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1962-12-11 第42回国会 衆議院 商工委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和三十七年十二月八日)(土曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次の通 りである。    委員長 逢澤  寛君    理事 小川 平二君 理事 岡本  茂君    理事 首藤 新八君 理事 白浜 仁吉君    理事 中村 幸八君 理事 板川 正吾君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       浦野 幸男君    遠藤 三郎君       小沢 辰男君    岡崎 英城君       海部 俊樹君    神田  博君       菅野和太郎君    藏内 修治君       小平 久雄君    齋藤 憲三君       笹本 一雄君    始関 伊平君       田中 榮一君    田中 龍夫君       中川 俊思君    林   博君       南  好雄君    村上  勇君       山手 滿男君  早稻田柳右エ門君       岡田 利春君    北山 愛郎君       久保田 豊君    小林 ちづ君       多賀谷真稔君    中嶋 英夫君       中村 重光君    西村 力弥君       山口シヅエ君    伊藤卯四郎君 ————————————————————— 昭和三十七年十二月十一日(火曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 逢澤  寛君    理事 小川 平二君 理事 岡本  茂君    理事 首藤 新八君 理事 板川 正吾君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       小沢 辰男君    岡崎 英城君       神田  博君    小平 久雄君       齋藤 憲三君    田中 榮一君       田中 龍夫君    中川 俊思君       南  好雄君    村上  勇君     早稻田柳右エ門君    北山 愛郎君       小林 ちづ君    多賀谷真稔君       中村 重光君    伊藤卯四郎君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁保安局         長)      野田  章君         通商産業政務次         官       上林 忠次君  委員外出席者         通商産業事務官         (軽工業局長) 倉八  正君         通商産業事務官         (軽工業局無機         化学課長)   田辺文一郎君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    小鴨 光男君     ————————————— 十二月八日  金属鉱産物価格安定臨時措置法案多賀谷真稔  君外二十四名提出、第三十九回国会衆法第三一  号)  金属鉱物資源開発助成法案多賀谷真稔君外二  十四名提出、第三十九回国会衆法第三二号)  有明海開発促進法案井手以誠君外二十一名提  出、第四十回国会衆法第四号)  中小企業基本法案松平忠久君外二十六名提出、  第四十回国会衆法第二四号)  中小企業組織法案松平忠久君外二十六名提出、  第四十回国会衆法第二五号)  中小企業基本法案宮澤胤勇君外二百三十三名  提出、第四十回国会衆法第四二号)  は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  小委員会設置に関する件  工業に関する件(日本カーリット株式会社保土  ケ谷工場爆発に関する問題)      ————◇—————
  2. 逢澤寛

    逢澤委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求の件についてお諮りいたします。  今国会におきましても、本委員会の活動を円滑ならしめるために、従来通り国政調査承認要求をいたしたいと存じます。  まず、調査する事項といたしまして、  一、通商産業基本施策に関する事項  二、経済総合計画に関する事項  三、公益事業に関する事項  四、鉱工業に関する事項  五、商業に関する事項  六、通商に関する事項  七、中小企業に関する事項  八、特許に関する事項  九、私的独占の禁止及び公正取引に関する事項  十、工業一般公益との調整等に関する事項  以上十項目とし、調査の目的といたしましては一、日本経済総合的基本施策並びに総合調整のため、二、通商産業行政の実情を調査し、その合理化並びに振興に関する対策の樹立のためとし、調査方法といたしまして、小委員会設置関係各方面より説明の聴取及び資料の要求等調査の期間、本会期中。  以上の通り国政調査承認要求をいたすことに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 逢澤寛

    逢澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、本委員会所管といたしましては、まことにいたましいことと存じますが、先般日本カーリット株式会社保土ケ谷工場爆発事故があり、多くの方々が死傷いたされました。委員会におきましても哀悼の意を表したいと存じますが、まず、所管政府当局より説明を聴取することといたします。上林政務次官
  5. 上林忠次

    上林政府委員 去る金曜日、横浜日本カーリット株式会社事故を起こしまして、多数の死者または負傷者を出したことは、大へん遺憾に思っておりますとともに、被害を受けました皆さん方に対しましては、追悼の意を表する次第であります。  前から、たび重なるこういうような火薬事故のために、委員会におきますところの決議もありまして、三十五年に保安規定を変えまして、工場内の操作の仕方、また工場外保安のやり方、いろいろな規定を変えたのであります。変えて、その法規に従って現在もやっているつもりでありますが、たまたまこういうような事故が起きたのであります。ただいまその現場に当たりまして原因を究明しておりますが、この事故のときにいました者がみな死傷いたしておりますために、まだ確実な原因がはっきりしないというような現状であります。想像いたしますところによりますと、てん薬工場てん薬中に、摩擦のために起きたのじゃないかというようなことを想像いたしておりますが、あらゆる点から、こういうような事故が起きた原因に対しまして、想像しながら、推察しながら、いろいろな原因を探究しております。まだその結果が十分に現われておりませんが、前に変えました規定改正の点にかんがみまして、将来打つべき手を打っていきたい、そうして将来こういうような爆発事故が起きないように、万全の準備をいたしたい、かように考えております。     —————————————
  6. 逢澤寛

    逢澤委員長 この際、お諮りいたします。  本問題は、当委員会所管上大へん重大な事件と存じますので、本日直ちに本問題の現地調査のため委員派遣を行ないたいと存じまするが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 逢澤寛

    逢澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、派遣委員人選等承認申請の手続に関しましては、すべて委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 逢澤寛

    逢澤委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。      ————◇—————
  9. 逢澤寛

    逢澤委員長 この際、小委員会設置の件についてお諮りいたします。  今国会も、前国会通り金属鉱山に関する小委員会及び石油に関する小委員会設置いたすことに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 逢澤寛

    逢澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、両小委員会の小委員並びに小委員長選任に関しましては、委員長において指名することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 逢澤寛

    逢澤委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  両小委員並びに小委員長は、追って指名の上、公報をもってお知らせいたします。      ————◇—————
  12. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、工業に関する件について調査を進めます。  日本カーリット株式会社保土ケ谷工場爆発問題について、質疑の通告がありますので、これを許可いたします。田中武夫君。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど政務次官から、去る十二月七日午前十時二十五分ごろ事故を起こしました日本カーリットの問題について、御報告がございました。その中で、今後はこのようなことのないように努めたい、こういう決意が述べられたわけでありますが、いつもこの種の事件が起きますたびに、通産省及びこれの関係官庁は、きまったように、今後このようなことが起きないように処置をいたします、こう言うのでありますが、またぞろこういうような爆発が起きたということは、一体そこに何か手抜かりがあったのじゃないか、そう思うわけなんです。現に三十四年の十二月あるいは十一月の末ですかに・東洋化工がやはり同じような爆発事故を起こしております。そのときに、われわれは現地を見ました。その翌日、三十四年十二月二日、これは第三十三回国会でありますが、火薬取り締まりに関する決議というのをいたしております。その後、火薬類取締法の一部改正がなされておりますが、こういう決議あるいは火薬類取締法一部改正のときに、同じくわれわれは附帯決議をつけております。そういうような問題について、一体通産省初めそれに関連する各監督官庁は、どういうような措置をとってきたのか、お伺いをいたします。
  14. 上林忠次

    上林政府委員 衆議院の商工委員会における附帯決議もございまして、極力こういうようなことがないように万全の策を講じたいというので、そのときに保安規定を変えまして、まず第一点としましては、保安距離を考える。また保安間隔工場工場との間の間隔、また工場と外部の住宅とか学校とかの距離間隔、そういうようなことの安全性を相当認めてつくったのであります。また危険加工室定員を、犠牲を最小限にとどめるために、この工場のセプタムは五人とか、八人とか、定員をきめまして、被害最小限にとめたいというようなことで定員をきめたわけであります。また消化器設備、また運搬車設備、こういうような設備の改善、包装の基準を整備するというようなこともやっております。それから製造施設、機械の装置、作業方法技術上の細目的な事項についても、危害防止のために万全の措置をとるというようなことをきめまして、極力こういうような災害発生のないようにという目標のもとに、規定を変えたのであります。この規定を変えるに際しましても、その規範をどういう工合にきめるかということにつきましても、学者初め官民の知識経験者を集めまして、これによって構成されました火薬類災害防止対策委員会、かような委員会をつくりまして、これで練っていただきまして、これを規範にしてその規制をつくったのであります。かようなことで、将来の万全を期したという意味であったのでありますが、今回、先ほど申しますような原因がわからない、どういうような原因でこういうような災害がまた起きたのかわからないような原因のもとに、こういうような事故発生したのであります。現場は、ただいま究明中でありまして、今検討中でありまして、まだ原因を突きとめた域に達しておりません。以上であります。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 なるほど、決議等の趣旨に沿って監督その他を厳にしておったかわからない。この種事故は、その場にいた者が全員死亡しますから、ほんとうにあとになってから原因調査するのは困難だと思います。日本カーリットという工場は、今までにも再三同じような事故をやっているのです。過去に四回やっております。最近でも、昭和二十五年の一月二十六日と三十年の八月の二日、三十年の八月の二十二日、三十三年一月十四日、今回を入れますと、五回の事故を起こしております。そのうち一回は、死亡者はなかったわけです。こういうように一つ工場がしょっちゅう同じような事故を繰り返しておるということは、何かそこに原因があるのではないかと思うのです。  そこでお伺いいたしたいことは、こういうような火薬製造会社といいますか、工場における、いわゆる災害発生率というものは、一体どういうことになっておりますか。この日本カーリットは、平均よりか多くの事故を出しておると思うのですが、そうするならば、何らかそこに、その会社保安上の手抜かりがあったと思います。そういう点についてお伺いいたしますとともに、そういうように過去に何回かの爆発事件を起こしておる会社だけに、特に監督を厳にする必要があったと思うのですが、その辺の事情はどのようになっておりますか、お伺いいたします。
  16. 倉八正

    ○倉八説明員 お答えいたします。  火薬、爆薬、いわゆる加工品類事件発生件数でございますが、これは三十二年から三十六年、昨年度までの件数を見ておりますと、毎年減っております。たとえば三十二年が十二件、三十三年が八件、三十四年八件、三十五年四件、三十六年三件、こういうふうにだんだん減っております。それで、それに伴いまして、大体死傷の数もそれに応じて減っております。この日本カーリットが、今田中先生の御指摘のように、過去四回非常に苦い経験があるということにつきましては、私たちの方でも特にこれを厳密に監督しているつもりでございますが、カーリットというのは、御承知のように粉末火薬でありまして、私もあまり詳しい技術は知りませんが、そこでてん薬のときにちょっとした異物でも混入すると、非常に点火しやすいという本質的な一つ性格を持っているものであります。従いまして、このカーリットにつきましても、昨年、一昨年来から、そういう事故が起こらないように、あるいは遮蔽物を特に設けましたり、あるいはてん薬室を隔離したり、あるいは実験につきましても、そこで爆破による影響をいろいろ緩和するためにいろいろ施設を設けるということで、ここにつきましては、特に監督を厳重にしたつもりであります。
  17. 田中武夫

    田中(武)委員 この前に火薬類取締法改正いたしましたときに、警察官立ち入り検査ということもできるようになったと思うのです。そこで、警察庁としては、この種火薬取り締まりといいますか、そういうものに対して火薬類取締法改正前、それと改正後とに、どのような違った監督なり指導をして参りましたか、それをお伺いしたい。
  18. 野田章

    野田政府委員 三十六年の二月火薬類取締法の一部を改正する法律並びに施行令の一部を改正する政令等が出まして、これに基づきまして、警察火薬類運搬規制に関する事務を直接担当するということができるようになりました。また、譲り渡しあるいは消費等の許可について意見を述べるという権限が与えられました。また、製造から消費に至るまでの取り扱いについて、公共の安全の確保という見地から、必要な措置を要請することができるというふうに相なりましたのであります。そしてまた、そういう法律上の責務を果たすために必要な範囲で火薬類製造所あるいは貯蔵場所消費場所等に立ち入り、あるいは帳簿、物件の検査をすることができるというふうになったわけであります。そういう意味で、まず第一に火薬類運搬する車の規制ということができるようになりましたので、この規定に基づきまして、まず火薬運搬する車両の通路あるいは車両点検場所指定に関する運用要項を制定いたしまして、これを関係府県に通達をいたしまして、三十六年の六月ごろから横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、広島の各都市におきまして、火薬類運搬する車両通過路線の設定、あるいは主要幹線道路における点検場所百二十九カ所の指定を行ないまして、ここで火薬運搬する車両点検をいたしておるわけでございます。それと同時に、所要の技術職員を全国で約七十名増員することになりまして、これらを現在配置いたしております。また、都道府県知事等警察公安委員会等の間に協定を結びまして、意見を述べるなり、その他についての要項の打ち合わせをいたしております。
  19. 田中武夫

    田中(武)委員 よくこういう事故を起こすのは、火薬だけでなく、たとえば炭鉱、鉱山等でございますが、これなんかも、結局は監督が二元をなしておるといいますか、そういうところに事故が多いと思うのです。たとえば火薬工場に例をとりました場合に、まず通産省にも監督権がある。改正によって警察にもある。それから労働省は、これは基準法による工場安全というところに重点を置くだろうが、あるわけなんです。そこで、火薬工場保安関係につきましては、一体この三者のうちで、ほんとう責任を持ってやらねばならないところはどこなんです。
  20. 上林忠次

    上林政府委員 特に責任のあるのはどこかというお話でございますが、通産省といたしましては、生産の衝に携わっておるという点で、特に責任を持ってやらなくちゃならぬというような覚悟でやっております。警察の方におきましては、火薬取り締まりという点で、これももちろん熱心にやってもらっておるわけでありますが、私ども通産省としましては、現場を扱っている、生産を扱っているという点で責任を感じております。通産省におきましても、定員をふやしたり、またいろいろなことをしまして、そういうようなことでも安全を期しておるわけであります。
  21. 小鴨光男

    小鴨説明員 ただいま先生指摘の点につきましても、御承知のように、工場安全という点から、基準法に基づきます労働安全衛生規則によって、引火性発火性爆発性の問題についての監督権限がございます。これについて監督指導を実施しております。火薬類取締法という通産省所管法律もございます。その点は、二重行政の弊を避けるということで通産省といろいろ協議いたしまして、そういう不便はなくして実際上の監督をやっております。
  22. 田中武夫

    田中(武)委員 そういう二重監督の弊を避けて、そういうことのないように実際の面は話をやっておる、こういうことであるけれども、それはどういうふうにしてやりますか。
  23. 小鴨光男

    小鴨説明員 規則の中で、基準法では包括的にあらゆる工場に対しての基準をきめるわけでございますけれども火薬類取締法につきましては、火薬工場についての特段の規定があるわけでございます。そういう意味で、たとえば保安責任者、これは火薬類取締法選任することになっております。これについては、私どもの方では、それによって工場安全が保たれるという前提から、基準法においては、それらの選任ということについての義務は課しておりません。
  24. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、労働省は、労働基準法による安全衛生規則、この基準の上に立ってやっておるわけでしょう。そうすると、特に火薬工場については火薬類取締法という法律がある。従って、労働省一般的安全衛生観点に立っておる。火薬工場の特別な点については通産省がやっておる。そういうことですね。
  25. 小鴨光男

    小鴨説明員 もちろん、火薬類取締法の中には、生産行政という面から規定している点もございます。また、その中で、こちらの労働安全衛生規則にあります労働災害とオーバーラップする面も若干あるわけでございます。そういう点についての行政上の円滑を期する、こういう意味通産省と協議をしておる、こういう点でございます。
  26. 田中武夫

    田中(武)委員 警察通産省との監督の限界といいますか、協調といいますか、そういう点はどういうふうになっていますか。
  27. 野田章

    野田政府委員 警察は、先ほども申し上げましたように、生産から消費に至るすべての段階におきまして、公衆の生命、身体に危険を及ぼすおそれのあるものにつきまして、警戒の措置をとる、そういう観点から、立ち入り検査等権限を昨年二月に認められたわけでございまして、そういう面から、火薬製造工場を初め、それを消費する場所、あるいは火薬庫、いずれもの場所に対しまして、立ち入り検査等のできる権限を与えられたという面と、火薬運搬についての規制という点が、公安委員会の主たる業務になっております。先ほどのような火薬工場製造工程における問題という技術的な問題になりますと、おそらく主として通産省関係であろうと思いますが、しかし、いわゆる事故防止という観点から、警察におきましても、定期立ち入り検査を実施いたしております。火薬工場等に対しまして、この保土ケ谷工場の例についてみますと、今年五月と十一月と二回にわたりまして、県本部保安課警察官技術職員の二名による立ち入り検査を実施いたしております。そのほか、火薬貯蔵所等につきましては、大体三カ月に一回くらい、第一線の警察署技術職員及び警察官立ち入り検査をするという規定で運用いたしております。
  28. 田中武夫

    田中(武)委員 年二回の定期検査というものは、法律でもきまっておりますね。これを警察がやるわけですか。通産省はやらないのですか。結局警察というものは、工場もそれだけれども、それのまわりといいますか、いわゆる公害といいますか、そういう面が重点じゃないかと思います。そうすると、やはり製造工程における監督といいますか、あるいはそういうことの安全保持ということは、結局通産省責任になろう、こういうふうに思うわけです。この三省間の競合しておる点に対する私の解釈は、間違っていませんか。
  29. 倉八正

    ○倉八説明員 私は、結論的に申し上げれば、田中先生のおっしゃるのは間違いではないと思います。と申しますのは、どれからどれということがなかなかはっきりわからないと思いますのは、火薬のようなものは、生産保安という特殊な性格を持っておると思います。保安を離れては生産もあり得ないということでございます。その保安につきましても、今のいわゆる工場内の保安生産保安という意味保安と、それから第三者に与える損害に対する保安と二つあると思いますが、この第三者に与える損害に対する保安としましても、われわれの所管としましては、できるだけ第三者損害を与えないように、たとえば距離を置くとか、あるいは壁の厚さを厚くするとか、高くするとか、そういうふうなことをやりまして、第三者に対する危険をできるだけ少なくするということでございまして、警察庁の方では、また別の見地からそれをごらんになっておるのじゃなかろうかと私は思いますが、そういうことで、労働警察、通産ということについての三つの保安問題につきまして、別にそう根本的な競合ということはなかろうと私は思います。
  30. 田中武夫

    田中(武)委員 それぞれその役所の性格といいますか、本来の任務あるいは法律の立て方によっておのずからきまると思いますが、往々にしてそういうような二省あるいは三省競合をして監督をしておるようなところに何か盲点があり、そういうところに事故発生しておる、このように申し上げても過言ではないと思うのであります。そこで、先ほど来質問をいたしまして今局長も御答弁になりましたが、距離の問題、あるいは壁を置いて何ぼの高さにする、こういうことですが、今回の事件を見ましても、第五てん薬所というのですか、この間には規定のへいがあったと思います。ところが、それを飛び越えて隣は全壊しておるんですね。そうしますと、三十五年の七月の火薬類取締法改正のときにわれわれがつけました附帯決議の中にも、距離問題等は再検討せよというようにうたってあるわけです。そういうことについて、再検討されたのかどうか。  それから火薬類取締法を見ますと、これは第三者との関係ということについても相当規定しておるが、もっと内部における問題について厳格な規定が抜けておるのじゃないか、このように思うのですが、附帯決議の線に沿って、その後どのような検討をなさいましたか、お伺いいたします。
  31. 倉八正

    ○倉八説明員 今田中先生から御指摘距離の問題でありますが、その前に、これに五つの附帯決議がありますが、これについてどういう検討をしたかということは、さっき私の方の政務次官から御説明しましたから省きまして、今の御質問の、距離をどういうふうに改正したかということでございますが、この保安距離を従来の保安距離よりも七〇%ないし八〇%延長せよということを、三十五年十一月一日の改正によりまして実施しております。それから第三者に対する保安でございますが、との第三者に対する保安につきましても、これは現実の問題でございまして、この前の御決議をいただきましてから、全部の火薬工場につきまして、つぶさに調査して指示を与えまして、ここにはこういう障壁をつくる方がよかろうとか、ここはこう避けた方がいいというふうなやり方を、各工場についてとった次第でございます。
  32. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど言ったように、事故の起きたのは同工場の第五てん薬工室ですね。それから隣の第六てん薬工室、この間には定められたところの基準に合った防壁があったわけなのです。ところが、それを飛び越えてしまって、第六てん薬工室は全壊をし、死者五人、三十一名の重軽傷というこの五人は、第五てん薬室におった。これは全部死んでしまった。あとの三十一名の重軽傷者は、この定められた障壁の外側におったわけです。それがこういう目にあっておるということは、その基準自体がまだ手ぬるいといいますか、あるいはもっと保安距離あるいは障壁の高さ、幅等も考えるべきじゃないかということを事実が教えていると思うのです。そういう点についてはいかがでしょうか。
  33. 田辺文一郎

    ○田辺説明員 ただいま先生の御指摘のありました第五てん薬工室と第六てん薬工室との隔壁でございますが、これには、省令によりまして、コンクリートづくりのがんじょうな構造の五十センチ以上という隔壁を設けなければならない。それを実施しておったわけでございますが、一般の保安距離工場間の保安間隔につきましては、多少の違いがございまして、一つは誘爆を避けるということ、それから先ほど先生の御指摘がありましたような人的被害をやはり避けるべきである。多少の建物の被害ということはやむを得ないということには考えておりますが、今回のように重傷三名出ました、たとえばはりが落ちてきて当たって重傷されたというようなことでありますので、われわれとしましては、カーリットの停滞量が二百キロであるということで、この辺なら大丈夫であろうということで考えておったのでございますが、ただいま先生の御指摘のありましたように、現実に隣の部屋で全壊で負傷者が出たということでございますので、その点につきましては、技術的に十分に検討いたしたいと考えております。
  34. 田中武夫

    田中(武)委員 今おっしゃったように、省令による障壁を作っておった。それが二百キロまでだから大丈夫だと思った。ところが、現実は百十八キロ、だから、二百キロよりもうんと少ない数量ですでにそれを飛び越えてしまったということ。そうすると、技術的に保安距離及び障壁の検討をやり直すことが必要だと思う。さらに、思い切ってこの種火薬といいますか、爆発するようなおそれのある工場をどこかもっと人里離れたところに疎開させてしまう。たとえばできた当時にはまわりにあまり人家はなかった。しかし、だんだんと宅地造成が出てきて、この工場は、私行ってみませんからわかりませんが、危険な工場が住宅街のまん中になっている事実もあるわけですね。いつ何時爆発するかわからない、そういうのに対して、これは火薬工場の近くに引っ越してきたやつが悪いのだと、こう言ってしまえばしまえるかもしれませんが、ただ単に法律なり政令によって、何メートルあけなくちゃならない、これだけなら、もうこの事実が示すように、だめじゃないか。従って、そういう火薬工場の疎開、ということはどうかと思いますが、そういうようなことについて根本的に検討し直したらどうかと思うのですが、どうでしょう。
  35. 倉八正

    ○倉八説明員 今の先生のお話、まことにけっこうでございまして、私たちの方では各国の例を調べておりますが、今御指摘になった通りに、外国においては、国によっては、最初火薬工場が無人の境と申しますか、非常に人里離れたところにできたならば、ほかの者がそれに何百メートル以内に寄ってはいけないという規定があるところがございます。日本も、そういうととであるならば非常にわれわれとしても助かると申しますか、火薬工場の面から見ればまことにいい傾向でございますが、日本の法制がそうなっていないのでございまして、周囲が最初は野っ原であったのが、だんだん人が寄ってくる、ますます工場としては、たとえば今までは五十センチの壁を、二重にしたり三重にしたり、いわゆる火薬工場に対する負担がだんだん重くなってくるわけでございまして、これをどこかにまとめよという考えも確かに出てくると思いますが、ただ、一つは経済性の問題もございまして、この問題については、今どこの工場がどこに行くということはまだ私は聞いておりませんが、今後の一つの研究問題として、委員会ででも諮ってみたい、こう考えております。
  36. 田中武夫

    田中(武)委員 今局長の言われたように、外国にはそういう立法例があるとするならば、日本においても検討すべきじゃないかと思うのです。なるほど火薬会社というか、その企業からいえば、そういうことについて自分だけの資力でお前は外に出ていけ、山の下に行けといったって、これは無理かもしれない。そこで国においても、公害を排除するという上に立っていろいろと考えるべき問題だと思う。いずれきょう午後から現地視察をいたしますので、その結果を待ちまして、なお疑問の点は質問していきたいと思っております。  ここでちょっと労働省にお伺いいたしたいのですが、一般の労働者の賃金水準に比べて、この種の危険な作業に携わっている者の賃金水準は、どういうことになっておりますか。
  37. 小鴨光男

    小鴨説明員 ただいま全部の面についての賃金との比較はちょっと困難だと思いますが、私の手元の資料で、「三十六年の賃金の実態の総合調査」で「その他の化学工業」という、産業用火薬類製造用を含みましたその他の化学工業の全労働者の毎月の賃金額、これが男子二万六千円、女子一万二千円でございます。これが老若全部合わせましての平均賃金でございます。それから日本カーリットの全労働者の平均賃金は、三十七年の四月一日現在で月二万七千円、こういうふうになっております。
  38. 田中武夫

    田中(武)委員 やはり言われるように、そういう危険な作業に従事しておる者の方が賃金が安い。そうでしょう。
  39. 小鴨光男

    小鴨説明員 日本カーリットの場合は、今のその他の化学工業に比べると、千円ばかり高くなっております。
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 しかし、ほかの一般工業といいますか、そこの労働者の平均賃金と比べると、火薬の方は安いでしょう。
  41. 小鴨光男

    小鴨説明員 ちょっとわかりませんので、後刻調べてお答えすることにいたします。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 安いと思う。大体火薬中小企業が多いのじゃないかと思うのですが、倉八局長日本カーリットはどのくらいの規模の会社なんですか。
  43. 倉八正

    ○倉八説明員 今の火薬関係でございますが、雷管でなくて、純粋の火薬をつくっている会社は、全部大企業といってもいいと思います。日本化薬だとか、日本油脂とか……。カーリット会社でございますが、このカーリット会社というのは、資本金が八億円でございまして、従業員が大体四百二十名くらいおります。それで今度爆発いたしました横浜とそれから渋川の方に工場を持っておりまして、会社の規模としては、中くらいの規模だと言えると思います。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 火薬をつくっておるところは、大手にもあるが、しかし、直ちに火薬と言えるかどうかわからぬが、いわゆる花火、こういうのは、中小企業というか、町中でやっておるのもたくさんあるわけです。そんなものを考えると、いつ爆発するかわからない、こういう考え方が浮かんでくるわけです。そこで、前にもそういうことを言ったと思うのですが、実際町の中でやっておる花火工場というようなものの実態は、通産省といえどもおそらく全部把握できていないと思うのです。そうすると、ここで一つそういう実態を早く把握してもらって、監督が十分いくように一もちろん、どんなに監督をしても、どんなに気をつけておっても、それは爆発することもあるだろうと思うのです。今回の場合などを見ても、死んだ人は、一人を除くほかは全部七年以上の経験者です。一人だけ二年なんです。この七年以上の経験を持っておりながら、なおかつどこかに抜かりがあったのじゃないか。従って、やはり安全教育といいますか、保安の問題については、より一そう、当局ももちろん、その会社自体もやらなくちゃならぬと思うのです。  それからこれを法律規定せよというようなことは無理かもしれませんが、やはりこういう危険な作業に携わっているものには、一般の産業より、いわゆる危険手当といったものがなくてはならぬと思うのです。これが、全体が火薬工場あるいはカーリット工場であるから、そうでないけれども、普通の工場であったなら、一般の職場より危険を伴うところには、必ずといっていいほど何らかの危険手当がついているはずなんです。これは企業の形態からくることではあろうと思いますが、一般産業に比べてなお危険の伴う作業場——一般産業なら、危険の伴うところにはプラス・アルファがついているわけです。それから見た場合には、火薬に携わっている従業員の給料は安過ぎる。そういう点について、何ぼ何ぼの危険手当を出せなんということは命令できないと思うのですが、しかし、通産省なりあるいは労働省等からの、そういうことの行政指導も必要じゃないかと思うのです。この死んだ人たちの平均賃金が幾らであるか、私知りません。それに従って労災保険が出るわけですが、それ以上に会社が内部規定によってどれだけのものを出すか、私知りませんが、そういうような不慮といいますか、その仕事自体がいつ爆発するかわからぬものに携わっている人たちの、今度なくなったときの遺族の保護の問題、これなんかも、単に労働基準法による労働災害補償、これをバックするところの労災保険、これだけで片づけていいのかどうかということも、なお問題があると思うのです。たとえば厚生年金その他の問題につきましても、坑内夫と外で働いている人の間には違いがある。これは危険が多い。従って、同じ地上で働いておっても、危険を伴うものと伴わない職種においては、何らかの配慮が必要だろうと思うのですが、いかがでございましょうか。
  45. 小鴨光男

    小鴨説明員 労働省の立場から申し上げますと、今先生指摘の点、まことにごもっともでございます。特に災害防止という観点からいたしましては、基準法監督という面ばかりでなく、特にこういう高率災害の企業につきましては、特別の安全指導という形でいろいろの御指導を申し上げておるところでございます。  給与体系については、労使それぞれ微妙な点がございますので、その工場の賃金体系をどうせよというようなことは申し上げられませんが、危険手当の問題、あるいは法律上の災害補償というような問題については、できるだけ今後も検討していきたいと思っております。
  46. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど申し上げましたように、きょう午後から現地を視察いたしますので、その結果でまたいろいろとお伺いしたいと思いますが、要は幾ら注意をし、幾ら監督を厳にしても、この種の仕事については、やり過ぎるということはないわけです。それで、最初に次官は絶滅を期すべくやっておったと言っておりますが、いつでも絶滅を期すべくやっておったが事故が起きたということでは、何にもならないわけです。ですから、ほんとう意味で絶滅を期すという気持になっていただきたい。それと同時に、今回のような事件が起きたならば、これは労働省等も、遺族補償等の問題については、できる範囲において、できる限りにおいて万全を期するように配慮してもらいたい。私はこの程度できょうは一応やめます。しかし、また現地を見ました結果、お伺いするかもわかりません。
  47. 逢澤寛

  48. 松平忠久

    松平委員 この問題について、二、三お伺いしたいと思うのです。  第一は、たしかあの当時新聞でも倉八君の談話のようなものが出ておったことを記憶しているのですが、現在の火薬類取締法は、さっきも議論が出ましたように、第三者保安ということに重点を置いた法律の体系になっていることは、私も認めます。その通りでありますが、しかし、一体はたして火薬類取締法というものがそれだけでいいかどうか。今度の事件を見ても、五人はその部屋におった。しかし、この部屋以外におった工員にも、かなりの重軽傷者を出した、こういう事実なんです。そういうことからいうならば、火薬取締法の法制の建前というものも、この際、やはりこの中で働く者の保安、これに対して、現在の法律手抜かりというか、欠陥があるのじゃないか、こういう気がするわけです。従って、前回法律改正をしましたけれども、やはりこれは新しい観点に立って、法律全般に対しての態度、そういうものをもう少し建て直していく必要があるのじゃないか、根本的な再検討を加えていく必要があるのじゃないか、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  49. 倉八正

    ○倉八説明員 おっしゃる通りでございます。それで、今松平先生のお話の事業所内の保安につきまして一番徹底的なやり方は、全部機械化をしまして、人が装てんするとか、あるいはこね回すとか、そういう人による工程を省けば、たとえば爆発がありましても、人命の被害というのはなくなります。それで、そういう方面にわれわれも進んでおりますが、まだ今までのところの技術といたしましては、全部機械化してもいけない面が多々ございますので、その方面については日を追って進めるということにしております。  それからまた、その間におきましてどういう保安の強化をやるかということにつきましても、今の構内における建物の問題とか、あるいは人の配置の問題、あるいは建物と建物の間の連絡通路の問題、あるいは配線の問題、いろいろまだありますから、こういうのを一つの機会にしまして、今後専門家の意見を聞きまして、法律の不備の点、あるいは政省令の不備の点を検討していきたい、こう考えております。
  50. 松平忠久

    松平委員 この問題は、今倉八君も言った通りに、法制上の整備というものと、作業のオートメーション化というか、そういうことにあるだろうと私も思うのです。そこで、それをするのには、やはり相当の予算を伴わなくちゃならないし、政府の援助ということが必要なのであります。この種の産業がやはり日本にとって必要だというならば、何らかの形で立ち行くような方向に持っていかなくちゃならぬだろうから、両方の法制的な整備と予算的措置ということが必要なんだ。  そこで、こまかいことだが、お伺いしたいと思うんだが、保安教育というものに対して、政府は今日どの程度の補助金を出しておられますか。
  51. 倉八正

    ○倉八説明員 PRないし講習会等の保安教育というのが非常に重要なことでございますが、これにつきましては、国の予算はございません。
  52. 松平忠久

    松平委員 そういうところに私は非常な手ぬかりがあると思うんだ。工場保安教育をやれといって法律でもって規定をし、命令を出してやらせる、こういうことで万事終われりと考えているのが、通産省の態度なんです。そとで、法律をもっと徹底してやるというためには、保安教育をするために国が必要な経費を計上して、工場に対して補助金を出すなり何なりするというところまでいかなければ、これは徹底しません。  それからお伺いしたいのは、しからば一体、今度の法律をこの前改正しましてから、この二、三年来の火薬取り締まりに関する通産省の予算は、どういうふうになっていますか。今回は幾ら要求しているのか。
  53. 田辺文一郎

    ○田辺説明員 先ほど政務次官からもちょっと触れましたように、本省関係と地方通産局の関係とに分かれますが、本省関係におきましては、火薬類取り締まりと申しまして、完成検査あるいは定期保安検査関係で三十万円程度の増額があったわけであります。それから地方通産局のは、先ほど申しましたように、六名の新しい定員がふえたということで、そこには新しく百万円台の予算がついたということでありまして、通産局も、立ち入り検査とか自主検査の立ち会いというようなことをやっておるわけであります。
  54. 松平忠久

    松平委員 花火等については、都道府県の第一次の監督のもとにあるけれども、都道府県に対しましては、通産省から火薬取り締まりについて、特別の経費というものはどの程度流しておりますか。
  55. 田辺文一郎

    ○田辺説明員 ございません。
  56. 松平忠久

    松平委員 それでは、都道府県は何でまかなっておるのですか。新しく法律改正して取り締まりを強化しなければならぬというための経費は、都道府県は交付金の中に入っておるのですか。自治省とあなた方が折衝いたしまして、特別にそれを入れてもらうという、基準財政需要額をふやす、そういうことをおやりになりましたか。
  57. 倉八正

    ○倉八説明員 花火の問題は、全国三百七、八十の工場を持ってやっておりまして、この予算の問題につきましては、そういう話をしたことは、私はないと思います。いわゆる府県庁の予算の中でやっていただきたいということでやっておると思います。
  58. 松平忠久

    松平委員 そこのすべての体制が整っていない。つまり法律はつくったけれども、この法律を運用するだけの予算的な必要な措置を講じておらない。そして花火等の都道府県の第一次の監督下にあるものについては、都道府県の金でまかなっていけ、こういうやり方なんですね。この考え方が、私は根本的に間違っておると思うのです。法律をつくって、一部は都道府県に押しつけて、お前がやれということは、きわめてイージー・ゴーイングなやり方なんです。  お聞きすれば、保安教育についての金は一文もない、こういうことでは、さっき政務次官が万全を期すと言われたけれども、とんでもない話なんです。そういうところから改めていって、本年度の予算等は、もっと大幅に取ってもらわなければいかぬ。要するに、火薬取り締まりというものに対する根本的な態度がいかぬ。もっとまじめにこの問題を取り上げてもらう必要があるのではないか、こう思います。どうですか、政務次官
  59. 上林忠次

    上林政府委員 昭和三十四年十二月の火薬類取り締まりに関する決議で、それ以来特に幹部及び従業者に対しては、保安教育に対しまして力を入れておる次第でありまして、そのときの法律改正に伴いまして、省令で保安教育計画の基準を定めて、これによってしっかり取り締まっていこう、基準によってこういうような災害防止していこうという建前でいっておりますが、松平先生からおっしゃいますように、魂が抜けておるのではないか、せっかく法律ができても動き得ないような、道路がついても道路が曲がっておるじゃないか、まっすぐになっていない、歩けないじゃないかというお話であります。今回こういうような災害に際しまして、ちょうど予算の設定の時期に際しておりますために、火薬類保安に対しまして、予算上の措置をとるように努力したいと思っております。
  60. 松平忠久

    松平委員 これは自然災害とは違いますから、自然災害の考え方で全部国がすべてやっていくのだということにはならぬと思いますけれども、しかしながら、日本の経済上必要な産業であって、しかもそれがやはり立ち行くようにしていかなくちゃならぬと同時に、保安に関してうんと金がかかるのだということになると、何かそこに政策的に考えていかなければならぬ問題が出てきはせぬか、政治的に考えていかなければならね問題があるのではないか、こういう気がするわけです。その点について、私はこの取り組み方の根本的な態度というものに対して、通産省の画期的な考え方の立て直しを一つしていただきたい、こう思います。  それからもう一つ伺いたいのは、私は技術的なことはよく知らないが、先ほど田中君が質問されましたが、五人の人がおった部屋には、二百キロですかの許容量に対して、百何キロしかなかったけれども、あの程度の災害になったというのでありますが、この前私が伺ったときには、火薬の量というものと質というものは、だんだんといい火薬ができてくるというか、その爆発力というものが増大するような火薬ができてくるのかと聞いたところが、そういうことはないんだ、火薬は全部いつまでたってもその質の変化はない、こういうことを伺ったのですが、火薬はそういうものですか。
  61. 倉八正

    ○倉八説明員 今の御質問ですが、私もまたあまり詳しいことは知りませんが、私はそういうものじゃないと思います。最近のようにTNTとか、ああいう大きいのが出ますと、たとえば同じ重さの一キロでも、破壊力というのは何倍、こういうふうに出てくるのでありまして、まあ従来と破壊力が一つも変わらぬということは私はなかろうと思いますが、もっと詳しく問いただしまして、あとでお答えしたいと思います。
  62. 松平忠久

    松平委員 私も、その点の技術的な学者等の意見というものが、どうもわからない点があるわけです。つまりカーリットの場合におきましても、粉末火薬というものが、百キロ集まった場合の破壊力と、二百キロの場合は、必ずしも二倍ではないのであって、幾何級数的なものだろうと思いますが、質そのものも若干の変化というものがあるのではなかろうかというように、しろうと考えに考えるわけです。  それはそれとしましてもう一つお伺いしたいのは、二百キロの許容量でありながら、百何キロでそういうあれを起こしたということは、防壁については、基準のものであったのかどうか、この点はお調べになったかどうか。
  63. 田辺文一郎

    ○田辺説明員 三百キログラム以下が三十七センチメートル以上で六百キログラム以下が五十センチメートル以上ということになっておりまして、この場合四十五センチメートルないしその程度の厚みになっておるということで、その点は確認いたしております。
  64. 松平忠久

    松平委員 それじゃ、それは基準に合っているというわけですか。
  65. 田辺文一郎

    ○田辺説明員 はい。
  66. 松平忠久

    松平委員 基準に合っているとすれば、その基準そのものに検討を加えなければならぬということになりませんか、実際問題として。
  67. 田辺文一郎

    ○田辺説明員 先ほどもちょっとお答え申したのですが、火薬庫あるいは製造所と、それから部外の保安物件との保安距離の問題、それにつきましては、たとえば独立の民家一つにつきましても、家屋がこわれる、ガラスがこわれるということのないように、百二十メートルとか百八十メートルというふうにとってあるわけであります。それで、工場保安距離保安間隔につきましては、生産の都合もありますので、誘爆をしないことと、それからやはり人的障害がないということを目標はしまして、多少は建物がこわれてもしようがないということなんでございますが、その点につきまして、程度問題になるのでございますけれども、その判定において、特に隣接してただいまのような四十五センチ程度の厚いコンクリートがあればまあ大丈夫だろうという見通しだったのでございますが、遺憾ながら軍傷者が出たということで、先ほど申しましたように、技術的にさらに検討いたしたいと考えておるわけでございます。
  68. 松平忠久

    松平委員 そういう基準は、世界共通のような基準というものがあって、それにのっとっておるのですか。それとも、日本では実験か何かしまして、——そうして実際に破壊の程度というものを見て基準をこしらえておられますか、どうですか。
  69. 田辺文一郎

    ○田辺説明員 学理的に申しますと、薬量の立方根に比例しまして爆発の効果がだんだん減衰していくということがありまして、それにどういうふうに係数をかけるかということで、私は詳しいことは存じませんが、その係数のとり方は、おそらく日本では諸外国の例も考えてやっておると思います。  それからもう一つ、昨年から、従来の経験と諸外国の例、あるいは学理的な量というもので一応現在の基準はできておりますけれども、それをさらに科学的に確かめるために、火薬爆発実験ということをいたしております。昨年北海道でやりまして、ことしは饗庭野演習場でやったわけでございますが、来年も続けます。それによりまして、小は百五十キロ、三百キロ、六百キロ、大は三トンぐらいまでやりまして、薬量ごとの爆発の効果、土手のある場合、ない場合、そういう場合の効果を実験によって確かめたいというふうにいたしておるわけでございます。
  70. 松平忠久

    松平委員 今お聞きすると、実験もやっておられて、その点については、今後も続けてやっていかれるそうでありますが、要は、やっぱり火薬類取締法に対する態度を再検討してもらうと同時に、今度の災害等の事実に照らして、やっぱり技術的な面について、一体どういうふうにしたら災害を免れるか、最小限度に食いとめ得るかということについて、あわせて検討願って、そして取締法は、ただ単に第三者保安ということではなくて、工場内一帯の保安ということを考えていかなければならぬだろう。あれは労働基準法の特別法的な役割というものを持っておるわけだから、その点に対する根本的な考えを一つ出していただきたい、こういうことを私要望しまして、終わります。
  71. 逢澤寛

    逢澤委員長 次会は、明日午前十時より開会することといたし、本日はこれにて散会いたします。    午前十一時四十八分散会