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政府委員(関
守三郎君)
援用の問題でございますが、三十五条の
撤回ということをはたしてこれを一挙になし遂げ得るかどうか、それともこれを若干の時間をかけてなしくずしにしていくほうが実際的であるかどうかというところが、結局、議論の分かれ目になるのではなかろうかと思いますが、現実に現在やっておりますところの、受けております待遇よりも、相手国の
輸入制限、数量制限というものが著しく減少いたします。たとえばブリュッセルの商品分類に従がいまして、三十
品目、三十五
品目、四十
品目という
程度にまあ減るという場合に、これを一挙にこの際ことごとく
撤回させなければ承知しないというのでは話し合いがつかないというのが過去の実例でございまして、いかにこちらががんばりましても、なかなか現実の問題として、やはり
日本の商品を
日本の
輸出——相手国にとっては
日本の商品の
輸入でございますが、
日本の場合におきますほど価格上の競争力が強い。かつ、その上に、何と申しますか、まあ過当競争と申しましょうか、
輸出のやり方がちょうどきりもみ戦法のような格好になりまして、とかくどうも市場撹乱を起こしやすいという傾向が強いのがやはり
日本の
輸出の場合が一番はなはだしいようでありまして、その
関係、そういう実例が過去においても無数にございます。で、その無数の過去の実例を前にいたしまして、それらは相手側の
政府といたしましても、今一挙にこういうものを直ちにきれいにしてしまうことはなかなかのみにくいという言い条もわれわれとしても了承できることでございます。これをいかにして幅を狭め、かつ、過渡的なことで期限を切るかということに事実上
交渉の重点は移っているということになるのが、過去の実例でございます。
もう
一つのこのセーフガードの問題でございますが、これは相手国に一方的にとられるだけのものではございませんので、わが国といたしましても、同様の場合においては同様にセーフガードが活用できるということになっております。したがいまして、たとえば今後
日本の自由化が進みまして自由化いたしました結果同様な事態が起こった場合には、これは
日本としても条約上はこのセーフガードを発動し得る権利を持ってくる、こういうことになって参るわけでございます。しかし、実際問題といたしましては、われわれといたしましては、このセーフガードを発動しなければならないような事態はなるべく起こさないように努力していきたい。これはまあいわば伝家の宝刀のようなものにしていきたいということでやっておるわけでございます。そして御
質問の、そういうことをしてまではたして実質的に、そういう何と申しますか、価値と申しましょうか、条件と申しましょうか、そういうものをくっつけたままで三十五条の
援用を
撤回させることに意味があるかということになると思いますが、私はこれは過去において実例が示しておりますとおりに、はっきりその結果
輸出が増進いたすわけでございます。たとえば、これははっきり三十五条を
援用ということになっておりませんけれ
ども、
豪州に対する
日本の
輸出が非常に伸びたことのごときは、これは事実上三十五条の
援用の
撤回という形はとっておりませんけれ
ども、実質上は、こういう今申しましたようなことで、つまりセンシティブ・
リストというものはある
程度のセンシティブ・
リスト、実際上、実質上におけるセンシティブ・
リストと認めまして、そうして実質上はセーフガードのほうを改める。これは必ずしも書きものにしたものはそういう形になっておりませんけれ
ども、
協定上の義務を暫定的にその当該商品に限って一定期間免れるということになるわけであります。これは協議が相ととのわざる限り——ということは、一種のやはりセーフガードでございますが、そういうものをもう一年安心さしてやらした結果、結局
豪州に対する
輸出が非常にふえてきたというふうなことで、実質上も私はきれいさっぱりとした三十五条の
援用の
撤回ということにはなりませんけれ
ども、つまり暫定的にそういうものを認めて、しかもなおかつ三十五条の
援用を
撤回させるということは、わが国の
輸出を増進させるという実質的な意味が非常に大きいと思うのでございます。これは数量制限ということだけに限って考えたわけでございますが、このほかに
関税の分野について考えますというと、これは三十五条
援用を
撤回いたします結果といたしまして、相手国は、
日本との間に、
ガットの規則に基づくところの
関税譲許交渉というものをやらなければならなくなるわけであります。また、その結果といたしまして、譲許いたしましたものにつきましては、
先方も縛られるということになってくるわけでございます。今後これらの、特にこれはまあ
豪州の諸国に対する
関係でございますけれ
ども、
日本の
輸出というものの伸ばし方というものを考えますと、これはやはりいわゆるセンシティブ・アイテムというようなものは、無理押しにそういうものを伸ばすということは、労多くして益がない。これは現実に過去におきまして、
アメリカ、
カナダに対する
輸出におきましても、
豪州その他に対する
輸出におきましても経験いたしたところであります。なるべくそういう狭い分野で、しかも、
向こうが非常にセンシティブだと考える分野に、まああまり無理押しいたしまして
輸出を伸ばすよりも、やはりわが国の
輸出というものは多様化していくということが必要になって参ると思いますが、その際におきまして、やはりわが国といたしましては、相手国と
ガット上の
関税関係を持ちまして、そうしたたとえば欧州の諸国が
アメリカその他に対して引き下げました税率を、
日本でも均霑してここに入っていくということ、それをしかも単に事実上の問題として、もしくは暫定条約上の権利としてそこに入ってくるのではなくて、やはり
ガットのこういう固い基礎の上に基づきましてこれに均霑いたしまして、さらにそういう新しい
品目につきましては、相手国と
ガット上の
関税交渉をいたしまして、
関税を引き下げまして、これによって新規商品の
輸出の道を開いて、やはり
輸出を多様化していく。これが私は非常に数量制限の
関係に見合いまして、
関税上の面におきまして、やはり三十五条の
援用撤回をさせていく結果として出てくる大きな面ではないかというふうに考えて、申し上げる次第でございます。
おおむね以上のような二点が、三十五条の
援用撤回をさせるこの際に、過渡的な今申し上げましたようなセンシティブ・
リストというようなものを認める、また双務的にやっても、双務的にセーフガードというものを認めるということは、まあ必ずしも好ましいことではありませんけれ
ども、それでもなおかつ十分な意味があるじゃないかということの御
説明であります。