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1962-10-01 第41回国会 参議院 文教委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年十月一日(月曜日)    午前十時四十三分開会   —————————————  九月四日   辞任      補欠選任    柏原 ヤス君  二宮 文造君  九月七日   辞任      補欠選任    二宮 文造君  柏原 ヤス君  十月一日   辞任      補欠選任    千葉千代世君  永岡 光治君  出席者は左の通り。    委員長     北畠 教真君    理事            斎藤  昇君            二木 謙吾君            吉江 勝保君            豊瀬 禎一君    委員            笹森 順造君            森田 タマ君            岡田 宗司君            小林  武君            永岡 光治君            米田  勲君            高山 恒雄君            高瀬荘太郎君   事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君   説明員    大蔵政務次官  竹内 俊吉君    文部省大臣官房    総務課長    木田  宏君    文部省大臣官房    会計課長    安嶋  弥君    文部省初等中等    教育局長    福田  繁君    文部省大学学術    局庶務課長   西田亀久夫君    文部省大学学術    局教職員養成課    長       安養寺重夫君    文部省管理局長 杉江  清君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告教育文化及び学術に関する調査  (当面の文教政策に関する件)   —————————————
  2. 北畠教真

    委員長北畠教真君) ただいまより文教委員会開会いたします。  委員の変更について御報告いたします。  本日、千葉千代世君が辞任され、その補欠として永岡光治君が選任されました。   —————————————
  3. 北畠教真

    委員長北畠教真君) 次に、委員長及び理事打合会について御報告いたします。開会前、本委員会運営について協議した結果、本日は、文部省関係昭和三十八年度予算の件について質疑を行ない、また、委員派遣報告を行なう。なお、十一月の委員会は十一月三十日を一応開会予定とするが、臨時国会などが開会される場合には理事各位と御協議の上、決定する、以上のように取り計らうことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 北畠教真

    委員長北畠教真君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  5. 北畠教真

    委員長北畠教真君) まず、先般、委員会で行ないました滋賀県、奈良県下の委員派遣につきまして、派遣委員から報告をお願いすることにいたします。岡田君。
  6. 岡田宗司

    岡田宗司君 調査の御報告を申し上げます。  去る九月七日から十日の四日間にわたり、北畠委員長、中山、米田委員と私のほかに、調査室から工楽室長生田調査員文化財保護委員会から事務局蒲生次長が同行いたしまして、滋賀県及び奈良県の視察をいたして参りました。  調査項目は、地方教育状況大学の実態、文化財保存保護の現状の三点でありますが、特に現在問題となっております平城宮跡保存対策など、文化財保護の問題について重点的に調査をいたしました。したがいまして、以下の報告は各項目別に申し上げますけれども報告の大部が文化財問題によって占められますことを、あらかじめ御了承いただきたいと存じます。  まず、地方教育状況について、その問題点につき申し上げます。御承知のとおり、現在最も緊要な問題は高等学校生徒急増対策でありますが、滋賀県の例についてみますと、中学校卒業生数昭和三十六年度の一万一千七百人に対し、昭和三十九年度は二万一千九百人と、倍に近い増加が予想されますので、これを基礎として対策を立てておりますが、新設既設校の新増築で百二十五学校設置することとし、残余は特別教室転用と一〇%のすし詰めによる増加で収容することといたしておりますが、これらの新増築事業費が五億円余であり、屋体の新築校地買収設備費等を加えますと総事業費は十億円余に達し、県としては苦しい状況にあるとのことでありました。これらの事情奈良県においても同様であります。なお、両県におきまして、工業高校以外にも高校施設整備校地の購入に対し、大幅な国庫補助をすること、地方負担分全額記載と認めることについて強い要望がありました。  これらのほか、一、学校建築単価是正構造比率改善基準坪数改訂等義務教育施設整備促進充実、一、義務教育学校学級編制基準の引き下げ、一、産業教育施設に対する建築単価是正国庫負担率の引き上げ、一、公民館、図書館、青年の家等社会教育施設設備に対する国庫補助増大等についても要望がありました。特に奈良県では、その地域性から、小規模学校が多い実情にかんがみ、学級編成及び教職員定数基準改訂には特別の配慮が希望されました。  次に、大学について、申し上げます。今回視察いたしました大学は、滋賀大学奈良女子大学でありまして、いずれも国立大学としては最小規模大学であります。滋賀大学は、本部経済学部彦根市に、学芸学部大津市にあります。私ども大学本部におきまして、学長から、一部の学長を認証官とするよりも、予算大幅増額による新制大学全体の改善充実をはかるべきであるとの意見や、地方大学における教官海外留学がきわめて少数であること、教員待遇改善による教員養成充実、併設の経済短期大学部学部の予備校化していることなどについて説明を聴取いたしましたほか、本学では教官研究意欲が盛んで、経済学部はもちろん学芸学部の湖沼の研究ども大いに成果を上げているとの報告を聴取しました。また、経済学部付属施設である史料館を視察し、名門彦根高商近江商人とゆかりをしのびました。なお、滋賀県には県立の短期大学があり、工業、家政、農業の三部に分かれておりますが、県当局彦根市にある工業部を同市内の新敷地に移転して新築する計画を進行中であり、すでに工事を開始いたしております。県は、この計画を完成した上でその諸施設を提供して、この工業部滋賀大学工学部として昇格移転されたいと申しているのでありますが、近畿工業地帯衛星県として、技術者養成のために滋賀大学工学部設置されることはきわめて時宜に適したものと考えますので、当局善処を希望しておきます。  奈良女子大学は、お茶の水女子大学とともに、国立大学としてはわが国にただ二つの女子大学一つでありますが、在学生出身地は全国的に分布しており、名実ともわが国における女子最高教育研究機関たるべく整備充実に努めているとのことであり、当面、特に次の三点の実現要望されました。  その一は、高度の女子研究者養成するための大学院修士課程設置であり、その二は、助手の増員を含む教官定員増加、その三は、建築以来五十余年を経た老朽狭隘校舎の改築を主体とする校地校舎整備拡充であります。なお、本学におきましては、新築女子学生寮を見て、女高師以来の伝統を持った女子教育重要性について感を深くいたしました。  次に、文化財について申し上げます。まず、滋賀県について御報告いたします。  彦根所有彦根城は、丘陵上に設けられたきわめて意匠のすぐれた城郭であり、築城の当初から火災に対して注意が払われていたのでありますが、現在の防火施設もきわめて貧弱であります。貯水槽設置計画はあるやに聞きましたが、いまだ実現には至っておりません。なお、城門外のうまや部屋は珍しい建物でありますが、荒廃著しいものがあると見受けました。早急に重要文化財として指定し、修理を加えるべきものであると考えました。また、史跡としての彦根城跡は城郭史上重要な遺構として、特別史跡指定されており、その北部には名勝玄宮、楽々の両園があります。長く無制限に公開されていたため、相当に原形を損じており、現在、保存修理が行なわれております。彦根市は、これらの庭園を民間に貸しつけて料亭として使用させながら管理を行なわせているのでありますが、防災検討を要する問題であります。  大津市の通称三井寺と呼ばれております園城寺におきましては、近年修理されました国宝光浄院客殿勧学院客殿及び近く修理予定されておりますふすま絵等を視察しましたが、ここでも防火施設充実が必要であると認めました。特に寺院側からは、指定物件のみでなく、未指定物件についても修理を進めなければならず、経常的な支出もかさむので、指定物件に対する現行の補助率を引き上げられたいとの要望がありました。実際、指定物件についてのみ修理補助事業実施しても、これに隣接する建造物維持管理を放置しては、保護の完璧は期し得ないのであります。環境の整備防災の見地からもきわめて重要な問題でありますから、当局において十分検討すべきであると考えます。  比叡山延暦寺におきましては、山上に点在する国宝建造物防災について、すでに早くから格段の配慮がなされていたにもかかわらず、先年、大講堂の火災があり、その後さらに一そうの考慮が払われております。すなわち、根本中堂を初め全寺域にわたって八十メートル余の高所に設けられた貯水槽から堂塔の周囲の消火栓に至る配管がなされております。また、避雷針、自動火災報知器設備もあります。しかし、これらの設備を活用するためには、平常時における関係者訓練が必要でありますが、冬季には放水訓練によって消火栓が凍結することとなるので、訓練実施できないという矛盾した事情もあることを聞きました。これらの問題については化学消防等考慮して、今後さらに一そうの研究が望まれるわけであります。  なお、滋賀県には重要文化財指定された小規模な建造物が多く、それが全県各地に散在しているのでありますが、野洲町において円光寺本堂など二、三の社寺を視察いたしましたところ、これらには全然防火施設がなく、その不備を嘆かなければならなかったのであります。  次に、奈良県について申し上げます。  文化財保存について常に問題となります点は、保存公開との関係であります。博物館はこの公開活用面において最も重要な施設でありますが、残念なことに、奈良国立博物館はその建築が明治二十八年という古いものでありますため、建物自体が古文化財であり、国宝重要文化財を収容展示するにふさわしい建物とは申されません。防災上完備した博物館として早急に本館並びに収蔵庫新設することが絶対に必要であると認めました。  次に、各寺院に設けられた収蔵庫の問題があります。まず、興福寺修蔵庫について考えます。この収蔵庫には国宝指定天平彫刻類が多数に収容されており、国宝館という名称で呼ばれて、博物館同様、一般公開されております。したがいまして、連日多数の観光客が入館し、相当土ほこりを上げるわけでありますが、観光バスの立ち上げる砂塵もまた館内に入り込み、それらが国宝にかなりのほこりを付着させているのであります。これらのほこりは、金銅仏ならば洗い去ることもできましようが、木造仏乾漆仏の場合には洗うわけにも参らず、その保存上大へんな支障となるわけであります。最近この収蔵庫入口付近へは観光バスを乗り入れさせないこととした由であり、適切な措置であると思いましたが、収納ケース収塵器設置を考えるなど、これら収蔵庫運営方法については、今後さらに検討の余地があると考えます。なお、東大寺においても、収蔵庫を建設中でありますが、一般公開予定しておりませんので、興福寺の轍を踏むことはないわけであります。さて、国宝重要文化財である美術工芸品防災保存のために、寺院等がみずからその収蔵庫を建設し、国庫がそれに相当額補助金を支出するという措置は、最近の文化財保護行政における一つ傾向でありますが、それが防火対策の一面は果たし得ても、収蔵庫公開のための観光施設となり、そのため収蔵する文化財自体保護保存に遺憾なきを期し得ない点のあることを指摘しなければなりません。したがいまして、国家が完備した収蔵庫を建設して、全国的に各所有者国宝重要文化財を保管収容する施設整備する必要があると考えます。奈良博物館収蔵庫新設要望するゆえんもここにあるわけであります。この問題と関連いたしまして、正倉院をも視察いたしました。正倉院校倉宝庫が、その裏を道る観光バスの排気や塵埃によって冒され、宝物の保存支障を来たすという声を聞いてからすでに久しいのでありますが、現在防火避雷、防塵、防湿、空気調節等すべてに完備した東西両宝庫が完成しております。正倉院における防災施設設備はまことにりっぱであり、国宝重要文化財を収納する倉庫はすべてかくあるべしと今さらのように痛感させられました。  次に、法隆寺唐招提寺薬師寺について申し上げます。法隆寺においては、主として中門の重要文化財呵吽の仁王両像修理状況を視察しました。これらの像は高さ三メートル七十八センチに及ぶ希有の大塑像でありますため、その修理はきわめて困難でありますが、現在は修理のための諸調査が行なわれており、実測図作成像内部のエックス線、ラジオアイソトープによる調査、石膏型の作成、木部の虫害防除措置等が行なわれております。文化財虫害防除対策は現在なお不十分でありますので、木像の修理とも関連いたしまして、虫害に対する科学的な研究を進めるため、文化財保存科学研究陣容の強化が必要であることを強調いたしておきます。唐招提寺薬師寺におきましては、国宝建造物彫刻類を鑑賞しながら、これら両寺における防災施設設備について考えさせられました。法隆寺におきましては、文化財保護法制定の端緒となりました昭和一千四年の金堂失火以来、その防災施設が大いに完備され、防火避雷はもとより、収蔵庫についても格段の配慮がなされておりますが、唐招提寺薬師寺では、近年失火などがなかったためと申してはいささか逆説的でありますが、その防災施設法隆寺に比べて著しく不備であります。焼けてからの防災よりも一焼かない前の防災が大切であります。ここにも現在の文化財保護行政の重要な問題があると考えます。そこで、次に元興寺極楽坊について申し上げます。  元興寺極楽坊法隆寺唐招提寺薬師寺などと違いまして、奈良市内の住宅や店舗の密集地の中にある国宝建造物であります。防災については特段の考慮を必要といたします。極楽坊は戦前から解体修理が行なわれていましたが、解体のまま終戦を迎え、昭和二十九年にようやく修理を完成しました。完工当時は禅室の裏側で隣接する民家と軒し、防火上全く危険な状況にありました。しかし、その後周辺民有地民家買収、立ちのき、取りこわし、防火壁貯水槽設置等、まれに見る防災計画実施され、すでに三千万円が投ぜられております。しかし、現在もなお門に接して民家があり、その撤去やドレンジャレー、特別水道設置など、今後さらに徹底した防災計画実施が必要であると痛感いたしました。  次に飛鳥平城宮跡を含めた史跡保存存について申し述べます。  昭和二十九年、農林省の大和平野農業用水導水路工事実施されることとなり、その水路予定線飛鳥地方宮跡寺院跡など数多くの史跡を破壊するおそれが生じたため、付近史跡調査が進められることになったのであります。そして、飛鳥地方発掘調査奈良国立文化財研究所奈良教育委員会との共同で昭和三十年から三十二年にわたって実施されました。調査の結果、現在、飛鳥大仏を安置する安居院の位置は飛鳥寺の中金堂跡であり、大仏の台座は飛鳥寺創建当時のままであることを確認するとともに、飛鳥時代伽藍形式遺構を新知見として発見いたしております。さて、飛鳥地方発掘調査としては、現在、飛鳥板蓋宮跡調査昭和三十五年以来、奈良教育委員会国庫補助を受けて継続実施しておりますが、事業費も少なく、まことに遅々たるものであります。地元の明日香村村長など関係者からは、飛鳥地方発掘調査早期に完了するとともに、その遺跡も明らかにし、保存のための所要の施設をするようにとの陳情がありました。私どもは、飛鳥寺遺構として明らかとなりました飛鳥大仏周辺地域は、これを史跡として指定し、その民有地国有地として買い上げ、適当な施設をして保存すべきであると認めました。当局において検討の上、適切な措置がとられるよう要望いたしておきます。  次に問題の平城宮跡について申し上げます。お手元にパンフレットをお配りしてございますので、御参照いただきたく存じます。平城宮跡は、大正十三年、史跡名勝天然記念物保存法の施行に伴って史跡として現在の国有地とその周辺指定され、昭和三年にその地域が拡大され、昭和二十七年に文化財保護法によって特別史跡指定され、現在に至っております。宮域の総面積は約三十万坪、内指定地は十六万七千坪、そのうち国有地は三万六千坪であります。近年、奈良市の発展と土地開発活発化に伴いまして、指定地の内外において農地外への転用が激増する傾向にあり、この貴重な史跡保存が困難となりつつあったのでありますが、特に昨年、近畿日本鉄道株式会社宮跡西南隅の未指定地に検車区を設置する計画を進めたため、その保存について全国的な世論が起こったのであります。私どもは、奈良文化財研究所現地発掘事務所におきまして、所長を初め発掘担当者から詳細な説明を聴取いたしますとともに、発掘された遺物、発掘現場をも実地に調査いたし、今日までよく保存された平城宮遺構を目前にして、これが保存重要性を認識いたしました。また、現地において指定地所有者代表からの陳情を聴取いたしました。代表者意見は、当初は指定全面解除要求していたが、現在は調査結果を利用するために調査に協力する態勢をとっている。しかしながら、現在の調査計画は今後百年を要する事業であるから、宮域全体を国で買い上げよというのであります。また、買い上げに際しては、一部の農家を犠牲にすることなく適正価格買い上げられたいとのことでありました。なお、知事県当局及び知事を会長とする飛鳥平城京跡保存会代表等との会談におきましても、平城宮跡保存について、一、宮跡の国の早急な買い上げ、特に関係地域内の民有地全域買収、二、発掘調査早期完了、三、宮跡全域史跡公園として国民の文化的向上に資する施設考慮等、三点の要望が出されました。文化財保護委員会では、先般ようやくこの宮跡買い上げ方針を立て、昭和三十八年度の概算要求予算において、未指定地指定地の一部を買い上げるため十一億円余を要求しており、さらに年次計画をもって宮跡全域買収する計画であると申しておりますが、私どもは、これらの貴重な天平文化の遺産を保存するためには、平城宮跡国有化のみにとどまらず、現存する南都諸大寺を含めた平城京公園化緑地化等の積極的な基本方針を確立することと、発掘調査遺構保存のための恒久的な調査機関設置が必要であると考えました。  以上で平城宮跡関係報告を終わりますが、文化財保護に関連して、なお若干追加して御報告することをお許しいただきたいと存じます。  私どもは、第二室戸台風によりまして被害の著しかった春日山原始林のドライブ・ウエーを一巡しましたが、都会地に接したこのような原始林はきわめて貴重な天然記念物でありますから、その災害復旧にはさらに一そうの努力が払われるべきであると痛感しました。ところで、この原始林に続いて、その西方に三笠山温泉郷や、遊覧地としてのドリームランドがあり、奈良文化の景観を破壊するものともいわれております。私どもはこれらを見まして、地元文化財保存に対する意欲に欠けるところがあったのではなかったかと思量いたしました。特に三笠山温泉郷は、正倉院東大寺北東方にあり、万一出火の際は北風に乗って文化財への延焼も憂慮されるというものでありますので、県当局との会談におきましても注意を喚起しておきました。また、奈良の宿舎におきまして、文化財保存に従事するいわゆる宮大工の養成、処遇についての陳情を受けましたが、重要な問題でありますので、県当局との懇談におきましても、その善処方要望しておきましたが、根本的には文化財保護委員会において本質的な検討を加え、適切な解決をする必要があると考えます。その他、奈良県当局からは、史跡等記念物保護対策防災施設完備等一般的な要望があり、特に知事からは、委員会制度検討を含む文化財保護法の改正についても言及がありましたことを申し添えましてこの報告を終わることといたします。以上でございます。
  7. 北畠教真

    委員長北畠教真君) 本報告に関する質疑は後日に行ないたいと存じます。   —————————————
  8. 北畠教真

    委員長北畠教真君) それでは、当面の文教政策に関し調査を進めます。  まず、文部省所管昭和三十八年度概算要求額重要事項について説明を願います。安嶋会計課長
  9. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 ちょっと委員長説明会計課長でけっこうですが、文部大臣はどうして出席しないのですか。
  10. 北畠教真

    委員長北畠教真君) 速記をとめて。   〔速記中止
  11. 北畠教真

    委員長北畠教真君) 速記を始めて。
  12. 安嶋弥

    説明員安嶋弥君) お手元にお配りいたしております資料につきまして、昭和三十八年度の文部省概算要求内容について御説明を申し上げたいと思います。  一番最後の九ページをごらんいただきますと要求総額がございますが、明年度要求総額は四千百十四億円余でございます。前年度予算が二千八百九十五億円余でございまして、差引千二百十八億円余の増加になっております。比率といたしましては、前年度に対しまして約四二%の増額要求でございます。  第一ページにかえりまして、以下、資料の順に従って御説明を申し上げたいと思います。  まず第一は、初等中等教育改善充実でございまして、最初義務教育費国庫負担金でございます。これは御承知のとおり、給与費教材費と、それから本年度新たに入りました共済年金に対する国の負担金、この三つに大きく分類されるわけでございます。まず給与費につきましては、御承知のとおり、明年度公立義務教育学校学級編制及び教職員定数標準に関する法律の実施の五年目にあたりまして、したがいまして、それの完全実施ということを積算の根底にいたしております。なお、明年度小学校児童が約五十八万六千人減少いたします。それから中学校生徒が約三十四万九千人減少いたします。合計で九十三万六千人の児童生徒の減ということに相なるわけであります。これに対応いたしまして標準法を適用いたしますと、約二万一千人の自然減教職員定数についてあるわけでございますが、これを最初に申し上げました学級規模適正化教職員定数充足等にその自然減を当てまして、なお全体といたしまして六百九十人余の増員要求いたしております。学級編制基準でございますが、現在は小学校が五十四、中学校が五十二になっております。これをいずれも五十に引き下げまして標準法完全実施をはかりたいというふうに考えております。それが教職員定数に関しまする大体の考え方でございます。それから次は給与内容でございますが、昇給原資は三%程度要求いたしております。旅費につきましては、実績等を勘案いたしまして今年度の四千八百円を八千百円に引き上げる要求をいたしております。それから校長の管理職手当でございますが、これは八%を一二%に引き上げる要求をいたしております。それから宿・日直手当でございますが、現在、日直が三百円、宿直が二百十円になっておりますが、これをいずれも三百六十円に引き上げる、そういう要求をいたしております。それから特殊学級担当教員調整額でございますが、四%を八%に引き上げる要求をいたしております。給与費内容につきましては、大体以上申し上げたところがその考え方の中心でございますが、なお、人事院勧告の実施につきましては、これは例年の例に従いまして、この要求には含めておりません。次は、教材費でございますが、これは単価を約二倍程度に引き上げる要求をいたしております。なお児童生徒数につきましては、学校の規模に応じまする補正をいたして、その補正された児童生徒数を基礎にして実際の教材費が配当されておるわけでございますから、その補正の係数をかなり変更いたしております。その変更の考え方は、小規模学校をより有利にするという方向で補正係数の是正を考えております。それから共済年金でございますが、これは年金の国の負担分の平年度化分をまず計上いたしておりますが、そのほかに整理資源といたしまして俸給の千分の七を計上いたしております。それが、共済年金の六十四億円余の内容でございます。  それから次は、養護学校教育費の国庫負担金でございますが、この考え方は、ただいま申し上げました小中学校の場合と同様でございます。ただ、前提といたしまして、明年度新設の養護学校二十二校を予定いたしております。そのほかに既設の養護学校七十六校の教職員の給與費等がその負担の対象として上がっておるわけでございます。  次は、市町村教育長の給与費補助金でございますが、これは考え方といたしまして従来と変わった点はございません。経費の増額分は昇給原資がほとんどでございます。  それから次は教育会館(仮称)の設置費でございますが、前年度予算額の五億九千万円は、これは建物の新営費でございましたが、明年度の六千五百万円は、その一部が建物の新営費の補足でございまして、その額は約四千六百万円に相なるわけでございます。それから現在私どもこれを特殊法人として運営することを検討いたしておりますが、建物の完成の時期が明年の十二月ごろまでかかるという見込みでございますので、三十九年の一月から三月までの間のこの特殊法人の運営費の補助を要求いたしております。これが約千八百万円でございます。合わせて約六千五百万円程度に相なるわけでございます。  それから次は、公立高等学校の普通課程の家庭科の設備費の補助でございますが、新規事項として実はこの中に含めて計上いたしておりますのは、商業課程における家庭科の設備を新規に補助対象にしたいという要求をいたしております。  その次は道徳教育充実強化でございまして、内容といたしましては、研究推進校の設置それから道徳教育に関する講習会の開催、それから道徳教育に対しまする指導、それから道徳教育資料の配付等を内容といたしております。道徳教育資料の配付は、これは小中学校の学級担任の教員に対しまして道徳教育資料となるべきものを配付するという予算でございます。  それから次は公立文教施設整備費でございます。金額といたしましては約百八十三億円余を要求いたしております。重点といたしまして考えております点は 義務制につきましては統合校舎整備、それから危険建物の改築、この二点を特に重点として考えております。その他屋内体操場につきましても従前のワクを広げまして、一般的にこれを整備していきたいというふうに考ております。それから非義務制につきましては、高等学校建物整備に重点を置いております。金額も約十七億円余になっております。昨年度は普通高等学校一般校舎整備につきましても補助金要求したわけでございますが、明年度工業課程以外の高等学校一般校舎整備について補助金要求するという態勢はとっておりません。ここに「高等学校建物」と書いておりますのは、これは工業高等学校一般校舎のみでございます。それからちょっと先に参りますが、工業高等学校の実験実習施設につきましては、これは産業教育費の国庫負担金のほうで負担補助の対象になっております。したがいまして、国の直接的な補助の対象にいたしますのは、工業高等学校関係建物整備費だけということでございます。高校急増対策といたしましては、昨年度のように補助金でこれに一般的に対処するという態勢はとっていないわけでございます。それから全般を通じまして単価構造比率の改訂を行ないたいというふうに考えております。単価につきましては、小学校の鉄筋コンクリート六万二千円を七万二千円と一六%アップ、鉄骨の四万八千円を五万七千円に二〇%アップ、それから木造の三万二千五百円を四二千百円に、これは三〇%アップ、この単価小学校については、ただいま申し上げたことでございますが、中学校あるいは統合校舎、危険建物の改築等についても同様の単価で積算をいたしております。それから構造比率でございますが、これは全体といたしまして一〇%ないし二〇%引き上げおります。それから小中学校の屋体でござますが、従前、耐火造が七五%でありましたものを一〇〇%耐火造にいたしております。これは構造上の問題もあるわけでございますが、一〇〇%耐火造にいたしております。それから統合につきましては、従前七〇%が耐火造でございましたが、これを九〇%に引き上げております。それから義務制危険建物につきましても、従前七〇%であった耐火造を八〇%耐火造に引き上げております。それから工業高等学校校舎整備でございますが、これは従前七五%が耐火造でございましたが、新設につきましては一〇〇%、それから既設につきましては七五%の耐火造といたしております。それから高等学校の危険建物の改築でございますが、従前は七〇%が耐火造でございましたが、これを九〇%耐火造に引き上げております。通じまして市町村、都道府県の要望を基礎といたしまして、構造比率につきましては一〇%ないし二〇%これを引き上げているということでございます。  次は、科学技術教育の振興でございます。理科教育設備費の補助につきましては、ほぼ前年並みでございます。増額いたしましたものの内容は、これは主として新設工業高等学校に対する設備でございます。それから理科教育センターは、前年どおり八カ所でございまして同額でございます。それから産業教育国庫負担金でございますが、前年度二十六億円が明年度は九十四億円ということで飛躍的にふえております。この内容といたしましては、新設課程に対する施設設備の補助が大幅に増額になったわけでございます。明年度工業高等学校の新増設といたしましては、従前の学年進行によりまするもののほか、三十八年度に新たに増募するものといたしまして、約三万八千人の増募を予定いたしております。学年進行といたしましては、三十六年、三十七年に増募いたしましたものの第二学年、第三学年分が計上されてくるわけでございます。その分がこの九十四億の増額の一番大きな要素となっているのであります。なお、設備関係でございますが、物価の上昇等がございましたため、現在の設備単価では時代の進展に合致した設備が困難であるということでございまして、その単価を約二・五倍に引き上げるような要求をいたしております。  それからちょっと先ほど申し落としましたが、公立文教施設整備費の中の工業高等学校一般校舎についてもそうでございますが、従来は対象事業の七〇%を補助対象事業として取り上げておりまして、三〇%は単独事業ということで扱っておりましたが、工業高等学校につきましては一〇〇%、その全部を補助対象に取り上げるという積算をいたしております。それから高等学校農業教育の近代化の促進補助金でございますが、これは前年度に引き続きまして、畜産、園芸農業科等の農業科の内容充実をはかる、ないしは従来の農業科のこれらの学科への転換をはかるということが、従前に引き続きました内容でございます。それから新規事項といたしましては、農業経営の実習施設を、畜産、それから穀作、園芸、それらについて二校新設する予算要求いたしております。それからその次は、中学校の技術家庭科の設備費につきましては、一応、三十七年度をもって既定計画が終わったわけでございますが、さらに現状では、不十分でございますので、第二次の五カ年計画を立てまして、一校約三十万円の設備整備することについて補助をしたいという予算を計上いたしております。それからちょっと戻りますが、実習船の建造費の補助金といたしましては、大型四隻、中型一隻を計上いたしております。  それから次は、私立の高等学校新設工業課程の施設費の補助でございまして、これは新規事項でございます。さいぜん申し上げましたように、公立の高等学校につきましては、工業高校一般校舎施設費の補助があるわけでございますが、私立ではそれに当たるものがございませんでして、それを明年度新規として要求したい。実験、実習費につきましては、これは従来から私立も産業教育費の国庫負担金の対象になっております。それから科学技術教育に視聴覚教材を利用するということでございますが、これは工業高等学校に十六ミリの映写機の整備をさせまして、それに対して、計画的な補助をするということがその内容でございます。  次は、国立学校の理工系の学生の増募でございますが、この点につきましては、三十六年度来約二万人の増募計画があったわけでございますが——三十六年度から三十九年度までの四カ年にわたり二万人の増募計画があったわけでございますが、私立学校における増募の実績等を基礎にいたしまして、この既定計画を一年繰り上げまして、三十八年度で二万人の増募の目標を達するということにいたしております。国立学校といたしましては、学部の創設、これは一学部でございますが、一学部におきまする機械と電気の二学科、それから学科の新設、拡充改組といたしまして五十学科、それから短期大学の学科の新設といたしまして一学科。それから次の事項に参りますが、高等専門学校十七校の創設、合わせまして国立におきまして三十八年度は約三千八百人の理工系の学生の増募を行ないたいということでございます。大学短期大学につきましては、これは電気、機械、応用化学、そういったものが学科の主たる内容になっておるわけでございます。それから高等専門学校の十七校でございますが、これはその場所につきましては、まだ最終的に確定はいたしていないのでございますが、昨年と同じ校数の十七校を要求いたしております。十三億円と申しますのは、この十七校分の設備と人件費その他の経常費でございまして、施設費は備考にございますように、約二十三億円、国立大学文教施設整備費の中に含めて計上いたしております。  それから公立大学及び短期大学の理科系学部学科の整備助成でございますが、これは新規でございます。理工農系の公立大学に対する助成をしたいということでございます。  私立大学研究施設設備の助成でございますが、これは私立大学における大型の研究施設設備に対しまして補助をするという内容でございます。新規といたしましては、施設を補助対象にするということと、それから補助率を二分の一から三分の二に引き上げていくということがその内容でございます。  それから私立大学の理科特別助成でございますが、これは増募に伴いまする設備の助成と既設の理科系の学部学科の設備に対する助成、この二つが含まれておるわけであります。私立学校におきましても相当数の理工系の学生が増募されておりますので、それに対応する設備費の助成を行ないたいという内容でございます。  それから次は、科学研究の振興でございますが、内容的には従前と特に変わったものはございません。金額的に教官研究費等と同様、前年度の五〇%を増額したいという考えでございます。  次は、民間学術研究団体の振興でございますが、前年度に比べまして千五百万円ばかり増加いたしておりますが、内容といたしましては、東洋文庫に東洋学に関する文献センターの役目を引き受けてもらう考えでございますが、その関係補助金増額したいということが主たる内容でございます。一般的に申しますと、従来のような学術研究団体の、何と申しますか、赤字を埋めるといったような補助の態勢を改めまして、より積極的な助成を考えていきたいということでございます。  それから次は、特殊法人日本学術振興会の設立運営でございますが、これは現在、財団法人として日本学術振興会があるわけでございますが、これを組織変更いたしまして特殊法人にしたいということでございます。で、内容的には現在の財団法人が行なっておりまする各種の事業をさらに充実していきたいということでございます。そのほか、金額が非常にふえておりますのは、日米科学合同委員会の勧告に基づく学術調査の仕事をこの団体を通じてやらせていきたいという考えでございます。その関係の経費が約三億円この中に含まれておるわけでございます。  それから次は国立学校の拡充整備がございまして、まず備考のほうから御説明申し上げますと、認証官学長設置ということで約六百六十万円要求をいたしております。内容といたしましては、旧七帝大の学長を認証官といたしまして、これに対する給与処遇を大幅に改善して参りたいということでございます。結果的には、旧七帝大ということでございますが、これらの大学はいずれも伝統のある大学でございます。教育研究の規模、内容におきまして非常に大規模であるということのその他の大学とはだいぶかけ離れておること、それからこれらの大学におましては、それぞれの学部にすべて大学院が置かれておるということ、そういう点から、この旧七帝大の学長を認証官といたしまして給与の大幅の改善をはかるということでございます。大体給与は約十八万円ないし十五万円にしたいというふうに考えております。  次に、教官待遇改善でございますが、内容といたしましては、大学院、大学教官の待遇の改善でございまして、従前は大学院の大学研究科担当手当という特殊勤務手当がございまして、これは規定の上は定額でございますが、内容といたしましては本俸の約七%程度になっております。これを今回は特殊勤務手当ではなくて、俸給の調整額といたしまして、調整率を五、したがいましては、本俸の二〇%を調整額として支給したいというふうに考えております。  学生経費、教官研究費は、それぞれ戦前の水準に返るというまで、とりあえず持っていこうという観点のもとにそれぞれ五〇%増額いたしております。教官研究費につきましては、これは現在非常に不十分でございますので増加していきたいということでございます。  設備費でございますが、これは学問の進展に対応いたしましてさらに充実する。それから古い機械の更新をはかっていくというような観点から百五十億円を要求しております。  それから次は営繕費でございますが、これは国立文教施設整備費とは別個に事項をあげてございますが、内容といたしましては、各種の新営、修繕がその内容でございます。大学建物が急ピッチで整備されつつあるわけでございますが、そういたしますと、下水の設備でございますとか、構内の道路の舗装でございますとか、あるいは受配電の設備、それから電話の交換施設、そういったものが非常に手狭に、不十分になってきております。そういう内容その他こまかい建物の新営、それから各種の修繕費、それから大学の構内が非常に今荒れておるわけでございますが、これを何とかもう少しきれいにしていきたいといったような経費が含まれております。  次のページに参りまして、患者の医療費でございますが、これは大学付属病院におきまする診療を行なうために必要な経費でございまして、従来の実績から考えまして約一〇%増額をしたいということでございます。  それから次は原子力の研究でございますが、これは学科の新設等はことしは見送っておるわけでございますが、既定の学科、講座の設備充実、それから大型の設備をさらに充実するという内容予算でございます。それから学部の創設は再掲でございます。先ほど申し上げました短期大学の創設といたしましては、これは現在文部省の直接の施設といたしましては、上野に図書館職員養成所があるわけでございますが、これを国立図書館短期大学にいたしたいという内容でございます。これは現在のところ人員、設備等、非常に貧弱でございますので、これを短期大学という形にいたしまして整備して参りたいということがその内容でございます。  それから学部学科の新設及び拡充改組でございますが、これは大体先ほど申し上げたわけでございますが、農学部の体質改善といたしましては、従来の総合農学科を農業機械、獣医、畜産、園芸、そういった関係のものに内容を転換させまして、その体質の改善をはかりたいという内容が主でございます。  それから大学院の拡充強化でございますが、この点につきましては、従来は文部省は旧制大学と申しますが、講座制の大学以外には大学院を作らないという方針をとって参ったわけでございますが、明年度は、その内容において、大学院の修士課程を置くに値すると見られる大学につきましては大学院の修士課程を置いていきたいということでございまして、新規の事項でございます。分野といたしましては、理学、工学、薬学、それから家政、音楽、美術、そういった学部の上に修士課程を置く考えでございます。  それから次は教員養成学部整備でございますが、これは教員養成学部は他の学部に比べまして教官陣容が非常に不十分でございます。そういうものを充実する、それから養護学校教員養成課程を設けていきたいそういったようなことがこの内容になっております。  それから研究所の創設でございますが、これはまず第一は、京都大学に共同利用の研究所といたしまして原子炉実験所を設置したいということでございます。これは実際の建物等はすでに着工されておりますし、炉もすでに発注済みでございます。現在は京都大学の工学研究所の一部として仕事が進んでおるわけでございますが、非常に大規模なものでございますので、これを工学研究所から切り離して独立の共同利用の付置研究所として創設をしたいということでございます。それから第二は前年度も要求いたしましたが、京都大学に共同利用の研究所といたしまして数理解析研究所を設けたいということでございます。第三は、群馬大学に内分泌研究所を設けたい、これは現在研究施設といたしまして相当整備されたものがあるわけでございますが、これは学部研究施設から独立の付置研究所に転換させていきたいということでございます。  それから国立文教施設整備でございますが、前年度百三十一億円を二百五十九億円に増加したいということでございます。内容といたしましては、理工系の学部、学科の増設に伴う分が金額的には非常に多いわけでございまして、その分が約百二十九億円でございます。二百五十九億円のうち約百二十九億が理工系の関係整備でございます。それから老朽の改築でございますとか、あるいは一般的な建物の不足を解消する分といたしましては約六十一億円を要求をいたしております。それから病院の建物整備といたしましては百三十三億円を要求いたしております。それから特定財源の施設整備といたしましては約二十五億円を要求をいたしております。二十五億円の中で重要なものは、大阪大学の理学部を中之島から石橋地区へ移転する、金沢大学の理学部を城内に統合整理する、それぞれ不要になった土地建物はこれを払い下げまして、その財源でもって所要の整備を行なうという考え方でございますが、そういうものが主たるものでございます。  それから次は在外研究員の点でございますが、これも大体戦前水準にまで在外研究員をふやしたいということで、約二億七千万円を要求いたしております。  次は、育英でございますが、まず、補助金といいたしましては、重点を返還回収事務の強化という点に置きます。昨年度は大阪に支所ができまして、それから今年度は名古屋と東京に支所ができまして、それぞれのその所管地区の返還金の回収に当たっているわけでございます。その他集金人等の制度も設けまして、かなり成果をあげているわけでございますが、それにいたしましても、不十分な点が多少ございますので、そういった返還回収事務のオートメーション化といった方向に事務の整備をはかっていきたいということがこの内容でございます。  それから次は、貸付金の内容でございますが、高等学校のまず一般貸与の奨学生につきましては、現在採用率が全日制で三%、定時制で二%でございますが、これを五%に引き上げる、貸与月額が千円でございますものを二千円に引き上げるということを考えております。大学につきましては、現在採用率は二〇%になっておりますが、この採用率は据え置いておきまして、貸与月額は一般学生の場合でございますが、三千円と二千円と二口あるものを三千円口に統一をしたいということでございます。それから教育学生というのが現在五千人のワクであるわけでございますが、そのうち、三千人につきまして貸与額の特別額をつけまして、これは特別奨学生と同じ単価でもって貸し付けをしたいということでございます。その単価は自宅外が九千円、自宅が六千円でございます。それから次は、特別奨学生でございますが、高等学校大学とも特別奨学生の採用人員は、学年進行分のほかは特に増加をいたしておりません。その単価は、高等学校が従来三千円でございましたものを四千円にしたいというふうに考えております。それから大学につきましては、従来自宅外が七千五百円であったものを九千円、それから自宅四千五百円であったものを六千円にしたいというふうに考えております。それから高等専門学校につきましては、一般学生といたしまして一〇%の採用、それから貸与月額は高等学校と同様二千円でございます。次に、大学院でございますが、この考え方は、従来どおり、研究者あるいは学者の養成ということでございますが、定数的には従前の定数をとりまして、金額を全部博士課程を一万五千円、それから修士課程を一万円にしたいということでございます。実は三十七年度は、単価がいろいろございまして、低い単価があるわけでございますが、それを一万円、一万五千円にそろえたいということが内容でございます。この金はやはり貸与ということで考えております。  それから次は、準要保護児童生徒対策でございますが、事業的には大体従前のとおりでございますが、下から三行目の通学用品費が事項的に新規でございます。それから対象率でございますが、教科書その他につきまして、準要保護児童の対象を七%に引き上げております。現在五%でございますが、これを七%に引き上げております。それから、要保護児童につきましては、生活保護基準の基準の改訂が厚生省から大蔵省に要求されておりますので、その内容に合わせまして要保護三%を三・四%にしたいというふうに考えております。その他、個々の内容につきましてはいろいろございますが、単価等を実際に即するように改訂して参りたいということがこの内容でございます。  それから、四ページに参りまして、僻地教育の振興関係でございますが、事項的に新規な事項は、まん中に小中学校の飲料水給水施設設備補助金という項がございます。僻地学校においては、天水、川水その他を利用している学校も少なくないわけでございますが、そういう学校に対して濾過の設備を補助したいということでございます。僻地教育のその他につきましては、おおむね従前の方針に従いまして内容をさらに進めていきたいということでございます。  次は、特殊教育の振興でございますが、これも考え方といたしまして従前と著しく変わった点はございません。それぞれ従来の方針をさらに進めていきたいということが、その内容でございます。  次の、全国の学力調査も前年度とほぼ同様でございまして、経費の積算不十分な点がございますものを是正にしていきたいということでございます。  次に、学力能力の調査研究費補助でございますが、これは、現在、大学入試が教育的にも社会的にも非常に大きな問題になっていることは御承知のとおりでございます。これを何らかの形で改善をしていきたい、そういうねらいをもちまして調査研究をする機関を設立いたしまして、その機関に対してそういった問題の解決のための調査研究費を補助するということがその内容でございます。  それから五ページに参りまして、勤労青少年教育の振興で、最初は高等学校の定時制教育及び通信教育振興の内容でございますが、これらも内容的には従前と著しく変わる点はございませんが、新規的な事項について申し上げますと、備考の上から五番目に通信教育用学習書の給与というのがございます。これは昨年度も要求をいたしたのでありますが、約六万人の生徒に対しまして学習書を給与して参りたいということでございます。それから、二つ飛びまして、夜間の定時制高等学校の運動場の照明施設費の補助というのがございます。これは新規でございまして、夜間の定時制高等学校の運動場を二十ルクス程度に明るくしていきたいというのがその内容でございます。その次は、定時制高等学校の夜食費の補助でございますが、大体従前の考え方でございますが、実施状況は非常に普及いたしておりますので、その実施率を引き上げたいということで金額がふえております。その他単価も若干増加いたしております。それから、施設設備整備につきましては、これは従前の四十校を申請の状況等を勘案いたしまして、若干減少させる考えでございます。  それから青年学級等の振興、充実でございますが、これも内容的には従前の方向を進めたいということでございます。青年学級につきましては、その間に内容に応じました補助の段階を設けまして、六万円、九万円、十五万円、二十一万円という四段階を作りまして、それぞれその内容にマッチした補助金を交付していきたいというふうに考えております。その他青年学級に準ずるものといたしまして、青年教室の運営費の補助、それから勤労青年学校運営費の補助、この二つを新規として要求したい考えでおります。で、青年教室のほうは、これはその内容から見て青年学級にまではいかないというものでございます。それから勤労青年学校は、これはその内容から見て、青年学級よりはむしろ学校的な形態に近いというものでございます。そういうものを助成して参りたいということでございます。  それから次は社会教育の振興でございますが、指導者の養成、それから青少年団体の活動促進、成人教育、婦人教育、そういった内容につきまして、これまたおおむね従前の方向で事業を進めていきたいというふうに考えております。  それから婦人教育でございますが、これも婦人学級の個所をふやすこと、その他がこの増額内容でございますが、事項といたしましては、家庭教育の振興が前年に比べまして若干ふえております。これは家庭教育のあり方について研究、協議し、あるいは必要な資料作成、配布するということがその内容でございます。  次は芸術、文化の振興でございますが、これも従前と特に変わった点はございませんが、備考の一番下にございまする芸術文化関係団体補助六千五百万円、これは従前は社会教育関係団体と一本の柱になっておったわけでございますが、それを取り出して事項を立てたいというふうに考えております。  それから規聴覚教育の振興につきましてもほぼ従前の方向で進めて参りたい。  その次は社会教育関係団体の補助でございますが、これはこの中から芸術関係のものを抜きまして、青少年、成人、婦人、その他の社会教育関係諸団体を助成していくということがその内容でございます。  それから、社会教育施設整備といたしましては、公民館、図書館、博物館等の整備をさらに促進をしたいと考えております。  次は体育の振興でありますが、オリンピック東京大会の実施に備えまして各種の施設整備費を織り込んでおります。それは国立競技場、屋内総合競技場、戸田漕艇場等がそれでございます。そのほか防衛庁に移しかえをするものといたしまして朝霞の射撃場の整備費が計上されております。それから一般的な経費といたしましては、オリンピック東京大会組織委員会に対する補助、それから選手強化のための競技技術向上のための助成、そういったものが含まれております。それから大会参加選手の練習場整備といたしましては、これは外国選手の練習場でございまして、これも整備していきたいというふうに考えております。  それから体育施設整備でございますが、一番最初にございますものが、先ほど申し上げたとおり新規でございまして、プール、体育館、運動場等について整備を進めていきたい。キャンプ・センターも新規でございます。それから地方スポーツの振興でございますが、これはスポーツ教室の育成奨励、これは従前に引き続いてさらにやりたいということでございます。スポーツ・テストの普及奨励は、これは新規事項でございます。次は、国体でございますが、これは内容的には、事業自体といたしましては、従前と特に変わった点はございませんが、補助金を若干増額したいということが内容でございます。それから国際スポーツ交歓、これも日独のスポーツ青少年の交歓等がその内容でございます。スポーツ団体の助成、これも高等学校の体育連盟その他の体育団体に対する一般的な事業の助成でございます。  学校給食の内容でございますが、今までいろいろなところで申し上げておるものを除きまして申しますと、備考のまん中あたりに、脱脂粉乳の供給費の補助十二億円というのがございます。これは新規でございます。その次の、栄養管理職員の設置費補助も新規でございます。それから下から二番目の、都道府県の学校給食会に対する補助、これも新規でございまして、小麦とミルクの取り扱いに関する事務費を補助していきたいということでござます。食管の繰り入れは、これは従前どおりの考え方でございまして、百グラム一円の食管繰り入れを計上したい、金額的にはややふえておりますのは、小麦の消費量について若干増を見込んだものであります。  それから次は、学校安全会でございますが、学校安全会につきましては、事務費につきまして、全額、国で補助したいというふうに考えております。そういったことがこの内容でございます。  次は、私学振興でございますが、まず、私立学校振興会に対しましては、十二億円、前年度出資いたしたわけでありますが。これを四十一億円に増加したいというふうに考えております。私立学校関係の三十八年度の全体の資金需要額は百二十六億円と見込まれております。そのうち二十五億円は振興会の貸付金の返還金その他で調達が可能でございますので、差し引き百一億円の新規の貸付財源が必要である、そこでそれを分けまして、四十一億円は一般会計からの出資、他の六十億円は財政投融資のほうから借り入れをしたいということを考えております。財政投融資のことはここに書いてございせまんが、そういう重要な要素をここでは含んでおります。その他につきましては、特に申し上げることはございません。  次は、国際文化の交流でございますが、まず、アジア諸国に対する教育協力といたしましては、これは本年度においても行なった文部大臣会議のあとを受けまして、教育計画の担当者会議を持つとか、あるいはアジア諸国の教育指導者を短期間わが国に招致して、その実情を見てもらうといったようなことがその主たる内容でございます。  外国人留学生につきましては、これは学部学生の数はそのまま据え置きまして、研究学生の数を約四十名ふやしたいというふうに考えております。それから新規な事項といたしましては、着後手当、一人一万円でございます。そういうものを要求いたしております。その他、備考にございますように辞典編集をするとか、あるいは外人留学生の問題につきましては、問題協議会といったふうな受け入け態勢の整備ということに重点をおいているわけでございます。国際教育協会の補助も、考え方といたしましては、ただいま申し上げましたとおり、研究学生増員に対する寮の整備、その他、現在すでに来ております者の世話をさらに十分していきたいということが内容でございます。それからユネスコ関係の団体の助成といたしましては、これは新規でございますが、千四百万円ばかり要求いたしております。  次は、沖繩に対する補助でございますが、新規事項といたしましては、備考の上から四番目の国体、それから全国青年大会等における沖繩代表の招致費補助、それから次のページに参りまして、上から三番目の文化財の援助、これらも新規でございます。それから学力調査につきましては、これは琉球政府の負担におきまして、すでに毎年実施されているわけでございますが、その問題要旨を日本政府において印刷の上、送付したい。それから学校長等の海外事情視察調査、これも新規でございまして、沖繩から二人、全額国庫負担で海外に派遣したいということでございます。  最後に、文化財関係といたしましては、従前の保存修理関係事業をさらに継続いたしまするほか、若干の新規事項を要求いたしておりますが、その中で金額的に一番大きなものは、先ほどもお話がございました平城遺跡買い上げの十一億円でございます。文化財関係事業費の対前年度増のほとんどが、この関係だと申して差しつかえないかと思います。それから無形文化財保持者に対する年金、一人四十万円の支給が事項としてございます。これは二千四百万円の増額要求をいたしております。  以上、文部省所管の予算の概要について御説明申し上げました。
  13. 北畠教真

    委員長北畠教真君) 午前の委員会は、この程度にとどめ、午後は一時半より再開することにして、これにて休憩いたします。    午後零時二十九分休憩    ————・————    午後二時七分開会
  14. 北畠教真

    委員長北畠教真君) ただいまより委員会を再開いたします。  午前に引き続き、当面の文教政策に関し調査を進めます。  御質疑を願います。
  15. 米田勲

    米田勲君 私冒頭に大臣にひとつ質問があるのですが、午前中に会計課長のほうから一わたり三十八年度予算概算要求内容について説明を受けたのですが、詳細な質問に入る前に、三十七年度予算並びに法案を審議した過ぐる通常国会で、この文教委員会は幾つもの決議を満場一致で上げているわけです。その後、臨時国会にもいろいろ文教委員に対して計画実施について明確な答弁が行なわれておる。そこで大臣も、これらの決議を上げた際に、誠意をもって努力をするというふうなたしか発言があったと思うのであるが、あの決議について三十八年度の概算要求内容をまとめる際にどういう検討を加えてそれぞれ決議に対する結論を出したのかということが一つ、それらの結論に基づいて、具体的にはこの概算要求のどこにどういう形で委員会の全会一致で決議せられた趣旨が生かされるようになっているかということをまず冒頭にお伺いします。
  16. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 毎々申し上げておりますように、国会の決議等はできる限りこれを尊重して、なるべくすみやかに立法に移す、そういう心組みで今まで参っております。三十八年度の概算要求に際しましてもそういう態度で臨むように事務当局には指示したような次第であります。
  17. 米田勲

    米田勲君 そういう一般的なことでなく、大臣はこの委員会で決議したそれぞれの決議の内容を今記憶しておりますか。
  18. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 全部記憶しておりませんので、事務当局から正確を期する意味で申し上げたいと思います。
  19. 米田勲

    米田勲君 それでは事務当局のほうから、委員会でこういう決議があったことについては検討の結果こういう結論が出た、その結論をもってこの概算要求にはこういう態度で考えたのだということを、大臣は記憶していないようですから、それをだれかかわって説明して下さい。
  20. 福田繁

    説明員(福田繁君) 私のほうの関係のことだけ申し上げます。私の記憶しておりますのは、まず第一に養護教諭の充実の問題であろうかと思います。それにつきましては、この前の国会におきまして、養護教諭の計画充実について御決議がございました。その趣旨に従いまして三十八年度以降これを充実する方向で考えておりますことは、この前の当委員会におきましても申し上げたとおりでございます。それからもう一つは、事務職員の充実の問題が、これも養護教諭と同様に、来年度以降におきまして予算化すべく予算要求いたしておるわけでございます。これは全く当委員会の決議の線に沿っているものと考えます。それからもう一つ私の記憶しておりますのは、特殊教育の問題であろうかと思います。特殊教育の問題につきましては、当委員会でも、あるいはまた衆議院の文教委員会におきましても、いろいろと御論議がなされました点でございます。特に当委員会におきましては、特殊教育の就学奨励の面におきまして、小中学部においてはもう大体就学奨励の範囲がほぼ完成の域に達しておりますので、したがって幼稚部、高等部を対象にして今後就学奨励の道を開くべきではないか、こういうような御意見がございまして、附帯決議でございましたがそういう決議があったことを記憶しております。したがって、来年度予算におきましては、特殊教育の拡充整備という点から、そういった小中学部以外の幼稚部、あるいは高等部のほうに就学奨励費を拡充する予算要求しております。同時に、全般的に特殊教育の振興をはかるべく特殊学級開設等につきましても、従来の計画よりもさらに一段とこれを拡充する方向において予算要求しておるものでございます。以上でございます。
  21. 米田勲

    米田勲君 前の養護教諭、事務職員の問題については、これは臨時国会で大臣のほうから計画が明らかにされて、この前の委員会ではそれが概算要求の中に入っておる、盛られておるということは確認をされたのですが、そのあとに、今特殊教育の問題だけに触れて言うのですが、前の通常国会では特殊教育以外に幾つかの決議を全会一致で上げておるのです。それはだれから答えていただけますか。
  22. 北畠教真

    委員長北畠教真君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  23. 北畠教真

    委員長北畠教真君) 速記をつけて。
  24. 米田勲

    米田勲君 それではその残余のことは資料が来てから答えてもらうことにします。  先ほど事務当局のほうからこの概算要求説明を聞きましたが、文部大臣にひとつ、三十八年度の文教政策としては、どういう点に重点を置いて日本の文教政策を進めようというふうに構想を立てたのか、その構想の概略をひとつ聞かせてもらいたい。おそらくその構想に立って概算要求を打ち出したものだと考えるので、基本的な三十八年度の日本の文教政策の進め方について、どういう構想を立てたかということをお聞きします。
  25. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 一言にして申せば、文教関係の課題を全面的に推進したい。もともと教育政策の問題は、新奇なことがこつ然として起こるものではなく、従来課題としては出尽くしておるものを、その年度に重点を置いて何を推進するかという事柄だとかねがね考えているわけですが、その意味でまず第一に、大学教育充実、さらに義務教育充実確立、なかんずく特殊教育、僻地教育についても特に考慮を払いたいという考えでおるわけであります。さらに社会教育充実発展を期すること、オリンピックを控えてのスポーツ振興対策、概略そういう点に重点を指向するつもりでおります。
  26. 米田勲

    米田勲君 僕はどうもそういう答弁をされても理解できないのですが、それでは予算の全体を羅列して答えているにすぎないと思う。私の聞きたいのは池田総理が所信表明のときにも、文教政策については重大な点に触れられているわけです、重要施策の一つとして。したがって、それを受けて文部大臣は三十八年度の文教政策については重点的にどういう考え方で構想を立てたのかということを聞きたいのであって、いや、大学教育義務教育も高等学校教育もオリンピックも……こう言ったら、この予算に盛ってあるものは全部重点です、こういう答弁になってしまう。それでは聞く必要はない。私の聞いているのは、もっと三十八年度に対する文教政策の重点的な考え方を聞きたいわけです。どれもこれも大事だということはこれは言える、この予算に盛ったもののうちで大事でないものはこれは一つもない、しかし、そういう答弁でなく、もっと話のわかるように答弁して下さい。
  27. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) もっと具体的には、予算折衝が済みまして、政府の案ができ上がりました後に十分しさいに御審議をお願い申し上げたいと思います。総理が文教政策に重点を置くんだということを申しましたゆえんは、従来にも増して全体の予算の中に、予算の問題として限って申せば、文教政策に対する予算の配分を重点的に結論づけたいという気持を述べたものと理解いたします。冒頭に申し上げましたように文教政策の諸問題は、どれといって甲乙はないものと理解をいたします。もし予算の規模が許しまするならば、全部一ぺんにやりたいくらいの気持は持つのでございますが、その中でも先刻申し上げたような点に比較的重点を置いて、文部省自体のワク内におきましては考慮していきたい、かように考えていることを申し上げたのでございます。一々のことは概算要求をことごとく御説明するほかはないわけですけれども、まだとらぬタヌキの皮算用も入っておりますから、一々のことを申し上げるのはどうかしらんとも思いますから、勢いお答えが抽象的たらざるを得ないことを遺憾といたします。
  28. 米田勲

    米田勲君 私の聞きたいことには答えてもらえないようでありますから、日を改めてこの問題についてはもう少し明確な答弁をお願いいたしまして、その点の質問は終わります。
  29. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 先ほど会計課長から説明された予算重要事項のプリントをもらったのですが、まず第一番に、第一項の初等中等教育改善充実に重点を置いて質問して参りたいと思います。大臣は今第一番に大学、その次は義務教育、こういう一応の重点らしきものをあげられましたが、第一の初等中等教育改善充実の中で今年度最も、内閣としてではなく一文部省として改善充実したいという重点の三つはどれとどれですか。
  30. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) ある程度具体的に申し上げる必要があろうかと思いますので、政府委員からお答え申し上げます。
  31. 福田繁

    説明員(福田繁君) 三つと制限されますと非常に申し上げにくいのでございますが、少なくとも金額的にも非常に大きく、また地方の教育の上から非常に重要なものは、義務教育国庫負担金でございます。それから、そこに掲げておりますのはもちろん皆重要なものでございますけれども、道徳教育充実強化という問題もこれは非常に重要な問題でございます。それから、直接私の所管ではございませんけれども、公立文教施設整備費もこれも非常に重要な問題であろうかと思います。先ほど申し上げました義務教育費国庫負担金と公立養護学校教育国庫負担金は、これは見合うものでございますから、これは一括というような意味にとっていただければ非常にけっこうだと思います。しいて申せばそんなところでございます。
  32. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 大臣にお尋ねしますが、すし詰め学級の解消について努力を今年までずっと続けて参られましたが、先ほど説明されました資料を見ますと、九十三万の生徒減、二万一千人の教員の過剰、これを整理して五十人に編成していくと六百九十一人の増ということですが、前国会から私どもとしては現在の文部省のすし詰め学級解消のテンポは、義務教育重要性という観点に立っても一学級の収容人員が多過ぎる。現に五十四ないしは五十二という基準があっても、下回っておる県も若干あるけれども、これを上回っておる県もかなりある。これを少なくとも私どもが主張している三十五まで下げるということは一気にできないとしても、もっとテンポを早めるべきである、こういう要望を強くしておったはずです。今年度は五十ということにしてありますが、今年度の五十の根拠、すなわち今後のすし詰め学級解消の展望に立って三十八年度は五十人というところで押えられたのだろうと思いますが、大体もっと望ましい——かって当委員会でせめて近いうちには四十四、五までは切り下げていきたい——これは四十が正しいか三十五が正しいかという点についてはいろいろの理屈があろうけれども、まだ結論は出ていない。しかし、まあ四十五程度には早く切り下げたい、これは内藤君が局長のころもそういう答弁をしておったと思うのですが、そういう点に対して、いわゆるすし詰め解消という問題に対して、今後の展望をどういうふうに立てて三十八年度は五十という設定をされたのか。
  33. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) すし詰め学級解消計画の最終年度が三十八年度と理解しておりますが、その建前に立って五十名ということにいたしておるのであります。御指摘のとおり、上回るもの下回るものもございますが、全国平均に見て五十人ということをきちんとするという建前であります。この前の委員会に出席しましてお答えしたような記憶がございますが、それに関連して、たとえば長野県のごときすでにして五十名ないしはそれ以下になっておるところ、それが基準が五十名になることによってオーバーするものを一体どうするかという具体的課題も出てこようかと思います。これは自治省との相談に基づきまして現在いる先生を百切ることはしない、そういう建前で極力努力をいたします。最終年次でございますから、五十名という基準になるわけですが、総決算におきましてはある程度のわずかながら増員を見込まざるを得ないということになるわけでありますが、その後一体どういう見通しでそれ以下の基準を定めるかということは今後の検討を必要といたしますが、四十五名見当というばく然たる表現たらざるを得ませんけれども、そういうことを念題に置いて、定数法の改正等は三十九年度予算を審議していただく通常国会に提案するということに具体的にはなろうかと思いますけれども、少なくとも五年後には四十五名見当にはしたいものだ、ばく然たることを出ないことはお許しをいただきますが、そういう気持で三十八年度の予算にも対処しているわけであります。三十八年度の予算そのものには今申し上げたことは具体的には現われませんけれども、そういうことを念頭に置いて五十名の最終定数を一応押えていこう、こういう考えであります。
  34. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 全体の展望は大体それでわかりました。しかしまあ一五十人が妥当であるか、四十五人が妥当であるかということは問題であろうと思いますが、きょうはそれに触れないということにいたしまして、将来の一応の文部省の展望からすると、大蔵政務次官にお尋ねいたしますが、三十八年度小中ともに五十人の定数でいきたいという文部省考え方については、次官としてはどういう見解をお持ちですか。
  35. 竹内俊吉

    説明員(竹内俊吉君) 三十八年度の予算概算要求が出ておりますが、まだ第一次の説明文部省から承ったばかりでありますから、予算全体の問題はむろんきまっていないわけであります。文部当局から教育の必要上また日本の教育の実情からそうすることが適当だという結論で交渉があろうと思いますから、財政の許す限り文部当局のそういう線に沿うことが適当であろうという考えのもとに折衝に応じておる次第であります。
  36. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 再度お尋ねいたしますが、先ほどもちょっと触れましたように、諸外国の例からしましても、日本の教育の現状からいたしましても一五十人というのはあらゆる角度から検討しても過剰人員であるということは、これは教育、父兄を問わず認めておるところですね。したがって、義務教育学校におけるすし詰めを早期に解消して好ましい一学級の生徒数を実現していくということは、ある面においては教科の一、二科目の改変とか、こういった問題よりももっと基本的に教育効率を上げていくという面から重要な問題であると思います。こういう点に対して、五十がよいか、四十五人がよいかは別問題として、早急にすし詰めを解消して好ましい一学級定員にしていくという基本的な態度に対して、文教予算の骨格をなすものとの御理解のもとに努力していただくという決意はありましょうか。
  37. 竹内俊吉

    説明員(竹内俊吉君) 大体御質問の趣旨は了承いたしました。
  38. 米田勲

    米田勲君 関連して質問さしていただきます。今文部大臣の話を聞いておると、この三十八年度で五年計画の最終年度としてはすし詰め教室を解消するということは、この二、三年来何度もわれわれは聞いているわけなんです。その約束どおり、三十八年度の概算要求は、確かに五十名の編成でいく基本を立てた。今豊瀬君からお話がありましたように、先進諸国の小中学校における初等教育の実体は、この学級編制ということが日本と非常に違っておるわけです。一教室に収容する子供の数というのは三十名内外でやっておる国すらある。私は小中学校の、特に初等教育充実強化をはかる幾つかの問題の中で、この学級編制の定員を早急に四十名にして、教師の教育効果を徹底させる必要がある。特に人づくりに重点を置くという政府の考え方を具体化するために、早急に四十名程度の学級編成にまでこぎつけなければならぬという考え方を持っておるわけです。今五年後にははっきりはしないが四十五名程度というきわめてこの改善については消極的な文部大臣考え方、これはもう少し検討を加えて、教育の徹底を期するために、学級編制を抜本的に改善をしていく決意を固めてもらいたい。もうすし詰め教室を解消したらひとまず学級の編制はこれで事足りたのだ、今度はほかのことをやらなくちゃならぬというものの考え方は、根本的に私は誤りだと考えておる。この点再度にわたってですが、文部大臣のひとつこの問題に対する決意を聞きたい。
  39. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) たとえばイタリアのごときでも三十名見当の学級編制でやっているように聞いております。この前申し上げましたように、三一名が日本として適切か、あるいは四十名がいいかというふうなことは、もっと検討を要しないと私も実は自信を持ってお答えしかねます。五十名よりは少ないほうがいいことだけはわかります。先刻申し上げましたように、五年くらいの見当で、四十五名ぐらいまでに持っていきたい、今ばく然とながら思っておるとおり申し上げたのでございますが、四十名が日本としての適切なりという結論が出れば、むろんその方向に向かって極力努力せなければならぬことは当然のことと心得ますけれども、一面日本の公共団体の財政問題、あるいは国全体の財政規模、あるいは教員養成等を考え合わせました場合に、にわかに何名ということははっきり申しかねますので、大事をとって四十五名見当を五年計画でと申し上げたわけであります。そのことは、それ以上の努力はしないという意味では毛頭ございません。景気よく四十名にということを申し上げましても、非現実的であろうと今としては考えますが、良心的に申し上げれば四十五名を目標に五年計画ぐらいならば、何とか立てられそうな気持がいたしますのでお答えしたわけであります。努力することは私どもの当然の職責と思っております。
  40. 米田勲

    米田勲君 この前の委員会で福田局長に質問をしたところが、その点はどうもはっきりいたしませんという大事な問題がある。これは一昨年の当初予算予算委員会の分科会で大臣にも、当時の内藤局長にも相当食い下がって私はこの問題を聞いた。そして考え方をはっきりさせた。それは文部省が出している小規模学校に対する政令です。あのときの答弁では、大体いなかの小さい学校は、三校に一校程度の学校に担任外の教員を配置すればそれでやっていけるという一時答弁もあった。しかし、長崎県のような非常に小さい島がたくさんあって小規模学校が非常に多い、北海道のように全体の六割五分にも近い小規模学校をかかえている、そういう地域におけるこの問題は、この政令の処置は重大になってきていることは、当時も私はるる説明をしたはずです。そのときの大臣や局長の答弁は、そのことの必要性は認めるけれども、今すし詰め教室を解消するために五カ年計画を立てて、三十八年度で五十名までとにかくこぎつけたいんだ、したがって、そのときにあわせてこの小規模学校の政令の問題については解決をするから、今直ちにこれを云々することはがまんをしてもらいたい。こういう平易に言えば分科会の答弁だったわけです。それで私は去年のときには、簡単に触れた程度で、小規模の学校の政令は、この三十八年度の予算編成の時期にあわせて解消してもらえるものと、そういう約束ができておったものと判断をしておった。ところが、どうも初中局長の話では、はっきり覚えていなかったというような話であるが、省内でその後そのことをどう検討したか、そうして大臣はまたこの約束を一体三十八年度でいっどのような形で解決をするという考え方であるのか、それを聞きたいわけです。実情を言うと、せっかく文部省が今かりに五十名の編成で小中学校をやっても、北海道のように五学級以下の学校が六割五分にもわたっているところについては、非常に学校学校の距離が山奥である関係、あるいは僻地である関係で離れておるから、どうしても学校長が学級を担任しておったのでは、年間非常に校長会議だ、役場に連絡だ、いろいろな用事で学級をあける、それではとても校長の担任しておる学級の教育は投げやりになり、補欠授業だけでは間に合わぬ、こういうことから各県で考えていることは、この小規模学校に対して、多級学校に割り当てられる定員のうち、それを削って小規模学校に回しておる、そういうやり方がだいぶとられておる。北海道はもう明らかにそれなんです。そのために昨年度中学校は五十二名、小学校は五十四名という、そういうせっかく文部省が編成方針を出していたにもかかわらず、北海道においては多級学校に特に著しく現われたのは六十名に近い——五十八名から六十名に近い編成をしなければ、小規模学校に定員をとられた関係からやっていけないという実情なんです。したがって、私は今度の三十八年度のこの概算要求の中には、どうしてもこれを入れてないとすれば、約束どおり入れて解決をつけてもらいたい、こういう強い考え方があったので、この前の委員会で聞いたわけです。そういう事情も考え合わせて、おととしの予算の分科会の約束をいつどういう形で果たすのだろうか、それを担当の福田局長からは検討した結果、大臣からは約束をどうして守るのか、両方にお聞きしたい。
  41. 福田繁

    説明員(福田繁君) この前の委員会でございましたか、特に北海道の事情をお述べになりまして、米田委員から小規模学校定数改善の問題が御質問がございまして、そのときに私がお答えいたしました内容は、今申しましたようにすし詰め学級の解消ということで三十八年はきておりますので、小規模学校定数改善については将来、本格的には三十九年以降において十分私ども考慮したい、こういうように申し上げたのでございますがと申しましたところ、それは前局長の言質と違うじゃないか、こういうようなお話がございましたので、私帰りましてさっそく当時の速記録を引っぱり出して調べましたところでは、内藤局長の当時お答え申し上げましたのは、三十八年以降においてこれを十分措置する、研究するというように答えてあったのでございます。したがって、私がお答え申し上げた内容と同じように私は了解をいたしたのです。したがって、今申しましたような、特殊の事情のあるところもございますが、この小規模学校の多い県におきましては、やはり小規模学校定数配置というものをもう少し根本的に検討すべき必要のあることは私どもも認めております。単に校長の定数だけではない、あるいは分校主事  のようなものだけの定数でなくて、根っこからやはり相当根本的に検討しなければならぬという面があろうかと思います。そういった面を私どもは今後とも十分検討いたしまして三十九年以降の本格的な第二次計画におきましては、その点を十分取り入れたものにしたいということでまあ研究しているような次第でございます。
  42. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 大体今、説明員から申し上げたとおりにやるほかに現実問題としてやり方がなかろうかと思います。これは一寸延ばしに問題を延ばそうというのじゃなしに、五十名の基準ですし詰めを解消することに今まで手一ぱいであった。そのほかに僻地学校の、今御指摘のような課題もあるというわけですから、五十名の定数をまず確立して、そうして今後一応四十五名と申し上げましたが、そういう方向に従ってそれ自体が根本的に考え直さねばならない幾多の事柄があろうかと思いますが、それと一緒に僻地学校定数等につきましても特別の考慮を払って、御指摘のような不便を解消するという課題とあわせ取っ組んでいかねば、タイミングとしましても実際問題としては三十九年度以降たらざるを得ない問題だろう、こういうふうに思います。そういう考え方に立って真剣な具体的努力を進めて参りたいと思います。
  43. 米田勲

    米田勲君 福田局長にお聞きをしますが、一昨年の予算の分科会における大臣や局長の答弁は、あなたの言うように、三十八年度以降と書いてありましたか、会議録は間違いありませまか。間違ったときにはあなたに責任をとらせますよ。
  44. 福田繁

    説明員(福田繁君) 分科会であったか、はっきりは記憶いたしておりませんが、言明したものはそういうように書いてございました。
  45. 米田勲

    米田勲君 私の聞いておるのは、会議録に三十八年度以降において解決するという答弁の会議録が残っておるかどうかということですよ。間違いありませんか。
  46. 福田繁

    説明員(福田繁君) 間違いないと思います。
  47. 米田勲

    米田勲君 そこで、私は以降ということについては私も確認をしなくちゃならぬが、それに多分に疑問を持っているのだが一あのときの分科会の経過からいっても、三十八年度以降というのは三十九年度でも、四十年度でもかまわないという、そういう内容の答弁ではないはずなんです。それはすし詰め教室を解消する、そのときにあわせてこの問題を考えたいので、ことしはちょっと待ってくれという内容の答弁であったわけです。したがって、私は五十名の学級編制にすると同時に、僻地教育充実のことも合わせ考えて、この政令は廃止されるものと考えておったのです。それで了解をしたのです、そのときは。相当私はこの問題について詳しく追及しているはずです。それなのに、三十九年度以降においてと今度は言い出した。一体真剣にこの政令をどうすれば廃止できるか、予算の組み立ての中の操作としてできるかということを検討していないのが事実でないですか。私はこの問題が重大であると考えるなら、三十八年度に一挙に解決しないまでも、二年間にわたって二カ年計画で解消していくという方法も一つの方法だと思う。それを、あのときの答弁とは私は内容において全く違うほうり投げたような調子で、そのことについて真剣に討議もしない、結論も求めないで、三十九年度以降の検討にまかせてしまっておるという態度は納得できない。この小規模学校の政令はどういうわけで今後も存続しなければならぬのか、もう一ぺん説明をしてもらいたいと思います。
  48. 福田繁

    説明員(福田繁君) 私の申し上げたことに誤解があるといけませんので、もう一ぺん申し上げておきますが、私は三十九年以降にならなければ検討しないというふうに申し上げたつもりはございません。内藤局長は、三十八年以降ということが述べられたように速記録に残っておりますが、私ども検討は常にいたすわけでございます。ただ、そういうふうに検討いたしましても、今お話に出ましたように、これがすべて一挙に解決するとは限りませんので、漸進的にいきたいということを考えておるわけでございます。したがって、本格的に私どもがこれについて相当改善を加えたいというのは三十九年以降だ、こういう意味において申し上げたのでございます。
  49. 米田勲

    米田勲君 私は納得ができない。あの当時の質疑討論はそんなあいまいなものではなかったはずなんです。そうして先ほども文部大臣は三十八年度の文教政策の重点の中にも僻地教育の振興を言っておる。もちろん僻教教育を振興するためには幾つかの基本的な条件を改善する必要はある。しかし、その中の一番先に解決をしなければならない問題は一この教員定数問題である。多級学校に与えられておる条件が五学級以下なるがゆえに、その同等の条件が与えられていない。そのことをなぜ何年も放置しなければならぬか。この政令を出してから一体どれだけの年数がたっておるか。そうして一昨年もこれを解決するように三十八年度のこのすし詰め教室解消の時期に合わせてこの問題を解決するようにしたいといって、問題の解決は当然三十八年度の概算要求の際にあわせて行なうべきなんです。私は予算の全体の規模からにらんで、このことがどうしても一挙に解決することができなかったという事情を述べるならまだわかる。全くこの問題を解決しないということしの態度だ。それが納得できない。三十八年度以降とあったからといって、三十九年度から本格的な検討を加えるという言い方は言いのがれなんです。実際に現場で教育をしておる者、そうしてその県の教育行政を担当しておる者がこの政令のためにいかに苦しんでおるかということを文部省の役人はよく知らないのだ。文部大臣はなおさら知らない。だから、この問題をあと回しにしようとする。少なくも僻地教育充実を言うなら、何はさておいてもまず多級学校と同じ条件は与えるべきです。それから順次僻地教育に特殊の改善した条件を増していく、これなら話がわかる。それが逆になっているじゃないですか。特に五割以上も占めておる小規模学校をかかえておる県の教育を一体どうしようと考えておるか。文部大臣、あなたの責任ある答弁を私は要求します。おざなりじゃ困ります。
  50. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 僻地学校の振興、特に今御指摘のような僻地学校における特殊事情のゆえに、いわば数年来放任されておる定数の問題、これも改善さるべき基本的な問題であることは私も乏しいながらわかるような気がします。そういう気持で私も従来お答えしておったことを思い起こしますが、で、具体的に、しからば三十八年度からなぜその解消に着手しないかということになりますと、先刻もちょっと触れましたが、今、省令で特例を認めておる。それが昭和何年からであったか、私もはっきり記憶しませんが、相当長いことそういう状態で今日まできておる。その省令の意味するところに従って交付税の配分等の積算基礎が生まれ出ておると推察いたすわけでありますが、一方において学級編制そのものがさしむき五十名の程度にすし詰めを解消することすらも五カ年計画をもって臨まざるを得ないという実情下におきましては、僻地のこともむろん以前から念頭にあったに違いないけれども、基本的に一般のすし詰めを解消することをまずもって急ぐ、そうして五十名に到達したならば、先刻も申し上げましたように、次の段階に向かって前進しなければならぬ、そのときに具体的にはあわせてその基本問題を、もっと具体的に申し上げれば交付税の積算基礎となるべき省令の改正、当然これは自治省との具体的な突っ込んだ相談なくしては改正はあり得ないと推察いたしますが、そういうこともあわせて、たとえば四十五名の定数に向かって前進する、それと一緒の課題として取っ組むことのほうがより現実的であり、またそうならざるを得ない、そういうことが今御指摘のようなこととなって現われているものと思います。ということは、僻地学校定数、今までの特例を実際上支障のないところまで少なくとも持っていくという努力をしないという意味じゃむろんないのであります。三十八年度から、先刻説明員が申し上げたような意味で具体的に取っ組んで、三十九年度には必ず実現に着手するというための基本的な検討が行なわるべきことは当然でございます。
  51. 米田勲

    米田勲君 それでも納得できないね、私は。文部大臣によく考えてもらいたいのだが、一体僻地校をどれくらい歩いているのですか。文部大臣知っていますか。僻地の学校とか、小規模学校というのは設備を見ても、施設を見ても何から何まで十分でないのです、多級学校から比べると。これは実態なんです。僻地の教育を軽視するわけではないがとかくそういう状態なんです。そこへもってきて教職員の僻地の定数が多級学校より切り落とされている、これは非常に僻地教育の振興を阻害しておるやり方なんです。私は多級学校なら何十人というたくさんの教職員がおるのだからこれはある程度操作はできる、内部で。ところが、小規模の学校であるから非常に教員の数がもう少ない、その中で操作しなければならぬということですから、僻地教育の振興ということを何度口で唱えても、この教職員定数を削減しておる小規模学校の政令を早急に廃止をしなければどうにもならないというのが現場の実態なんです。校長が一人おってあとの二校は十分に回れば監督ができるというのが、その当時内藤局長の答弁した言葉なんです。そこで僕は非常に憤慨したのです、そのときに。現場の実態も何も知らないで、机の上でそんなばかなことを言っている。そのときの話では、とにかくすし詰め教室を解消する際にということだった。文部大臣は何かこの問題の処理の仕方の線を間違っておるのじゃないですか。五十名に減らしてすし詰め教室を一応解消することも大事なことですよ。しかし、大方の多級学校がそういう条件になってきても五学級以下の小さい学校が依然として非常に困った条件のもとにこれからまた教育を続けなければならぬということになると、僻地教育などということは口にすべきでないのじゃないですか、少なくもそういうことを重点施策とするなら、何はさておいてもこの政令を廃止をして、多級学校と同じような定数を与えるべきなんです。それを今年度から、私は譲歩して、先ほども言っているが、一挙に解消できなかったというなら話はわかるというのです。しかし、あなた方は三十八年度以降において解決をするのだからことしの予算に現われなくても仕方がないのだ、当然なんだ、こういう話では何としても納得できないのです。当時の質疑応答の条件からいっても私は納得できないのです。したがって、この問題については大蔵省に対して追加要求をして下さい、この問題を解決するために。その解決の方法は一挙でなくても私は納得がします。文部大臣、どうですか、この問題の年次計画を立てて、二年次とか二年次とか、そうしておいて追加要求を三十八年度の概算要求の中でして下さい。これを全然放置するのでは納得できない。
  52. 福田繁

    説明員(福田繁君) 申し上げますが、私ども小規模学校定数改善については、決して無関心ではございませんし、非常に重要な問題だと考えております。したがって、先ほども申し上げましたように、重ねて恐縮でございますけれども、将来にわたって小規模学校定数改善をして参りたい、こういう考えでおりますけれども、三十八年度においては本格的にはできないということを私は申し上げたんです。たとえば現行は小規模学校につきましては、校長は三分の一の配当しかございません。しかし、来年度においては私どものほうの希望としては、それを増員いたしまして、約七〇%程度までに充実するような定数改善をはかっていきたい、こういうような漸進主義でものを考えているわけでございます。
  53. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 来年度ですか。
  54. 福田繁

    説明員(福田繁君) 三十八年。
  55. 米田勲

    米田勲君 文部大臣はその構想を理解して承認を与えているんですか、小規模学校を解消するための年次計画。私は、先ほど文部大臣の話を聞いておったらば、三十八年度のこの概算要求の中には、いろいろな関係上含まれなかったが、来年度は解決をするという言葉に近い、非常に強い言葉を言っている。こっちの局長は、来年度は七〇%、そうすると、あと三〇%はいつ解決するんですか、文部大臣、どうなんですか。
  56. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 今、初中局長がお答えしたことは、具体的には私の念頭になかったことであります。それは定数法の改正もしくは予算概算要求として形に現われた範囲では、私の念頭になかったことでございますが、今申し上げる程度の漸進主義の第一歩が具体的に三十八年度からスタートを切り得るならば、きわめてけっこうなことだと思います。私ほど来申し上げておりますのは、御指摘のような僻地学校定数を他の僻地でない学校並みに、少なくともそれに近づける制度上のことに着手しますのは三十九年度たらざるを得ない、現実問題としまして。それと問題しまして。それは政令ができましたのは、ちょっと私は知らないのでおりましたが、聞いてみますれば三十四年度に政令ができたようでございます。これは結局ベビーブームの影響上地方財政の立場等も考え合わせて当分の間、そういう暫定措置たらざるを得ない現実に即するためのものじゃなかろうかと推察するのでありますが、そういう実情下に僻地学校定数改善は、御指摘のとおり、重要な僻地学校振興のための課題であることは、昭和三十四年以来その重要性はだれしも認識しておったことと思いますが、しかし、現実はなかなかそういかないことからしまして、そういう臨時的な便宜措置がとられたために、僻地学校に不利な点が出てきているというのが課題だと思います。したがって、先刻申し上げましたとおり学級編制定数は五十名にすることに急なるの余り、僻地学校のことまでは、昭和三十四年以来及び得なかったという状況が今日に続いてきている。したがって、五十名を達成しました次の年度からたとえば四十五名に向かって前進するならば、僻地学校につきましてもあわせて基本的な考え方をあらゆる資料を収集しつつ具体的に三十八年度から調査を開始いたしまして、三十九年度に計画的な第一年度を踏み出せるようにするということたらざるを得ない、そういう気持で申し上げたような次第であります。
  57. 米田勲

    米田勲君 文部大臣はこの小規模学校の政令は三十四年度に出したと言っていますが、三十四年に出ていますか〇三十四年ではない。何度もしつこく言うようですが。今のように、文部大臣が真剣にこの小規模学校に対する政令、特に教員定数を劣悪な条件にしている政令を、ほんとうに真剣に僻地教育を考えるなら、まずそれを解決せいという考え方が出てくるはずなんです。しかし、三十八年度の概算要求に出しておらない。今それを追加要求せいと言っても、文部大臣はなかなか大蔵省のほうに対しては都合悪い。しかし、どうですか、きょうはここでこのことを、三十九年度の概算要求では解決をつけられなかったが、来年、三十九年度予算で必ずこの政令を廃止して解決する、そういう約束がしてもらえるなら、私はこれ以上しつこくこの問題を追及しない。
  58. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 三十九年度から計画的な政令廃止に着手する、これはお約束申し上げてよろしゅうございます。
  59. 米田勲

    米田勲君 何年くらいでやるのですか。
  60. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) それはちょっと明確に申し上げかねます。先刻、学級編制定数を五十名以下、たとえば四十五とするについて、何年くらいでやるかというお尋ねにお答えするにつきましても、大体五年くらいの見当という気分を申し上げたので、それ以上のことはこの問題についても申し上げかねると思います。しかしながら、前向きに計画的に解消する努力をする、それだけはお約束できます。
  61. 米田勲

    米田勲君 私はこの定数を、五カ年かかってすし詰め教室を解消するためにやってきたそのテンポで、この小規模学校の政令を考えられては困る。これは当然今年度解決しなければならぬ問題だったのだから、少なくも来年度はこの問題を解決するという約束をしてもらいたい。そんな何年で解決するかわからないようなことを答弁されて黙って引き下がれない。文部大臣はもう一ぺんおととしの予算の分科会でどんなことをお互いに話し合ているかを見るべきだ。今になってから三十九年度以降何年がかりでこれが解消になるのかわけのわからぬような答弁をされるのは全く心外だ、もう少しはっきりして下さい、自信を持って、こんなことは。
  62. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 ちょっと答弁の前に関連して。私も米田君が予算委員会の分科会に夕方おそくまで、六時過ぎだと思っているのですが、残ってやっている際に、聞いてもいるし、会議録も見ているのですが、明確に覚えておりませんが、文教委員会における内藤君並びに大臣の答弁は、小規模学校の問題については、すし詰め解消を努力したい、こういう趣旨の答弁です。それははなはだ不満だと私は言った。ところが、予算の分科会における質疑応答の過程を全部通じて見ますと、たとえば北海道の、先ほど米田君が言ったように、大規模からこう持ってきておる。その大規模は、大規模のところできちんと定数法どおりやっておる、そうして小規模学校にプラス・アルファをつけた際には、それは次年度からでも一そういう用語を使ったかどうか覚えておりませんが、次年度からでも、その実績を尊重して小規模学級の定員が増員されていくような具体的な措置、政令改正をいつするとかそういったことじゃなくて、具体的な措置は努力していく、こういう趣旨の答弁をどちらもなされたように記憶しておる。したがって、政令改正に着手して、技本的に改正する、そしてそれを何年で解消するかということも、柱としては問題ですけれども、やはり三十七年度も三十八年度予算においても、逐次それが解消していくような努力の積み重ねの中で政令改正が最終的に行なわれていく、こういう努力は、小規模学校問題に関する今日までの決意というか趣旨というか、このものからして真正面に考えていくと、単に全般的な政令改正は何年度するとかいったことでなくて、具体的な改正措置というものは、なされていくべきじゃないでしょうか、私はそういうふうに分科会におけるあなた方の答弁というものを理解したのですが。
  63. 福田繁

    説明員(福田繁君) ただいま豊瀬委員のお話の点でございますが、そういう意味におきまして答弁したのではないかと私も想像いたすわけでございますが、その点について、三十八年度以降という言葉を使っておったと思います。したがって、私ども現在の政令の内容については、これを全面的に改正しないまでも、できることから内容充実改善をはかっていくということは、当然に考えておるわけでございます。したがって、三十八年度は、三十九年以降の問題について第二次計画を立てるといたしますと、少なくともその第二次計画との橋渡しというものはある程度考えなけばなりません。その方向においてやはり三十八年度の定数はある程度考える必要がある。こういうような考え方で進んでいるわけでございます。したがって、先ほど申し上げましたように、この問題については、小規模学校につきましては現行では校長は三分の一程度しか配当されておりませんが、少なくとも来年度は希望としては、それを七〇%程度に高める措置を講じたい、こういうふうに考えているのであります。そのほかに若干単複学級の定員の改正もやりたいと思っております。それはもちろんプラス・アルファという意味ではないかと思いますが、そういう改善は徐々にでもやっていきたいと思います。
  64. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そうすると、ただいまの答弁は、もちろん政令二百二号ですね、政令二百二号の第五条の改正を中心とする問題は、法改正をするしないにかかわらず、実態としては三分の一というものを七〇%に次年度から具体的な配当としては行なわれていくだろう、こういうふうに理解すると同時に、小規模学校の定員増という問題は、本年度から実施されるのじゃなくて、来年度その検討が行なわれて、実際の政令改正、予算措置は、三十九年の予算から発足していく、こう理解してよろしいですか。
  65. 福田繁

    説明員(福田繁君) この小規模学校の解消の問題等につきましては、これは予算が成立すれば当然政令の改正に及ぶかと思っております。
  66. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そうすると、この予算の中には、政令の面からいうと、第五条の改正については、実現すれば実施できる予算が組んである、それから小規模学校の全般的なことについては、三十八年度すし詰め学級解消後、抜本的な計画を立て早急に改善していくように努力する、そういう答弁ですね。
  67. 福田繁

    説明員(福田繁君) そういうことであります。
  68. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 特に小学校は幼児であるという点から特殊の問題を持っているし、中学校の場合には免許状を持たないという問題がありますが、さらにこれは若干関連してくると思いますが、昭和三十八年三月三十一日でもって仮免の者は一応免許法では限度がきますね、それでも実態としては中学校の場合には四、五人しかいない教員ですから、小規模学校の場合には。そうすると、免許状を持たなくても教壇に立っていくという実態が続いていくわけです。小学校であれば養護教諭その他のいわゆる幼児に対する手当の問題が残ってくるし、中学校では免許状という問題から考えても、全然免許状を持たない者が当該教科を多年にわたってずっと教えていく。こういうことから考えると、特に三十八年度は仮免の期限が切れてしまう、これは三十九年度から実施するのじゃなくて、免許状を持たない教師が教科を教えているという現象を解消するという意味からも早急に手をつけるべき問題だと考えておりますが、これはどういうふうに検討しておりますか。養成課長のほうからでもけっこうです。
  69. 安養寺重夫

    説明員安養寺重夫君) 現在の教育職員免許法の規定によりますと、お話のとおりに本年度一ぱいをもちまして従前の仮免許あるいは仮免許状所持のみで教諭の職にある人は失職をするというようなことになっているわけであります。その点につきましては、現在われわれのほうでも実態を調査いたしているようなわけであります。ただ、この改正は昭和二十九年に行なわれたものでございまして、当時のそういった資格所有者あるいは免許状所有者に対しましては三年及び必要とある十五単位を取得すれば二級の普通免許状に上進できるという経過的な特別措置を同時にあわせて講じましたような関係から、今のところは免許法の規定をそのとおりに実施するのが至当じゃなかろうか、やむを得ないのではなかろうかと、かようにまあ考えておるようなわけでございます。
  70. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 ちょっと関連したから若干それたと思いますが、三十八年の三月三十一日で切れる仮免の問題についての措置もさることながら、私が言っているのは、仮免を持っている者はその職にあることができるんですから、四月一日以降はその職から去らねばなりませんね。そうじゃなくて、小規模の中学校には、免許状は持っておる、社会科は持っておるけれども、国語は持たないという人がおりますね。これが国語を教えたり、数学を教えたりしておりますね。この実態が多いことは御存じのとおりです。いわゆる無免許の教師が、他の免許状を持っておるけれども、自分の持たない免許状の科目を教えておる。これは人数が少ないから当然そういったことになります。これに対してどういう手当をしていくつもりですかと聞いている。これは教員の配当率と関係してきます。
  71. 安養寺重夫

    説明員安養寺重夫君) 現在の教育職員免許法によりますと、各学校において特に中学校、高等学校等は教科担当を原則といたしております関係上、いろいろ学校規模あるいは教員の充足の程度等にかんがみまして、やむを得ない場合はある種の免許状を持ち、他の種の免許状を持たない場合にも、授与権者の許可を得まして、その持たざる免許にかかる教科の授業を担当することができるというような暫定の措置を講じておるわけでございます。これが教育上決して望ましいことではないわけではございますけれども、やむを得ない場合のことを考えまして、制度的にはこういうことをやっておると、われわれといたしましてはできるだけこういうことのないように、従前からも種々の単位習得の試験、あるいは通信教育、認定講習というふうなことを開催いたしまして、できるだけ多くの人たちが教師としての免許の資格を得ることができるようにというふうな措置は講じて参っておるわけでございます。
  72. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 いや、養成課長に答弁させなさるからそういうことになる。私はその免許状を持たない者に免許状を持たせるようなことをどうしますかと聞いていんじゃない。そうじゃなくって、そういう措置を講ぜられても、たとえば私が東光中学におって国語と理科を教えておるとする。自分は、あなた方がどんなに免許状取得の方法を講じてもらっても——講習会旅費をやられる、東京に来るなら東京行きの一等旅費をやると言われても、私は社会科の教員ですから国語や理科を取りたくないと言ったら、これはしょうがないでしょう。ところが、現実に自分の望まない教科を、これは大規模学校でもこういうことは若干ありますが、特に小規模学校はひどい。それはそういう免許を取得させていくという措置じゃあ解消できません。やはり小規模学校に、米田君が再々言ったように、教員の配当率を高めていくという方法しかあり得ない。それでもなお完全に解消はしません。これは極端にいったら、教科数だけ配当しなければならぬような学校もありましょうし、二教科持った者が二分の一おればその半分で済むというこの実情を、少なくとも教員免許状取得、あるいは教員養成の問題としてでなくして、義務教育学校充実という角度から考えていくと、それらの教員に免許状を取得させるということじゃなくて、小規模学校教員配当率を高めることによって、無免許の教科を教えることを少なくしていくという方便が早急に講ぜらるべきだと、こう言っている。このことに関して大臣はどういう御見解かと、こう言っている。
  73. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 今御指摘の点は、当然そういう方向をたどるような努力がなされねばならぬと思います。
  74. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 もう一歩突っつきますがね、大臣はずいぶん各地を回っておられますが、たとえば五学級程度の僻地学校の中学において、免許状を持たない教師が何科目ぐらい教えておるか、大まかには係の者から聞かれたことがありますか。
  75. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 正確にお答えするほどは聞いておりません。
  76. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 正直で非常によろしい。大体お聞きになっていないでしょう。単に教職員の勤務のオーバーというのじゃなくて、教育効果という面から考えても、小規模学校教員の配当率を高めて、専門の教科担任が教科を教えていくという傾向を助長していくためにも、小規模学校の現行の定数というのは改正さるべきだということを、大臣も十分考えておいていただくと同時に、僻地の問題については、そういう全くしろうとの科目に対して中学生教員が教えておる場合が非常に多いということ、ある学校では三分の二以上の教科がそういう現象にあるということを大蔵政務次官も十分お考えいただきまして、ぜひともこれが早急に改正に努力していただきたいと思うのです。  僻地の問題が出ましたから、教員の配当率で、もう一つお尋ねしたいのですが、養護教員の配当につきましては、昨年私どもが出した法律案に対して、文部大臣から非常に年次計画まであげられた詳しい決意のほどが表明され、今年度は実現の第一歩を踏みました、これは喜ばしいことですが、あの際にも私どもが論議いたしましたのは、いわゆる大規模学校には少なくとも配当していくと、こういう考え方と同時に、僻地の場合を考えてみますと、大臣の出身地の八女部にいたしましても、北海道その他の僻地、離島においては特にそうですが、無医村がかなりありますね。僻地の学校の無医村というのは、文部大臣もまだ正確な数字を聞いておられないと思うのです。こういう中で養護教諭の果たす役割というのは、単に生徒の看護養護だけじゃなくて、村の人たちが腹痛を起こした場合に、なければ麦の粉を食わして、これでよくなるのですと言わなければならぬ場合もあるし、いろいろ医者としての役割を果たしておるのですよ。こういう点から考えてみますと、少なくとも養護教諭といってものについては、特に小学校等においては、別途に定数法の改正だけでなくして、養護、事務職員等については、小規模学校、特に山間僻地、離島においては、別個に僻地教育振興という角度からも検討を加えて、一般の学級定数の改正という問題とは——もっと重点を置いて、養護職員、教員あるいは事務職員を配当すべきだと、こう思うのですが、そういった決意がこの予算のどこかに盛られておりましょうか。盛られていないとすれば・基本的にどういうお考えでしょうか。
  77. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 計画的には盛られていないと承知いたします。そうだとしまして、一般的な、基本的な態度としてどうだというお尋ねのようでありますが、これはちょっと常識的なことしか申し上げられませんが、僻地におきまして無医村があった場合には、むしろ厚生省の所管の問題として無医村を解消するという課題が先じゃなかろうか、僻地における学校児童生従数よりも住民の数が多いでしょうから、その住民の数の多いことに重点を置いて無医村解消というものがまず考えられる、それが順序じゃなかろうか。そのお医者さんが学校の養護教諭の代理みたいな機能を果たしてもらうということも現実問題としてやむを得ないのじゃなかろうかというふうに受け取れます。
  78. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 荒木新厚生大臣の決意のほどはよくわかりましたが、そのことも国民のウエルフェアの問題から考えると当然そうなるべきです。これはまた御存じでないからそういう御答弁なさると思うのですが、僻地の学校では、まず身体が、非常に都合の子供と比べて劣っています。それと同時に、いろいろな疾病を持っています。眼病とか、あるいは容生虫病とか、これは衛生環境の問題も、医者がいるとよくなるという問題もあるでしょう。とにかく僻地の子供の身体というのは非常に劣悪な条件にある。これはやはり学校教育としては、医者がこれを担当すべき問題でなくて、養護教諭という立場でやっていくべき問題だと思うのです。それでもやはり大臣は、養護教諭を大規模学校に早急に充実していくと債時に、僻地も、大きいところと小さいところから割り当てていくという機械的な考えでなくて、僻地にも養護教諭を早急に配当しなければならぬという実情にあるということもお認めにならぬですか。
  79. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 認めないわけではございませんか、限りある養護教諭の養成状況——看護婦すらも足りないで、厚生省では大騒ぎしているという実情に立って考えます場合、先刻申し上げたとおり、まず無医村解消、続いて、できるならば僻地学校にも、一つ一つどの学校にも養護教諭が配当できるようにと、気持はそうでございますが、おそらく百年河清を待つような状態ではなかろうか、現実の問題は。そういうことを念頭に置きましてお答えしたわけでございまして、理想的に言えば、お医者さんもおってほしいし、養護教諭もあったほうがいい、そのことには間違いないと思います。しからば昭和何年にそれが実現できるかという、計画的な解消方法を考えようにも考えようがないくらいにむずかしいことだろう、事実問題としてはそう思います。
  80. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 定数法の改正、あるいは政令改正の際、あるいは三十八年度が終わって、一応の第一次のすし詰め学級解消の文部省の施策が完了した後に、新たに学級定数の構想を立てていく、いわゆる四十五年、五カ年程度の計画の際にも、小規模学校に、単に小規模ということでなくて、特に僻地におけるそういって学校に養護教諭の資格を有する者の養成ということを兼ねながら、早急に配当していくにはどうしたらいいかという検討の意思はおありにたる、こういうふうに理解してよろしいですか。
  81. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 検討はむろんいたさなければなりませんが、さっきも申し上げましたように、現実的な解消の線までたどりつくのは容易なことではなかろう。さりとて、それを無視するのではもちろんない、かように考えます。養護教諭を大規模学校に配当しますにつきましても、まず養成のことから考えなければならぬということに考え及びまして、その養成施設充実したいということに着手しようとしているわけでございますが、それがだんだんと年を追うて養成の効率を上げるようなふうに努力が続けられて初めて到達する問題と心得ます。
  82. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 大臣にもう一つだけあるのですが、同僚議員もほかにあるようですが、施設設備の問題について単価の引き上げをされたこと、それから構造比率の見込みを是正されたということ、これは敬意を表します。しかし、先ほど会計課長が読み上げた単価計算では、教材費についても、校舎建築についても足りないし、特に僻地においては、町村当局そのものの財政が、ある町では収入が——村でも町でもそうですが、町は若干少ないと思いますが、年間の予算規模は一千万円程度、学校を建てるには一千万円では建たない、こういう現状にあるわけです。単価の引き上げと同時に、補助率の改正、引き上げ、特に僻地等については地方自治体の財政力が弱いという点、こういう点を十分考えて、公立文教施設整備補助費ですね、これの単価、あるいは補助率、全般的にもそうですが、特に今申し上げました財政力の弱い僻地等に着いては、ある程度プラス・アルファというか、是正をしていくという検討がなされたでしょうか。説明員(杉江清君) ただいま御指摘のような点、検討いたしました。しかし、その点の引き上げは要求いたしておりません。その補助金の裏づけとして起債のほうを見ているというような事情も考えまして、今回は補助率の引き上げの要求はいたしておりませんで、地方負担の多くなりますことを改善する点におきましては、構造比率及び単価の引き上げ、そして、もう一つどもは、予算の上には直接現われておりませんけれども、基準改定をぜひ来年度よりいたしたい、こう考えております。それによってその負担の実質的な改善をいたしたいと、かように考えておる次第であります。
  83. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 それは全般の問題ですね。
  84. 杉江清

    説明員(杉江清君) そうです。
  85. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 私が指摘した財政力の弱い僻地等の市町村に対する別個の、僻地教育振興法になるか別の法律になるか、まだ具体的にはこれという試案もないんですが、そういう問題は検討しましたか。
  86. 杉江清

    説明員(杉江清君) 検討はいたしましたが、来年度は、まず単価構造比率、基準改定、この面からひとつ——これは全般的になりますけれども、その負担の問題を改善したい、かように考えて、特に僻地という観点からの引き上げの要求はいたしておりません。
  87. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 検討したということですが、特に僻地等について補助率の引き上げをするとすればどういう方法を考えられるか、検討の経過を簡単に説明してもらいたい。
  88. 杉江清

    説明員(杉江清君) 僻地教育振興のために補助率の引き上げは望ましいことではありますけれども、しかし、この補助金の残りの部分は、やはり起債で見ているわけでありますから、その点では地方負担の引き上げの効果というものは、地方負担について望ましいことであるけれども、それほどその起債の問題は、あわせて考えましたときには、なおほかのほうの改善を先に考えまして、将来その問題を検討するということでいってよろしい、かように判断したわけでございます。
  89. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 僻地教育振興連盟、あるいは僻地教育研究会ですか、こういったところからすでに文部省に対して、僻地教育の振興に関する両団体から詳細な陳情書が出ているはずですね。それのどれとどれに重点を置いて検討されましたか。
  90. 杉江清

    説明員(杉江清君) 公立文教施設整備という観点からは、私どもは、いわゆる集会室と教員宿舎、この面のなお充実に特に力を入れるということで要求しております。
  91. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 教員宿舎の僻地手当の支給されている全国の義務教育学校で、教員住宅に入らないで、一般の旅館あるいは村の有志等のいわゆる下宿ですね、これの比率はどうなっていますか。
  92. 杉江清

    説明員(杉江清君) ただいまその資料は持ち合わしておりません。資料は用意はしておりますけれども、持ち合わしておりません。
  93. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 大臣に考えていただきたいのは、教員住宅の問題が出ましたが、なるほど町村で補助がありますから、教員住宅を建てております。ないところは割りに少ないようですが、それでも実際は通勤できないで、今申し上げました旅館その他に下宿しておる者がかなり多い。これはあなたの御存じの八女郡でも朝倉郡でも非常に多い。このことは、市町村が教員住宅を建てていけば補助するのですよ。こういうかまえだけでは解決できない問題です。やはり教員住宅の補助率の引き上げなり、あるいは予算そのもののワクの拡大、こういったものが並行していかなければならないと思いますが、大体福岡県で、今申し上げました両部におきましても、普通の下宿の場合は、ずいぶん村当局が努力してくれて、三千七、八百円で押えておるところもあれば、四千円程度でやっておるところもあるようです。しかし、それでは僻地手当というのは赤字になるのは御承知のとおりですね。こういう点を考えて、やはり住宅手当の支給ということも一教員住宅を設定していくということと同時に考えらるべき問題だと思っておりますが、この点に関しての検討は行なわれましたか。
  94. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 特別に検討いたしておりません。というのは、私の理解に従いまするならば、御指摘のような問題は地方財政一般の問題ではなかろうかと思います。僻地なるがゆえに財政負担力が弱いということは、交付税制度それ自体に当然含まれる課題でございまして、教育の面だけから、僻地なるがゆえに、僻地にあらざる市町村、公共団体と差別をして補助率を考えるということは、第一義的には当然出てこない課題ではなかろうか。財政力の負担が弱いが、一般行政レベルを上げなければならねという課題は、地方財政の面からとらえて、僻遠の地であるがゆえに国としてはむろん考慮すべき課題とは思いますけれども教育プロパーの立場から当然に導き出される課題ではないのじゃないか。教育に対する僻地手当等は、教育それ自体の立場から割り切れる課題と思いますけれども、今御指摘のような課題は、私はそういうふうに受け取らるべき課題であろう。だから今日までそういう制度が考え出されないでおる。さりとて、自治省に対してその問題を全然無関心であってよろしいとはむろん思いませんけれども、制度論として申せばそういうことじゃなかろうか、こう理解しますので、特別に文部省としては具体的には検討いたしておりません。
  95. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 原則論としてはそういうことです。しかし、通勤できないという事情にある教員が全国——私は数は持ちませんけれども、杉江局長はお持ちのようですので、あとで出してもらいますが、非常に多いわけです。バスがあるけれども、始業時間には間に合わない。九時半ごろ第一時限を始めると間に合うけれども、しかし、それでは六年生等は非常におそくなる。そうすると、山の中を帰っていく際に不祥事件が起こったりする可能性がある。こういったいろいろな問題があるわけですね。そこで、やむを得ず下宿をしておる。これでやはり三分の一から半分近いパーセントが私が指摘した両郡であります。こういった点を考えると、いわゆる住宅手当がないということの可否の問題は別問題として、少なくとも住宅の建設を促進していくということ。それから、同時に、僻地手当で下宿をしても、二重生活をしておる教員が赤字にならないでやっていけるという僻地手当の増額、これは当然必要だと思うのです。赤字になるために、三カ山の朝倉の校長はバイクで大体五十キロ通勤しています。しかも、それは普通私どもが歩いても、なかなか簡単には歩きづらいような道をそういう通勤の仕方をしておる。こういう点を考えまして、住宅手当を支給するということが現段階であなた方の頭から出てこないとすれば、僻地手当の増額ということは、当然三十四年度設定の際から考えまして、今日ではもう再検討の時期にきているのじゃないか、こういうふうに考えるのですが、所管局長なり大臣のお考えをお聞きしたい。
  96. 福田繁

    説明員(福田繁君) おっしゃるように、僻地の問題にはいろいろな問題があると思います。で、まあ根本的に申しますと、教育費として補助金等を出しておりますのは、ごく一部分の限られた問題でありますので、先ほど大臣がおしっゃいましたように、やはり僻地の町村の財政力を強化するには、何と申しましても自己資金の強化であると思います。そういった点から、やはり将来教育問題を研究しなければ、相当大きなそこに問題があることは私ども承知いたしております。それらに関連して教員の待遇の問題でございますが、これも今御指摘の僻地手当の問題につきましては、まあ現行でいいかどうかという声も聞くのでございますが、教員給与の問題につきましては、これは全般的な問題と関連いたしますので、そういう全般的な問題とやはり関連させて検討する必要かあろうかと思っております。したがって、今直ちに僻地手当増額ということには結論が出ないわけでございます。将来ともに検討すべき課題であると考えております。そういう状況でございます。
  97. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 僻地教育振興連盟ですか、その三役が持っておるプリントを見まして、当人たちに会っていろいろ話をしたのですが、ここで課長の名前を言うのも何でしょうから言いませんが、文部省のその課長に話をしたところ、次年度の予算の中にはそれは繰り入れるというか、ちゃんと増額するようにやっていますと、こういうことで安心しましたという報告を、朝倉郡の小石原中学で、かなり多くの郡の僻地の学校の校長が集まったときに報告をしておりましたが、僻地手当を含めて、文部省と全国の僻地のそういった諸団体との間にと次年度予算において打ち合わせが終わっているのじゃないですか。
  98. 福田繁

    説明員(福田繁君) もちろん僻地連盟等の方々が陳情にお見えになりますし、そういう場合には、その趣旨をよく伺っておりますが、僻地手当を増額する、引き上げるということを申したかどうかは、私はそれは存じません。おそらく現在の僻地手当は、御承知のとおり、低率でございますから、人事院勧告に基づきますベース・アップ等の問題があれば、当然に僻地手当は実際は増額されるわけでございます。そういった問題はあるいは話し合ったかもしれませんが、その率自体を引き上げるというようなことは聞いておりません。
  99. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 もう一つ。そうすると、僻地手当の増額、さらには基準点数というのですか、ありますね一幾つも分けた。役場までの距離とか、バスまでの距離とか、あれの改正等を含めて、現在次の通常国会に僻地教育振興法等の具体的な改正はまだ検討されていないし、結論も出ていない、こういうふうに理解してよろしいですか。
  100. 福田繁

    説明員(福田繁君) その面について、現在直ちに僻地教育振興法を改正する必要があるかどうかということは、私どもまだ結論を得ておりません。ただ、僻地の問題につきましては、いろいろな問題で充実しなければならぬ問題が相当ございます。従来からの、たとえば電灯のない所の発電施設の問題、給水施設とか、あるいはスクール・バスだとか、いろいろな問題がございますので、そういった点につきましては、これはできる限り従来の方針を踏襲しまして内容充実して参りたい、こういうように考えておるわけでございます。それから、三十七年度におきましては、多学年学級担当手当の増加等、若干の引き上げをいたしました。そういった点では、今後改善すべき問題は改善して参りたいと思っております。
  101. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 基準点数の改正は、もう三、四年たったのですから、必要になってきておるし、実情に合わなくなってきておる面が若干あると思うのですが、これが若干の手直しを、次年度の予算編成に大きく響いてきますが、あるいはこの予算の中でも、若干の手直しはできるという判断ですか。
  102. 福田繁

    説明員(福田繁君) 私どもその点につきまして、今年の初め以来、いろいろな御要望がありますので、その線に従って検討してみたことがございます。その際に、各府県の意向としてはいろいろな意向がございまして、必ずしも一致した意見ではございません。これはやはりその地域事情が非常に違うという特殊性に基づくものだと考えております。したがって、今の級別指定をいたしましたのも、いろいろな要素を勘案しての級別指定でございますが、この指定した以後において、事情がある程度、やはり交通が開けるとか、いろんな点から変わっていくことは当然でございます。変わっていくべきだと思いますが、直ちにそれを改正いたしますと、かえって実態に合わないというような面が起きる心配がございます。むしろ現在の級別指定で非常に不合理な点があれば改正しなきゃなりませんけれども、むしろ今は、かつて指定されたものをそのまま温存したいという、何と申しますか、暫定的にでも今の指定を残してもらいたい、こういうところが非常に多いわけでありまして、そういった点で私どもは実際の問題にぶつかりますと、それもある程度既得権として考慮しなきゃならぬというように考えまして、まあジレンマに陥るわけでありますが、各府県の意向は非常にまちまちで直ちにこれを改正してもらいたいという意向はただいまのところないようであります。
  103. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 全国の大会をやった結論として出しておる中には、僻地振興の改正、基準点の改正、どちらも要望しておるのでしょう。だから各県の教育長や当該者が陳情してくるものと、やはり僻地教育振興連盟ですか、町村がやっているほうではないほう、あちらには補助金も出してあるでしょう。たしか二十万かもらっているように聞きましたが、そういう団体が純教育的な立場から強く要望しておる問題ですから、全体の要望事項を再度検討していただいて、もう一度僻地教育振興法、あるいは基準点、その他教員の配当率、それから教員住宅、あるいは交通手当等についても、バスを利用しておれば有利だけれども、自分の乗物を持っておる場合には非常に不利です。実は一日に五十キロ走っているものもある。ひどいところでは、朝倉郡でも、年間二台のスクータを買いかえておるという資料を出しております。こういった点をもう少し抽出をしてでもけっこうですから、寒冷地帯、とかあるいは離島とか、あるいは純粋な山とか、こういった状定の指定のところでも十分調査をしていただいて、再度検討しておいてもらいたいと思います。
  104. 小林武

    ○小林武君 まず初めに、先ほど大臣の答弁の中で、ちょっと確認をしておいたほうがよろしいのではないかと思う点を一、二お尋ねいたします。  大臣の先ほどの答弁の中に、一学級の学級編成生徒児童教の問題で、イタリーの例を引かれた。イタリーばかりでなく、ほかの国のことも明らかになっておるわけですから、そのことは申し上げませんけれども、四十人よりかも三十五人がいい、なお聞いてるとあるいは三十人がいい、二十何人がいいというようなことについては、まだあなたは確信を持っていないというような意味の御答弁をなすっている、そういうふうに聞こえたのですが、あなたは財政上予算上の面から、そういう点は諸外国のあれにだんだん近づけるほうがけっこうだけれども、金の問題を考えると、なかなかそこまでいかないとおっしゃるのか、諸外国のとっているような面までいくということについては、教育の効果という問題、教育の技術の点からいって、問題点がまだ残されているというのか、その点をひとつ明らかにしていただきたい。
  105. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 教育効果などという専門的な用語で表明されるような内容を裏づけしたことを私申し上げる資格はありませんが、学級編成は、一般的にいいまして、数が少ないほどいいだろうということは言えるかと思います。あとは現実に国家財政なり地方財政等の負担力、あるいは諸政百般の中に占める教育の重要度というものを現実に実行できるか否かという点から見てどう把握するかということが、私の申し上げた考えの裏づけの課題でございます。
  106. 小林武

    ○小林武君 わかりました。そうすると、なるたけ少なくしたい、こういう意向ですね。
  107. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) できれば一対一対で教えるのが一番いいと思います。
  108. 小林武

    ○小林武君 まあいいでしょう。  それから、僻地教育の問題ですが、先ほどから何べんも質問があり、答弁があったのですが、やはり僻地教育を考える場合には、経験した者からいって、やはりどうしたら教育が能率的に、効果的に行なわれるかということは、教師にとって非常にこれは重要な問題です。そういう点からの配慮というものは、この予算の中にあまりはっきりしていない・雨水がどうしたとか、いろいろいいこともありますけれども、スクール・ボートもけっこうです。皆そういう条件がそろわなければならないということについては異議はありませんけれども、たとえば先ほど米田委員が質問した問題等について御答弁をいただいているところを聞くというと、僻地教育の振興という問題については、たいへん力こぶを入れているとおっしゃるけれども教育の効果を直接上げるための金の使い方、予算の立て方という点では、非常に足りないところがあるように思うわけです。そういう点は一体お考えになっているのかどうか。重点としてお考えになったというが、直接効果を高めるという点はどこにあるのか、ひとつ御説明願いたい。
  109. 福田繁

    説明員(福田繁君) 先ほど米田委員のお尋ねにございましたように、僻地教育の問題について、教員定数の問題、これは非常に重要な問題であると思います。先ほど私、豊瀬委員の御質問に対しましてお答え申したとおりに、たとえば僻地教育の振興をはかる意味におきまして、電灯のないところに自家発電施設設置に補助するとか、あるいはスクール・バスとかボートというようなものの援助も、これもやはり僻地教育振興の一つの方法と思います。あるいはまた教員住宅の補助につきましても同様に考えるのでございます。私どもとしましては、さらに教材の面も相当重要なものだと考えております。したがって、来年度におきましては、僻地を中心にいたしました小規模学校におきまして、従来の教材費の充当をさらに充実しまして、そして教育効果を上げたい、こういう趣旨をもちまして、特に僻地の学校に対する分として、教材費負担金の中に十一億円のワクを作ってこれを要求いたします。それらによって来年度はできる限り充実した教育ができるような配慮をしたいと考えております。そのほか、僻地にはいろいろな問題が従来からございますので、僻地の教育について、やはり根本的にメスを入れる意味において、調査もさらに今後やらなければなりませんし、それから、また、従来からいわれておりますところの複式学級の教科書等におきましても、これは非常に重要な問題でありますけれども、非常にむずかしいので、従来も手をつけなかったわけでございますが、来年度は、もし予算が取れますれば、こういう教科書の調査等につきましても事業を開始したい。こういうことで根本的に僻地の教育のあり方、内容等について、今後十分検討しながら改善をはかっていくつもりでございます。
  110. 小林武

    ○小林武君 まあ先ほど議論されたことですから、これはよろしいといたしまして、次に、先ほど予算説明のときにも強調されましたが、重点的な問題だといって、道徳教育充実強化に一億以上の金が出ておるわけですが、その際の説明に、研究推進校をきめる、あるいは講習会を開く、あるいは小中校の学級担任教員資料の配付をするというような、こういう説明があったわけですけれども、この点について、もう少しどういうねらいで、具体的にはどういうことをやるということを、ひとつ金を出すことですから、ただ簡単にこれくらいあったらいいだろうということではないだろうと思いますので、説明をしていただきたい。
  111. 福田繁

    説明員(福田繁君) 現在小中学校におきまする道徳教育内容、やり方は、これは学習指要導領に定められておる内容でございます。したがって、小学校につきましても中学校につきましても、学校においてやるべき道徳教育内容、範囲というものは大体きまっております。それに従って各地区の小中学校におきまして中心になるような研究校を設けまして、そうしてそこを中心に道徳教育充実をはかっていきたい、こういうような考え方でございます。それから、また、先生に直接読んでもらうべき手引書につきましては、これは学習指導要領において一応の内容がわかっておりますけれども、さらにその教材を駆使して、学年別にこれを配当していくというようなことになりますと、いろいろやはりむずかしい問題もございますので、そういった面から、一般の担任の先生がわかりやすく道徳教育というものをやっていく上において参考となる資料を配付したい、こういうような考え方でやっていくわけでございます。もちろんその内容は、この指導要領によって定められた内容でございます。
  112. 小林武

    ○小林武君 そうすると、資料というのは、これは教師用書というようなものですか。教師が指導する内容を、文部省からこのように教えろというように指導されるという中身を持ったものですか。
  113. 福田繁

    説明員(福田繁君) たとえば教材の扱い方にいたしましても、学年別の配列等の参考例等を示した具体的な指導上役に立つ資料を作っていきたい、こういうように考えております。
  114. 小林武

    ○小林武君 あなたは簡単にそういうことをおっしゃいますけれども、どういうことですか。どういうこととどういうことを教師に一体やれというんですか、結局。
  115. 福田繁

    説明員(福田繁君) これは抽象的にしか申し上げられませんが、学習指導要領においてきまっております事柄を教師として話していく上において、指導上必要な資料、そういうものにしたいと考えております。
  116. 小林武

    ○小林武君 そうするとあれですか、学習指導要領に出ている問題をさらに生徒児童に教えるように具体的に書いたものだと、こういうわけですか。
  117. 福田繁

    説明員(福田繁君) これは全部具体的に書くには、とうていそういう大部のものはできないと思います。参考として、学年配当等について教師の参考になるようなものを一部これを収録するつもりでございます。
  118. 小林武

    ○小林武君 あなたのほうは予算を立てられたのだから、相当練って立てられたのだと私は思うのですけれども、今の答弁はどうもはっきりしないのですがね。あなたも文部省は長いのだからおわかりだと思うが、これは昔、教師用の教科書の教え方というのがありましたね、あの教師用の教科書のようなものですか、この場合の資料というのは。
  119. 福田繁

    説明員(福田繁君) 教師用の教科書というようには考えておりません。指導資料でございます。
  120. 小林武

    ○小林武君 それじゃこの資料の扱い方というのはどういうことになりますか。
  121. 福田繁

    説明員(福田繁君) 教師が参考としてこれを読んでいただくというものだと思います。
  122. 小林武

    ○小林武君 そうしたら、これは何ら拘束しないものですか。教師を拘束し、道徳教育そのものの内容を拘束しないことになりますか。
  123. 福田繁

    説明員(福田繁君) 拘束するという意味がよくわかりませんが、今申し上げましたように、教師が指導するについて、参考としてこれを読んでもらう、こういうものでございます。
  124. 小林武

    ○小林武君 参考ですか。これはだれが書くのですか。文部省の責任で書くということですか。
  125. 福田繁

    説明員(福田繁君) 私どものほうにおります教科書調査官、その他外部の専門家を集めましてそういう資料を作りたいと思っております。
  126. 小林武

    ○小林武君 これは全国の小中校の学級担任全員にこの資料はいくものですね。
  127. 福田繁

    説明員(福田繁君) そうしたいと考えております。
  128. 小林武

    ○小林武君 そうすると、これはこのことを参考にするというだけで、他意がないということですか。教師はそれについて自由に採択することも、あるいはこれをどうすることも自由だということですか、あなたのおっしゃるところでは。どういうことです。そこら辺がはっきりしないとね。あなたがおっしゃるのでは、学習指導要領に従ってその内容を具体化したのだ、——私は、ものが具体化されればされるほど、拘束ということはおわかりにならないといったが、たとえばそのことの事実を、授業の中においてはっきり教え込むということになると、教師のやはり教育をするということに対して拘束になる。だから、あなたのおっしゃるのは一体どういうことですか、そういうことなんでしょう結局。学習指導要領の問題をさらに具体的に書いて、そして、それを日常の授業に役立つようにやっていこう、そういうものを教師に配ると、こういうのでしょう。そうしたら、それはどうですか、事実上の問題として、授業というものに拘束を与えることになりませんか。
  129. 福田繁

    説明員(福田繁君) 私ども、その点は現在の学習指導要領というものがきめられまして、これは小中学校においてやることになっております。したがって、その具体化の一つの方法として参考資料を先生がお読みになる、これは一向差しつかえないものだと考えております。
  130. 小林武

    ○小林武君 少しはっきり言ってもらいたいものだが、あなた、重点だとおっしゃっておる、これは。そして一億という金が出ておるわけですよ。全国の小中の義務制の学校教員の学級担任全員にこれは渡るものですよ。その際に、学習指導要領というものをさらに具体化し、それを配るということになれば、前の講習会、あるいは研究指定校の設定、こういう問題とからんで、この範囲内で教えるということになりませんか。そういうあいまいなことを言ってもらっては困るのですよ。文部省は金を使ってやるのだから。あなたのほうの意思だけをはっきり言ってもらえないですか。参考というのは一体どういう意味か、私にはよくわからないが、あなたのおっしゃることには、少なくともあなたのほうで道徳教育をやろうというからには、この内容を徹底させるということでしょう。一種の修身教科書もそのうちに作る御決意のようですが、そういう意味でしょう。この内容を教えろということになるでしょう。そうなりませんか。
  131. 福田繁

    説明員(福田繁君) 私は、学習指導要領を具体化する、具体的に教授上にこなしていくような指導資料ということを申し上げたつもりでございます。あくまで指導上の参考資料でございます。
  132. 小林武

    ○小林武君 局長というのは、実際の授業というのは知らないだろうから、机上プランで、そこまで十分の見通しがなかったとおっしゃるならまた別ですけれども、少なくとも学習指導要領の問題では、教師と文部省の間にも、かなりの意見の対立があって、このことについて一つの国家基準が、この基準だけははっきり教えなければならないというようなこともあなたのほうで強調されておるのです。そのことがさらに具体的に具体化されて出てきた場合に、それが授業を拘束しないと言えるかどうか。あなたのほうの参考というのはどういうことなのか、そこらをはっきりもう一ぺんだけ答弁してもらいたい。
  133. 福田繁

    説明員(福田繁君) 参考はあくまで参考だと思います。
  134. 小林武

    ○小林武君 あくまで参考だ、参考というのはどういうふうに解釈したらいいのですか、文部省の解釈の参考といった場合に。われわれが参考という場合には、あらゆるものみんな参考ですよ。教師もいろいろなことを教えることについては、多少勉強もしなければなりませんからね。そういう意味の参考ですか。ひとつ読んでおいてくれないかという程度のことですか、その点ひとつはっきりして下さい。
  135. 福田繁

    説明員(福田繁君) 参考という意味に特別な意味は持っておりません。別に法律によってこれを義務づけるというようなことは、考えておりません。
  136. 小林武

    ○小林武君 それでは、昔、教師用という、小中教科書を教えるそういうものがあったのですが、そういうものとは内容なり性格なりを異にする、こういうことですね。
  137. 福田繁

    説明員(福田繁君) 先ほどから申し上げますように、今の学習指導要領の内容は昔と違っております。したがって、内容が違うことは当然であります。だから、今御指摘になりましたものは、昔はこれは教科書と同じ扱いでありました。したがって、今度のこういう指導資料というものは、今申し上げましたように、参考資料でございます。教科書ではございません。
  138. 小林武

    ○小林武君 全くの参考だと、こういうわけですね。  それではもう一つちょっとお尋ねいたしますが、公立文教施設整備費補助ということが重点だとおっしゃった。その中に特殊教育建物のところがございますけれども、先ほどの何か特殊教育のところの御説明の中にもあったと思いますが、大体特殊教育というのは、かなり前進していったというか、そういう表現ではなかったけれども、だんだん進んでいっているというようなお話があったと思うのです。だから、今後は何か職業とか何とかいうような、そういう方面に重点を置いていきたいというようなお話があったと思いますが、一体、特殊教育の中に入る精薄児、あるいはめくらの子供、耳の聞こえない子供、肢体の不自由な子供というのは、現在においてどのくらいの率で就学をしているのですか、義務教育に。それをお尋ねいたします。
  139. 福田繁

    説明員(福田繁君) ここにございますのが三十六年度の就学率でございますが、精薄は四・四%でございます。肢体不自由児は大体八%強でございます。それから病弱、身体虚弱者、これが二%でございます。それから、めくらが四二%、ろうが六七%、こうなっております。大体そういうふうになっております。
  140. 小林武

    ○小林武君 こういう数字を見るというと、どうなんですか、特殊教育の重点というのは八・何%とか、四・何%とか、二・何%という、そういう数字ですね。めくらが四二%で、これは半分に足りない。ろうが、かろうじて半分をこしている。一体ことしの重点はやはり間違っているのじゃないですか。大体、義務教育さえも受けられないというような問題について重点を入れてこれを解決するという方針じゃないのですね、この予算の上から見ると。
  141. 福田繁

    説明員(福田繁君) 特殊教育の面につきましては、従来から年次計画をもちまして、特に精薄児、肢体不自由児を対象にして学級あるいは学校の開設をやって参っているわけでございます。したがって、今申し上げましたように、現在の就学率は、精薄、肢体不自由児は非常に低いのであります。来年度におきましては、従来の年次計画で参りますと、たとえば特殊学級などは、せいぜい七百学級程度しか年次計画の三十八年度分としてはできないことになっておりました。ところが、さらに来年は特殊教育についても相当重点を置いて、これを拡充したいという考え方をもちまして、来年は特殊養護学級を千二百学級程度増設をする計画を進めております。そのほか、学校施設につきましては、従来の五カ年計画等がございますので、それに従った年次計画でもってやるつもりでございます。
  142. 小林武

    ○小林武君 五カ年計画で大体見通しは全体にわたっていくわけですか、そのようにこれは組まれているわけですか、この予算は。
  143. 福田繁

    説明員(福田繁君) 特殊教育の面につきましては、御承知のように、いろいろな隘路がございます。したがって、現在可能なものとしては、従来から立てております五カ年計画というものを一応進めていくのが、現在の段階におきましては一番妥当だという考え方でいっているわけでございます。さらに五カ年計画の中に含まれていない、対象外のものをさらに今後拡充するということは、これは今後の努力目標だと考えております。
  144. 米田勲

    米田勲君 高校全入運動というものは知恵のないやつの言うことだといって、また論議になりますから、そのことには触れないことにして、どうも高校急増対策については、昨年度一年文部省のとった方針では、各都道府県を初め、自治体では、なかなか親たちの要求というか、地域社会の要求に応じられないのが現状じゃないですか、私はそう見ておる。このことでお聞きしますが、一部の高校増設というようなことには、若干の金は出ましたが、この三十八年度では、やはり主体を起債ということで急増対策を切り抜けよう、こういう考えなんですか。
  145. 杉江清

    説明員(杉江清君) 本年度、政府の方針といたしまして、産振と工業一般校舎に対する補助金ほかは、起債と地方交付税によるこの方針を受けて、その中身を充実する、こういう方針で来年度予算要求をしております。
  146. 米田勲

    米田勲君 文部大臣、昨年も今答えたような方針のできておるわけですが、この高校急増対策は、地域社会の人たちの希望をしておるような線に解決が向かってきているという判断をしていますか、どうですか。
  147. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 大体向かいつつあると判断しております。
  148. 米田勲

    米田勲君 文部大臣は認識不足ですよ、非常に認識を不足しております。これはいまだに依然として自治体の重大な課題になっている。そして地域によっては非常に高校に入れない中学浪人がすごくふえるというのが親たちの頭痛の種になっている。私は、結論的に言うと、先年度の政府のやり方、文部省のやり方では、高校急増対策ということは成功しなかった、地域社会の人々の要請には応じ切れなかったというのが実情でないかと思う。依然として文部大臣は今のような答弁を繰り返しますか。反省をしませんか。あの方法では、どうも地域社会の要請に応ずるような急増対策計画的に進められなかったという反省はないですか。
  149. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 反省と申しますか、よりベターな案は、わずかながらでも補助金を出してやるやり方がベターであったろうという気持はあります。ありますが、その補助金制度で意図する事業量と同じものを交付税と起債財源の裏づけでやるならば、それもまた一つの方法だということで、この正月、政府としては態度をきめました。したがって、問題は、起債財源と交付税財源の裏づけが同じように行なわれるかどうかというのが問題の焦点だろうと思います。それにつきましては、今政府委員からお答えしたかとも思いますが、知事会側と自治省と文部省とで、三者で数字を持ち寄りまして、これを事務的にずっと詰めております。新聞紙等に伝えられます数字の中には、いわば急増対策と考えられない部面が相当にあるようであるが、さらに今度は単価構造比率について幾分の考えの相違がございます。そういうことから、ある程度の誤差が出ておりますが、それを今申し上げるように事務的にずっと詰めまして、詰めた結果を起債財源及び、要すれば交付税財源の補正という形で埋め合わせしていこう、そういうのが今残された課題でございます。それが満足されます限り、地域社会の期待にはこたえ得る、かように考えております。
  150. 米田勲

    米田勲君 若干の検討を加えておるようですが、われわれが昨年の予算の際に、高校急増対策としてはこれでは解決がつかないということを再三にわたって強く主張しましたが、文部大臣も政府もあの方針を押し通した。今日の段階にきて、若干の手直し程度でこの急増対策地域社会の人々の要求に応じて解決をみているという判断をしているということは、私は間違いだと思う。依然として解決がついていないということが現状認識でなければならない。それを前提にして考えると、同じ方式——補助金方式はとらないとすれば、起債という形をもっと自治体の側で受け入れて、急増対策に大きく踏み込めるような緩和した条件を改善すべきではないか。去年度のようなものをそのまま踏襲しては、依然として私は自治体の取り上げ方というものは一地域社会の要求に応じて解決の方向に向かわない、そうすると、あとは泣き寝入りですよ、時日が経過すれば泣き寝入り、国民は泣き寝入りしなければならぬということになりかねないので、もしも去年と同じような大幅な補助金政策をことしはとらないとすれば、その急増対策を前進させるために、思い切って何をすればいいかということが問題になる。この起債財源については、去年と同じような考え方なのか、内容なのか、その点はどうですか。
  151. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 数字的に政府委員からお答えいたします。
  152. 杉江清

    説明員(杉江清君) 文部省としましては、来年度は、本年度の実施状況にかんがみまして、進学率、それから単価、構造の比率、年度割り等について再吟味いたしまして、その全体計画を、かくあるべしという案を用意いたしまして、それに基づいて補助金、起債、交付税等の措置をしてもらいたい、かような要求をしているわけでございます。その計画によりますと、この計画については、実際の実施状況に即して、なお改定の必要があるかもしれませんが、一応現在までの資料に基づいて、私どもはこのようにすべきだという考えのもとにおいて積算いたしました数字といたしましては、全体計画について申し上げますと、既定の政府見込みにおきしては、五百五十三億円を必要とすると、こういうふうに考えておりましたが、改定の見込みによりますと、その所要額は九百三十二億円でございます。差額は三百七十九億円、こういうことになりますが、これを年次割りといたしまして、三十八年度の計画を現在考えております。
  153. 米田勲

    米田勲君 起債や交付税の条件というものは、これは緩和されたり、条件がよくなったりすることはなしに、去年どおりの行き方ですか、大体。
  154. 杉江清

    説明員(杉江清君) その起債の具体的な条件につきましては、これは自治省で考えられることでありまして、その点について細部な打ち合わせばいたしておりません。ただ、私どもは、全体計画から見て、このような起債財源が必要である、このような交付税措置が必要である、こういう要求をいたしておるところでございます。
  155. 米田勲

    米田勲君 起債財源を文部省でこれこれとはじいても、これは自治省で、それを文部省計画しておるように受け入れてくれなければだめですね。その受け入れの了解が大蔵省や自治省にとれているのか、とれた上でこの計画に基づいて三十八年度の概算要求ができているのか、それをお聞きしたい。
  156. 杉江清

    説明員(杉江清君) まだそこまではいっておりません。今それについて大蔵省、自治省に対して説明をいたし、お願いをしている段階でございます。
  157. 米田勲

    米田勲君 私は、その文部省計画自体でも、高校急増対策というものについては、現状を解決することには非常にほど遠いとすら思っているときに、その主たる財源になる起債、交付税、そういうものが、はたして文部省計画をしている程度まで自治省や大蔵省が了解をしてくれるのかどうかさえも今の段階では疑問だと、こうなると、文部大臣どうですか、今年度の高校急増対策というものは非常に不安定なものだ、昨年同様、三十八年度の計画としては、相当これを消化して解決をしていけるという自信は今のところ文部省としては持てないということになりませんか。どうですか、その点。
  158. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 今政府委員から申し上げたとおり、起債財源の追加割当及び交付税の補正、それが満足されなければ前向き姿勢が一部くずれまして、三十八年度に持ち越されるということがあり得ると思います。
  159. 米田勲

    米田勲君 これは大蔵政務次官どうですか。この点の問題は、積極的に解決をしてもらえるような受け入れ態勢ですか。
  160. 竹内俊吉

    説明員(竹内俊吉君) ただいまのお話は、今年度における対策と、三十八年度の予算関係と、双方お尋ねになっておるようでありますが、今のは三十八年度のお話でありますか。
  161. 米田勲

    米田勲君 そうです。
  162. 竹内俊吉

    説明員(竹内俊吉君) 三十八年度に関しましては、先ほど文部大臣から御答弁がありましたように、自治省と文部省設置者側との間で今話し合いを進めておりまして、まだ結論が、御答弁のとおり、出ていないようでありますが、その結論に出ました線に沿って、財政的にどれだけのまかないができるかということは、その結果が出てからのことでありまして、大蔵省としては、そういうつもりで待機しておるのでありますが、そういうことであります。
  163. 米田勲

    米田勲君 三十七年度の補正と三十八年度の対策があるわけですが、実際のところ、高校急増対策は、文部大臣は、非常に昨年度以来の方針を踏襲をすれば大体いける、補正がきけば。そういう考え方に立っているために、われわれと非常に認識を異にしているのですが、それにしても、最低の文部省考え方、それを実現に持ち込むためには、大蔵省なり自治省なりが大幅な理解をしてくれるということでないと、最低のものすら破れていくわけです。それは国民を結局泣き寝入りさせるというような事態で解決をしていくということになりますので、その点はひとつ大蔵大臣にも、十分政務次官のほうから事情を話してもらって、こちらのほうの計画支障のないように大幅な理解をしてもらいたい。この点はどうですか。
  164. 竹内俊吉

    説明員(竹内俊吉君) この問題は、三十七年度における事業量の消化が満足にできなかった場合に、三十八年度の入学を圧迫するというか、そういう面が出てくるということは、国民の非常に関心の深いところであります。そういう認識に立っておることには間違いないわけでありますが、先ほど申し上げたように、設置者側と文部省と自治省との話し合いの結果が出た上で実際の措置を考える。文部大臣のお答えのように、この場合にどういう起債の点でいくのか、あるいは交付税の点でいくのかということも、あわせてそういう場合に考えていかなければならぬ、こう考えております。
  165. 米田勲

    米田勲君 もう一点は、昨年度から教科書無償の問題が法律化されて、いよいよ実施になるのですが、この三十八年度の概算要求には、教科書無償政策の実施についてどれだけ見積もってあるのですか。
  166. 福田繁

    説明員(福田繁君) まだ調査会の結論が出ておりませんが、一応ワクとしては七十一億円要求いたしました。
  167. 米田勲

    米田勲君 七十一億ですか。この中に入っておるのですか。
  168. 福田繁

    説明員(福田繁君) はい。
  169. 米田勲

    米田勲君 どの項目ですか。
  170. 福田繁

    説明員(福田繁君) この表の中にはないそうでございますが、別に七十一億要求いたしております。
  171. 米田勲

    米田勲君 別にというのはどこにあるのですか、別ワクで要求をしているのですか、どうなんですか。
  172. 福田繁

    説明員(福田繁君) この表にないというだけでございまして、文部省概算要求の中で七十一億要求しているわけでございます。
  173. 米田勲

    米田勲君 そうすると、この表には載ってないけれども概算要求の中には七十一億円が入っている、こういうことですか。
  174. 福田繁

    説明員(福田繁君) そうでございます。
  175. 米田勲

    米田勲君 これは政務次官どうですか、そのことの折衝は受けているのですか。
  176. 竹内俊吉

    説明員(竹内俊吉君) 概算要求の中には、確かに今御答弁があったように、入っておりますと承知いたしております。
  177. 米田勲

    米田勲君 その七十一億というのは、この教科書無償政策を進める計画の中からいうと、どういう位置になっているのですか。ちょっと聞き方が悪いとすれば、年次計画というようなものでもあれば、その計画の中でどういう位置を占めているのですか、この七十一億は。
  178. 福田繁

    説明員(福田繁君) これは先ほど申しましたように、新しく設けられました調査会で結論を出さないことには、本来ならば、それに従った予算要求がしできないのでございますが、とりあえず七十一億要求しておりますのは、小学校の一年生から六年生まで、全部全額国で持てば七十一億要るわけでございます。その分として一応概算要求いたしておりますが、調査会の結論が出れば、それに従って修正されるというものでございます。
  179. 米田勲

    米田勲君 調査会の結論は、あれは日にちが限定されているはずですが、いつごろ出そうですか。
  180. 福田繁

    説明員(福田繁君) 来年度の予算に関連のある事項は十一月末まででございます。おそらくそれ以前に出るだろうと思っております。
  181. 米田勲

    米田勲君 そうすると、文部省側の立場としては、その調査会の結論が出てから具体的に計画が立てられて、それから予算要求という段取りになるわけですか、手続上は。
  182. 福田繁

    説明員(福田繁君) 手続としては、今出しております予算を訂正するということになると思います。
  183. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 関連。一応四時半には終わるように努力するということですが、あとわずかしかないんですが、問題点がありますので、簡単に聞きたいと思います。  まず第一番は、昨年の法律で設置された工業教員養成所ですね、これは与党の皆さんも文部大臣も御承知のとおり、今年、当該学校生徒が、教授が基準どおり配当されず、また時間割りが組まれても、当該講義が時間割りどおり行なわれない。私は、各学校の全部の一定期間の授業の欠講になったのを調べていますが、ある時期においては、六月ごろにおいては、半数以上が授業が行なわれていないという点があります。それから、教官の配当率も、北海道大学、九州大学等の一、二を除いては、非常に悪い。それから、さらにもっと問題は、私どもが当初心配したように、優秀な生徒が将来に対する不安を持っている。その他、設備が悪い等の問題のために受験をしていない。第二次募集をやった学校が非常に多い。しかも第二次募集で実際に福岡県で入学した当該生徒の高等学校における成績まで私は調べて参りました。これは他の諸学校における生徒よりも非常に成績が悪い。しかし、それでもなお定員に満たないために、九州大学では、ある学級は定数よりも十何人だったと思いますが、数字として不正確ですが一その他の大学養成所においても、四十人の定員に対して、二十数名というのがかなり多くある、こういう現状です。そこでストライキをしたことがいいか悪いかということではなくて、あのストライキの当時、私も実際に見てみましたが、きわめてまじめな態度で、自分たちの身分、あるいは実力のつかないということに対して不安を持っている。私は、三年間で今のような条件の中で工業教員養成することは、あぶはちとらずであるし、政府の意図が実現できないという点で、再々指摘したのですが、発足した以上は、これを充実する以外ないと思うのですが、現状に対して、まず教官の配当、それから施設設備充実、このことに対して基準どおり全養成所が完全にできるように予算要求をしているかどうか、まずそれが第一点。
  184. 安養寺重夫

    説明員安養寺重夫君) 九つの工業教員養成所を開校いたしまして、来年度をもって完成年度に達するわけでございます。われわれといたしましては、初年度から逐次当初の教官定数設備の充足計画というものを変更いたしまして、新しく教官定教の増並びに設備の、さらに経費の増額ということを実行しておるわけでございます。最終年度には、さらにその改訂いたしました計画が確実に実行できますように努力をしたい、かように考えておるわけでございます。大まかに申し上げますと、教官の定教は、当初、専門教官につきまして、大学工学部の学科の約半分という要求をいたしたわけでございますが、それを改訂いたしまして、専門教官は四分の三にまで持っていきたい、並びに一養成所につきまして基礎教育のことをもっぱら専管していただけるような教官の充足を別途にいたしたいというようなことを考えております。なお、施設につきましては、当初計画どおり工事が現在進行いたしておりますので、設備の充当に全力をあげたい、これも大体新制大学工学部の学科の四分の三に近いところまでは充当いたしたいと、かように考えておるわけでございます。
  185. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 計画どおり進んでいることは大体知っております。その計画がおそ過ぎるから学生の間に問題があるし、協力的な九州大学その他の大学においても、当該工学部に対してははっきりと不満がある、異常な決意で、国家目的に対しては、中に入ってきた者がりっぱな教員になるつもりで協力してやってくれるだろうというのが大臣の所信です。これとまったく逆行した方法をとっています。したがって、施設設備についても、設備でなくして施設設備についても現行のテンポを早める必要がある、それから教官の充足についても二、二、一というのが完全に実施されないでもっと低いところがたくさんある、それから当初予想されておった工業短期大学、あるいは工学部等の協力が期待どおりできていない、こういう状況にあるのですね。このことについては再度検討されて、せっかく工業教員養成しようとしておるのですから、少なくとも形の上においては三十七年度末にはきれいになるように追加予算でも要求するという決意でやってもらいたいと思っております。大臣には、工業教員養成機関の施設設備教官配当について一日も早く完備する、現行基準を引き上げたいという養成課長の考え方はけっこうですから、それも必ず実現していく、こういう決意を持って大蔵省と折衝してもらいたい、こう思っておりますが、それに対してはどうですか。
  186. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 御指摘のとおりに努力いたしたいと思います。
  187. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 次に、生徒自身が、先ほど言ったように、大学に入学したいといって受験勉強をしておる者の数、受験勉強を初めたいといっておる者、民間の会社に将来いきたいという者、各大学一年生、二年生、それぞれ別個私の手元に全国の養成所の資料があります。それを一々読み上げていきますと長くなりますので、次回に再度検討してもらって触れることにいたしますが、こういうふうに、現在入学しておる者も教員になるという希望というか、気持において動揺を来たしておる、これが第一、それから私が、たとえば九大に設置されている工業教員養成所を一日かかって調査しました。教官の意向も聞きました、学生の意向も聞いた。この中で実際に高等学校を調ベてみても、端的に申し上げまして、前年度に比べて今年度は、先ほども申上げましたように、非常に成績の悪い者が希望をし入学しておる、こういう実情を大臣は把握しておるだろうと思いますが、これが何によってそういう現象が招来されておるか、それは現在、定数に完全に満ちておる養成機関のほうが少ない、こういう現状をどう把握しておられるか。
  188. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) これはひとり工業教員養成所のみならず、教員養成大学に通じても指摘できる一般傾向だと思います。工業教員養成所に、ある程度その現われ方がきびしい状態になっておろうかと思いますが、いろいろ原因もございましょうけれども、これは教員の待遇の改善ということもむろん根本的な課題の一つかと思います。それは当然に経済界の人材の要望が熾烈なるがゆえに、そのほうへいい者が抜かれてしまう。入学するときから、これと思うものは教員養成学校等にいかないで、ほかのほうを選ぶというふうなことも関連しておろうかと思いますが、先刻御指摘のようなことを極力整備することによって、かつまた、入ったものに対する使命感をさらにかき立てることによって幾らかでもその欠陥を補っていきたい、かように思います。
  189. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 使命感のかき立てという、うしろからかき上げて尻を突くような政策じゃなくて、将来に対して希望を持たせるということと、学校に入った以上は、そこで十分の教員としての学力が養成されていく、こういったことが重要な問題ではないかと思います。もちろんたびたび指摘いたしましたように、教員を確保するためには、臨教員養成所を作るというようなことはこそくの手段であって、抜本的にはあなたの言われたような、待遇の改善とか、その他の問題が必要になってきます。たとえば九大においても、九州大学と同じ角帽をかぶらせてくれ、こういうナンセンスな要求を、すました顔をして学校当局要求をする。これは学校教育法によって設置された学校でないということに対する、本学に対するコンプレックスから、こういった感情の中で教員が三年間養成されていくことが将来に対して大きな影響を与えてくると思います。冒頭に申し上げましたように、彼らの統一要求は、やはり四年制にして大学卒業程度の養成をしてもらいたい、こういう前向きの希望です。これは私どもがたびたび法案審議の際に指摘したところです。わずか一年間早く出すために、大学よりもある科目については完全にゼロ、ある科目については三分の一、ある科目については二分の一、こういったようないわゆる教科の内容で、優秀な工業教員になるのだという宣伝を、あるいは使命感を幾らしてきてもだめだと思います。したがって、現行の施設設備等に対する充足を早急にやっていただきたいと同時に、この際もう一度工業教員養成機関というものに対して、四年制の必要性について再検討を、三年制でいいか悪いかということを、先ほど私が指摘した非常に成績の悪い者がかなり多く入学希望し、実際において入学しておる。こういった事態から考えて抜本的に再検討すべき時期にきておると思うのです。このことに対して養成機関の現行のあり方、将来の設計に際して、再度検してもらいたい。このように考えますが、大臣どうですか。
  190. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 教員養成所が学校教育法に言うところの学校でないことは初めから明瞭なことであります。当面の教員不足にちっとでも早く応じたい、そのことが学校で学びますところの児童生徒に対する当面の緊急の課題でもあるということから生まれ出ましたのが教員養成所でございますから、これを四年制に改める考えはございません。それは四年制の大学教員が充足できるかどうかということとのにらみ合わせで考えらるべき事柄と思いますが、当分の間、この養成所は御指摘のようなことを充実して、入ってきました学生養成所の生徒に対しまして無用の卑屈感やら自信喪失感情を起こさないような考慮を十分にして、その努力を積み重ねることによって生徒たちの要望にも沿いたいと、かように思います。
  191. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 政務次官にお尋ねしますが、現行の予算でも不十分だと思いますし、概算要求ですので、あらためて実態に立って文部省要求してくれば、なおけっこうなことです。そうするだけの熱意がなくて、すでに要求しておるこの予算に対しましても、工業教員養成所の実態をきょうは詳しく述べる余裕がありませんでしたけれども、せっかくこういう養成所を作っておって、現状のようではまことに憂慮すべき問題だと思うのです。十分その点を理解していただいて、工業教員養成充実という点についての予算について御配慮を願いたいと思います。  それから次に、大学問題でお尋ねいたします。これは大臣にお尋ねしますか、いわゆる旧制の四年制の国立大学、それと新制の大学とに対して施設単価でさえも違いますね。鉄筋で校舎を建てる際に旧制帝国大学には九万八千ですか、新制の際にはそれを切り下げてやる。それから教官研究費も同様だと思うのです。それからきょう出てみて初めてびっくりしたのですが、大学院があるとか、学部がたくさんあるとか、こういった理由で旧帝国大学だけに認証官学長とか、こういうものを作ろうとした。こういうことが現行の国立大学の刷新、充実になるとお考えになっているところに非常に問題点があると思うのです。ちょっと時間がありませんけれども、具体的な例をとってみたいと思うのですが、これは私よりもあなた方のほうがお詳しいと思うのですが、国立大学においても旧制と新制はもちろん、戦前からの経過がありますから、蔵書の数もお話にならぬことは当然ですが、東大や京大には二百万の、国会図書館よりも多くの書籍があるのに、帯広畜産大学はわずかに二万四千、室蘭工業大学は三万九千とか、その他の国立大学でも十万以下というのがざらにありますね。そうして、それぞれの大学の図書館長や事務局長に問い合わせてみると、年間の図書の増というのは全く微々たるものであります。私が指摘したいのは、図書というものは学術研究において最も重要な位置を占めると思うのです。この図書費が非常に少ないということは、大学管理機構を云々する前にもっと優先して考えられなければならない問題であると同時に、旧制大学学部が多いから、なるほど図書の数もトータルにおいては多く要るでしょう。しかし、実際に大学で二万や三万の書籍を持っておって大学の価値がありますか。こういう点については画一的な予算ということでなくして、新制大学充実していくためには、早急に、少なくとも書籍だけは、東大や京大のように二百万冊を一気にそろえるということは困難しょう。優秀な高等学校中学校よりも少ないような書籍の現状で国立大学がいわゆる大学として必要な資質を持っておるという判断に立っておられるとこに問題があると思う。だから、私は原則として聞きたいのは、旧制の帝国大学と新制の大学とについてなぜ差別をつけようとするか。教官研究費あるいは校舎建築の費用まで、図書館費についてもそういうことですが、これはもちろん大学院があるとか、あるいは先ほど管理局長が言ったように、学部が多いとか、こういった事情もありましょう、実態もありましょう。しかし、基本的には旧制大学よりも、ある程度早急に充実すべきは新制大学じゃないですか。こういう点についてまず大臣の新旧のいわゆる国立大学に対する考え方をお聞きしたいと思う。差別待遇をなくしていくつもりか、維持していくつもりか。
  192. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 差別待遇をする意思はございません。現実問題としましては、一挙に大学がたくさんになりまして、旧制もあれば新制もあるという状態のまま満十五年を経過いたしましたが、予算的に見ましても、過去の実績主義と申しましょうか、沿革的な姿そのままで今日まできておるわけであります。それを画期的に根本から予算の問題としても考え直すという時期が今までこなかったということかと思います。したがって大学問題全般についての諮問が行なわれ、その答申を待って初めて大学問題一般のことが戦後初めて再検討される機会がくるというふうなことでございますので、今御指摘のような点は、現実問題としては三十九年度以降にしか着手できないというのが率直な実情だと心得ております。
  193. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 くどくは申しませんが、新しく鉄筋で建てていく大学でも、旧制大学に対しては単価をよけいやる、新制大学は同じ鉄筋で安くする。どこからそんなお考えが出ますか。間違っていますか。——僕はしかし九大の工学部長から聞いたのですよ。間違っておればけっこうです。間違っておることを期待します。図書館の予算ですね、これについては一覧表がありましょう、図書館の蔵書の。これは次回の委員会へ出してもらいたいのですが、私の手元には十二しか大学蔵書の数と、年間もらっている予算のあれはありません。もっと国立大学はあるはずです。こういう点は早急に、三十九年度しかできませんということでなくて、やはり教官研究費は五〇%ふやしましたね、そうでしょう、これも同時にもっとふやしてもらいたいし、教官研究費の増額、図書館蔵書の拡大というものは、大学の現行機能を発揮させるために、ある意味では非常に急を要する問題だと思う、こういう問題についても御善処願いたいと思います。それから認証官学長、単に学部が多いということ、大学院があるという、これだけの理由で認証官学長の必要があると、こういうふうに理解してよろしいのですか。
  194. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 認証官制度を思いつきましたのは、認証官にすれば大学教授がえらくなるという考え方ではございません。いつかの委員会でお答えしたかと記憶しておりますが、現在の人事院における給与表の考え方の基本線は、全体のレベル・アップということを念頭に置いて考えます場合には、たとえば大学教授ということを例にとりました場合、外交官、司法官と比べまして、大学教授とりました場合、認証官という扱いがないがゆえに、現在の号表をそれ自体全体としてレベル・アップするという考え方は出てこない。外交官あるいは司法官が大学教授よりもえらいから、あるいは生活費がかさむからよけいにせにゃならぬということでなくして、認証官という制度があるから、そうでない職域の俸給号表よりもレベルが高いということになっておる。したがって、まず大学教授の待遇から全体としてのレベル・アップの改善をしようとするならば、認証官という制度を設ける以外に今壁を破る方法はないということに帰着しそうでございますから、したがって、大学教授の中から全部というわけにいきませんので、たとば旧制大学学長等を中心に認証官にするという予算要求し、もしこれが成立しますれば、大学教授の号表そのものを全体としてレベル・アップする課題に取り組むきっかけができてくる。そのことは同時に小中校についても右へ習えで及ぼし得るものである。かように考えて要求しておるのが主眼点でございます。
  195. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そうすると、予算に出ておるこの旧七帝大の学長と、こういう説明は不十分であって、人事院の給与体系の現行から考えて認証官の制度を設けると給与が上がっていく。したがって、単に学長ということでなくて、該当する一定の基準をきめたならば、学長であろうと教授であろうと、学部長であろうと、旧制帝大であろうと、新制大学であろうと、一定の基準に達したものは自動的に認証官にしていく、こういう精神である。こういう理解でよろしいのですね。
  196. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 一般論としてはそのとおりでございます。
  197. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 三十八年度は、通ったならば機械的に旧七帝大の学長だけにする予定ですか。
  198. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 機械的にとおっしゃいますのはどういう意味か知りませんが、認証官にするにつきましては、立法措置が要ろうかと思います。その場合に、どういう具体的な立法内容になるか、まだ事務当局からも聞いておりませんので明確にはお答えしかねますが、先刻申し上げましたとおり、大学学長あるいは教授となりますか、いずれにいたしましても、そのうちの何名以内を認証官とすることができるというがごとき扱い方ではなかろうかと考えております。
  199. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 所管局長がきていないですね。——それでは一応七人分の予算は組まれた、通った後は一つの基準があって、各大学別になるか、全国的になるか、ワクが設けられる。その基準に従ってこれが適用されていく、このようにすなおに理解してよろしいですね。
  200. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 現実の問題としては、旧制の大学がこれに当たろうかと想像しますが、制度論としては別個の問題だと思います。
  201. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 別個の認証官に任用していく基準というものは何らかの、政令があるいは何か知りませんが、基準が設けられる。自動的に十人になってたら十人の旧制帝大、七人になったら七人と、こういうふうな、学校の歴史とか、学校規模とかいったもので機械的に任命されていく、任用されていくのじゃなくて、基準によって、基準が定められるというと、それによって運用されていく、この二つと理解してよろしいですか。
  202. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) そこまで私が今最終的な結論として申し上げるわけに参りませんけれども、さっき申し上げたとおり、一般論としては、学長ないしは教授のうち何名以内を認証官とすることができるというがごとく扱われるのではなかろうかと、かように考えております。
  203. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 これは大学局ですね。基準を作るという点については検討しておりますか。
  204. 西田亀久夫

    説明員西田亀久夫君) 大学局で検討いたしております中身は、御承知のように、中教審が大学の目的性格について第一次の中間報告を提出されております。その中に高等教育機関の大学大学一般大学、そういった種別を将来検討すべきだというようなことの内容が出ております。学長を認証官にするにつきまして、そのような大学大学というものの内容については、大学設置基準等で将来さらに検討しなければならないということになろうかと思います。中教審で言われておりますのは、総合大学であって、すべての学部の上に博士課程の大学院を持つ学術研究を中心的な使命とする大学、こういったものを特別に目的に置いて充実するという考え方が述べられております。現在、認証官の予定されておりますところは、将来そのような大学大学予定いたします場合に、必ずその候補者としてなり得るところが現在においては七つあるということを一応取り上げておるわけでございまして、将来ともそれがどれだけの数になるかという問題は、大学大学のあり方についての基準等に対する検討によって将来きまろうかと思っております。
  205. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 いきさつはわかりましたが、基準をきめるかどうかという点はどう答えられましたか。
  206. 西田亀久夫

    説明員西田亀久夫君) 認証官学長の基準ということではなくて、大学大学というものの基準については、これを一つの種別として立てます場合には、大学設置基準そのものにおいて、どのようなものを大学大学と称するかということについての基準の検討はやらなければならないと考えております。
  207. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そうではなくて、認証官に任用していく基準はきめられるかと、こういうのです。
  208. 西田亀久夫

    説明員西田亀久夫君) 現在の考え方では、そのような設置基準によって大学大学とすべき大学学長を認証官とする、こういうことで、大学のほうからきめていくという考え方であります。
  209. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そうすると、先ほど私がここで、抽象的ではあるけれども、原則を言った趣旨は実際的には生かさされている。大学大学の基準によって自動的にそれに該当する大学学長が認証官に任用されていく、こういうことになりますね、大学大学の基準がきめられて。したがって、認証官任用の基準ではなくて、大学大学の基準によってそれが認定される、そこの大学学長は当然認証官になっていく、こういうふうに理解してよろしいですね。
  210. 西田亀久夫

    説明員西田亀久夫君) 大学大学の基準の検討のことを申し上げたのでございまして、認証官の問題は先ほど大臣お答え申し上げたように、それ自体特別な立法措置を要しますので、機機的と言われますことに直ちに適応いたしますかどうか、今の段階ではまだはっきり申し上げられないと思います。
  211. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 もう一つだけ、五分間に限定して聞きます。三分でやめましょう。  道徳教育資料配布ですね。これはすなおに理解して、荒木萬壽夫先生が書かれた道徳教育のあり方、豊瀬禎一が書いた日本の道徳、こういう参考書があるとしますね。どれを選んでもいいわけです。ありがとうございます、いただきました、こういう参考書を今後道徳教育に限らず、たとえば理科教育の場合は、全国のいわゆる日本の義務教育学校でする理科教育について、家庭にある器具を使って、たとえば蒸気の原理を実験させるにはどういう器具があるか、どういう実験でできるかというのをユネスコから出していますね、英語で。これなんかも僻地の学校に行くと非常に便利なんです。こういう資料も当然どんどん追加し、指導要領を進めていく参考資料として、将来は必要な学科については、全部参考書は全国の教官に対して文部省が国費で配給していただく、こういうふうに私は局長の答弁を理解したのですが、そう考えてよろしいですね。これは大臣に聞いているのです。大臣わからぬですか。
  212. 福田繁

    説明員(福田繁君) これは全部の教科についてそういう必要なものができることは望ましいわけでありますが、現在の段階におきましては、道徳教育の問題が一番現場で困っている問題でございます。そういった意味で、私どもは、教師が現場の指導上有益な資料を作って、それを持って参りたい、こういう趣旨で作るわけでございます。
  213. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 そうすると、福田さんにお聞きしますが、世界教員会議においても問題になりましたし、また、日本の、荒木さんに言わせると曲学阿世の徒らしいのですが、教育学者のかなり多くも、まあ指導要領についても小林委員が言ったように、文部省が作ったものの拘束性ということにも異論がありますし、まあそのことはきよう論及しませんが、まして教育内容を具体的に国家が統制してくる、あるいは国がきめていくということは教育の常道である、ここが教育の一番重要な問題だと思うのです。したがって、読んでよければ読むし、読んで役に立たぬと思えばちり紙になるし、とにかく全担任に配付される道徳教育資料というものは、当該学校の環境、地域性、あるいは生徒児童の実際の現行学校教育法なり、教育基本法の教育方針、目的、具体的な小中別の目標、こういったものから照らして、自分たちで必要であると思えば読むし、必要でないと思えばほっておくし、くず屋にやる。教員の採択の自主性は完全に保障される。ある学校においては百パーセント利用されるところもあるでしょう。ある学校においては、これは全くつまらぬものを作ってくれた、ありがたくもない、こういったことで、つまり教員のそれを利用する採択の自主性というものは完全に保障されているものである、こういうふうに理解してよろしいですね。
  214. 福田繁

    説明員(福田繁君) 教員が採択するということがよくわかりませんが、先ほど申し上げましたように、指導上の参考資料でございます。そういう意味において、私ども内容充実したいいものを作っていきたい、こういう心組みでございます。したがって、できました暁においては有益な資料として全部が読んでいただくことを希望しております。
  215. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 せっかく国の費用を一億もかけてお作りになるのですから、そういう期待がありませんと言ったら公務員として不適格です。あなたが期待することはよろしい。しかし、教員が現場に立って実際に生徒に道徳教育をやっていく、あるいはしつけをやっていく、こういう際に、これは役に立つか役に立たぬかという判断の自主性が教員にまかされておる、これさえはっきりしてもらえればいいのです。このことが一番肝心なところです。教員教育活動に対する若干でも拘束性を持つものであるということになると、これは私は三分と言ったけれども、終わりませんよ。これは参考資料として当然その教育活動に対して採択の自主性は百パーセント保有されておる、そう理解してよろしいですね。イエス・オア・ノーでけっこうです。
  216. 福田繁

    説明員(福田繁君) これは参考資料でございますので、先ほどから言っている以外には目的がございません。
  217. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 それでけっこうです。他に目的がなく単なる参考資料で、教員の採択の自主性は完全に保有されておる。そうすると、全学校の全担任に配付するというのは、これはちょっと何か力み過ぎてやせぬか。それは四千億も要求された中の一億ですから、あなた方からすると微々たる予算でしょう。しかし、金額の問題として、学校に学年別に作られるわけでしょう。少なくともある学級においては特殊な構成をすることもあります。私ども義務教育に多年携ってきておるから、その学校において、ある事情のもとに学級編制を機械的に割り当てないで特殊な編制をする場合、この場合でもおそらくそういった目的ではなくて、目的に合致するような資料でなくて、全国各学年共通したものをお作りになる、そうしたら学年に一部とか、あるいはあなた方の考え方からすると学年に一部あったほうがいいのでしょうが、全学校の全担任に配付するというのは若干オーバーじゃないですか。国費の乱費と考えても、あまりこの問題に関しては言い過ぎでないと思うのです。文部省から出ているそうだから、ちょっと参考になるところがあったらあした見てみようか。文部省が作ったにしてはつまらぬ表現をしているな。これはやめておこう、こういうことになるかもしれない。ここだけはいいところがあるな。文部省の選ばれた学者の中にもいいことを言うやつはいるなと感心することもあるでしょう。そういうのを一人々々に一億の金を使って配付するというのは全くナンセンスじゃないですか。それよりも精薄児の〇・五%しか就学してないものを救うためにどうするか。準要保護の給食に対して一億の金を増していくように補助率や該当率を引き上げていく、こういう当面した問題のほうがもっと大事じゃないですか、先生の参考書を力んで全員にこれはあなた方からいうと、いいものだとおっしゃるでしょうが、いいものかどうか教師がきめるのですから、そういう採択の自主性のあるものを全員に配付するというのはオーバーだと思うのですが、そう思いませんか。
  218. 福田繁

    説明員(福田繁君) オーバーだというお説でございますが、私どもとしては、この内容として盛り込むべき事柄はなるべくたくさん盛り込みたいという気持はありますけれども、それは予算やその他いろいろな制約がございますので、ごく一部分にしかならないと思います。したがって、指導上の参考資料としては、これはただ例示をする程度のものしかできないと思いますので、それを用いまして、やはり将来の授業なり、あるいは道徳教育内容、方法等につきまして、教師が十分研究してもらいたいというような考えを持っておりますので、したがって、これは全部の先生が持って、そうしてそれをよく読んでもらって、そうしてその上でさらに自分の担当授業というものを深めていってもらいたい、こういうような考え方を持っておりますので、でき得る限り全員これを読んで十分研究していただきたい、こういう趣旨でございます。
  219. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 教師の採択の完全な自主性があるということを確認すると同時に、あなた方の期待は別にして、そういうものを全教師に国費で配付するということは、オーバーというよりも明らかに国費の乱用である。そういうことをやるなら、もっと自分の採択の自由のある費用を研究費として教員に配付して、さっき言ったように、荒木萬壽夫先生の蔵書になるところの道徳教育の手引きとか何とか、何でも自分の好きなようなものが自由に選択できる、その学校生徒に適合することのできるような参考資料の購入が行なわれるようなことが当然であると思います。この問題については再度検討をお願いいたしておきます。以上です。
  220. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 時間がないから簡単に御質問しますが、学校給食の助成金ですが、大体二十九億からの増額がなされるわけですが、この増額でほとんど給食の態勢がとれるのか。こういう点はどう考えるか。
  221. 木田宏

    説明員(木田宏君) 学校給食に関しましては、先ほど会計課長から御説明申し上げましたような経費を要求しておるわけでございますけれども、これで、今お尋ねのように、学校給食が全部完全に整うかという点では、まだまだ先の目標があるわけでございまして、逐次、一歩々々、学校給食の普及充実をはかっていく、そういう意味で来年度の予算要求を一歩前進したいという建前で作ってあるわけでございまして、全部の問題が解決するというふうには考えておりません。
  222. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうすると、全部が完全実施できないということになりますと、結果的には部分的な前進を見るという程度の助成金になると思うのです。その場合に、一方においては、しかも栄養士を完備していこうという助成金を出そうとしている。ないところと、そういう高度に給食制度が確立するという一体格差をどうして直そうとする指導を政府はしておるのか。格差が必ず起こる。その格差をどうして是正しょうとしておるか。
  223. 木田宏

    説明員(木田宏君) 現在、小学校におきましても、全部の学校で給食を実施いたしておるというわけにはまだ参っておりません。大体、小学校生徒数の七〇%、それから中学校におきましては生徒数の二〇%見当が給食ということになっておるわけでございます。したがいまして、給食施設の助成に力を入れまして、できるだけ多くの学校で給食が行なわれるように逐次助成の歩を進めていくということをやっておるわけでございます。また、御指摘がございましたように、現在実施いたしております学校給食につきまして、栄養管理職員の設置等をこれまた一歩々々進めて参りまして、そうして給食の実施内容充実をあわせてはかるということも、これまた並行していたしているわけでございます。したがいまして、現在実施しているところと、していないところには、御指摘のように、ゼロと実施しているという非常に違いがあるわけでございますけれども、これは地域の実情等にもよるいろいろな諸条件もございますので、その辺のところは、特に僻地なんかには高率の補助をいたしますにつきましても、一般の都市よりはもっと重点的な補助予算というものを考えられるならば補助していきまして、まず一方でそういう充実をはかる。そういう意味で全体として足らないところを、少しずつ力を入れて進めていくということに努力をいたしているわけでございます。
  224. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 今の御説明ですと、力を入れておられることは、増額することだけに力を入れられているのだろうと思うのですが、そうじゃなくて、給食の設備もできないという実態というものは、一体どういうところに原因があるのか。おもにあげてみれば、災害にあったとか、非常に経費が足らないとか、ただ補助だけではできないのだとか、そういうことを政府は調査されたことがあるのですか。どういうところに原因があるのかということを、具体的な例を二つか三つあげて下さい。
  225. 木田宏

    説明員(木田宏君) 給食の実態等につきましては、かなり全般的な調査も一昨年いたしまして、給食制度の改善につきましての新たな方向も協議会で御相談をいただいて参りました。一つには、給食を今後普及いたしますにつきまして一国内産の米をどのように利用できるかというような課題もございますし、もう一つは、全部の完全給食を一気に実施するまでに至りませんところでは、さしあたりミルク給食だけでも普及をすることによって、少しでも児童の栄養改善に資する必要があるんじゃないか、そういうような問題、あるいは給食物資の流し方につきまして、各県にそれぞれ給食会等が設けられておりますけれども、その給食会の運用の改善をさらにはかる必要があるんではないか、こういったような問題を文部省としては考慮いたしているわけでございます。したがいまして、ミルクの給食の普及というような点につきましても、今度の予算では、できますならばそれに補助をつけて推進をはかれるようにしたいということを考えているわけでございます。
  226. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 いや、私はそれを聞いているんじゃないのですよ。具体的に給食設備が確保できない都道府県の学校が、どういうような事情で、どういうところが隘路になっているのか。それを文部省として解決をはかる方針が別途あるのか、やっておられるのかということが質問の概要ですよ。
  227. 木田宏

    説明員(木田宏君) 給食を実施いたしますにつきましては、御案内のように給食の施設整備する、あるいは給食に従事いたします職員を確保するとか、そういった出発点におきます財政上の問題があるわけでございます。したがいまして、給食設備の補助につきましては、僻地等にも重点を考える補助体制というものを作りまして促進いたしますとともに、給食を実施いたしますにつきましての給食調理婦等の職員の経費につきまして、自治体のほうでも十分めんどうをみてもらえるように、地方交付税の中で算定の基準を逐次高めていく、このような基礎的な事項の充実にも努力をいたしております。そのようにして各自治体が設備整備し、給食に必要なる人間を整えまして、運営がしやすいようにするということを考えているわけでございます。
  228. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私の質問に答えていないですよ。政府として、その設備のできないような地域においてはどういう具体的な実態があり、それにはどういうふうにしようと考えておられるのか、それを二つ、三つ説明願いたいと、私はこう言っているんです。次官ひとつ答えて下さい、根本的な問題を。
  229. 杉江清

    説明員(杉江清君) おそれ入りますけれども、私前に体育局長をやっておりましてその問題につきまして多少研究をいたしましたものですから、私から多少補足説明することをお許しいただきたいと思います。学校給食の普及がおくれております理由はいろいろあるわけでありますけれども、端的に、この普及のおくれておりますのは、まず第一に施設に対する補助金要求額に達しておらない。実際はもっと実施したいというところも相当あるのでありますけれども補助金がそれにこたえていないというところが、まず第一にその普及を阻害している原因であります。しかしなお基本的に考えて、補助金がたくさんあっても、それじゃ一挙に完全実施までいくかというと、そう参らない事情があります。それはそのような施設補助金があっても、地方財政の事情からいいまして、市町村の財政力からいいまして、その施設をすること及び給食を実施するについての人件費をまかなう余裕が今のところないという市町村が、まだかなりあるということであります。もう一つ、給食費は現在非常に安いのでありますけれども、しかしなおこの給食費でも、山間僻地に行きますと、それを実施するのにちゅうちょするという父兄の考え方がまだあります。といいますのは、自分のところで取れたお米による弁当を持って行けば、とにかくその負担は直接的でないというようなことから、この多少の給食費でも出したがらないというような、そういう風潮がまだ残っております。それからなお今パンを主食にいたしておりますけれども、パンを作る場所が近辺にない、こういうふうな事情もやはりその普及を阻害している一つの原因になっております。その点はしかし、今度そういう地域においては米の利用を認めるというようなことで一部緩和されるかと思いますけれども、しかしその場合もいろいろ取り扱い上の困難な問題がありますから、やはりそういうことが一つの障害になってくると思います。  以上のような原因が相重なって普及を阻害しているかと考えます。だからこれが対策としては、今の施設設備に対する助成をふやしていくということ、それから各種の人件費を大幅に出していくということ、というのは地方交付税での調理婦の積算を上げていくということ、それから栄養士について国の補助をしていくということ、それからもう一つは、基本的にはやはり給食費を安くしていくということ、父兄負担を軽減していくということ、こういうふうな措置が相伴わなければならぬと思いますけれども、来年度の要求においては、それらの算定についてやはり前進するような方向で予算が組まれていると考えております。
  230. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それで私が最初に聞きましたように、これだけの予算ではというてい施設を完全にするわけに、全部やるわけにいかぬと、こういう見通しにおられるわけですね。実情も今言われたようにわかったわけですが、しからば政府は最も重大な児童の体育というような問題ですね。スポーツその他については相当施設をこれはやっていこうとされるわけだ。ところが、根本的な給食の問題は、栄養士を置いてやる都市と、全然昔の慣習の弁当持ちで給食もしないというところと体位はどのくらい変わってさているか。統計にこれは出ていると思う。何かで見たことがある。一体そういう検査までしているのかどうか。調査を一ぺん聞かしてもらいたい。
  231. 杉江清

    説明員(杉江清君) ただいま資料を持ち合わしておりませんけれども、その辺の調査はいたしております。そしてその結果は、明らかに給食の効果が具体的な教字となって表われております。
  232. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それはひとつ出して下さい。私のほうに出してもらっても委員会に出してもらってもいいです。最後にこれは大臣に聞きたいのですが、こうした事態は、かなり市町村における給食の困難性が財政的にあるわけですね。そういう財政的な問題を解決づけないで、やはり全校にわたる国家の補助によって個々の管理費の繰入金は何ほど出しておるわけですか、一円か二円か出しておるのじゃないですか。こういうものを出して給食をやっておるその市町村の学校と、全然それをしないで、給食は設備も完備しない、こういう状態を放任するということは、僕は大きな問題であると思います。文部大臣はこれは計画的に何年度までには完備してやりたい、そういう希望をお持ちなのかどうか、ひとつお聞かせいただきたい。
  233. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 実は昨年専門的な立場の方にお願いをしまして、学校給食の問題を将来に向かってどうあるべきかについて調査会でもって審議していただき、その結論は全貌を御披露できませんけれども、大体国の補助を二分の一に補助率を引き上ぐべし、そして少なくともパン及びミルクを全面的に、全国的にやれるようなめどを持って五カ年計画、七カ年計画でございましたか、ちょっとはっきりいたしませんが、年次計画をもってそこまで到達するめどで前進すべしというふうな趣旨の答申をいただきました。その線に沿って三十七年度も予算要求をしましたが、努力不足のゆえに大幅に撃退を食いました。しかしその意図はむろん持っておりまして、御説明申し上げたと思いますが、粉ミルクを主といたしましてミルク給食をやるという線で要望いたしております。ただ金額的には、全体の予算からいいますれば、大したことじゃございませんが、今の粉ミルクとパンということでいきましても、小中学校全部に及ぼすとすれば、概算七、八十億は要ろうかと思います。そのほかに人件費・施設設備費の補助等を合わせますれば、相当まとまった教字になります。したがって一挙にこれができかねる悩みを感じておりますが、できるだけすみやかな機会に、小中学を義務的にでも給食ができますようなめどを立てたいと思っております。それにいたしましても、先刻説明員から申し上げましたとおり、漸進主義たらざるを得ませんので、普及率が相当程度になりましたあとに、義務的な制度にまで持っていくということで、これが実現をはかりたい、はなはだ抽象論をいでませんで恐縮ですが、考え方としてははそういうふうに思っております。
  234. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 最後に、これで最後にしますが、大体二十九億というよう予算増額になったということは、計画的に八〇%まで給食の設備改善していくと、こういう案ができて増額をなされたわけではないわけですね。したがってこれくらいは、この二十九億というものがなければ、この助成金としてなければ、地方の要請に対してこたえることができない。こういう大よその予算でここに組まれておって、給食については計画的なものではないと、こういう考え方を持ってよろしゅうござますね。
  235. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) 残念ながら大体そういうことでございます。現在の普及率の程度で粉ミルクを支給するといたしますれば、二十億見当のものがプラスされざるを得ない、こういう計算でございます。明確な年次計画がきちっと定まった、第一歩を印するというところまでまだいっておりません。
  236. 北畠教真

    委員長北畠教真君) 本件に対する本日の質疑は、この程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時二十五分散会