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北村暢君 それから、これらの問題は、賃金問題はこれはもう、この一回だけでできませんから、私は今言った公団の六百八十一円、それから国有林の六百八十九円、こういう単価で、実際に事業はできません。これは、公団もできない、それから国有林もできません、六百八十九円では。これは事実どのくらいかかっているか、あなたのところの団体交渉できめているというものの、いわゆるこの機械造林の方々の標準賃金というのは、七百円以上というのが大体多いですね。七百円以上です。で、この団体交渉できめている七百円以上のものでも、七百円でも、これは実際に仕事ができておらないです。で、公団造林の七百円くらいのものでやるということになれば、これはもう現実に千円出さなければ人が集まらないのですから、今日。したがって、これはもう植えるだけは植えた、も
うその後の手入れというものはやらないで、ほっぽらかしておくというところが、現実に出てきているようであります。そうすれば杉を植えたものが、手入れしなければ消えてしまって、これは松山になってしまうという例がまた出てくるんです。しかも公団造林というのは、私はこれは水源林の造成ですから、決していい所に造林はしてないです、これは。でありますから、その単価も低過ぎる。それでもなおかつ現状では、国有林よりも公団のほうが賃金を高く出しておるということを私は聞いておるのです。はるかに高く出しておるというと、
予算単価ではやってないのじゃないか。はるかに高い賃金を払って実際はやっておる。そうせざるを得ない。そうすれば、結局百町歩植えるところを八十町歩くらいしか植えられないので、
あとの二十町歩はほっぽらかしておく、そういう結果になっておるのじゃないかということが
考えられるのです。そういう地帯が実際は出てきているのじゃないか、こういうふうに思います。
それから国有林の七百円のこの単価ではできない。したがって、今日どういうやり方をやっているか、林野庁は、どういうことをやっているか。これは直営ではとてもできません。したがって、請け負いに出すということもやっておるようです。請け負いに出した場合に、この単価で押し付けてしまう。
業者は赤字を出してやっておる。赤字を出しても、しかもこの造林専門の
業者ではなくて、伐木
業者にこれをやらさしておる、との造林をやらないというと、立木処分のほうが当たらない。木をもらう
関係から造林は赤字でもやむを得ずやらざるを得ない。上から、そういうふうにやられておる、こういうのが出てきておる。
それから最近この七百円
程度の標準賃金では、国有林労働者はやっていけない、日給制でやっていったのでは。そこで、出来高制にしてくれと労働者自身から言ってきておる。その出来高制でやったならば、一日一千三百円になる、こういう
実情です。日給でいけば七百円、出来高で無我夢中でやれば一千三百円になる。これは実態であります。調べていただけばわかる、一千三百円になる。したがって、労働者はそっちのほうを選ぶ。林野庁はなるべく日給ではなしに、出来高制になることを望んでいるのかどうか知らんけれ
ども、労働者は七百円では食っていけないから、千三百円のほうの出来高をやる。その出来高でやった場合の事業の内容が、一体どうなっているか、これが問題なんです。日給制なら七百円のものが、出来高で能率を上げれば一千三百円はもらえるというのですから、倍です。八時間労働をやっている者が十六時間働くわけじゃないのです。働こうといったって働けないのですから、したがって十時間くらいの間で、時間も延びるでしょう。そうして非常に無理をしてやるのでありますが、能率を上げたということは言うかもしれないけれ
ども、ある
程度は上がるでしょう。しかしながら、その出来高でやった結果が非常に能率を上げるために、粗雑な仕事をやっているということになる。
たとえばブッシュ・クリーナーでもってやる場合に、機械化したから能率が上がるということで、
予算単価は若干上がっても
——賃金単価は若干上がっても、その日給制でしぼるものですから、必然的に能率を上げなければならぬ。したがって、日給制で今七百円もらっている人が、ほんとうに休憩時間に休んでいたならば、もう言われただけの仕事は、とうていできないというのですよ。休憩時間も休まないでやらないというと、日給制ですら、ブッシュ・クリーナーが入ったのだから、これだけの能率を上げろという形でやってくるわけです。したがって、そうやらざるを得ない。それを今度は、出来高でやったらば、まだ能率を上げなければならぬ。そんなことは不可能に近い。したがって、もう粗雑な、せっかく植えた苗木であろうと何であろうと、手入れのときにちょん切ってしまう。造林をやっているのか苗木を刈り払っているのか、わけのわからない事業が今日行なわれている。こういうことは、造林に力を入れて能率を上げるとか何とか言っているけれ
ども、私
どもは非常に
理解ができない。そういう実態が出てきている。
これは、われわれが常識的に
考えて、日給制七百円のものが、出来高にすれば一千三百円になる。倍上がるということは、どうやって出てくるかということですね。これはひとつ、長官に十分
考えていただきたい。人間の能力が急に倍になるのかどうであるのかということですね。それは出来高でやったらばいいと、ある事業所でこれは出来高でやったために、どういう結果が出ているかというと、こういう結果が出ている。営林署から管理官と
経営課長と監督主任が行って、その作業員と集まって、なんでもいいからとにかく出来高で、ここのところを坪刈りでもなんでもいいから、これだけやってくれということで、監守もつかなければ監督もいない。それでとにかく作業員まかせ、そういう形で作業をやっておる。出来高だから、できただけ払えばいいんだからという
考え方です。それで行ってみて監督主任なり何なりが、どこで作業員が仕事をしているのかわからない。もう請け負わしたような形になっちゃっている。そういう実態でやっておるのです。これは低賃金だから、そういうふうにせざるを得ないのですよ。そういうことで成り立っていると思っていたら、私は大間違いだと思うのですね。
それで、まあ感覚からいって、そういうことですから、私
どもは単価が低いために、いかに無理して仕事をやっているかという、したがって造林の成績がどういうふうになって現われてくるかということに非常に疑問なわけです。大きな問題としては、木材を切るほうは収入は上がるのですから、
予算は相当潤沢にいく。植えるほうは何十年後しか収入は上がってこないから、これは切りつめ切りつめてやっておる。これは事実だろうと思う。それで、もう同じ事業をやる中において、営林署で非常にへんぱな
予算の状況で非常に困っているのが実態です。
それからお伺いしたいのは、ブッシュ・クリーナーを入れたために非常に能率は上がるわけですね。今まで一ヘクタール十人なり、二十人なりかかっていたものが七、八人でできる、あるいは五、六人でできる。こういうようなことで能率は上がるような形になっている。これは最近の機械化ということで、機械化そのものに私は反対いたしませんけれ
ども、入れ方に問題があるのです。機械を入れたから直ちに能率が上がるということで、その年から、すでにもう
予算を削ってしまう。単価をぐっとしぼってしまうのですね。だから、もらった者は使い方も知らなければ何も知らない。機械をもらったということだけで、もう能率は上がるという前提に立ってやられているのです。切りかえ方が非常にまずい。労務者の訓練なり何なり行き届いて、ほんとうに能率が上がってから
予算をしぼるならわかるが、そういうむちゃくちゃなことが今日行なわれているのです。
したがって、これらの問題については十分ひとつ
理解をしていただきたい。これはもう明らかに
生活保護世帯基準よりも以下の賃金、失対事業単価より以下の賃金、こういうもので事業がなされている。これは造林手の賃金でありますけれ
ども、育苗手、いわゆる苗畑等においては三百円台の失対事業の単価よりはるかに低い賃金単価が民有林だけでなしに、国有林にも実在をしているということです。これらの点については十分ひとつ考慮してもらいたいと思うのです。したがって、これらの点について、一体事業の運営上の問題からいって、
予算の単価からいって、私はこの
予算単価が、あまりにも窮屈にしぼっておるために、事業の実行者は非常な無理をして成績の上がらない仕事をやっておる、こういう結果に陥りがちである。したがって、上から下に押しつけていって、末端の事業担当者は非常にこれがために苦労をしておる。そういう
実情というものをやはり知ってもらわなければいけないと思う。これに対するひとつ見解を承っておきたい。