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1962-08-31 第41回国会 参議院 決算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年八月三十一日(金曜日)    午後一時三十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     鈴木  壽君    理事            岡村文四郎君            佐藤 芳男君            仲原 善一君            相澤 重明君    委員            久保 勘一君            鈴木 恭一君            田中 清一君            二木 謙吾君            前田 久吉君            谷村 貞治君            北村  暢君            横川 正市君            和泉  覚君            高山 恒雄君            奥 むめお君            林   塩君            鈴木 市藏君   国務大臣    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君   政府委員    文部政務次官  田中 啓一君    文部大臣官房長 宮地  茂君    文部省初等中等    教育局長    福田  繁君    文部省大学学術    局長      小林 行雄君    文部省社会教育    局長      斎藤  正君    文部省管理局長 杉江  清君   事務局側    常任委員会専門    員       池田 修蔵君   説明員    文部大臣官房会    計課長     安嶋  弥君    文化財保護委員    会事務局長   清水 康平君    会計検査院事務    総局第二局長  樺山 糾夫君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十五年度一般会計歳入歳出決  算(第四十回国会内閣提出) ○昭和三十五年度特別会計歳入歳出決  算(第四十回国会内閣提出) ○昭和三十五年度国税収納金整理資金  受払計算書(第四十回国会内閣提出) ○昭和三十五年度政府関係機関決算書  (第四十回国会内閣提出) ○昭和三十五年度国有財産増減及び現  在額総計算書(第四十回国会内閣提  出) ○昭和三十五年度国有財産無償貸付状  況総計算書(第四十回国会内閣提出) ○昭和三十五年度物品増減及び現在額  総計算書(第四十回国会内閣提出) ○継続調査要求に関する件 ○継続審査要求に関する件 ○委員派遣要求に関する件   —————————————
  2. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  なお、この際、委員各位に申し上げます。本国会は今のところ九月二日をもって終了いたすことになっておりますが、本委員会といたしましては、新しい決算審査方針にのっとりまして、すでにお手元に配付いたしております日程案に従いまして審査を進めて参ることになっておりますので、残暑もきびしく、また各位におかれましては公私御多忙の折から、まことに恐縮でございますが、万障お繰り合わせの上、本委員会の円滑なる運営に御協力いただきまするよう、よろしくお願いを申し上げます。  それでは、昭和三十五年度決算外三件を議題とし、審査を進めます。本日は文部省の部でございます。  まず、文部大臣より、文部省関係決算につき御説明願います。
  3. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 昭和三十五年度文部省所管一般会計歳入歳出決算の大要を御説明申し上げます。  まず、昭和三十五年度予算執行にあたりましては、予算の効率的な使用経理事務の厳正な処理に努力したのでありますが、会計検査院から不当事項一件の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存ずるところでありまして、経理事務の厳正な執行につきまして、今後さらに努力をいたす所存であります。  次に、決算の内容を御説明申し上げます。  文部省主管歳入につきましては、歳入予算額百三億四十一万円に対しまして、収納済歳入額百二十億五百六十四万円余であり、差引十七億五百二十三万円余の増加となっております。  その増加額のおもな内訳は、学校付属病院等収入官業益金及官業収入十三億八千七百十三万円余、雑収入三億一千七百八十九万円余であります。  次に、文部省所管歳出につきましては、歳出予算額二千百三十九億九千七百九十一万円余に、前年度からの繰越額十四億八千五百十五万円余と予備費使用額一億六千三百四万円を加えた歳出予算現額二千百五十六億四千六百十一万円余に対しまして、支出済歳出額は二千百二億五千三百七十七万円余であります。その差額は五十三億九千二百三十三万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は四十四億五千六百九万円余で、不用額は九億三千六百二十四万円余であります。  支出済額のうち、主要な事項は、義務教育費国庫負担金千二百三十六億八千九百二十九万円余、国立学校運営費五百十九億六千七百八万円余、文教施設費百五十五億五千六百八十七万円余、育英事業費四十七億三千二百四十二万円余、科学技術振興費三十三億八千十六万円余、要保護・準要保護児童生徒対策費九億一千五十八万円余、スポーツ振興費二億七千九百二十七万円余、私立学校振興費十四億一千七百七十九万円余、青少年対策費七億六千八百十五万円余となっておりますが、詳細につきましては、別に提出いたしております「昭和三十五年度決算説明」に記述しておりますので、御承知願いたいと存じます。  次に、翌年度繰越額四十四億五千六百九万円余について御説明申し上げます。  財政法第十四条の三第一項の規定による明許繰越金額は、四十二億三千三十四万円余でありまして、その内訳のおもなものは、文教施設費のうち、用地の選定、気象条件設計変更等により工事施行不測日数を要したため年度内支出を終わらなかったもの、また、国立学校運営費のうち、京都大学に設ける研究用原子炉設計等不測日数を要したため、年度内支出を終わらなかったもの等であります。  財政法第四十二条ただし書きの規定による事故繰越金額は、二億二千五百七十四万円余でありまして、その内訳のおもなものは、名古屋大学医学部付属病院分院建物の取得にあたり、その工事施行不測日数を要したため年度内支出を終わらなかったもの等であります。  次に、不用額九億三千六百二十四万円余についてでありますが、その内訳のおもなものは、国立学校運営費のうち、職員定員充足がおくれたため人件費を要することが少なかったこと等により不用となったもの等であります。  次に、文部省におきまして予備費として使用いたしました金額は、一億六千三百四万円でありまして、その内訳のおもなものは、公立文教施設災害復旧費補助南極地域観測事業費等であります。  以上、昭和三十五年度文部省所管一般会計歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第であります。
  4. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) 次に、会計検査院検査報告を聴取いたします。
  5. 樺山糾夫

    説明員樺山糾夫君) 昭和三十五年度文部省所管決算につきまして検査いたしました結果、不当と認めました事項は、大学病院における診療収入徴収漏れ一件でございまして、検査報告に記述のとおりでございます。そのほかの点で特に不当と認めた事項はございません。
  6. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) それでは、これより直ちに質疑に入ります。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  7. 横川正市

    横川正市君 これはあと事務当局から資料説明いただければ納得がいくかどうかわかりませんが、ちょっと気のついた点で、翌年度繰越額の四十四億五千六百九万円という額は、全体の額の何パーセントになっておるか、それから、各年次ごとの繰越金が、大体文部省としてはいつでもこの程度のものは繰り越されてきておるのか、この点だけ質問をいたしまして、あとは、この繰越額の四十四億、明許繰越額の四十二億三千三十四万円、これが翌年度繰り越しをしなければならなかった、不測日数を要したとか、あるいは計画の変更とか、いろいろ理由が述べられておりますけれども、それはどういう状態なのか、資料でひとつ出していただきたいと思います。よろしゅうございますか。
  8. 安嶋弥

    説明員安嶋弥君) ただいまの御質問の点につきましては、後日資料として提出いたします。
  9. 横川正市

    横川正市君 それから次に、不用額の九億三千六百二十四万円でありますけれども、ここには、職員定員充足がおくれたため人件費が余ったということだけでありますが、この点の説明資料で提出していただきたいと思います。
  10. 安嶋弥

    説明員安嶋弥君) そのとおり資料で提出いたします。
  11. 横川正市

    横川正市君 まず、大臣にお伺いをいたしますが、文化財保護委員会が、文部省所管の業務として、非常に困難な仕事をやっておるわけです。この仕事に対して、文部省としてはいろいろ努力をされているんだろうと思うんでありますけれども、実際には、文化財保護施設、そういったもののそのもの価値が、観光事業と、それからその他のものと競合しておりまして、なかなか所期の目的を達せられないというような場合も多々あると思います。根本問題として、文部省として文化財保護に対してどういうふうにお考えになってこの仕事をやっておられるか、まず大臣から意向をお伺いしたいと思う。
  12. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 文化財保護法は、御承知のように、議員立法で制定せられまして、文化財保護行政文部省と最も密接に関連があるであろうという前提と思いますが、文部省に置かれておることは、御指摘のとおりであります。文化財保護委員会の各委員は、文化財価値判断文化財保護それ自体価値判断につきましては、独立してその職権を行なうという建前で、独立不覊の立場でやっておられるわけであります。その事務的な補佐は、事務局がございまして、やっておりますが、むろん文部省官房文化財保護委員会事務局をバック・アップするという関連のもとに動いておるわけであります。  御質問は、いかなる方針でこれに対処しておるかというお尋ねのようでございますが、これはまあ抽象的でございますが、文化財保護法の定めまする建前に従ってやっておると、こう申し上げるよりほかないと思います。観光事業等との関連において、たとえば埋蔵文化財が、次々に開発されていくところの道路工事その他でもって、おそらくは貴重なものが不本意にも荒されておるんじゃないかという点も、むろん懸念されるところでございますが、現在の制度上のことから申しますと、当然のこととして、さような場合に未然に事故を防止するという手段はほとんど不可能ではないかと思われる状態であります。このことは、もっと立法論としては、法律上の規定整備等が問題として残っておろうかとも思いますけれども、それにいたしましても、極力文化財保護委員会としては、たとえばある工事をいたしますときには十分に注意をしてもらう、そしてまた、埋蔵文化財とおぼしきもののありました場合には、十分な連絡のもとに工事をしてもらうというふうなことで、現実的には細心の注意をしながらやりきたっておるのでございます。ですけれども一般論として申し上げますと、思うにまかせない点が多々あるようでございますので、今後の検討課題として残るわけでございます。
  13. 横川正市

    横川正市君 私どもは、機構の問題で、委員会が設けられておるから、大体文部大臣としては、その委員会運営に信頼を置いて、そして直接な指示とかあるいは改善策とかというものを側面から支援をするというようなことはあまりないというように聞かれるわけです。しかし、最近でも、火事でもって相当文化財が焼けておりますし、それから、その焼けた文化財価値そのものが非常に惜しいということよりか、もっと私は大切なのは、そういう文化財が焼ける原因が一体どこにあったかという点を掘り下げていってみますと、その中には、非常に古い因習や、因果や、そういったものがそのまま置かれている。もっとも、保護を受くべき物件が古いんですから、住んでいる人たちの精神的なそのものも古いということも、いなめない問題もあろうかと思いますが、それと関連して、非常に保護そのものに危険な状態というのは、火事になってあとからニュースその他で報道されている。こういうこともあるので、私どもとしては、文化財保護というものについては、相当細心の注意と言われますけれども、当面の状況をよく視察されて、適切な処置をすべき問題があるのじゃないだろうか。これからも多く保護すべき物件を失いたくないという点から、その方針についてお伺いをいたしたわけなんです。まあこれは、大臣が今言った程度の答弁しかできないというならば、直接保護委員会事務局長から聞いてもいいわけでありますが、何かやはり、少し注意が不足をするという程度のものよりか、もっと機構とか、その他立法上不備があるのじゃないか。それを、私どもとしては、すみやかに立法で当然やるべきと思われる点については、立法措置をほしいし、それから細心の注意を払うという点については、これは当然注意を払っていただきたい、そういう意味でお聞きをいたしておるわけであります。
  14. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) まあ、私自身文化財そのものについての造詣というがごときものを持ち合わせませんことによる運営上の欠陥等がありとしますれば、それは恐縮千万と申し上げるほかないわけであります。事実そういうおそれを私自身は感じておりますが、しかし、機構上は、さっき申し上げたとおり、御承知のとおり、文化財保護委員会という、いわば超党派的な立場において文化財保護をやる行政組織になっておる二とは、適切だと思います。それからまた、文化財保護委員会それ自体事務局を置いて、文化財保護委員の本来の使命を果たします補助機関としては一応整備しておる。量的にいかがであるかということは問題があるにいたしましても、機構としては一応妥当な機構であると私は存じます。  そこで、今御指摘のありましたような、たとえば貴重な文化財が措しくも火災で焼失するとか、いろいろな事故がちょいちょい起こりまして、残念しごくと私も思うのでございますが、これらに対しましても、火災に対する予防的な注意ないしは万一起こりましたときの防火施設設備等は、一通りは整っておると考えておるわけでございますが、問題は、結局、たとえば神社仏閣等文化財が指定されたものがあるといたしまして、今申し上げたような用意は整っておりましても、現実にとっさの場合にこれに対処する者は、その神社なり仏閣なりの管理をいたしております人間の問題でございまして、注意が行き届かない、たるんでいるんじゃないかというおしかりをかつて受けたこともあるわけでございますが、そういう欠点もなしとしないと思います。ですから、さようなことにつきましても、文化財保護委員会ないしは文部省としまして、できるだけの努力はしておるつもりではございますが、さらに改善すべき余地もあろうかと思います。具体的な実例等に即しまして、今後いかなることに注意を向け、何をなすべきであろうかという具体的なことは、事務当局からお答えを申し上げます。
  15. 清水康平

    説明員清水康平君) 文化財保護法施行せられましてから、いろいろなところで文化財が焼けております。まことに遺憾しごくに存じております。文化財保護法施行後、国宝あるいは重要文化財に指定されておりました建物で今日まで焼けましたものが四件でございます。先日は壬生寺の本堂が焼けまして、中に安置してございました地蔵菩薩四天王像、それから金鼓、いずれも指定してあるわけでございますが、これらのものが焼失したということは、返す返すも残念しごくでございます。この原因はどこにあるか。私どもといたしましては、もちろん、これは民族の文化遺産であり、貴重な国民的財産でありまするので、国民全体がこれを大切にするという気持が一番大切だと思います。しかしながら、現実にそれを所有し、管理している人が、これこそ、一般国民から預かっておるのだという誇りと自覚を持っていただきたいのでございます。今日までの盗難、その他火災を見まするというと、必ずしも不可抗力あるいは天災だけではないようであります。この点、文化財保護行政に携わっております私どもといたしましても、まことに残念に思うわけでございますが、今日までこれについての、防災についての予算も毎年一億七、八千万円出しておるのでございますが、消火栓でありまするとか、貯水槽でありまするとか、あるいはドレンジャー、あるいは警報装置自動警火装置というようなものをつけるように努力し、また補助金も出しておるわけでございますが、私どもが常日ごろ言っておりまするのは、これらの物的な防災施設もさることながら、もちろん国としてもできるだけのことをいたさなければならないと思っておりまするが、それにもますものは、これを守っていくという心がまえと申しますか、心の防災が一番大切ではなかろうかと思うのでございまして、先般壬生寺のこういう問題が出ました際にも、県の教育委員会を通じ、所有者管理者の一段の注意を喚起いたしたような次第でございます。それと同時に、警察庁、消防庁とも連絡をいたしまして、事前にこれが防火診断あるいは防犯診断をしていただきまして、所有者中心にして、みんな保存について今後十分努力して参らなければならぬと思っている次第でございます。なお、私どもといたしましても、反省し、改善していくべきところがありましたならば、各方面の意見を聞いて、この保全に十全を期して参りたいと思っておるような次第でございます。
  16. 横川正市

    横川正市君 私は、この委員会がやるべき問題には二つあると思うのですね。一つは、現在の保護すべき物件保護するための処置、それからもう一つは、保存するのに現行で行き届かない点はいつでも直していくという、その真摯な気持が動かないと、次から次へと重要文化財を焼却したり、あるいは紛失したりするという結果になると思うのですよ。私どもが一番聞きたいのは、一体前者は、今言ったようなことで何かあなたの責任はのがれられるかもしれないけれども、後者のほうは、もう少し適切な処置がなかったかどうか。ということは、燃えたりなんかしたり、損失をされたあと状態を見て、国民のすべてが思うことだと思うのです。その点は、一体予算が少ないのか、それとも法律が不備なのか、あるいは適切な処置がここでとれておらなかったのか、いろいろ原因があるわけですから、その原因を手当をしていくということで、次に起こらない対策を立てて頂きたいという気持を実は持っているわけです。そういう意味で、実は先ほども大臣にお聞きしたのですが、実際には所掌されておらないから、適切な答弁いただけませんでしたけれども、そこでまず具体的な問題で、これはどうするかということをお聞きしたいと思うのですが、これは日光の二社一寺、東照宮の現在の維持は、これは二社一寺側と、それから文化財保護委員会側と、共同責任になっておるわけですね。しかし、実際上は二社一寺が全体の責任を負うて動いているということで、文化財保護委員会はある程度予算を出すにとどまっている。そういうような機構の中で、技術者というのは、私はこれはまあいわば人間文化財のような技術者が非常にたくさん要る。その人間文化財のような技術者のいわゆる文化財保護労務提供機構というのはどうなっているかといえば、差し入れ稼業のような請負者工事を請け負って、それを担当させている。これはもう、今の一つ仕事をするのに、そういう前近代的な使用関係といいますか、そういったものを維持して仕事をさしているというのは、あまり他にはないのでありまして、おそらくこの東照宮あるいは京都とか、奈良とかいうような、そういう文化財保護する技術者の中に特殊な雇用関係として存続するのじゃないかと思うのです。私どもは、願わくば、文化財保護委員会は、技官としてのある程度の人員というものを雇用し、まあ自分の職員として持って、そして適切な保護のための施設を随時施していくというようなことが、実際上保護のために必要なんじゃないかということを痛切に感じているわけです。しかし、一方、燃えなければ、おそらくこういうこともわかりませんだろうし、それから何か問題が起こらなければそんなことも表に出てきませんから、ほとんど手をつけられないで、そのままになってきている。そういう状態で、ひいてはこれは管理の問題にも相当大きな影響力を持ってくるわけですから、そういうことで一歩前進させるとすれば、文化財保護委員会機構の問題にも、相当考え方を変え、機構を変えるということで充実をする必要があるのではないか、こう思っているわけなんです。これに対して、委員・会は、今までのなりきたりその他から、なかなか踏み切れない点もあるのではないかと思いますが、まずひとつその点でお答えをいただきたい。
  17. 清水康平

    説明員清水康平君) 貴重な御意見を拝聴いたしました。その中で技術者の問題でございますが、御承知のごとく、文化財関係技術者は、町に求めても実際得られないのでございます。建造物にいたしましても、特有の経験と技術を要するのでございまして、この人たち中心になって建物修理をいたしておるわけでございます。ただいまのやり方といたしましては、御承知のごとく、文化財保護法を見ましても、所有管理はすべて所有者管理者がこれに当たっているわけでございます。それに対して、国は、技術的な指導、あるいは建築上の助言、場合によっては指揮もすることができるのでございますが、指定物件修理につきましては、文化財保護委員会建造物課指導に基づきまして設計をし、旧規にのっとって修理をいたしておるのでございまして、それぞれ現場主任を置いてやっている次第でございます。特に奈良京都のように神社仏閣が多いところにおきましては、修理主体者、すなわち所有者が、修理するときに、その修理する工事奈良京都委員会に委託しまして、それをまたわれわれが指導監督していく。そうでない場合には、文化財保護委員会がそれぞれ責任者を置きまして、技術上の指導をやっている次第でございます。しかしながら、今後、文化財重要性にかんがみまして、改善すべきところは反省いたして改善していかなければならぬと思っておりますが、今日までの現状はそうでございます。
  18. 横川正市

    横川正市君 そこで、大臣に、これは別にむずかしいあれじゃないですよ。問題の一番大切な点は、今私は、労使関係で、技術者使用について、人入れ稼業のような格好だというようなことを指摘しましたが、同時に、所有管理所有者にまかされているということで、観光事業関係では、日光あたりでは相当な収益を上げているはずですよ。それから、日光の二社一寺に使用される人たちの給与なんかを調べてみましても、相当なものをもらっているようです。特殊な状態ですからね。しかし、実際に、それだけのものをやりながら、それならばあの保護物体を、それだけの所有管理をまかされた所有者だけで守っていけるかというと、私はこれは完全でないということは端的に言えると思う。そこで一番むずかしいのは、所有者管理をするということでまかせでおかなければならないという、この点は、何とか私は、やはり法律的にもっと保護委員会が権限を持つようにして変えていかないと、重要文化財保護ということは万全を期せないのではないか。それからもう一つは、今のような人入れ稼業のような非常に古いシステムでやっておったんでは、これまた実際上、何といいますか、新陳代謝もあるわけですから、重要な技術者をずっと維持していくということもできませんので、その面の管理の問題も、これもまた今のままにまかせておいたんではむずかしいんじゃないか、こういうふうに考えるので、二つの面からぜひひとつ保護委員会と十分相談されて、適切な処置をとっていただきたい、かように考えるわけでありますが、この点でひとつ御答弁いただいておきたいと思います。
  19. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 一方的な措置法律改正等を要するやいなや、要するとすればいかなる点をどうするかという、先刻ちょっと触れました、たとえば奈良県で問題になっております近鉄の仕事の拡張との関連において問題を投げかけたわけですが、これも結局は、平城宮跡の例をとりますれば、その土地の所有者が、使用、収益、処分権を持っておる。それに文化財保護委員会で史跡として指定をすれば、勝手な使用、収益、処分ができないという立法措置はとられておりますものの、そういうことになりますと、所有権者から見れば、非常に迷惑だ、率直に言えば。ということでもありますために、現実問題としては非常にむずかしいことがはらんでくるようであります。これらにつきましては、何としても私は、国が買い上げて、所有権それ自体を国に移してやるんでなければ、万全を期し得ないであろうというふうな角度から、今具体的に検討をしておりますが、今横川さんから言われました、たとえば日光等の問題にいたしましても、抜本的に考えるとしますれば、日光東照宮なら日光東照宮を国が買収するということができれば、一番願ったりかなったりとは言えますものの、そうすると、それ自体がまた政策的にどうであるかということもさることながら、全国的に国が所有権を持つということも、財政面から考えまして、文化財保護するという公益目的と、莫大もない金を出すこととの比較問題でございましょうけれども、おのずから限度があろうかと思います。したがって、御指摘のごとく、法律そのものが不完全であるがゆえに、大事な文化財がみすみす破壊され、もしくは滅失していくということであるならば、その面からの考慮があらためてなされねばなるまい、かような点も含めまして、文化財保護委員会事務当局に大いに検討してもらいまして、私も関心を持って、その改善には努力をいたしたいと思います。  技術者の面につきましては、正直なところ、具体的な事例についてどういう点をおっしゃっているかがはっきりつかめませんので、事務当局からお答えを申し上げます。もしそれが、国に、文化財保護委員会に、専門技術者をもっとたくさん置いて、人入れ稼業みたいなものでなくやるべきだという問題だとしますれば、それは分量的に予算をふやして、そういう人員をかかえ得るようにする課題となって現われようかと思いますが、いずれにしましても、その点は事務当局からお答えを申し上げます。
  20. 清水康平

    説明員清水康平君) 最初に、文化財の保存管理所有者原則になっていることは申し上げたのでございますが、所有者が判明しない場合でありますとか、所有者管理能力がない場合というような事例につきましては、法律に基づきまして、地方の公共団体にそれを管理させることができる、いわゆる管理団体という制度がございまして、どうしても所有がうまくいかない、所有者が判明しない、また管理団体を設けたほうがいいというような場合には、管理団体に委任いたしまして、県なり市に委任いたしましてやっておる次第でございます。  なお、ただいまの文化財関係修理技術者の問題でございますが、建造物につきまして申し上げますと、大部分現場に修理委員会というものを置いております。修理委員会には、もちろん、文化財保護委員会建造物課の専門技官が入りまして説明をし、そうして修理方法、内容を検討いたしまして、そうして現実の現場の指揮監督は文化財保護委員会がやっておるような次第でございます。ただし、それぞれ文化財保護委員会で、たとえば山の中にある指定物件神社修理する場合も、相当日数現場へ参りまして指揮監督しておるわけでございますが。いない場合には現場主任者とというものを置いておるわけでございます。この現場主任者は、大体全国で百人ちょっと越しておりますが、この人たちは、長い間文化財修理のみに一本でやって参った人でございまして、かけがえのない人たちでございます。この人たちの身分を今後どうするかという問題が残されているわけでございますが、これを文化財保護委員会事務局の定員増でいくか、京都奈良のようなふうに、それぞれの主管課の職員にしてもらう、その他いろんな方法を検討いたしておるわけでございますが、今日までの修理のやり方では、その人たちの今後のことを考えなければならぬのでございまするが、修理上、第三者、一般の人を頼んできて作らせるということではなく、あくまでも文化財保護という立場から、抜術的にも歴史的に考証いたしましてやっておるような次第でございます。
  21. 横川正市

    横川正市君 今私の質問したのは、実際、文化財保護の重要さから見れば、ほんの一部分です。非常にいろいろな問題があって、ちょっと短い時間で堀り下げて質問をするということはむずかしい問題だと思っておりますので、今言ったような二つの点が重要だと思いますからぜひひとつこの点では、御検討いただいて、適当な処置をしていただきたいと思います。  続いて、北海道の原住民であるアイヌは、今まで北海道に居住して、ずっと長い歴史を持っておるわけでありますが、その文化的な価値の保存について、今どういうような処置をされておるか。それから、具体的に言えば、いろんなものがあって、たとえば観光関係の一つの業務みたいな格好で生活をしておる人たちもおるわけでありますけれども、入ってみますと、ほんとうに、何といいますか、ちゃちな、もうあつしを着て、それから塗りものを置いて、そしてもう原始的な服装をした者が、獣や鳥をとっていく服装だけが今観光用の格好で出ておるわけであります。もっとやはり、今までの深いこの歴史というものをまとめておさめていく。その場合であっても、たとえば白糠のアイヌの生活の状態だとか、それから旭川、近文のアイヌの生活状態とか、あるいは日高のアイヌの生活様式とか、あるいは文化価値とか、そういったものは、おのおの特有なものがあるのじゃないか、かようにも思っておるのでありますけれども、これらについて委員会としてはどういうふうにお考えになっておるか、お聞きしたいのです。
  22. 清水康平

    説明員清水康平君) ただいまのお話は、おそらく旭川市にございますアイヌ記念館の問題ではないかと思うのでございますが、そのことにつきましては、数年前に国会において請願がございました。いずれも採択せられまして、文部省に要望決議書が提出があったのでございます。アイヌの民族のいろいろな資料は、私どもの観点から申しますと、もちろん今後十分調査をいたさなければならぬのでございまするが、絵画、彫刻というような美術品の立場というよりは、むしろ民族資料として重要なものではないだろうかと思っておる次第でございます。民族資料は、私どもの祖先から今日に至るまでの間の生活様式等の資料でございますが、そのうち特に大切なものにつきましては、重要民族資料に指定するという制度がございます。現在のところ、これらのアイヌ民族のいろいろな資料につきましては、重要民族資料に指定されてはおりません。今後、北海道その他にありまするアイヌ民族の各種の資料を調査研究し、比較考量をいたしまして、重要民族資料にすべきものはしなければならぬと思っておる次第でございますが、今日までの私ども建前といたしましては、国宝、重要文化財あるいは重要民族資料に指定せられたものを収蔵するような収蔵庫というようなものにつきましては、補助金を出しておるわけでございまするけれども、現在のところは指定されておりませんので、そのことは考えておらぬのでございます。しかしながら、これが非常に、一番日本民族にとりまして大切な民族的な資料であることには間違いございませんし、これを収蔵されておりまするところの旭川博物館でございますが、これもやはり博物館でございまして、もしこれについて、りっぱなものを、建物を作りたいということになりまするならば、私のほうの関係は深いのでございまするが、私の隣に社会局長がおりますが、社会局長のほうの立場から博物館施設として取り上げることはできるのではなかろうかと思うのでございますが、大体以上でございます。
  23. 横川正市

    横川正市君 どういう格好で解決するかということは二段として、なぜ今この民族資料としての重要資料が不足しておるかという最大の原因というのは、放任しておいたからですよ、今まで。ほとんど個人とかあるいは小さな団体にまかせてしまった。そういうことから、現地では、もう短い期間にほとんど重要なものはなくなってしまうのではないかという心配をしておるのが——まあ血統といいますか、血族からいいますと、もう幾らも残っておりませんからね、そういう人たちの意向なんです。だから、できるだけ私は早い時期に、もちろん収容する場所を作ることも大切ですけれども、民族資料として、相当予算も使い、努力もして、もう今散らばっているものをまとめていく時期じゃないかと、こういうふうに思っておるわけです。そういった点から努力をお願いできるかどうか。それから、もし社会教育局の関係で今言ったようなことが検討されるならば、たいへん幸いなのでありまして、あわせて御答弁を願いたいと思います。
  24. 清水康平

    説明員清水康平君) 御指摘のとおり、民族資料の一番大切なことは、散逸しないことだと思います。この散逸を防いで一カ所に保存するということが一番大切なことでございまして、その意味合いから、重要民族資料に指定してございませんけれども、一カ所に集めて博物館を作るということは、大切なことではないかと思っておる次第でございます。
  25. 斎藤正

    政府委員(斎藤正君) 博物館の施設並びにその内容の助成は、私どものほうの担当でございますが、現在まだ予算が十分にございませんが、今後、関係の都道府県と協議をいたしまして、その充実に努めて参りたいと、かように存じております。
  26. 横川正市

    横川正市君 文部大臣は、今度は一番古い大臣ですね。三期続いておるのですが、その大臣に実は私のほうから申し上げる機会を今日まで逸しておったわけです。非常に残念だと思っておるのです。保護委員会、それから社会局長から御答弁をいただいたわけでありますけれども大臣からぜひひとつこれについての賛成の意向をお聞きしたいのですが、御意向をお聞かせいただきたい。
  27. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) アイヌの民族資料の保存というふうな課題、横川さんから今お話が出るまで、非常に重要な課題として私自身があまり意識しなかったことでありまして、不覚千万でありますが、御指摘のとおり、ただ北海道観光客が熊祭やなんかで見せてもらって喜んでおるという状態のままでは惜しい限りでございますから、今後の問題とならざるを得ませんけれども、両政府委員から申し上げましたような角度で、具体的に取り上げて、何とかうまい考えをひとつひねり出したいものだと、お話を聞きながら思った次第でございます。努力いたしてみたいと思います。
  28. 相澤重明

    ○相澤重明君 文部大臣の時間がたいへん迫っておるようですから、できるだけ私のほうも簡潔にお尋ねしたいと思うのですが、三十五年度決算の中で、これは事務的の問題ですが、ちょっとお尋ねしておきたいのは、財産の問題ですが、船を持っておりますね、その船はどういう形に使用されておりますか。
  29. 安嶋弥

    説明員安嶋弥君) 文部省所管の船舶は、これは、御承知のとおり、大学関係、それから商船高等学校関係が主でございまして、大学関係といたしましては、商船大学が東京と神戸にございます。その関係のこれは比較的小型のものでございますが、練習用の船舶がございます。それから水産大学関係といたしましては、北海道大学の水産学部、東京水産大学、それから長崎大学の水産学部、鹿児島大学の水産学部等におきまして、水産の実習船を持っております。その他商船高等学校におきましても小さいものがございます。
  30. 相澤重明

    ○相澤重明君 その次に、文部省の土地所有について、公園等の坪数が出ておりますが、今これはどういうふうになっておりますか。
  31. 安嶋弥

    説明員安嶋弥君) ただいま手元に詳細な資料を持ち合わせておりませんが、念頭に浮かぶものといたしましては、奈良学芸大学が御承知のとおり奈良公園の中にあるわけでございます。そういった関係の土地が公園地として指定されておるわけでございます。具体的には、そういったものがあるわけでございます。
  32. 相澤重明

    ○相澤重明君 以上の二点をお尋ねをいたしましたのは、特に国立工業高等専門学校の設置についてでありますが、三十七年度以降国立工業高等専門学校を政府は十二校設置する、こういう方針に変わりがございませんか。これは大臣からお答えいただきたい。
  33. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 三十七年度予算をおきめいただきまして、すでに十二校がこの春から発足をいたして、おります。
  34. 相澤重明

    ○相澤重明君 そこで、この予算を見ますというと、土地購入の予算が私は計上をいたしてないのが見られると思うのでありますが、これはどういうふうに政府は考えておるのですか。
  35. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) これは、高等専門学校のみならず、国立の学校を設立します場合、以前からのいわば慣例と申しますか、それは地元でもって工面していただき、それを政府に寄付していただくというやり方でやっておるのが今までの例でございまして、土地購入費という形では従来国立学校設置につきましては要求しない、国費は出さないというやり方で参っておるのであります。
  36. 相澤重明

    ○相澤重明君 今の文部大臣の発言は、私は非常に大事な問題だと思うのです。なるほど、政府が、今申し上げたように、学校をこれだけ作りたい、こういうことを発表をすれば、関係の都道府県で、私のほうへもらいたいということで、なるほど競争は激しくなるかもしれない。しかし、不当に地方財政を圧迫することは、今の大臣の答弁にもあるように、地方自治体が土地を提供しなければ学校は来ないのだ、こういうことになって、私は非常に問題が起きると思う。しかも、地方財政法との関係については、大臣はどういうふうにお考えになっておるのでしょうか。この点、大臣のさらに御答弁をいただきたい。
  37. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 今御指摘の点は、三十七年度予算の御審議を通じましても、数回お話が出たことでございまして、御承知のとおりでありますが、経過はさっき申し上げたとおりでございます。そこで、地方財政法との関係は、申すまでもなく、公共団体が現金もしくは現物を負担いたしまして政府に寄付するということは、法律上認められないことであることを承知いたしております。そこで、高等専門学校を作るにいたしましても、地元と申しましても、当該都道府県の県民の浄財の寄付に基づいて、それに依存して土地を造成し、寄付していただく、そういう建前で現地とは打ち合わせながら実行中でございます。地方財政法には違反しないでやるべきことは、これは当然だと心得ておるわけであります。
  38. 相澤重明

    ○相澤重明君 これは、荒木さんが池田内閣の長老格、文部大臣は池田さんが総理大臣をやっておるうちはかわらない、こういうような考えで、親船に乗っておるからそういうことを言うと思うのですが、これは内閣がかわったら、たいへんな問題だと思うのですよ。今のあなたのお話のようでは、地方財政法というものはあってもなきがごとし、しかも、地方財政の再建促進特別措置法、こういうような場合でも、これは、私は、非常に地方の自治体としては、とにかく学校ができるのだ、そのために、今大臣みずからのおっしゃったように、無理をしてもやっぱり誘致をしなければならぬ、こういうようになって、実際に学校教育の根本思想というものが私はくずれてくるのじゃないか、こういう点をおそれたから、先ほどの、登録されておる財産がどのくらいあるのか、その財産いかんによっては、何も無理にそう競争させなくても、最も適切な土地において、これに政府が考えておる学校を建設ができるのではないか、こういう点を実はお尋ねをしたかったのです。  そこで一具体的にひとつお尋ねをしたいのですが、十二校のうちに、あなたのほうで国有財産でもって建てられるというのは何校ですか。全部、今荒木文部大臣の言うように、何でも地方自治体にかぶしてしまう、こういうことですか、この点ひとつ伺いたいと思う。
  39. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 一部国有地がございます。その他は私有地、私の個人の所有地、ないしは公共団体の所有地も一部あったかと思いますが、もっと具体的に申し上げるとすれば、説明員から、政府委員からお答え申し上げます。
  40. 安嶋弥

    説明員安嶋弥君) ただいま大臣から国有地があるという話がございましたが、それは二件ございまして、一件は新居浜の工業高等専門学校でございます。これは、愛媛大学の工学部が松山に移転をいたしますが、その跡に設置されております。それからもう一つは、佐世保の高等専門学校でございますが、これは元軍関係の普通財産にすでに設置されております。その他は、大臣から申し上げましたように、私有地ないしは公共団体の所有する土地ということに相なっております。
  41. 相澤重明

    ○相澤重明君 十二校のうち、もっとあったのじゃないですか、その国有地は。今のあなたの説明では、三校しか発表になっていないが……。
  42. 安嶋弥

    説明員安嶋弥君) ちょっと申し落としましたが、十二校のうちには、宇部と長岡の工業高等専門学校が含まれて、それを申し上げることをつい忘れたのでありますが、長岡の工業高等専門学校につきましては、国立の長岡短大の敷地に設置いたしております。それから宇部は、これは山口大学の工学部の敷地に建っております。
  43. 相澤重明

    ○相澤重明君 次に、船の話を私はお尋ねをしたわけですが、特に南極探検の問題について、その後大臣はどういうふうにお考えになっているのでしょうか。
  44. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 南極地域の観測は、一時中止いたしておりますが、なるべく早い機会に再開したいという考え方で、寄り寄り関係の各省と相談中でございます。その船の関係が、そもそも宗谷では老朽船でございまして、南極のあの厚い氷、流氷のただ中を往復するのには危険性がある。生命の危険を冒してやるのはいかがであろうということも含めまして、一時中止をしたわけでございます。そこで、できれば砕氷能力を十分に持った新しい船を作って再開しよう。再開の具体的なめどがつきますまでは、外国と協力しながら、観測は続けていこうというふうな建前で進んでおるわけであります。船の問題は、できることならば、防衛庁と協力いたしまして、海上自衛隊の遠洋航海訓練を兼ねたようなやり方で船を調達することを考えまするならば、同じ金をかけるにしましても、一挙両得という面が出てきはせぬだろうかということで、具体的に相談し、検討中でございます。
  45. 相澤重明

    ○相澤重明君 次にお尋ねしたいのは、科学技術振興について、特に文部省関係の原子力関係の経費等についてでありますが、日本原子力研究所法、あるいは原子燃料公社法等に基づきまして、政府としても非常に努力をされておると思うのでありますが、現在文部省の所管になっておるところの、原子力研究をしておる学校、あるいはそれに関係の研究所、こういうものは何カ所になっておりますか。
  46. 安嶋弥

    説明員安嶋弥君) 文部省関係で、原子力ないし原子核の研究をいたしております学校は、旧帝大の七大学のほか、東京工業大学の計八大学であります。その他、研究所といたしましては、東京大学に付置されております原子核研究所、それから名古屋大学に付置されておりますプラズマ研究所、それから京都大学に付置されております工学研究所等がございます。
  47. 相澤重明

    ○相澤重明君 現在文部省に申請をされておる大学はありますか。
  48. 安嶋弥

    説明員安嶋弥君) 原子力の研究と申しましても、かなり幅があるわけでございますが、たとえばコバルト六〇の放射線の研究をするというようなところまで原子力あるいは原子核関係の研究の分野に含めるといたしますと、これはほとんどの大学におきまして、現にその種の研究が行なわれております。さらにそれを拡充したいという希望も出ております。ただ、本格的な研究となりますと、かなりな経費と研究者が必要になるわけでありまして、それはかなり伝統のある基礎のしっかりした大学でないと、そういう基礎研究はなかなか容易に行なわれないのであります。ただいま申し上げました八大学以外に、本格的な原子力あるいは原子核の研究、教育をさせる、それを拡充していくという考えは、現在のところございません。
  49. 相澤重明

    ○相澤重明君 文部大臣に特にお尋ねしたいのは、私学技術振興費の予算現額について、翌年度繰越額が一割近くある。これはどうしてこういうことになったのか。これはひとつ文部大臣から御答弁いただきたい。
  50. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 先刻、決算の御説明を申し上げましたときに、ちょっと触れましたのですが、それは、御承知と思いますが、京都大学に研究用の原子炉を置く予算は、数年前に成立しておったのでございますが、敷地を選定するにあたりまして、放射能被害を必要以上に心配された等のことがございましたために、なかなかきまらなかった。それで、繰り越し、繰り越しいたしまして、その結果、繰越額としても出ておりますが、不用額の一部もそういうことによって出ておるのがおもな内容だと承知いたしております。さらに詳しくは、政府委員から申し上げます。
  51. 安嶋弥

    説明員安嶋弥君) ただいま大臣から御説明申し上げましたほか、科学研究費の関係といたしましは、九州大学に一件ございます。これは岩石に含まれております同位元素の存在比を測定いたしまして岩石の性質等を研究する、そういう機械の購入費について交付金の交付決定をいたしたわけでありますが、この装置の製作者でありますところの日立製作所がこの機械を輸送中、運搬車のブレーキがかかりまして、その衝撃で装置が破損し、再製作に付することになったために納入がおくれたという例であります。もう一つは、国立の遺伝学研究所の関係ですが放射線の線源を米国のオークリッジ研究所で製作し、それを購入する予定で交付金を決定いたしましたところ、製作過程におきまして汚染事故が発生いたしまして、そのために納入がおくれた、そういった事例になっております。
  52. 相澤重明

    ○相澤重明君 次に、高校進学の問題について政府の考え方をいま一度お尋ねをしておきたいのでありますが、高校全入問題が全国的に非常にやかましくなっておるわけですが、一体、政府が進学者の見込みというものをきめているようでありますが、その見込みがはたして政府が考えられておるように押えられるかどうかという点、私は非常に危惧するわけですが、昭和三十五年度の高校進学者の比率の実績は五九・九%、これを年々推移を見て、四十年までに百二十三万人増、こういうふうにお考えになっておるようでありますが、三十六年度の実績は六五・八%、これをこのままずっと伸ばしていきますというと、政府の言うようにならないのじゃないかという心配があるわけですが、これはどういうふうなお考えで作られたのか、いま一度御答弁いただきたいと思う。
  53. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 高校への進学者の率の問題でございますが、御指摘のように、三十五年は高校への進学率は五九・九%、約六〇%でございます。三十六年は、御指摘のとおりに、それよりも高まっております。ところで、高等学校の生徒収容計画として、私どもが急増対策として考えて政府部内で決定いたしました数字は、三十八年は、大体三十五年の進学率を基礎にいたしまして六〇%、三十九年は六一%強、四十年は六三%というように、漸次高めまして、だんだんにその後におきましても進学率は高まっていくわけでございますが、昭和四十五年には七二%を目標にしてこれを設定するということになっておるわけでございます。ただ、現実の問題として、御指摘のように、進学率が三十六年においては約六四%になっておると思いますが、高くなっております。これは、三十六年度が中学の卒業生が少ない年でございまして、三十五年と比較することはちょっとできないと思いますが、したがって、三十七年に今の見込みでは約六四%を上回るような見込みでございます。しかしながら、それに従って三十八年が六四%を上回るとは考えられませんので、その点は、私どもは、進学率をまあ六〇%で押えるかどうかという問題ではなくして、各地方々々において、高等学校の進学状況というものはいろいろ事情が違っております。したがって、各府県で平均六〇%で押えるということでなく、地方におきまして高等学校の収容計画を立て、その地域的な特色に基づいてある程度の進学率を高めていくということは、これは高等学校教育の普及のためには望ましいわけでございますから、それを政府としてチェックするという考えは持っていないのでございます。しかしながら、財政計画として六〇%ないし六三%を押えましたのは、この急増期におきましても、少なくとも六〇%の進学率を保証するだけは財源措置をする。これは最低保証という考え方に立っているわけでございます。そういう趣旨でございます。
  54. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 関連して、今の問題は、進学の問題として非常に重要な問題ですが、私はちょっと今の説明に対して疑義を感ずるのですが、一体パーセンテージで進学率という問題を処することが正しいのか、あるいはまた、来年度の学卒というものは、三十五年、六年、七年から見て、いつがピークなのか、一番多いのか、それからまたずっと減ると思いますが、そういう点をもっと基礎的に御説明を願いたいと思います。
  55. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 御承知のとおりに、生徒の急増は、中学におきまして三十七年でございます。したがって、その三十七年以降におきまして高等学校への生徒がだんだんふえて参りまして、三十八年に中学からの入学者が相当ふえる見込みでございますが、三十八年、三十九年、四十年、この三年間に、私どもの推算では、大体百二十三万人従来よりもふえる、こういうような計画をしておるわけでございます。したがって、高等学校のピークとしては、昭和四十年でございまして、それ以降は高等学校の生徒もまた漸次減少するという傾向になるだろうと思います。
  56. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 四十年がピークだと言われるのは、進学者がそこでふえるということだろうと思います。ところが、六二%だとか五八%だとかおっしゃる、そのパーセンテージで高等学校進学を出しておられるということになりますと、来年が、いわゆる三十八年の卒業者が一番最高だと思う。そういう点を考慮に入れないで、四十年が高校進学者が最高だという考え方は、何を根拠にしておられるのですか。
  57. 福田繁

    政府委員(福田繁君) おっしゃるように、三年間の生徒を収容しますには、最初にそれだけのいれものと申しますか、窓口が開けていないと、入れないわけでございます。したがって、三十八年にその窓口を開くという意味においては、三十八年が一番大きいということは、これは同感でございます。
  58. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 したがって、現在の設備では収容するだけの能力はない、こういうことですね。間に合わないということですね。  これは大臣にお聞きをしたいんですが、こうした状態は、きょうやきのうからわかったことじゃないと思います。少なくとも、昭和二十一年、二十二年、二十三年の出生率が日本は非常に多かった。この方々が高等学校に進学をする時代というものは、統計的に出てこなくてはならない。それが、今日になって、一番出生率のピークのこの中学卒業者が来年だということになれば、相当学校が不足していると思うが、こういう面について大臣はどう考えるか。
  59. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 御指摘のとおり、前からわかっておることでございます。そこで、従来の高等学校に対します対策、小・中学校でも同様でございましたが、その年次に、たとえば三十七年なら三十七年の春入学するであろう生徒増、それに対しては三十七年度予算措置するというのが従来のやり方でございました。ところが、今お話のとおり、ふえることがわかっておるのに、しかもそれが一挙に膨大な数が増加するのに、今までどおりで、その年に入る者をその年措置するということでは、実際問題としては、一年間青空教室たらざるを得ない、そういうことでは対策にならないであろうということで、中学の生徒増に対応しまする第二年次であったわけでありますが、そのとき以来、この対策は前向きにやろうということで、たとえば三十七年度の春入ってくる者のためには、さかのぼって三十五年度及び三十六年度の二カ年がかりで前向き体制を整えようということにいたしたのであります。これは当然のことでありますが、従来は今申したとおりそうでなかった。そこで、二十八年度を第一ピークとします高校生徒急増に対しましては、三十六年度予算、これは金額的には二十億見当で、たいしたことではございませんでしたけれども、三十六年度対策及び三十七年度対策で三十八年度に高校にピークとなって現われる生徒増を受けとめたい、こういう体制で今日まで進んできておるのであります。そこで、先刻も政府委員から申し上げましたように、三十八、九、四十年がピークでございますから、その三年間に高等学校に収容せねばならない急激な増加数というものは百二十三万人見当になるであろう、そういう見込みを立てまして、三十六年度、七年度に三十八年度対策を講じ、三十七、八両年度で九年度というごとく、前向き姿勢で年次割りを予定いたしまして対策を立てよう、こういうことになりまして、三十六年度の二十億余の予算プラス、三十七年度予算では、国の予算としましては、工業高等学校、商業高等学校等のいわゆる産業教育振興法に基づきます学校に対しましては、十三億円ばかりの国の補助金を出すことによって対処する、一般普通高校に対しましては、すでに御承知願っておると思いますが、できれば三分の一くらいの国庫補助で対処するほうがきちっと見きわめがついてよかろうという建前でいきましたが、御案内のごとく、高等学校の設置責任者は制度上都道府県ということになっておる、国が当然責任を負うという制度下にはないということで、その考えは取り上げられませんで、本来の建前に従って交付税、起債ワクの決定に基づく財源の裏づけを地方公共団体にいたしまして、それでもってこのピークに備えるというのが、三十七年度予算中心とする対策でございます。その金額は、百五十四億円と予定をいたしておるのであります。五十億円の起債のワクと九十一億円の交付税でもって財源措置を講じ、先刻触れました国の補助金——産業教育振興法に基づく施設に対しまする国の補助金十三億、合わせまして百五十四億円あれば大体施設設備はできるであろう、ただしそのほかに新設高等学校の敷地が要る、これにも資金が要る、これは閣議決定の計画に計数的には出しておりませんけれども、百八十万坪くらいが要るであろう、それに対して財源措置としましては四十億円見当が要るであろう、それは起債財源をやりくりしまして弾力的に措置をしていこう、これが三十七年度に応ずる態勢でございます。まあそれは先刻相澤さんが触れられましたように、進学率をどう見るか。あるいは鉄筋、鉄骨対木造のいわゆる構造比率をどういうふうに見るかというふうなことやら、あるいはある府県におきましては、三十八年度に対処すべき財源措置は、六、七、二カ年度でいいわけですが、それよりさらに前向きに、まあ超前向き的に、三十九年度に必要とする施設も三十七年度からやりたいということで、かなり意欲的な都道府県もあるものですから、そこら辺から、まあ百五十四億円じゃ足りないじゃないか、知事会の計算との相互比較においては、百六十億円と称し、あるいは二百数十億円の格差があるじゃないか、これを一体どうするんだというような問題として、今盛んに論議がありますけれども、国の立場におきましては、先刻政府委員も申し上げましたとおり、基準的な進学率を押え、基準的な構造比率を基礎とし、あるいは建築単価にいたしましても、所によって高低はございましょうが、基準的な単価で押えるほかに手がないものですから、一応予想しましたそれらの基準に基づいて推算すれば約百五十四億円見当でいけるであろうと。そこで、今度は現実の問題をとらえまして、自治省、大蔵省とも、あるいは知事会側とも密接に連絡しながら、今の誤差があるというやつを、基準的な立場からと知事側からの現実に即した考え方とを数字的に今詰めておるわけであります。この詰める作業が済みますれば、その結果に基づきまして、三十七年度対策として財源措置をしましたことで、それで足りるのか足りないのか。足りないならば、それをどうするか。どうするかという方法は、いずれは予算で御審議願う形において、起債のワクを拡大する必要があるかもしれませず、あるいは交付税にいたしましても改定する必要があるという課題が出てくる可能性はむろんございます。その数字は、詰めました後に善処することで、一定の公正な進学率は維持しながら、迷惑がかからぬようにいたしたいと、かように思っております。
  60. 相澤重明

    ○相澤重明君 今、大臣の答弁を聞き、さらに先ほどの福田局長の話を聞いておると、こういうことが言えるわけですね。とにかく高校全入の問題については、急増対策として政府も知事会との意見調整をして、できるだけこれが解決のできるように努力をすると。したがって、三十八年度ないし三十九年度に立てたいというんだけれども、その以前に、たとえば校舎はそうなっても、土地を現在でも買えるならば土地を購入してよろしいと、そういう若干のゆとりを持ってこれに対処していくと、こういう考えであるということなんですね。  それから高校生入学の率の問題でありますが、政府が考えておる六一%ないし六三%というのが今言われておるわけでありますが、私は知事会と文部省との間の今までの総事業に対する見積もりというものが、非常な開きがあるのじゃないか。そうするというと、先ほどの御意見、まあ御説明を聞いておっても、どうもそういうふうにならない、こういうふうに心配をされるのですが、文部大臣の言うように幅を置くと。したがって、地方の都道府県知事が、いわゆる今年度に少し意欲的にこの際起債をしてやるんだと、こういう場合には、それも認めていくと、こういう考えに立って、アンバランスのあるものをなるべく差を縮めていくと、こういう考えであるということを確認してよろしゅうございますか。
  61. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 気持はそんな気持ですが、少し違います。と申しますのは、全入とおっしゃることについても少しニュアンスが違いますが、義務教育と申しますか、すべて希望者を全部入れるという制度なり態勢はないわけでございますから、それはちょっとごかんべんいただかねばならないという問題がございます。それから土地の購入その他ことごとく知事会側の要求どおりに、三十七年度の地方財政計画の改定をするというような形にはならないのでございまして、現に必要な土地等は都道府県では入手し、もしくは入手しつつあります。ただ交付税ないしは起債財源の裏打ちのワクからはみ出すというふうな課題が出てくることはむろんございますが、それには先刻来申し上げておりますように、一々の都道府県の実情そのままを全部カバーするという建前には、今の地方財政計画上は当然には出て参らないわけでございまして、進学率もおのずから一定の基準を押えざるを得ない。さらに構造比率も、単価も、共通的な観点に立ちました基準に基づかざるを得ない、そういうことからしまして、一々の都道府県ではある程度の格差が当然出てくることはやむを得ないわけでございまして、要は、相澤さんも触れられましたように、私どもの見込みでは六〇%の進学率は絶対に確保するような手当をいたしたいというのはすでに基本線として出ておりますが、しかし実際を見てみると、六〇%では、六〇%と予定しておったときに考えておった程度の進学率も、実際の進学状況はまかない得ないとならば、その誤差だけは当然修正されるべき性質のものである。その意味合いにおける補正というものはあり得る、そのことを合理的に発見すべく数字を詰めているのだと、こういうふうに御理解いただけばありがたいと思います。
  62. 相澤重明

    ○相澤重明君 文部大臣、だんだん上手な答弁をされて、いかにも納得しなければならぬというような形になっているけれども、私は自体百二十三万に押えた基礎が、これはもうそもそもあやしい。文部大臣の言うように、私自身も、高校全入だからといって、何が何でもその年になったり、中学卒業した者はみんな入れる、そういうことではない。政府の算定した基礎が、百二十三万と押えること自体が少し無理がある。もっと百七十万人ぐらいおるのではないかということまでいわれている、こういうことから、ずっとこの伸び率を考えてくると、知事会の意見と政府の考えている意見とのやはりアンバランスがあるでしょう。これが私は心配になったから、政府でも、都道府県知事がこの急増対策としてやるのならば、この三カ年なら三カ年のうちにある一定のゆとりを持たせるということになれば、あなたの説明したようになるけれども、そうでなければ、政府が六〇%という一つのパーセンテージを考えて対策を立てたのは、先ほどの局長の言うようにまあ六三%、六一%というような幅が出てくる。実際は六〇%というふうに押えたいけれども、場合によればその一%や二%の修正は今後あるかもしれない、こういうふうに答弁を私は聞いておるのですが、どうもその辺が先ほどからの答弁では、まだ地方の都道府県知事の要望に沿うには、私はかったるい、率直に申し上げて。だから、たとえば政府が全体として八百五十億なり八百八十億の事業費を見込んでおるのに、地方の都道府県知事会は、やはり千三百億なり千五百億を見込んでいるわけです。この幅があるわけです。幅がだいぶ違っている。それを、あなたのほうでこの三カ年間に、実情に応じてできるだけ急増対策をとるということならば、私はわかるけれども、何でもその基礎をぐっと押えてしまうということの話でいくと、せっかく御答弁をいただいたけれども、ニュアンスがだいぶ違ってきてしまう、それこそ。そこで私はこれは決算委員会ですから心配をしておることは、政府の金が効率的に運用されることが望ましいのであって、しかしその中でも子供の教育については特に力を入れてほしい、そういう都道府県知事の要望も、私どもはこの際この支出の中で十分考えられないものか、こういう点を聞きたかったのでありますが、いま一度、その幅はあなたが持っておるのか、それともどうもこれは基本的な六〇%に最初考えた構想で今後もいくというのか、その点はいま一度答弁願わないと、これは大へんな食い違いが出ると思うので、いま一度ひとつ大臣から御答弁を願って、次の問題に入りたい。
  63. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 相澤さんが最後に教育の問題を心配するというお立場からおっしゃったその気持は私も同じでございます。くどいことを申し上げてかえって混乱せしめることをおそれますが、端的に申し上げれば、政府側と知事側と数字を詰めて、結論として具体的の措置を講じるとするならば、知事側も納得してもらえるという線を発見するために努力しておる、こういうことでございます。
  64. 相澤重明

    ○相澤重明君 それは今後都道府県知事もいずれまたあなたのところにひざ詰め談判でこれは話をすると思う。まあ一つ十分地方の意見も、知事会の意見も聞いてもらって、何も文部省が国の予算を使うのにつまらん問題に使うわけじゃなくて、将来の国作りのために使うわけですから、それこそ池田総理の言う国作り、人作りの問題でありますから、根本でありますから、この点はぜひ努力をしてもらいたいことを要望して、あなたのこれからのやり方を見ていきたいと思う。  そこで最後に一つ、またあなたの努力をしてもらいたい、お答えをいただきたいのですが、先ほど横川委員からも文化財の問題について話があったわけですが、私はひとつ奈良における平城宮の保護に関して政府はどう考えておるか、まずこの点を文部大臣からお答えをいただきたいと思う。それでこまかい点については関係の事務局長なりあるいは局長のほうからそれぞれ御答弁をいただきたい。
  65. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 先刻もちょっと触れましたように、何としてもこの所有権は民間個人にある、あるいはある団体にあるという状態のままで、今御指摘の平城宮跡の史跡保存、埋蔵文化財保護等を考えます場合、どうしても限界があるわけでございまして、すなわち所有権者側から見ても不便きわまりない。また文化財保護委員会立場から、文化財保護しよう、史跡を保存しようという立場からいいましても、おのずからそこに立ち得る限界がある。そういうことのために隔靴掻痒の感をいだきながら今日にきておると思われるのでありますが、それにかてて加えて近鉄の工事等が具体的な問題として日程に上ってきておる。一体どうするのだということに直面いたしまして、結論的に考えましたことは、結局は、あの世界的にも大事な平城宮跡の保存なり発掘なりということを真剣にやろうとするならば、国が所有権者になってやるよりほか手がないようだ、こういう結論に到達しまして、できることならそんなふうにしたいということで、三十八年度予算でも、要するにそういうふうに持っていきたいものだと、今考えている最中でございます。
  66. 相澤重明

    ○相澤重明君 政府がそういう方針を固められて、三十八年度予算編成をされるということであるならば了承いたします。  そこで、私は中国なりソ連なりあるいは東南アジアの、それぞれ欧米のこういう文化保存の状況を見て参りますと、決して外国にも劣らない、私ども日本国民としては大事なものがたくさんある。しかしそれがどうもわれわれが手をつけられないで、いわゆる放任しっぱなしで、どうしてもあたら惜しい文化財をなくしていく。こういうことが非常に心配をされるわけです。それは先ほど大臣からも御説明をいただいた、近代都市の作り方によって、どうしてもそういうふうにかかってくる場合にじゃま物になってくる。どけなければいかん、あるいはこわさなければいかん、こういうふうなことがまあ行なわれるわけでありますが、一体こういうものをどうしたらいいのか。どうしたら日本のそういう民族固有の大事な物を保存することができるのか。こういう点について再検討をされるお考えがあるかどうか。この点ひとつ大臣からお答えいただくと同時に、保護委員会のほうも、現在どういうように考えて政府に建言をしているのか、これもあわせてお答えをいただきたい。
  67. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 今のお尋ねには詳しくお答えする能力がありませんけれども、私の承知します限りでは、今の文化財保護法建前からいたしますと、たとえば弾丸道路ないしは第二東海道線等の沿線に埋蔵文化財があって、荒らされるおそれがあるという場合に、どういう手が打てるかということは、文化財保護委員会でもって、ある地域についてそのおそれがあるところを史跡なり何なりとして指定をする。指定をすれば、平城宮について申し上げましたように、指定された土地の所有権者は勝手に使用収益処分ができない、制限を受けるということで対処する方法以外にないようでございますが、さて指定をするにつきましても、その所有権者の、指定してよろしいか、よろしうございますという承諾をとらないことには指定ができないということでございます。したがって所有権者から見れば、指定を受ければ所有権者としての権利が行使するのに不便で仕方がないから、喜んで指定を受けてけっこうですと言う人は、これはよほどの篤志家でなければあり得ないような道理でございます。そういうところから、今までも非常に不便しているのだということを聞いておりますが、もしそうであるならば、そうしてまたそうするほかに手がないとするならば、何らか——所有権者に黙れという態度で臨むわけにもいかない面もありますし、立法上どういうふうなことをしたら御指摘のような懸念を未然に防止できるかという角度から、現行法の再検討という課題となって現われざるを得ないと思います。そういう意味で、今直ちに通常国会目ざして検討を加えて間に合わせますとも申し上げかねますけれども、検討すべき課題が立法上もあるんだろう、かように思うのであります。
  68. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) 速記を止めて。   〔速記中止〕
  69. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) 速記を始めて。
  70. 清水康平

    説明員清水康平君) ただいま御指摘がございましたごとく、経済の発達に伴いまして、特に道路、団地あるいは鉄道というようなものが発達して参るにつれまして、埋蔵文化財を包蔵している土地がそれとぶつかるのでございます。法律規定をまつまでもなく、私どもとしましては、公共事業との調整をはからなければならんのでございますが、行政権の限界といたしましては、ただいま大臣からお話のございましたとおり、史跡とか名勝とかというふうに指定してありますというと、一応法律上は許可の権限があるわけでございますが、指定してないいわば古墳でありますとか貝塚というようなものは、全国で二十万はあるだろうといわれていると思います。大部分は指定してございませんし、二十万の中には周知の遺跡として今日もわかっているのもありますが、わかっておらないのもある。わかっているような場合には、発掘する場合二つありますが、一つは学術上の要求で発掘調査する場合でございます。もう一つは、指定はしてないがそのところをどうしても鉄道を通さなければならぬという、土木工事に伴う埋蔵文化財包蔵地の発掘と二つあるわけでございます。そのいずれもが、今日は学術調査による発掘も、土木工事による発掘も、法律上は届出制になっておりまして、許可制ではないのでございます。そこに問題があるわけでございますが、重要な貝塚、古墳というようなものを許可制にするためには、前もってどこそこに周知の遺跡があるということを一般国民に、学界に知らせておく必要があるのでありますけれども、今日二十万はあるであろうと思われる古墳は、実際は大部分がどこにあるかわからないという状況でございます。これではたとえ届出制を許可制にするにも困難でございますので、数年前から全国の貝塚、古墳等の調査をいたしております。来年度で一応終わるだろうと思うのでありますが、それによりまするというと、何々県のどこそこには、指定はしてないけれども、こういう古墳がある、こういう貝塚があるとわかりますれば、いわゆる遺跡台帳というものを作りまして、そして学術者あるいは建築業者その他に告示いたします。そこをもし発掘しなければならぬというような場合には、許可制にするかしないかということを、法律上の改正とにらみ合わせて検討していかなければならぬと考えておる次第でございます。
  71. 相澤重明

    ○相澤重明君 これはやはりさっきの文部大臣の答弁ではないけれども、やはり法律を再検討する必要があると思うのです。私は一つの例でありますが、これは史跡の問題ですけれども、江ノ島のそばにある稲村ケ崎、新田義貞が刀を海へほうり投げて、そして塩水が引いて鎌倉に攻め入ることができた。この史跡が実は史跡指定をしたのでありますが、そこへ有料道路を作って、その脇に駐車場を作った。あるいは港にヨットを浮かべるようにひとつ作っていきたい、こういうようなことで、あたら史跡というものが実はいつの間にか変わった姿になりつつある。こういう点をずいぶん神奈川県の議会の中でも議論があったようですが、せっかく指定をしたが、それをいつの間にはずされる。そうかと思うとまたそれを指定しておる。こういうような全く常識では考えられないようなことまでが実は行なわれてしまうわけであります。でありますから、よほど文化財保護については、それこそ官民ともに協力しなければ将来の国民に私どもは引き継ぐことができないと思うのであります。諸外国の例を見れば非常に努力をされて、そうして自分たちの祖先がほんとうによかったというふうに私どもにも教えておるわけでございますから、われわれ日本人も決して負けておるわけじゃないのだから、そういう意味でこれはぜひ再検討をしてもらいたい。そして文化財保護なり、あるいは史跡の指定をし、あるいはこれが十分将来に残されるように私どもは希望したいわけであります。これは先ほどの事務局長の答弁もいただきましたが、むしろ政府のほうにこれはひとつ御答弁をいただいておくほうがいいと思います。次官のほうからひとつ御答弁いただきたいと思います。
  72. 田中啓一

    政府委員田中啓一君) 大臣がおりませんので、かわって私が御答弁申し上げます。  相澤さんの御趣旨、まことに私どもも実は前々から一国民としては感じておったことでございまして、大臣もあのような気持でおりますので、ひとつ文化財保護法の期待しておるような体制を何と申しますか、政府その他の公共団体並びに国民一つになって、貴重なわが文化財が滅失しないように、散逸しないように、また放任に流れないようにひとつ体制を整えたい、そういう趣旨で、法律も検討し、またどうせこれは金のかかることだろうと思うのでありますが、そういうものもひとつ考えていくというようにやりたいと存じております。
  73. 相澤重明

    ○相澤重明君 次に一点だけお尋ねをして私も終わりたいと思いますが、国立大学に夜間部を設ける考えはないのかどうか。今までにも若干ありましたが、今後できるだけ地方の青年の希望を入れるように、そうした措置というものを政府は考えているのかどうか。現在まで何校夜間部を持っているのか、今後はどういうようにいくのかという点を御説明願いたいと思います。
  74. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) お答え申し上げます。御承知のように国立大学で夜間の学部を持っておりますのは、四年制のほうは六つの大学で、学部の数といたしましては八学部でございます。なお、これ以外に短期大学部が、これははっきり数は覚えておりませんが、たしか十五、六できているわけであります。夜間の短期大学部は勤労青年に対する教育の機会をできるだけ与えようというような趣旨から発足したものが多いのでございまして、現在相当効果は上げていると思っております。ただ最近の情勢といたしましては、その中にはだんだん学生の入学希望者の数も減って参りました関係から、四年制の学部——四年制と申しますか、これは夜間は五年でございますが、五年の学部にかわりたいというような希望を強く述べて参っているようなものも出て参っております。そういう状況でございます。なお、将来の問題といたしましては、これはやはり地元の関係から、そういった要望が強いものについては、私ども文部省としても取り上げて参るつもりで、実は国立大学の学長会議等でも話し合いをいたしておりますが、最近においては、あまり実は夜間部設置の強い要望が出てきておらない状況でございます。もしそういう希望が地元等において、あるいは大学において強いものがありますれば、そういうものは取り上げて参りたいと思っているわけでございます。
  75. 相澤重明

    ○相澤重明君 今の説明からいうと、今まで六カ所ほどある、しかし現在あまり希望がない、各大学で夜間部を設けてもらいたいという希望がない。これはやはりお役所の上にいるから、そういうことを言うのであって、現在大学に入りたいという希望者は非常に多い。多いけれども、国立にはなかなか上がれない。しょうがないから私立に上がる、私立も授業料が高くなってなかなかこれは上がれない、こういう悩みを持っているのが日本の青年ですよ。あなた方、少なくとも最高の学府の監督をする立場にある者が、今大学に上がる希望が少ないなんというのはとんでもない、これは多い。だからその多い中でも昼間の学校には行かれない、私立にも通えない、それならばせめて国立大学ならば国があらゆる面で援助してくれるのだから、夜間でも勉強したいという向学の青年の多いということを見逃すようなことでは、これはたいへんだ。それ自体の頭の切りかえをしてもらわなければならない。いわゆる洗脳しなければならないと言われなければならぬと思う。まさかそこまで私どもも言う必要はないと思うのだけれども、実際に現在まで政府に国立大学へ夜間部を作ってくれという申請は一つもないのですか。この点聞いておきましょう。
  76. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) 先ほどのお答えの中でちょっと訂正いたしておきますが、短期大学部を持っておりますのが二十三でございます。この点だけは御訂正させていただきたいと思います。  なお、最近の状況でございまするが、これは今相澤委員の御質問のように、たとえば神奈川県横浜等において夜間学部を作ってもらいたい、経済関係の夜間学部を作ってもらいたいという御希望があることは聞いておりますけれども、これは大学との関係におきましては、そういう要望にこたえたらどうかということを申し上げることでございまして、それ以上にこちらから命令をして、しゃにむに作らせるということにもならぬわけでございます。最近の状況を申し上げますと、先ほどちょっと触れましたのでございますが、従来の短期大学部を、いわゆる夜間学部にしたいということで実施をしたものがございますけれども、新たに国立大学に夜間大学部を作ってくれという大学側の御要望は最近は出ておりません。
  77. 相澤重明

    ○相澤重明君 私は、大学に進みたいという青年が非常に多い、こういう点については先ほど申し上げたとおりでありますが、特に非常に生活力の弱い中に向学心に燃えておる学生が非常に多いわけです。そのために育英事業も盛んになっておるのでありますけれども、現在大学に進んでおる中で、どのくらいの人が育英資金を借りておるのか。どのくらいの額になっておるのか。この点をひとつ御答弁いただきたいと思うのです。
  78. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) これは三十六年度の数字でございますが、三十六年度末までに、日本育英会といたしまして貸与いたしました育英奨学金の総額は四百二十六億ということになっております。貸与の人員は大体六十八万人、ただしこれは大学だけではございませんで、御承知のように高等学校以上の者全部を含んだ数字でございます。
  79. 相澤重明

    ○相澤重明君 そこで大学を卒業されてからお返しになった率、現在どの程度になっておりますか。
  80. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) 日本育英会の貸与金の返還の状況でございますが、先ほど申しましたように、奨学金の総額、貸与の総額は四百二十六億という数字でございますが、ただし御承知のように、教育関係者、卒業後教育関係の先生になったような場合、あるいは研究者になったような場合、その他返還免除になるような制度がございます。それと、これは年賦償還で最初の何年間かは就職の種類によってすえ置かれるというような制度もございまして、現在四百二十六億のうち返還すべき時期にきておるものが七十四億ということでございます。この七十四億のうち、実際返還済みになりましたのが四十一億、これは概数でございます。四十一億ということでございますので、返還の率は五五・一%というような数字になっております。
  81. 相澤重明

    ○相澤重明君 それでは大へん恐縮ですが、昭和三十年度からでけっこうですから、この育英会の状況について、今のように資金、人員、それから返還率そういうものをひとつ三十六年度まで、三十六年度までわかりますね、それをあと資料として出して下さい。これは中に、私どもが話を聞いているというと、もう大学出てしまえば、これはもらったものだ、返さなくてもいい、こういうことになるという話も聞いておりますが、それでは後輩を育てることにならないわけです。したがって、今の五五・一%というのは非常にさびしいわけですから、そういう点を少し資料として出していただきたい。将来はできるだけ多くの人に早く返してもらう、そうして多くの人にまた勉強してもらう、こういうふうに努力していただきたいためにひとつ資料の要求をしておきたいと思います。よろしゅうございますか。
  82. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) 承知いたしました。
  83. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 一つだけ検査院の方にお聞きしたいのですが、私は不なれですから、内容がはっきり頭に入らんかもしれませんけれどもお答え願いたいと思います。  この文部省関係不当事項というのは、さっき大臣も言われたように、そういうのが一点あるので非常に残念だ、こう言っておられたわけですね。ところが、私は文部省の一点というのはほんとうに一点なのかどうか、非常にこれは前の防衛庁の問題から読んでみて、文部省の問題を見ると、何か遠慮して書いておられるような気がするのです。これは検査院は、そんなことはないと私は信じておりますけれども、何か見ると、遠慮しているのじゃないかというふうに見える。そんなことはないと私は信じますけれども、ひとつお答え願いたいと思うのです。再三注意をしたといわれますが、これは大体検査をされる起点を中心にして、さかのぼって、何月と何月と何月にそういう注意をされたのか、これがまず一点。
  84. 樺山糾夫

    説明員樺山糾夫君) この附属病院の診療収入につきましては、三十二年度から検査をいたしております。当時、三十二年度におきまして、この前にこの検査は非常にこまかい事項でございまして、ここにも書いてありますように三カ月分だけを調査してこのような徴収を願ったということになっておりますが、三十二年度におきましては、四大学で三十五万円ほどの徴収漏れが検査の結果発見されました。それから三十三年度でも約九十九万円の徴収漏れを発見しておりますが、こういった事態につきまして、一応文部当局者に対しまして事務総長名で三十二年度、三十三年度、三十四年度三年注意書を発しております。それがこの検査報告に書いてあります再三の注意というのがそういうことをさしておるわけでございますが、そういった注意をしておりますが、なお、三十五年度におきましても、このような徴収漏れがありましたので、そういった徴収事務につきましては、根本的な改善の余地がある、必要があるということで決算報告書に提起した次第でございます。  なお、先ほど文部省所管につきまして何か遠慮して検査しているのじゃないかというようなお話がございましたが、さようなことはございませんで、書面検査、実地検査ともに、各省と同じように検査をいたしております。ただ、検査報告に掲げるような、重大な事故がなかったということであります。
  85. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうすると、四分の一の検査をされたわけですから、これの四倍は、こういう不当があったとみてもいいわけですか。その点はどうですか。
  86. 樺山糾夫

    説明員樺山糾夫君) 私どもの検査の能力からしまして、三カ月しか検査ができなかったわけでございますが、それを、率でいきますれば、そういうことになろうかと思います。
  87. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 これは、ほんとうは重大な問題ですから……。私たちは、決算委員という、一つの職をもらって、検査院の方を信頼するより仕方がないです。こんな膨大な数字をもらって、一々できるものじゃないのです。何としても、私は重大な問題だと考えるわけですが、これは、私だけでなく、決算委員の方、みんなそうだと思うのです。したがって、私は、ほんとうを言うと、大臣に聞きたいところなんですけれども、次官でもいいですが、そうした再々の注意を受けておって、しかもこれが、診療収入が漏れておるというような事態は、どういうところから起こるのか。これは役所でなければできぬことだと思うのですよ。普通の民間の診療所あるいは法人につきましても、こんな、診療費が漏れておるなんてことは……、再三再四注意を受けながら、三十二年から今日まで、ずっと注意を受けて、そのことが是正できないというのは、どこに原因を持っているのか。大臣は何代も大臣をやっておられるのだし、しかもあれだけ法律をたてにとって、堂々と自分の声明を発表せられるくらいの人が、こんなやさしいことがどうしてできないのか。一ぺん、大臣に伝えてもらいたいのですが、大臣が見えないから、次官でもいいから、どうしてそれができないか、回答願いたい。
  88. 田中啓一

    政府委員田中啓一君) たいへんどうも、高山委員から、文部省おしかりをこうむったわけでありますが、同じような案件で、同じ個所で起こったとは、私は思わぬのでありますが、たくさん医学部を持った大学がございまするので、絶えずどこかに、そういうようなのが起こるのじゃないかと、こういうことだろうと思います。おそらく私は調べてみると、いろいろ事情がありはせぬかと存じますので、一ぺん念入りにそういった原因を調べ、そうして将来、そういうことの起きないような措置を講ぜられるものならば、ひとつ念入りにやってみたい、かように存ずる次第であります。
  89. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それだけでは納得いかないことなんですがね。これは検査院の方にもう一ぺんお聞きしたいのですが、その診断をして、あるいは輸血などの問題もあるようですが、一体もし検査院の方がこれを摘出できなかったとかりにしますと、金は徴収しているかもしれませんね。その点はどうですか。徴収されてないという断言ができますか。たとえばレントゲンで診断をした診察料をとってないのでしょう、早い話が。あるいは輸血をした、そういうことが、あるいはカードがいくはずだし、あるいは何かの伝票が回るはずですね。それがかりにとってないということになりますと、これはもう全くのルーズですね。ところが、帳面には上がってなかったけれども、あるいはとっておって、それが記載してなかったのだということもあり得ると思うのですよ。記載してないということになれば、不良に使用したと言っても、これは過言ではないわけです。そういう面を、どちらにこれは判定されているのか、私はお聞きしたいと思います。
  90. 樺山糾夫

    説明員樺山糾夫君) 担当者に不正があったかというお話でありますが、そういう点は、私どもの検査では絶対にございません。この問題はここに原因を書いてございますように、診療を担当します医者とかあるいは看護婦等が、カードに記載するが、これを料金を徴収するほうの係へ回さなかった、あるいは看護婦がカードに記載することを漏らした。そういった連絡の不十分とか、場合によりましては、点数組織の不十分ということが、このような徴収漏れ原因となっているわけでございます。
  91. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうすると、これは金額にしても、これが四分の一ということになると、場合によっては、検査すればこの四倍出るということも言えると思うのですね。ここに二つの決算を出しておられますが、これを八つも十もしたとすれば、もっと膨大なものになると想像もできるような書き方がしてあるわけです。そこで、私は、こうした結果を検査院の方で検査されたと、その事後の処置ですね。一体その連絡不十分とか、その他のいわゆる看護婦さんなら看護婦さんの手落ちとして、看護婦さんが処罰を受けているのだ、あるいは再三注意をしたにもかかわらず、そういうことのないような方法をとらなくちゃならぬ責任者が、責任を負うているのか、事後の処置はどうなっているのか、それを一ぺんお聞きしたいと思います。
  92. 樺山糾夫

    説明員樺山糾夫君) 結局、内部の会計事務全般としては、あるいは会計課長とかそういうものが、監督の責任にあるわけであります。そういうものが監督を十分やり得なかった、あるいは手続的なものにおいて、若干不備な点があったということでございまして、看護婦というよりも、むしろそういった会計関係の責任者責任になるかと考えるわけであります。
  93. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 これは氷山の一角と申しますが、非常に一つしか出ていないという状態ですけれども、われわれ決算委員という立場から申し上げますならば、この一角がどういうふうに内容的に膨張する、こうした不当なものがあるのか、もう想像に余るものがたくさんあると思います。したがって、これは文部省としては、一つ不当事項だと大臣も言っておられますけれども、私は、自後、どこかのこうした連絡不十分のために、収入漏れがあったというような不当なことがないようにぜひこれは絶滅してもらいたいというふうに希望申し上げておきます。これで終わります。
  94. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  95. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) 速記を起こして。  他に御質疑のおありの方はございませんか。——他に御質疑もなければ、文部省に対する審査は、これをもって終了いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) 御異議ないと認めます。よって文部省関係審査は、これをもって終了いたしました。   —————————————
  97. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) この際、継続審査及び継続調査の要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和三十五年度一般会計歳入歳出決算、昭和三十五年度特別会計歳入歳出決算、昭和三十五年度国税収納金整理資金受払計算書昭和三十五年度政府関係機関決算書昭和三十五年度国有財産増減及び現在額総計算書昭和三十五年度国有財産無償貸付状況総計算書昭和三十五年度物品増減及び現在額総計算書審査並びに国家財政の経理及び国有財産の管理に関する調査につきましては、今期国会中にその審査並びに調査を完了いたすことは困難でありますので、閉会後も引き続いてその審査を行なうこととし、本院規則第五十三条により継続審査要求書並びに継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  なお、要求書の作成、提出の時期等の手続につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。   —————————————
  100. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) 次に、委員派遣要求に関する件についておはかりいたします。  昭和三十五年度決算外三件の審査及び国家財政の経理及び国有財産の管理に関する調査のため、委員派遣を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) 御異議ないと認めます。  つきましては、本院規則第百八十条の二によりまして、委員派遣承認要求書を議長に提出いたすことになっておりますので、要求書の内容、提出の時期等の手続につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  102. 鈴木壽

    委員長鈴木壽君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  本日はこれをもって散会いたします。    午後三時四十二分散会