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1962-08-31 第41回国会 参議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年八月三十一日(金曜日)    午前十一時十八分開会   —————————————   委員異動  八月三十一日   辞任      補欠選任    田中 茂穂君  谷口 慶吉君    長谷川 仁君  川野 三暁君    熊谷太三郎君  後藤 義隆君    高橋  衞君  温水 三郎君    野溝  勝君  戸叶  武君   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     佐野  廣君    理事            柴田  栄君            西川甚五郎君            成瀬 幡治君            渋谷 邦彦君            永末 英一君    委員            青木 一男君            太田 正孝君            川野 三暁君            後藤 義隆君            高橋  衞君            谷口 慶吉君            温水 三郎君            林屋亀次郎君            日高 廣為君            堀  末治君            森部 隆輔君            米田 正文君            大矢  正君            佐野 芳雄君            柴谷  要君            野々山一三君            野溝  勝君            原島 宏治君            大竹平八郎君            鈴木 市藏君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君   政府委員    内閣法制局長官 林  修三君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省条約局長 中川  融君    大蔵政務次官  竹内 俊吉君    大蔵省主計局法    規課長     上林 英男君    大蔵省理財局長 稻益  繁君   事務局側    常任委員会専門    員       坂入長太郎君   説明員    通商産業省企業    局賠償特需室長 池田 久直君   —————————————   本日の会議に付した案件産業投資特別会計法の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 佐野廣

    委員長佐野廣君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  本日、田中茂穂君、長谷川仁君及び熊谷太三郎君が辞任され、その補欠として、谷口慶吉君、川野三暁君及び後藤義隆君が選任されました。   —————————————
  3. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 産業投資特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に続き、本案の質疑に入ります。  この際、池田内閣総理大臣が出席されましたので、総理大臣に対する質疑を行ないます。御質疑のある方の発言は、委員長において順次指名いたします。野溝勝君。
  4. 野溝勝

    野溝勝君 総理の出席されたこの際、本国会における重要法案であり、かつまた国民的、いわば民族的にも将来の歴史に非常な不安を残す案件でございますので、この機会を通しまして総理所見をお伺いしておきたいと思います。  特に本法改正案は、アメリカ合衆国との間における協定ガリオア・エロア協定、それに基づく債務は、対日援助見返資金特別会計廃止の際その資産を継承した産業投資特別会計の負担とするとともに、この債務については、元金四億九千万ドルに相当する円の金額千七百六十四億円を資本から債務に振りかえる等の措置を行ない、またこの債務元利金支払いをこの会計歳出とする等所要の改正をするとしております。第二の点は、これは投資需要を充足する点でございます。この点に対する質問前段理解ができないため省略いたしまして、この改正法案を出した提案理由二つのうちの第一の点について私はお伺いをしたいと思います。  総理は、特にこの案件につきましては最初から関係をされておっただけに、十分御承知であると思うのでございます。しかし、本改正法案提案理解のできないままでいることは、とりもなおさず、その内容なり経過なりが全くわれわれには完全なる了承ができないのでございます。政府本法議決されたのだからあと付属立法みたいなもので別に論議はないじゃないかというようなことを言われることもありますが、それはあまりにものを一方的に割り切った意見でございまして、そういうことは議会人として許すべきものでないと思います。その点につきまして、私は皮肉を申し上げるのではないのでございますから、総理もさような気持お答えを願いたいと思います。むしろこの機会を通して国民十分理解をしてもらうことが必要ではないか、私はかように思っております。さようなお気持お答えを願いたいと存じます。  第一点は、債務性に関する問題でございますが、特にこれを債務として承認をしたといいますが、借用証書を出したのは、あなたの内閣の前外務大臣でございました小坂君とライシャワーとの間における一月九日の協定によって初めてこれが借用証書となり、いわば表向きになったわけでございます。その間、昭和二十八年七月七日国会における予算委員会におきまして、今日の池田内閣における建設大臣をやっております河野君が、当時の鳩山自由党の代表として予算委員会において大きくみえを切ったわけでございます。そのときはもちろんこの問題だけではございません。いわば朝鮮米軍への物資売掛代金ないしは補給に対する債権上の問題、すなわち対米債権の問題を中心に論戦をしたのではございますが、しかし、ガリオア・エロアの対日援助物資との関連についても質問したわけでございます。そのときの答弁が非常にあいまいなのでございます。さらに、それに続きまして、今日の自民党の前運輸大臣をやっておりました中村三之丞君も、この点を深く食い下がって質問されております。さらに、わが党の武藤あるいは八百板君、これらも同様な質問をやっております。こういう長期にわたって疑義を起こしておった問題であるだけに、これは単に社会党だけの問題として考えられることが非常に誤りでございます。特に今日自民党に籍を置いた建設大臣河野一郎君なども、むしろ堂々とその点の見解なりその当時の経過なり、その後どういうふうに割り切ったかというようなことを、当然国民の前に宣明する必要があると思うし、機会を見て、記者会見でもして談話を発表しなければならぬと思うのでございます。こういう点いろいろありますので、この際、総理からその間の経緯について忌憚ないお話を願っておきたいと思います。
  5. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の趣旨が私にはっきり受け取られませんが、もしあなたの真意にまた違っておりましたら、あとから再度御質問を願います。  この対日援助につきましての債務性については、本院並び衆議院で、前の国会でたびたび申し上げたとおりでございまして、債務として四億九千万ドル、十五カ年にこれを返還するということは、前の国会で一応決議を受けたわけでございます。それまでの十数年間にわたりまして、われわれは常に債務と心得ております。こう申し上げてきたのであります。その根拠はいろいろありまするが、アメリカのスキャッピンによりまして、対日援助支払い方法並びに計算については追ってきめるという覚書もあります。また、阿波丸事件のときの両国の話し合い、またアメリカ国会におきまするマッカーサーその他の証言等からいたしまして、いずれは払わなければならないとわれわれは心づもりをしておったのでございます。それをさき国会におきまして御決議をいただいた次第でございます。その間におきまして、いろいろの問題点、疑点につきましてかわされたことはお話のとおりでございます。  河野君の質問につきましても、援助の一部物資使用方法並びに計算についての質問でございました。全体としてガリオアは支払うべきものでないというような質問ではなかったと私は記憶いたしております。
  6. 野溝勝

    野溝勝君 時間が制約されておりますので、いろいろ質問をすることはできかねますし、かつまた、衆議院並び参議院及び本委員会におきましても、同僚委員から運営上詳細にわたっての質問が相当ございました。私はまず本法の出発から疑義を持っているのであります。  特に総理にお考え願いたいのは、こうしたあいまいな問題を、国の権威として債務とするのが正しいものだというような考え方をもって処理することは納得できないのです。大体われわれは昭和二十一年、二年、三年、国民の窮乏、特に食料品その他のあの状態のときに、アメリカが手を伸ばして援助してくれたことに対しては感謝決議をした、その提案者の一人でございます。当時英国、ソ連が、あるいはどこの国が大きいことを言いましても、そのときは実際アメリカに対して率直に感謝いたしました。他の国で援助したものはないのだ。しかし、それは援助ということは贈与意味することでございまして、債務意味することではなかったと思います。アメリカ法律を見ると、この援助物資に対しては贈与と信用貸しの二つがあるということはきめられておりますけれども、そのときは放出物資余剰物資、何と名前を言おうとも、贈与である点について私は感謝をしたのでございます。これが債務であるなら感謝決議などする必要はなかったと思うのであります。特に、もしそれが債務ということでありましたならば、憲法八十五条にいうところの国会議決を待たなければならぬのでございまして、今日まで放置したのでございますから、その当時これは贈与であるか債務であるか、あいまいであったのには間違いない。その後シーボルト氏の要求によって、総理のあなたがびっくりしたように、それから具体的に債務ということに切りかえられたと私は思うのでございます。この間のあなたの偽らざる気持をひとつここでお答え願って、そうして贈与という気持を持っていたけれども、そういうことで要求されたのでいたし方なかったと率直にできないのですか。総理といたしましては、発言の影響もおありでしょうから、私はあまりこのことを掘り下げては申し上げたいとは思いませんが、その間の事情さえわかってくれば、おのずと国民の諸君もわかってくれると思うのです。どうかその点に対する心境、これは政治の倫理性にも影響する問題だと思うのです。そういう意味において、ひとつ総理気持お答え願いたいと思います。
  7. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お言葉を返すようですが、衆参両院決議をいたしましたのは、援助物資放出に対しての感謝決議でございます。ただで下さったからという感謝決議ではなかったと私は記憶いたしております。しこうして、先ほど申し上げましたように、いろいろな事情から総合してみますと、私は債務と心得ますということは、昭和二十四年大蔵大臣になったときに申しております。また、そういうことがございますので、私は、敗戦後昭和二十四年の予算を組みますまでに、アメリカから参りましたいわゆる援助物資に相当するお金が、輸入あるいは輸出補給金補助金等に使われ、それのみならず、日本の財政から相当の補給金を出しておった、こういうことでは将来支払うという場合におきましてたいへんなことになるというので、対日援助見返資金という特別会計を置きまして、将来払うときにはこれから払うという心組みを私はひそかにしておったのであります。だから、急にがく然と驚いたとかなんとかという気持は私は持っておりません。初めから今日あることを考えまして、昭和二十四年に対日援助見返資金特別会計を設けまして、そうしてアメリカからの援助物資に相当するお金を積み立てて、そうしてこれを日本経済の再建に使う、こういう建前にいたしたのであります。  したがいまして、昭和二十四年から国内物価政策その他、社会党考え方と違いまして、自由主義にして、補助金をだんだん切っていくということで、今まで援助物資でやっておりました補給金に相当するものとして、昭和二十四年には二千二十億円の補助金を組んだわけです、一般会計で。七千億円の一般会計歳入歳出のワクのうちで、二千二十億円の補助金を組まざるを得ない。それはなぜかといったら、援助物資に相当する金額を見返資金に積み立てたから、輸入補助金あるいは輸出補給金に対しての金を一般会計、税金から組んだ。しかし、その年において私は国内物価体系というものを変えまして、自由主義にして補助金をなくしてしまった、こういうことにしていったのであります。  私は思い出しますが、昭和二十六年のサンフランシスコ講和会議のときに、実は私は公表しておりませんが、もし払うという場合においてはどういうふうな払い方をしなければならぬかという腹案を私は持って参りました。これは発表しておりません。しかし、私の腹案につきまして、アメリカ外務省の職員、また日本に非常に関係を持っておられましたドッジ氏は、私の案をごらんになりまして、見られまして、そしていろいろ質問を受けました。その当時私は、七億ドル程度のものが残っておる、二千億余りのものが見返資金に残っておる。そしてその他におきましても、前の特別会計から引き継いできました外国為替特別会計でのほうの二億ドル近いものは別にいたしまして、見返資金特別会計あと産業投資特別会計の金だけでも二千億余りになっております。そこで、私の案は、五カ年据え置き、三十年年賦二分五厘の利子、こういう案でいったならば、積み立てたお金、当時七分五厘で貸しておりまして、二分五厘の利子ならば今の産業投資特別会計にありますお金利子だけで三十五年間に払える、そして元本はずっと将来永久に残るという案を持っておりまして、これは非公式に私の知人、向こうの役人とも話をいたしました。昭和二十六年です。そうすると、昭和二十七年にドイツアメリカとの交渉が開始せられまして、三十三億ドルに対しましていろいろなものを引いて十億ドル、三十年年賦二分五厘と、こうなったのであります。私は心ひそかに、自分考えておった案どおりドイツはいったと見たのであります。  越えて二十八年、池田ロバートソン会談のとき、ドイツとの話は済んだんだが、日本はどうか、早くせよと、直ちに交渉を開始しようというあれでございましたが、直ちにというわけにいかぬ、ドイツ日本は違う、今しばらく待ってもらいたいというので、まあそのうちニア・フューチャーに変えてもらいまして、そして徐々に交渉を始めていこうというのが、昭和二十八年の日米、私とロバートソン共同声明にあるのであります。越えて二十九年ごろから、だんだん話が、当時は六億とか、あるいは六億五千万とか、あるいは五億五千万というふうな話もいろいろありましたが、わが国経済の状況から申しまして、ドイツ並みに今直ちにというわけにはいかない、こういうので、ずっと今日まで、最近まで来たのであります。  しかるところ、ドイツにおきましては、三分五厘、三十年年賦、十億ドルのものを今やほとんど返した、返すことにいたしました。わが国国際的立場から申しまして、また私はそういうことを年来の考えとしておりましたので、とにかく当初は十九億五千万ドルというふうなことをアメリカは言っておりましたが、これを詳細に精査いたしまして、十七億九千万ドルを基本にいたしまして、そして見返資金、前の分、あとの分を一応分けまして、そしてまた折衝の結果、四億九千万ドル、十五カ年ということで協定の成立を見たのでございます。今お話しのように、卒然と払えと言われてびっくりしたということはございません。私は、国会におきまして債務と心得ておるということを十何年問続けて言って参っております。しかし、自分気持としては、これは日本人の本心として、ああいうふうに世話になったところの分は払うだけ払わなければならぬという気持は前から持って準備をしておった次第でございます。幸いにさき国会でも御決議をいただいて、私は実はほっとした状態でございます。今後も日本経済の進展とともにこの債務支払いに万全を期したいと考えておる次第でございます。
  8. 野溝勝

    野溝勝君 私はあまりこまかいことで、表現の上で議論をしたくないのでございますが、総理放出物資であるから感謝決議はそれに限られておると言われますが、対日援助資金の中には放出物資も含まれておるのでございます。これは私は別々に解釈するという人も、あなたのような見解の人もあるでしょうけれども、その当時の会計事情から見れば、含まれている、私はこの立場に立っておるのでございます。その点はそういうふうに反省と御理解を願って、疑問のあるという点についての十分なる、あなたのお答えを願いたいと思います。  次に、私が申し上げたいことは、それと関連して対日援助ですが、対日援助に対しましては、あなたが国会においての答弁におきまして、十分支払わなければならないということを表現したというけれども、あなたの国会における答弁を検討してみますと、シーボルト氏からの要請があった以後における国会におきましては、対日援助は、あなたの答弁では、対日援助贈与債務かはこれは講和会議の際にきめる、贈与になった国の例もある、こうした答弁をされておるのでございますが、その当時の心境——大蔵大臣でいらっしゃいましたが、総理当時の心境ははっきりしていなかった。もし総理が以前から債務で支払わなければならないということであったなら、なぜ明確に答弁しなかったのですか。その点いかがでございますか。
  9. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そこで、私、はっきりと債務であると言ってはございません。そしてまた、ガリオア・エロアのうちでも学校給食のように初めから無償贈与というはっきりしたものもございます。そういうことを表わしたのであります。また、イタリアのごとく、これはおしまいには連合国になりましたが、払わない国もございます。それから、払ったにいたしましても、ドイツのように三分の一というのもございます。これは確定債務ではございません。いずれは結末をつけるべきものだと、こう考えておったのであります。したがいまして、講和会議のときに、これがアメリカ日本——講和会議各国とですが、アメリカ日本との間にこの話が出るかもわからないということを私は考えておったものでございますから、先ほど申し上げましたように、私としての案をひそかに実は持っていっておりました。これは非公式でございます。表向きの話ではございませんが、そういうふうに私は実はしておるのでございます。  そういたしまして、先ほど申し上げましたように、二十八年の池田ロバートソン会談のときに、あなたはそういう案を持っていたではないか、しかもあなたの案に大体沿ってドイツのほうは片づいた、君は早くしなければならない、という話もあったのでございますが、私は、今はそうはいきません、こう言って、二十八年には話をまとめなかったのでございます。私のガリオア・エロアに対します心境は、昭和二十四年政府当局にありましたころから、今お話し申し上げたとおりでございます。
  10. 野溝勝

    野溝勝君 総理ね、そこで総理がそういう気持であったとするならば、当然この債務の問題については、先ほども申しましたように、国会承認を、議決を経なければならないのでございますから、その間、総理国会において債務としての議決を得ようという努力をやらなかったかどうか。あるいは、どうしてその間そういう議決をせなんで来たかという、この気持ですね、それをお伺いしておきたいと思います。
  11. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申し上げましたごとく、ドイツはいち早く二十七年にやりました。しかし、日本ドイツとは違いますから、日本経済がもっと拡大強化せられて、そうして払うにいたしましても割合に楽に払える、そしてそのときまで日本経済基盤を強化しようというのが、私の念願とするところでございました。だから、二十八年のときも延ばしてくれと言うて、こういうことでずっと今日まで——今日までと申しますか、昨年まで来たわけでございます。こういうときには、もう日本としては適当なわれわれの納得のいく条件ならば、もう払うことに踏み切るべきだ、たまたまドイツはもう全額払うことになっている、そういうことで、よその様子を見ながら、また内の日本経済発展も見ながら、アメリカにも話をいたしまして、昨年まで待ったわけでございます。
  12. 野溝勝

    野溝勝君 私、まだたくさんお伺いしたいこともございますが、時間の関係で省略いたしますけれども、この点をひとつ総理に、私はむしろ質問というよりは意見を織り込んで申し上げてみたいと思います。  ただいまのお話によると、日本経済の回復と相待って時期を見て国会議決を得ることにしたいというような、この間のあなたの気持国民には徹底しておらないし、その間非常な批判を生んでおったわけなんです。それで、あなたから言われてみると、それはもちろんあなたの立場から見ればそういうお考えも私はわからぬわけではない。ただ、そういう、時間がずれてきて、今日債務決定版としたことは、ドル不足によるところのアメリカ経済政策補強工作として強行された、その一環として総理は受けざるを得なくなったのではないか、こういう意見もあるわけなんです。それは他山の石として、総理、十分お考えを願っていかないと、今後国際的にいろいろ問題が起こってくる。債務上の問題ばかりではない、あるいは賠償上の問題、こういう問題が起こってくると思う。  そこで、各国の例を見ますと、国会法などにおきましても上院任務——はたしてこれが外国の、いわゆる日本上院として適応するかどうかということは幾多問題はございますが、衆議院参議院とにおける任務、権限と申しましょうか、そういうような点についても、総理は行政上の長官としてばかりでなく、自民党総裁でもありますから、こういう問題についても今後かような問題の際に危惧を起こさないようにしてはどうか。たとえば上院でありますならば、上院におきましては外交上の問題などにつきまして、与野党の首脳会議を開き総理が臨んで話し合いをする場合、あるいは委員会を開いてやる場合、こういうような場合もあるのでございますが、こういうような点を総合して、総理はどういうふうにお考えになっているのか。確信過剰になると、本法案のごとく国民に誤解を起こす。今後起こさないように払拭をするためにひとつこういうようなことを考えているというようなことを、この際国民に対してこれが妥当性を持たせるためにも、あるいは信頼を持たせる意味においても、政府並びに自民党総裁としてもひとつ考えておく必要があるのではないかと思うのであります。この機会総理所見を承っておきまして、私の質問はこれで打ち切りたいと思います。
  13. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ガリオア・エロアの問題は、過去十数年間毎国会で議論されておるところでございます。私は、相当問題があるということは国民周知のことだと思います。ことにまた、これを国会提案いたしましたときには、衆参両院を通じまして、さき国会ではほとんどこれが一番の問題であったごとく論議されたのであります。何も秘密だとかなんとかいうことではございません。われわれは当然国会承認を得べきときには十分の資料と説明気持をもって出ておるのでございます。卒然としてやった問題でもございません。また、今後の外交交渉におきましても、国会で十分私は論議を尽くしていきたい。  ただ、お話しの点が、国会に出す前に話し合いをしたかどうかということであれば、これはやはり何と申しますか、お互いに建設的な気持で相談し合うということは非常にけっこうなことだと私は考えております。ただ、いかんせん、今の状態では、党首で話をいたしましても、なかなかそれがうまくいきそうにございません。前の国会の末期にあたりまして、産業投資特別会計につきまして私は河上さんにお願いをしたのでございますが、なかなかそうもいかぬようでございます。あれはおそかったからかわかりませんが、今後は努めて、そういう気持を持っておりますので、具体的にさあどういう問題をどうするかということにつきましては、なかなか厄介の問題でございます。たとえば今問題になっておりまする日韓交渉なんかにつきましても、私は、もし与野党の党首で話し合いをしたほうがいいというようなことであれば、何ら私は話し合いをするにやぶさかではございません。しかし、あくまでこれは外交上の機密に属することでございますから、絶対に秘密を守っていただくという条件であれば、何どきでも私は意見を承りたいという気持は十分持っておるのであります。ただ、そういう条件と情勢がまだそこまで行っていないと考えておるのであります。また、交渉もまだ初っぱなでございまするので、状況を見まして、あるいは御意向があれば、自分としても会見あるいはいろいろな話し合いに応じてもいいという気持は持っておるのであります。
  14. 野溝勝

    野溝勝君 要領を完全に得ないのでございますが、総理が非常に自信過剰をもってお答えになっておるようでございますが、実際、問題が国民に割り切れないでおるという点は、これは事実なんでございます。いかに国会で多数決で承認されたといえども、国民はなかなか納得してくれません。そこで、先ほど来の問題を私は提起して、かような誤解を起こさないように努める方法を講じたらどうかというようなことをお話を申したのであります。私はこれで一応打ち切るといたしましても、どうか政府並びに自民党でも、本問題については、特に外交上あるいは日本の産業経済の上におきましても、影響のある問題でございますから、これを契機といたしまして、十分なる反省と再検討、今後の日本の政治史の上にもっと明朗なる方針と善処が必要だと私は思うのでございます。この点、私は強く強調いたしておきまして、質問を打ち切ります。
  15. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 大矢正君。
  16. 大矢正

    ○大矢正君 去る二十四日に衆議院から産投会計法が当委員会に送付をされましてから、大蔵大臣外務大臣を中心として、私どもは、この産投会計から支払われるガリオア・エロア、戦後の対日援助が、はたして本来債務的な性格のものであるのかどうか、あるいはまたそれが具体的にこれからの産投会計の運用等についてどんな影響を与えるのか、こういう問題については議論をして参りましたので、それらの点を省いて、私はきょう特に総理大臣に、産投会計の中からガリオア・エロアというものが支払われるということになって参りますと、勢いそれはわが国の国際収支にも影響の出てくる問題でありまするし、いま一つは、明年度の予算は相当引き締めをした、言うならば健全予算を組まなければならないのではないかといわれておる今日の状態や、あるいはまた最近の急激に増加して参りました輸出入銀行や開発銀行の原資を供給しているこの産投会計に与える影響等、これらの問題を中心として総理見解を承りたいと存じます。  まず、第一に私がお伺いをいたしたいのは、総理はこれからの日本の国際収支の見通しをどのようにお持ちになっておられるかということであります。それはおそらく総理は、先般来この十一月には国際収支は均衡するであろうと言ったのが、四カ月も以前の七月においてすでに経常収支が均衡を回復しておるというから、自分の予想以上に速いテンポで国際収支の均衡が保たれたと、あるいはお答えになるかもわからないと私は思います。しかし、私は考えてみまして、今日の日本の対外、対内の情勢というものは、総理が簡単に十一月の国際収支の均衡が七月に早まったということだけで断定をすることは困難ではなかろうかと私は存じます。したがいまして、この際、総理の国際収支のこれからの見通し等についてお答えをいただきたいと思います。
  17. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 敗戦後の日本の状況を考えますると、国民諸君の非常な御努力によりまして、またわが党の政策がその時勢に適応した結果として、また外国の協調によりまして、驚くべき進展をとげて参りました。昭和二十四年、今申し上げましたが、予算を作ったときには、まあ占領下でございましたが、外貨はほとんどゼロです。これが今では十六億三千五百万ドルに相なった。私は、この歩みは日本の実力であります。そうして国民の努力でございます。世界の各国との協調のたまものであります。しかも、今までの政策を今後も続けていくならば、これは手放しに楽観するわけじゃもちろんございませんが、やはり自信を持って進んで行って、これは日本の国際収支は、一時的ないろんなしわはございましょう、長い目で見て、どんどん伸びていくものと確信いたしております。国民の努力が、政策がよろしきを得て、そうしてまたそういうふうにこれから導いていかなければならぬ、こう考えているのであります。
  18. 大矢正

    ○大矢正君 総理大臣、あなたの答弁はちょっとおかしいんじゃないですか。私の質問しているのは、国民の努力がどうのこうの、こういう質問をしているのではなくて、あなたの見通しとして、国際収支はどうなるという見通しを持っているかと聞いている。あなたが十一月には国際収支は均衡するだろうと言ったのが、七月にすでに回復しているから、このまま順調にいくというふうにあるいはお答えになるかもしれないけれども、もしそれならそれでけっこうです。それなら、これから順調にいくという要因はどこにあるかお答え願いたい。私はあなたのお答えによっては——これは私としては、国際収支は必ずしもこのままの状態で進んでいく、このままの状態で回復していくというような見通しは持っておりません。これは確かに七月の外貨の準備高は十六億三千万ドルといって、私の記憶に間違いなければ、最低に落ち込んだのは十四億六千万ドルでありますから、かなりの回復をしていることは事実であります。事実であるが、外国との関係や、あるいは国内経済情勢や、そういう点から考えて参りますれば、将来に対して国際収支の面で明い希望が持てるとか、あるいはまた国際収支はこれからは絶対にもう赤字に戻ることはないだろうというような、そういう結論を私は出すことができないのです。だから、そういう面についての総理答弁を願いたいと、こう言っているのです。
  19. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国際収支の将来の見通しと言われますから、過去の実績から申しまして、そうしてその政策におけるよろしきと、国民の努力と、世界の協調があるならば、心配は要らぬ、これが私は総理大臣としての答えだと思います。  それは十一月が七月になった、来年の一、二月はどうかという御質問ならば、これまた私どもの見通しをやりますが、これは総理大臣として、今これがどうなるか、国民が非常に不安だと、昨年の暮れのように赤字がどんどんふえていくときには、一応の鎮静剤として意見は言いますが、将来の長きにわたっての日本の収支は、私は今国際収支は申し上げたとおりであります。  しからば、当座の問題としていろんな議論がございましょう。しかし、何と申しましても、自由主義経済でございまするから、政府は金融政策その他輸出入の為替政策等で、いろいろの手を尽くしますけれども、なかなか何月よりこうなりますということは言い得られない。そういうようにすることは、統制経済でもなかなかむずかしいわけなんです。だから、私は今、十一月の予定が七月になった、しかし常に言っておりますように、手放しの楽観は許されない。一−三月に輸入がどのくらいになるかということはなかなかわかりません。また、国内の鉱工業生産がどの程度まで下がるか、いつがピークになるか、これはなかなかむずかしいことであるのであります。だから、総理大臣として責任を持っていついつこうなるということは、今は申し上げることは早い。しかし、私は、今の状態は、大体国際収支が均衡していくと思います。月々のことは申し上げられませんが、本年十二月ごろまでは相当輸出超過になります。輸出超過と申しますか、国際収支は黒字を続ける。ただ、一月−三月がどうなりますか、来年の三月末では大体やはり十六億五千万ドル少し上回るでしょう。その場合に、アメリカの三銀行から借りております二億ドルというのは十一、十二、一、二で払いますから、それを払ったあとがどのくらいになるか、またエグジム、保証借入の三千三百万ドルの分を払うとすれば、私は今の十六億三千五百万ドルが十七億ドル近くになっても、十五億を切るか切らぬかということが問題だと思います。
  20. 大矢正

    ○大矢正君 やはり今の国民全般が国際収支に非常に関心を持っているということは、それなりに私はやはり理由があると思うのです。それは経済の先行きを見るためにはいろいろな指標が私はあると思います。あると思いますが、やはり今日の段階では国際収支というものに、何といっても最大のウエートを置いておるのではないか、こう思うのであります。ですから、そういう立場から見ると、国民としてはこれからの日本経済がどうなるのだろうかという点については、それは鉱工業生産指数の問題もありましょう、あるいは資金の流れもあるでしょう、あるいは株価の動きもあるでしょう、そういういろいろな要因をたくさん積み上げてみても、まず根底に横たわるものは国際収支だ。なぜかといえば、それはもう私が申し上げるまでもなくて、従来まで日本が、たとえば調整過程とかなんとかいって政府はお逃げになっておられるようだけれども、私どもに言わせれば不況政策、デフレ政策です。それがとられる最大の原因というものは、一つはまあ全体的な需要の減退もあるでしょう、あるいはまたある場合には設備投資の過剰によって過剰生産ということもあるでしょうが、しかし従来までの日本の国を訪れてきた不況というものは国際収支にそのガンがあるわけですから、ですから、国際収支の均衡や回復ということは、日本経済の発展にとって非常に重大なことを国民みずからが知っているわけでしょう。ですから、総理が国際収支のこれからの見通しということは、言うならば国民の一つの願いであります。それを示してもらうこと、それは一つの願いです。ですから、そういう立場から私は国際収支の見通しをはたして総理はどう考えているだろうかということを申し上げているのです。  そこで、あなたの説からいきますと、十二月まで、それから十二月以降来年の三月までというような御説がございました。しかし、考えてみますると、私は一つにはこういう問題があると思います。対米貿易が最近は改善をされて、アメリカに対しての輸出が伸びてきたから、そういう面では経常収支の中における貿易収支は均衡を回復するであろうが、そうしてまたそのままそれが持続されるであろうというような御説があるようでありますけれども、それはあくまでも落ち込んだ去年の対米貿易を基礎にしてその数字を出しますれば、そうなりますけれども、御存じのとおり、去年の対米貿易というものは過去数年間におきましては一番落ちた時期であります。それをとらえて今日貿易の伸びが対米貿易において多いとか少ないとかという議論は、危険性が一つあるということを私は申し上げなければならないと思います。それから、もう一つは、アメリカの開発局その他の関係で、東南アジアを中心とした特需が減少するということがいわれております。通産省でも、今年のこの三十七年度の特需は一億ドルくらい減る危険性がある、それは米製品優先買い上げという立場があるからだということもいわれております。そういう面から見ましても、これはなかなか私は国際収支、特に経常収支を含めて楽観を許さない状態にあると思います。あるいはまた、昨年来本年にかけまして、多少なりとも短期の資本収支というものは国際収支に黒字の影響を与えて参りました。しかし、最近六月、七月の傾向を見ますると、資本収支の短期収支というものは急速に減少しております。これから大幅に短期収支というものを見込むことは困難であります。したがって、総体的な国際収支の面におきましては、ここにも一つ私は問題点があると思います。  それからまた、いま一つは、一番外貨の蓄積が高かったときは約二十億ドルの外貨がございました。今日それがどうにか上向きになったといえども、十六億三千万ドルしか外貨の蓄積はございません。過去の最高のレベルである二十億までこれを戻すということになりますると、たいへんな努力であります。一年七カ月かかってやっとこの七月に初めて経常収支が黒字に基調が変わったのでありまするから、それをさらに伸ばして過去の二十億ドルまで持っていくということは、私はこれからの貿易政策、これからの経済政策にとりましても、考えなければならない問題だと思いまするし、同時に、外為勘定で揚げ超が依然として続くということは、資金面におきましてそれだけ総体が苦しむ結果になりまするから、一般の金の流れがそれだけ鈍くなって参りますから、これが経済に与える影響ということも考慮しなければならぬと私は思います。  したがって、これらのことを考えてみますと、あなたが言われたような、簡単にこの七月で経常収支が黒字基調を回復したからこのまますべり込んでいけるだろうという見通しは甘いのではないか、こう私は思いますが、総理大臣、どうでしょうか。
  21. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の第一点の対米貿易でございますが、これは昭和三十二年に比べまして三十三年は大体五割増しをいたしております。アメリカの好景気に続いて日本輸出が伸びております、五割増し。三十四年、三十五年、三十六年は大体横ばいでございます。だから、去年が急に下がったわけではない。十二、三億——十三億前後で三年間続いた。今年は大体アメリカ合衆国に対しましては、横ばいで三年間来たものの三割。そこで、アメリカの景気がどうなるかということにつきましては、アメリカ内でもいろいろ議論されております。ケネディに言わせれば、景気は悪くならない、上向きだと言っております。人によっては下向きだと言っている人もありますが、いずれにいたしましても、対米貿易の問題については、私はまだ相当——相当といっても三年も五年もということではございませんが、三カ月や五カ月ぐらいは対米輸出はふえていくと思います。  それはなぜそう申すかと申しますと、大体輸出入信用状は四カ月前、六カ月前というか、先を見込みますが、先月は輸出入信用状の輸出の黒字が一億一千九百万ドル、その前の六月には一億二千六百万ドルの黒字、今月が多分一億三千万ドルをこえましょう、きのうまでの数字で一億三千万ドルまで行っておりますから、先々月の一億二千六百万ドルをこえます。これで私、毎日信用状の状況を調べております。毎日調べております。それから、もっと近めに来る輸出入の承認額、これも先月から私はとることにしておりますが、輸出承認額も今月はちょっと三千万ドルぐらい黒字ではございませんか。そういたしますと、少なくとも十二月までは黒字が続きます。これは輸出入信用状の過去の毎月の状況を見てからの判断でございます。アメリカの景気が悪くなる、悪くなってもしばらくは輸出が伸びるのが今までの例でございます。そうすれば、私は、アメリカの景気自体にはいろいろ議論はありますが、まだ来年の三月までは大体いいのじゃないか。  それから、アメリカとの関係で非常に大きかったが、ことしは少ないというのは、一番多い鉄鋼の原料関係が、大体八億ドルぐらい去年なんか輸入しております。しかし、鉄鋼生産のあれが変わって参りまして、くず鉄の使用量が非常に減って参りました。私は、その関係で、昭和三十七年度の輸入物資の中で鉄鋼関係で二億ドルぐらい減る。これは生産手段その他の関係で、ストックももちろんありましょう。  そういう関係で、今年度の国際収支が、私が前に見積もった四十七億ドルの輸出は、とてもそんなことはできぬと批判を受けたが、四十七億ドルをこえましょう。それから、輸入が四十八億ドル、これよりも多くて五十億ドルをこえるという議論がございました。大矢さんは知られているかどうか知りませんが、記憶はございませんが、四十八億ドルを割りましょう。こういう状況でございます。  そうしてまた、私は、今の米国が大体三分の一——北米が三分の一くらいでありますが、考えなければならぬのはEEC、欧州貿易でございます。欧州貿易は非常に伸びております、おととしに比べますと、今年の状況は四割、五割増しであります。去年はおととしと比べて二割増し、日本輸出は。また、去年に比べてことしは相当伸びておる、三割余り。そうすると、おととしに比べて五、六割ぐらいの伸びになるのじゃないか。それは絶対金額は少のうございます。しかし、一大工業国、アメリカと同様な工業国が今輸出が四、五億ドル、アメリカのほうは十五億ドルくらいになりましょう。それじゃとてもいかぬので、EECにもっていって、アメリカに向けると同じような、貿易自由化によって彼れらに日本の物を買ってもらう努力をすれば、相当伸びる。  第三の問題としては、東南アジアにおける第一次産物の値下げ、これをどういうふうにして日本が買って彼れらに輸入力を与えるか、また日本経済援助をどうするかということによって相当あれしてくる。  それで、私は今年の貿易は予想しておりました以上に三月まではいけるのじゃないか。ただ、外貨の点は、借金を払う関係上ある程度これは減る。そうしてまた、今の自由円、ユーロ・ダラーの問題がございましたが、激減したとおっしゃるが、そう激減しておりません。
  22. 大矢正

    ○大矢正君 減っていることは事実だ。
  23. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 激減しておりません。大体六億ドル前後はあるのであります。これを十二月のような決算期のときには、世界の情勢によって二、三千万ドル、四、五千万ドル、この点は違いはございますが、大体日本の信用が落ちておりません。だんだん上がっておりますので、自由円、ユーロ・ダラーにつきましては私は御心配は要らない。それよりも日本があらゆる方法で世界の信用を博することは、ガリオア・エロアなんかも日本の国際信用に非常に役立ったと考える。もう一つ、自由円、ユーロ・ダラーの問題に対するものは今度何がございます。一般の借款でなしに、各民間の会社が社債を出すとかあるいはまた株式投資について緩和策を講じた。今のところまだ出ておりませんが、二、三カ月ぐらいしたら、だんだん出てくると考えておるのであります。したがいまして、私は国内である程度ひずみはございますが、経済全体としては国際的には私は信用を高めつつあると考えておる。したがって、国内の景気調整によりますひずみを細心の注意をもってきめこまかに方策を講じていく必要があると私は感じておりますので、全体としての経済の動きに心配をしておりません。心を砕く心配はだれにも増してしておりますが、悲観はしておりません。
  24. 大矢正

    ○大矢正君 今貿易を中心とした議論でありますが、これはアメリカ経済わが国経済、そしてまたヨーロッパ諸国の経済の動向ということが契機となる問題でありますから、その点では議論があるところでありますので、その点は私といたしまして、今総理発言の中にもありましたとおり、日本はこれから従来と異なって外貨で支払っていかなければならぬものが数多くあるということですね。一つは、昨年の秋以来借りて参りましたアメリカの市中銀行に対する返済が、私の判断に間違いなければ、この十一、二月ごろから支払わなければならないという情勢にある。これだって少額のものじゃない。相当な金額でしょう。これがまず一つある。それから、いま一つ大きな問題は、これはもとより私どもは反対でありますが、総理大臣が中心となって韓国との間の国交正常化といいましょうか、日韓交渉が再開をされておりますが、私どもは今のように南北朝鮮の統一を妨げるような日韓交渉にはもとより反対でありますから、そういう交渉にも反対でありますし、その立場を横へ寄せてあなた方のぺースでものを考えてみたといたしましても、これからかりに対韓交渉がまとまった場合には、あなた方のほうは贈与と借款を与えると、こう言っておるのでありますから、当然その金は出さなければならない。もちろんこれは外貨で出すのではないにいたしましても、たとえば製品で韓国に対して援助をする場合でも、その製品を生産するについての原材料は当然外国から輸入してこなければならないから、勢い私は輸入がふえることは必然だと、こう思いまするし、それからまた、他の面から考えてみましても、今日のこの日韓交渉の妥結に基づいてわが国が負わなければならない国際収支上の負担というものも見のがせないと私は思います。それからまた、今の総理の言葉にありましたように、明年は三千八百万ドル以上の外貨によってアメリカに、対米債務といわれておりますガリオア・エロア、もしこれが通ると、返済しなければならぬことになる。  そういう負担面では、あなたの言われるような結果になって経常収支が均衡を維持していったとしても、これらの従来ない支出の要因というものは容易に日本の国際収支を改める方向に私はならぬと思います。総理大臣、どうですか。これはかなりの金になると私は思いますよ。
  25. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 過去五年賠償を払ってきております。相当の数字になっております。しかし、あの賠償支払いを始めた三十二年ごろの日本経済と今の経済とを比べれば、おわかりと思います。私は、非常に楽に払えるとは申しませんが、必ずや日本人はそういうことをなし遂げる国民であるという自信を持っております。何と申しますか、アメリカの市中銀行へ十一月から五千万ドルずつ二月まで四カ月払います。払えるようになって参りました。私は、あのときはかなり心配しまして二億ドルを借り、世銀から一億二千五百万ドル、IMFのスタンド・バイ・クレジットも取りつけておりましたが、スタンド・バイ・クレジットには手をつけないでいいようになって参りました。私は、先ほどから申し上げましたごとく、来年の三月の年度末におきまして十六億三千五百万ドルよりももっとふえる、そしてふえた中から二億ドル、あるいはまたIMFの本年度内に払う三千三百万ドルも大体払っていけるという気持を持っておるのであります。将来これはガリオア・エロアを払うことによってそれだけの外貨負担になりますけれども、日本経済の高度成長から申しまして、そういうものは私は払える確信を持ちたい、また払えるように経済を高度化していかなければならぬと考えるのであります。
  26. 大矢正

    ○大矢正君 次に、私は、日本経済のこれからの見通しと関連をして、日銀の貸し出しについて総理考え方を承っておきたいと思うのでありますが、それはごく最近の統計を見ますると、日銀の発券高は一兆二千三百億、それに対して依然として日銀の貸し出しというものは一兆五千億を上回っておる。これはなかなか改善をされる見込みはないのですね、現実には。私がこういう質問をすると、あなたは、いや、日銀から一兆五千億も出しているから、今日この不況の中で、金詰まりの中でも中小企業はどうにかやっていけるのではないかとお答えになると思います。が、しかし、私はこれはこのまま放置をされる状態ではない、やがてはこの日銀貸し出しというものは収縮しなければならない時期が来るのではないか、こう思います。そういう点を考えて参りますと、これからの日本経済というものは、やはりあなたはまあ貯蓄をふやしてくれればこれは市中銀行を通して漸次日銀貸し出しも減るだろうというような希望があるかもしれないが、貯蓄々々とあまり熱を上げれば、これは需要が、消費が減退しますから、そういう意味ではこれも限度があるのですが、一兆五千億という膨大にふくれ上がった日銀貸し出しというものに対して総理大臣はどうお考えですか。このこと自身は日本経済にとって非常に重大な影響がある。これが急激に収縮するかどうかということは日本のこれからの経済にとっても重大な問題ですが、総理大臣考え方を承っておきたい。
  27. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日銀貸し出しの増加の原因は、やはりそれだけ資金需要があるということが一点、もう一点は政府の財政収支が非常に引き揚げ超過であるということが原因の一点であるのであります。政府の引き揚げ超過は、大体ことしになりまして、ことしの一月から大体五千億程度の引き揚げ超過になっております。そうして年度初め、四月からと比較いたしますると、四百億円ぐらいの引き揚げ超過になっておる。去年のきょはどうだ。去年のきょうは、昭和三十六年一月から八月の二十五日で見ますと、去年は六千億円の引き揚げ超過、そうして四月から去年の八月末までは二千五百億円の引き揚げ超過。政府がこれだけ引き揚げ超過しておることが日銀貸し出しの増の一つの原因でございます。そうしてまた、先ほど申し上げましたように、資金需要の多いこと。  そこで、きょうの新聞によりますと、金作りのために貯蓄増加、こう言っております。新聞にはそう書いてありますが、私の真意はそこではなかった。それも必要でございますが、日本国民所得に対しまして、日本の通貨はあなたの言われた一兆二千億。先年は多分一兆をちょっとこえておったと思います。去年から一割五分ぐらいふえております。しかし、総生産額は名目的には二割近くふえておる。だから、今一兆二千億の日本銀行券が日本経済に対してそれが適当であるかどうか、こういうことは私は考えなければならぬと思う。そうしてまた、通貨の発行の要因になる日本の国債というものの状況はどうか、私はその点大いに考えなければならぬ。だからといって、私は国債発行論者ではございません。今あなたのおっしゃるように、日本銀行の貸し出し一兆五千億じゃたいへんじゃないかというときに、まずこれの起こった原因は資金需要の多いことと、政府の引き揚げ超過。そうしてまた、そのもう一つ根本に、貸し出しの一兆五千億とか、あるいは通貨の一兆二千億というものはどうか。国民所得十四兆に比べて今多いといわれる一兆二千億というのはどうですか。ようやく八%じゃないですか。これは日本の今までのずっと経歴をごらんになりましても、私は通貨が、銀行券が少し少な過ぎるし、去年の状態で世界に比べますと、アメリカとカナダが国民所得に対しまして七%、日本も七・五、六%。フランスやイタリアでどうですか。このごろ非常に好況だった欧州経済の中心国になっておるフランス、イタリアの通貨発行額は、国民所得に対しまして十数%であります。フランスが一番多くて一七、八%、イタリアが一三、四%。もし日本がイタリアやフランス並みにいったならば、日本の通貨は一兆七、八千億ということになります。一ぺんにそうはできませんけれども、しかし日本経済の置かれた状態がどこにあるかということをもう反省すべき時になってきておる。  そうして、貯蓄増強ももちろん必要でございましょうが、日本経済をこれ以上伸ばしていくためには、通貨制度、流通過程の状況——今申し上げましたように、それだけ預金が非常に集まらないというのは都市銀行でございますが、地方銀行、特に相互銀行、信用金庫のほうはいまだかつてないほどの集まりようであって、こういういろいろな状態考えて、まあ金作りというようなことがきょう出ておりましたが、貯蓄の増強も必要であれば、われわれは外資の導入とか、金融のよろしきを得て、財政経済政策のよろしきを得て金をこしらえることを考えなければならぬということを、きのう財界の人に話をしたわけであります。しかし、そういうことが出ずに、ただ貯蓄増強ということだけが出ておったようでありますが、実際はそうではない。日本経済をもっとりっぱなもの、筋の通ったきれいなものにするためには、やはり通貨制度——まあ今の制度を根本的に変えるという意味じゃございませんが、国庫の状況、そうしてそれが民間とのつながり等々について十分検討していく時になってきた。日本経済というものも、他国経済から見れば世界的なものになってきた。私はロンドンやニューヨークのように世界の金融市場の中心なんかということは考えませんが、少なくとも日本としては東南アジアにおきまして円が国際通貨になるような場面をわれわれ考えるとすれば、日本の金融、経済、その他につきまして、抜本的に考慮すべき時が来たのではないかということを、心ひそかに考えておるのでございます。今金作りというのは、貯蓄増強ということに重点を置いておりません。いろいろな点を考えまして、私はりっぱな日本の金融政策、それから財政と金融のあり方等々につきまして、全心を砕いておる次第でございます。
  28. 大矢正

    ○大矢正君 あなたのお説によると、通貨の量は一兆二千億というものは必ずしもそれは妥当な数字じゃないという御意見、それは今日のように信用取引がどんどん発達をしていけば、ある面ではそういうことは言えるかもしれません。が、しかし、あなたの言われた、揚げ超、揚げ超と言われて、責任は一切揚げ超にあるから日銀の貸し出しがふえるのだと、こういう御議論だけれども、それじゃ揚げ超になぜなるかといえば、一つには貿易収支が赤字基調に変わったために赤字になるのでしょう。あるいはまた、ある意味考えれば、あなたの言われる経済政策が揚げ超にならざるを得ない。こういう不健全な、日銀の貸し出しを一兆五千億もやらなければ揚げ超のこの均衡を保っていくことができないようなこういうことは、やらなくても済むのじゃないですか。私はそう思います。  まあ、時間があと五分しかありませんから、この議論はやめまして、最後に、産投会計から今年、それから明年、まあ多年度額が支出をされるということになるわけでありますが、そこで問題は、明三十八年以降の産投会計の原資を確保することができるかどうかという問題です。先ほど来申し上げましたように、輸出入銀行はますます資金の需要が高まって参るでありましょうし、貿易の自由化に対抗するためにも開発銀行その他金融機関が積極的に資金需要を求められることは必然だと私は思います。そういう中で、やはり政府の投融資計画というものは非常に重要な要素になってくるわけであります。その段階で来年の日本経済の見通しやその他を見ますると、御存じのとおり、大蔵大臣は先般もお答えになりましたが、ことし、三十七年の自然増収もどの程度であるかということを見込めないというのが実情であります。去年なんかの自然増収の多いときには、もう七月ごろになりますればおおよそ自然増収の見込みも立つのでありますが、今年は全然立たない。なぜ立たないかといえば、ようやくにして企業の利益率が低下をしてきて、これがどこまで続くかという心配もあるでしょうし、国民の納める所得税の問題もあるでしょう。そういうような要因を考えると、ことしすら自然増収が幾らであるかわからない。ことに災害対策がある、公務員給与値上げがある、これらはいずれば補正予算を組まなければならない。そうすると、ことしの私は自然増収があったとしても、地方自治体に対する還元もありますから、おおよそこれはなくなってしまうと見なければならない。さすれば、昨年のように、この自然増収で産投会計資金に振り込んでいつかはそれを使うということも、現実的に不可能になって参ります。と同時に、これを来年の経済の発展についてみましても、法人企業の利益率というものは、むしろこれからが下ってくるときである。三月期は幾らか維持されておる。しかし、九月期、来年の三月期、それから来年の九月期というものは、一番法人利益が下がる時期じゃありませんか。そうすれば、財源の一番大きな法人税に重大な支障を来たします。私は、一般会計においてすら財源の余裕がなくなってくると思いますから、当然のことながら、かりにガリオア・エロア債務というものを産投会計から払うことになりますれば、それだけ開発銀行なり、輸出入銀行なり、あるいはその他の政府関係機関に対する投融資、出資などが不足を来たしてくることが必然ではないかと私は思うのでありますが、今私が申し上げたような産投会計から充足をして今日まで出資をしてきた、投融資をしてきたこれらの資金量を絶対に確保できる——しかもこれは年々ふえておるのですから、去年と同じじゃ困りますよ。年々これは資金の需要はふえるし、そしてまた希望も多いのでありまするから、それに見合うだけの原資を確保することができるのかどうかということを、最後にお伺いしておきます。
  29. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 産投会計から出しまする百五十八億円だけは、そのままにしても減るのであります。減ることは、これは確かであります、払うのですから。ただ、産投会計の総額というものは相当なものでございます。これの財源は資金運用部の金、あるいは簡易保険、郵便貯金、また今後ふえていきまする厚生年金、国民年金等もございます。そうしていわゆる考えようによっては一般会計からの補充ということも考えられる。いろいろな手があると思います。そこは大蔵大臣は非常に堪能でうまくやられると私は考えております。この問題はやはり次の国会で議論なされることになりましょうが、あなたのおっしゃたように、非常に本年度の租税収入が九月決算で赤字が多いからたいへんだというふうにお考えになるのはいかがなものかと思います。これは私の所管外でございますから、四月からのずっとこっちへの租税収入は、今月も大体昨年よりも百三十億ばかり多いのです。
  30. 大矢正

    ○大矢正君 大蔵省はあなたの言うことと反対の答弁をしている。
  31. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いや、事実です。毎日とっているのです。ただ問題は、四月からの収入はいい。そこで、去年の実績、去年の決算と今年の予算は大体同じでございます。大体今のところは百十億ないし百三、四十億毎月去年の実績より多いから、今年の予算よりもそれだけ多くなるはずです。ただ、間接税減税の分は、これはその分だけは差っ引かなければなりません。  そこで、問題になるのは、きょうの新聞にありましたごとく、不況産業の製鉄会社——繊維会社はちょっと持ち直したようでございますが、製鉄会社などは非常に減って参ります。減って参りますが、全部がそうなるかということになると、必ずしもそうではない。しかし、片一方の大きい財源でありまする所得税、ことに源泉徴収の所得税につきましては、もう俸給の上がりが非常に多いようでございます。
  32. 大矢正

    ○大矢正君 多いということはないでしょう。
  33. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 多いのです。とっても多い。それはごらんになったらわかりますが、今年の四月、五月を見ますと、去年の場合に比べますと二二%ふえ、六月が二%ふえています。
  34. 大矢正

    ○大矢正君 公務員給与は上がっていないじゃないか。
  35. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 公務員給与が上がらなくて、それだけふえています。そうなって参りますと、私ははっきりしたことは所管大臣がいるから申し上げませんが、あなたの心配せられたほどではない。  そこで、今後の持っていき方でございます。鉄鋼は非常に悪い。鉄鋼がどうなるかということは心配でございましょう。今後の持っていき方。去年は、私は常に言っているように、不景気ではない。
  36. 大矢正

    ○大矢正君 不景気ですよ。
  37. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) あなた方は不景気とおっしゃいますが、外国の人が見たらどうでしょう。アメリカやイギリスなんかは二、三%の生産増強じゃございませんか。四%から上がったら、相当あれです。日本の雇用が減っていますか。卸売物価は大体横ばいでございます。
  38. 大矢正

    ○大矢正君 失業者はふえている。
  39. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 失業者はそうふえておりません。一昨年に比べますと、三百万人雇用労働者がふえております。そうして賃金も上がっております。とても、あなた、不景気という状態ではない。これは国民をまどわしちゃいけません。(笑声)これは前のように非常な好景気ではございませんが、まだまだ不況、不景気ということは全体的に言えないと思います。鉄鋼業の不景気はございます。経済の見方というものはよほど公平に、イデオロギーにとらわれずに、まじめに実際の状況を見ていきますと、私は、去年、一昨年のような好況ではございませんが、調整期でございますが、非常に不景気だとは言えません。雇用の関係、賃金の状況なんかは、私は不景気と言うべきじゃない。あるいは資本家は不景気と言うかもしれませんが、労働者、一般大衆が不景気とは言えないと考えます。(笑声)
  40. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 永末英一君。
  41. 永末英一

    ○永末英一君 池田総理内閣を作られて以来、政治の姿勢を正すということを一番の根本の身上として参られたことは、われわれは承っております。われわれの考え方によりますと、政治の姿勢を正すためには、正すという言葉が出るためには、どっかゆがんでおるのじゃないかという前提があったと思います。そのゆがんでおる大きな柱は、われわれ日本民族が敗戦をしてずっとやって参りましたけれども、政治的にも経済的にもやはり自分で立つ、こういう政治のかまえを作ることが一番の大きな柱の一つではなかったかと思うのであります。そういう意味では、このガリオア・エロアの決済ということは、政治の姿勢を正すためには、問題としてははなはだ重要な問題の一つであったとわれわれは考えておりました。  先ほどからの御説明を承りましても、債務と心得ておったというのでございますが、これは法律用語として、あるいはまた形式的には確定債務でなかったという意味合いで、お使いになっておるようでありますが、日本人自身の気持からいえば、いわゆる、まず前提としてこれは債務だという意味合いで考えたのではなく、いろいろな複雑な関係を持っている。いわば債務の部分も一部分あるかもしれないけれども、われわれが困っておったときに援助を受けたことは、これは事実です。この援助は何らかの形で返そう、出世をしたときに返すという日本人の古来からの社会にある慣習に従えば、出世払いという形でこれは返すべきじゃないか、こういう考え方をわれわれは持っております。  ところで、そういう日本人の率直な感情をこのガリオア・エロアの決済にあたってはアメリカ側に率直にぶっつけてほしいとわれわれは考えておったのでありますが、池田さんのやり方では、これが必ずしも率直に訴えられなかったのではないかという判断をいたしまして、われわれはこのような協定を結ぶことについて前国会でも反対をいたしました。しかしながら、われわれの反対にもかかわらず、これが成立をいたしました暁においては、この払い方をどうするかということは政府の姿勢を正す上にも私は重大な問題があると思います。  そして今回の政府の御提案では、これを産業投資特別会計から支払う、こういう御提案でありますが、そもそも昭和二十八年にこれが出たときには、経済の再建という目的は別にいたしましても、現在生きている課題としては、産業の開発なり貿易の振興ということが産業投資特別会計の目的であります。それ以外の目的に使うということは二十八年当初には考えられていなかった。ところが、今度これにもう一つの異質の目的を追加して、この中から借金の返済をするのだ、こういう御提案をわれわれは受けておるわけでございます。そうであるとするならば、一体この産業投資特別会計が設けられた当初の目的とこれから借金を払うという異質のものを一緒くたにしたような一つの会計法律は条文を変えれば何でもできるかもしれませんが、当初の目的と私どもは変わっておる、このように考えますが、総理大臣はどのようにお考えですか。
  42. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういう御質問があるからと思って、問われもしないのに、私は昭和二十四年見返資金特別会計をこしらえたときからの経過をお話しした次第でございます。あるいは、いや、国民の税金から債務など払ったらいいじゃないか。それも一つの方法でございます。しかし、私には、一般の国民は、アメリカ援助に対して払うのなら、その援助物資を金にして運用してためた金があるのですから、それの利子で払うということが一番わかりいいじゃありませんか。これは私は民主主義のあり方だと思う。あの産投会計を設けたときに、まだ払うことがきまっておりませんから法律に出さなかっただけで、国民に、払うのは税金から払うのではありません、アメリカからの援助の実を言ったら四分の一ばかりのものを払うのだ、しかもこういう金をとっておいて、しかもその利子だけで払えるのです。それが一番国民にわかりいいではありませんか。われわれの納めた所得税で、何か昔人はもらったと思っていたが、われわれ払わなければならぬと思っておったのだが、その分を今の金で払うより、ためた金があってその利子で払うほうが、その利子で払ったほうが一番わかりいいじゃないか。これが一番わかりやすい、国民の偽らざる感情じゃないかと思う。  もし、私が総理大臣じゃなければ、あるいはあなたのおっしゃるように税金で払ったかもしれませんが、私は今日あることを予想してそういう金をためて、そうして元本の利子で払うということが十数年来の私の年願でありますから、私はこれで払うということは国民が一番わかりやすい。これが一番財政の何といいますか、筋を通している。どういうところから払うのだ、こういうところから払うのだ、その金はどうなっている、こうなっている。これが一番わかりいいじゃないか。私は虚心たんかいに国民の一番よくわかる方法でいくのがいい。産業投資特別会計法改正するにあたりまして、こういう金が残っていますからこれで払いましょうというので、今の特別会計の議論とかなんとかいうことよりも、国民に一番わかりやすい、実質に沿ったやり方が私は民主的なやり方と考えております。
  43. 永末英一

    ○永末英一君 このガリオア・エロア援助によって日本で積み立てたものが産業特別会計のみに残っておるのなら、今総理が言われたような一つの考え方があるかもしれない。しかしながら、今まで政府当局の御答弁を承っておれば、ガリオア・エロアによる援助、これに対して国民の支払ったもので政府の金になっておるものはこれに限らない。あるいは外為会計を通じ、あるいは貿易特別会計を通じて、一般会計に入っておるわけであります。それをこの見返資金という会計を通じながら産投会計だけに負わせるということによって、今産投会計が当初設置された目的と異質のものを受け入れることが、産投会計のこれからの運営の前途に対してわれわれは悪影響を及ぼす、このように考えておりますから、重ねて、この産投会計総理大臣がどのようにこれから運営をしていこうとしているかという点に関連をさせながら、この点についてお答えを願いたいと思います。
  44. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 率直に申し上げますと、産投会計だけで払える、そして外為特別会計を入れまして七百三十億円の分は、これに手をつけなくてもいいんです。また、国鉄や森林公団、電電公社に出しました百数十億——二百億円ぐらいございましたが、これはこの金の利子なんかもそれに手をつけなくてもいい。産投会計利子だけでまかなえるから、何もほかの特別会計に出したものあるいは公社の貸付金等を集めなくても、これだけで簡単にいくんだということで、あえてこれにしたわけでございます。これをやったからといって、産投会計の目的が何もなくなったというのじゃありません。産投会計の目的ははっきり生きておるわけであります。ただ、そこにありますためた金の利子で払うということを入れただけでありまして、国民には一番わかりがいい。ほかの会計に手をつける必要はない。  だから、これはこの前の国会でも非常に外為資金のことも言いました。私は言いました。衆議院予算委員会で、こういう金がまだあります、森林公団、国鉄、電電公社への貸付金等もあります。そんなものに手をつけなくてもいい。あなたはそれならみんな手をつけたらと言うけれども、たいへん厄介になる。それには幸いに産投会計で払えるんですから、いいじゃありませんか。
  45. 永末英一

    ○永末英一君 私が申し上げておるのは、今までの政府当局答弁によれば、利子ぐらいで払える、こういう話だったんですね。ところが、これに二つのやはり影響が出てくる。一つは、産投会計の原資というのは、もし運用金、回収金、利子等で払うとすれば、これから年々産投会計に繰り入れられるプラスの面がこれでなくなってくる、これは返しますから。そうしますと、産投会計によって当初会計が設立されたような目的、産業の開発とか貿易の振興に使うためには、やはり資金を持ってこなければならない、こういう問題が当然出てくる。これはすなわち異質の目的をつけ加えたからそういう結果になった。したがって、もし池田総理が借金返済をこれに入れるのなら、産投会計自体として今後どうするかということに対する考え方を明らかにまずしていただきたいということです。  もう一つは、利子や回収金等で支払える、元本は残っておりますよという答弁を承っている。しかし、われわれは払うからには、これはいわゆるガリオア・エロア援助を総決算をして、アメリカ援助はなくなったと、こう言いたい。ところが、元本が残っておりますというようなことを言われますと、まだまだアメリカさんの援助を十五年たってもまだ受けるかという妙な感覚をわれわれに与える。そうじゃなくて、これをはっきりさせるためには産投会計という、未来永劫続くかどうか知りませんが、こういう続く一つの会計の中に入れるのではなくて、十五年を区切った別の会計で処理をする、あるいはまた戦争中なり戦争後のことに関係があるとするならば、賠償特別会計に振りかえてやるほうが、国民の目にははっきりともっと合理的に映るとわれわれが考えるから申し上げておるのです。この点について御見解を伺いたい。
  46. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 産投会計から賠償特別会計へ入れて、それから払うと。一つの手でしょうが。それは手数じゃありませんか。頭のいいあなたなら、もうおわかりでしょう。  それから、今後の産投会計のあり方ということは、前のあり方と同じです。いわゆる先ほど申し上げました、相当ふえてくる原資、また貯蓄増強等によって増加すべきものを目当てにしております。それから、一般会計その他の繰り入れ等もやります、そのときの状況によりまして。私は、まだ日本という国は民間の資本だけで十分じゃないという点がありますので、今までどおり産投会計はやっていく。  利子で払っても、元本が残っていると、アメリカからまた払えと言われるじゃないかということですが、そういうことはありません。これはアメリカだってよく知っております。百も承知しております。私は、昭和二十六年のサンフランシスコの講和会議のときに非公式に言ったのです。利子だけで払うのだと、こう言っておりますから、向こうもみな知っております。私は、国民に対してこういうふうにはっきり言ったほうが、十五年たったらそのものはみな自分のものになるということは、この点は国民もよくおわかりいただけると思います。
  47. 永末英一

    ○永末英一君 私が申し上げているのは、産投会計の原資というのは、法律によって確定されているわけであります。今総理大臣お話を伺っていると、郵便貯金とかなんとかという財政投融資の他原資も同一目的に使われるかのようなお話がありました。実は私はその点を伺いたかったのです。つまり、私は、産投会計というものと財政投融資の他原資の使用先というものとは、もっと私は整理をして筋通を立てて使っていくべきではないかと思う。これが政治の姿勢を正す一つの私は柱になると思う。ところが、このごろの政府のやり方を見ておりますと、たとえば一般会計補助金として出しておったもの、これは先ほど御説明のように徐々に融資等に、あるいは出資に振りかえってやってきたというお話がございました。あるいはまた、補助金という積極面の手助けでなくして、租税特別措置法という形で、いわばマイナスの面の手助けをしながら資本蓄積をやらせて参っております。これは一般会計でやっております。ところが、そういうものと見合いながら、財政投融資全般を扱うといたしましても、その財政投融資の全般を扱う場合には、産投会計で扱うものと他原資を利用して扱うものとは、性格的には私は異なっていると思う。これを全部合わせて一本としてお使いになるつもりなのか、この辺の運営をやはり筋を立てながら動かしていくおつもりなのか、この点をひとつ伺っておきたい。
  48. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の点が原資の問題ということであったから、私はそう答えたのでございます。財政投融資関係の分は、これは予算と申しますか、一応国会論議の対象になっております。それは性質が違います。産業投資特別会計の原資の問題につきましては、一般会計あるいはその他の資金の増加等を見てやらなければならぬ。これは金がどこから来るから筋が通らないというわけのものではございません。財政投融資関係と産投会計とははっきりいたしておりますことは、御承知のとおりであります。
  49. 永末英一

    ○永末英一君 このごろの経済がずっと続くかどうかわかりませんけれども、ともかく産業界は資本が少なくなって参り、先ほど池田総理が言われたように、今後政府資金に対する需要あるいは要求というものは大きくなってくる。その場合に、どういう形の政府資金でもって産業資金にするかということは重要な問題だとわれわれは考えるわけです。したがって、今直ちに原資が違うから用途向きに区別せよ、私が申し上げたのはそれだけの話でないのであって、たとえば巷間伝えられるところによると、今の産投会計のほかに第二産投というものを作ってやれという意見が一部にある。ところが、そういう意見はあっても、それに対する資金はどこから充てるかというと、ある人は言う、これから厚生年金、国民年金がふえるからそれを回せばいいのだという議論をする人もある。そうじゃないと思う。もし産投会計が当初設定されたような形でもって長期低利の金融等を政府が手助けをするなら、持ってくる金は別途のものでなければならないと思う。そういう点について政府資金の活用が望まれるということを総理は先ほど言われましたが、どういう形でその政府資金を当てがうつもりか、御構想があれば承りたい。
  50. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 筋道は、今の財政投融資、また産投会計でやって、第二、第三を作る必要は私はないと思います。  それから、政府資金をどういうふうにやっていくか。私は今までどおりで、必要に応じてこれは出さなきゃいかぬ。今私が問題にしておるのは、電力なんかも今まで相当出ておりまするが、このようにその値上げで財政がある程度しょうべき筋合のものがあるんじゃないか。しようとすればどのくらいしょえるかということは、今度の値上げ問題で私は今までと変わった財政的な処置を講じなければならぬじゃないか、こういうように今検討しております。そのほかに新たにどういうところに出すかというようなことにつきましては、まだ切実な要求を聞いておりません。
  51. 永末英一

    ○永末英一君 もう一度その点で付いたいのですが、今総理が言われましたように、電力料金の値上げ等の問題を政府が近い将来考えられるときには、やはり政府の手助けが必要だというような御意向のようです。ところで、それをやる場合に、この産投会計を使うとすれば、法律改正をしなければ入ってこない。たとえば資金項目に金を繰り入れるとすれば、やはり一般会計から繰り入れをしなければならぬ。そのほかの種類の金ならば、大蔵大臣総理も今はその意図はないと言われておりましたが、国債でも発行して、その国債に見合った金をここに繰り入れなくてはならない。結局今まで産投会計が扱ってきた原資というものは局限されている。ところが、この産投会計を利用しないで政府の手助けをやる、こういうことになりますと、他の原資を使わざるを得ない。それでは、一体そういう産業に向けて郵貯なり、簡保なり、厚生年金なり、国民年金というものを使って援助をしていく方針を池田内閣は持っているというふうにわれわれ考える。一体そういう方針なのか、それとも産投会計によって——今ビッグ・ビジネスの問題がいろいろ問題になっている大企業と政府関係をどうするか。その関係をつなぐ一つは、財政資金による投融資の関係をどうするか、それに対する監督、言葉は悪いですけれども、政府側の一つのひものつけ方をどうするかということが問題だと思う。その場合に産投会計の持つ役割をはっきりさしてもらわなければ、ここでわれわれは十五年間にわたってここから借金を払うということをこの法律できめるわけですから、その見通し、今の方針を伺いたい。
  52. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 十五年間の見通しというのは、これはきのうまで何回も申し上げておりますように、十五年間で対米債務をこの会計の負担において払うということであります。この会計でもって百五十八億ずつ払うと、来年から。産投の重要性がますます強くなるにかかわらず、百五十八億が払われると窮屈になるじゃないかという議論に対しましては、それは全く産投の原資が強化拡大されなければならぬということと、対米債務を払うということとは、全然政策的に別の問題であるということも申し上げておるわけであります。  産投から払わなければならないという、これからの将来の産投の重要性というものに対しては、現在産投会計の第一条第二項に規定いたしておりますいろいろな財源確保の道があるわけでありますが、それだけでなおまかなえないというような状態の場合には、別に法律改正を行なって財源を得るというふうになると申し上げておるわけであります。しかし、電力とか海運、その他の問題に対する考え方としては、きまってはおらぬけれども、将来は大いにこの種の機関を利用して、もっとできるようにしなければならぬじゃないかという問題に対しては同感でありますが、これらの問題に対して一般会計から補助金を行なうような法制上の建前をとるか、産投から投資をするか、また開発銀行の利子のたな上げとか助成政策はどういうふうにするかは、法律できめるのでありますから、個々のケースに基づいて適切に万全の処置を行ないます、こういうことを申し上げておるわけであります。
  53. 永末英一

    ○永末英一君 池田総理に最後にひとつ伺っておきたいのですが、いずれにいたしましても、財政投融資の役割は今後ますます増大するとわれわれ考えます。ところで、今までの財政投融資計画に乗ってきた経過を振り返りますと、出てきた問題に対して政府は対処するというので、いろいろな公庫を作る、あるいは公団に出資を行なう、融資を行なう、あるいは銀行整備や、その場その場の問題を解決するのでやってこられた。そこで、統一的にこれから政府財政によるところの日本経済に対する役割、影響が、財政投融資部門がふくれるにつれて非常に大きくなってくるとわれわれ考える。その場合に、財政投融資が今まで運営されてきた経過から考えると、包括的に統一的に政府がこれに対してその効果を見得るような組織になっていない。ある部分は人間がそこに行っておるから大体監督できるんだろうということであったり、あるいはまたそのある機関がそれぞれの省に連絡があるから監督できるんだ、こういう考えでありますけれども、金の出どころは一つ、大蔵省で、一つところから出ておる。そういう一つの行政的な不一致というものが必ずしも十分な効率効果の測定、あるいは指導に役立っていないと私どもは見ております。この点について今までの政府当局答弁では、現状でよろしゅうございますという答弁でございますが、特に財政の専門家である池田総理から見て、こういう点について新しい構想をする必要があるとお考えかどうか、伺いたい。
  54. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今の制度自体は、これはいろいろ議論はありましょうけれども大体いいと思っております。ただ、各公団あるいは政府関係機関の実際のあり方、監督指導、これがどうかということになりますと、これは行政管理庁長官も言っておりましたが、もっと所管官庁が頭を突っ込んでいかなければならぬということは言えると思います。制度をどうこうするということにつきましては、これは私は今のままでいけるんじゃないかというふうに考えます。
  55. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 鈴木市藏君。
  56. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 時間がありませんので、総理に二点だけお聞きしたいと思います。  第一点は、先ほど野溝委員質問にも答えまして、二十六年のときに私案として講和会議のときにこのような腹案を持って臨んだ、それは七億ドル余の返済を考えて、五カ年据え置き、三十年くらいではどうだろうということをドッジと相談したということを申されましたが、総理の私案は今まで国会で発表されていない。きょう初めての発表でございますね。そのように私記憶しておりますが、どこかでほかに発表されましたか。
  57. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 七億ドル払うということは言いません。金額は言いません。二分五厘で五年据え置き、三十年ならば、利子だけで払えるということを言っただけでございます。よろしゅうございますか。七億ドルということは言っておりません。  それから、サンフランシスコ講和会議の議題にももちろん何にもあったわけではございません。ただ、私はこの問題はいつかは解決しなければならぬというので、あるいは向こうから言ってくるかもわからんぞというので、非公式に、そうしてまた日本の財政に、経済につきましては非常に関心を、ドッジも示しておりましたし、こういうふうに運用しているということを私は、非公式になるわけですが、自分の腹づもりではこういう考えでいるということを言っただけでございます。これは全権として言ったわけじゃございません。一池田として、そうして日本経済に非常に貢献してくれたドッジ氏、また非常に関心を持っておりますアメリカの国務省の一、二の人に、ほんの個人の私案として、これなら私は返せるんじゃないかということを言ったわけでございます。これは国会では初めてでしたかな。ほかの機会には私は言ったことがございます。そうして、これは先ほど申しましたように、ロバートソンもよく知っております。しかし、これはそう公表するところじゃございませんが、まあこれが一段落きょうでいたしますから、今度の国会でいたしますから、思い出話にして、実際池田はこういうふうな気持で今までおりましたと。これはためおいた金の利子で払うのだということは、昔から、十数年来の私の念願です。どうぞこれでひとつ御了承願いたいという、最後のいわゆる気持を言ったわけでございます。(「ざんげか」と呼ぶ者あり)ざんげでもなんでもありません。私はこのくらいのことは考えてやってきたつもりでございます。
  58. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 私は、その講和会議のときの池田総理考え方は残念だと思うのです。日本国民の利益をはかっていく場合には、棒引き論を講和会議に持ち出して棒引きにすべきだということを腹にしっかりと入れていくべきはずのものを、あらかじめ、そのときに議題にもなっていないにもかかわらず、腹づもりとして払うつもりなんだというような形でいくというのは、日本国民の利益を真に願った態度とは言えないと思うのです。それが今日までずっと糸を引いて、このような形になってきているわけです。  で、私は、本委員会大蔵大臣あるいは外務大臣を通じて、当時当然講和会議にかけなければならないほどの重要性を持っているこの問題を、講和会議の議題からはずしたかわりには、何かそれにかわるべき重さを持った約束事を相手国とやっているのではないか、それについての覺書あるいはそういったような口約束でもあるんではないかということを盛んに聞きましたところ、大平外務大臣は口を固くしてそれについては答えなかったのですが、今初めて当時の一員として行きました池田さんからこのような言葉を聞いて、がく然とするわけです。私たちの考えでは、当時講和会議日本政府がもっとしっかりしてこの問題を持ち出すことができたならば、棒引きになったろうとさえ考えておるのです。それだけにとどまらず、このような私案を持っていたにもかかわらず、国民にもその内容を知らさず、国会にも話さず、事前に相手国との間で話し合いをして、債務と心得るというのは国民に対する、国会に対する言葉であって、アメリカに向かっては心得るどころか、必ず払いますというように約束をしていたのではないかということが、いよいよきょうの総理の御答弁の中から一そう明らかになったような気がいたします。だから、この問題については、私は質問をこの辺にして、時間がありませんので、次の問題に移りたいと思うのです。  次の問題につきましては、交換公文の問題です。この問題につきまして二つの交換公文が取り行なわれておりますけれども、一つの問題は日米文化教育交流に関する覚書、これは二千五百万ドルですか、約九十億支払うことになっておりまするが、この金については、この間ここの委員会でも申し上げましたので、残された問題の一つとして対外援助に関する交換公文のほうに移っていきたいと思うのですが、具体的に問題を聞きたいと思うのです。  この今度日本が支払う金はアメリカの金なんですね。これはもう何回も念を押しましたが、アメリカの金である。そしてアメリカの対外援助法に組み込まれる金である。私は、日本が今までアメリカの対外援助法そのものに組み込まれるような金を出すのは今度が初めてじゃないかと思うのですが、これが成立すれば。アメリカの対外援助法に日本の金が日本の意思として組み込まれて使われるということは、きわめて重大だと思うのです。それは対外援助法の六百十八条に基づいてある一部の開発に使われるのだ、軍事費じゃないのだというようなことを言っておりますけれども、そういうことの危険性というものは今日までの幾多の事実が示していると思うのです。この交換公文の中に後進国の開発と平和と安定のためにということを言っておりまするけれども、アメリカのやっていることを東アジアで見るならば、ことごとくその平和と安定とは逆行しているようにわれわれは考えております。ますますその傾向は強まる一方でありまして、こういうものに金が使われていくということは、額の問題ではなく、その性格がきわめて重大であり、アメリカの対外援助法、このようなつまり反共戦略資金ともいわれるものに共同の責任を負うということは、将来の日本の方向にとってきわめてこれは不幸な方向だと考えるが、この点についてどういうふうな立場でこの交換公文をかわされたか、しっかりと御答弁願いたいと思うのです。
  59. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) サンフランシスコ講和会議の議題にはならないのです。そしてこれは非公式に個人としての話、御了承を願います。  それから、私は、こういうものにつきまして永末さんは出世払いと言われましたが、日本が払えるようになったら払うということは日本人として当然の気持だと考えます。  それから、今の払った場合においてアメリカの対外援助法にこの金が行くということは、東アジアと低開発国——東アジアの低開発国の開発に向けるということは、われわれは願っておるところであります。あなたは、それが軍事費に使われる。われわれは、軍事費に使われるとは思っておりません。低開発国の経済開発に使えるということは、アジアの一員としてアメリカときめることは、私は国民の納得のいく考え方だと思います。思想の根本的の違いがあれば別でございます。国民大多数は、低開発国の開発に使ってもらいたいということを国民は希望していると思います。
  60. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 つまり、この対外援助法というものの性質を見るならば、はっきりとこれはやはり反共資金なんです。そういう金を出すことになるわけです。しかも、それをアメリカの対外援助法という法律の中で使われる金を出すことになるわけです。これが今まで日本になかったことを今度やるということは重大なんです。しかも、これが十五カ年間、アメリカのこのような対外援助に従う約束を日本はするわけです。安保条約は十年ですけれども、これは十五年。これを私たちは非常に心配しているし、疑問に思っておる。特にアメリカの対外援助の六二年のあれなどを見てみますと、インドがソ連の全面軍縮に協力をしたからインドには金を出さぬといったようなことを、公然と言っているようなアメリカですから、あなたがいかに言葉の上だけで、後進国の開発に使う、平和と安定のために使うと言っても、具体的にはそれは、南ベトナムの事実を見ても、台湾の事実を見ても、南朝鮮の事実を見ても、よくもアメリカはああいうふうに腐った政権に金をつぎ込んで、何だって東アジアの平和と独立を混乱させるのかと思われるようなそういうことばかりやっている。そういうものに使われるのです、この金は。それが日本国民の意思としてけっこうだということにはならない。こういうふうなことになるというのはどこに問題があるか。もとが正されていないから、そういう意味から、支払うべからざる金を支払うということが、もとが正されていないからこういったことが発生したのだというふうに考えているわけです。私はこの機会にもう一度この点について、二つの交換公文について再考をする余地はないかどうか、はっきりこの点をお聞きしたいと思う。
  61. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 結論から申し上げます。再考することはいたしません。そうして、この対日援助問題にあたりまして、衆参両院でいろいろ議論がございましたが、まあアメリカに払うのだから、払った金はアメリカで自由にすることは当然だが、せめて低開発国、アジアのわれわれ一員として低開発国の経済開発に使ってもらうべきじゃないかという議論はたくさんあったのでございます。前の国会、その前の国会から。私はこれは国民の世論だ。ただ世界観が違うからどうこうということで批評なさることは別でございますが、私は国民大多数の気持は低開発国の援助に使われることを希望しておられると思いまして、こういうふうな努力をしたわけです。
  62. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 午前中はこれにて終わります。午後は二時に再開することにいたします。  暫時休憩いたします。    午後一時十分休憩    ————————    午後二時三十八分開会
  63. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 委員会を再開いたします。  委員異動について報告いたします。  高橋衞君が辞任され、その補欠として温水三郎君が選任されました。   —————————————
  64. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 午前に続き、産業投資特別会計法の一部を改正する法律案を議題とし、本案に対する質疑を続行いたします。  御質疑のおありの方は順次御発言願います。
  65. 柴谷要

    ○柴谷要君 まず、御質問申し上げます前に、初めての質問でございますので、できるだけ重複を避けてお伺いをいたしたいと思います。大蔵委員会は初めてでありますので、お教えをいただくという気持で御答弁をいただきたいと、冒頭にお願いをいたします。  同僚議員の多くから数字的にいろいろ御質問があり、御解明をいただいてありますから、そういう点を省きまして、私は、援助費の受け取り方、これについて少しくお伺いをいたしたいと思います。今日までいろいろ議論されておりますから額についてはわかるのでありますけれども、一体どういう形で日本援助費を受け取って国民に配付をしたか、この経緯を少しお聞かせいただきたいと思います。
  66. 池田久直

    説明員池田久直君) 御説明申し上げます。援助物資の買付はワシントンの米国陸軍省購買契約官によって行なわれまして、援助物資が本邦に到着する前後に、司令部から貿易庁の名と責任におきまして第八軍の指示により物資を引き取るべき旨の引き取り指令書が発せられまして、それに基づきまして第八軍より引き取りが行なわれました。一九四六年十一月十九日付のスキャッピンによりまして、品物の検査が行なわれまして確認した数量をもって受領証を作製、司令部に提出いたした次第でございます。このレシートは輸入貨物入港月報として取りまとめ、翌々月の十五日までに司令部に提出されまして、これが見返資金の積み立ての基礎となったわけでございます。売却につきましては、統制価格は存在いたしておりましたので、その統制価格によりまして国民に売却された次第でございます。
  67. 柴谷要

    ○柴谷要君 ただいまの答弁は手続と経路についてですが、大体受け取ったのは日本の港へ船で着いて、そこで日本側に受け渡しがなされたと思うのです。その際に港へ向けて来た品物について日本側が受け取ったときの状況、これで何ぼの品物が来た、どういう品種のものが来たということがおわかりになっていると思うのです。その点をひとつおわかりでしたらお知らせを願いたい。
  68. 池田久直

    説明員池田久直君) 原則といたしまして日本港着のCIFで参っておりますけれども、中にはFOBで、あと日本船が運んだというような状況のものもございます。これらの品物が日本に着きました場合には、これに対しまして受領証を提出いたしまして引き取った、こういう次第でございます。
  69. 柴谷要

    ○柴谷要君 援助物資は今のような手続で日本に入ってき、かつ日本側でそれを受領をしたということで、数量等についても大体明らかになっておる、こういう御説明なんですが、そこで、いろいろ今日まで相当年限がたっておりますから、いろいろな憶測も報道されておると思いますけれども、この援助物資全体のものが日本に即日本国民に配給されたのではなくて、アメリカ軍の使用したものもあるであろうし、それからこれは言葉が悪いかもしれませんが、横流れが相当しておる、こういうことが言い伝えられておるのですね。日本に向けて発送されてきた援助物資が、日本に受け渡しになってから米軍に引き取られたものもあるし、それから横流しをされたものもある、こういうふうなことが実はいろいろな資料に書かれたのを見たのでありますが、そういう数量について的確に通産省は握っておられるものでしょうか。それをひとつお聞かせ願いたい。
  70. 池田久直

    説明員池田久直君) 御説明申し上げます。日本が引き取りを行ないまして、その後米軍に返還いたしました分につきましては、総額から控除いたしております。総額はガリオア物資だけについて申し上げますと、六十六万九千ドルでございます。それから、米軍払い下げ物資につきましては六十八万三千五百ドル程度でございます。それから、余剰放出物資につきましては千五百六十五万七千七百六十九ドル程度でございまして、ただいまの分が返還でございます。それから横流れの分につきましては、私存じておりません。
  71. 柴谷要

    ○柴谷要君 質問をするのが無理かと思います。横流れの数字を言えということは、これは条理にかなった質問でないと思いますが、そういうことがいろいろ出ておりましたので、そういう数字を的確に握っておったのですね。だから、交渉の場合には、アメリカ側の言われる数字よりも日本で受け取った数字のほうが少ない。で、こういうことに資料をお使いになられたかどうか、そういうことを質問したかったが、そういう質問は無理かと思いますので、次に移りたいと思います。  これは外務大臣にお尋ねしたほうが当を得ているかと思いますが、対日援助を優先的に債務と確認させることによって各国の対日賠償要求を抑制するという手段にとられたというようなことがある記事に載っていたが、そのような傾向が多少でも示されたことがあるのでございましょうか、その点を聞かせていただきたい。
  72. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) そういう対日援助支払い賠償とは全然別の問題であります。そういう賠償支払い抑制のために対日援助を利用するとか、そういうようなことはありませんでしたし、そういう意図も全然ございません。
  73. 柴谷要

    ○柴谷要君 つまり、日本が戦争に敗れ、アジアの諸国からたいへんな賠償要求がされている、こういうことを考えるというと、日本援助した国の立場から考えますというと、各国賠償について高額なものを日本に払わせることはかわいそうだ、アメリカにも相当の金を出さなければならない。で、援助の額等の問題については、日本に貸しておいたのだからわれわれのところに返せ、ガリオア・エロアの返済なども行なわなければならないし日本は負担が多いから、賠償については手心を加えてやれという気持があったように伝えられている部面があるが、ただいまの外務大臣お答えでは、絶対になかったというが、雑談の中か何かにそういうようなお話はありませんでしたでしょうか、ひとつお漏らしを願いたいと思います。
  74. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) そういうことはございませんでした。むしろ逆でございまして、賠償等がございますので、この処理を最終的にきめることにして、できるだけ今日まで遷延させてきたという事情であります。
  75. 柴谷要

    ○柴谷要君 先ほど総理大臣の御答弁を聞いておりましたのですが、総理は早くから債務と心得て、日本経済の復興を待ちながら、できるだけ早く解決したいという気持で今日までこられたという御説明がありました。まさしく私は総理としてはそういう心境になっておられたと思います。  さて、そのお気持が、当時の政権を握っておられました自民党の皆さん全部がそういう気持であったかというと、私はずいぶん開きがあったように思うのですが、たとえばわが党の加藤勘十氏が水田さんとお会いしたときに、国会議員のときには債務とは思っていなかったが、大蔵大臣になったら急に債務と言われたのでびっくりしたという話をされたということで、実はわが党の横路委員から追及されているわけですが、実際それほど政府の衝に当たっておられる方々は内密といいますか、扱いについては対外的な関係もあるので極秘にしておったのでありましょうか、またそれには何かいわくがあるのでございましょうか、これについてひとつお聞かせいただきたい。
  76. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 不確実なところですけれども、私は水田前大蔵大臣がどういうお考えであったかわかりませんが、私たちが終戦後、まあ私は昭和二十一年の——二十年の暮れに選挙に立候補して二十一年の選挙には落選をして、(笑声)二十二年の選挙に当選を初めてしたわけでありますが、その当時からずっと今日まで考えておりますと、ずっとまあ、平たい意味で、いろいろな先輩の言われたことや、占領軍当局とのつながりも全然個人的になかったわけではありませんが、そういう事情を、まあ非常に不確かなことでありまして国会の席で言うことはどうかと思いますが、全く、知り得たものを申せという御質問でありますから、ひとつ責任を追及するようなお考えにならないで聞いていただくとすれば、今考えられておるほど、日米日本と占領軍の間はそうその簡単なものではなかったように話は承っております。  それは、御承知のとおり、ポツダム宣言を受諾をした後、ミズーリ艦上において無条件降服をした、その後の極東委員会日本に対する将来の処理方針というものは、当時アプルーブせられておったわけであります。で、その第一の考え方としては、日本に対する賠償は放棄をしない、こういう前提があったようであります。で、賠償は放棄しないというだけではなく、日本を永久に被占領化すために、再び第三次世界大戦勃発の端緒を開かないような日本を作り上げるために、民主化、自由化、細分化とかというようないろいろな指令、メモランダムが発せられたわけでありますが、そのときに、将来戦力となり得るものは一切日本から排除するということで、各種重工業、当時の考え方では水力発電所の二分の一、火力発電所の三分の二を日本から撤去をするのだというような事実が流布されておったことは事実でございます。それから、重工業というものは一切日本には認めない、化学工業も認めないというようなことが、政府に正式なメモとして来たかどうかわかりませんが、当時占領軍の将兵がそういうことを日本人に言っておったことは事実であります。そういう意味で、重工業やその他日本の現在の経済力のもとになっておるような施設に対しては、有刺鉄線で囲まれて、賠償施設として撤去をすべき物件に対しては、最高司令官の命令がなくして立ち入ることを禁ず、こういうような札が張られておったことも事実でございます。そうして全面講和論、単独講和論というものがあったときに、向こうから示されたのかどうかわかりませんが、日本に対する賠償は免除をしない、ただしその優先債務として規定をするものがあったようであります。優先債務とは何か。占領中に占領国民の生活を守り、それから占領に伴い必要として投下をされる金、物その他に対する代金は賠償に優先する債務だというようなことを私たちは聞かされておったのでありますが、しかし、その後の情勢の変化、いわゆるジョージ・ケナンの外交方針の転換とか、その後に起こったいろいろの事情によって、賠償というようなことを言わなくなられましたが、外交界の大先輩等から伺ったことがございます。  でありますから、日本賠償の責めに任じないで戦後の再建ができ得るということは、これは非常に世界の大戦の歴史から考えると珍しいケースであるということ、それからまあそれに優先する債務というものに対しては、当然将来清算をして返済をせられるだろうというようなことは聞いてはおりますが、これはまあ不確かなものでありまして、私たち今政府立場として申し上げるとすれば、今国会に御審議を願っておるガリオア・エロア等を含む対米債務のみが戦敗国としての日本の保安安全に対して払う債務というふうに、現在そう信じておるわけでございます。
  77. 柴谷要

    ○柴谷要君 たいへん御丁寧にお教えいただいてありがとうございました。  で、次は、さき国会債務が確定をしたわけですけれども、それ以前の日本国民の感情の中には、ガリオア・エロアの問題が法的には債務とは思われない。しかし、国民はこれはやはり道義的にも、終戦直後のあの混乱のときに、非常に食糧難のときに切り抜けてもらわしたのだから、これは返さなけりゃならぬ、こういう気持が一部国民にもあると思う。そういう立場に立って政府は今日まで処理されてこられたのか、それとも法的に債務を心得てやってこられたのか、これをひとつお聞かせ願いたいのであります。
  78. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあいろいろな問題に対してはそれは現象論でありまして、まあ御承知の、私が先ほど申したように、日本の相当な施設が撤去されるというふうに考えてもおったでありましょうし、その後ジョージ・ケナンの外交方針の転換となり、またドレーパー使節団が日本にやってきて、日本の撤去すべきすべての財産に対する賠償解除の指示をいたしたことも御承知だとは思いますが、しかし、その問題とは別にして、対米債務については、何か援助をしてもらったから払わなきゃならないとか、また国民の一部は当然まあ相当苛酷な賠償取り立てをせられると思っておったものが、逆に援助をして今日の社会を築き得たということに対して、当然国民もいつの日にか払わなきゃならないからという考えに立って政府債務と心得たのかというようないろいろな問題はありますが、まあ現在の状況で申し上げれば、池田総理が二十四年当時見返資金特別会計の設置によって、当時からいつの日にか何らかの形で全額払うということに限ったことでありませんが、払わなければならない、債務であるというふうにお考えになられたことが明らかにせられておりますから、私たちもその線に沿って今国会に、この前の段階で国会で御決議をいただいたその日米間の協定のとおりの、協定に基づく債務を払うと、こういう考えでございます。
  79. 柴谷要

    ○柴谷要君 それでは、次は、変わった立場でお尋ねしたいと思うのですが、国民に配給をした、それはまあ値段は百ドルのものが大体まあ八十ドル見当で払い下げたのであるから、国民はたいへん利益をしているのである、こういうことをまあいつだかお聞きしたのでありますが、実際にまあ扱い上からいいますならば、百ドルのものを八十ドル見当で配給されたということは予算の面からもわかるのでありますけれども、ところが、そこまでは確かに仰せのとおりだと思いますけれども、配給された品物、これを見ますと、たいへん不良品が多かった。まあ言葉を悪くいいますならば、ニワトリに食べさせるようなものも来たのだと、こういうような話をしておりますけれども、ニワトリに食べさせるものでもまあ食べれば、当時の食糧事情からいえば食べて食べられないことはなかったけれども、実は食べられないものが来たんです。私はこれはじかに経験をしておる。それと同時に、実は日本の作った品物、戦利品が向こうの援助物資としてわれわれの手元に来たんです。こういうことがあったのですけれども、それらの内情をおわかりでございますか。おわかりでございましたら、ひとつお知らせを願いたいと思います。これは具体的事例を持っておりますから、お答えを私のほうからあとでいたしますけれども、そういうことがあったのかなかったのか。
  80. 池田久直

    説明員池田久直君) 御説明申し上げます。通産省におきまして総額を算定いたします際には、米国の遺留資料によったわけでございます。これにつきまして、その遺留資料のうち、貿易庁の係官が港に入りますときに検査に立ち会っておりまして、損傷というふうに判断されたもの、あるいはまた動植物の検疫によりまして不合格とされましたものにつきましては、その旨を受領証に記載されております。したがいまして、通産省の総額算定にあたりましては、それらのものを差し引きました残りのものが総額を構成しているということでございます。  それから、敗戦国の品物を持ってきたというふうなことに関しましては、そういうものがどれだけあったかということにつきましては、受領証に記載しておりませんのでわかりませんが、まあ当時物資が非常に不足していたという際でございまして、大部分のものがアメリカのほうから運ばれてきたというようなこともございますので、そういうものがかりにありましたにいたしましても、非常に少なかったのではないかというふうに思われますが、それらの確認は私たちのほうの遺留資料によりましては作業いたしかねる次第でございます。
  81. 柴谷要

    ○柴谷要君 日本の戦利品の配給が、今の言葉でいいますならば、ガリオア・エロアというような形でアメリカ援助品だということで配られた事例はあったのであります。これは実は私、国鉄なんですが、われわれ現場で、たび重なる空襲で復旧作業に懸命に努力していたのですが、さなかにはく靴がなかった。地下足袋がなかった。ほとんど素足に近い状態で毎日々々復旧作業に専念をしたのですが、これが終わりますというと、大きなアメリカの軍人さんがはかれた靴が配給になりました。このときは足に合わなくても非常に喜んで、まずまず地獄に仏という気持で受け取った。感謝をしておった。ところが、当時私は責任者の立場にあったので配給をしたのでありまするが、これが二足の中に一足ずつ日本の靴がまじってきた。そうして最後に支払いをいたしました場合には、援助品の値段でこの戦利品の一足分もきちっと取られているわけです。こういう形の配給が当時あった。これは波乱のさなかですから、たいへんな配慮があったと思いますけれども、そういうことが行なわれた。これはあたたかい気持でやっていただいたと思うのですが、それがやはり戦利品の一つではなかったかと今になって思い出すわけです。ですから、そういうのがやはり統計的にきちっと政府ではおわかりになっておられるかどうか、それをお尋ねしたわけですが、そういう点について別段詳しいことでなくてもおわかりでしたら教えていただこう、こういう気持でございましたが、今の答弁では正確でないようですから……。
  82. 池田久直

    説明員池田久直君) 御説明申し上げます。総額算定の際におきまして日本品というものはございませんでした。また、当時いろいろ配給されましたのは、日本軍が持っておりまして日本で配給されたものがございましたので、あるいはそれと混同されておるのかとも思われますけれども、その詳細は、私、配給のことよく存じておりませんのでわかりませんが、そういうものが、日本から配給したものがあるいはあったように聞き及んでおります。
  83. 柴谷要

    ○柴谷要君 いろいろ過去の援助物資の問題について数えあげてみますと、数限りなくいろいろな疑点があるわけでありますが、そういう情勢の中で、国民感情はやはりこれはいただいたものだという感情が強かったことだけは、これは今日の国会における事態とは違って、国民感情としては、やはりこれはいただいたものだ、こういう感じでいたということは、大蔵大臣、お認めいただけますか。
  84. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私も当時、道で演説をやったことを思い出したのですが、日本人の手よりも二尺ぐらい長いシャツや服が配給された記憶を持っております。その当時、敗戦国であって非常に苦しい状態でありましたから、二尺も長いものを何に使ったかというと、捨てたかというと、ぞうきんに使ったり、ふきんに使ったりしたような例もこの目で見てもおりますし、また私たちの村にもそういう事実があります。あの当時、国民の一部の中には確かに、戦争に負けた国は大体賠償を取られるというふうになっておるのに、世の中が変わると幾らかもらえるのかという話を、昭和二十二年、二十四年の選挙にお互いにそういうことをしゃべり合ったことを今でも覚えております。社会党に籍がございます小林進君などは、二十二年一月から私は一座を組んで(笑声)選挙区を回っておったというような中で、そういうことをまじめに取り上げて話をしておったこともあるわけでありますから、やはり国民の一部には確かにそういう考え方、これは米軍にまで払わなければならないかというような考え方を持たないで、ありがたくいただいたというような考えの人も確かにあったと思います。確かにあったと思いますが、その後、役場や町から代金が幾らか——非常に安い代金でありましたが、そういうものを徴収せられておりましたが、国民のすべてが、この金がどういうようなケースを通ってアメリカに入るのか、日本の国庫に収納されるのかというところまで考え及んだ人はないのではないかと思われるのであります。
  85. 柴谷要

    ○柴谷要君 これはお尋ねするのはどうかと思いましたけれども、私も終戦直後組合に入っておりまして、司令部あたりにときどき呼ばれまして、いろいろなことを聞かれたことを今思い出したのでありますが、マッカーサー元帥の日本占領行政報告というのがアメリカの議会に出された当時、こういうことを聞いている。それはもちろん日本に駐留している最高司令官ですから、状況を報告されるのは当然だと思うのです。その中に、日本援助を与えたことは非常に有効であったということを報告されておるのですが、日本援助をしたことが有効であるということは、アメリカにとって有効なことであり、私はそのときの元帥の心境は、日本国民は非常に勤勉で努力の国民だから間もなく立ち上がるだろう、日本援助してやることは戦勝国の責任だと、こういう気持で当時のマッカーサー元帥は考慮されて援助された。実際にマッカーサー元帥は、これを日本に貸し付けたのだ、貸したのだ、こういうことを一度でも言われたことがあるのでありましょうか。実は日本にこれは与えたいという気持でおったものと私たちは当時、錯覚かもしれませんが思っておったのですが、元帥の行政報告の中で、日本に貸し付けたのだ、しかしこの処置は非常に有効であった、こういう報告がなされているかどうか。これはアメリカのことでございますから、おわかりの範囲でひとつお教えいただきたい。
  86. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 昭和二十四年の二月に対日援助に対するマッカーサー司令官のアメリカ議会に対するメッセージが送られております。この中には、この代金は将来決済をするという趣旨のことが明らかに示されております。日本も将来大きくなる日本でありまして、ただでもらう、いわゆる慈善として受けることを日本自体も欲しておらない、こういうこともありました。それからまた、その後ドレーパー氏の米議会における証言等においても、これと同じ趣旨のことを何人かによって何回か繰り返されております。このような問題に直接関係があったかどうかわかりませんが、昭和二十四年が昭和二十六年か七年かわかりませんが、当時行なわれた総選挙においても、一つの命題として、黄変米事件がありました。その黄変米事件に対して、ニワトリのえさのようなものにはなるけれども、人間が食うにはなかなかまずいものも一部にあるのに、一体政府はもらったのか買ったのか、いつの日か払うことは不当であるということを焦点にして選挙を争ったこともありますから、いわゆるその当時のマッカーサー司令官及びドレーパー氏等が日本国民にその種のことを正式に発表したということは、私も記憶をいたしておりませんが、米議会においてそういうことが行なわれたり、また極東委員会から発しられた各種の文書また品物の受け取りという指令には、いずれ代金が決済せらるべきものであるということをはっきり日本政府に通達をされております。日本政府はそれに対してノーという返事を出しておりませんので、そういうことに対して国内に争いがあったのだと思いますが、いずれにしても、日本政府は態度を明らかにしてはおりませんけれども、占領軍司令官、アメリカ当局者、また極東委員会の皆さんにおいては何らかの形で将来決済すべきものであるということは日本政府に通達をせられております。
  87. 柴谷要

    ○柴谷要君 これは外務省のアメリカ局長さんにお尋ねすればいいと思うのでございますが、これはちょっと教えていただきたいと思います。ヘーグ陸戦法規というのがございますね、これをちょっとひとつ教えていただきたいと思います。
  88. 中川融

    政府委員(中川融君) ヘーグ陸戦法規というのは、今から五十数年前にできました戦時における要するに陸軍の行動を律する基準を国際条約できめたものでございます。その中にいろいろな規定がたくさんあるわけでございますが、ガリオアの関係で問題になってきておりますのは、四十三条というのがございまして、これは占領した場合、占領地においてどういうことをするかということを書いた条項の一つでございますが、占領者はその支障のない限り占領地の公共の生活を回復し確保することに努めるべきものである、こういうような規定でございます。したがって、これから占領地の公共の生活を回復をするということについてできるだけ努めろということでございますが、問題は、これが無償でやるべきものであるか、あるいはその経費はあとで被占領国から回収していいものであるかどうかという点が問題の焦点になったわけでございますが、これはヘーグの陸戦法規の解釈といたしましては、無償ということを意味しているものではないのだ、あとで占領費を取り立てるということはその後いろいろな戦争で幾多の事例があるわけでございます。したがって、無償ということは何もきめたことでない、有償であることも十分あり得るのだ、なお、これもでき得る限りということであって、絶対に義務をきめたものではない、こういうのが、大体これが一般に認められた解釈になっておるわけでございます。
  89. 柴谷要

    ○柴谷要君 私はその法規の適用によって有償とか無償とかまではお尋ねしたのではなくて、実は同じ占領でも、戦争が継続されておって、そうして占領したという時点と、それから日本のように、とにかく条約が成り立って、そうして駐留をしてきて占領したというような形、こういうものとの違いはあるのでしょうかないのでしょうか、これをひとつ。
  90. 中川融

    政府委員(中川融君) その点も非常に重要な点でございますが、これは五十数年前にできました条約でございますので、第一次大戦以前にできた条約でございます。したがって、それまでの戦争というものは、戦争が終わればせいぜい数カ月で平和条約ができて、したがって、占領というものも数カ月で終わってしまうという実情であったわけでありまして、したがって、ここにいう占領者の義務ということは、結局は戦争中の占領ということを原則として考えていたことは、これは間違いないようでございます。したがって、これが戦後十年に近く占領が続くという今次戦争のあとのいわば占領というものにそのまま当てはめ得るかどうか、これは非常に疑問があるのでございますが、その意味では相当古い規定であると見ざるを得ないと思います。
  91. 柴谷要

    ○柴谷要君 それでは、あと二問ばかりで終わりたいと思いますけれども、これは明確に私は記録に残しておきたいと思うので、お教えをいただきたいんですが、援助の初めは何年何月で、援助が終わったのは何年何月でございますか、間違いのないところをお聞かせいただきたいと思います。
  92. 安藤吉光

    政府委員(安藤吉光君) 一番最初に援助物資が参りましたのは、いわゆるプレ・ガリオアの民生安定計画、それに基づいて参りましたものでございまするが、一番最初に参りましたのは一九四六年、昭和二十一年の二月の十一日付の覚書で、この覚書では二百万ポンドの小麦粉が引き渡されておりますが、それが一番最初であります。その後QM、SIMとか、いろいろなものが来ておりますが、一番最後に船積みで日本が引き取ったのが一九五二年の二月の入港、これが一番最後でございます。
  93. 柴谷要

    ○柴谷要君 ありがとうございました。それでは、二十四年三月までの援助物資について、過日同僚議員の質問に答えられておりますが、私は数字を言われたのを記憶しているんですが、これは間違いないかどうか、それだけのお答えでけっこうでございます。輸出は六億五千七百万ドル、輸入が十七億四千七百万ドル、輸入の十七億四千七百万ドルの中で援助物資は十一億九千七百万ドル、商業ベースのものが五億四千三百万ドル、こうなっておりますが、これは間違いありませんか、数字に。
  94. 上林英男

    政府委員(上林英男君) ただいま仰せられましたのは、司令部が作りましたJES統計の数字でございます。当時はこの数字しかなかったわけでございますが、したがいまして、JES統計としてはそのとおりでございます。
  95. 柴谷要

    ○柴谷要君 今のJES統計のものは、これは間違いないわけでございますね。それを援助物資日本政府は八億四千五百万ドルと見込んだと言われておりますが、その数字も間違いございませんか。
  96. 稻益繁

    政府委員(稻益繁君) 見返り積み立て前でありますと八億四千五百万ドル、間違いございません。   —————————————
  97. 佐野廣

    委員長佐野廣君) この際、委員異動について報告いたします。  野溝勝君が辞任、その補欠として戸叶武君が選任されました。   —————————————
  98. 野々山一三

    野々山一三君 最初に、ちょっとこうこまかい質問ですけれども、質問を進めていくために前提を確認したいので、ちょっとおつき合いをいただきたいと思います。  琉球ですね、琉球は一体今日これは法律的には日本とどういう関係になるのかということをひとつ、これは次の質問に入るためにひとつ聞きたいと思うんですけれども、外務省当局。
  99. 中川融

    政府委員(中川融君) 琉球は日本の主権のもとにある日本の領土でございますが、平和条約第三条によりまして、現在アメリカの立法、司法、行政三権のもとにある地域でございます。したがって、現実に日本の施政権の及ばない地域でございます。
  100. 野々山一三

    野々山一三君 国民や領土は、日本国民であり日本の領土である、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  101. 中川融

    政府委員(中川融君) そのとおりに考えております。
  102. 野々山一三

    野々山一三君 けさほどの総理答弁並びに先般来の質疑の中で、この間特に大蔵大臣は私の質問に、これは一つの意見として払わぬで済むものならばそれも一つの考え方だけれども、これは日本という国が将来の外交的な地位なり、発言力なり、信用なりというものを固め、かつ伸ばしていくためには、この際このガリオア・エロアの四億九千万ドルというものを払うということが、これが外務大臣の言葉をもってすれば、大国としての立場である、こういうふうにおっしゃったわけですが、私がただいまお伺いしたら、琉球というのは日本の領土であり、その国民日本国民である、こういうことを条約局長は確認をされたわけですけれども、その琉球に対して、いわゆるあの戦争が終わってから、今日もなおアメリカ側の援助が行なわれているわけです。その援助の話を進めるために、ひとつここで整理しますけれども、琉球に送られて参りました援助というものは、いつから今まで続いたものの金額がどのくらいであるかということを、ひとつ正確にお答えいただきたいと思います。
  103. 安藤吉光

    政府委員(安藤吉光君) このガリオア資金から琉球に供与されました援助につきましては、私、数字を持っております。それは一九四七会計年度から一九五三会計年度まででございまして、総額が一億七千四百三十一万ドル余でございます。ただ、そのうち二千百万ドルぐらいがこれがいわゆる行政費でございまして、援助物資の総額は一億五千三百万ドル、そういうふうな数字でございます。
  104. 野々山一三

    野々山一三君 外務大臣がこの間使われた、大国日本という議論からさらに進めてお伺いしたいのですけれども、その大国日本が、今日日本国民の意思として沖繩を日本の行政権のもとに、主権のもとに返したいという考え方があるわけですね。この考え方については、これも確認する意味ですけれども、外務大臣、間違いないというふうに理解してよろしゅうございますか。
  105. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) この間私が申し上げたのは、必ずしも大国意識を持って申し上げたわけではないので、私はむしろこのガリオアを返せるような状態になったこと、そしてアメリカ日本を返せるという状態において評価したこと、そういうことは日本国の名誉のためにけっこうじゃないかと、これをお支払い申し上げていくことが、これからの国際関係におきまして私どもの自主性を高めるゆえんじゃないか、そういう意味のことを申し上げたので、決して大国意識を誇持したつもりはないのでございます。  それから、今の沖繩復帰の願望が全国民的なものであるということは仰せのとおりだと思います。
  106. 野々山一三

    野々山一三君 まあ私ども最も早い機会に沖繩の領土と行政権、主権が日本に復帰して、そしていわば本土と全く同じ状態に返ることを期待するのであります。そういう立場でさらにお伺いをいたしたいのでありますけれども、この日本に完全に復帰したという事態において、先ほどアメリカ局長から言われた一億五千三百万ドルというガリアオ・エロアの援助というものが、事実日本国民日本の領土、そして沖繩の治安なり秩序なり、そして福祉なりということの目的のためにときっとおっしゃる。そのために使われるのです。援助されるのです。沖繩が日本の主権のもとに返ってきたときに、この問題の債務という問題がまた再び起こりはしないかということを私は心配するのでありますけれども、そういう心配はないかどうか、あるいは日本の戦争が終わってから今日まで日本に投じられたといわれる十七億九千五百万ドルというものと性質が全く違うというふうに言われるのかどうか。この点は実は比較論で申し上げるのではなくて、将来の、ここで一ぺんけりがついたと思ったら、また出てきたということが起こったのでは、これはなかなか国民が納得しない筋合いのものになると思う。これはあくまで日本の領土であり、日本国民のことである。全く性質は同じだ。繰り返して申し上げませんけれども、今申し上げた二つの点についてはっきりとしたひとつ御回答をいただきたいのであります。
  107. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) そういう性質のアメリカの対沖繩援助は、私ども日本の負担になるとは考えておりませんが、まあ的確にその理由につきましては条約局長のほうから説明させます。
  108. 中川融

    政府委員(中川融君) 沖繩は、御承知のように、終戦直後の司令部の指令によりまして、日本政府の行政権からは分離させられたわけでございます。したがって、日本政府の行政権というものは終戦直後から沖繩には及んでいなかったのでございます。したがって、その後日本に対してはガリオア援助がずっと行なわれて、沖繩にもガリオア援助が別途米国の手で行なわれたわけでございますが、これは全く米国が直接自分の施政しておる地域である沖繩に対して出されたいわば経費でありまして、早くいえば、日本政府は全然関知しないところであるわけでございます。沖繩が将来日本に復帰した場合に、その際に沖繩現地との債権債務の処理ということは、これは当然行なわれるわけでありますが、したがって、その際財政的にどういうものを日本政府が引き受ける、あるいはどういうものをアメリカ政府が引き受けるというようなことを、いろいろそのときにきめるわけでございますが、今申しましたような事情にかんがみまして、日本政府が全然関知しないこの米国が沖繩に対して出した経費というものは、たとえそれによってこの利益を受けた者が日本国民であることは間違いないわけでございますが、これはあくまでも施政権者としてのアメリカが出した経費でございますので、これは特別の合意がそのときになされない限り、日本政府が引き受けるべき筋合いのものではない、かように考えるわけでございます。  したがって、その場合に特別の合意が、それじゃその場合に特別の合意によって日本が引き受けることになりはしないかという疑問も出てくるかと思いますが、これはやはり直接の施政権者が、自分の施政の一部として出した経費を、やはり日本が引き受けるべき筋合いではないのじゃないか。もしそういう理屈でいえば、かりに全部の行政費、アメリカの出した全部の行政費をやはり日本が引き受けなければならぬというようなことにも相なります。理屈からいって、どうもそうはならないのじゃないかというふうに考えるわけでございます。
  109. 野々山一三

    野々山一三君 沖繩は終戦直後から日本の行政権とは分離されておるから、これは本土日本のそれと沖繩のそれと違うとおっしゃる。それでは、そういった回答ですから、少しこれはいやらしい質問になりますけれども、お答えをいただきたい。一体日本が独立するまでの間は、これは国際法上日本の地位はどういう地位にあったのですか。戦闘間における占領という一つの説と、非戦闘間における占領という一つの議論があろうとも、先ほど大蔵大臣が柴谷さんの質問に答えられたように、ものを言おうと思っても言えない、そんななまやさしいものではなかった、そういういわゆる時代に、軍司令部が日本政府という、らしきものを通して、占領行為を円満に進めるためにやった行為なんです。したがって、この行為は、いうところの、国際法上にいう占領期間中における占領行為でしょう。そのことは、沖繩におけるそれと何ら私は変わるところはない。いかがです、外務大臣。これは外務大臣に答えてもらいたい。
  110. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 日本政府はその間といえども現存しておったわけでございまして、ただ、それが管理下に置かれておったというものだと思います。
  111. 野々山一三

    野々山一三君 沖繩が外交的に、いわゆる日本と沖繩の行政府というものとの間が、対外的な関係において画然として区分けされるようになったのは、私はやっぱり講和条約だと思います。その限りにおいては、やはり占領が二つの種類において沖繩と日本と終戦直後において行なわれたという事実関係はありとしても、国際法上、沖繩というものと日本というものが画然と国際的な地位に違いのできたのは、やっぱり講和条約だと思うんですね。その点の事実関係はいかがでしょう。
  112. 中川融

    政府委員(中川融君) 完全な条約上の意味におきましては、まさしく御指摘のとおりでございまして、平和条約によって初めて、はっきりと沖繩というものが日本の施政から条約上分離されたということになっているわけでございます。したがって、その意味におきましては、それまでの間はいわば広い意味における占領下に日本本土もありましたし、沖繩もあったわけでございます。これはその他の日本、従来の日本領土についても同じことが言えるわけでございまして、条約上からいえば、領土問題というものは平和条約で書くことによって初めてはっきり形がついたということは、お説のとおりでございます。
  113. 野々山一三

    野々山一三君 そこで、先ほどあなたがおっしゃった、日本と沖繩というものは行政権において違いがあるということをおっしゃったんですけれども、たとえば、これはその一例で、全く実情に合わないかもしれませんけれども、私の言おうとするところを知っていただきたいために例を申し上げるんですが、たとえば、ある、広島県なら広島県というものを英連邦軍がかりに管理しておったとしましょう。管理ということです。その他の地域をアメリカ軍が管理をしておったとしましょうか。しかし、その上に連合軍というものがおって管理をする。これと同じじゃありませんか。したがって、アメリカが終戦当時における状態として、軍事援助法によって日本——日本というもの、包括的な意味における日本というものに対して行なった援助というものは、私は変わらない、同じものである、こういう理解をするのであります。この理解は間違いでしょうか。理論的に、これは言葉のあやとして、行政権もというような抽象論ではこれは困るんです。法理論的に、ひとつぜひ、私もしろうとですから、先ほどみたいな木で鼻をくくったような答弁でなく、ひとつ親切に、外務大臣、お教えをいただきたい。
  114. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 沖繩の場合は、米軍が占領政策を遂行する便宜上、琉球政府というものを作ったわけです。で、沖繩県というものがそのまま続いておって、それを占領政策の手段として使ったわけじゃないと思います。日本の場合は、終戦を境に——終戦、戦争終結という事態が経過いたしましたけれども、日本政府というのはちゃんと権利義務が継承されておったわけでございますので、その間には明らかに差異があると私は思います。
  115. 野々山一三

    野々山一三君 これは言葉のあやで、少し水かけ論になりまして恐縮ですけれども、念のためにもう一回申し上げるんですが。占領軍が、あるいはアメリカが、日本という、包括的な日本を、沖繩県という名前を使って、客体をつかまえて、あるものをつかまえて日本の行政をしたというが、琉球政府という名前をつけていったかの違いだけのことなんです。日本というものに対して援助をするということが事の始まりである。このことについては、これは言葉のあやでごまかさぬで、事実としてお認めになったほうが正直だと思います。その点はいかがですか。
  116. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 大きなつかみ方としては、おっしゃるとおりだと思います。
  117. 野々山一三

    野々山一三君 大きいも小さいもないのですよ。つまり、先ほど私が申し上げたように、私の言おうとしている結論というのは、あなた方は承知の上で答えられているのだろうと思うけれども、わざわざそれを逃げちまうから、私は先ほどくぎを打って、講和条約発効までは私はこれは全く沖繩と言おうと、琉球政府と言おうと、日本国と言おうと、全く同じものを対象にしてアメリカ日本援助をしておったのでしょう。こういうことを聞くために申し上げたら、わざわざ、沖繩県と違って、琉球政府というものだとおっしゃったものだから、これはいやらしい質問だけれどもと、私もわざわざ断って聞かなければならない。そこのところはやはり私の言うとおりじゃないですか。先ほどおっしゃったお答えでは、講和条約発効までは同じものなんだと言われた。そのとおりです、名前はどう使われようと。間違いがあるのですか。
  118. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いや、だから、講和条約発効までは、先ほど条約局長お答えしたとおり、あなたのつかみ方として、私もそれはそのように思いますということを申し上げておるのです。
  119. 野々山一三

    野々山一三君 そこで、話を戻しますけれども、条約局長お話によりますと、そのようにして日本というもののうちを二つに区分けして、沖繩というものと日本というものに区分けをして、援助が行なわれたけれども、アメリカの沖繩というものを管理していくための必要上から出たものであり、沖繩に関する管理はそういうものであり、しかも琉球政府というもの——まああなたのほうの取ってくっつけた理屈ですがね、琉球政府というものを対象にしてやったのであるから、将来債務処理について話をしなければならぬことになると思われるけれども、日本が負担しなければならぬ筋合いのものではないと思われるというのです。私はここで、ないと言い切れるなら言い切っておいてもらいたいのです。私の気持からいえば、またもう一回思われるというような言葉が、時間とともに、思われておったのだけれども、いや、大国なんていう話で、また大国論を、今度大平さんが総理大臣になってそんなことを言われたのではたまったものじゃない。ひとつぜひ、これは絶対ない、こういうふうに言えるなら言い切ってもらいたい。
  120. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これは両院の予算委員会でも御答弁申し上げたわけでございますが、先ほど条約局長が申しましたとおり、特別の合意がない限りは日本の負担になるとは思われないということでございますが、で、特別の合意をやるつもりはございませんということで、先方からそういう申し出があった場合に受けるつもりがあるかどうかということについては、これはそういうことに合意するつもりはありませんということを私は申し上げたのであります。
  121. 野々山一三

    野々山一三君 それじゃ、念のために確認しておきたいのですけれども、向こうが、アメリカ側が沖繩に送られた援助に対して、債務性ということについては多少のまだ議論が残っているわけですね。残っているわけでしょう。先ほどのお答えでは、債務処理については当然行なわれなくちゃならぬというのですから、債務性の議論というものはあると考えざるを得ない。ないならば、先ほどの答弁を訂正してもらわなければいけませんね。今の答えならば、ここに書いてありますよ、債務処理は当然行なわれると思う、しかし日本が払わなければならない筋合いのものじゃないし、加えて特別の合意がない限りと、こういうふうに答えられたわけですから、もし向こう側がその債務性について日本政府に対して返還を求めるよりどころになるようなすべてのかかり合いのメモランダムでも何でもいい、一切ありませんというならば、それで僕は安心するわけです。そこのところをひとつ念を押しておきます。
  122. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほど条約局長が言われた処理をしなければいかぬという意味は、援助というばかりでなくて、施政権を日本に返す場合にいろいろな引き継ぎをやらなければいかぬ、そういう処理のことを言うたわけでございまして、沖繩に対するアメリカ援助につきましては、アメリカからこれは将来それを処理するのでございますというようなメモランダム一切、私どもに対する意思の表示は全然ございませんし、私どもはまた今後ないものと思います。もしかりにありましても、先ほど申し上げましたような筋合いから、私のほうはそれに同意するつもりはありません。
  123. 野々山一三

    野々山一三君 もう一ぺんこれは確認だけしておきます。メモも一切ないし、援助債務の処理については、そういう事態が起こっても、一切日本政府としては払わなければならぬ性質のものでもないし、払わない、こういう御確認をいただいたものと了解してよろしゅうございますね。
  124. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) さよう心得ております。
  125. 野々山一三

    野々山一三君 それでは、次に問題を進めますけれども、これはちょっとくどいようですけれども、この間私質問の途中で大臣がお帰りになった。きのうちょっと佐野君の質問に関連して聞きました例の造船の問題ですね。大蔵大臣、私がもう一回聞きたいのは、けさほど来の質問でも、それからきのうの大蔵大臣答弁でも、産投会計法から二千億有余のガリオアの債務を払うということになってくれば、多少の資金の窮屈さというものがあるけれども、しかし産業投資に対しては絶対私は心配をするようなことはいたしませんというような答弁をなさったと思います。それはそういうふうにもう一ぺん念のために、恐縮ですけれども確認をしておきたい、あなたの気持ですね。将来の政治態度というものを、ちょっと聞いておきたい。
  126. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 産業投資特別会計や、きのうの話では輸出入銀行とか、それから開発銀行の性格の問題でありますが、昭和三十八年からのどの程度の入用があるかということは、今にわかに即断できませんけれども、これまでの例から見て、これら機関の原資というものは相当拡大をせられる方向にあるということも容易にうなずけるわけでございます。そういう意味で、その産投の負担として対米債務を払うことは、そうして起こり得る現象とは政策的の問題でありますから全然別でありますということを明らかにいたしております。  そうしますと、法律その他によって規制を受けたり、また新しく要求をせられるこれら機関に対する原資の確保については自信があるかということでありますから、これは当然造船に対して国会がたな上げの議決をなさるとか、それからその他のいろいろな産業、電気とか私鉄とか、公益企業として法律上の規定等で特に開発銀行や産投が原資を必要とするような場合には、先ほど申し上げたとおり、必要があれば法律改正を行なって特殊の財源を求めることもありましょうし、また国会議決が得られれば、また財源も豊富であった場合には、一般会計からの繰り入れに重点を置く場合もあるでありましょうし、いろいろな問題を別にして原資の確保には努力をいたしますし、当然なすべきであるという私の考えは変わっておりません。
  127. 野々山一三

    野々山一三君 そこで、きのうの答弁で、今の気持はそれでわかりましたけれども、小さく小刻みに時間の関係上進めて参りますけれども、船の建造、それから機械の輸出というようなものを見てみますと、やっぱり船の場合には、さらに調べてみましたら、大手二十四社の船を建造し得る能力は六十八基といわれておりますが、これがこのまま参りますと、来年の三月までにみなでき上がっておりてしまうのであります。で、でき上がっておりてしまうというのは、なぜかというと、これも開発銀行からも答えられておったところでありますけれども、今年度二百億の建造融資を考える、ところが前年度百二十億切られてしまっておる、そこで金がないので、本年度回るのは八十億だ。したがって、次の十八次計画というものが、さらに五十万トンベースで、五十万総トン建造ベースで進むということになりますと、かりにそれが作業が早く進んでも、なおかつ来年の三月では大手二十四社の六十八基のうちで六十四基までが遊んでしまう。これはたいへんなことでして、それはなぜかというと、先ほど言ったように、本来ならば七十万総トンの建造計画で進んで参りたい。それくらいはいかなければ、その船台も遊んでしまうし、貿易外収支を改善する将来の展望の面からいっても適当ではない。おりるけれども、金がないからそういう工合になっているんだということですけれども、本年度のことは今さらやかましく言ってもいたし方がないのですが、来年度以降、答申の言っている筋、つまり七十万総トン建造というベースで融資対策というものを考えるというふうに進めていかなければ、非常な危機にさらされる。そこらの業者なり何なりの今日の不安というものは、この産投会計の規模に非常な期待を持っているだけに、もう一回あなたの答弁をいただきたい。
  128. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 海運造船対策に対して政府が非常な腰を入れて参ったことは御承知のとおりでありますし、また三十七年以降七十万総トンをどうしても造らなければ船台があくということにつきましては、答申を見ておりますから、この数字に対してはもっと検討もしなければならぬとは思いますが、いずれにしても、三十六年二十五万総トンというものを六十万総トン、七十万総トンにまで上げていいじゃないかと言ったのですが、当時の状況からいうと、外国船の受注状況もありますし、まあ一応三十七年度と合わせて暫定的に五十万総トンをきめようということで、期の半ばにおいて二十五万トン・プラス二十五万トン、倍にしたわけであります。そういう事情であり、政府もそういう造船海運に対しては協力をしようという考え方を持っておるわけです。日本の建造造船その他の問題いろいろありますけれども、日本が海運造船というものに重点を置かないために、いろいろな外国船を受注するということでもって、十年から十五年後は、世界各国の持ち船の総トン数の比較から見ますと、今よりもよりアンバランスになってしまって、海国日本いずこにありやということになるとたいへんでもありますので、貿易収支上の問題、また貿易外収支の問題も大きな問題でありまして、将来日本海運に対しては、やっぱり十億ドル程度の予想を立てなければならないというような考えで、真剣に政府も与党も検討した結果、五十万総トンに踏み切ったわけでありますから、そういう姿勢は変えておりません。  おりませんので、それから一年たった現在、日本の造船が外注はどのぐらいあるのか、それに対して日本がどういうふうに対応しなきゃいかぬのか、うしろ向きの政策はどうするのか、前向きの政策はどうするのかということは、今政府でも私どもでも検討いたして、相当強腰で進めておるのでありますから、あなたがお考えになっておるような方向で資金措置も行ない、各般の施策を行なうという考え方であります。
  129. 野々山一三

    野々山一三君 もう一つ、今外資船の建造のこともあるので、まあ国内船はいろいろ意見があるだろうけれども、今年は五十万総トンだ。先はお前の言うようにできるだけやっていこう、こういうのがあなたのお答えだと解しておきます。で、その外資船の状態がもう一つ、やはり産投会計法の本質から見て、私の心配を、資金規模においてふやさなければいけないという立場からの意見としてお伺いしたい。  この間もちょっと触れましたように、外資船を受注するという場合に、まあEEC諸国が二〇%即時、あとは十五年で八〇%を返済する。そうすると、やはり日本もそれに近いものでなければ——今の適正操業能力百八十万総トンというものをまかなっていくには、相当の英断をもって外資船の受注というものも考えなければ、今日の造船産業というものは非常な問題にぶつかるわけです。先ほど申し上げたように、三月に来るともう五%しか稼働しないことになるのでありますから。そこで、この間の質問に答えてあなたは、延べ払い制についても国際競争の今日の現状から見て相当思い切って検討を加えなきゃいかぬ、こういうことを言われたのでありますが、そういう意味で私は、もし違ったら答えてもらいたいんですけれども、EEC諸国やヨーロッパ各国の、機械、造船、電機企業などに特に輸出対策として考えている延べ払いの国際水準というものに日本も合わせる方向に早急に手を打つというふうな考え方にある、こうまあ私は理解したんですけれども、そういうふうに考えていいかどうか。それから、もしそうだとすれば、延べ払い制をそういうふうに国際ベースに合わせるということになればなるほど、一そう企業に対する融資ワクというものを考えざるを得ないことになる。つまり、私が申し上げたいのは、貿易自由化、九〇%を自由化する、そして貿易外収支なり貿易の収支をよくするというあなた方の熱情、当然国民気持というものを満たしていくためには、船のみならず、機械輸出に対してもやはり当然その処置が講じられなきゃならぬから、そういう意味資金ワクを広げる必要があるという意味から、具体策としてそういう気持のほどを伺いたいと思うのです。延べ払いというものについても、これは行政行為ですからね、あなた方が腹をきめられればやれる、あと資金ワクだけだ、こういうことになるのですから、そういう点を具体的にひとつお伺いしたい。
  130. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 造船に対しまして、先ほど申し上げましたとおり、五十万総トンというものを一応の目安として設定いたしましたが、船台があくような状態になっても、五十万総トンを今年中に全然トン数をふやさないんだというような考えではないんです。あの当時ではさしあたり五十万トンということで大方の了承を得た数字でございますので、これからの問題に対しては検討しなきゃならぬと思います。  それから、プラント類の輸出とかその他に対しては、開発銀行だけでなく、当然外注に対しては輸銀の資金も使って延べ払い方式をとられるわけでありますから、これらの問題に対しては、これは御承知のとおり、適切に、輸出振興ということを第一に掲げておるのでありますから、政府も、また民間も、輸銀当局も、英知をしぼりながら合理的な方法をとっておるわけであります。これに対しては、御承知のとおり、経済最高会議のメンバーもじききまりますし、また輸出最高会議のメンバーもございますし、また各国がいろいろな問題に対して落札をしておる事情もございますし、そういうものと——相手のある話でありますから基準だけ設けて、ばかの一つ覚えでその基準を守るために、ただ一隻も日本に落札をしないというようなことになれば、これはもう全く輸出を第一義として考えておるとはいえないことでありますので、これらの問題に対しては万遺憾ない措置を考えております。が、しかし、これらの延べ払いを何年にするか、金利をどうするかというような問題、これは各国とも不公表であるという、それは商道の一番いいところであって、こういうものを基準はこうでありますというふうに申し上げられる筋のものではありませんが、いずれにしても、一件ずつケース・バイ・ケースでスピーディにものを解決していくという方針をとっておることは御承知のとおりであります。
  131. 青木一男

    ○青木一男君 議事進行。今のお話傾聴しておりますが、ああいう具体的の問題を質問始めたら、あらゆる問題が関係してくるので、これはちょっと委員長において質問の範囲を制限して厳重にやるように……。
  132. 野々山一三

    野々山一三君 具体的な問題といって、あんた、資金ワクの問題との関係だから、例をとって質問するんですから、そう開き直らぬでもいいと思います。  これはもうわかりました。あなたは、実際に政府輸出振興は主義の一つだから、支障のないようにしましょうというのだから、それはまあその点はこれで終わっておきます。  この間、話が途中で切れておるもんですから、つなぎを少しお伺いしますけれども、今度の支払い交換公文の二つのうち、一つ、文化教育交流資金のほうに回すという二千五百万ドルというものは、これは円貨払いで、あなたはこの間、まあ外務大臣も同様に、この審議が終わって成立したならば、できるだけ日本気持を入れるように交渉をしたい、こういうことなんでありますけれども、これはまあ外交上のことですから、なかなか言えないかもしれないけれども、気持のほどをひとつ伺っておきたいのです。大蔵大臣はこの議会が終わって間もなくアメリカへお行きになるわけですね。これほど二回の国会にわたって議論をされて、しかも債務性の問題に及んでまで議論をされたこの四億九千万ドルというものが払われる。ぜひとも私は——協定としてはドル貨払いとすることになってしまうということになるのでありましょう。数の上であなた方そうおやりになるのでありましょうけれども、やはり産投会計に見返資金を引き継いだという歴史的なことはさることながら、ともあれ国内的にこの産投会計というものの持っておる目的、意義、性質というものからいたしまして、私はこの金が国内産業を潤すというような性質のものになりたいものだというのが、せめてものこれは日本国民気持と思うのです。それこそが産投会計法の持っている意味でもあり、役柄でもあるということは、あなた方も再々言われたことなんです。もう間もなくアメリカへお行きになるんで、円貨払いないしは物でというようなことについて、これほど国民世論というか、日本国内事情が燃えていることだけに、それを背景にして、そういう円貨払いないしは物で払うという、そういうことについて向こうと話し合う気持はないか。そこのところをぜひ、これは最後の段階ですから、もう一回伺いたい。
  133. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) あなたの御発言、またお気持も十分わかりますが、いろいろ申し上げておりますとおり、日本も用賀払いその他に対して十分折衝いたしたのでありますが、最後の状態において四億九千万ドル、十五年三十回払い、一回、二回のものの中から二千五百万ドルを日米文化交流に使う、残余のものに対してはドルで払うということをきめまして、まあ気持としてはわかるのですが、もう最後の段階で、何かこうしなければこの協定は通らないんだというようなことではなく、まあさっきから言われる大国意識を持つわけじゃありませんけれども、日米間の友好親書もまだ悠久なのでありますから、少なくともここまで私は参りましたら、ひとつあっさり御可決を願って、まあ議決を願わないうちにいろんなことをやるというような考えではなく、やはり手続をするものは手続を了して、それから今度ということになれば、どこの民族でも話はわかるんでしょうし、いろいろな問題も起きるのでありまして、今きょうここで上げていただきたいからということを前提で、あなたの言うとおりやっていきますというわけにはちょっと参らないと思いますので、その間の事情はひとつ御了察願って、この日米間で円満に合意に達した協定を御審議、御議決を賜わりたい、こう考えるわけであります。
  134. 野々山一三

    野々山一三君 まああり余った金でということでないことはわかっているんですけれども、しかも、あなたも再三認められておるように、金は産投会計において十分じゃない、狭まる、影響もあるだろうけれども、しかしまあこれくらいならば他に打ち手もあるだろうからというのがあなたの泣きどころです。それからまた、払う前にぐずぐず言わぬでというのが、浪花節的泣きどころです。この二つしかない。  まあそういういやらしい言い方は別問題といたしまして、たとえば先ほどの船にしても、あるいは繊維産業にしても、相当以上の操業短縮をやっているでしょう。もしこれが市場を確保し、かつこれを物で処理するということになったら、これらの今非常な操業短縮をやっているようなものに対しても潤うことになりますわね。だから、私は、そういう事実関係の面からも、国民感情の面からも、これはあなたに言わせると、それこそ泣きどころだと、今度僕の説を逆襲するかもしれませんけれども、しかしこれは大事な国策上の具体策であると私は思う。そういう意味で、これをひっさげてあなたがお行きになるのが大国のアメリカであっても恥ずかしいなということは絶対にないと思う。そういう意味で、もう少しやはりあなたも、せめて最後の、国民を納得させるというためにも、具体的な言い方をなさるということが私はあっていいじゃないかと思うのです。しかし、これはまあ議論ですから、もうこれ以上いたしません。  次に、これは最後の念押しみたいなものですけれども、十年間やりとりやられて参りました日韓会議が、今日非常に具体的な日程に上って参りました。この四億九千万ドルの金がアメリカの対外援助の中に入り、そうして東アジアの経済開発援助に使われるというので、東アジアの中には、当然、何べんも言われているように、日本も入っている。それだけに、私が先ほど言った、払った金の行方、使い方についてもものが言えないはずはないじゃないか。共同の目的のために相互理解を持って協議すると交換公文に書いてある。だから、その説というものは私は持っていっていい説だ、こういうふうに思うのですが、加えて、時期的に符合したのかもしれませんけれども、日韓会談が御承知のような事態なんです。この金は、アメリカに入った金がアメリカからどういうふうに出ていくかわからぬのですと言われればそれまでですけれども、何ら関係がないということに使われるのだ、こういう理解はいいですか。そこのところを少し聞いておきたい。
  135. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 御承知のように、現在は経済協力時代と申しますか、低開発国に対して先進国が協力してその経済水準を上げて参る動きが世界的になってきておるわけです。それの是非の議論はあれでございましょうけれども、世界の大勢がそうなってきて、現実に経済協力機構というものがいろいろ企画され、あるいは現存して働いているわけでございます。そこで、私ども日本もこの大勢の圏外にあってはいけないというので、すでにインド、パキスタン等につきましては、債権者団に入りまして、応分の協力をいたしておるわけでございます。私は、この経済協力問題というのはこれからの問題でございまして、今からどういう発展の態様を示すものかさだかにわかりませんけれども、二十世紀の後半における最大の問題の一つだと思います。  そういう角度から、今度の協定、交換公文で見られますように、低開発国に対する東アジアの国々に対する経済援助、開発援助というものも、そういう時代の潮流に乗った一つの構想だと思うわけでございます。このガリオア・エロア援助資金はそういう方向に充当されるようにアメリカも決意したということは、やはりこの潮流を意識してのことだと思うのでございます。しかし、アメリカといえども、私たちはしろうとだと思うのでございます。どういう国へどういうプロジェクトに投下したらいいかということにつきましては、十分自信はないだろうと思うのであります。それで、私どももそういう点よく検討いたしまして、日本としての言い分も、せっかく与えられた協議の機会で十分先方に申し上げていく機会があるわけでござ、いまするので、鋭意それは努力いたしたいと思います。そうしてそのことば、今先生が言われましたように、ガリオア・エロア援助支払い問題にからんで日本国民の願望というものがあるのである、それはやはり日本物資とか、あるいは頭脳とかというようなものが使われて、ネットの外貨の不足になるようなことのないようにもっと工夫すべきじゃないか。またそういう願望があることも私もよくわかるわけでございまして、そういう目的に沿う上におきましても、経済協力関係の展開、特に日本に近接した地域のそういう情勢の展開ということについては、日本人も非常に関心を持っておりまするし、また今そういう願望を具体化する上におきましても一つの手だてになると思うのでございまして、私どもはそういう角度から十分検討を遂げて、今先生のおっしゃるように実のあるものにするように最善の努力をいたしたいと思います。
  136. 野々山一三

    野々山一三君 実のあるものにしようという努力のほどはわかりますが、しかし、私の質問は、日韓会談との関係はまるきり関係がないのかということを最後にお伺いしたはずでありますが、その点はあと時間がたてばこれはわかることですから、絶対にないのか、あるのかということだけを聞いておけばいいのです。
  137. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 目下折衝を始めたばかりでございますが、進行中の日韓会談とは何ら関係ございません。ただ、私が本院の予算委員会で申し上げましたとおり、経済協力関係を展開していく上におきまして、韓国を見る世界の目から見ますると、近隣の日本の問題がまだ片づいていないというようなことは、経済協力関係を推し進める上において一つの障害になっているだろう。したがって、私どもは経済協力関係の展開に日本政府として応分の寄与をする場合に、こういうことは寄与しないとはこれは言えないと申し上げておるわけでございます。
  138. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 ちょっと関連をして……。
  139. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 鈴木委員、簡単に願います。
  140. 鈴木市藏

    ○鈴木市藏君 今、外務大臣、この野々山委員の切々たる願い、願望に対して答えるような言葉を言っておりますけれども、私はそういうのはまた一時のがれの言葉になるのじゃないかと思う。そういうことはおやめになったほうがいいと思います。はっきりとおきめになったこれを見ますと、協定を見ますと、アメリカのドルで払うのだということがはっきり書いてありますからね。ですから、合衆国の法貨によって支払うということをぴちっときめてあるし、これを物資で払うようにできるように実のあるように最善の努力をいたしましょうなどというようなことを今この段階で言うなどというようなことは、かえってごまかすことになるので、やはりやるならばぴちっとこのとおりにやるのだというふうにはっきりおっしゃったほうが、ごまかしがなくていいように思うのですよ。  関連ですから、ついでに(「それはおかしいよ」と呼ぶ者あり)委員長が許しておるから、二つだけ聞きたいのです……。
  141. 野々山一三

    野々山一三君 これは鈴木君と僕とは関連質問ということで、正反対なことを言われたのでは、文句言うのも無理ないので、これはまあひとつもとへ戻しましょう。ただ、私が気になる……。言葉じりで恐縮ですけれども、隣接国韓国が御承知のようにああいう事情にあることは、隣の日本としては好ましくない。したがって、この金が隣接国韓国に使われることによってそれが経済的に寄与することもありとすればというようなニュアンスの言葉を使われたのでありますけれども、そのままにしておきますと、やはり韓国に使われるのだというような印象をさらに持つのであります。したがって、私は、そうならまた聞かなければならぬので、これは関係がないのだというふうに言われるならすっぱり言われて、アメリカの対外援助法による低開発諸国に使われる金というものは、それはその目的で使われるなら、これは性質が変わってきますからね。しかし、これは答え方によっては、一つの国のことですから、ぐるっと回ってくるだけのことですから、そこのところが私は心配なので、私はこの日韓会談にたまたま時期を同じくして支払い協定が結ばれておること、そしてさらにこの間、まあこの議会の審議というものも相当関係があるだろうと思いますけれども、韓国の大使がアメリカ側の意向を聞いておりますね、この問題について聞いておるのです。それだけに、私はやはりこの四億九千万ドルというものが東アジアの低開発諸国への援助という名前で回って使われるという心配があるのです。そうすると、やはり外務委員会で議論になったり、他で議論になっておるように、問題が起こりますので、ここではこういうことはありませんというのならいうように、はっきり、わかったようなわからぬような答えでなくて、念を押したいのであります。いかがでしょう。
  142. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 今交渉中の日韓交渉と全然関係がございません。私が申し上げたのは、日韓交渉自体は、客観的に見まして、経済協力時代において隣接の国がまだ国交が開かれずそういう状態でおるということは、経済協力全体を進める上において一つの陥没地帯があるわけでございますから、これを埋めてかかるということは、全体の経済協力を進める上において役に立つだろう。つまり、日韓交渉自体が、この援助資金の使い方がどうだということは、それは全然関係ないということを私は申し上げておるわけであります。
  143. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 少しお尋ねしたいのです。まず第一は、アメリカ関係は、対米関係は、講和条約等があり、それで借款でいえばガリオア関係だけで終わってしまう、いろんなことが終わってしまう形になるのですが、在米資産の問題について、この前、アメリカ議会にしばしば出されておるのだが、日独の凍結資産の問題がしばしば出されておる。しかし、これは講和条約では放棄したものである。しかし、返ってくるということになると、これはその個人に返るのか、国の財産になるのか、どういうことになりますか。
  144. 安藤吉光

    政府委員(安藤吉光君) 現在アメリカの敵産管理局で発表いたしております現在の在米の旧日本資産は三千五百万ドルでございます。それで、これはこの前ちょっと簡単に申し上げましたけれども、いろいろな法案が出ておるわけでございます。ほとんど毎年度出まして、ある場合には個人の分だけ返そうじゃないかという法案が出たこともございます。そういったものが通れば、個人の分だけ返るわけであります。商社の分はどうするかという問題もあるわけですが、また年度々々によっていつも案が出ておりますが、これは残念ながら今まで実っておりませんが、従来までの経緯をずっとたどってみますと、個人の財産は返してやろうじゃないかという空気が議員の間に強いようであります。
  145. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 僕は、返った場合のことを、仮定の問題だから云々とおっしゃるかもしれませんけれども、もし返ったとすると、片一方のほうでは、中国は別ですよ、韓国やほかのととろは、大体講和条約を締結したところは放棄しておるのです。国と個人の関係国内でいえば国民政府関係ですから、一応の問題が解決したような場合、いろいろな問題がございますけれども、そこで問題はアメリカからそういう個人のものが返ってくる場合は、国内問題としては、対外的に日本アメリカの問題は返るか返らぬか、その場合に国内に来たときに、一体それは個人のものになるのか国のものになるのか、そこをわからないから尋ねておるわけです。
  146. 中川融

    政府委員(中川融君) これはただいまアメリカ局長答弁いたしましたように、アメリカ国内法がどういう規定をするかにもかかるわけでございますが、たとえば南米諸国で実は日本財産が返ったところがあるわけでございます。これはもとの権利者に返ったということでございまして、日本政府に返るのではなくてもとの権利者に返ると、こういう例でございますので、おそらくアメリカ日本財産が返る場合も、そういう形で返るのじゃないかと、かように想像いたします。
  147. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 たとえばビルマであるとか、ほかにあるところの在外資産を国民は放棄させられておりますがね、講和条約を結ぶことによって。国内でいえば、国民政府の間でいえば非常に不満ですけれども、いろいろな問題が出てきておるわけです。それで今度アメリカ国内法に基づいて日本の個人に返るということになると、そこに問題が出てくると思う。ですから、簡単に、アメリカ国内法できめられることであるから日本の個人に返るんだと、日本の商社に返るんだと、こういう形だけで問題を解決されれば、不公平というのがたくさん出てくるわけです。ですから、この点を明確にしていただきたいために私はお尋ねしているわけです。意見はたくさんございますよ、私は。だけれども、国の方針というものはどうなるのだということをお尋ねしておる。したがって、条約問題ではなくて、国内問題としてどうなるか。しかし、それには条約の問題でいえばどうなるかということをまず先に明らかにしておかなくちゃなりませんから、先ほど中川さんの答弁されたように、それは個人に返るんだ、国じゃなくて個人へ返るんだというふうに条約上はなる点だけは明確になりました。  そうしますと、国内問題としてはどうなるかということだけは、明確にひとつしておいていただきたいと思います。
  148. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国内問題でありますから、私の所管だそうでありますが、私の今考えておりますのは講和条約で個人財産及びその他の法人、国の財産等を放棄をしたことは、これは外交上の問題として放棄をいたしたわけであります。でありますから、国の権限で放棄を決定をしたために、日本人の個人財産も含まれている、その当該者に対して国がどうするかという問題は残ります。残りますから、在外財産の問題に対しては一応五百億という前に処理方針をきめて支払いを行なっておるわけであります。この問題と混淆して、在米財産が返ってきた場合、一部の人のものだけが返ってきて、他の地域にあるものは返ってこないのだから、端的に個人の所有になるということは問題が大きいと、こう言われますが、問題は大きく影響するところはありますが、アメリカにあるものが法律によって解除をせられる、返還をせられるという場合、当然もとの所有者に対して変換をせられる、こういう法律が通ると思います。その意味では国内において日本人同士の間には問題はあるとしても、もとの所有者に返還をする、こういう解除の法律が通過した場合、当然私人の帰属に帰するものだ、こういうふうに考えます。
  149. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は、ヘーグの陸戦協定とヘーグの武器協定と講和条約のいろいろなことを、ここで議論しようとは考えていない。ただ、日本の在外資産が凍結されたものが返ってくる、これは当然なことだと思うのですよ。ただ、講和条約であんなむちゃなことを、日本が遠慮して放棄したというようなことですから、返ってきたら個人に渡すのだ、政府としては大体個人に渡すと、こういう方針であるということだけは、今の御答弁でいくと確認されたことになるが、よろしゅうございますか。
  150. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはもう法律の通例の解釈でありまして、アメリカ議会でもって特別法が通る場合には、もとの所有者に返すということであって、私人のものは私人に返る、それから国のものは国に返る、法人等のものは法人に返るといいますが、その後法人等でなくなっておるような法人に対しては、国と国との間でだれがこれの帰属権を持つかということをあらためて特別に協議をせられるわけでありますが、すなおな考え方でいって、法律上当然私人のものは私人に返る、こういうふうに考えます。
  151. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 よく西独の例をお聞きいたしましたが、そこで、西独関係では、とやかくいろいろなことは抜きにしまして、少なくともドルが足らなくなるのじゃないか。そこで返済をする場合に、アデナウアーは相当貿易の面について条件を出して、少なくとも返済のできるようなことについてがんばって、それを条約の中に入れようというのを入れることができなくて、会議録に、また報告書の中に載せるところまでがんばった。そこで、日本は大矢委員や各委員からも対米関係の貿易の見通しの誤りをいろいろ言われてきたわけです。それに対して強気一点張りで、大体返済できるんだ、返済できるんだと、こういう話ばかりだったのですね。そこで、一体ドイツですらそれをがんばってきたのですから、日本国としてはもしこれが——向こうは三十五年なんです。日本は十五年です。二分五厘、同じことです。ただ、向こうは早く金がたまったから返したというだけの話なんです。日本の国のほうがドイツよりも短くなっているわけですね、うんと。そこで、今後ドル不足と申しましょうか、いろいろなことが出てくるだろうと思うのです。そういう場合でもぽんぽんと返していくのか、借金をしてでも返していこうとしておるのか。そうではなくて、そういうような場合には、これを繰り延べしていくのか、あるいは貿易の問題については特別に考慮を払ってくれるようというようなことが何かの上において取りつけてあるものかどうかという点をお聞きしたいと思います。
  152. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は専門家でありませんし、あまりつまびらかにいたしておりませんが、ドイツはこういうことに対していろいろ責任と権利を明らかに区分をしてやっているようです。十億ドルというものに対して八億ドルを繰り上げて払って、あとの二億ドルを払わないということです。一億ドルはなぜ払わないのだろうかと考えると、ぼつぼつアメリカの議会等で問題になっているドイツ人の在米財産が約二億、ドル余あるのでありますから、これが返る場合にはというようなことが流布されております。事実そういう交渉が行なわれているかどうかわかりませんが、いずれにしても、われわれが考えると、ドイツ人らしいなというようなものの考え方ができるように、ちゃんと差っ引いて、あとのものは早く返してしまう、こういうことをやっておりますが、日本は対米債務支払いが明確に決定しないうちから、もう何年か前から米国議会においては、ドイツの敵産と同じような状態日本人のものもひとつ返そうというような機運が出て、法律も何回も出ておるという問題でありますから、われわれがこの問題に対して、協定だけが通って産投だけが通らないような現在において、こういうものを当然差っ引いてやればいいじゃないかというようなことを言うことはどうかとは思いますが、西ドイツがもうやっておることでありますし、また日本の問題に対しても、こちら側が言うよりも、向こうが何年も前から好意的な処置をとってくれているのですから、これらの問題は事態の推移を見ながら、両国間の友好親善の状態において円満に解決せらるべきだ、こういうふうに今考えておるわけであります。
  153. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 この問題は大蔵大臣から実は答弁をいただくのじゃなくて、外務大臣のほうからお答えがあると思ったのですが。それで、ドイツは実は協定を結ぶ前に、そういう交渉をやって取りつけておるわけです。ですから、日本もそういう交渉である程度の、何といいますか、記録に残すとか、付属文書にそういう取りつけをするというようなことが行なわれてしかるべきじゃないでしょうか。これは僕は証拠があって言っているわけじゃない。ただ、ここに出されている資料として、会議録の報告書の中にそういう言葉がドイツ関係では残っているということが出ておる。したがって、日本のそういうたとえば貿易関係の問題についても十分配慮するというようなことを、あるいはドル不足からこれを繰り延べするのだというようなことをも全然取りつけてなくて、ただ単に、はい、ようしゅうございます、これだけ払います、——これじゃドイツと比べてみて人がよ過ぎる。もう一つ、田中大蔵大臣のように、対米取引で何とかなるだろう、そういう交渉の仕方もあると思いますが、外交関係をもう少しシビヤーにやるのが常識だと思う。常道だと思う。したがって、外交折衝でそういうことに当たられておるのかどうか。ないというならない、ないというならどうして当たらないのか、その辺のところを御説明願いたい。
  154. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これは協定でおわかりのように、第二条で「両政府は、不利な経済事情又は他の理由により、利子若しくは元金の賦払を延期し若しくはその延期を取りきめ、又は利子若しくは元金の支払に関するこの協定のいずれかの規定を変更し若しくはその変更を取りきめることが両政府の共通の利益であることをいつでも決定するときは、書面による相互の合意により、これらの延期又は変更を取りきめることができる。」ということになっておりまして、今御指摘の貿易関係が非常にこうアドバースになって参ったというような場合、日本が非常な国際収支のピンチに陥るとかという不利な経済事情の場合には、これをどう処理するかの道は開いておるわけでございますが、私どもといたしましては、政府側がたびたび御答弁申し上げておりますように、十五年の賦払いということにつきましては、今日わが国の国際収支、能力から申しましても過大ではないと見ておる。したがって、約束どおり払っていくことを期待いたしております。が、しかし、万一そういうような事情が起こった場合におきましては、変更という道も開いてございます。
  155. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 それから、この金をどう使うかという問題については、野々山委員等からしばしば話はされてきておるわけです。そして政府答弁も、低開発と日米共同の利益に使うのだ、こういうことははっきりしているのですが、植村構想等も出ておるわけですね。これをある程度軍事に回したらどうだというような構想があり、それに対して反対という意見政府部内に強いということも新聞等を通してわれわれも承知しておるのです。そこで、これを絶対に軍事関係に使わないのだということも明確に約束をされておるものか、国会用の答弁だけなのか、そこはどうなんでしょうか。
  156. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) アメリカの対外援助法につきましては、だんだん御説明申し上げたとおり、軍事援助をしないということを先方ですでにきめて、六百十八条ができておるわけでございまして、そのワク内の操作になります。
  157. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 次にお尋ねしたいのは、援助輸入総額の中で、しばしば十七億というような数字を聞いております。援助の十一億ということも聞いておりますが、一体商業ベースの五億四千二百九十四万ドルとか、あるいはこれは職人か輸出か、六億というような話を聞いておりますが、一体、私がお尋ねしたいのは、援助の十一億九千万ドルが通産省が調べていろいろとやってみたら八億四千五百万ドルになったという数字が発表になっておる。ところが、輸出の六億五千四百九十九万ドルあるいは五億四千二百九十四万ドルは、JES統計で発表になっておりますけれども、通産省はこれをお当たりになったことがありますか。あったら数字を発表していただきたい。
  158. 池田久直

    説明員池田久直君) お答えいたします。十一億ドルとおっしゃられました数字は、これはJES統計でございまして、商業物資につきましては、通産省といたしましては、援助物資、これが受領したことが確実なもののみを算定いたしまして、それで対米交渉に使うために算定いたしております。商業物資につきましては、援助と直接の関係がございませんので、遺留資料につきましては集計はいたしておりません。それで、ただJES統計にあります数字によりまして、輸出輸入というような、大体の当時の傾向というものを知るにとどめております。
  159. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、全然調べずに、ただ向こうのJES統計を引用しただけの話で、何もやっていないわけですね、今のお答えを聞いておると。
  160. 池田久直

    説明員池田久直君) お答えいたします。援助関係のあります商業物資の遺留資料につきましては、これは精密に当たっております。ただ、これを集計——それから品目別、そういう集計はJES統計をもちまして参考といたした次第でございます。
  161. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 では、こういうことをお聞きしたいと思いますが、私のほうでほんとうに聞きたいのは、輸入補給金あるいは輸出補給金にどれだけ使ったかということをお聞きしたいわけです。これはわかりますか。それはもちろん二十四年三月までの話です。
  162. 池田久直

    説明員池田久直君) お答えいたします。当時為替レートがございませんので、輸入補給金としてどれだけのものが使われたか、また輸出補給金にどれだけのものが使われたか、そういうことにつきましては、作業といたしまして一応いたしてはおりますけれども、これは非常に、申し上げるほどのものじゃございませんので、正確にお答えしかねる次第でございます。
  163. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 僕が指摘しておるのは、どうも、いろいろな援助があったんだ、しかし確かに輸入した物資が、日本のマル公価格よりも高く売ったんだから、そういう輸入補給金を使われたんだということは了承しているんで、また逆にいえば、輸出補給金を使われたんだ。だけれども、どうもあなたのような数字では、いろいろごまかしておるような気がしてしようがない。複数レート云々ということでありますが、十五円から三百六十円までの間がありますから、そういう困難だということはわかるけれども、しかし、いろいろと当たっておみえになるんだから、そこで日本は一体、もらったんだけれども、どうも輸入補給金に持っていかれたという疑いがあるんです。僕らそういうことを疑うわけです。そうじゃないんだと、やはり半々に使われたんだと、そうではなくてもっと輸入補給金のほうに多いんだというようなことになれば、ある程度納得できるわけですが、その間の事情説明がつくと思う。そういう疑いがあるわけですが、政府もやっぱりそういう点については疑いを持って、国が一体損したのか得したのかということは、当然やるのがあたりまえだと思う。あなた、発表する数字にならぬとかなんとかいうことは、あなたが内緒で秘密にしておくものじゃないんじゃないですか。
  164. 池田久直

    説明員池田久直君) お答えいたします。ただ、この数字につきましては、いろいろ当時の購買力平価というようなものを考えまして、そういうことをいろいろやったわけでございますが、大部分が輸入補給金として使われているというような形のものになっております。それで、輸出物資につきましては、当時円高のものと、それから円安のものとがございまして、それで円高の物資、たとえて申しますと三百六十円より、二百二十円とか、そういうような物資、これは繊維が非常に多ございましたので、やや輸出につきまして繊維関係物資は非常に数量が多かった次第でございますから、そういう面からある程度相殺されておりまして、輸入物資に大部分が使われたというような結論になっておりますが、ただこれは推定でございますので……。
  165. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  166. 佐野廣

    委員長佐野廣君) 速記をつけて。  暫時休憩いたします。    午後四時四十二分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕