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1962-10-31 第41回国会 参議院 外務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年十月三十一日(水曜日)    午前十時十五分開会    ——————————   委員異動 十月二十二日  辞任       補欠選任   佐多 忠隆君   近藤 信一君 十月三十一日  辞任       補欠選任   近藤 信一君   佐多 忠隆君    ——————————  出席者は左の通り。    理事            井上 清一君            鹿島守之助君            大和 与一君    委員            青柳 秀夫君           大野木秀次郎君            木内 四郎君            杉原 荒太君            長谷川 仁君            加藤シヅエ君            佐多 忠隆君            羽生 三七君            森 元治郎君            石田 次男君            曾祢  益君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 大平 正芳君    国 務 大 臣 志賀健次郎君   事務局側    常任委員会専門    員       結城司郎次君   説明員    防衛庁防衛局長 梅原  治君    法務省入国管理    局次長     富田 正典君    外務省アジア局    長       後宮 虎郎君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省欧亜局長 法眼 晋作君    外務省条約局長 中川  融君    外務省国際連合    局長      高橋  覚君    ——————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (国際情勢に関する件) ○派遣委員の報告    ——————————   〔理事鹿島守之助委員長席に着   く〕
  2. 鹿島守之助

    理事鹿島守之助君) ただいまから外務委員会を開催いたします。  岡崎委員長海外旅行中ですから、私が委員長の職務を行ないます。  まず委員異動について御報告いたします。去る十月二十二日佐多忠隆君が辞任され、その補欠として近藤信一君が選任されました。十月三十一日近藤信一君が辞任され、その補欠として佐多忠隆君が選任されました。    ——————————
  3. 鹿島守之助

    理事鹿島守之助君) 次に国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行なうことといたします。御質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。
  4. 羽生三七

    羽生三七君 きょうは主としてキューバ問題についてお尋ねをいたしたいと思いますが、ここしばらく世界の諸国民を不安に陥れて、戦争か平和かのせとぎわかと言われたキューバ問題が、とにかく一応解決曙光を見出したことは、これは御同慶の至りであります。私たちはこれを心から喜ぶ者でありますが、しかし今回の事件を振り返ってみて、この一応の小康状態にもかかわらず、手放しで喜んでおられるかどうか、はなはだ疑いなきを得ないのであります。今度のキューバ問題に関する米国政策を見ますると、これは言うまでもなく戦争せとぎわ政策であるし、あるいは力の均衡政策以外の何ものでもないと思います。幸いにフルシチョフ首相良識、それから世界の平和を愛する人たちの大きな力が、これを爆発寸前で抑止することができたことは不幸中の幸いでありますが、これをもってアメリカの力の勝利などと考えたり、あるいはアメリカのとった行為を合法化したり、合理化したり、容認したりすることはどうでありましょうか。昨日の池田首相記者会見等から見ても、事が済んでしまってからではありますにしても、何かそれらしきにおいがすることははなはだ遺憾であります。要するに、私としてはこの危機が一応回避されたことは、ソ連の出方もあるし、今また申し上げたように、世界良識のたまものと言えますけれども、ただいまも触れましたように、これをもって力の勝利などと考えて、今後の外交一つの見方とすることは、私はとるべき策ではないと思います。まずもって最初に、一応小康状態になったとはいえ、なおまだ今後続くであろう冷戦考えながら、今回の問題をどのように判断されておるのか、この点をまず外務大臣お尋ねをいたします。
  5. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) キューバ問題が米ソ両国首脳並びに国連首脳良識によりまして解決曙光を見出し得たことは、羽生先生の言われるとおり、世界平和のためにしあわせであったと思うわけでございますが、目下の段階はその収拾過程にございます。したがって、まだ安心ができないわけでございまして、この収拾が同様に良識でもって仕上げができるように私どもは希求いたしております。で、今度米国がとりました措置ソ連がこれに対応してとられました措置等外交的評価を申し上げるのは、まだ時期が早いと思うのでございまして、またそういうことを論議すること自体が、今後の収拾ということに支障になりはしないかとおそれる者でございまして、私どもは静かにこの事態が平和的にりっぱな仕上げになるように希求し、かつ静かにこれを見守るということで参りたいと思っております。
  6. 羽生三七

    羽生三七君 もし見守るのであれば、最初から見守ったほうがよろしいと思います。あの際、日本はこれをやむを得ざる措置と認めるとか、十分理解できるというような表現アメリカ回答を出しておりますが、もし静かに見守ることが適切であるなら、あの際においてすでにそういう態度をとるべきであったと、こう思います。  そこで、やはりこの今回の問題について政府態度を置いたものは、一貫して力の均衡政策であったと思います。要するに、キューバにああいう基地ができたことによって力の均衡が破れる、これは適当でない、またアメリカ立場も理解できる、こういうことであったと思います。しかしこの方法で平和が維持できるかというと、私は問題の解決にはならないと思います。そればかりでなしに、危険であります。この力の均衡が破れることは好ましくないという政府のお考えであると思いますが、この立場でいくと、結局、均衡均衡でも力の拡大均衡にいく以外にありません。結局世界軍拡競争は一そう激しいものとならざるを得ないのじゃないかと思います。もししいてこの均衡が必要だと言うならば、これは私前にも、外務大臣御同席の際だったと思いますが、総理にも申し上げましたけれども、しいて均衡政策をとろうというならば、これは縮小均衡であるべきだと思います。たとえばキューバトルコ基地交換等もその一例であります。しかし、きょうはこの問題には触れません。経済の場合の縮小均衡はこれは私どうかと思いますが、ここで触れる筋合いのものではありませんから申し上げませんけれども、しかし結局今の政府論法で言えば、均衡均衡でも力の拡大均衡以外にはなくなる。そうでなしに、もし均衡政策が必要ならば、縮小均衡に持っていくべきである。そうしなければ、それをまた積み上げてこそ、初めてこの一般的な世界的軍縮ということもありますけれども、そういう包括的な問題以外に、個々の地点、個々の国における一つ一つの問題を縮小均衡さしていってこそ、それを積み上げていってこそ、初めてこの世界の真の平和が維持できるのではないか。そういう意味で、政府がいつも不断に米国行動を、自由陣営一員ということで合理化したり、あるいは適当と認める、こういうやり方は適当ではないのじゃないかと考えますが、政府所論でいけば拡大均衡にいく以外にはないことになりますが、それでいいとお考えになるかどうか、この点をお伺いいたします。
  7. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どもが、米国並び米州諸国がとりました措置は十分理解できると申しました意味は、米国海上隔離措置を決意する、実行する以前に、リオ条約機構国々を集められてその承認を求めて、そうしていち早くそれが安保理事会に報告されまして、安保理事会は御承知のように審議を始めたわけでございまして、その限りにおきまして、米国がとりました措置は、少なくとも手続瑕疵はないと判断いたしましたことと、かねて友好関係がございまする米国を初め米州諸国が、今回の問題につきまして西半球の平和に対する大きな脅威だと見たという事情につきまして、私どもはその立場は十分理解できるということを申し上げたのでございまして、外交はひとり冷ややかな論理ばかりでなく、やはりあたたかい友情がなければならぬと思うわけでございまして、そういう状態に対しまして、わが国としてはそのように理解するということを申し上げたわけでございます。  それから第二点の、政府所論からすればこれは拡大均衡に帰結するのではないかというお説でございますが、遺憾ながら私は羽生先生のお説に同意できないのでございます。私ども政府の談話あるいはケネディ大統領に対する返書でもって申し上げましたことは、少なくともここ戦後十数年間世界の平和はともかくも維持せられてきた、これは厳たる事実であろうと思うのでございます。これをささえるものは何かということになりますると、いろいろな論議はございましょうけれども、いうところの世界均衡というものが保たれておったことを実証したものではないかと思うのでございまして、この均衡を破るような新しい事態が起こることに無関心ではあり得ないという立場でございまして、この現状、あるがままのステータス・クォというものを、均衡を破ることなく縮小均衡に持って参りますことは、もとより私どもの希求しているところでございまするし、ジュネーヴにおきまして十八カ国委員会が取っ組んでおる問題もその問題であると理解しておるわけでございまして、私どもはそのメンバー国ではございませんけれども、そういう国々を激励いたしまして、実効のある軍縮協定というものに到達するように全力をあげて応援して参らなければならぬと考えておるわけでございます。
  8. 羽生三七

    羽生三七君 日本政府がですね、キューバ問題に関する米国立場を無理からぬものと考え、また十分理解できるとする場合ですね、この論法でいくと、もう一つ、ただいま申し上げたことのほかに、かりに中国核兵器を持った場合、これはまあ時間の問題とされておりますが、中国核武装した場合には、アメリカ日本への核兵器持ち込みは必至となると思います。これは、もうそんな先のことはわからぬとおっしゃるかもわかりませんが、しかし、そういうことすら予見できないような外交であるはずはないと思いますから、これはあえてお尋ねをいたしますが、この場合、当然キューバに似たような事態アジアにも起こる。しかもそれは遠い——はかり知れないほど遠い将来のことではない。最も近い将来に中国核武装化ということがいわれておる。そういう場合には、当然アメリカも何らかの処置をとることは必然であろうと思います。今回の日本政府が、先ほど来申し上げますように、ああいうアメリカ処置をやむを得ざるものと認め、また十分理解できるという立場に立つ限り、アメリカ日本への核兵器持ち込みというものは、日本政府考えのいかんにかかわらず、一つの重要な問題点になって参ると思います。こういう場合でも、なおかつ政府は、昨日総理が言っておられたと思いますが、あくまで核武装をする意思はない、日本核武装はしない、そういうことを貫き通す確信をお持ちになっておるのかどうか。単なるこれは抽象論ではなしに、具体的にそういう問題が起こった場合どうか。それはそんなことは、先のことはわからぬというような、そういう御回答でなく、政治家であり外交家であるならば、当然予見し得る。しかも遠い将来ではない、最も近い将来に予見し得る確実な一つの見通しの上に立ってのお尋ねでありますから、あえてお尋ねをするわけであります。
  9. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま政府は、核兵器持ち込み核武装ということにつきましては、全然考えておりません。
  10. 羽生三七

    羽生三七君 いやそれは、そういう一般的なお答えを承るつもりは毛頭ないのです。それはもう当然そういうお答えがあってしかるべきですが、具体的に私は事例をあげたのです。そういう場合にはどうなさるか。くどいようでありますが、重ねてお尋ねをいたします。
  11. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政府は今申し上げたような方針を堅持いたしておりますので、それ以上私がここで申し上げる自由はございません。
  12. 羽生三七

    羽生三七君 私は自由があるとかないとかということ、あるいは池田内閣基本的な政策核兵器日本への持ち込み基本政策として禁じておりますから、まあ今の場合はとおっしゃることはよくわかりますが、しかし、確固たる政治家としての信念をお持ちになるならば、そういう場合でも、私としては拒否するのが筋だと思うのです。また拒否すべきであると、こういうお考えの表明があってしかるべきだと思いますが、いかがでございましょうか。
  13. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 核武装するということはしないということを政府基本方針にいたしておりますので、そのことを率直に申し上げるわけでございます。
  14. 羽生三七

    羽生三七君 いや、この点はもっとうんといろいろお聞きしたいと思いますが、どうせ幾らお尋ねをしてもそれ以上はおっしゃられないと思いますから、この辺にいたしておきますが、しかし必ずそれは起こり得る問題であります。その場合に日本政府がどういう態度をとるか、これは非常に重大な問題だと思いますが、次の問題に移ります。  今回のキューバの問題で防衛庁が非常に騒いだわけでありますね。それが表面化しなかっただけのことで、騒いだことは事実であります。しかし、私どもは非常に不思議に思うことは、あの際政府は、日米安保条約があるから日本中立立場をとり得ないから、ある程度やむを得ないという表現をされたことがあると思いますが、このキューバ問題にまで安保条約上の制約を受けるのかどうか。何か極東に問題があって、日本が外国からの攻撃の危険にさらされたというような場合はとにかく、キューバ問題ですぐ防衛庁が大騒ぎを始める。これは表面化しなかったけれども外務省に文句を言われて静かになったそうでありますが、しかし、そういう状態防衛庁があるということは事実であります。これは適当なことかどうか。そういうキューバ問題にまで安保条約上の制約日本は受けるとお考えになっているのかどうか、その辺をひとつお伺いしたい。
  15. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) キューバ問題に直接関係ございません。したがって、キューバ問題に関連して自衛隊非常体制をとる必要はないと思います。ただ、私どもは、自衛隊が常時いかなる場合におきましても、日本を自衙するという決意のもとに、終始緊張した状態にあることを期待いたしております。
  16. 鹿島守之助

    理事鹿島守之助君) ちょっと羽生さん、志賀防衛庁長官は十一時まで欠席して十一時以後に来られますから、その節御質問下さい。
  17. 羽生三七

    羽生三七君 総理がお見えにならないのに、それに関連するお尋ねをするのはいかがかと思いますけれども、昨日の記者会見等から見ますると、総理アメリカの今回の行動を合法化するというか、合理化している向きがうかがわれます。たとえば国際法上、最近の国際法は変わってきているのじゃないか。しかし、私は今回の行為を見て、国際法のどこに合致しているか合致していないかというようなことを一生懸命で探して、その合法性の根拠を探求するのにこれ努めなければならぬというほど合法性の乏しいものであったと考えざるを得ないのであります。それを、済んだあと、最近武器発展等に基づいて国際法が変わってきたのではないかというようなことから、一そうさらにこれを合法化されるようなことは適当とお考えになるのかどうか。あれを国際法上合法的なものとお考えになるのかどうか。これは条約局長でもかまいませんが、最近どういうふうにこれをお考えになったのか、これを承りたい。
  18. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この問題は、この前の衆議院の外務委員会におきましても私から御答弁申し上げましたとおり、今まで米国並び米州機構側がとりました手続、手順には少なくとも瑕疵はないということでございました。問題は、その実態が合法的かどうかという問題になるわけでございますが、これは安保理に取り上げられまして、安保理が審議いたしているわけでありまして、私ども国連の判断に待つべきものと思っておりますし、またかりに日本政府としてその法律問題を取り扱うにいたしましても、事態が非常になまでございまして、まだ十分的確な材料を入手いたしておりませんので、この問題につきまして軽率なことは申し上げないほうが適当であると判断いたしたのでございます。総理大臣がきのうの記者会見で言われた合法的という意味は、今までの過程は少なくとも手続瑕疵はないじゃないか、こういうお気持で言われたものと思います。
  19. 羽生三七

    羽生三七君 先ほど来申し上げますように、一応この問題は小康を得たにいたしましても、東西冷戦はなお続くと思いますし、この問題の処理も、今国連事務総長が奔走しておるようでありますが、キューバヘの国連監視団の問題、あるいはキューバが言っておるグアンタナモ基地の撤廃の問題、あるいは事実上の武器以外の経済封鎖解除等の問題、これらをどう取り扱うか。ベルリン問題との関連もあって今後なかなか予断を許さないものがあると思いますが、いずれにいたしましても、こういう場合に、今度この東西危機に際会して、ウ・タント国連事務総長のとった態度は大いに賞賛されると思いますが、それはまたフルシチョフ首相がどういう見解であったにせよ、終局的に平和のために非常な寄与をしたことは歓迎すべきことでありますが、とにかく国連事務総長がああいう動きのできた背景には、やはり数十カ国の中立諸国動きが大きな影響を与えておると思います。ところが、日本アメリカとともに自由陣営一員であり、安保条約を結んでおるから仕方がないという立場で御説明にはなっておりますが、私はやはり日本外交がもっとああいう場合に何らかの積極性を出して、アメリカ冒険主義に対して十分な警告を発すべきだったと思います。そういう意味で、あの四十三カ国の中立国からは日本に何らかの話し合いがあったのかなかったのか、またあっても断ったのか、その辺の動きを少し知らせていただきたい。
  20. 高橋覚

    説明員高橋覚君) 私、当時ちょうどニューヨークにおりましたけれども、例の中立四十何カ国の動きというものが日本には呼びかけがございませんでした。
  21. 羽生三七

    羽生三七君 まあ、呼びかけがなかったのは、無視されたかどうかその辺は知りませんけれども、いずれにしても、もっと積極的に、先ほど外務大臣は静かに成り行きをごらんになると言いますが、何も気負い立って先頭切って騒ぎ立てることがいいということを私は言うわけではない。しかし、この東西のいろいろな動きを十分見きわめて、日本日本としての立場で、もっと冒険主義に対して徹底的な批判があってしかるべきだと思います。なぜそういう点について、このアメリカ立場を極力合理化することにだけきゅうきゅうとされておるのか、はなはだ理解に苦しみますが、過去のことは別として、今後ともできるだけこの力の均衡拡大冒険主義に対して、もっと十分な検討を加えて、アメリカに対しても言うべきことは十分言うような姿勢をおとりになるべきではないかと思いますが、いかがでありますか。
  22. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どもは、世界平和を維持して参る、それから紛争が起らないような事態を招来するために、終始建設的で意欲的でなければならぬと思うわけであります。この問題は、世界平和を維持するということが至上命令でございまして、その至上命令に沿って具体的な場合にどうするかということを判断して参るべきものと思います。
  23. 羽生三七

    羽生三七君 この限られた時間の中で私がくどくどあまり言うのはいかがかと思いますが、どうも日本外交は、たとえば今度のキューバ問題についても、イギリスの様子をそっとうかがう、フランスの様子も見る、そこでおもむろに日本が口を開く。先に口を開く場合は、先ほど申し上げたとおり、アメリカ態度を理解するにはやぶさかでないというような、こういうやり方でありますが、とにかくあまりにも私はそういう意味で最近の国際間のいろいろな動きに対処した場合、平和のための強い意欲、またそのための努力というものが日本外交には非常に欠けておるんじゃないか、要領よく立ち回るにすぎない。これは極端な批評かもしれませんが、そういう感じを受けております。無難かもしれませんが、しかし今日の激動しておる国際政局に対処する日本外交の姿としては、きわめて私は貧困であろうと思います。これは質問ではありません。意見として申し上げておきます。  それから次に、やはり今度キューバ基地撤去が先決であるというケネディ大統領の要望に、ある意味ではこたえて、キューバトルコ基地相互撤去というこのフルシチョフ首相の要求が、一応トルコのほうを引っ込めてキューバ基地撤去に踏み切ったわけでありますが、将来とも私は基地問題は重要な問題になってくると思います。キューバには確かにソ連がああいうことをして、今度それは撤去することになるわけでありますが、しかし、それではアメリカ世界じゅうどこへでも基地を持っていいか、それは合理化されるかということになると、力の均衡理論で万事を測定される場合には、問題は全然別のことになってしまいますが、いやしくも世界平和という立場で問題を考える場合においては、これは私は非常な重大な問題になってくると思います。そういう意味で、日本にある米軍基地というものも、今即時全部撤廃するということを、今ここで私が実際上できもしないことを言うわけじゃありませんが、しかし、漸次縮小ないし廃止の方向へ向かっていくべきではないか、またそういう努力があってしかるべきではないか。そういう場合均衡が破れると言いますが、その場合の日本の安全のあり方というものは、もっとほかに十分検討の余地を残しておると思います。したがって、この基地問題については、今後とも世界的にいろいろ問題が起こってくると思いますが、日本政府としては日本のただいまの米軍基地に対してどういうふうにお考えになっておるのか、この点をお伺いいたします。
  24. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わが国にすでに久しく基地があるわけでございまするが、この基地安保条約に基づきまして終始防衞的なものであるということは、常々政府が申し上げておるとおりでございまして、安保条約自体も、防衛的な、寸毫も攻撃を意図するものでないということは、はっきり申し上げておるとおりでございまして、そういうことによりまして、少なくとも日本をめぐりまして戦後平和が維持されてきておる、これは事実でございまして、このことは私ども十分銘記すべきことだと思うのでございまして、したがって、私どもは今の姿勢日本防衛ができ、日本をめぐって平和が保たれておるという以上、この基地問題は非常に慎重に対処しなければならぬ問題だと思うのでございまして、これの改廃というような問題は用心深くやらなければならぬことと心得ておる次第でございます。今基地について何らかの新しい政策を実施する気がまえかどうかということにつきましては、そういう考えはないと申し上げるほかございません。
  25. 羽生三七

    羽生三七君 私だけが長く時間を取ることはいかがかと思いますので、もう結論を出すことにいたしますが、もう一つキューバ問題と直接に関連性はありませんが、新聞を見まするというと、中国問題も国連で加盟が否決されて、日本反対投票をしたようでありますが、今私がここで中国の代表権問題を云々することは考えておりませんけれども、ただ私の一つ関心は、中国国連の外に置いて、中国の核保有なり核武装を規制することが可能かどうか。世界的軍縮と言い、それから核兵器禁止協定というようなことをいろいろ言っておりますけれども中国国連の外にあってそれをコントロールすることが可能かどうかということになると、私は不可能だと思います。中国独自性を主張し得る、そういう意味の展望をも含めて一体中国問題というものは討議されているのかどうか、岡崎代表の演説の内容も知りましたが、しかしほとんどそういう意味関連で問題が検討されているという気配は少しもありません。そこでこの機会にお伺いいたしたいことは、先ほど私が触れました中国核武装した場合、アメリカ日本核兵器を持ち込むようなことが起こらないかということともこれは若干の関連性があるわけでありますが、中国問題を取り扱う場合に、その基本的な議論は私はこの際抜きにいたします。問題は、中国国連の外に置いて中国核武装を規制する道があるかどうか、そういう意味では、もっとそういう問題を含めて中国国連加盟というものを根本的に考え直してみる必要があるのじゃないか、そういう気がいたします。いかがでしょう。
  26. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申し上げましたように、私ども世界平和を希求せねばなりませんし、その維持のために最善の努力をはからなければなりません。同時に、わが国の平和と安全とそうして繁栄を確保し、保障していかなければならぬ重大な責任があるわけであります。そういう観点からこの問題を見ました場合に、中国代表権問題につきましては、いろいろの考え方があり得ると思うわけでございますが、わが国はそういう立場から、そうして今わが国が中華民国政府と条約、外交、国交を持っておりますし、友好関係を続けているという条件をになっていることも羽生先生御承知のとおりでございます。こういう状況のもとにおきまして中国代表権問題を考えた場合に、国府を国連から追い出すということがかりにできたといたしましても、それがもたらす日本をめぐる極東の平和、安全ということにどういう事態が起こるかということも十分頭に置いてかからなければならないのでございまして、これはひとり中国代表権問題という限局された問題でなくて、世界の平和、極東の安全ということに至大の関係ある問題でございまするから、この問題はまさに世界平和の上に重要な問題であるという建前を私どもは堅持しているわけでございまして、今回の国連における行動も、そういった観点に立って処置いたしたわけでございます。そのことは十分御了解をいただきたいと思います。
  27. 羽生三七

    羽生三七君 これで終わりますが、私の今申し上げたことは、今の国府の立場がどうとか、中国本土の立場がどうとか、それをどういうふうに処理したら危機が起こるとか起こらないとかという問題ではなしに、それもあるでしょうが、今のキューバ問題に端を発する核兵器、最近のミサイル等の問題を考えてみた場合に、中国核武装ということが起こった場合に、国連の外に置いてこれを規制する道があるかどうか、そういう関連性でも、その問題についても十分な配慮を中国問題を検討する際に加えるべきではないかと、こういうことを申し上げた次第です。  それからもう一つ、さっきのことに戻って重ねて申し上げて恐縮でありますが、中国核武装をした場合、日本では持たないということを——ただいまでは持ちませんというお答えでありましたが、私はその場合のこまかい論議は一切する意思は全然ありませんが、中国核武装した場合においても日本アメリカ核兵器持ち込みを許す意思はないと、そう理解しておいてよろしゅうございますか、重ねてお尋ねいたします。
  28. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申し上げましたとおり、日本政府核武装しないということを天下に声明いたしておるわけであります。そのことだけを私は申し上げる自由を持っておるわけでございます。
  29. 曾禰益

    ○曾祢益君 今、羽生委員からキューバ問題で御質問があったのですが、その中で日本政府のこの問題に関連してとった態度についての御質問、私もたとえば日本政府アメリカの大統領の書簡に対してどう返事をされたかということは知っております。ウ・タント事務総長が両方に対して理性を要請いたしまして、アメリカに対しては、とりあえずキューバに対する実力行使でなくて、そうして国連解決するように、またソ連キューバに対しては、とにかく基地の工事を中止して、そして国連の代表の到着を待つように、そういう態度をとったわけです。こういうものに対しては日本政府はどう考えるか。ただアメリカの行政に対して、それはよく理解できる——まあ半ば以上支持的態度をとっただけでなく、紛争の平和的処理に対してウ・タント事務総長の行動を強く支持する、それに従ってアメリカにも、要するに封鎖行為を現実にどんどんやらないで、国連の決定を待てと。逆にまた、これは確かにアメリカだけが緊張を激化したわけじゃありません。そういう意味では、こういうアメリカのいわゆる実力を背景とする封鎖行為の前に、確かにソ連のほうが核ミサイル基地を隠密裏に、しかも偽ってキューバに作ったという事実がある。このほうについてもわれわれは問題にするのは当然なんです。したがって、アメリカに対して理性を要請すると同時に、日本政府としても当然この緊張激化をやめろという意味において、ソ連なりキューバに対しても、それぞれ適当な、たとえばウ・タント事務総長が言った程度の、とりあえずこれ以上の増強を待って、そうして国連にまかせろというくらいのことをおっしゃったのかどうか、それらの点について一つもわれわれはわかっていない。そういう意味で両方に対してどういう態度をおとりになったのか、ここで明らかにしていただきたい。
  30. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 事態は今収拾の段階に入っておりまするし、特に私ども収拾の段階において希望を持ちますゆえんのものは、ソ連邦におきましても、国連監視団を迎えて公明に撤去をしようというような態度に出られたことは、これからの核停問題につきましても、軍縮問題につきましても、大きな希望をつなぐゆえんだと思うわけでございまして、今の収拾過程を歓迎いたしております。問題は、すべてアメリカ側の発意で最初にこれが国連に持ち込まれ、国連で平和的に解決しようという態度をいち早くとられたことに対しては、わが国はそういう態度を歓迎するということを表明いたしたわけでございまして、それが旬日の間に国連で急速な収拾過程に入り、私どもが希望する方向に事態が進んでおることを私どもは喜んでおるわけでございます。
  31. 曾禰益

    ○曾祢益君 もっと明確にお答え願いたいのですが、むろんウ・タント事務総長のあっせんもありましたが、最終的にフルシチョフが非常な、何といいますか、決意を持って、一応キューバ政権を進攻しないというアメリカ大統領の声明を信頼したという形において、自発的に今までの基地を撤去するということに同意し、かつ、それを確認するための国連理事の来ることを歓迎する。これがあってから後は、これはある意味でのんきな話で、それまでに至る過程においてほんとうに世界がまさに人類共滅の戦争かどうかという関頭に立たされた、そのときの外交について伺っておるのです。だから、端的に言うならば、アメリカに対する回答にしても、むろん国連に持っていったことを歓迎する、それはそのとおりだと思う。同時に、われわれははっきりした法律的並びに政治的見解を明らかにするならば、まず国連に持っていきなさい。平時海上において第三国の船を臨検捜査することは、これは国際法からいって、私はできないと思う。それは緊急やむを得ないとか、いろいろ米州機構に相談したとか、それはアメリカ側の理屈もあるでしょう。しかし、とにかくそういうことをする前に、まず国連に訴える。だから国連に訴えるということが主であって、そうしていわゆる自衞行為か何か知りませんが、緊急行為としての封鎖ということはとりあえず待てというぐらいのことをアメリカには言うべきである。同時に、ソ連及びキューバに対しては、特にキューバは別としても、ソ連に対しても政府としては何かお言いになったか。私は当然に言うべきだと思う。世界の緊張がほんとうの微妙なバランスの上に立っておるということは事実なんです。それをある地点において大きく変えることは、これは非常な戦争の危機であることは事実である。そういうことに対して黙っておるということはおかしい。アメリカ行為に対してただすべきものはただし、ソ連のほうだけは黙っている、そういう片手落ちは私はいけないと思う。そういう意味では、日本政府アメリカ立場より、これはウ・タントでもバートランド・ラッセルだってソ連に言うべきことは言っておる。そういう意味では、特に基地の増強はやめろというぐらいのことは、フルシチョフ首相がやめますと言う前に言っておいてくれなければ、国民としては日本政府外交に信頼できない。こういう点はどういうことをおやりになったのかということをお伺いいたしたい。
  32. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ケネディ大統領に対する首相の返書におきましても、国連において平和的に解決をというように申し上げておりまするし、またソ連政府がわれわれのほうに接触がございまして、フルシチョフ首相の声明並びにラッセル卿にあてました書簡の写しを持って駐日大使が私のところに参られましてそれで同様の趣旨のことを私からも駐日ソ連大使に申し上げたわけでございますが、冒頭私が申しましたように、今回の事件は米ソ両首脳並びに国連首脳の賢明なステーツマン・シップによりまして事態が予想より早く収拾に入ったわけでございましてそういったステーツマン・シップに対しましては、私ども心から敬意を表しております。
  33. 森元治郎

    ○森元治郎君 一つだけ、皆さんの質問と同じことを別な角度から伺うのですが、この事件が起きてからの政府はもっぱら国際法なんというものはもう時代おくれなんだということを、事務官僚から教えられた政治家も、事務当局はもちろん、盛んにたたいておる。そこにおられる法眼欧亜局長、東大の林教授、それから防衞庁の研修所の佐伯所長、座談会なんかを見ても、三人寄ってたかって非常に、今はもう国際法なんというものじゃないのだと口をきわめてPRをしておられる。そうすれば一体われわれが国際関係を規律するものはどういうものによってやっていくのかという問題が一つ。今度の事件でなぜこういうふうに静かになったかというのは、国際法的にはいろいろ疑問はあるが、とにかく戦争をやってもらっては困るというのが世界の——日本も含めて——気持であって、国際法的に正しいのだというところはどこにもないのです。ただ、そういう法律をやっている時間がないというので、とりあえず静かにしてくれ、力を使わないでくれ、ソ連も言うことを聞いて撤去するように努力しろというようなことであったと思うのです。そこで、一体政府は、この国際法というものはもう何もないのだ、ただ力なんだ。もしアメリカの今度の行動が許されるなら、私は満州事変は当然許されると思う。満州を守るためには山海関にいる支那軍がじゃまだ。北支那に進出する。ビルマ・ルートからの英米の援蒋がじゃまだ。あそこへ入ってくるからそのもとのほうをひっぱたいてしまう。みな自衞権で事を処理する。これでは十八世紀に戻ってしまう。こういう点について、国際法と現事態関連を、大臣と、盛んにぶっていた欧亜局長から御説明を、願いたい。
  34. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私も、最初羽生先生の御質問で申し上げましたとおり、手続上リオ条約の条文あるいは国際憲章に示された手順を踏んでおるということをまず申し上げたわけであります。問題は、海上の隔離処置というものが合法的かどうかという実際問題につきましては、それを正確に判断する材料をまだ持ってないから、政府としては軽率に判断を下すことはできませんということを正直に申し上げておるわけでございまして、政治と法が支配する世界を希求するということにつきましては、森先生に劣らず私どもも追求して参らなければならぬことだと考えております。
  35. 法眼晋作

    説明員(法眼晋作君) ただいま御質問がございましたのでお答えいたしますが、私は決して国際法を無視しろということを言ったわけでございません。ただ国際法を含む法律一般は、その当時の社会現象に基づいて作られているものでありますから、将来のことを律する場合には、必ず一つの解釈の余地が出てこねばならぬという一般的理論から問題を提供しただけでございまして、さような意味で御了承願いたいと思います。
  36. 大和与一

    ○大和与一君 一つ関連ですが、国際常識からいって、伝えられるキューバのソビエトの施設、核兵器、それはアイスランドとか、ベルギーとか、あるいはトルコとか、沖繩とか、こういうところにアメリカがやはり同じような設備を内容的に持っている。こう考えてよろしいと思うのですが、どうですか。
  37. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) NATO条約に基づきました協定の中で、アメリカとNATOとの協定でそのような施設があるということは承知いたしております。
  38. 安藤吉光

    説明員(安藤吉光君) 今のお話でございますが、具体的に申しますと、今度キューバで問題になったのはMRBM、IRBM、前者は射程距離一千マイル以上、それから後者はその倍以上ということを言われております。設備の上で核基地がございますのは、私の承知いたしておりますところでは、英国とトルコとイタリアでございます。これらはNATOの条約に基づいて設置されているものと承知いたしております。
  39. 大和与一

    ○大和与一君 外務大臣は、さっき私は沖繩も含めて今核弾頭をつけておるかという点で、取りはずしが自由なんでしょうから、沖繩も含めてやはり同じような設備を持っておる、あるいは装備ができる、こう考えておりますかと聞いたのですが、それに対して外務大臣はそのとおりだとおっしゃったのですが、よろしゅうございますね。キューバと同じようなことができる。設備、装備というか、それは常識的に、国際常識としても当然考えられておる、その場所のことも……。
  40. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私が申し上げましたのは、日本におきましてはそういうことはいたさないということを申し上げたのであります。
  41. 大和与一

    ○大和与一君 ですから、日本の国内においては、おっしゃるとおりです。沖繩は日本の領土だけれども、今政府の力が及んでいない、当然。沖繩はなぜそういうようになっておるかというと、やっぱりアメリカとしてはそういう非常事態に備えての設備が十分になされておる、こう考えるから、キューバと沖繩とトルコとどう違うかというと、距離の問題だけであって、内容は同じだと思う。そうすると、瞬間的に最悪の事態が来るという今回の情勢から見て、まさに人類の破滅というか、あるいはまかり間違えば日本民族の破滅、こういうことが起こるのではたいへんだということを国民が考えるから、沖繩は日本国内ではないけれども政府から言えば、ないと言うのだけれども、沖繩では絶対に、今度のようなことを考えると、ほんとうにはだえにアワを生ずるような心配があるから、核兵器を使うということは絶対せぬでくれと、こういうようなことを米国にあらためて強く要請をし、その返事をとるということまでできないものかどうか、いかがですか。
  42. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今、私どもが沖繩問題を処理いたしております根拠は、方針は、つまり沖繩はアメリカの施政権下にあるわけでございまして、私どもの支配の及ばない地域でございます。したがって、今住民の福利とか経済の発展とかいう面におきまして、日米琉協力いたしまして、できるだけのことをいたそうという態度でございまして、事、施政権の問題に関しましては、有権的な発言権を持っていないわけでございます。そういう態度で今すべての問題が処理されておるわけでございます。
  43. 大和与一

    ○大和与一君 何か、一番最悪の事態が一応過ぎ去ったから、もう楽になったという気持でおるのじゃないかと思うのです。これがもしまかり間違って何かあったという場合には例外になるか。ならぬでしょう。世界じゅうの、両方から、あらゆる基地からロケットが乱れ飛ぶわけですから、そういう場合に沖繩は例外ではない。外国から考えれば、そういうことを沖繩はやらないという保証はどこにもないのだから、そういうことを向こうが言うわけですね。非常にたいへんな事態があって、幸いに最悪の事態が避けられたとしても、日本の国民の立場からすれば、沖繩にかりにもそういう装備がある——これは間違いなくあると思うのだけれども、それはやはり不測の事態を起こしてたいへんなことになるのだから、ぜひそれは、どうしても核兵器については、絶対に装備しないように、持ち込まないように、これぐらいのことをやはり言わなければいかぬ。もし言わぬとすれば、今の日米安保条約の取りきめだけによって絶対に日本国民の断固安全を保障するということを政府は言えるか。
  44. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申し上げましたように、日本をめぐって戦後平和が保たれてきたわけでございます。このことは厳たる事実でございまして、私どもは、日本並びに日本の周辺に平和に対する脅威というものを御心配する向きもあるかもしれませんけれども、少なくとも戦後平和が保たれてきたということの事実を信頼しなければならぬと思うのでございまして、そういった事態に、万が一にもならないように終始心がけて参らなければならぬことは、当然政府の重要な責任でございます。ただ、沖繩に対して私どもは有権的なヴォイスを持たないということをお断わり申し上げておきます。
  45. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 関連。  どうも答えになっていないと思うのです。沖繩は非常な核武装化が行なわれておる。たとえば、エイルズ陸軍次官がアメリカの下院の軍事委員会で答弁したことによっても、沖繩は極東唯一最大の核武装基地であるということを言明しておる。一体そういう状態にあるのに、非常にのんきに、今まで平和が保たれてきたからそれを多とすればいいじゃないかというような答弁で済むとお考えになっているのかどうか。一体大臣は、沖繩における核武装化という問題がどういう状況にあり、どういう程度進んでいるというふうに認識を持っておられるのか。そういう状況にあるにかかわらず、今言ったような答弁でいいとされるのか。私たちから言えば、もっとそこは、今大和委員も言ったように、積極的にこれを非核武装する、核武装を解体をしていくという方向に努力をしなければならぬし、主張をしなければならぬと思うのですが、その辺をどういうふうにお考えになりますか。
  46. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 沖繩の核武装の実態につきましては、私はつまびらかにいたしておりません。しかし、そういうことも含めまして、ともかく世界的に均衡がとれて、平和が維持されてきたということは事実であろうと思うのでございまして、私どもは、したがいまして、こういった均衡状態を新しく破るような新しい事態の発生ということについては、非常に警戒的でなければならぬと思っておるわけでございます。先ほど大和委員にもお答えいたしましたとおり、私ども日本の平和と安全を何としても維持して参らなければならぬわけでございまして、そういう観点からすべての問題について慎重に対処したい、またすべきものだと考えます。
  47. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 平和が保たれているというのは、熱戦が行なわれていないというだけであって、緊張状態は非常に続いているのですよ。その緊張状態が続いているからこそ、また沖繩の軍事基地が必要だとかなんだとかあなた方はアメリカとともに主張をされている。その緊張状態自体を緩和する、解除していくということが今は重要な問題であり、その唯一最大の方策は、まず沖繩の核武装基地化——核武装を解体をしていくということが必要なんだと思うのですよ。そういう重大な問題であるにかかわらず、まあ核武装がどういうふうに進んでいるか知りませんとぬけぬけと言っていて通れるとお考えになるのか、そういう答弁はないと思うのですが、まあその事実をつまびらかにしてないとおっしゃるのならば、防衛庁どなたか見えていますか。——防衛局長からまずそれを御説明を願い、その上で大臣にさらに御質問いたします。
  48. 梅原治

    説明員(梅原治君) 沖繩の状況につきましては、先般のこの委員会でも御説明申し上げたことと記憶いたしております。特に核兵器があるかどうかということにつきましては、私どもとしてこれを確認する機関を持っておりませんが、先般も申し上げましたように、あすこにはメースBの基地が四基地完成いたしております。メースBが完全に配置されたかどうかということにつきましての公式の情報は受け取っておりません。このメースBは、御存知のように、射程約二千二百キロを持ちますところの通常弾頭、核弾頭併用のものでございます。さらに地対空ミサイルといたしまして、ナイキ・ハーキュリーズがございます。これもやはり通常弾頭、核弾頭併用できるものでございますので、そのような装備があります以上、普通には、常識的には核兵器があるというふうに考えるのが私どもの判断でございます。
  49. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今お話しのとおり、ナイキ・ハーキュリーズ、それから今お話しがありませんでしたけれども、オネスト・ジョン、リトル・ジョン等の兵器、それから特に重要視しなきゃならないメースBの基地、それから今お話しはなかったけれども、もっと重要な問題は、原子力潜水艦がしばしば寄港をし、あすこが一つの原子力潜水艦の基地化しつつあるということまで言われている。だから、こういうことを内容としてエイルズ陸軍次官が、沖繩が極東における唯一最大の核武装基地であるという答弁、説明をしているのだと思います。そういう状況にある。したがって、ここに極東における緊張状態一つの大きな要因がある。われわれが極東における緊張状態を緩和し、解除していこうとするならば、先ほどから大和委員も言っているように、これをまず取っ払うことを考えなければならない。これをどういうふうにお考えですか。
  50. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私から申し上げておりますことは、そういうことも含めまして、そういう状況の上に立ちまして世界の平和がともかくも維持されてきたではないかということを申し上げておるのでございまして、新しいバランスを破るような事態、それはプラスに働く場合もマイナスに働く場合も非常に危険であるというように判断いたしておるわけでございまして、基地の撤廃ということはそれ自体原理的には望ましいことでございますけれども、そういうことをやることによって世界の平和が脅威を受けるような事態になることをおそれるわけでございまして、この問題に対する接近は、国際的に有効な軍縮協定というようなものが国際世論をバックにできて参ることが大事なんでございまして、しかもそれが有効に処置されるような状況をどうして醸成するかということが世界外交の最大の課題であろうと思うのでございます。そういう方向に世界世論の熟成、展開というものを希求して建設的な努力を払うべきものだと考えます。
  51. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それから、大臣も軍縮なり何なりの方向は必ずしも反対をされないのだろうし、むしろそうあるべきだと言って希望しておられるのだと思う。それならば現在の現状を維持することではなくて、それを変えていくことでなければならない。むしろ現在の状態は熱戦の状態ではないかもしれないけれども、先ほどから言っているように、緊張状態として冷戦が熱戦に転化しかねないような状態だと思うのですね。したがって、こういう現状は破られていかなければならない、軍縮、軍備撤廃の方向に変えられていかなければならないというのが前提だろうと思います。そうであるとするならば、バランスを破らないで現状のままで置くという考え方ではなしに、むしろバランスを破ることが現在の緊張状態を排除していく方向だというふうにお考えになって、方向をそういうふうに定められることが必要なんじゃないか、それをどうお考えになりますか。最近あなた方はバランス、バランスと言っておられるけれども、そのバランスはむしろ現存の緊張状態をそのまま持続することです。そうなれば、緊張状態が今のように持続するということになれば、いつまでも極東は不安であり、したがって、また沖繩の軍事基地も必要だとかなんとかいうような議論まで出てくる。あなた方は、沖繩は希望としてはやはりなるべく早い機会に返してもらいたいということも御同意だろう。そうであるならば、やはり緊張状態を解く努力をしなければならないし、そのために軍縮その他も必要なんでしょうが、それにもまして、まず手始めに核実験はやめる、核武装はやめるということでなければならないし、ことに、われわれのすぐ身近な所、しかも、われわれが施政権は持っていないけれども、潜在的な主権を持っている日本の領土にほかならないところの沖繩で核武装が大規模に行なわれているということは、われわれがこれを現在のバランス状態としてやむを得ないのだというようなのんきな問題じゃないと思う。どうお考えになりますか。
  52. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 決してのんきに考えているわけではございませんで、緊張状態が緩和されるという方向に作用する手段、これは絶対的に望ましいかと申しますと、そういうことをやることによって世界の平和が破られる危険性もよく勘定しておかなければいかぬと思うのでございまして、のんきにかまえているわけではございません。問題は、先ほど言われましたように、こういう状態下におきまして、国際的に核保有国などを有効に縛るところの協定というものができなければ、佐多先生が言われるようなことも実行ができないわけでございますから、国際的な有効な軍縮協定ということに最善の努力を払うべきだと思うのでございます。先ほど曾祢先生の御質問にお答え申し上げた中にもございますように、今度のキューバ問題にいたしましても、キューバにおける基地施設の撤去ということを国連監視下でやろうということは、これはもう世界の平和に対する非常な私は建設的な貢献だろうと思うのでございまして、こういった芽ばえを発展させて参りまして、国際的に核保有国というような有力な国々を縛るに値する協定ができると、そういうことができないと、今おっしゃったようなことも実行が不可能であるわけでございます。問題の接近の仕方は、そういう角度からやるべきじゃないかと考えます。
  53. 大和与一

    ○大和与一君 やはり外務大臣に…。国民の立場からすれば戦争は反対、それで今度のキューバのことを考えて、特に沖繩のことが気になって心配でしょうがない。そうしたら、今まで穏やかであったということは認めることにして、また全国の基地を一ぺんに返すということはわれわれの念願だけれども、これも一応お預けにして、このキューバの経験から、今この際こそ、国民の感情をそのままアメリカにぶつけていくということがどうしてできないのですか。安保条約だって、事前協議だって、こちらはあるわけでしょうが、沖繩は何もないのですよ。しかもボタン一つ押せばどうなるかわからぬという、こういう危険を世界のすべての人が非常にたいへんなことだと思って直感した。日本国民として、沖繩のこの基地に対してそういう装備があることがわかったら、ぜひともこれはひとつ絶対に核は使わないでもらいたいということをこの際アメリカにきちんと政府として言うことは当然で、少しもおかしくないと思いますが、それがなぜできないか、なぜちゅうちょするのか、それをひとつお答え願いたい。
  54. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういうことはやさしいことでございますが、問題は、そういうことの実効を確保する方法がなっていない。単なるアピールではこれは実効が期しがたいわけでございまして、問題は、実効ある外交措置をとるべきだと思うのでございまして、今佐多先生にお答え申し上げたとおりの考え方でおるわけでございます。
  55. 羽生三七

    羽生三七君 防衛庁に、先ほどちょっとお尋ねしたことでありますが、先ごろのキューバ問題に関連して自衛隊が何か警戒態勢に入るとか入らぬとかということでだいぶん騒いでいるようでありますが、表面化しなかったわけで、これは一応表面的には何事もなく済みましたが、この真相をちょっと承りたいのです。それはどういうことかというと、アメリカキューバにああいうことが起こったということ、それだけのことですぐ日本防衛庁なり自衛隊が騒ぎ出さねばならないという根拠、これはどうしても私にはわからない。それから、そういう場合に、ほんとうの意味の警戒態勢というようなことになれば、これは当然政府のしかるべき責任者の決定に待つことであろうと思いますが、それが、どういう立場の人がどういう指令を、正式には出さなかったでしょうけれども、どういう考えで騒ぎ立てられたかわからないが、その辺にも一つ問題があると思う。ですから、表面化しなかったけれども、当時問題にされたことの真相をこの機会に少し承らしていただきたいと思います。
  56. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) ただいまのお話によると、防衞庁が騒いだ、そういうようなお話ですが、一向に騒ぎもしなければ、あわてもしません。これは真相を申し上げよということでございますが、ちょうど朝の八時四十分ごろと私は記憶いたしておるのでありますが、当日、在日米軍のほうから、先刻ケネディ大統領キューバに対する強硬措置の声明を出したという連絡を受けたのであります。ちょうど定例閣議のある日でございまして、閣議が終わって参りましたところが、再度連絡がございまして、その連絡によるというと、警戒を厳にしたというきわめて簡単な連絡がございました。その警戒を厳にした内容は、国防省は、全世界における米軍の爆撃機並びに戦略爆撃機部隊に対して警戒を厳にすべき指令を出したという内容のものでございます。そこでいろいろ私なりに検討いたしたのであります。私の理解では、おそらくキューバ問題というあの事態は、戦後最大とも言うべき国際情勢の変化であると私は理解いたします。したがって、軍事科学の非常に発達した今日、あのような大きな問題が世界のどこにいつ影響をもたらすか想像、予測できないのでありまして、やはりこの際、領空侵犯に対処するために、戦闘機を配置する航空部隊に注意程度はひとつ促したらどうだろうという私なりの判断をいたしたのであります。これは、まあ御承知のことでございますが、戦闘機を配置しておりまする自衛隊の航空部隊では、領空侵犯に対処するために、常に、四六時中警戒態勢を発しているのであります。これはもう四六時中警戒の態勢下にあるのでありまして、そこにあらためて、非常事態の命令ならいざしらず、同じような指令を出す必要もないのでございまして、ただ注意を念のために促す意味で、口頭でやったらよかろう、それも文書その他でやるというといかにもおびえ上がったような印象を受けるから、慎重に、特に空幕長に命令して、本来ならば、総理大臣の命令を受けまして私が一切の措置をとるのでございますが、きわめて軽い意味の、注意を促す程度の念のための措置でございますから、空幕長から、これは五つの部隊しかございませんから、ここにひとつ注意を促したらよかろうということにきめまして、ちょうど当日の午後一時過ぎにそういう措置をとったのでございまして、警戒態勢とか、あるいは今申しましたような四六時中とっております警戒態勢をさらに厳にすべしというようなことではないのでございまして、以上のような次第が真相でございます。
  57. 森元治郎

    ○森元治郎君 ちょっと一つ。大臣、今の常町領空侵犯に対する防衛態勢というものをとっている。特に空幕長からどういう指令を出すのですか。何かきょうはレーダーに写りそうだからレーダーをのぞけというのですか。一体ふだんやっていることを、特に空幕長からいかなる目的で警戒、特に注意をしたまえと言うのですか。
  58. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) それは、私のさいぜん申し上げましたようなキューバ問題という世界的の国際情勢の変化でございますから、こういう点を勘案して、まず緊張を促す意味において、これは四六時中警戒態勢下にあるものでございますから、それをさらにひとつ緊張して注意してやれ、こういう意味でございまして、具体的な命令なり何ものもないのでございます。ただ精神的な緊張感を促す意味において、注意すべし、注意をしながら事に当たれ、こういう意味の示達をいたしたわけでございます。
  59. 森元治郎

    ○森元治郎君 そうすると、受け取ったほうは、前線の部隊は、あなたからその命令を受けた部隊は特に緊張をしてやってくれ、何だかわからないが緊張をしてくれ、こういうことで飛行機に乗っかったり、のぞいたりしているのか。キューバ問題という、君らはラジオで聞いているかもしれぬが、これこれがあるということはつけ加えられているのかどうか。
  60. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) 実際何ものも具体的には示しておりませんけれども、あとで聞いてみますと、たとえばレーダー基地でございますが、これは航空部隊等レーダー基地にはもうほとんど備わっておるのでございますから、レーダー基地における隊員の欠員がある場合、病欠がある場合にはそれを充足してやるとか、まあ、そういったことをやったようでございます。これも具体的にそういうことをやれという命令じゃないのでございます。ただ注意を——大いに注意をしてやれ、こういう意味合いの示達に対してそういうことの措置を講じた部隊もあるようでございます。
  61. 森元治郎

    ○森元治郎君 そういうような空幕長の命令は必要ないですね、それは。そういう命令は必要ない、そんなものは。何だか知らないが、緊張しろというような、そんなことで緊張できませんよ。そういうものは出さないほうがいいと思う。第一線がもっとよく判断して……。大体朝の八時四十分ごろに報告を受けて、午後一時ごろになって緊張しろと言う、そんな醜態はありませんよ。
  62. 志賀健次郎

    国務大臣志賀健次郎君) お説は十分に私はお聞きいたしますけれども、これは私の判断でやったことでございます。
  63. 大和与一

    ○大和与一君 では、日韓会談について御質問いたします。  まず外務大臣から現状についてのお話を少し。日韓会談の現状ですね、見通し、簡単にひとつ伺いたいと思います。
  64. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 八月になりまして、休んでおりました予備交渉を再開いたしまして、懸案について双方の協議を続けておるわけでございます。この予備交渉におきましては、一つの重点は、もろもろの懸案の中で一番問題の懸案となっており、その問題の解決いかんによって、ほかの懸案の解決にも影響力を持っております請求権問題というむずかしい問題がございますので、これにつきましては、従来池田・朴会談におきましては、法律的根拠のあるものについて考えようということで了解ができたと承っているわけでございます。その線に沿って従来やって参ったのでございますけれども、御承知のように、事は十数年前の事実関係を十分調べなければなりませんし、その法律的根拠も究明しなければならぬということで、純法律的に考えますと、この請求権は、その実体はどんなものであるかということにつきまして、的確な結論は得られにくいわけでございます。で、先方があくまでも請求権問題は法律問題としてやるのだという態度を変えない限りにおきましては、池田・朴会談の了解は生きていると私は判断いたしておるわけでございますが、この問題をそういう角度から究明して参りますと、なかなか解決がむずかしいわけでございます。問題は、日韓の間の国交の正常化をできるだけ早くはかるということが目的でございますならば、この問題に対する接近の仕方も、もう少し工夫をこらしてみる必要があると私は判断いたしまして、韓国側に対しまして一つの提案をいたしました。日本がある程度の無償供与をいたすということを実行いたしたならば、あなたのほうは、この請求権の問題は非常にむずかしい困難な問題だけれども、まあ解決したということにする用意があるかどうかという意味の提案をいたしたわけでございます。これに対しまして、ただいままでのところ、イエス——そういたしましょうという答えは得ておりません。しかしながら、それでは絶対困るというノーという返事も得ていない状況でございまして、この問題が、今一番むずかしい問題として終始私ども苦悶いたしておる問題でございます。その他の漁業問題その他大きく五つの懸案がございますが、それはそれぞれ専門委員会の手中にございまして、目下協議を続けているわけでございます。しかるところ、せんだって韓国のほうから情報部長の金鍾泌氏が日本へ参られまして、私も金氏と会談の機会を持ちました。で、ここでお話を申し上げましたことは、日本側のこの問題をめぐる国民の感情、それからこの問題に対する考え方等をざっくばらんに話し合ったわけでございます。で、先方からもざっくばらんについ立を置かずにお話を伺いたいということで、先方の考え方も聴取いたしたわけでございます。その結果、私といたしましてはこういう判断を持っております。日本側の事情も、韓国側の事情も、双方がそれぞれ相当理解を深めることができたのではないかと考えております。ここで合意に達しましたことは、請求権問題というむずかしい問題がございますけれども、しかし予備折衝ももう少しピッチを上げてやらなきゃいかぬじゃないかということで、もろもろの懸案に対して、予備折衝の場でもっと積極的に煮詰めようじゃないかということに意見が一致いたしまして、予備交渉は従来よりももっとピッチを上げてやることになると思っておるわけでございます。その予備折衝の煮詰め方も見まして、次の段階にどういうことをやるかということにつきましては、まだきまった考え方を持っておりませんわけでございまして、せっかくそういった合意に達した現状におきまして鋭意予備折衝を進めて参るというのが、今私ども態度でございます。
  65. 大和与一

    ○大和与一君 朴議長が、韓国も日本も、政府当局者は、ある程度国民の非難を覚悟しても、これを交渉妥結すべきだと、こういうことが新聞に出ておりましたがね。その後朴議長なりあるいは金部長にお会いになったと思うのですが、その話された感じからいって、韓国側は、韓国の国民をある程度押えつけてでもどうしてもまとめ上げるんだ、こういう気持が十分に読み取れるのですか。
  66. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 金氏とお話をいたしました印象から申しますと、先方は真剣に日韓の正常化を行ないたいということに十分の熱意と減意を持っておると私は判断いたします。
  67. 大和与一

    ○大和与一君 それは、一つには朴政権の六月通貨改革の大失敗と、これによって経済が非常に困っておる。これは事実だと思うのですが、たとえば完全失業者二百五十万ですか、これくらいおるらしいのですか、そういうやっぱり向こう側の事情によって国民生活が安定をしてない。経済がとてもこのままではやっていけぬ、こういう向こう側の切実な事情が、そういう気持を、国民の世論を押さえつけてでもこの際どうしてもまとめなくちゃいかぬ、こういう気魄に満ちて、あなたなり総理に話をされておるのか、その点はどうですか。
  68. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私の印象では、韓国の政情、経済事情というものをふまえた上で、その都合上こうやらなきゃならぬというふうなことではなくて、やはりこの問題は日韓間に横たわる歴史的な課題であるので、ステーツマンシップをもって処理すべきものだという思考が優先しているように私は印象を受けました。
  69. 大和与一

    ○大和与一君 そうすると、先ほどのお話の請求権問題に対する考え方、解釈、立場も違い、少なくともこの問題が合意に達しなければ妥結はしないと、こう考えていいのですか。あなたが新しい構想を一応打ち出してお話をされたけれども、それには乗ってこない。向こうは向こうとしてどうしてもこれは今までの損害賠償を取るんだ、こういう国民感情も依然としてあるわけですから、これはどうしても護れないのであって、その問題が話し合いができなければまとまらぬ、こう考えていいんですか。
  70. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでございます。ただちょっと正確でないように思いますのは、私どもの提案に対しまして、イエスともノーとも言ってないということで、これは完全にノーということになりますと、なかなかこの問題打開がむずかしいと私は思いますが、ただいままでのところ、向こうはそれはノーとは言ってきていないということだけは申し上げておきます。
  71. 大和与一

    ○大和与一君 もう一つ大事な問題は、やはり両国民の世論といいますか、国民感情だと思うのです。これは一体韓国のほうはどう考えているのか。たとえば韓国の最近の新聞なんか見ると、韓国で一番きらいな国はソビエト、その次は日本と、こうなっているのですね。それから日本の中央調査社の過去二年の統計を見ると、日本でどの国が一番きらいかといったら、一番がソ連で二番が韓国、こういうことになっている。こういう世論の実態があるのですが、それとあわせて、韓国では最近大学生の高文試験というか、資格試験を政府がやることにしたのですね。そうしたら、受けないと言って全部拒否した。それを最近力で押さえつけて受けさせようとしているらしいんですけれども、特に韓国は、この革命ができた直前の学生の大きな運動としては相当、みな板門店にまで進んで行って話し合いをしようじゃないか、こういう事実もあって、それを格好から見ればそれも一つ押さえつけた格好になったと思う。そういう学生運動というものは軽視できないと思うのです。韓国の今までの歴史からいって、そういう点を考えると、韓国の世論がなかなか朴政権が考えているような、日韓会談について賛成だと、こういう手放しの喜びはできないのではないか、こう考えるのですが、こういう形の中で、それは韓国だけじゃなくて、日本の国内にもやはりたくさんの反対論がある。それは、池田首相が言っているように、朝鮮民族の統一、一つになることは賛成だ、ここまでは認めている。それから、北のほうに一つの権威がある。政府もここまでは慰めているわけです。それから先が話なんだけれども、それに対して、何もあわてなくてもいいんじゃないか。特に朴政権がやはり軍事政権であって、ほんとうの安定の度合いは、やはりまだあるとは考えられない。これが最後の政権だなんと考えるのは、やはり浅い考えであって、国民の力によって選ばれれば、過去の問題があったとしても、張勉内閣というのは国民の選挙によって選ばれたのだから、いい悪いは別として、やはりわれわれは、そちらのほうを民主的に選ばれているものと思っていいと思うのです。そういうことを考えると、今の朴政権と、どうしても今ここで何が何でもやらなければならぬということには別にならぬのですが、その辺、韓国の国内の国民感情、世論というものに対するあなたの考え方、正確な認識と、日本の国内の反対の世論、これはよくおわかりだと思うのですが、そういうことを考えても、なおしゃにむにやりたいというのは一体どういうところから出てくるのか教えてもらいたい。
  72. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 韓国が独立して再建途上にございまするが、いろいろな内政問題があることは想像にかたくないところでございますが、これは韓国政府の問題でございまして、日本政府が国の立場でこれを論評するというようなことは、差し控えたいと思います。日本におきましても、大和委員御指摘のとおり、この問題につきましてはいろいろ論議がかわされておるわけでございまするのみならず、反対の動きもあるわけでございまして、そういうことを判断、処理して参りますということは私どもの責任であると思っておるわけでございます。問題は、私どもの課題は十年交渉で、われわれ外務省といたしましては最大の懸案の一つでございますので、もし可能であれば、これを国民が御納得いくようなところで処理さしていただきたいということを考えておるわけでございまして、何が何でもいついつまでにこうしなければならぬというような、そういうふうなぞんざいな考え方は持っていません。
  73. 羽生三七

    羽生三七君 新聞報道等で、明年三、四月ごろ妥結を目途にとかなんとかありますですね、あれは新聞報道で、政府は関知しないんですか。どういう理由で一応の明年三、四月と言うのかですね。この間の事情。新聞だってそんなに出ほうだいに言うわけじゃない。何らかの根拠があって書かれておると思う。何が根拠で、三、四月ごろとなるのか。
  74. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 懸案を処理して参る場合に、われわれといたしましては一つの目安を持たなければいかぬわけでございます。事務交渉を通じまして懸案を処理する基本方針を、要綱をきめるということをやりまして、それから国会に出します協定を作るというような段階になるわけでございますが、それには一体どれくらいの時間的な余裕が要るかということで一応私どもとしては目安を持っておらなければならぬわけでございます。でき得れば、こういったことは来年の春ころまでにできればということを一応の目安といたしましてやっておるわけでございまして、そういう期限が先に立ちまして、交渉を荒っぽく進めていかなければいかぬというようなことは考えていないわけでございます。
  75. 大和与一

    ○大和与一君 去年池田総理がケネディにお会いに行くとき、私は外務委員会で、日韓問題をどうせ話しに行くんでしょう、こういう質問をしたら、そんなことはないと、えらい簡単に言って、いろいろなものを見ると、みんなそれを話してきているのですね。あなたも今度ラスク会談をやってきたのですが、今度金部長が行っている。これも常識的に考えて、みんな何かやっているということがわかるのですが、それを一言も言わぬで、何もないとか言って、ちっとも外務委員会でも言わないんですが、いつそれを、ほんとうのことを言うわけなんですがね。これは一体、アメリカは韓国に対してたいへんたくさんの、十二億ドルだったか、たいへんな援助をしたときは、かえって中間搾取があって、うまくいかなかった。最近成績がいいのは、少し援助を減らしたからいいのだと、こういうことを書いたものもありますが、アメリカは韓国に対してどう考えているか、そしてあなたがラスク長官に会われて、一体韓国についてどういう話をしてきたのか、差しつかえない程度話していただけませんか。
  76. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) アメリカは、韓国と条約を結びまして広範な関係を持たれていることは御承知のとおりでございまして、アメリカが韓国に対して重大な関心を持たれていることは当然だと思います。したがって、私どもアメリカ要路の方々にお目にかかった場合に、日韓の問題はどういうふうに進んでおりますか、できるだけ早く妥結することを希望しますということを言われたことは事実ででございますが、しかし、誤解がないようにお願いいたしたいのは、日韓交渉はアメリカとやるわけじゃございませんで、日韓の間でわれわれが自主的に処理すべき問題でございますし、その点はアメリカのほうも十分本知しておることと存じます。
  77. 大和与一

    ○大和与一君 伊関アジア局長が、何かうわさでは、ことしでやめるということが新聞に出ていましたが、一体あれはどういうわけなんですか。韓国問題は、たくさん実力者もおるだろうけれども、やっぱり伊関局長がまずこれは命がけでやってきたと思うのですよ。それを一体、まとめるつもりでやめさせるのか、まとめないつもりでやめさせるのか、どちらですか。ちょっとおかしな質問ですが、なぜこの大事なときに、ずっと今まで長い間この衝に当たって全力をつぎ込んできた伊関君が、まあ省内の事情もあるだろうけれども、特に国民注視のたいへんな日韓問題にそういう人事異動をやらなくちゃならなくなったかということを聞きたいのですがね。
  78. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日韓交渉上、伊関局長が責任局長として十分お働きをいただいたことは大和委員も御評価のとおりでございます。私どもは、伊関さんに劣らないような後任を迎えまして、そして後宮新局長は審議官として相当期間にわたりましてこの問題を御検討いただいておりますので、このあたりで後戸さんにかわっていただくというようにいたしたわけでございます。日韓交渉とは何も関係ございません。
  79. 大和与一

    ○大和与一君 この日韓会談があると、不思議なことに、何か北鮮スパイ問題というものがいつもちょこっと出てくるのですが、一体あれは何ですか、内容は、新聞にも二、三べん出ましたね。日韓会談があると、何か北鮮のスパイがつかまったというのが出ているのですよ。そのことをあなたのほうではわかっているはずですが、それはどういうことですか。
  80. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私、承知いたしておりません。
  81. 大和与一

    ○大和与一君 局長、だれか知りませんか。
  82. 中川融

    説明員(中川融君) 公安当局の所管でございまして、外務省と直接連絡はございません。向こう側の独自の判断でいろいろやっておることでございます。どういうわけで日韓交渉が起こるとスパイ問題が起こるかという直接の関係は、これは全然ないと思います。
  83. 大和与一

    ○大和与一君 ちょっとそれは答えておいてもらいたいのですが、内容としては、スパイといっても密入国というようなことらしいのだけれども、現地の人から聞いた話によりますと、そのことについて抗議——この間山形県の酒田の沖であったことですが、仙台の関係当局のところに行って、どうしたのかと聞きましたら、そんなことは知らぬと、こういうことを当局が言ったという話があるのですよ。これはちょっと筋違いだけれども、法務省に聞いてみて、一応そのことで今度御答弁してもらいたいと思うのです。  それから次に、人民共和国、北のほうの権威はお認めになっているわけですが、これと財産請求権なんか、その問題もありますけれども、具体的にこの冬に日本国際スケート選手権大会か何かあるらしいのですね。向こうから選手が来るのですが、今までずいぶん私たち政府にもお話したのだけれども、ちゃんと北の権威を認めているのだから、あるいはメーデーに来るとか、あるいは文化交流とか、こういうことはしていいじゃないかということを政府にずいぶん話したのだけれども、まだ実現していない。この間外務大臣に、北の問題を、一つ一つ解決できること、処理できることはしていいじゃないかと、こう言ったら、なるべくそうしたいと、こうおっしゃったと記憶しておるのですが、この冬にスケートの選手権大会があるときに向こうの選手が来ると、こういうときには向こうから遠慮なく来ていいんでしょうか。
  84. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その問題があることは承知しておるわけでございますが、その後の状況がどうなっているか、私も今はっきりいたしておりませんので、事務当局からひとつ答弁願いたいと思います。
  85. 中川融

    説明員(中川融君) これはスポーツ精神に沿いまして善処するように、目下慎重考慮中でございます。
  86. 大和与一

    ○大和与一君 それから私、外務委員会であした佐多委員から詳しくお尋ねがあるかもしれませんが、福岡、長崎に行って参りましてね、いわゆる李ラインの不法拿捕の実情を詳細伺って参りました、この関係者を呼んで。全くこれはむちゃくちゃですね。ラインなんかないですよ。ほんとうに何でもなくて、ずっと内輪におるのがつかまっていっているのですよ。向こうもあわてて、そんなことをやったやつを首にしたりしているのですが、こういう具体的な事実がずいぶんあるのだけれども、これは最近の情報として、これは出入国管理局のほうになるかもしれないけれども、それと韓国が李ラインをはさんで非常な広範なところで演習をするという予告をしているんですね。そこでうんとぶっぱなされたらやっぱり漁業の関係からいって困るのですが、これに対しては、あるいはもう委員のほうからお話があったかもしれませんが、どういう措置をなされたかお尋ねします。
  87. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 漁船の拿捕があった場合には、そのつど持ち出しまして、抗議し、善処を求めておるわけでございまして、大部分がそれで処理されつつある状況でございます。きのうも五百トンの船は返還すると言ってきました。私は、こういうような事態がしょっちゅう起こりますことは非常に不幸なことでございまするし、日本の漁業が朝鮮海峡の水域におきまして安全操業ができるようなことをぜひこの際やりたいということも、私どもの交渉の主眼点の一つでございます。
  88. 大和与一

    ○大和与一君 演習の問題。
  89. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 演習の問題は、私ども聞き及んでおりませんで、今あなたから初めて伺ったんです。
  90. 後宮虎郎

    説明員(後宮虎郎君) 演習の問題につきましては、向こうの海上保安当局の一般的な通告の中にそのことが出ておりましたので、日本関係業界のほうからも、もっと詳しい情報がほしい、公的にもっと詳しい情報がほしいという要請がございましたので、約三週間になりますか前に、ここの韓国代表部を通じて詳しい情報を公的に教えてくれるように要請してございますが、今のところまだ回答は来ておりません。
  91. 大和与一

    ○大和与一君 要するに、外務大臣お尋ねしたいのは、この日韓会談ですね、はっきりと朝鮮の統一に反対するという、強硬に反対するという政府があるわけです。その政府がしかも軍事政権であって、来年には民政移管をすると言われておる。その民政移管の内容というものは、ほんとうにデモクラティックにできるかどうかは疑問もあると私は思うんです。そういう政府と、来年民政移管をすると、こういうふうにまで国民に公約をしておる政府と、これは国民投票によってきめるだろうから、その民主的な結論を待って話をしてもちっとも差しつかえないんだから、そうしたはっきり統一に反対をする政権と話し合いをするということは、これは無理をする必要はない、やめるべきだというのは国民の正しい一つ考え方だと思う。もう一つは、今の朴政権が韓国の国民からほんとうに積極的に支持されておるかどうか。これはやっぱり大きな問題だと思うんです。そこに安定度もあるし将来性もあると思うんですが、これもさっき言ったように、私たち新聞で知る限りでも、なかなかいろんな問題があって、安定しているとはまだ言えぬ。暫定政権的な性格を持っておる。こうなりますと、私はやっぱりその二つを大筋として考えて、日本国民のだれに対して聞いても、それはそういうことだったら、もうちょっと待ってもいいんじゃないか、こういうことは私は国民のすべてが言うことじゃないかと思うんです。したがって、自民党の中のいろいろな御意見を聞いても、どうもやっぱり最後には総理外務大臣があまり本気でないじゃないか、こういううわさ話を聞きますが、私なんかそれでいいと思うんです。(笑声)そういうことは別として、私の言った大筋の二つの道を、これは国民として平らに考えておかしなことじゃないんだから、当然な考え方でありますから、常識的な、しかも正確な考え方だと思われるから、それに対して外務大臣政府を代表してその声は十分に聞いて、決して無理をしないというか、そういう腹がまえを持ってやっているということになるのかならぬのか、やっぱり朴政権のほうに引きずられて、向こうがどうしてもやりたいと言うのだから、少しはこっちも合わせなければいかぬと、こういうことになるのか、その点を最後にもう一度お聞きしたいと思うのです。
  92. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申しましたように、韓国の国内情勢、政局、政権の問題等につきまして、私の立場でコメントを申し上げるということは差し控えたいと思います。また私どもの気持は韓国に引きずられておるわけでもなく、私どもが自主的に長年の懸案を何とか打開する道はないかと懸命になっておるわけでございまして、私は本気でやっておるわけでございます。
  93. 大和与一

    ○大和与一君 もう一つ質問して終わりますが、時間的な問題で、例の北鮮帰還協定ですね。これが十一月の十三日で切れるわけです。それでこれに対して政府はどういう指導というか、考えを持っておられますか。
  94. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 北鮮帰還の問題は、御案内のように、五万人余りの帰還御希望の方々が順序よく御帰還できることに政府のほうも御援助申し上げたわけでございます。御案内のように、今帰還希望者が激減をいたしまして、従来のような、政府が前面に出まして、責任を持って処置するというほどのかまえじゃなくて、これは両赤十字社で御協議いただいて、日本側では赤十字のほうで処置していただいて、十分帰還御希望の方々の支障にならぬようにできるんじゃないかという判断を私ども持っております。もっとも赤十字社のほうも素手ではできませんので、やはり政府がある程度財政的援助を申し上げないとこのことは実行上支障が起こるんじゃないかと懸念いたしておりますので、政府といたしましても赤十字社に対して所要の財政援助をいたそう、こういう姿勢で今まで来ておったわけです。ところが、ここに十二日が期限満了の時期になりましたので、今大和先生がおっしゃるように、帰還協定を延長して処置するか、私どもが従来考えておりましたように、今回はもう赤十字社にお願いしようということでいいのかという問題につきまして最終的に結論をつけなければならぬ段階に来たと思いますので、きのう以来、厚生大臣と御相談を申し上げておるわけでございます。早急に解決したいと思っております。
  95. 大和与一

    ○大和与一君 やっぱり今でも約三千人ぐらいおりますですね。それと、この出発点が、藤山外務大臣が言われたように、あくまで人道問題でこれを取りまとめた非常な努力政府としてもあるんですから、私は一方的には、これはこちらは知らぬから打ち切ると、こういうことはしないとはっきり言ってもらいたい。やっぱり話し合いを続けていって、まとまったときはどうなるかということでしょう。
  96. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 承っておきますが、私どもとしては、実際の帰還事務が支障のないように行なわれるようにいたしたいと思っておるわけです。それが協定の延長という格好でやるか、事実上赤十字社にやっていただくか、そのあたりは方便の問題ではないかと考えております。問題は、帰還を希望されておる方々の帰還の仕事が円滑に参るようにこれは保証してあげなければいかぬと思っております。
  97. 大和与一

    ○大和与一君 それでは、今のは、大臣のお話で円滑にいくように保証するということは、もしそれがうまくいかぬ場合には、その全部、生活その他の裏づけももちろんしなければならぬ、こういうことまで含まれておると思うのですが、もう期限が来たからこれは自動的にもうないんだと、こういうふうなことは言わないと、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますね。
  98. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それは当然のことだと思います。
  99. 大和与一

    ○大和与一君 私の質問はこれで終わります。
  100. 曾禰益

    ○曾祢益君 どうもコーヒーが入っちゃって、少しなごやかになりましたが、外務大臣とは日韓問題についてだいぶ国会討論会なんかでもいろいろやり合ったり何かした仲ですから、あらかじめ私の考えを申し上げなくても、おわかりだと思いますが、残念ながら社会党の諸君とは意見が違うのであります。私は、日本と韓国との懸案解決努力する、そしてそのことは努力の結果国交調整に至りますのは、それはむしろ当然ではないか。ある意味ではサンフランシスコ平和条約の義務からいっても、日本から分離し、独立した韓国との間の懸案を解決していって、請求権の問題であれ、日本における韓国人、朝鮮人の地位の問題であれ、あるいは竹島の問題であれ、季ラインの問題であれ、こういう問題を解決して、平和にお互いに仲よくやっていくように努力するのはこれは当然である。そういう意味で一がいに、平和統一が望ましいことはわかっておるけれども、韓国の平和統一ができるまでは待て、あるいは軍政時代であるから絶対にいかん、そういう議論にはわれわれは遺憾ながら賛成できない。しかしながら、大平外務大臣は、官房長官時代から非常にこういう問題については慎重にやられるという側であったと思うのです。自民党の中には俗にコリアン・ロビーと言われる諸君もあって、なるべく代理政権でやったほうがうるさくないとかというような、そういう意味の変な積極論者もあった。そうでなくて、これは今言うような、両国間が当無に仲よくする。当然に懸案を解決する。そして仲直りする。その意味で慎重にかまえて、しかしやるのだという方向を従来はまあとってこられた。ところが、残念ながら、まあ私をして言わしむれば、残念ながら、あなたが請求権問題について大いに、さっきの言葉によれば、まあ池田・朴会談における法律的根拠のあるものについてのみ考えるという基本線がさらに一つ飛躍されて、いわゆる工夫をこらした一つの提案、もう少しレベルの高い政治的考慮、私はこれが非常に危険であると思う。そういうどんぶり勘定的なことをかりにやった場合に、だれも承知のように、政府も認めているように、北鮮に請求権の残ることは、これは政府も認めておられるわけです。韓国の中に北鮮に政権がある。これは大和君の質問にもあったが、北鮮に請求権が残る。そうすると請求権の問題を、法律的に十分に根拠のあるもの以外に、何か突っ込みで無償供与も何も一緒にしてどんぶり勘定で韓国にかりに払ったとする。そうすると、今度は北鮮からも同じように無償供与か何か知らぬけれども、請求権以外のお金を北鮮にも与えなければいけない。もっとさらに言うならば、政府は、まあ日本中国との関係は、日本と台湾との条約で解決していく、こういう法律的解釈はしないのだ。そんなことを言ったって、中国の場合に、大陸中国との間に将来仲直りの場合に、請求権の問題あるいは賠償の問題にひびが入らないものとも限らない。したがって、この請求権の問題解決だけは、この政治的考慮もけっこうかもしれませんけれども、そういうどんぶり勘定の突っ込みみたいなもので解決するのは、非常に大きな憂いを将来残すのではないか。むしろ韓国側のほうが請求権は請求権で幾らとはっきり言っておるので、大平方式にはまだイエスもノーも言ってないように伝えられておるのでありますけれども、私は無償供与は無償供与で、政治的な、軍事的な援助でない限り、これは国民の許す場合もあろう、金額があまり多くてはしようがございませんけれども。しかし請求権はこれだけだ、そのほかに無償供与は幾ら、あるいは有償供与は幾ら、こういう筋道の通った話であれば、これは別です。ところが、しかし請求権は幾らかわからないが、請求権プラス無償供与分合わせて三億ドルなりあるいは四億ドル、そういう解決方法をもしお考えだとするならば、今から言ってもまだおそくないように思いますので、ぜひそういうことはおやめ願いたい。請求権は請求権でいろいろありましょうけれども、むろん韓国側がおそらく考えているであろう三十六年間の日本の占領時代の償いという意味、これは私は筋が立たないと思う。そういう賠償的な意味ではいけませんけれども、請求権で筋道の立つものは、九千万ドルか知りませんが、日本の分を相殺してもそれは幾らかある。それは払う。そのほかに両国の好意的な立場に立った援助というものがあってもいい。それはすかっとそういうふうに解決していただかないと、私は国民が承知しないと思う。日韓会談絶対阻止といったような極端な議論でなく、ほんとうに心ある国民としても、そういうどんぶり勘定の解決には賛成しない。そういう意味でひとつそこらの、最後には条約文のテクニックにも関係するかもしれませんから、あまりこまかいことまでお聞きしようとは思いませんけれども、重要な点ですから、あなたの政治的解決がどんぶり勘定的でないのだ、請求権は請求権、援助は援助だという方向になるかどうかということを、この点だけは今の段階できめておかないと、私は重大だと思いますので、もう金さんとの会談等で、そういうもしテクニックの話は当然しなかったと思いますし、その後の模様を見ますと、請求権の問題と平行していろいろな季ラインの問題とか、そういう問題、あるいは竹島の問題の解決方法とか、法律的懸案を解決していくという線で話が進んでいるようでありまして、この限りにおいては私は必ずしも悪いとは考えているわけじゃありません。何といってもこの問題の中心は請求権であることは疑いのないところですから、その意味で今が重大な時期です。ぜひ外務大臣考え方を伺っておきたい。
  101. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 請求権の問題は請求権の問題として、きちんと片づけろ、こういう御趣旨ごもっともでございます。それで問題がすっきり片づけば一番いいことだと思うのです。御承知のように、先ほど私も申し上げましたように、大和先生の御質問で答えましたとおり、法律的に片づけるといたしますれば、まず事実関係を確認しなければならぬという仕事があるわけでございます。事実関係は十数年たっておりますし、また朝鮮事変という事変がございまして、今確認がどこまでできるかということにつきましては、非常に問題があるわけで、その点は御理解いただけると思いますが、いやしくも国会に御承認を求める以上は、これはこの程度推定しておいたというようなことでは、なかなかそれをお認めになるほど国会も寛容じゃないと思う。したがいまして、ぎりぎり法廷に出すような証拠書類を出して、引用いたしまして、法律問題としてきちっと片づけたいわけでございますけれども、そこにおのずから限界があるということは曾祢委員も御承知願いたいと思うのでございます。問題は、しかしながら、国民が納得できなければ御承認いただけないでしょうし、国民が納得いただくような方式とそうして実体を備えたものにしたいということが、もう日夜私苦心いたしておるところでございまして、御審議いただく段階になりますれば、とにかくこれはわかるというようなものにしたい。今一生懸命考えておるところでございますけれども、御注意はよく承りまして、慎重に対処いたしたいと思います。ただ、私が内閣におるときは慎重論で、それで外務省へ行くと促進論になったのじゃないかというような御印象をいただいておるように思うのでございますが、私はあらゆる問題について慎重論者でございます。軽率に公の仕事をやるなんということはいけないことでございまして、あらゆる問題について慎重にやって参る。乏しき身でございますけれども、慎重にやって参るつもりでございます。
  102. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと関連して。  基本的な問題は別にして、日韓がかりに妥結する場合には、共同宣言方式とも言われ、先ほど外務大臣は国会に条約または協定等を出す場合はと、こういう意味のことを言われましたが、条約方式をおとりになるのか。それから、かりに協定とすれば、それは金銭上の問題になるんだから、その金銭上の問題を言われるのか。つまり国交回復を条約化するような意味での条約でなしに、そういう純経済上の協定を言われるのか。その辺はどういうことになるのか。また国会にお出しになる場合には——かりにもし妥結して国会にお出しになるような場合には、今曾祢委員からお話しのとおり、請求権の問題をそれこそもう明白に全部明らかにというわけにいかなくとも、ある程度請求権というものにどういうふうに対処したかということを盛り込んだ協定になるのか。その辺はどういうふうにお考えになるのでありましょうか。
  103. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは実体がまとまったあとの形式論でございますが、今確たる考えはまだ持っておりません。実体を煮詰めることをまずやりまして、それでそれをどういう形式に盛り込むかということになりますので、その段階で最終的にきめたいと思いますが、まあ今私ども考えでは、この平和条約と申しますか、本格的な条約形式というもの——領土の問題が、御案内のように、朝鮮半島というふうにとり得ないわけでございまして、もしそれだけ出せば、羽生先生初め社会党の方からおこられるわけでございまして、そういうことでなくて、今あるがままの状態におきまして懸案をきちんと解決していくということで進まなければならぬと思っております。しかし、漁業その他の懸案もございますので、まあ何本の協定になりますか、今のところはっきり言えませんけれども、少なくとも請求権その他の問題がきちんと処理がつくということでないといけないと申されることは、十分私ども体して参りたいと思っておるわけでございます。いずれにいたしましても、まず今実体を煮詰めることのほうに全力をあげておりますので、形式の点につきましてはこの段階において——煮詰まった段階におきまして慎重に対処して、国会の御承認が得られますようにしたいと思います。
  104. 曾禰益

    ○曾祢益君 もう簡単にいたしますが、外務大臣が慎重にやられるということはけっこうだと思います。ただ慎重と同時にやはり折り目筋目を立てた解決が必要だ。最終的の条約の形等よりも、やはり本質は請求権と、それからあるいは無償であり有償であり、何か賠償的なものという両方で勝手に解釈できるというようなあいまいなものおっしゃり方、これはやはり将来非常に累を残すと思いますので、その折り目筋目は正しくしていただきたいと思います。  それからもう一つ、これは日韓外ではありますけれども、先ほど事務当局に御通告しておきましたから伺いますが、実は中印国境の問題でございます。せっかくキューバの問題が片づいたけれども、まだこういうローカルな紛争どころではない、非常にアジアとしては大きな熱い戦争がヒマラヤ山脈なり、ああいうところで行なわれているわけですね。そこでこの問題についての日本政府態度は一体どうなのか。これは当然国民も知りたい。そこでそういう抽象論でなくて、ネール首相から友好各国にインドの立場説明し、あわせてインドの立場を支持、援助を求めるような書簡が送られたと新聞が伝えておるのであります。どういう書簡であるか発表して差しつかえないならば、内容をお示し願い、あわせてそれに対する日本政府態度、返事等についてもここで承りたいと思います。
  105. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 駐日メロトラ・インド大使が昨日の午前十時に外務省に武内次官をたずねまして、中印国境問題に関する、今御指摘のネール首相の親書を受けました。これは本日の十時半に官房長官から発表いたしました。今ここに手元にありますから、読まさせましょうか。
  106. 曾禰益

    ○曾祢益君 簡単なものですか。
  107. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 相当長文なものです。
  108. 曾禰益

    ○曾祢益君 じゃあ、読まなくていいです。時間の節約の意味で。趣旨と政府態度だけ聞かしていただきたい。
  109. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この趣旨は、中共側のインド領土侵犯の事実があるということ、日本政府のインドの立場に対する同情と支持を求めてきたものでございます。われわれといたしましては、今御指摘の中印国境紛争というものの実態について、公正かつ正確な判断を下す材料を持っておりません。が、しかし、すべての国際紛争がそうでありますように、この紛争が両国間の大規模な戦争に発展しないように平和的に解決されることを衷心より希望しておるということでございます。しかし近接した地域でございますので、日本側が何か介入して調停するというようなことも観念的には考えられますけれども、しかし日本といたしましては、中共と今正規な国交を持っておりませんので、中印国境の紛争の問題について、調停とか仲介とかいうようなことをやる立場にないことは御案内のとおりでございます。平和的に解決されることを希求しておるということでございます。
  110. 曾禰益

    ○曾祢益君 私も、日本政府がはね上がって、調停に乗り出すとか、そういうことを申し上げているつもりではないのです。ただ、その問題はむろんヒマラヤ山脈のことだから実情はよくわからないと、そういう通り一ぺんの返事では済まない。これは非常にマクマホン・ラインを認めるか認めないか、これはおそらくマクマホン・ラインを認めろというのがインドの主張であり、認めないというのが中国の主張である。それに対するイエスかノーかが問題にされるだけであって、むろん紛争の平和的処理解決を祈るということは、結論としてだれも異存がないわけで、そういう問題に対して日本政府がいつまでも逃げておられないのじゃないか、そういうものについて政府の、今直ちには求めませんが、政府のマクマホン・ラインに対する法律的見解はどうなのか、これをやっぱり次の機会ででもはっきりしていただきたい。  それから日本側に対してインドから武器供与等の、むろんこれは有償ですけれども、援助の話はあるのか。あった場合には、そういうことははっきり断ってもらいたい。武器に関しては、法律的見解等については、明確な政府態度をきめないでただ引っぱっておくわけには参りません。この点については近く明確な政府態度を表明していただきたい。この点を要求しておきます。
  111. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 武器援助の要請というのはございません。
  112. 大和与一

    ○大和与一君 もう一つ違うことですがね、きのうでしたか、首相が新聞記者とインタビューした。それで新聞の解説なんか見ると、ヨーロッパに行かれて、特にイギリスと何か特別に仲良くするというか、関係を深くするというか、重点を置くというか、そういう気持で総理が行かれるのじゃないかというふうに新聞の解説なんか書いてあるのですが、これは一体どういうことですか。
  113. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 総理大臣のお気持の中に入りますので、私はよくわかりませんですけれども、問題は、私どもは、ちょうど池田さんも米国とカナダを回りましたし、東南アジア四カ国もおたずねいただいたし、あるいは今EEC等を中心にして台頭期にあるヨーロッパを見ていただくし、同時に、御承知の三十五条援用撤回問題とか、日本に対する輸入制限問題などで一番腰の重いヨーロッパ諸国をおたずねいただいて事態の好転に寄与していただきたいと私ども思っておるわけでございまして、どの国に重点を置くか。全部の国が重点でございまして、どういう調子でプレスのほうでとられたかそれは私は存じませんけれども、私どもすなおにそのように考えておるわけです。
  114. 大和与一

    ○大和与一君 私が言いたいのは、新聞をすなおに受け取れば、何か昔の斜陽華族に、新しいヨーロッパの台頭を正確に知っておるかおらないか知らないけれども、おるならば、特に媚態を示すような古典主義はやめてもらいたい、古くさいから。正しく公平に見てこい、こういうふうにあなた注意してもらいたい、老婆心ですけれども
  115. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) イギリスは英本国だけでなくて、コモン・ウエールズを持っておりますし、現実にイギリスの影響力というものは正確に判断して外交をしなければならないと思っております。ヨーロッパのうちで歴史的にも、また実際経済的にも非常に関係の深い国であるということは忘れてはならないと思っております。
  116. 曾禰益

    ○曾祢益君 私の質問は終わります。
  117. 羽生三七

    羽生三七君 一つだけ。近く開かれる日米経済合同委員会に臨まれる日本側の基本態度はどういうことか、何かまとまった御意見がおありになりますか。
  118. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今日米間で議題をきめまして、目下問題点の整理をずっといたしておる段階でございまして、まだ煮詰まった段階ではございません。これがトーキング・ペーパーとして仕上げ等ができた段階でまたお答えすることにいたします。
  119. 石田次男

    ○石田次男君 簡単に二、三点お伺いしたいのですが、この前視察に参りまして、そこからいろいろ聞いてきたわけですが、先ほども話が出たかと思いますけれども、韓国が李ライン内外で大演習をやっている。これについて、相当長期でもあるようだし、範囲も広いようで、ちょうど漁期とかち合いまして相当漁業の妨げになっているらしいのです。これについて何か外務省のほうで調査なり申し入れ等のことがありましたかどうか。
  120. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほどお答え申し上げたわけでございますが、三週間ほど前に、演習の範囲等につきまして先方の解明を求めているわけでごさいますけれども、まだ返事が来ていないということであります。
  121. 石田次男

    ○石田次男君 それから直接外務省関係ではないわけですが、他の省庁との連携という点で一点お伺いしたいのですが、たとえば海上保安庁の第七管区あたりの話ですが、装備が非常に古くなって、昭和二十七年の装備とか言っているのです。相手はどんどん巡視船の装備なんか新しくしてきておりますので、その点何とかしてもらいたいと言っても、大蔵省で予算を削られると言っているわけです。それから、拿捕された場合ですが、これは通産省関係だと思いますが、拿捕された船に対する補償はあるけれども、網なんか切って逃げた場合に、その網に対する補償も融資の道もついていないわけですね。こういう点やはり李ラインというものをめぐって起こってきている問題なんで、他の省庁、通産省、保安庁あたりとこういう具体的な問題について外務省として何か意見の交換等をしていらっしゃるかどうか、その点いかがですか。
  122. 中川融

    説明員(中川融君) 李ラインにつきましての国内的ないろいろな措置、これは御指摘のように、各官庁が緊密に連携してやっているわけでございます。しかし、やはり外務省といたしましては、対韓交渉のほうに主力を注いでおりますので、それらの国内措置のほうは原則として国内官庁にまかしております。ただいま御指摘のような点につきましては、今後十分それらの国内官庁とも連絡をとって善処いたしたいと考えます。
  123. 石田次男

    ○石田次男君 今までは連絡をとっていらしたわけですね。
  124. 中川融

    説明員(中川融君) いわゆる李ラインの善後措置ということにつきましては、各官庁連絡をとってやっているわけでございます。
  125. 石田次男

    ○石田次男君 連絡をとって、会談の範囲において何らかの結論は出ておらないのですか。
  126. 中川融

    説明員(中川融君) あそこで拿捕されました船及びその船に乗っておられる方々をどういうふうな保護をするかということは非常に重要な問題でございますので、過去十年ぐらいにわたりまして、政府としてでき得る範囲のことをやっているわけでございます。ただいま御指摘の、向こうにつかまりますので急いで逃げたために、たとえば漁網が損壊したというようなものにつきまして、具体的にどのような措置をとっているか、実はそこまで相談が今までなかったように思いますので、この点につきましては、あらためて水産庁とさらに協議したいと思っております。一般的に船及びその船に乗っておられる方の保護ということについては、できる限りの措置を講じているということでございます。
  127. 石田次男

    ○石田次男君 最後にひとつ。これは外務省御存じかどうかわかりませんが、大村収容所から韓国へ帰国させるために帰国船に乗せるわけですね。その際、乗船させるについて、日時等は公開主義でやっているのか、非公開でやっているのか、どっちでしょう。ちょっと最近大村の収容所で変わった事件が起きて私調査しておりますので、その点をお伺いしたいと思います。公開か非公開か。
  128. 富田正典

    説明員(富田正典君) 新聞などで事前に公開するかという意味では、しておりません。
  129. 石田次男

    ○石田次男君 そうすると、こちらで日時を内定して、秘密主義で乗せて帰すという形ですか。
  130. 富田正典

    説明員(富田正典君) 別に秘密主義というわけではございませんが、大体船が出る前には、韓国の代表部の方が行っていろいろ面会して事情を聞いておられます。そこで大体収容されて送還対象になっている者は、もう近く送還船が出るということはわかっているはずであります。
  131. 石田次男

    ○石田次男君 その秘密が外部へ漏れて何か困るようなことがあるわけですか。
  132. 富田正典

    説明員(富田正典君) 別に外部へ漏れても困ることはないと思います。
  133. 石田次男

    ○石田次男君 差しつかえないですね。
  134. 富田正典

    説明員(富田正典君) 別に支障はないかと思います。
  135. 石田次男

    ○石田次男君 それじゃ、これに見送り等が相当来ても、それはかまいませんね。乗船帰国の際の見送りです。見送りの人が相当来てもそれはかまわぬか、何かそれ制限ありますか。
  136. 富田正典

    説明員(富田正典君) 詳しくは存じませんが、送還業務に支障のない限りにおいては差しつかえないかと存じます。
  137. 石田次男

    ○石田次男君 もう少し……。あしたでいいですから、もう少しその辺詳しく教えてくれませんか。
  138. 富田正典

    説明員(富田正典君) 従来の実情、それから特に送還業務上見送り人が多数来て困ったような事態があったかどうか、その点を十分帰って調べまして、現在これに対して入管局がとっている方式など、もう少し正確に調べました上でお答えしたいと思います。
  139. 石田次男

    ○石田次男君 そうしていただきたいと思います。では、終わります。    ——————————
  140. 鹿島守之助

    理事鹿島守之助君) まだ一つ議題が残っておりますが、派遣委員の報告。井上委員から報告願います。
  141. 井上清一

    ○井上清一君 去る八月三十一日の委員会の決定に基づきまして、大和理事、青柳、長谷川、加藤、佐多、石田の各委員と私の七名は、十月七日から七日間の日程をもって、福岡、長崎、熊本の各県に出張し、李ライン海域における日本漁船の拿捕問題並びに韓国人不法入国問題に関して、各県当局、第七管区海上保安本部当局、業界代表等から事情を聴取するとともに、大村入国者収容所を視察して参りました。現在日韓会談進行中のことでもあり、今次委員派遣は関係方面の関心を引いたと思われるのでありますが、詳細は委員長のお手元に提出いたしました報告書によって御承知願いたいと存じます。
  142. 鹿島守之助

    理事鹿島守之助君) ただいま委員派遣概略報告があった次第ですが、その詳細な内容については、派遣報告書が委員長の手元に提出されておりますので、これを便宜会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  143. 鹿島守之助

    理事鹿島守之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  ただいまの委員派遣の報告について御質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたしたいと思います。   〔「なし」と呼ぶ者あり〕 別に御発言もございませんので、委員派遣の報告は、これをもって終了いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十三分散会    ————・————