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1962-08-27 第41回国会 参議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年八月二十七日(月曜日)    午前十一時開会   —————————————   委員の異動  八月二十四日   辞任      補欠選任    小柳  勇君  武内 五郎君  八月二十五日   辞任      補欠選任    小林 篤一君  林   塩君  八月二十七日   辞任      補欠選任    吉江 勝保君  豊田 雅孝君    武内 五郎君  小柳  勇君    向井 長年君  村尾 重雄君   —————————————   出席者は左の通り。    委員長     木内 四郎君    理事            大谷藤之助君            川上 為治君            平島 敏夫君            米田 正文君            藤田  進君            松澤 兼人君            小平 芳平君            田畑 金光君            大竹平八郎君    委員            井上 清一君            太田 正孝君            加藤 武徳君            木村篤太郎君            草葉 隆圓君            小林 英三君            小林 武治君            小柳 牧衞君            小山邦太郎君            古池 信三君            後藤 義隆君            郡  祐一君            斎藤  昇君            杉原 荒太君            鈴木 万平君            館  哲二君            豊田 雅孝君            松野 孝一君            安井  謙君            湯澤三千男君            稲葉 誠一君            亀田 得治君            小柳  勇君            戸叶  武君            豊瀬 禎一君            成瀬 幡治君            羽生 三七君            山木伊三郎岩            吉田 法晴君            鈴木 一弘君            村尾 重雄若            林   塩君            須藤 五郎君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 中垣 國男君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    厚 生 大 臣 西村 英一君    農 林 大 臣 重政 誠之君    通商産業大臣  福田  一君    運 輸 大 臣 綾部健太郎君    郵 政 大 臣 手島  栄君    労 働 大 臣 大橋 武夫君    建 設 大 臣 河野 一郎君    自 治 大 臣 篠田 弘作君    国 務 大 臣 近藤 鶴代君    国 務 大 臣 志賀健次郎君    国 務 大 臣 宮澤 喜一君   政府委員    内閣官房長官  黒金 泰美君    内閣法制局長官 林  修三君    総理府総務長官 徳安 実蔵君    経済企画庁調整    局長      山本 重信君    外務省欧亜局長 法眼 晋作君    外務省経済局長 関 守三郎君    外務省条約局長 中川  融君    大蔵省主計局長 石野 信一君    大蔵省主税局長 村山 達雄君    大蔵省銀行局長 大月  高君    大蔵省為替局長 村上  一君    文部大臣官房長 宮地  茂君    文部省社会教育    局長      斎藤  正君    厚生大臣官房長 熊崎 正夫君    農林大臣官房長 林田悠紀夫君    食糧庁長官   大沢  融君    通商産業省企業    局長      佐橋  滋君    通商産業省鉱山    保安局長    八谷 芳裕君    運輸省海運局長 辻  章男君    郵政省郵務局長 佐方 信博君    建設省河川局長 山内 一郎君    建設省住宅局長 関盛 吉雄君    自治省選挙局長 松村 清之君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    総理府特別地域    連絡局長    大竹 民陟君   —————————————  本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠互選の件 ○予算執行状況に関する調査   —————————————
  2. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。  去る二十四日、小柳勇君が辞任され、その補欠として武内五郎君が選任されました。  さらに二十五日、小林篤一君が辞任され、その補欠として林塩君が選任されました。  また、本日、吉江勝保君が辞任され、その補欠として豊田雅孝君が選任されました。   —————————————
  3. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に、理事辞任についてお諮りしたいと思います。  理事後藤義隆君から、去る十二日文書をもって、都合に上り理事辞任したい旨の申し入れがありました。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。  つきましては、直ちに補欠互選を行ないたいと存じます。  その互選方法は、成規の手続を省略して、便宜その指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、私より大谷藤之助君を理事に指名いたします。   —————————————
  6. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 本日は予算執行状況に関する調査を議題といたします。  質疑の通告がございますので、これより順次発言を許可いたします。羽生三七君。(拍手)
  7. 羽生三七

    羽生三七君 きょうは主として経済問題を中心にお尋ねいたします。  近年、日本経済成長が世界的にもまれに見る高度なものであったわけでありますが、その反面にまた多くの矛盾を露呈いたしました。それは設備投資行き過ぎとかあるいは国際収支の赤字、所得企業地域間の格差、あるいは農業中小零細企業の立ちおくれ等々に現われております。しかし私は、これから質問するにあたって、次の前提を一応申し上げておきたいと思います。それは、この資本蓄積投資、あるいは設備拡大等を否定するものではないということであります。蓄積投資なしに経済発展するはずはないし、また、経済発展なくして国民生活向上があり得るはずはありませんから、それを認めることは当然であります。しかし、そういう前提に立ちながらも、日本経済のこの高度成長が招来をした多くの矛盾というものを見のがすわけには参りません。しかしまた同時に、私はここで、この資本主義自主主義経済体制にわたる原則論を述べる意思は毛頭ありません。問題は、今申し上げましたように、このような諸矛盾拡大することなしに、今後とも高度経済成長を持続し得るかどうか、こういうことであります。そこで具体的にお尋ねいたします。  第一番に、実質一三%をこすというような前年度のような異例な高度成長はとにかくとして、今後とも所得倍増計画に示された成長率を堅持し得るのかどうか。また、その方針に変わりはないのかどうか、まず最初にこれをお尋ねいたします。
  8. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 十年あるいは十年以内の倍増計画は堅持して参る所存でございます。ただ、お話しのように予定を非常に越えた超高度の成長が行なわれましたので、その結果として調整政策をとっております。したがいまして、今までのような成長率を期待することはできません。また、期待することもかえって行き過ぎになりますので、調整を講じながら予定の十年倍増、あるいはできれば十年以内の倍増を続けていく方針でございます。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 きょうまでの日本経済発展要因は、総理もよく言われることでありますが、戦後日本特殊性とかあるいは後進性、あるいは豊富な労働力とか、その質、こういう幾つかの日本的な条件に、さらに技術革新による近代化合理化、この動きを軸として設備投資が急速に拡大して、今日の発展基礎を築いたと思います。しかし今日までこの高度成長を進めてきた設備投資中心成長政策が頭打ちになったのではないかと思います。一部では日本経済転換期と言っておりますが、言葉の問題はともかくとして、設備投資中心成長政策は、先ほど私が述べたような諸矛盾をさらに拡大するのではないか。もちろん国際収支が一応改善されますれば、企業家はやはりやり残しの設備投資を継続したいでありましょうから、再びある程度浮揚力が起こることは確実であります。しかし、それはまたすぐ国際収支の壁に突き当たって、その後の後退の時期は過去二、三回よりもその同期を早めるのではないかと思います。結局同じ矛盾を繰り返すことになるのではないかと思いますが、総理としてはどうお考えになりますか。
  10. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今までのような設備投資が今後行なわれるかということになりますと、これは私はスロー・ダウンしていくのではないかと思います。金額的に申しましても下がるし、また総生産に対しまして、あるいは国民所得に対しましての設備投資の割合も、私は下がってくるのが当然だと思います。しかし、今までの設備投資による新規生産力増加を何に求めるかということが問題になるのであります。それは御承知のとおり、われわれは輸出第一、新市場の拡大をはからなければならない。そうしてまた片一方では、国内の健全な消費が行なおれて生活水準の引き上げをしていく、こういうことになって参る。したがいまして、輸出増強と健全な国内消費、その消費個人消費もありましょうし、また政府財政投資もございましょう。こういうことで新規生産力増加と見合いながら生産の急激な下降というものを避け、そうしてモデレート方法で進んでいきたい、その間に輸出がどうなるか、国内消費がどうなるか、そうして設備投資が新たにどう行なわれるか、あるいは各設備投資によりまする新規生産の増がどうかというふうなことは、今後の成り行きによりまして現われて参りますが、それをどう調整していくかということが今後の財政金融政策のねらいであると思います。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 所得倍増計画は十カ年平均七・二%の成長率で、当初三カ年は平均九%となっております。これを具体的に検討しますと、この基準年次のとり方に問題がありますが、総理国会答弁から推定して、三十五年度国民生産十三兆六千億を基礎としたものであることは間違いないと思います。そこで三カ年平均九%ということでありますが、これでいくと、三十六年度は十四兆八千二百億円、それから三十七年度が十六兆一千五百億円、三十八年度が十七兆六千三十五億円、こういうことになります。そこで、三十五年の税抜き十三兆六千億は所得倍増計画基礎として採用した数字でありますが、必ずしも現実に即したものでありません。各年度実績見通しあるいは予想数字によって相当そのつど狂っております。詳細は略しますが、三十七年八月十日で計算してみまするというと、これでいくというと、三十五年は十四兆六千六百四十九億円、これは確定であります。三十六年は十七兆四千五百億円、三十七年は十八兆五千億、こうなります。池田総理の当初の構想が三十八年度税抜き十七兆六千億達成にあるとしますならば、三十六年でほとんど達成したことになります。今後は三十七年度予想水準より若干低下した場合でも、目標に関する限りは達成したというおかしな結果になります。もし三十五年度実績基礎として九%成長水準を計算してみまするというと、三十七年度で十八兆五千億になります。三十八年度は十八兆九千八百八十億になります。こういう結果になります。  したがいまして、当初三カ年の最終年度の三十八年度は、どんなに成長を押えても、すでに目標をはるかに上回ったということになる。これは最初からあまりに高低があり過ぎはしないか。総理のおっしゃたように経済は動いておりますから、これは不断にいろいろな手を加えることは当然でありますが、それにしても最初からあまり高低があり過ぎはしないか。自由経済のもとでは、当然ある程度の波はありますが、これではあまりに振幅の幅がひど過ぎはしないか。国民の側から言えば、もっと均衡のとれたものと所得倍増計画を理解していたはずであります。これは計画ではなくて、経済の流れを、あとを追って数字を訂正していく、修正していくというだけに終わるのではないか。計画という名に値するのかどうか。この辺で所得倍増計画は根本的に再検討するか、あるいは修正すべき段階と思いますが、どうでありますか。
  12. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 所得倍増計画という計画についての判断でございますが、これはもう羽生先生も御存じのとおり、一応は計画と書いてありますが、こういう前提のもとにこうなるだろうという見通しだと心得えていただきたいということは、さきさき国会で申し上げたとおりでございます。われわれといたしましては、早いにこしたことはございませんが、とにかくモデレート成長率でいきたいというので、私は一応七・二%ならば十年で倍になる、しかし過去の実績を見まして、まあ九%ぐらい三年間はいくのではないか、しかもそれが雇用の関係からいって、とるべき数字ではないかというので、最初の三カ年間を九先としたわけでございます。しかし実際は、過去の実績から申しましても、今お話のとおりに、お示しの数字名目的のGNP増加でございます。実質的に見ますとやはり相当下がってくるのでございますが、結論的にはお話のように名目的にはもう三十八年度の分を三十六年にあれした。実費的に申しますると、三十七年度の十八兆四千億というものは、まだ昭和三十五年の価値から申しますと十七兆六千億までいっていないと私は見ておるのであります。しかもその基準を三十五年度の実際にとりました実質的増加におきましては、大体三十七年度でようやくいくかという程度のことであります。したがいまして政府計画というものは、自由主義経済のもと、しかも今のような体制におきましては、なかなかこれを押えようといってもそう抑えられるものではないのであります。ことに昭和二十八年とか、三十二年のときとは違いまして、わが国の経済はよほど力強く、底力がついてきております。それから財界の人なんかの考え方も、よほど前以上に積極的でございます。これを押えるということは、金融その他の措置でやりましても、なかなか押えにくい。これは私どもの過去の三年間の経験であれしたのでありますが、最近ようやくわかりました。私は大体過去の実績を各業界に見ながら、今度はモデレートにいくのではないかという、考えを持っておるのであります。ただ私が心配するのは、非常に行き過ぎる場合もありますが、逆に、あつものにこりてなますを吹くというようなことになっては困る、これが私の今心配しているところでございます。私はその点は、だんだん世界の情勢、日本経済が世界的になって参りますこの機会に、政府もそうでございますが、民間におきましても、よほどお考えを願っていただければ、そう今までのようなことはなくていくのではないかと、こう考えております。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 この高度成長政策矛盾は、先ほど述べたとおりであります。しかし、国際収支だけが問題であるとするならば、国内均衡を犠牲にして、いわゆる設備投資を引き締めて縮小均衡をやれば、国際収支はいつでも改善いたします。その意味で成長要因を再検討する必要があるのではないかと思います。今後の成長要因は、社会資本の充実とか、あるいは国内有効需要拡大、あるいは立ちおくれた農業中小零細企業の振興、社会保障の強化等々、いわゆる底辺部門の底上げ、一口に言えば国民生活環境の改善、これに役立つような国内均衡の諸政策重点的に施行すべきではないかと思います。要は、成長率の高いだけが問題ではなしに、国民生活水準向上が問題であることは当然だろうと思います。  そこで私としては、今総理からお話のあったような、あまり手心を加え過ぎて、逆に成長率が非常に低くなってしまうということは、これは問題だと思います。私もまたそんなことは毛頭考えておりません。しかし、このような不均衡をどう是正するか、アンバランスをどう是正するかという問題、あるいは今申し上げたような設備投資重点だけではもういけない。いろいろな条件日本経済構造部門に出てきたのではないかと思います。  そこでこの際総理に特にお尋ねしたいと思うことは、成長率は若干鈍化しても、これは二%、三%になったということでは因りますが、今の日本の現状から見て、成長率は若干鈍化しても、設備投資中心成長政策重点を、今私が述べたような国内均衡転換するお考えはないか。そうかといって、私は設備投資をやめなさいということは毛頭言っているわけではありません。ただ、重点設備投資中心だけでは、今総理からお話があったようなアンバランスが出るのですから、当然重点政策を転型というより私は政策転換と申したほうがいいと思いますが、この政策転換の御意思はないか、これをお尋ねしたい。
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この政策転換と申しますると、所得倍増計画を変えるとか何とかという方針を変えるようにとられがちなんです。これは成長過程におきまして、一四、五%も伸びる、二、三年問続けて大体一〇%以上に伸びる。そのあとに来るものがこれはどの程度に伸びるかという問題、私は四、五%、五、六%伸びるのは当然だと思います。そしてそれが政策転換ではない、それが経済の実態なんです。それに沿うように倍増計画をアジャストしていく、これは転換ではございません。当然前から予想しなければならない。  そこで問題は、たとえば三十二年、三十三年のあのときでも大体は三%程度いっていた。三%の成長率と申しますとイギリスアメリカの普通の年の成長率、それが日本では非常に不景気だという成長率。よその不景気は生産が下がること、日本の不景気というのはよそでは非常に常態の場合が非常に不景気になる。私はそういう気持考えながら、一応企画庁で試算いたしましたところの名目六%、実質四・五%程度の分が、まあ低く見た場合の成長率で適当ではないか。それは私は政策転換とか何とかという問題ではない。当然起こり得べき調整過程における状態だと考えているのであります。お話のとおり、何もこれは九%とか一〇%以上とか、そんな気持は私は持っておりません。これは前の国会でも申し上げましたように、成長率というものは長い目で見ていかなければならぬ。それで、私は転換というよりも当然起こり得る調整過程における成長率考えているのであります。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 私の言うのは、調整過程における一つ現象の現われということをお尋ねしておるのではないのです。それはもう当然であります。問題は、総理が、私は前の国会で何回も申し上げましたように、所得倍増計画という名前はやめて、経済成長十カ年計画と呼ぶべきだという議論を出しておりますけれども、まあ転換ということは総理もおきらいのようでありますが、それはそれでいいとして、現象形態にしろ何にしろ、そういう傾向が起こってきて、その重点が一時的な調整ではなしに、基調としてそういう方向に移行を始めているのではないかと思いますが、その辺はどうですか。  それからもう一つは、高度成長というと何%ぐらいを言うわけですか。総理のお考えだと、イギリスアメリカその他西欧諸国に比べて日本高度成長という場合、一体どの程度高度成長というか、さっぱりわからないのですが……。これは抽象的な質問ですけれども。
  16. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) どの程度のものが高度成長かとおっしゃいますと、国によって違います。最近、イギリスアメリカは三%前後でございます。それからまたOECD二十カ国の十年間五割増というのも高度成長一つのあれと考えられます。そうすると四%程度ではないかと思う。これが高度成長のうちではございますまいか。また最近におきまして、イタリア、フランスは七%程度上昇率をしておるようで、これは続けてではございません。ここ一年、一年半ぐらいがそういう傾向をとっている。日本のように一三%、一四%というものを三年も続けるというようなことは、これはもう高度ではない、超高度でもないし、驚異的数字というのでございます。大体所得倍増計画というのは、今から八、九年前にイギリスが二十五年間で倍増ということを言った。これだと二・七、八%か三%程度ではありますまいか。イタリアが五、六年前に、十年五割増しという案を立てたやに開いておりますが、大体五%程度でずっといけば、これは高度成長のうちに入る、四%、四・五%でも入るんじゃないかと思います。  それから前の御質問は、この前お答えしたので私は尽きておると思いますが、再度御質問下されば、お答えいたします。
  17. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっとこれは時間外にして下さい。  前のお尋ねは、調整過程における単なる現象形態ということでなしに、一応の基調変化が出てきておるのではないか。そういう方向政策転換——転換という言葉がいやなら、どういうふうでもいいですが、重点を移行さしていく、そういうお気持はないか、単なる調整過程における現象形態とお考えになるのかどうかということです。
  18. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) たとえば実質四・五%というのは、閣議決定したわけでございますが、今の見通しが、企画庁の文ではこうだ、こう言っておるわけです。そうすると、四・五%を前提にするかどうかという問題でございます。私は、今の状態では四・五%くらいならば、調整過程のあれとして、みんなが納得する数字じゃないかと思います。前のこの一月ごろの分は、五・四%。五・四%なら実質名目も同じ数字であったのであります。今度は名目は六・六%で、実質四・五%だ。それは、卸売は横ばいするが、消費者物価は少々上がるというのでやっておるのでございます。これもやはり見通しでございまして、四・五%が今年も来年も再来年も続くかという問題になると、私はわからぬと思います。これは、先ほど申し上げましたように、国内社会資本、あるいは健全な国民消費社会保障等考えると同時に、輸出第一主義でやっていって、そして新たに加わった生産力と新たに生産せられた物資消費が、どういうところにいくかということによって、来年の状況も私は変わってくるんじゃないか、いずれにいたしましても、四・五%がずっと続くとは思いません。あるいはそれが四・四%になるかもわからぬ、しかし私はそうしたくはない。これが七%くらいにいつかえるかという問題。たとえば四・五%の説明を聞きますというと、 GNPが三〇五、六、三〇七をピークにいたしまして、そしてこの下半期にだんだん下降していく。前の見積りは、三〇七、八が二九〇程度にまで落ちるというあれであったと思います。しかし今度は、それが三〇〇程度が下のピークでいくんじゃないかという見通しのようです。そういたしますと、はたしてそれが三〇〇なのか、三〇〇でとまるか、二九五までいくか、あるいは三〇三くらいで続けていくかということは、これからの問題です。そしてまた、その生産が続いていった場合、あるいは輸入がどうなるか。輸入は大体見越し輸入が三十二年のときほどもちろんございません。しかし貿易収支で、物資輸入は大体十億ドル赤字できているわけです。それが原材料か、機械か、とにかくそれだけ日本財産がふえた、この財産のふえたのが、原材料のふえ方か設備投資になってしまっているかということは問題でございます。したがいまして、今後の四・五%というのは、今の一応の見通しでございますが、これが来年も再来年も続いていくということは、なかなか考えられないんじゃないか。したがって、四・五%が三年も続くという前提なら、これは転換で、それがずっと続くと、こういう結論になりましょうが、私は、そうはいきませんぞ、単なる今の見通しであるのでございます。したがいまして、転換とは言い得られないので、調整過程一つ現象だと、こう申し上げたのであります。
  19. 羽生三七

    羽生三七君 いや、私は必ずしもそうは思いませんが、これはもう一度あとで触れますから……。そこで、ちょっと問題が横へそれて恐縮でありますが、二十二日に答申になった社会保障制度審議会の結論を尊重して、特に高度成長の谷間にあえぐ人たちの対策として、これを具体化するお考えがあるかどうか、これは私が今述べてきた問題と相当重要な関連性がありますので、特にこの際お聞きをしておきます。これは厚生大臣というより、むしろ総理から一応聞いてみたいと思います。
  20. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 答申は四十七ページにわたりまして、相当大部のものであります。まだ読んでおりません。私は大内会長と三、四十分話をいたしました。大体の考え方は直接聞きました。しかし、今までのずっと積み上げ的のものを、今度は調整していかなければならぬ段階であることは、意見が一致しておるのであります。その調整の仕方をどうするかという問題でございますが、いずれにいたしましても、所信表明で申し上げましたごとく、社会保障制度の拡充強化ということは、組閣以来の一つの大きい柱でございますので、、せっかく答申もありますので、十分善処いたしたいと考えております。
  21. 羽生三七

    羽生三七君 厚生大臣に。
  22. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) お答えします。  大体ただいま総理からおっしゃったとおりでございまするが、御承知のように日本社会保障制度は、一応国民皆保険、国民皆年金と、制度上も出そろってはおるけれども、内容が整っていない、そういうような意味もありまして、この際、やっぱり総合調整をしなければならぬということも考えておりましたが、やはり今度の答申にも、そういう点に向かって総合調整すべきであるということでございます。  もう一つは、やはり社会保障を進めていかなければならぬ。日本社会保障は、戦後非常に急速な進歩をしたけれども、まだ西欧の諸国に比べて非常に進んでいないから、ある目標を持ってやらなければならぬ。それから年金等は別にいたしましても、社会福祉あるいは公衆衛生と、そういう面もあの答申の中に基本方針が示されておるのでございます。非常に貴重な御意見でございまするから、今後、具体策につきましては十分研究していきたいと、かように考えておる次第でございます。
  23. 羽生三七

    羽生三七君 先ほど私が申し上げた、いわゆる国内均衡という立場からいっても、ぜひただいまの点は、十分具体化するよう配慮されることを特に要望いたしたいと思います。  次に、三十七年度経済白書は、日本経済の最近の動向を転型と呼んでおります。言葉の問題はとにかくとして、企画庁長官はどういうふうに理解されておるのか、少し詳しくお聞かせいただきたいと思います。
  24. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど羽生さんのおっしゃいました御質問の意味、私にはよくわかったと思います。つまり先刻おっしゃいましたことは、各所において転型期と言っておる、それの内包しておることは、要するに設備投資がここまでふえてきて、それがある程度限界に来た。したがってこれからの国民経済の動きの重点というものは、財政支出、これは先ほど御指摘の先行投資、社会投資になると思うのです。また、ただいまおっしゃいました社会福祉的な支出にもなると思います。それから輸出、これはもう説明を加える必要はありません。さらには先刻総理が指摘しました健全な国民生活の充実、こういうほうに国民経済全体の重点が移っていくのじゃないか、こういう御質問であったように私は了解いたします。そこで、白書が転型期という言葉で景気環境の一つの形態としてあれをとらえましたとらえ方には、私も多少の——必ずしもそれが唯一の見方でなかろうかという考え方を持っております。その点を国民経済全体の重点転換というふうに言ってもいいではないかと、こうおっしゃるならば、まさしくそういう感を私も持っております。白書が転換期と申しましたのは、そういった意味での国民経済重点が、多少設備投資のほうから政府の社会投資、先行投資、それから輸出の増進、国民生活消費生活の充実、こういうほうに移りつつある、こういうことを指摘したものと了解をいたしております。
  25. 羽生三七

    羽生三七君 今お話しの御要旨は大体私の考えているところと大差ないようでありますが、ただ問題は、先ほど総理からお答えがあったと同じ問題に関連するわけですが、当面の単なる現象形態のごらんになるのか、やはり日本経済一つの——これは永久なんという言葉を私は使いませんが、少なくとも今後近い将来における一つ基調変化、そういう意味で単にスケッチされただけなのか、あるいはもっと何らかの観測も含めてそういうことをお認めになるのか。その辺は、長官は単なるスケッチというようにおっしゃったようですが、その辺一つと、それからもう一つ設備投資改定計画では、設備投資を千四百億円減を見込んで、個人消費支出の一三%増として初めてこれは十兆円の大台に乗ったわけですが、こういうようなことは、今お話しのように、成長への大きな変化と思いますけれども、それとともに個人消費支出の一三%増は可能かどうかということです。さきの私の質問にあわせてお答えをいただきたいと思います。
  26. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 経済白書そのものはスケッチであるか、あるいは政策を織ん込んでおるかとおっしゃれば、私はスケッチであると考えます。しかしながら、御承知のように数年前に策定されました基本になります所得倍増十カ年計画においても、十カ年の後半においてはだんだんと国民経済全体の姿が、後半と申しますか、中段からでございますが、先行投資あるいは消費生活の充実、そういうほうに移ってくるであろうという大きな見通しをすでに述べ、おります。そこで御質問でありますから申し上げるならば、白書が提起いたしました問題も、やや所得倍増十カ年計画最初見通しましたそういう方向に向かって経済が動きつつあるのではないか、こういう指摘をいたしたものと考えております。  それから消費が十兆円台に乗せた、こういうことが可能であるかというお尋ねであります。先ほど総理がお答えいたしましたように、このたびの見通しは、私どものほうでこれこそスケッチ風にきわめて事務的にいたしましたわけでもありまして、一月十六日の閣議決定にかかわるものではございません。そこで、作業の過程におきましてGNPはこのくらいになりそうである、したがってその配分の面において財政支出、輸出国民消費設備投資、在庫投資、それらに配分をいたして参りますと、どうしても消費のところにあれだけのウエートをかけて見ませんと全体の素描というものが成り立たない。現実に消費が十兆円をこえるかこえないかという予想そのものは非常に困難で、ありますが、設備投資はこれ以上いかないであろうとか、在庫投資はこれ以上無理だとか、輸出はこのくらいであろうとかいう財政支出ははっきりしております。そういう見通しはおのおのはっきりいたしますので、したがって、しからば国民消費がこのくらいになるのではなかろうか、そういうことを素描をいたしたというように御了解願いたいと思います。
  27. 羽生三七

    羽生三七君 これは全く私の意見でなしに、わからぬからお尋ねをするのですが、この経済見通しの改定案では、設備投資が当初見通しより千四百億円下回っておる。しかし生産水準はその割に落ちないともいわれておる。実は毎日のいろいろな新聞その他で指標を見ておるんですが、生産水準が落ちたというときもあるし、その割に落ちないというときもある、あるいはまた調整策が浸透しておるとも言われるし、なかなかそうでないということも言われて、この間の正確な現状分析というか、把握が非常にむずかしいわけです、僕らのようなしろうとには。ですから、そういう意味で、今企画庁としてそういう一応の改定見通しを立てられたわけですから、そういう現実のしに立って少しその問の動向をわかるようにひとつお示しをいただきたい。
  28. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私どももある程度以上の正確度をもっては申し上げ得ないわけでございますが、ただいま御指摘の点でございますが、まず鉱工業生産の動向につきましては、先ほど総理が答弁を申し上げましたように、六月において季節変動を修正いたしまして、三〇九、何がしというかなり高いところに達しました。それからあとの動向がどうなるかということを私ども議論をいたしましたときに一番考えましたのは、やはり機械受注の動きでございます。私どもの見通す限り、機械受注というものは急速に減りつつある。これは業界の報告を集計いたしましてもかなり減りつつあるのでありますが、元来機械受注に対する業界の見方は常に現状維持的であります。つまり受注がふえるときにはそれほどはふえないような見通しを出しておりますし、減るときにはそれほどは減らないという見通しを出している傾向がございます。そこで業界の見通しよりはより機械受注が減るであろうということを当時考えたわけであります。実際その後の様子を見ますと、確かに業界の見通しよりも機械受注が減りつつございます。中には既契約のキャンセルを行なったりしておるものもあるようでございます。機械受注と鉱工業生産の指数は大体二カ月なり三カ月なりの間隔を置いてかなりきれいに同じカーブをとりますので、そこで私どもは鉱工業生産は落ちるであろう、こう考えたわけでございます。そうして先ほど総理が答弁を申し上げましたように、十月で大体三〇〇ぐらいまでいくのではなかろうか、こう考えておりまして、七月の集計がただいまのところ出ておりますが、六月の三〇九・何がしから三〇四・四ぐらいまで落ちております。これはかなり顕著な下落であります。八月は本来季節的に鉱工業生産の落ちる月でございますが、おそらく季節変動を加味いたしましても、電力消費状況から見ますと、さらに落ちるであろうということがほぼ明らかと思います。鉱工業生産の有様は現在そのような状況でございます。  それからそれとの関連で……それでよろしゅうございますか。そういうような状況でございます。
  29. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっとあとのほうの質問でありますが、ちょうど今長官からお話しがあった際でありますので、質問の順序を変えますけれども、この統計を見ますと、いろいろでこぼこがあるが、大まかに言って生産財の生産消費生産とがだいぶアンバランスがあるようです。特に生産生産は下がっておる。消費生産はおおむね上がっておる。これはもちろん大まかな言い方であります。その中にそれぞれでこぼこがあることは当然でありますが、この場合政府としては、これを生産生産消費生産方向にさや寄せといいますか、持っていくのか、あるいは逆に生産生産方向消費生産を持っていくのか、つまり全般的不況に持っていくのかどうかという問題もあると思います。しかし生産生産消費生産にさや寄せする場合には国際収支の関係がどうなるか、こういう問題があると思いますが、これはちょっと順序があと先になって恐縮ですけれども、この辺はどういうふうに判断をされておるのか、お尋ねいたします。
  30. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 政府としてどういうふうに持っていくのかという御質問に対してはちょっとお答えがしにくいのであります。現実にどういうふうに動きそうかということでございますと、確かに耐久消費財の生産というものはかなり堅調でございます。しかし、これもやや想像が入りますけれども、冷蔵庫でありますとかテレビジョンでありますとか、そういうものでございますが、この夏を境にして少し耐久消費財の生産にも多少弱含みの傾向が出てきておるのではないか。それまで強含みであったものは経済見通しの中でどう処理されておるかと申しますれば、それが先ほど申し上げました消費が十兆円に乗せるであろうかどうかというところと関連をいたしておるわけであります。いずれにいたしましても、鉄鋼とか繊維とかいうようないわゆる輸入原材料に頼るような種類の生産というものはいずれにしても落ちぎみでございますので、どう動きましても、国際収支に大きな影響があろうというふうには考えなくてよかろうかと思っております。
  31. 羽生三七

    羽生三七君 やはりこれも質問のついでで恐縮ですが、大蔵省は明年度の税収との関係で成長率は八%前後にする必要があるということで何か検討を始めたというふうに伝えられておりますが、その問題はどうか。  それから国際収支均衡は持続的かつ本格的なものとする、これが経済運営の基本だということを衆議院の大蔵委員会でしたか、大蔵大臣がおっしゃっておりましたが、かりに八%成長を確保するというような場合に、今の蔵相の所信表明と背反するようなことは起こらぬのかどうか、その辺のことをお尋ねいたします。
  32. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。来年度の税収見通しにつきましては、経済見通しも非常に困難な状態でありますので、財源が窮屈であろうということで、九月決算期を見ながら十月の末ないし十一月になってから予算規模、予算の編成大綱をきめたいということを言っておるのでありまして、新聞に出ておったようでありますが、八%というような検討は現在しておりません。経済企画庁で試算をしました数字に対しては、公式な閣議決定の数字ではございませんが、大蔵事務当局との間にも意見の相違はなく、おおむねこの試算数字を基として、今年度経済見通し経済の推移を見ているのが現状でございます。  第二点の国際収支の問題につきましては、御承知のとおり七月は経常収支において二千二百万ドルの黒字というふうになりました。七月末外貨は十六億三千五百万ドル、一番低い十四億七千六百万ドルの昨年の十二月から比べれば非常に好転をいたしておりますが、この基調をくずさないようにしていかなければならないという考えでおります。
  33. 羽生三七

    羽生三七君 今お話国際収支は十六値二千五百万ドルですか、改善されたといいますが、その内容が問題だと思います。先日申し入れをしておきましたが、この際金保有量、それから長短期外資等の内訳、これを詳細に説明をしていただきたいと思います。特にそのうち返還の近づいたもの等、詳細にひとつ御説明いただきたい。
  34. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。七月末現在の十六億三千五百万ドルの内訳は、金が三億八千九百万ドル、外資が十三億四千六百万ドルでございます。なおこの中には米市中銀行三行から借り入れの二億ドル、その他の来年度に返済をしなければならない一億二千五百万ドルばかりの借款が含まれております。
  35. 羽生三七

    羽生三七君 いや、もっと詳細な内容を聞きたかったのですが、そこでこのアメリカの市中銀行筋から特別借款をしておる総計三億二千五百万ドルですか、この返済期限は近づいたようでありますが、それはどうするのですか、返す場合に手持ち外貨との関係、それから借りかえするのか、そういうことはどういうふうに——この前大蔵大臣はこれは資金繰りの問題で国際収支とは直接関係はないとかというお話がありましたが、そういうことでなしに、具体的に今の外貨が十六億三千四百万ドルになったのだと誇示されるからには、そういう場合の手当をそこでどうされるのか。
  36. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。米市中三行からの借り入れ二億ドルにつきましては、十一月末から四カ月間、来年二月までに五千万ドルずつ分割返済をいたすわけでございます。それからなお一億二千五百万ドルでありますが、これは来年の二月から来年の七月までに分割返済をするという予定になっております。現在外貨の年度見通しを立てておりますので、これが現在借りかえを行なうか、または借り入れをもって行なうか、手持ち外貨をもって行なうかは全然未定でありますが、借りかえをしていくというような考えは現在持っておりません。返すものは返していくほうがいいのではないか。また外貨の見通し考えますと、大体今申し上げたものに対しては順調に返済ができ得るという見通しでございます。
  37. 羽生三七

    羽生三七君 そういうことで、今度は貿易の問題に関連しますが、輸出は当初の見通し四十七億ドルを上回った四十八億ドルの達成も困難ではないと言われております。しかし、一面アメリカや西欧の景気も動向も相当問題であろうと思います。それとともに補充輸入の圧力も出てくるかもわからない。さらに自由化の影響も出てくると思います。また一−三月の輸入期の問題で、今申し上げたような問題との関連で、一−三月の輸入期をどう推移するかということも非常に問題だと思います。池田、藤山論争では——論争と言ったほうがいいのか、とにかく国際収支均衡の時期についての見方、これは池田総理に軍配が上がった、勝負があった、こういう形であります。さりとて今の問題を内包しているのですから、手放しで楽観はできないと思います。ですからその辺の見通しはどうなのか、これを大蔵大臣から。
  38. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。御存じのとおり六月、七月、八月は非常に例年輸出不振の時期でありますが、引き締め、調整策、いろいろ浸透した結果として輸出が伸びて輸入が非常に鎮静状況を続けているわけであります。おおむね年間を見ますと、四十八億ドルの輸入はそれ以下に抑えられ、四十七億ドルの輸出はそれよりももっと輸出が伸びるということは、おおむね見通しができるわけでございます。六月、七月、八月、九月の悪い時期にも、総合収支さえ黒字を計上できるような状態でありますから、八月、九月は国際収支尻においては、おおむね現在のまま黒字基調を続けるという見通しでございます。十月、十一月、十二月は、これは例年のとおり輸出が伸びるという時期でございます。それがどれだけ伸びて一−三月の輸入が伸びるときの相殺勘定を起こした場合、年度末にどの程度の外貨を持ち縛るかは、今から予測できませんが、私が最初に申し上げたとおり非常に順調な伸び方を示していくだろう、またいくほうに万全の措置をとって参りたい、こう考えておるわけであります。
  39. 羽生三七

    羽生三七君 大蔵省のIMR総会あるいはIMEの対日年次協議などを控え、会議に臨む態度として八条国移行勧告については、無条件でもう一度再延期するよう要請する方針を固めておる、こう伝えられております。それはそのとおりでしょうか、どうですか。
  40. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 新聞の報道でありまして、大蔵省はそのような決定をいたしたことはありません。
  41. 羽生三七

    羽生三七君 かりに決定するとしても、そういうことになると、国際収支がこの秋均衡するといわれながらも、私は先行き不安があるからではないかと思いますが、これは議論になりますからやめておきます。  そこで先ほどちょっと申し上げましたように、大蔵大臣は衆議院で、もう一度繰り返しますが、「国際収支均衡を持続的かつ本格的なものにすることをもって経済運営の基本的な目標とし、」云々と、こう述べておられます。そこで均衡は一応形の上ではできたわけです。また、できたといいますか均衡に近づきつつある。特に七月の外為黒字で光行き心配ないという見方も一部に出てきております。そういうことから中には引き締め手がかりの足場がこれで固まったんだと、そう言っておる向きもあります。これに関連して、公定歩合の引き下げというようなことも考えておるのかどうか、とにかくその辺の大蔵省としての判断をひとつお伺いいたします。
  42. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。  外貨問題につきましては、先ほど御発言がございましたとおり健全均衡の線を貫きたいと考えておりますので、現在ただ数字の上で十六億三千五百万ドルになり、なおこの後十二月までは順調な伸びを示すであろう、また一−三月を通じてのマイナス面を考えても、期末においてはわれわれ当初考え程度の順調な締めくくりをくくり狩ることができるだろうということを考えておりますが、しかし、先ほどからの御意見もありますとおり、九月末の自由化の問題もあり、輸出は非常に堅調であり、輸入は沈静な状況を続けているといっても、まだ今の段階において金融面その他に対してゆるめるような考えを出すのは時期的に尚早だという考えでございます。その意味で、総理もたびたび申されておりますとおり、長い意味の健全な成長をはかるためには、現在のところ金融引き締めをゆるめたり、また、引き締め調整基調をゆるめるような考え方は全然持っておりません。
  43. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、かりに引き締め政策の手直しを可能とする安定的な均衡の時期はいつごろと御判断されるか。ちょっと話が横道にずれて恐縮ですが、経済の議論なんてものは水かけ論みたいなもので、もう私はこんなことをしゃべったって持ち時間がなくなるのでどうかと思うのですが、たとえば本会議における施政演説の際の経済演説、あるいは財政演説にしても、それから今の私どもとの議論でもそうですが、結局景気の動きについていったあと数字を手直しするだけで、そのような意図というものを言えば、それは経済は動くものだからということになってしまって、全然これでは一体何のための論議かあるいは政策かということに非常に疑問を持つわけです。したがって、そういう意味からいっても、ほぼ均衡の線に近づいておると言われているけれども、なおかつ慎重を期している、こういうことだと思いますが、その引き締め政策の手直しを可能とするような安定的な均衡の時期はいつごろと判断されるのか。こういう程度見通しも持たないということになったら、一体政府というものはどういうものかという疑問を持たざるを得ない。これはひとつはっきり御答弁願います。
  44. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。  高度成長行き過ぎに伴って国際収支面においてアンバランスが生じて参りましたし、先ほども発言がありましたように、国内均衡をはからなければならないような面もありますが、国際収支均衡をはかるためにあらゆるものを犠牲にして縮小均衡を行なっているのではありません。必要なものに対しては国内均衡をはかりながら、非常に欲ばった目標かもわかりませんが、国際収支均衡をまず第一に考えながら、国内均衡をはかりつつ、また、これが基本線を完遂するための各般の施策を同時にあわせてやっておるのでありますから、これが十九億ドルになり、二十億ドルになり、二十何億ドルになればゆるめるのだというような考え方はいたしておらないわけであります。昭和三十二年に約七億ドル程度の外資が昭和三十六年の四月には二十億ドルという激増があったわけでありますが、これが十四億九千六百万ドルに三十六年十二月になり、今日六カ月間ないし八カ月間のうちに十六億三千五万ドルというところになったわけでありますが、これは数字の上でここまでくればゆるめるのだというような考え方でなくて、均衡ある財政金融各般の施策を行ないつつあるのでありますから、どこの時期にゆるめるというようなことは適切ではないと考えます。
  45. 羽生三七

    羽生三七君 総理も同じことですか。
  46. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大蔵大臣が責任者でありますから、大蔵大臣の言うとおりであります。
  47. 羽生三七

    羽生三七君 このアメリカの国防長官が七月二十七日指示したドル防衛処置、このうち米製品が他国より二五%以上高い場合、そのときだけ他国の製品を買うことができたというのが、今回それが五〇%以上ということになった。それから一万ドル以上の場合は一括全部米製品優先、こういうことになりましたが、これによる外貨収入減は一億四千万ドルということに見込まれております。私は特需の問題を言っておるのではありません。私たちはノーマルな貿易を希望しておりますから、特需を問題にするわけではありませんが、純粋な国際収支の比較という観点から、この問題にどう対処するのか、また、国際収支にどの程度の影響を与えるのか、通産大臣からお答えをいただきたいと思います。
  48. 福田一

    国務大臣(福田一君) お答え申し上げます。おっしゃるとおり、全問この二五%以下のものであれば買ってもよいというのを五〇%まで引き上げることにしたことは事実でございます。そこでこれに対処しまして、通産省としましては、直ちに外務省と連絡をとって、そういうようなことについてよく事情を説明し、当方にあまり影響のないように、実は米国側に申し入れをいたしておる、こういう段階でございます。
  49. 羽生三七

    羽生三七君 影響があるとすれば、額としてどの程度の影響がありますか。
  50. 福田一

    国務大臣(福田一君) 仰せのとおり、大体一億四、五千万ドルの影響があるのではないかという一応の見通しを立てて交渉をいたしておる段階であります。
  51. 羽生三七

    羽生三七君 やはり前後しますが、これと関連するからこの機会に承っておきますが、今秋アメリカで開かれる日米経済会議の合同委員会ですね、六閣僚がそろっておいでになるようでありますが、その際は、この前の箱根会談のあの程度ではまずいのではないかと思います。私は、単なる対米協調ムードということだけに終わらないように、積極的に今のドル防衛の緩和あるいは対米片貿易の是正、そういう問題に積極的に取り組まなければ、六閣僚そろってアメリカへ行かれる意味はあまりないので、でありますから、今のような問題も含めて、積極的なこの秋に予定される日米合同委員会においてそういう態度を堅持されて臨まれるかどうか、これは外務大臣ですか……。
  52. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せのとおりの決意で十分の準備を整えて参りたいと思っています。
  53. 羽生三七

    羽生三七君 この前の箱根会議でも十分の準備をされたと思いますが、結果は必ずしもそうでなかったと思いますので、今の通産大臣の御答弁の単なる申し入れというようなことでなしに、積極的に池田総理が指示されて、六閣僚と一致した意見を持って十分成果を上げるような結果を望みます。  次に物価問題ですが、消費者物価の騰貴は当面の最大課題と思います。改定見通しでは、当初見通しの二・八%が五%上昇に修正になっております。それから実際には本年四、六月は前年同期に比べて約八・七%の上昇になっております、現実に……。さらにまた、近く公共料金、私鉄運賃とかあるいは場合によると電力あるいは消費者米価、これは三月の予算編成期のことでしょうが、大学授業料、こういうものの値上げが必至と見られておる。政府としてはこれにどう対処されるのか。これは再び経済見通しの修正を必要といたします、少なくとも物価問題に関する限りは再度修正が必要になって参ります。そこでこの物価の値上がりのあとを追って、ただ数字を修正していく。これはやむを得ぬ、あれもやむを得ぬということじゃなしに、今の基本的な、これらの電力料金、あるいは私鉄運賃、消費者米価、こういう問題に基本的にどういう態度で臨まれておるのか。また、再び経済見通しの物価問題を修正せんならぬというようなことが現実に起こってくるのかどうか。その辺は、たとえば、私鉄運賃についてはトロイカ方式とか、いろいろ言われておりますが、所管大臣からそれぞれ、どういう形で物価問題との関係でどういう考え方を持っておられるのか、この機会に承っておきたい。
  54. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) まず概括の考え方だけ私から申し上げます。五%の消費者物価の上がりを、見ておるわけでありますが、確かに六月においては、昨年の前年同月対比八%余りの上がりをいたしております。しかし、それから以後、なお前年の物価が上がっておりましたために、年平均をとりますと、そういうことにはなっておりません。六月のまま消費者物価が上がらずに推移いたしますと、大体年間でほぼ五%弱の前年に対する上がりになるはずでございます。で、現実には、七月に入りまして、初めて消費者物価が下がりまして、五月の一一二・五に対して、六月が一一二・一と下落を示したわけでありますが、消費者物価のうち、大体寄与率と申しますか、これが上がるとどのくらいと申しますか、一五%ぐらいが野菜でございます。それから八%ぐらいが魚、同じく八%ぐらいがくだものでございまして、非常に季節的な、あるいは天候の支配を受けやすい、しかも需要の動きにすぐに生産構造が即応して動かない種類のものが多かったわけでございます。幸いにして、今年はそのような天候異変もこのところございませんし、また、流通機構の整備、あるいは消費者保護のいろいろな行政によりまして、こういう一番消費者物価に影響を与えやすい種類の品物の動きがかなり鎮静をいたしております。そこで、年間を通じて五%という見通しは、私ども、そんなに間違った見通しではない。これからいろいろなことが考えられますけれども、それをかなり悪い場合に見ましても、六%という数字は出ないというふうに、ただいまのところ考えております。  公共料金全般につきましては、総理大臣の施政方針演説にも、所信表明にもございましたように、中には資本比の増加によるものが相当ございます。それは私鉄でございますとか、年間に輸送量の伸びが一二・三%づつある。あるいは、東北電力の場合でもそうでございます。わが国の電力需用というものは今後おそらく、やはり年率一二%から一五%ぐらいずつふえていくのではないかと考えますので、資本比の増加による部分が相当ございます。したがって、所信表明にございましたように、財政、金融、税制、あらゆる措置を通じて、できるだけこれを最小限度に食いとめる。場合によっては、かなり思い切った措置もとらなければならないのではないか。できるだけ値上げの幅を押えていきたいというのが、全体の私どもの考え方であるというふうに承知を願います。
  55. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答えいたします。  私鉄運賃につきましては、ただいま経済企画庁長官が申しましたように、各種の措置をとって、しかも、今日、六大都市その他都市の交通が非常に何と申しますか、困難をいたしておる。この状態をいかにして解決するかという問題と関連いたしまして、解決いたしたいと考えております。
  56. 重政誠之

    国務大臣(重政誠之君) 消費者米価は、食管法の建前から、家計の安定を旨として定めるということになっております。そこで、問題は、現在の米価に据え置かなければ家計の安定を害するかどうかということが、食管法上の問題になるわけであります。昭和三十二年に消費者米価を値上げいたしまして今日まで据え置きになっております。三十二年から三十六年を比べてみますというと、家計費は三三%半上昇をいたしております。これに反しまして、食糧費は四四%余りから四一%に減少しておる。その中でも、米によって支払われる経費というものを見ますというと、一二%余りから一〇%に減っておる。その間二%半ぐらい安くなっておる。家計費全体は三割三分五厘上がっておるが、米代の割合からいきますと、家計費に対して二%半減っておるというのが現状であります。でありますから、その面から見ますというと、消費者米価を若干値上げをしても、家計の安定は害さないということになると私は思うのであります。しかしながら、これは今日はそうでもないのでありますが、日本では米代というものが物価の基礎になるという考え方がありまして、消費者米価を上げますというと、心理的の影響が私はあると思うのであります。そういう面からいたしまして、これは政府全体として十分検討をして事に処すべきものである、こういうふうに思います。
  57. 羽生三七

    羽生三七君 私鉄料金は交通事情を見て検討するとか、今、農林大臣も、いろいろなエンゲル係数等をとってお話がありましたが、私は、そういうことを聞いておるのじゃないのです。結論的に上げるのかどうか——幅が大きいか少ないか別として、結論的に上げるかどうか、それをお尋ねしておる。説明は、要りません。
  58. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) それはさき経済企画庁長官申されたように、また、総理大臣も衆議院において答えたように、諸般の事情を勘案して、そして物価値上がりムードを起こさないような方法で研究いたしております。結論が出次第に、いずれかにきまることであります。
  59. 羽生三七

    羽生三七君 それはもういずれかにきまるのはきまった話で、無責任な話だと思いますが、問題は、私、この前の予算委員会で申し上げましたように、政府が物価対策に取り組んでおるでしょう、そのための十二要綱ですか、きめましたね。そこで、そういう対策を持っておるのに、当面、政府が先んじてそういう重要な問題について値上がりをきめていいのかどうか。その場合には、トロイカ方式というものもあるようでありますが、財政とか金利とかの面で、たとえば私鉄の方面において、ある一定の期間——永久のことは知りません。ある一定の期間これを抑えるとか、あるいは消費者米価についても、社会保障という立場で、いましばらくこの値上げを抑制するとか、そういう考慮があるのかないのか。ただ、今の御説明のような点では非常におかしな話だと思います。これは総理大臣として、どうですか、上げるのですか。現状維持ですか。総理大臣からひとつ。
  60. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私鉄の運賃にいたしましても、もう申請がありまして一年たっております。上げたくないのであります。上げたくない。しかし、上げたくないからといって上げずにおった場合に、私鉄の事業者その他がどうなるかという問題でございます。電力料にいたしましても上げたくございません。何とか方法を講じて上げないようにしたい。もしどうしても上げるとすれば、上がり方をどれだけ少なくできるかということが私は現実の問題じゃないかと思います。おっしゃるとおりに、一年なり二年で上げないのだ、こう言ってやって、そしてその結果がどうなるかということを考えなければなりません。たとえば公務員の給与にいたしましても、これは当然上がるべきものでございましょう。しかし、われわれが、これは上げたくないとかなんとかということでこれは処理できるものじゃない。何というか、合理的な方法ならこれは当然上げるのが自由主義経済のもとじゃございませんか。ただ、その上げ方をどうするかというのが問題であるのであります。米の値段なんかにいたしましても、御承知のとおり、三十二年に上げました。三十一年にも上げました。二十九年も、二十八年も上げたと思います。二十八年、二十九年、三十一年、三十二年と四回に、ほとんど毎年のように上げております。また、労働者の賃金もそうです。毎年上がっております。公務員の給与も去年は七.一%、おととしは一二・四%、さきおととし三・四%ぐらいだったと思います。これは上がった。民間の人は、公務員の給与を上げちゃ悪循環だという議論がございますが、民間の人が上げたくないと言っても、それは経済の原則でございますまい。私は経済の原則、自由主義のあれを、国民生活水準が上がり、所得がふえた場合に、上げたくはないのだけれども、いかにして上げ方を少なくするか、また、上げずに済むような方法はないかということを検討しておるのであります。それを今結論を出すということは、私はまだ早い。上げるときには国民にその事情を訴えて合理的な方法でやっていこうというのが私の考えでございます。
  61. 羽生三七

    羽生三七君 公務員の給与が上がっても、実質には物価値上がりで、ある部分が相殺されることになるので、私は申し上げておるのですが、時間がないからこれ以上申し上げません。  そこで、政府は、昨年五月二十一日経済運営に関する統一見解の際、池田総理としては、最高経済会議の設置を閣議で決定されておりますが、これはその後どうなっておりますか。おやりになる意思はありますか。これは取りやめですか。
  62. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 閣議決定いたしましたように、日本経済の動きというのは非常に自由化を控えまして重大なときに来ております。先ほど来のお話でもわかりますとおり、私はやはり私の相談相手としてその会議を開こう、設けようと考えて今準備をいたしておるのであります。選挙がありましたし、また、臨時国会もこういうような状況でございますので、私はこれが終わり次第、今人選に入っておりますから、私が外国に立ちますまでに早急にきめたいと思っております。ただ、あの決定の場合におきましては、主として経済関係、産業、経済金融関係でございましたが、私はやはりまあ労働問題は産業機構、経済機構に非常に影響がございますので、その他の人も入れたらどうか、別なあれにしょうかというので、今考慮中でございます。いずれは結論を早く出したいと考えております。
  63. 羽生三七

    羽生三七君 もう一つ総理に。先ほど来の議論で、総理がなおこの高度成長の立場を堅持されておることはうかがえるわけですが、自由経済下で設備投資中心ということになれば、結局、先ほど申し上げたように、今までの矛盾を繰り返すことになると思う。この辺で総理としては、何らかの新しい発展方法を打ち出されしてかるべきじゃないかと思うのです。たとえば私が先ほど申し上げた重点の移行ということでなくても、たとえば、今の総理の立場に立たれても、外貨割当制度の崩壊とか、あるいは業界自主規制の限界、こういうものを考えると、設備投資のコントロールは財政金融措置以外にはないわけです。しかし、この設備投資中心政策がいろいろな矛盾を繰り返すことは当然でありますので、この辺で、たとえ自由経済であっても、何らかの新しい方向をこの際お考えになってしかるべきじやないか。財界その他でもいろいろ検討しておるようでありますが、総理としても何かお考えがあったら伺いたいと思うんです。
  64. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のようなことがありますので、私も今の経済会議ということを考えておるのであります。設備投資重点で、いかにも経済が誤ったようにお考えになりましては、これはあれなんで、やはり日本は非常におくれておりまして、近代化しておりませんし、合理化しておりません。競争力がないんですから、その場合に設備投資を思い切ってやった。少し行き過ぎはありましたけれども、思い切ってやったということは、これは今後輸出を伸ばし、国内の健全な消費をふやしていって、生活水準向上一つのあれで、初めからちょうどはかりへかけたように、これだけ設備投資をして、これだけ生活水準を引き上げて、これだけ輸出をやっていくんだという直接統制的なものはできない。だから、ときには設備投資行き過ぎることもありましょう、ときには国民個人消費行き過ぎるところもありましょう。しかし、長い目で全体として見れば、あの設備投資があったからこそ、私は国民所得もふえ、いろいろな財政施策もできるし、生活水準も上がってきておる。そうして賃金も相当上がって参りましたが、なおかつ、大体均衡のとれた——月々には違いはございましょう、一、二年、二、三年を見てみれば、私は国際的に日本経済の力は非常に強くなったという事実は争われないことだと思います。ちぐはぐはございますが、初めからはかりへかけて、これは何ぼこれは何ぼというわけにはいかないことは、これは自由主義経済のむずかしいところでございますが、これまたいいところがあると私は考えておるのであります。
  65. 羽生三七

    羽生三七君 結論といたしますが、これは意見でありますけれども、私はこれは総理の、先ほどお話がありましたが、国際収支の赤字の問題は、単に私、景気循環からだけ起こるものではないと思う。貿易の問題があります。したがって、今度貿易の問題で、特に私は貿易構造の問題だと思いますが、この、日本の財界の訪ソ使節団が、ある程度の取りきめをしてきたことは歓迎すべきことだと思います。この共産圏貿易の拡大についてはいろいろ議論がありますし、私も若干準備してきましたが、もう時間が終わりますので、これは単に要望にとどめておきます。  最後に、電力再々編成の問題を伺いたいと思います。この問題については、河野さんの発言をきっかけに、企画庁長官の発言、業界の反応というように、種々いろいろな問題を提起しておるようでありますが、この機会に関係者大臣の御所見を承りたいと思います。  特にわかりやすく申し上げると、東北電力の料金値上げという立場から、局部的な便法としてお考えになった問題なのか、あるいは電力全般にわたって再検討する時期に到来したと、そういうことからお考えになるのか、その辺をまずお伺いいたします。これはどなたにお伺いしたらいいんでしょうか、河野さんがあのイニシアチブをとられたんですから、ちょっと一度お伺いしたいと思います。
  66. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私から。この問題は一省、一部局の問題ではございません。昭和二十五年に私が大蔵大臣として通産大臣を兼ねたそのときに、九分割をいたした私は責任者でございます。当時七分割あるいは九分割、いろいろの説がございました。しかし、占領下、進駐軍の意向を考えまして九分割いたしたのであります。これが日本の電力界によかったか悪かったかという問題を考えてみますと、私はこれがあの危機を救う場合、いろいろな点からいって大体よかったというふうに考えております。しかし、その後におきまする電力界の状況を見ますと、これが独占企業という建前でいっております。そこにロスがないか、あるいは電発との関係等々も、私はしろうとながら実は三、四年前から考えておる問題でございます。しかし、今政府がこの九電力会社についてどうせいああせいと言う筋合いのものではございません。ただ、私は、経済的に見た場合に、今から三年前に北陸、東北を上げました。私はそのときに閣内にはおりませんでしたが、計算を見たことがございます。いかにもやりきれません。私は上げることに賛成いたしました。また、東京電力につきましては、池田内閣で上げることにいたしました。九州電力の値上げのときに私は通産大臣でありました。しかし、これは電気の計算方法が、御承知のとおり、積上式でないのです。電力におきましては投下資本に対して八%の利益率をかけております。しかもそれは、その画定資産につきまして再評価積立金は半分にしてやる、こういう計算方法でございます。そうした場合において今後東京電力は相当な昔からの設備を持っております。そうして新規設備の場合もふえたにしましても、今度の値上げで関西電力との差が非常に縮まって参りました。東北電力は三年前に上げて、そうして今その後の発電の原価が高くなって、今度も上げたいと言っております。しからばあの東北へ今後工場その他を置いた場合に、私は実は、これは内容を申し上げますと、心配になっておるものだから、企画庁長官に、三年前に、東北電力が上げたときと、北陸電力を上げたときの原価と、今の原価とどう違うか、今後東北が非常に伸びていった場合において、ほかの電力会社が上がるときに、また東北が上がるというようなことはないかと、見通しを計算してみるように、私は頼んだことがあるのであります。こういうことを考えますというと、私は電力のあり力につきまして、これは私個人の意見にしていただきたいと思います。自分がそういう関係をして参りました関係上、このままで電力会社がずっと行っていいか悪いかということは、検討すべき問題だということは、私は三、四年前から考えておることでございます。しかし、結論は出ておりません。ということで、今東北電力と東京電力を合併する云々について、結論を出したわけではございません。電力界のあり方について検討を要する問題がないかということを、私は関係大臣に一度言ったのであります。先ほどの閣議で問題が出ました。しかし、私は何にも発言いたしません。聞いておりましたが、私の気持としては、電力界におきましては、問題はあると思います。東京と東北ばかりではございますまい。大いに検討していかなければならぬと思います。私はこの国会におきましても、衆参どちらか記憶がございませんが、この問題につきまして二、三質問を受けたことがありますが、そのときには、お茶を濁すと言ってはあれでありますけれども、私は黙って意見を聞いて聞き流しておきました。一つの問題でございましょう。私はここの会社とどこの会社と、ここでは申し上げられませんが、とにかく電力会社の内容は、同じく公益専業でありましても、ピンからキリまでとは申しませんが、非常にいい内容と非常に悪い内容と、内容の違いがあることは事実です。それはやはりもとは九分割のときの、九分割がいいか悪いかという問題と、どの発電所をどこへつけるかという問題等々が重なってきておる問題であるのであります。だから私は電力料の値上げ、今の当座の問題として研究するということでなしに、私としては電力業界全体の問題として考えるべき点があるのじゃないか。たとえばその地域におきます何は、今の九電力会社が独占しておりますが、自家発電を認めるか認めないか、こういう点をずっと考えて参りませんと、エネルギー関係が非常に複雑になってきておりますし、そうして前の固定資産と新規の投資との関係が種々違っておりますので、その点なかなかむずかしい問題でございますから、今政府としては、私は研究の題目、将来の問題として検討すべきことであって、電力料金と直接のつながりがある問題ではございません。これはあくまで建前は民間会社であることでございますから、慎重に研究いたしたいと思います。したがいまして、各省大臣からお聞きいただくよりも私の気持を申し上げて御了承を願いたいと思います。
  67. 羽生三七

    羽生三七君 一応総理から大局的な御答弁があったわけですが、企画庁長官と通産大臣とではそれぞれ若干のあれが違うように思いますが、ちょっと両相からお答えいただければ……。
  68. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は違いないと思います。それは企画庁長官にも、通産大臣にも、通産大臣就任早々のときに私は話をしておりまするから、私の気持を町人は知っておりますから、表現の仕方、表現のことはどうかわかりませんが、池田内閣の方針としてはただいま申し上げたとおりであります。
  69. 福田一

    国務大臣(福田一君) お答えを申し上げます。  磁力料金の問題と再編成と申しますか、この問題につきましては、ただいま総理が申されましたとおりでありまして、直接関連のある問題とは考えておりません。しかしながら、総理が言われたとおり、種々の電力業界には問題点がございますので、これはただいま慎重に検討をいたしている段階であります。
  70. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私が申しましたことは、概して正確に新聞に伝えられているように考えます。これは政府が何かいたす問題ではございませんし、また、この時期が最適の時期ということでもございませんが、確かに問題は存在するということを申したのはそのとおりでございます。先ほど総理が答弁されました九電力の最初の編成のときと今日とで一番顕著な違いは、やはり火力、大火力というものが可能になって、わが国でもすでに三十万キロワットぐらいの火力ができつつありますし、欧米では百万キロに近いものがあるわけであります。そうして熱効力というものが非常に下がって参りました。また、送配電のロスというものも極端に下がって参りました。したがって、当時考えられもしなかったようなこういう大火力による効率的な発砲というものが可能になって、きたということが、一番当時と基本的な事情の違いであると考えておるのであります。それから問題になりました二つの電力会社について申しますならば、何といっても東北の場合に需用者の構成が非常に不利である、思いと申しますか、送電、配電についてのコストが非常に地域が広いために大きいわけであります。したがって、夕方のピーク時というものには、東京では非常に大きな電力が必要といたしますが、夜間には今度は逆に融通をし得るという立場にあるわけであります。せっかく公益運営というところまで行っておるのでありますから、それをさらに改善する余地はないか、また、東北の需用者は小口と大口たるとを問わず、ことに産業においては今度の二〇%近い値上げというものがもし行なわれますと、非常に大きな影響を受けるわけでありますから、わが国の経済界全体、あるいは電力事業界全体の問題としてこういうことを検討してみて下さってはどうであろうか、こういう気持は持っております。しかしながら、全体のこの問題についての政府としてなし得ることの限界、あるいはその時期その他につきましては、総理大臣が答弁をされたとおりであります。
  71. 藤田進

    ○藤田進君 ちょっと関連して。最初総理にお伺いしたいのです、非常に詳しいですし……。昭和二十六年の電力再編成については、結果的に振り返ってみて、これはまあ成功であったように御答弁になっているわけであります。これはまあそれぞれの議論で違いますが、今の通産大臣の稲田さんあたりも、どうもああいった当時の現状では満足できないということで、御承知のように、電源開発株式会社法の創設に非常に努力をなさったわけであります。そのときの提案理由の説明、質疑等を繰り返すまでもなく、電源開発が現行形態ではスムーズにいかないということで、低コスト、豊富な電力、良質なものを供給するのだという点に法律の目的があったわけですね。その後、これが送電幹線の問題等に発展をし、開発した保有発電所の問題に及び、あるいは所によっては、下流増の交渉がいまだに解決を見ていない。たまたま総理も触れられたように、東北については、ここに電力料金の値上げというものが提起されてきた。この関係において、企画庁長官は、私の受けましたニュアンスでは、幾多の不合理がある問題をこの際合理化する必要があるのではないかというところに、料金との関係においても問題が提起されたと、私はこれを把握しております。今の御答弁を聞いても、そのように思うのであります。したがって、今、結論的には、いつになるかどうか、問題点があるように思うので、したがって、これらを今後検討したいという総理の御答弁であるし、通産大臣も、これに沿って御答弁になりましたが、しかし、現在もうすでに、料金改定という現実の問題が出ております。あるいは運輸大臣所管についても出ている。  そこで私は、次の点をお伺いいたしますが、資本費の増大ということで、一般経費の増加というよりも、開発なり新線なり、その他のそれぞれの今公共料金については、資本費がかなりを占めていることは、私も承知しております。およそ六〇%を上回る毛のが資本費でしょう。これに対する金利等も、相当かさんでいると思います。とするならば、ここに、その資本費軽減の具体策というものと対比されて、これとの相殺において、料金というものはどうあるべきか、上げるべきか、上げるべきでないか、さらに進んで、企業形態というものは、これは電力のみならず、私鉄についても、大手十四社と中小私鉄、あるいは大手の中でも、赤字路線なり黒字路線というものは御承知のようにある。こういう矛盾については、自由主義ではあろうけれども、政府の運輸行政なり電力行政として、明らかな態度を出される時期に大体来ているのじゃないだろうか。需給の調整のみならず、開発の問題といったような一連の問題について出てきている。ここを企画庁長官はとらえたに違いないというふうに思うのですが、そこで、資本費の具体的軽減の政府として構想なりあるいは資金的な解決なりといったような、あるいは電力については、電気税もついていたりというような、政府みずからがなし得る問題について、具体策をどのように考えておられるか、これが第一点であります。これについては、通産大臣からお答え願いたいと思います。  それから第二の点は、料金とは無関係だと言われるが、その無関係であることは、私は納得いきません。料金との関連があるからこの問題が出てきたと思うので、関係のない点は納得いきませんので、納得のいく御答弁をいただきたい。そこで、企画庁長官のほうは、おそらく、料金問題等、物価一連の対策として企業形態論に頭を突っ込まざるを得ないようになったのじゃないか。総理も、若干そういうニュアンスを持っての検討というふうに受け取るわけです。しかし、現実の料金改定は、聞くところによると、総理イギリスその他訪問なさるその前に解決をしておきたいということは、しばしば私ども諸般の報道で承っております。とするならば、企業形態変更という、再々編成、電力についての問題は、かなり時間を要するでありましょう。今申されたように、私企業であるといった点もありましょうし、ならば、料金とは時間的には、これは別個の問題で解決されるようになる可能性のほうが強いじゃないですか。それと関連して、しからば電力料金値上げの場合に、政府が具体策を講じて、上げなくてもいいということを望みますが、上げる場合に、前回もとられたような特定的なものか、あるいはそうでない抜本的なものか、これであります。  ついでに、もう一点お伺いしておきますが、これは通産大臣、電力に関する限り、根拠法規というものがあいまいです。電気事業法を出すんだ出すんだと言って、今日までもうすでに数年、画編成後出てこない。これは一体どういうことなんです。電力行政の基本というものがないのか。どうして電力政策について、根拠法規というものを、電力事業法、電気事業法などということが言われながら出てこない、その出されていない理由なり、あるいは次回の通常国会に出すと言われるのか、この点もあわせてお伺いをしたいと思います。
  72. 福田一

    国務大臣(福田一君) お答え申し上げます。  電気に関する非常に詳しい事情を御承知の上での御質問でございますので、いささか私の考えも申し述べさしていただきたいと思うのでございますが、御承知のように、ただいまの公益事業法によりますというと、電気がほしい人があったら、どうしても電気事業者は電気を供給しなければならぬ。そういうことになりますと、電気を使う人がふえればふえるほど、電気をよけい作らなければいけないということになります。その場合に、その新しく作る電気の資本費というものは、非常に高いものについてきますので、ここに一つの大きな問題があることは、ただいま御指摘のとおりでありまして、資本費の増大が、いわゆる電気料金の問題に大きくはね返っていることは、おっしゃるとおりであります、そういうような事情がございますが、その電気の消費がふえる率というものは、また各地域によって御承知のように異なっている。そうしてまた、その電気を使う内容、すなわちいわゆる大口のものが使うものと、小口のいわゆる一般家庭が使うものとの率によって、またいろいろ差が出てくるというようなこともあるわけであります。こういうことを勘案してみますと、一応九分割をいたしまして、そうして日本の産業が今日までずっとその姿において発展し、また生成してきた今日の段階において、いろいろの料金の差がだんだんと広がったりあるいは縮まったりした場合がありますが、そういうことがいろいろ出てくるというようなことから、一体このまま電気をいわゆる公益事業法という法律でやっていっていいかということは、九分割が行なわれた後ずっと今日まで続いた問題だと思うのでありまして、歴代の内閣においても、この問題については、何らか処理をしなければならない、こういう考え方でやってきておりますが、問題の及ぶところ、またこれをやりましたところの影響等々を考えてみますと、もういかなる方法でやっていいか、いかなる時期に踏み切っていいかということは、日本経済に与える影響等を考えると、よほど慎重に行なわなければならない、こういう観点に立って、なかなかこの問題の抜本的な解決に乗り出すということがおくれておったのだと思うのであります。  そこで、御質問の第一点に立ち返るのでありますが、仰せのとおり、資本費の増大という毛のが、大きく料金の問題にはね返ってくるのでありますが、その資本費を、国が安い金を電力会社に提供することによって電力料金を安くするか、あるいはまた、これは一つ方法を申し上げるだけでありますが、場合によっては、いわゆる利子簿について何らかの措置を考えてみると、いろいろなことはあるでありましょう。等々の問題もございますが、こういう問題も、いろいろ国家財政の問題とも関連いたします。いろいろのことがありますので、ただいまの段階において、これと、あるいは税制面で何か措置ができないか、あるいはその他の方法がないかというようなこと等も今研究をいたしている、こういう段階でございます。  それから、次に仰せになりました料金を直接この問題と関連さして、東北電力の値上げと直接関連さしていくのではないか、私の答弁では、それはそういうふうになっていないようだけれども、結局は、企画庁長官の話などを聞いていると、やはりこれは関係があるんじゃないか、こういうお話でございます。大きな意味で考えてみますというと、もちろんこれは関係がございます。しかし、私が今考えて申し上げておりますことは、今度の料金問題を解決するまでに抜本塞源的なあれができるかどうかということになりますというと、かなり困難であろうかと考えますがゆえに、そこで、料金の問題を決定するにあたっては、これは別の問題として一応切り離した。しかしながら、そういう方向等も十分にらみ合わしながら決定していく、こういうことに相なろうかと存ずるのでありまして、それが全然関係がないとは申しませんけれども、しかし、今度の場合に、その問題と関連さしてやるかということになるというと、私は、いわゆる狭義の言葉で申し上げますならば、関連させる意思はないと申し上げておる次第であります。  次に、電気事業法の問題でございます。先ほども私ちょっと御説明申し上げたのでありますが、これを改正する意思があるかないか、また、今までの歴代内閣がなぜそういうことをやらなかったのか、それを述べろというような御趣旨と承るのでありますが、先ほど申し上げましたように、電気事業法というものには、いろいろ問題とすべき点がございますけれども、これを改正しますというと、これが直ちに電力の再編成の問題につながる場合も出てきます。また、その他いろいろの問題を惹起して参りますので、これはひとつ十分研究をして、そうして各方面にあまり大きい悪影響を与えないように、むしろいい影響を与えるようなふうにやっていかなければいけない。そういう意味で、私自身も、また通産省——もとより通産省でありますが、通産省も考えております。政府としても、そういうつもりで考えておるのであります。今までの政府がこれを改正できなかったのも、同じような観点からいろいろ研究してみますと、なかなかむずかしい問題があることは、むしろ藤田さんのほうがよくおわかりだと思うのであります。そういう考えから、われわれとしては、慎重にこれは研究をして、そうして結論を得るようにしたい、まあかように考えておる次第でございます。
  73. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどの問題ですが、電力料金の値上げを認めることの条件であるかというお尋ねであれば、さようではございません。そのような方針というものは非常に強権的なやり方であって、政府としてフェアでないと思いますし、私どもにまたそういう権限が与えられておるとは考えません。その点は、通産大臣と全く同じ意見であります。ただ、通産大臣も私も、総理大臣から、この東北電力の値上げについて、これを極力圧縮するためにいかなる方法があるか、あらゆる方法考えてみろという指示を受けております。したがって、ただいま通産大臣の答弁のように財政、あるいは藤田さん御指摘のように金融による方法、その他税制、いろいろなことを考えております。で、これは問題の広がりの限界を国民に知ってもらうためでもあると考えておるのでありまして、この問題もその一つではございます。したがって、結論として、そういうもののうちで、何をすることが適当であり、何をすることが不適当である、これは、最終的に他の公共料金との問題もございます。総理なり閣議なりで最終的に決定をしてもらうべきもの、こう考えております。
  74. 藤田進

    ○藤田進君 暫定かどうか。それから、十一月ごろまで、時期。
  75. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そこで、値上げを考えます場合に、私どもとしては、ここで一ぺん値上げをして、さらに、それが一年なり一年半ぐらい先に再現するであろうか、しないであろうかということについての見通しだけは確かに持っていたいと考えます。先がわからずに、この際だけ事態を収拾するということは適当でないと考えますので、そういう意味では、この問題についても、大きな傾向として、電気事業界全体にどう考えられるかということは、私としては知ってみたいということを考えておるわけであります。
  76. 藤田進

    ○藤田進君 時期はどうなんですか。総理が外遊される前ですか。
  77. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 時期につきましては、これは米価の問題、私鉄の問題、その他幾つかの問題がございます。したがって、来年度予算とも先刻申しましたような意味で十分にからみ合って参ります。財政投融資等の関係もあろうと思います。できれば、総理が訪欧せられます前に、私ども関係者竹の間では意見の調整をしてみたいと考えておりますけれども、それが現実の問題として、十二月に入るものであるか、あるいは十一月中に行なわれるのか、ただいま私どもとして確たる見通しは持っておりません。
  78. 羽生三七

    羽生三七君 この問題については、藤田さんから詳細お尋ねがありましたが、最近イタリアでも、電力国営に踏み切ったようです。これは確報かどうか知りませんが、そういうことです。私は、この問題とそれと対比するつもりはありませんが、十分この機会に御検討下さるように要望いたします。最後に、訪ソ使節団が日ソ航空協定で話し合ったようでありますが、この東京——モスクワ、いわゆる首都相互乗り入れば困難であるとしても、これはずいぶん長い間検討されたが、むずかしいようでありますが、新潟または北海道からハバロフスク間という構想は、運輸省としてはどうでありますか。
  79. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) お答え申します。  政府としましては、モスクワ——東京間の直通以外のことは考えておりません。これは影響するところ非常に大きくございますので、その相互乗り入れ以外には考えておりません。ハバロフスク——新潟、ハバロフスク——北海道等のことは考えておりません。
  80. 羽生三七

    羽生三七君 それは全然違うのだ。首都圏相互乗り入れは困難でも、そういう程度のあれで財界で話し合いがあると、日本政府としてはやる意思があるかどうか。
  81. 綾部健太郎

    国務大臣綾部健太郎君) やる意思はございません。
  82. 羽生三七

    羽生三七君 最後に、質問じゃありませんが、ちょっと一点だけ意見を述べさせていただきます。  先ほど総理は、設備投資は何か私が全部反対だというようにお受け取りになっていらっしゃいますが、そういうことではありません、これはウエートの問題であります。片方はゼロになって、片方はふえるとか、そういうことじゃなしに、重点の移行を言っておるのでありますから、誤解のないように……。  それからもう一つは、最近、そういう経済基調と関連をして、一部には、兵器生産や日韓会談に景気打開を期待する向きもあるようでありますが、私はこれを採りません。やはり普通の、ノーマルな形でのコンマーシャルの貿易が対共産圏関係で特に伸長されることを希望をいたします。  そのほかにいろいろありますが、時間が参りましたので、これで終わります。
  83. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 羽生君の質疑は終了いたしました。
  84. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいま委員の変更がございました。  向井長年君及び武内五郎君が辞任され、その補欠として、村尾重雄君及び小柳勇君がそれぞれ選任されました。  一時四十五分まで休憩いたします。    午後零時四十九分休憩    ————・————    午後一時五十八分開会
  85. 木内四郎

    委員長木内四郎君) これより予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。
  86. 羽生三七

    羽生三七君 議事進行。先ほどの私の消費者物価に対する質問について、企画庁長官から、上がってはいない、むしろ逆に下がっておるという御答弁がありましたが、その後調査の結果、下がっておるはずはないので、上がっておると思います。したがってこの答弁が、企画庁のほうが間違いではないかと思いますが、後刻調査の上で明らかにされることをお願いいたしておきます。
  87. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 承知しました。   —————————————
  88. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 杉原荒太君。
  89. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 日韓問題にしぼって質問をいたします。現に行なわれている交渉の具体的内容の問題に立ち入ることをこの際差し控えまして、交渉の背景または基礎として重要と認められる若干の問題並びに朝鮮に対するわが国外交政策の基本目標に触れる問題について、政府の所見をただしたいのであります。  まず第一に、政府はクーデターによって成立した朴政権を国際法上韓国を代表する正当政府として認めておられるに違いないが、その法的根拠はどこにあるという見解をとっておられるか、まずその点をお尋ねいたします。  ただ、申しておきますが、私の質問は、何も政治上の理由を問題にしておるのではありません。また、法的の根拠がないという予想のもとに質問しておるのでもありません。また、その法的根拠というものは、ただ一つだけしかこの場合にはあり得ないのであって、その法的根拠のとり方というものが一つの問題であるということを私は念頭に置いて質問するのでありますから、その辺のところを御考慮の上で御答弁願いたいと思います。
  90. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 韓国が私どもが交渉の相手として適格性を持っておるという根拠として考えておりますのは、一つには、一九四八年の十二月に国連の第三回の総会におきまして、朝鮮における唯一の合法政府であるという国連の宣言がございまして、ただいま五十一カ国がその宣言を尊重いたしまして韓国を承認しておるという事実がございます。それから、しかしながら今御指摘のように、韓国に昨年の五月にクーデターが起きた。で、クーデターをめぐる状況は、韓国の憲法におきまして、政権の授受を行なう手続というものにその性格上若干の瑕疵があったかと思うのでございますけれども、大統領は引き続き在任をしておりまして、大統領の憲法権限の範囲内におきましてこの政権授受が行なわれたということ、したがいまして、政権の性格が変わったと国際的に見るのは無理じゃなかろうかというような判断に立っておるわけでございます。今御指摘のように政治問題として考えますと、ほかにもいろいろ申し上げなければならぬ点もございますけれども、法的な根拠といたしましては、そのような事情を踏まえて考えておるわけでごいいます。
  91. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 ただいま外務大臣が引用されました国連総会の決議、これは、言うまでもなくわが国のほかにも従来韓国政府を朝鮮における唯一の合法政府と認めてきたものがあるという事例の説明であって、別に私の今質問しているところと直接にはこれは関係のないことであります。今外務大臣の御説明を伺いますというと、私の質問している点に対する、それに対応するお答えの部分をお聞きしますというと、憲法上大統領に認められた非常事態のもとにおける権限を根拠とされることは、要するに朴政権は韓国の国内法上合法的に成立したものと見て、それを根拠として、わが国としては特に承認を要せずしてその正当政府たることを認めることができるという、その法的根拠、そういう見解をとっておられるものと思う。そういう見解をとられるために、前の国会などでも、朴政権が韓国の国内法上合法的に成立したものであるという、その合法性の根拠づけのためにいろいろと御苦心になった見解の表明がありました。また、そういう見解をとっておられるために、わが国会内でも、韓国の国内法上の合法性あるいは非合法性というところまでの詮議だてまで行なわれておったのであります。たいへん御苦労なことだと思う。もとより朴政権自体としては、どのような根拠づけをしようとも、それはわれわれがかれこれ言う筋合いのものではないと思います。しかし、朴政権をわが国の立場から正当政府として認めるということは、これはわが国、わが政府が決するところでありますから、申すのでありますが、朴政権を政府が韓国を代表する正当政府として認めていくということにされたこと自体は、政治論としても私はもとより適当な措置だと思う。また、そういう方針をとるにあたって、その方法として特に覚書や通告などの明示的な承認の方法というものをとらなかったことも、よく理解できるところであります。ただ私の疑問とするところは、政府がなぜ黙示的な承認という建前をとられなかったかということであります。その方法をとるならば、何も国内法上の合法性、非合法性を論ずる必要はない。また黙示的な方法であれば、それは外から見た形の上では別にどうということは起こらぬ。しかるに、今の御説明によると、そういう黙示的な承認という建前をとられたのではないように思うが、その理由を御説明願いたいと思います。
  92. 中川融

    政府委員(中川融君) お答え申し上げます。  先般朴政府ができました際に、明示または黙示の承認の措置を政府がとらなかったということにつきましては、外務大臣から御説明申し上げましたとおり、その当時の事態が特にあらためて政府の承認をすることを必要としないような事態であったと、こういうふうに判断されたのでございまして、この判断は、日本のみならず、ほかの各国も同様の態度を、とったわけでございます。明示の承認をしなかったのみならず、黙示も承認もほかの国もしなかった。日本といたしましても、先ほど外務大臣が申されましたような事情により、やはり大きな意味での政府の継続性、法的な意味の政府の継続性は依然あるものと、かように判断いたしまして、特に新しく承認は必要としない、かような態度に出たわけでございます。
  93. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私は、今の政府の見解も全然間違いだとか、そういうふうにまでは考えません。ただ、この問題のすなおな、また、無用の論議を起こす必要がない方法としては、むしろ今言ったような黙示の承認というほうがかえってベターじゃなかったかという私は個人的な見解を持っているから、ただしたのでありますが、しかし、これはこれ以上の論議の必要はないと思いますから、その辺で、政府の見解だけ明らかになりましたから、これでこれ以上質問いたしません。  次に朴政権の公約しておる民政移管に関する問題について三つの点をお尋ねいたします。  第一点は、今年三月十六日制定公布されました韓国の政治活動浄化法の実際の運用ぶりいかんです。民政移管を骨抜きにするかいないかの一つの試金石として重視されてきておるところでありますが、この法律に定められた適格審査の対象となる者として指定を受けた旧政界人らの数は何名であるか、これに対し適格審査審判を申請した者の数は何名か。またそのとき適格と判定されて、明年以降政治活動を認められることになった者の数は何名か。適格の判定を受けた者のうち、張勉政権時代の民議院議員、参議院議員は何名含まれておるか、また旧各政党所属別にそれぞれ何名か、わかっておる分だけでよろしいですから、お答え願います。
  94. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 政治浄化委員会に適格審査対象者と指定された旧政界人らの総数は四千三百六十九名であると四月十六日に公告されております。これに対しまして二千九百五十八名が通称審判を申請いたしました。そのうち五月三十日までに千三百三十六名が審査のしで適格と判定されております。で、張勉政権時代の民議院議員適格と判定された者の中には、張勉政権時代の民議院議員二十二名、参議院議員八名が含まれています。各党派所属別には旧自由党が六百四十七名、旧民主党が二百九名、旧新民党が百九十四名となっております。以上です。
  95. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 第二点は、本年七月中旬設置された憲法審議委員会のほかに、民政移管の具体体的準備はどう進められておるかという点であります。
  96. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 昨年の八月二日に最高会議議長が発表いたしましたスケジュールによりますと、明年初頭より政治活動を認めまして三月までに新憲法を制定公布する、五月に総選挙を実施して夏までに民政移管を完了するということになっておるわけであります。
  97. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 第三点は、昨年十二月十四日、国連の朝鮮統一復興委員会における崔徳新韓国外務部長官の発言の中に、民政移管のための韓国の選挙は一九六三年五月、国連の監視のもとに行なわれるという言明があったと思うが、その選挙は国連の監視のもとに行なわれるということは、国連のほうで、すでに決定しておるかどうかということ、また政府は、韓国側から選挙の時期は明年五月ということの確報を得ておられますかどうかということ、その点をお尋ねいたします。
  98. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 国連の朝鮮統一復興委員会というものが総選挙の監視に当たるということは国連で決議されておると承っております。で、国連の第十六回総会に韓国の外務部長官が出席いたしました上記の言明もございますので、日本政府としては、それが予定どおり実行されるものと期待いたしておるわけでございます。
  99. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次にお尋ねいたしたいのは、朴政権は南北統一の方式に関する基本的態度について、対外的にどういうコミットメントをしておるか、李承晩はしばしば武力北進を唱え、南北統一のため同盟国の援助が得られない場合には、単独でも武力を使用する旨を声明しております。朴政権はクーデター発生の際発表した革命綱領の中で、反共を強調しつつも、武力による統一方式を否定しておったと思うが、この武力による統一方式の否定について、朴政権は国連やアメリカに対して、はっきりした言明ないし誓約を与えている事実があるかどうか。またこの点はわが国として重大関心事だと思うが、政府は今日まで韓国政府側との接触の機会において、この点に関する韓国側の意向を聞かれたことがあるかどうか、その点をお伺いいたします。
  100. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 御承知のように朝鮮統一の方式につきましては、一九四七年の十一月の国連総会の決議によりまして、国連監視下の全朝鮮自由選挙に基づき全朝鮮単一政府を作るという、いわゆる国連方式が策定されております。自来、これが国連の確定した方針となっておりますが、朴政府は従来よりこの国連方式による朝鮮の統一を主張して参っております。昨年  私は前の国会での質問において、いわゆる請求権問題の解決方式として、六月の軍事革命後、一時は軍事政権が武力北進を唱えるのではないかという憂慮が一部にございましたが、同政権は革命後間もない六月二十四日に外務部長官談話をもちまして、これを正式に否定いたしまして、国連方式による統一を主張することを確認いたしております。この軍事政権の立場は、昨年の国連第十六回総会に対する国連朝鮮統一復興委員会の報告を通じまして、国連加盟各国に伝達されております。また革命直後軍事政権が一木を含む諸外国に派遣した親善使節団によりましても、特に強調されたわけでございます。特に昨年十一月最高会議議長はアメリカを訪問いたしましたが、十一月十五日付でケネディ大統領との間に発表された共同声明におきましても、朴議長とケネディ大統領とは、国連総会が提示し、かつ再確認した原則に従いまして、平和的な手段をもって自由な朝鮮の再統一を達成するという決意を再確認したと述べております。  なお一番最後の御質問の点でございますが、私どもが日韓交渉の経過におきまして、諸懸案の解決のための、こういった討議におきまして、南北の統一問題というものを今まで論じたことはございません。
  101. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 以上、日韓交渉の前提または背景として無視できないと思われるものを若干について質問したのでありますが、次に、日韓交渉全体の成否を決するかぎだとも見られておる、いわゆる請求権交渉の基礎となる事項について三つの点だけ質問いたします。  私は前の国会での質問において、いわゆる請求権問題の解決方式として、純粋な意味における法理的の解決ということは、この種の問題について現状において日韓両国を拘束する実体法の法則が欠如しておるから、大体無理な話ではないかということ、またかりに両国間で、ある程度法的基準について合意ができたとしても、その基準に当てはまる各具体的のケースの証拠事実を整えることが困難または不可能な場合が多いから、厳密な意味における法理的の解決ということは、実行の可能性が乏しいのではないかという疑問を提起しました。本日ここに質問したいと思う第一点は、そういった疑問にも関連することでありますが、いわゆる請求権交渉の基礎となっている対日平和条約第四条(a)項に言う請求権なるものを政府はどう解しておられるかということであります。これは一見テクニカルなこまかい問題のように見えて、実はいわゆる請求権交渉の内容に大きな関係を持ってきて、ひいては交渉全体に重大な影響を及ぼす問題であると私はかねて見ておるのでありますから、私はあえて質問する次第であります。
  102. 中川融

    政府委員(中川融君) 平和条約第四条に規定いたしております請求権というものを、どう考えているかでございますが、これは条約の規定にもございますように、「請求権」と書きまして、その下にカッコして、「(債権を含む。)」というふうに書いてございます。したがって請求権は、いわゆる債権よりは広い概念である、これは条約から見ても明らかなわけでございます。請求権というものは、英語ではクレームという字が使ってあるのでございます。通常クレームということを申します際には、やはり権利ありとして主張するいわば地位と申しますか、そういうことであろうかと思うのであります。権利から離れるわけではございませんが、しかし権利そのものでは必ずしもまだない次第でございまして、相互交渉した結果真に権利ありやいなやを確かめる、こういうプロセスが必要である問題である、かように思うのであります。
  103. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今条約局長の言われたように、平和条約四条の日本語の請求権に該当する英語のほうはクレームですね、これはフランス語ではレクラマシオンとなっている。日華条約のその該当部分のところで中国文では要求となっている。対日平和条約では、私が言うまでもなく英文、仏文、スペイン文というものが正文になっておって、日本文は正文になっておらぬ。解釈に疑いあり、相違がある場合には、オ−センティックな、有権的の効力がある正文によることは当然のことだと思う。したがって正文をもとにして見るとなると、明確な権利としての請求権ということじゃなくして、要求または請求という意味に解してよいのではないか、あるいはむしろそれが正当ではないかという疑いを私は持っている。またいずれにしても、いわゆる請求権問題について、日韓間の取りきめができ上がって、初めてその法律効果として権利が発生し、確定するのであるから、それ以前、交渉の過程において請求または要求の問題として取り扱うのが適当ではないか。私は以上二つの根拠からして、交渉の過程において請求権の処理として、そういうアプローチの仕方には、かねて疑問を持っておるのでありますが、この点に関する政府の見解を尋ねたい。
  104. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 杉原委員と全く同様な考え方をしております。
  105. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私は今まで政府のほうから、そういうふうなことを聞いたことがなかったので、本日の外務大臣のその、言明に私は非常に同感——非常にけっこうなことだと思います。いわゆる請求権問題に関しては、対日平和条約第四条(b)項に関する米国解釈を基礎としてなされておると思うが、その米国解釈なるものの解釈について日韓両国間に意見の一致を見ておるかどうか、その点をお尋ねしておきます。
  106. 中川融

    政府委員(中川融君) いわゆる米国解釈によって請求権問題は片づける。そのことにつきましては、日韓双方で意見が一致しておるところでございます。
  107. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 その今条約局長の言われた点は、米国解釈なるものの内容の読み方、それについて意見が一致しておると、ここまで含んでおりますか。
  108. 中川融

    政府委員(中川融君) いわゆる米国解釈によって請求権問題を片づけようということには、その方式には日韓間で意見の一致を見ておるのでありますが、米国解釈そのものの実質的解釈となりますと、必ずしも一致してない面もあるのでございます。一例をあげますと、日本の請求権がすでに平和条約上消滅しておる、しかしながらその事実は、韓国側の請求権を検討する際に考慮に入れなければならないという点が米国解釈の中にあるのでございますが、たとえばこれにつきまして、日本側は今やっておる交渉において、それを考慮すべきであると言っておるのに対して、韓国側はすでにそれは考慮に入れた要求を自分のほうは出しておるのだ、こういう主張をしておる。これは一例でございますが、そういうふうに実質に至っては、必ずしも全面的に一致していない、こういうふうな実情でございます。
  109. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 一九四五年在韓アメリカの軍政府が帰属命令によって接収した在韓の日本財産の内容並びに一九四八年米韓協定によって、米軍政府から韓国に移譲された財産の内容は、政府においてわかっておりますか。この際、内容の説明を私は求むるものではないのでありますが、政府にその内容がわかっておるかどうかという点をお尋ねいたします。
  110. 中川融

    政府委員(中川融君) 在朝鮮あるいは韓国に限定いたします。在韓国日本財産、これがその後四五年のいわゆるヴェスティング・デクリーによって、アメリカに接収され、さらに一九四八年の米韓協定によって韓国政府に渡されておるわけでございますが、その具体的内容につきましては、正直のところ、日本側にはわれわれの資料というものはないわけであります。引揚者から、その引き揚げの際に申告を受けたもの、これが唯一の根拠でございますが、これとても不完全なものであるわけ、でございます。それで具体的に米国が韓国に渡した際に、どんな財産があったのか、その内容を知らしてもらいたいということをアメリカ政府に久しく前から要求しておるのでございます。その要求に基づきまして、ある程度の資料は最近参りました。しかしながらこれまた十分でないのでございまして、さらにその残余の分についても、資料を出すようにと、今アメリカに折衝いたしております。なお韓国側にも、この資料の要求を求めておりますが、韓国側からは、この点についての資料はわれわれのところに送ってきていないのが現状でございます。
  111. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 最後に、朝鮮に対するわが国外交政策の基本目標に触れる問題について、若干政府の見解をただしたいと思います。  朝鮮半島は世界政治の危険地帯の一つであり、しかもわが国として最も重大な関心を持たざるを得ないところであります、大局的に見て、朝鮮半島における国際平和の維持はわが対外政策の基本目標一つでありましょう。しかるに、これがためわが国としてとり得るあるいはなし得る有効な方策というものが、わが国の能力から見てきわめて限られているように思われるのであります。その限られた範囲のうち、現に行なわれておる日韓交渉の外交努力は、正当に評価されてしかるべきものでありましょう。しかし、朝鮮半島の平和維持の問題の背景は、広く深いものがあります。政府は、今後、朝鮮半島の平和維持に日本日本なりの貢献をするために、日韓交渉の成立を期するほか、またその日韓交渉の成果を補完する意味においても、特にどういうところに目をつけて、重きを置いてやっていこうとせられるのか、その点をお伺いいたします。
  112. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 今御指摘のように、半島の平和の問題、繁栄の問題ということに対しまして、日本が寄与し得る力の限界というものがございますことは、今杉原委員が御指摘されたとおりでございまして、私どももさように考えております。したがって、国連に関係の委員会がございまするし、現にアメリカを初め関係国が協力いたしまして、韓国に平和がよみがえり、かつ繁栄が結ばれるように、私どもは応分の寄与をなすべきものと心得ております。したがいまして、これはすべての外交問題がそうでございまするように、国際協力の精神にのっとりまして、わが国としては、近接した特殊な関係がある地域であるということを頭に置きまして、応分の積極的な寄与をなすようにして参りたいと考えております。
  113. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 朝鮮の平和維持のための方途を考える場合に、単独外交では弱い。日本の立場としては、連合外交の手段に相当のウエートを置かざるを得ないでしょう。その意味において、私は、今外務大臣の申されたその線は、そのとおりだと思います。現実的には、特に米国との話し合い、国連外交のやり方を重視せざるを得ないことは、これは現実的に見て、当然の帰結であると思う、米国との関係については、政府においてとっくに考えておられることと思いまするので、ここに質問はいたしません。国連において、朝鮮問題の担当委員会が中心となって、朝鮮における国連の目的は、朝鮮における国際平和の完全回復にあることを認めるとともに、武力統一の方式を否認して、これを現在の韓国政府にも受諾せしめておるというその事実は、朝鮮における平和維持という日本の朝鮮に対する基本目標の上から見ても現実的の意味のあることであり、またそれは、単独外交ではできがたいことが、連合外交の力によって可能となる面があることを示すものでもありましょう。国連外交の問題としては、大卒外相の国連総会における演説草案として新聞に伝えられているような森羅万象の事柄があるにはあるけれども、わが日本としては、身近かな、しかも大事な朝鮮の平和維持の問題と真剣に取っ組んで、これをわが国連外交の最大の特色として打ち出していくということこそ、わが国の分に応じた、板についた行き方であり、またそのほうがかえって国連でも光ってくるゆえんではないかと思うのであります。その点に対する政府の御所見を承りたいと思います。
  114. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) お説と全く同感でございます。特に、先ほど申し忘れましたが、国際協力を基調といたしまして朝鮮の問題は取り組むべきであると申しましたが、その国際協力という気運を醸成して参る上におきましても、日本が自主的にやって参る日韓国交正常化ということも、国際協力を醸成する場合に非常に必要なことだと、私どもは考えております。
  115. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 これで私の質問を終わります。ありがとうございました。
  116. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 杉原委員の質疑は終了いたしました。   —————————————
  117. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に吉田法晴君。
  118. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 最初、私も日韓会談に関連をして質問いたしたいと思います。質問を始めるにあたって注文を申し上げておきたいと思います。本会議で質問を申し上げました際にも、交渉中だということで、十二分の答弁が得られません。重大な問題でもございますし、国民の利害に重大関心の問題でございますから、せっかくの国会の最中でございますから、国会を通じて国民の前に明らかにするという態度を示していただきたい。  今、日韓会談の第六次、その予備会談が行なわれているのであります。二十一日、二十四日と進められて参りまして、その予備会談で何の話があっているのか、正式には説明がなされておらぬように私は感ずる。請求権問題が論議せられているがごとくでもあり、そうでないようでもあり、あるいは平和条約に関連のある、朝鮮の分離独立に関連をする諸懸案の問題が討議せられているようでもあり、そうでないようでもあり、明確にわかりやすく国民の前に明らかにしてもらいたい。
  119. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 予備会談は、御案内のように、二回ただいままでやらしていただきました。そこで何が討議されたかということは、政府側で発表いたしてございます。すなわち、請求権問題というものについて、当方の考え方を先方に示して、討議が行なわれた。第二回目におきましては、先方からこれに対しまして考え方の提示があったということでございます。世上、今吉田委員が指摘されましたように、マスコミにはいろいろな論議が行なわれておりますけれども、私どもといたしましては、今交渉中——何が問題になったかということを、正規のスポークスマンを通じまして御発表申し上げるという域を出ていないわけでございます。
  120. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それでは、二十一日、特に二十四日のようでありますが、日本側提案、あるいは韓国側からの意向というものについて、具体的に承りたい。請求権問題に関連をして討議がなされておるということですが、その対日請求権を含む無償供与と長期低利借款を合わせて三億ドルの案を提出をした、あるいは韓国側からは六億ドル案が提出されたと、これはほとんど共通をして報道がなされておる。三億ドルあるいは六億ドルの内訳、基本的な点についてお示しを願いたい。それから、三億ドルあるいは六億ドルといわれておりますが、その金は、日本の評価でするならば、金にするならば幾らになるのか、ひとつ御説明願いたい。
  121. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど申し上げましたとおり、私どもの請求権問題に対する考え方というものを提示いたしまして、討議が行なわれたわけであります。それを幾ら幾らの金額を盛ったかということにつきましては、たいへん恐縮でございますけれども、今の段階、表に御発表申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。ただ一つ申し上げられ得ることは、今有償の経済協力という問題がすでに言及をされましたけれども、先方の考え方は、それは国交正常化のあとだという考え方を今のところ先方は持っておるように伺っております。
  122. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 金額については言えぬということでありますが、この問題については、いわゆる法的根拠のある請求権云々という点については、大蔵省でも計算がなされたということでありますから、大蔵省の所見を伺いたいのでありますが、その日本側から提示しました金額、これは新聞紙上には三億ドル、あるいは韓国側から、四億ドル近いものが出された云々という点は、これは新聞に全部報道された。あるいは、韓国に帰られたペ大使というのですか、彼も語られておることでありますから、これは外務省、あるいは政府国会に言わぬだけの話で、国民の間には報道機関を通じて知らされているということでありますが、なお国会には明らかにされようとしないのか、大蔵省の所見、あるいは金額なり——日本で計算をすればどうなるのか、こういう点をお示しをいただきたい。
  123. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) マスコミにやられております金額は、マスコミ側の推測でございます。したがって、それを私どもは否定するとか肯定するとかいうようなことになりますると、金額を公表したことになりますので、それは差し控えておるまででございます。
  124. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それじゃ、新聞に報道せられる、あるいは韓国で新聞記者に語られたペ大使のお言葉等を否定なさるのですか、そうではないのでしょう。それから、お尋ねしておったのは、大蔵大臣に、その数字を大蔵省から見られて日本円に換算すると幾らになるかという点をお尋ね申し上げたんでございます。あとでいいです。
  125. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 政府は、いかなる形におきましても、発表いたした覚えはないのであります。
  126. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 第一問については、外務大臣がただいま申されたとおりであります。  それから第二の、大蔵省でかつて試算をした数字という点についてでありますが、これは参議院の選挙前に外務省、大蔵事務当局等で試算した数字があるようでありますが、私はそれを承知をいたしておりません。
  127. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それでは、新聞に報ぜられておる三億ドルあるいは六億ドルという数字について、外務大臣否定もしない、こういうことですか。
  128. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 全く日本の新聞は自由でございまして、私どもがその報道される実態につきまして干渉する余地はないわけであります。私どもは否定もしないし、肯定もしない、全然発表していないということを先ほど申し上げたとおりでございます。
  129. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 発表してないといっても、おそらく新聞の記事は、外務省その他から漏れたと言ってはあれですが、大綱について、あるいは趨勢について語られたものが報道せられておる。食い違いがあるというなら別でありますけれども、全部一致をしておるのであります。しかも、新聞を通じて国民にはある程度知らされた。しかし、国会には言えぬ。これは私は国会あるいは国会を通じて国民に対しての侮辱であると思うのです。韓国側なら韓国側が、あるいは飛行場で語られ、あるいは報告がなされた。そしてこれに対する対案が立てられた。こういう段階で、発表をしたら云々ということで、それだけで済むものではなかろうと私は思うのですが、そこで、新聞に報ぜられておるところは否定はなさらない、こういう念を押しているわけですが、どうですか。
  130. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 御承知のように、今予備折衝が始まったばかりでございますので、私どもは、今の段階におきまして内容を発表するということはいたさないほうがいいという判断に立ちまして、御発表申し上げていないわけでございます。これは決して国会を軽視するとかいうようなことではなくて、国会を尊重するがゆえに、私どもは今の始まったばかりの状態において軽率に申し上げるというような非礼は避けたいと考えております。
  131. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、三億ドル、六億ドルと、これはドルで計算をされている。しかし、日本で計算をする場合には、これは日本国民の税金を支出することでありますから、円に換算されることだろうと思うのですが、それは一ドル三百六十円で換算をし、三億ドルと言われるときには千八十億、あるいは六億ドルと言われるのは二千百六十億、こういう計算をしていいのかどうか、その点だけ聞いておきたい。
  132. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 対韓問題につきましては、ただいま外務大臣が申し述べられたとおりでございます。今発表する段階でもありませんし、外交のもちろん特殊性考えまして、私はこの交渉に対しては外務大臣に一任をいたしておりますから、私としては申し述べることは何にもございませんということを先ほどから申し上げておるわけであります。  なお、一二億ドルを日本の金に換算して幾ら、六億ドルは幾らかということでありますが、これは朝鮮問題とは全然関係なく言えば、今あなたが言われたとおり三百六十円かければ出る数字でありまして、これとは日韓問題は全然関係なく、あなたが今言われたとおりであります。
  133. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それでは、三億ドルは千八十億、あるいは六億ドルは二千百六十億という点は、これは認められたわけですね。
  134. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) それは今御発言のありましたとおり、日本円の為替換算率でございますから、そのとおりでありますが、日韓交渉とは何ら関係がなく御質問でありますし、私もその意味で答弁を申し上げたのです。
  135. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 向こうは発表しておるのに、こっちは発表しない、国会を通じて明らかにしないという点は、けしからぬ態度だと思うのですが、経過から見て、三億ドル云々という点は否定はなさらなかったようであります。  その内訳ですが、金額はとにかくとしまして、長期低利借款あるいは経済協力といわれるものと対日請求権を含む無償供与と、こう二つに分かれておるという点は、これは提案の中の説明として、これはできますか。
  136. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 請求権問題に対する接近でございますが、合法的な根拠、合理的な根拠を探求をいたしまして積み重ねてやって参るということは、先ほど杉原委員も指摘されましたように、実定法上の条件を十分備えられるかどうかという困難もございまして、私どもといたしましては、もう少し工夫がないものかどうかということについて、考え方を提示して、先方に考慮を求めておる段階でございまして、どういう内容か、どういう金額かということにつきましては、ここで言明を差し控えさしていただきたいと思います。
  137. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 金額の発表は差し控えさしていただきたいというさっきからの御発言ですが、その中身について、短期請求権を含む無償供与と長期低利借款と合わせて提示をされた総額幾らという提示ですね、その中身は半々だという報道もございますが、二項目を合わせて総額を私どもは新聞紙上その他を通じて三億ドルというものを聞くわけであります。二つに分け、二つを含んで総額を示された、こう理解してよろしいですか。
  138. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 金額と内容につきましては、まだ交渉が始まったばかりでございますので、たいへんしつこいようですけれども、差し控えさしていただきたいと思います。
  139. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 私も繰り返してあれですけれども、新聞紙を通じては経過がある程度報告をされる、あるいは向こう側では発表があるのに、日本国会では交渉中だからということで言えない。これは私は国会を通じて国民意思を問う——最終的には税金から幾ら出さなければならぬという点をきめるわけですから、政府の態度としては私はけしからぬと思うのです。  繰り返しても同じことですから、次に進みますが、この三億ドルだとか、あるいはこれに考慮を加えるかどうかといわれておるものの性格について伺いたい。いわゆる請求権について池田首相は、合法的なもの、あるいは根拠あるものに限ると今まで言ってこられました。そうして法律的根拠あるもの、あるいは合理的な根拠あるものとして、大蔵省では最初三千万ドル、これは百八億になるようでありますが、と計算をされました。あるいはその後五千万ドル、百八十億円、それが最近では七千万ドル、二百五十二億円と、だんだんと上がってきたと聞いている。いわばこれは差額が二千万ドルずつですが、バナナのたたき売りみたいな、一たたき七十二億円国民から出さねばならぬかという、その差が七十二億もついているわけであります。ところが、経緯をここに繰り返しませんけれども、在韓日本国民財産の請求権があったということを考慮するということで、この請求権について、合法的な根拠あるものに限るという強い原則あるいは積算方式がだんだんくずれてきつつあるのではないか。そうして、今度は商い次元で解決したいという高次元論が出てきたようでありますが、そうすると、今までの法律的根拠あるものあるいはそれを積算をする、こういう方法は、これはくずされたのか、伺いたい。どんぶり勘定になったのか、あるいは法律的、合理的な根拠あるものに限ると、今まで首相あるいは外務大臣その他から繰り返して言われたことでありましたが、その議論はくずれたのかどうか、伺いたい。
  140. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 請求権問題に対する接近のし方といたしましては、合理的な根拠あるいは法律的な根拠のあるものに限るという原則はくずしてございません。ただ、問題は、日韓の間に国交を正常化する、できるだけすみやかにもろもろの懸案を解決いたしまして正常化に持ち込みたいというのが、私どもの交渉の基本の目的でございまして、その目的を達する場合に、合法的、合理的根拠のある請求権に限るという接近の仕方で長後まで有効な結果が得られるかどうかということにつきまして、若干疑問を持ちますので、先ほど申しましたように、ここで若干の政治的工夫をこらす余地はないかという考え方で先方の考慮を求めているという実情でございます。
  141. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それでは、この法律的根拠があるもの、いわば積算方式のみに固執をしているのじゃなくて、その結果プラス・アルファということで考えている、いわば高次元論といいますか、高い次元で云々という点は、この積算方式、合理的、合法的な根拠のあるもののみではない、しかしそれははっきり数字は持っている、それにプラスをする、そのプラスの政治的な考慮云々という点が馬次元論といわれるんですか、その辺をはっきりしておいていただきたい。
  142. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) そうではございませんで、請求権に固執した考え方でやれる限りにおきましては、合法的、法律的根拠のあるものに限るという態度はくずしておりません。しかし、請求権という問題はあるいは主張しないとか、あるいは請求権問題は解決したという前提に立って工夫をこらす余地がないかというのが、いわゆる私どもが考えている政治的工一夫の問題でございます。請求権問題プラス・アルファというような考え方はございません。
  143. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 固執をせず、あるいはプラス・アルファということでなければ、請求権とは関係なしに、今のお言葉の中にありましたけれども、請求権は解決したということで、全然別の角度から、あなたの高い次元というのは、別の角度から考える。理由はないけれども、理由はあとで聞きますが、何かあるのかもしれませんが、理由はとにかくとして、国交を早く回復したいから、あるいは援助をしたいから、そこで請求権問題に固執をしないで、別の理由で解決をしたい、こういう態度ですか。
  144. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先方におきまして請求権は主張しないというような考え方になっていただけますならば、私ども政治的な工夫を加えることができるだろうということで、私どもの考え方を先方に提示して、考慮を求めておるという実情でございます。
  145. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それでは、はっきり請求権問題ではなくなった、請求権についての先方のあれを固執しないならば考えようということで、これは従来の請求権の内容は、各項目ごとに事務当局で検討したものを積み上げていかなければならぬ、あるいは合法的なもの、あるいは合理的なものに限るという線がくずれているようですが、池田総理、いかがですか。その点は池田総理も今まで言明されてきた大きな原則はくずして日韓交渉をすると、こういうことですか。
  146. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 請求権問題は、先ほど杉原委員の言われたように、何も民法上の権利というふうなものが初めからきまっているものではないのでございます。向こうの要求でございまして、その要求に対してこちらも考え方があります。で、プラス、アルファといわれるかもわかりませんが、向こうでは、マイナス・アルファと言っているかもわかりません。そこで、法律的根拠があり、そしてお互いが納得し得るものであるということは、私も特に朴議長との会談で一応きめておるのでありまするが、法律的根拠とは何ぞや、そしてもし法律的根拠があったときに具体的の数字を出すように事実関係の確認ができるかということになりますと、なかなかできない。できなければ、できなくてもほうっておけばいいじゃないかという議論もありましょう。しかし、それは日本の置かれる立場、すなわち善隣友好の関係、アジアの平和のためという点から考えて、そういう数字にばかりとらわれておることがどうかという問題が新たに出てくるわけでございます。  で、私はあるところで聞いてみますと、前とは非常に変わったと、前の外務大臣と今の大平大臣は非常に変わったと、こう言われるけれども、それは交渉内容をお知りにならぬから、そういう議論があると思います。お互いに誠意をもってまとめていこうという場合において、もともとの法律的根拠とか具体的事実の上に認証という問題はありまするが、それをやる上におきまして、何もそういう理屈ばかりにとらわれずに、お互いに納得のいく方法はないものかと、お互いの要求に対してそういうところを考えて、高い次元という言葉が適当かどうかわかりませんが、交渉の経過から申しますると、だいぶ両方とも誠意が認められつつありまして、そうして交渉が私は進展しておると、変化というんじゃなしに、進展しておると、こうこれはお考え願うべきだと思のです。もちろん、いいかげんの数、字でどうこうというわけじゃございません。やはり法律的の問題も考えましょう。そしてこれを裏づけする具体的の事実の認証も検討してみなければなりません。しかし、それにしましても、長いことたっておる間でございまするから、事実の認証がだめだと、証拠が不十分だという場合に、これをゼロにするか、あるいはどうするかという問題があるときに、やはりそこは良識で考えるべき筋合いのものだと思います。したがいまして、理論的な根拠並びに両方の誠意から、そうして交渉を両国民の納得のいくような方法でまとめていこうとして今交渉いたしておるのであります。変化でも何でもございません。だんだん交渉が進展していくということになっておると私は考えるのであります。
  147. 羽生三七

    羽生三七君 関連。私は金額とか、法的根拠、すべてそういう質問は避けます。ただ一点だけ、今善隣友好とかアジアの平和という、いわゆる高い次元に立ってというお話でありましたが、交渉が進んでいって、日本としてはこれが一つ日本が譲り得る最高限といいますか、限度という壁はあるのでありますか。そういうものなしに、高い次元でどこまでも金額も高くなっていくと、こういうことなのか、一つの壁、これが譲り得る限度というものは存在しておるかどうか、これを伺いたい。
  148. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 交渉の途中でございまして、限度がないとか、高くこれからなるとかいうことにつきましての意見は差し控えます。
  149. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 その、進展をしておる、変化じゃないと、こう言われますけれども、しかし池田総理は、国民の納得のいく数字、こういうことを言われておる。それはちゃんと説明のつく理由がなければなりません。その説明のつく理由が、合理的な、あるいは法律的な根拠のあるもの、こういうことが従来いわれてきた。で、あるいはその法律的な根拠、あるいは合理的な根拠といっても、なかなか事実が認定できない、あるいは合意できないと、こう言われますけれども、出ているものはこれは私どもが拝見をしても、具体的なもの、その具体的なものについての検討をやめて別の次元で考える、一つ一つの事実についてこれを合意に達せぬから全然別のもので云々というときには、これは次元も変わっておりますが、理由も変わっておる。じゃあ、何ですか、別のあるものは。何もなしに、ただこの合意に達するために次元を変える、あるいは理由を変える、こういったって、それで国民が納得できると考えられますか。おそらく理由のない金を出したら、国会国民も承知をしないでしょう。それは変化じゃなくて進展と言われますけれども、はっきり説明の理由は、これは変わっている。  その次元と言われる理由について伺いたいのですけれども、その理由は戦争の償いなんですか、あるいは植民地支配の償いなのか。これについて従来池田・朴会談では、日本に対する報復的な、あるいは賠償的な性質のものから出ているのではないと、こう言ったと報ぜられている。積算方式あるいは合法的根拠のあるもの以上の高い次元のものというならば、それは、国民説明のつかない、いわば高い理由だ、こういうことになろうと思うのですが、いわれております金額も、先ほど申し上げましたように、三億ドルといえば千八十億、あるいはそれを譲歩して四億ドルに近い云々という意向等も漏れているようでありますが、そうすると、四億とすれば千四百四十億、これは当面しているこの高度成長政策のひずみによって困っている国民に、あるいは生活保護費であるとか、あるいは失対費であるとか、あるいは高校全入の費用であるとか、そういうものを償って余りある金額です。あるいは減税は来年はできないとしきりに言っておられますけれども、一千億をこす金は一千億減税を可能にする金額です。その二千億をこす金を、理由のない、このいわば高い理由と言われますけれども、説明のつかぬ理由で出すということについては、国会国民は断じて承知するわけには参りません。高次元と言われるのは何なのか、アメリカの要請というのか、あるいは反共陣営のてこ入れというのか、あるいは独立のお祝いに御祝儀を差し上げるという、理由は立たぬけれども御祝儀相場なのか、承りたい。
  150. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど申し上げましたように、日韓の間は現在のような不自然かつ不安定な状態であることは好ましくないわけでございまして、なるべく早い機会に国交の正常化をしたいというのが私どもの願いでございました。それを達成する手段といたしまして、諸懸案の討議が今彼我の間で行なわれておるような状態でございます。もとよりこの交渉は、根本におきまして古田委員が御指摘されますように、国民が納得をする、納得をいただけるものでなければならぬということは、衝に当たっておる私どもの昼夜念頭を離れない最高の要請であると承知をいたしておるわけでございます。そういう御納得がいただけるということを基準にいたしまして、せっかく苦労をいたしておる次第でございます。
  151. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 今まで総理としても、いろいろ発言をしてこられた。あるいは池田・ケネディ会談あるいは池田・ラスク会談等でも、池田総理が行って言われたというものが報ぜられておるのです。その中には、日韓問題解決であれ国交正常化のために努力したいという点もありますが、大国主命以来の日本と韓国との関係、朝鮮との関係、日本の死命を制する南朝鮮の反共体制に重大な関心を払い云々という発言等もあるようでありますが、今の外務大臣の正常化したいから、国民の納得のいく数字云々と言われても、高い次元ということで、ただそれだけでは説明がつきません。そのほかに理由を私はあげてお尋ねをしたわけでございますが、総理から所信をお伺いいたします。
  152. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は以前から、内閣首班になる以前から、朝鮮問題を早期解決をはからなければならないという考え方を持っておるものであります。それは歴史的に、地理的に、民族的に申しまして、日本と韓国とは最も緊密であるべき立場にあるのであります。それが戦後正常化されていないことは、日本としては非常に不幸なことであり、また韓国としても同様に不幸なことでございます。私は外交政策の基本として一日も早く正常化したいという強い念願を持っておる次第であります。その念願で今交渉をしておるわけでございます。
  153. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 国文を正常化したいというのは、それは気持です。しかし国民の納得のいく数字云々という点は合法的な根拠あるもの、そういうものを抜けて別にあるはずがない。高い次元と言われるけれども、今の総理なりあるいは外務大臣の説明では、そのほかに理由はないじゃないですか。何があるのです、答弁になっておりません。
  154. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 交渉が始まったばかりでございますので、詳しく内容を申し上げるわけには参りませんが、私どもは吉田委員が御指摘されたとおり、国民の納得がいただけるようなやり方で取り進めたいということで進んでおるわけでございます。いずれ話がある段階に参りまして、納得がいくように私どもも説明しなければならぬと思っておりますが、交渉が始まったばかりでございますので、ただいまのところは申し上げる段階でございませんので、差し控えさしていただきたいと思います。
  155. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 韓国との間に国交を回復したい、だから問題を解決をして国交回復をはかろうということでこの請求権問題が起こってきた。ところが、その請求権問題について合法的な根拠のあるもの云々ということを検討しておったけれども、その理由は捨てた。そうするとあと何が残るか。池田・ケネディ会議等で言われておったような韓国の情勢については重大な関心を持ち、現況でいろいろ欠陥はあるけれども、反共体制を強化しなければならぬから、こういうことでかかる費用はどれだけであっても、あるいは韓国の了解を得るためにはどれだけ金が、事由がつこうがつくまいがお金を出して、とにかく納得させ、国交正常化をはかる、こういう以外にないじゃありませんか。あとのあるいは李ラインの問題、あるいは領土問題等々についても、これはどうなってもかまわぬ、あるいはそれをたな上げしても共同宣言方式でいこうということですか。そういうことでは、これは韓国の政権があるいは限定をされておる、あるいは非民主的で、軍事クーデターを通じてたくさんの人たちを、民主的な人たちも、あるいは新聞社の社長等も、言論、新聞等を弾圧しながら今日まできておる。国会、選挙によってできた政権でもないじゃないか。あるいはそれと国交回復することは、朝鮮の統一を妨げるのではないか。国連の統一と繁栄の委員会の存立を無視して国交正常化を進めようとするのか。それは朝鮮の統一とアジアの平和に寄与する道ではないじゃないかという非難がある。これに対して十分の説明ができますか。できないじゃないですか。
  156. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) たびたび申しますように、国交正常化をはかるということが目的でございまして、そのためにどういう手段で解決して参るかということで諸懸案の討議に入っておるわけでございます。私どもが申し上げられることは、先ほど申しましたように、この国交正常化をはかる手段として私ども考えますことも、国民の御納得がいくようなものでなければならぬと思っております。同時にまた、請求権問題、ほかの諸懸案をたな上げして請求権の問題を片づけようというようなことではなくて、一括して諸懸案を解決いたしまして、国交の正常化に持ち込みたいと、しかもそれは今言われたような国民の納得のいくような方法、手段によってやりたいと、せっかく努力いたしておる次第でございます。
  157. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 時間もございませんから、論戦はこの程度に差し控えたいと思うのですが、とにかく合理的あるいは合法的根拠というものをなくして、理由はわからぬけれども、高い云々ということでは、これは国会国民を納得させるわけには参らぬということだけ申し上げておきたいのですが、韓国に対する日本人の請求権はどうなっておるか。戦時国際法でも没収をするということはできないのですが、これの経過、取り扱いについて、それについて国民に対してはそれでは戦時国際公法で没収せられない財産権に対する補償は、どういう処置をせられるのか、伺いたいと思います。
  158. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 在韓の日本財産は、在韓米国政府の帰属命令によりまして、米軍政府がみずからの所属に帰せしめまして、その後米韓協定によりましてこれを韓国に移譲いたしました。わが国は平和条約の第四条(b)項の規定によりまして、在韓米軍政府の在韓日本財産に対する譲渡処分につきましては、異議を申し立てないことになっております、したがいまして、これによって生ずる財産その他の損害はあくまで米国政府の措置により基因するものでございまして、日本政府の処分に基因したものではございませんので、政府といたしましては、この際その補償の責任に任すものではないと考えております。政府はしかしながら在外財産の補償については、以上のように考えておりますけれども、現実には多数の者が、同胞が生活の根拠とする外地からほとんど無一物で引き上げられたという実情にかんがみまして、引揚者給付金その他の援護措置を講じて参っておる次第でございます。
  159. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 中川条約局長と法制局長にお尋ねをいたしますが、三十二年十二月三十一日付日本国外務大臣と大韓民国代表部代表の合意議事録というのは、これは性格はやはり条約じゃありませんか。今、外務大臣は米国の措置によって云々と、日本の措置云々ということではございませんが、合意議事録の中に盛られている内容によって国民の権利、財産権が処分された、これを認めた、これが根拠だと思うのでありますが、条約局長にお伺いいたします。
  160. 中川融

    政府委員(中川融君) ただいま御指摘になりました昭和三十二年十二月三十一日付の日韓間の合意議事録で、日韓双方ともいわゆる米国解釈に異存がないということを確認しておるわけでございます。しかしながら、この日本側の考え方、解釈というものは、昭和三十二年に初めてとったのではないのでございまして、これは結局そういう解釈が一番適当である、それが正当な解釈であるということを、いわばはっきりしたというだけのことでありまして、平和条約そのものの解釈であります。したがいまして、平和条約第四条(b)項のいわゆる米軍司令官のとった措置というものは、やはりそういう意味に解釈すべきあるというのが、そのときはっきり表に出しただけでございます。したがってその効果というものは、平和条約とともに起きているのでございます。したがって、先ほど外務大臣の申されたとおり、ほかの、たとえば平和条約第十四条に基づきます一般在外財産と同じく在韓日本財産は占領軍の手によってあるいは連合軍の手によって処分されている、日本は今受け身の立場にあるということでございます。したがって、先ほどの憲法解釈あるいは国内法上の解釈ということがそこから出てくるわけでございます。  なお、藤山外務大臣と金韓国大使との間に結ばれております合意議事録が何であるか、条約であるかどうかということでありますが、われわれは解釈を確定したというだけのことでございまして、われわれは決して新しい要するに法律的効果をそこから生じたものではないという考えでございます。したがって、これはいわゆる憲法七十三条にいう条約ではない、政府間の、要するに方針を共同して宣明したものである、かように考えております。
  161. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 さっき、法制局長官の答弁を求めましたが……。
  162. 林修三

    政府委員(林修三君) 三十二年の十二月三十一日の合意議事録、この性格については条約局長のお答えしたとおりでございまして、これは新しい条約と解釈すべきではないのでございます。やはり平和条約第四条(b)項の解釈をお互いが、日韓両国はアメリカの解釈でやっていこうという方針をお互いにきめた、そういうものにすぎない、かように考えております。
  163. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 外務省にお尋ねをいたしますが、朝鮮にあった日本人の財産、今、いわゆる請求権といわれておりますけれども、この総額等については調査ができておりますか、あったらお示しを願いたいと思います。
  164. 中川融

    政府委員(中川融君) 先ほど杉原委員の御質問に対してもお答えいたしましたが、正確な数字が実はまだ日本政府として持っていないのでございまして、できるだけこの数字を、はっきりしたものを得たいと鋭意努力しておるところでございます。
  165. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 これは衆議院その他で要求がされておるにかかわらずなかなか出されない。平和条約締結の際に、外務省なり大蔵省で集められた形跡は十分あり、書類の一部の写し等も私ども入手しておるわけでありますが、これは早急に出されることを要求をいたします。  それから懸案をいわばたな上げをして国交正常化のための共同宣言方式が考えられておるということですが、そうなのかどうか。本会議の質問に答えて、諸懸案を一緒に解決すると、こういう希望だけは述べられました。いわゆる李ライン問題、漁業問題、それから竹島問題等について、竹島問題については国際司法裁判所に提訴をし、その応訴を条件にして云々という話ですが、国際司法裁判所に提訴をするということは紛争を認めるということになるのですが、これに応訴をするということが保証できるかどうか。それから司法裁判所にかけて何年もかかりますが、その結果にいっても、これを強制執行をする方法はない、応訴するということそれ自身も問題があるが、竹島問題それ自身を解決する見通しが応訴だけでもないように思います。同時解決ということにならぬのではないか。どういう方針か承りたい。  それからもう一つ。李ライン問題については、伝えられるところによると、軍事的なラインとしてはこれを容認をし、そして日韓共同事業をする。あるいは漁業施設を供与する、こういうことを含んで漁業協定を結びたい、こういうお話です。ところが、ラインは公海上に引かれたラインで、不当なことはこれは国際的にも何人にもはっきり主張し縛るところでありますが、それを認めて云々という点は、私ども国民として了承することはできませんが、このラインの問題を同時に解決をすると言われるその方向一つ承りたい。  それから不当なラインに従って漁船が拿捕をされ。あるいは一部艦艇に変装をされて使われたりいたしております。これらの点についての補償問題をどうするか、あわせて承りたい。
  166. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 諸懸案をたな上げにしておきまして国交の正常化を急ぐというようなことは、国民の納得いただける趣旨ではないと思います。私どもは、あくまでも諸懸案を解決した上で正常化をやりたいと思っております。  それから竹島問題につきましては、たびたび当方から国際司法裁判所のほうに持ち込もうじゃないかということを先方に申し入れておりますことは事実でございます。ただいまのところ、先方がまだそれを受諾していないというのも事実でございますが、この点につきましては、先方が応訴していただけるように鋭意努力いたしたいと思います。  それから漁業問題につきましては、李ラインというものを政府は公にも私的にもこれを認めたことはございません。政府として認めたことはございません。で、最初、李ラインというものを前提にして云々ということは、交渉の初期においてあったかのようでございますが、先方におきましても、これはやはり漁業協定というものを前提にして、資源論を中心にいたしまして日韓双方の漁業の共栄をはかっていこうというような趣旨に基づいて、今、煮詰みつつあるようでございます。したがってこの漁業協定におきまして、今までの懸案をフェアに解決するという方向で進みたいと考えております。
  167. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 同時解決にならぬではないかということを申し上げたんでありますが、時間がございませんから、あと石炭問題と、それから非鉄金属の問題について伺います。  その前に、総理に最終的なあれを承りたいのですが、日韓交渉の問題について、これは私は、日韓交渉は池田内閣の最後のいわば課題になっているようでありますけれども、国民の関心、あるいはアジアの平和から考えてみても、反共政権を支援するということが、従来の経緯からいって、あるいは岸内閣時代の実績から考えてみても、大きなこれは池田内閣の試練の問題、あるははかつてのベトナム賠償に対する世論の動向、あるいは安保を強行された岸内閣の運命の問題とも私は関連をする重大な問題だと思うわけですが、最近アメリカから帰りました毎日新聞の外報部長の論文を見ても、あるいはロストー報告等を見ても、あるいは閣内にあります有力な意見等を見ても、私は重大な問題であるし、あるいは慎重に考えられなければならぬ問題だと考えますが、池田内閣としてどういう工合に考えられておるか承りたい。
  168. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど来お答えしたとおりでございまして、蛇足になるかもしれませんが、私は日韓国交正常化は一日も早くやることが、両国民の幸福であるという考えに変わりございません。
  169. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 最後に、石炭問題と、それから非鉄金属の問題に関連してお尋ねをいたしたいのですが、四月六日、閣議決定をもって生活と雇用安定のために政府としては、石炭政策、あるいは総合エネルギー対策に取り組む、そうして調査団の結論が出るまでは調査を依頼をし、調査団の結論が出るまでは閉山あるいは第二会社への移行、あるいは首切り等を出さないという、こういう言明をされた。いわばあの当時炭労なり、炭鉱労働者の大きな決意と、それからゼネストをかけての要求に対して政府は約束された。ところが、その後、実際にはこの調査の進行と並行して、いな調査方向も最近あるいは土屋氏の朝日ジャーナルの論文その他を通じて、一千万トンのスクラップ化、あるいは九万人の失業者を出さなければならぬかもしらぬ、こういう冷厳な報告等が出されつつある。政府の約束が守られないのではないか、こういう実態にあります。どんどん山がつぶされ、あるいは失業者が出ているのでありますが、この実態に対してたまりかねた山元の労働者は、さらに上京をしてあるいは調査団や政府に陳情、抗議をしようといたしておりますが、政府の所見を承りたい。  それから合わせて承りたいのですが、石炭政策の中で論議されておりますものの中から、当面除かれております児童の給食問題、これについてはあるいは同僚議員が文教委員会その他で取り上げてくれたり、あるいは衆議院でも問題になったりいたしましたけれども、実際には弁当を持っていけない。そのために欠席をしておる。あるいは給食ができないものだから、学校に行っても弁当の時間をあるいは運動場で遊びながら、あるいは別な雑誌を広げながら隠れて昼食の時間を過ごすというような事態、あるいは長期欠席する長欠児童等の実態も見ておりますが、これに対して政府として、あるいは文部省、自治省として、どういう対策を立てようとされるか承りたい。  それから金属鉱山問題については、これは商工委員会でも、自由化を前にして壊滅的な打撃を与える産業については自由化を延期すべきではないかという質問に対して、通産大臣は、そういう産業については、対策は立てるけれども、間に合わないもの、あるいは格別な影響があるものについて延期をする、こういうお話がありました。関税等では問題にならぬということで、衆議院の決議等に勘案をして対策が立てられつつありますが、もう一度通常国会前に臨時国会が持たれるかどうかわからない現状において政府方針を明らかにしていただきたい。石炭、非鉄金属に関連をして政府全体の方針を明らかにされることを要望いたします。
  170. 福田一

    国務大臣(福田一君) お答えをいたします。  石炭問題につきましては、お説のとおり四月六日の閣議決定に基づきまして、ただいま公正なる調査員をお選びをいたしまして、そうして石炭事業のあり方についていかがすべきかということについて調査をしていただいておりますので、石炭問題全体をどうして  いくかということについては、この調査団の結果を待って措置をいたして参りたいということは、しばしば申し上げておるところでございますが、しからばその閣議の決定の内容に反して、休山あるいは閉山をさせるような措置をして、あるいはその趣旨に相反するようなことが起こっておるのじゃないかというお話しのように承るのであります。この点につきましては、閣議の決定にあたりましても、石炭合理化臨時措置法の法律のやり方によって、いわゆる労使双方が一緒になって、それでもよろしい、休、閉山してもよろしいということになった場合には、これはやってもいいのだということになっておりますので、過般の閣議におきましても相当申し入れがあったのでありますが、そのうちで二百万トンばかりは、これはそういう措置にしよう、こういうことにきめたわけでございまして、閣議の趣旨を離れてこの措置をやったというわけではないのでありまして、この点は御了承を賜わりたいと存ずるのであります。なお、そのほかにも申し込みがありましたけれども、しかし相当やはりその法律に基づいて当然やってもいいものもありましたけれども、これはいろいろ影響するところが大きいというようなものにつきましては、実は通産省といたしましてはこれを差し控えておるようなことでございまして、十分いわゆる閣議の趣旨を尊重してやらしていただいておるわけでございます。  なお、非鉄金属の問題につきましての御質問でございますが、私が申し上げておりますことは、従来、十月一日から自由化をしたい、こういうことできめておる品目が十数品目あるのでありますが、そういう品目一つ一つにつきまして、どのような影響が現われるであろうか、今までとった関税措置だけで十分であるかどうか。十分でなかったならば、どういうふうな措置をしたらいいかというような問題も含めて、個別的にただいま検討をいたしておる段階でございまして、そうしてその決定はすべての品目と合わせまして九月の中ごろに大体決定をすることになっております。したがってただいま検討中でございますので、これに対して、どの品目はどうするということを、ここでお答え申し上げるわけにはいかないわけでございます。  なおまた、銅、鉛、亜鉛等につきましては、これは来年の三月末までに自由化するという決定になっておりますが、これも合わせてただいま申し上げたような趣旨に基づきまして、十分研究をいたしまして、そうして万遺漏なき措置をとりたい、かように考えておりますので、ひとつ御理解を賜わりたいと存じます。
  171. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。学校におきます児童生徒の給食に関連しまして、特に石炭産業不況を反映しまして、御指摘のような現象が一部現われておることは承知いたしております。まことに残念であり、気の毒に思っております。ところで、準要保護児童は全児童数の五%を対象人員と一般にはいたしておりますが、石炭産業不況に伴いまする御指摘のような事態に備えまして、今福岡県に対しましては一八・一%くらい対象児童数を多く見て、それに対しまする二分の一の国庫補助をいたしております。町村負担分につきましては、御案内のとおり交付税でもって積算されておるわけでございますが、そのほかに特に炭鉱不況の度合いがひどいところには、特別交付税も出されておるわけであります。したがって資金、面におきましては石炭産業不況とはいいながら、一応補助金二分の一、それに対する町村負担、残りの二分の一の財源措置はできているわけでありますが、どういうわけか、一部の町村におきましては一八・一%の準要保護児童に対する補助金の一部を返還してくるという現象が起こっております。それがどういう、原因によりますのか、的確にはまだ把握できませんけれども、理論的には町村が熱意を持ちます限り、資金手当も一応できているわけでありますが、他の何らかの理由によって負担し切れないということであるのかどうか、もっとその点を突っ込んで調査いたしまして、もし必要とするならば、石炭産業の、不況という宿命的な苦しい立場にありまする地域に対しまして二分の一の国庫補助率をもっとふやすかどうか、さようなことも検討してみたいと思っておるところであります。
  172. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 古田君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  173. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に、小平芳平君。
  174. 小平芳平

    ○小平芳平君 最初に公職選挙法について御質問したいわけであります。先国会の幕切れのどたんばのあっという間に、公職選挙法の改正案が成立したわけであります。このときにはこの改正が骨抜きであるとか、そのやり方が慎重審議を尽くす建前であるにもかかわらず、あまりにも強行に通し過ぎたとか、いろいろ批判があったわけであります。それから参議院選挙を体験して、今回の参議院選挙の結果にもまた空前の違反が出た、このように批判されているわけであります。池田内閣総理大臣はこの際公職選挙法を再検討して、改正すべき点は改正し、また選挙制度審議会がただ、いまは任期切れになっているようでありますが、選挙制度審議会を発足させる予定あるいはどのような内容を諮問なさるおつもりか、お聞きしたい。
  175. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 選挙が適正に行なわれますことは、民主主義の基本をなすものでございます。したがいまして、選挙制度の改正につきましては、常に考えなければなりません。しかも先般の答申のありました選挙制度審議会は、お話しのとおり任期がもう切れました。全部辞任された状態になっているのであります。しこうして、今後公職選挙法並びに関係のいろいろな点につきましては、今後やはり選挙制度審議会の発足をみまして検討を続けていきたいと考えております。しからばいつ新たな委員を任命するかという問題、今検討中でございまして、できるだけ早い機会に任命いたしたいと考えております。
  176. 小平芳平

    ○小平芳平君 いつとあまり確定的なことは言えないかもしれませんが、およその見当はいつごろかということと、もう一つ、諮問する場合に、すでに昨年十二月に答申のあった部分が相当部分あるわけでありますが、その部分についてもさらに検討をお願いするようなおつもりかどうか、お聞きしたい。
  177. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 選挙制度の審議会の委員が、ただいま総理が述べられましたように、任期満了でございます。できるだけ早くその任命をいたしまして、選挙制度審議会を再開していただきたいと思っておりましたが、ちょうど夏休みに入りまして、委員に従来なっておられた方あるいは委員に委嘱したい方々が、ほとんど旅行あるいは避暑においでになっておりまして、なかなか連絡がつきにくいという関係と、国会がちょうど臨時国会が開かれておるというような関係で、九月になりましたならばさっそく選考を開始しまして、委員になられる方々とも交渉いたしまして、審議会が発足できれば直ちに審議に入っていただく、こういうことに考えております。  いま一つ、この前の改正された部面も検討する意思があるかどうか、こういう問題につきましては、今後開かれる審議会においては、大体この前の改正された以外の点を審議していただくことになるのでありますけれども、しかしその間に参議院の選挙がございましたので、特にその間において問題になるというようなことがあれば、審議会として再検討されるであろうと考えております。
  178. 小平芳平

    ○小平芳平君 総理大臣は、本会議の御答弁の中で、今回の経過にかんがみまして、選挙法につきましても十分今まで改正した以外の問題とかね合わせまして検討を続けていきたいと考えておりますと、このように御答弁なさっておられますから、ただいまのお答えは、要するに、今回改正になった分もあらためて検討していただくというお考えと了解してよろしいですか。
  179. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 選挙法の改正は、御承知のとおり、全般的に、こういう事項ああいう事項というので諮問していなかったと思うのです。全部について御審議を願いたい。しかも政治資金規正法あるいは政党法につきましても私はやってもらうぐらいのつもりでおったのであります。ただ、自治大臣の申すごとく、参議院の選挙が間近に迫っておりますので、とりあえずああいうふうなことになったのでございます。定員改正の問題は中間報告でございましたが、今後はその他の問題につきまして重点的に御審議なさることと思いまするが、しかし、選挙制度は全体として考えなければならぬものでございますので、さき国会で通過したものは、もう今後は一切触れないのだというわけにはもちろんいかぬと思います。したがいまして、私は全体としてお考え願いたいというふうに考えておるのであります。
  180. 小平芳平

    ○小平芳平君 現在の選挙法は、ポスターは何枚刷るとか、ちょうちんは幾つとか、その大きさは縦何センチ、横何センチというような、まことにこまかい制限規定や処罰規定が多いわけでありますが、将来選挙法全体を検討していく場合に、選挙法はそうした取り締まりや制限をおもにした選挙法でなしに、もっと民三主義を大きく育て上げていくとか、公明選挙を確立していくとか、そういうような方向に行くべきだと思いますが、いかがですか。
  181. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 選挙はあくまでも、する者もされる者も気持よく、またできれば愉快に公民権の行使をやるということが建前であります。したがいまして、ただいま御指摘のポスターの寸法がたとえ三分長かったから、短かかったからといって、警察で問題にされたり、あるいはまた言論の抑制をするというような問題につきましては、できるだけ御研究願いまして緩和していく、こういう考えでございます。しかしながら、いろいろな違反も跡を断たないことでございますから、現在の状況から見まして、全然自由な選挙をやるという段階にはまだ達してない。悪質なものについては厳重に取り締まって、そして言論の自由、あるいはまた単なる形式的なものについては、これをできるだけ自由にしていきたい。こういう考えでございます。
  182. 小平芳平

    ○小平芳平君 先ほどちょっと触れられました政治資金の問題ですが、現在のわが国の法律の建前では、ずいぶんとお金がかかるような建前になっていて、しかも選挙あるいは政治にお金が動いたからといって、すべてそれが非合法ともいえない。合法的に、しかもお金がかかるような制度になっているともいえるのではないかと考えます。そういう面を規制する意味で、現在の政治資金の規正ではまだ規制のうちへ入らないではないか。もっと外国の腐敗行為防止のための法律とかその他団体の寄付を禁止するとか、そういうような政治資金の面をもっと強化していかなければならないではないか。たいていの人が選挙は金がかかって困る。金がかかっていいとはだれも言っておりません。それでいながら、しかもどうしようもないというような現行制度をどのように改正していったらいいか、御所見をお伺いしたい。
  183. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 政治資金の問題につきましては、いろいろ諸外国の例も調査しております。その材料によりますと、政治資金を日本よりもきびしく取り締まっておる国はアメリカ一国でありまして、その他の国におきまして、イギリスが労働組合の一般の基金の中から政治献金をしてはならないという規定を設けている以外に、諸外国において政治資金について非常にきびしい規制を設けている国はございません。したがいまして、日本アメリカのところまでいくかいかないかというような問題も、おそらく審議会において御検討されることと考えます。
  184. 小平芳平

    ○小平芳平君 その問題についての大臣としての御見解はいかがですか。
  185. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) すべて学識経験者等にお願いいたしまして、公正な立場から審議会の意見を聞くことになっておりますから、審議会の答申を見てこれを尊重していきたい、こういうふうに考えております。
  186. 小平芳平

    ○小平芳平君 連座制の問題がこの前の法改正のときもずいぶん問題になったわけであります。その連座制が骨抜きになったとか、いや、その精神は生きているとか、いろいろ問題になったわけでありますが、その後の新聞報道などで、いわゆる連座にかかると思われるような人が逮捕されたり起訴されたというような新聞報道も見られたのであります。そのようないきさつからして、現在の連座制の規定が死文化しているか、それともその精神が生きているか、その点についての御見解を承りたい。
  187. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 連座制の規定が答申よりも骨抜きにされたというような批評もございましたが、それは結局において最初の答申が、親子、兄弟、配偶者といったような、そういう親族が悪質選挙違反を犯した場合には候補者は裁判を受けることなくして直ちに失格する、こういう答申でございました。そこで、いろいろ法制的にも研究された結果、憲法にも日本国民はいかなる場合においても裁判を経ずしても罰せられることがない、こういう規定がございます。そこで、連座制は罰であるかないかという議論もありましたが、結局において当選者が失格するということは、これは非常に大きな、本人にとっては罰である、裁判を受けることなくして罰せられることがないという憲法の規定に抵触する疑いがあるということで、政府の修正となり、また、国会においてこれが通過したわけでございます。それでもまだいろいろ議論は両論ありまして、これでも過酷だという議論と、骨抜きであるという議論と両方ありました。しかし、結局、今度の改正によりまして、従来、相当そういう親族が選挙においてはそれほどの効果がないにもかかわらず、親族なるがゆえに、活躍しておったというようなことはずいぶんありましたが、今回の選挙において、うっかり選挙に親族を出して違反を起こした場合には連座をしなければならぬというような、そういう考え方も加味されたと思うのでありますけれども、連座制の強化というあの改正は非常に効果があったと、私はそういうふうに考えております。
  188. 小平芳平

    ○小平芳平君 効果があったということは、違反がふえたということですか、それとも、そうした違反をなくす方向に効果があったということですか。
  189. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 私のきょうまで受けた報告によりますと、連座に関する違反というものは非常に少ない、こういうふうに報告を受けております。
  190. 小平芳平

    ○小平芳平君 公務員の地位利用という問題でありますが、私たちはなるべく選挙は自由にしていきたいというような立場から、選挙管理関係とか警察とか特別の公務員はともかく、一般の公務員の選挙活動などはなるべく自由にしてやったほうがいいというような考えを持っているわけでありますが、高級公務員がその地位を利用して違反にかかるというようなものはむしろきびしく罰していくのが当然であるというふうに考えますが、その点はいかがでしょう。
  191. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 公務員の地位利用の問題は、これは非常に選挙界にとって大きな問題であろうと思うのです。そこで、審議会の答申は、初め、高級公務員の地位利用を取り締まろう、こういう案でございました。ところが、やはり憲法によりまして、日本国民はいかなる場合といえどもその地位あるいは職業あるいは門地その他そういうものによって区別されない、選挙の立候補もまたそういうことによって制限されない、という条項がございます。そこでもう一つ、憲法は日本国民の平等を規定いたしております。そこで高級と下級を一体憲法に違反することなく分けることができるかどうかという問題でございます。憲法が国民の平等を規定しておるにもかかわらず、法律をもちましてこの国民は高級な国民である、この国民は下級な国民である、しかも確たる標準なしにそれを分けるということは、これは非常に至難なことでもあるし、同時にまた憲法違反の疑いもあるということで、結局公務員の地位利用ということがよくないならば、上級下級を問わず、全部公務員の地位利用ということをやめたらいいじゃないか、こういう観点から今度の法律ができたわけです。そういう意味におきまして、今まで事前運動だけを取り締まっておりました公務員の地位利用というものが、今回の選挙におきましては、いわゆる選挙に入ってからの運動でも、その候補者が地位を利用した、あるいは運動員が地位を利用しているという疑いがあった場合は対象となったわけでありまして、御承知のとおり、公務員の地位利用という問題が、違反が今度たいへんふえたわけであります、これはもちろん候補者等におきましては、十分そういうことを理解されておったと思うのでありますが、一般の選挙民におきましては、新しい法律でございますから十分理解されておらなかった、それが結局において非常に違反をふやしたのじゃないか、こういうふうに考えております。今後十分PRあるいはまた行政指導あるいはマスコミの協力等によりまして、この面を十分徹底さして違反を少なくしていきたい、こういうふうに考えております。
  192. 小平芳平

    ○小平芳平君 むしろそうした規定は、ゆるめたらいいじゃ、ないかというようなことも論議されているような記事を見たわけでありますが、そういうようなことはございませんですか。
  193. 篠田弘作

    国務大臣(篠田弘作君) 目下のところ、これ以上ゆるめようという考え方はまだいたしておりません。
  194. 小平芳平

    ○小平芳平君 以上、選挙制度につきましては、近く審議会も発足されるとのことでありますし、自由な選挙ができるような方向に再検討していっていただきたいと思います。  次に、経済企画庁長官にお伺いしますが、昭和二十五年の国土総合開発法に基づく開発計画が最近でき上がったように承っておりますが、これについて御説明願いたい。
  195. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 昭和二十五年に国土総合開発法ができまして、この規定に基づいて国土総合開発計画ができなければならなかったわけでありますが、いろいろな事情——私も全部はつまびらかにいたしませんが、十年後の今日まで基本計画ができなかった、昨今になりましてようやく情勢が熟しまして、近く閣議決定をいたそうというところまできておりますが、まだその運びになっておりません。その間に御案内のように、詳しくは、御説明申し上げませんが、いろいろなその基本法の、基本計画の上に立って推進せらるべき具体的な計画のほうが先に進んでしまいました。ちょうど基本法と実施法とが逆に歩いたような、非常に変則的な格好になっておりますが、要するに基本計画が意図しておりますものは、数年あるいは十年後のわが国の国土の総合的な開発を中央、地方を通じてどういう構想に基づいてやっていくか、そういうことを基本的にきめた計画、正式にまだ決定をいたしておりません、そういう性質のものでございます。   —————————————
  196. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) なお、委員長、この際お許しを得まして、先ほど羽生委員から御発言がございました際に、私が不在をいたしておりまして、午前中の速記録を調べましたところ、私の申し上げようとしておったことが、必ずしも明確になっておりませんので、答弁をお許しいただきたいと思います。  今年の五月の全都市の消費者物価指数は一一二・五でありまして、六月に一一二・一に微落をいたしております。先ほどこの点を最初の一月ずれて誤って申し上げました。訂正をいたしたつもりでございましたが、はっきりいたしませんでしたのであらためて申し上げます。なお、七月の消費者物価指数はまだ公表をされておりません。
  197. 羽生三七

    羽生三七君 私どもの手元にきている統計でいきますというと、五月が一一二・九%、六月が同じく一一二・九%、七月は発表になっておらぬと言いますが、すでに公表になりまして、一二二・九%と上がっております。
  198. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 羽生委員の今御引用になりましたのは、消費者物価指数のうちで東京の指数でございます。私どもが従来使って参りましたのは、日本の全都市の平均の指数でございまして、ただいま申し上げましたのがその数字でございます。   —————————————
  199. 小平芳平

    ○小平芳平君 この開発計画日本の全国民、全都道府県、それこそあらゆる市町村にも影響を持つ大きな計画だと思います。ところが、二十五年の法律の建前は、当時の食糧増産とか電力その他の資源の開発、そういうようなことがむしろ主体になって考えられていたようであります。ところが、今日ではそのような資源の開発確保から、さらに国民経済発展に伴って、所得倍増計画の推進、それに伴う地域格差の是正、あるいは工場の地力分散とか、低開発地域の開発とか、そういうような点がむしろ大きく取り上げられているわけであります。そうしてみると、そうした十二年前の法律に基づいて、今ごろになってそうした計画を立てていこうというのは、少し時代おくれになりやしないか。もう少し、むしろ法改正の必要があるならば、法律を改正して、今の経済その他の事情に即した総合計画というものが考えられなければならないではないか、その点はいかがですか。
  200. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 前段に御指摘になりましたことは、私もそのとおりだと考えます。それでございますから、そういう基本法ができながら、計画ができないままに、その当時ではいわゆる特殊地域の開発、水とか農業、食糧増産等を中心といたしまして、たとえば北上川のようなものでございますが、そういうものが具体的に計画として進められておりました。しかし、昨今では、今度は逆にただいま御指摘の地域格差の是正等を目的といたしまして、低開発地域工業開発促進法あるいは先般議決をいただきました新産業都市建設促進法といったように、過大都市への集中を排除する、あるいは低開発地方に工業を持っていく、そのようなことに施策の重点が当然置かれて参っているわけであります。そこで、この際十何年前の法律に基づいて、総合開発計画を必要とするかどうかという問題でございますが、法律自身はいわゆる食糧増産でありますとか、農業でありますとかいうようなことを特に申しているわけではないのでありまして、無差別に開発をするのでなく、一定のプログラムに従って開発しよう、こういうことでございますので、現在の要請に基づまして、その法律の基礎の上に総合開発計画を立てますことは、所得倍増十カ年計画とも関連をいたしまして、もとの母となる計画としては不必要ではない、意味のあるものであろう。当時の要請と異なったことは御指摘のとおりと考えます。
  201. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、法律の建前から全国計画、地方計画とか都府県の開発計画とか、そういうようなすべてのものについて法律どおり今後推進していかれる予定でございますか。
  202. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 実際問題といたしましては、親子が多少逆になりまして、各地方の、東北でありますとか、中国でありますとかという地方の開発促進法が国会で幾つも御議決になっておりますし、また、地方の工業開発、低開発地域の工業開発、あるいは新産業都市等、すでに具体的な計画のほうが母法の計画に先行してできているというきらいがございます。確かにそういうきらいはございますけれども、やはり基本のプログラムはあの法律に従って、おそまきながら持っておったほうがいい、こういうふうに考えております。   〔委員長退席、理事平島敏夫君着席〕
  203. 小平芳平

    ○小平芳平君 今御説明の各地方の開発促進法は、すでに昭和三十六年に成立している後進地域の開発に関する公共事業に係る国の負担割合の特例に関する法律、この中へ財政的な面は含まれてくると思いますが、それにもかかわらず、なおかつ、各地方には、財政的な面をここへ含んでしまいながらも、各地方に開発計画があり、その上なお法律に基づく開発計画のほかに、各県でも五カ年計画とか、そのようないろいろな計画を持っているわけであります。そういう点について少し矛盾を感じられませんでしたか。
  204. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 何分にもできるべきもとの計画が十何年遅延をいたし、その間、計画に盛り込むべき要請もおくれました。それを待っておれずに、各地方あるいは各ブロック、あるいは各地域での計画が今日進行いたしております。そこで、確かに相当混雑をした、ある場合には矛盾を感ずるというような事態がございます。ございますけれども、この際そういう現在の情勢、それから現実に進んでおります計画、おのおのの法律に従って行なわれておりますが、それと調節をいたした形で、もとになる全国計画を編み出したい、こういうふうに考えておるわけでございます。かなり複雑で、現実の仕事がやりにくい部分があることは御指摘のとおりであります。
  205. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうやりにくい面は改善していかなければならぬと思います。新産業都市建設促進法ができているわけでありますが、この新産業都市のほうは企画庁のほうで計画をなさっているわけですが、同じような計画で、建設省では広域都市の建設計画を持っておられるわけですが、それで、この新産業都市のほうへ建設省の調査の結果の資料を提供するというふうにもなっておりますが、また、建設省のほうでは独自に広域都市の建設計画を進めていくというふうにもなっているようでありますが、この点について御説明願いたい。   〔理事平島敏夫君退席、委員長着席〕
  206. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 新産業都市建設促進法ができますときに、御承知のように、かなり長い経緯がございまして、自治省、通産省、建設省おのおのの各省が、その観点からいろいろな構想を持っておられました。それを国会の御意向も伺いながら一つ調整をいたしましたものが、ただいまの新産業都市建設促進法でございます。したがって、この指定を行ないますのには、関係の各省お互いに協力をし、意見を調整しながら指定をいたしていかなければならないと思いますが、各省とも十分に従来のところ協力をしておっていただきますので、この法律に基づきまして一本の指定ができるものと考えております。
  207. 小平芳平

    ○小平芳平君 この法律に基づいて新産業都市のほうの指定と広域都市のほうの指定とダブる面もありますか。また、広域都市のほうには独自の計画もあるのではないのですか。
  208. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この法律には、必要によっては市町村等の合併等ができる旨の規定もいたしてございますし、その他、道路、港湾等、先行投資についての扱い方、考え方も含まれておりますので、名前としては、何と申しますか、新産業部市、いわゆる地方における相当膨大な人口を持ちますところの地方の開発の拠点というものをこの法律に基づいて指定をしていきたい、それは一本でやることになると考えております。
  209. 小平芳平

    ○小平芳平君 新産業都市の指定は一本でやることが、当然そういう結果になると思いますが、建設大臣にお伺いしますが、広域都市のほうは調査だけで終わるわけですか。それとも建設省は国土建設、国土開発というその実施官庁として何かおやりになる計画ですか。
  210. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お話しのように、新産業都市を一本にまとめますまでは、建設省におきましては広域都市というようなことをやっておったのでございますけれども、今、企画庁長官のお話にありましたように、内閣として、また法律も一本にまとめましたからは、建設省としましても、この新産業部市の方向にまとめて協力していくということにいたしております。自治省との間にいいろいろあるようでございますけれども、これは自治省が中心になっておやりになるのだろう、それに建設省は協力する態勢をとることがよかろうということに行政指導をいたしております。
  211. 小平芳平

    ○小平芳平君 地方財政とか、あるいは全体の経済計画とか、そういう点は企画庁あるいは自治省でおやりになるのが建前かもしれませんが、このような国土の開発とか、国土建設、国土の防衛というようなことは建設省がおやりになるのじゃないですか。
  212. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど私の御説明が十分でなかったのかもしれませんが、地方の都市のほうの問題は、いわゆる国による指定というような問題はございませんので、それで、建設省の行政的な観点から、そういう都市の整備をされるということはあると思いますが、それは国が指定をして先行投資をするとかいうことには別段関係がないわけでございます。
  213. 小平芳平

    ○小平芳平君 新産業都市の指定をしないのですか。
  214. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 地方都市の建設に関しましては、建設行政の面からおのおのいろいろな施策を当然お考えであろうと思いますが、それは国がそういう地域を指定いたしまして、そこに対して先行投資をするとか、あるいはいろいろな特恵と申しますか、恩典といいますか、そういうものを与えるとかいうことにはなっておらないわけでありまして、そういうものが伴います指定はすべて新産業都市の名のもとに新産業都市建設促進法に基づいて行なう、こういう意味でございます。
  215. 小平芳平

    ○小平芳平君 いつもこういうような問題が次から次に法律ができて、そうして各地域、各省間で非常に複雑な調査や実施、実施にあたっては各省間のなわ張りや、いろいろ窓口の争いが起きるわけですが、こういう点に対して総理大臣が今後もっと行政の能率という面から考えても、また実際に実施していく官庁の立場から考えても、もっと考え調整してやっていかれる方法があるではないかと私ども考えるわけですが、総理大臣はどのようにお考えになっていらっしゃるか。また、そういうように法律がたくさんできて、また補助金その他いろいろな意味で低開発地域の工業の発展とか、そういうようないろんな意味で行なわれているのですが、実際にそれほどの効果が上がっているかどうか。新聞報道では、新しい官庁都市を作っていくというような報道もありますが、どのような将来の御構想を持っていらっしゃるか承ります。
  216. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ただいままで企画庁長官がお答えしたとおり、昭和二十五、六年に基本的な法案ができたのでございます。その後幾多の法案が出ました。これは地方別に、たとえば東北ができる、九州ができる。四国ができる、中国ができる、利根川地域、北陸の一部ぐらいを除いたら、 ほとんどできたのじゃないかというぐらいに年とともにできていく、それはやはり地方開発の意欲から出てきておるのであります。最近のわが国の産業の分布状態、また今後世界貿易上われわれの立っていくためには、また国内の格差を縮小するためには、どうしても新しい考え方でいかなければいかぬという気持のもとに、今までの法律もございまするが、その法律のいいところをとりながら、新しい構想で、今後、新産業都市の建設等々をやっていきたいと思います。したがいまして、今までのいろんな法律をやめるというのじゃなしに、その精神を生かしていこうという考えで進んでおるのであります。
  217. 小平芳平

    ○小平芳平君 その精神を生かしてという点はよくわかるわけでありますが、実際にどれほどの効果を上げられるか、たとえば交通問題にしても、住宅問題にしても、過大都市にはひしめいているし、一方では、地方都市ではだんだん貧乏になって、人口がふえないとか、あるいは、ところによっては人口が減るとかというような傾向もあるわけです。そういう点に対して、よほど思い切った政策を推進していかなければ実際の効果がいつになったら上がるかという点について不安を持っているわけです。不安を持っている者が相当あるわけです。そこで、法律をたくさん作るだけでなくて、実際に効果の上がる方法を早急に検討し、実施していっていただきたい、このように考えるわけです。確かに十二年前の法律を引き出して、総合開発計画を立てたということも一つの前進ではあると思いますけれども、そのことによって、はたしてどれだけの進歩があるか、そういう点について、一方においては所得倍増計画というものが大きな旗じるしになっておりながら、他方では取り残される部面がいつも出てくるのではないかと、こういう点についてのお考えをお尋ねしておきます。
  218. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 私からお答えを申し上げますが、国土開発法が二十五年にできましてから、ただいま全然関係なく十二年ぶりで基本計画ができるとお考えになっているところにちょっと誤解があったようでありますから申し上げますと、当時、昭和二十五年、増田建設大臣のときに、政府提案でありますが、各党提案として衆議院で立案をして政府提案にすりかえた法律であります。この法律のためには、今日まで基本計画が正式にできませんでしたが、この法律は十二年間の間に相当大きく効果をあげておりまして、現在でも相当な大都市における過度集中が起こってはおりますが、この法律ができなかったならば大へんだったろうというようなことが想定せられるわけであります。国土開発法を二十五年に制定いたしましたと同時に、付属法としてできましたのが現在の治水十カ年計画であり、道路五カ年計画であり、港湾都市建設法であり、その後できましたのが各地方の特別開発法であり、北海道の開発庁もこれに準拠してできたわけであります。その後ずっと年々議員提案のような形式でもって作られたものの中に、現在の電源開発株式会社を含む電源開発促進法、当時のGHQの反対を押し切ってきめたのもこの法律をもとにしてきめたわけであります。それで、なお昨年誕生しました水資源開発法、産炭地振興法とか、低開発地域振興法とか、そういう法律がこの二十五年の国土開発法を中心にして非常にたくさん生まれておるわけでありまして、各水系別の開発計画もこれがもととして生まれておるわけでございます。でありますから、現在いろいろな法律が生まれまして競合するところも非常に多いわけでありますし、特に東京、大阪のような大都市に産業人口の過度集中という問題が取り上げられてきた今日、特にこれらの法律の競合する部面を調整するために、あらためて昭和二十五年法律の基本計画を定める必要が生まれたわけであります。実態としては、戦後十二年間にわたって、日本の国土再編成のために有効に動きつつあるわけでございます。でありますから、今度はこの法律に対する基本計画が制定せられることによって、十二年間にばらばらに作られたものに対してその間の総合調整がはかられる、眼点的な財政投資も行なわれるというので、今まさにほんとうの画龍点睛という段階に至っておるものと考えるわけでございます。
  219. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、それに基づいて各都府県の計画も、地方開発計画もできるわけですか。
  220. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) そのとおりであります。これもこの法律が十年後、十五年後に日本の人口を想定いたしまして、一億一千五行万になる場合に、東京を中心にした首都圏に人口及び産業を集中できるものが幾ら、それから近県に集中するものが幾ら、それから遠賀川水系に集まるものが幾ら、それから名古屋を中心にした木曾川、長良川水系に集まるのが幾ら、あとは水系別に吉野川をどう使うか、それから北上川の水を最終的にどう使うかというとような問題が全部これに総合的に関連調整をされるわけであります。
  221. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 小平委員の質疑は終了いたしました。
  222. 小平芳平

    ○小平芳平君 法律よりもとにかく実効の上がるように希望いたします。   —————————————
  223. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に田畑金光君。
  224. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は、外交案件について、まず最初に沖繩問題について、総理並びに外務大臣にお尋ねしたいと思います。  琉球が日本本土の一部であることを認める。自由世界の安全保障の考慮が、沖繩が完全に日本の主権のもとへ復帰する日を待望しておる。琉球諸島が日本の施政下に復帰することになる場合の困難を少なくするため、具体的措置を講ずる。これは、申すまでもなく、三月十九日の沖繩新政策に関する大統領声明の骨子であるわけでございます。これに対して、当時の官房長官でありました大平さんの名において政府は声明を発表されて、民生福祉、経済援助を含む各般の問題についての日米間の取りきめを作成するため、双方の準備が完了次第近く討議が始められることになるであろう、こういうことを述べられたわけでございますが、すでに半年を経過しておるわけでございます。この間、六月の中旬に、小坂前外相とアメリカ大使との会談が持たれたことは承知いたしておりまするが、具体的な内容についての日米交渉というものが、なお持たれていないわけでございます。聞くところによれば、九月には持たれるというようなことも新聞等で聞いておりまするが、どういうわけで今日までなお交渉を持つに至っていないのか、この事情について、ひとつ外務大臣から承りたいと思います。
  225. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 御案内のように、沖繩の民生福祉の向上経済開発促進という問題につきましては、アメリカに協力いたしまして、施政権が返ってくる場合に、日本の民度と沖繩のそれとが非常な格差があるというような状態では困りますので、そういうことのないように、十分日本側としても、施政権が返る前におきましても協力して参るべきだと考えております。で、御承知のように、三回にわたりまして政府のほうから調査団を派遣いたしたりでございます。それは政府みずからの手で、各分野の専門家の眼識をもちまして沖繩について直接調査をして、把握し得た事実というものを基礎に進めるということが望ましいと考えて、三回にわたりまして調査団を派遣いたしましたことは御案内のとおりでございます。で、これが帰って参りまして、ようやくその報告が出そろうという状況になって参りました。私どもといたしましては、九月中には日米折衝に入りたい心組みでおるわけでございます。
  226. 田畑金光

    ○田畑金光君 三回にわたる調査の結果、日本側といたしましては、日米交渉に入る資料、その他具体的な準備が九月までにはでき上がる、こういうことでございますか。
  227. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) さようでございます。
  228. 田畑金光

    ○田畑金光君 日本の側においては、準備がかりにできたといたしましても、日米交渉においては、日本の側はむしろ受身の立場に立つわけでございます。どのような援助、あるいはどの程度の援助をするかということは、具体的な内容に入って参りまするには、どうしてもアメリカ側の援助の内容というものが明確にならなければできない問題だと考えるわけでございます。プライス修正案というものは、すなわち、現行六百万ドルのワク内を二千五百万ドルに引き上げるという修正案の内容でございますが、五月下院を通過して上院にきておるが、上院の軍事委員会においては、六月十四日に第一回の聴聞会を開いて以後、審議が進んでいない、こういう状況にあることは御承知のとおりです。先週キャラウェイ高等弁務官がワシントンに飛んで了解外務工作を求めたということも聞いておるわけです。結局アメリカのプライス修正案を中心とする援助の方針がきまらなければ、日米の話し合いは具体的に実らない、こういう形になろうかと考えておりまするが、その点はどうでありましょうか。
  229. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 御案内のように、今上院で審議をされておるのでございますが、アメリカ政府といたしましても、非常に力を傾注して上院の審議の促進に努力されておるようでございますので、私どもは、近く成立の運びに至るものと期待しております。
  230. 田畑金光

    ○田畑金光君 私のお尋ねしておるのは、プライス法という法律の修正案が成立しなければ具体的な日米交渉の話し合いは持てない、持っても具体的な成果を見出すことはできない、こう考えますが、その点を伺っておるわけです。
  231. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 日米折衝に入るまでには成立をするものと期待しています。
  232. 田畑金光

    ○田畑金光君 もし成立をしない、こういうことになってくれば、池田・ケネディ会談でたいへん大きな成果があったように池田総理はかねがね言われておりましたが、大山鳴動してネズミ一匹も出なかった、こういう結果になるわけです。おそらく今のアメリカ国会の質疑を見ますと、相当な後退した減額修正ということになるんじゃなかろうか、こういうふうにわれわれは判断しておりますが、かりに減額になったということになれば、当然日本の負担もそれに応じて減ってくるわけです。そうしますと、一体沖繩を本土の県並みにすみやかに生活水準を引き上げ、経済開発を進めるということはできないということになろうと考えますが、この点はどのように見ておられましょうか。
  233. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 今申し上げましたとおり、私どもは、本法案は今上院で審議中でございますので、とやかくの論評をいたす筋合いのものじゃないと思います。私どもは、すみやかにこれが成立するものと期待いたしておるわけです。
  234. 田畑金光

    ○田畑金光君 もう一つお尋ねしたいことは、ケネディ声明が出てから、アメリカの中においては、特に国防省を中心に、軍部はケネディの新政策の推進に対し、たとえば自治権の拡大の問題等については、激しい巻き返しをやっておるわけでございます。ことに沖繩の現地におきますると、米民政府による法律案の拒否が新聞等でわれわれは見ておるわけでございます。去る六月末に終わりました琉球立法院は、九十九の法律案件を成立させた、可決したといっておりまするが、相当の法律が民政府の拒否にあっているわけです。その内容をひとつ御説明願いたいと、こう思うのです。
  235. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 事務当局から説明させます。
  236. 大竹民陟

    説明員大竹民陟君) 去る沖繩の立法院でどういう法律が拒否されたかということでございますが、全部は承知いたしておりません。そのうち、幾つかが今日まだ成立しておらぬということは聞いておりますが、まだそれの詳しい事情は、十分な情報を得ておりませんので、まだ申し上げるだけの材料を持っておりません。
  237. 田畑金光

    ○田畑金光君 政府は、現地に沖繩の連絡事務所も設けておるわけです。すでに各新聞等は、具体的な法律の内容等についても報道しておるわけで、知らぬということはないはずです。総務長官からお答え願いたいと思うのです。
  238. 徳安実蔵

    政府委員徳安実蔵君) ただいま御質問の、拒否にあいました法案につきましては、出先機関におきまして、至急にその内容等を報告するよう命じてございますので、後刻お手元のほうに、その報告に基づいて御答弁を申し上げたいと思います。
  239. 田畑金光

    ○田畑金光君 この間の国会で、琉球立法院で可決された公職選挙法の改正案が、現に民政府の拒否にあって、十一月総選挙を目の前に控えて、沖繩の各政党とも、非常に混乱をきわめているということは各社が伝えておる報道であって、それすらも政府としては承知しないのか、総務長官は御存じでないのかどうか。
  240. 大竹民陟

    説明員大竹民陟君) ただいまの公職選挙法の問題でございますが、これは今日まで成立しておらないようでございます。大体内容的に問題になっております点は、私どもが承知いたしてる限りにおきましては、一つは選挙運動の範囲をどうするか、それから被選挙権について疑問がある、それから罰則についての問題というふうなことが若干残っておるようでございまして、私どもが聞いております限りにおきましては、行政主席が今日まで署名をしておらないと申しますか、沖繩の場合は、立法院で立法いたしましたものが効力を発生いたしますためには、行政主席が四十五日以内に署名しなければいかんという規定がございます。その署名が今日まで済んでおらぬというふうに聞いております。
  241. 田畑金光

    ○田畑金光君 総理にお尋ねしたいわけでございますが、今お開きのとおり、公職選挙法の改正法案というものは、明らかに民政府の拒否権にあって、十一月の総選挙をどうするかということであわてておるという実情です。御承知のように、ケネディ新政策の中の行政命令の改正の重要な一つの内容として、選挙区の改正の問題、定員の改正の問題等が立法院の権限だということをうたっておるわけです。新行政命令の中で、りっぱな改正の一つとして大統領が指摘したその内容の法律案が、拒否権にあって事実上実施できなくなった。これは私は、言うならば自治権のあり方に対する大きな制約だと、こう思うのでありますから、私は、ケネディの新政策の発表のあの直後にも当委員会で質問いたしましたが、自治権等については、何一つ政策の中に盛られていない、そのとおり今日はきているわけです。ただ、文官の民政官ができたというだけです。また、先ほど外務大臣から御答弁のありましたように、フライス法案のアメリカ議会における審議の難航を見るならば、せっかく国民に期待を与えた、特に沖繩県民に期待を与えたケネディ新政策というものが、大きな一つの曲がりかどにというと語弊があるかもしれませんが、一つの難関にぶつかっている。こういうことに対しまして総理はどのように考えておられ、これは今後どのように切り開いていこうとするお気持であるのか、この際、承っておきたいと思います。
  242. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大きい流れといたしましては、私は、ケネディ大統領が声明したとおりに進んでいっていると思います。プライス法案にいたしましても、従来六百万ドルというのが、最高二千五百万ドルということになろうとしているのに、下院はそれを通過さした。上院では二千五百万ドルを千九百五十万ドルに切り下げようかということが議論になっているようであります。それを、すぐこれは通らんのだ、一つも前進しないのだとお考えになるのはいかがなものかと思います。  それから、今の選挙法の問題でございますが、これは正確ではございませんが、今、事務当局から言っているように、三点ある。一番問題は、破廉恥罪を犯した人に被選挙権を認めるかどうか、これが問題になっているようであります。これは私は、沖繩の人——大田主席ではございません、ほかの人から聞いているのであります。しかし、これはもう可決になりまして、いろいろいきさつがございまして、相当問題になった。選挙法を拒否するかしないかという問題は、それ以前に、破廉恥罪を犯した人の被選挙権を認めるかどうかということが、思想問題にからんできているようであります。しばらく私はその経過を見なければならぬものだし、問題は、これで自治権の拡大も何もできぬのだと一人ぎめをしてしまうのは少し早過ぎやしませんか。全体の流れを見て、われわれは、徐々に沖繩の方々の生活水準向上、民生の安定、そうして自治権の拡大に向かって努力を積み重ねていきたい。私はその方向に進んでいっていると確信を持っております。
  243. 田畑金光

    ○田畑金光君 具体的なただいまの総理の御答弁は、私は不満でございますが、単に公職選挙法だけではなくして、減税法案についても、提案する前に抑えられたといういきさつも御存じのとおりでございます。あるいはまた、その他幾つかの重要法案についても、同じような取り扱いを受けているわけです。  さらに私は、米国の下院軍事委員会において、沖繩援助に関するプライス修正法案の採決にあたり、報告書が採択されておりますが、その内容を見ますと、たとえば潜在主権の問題について、日本に真の主権行使の権利もなく、日本が保有しているのは、米国が第三者に琉球を引き渡さないことを期待する権利であると言っているわけであります。また、六月十四日の上院の軍事委員会におきまして、同じ法案の質疑にあたりまして、ある議員はこう言っております。もし沖繩がいずれ日本に返るならば、あまり米国は金を注ぎ込む必要はない、こういうようなことも言っております。また、ある議員は、日本から米国が追い出されたら、とどまるところは沖繩だけとなり、ダレス元長官が日本に潜在主権があることを認めたのは了解できない、こういうことも言っているわけであります。私は、議会というところでありますから、いろいろな意見が出ることは認めなければならぬと思いますし、また、当然であるかもしれませんが、明らかに現地における民政府の動きを見ましても、アメリカの議会における審議の内容を振り返ってみましても、施政権の問題等についてはますますかたくなりつつあるということをわれわれは見ざるを得ないわけです。池田総理が昨年ケネディ大統領と話をなされて、その結果、三月の大統領新声明となったわけでございますが、最近の傾向はむしろそれをはばむ、後退する傾向にあるわけです。私はこういう問題については総理としてももっと大胆率直に、あらゆる機会を通じアメリカと話し合うだけの勇気を持つべきであると考えますが、総理の見解を承っておきたいと思います。
  244. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本政府と米政府とは常に緊密な連絡をとりまして、建設的な意見の交換をしつつあります。私はこういう問題は常に最善の努力を傾けている次第でございます。
  245. 田畑金光

    ○田畑金光君 大平外相は九月にアメリカに行かれるそうですが、こういう機会に、こういう問題は遠慮しないで話をなさるのが当然だと思いますが、そういう準備があるのかどうか。
  246. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) さよう心得て善処します。
  247. 田畑金光

    ○田畑金光君 何を心得られるのですか。
  248. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 沖繩の問題は、非常に、池田・ケネディ会談ばかりでなく、それに先行する総理並びに外務大臣の訪米の機会に終始主張して参ったわけでございます。私もこういう既定の方針を蹈襲いたしまして、今、田畑委員が言われるように、熱意をもちまして対処するつもりです。
  249. 田畑金光

    ○田畑金光君 施政権の返還の問題、あるいはまた今低滞している沖繩の経済援助、民生安定等については、具体的に私は国民意思を大事外相の渡米にあたっては伝えるべきだと思いますが、そういう意味にとってよろしいわけですか。
  250. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど申しましたように、沖繩に対しまして、直接日本の専門家の手によりまして調査が行なわれたということは、非常な貴重なことであったと思うわけでございます。これを携えて私どもは近く日米折衝に入ろうと思います。これは時の問題でございますことは重々承知しておりますので、私の訪米にあたりましても、そういう前提に立ちまして努力を重ねたい決意でございます。
  251. 田畑金光

    ○田畑金光君 日米会談によって沖繩の援助の具体的な話し合いがきまったとした場合に、まあ一九六四年から始まる沖繩の経済開発五カ年計画などといわれておりまするが、その場合の日米両国あるいは沖繩行政府の財政的な負担はどういうことになるわけでございますか。
  252. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 今、言及されました五カ年計画いうものは、まだ策定を終わったわけではございません。今、民政府一つの草案としてでき上がっている、今アメリカ本国におきまして検討中と承っているわけでございます。したがいまして、この問題につきましてアメリカの検討が進み、そうして日米折衝の場におきまして、私どもこの打ち合わせができるものと期待いたしているわけでございまして、その討議を終えてみないと、日米間の負担というような問題に接近することはできないと考えております。
  253. 田畑金光

    ○田畑金光君 これは衆議院の予算委員会ですか、外務委員会かで取り上げられた問題で、新聞でも私は読んだわけでございますが、念のために私はお尋ねしておきたいと思うわけです。将来沖繩が、施政権の返還が日本になされた場合、今後の計画に基づく、これからの計画に基づくアメリカの援助について、ガリオア・エロア債務と同じように、わが国の債務負担にならないかどうか、こういう問題でございます。私はガリオア・エロアについては、いろいろあの文書の価値や評価については疑問があったにいたしましても、沖繩の場合と完全にこれは違っておると思うわけでございます。沖繩の場合は明らかにアメリカ管理の主権を行使しておる。したがって経済開発、民生安定についてアメリカが負担をすることは、これは当然の措置だという考え方に立っておるわけでございますが、この点について念のために政府の見解を承っておきたいと思います。
  254. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私は施政権者がその施政下にあります住民の福祉安寧のために費消する経費につきましては、施政権者が支払うべきものと考えておるのでございまして、私ども、将来にわたって日本政府アメリカとの間に特別の合意がない限り、私どもは、その費用は私どもの負担になるものと考えておりません。私どもは、これをそういう提示があった場合に、日本の負担に合意するというようなつもりもございません。
  255. 田畑金光

    ○田畑金光君 時間がございませんので、私、日韓会談の問題について一、二お尋ねしたいと思いますが、最近の予備会談における政府の態度を見てみますと、昨年の池田・朴会議の合理的根拠に基づく解決じゃなくして、われわれの心配したどんぶり勘定、政治的な解決に明らかに入ったと、こう見るわけです。大臣は高い次元で解決すると言われておりますが、高い次元とはどういうことですか。
  256. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 池田・朴会談は双方がすみやかに国交、正常化のために努力しようということと、それから、事請求権に関しましては、合理的、かつ根拠のあるものに限ろうではないか、こういうような話し合いがあったと承っております。私どもは、請求権というものを問題にする限りにおきましては、池田・朴会談で話し合われた原則に沿って、合理的、かつ根拠のあるものに限るべきだという方針を変えておらないわけでございます。しかし、第一の原則でございまする国交正常化をすみやかにいたそうじゃないかということにつきまして、請求権というもののレベルにおきまして数字を積み上げるというようなことには、実定法上の要件から考えましていろいろ問題がございますので、国交正常化を促進いたしますためには、もう少し考えようがあるのではないか、工夫を施すべき余地があるのではなかろうかという考え方を、今、先方に提示しておりますことは事実でございます。これが先方がどのように反応をして参るかということは、私どもただいままだわかりません。
  257. 田畑金光

    ○田畑金光君 大蔵大臣は、話がまとまれば結局金を払わなければならぬ立場の方ですが、大事な責任者ですが、高い次元というとどういうことなんですか。
  258. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。  高い次元とは、今外務大臣が言われたとおり、一衣帯水であり、日韓間は特別の間柄でありますし、しかも戦後十年間以上も交渉を続けながら全然一進一退ということは、日本の立場から考えますと、できるだけ早い機会に両国の間は正常な国交関係に入りたいという考え方をさすものと考えます。
  259. 田畑金光

    ○田畑金光君 対日請求権八項目については、これは煮詰まったのかどうか。それから、四つの委員会を設けて、それぞれの問題点について話を詰めてこられたが、それは煮詰まったのかどうか。その上に立って今日の予備折衡の段階では具体的な提案をされているわけですから、そういうような合理的な処理の上から、今回の第六次予備会談に入っているのかどうか。
  260. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 各懸案になっておる問題、領域につきまして進展は見ておりますけれども、煮詰まったという段階ではございません。
  261. 田畑金光

    ○田畑金光君 大事な問題点の話し合いがつかないのに、すでに額を提示するということは、合理的な解決に非常に反するんじゃございませんか。
  262. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 緒懸案につきましてはそれぞれの委員会を設けまして、ただいま申しましたように論議が相当進展いたしておりますが、まだ煮詰まったという段階になっていないことは申し上げたとおりでございます。そこで、私どもが折衝に臨みます場合に、いろいろの懸案はございますけれども、請求権を優先的に論議しようということ、そのことは全体の懸案の取りまとめにつきまして、いわばそれに先行する要件であるように受け取れるわけでございますので、その問題に特に力点をおいて話し合いを進めるようにというのが今日の実情であります。
  263. 田畑金光

    ○田畑金光君 請求権問題の話し合いがつけば、その他の問題点については話し合いが案外スムーズに解決ができる、その他についてのめどは請求権問題のいかんにかかっておる、こういうように見てよろしいわけですか。
  264. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 今申しましたように、まず請求権を論議しようということでございまして、この問題について煮詰まりを見ることができれば、その他の問題の妥結ということにつきましては、事は非常にやさしくなってくるものと私どもは考えております。
  265. 田畑金光

    ○田畑金光君 昭和三十二年十二月三十一日の例のアメリカの日韓請求権に関する解釈の問題、これは先ほど杉原委員からの質問の御答弁でわかりましたが、そのようにまだ両国が、日韓両国の間において、あの解釈についての、実費的な内容について意見の一致を見ない、そういう段階において、政府が具体的な支払額を提案されたということは、これはふに落ちないわけです。そういうことでは国民が納得しないと思います。合理的な解決でないと、こう思いますがどうでしょうか。
  266. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど申しましたように、国交正常化ということが私どもの目的でございまして、その目的に合ったようにいろいろの手段を工夫して参ることは当然のことと思うのでございまして、しかしそういうことを進めて参る上におきまして、私どもは終始国民に御納得をいただけるような方法、手段、範囲、程度におきまして処理すべきものと考えております。
  267. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 時間が参りました。
  268. 田畑金光

    ○田畑金光君 時間がきてまことに残念でございますが、とにかく今の政府の交渉の姿を見ておりますと、昨年の池田・朴会談の話し合いと大きく逸脱しておるわけです。ことになぜ——私は池田総理にお尋ねいたしたいわけでございますが、この朴政権の存続しておる間に、いうなれば民政に移る前に、なぜ解決を急がなければならないのかと、この問題です。われわれも懸案を解決して、隣国との正常化をはかることについては大いに賛成でございますが、しかし国民の納得する解決をしていただきたいということです。また大平外相が近く渡米をされますが、アメリカに行くまでに話し合いをつけたいというのが、なんともどうもアメリカに面子を立てるような、そういうような感じがしないでもないわけです。ことにまた、今回の政府の提示された額を見ますると、その中には長期借款いわゆる経済協力も、それから無償供与も、それから請求権に該当するもの、どんぶり勘定に入っておるわけです。請求権を積算してくると話がまとまらぬから無償供与も一緒に含めたのだ、そうなってきますと、当然そこに出てくるのは、賠償という性格を私は確かに持っておると思うのです、賠償。韓国側は長い日本の植民地時代に物的、精神的に非常なた苦痛を受けたから、その賠償を払うべしというのが請求権の大きな内容とわれわれは聞いておりますが、今回の政府の支払い方式あるいは金額そのものは、まさに賠償を認めたような解釈が出ておるわけです。そういうことになってきますと、将来北鮮との問題がまた出てきた場合に、二重払いの危険性等も出てくるとわれわれは見ておるわけです。さらにまた経済協力の問題も、私はあわせて提案するということは意味がわからない。韓国は経済協力は、当然国交正常化を実現した暁においてなすべきだ、こういうことをいっております。むしろ筋は、韓国の主張が通っておると思うのです。これに対して日本政府は、経済協力の問題は、長期の借款であるから、もらったと同じようなことである。こういうようなことも説明されておるように新聞では伝えておりますが、ますますこうなってきますと、国民としては理解ができない。こういう点について私たちは、隣国との国交正常化については賛成であるが、しかしあくまでも合理的な、しかも国民の納得のいく立場に立って問題の処理をはかっていただきたいと考えますが、なぜ政府は、このように解決を急がなければならないのか。  さらに私はもう一つ、吉田委員質問に関連してお尋ねしたいことは、当然日韓請求権の問題が解決されるならば、韓国に営々と築いてきた、かつての在留邦人、すなわち対韓請求権の問題、特に私は私有財産の問題については、先ほど大平外務大臣は、例の引揚者給付金等支給法によって処理済みだ、こういうことを言われておりますが、そういうことで処理済みだということで片づけられるのかどうか。私は池田総理大臣から明確に承りたいと思うのでございますが、少なくとも昭和二十八年十二月三十一日対韓請求権を撤回するまでは、私有財産については当然これは返還すべきだという立場をもって、皆さん方は韓国と会談をなされていたわけです。それを十二月三十一日アメリカの新解釈採用で一挙に撤回をされたわけでございます。こういう歴史的な経緯を見ましても、また私は、あの平和条約の第十四条を見ましても、結局かつて海外に残してきた私有財産というものは、戦勝国家の賠償に振り出てられておる。現実にそうなっております。賠償というのは敗戦の結果、戦争に敗けた結果生まれた現実でございますから、当然それは国民全体の負担において賠償は支払うべきだ、それを一部海外引揚者の在外財産によって処理することは、国際法の建前、憲法二十九条の精神から見ましても、これは不当である、違法であるとすら私は言いたいわけでございますが、この点について総理の明確な見解を承りたいと考えておるわけであります。
  269. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) もう御質問の点は、ほとんど私は言い尽くしておると思います。前提がわれわれと違った考え方でおられるのでございまして、私とは並行線になると思います。  第一の朴政権を認めるのがいかぬということは、なぜ朴政権を認めてやるかということにつきましては、もう隣国との関係で早く仲良くしたいと、こういうことです。朴政権は正当に認められておるものだということは、杉原君の質問でお答えしたとおりでございます。  それから賠償という観念は、ないということは、たびたび、言っております。これは朴政権も言っております。賠償じゃないかという前提であなたは御質問になるが、賠償ではございません。やはり法的根拠のあるものについて誠意を持って交渉する、その法的根拠というものをどうやるか、具体的な証拠その他をあれすることは、なかなかむずかしいから、そこで誠意を持って話し合いを進めていくというのでございますから、別の観念ではない、それで金額はどうとかこうとか言いますが、これは十何年も前のことを証拠のあるものとして探したときに、今のこちらの裁判所で、ほんとうに証拠と言い得るものが、山国間で出せましょうか。それはなかなか出ないし、証拠の法的根拠の確実なものと認められるものを誠意を持ってお互いに話し合おうというのでございます。カテゴリーは同じでございます。それをすぐ賠償だと一人ぎめなさいますと、幾ら質疑応答しても際限がないと思います。  私はあくまで国民の利益をまず第一にし、そして第二に韓国国民の利益も考えて、国交を正常化したい、こういう気持で言っておるのであります。長期借款なんかということも、これはもう、西欧諸国がどんどんやってきておるじゃございませんか。それを私がほんとうに広い意味で、両国民の幸福になるような意味におきまして、単に請求権だけにおいてやるということよりも、やはり漁業問題、法的地位の問題全般のもので、ひとつ今後の両国のあり方をどうこうしようということを話題にするのは当然だと思います。この問題は請求権だけに限るとか、漁業権だけに限るとか、そういうことは、ほんとうに誠意を持って国交を正常化するゆえんのものじゃございません。私はそういう意味におきまして、国民の納得のいくようにあらゆる努力をしています。変わってきたとか、いろいろなことを言っておりますが、私は初めの所信を変えていない、そういうつもりでやっているのでありますから、今しばらく交渉が成功するのをお待ち願いたいと思います。われわれ責任を持ってやっております。
  270. 田畑金光

    ○田畑金光君 私有財庭の問題は……。
  271. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これも、たびたび申しておりますように法的の関係は、ただいま申しているとおりであります。憲法二十九条に違反しているということ、これも、あなたからたびたび聞いております。そのつど答えておりまして、あなたとの質疑応答だけでも相当、数年間やっている。これはもう際限がないと思います。私は外務大臣の申し上げました気持と同じでございます。
  272. 木内四郎

    委員長木内四郎君) これにて田畑君の質問は終了いたしました。
  273. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に大竹平八郎君。
  274. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私は質問時間がきわめて短かいのでございますので、できるだけ端的にお尋ねしたいと思うのであります。  まず第一に、先般行なわれました参議院の公職選挙に関連をいたしましてお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、この問題は本来でございますというと、私一個の問題でなく、衆参両院を通じて各議員にきわめて関係の深い問題でございますので、本会議で緊急質問をいたすほうが筋道かと思うのでございますが、会期の日も、きわめて切迫いたしておりますので、どうせこの委員会で画然たる御答弁をいただくわけには参らぬと思うので、その点は後日に保留をいたしたいと思うのでございますが、まず第一に総理にお伺いをいたしたいのでございますが、池田総理は御就任以来、特にこの官吏の綱紀粛正という問題につきましては、非常に御努力をせられて参ったことは、よく私ども承知をいたしておるのでありますが、特にあらためて私は、この点について、一度さらに伺いたいと思います。
  275. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 政治の姿として綱紀を粛正し、そうして役人が国民の公僕として、全力を尽くすことは当然でございます。したがいまして、われわれといたしましては、心がまえの問題ももちろんでございますが、行政制度のあり方等につきましても、再検討を加えまして、ほんとうに行政の運営が公正にかつ円滑にいくように、ひとつ努力を続けていきたいと考えております。
  276. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私はここに、証拠物件をたくさん持ってきておるのでありますが、郵政大臣にお伺いをいたしたいのでございますが、これは公職選挙に関係がございますので、自治大臣がおらなければ、選挙関係の政府委員がお聞き願いたいと思いますが、公職選挙の基本的な問題は、言うまでもなく与えられました全国区でございますというと、十万枚のはがきとそれからポスター、これが基本になって、われわれがいわゆる公職選挙というものはできるのでございます。したがいまして、その候補者にとりましてのはがき一枚というものは、ほんとうにその血の出るようなものであるわけでありますが、特に日本の郵便は、日本の国鉄とともに、その正確さは世界的とまで言われているのであります。しかるに、この公職選挙法に関連してのその選挙はがきというものが、さらにより以上の意義と重要性を持っていることは、私がちょうちょうする必要はないと思うのであります。  そこで私の自身でございまするが、選挙が終わりました七月のたしか七日か八日だと思うのでございますが、私の手元に、その一枚々々血の出るようなはがきがたいへん返ってきたわけでございます。これは、私の顔をよく見て下さい、間違いない。これはごく一部です、三十三枚、手元に、ここにございますのが、束にいたしまして百枚ずつ七百枚ある、七百三十三枚というものが、まず私が今手元に持っている。実際は、この何倍かが来ているのであります。これに対しまして、郵政大臣は、これはむろんあなたのときのことではございませんけれども……。
  277. 手島栄

    国務大臣(手島栄君) お答えいたしますが、選挙郵便は非常に多数のものが一時に出ますので、多少間違いがあったようであります。私自身も選挙をやりましてそういう経験はありました。大体において現在の郵便は一時にたくさん出ますので、その中で故意にある人の郵便をおくらすというような余裕もなかなかない仕事でありますので、現物につきましてくわしく調査をして善処をしたい、かように考えております。
  278. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 選挙局長にお尋ねをいたしますが、公職選挙法が始まって、こういうような事例のあったことはありますかどうか。
  279. 松村清之

    政府委員(松村清之君) お答え申し上げますが、私といたしましては聞いたことがございません。
  280. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 郵政大臣にお尋ねをいたしますが、今選挙局長がおっしゃられたとおりでありまして、あなたも今、私も選挙をやってそういう問題にあった、こう言っておられますが、それは何でしょう。付せん付きのものが返った、こういうことでしょう。
  281. 手島栄

    国務大臣(手島栄君) お答えいたします。実はただいまのように、あて先が書いてないものでございます。大体は付せんがついて返ってくるものが多いのであります。
  282. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私が出しておるのは、今あなたがごらんになっておるとおり、完全な中央局の消し印があって全く選挙用のはがきでございますよ。なるほど私のところにもいわゆるあて先不明で返ったものが三千六百余枚ございます。それはあくまでもこっちの落度です。住所不明でございますから。私はそんなことを言っておるのじゃない。十万枚のうちにこれだけ、実際の数は、私はこれは目分量で見たのでございますが、約二万枚以上ある。そしてあて先不明で返ってきたものが三千六百枚と言っておるが約一万枚以上ある。しかも私が出したのは選挙事務所本部から、御承知のとおり二百枚ずつやるわけでありますが、少くとも五百枚以下ぐらいのものを完全な梱包をしまして、そして書留速達で全部出しておるわけでございます。ここにあなたのほうの領収書がたくさんあります。書留で全部出しておる。しかも速達で。御承知のとおり一日も争うわけでございます。そういうわけですから出したが、出し先にはなかなかつかないから非常に障害があった。しかし選挙なんかはなかなか大へんなときでございますから、一々こまかく調査することもできなかった。そのまま過ぎて選挙が終わったところが、われわれのほうは完全に梱包してあった。ここに証拠がございます。これだけ出したそのうちで、どれだけ戻ったかということは、私は確言はできませんが、これは十枚戻っても一枚戻っても大へんなことである。ところが私ははっきりあなたにお見せしているのが完全に七百三十三枚ある。  私は、これが高位当選であったらそんなでもなかったかもしれないが、私は四十万票は欠けている。四十六番であった。したがって、当選圏すれすれでずいぶんスリルを感じた。そこで私は一万以上もしあったとするならば、何万よけいに取ったかもしれませんし、また逆に落選した人がこういう目にあったとしたら、これは訴訟が起きますよ。選挙無効の訴訟が起こる。だからそんな簡単な、あなたが、ただいまされたような答弁でこの問題は済む問題じゃございません。過失でございまするならばこれは過失で——簡単な言いわけで、私は済ませようとはいたしません。それからもし、私は、そんなことはないと思うのでありますが野党である、意識的にこういうことをやられたということがわかりますれば、公職選挙法のいわゆる自由妨害の罪という問題があるわけでございます。「交通若しくは集会の便を妨げ、演説を妨害し、又は文書図画を毀棄し、その他偽計詐術等不正の方法をもって選挙の自由を妨害したとき。」は、四年以下の懲役もしくは禁錮又は七万五千円以下の罰金ということがあるわけでございます。そういうわけでございまして、この点についてどういう調査をせられるか、ひとつお聞きいたしたい。
  283. 手島栄

    国務大臣(手島栄君) ただいま材料をお持ちのようでありまするから、その材料全部について筋道をたどって調査をいたしたいと思います。ただ、さきにも申し上げましたように、郵便は非常に混雑いたしておりますので、その中から特定の人を選んで邪魔をするというようなことは、仕事の運びから見ましてもなかなか不可能でないかと思いますので、選挙妨害というようなことは、私個人としては考えられないであろう、かように考えておりますから、今お持ちの材料をあとでいただきまして、十分調査をいたしたいと思います。
  284. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 先ほども申し上げましたとおり、公職選挙法というのは大事な問題でございますよ。そうして、それの一つの大きな要素でございまする選挙用のはがきの配布ですね。そうでなくても日本の、先ほど言ったとおり、郵便というものは、相当信頼されているわけです、近ごろはちょいちょい遅延のものなどもあるようでございまするが。ことにその正確を誇っておりまする郵便、しかも私が出した場合は書留であり、速達であるのですよ。そうして完全な梱包をいたしまして、そうして各選挙事務所へ出してきたわけです。われわれはこんな裸で出したのは一つもない。ところが戻ってきたのは先ほどの付せん付きのものと、大事なはがきが山になって一緒に戻ってきたわけなんです。私自身は直接あれはいたしませんが、秘書や何かが、出した中央郵便局にいろいろ問い合わせをしたり何かしておるのですが、こういうような重大なことについて、私は参議院議員ですよ、一言の連絡もない。ここで私は先ほど総理にも伺った綱紀の粛正というものは一体できているのか、いかがですか。
  285. 手島栄

    国務大臣(手島栄君) 事実問題をつまびらかにいたしておりませんので、ただいまお話のようなことがありましたならば、実物について十分調査をして御回答申し上げたいと思います。
  286. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 いま一つあるのです。やはりはがきの問題でございますが、これはもうあなたのほうからこれだけ返したという通知をもらっております。それはどういうことであるかというと、どうぞひとつ頭に置いて下さい。このほかに二百四十六枚という数があるのです。それは私が関係をいたしておりまする、ある学校法人の私は理事をいたしております。その理事長の名によりまして、これは法規の許すところによって私製はがきが刷れるわけでございますが、そこであなたのほうで選挙のこれを押してもらうわけです。ところがそれを持っていったときに、そのときは何でも、なかった。ところがやはり選挙が済んでから、何か消し印が不明だという理由でもって、二百四十六枚というものを私の手元へ戻してきた。消し印が不明といっても、勝手に私がつけられるわけではない。それが不明だというなら、全部あなたのほうの責任なんです。これは消し印不明だというようなことでもって、二百四十六枚、それははっきり通知をいただいておるわけです。こういうわけで、おそらく今選挙局長も言われたとおり、前代未聞のことですよ。これは私はそんなことを中心にどうのこうのと言うのじゃありませんが、これは全体の人、衆参両院、与党の人も含めて、選挙をやる人の一番共通的な大きな問題です。こういう意味で、ただ単なるその調査くらいじゃ私は簡単に済まないと思う。よほどあなたの責任を持ったひとつ調査と、責任を持った御回答というものを願いたいと思うのですが、その点いかがですか。
  287. 手島栄

    国務大臣(手島栄君) ただいまのようなお話で、通信が非常に信用ができないというような問題は、きわめて重大な問題でありますので、この点につきましては責任を持って調査し、善処したいと思っております。
  288. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 どうかひとつ総理におきましても、今の問題は頭に置いて、大臣に対して特にひとつ督励を願いたいと思います。  それから、あまり時間もございませんので、総理にお伺いいたしたいのでありますが、最近の諸情勢を総合いたしまするに、近くソ連がわが国に対しまして再び平和条約締結の申し入れを行なうのではないかというような気配がいろいろ新聞、あるいはその他の消息によってうかがえるのでございますが、政府はこの点をいかに御観測をせられておりましょうか、総理から御答弁を、願いたいと思います。
  289. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ソ連との経済関係は、年とともに非常に増進いたしております。したがいまして、われわれも、どの国ともそうでございますが、ソ連との平和回復は以前から念願しておるところでございます。ただその前提条件であります領土問題の解決がないと、これはわれわれとしてはできないわけでございますので、機会あるごとに領土問題につきまして、われわれの主張を通してくれ、そうして平和条約の締結をできるだけ早く行なえるように努力はいたしておるのであります。
  290. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 本年の一二月十四日の本会議で、例の北方領土回復に関する決議の趣旨が御承知のとおり出たわけでございまするが、このときに総理からも非常にはっきりした御答弁があったのです。すなわち、本件の実現にはなお幾多の困難が予想されるが、政府は今後とも最善の努力を尽すつもりである、こういうことを総理が言われたのでございまするが、その後政府といたしましてはいかなる御努力をお払いになったか、この点を伺いたいと思います。
  291. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) あの決議以後は特に取り立てて申し上げる事例もございません。しかし、先ほど申し上げましたように、機会あるごとに私はこのことはソ連に対して主張しているのであります。
  292. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それからこの北方領土回復に関しましては、いろいろ世論があるわけでございまするが、ことに最近与党内部におきまして、安全操業のほうが先決問題で、領土問題はあと回しでもいいというような意見があるように聞いておりまするが、そういう一体事実はあるのかどうか、また北方の領土の回復につきましては、与党でございまする自民党の党内が一つになって結束をいたしているのかどうか、はなはだうがった話で恐縮でございまするが、その点を伺いたい。
  293. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 択捉、国後は日本固有の領土である、ソ連がこれを占領していることは不当であるという主張に何ら変わりはありません。一致結束いたしております。
  294. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 外務大臣に対しまして今の問題に関連してお尋ねいたすのでありますが、最近社会党の訪ソ使節団が帰国直後記者会見を行ないまして、歯舞村民のコンブ漁について、出漁期間は六月十日から九月三十日までとする、それから区域は貝殻島周辺、それから出漁規模は三人乗り百六十隻、二人乗り百六十隻とするなどの提案を行なっています。また、スパイ行為の自主規制体制といたしまして、自主規制の強化、それから漁業労働組合を作る、それから全漁民を日ソ協会に入れるなどの申し入れをしたと新聞で私ども拝見したんですが、これらはみな政府と事前の協議があってなしたことであるか、この点を外務大臣から伺いたい。
  295. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ソ連官憲によるわがほうの漁船及び漁民の拿捕に対しましては、政府は三十一年の七月に当時の在京ソ連漁業代表部時代より十数回にわたりましてソ連政府の措置に抗議して、漁船、漁具の返還並びに抑留者の釈放を要求いたしますとともに、在ソ大使館を通じまして、日本人抑留者の実情調査のため大使館員の現地派遣を申し入れるなど、種々の外交的措置を講じて参っております。しかしながら、ソ連は、これらの漁撈は日本漁民による計画的、組織的なソ連領侵犯であり、日本政府の責任であると非難し、または大使館員の派遣要請に対しましては、右水域が外国人の立ち入り禁止地域であるという理由でこれを拒否しておることは、御承知のとおりでございます。御質問を待つまでもなく、本件は直接わが国民の生活に重大な影響を及ぼす事柄でありますので、政府といたしましては、問題解決のため今後とも努力するつもりでおります。  今お尋ねの社会党との話し合いにつきましては、政府としては関知いたしておりません。
  296. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それから、事前協議なしに外国に対しまして、かりに政府でない立場にあるものがこのような提案をいたしたということは、これはさきに私が本会議におきまして、社会党の前の委員長鈴木さんとそれから外交委員長との共同声明の問題において触れたんでありまするが、内閣の外交権の問題、すなわち憲法第七十三条二号の問題に、これも当時のやはり中共との声明のように、触れるのかどうか、こういう点についての御解釈を願いたい。
  297. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 外交権は、当然政府が行使すべきものと心得ておりすます。
  298. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それから、もと北方地域に居住して、戦後内地に引き揚げられた同胞の援護対策というものはどうなっておるのか、これはひとつ総務長官から伺いたい。
  299. 徳安実蔵

    政府委員徳安実蔵君) お答えいたします。  北方地域から引き揚げました諸君は、大体一万四千五百人、約三千世帯でございます。これらの方々は、大部分北海道根室を中心としてただいま居住されておりますが、御承知のように、一般の引揚者と同様な措置を受けておられるのでありますが、さらに、この北方地域がわが国の領土であり、しかも長くお住まいになっておったにもかかわらず、帰ることのできないというような特殊な事情も考えまして、また一面におきましては、漁業権の補償の措置等につきましても何ら顧みられない実情でございますので、先回の国会におきまして、北方地域旧漁業権者等に対する特別措置に関する法律を公布いたしまして、北方協会を設立し、そうしてその協会に国債十億円を交付いたしまして、これらの人々が生活安定をはかり得るように特別措置を講じた次第であります。この北方協会は、財源といたしまして、前に申し上げましたような交付公債によりまして、ただいま、これらの北方に居住されておった諸君の生活の安定あるいはその他の問題につきまして業務を開始いたしまして、六月から融資業務等を開始しておるそうでございます。ただいま、その開始後における計画につきましてはまだ、要細な報告はされておりませんが、その報告をいただきましたならば、さらに検討を加えまして、もし不足するものがございますれば、より善処をいたしたいと考えておる次第でございます。
  300. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 北方協会と言われますが、これは私が大蔵委員長のときに上げたので、よくその事情を知っておるのでございますが、原資はたしか十億だと記憶いたしておりますが、その利息なんですね。そうするとわずかなものなんです。しかも実際にその発足は、今お話しされたとおり、まだ何カ月もたっていないわけなんですが、そういう点で一体それはどの程度にいわゆる生活資金というものをまかなったのか、その数字があったらひとつお知らせ願いたい。
  301. 徳安実蔵

    政府委員徳安実蔵君) ただいま申し上げましたように、十億円の公債によりまして約年間六千万円、そのほか年間三千万円の借り入れをいたしまして、九千万円程度でこれらの方々の救済、生業資金等をまかなうことになっておりますが、ただいま御報告いたしましたように、何しろ六月の末ころから店開きをしたような状態でございまして、その内容、その成果等につきましては、まだ要約に報告を受けておらない状態であります。
  302. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 ほとんど救われていないのですよ、実際は。  文部大臣にお伺いいたしたいのでございますが、池田総理は先般国会におきまして、国作り、特に人作りという問題を強調せられまして、私どもも非常にその池田総理の言明に賛意を表したわけでございますが、そこで荒木文部大臣が、たしかこの二十三日でございましたか、都道府県教育長協議会の会合の席上におきまして、道徳教育の教科書作成のため具体的検討に入ったと言われているのでありますが、教科書によって道徳律の規範を教えることが必要だとも述べられていることに私も大体同感でございます。しかし、ここに言う道徳律の規範を教えるということが必要だと述べられていることには、むろん賛成でありますが、しかし、こういう道徳律の規範が一体いかなるものであるか、これをひとつ明らかにしていただきたい。これが、いうところの池田内閣の人作りの私は基準になると思うのでございますので、あえてお尋ねするわけでございます。
  303. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。現在小、中、高等学校——高等学校は明年からでございますが、小、中学校におきましては一週間一時間の道徳教育の時間が特設されまして教えられているわけでございます。教えるにつきましては、学習指導要領に、小学校ではおおむねこういうふうなこと、中学校ではおおむねこういうふうなことを教える趣旨であるという、抽象的と申しますか、一応の徳目を例示しながら、道徳教育の時間の指導をするということに相なっております。ところが、教える先生としましては、小学校一年から六年まで、中学校一年から三年まで、それぞれの学年に応じまして、子供たちの受け取り方が、感受性が一々違うわけでございますから、ほんとうならば学年ごとにこれを仕分けをして例示するということも必要であろうかと思われるわけであります。したがって、そういうことを検討しますと同時に、やはり目で見る教科書というものに、指導要領で例示しましたようなことを書き上げまして、それを生徒に与える。同時に教える先生にも、この手引書みたようなものをこしらえて提供するということが必要ではなかろうか。むろん、教科書に、よって道徳教育がすべて作られるわけではもちろんございませず、ほんの九牛の一毛ではあろうともちろん思いますけれども、そうしますことによって、子どもたち自身も生体的に、自分が持っている、目で見るものを通じて、道徳教育の効果を上げるよすがにもなるであろう。そういうことから教科書をひとつ作る検討を始めたらいかがであろう、こういう考えに立ちまして、教育課程審議会等のむろん専門家の御検討を待たねばなりませんけれども、その検討をし始めるということをいたしたわけでございます。そこで、一体その道徳的な規範あるいは徳目とは何ぞやということになりますと、抽象的に申せば、現行憲法、あるいは憲法の趣旨に基づいて制定されております教育基本法の指向するところにのっとるべきことは当然でありますが、それでは教科帯にもなりませず、今申し上げました学習指導要領の目ざすところも具体性を欠くわけでございますので、あくまでもよき人間として、何ぴとも賛成できるような内容であるべきでございましょうし、またそれがよき日本人として、さらにはまた国際的にも、その道義感を身につけました者が信頼と敬愛をかち得るであろうというふうな目標を持って、専門家が検討されることと期待いたしているのでございます。この作業に着手しましても、おそらくは一年やそこらでは結論に到達しかねるくらいのめんどうなことだとは思いますが、そうしますことが、せっかく道徳教育の時間一時間を特設いたしました効果をより一そう上げる一種の具体的な道しるべができるであろう、そう期待いたしておるのであります。
  304. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 教育を通じて、人作りもまことにけっこうでございまするが、最近の非行少年の状況でございますが、時間ございませんので簡単に申し上げますが、昭和三十六年の検挙せられました十四才から二十才未満の者、十五万八千余人ですね。そうして少年人口の千人中の比率をとってみますると、刑法犯数というものが三十六年に一二・二というような膨大な数字に達しておるわけでございます。そういう意味におきまして、これはむろんいろいろな家庭その他の原因があると思います。家庭生活と変化と人間的結合の稀薄というような問題も取り上げられましょうし、大人と少年の考え方の断層とか、あるいはレジャー時間の増大と消費生活の豊富化、あるいはマスコミの影響、少年のあるいは身体的な成熟というような問題がわれわれは取り上げられると思うのでございます。そういう点から考えまして、こういう眼前の事態、しかも、どこの町に参りましても、どこの家庭の奥さんたちに聞きましても、今日の非行少年の行為というものは、これはもうそれぞれ全国的でございます。そういうわけで、これにつきまして特に抜本的な措置をひとつとる考えはないか。もし具体的な案がございましたら、ひとつこの際伺いたいと思います。
  305. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。抜本的な対策とおっしゃいますと、ちょっとお答えいたしかねるわけですが、ともかく非行少年が現にできておる既成の事実に対しましては、むしろ学校教育を通じてはあとの祭りでございまして、それを、おのずから法務省なり警察関係なりあるいはその他厚生省方面での仕事があろうかと思いますが、要は非行青少年を出さないようにするということに重点があろうかと思います。それは何と申しましても学校教育、なかんずく義務教育課程ないしは高等学校における教育のあり力いかんであろうと思うのであります。戦後、新教育制度が発足しまして、まあいわば自主性があまりに強調されるのあまり、がんぜない子供の自由が必要以上に、いわば放縦に流れるくらいに放任されておったきらいはなかろうか。同時に、教える教師の立場においてもそのことが、むろん悪意のあろうはずはございませんけれども、ただ放任的な取扱いのゆえに、間違った自由のはき違え等が横行いたしました結果、いろんな非行事件を生み出す原因がそこら辺にもあるであろうと思われる。したがって、道徳教育もさることながら、学校ごとに、何と申しますか、カウンセラーとでも通称せられるような制度、非行の実績のある者、もしくはそのおそれのある者について、一人々々について、その心の悩みに真剣に相談相手になってやるというがごとき制度でも作りまして、そして未然に非行事件を起こさないような方向に協力する態勢こそ必要じゃなかろうか、かように思っておるわけであります。また、家庭教育におきましても、何としましても、戦争に負けまして以来、ぼう然とした時期が続いておりまして、親も、子供に対してのいわゆるいい意味でのしつけというものが自信喪失症状になっていたきらいがないとは甘えない。そういう面につきましても、家庭教育において親が子供にしつけをするのにも、いわば近代的な手引きとでも申しましようか、そういうことを社会教育の面で具体性を持った施策を通じて徹底したらいかがであろう、こういうことを考えておる次第でございます。
  306. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 最後に、関連いたしまして、総理に伺って質問を終わりたいと思うのでありますが、青少年教育の問題につきましては、今文部大臣が言われたようなわけでありますが、私はまず、何といっても、この現在のテレビ、映画、週刊雑誌等のいわゆるマスコミの対策というものが非常に必要ではないかという点で首相のお考えを伺いたい。  次に、やはりこれに関連いたしまして、深夜喫茶とかあるいはジャズ喫茶、あるいはパチンコ屋等の生活環境の浄化が非常に大切であると思うのでございますが、この点もあわせて伺いたい。  それからさらに、総理はよく、青少年育成の方法として、宗教的情操の涵養と家庭のしつけを重視するということを言っておられますが私どももむろん賛成でございますが、しかし、現在におきましては、日本の家族制度というものが次第に崩壊されつつある現状でございますので、こういう点に関しまして、これを涵養するというのは、いかなる方法をもっておやりになったらよろしいのか、その点を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  307. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今の時代の教育問題では、学校教育ももちろん重要でございますが、家庭教育、社会教育、これを兼ねてやるべき問題と思います。そのうちにおきまして、マスコミの問題、これは、ほんとうにその重要さは年とともに加わって参りました。したがいましては私、まだ成案ができておりませんが、この新しいりっぱな人を作るにつきましてのやはりマスコミの協力をぜひ願わなければ、効果がこれは上がらぬと思う。そういう点につきましてただいま考えておるのであります。また、非行少年の問題につきまして、先ほど申し上げました家庭教育、非常に必要でございます。それからまた、宗教心というものは、やはり人間性を発揮し、りっぱな人を作るということにおきまして、お互いの修養ということは必要でございますし、反省が必要でございますが、しかし、それには永遠的、絶対的なものに対する敬虔さを持っということが私は必要であろうと思う。家庭教育と宗教心というもの、これはいかにも、家庭教育が悪くなったならば宗教心が当然衰えるというものじゃございません。家庭教育とは別でございます、宗教心というのは。これは、家庭制度のないアメリカその他ヨーロッパにおきましても、毎週一回教会に行くとか、あるいは一日一回の反省をするとか、あるいは朝晩仏さんに参るとか、かしわ手を打つとか、これは心がまえの問題であります。それを親のしつけとして子供を導くのも一つ方法でございますが、家庭教育自体から当然宗教心がわいてくるものじやございません。ただ、日本の今までのあれというものは、家庭教育が中心であって、そして両親が宗教心の深い人であったならば、おおむね子供もそういうふうになるということであって、本質的な問題ではないと思います。したがって私は、やはり学校教育におきましても家庭教育におきましても、社会教育におきましても、あらゆる方法を通じて、やはり凡夫でございますから、敬虔な気持で神、仏——天地でもよろしゅうございますが、反省を加えていって、人間性をみがかなければ、私は、りっぱな社会、りっぱな国家というものはできないのじゃないかという気持を自分の体験から持っておるわけでございます。道徳教育というと、いかにもむずかしいように思いますが、何かにございますように、道徳教育といっても、エチケットのようなものでございまして、エチケットといえばすぐわかるが、道徳教育といえば、いかにもむずかしいように思われる。そういうことで、私は、お互いにみんなが自分を尊重すると同様に、あるいはそれ以上に他人を尊重する、卑近な言葉で言えば、お互いに常時反省をしながら、お互いによくなっていこうという気持が起きてくれば、そこに道徳心の涵養もできると思う。それには、何と申しましても、私は、反省、宗教的情操を養うことは、これは人間の重要な部分だと考えておる次第であります。
  308. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 大竹委員の質疑は終了いたしました。  明日は午後一時開会することにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十八分散会