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1962-08-21 第41回国会 衆議院 内閣委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年八月二十一日(火曜日)    午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 伊能繁次郎君 理事 岡崎 英城君    理事 内藤  隆君 理事 宮澤 胤勇君    理事 石橋 政嗣君 理事 石山 權作君       内海 安吉君    小笠 公韶君       島村 一郎君    園田  直君       高橋  等君    辻  寛一君       中島 茂喜君    藤原 節夫君       前田 正男君    田口 誠治君       西村 関一君    受田 新吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣 川島正次郎君  出席政府委員         内閣法制局参与         官         (第二部長)  野木 新一君         人事院総裁職務         代行      神田 五雄君         人事院事務官         (給与局長)  瀧本 忠男君         行政管理政務次         官       宇田 國榮君         総理府事務官         (行政管理庁行         政管理局長)  山口 一夫君  委員外出席者         内閣法制局事務         官         (長官総務室主         幹)      眞田 秀夫君         内閣法制局参事         官       加藤 泰守君         総理府事務官         (行政管理庁行         政管理局審議         官)      松本 操一君         総理府事務官         (行政管理庁行         政管理局管理         官)      北川 力夫君         総理府事務官         (行政管理庁行         政監察局長)  山口  酉君         専  門  員 加藤 重喜君     ――――――――――――― 八月二十日  委員金子一平辞任につき、その補欠として内  藤隆君が議長の指名で委員に選任された。 同月二十一日  理事草野一郎平君同月七日委員辞任につき、そ  の補欠として内藤隆君が理事に当選した。     ――――――――――――― 八月十八日  観光事業振興に関する請願井出一太郎君紹  介)(第五号)  同(唐澤俊樹紹介)(第六四号)  同(中島巖紹介)(第六五号)  同(下平正一紹介)(第一二五号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第一二六号)  同(松平忠久紹介)(第一九一号)  公務員の賃金一律五千円引上げ等に関する請願  外七十四件(川上貫一紹介)(第一三三号)  同外七十三件(谷口善太郎紹介)(第一三四  号)  同外七十三件(志賀義雄紹介)(第一三五  号)  同(川上貫一紹介)(第一六七号)  同(志賀義雄紹介)(第一六八号)  同(谷口善太郎紹介)(第一六九号)  旧金鵄(し)勲章年金受給者に関する特別措置  法案修正に関する請願池田清志紹介)(  第一三六号)  国有林野事業職員雇用安定等に関する請願(  東海林稔紹介)(第一三七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 八月十八日  暫定手当の本俸繰入れに関する陳情書  (第一号)  地方農林局設置反対に関する陳情書  (第二号)  定員外職員定員化促進に関する陳情書  (第三号)  観光事業振興対策確立に関する陳情書  (第  九三号)  暫定手当制度の廃止に関する陳情書  (第一五四号)  沖繩農民営農資金貸付に関する陳情書  (第一五五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  行政不服審査法案内閣提出、第四十回国会閣  法第五八号)  行政不服審査法施行に伴う関係法律整理等  に関する法律案内閣提出、第四十回国会閣法  第一五一号)  公務員給与に関する件      ――――◇―――――
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任を行ないます。  去る十四日の委員会におきまして、委員長において指名するように決しました理事補欠選任に関し、残る欠員一名につきまして、委員長理事内藤隆君を指名いたします。      ――――◇―――――
  3. 永山忠則

    永山委員長 公務員給与に関する件について調査を進めます。  去る十日の人事院の、一般職職員給与改定に関する勧告につきまして、人事院当局より説明を聴取いたしたいと存じます。人事院総裁職務代行神田五雄君。
  4. 神田五雄

    神田政府委員 私、神田でございます。どうぞ、よろしく。  人事院は、八月十日国会及び内閣に対しまして、一般職国家公務員給与に関する報告及び勧告をいたしたのでございます。  国家公務員給与は、昨年の勧告実施により改善を見たのでありますが、他方民間給与生計費等公務員給与の決定に関係のある諸条件にもわが国経済実情が反映して、この一年間に相当な変化が生じて参ったのでございます。  すなわち、民間給与につきましては、本院が、例年のごとく、本年四月現在で、全国民間事業所約六千、その従業員約二十七万人について給与調査を行ない、これを公務員実態調査の結果と比較いたしましたところ民間給与公務員のそれを九・三%上回っていることが明らかになったのでございます。  ことに民間初任給は、昨年に比べ、おおむね一五%以上も上昇しており、また賞与等特別給もかなりの増加を示している実情にあります。  他方総理府統計局調査によりますと、本年四月までの一年間に、東京及び全都市消費者物価は、いずれも七%台の騰貴を示しており、また同局の家計調査における一世帯当たり平均消費支出額は、同じく本年四月までの一年間に、東京では七・五%、全都市では一三・一%の増加となっているのでございます。  また、これらの事情を反映いたしまして、本院が毎年算定いたしております東京における十八才程度独身男子標準生計費についても、本年四月においては、月額一万九百六十円と、昨年に比べ千百四十円の増加となっているのであります。  以上の諸事情を総合勘案いたしまして、かつまた、最近における民間給与改善中位以下の層において相対的に大きく、これに対しまして、公務にあってはこれらの層の昇給率が低下の傾向にある事情を特に考慮いたしまして、今回、次のような勧告を行なった次第であります。  すなわち、第一は、初任給中位等級以下の職員に重点を置きまして、特に行政職俸給表(二)の適用職員に配意して俸給額改善を行なうことといたしますとともに、主として中位以下の職員を対象として俸給制度合理化をはかることとし、これらを内容として俸給表改定を行ない、これに逐次切りかえることといたしたのでございます。  なお、本年四月に新設された高等専門学校の教職員に対しましては、これに準用するため、新たに特別の俸給表を設けることといたしました。  第二は、民間賞与相当する特別給は、現在公務員については年間三・四月分でございますが、これを民間に合わせて〇・三月分増額することといたしました。  また、その支給日支給方法等についても適正化をはかり、勤勉手当の一部については、三月に支給するようにいたしますとともに、支給日前一月内に退職する職員にも支給し得る道を講ずることといたしました。  なお、宿日直手当については、民間実情を考慮いたしまして、土曜日退庁町から引き続いて行なわれる宿直勤務に対し四百二十円以内の額を支給し得るようにいたしております。  以上、今回の報告及び勧告につきましてその概要を申し上げましたが、この勧告実施時期については、この勧告の基礎となっております官民給与の格差が昭和三十七年四月を基準としておりますことから見まして、本年五月一日といたしている次第でございます。  従いまして、この勧告実施される場合におきましては、給与法の適用を受ける公務員約四十七万人につきまして、昭和三十七年度内におおむね、俸給表改正に対し約百六十七億円、期末手当勤勉手当等の増額に対し約四十億円、両者を合わせまして約二百七億円の経費を要する見込みとなっているのであります。  何とぞ、国会におかれましては、この報告及び勧告を御審議下さいまして、すみやかに適切な措置をとられるよう切望する次第でございます。      ――――◇―――――
  5. 永山忠則

    永山委員長 行政不服審査法案及び行政不服審査法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案の両案を一括議題として、質疑を継続いたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。田口誠治君。
  6. 田口誠治

    田口(誠)委員 先般の質問に引き続いて、若干質問を申し上げたいと思うわけです。  私どもしろうとがこの法案を拝見いたしましたときには、明治二十三年十月十日に制定された訴願法が今日まで改正されておらず、大きく進歩したところ行政不服審査法案であるという、おおまかなこの法案に対する考え方で、この内容しろうとなりに検討してみたわけなんです。いろいろ検討してみますと、問題点がずいぶんあるわけなんです。  そこで、これは一番最後に申し上げる質問かもわかりませんけれども、この法案関係する訴願手続、また異議の申し立て、こういう脈につきましては、特に多く問題が出てくるというのは、社会保障関係する法案が多いように私ども思うのです。それで、詳細に調べてはおりませんけれども、おそらく社会保障関係だけでも、いろいろこれに関連してくる面が三十余件くらいあると思うのです。そうなりますと、こういう法案ができた場合に、国民にこの法案を利用してもらわなくてはならないわけなんですが、現在の地方行政実態、また、国が法律を作って国民徹底する今日までの徹底方法からいきますと、法律はできましても、ほんの一部の人がこの法律を運用するという程度にとどまるのではないか。従って、行政管理庁としては、こうした法律成立いたしました場合には、各地方行政官庁あるいは国民に対するところのいわゆるPR徹底というものをどのようにされるかという点を、私どもは従来の徹底方法からいって大きく危惧をいたしておるわけです。そういう点について一つの構想をお持ちになっておられると思いますので、これは最後にお聞きすることだろうと思いますけれども、途中でございますが、この点を伺っておきたいと思います。
  7. 川島正次郎

    川島国務大臣 その点につきましては特に注意をいたしまして、この法案の中にも教示制度というものを設けまして、処分国民に通達する場合に、再審査要求ができる、その要求をする上級官庁はどこであるかということを特に明示して通達するという、これはこの法案としてはやはり一つの特色のある条文を入れておるわけでございます。そういうふうに、この法案をなるべく国民に広く利用してもらおうという考えを持っておりますから、今お話しの点、いよいよこの法案が公布になった場合に国民にどうして徹底させるかということについては、具体的な方法を私まだ考えておりませんけれども、まことにごもっともな御意見でありますから、一つ具体的にPR方法考えることにいたします。
  8. 田口誠治

    田口(誠)委員 従来の経過からいきますと、官報に出す。官報に出れば、国民は知っておらなければならないということになっておるので、そういう一面から、こうした明治以来改正されておらない法律改正法案をせっかく成立せしめても、国民がそれを知らないということになりますといけないので、まだ今のところではPR方法はお考えになっておらないということでございますけれども、これは単なる、行政官庁へ通達を出すとか、あるいは官報で発表をするというような程度では、この法律はいけないんじゃないか。これは報道機関が特別にどういうようにしてもらえるものかわかりませんけれども、やはり行政管理庁として、そうした報道関係も協力をしてもらって、そして国民に十分に徹底をさせる方法考えていただかなくてはならないんじゃないか、こういうように考えておるわけなんですが、長官自身としてはあまりそうしたこまかい面まで心を使っておられぬかもわかりませんけれども局長さん以下官房の力で何かお考えになっておれば、一つ御発表いただきたいと思います。
  9. 山口一夫

    山口政府委員 お話通り、この法案趣旨徹底につきましては、国民全般に対し、また特に中央地方を通じまして行政庁の当事者に対しまして、十分に一つ趣旨徹底させまして、法案成立に資したいと思っております。法律成立の暁におきましては、とりあえず全国――中央官庁出先官庁都道府県並びに都道府県以下の機関を大体ブロック別に集めまして、趣旨徹底をまずはかりたいと思います。法律説明、並びに法律精神について特に徹底をはかりたいと思います。それと並行いたしまして、全国にいろいろ行政上の苦情の相談を受けつける機関を設け、それらにつきましてもこの趣旨徹底いたしまして、話があったときには、そういう人たちからもPRする、そういうことをとりあえず考えております。なお、政府刊行物その他の各種のマスコミの利用等によりまして、できるだけの趣旨徹底をはかりたい、かように考えております。  なお、これに必要な予算につきましては、前年度計上していただいた予算を繰り越して使えることになっております。それをとりあえず今年度分として使いまして、明年度につきましては別途新年度予算で計上いたしたい、かように考えております。
  10. 田口誠治

    田口(誠)委員 今初めてお聞きしたのですが、国民年金普及徹底の場合には、相当予算をとって徹底をされたわけです。それで、各他方自治体としても相当予算が交付されたので、やはり相当の成果も上げておるわけなんですが、今の予算というのは、国民年金普及徹底をするときのような考え方の上に立っての予算であって、額も相当あるのですか、どうなんですか。そういう点ちょっと詳細に……。
  11. 山口一夫

    山口政府委員 法律成立を予定いたしまして、法律成立の場合のPR経費といたしまして七十二万円ちょっと一応ございます。なお、今後の新年度以降の分につきましては、大蔵省と折衝いたしまして、別途そのほかに必要経費を計上する予定でございます。
  12. 田口誠治

    田口(誠)委員 予算というお話でございましたので、だいぶん額もあると思いましたけれども、それは予算といえば予算という程度の額でございますが、ただいま私の方から質問申し上げました精神に基いて、また、長官の方からも重要であるというお考え答弁のありました考え方の上に立って、やはり予算も組んで、十分にこの法案徹底してやる必要がある、こういうように考えております。これ以上は意見になりますので申し上げませんが、そういう点も強くこの際要望しておきたいと思います。  それから、この法案は、行政処分等を受けた場合の自余救済を受けるときの、またはかるところ法案でございますけれども、その前も、並行してこれは検討されたかどうかということをお伺いいたしたいことは、処分を受けた自余救済ということも必要でございますけれども事前救済という意味を持つ方法、手段というようなものも相当考えられるわけなんです。それで、やはりこういう点については一つ行政手続法律案検討されて、事後事前両方から救済をはかれるような方法考えていく必要があると思うのですが、この前に対するところのいわゆる行政手続法というようなものの制定ということについてまでは、この法案を出す審議の過程においてはお考えにならなかったのかどうかということを、まずお伺いいたしたいと思います。
  13. 山口一夫

    山口政府委員 お説の通り、この法案は、違法または不当な処分に対する救済でございますので、違法または不当な処分をしないことがむしろより以上に重要なことは、全く同感でございます。行政の組織、行政の作用並びに事後救済、これら全体を通じまして行政運営適正化をはかるということが、行政運営上最も重要な問題であるということは、私も痛感をいたしております。この法案審議されます途中におきまして、訴願制度調査会の席上におきましても、お話行政手続法と申しますか、行政運営を規制する法律制定をあわせて研究したらどうかというお話が少々出たように伺っておりますが、何分時間の制約がございまして、調査会といたしましては、とりあえず不服審査法審議だけをして答申いただいたのであります。お話運営法の問題は、実は終戦後再三問題になっております。行政審議会におきましても、その旨の法規を制定する必要があるというような答申が、すでに終戦後間もないころ出ております。また、国会におかれましても、昭和二十七年であったかと記憶いたしますが、国家行政運営法案の御審議がありまして、成立には至らなかったのでありますが、問題を検討されたように伺っております。このように行政手続法に対する法的の規制ということは、わが国におきましても、また同時に、世界各国における一つの趨勢でもございますので、十分に検討いたして参らなければならぬ問題だと思っております。ただ、何分行政内容が非常に複雑でございまして、これらを通則的に規制する運営法制定ということになりますと、その内容がかなりきめにくい点があるのではないかと思うのであります。単に行政執行にあたる役人の心がまえあるいは訓示というようなもの以上に出る必要があります。また、複雑な各般の行政を全部おしなべて規制するということになりますと、その仕方もかなりむずかしい問題があります。いろいろ法律制定上の困難もあるかと思いますが、それにもかかわらず、おっしゃいましたように、この種の法案につきまして検討を進めて参ることは、ぜひとも必要であろう、かように考えております。現在臨時行政調査会におきましても、この問題につきまして、行政運営一つの重要問題として検討を続けておられますが、それらの結論等を見まして、政府におきましても、将来は何らかの措置を講ずる必要があるのではないか、かように考えております。  なお、法制局におかれましてもし補足されますようなことがございましたら、そちらから補足していただきたいと思います。
  14. 田口誠治

    田口(誠)委員 ただいまの質問に対しての回答としては受け取れたわけでございますが、ただ、実際に私はやはり事前救済の必要を痛感いたしておりまするので、もし法制局でも作業が進んでおれば、この際承っておきたい。そして最後に、こちらから意思表示する必要があれば意思表示をいたしたい、こういうように考えておりますので、法制局の方からも一つ答弁をいただきたいと思います。
  15. 野木新一

    野木政府委員 御質問のいわゆる行政手続法とでも総括して申しましょうか、そういう法案につきましては、この訴願制度調査会をやっておる間におきましても、学者の先生からそういう事前手続が必要じゃないかというような、非常に強い発言もありましたが、訴願制度調査会制質上、諮問事項との関係もあって、そこまではいきませんでしたが、その間だいぶ各国資料ども収集いたしました。そして、私ども法制局といたしましては、非常に興味のある問題でありますし、また大切な問題でもありますから、引き続き、その資料などについては若干の研究は進めておりますが、何しろ行政全般にわたる大問題でありまして、審査を主とする法制局だけの手にはちょっと負えない形でありますので、それに着手するには、今言った資料などを研究して、またしかるべき機関等を設けてやらなければならないのじゃないかと存ずる次第であります。
  16. 田口誠治

    田口(誠)委員 そこで、なお、関連してお聞きしておきたいと思いまするのは、この法案除外事項がございますね。ところが、院外事項の中には、除外してもらっては困るのだという内容のものがあるということについて、先般の質問のときに質問申し上げたわけなんですが、ああいう個々の問題を法制局としても内容を見られれば、当面全般的なものはできぬとしても、これとこれとは早急にこうしなければならないというような点がお気づきになっておると思うのです。そういうところ作業に全然かかっておられないのか、お聞きしておきたいと思います。
  17. 野木新一

    野木政府委員 御質問趣旨は、行政手続関係でございましょうか、それとも不服申し立ての制限の関係でございましょうか。
  18. 田口誠治

    田口(誠)委員 先ほどの答弁には、行政全般にわたっておって、なかなか膨大なものであるから、その方面に気を使って検討はしておるけれども、なかなかこれを法案にして出すまでには容易なことではないという意味の御答弁があったわけなんです。そこで、私は、行政面全般のものをここで一まとめにして出すということになれば相当日時を要するだろうと思いますが、先日の質問にも申しましたように、今度の法案が、明治二十三年十月の訴願事項は六項目に限定されておるけれども、ずっと幅が広まっておるわけなんです。そうしてその中で、これとこれとこれは適用しないという除外条項があるわけなんですね。その除外されておるものに対して、やはり私は、その除外から除外をしてもらう必要があるのじゃないかという質問をこの間もしたわけですが、そういう必要のあるものに対してはピック・アップして、これはやはり検討をされる必要があると思いまするし、また、これは今度の国会修正までできなくとも、次の国会にはなお検討をして、そうして除外条項内容の中で必要なものに対しては、なお除外条項からはずすという法の改正を今後出してもらうことが必要でないかというように考えての質問なんです。ちょっと質問ぶりが回りくどいので、わかるかどうかわかりませんけれども……。
  19. 野木新一

    野木政府委員 この行政不服審査法案におきまして、第四条において十一ほどの除外条項を設け、それからそれ以外にこの行政不服審査法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案で、個々法律において若干の除外条項を設けております。その除外条項を設けてある趣旨はいろいろありますが、この不服審査法本法の方で設けておる除外条項につきましては、この前の補足説明の際に山口局長から説明があったと存じますが、手続自体が非常に慎重な手続で、処分自体事前に非常に慎重な手続で行なわれておりますので、重ねてそれに不服申し立てしてみても、あまり実益がないじゃないかというような処分一つ。それからその処分の性質上、その性格から考えてみまして、この行政不服審査法というような手続によらしめるのが必ずしも相当ではなくて、むしろ、その処分自体性格に即したそれぞれの手続を認めた方がよいのではないかといったようなものがあります。それはたとえば刑務所などの処分とか、人の学識、技能に関する試験検定の結果についての処分とか、外国人出入国に関する処分とか、こういうものであります。たとえば外国人出入国に関する処分適用除外しておりますが、出入国管理令等におきまして、非常に詳細な手続ができておりまして、それで十分まかなえることになっております。  それから他の法律除外事項としておりまするのは、たとえば土地調整委員会、ああいうような行政委員会でした処分でありまして、これはその処分自体が、いわゆる先ほど申し上げました行政手続法ですか、アメリカ式行政手続法というようなものにのっとった、非常に丁重な事前手続を踏んでなした処分が多いのでございますが、そういう処分は重ねてまた異議申し立てとか、そのまま上級庁に行くというよりも、裁判所に直接行く方がよいのではないかといったような趣旨からいたしまして、この手続には乗せず、むしろそちらの方の手続に乗せた、そういうようなものがあります。  それから第三に、本法に載っておりますのは、緊急事態に対処するための処分というものがあります。それは緊急事態処分でありますから、これはその処分をやる上につきまして、一々不服の申し立て、この手続のような非常に丁重な煩瑣な手続を設けておりましては、なかなか緊急事態処分は十分いきかねるのではないか。そういった点から除外しておるのでありまして、これでももちろん違法であるような場合におきましては、裁判所に行きまして、また不当であるような場合には、それぞれ別に、この手続でありませんが、普通の請願とか陳情とか、そういうような道も開かれておるわけであります。ただ、この手続は、相当丁重な一種の手続になっておりますので、緊急処分のような場合においては、必ずしもこの手続によらしめるのは適切でない。もし将来必要ならば、何かもっと簡易な手続を設けるということは別に差しつかえない。そのことは、この本法におきましてもうたっておりまして、四条二項で「前項ただし書の規定は、同項ただし書の規定により審査請求又は異議申立てをすることができない処分につき、別に法令で当該処分の性質に応じた不服申立ての制度を設けることを妨げない。」そういうようなことでありますから、そういうものにつきましては、また別途個々に研究いたしまして、それにふさわしい不服申し立てが必要ならばこれを設ける、そういうような立場になっておるわけであります。そうしてその点については、将来個々のものについてなお検討を進めていくということはもちろんでございます。
  20. 田口誠治

    田口(誠)委員 それでは次へいきます。訴願制度調査会答申案の二十六ページ、項目で言うと7というところをごらんいただきたいと思うのです。それからこの行政不服審査法案の二十五ページ、項目で言うと6というところをごらんいただきたいと思うのです。それで私は、こういう異議の申し立てとか執行停止の申し立てをするというような、国民救済に大きな影響のある法案は、いずれにいたしましても、日時を限定するということは非常に大事じゃないか、こういうふうにふだん考えておるわけです。ところが、この訴願制度調査会の答申案では、執行停止の申し立て等に対して、これを認めるかどうかというようなことを決定する場合には十日以内ということがやはり必要でないかというように答申されておるわけです。ところが、この法案の三十四条の六項でいきますると、「審査庁は、すみやかに、」という表現をいたしております。それで十日より、すみやかにということは、早いと言えば早いわけですけれども、期限というものがなかったら、すみやかにということは、十日を超過しても、二十日たっても、場合によっては言いのがれができるわけです。従って、こういう救済をする法案というものは、もうがっちりとその内容を規定しておいていただかないと、実際に執行する面に入りますと、これはずるになるわけです。こういうような点から考えまして、私は、十日以内がいいんじゃないかという答申に対して、あえてすみやかにというように内容を変えておられる点は、どういうような意味から変えられたのかということがお聞きしたいのと、それから法文で言うところのすみやかにというこの概念は、これはおよそ幾日くらいをすみやかにというように言われておるのか、これもやはり専門的な面から明確にしておいていただきたいと思うのです。
  21. 野木新一

    野木政府委員 御指摘の答申に刷られました要綱案の第25の7におきましては、「十日以内に当該処分の執行停止をするかどうかを決定し、」とございます。この案におきましては、すみやかにと面したわけでありますが、これにつきましては、いろいろ議論してみましたが、十日といたしますと、この執行停止ということは、この法案の三十四条にもございますように、ことに四項を見ますと、「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは、審査庁は、執行停止をしなければならない。ただし、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、処分の執行若しくは手続の続行ができなくなるおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、この限りでない。」こういう、相当実態と申しましょうか、複雑な事態をも一応判断に入れて、執行を停止するかどうかということを決定しなければならない場合もありますので、十日といたしますると、どうもそこがはたしてうまくいくか、十日も執行停止ができないとか、もう執行停止はやめようというようなことになってもいけませんし、また、一律に十日としますと、この前もちょっと議論がありましたように、簡単なものでも十日までいいじゃないかといったようなことになってもいけませんので、いろいろ議論がありましたが、やはり十日と一律に切るよりも、すみやかにというふうにいたしまして、その具体的事情に即した方がよくはないか、そういうような考えで、答申の要綱案には十日とありますが、すみやかにといたしたわけであります。ただ、すみやかにというと、十日とか五日とかいったのに比べまして、ばく然とすることは御指摘のようであります。すなわち、すみやかにということは、一種の価値的な概念でありまして、何と言いますか、公の秩序、善良な風俗といった用語に多少似たようなばく然とした点が出てきますが、やはり具体的場合々々に即して考えるのでありまして、たとえばすみやかには、むずかしい事件におきましては、やはりそのむずかしい事件を処理するという見地から見て、すみやかにという点が、十日より長いということになる場合もあろうし、簡単な事件の場合には、もっと短期間にということにもなるわけでありまして、一律にすみやかにとしたために、これは幾日以内ということは、やはり画一的には申せないと存ずる次第であります。ただ、具体的事情に即して考える、やはりそういうことになるだろうと思います。
  22. 田口誠治

    田口(誠)委員 そうしますると、この法案の三十四条をおつくりになった思想の流れは、六項に「すみやかに、」という表現はしてありますけれども、答申案要綱にある「十日」というような日にちの限定ではなかなかむずかしい面があり、それで、なお日にちがかかってもやれるようにするというのが、この考え方に流れる思想であって、早く救済の結論を出してやるのだという思想の上に立っての法案のつくり方でないように受け取れるのですが、その辺のところはどうなんですか。それは四項の関係考えてみまして、むずかしいものもございまするし、まあ、十日間という余裕があれば、これは結論が出るのではないか。十日も検討しておって結論の出ないというものは、これはその間政治的な面とかいろいろな面が介入してきて、結論が出しにくいというようなものでなければ、結論は出ると思うのです。私は、当然原則的には、十日という原則は打ち出しておいて、そうしてもしこういうような場合はこういうこともあり得るのだというような打ち出し方が、やはり国民行政罰の不服を救済するには法の建前として当然でないか、こういうふうに考えておるのですが、今の御答弁でいきますると、どうもその思想が、私ども考えておる考え方と大きな開きがあるのですが、そういう点、一つ明確にして下さい。
  23. 野木新一

    野木政府委員 救済はできるだけ早くするという建前でこの法律案はできておるということは、やはり言わなければならないと存ずる次第であります。ただ、この執行停止の点におきましては、十日といたしますと、たとえば執行停止をするのは処分庁の上級行政庁である場合もあるし、それ以外の審査庁である場合もあって、そういうようなことを考えますと、一律に十日で切ってしまうのはどうもあまり確信が持てない。決して十日をはずしたのがゆっくりしていていいという趣旨ではございませんが、やはり具体的妥当を期するためには、すみやかにといった抽象的概念にした方が具体的妥当を期せるのではないか。十日と規定いたしますと、処分庁の上級行政庁以外の審査庁の場合とか、あるいは先ほど言った、こういう判断がむずかしいという場合もあるので、どうもやり切れない場合があるといったような議論が強かったので、結局こうなったのでありまして、決して、のんべんだらりでいいという趣旨でやっておるわけでは毛頭ございません。
  24. 田口誠治

    田口(誠)委員 この法案明治以来の改正ですから、画期的な法案であるという考え方から、私はそういう点も突っ込んでお聞きしておるのですが、この訴願制度調査会のメンバーは、これは直接事件に関係をしておられる弁護士の方とか、その他大学の専門の教授とか、そういう方々が十分に検討をされて、十日以内というこの期限をつけられておるのですから、これは法案をつくられる立法府としては、そこまでの考え方というのは――大体官庁の仕事というものが、いずれにいたしましてもいろいろと複雑多岐にわたっておって、何ごともスロー・モーションであるということ、こういうことが頭の中に入っておって、専門家が十日で十分にできるんだと言っておっても、なおこれは十日にはできない面があるから、すみやかに――どう見ましても、私は、十日よりすみやかにという方が早いようにとるのですけれども、十日以上になるものが多いというような考え方に立って、十日という期限が切れなかったということは、どうも従来の官庁の事務処理の複雑化、スロー・モーションの実態からあなた方がお考えになって、この法案に盛られておるんじゃないかと思うのですが、そういう点はどうなんですか。弁護士さんにしても、大学の教授にしても、直接事件を取り扱っておられる専門家が答申をされたのであるから、これを変えるということになると、それはやはりそれ相当の理由がなければならぬと思うのです。ただいまの御答弁の範囲内の理由では私はちょっと納得できないと思うのですが、もう少し詳細に明確に御答弁をいただきたいと思います。
  25. 野木新一

    野木政府委員 まことに有力な方々が集まった調査会の答申でありまして、ことに参考案のみならず、答申自体にも「十日以内」と書いてありますので、これは私どもといたしましても十分尊重しなければならない立場であるわけでありますが、実はこの答申を得ましてから答申を各行にずっと回しまして、各省の意見もいろいろ聞きまして、これは行政管理庁当局にも――私ども側面からタッチしたわけでありますが、聞きましたところ、十日では現状におきましてはむしろ執行停止ということはむずかしくなってきはせぬか、実態的にも具体的妥当を期するためには、十日と縛るよりも、やはりすみやかにとしておいた方が、むしろこの制度を活用するゆえんではないかという議論が非常に強くありまして、私どもといたしましては、そういう行政庁側の実情論を参酌いたしまして、この際は、答申には「十日」とあって、これを変えるのは私どもとしてはなかなか忍びがたい点がありますが、この法案成立させるという上におきまして、また実態的妥当を期するという意味におきまして、この案におきましては、「十日」ということを「すみやかに」というように、少し具体的妥当性を期せられるような文字に変えたわけでありまして、将来これでうまくなければまた十分検討するという立場に立って、一応この案はこういたしたわけでございます。
  26. 田口誠治

    田口(誠)委員 実務をしている関係省の意見を聞かれて結論を出される、そのやり方については、私はいいと思いますけれども、回覧的に、また文書で問答を求めて、こうがいいのだということでそれで必ずしもいいか悪いかということは、今行管の方で、おそらく官庁の業務の民主化を含めたいろいろな簡素化というようなことも検討されているのですから、意見意見として聴取されてもいいけれども、実際においてそうであるのかどうかというようなことも、十分検討されたのかどうかということと、それから長官の方にも、これは重要な点ですから、今後いろいろ配慮していただかなければならない点も、この中には要素が多く入っておりますから、お聞きしたいのですが、実務をされておられる各省の意見を聞いて、それを集約した最大公約数が「すみやかに」ということになったということでございますけれども、私は、従来の官庁の機構の実態からいっても、それから手続実態からいっても、国民から見れば、非常に不満だらけであるわけでございます。従って、こういう点もあわせて改正をしていかなくてはならないのではないか、こういう点も十分に考慮されてあるのかどうかということをここでやはりはっきりしていただいておかなければ、ただ答弁として、今後必要があれば内容改正もしたいし、また考慮もする考えであるというような答弁があっても、これは答弁のための答弁ということにもなりかねないわけですから、私はこの点は非常に重要な点であると思いますので、やはり長一宿の御答弁もいただき、なお法制局の方の御答弁も、具体的に将来の問題も含めて承っておきたいと思うのです。
  27. 川島正次郎

    川島国務大臣 現在の行政運営の一番の欠陥は、ものが迅速に運はない、非能率ということでありまして、私は行政管理庁長官になりまして以来、特にこの点に注意をいたしまして、行政の能率化、民主化についていろいろ考えており、また手も打っているわけであります。田口さんの御趣旨のことは私もよくわかります。わかりますが、この法案をつくったいきさつは全く知らない。ただいま政府委員田口さんの質疑応答を聞いて初めて知ったのでありますが、おそらく最後にこの法案政府でつくります際に、各関係官庁が集まっていろいろ具体的の事実を持ち寄って検討した結果、十日では処理できないということが相当あったのではないか、なるべくすみやかにやりたいけれども、ある特殊のものについては十日ではできないといういろいろな具体的な事例が出まして、そこで抽象的でありますが、「すみやかに」こういうふうに法文になったのではないかというふうに私は考えておりますが、この「すみやかに」という文句の使い方でありますが、これは答申の趣旨に沿いまして、ほんとうにすみやかにやる、十日以内にやるというふうにこれから行政指導をして、田口さんの御心配をなくなすようにしたい、こう私は考えております。今法案をすぐ直すというよりも、そういうことは行政上できないのじゃないか、これだけは私からはっきり御答弁申し上げておきます。
  28. 山口一夫

    山口政府委員 一言つけ加えさせていただきますが、実は私どもといたしましては、ぜひ十日以内ということで各省を納得させたいというつもりで強力に主張しておりました。しかし、各省は具体的の事例をいろいろ上げて、この趣旨をほんとうに生かすためには、できるだけ強行停止の可能なものはするようにした方がいいのではないか、十日と切られてしまったら、審議が十分できないうちに十日の期限が来れば断わるしかないということで、かえってこれは趣旨が生きないじゃないかというような議論が相当強くございまして、そういう具体的事例をあげての議論につきましては、私どもも傾聴しなければなりませんので、それを尊重したわけでございますが、ただ、これは調査会で答申がございますので、実は調査会の答申の十日の議論というのは、実はそうつめた検討はされたわけではございませんけれども、一応ともかく政府に対してどうだという批判を出しましたので、そのことにつきまして調査会の会長並びに小委員になりました有力な委員の方々に、さらにこの点をその後申し上げまして御説明申し上げましたところ、それは十日ということよりも それではすみやかにということに変える方がよかろうというふうな御意見がございましたので、私どもといたしましてもそのような措置をとったわけでございます。ただ、これは、調査会は期限が切れて消滅しておりましたので、事実上委員であった方々に申し上げて御了解を得ただけでございまして、正式のものと申しますか、法律的なものではございませんけれども、実質的にはそういう事情については十分御了解を得る手段をとっております。
  29. 田口誠治

    田口(誠)委員 ただいまの御答弁のお考え方でいけば、私は了解できる面もあるわけなんです。なるべく問題によっては日にちをかけても、多くの人を救済したいという考え方で、十日という期限を切るということが、これはかえって不利であるという考え方から、「すみやかに」ということに法の建前をされたということになれば、これは了解できると思いまするが、それにいたしましても、私は、やはり原則的なものは、日にちをぽんと切って、そしてその他こういうものについてはこうだいう、そういう法の建前をとることが、ただいまの御回答の意味も、私から申し上げておる意味も、両方やはり生かしていくということになろうと思うので、これはこれ以上は意見になりまするので、申し上げることを避けます。  まだ受田委員が御質問があるようでございますので、私も質問半分でございますけれども、一応私の質問は打ち切ります。
  30. 永山忠則

    永山委員長 受田新吉君。
  31. 受田新吉

    ○受田委員 川島行政管理庁長官が外国へ御出張される前であるというので、あなたはぜひ自分が手がけたこの法案を実を結ばせたいという御熱意のほどを伺っておりますので、御出発前に大臣に一言お答えを願っておきたいと思います。  私は、この法案については、原則として、すでに前国会でこの法案が当委員会にかけられたときから賛意を表しておったおけでありますが、問題は、この法案の持っている意義、明治二十三年以来すでに七十年以上の歴史を持っている訴願法が、今日までなぜ改正をされるに至らなかったか、いろいろな途中の動きはあったようでございますが、とくにかく今日まで訴願法というこの法律が、古典的な古色蒼然たる旧法律文章をもって、しかも帝国議会ができる前の法律として残ってきたということですね。これはなかなかおもしろい持ち味があると思うのですが、あまり掘り下げた御答弁でなくていいですが、あなたは、この訴願法が、非常に長期間にわたって日本歴史の上に厳として国民の権利義務を擁護するために存在しておった、正式裁判でなくして、こうした行政救済一つの道が、長期にわたって形態が同じに残ってきた理由は、どこにあるとお考えでございましょうか。
  32. 川島正次郎

    川島国務大臣 この訴願法によりまして一体年間どのくらい訴願が出ているか、税関係まで加えますと、大体年間十万件程度訴願が出て処理されているわけであります。従って、古色蒼然たる法律でありますけれども相当国民の権利擁護のためには役立っているのだと思うのです。戦前にも一回これを改正する議が起こったそうでありますけれども、結局成立しなかったことは、やはり何といっても、現在の官庁の機構、あまり国民の権利擁護に熱心でなかったということが、一つの原因ではないかと思うのであります。いいかえれば、この改正には官僚が抵抗したということであると思うのですが、戦後は新憲法になりまして、全く行政の様相が変わりまして、各方面とも賛成して本案の提案にまでこぎつけたわけであります。  そこで、第一条に書いてあるのですが、この行政不服審査法の目的とするところは、簡易迅速な手続によりと書きまして、まず第一に「国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保する」こう書いてありまして、国民の権利、利益を救済することが主たる目的であります。ところが、戦前の訴願法によりますと、これは従たる目的であって、行政の適正な運営をはかることを主たる目的として訴願法ができている。そういうところにこの法律の根本の精神の違いがあるわけであります。そういうことだと思って、今日まで二十三年以来改訂しなかったのでありますけれども、幸いに今回は提案の運びになりまして、皆さんに御審議を願っておるわけであります。
  33. 受田新吉

    ○受田委員 この法律の主目的は、究極するところは、国民の権利、利益の救済行政の適正な運営の確保ですね。ここにねらいがある。ところが、現実に行政庁は、この訴願でも行政訴訟でも同じことでありますけれども行政事務がはなはだ弛緩しているのです。これは、行政管理庁長官としての、最近におけるあなたの党内における最も有力な実力者としての御努力が、漸次実を結びつつありますけれども、このような法律改正をしたとしても、行政運営が、この文句に書いてある「適正な運営を確保する」というそのこと自身は、法律改正だけでできるものではないのです。実際に官庁が真剣にこれと取っ組むならば、今までだって、たとえば恩給法、援護法、その他のいろいろな社会保障関係手続などでも、提出をした書類についてもっと早く結論が出て裁決されなければならない。特に年令的に老齢に達している人たちは、こういういろいろな手続上の問題で、ついにその恩典に浴することなく、この世から去っていく人がたくさんあるわけです。行政庁がすみやかに申請とともに真剣に取っ組んでくれたならば、その人が生存中に幾つかの恩典に浴したであろうものを、ついにその人は墓場でもこれを見ることができないという人さえも出ているのです。行政そのものは行政庁の心がまえにあると私は思うのです。大臣、いかがです。
  34. 川島正次郎

    川島国務大臣 行政の適正な運営を確保する方策はいろいろあると思うのであります。そこで私は、先般御協賛を得ましてできた臨時行政調査会に対しまして、行政機構の改革と行政運営改善と、この両方面から検討を願っておるわけでありまして、この行政不服審査法行政の適正な運営方法一つだと思うのです。これだけでもって行政運営が適正にできるとは考えておりません。考えておりませんが、たしか一進歩だとは考えております。なお今後とも行政の適正な運営につきましてはできるだけ努力しまして、あらゆる手を打ちたい、これは私が行政管理庁長官になりまして以来の念願であります。ただいままでもいろいろ監査その他でやっておりますが、今後とも十分にそれはやっていきたい、こう考えております。
  35. 受田新吉

    ○受田委員 私があなたに御期待申し上げているのは、これほど熱心に行政機構の改革と行政運営の適正、機構と人間の両方ぴったりして国民の期待にこたえようとしておる熱意には、敬意を表しております。私たちがかつて法律を学んだ当時、この訴願法というものの取り扱いについて、行政訴訟とともにこれは大へん興味を感じて勉強した問題です。しかも、今、おおむね私どものよわいよりも古い人々は、これに郷愁を感じている面が一つあると思う、しかしながら、もう時代は急転して民主化時代になってきておるときに、今これに列挙された改善の要項などを見ると、確かにわれわれとしては、これは整理統合してすっきりしたものにしたいという新時代の要請も手伝ってきております。  そこで、私伺いたいのは、結論はまたあとから伺いますが、さしあたり、今度改正されようとした、調査会の答申などに基づいてやられようとしたその中に、もう国民の権利、利益関係救済運営の適正の方に重点が置かれて、行政庁の側には得るところがないのか、行政庁の側でも得るところがあるかどうかです。いかがでしょう。
  36. 山口一夫

    山口政府委員 さしあたり行政庁といたしましては、教示の規定に基づきましては教示をしなければならない。また、各種の拡大されましたいろいろな申し立て事項によりまして、一応不服の申し出が従来よりは出やすくなった関係上、いろいろ出てくると思います。こういう関係がございますので、さしあたり事務的にはある程度の負担がかかってくることは覚悟いたしております。しかし、これは、この法律精神である国民の権利、利益の救済という大目的のための仕事でございまして、当然その期待にはこたえるように努力して参りたい、かように考えております。
  37. 受田新吉

    ○受田委員 事務的にかえって複雑になるとか経費もかかるとかいうところで、サービスの方が多くなって、別に得るところはあまりないという結論ですか。
  38. 山口一夫

    山口政府委員 得るところというのは、結局行政が適正に行なわれ、また国民の権利、利益が拡大するということは、行政がよりよく行なわれることになりますので、その面におきましては非常な進歩がある。そういう意味の得るところと申しますか、そういう意味の効果は十分に期待できると思います。
  39. 受田新吉

    ○受田委員 非常に国民全体の奉仕者としてのお立場の御発言で、長官、こういう部下をお持ちになったことを喜んで下さい。私は、ここで問題は、つまり、この法律が通ると、どんどん申し立てが出る、異議の申し立てにしてもどんどん出てくる、異議の申請も出てくる、不服の申し立ても出てくる、こういうことになってくると、仕事がますます複雑になる、そういうことであるが、国民の権利が擁護され、行政運営が適正になる、それが得るところだ、この考えは大いに私は賞揚してあげます。ほめてあげます。その考え方行政運営に当たっていくことによって、国民に喜ばれるわけなんです。その心がまえを特に賞賛申し上げて、私の質問の次に移ります。  私はここで指摘したいことは、作為、不作為の関係です。不作為に対するこの不服の申し立て、これはなかなか妙味のあることなんです。当然なすべき行為をしなくて国民に迷惑をかけたときに、その不作為に対する不服の申し立てを認めておる。書類を出した、いろいろな口実かまたはなまけておって、それに手をかけてくれなかった、そのために、生きている間についにその恩典に浴することができなかった、これは社会保障関係でなくて、そのほか許可、認可等の事項でもけっこうです。とにかく非常に言を左右にして、まだまだといううちに日時を費やしてきたという場合ですね、こういう場合が入ってきておるわけです。そういう場合に、不服の申し立てをする申し立てに期限がありますか。不作為の不服の申し立て。
  40. 山口一夫

    山口政府委員 不作為は、相当の期間のうちに何らかの行為をしない場合という、抽象的な……。
  41. 受田新吉

    ○受田委員 そうそう、はっきり期間がなかったですね。相当ということが書いてある。さっき議論になったでしょう。どうですか。これは相当といえば、十日ということも出ておるし、二十日ということも出るんですね。一体政府はどちらをとっておられますか、相当ということは。
  42. 野木新一

    野木政府委員 本案の第二条第二項に不作為の定義がありまして、「行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内になんらかの処分その他公権力の行使に当たる行為をすべきにかかわらず、これをしないことをいう。」こういう定義がございまして、ここから出発するわけでございます。相当の期間内というのを、たとえば十日以内とか二十日以内とか一月以内とかに切ったらどうかという議論も一応は考えられると存じますが、ここでそういたしませんでしたのは、処分その他の公権力の行使というものは千差万別でありまして、いろいろの事態があります。従って、一律にそういうように切るということは、やはり行政実態に即して考えますと、非常に困難であります。従いまして、相当の期間と申しますと、一種の価値的概念でございますから、多少ばく然としているのではないかといえばそうでございましょうが、やはりこれは客観的に見て、通常の人が相当の期間と認められる、そういう場合に従って処分をしたということにとらえておるわけでありますから、おのずから、そこに相当の期間ということは、その処分々々によって判例的に積み重ねられてできていくと存ずる次第でございます。
  43. 受田新吉

    ○受田委員 はなはだばく然としているのです。これが問題ですね。相当の期間はおのおのの認識によって違うということになると、これは問題です。そうすると、相当の期間というのは、本人は十日か二十日か、おのおののいろいろな考え方があるでしょう。その間に何らの措置がない。そこでまた申し立てる、次々に申し立てができるものかどうか。そうなると何回でもできるものかどうか。
  44. 野木新一

    野木政府委員 ある時点におきまして、相当の期間と認めて申請した。ところが、それが結局上の審査庁におきまして、相当の期間たっていないということで、申し立てを認めないという場合、それから後になりましてまたやるという場合におきましては、そのときには相当の期間たっているということもあり得るわけであります。それはやはりその事情が違ってくるわけでありますから、異なった事情においては、また異なった申し立ても可能だ、理論的にはそう考えておる次第であります。
  45. 受田新吉

    ○受田委員 それは私問題だと思うのです。何回も申し立てができるという理論が、理論的に可能だということになると、これは例の最高裁の判決などでも、すべてこの訴願を経なければ出訴することができない、正式裁判というものは、訴願手続を一応経ておらなければやれないということになっておるわけです。それを何回も申し立てするということになると、今までよりはよほど複雑になって、四段階も五段階も手続が要る。救済手続が何段階も何段階も要るということになったら、いよいよ複雑になって、今までよりも本人には不利になるのじゃないですか。
  46. 野木新一

    野木政府委員 その点につきましては、今度の法務委員会でやられました行政事件訴訟法におきまして、いわゆる現在は訴願前置主義というのが一般に取られておりますので、おっしゃったような問題もあるいは起こるかもしれませんが、新法におきましては、訴願前置主義をはずしておりまするので、おっしゃったような御心配というものは起こってこないように思います。
  47. 受田新吉

    ○受田委員 それは現状においてはまだそういう考え方として、これに切りかえた場合に、申し立てがどんどん繰り返されることによって、正式裁判を仰ぐ機会がおくれてくる。何回も申し立てができるという今のお説でいけば、こっちの方では申し立てておいて、こっちの方では出訴ができますか。両方できますか。
  48. 野木新一

    野木政府委員 選択主義ということになっておりますので、どっちでもできるのでございます。
  49. 受田新吉

    ○受田委員 それではっきりしました。どちらでも選択で自由だ。一応その選択主義に問題があると思うのです。一方で不服の申し立てをしておる、一方では正式裁判を仰いでおる、こういうような行き方、選択というと、両方やってもいいのでしょう。どちらかでなければならぬのでしょうか。両方やっていいのでしょう。
  50. 野木新一

    野木政府委員 訴願前置主義をはずしましたのは、いわゆる選択主義に変わりまして、その欲するところに従って、両方できる、自分の好きな方ができる、両方やってもいい、そういう建前でございます。
  51. 受田新吉

    ○受田委員 どっちをやってもいいし、両方やってもいい、こういうことですね。これで一つ問題が別の力で起こってくるわけなんですが、そうしたことは、結局正式裁判の方を重点を置く、つまり、すぐ裁判へ持っていってもいいのだということになるので、この行政不服の審査の方が軽視される。今までは訴願を経なければ正式裁判へいけなかったが、今度は最初から裁判にいってもいいということになってくると、事務的な行政処理でできるものを、行政処分に対する不服を解決する行政救済手段として、簡単にいくもりを、裁判で念入りにやるという行き方、これはかえって本人には非常な不利を与える場合がある。本人が選択するのでやむを得ませんけれども、選択の仕方によって、裁判の方へ持っていったために、手続が大へんやっかいになり、費用もかかった、行政不服の方でいけば、もっと簡単に費用もかからなくて済んだ場合があるのに、裁判に持っていったためという場合が起こりますね。そういう場合があり得るかどうか、これはいかがですか。
  52. 野木新一

    野木政府委員 御質問の要点は、この行政事件訴訟法律案の際に、訴願前置主義をとるかとらないかという問題に関連して、非常に重要項目となって議論されたところにつながる問題であると思います。そしてその答申並びに法律におきましては、今言ったように、現行行政事件訴訟特例法のとっている訴願前置主義はとらないということで、法律ができているわけであります。従いまして、行政不服審査と訴訟法との関係におきましては、いわゆる学者の選択主義という主義になっておりまして、先ほど申し上げたように、行政処分によって権利、利益を侵害された者は、訴訟にいこうと思えばいけるし、また、行政不服審荘を申し立てようと思えば申し立てられ、どちらでもいいという選択主義が原則になっているわけであります。これが、結局新しい憲法下において、国民の権利、利益を擁護するのに適しているのではないか。というのは、権利救済の本筋というものは、やはり司法裁判所だ。従って、訴願前置主義にしますと、どうしても行政庁の判断を経なければ裁判にいけない、それでは新憲法の司法裁判所が国民の権利擁護の最後のとりでといった点と少し不適切じゃないかという点から、訴願前置主義は廃止されたわけであります。ただ、選択主義になっておりますが、たしか行政事件訴訟法におきましては、訴訟が起こされ、また不服審査手続が起こされた場合には、裁判所は、場合によっては審査手続を停止して、こちらの手続の進行を見るというような調整規定もあったと思います。そういうような調整ははかっている次第でありますから、その点で相当救われるのじゃないかと存ずる次第であります。
  53. 受田新吉

    ○受田委員 これは、前置主義を採用するかどうかという議論もずいぶんあったそうでありますから、だから裁判の前の、裁判に近い別の方式でやるということですから、この問題は、大まかに言えば、行政救済手続の体系化という上から一つの問題があると思う。つまり、正式裁判の司法手段に基づく前の行政救済手段というようなもの、また、事前救済手段と事後救済手段とに分けてみる、そういう一つ行政救済手続制度というものの体系化を、一体どういうふうに考えてきたのですか。体系化というものは全然考えていないですか。調査会で一応の体系を考えるという意見はなかったわけですか。
  54. 野木新一

    野木政府委員 行政処分によって権利、利益を侵害された者の救済という点を体系的に考えてみますと、まず行政処分をする際に、権利、利益の侵害でないような、そういういろいろな手続をとって行政処分をするようにしたらどうか、これがどっちかというと、いわゆる行政手続法の問題でございます。ところが、次には、行政処分が一体あったか、あって権利、利益が侵害された、それをどういうようにして救済していくかという法体系を考えていく場合におきまして、ここに二つありまして、それが権利の侵害、違法という面におきましては、これは裁判所にいく道は、憲法上当然開かれておるわけでありますが、その前に、行政庁として自分でやった処分であるから自分の中で救済をはかろう、そういうのは、いわゆるもとの訴願、今度の行政不服審査法であります。そういう二つの考えでありまして、ただ、この二つの考えをどういうふうに組み合わせるかという点になりますと、今言ったように、現在の行政事件訴訟特例法でとっております訴願前置主義、まず訴願手続をしてこなければ、訴えを起こしても受け付けないという制度、それから今度とりました選択主義、どちらでもその権利、利益を侵害されたものの選択にまかすという主義、そういうふうに体系的に一応考えております。ただ、先ほど申し上げたように、行政手続法の方は、まだ十分法案手続は伸びていないということであります。
  55. 受田新吉

    ○受田委員 問題は、この新しい制度が、ほんとうに国民の権利、利益を擁護するのに適切であるかどうかということですから、大所高所から一応結論を得る過程をお聞きしてみたわけです。それから現実にこれから問題があるという選択の過程においても、なお両方の進行状況で打つ手があるということでありますから、そういうところは実際の運営ができれば私はいいと思う。  ちょっと話が横にそれますが、独立の行政裁判所の設置ということについての意見は出なかったのですか。
  56. 野木新一

    野木政府委員 独立の行政裁判所という意味でございますが、いわゆる最高裁判所、司法裁判所の系統から離れた意味の、全然旧の行政裁判所と申しましょうか、そういう意味行政裁判所、これは現行憲法上からはどうもむずかしいのではないかという議論が強かったわけであります。そのほかに、そうじゃなくて、最高裁判所の系統におきまして、たとえば今家庭裁判所があるのでありますが、最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所、簡易裁判所が通常の過程でございますが、そのほかに、家庭裁判所と似たような行政裁判所を中央に設けて、それの裁判判決が違憲とかなんとかいう場合には、最高裁判所につながらしたらどうかという議論もありましたが、それは今の段階においては、やはり司法裁判所、通常裁判所一本にするのがいいのじゃないか、ことに統一的に中央にそういう行政裁判所を設けるというのは、裁判系統に入れるとしても、多少逆行のきらいがあるのじゃないかという意見が、少なくとも現在の段階においては強くありまして、そういうふうに考えておりません。ただ、裁判所でたとえば一つ行政専門の部のようなものを設ける必要があるかもしれないという意見は出ましたが、いわゆる独立というか、家庭裁判所と並んだ行政裁判所、中央に統一的な裁判所を設けるという点までには、議論は熟しませんでした。
  57. 受田新吉

    ○受田委員 ここでちょっと不服申し立てと、それから法律の対象になる事件とのつながりからお尋ねすることがある。たとえば今試験問題が盛んに漏れておる。私は文教委員会でしばしば追及してきたのですが、これによって不利益を受けた者の救済は、今度の法律で救われる対象になるものかどうか。一般概括主義に転化した現段階におけるこの法律で、試験問題が漏れて、そのためにわかった人とわからない人と――試験問題がわからぬ方は、まじめにやった分はどうして不服を申し立てることができるか。これは行政不服の方に入る問題じゃないか。一例をあげてお尋ねします。
  58. 野木新一

    野木政府委員 御指摘のような問題、試験に関連する問題は、いろいろ議論になりましたが、試験というものは、何しろ非常に特殊なものでありますので、この手続は、一般の行政不服審査法という手続の活用にはやはり適当ではないのではないかということで、この法案におきましては、四条十一号におきまして、「もっぱら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分」ということにつきまして、試験関係は一応この手続からはずしております。しかしながら、もしそういうものが何か特別の救済が必要だというならば、二項で「前項ただし書の規定は、同項ただし書の規定により審査請求又は異議申立てをすることができない処分につき、別に法令で当該処分の性質に応じた不服申立ての制度を設けることを妨げたい。」という規定がありますから、それに適したものは、必要であればこの道は開いておるわけでありますが、しかしながら、何といっても、試験というものは非常に特殊なものでありまして、この不服審査法を活用していくには不適当である、こう存ずる次第であります。
  59. 受田新吉

    ○受田委員 どうもはっきりしないところ一つあるのですが、これは実際運営の上で、途中でいろいろ問題が起こります。この法律適用を受けるべきものかどうかということについて、実際やってみると、この法の適用とすべきもの、除去すべきものというようなことにひっかかると思う。これはまたそのときになって法律改正すればいいわけですが、十分研究しておいてもらわなければならぬ。  いま一つ、審理の問題でお尋ねしておかねばいかぬですが、これは審理方式というものが非公開主義ですね。どうなっておりますか。
  60. 野木新一

    野木政府委員 原則として公開主義ではありません。非公開ということになっております。
  61. 受田新吉

    ○受田委員 そこで、先ほどお答えいただいた選択主義を採用されて、裁判でもいいし、この行政不服の法律でもいい、どちらの適用を受けてもいいということになりますと、これは国民の権利、利益を守る立場から二つの裁判方式ということになれば、憲法に規定する公開主義をとるべきではないか。秘密のうちに処理していくということになれば、これは問題がある。原則としては、ある程度の公開主義をとるのがいいというお立場はどうでしょう。
  62. 野木新一

    野木政府委員 公開、非公開と申しますが、これは別の言葉で申しますと、書面審理を原則としておるわけであります。ただ、全部公開主義をとるという点は、この審判の性質からいたしまして、必ずしも全部の処分についてそこまでいく必要はないのではないか、そういうこの法案の立場に立っております。もっとも、今言ったように、申し立てがあれば、たとえば二十五条で、「審査庁は、申立人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならない。」とか、あるいは二十七条で、「参考人としてその知っている事実を陳述させ、又は鑑定を求めることができる、」それから三十三条二項で、「審査請求人又は参加人は、審査庁に対し、処分庁から提出された書類その他の物件の閲覧を求めることができる。」こういうような規定がありまして、原則的に公開主義をとらなくても、このように口頭審査というものをある程度とり入れることによりて、書面審理のみからくる機密性というものは、ある程度除かれていくのではないかと存ずる次第であります。
  63. 受田新吉

    ○受田委員 それに関連するのですが、書面審理主義と、また口頭審理主義と申しますか、どちらでもいい。書面審理主義と口頭審理主義という立場では、書面審理主義を原則としておられる。一方では非公開を原則としておられる。そこに私はつながりがあると思うのです。やはり憲法で、個人の権利とか自由とかいうものが制限されるときには、これに対して反対審問を保障されているわけです。そういう意味からは、堂々と口頭で申し入れて意見を述べさせるような道を開く、この方を原則とする方が正しいのではないかという考え方はいかがでしょう、経費の節約とかいうことでなくて。
  64. 野木新一

    野木政府委員 口頭主義というものをとりますと、口頭で審問するということは、やはり一種のテクニックを相当要するのでありまして、普通の行政庁の方でありますと、なかなかそれに習熟するのもむずかしいし、また、手続が非常に繁雑になるわけです。行政不服審査法の、簡易迅速に何とか救済をはかろうという一つの立法目的から見ますと、どうも口頭主義というのは、やはりその趣旨に沿わないじゃないか。従って、原則としては書面審理にしておきまして、当事者が申し出たときは――二十五条にありますが、審査請求人から申し立てがあったときは、申し立て人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならないといったような程度の、折衷主義と申しましょうか、口頭主義をある程度入れた方が、やはり簡易迅速に行政庁でやるという立法目的にはかなっておるのじゃないか、そういう見解からこの案ができておる次第であります。
  65. 受田新吉

    ○受田委員 私は、こういう異議申請、不服申し立てのようなものを取り扱うお役人は、やはり優秀な人だと思うのです。無能な人はおらぬと思うのです。従って、そうした優秀な人によって処理されるものは、やはり筋を通してやる手続にしておくべきじゃないか。書面審理というようなことになると、また本人を呼び出さなければいかぬことになる。本人の代理人が出るというような場合も起こって、書面審理でかえって複雑な結論を出すおそれもあるので、やはり口頭主義というものを採用しても、そこで本人の意思もすぐ伺うことができるし、書面で満ち足りないことを解決することもできるのであります。非常に基本的な問題でありまして、根本的な問題になると、憲法の関係と裁判の関係にも及びますので、根本的な問題で時間をかけることを避けますが、これは大事な問題だと思うのです。書面審理がかえって日数をかけておる。こういうのが従来の例です。やはり本人がそこに行って十分申し開きをして、その場で解決できることの方が、効果があるということも含んでおいていただきたい。私はこれだけで質問をおきますが、要するに、この法律ができ上がりましても、行政運営適正化をはかるためには、やはり役人の心がまえが大事なんで、役所でマージャンをやったり、午前十時ごろ役所に出たり、局長委員長――審査委員長みたいな委員長ですが、行政委員会委員長、管理監督の地位にある人が、自動車の事情などでおそく御出勤になる。従って、下の方にも影響して――河野さんのような大臣がおられると、九時に出始めておりますが、川島さん、あそこは勤務時間が大臣の御要望に沿うているようです。私の関係者があそこに勤めておりますが、九時よりおそう出られないそうです。十時までの一時間の余裕部分をそういう仕事に充当してくれれば、これは受信主義をとっておられるようですが、その翌日には裁定が下って本人に行くというように、非常に簡潔な手続で能率を上げるという手もあるわけです。これは運用さえよければ今までの行き方よりはよいのです。だから、この法律が通ると同時に、行政管理庁が中心になられて、官紀、綱紀の粛正と事務能率の高揚をはかられて、手さばきのよい事務をやって、国民の権利、利益を守っていただく、さっぱりしたものをやっていただくように私は希望して、質問を終わります。
  66. 永山忠則

    永山委員長 本日はこの程度にとどめて、次会は、来たる二十三日木曜日十時理事会、十時半委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時三十五分散会