 小林武

    ○小林武君 そうですか。それでは質問を終わります。
  104. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 福田さんも御存じと思いますが、愛媛県の教育研究団体に補助金を交付されておるという実績についていろいろ審査をいたしまして、たしか十二月ごろまでは補助金をもらっておるけれども、何をやったか報告は来ていないために、いかなる研究をしたかわかりませんというような答弁が行なわれました。そこで、年度の三分の二終わったころまでに研究が全然行なわれていないということは好ましくないが、そういうことであればやむを得ないので、後日きちんと出して下さいと言って、そのままになったのですが、三十六年とそれからの実績、三十七年度において報告がそろっておるものについて補助金を支出した団体、構成員、その構成の概要——たとえば教職員のみで組織しておるのか、教育委員会、PTA等も一緒に加入しておるのか、概要というのはこれです。それから研究実績の概要、これは本問題を審査する上に最も重要なものです。しかも国の補助金を交付しているのですから、検討しますということではなくして、当然何を教え、何時間何をしゃべって——何のテキストを何枚配ったという詳細なことはなかなかむずかしいでしょうが、報告の中にはかなり詳細に出ていますから、たとえば倫理学を研究した、社会学を研究をした、講師はだれで、どういう趣旨の研究会で、対象は何であるといったような研究実績の概略、これを三十六年並びに三十七年で、すでに来ているものについての一覧表を出してもらいたいと思いますが、およそどのくらいの日数を必要としますか。
  105. 福田繁

    政府委員福田繁君) ただいま御質問のありました点、私詳細なことを存じませんので、よく聞きましてからお答えをいたします。
  106. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 三十六年度の実績については、すでに文部省に提出済みと判断いたします。これは前内藤初中局長の補助団体の報告に対する答弁として本委員会で答えた際の実績からすると、すでに出ているはずですが、三十七年については出ていないものもあると思いますが、できるだけ早急に出していただきたいと思います。それから次の質問に移るために、先ほど私が要求した事務職員、養護の配当の一覧表はまだ出せませんか。
  107. 北畠教真

    委員長北畠教真君) ただいまの資料要求がございましたが、文部省はなるべく早く提出していただきたいと思います。
  108. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 先ほどの、今言った事務職員、養護の一覧表は今出せますか、これは先日から通達しているはずです。
  109. 福田繁

    政府委員福田繁君) 今持っておりませんが……。
  110. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 これは先日、委員部を通じまして、質問の詳細は言っておりませんけれども出席すべき人々並びに事務職員、養護の配当の問題について質問しますと、こう言っているのですから用意あってしかるべきだと思いますが、今ありませんというのは、質問を続けておればやがて持ってきますという意味ならばそれで進めますが、どうですか。
  111. 福田繁

    政府委員福田繁君) その資料御要求のことは私聞いておりませんので、ここに課長がおりますけれども、課長も聞いていないようであります。
  112. 北畠教真

    委員長北畠教真君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  113. 北畠教真

    委員長北畠教真君) 速記を開始して。
  114. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 三十七年の各都道府県の進学率、それから今度六一・八%に大体話が落ちついた、知事会と話が統一した、その都道府県別のパーセンテージを出してもらいたい。これは出てこぬといかぬから、ひとつ委員長確認して下さい。
  115. 福田繁

    政府委員福田繁君) 三十八年の進学率の問題でございますが、これは私ども全国的な立場におきまして六一・八%というものを一応作ったわけでございますが、少し不安でございまして、まだ関係省と折衝の余地のある問題でございます。したがって、府県別には申し上げかねるのでありますが。
  116. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうなると私は聞きたいのだが、さっき文部大臣の回答では、都道府県等の十分その知事の意見を聞いて、そうして県ごとに当たってきめたのが六一・八%、こうおっしゃるわけだ。そうすると、六一・八%に是正したというその基準というのはどこから出ておるか、それは出ていないはずですよ、それが都道府県別に出ていないというならば。それはやっていないということじゃないですか。それじゃ三十七年と三十八年の対比が見たい。どういうわけで六一%に変わってきておるのか、こういうつもりで資料の要求をしておるわけです。それが出てないということになると、大ざっぱな見方ということですか。
  117. 福田繁

    政府委員福田繁君) 先ほど私申し上げましたのは、各府県の公立を大体押えましての決定でございます。したがって、いろいろまだ私立等については未確定な要素がございます。そういった意味で、全体として府県別の数をお出しするのは差し控えたい、こういうことでございます。
  118. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それじゃないものを出してくれといってもこれは無理ですから、三十七年度だけ出して下さい。
  119. 福田繁

    政府委員福田繁君) 承知いたしました。提出をいたします。
  120. 千葉千代世

    千葉千代世君 私は養護教諭増員計画について文部大臣質問したいと思います。第四十国会で養護教諭、事務職員の増員に関する決議がありました。その際、当局は次の五点についての努力を約束されたわけです。その第一点は、昭和三十八年度以降四十二年までの充足計画でございますが、すなわち、昭和四十二年には小学校九百名につき一名、中学校千二百名につき一名とする。三十八年度約二千三百名の増員、これは地方費支弁で採用されているものを優先的に採用して充足していくというわけであります。それから三十九年度約千二百名の増員以後は毎年約七百五十名の増員ということでございます。二番目には地方費、すなわち市町村費支弁のものは全部任用がえしていく努力をする。その中でまず免許状の所有者を切りかえていく。免許状のないものについては取得できるように善処する。三番目には、既得権は維持する。つまり、現在、配置基準を上回っているところでも減員しない。減らさない。首を切らない。それから四番目に兼務をなくしていく。五番目には養成所の増設でございますが、この中で、まず第一に伺いたいことは、この第一番目に、充足計画の三十八年度に約束されましたものを今度の予算にどのように盛られておりますか、説明していただきたいと思います。なった趣旨を体して善処したい気持に変わりございません。具体的数字はちょっと私も念頭にございませんので政府委員からお答えします。
  121. 福田繁

    政府委員福田繁君) この問題については、通常国会以来、三べんくらい私申し上げたかと思いますが、くどいようでございますけれども、決議の趣旨に従って文部省としては三十八年度以降においてこれを充実していきたい。さしあたり三十八年度の養護教諭の充実につきましては、大体五カ年計画の中で約二千人程度要求したい、こういうことを申し上げておいたのでございます。そのとおりに現在は要求して折衝中の問題でございます。
  122. 千葉千代世

    千葉千代世君 その二千名というのは、現在市町村費支弁でおりますものを優先的に採用していくという内容の二千名でございますか。つまり二千名、まあ数字については二千三百名、あるいは二千五百名なり二千名なり、そのことについては詳しく数理的な検討はされるという約束ですが、当時約二千三百人ということを質疑の中に明らかにされておったわけですが、それは市町村支弁のものを充足、こういう内容ですか。
  123. 福田繁

    政府委員福田繁君) これはもし定員がとれました場合には、おっしゃったように町村支弁の職員をできる限り優先的に切りかえていきたい、こういうつもりでおります。
  124. 千葉千代世

    千葉千代世君 もしということではなくて、あのときのお話し合いの中には、全国で市町村支弁のものがこれだけいる。内容が明らかになっておったし、現に文部省の三十七年五月一日の指定統計の中にも明らかにされておりますように、非常な数でございますね。大体義務制で約三千九百二十八名いる。これは文部省の統計でございます。そのうちの市町村費で採用している毛のが百名以上もある県が十五県、それから市町村費支弁のものが最も多いのは鹿児島の三百三十九とか、広島の三百二十八とか、兵庫の二百十二とか、こういうふうにございますわけです。県によって非常なアンバランスでございますけれども、とにかく市町村費支弁のものを一番先に採用していく、免許状を持っているものを得がたいというので、これはやはりきちっと予算の中でもって各県が実行できるような処置をしていただかなければ、この前に約束したことも空文になってしまうと思うのですけれども、ただ盛っただけで何にも行政措置もされていないという現状でしょうか。
  125. 福田繁

    政府委員福田繁君) これは予算がきまってからの問題でございまして、私どもはきまったならば、今申したように現在のそういった市町村負担の職員を最優先的に考えたい。こういう方針で臨んでおることはちっとも変わりはないわけでございます。
  126. 千葉千代世

    千葉千代世君 その点についてですが、ちょっとこれは聞きかじりで確かかどうかは存じませんけれども、今の配置基準になっていない、まだ不足しておるところだけを市町村支弁のものをまず優先的にやって、配置基準以上のものについては、あるいはそれに近いものについてはあと回しにするようなお話をちょっと聞きかじったわけですけれども、そういうことはないでしょうね。
  127. 福田繁

    政府委員福田繁君) まだそういうところまであまり具体的に考えておりません。これは、予算決定した上で各府県の実情をさらにもう一ぺんよく聴取いたしまして決定したいと思います。
  128. 千葉千代世

    千葉千代世君 四十国会の決議のあとに文部当局からいわれた中には、まず第一に何をおいても充足計画の中の第一番にこれを取り上げるというのですから、これは全国で、さっき申し上げたように非常にアンバランスがありますけれども、総体的に全員が幾らかということを把握して、その中からこの充足計画に見合った人数を採用していくと、こういう趣旨に変わりはございませんですね。
  129. 福田繁

    政府委員福田繁君) 考え方はそうでございますけれども、現実の都道府県の中のいろいろな配置や具体的な人を考えて参ります際には、やっぱりいろいろな条件があろうと思います。そういう問題をやはり考えまして、できる限り私どもとしては最優先に考えていきたいということでございます。
  130. 千葉千代世

    千葉千代世君 各県の実情に合わしてということでございますけれども、やはり各県ではそれをたてにとりまして、年令が超過しているからだとか、俸給が高いから新規採用に切りかえられないとか、いろいろな条件をつけられて、実際的には採用できにくいというのが実情なんでございます。そういうふうなわけで、各県別にその採用について困っているという県がたくさんございます。たとえば年令制限については、奈良県では新採用三十七才までだけれども四十六才までにしてやったとか、あるいは群馬のように、基準がないのだから、その点は政府の見方を考えてとか、いろいろ県によって違うわけなんです。ですからこの行政措置と行政指導と一緒にあわせて行わない限りは、これはなかなか——予算に盛ったからあとは各県の自由だ、地元で勝手にやれであっては、やはりこれは問題は解決しないと思いますけれども、いかがでしょうか。
  131. 福田繁

    政府委員福田繁君) まだあまり細かい点まで私ども考えていないことは今申し上げたとおりでございます。いろいろな各県の実情がありますから、それらの実情を十分聞きまして、不公平にならないように、できる限り公平に、しかもさっき申しましたような、現在の職員に優先してもらえるような方法考えていきたい、こういうことでございます。
  132. 千葉千代世

    千葉千代世君 それもまたあとで質問するとしまして、次に進めたいと思うのですが、各県別の配置に非常なアンバランスがあるわけなんですが、具体的に各県の事情をちょっと簡単に説明していただきたいのですが、大体基準にいっているところがどう、それからそれに満たないところが何県、それからこういうふうな満たないところについてはこういう行政指導をしたとか、そういう点について説明していただきたいんですけれども
  133. 福田繁

    政府委員福田繁君) 三十六年五月現在の調査によりますと、基準をこえております県が岩手県、宮城県、それから秋田県、山形県、福島県、それから群馬県、それから東京都、それから福井——福井はごくわずかでございますが、それから長野県、岐阜県、福岡県、佐賀県、長崎県、宮崎県、そういうようなところが大体基準をオーバーしている。その中でも特にオーバー著しいものは岩手県、山形県、それから長野県、福岡県、それだけでございます。あとはなお足りないという状況でございますが、これは養成の問題とも関連しておりますので、御承知のようになかなか養護教諭の供給の面において非常な困難を来たしております。そういった点から、やはり置きたくても置けないという県も相当ございますのが現状でございます。
  134. 千葉千代世

    千葉千代世君 今お聞きしていきますというと、基準に達してない県が約二十九県あるわけですね。中学校で三十一県と、こういう現状でございますけれども、その中で一番少ないところ、これはどこでございましょう。
  135. 福田繁

    政府委員福田繁君) 数から申しますと、北海道、静岡県、兵庫県が少ないと思います。
  136. 千葉千代世

    千葉千代世君 島根県が昨年は二・七%で、ことしは四・六二%と、こうなっておりますね。そうすると、東京の八四・四六と、それから島根県の四・六二とはたいへんな開きなんですけれども、これについて文部省は何か島根県に対して行政指導なさったことございますでしょうか。
  137. 福田繁

    政府委員福田繁君) 島根県に対して特に指導したこと、私になりましてからないと思っております。高根県は不足がございましても八十人程度でございます。ほかの県に比較しまして八十人くらいのところは相当ございます。したがって、最も多いという県ではなかろうと思います。
  138. 千葉千代世

    千葉千代世君 決議があげられましてからかなり口数がたっているわけなんです。その中で今申し上げました島根県を初め青森県の一三・一七とか、栃木の七・三二とか、広島の一二・二〇とか、香川の一二・三九とか、徳島の一二・四六とか、こういうふうに全然問題にならない県があるわけです。今一番ひどいのをあげてみたんですけれども、そうしますと、これらのアンバランスをなくしていくという中で養護教員の配置でございますけれども、今度の予算に盛られた中で、これが逐次解消されていく方向に向かうと思っていらっしゃるでしょうか。
  139. 福田繁

    政府委員福田繁君) これはとうてい一ぺんにはいかないと思います。したがって、五カ年計画を立てて、供給のほうとにらみ合わせながら逐次増加していく、アンバランスをなくしていく、こういうような考えでおりますけれども、直ちに各府県のアンバランスをなくすと申しましても、ただ数の問題だけじゃなくて、各府県にはいろんな事情がございます。そういう事情を勘案しながら今後指導していかないと、その辺は非常にむずかしい問題だろうと考えております。
  140. 千葉千代世

    千葉千代世君 たしか昨年の三月ごろだったと帳面に書いてございますが、三十八年度は現行標準定数の政令を改正して満たしていく、三十九年度以降は現行標準定数の法改正、片方は政令、片方は法改正、こういうふうにして充足をしていきたいというふうにおっしゃったのですが、それについてどのように考えていらっしゃいますか。
  141. 福田繁

    政府委員福田繁君) 予算決定すればそういう必要が生じてくることは当然でございます。
  142. 千葉千代世

    千葉千代世君 時間の関係で急ぎますけれども、養成計画でございますが、昨年五カ所国立の養成所を設置していただきました。三十八年度は三カ所増置する、こういう計画に聞いたのですが、その予算は幾ら持って、大体どこに設置して、どのように運営していくのか、それについてお答え願いたい。
  143. 福田繁

    政府委員福田繁君) 私が承知しておりますのは、山形大学と徳島大学と熊本大学の三大学に新しく講座を設けるというような方針で、これは大学学術局の所管でございますが、大体金額にいたしまして四百六十万になるそうでございます。要求中だそうでございます。
  144. 千葉千代世

    千葉千代世君 その山形大学なんですが、山形には現在、県立の養護教員養成所があって二級の免状を出しておりますですね。これは廃止して新たに設けると、こういうわけでございしょうか。
  145. 福田繁

    政府委員福田繁君) 私の承知しておりますのは、それは廃止しないで新たに別に作るという考えのようでございます。
  146. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうしますと、今、山形大学の中にあります、私これは見て来たのですけれども、あります養成所、それはそのままにしておいて大学の中に別に設置する。そうすると、あすこの養成所は今立ちのきを命ぜられておったわけなんです。だから、それをなくしてしまって、そちらに全部かえられるという心配をしておったのですが、それはこまかい質問で、あとでしたいと思うのですけれども、それだけ特に答えていただきたい。間違いないか、そのまま存置していくこと、大学には大学で別に設置するということ、そして新たに募集してそこで養成していくということ、三本立でやること間違いありませんか。
  147. 安養寺重夫

    説明員安養寺重夫君) お答えいたします。今、現在山形県が経営いたしておりますのは、高等学校を卒業した者を入れます二級の免許資格取得者のための機関でございます。来年度予算が通過いたしますれば設置したいといいますのは、高等学校を卒業いたしまして、看護婦の免許状を取得する勉強をいたしまして、さらにそのものが大学へ入りまして一年の教育を経た上で一級の免許資格をとる、こういう養成計画の機関を設置したいということでございますので、制度自体は別のものであるという工合に考えておるわけでございます。
  148. 千葉千代世

    千葉千代世君 養成所をたくさん作ることは私どもぜひ賛成してやってもらいたいことなんですけれども、地域的な問題など毛関連いたしますが、その質問はあとに譲りまして、昨年五カ所設置してみて運営上何か問題点はございませんでしたでしょうか。私どもの聞くところによりますというと、やはり教授の方々が兼任でありますために非常に時間がとりにくかったり、それから相当労働過重になっていくとか、そういう問題点とか、それから併任手当についても非常に少額であるとか、たくさんの問題点が出ているわけですけれども、養成計画について、それらの問題点ございましたならば述べていただきたいと思いますが。
  149. 安養寺重夫

    説明員安養寺重夫君) まだ一年生を最初に入れたばかりでございまして、全部終わっておりませんので、中途の中間的な意見になると思いますけれども一つは募集の時期の問題もございまして、せっかく各大学三十名、百五十人の定員を用意をいたしましたけれども、唐名程度しか入学者を見ることができなかったという点がございました。この点について来年度について多少工夫をめぐらして、さようなことのないように徹底をいたしたいと考えておるわけでございます。それから今御指摘のございましたのは、教育課程の運営の問題かと思いますが、このことを始めます前に、五大学の専用の先生方にお集まりをいただきまして、教育課程内容を一応概略各機関とも共通に編成をするというようなことでお考えいただいたわけでございます。この関係から、いろいろやりましたあげく、もう少し時間割をぴっちり組んでもらいたいという生徒の希望がございます。と申しますのは、これは大学の管理制度の問題でございますので、多少時間割があく場合がございます。こういうようなこともございまして、その時間は特別な補講をいたすということに現在はいたしております。その関係から、御指摘のような時間講師の面で多少手当をもう少し増額をしてはどうだろうかというような問題がございますので、そういう点も加味して、実は先ほど福田局長からお答え申し上げましたように、本年二百六十万でございましたけれども、四百六十万円ばかりの増額要求というようなことをいたしております。そのほか設備の充実というようなこともございますけれども、おいおいそういうことは実現いたしていきたい、かように思っておるわけでございます。
  150. 千葉千代世

    千葉千代世君 最後にもう一点だけ、三月終わって四月に採用する問題なんですけれども、その中でやはり養護教諭を得がたい点の一つのうちに、年令が非常に上がっているわけです。普通の一般の教員よりも特殊な仕事であったために、相当年令的に上回っている。そういう者については、年令の基準を選考に当たってゆるめていくようにというこの前の私の質問の中で、福田初中局長はどのように答えているわけなんです。これは各任命権者である都道府県のことでございますけれども、おっしゃるように、養護教諭がなかなか得にくいというような事情もございますので、あまり窮屈な年令にこだわらず、適任者はこれを採用していくというような方法で指導していきたいと考えておりますとおっしゃったのですが、この指導について、何か各地方連絡とか、あるいは文部省のほうとして適切な方法で御指導なすったかとうか、何かおやり下すったかどうか、ちょっとその点お答え願いたい。
  151. 福田繁

    政府委員福田繁君) 都道府県教育長協議会の会合の席などで、養護教諭の充実について将来の見通し、それから将来の対策等、いろいろ話したことはございますが、具体的に今お尋ねのようなことを指示したことも相談したことも現在までございません。
  152. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうしますと、たとえば県といろいろな地方の先生がお話し合って、どうしても年令の基準とか、選考基準が非常に窮屈な場合には、やはり具体的にそちらに連絡したならば、その県に向かって指導の処置をとって下さるのでしょうか。
  153. 福田繁

    政府委員福田繁君) これはまた機会がありました際に、十分その辺は教育長連中と相談をしてみたいと思っております。
  154. 千葉千代世

    千葉千代世君 これはぜひ第一番に、ことし全国的に本腰を入れて御指導いただきたい点の一つなんです。その他予算に関連して質問したいと思いますが、後日に譲ります。
  155. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 安養寺課長にお尋ねいたしますが、養護教諭の採用年令制限で一番若いところで制限しておるのはおよそどの辺ですか。それから一番高いところで制限しておるのは。
  156. 安養寺重夫

    説明員安養寺重夫君) 私は詳細はよく存じておりません。
  157. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 梅田さんの答弁でもわかりましたけれども、やはり前国会の本委員会で審査を行ない、文部省が答えた趣旨からいたしますと、やはり全国の、たとえば岩手では三十七才以上になると採用しませんとか、三十五才までしか採用しませんということは、養護教諭を確保していくという方針とはそごをいたしますから、早急に各都道府県の養護教諭新採用年令の制限の状況を調べていただいて、今年度中にその制限が撤廃されることによって、資格を持っておる優秀な養護教諭が確保できるような行政指導をお願いしたいと思います。  続いてお尋ねいたしますが、昭和三十三年だったと思いますが、公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員逆数の標準に関する法律の審議の際に、第七条並びに第八条について議員の質問に答えまして、文部省は、第七条の表十八学級から三十学級までの学校の乗ずる数の四というのは四の中の一、第八条の九学級から二十学級までの学校の乗ずる数の三というのはその三の中の一、これはそれぞれ事務購買を配当することを意味しております、こういうふうな答弁を行なっておるのですが、今申しました十八学級以上、九学級以上の基準に達していない県数を小中別にあげて下さい。
  158. 福田繁

    政府委員福田繁君) 手元にあります資料は三十七年五月現在の資料でございますが、小学校で達していないのは、北から申しまして北海道、岩手、秋田、栃木、群馬、埼玉、神奈川……。
  159. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 県名を読み上げぬで総数でいいです。
  160. 福田繁

    政府委員福田繁君) 総数では小学校におきまして九百四十八名、中学校におきまして二千二百二十九名という数になります。
  161. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 達していない県数ですよ、県の数、小学校は……。
  162. 福田繁

    政府委員福田繁君) 小学校では二十八県ございます。
  163. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 一々区切らせぬで、小中別と、こう言ったのですから、中学校も一緒に。
  164. 福田繁

    政府委員福田繁君) 中学校は今勘定しておりますから。——中学校は三十七県でございます。
  165. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 三十三年に定数法制定の際にそのような趣旨を答弁されて、三十三年の本法律案は五月一日に成立しました。その当時の指定統計による事務職員配当から約四、五年の間に、県の数でもよろしいです、パーセントでもよろしいですが、どのくらい事務職員の配当がよくなりましたか、実数が。
  166. 福田繁

    政府委員福田繁君) 今調査中ですから、後ほどお答えいたします。
  167. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 前もって各県別の配当を出して下さいと予告いたしたのですから、それに達しない県はおよそ二十何県というふうなことはわかるはずですがね。それでは別の角度からお尋ねしますが、学校教育法の——小学校の場合は二十八条、中学校の場合も二十八条ですね。二十八条によって、二十二年以来、特別の事情がなければ事務職員は置きなさいということですね。特別の事情があるときは置かないでもよろしい。そうすると、置くことが本体だということは前国会大臣答弁でもわかっておるのですが、少なくともそれを具体化した定数法制定の際の、三十三年から今日まで学校教育法二十八条の趣旨、三十三年定数法成立の際の文部当局の趣旨、これがどう行政指導がされて、どう成果をとげてきたかということは、調査していますということは、行政指導してきていないという意味でしょうか、してきた成果について把握していないという意味でしょうか。
  168. 福田繁

    政府委員福田繁君) 先ほどのお尋ねが数またはパーセントで示せということでございましたので、今数を調査しております。——三十三年度の事務職員は八千六百人くらいでございますが、三十六年度の統計までしかまだございませんが、三十六年度で約九千五百でございます。約千人くらいふえているということになるわけでございます。
  169. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 約九百名程度のプラスですか。千人足らずの増員という形で表現し得ることも一つ方法ではありますが、しかし、事務職員の際にも養護教諭の際にも言われたように、やはり高年令は採用しないという都道府県の内規に対して、それは養護教諭の確保の道でないという行政指導が行なわれないために養護教諭が確保できていない。これは御承知のとおりです。これも怠慢です。学校教育法二十八条によれば、特別の事情がなければ事務職員を置きなさいという法律だから、都道府県がそれに準じて赴いていく指導が一つ。ただし、定数法があるのですから、養護は生徒数によって割ってあるけれども事務職員の場合は定数法について一つの基準が示されておりませんね。そうすると、結局、まず一つの根拠になるのは、小学校十八学級以上の四の中の一、中学校九学級以上の三の中の一というのが文部省考えている配当基準であるが、これを歴年どういう行政指導をしてこられたか。と申しますのは、九百名の増員、必ずしも全国的な事務職員の配当の適正と判断できないのは御承知のとおりですね。ある県は基準よりもはるかに上回った配当をしておる。岩手県のごときはいわゆる事務職員と称するものはゼロであり、四国四県のごときは二名置いてみたり四名置いてみたりしながら、岩手のごときは教諭を事務職員として配当しておる。あるいは四国各県のごときは、わずかな市町村採用の事務職員を配当することによって県市別の事務職員の配当を怠っておる、こういう各県の凹凸に対して、島根はゼロですが、県の採用の事務職員を配当しなさい、少なくともその基準は文部省国会で答えた小十八学級、中九学級以上は適正に配置せよ、こういう指導は行なってこられたのでしょうか、簡単にお答え願います。
  170. 福田繁

    政府委員福田繁君) 先ほど申し上げました数字は三十六年度でございましたが、三十七年度においてみますと、千二百人増加しております。もちろん事務職員の増員につきましても年々努力して参ったと思いますけれども、一方において、中学校の急増等の問題もございまして、現在までに結果的に見ますと不十分な状態になっておることは御承知のとおりでございます。したがって、私どもとしては、この前の国会におきまして、大臣からも言明がございましたように、養護教諭とあわせて、将来、事務職員も年次計画を立ててこれを増員していきたい、こういうつもりで現在計画を進めておるわけでございます。したがって、三十八年におきましては、約二千人くらいの増員を予算要求してこれを実現していきたい。したがって、今申しました過去の、三十三年以来の増員は年々わずかでございますけれども、それを取り返す意味におきましても、今後できる限り増員をして、事務に渋滞のないようにしていきたい、こう考えておるわけでございます。
  171. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 私が聞いておるのは、そういうことであると同時に、さきの通常国会の際に、大臣から数字をあげて年次計画説明された。しかもその際の質疑応答の中で、学校教育法二十八条の趣旨はできるだけ早く実現すべきである。これは養護教諭、事務職員を必置するという趣旨です。ところが、今指摘しましたように、島根はゼロ、岩手は一、滋賀県は十五、新潟も十五、四国各県のごときはおしなべて百人に足らない、三、四十という事務職員しか配当していない。このことは、少なくとも学校教育法制定の際の小学校十八、中学校九以上の三ないし四というのは、その中の一は事務職員ですよと、こういう答弁した趣旨からすると、総トータルがふえておっても、一つには市町村採用がふえたという現象が明らかに見られます。もう一つは、学校教育法二十八条の趣旨に忠実に努力してきた県が、基準よりも上回っている県がかなり出てきておる。そうして一方、基準よりもはるかに低い県は、かなり多くの県が依然として、私が指摘したような、はなはだしい県のごときは、県費負担の事務職員がゼロであるという状況ですね。このことの是正が行政指導として行なわれない限り、極端にいえば一万人ふえても、配置のよい県には文部省考えておる基準以上にずっと事務職員が配当されるけれども、そうでないところは、島根と福島のごときは小中合わせてわずかにゼロないし二名、こういった非常にアンバランスを生じていますね。だから二千名ふやすという総トータルの趣旨に従って予算要求をしていただいて、努力していただいていることはつとに承知いたしております。これは予算書が明らかに示しております。そのことを努力しなさいと言っているのではなくて、そのことはもちろん同時に、今私が一、二の県をあげて指摘した県費負担の事務職員がゼロとか、数百校あるのに二、三人とか、こういうアンバランスの県に対して……今度はもっと問題を縮めましょう。さきの国会で、二十八条の趣旨にはできるだけ早く実現されることが望ましいという文部大臣答弁を受けて、文部省が各県に対して、配当の悪い県に対して、適切な、親切な行政指導をしたのですか、しなかったのですか。実績主義だから各県に置けば、それによって負担法によって半額だけ持ちますという放置をしてきたのか、いずれですか。
  172. 福田繁

    政府委員福田繁君) もちろんこれは建前上実績負担でございますので、各県の実情に応じて各県で計画を立ててやるわけでございます。しかしながら、趣旨としては標準法の完全実施という建前からいって、できる限り事務職員についても増員することが望ましいわけであります。したがって、そういう趣旨に従いまして、従来ある程度の指導はしてきたものと考えておりますが、しかしながら、それをどうしても各県の事情によって置かないというものを、そこが非常にむずかしい問題であろうと思いますが、それを越えてやるというのも私どもとしてはいろいろ問題があるのではないか。特に一方において中学校の急増という問題がありますので、こういう点は今後の問題として残っておるということになろうかと思います。
  173. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 この問題についてもう一つだけ念を押しておきます。なるほど各県の事情によって置かないという県がある場合には、義務教育費国庫負担法の建前からしても押しつけることは文部省としてできない、まことにごりっぱな御見解です。学力テストのときに都道府県がやらないといったらどうしますか、いや、ねじ伏せてでもやります、行政指導というものが、みんなが歓迎することについては、どうも都道府県の自主性が謳歌され、問題があって、文部省がどうしてもやりたいと思うことはねじ伏せていく、こういうお考えではいささかへんぱであろうと思うのです、学テの問題については言いませんが、少なくとも文部大臣が、二十八条の趣旨は早急に実現されることが望ましいが、一気にはできませんので努力しますという趣旨に従って、総員をふやす予算をとっていただく努力をしていただくと同時に、三十三年の標準法制定の際に、定数法制定の際に、文部当局が答えた十八ないし九、これは私は決して現状において妥当な線とは思いません、しかし、低いのがあなたのところの統計でも二十八もあってみたり、中学校は三十幾つもあるというような状況ですから、少なくとも三十八年度の予算には非常に配当の悪い県に対しては適切な指導を行なってもらって、少なくとも今申し上げた基準に各県が達するように行政指導を行なってもらいたい、このように考えておりますが、文部大臣の御見解いかがですか。
  174. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 賛成でございます。
  175. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 次に進みます、その趣旨に立ちまして、たとえば次年度二千名程度の要求をしていただいておりますが、これまた放置すると、都道府県が予算を組まないところは二千名分の予算は余ってしまいますね。あるいは現在起こっておる配当の問題等で、事務職員の実質的増員というのが、あの大臣御回答の趣旨から、結果としてはずれていくという危惧を非常に強く持っておるわけです。そこで、予算が取れましたならば、予算要求をしておる現段階から、文部大臣のほうで、ただいまの御回答のように行政指導をしていっていただいて、予算が実現した暁には実質二千名の事務職員そのものが増員できるような行政指導を的確に行なっていただきたいと考えておりますが、大臣の御見解はいかがですか。
  176. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 善処します。
  177. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 局長にお願いをしておきますが、全国教育長会議、委員長会議等、しかるべく諸会議を通じ、あらゆる機会を通していただいて、さきの通常国会における事務職員、養護教諭は、文部省並びに当委員会の決議、それから学校当事者等の期待どおり適正に配置されていくように行政指導をお願いをしたいと思います。事務職員の問題については質問を終わります。  次に文化財の問題でほんの少し時間をとりまして質問しておきたいと思います。  平城宮跡の問題につきましては、当委員会でも重視し、文教委員長を初め多数の委員の皆さんが出張されました。これを文化財として指定して保存していくということも文部省の御同意を得られたようでありますが、大臣にお尋ねいたしますが、予算の確保については熱意をもって努力していただいておると信じますが、いかがでしょうか。
  178. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) ちょっと善処しますとお答えしたことについて政府委員と話しておりまして、一番最初の御発言を聞き漏らしましたので、恐縮ですが、もう一ぺんお願いいたします。
  179. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 平城宮の予算について努力をいたしますか。
  180. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 努力をいたします。
  181. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 大体実現できると期待してよろしゅうございますか。
  182. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 御期待願えるように努力をしたいと思います。
  183. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 清水文化財事務局長にお尋ねをいたします。八月ごろの新聞でしたか、難波の宮の遺跡について、合同庁舎ですか、これが一番肝心なところに、かなり高層ということは地下を掘り起こすということですね、建てられることになっておる。代替地があればほかに変わってもよろしいがと現地側もあなた方の努力によってなっておるそうですが、これは福岡の城趾の際にも国立病院のことで問題になりましたが、国相互の問題ですから、民間とは異なって、文化財保護の熱意が政府にありさえすればきわめて簡単に片づく問題であろうと思います。これは念を押しておきますけれども、まさかあの土地に、遺跡の調査に全く支障を来たすような形で合同庁舎が建設されていくことはないと信じますが、いかがですか。
  184. 清水康平

    説明員(清水康平君) 難波宮跡の跡に合同庁舎の問題が突如として出てきたのでありますが、この点につきましては関係官庁とも連絡をとり、通達、お願いもいたし、ただいま他の土地を大蔵当局、地元と折衝中でございますので、国として史跡として指定しようとする枢要な部分には建たないだろうと、私は今期待いたしております。
  185. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 文部大臣もただいまの報告どおり努力していただきたいと思いますが、いかがですか。
  186. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣荒木萬壽夫君) 承知しました。
  187. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 次に質問します。これまたたびたび新聞の所載したところですが、箱根のヤマボウシを中心とする植物保護の問題ですが、これは木原均博士ですか、非常に努力をされておるし、いろいろ希望も出ておるのですが、八日に文化財専門委員の武田久吉、吉川技官等が現地に調査に行かれることになっておるのですが、調査の概要について説明をいただく必要はございませんが、調査の結果として、文化財に指定してあの原始林を保護するという方向で努力されておりますか。
  188. 清水康平

    説明員(清水康平君) 箱根の山のヤマボウシその他原始林の問題につきましては、私率直に申し上げますというと、箱根をよく存じませんので、実はあの前に国立の遺伝学研究所の所長からそういう話があったものですから、それではひとつ専門技官と専門審議委員を派遣して調査しよう、こういう計画を立てておりましたときに新聞に出たような次第でございます。その専門家の意見といたしましては、錦ケ谷に云々といろいろおっしゃいますが、私全然知らないものですから、専門技官の意見を聞きますというと、箱根で国でもって法律で指定してありまするのは、これは私も知っておりまするが、箱根の関の跡と箱根の関のところに自然の杉並木があります。これは指定してある。しかし、箱根の山の深いところは、ある程度は知っておりますけれども、とにかく局長がそう言うならばというところで、専門技官と専門審議会の委員の人が、遺伝学研究所の所長の今までのデータを中心に、御案内を受けて現地を調査いたしたわけで断ります。その結果の報告によりますというと、箱根全山の大部分は近代的な設備その他によって、昔の面影が次々と破壊されておるということは、まことに事実の問題として遺憾なことでありますが、経済の発展上やむを得ない部分もあると思うわけでございます。それで、専門家の意見、われわれの意見といたしましても、そういう経済の発展上、しかも公益的なことはやむを得ないが、ここはというところはやはり守るべきじゃなかろうかということで、現在よりより協議をいたしまして、あるいはまたあと一、二度現地に参りまして、そして結論が出てくるんじゃなかろうか、ただいまのところさように考えておる次第でございます。
  189. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 叡山にああいう施設ができまして、自動車やオートバイ等が横行するために、野鳥が非常に少なくなりましたし、そしてまた叡山の持つ自然美そのものもまた非常にそこなわれておることも御承知のとおりです。したがって、観光資源の開発ということはよくわかりますけれども、こういう原始林あるいは自然の特別保護すべきことについては、早急に調査の上、——一度変貌されますと、取り返しつかない問題ですから、できるだけ早く実地調査されて、文化財に指定する必要があるならば、早急に御指定を願いたいと思います。  それから続いて質問ですが、これまた新聞の所載するところでは、当委員会で非常に委員会として努力いたしましたトキの保存の問題ですが、石川県の現地も、私、張る四月でしたか見て参りましたけれども、当該委員会のほうでは、別にこれはという納得すべき保護対策もしていなかったようですが、何でもあの記事によりますと、六、七羽しかいないようです、佐渡と合わせて。こういう状況だと思う。それで佐渡のほうは、あなた方の努力で一応国に買い上げることによって保存ができておると考えておるのですが、現在も大体あの土地買い上げによって、トキの保存は今の段階では十分な指貫をされておるかどうか、石川県のトキの生息する地域については、どういう状況か、簡単にお答え願いたい。
  190. 清水康平

    説明員(清水康平君) トキの問題は、現在確認されておる数は、日本しかおらない鳥で、申し上げるまでもないのでございますが、石川県に五羽、佐渡に六羽おります。これは当委員会の先生方の現地国政調査をきっかけにして、佐渡のほうは、国政調査の結果、国で約三百二十町歩を四千四百万円で買いまして、国際保護鳥であるトキの卵を生んだりする場所、生息地というようなものが確保されたわけでございます。ところが、ことしですか、また当委員会の御調査によりますと、その御報告によりますと——衆議院です。うっかりしておりましたが、とにかく国会の国政調査の方々があそこに行きまして、その非公式のお話によりますというと、国で買うた三百二十町歩以外のところへトキが遊びに行っておる。これは鳥ですから飛んでいくのは当然ですが、その土地がどうも売られる傾向がある、伐採される傾向があると言っているがどうだろうかという話があって、調査いたしましたところが、約三百何十ヘクタールのところが官行造林地域になっているわけです、大正十一年から昭和七十七年まで。農林省に問い合わせましたところが、農林省としては官行造林にはなっているけれども、地元が切るという意思がなければ切るという考えはない。それで、教育委員会に問い合わせましたが、教育委員会もわからない、とにかく世界にあすこに六羽しかおらぬのだから、地元でさっそく調査いたしましたが、新穂村などは痛しかゆし、トキは守りたいが造林のあれも伐採いたしたいという気持もあるようです。それで、やはり財政上必要だけれども、一体、トキが飛んで歩くのですけれども、大体どの辺を飛んで歩くのか、それから切りたいといっても、まる坊主にしなくても、合間を縫って切る方法もあるし、この点もう少し地元としても考え方をまとめてもらう必要もあるし、またひとつ来春に雪も融けましたならば、専門家も行ってもう少し現地を調査してみよう、こういう結論に到達しております。それからもう一つ、五羽おります石川県の問題でございますが、これは御承知のごとく農林省関係で土地開拓団といいますか、それを、トキがやはり何といいますか、飛んで歩く林の付近を開墾いたしました。そのためにトキの生息に非常に影響を及ぼす、それは困ったものだということで、私ども現地に参りましたし、石川県とも折衝いたしましたところが、石川県といたしましては、開拓団のために別な土地を、代林地を与えてやる。それから木を切られたところは石川県の力によって木を植える、それに要する経費は約七百万円でございましたか、これは石川県が自主的にやると言っております。それから、それもトキ生息地帯といたしまして仮指定をいたしたのでございます。この点は私どもといたしましては、石川県または石川県民の人たちのトキに対する認識と理解、それに伴う御努力に対して衷心より敬意を表するとともに、国として今後なさねばならぬことは国としても努力いたしたい、かように思っている次第でございます。簡単でございますが、トキについては以上でございます。
  191. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 トキは国際保護鳥ですから、あなた方御承知のように、死んでしまったらたいへんなことになりますので、日本の国際的な恥辱になりますから、多少の地元の要求等に問題がありましても、早急に結論を出して、その対策は急いでいただきたいと思います。
  192. 小林武

    ○小林武君 関連ですが、文化財保護の問題では、たとえば平城宮の問題でも、今度の難波遺跡の周航でも、何か後手々々というように回っていくようなんです、結局。文化財保護委員会が積極的に計画を立てて文化財を保護するというよりかも、地元なり、あるいはそれを研究する研究者なりが、とにかく何か陳情するとか何とかいう形でやっていくようなどうも傾向にみられてしょうがないわけです。これを、そういうことがあるということは、文化財保護委員会を作った意図に私は沿っておらないような気がするのです。そういう何か根本的な欠陥というのが今の委員会制度の中にあるのですか。
  193. 清水康平

    説明員(清水康平君) 今、小林委員のおっしゃった御趣旨がわからなかったのですが……。
  194. 小林武

    ○小林武君 わからぬければもう一回言います。たとえば難波の遺跡の問題でも、あなたのほうで突如としてというようなことをおっしゃいますけれども、難波遺跡が突如としてできたわけではないのです。平城遺跡の問題でも同様なんです。それからたとえば聞くところによると、京葉工業地帯というようなところでは、相当あすこにはやはり考古学上のいろいろな記念物に属するようなものもあると聞いているのです。そういう問題をわれわれのほうで積極的に、計画的に一体保存していくにはどうしたらいいかということで計画を立てる、また、それを実施することが文化財保護委員会の私は使命だと思う。ところが、どうもわれわれの見たところでは、積極的にそういう手を打つ前に、大阪で、研究者とか、それから関係者が難波のあれはたいへんだ、そしてみんなのところに陳情して回らなければ、それの遺跡を保存することも何もできないというようなやり方は、文化財委員会の存在に何かやはり問題点があるんじゃないかというようなことを感じていると、こう言うのですよ。
  195. 清水康平

    説明員(清水康平君) 御趣旨よくわかりましたから申し上げます。難波の問題、これは突如と申し上げましたが、これは私の舌足らずでございまして、難波官跡の問題は、昭和二十七年から山根徳太郎博士が中心になって、十六次発掘をやっております。今日まで千百七十日の日を要しておるわけであります。これに対しましては、文部省としても科学研究費を三百万円出し、地元の市長が中心になりました難波官跡顕彰会から金を出しまして、次々と、たとえば難波宮の跡あるいは豊崎宮の跡が出て参ったのであります。そして、ことしの七月までに、今合同庁舎はそこに建てるのじゃなくて、大阪府の横に建てる予定であったのです。それが合同庁舎に入れるものでもう少し広くしたいということで、ことしそこに建てないつもりでおったものが、急に八月建てるということにきまったものですから、これはいけないということで、私どもは各方面の御協力も得て、積極的に動いて指定したいということを通知したわけです。突如というのはそういう意味で、決して私言いわけを申し上げるわけじゃございませんが、そういう意味でございます。  それから一般埋蔵文化財の点につきましては、各方面の御意見を聞いて、反省しなければならぬ点は反省し、改善すべきところは改善して参るわけでございますけれども、御承知のごとく、埋蔵文化財も、これは文化財でございますけれども、指定してありまするというところ、古墳であるとか、貝塚とか、法律に指定してありますというと、その範囲内は行政権の発動はできまするけれども、それでも行政権にはやはり限界があると思います。いわんや指定していない日本に古墳、貝塚は全国二十万あると言われておるのでございますが、それを発掘する場合は、御承知のとおり二つあると思います。学術調査のために発掘する場合と、公共事業なんかでもって道路を作るために発掘する場合と二つあるわけでございます。それは現今指定していないものは、法律上届出制度になっておるわけで、それでユネスコなどではこれではいかぬ、学術調査の場合、届出制はいかぬから、各国とも学術調査する場合は許可制にしなければならぬ、こういう動きがあると思うのです。それで私どもも許可制にするためには、一体どこどこに貝塚があるか、どこどこに古墳があるかということを早急にしなければならぬということで、ここに年次計画——来年で終わりますが、そうすると、どこに古墳があるということはわかります。それに基づいて、場合によったならば、私個人といたしましては、やはり各国の例にならい、ユネスコの勧告に従いまして許可制にいたしたい、かように思っておる次第でございますが、しかしまた反面、この埋蔵文化財につきましては、今後なお法の改正、あるいは私ども努力していかなければならぬことはひとつお教え願いまして、駑馬にむちうって努力して参りたいと、さように考えております。
  196. 小林武

    ○小林武君 たいへん努力なされておることは認めましょう。それで降ってわいたように建物が建つということになったわけですね。難波宮の場合は難波宮そのものに対する認識がやはり足りないというか、特にこれは政府がやるのですからね。そういう問題がやはり私は文化財保護委員会においては、政府自体の中に、威令行なわれぬといってはおかしいですけれども、文化財の貴重なことを徹底させられないということは、これは大いに反省すべきだと思うんですよ。同時にこれはあれですか、私は調べて申し上げるわけでないけれども、こういう陳情を受けて考えるんですけれども、合同庁舎を建てるというようなことがある以上、これの一体発掘とか、その後の保存の問題とか、どういう形でそれは保存するか、国民の文化財として。そういう点についてのあなたのほうの御計画というのはあるんですか。
  197. 清水康平

    説明員(清水康平君) 難波宮跡、ちょっと広い難波宮跡でございますが、広く聖武天皇のころの難波宮跡のほかに、孝徳天皇の長柄豊碕宮と両方出てきているわけです、御承知のごとく。それでその遺跡を掘りましたところが、場所によりまするけれども、当時の凝灰岩の雨落なども出てきております。それによって大極殿の大きさ、小安殿の大きさ、回廊というものがほぼ確実になってきたわけです。したがいまして、これを将来、ただ学術調査をして、写真をとることだけで足りるかという問題になるだろうと思うのでございますが、この点につきましては、もちろん地元の意見を聞かなければなりませんが、私どもといたしましては、専門家の意見を聴取してきめていかなければならないと思いまするけれども、地元といたしましては、大阪市の発祥の地である。私どもはそればかりじゃなくして、国民全体にとってまことにかえがたい遺跡でありますから、また、地元といたしましては史跡公園としてこれを保存して参りたい、かように思っている次第でございます。おそらくそういう方向へ進むだろうと思っております。
  198. 小林武

    ○小林武君 したがって、そういうことになると予算等もやっぱり計上しなければならぬということになりますね。
  199. 清水康平

    説明員(清水康平君) おっしゃるとおりでございます。
  200. 小林武

    ○小林武君 それからもう一つ。先ほどのお話の中に、文化財を保存するためのいろいろな手当の中に届出制ですか、これをやると何か一切が解決するとも、言わなかったけれども、かなり文化財保護に効力を発揮するようなお話ですけれども、これは私しろうと考えですけれども、たとえば京葉工業地帯というようなところに、これはわれわれが行ってみても相当海を埋める、丘をくずしてやっているわけです。こういう工事関係者のやるやつは届出どころじゃないわけですね。大体今まで、悪い言い方ですけれども、そういうもので突如として文化財がその中から現われてきたからびっくりしたこともないわけではないだろうと思うんですけれども、そういうところには、特に千葉の場合には、私は研究者の間からは、あすこには、いわゆる文化財というものがかなり包蔵されているというような話を聞いておるわけです。そうなったら、ああいういわゆる工業地帯になるときの非常に何らかの考慮や何がないのかどうかということが不思議でたまらないのです。あなたのほうで手当を講じていないということ、それを研究者の届出だけが何か非常に大事なことのように言うのは、研究者をかえって拘束するような、たいへん都合がいいようですけれども、何か本末転倒という感じがしてならないのですが、どうですか。
  201. 清水康平

    説明員(清水康平君) 現行の法律は、研究者の発掘も土木工事も届出制になっているんです。これじゃ困る、許可制でなければ原状を変更する場合でも、それを抑えることができないからというので、届出制を許可制にしたいというのが趣旨でございます。それから千葉の問題でございまするけれども、この届出制の場合も、周知の遺跡でないと、自分の家を作ろうと思ったらそこから出てきたというのは、これは周知の遺跡というものではないのでありますから、これは押えようがないんですが、学術調査あるいは土木工事をやる場合には、できれば届出から許可にいたしたい。それから今の千葉——京葉ですか、あの裏のほうにいきますと、これは金鈴塚とか、いろいろあれがございます。また指定もしてございますけれども、海岸の埋立地のところは私まだ聞いておりませんけれども——周知の古墳があったということを聞いておりません。ただし、それと似ているものでございますけれども、たとえば東海道新幹線でございまするとか、そういうようなものにつきましては、運輸省と連絡をとりまして、予算を取って、そうして出たときには調査をしてから鉄道を作るように、及ばずながらやっておるわけでございます。京葉についてはあまり私聞いておりませんが、しかし趣旨はごもっともでございます。
  202. 小林武

    ○小林武君 それならば、この文化財保護委員会は、いわゆる文化財を大事にするために作られたものですから、十分、工業化がかなりのスピードで進められていく場合に、積極的なやはり意図でもって、そういう問題を取り扱おれることを私は希望しておきたいと思います。
  203. 北畠教真

    委員長北畠教真君) 本日は、この程度にして、これにて散会いたします。    午後四時四十一分散会