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1962-11-12 第41回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年十一月十二日(月曜日)    午前十時十五分開会   —————————————   委員の異動  十月十九日   辞任      補欠選任    徳永 正利君  山本  杉君  十月二十二日   辞任      補欠選任    亀田 得治君  藤原 道子君  十一月九日   辞任      補欠選任    小柳  勇君  相澤 重明君  十一月十二日   辞任      補欠選任    相澤 重明君  小柳  勇君    小平 芳平君  鈴木 一弘君   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     加瀬  完君    理事            高野 一夫君            藤田藤太郎君    委員            高橋進太郎君            丸茂 重貞君            山下 春江君            小柳  勇君            杉山善太郎君            柳岡 秋夫君            鈴木 一弘君            村尾 重雄君            林   塩君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    法務省刑事局青    少年課長   荻野かく一郎君    大蔵省関税局業    務課長     前川 憲一君    厚生省薬務局長 牛丸 義留君   参考人    総武病院院長  青木 義治君    麻薬相談員   本多 末信君            安藤 晋策君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○社会保障制度に関する調査  (麻薬対策に関する件)  (薬務行政に関する件)   —————————————
  2. 加瀬完

    委員長加瀬完君) ただいまより開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  麻薬対策に関する件調査のため、本日、総武病院院長青木義治君、麻薬相談員本多末信君、それに安藤晋策君を参考人として御出席願い、御意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  なお、議長に提出すべき要求書につきましては、委員長に御一任願います。   —————————————
  4. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 社会保障制度に関する調査のうち、麻薬対策に関する件を議題といたします。  本日は、御多忙中、かつ、御遠路のところ、参考人方々の御出席をわずらわし、本件に関する忌憚のない御意見を拝聴いたしまして、本委員会調査参考にいたしたいと存じている次第でございます。審議都合上、参考人の方の御発言は、お一人につき約二十分以内でお願いをいたし、参考人方々の御意見の陳述がすべて終了した後に、これに対する委員の質疑を行ないたいと存じますから、この点あらかじめ御了承をお願いいたします。  なお、本日は参考人として菅原通済君の御出席お願いしたいと存じておりましたが、御都合で本委員会への出席ができなくなりましたので、そのかわりに、お手元に配付してありますよう意見書が提出されております。  それでは、これより順次参考人の方方の御意見を聴取いたします。  まず、青木参考人からお願いをいたします。
  5. 青木義治

    参考人青木義治君) 私総武病院青木でございます。私はこの十年以来、いろいろな、たとえば覚醒剤、あるいは睡眠麻酔剤、あるいは睡眠薬アルコールとか、それから麻薬、そういう中毒を扱っておりまして、ふだん私が感じていることを二、三申し上げまして、何か参考になれば非常に幸いと思うわけでございます。  大体その中毒は、終戦後、初めこの覚醒剤から睡眠麻痺薬とか、あるいは睡眠薬とか、だんだん移行して参りましたのです。そうしてその中にアルコールが入ってみたり、あるいは麻薬が入ってみたりしている。今までは覚醒剤がずっと日本中に広がったときに覚醒剤対策を多くの方にやっていただいて、一時非常によくなったのですが、しかし、そういう中毒者がまた次のチクロパンとか、あるいはバラミンとか、そういうほかの薬に入ってしまう。そういう一つのものを退治すると、また次のものに入ってしまう、そういう傾向多分にあったわけでございます。今問題になっております麻薬もその一つに私すぎないよう感じておるわけなんです。ですから、おそらく麻薬を十分押えますと、またほかのものに移行するんじゃないか、そういう懸念は私多分感じている。そういう点もやはり十分御配慮願いたいというよう感じが第一番にしているのであります。  大体、麻薬といいましても、医者が使っている医薬品としての麻薬と、それから今密輸で入ってきますヘロインと二種類があります。医者が使っているこのモルヒネ類中毒と、それからヘロイン、つまり密輸で入ってくるヘロイン中毒とは、だいぶ患者病気になってくるなり方とか、それから病状だとか、あるいはそれをなおす場合、あるいは家庭環境とか、いろいろな場合に差があるかと思います。そういう医薬品麻薬で起こってくる中毒と、それからそのヘロイン中毒とを同じに考えていいか悪いかということは、やはり一応私は考えていただきたいと思っております。それを今までややもしますと、単に麻薬中毒とはこういうものだ、つまりヘロイン一点張りにお考えにならないようにして、医薬品中毒の場合とヘロイン中毒とは、やはり分けて考えていただくべきものじゃないか、私はそのほうが適当じゃないかというよう感じがしております。一般麻薬中毒は、少し打ちますと、またすぐ打ちたくなる。そうして薬が切れますと、いわゆる禁断症状といいまして、非常に苦しみもがくことがあるわけなんです。で、従来禁断症状をあまり強く考えすぎたきらいが多分にありはしないか。つまり禁断症状というものは、いわゆる植物神経のあらしと申しまして、一過性に起こる体のバランスの一つのくずれなんですから、ある時期を通ればすぐになおってしまう。私が知っている患者なんかでも、相当禁断症状の激しく出そうな患者でも、自分ががまんしますと出さずに済んでしまう、そういうことができるということもあり得るわけなんです。ですから、よく警察なんかにつかまったヘロイン中毒者が、非常に大げさな表現をする場合があります。それはやはりそういう環境において自分ペイを打っているのだというよう一つのみえのところも多少あるような気がします。ですから、一般の方が大騒ぎされるほど禁断症状というものはそう自分で手加減ができるものだということも知っていただく必要が私あるような気がいたします。で、禁断症状をわれわれがなおす場合に、いわゆるずっと持続睡眠療法としてズルフォナールなど薬物を大量に与えまして、その上に現在はトランキライザーですか、精神安定剤を相当飲ませまして、二、三週間寝かしてしまいます。そうしますと、大体その間にその苦しみの禁断症状はとれます。ですから、禁断症状をとるということは、そうむずかしいことではないと私思います。ですから、これはもう一般のお医者さんでもできないことはないよう感じがします。しかし、一番私たちが困っていることは、禁断症状がとれてからあとです。とれますと、もうおれはなおったんだ、だから治療を受ける必要がないというように簡単に考えがちなんです。そういうところが非常にむずかしいのです。で、そう長年打っているそういう麻薬が、禁断症状がとれたからといって、頭の中からとか、あるいは肝臓とか、あるいは体全体の臓器からすぐ麻薬が出てしまうというわけじゃないわけなんで、その影響が多分に残っているわけですが、それが案外患者自身が苦しみませんものですから気がつかない。禁断症状さえとれればいいのだというように軽く考えられがちであります。世間の方々もそういうよう傾向多分にある。そういうところが中毒をなおす上に非常にむずかしい点だと私は思います。で、禁断症状をとってから、やはりああいう気持がよくなるというものは、やはり何かの折にやってみたくなるのです。それが非常にむずかしいわけなんです。で、自分がもう薬を打つちゃいけないと心に思っておっても、やはり何かの機会に、たとえば不満があるとか、不愉快があるとか、あるいは友人が来て誘われますと、ふっとすぐ賛成して、一本ぐらいいいだろうということでずっといきますと、一本打ったら、またずるずると打ってしまう。そういう何かの機会にまた打ってしまう傾向がある。そういう薬のくせとか、いわゆる嗜癖と申しまして、そのくせが非常にむずかしい。そのくせをどうやってなおすかということに中毒治療の面ではヤマがある。そういうくせをなおすということと、それから、そういう中毒者は大体中毒になる前から普通の仕事をしてないので、あるいは多少ともゆがんだ社会、あるいは遊び人だとかやくざだとか、ああいうグルーブに入りがちな傾向がある。そういう仲間の片一方のものが打てば自分も打ってしまう。そういう環境的な条件も悪いし、そういうグループに入りがちな人間が、そしてまた打ちますから、よけい人格がくずれてくる。そういう点でもって、この病気をなおす場合には、その中毒者の人柄をなおさなくちゃいかぬ。いわゆるまともな仕事をして、まともな生活をするというような、着実な生活ができるようにするということが治療の中心だと私は思います。そういう点で非常に中毒者治療がむずかしいわけなんです。そういう期間が、相当私なんかが考えましても、まあ少なくとも六カ月とか、あるいは一年以上かかると思うのです。そういう期間が非常にむずかしいし、そういう治療施設なり、そういう態勢を整えるということが非常に問題になってくるわけです。しかし、実際今まで私たち病院で取り扱った患者などは、もうお金に少しでも余裕があれば、まさか病院に来るなどという気持は起こらないのです。自分はもうペイを打って中毒になった、だから多少何とかなおしたいという気持はあるわけなんです。なおしたい気持はあるのだけれども、やはりここに何がしかの金があると、その金で病院に行くよりもペイを打ったほうがいいということで、そっちへいってしまいます。それでなかなか自分お金で入ってくるという患者は非常に少ないわけなんであります。しかし、私ども病院では、今まで十年間大体八八%は自分費用、つまり自分費用というよりも、お母さんとかお父さんとか、あるいは親戚のお金、あるいは親分から金を借りてもらうとか貸すとか、そして入院した患者でありまして、もうあとの残り少ないものは一部生活保護法医療券でもって入ってくるものとか、健康保険で入ってくる患者というもので、ごく少ない。なぜ少ないかというと、健康保険を使えるようなそういう方は行かないわけです。つまりまともな職業に従事しているとか、健康保険が使えるような職についていないということです。それから生活保護法医療券が使えないということは、やはり住所が定まらない。そして医療券をもらえる、あるいはもらいにいくということは少し気がかりだ、そういう点があって、やはり自分からそういう社会保障的なものでもって入ってくる患者が少ないということ。実際私ども病院は、今まで強制入院で、いわゆる精神衛生法の二十九条によるところの強制入院患者を収容しろというのでもって、この十年前にそういうお達しがありまして、毎月十五名以上入ることになっておりますけれども、いまだに十年間に一人も来なかったというような、そういう現状であります。そういうところに、やはり現在の精神衛生法で言うところの措置入院の仕方というものに非常に欠点があるということがあり得る。ですから、法規上にはそういうルートができても、実際は何も使ってない。使えなかったという状況です。そこにやはり何とか今度のこの規則を直していただくときに、それを御配慮願いたいと私は思っております。しかし、そういう患者を今度は強制して入院させる場合の一つ条件がはなはだむずかしいのであります。一体ああいう禁止している薬を自分がああいうやみの男からそれを買って、そして自分で打ちます。打つその行為は、やはり私は正当な一つ行為とは考えられないと思います。そういう違法な行為を繰り返して、またその行為そのものは違反でありますけれども、その結果からなった中毒というのは、つまりヘロイン中毒そのものは、これは一つの犯罪でもなければ、ただ一つの疾病である、病気であると、そう私は考えるのです。そういうために、今度は一般精神病の場合には、たとえば衝動的に乱暴して他人に危害を加えるとか、あるいは町をうろついて非常に困るとか、大声をあげてどなるとか、社会的に非常に問題が起こる。直接に被害をこうむるのですが、麻薬中毒の場合はそういうことはないので、むしろ注射をしますと静かに休んでいる。むしろ非常におとなしくすわっているとか、あるいはテレビを見てぼうっとしているとか、あるいは周囲でもって何が起ころうが、平然としているわけです。つまり自分を静かなそういう気持のいい状態に置けば、他に何が起ころうが、そういうことは無関心なんです。ですから、そういう点では、社会的にその中毒者は、じかにそんなに他に害を及ぼさないわけです。そういうところにやはり非常にむずかしい点が私はあるような気がしますし、それから激しい精神症状が出てこないのです。そういう点で、強制して入れるという場合の強制のワクが私は非常にむずかしいのじゃないか。こういう点もやはり本で読みましたのですが、アメリカのほうでも、強制するための一つ措置というものが、州によって非常に違うようなことを書いてありますけれども、そういう点が非常にむずかしいのじゃないかというような気がしますし、一番初めに申し上げたような、つまり医薬品としてお医者さんが使っているモルヒネ等の薬で中毒になった場合と、不正麻薬ヘロイン等を使用して中毒になった場合とは、これは同じよう考えていいかどうかというようなことは、非常に私はむずかしいのじゃないかというよう感じがします。  そういう点と、それから、いざ患者病院に入りましてからあと患者自身の態度といいますか、非常に落ち着きがなくてそわそわして、それから自分の思ったことをすぐ通さなければ気が済まないというような、そういう点から、非常に医者とか看護婦とかが、もちろん禁断症状をとるときになかなか薬がきかないのです。普通の方が睡眠治療のために飲む持続睡眠の薬を飲めば、ほとんど死んでしまうような相当の量でもってやっても、患者さんはなかなか睡眠に入っていかないのです。その点が非常に困るのですが、二、三日は非常に苦しみますので、その間にいろいろなことを患者が訴えるわけです。とにかく何か不安な状態も非常に激しいし、医者が一晩中ついていないと、始終ああしてくれとか、いろいろなことを要求をされるわけです。それから看護婦さんにも非常にいろいろな無理難題なことを言うわけなんですね。看護上、あるいは治療上非常にむずかしいわけなんです。で、私たちがその患者さんに言いますと、すぐ納得するのです。一応納得するのですけれども、私たちが横へ行くと、その要求を何回もしつつこく言うし、それからその反対をやるし、それから仲間と一緒になってささいなことを大きく扇動してしまう傾向がある。つまり非常に取り扱いにくかった。しかも、私なんか、少なくとも六カ月以上そういう施設に置いておけば何とかもう少し回復する可能性があると思ったのですが、残念ながら、今まではそういう自分費用とか、貸してもらった金でもって入ってきますので、大体一カ月くらいで退院してしまうのが大体私のところでは今まで五〇%くらい、約半数の患者は一カ月くらいで退院してしまうのです。ですから、非常に治療が不十分でもって退院してしまうし、不十分でもって退院してしまうから、よけいに再びまたすぐ元に返って打ってしまうというような、なかなか治療成績が上がってこないのです。そういうことで私悩んでおります。患者病院の中で薬の癖を抜くためには、いろいろな仕事をやらしてみたり、あるいは運動さしたり、そして薬がなくても非常に健康な生活ができるのだということを自分で自覚させるのです。そういう一つ生活指導と申しますか、生活指導療法ほんとうにやらなければならぬ、これを本式にやらなければ施設の価値がないのです。ところが、生活指導療法をやるためには、現在残念ながら医療の点数に入っていないのです。ですから、われわれの病院でもそういう生活指導を十分やらなければならない、やればある程度効果が上がることは十分わかっております。しかし、それができないのです、現在は。その生活指導をやるためには、専門職員だとか施設がだいぶ要るのです。そういう病院、つまり麻薬中毒をなおすための施設について、単なる普通の病院を作っても、これは意味がないのです。そういった点もやはり非常に考慮していただきたいと私は思うのです。単なる病室を作ったってだめなんです、病院を作っても意味がない。その病院の中に、必ず生活指導療法を行なうためのいろいろな施設を作る、それから、その専門職をそこに作って、そういう一つの体系を整えなければ、これはまだ中毒をなおすという一つの方法を全然やってないのと等しいのじゃないかと私は思います。ですから、私が今までやりました十年間の経験も非常に乏しい、乏しいというよりも、私はやらなければならない、ごうすれば必ずいいと思っても、実際できなかったのです。できないというのは、その経費がなくて施設ができないのです。実際、私、情ないと思うのは、私たちの力も足りないと思いますけれども、現在神戸にある私どものところの分院などは、そういう病室だけはできたのです。ところが、今申し上げたよう生活指導を行なうための施設一つもできないのです。できないというのは、実際お金がないのです。その施設ができなければ中毒者をなおす施設じゃないと私は思っておりますが、残念ながらそれができていない、そういう点で、やはりわれわれのような小さな財団じゃおそらく私は不可能じゃないかと思います。これはやっぱり国家の施設でもって十分な施設を作ってもらって、そして作る以上は、病室はともかくも、人格を訓練し、そして社会生活に適応できるよう生活指導療法を十分にできるだけの施設を作っていただきたい、そういったところがやはり治療を完備する大きな問題じゃないか、そう思っておるのですが、すこし時間が長くなりましたので、一応この辺でもって私の話は終わりたいと思います。   —————————————
  6. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 次に、本多参考人お願いをいたします。
  7. 本多末信

    参考人本多末信君) 私は、兵庫県麻薬対策推進協議会麻薬相談員本多末信でございます。  まず、麻薬相談員としての立場として、諸先生方には十分におわかりのことと思いますが、番町地区と申しますれば、神戸港を控え、特に麻薬の温床であり、暴力の町、あるいは麻薬の町、売春の町として、ほんとう日本で一番名前の通った——いい面であればよろしいが、一番悪い面で通じているのであります。その中に私が麻薬相談員として日ごろ仕事をさしていただいております関係上、先生方に十二分に聞いていただきたいと思いますことは、なぜ麻薬患者病院入院しても、われわれが三カ月という月日を切って、せっかくむずかしい書類を作成して入院したけれども、たった一カ月そこそこガラスを割り、格子戸のこぎりで切って出てきてしまうよう状態でございます。こういう人たちに対して、われわれ全国で九十六名の相談員がおりますが、われわれはその相談員方々と御相談いたしましても、やはり私のように結論が出ると思います。現在の麻薬相談員、あるいはわれわれの仕事として一番難点でございますのは、やはり現在の現行法で行なわれております刑法でございます。これと、予算裏づけというものがわずかのために、どうしてもわれわれとして手の打ちようがないのであります。せっかくむずかしい手続をしながら病院へ入れても、病院院長先生として何らの手の打ちようがなくして、ただ本人がきょう入れば、あす用事があるから帰ると言ったととろで、病院院長先生として、それをとめることもできず、人権尊重の建前から、どうしてもやむを得ず帰すことがございます。実はわれわれ相談員として、先生方のお手元にお配りしております要望でございますが、現在、先ほど青木先生が申したように、神戸市の垂水区に垂水病院と申して、財団法人復光会一つの分院がございます。この中に、番町地区から、ありとあらゆる方面において私たち苦労難難して入院さしておる。大体一カ月そこそこで、私のほうの相談月報を見ますと、大体六十名くらい垂水病院に入れましたが、その中で一番長く入院していたのが大体一カ月半でございます。早いので二日です。こういうよう状態は、おそらく番町地区だけでなくして、船橋のほうの病院もそうと思いますが、しかし、われわれがもっと国会において審議をしていただきたいということは、やはり外国法律であれば重い刑で罰するが、日本の国の刑は、最高十年でもって罰金が五十万円、非常に軽い。こういう現行法では、外国で悪いことをすれば刑が重いから、日本へ来て、日本のほうでそういう麻薬を売買したほうが非常に得じゃないかという点が、暴力団の資源である麻薬というものを日本密輸入されるような格好になっているんじゃないかと私は思います。先月の十月の二日に、当委員会竹中先生並びに柳岡先生神戸市番町地区を視察されまして、番町地区の中には、一つ更生施設じゃなくして、厚生館としてりっぱなものがあります。私はその中の職員でございますが、非常に毎日のようにそういう相談を受けながら、何らの手も尽くされないというのは、予算というもの、お金さえあれば、私は一回だけの入院じゃなくして、何回も入れることができます。神戸市の麻薬対策本部費用として年間二百万円組んでおります。これすらも、もう十一月の中ごろにおいてその予算というものが消えてしまう。そうなれば、二回目の入院といたしましてどういう手を打って入院さしたらいいかという点についても、われわれは非常に迷うのでございます。こういう点において生活保護法医療券を発行していただいて、とれによって再度入院をさしていただく。しかし、民生委員はじかに面接をいたしまして、本人に対して非常にきつい意見をかわしながら、もう一回何とかしてわれわれの言うことを聞きながら治療更生に励んでいただきたいと申しても、大体一カ月以内で全部帰ってしまう。病院のほうでは、院長先生幾らやかましく申しても、ガラスは割る、看護婦さんには暴行を加え、格子戸のこぎりで切られる、そういう状態が現在の番町地区の中でございますので、おそらく全国精神病のそういう病院におられる麻薬患者もそういうような実態と私は思います。こういう点につきましても、委員会におきまして、何とかしてこのたびの法律改正につきましては、全力をあげて改正に努力していただきたいし、国民として、非常にこの麻薬三法は注目の的と私は思っておりますし、私たち麻薬相談員として、予算というものの裏づけがあれば、どんな仕事でも、どんどんとそういう中毒患者に対しても私らはできますし、更生の道もございます。青木先生が申されたように、神戸垂水病院は、施設はりっぱでございますけれども職業補導は、ただ指導のみであって、治療してなおったあとのそういう職業補導についてのほんとうの手を打つことはしておりません。ただ、建物はわれわれの目から見れば非常にりっぱでございますけれども、しかし、内容そのものは貧弱でございますので、幾ら二カ月、三カ月、四カ月、五カ月、こういう長い間入れていても、その結果出てくれば、そういう麻薬患者が町をうろうろしておる。こういう状態をながめたときに、もっと国会がたくさんの予算を組んでいただいて、施設の充実、あるいは国にこのお金を出していただいて、国が建てるべきものじゃないかと思います。現在民間のそういう財団法人とか、そういう町の医者によって麻薬中毒患者がなおり得ないというのは、私は当委員会先生方は十分おわかりと思いますので、この点について、私は、わざわざ神戸から委員会出席いたしまして何を要望するかと申しますと、予算裏づけと、今回の刑法改正について全力をあげていただきたいということを、全九十六名の麻薬相談員を代表して、私は委員先生方に申し上げたいと思います。  現在日本の国において四万という麻薬中毒患者がございますが、それから常用者として二十万、麻薬愛好者として五十万、これだけの多くの人、それからこれに使われる麻薬——ヘロインの量が、金額として年間七百億という金が外国に流れ出るということは、日本の多大の損害と私は申し上げたいと思います。私はくどくどしく申し上げたくないけれども、どうかこのたびの麻薬三法について、ぜひ通過さしていただきたいと思います。それと予算裏づけについて、それを私は麻薬相談員を代表して申し上げたいと思います。  以上私が申し上げたことについて、後ほど御質問がございますればどうぞひとつ。   —————————————
  8. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 委員の異動についてお知らせいたします。  本日、小平芳平君が委員辞任され、その補欠として鈴木一弘君が選任をされました。   —————————————
  9. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 続きまして、安藤参考人お願いをいたします。
  10. 安藤晋策

    参考人安藤晋策君) 私、安藤でございます。私、麻薬患者がこれまで更生できた経路ということについて申し上げます。  私は、横浜市で建築請負業をやっておりますが、そして私が初めに麻薬を覚えたのは、川崎で麻薬を覚えました。それというのは、やはり初めは自分はちょっとした好奇心から始めて、それでまあいろいろ深い事情がありまして、そして私が大体一日にやっておりました量は五千円くらいに達します。それでいろいろ金銭問題にしても、親のほうからお金を融通したり、また兄弟、あるいは親戚関係などからいろいろお金を借りて、しまいには自分でもほんとうに苦労して、親のほうでもほとんど見放すまでに至りました。そして、自分でもやめたいやめたいと思っていてもやめられないわけなんです。そして、あるときに自分のおじさんという方が厚生省の麻薬課のほうに相談に行ったわけです。そして結局、厚生省のある麻薬課の方が私に会って、そして、それまでにいろいろかなり自分でやめたいやめたいと思って、少しやめたケースもあるのですけれども、ただ自分で抜いただけでは抜けないから、病院へ入ったらどうかといわれて、それでまあ病院のほうへお世話になった。それで神戸垂水病院に約三カ月おりました。そして自分が結局やめたわけなんですけれども、ちょうどもう約半年たちますけれども麻薬というのは、結局ただ自分でもってやめようやめようと思っていても、周囲の方——友だちです。友だちが来て誘われたりなんかすると、また結局始めるというケースが多いわけです。それで、ある程度自分の自覚も必要ですけれども環境ですね、環境。また自分がもうやめてからは、ある程度まあ親の目とか、周囲の方たちがある程度あたたかい目で見ていただけば、またかなり更生するにも効果があるんじゃないかと思います。  それで、まず更生するのに第一に必要と見るのは、自分の自覚ですね。そして、次には、やはり施設、ある程度施設へなるたけなら長く入っていたほうが自分のためにもいいんじゃないかと思います。何しろ自分中毒であるときに、親にもほんとうに見放されるまぎわまでいって、もう寝ていてもほんとうに親に何かされるんじゃないかと、こういうようなずいぶんケースが見られたんです。それまで自分も、ひどくなった中毒がこれまでになおったということは、病院あるいは厚生省の方たちの周囲の人の協力だと思います。それで、今度自分もこれから力を尽くして、そういう方面にはタッチせずに、これから今までのせめてもの罪滅ぼしに、そういう方たちをぜひ救いたいと思っております。実際に自分が、現在では土木建築請負業をやっておりまして、そういう麻薬患者病院から出たら、また、事情があって警察のほうから出てきたりした方を、二度とその道を繰り返さないように、自分も現在使っております。そして、現在の仕事を父がやっておりますが、中心として今度ぼくが責任を負わされてやるようになっております。麻薬というものも、ほんとうになおりにくいものですけれども、なおしようによっては必ずなおります。なおると思います。まず麻薬をなおすためには、警察のほうへ行ってしまうと、警察とか刑務所へ行って帰ってくると、なかなかなおりにくくなるようなケースが多いわけです。ですから、施設をこしらえて、その施設でもって完全になおして、それでそういうふうにしたらいいんじゃないかと思います。麻薬はなおらないものではないと思います。必ずなおると思います。ただ、麻薬患者は、禁断症状とか、そういうものをある程度こわがっているのが多いわけです。それで、禁断症状が出てこないうちに結局次の薬を打ってもたそう、そういうよう考えが多いわけです。自分もこれまでになったのは、ほんとうにいろいろまた友だちからも勧められるようなケースも今までありましたが、それを振り切って現在に至ったわけですが、これからも、逆にそういう方たちを今度は救っていきたいと、こう思います。  それでは、これで……。(拍手)   —————————————
  11. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 参考人の方には、長時間ありがとうございました。  以上をもちまして参考人各位の御意見の発表を終わります。  これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  12. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 まず、青木先生にお伺いしますが、先ほどのお話の中で、まず最初の点、医薬品によって使われる麻薬、それからヘロインによって起こる中毒、これは分けて考えるほうがいい、こういう御意見でしたが、もう少し具体的に突っ込むとどういうふうなことになるのでしょうか。
  13. 青木義治

    参考人青木義治君) 医薬品の場合は、中毒になりましても、自分気持がいいとか、そういう快楽というものが割合に少なくて、むしろ薬がないと仕事ができない、薬を使うと普通の仕事ができるという方が割合に多いので、むしろそういう苦しみからのがれるとか、それから不安からのがれるというようなことが割合多いんです。ところが、ヘロインの場合には、むしろ快楽一点張り、そういうところがずいぶん症状が違いますし、それから、なって来る患者も、そういう医薬品の場合には、そう激しく人柄がくずれているというようなことはあまりなくて、むしろやみのほうの人のほうが人柄がくずれている。そういうことで治療する面でもずいぶん違うよう感じがします。それから、注射を打ち出す動機やなんかでも、先ほど申し上げましたように、おなかがいたいとか、それから神経痛だとか、何か歯が痛いとか、そういう原因があってだんだん打ち始めていくというようなケースが多いので、そういう点は、やはりある程度ヘロインみたいに、初めから違反だということがわかっていてやるのとだいぶ違うのじゃないかというように感ずるので、何かあまり同一にするのはまずいのじゃないかという感じがしておるのですが。
  14. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 先ほどのお話の中で、麻薬中毒患者が一たん治療をいたしましてなおったと思われても、まあ禁断症状がとれても、麻薬の影響が中枢神経や肝臓その他に残っておって、一種の癖になっているというお話でしたが、やはり癖という御表現はわかるのですが、これはあとからまたもう一回お伺いする重要な問題だと思うのです、ただいまの法律改正について。先生のお立場からしますと、この癖がなおる最低の期限というのは、ほぼどのくらいにお考えでしょうか。
  15. 青木義治

    参考人青木義治君) 非常にむずかしい問題だと思うのですが、患者の中でも、非常に何ともいえない気持がいいという人と、そうでもないという人もあるのですが、しかし、中毒になりますと、やはりお酒なんか全然飲まなくなって、お酒飲んで酔っぱらっているのは非常にばかくさい、あんなのはくだらない、今まで酒飲んだ人が飲まなくなってしまった。酒飲んでいい気持になっているのはばかくさい、初歩だとか、そういうよう気持になってしまうし、それから男の人なんかでも、異性に対する性欲が全然わいてこない。性行為なんていうのは非常に価値のないものだ。おそらく全然性欲がない、あるいは性というものを非常に価値を低く感じて、ヘロイン中毒ヘロイン気持のいいというのが一番最高じゃないかというふうな感じがあるのです。そういう体験を中毒人たちは持っているわけですから、その持っているということは、一生涯忘れられないのじゃないか。ほんとう中毒の癖のこわさというものはそこにあるのじゃないかと私思うのです。ですから、もう決してやるまいやるまいと思っても、やはり心の中にそういう気持のよい体験というものが残っておりまして、何かのときにぴたっと出てしまうのじゃないか。そういう点に私非常にその癖を忘れさせることが一体できるかできないかということで、今実は困っているわけですが、いかにも一ペん体験したその癖のいい感じというもの、何ともいえない一つの魅力というものは、その方が生ある以上は、いつも頭の中に絶えず残っていて、忘れてもちょっと出てくるのじゃないか。そういう意味で非常にこわいのじゃないか。ですから、そういう欲望よりも、何か自分がもっと人間として生きていく一つの人生観なり社会観なり、あるいは生活する場に張り合いをつけてやる、そういうところに私はこの中毒者更生する一番むずかしいところがあるよう感じがいたしているわけでございます。
  16. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 今のお話から先ほどのお話が結びついて私わかったのですが、結局、今、安藤さんのお話にもあったように、自分を自覚するということが一番大事だが、同時に、環境を整備することが非常に大事だ。先ほど先生のお話の中には、やはり訓練をある程度適正にしないと十分な効果があがらない。その訓練も含めて、少なくも六カ月から一年ぐらい必要なんだ、こういうお話でしたが、これは直ちに治療期間と結びつけてもよろしいお考え考えてよろしゅうございますか。
  17. 青木義治

    参考人青木義治君) 私は、禁断症状をなおすということは、これはもうどこの施設でもできると思うのです。ただ、せめてまともな生活、最低限度の生活社会生活ができるようにしつけをするとか、生活指導をするとか、訓練をするということは、これはやはり中毒治療の本源だと思うのです。それがないことには意味がないと思っております。ですから、それが中毒治療法だと私は思います。そういう点では、そういう人を救ったり、生活指導をすることが中毒をなおす中心をなすものと、そう私感じております。
  18. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 先ほどの精神衛生法の二十九条の御指摘がございましたが、これはたいへん重要なお言葉だと思います、今後法改正の上に。というのは、強制収容の項がありながら、なかなか適用がなくて、実際今までなかった。これは参考になる御意見だと思うのです。これは先生は的確な御指摘が先ほどなかったのですが、やはり法施行上のというか、認定の問題というようにお考えでしょうか。
  19. 青木義治

    参考人青木義治君) 精神衛生法の二十九条と、それから一番最後の五十一条でもって、麻薬中毒者が強制入院することができる法文はあるのですが、何がいけないかと申しますと、たとえば中毒者がここにおりましても、そのアパートの前の人でも管理人でも、あるいはお父さんでもお母さんでも、あるいは警察の方がつかまえて、これは中毒者だと思えば申請していただけばいいのです。つまり、保健所を通して申請すればいいのですが、そういうところに今まで非常に欠けていたのではないかと思います。つまりだれかが申請すればいいのですが、しかし、先ほど申し上げたように、中毒者がたいへんそういう点では、たとえばアパートについて、隣の人でも、静かですから、何も社会的に問題を起こさない、わあわあ騒ぐわけではないのですから、中毒者がいたってなかなかわかりません。つまり一緒に生活している夫婦さえも、片方の人は、自分の御主人が中毒者だということがわからない程度ですから、ごまかし得るのですね。だから、なかなか申請するといってもむずかしいのではないか。ましてああいう不良社会の人間が多いので、そういうつき合っている連中がお互いに申請するはずがないし、それから、もしだれか申請すると、あとあとくされがあって困るのじゃないかというのでもって、だれも申請する人がない。そういうことと、もし、たとえば申請しまして、精神衛生法で精神衛生鑑定医が二人でもって鑑定するわけですね。これが他人に害をするとか、あるいは自分に傷害を及ぼす、あるいはそのおそれが多分にあると思えば、それは強制入院の診断書が書けるわけですね。ところが、なかなか精神症状が、医者の前では非常に静かで、それから自分もなおしたいというので非常におとなしいし、どうも精神症状が激しくないものですから、これは強制入院の対象になるのがむずかしいのですね。普通の精神科の精神衛生鑑定医は、りっぱな精神病でもって、すぐわれわれの前でもってあばれたり暴言を吐いたり、ふらふらしている者、そういう患者ばかり見ておるものですから、そっちのほうに重点を置きまして、中毒者のほうはそういうほうに該当しないように——しないわけじゃないのですが、まあそのほうが優先的にしてしまうので、そういう意味でなかなか強制入院しなきゃならないのだという認定ができかねるのです。そういう点で今まで措置入院患者がいなかった。それからもう一つは、やはり今度は、そういう患者を引き受けた病院がやり切れないのですね。ですから、どうもみんなが敬遠しがちなんですね。そういう点も私はあったのじゃないか、こういうことだと思います。
  20. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 先ほど治療の具体的なお話を承ったのですが、少なくも六カ月くらいはほしいのだ。ところが、大体最低一カ月ぐらいで帰りてしまうということですね。その帰る原因については、やはり経済的な問題が多い。それから病院側の実情としても、点数表にそれのめんどうをみる該当項目がないからというふうに聞きましたが、そうだったでしょうか。やはりそうしますと、先生のお立場からすると、少なくも半年くらいは入れておかないと治療効果はほんとうに望めない、こういうふうに承っておいてよろしゅうございますか。
  21. 青木義治

    参考人青木義治君) 精神症状、すなわち禁断症状などは、やはり二、三カ月で大体回復すると思いますけれども、そうやってお互いに適応するためのいろんな人柄の訓練だとか、それから生活指導を含めたいろんな精神療法を行なうのには、どうしてもやはり数カ月かかって、全部で六カ月以上はどうしたって要るのじゃないか。そういうふうに今の制度では、あと生活指導というような一番重要なところに医療点数がないものですから、病院としては、その人の人件費もなければ施設ができない。やりたいけれども、やれば病院が赤字になってしまう。そういうところに非常なむずかしい点があるので、やりたいと思ってもでき得ないが、何かその施設を作っていただけばできるのじゃないか。それにしても、やはりそれに伴う人件費がないとか何とかいうこともありますから、そういう点で非常に欠けているという気がするので、何かそういうところの御配慮を願いたいという感じが切実にしているわけです。
  22. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 青木先生にひとつお伺いしたいのですが、今、丸茂委員からのお尋ねで非常にわかったわけでありますけれども、今、厚生省は、三カ月収容という格好で繰り返してまず第一歩を踏むわけですが、私たち専門家の皆さん方の御意見を聞くと、三カ月ではとてもなおらぬ。まあ禁断症状というものはとれているとしても、なおるというような概念にはちょっと入ってこないのじゃないか。九州の専門家の方々は、一年以上は必要だというようなお話がございました。しかし、本人の今の生活環境やその他で、努力によって禁断症状がなくなれば、それに再び入らないということで持続していけばいい方向にいくような、たとえば癖をなくするというような格好にすれば、その限界をどこに置くか、禁断症状が一応表面的でなくなった、内臓に残っておっても。そういうところの限界というか、それを一応どの辺に置いたらいいのかということについて非常に私たちは悩むわけなんです。だからどうだということを、もう少しこう分けてそこらあたりお話がしていただけないかと思うのです。周囲の環境がよくなって、周囲の人が守っていくなら禁断症状がなくなって、その辺からなら処置がとれるならとれる、何でもある一定の年限がいったから一応のいい方向にいくのだ、そういうところの今までの経験上の御判断があればお聞かせをいただきたいと思うわけです。
  23. 青木義治

    参考人青木義治君) 非常にむずかしい問題なのでございますが、その患者一人々々のケースによって非常に私は違うと思うのです。で、その患者の心がまえとか、その患者の受け入れ態勢の問題と、それから職員の問題、そういうものがうまく——うちが非常に受け入れ態勢がよくて職場があってと、そういう場合には、割合に早く退院してもかまわないというよう感じが私はするのですが、つまり何も三カ月を待たなくても、もっと短くてもできないことはないと私は思うのです。しかし、その中毒が非常に長い期間になって、たとえば二十年とか三十年くらいのケースがありますね。そうしますと、自分じゃなおす意思が全然ないのです。病院に行ってあまり自分でやりますと、からだがまいるとか、それからお金がかかりますね、量がふえるから。そこで病院へ抜きにくるのですね。抜きにきて、帰ってからまた打ってしまう。そういうふうに、一体自分麻薬で死んでもいいのだという気持の方と、そういう気持のいいものをやめないのだというような——われわれには表面的にはやめると言っても、心の中には絶対にやめないというがんばりを持っている方があるのです。だから、何カ月でいくときめるというわけにはいかないような私は気がするのです。そういう点で、私いつか三カ月の問題なんかでも考えてみたのですが、前の覚醒剤中毒の場合などは、あるいはその辺でもいいかもしれないと思ったのです。なぜかというと、覚醒剤の場合には、あまり気持がよくないのです。打っても、済んでしまうと、なんだ、あんなつまらないものだとか、つまり覚醒剤の場合にはびくびくしたりこわがったり、自分の家の中に入っていても、音がしても刑事がいるとか、天井の裏でネズミの音がすると、そこに何か警察の方が自分を監視しているんじゃないか、そういうびくびくした不安な状態が激しいのです。だから、済んでしまうと、実にばかばかしい。ところが、麻薬の場合にはそうじゃないので、そこのところが非常にむずかしいというよう感じがします。ですから、その患者気持ですね、性格のくずれと生活の態度による。それから、麻薬中毒者の中には売人が多いのです。つまり自分ヘロインを打ちますから、どうしても金が非常に要る。要るから、どうしてもその金を得るためには、自分に金の入る客人を作るわけです。これが三、四人いるわけです。ですからどうしてもそういうルートを考えてしまうと、なかなか抜け切れないというよう状態になるんじゃないですか。そういうような抜け切れない人間というものが、相当長期に一年でも二年でも、あるいは五年くらいおいてもうまくいかないかもしれない。その辺のところは一がいに何カ月ということをきめかねるのじゃないかと私は思います。そういう気がいたします。私はもう決してしませんと言って、二年間くらいちゃんと普通の生活をされている方があるのです。それでまた患者を紹介しできて、少したって、せっかくなおった患者がまたやっている場合がある。非常に中毒をなおすというのはむずかしいと思う。アルコール中毒の場合でもそうですが、アルコールの場合には、退院してから二年、三年あたりでもってなおる者は大体なおるし、なおらない者はなおらないような形が大体きまってきたのですが、麻薬の場合には、退院してから一体何カ月日になったら何とか病状がきまるものかどうかということが、まだ病後の調査が十分できていないものですから、はっきり申し上げられないのです。そういう点だと私は思います。
  24. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 安藤さんにお尋ねをしたいのですが、あなたは川崎で麻薬を経験されて、努力をしてなおしてこられた。それから何年たちますか。そういうことをお聞きしたいのと、それから、今、青木先生のお話にあったのですけれども麻薬の当時のことを思い起こして、もうあれには入らないというあなたの意思が今りっぱに治癒されたのだと思うのですけれども、どうでございましょうか、普通これはちょっとなかなかむずかしい問題でしょうけれども、いつまでたっても麻薬の、何といいますか、気持のよかったということは残っているものでしょうか。ちょっとむずかしい質問でございますけれども、あなたがお打ちになっていた当時の仲間の知っておられる方々ですね、そういう方ともお話されることがあるかと思いますけれども、やめておられる方があると思いますけれども、今先生のお話を聞くと、どうもよかったということが終生続くというようなお話があったのですが、経験されたあなたの気持を聞かしていただきたいと思います。
  25. 安藤晋策

    参考人安藤晋策君) やはり麻薬というものは、こうやってやめていても、その当時の、打ったら気持のよくなるとかということは忘れられないわけです。ですから、そこで自分の自覚というものが必要なわけです。ですから、ある程度まわりの方の——先ほどの続きになりますけれども、私がやめてから、病院から退院しても、まだずっと厚生省の方が家へたずねて来て、初めのうちは自分としてはずいぶん迷惑に感じようなわけなんですけれども、やはり現在にきますと、これが自分のためにずいぶんプラスになったのじゃないかと思うのですけれども、やはりまわりからある程度監視されるというような面も初めのうちは必要ではないかと思います。
  26. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 おやめになってから何年ぐらいになりますか。
  27. 安藤晋策

    参考人安藤晋策君) やめてからまだ七カ月ぐらいです。
  28. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 本多参考人にお伺いいたしますが、あなたは兵庫県で相談員をなさっておられますので、たいへん御苦労だと思いますが、今全国相談員が九十六名あるとおっしゃっておりました。大体おられるところの兵庫県の関係もここにありまして、たとえば麻薬密輸入の輸送の経路の問題であるとか、麻薬対策に関する予算面について強い要望と主張がございました。そういうふうに受けとめているわけですが、この輸送経路、密輸入の経路の問題でございますが、船なり飛行機なり、そういう面で立地的に兵庫県は御苦労なさっている、こういうふうに考えます。私も戦争前は長い間船乗り生活を送って参りましたので、戦前戦後を比較対照いたしまして、たとえば船だけを考えてみますと、船乗りがやはり密輸の手先をやるといったようなことも、グロテスクな映画面ではよく見るわけでございますけれども、最近戦後の傾向としましては、船乗りも非常にいろいろな訓練を受けまして、優秀になってきておりますので、むしろ輸送経路の問題については、今日日本麻薬の問題が社会問題として大きな問題になってきている。そういう関係からいって、御承知のように、沖繩という基地も含めて、日本はやはり二百有余の基地がある。そういったような関係で、あなたはやはりもちろん港の地域に住んでいらっしゃるのでありますから、通念上の飛行機とか船とかいうものは、十分身をもってつぼと勘で押えておられると思います。それに関連して、取り締まりの問題をああしたらいい、こうしたらいいというふうに受けとめていると思いますけれども、私は、やはり沖繩も含めて、日本の悲劇は基地というものの中で相当に——ところが、大蔵省の税関のピケ列の中でも非常に苦心していらっしゃると思いますけれども、沖繩を含めて、数ある多くの基地については、なかなか治外法権的な性格を持っておりますので、日本官憲の手も及ばない。しかし、それも一つの限界があって、今日政治的にも社会的にも、やはり日本の悲劇であるといったようなことになってくると、やはり日本に基地があるということについても、あれは治外法権だから手が及ばないのだというようなことでは済まされないのだ、そういうふうに私は常に考えているわけでありますが、もちろんこれは非常にデリケートな問題でありますけれども、あなたがせっかくやはり非常にこの問題について御苦労なさっておりますので、あなたの考えておられる差しつかえない範囲の密輸入経路の問題についてお気づきになっている点や、われわれ今後の参考になるようなことを、ひとつ差しつかえない範囲で御見解を承りましたら仕合わせだと思います。
  29. 本多末信

    参考人本多末信君) ただいまのお話のように、実際兵庫県の中に神戸市がございます。神戸市に神戸港という大きな港がございまして、大体麻薬というものは、飛行機もありますが、しかし、船が大部分でございまして、船から陸揚げされるそういうヘロイン、ぺイは、大体暴力団という、ものすごい武器を持って、現在警察官であろうが麻薬取締官であろうが、どうしても手のつけようのないような経路で、非常に取り締まりがきつくなればなるほど巧妙になってきますので、われわれ相談員として、詳しいルートについてははっきりわかりませんが、しかし、全国はわかりませんけれども、兵庫県神戸市のことについては、多少われわれとしてはわかっております。ほんとうに問題となるのは、やはり日本の国の法律が非常に罰が軽いということです。私は、これは国亡犯である、これはもう目に見えない殺人犯である、こういうものが最高十年、こういうわずかな刑になっている。十年というものは、ほんとうに私は大阪の刑務所なんかちょっと調べましたところが、無期刑なんかもう何百人もおります。その中へ麻薬で十年入っても、十年なんというものは、これはもう下賎な言葉でございますが、十年は西向いて東向いて帰ってしまう、そういうような軽い刑でございますので、おそらく外国の香港なんかで商売するよりも、あるいはアメリカなんかの場合は十八才の未成年者に薬を売った場合は死刑、こういうようなきつい刑でございますが、日本では、大体私の記憶するところでは、神戸市の場合、神戸の地方裁判所で取り扱った件をちょっと調べましたところが、大体八年が最高でございます。その八年も、何も罰金もつけずに、ただもう刑だけが八年であって、保釈というものによって現在出ておりますが、こういうよう状態では、やはり日本で大きな金もうけして、その金もうけによって一生過ごぜばいいじゃないか、そういうようななまやさしい考え方——われわれ相談員として仕事をどこまでやっていいかということは、やはり予算というものの裏づけがございまして、さっき青木先生が申されたように、実際は麻薬患者が十年かかれば、十年だけの、それだけの費用が要るということは当然なんですが、しかし、神戸市の場合、三カ月は役所のほうで完全に支障なしに責任を持ちますが、ところが、ものの一カ月もすればもう帰ってしまう。三カ月でも四カ月でも、本人がおる限り、私は麻薬相談員としての責任上、一年でも、予算の許す限り入っていただくという、そういうような私は考え方です。実際は日本法律というものが非常に刑が軽いというため、私は、現在の麻薬というものが日本に入ってくるのにそういう経路が一番やすいのじゃないか。特に委員会先生方に申し上げたいのは、やはり現在の現行法の最高が十年というのは、おそらく十年といっても、いまだ日本の国で十年の刑を受けた者は数少ないと私は思います。これだけものすごく一年間に七億という莫大なお金外国に流れる。その半面に、大物はかからずに、番町地区ような、ああいう小さな一年足らずの小物ばかり警察の手にひっかかるという、こういうようなことでは、おそらくやまだまだ日本法律が、外国法律をながめたときに、日本というものは、あくまでも人権の尊重の立場からそうお考えになっておりますと思いますけれども、しかし、このたびの臨時国会、あるいは通常国会において、麻薬三法というものは、おそらくは厚生省のほうから出されてくると思いますので、この点について十二分に御検討願いたい。経路等については、やはり日本の国の法律がやすい、また、神戸の港に陸揚げが一番やりやすいという点と、それから神戸に陸揚げする場合には、神戸の暴力団というものは日本で一番勢力があり、一番そういう手に入りやすいのが私は神戸というところの麻薬基地だと思う。そういう点から、たとえば神戸の薬が大阪へ流れる、大阪からまた横浜、横浜から東京、神戸で現在五百円ぐらいしておりますのですが、ところが、東京へくれば千二百円ぐらいになる。そのさやで自分たちの薬代が十二分に出る。こういうような点で、私は、神戸という所は一番暴力団のはびこる所であり、また、一番仕事がしやすい。それによって神戸という名前がよく出ると私は思います。
  30. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 青木先生にちょっとお伺いしたいんですが、先ほどお話があったかもしれませんですが、今横浜で、総武病院入院した中で二名死亡したと、お前たちなおそうといっても、それは無理だぞというような、だいぶ工合の悪いことが起きておりまして、そういうことを暴力団関係から中毒者にどんどん言いふらされておる。なかなか相談員の方が困っておるというよう状態にあります。この状況ですね、おそらく心臓衰弱かなんか起こしておったと思いますが、何かほかの原因を治療してそうなったんじゃないかと思いますが、そういうことを言われておる。事実であるかないかわからないんですけれども、この機会にひとつお聞かせ願いたいと思います。
  31. 青木義治

    参考人青木義治君) そういう話は初めて私伺ったんですが、私の病院麻薬のために死亡したという例はないと思います。で、持続睡眠療法中に肺炎とかほかの病気を起こして重くなった例はありますけれども、私の病院では、麻薬をなおすために治療を行なっただけで死亡した例はないんですが、おそらくああいう連中は、病院に行くのに何かそういう理由をつけているんじゃないかと思います。それから、これは分院の垂水のほうでもそういううわさがあるんですが、もう売人が、病院へ行って病気をなおされては困るというので、いろいろ悪宣伝している傾向多分にあって、何か患者がなるべく早く退院するように仕向け、退院したときに、退院祝いと称して仲間がまた打ってしまう。そういうことをやっておるので、どうもこういう麻薬をなおす病院があっては非常にわれわれには迷惑だから、病院をつぶしてしまえということをあるいは考えているんじゃないかというような懸念もあるんです。
  32. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 よくわかりました。ありがとうございました。  安藤さんにちょっとお伺いしたいんですが、先ほど青木先生から、ヒロポンの場合は恐怖心があるけれども麻薬のときは出ないというお話だったんですが、ところが、中毒者に聞いてみると、どうもやはりある程度恐怖心は感じているようなことを伺いますので、安藤さんの前の中毒者としての体験では、その点はどうでございましたでしょうか。
  33. 安藤晋策

    参考人安藤晋策君) 別に恐怖心というのはあまり起きないと思いますけれども
  34. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうですか。ありがとうございました。
  35. 小柳勇

    小柳勇君 本多参考人に。今その科刑の問題がありましたけれども、実際相談員として苦労しておられるから、どうしたらこの犯罪をなくせるかということについて真剣に考えておられて御発言があったと思いますが、再三再四刑法改正などについて言及がありました。私、先般もこの委員会で質問しまして、ずっと各国の科刑の実態を調査しているのですが、先般来の調査によりますと、台湾が戦時体制特別法によって死刑または無期です。それから中国がやはり同じように管理条例によりまして、これも死刑または無期の懲役、韓国が麻薬法によりまして、これも臨時特例法ですけれども、死刑または無期ということで、日本の周辺がこの麻薬の取り締まりに非常に強硬な科刑をもってこれを撲滅することに立ち上がっているのです。そういうことで日本の科刑が軽いから、日本のほうでもうけようとして商売人がやっているのじゃないか、その犠牲に日本国民がなっておる、そういうふうな私は気がするわけです。実際取り締まりをされる、あるいは相談をされている皆さんとして、科刑によってそういう犯罪を縮小することができると御判断になっておるかどうか、お聞きしておきたいと思います。
  36. 本多末信

    参考人本多末信君) ただいまのお話でございますが、私は、麻薬患者に対しては刑罰をもってやるべきものではないと思います。しかし、日本の国土の中で第三国人が日本人をあやつって、もうけは全部第三国人のほうに流れてしまう。私は、麻薬患者に対しては、いつも更生ということを念願し、麻薬相談員として、できることなら、本人の希望があれば何カ月でも治療費用というものを国が負担しなければならないというので、神戸市の場合は麻薬対策本部というのがございますので、その中から年間二百万円を出しておりますが、それが切れたならばどうするかと申しますと、これはまあ生活保護法医療券を発行していただいて、私はできるだけ麻薬患者に対しては温情をもって接しております。しかし、私の言わんとするところは、麻薬密売業者に対しては、外国よりも私はむしろ日本法律が刑罰が軽いんじゃないかと思います。米国にしても、あるいは香港にしても、韓国にしても、台湾にしても、大体終身刑あるいは死刑という重い罰則でありながら、日本の、まして神戸麻薬の王さんといわれた王漢勝という、こういう第三国人である人らが、たった八年という刑で、罰金なし。いかに検察庁で最高の刑を求めても、裁判所として八年しか言い渡さない。こういうような実態をながめたとき、やはり軽い刑罰で罰せられたほうが金もうけはたくさんできるし、外国ではできない。もし万一逮捕された場合に死刑では、幾らもうけても、これはもうけにならぬ。しかし、日本で商売やってたくさんお金をもうけて、十年間西向いて東向いて帰ってくるという、そういうような甘い考え方を持っておるという第三国人は、日本でおそらくはたくさんいると思います。その配下に暴力団が動いている。こういうよう状態でありますので、麻薬患者に対しては、あくまでも麻薬相談員は温情をもって一日も早く更生していただくように念願をしておりますが、しかし、麻薬密売業者に対しては、徹底的に刑によって罰して、二度と社会に復帰させないようにと私は思います。
  37. 小柳勇

    小柳勇君 安藤参考人の発言の中に、この患者は警察で扱ってはならぬが、施設をよくすることによって患者更生できるようにしてもらいたいという発言がありました。その警察という言葉の中には、厚生省の取締官なども含まれておると考えますが、実際に施設強制収容するような場合に、どういうふうなことが一番いいでしょうか。あなたにもしお考えがあればお教え願いたいと思います。
  38. 安藤晋策

    参考人安藤晋策君) やはりまあ家族の方たち本人に納得させるとか、またそれで納得できないようでしたら施設のほうへ申し込んで、そして施設のほうへ入れて、ある程度の日数を加えて、自分の場合は三カ月でしたけれども、できるだけ長いほうがいいのじゃないかと思います。そしてやはり施設の中で、結局ある程度精神修養のために、いろいろな娯楽だとか、また作業だとか、いろいろそういうような方面のことができるよう施設をこしらえたほうがいいと思います。
  39. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 青木先生にお伺いしたいのですが、私も先般垂水病院に参りまして、いろいろな実情を見たり、また聞いたりして、今いろいろ申されました意見につきまして、深く考えておるのでございますが、その患者の中で更生する人が、垂水病院に参りましたとき約一割だと、こういうようなお話を承ってきた。船橋で大体どの程度の率で更生されておられるかということと、更生させるために、先ほど申されました生活指導療法ですか、それが非常に重要だということを申されましたが、六カ月から一年はぜひとも入院が必要だといわれていますが、この期間の中での生活療法ということを考えておられるのか、それとも退院後どのくらいの期間生活療法というものが必要なのか、その点ちょっとお聞きしたいと思います。
  40. 青木義治

    参考人青木義治君) 中毒としての禁断症状がとれましてから、自分の身のまわりのことをまず自分でやるようなしつけをするとか、あるいは自分の今までの体験を日記に書かせるとか、歌を歌ったり、あるいは事務をとったり、あるいはいろいろ野球をやったり、あるいは洗たくをやったり、いろいろな仕事をやって、仕事をやりながらまた娯楽をするというように、そうしてそういう規則正しい生活をしながら日常生活になれていくと、その訓練の期間は、どうしても私は数カ月かかると思うのです。そういう点は、やはり今まで全然やった経験がないそういう人をそういうふうにしむけるのですから、なかなか大へんなんですね。なかなか初めのうちは、たとえば字を書かしても絵をかかしても、自分中毒をなおしに来たのだから、何もそういう字なんか書かない、絵なんかかかない、歌も歌わないとか、なかなかそこまでもっていくのが大へんなんです。そういうところが、ただ自分たちは薬さえ抜けばいいのだという気持多分に抜け切れないのですね。その人柄が悪いのだと、人柄ができていないのだと、だから何とか人柄を作るようにしむけるというしむけ方が、非常にしむけるまでが大へんだと私は思います。そういう努力が必要なことと、それから今度は飽きっぽいですから、すぐやって飽きてしまう。ですから、何かやっても、途中でもってぱっとやめちゃうとか、それから非常に他人の言に扇動されやすくて、自分はこうやろうと思っても、他人がつまらないといえば、すぐかっとそっちのほうへ傾いてしまう。だから何とかして、何という意味なぐ家へ帰りたいとか、桂会に出たいというような、そういう気持になりがちなんです。そういうのは、やはり病院の中でもってそういう気持を起こさせないようないい雰囲気を作ってやるということが非常に大切だと思います。  それからもう一つは、そういう病院の中に入れても、普通の社会よりももっといい雰囲気に入れて、そうして何か仕事をやらせなくちゃならない。職業を持っている人というのは非常に少ないし、非常に転職がちなんです。仕事を今までたいてい十回とか二十回ちょっとやって、すぐ飽きてしまう、何とかして地道な職業につけてやらなければならぬ、その職業指導が非常に重要だと思う。そうやって退院してから、退院したあと病院においてうまく適応ができても、今度は社会に出てまた失敗するので、その間の、私なんかが考えているのは半病人の時代、今のいろいろな医療機関の制度には、たとえば健康保険なんかの場合でも、病人であるか、あるいは健康であるか二種類しかない。私なんか考えているのは、どうしても半病人の時期というものが私は欲しいのですが、つまり健康であって、それからまた病院から出てからあと半病人の時代ですね、病人でほんとうに一人前じゃない、そういう半病人の制度、つまり半病人で半分は仕事をするけれども、半分は休んでいる、つまり一日のうちに半分ぐらいは静養して、半分ぐらいは仕事をするというような、そういうようなことができるよう一つの制度が私非常にほしいような気がするんです。ですから、たとえば今の制度だといいますと、病院から出ちゃうともうすぐ健康人になっちゃう。実際は健康人じゃないんだけれども、健康人にならざるを得ない。救い手が何にもないんです。ですから、何かそういう病後指導が非常に重要な病気は、その半病人みたいな何か制度を設けて、そしてそこでもって、半分は社会に働き、半分は療養ができると、そういう何か——私絶えず考えているのは、病後指導一つの工場みたいな、病院工場といってもいいんですが、何か仕事をしながら半分は療養すると、そういうようなものでも作れば、病院生活指導をして、それから今度は退院してから半病人の施設に入って、それから社会に復帰するというような三段がまえができれば、私、あるいはほんとう社会復帰ができるような気がするんですが、その点は、今のところはその一番前段階さえできていない。それでもうその病気がいいとか悪いとか、なおるとかなおらないとかいっても、どうも治療の段階が全然できていない。全然できていないものですから、そこのところで、私、非常に治療効果が上がらないといっても無理がないんじゃないかという感じがしておるのであります。
  41. 林塩

    ○林塩君 青木院長先生にお尋ねしたいんですが、お話の中にございます禁断症状のときに、患者さんは非常に不安状態でございますので、いろいろ医師、看護婦が取り扱いにくい。私も多少経験がございますので、特にその意味がよくわかりますのですが、取り扱いにくいということは、結局手が非常にかかります。そして、今言って聞かせたことがすぐわからなくなる。またもう一度言って聞かせなくちゃならない。その言って聞かせている方法にもいろいろございます。その間に、不安な人はだれかがついていて話してくれているから安心だという気持もいたしまして、その間には励まされたりするという意味で、これは看護上非常に大事な問題だと思う。現在看護婦看護人の数が足りません。それから、ことに先生のところは精神病院も一緒でございますので、精神病麻薬患者とは違うということはわかりますが、大体において、こういう施設の数、看護人、看護婦の数が少ないと思います。それから適当に訓練された人が少ないと思います。これは全国的の問題でもございますけれども、ことに麻薬の場合はもっと数が要るんじゃないか。それで、現在医療法の中におきましてきめられております数が、精神病院では患者六人に対して一人、それもなかなか確保ができないという状態でございます。それで先生のところで、麻薬患者ですね、この中毒患者にどのくらいついておられますか。それからまた、先生のお考えでどのくらいあればいいかというようなことを、御経験上伺いたいんです。それが一点と、それから、特別に中毒症状に対してどういうふうに取り扱ったらいいか。そういう看護婦看護人に何か特別の訓練を必要としますようなことをお感じになりますかどうか。その二点を伺いたいと思います。
  42. 青木義治

    参考人青木義治君) 実際はああいう医療施設でもって看護婦さんの活動というものは非常に重要な点を占めているわけなんですが、しかし、その看護婦に、ああいう中毒者というものは非常に表面的はいいようにふるまって、あとすぐ裏に回ってとんでもないことを始めたり、計画したり何かする。それから、うそを平気で言ってみたり、あるいはからかってみたり、あるいは怒ってみたり、もう非常に看護婦が手をやくわけなんですね。で、よほど忍耐とか教養がないと、患者よりも看護婦のほうがお手上けしてしまう。ですから、一般看護婦さんが非常に数が少ないのに、そういう中毒者を扱うような志望者が実際なかなかいないわけですね。それで、ずいぶんわれわれ困っております。で、何年治療に従事しておる看護婦でも、全然自信がないと言っております。自信がつかないんですね。で、私なんかも考えておるのですが、ほんとうを言えば、一人に一人看護婦がつくぐらいでなきゃほんとうはいけないのですが、病院の経営上どうしてもそれができないのですね。ですから、晩なんかは、大きな病棟に夜間は看護婦が二人しかいないので、その禁断症状に苦しんだり、いろいろな要求を、とても二人でもってまかない切れないのですね。それから、医者が困るのは、当直の医者を全然寝かせないのですね。つまり、当直の医者をすぐ呼んでこい、それからまた、呼んでくると、またすぐほかの患者がいろいろな訴えを言うのですね。で、ほとんど徹夜の仕事を次から次にやらなくちゃいけないし、しかも医者というよりも、院長を呼んでこいとすぐ言い出すのですね。そういうので非常に手をやくわけですが、ですから、どうしてもああいう患者も取り扱う医療従業員というのは、相当数をふやさなきゃいけないし、今やっている精神病院の患者五人に対して一人とか、六人に対して一人というのは、もうおそらくそれは不可能なんですが、しかし、私のところは経営上やむを得ずそうやっているのですが、そうせざるを得ないのですね。ほんとうはもっと数をふやしたいのですが、経営上はもうそれが不可能だし、それからそれだけ職員が来てくれないのです。なかなか募集しても来ないのですね。で、おそらく今度国の施設を作っていただくと思いますけれども、国の施設を作っても、一体医者が来ないと私は思います。とても、こういう患者を取り扱うお医者さんというのはなかなかいないし、それから、まして精神科のお医者さんがいないし、その中でもって中毒を取り扱おうと心がける人が、いてくれればいいけれども、それがいるかいないかということ。それから、今度はそれに従事する看護婦さんとか、看護人とか、そういう医療従業者が一体いるのかいないのか。何か、家を作ったけれどもだれも来ないのじゃないかと、そういう懸念が多分にあるのです。そういう点は、やはりどうしても今までの従来の医者のいろいろなベースだとか、あるいは看護婦さんの公務員ベースなんという、そのベースじゃとても私は集まらないのじゃないか。まあ、そこのところが非常に懸念されているわけなんですが、何かそういうところを特別な配慮をしていただいて、相当な待遇をもうしなきゃならんし、しても来ないのじゃないかという、そういうおそれは多分にあるように感ずるわけでございます。
  43. 林塩

    ○林塩君 今、院長先生のお話を伺いまして、ほんとうだと思います。それに看護婦が非常に不足、看護人が不足でございます。それのためにいろいろ苦慮している問題があるのでございますが、精神病院というところは特別のところでございますので、全体の精神病院を見てみますと、成年に達した、経験も十分にあり、それからいろいろな問題を解決するだけの常識を備えるには相当の年令でなくちゃならないと思いますが、そういう人がおりませんで、かえって年令の若い人たちが非常に大事な精神病者を取り扱っている。おそらく中毒患者といいますと、もっと年令層も高く、社会事情もよくわかり、それから人間性もよくわかる人でないとむずかしいのじゃないかと思いますが、今のよう状態でございますと、病院は作られましても、施設が作られましても、先生が御心配になっていらっしゃいますように、私も相当人が集まりにくいのじゃないかと思いまして、それから、病院を作って、ただ患者さんをほうり込んでいるだけでは、これはもう全然更生機会もございません、十分に治療もできませんので、それを繰り返しているだけであるように思います。で、私の考えといたしましては、こういうことはどうかと思うのですが、やはり看護婦看護人の待遇の問題というのが問題でございますが、中毒患者看護婦さんにつきましては、特に待遇をよくするとか、あるいは勤務時間をもっと少なくするとかというふうに考えるわけでございます。で、アメリカの精神病院に私いたことがございます。精神病になったわけじゃございませんが、勤務をしてみまして、特に普通の病院よりは優遇されております、看護人、それから看護婦も、医師も。今回、いろいろな施設ができますときには、その面も特に考慮して、そして考えられなくてはならぬじゃないかというふうに思いますので、先生のお考えも伺っておきたいと思います。たいへん御熱心にいろいろしていらっしゃいますが、経営上の問題でとおっしゃいますので、せっかくいいお考えがございましても、経営が成り立たない、人が集まらないでは、いいお考えも実行に移せないと思いますので、患者さんをお取り扱いになっておられる実際の状況として、御意見をもう一度伺ってみたいと思います。
  44. 青木義治

    参考人青木義治君) 実際、ほかの科の看護婦さんと違いまして、その患者の、一つの人柄とか人格とか、そういうものを指導しなければならない。ですから、相当高い教養が絶対必要だと私は思います。人柄ができるというのには、どうしても、相当の年配ということと、教養と、それからそういう人と接する態度というものが非常に重要なんで、そういう点が、やはり私は、少なくとも、現在の看護婦が高等看護学院を出ただけでは無理じゃないか、できれば、私は、保健婦以上の知識を持った人に、そういうものを扱わせなければいけないという感じがしております。そういう精神病院こそ、あるいは中毒患者こそ、そういうものを取り扱うのには、相当、知識の高い看護婦さんを私は望みたいし、そうやらなければ全然意味がないような私は感じがするのです。それからもう一つ必要なことは、先ほど申し上げた生活指導をする場合に、それは看護婦さんにやらせちゃいけないのです。これは、全然専門的な一つの職があるのです。作業療法手というふうな、いわゆるそういう生活指導を中心にして、専門にやる一つ職業を作らなければいけない。これは、アメリカでは、ずっと前からやっております。専門学校もできておりますので、全然看護婦とは別なんです。その別な作業療法専門の学校を出なければ、作業療法をやっちゃいけない。それなのに、日本は、それが全然できていない。ですから、そういう点が、まだ私は欠けておると思います。生活指導をする場合に、決して看護婦さんにやらしちゃいけない。看護婦さんじゃなくして、作業療法手という専門の学校を出た専門の者でなくちゃいけない。そういうふうに考えますと、日本の、そういう精神病院、あるいはそういう精神療法を行なうほんとうの従業者の養成ですか、その学校さえ、制度さえもできていない。そういうところが非常におくれているのじゃないかと思います。つまり、そういう看護婦と別な、非常に重要な制度が何もないということ、また、そういう生活指導療法ほんとうに行なうための施設を作っても、それを行なう人がいないということなんです。私のところなんかは、幸いにアメリカに行って、実際にそれを専門にやってきた人が一人おるので、それをたよりに、今専門にやっておりますけれども、そういういろいろな治療を行なうために、ただ医者がいればいいんだとか、看護婦がいればいいんだということだけじゃなくて、いろいろ作業療法なら作業療法専門の職を作らなければいけないし、それからいろいろなその社会復帰のためのいわゆるケース・ワーカー、精神科専門のケース・ワーカーを置くようにしなければならない。そういう際に、日本にはまだそういう制度ができていないし、そういう専門職がいないのですね。そういうところに、やはりほんとうにわれわれがしなければならない、すべきだと思っても、まだでき上がっていない、非常に何か私、残念だという感じがしているわけなんです。
  45. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 参考人に対する質疑は、まだいろいろあると存じますが、この程度で終了いたしたいと存じます。  一言お礼を申し上げます。参考人方々には、本委員会における審議参考に資するため、それぞれ有益なる御意見の御発表を願い、たいへんありがとうございました。麻薬対策に関する問題の重要性にかんがみ、本委員会におきましても腐心いたしているのでございますが、皆様の御意見も十分参考にいたしまして、なお今後ともこれが対策に力を注ぎたいと存じます。  たいへんありがとうございました。(拍手)   —————————————
  46. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 次に、政府に対する質疑に入ります。  御質疑のある方は順次御発言を願います。厚生省、大蔵省、法務省、それぞれ質疑の通告がございますから、御着席願います。
  47. 小柳勇

    小柳勇君 厚生省に質問をいたします。  この前の委員会におきまして質問いたしました、その資料要求に対する回答が出ております。この回答に沿いまして、三点だけ質問いたしたいと思います。  一つは、ただいまの参考人意見にもありましたように、患者施設に収容して、これを治療し、かつ生活指導をすることが必要であるということは、これはもう大方の意見でありますが、収容施設として、厚生省は、国または地方団体で、専門病院を作るということを提案しておられます。内容を見ますというと、まことにお粗末でありまして、三十八年度で二百床の計画があるようであります。国立のものが二百床、地方の補助が三百床で、五百床でありますが、おそらくこれでは何とももう焼石に水ではないかと考えます。先般の調査団の報告によりましても、私の近所にある小倉市だけでも、二千名近くの患者がいるという報告がなされておりますが、全国を見ますというと、おそらくこれではもうほとんど用をなさないと思いますが、国立の収容所あるいは県立の収容所以外に、民間の人たちの協力を得て、早急に収容所を作る必要があると思うが、民間の人たち病院なり収容施設に対して、国の補助なりあるいは金融措置なり、どのようにお考えであるかお聞かせ願いたいと思います。
  48. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) 中毒患者の収容施設が不足しているということは、ただいま御質問のとおりでありまして、私も早急に施設の増加をはかって、中毒患者対策を推進していきたいと思っているわけでございますが、先ほども青木先生のお話もございましたように、入れものを作ると同時に、その運営管理についても重要な問題がございますので、とりあえず来年は国立で二百床、それから府県立に補助として三百床の分を考える。そういうふうに予算を計上したわけでございますが、民間はこれは従来復光会に対しましてはすでに二百床、それから桜ケ丘のこれも民間の財団法人病院でございますが、百床の補助も出しているわけでございまして、まあ、都道府県並びに財団法人その他の公益法人に対しては設置を慫慂して、できるならば補助の措置を講じていく、そういうことで、国と都道府県または公益法人というような三本立で設置を考えていったらいかがであるかというふうに私ども考えているわけであります。
  49. 小柳勇

    小柳勇君 個人の場合、この医療金融公庫法の融資の問題など優先するというような臨時的な措置についてはいかがですか。
  50. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) 個人の病院で特殊の方がおられますのをチェックするということは私ども考えているわけではございませんけれども麻薬中毒患者というものが特別のものでもございますし、そういう方がはたしておられるか、私ども予算編成のときによく予想もできませんでしたので、とりあえず、公的なものとして考えたわけでございますが、しかし、とりあえずの措置としては、そういう私の病院でも、法律上の制度としては麻薬中毒患者の収容施設として指定をすることの可能性法律考えていきたいというふうに考えているわけでございまして、指定をしましたならば、それは少なくともそこで入院をする場合のそういう入院費、強制入院の場合の入院費等は国並びに都道府県で見ていく、そういうふうな法律上の可能性考えていきたい、かよう考えております。
  51. 小柳勇

    小柳勇君 現在精神病院などに主として収容してあるのですが、専門の医院を新たに建造するというようなことについては、指導なりあるいは補助なりいたしますか。
  52. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) ちょっと今の御質問の趣旨を……。
  53. 小柳勇

    小柳勇君 現在は精神病院に主として収容してあるわけです。たとえば外科病院とかあるいは内科の病院に指定をして収容させることはお考えになるようでありますが、新たにこれを、専門病院を作るというような場合はなかなか法人化も簡単にできない。個人の病院が建設するというようなとき、特別に融資あるいは指導、そういう方向の考えはございませんか。
  54. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) 実は三十六年の予算で、そういう民間といいましても財団法人関係の麻薬中毒施設の補助金が、これは予算措置しまして、その施設を作る希望者をずいぶん探したわけでございます。財団法人その他の民間では、なかなか現在のところ、私どもがずいぶんほうぼう探してようやく東京都のほうに百床の、精神病院に付置する専門麻薬中毒患者病院を作っていただくというようなことになった三十六年度のそういう経験もございまして、その点はなかなか私どもはむずかしいという、現状においてはむずかしいという判断をしておりますので、しかし、事情が変わりまして、そういう希望がもしおられますならば、それに対してはまた新しき観点から考慮していったらいかがかと考えております。
  55. 小柳勇

    小柳勇君 第二の問題は、麻薬取り扱いについて医者は非常に慎重にしてあると思いますが、麻薬患者とわかっておって、たのみに参りますと、十人の医者のうちに九人はこの薬をやることを拒否しないという報告が出ているわけです。一人だけは拒否するということでございましょう。こういう医者が、言うならば不正施用する、麻薬を不正施用する、このような者もこの際徹底的に取り締まりませんと、麻薬の売買については極刑をもって取り締まるにいたしましても、医者が不正施用する場合にはそれはまた非常な悪い影響がありますが、この点について最近どのよう指導をしておられますか。
  56. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) これはごもっともな御意見でございまして、まあ、来年度の予算におきましては、そういう面で都道府県に配置しております麻薬取締員の増員も実は予算要求しておるような次第でございますし、しかし、これは来年度の予算によって人間がふえてから取り締まりを強化するというような性格のものでもございませんし、去る十一月の六日の日に、私どものほうで各取締官事務所の捜査課長の会議を招集したときでも、私から特にその点を申し上げたわけでございますが、警察等の方面からも、警察もそういう点を十分にやるけれども、取り締まりについても、不正の麻薬施用についての医療、いわば麻薬施用者の取り締まりを強化してくれという要望もございまするし、私どもはそういう点は従来も十分やっておるつもりでございますが、特に厳重に指導して不正のものは取り締まりを強化していきたい、かよう考えておるわけでございます。
  57. 小柳勇

    小柳勇君 最近都道府県などに出されました達しなどございますか。
  58. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) たしか七月ごろだったと思いますが、そういう通達も出しております。これは、八月でございますか、ちょうど横浜でああいう麻薬患者があぶれまして、いろいろ世間を騒がせた直後、川崎その他で医療施用者の麻薬の盗難事件が頻発しましたので、盗難に対する問題は、結局、これは管理の注意ということも必要でございますから、そういうものとあわせて麻薬施用者の管理の適正をはかっていくように、それに対して取り締まりも十分指導監督をするようにという意味の通達を八月の初めころだったと思いますが出しておるわけでございます。
  59. 小柳勇

    小柳勇君 麻薬関係の地方の親分衆は笑っていますから、医者のほうをまず取り締まらなければと笑っていますから、厚生省の今後の強力な要請なり指導お願いしておるわけです。  それから第三点は、厚生省の回答の第一ページに書いてあります、麻薬密売者には厳罰主義をとるべく目下関係方面と研究中であると書いてあります。厚生省だけの答弁ではどうかと思いますけれども、とりあえず厚生省からお聞きしておきたいのは、先般都条例によりましてぐれん隊取り締まりが今なされております。まあ、新聞に出ただけでも相当の効果があるということが一般にいわれておるわけです。こういう時期でありますし、麻薬の問題はもう国会で決議しましてからでも二カ月になる。ところが、ただ取り締まりだけをやりましてもなかなかこれはぴんとこないわけです。研究中ということよりも、むしろ近くの国にならって、今度は密売者などについては死刑だとか無期だとかいうことが新聞に出ただけで相当の効果がありはせぬかと思うのですが、研究中であるということももちろん必要でしょう。死刑については私ども簡単に肯定できませんけれども、さっきの参考人の言葉のとおりです。したがって、各省との折衝の状況についてできれば拙速をもって新聞発表でもするようなのがこの時期としてはマッチしはしないかと思いますが、その点の御勘案はなされておるかどうかお聞きしておきたいと思います。
  60. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) これは、最終的には法務省のほうで決定していただくわけでございますが、私どもと今法務省の事務的な話し合いの段階では、法律改正の原案といたしましては、大体営利常習罪については三年以上無期ということを私どもの一応の案として折衝していきたいというふうに考えております。従来、現行法におきましては一年以上十年の懲役、五十万円以下の罰金ということになっておりますが、それを三年以上より無期まで、それに罰金の金額もでき得れば一千万円程度までは増額していきたい。それに関連しまして、そのほかの刑罰もそれに比例して上げていく。それから別に、ちょうど売春防止法に、場所の提供とか、それからあっせん的なものに対する罪が独立罪として規定されております。そういうものと同じよう意味麻薬の密売に対して場所を提供したり、あるいはその他の情報を提供したり、あっせんをしたりするようなものに対しては、現行法ように、それを従犯または共犯として処断するのではなく、独立罪としてその他の犯罪が成立しなくてもそれだけで犯罪が構成できる、そういうふうな体制も同時に行なっていったらどうかというようなことも現在検討しているわけでございます。
  61. 小柳勇

    小柳勇君 まだ最後の問題、予算の問題がございますが、また別の日にいたしまして、ただ要請だけいたしますが、来月になりますと国会が始まりましてほかの問題がたくさん出て参ります。きょう特に参考人に来ていただきましてこの問題を取り上げました委員長理事打合会の真意は、報道機関の皆さんに全面的に協力してもらって、こういう機関に大々的に宣伝してもらって麻薬のおそろしさ、それから取り締まりに本腰で厚生省が乗り出したということをそういう関係の人に知ってもらって、これをひとつこの際撲滅したいという参議院社労の真意でありますから、厚生省もその面でよほど関係の皆さんにも協力願って、徹底的にこの際、臨時国会開会までに対処していただきたいということを要請いたしまして質問を終わります。
  62. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) ただいまの御趣旨を十分私どもも体しまして善処したいと思います。
  63. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 今、小柳委員の御質問の中で、医師が非常に不正施用をしておる、特に患者が医師のところへもらいに行った場合に、十人のうち九人まではやっている、一人が拒否するという実情だ、こういう御質問に薬務局長はごもっともと言われたんですが、それはどういうところの資料から出たんですか。まず一点それをお伺いいたします。
  64. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) まあ、十人のうちの一人という意味をごもっともだと言ったわけでございませんで、医師の不正施用がふえているということはごもっともというつもりで答えたのでございますが、これは警察からの報告によってもその点がはっきりとしておるわけでございます。
  65. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 ふえている原因について厚生省は調査をされた事実がありますか、ありませんか。
  66. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) この点だけを特に調査したわけではございませんが、私どもとしては、これはまあ一面、非常に医師に対しては単に悪いというだけできめつけられない面があるのじゃないか。一つは、一般の取り締まりが非常に強化されていきますと、不正の流通というものが相当阻害されますので、中毒患者がどうしても正規の麻薬にすがろうとする傾向があるわけでございまして、そういうふうな一つの最近の傾向によってどうしても麻薬は手に入れたい、しかし、なかなか不正の入手というものが従来よりも困難になってきた。その結果、どうしてもそれは一般麻薬を所蔵されているとする麻薬施用者のほうにその要求が流れていくという、そういう傾向からお医者さんの不正施用、それとの関連において不正施用というものが勢いふえてきたんじゃないか。したがって、医師の不正の中には、まあ強要されたり、あるいはその他の理由で、初めは知らなくて売って、それが二回目から逆に居直られたというような事情もあるかと思います。しかし、中にはほんとうに事情を知って不正に施用されている医者の例も相当警察の報告等にあがっておりますので、そういう非常に事情をしんしゃくすべきものもありますが、また不正な医師も相当ふえておるという両面があるというふうに私どもは今日考えておるわけでございます。
  67. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 今、薬務局長のお答えは、実態調査に基づかない、大体推定でございますね、原因についての。
  68. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) これは私ども麻薬取締員の報告並びに警察の不正取り締まりの結果の報告に基づいた私の判断でございます。
  69. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 これは早急にその実態の、あなたの判断の基礎になった資料をお出しいただきたい。  もう一つは、今のお答えの中で最も大事な原因について私の見解からして足らないと思われる点があるのですが、この点について御意見を承りたい。埼玉県で起こった最近の麻薬の施用者の不正事件にしても、実態を調べてみると、二人の中毒患者によって四十何人の医師がひっかかっておる。そうしますと、今までの取締法ですと、たとい医師が中毒患者と認定して報告をしても、その患者は、まあ行政当局は何らの施すすべがない、野放しのままである、しかもそれだけの報告をさしておいたのならば、あとはその患者がどこでどういうことをやるという、まあ何というのですかな、注意をするだけの私は義務があると思う。今までそういう義務を、あるいは注意を払った事実はありますか、これが一点。
  70. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) 埼玉の件は、私どもよく調べまして、その結果御報告したいと思います。
  71. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 これは私が一つの例として申し上げたので、一般的に中毒患者として報告を受けた者について、当局が自今さようなあやまちを犯さないような注意なりあるいは監視なりを今まで行なっておったかどうかという点を聞きたい。
  72. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) まあこれは府県の麻薬取締員の活動の問題というふうに私は思うわけでございますが、医師のそういう不正の事例があった場合には、私は当然麻薬取締員の報告を受けて、その事情を知った場合には注意をし、将来そういう事件が起きないような監督をしているというふうに私は考えております。
  73. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 そうすると、今までたとえば医師が中毒患者を報告した場合に、その報告患者について今局長が言われたようなことを怠っている取締官があるとすれば、これは職務上の怠慢になりますか。
  74. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) まあそれはそのときの事情によると思いますが、たとえば中毒患者の報告を受けて、そしてそれを社会の、たとえば精神衛生法の二十九条に該当するという場合には、麻薬取締員はそれをそういう措置の要請をすることが必要だと思います。そういう点について当然なすべき措置をしなかった場合には、これは取締員の職務怠慢になるかと思いますが、すべての中毒患者を、そのまま聞いて入院させなかったというような事柄だけでは職務怠慢になるかどうか、その点はそのときの具体的な判断に待つ以外ないと思います。
  75. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 私は二十九条該当とか、あるいは入院とかを言っているのではなくて、中毒患者を発見した場合には報告しろと、こうあるのですね。その報告をさせる真意はどこにあるのですか。
  76. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) これは結局中毒者というものの実態を把握することによって麻薬の正当な施用または不正な施用というものが判断できるわけでございますから、そういう取締官の職務遂行上の問題にも関連するし、また法律上規定されておりますたとえば強制入院措置の要否、そういうような当然取締官としてなすべき職務の判断の資料として実情を把握し、かつなすべき判断の基礎としての報告の任務が与えられておるというふうに考えております。
  77. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 そうすると、その報告は入院を要するかいなかの判断の資料にする、入院を要しない者についてはそのままと、こういうことですか。
  78. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) そういうことになるかと思います。
  79. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 そういうことになるとすると、入院を要しない中毒患者については野放しということを言っても該当するわけですね。
  80. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) 麻薬取締員の職務としてはそれ以上のことは現在の法律では要請されてないということです。
  81. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 中毒患者が野放しになっておって、その中毒患者が犯罪を犯すまでは少なくも手がつかない、今の取締法では手がつかない、これは私もわかります。しかしながら、ほかの問題と違う、どろぼうや何かでも、まあ私らはよく知りませんが、要注意人物とか何かあるかもしれません。しかし、これは中毒患者と報告を受けた以上は、報告をさせた以上は、その報告に対して犯罪を予防すべきところの何らかの措置か注意が払われなければ、私は報告さした意味というものが大部分飛んでしまうと思う。その意味において取締官が起こった犯罪を追及する面も必要でしょうが、より大事な面は犯罪を予防する方向に努力しなければいかぬだろう、私はその意味で報告というものは非常に意味がある、そういうふうに解釈しておった。ところが、そうではないということを承ったのですね、そう思っていいのですか。
  82. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) 中毒患者ということの実態を把握するということが報告の規定の趣旨になっていると私は思います。それが中毒患者がはたして犯罪をするおそれがあるかどうか、それは中毒患者それぞれの個人々々の実情をよく把握しておくことによって、中には犯罪を起こす危険があるというような場合もあるでしょう。その場合には、取締員がそういう報告をもし受けたならば、それは警察にも連絡をするという当然の取締員の職務の問題になりますから、そういう取締員が自分の職務をやっていく上にはまず実情を把握する必要がある、そのためには報告を受ける必要があるという意味でございますから、報告を受けることから関連してくるさまざまの問題は、取締員が法律の規定上当然なすべきことは当然していく必要があるかと思います。しかし、中毒患者がすべて犯罪を犯すかどうかということは少し早計な断定じゃないでしょうか。したがって、個々の中毒患者の問題としてそういうものは当然警察にも連絡をし、あるいはみずからも予防の措置を講ずる必要があるかもしれません。しかし、単なる中毒の者は報告を受けたままでもいい場合もあるでしょうし、それは報告を受けたということからくる当然の論理ではないかというふうに私は考えておるわけでございます。
  83. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 中毒患者として報告しておいてですね、まあ医療機関が安心しておる、一週間ぐらいたってまた顔を出す、お前はおれを報告したなと脅迫される、これは脅迫されたら警察へ訴えればいいじゃないか、これは机上の考え方なんです。実際になかなかそこまでいけるものじゃない、つい心ならずも脅迫されて、あなたがさつき言われた例の中にそれが入っておったと思います。それを私は非常に重要に考えるわけです。医師というものは患者をなおそうという善意だけでいかせておくというような制度でなければならない。ところが、来た者が中毒患者かどうか疑ってから見るというような、そういうようなところに追い込んではいかぬということです。私が申し上げたいのはそのことなんです。このことに関連して先ほど小柳委員の質問の中に、私としてはたいへん看過できない重要な御発言があった。ある麻薬ボスが、いかに麻薬を取り締まっても取扱者のほうを怠っておったならば、これは何と言ったのですか、笑うべきことだというふうな——あなたはそれに対してもごもっともだとお答えになった。私はこれは非常に危険な点だと思う。かねがね警察当局の資料等あるいはわれわれ検討の結果、今日本を毒しているのは九九%までヘロインです。九九%までといえないまでも大部分は密輸ルートから入ってくるヘロイン系統の麻薬です。その方面の取り締まりを取扱者のほうに向けることによってゆるくさせようとする謀略じゃないかと思われるほど私は心配になってきた。というのは、これは釈迦に説法でしょうが、取扱者というのは毎年末に買った量と使った量を厚生省にちゃんと報告している、注射薬にしたって一本だっておろそかにできない、一本破損しても届けて許可を受ける、粉末だってきちんと一人の患者に何グラム使って幾らと、一年の合計をちゃんと厚生省に届けている。よっぽどずうずうしくてよっぽど巧妙にやっても、それから流れる量というものは知れたものである。まして厚生当局が適正な監督をやっておれば、これはそこから流れる量というものは些細なものであるわけです。ところが、麻薬ボスがそこを押えなければ意味をなさないというふうにせせら笑ったとするならば、その謀略がそこにある。これについては御意見を承りたいと思うのですが、私の要望は、ぜひとも警察当局はもとより厚生当局はさような謀略に惑わされることなく、日本ほんとうに毒しておるのはヘロイン系統のほうの密輸ルートである、これをたたき上げることが最も今喫緊の重要なことであるという点についてぜひともこれは明確にしておいていただきたいと思う。その点についてひとつ先ほどのように、一年分の使用量についてちゃんと報告している、これは間違いなかったと私は言わない、今までもあった、大ぜいの中であるから不心得の者があったに違いない。しかし、はたして今日の麻薬騒動の起こっておるところの原因に対して何%が、いつぞやの警察当局の資料を見てもわかると思う。八十何件、たしか私の記憶に間違いがなかったならば八十六件だと思う。こういう点は今後しろうとがだまされる傾向が非常に出てくると思う。そういう連中によってそういうことをしろうとがだまされないように、厚生当局はPRに最も力を入れていただきたい、こういうふうに思うのです。
  84. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) これは麻薬の不正施用ということは結局大きく分けますと、そういう密輸入される不正の主としてヘロインでございますが、そういうものが国民を害しておる、これはもうおそらく何人も異論のないところであろうかと思います。したがいまして、これに対する取り締まりの強化ということをさらに推進していくこと、これが私どもの当面なすべき重大な問題でございますが、しかし、小柳先生がおっしゃった質問は、それはそれとしてそれの重要性を否定するというととでなくして、全国的には麻薬使用者といったら十一万の数の人がおりますし、その人もそういう医師、歯科医師の方々が全部悪いことをしているというふうにはだれも思っていないのでありますが、しかし、そういうふうにたくさんの件数の人員によって取り扱われている正当な麻薬の取り扱いの中においても、中にはやはり不正な人がおる、そういうものによって犯罪が起こされるという点を見のがしてはいけない、そういう両面をよく見て適正な取り締まりの強化をはかれという御趣旨だと私は理解をして、ごもっともだという答弁をしたわけでございまして、おそらく丸茂先生の質問の趣旨もヘロインによる国民に対する麻薬禍というものが、医師の一部の不正によってその価値を非常に減少して国民が惑わされるようなことがないようにしろと、それほどのウエートを持って医師の不正を考えておられるわけではないと思うのであります。おそらくその比較はこれは議論の余地はないと思いますけれども、しかし、そうかといって、そういう医師の中で、あるいは歯科医師の中で不正施用者というものを手をこまぬいていてはいけない、これは不正は不正として厳正な態度で臨むべきである、そういうふうに私は考えますので、その点については厚生省としてもそういう責任上十分に指導をし、不正のものに対しては厳罰をもって臨む、こういう態度をとるべきではないか、こういうふうに考えるわけでございます。
  85. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 たいへん牛丸局長は聞き上手なんで安心しましたが、ただ問題は、私ももちろん取扱者に対して監視、監督を厳重にすることは賛成なんです、反対の意味ではない、ただそれが行き過ぎますと、何と言いますか、善意と申しまするか、先ほども申し上げました診療所の善意が阻害される、これが今日出ておる、これを心配するのです。これはいつかの警察当局の資料でも、一人、一回だまされて、中毒患者にださまれて、医師が注射をして犯罪になっておる例が相当入っておりましたね、あの資料の中に。そういう点を考えますと、今、医療機関で、特に麻薬というものは繁雑でかなわぬ、このままでいくならば、麻薬はひとつ施用しないことにしようじゃないかという機運が強く、これはどこにいっても、とばっちりはどこにいくかというと患者さんにいく以外にない。これはたいへんむずかしいと思います。監督を厳重にするが、その面をうまくするということはなかなかむずかしいと思います。しかし、医師が使わなくなってもこれまた困る。そこで特に当局者はその辺の事情を十分頭に置いていただいて、今後、私が一番安心しております点は、法律改正になって、中毒患者強制拘禁になって犯罪を次々に犯すことができなくなる、その点で今までのようではなくなるということに希望を持っております。持っておりますが、やはり行き過ぎるという点を十分警戒していただきたい。もちろん、それぞれの専門団体では、みずから自戒して、麻薬の施用については自戒する態度は現在もあるようです。しかしながら、それはそれとして、やはり当局はそういう広範な意味からも指導を怠らないように、これはぜひお願いしたい。
  86. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  87. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 速記を始めて。
  88. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ヘロインの国内に入ってくる、これは結局水ぎわの防除が一番大事だということはわかり切っていることなんですが、いろいろ努力はされていると思うのですが、現在税関のほうでは、入ってくるのに対して、ヘロインを含めて一切の密輸品全部でございますけれども幾らか奨励金のようなものですか、密告制度のようなものがあって、そうするというと幾らか出すというような内規があるということを聞いたのでございますが、その点内規なのか、はっきりしているのか、どの程度のものか、まず先にひとつ伺いたい。
  89. 前川憲一

    説明員(前川憲一君) これは御承知のように、関税法上の報償金と言いますのは、もとは法律できまっておった、ところが、昭和二十九年に税法全体につきまして密告というふうなことは別の面から申しますと、社会の公序良俗に反するというふうな一般的な考え方が出ましたので、これは所得税法その他一般税法全体について法律上の報償金制度というものはなくなったわけでございます。そういう関係で予算も認められませんし、法律上もそういうことは正々堂々と行ない得ない、こういうことになっておりますので、現在ははなはだ少ないのでございますけれども密輸金額の千分の十五というきわめて微々たるものしか出していないのでございます。それでいいのかという点でございますが、事麻薬ということになりますれば、これは密告ということはあまりよくないことなんだというような、常識では律し切れない。先ほど来お話にもございましたように、全国民的な最大の関心事であって、その災いからわれわれ国民はみずから守らなければいかぬ、こういうことでございますれば、税法そのものに書くのはむずかしいといたしましても麻取法その他で、事麻薬情報については報償金が出るのだというような立法が行なわれて、それに基づいて堂々と予算が出るというふうになることが望ましいのじゃないか、われわれが麻薬の関係の情報を得ました場合の過去における取い扱い等から見まして、そのほうが効果が上がるのではないか、かよう感じております。
  90. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 最高限度どの程度になっておりますか。五万円というふうにちょっと聞いたことがあるのですが。
  91. 前川憲一

    説明員(前川憲一君) 最高五万円でございます。
  92. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 最高五万円、千分の十五で最高五万円ということですが、いろいろまた麻薬の場合ですと、向こうから入ってくるときにルートごとの争いもある、あるいは親分子分の争いもあるというふうで、もっと密告制というのを善用してくれると非常に工合がいい。今申されたよう法律に整備されて賞金制度が出れば非常に問題ないわけです。まず現在ある内規を最大限度に活用していく、特に一般の時計とかなんかの密輸と違いますので、最高限五万円をもっと引き上げるとか、あるいはもっと一面には、千分の十五であるとか最高限度五万円であるということは一般に知られていない。大々的にというとおかしいですけれども、特に麻薬の問題で、こういうことがあるからひとつ大いに協力をしてもらいたいという宣伝をやるべきじゃないかと思うのですが、その点についてPRの方法やっていくよう考え方、これは大いにやっていただきたいと思うのですが、特に船員関係とか業者関係とかやってもらいたいと思うことなんですが、どんなですか。
  93. 前川憲一

    説明員(前川憲一君) 今、先生の御趣旨ごもっともと思います。この当委員会にわれわれが提出いたしました、税関として行ないまするところの麻薬取締対策の三の(4)にも書いてございますが、「税関業務に関係ある業者団体に対する部外広報活動の積極化とその協力の要請」沖仲仕組合でありますとか回漕業者その他でございます。その御趣旨に沿ってPRをやりたいと思います。ただ報償金ということにつきましては、できるだけ今言ったような、たとえ五万円という頭打ちであっても最大限に活用するようにいたしますが、何分にも予算のワクもございますので、もちろんその予算が足りなくなるほど大いに密告があれば大いに慶賀すべきことなんですが、まあ法律上制度を設けておりませんので、内規を変えて特に今の段階で麻薬だけ多くするということはちょっと問題があると思いますが、一応現在の制度上認められているところでは予算の許す範囲内で報償金制度を活用するようにいたしたいと思っております。先般もこの委員会であるいは申し上げたかもしれませんが、門司あたりで船に積んでおりました麻薬が発見されておりますが、それも沖仲仕の方が中国人水夫が、中国人の船員でございます、郭安という人がはなはだ不審な挙動をやっておる。それを沖仲仕の方が税関に通報してくださったので、それに基づいて船内を捜索して、その部屋から、なまアヘン六百十グラムを発見したわけでございます。そういう通報に期待するところは、最近の実例から申しても多いと思います。
  94. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今、一般的な広報活動のことはこのプリントにあるとおりだと思いますけれども、特に報償金について海員も知らないというよう状態です、はっきり言えば港湾関係の。これは積極的に進めてもらいたいと思います。以上であります。
  95. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 小柳委員の質問に対する薬務局長の答えの中で、もう一度お聞きいたしたい点が一カ所あります。それは麻薬常習営業的な不正取扱者に対する罰則強化の点で、無期懲役、または罰金刑を一千万円台まで単位をひとつ上げるようにしたい。この考え方だというお話を伺ったのですが、このときに、これに関連して、いわゆる麻薬取締法強化に関連して、他の取締法をも改正を考慮していると考えているのだというお答えがあったと、私はこう思います。こう聞いたのです。これは私は、法務省がたとえば罰金刑を一千万円の単位に引き上げるについて、あるいはこの麻薬不正取扱者に対する無期懲役刑を行なうことについて、一般法との関連から考慮されることはこれはあたりまえだと思いますが、厚生省の内部で、たとえば麻薬取り締まり強化、罰則を強化すること等を機会に、他の、あなたは厚生省全体と言われたのは、薬務局関係の他の取締法をお考えになっているのかどうかしりませんが、その点、私お聞きをしたのに不明確だったから、たしか考慮している、こういうお言葉があったようですが、その点伺っておきたいと思います。
  96. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) 私の説明が少し不足しておったように思いますが、麻薬取締法の中のいろいろの罰則がございますので、それの営利常習罪というのがそのうちで最高の刑罰でございますから、それを一年以上十年というのを三年以上無期というふうに上げますと同時に、麻薬取締法の中のいろいろの不正施用の罰則、それが総体的に関連するものがございますから、そういうものを多少是正するということで、その他の法規の一般までやる、そういう趣旨ではございません。取締法内部の問題だけでございます。そのバランスの問題でございます。
  97. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 法務省の方にちょっと伺いたいのですが、今これから三年以上無期という刑になるということで、いよいよ保釈がきかなくなる。これは非常に助かったと思いますが、現在までのことを考えても、三カ月で大体一つ麻薬の小屋が持つそうです。そうすると、八十万ぐらいもうかる。中間で三回ぐらい保釈されれば大体一年分くらいのかせぎは出るという状態で、一向差しつかえないという話だったが、これが三年以上ということになることですから安心いたしました。いまひとつ、これは大きな問題ですが、刑の執行停止の問題、肺病になったり、あるいは中には売人の中でわざと断食をやって体をこわす、そういう状態で拘置所なり刑務所から出てきてしまう。ところが病院からそれが脱走してしまうというよう状態にあるわけです。この点、病気のときすぐ医療刑務所へ入れるなり、あるいは拘置所の中に特別に病院を作るなりしなければならないと思うのですが、この点についての考え方、特に麻薬事犯についての刑の執行停止について、これは行なわないというような方向に持っていけないものかどうか、その点の考え方をひとつ聞いておきたいのです。
  98. 荻野かく一郎

    説明員荻野かく一郎君) 私、きょう資料を持ってきておりませんので実例を申し上げかねるのでございますが、実はただいま御指摘のような事例は幾つかあるのでございます。法務省といたしましては——と申しますより検察庁といたしましては、ことにこの麻薬事犯関係の被疑者、被告人に対しまして、保釈の請求がありましても、これはもうもとより不相当である、執行停止が出ましても、これは常に反対の意見を申し述べておるわけでございますが、それがまことに遺憾なことに裁判所のほうで執行停止になさり、あるいは保釈なさる、そのためにただいまお話のございましたように逃げてしまった、その後なかなかつかまらないという事犯もあるわけでございまして、私どものほうといたしましては、勾留の執行停止あるいは保釈、こういうことについては厳重にしないようにと、そういう方針で進んでおるわけでございます。
  99. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 しないように進んでいるというのですが、実際、警官あたりに聞いてみるというと、取り締まりの警官に聞くと、病気で執行停止になって、肺病の重病だということで病院に入っておるというのが、まっ昼間から日ノ出町かいわいで酒を飲んで歩いている、実際にそこで売買をやっているという状態なんですね。そういう状態があるのに、今のお言葉とずいぶんとうらはらな感じなんです。これはもっと強力に進めていくというか、その点の、現地としてはこれでは取り締まりをやったって何の情熱もわかないじゃないか、あげたと思えば出てしまうじゃないか、それで麻薬をなくせと言ったってできないじゃないかという声になってくる、実際、相談員なんかもああいう大ボスがすぐ執行停止になってしまうのじゃ困るじゃないかという声が起こっておるわけです。しまいには相談員の情熱もなくなってくるのじゃないかという心配があるわけです。執行停止の点について、今のようなお座なりでなくて、情熱のある考え方というのをちょっと伺っておきたいのですが。
  100. 荻野かく一郎

    説明員荻野かく一郎君) 執行停止に限らず麻薬事犯全体の、検察といたしまして、法務省といたしましては非常に厳格な態度で臨んでおるのでございまして、たとえば先ほどもちょっと話が出ましたように、最近、懲役十年、罰金五十万円という判決があったのでございます。これも第一審は検事の求刑に対しまして懲役七年という刑が言い渡されたのでございまして、検察官はこれを不服として控訴いたしました結果、十年、五十万円という判決があった次第でございまして、検察官といたしましては、決して手ぬるい、なまぬるい考えをもって進んでおるわけではないということを申し上げておきたいと思います。
  101. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 厳重にやっていると言いながら、現在酒を飲んで執行停止で歩いているのですから、その点は十分に連絡を取り合ってやっていただきたいし、そういった保釈を許さないように、よく裁判官のほうに言っておいてもらいたいと思うのです。  それから先ほど答弁していただきたかったのですが、漏れてしまったようですが、拘置所の中に病院等を作っていくよう考えですね、責任ある答弁はできないかもしれませんが、お願いしたいと思うのですが。
  102. 荻野かく一郎

    説明員荻野かく一郎君) いささか所管外にわたりますことと、申しわけありませんが、資料を持ってきておりませんので、明快に御答弁できかねることを遺憾に存じますが、御指摘のとおり、法務省の所管いたしております収容施設の中に麻薬中毒に関連のある者、中毒者と申しても差しつかえございませんが、これが相当数おることは事実でございます。明確に数字を申し上げかねますけれども、現在、収容施設におります者は麻薬中毒者、これが二千人くらいおると思います。これにつきましては、それぞれ医療的な面とそれから処遇的な面と、両方を矯正当局では考えてやっておるのでございます。ここに私、ちょっと横浜関係の資料は持ってきたのですが、非常にこまかい、どういう処遇をしたらいいか、どういう医療を施すべきであるかという点を研究しながら実施しておるのでございます。もちろん大きな拘置所、それから刑務所にはもちろんでございますが、それぞれ医療部、また専門医療刑務所もございまして、病症によりましては医療刑務所なり、あるいは刑務所、拘置所の病室のほうに移管いたしまして、治療の面とそれから処遇の面とについてやっておるわけでございます。しかしながら、これが決して十分とは申し上げかねる現状でございますので、本日、資料として提出いたしました予算関係のところにもございますように、来年度は医療刑務所の病舎を初めといたしまして、三十四カ所に中毒者に対する保護房の整備を考えておりますし、それからまた、麻薬中毒の収容者に対する治療用の器具の整備、それからまた、全国二十カ所の刑務所に医療センター的なものを考えるということを計画いたしておる次第でございます。
  103. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 厳重にやるということですから、見守っていきたいと思います。厳重にやってもそうやって歩いている状態ですから、なお一そう厳重にやってもらいたいと思います。  次に、厚生省のほう、薬務局長に麻薬相談員のことについて伺いたいのですが、今度だいぶふやすことになってきております。現状の配置ですが、いろいろな濃厚地区——濃厚地区でないところにも配置されておりますが、看板を出して堂々と麻薬相談所としてやっているところもある。そうかと思うと、どこに相談所があるのかわからないというようなところもあるわけですが、その指導についてどういうふうに考えていらっしゃるのか。
  104. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) 麻薬中毒者の相談制度というものは、神戸の制度が私ども非常にいいと思って予算化しまして、そうして濃厚地区八都府県にそういう制度を予算化したわけであります。まだ今、まあいわば実験的なものでございまして、麻薬相談所という看板を掲げたほうがいいという意見と、そういうものがあったらかえって相談に行きにくいんじゃないかというふうな意見もございまして、その辺はやはり実情に即して、明確にするか、あるいはまあ個人的な人間的なつながりというようなことでやるか、両方考えるべきじゃないかというふうにも現在考えておりますが、これは法律改正の中にそういう相談所の制度なり相談員の制度を明確にするまでに、その辺をもう少し制度的に詰めまして、そうして、いずれか一方にきめるか、あるいは両方の制度をとるようにするか、予算的には来年、現在の九十六名を倍の百九十二名に増員いたしまして、もう少しそういう相談員の活動の分野を広げていきたいというよう考えておる次第であります。
  105. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 今、実験段階であるというお話なんですが、実際、横浜あたりでは、実験段階どころか動いておるわけです。ところが、東京都あたりの相談員に実際に当たってみますと、看板は病院の奥深くのところにかかっている。診療室をあけなければ出てこない。実際に来たのかというと、濃厚地区があることは知っているけれども、実際に行ったこともなければ、相談に来た人も一人もいないという状態です。どういうふうにやったらいいのだろう。ただ五千円もらっているだけだ、こういう状態のところがある。本格的にやるなら、実際に横浜あたりの中毒者や、あるいは相談員の声を聞いてみると、濃厚地区のどまん中に常設の相談所をつくっておかなければだめだというのです。そうして、因ったときにすぐかけ込めるようにしておかなければならない。ところが、一方では、東京のように全然なっていないところがあるわけです。麻薬相談員の選考の方法ですけれども麻薬のおそろしさ、ヘロインのおそろしさを知っている者がやらなければできないわけです。その点について、この選考の過程がどうなっているのか、どういう基準で選ぼうとしたのか、その点についてひとつ。
  106. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) これは神戸の実際の実施の状況を見ますと、大体、主として民生委員とか、それから司法保護司というよう方々の中で、日ごろ麻薬中毒患者なり、あるいは麻薬を施用するような人に接しておられるような人がそういうふうな相談員としての実際の仕事をやっておられますので、そういうふうな身分の人が、私どもとしては適当じゃないかというよう考えまして、大体、選考の基準として明確なものを持っておるわけではございませんが、そういうよう中毒患者の実際のお世話をしていただく人となれば、結局は、やはり民生委員なり司法保護司というよう方々の中で、特に麻薬に対して熱意を持っておられる、そういう方にお願いをするというように、将来もそういう方向でいったほうがいいのじゃないかというよう考えておるわけでございます。
  107. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 時間も十分ないようですから急いでやりますけれども、肩書きだけの人がいるわけです。肩書きが、今、局長の言われたように、民生委員なり司法保護司というような名前から相談員になっておるというだけの人もあるわけです。私がここで申し上げておきたいことは、先ほども中毒から更生した安藤さんが来ておりましたけれども、実際麻薬の恐怖を知ってきた人や、あるいは、そのかいわいにいて売買の取引場所を提供した者であるとか、そういうような人で、麻薬の罪悪、おそろしさというものを心から身にしみておる者がやらなければ、患者の心理というのは非常に微妙でもありますし、相談ということはできないわけです。むしろ・指導の方法としては、民生委員もけっこうでしょう。けれども、それ以上に、そういう実際の中毒者から更生した人であるとか、場所の提供をやった人であるとか、あるいは、やくざの仲間に入って、心ならずも売人をやっていた、しかし足を洗ったとかいうように、被害を身に感じている者にしなければならないのじゃないか。今までの考え方というものは非常に甘いよう感じがするわけです。その点について、要求みたいな格好ですけれども、そういう方向に手を広げて、相談員というものを設置しなければいけないと思うんですが、その点についてのお考えはどうですか。
  108. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) 私もそういう——たとえば、実際に麻薬中毒の経験があって立ち直った方で、そういう相談業務を引き受けて下さるような人がおられたら、これは非常に願ってもないことでもありますし、ただいま御質問のありましたような点は、今度の増員を機会にひとつ考えまして、それから民生委員なり司法保護司の方々に限ったということでもございませんし、ただ名前だけでお願いするというような趣旨でもございませんので、その点、十分将来については考えていきたいと考えております。
  109. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 先ほど、安藤さんから、麻薬のおそろしさについて、これから罪滅ぼしをしたいというよう意見もありまして、そういう点を十分考慮してこれから進めていただきたいと思います。  それから、先ほど総武病院の院長さんに聞いたんですが、非常に悪質な宣伝——病院入院すると死亡するからお前たち相談所に行ってもいけない、あるいは、相談員相談すると、すぐ病院に入れられて殺されちゃうぞという宣伝があったり、また、税関の問題にしても、非常に宣伝が足らないよう感じなんです。今まではテレビでこれを全然やっていなかったわけです。ところが、実際に町の人に聞いてみると、麻薬のおそろしさを知ったのは何から知ったというと、テレビで知ったというのがほとんど多いわけなんです。ところがテレビで扱っているのはいわゆるグレン隊ものです。そして筋書きも非常に芳しくないという筋書きである。そういう中で、テレビで麻薬のことを知っている。だから麻薬のおそろしさを知るというよりは好奇心を刺激されているような格好です。これは厚生省で本格的に麻薬に関係するようなテレビが出るときには、指導するなり助言を与えるなり、あるいは厚生省自体としてテレビというものによって麻薬の害悪というものを教えていく、宣伝していく、こういう考え方はないでしょうか。
  110. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) 私ども、まさにそのとおり考えておるわけでございまして、ちょうど内閣のほうに関係各省集まりまして麻薬対策推進本部ができまして、そして今第一に国民に対する啓蒙、啓発の運動をやろうということで今打ち合わせをしているわけでありますが、おっしゃったような線を十分考えて、特に民間なり報道機関の協力を得て、適正な麻薬禍の認識を深めてもらう、そういう点を私どもこれからやっていきたいと思います。
  111. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 非常に意を強くしました。ただ一般の人はアヘンのほうをヘロインよりよく知っておりまして、麻薬の害毒が一番強いのは何かということになると、すぐアヘンだというふうに思っております。ヘロインというのは知らない人もおるというよう状態です。その点、宣伝のほうには十分力を入れていただきたいと思います。  それから最後になりますが、先ほども総武病院長から半病人の治療制度、いわゆるアフター・ケアというものをほしがっております。これは横浜市当局と相談しても、あるいは相談員の人と相談しても、やはり最後にはアフター・ケアの島流ししかないじゃないかという考え方、ところが、ことしは、来年の要求にはそういうのはないよう感じなのですが、この点についての考えというのをここではっきり出しておいていただきたいと思います。
  112. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) まあ治療とそれから予後の措置というのは、先ほどの青木先生のお話も、期間の問題で、三カ月なり、六カ月なり一年というような、そういう期間の間で、どこまでが治療でどこまでが予後の措置になるかということ、私どもまだ研究する余地がございますし、しかし、とにかく社会へ復帰するまでの十分な措置を講ずることは必要だというお説でもございますから、そういう点を早急に検討して善処していきたいと思います。
  113. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いま一つだけ。職業補導を相当にやってあげないと、実際患者の姿、中毒者の姿を見ていると、職業がなくなっております。慎重に検討するというだけでなくて、早く具体化するよう職業補導を、ほかの施設を利用してもいいですから、考える、こういうようにしてほしいと思うのです。これはいいです。
  114. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 麻薬対策に関する件につきましては、本日のところこの程度にとどめおきます。   —————————————
  115. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 次に、薬品規制に対する質疑がございますので発言を許します。
  116. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は薬務行政について薬務局長にお聞きしたい。  第一に、今日の薬の製造量というものは幾ら出されておるか、それからまたそれは価格にして医療費の中の何パーセントを占めておるか、それを先に聞きたい。
  117. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) 医薬品の年間の生産額は三十六年度で二千百億程度ございます。——その次の御質疑よく……。
  118. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 医療費の中の何パーセントを占めておるか。
  119. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) これは医薬品二千億の中で医療用の医薬品とその他のものと分けまして、大体半々ぐらいのものかと思いますが、医療費の中で医薬品だけの金額がとういうふうに占めるかということは、今の医療費の構成が薬代と、それからお医者さんの薬治料なり、注射料というものが一緒に計上され、支払われているというような、そういう条件もございまして、正確な統計はございませんが、私どもが推定いたしますとしますと、社会保険だけの統計でいきますと、大体約二〇%程度が薬の代金であるというふうに考えます。
  120. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、薬は一番オーバーな宣伝だといわれておるように、非常にたくさん宣伝されて、いろいろの薬がたくさん出ている。薬の販売については薬局における乱売の問題で非常に問題を起こしたのであります。しかし、薬そのものについて研究が高度に発達をして、よりよい薬がどんどんできてきているという状態だと私は思います。そうすれば人体保護の面からいっても高度の、たとえば抗生物質の薬、人体を保護するためにそういう薬というものをやはり薬務行政としては作らせて、できるだけ安く、そうして人体を保護するという指導があって私はしかるべきだと、こう思うわけです。だから、そういう面から見るならば、いろいろの、まあわけのわからぬと言うたら異論があるでしょうけれども、似たような薬が非常に競争で行なわれておる。販売の面なんかの規制というものが必要ではないかと私は思っているわけであります。似たような薬がどんどんと宣伝によって行なわれている。この面の規制は薬務行政としては必要じゃないかと思う。その一面においては高度な内容を持つ非常によい薬を伸ばして、より人体を守っていくという行政があってしかるべきだと私はそう思うわけです。そこで、私はきょうは時間がありませんから簡単にお聞きしますけれども、たとえばクロロマイセチンのような、われわれから見て高度に人体を保護してくれる薬だと思っているのですが、医者が診療する場合においてこの薬がないという現象を各地に起こしているというのは、これは何かこういう製造に対して薬務局が規制しているんじゃないかということが一般に言われているわけであります。で、ビタミン剤とかホルモン剤とか、そういうものがどんどん多量に出るけれども、肝心の人体を保護する高度に発達した薬は薬務局で規制をしておる、こういうことで医者が診療のときに使うことができぬ、薬が集まらぬ、こういう問題があるとしたら、非常に私は重要な問題だと思っているわけです。この辺の点を薬務局としてはどういう工合にお考えになっておるか、またおやりになっているのかどうか、それを聞きたいのです。
  121. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) 薬が全体として生産が伸びておりますし、それから特に医療用の薬で非常に高度のものが生産されていることは私どもも非常に喜ばしいことと思いますが、これは私どもとしてはそういう保険薬といいますか、一般大衆薬を大いに生産を伸ばして、医療薬のほうを規制するという、そういう考えは毛頭ないわけでございまして、むしろ気持の上から言いますならば、その逆の方向に指導をしていっているつもりでございます。それは主として広告の問題におきましても、薬事法においては、虚偽誇大の広告の禁止というものが規定されておりますし、しかし、そういう法律違反だけじゃなくして、適正な広告の基準というものを作って、そうして過度な広告がないように私どもとしては指導しております。したがいまして、保健薬と治療薬の間に生産を規制しているということは、いずれにしてもないわけでございます。今のクロラムフェニコール等の問題で、これは大体年間約百億程度の生産があるわけでございますが、非常によく売れる薬でございまして、まあ摩擦的な品不足ということがときどき過去において起こったことがあるわけでございますが、現在はそういう点も、不足をして、需要が多ければ生産がまたすぐそれに追いつくというような格好で、特に重要医薬品であって供給が需要に追いつかないというようなものは、私どもとして全体として見て現在はないのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  122. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、あなたのほうではこれを規制をしてない。規制をしてないという状態の中の今の判断。そういたしますと、医者の診療の窓口に薬が回らぬということになると、その製造が足らないのか、需要が多くて製造が足らないのか。それから、今まで回っておった薬が、規制をして、自主規制をしてやっているのか、まあ二つの道があると思うのです。で、こういうことを調べられたことがありますか。
  123. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) たとえば昨年でございましたか、注射用のブドウ糖等が非常に不足したという例がございました。これは今医療上非常に重要な問題でございますので、すぐ私ども調査いたしましてその原因を究明したわけでございます。ちょうど大阪地区にそういうブドウ糖注射液の製造工場がございまして、そういうものが台風の結果水浸しになって生産が一時ストップした、そういうふうなことで、それが大手の製造工場でございましたので一時生産が需要に間に合わないというような現象が起きて、これに対しては、私どもも生産奨励をやって、他の工場に一時生産をそっちのほうに回してもらうというような行政指導でその不足分をカバーすると、そういうふうなことをやった経験もございますし、そういう重要医薬品については、私どもとしては、需要供給のバランスを一般的に見ておりまして、それが恒常的に不足を生ずるおそれがあるという場合には、大体私どものほうでもわかりますので、その場合には生産を慫慂するというよう指導をやっているわけでございます。
  124. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今私が申し上げているのは、今のブドウ糖の例は薬務行政としてよい方法をおとりなったのであると思うのですが、で、今私が申し上げているのは、たとえばクロマイなんかが非常に不足して、ほとんどないというので医者がもう悲鳴をあげている。代替品で間に合わすのにも苦労をしているという格好。今までは十分間に合っておった、これは何かあるのだといって調べてみると、まあ厚生省が薬品製造を規制をしていると、こういうふうになっているのだということがいわれているわけです。それが事実でないというお話なんです。そうなってくると、たとえば輸出にうんと出たとか、需要がうんとふえたとか、または生産者自身が規制をしたとかという、そういうことになってくるわけですが、そういう抗生物質の、非常に人体によくきくという薬が出回っているということは厚生省も御存じなんですから、そういう点はやっぱりブドウ糖のようにお調べになって、そうして適切な方法があればやっていただきたいと私は思うのです。どうもその話だけを聞いていると、またまた価格カルテルをそういう面からやられておるのじゃないか、それを厚生省の薬務局が保護しているのじゃないかというような疑いさえ持つ人が地方には出てくるわけでありますから、だから、そういう点はそういうことのないように、厚生行政はガラス張りで、一番人体保護のためには努力しているのだということを私はやっぱり明らかにしてほしいと思うのです。それでないと、いろいろのうわさが飛んでおるわけです。私はきょうは時間がありませんから一つの例しかあげませんけれども、そういう点をひとつ明らかにしていただいて、制造して、少なくとも乱売してああいう格好になることは困りますけれども、しかし医者の要するに窓口でこれが不足してくると、百パーセントのそういう治療ができないというような格好になれば医者も困るでしょうし、また患者も困るわけなんです。そういう点の適切な私は指導をしてもらいたい。業者に対してもいろいろの面に対する薬務行政としてやっていただきたいということを強く私は申し上げておきたいと思います。
  125. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) ただいまのクロラムフェニコールの実態につきましては、私ども至急調査いたしまして、そういう実情を調べてみたいと思いますが、まあ繰り返すようでございますが、生産規制をしたいという実例は私どもとしてはございませんので、まあ途中の段階で、卸その他のところで、一方において非常にまあ見込みでよけい渡しておった、地域的にこちらのほうが消化されてこちらに不足を生じた、そういうふうなこともあり得ると思いますので、その辺よく事情を調べまして、わかりましたら御報告いたしたいと思います。
  126. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと簡単に申し上げておきますが、関西ですね、関西がひどいのです。
  127. 加瀬完

    委員長加瀬完君) 他に御発言もなければ、本日はこの程度にとどめておきます。  これにて散会いたします。    午後一時二十八分散会