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1962-08-31 第41回国会 参議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年八月三十一日(金曜日)    午後一時十六分開会   —————————————   委員の異動   八月三十日   辞任      補欠選任    長谷川 仁君  川野 三暁君  八月三十一日   辞任      補欠選任    川野 三暁君  長谷川 仁君   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岡崎 真一君    理事            井上 清一君            鹿島守之助君            草葉 隆圓君            大和 与一君    委員            青柳 秀夫君           大野木秀次郎君            木内 四郎君            杉原 荒太君            山本 利壽君            加藤シヅエ君            佐多 忠隆君            羽生 三七君            石田 次男君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 大平 正芳君   政府委員    外務政務次官  飯塚 定輔君    外務省経済局長 関 守三郎君    外務省条約局長 中川  融君   事務局側    常任委員会専門    員       結城司郎次君   説明員    法務省入国管理    局次長     富田 正典君    外務省アジア局    北東アジア課長 前田 利一君    外務省経済局外    務参事官    平原  毅君    外務省経済局国    際機関課長   宮崎 弘道君    外務省経済局ス    ターリング地域    課外務事務官  橘  正忠君    外務省条約局外    務参事官    須之部量三君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○通商に関する日本国とニュー・ジー  ランドとの間の協定を改正する議定  書の締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○国際情勢等に関する調査(在韓日本   人妻に関する件) ○海外移住の推進及び援護対策に関す  る請願(第一〇号) ○沖繩船舶日本国旗掲揚に関する請  願(第八三号) ○日ソ近海漁業完全操業確立に関す  る請願(第九四号) ○残置在外私有財産返還補償促進に関  する請願(第三七〇号) ○軍備全廃に関する請願(第三八八  号) ○千九百六十年及び千九百六十一年の  関税及び貿易に関する一般協定の関  税会議に関する二議定書等締結に  ついて承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○継続調査要求に関する件 ○委員派遣に関する件   —————————————
  2. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) それでは、これから外務委員会を開会いたします。  本日は、まず通商に関する日本国ニュー・ジーランドとの間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。  なお、本件は提案理由説明及び補足説明を聴取しておりますので、本日は質疑に入りたいと思います。御質疑のあります方は、順次御発言を願います。
  3. 大和与一

    大和与一君 ニュー・ジーランドとしては英国のEEC加盟が実現した場合には、イギリスとの特恵制度というか、そういうものが弱まる、こういう一般的な見方があると思うのです。そのために今後の実情として日本に期待する関係から、今回正式に三十五条撤回に踏み切った、こういうような一体背景はあるのかないのか、その点をお尋ねいたします。
  4. 平原毅

    説明員平原毅君) 今先生の御指摘の点が、今度ニュー・ジーランドが三十五条の撤回に踏み切りました要因の一つになっている、そういうように考えております。
  5. 大和与一

    大和与一君 そうすると、何ですかね、イギリスEEC加盟が、なかなか農産物なり、あるいはイギリスカナダオーストラリアニュー・ジーランドあるいはその他、今までの関係等があってまだすっきりしないんですよ。非常に内容はたいへんな複雑な問題があって、それを今度欧州大陸側が簡単にのむかというと、そうもいかんものだから、ごたごたまだもたつくかもしれない。方針はそういうふうにきまっても、たいした影響はないのですね。
  6. 平原毅

    説明員平原毅君) 御存じのとおり、もう対日二十五条援用撤回いたしましたので、ニュー・ジーランドといたしましては、今さら再援用ということは形式的にもできなくなっておるわけでございます。
  7. 大和与一

    大和与一君 ことしの五月十九日のロイター電によると、マーシャル、ニュー・ジーランド商相マッキュアン豪州貿易相がシドニーで会談したですね。そのときにイギリスEEC加盟問題を討議したあとに、豪州ニュー・ジーランド両国間で、太平洋共同市場設立を協議した、こういうことをロイター電で言われておるが、こういう構想について何か御存じでしたらお話しをいただきたいのと、それから、かりにそういう考え方があるのであれば、その考え方が少しでも推進されるとすれば、わが国には一体いかなる影響が起こり得るであろうか、その具体的な幾つかの要点をおっしゃってもらいたい。
  8. 平原毅

    説明員平原毅君) 御指摘の点でございますが、ごく簡単に電報で入ってきておる以外に、何らの詳しい情報を私どものほうとしては存じておりません。
  9. 大和与一

    大和与一君 それは第一点のお答えであって、もしもという、そういうことは当然考えられるわけですから、それぞれの国でやはり自分たちが生きていかなければならぬのだから、いろいろな手を打つと思うのです。そういうような一つ仮説が生まれる場合、考えられる仮説だけれども、その場合に、一体日本がそういうものに対して、どういう影響を受けるかということはおっしゃることができるでしょう。個人の見解でもいい。
  10. 平原毅

    説明員平原毅君) 御指摘の点、従来の情報と申しますか、きわめて抽象的なものがございますが、われわれといたしましても、詳しい研究ということは正直のところわからないわけでございますが、私の個人的な見解と申しますか、思いつき程度で申しわけないのですが、申し上げますが、そういうふうなニュー・ジーランド豪州を中心といたしますような太平洋経済結びつきというものの加盟国がどうなるかという問題は、一つの大きな問題でございます。日本も参加を求めるような、あるいは非常に太平洋を広くとりまして、アメリカカナダ日本豪州ニュー・ジーランドあるいは中南米の太平洋岸の諸国というものまで含めるという問題。それから第二番目の、結びつき方が、EEC——ヨーロッパ経済共同体のような関税同盟を作るものであるとか、自由貿易連合を作るものであるとか、そういういろいろ仮定の条件がございまして、どうも私といたしましても突き詰めて、日本にプラスであるかマイナスであるかという問題は、非常にむずかしくて、正直なところお答えできないものですが、ただニュー・ジーランドの問題で考えてみますと、一応ニュー・ジーランドは今のところ工業化が著しくおくれておりまして、農産品輸出国でございますので、この国と日本との今後の経済関係というものは、そういうような経済同盟がたとえできましても、短期間の間にはすぐ利害が衝突するというのがわりに少ないのじゃないか、そういうふうに想像する次第であります。
  11. 大和与一

    大和与一君 ニュー・ジーランドは、いわゆるアンザスですね、この一員なんですが、一体アンザスは具体的にはどんな動きをしているか、最近の情勢少しおわかりですか。
  12. 橘正忠

    説明員橘正忠君) アンザスは一九五一年にできましたのでございますが、もっぱら政治的な会合でございまして、直接には経済関係にはタッチしておりません。最近アメリカオーストラリアニュー・ジーランド三国が会議をいたしまして、共同コミュニケを発表いたしましたが、その際には、これら三国はソ連政府核実験の停止に関する協定手続を延ばしたことに関心を持っておる。それから、豪州ニュー・ジーランドアメリカが一連の核実験を行なわざるを得ない立場に立ったことは認める。それから、軍縮問題については、一般的な完全な軍縮協定を結ぼうという米国の態度を、豪州ニュー・ジーランド両国とも承認する。あるいは南ベトナムに対する共産勢力の侵入を阻止する。そのための援助を行なおうというような意向をその共同コミュニケで発表いたしました。  それから、ラオスの中立政府の成立、西ニューギニア問題の平和的な解決、これについて国連の暫定事務総長立場を支持する。それから、経済問題についても、アンザス三国はアジアに対する援助継続を約束しよう。あるいは日本援助も歓迎する。そういった共同コミュニケを行ないまして、なお、このアンザス会議の後に、オーストラリア南ベトナム軍事顧問団を送るというような措置をとりました。  そういうことが、ただいまわかっておりますアンザス動きでございます。
  13. 大和与一

    大和与一君 ニュー・ジーランドは今回三十五条を撤回したんですが、オーストラリアはそれはだいぶ内容は違うけれども、やはりイギリスとの関係は似たようなものですからね、撤回動きなんというものはありますか。そういう話は一ぺんもないですか。
  14. 平原毅

    説明員平原毅君) お答えいたします。豪州との問題は、日本側といたしましては、当然ニュー・ジーランド援用撤回したことでございますし、絶えず豪州のわがほうの大使館、あるいは先方要路者の訪日を機会に、いろいろ話し合っておる次第でございまして、ただいまの予定は、大体ことしの十一月の初めに現行協定改定交渉と並びまして、この三十五条問題を豪州と折衝したい、こういうふうに考えております。
  15. 大和与一

    大和与一君 何か、去年だったですかね、総理大臣が来ましたね。そういうときにやっぱりこういう話は一応出ているわけですか。
  16. 平原毅

    説明員平原毅君) そのとおり出ております。
  17. 大和与一

    大和与一君 ニュー・ジーランド日本との貿易ですね、若干入超の状態にあるんだけれども、この貿易事情を改善するために、縮小均衡でなくて、たとえば第三国を通ずる均衡方式とか、そういうようなことを何か考えておられますか。
  18. 橘正忠

    説明員橘正忠君) お答えいたします。今までニュー・ジーランドからは、羊毛とか、木材とか、スクラップとか、羊の肉とか、そういう工業原材料とか食糧を輸入しておったわけでございますが、経済の成長でこれが次第に伸びて参りまして、一方日本輸出は繊維とか雑貨類程度でございましたので、ニェー・ジーランド国際収支の面で苦しい。したがって輸入を締めるということになりますと、どうしてもそのあおりを一番受けます。したがって、輸出も伸びては参りましたが、輸入の伸びほどではございませんでしたので、今後はこういう消費財以外のもう少し資本財のような新しい分野を拡大していけば、日本輸出均衡とまではいかなくても、もっと輸入に近い水準に伸びる可能性があると考えております。
  19. 大和与一

    大和与一君 今回の改正で、現行協定第五条を政府側としてこれを削除しているのですね。それと同趣旨内容を持った交換公文を交換している理由は一体どうなんですか。政府側規定ガット十九条にも規定があるわけで、双方がガット当事国である以上は、無理にこのような政府側の事項をお互いに確認する必要がないのではないかとも考えますがね。
  20. 須之部量三

    説明員須之部量三君) 今の点は確かに御指摘のとおりでございまして、なくもがなと言えばそのとおりでございます。ただ、交渉にあたりまして、ニュー・ジーランドの国内でもやはりまだまだ若干は不安を持っている点もございます。そのためにニュー・ジーランド側立場としましては、ガットそのものを適用するのでございますが、したがって、ガット規定と重複はいたしますが、一応この種のことを書いてほしいという希望もありまして入れたのでございます。これの運用はガットどおりにやるということは、交渉当時から意見は一致しております。
  21. 大和与一

    大和与一君 そうすると、それは向こうの強い希望で一応入れたという程度なんですね。それで実質的にそう変わらぬからまあいいじゃないか、蛇足だけれども、しばらくの間、こういうことですか。
  22. 須之部量三

    説明員須之部量三君) 言いかえますれば、御指摘のような趣旨でございまして、議定書のほうの本文自体で、今回の取りきめはガットの取りきめを何ら害するものではないと書いてございます。したがいまして、あくまで、運用せられますのはガットそのものでございます。
  23. 大和与一

    大和与一君 交換公文の中に、日本側が提起してある第一次産業というのは一体どういう産業ですか。
  24. 橘正忠

    説明員橘正忠君) 第一次産品の例といたしましては、酪農産品、それから羊毛木材というようなのが考えられますが、ここで特に日本関係ある第一次産品は特に酪農品を意味しています。
  25. 大和与一

    大和与一君 それだけですかね。関税交渉に関する交換公文のうちに、ニュー・ジーランド羊肉を、日本側サケカン詰甲殻類といいますか、軟体類のカン詰現行関税率を引き上げないことを要請しているが、これらの品目が特記されている理由輸入第一位の羊毛に触れていない理由、そういうことをお尋ねいたします。
  26. 宮崎弘道

    説明員宮崎弘道君) お答え申し上げます。  ニュー・ジーランドとの協定に基づきまして関税交渉ガットのワク内で開始することが合意されておりまして、ジュネーヴにおきまして近く正式交渉が開始されると思います。その場合に、例示品目は、これは日本側関心を示しました品目例示としてここに記録されておるにとどまるわけでございまして、それ以外の品目につきまして、ニュー・ジーランド側に対しまして関税譲許を求めるということを妨げない、かように解釈いたします。また、日本側ニュー・ジーランドに提供いたします品目につきまして、羊の肉は、これは先方が特に関心を示したものでございますので、一応例示の意味でここに書いてございます。羊毛につきましては、日本の主たる輸入先豪州でございますから、将来豪州との関税交渉の問題が生じましたときに考えることが得策であるということで、ニュー・ジーランドに対しましては特に約束をいたしておりません。ただし、関税交渉の場におきまして、先方が要求してくることは自由でございますけれども日本側としましては、現在のところ羊毛等につきまして関税譲許することは、ニュー・ジーランドとの交渉におきましては、現在は考えておりません。
  27. 大和与一

    大和与一君 最後にちょっとつまらぬことを聞くのですがね、外務次官が提案されたときに、ニュー・ジーランドと非常にジーを強くおっしゃったわけですね。あれはどうなんですか。ほんとうの言い方はどうなんですか、国の名前の発音は。
  28. 平原毅

    説明員平原毅君) 御存じのように、ジーランドというのは現在のオランダ領にあります島でありまして、それを現在のニュー・ジーランドに名をつけましたときに、新しいジーランドというのでニュー・ジーランドとしたわけでございます。アクセントはジーにある。ニュー・ジーランドであります。
  29. 大和与一

    大和与一君 私の質問は終わります。
  30. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) それでは大臣が見えましたので、ただいまの件は質疑を一応終わります。   —————————————
  31. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 国際情勢等に関する調査議題といたします。  この際加藤委員より発言の通告がございますので許します。加藤君。
  32. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 外務大臣にお伺いいたします。お伺い、兼十分な御考慮を願いたい問題でございます。  これは純粋な外交問題ではないわけでございますけれども、先ごろの新聞では、今日韓国に、日本婦人韓国人結婚して韓国国籍がある日系婦人、これが約二千人くらいおるそうでございます。その日系婦人たちが今日非常に生活が苦しい環境に置かれておるそうでございまして、助け合い団体というので弥生会というのをこしらえて、会長の原富美さんという方がソウルから日本に来られまして、その実情日赤本社にいろいろと訴えられましたことが新聞に報道されておるわけでございます。また先ごろ作家の平林たい子さんも現地に行かれまして、この日系婦人たちがどのくらい生活に困窮しておるかというようなことをつぶさに見てこられたそうでございまして、この約二千人の日本婦人のうちの八割に相当する千六百人くらいは、子供を四、五人かかえていて、全然生活の道を失っておる母子世帯でございます。この苦しい人たちは、国籍韓国にあるために、現在のような日本韓国との関係では帰ることができない。しかも子供があるために韓国国籍を離脱することもできない、こういうような状態婦人たちに何とか日本に帰る方法、そして日本に帰って、生活のちょっとめんどうを見るような方法を考えていただきたいと、こういうことでございまして、これはまあ外交問題を超越した純粋の人道問題として、外務大臣にも御考慮を願いたい、こう考えまして御質問するわけでございます。
  33. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どものほうで今御指摘の在韓日本婦人生活状態、実態がどうなっておるかということにつきまして、一応の調べもございます。また、その帰国希望の状況、それから今御指摘の、御帰国される希望を漏らされている場合の帰国手続問題点等、一応調べをいたしたわけでございます。で、問題点につきましては、今御要請されましたとおり、私どもといたしましても精細に検討さしていただきまして、外交上の問題と申しますよりは、おっしゃるとおり人道上の問題でございますので、あとう限りの配慮をいたす決意でおります。  今後とも、お気づきの点がございますれば、御指摘をいただきたいと思います。
  34. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 今外務大臣の非常に御同情をお持ちになった御答弁をいただいたわけでございますが、手続上の問題点というのは、どういうようなところにございますでしょうか。
  35. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ在韓日本人の中には、在日親族がないという場合、あるいは親の反対を押し切って韓国人結婚されたということのために、戸籍謄本を取り寄せられる場合に困難が事実上あるという場合、それから必要書類を整えるのに、まあ在日親族との間に何回も手紙を往復しなければならぬ。中には、まあ貧困のために切手代等の支弁に困るという方もあるようでございます。それから韓国政府の審査に手間取るためかどうか、韓国帰国の申請を行なってから日本政府に到達するまで、相当時間がかかります。まあ、そういった点が、できるだけ便宜的措置は講じておりますものの、そういう事実上の制約があるということ。そこで、これは手続と申しますよりは、その方が置かれた環境でそういう制約があるということでございます。まあ、それにどういう政府のほうで手を差し延べてあげるかという問題になるわけでございます。
  36. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 政府のほうでは、具体的に、積極的に、どういうことをして下さいますでしょうか。
  37. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私も実は精細な点は十分勉強が行き届いておりませんが、事務当局のほうでだれか……。
  38. 富田正典

    説明員富田正典君) 私は法務省入国管理局次長でございます。  法務省入管としては、受けて立つほうでございまして、むしろ外務省説明をいただいたほうがいいかと思うんですが、まだちょうどこれからお見えになるところらしいんで、私の知っている限りのところを一応お答えしておきたいと思います。  向こうに行っておる元日本人である韓国の御婦人方については、一時的な里帰りの問題と、それから永住的に帰ってくる場合と二つあると思うのです。で、永住的に帰ってくる場合には、日赤のほうからの申し出によりまして、韓国赤十字が全面的に帰国援護をするということになっております。先ほど外務大臣の御答弁にもございましたように、帰国する場合に、いろいろ旅券の問題であるとか、その往復に非常に手間取るとか、あるいは元日本人であるならば、日本人として戸籍があって、それが戸籍から除かれておるかどうかというような問題、それからまた、自分韓国人だと思っておりましても、その結婚が事実上の結婚でございまして籍は依然として日本にあるというような、戸籍調べなければならない問題などもございまして、その手続往復というものに相当な費用もかかる。時間もかかる。それからまた、旅券を取りに行きます場合には、ソウル向こう外務部まで出て行かなければいけないというので、非常に生活に困っている方々がそういうふうにできないというような実情にあるわけでございます。これを永久に里帰り希望する元日本人については、韓国赤十字といたしましてもそういう隘路がございますんで、一応希望を受け継ぎまして、そのリストを作りまして、これを日本外務省に送って参ります。それを外務省からさらに法務省入国管理局のほうに送って参りまして、こちらのほうで戸籍上の確認手続をとって、それをまた逆のルートで向こうに送り返す。それによって韓国のほうで、これは韓国人であるという国籍証明書のようなものを出しまして、釜山まで旅費全部めんどう見て送り届ける。で、これが帰って参りました場合には、そのあらかじめリストでチェックしているものがございますから、下関の入管の事務所でも、それによりまして対照して受け入れるという工合に、非常に簡便な手続を、手続面でもそれから経費の面でも講じているわけでございます。ただ、一時帰国の場合には、若干趣きが異なりまして、やはり韓国人が一時日本に来てまた帰るということになりますと、これは当然パスポートを韓国政府からもらって参らなければなりません。そうして普通の韓国人と同様に、事前にこういう者の入国をさしてもらえるかどうかという事前の照会が、外務省を通じて法務省に参りまして、普通の外国人と同様な手続でなされております。そういう点は、一時帰国の場合には通常の手続による。そのために若干のいろいろな困難はございます。永久帰国の場合には、万全なできるだけのことを用意してあるということになっております。日本人の場合には、永住帰国で帰ってきます場合には、これはもう問題ございません。日本人であるということさえ確かめ得るならば、これはもう日本人が帰ってくるのでございますから、問題ございません。ただ、日本人が一時こっちへ参って、また韓国へ戻るということになりますと、これは、韓国政府から再入国の許可をもらってこっちに来なければなりません。それで、やはりその点ではめんどう手続があるようでございます。  大体以上でございます。
  39. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 まあ、特別のお取り計らいを考えていて下さいますことがわかりまして、たいへん心強く思いますけれども、今の御説明によりましても、一時帰国の場合には割合に事がめんどうだということは、法律上も手続上もめんどうなことはよくわかりますのですけれども、今申し上げております問題は、やはり子供があるということになりますと、その子供韓国人国籍に入っていて韓国人であるために、そこから自分だけが籍を取って日本に帰ってしまうということができないという、これは特殊事情でございまして、そういうような問題も一つの強い要素として含まれているということを御考慮願いまして、そうして費用ども全然支払える能力のないこの二千人の人たちであるということが考えられますので、費用の負担はどういうふうにしていただけるものか。あくまでも人道的な立場からお考えになって、だんだん寒くなりますと、穴の中に住んでいる御婦人たちがずいぶんあるのだそうでございます、家のないために。土で作った穴の中に日本婦人が住んでいるというようなわけでございますから、やはりあまり手間取らないような方法で善処していただけますように、大臣としても十分な御考慮を払っていただきたい。また御尽力をお願い申し上げたいと、こういうことでこの問題の質問は一応終わります。  委員長、もう一つ大臣に伺いたいことがございますが、よろしゅうございますか。
  40. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) はい。
  41. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それはやはり簡単なことでございますが、昨日あたりの新聞、けさの新聞や昨日のニュースでもって、千円紙幣偽造紙幣がたくさん出ているということに関連して、大蔵当局で今度新しい紙幣を印刷なさる、それには伊藤博文の写真を入れるということを決定なすった。こういうようなたくさんの人が使うお札をどういう図案にするかというような問題を、そういうような図案という二とについてどのくらい権威のある方がおきめになっているか。これは外務大臣の問題じゃございませんから、外務大臣に伺うわけじゃないのでございますけれども、私はそういうことに非常に疑問を持つわけです。これは事務当局だけでおきめになる問題ではなくて、やはり図案の専門家の意見を聞いた上で適当なものを採用なさるのが順序だろうと思うのであります。今回どういり手続でおきめになったか。ニュースなんかでは、次官の会議か何かそんなことでおきめになった。それで伊藤博文の写真を入れる。なお詳しいその説明を見ておりますと、伊藤さんが変な——変なと言っちゃ悪いけれども、ゴボウのようなひげをはやしていらっしゃる。ひげはたいへんデリケートですから、今度は偽造を作る人は偽造をするのにむずかしいということがその写真が選ばれた一つ理由だということも新聞で承知したわけでございます。ですけれども、私が受けました印象では、今外務当局としては日韓問題を一生懸命やっていらっしゃる。私のほうの党ではこれに反対をしているわけでございますけれども、そういうような政治的立場を超越いたしまして、南北朝鮮の人々の立場から見ました場合に、今さら日本韓国人が、北鮮人が一番いやな印象を受けているような伊藤博文公の写真を何でわざわざ持ち出して千円札に入れなければならないか。そういうようなことをきめられるということは、政府当局としてもあまりにも国際感覚が無神経過ぎるじゃないか。これは韓国の問題だけじゃございません。北鮮の問題全部含めて、あの半島の人は、伊藤博文といったら、これは帝国主義侵略のシンボルのように思っているのだろうと思います。それをわざわざきめた。外務大臣としては、やはり国際親善の立場から、こうしたことに対して一言なかるべからざることだと私は思うのでありますけれども外務大臣はいかがでございましょう。
  42. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 実はただいままでのところ、私のところへ御相談を受けていないのであります。おそらく私のところなんかに相談すべきものじゃないという御判断かもしれません。今お述べになりましたようなことは一応新聞等で拝見しておりますが、せっかくの御注意もございますので、もう一ぺん、どういう事情であるか、ひとつ私自身も検討させていただきたいと思います。で、従来、生きている方は載っていない。国民的な、何といいますか、感じからしますと、高橋是清さんみたいな方がいいんじゃないか、それはすでに作ってあるそうです。聖徳太子という方は真実の写真かどうかはわからぬし、できるだけ最近の方ということで選考したように承りましたが、どの程度まで行っておるのか、どういう配慮があったのか、私は実はつまびらかにいたしておりませんので、せっかくの御注意もありますので、なお検討させていただきます。
  43. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 この問題は、もとより外務大臣に一々御意向を伺う筋合いの問題ではないわけでありますから、外務大臣に御相談がなかったのはあたりまえだと思います。ですけれども、こういうことが新聞に発表されましたから、外務大臣のその鋭い感覚をもって当然何かおっしゃるべきじゃないのでしょうか。大臣としてはどうお思いになりますか。
  44. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 韓国の方が伊藤公に対してどういうようなお感じを持たれておるか、私はよく存じませんのですけれども、今御指摘のような懸念があるとするならば、それは当然私自身が配慮しなければならぬ問題でございますので、取り急ぎ検討さしていただきます。
  45. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 伊藤博文に対して韓国人あるいは北鮮人がどういう感じを持っておるかということを御存じないのはおかしいと思う。それはだれだって自分の国を併合という形で事実上占領されてしまった、その最初のやった人に対していい感じを持つわけがございませんです。それで、ことに伊藤公の最後がどういうものであったかということをごらんになれば、これは官僚が悪かったということは明々白々のことだと思います。どうか、私がきょうそういう御質問をいたしましてそういう御答弁をいただきましたが、必ず具体的にこういう問題お取り上げになって、こういうような国際親善の障害になるようなことを、何かほかにいい人がないわけじゃございませんですから、どうかそういうような帝国主義的な侵略のシンボルであると思っておる者が相当あると思います。そういうような方をこの際日本が取り上げてお札に印刷するということは適当でないということをおっしゃっていただきたいということを私は希望いたしまして、この質問は終わります。
  46. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 他に大臣に対して何か御質問ございませんか。——それでは御質問はないものとしまして、本件につきましては、この程度にとどめます。   —————————————
  47. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) それでは再び、通商に関する日本国ニュー・ジーランドとの間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を続行いたしたいと思います。御質疑のあります方は、御質疑を願います。
  48. 羽生三七

    ○羽生三七君 ニュー・ジーランドの場合でも、それからガット関係も関連しますから、一応これはこれにしておいて、私は若干ガット関係質問がありますが、あとにいたします。これはこれでよろしい。
  49. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) それでは、本件に対する質疑は尽きたものと認めまして御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 御異議ないものと認めます。  それでは討論に入ります。御意見のあります方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようでございますので、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 御異議ないものと認めます。  それでは、通商に関する日本国ニュー・ジーランドとの間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を原案どおり承認することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  52. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、原案どおり承認すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出する報告書の作成につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 御異議ないと認めます。さよう決定いたしました。   —————————————
  54. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) それでは請願の審査を行ないたいと思います。本委員会に付託された請願第一〇号ほか四件の請願議題といたします。まず、専門員からこの概要について説明願います。
  55. 結城司郎次

    ○専門員(結城司郎次君) 当委員会付託の請願は全部で五件であります。要旨は、お手元にお配りした文書で一応取りまとめてございますので、番号の順序によって簡単に御説明申し上げます。  まず請願第一〇号は、海外移住を推進強化するため、国及び県が今後一そう積極的に各種の措置をとられたい、なかんずく移住振興の融資のワクを引き上げること、国及び県から市町村に対する補助金を大幅に引き上げられたいというものであります。なお御参考までに付言させていただきますが、移民関係請願としては、第十九国会及び二十六国会において、一般的に移住振興に関する請願がございましたが、いずれも採択されております。  次は請願第八三号、沖繩船舶日本国旗掲揚に関するものであります。その趣旨は、日本国旗の掲揚を許されないために国籍不明船として銃撃等の危険にさらされることもしばしばあるので、日本国旗を掲揚し得るよう適当な措置を講ぜられたいというものであります。なお補足的に一、二付言いたしますと、御承知のとおり、本年四月インドネシア水域モロタイ島沖において沖繩マグロ漁船一隻が銃撃を受けた事件が起こり、四月十二日の本委員会で関係当局に対して質疑を行なったのであります。その際当局の説明の上要旨は、沖繩には日本国の主権の行使が停止されておる関係上、船舶法その他海事法規の適用はできない、したがって日本国旗を掲げることは好ましくないというのが一点でございました。また、日本国旗を掲げた船舶ならば、日本政府が対外的に全責任を負わねばならない、船舶行政がアメリカにありながら、対外的責任のみを負うことになれば、いろいろの困難な問題が出てくるので、日本国旗を掲揚するためには船舶行政を日本に移譲してもらうことが必要となり、しかしこれは当然アメリカの同意がなければできないことであるという説明があったのであります。また、その際委員の一人から、沖繩関係の日米会談において、他の問題とともに本問題を解決されることを期待したいという発言に対して、当時の小坂大臣から善処の旨の答弁があったのであります。なお、琉球立法院がキャラウエー高等弁務官に対し、国籍明示のため日の丸の掲揚を許可してほしいとの要請を行なっておるのに対し、同弁務官は五月十六日文書でもって、琉球船舶が日本国旗を使用することは国際法による国旗の乱用であるという趣旨の回答を行なった旨が五月十六日付の朝日新聞で報道されております。  次は請願第九四号、日ソ近海漁業の安全操業確立に関するものであります。その趣旨は、政府は抑留漁業者の早期送還について万全の措置を講ぜられたい、さらに、すみやかに日ソ平和条約の交渉を始め、あわせて日ソ近海漁業の安全操業確立のために努力されたいというのであります。なお昨日現在抑留されておる漁民の数は百三十名となっております。なお、本問題に関しては、本委員会において第二十六国会、第二十八回の国会において同趣旨請願がありまして、いずれも採択されるとともに、数度にわたって委員派遣によって現地視察を行なっております。  次に、請願第三七〇号、残置在外私有財産返還補償促進に関する請願の問題でありますが、その趣旨は、日華平和条約第三条の規定によって、台湾にあった日本国民の財産及び請求権の処理は、日華両国の特別取りきめの主題とする旨規定されているにもかかわらず、いまだ何ら措置されておらないので、政府はすみやかに特別取りきめの折衝を促進し、残置私有財産の帰趨を決すべきこと、もし、かかる私有財産の没収ということが決定した場合には、政府は補償を行なうべきこと、また、かつての閉鎖機関会によって銀行の預金、送金の支払いに対する換算率が一・五対一となっておりましたのを是正して、三分の一の追加払いをしてもらいたいという趣旨でございます。  最後に、請願第三八八号、軍備全廃に関する請願趣旨は、核実験、使用、製造、貯蔵をやめて、軍備全廃の実現をはかるよう政府並びに国連に対して要望する。わが国においては、この目的を達成するために、すべての軍事基地の廃止、日米安保条約の廃棄、平和憲法の擁護、軍事費を福祉費に回すことなどを要望いたしているものでございます。  以上であります。
  56. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 以上で説明は終わりました。
  57. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 琉球船舶の国旗掲揚に関する問題は、今もちょっと付加説明があったのですが、日米の間でさらに折衝するということになった。これは、私が質問をしたときには、日米交渉を待つまでもなく、直ちにこの問題についてだけは向こうとかけ合うということを外務当局は通常国会のときに言われたんですよ。その後、この交渉はどいうふうになったか、今どういうことになっているのか、御説明を願いたいと思います。
  58. 前田利一

    説明員(前田利一君) お答え申し上げます。ただいま御指摘の点につきましては、種々関連する法的な問題もございますので、現在運輸省初め関係当局とも相談、検討を進めまして、近く行なわれます日米交渉とも関連いたしまして、どのように申し出るかにつきまして検討を続けているところでございます。
  59. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 私が質問をしたのは前の通常国会のときで、しかも、そのときの御返事には、日米交渉を待つまでもなく直ちにこの問題だけはやりたいのだ、やりますというお話だったんだが、今のお話によると、まだ検討中だし、それから今後日米交渉のときに話をするというお話ですが、そのときと模様は変わったんですか。
  60. 前田利一

    説明員(前田利一君) お答え申し上げます。先ほど申し上げましたように、関連する問題が種々ございまして、なお、最終的に煮詰めかねている点もございますので、それを引き続き検討いたしまして、近く開かれる日米交渉との関連におき失して、どのように米側に申し入れるか、この点を検討しておるわけでございます。
  61. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 関連する問題が多いということは、今さらわかるような問題ではなくて、前の通常国会のときに御答弁になったときにすでにわかっているはずです。そういうことがわかっていて、しかも、早くやりますという答弁をしていながら、今に至ってもそういうふうな状態であるというのは、怠慢以外の何ものでもないと思うのです。もしそういうふうにむずかしい問題であるというならば、あのときにさっそくにでも交渉しますというような無責任な、いいかげんな答弁はやめていただきたい。もう少し責任を持った答弁をしてもらいたい。
  62. 前田利一

    説明員(前田利一君) お答え申し上げます。  その御指摘の際の答弁の中にもあったかと記憶しておりますが、アメリカ側に対しましては、この問題があるのだということで、近くこの点について申し入れるぞということは米国側にもすでに申し入れておるわけでございます。ただ、どういう方向に改正していくか、その点についてわが国の国内の関係法規も多岐にわたったり、施政権との関係ということで、先ほど御説明がございましたが、船舶の旗国としての保護、監督の責任、そういった点と施政権との関係についてさらに検討を要する点が残っておりますので、その点をさらに詰めました上で、早急に米側に申し入れる、こういうことになっておると考えております。
  63. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) それじゃ、速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  64. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) それじゃ、速記をつけて下さい。  それでは、第一〇号、海外移住の推進及び援護対策に関する請願と第九四号日ソ近海漁業の安全操業確立に関する請願の二つを採択することにいたしますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、報告書の作成及び手続等は、慣例により、委員長に御一任願いとう存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 御異議ないと認めます。それでは、さよう決定いたしました。   速記をとめて。   〔午後二時二十一分速記中止〕   〔午後二時四十三分速記開始〕
  67. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 速記をつけて。  それでは、暫時休憩いたします。    午後二時四十四分休憩    ————・————    午後三時三十七分開会
  68. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) それでは、これから再開いたします。  千九百六十年及び千九百六十一年の関税及び貿易に関する一般協定の関税会議に関する二議定書等締結について承認を求めるの件を議題といたします。  本件はすでに提案理由説明及び補足説明を聴取しておりますので、これから質疑に入りたいと思います。質疑のあります方は、順次御発言願います。
  69. 羽生三七

    ○羽生三七君 この協定の個々の問題は別として、一般的なことで二、三お尋ねいたしますが、このセーフガードというか、保障条項あるいはこの輸入制限品目というような条件付で、相手国のいずれであるかは別として、三十五条の撤回を求める場合、この実質的な効果はどうなのか。条件付でも三十五条の撤回ができればこれはベターであるという考え方のようですが、具体的にはどういうことになるのかよくわからないので、事情をひとつお聞かせいただきたい。これはこの今の審議している案件ということでなしに、一般的に将来あり得る問題として質問しているわけです。
  70. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) お答え申し上げます。今御質問になりましたセンシティブ・リストと申しますか、輸入の——わが国からの輸出でございますが、そういうものの数量制限を若干認めて、なおかつセーフガードというものを認めて、その上でガット三十五条の援用撤回させるということには一体実質的な意味があるかどうかという、こういう御質問かと了解してよろしゅうございますか。
  71. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうです。
  72. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) 過去におきましても、実はそういったような、これは三十五条撤回……。
  73. 羽生三七

    ○羽生三七君 いや、援用の問題です。
  74. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) 援用の問題でございますが、三十五条の撤回ということをはたしてこれを一挙になし遂げ得るかどうか、それともこれを若干の時間をかけてなしくずしにしていくほうが実際的であるかどうかというところが、結局、議論の分かれ目になるのではなかろうかと思いますが、現実に現在やっておりますところの、受けております待遇よりも、相手国の輸入制限、数量制限というものが著しく減少いたします。たとえばブリュッセルの商品分類に従がいまして、三十品目、三十五品目、四十品目という程度にまあ減るという場合に、これを一挙にこの際ことごとく撤回させなければ承知しないというのでは話し合いがつかないというのが過去の実例でございまして、いかにこちらががんばりましても、なかなか現実の問題として、やはり日本の商品を日本輸出——相手国にとっては日本の商品の輸入でございますが、日本の場合におきますほど価格上の競争力が強い。かつ、その上に、何と申しますか、まあ過当競争と申しましょうか、輸出のやり方がちょうどきりもみ戦法のような格好になりまして、とかくどうも市場撹乱を起こしやすいという傾向が強いのがやはり日本輸出の場合が一番はなはだしいようでありまして、その関係、そういう実例が過去においても無数にございます。で、その無数の過去の実例を前にいたしまして、それらは相手側の政府といたしましても、今一挙にこういうものを直ちにきれいにしてしまうことはなかなかのみにくいという言い条もわれわれとしても了承できることでございます。これをいかにして幅を狭め、かつ、過渡的なことで期限を切るかということに事実上交渉の重点は移っているということになるのが、過去の実例でございます。  もう一つのこのセーフガードの問題でございますが、これは相手国に一方的にとられるだけのものではございませんので、わが国といたしましても、同様の場合においては同様にセーフガードが活用できるということになっております。したがいまして、たとえば今後日本の自由化が進みまして自由化いたしました結果同様な事態が起こった場合には、これは日本としても条約上はこのセーフガードを発動し得る権利を持ってくる、こういうことになって参るわけでございます。しかし、実際問題といたしましては、われわれといたしましては、このセーフガードを発動しなければならないような事態はなるべく起こさないように努力していきたい。これはまあいわば伝家の宝刀のようなものにしていきたいということでやっておるわけでございます。そして御質問の、そういうことをしてまではたして実質的に、そういう何と申しますか、価値と申しましょうか、条件と申しましょうか、そういうものをくっつけたままで三十五条の援用撤回させることに意味があるかということになると思いますが、私はこれは過去において実例が示しておりますとおりに、はっきりその結果輸出が増進いたすわけでございます。たとえば、これははっきり三十五条を援用ということになっておりませんけれども豪州に対する日本輸出が非常に伸びたことのごときは、これは事実上三十五条の援用撤回という形はとっておりませんけれども、実質上は、こういう今申しましたようなことで、つまりセンシティブ・リストというものはある程度のセンシティブ・リスト、実際上、実質上におけるセンシティブ・リストと認めまして、そうして実質上はセーフガードのほうを改める。これは必ずしも書きものにしたものはそういう形になっておりませんけれども協定上の義務を暫定的にその当該商品に限って一定期間免れるということになるわけであります。これは協議が相ととのわざる限り——ということは、一種のやはりセーフガードでございますが、そういうものをもう一年安心さしてやらした結果、結局豪州に対する輸出が非常にふえてきたというふうなことで、実質上も私はきれいさっぱりとした三十五条の援用撤回ということにはなりませんけれども、つまり暫定的にそういうものを認めて、しかもなおかつ三十五条の援用撤回させるということは、わが国の輸出を増進させるという実質的な意味が非常に大きいと思うのでございます。これは数量制限ということだけに限って考えたわけでございますが、このほかに関税の分野について考えますというと、これは三十五条援用撤回いたします結果といたしまして、相手国は、日本との間に、ガットの規則に基づくところの関税譲許交渉というものをやらなければならなくなるわけであります。また、その結果といたしまして、譲許いたしましたものにつきましては、先方も縛られるということになってくるわけでございます。今後これらの、特にこれはまあ豪州の諸国に対する関係でございますけれども日本輸出というものの伸ばし方というものを考えますと、これはやはりいわゆるセンシティブ・アイテムというようなものは、無理押しにそういうものを伸ばすということは、労多くして益がない。これは現実に過去におきまして、アメリカカナダに対する輸出におきましても、豪州その他に対する輸出におきましても経験いたしたところであります。なるべくそういう狭い分野で、しかも、向こうが非常にセンシティブだと考える分野に、まああまり無理押しいたしまして輸出を伸ばすよりも、やはりわが国の輸出というものは多様化していくということが必要になって参ると思いますが、その際におきまして、やはりわが国といたしましては、相手国とガット上の関税関係を持ちまして、そうしたたとえば欧州の諸国がアメリカその他に対して引き下げました税率を、日本でも均霑してここに入っていくということ、それをしかも単に事実上の問題として、もしくは暫定条約上の権利としてそこに入ってくるのではなくて、やはりガットのこういう固い基礎の上に基づきましてこれに均霑いたしまして、さらにそういう新しい品目につきましては、相手国とガット上の関税交渉をいたしまして、関税を引き下げまして、これによって新規商品の輸出の道を開いて、やはり輸出を多様化していく。これが私は非常に数量制限の関係に見合いまして、関税上の面におきまして、やはり三十五条の援用撤回をさせていく結果として出てくる大きな面ではないかというふうに考えて、申し上げる次第でございます。  おおむね以上のような二点が、三十五条の援用撤回をさせるこの際に、過渡的な今申し上げましたようなセンシティブ・リストというようなものを認める、また双務的にやっても、双務的にセーフガードというものを認めるということは、まあ必ずしも好ましいことではありませんけれども、それでもなおかつ十分な意味があるじゃないかということの御説明であります。
  75. 羽生三七

    ○羽生三七君 相手国に対して三十五条の援用撤回を求める場合、一挙には無理なので、漸進的にやっていく、それはよくわかります。そこで今のお答えによって、そういう場合でも、漸進的にやっていく場合に、条件付の場合でもなおかつ、そのほうが有利であるという御判断に立てば、それでそれはけっこうだと思います。  次の質問は、ちょっと少し抽象的になって恐縮ですが、EECのような巨大な経済組織ができて、さらに英国も加入し、米国も接近しようということになって、近代的な大国、それから貿易の王座を占める先進国が同一歩調を取り出した場合、たとえばガットとの関係はどうなるのか、実質上ガットは有名無実になるような感じがするのですが、その点はどうなんですか。
  76. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) このEECの発展、特に英国が加入した後のこのEECの発展と、それが現在のガットにどういう影響を及ぼすかという御質問であると思いますが、特にこのEECがあまりにも強大になって、ガットが有名無実になるのじゃないかと、こういう御質問と了解してよろしゅうございますか。
  77. 羽生三七

    ○羽生三七君 必ずしも有名無実とは言いませんが、そういう影響はないかということであります。
  78. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) 御承知のとおり、ガットはEECに対しまして、その域外貿易がなるべく、何と申しますか、アウトワード・ロッキングと申しますか、EECの域外貿易が無差別であるべきだという原則は、もちろん強く主張しておりますけれども、そのほかにもアウトワード・ロッキングという意味で、たとえば具体的に申しますと、EECの域外関税というものをなるべく引き下げていく方向に行くべきではないか。具体的に申しますと、そういうことでございます。そういう方向で引きずっていきたいということでガットも努力いたしておるわけであります。ただ現実の問題といたしまして、将来そういうガット並びに、まあわれわれとしてもガットのメンバーとして当然そういう考えを持っているわけですし、もちろんアメリカもそういう考えでございますが、そのほかのEEC以外のガット加盟国もおおむねそういう点については同様な考え方を持っていると思うのでございますが、そういうガット当局並びにガット加盟国のEEC以外の諸国が持っておりますところのEECの域外通商政策をなるべくアウトワード・ロッキングでなく、かつ自由貿易に即応したものに持っていきたいという努力にもかかわらず、ガットが将来あるいはこれが巨大化するに従って、われわれの希望するごとくアウトワード・ロッキングにならないという可能性が全然ないということではございませんが、たとえばイギリスがこれに加入した場合に、イギリスといたしましては、やはり当然このEECの域外の貿易政策というものをできるだけやっぱりリベラルなものにしていく。できるだけリベラルなものにしていくということは、やはりイギリス自体の利益に非常に大きな関係があることでございまして、将来といえども、たとえばイギリスのごときものはおそらく加入いたしましたあとに非常に有力なメンバーになるだろうと思いますが、そのEECの貿易政策そのものをなるべくリベラルなものにしていきたいという考えにおきましては、ガットの考えと一致する次第でございます。したがいまして、御懸念のように、EECが強大となるにしたがいましてガットの政策と矛盾した政策をとる危険性は全然ないとは申しませんけれども、やはり大体の見通しといたしましては、必ずしもそういう方向はたどらない。なるべく無差別な、かつ何と申しますか、アウトワードと申しますか、貿易全体を自由化していこう、そしてできる限りの範囲でEEC自体の域外関税もむしろ引き下げていこうという方向に持っていけるのではないか。その公算のほうが大きいというふうに私は考えている次第でございます。
  79. 羽生三七

    ○羽生三七君 やはりそれに関連する問題ですが、このEECはその域内諸国の経済力が強まってきて、したがって、EECを相手とする諸国から見れば、その購買力も高くなって、その結果日本の対外貿易ではプラス面が多くなる、こういう見方もあるわけです。その反面に、逆に重工業製品などではほとんど輸出の見込みはなくなるのではないかという見方もあるようであります。そういう点についてのいわゆるプラス面、マイナス面、おおよその見通しはどうでありましょうか。
  80. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) お答え申し上げます。この将来のEECが巨大化するに従って、日本自体のEECに対する輸出がどうなるかという問題と、EECのコモン・マーケットの外の第三国市場におきまして、日本輸出とEECとの競争関係がどうなるかという二つ問題が考えられるわけでございますが、ただいまの御質問は第一点に関するものと了解いたしてよろしゅうございますか。
  81. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうでございます。実はその次に、第三国市場におけるEEC加入国日本との競合関係をお聞きしようと思っていたのですが、これは両方合わせて御答弁いただいてけっこうです。
  82. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) 第一の点でございますが、なるほど過渡的には、たとえば具体的に申しますると、ある種のカン詰類とかそういうものは、たとえば現在ある国に対して五%の関税で入ってくるというものが、EECの域外共通関税が、これがたとえば一〇%に上がった、しかも域内においてはこれがゼロになったというような場合におきましては、五%の差が出て参るわけでございます。その限りにおいてわが国のEECに対する輸出というものは、EEC内部の産業と競争関係においては現在以上に困難になるという面も考えられるわけでございます。またそのほかにも、たとえばEECが非常にかりに閉鎖的な政策をとるというような場合におきましては、その限りにおきましてある程度のわが方の輸出に対する障害というものは生じてくる可能性もあるのでございますが、これを具体的に調べてみますると、現在までにある程度すでにむずかしい、つまり日本からの輸出であってセンシティブなものにつきましては、先ほども質問にございましたとおりに、輸入制限というものがある程度行なわれておるのでございまして、数量的な輸入制限というものが行なわれている関係がございまして、そういったものを逐次おろしていくという、自由化させていくということになるわけでございますが、これを相殺するに足るほどの高関税に引き上げ得るかどうかということになりますと、これはもちろん商品によって違いますけれども、結論として考えますと、一時的にはある部門の商品についてはEEC自体に対する輸出は確かにこれは部分的には障害を受けるものが全然出てこないというわけにはいかないと思いますが、その分というものは必ずしも一般に考えられているほど大きなものではないわけでございます。そしてこれが将来にわたってどうなるかと申しますると、長い目で見ますると、結局は、そういう商品についてはあまり多くを期待することはできないと思いますけれども、これはできるだけ相互の関税引き下げ交渉というものを通じまして、これで引き下げていく。そして輸出をやはり伸ばしていくということでございましょうけれども、むしろそういうセンシティブな商品の分野に限りませんで、先ほど申しましたように、やはりEECに対する輸出というものは、どちらかと申しますと、輸出の多様化という方向で輸出を伸ばしていったほうがいいのであり、またその道は十分に開かれているというふうに私どもは考えるわけであります。重工業製品というようなもので、はたして競争できるかどうかということになりますと、これは重工業の製品では、私は全般的に申したら、やはりこれはむずかしいのじゃなかろうかと思います。しかしながら、軽機械、そういった精密機械というものにおきましては、これは重工業機械と称すべきかどうかわかりませんけれども、たとえば現実に工作機械というようなものは、現在向こうに出すことは非常に困難だということもありますけれども、最近はかなりEECに対して輸出が出ているわけでございます。そういったものに関しましては、将来といえども必ずしも見込みがないことはないのではなかろうかと思っております。  それから御質問の第二の点に移りまして、たとえば東南アジア、そういうところにおいて、EECが巨大国になるに従って日本輸出が非常に競争上困難な立場に追い込まれるのではなかろうかという御質問でございますが、この点は実を申し上げますと、はっきり将来の模様を見なければ何とも申し上げかねるということでございます。やはりEECも自由貿易主義と申しますか、自由主義経済と申しますか、そういうものをとっておりまして、原則としてこれはやはり自由競争というものを建前といたしておりますので、しかもその競争力というものは、御承知のような事情で、先方のEECの内部で、一方において企業の専門化というものが行なわれ、一方において企業の合同というものが行なわれる。そうすると、やはりその競争力というものは逐次強まってくるというふうに考えざるを得ないわけでございます。それがどのくらいのテンポで進むのかということにもよることでございましょうけれども、やはり将来の見通しとしては、これは向こうの競争力が強まってくるということは、これは否定し得ない傾向ではなかろうかと思います。問題は、いかにして拮抗し得るだけの競争力を日本自体が持つか、またかりにそういうような拮抗力ができた場合に、はたしてこの競争力をもって直ちにEECとけんかするということよりも、ある程度の話し合いをして、適当なる協調を一方においていたし、他面において適当な競争をいたすという工合に持っていくかどうか、そういうことに最後には帰着するのではなかろうかと思っております。
  83. 羽生三七

    ○羽生三七君 今回、EECそのものを直接の対象とするこの交渉が成立したことは、非常に意義深いことと思うわけでありますが、この場合に、聞くところによると、EECは二〇%の一率引き下げという提案をしてきたけれども日本側は国内の関税体系が十分整備されていないということから、今回程度品目に落ち着いたと言われております。日本がそういう相手側のEEC側の提案にもかかわらず、関税体系が整備されていないというのはどういうことなのか、その経過をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  84. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) 今回のEECとの関税引き下げ交渉におきまして、先方が確かにパーセンテージとしては、一律と申しませんけれども、二〇%というようなかなり大幅に見えるような引き下げを提案してきたし、幅も現在まとまったところよりは広いものを持ち出してきたわけでございますが、これに対して日本側が十分にこれとマッチするだけの交渉材料と申しましょうか、引き下げ材料と申しましょうか、そういうリソースは持っておらなかった。これは一つには、御承知のとおりに、貿易自由化のためには、日本といたしましては、むしろ関税を引き上げてくれという業界が多かったわけでございまして、あまり引き下げ得る余地が、非常に余地のある商品も少なければ、引き下げる幅というものも非常に少ないということがやはり一つの致命的な、致命的なと申しますか、一つの大きな原因となって、日本側としては十分な態勢で受けて立てなかったことは事実でございますが、もう一つ日本側には交渉に入っていけなかった大きな理由があるわけでございます。これは日本側といたしましては、非常に困難な際に、大幅な引き下げ、かつ幅の広い引き下げに応じますには、EECの側からの関税引き下げをしてくれる内容が、わがほうが非常に欲しておる品物、たとえば陶磁器とかトランジスターでございますとか、それからミシンというようなものについて実は引き下げてもらいますと、これは日本のほうといたしましても、かなりの無理をいたすだけのかいがあるわけでございますが、EECの側といたしましては、こういった日本が最も輸出を急速に伸ばし得る商品と考えている品物は、同時にEECの側におきましては、先ほど御説明申し上げましたように、センシティブ・アイテムとなっておるのでございまして、これに対しては関税を引き下げることにも応じますと困るので、一切引き下げ対象となることを拒否して参ったわけでございます。したがいまして、もし大幅にやるといたしますというと、日本の比較的興味のない品物、輸出品につきまして幅を広くして引き下げてもらっても、実はこれは、長い将来の問題としては別でございますけれども、今さしあたっての日本輸出力にはあまり利益になりません。しかも、日本側としては無理な引き下げのための努力をいたさなければならない。これは非常に困難である。こういうところから見ますと、EECの今日交渉というものは、品目の範囲もそうでありますけれども、幅も比較的狭いと考えざるを得ないという次第でございます。
  85. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっとこれは私不勉強だったのですが、EECを相手にした特別の外交機関は当面持たないということになっておりますが、当面の便法は、あれはどこの国の大使館が兼務するわけですか。
  86. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) 現在EECに対しましてはブラッセル、つまりベルギー国に駐在のわが特命全権大使である下田武三氏が同時にEECに対しましてアクレディットされているわけでございます。したがいまして、EECそのものに対する直接の外交関係を掛当している出先の外交機関としましては、これは窓口はわが国のベルギー駐在の特命全権大使ということになって、これははっきり確定いたしているわけでございます。ただし、このガット関税引き下げ交渉に関しましては、これは両方から全権を出しまして、それが全権と申しますか、代表と申しますか、そういうものを選びましてきめまして、それがジュネーヴで交渉いたしたわけでございます。このガット関係関税交渉というものは、ほとんど全部がジュネーヴにおいて行なわれるわけでございます。この場合におきましても、やはりわがほうといたしましては、ジュネーヴにおりますところの青木公使を、EEC側はハイゼンというEECにおります関税関係の担当官と申しますか、ちょうどやはり公使かで、その人との間で交渉を行なわれて、書類などもこの人に与える、こういうことでございます。
  87. 羽生三七

    ○羽生三七君 当面は、個々の国を相手とする場合、実質上の交渉、特に条約締結の場合にはジュネーヴでやる、それはそれでいいと思いますし、ベルギーのブラッセルで一応具体的な通商関係の外交をする、それもいいと思いますが、EECは膨大な国際官吏を持っているわけでしょう、それなのに、一体日本としては、当面は持たないにしても、今の出先機関の大使館の兼務程度でほんとうに仕事ができるのかどうか、そういうことで特別に機関を設けないにしても、あるいは人員とか、あるいはその他の点で、もっと具体的な配慮があっていいように思うんですが、そうでなしに、数千人の陣容を擁する国際EEC官僚群に対抗して、今後どうしてやっていくかということは、杞憂なきを得ないんですが、その辺はいかがですか。
  88. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) お説のとおりに、EEC自体がかなりの多数の役人をかかえておりますけれども、これは私が申し上げるのもどうかと思いますけれども、彼らの仕事というものは非常に具体的な数字に基づいて、何と申しましょうか、非常にこまかい作業をことごとく、ことに経済関係は共通の関税、こういうものになりますと、非常にこまかいところまで立ち入った数字の計算をいたしまして、そうして、このお互いの六カ国の間の協調を保っていく。そういう関係から非常に多くの役人を使い、統計を出し、妥協案を見出すというようなことをやっているわけでございます。現在EECが対外的に交渉できる——EECと申しましても、コミッション、委員会になるわけでございますけれども、これが対外的に交渉できるという権限は非常に限られておりまして、特に経済関係の問題になりますと、やはり関税上げ下げの、共通関税を上げ下げすることについて第三国と交渉する権限ということにしぼられてきているわけでございます。あとのたくさんの膨大な官僚というものは、むしろEEC内部のコンソリデーションのための作業あるいは調査とかいうようなことに使われているわけでございます。われわれは現在EECに接触するということにつきましては、実質的に正式に交渉できるというものは、今申しました関税引き上げ、引き下げに関する交渉だけでございまして、それ以外に直接EECと正式なまとまった交渉というものは、これはまだできないわけであります。私どもとしてもそういう権限は持っておられないわけであります。ただ現実の問題といたしましては、やはり情報をとりましたり、それから正式に交渉できなくても、やはり向こうと個人的に接触を深めていくというような必要は、これは多々ますます弁ずる次第でございまして、とりあえずのところは、ブラッセルの大使館の、特に経済関係の人で、できればフランス語のできる人をなるべく急速に増強して、わがほうの情報収集その他の関係でコンタクトする範囲を現在よりもっと広くしていきたい。またこれが現地の意見でもありますし、わがほうから行って調べてもらった結果も大体そういうことがとにかく第一着手であるというふうな結論を得ておりますので、さしあたって、むしろそういうことに来年度予算等におきましては努力していくのが一番の先決であるというふうに考えております。
  89. 羽生三七

    ○羽生三七君 外務省がそうお考えになっているのに、僕らがかれこれよけいな心配をするのもどうかと思うのですが、常識的に考えて、ベルギーにおける、特に今お話しの経済関係の人員については、よほどの配慮がないと、直接の交渉の機会があまりたくさんはないからといって、この問題はなかなか将来容易ならぬものがある、こう考えておりますが、これは私の杞憂であればけっこうでありますから、これ以上は申し上げません。  それからもう一つは、これは直接この協定関係したことじゃないのですが、けさ新聞をちょっと見ますると、日米通商航海条約の改定を非公式に政府アメリカに申し入れをするということが伝えられておりますが、何か新聞情報では貿易自由化との関係等から、それから日本のそれに関連をするいろいろなIMF八条国移行の問題、それらと関連をして、国務省では難色を示しておるというふうな情報も伝えられておるわけであります。それからまた、場合によると、日本で今度の改定——改定といいますか、新しい取りきめの際に、為替関係等で規制措置が強化せられれば、その結果アメリカとしても非常に硬化せざるを得ないということも言われておる。この種のことはあまり私が先ばしったことを言うのもいかがかと思うので、深く掘り下げての御質問はいたしませんが、しかし、とにかく正式に申し入れをするということをきめたようでありますから、もし若干事情がわかっていたら御説明を願いたい。
  90. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) お答え申し上げます。  実はけさ、毎日新聞はとっておりませんので、人に指摘されて見たのでありますが、私が在京米大使館に対しまして、日米通商航海条約の改定について非公式に申し入れをしたというような記事が出ておりますが、これは全く事実無根でございます。どこからそういう記事が出たのか、私も実は驚いております。日米通商航海条約を改定する必要があるかどうかという問題は、これはまだ政府全体としては何も決定を見ておらないことでございます。また、これを改定する必要があるのかどうかということにつきましても、その前提となるいろいろな問題があるのでございまして、そういう問題の成り行き、また、そういう問題の見通しがはっきりつきました上で、これはやはり政府全体としてきめていかねばならないことでございまして、現在、私の承知いたしておる範囲におきましては、まだ何もはっきりきめた方針というものはないというふうに、はっきり私の承知いたしておる範囲におきましては、さような決定を見ておらないというふうに申し上げて差しつかえないと思います。  それからして、米国政府がどうこうというようなことも書いてございますけれども、これはやはり米国といたしましても、この問題につきましてはいろいろな関心を持つのは当然でございまして、今日までもこの問題はしばしば日本新聞等におきまして現われておりますが、そういうことについてはたしてどの程度の根拠があるのかどうか、それから実は私自身に対してどういう考えを持っておるかというような質問かと思いますけれども、特に米国政府全体として非常にどうこうというようなことはございません。もし、具体的に申しますれば、むしろフレンドリー・コンサーンと申しますか、友好的な関心と申しますか、そういうものでは、それはもう事務的なレベルで非公式には年がら年じゅう意見の交換をいたしておりますが、そういうことはございません。それ以上に、特にわがほうの、第一、政府として何もきめておるわけではございませんで、特に強硬な抗議が来たというようなことはないわけでございます。私の承知しておる限りにおいては、ないわけでございます。
  91. 羽生三七

    ○羽生三七君 今の段階では、私はこれ以上お尋ねいたしません。  最後に一つ、これも非常に抽象的な質問でいかがかと思いますが、昨日の新聞にも、アメリカのハリマンですか、どなたかが、先ほど大和さんの質問にもあった太平洋の共同市場の結成はどうかというような——しかし、それは強制すべき性質のものではなしに、それぞれの国の自主的な判断に基づくものだということを語られておるようですが、それはそれでいいとして、その場合に、太平洋地域を中心とするアメリカとか、カナダとか、あるいは豪州とか、ニュー・ジーランド、それから日本、こういうものと、それからアジア地域との結合というような二つの方向があると思うのです。それで私は、EECに対抗といいますか、EECと同じような立場に立つ太平洋なりアジアの共同体がすぐできる条件が今あるとは思いません。それから、これは全くその地域における客観的な条件に基づくものでありますから、急に粘土をこね回すようなことでできる性質のものではありませんから、それは当面問題にならぬということはよく承知しておりますが、かりにもしそういう方向があるとするならば、このアメリカカナダ豪州ニュー・ジーランド日本という方向と、それからアジア地域というような問題とは、より多くどちらにその条件が存在しているのだろうか。これは全く抽象的な問題ですが、外務当局でお考えになって、条件的にはどちらにより多くウエートがかかっておるか。これは一般的なお話でけっこうですから、ひとつ伺わしていただきたいと思います。
  92. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) お答え申し上げます。  今の御質問に対するお答えは、結局、いわゆる共同市場というものは実体として何を考えておるかということによって私は御返答は変わらざるを得ないと思うのでありますが、たとえばヨーロッパ共同市場のように関税同盟というようなことになりますと、これは日本といたしましては中心国であります関係上、いずれの側ともくっつきにくいということになるのではなかろうかと存ずる次第でございます。たとえば豪州でございますが、豪州日本との間に関税同盟を結ぶ。これは五年、十年先にお互いの間の関税をなくする——これは当然たとえ十五年、二十五年といたしましても——ということは、結局、日本の安い品物がどんどん豪州へ行きまして、過度的にしましても、豪州の基礎産業の多くのものを払拭してしまうということは、これは火を見るよりも明らかでございまして、豪州にしろ、アメリカにしろ、カナダにしろ、あるいはニュー・ジーランドにしろ、関税同盟という意味における共同市場というものを日本との間に結ぶということは、これはとうてい現実の問題としてあり得ないことだというふうに考えられます。また、現実にそういう考えが日本新聞記事等に出まして、聞いてみろということで、われわれもしばしば——しばしばでございませんが、一、二回たとえばということで聞きましても、これは向こうは全然乗ってくる気はない。また経済の論理上から言えば、きわめて当然なことでありまして、よほど特別な政治上の要請でも出てこないことには、なかなかそういうことには参らない、できる話でないとわれわれは思います。しからば、日本が東南アジアと申しましょうか、それらの諸国との間に、今申しましたような関税同盟とか集合地帯というような意味における共同市場というものを一体作れるかどうかと申しますと、この場合におきましては、賃金の差とか、そういう点からは必ずしも格差というものは日本アメリカというほど大きくはないと思うのでございますけれども、やはりそこにかなりの格差が生ずるわけでございますし、それは別といたしましても、やはり具体的に申しますと、直ちに日本の農業をどこに持っていくのかというふうに、きわめて厄介な問題が出て参りますので、これは容易なることではないと存じまするが、しかしながら、長い目で、たとえば十五年、二十年というふうに考えましたならば、私個人の考えでございますけれども、私の感覚から言うと、どちらかというと、むしろ後者のほうに私は公平に見て歩があり得ると考えられます。
  93. 大和与一

    大和与一君 少し御質問しますが、お答えはもっと要点的でけっこうです。  一番は、世界の経済を分けて、社会主義政権を一応はずして、アメリカとEEC、こういうふうに考えられると思うのです。その場合に、EECは今できたばかりでどれくらい大きくなるかわからぬ。そうすると、アメリカは現在の世界の経済をある程度押えているのだけれども、それに対してEECが互角になるのは何年先か。こういうことは当然勘定に入れておかなければ、目先だけのことをやっていたのでは、政治でも政策でもないですから、その点だけをまず第一にお尋ねいたします。大体の話でいいですよ。
  94. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) ごく簡単に申しますと、一番ぴんと来る問題は貿易問題であると思いますけれども、現在におきましても、すでにEECの貿易量のほうが、現在の六カ国プラスイギリスというものを米国と比較いたしますと、はるかにEECプラスイギリスのほうが強大でございます。貿易の量というのははるかにアメリカを凌駕いたしておりますというわけでございます。それからして、人口について見ましても、これはEECとイギリスを加えますと、アメリカより大きくなるわけです。
  95. 大和与一

    大和与一君 そういうことでなくて、経済実情、いわゆる経済の実力というものが、現在はそういうふうにアメリカのほうが強いと見ているのですけれども、それが一体EECがこれからどんどん完成していくのだけれども、それがアメリカと世界の経済を分けて、実力において大体追いつくというか、互角になるというか、そういうめどはないかということです。
  96. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) 実力というのはどういう指標をとりまして実力とお考えになるかということによってちょっと違ってくるわけです。ただいまの貿易とか人口量、こういうものによっては現在すでにEECのほうが大きい。すでにアメリカを凌駕しておりますというわけでございます。鉄鋼の生産をとりましても、鉄鋼はまだEECのほうが小さいでしょう。イギリスを加えますと、大きいそうでございます。現在すでに鉄鋼の生産力というものは、EECの六カ国プラスイギリスで、すでにアメリカより鉄鋼の生産力が大きいということになっております。電力、これはおそらく現在におきましてもアメリカのほうが大きいと思いますが、指標をどこにとるかによって違うと思いますけれどもイギリスが入る場合におきましては、スカンジナヴィアなんかもおそらく入ってくるだろうと思います。スエーデンを除きまして入ってくる。そうすると、どの指標をとるかによってかなり違いますが、アメリカに拮抗し得る経済実力というものにもうすぐなるというふうに私は考えても差しつかえないのじゃなかろうかと考えておる次第であります。
  97. 大和与一

    大和与一君 私が言わんとするのは、今はアメリカのほうが力があると常識的に考えるけれども、それが追いついてくるときの一応目安を考えながら、アメリカ日本アメリカアジアのあらゆる経済貿易、金融、そういう問題にやはりこれは考えを及ぼさなければいかんと思います。それは今のお話で、もうすでにイギリスを加えればアメリカに負けないのだ、こういうことになると、今のEECの場合にバーター・システムですか、損せんようにやっているわけです、取引を。自分の出したその見返りがなければならん。それは別として、そういうふうに今でもそんな力があるとすれば、アメリカはヨーロッパにおいてたくさん物を売るといってもそんなに買ってもらえないのだから、むしろ、向うが逆に攻勢に出ている格好だから、そうすると、一体アメリカは市場をアジアにもっともっと伸ばさなければ、自分の国が生きていけなくなる、こういう格好になる。そのときの日本が、ほんとうに日本の力ができてくれば、今度アメリカはかえってじゃまになってしまって困るのですよ。だから、そこに私たちの言うのは、日本アメリカだけではなく、ほかのアジアとも商売していいんじゃないかという、きわめてあたりまえのりっぱな議論を社会党はしているわけです。そこで、そういうふうな今のアメリカとの特別な関係を見ると、日本アメリカとの紐帯は、経済的な関係というものは、やはり日本はもっと締めつけられるのじゃないか、こういう心配をするのです。たとえば、安保条約ができてその第二条には、日本経済的に十分やることをアメリカはちゃんと公約している。何もやっていないじゃないか。最近はむしろ関税を、陶器にしても、板ガラスにしても、みな締めつけているじゃないか。あるいは洋食器類、そういうようなことがあるので、アメリカは安保条約の公約を実行しないで、経済的にはむしろ日本から物を輸入するためには、ほかの国を少しチェックしてもいい、このくらいのことをはっきり言っているが、そういうこともしていないし、困るじゃないか、こういう私は、日本の場合としては自主性を考えた上の意見なんだ。だから、これに対して、一体今後、今提案されている問題は全部私たちと関係あるけれども、そういう点はどのように考えるのですか。
  98. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) 今おっしゃいましたお話の趣旨は、必ずしも私はっきりのみ込めなかったもんで、おそれ入りますけれども、もう一度お尋ねいただけますか、たいへん失礼でございますけれども
  99. 大和与一

    大和与一君 言ったことは、もったいないから言わんですが、違う角度から聞きます。  そうすると、たとえば今ガット援用しておる国だけではなくて、援用していないイタリアなんかでも、対日差別輸入制限というものは非常に強いのですねだから、当面、ガットの問題は全部はずしてもらいたいけれども、そこ虫で話が一般にいかぬわけだ。そうすると、対日輸入制限のほうは、これは相当やはり緩和を求めることのほうが急務ではないかという感じがする。たとえば、外務省ガット援用撤回させるために、相手国にセーフガードとか、センシティブ・リストとか、こういうものを認めさせる方針を考慮中だというふうにもちょっと聞いていますが、これは事実かどうか。現にアメリカとの通商条約の交渉では、これの措置を認めることとなるやにまたこれも聞いているのだけれども、そういうふうなことを考えると、これはやはり対日差別輸入制限の緩和のほうを求めるほうが大事じゃないか、こういうふうに考えるのですが、その点はどういうふうにお考えになっておるか。
  100. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) 当然、この日本に対する輸入差別をするというのを、いかにしてやめさしていくかということが、これはわれわれのヨーロッパ諸国に対してやっている交渉の主眼でございます。その点につきましては、まことに今お話しになったとおりであるというふうに考えております。
  101. 大和与一

    大和与一君 前回、この補足説明によると、アメリカが今回の交渉で、いわゆる第三国に与えた譲許として、それについてはわが国の受ける間接の利益は、羊毛製品とか鉄板、しんちゅう製品、オルゴールなど、わが国の貿易実績にして約二千五百万ドルに達すると言われておる。また、ケネディ大統領は、新通商拡大法に基づいたEECとの間の関税双互引き下げの利益をわが国初め他の自由諸国にも均霑しようとしている。わが国の一部では、将来わが国がアメリカとEEC間の関税引き下げにおいて均霑し得る品目は、事実上非常に少ないというふうに言われておる。まあ、この辺は事実かどうか。
  102. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) これはまあ取らぬタヌキの皮算用の感がございますけれども、というのは、アメリカとEECの関税引き下げ交渉というのは、おそらく来年の末ごろまで始まらないかと思います。それが一体どれだけの間接利益を日本にもたらすかというようなことは、必ずしもはっきりとした計算はできないと思いますが、かなりの間接利益というものは日本としても期待できる。一説によれば、七億ドルくらいになるのじゃないか、これはカバーリッジでございますけれども、デプスは別です。深さは、これがどれだけあるかということは別にいたしまして、そういうものについて、たとえばアメリカ関税引き下げ、その引き下げたものは日本も均霑することになるのでありまして、これはEECとアメリカとの間の交渉の結果を見なければわかりませんけれども日本にこれが均霑するということは、これはもうガットの規則にもありますし、日米間の通商航海条約にもそういう規定があるからこそ初めて日本にとってこの条約が意味があるわけでございまして、そういうものを御破算にして、彼ら同士で勝手に関税引き下げを日本には均霑させないということは、これは決してないだろうと考えます。その際に考えられますことは、日本交渉に全然参加しないということになりますと、これはもう日本に、特に日本について大きな関心があるものは、これは交渉からはずすというようなことは考えられないわけではございません。しかしながら、日本としてもある程度の一律引き下げの世界的な、グローバルなガットの加入国間の交渉に全然そっぽを向いて入らないということは、これはどうしてもできない。やはりある程度はどうしても入っていかなければならない。その限りにおきましては、お説のような御心配は出てこないということを言い切って差しつかえないと思います。今日まで、その点につきましては再々米国側並びにEEC側とも話をしてきました。あまりそういう懸念はないんじゃないかというふうに考えられます。
  103. 大和与一

    大和与一君 もう一つでやめますが、もう一つ大きなことは、貿易の自由化との関連だと思うのです。それで現在政府が行なっておる関税率の修正というようなことを、まあどこかでやっていると思うのですが、あるいはそれが済んだところもあるけれども、その交渉の現状といいますか、これはどの程度ですか。
  104. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) 具体的にはちょっとわかりません。国際機関課長から。
  105. 宮崎弘道

    説明員宮崎弘道君) お答え申し上げます。関税率の修正のうちで、一昨年まあ自由化に関連いたしまして行ないました大豆その他の関税引き上げの件につきましては、ガットで行ないました交渉を国会に提出いたしまして、すでに御承認を得ております。それから、現在やはり一部の商品につきまして関税率の引き上げを行ないたいということで、そのうちでガットの譲許がありますものにつきましては、ジュネーヴで交渉を続行中でございます。相手国は利害関係国が相当多数ございまして、そのうちの一部との交渉はすでに実質的に妥結をいたしておりますけれども、他の交渉はなお進行中でございます。これはできるだけすみやかに妥結いたしまして、その結果を国会の御承認を得る運びにいたしたいと事務当局のほうでは考えております。
  106. 大和与一

    大和与一君 まあことしの十月一日までに自由化率九〇%、そういうつもりでわが国はおる。そうすると、一部関税引き上げぐらいやって、国内産業保護の措置も講じなくちゃならぬ場合もあるいはあるかもしれぬ。そこで他方ケネディ大統領のほうじゃ、通商拡大法の構想でもわかるように、関税の相互引き下げ、こういう一つ考え方を持って、そうして貿易を拡大する。こういう世界的な趨勢の中にあって、一体日本はどういう基本的な態度、具体策をお持ちになっているか。今おわかりの程度でいいですから、お答えをいただきたいと思います。
  107. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) お答え申し上げます。自由化を控えまして、業界の一部で、やはりこの関税を引き上げてくれというような希望が出て参りましたのは、もうすでに二年前くらいから出ておったわけでありまして、これは事務的にある程度みな関係省が、農林省、通産省等が検討いたしました上で、やはりガットの譲許は与えるべきものと、どうしてもこれを国が関税率を引き上げる際に各国との交渉を要するものというものにつきましては、ある程度のものは、今宮崎君から言いましたように、たとえば大豆のようなものでございますと、一部は交渉を了しまして、そうして国会の承認を得ております。自余のものにつきましては、現在ある程度交渉をいたしておるわけでございますが、やはり今後としてもそういう引き上げをしてくれという希望は次から次へと出てくるわけではないと思います。大体大ざっぱに見まして、自由化を見越しまして、これによって関税率を引き上げなければならない、どうしても上げなければならぬというものにつきましては、今日までに、たとえば大きい目ぼしいところはもう大体手当をして、その手当に伴う外国交渉、代償を出すというような交渉を、今お話ししたようなことで事務当局でやっておるというのが実情であると思います。したがいまして、将来世界的に関税の一律引き下げ交渉というものが行なわれる場合におきまして、日本がさらにこれに参加いたしまして、これに見合った引き下げをやっていくということは、これはまあ確かに楽な仕事ではないと思われるのでございますが、これを、いわゆる一律引き下げ交渉というものは、具体的にどういう基準で何年を基準にし、どの程度の幅で、どういう品目についてやっていかなければならないかというようなことにつきましては、今後の問題でございますし、また、これは日本といたしましても、全面的に絶対に全部引き下げなければならぬというものではないのでございまして、たとえば、据え置きを約束するというようなことで通るのもかなり幅があるわけでございます。積極的に引き下げるということはなかなか困難ではあると思いますけれども、据え置きを約束するというようなことで、やはりこれを代償として各国から均霑を求めていくということもできるわけでございまして、結局、アメリカがどうこう言ったからとか、ガットがどうこうしたからということでなしに、日本自分輸出を伸ばしていくためには、やはりある程度自分のほうでもこれに見合って、各国の関税引き下げに対してある程度の見合ったものは日本としても出さなければ、これは日本自体の輸出を伸ばす上にも支障になるわけでございまして、そこをやはり大局的に判断いたしまして、そうしてできるだけ無理のない方法、しかも、できるだけ有効な、たとえば据え置きというようなものをできるだけ幅広くとりまして、そうして交渉に参加するということでなければならないと私は考えております。
  108. 大和与一

    大和与一君 ちょっともう一つ。さっき言ったEECにイギリスが入ったら、アメリカと、大体今でも力がまさっている、同じものになるということを言われたが、それはイギリスカナダオーストラリアニュー・ジーランド、あるいはイギリスとインドとかビルマとか、イギリスの旧植民地との特に今も残っておる経済の実際のつながり、そういうものを全部含めて、それがEECに入ったとすればということですか、それをもうちょっとはっきり。
  109. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) 先ほど申しました数字は、英本国だけでございます。英連邦諸国は全然除いてございます。
  110. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 一点だけ質問いたします。私のほうはこれは念のためのお尋ねですが、EECの域内関税、これはいずれば廃止する、今までは全部廃止していないけれども。しかし、とにかく域外関税とはこれは違う。そこで今度はEEC外の国、たとえばわが国とEECの各構成国との間の関係から、このガット規定というものを見るというと、この最恵国条款の適用範囲の問題ですが、ガットには、一般的の最恵国待遇をしないでもいい場合を特定していかなければならない。最恵国条款の適用の問題のときには、EECの域内関税があって、それは他に特別の条約上の根拠がなければ、当然そこに適用される性質のもので、理論上からすれば、ただ現在——現在というか、従来のガットの条約には、そういうものを一般的な最恵国待遇から除外でき得るという根拠規定がない。それだから、それを可能ならしめるためには、EECに入っている国と、そうでないガットの諸国との間に、特別の条約を理論上必要とするわけです。そこは僕はうかつで、すでにできておるにかかわらず僕は忘れておるかもしれぬ。それはどうなっていますか。
  111. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) ただいま御指摘になりましたお話のうちで、ガットではEECの内部の域内関税を撤廃し、しかも域外関税を設定するということによって、同じガット諸国でも、域内の諸国と域外の諸国に対して差別をすることは最恵国条款の違反じゃないかという問題であろうと思うのでありますが、これはガット二十四条に、「適用地域——国境貿易——関税同盟及び自由貿易地域」ということで、これは詳しい条文は申し述べませんけれども……。
  112. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それを根拠にしてですか。
  113. 関守三郎

    政府委員(関守三郎君) ええ。そしてそのうちに五項の(c)というのがございます。そこで「(a)及び(b)に掲げる中間協定は、妥当な期間内に関税同盟を組織し、又は自由貿易地域を設定するための計画及び日程を含むものでなければならない。」、こういうものをはっきり、つまり妥当な期間内に、たとえば十五年内にそういうものをはっきり作るんだということをはっきり各国間協定の間に結びまして、そしてそういう協定を作った限りにおいては、過渡的な期間、たとえば現在のEECでございますと、こういう期間において、過渡的期間においても、差別的な関税を域内の諸国と域外の諸国に対してやることは認めるということが書いてあります。
  114. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それはそれとしてわかりました。が、結果としては、そういうふうになってくるというと、ことにイギリスがEECに入るとかなんとかなれば、最恵国条款というものの適用範囲が狭くなってくるので、非常に最恵国条款について意味が狭められるわけですね。
  115. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 他に御質疑がございませんか。——なければ、本件に対する質疑は終局したものとしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言もないようでございますから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  117. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  千九百六十年及び千九百六十一年の関税及び貿易に関する一般協定の関税会議に関する二議定書等締結について承認を求めるの件を問題に供します。本案を原案どおり承認することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  118. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、原案どおり承認すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 異議ないと認め、さよう決定いたしました。   —————————————
  120. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) この際、継続調査要求についてお諮りをいたします。  本委員会におきましては、今期国会中、国際情勢等に関する調査を行なって参りましたが、会期中に調査を完了することが困難であると考えられますので、閉会中も引き続き調査を行なうため、継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じまするが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  121. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 異議ないと認め、さよう決定いたしました。  なお、要求書の内容及びその他の手続等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じまするが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 異議ないと認めます。さよう決定いたします。
  123. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 次に、閉会中の委員派遣につきましてお諮りをいたします。  国際情勢等に関する調査のため、今期国会閉会中に委員派遣を行ないたいと存じまするが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 異議ないと認めます。さよう決定いたします。  なお、派遣期間、人選等、及び諸般の手続につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じまするが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。  それでは、次回の委員会は九月三日午前十時より開会することとし、本日はこれをもって散会いたします。    午後四時四十七分散会    ————・————