○
国務大臣(
池田勇人君) 日銀貸し出しの増加の原因は、やはりそれだけ
資金需要があるということが一点、もう一点は
政府の財政収支が非常に引き揚げ超過であるということが原因の一点であるのであります。
政府の引き揚げ超過は、大体ことしになりまして、ことしの一月から大体五千億程度の引き揚げ超過になっております。そうして年度初め、四月からと比較いたしますると、四百億円ぐらいの引き揚げ超過になっておる。去年のきょはどうだ。去年のきょうは、
昭和三十六年一月から八月の二十五日で見ますと、去年は六千億円の引き揚げ超過、そうして四月から去年の八月末までは二千五百億円の引き揚げ超過。
政府がこれだけ引き揚げ超過しておることが日銀貸し出しの増の一つの原因でございます。そうしてまた、先ほど申し上げましたように、
資金需要の多いこと。
そこで、きょうの新聞によりますと、金作りのために貯蓄増加、こう言っております。新聞にはそう書いてありますが、私の真意はそこではなかった。それも必要でございますが、
日本の
国民所得に対しまして、
日本の通貨はあなたの言われた一兆二千億。先年は多分一兆をちょっとこえておったと思います。去年から一割五分ぐらいふえております。しかし、総生産額は名目的には二割近くふえておる。だから、今一兆二千億の
日本銀行券が
日本の
経済に対してそれが適当であるかどうか、こういうことは私は
考えなければならぬと思う。そうしてまた、通貨の発行の要因になる
日本の国債というものの状況はどうか、私はその点大いに
考えなければならぬ。だからといって、私は国債発行論者ではございません。今あなたのおっしゃるように、
日本銀行の貸し出し一兆五千億じゃたいへんじゃないかというときに、まずこれの起こった原因は
資金需要の多いことと、
政府の引き揚げ超過。そうしてまた、そのもう一つ根本に、貸し出しの一兆五千億とか、あるいは通貨の一兆二千億というものはどうか。
国民所得十四兆に比べて今多いといわれる一兆二千億というのはどうですか。ようやく八%じゃないですか。これは
日本の今までのずっと経歴をごらんになりましても、私は通貨が、銀行券が少し少な過ぎるし、去年の
状態で世界に比べますと、
アメリカとカナダが
国民所得に対しまして七%、
日本も七・五、六%。フランスやイタリアでどうですか。このごろ非常に好況だった欧州
経済の中心国になっておるフランス、イタリアの通貨発行額は、
国民所得に対しまして十数%であります。フランスが一番多くて一七、八%、イタリアが一三、四%。もし
日本がイタリアやフランス並みにいったならば、
日本の通貨は一兆七、八千億ということになります。一ぺんにそうはできませんけれども、しかし
日本の
経済の置かれた
状態がどこにあるかということをもう反省すべき時になってきておる。
そうして、貯蓄増強ももちろん必要でございましょうが、
日本の
経済をこれ以上伸ばしていくためには、通貨制度、流通過程の状況
——今申し上げましたように、それだけ預金が非常に集まらないというのは都市銀行でございますが、地方銀行、特に相互銀行、信用金庫のほうはいまだかつてないほどの集まりようであって、こういういろいろな
状態を
考えて、まあ金作りというようなことがきょう出ておりましたが、貯蓄の増強も必要であれば、われわれは外資の導入とか、金融のよろしきを得て、財政
経済政策のよろしきを得て金をこしらえることを
考えなければならぬということを、きのう財界の人に話をしたわけであります。しかし、そういうことが出ずに、ただ貯蓄増強ということだけが出ておったようでありますが、実際はそうではない。
日本の
経済をもっとりっぱなもの、筋の通ったきれいなものにするためには、やはり通貨制度
——まあ今の制度を根本的に変えるという
意味じゃございませんが、国庫の状況、そうしてそれが民間とのつながり等々について十分検討していく時になってきた。
日本の
経済というものも、他国
経済から見れば世界的なものになってきた。私はロンドンやニューヨークのように世界の金融市場の中心なんかということは
考えませんが、少なくとも
日本としては東南アジアにおきまして円が国際通貨になるような場面をわれわれ
考えるとすれば、
日本の金融、
経済、その他につきまして、抜本的に考慮すべき時が来たのではないかということを、心ひそかに
考えておるのでございます。今金作りというのは、貯蓄増強ということに重点を置いておりません。いろいろな点を
考えまして、私はりっぱな
日本の金融政策、それから財政と金融のあり方等々につきまして、全心を砕いておる次第でございます。