○吉田法晴君 私は、
日本社会党を代表して、先日の
池田総理の
所信表明に対して、引き続いて
質問をなさんとするものであります。
池田総理は、その
所信表明で、今回の
内閣改造により、新たな決意と勇断をもって内外の要務に当たりたいと申しました。
〔
議長退席、副
議長着席〕
しかし、
演説全体としては、手前みそと抽象的な表現に終始して、内外
政策いずれも具体策がなく、
官僚式美文調ではあっても、
政治家としての抱負識見というものは感ぜられませんでした。
外交の上で見るべきものがなく、
池田内閣の一枚看板であった高度成長
政策自体が、いろいろのひずみと
不況様相をもたらして、失敗を自認せざるを得なかったのであります。すなわち、
総理の
所信表明と同じ日、
総理に最も近い宮澤経企長官によって、「
昭和三十七年度
経済見通し」を修正せざるを得なかったのであります。いわば、
総理が、この壇上から、
所信表明で高度成長
政策の功績をみずから謳歌していたその日、側近の手によって、皮肉にも、その葬式を裏口からこっそり出さざるを得なかったではありませんか。この無為と失敗とをおおい隠すために、繁栄と
生活の向上を自画自讃し、また、
国民生活と
経済、国際情勢が当面している困難と不安に目をおおおうとするのでありましょう。
所信表明が、その大切な
部分をごまかしに終始したから、新しい改造
内閣が何をやろうとするか、新しい重点施策が何であるかを浮き彫りにすることができませんでした。今度の
所信表明の中で
総理が強調した人作りそれ自身が抽象的で、文教
政策として何をなさんとするか示されなかったのも、当然でありましょう。国作りに失敗をしたから、
政策のかわりに道義だとか、徳性の涵養とか、祖国愛とか、精神主義による説教、
国民に
責任を転嫁する反動教育
政策が示されたにとどまったではありませんか。
以上、酷評をいたしましたが、
所信表明に具体性が欠けていたという点は免れ得ない批判であります。
国民生活と
経済、国際情勢が当面している困難と不安が深刻なだけに、これを解消する具体策を示されたい。インフレなき高度
経済の助長、所得水準の向上、雇用の増大、所得格差の解消、社会保障の拡充、減税の断行、あるいは平和
外交、
経済外交の推進、文教の高揚と刷新、人作りといっても、その具体策が示されていないではありませんか。
総理の所見を聞きたいところです。
次に、当面の緊急な
核実験の停止、軍縮、
アジアの
緊張緩和のためいかなる具体的な方針を持っているかということであります。
東西間の
緊張、特に
アジアの
緊張については、
日本国民の最も危惧するところであります。この八月、原爆投下の暗い思い出の残っているときに、
国民がひとしく心配することは、ベルリンで起こる事態に呼応して、南ベトナムから、金門・馬祖から、韓国から、いつ軍事行動が始まるかわからぬ。
沖繩や
日本基地を使っての核戦争の危険、人類共滅の核戦争に、
日本と
日本国民がいつ巻き込まれていくかわからぬということであります。
核実験の即時停止、核停
協定の
成立、完全軍縮、
アジアを中心とする
緊張緩和、これはすべての
国民の願うところであり、
日本の
政府が
国民の
政府なら、一番緊急な
外交方針としてとらねばならぬところではないでしょうか。さきの通常
国会の施政方針
演説では、
池田総理大臣から、
緊張緩和について一言触れるところがありましたけれ
ども、今度の
所信表明では、故意か偶然か、全く触れられておりません。だから、この点について、いかなる具体的な方針を持っておられるか伺いたい。
しかし問題は、この
核実験の停止、核装備を含む完全軍縮、
アジアの
緊張緩和を、
日米協力と力の均衡
政策の上に立ってやるのか、東西両陣営のいずれにも加担せず、
日本の自主的な
立場、
日本国民の滅亡を防ぐために
努力するか、いずれかであります。力の
政策に立たず、自主的な
立場から、
アジアにおける
緊張と核戦争の危険を一日も早く取り去るために、まず核停
協定を成功させるため
努力することが、
日本政府の緊急課題だとするならば、軍縮委員会に提出されている
核実験の停止のための
中立八カ国案があります。これを基礎に核停
協定が結ばれるよう、諸国家に呼びかけたり、国連総会で
努力すべきではないでしょうか。岡崎国連大使は、重要事項方式に賛成を得るため、カサブランカ諸国を回ったと言われます。
緊張緩和、核停、軍縮への道を作るために、八カ国案を基礎にして、国連で
核実験停止促進決議を実現しなければならぬとするならば、
アジア・アフリカの
中立諸国をそのために歴訪することこそ、国連大使の仕事ではないでしょうか。EECの実情を見、
日本のこれに対する対策を立てるため、
総理は欧州諸国を歴訪するとのことですが、しかし、当面この緊急の核停
協定の成功、軍縮交渉
成立促進のため、イギリスの
首相を説き、
中立諸国の結集をはかり、あるいは
アジア・
アフリカ諸国の協力を得るため
努力することも、より緊急であり、当面の
外交の
最大のものではないでしょうか。
総理と外相に聞きたい。また、
ソ連と
アメリカだけで核戦争をするとかしないとかきめられて、その影響を黙って受けねばならない義理があるだろうか、
核兵器の
実験禁止だけでなく、
ソ連と
アメリカの
関係を何とかするような
努力をしなければならぬのではないかと言われる河野
国務大臣に、この問題についての
意見を聞きたいと思います。
アジアにおける
緊張緩和の鍵となるもう一つの問題に、
ソ連、
中国の問題があります。
所信表明は、従来の方針の繰り返しで、
中国、
ソ連との国交調整、
緊張緩和のための具体的な
政策が何にも示されなかったし、日中、日ソの
貿易拡大の具体策も論及されませんでした。訪ソ
経済使節団に大きな
期待がかけられ、シベリア
開発にどれだけ
日本の
経済技術が協力できるのか、締結される日ソ
貿易協定の規模や、これに対する
政府の
態度が注目されているし、
総理と石橋氏との会談、その結果、どういう具体的な
措置がとられるのか、
国民の注視と関心が集まっているときだけに、日中、日ソ
貿易拡大に対する
政府の方針を承りたい。
これらの点に関連して、二つのことをお尋ねしたいのであります。
一つは、来月から始まる国連総会での
態度についてであります。
池田総理は、その政局担当にあたって、
中国問題について前向きの姿勢をとる、あるいは
中国は敵視していないと
答弁してきましたが、昨年の国連では、岡崎大使の口から、「二つの
中国」という言葉は使わぬけれ
ども、まさに「二つの
中国」論を内容とする
演説がなされました。
中国の国連における
地位の回復の問題については、重要事項方式の提案国となったのであります。
日本が
中国に対して友好的であるというならば、
中国が国連に正当な
地位を回復させるのが当然だという
ソ連案、あるいは
中立国案に対して、賛成するのは当然でありますが、しかし、それができないにしても、
中国を国連に復帰させるべきではないという案に対しては、せめて棄権すべきではないか。重要事項方式の提案国にはなるべきではなかったという
意見が
政府部内にもあります。ことしの国連総会でどういう
態度をとられるか承りたい。
もう一つは、
貿易を促進したいと言われる。しかし国連や
外交政治の舞台で非友好的な
態度をとっていて、
貿易が増大すると思われるか。これに関連して二つの
意見が最近述べられました。一つは、ハリマン国務次官補及び
アメリカ大使館からの、日中
貿易を
拡大することは好ましくないという意思表示であります。この露骨な内政干渉の疑いある発言に、
日本政府自身困ったようですが、しかし自由主義陣営並みのことしか
考えていないからという弁明によって、日中
貿易の出鼻をくじかれたのは事実のようであります。もう一つは、
国務大臣の河野氏の「特定の国に追随する
外交をやめて先立つ国自身濃霧の中に混迷しているとき、そのあとを追随することがどんな結果をもたらすか、よく
考え、民族の自主的な
立場に立ち、共存
外交とともに共通の
利益を
考え、
貿易のごときは大いに伸ばすべきだ」という議論であります。これについて
総理及び河野
国務大臣の所見を伺いたい。
なお、佐藤前
通産大臣は、日中
貿易にも第三国保証なしの延べ払い方式を認める方針だと言明されました。改造
内閣でも同じ方針だと理解してよろしいか。また
総理が石橋湛山氏に会われた後、
輸出入組合の強化と、これを通じての日中
貿易の
拡大を検討されているようであります。しかし、岸
内閣当時の日中
貿易中断と、その後の経緯や、
貿易三原則もあり、友好取引の
拡大と長期化をこそ
考えるのが本筋だと
考えます。
日
ソ貿易、日中
貿易とも、
政府が友好的であること、
ソ連、
中国が長期計画を持っているのだから、契約の長期化をはからねばならぬとすれば、何らかの
政府保証を
考えるべきであること、ココムの撤廃に
努力することこそが、日中、日
ソ貿易等、いわゆる
共産圏貿易に関連する
政府の施策であらねばならぬと
考えるが、
総理、外務、通産各
大臣の所信を承りたい。
次に、日韓会談についてでありますが、まずこれは、日韓会談の前提となる原則的問題ですが、第二次大戦後の一つの特徴として、朝鮮のような不幸な分割された民族が幾つかあります。これら民族国家は、かつて一つであったし、また当然に一つに再統一されねばなりません。統一は民族の
悲願でありますが、実際には統一は容易でなく、しかも統一を妨げている
原因が、その民族以外の大国にあるため、不幸な分裂自身が
紛争の種になり、
緊張の
原因となっております。こういう不幸な民族、不幸な国に対して、
日本はいかなる
態度をもって臨むべきか。外国の干渉、外国の軍隊の撤退、そして民族自決による統一を助けることこそが、唯一の解決策であり、
紛争や
緊張を除く道ではないかと
考えられますが、
総理、外務
大臣の御所見を伺いたい。
また、もう一つは、日韓会談は何を
目的とするのか。カイロ宣言によって自由独立のものとして
日本から分離された朝鮮に対して、この分離独立に関連する諸問題を解決して、国交正常化をはかろうとするのか。そうすると、朝鮮を一体として
考えなければなりません。それとも、軍事政権を支援をし、
アメリカの示唆にこたえて国交正常化を急ごうとするものであるかどうか。これに関連をして、国連に設置されている統一復帰のための朝鮮統一復興委員会の存在と活動を無視しても、なおあえて韓国との国交を正常化し、統一を阻害するつもりなのか、
首相と外相に伺いたい。
日韓会談は、今までの経緯から見ても、あるいは新
内閣になってからの
総理、外相の談話から見ても、近く予備折衝が開始され、ソウルでの高級
政治会談が開かれるようでありますが、次の諸点を
総理と外相に伺いたい。
韓国との国交正常化は、領土請求権等、諸懸案の一括解決を織り込んだ基本条約方式によるのか。諸懸案は一応たな上げにして、国交正常化のための共同宣言方式によるのか。共同宣言方式によるとすれば、竹島問題に関連する領土の問題、国籍の問題、帰国問題、対日請求権問題、季ライン
問題等、懸案は、いついかなる形式と内容で解決するつもりか、伺いたい。国交正常化と諸懸案解決とを切り離し、請求権問題の解決なしに日韓会談は
成立するか。
日本側からいっても、竹島問題、李ライン問題が解決せずして、日韓国交正常化して、それで
国民が納得すると
考えられておるのかどうか。
また、会談再開の前提と言われた韓国における
日本代表部の設置問題はどうなったか。
いわゆる対日請求権は、賠償請求権的なものか。あるいは法律的、事務的なものか。対日請求権の合法的、合理的根拠のあるものというのは幾らか。無償
援助、
経済援助を加えて総額幾らという形を
考えているのか。請求権の範囲は、小坂外相は、三十八度線の南、すなわち、韓国の地域に限り、北を含まないと答えていたが、大平外相も同様に
考えているものと理解してよろしいかどうか。
経済協力について
政府保証を
考えられているかどうか。日韓
経済協力は、純然たる民間ベースでは、手動式の漁網一万ドル余の無為替
輸出許可の申請一件にとどまっております。湯川氏その他が石井光次郎氏から
池田総理に伝えられたという保税加工方式は、朝鮮の中に租界を作るものとして、朝鮮全土から
反対をされているところであります。
日本からいうと、かつてのような在外権益を作るものではないでしょうか。また、有償無償の
援助は利権の対象となり、汚職が発生する危険が多分にあります。
請求権支払いを含む対韓
援助は、南ベトナムのゴ・ジン・ジェム政権に対する「鶏三羽に三百億の贈償」と同一の運命をたどり、
日本国民の税金を使って反共政権を支援をしたが、民族の信頼をつなぎ得ない政権への
援助は、民族の反感を残すのみで、泥沼に金をつぎ込むのと同じ効果しかないという運命をたどる危険性がきわめてあると
考えられますが、以上の諸点について、
総理、外務、通産の各
大臣に所見を伺いたい。
次に、今度の
所信表明の中心だといわれる人作りについてであります。
この国作りの基本たる人作りは、
参議院選挙の際強調された「法秩序の無視の傾向と暴力的風潮」の排除のための治安立法と呼応して、徳性の涵養、祖国愛の強調などを基礎にしようとしております。教育基本法は、憲法の民主主義、平和主義の原則に基づいて、教育の基本を、「民主的、平和的な国家社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値を尊ぶ自主自立の人格完成を目ざす」ものと規定しております。この教育の基本目標と、人作りの基礎である祖国愛だの、あるいは民族精神といわれるものは、異質のものではないでしょうか。教育基本法の平和的、民主主義的教育を、赤の教育、革命の教育と非難する
立場から、徳性の涵養、祖国愛の養成ということになると、それは、古い修身的道徳観とファッショ的祖国愛思想とを結びつけて、教育内容を全く変えようとするものではありませんか。そうして、この教育の転換と、
アジアの
緊張の激化、祖国を守る義務とは、結びつく必然性を持っております。祖国防衛のために一身一命を犠牲にするという徳性につながって参ります。私は、
総理の
所信表明を聞きながら、「この話はいつか聞いた話」という気がいたしました。世の中を変えようとするとき、
政治の基本方向を変えようとするとき、まず教育の目標が変えられ、学問が
政治によって曲げられ、方向づけられて参ります。学者や教育者や、なかんずく教職員に熾烈な攻撃を加える右翼
団体、治安グループの台頭と相呼応し、法秩序の擁護とともに祖国愛を強調して、人作りを進め、教育の基本理念を変えようとする
池田総理の
態度を
考え合わせると、ちょうどあの満州事変前後、準戦体制への道を推進した時代を思い起こさせます。「いつか来た道」、暗い道をまたたどらせようとするのか、
総理に伺いたい。
次に、大学管理制度改革問題についてお尋ねをしたい。
総理は、先日の
所信表明にはこのことに触れませんでした。しかし、
参議院選挙にあたって、あるいは
内閣改造の記者会見では、この点に触れました。言うまでもなく、大学は学術研究の中心であるとともに、また、人材養成の最高機関でもあり、近代国家存立発展の基礎をつちかうものであります。したがって、そのあり方いかんに
国民が大きな関心を寄せることは当然であります。しかし、学問の自由、学園の自治の保障、その具体化のための自治制度は、今日のあらゆる
先進国家のいい伝統として確立せられて参ったところであります。洋の東西を問わず、大学の歴史は専制的な
政治権力者との闘争の歴史でありました。
日本で、大正の初め、デモクラシーの高揚期にやっとたたかい取られた大学の自治の原則も、その後、
昭和初頭から始まったファッショ的軍国主義の台頭期に、学問思想の自由とともに弾圧攻撃が加えられました。いわく森戸事件、京大事件、この議場にも
関係のある天皇機関説事件、その間における荒木文部
大臣——名前は違いますが、荒木貞夫文相の大学自治制度批判事件等々、数え切れないほどありました。そうしてこの大学自治と学問の自由に加えられた弾圧は、
日本を敗戦に導いた序幕であったのであります。今日、
総理は、大学管理問題を取り上げてどう改革しようとするのか。中教審の答申待ちと言っておりますが、大学の管理運営に
政府が
責任を持てるように、学長や教授の
任命に拒否権を持つかいなかはともかくとして、何らかの権限を持とうとしているのは明白ではありませんか。これをわれわれは、大学の自治と学問の自由に対する制約の企図があると言う
ゆえんであります。私は、故鳩山一郎氏を戦後の数少ない
政治家の一人としてあげることができると思いますが、
政治家として識見を持ち、日ソ
国交回復と
日本の国連加盟に寄与されました。しかし、残念なことには、彼は文相として、滝川教授をその刑法読本の
ゆえに追放し、京大事件の
責任者であったという点で、歴史に汚点を残す結果となりました。
池田総理も鳩山さんのような悪名を歴史に残すためあえて勇断をふるおうとするのでありましょうか、
総理の所信を伺いたい。
次に、国家公務員の給与改定に関する人事院勧告に関連して、
総理及び給与担当
大臣にお尋ねをいたしたい。
人事院は、十日、
国会及び
内閣に対して、
一般職国家公務員の給与に関連して勧告を行ないました。わが党は基本的にはこの勧告の内容に不満であります。なぜなら、労働省の毎勤によっても、この一年間民間給与の平均
上昇率は一三・三%に上っております。人事院自身が調査したところによっても、民間給与との格差は九・三%を上回っているのに、人事院は七・九%と
上昇率を押えたからであります。
消費者物価指数は、昨年四月から本年三月までの間に全都市七・八%の
上昇、家計費の増加は一三%、民間給与との差は依然として大きく、公務員労働者の
生活水準は民間に比して大幅に低下しております。こういった実情を知りながら、年なおかつこの
上昇率を低く押えた理由は、
政府からの圧力と人事院の
政治的考慮以外の何ものでもありません。わが党は、人事院勧告の実施にあたり、民間給与との格差解消のため、勧告を大幅に上回る
措置、技術職員の待遇についての抜本的
措置、実施期日、昨年十二月なされた暫定手当整理の勧告の完全実施を
政府に要求をいたしました。以上の諸点と、実施期日を五月一日にさかのぼり実施するかどうか、財政上の
措置をどうするか、
国会の開会中勧告がなされたのでありますから、
国会にすみやかに給与法の改正案と補正
予算を提出すべきでありますが、
総理及び給与担当
大臣の所見を承りたい。
なお、災害対策についてお尋ねしたいのでありますが、時間がございませんから、このたびの北九州から北海道に及ぶ水害と有明海の魚介類壊滅に対する対策の大綱と、その
措置のため、給与とともに補正
予算を組むべきであると思うが、
総理、建設
大臣の所見を承りたいところであります。
最後に、危機を告げ、従業員の雇用と
生活きわめて不安な石炭と金属鉱業の問題について伺いたい。
四月六日の閣議決定によって、石炭
産業の安定と雇用の安定について抜本的対策がとられることが約束されました。そして、石炭調査団が九州、北海道の現地を視察して、現在答申の作成中であります。ところが、この答申を待たずして、依然として閉山、首切りはますます強く進行しようとしております。いな、進行しつつあります。しかも、その後、雇用
市場は全く変化して、受け入れ態勢はない深刻な実情の中で、首切り、閉山が続いております。炭労の大量動員と無期限ストライキが中止されたのは、解雇が答申までストップされ、
生活と雇用の、安定について
政府が誠意をもって
措置すると信じたからであります。しかるに、事実はその逆であります。もしこの事態によって、
政府が閣議決定をもって保証したのに、それが裏切られたという印象を、労働者、
国民に与えるとするならば、きわめて重大な問題だと思うのであります。総合エネルギー対策の確立について、また炭鉱の最低賃金制について、具体案はいつごろ明らかにできる段階にあるか、
総理、
通産大臣にお尋ねをいたしたい。
金属鉱業は、重要基礎
産業でありますが、比較的
国際競争力が弱く、
貿易自由化を目前に控えて、一歩誤れば壊滅的な打撃を受けること必至であります。このため、通常
国会で危機打開のための決議等がなされました。
政府は決議に応ずるいかなる対策を立てつつあるか。また、十月
自由化が予定されているアンチモニー地金、水銀、マンガン鉱石、黒鉛、石綿等の五鉱種について、格安外国品の脅威や全般的外国相場の値下がりのため、保護
措置のみでは対処できないといわれますが、問題の銅、鉛、亜鉛等とともに、この際、
自由化を延期し、抜本的金属鉱業対策を確立すべきであると
考えるが、いかがです。すでに
自由化を待たずして金属鉱業は深刻な
不況に見舞われ、昨年以来一万名近い労働者の首切りが行なわれ、また切られようとする現状であります。雇用の安定と離職者対策についていかに
考えるか。
以上、
総理の所信
——具体的内容の乏しかった所信に対して、社会党を代表しての
質問を終わる次第であります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕